(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】切断中の負傷を回避するための安全装置を有するパネルソー
(51)【国際特許分類】
B27G 19/02 20060101AFI20240129BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20240129BHJP
B23Q 11/06 20060101ALI20240129BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240129BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240129BHJP
B27B 5/06 20060101ALI20240129BHJP
B26D 7/22 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B27G19/02 D
B23D47/00 C
B23Q11/06
B23Q11/00 D
B23Q17/00 A
B27B5/06
B26D7/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023543134
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022050418
(87)【国際公開番号】W WO2022157037
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202021100243.3
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500395
【氏名又は名称】アルテンドルフ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Altendorf GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ノイフェルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,カール-フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ポーレ,ユリア
【テーマコード(参考)】
3C011
3C021
3C029
3C040
【Fターム(参考)】
3C011AA15
3C021HA03
3C029EE00
3C040AA01
3C040GG41
(57)【要約】
本願発明は、特にパネルソーである丸鋸に関連し、丸鋸は、鋸刃スロットを有するワークピースのための支持面と、支持面の下方に配置され、鋸刃を回転運動させるための主駆動モータと、回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定されるように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、高さアクチュエータと、鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備え、鋸刃ホルダと支持面との間の間隔を設定するように配置および設計された高さ調整装置と、鋸刃の突出高さを入力するための電子インターフェースと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にパネルソーである丸鋸であって、
鋸刃スロットを有するワークピースのための支持面と、
支持面の下方に配置され、鋸刃を回転運動させるための主駆動モータと、
回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定されるように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、
高さアクチュエータと、鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備え、鋸刃ホルダと支持面との間の間隔を設定するように配置および設計された高さ調整装置と、
鋸刃の突出高さを入力するための電子インターフェースと、
電子インターフェースおよび高さアクチュエータに信号によって接続され、使用者インターフェースを介して入力された鋸刃の突出高さが高さアクチュエータによって設定されるように高さアクチュエータを作動させるように設計された制御装置と、
危険な状況を記録するための監視装置を有する、危険な状況において鋸刃を迅速に下降させるための保護装置と、を含み、
保護装置が、信号によって監視装置および高さアクチュエータに接続され、監視装置によって危険な状況が記録されたときに、鋸刃ホルダを迅速に下降させるために高さアクチュエータを作動させるように設計されている、
丸鋸。
【請求項2】
高さアクチュエータが電気サーボモータである、
請求項1に記載の丸鋸。
【請求項3】
保護装置または制御装置は、
第1の動作モードにおいて、鋸刃の突出高さを設定するために高さアクチュエータを作動させ、
第2の動作モードにおいて、鋸刃を迅速に下降させるために高さアクチュエータを作動させ、
第3の動作モードにおいて、好ましくは、迅速に下降させた後に鋸刃を元の鋸刃の突出高さに戻すために高さアクチュエータを作動させ、
第4のモードでは、好ましくは、ブレード交換位置を設定するために高さアクチュエータを作動させ、
丸鋸は、さらに、ブレード交換位置を摩擦的または積極的に固定するための制動装置を有し、保護装置または制御装置は、さらに、ブレード交換位置を固定するために、高さアクチュエータによってブレード交換位置が設定された後に、制動装置を作動させるように設計されている、
請求項1または2に記載の丸鋸。
【請求項4】
鋸刃ホルダおよび鋸溝は、350mm以上、好ましくは400mm以上、または450mm以上の直径を有する鋸刃を受け入れるように設計され、保護装置は、支持面上の元の突出高さを有する位置から、元の突出部よりも小さい支持面上の鋸刃の最終的な突出高さを有する下降位置への迅速な下降の場合に、高さアクチュエータを作動させ、鋸刃を作動させるように設計されている、
請求項1~3のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項5】
保護装置は、鋸刃ホルダが下降速度まで下方に加速される加速段階において迅速な下降のために高さアクチュエータを作動させ、その後、鋸刃ホルダが下降速度から制動される制動段階において作動させるように設計されている、
請求項1~4のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項6】
保護装置が、
鋸刃の所定の最大下降深さから現在の下降深さを引くことによって計算された制動距離と鋸刃の現在の下降速度とから計算される減速度が所定の最大減速度を超えるとすぐに、
または、
鋸刃の所定の最大下降深さから現在の下降深さを引くことによって計算された制動距離が50mm未満であるとすぐに、
及び/または、
高さ調節装置が鋸刃の直径の半分よりも少なくとも50mm大きい調節移動量を有する場合に、鋸刃軸が鋸刃の直径の半分以上の距離だけ支持面より下にあるとすぐに、
加速段階から制動段階への移行のために高さアクチュエータを作動させるように設計される、
請求項5に記載の丸鋸。
【請求項7】
保護装置が、入力インターフェースを介して鋸刃直径および鋸刃突出高さを受け取り、鋸刃直径および鋸刃突出高さから、保護装置によって監視される監視領域内に位置する、鋸刃の周囲の危険領域を特定するように設計され、
危険領域が、制御装置によって、鋸刃の直径が大きい場合に、鋸刃の直径が小さい場合よりも大きく指定され、および/または、危険領域が、制御装置によって、鋸刃の突出が大きい場合に、鋸刃の突出が小さい場合よりも大きく指定され、
保護装置が、監視領域において保護装置によって記録される使用者の手の位置と動きから、その手が危険領域にどの期間内に入るかを決定し、決定された期間が所定の警告時間未満である場合に、鋸刃の迅速な下降を実行するように設計される、
請求項1~6のいずれか1つ、または請求項1の前提部に記載の丸鋸。
【請求項8】
鋸刃ホルダが、自己調整式ベルト張力調整装置によってベルト張力に緊張される多重リブベルトによって主駆動モータに接続され、
主駆動モータが三相交流モータであり、制御装置または保護装置が、直流電流の注入によって迅速な下降を目的として主駆動モータを同時に制動するように設計され、初期制動段階では、所定の電流レベルで制動直流電流を投入し、所定の制動時間後に制動直流電流を減少させ、
ベルト張力調整装置は、ベルト張力を、予め定められたベルト張力調整範囲の上限の90%から100%の間に設定するように設計されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項9】
保護装置が、画像キャプチャ装置と画像評価装置とを備えた監視装置を含み、
画像評価装置が、鋸刃ホルダの迅速な下降のために危険な状況が識別されたときに高さアクチュエータを作動させるように、信号によって高さアクチュエータに接続されている、
請求項1~8のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項10】
鋸刃スロットを有するワークピースのための支持面と、
支持面の下方に配置され、鋸刃を回転運動させるための主駆動モータと、
回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定されるように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、
監視装置によって危険な状況が識別されたときに鋸刃ホルダを下降させるように配置され設計され、危険な状況を記録するための監視装置と、高さアクチュエータと鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備えた高さ調整装置とを備え、危険な状況において鋸刃を迅速に下降させるための保護装置と、を含み、
この監視装置は、画像キャプチャ装置と画像評価装置とを含み、画像評価装置は、鋸刃ホルダの迅速な下降のために危険な状況が識別されたときに高さアクチュエータを作動させるように、信号によって高さアクチュエータに接続されている、
丸鋸。
【請求項11】
画像キャプチャ装置が第1のカメラと第2のカメラを含み、画像評価装置が第1の画像評価ユニットと第2の画像評価ユニットを含み、
第1のカメラと第2のカメラが丸鋸または工作機械のワークピース支持面の上方に互いに間隔をおいて配置され、それぞれがワークピース支持面の方向に向いている記録方向を有するとさらに好ましく、
第1のカメラは、信号によって第1の画像評価ユニットに接続され、この第1の画像評価ユニットは、第1のカメラからの画像データを受信し、危険な状況が存在するかどうかを識別するために、第1の評価ソフトウェアによってデータを処理するように設計され、
第2のカメラは、第2のカメラから画像データを受信し、危険な状況が存在するかどうかを識別するために、第2の評価ソフトウェアによってデータを処理するように設計された第2の画像評価ユニットに信号によって接続され、
第1の評価ソフトウェアは、第2の評価ソフトウェアとは異なり、および/または、第1の画像評価ユニットは、第2の画像評価ユニットとは異なる、
請求項9または10に記載の丸鋸。
【請求項12】
第1の評価ソフトウェアが、第1の画像評価ユニット上で動作する第1のオペレーティングシステムと、第1の画像評価ユニット上で動作する第1の画像評価アルゴリズムとを有し、
第2の評価ソフトウェアが、第2の画像評価ユニット上で動作する第2のオペレーティングシステムと、第2の画像評価ユニット上で動作する第2の画像評価アルゴリズムとを有し、
第1の画像評価ユニットと第2の画像評価ユニットとが互いに異なる、
または、
第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに同じであり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに異なる、
または、
第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに異なり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに同じである、
または、
第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに異なり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに異なる、
請求項11に記載の丸鋸。
【請求項13】
画像評価装置が、監視領域からの画像データと、危険領域からの画像データとを評価するように設計され、
危険領域が、監視領域内に配置され、使用者が鋸刃上で負傷する可能性のある危険箇所を含んでおり、
危険領域内の表面ユニットが、監視領域内の同じ大きさの表面ユニットよりも多くの画素数で第1のカメラまたは第2のカメラによってキャプチャされるようになっている、
請求項11または12に記載の丸鋸。
【請求項14】
画像評価装置が、丸鋸または工作機械の動作パラメータを受信し、丸鋸または工作機械の動作パラメータに応じて危険領域のサイズを変更するように設計されている、
請求項11~13のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項15】
動作パラメータが、使用される鋸刃の直径およびワークピース支持面の上方で使用される鋸刃の鋸刃突出高さ、または工作機械の対応するパラメータを含み、
画像評価装置が、鋸刃直径および鋸刃突出高さから、ワークピース支持面への、またはワークピース支持面からの、鋸刃の外周に配置された鋸歯の入口点および/または出口点を危険箇所として特定し、一方または両方の危険箇所の周囲に危険領域を所定の形状として配置するように設計されている、
請求項14に記載の丸鋸。
【請求項16】
動作パラメータが、使用される鋸刃の直径と、ワークピース支持面の上方で使用される鋸刃の鋸刃突出高さとを含み、
画像評価装置が、
鋸刃直径が大きい場合には鋸刃直径が小さい場合よりも危険領域を大きく規定するように設計され、
及び/又は、
鋸刃の直径と鋸刃の突出高さとから、ワークピース支持面における鋸刃の周縁での接線とワークピース支持面との接線角度を特定するように設計され、
かつ、
接線角度が大きい場合には、接線角度が小さい場合よりも危険領域を大きく定義するように設計される、
請求項14または15に記載の丸鋸。
【請求項17】
ワークピース支持面の上方に配置され、鋸刃を部分的に囲み、高さ調節可能なガードをさらに含み、
ガードが身体部分の一部と画像キャプチャ装置との間に位置するように、画像キャプチャ装置によって認識される使用者の身体部分が配置される場合、特に、ガードが画像キャプチャ装置の第1のカメラまたは第2のカメラと身体部分の一部との光路内に位置する場合に、危険状況を識別するように画像評価装置が設計されている、
請求項9~16のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項18】
ワークピース支持面の上方に配置され、鋸刃を部分的に取り囲み、高さ調節可能なガードを含み、
ガードが、鋸刃スロットの上方の位置から鋸刃スロットの隣の位置に移動可能であり、
画像評価装置が、鋸刃スロットの上方の位置から移動されたガードの場合に、仮想的なガードの輪郭または輪郭の一部を特定するように設計されており、そして、画像キャプチャ装置によって認識された使用者の身体部分が、輪郭または輪郭の一部が身体部分の一部と画像キャプチャ装置との間に位置するように配置されている場合、特に、輪郭または輪郭の一部が画像キャプチャ装置の第1のカメラまたは第2のカメラと身体部分の一部との光路内に位置する場合に、危険な状況を識別するように設計されており、
画像評価ユニットは、好ましくはガードの位置を決定するように設計されているか、または丸鋸は、ガードの位置を記録する位置センサを含んでいる、
請求項9~17のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項19】
ワークピース支持面の上方に配置され、鋸刃を部分的に囲み、高さ調節可能なガードと、ワークピース支持面の上方におけるガードの高さを決定するように設計されたガード高さセンサと、をさらに含み、
制御装置が、ガード高さセンサによって決定されたワークピース支持面の上方におけるガード高さと鋸刃突出高さとの比較に基づいて高さ比較値を形成し、高さ比較値が所定の高さ比較閾値を超えた場合に警告信号を出力するように設計される、
請求項9~18のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項20】
画像キャプチャ装置が第1のカメラと第2のカメラとを含み、
第1のカメラが、ワークピース支持面における鋸刃スロットの第1の側に配置される第1のエリア重心を有する第1の画像キャプチャ面を有し、
第2のカメラは、ワークピース支持面における鋸刃スロットの第1の側とは反対側の第2の側に配置される第2のエリア重心を有する第2の画像キャプチャ面を有し、
第1のエリア重心と鋸刃スロットとの間の間隔は、第2のエリア重心と鋸刃スロットとの間の間隔よりも小さい、
請求項9~19のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項21】
第1の画像キャプチャ面と第2の画像キャプチャ面とがオーバーラップ領域で重なり合い、オーバーラップ領域が鋸刃スロットを覆い、好ましくは第1の画像キャプチャ面の表面サイズの50%以上の表面サイズを有する、
請求項20に記載の丸鋸。
【請求項22】
保護装置は、丸鋸または工作機械の各使用者の手が監視装置によって記録される初期化プロセスを実行するように設計され、
初期化プロセスでは、鋸引き手順または機械加工手順を実行するために、最初の鋸引き手順または機械加工手順の前に少なくとも1回、好ましくは毎日実行されなければならず、
保護装置は、先行する初期化プロセスで記録されなかった監視領域内の手を監視装置が認識した場合に、鋸刃の迅速な下降または安全措置を実行する、
請求項1~21のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項23】
保護装置が、光信号装置を含み、
光信号装置は、
保護装置が作動可能な状態にあるとき、及び/又は危険な状況を示していない手が認識されたときに第1の信号を発し、
手がさらに動かされると、1秒未満、特に0.5秒未満の時間内に危険な状況に発展することが予測される危険な状況にある手が認識されたときに第2の信号を発するように設計された、
請求項1~22のいずれか1つに記載の丸鋸。
【請求項24】
保護装置が、
画像キャプチャ装置によって手を記録することにより、ワークピース支持面上への2次元の手の投影に変換し、手の投影の位置と、手の投影の移動速度と危険箇所の方向への加速度のベクトル部分とが決定されることによって、手の位置と、危険箇所の方向への手の移動速度と、危険領域の方向への手の加速度とが決定されるように設計され、
投影された位置、投影された移動速度、および投影された手の加速度から、どの期間内に手が危険箇所に到達するかが決定され、
その期間が所定の事前警告時間未満である場合に、鋸刃の迅速な下降または安全措置が実行され、
事前警告時間は、好ましくは、ワークピース支持面上への鋸刃突出高さおよび/または鋸刃直径から予め決定される、
請求項1~23のいずれか1つ、または請求項1の前提部に記載の丸鋸。
【請求項25】
信号によって保護装置に接続される緊急時スイッチオフ作動要素を有し、
保護装置が、緊急時スイッチオフ作動要素が作動されたときに鋸刃の迅速な下降を実行し、迅速な下降が完了すると丸鋸のすべての駆動要素を停止するように設計されている、
請求項1~24のいずれか1つに記載の丸鋸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを支持し、鋸刃スロットを有する支持面と、鋸刃を回転駆動するために支持面の下方に配置された主駆動モータと、回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定される(fixed in torsion)ように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、高さアクチュエータと、鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備え、鋸刃ホルダと支持面との間の間隔を設定するように配置され設計された高さ調節装置と、鋸刃の突出高さ(projection)を入力するための電子インターフェースと、電子インターフェースおよび高さアクチュエータに信号によって接続され、使用者インターフェースを介して入力された鋸刃の突出が高さアクチュエータによって設定されるように高さアクチュエータを作動させるように設計された制御装置と、危険な状況を記録するための監視装置を有し、危険な状況で鋸刃を迅速に下降させるための保護装置と、を含む、丸鋸に関する。
【0002】
丸鋸は、板材、形材、棒材、プランク材をまっすぐに切断するための工作機械である。丸鋸は、アマチュアが時々使用する比較的小型の日曜大工用丸鋸、建設現場で移動使用する扱いやすい丸鋸、または大工作業場や同様のプロフェッショナル用途で使用するパネルソーとして構成することができる。
【0003】
パネルソーは、木材や、木材に類似した物理的特性を持つ材料、プラスチック、鉱物、軽金属を寸法通りに切断するために、大工作業場やその他の工業的または職人的な作業場で使用される専門的な工作機械である。パネルソーは、一般的に、ワークピースを支持する支持面と、この支持面からスロットを介して突出し、鋸切断を行うために支持面の下方に位置する鋸刃軸を中心に回転する鋸刃によって特徴付けられる。鋸切断を行うために、ワークピースは鋸刃軸に対して相対的に押されることができる。このために、職人工房で使用される典型的なパネルソーの場合、ワークピースは、支持面、特に支持面の摺動部に小さな力を使って移動させることができ、鋸切断が行われるとき、鋸刃の軸は静止している。テーブルソーのオペレータが正面から操作するため鋸刃の両側でワークピースを握ったり押したりすることもできるのとは異なり、ここではオペレータは鋸刃の横に立つ。
【背景技術】
【0004】
パネルソーの代替的な実施形態は、ワークピースが静止するように支持面上に固定され、鋸刃が並進変位可能な鋸刃ユニット上に配置されることによって鋸切断を行うものであり、この場合、鋸切断を行うために鋸刃が並進運動するように設定される。パネルソーは、一般にEP2 527 069 A1、DE20 2009 007 150 U1、またはWO2012/159956 A1から既に知られている。
【0005】
パネルソーは、高い切断品質と切断精度を特徴とし、高い容量で鋸切断を行うことができる。このため、無垢材(solid wood)や非常に厚いワークピースもパネルソーで切断することができる。この目的のために、パネルソーには直径の異なる鋸刃を取り付けることができ、その直径は10~15cmから、例えば直径55cmの非常に大きな丸鋸刃まである。
【0006】
例えば、鋸刃を上方から覆い、おが屑を排出する役割も果たすガードや、鋸刃に近接して小さなワークピースを押すことができる押し棒などの安全装置が従来から提供されているのにかかわらず、そしてパネルソーは、機械の使用に関する特別な訓練を受けた熟練したオペレータによって使用されることが多いが、パネルソーの鋸刃上でのオペレータの切断事故は頻繁に発生している。このような負傷は通常、指の一部、指、あるいは手の切断という形態をとる。
【0007】
本発明者らは、このような負傷の原因が、誤操作または偶然に行われる様々な作業手順にあることを発見した。一般的な原因は、鋸刃の周囲で素早く手を動かす際に、鋸刃の周囲から切断片を不注意に取り除くことであり、その結果、鋸刃に接触して負傷をする。その他の原因としては、ワークピースを押し進める際に手がワークピースから滑り落ちること、または、つまずくなどの使用者の不注意な動作、時間的プレッシャーの下での作業、複数の作業者がパネルソーで作業している場合の連係不良などがある。
【0008】
このような負傷を防ぐために、従来の受動的な安全装置の代わりに能動的な保護装置も様々な場面で提案されている。アメリカのメーカ「SawStop(登録商標)」のシステムは、鋸刃における木材と身体部分との、導電性および容量性挙動の違いに基づき、鋸刃と身体部分の接触を、鋸刃とワークピースの接触と比較して区別する検出として使用してトリガとするもので、1999年に初めて提案された。その目的は、鋸刃をできるだけ早く停止させ、それによって大怪我を防ぐことである。このシステムは、特定の使用状況において重大な怪我を避けることができることを示している。しかし、このシステムの欠点は、一般に、急制動が鋸刃に修復不可能な損傷を伴い、検出システムのために、ある種の事故、特に身体の一部が鋸刃に素早く接近した場合に重傷を避けることができないことであった。この保護システムは、例えばEP1 234 285 B1、WO2017/210091 A1、およびUS2014/0331833 A1に記載されている。
【0009】
本発明者らは、鋸刃の制動のみによって傷害を防止しようとすると、保護装置が物理的な限界に遭遇することを発見した。第一に、高速で回転する鋸刃に蓄積される運動エネルギーは、相当な制動力を必要とし、この制動力は、特定の事故状況を回避するためには、鋸刃を損傷することなく発揮することができないからである。このことは、特に、慣性モーメントが大きいために鋸刃にソフトな制動を行うにはエネルギーを蓄積しすぎる大型の鋸刃を使用する場合に当てはまる。本発明者らは、パネルソーの典型的な使用例において、直径550mmで制動時間10msの鋸刃を制動するための制動力は約1500kWであるのに対し、直径250mmの鋸刃の場合は、この小さな鋸刃が大きな鋸刃の約2倍の速度で駆動されているにもかかわらず、約300kWしかないことを発見した。
【0010】
鋸刃を制動する代わりに、鋸刃を急速な動きで下降させ、それによって鋸刃をワークピース支持面の下方の位置に持っていき、その結果、使用者の身体の一部が鋸刃に接触するのを防止することが、様々な時点で提案されてきた。しかしながら、ここでも、大きな質量を非常に短時間で、特に非常に高い初期加速度で移動させなければならず、このことは、このような加速のためのエネルギーおよび力の発生という点で、また、パネルソーのすべてのガイド部品および軸受部品に対する負荷という点で、問題を伴う。
【0011】
丸鋸にも使用することを意図した安全装置は、一般にUS9,702,916 B2から既に知られている。この場合、危険な状況は較正とSNR計算によって認識される。危険な状況が発生すると、同時にモータが停止し、丸鋸の刃を停止させるために切断工具のロック機構が適用される。
【0012】
WO2017/059 473 A1は、容量の周期的変化を記録することにより、工具近傍の人体組織を検出する方法を開示している。
【0013】
丸鋸の安全システムは、US2016/0279754 A9 から既に知られている。代替的または追加的な検出手段および能動的手段のリストに記載されているのは、危険な状況の検出基準としての鋸刃との接触または鋸刃への近接、および危険な状況における能動的手段としての鋸刃停止および鋸刃下降である。
【0014】
身体の一部が鋸刃に接触したり、鋸刃に近づいたりすると、容量測定によって記録される丸鋸の安全システムは、WO2016/145 157 A1から既に知られている。ここでは、身体の一部が近づくとモータが停止するが、接触すると火工(pyrotechnic)制動装置が点火される。危険な状況の検出は静電容量式で行われる。
【0015】
WO2015/091 245 A1は、肌の色調と、そこから計算される鋸刃への身体部分の接近を記録するための光学検出システムを開示している。反応機構として、鋸刃の停止または下降が説明されている。危険な状況は、トリガ基準として、一定の距離を下回る身体部分の接近または一定の接近速度を超えるという形で検出される。
【0016】
赤外線によって温度を記録することにより、身体の一部が鋸刃に近づいたときに危険な状況を判断することは、US2014/0 090 948 A1から既に知られている。物体の速度が記録され、この記録は移動方向と移動速度とを含む。このようにして記録された速度によって、駆動が停止されるか、ブレーキが作動されるかが決定される。
【0017】
WO2013/046 522 A1には、三重のセンサを配置した危険領域の監視と、この危険領域に物体が入ったときの鋸刃の停止が記載されている。ここでは、電磁波をある程度反射する物体のみが記録され、作業用手袋の親指の先端に固定されたRFIDタグが例として挙げられている。危険な状態では鋸刃の停止と並行してアラーム信号が出力される。
【0018】
WO2014/164 964 A1には、そこから得られる切断パラメータを最適化するために、ワークピースの材料の種類を記録したワークピースの記録が記載されている。丸鋸の刃の速度は、これらのパラメータによって調節される。ワークピースは、切断方向の幾何学的な長さにおいて材料センサによって記録され、切断終了時に速度が下げられ、その結果、スプリンタの発生や、それに伴う作業者の負傷のリスクを減らすことができる。
【0019】
US2011/0 226 105 A1は、丸鋸の様々な安全装置について記述しており、危険な状況の検出と危険な状況が発生した場合の動作の両方に関するものである。そのために、危険な状況を認識するためのさまざまなセンサシステムが開示され、危険な状況を回避するためのさまざまな動作が記載されている。これらには、鋸刃の停止、鋸刃の下降、鋸刃の周囲への保護シールドの形成(エアバッグ)、音響信号または光信号が含まれる。
図16に示すレバーは、危険な状況で鋸刃の切断をカバーするためのものであるが、工具がワークピースに係合する際の技術的観点からは、確実に有効な安全装置とは言えないようである。
【0020】
US2009/0 301 275 A1は、波長400nm~1500nmの電磁波によって身体部分を認識し、鋸刃を覆い鋸刃を停止させることで危険な状況を回避することを開示している。同文献では、トリガイベントとして、危険領域内に手を認識することが記載されている。
【0021】
鋸刃の迅速な下降が同様に保護手段として実行されるパネルソーの安全システムは、EP 3 403 762から既に知られている。このシステムでは、鋸刃が装着された鋸刃ユニット(sawing unit)は、強力な磁石によって鋸刃の位置に保持され、プレテンションスプリングに抗している。安全装置が作動すると、これらの磁石の極性が反転し、その結果、鋸刃ユニットが下方向に垂直に加速される。原理的には、このシステムを使用して鋸刃を急速に下降させることが可能であるが、磁石やプレテンションスプリングなどの機能部品が必要であるため、急速下降のために移動させなければならない鋸刃ユニットの質量が増加し、その結果、下降中にかなりの運動エネルギーが発生し、その結果、複雑な緩衝機構にもかかわらず、パネルソーのすべての軸受要素とガイドに大きな負荷がかかり、安全システムが一定回数作動した後に故障を引き起こしたり、パネルソーの精度と正確さに影響を及ぼす可能性がある。
【0022】
丸鋸の刃の停止または下降を伴う丸鋸の安全装置は、DE10 2007 062 996 A1から既に知られている。危険な状況は、身体の一部と、危険な領域におけるその動きの方向が認識されることによって認識され、また別途、2つの異なる動きの観察とその比較が記述されている。
【0023】
DE10 2008 001 727 A1は、原理的には、センサ、特に距離センサによる検出と、鋸刃を保護位置に下げる動作を説明する保護装置を記載している。
【0024】
DE10 2009 054 491 A1には、作業者の特別に設計された手袋が認識されるとシャットダウンする丸鋸の安全装置が記載されている。この手袋の位置は、紫外線領域の電磁放射の記録によって決定され、手袋が危険領域に入ることによって、丸鋸の刃がガードによって覆われる。
【0025】
DE20 2010 004 458 U1は、センサシステムが入口前端領域の身体部分を記録する安全システムを記載している。基準に従って実行される危険な状況の認識が記載され、危険な状況を防止するために、丸鋸の刃の遮蔽またはテーブルの下への鋸刃の下降が動作として記載されている。
【0026】
DE20 2011 101 566 U1には、危険な状況を回避するための丸鋸刃の迅速な下降装置が記載されている。
【0027】
これまでのところ、これらの実現可能性研究および基礎研究で提示されたシステムのいずれも、プロ用パネルソーを含むあらゆるタイプの丸鋸に使用することが可能であることが示されておらず、実用化されていない。本発明者らは、これには様々な理由があることを発見した。第一に、あらゆる種類の丸鋸、特に業務用パネルソーに使用するには、安全システムについて、第一に操作の安全性、第二に操作効率の観点から判断する使用者の高い受容性が必要である。作業工程を著しく遅らせる安全システムや、プロの使用において発生する典型的な危険状況が認識されないために信頼性に欠ける作動をする安全システムや、安全な操作手順が危険な状況として誤って認識されるために誤った作動を何度もする安全システムは、プロが使用するパネルソーに使用することはできず、これは、使用者の受容が得られないために、全く購入されないか、あるいは欠陥が最初に経験された後、日常使用中に作動しなくなるからである。
【0028】
さらに、プロのパネルソー使用者は、安全システムがランニングコストの面で安価であることを期待している。特に、危険な状況の発生時にシステムが作動し、保護装置が作動した後にパネルソーを迅速に再始動させることができることにより、予防的な作動が行われる場合にも、安全システムの作動には低いコストしかかからないことが要求される。
【0029】
すべての丸鋸、特に業務用パネルソーに求められる典型的な要件は、丸鋸の多様な用途すべてに対応する安全システムが機能することである。これには特に、大型の鋸刃を高速で使用すること、非常に厚い無垢材やボードを鋸で切断すること、軽金属を含む様々な材料を鋸で切断すること、手袋を着用して、または手袋を着用せずに作業すること、複数の使用者でパネルソーを操作することなどが含まれる。パネルソーの安全システムは、パネルソーで発生する典型的な事故シナリオを想定して設計されなければならず、例えばテーブルソーの事故リスクを低減するシステムからの移行は、オペレータの作業姿勢やワークピースの誘導方法が大きく異なる(パネルソーの場合は鋸刃の片側で両手を使い、テーブルソーの場合は鋸刃の両側で両手を使う)ため、すでに不可能である。
【0030】
最後に、丸鋸に使用するのに適した安全システムは、丸鋸の運転が何時間も、あるいは丸一日続くことが多い、急速に繰り返される作業工程の場合であっても、例えば業界団体や認証機関などの専門組織によって、多くの国で慣例となっている、あるいは要求されている承認を保護システムに対して取得できるような、信頼性の高い機能も備えていなければならない。
【発明の概要】
【0031】
このような背景から、本発明は、鋸刃上の負傷からオペレータを保護するシステムを有し、丸鋸のプロフェッショナルな使用に適した丸鋸、特にパネルソーを提案することを目的とする。本発明は、さらに、負傷の危険性がある工作機械、すなわち、操作中に負傷の危険性がある工具の近傍に操作者の手が入る可能性がある工作機械において、負傷のリスクがある場面(ここでは、使用、セットアップ、メンテナンス、またはクリーニングと理解する)で、負傷から操作者を保護する改良された保護システムを提案する。このような工作機械は、特に、例えばバンドソー、フライス盤、旋盤、放電加工機、折り曲げ機、曲げ機、射出成形機などの鋳造システム、切断機、あるいは溶接機などの材料除去、成形、再形成加工用の工作機械とすることができる。
【0032】
この目的は、本発明によれば、以下を含む丸鋸によって達成される。丸鋸は、鋸刃スロットを有するワークピースのための支持面と、支持面の下方に配置され、鋸刃を回転運動させるための主駆動モータと、回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定されるように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、高さアクチュエータと鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備え、鋸刃ホルダと支持面との間の間隔を設定するように配置および設計された高さ調整装置と、鋸刃の突出高さを入力するための電子インターフェースと、電子インターフェースおよび高さアクチュエータに信号によって接続され、使用者インターフェースを介して入力された鋸刃の突出高さが高さアクチュエータによって設定されるように高さアクチュエータを作動させるように設計された制御装置と、危険な状況を記録するための監視装置を有する、危険な状況において鋸刃を迅速に下降させるための保護装置と、を含み、保護装置が、信号によって監視装置および高さアクチュエータに接続され、監視装置によって危険な状況が記録されたときに、鋸刃ホルダを迅速に下降させるために高さアクチュエータを作動させるように設計されていることが規定される。
【0033】
本発明に従って提案された丸鋸は、鋸刃がアクチュエータによって迅速に下降されることを特徴とし、このために、同じアクチュエータ、すなわち、通常の運転中に鋸刃の特定の作業高さを設定するためにも役立つ高さアクチュエータが使用される。丸鋸の場合、鋸刃のワークピース支持面上への突出高さを設定できることは原理的に知られており、いくつかの最新の丸鋸の場合、高さアクチュエータを使用した電動調整によっても可能である。その結果、鋸刃は、ある厚さのワークピースの高品質な切断に理想的な突出を持つように移動させることができる。高さアクチュエータとしては、さまざまな駆動装置が使用される。鋸刃の高さは、機械的要素を介して鋸刃の高さを設定する電動駆動装置、例えば電動モータによって設定するのが通例であり、また公知であり、鋸刃ユニット、そして軸受が昇降することによって行われる。
【0034】
本発明によれば、高さアクチュエータは、鋸刃の突出高さをワークピース支持面の上方に設定することと、危険な状況において鋸刃をテーブルの下方に迅速に下降させることの両方の役割を果たす。この目的のために、高さアクチュエータは、突出を設定する丸鋸の制御装置と、鋸刃の迅速な下降のために高さアクチュエータを作動させる保護装置の両方によって作動される。鋸刃の突出高さの設定と鋸刃の急速下降は、例えば、鋸刃軸を中心とする鋸刃の軸受と、場合によっては鋸刃を回転させる駆動装置を含む鋸刃ユニット全体が高さ調整され、安全システムが作動した場合に急速下降することを意味すると理解されたい。他の設計では、例えば鋸刃の軸受ユニットのみなど、その一部のみが上昇および/または下降することも可能である。
【0035】
本発明によるサーキュラーソーの場合、迅速な下降のために高さアクチュエータを使用することの効果で、一方では、迅速な下降を実現するために追加の構成部品を取り付ける必要性が回避される。また、別個の安全アクチュエータで迅速な下降を実行できるようにするために、そのような追加部品から高さ設定を切り離す必要性も回避され、その結果、突出高さを設定するために必要な高さアクチュエータに対抗して作動することがない。さらに、高さアクチュエータの作動により、アクチュエータから直接制御される鋸刃の作業位置から安全位置への下降と、同時に高さアクチュエータの補助による動きの制御された制動が可能になるという利点がある。これらの利点は、高さアクチュエータが、その必要な正確な作動により、正確な高さ設定のための対応する制御能力を備えているから達成される。本発明者らは、高さアクチュエータは、強力な初期加速と下降運動の制御された制動との両方が高さアクチュエータによって行われるように設計し作動させることもできることを発見した。その結果、迅速な下降によって丸鋸にかかる負荷が著しく低減され、最大直径550mmまたはそれ以上の大型の鋸刃を使用して迅速な下降が行われた場合でさえも、迅速な下降の結果として丸鋸の精密軸受およびガイドに損傷が生じることがない。
【0036】
鋸刃ホルダは、鋸刃のガイド及びトルク伝達固定(anchoring)に必要な特性を有する、鋸刃のための回転可能に取り付けられた固定オプションとして理解される。鋸刃ホルダは、鋸刃が鋸刃軸を中心に回転移動することを可能にするために、滑り軸受または転がり軸受またはその他の軸受として構成される鋸刃軸受ユニットを含む。また、この鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転可能に取り付けられ、鋸刃を保持する役割を果たす鋸刃フランジも含まれる。鋸刃フランジは、特に、クランプ、ねじ止め、または他の積極的なロッキング手段によって鋸刃を保持するように、ここで設計することができる。これは、例えば、2つのフランジディスクの間に鋸刃をクランプすることによって、バヨネット接続の方法で鋸刃を固定することによって、またはいくつかのねじ等によって鋸刃をねじ込むことによって行うことができる。
【0037】
高さ調節装置は、一方では高さアクチュエータを有し、他方では伝達要素を有する。高さアクチュエータは、ここでは、例えば電動モータ、流体駆動装置などの電動駆動要素として理解される。高さアクチュエータによって引き起こされる動きを鋸刃ホルダの高さ調節に変換する、スピンドル駆動、ピストンロッド、レバー連結などのような機械的要素は、伝達要素として機能する。
【0038】
丸鋸はさらに、鋸刃の突出高さを入力するための電子インターフェースに接続された制御装置を有する。この電子インターフェースは、例えば、キーパッド、タッチスクリーン、音声認識ユニットなど、使用者が操作可能な入力装置とすることができ、また、動作パラメータの遠隔送信のためのデータインターフェースとして構成することもできる。制御装置は一般に、サーキュラーソーの様々な機能を制御するようにプログラムされた電子制御システムから構成される。本発明によれば、制御装置は、少なくとも、インターフェースを介して入力された突出高さ、またはそのような突出高さを導き出すことができるパラメータに基づいて、適切な鋸刃の突出高さを設定するために高さアクチュエータを作動させるように設計されている。
【0039】
本発明による保護装置は、危険な状況において鋸刃を迅速に下降させ、その結果、使用者の身体の一部と鋸刃との接触を防止するのに役立つ。保護装置の構成部分は、危険な状況が記録される監視装置である。この監視装置は様々な設計が可能であり、例えば、鋸刃の周囲の領域をキャプチャ装置で記録し、画像評価によって身体部分の動きとその危険な位置について判断を下す光学式監視装置として構成することができる。監視装置の他のオプションとして、身体部分の接近を検知するために鋸刃に隣接して配置される静電容量式センサや赤外線センサ等を含むこともできる。
【0040】
監視装置によって危険な状況が識別された場合、鋸刃の迅速な下降は、直接的な措置として高さアクチュエータによって制御することができるが、場合によっては、警告、第1の安全措置などのような第1の措置またはさらなる措置の前の下流側の措置としても制御することができる。この目的のために、高さアクチュエータは、通常、鋸刃の垂直下向きの強い加速のために作動され、一旦、鋸刃の下降が達成されて危険性が除去されると、高さアクチュエータの補助による下降運動を緩和するために、高さアクチュエータの対応する作動によって、この迅速な垂直運動から再び制動することができる。下降が実行され、危険な状況が解消された後、鋸刃を元の鋸切断位置に上昇させるために、高さアクチュエータを再び作動させることができる。その結果、これを行うための更なる構成部品や調整装置を必要とすることなく、安全上の理由による作動後、丸鋸の作業位置の迅速な回復が達成され、安全上の理由による作動によって丸鋸の作業工程に必要以上の遅れが生じることがない。
【0041】
本発明によれば、高さアクチュエータの作動は、一方では丸鋸の制御装置によって、他方では丸鋸の保護装置によって行われる。制御装置は、信号によって保護装置から指示を受けることも、保護装置の構成部分となることも、制御装置の一部が保護装置の構成部分となることもできる。原則的に、制御タスクは、中央制御装置によって、または2つ以上の別個の、場合によっては冗長な制御装置によって、通常の動作パラメータの設定と事故回避のための保護措置の両方の観点から丸鋸上で実行することができる。保護装置は、特に、起こりうる危険な状況を検出し評価する評価ユニットを含むこともできる。このような評価ユニットは、例えば、独立した自律監視機能を実行するために、2つの異なるコンピュータユニットによって形成することができる。
【0042】
本発明によれば、一方では、通常の動作パラメータとしてのワークピース支持面上への鋸刃の突出高さの設定が、高さアクチュエータによって行われ、他方では、鋸刃の迅速な下降が、同様に高さアクチュエータによって行われる。ここで、この迅速な下降は、鋸刃の、鋸刃の突出高さの設定よりも高い移動速度で行われることを理解されたい。これは、要求される目的、すなわち、一方では所望の突出高さの正確な設定、他方では鋸刃の可能な限り即時の下降の両方において好都合であり、また、通常の動作パラメータ、この場合は鋸刃の突出高さを設定する過程で不必要に高い加速が回避されるため、丸鋸の構成部品を穏やかに扱うのに役立つ。鋸刃の迅速な下降のために、保護装置は、このように、通常動作中の動作パラメータの設定過程で丸鋸の制御装置からの作動による鋸刃の突出高さの減少のためよりも高い移動速度で高さアクチュエータを作動させる。
【0043】
第1の好ましい実施形態によれば、高さアクチュエータが電動サーボモータであることが規定される。本発明者らは、サーボドライブの構成部分である電動サーボモータが、一方では、鋸刃の突出高さの正確な設定を保証するのに適しているが、他方では、大きな鋸刃を危険のない位置まで迅速に下降させるために、迅速な下降に必要な電力を適用することもできることを見出した。サーボモータは、好ましくは、スピンドルドライブを介して伝達要素として作用することができる。このようなスピンドル駆動は、サーボモータの回転運動を、鋸刃ホルダの昇降に必要な並進運動(translation)に有利に変換する(translation)。この並進運動は、特定の高さの正確な設定にも、迅速な下降を目的とした高加速にも適している。
【0044】
さらなる好ましい実施形態によれば、保護装置または制御装置は、第1の動作モードにおいて、鋸刃の突出高さを設定するために高さアクチュエータを作動させ、第2の動作モードにおいて、鋸刃を迅速に下降させるために高さアクチュエータを作動させ、第3の動作モードにおいて、好ましくは、迅速に下降させた後に鋸刃を元の鋸刃の突出高さに戻すために高さアクチュエータを作動させ、第4のモードでは、好ましくは、ブレード交換位置を設定するために高さアクチュエータを作動させ、丸鋸は、さらに、ブレード交換位置を摩擦的または積極的に固定するための制動装置を有し、保護装置または制御装置は、さらに、ブレード交換位置を固定するために、高さアクチュエータによってブレード交換位置が設定された後に、制動装置を作動させるように設計されている。
【0045】
この進歩によれば、この丸鋸は2つの異なる動作モードで高さアクチュエータを作動させるように設計されている。最初の動作モードでは、鋸刃の突出高さが設定され、鋸刃の軸を特定の高さに正確に位置決めするために高さアクチュエータが作動する。第2の動作モードでは、高さアクチュエータは迅速に下降するために作動する。ここでの制御は、鋸刃軸を特定の高さに正確に位置決めすることではなく、使用者が負傷しないように、可能な限り短時間で鋸刃を下降させることである。従って、第2のモードにおける高さアクチュエータの移動速度は、第1の動作モードにおける移動速度よりも大きい。特に、高さアクチュエータは、迅速な下降を達成するために、第2の動作モードでは最大出力で動作させることができる。さらに、第2の動作モードでは、高さアクチュエータの下方加速度を制御することができ、高さアクチュエータを作動させて、下降動作の制動を行い、移動の終端での強い衝撃を防止することができる。
【0046】
さらに、好ましくは、第3の動作モードが設けられ、この第3の動作モードでは、高さアクチュエータは、急速下降後に、急速下降前と同じ鋸刃突出高さを有する鋸刃によって再び通常の動作状態に移動させられる。この第3の動作モードでは、鋸刃軸の以前に記憶された位置に再び接近する。この接近動作は、第1の動作モードと同じ方法で、同じ速度で行われる。この第3の動作モードにより、迅速な下降が行われた後、丸鋸は直ちに通常の動作状態に戻され、オペレータは丸鋸での鋸引き作業を継続することができる。
【0047】
最後に、刃交換位置を作動させるために高さアクチュエータが駆動される第4のモードも設けられているとさらに好ましい。この第4の動作モードでは、鋸刃がこのような刃交換位置に到達すると同時に、制動装置が追加的に作動する。刃交換位置は、使用者が鋸刃を鋸刃ホルダから取り外し、別の鋸刃を鋸刃ホルダに固定することを可能にしなければならない。これは通常、鋸刃ホルダを下げた位置で行われる。原理的には、高さアクチュエータは、コンロール式に特定の位置を保持し、その結果、鋸刃軸を特定の高さで静止させるように設計することができる。このような制御された位置により、鋸刃の突出高さを、例えば、第1の動作モードにおいて設定および維持することができる。特に、このような位置の開始および維持は、例えば、高さアクチュエータとしてサーボモータを用いることにより可能である。
【0048】
第4のモードで作動する刃交換位置では、使用者が鋸刃を把持して取り外す必要がある。高さアクチュエータが位置を維持する際の制御誤差に因する負傷を回避するという安全上の理由から、高さアクチュエータを制御する手段によってこの位置を維持するのではなく、高さアクチュエータとは別の制動装置によって位置を固定することが好ましい。制動装置は、鋸刃の軸の位置を固定するために、高さアクチュエータ、スピンドルなどの伝達要素、または鋸刃を垂直調整でガイドする他のガイド要素に摩擦的に作用することができる。また、鋸刃の交換位置で実際に機械的なロックを行う積極的な制動装置を設けることもできる。
【0049】
さらなる好ましい実施形態によれば、鋸刃ホルダおよび鋸溝(saw slot)は、350mm以上、好ましくは400mm以上または450mm以上の直径を有する鋸刃を受け入れるように設計され、保護装置は、支持面上の元の突出高さを有する位置から、元の突出部よりも小さい支持面上の鋸刃の最終的な突出高さを有する下降位置への迅速な下降の場合に、高さアクチュエータを作動させ、鋸刃を作動させるように設計されることが規定される。
【0050】
本発明によれば、基本的にこの実施形態は、保護装置が高さアクチュエータを作動させるか否かとは無関係に構成することもできることを理解されたい。同様に効果的かつ代替的に、高さアクチュエータの代わりに、迅速な下降を提供するために別の種類のアクチュエータを作動させることもできる。この場合、丸鋸には2つの独立したアクチュエータが存在し、一方は鋸刃の突出高さを設定する役割を果たし、他方は鋸刃の迅速な下降を実現する役割を果たす。
【0051】
本発明のこの態様は、鋸刃の直径が350mmを超える場合、400mmを超える場合、450mmを超える場合、500mmを超える場合、構造上の制約から、あるいは動力上の制約から、鋸刃をワークピース支持面より完全に下降させる迅速な下降を行うことができない場合が多いことを本発明者らが見出したことに基づく。丸鋸のサイズや鋸刃ユニットの構造設計にもよるが、ある最大サイズを超えると、鋸刃の完全な下降が不可能になるという問題が生じる。ここでの問題は、純粋に幾何学的に完全な下降を達成するために、迅速な下降がうまく行われないということだけでなく、可能な最大限の幾何学的限界まで下降する場合には、硬い衝撃が迅速な下降を終了させ、この結果、特に大きな鋸刃の場合には、その高い慣性のために丸鋸が損傷する可能性があるということである。しかしながら、本発明者らは、これらの制限が、大型の鋸刃に対して保護装置を作動不能にしたり、対応する事故防止機能を有する丸鋸を上記最大サイズ以下の鋸刃に制限したりする理由にはならないことを認識している。というのも、事故を防止するために一般的に十分な対策は、大きな鋸刃をワークピースの支持面上に突出したままの位置まで迅速に下降させることにあるからである。本発明者らは、一方では、円形鋸刃の円形輪郭のために、垂直下降の場合には、鋸刃軸が下降した距離よりも大きい、鋸刃に水平方向に接近する本体部分と鋸刃外形との間の間隔が、鋸刃軸によって最初に垂直方向にカバーされた最初の距離によって既に生成されることを発見した。これは、鋸刃軸がワークピース支持面の下方に配置されていることと、それによって生じる、円形鋸刃の外周の周りの接線の向きから生じる。
【0052】
この「変換」は、小さな垂直下降移動量を大きな水平距離の生成に変換することと理解され、鋸刃に接近する身体部分と鋸刃外周との間の水平方向の間隔を、たとえ大きな鋸刃の場合であっても、事故を回避できるように迅速に変更することを可能にする。同時に、使用者は、迅速に行われる下降によって危険性を明確に認識し、身体部分の危険な動きを変更または停止するよう促され、その結果、多くの場合、事故を確実に回避することができる。部分的にしか行われない下降は、さらに、下降アクチュエータ、特に高さアクチュエータを使用して、幾何学的に決定された移動の終わりの前にブレーキをかけ、移動の終わりでの強い衝撃を避けるために使用することもできる。
【0053】
特に、大きな鋸刃の部分的な下降動作を、鋸刃の回転の同時の迅速な制動に接続することが好ましい。その結果、鋸刃は、当初、身体部分から水平方向の間隔を形成することによって、部分的な迅速な下降による負傷を回避し、丸鋸刃の部分的な下降状態に達したとき、鋸刃は、身体部分が鋸刃に接触したときでさえ重大な切り傷の負傷を回避するように、回転を停止させられることが達成され得る。
【0054】
更なる好ましい実施形態によれば、保護装置は、鋸刃ホルダが下降速度まで下方に加速される加速段階において迅速な下降のために高さアクチュエータを作動させ、その後、鋸刃ホルダが下降速度から制動される制動段階において作動させるように設計されていることが規定される。
【0055】
この実施形態によれば、丸鋸刃の移動は、急速下降の場合、少なくとも2つの段階を含む。第1段階において、鋸刃は、高さアクチュエータによって垂直下方に加速され、その結果、静止状態から下方に向けられた速度まで加速される。この加速段階の後、場合によってはこの加速段階の直後に、高さアクチュエータは、制動段階のために保護装置によって作動させられる。この制動段階において、高さアクチュエータは、下降移動の終端での強い衝撃を防止するために、下降移動を減速させる。この制動段階では、鋸刃ホルダが移動の終了前に制動されて停止するように制御することができる。あるいは、制動段階は、移動の終わりに達したときに、鋸刃ホルダが対応する停止装置、ダンパ、緩衝装置などによって吸収される残留速度をまだ有するように制御することもできる。加速段階と制動段階との間の移行は、時間制御システムまたは移動制御システムによって行うことができ、これら2つの段階の間に一定速度の段階を設けることもできる。鋸刃がワークピース支持面の上方に突出しなくなった、すなわちワークピース支持面の下方に完全に下降した時点で、制動段階が開始されるのが原理的に好ましい。しかし、大型の鋸刃の場合、移動終了時の強い衝撃を避けるために、鋸刃がまだワークピース支持面の上方に突出しているときから制動段階を開始することもできる。これは特に、鋸刃が非常に大きく、ワークピース支持面の下まで完全に下がらない場合に当てはまる。
【0056】
保護装置が、計算された制動距離と鋸刃の現在の下降速度とから計算される減速度が所定の最大減速度を超えるとすぐに(ここでは、計算された制動距離が、鋸刃の所定の最大下降深さから現在の下降深さを引くことによって計算され)、または、計算された制動距離が50mm未満であるとすぐに(ここでは、計算された制動距離が、鋸刃の所定の最大下降深さから現在の下降深さを引くことによって計算され)、および/または、高さ調節装置が鋸刃の直径の半分よりも少なくとも50mm大きい調節移動量を有する場合に、鋸刃軸が鋸刃の直径の半分以上の距離だけ支持面より下にあるとすぐに、加速段階から制動段階への移行のために高さアクチュエータを作動させるように設計されることがさらに好ましい。
【0057】
この実施形態によれば、加速段階から制動段階への移行は、3つの代替基準に従って開始される。ここでの進歩は、1つの代替実施形態において、これら3つの基準のうちの1つだけが制御システムに実装され、加速段階と制動段階との間の移行が、この制御システムの代替に従ってのみ設定されることと理解される。第2の代替実施形態では、2つまたは3つすべての基準が制御システムに保存され、加速段階から制動段階への移行がいつ行われるかについて、下降中に同期して、または鋸刃の直径、鋸刃の突出高さ、および最大移動量のような事前に指定された幾何学的値の助けを借りて、計算が行われる。この第2の代替実施形態では、制動段階は、基準の1つが満たされるとすぐに開始される。
【0058】
計算された制動距離の限界値は50mmとすることができるが、代替案として、高さ調節装置の設計に応じた基準、例えば25mm未満、30mm未満、40mm未満、60mm未満、70mm未満、80mm未満、90mm未満、または100mm未満などの、他の限界値を使用することもできることを、両方の代替実施形態の場合に基本的に理解すべきである。さらに、制動距離の限界値は、鋸刃が下方に加速されるときに発生する運動エネルギーを考慮して可変の限界値が使用されるように、鋸刃の直径または鋸刃の重量のようなパラメータに応じて決定することもできる。この基準により、丸鋸の典型的な使用パラメータ、すなわち典型的な丸鋸の刃の直径、刃の突出高さの下で、加速段階からの急速下降の十分に緩やかな制動が達成され、その結果、急速下降によって引き起こされる丸鋸のガイドと軸受の損傷が回避されることが保証される。
【0059】
本発明は、高さアクチュエータによる丸鋸刃の迅速な下降に関して上述した。本発明および移動制御の上述の態様は、この丸鋸への適用に加えて、他の工作機械にも使用できることを理解されたく、このような工作機械では、工具に起因するオペレータの危険な状況が確認された場合、負傷の危険性がある工具を危険領域からできるだけ迅速に取り除かなければならない。このような他の工作機械の場合にも、工具の設定、送り、前進以外の目的のために設けられたアクチュエータを、このような工具の安全位置への迅速な安全動作のために有利に作動させることができ、正確な工具の設定動作と迅速な安全動作の両方を実行するために適宜設計される。従って、例えば、フライス工具を危険領域からオペレータから離れるように迅速に移動させることができる。
【0060】
この意味で、本発明は、工作機械の安全装置も含み、
装置は、
- 負傷の危険性がある工具と、
- ワークピースの加工に必要な工具の移動を行うために工具に連結される調整アクチュエータと、
- 工具位置を入力するための電子インターフェースと、
- 電子インターフェースおよび調整アクチュエータに信号で接続され、使用者インターフェースを介して入力された工具位置が調整アクチュエータによって設定されるように調整アクチュエータを作動させるように設計された制御装置と、
- 危険な状況を記録するための監視装置により、例えば危険な状況で工具を迅速に移動させるなどの安全対策を開始するための保護装置と、を含み、
保護装置は、好ましくは、信号によって監視装置と調整アクチュエータとに接続され、監視装置によって危険な状況が記録されたときに、工具の迅速な変位移動のために調整アクチュエータを作動させるように設計されていることを特徴とする。
【0061】
上記の説明および以下の説明は、この態様についても同様に適用され、ここで、調整アクチュエータは、高さアクチュエータに対応し、工具は、鋸刃または鋸刃ホルダに対応し、工具位置は、鋸刃高さに対応し、迅速な変位移動は、迅速な下降に対応する。
【0062】
保護装置は、安全対策として、例えば、工具の迅速な変位移動を許容しない工作機械の場合、又はこのことが危険の低減をもたらさない工作機械の場合、例えば、包囲する、遮蔽する、又は工具の移動を停止させる、プリテンション力、圧力の解放、又は減圧する等の別の対策も実施することができ、これにより、オペレータの危険を低減又は完全に回避する。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態または独立したさらなる態様によれば、保護装置が、入力インターフェースを介して鋸刃直径および鋸刃突出高さを受け取り、そして鋸刃直径および鋸刃突出高さから、保護装置によって監視される監視領域内に位置する、鋸刃の周囲の危険領域を特定するように設計されていることが規定され、危険領域が、制御装置によって、鋸刃直径が大きい場合に、鋸刃直径が小さい場合よりも大きく指定され、および/または、危険領域が、制御装置によって、鋸刃の突出高さが大きい場合に、鋸刃の突出高さが小さい場合よりも大きく指定され、ここで、保護装置が、監視領域において保護装置によって記録される使用者の手の位置と動きから、その手が危険領域にどの期間内に入るかを決定し、決定された期間が所定の警告時間未満である場合に、鋸刃の迅速な下降を実行するように設計される。
【0064】
この実施形態は、保護装置が信号によって監視装置および高さアクチュエータに接続され、監視装置によって危険な状況が記録されたときに、鋸刃ホルダを迅速に下降させるために高さアクチュエータを作動させるように設計されていれば、上述の丸鋸または工作機械と接続して構成することができることを基本的に理解されたい。しかし、同様の、および代替の方法において、異なって構成されてもよく、保護装置は、別のアクチュエータを作動させて迅速な下降をさせることができ、この場合、高さアクチュエータは、鋸刃突出高さの設定と迅速な下降の二重機能を実行せず、代わりに鋸刃突出高さの設定のみを実行する。
【0065】
この進歩は、保護装置の実用性と妥当性のためには、誤作動の数をできるだけ少なくする必要があるが、同時に、あらゆる動作状況において、保護装置によって切り傷から十分な安全度を得る必要があるという洞察に基づいている。本発明者らは、これに影響を及ぼすパラメータとして、一方では鋸刃の直径、他の工作機械では一般に工具の寸法、他方では鋸刃の突出部、他の工作機械では一般に工具の位置が影響を及ぼすことを特定したが、機能は、鋸刃の直径および鋸刃の突出高さを例として下記に説明される。従って、まず第一に、使用者が手を鋸刃の横を通過させ、鋸刃の近くに移動させなければならない切断ガイド動作を含む作業が、実際の使用中にしばしば実施され、そのために、より小さい鋸刃とより小さい鋸刃突出高さが一般的に使用される。これとは対照的に、大きな鋸の切断は、大きな鋸刃と大きな鋸刃の突出を 使用して、高いエネルギー使用と、使用者による高い押し付け力で行われることが多い。その結果、小型の鋸刃や鋸刃突出高さを使用する繊細な作業の場合、大型の鋸刃や鋸刃突出高さを使用する場合よりも、鋸刃に対する身体部分の接近距離が小さい場合にのみ、保護装置が迅速な下降をトリガする必要が生じる。
【0066】
本発明者らはさらに、小さい鋸刃および小さい鋸刃突出高さの場合、一方ではこれらの鋸刃の慣性が低いため、また、このような鋸刃突出高さの場合、ワークピース支持面の下方に完全に隠れるために、このような鋸刃を下降させなければならない距離が短いため、大きい鋸刃および/または大きい鋸刃突出高さを有する鋸刃よりも少量のエネルギーの消費で、迅速な下降を行うことができることを発見した。同じ理由で、より小さい鋸刃および/またはより小さい鋸刃突出高さを有する鋸刃は、より大きい鋸刃および/またはより大きい鋸刃突出高さを有する鋸刃よりも、同じエネルギー使用でより迅速に下降させることができる。
【0067】
このような業務用の本発明による丸鋸に実用的な保護装置を装備するために、使用者の身体部分、例えば使用者の手、が記録される監視領域が保護装置によって監視され、この監視領域内に可変の大きさの危険領域が画定されることが提供される。この危険領域は、例えば鋸刃の歯や、鋸刃の円周がワークピース支持面やワークピースの上側平面に接する点など、1つまたは複数の危険箇所に関する区切られた空間または区切られた表面を記述する。記録された位置から出発して、この身体部分が所定の事前警告時間内に危険領域に入るように移動することが使用者の身体部分を監視することによって判断された場合、この識別によって迅速な下降がトリガされる。基本的に、危険領域は、危険な状況を評価するための、直接的に傷害を誘発する基準として使用されることを理解されたい。このことは、例えば、より大きな事前警報領域が監視領域内に定義され、この事前警報領域への身体の一部の計算された進入が、保護装置のカスケード反応の意味において事前警報信号を生成するために使用される可能性を排除するものではない。本発明は、基本的に、工具の少なくとも1つの寸法に応じて、および/または、危険性が回避または低減される固定位置からの工具の少なくとも1つの間隔に応じて、危険領域の大きさを規定することからなる。その結果、本発明による保護装置は、大きな工具の場合、および/または工具が固定位置から長い距離を移動した場合にも、オペレータが負傷しないことを保証することができる。
【0068】
本発明によれば、危険領域は、原則として、物理的空間または物理的表面の意味においてのみ理解されるものではなく、その代わりに、事前警告時間の対応する適応によって実施することもできる。ここでの事前警告時間は、身体の一部が危険箇所に達するであろう算出時間と比較される期間を表し、この期間が事前警告時間より短い場合に急速下降がトリガされる。この代替案では、上記で定義したように、危険箇所から出発して、事前警告時間は、例えば、鋸刃の直径および/または鋸刃の突出高さに応じて適合される。したがって、第1の場合において、危険領域を画定する空間または表面の画定は、保護装置の実用的な感度を確保するために、鋸刃の直径が大きい場合または鋸刃の突出高さが大きい場合には、対応する鋸刃の直径または鋸刃の突出高さが小さい場合よりも大きくなるように選択される、危険領域の代替定義の場合、このような幾何学的限界は移動されず、その代わりに、鋸刃の直径/鋸刃の突出が大きい場合、鋸刃の直径が小さい場合または鋸刃の突出が小さい場合に設定されるよりも長い時間内に身体部分の現在の位置および動きが鋸刃に接触することになる場合に、迅速な下降が既にトリガされるように、事前警告時間が長くなる。
【0069】
危険領域の大きさまたは事前警告時間に適合させるために、鋸刃の直径および鋸刃の突出高さに加えて、追加的または代替的に他のパラメータも考慮に入れることができる。したがって、例えば、身体の一部がいつ鋸刃または鋸刃上の危険箇所に到達するかについて、身体の一部の位置、速度、加速度から計算を行うことができ、それに応じて、十分な安全バッファを確保するために、危険領域または事前警告時間が拡大または縮小される。ワークピース支持面またはワークピースの上側に位置する点における鋸刃周縁での接線とワークピース支持面との間の角度も決定され、考慮され得る。この接線角度は、鋸刃の垂直下降を基準として、本体部分と鋸刃との間の水平方向の間隔が変化する速度に影響する。原則的に、大きな接線角度は、鋸刃の下降による水平距離の迅速な生成に不利であり、一方、小さな接線角度の場合には、短い下降距離で、身体部分と鋸刃との間に大きな水平距離を既に生成することができるので、小さな接線角度は有利である。したがって、接線角度が小さい場合の危険領域または事前警告時間も、接線角度が大きい場合よりも小さく選択することができる。最後に、鋸刃の速度も、危険領域の寸法または事前警告時間を決める際に考慮することができ、特に、ワークピース支持面の下方に完全に下降させることができない大型の鋸刃の場合には、これらの大型の鋸刃のための安全設計において、鋸刃の回転停止への制動も考慮することができ、この制動プロセスは、速度に応じてより長くまたはより短くすることができるからである。
【0070】
さらに好ましい実施形態によれば、鋸刃ホルダが、自己調整式ベルト張力調整装置によってベルト張力に緊張される多重リブベルトによって主駆動モータに接続され、主駆動モータが三相交流モータであり、制御装置または保護装置が、直流電流の注入によって迅速な下降を目的として主駆動モータを同時に制動するように設計され、初期制動段階では、所定の電流レベルで制動直流電流を投入し、所定の制動時間後に制動直流電流を減少させ、ベルト張力調整装置は、ベルト張力を、予め定められたベルト張力調整範囲の上限の90%から100%の間に設定するように設計されていることが好ましい。
【0071】
この実施形態は、高さアクチュエータが保護装置によって作動される実施形態の発展形として、または、保護装置が迅速な下降のために別個のアクチュエータを作動させる場合の保護装置の有利な実施形態を表す独立した態様としても寄与するのに適している。
【0072】
この実施形態によれば、急速下降の場合の鋸刃の回転が、並行して停止される、すなわち同時に開始するか、前もって開始するか、または遅延して停止されることが規定される。ここでは、鋸刃が複数のリブ付きベルトを介して主駆動モータによって駆動されることが規定されている。この形式の駆動装置は、伝達可能な速度とトルク、および静かな動作という点で効果的であることが証明されている。しかしながら、このような多重リブ付きベルトは、ベルトプーリに特に大きなトルクがかかった場合にスリップする可能性があり、その結果、トルク伝達が行われないか、または低減されたトルクだけが伝達されるという欠点がある。したがって、自己調整式ベルト張力調整装置が、駆動モータに制動電流を注入することによって強力な制動を伝達できるようなベルト張力に多重リブ付きベルトに張力を与えることが提供される。その結果、丸鋸に追加のブレーキを配置する必要がなく、代わりに、三相交流モータの対応する作動によって主駆動モータを介して制動力が導入されることが有利に達成される。この実施形態は、例えば、工具自体(ソーバンド)とソーバンドがループ状に巻かれた従動ドラムとの間にそのような伝達手段を有するバンドソーの場合のように、工具がベルト駆動を介して、またはそうでなければ静止摩擦を介して駆動される他の工作機械および工具、または上記のさらなる工作機械にも適用できることを基本的に理解すべきである。
【0073】
ここで、より好ましくは、制動を行う目的で三相交流モータに注入される直流電流のレベルは、初期制動段階の後、初期レベルから開始されて低減される。これは、予め設定された制動時間の後に行われるか、または主駆動モータの速度があるレベル以下に低下した場合に行われる。この制動直流電流の減少により、制動段階全体で多重リブ付きベルトのスリップが発生し、多重リブ付きベルトとベルトプーリとの間に一般的に存在する静止摩擦と比較して、多重リブ付きベルトとベルトプーリとの間にかかる摺動摩擦のために制動トルク伝達が著しく減少することから、強化された制動効果がビルドアップしてしまうことが防止される。
【0074】
ベルト張力は、予め定められたベルト張力上限の90%から100%の間に設定されると特に好ましい。複数のリブ付きベルトは、一般に、技術的に予め定められたベルト張力上限値を有しており、このベルト張力を超えて張力をかけると破損する可能性があるため、このベルト張力を超えて張力をかけてはならない。丸鋸を操作するための駆動トルクは、一般に、この最大ベルト張力の90%未満、例えば85%未満、あるいは80%未満のベルト張力でも確実に伝達することができる。しかしながら、多重リブ付きベルトがより強く張力をかけられ、張力調整装置によって最大ベルト張力の90%を超える前記範囲に維持されるならば、鋸刃を迅速に制動する目的で有利である。
【0075】
保護装置が、画像キャプチャ装置と画像評価装置とを備えた監視装置を含み、画像評価装置が、鋸刃ホルダの迅速な下降のために危険な状況が識別されたときに高さアクチュエータを作動させるために、信号によって高さアクチュエータに接続されている場合は、さらに特に好ましい。
【0076】
画像キャプチャ装置と画像評価装置を備えたこのような監視装置により、一方では、丸鋸刃の近傍における身体部分の動きの信頼性の高い監視が達成され、他方では、異なるパラメータに応じて、事前警告時間の計算、監視領域の拡大または縮小により、監視領域および監視領域の特に有利な指定が実施できる。この監視装置は、原則として、傷害の危険性があるあらゆる種類の工作機械に、特に上述のタイプの保護装置と組み合わせて、またその構成部分として使用することができる。
【0077】
本発明のさらなる態様は、以下のものを含む丸鋸である。鋸刃スロットを有するワークピースのための支持面と、支持面の下方に配置され、鋸刃を回転運動させるための主駆動モータと、回転運動を伝達する目的で主駆動モータに連結され、鋸刃軸受ユニットと、鋸刃軸受ユニットによって鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられ、鋸刃に緊張下で固定されるように連結されるように設計された鋸刃フランジとを備える鋸刃ホルダと、監視装置によって危険な状況が識別されたときに鋸刃ホルダを下降させるように配置され設計され、危険な状況を記録するための監視装置と、高さアクチュエータと鋸刃ホルダに連結された伝達要素とを備えた高さ調整装置とを備え、危険な状況において鋸刃を迅速に下降させるための保護装置と、を含み、この監視装置は、画像キャプチャ装置と画像評価装置とを含み、画像評価装置は、鋸刃ホルダの迅速な下降のために危険な状況が識別されたときに高さアクチュエータを作動させるために、信号によって高さアクチュエータに接続されていることを特徴とする。
【0078】
この態様によれば、使用者の身体部分の切り傷を防止するために、作業事故を回避するための保護装置を備えた丸鋸が提案される。ここでは、身体の一部が危険な方法で鋸刃に接近しているかどうかを識別するために、画像キャプチャが実行される。このために、画像キャプチャ装置は、監視領域を記録し、監視し、その中で、この身体部分について決定された位置、移動速度、および/または加速度に基づいて、鋸刃上の危険箇所または鋸刃の周囲の危険領域に接近している身体部分が識別されたとき、高さアクチュエータを作動させることによって、対応する鋸刃の迅速な下降をもたらすことができる。
【0079】
基本的に、この丸鋸は、上述した技術的側面および開発手段を用いて開発することができることを理解されたい。さらに、本発明のこの態様も、丸鋸への適用に加えて、工具に起因するオペレータの危険な状況を特定しなければならない他の工作機械にも使用できることを理解されたい。その結果、本発明の対象は、使用者の身体部分の切り傷を防止するために、作業事故を回避するための保護装置を備えた工作機械でもあり、この工作機械では、身体部分が危険な方法で工具に接近しているかどうかを識別するために画像キャプチャが実行される。このために、画像キャプチャ装置は、監視領域を記録および監視し、この監視領域において、この身体部分について決定された位置、移動速度、および/または加速度に基づいて、工具上の危険箇所または工具の周囲の危険領域に接近している身体部分が識別された場合、例えば、工具の迅速な取り外し/遮蔽/ブレーキなどの安全措置をトリガすることができる。
【0080】
画像キャプチャ装置が第1のカメラと第2のカメラを含み、画像評価装置が第1の画像評価ユニットと第2の画像評価ユニットを含み、第1のカメラと第2のカメラが丸鋸または工作機械のワークピース支持面の上方に互いに間隔をおいて配置され、それぞれがワークピース支持面の方向に向いている記録方向を有するとさらに好ましく、第1のカメラは、信号によって第1の画像評価ユニットに接続され、この第1の画像評価ユニットは、第1のカメラからの画像データを受信し、危険な状況が存在するかどうかを識別するために、第1の評価ソフトウェアによってデータを処理するように設計され、第2のカメラは、第2のカメラから画像データを受信し、危険な状況が存在するかどうかを識別するために、第2の評価ソフトウェアによってデータを処理するように設計された第2の画像評価ユニットに信号によって接続され、第1の評価ソフトウェアは、第2の評価ソフトウェアとは異なり、および/または、第1の画像評価ユニットは、第2の画像評価ユニットとは異なる。
【0081】
この実施形態によれば、画像キャプチャ装置は、互いに間隔をおいて配置された少なくとも2つのカメラによって形成され、これらのカメラは、その一部において、ワークピース支持面の領域の画像キャプチャを実行する。2つのカメラによってキャプチャされる2つの領域は、部分的にまたは完全に重なり合うことができるが、互いに離れていることもでき、このように結合して監視領域全体を形成することもできる。画像評価装置は、第1および第2の画像評価ユニットによっても構成され、第1の画像評価ユニットは第1のカメラに関連付けられ、第2の画像評価ユニットは第2のカメラに関連付けられる。その結果、別個の画像キャプチャユニット(カメラ)および別個の画像評価ユニットを使用した独立した画像キャプチャおよび画像評価が得られ、このことは、1つのカメラまたは1つの画像評価ユニットが故障または誤動作した場合に、保護装置全体が動作不能にならないので有利である。特に、鋸刃の周囲の直近の危険領域が、有利なことに、両方のカメラによって重複して撮影される場合、この危険領域の独立した冗長監視が、結果として、画像キャプチャ装置および画像評価装置によって達成され得る。
【0082】
ここで、第1の評価ソフトウェアが、第1の画像評価ユニット上で動作する第1のオペレーティングシステムと、第1の画像評価ユニット上で動作する第1の画像評価アルゴリズムとを有し、第2の評価ソフトウェアが、第2の画像評価ユニット上で動作する第2のオペレーティングシステムと、第2の画像評価ユニット上で動作する第2の画像評価アルゴリズムとを有し、第1の画像評価ユニットと第2の画像評価ユニットとが互いに異なる、または、第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに同じであり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに異なる、または、第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに異なり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに同じである、または、第1のオペレーティングシステムと第2のオペレーティングシステムは互いに異なり、第1の画像評価アルゴリズムと第2の画像評価アルゴリズムは互いに異なることが特に好ましい。
【0083】
この進歩によれば、信頼性を保証する冗長性を提供するために、2つの画像評価ユニットのハードウェア、オペレーティングシステム、および/またはソフトウェアが互いに異なる。この目的のために、第1の画像評価ユニット上の第1の評価ソフトウェアと第2の画像評価ユニット上の第2の評価ソフトウェアが異なること、および/または、第1の画像評価ユニットまたは第2の画像評価ユニットが互いに異なることが提供される。この相違により、画像評価装置のハードウェアの場合、または画像評価装置にインストールされるソフトウェア、すなわちオペレーティングシステムまたは評価ソフトウェア、またはその両方の場合に、相違が達成される。この違いは、誤認識、故障、または危険な状況の部分的な不正確な評価の原因となる可能性のあるシステム的なエラーが、必ずしも両方の画像評価システムで並行して同期して発生する必要がないため、有利である。その代わりに、評価の確実性を高める冗長性が、異なるハードウェアおよび/または異なるソフトウェアによって得られる。
【0084】
ここで、画像評価装置が、監視領域からの画像データと、危険領域からの画像データとを評価するように設計されており、危険領域が、監視領域内に配置され、使用者が鋸刃上で負傷する可能性のある危険箇所を含んでおり、危険領域内の表面ユニットが、監視領域内の同じ大きさの表面ユニットよりも多くの画素数で第1カメラまたは第2カメラによってキャプチャされるようになっていることが、さらに好ましい。
【0085】
この進歩によれば、カメラの設計、カメラの配置、またはカメラのセンサ面の構成によって、危険領域と、危険領域の周囲に配置された監視領域とで異なる解像度が実現される。その結果、監視エリア内と危険エリア内の身体部分を監視するために評価すべきデータ量が削減され、監視エリア内の物体が危険エリア内よりも低い解像度で撮影されることにより、それぞれの危険度に適応して必要な解像度が得られる。これにより、画像評価を効率的かつ迅速に行うことができ、その結果、監視エリア内または危険エリア内で複数の身体部分を同時に評価する必要がある場合でも、画像評価によってリアルタイムで行われるリスク分析を実行し、その結果、事故の予防を確実に提供することができる。
【0086】
画像評価装置が、丸鋸または工作機械の動作パラメータを受信し、丸鋸または工作機械の動作パラメータに応じて危険領域のサイズを変更するように設計されているとさらに好ましい。
【0087】
上記で説明したように、危険領域の大きさは、事前警告時間の長さに置き換えることができる。この危険領域または事前警告時間は、丸鋸の動作パラメータに基づいて変更することができる。例えば、大きな鋸刃、大きな鋸刃突出高さ、および/または高い鋸刃速度の場合、小さな鋸刃直径、小さな鋸刃突出高さ、および/または低い鋸刃速度の場合よりも、危険領域は大きく、または事前警告時間は長く選択することができる。危険領域の大きさを適合させる目的で、さらなる動作パラメータを考慮することもできる。従って、丸鋸刃の駆動モータのモータ電流は、例えば、使用者によって発揮される押付力の尺度である鋸刃の現在の切断力を決定するために使用することができ、その結果、使用者によって発揮される押付力が大きい場合には、特に、滑ったときに使用者の手が早く加速する危険性を伴い、負傷の危険性が大きくなることも考慮することができ、その結果、予防措置として、危険領域の拡大/事前警告時間の延長が行われる。
【0088】
ここで、動作パラメータが、使用される鋸刃の直径およびワークピース支持面の上方で使用される鋸刃の鋸刃突出高さ、または工作機械の対応するパラメータを含み、画像評価装置が、鋸刃直径および鋸刃突出高さから、ワークピース支持面への、またはワークピース支持面からの、鋸刃の外周に配置された鋸歯の入口点および/または出口点を危険箇所として特定し、一方または両方の危険箇所の周囲に危険領域を所定の形状として配置するように設計されていることが、特に好ましい。
【0089】
この進歩によれば、丸鋸刃の外周とワークピース支持面との交点に対応する1つまたは2つの危険箇所が、特定の動作パラメータ、すなわち使用される鋸刃の直径および鋸刃の突出高さから決定される。ワークピース支持面の代わりに、ワークピース上面を使用することもでき、これは、例えば、入力されたワークピースの厚さ、ワークピース上に配置されるガードの記録された位置高さから決定することができる。こうして決定された危険箇所は、したがって危険領域を正確に特定するのに役立つ。特に、小さな鋸刃または小さな鋸刃の突出の場合、この計算により、例えば危険領域が鋸刃の周りの固定された表面領域として指定された場合のように、まだ危険ではない状況で手が鋸刃に近づいたときに、すでに迅速な下降がトリガされることを回避することができる。特に、大きな鋸刃が使用され、場合によってはワークピース支持面の上方に大きな鋸刃の突出がある場合には、さらに、危険箇所を正確に指定し、そこから危険な状況をより正確に認識することが可能であり、誤ったトリガが少なくなり、実際の危険な状況の場合に確実にトリガされるという利点がある。最後に、ワークピースの上面を用いて危険箇所を特定する場合、鋸刃が傾斜しているときにも実際の危険箇所の正確な特定が達成され、この場合、この危険箇所は、鋸溝に対して水平にオフセットされ、ワークピース支持面の上方に位置することが可能である。
【0090】
動作パラメータが、使用される鋸刃の直径と、ワークピース支持面の上方で使用される鋸刃の鋸刃突出高さとを含み、画像評価装置が、鋸刃直径が大きい場合には鋸刃直径が小さい場合よりも危険領域を大きく規定するように設計され、及び/又は、鋸刃の直径と鋸刃の突出高さとから、ワークピース支持面における鋸刃の周縁での接線とワークピース支持面との接線角度を特定するように設計され、かつ、接線角度が大きい場合には、接線角度が小さい場合よりも危険領域を大きく定義するように設計されることが、さらに好ましい。
【0091】
この進歩によれば、危険領域のサイズを特定するために、1つ、2つ、または3つの追加パラメータが考慮される。一方では、直径の大きい鋸刃は、直径の小さい鋸刃よりも迅速な下降がゆっくりであり、同様に、鋸刃の突出部の大きい位置にある鋸刃は、鋸刃の突出部の小さい位置にある鋸刃よりも迅速な下降がゆっくりであることが考慮される。さらに、接線角度も事故回避に一役買っており、なぜなら、接線角度が小さい場合、鋸刃に接近する身体部分と危険箇所との間には、垂直下降距離が小さい場合にも既にかなりの水平間隔が形成されているのに対し、接線角度が大きい場合には、鋸刃と身体部分との間に生じる水平距離と垂直下降距離との間の比率は不利に小さくなり、その結果、すでに下降運動の最初の数センチメートルにわたって、身体部分と鋸刃との間に有利な大きな水平間隔を得ることができないからである。
【0092】
ガードが身体部分の一部と画像キャプチャ装置との間に位置するように、画像キャプチャ装置によって認識される使用者の身体部分が配置される場合、特に、ガードが画像キャプチャ装置の第1のカメラまたは第2のカメラと身体部分の一部との光路内に位置する場合に、危険状況を識別するように画像評価装置が設計されているとさらに好ましい。
【0093】
この実施形態によれば、画像評価によって認識された身体部分が、丸鋸刃を取り囲むガードの下方に位置するとすぐに、迅速な下降がトリガされることが提供される。この実施形態は、一方では、身体部分が鋸刃に危機的な態様で接近しており、他方では、ガード下方の身体部分のさらなる移動は、もはや画像キャプチャ装置によって確実に判断することができず、その結果、危険な状況の存在をもはや確実に認識することができないので、有利である。
【0094】
丸鋸が、ワークピース支持面の上方に配置され、鋸刃を部分的に取り囲み、高さ調節可能なガードを含み、その後、ガードが、鋸刃スロットの上方の位置から鋸刃スロットの隣の位置に移動可能であり、画像評価装置が、鋸刃スロットの上方の位置からガードが移動した場合に、仮想ガード(virtual guard)の輪郭または輪郭の一部を特定するように設計されており、そして、画像キャプチャ装置によって認識された使用者の身体部分が、輪郭または輪郭の一部が身体部分の一部と画像キャプチャ装置との間に位置するように配置されている場合、特に、輪郭または輪郭の一部が画像キャプチャ装置の第1のカメラまたは第2のカメラと身体部分の一部との光路内に位置する場合に、危険な状況を識別するように設計されていることがさらに好ましく、画像評価装置は、ガードの位置を決定するように設計されているか、または丸鋸は、ガードの位置を記録する位置センサを含んでいることが好ましい。
【0095】
基本的には、ガードは、丸鋸の使用時に鋸刃を取り囲むように設けられ、ワークピースが鋸刃の下を通過するのに十分な高さまでしか上昇しないことが意図されている。しかし、いくつかの用途の場合、特に中空のものを切断しなければならない場合、ガードを回動させて遠ざけなければならないことが避けられない。このような場合、一方では負傷の危険性が増大し、他方では、鋸刃のすぐ近くの領域がガードによって保護されなくなり、領域としてのカバーがされなくなる。したがって、このような場合に、ガードが回動して離れると、丸鋸刃の周囲に、通常はガードによって覆われている領域に対応する仮想領域が画定され、この仮想領域に身体の一部が配置されると、迅速な下降がトリガされると有利である。こうすることで、ガードが離れた位置にある場合でも、身体の一部が危険な状況にあることを即座に認識し、負傷を回避することができる。
【0096】
ここでは特に、仮想ガードの幅が、カメラから見てワークピース支持面上に突出した鋸刃によって覆われる領域よりも大きいことがさらに好ましい。この開発は、特に、鋸刃の傾斜位置、すなわち、鋸刃の回転軸がワークピース支持面に対して非平行に配置され、それによって角度付き切断またはマイター切断を行う場合に有利である。
【0097】
丸鋸が、さらに、ワークピース支持面の上方に配置され、鋸刃を部分的に囲み、高さ調節可能なガードと、ワークピース支持面の上方におけるガードの高さを決定するように設計されたガード高さセンサと、を含み、制御装置が、ガード高さセンサによって決定されたワークピース支持面の上方におけるガード高さと鋸刃突出高さとの比較に基づいて高さ比較値を形成し、高さ比較値が所定の高さ比較閾値を超えた場合に警告信号を出力するように設計されていることがさらに好ましい。
【0098】
この実施形態によれば、ガードの高さ位置決めと丸鋸刃の鋸刃突出高さとが、2つの値が対応するセンサから読み取られることによって比較される。この比較により、ガードの高さ位置が誤って調整され、その結果、ワークピースの上側とガードの下端との間隔が大きくなりすぎているかどうかを認識するのに役立つ妥当性(plausibility)テストを実行することができる。このような場合、警告信号を出力することで、使用者にガードの誤った設定を知らせることができる。危険な状況を回避するために、鋸刃を迅速に下降させることも可能である。これは特に、事前に出力された警告信号にもかかわらず、使用者がガードの位置を修正せず、代わりに鋸引き作業を行う場合に起こり得るが、このことは、例えば、鋸刃の回転やモータ電流に基づいて認識することが可能である。
【0099】
さらなる好ましい実施形態によれば、画像キャプチャ装置が第1のカメラと第2のカメラとを含み、第1のカメラが、ワークピース支持面における鋸刃スロットの第1の側に配置される第1のエリア重心(centroid)を有する第1の画像キャプチャ面を有し、第2のカメラは、ワークピース支持面における鋸刃スロットの第1の側とは反対側の第2の側に配置される第2のエリア重心を有する第2の画像キャプチャ面を有し、第1のエリア重心と鋸刃スロットとの間の間隔は、第2のエリア重心と鋸刃スロットとの間の間隔よりも小さい。
【0100】
この実施形態によれば、互いに間隔を隔てて配置され、それぞれがワークピース支持面上の表面をキャプチャし、鋸刃スロットの左側および右側に配置される2つのカメラを用いて画像キャプチャが行われる。その結果、一方では、視野が鋸刃または鋸刃の上方のガードによって覆われることを可能な限り回避することができ、監視領域および鋸刃の周囲の危険領域が、画像キャプチャ装置によって良好にキャプチャされ得ることが達成される。画像キャプチャ面の2つの領域中心は、好ましくは、鋸溝から異なる距離に位置する。その結果、カメラの配置およびその画像キャプチャ方向における非対称性が得られるが、ワークピース支持面とカメラとの間の領域における物体によるカバー効果の可能性という点では致命的でない。
【0101】
ここで、第1の画像キャプチャ面と第2の画像キャプチャ面とがオーバーラップ領域で重なり合い、オーバーラップ領域が鋸刃スロットを覆い、好ましくは第1の画像キャプチャ面の表面サイズの50%以上の表面サイズを有するとさらに好ましい。
【0102】
2台のカメラのキャプチャ面は重なり、このオーバーラップ領域は鋸刃の領域に位置する。このオーバーラップにより、両方のカメラによる鋸刃の周囲の直接的な危険領域の信頼性の高い冗長キャプチャが得られる。この構成は、丸鋸、バンドソー、および他の形式の鋸、ならびにカメラの視野に対応する覆いが生じる危険性がある他の工作機械のために、本発明に従って提供される。
【0103】
さらなる好ましい実施形態によれば、保護装置は、丸鋸または工作機械の各使用者の手が監視装置によって記録される初期化プロセスを実行するように設計され、初期化プロセスでは、鋸引き手順または機械加工手順を実行するために、最初の鋸引き手順または機械加工手順の前に少なくとも1回、好ましくは毎日実行されなければならず、保護装置は、先行する初期化プロセスで記録されなかった監視領域内の手を監視装置が認識した場合に、鋸刃の迅速な下降または安全措置を実行する。
【0104】
この実施形態によれば、丸鋸の保護装置は、一方では、初期化プロセスにおいて、その後の丸鋸の使用において保護装置によって監視される1人または複数の使用者の手を記録するように構成されている。この初期化プロセスは、保護装置によって確実に記録できない身体部分が監視領域に現れること、および、使用者またはそれに加わるさらなる使用者が、保護装置がそのような身体部分の監視機能を実行すると誤って思い込む可能性を回避するために、丸鋸の信頼性の高い操作のために必要である。従って、初期化処理において記録されていない手が監視領域において認識された場合、保護装置によって安全化されていないこの手の危険な状況を回避するために、警告信号が出力されるか、または鋸刃の迅速な下降が実行されることが提供される。
【0105】
保護装置が、保護装置が作動可能な状態にあるとき、及び/又は危険な状況を表していない手が認識されたときに第1の信号を発し、手がさらに動かされると、1秒未満、特に0.5秒未満の時間内に危険な状況に発展することが予測される危険な状況にある手が認識されたときに第2の信号を発するように設計された光信号装置を含むことが、さらに好ましい。
【0106】
この進歩は、保護装置の実用性のための本質的な前提条件は、この点で、使用者がその機能的能力およびその現在の監視機能を信頼できることであり、この機能的能力および監視機能が使用者にとって識別可能であること、または保護装置がこれらの機能を実行していない場合に使用者にとって識別可能であることであるという洞察に基づいている。この目的のために、作動状態または手が危険な状態にないと認識された状態を第1の種類の信号で使用者に知らせ、身体部分の認識および危険な状況の判断が機能的に作動していることを示す事前警告段階を第2の信号で知らせる、対応する信号装置が提供される。その結果、使用者は、保護装置に異常があることを知ることができる。信号装置は、特に、丸鋸のガード上に配置される光信号によって形成することができる。このような信号装置のさらなる機能として、第3のタイプの信号を用いて回転する鋸刃に信号を送ることができる。
【0107】
本発明の更なる好ましい実施形態又は更なる独立した態様によれば、保護装置が、画像キャプチャ装置によって記録された手が、ワークピース支持面上への2次元の手の投影(hand projection)に変換され、手の投影の位置と、手の投影の移動速度と危険箇所の方向への加速度のベクトル部分とが決定されることによって、手の位置と、危険箇所の方向への手の移動速度と、危険領域の方向への手の加速度とが決定されるようになっていることが提供され、投影された位置、投影された移動速度、および投影された手の加速度から、どの期間内に手が危険箇所に到達するかが判断され、その期間が所定の事前警告時間未満である場合に、鋸刃の迅速な下降または安全措置が実行され、事前警告時間は、好ましくは、ワークピース支持面上への鋸刃突出高さおよび/または鋸刃直径から予め決定される。
【0108】
この実施形態では、高さ設定と迅速な下降の両方に作動する高さアクチュエータとは独立して、またはそのように作動する高さアクチュエータと組み合わせて使用できることを理解すべきである。この実施形態は、工作機械の設計からさらに独立したものであり、一般に、負傷の危険がある工作機械に適している。
【0109】
本実施形態では、ワークピース支持面への位置、危険箇所方向への移動速度、危険箇所方向への手の加速度の投影から、危険な状況が存在するか否かを判定する。そのために、ワークピース支持面への手の2次元投影をキャプチャ装置の使用よって記録し、この投影に基づいて危険状況の観点からの画像評価を決定する。ここで決定されるのは、移動速度のベクトル部分と、危険箇所の方向への手の投影の加速度である。この危険箇所は、例えば、鋸刃の周面とワークピース支持面との交点、鋸刃が使用者に最も近い位置、すなわち鋸刃の歯がワークピース支持面に上方から進入する位置に存在することができる。2つ以上の危険箇所を計算することもでき、例えば、鋸刃の周面とワークピース支持面との間の後方交点や、場合によっては、鋸刃の周面と鋸刃によって切断されるワークピースの上面との間の交点も計算することができる。手が危険箇所に到達する時間が所定の事前警告時間未満であると判断された場合、鋸刃の迅速な下降が行われ、これは、もしそうしない場合、手が更に移動すると、手と接触するまえに鋸刃がワークピース支持面より下まで下降されることがもはや不可能であるからである。ここで、事前警告時間は、固定値の範囲内で予め定めることができる。しかしながら、事前警告時間は、事前警告時間を計算するための関連するパラメータを、危険を回避するために鋸刃が下げられる期間に使用することによって、可変的に予め決定することもできる。これらのパラメータは、例えば、ワークピース支持面上への鋸刃の突出高さおよび/または鋸刃の直径とすることができ、これは、鋸刃の直径が大きい場合または鋸刃の突出高さが大きい場合には、切り傷を回避するために鋸刃を依然として高い信頼性で下降させるために、鋸刃の直径が小さい場合または鋸刃の突出高さが小さい場合よりも長い事前警告時間が必要とされるからである。さらなるパラメータが(追加で、または代替的に)、事前警告時間を計算する際に考慮されてもよく、それらは、例えば、鋸刃周面とワークピース支持面との交点における鋸刃周面とワークピース支持面との接線角度などである。接線角度が大きい場合よりも小さい場合の方が、接線角度が大きい場合よりも、鋸刃が垂直に下降するときに、接近する手の間に水平方向の間隔がより迅速に生じるので、事前警告時間は、ここでは、接線角度が大きい場合には長いものとして計算され、接線角度が小さい場合には短いものとして計算される。
【0110】
最後に、丸鋸が、信号によって保護装置に接続される緊急時スイッチオフ作動要素を有し、保護装置が、緊急時スイッチオフ作動要素が作動されたときに鋸刃の迅速な下降を実行し、迅速な下降が完了すると丸鋸のすべての駆動要素を停止するように設計されていることが、さらに好ましい。
【0111】
丸鋸のような工作機械には、原則的に非常停止スイッチが設けられており、多くの国の安全衛生規則にも日常的に規定されている。ここでは、緊急スイッチオフ作動要素が、使用者にとって危険となる可能性のある丸鋸のすべての構造要素のシャットダウンを確実にし、それに応じて丸鋸の主電源を遮断するように切り替えられることを意図している。しかしながら、起こり得る危険な状況は、実際には、例えば、駆動モータが停止した後、比較的長い時間にわたって鋸刃が速い回転速度からまだ回転している場合など、時間遅延を伴ってのみ主電源を遮断することによって、しばしば防止することができる。従って、緊急スイッチオフ作動要素の作動を、鋸刃の迅速な下降に接続することが好ましく、これは、緊急スイッチオフ作動要素の作動後、短時間の間、まだこのために必要なアクチュエータへの対応するエネルギー供給を必要とする。従って、本開発によれば、緊急遮断作動要素を使用して丸鋸全体を直ちにシャットダウンせず、その結果、迅速な下降がもはや実行され得ず、その代わりに、鋸刃が迅速に下降した後にのみこのシャットダウンを実行し、その結果、丸鋸の特に安全な状態を特に短時間で作り出すことが提供される。
【0112】
基本的に、本発明による丸鋸は、迅速な加工サイクル、大きな鋸刃直径および鋸刃突出高さ、および高い鋸刃速度のために、本発明による安全システムが特によく適しているパネルソーとして特に構成することができることを理解されたい。しかし、本発明による保護装置は、潜在的な危険がある他の工作機械にも適している。従って、例えば、建築産業において建設現場で持ち運び可能に使用されることが多く、環境条件のために本発明による保護装置を有利に使用することができるプランジソー、テーブルソー、またはマイターソーに使用することができる。食品加工産業における加工機械、例えばバンドソーに保護装置を使用することも可能である。作業者にとって危険な状況は、本発明による保護装置の助けを借りて認識することができ、例えば、保護措置としてバンドソーを素早く停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
本発明の好ましい実施形態について、添付の図を用いて説明する。
【0114】
【
図1】
図1は、前面上側から斜めにみた本願発明に係るパネルソーの斜視図である。
【
図2】
図2は、パネルソーのワークピース支持面の平面図であり、監視領域と危険領域とが模式的に示されている。
【
図3】
図3は、断面側面図であり、監視装置からの視線が示されている。
【
図4】
図4は、パネルソーの前面図であり、監視装置からの視線が示されている。
【
図5】
図5は、傾斜した位置にあるパネルソーの鋸刃ユニットの、左後ろ上から斜めにみた斜視図である。
【
図6】
図6は、傾斜していない位置にあるパネルソーの鋸刃ユニットの、左後ろ上から斜めにみた斜視図である。
【
図7】
図7は、刃交換位置にあるパネルソーの鋸刃ユニットの、左後ろ上から斜めにみた斜視図である。
【
図8】
図8は、パネルソーの模式的側面図であり、大きい鋸刃および小さい鋸刃を備え、小さい鋸刃突出高さが示されている。
【
図9】
図9は、パネルソーの模式的側面図であり、大きい鋸刃を備え、大きい鋸刃突出高さが示されている。
【
図10】
図10は、ワークピース支持面の模式的平面図であり、危険箇所と鋸刃に接近する手が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0115】
パネルソーの基本構造を、まず
図1を参照して説明する。パネルソーは、ワークピース支持面20がその上に配置される機械ベース本体10を含んでいる。機械ベース本体上には、水平方向に並進移動するためのキャリッジ30が取り付けられている。キャリッジ30の上面は、ワークピース支持面20の構成部分であり、ワークピース支持面20と面一である。キャリッジと共に並進移動可能なクロスカットテーブル40が、キャリッジ30に固定されている。クロスカットテーブル上には、クロスカットフェンス41が傾斜可能かつ位置変更可能に配置され、長さストッパ42a、b上に長手方向に変位可能に取り付けられ、それにより、載置するワークピースの切断角度および切断長さを設定できる。
【0116】
ワークピース支持面20には、鋸刃50が垂直に延びる鋸溝21が配置されている。鋸刃50は、機械本体10内のワークピース支持面の下方に配置された鋸刃軸を中心に回転できるように取り付けられている。
【0117】
機械本体10には、第1の片持ち梁アーム71を介してガード70が固定された垂直支柱60が固定されている。ガード70は、鋸刃50を上方から囲み、ガードの高さを調節することにより、エンクロージャの円周角度を変えることができる。さらに、ガードは、横方向に移動することによって、鋸刃が鋸引き方向に横たわる水平軸を中心に傾斜するのに追従することができる。ガード70は、一方では、作業時の安全のために鋸刃50を覆う役割を果たし、他方では、切断中に発生するおが屑は、適切な吸引装置によってガードを介して吸い取られる。
【0118】
第2の片持ち梁アーム(cantilever arm)81には、使用者インターフェース80が配置されている。使用者インターフェース80は、機械パラメータ、鋸切断に関する情報およびワークピース支持面上のワークピースの配置を表示するためのディスプレイ82を含む。オペレータインターフェース80にはさらに、特に非常停止ボタン83を含む様々な操作ユニットが配置されている。
【0119】
2つのカメラ90a、bを備えた監視装置が第3の片持ち梁アーム91上に配置されている。監視装置は鋸刃の上方に配置され、カメラ90a、bが鋸刃の周囲を、垂直下方に向けられたワークピース支持面への視線方向で見るようになっている。
【0120】
図2は、カメラ90a、bによって記録され、評価装置によって監視される監視領域100を示している。監視領域100は長方形で、その中心に位置する危険箇所101を囲んでいる。危険箇所101は、切断前のワークピースに面する鋸刃前縁の鋸刃外周とワークピース支持面との交点であり、鋸刃外周に配置された鋸歯が通常上方からワークピース支持面に進入する点である。監視領域100は、ワークピース支持面の機械本体10上に配置された固定部と、ワークピース支持面のキャリッジ上に配置された可動部とを含む。
【0121】
丸鋸刃の周囲の同様に矩形の表面部102は、監視領域からワークピース支持面のガードで覆われた領域を画定する。この領域102はガードによって遮蔽されているため、モニタリングは不可能である。監視領域100に記録されている身体の一部がこの区切られた部分102に入ると、これは危険な状況を表し、以下に説明する適切な措置がとられる。
【0122】
危険領域103a-cは、区切られた領域102とは別に監視領域内に完全に位置し、危険箇所101を囲む円として配置される。危険領域の大きさは、
図2に破線で示された3つの円103a-cで象徴されるように、変化させることができ、そのうちの1つは危険領域を区切っている。危険領域の大きさ、本実施例では危険領域を区切る円の直径は、動作パラメータと身体部分の動作パラメータに基づいて指定され、以下に詳細に説明するように、丸鋸刃の直径や突出高さのような調整可能な機械パラメータと、操作者の手の位置や動きの種類のような絶えず変化する動作パラメータおよび使用パラメータの両方に依存する。
【0123】
監視領域の図示された矩形形状および危険領域の円形形状の代替案として、例えば、曲線、楕円、8の字形状に区切られた領域など、他の形状も使用できることを基本的に理解されたい。
【0124】
図3は、2つのカメラ90a、bの視野角を示す側面図である。見てわかるように、2つのカメラの各々は、ワークピース支持面20に対して垂直な視線方向を有する視野角90a’、90b’を有し、その結果、カメラキャプチャ領域91a、bをキャプチャする。カメラキャプチャ領域91a、bは、鋸刃と鋸刃スロット21のすべてを含む中央領域91cで重なり合っている。ガード70によって覆われているため、このオーバーラップ領域91cの内側では、ガードの左右の2つの領域をカメラ90a、bの一方だけで監視することができ、その間の小さな領域91bはどちらのカメラでも監視することができない。この領域91dは、
図2の区切られた領域102に対応する監視領域から区切られた部分を表し、別の監視方法が適用される。
【0125】
カメラ90a、bは、水平に配置された鋸刃軸の場合に鋸刃が横たわる鋸刃平面92の左右に、この鋸刃平面に対して垂直に配置されたカメラ軸93上に配置されている。このように、前方カメラ90aの視線は、後方カメラ90bの視線よりも切断方向において鋸刃平面に近い位置にあるため、鋸刃平面に対して2つのカメラが非対称に配置される。
【0126】
図4は、カメラ90a、bの視野を正面図で示している。見て分かるように、カメラ90a、bは、それぞれの場合、垂直な視線90a”、90b”上を下向きに見ている。2つのカメラが配置されたカメラ軸93は、ここでは、中型の鋸刃の危険箇所のほぼ直角上方の高さに配置され、鋸刃軸の前方には約150mmの水平間隔がある。
図4による図において、ワークピースは右側から供給され、鋸刃50を通って左側への送り方向Zに案内され、切断される。従って、垂直方向の視線90a”、90b”は、送り方向Zに対向する鋸刃軸SBAに対して前方にオフセットされ、その結果、カメラは、鋸刃軸SBAに対して前方(
図4では右方)にシフトされ、従って、鋸刃の後方よりも鋸刃の前方のより広い領域を監視する。
【0127】
図5は、本発明によるパネルソーの鋸刃ユニットの斜視図である。鋸刃ユニットは、基本的に、機械本体10内のワークピース支持面20の下方に配置されている。鋸刃ユニット全体は、鋸切断方向に延び、長手方向に鋸刃スロットを通ってワークピース支持面20の高さを通る水平-垂直仮想傾斜軸SAを中心に傾斜させることができる。その結果、鋸刃軸SBA、ひいては鋸刃を、鋸刃スロットを通る鋸刃の通路が各傾斜位置において変化しないように傾斜させることが可能となる。
図5は、鋸刃軸がワークピース支持面に対して平行でなく、その結果、水平に移動しない傾斜位置における鋸刃ユニットを示す。本発明によるパネルソーの鋸刃ユニットは、原則として、片側または両側に傾斜するように構成することができる。片側傾斜の場合、鋸刃ユニットは、水平に配置された鋸刃軸を有する方向から出発して、傾斜軸を中心に一方向にのみ傾斜させることができる。両側傾斜可能の場合、鋸刃ユニットは、水平な鋸刃軸を有する位置から出発して、両方向に傾斜軸を中心に傾斜させることができる。
【0128】
鋸刃ユニットはさらに、鋸刃駆動モータ110を備えており、この鋸刃駆動モータ110は、鋸刃軸151に固定された上側Vリブ付きベルトプーリがVリブ付きベルトを介して駆動されることによって、下側Vリブ付きベルトプーリが固定された出力軸を有している。この鋸刃軸は、鋸刃軸を中心に回転できるように、鋸刃軸受ユニット120に取り付けられている。鋸刃50が固定される鋸刃フランジ152が、さらに鋸刃軸上に配置される。
【0129】
鋸刃駆動モータ110、鋸刃軸受ユニット120、鋸刃フランジ152からなるユニット全体は、鋸刃ユニットフレーム130に固定された2本のリニアガイドレール140a、bとそれにガイドされたリニアガイドシューからなるリニア軸受によって垂直方向に変位可能に取り付けられている。鋸刃が鋸刃スロット21からワークピース支持面20の上方に突出する突出高さは、この垂直変位可能性によって設定することができる。リニアガイドは、鋸刃ユニットと共に傾斜される鋸刃ユニットフレーム130に固定されているので、この設定は、鋸刃ユニットの各傾斜位置で設定することができる。
【0130】
さらに、スピンドル駆動装置161を駆動するサーボモータ160が鋸刃ユニットのフレーム130に固定されている。サーボモータは、鋸刃ユニットフレーム130に不動に固定されている。スピンドルの長手方向軸線に沿ったスピンドルの回転によって上下動するスピンドルプレート162が、サーボモータによって駆動されるスピンドル161上に案内される。鋸刃軸受ユニット120および鋸刃駆動モータ110は、スピンドルプレート162に接続されている。したがって、鋸刃軸受ユニット120は、スピンドル161を駆動することにより、鋸刃駆動モータ110と共にリニアガイドレール140a、bに沿って垂直方向に変位することができる。
【0131】
サーボモータ160は、一方では、鋸切断手順のために使用者が所望する鋸刃突出高さを設定するために、このような変位の目的で作動される。この鋸刃突出高さは、典型的には、分離切断が行われる場合には、切断されるワークピースの厚さよりも大きい鋸刃の歯高さにほぼなるように選択される。対照的に、溝が切断される場合、鋸刃の突出は溝の深さと同じになるように設定される。鋸刃の突出高さを正確に設定するために、サーボモータは、例えば約5cm/sの低速設定速度で作動する。
【0132】
サーボモータ160はさらに、迅速に下降させるために作動させることができる。この場合、サーボモータは、鋸刃に接近する身体部分によって生じる危険な状況を回避し、接近する身体部分が鋸刃によって負傷するのを防止するために、可能な限り短い時間で鋸刃を下降させる役割を果たす。この場合、サーボモータは非常に高い、特に最大許容駆動力で作動し、その結果、鋸刃を急速に下方に加速する。このような迅速な下降の場合、サーボモータは、0.5m/s以上、特に1m/s以上の鋸刃軸受ユニットの移動速度を達成し、サーボモータおよびスピンドル駆動装置は、好ましくは、2m/s以上または4m/s以上の下降速度を発生させることができるように設計される。その結果、鋸刃を十分に高速で下降させることができ、身体部分が高速で鋸刃に接近する場合であっても、身体部分と鋸刃との接触を確実に防止することができる。
【0133】
急速下降の際、サーボモータは、まず、鋸刃が固定された鋸刃軸受ユニットを下方に向けた最大加速度を発生させるように作動する。ある移動量の後、スピンドルドライブのエンドストップに到達する前に、サーボモータは再び減速され、それによって鋸刃と鋸刃軸受ユニットの急速な垂直下降運動にブレーキをかける。この減速は、負の加速度、すなわち制動加速度によって行われ、この加速度は、スピンドル駆動の停止に達するまで、鋸刃と鋸刃軸受ユニットの垂直下降運動を、好ましくは速度ゼロに、しかし少なくとも低速に減速するのに十分な大きさである。その結果、変位移動の終端での強い衝撃が回避される。
【0134】
図6は、鋸刃ユニットを左から見た斜視側面図で示し、
図7は、鋸刃ユニットの上部を前、右、上から見た斜視図で示す。鋸刃駆動モータ110の上部ハウジング壁部には、複数の板ばねからなる圧縮ばねのスタック182が垂直上方に延びるねじボルト181の周りに支持された下部支持板180が固定されている。圧縮ばねの積み重ねは、鋸刃軸受ユニット120に固定された上部支持プレート183を圧縮ばね力で支持する。従って、圧縮ばねの積み重ね182によって、鋸刃軸受ユニット120に取り付けられた上部ベルトプーリ185と鋸刃駆動モータ110の出力軸に固定された下部ベルトプーリ186との間を移動するVリブ付きベルト184に付勢力が加えられる(
図7参照)。Vリブ付きベルト184は、スロットに配置された2つのねじ188a、bを緩めることによって、高い張力でプレテンションがかけられる。このプレテンションは、2つのねじ188a、bを締めることによって固定することができ、Vリブ付きベルト184の伸びが実質的に起こらないので、長い運転期間にわたって変化しない。
【0135】
図7は、刃交換位置にある鋸刃軸受ユニット120を示す。この刃交換位置では、鋸刃ユニットは、サーボモータ160およびスピンドル161の助けを借りて、最大許容直径を有する鋸刃が、鋸刃軸SBAを中心に回転できるように鋸刃軸受ユニット120に取り付けられた鋸刃ホルダ190から取り外され得るか、またはその上に載置されてその中にクランプされ得るところまで下降させられる。刃交換位置は、対応するオペレータ入力に応答してサーボモータ160によって作動され、サーボモータ内部のロックブレーキ(見えない)によってロックされ、その結果、確実に維持される。これにより、鋸刃の交換時にオペレータが負傷をする危険性が回避される。
【0136】
図8は、小さな鋸刃突出高さS1を有する2つの異なるサイズの鋸刃250a、bの概略図である。ここに図示されているのは、鋸切断中にワークピースが送り方向Zにおいて右から左へガイドされる方向である。
【0137】
図9は、大きな鋸刃突出高さS2を有する大きな鋸刃250aの模式図である。
【0138】
図8および
図9に見られるように、鋸刃の前側における鋸刃周面とワークピース支持面との交点として定義される危険箇所の異なる位置が、これらの異なる鋸刃サイズおよび鋸刃突出高さのために生じる。最も前方の危険箇所260は、大きな鋸刃突出高さS2を有する大きな鋸刃250aの場合に生じる(
図9)。大きな鋸刃が下降して小さな鋸刃突出高さS1に設定されると、ワークピースの送り方向においてこの危険箇所260の後方に位置する第2の危険箇所261が生じる。大きな鋸刃250aの代わりに小さな鋸刃250bが使用される場合、同じ(小さな)鋸刃突出高さS1を有するこの小さな鋸刃250bの危険箇所262は、今度は、ワークピースの送り方向Zの方向にさらにシフトして位置する。
【0139】
図10は、使用者の手の位置と動きの計算を示す概略図である。この計算は、手をワークピース支持面に投影し、ワークピース支持面において鋸刃軸の垂直上方に位置し、切断面内に位置する点を中心点とするXY座標系を参照して行われる。ここでのY軸は、ワークピース支持面に平行で、鋸刃軸が任意のタイトル位置に位置する平面内を通る。X軸は、ワークピース支持面と切断面との交線に対応する。
【0140】
この場合、Y軸と手の移動方向とのなす角φ
Handは次のように計算される。
【数1】
この角度φ
Handは手の動く方向を定義する。
【0141】
手の移動速度v
Handは次のように計算される。
【数2】
主な危険箇所とワークピース支持面への回転軸の投影との間隔aを次のように決定すると、角度λは、手の中央と主な危険箇所との間の最短間隔の方向を表し、下の式で計算できる。
【数3】
ここで
- dは鋸刃の直径を表し
- hは鋸刃の突出高さ。
【数4】
【0142】
次いで、これらの計算データから、計算された手の速度v
Handが、例えば2m/sとして予め設定することができる最大速度v
max以上であるかどうか、さらに、角度δの大きさが、例えば30°とすることができる予め設定された許容角度以下であるかどうかが判定されることによって、そのような傷害を回避するのに間に合うように鋸刃を下降させるのに必要な事前警告時間よりも短い時間内に、鋸刃上の手に傷害が生じるかどうかを識別することができる、
【数5】
ここで、角度δは、φ
Handからλを引いた値で次式のように計算される。
【数6】
両方の条件を満たす場合は、迅速な下降を実行し、それに応じてサーボモータを作動させる必要がある。つまり、手の移動速度が遅すぎるか、手の移動経路が十分な間隔を空けて危険箇所を通過しているため、手は予告時間内に危険箇所に到達しない。
【国際調査報告】