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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】外科用材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/10 20060101AFI20240129BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61L31/10
A61L31/14
A61L27/16
A61L27/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542966
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2022050924
(87)【国際公開番号】W WO2022152920
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/138,743
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517442557
【氏名又は名称】ティシウム ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ マリア
(72)【発明者】
【氏名】モロー ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ビトン エリザ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AC03
4C081AC05
4C081BB03
4C081BB04
4C081CA081
4C081CA082
4C081CB031
4C081CB032
4C081DA06
(57)【要約】
本開示は、メッシュ及びポリマー組成物を含む新規な外科用材料、並びにヘルニア及び関連する疾患及び状態の処置におけるその使用に関する。本開示はまた、外科用材料を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ基材に適用されたポリマー組成物を含む外科用材料であって、前記ポリマー組成物が、手術中に前記外科用材料を身体組織上に再配置させることを可能にするポストイット効果を有し、前記ポリマー組成物が、前記身体組織上に配置した後に活性化されて、外科用材料を前記組織に付着させ得る、外科用材料。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、ポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)又はその誘導体を含む、請求項1に記載の外科用材料。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が光によって活性化される、請求項1に記載の外科用材料。
【請求項4】
前記メッシュが円形であり、前記ポリマー組成物の重量と前記メッシュの直径の比が約0.04g/cm~約0.06g/cmである、請求項1に記載の外科用材料。
【請求項5】
ヘルニアを処置する方法であって、
i)請求項1に記載の外科用材料をヘルニア状態の欠損部上に配置する工程であり、前記外科用材料が、好ましくは、ポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)又はその誘導体を含むポリマー組成物を含む、工程;及び
ii)前記ポリマー組成物を活性化して、前記外科用材料を前記ヘルニア状態の欠損部に近接する体内の組織に付着させる工程を含む、方法。
【請求項6】
工程i)の後、かつ工程ii)の前に、必要に応じて前記外科用材料を再配置することを更に含む、請求項5に記載のヘルニアを処置する方法。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、工程ii)の間に光によって活性化される、請求項5に記載のヘルニアを処置する方法。
【請求項8】
外科用材料を製造する方法であって、ポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)又はその誘導体を含むポリマー組成物をメッシュ基材上に適用することを含み、前記ポリマー組成物が、手術中に活性化されて、外科用材料を体内の組織に付着させ得る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物を含む外科用材料、並びにヘルニア、及び弱くなった、異常な、又は損傷した組織に支持を付与することを必要とするあらゆる疾患及び状態の処置におけるその使用に関する。本開示はまた、外科用材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルニアとは、臓器が通常含まれる空洞から突出することである。ヘルニアの処置のために、組織の弱くなった部位にメッシュを留置させることができる。メッシュは、鋲、縫合用糸、自己固定メッシュ、又は接着剤を用いてその部位に固定することができる。現在利用可能な固定法には、固定強度が弱い、痛みがある、使用性が悪い、及び/又は組織の損傷などの欠点がある。更に、縫合用糸は、低侵襲的手技では配置することが難しく、時間がかかってしまう。メッシュは腹壁の層の間の様々な位置に留置することができ、メッシュの位置は外科医の癖及び患者の病歴に依存することがある。
メッシュは2層の組織の間に留置されるため、より低い固定力が要求されることが多い。しかし、腹腔内メッシュ留置術(IPOM)のようないくつかの特定の手技では、メッシュは腹腔内に留置され、1層のみの組織と接触するため、より高い固定強度が要求される。タッカーは再吸収性(例えば、PGLA)であってもよく、そうでなくてもよい(例えば、チタン)。IPOMを行うことは非常に簡単であるにもかかわらず、内臓に望ましくない癒着が生じるリスクが高く(Gungor et al., 2010)、固定方法(通常1~2列の鋲、場合によっては経筋膜縫合で補完)による痛みが強い。
【0003】
固定法の選択は、外科医の癖、ヘルニアの位置、選択したアプローチ、及び患者によって異なる。鼠径部のシナリオでは、ほとんどの場合、最小限の固定を必要とするため、自己固定メッシュ(ProGrip(商標)-Medtronic)、数本の鋲、又は更にフィブリン接着剤が多く採用されている。開腹手術でヘルニアにアプローチする場合、ほとんどの場合縫合用糸が使用される。
現在、メッシュを組織に固定するための固定法は、鋲、縫合用糸、及びフィブリン又はシアノアクリレートで製造されている外科用接着剤など、いくつか存在する。しかし、いずれも以下の欠点の少なくとも1つを有している:疼痛1、癒着2、3、或いは性能(すなわち固定強度)及び/又は使い勝手の悪さ。
鋲には、以下に限定されないが、以下のようないくつかの限界がある。(1)この固定法は貫通性があり、術後の急性及び/又は慢性の痛みの原因となる。(2)鋲が内臓付着の原因となり得る。(3)ヘルニアの位置によっては、不十分な配置角度のために組織を誤穿刺する危険性がある(鋲を最大限に貫通させるために90°の角度と逆圧の適用を必要とするものもある)。(4)一度配置したメッシュを再配置することができない。(5)鋲を適用する際にメッシュが中心からずれることがあり、メッシュを平坦に配置することが困難である。これら全ての限界があるにもかかわらず、より適切な代替手段がない限り、鋲はIPOM固定の標準的な治療法である。
【0004】
以下の様々な接着剤が腹腔内留置の文脈で試験されているが、まだ最適でなく、広く採用されていない:(1)フィブリン-鼠径ヘルニア及び一部の腹側ヘルニア手術に使用されているにもかかわらず、IPOM修復におけるメッシュの臨床成績は、おそらく固定強度が低すぎるために納得のいくものを示さなかった。(2)シアノアクリレート系接着剤は鼠径部の修復に使用されることもあるが、使用性が悪く(すなわち体液と反応する)、組織毒性及び細胞の機能着障害が知られているため、今のところ採用は限定的である4,5。いずれの化合物についても、メッシュにインサイチューで適用する必要があり、自己重合性のためメッシュのプレコーティングが不可能であり、標準化することができない。更に、いずれの化合物も粘度が低く、周囲の組織に滴下する可能性がある。自己重合及び周囲組織への滴下を制御できないため、必要に応じてメッシュを再配置することができない。
したがって、ヘルニア患者、特にIPOM手技を受ける患者のために、新しい外科用メッシュ及びメッシュを組織に固定する固定方法に対する満たされない医療ニーズが残っている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、外科用材料は、表面を有するあらゆる基材、より詳細には外科用パッチなどの組織修復支持体、例えばメッシュ基材に適用されたポリマー組成物を含み、ポリマー組成物は、手術中に外科用材料を身体組織上に配置及び再配置させることを可能にするポストイット効果(post-it effect)を有し、ポリマー組成物は、身体組織上に配置した後に活性化されて、外科用材料を組織に付着させることができる。
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、PCT/EP2020/079941に記載されている組成物である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は光によって活性化される。いくつかの実施形態では、メッシュは円形であり、ポリマー組成物の質量とポリマーパターンの全長(例えば、内側クラウンの周囲長+外側クラウンの周囲長)の比は、約0.03g/cm~約0.08g/cm、より詳細には約0.04g/cm~約0.06g/cmである。
【0006】
いくつかの実施形態では、ヘルニアを処置する方法は、i)外科用材料をヘルニア状態の欠損部上に配置する工程であって、外科用材料は、好ましくは、例えば、PCT/EP2020/079941(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなポリマー組成物を含む工程、及びii)ポリマー組成物を活性化して、外科用材料をヘルニア状態の欠損部に近接する体内の組織に付着させる工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、工程i)の後、かつ工程ii)の前に、必要に応じて外科用材料を再配置することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、工程ii)の間に光によって活性化され得る。
いくつかの実施形態では、外科用材料を製造する方法は、例えば、PCT/EP2020/079941に記載されているようなポリマー組成物をメッシュ基材上に適用することを含み得、ポリマー組成物は、手術中に活性化されて、外科用材料を体内の組織に付着させ得る。
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、開示された実施形態を示し、本明細書と共に、開示された実施形態の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、メッシュを留置することのできる腹壁の様々な層を示す。6
図2図2は、Ventralight(商標)ST及びSymbotex(商標)という2つの市販の複合メッシュの編み目の堅固さを示す。
図3】[保留]
図4図4は、ブタモデルにおけるAbsorbatacks(商標)と比較した本開示の外科用材料の移植を示す。
図5図5は、本開示の例示的な外科用材料を示す。
図6図6は、ダブルクラウンパターンを有する外科用材料とフルコーティングパターンを有する外科用材料との急性破裂の結果の比較を示す。
図7図7は、2つのポリマーの量比における本開示の外科用材料の破裂急性性能を示す。
図8図8は、ラップせん断試験の構成を示す。
図9図9は、バーストボール試験の構成を示す。
図10図10は、フィブリンと比較した本開示の外科用材料の急性ラップせん断性能を示す。
図11図11は、様々なメッシュを使用したバーストボール急性性能の概要を示す。
図12図12は、慢性動物試験の試験デザインを示す。
図13図13は、移植後90日以内のメッシュの外観を示す。1行目は本開示の外科用材料を示し、2行目はAbsorbatacks(商標)を示す。
図14】[保留]
図15】[保留]
図16図16は、ポリマー組成物(外科用材料)でコーティングされたメッシュ、又はAbsorbatacks(商標)で固定されたメッシュの組織寛容性と細胞浸潤を示す。
図17図17(a)は、バーストボールの構成を示す。図17(b)は、Absorbatacks(商標)と比較した本開示の外科的開示の3か月におけるバーストボール試験の結果を示す。
図18図18(a)はT-ピール試験の構成を示す。図18(b)は、Absorbatacks(商標)と比較した本発明の外科用材料の生着強度を示す。
図19図19は、ポリマー組成物であるPOL004及びAbsorbatacks(商標)の性能が同等であることを示す慢性試験の概要である。
図20図20は、種々のメッシュを使用した場合のポリマー組成物のアクリレート転化率を示す。
図21図21(a)~図21(c)は、特定のメッシュ及び/又はポリマーパターンに基づく例示的な比率及び/又は質量計算を示す。
図22図22は、Ventralight(商標)に固定したSorbaFix(商標)と比較した、POL004の3か月後のバーストボール試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリマー組成物
いくつかの実施形態では、「ポリマー組成物」は、例えば、PCT/EP2020/079941に記載されているような、あらゆるポリマー組成物を指し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、「ポリマー組成物」は、PCT/EP2016/064015に基づく米国出願第15/737,103号、PCT/EP2016/064016に基づく米国出願第15/737,143号、又はWO2019/180208に記載される、あらゆるポリマー組成物を指し、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの他の実施形態では、「ポリマー組成物」は、米国特許第7,722,894号及び米国特許第8,143,042号、米国特許第10,179,195号、米国特許第9,724,447号、米国出願第16/206,937号、又はEP3005221に記載される、あらゆるポリマー組成物を指し、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの好ましい実施形態によれば、好適なポリマーは、例えばアミノ化PGSA(WO2021/078962)などのポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)又はその誘導体からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、前記ポリマーは、以下の構造を有するポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)誘導体である:
【0009】
【化1】
上記構造において、n及びpは、互いに独立して、1以上の整数であり得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、「ポリマー組成物」は、光硬化性化合物である接着剤組成物を指す。「光硬化性化合物」とは、適切な放射エネルギー、より詳細には光源からの光の形態の放射エネルギーを受けると重合又は他の方法で硬化するように構成された化合物を指す。好ましい実施形態によれば、前記光は可視光、より好ましくは可視青色光である。
光硬化性化合物は、プレポリマー及び光開始剤を含んでいてもよく、前記光開始剤は、特定の波長の光に曝されると、前記プレポリマーの重合を誘導することができる。
少なくとも1つの実施形態によれば、前記光開始剤は、紫外線(UV)に感受性である。
少なくとも1つの実施形態によれば、前記光開始剤は、波長405nmの放射線に感受性である。
【0011】
いくつかの実施形態では、プレポリマーのポリマー骨格は、一般式(-A-B-)nのポリマー単位を含み、ここで、Aは置換若しくは非置換のポリオール又はそれらの混合物から誘導され、Bは置換若しくは非置換のポリ酸又はそれらの混合物から誘導され;nは1より大きい整数を表す。ポリマー骨格は、一般式-A-B-の繰り返しモノマー単位からなる。「置換」という用語は、化学命名法における通常の意味を有し、一級炭素鎖上の水素がアルキル、アリール、カルボン酸、エステル、アミド、アミン、ウレタン、エーテル、カルボニルなどの置換基で置換された化合物を表すのに使用される。プレポリマーの成分Aは、ジオール、トリオール、テトラオール以上のポリオール又はその混合物から誘導される場合がある。適切なポリオールとしては、ジオール、例えばアルカンジオール、好ましくはオクタンジオール;トリオール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリエタノールアミン;テトラオール、例えばエリスリトール、ペンタエリスリトール;及び高級ポリオール、例えばソルビトールが挙げられる。また、成分Aは、テトラデカ-2,12-ジエン-1,14-ジオール、ポリブタジエンジオールなどの不飽和ポリオールから誘導される場合があり、又は例えばポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトントリオール、及びN-メチルジエタノールアミン(MDEA)などのマクロモノマーポリオールを含む他のポリオールも使用することができる。好ましくは、ポリオールは置換又は非置換グリセロールである。プレポリマーの成分Bは、ポリ酸又はその混合物、好ましくは二酸又は三酸から誘導される。例示的な酸としては、グルタル酸(炭素数5)、アジピン酸(炭素数6)、ピメリン酸(炭素数7)、セバシン酸(炭素数8)、アゼライン酸(炭素数9)及びクエン酸が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な長鎖二酸としては、10個より多い、15個より多い、20個より多い、及び25個より多い炭素原子を有する二酸が挙げられる。非脂肪族二酸も使用し得る。例えば、1つ又は複数の二重結合を有する上記の二酸のバージョンを使用して、ポリオール-二酸コポリマーを製造することができる。好ましくは、ポリ酸は置換又は非置換のセバシン酸である。
【0012】
紫外線に感受性のある好適な光開始剤の例としては、2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1173)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(Irgacure 754)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Irgacure 907)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
別の実施形態によれば、前記光開始剤は可視光(通常は青色光又は緑色光)に感受性である。
【0013】
可視光に感受性の光開始剤の例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エオシンY二ナトリウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)及びトリエタノールアミン、並びにカンファーキノンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態によれば、ポリマー組成物は、生物活性剤(例えば、抗生物質、組織成長因子、...)を更に含む。
いくつかの実施形態によれば、ポリマー組成物の粘度は500~100,000cP、より好ましくは1,000~50,000cP、更に好ましくは2,000~40,000cP、最も好ましくは2,500~25,000cPである。粘度分析は、2.2mLチャンバー及びSC4-14スピンドルを備えたBrookfield DV-II+Pro粘度計を使用して行い、分析中の速度は5~80rpmの範囲で変化させる。上記粘度は、医療用途に関連する温度範囲、すなわち室温から40℃まで、好ましくは37℃までで存在する。
【0014】
外科用材料
本開示のいくつかの実施形態では、外科用材料は、例えば、PCT/EP2020/079941に記載されているポリマーなどのポリマー組成物でコーティングされたメッシュを含む。いくつかの他の実施形態では、ポリマー組成物は、参照により本明細書に組み込まれる他の特許出願に記載されているものであってもよい。いくつかの他の実施形態では、ポリマー組成物は、接着性及び/又はシーラント特性を有するあらゆるポリマー組成物であってよい。
いくつかの実施形態では、メッシュ基準に応じて、適用されるポリマー組成物の質量とポリマーパターンの全長(例えば、内側クラウンの周囲長+外側クラウンの周囲長)の比は、約0.03g/cm~約0.08g/cm、より詳細には約0.04g/cm~約0.06g/cmであってもよい。他の実施形態では、比は0.03g/cm、0.035g/cm、0.04g/cm、0.045g/cm、0.05g/cm、0.055g/cm、0.06g/cm、0.065g/cm、0.07g/cm、又はそれ以上であってもよい。図21は、特定のメッシュ及び/又はポリマーパターンに基づく、特定の比及び/又はポリマー組成物の質量決定を示す。ポリマー組成物の量はメッシュ組成に依存する可能性がある。例えば、メッシュの編み目が緊密な場合は、メッシュの編み目が緩い場合と比較して、より多くのポリマー組成物をメッシュ上に適用することができる。図5に示すように、コーティングは一定のパターンに従って適用してもよい。或いは、コーティングはメッシュの表面全体に適用してもよい。少なくとも1つの実施形態では、コーティングは、あらゆる様々なパターンで適用してもよい。例えば、ポリマー組成物を線ではなく点でコーティングしてもよい。いくつかの実施形態によれば、コーティングは、円形、楕円形、又は長方形のメッシュ上に適用してもよく、パターンは、円形、楕円形、又は長方形のパターンに従ってコーティングしてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物はダブルクラウンパターンに従って適用される。コーティングパターンの外側クラウンは、メッシュ及び組織の間の滑らかな連続性を可能にし、メッシュの剥離及び内臓付着のリスクを最小化し得る。いくつかの実施形態では、内側リングは、例えば、(1)メッシュ上に均質な固定をもたらし、メッシュ及び標的組織の接触を最大にし、(2)欠損により近い部分を理論的に補強する、などの理由で使用することができる。
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物がダブルクラウンパターンに従って適用される場合、2つのクラウン間の距離はランダムに選択することができる。いくつかの実施形態では、内側クラウンの長さと外側クラウンの長さの比は、約0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75又は0.8であってもよい。いくつかの実施形態では、外側クラウン及び内側クラウンの間の長さの比は、約0.55~約0.65であってもよい。いくつかの実施形態では、外側クラウン及び内側クラウンの間の長さの比は、約0.6からであってもよい。
いくつかの実施形態では、コーティングパターンは外側リングのみを含む。他のいくつかの実施形態では、コーティングパターンは、外側リング及び外側リング内のあらゆる追加パターンを含んでもよい。
【0016】
外科用材料は、ヘルニア、及び弱くなった、異常な、又は損傷した組織(例えば、瘻孔などの穴の開いた組織)に支持を提供することを必要とするあらゆる疾患及び状態を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、外科用材料はポリマー組成物でプレコートされたメッシュである。外科用材料が医師によって欠損部の上に配置された後、ポリマー組成物は、例えば、光を使用して活性化され得る。いくつかの実施形態によれば、この光は可視光、より好ましくは可視青色光である。いくつかの実施形態では、光は、内視鏡及びLEDモジュールを介して提供され得る。いくつかの実施形態では、内視鏡の直径は、約3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、又は13mmであってもよい。いくつかの実施形態では、内視鏡は約10mmの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、LEDモジュールは、約5W、6W、7W、8W、9W、10W、11W、12W、13W、14W、又は15Wの光強度を有し得る。例えば、LEDモジュールは約10Wの光強度を有し得る。
【0017】
外科用材料の利点
本開示のいくつかの実施形態では、外科用材料は、ポリマー組成物でコーティングされたメッシュを含む。この外科用材料は、いくつかの利点を有する。
非貫通性固定:
鋲とは異なり、ポリマー組成物は非貫通性であるため、メッシュ固定による術後疼痛の軽減をもたらすことが示唆され、外科医及び専門家に受け入れられ、患者にも利点があるであろう。更に、非貫通性固定により、メッシュ又は外科用基材が損傷されないので、腹腔内使用の場合の癒着の発生を減少させる可能性がある。
使いやすく、配置が簡単-ポストイット効果:
ポリマー組成物の粘性により、腹腔内に巻き込んで挿入する前にメッシュ上に適用することが可能となる。これは、ヒトフィブリン接着剤(例えばTissucol/Tisseel)、フィブリン接着剤(Baxter Healthcare、Deerfield、米国、イリノイ州)又はシアノアクリレー接着剤の使用など、先行する方法(腹壁内)で提案されているようなインサイチューにおける適用と比較し、かなり単純で、標準化され(同様のパターン及びポリマー量)、より迅速である。これらの組織接着剤は、通常は、外科医が腹腔鏡アプリケーターを用いてメッシュ全体に点状に適用する。
【0018】
メッシュ及びポリマー組成物が腹腔内に入ると、ポストイット効果により、欠損部上のメッシュの容易な配置及び再配置が可能になる。ポストイット効果とは、活性化によってメッシュが組織に堅固に固定される前に、組織壁に対するメッシュの粘着性をもたらすポリマー組成物の能力であり、例えば、手術中に所望に応じてメッシュを再配置する能力を外科医に与える。このポストイット効果は、光活性化前のポリマー組成物の粘着性の程度による。ポストイット効果により、欠損部上のメッシュの適切なセンタリング/配置が可能になり、外科医にとってのリスクの1つであるヘルニアの再発を回避又は低減することができる。「再配置する」又は「再配置」という用語には、「メッシュの配置を調整する」及び/又は「再調整」という意味も含まれる。
オンデマンド活性化:
外科用材料は、欠損部上に配置されると活性化され得る。ポリマー組成物をいつ活性化させるかは医師が決めることができるので、オンデマンド活性化により、メッシュの配置に対してより多くの制御がもたらされる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、光、例えば、405nmのLED光によって活性化され得る。他のいくつかの実施形態では、ポリマー組成物は腹腔鏡溶液によって活性化され得る。
【0019】
完全なシーリング溶液
図4は、Absorbatacks(商標)で固定したメッシュと比較した本開示の外科用材料のブタモデルへの移植を示す。図4に示すように、メッシュの境界にポリマー組成物を配置することで、メッシュ及び組織の間の移行が非常に滑らかになった。これは、図4に示すように、ダブルクラウンパターンを用いて留置した場合であり、鋲の場合はそうではない。外科用材料組成物はまた、Absorbatacks(商標)で固定したメッシュよりも、しわが少なく、標的組織への固定は良好である。
ヘルニア又は類似の状態の処置方法
いくつかの実施形態では、本開示の外科用材料は、弱くなった、異常な、又は損傷した組織(例えば、瘻孔のような穴を有する組織)に支持を提供することを必要とするあらゆる疾患及び状態のような、ヘルニア又は類似の状態を処置するために使用することができる。この外科用材料は、損傷部位を補強することを目的として細胞が増殖するための足場として機能し得る。本開示の外科用材料は、メッシュ及びポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、病院などの医療施設に出荷される前に、複合メッシュ上に予めコーティングされ得る。しかし、少なくとも1つの実施形態では、医師は、その移植前に、現場でメッシュにポリマー組成物を適用することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示の外科用材料は、ヘルニア又は類似の状態を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の外科用材料は、IPOMに使用することができる。いくつかの他の実施形態では、外科用材料は、他の同様の適応症を処置するために使用することができ、様々な位置、例えば、腹側の筋背側又は鼠径の手術で留置することができる。いくつかの実施形態では、外科用材料は、ヒト又は動物を処置するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、外科用材料は、医師によって欠損部の上に配置され得る。外科用材料は、活性化前の粘着性の程度により、ポストイット効果を有する。したがって、いくつかの実施形態では、医師は必要に応じて外科用材料を適切な位置に再配置することができる。外科用材料が欠損部の上に適切に配置されると、ポリマー組成物は、例えば、光又は腹腔鏡溶液によって活性化され得る。少なくとも1つの実施形態では、光は、内視鏡及びLEDモジュールを介して提供され得る。いくつかの実施形態では、内視鏡の直径は、約3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、又は13mmであってもよい。いくつかの実施形態では、内視鏡は約10mmの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、LEDモジュールは、約5W、6W、7W、8W、9W、10W、11W、12W、13W、14W、15W、又はそれ以上の光強度を有し得る。例えば、LEDモジュールは約10Wの光強度を有し得る。
【0021】
外科用材料を製造する方法
いくつかの実施形態では、本開示の外科用材料は、複合メッシュ上にコーティングされた、PCT/EP2020/079941に記載されるポリマーなどのポリマー組成物を含む。いくつかの他の実施形態では、ポリマー組成物は、参照により本明細書に組み込まれる他の特許出願に記載されたものであってもよい。いくつかの他の実施形態では、ポリマー組成物は、接着性及び/又はシーラント特性を有するあらゆるポリマー組成物であってもよい。
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物のコーティングは、コーティング装置を用いて適用することができ、これにより、外科用材料製品の標準化が可能になる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、病院などの医療施設に出荷される前に、複合メッシュなどのメッシュ上に予めコーティングされていてもよい。しかし、少なくとも1つの実施形態では、医師は、移植前に現場でメッシュ上にポリマー組成物を適用することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、メッシュ基準に応じて、適用されるポリマー組成物の質量と全ポリマーパターン長(例えば、内側クラウンの周囲長+外側クラウンの周囲長)の比は、約0.03g/cm~約0.08g/cm、より詳細には約0.04g/cm~約0.06g/cmであってもよい。他の実施形態では、比は、0.03g/cm、0.035g/cm、0.04g/cm、0.045g/cm、0.05g/cm、0.055g/cm、0.06g/cm、0.065g/cm、0.07g/cm、又はそれ以上であってもよい。ポリマー組成物の量は、メッシュの組成に依存する場合がある。メッシュの編み目が緊密な場合は、メッシュの編み目が緩い場合と比較して、より多くのポリマー組成物をメッシュ上に適用することができる。
図5に示すように、コーティングは特定のパターンに従って適用することができる。或いは、コーティングはメッシュの表面全体に適用してもよい。少なくとも1つの実施形態では、コーティングは、あらゆる様々なパターンで適用してもよい。例えば、ポリマー組成物を線ではなく点でコーティングしてもよい。
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、ダブルクラウンパターンに従って適用される。ポリマー組成物がダブルクラウンパターンに従ってコーティングされる場合、2つのクラウン間の距離はランダムに選択され得る。いくつかの実施形態では、内側クラウンの長さと外側クラウンの長さの比は、約0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75又は0.8であってもよい。いくつかの実施形態では、外側クラウン及び内側クラウンの間の長さの比率は、約0.55~約0.65であってもよい。いくつかの実施形態では、外側クラウン及び内側クラウンとの間の長さの比は、約0.6からであってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、コーティングパターンは外側リングのみを含む。他のいくつかの実施形態では、コーティングパターンは、外側リング及び外側リング内のあらゆる追加パターンを含んでもよい。
外科用材料は、ヘルニア又は他の類似の状態を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、外科用材料は、医師によって欠損部の上に配置される。外科用材料は、活性化前の粘着性により、ポストイット効果を有する。したがって、いくつかの実施形態では、医師は必要に応じて外科用材料を適切な位置に再配置することができる。外科用材料が欠損部の上に適切に配置されると、ポリマー組成物は、例えば、光又は腹腔鏡溶液によって活性化され得る。
【実施例
【0024】
実施例は、本開示の外科用材料を使用する様々な試験を更に例示し、例示するために以下に提供される。本開示の範囲は、以下の実施例の範囲によって何ら限定されないことを理解されたい。
以下の略語の定義は以下の通りである:
【表1】

【0025】
(実施例1)
3種類の市販複合メッシュでの試験
本発明の外科用材料は、メッシュに適用されたポリマー組成物を含む。メッシュは、使用される材料、孔のサイズ、質量、及び伸縮性など、様々な側面によって特徴づけられる。メッシュは合成、生合成、生物学的なものであり得る。合成のものは主にポリエステル、ポリプロピレン、ePTFEから製造されている。汚染された領域では、生物学的なものが好まれる。メッシュを内臓に接触させない場合(IPOM以外の鼠径及び腹側の手術)には、非コーティングの合成メッシュの使用が推奨される。IPOMでは、内臓に接触させて留置するため、複合メッシュが使用される。メッシュは2面構造になっており、非吸収性の面は組織の新生を促進し、吸収性の面(又は業者によっては非吸収性の面)はメッシュと内臓の癒着を防ぐ。
前臨床試験は、3種の市販複合メッシュに焦点を当て、3種の主要製品:Medtronic社のSymbotex(商標)、Bard社のVentralight(商標)ST、Ethicon社のProceed(登録商標)について検討した。これら3製品の再吸収性固定具の構成の詳細を、付録1に示す。
【0026】
MEDTRONIC社-Symbotex(商標):
MEDTRONIC社のメッシュは、コラーゲン及びグリセロールでコーティングされたポリエステル系のメッシュである。このメッシュは透光性が高く(ポリマー組成物POL004と併用した場合、活性化ステップのために光を通すことが可能であり、以下参照)、水和後でも扱いやすく(柔らかすぎず、硬すぎず)、操作後でも所定の位置に留まる生体吸収性コーティングを呈する。
ETHICON社-Proceed(登録商標):
Ethicon社のメッシュに関しては、ポリプロピレン製で、酸化セルロースでコーティングされている。このメッシュは他の複合メッシュよりも透光性が低く、ポリマー組成物との組み合わせの場合、適合した光活性化条件(例えば、時間、強度)を必要とする。このメッシュは水和を必要としない。
【0027】
BARD社-Ventralight(商標)ST:
Bard社のメッシュは、ヒアルロン酸ナトリウム(HA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)系ハイドロゲルでコーティングされたポリプロピレン及びPGAから製造される。水和後のメッシュは非常に柔らかいため、鋲で固定する際にメッシュを所定の位置に維持することが難しい。
ポリマー組成物(PCT/EP2020/079941に開示されており、ここでは「POL004」と呼ぶ)を3種類の市販の複合メッシュに適用し、その性能を試験した。POL004は、以下のポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)誘導体である:
【0028】
【化2】
上記の構造において、n及びpは、互いに独立して、1以上の整数であり得る。
図2に示されるように、メッシュ編みの堅固さは様々であり、これは外科用材料製品の性能に影響を与える可能性があり、必要なポリマーの量を調整する必要がある可能性がある。
【0029】
(実施例2)
コーティングパターンの試験
図5に示されるように、メッシュ全体に製品をコーティングするフルコーティングと、ダブルクラウンコーティングとを比較し、様々なコーティングパターンをエクスビボで試験した(Symbotex(商標)を使用)。
図6は、ポリマー組成物POL004をダブルクラウンパターンで適用した場合の外科用材料の急性破裂試験の結果を、メッシュ全体に適用した場合と比較して示す。図6に示すように、2つのコーティングパターンの試験結果の性能は類似していた。
したがって、ダブルクラウンコーティングパターンの下の境界は、製品量を最小化し、ポリマー量の比率を低減するために使用することができる。
【0030】
(実施例3)
ポリマー組成物の量に関する試験
必要な製品量を定義するために、以下の基準を用いた:(1)ダブルクラウンコーティングパターンの下の境界を得るのに十分な製品、(2)満足のいく急性固定強度性能(バーストボールの構成を使用して定量化)、及び(3)良好なポストイット効果(新鮮なブタの死体モデルを用いて定量化)。
Symbotex(商標)
ポリマー組成物POL004と組み合わせて試験を行った最初のメッシュは、Symbotex(商標)(Medtronic社製)であった。
このメッシュに使用される製品の量は、上述の基準に従って経験的に基づいていた。
0.04g/cm(ダブルクラウンコーティングパターンの下に境界を使用する直径15cmの円形メッシュについては、3gに相当)の比に達した。この製品量を使用して良好な性能が観察された。
【0031】
Proceed(登録商標)
Proceed(登録商標)メッシュの場合、本発明者らは、Symbotex(商標)メッシュに使用したのと同量のPOL004を使用した。
Ventralight(商標)ST
図2に示すように、Ventralight(商標)STメッシュの場合、ポリマーはメッシュの編み目で連結することがある。このメッシュでは、Symbotex(商標)メッシュを使用した場合の外科用材料と同様の性能を得るために、POL004の量を増加させた。このメッシュで満足のいくポストイット効果及び十分な固定強度性能を得るには、0.055g/cmの比で十分であることが結論づけられた。
図7は、2つのポリマー量比における本開示の外科用材料の破裂急性性能を示す。図9に示す構成を試験に使用した。
【0032】
(実施例4)
使用性性能試験
Symbotex(商標)
ポリマー組成物であるPOL004を、現在における標準治療であるAbsorbatacks(商標)と並行して、Symbotex(商標)メッシュをPOL004で固定する試験を行った。これらの試験は、ポリマーの急性性能及び使用性の両方を評価し得るように、殺処分したばかりのブタの死体で行った。ブタのモデルはヒトに似ているため、製品の使用性を評価するのに適していると考えられた。
正中線ヘルニアを形成し、(1)POL004+Symbotex(商標)、又は(2)Absorbatacks(商標)+Symbotex(商標)のいずれかを用いて修復した(古典的には腹腔鏡下IPOMアプローチを使用した処置)。
次いで、実験者(外科医)により、解決策を、5点を付与する「完全に同意する」から1点を付与する「完全に同意しない」までで評価する見解が示された。
予想通り、ポリマーの主に非常に高く評価された利点は使いやすさであり、ポリマーを使用することで以下が向上した。(1)POL004の「ポスト-イット」効果、及び目印となるコーティングパターンにより、メッシュを欠損部の中央に配置する能力、(2)メッシュ及び組織の連続性を乱す貫通固定点を形成せず、欠損部上でメッシュを平らにする能力、(3)光活性化前にメッシュを再配置する能力。
【0033】
Proceed(登録商標)
Proceed(登録商標)メッシュについても、Securestraps(登録商標)を対照として使用して同様の試験を行った。本発明のポリマーの使用により、鋲と比較して使用性が向上した。
Ventralight(商標)ST
SorbaFix(商標)又はSorbaFix(商標)及びEcho 2 Positioning System(登録商標)を対照として使用したVentralight(商標)メッシュについて、同様のテストを行った。
両メッシュに関する外科医の現場における試験の結果を以下の表に示す。この表は、POL004などのポリマー組成物の外科用材料は、中央に配置することが容易であり、壁への良好なメッシュのコンフォメーションが得られやすく、再配置が容易であるため、全体的な手術方法の全体的な改善が得られることを示す。表中の*印は、外科医のフィードバックからの解釈に基づく。
【表2】
【0034】
(実施例5)
光活性化試験
実験は、ポリマー組成物が最適な時間でメッシュを通して効率的に光活性化され得ることを確認するために行われ、これは操作時間を延長することなく、ポリマーが接着機能を発揮するのに十分な架橋状態になることを意味する。
ポリマー組成物は、ドット間のダブルクラウンパターンで適用され、低侵襲手術に使用するためのプロトタイプ光源によって活性化された。光は405nmのLEDで構成されている。
メッシュを通したポリマー組成物の光活性化は、2つの実験系で評価した。
まず、405nmの波長の照射におけるメッシュの透過率を測定した。光源が1cmの距離にあるときにメッシュを透過する光強度を下表に示す:
【0035】
【表3】


第2に、光照射後のポリマー組成物の架橋度を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて定量化し、アクリレート転化率を定量化した。
図20に示すように、種々のメッシュを使用した場合、ポリマー組成物に対して高いアクリレート転化率(90%超)を達成し得ることが実証された。重合の時間又は強度は、使用するメッシュの光透過率特性、並びに光源の特性にも依存する。図21(a)~(c)に示すように、比及び/又は質量計算は、選択したメッシュ及び/又はポリマーパターンによって異なる場合がある。
【0036】
前臨床試験の結果
外科用材料の製品性能を評価し、鋲の使用(標準治療)と比較するために、様々な種類の試験を実施することができる:
【表4】

【0037】
前臨床試験1.エクスビボにおける、急性ラップせん断性能
図10に示すように、POL004の性能を、Symbotex(商標)メッシュに固定したフィブリン製品と比較するための急性エクスビボ試験を行った。ラップせん断方法を使用した。試験結果を図10に示す。
前臨床試験2.エクスビボにおける、急性バーストボール性能
図11に示すように、下記グラフは、3種類の市販メッシュのポリマー組成物のバーストボール性能を、標準治療の固定方法(鋲)と比較したものを示す。
Securestraps(登録商標)は、全ての市販製品の中で最も高い性能を示した。全体として、本開示のヘルニアメッシュ製品は、Securestraps(登録商標)を除き、61~84%の鋲性能をもたらした。これらの結果を、ヒトの腹壁により維持される最大腹圧と比較すべきである。この圧力は、咳又はジャンプの際に170mmHg(2N/cm2)に達する。約12cm2(欠損直径4cm)の欠損の場合、メッシュは少なくとも約25Nに等しい荷重に耐えるはずである。このことは、POL004が、壁が修復されるまで欠損部にメッシュを維持するのに十分な固定強度を示すことを示唆している。
【0038】
前臨床試験3.Symbotex(商標)メッシュの慢性性能
慢性試験は、3~4cmの切除欠損で腹膜が無傷の正中線ヘルニアを有するブタモデルを用いて行った。
図17(b)に示すように、3か月慢性試験のバーストボール性能の結果に基づき、POL004を含む外科用材料は、示された特性に関して、Symbotex(商標)メッシュを固定するAbsorbatacks(商標)と同等の性能を示した。図22に示すように、同様の結果がVentralight(商標)メッシュでも得られており、POL004がSorbaFix(商標)と同等かそれ以上の性能を示したことを示している。
慢性試験の詳細を図12図18に示す。図12は、慢性試験の設計を3つの工程で示す。図13は、試験を行った、3か月までの種々の時点におけるメッシュの外観を示す。図16は、3か月間移植した後の対照と比較した、外科用材料の組織寛容性及び生着を示す。方法は以下を含む:各群n=2匹、正中線モデル使用、モバットペンタクローム染色。図16は以下のことを示す:(1)固定方法とは無関係に、全ての移植部位で軽度の組織の生着を観察することができた。(2)両群とも、繊維組織はメッシュ全体に拡散していた。(3)いずれの時点においても、POL004の局所的な耐性は良好であったと考えられた。
【0039】
図17(a)は、バーストボールの構成を示す。図17(b)は、Absorbatacks(商標)と比較した本発明の外科的開示の3か月におけるバーストボール試験の結果を示す。使用した機械式試験機は、(1)Instron、(2)5kNロードセル、(3)25.4mm/分の速度での圧縮である。バーストボールの構成は、(1)上顎は中央で直径15cm、(2)プランジャーは直径2.54cm、(3)構成に組織を固定するための貫通ネジは8本である。図17(b)に示すいずれの条件についても、メッシュ及び組織の界面が破壊される前にメッシュ及び組織は貫通している。
図18(a)はT-ピール試験の構成を示す。図18(b)は、Absorbatacks(商標)と比較した本発明の外科用材料の生着強度を示す。使用した機械式試験機は(1)Instron、(2)500Nロードセル(3)25mm/分の速度での圧縮である。使用した組織は、(1)新鮮なブタの腹壁、(2)残存する1筋層、及び(3)3か月の生着後の6×2cmの組織である。図18(b)に示すように、POL004群及びAbsorbatacks(商標)群の間で、同様の生着強度を示す結果が得られた。
【0040】
本開示の多くの特徴及び利点は詳細な明細書から明らかであり、而して、付随の特許請求の範囲によって、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る本開示の全てのそのような特徴及び利点を対象とすることを意図している。また、数多くの修正及び変型が当業者には容易に想起されるはずであることから、本開示を例示され説明されているその通りの構成及び作動に限定することは望ましくなく、したがって、本開示の範囲内に入る全ての適した修正及び等価物が講じられる余地がある。
更に、当業者は、本開示が基礎とする着想が、本開示のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として容易に使用され得ることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、前述の説明又は実施例によって限定されるものとはみなされない。
【0041】
I.文献

図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図16
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図19
図20
図21(a)】
図21(b)】
図21(c)】
図22
【国際調査報告】