(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】無水コハク酸官能性シロキサンチキソトロープ剤を含有する充填剤入りシリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240129BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08L83/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542606
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022012245
(87)【国際公開番号】W WO2022164640
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャンジー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ベセラ、アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チー-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ドンチャン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー、リチャード
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04Y
4J002CP05W
4J002CP14X
4J002DA010
4J002DA020
4J002DA076
4J002DA080
4J002DA090
4J002DE070
4J002DE106
4J002DE146
4J002DF000
4J002DK000
4J002EX018
4J002EX037
4J002EZ009
4J002FA040
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD14Y
4J002FD159
4J002FD207
4J002FD208
4J002GJ00
4J002GQ00
(57)【要約】
組成物は、マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を含有し、マトリックス材料は、(a)1分子当たり平均2個以上の無水コハク酸基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、(b)第1のポリオルガノシロキサン以外の第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、充填剤粒子は、組成物の体積に基づいて15~80体積パーセントの範囲の濃度で存在し、第1のポリオルガノシロキサンは、マトリックス材料1グラム当たり0.30~200マイクロモルの濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を含む組成物であって、前記マトリックス材料が、
a.1分子当たり平均2個以上の無水コハク酸基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、
b.前記第1のポリオルガノシロキサン以外の第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、
前記充填剤粒子が、組成物の体積に基づいて15~80体積パーセントの範囲の濃度で存在し、前記第1のポリオルガノシロキサンが、マトリックス材料1グラム当たり0.30~200マイクロモルの濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する、組成物。
【請求項2】
前記第1のオルガノポリシロキサンが、以下の平均化学構造:
【化1】
(式中、R’は、各出現において、独立して、1~6個の炭素原子を有する二価炭化水素の群から選択され、Rは、各出現において、独立して、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビルの群から選択され、nは、5~150の範囲の値である)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各R’が、-CH
2CH
2CH
2-であり、各Rが、メチルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のポリオルガノシロキサンが、ビニル官能性ポリオルガノシロキサンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックス材料が、2個以上のシリルヒドリド基を含む第3のポリシロキサンを更に含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤粒子が、組成物の体積に基づいて40~80体積パーセントの範囲の濃度で熱伝導性充填剤粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
i.前記熱伝導性充填剤が、組成物の体積に基づいて40~70体積%の範囲の濃度で存在するとき、前記第1のポリオルガノシロキサンが、マトリックス材料1グラム当たり7.5~200マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在し、
ii.前記熱伝導性充填剤が、組成物の体積に基づいて、70体積パーセントを超え、かつ同時に80体積パーセント以下の濃度で存在するとき、前記第1のポリオルガノシロキサンが、マトリックス材料1グラム当たり0.3~120マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
充填剤処理剤を更に含む、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記充填剤粒子が、組成物の体積に基づいて15~60体積パーセントの範囲の濃度で存在する導電性充填剤粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のポリオルガノシロキサンが、ビニル官能性ポリオルガノシロキサン1グラム当たり7~160マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水コハク酸末端シロキサンチキソトロープ剤を含有する充填剤入りシリコーン組成物に関する。
【0002】
序論
充填剤入りシリコーン組成物は、ポリシロキサン成分を含むマトリックス材料中に分散された充填剤を含む。充填剤入りシリコーン組成物は、熱伝導性材料及び導電性材料などの伝導性シリコーン組成物を含む多くの用途で使用される。伝導性シリコーン組成物中の充填剤は、組成物の伝導特性を高めるのに役立つ。熱伝導性シリコーン組成物は、典型的には、熱伝導性充填剤を含有し、導電性シリコーン組成物は、典型的には、導電性充填剤を含有する。充填剤は、多くの場合、充填剤入りシリコーン組成物の体積に基づいて、15体積パーセント(体積%)以上の濃度で存在し、最大80体積%の濃度で存在することができる。導電性充填剤の量を増加させると、シリコーン組成物の導電特性を増加させることができるが、それはまた、典型的には、充填剤入りシリコーン組成物の粘度も増加させ、これは、シリコーン組成物を基材に適用することを困難にする(低い加工性)場合がある。その結果、シリコーン組成物の伝導特性を最大にすることと、シリコーン組成物の加工性を維持することとの間には緊張があった。
【0003】
剪断下で低粘度を有することによって高い加工性を有することが望ましいが、それが配置される形状及び場所(すなわち、物理的安定性)を維持するために、低剪断下又は無剪断下で高粘度を有することもしばしば望ましい。剪断減粘性組成物は、剪断が殆ど又は全くない状態では比較的高い粘度を有し、組成物の安定性を提供する一方、押出を可能にするために剪断下では比較的低い粘度を実証している。結果として、剪断減粘組成物は、押出などの比較的高剪断方法によって容易に適用することができ、更に、一旦適用されると物理的安定性を維持することができる。充填剤入りシリコーン組成物に剪断減粘特性を導入する方式が存在する。しかしながら、その課題は、組成物の押出が可能になるように剪断下で十分に低い粘度をなお達成しながら、充填剤入りシリコーン組成物において剪断減粘挙動を誘導する方法を特定することである。剪断減粘特性を増加させる多くの方法は、しばしば剪断下において押出/流動の減少をもたらす。剪断減粘挙動は、しばしば、組成物の「チキソトロピー指数」によって特徴付けられ、これは、低剪断条件における粘度を、高剪断条件における粘度で割った比である。チキソトロピー指数を増加させることは、組成物の剪断減粘特性を増加させることに対応する。
【0004】
チキソトロピー指数は、低剪断粘度を増加させること、高剪断粘度を減少させること、又はこれらの組み合わせによって増加させることができる。しかしながら、減少する高剪断粘度に対して低剪断粘度を優先的に増加させることが望ましい場合がある。低剪断粘度を増加させると、適用後又は保管時の物理的安定性及び組成安定性(組成物からの充填剤の沈降)が向上する。これらの特徴が最も重要である場合、例えば、組成物が滴り落ちたり又は垂れたりしてはならない垂直用途においては、低剪断粘度を可能な限り増加させることが望ましい。高剪断粘度を上下に変化させることは、組成物の堆積又は押出の方法に望ましくない影響を与える可能性があるので、高剪断粘度の変化は最小限に抑えることが望ましい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させるために、充填剤入りシリコーン組成物の低剪断粘度をその高剪断粘度に対して優先的に増加させる充填剤入りシリコーン組成物のための添加剤を特定することである。より具体的には、本発明の目的は、充填剤入りシリコーン組成物の体積に基づいて15~80体積%の充填剤を含む、充填剤入りシリコーン組成物のための添加剤を、特定することであって、その添加剤は、組成物の最小粘度に対して最大粘度を優先的に増加させると同時に、かつ本明細書において以下に記載される0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたってひずみ掃引法で決定される200パスカル*秒(Pascal*seconds、Pa*s)以下の最小粘度を達成すると同時に、組成物のチキソトロピー指数を増加させる。更により望ましくは、その添加剤が、同時に、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を、50%以上、好ましくは75%以上、最も好ましくは100%以上増加させることができる場合である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、組成物のチキソトロピー指数を増加させるために、シリコーン組成物の低剪断粘度を、その高剪断粘度に対して優先的に増加させる充填剤入りシリコーン組成物のための添加剤を特定するという課題に対する解決策を提供する。本発明の添加剤は、15~80体積%の充填剤を含む充填剤入りシリコーン組成物のためのチキソトロープ剤として機能し、充填剤入りシリコーン組成物の最小粘度に対する最大粘度を優先的に増加させると同時に、かつ本明細書において以下に記載されるように、0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたってひずみ掃引法で決定される200パスカル*秒(Pa*s)以下の最小粘度を達成すると同時に、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させる。その添加剤は、同時に、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を、50%以上、好ましくは75%以上、最も好ましくは100%以上増加させることができる。
【0007】
本発明は、1分子当たり平均2個以上の無水コハク酸基を有する無水コハク酸官能性直鎖状ポリシロキサンが、充填剤入りシリコーン組成物中でチキソトロープ剤として機能して上記の目的を達成することができる発見の結果である。
【0008】
第1の態様では、本発明は、マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を含む組成物であって、マトリックス材料は、(a)1分子当たり平均2個以上の無水コハク酸基を含む第1のポリオルガノシロキサンと、(b)第1のポリオルガノシロキサン以外の第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、充填剤粒子は、組成物の体積に基づいて15~80体積パーセントの範囲の濃度で存在し、第1のポリオルガノシロキサンは、マトリックス材料1グラム当たり0.30~200マイクロモルの濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する、組成物である。
【0009】
本発明の組成物は、例えば、熱伝導性ポリシロキサン組成物及び/又は導電性ポリシロキサン組成物などの充填剤入り導電性ポリシロキサン組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0011】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0012】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0013】
「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を指し、アルキル基及びアリール基を含む。
【0014】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導可能な炭化水素基を指す。アルキルは、直鎖状又は分岐状であり得る。
【0015】
「アリール」は、芳香族炭化水素から水素原子を除去することにより形成可能な基を指す。
【0016】
組成物の「最大粘度」、「最小粘度」、及び「チキソトロピー指数」は、以下の振動剪断ひずみ振幅掃引(「ひずみ掃引」)法に従って測定される。直径25ミリメートル(mm)の円形平行鋸歯状プレート(TA Instruments(New Castle,DE,USA)から、部品番号401978.901)を準備する。試料組成物を一方のプレートに配置し、プレートが互いに平行になり、プレート間のギャップ間隔が1.0mmになり、試料組成物が両方のプレートと熱接触し、プレート間のギャップ間隔が満たされるまで、もう一方のプレートを試料組成物に押し付ける。ARES-G2ひずみ制御されたレオメータ(TA Instruments(New Castle,DE,USA))を使用して、摂氏23度(℃)で、1秒当たり10ラジアンの角周波数を使用して、1桁当たり20個のサンプリング点で0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅の対数掃引を行う。パーセント振動ひずみ振幅の関数として、パスカル*秒(Pa*s)の複素粘度を記録する。「最大粘度」は、0.1マイクロニュートン*メートルの振動トルク振幅(又は同等に、0.0326パスカルの振動応力振幅閾値を超える)を超えて記録された最高複素粘度である。「最小粘度」は、同じ閾値を超えて記録された最低複素粘度である。
【0017】
「チキソトロピー指数」は、最大粘度対最小粘度の比である。本発明の組成物は、2.5以上、2.7以上、及び3.0以上、更には4.0以上のチキソトロピー指数を達成することができ、同時に、200Pa*s以下、更に175Pa*s以下、150Pa*s以下、125Pa*s以下、又は更に100Pa*s以下の最小粘度を達成することができる。
【0018】
29Si、13C、及び1H核磁気共鳴スペクトル法を使用して、ポリシロキサン中のシロキサン単位の組成及び平均数を求める(例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee,ed.,John Wiley & Sons:New York,1991,p.347ff.を参照されたい)。
【0019】
本発明の組成物は、マトリックス材料中に分散(分布)された充填剤粒子を含む。マトリックス材料は、第1のポリオルガノシロキサン及び第2のポリオルガノシロキサンを含む。
【0020】
第1のポリオルガノシロキサンは、1分子当たり平均2個以上の無水コハク酸基を含む。望ましくは、第1のポリオルガノシロキサンは、直鎖状ポリオルガノシロキサンである。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、R”3SiO1/2(「M」)及びR”2SiO2/2(「D」)シロキサン単位から選択されるシロキサン単位を主に含み、これらのみからなることができ、式中、R”は、ケイ素原子に結合した一価の有機基又は置換有機基であり、各シロキサン単位のO1/2及びO2/2は、別のシロキサン単位の別のケイ素原子と共有される酸素原子を指す。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、2個以下、好ましくは1個以下のR”SiO3/2(「T」)及びSiO4/2(「Q」)シロキサン単位を含有することができる。望ましくは、第1のポリオルガノシロキサンは、直鎖状ポリオルガノシロキサンの各末端に無水コハク酸基を有する。
【0021】
第1のポリオルガノシロキサンは、化学構造(I):
【0022】
【化1】
(式中、
R’は、各出現において、独立して、1個以上の炭素原子を有する二価の炭化水素の群から選択され、2個以上、3個以上、4個以上、更には5個以上の炭素原子を有することができ、かつ同時に、典型的には、6個以下の炭素原子を有し、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を有することができる)を有することができる。例えば、R’は、1つ又は全ての出現において、-CH
2CH
2CH
2-であることができる。
【0023】
Rは、各出現において独立して、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、更には7個以上の炭素原子を有するヒドロカルビルの群から選択され、かつ同時に、典型的には、8個以下の炭素原子を有し、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を有することができる。例えば、Rは、メチル基及びフェニル基から選択することができる。
【0024】
下付き文字nは、第1のポリオルガノシロキサン中の[R2SiO]基の平均数であり、5以上の値を有し、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、更には100以上の値を有することができ、かつ同時に、典型的には、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、更には100以下の値を有する。
【0025】
組成物中に、マトリックス材料1グラム当たり、0.30以上であり、0.40以上、0.50以上、1.0以上、5以上、10以上、25以上、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、更には250マイクロモル以上であることができる濃度の無水コハク酸基であり、かつ同時に、典型的には、300.0以下、290以下、275以下、250以下、225以下、200以下、175以下、150以下、125以下、更には100マイクロモル以下の無水コハク酸基を提供するのに十分な第1のポリオルガノシロキサンを含む。
【0026】
組成物を作製するために使用される配合が既知である場合、組成物を作製するために使用される材料から無水コハク酸基の濃度を決定する。特に、組成物中の無水コハク酸基の濃度は、第1のポリオルガノシロキサンの数平均分子量(Mn)(Mn(第1のシロキサン))、1分子当たりの無水コハク酸基の平均数(#SAG)、組成物中の第1のポリオルガノシロキサンの重量パーセント(重量%1)、及び組成物中のマトリックス材料(充填剤以外の全ての成分)の重量パーセント(重量%2)から決定する。ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィによってMnを決定する。プロトン(1H)核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光法によって#SAGを決定する。組成物を調製するために使用される第1のポリオルガノシロキサンの重量及び組成物重量から重量%1の値を決定する。組成物中のマトリックス材料の重量及び組成物重量から重量%2の値を決定する。方程式(A)を使用して、マトリックス材料1グラム当たりの無水コハク酸のマイクロモル単位での無水コハク酸基の濃度を計算する:
無水コハク酸の濃度=[(1,000,000)(#SAG)(重量%1)]/[(Mn(第1のシロキサン))(重量%2)] (A)
【0027】
組成物を作製するために使用される配合が未知である場合、無水コハク酸基の濃度は、溶媒を使用して充填剤からマトリックス材料を抽出することによって組成物から決定することができる。次いで、溶媒を除去し、マトリックス材料を定量的フーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy、FTIR)によって分析して、マトリックス中の無水コハク酸基のモル数を決定することができる。その数をマトリックス材料の質量で割ると、マトリックス中の無水コハク酸基の濃度が得られる。
【0028】
マトリックス材料は、第1のポリオルガノシロキサン以外の第2のポリオルガノシロキサンを更に含む。望ましくは、第2のポリオルガノシロキサンは、無水コハク酸基を含まない。望ましくは、第2のポリオルガノシロキサンはビニル官能性ポリオルガノシロキサンである。第2のポリオルガノシロキサンは、化学構造(II):
RaR2SiO-[R2SiO]m-OR2Ra (II)
(式中、
R及びRaは、各出現において、独立して、ヒドロカルビル基、好ましくは1個以上、かつ同時に8個以下、6個以下、4個以下、更には3個以下、又は2個以下の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される)を有するものなどの直鎖状ポリオルガノシロキサンであることができる。望ましくは、Rは、アルキル基であり、Raは、ビニル基などのアルケニル基である。例えば、各Raは、ビニル基であることができ、各Rは、メチル又はフェニル基から選択することができる。
【0029】
下付き文字「m」は、1分子当たりのR2SiO単位の平均数であり、概ね10以上、20以上、30以上、更には40以上、かつ同時に、1000以下、800以下、600以下、400以下、200以下、150以下、100以下、80以下、60以下、更には50以下、又は45以下の値である。
【0030】
マトリックス材料は、第1及び第2のポリオルガノシロキサンとは異なる第3のポリオルガノシロキサンを含むことができる。第3のポリオルガノシロキサンは、2個以上のシリコーンヒドリド基を含むことができる。例えば、マトリックス材料は、第1のポリオルガノシロキサンと、ビニル官能基を有する第2のポリオルガノシロキサン(例えば、各Raがビニルである化学構造(II))と、複数のシリルヒドリド(silyl hydride、SiH)基を有する第3のポリオルガノシロキサンと、を含む、ヒドロシリル化硬化性組成物であることができる。
【0031】
組成物は、マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を更に含む。充填剤粒子は、組成物の体積に基づいて、15体積パーセント(体積%)以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、45体積%以上、50体積%以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上、更には75体積%以上の濃度で存在し、かつ同時に、概ね、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、55体積%以下、50体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下、更には30体積%以下の濃度で存在する。
【0032】
充填剤粒子は、熱伝導性充填剤、導電性充填剤、非導電性充填剤、又はこれらのタイプの充填剤の任意の組み合わせであり得る。望ましくは、熱伝導性充填剤は、熱伝導性充填剤及び導電性充填剤から選択される任意の1つ又は2つ以上の充填剤の任意の組み合わせである。
【0033】
熱伝導性充填剤としては、金属粒子、例えば、アルミニウム、銀及び銅の粒子;アルミニウム、銀及び銅などの金属でコーティングされた任意のタイプの粒子を含む金属コーティング粒子;無機粒子、例えば、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及びアルミニウム三水和物;並びに、炭素質材料、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び炭素繊維が挙げられる。
【0034】
導電性充填剤としては、金属粒子、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅及びこれらの合金の粒子;金属、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅及びこれらの合金でコーティングされた任意の種類の粒子;並びに、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びグラフェンが挙げられる。
【0035】
充填剤粒子は、典型的には、0.05マイクロメートル(μm)以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上の平均粒径を有し、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、更には100μm以上であることができ、同時に、典型的には、250μm以下、200μm以下、150以下、100μm以上、90μm以上、80μm以上、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5.0μm以下、更には3.0μm以下、1.0μm以下の平均粒径を有する。Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザ回折粒径分析器を使用して、ポリオルガノシロキサンの粒径分布の体積加重中央値(Dv50)として平均粒径を測定する。
【0036】
最も広い範囲において、充填剤粒子は、以下の形状、すなわち、球状、小板状、棒状、又は不規則な形状(例えば、「破砕された」)のうちのいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む任意の形状であることができる。
【0037】
組成物は、異なるタイプ及び/又はサイズの充填剤粒子の組み合わせを含むことができ、典型的には含む。例えば、組成物は、組成及び/又は形状及び/又はサイズが異なる2つ以上、更には3つ以上の異なる充填剤粒子の集合体を含むことができる。
【0038】
本発明の組成物は、既に考察されたもの以外の追加の成分の任意のもの又は組み合わせを、更に含むことができるか、又は含まないことができる。例えば、組成物は、マトリックス材料の一部として充填剤処理剤を更に含む(又は含まない)ことができる。充填剤処理剤は、典型的には、充填剤凝集及び充填剤-充填剤相互作用を低減することによって、マトリックス材料中への充填剤の分散を改善するために望ましい。充填剤処理剤はまた、マトリックス材料による充填剤表面のウェットアウトを改善し、組成物の粘度を低下させ、充填剤表面上の反応性基をキャップして、組成物の保管寿命を低下させ得る、充填剤との反応を防止することもできる。望ましくは、処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの一方又は両方を含むか又はこれらからなる。
【0039】
好適なアルキルトリアルコキシシランの例は、一般式:(R1)(R2O)3Si(式中、R1は、望ましくは1分子当たり平均で、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、更には16個以上の炭素原子を有し、同時に、典型的には、18個以下の炭素原子を有し、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、又は更には10個以下の炭素原子を有することができるアルキルであり、R2は、望ましくは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、更には6個以上の炭素原子を有し、同時に、典型的には、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を含有するアルキルである)を有する。望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、上記のアルキル基を有するアルキルトリメトキシシランである。望ましいアルキルトリアルコキシシランの一例は、n-デシルトリメトキシシランである。組成物中のアルキルトリアルコキシシランの濃度は、組成物の重量に基づいて、概ね0重量%以上、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.22重量%以上、0.24重量%以上であり、同時に、概ね0.75重量%以下、0.50重量%以下、0.40重量%以下、0.30重量%以下、好ましくは0.28重量%以下、0.26重量%以下、又は0.24重量%以下であり、0.22重量%以下であることができる。
【0040】
好適なモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの例は、一般的に、以下の化学構造(III):
R3SiO-(R2SiO)h-[(CH2)e((CH3)2SiO)f]g-(CH2)e-Si(OR2)3 (III)
(式中、R及びR2は、各々独立して、各出現において、上で定義したとおりであり、下付き文字hは、1分子当たりの(R2SiO)単位の平均数であり、典型的には、10以上、15以上、20以上、25以上、更には30以上の値を有し、同時に、概ね150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は更には30以下であり、下付き文字eは、各リンケージ内のCH2単位の平均数であり、独立して、各出現において、0以上、1以上、更には2以上の値を有し、かつ同時に、通常は4以下、3以下、又は更には2以下であり、下付き文字fは、典型的には、0以上、1以上、2以上、3以上の値を有し、かつ同時に、概ね6以下、5以下、4以下、3以下、又は更には2以下であり、下付き文字gは、典型的には、0以上、1以上、2以上、3以上、更には4以上の値を有し、同時に、概ね、6以下、更には5以下、4以下、又は3以下の値を有する。
【0041】
望ましくは、モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、一般分子構造(IV):
(CH3)3SiO-((CH3)2SiO)t-Si(OR2)3 (IV)
1つの特に望ましいトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、末端トリメトキシ官能化ケイ素原子を形成するように、R2が、メチルに等しく、下付き文字tが、130以下、好ましくは120以下、好ましくは110以下、より好ましくは110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、又は30以下、同時に、20超、好ましくは30以上の値に等しい式(IV)の組成物を有する。
【0042】
モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて典型的には0重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.30重量%以上、0.40重量%以上、0.50重量%以上、0.75重量%以上、更には1.0重量%以上又は2.0重量%以上であり、同時に、概ね3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.20重量%以下、1.15重量%以下、又は更には1.10重量%以下である。
【0043】
組成物は、複数の追加成分のうちのいずれか1つ若しくは任意の組み合わせを更に含んでもよい(又は含まなくてもよい)。そのような追加成分の例としては、硬化抑制剤、硬化触媒、架橋剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、粘度調整剤、シリカ充填剤、及びスペーサ添加剤が挙げられる。誤解を避けるため、組成物は、このような追加成分のいずれか1つ又は任意の組み合わせ又は複数のものを含まなくてもよい。例えば、組成物は、シリカ充填剤を含まなくてもよい。「シリカ充填剤」とは、シリカ、例えば、天然シリカ(結晶石英、粉砕石英、及び珪藻土シリカなど)、並びに合成シリカ(ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル及び沈降シリカなど)を含む固体微粒子を指す。追加的、又は代替的に、本発明の組成物は、ポリエーテル及び/又はシラノール官能性ポリジメチルシロキサンを含まなくてもよい。
【0044】
硬化抑制剤の例としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2フェニル-3-ブチン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、フマレート、マレエート、及びメチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランが挙げられる。存在する場合、抑制剤は、典型的には組成物の重量に基づいて0.0001重量%以上、0.001重量%以上の濃度で存在し、かつ同時に、概ね5重量%以下、又は更には1重量%以下、更には0.5重量%以下の濃度で存在する。
【0045】
硬化触媒としては、例えば、ヒドロシリル化硬化触媒、例えば、カールシュテットの触媒(Karstedt's catalyst)及び/又はシュパイアーの触媒(Speier's catalyst)(H2PtCl6)などの白金系触媒を挙げることができる。
【0046】
架橋剤としては、1分子当たり平均して2個以上のシリルヒドリド(SiH)官能基を有するシロキサンが挙げられ、本明細書で上述した第3のポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0047】
酸化防止剤は、存在する場合、典型的には組成物の重量の0.001~1重量%の濃度で含まれてもよい。酸化防止剤は、単独で、又は安定剤と組み合わせて存在してもよい。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤が挙げられ、安定剤としては有機リン誘導体が挙げられる。
【0048】
顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、及び銅フタロシアニンが挙げられる。存在する場合、顔料は、組成物の重量に基づいて0.0001~1重量%の濃度で存在する傾向がある。
【0049】
スペーサ添加剤は非熱伝導性充填剤であり、50~250マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。スペーサの例としては、ガラス及びポリマービーズが挙げられる。
【0050】
組成物は、ヒドロキシル官能性ポリシロキサン及びヒドロキシル官能性炭化水素を含まないことができる。
【0051】
熱伝導性組成物
本発明の組成物は、熱伝導性組成物を含むことができる。熱伝導性組成物として、充填剤粒子は、熱伝導性充填剤粒子を、組成物の体積に基づいて、望ましくは40体積%以上の濃度で含み、50体積%以上、60体積%以上、更には70体積%以上であることができ、かつ同時に、概ね80体積%以下の濃度で存在し、70体積%以下、60体積%以下、又は更には50体積%以下であることができる。
【0052】
熱伝導性充填剤が、組成物の体積に基づいて、40~70体積%の範囲の濃度で存在するとき、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、マトリックス材料1グラム当たり7.5~200マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する。
【0053】
熱伝導性充填剤が、組成物の体積に基づいて、70超~最大80体積%の範囲の濃度で存在するとき、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、マトリックス材料1グラム当たり0.3~120マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する。
【0054】
熱伝導性組成物は、望ましくは、前述のような充填剤処理剤を含む。
【0055】
本発明の熱伝導性組成物において使用するための1つの望ましい第2のポリオルガノシロキサンは、末端ビニル官能基及び40~800の範囲の平均重合度を有するポリジメチルシロキサンである(すなわち、各Rが、メチルであり、各Raが、ビニルであり、mが、40~800の範囲である化学構造(II))。
【0056】
導電性組成物
本発明の組成物は、導電性組成物であることができる。導電性組成物として、充填剤粒子は、導電性充填剤粒子を、組成物の体積に基づいて、望ましくは15体積%以上の濃度で含み、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、更には50体積%以上であることができ、かつ同時に、典型的には、60体積%以下の濃度で存在し、50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下、又は更には20体積%以下であることができる。
【0057】
組成物が導電性組成物であるとき、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、ビニル官能性ポリオルガノシロキサン1グラム当たり7~160マイクロモルの範囲の濃度の無水コハク酸基を提供するのに十分な濃度で存在する。また、第2のポリオルガノシロキサンは、末端ビニル官能基及び140~800の範囲の平均重合度を有するポリジメチルシロキサンであることも望ましい(すなわち、各Rが、メチルであり、各Raが、ビニルであり、mが、140~800の範囲である化学構造(II))。
【実施例】
【0058】
表1に、本明細書に記載の試料を調製する際に使用するための材料を特定する。
【0059】
【0060】
第1のポリオルガノシロキサン2の合成
480.38gの平均DPが100であるジ-メチル水素末端ポリジメチルシロキサン(Speierらの米国特許第2,823,218号及び米国特許第4,329,273号。Speierらの米国特許第2,823,218号における教示によって調製した)、19.61gのアリル無水コハク酸(CAS:7539-12-0、Sigma-Aldrichから購入した)、及び55.56gのイソドデカン(CAS:31807-55-3、Sigma-Aldrichから購入した)を、ガラス撹拌棒、ガラス撹拌棒アダプタ、凝縮器、温度プローブ、窒素パージ、及び加熱マントルを備えた1000mlの3つ口丸底フラスコに入れる。撹拌を250rpmに切り替え、反応フラスコの内容物を75℃まで加熱し、イソドデカン溶液中の0.35gの1%SYL-OFF(商標)4000触媒(The Dow Chemical Companyから入手した)を添加する。15℃の発熱後、反応を1時間保持し、FTIRでSi-Hをチェックする。Si-HがFTIRによって観察されなくなったら、脱揮工程のための反応を設定する。真空蒸留ガラス容器を追加し、フラスコの内容物を、2時間、135℃及び約5mmHgの真空で脱揮する。2時間後、室温まで冷却し、真空を解除し、デカントして、第1のオルガノポリシロキサン2を得る。
【0061】
熱伝導性複合材料試料-パートI
最初に熱伝導性複合材を調製し、次いで、その熱伝導性複合材を、第1のポリオルガノシロキサン成分と混合することによって試料を調製する。表2の配合及び次の手順に従って、5つの熱伝導性複合材(TC-1~TC-5)を調製する:第2のポリオルガノシロキサン1、充填剤処理剤、及び充填剤3を、100ミリリットル(milliliter、mL)のポリプロピレンカップに添加し、そのカップを、Flacktek Speedmixerに入れ、2000回転/分(revolutions per minute、RPM)で20秒間混合する。次いで、充填剤2を添加し、再び2000RPMで30秒間混合し、続いて、充填剤1を添加し、2000RPMで30秒間混合する。得られた混合物をアルミニウムパンに移し、3.066メガパスカル(23トル)圧力の真空下で、1時間、摂氏150度(℃)まで加熱する。
【0062】
【表2】
*重量%2は、組成物中のマトリックス材料の重量パーセントである。
【0063】
20グラム(g)の熱伝導性複合材を添加し、次いで、配合物中、0.1重量%毎に0.02gの第1のポリオルガノシロキサンを添加することにより、チキソトロープ剤として作用する特定量の第1のポリオルガノシロキサン成分を添加することによって、20mLのポリプロピレンカップ中で熱伝導性複合材を調製する(0.1重量%の装填量の場合は、0.02gの第1のポリオルガノシロキサンを使用し、0.5重量%の装填量の場合は、0.10gの第1ポリオルガノシロキサンを使用する、など)。
【0064】
ポリプロピレンカップを、Flacktek speedmixerに置き、1500RPMで20秒間混合して、試料の熱伝導性複合材を得る。熱伝導性複合材試料に関する配合は、熱伝導性複合材の特性と共に、表3にある。表3は、組成物中の充填剤の体積%によって分類されている。
【0065】
【表3】
1最小粘度が200Pa
*s未満であり、対応する参照複合材と比較して、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が最小粘度よりも大幅に増加する場合、試料は合格である。
2最小粘度が、200Pa
*sの最大量を超えるため、試料は不合格であった。
3参照複合材と比較して、最小粘度が最大粘度よりも大幅に増加したため、試料は不合格であった。
*重量%1は、組成物中の第1のポリオルガノシロキサンの重量パーセントである。
【0066】
熱伝導性複合材試料-パートII
12.24gの第2のポリオルガノシロキサン2、1.9gの第2のポリオルガノシロキサン3、0.47gの充填剤処理剤1、62.88gの充填剤1、及び22.51gの充填剤3を、ポリプロピレンカップ中で、2500RPMで20秒間、Flacktek speedmixerで一緒に混合することによって、参照6を調製する。3.066メガパスカル(23トル)の圧力の真空下、150℃で1時間、混合物を加熱して、参照6を得る。組成物中のマトリックス材料の重量パーセント(重量%2)は、14.61%である。
【0067】
20gの参照6を、0.02gの第1のポリオルガノシロキサン1と組み合わせることによって、試料13を調製する。試料13は、マトリックス材料1グラム当たり、0.1重量%の第1のポリオルガノシロキサン1及び14.7マイクロモルの無水コハク酸基を含有する。
【0068】
参照6及び試料13の最大及び最小粘度並びにチキソトロピー指数を決定する。結果は表4にある。
【0069】
【表4】
1最小粘度が200Pa
*s未満であり、対応する参照複合材と比較して、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が最小粘度よりも大幅に増加する場合、試料は合格である。
【0070】
熱伝導性複合材試料-パートIII
1ガロンのBaker Perkinsシグマブレードミキサー中で参照7を調製する。413.58gの第2のポリオルガノシロキサン4、20.00gの充填剤処理剤1、20.00gの充填剤処理剤2、及び614.5gの充填剤5を添加し、5分間混合する。スパチュラでチャンバ壁をこすり落とし、1310.5gの充填剤2を添加し、5分間混合する。スパチュラでチャンバ壁をこすり落とし、2621.0gの充填剤4を添加し、5分間混合する。チャンバ壁をこすり落とし、次いで更に5分間混合する。25トルまで真空にし、30分間混合する。135℃まで加熱し、60分間混合し、次いで、冷却して参照7を得る。マトリックス材料の濃度(重量%2)は、組成物重量に対して9.07重量%である。
【0071】
100gの参照7を、Flacktek 100Maxポリプロピレンカップに添加し、次いで、0.05gの第1のポリオルガノシロキサン1を添加することによって、試料14を調製する。Flacktek speedmixer中で、2500RPMで20秒間、続いて、1000RPMで10秒間、混合する。
【0072】
100gの参照7を、Flacktek 100Maxポリプロピレンカップに添加し、次いで、0.10gの第1のポリオルガノシロキサン1を添加することによって、試料15を調製する。Flacktek speedmixerで、2500RPMで20秒間、続いて、1000RPMで10秒間、混合する。
【0073】
参照7並びに試料14及び15に関する最大及び最小粘度並びにチキソトロピー指数を決定する。結果は表5にある。
【0074】
【表5】
1最小粘度が200Pa
*s未満であり、対応する参照複合材と比較して、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が最小粘度よりも大幅に増加する場合、試料は合格である。
【0075】
硬化性導電性複合材試料
表6は、硬化性導電性複合材試料に関する配合を提示している。以下のように試料を調製する。
【0076】
最初に、白金触媒成分を、第2のポリオルガノシロキサン2成分と共に、ポリプロピレンカップに添加し、2000RPMで30秒間混合することによって、触媒/抑制剤溶液を調製する。抑制剤成分を添加し、2000RPMで30秒間混合する。
【0077】
次いで、他の第2のポリオルガノシロキサン成分をポリプロピレンカップに添加し、次いで、触媒/抑制剤溶液を添加することによって、マスターバッチを調製する。2000RPMで30秒間混合する。Si-Hポリシロキサン成分を添加し、2000RPMで30秒間混合する。
【0078】
特定量の充填剤成分をポリプロピレンカップに量り分け、マスターバッチを添加し、2000RPMで30秒間混合する。特定量の第1のポリオルガノシロキサン1成分を添加し、2000RPMで30秒間混合して、最終的な硬化性導電性複合材試料を得る。
【0079】
【0080】
参照8~11、試料16~24及び試料Hに関して最大及び最小粘度並びにチキソトロピー指数を決定する。結果は表7にある。
【0081】
【表7】
1最小粘度が200Pa
*s未満であり、対応する参照複合材と比較して、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が最小粘度よりも大幅に増加する場合、試料は合格である。
2チキソトロピー指数が参照に対して低下したため、試料は不合格であった。
【国際調査報告】