(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】血管内ステント及び患者の血管内にステントを送達するシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/86 20130101AFI20240129BHJP
【FI】
A61F2/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544531
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022012083
(87)【国際公開番号】W WO2022159310
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521545097
【氏名又は名称】ウォルツマン,ダニエル,エズラ
【氏名又は名称原語表記】WALZMAN, Daniel, Ezra
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルツマン,ダニエル,エズラ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA42
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA50
4C267BB32
4C267BB52
4C267CC09
4C267CC10
4C267CC12
4C267CC21
4C267DD08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】
カバードステントの剛性の上昇を抑える。
【解決手段】
ステント本体と、該ステント本体の一部である第1部分をカバーする少なくとも一つのカバーを備え、カバーは、ステント本体に取り付けられる第1領域と、ステント本体には取り付けられない第2領域とを有する血管内ステントによりこれを解決する。複数のカバーを重ねながら取り付けることも可能であり、各カバーは取り付けられていない自由な端部を有する。この自由端はステントの剛性の上昇を抑える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)長手方向に延びる軸線及び複数の開口を有するステント本体と、
b)前記ステント本体の一部である第1部分に重なるように長手方向に延び、該第1部分をカバーする、第1カバーと、を備え、
前記第1部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第1カバーは自由端を有し、該自由端を前記ステント本体に対して遊動可能とすることにより前記ステント本体の剛性の上昇を抑え、
d)前記ステント本体が曲げられたときには、
前記第1カバーの一部が前記ステント本体に対して軸線方向に移動し、前記ステント本体の、前記第1カバーに覆われた部分の長さが、カーブの外側に沿って短くなる、
血管内ステント。
【請求項2】
前記ステント本体の一部である第2部分に重ねられ、該第2部分をカバーする、第2カバーをさらに備え、
前記第2部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第2カバーは自由端を有し、
前記ステント本体が曲げられたときには、前記第2カバーの一部が前記ステント本体に対して軸線方向に移動し、前記ステント本体の、前記第2カバーに覆われた部分の長さが、カーブの外側に沿って短くなる、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項3】
前記ステント本体が曲げられたときには、そのカーブの内側に沿って、前記ステント本体の長さに対する前記第2カバーの一部の相対的な長さが、長くなる、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項4】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、取付端部の取付位置を除き、前記ステント本体から独立して展開可能である、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項5】
前記第2カバーに重ねられる第3カバーをさらに備え、
前記第2カバーには前記第1カバーが重ねられ、
前記第1カバー、前記第2カバー、及び前記第3カバーは、屋根板(shingle)状に並べられている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項6】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステントを血管内に挿入・設置するよりも前に、前記ステント本体に装着される、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項7】
前記ステント本体および前記第1カバーの一方または両方の少なくとも一部には、ハイドロゲルが付着している、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項8】
前記第1カバーは、前記第2カバーの半分以下を覆うように、前記第2カバーに重ねられる、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項9】
前記第1カバーは、前記第2カバーの半分よりも広い範囲を覆うように、前記第2カバーに重ねられる、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項10】
前記第1カバーの前記自由端と前記第2カバーの前記自由端とは、軸線方向に離れている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項11】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステント本体の内壁に取り付けられている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項12】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステント本体の外壁に取り付けられている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項13】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステント本体の外壁に取り付けられ、
前記第1カバー及び前記第2カバーを覆うように配置される、第2ステント本体をさらに備える、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項14】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステント本体をその円周方向における360度の範囲にわたって延びている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項15】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、記ステント本体をその円周方向における360度未満の範囲にわたって延びている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項16】
前記第2カバーは、前記ステント本体に取り付けられる取付端部を有し、
前記第2カバーの前記自由端は、露出しており、前記ステント本体に対して遊動可能であることにより、前記ステント本体の剛性の上昇を抑える、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項17】
a)編まれた又は織られた素材により構成される外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え、
前記内側層は、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、前記外側層の展開を促す、
患者の血管内に設置可能な血管内ステント。
【請求項18】
前記内側層は前記外側層に取り付けられ、ともに患者の体内に挿入される、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項19】
前記内側層の気孔率は、前記外側層の気孔率よりも高い、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項20】
前記内側層の気孔率は略80%以上である、
請求項19に記載の血管内ステント。
【請求項21】
前記外側層の長さを第1の長さとし、前記内側層の長さを第2の長さとしたときに、前記第1の長さと前記第2の長さとは等しい、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項22】
前記外側層の長さを第1の長さとし、前記内側層の長さを第2の長さとしたときに、前記第1の長さは前記第2の長さとは異なる、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項23】
前記外側層の外壁および内壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である第1部分と重なるように長手方向に延び、該第1部分をカバーする、第1カバーをさらに備え、
前記第1カバーは第1領域、及び非結合領域を有し、
前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第1領域が取り付けられ、前記外側層の気孔率を低下させる、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項24】
前記外側層の外壁および内壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である第2部分と重なるように長手方向に延びる、第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは第1領域、及び非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記第1領域に重なり、前記第2カバーの前記自由端には重ならず、
前記第1カバーの前記自由端と、前記第2カバーの前記自由端とは、軸線方向に離れている、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項25】
長手方向に沿って延びる第1カバーをさらに備え、
前記第1カバーは、前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられており、
前記第1カバーは第1領域および非結合領域を有し、
前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは前記第一領域が前記内壁に取り付けられている、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項26】
前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられた第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは第1領域および非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記第1領域に重ねられ、前記第2カバーの前記自由端には重ねられない、
請求項25に記載の血管内ステント。
【請求項27】
前記内側層および前記外側層の一方または両方にはハイドロゲルが付着している、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項28】
前記内側層の内壁または外壁、もしくは前記外側層の内壁または外壁に取り付けられたカバーをさらに備え、
前記カバー、前記内側層、及び前記外側層のうちの一つ以上にはハイドロゲルが付着している、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項29】
前記内側層は、前記外側層が患者の体内に設置された後で、該外側層の中に挿入される、
請求項17に記載の血管内ステント。
【請求項30】
a)第1の気孔率を有する外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え
前記内側層は、前記第1の気孔率よりも大きな第2の気孔率を有し、
前記内側層は、つぶされた状態から展開された状態に移行可能である、
患者の血管内に設置可能な血管内ステント。
【請求項31】
前記内側層は前記外側層に取り付けられ、ともに患者の体内に挿入される、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項32】
前記内側層の気孔率は略80%以上である、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項33】
前記外側層の長さを第1の長さとし、前記内側層の長さを第2の長さとしたときに、
前記第1の長さと前記第2の長さとは等しい、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項34】
前記外側層の長さを第1の長さとし、前記内側層の長さを第2の長さとしたときに、
前記第1の長さは前記第2の長さとは異なる、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項35】
前記外側層の外壁および内壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である第1部分と重なるように長手方向に延び、該第1部分をカバーする、第1カバーをさらに備え、
前記第1カバーは第1領域、及び非結合領域を有し、
前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第1領域が前記外側層に取り付けられ、該外側層の気孔率を低下させる、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項36】
前記外側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である第2部分と重なるように長手方向に延び、該外側層の気孔率を低下させる、第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは第1領域、及び非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記第1領域に重なり、前記第2カバーの前記自由端には重ならず、
前記第1カバーの前記自由端と、前記第2カバーの前記自由端とは、軸線方向に離れている、
請求項35に記載の血管内ステント。
【請求項37】
長手方向に沿って延びる第1カバーをさらに備え、
前記第1カバーは、前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられており、
前記第1カバーは第1領域および非結合領域を有し、
前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは前記第一領域が前記内壁に取り付けられている、
請求項37に記載の血管内ステント。
【請求項38】
前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられた第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは第1領域および非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記第1領域に重ねられ、前記第2カバーの前記自由端には重ねられず、
前記第1カバーの前記自由端と、前記第2カバーの前記自由端とは、軸線方向に離れている、
請求項37に記載の血管内ステント。
【請求項39】
前記内側層、前記外側層、及び前記第1カバーのうちの一つ以上にはハイドロゲルが付着している、
請求項37に記載の血管内ステント。
【請求項40】
前記内側層は、前記外側層が患者の体内に設置された後で、該外側層の中に挿入される、
請求項30に記載の血管内ステント。
【請求項41】
ステントが収容された送達部材を備え、
前記ステントは、フレーム、及び該フレームに取り付けられた第1カバーを有し、
前記第1カバーは、前記フレームの一部である第1部分に重なるように長手方向に延び、該第1部分をカバーし、
前記第1カバーは第1領域および非結合領域を有し、
前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは前記第1領域が前記フレームに取り付けられ、
前記ステントの一部である第1の部位が前記送達部材から露出すると、該第1の部位は展開されて血管壁に接触し、
前記第1カバーの前記第1領域が前記血管壁に対して固定される一方、
前記ステントの第2の部位は前記送達部材に収容されているため、前記第1カバーの前記自由端は前記血管壁から離れたままとなる、
患者の血管内にステントを送達するシステム。
【請求項42】
前記ステントは、前記フレームの一部である第2部分に重なるように長手方向に延び、該第2部分をカバーする、第2カバーを有し、
前記第2カバーは、取付部および非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記取付部に重ねられている、
請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記ステントの前記第1の部位を完全に露出させるまでは、前記第2カバーの少なくとも一部は前記送達部材に収容されている、
請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記第1ステントを覆う第2ステントをさらに備える、
請求項41に記載のシステム。
【請求項45】
前記第1ステント内の第2ステントをさらに備える、
請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記第1ステントは、編まれた又は織られた素材で構成され、
前記第2ステントは、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、前記第2ステント内における前記第1ステントの展開を促す。
請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記第2ステントは不織材料で構成される、
請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記第2ステントは編まれた又は織られた素材で構成される、
請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
第2ステントをさらに備え、
前記第2ステントの気孔率は、前記第1ステントの気孔率とは異なってる、
請求項46に記載のシステム。
【請求項50】
前記送達部材は、前記ステントを送達するための側孔を有している、
請求項41に記載のシステム。
【請求項51】
第2ステントをさらに備え、
前記第1ステントは第1の材料で構成され、前記第2ステントは、該第1の材料とは異なる第2の材料で構成されている、
請求項41に記載のシステム。
【請求項52】
第2ステントをさらに備え、
前記第1ステント、前記第2ステント、及び前記第1カバーの一つ以上にはハイドロゲルが付着しており、
前記ハイドロゲルは、膨張することで前記第1カバーの隙間を塞ぐ、
請求項41に記載のシステム。
【請求項53】
前記第2ステントの気孔率は、前記第1ステントの気孔率よりも高い、
請求項49に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月9日提出の米国特許出願第16/214,130号の一部継続出願である。ここにその全内容を参照により援用する。
【0002】
本開示は、不健康な血管内の動脈瘤や瘻孔を治療するために使用される血管内装置に関し、より具体的には、血管内に配置可能なカバードステントに関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術文献には、動脈瘤の治療に使用される多くの装置が開示されている。血管治療における共通の課題は、エンドグラフト外の動脈瘤嚢内の持続的な血流である。実際、これは血管内動脈瘤修復術(EVAR)後の最も一般的な合併症である。このようなエンドリークの改善にはいくつかの手段が考えられる。例えば、米国特許出願第15/732,147号(Walzman)及び米国特許出願第15/732,365号(米国特許出願公開第2018-0153554号)は、エンドリークを防ぐハイドロゲルの使用を教示している。
【0004】
先行技術文献はまた、嚢状動脈瘤への血液流入を防ぐ低侵襲技術として、血管内コイリングを教示している。この治療法は、コイルが動脈瘤の塞栓形成(凝固)を促すことにより、血液が動脈瘤に流入することが阻止され、その結果、動脈瘤の破裂や、頭蓋内動脈瘤に因るくも膜下出血が防止される。しかしながら、血管内コイリングは、血栓塞栓症、脳塞栓、動脈瘤穿孔、親動脈閉塞、コイル移動、動脈解離などの合併症を引き起こすおそれがある。先行技術文献はまた、ステント支援コイリングを教示している。ステント支援コイリングもまた、ステント留置や親動脈へのステント留置に関する同様の欠点を有しており、ステント内の血栓症に基づく狭窄のリスクを低減するために抗血小板薬の長期使用を必要とする。
【0005】
動脈瘤や瘻孔はカバードステントにより治療されることが望ましい。カバードステントは瘻孔の穴や動脈瘤の頸部を直接覆って血管壁を再建し、親血管の血流を即座に正常な経路に振り向けることができる。しかし、神経血管や、脾動脈瘤や肺動静脈瘻など、体の他の部位のひどく曲がりくねった解剖学的組織に有効なカバードステントは、今のところ存在しない。
【0006】
カバー付きの神経ステント(covered neuro-stents)の重要な用途として考えられるのは、瘻孔の治療、特に海綿静脈洞と頸動脈系との間の異常な連結である頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF:carotid cavernous fistula)の治療である。
【0007】
動脈瘤の他の治療法としては、頭蓋内動脈瘤の頸部をクリップで挟む外科的クリッピング術がある。この治療法には、開頭手術や脳の物理的操作を必要とするなど、いくつかの欠点がある。外科的バイパス術も検討されることがあるが、一般に罹患率と死亡率がさらに高くなる。
【0008】
さらに、先行技術文献には、親動脈に沿って動脈瘤頸部にメッシュステントまたはステント状の構造物を配置することにより、血流を動脈瘤から迂回させるための血流迂回装置が開示されている。これらの器具を使用することにより、動脈瘤内に血栓を形成することができる。しかし、血流迂回装置の設置後には合併症が増加する可能性がある。さらに,血流を完全には遮断しないため,ほとんどの瘻孔や破裂した血管の治療には有効ではない。同様に,現在のところ,頭蓋内動脈の医原性破裂に対する有効な血管温存治療法はない。現在の治療では、破裂した動脈をコイル及び/又は液体塞栓剤で閉鎖して出血を止める必要があるが、通常、その動脈領域の虚血性損傷による重大な罹患率を伴う。さらに、これらの器具で動脈瘤を治療する場合、動脈瘤は時間の経過とともに血栓化するため、タイムラグが生じ、すぐには治癒しない。このため、患者はタイムラグ期間中に動脈瘤破裂の危険にさらされることになる。これは、短期的な再破裂率が高い破裂動脈瘤を治療する際に特に問題となる。
【0009】
現行の技術が有する課題や欠点を克服し、選択された血管内動脈瘤または瘻孔を即座に治療する血管内介入が可能な血管内装置が求められている。より詳細には、蛇行した解剖学的組織におけるきつい屈曲部の付近でキンクすることなく、ステントの自由な動きと屈曲とを可能にするカバードステントが求められている。
【0010】
カバードステントの大半は、金属合金のような半硬質材料からステントの「骨格」または「フレーム」のシリンダーを製造し、次いで不浸透性の「カバー」をフレームに取り付ける。先行技術では、カバーはステントの全長にわたって固定間隔で接合されるため、ステントの柔軟性が著しく制限される。安全で効果的な送達、及び蛇行した血管への設置が可能で、動脈瘤、瘻孔、又は破裂した血管への血流を効果的に迂回させる一方、治療対象部位よりも遠位の健康な組織への血流を保ち、かつ動脈瘤または瘻孔の内部におけるうっ血および血栓の形成をもたらすステントが求められている。このように、カバードステントと同様に、脳以外の曲がりくねった解剖学的組織にも使用可能なカバー付き神経ステントに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術の問題点や欠陥を克服するものである。本発明は、動脈瘤、瘻孔、または破裂した血管から血流を効果的に迂回させる一方で、治療対象部位よりも遠位の健康な組織に血液が流れるようにし、かつ動脈瘤または瘻孔の内部でのうっ血および血栓の形成、及び/又は損傷した血管の修復およびその後の治癒をもたらすべく、曲がりくねった血管に安全かつ効果的に送達および設置することができるカバードステント器具を提供する。本発明のカバードステントは、神経ステントとして利用できるだけでなく、脳以外の他の曲がりくねった解剖学的組織にも使用できる。これらの器具は、曲がりくねった解剖学的組織でなくても同様に使用できる。
【0012】
本発明は、自由浮動カバーを備えるステントにより上記課題を解決する。自由浮動カバーは、曲がりくねった解剖学的組織への挿入に最適化されており、ステントを血管系に挿入すると屈曲および湾曲する。実施形態によっては、これは、カバーの一端にある単一の円周形状の接合点(これは例えば約0.1mm程度に小さくてよい)により達成される。また、詳しくは後述するが、実施形態によっては、屋根板状に重ねられて配置される複数のカバーを有する。このようなカバーの構成および取り付け方により、器具の剛性が最小化され、剛性により生じるキンクなしにステントを曲げることができる。従って、上述のように、その十分な柔軟性により、脳以外の曲がりくねった解剖学的組織だけでなく、神経用途のカバードステントとしての使用が可能になる。
【0013】
以下に説明する種々の実施形態から分かるように、ステントは単一のカバーを有することもできるし、様々な位置および配置で複数のカバーを有することもできる。
【0014】
実施形態によっては、カバーは、ステント(フレーム)の片側にのみ取り付けられ、屋根板状に重ねられて幾何学形状に配置され、上記屋根板状カバーの長さの70%未満を構成する。屋根板状に並べられたカバーは、フレームのその円周方向の表面および/または長手方向の表面における限られた部分のみに取り付けられてもよい。屋根板状に重ねられた追加のカバーや、その独立した取り付けは、ステントのカバーされた部分とカバーされていない部分に延び、その結果、ステントの上記部位を完全に覆うことができる。実施形態によっては、重ねられたカバー、例えば、屋根板状のカバーにより、ステントフレームの部分的な被覆を実現することができる。これらのカバーは、組み合わされて、フレームの全長の大部分、又は一部を被覆する。また実施形態によっては、複数のカバーされた領域を有することもある。
【0015】
本発明のカバードステントは、血流がカバー、例えば布に対して、これを折り曲げたりしわを寄せたりする可能性を最小化するために、薬理学的手段により、あるいは一時的にバルーンを膨張させたバルーンガイドカテーテルにより送達したり、又はその他の手段により、血流拘束下で設置してもよい。さらに、例えばステントカバーが大きな瘻孔に重なっている場合など、ステントカバーの一部が血管壁にうまく密着していないときには、第2の同様のカバードステントを第1カバードステントの内側に設置することもできる。第1カバードステントのフレームは、第2カバードステントのカバー(複数可)の固定を補助する。同様に、別のカバードステントを最初の外側ステントとして使用することもできる。但しこの場合、このような外側ステントの隙間が十分に小さく、第2の内側ステントのカバーがその隙間を通ってヘルニアになることがないことが条件となる。
【0016】
本発明のステントカバーは、ステント(フレーム)の特定の部分を完全に包囲してもよく。あるいは、実施形態によってはこれを部分的に包囲し、ステントのその円周方向における一部のみをこれに沿って覆う一方、同じ部分の他の円周方向範囲/部位を覆わないようにしてもよい。これにより、例えば、親血管における、瘻孔や動脈瘤の頸部がある部分の反対側に存在する、分枝血管の起始部を温存できる場合がある。
【0017】
本発明の一態様によれば、血管内ステントは、a)長手方向に延びる軸線、第1部分、第2部分、及び複数の開口を有するステント本体と、b)第1部分上を長手方向に延びてステント本体を覆い、ステント本体の第1部分をカバーし、第1領域および非結合領域を有し、非結合領域は自由端を有し、ステント本体に第1領域が取り付けられている、第1カバーと、c) 第2部分上を長手方向に延びてステント本体を覆い、ステント本体の第2部分をカバーし、第1領域、第2領域、及び、自由端を有する非結合領域を有する、第2カバーと、を有し、第1カバーは第2カバーの第1領域に重なり、第2カバーの非結合領域は第1カバーによって覆われていない。
【0018】
実施形態によっては、第1カバーは、第2カバーの半分以下の範囲を覆うように第2カバーに重なる。他の実施形態では、第1カバーは、第2カバーの半分よりも大きな範囲を覆うように第2カバーに重なる。
【0019】
実施形態によっては、第1カバー及び/又は第2カバーはステント本体の内壁に取り付けられ、他の実施形態では、第1カバー及び/又は第2カバーはステント本体の外壁に取り付けられる。
【0020】
ステント本体(骨格/フレーム)は、単層または2層以上の層が1箇所または複数箇所で結合されている場合がある。ステント本体には、織成や、編組、レーザーカット、又はこれらの組み合わせが用いられ、またこれらはステント本体の長さ方向に沿って異なっていてもよく、あるいは2つ以上の異なるタイプのフレームが1つ以上の点で結合されてもよい。骨格/フレームは、1種類以上の金属、金属合金、又は他の好適な非金属材料で作ることができる。
【0021】
実施形態によっては、ステントは、第1及び第2ステントカバーがステント本体に取り付けられた状態で患者の体内に挿入される。すなわち、カバーは製造工程で取り付けられる。
【0022】
実施形態によっては、第1及び第2カバーがステント本体の外壁に取り付けられ、第2のステント本体が第1及び第2カバーの上に配置される。これを実現するには、まず、生体内に第2ステント本体を設置し、その後、ステントカバーが取り付けられた第1ステントを第2ステント内に設置すればよい。これにより、カバーの自由端、例えば屋根板状の自由端が、2つのステント骨格の間に挟み込まれ、重ねられたカバーからのエンドリークの可能性が最小限に抑えられる。他の実施形態では、2つのステント本体は一緒に挿入される。
【0023】
実施形態によっては、複数のステントはそれぞれ複数のカバー、例えば屋根板状に並べられたカバーを有し、カバーからの又はカバーの周囲からの漏出の可能性をより低くするため、生体内で互いに伸縮可能な入れ子状(telescoping fashion)に配置される。また実施形態によっては、例えばハイドロゲル等の追加的な要素を有することがある。これらは、骨格フレーム及び/又はカバーの一部または全部を被覆し、生体内で膨張することで、カバーの間、例えば屋根板状に並べられたカバーの隙間、及び/又はステントと血管壁との間における漏出の可能性をより低くする。
【0024】
第1及び第2カバーは、実施形態によってはステント本体のその360度全周を覆うように延びており、他の実施形態ではステント本体の360度未満を覆う。ある実施形態では、第1カバー及び第2カバーは、これらが組み合わされて、ステント本体の全長未満を覆う。
【0025】
カバーは、実施形態によっては円筒形状であり、他の実施形態では半円筒形状であり、他の実施形態ではほぼ三角形である。魚の鱗のような他の構成や幾何学的形状も考えられる。
【0026】
実施形態によって、第1カバー及び第2カバーは、ステント本体におけるそれぞれの取付位置に取り付けられており、第1カバー及び第2カバーは、それらの取付位置を除き、フレームから独立して展開することができる。
【0027】
実施形態によっては、ステント本体の第3の部分上を長手方向に延び、第3の部分を覆う第3カバーを有する。第2カバーは第3カバーの一部に重ねられ、第1、第2及び第3カバーが屋根板状の配置を形成する。さらなる追加のカバーも考えられる。
【0028】
本発明の別の側面として、血管内ステントは、a)長手方向に延びる軸線および複数の開口を有するステント本体と、b)ステント本体の第1部分上を長手方向に延びてステント本体を覆い、ステント本体の第1部分をカバーし、第1部分は第1領域および第2領域を有する、第1カバーと、を有し、ステント本体が曲げられると、第1カバーの一部はステント本体に対してその軸線方向に移動し、ステント本体は、通常、カーブの外側に沿って引き伸ばされる一方、カバーの長さは一定であるため、ステント本体における第1カバーがカバーする長さは、カーブの外側に沿って減少し、ステント本体は、通常、カーブの内側に沿って押し縮められるため、カーブの内側におけるステント本体に対するステントカバーの相対的な長さは、増大する。
【0029】
実施形態によっては、ステント本体を覆い、ステント本体の第2部分をカバーする第2カバーを有し、第2部分は第1領域および第2領域を有し、ステント本体が曲げられると、第2カバーの一部はステント本体に対してその軸線方向に移動する。
【0030】
実施形態によっては、ステントの一端はカバーされていない。また実施形態によっては、ステントの近位端と遠位端の両方がカバーされていないことがある。同様に、様々な実施形態において、カバーのある端部とカバーのない端部の両方を有する分岐ステントも考えられる。また実施形態によっては、類似する及び/又は異種の多数のステントについての様々な構成も使用することができる。また実施形態によっては、ステントは、その1つ以上の端部がカバーされ、その長さ方向における他の1つ以上の部分がカバーされていないことがある。また実施形態によっては、ステント本体が曲げられたときに、カバーの一部がステント本体に対して移動することがある。
【0031】
また実施形態によっては、ステント本体が曲げられたときに、ステント本体の一部がカバーに対して相対的に移動することがある。また実施形態によっては、ステント本体が曲げられたときに、ステント本体の一部が1つ以上のカバーに対して相対的に移動することがある。また実施形態によっては、第1カバーは、第2カバーの自由端には重ねられず、第2カバーの取付部に重ねられることがある。
【0032】
実施形態によっては、第1カバー及び第2カバーは、それぞれ、フレームの取付位置に取り付けられる。取付位置は、別々に分離されていても、両方のカバーについて共通であってもよい。第1カバー及び第2カバーは、それらの取付位置を除き、フレームから独立して展開することができる。取付位置は、単一の点、線、他の形状、フレームの円周、又はその円周の一部であってもよい。好ましい実施形態では、各カバーはそれぞれ独立した取付位置を有する。実施形態によっては、第1カバーは、第2カバーの一部にのみ重なる。他の実施形態では、第1カバーは、第2カバーの大部分に重なる。
【0033】
実施形態によっては、第1及び第2ステントカバーは、ステントの血管内への挿入・設置の前に、ステント本体に装着される。
【0034】
実施形態によっては、1つ以上のカバーがフレームの内側に配置される。また実施形態によっては、1つ以上のカバーがフレームの外側に配置される。また実施形態によっては、1つ以上のカバーがフレームの内側に配置され、1つ以上のカバーがフレームの外側に配置される。また実施形態によっては、1つ以上のカバーがフレームの層の間に配置される。また実施形態によっては、1つ又は複数のカバーがフレームの内側に配置され、1つ又は複数のカバーがフレームの外側に配置され、及び/又は1つ又は複数のカバーがフレームの層の間に配置あれる。
【0035】
本発明の別の側面として、血管内ステントは、長手方向に延びる軸線、第1部分、第2部分、及び複数の開口を有するステント本体を備える。第1カバーは、ステント本体のその軸線方向における一部をカバーするように配置されている。第1カバーは、ステント本体に取り付けられた取付端と、その反対側の、ステント本体に対して移動可能であり、これによりステント本体の剛性を下げる、自由端部と、を有する。すなわち、カバーのその一端のみがステント本体に取り付けられることで、ステントの柔軟性が高められ、ステントがキンクしにくくなる。
【0036】
実施形態によっては、剛性を低下させるために、ステント本体に取り付けられた取付端部と、その反対側の、ステント本体に対して移動可能な自由端とを有する第2カバーが設けられる。
【0037】
実施形態によっては、第1及び第2カバーの各々は、ステント本体の全長よりも短い範囲にわたって延びている。あるいは、全長にわたって延びている。あるいは、全長を越えて延びることもある。
【0038】
本発明の別の側面として、患者の血管内におけるエンドリークの防止方法は、第1ステントを血管内の開口部を横切るように設置し、その後、フレームと第1カバーを有する第2のステントを第1ステント内に挿入し、第1カバーを血管内の開口部を横切るように展開することを含む。第1カバーは、フレームに取り付けられる第1端部と、フレームに取り付けられていない第2の自由端と、を有する。第1ステント内に第2のステントを挿入することで、第1カバーを第1ステントと第2ステントとの間に固定することができる。血管内の開口部は、例えば瘻孔や動脈瘤の頸部の開口である。
【0039】
実施形態によっては、第2ステントは、取付端と自由端とを有する第2カバーを有し、第1カバーの自由端は第2カバーの取付端に重ねられ、第1カバーの自由端は、第1カバーと第2カバーとの間の血流を制限するため、第2カバーに対して固定される。
【0040】
実施形態によっては、第1ステントは編まれた又は織られた素材で構成され、及び/又は、第2ステントは不織材料で構成される。実施形態によっては、これらには金属材料またはポリマー材料を用いることができる。第1及び/又は第2ステントは、バルーン拡張型または自己拡張型とすることができる。また実施形態によっては、第1及び第2ステントは異なる気孔率を有する。また実施形態によっては、第2ステントは80%を超える気孔率を有する。
【0041】
実施形態によっては、ステント本体/フレーム及び/又はカバー(又は複数のカバー)の少なくとも一部には、エンドリークの防止を補助するハイドロゲルが付着している。
【0042】
本発明の別の側面として、患者の血管内にステントを送達する方法は、
a)血管に送達部材を挿入し、送達部材はステントを有し、ステントは、フレーム、及び、フレームの第1部分上を長手方向に延び、第1部分に重なって第1部分をカバーする第1カバーを有し、第1カバーは第1領域と非結合領域を有し、非結合領域は自由端を有し、第1カバーはフレームの第1領域に取り付けられ、
b)ステントの第1の部位を送達部材から露出させて、第1の部位が血管壁に接触するようこれを展開させたときに、第1カバーの第1領域は血管壁に対して固定され、一方、ステントの第2の部位は送達部材内に保持され、第1カバーの自由端は血管壁から離れたままとなる工程を含む。
【0043】
実施形態によっては、ステントはフレームの第2部分上を長手方向に延び、第2部分に重なって第2部分をカバーする第2カバーを有し、第2カバーは取付部と非結合領域を有し、第2カバーの非結合領域は自由端を有し、第1カバーは、第2カバーの取付部に重ねられる。実施形態によっては、ステントの第1部分を露出させている間、第2カバーの少なくとも一部は、送達部材の中に収容されている。
【0044】
本発明の別の側面として、患者の血管内に設置可能な血管内ステントは、編まれた又は織られた素材で構成される外側層と、外側層内に配置される内側層と、を有し、内側層は、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、血管内で外側層の展開を促す。
【0045】
本発明の別の側面として、患者の血管内に設置可能な血管内ステントは、編まれた又は織られた素材で構成される外側層と、外側層内に配置される内側層と、を有し、内側層は、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、血管内で外側層の展開を促す。
【0046】
拡張材料は、自己拡張性、バルーン拡張性、機械的拡張性のいずれでもよい。
【0047】
実施形態によっては、内側層および外側層は異なる気孔率を有する。実施形態によっては、内側層の気孔率は、外側層の気孔率よりも高い。実施形態によっては、内側層の気孔率は約70%から約99.9%の間である。気孔率は80%より大きいことが好ましい。実施形態によっては、外側ステントの気孔率の範囲は0%から約80%の間であり、約75%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の別の側面として、血管内ステントは、第1気孔率を有する外側層と、第1気孔率とは異なる第2の気孔率を有する第2の層と、を有する。
【0049】
実施形態によっては、外側層の長さは内側層の長さと等しい。また実施形態によっては、外側層は内側層よりも短い。また実施形態によっては、外側層は内側層よりも長い。
【0050】
実施形態によっては、1つ以上のカバーは、内側層の外壁に取り付けられ、及び/又は内側層の内壁に取り付けられ、及び/又は外側層の外壁に取り付けられ、及び/又は外側層の内壁に取り付けられる。また実施形態によっては、カバーは、取付部と、自由端を有する非結合領域を有する。カバーは、重ならないように、又は重なるように、例えば屋根板状に配置することができる。
【0051】
実施形態によっては、外側層が患者の体内に配置された後に、内側層が外側層に挿入される。他の実施形態では、内側層は外側層に取り付けられ、患者の体内に一緒に挿入される。
【0052】
実施形態によっては、複数のステントはそれぞれ複数のカバー、例えば屋根板状に並べられたカバーを有し、カバーからの又はカバーの周囲からの漏出の可能性をより低くするため、生体内で互いに伸縮可能な入れ子状(telescoping fashion)に配置される。また実施形態によっては、例えばハイドロゲル等の追加的な要素を有することがある。これらは、フレーム及び/又はカバーの一部または全部を被覆し、生体内で膨張することで、屋根板状に並べられたカバーの隙間、及び/又はステントと血管壁との間における漏出の可能性をより低くする。
【0053】
好ましい実施形態では、ステントは自己拡張型である。実施形態によっては、ステントは、バルーンに装着されたバルーン拡張型であってもよい。また実施形態によっては、ステントは、部分的に及び/又はその全体をリシース可能としてもよい。またステントは、プッシャーワイヤーに取り付けられてもよい。また、ステントを、機械的に、流体静力学的に、電気的に、熱的に、または他の原理を利用して取り外し可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明は、以下の詳細な説明を考慮すれば、よりよく理解され、上記以外の目的も明らかになるであろう。かかる説明は、以下の添付図面を参照する:
【
図1】本発明の一実施形態に係るケープ付き(カバード)ステントのカバーの透視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るケープ付き(カバード)ステントのステント(フレーム)の透視図である。
【
図3】
図2のステント本体内に配置された
図1のカバーを示す透視図である。
【
図3A】カバーがステント(フレーム)の内側にあり、ステントの長さを超えて延びている本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図であり、ケープ付きステントは血管内に示されている。
【
図3C】
図3Bに類似した図であり、ケープ付きステントがその挿入中または使用中に曲げられたときの、カバーの遊動部分に対するフレームの自由な動きを示している。
【
図3D】本発明のケープ付きステントの他の実施形態を示す、
図3Aに類似した図であり、カバーがステント本体の外側(外部)にある、血管内に配置されたケープ付きステントが示されている。
【
図3E】血管外における
図3Dのケープ付きステントの透視図である
【
図3F】
図3Eに類似した図であり、ケープ付きステントがその挿入中または使用中に曲げられたときのカバーの自由な動きを示している。
【
図3G】軸線方向に離して配置された2つの外部カバーを有する、本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図である。
【
図4】
図2と同様の透視図であり、ワイヤ支柱で形成されたステントに代えてメッシュステントの例を示している。
【
図5】遠位端が取り付けられた内部カバーを有する
図4のメッシュステントを示す透視図である。
【
図5A】メッシュステント上に配置されたカバーを有すること以外は、
図5に類似した透視図であり、カバーはその遠位端が取り付けられている。
【
図5B】外部カバーのその近位端がメッシュステントに取り付けられていることを除き、
図5Aに類似する図である。
【
図6】本発明のケープ付きステントのカバーの他の実施形態を示す透視図であり、カバーは重ねられて配置されている。
【
図6A】本発明のケープ付きステントの透視図であり、ステント本体上に配置された
図6のカバーを示している。
【
図7】本発明のケープ付きステントのカバーの他の実施形態の透視図であり、3つのカバーが重ねられた状態が示されている。
【
図7A】
図7のカバーをステント本体上に配置した状態を示す透視図である。
【
図7B】
図7Aのケープ付きステントの長手方向断面図である。
【
図7C】本発明のケープ付きステントの他の実施形態を示す透視図であり、ステント本体上に重ねて配置された3つのカバーを有し、近位側および遠位側のカバーが中間部分のカバーに重なり合っている。
【
図7D】
図7Cのケープ付きステントの長手方向断面図である。
【
図7E】本発明のケープ付きステントの他の実施形態を示す透視図であり、重ねて配置された3つのカバーを有し、これらはステント本体を部分的に、すなわちステント本体に対して360度未満の範囲を覆うように延びている。
【
図7F】本発明のケープ付きステントの他の実施形態であり、ステント本体を覆うように重ねて配置された複数の三角形のカバーを示す透視図である。
【
図7G】本発明のケープ付きステントの他の実施形態であり、ステント本体の全長の半分以下、かつその円周方向における360度未満を覆うように重ねて配置された、複数の三角形のカバーを示す透視図である。
【
図8】本発明のケープ付きステントの透視図であり、
図7の3つのカバーがステント本体の両端を覆わない形態を示している。
【
図9】本発明のケープ付きステントの他の実施形態であり、円周方向に重ねて配置された一連のカバーを有し、カバードステントが畳まれた送達構成(状態)を示す透視図である。
【
図10】送達中の畳まれた状態のカバードステントを示す、
図9のカバードステントのカバー部分を切断した断面図である。
【
図10A】拡張(展開)された構成(状態)にあるカバードステントを示す、
図9のケープ付きステントの透視図である。
【
図10B】展開された
図10Aのカバードステントのカバー部分を切断した断面図である。
【
図10C】本発明のケープ付きステントの他の実施形態であり、畳まれたカバー部分を切断した断面図である。
【
図11A】円周方向に重ねて配置された一連のカバーを有する、本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図である。
【
図11B】円周方向に重ねて配置された一連のカバーを有する、本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図である。
【
図11C】ステント本体の360度未満の範囲にわたって円周方向に重ねて配置された一連のカバーを有する、本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図である。
【
図11D】本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図であり、ステント本体の円周方向に重ねて配置された一連のカバーを有し、これらカバーがステント本体の全周にわたって延びている例を示している。
【
図12】
図10Aと同様の図であり、追加のカバーを有する他の実施形態を示しており、図のカバードステントは展開位置(状態)にある。
【
図13】本発明のカバードステントの自己拡張型ステント本体が送達装置から展開されつつある様子を示す側面図である
【
図14】ステント本体を覆うカバーを覆う外側ステントを備える、本発明のカバードステントの他の実施形態の透視図である。
【
図15】外側ステントの一部を取り除いてより明確化した
図14のケープ付きステントの透視図である。
【
図17】2つのステント層を有する本発明のケープ付きステントの他の実施形態の透視図であり、カバーを示すために一部が取り除かれている。
【
図18】2つのステント層を有する本発明のケープ付きステントの別の実施形態の透視図であり、カバーを示すために一部が取り除かれている。
【
図19A】血管の開口部に隣接して配置された、本発明の実施形態によるケープ付きステントを示す透視図であり、矢印は中間カバー下への漏出を示している。
【
図19B】外側ステントの中に設置されたケープ付きステントを示す
図19Aと同様の図である。
【
図20A】2つのステント層を有する本発明のケープ付きステントの他の実施形態を示す透視図であり、内側のステント層を示すために一部が取り除かれている。
【
図20B】2つのステント層を有する本発明の他の実施形態の断面図である。
【
図20C】2つのステント層を有する本発明の他の実施形態の透視図である。
【
図20D】2つのステント層を有する本発明の別の実施形態の断面図である。
【
図20E】2つのステント層を有する本発明の別の実施形態の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、血管内に設置され、動脈瘤、瘻孔、又は破裂した血管から血流を効果的に迂回させる一方で、治療対象部位よりも遠位の健康な組織への血流を維持し、かつ動脈瘤、瘻孔、又はカバーされた他の病変部の内部におけるうっ血および血栓形成をもたらすか、若しくは望ましくない孔または嚢を閉塞するため、曲がりくねった血管等の血管系を通して送達できるように構成された、カバード(ケープ付き)ステントである。本発明のカバードステントは、神経脈管系だけでなく、脳以外の曲がりくねった解剖学的組織、管腔構造、その他の解剖学的組織にも利用することができる。
【0056】
本発明のカバード(ケープ付き)ステントは、ステント本体(フレーム)が血管系のカーブを曲がる際のキンクを低減または防止する。本発明のカバードステントによるこのような柔軟性の向上効果は、ステント本体上を遊動可能なカバーによるものであり、これはカバーの取り付け方法およびその構成により実現される。具体的には、ステント本体へのカバーの接合部分を最小限に抑えることで、接合されていない遊動部分が残される。その結果、カバードステントが曲がる際に、カバーはステント本体の柔軟性を阻害せず、そのような曲げに追従することとなる。
【0057】
本発明のカバードステントは、従来のカバードステントよりも鋭角に動くことができる。本発明のカバードステントには鋭利なエッジがなく、キンクが起こりにくいため、血管に対して擦過傷、穿刺、破裂、狭窄、閉塞、及びその他の損傷のリスクが低減される一方、連続的な閉塞に加えて血管壁への適合性も向上する。また、従来のステントで対応可能な血管よりも曲がりくねった多くの血管において、ステントの安全かつ効果的な送達および設置が可能となる。実施形態によっては、ハイドロゲルまたは他の物質をステントの全体に又は部分的にコーティングすることにより血管壁の閉塞がさらに強化される。本発明のケープ/カバーの設計/構成は、従来のように、ステントの長さ方向に沿って接合されたり、複数の点で接合されたり、その両端が接合されているカバーとは異なり、カバー(ケープ)の遊動が可能であることにより、カバードステントの課題である剛性が排除されるか、少なくとも改善される。本発明はこの特徴により、ステントの屈曲・湾曲を阻害して剛性を高めてしまう従来のカバーに比べ、カバードステントの設置が容易になる。さらに、従来の、カバーが固定されその全体が接合されたステントでは、カバー(カバーの取り付け部)がフレームに固定されているため、血管のカーブの外側に沿ってステントを適切に伸ばしたり、カーブの内側に沿ってステントを縮めたりすることができない。この性質はステントを硬くし、曲がりくねった解剖学的組織での送達および設置をより困難とする。言い換えれば、従来のステントでは、固定されその全体が接合されたカバーがステントの湾曲・屈曲を阻害するのに対し、本発明のカバードステントでは、カバーが自由端を有することによる、カバーに対するステントの自由な動きが、ステントの柔軟性をより高くし、あるいはステントにその完全な柔軟性を発揮させる。
【0058】
本発明では、ステント本体を覆う一又は複数のカバーを使用することが想定されている。複数のカバーを設ける場合、以下に詳述するように、これらを重なり合った構成で配置することができる。また、後述するように、このカバーが重ね合わせられた構成によれば、ステントは、そのカバーされた部分の一つが血管内に設置された状態でもその柔軟性が維持されるため、ステントの送達を制御するのにも有利である。カバーには様々な構成があり、ステント本体のカバー範囲も様々である、これについても以下で詳しく説明する。ステントによっては、カバー及び/又はフレームに開窓が設けられることもある。
【0059】
ここで、図面および本開示の具体的な実施形態を参照する。本発明のカバードステントの実施形態が示された各図において、カバードステントの同様の構成要素には同じ符号が付されている。
【0060】
まず
図1~3には、本発明のケープ付き(カバード)ステントの第1実施形態が示されている。カバー又はシール要素130を
図1に示し、ステント本体230を
図2に示す。このようなカバーは血液および/または血漿に対する浸透性が限られているか、又は全くないことが好ましい。カバー130、ならびに本明細書に開示される他のカバーは、本明細書では「ケープ」、「シール部」、又は「ケープ部」とも呼ばれる。また、ステント本体230、及び本明細書に開示される他のステント本体は、本明細書では「ステント」、「フレーム」、「ステントフレーム」、「骨格」、又は「足場」とも呼ばれる。単一の又は複数のカバーは、ステント本体の内壁に取り付けられることでステント本体の内側に、又はステント本体の外壁に取り付けられることでステント本体の外側に、及び/又はステント本体の隙間部分に取り付けられる。本明細書では、一又は複数のカバーがステント本体に取り付けられた器具を総称して、「ケープ付きステント」又は「カバードステント」と呼ぶ。
【0061】
図1~3を引き続き参照する。カバー(ケープ部)130は、これをステント本体230の部位290に取り付けるための接続部または取付部100を一端に有する。この接続/取り付けには、例えば溶接、金属糸、布糸など、種々の方法が考えられる。接続部100を含む端の反対側は、ステント本体230に取り付けられていない自由端160である。カバー130は、これに密封性を持たせるため、好ましくは不浸透性である。カバー130はまた、様々な流体や成分に対して浸透性、部分浸透性、完全不透過性であってもよい。
【0062】
カバー130の(その取り付け端からその自由端160までの)長さは、対象の血管のサイズに応じて、ステントによりカバー/シールすべき範囲に応じて、及び/又はステントに要求される柔軟性に応じて、及び/又はカバーの数に応じて、様々な長さにすることができる。実施形態によっては、カバー130は、ステントの屈曲を阻害せず、血管のカーブの外側におけるステントの伸長を可能にし、かつ所望のカバー率を維持するため、対象の血管のカバーすべき範囲よりも約30%長い。より詳細には、カバー130が、そのシールする部分よりも外側の部分のみがステント230に取り付けられている限りにおいて、ステント230は、その長さに沿って複数の部位が取り付けられたカバーを有するステントよりも柔軟性が高くなる。別の実施形態では、カバーは、カバーされる対象血管の領域よりも30%以上長い。他の実施形態では、これは30%未満である。このような様々な長さのカバー、及びステント本体のカバーされる範囲の様々な長さは、本明細書に開示されるカバードステントの各実施形態に適用可能である。
【0063】
図2は、透光性と浸透性を有し、第1端部200、第2端部260、及び、第1端部200寄りのステント取付部位290を有するステント本体230を示している。ステント本体230は(本明細書に開示した他のステント本体(ステントフレーム/骨格)と同様に)、図に示されるように、複数の金属製の支柱により形成される。ステント230は、その他にも、複数のワイヤで形成されてもよく、切断された、例えばレーザー切断された管状部材、織られたメッシュ、ブレード(braid)、高分子材料、又はこれらの組み合わせ、若しくはこれらと他の材料および方法との組み合わせにより形成されてもよい。これらをステントの長さ方向に沿って次第に変えたり、2種類以上のフレームを一箇所又は複数箇所で結合したりしてもよい。ステント本体は、単層または2つ以上の層が一箇所又は複数箇所で結合されていてもよい。その例については後述する。
【0064】
カバー130は、図に示されるように、ステント本体230の内側(内部)に、すなわちステント本体230の内壁に取り付けられてもよい(
図3)。カバー130は、ステント本体230の第1端部200から近位側および第2端部260から遠位側に離れて配置されている。これにより、ステントの上記近位側の部分と遠位側の部分には、カバーされていない(露出した)領域が残る。カバーされていない領域の長さは様々である。カバーは、本明細書で説明する他の実施形態のように、ステント本体の外側(外部)に、すなわちステント本体の外壁に取り付けることもできる。また、実施形態によっては、カバーされていない部分が存在しないこともある。
【0065】
ステント本体230は、金属製の支柱(又はワイヤ)で形成することができ、この支柱は、デリバリーシースを通して送達される際に折り畳まれるか、又はバルーンに圧着されて外形が縮小され、シースから送り出されるとより大きな直径に拡張する。ステントは自己拡張型でも、バルーンその他のステント内に配置された拡張機構/構造によって拡張可能なものでもよい。拡張状態を
図2及び
図3に示し、
図3Aは血管V内で拡張したカバードステントの例を示している。
【0066】
また、ステント本体は、
図4及び
図5に示す実施形態のように、透過性の小さな開口を有するメッシュで構成することもできる。この実施形態では、ステント本体230’は、
図2のステント本体230と同様に、第1端部200’、第2端部260’、及び取付部位290’を有する。その他の点では、
図4及び
図5のカバードステントは
図3のカバードステントと同じである。カバー130はステント本体230’内に配置される。一方、これに代えて、
図5A及び
図5Bに示す実施形態のように、ステント本体の外側にカバーを配置することもできる。
図5Aに示すカバードステント650は、カバー660がその外側に配置されたメッシュステント670を有し、カバー660は、その遠位部分の取付部662が取り付けられている。カバー660の近位側部分/端部664及びその他の部分は取り付けられておらず、自由に動くことができる。取り付け部の長さは、1ナノメートル未満から1メートルまで変化し得る。カバー660の長さはステント本体670の長さよりも短く、ステント本体670の遠位側部分672と近位側部分674はカバーされていない。他の長さや比率も考えられる。
【0067】
図5Bのカバードステント680は、カバー681がその近位側部分/領域に取付部682を有し、遠位側部分が自由に動けるようになっている点を除き、
図5Aのカバードステント640と同じである。ステント本体692の遠位側部分684および近位側部分694はカバーされていない。上述したように、本明細書に開示された他の実施形態と同様に、この実施形態におけるカバーの長さは図示されたものとは異なっていてもよい。カバーは
図5Aや
図5Bのようにステント本体の中間部分ではなく、これよりも遠位端に寄せて配置されてもよく、近位端に寄せて配置されてもよい。すなわち、カバーは、ステント本体の中間部分を覆うように示されているが、より遠位側またはより近位側に寄せて配置されてもよく、図示されたものより短くても、又は長くてもよい。すなわち、カバーはその一端側が取り付けられ、他端側は遊動可能であり、ステント本体に合わせて動くことができる。また、単一のカバーの場合もあれば、複数のカバーの場合もある。複数のカバーを有する実施形態では、それらは完全に重なり合っていても、部分的に重なり合っていても、重なり合わなくてもよく、及び/又はこれらを様々に組み合わせてもよい。
【0068】
尚、
図4~5Bのメッシュステント本体は、本明細書に開示した他の実施形態にも適用することができる。
【0069】
カバーの自由端の利点は、
図3Bと
図3Cを比較することで理解できる。
図3Bでは、カバードステント250はまっすぐに/直線的に配置されている(
図3Aは血管V内に直線的に配置されたカバードステント250を示している)。カバー260はステント本体252の内壁にその取付部266が取り付けられている。カバードステント250が曲げられると、結合されていない自由端264がステント内でステント本体に沿って移動する。例えばカバードステント250が血管内のカーブに沿って曲げられると、
図3Cに示すように、結合されていない自由端264がステント内でステント本体に沿って軸線方向にスライドする。そのため、ステントがカーブの外側に沿って長くなるにつれて、カバー260の近位側部分264がステント本体252内でスライドし、その露出部分が長さL1よりも短い長さL2となる。ステントフレーム本体はカーブの内側に沿って短くなるため、カーブの内側におけるステントフレーム/本体の長さに対するカバーの被覆範囲は長くなることがある。カバー部分とその下(又は上)にあるステント本体部分がこのように相対移動することで、ステントの湾曲・屈曲がカバーにより阻害されず、ステントの柔軟性が高められる。すなわち、仮にカバー260の両端が取り付けられ、遊動可能な未結合の端部がない場合、ステント本体252の湾曲・屈曲が阻害されるが、上述のような相対移動によりステントの柔軟性が維持される。この変化は
図3Cに描かれている。カバーは、カーブの「外側」に沿って伸長したステントフレームに対して相対的に「短く」なる一方、カーブの「内側」(下側)に沿って縮んだステントフレームに対して相対的に「長く」なる。
【0070】
自由端は、ステント本体の湾曲・屈曲やその他の動きに対して遊びを持たせるため、若干長目にしてもよい。尚、この実施形態のカバー260は、ステント本体252の近位端256よりも長く延びており、ステントフレームの外に出た部分264を有している。カバー260の遠位端は、ステント本体の遠位端254から近位側に離れた位置に配置されている。尚、カバーは、これを近位端256よりも長くすることに代えて、又はこれに加えて、遠位端254より長くすることもできる。その他、カバー260がステント本体252内に収まるように、カバー260の近位端をステント本体252の近位端256よりも遠位側で終端させてもよい。いずれの場合も、カバーの自由端はステント本体に対して相対的に、かつ独立して動くことができる。
【0071】
尚、
図3Cには拡張した状態のケープ付きステントが示されているが、ステントは送出中に折り曲げられれることもある。このとき、ステントは、挿入のためこれをより小さな外形とすべく、送達部材よりも小さな直径に折り畳まれ/圧縮されている。目的部位に到達すると、ステントは送達部材から解放され、元の展開された、より大きな直径の状態に戻る。ステントの非結合領域の遊動は、カバードステントの送達中および/または設置箇所で生じ得る。
【0072】
上述のように、カバーは、これをステント本体の外壁に取り付け、ステント本体の外側に配置することもできる。これは例えば
図3D~3Fの実施形態に示されている。
図3Dの血管V内に配置されたカバードステント270は、ステント本体272と、取付部286が取り付けられたカバー280とを有する。カバー280の遠位端284はステント本体272の遠位端273よりも近位側で終端しており、ステント本体272の遠位側部分276はカバー280に覆われていない。これに代えて、又はこれに加えて、ステント本体272の近位側部分をカバー280で覆わないことも考えられる。カバーされていない部分の長さは様々であり、露出部はより長くなったり、短くなったりする。また、カバー260はその遠位端が取り付けられているが、これに代えて、遠位端から離れた部位または近位端が取り付けられてもよい。このような代替の取り付け部位は、本明細書で開示する他のカバードステントにも適用可能である。
図3Fは、カバー280の自由端に対するステント本体の動きを説明すべく、曲げた状態のカバードステント270を示している。ステントが曲げられるときには、ステント本体の露出部275から分かるように(
図3Eと比較して)、ステント本体が各所に沿って伸長および/または短縮するのに合わせて、カバーの取付部286の反対側の、ステントに取り付けられていない端部である自由端285が、ステント本体272と相対的に移動する。図に示されるように、カーブの外側に沿ってステントが伸長すると、カーブ外側のステント本体の長さに対するカバー280の被覆範囲が減少し、カーブの内側に沿ってステント本体が縮小すると、カーブ内側のステント本体の長さに対するカバーの被覆割合が増加する。遠位部276におけるステント本体とカバーの相対位置は、遠位部276に隣接するカバー装着部286により変化しない。
【0073】
図3Gに示す実施形態では、カバードステント600の2つのステントカバー620及び630がステント本体610に取り付けられている。ステントカバー620及び630は、ステント本体610の中間部分616をカバーせず残すよう、軸線方向に隙間をあけて配置されている。カバー620はその遠位側の取付部622が取り付けられている。その反対側の端部624は取り付けられておらず、遊動可能である。カバー630はその遠位側の取付部632が取り付けられている。その反対側の端部634は取り付けられておらず、遊動可能である。カバー620及び630は同じ長さ、又は異なる長さにすることができ、図に示すものとは違う長さにしてもよい。又はこれらの間隔を変えて、ステント本体610のカバーされている部分とカバーされていない部分とを図とは異なる長さにしてもよい。また、ステント本体の内側または外側に2つ以上のカバーを半径方向に間隔をあけて配置することも考えられる。
【0074】
図6~
図16は、複数のステントカバーが部分的に重なるように配置された、本発明のカバードステントの他の実施形態を示す。
図6~
図8の実施形態では、第1ステントカバーが第2ステントカバーの遠位側に、第2ステントカバーが第3ステントカバーの遠位側に配置されるように、複数のステントカバーがステント本体の長手方向に延びる軸線に沿って並べられている。
図9~
図13の実施形態では、カバーはステント本体に対して放射状に、すなわちステント本体のその長手方向の一部に対して、ステント本体の円周方向に向かって延びるように配置されている。各カバーはステント本体の円周上のその全周に満たない一部を覆っており、同円周に沿って延びる隣接するカバーと重なっている。このように、カバーはステント本体の所定の長さ(長手方向の一部)に沿って重なっている。別の言い方をすれば、カバーは、連続用紙(fanfold)や巻かれた地図を展開する要領で、前後に重ねることができる。
図6~16の各実施形態において、ステント本体の被覆された範囲は、ステントが曲がるにつれて変化する。これは、ステントが挿入された血管(又は他の身体部位)の管径が許容するステントの展開量にも依存する。カバーが自由に動くことで、ステントの柔軟性が高まる。上述した
図3C及び
図3Fのように、ステントが曲がるとき、ステント本体におけるカーブの外側の部分が長くなるにつれて、そのカーブの外側部分における被覆範囲が相対的に短くなることがあり、ステント本体におけるカーブの内側の部分が短くなるにつれて、そのカーブの内側部分における被覆範囲が相対的に長くなる(増加する)ことがある。
【0075】
まず
図6と
図6Aに目を向けると、カバードステントはカバー/ケープ130とカバー/ケープ330とを備えている。カバー130は、その取付部100が遠位端に取り付けられ、自由端160を残している。自由端160を含むカバー130の近位側の部分は、カバー330の遠位側の部分と重なっている。カバー330は、その取付部390が遠位側の部分に取り付けられ、近位側に自由端360を残している。図示された実施形態では、カバー130は、カバー330の取付部390を覆うようにこれに重なっている。別の言い方をすれば、カバー330の取付部390及び遠位端300は、外側のカバー130に重なっている。ステントカバー130、330の重なりを示すため、これらの長さをそれぞれ符号10、30で示す。尚、これらが重なった部分の長さは、本明細書に開示された本実施形態および他の実施形態において、図示されたものとは異なっていてもよい。また、これらが重なった部分の長さは、同じステントでも、ステントの構成および/または曲げ具合によって異なる場合もある。図から分かるように、カバー330の自由端360は、ステント本体に取り付けられておらず、カバー130からも露出しているため、つまりカバー130と重なっていないため、制限を受けない。
【0076】
図7、
図7A及び
図7Bは、3つのケープがどのように組み合わせられるかを示している。具体的には、カバードステントは、遠位カバー/ケープ130、中間カバー/ケープ330、及び近位カバー/ケープ530を有している。カバー130は、遠位部の(その遠位端に隣接する)取付部100が取り付けられ、露出した/覆われていない自由端160を残している。自由端160を含むカバー130の近位側の部分は、カバー330の遠位側の部分を覆っている。カバー330は、遠位部300の(その遠位端に隣接する)取付部390が取り付けられ、露出した/覆われていない自由端360を残している。自由端360を含むカバー330の近位側の部分は、カバー530の遠位側の部分を覆っている。カバー530は、遠位部500の(その遠位端に隣接する)取付部590が取り付けられ、露出した/覆われていない自由端560を残している。図示された実施形態では、カバー130は取付部390を覆うようにこれに重なり、カバー330は取付部590を覆うようにこれに重なる。ステントカバー130、330及び530の重なりを示すため、これらの長さをそれぞれ符号11、31及び51で示す。尚、これらが重なった部分の長さは、本明細書に開示された本実施形態および他の実施形態において、図示されたものとは異なっていてもよい。図から分かるように、自由端160、360、及び560は、隣接するカバーに覆われておらず、露出しているため、つまりカバー130と重なっていないため、制限を受けない。取付部100、300、500はステント本体に取り付けられて、また、取付部/取付セグメント100、390、590(及びカバー130の遠位部分(図示せず))として示される、小さな長手方向の部分に沿って取り付けられてもよい。屋根板状に重なり合うよう配置されたカバーの様子は
図7Bの長手方向断面図から分かる。
図7Bは、カバー130の近位側の部分103が、取付部300を含むカバー330の遠位側の領域を覆っており、カバー330の近位側の部分303が、取付部500を含むカバー530の遠位側の部分を覆っていることを示している。カバー330、530の近位側の部分/自由端303、503は、カバーで覆われていない。カバー130、330、530はステント本体230の外壁231に取り付けられている。他の実施形態では、1つ以上のカバーをステント本体230の内壁232に取り付けてもよい。
【0077】
図8は、
図7のカバー内に配置されたステント230を示す。カバー130、330、及び530は、カバー130の取付点295のような円周形状の一箇所の取付点によりステント230に取付けることができる。すなわちそれらは、その一端のみが、単一の円環に沿って取り付けられることが好ましく、あるいは、部位390及び590のような遠位側の(長手方向に)短い部分に沿って取り付けられてもよい。このような単一の円環の取付点または長手方向の取付点は、屋根板状に重ねられた円周形状のカバーと組み合わされて、ステントをキンクなく曲げることを可能にする。尚、自由端の範囲が十分であれば、取付点は、この他にも、全周、円周の一部、全長の一部、及び/又はこれらの組み合わせを含んでもよい。第1カバー130の部位100は、ステント230の第1端部200と第2端部260との間の位置するステント取付要素・ステント取付部295において、カバー130をステント本体に固定する。部位390及び590も同様に、カバー130の取付部295のようなリング状のステント取付部や、又は長手方向の部分に沿うような、ステント取付要素に取り付けられる。尚、
図8の複数のカバーは、その全体の長さがステント本体230の全長よりも短く、ステント本体230の遠位側の部分と近位側の部分はカバーに覆われていない。これらの長さはこの限りでない。
【0078】
屋根板状に重ねられたカバーの配置は、バルーン拡張型(又は機械式拡張型)及び自己拡張型ステントに使用できる。自己拡張型カバードステントが送達器具、例えばカテーテルから部分的に押し出されてその部分が完全に拡張すると、カバーが血管壁に対して固定される。しかし、本発明の屋根板構造によれば、カバーの一部が露出して、ステント本体のその部分が完全に展開されると、露出したカバーは血管壁に対して固定されるが、残りの部分または残りのカバーはまだカテーテル内に保持されており、血管壁に対して固定されていない。言い換えれば、各カバー(ケープ)は独立して動くことができるため、あるカバーの固定が他のカバーの動きに影響を与えることはなく、ステントはカバーによっては拘束されない。ステントのシースが外されると、ステントの遠位側の部分は完全に展開される。しかし、カテーテル外のステントのうち、カテーテルにすぐ隣接する部分には、依然として、カテーテルの出口部分の拘束力がその円周に対していくらか作用している。各カバーは、ステントを前方に押し出すか、カテーテルを引き抜くか、あるいはこれら押し出しと引き抜きの両方によって、カテーテルから出たときに、血管壁およびカテーテルによる固定/拘束から一時的に完全に解放されることがある。このように、カバーは所望の順番で設置することができる。この利点を利用するためのカバードステントの部分的な設置方法を
図13に示す。例えば、送達部材(チューブ)900から完全に展開されたとき、第1ケープ(カバー)130は、第2ケープ(カバー)330の完全な展開に先立って、病変部を部分的にまたは完全に覆うことができる。第1ケープ130は送達部材900の外側に図示されているが、ステントのより近位側の部位(部分)は送達部材900に拘束されたままであるため、第1ケープ130はステントフレームと血管壁との間にまだ完全には固定されていない。ケープ130の自由端側の部分まだ血管壁から離れている。ステントのより遠位側の部位(一部)は、送達部材900から送出・展開されることで血管壁に接触している。第2カバーの遠位側の部分は送達部材から露出しており、より近位側の部位は送達部材の中に残っている。本明細書の説明から理解されるように、自由端はステントの湾曲・屈曲を制限しない。尚、単一のカバーではなく、一連の屋根板状のカバーにより、及び自由端により、ステントが部分的に展開され、遠位側のカバーがステントによって血管壁に固定されても、端部が取り付けられていない近位側のカバーはステントの湾曲・屈曲を制限しないため、ステントは他の部分を展開する柔軟性を維持することができる。
【0079】
ステントカバーは様々な配置で重ね合わせることができる。その他の配置の一例を
図7C~7Dに示す。この実施形態では、遠位ステントカバー180及び近位ステントカバー182が中間ステントカバー184に重なっており、ステントカバー180の近位側の部分180bがステントカバー184の遠位端184aを含む遠位側の部分に重なり、カバー182がカバー184の近位端184bを含む近位側の部分に重なっている。ステントカバー180は遠位端180aに隣接する部分が取り付けられる。反対側の端部180bは取り付けられず、自由端を形成している。ステントカバー182は近位端182bに隣接する部分が取り付けられる。遠位端182aは取り付けられず、自由端を形成している。ステントカバー184はその一部が露出している。ステントカバー184は、ステントカバー180、182に取り付けることができ、及び/又はステント本体230に取り付けることができる。尚、この他にも、カバー180のその近位端180bに隣接する部分を取り付け、及び/又はカバー182のその遠位端182aに隣接する部分を取り付け、これらの反対側の端部を自由に浮かせたままとすることもできる。ステントカバー184の両端はステント本体230に固定してもよく、一端を固定して他端を自由に浮かせてもよい。図には、カバーがステント本体230の外壁231に取り付けられている様子が示されているが、これに代えて、1つ以上のカバーをステント本体230の内壁232に取り付け、ステント本体230の内側に配置してもよい。
【0080】
図6及び
図8に示されるカバーは、ステント本体230の全周、すなわち360度の範囲を覆っている。他の実施形態では、ステントカバーはステント本体230の外面を360度よりも小さな範囲で覆うこともある。これには例えば、ステント本体230に対して、270度、180度、及びその他の量/度が含まれ得る。
図7Eは、カバーがステント本体の周囲を約180度覆っている例を示している。カバーは半円筒状に構成されており、カバー413がカバー433の上に重なり、カバー433がカバー453の上に重なる(近位側から遠位側に向かって重なる)ように、
図7Aのカバーと同様の屋根板状に配置される。より具体的には、カバー413は、取付部402がステント本体230に取り付けられた遠位端413aと、ステント本体230に取り付けられていない近位側の自由端413bとを有し、カバー433は、取付部404がステント本体230に取り付けられた遠位端433aと、ステント本体230に取り付けられていない近位側の自由端433bとを有し、カバー453は、取付部406がステント本体230に取り付けられた遠位端453aと、ステント本体230に取り付けられていない近位側の自由端453bとを有する。カバー413の近位側の部分は、カバー433の遠位端433aを含む遠位側の部分を覆っており、カバー433の近位側の部分は、カバー453の遠位端453aを含む遠位側の部分を覆っている。このように、かかる屋根板状の配置は、各カバー413、433、453の自由端を、遊動ために露出させている。尚、カバーは、本明細書に開示されるこの実施形態や他の実施形態に代えて、近位端に取付部を備え、遠位側から近位側に向かって重なってもよい。
【0081】
カバー413、433、及び453は、共にステント本体230の大部分を覆い、その近位端から遠位端まで延びているが、他の実施形態では、これらの長さは、ステント本体のより短くてもよい。また、一又は複数のカバーを、ステント本体230の外壁の代わりに内壁に取り付けてステント本体230の内側に配置し、これらをステント本体230の内側で様々な長さにすることもできる。カバーはまた、その遠位端に代えて近位端を取り付けることができ、取り付けられていない遠位端を自由に浮かせておくこともできる。尚、この実施形態では、本明細書に開示した他の実施形態と同様に、ケープ付きステントのカバーが実質的に同じ長さで示されているが、これに代えて、これらのカバーだけでなく、本明細書に開示された他のケープ付きステントのカバーも、それぞれ異なる長さにすることができる。
【0082】
上述したように、カバーは、
図6~8に図示されているような円筒形または半円筒形など、様々な幾何学的形状とすることができる。
図7F及び
図7Gは、異なる形状のカバーの例として、三角形状のカバーを示している。
図7Fは、屋根板状に(魚の鱗のように)重なり合うよう配置された、4つの略三角形のカバー720、722、724、及び726を有するケープ付きステント700を示す。カバー720、722、724、726は、それぞれの遠位端720a、722a、724a、726aが取り付けられており、近位端は取り付けられておらず自由に浮いた状態になっている。カバー720の近位側の部分は、カバー722の遠位端722aを含む遠位側の部分に重なっており、カバー722の近位側の部分は、カバー724の遠位端724aを含む遠位側の部分に重なっており、カバー724の近位側の部分は、カバー726の遠位端726aを含む遠位側の部分に重なっている。カバー720、722、724、726はステント本体230の360度未満に範囲にわたって延びており、それぞれの端部720b、722b、724b、726bで終端している。尚、カバーの数は異なっていてもよい。カバーはステント本体230の円周に対して図示とは異なる角度(量)を覆っていてもよい。すなわち、本実施形態および他の実施形態におけるこれらのカバーは、これらが組み合わされることで、ステント本体の円周方向および/または軸線方向において、図示した被覆範囲とは異なる範囲を被覆し得る。
【0083】
図7Gのカバードステント750は、三角形のカバーが組み合わされてステント本体230の長さの一部のみを覆っており、長手方向(軸線方向の一部分233)に露出部(覆われていない部分)を有し、ステント本体をその360度全体は覆わない(ステント本体230の領域235を露出したままの)例を示している。カバー752、754、756は屋根板状に重ね合わされて配置されている。カバー752、754、756はそれぞれの遠位端752a、754a、756aが取り付けられており、近位端は取り付けられておらず自由に浮いた状態になっている。そのため、カバー752の近位側の部分は、カバー754の遠位端754aを含む遠位側の部分に重なっており、カバー754の近位側の部分は、カバー756の遠位端756aを含む遠位側の部分に重なっている。
【0084】
本明細書に記載されているように、不透過性の屋根板効果(shingling effect)を生じさせるべく重ねられたカバーは、必要であれば他のカバーを完全に展開させることなく、各カバーを完全に展開させることができる。例えば、カバードステントのその全体を完全に展開することなく瘻孔をカバーできるという利点がある。この特徴の他の利点としては、異なるサイズのカバードステントの必要性に応えられることである。さらに、これらのカバーが組み合わされることで、ステントの柔軟性を著しく阻害することなく、より長いステント及び/又はより大きな直径のステントをカバーすることができる。
【0085】
図6~7Gは、ステント本体の長手方向(軸線方向)に沿って延びるステントカバーを示しており、これらは屋根板状に重なり合っている。
図9~
図12の実施形態では、カバーは、ステント本体の長手方向の同じ部分に、円周方向に屋根板状に重なり合うように配置されている。
図9及び
図10では、巻かれた状態(展開されていない状態)のカバーが示されており、
図10A及び
図10Bでは、巻かれていない状態(展開された状態)のカバーが示されている。尚、本明細書でいう「巻かれた状態」とは、カバーが畳まれた状態、例えば「しわが寄った」又は「束ねられた」状態など、不規則で不均等な構成を呈する状態である。これが展開されると、カバーが「ほぐされて」、ステント本体の周りに、より規則的で均一なカバーが形成される。
【0086】
図9~10Bでは、単一の連続的なカバーの代わりに、円周方向に「屋根板状」に設けられた、好ましくはほぼ不透過性の又は完全に不透過性の、布製のカバーを有し、カバーの、その取り付けられていない自由な部分は、隣接するシートの取付部を含む、その軸線方向の一部を覆う。の屋根板構造により、ステントは、その非接合部分をより自由に曲げることができる。カバーはステント本体(フレーム)230の内面および/または外面に設けることができる。このように、カバーは、ステント本体230の円周方向に沿って断続的に設けられた複数の取付点を有し、これら取付点の間の各部において、「フレーム/骨格」に比べてその自由端に余分な長さの布を有することで、骨格が布に制限されることなく自由に曲がることを可能にしている。余分な布は、血管内のステントの湾曲部・屈曲部の外側において、骨格が相対的に長くなることを可能にする。実施形態によっては、フレームも同様に開放端のロール(open ended roll)とすることができ、これによりステントをより多様な直径の血管に適合させることができるようになる。すなわち、ステントフレームは、そのシリンダーが長手方向に閉じていないロール状の構成を有することがある。
【0087】
より具体的には、複数のカバー930はステント230の外面に設けられた直線状の接続点935でステント本体230に取り付けられている。接続部は、接続点935における各カバー930の端部であるか、あるいは、ステント本体230の長手方向に延びる軸線に沿って端部から直線状に延びており、例えば、カバー930の遠位側の端部933から近位側の端部936まで延びている。ステントカバー930は、ステント本体230の端部200と260との間の中間部分に配置されている。ステントカバー930はステント本体の長さより短いため、ステント本体230の近位側の部分および遠位側の部分は覆われていないが、より短い、又はより長い範囲をカバーすることも考えられる。
【0088】
送達(非展開)中は、各カバー930は畳まれた非展開状態にあり、カバー930は
図9及び
図10に示すようにステント本体の円周方向に沿って延びており、ステント本体230の中間部分に配置されている。実施形態によっては、カバー930は、カバー930を非展開構成に拘束するデリバリーシース(図示せず)内において、非展開状態に維持される。
図9及び
図10に示すように、この畳まれたカバーは、不規則な/しわが寄った状態にある。カバーはステント本体の円周方向の一部または大部分を覆うように延びており、実施形態によっては、(
図10に示すように)円周方向の100%を超えて延びていることもある。例えば、360度にわたって、かつ円周の125%の長さを有することがある。ステントが展開され、これによりカバーも展開された状態に移行すると、これらカバーの重なり量は減少する(
図10A参照)。一例として、畳まれた状態ではそれぞれがステント本体の1/2(180度)程度を覆い、展開された状態ではそれぞれがステント本体の1/6程度を覆う3つのカバーを設けることができる。ステントが圧着された状態では、ステントが展開されたときよりもカバーの重なりは大きくなり、実施形態によっては、各カバーがステント全体を一周することもあり、また実施形態によっては、圧着された状態ではステント本体を一周以上することもある。
図10Cは、畳まれた状態にある3つのステントカバーが、
図10の実施形態よりも円周方向に短い距離延びている例を示している。
図11Aは、ステント本体230の周囲に3つ以上のカバーを備える実施形態を示している。
【0089】
尚、異なる数のカバー、異なる長さのカバー、及び、ステントの展開時および非展開時においてステント本体をその円周方向に異なる量(角度)覆うカバーも考えられる。
【0090】
展開されると、カバーは
図10A及び
図11Aに示す重なった状態に展開される(伸ばされる、解かれる)(ステントが膨張するにつれてカバーが解かれることもある)。展開されると、カバー(符号930で総称される)のカバー930aは、カバー930bの軸線方向の範囲と重なる自由端を形成する端部932を有する端部領域960を有し、カバー930bは、隣接するカバー等の軸線方向の範囲と重なる端部領域または端部938を有する。このようにして、各カバーは、隣接する下層カバーの端部933から端部936までの軸線方向領域と重なる、端部933から端部936までの自由な軸線方向領域960を有する。第1端部933から第2端部936まで延びる、ステント本体230へのカバーの取り付け線は、
図10Aおよび
図11Aにおいて破線で示されている。すなわち、各カバーは、長手方向(軸線方向)の長さに沿って延びる、すなわちステント本体230の長手方向の一部に沿って延びる、覆われていない自由端(領域)960を有する。このようにして、巻かれていない複数のシール部材(カバー)930は、各自由端960が隣接する直線状の接続点の端部上にフラップを作るように重なることで、連続用紙のように重なったカバードステントを形成し、それにより、ステント230の円周上において重なり合った自由端部分960の被覆帯を形成する。尚、ステント本体230を取り囲むカバーの数は、カバーの寸法および所望の被覆量に応じて変化し得る。カバーの長さも様々である。
図10A及び
図11Aで理解できるように、展開された状態では、カバーは、畳まれたときのしわが寄った不規則な外面に比べて、より滑らかで均一な外面を呈する。
【0091】
図11Bは本発明のカバードステントの他の実施形態を示す。
図11Aは、複数のカバーを有するカバードステントの例として、8つのカバー930を有する実施形態を示す。上でも述べたように、3つのカバー930a、930b、及び930cは、それぞれ、長手方向に延びる部分932に沿ってステント本体230に取り付けられている。部分932は、端部932(又は隣接する端部932)から、端部936)、又は隣接する端部936まで延びている。
図11Bのカバードステントは、カバー940が追加の取付部を有すること以外は、
図11Aのカバードステントと同じである。すなわち、カバー940は、ステント本体の円周に沿って放射状に延びる取付部945をその遠位側の端部(又はこれに代えて近位側の端部)に有する点でカバー930とは異なっている。その他の全ての点において、カバー940a、940b、940c等(これらを総称してカバー940と呼ぶ)はカバー930と同じであり、カバー930と同様に、端部942から端部936まで(又はこれら端部に隣接して)軸線方向に延びる部分が重なっている。
【0092】
図9~11Bのカバードステントは、組み合わされることでステント本体230の全周(360度全体)を覆うカバーを有する。他の実施形態では、このようなカバーは、例えば270度、180度、及びこれ以外の範囲/角度など、ステント本体230のその360度未満の範囲を覆うこともある。
図11Cは、カバーが組み合わされることでステント本体の周囲を約180度覆う例を示しており、その被覆範囲はカバーの端部956で終端している。カバー950は、カバー950aがカバー950bを覆い、また、カバー950aがカバー950cに覆われるように、
図11Aのカバーと同じく屋根板状に配置されている。ステントカバー230の円周方向の一部238は露出している。カバー950は、破線954で示されるように、軸線方向の一部または縁に沿って取り付けられている。
【0093】
尚、
図9~11Cの実施形態における円周方向の重なり部分について、カバーはステントの中間部分、又はこれより遠位側の部分、又はこれより近位側の部分に配置されてもよい。また、カバーは、ステント本体の軸線方向の長さにおける大半または一部のみを覆うことができ、また、ステント本体の全周またはその円周方向における一部のみを覆うこともできる。尚、本明細書でいう「大半・大部分」とは、50%を超える100%までの範囲までを意味している。
【0094】
図11Dに示すカバードステントの実施形態は、
図11Aのカバー930a、930b、930cと同じ構成で円周方向に重なる、カバー970a、970b、970c等(これらを総称してカバー970という)を備えている。カバー970は、カバー930のように、丸められた(巻き付けられた)形態、及び、伸ばされた(解かれた)形態をとる。一方、この実施形態では、追加のカバー980が設けられている点で、
図11Aの実施形態とは異なっている。カバー970は、カバー980の遠位端984を含む遠位側の部分に重なっている。カバー980はその遠位側の部分985の円周がステント本体に取り付けられている。近位端986の部分は取り付けられておらず、自由端を形成している。すなわち、この実施形態では、カバー970は、ステント本体230の長手方向に沿って延びる自由端(例えば端部972、975など)を有しており、カバー980は、ステント本体の円周方向に延びる自由端986を有している。カバーの自由端は露出している。カバー970、980は、ステント本体230の全長を覆うことも、又は
図11Dのように、ステント本体230の一部を覆って、その遠位側の部分および近位側の部分を露出させたままにすることもできる。
【0095】
本発明は、その実施形態によっては、カバードステント本体の外部に第2ステントを設けることができる。第2ステントは、その内部とカバードステント本体との間にカバーを挟み込む。これは例えば
図14~16の実施形態に示されている。カバードステント800のカバー810は、(遠位端810aに隣接する)その取付部811がステント本体804の遠位側縁部に取り付けられており、ステント本体804には取り付けられていない自由端810bを有している。カバー810の、取り付けられていない自由端810bを含む近位側の部分は、カバー812の遠位側の部分と重なっている。カバー812は、(遠位端812aに隣接する)その取付部813がステント本体804の遠位側の部分に取り付けられており、取り付けられていない自由端812bを有している。自由端を含むカバー812の近位側の部分は、カバー814の遠位側の部分と重なっている。カバー814は、(遠位端814aに隣接する)その取付部815がステント本体804の遠位側の縁部に取り付けられ、取り付けられていない自由端814bを有している。図に示す実施形態では、カバー810は取付部813を覆うように重なり、カバー812は取付部815を覆うように重なる。ステント本体804は内側ステント又は内側フレームを構成する。外側ステント802は、カバーが内側ステント804と外側ステント802との間に挟まれるように、カバー810、812、814の上に配置される。尚、本明細書に開示されたこの実施形態および他の実施形態における、カバーが重なった部分の長さは、図示されたものとは異なっていてもよい。また、実施形態によっては、外側ステントは、一部のカバーの上にのみ配置されることがあり、隣接するカバーの軸線方向における全長よりも短いことがある。重ねられたカバー810、812、814は、
図16に示す断面図から分かるように、屋根板状に配置されている。
図16には、カバー810の近位側の部分が、カバー812の、取付部813を含む遠位側の部分に重ねられ、カバー816の近位側の部分が、カバー814の、取付部815を含む遠位側の部分に重ねられた様子が示されている。内側ステント804の外面と外側ステント802の内面の間には、隙間816と816aが示されている。
【0096】
尚、
図14~16の実施形態では、カバー、例えば「布」は、2つのステントの層の間に挟み込まれている。第2の外側ステントは、カバー、例えば布地層を間に挟んだ第2の組み込み層とするか(ただし布地はほとんど取り付けられていない)、又は、別個の、未結合の層として別々に配置することができる。この第2ステント(骨格)は、非取付領域でのエンドリークのリスクを最小化し得る。第2ステントが布を第1ステントに固定せず、布地層の一部に遊動の余地があるなら、特に、布が、動脈瘤や瘻孔を覆い、血管壁に完全に固定されていない部分では、布地層が完全に取り付けられていない部分のエンドリークが最小化され得る。移植後のカバーに遊動の余地があると、特にカバーが「屋根板」状の場合、血流がカバーをはためかせてしまうおそれがある。内側ステントの外側にカバーが設けられたこの2層構成では、外側ステントは、実施形態によっては全くカバーを備えず、むしろフレームのみを有し、このフレームと内側ステントとの間でカバーを固定すべく、血管壁と同様の働きをする。この場合、ステントは、血管内の動脈瘤や瘻孔などの病変を伴う部位にあり、内側ステントのステント本体上にある。あるいは、内側にカバーが設けられた外側ステントを有する2層構成において、内側ステントは、実施形態によっては全くカバーを備えず、むしろフレームのみを有し、この内側ステントと外側ステントのステント本体(フレーム)との間にカバーを挟み込むために血管壁と同様の働きをする。あるいは、外側ステントと内側ステントの一方または両方に外側カバーを付けてもよい。実施形態によっては、1つ以上のカバーは、内側の層の外壁に取り付けられ、及び/又は内側の層の内壁に取り付けられ、及び/又は外側の層の外壁に取り付けられ、及び/又は外側の層の内壁に取り付けられる。
【0097】
大きな瘻孔に重なる場合など、ステントカバーの一部が血管壁にうまく配置できない場合には、第2の同様のカバードステントを第1カバードステントの内側に配置することができる。第1カバードステントのフレームが第2カバードステントのカバーを固定するのに役立つ。同様に、別のカバード又はカバーを備えないステントを最初の外側ステントとして使用することもできる。このような外側ステントの隙間が十分に小さければ、第2の内側ステントのカバーがその隙間を通ってヘルニアになることはない。すなわち、実施形態によっては、外側にカバーを備える又は備えない追加のステントを別のステントに続けてその内部に配置すること、カバーを固定し、血管の閉塞を防ぐことができる。例を
図19A及び
図19Bに示す。
図19Aでは、カバードステントが血管の開口部に隣接して配置されているのが示されている。これは瘻孔、動脈瘤、または他の構造であり得る。場合によっては、カバーのうちの1つ、例えば中間カバー330の自由端が開口内に少し張り出すことがあり、これによって、カバー330の下に血液が漏れ出すことがある。このようなエンドリークは、
図19Bに示すように、外側ステント331を使用することで防止される。外側ステント331は開口部を横切って血管内に配置され、次いで本発明のカバードステントが外側ステント内に挿入される。カバードステントは本明細書で説明したものでよく、その内壁および/または外壁にカバーを備え得る。
図19Bの実施形態では、多層ステントは、外側の織成ステント又はブレードステントと、レーザーカットや一連の支柱などによって形成された大きな開口部を有する内側ステントとを含み得る。実施形態によっては、内側ステントの気孔率は外側ステントの気孔率を上回る。内側ステントの気孔率は、約70%から約99.9%の間が好ましく、約80%を上回ることがより好ましい。但し、気孔率がこれよりもより大きなもの、及び小さなものも考え得る。外側ステントの気孔率は0%から約80%の間が好ましく、75%以下であることがより好ましいが、これよりも大きな気孔率、及び小さな気孔率も考えられる。
【0098】
本発明のカバードステントは、粘着性ハイドロゲルのような、エンドリークを最小化するための追加的な要素を含んでもよい。ハイドロゲルは、ステント、例えばステント本体/フレーム(2つのステント層を有する実施形態では外側ステント本体および/または内側ステント本体)及び/又はカバー、及び/又は複数のカバーを有する場合は1つ以上のカバーに付着したコーティングの形態をとり得る。ハイドロゲルがエンドリークを阻止する例としては、例えば設置されたカバーに折り目があり、血液がその折り目を通り抜けるおそれがあるときに、ハイドロゲルが膨張してその隙間を埋め得ることが挙げられる。
【0099】
図17と
図18は多層カバードステントの他の実施形態を示す。
図17において、外側ステント850は金属材料で構成されている。外側ステントはレーザー切断チューブ又は他の方法で形成され、自己拡張やバルーン拡張又は機械的拡張により展開される。外側ステントは高分子材料を含む他の材料で形成されてもよい。内側ステント852は編まれた又は織られた材料、例えばブレードで形成され、外側ステントよりも気孔率が低い。外側ステントの気孔率は、実施形態によっては例えば約70%~約99.9%であり、より具体的には80%以上である。内側ステントの気孔率は、実施形態によっては75%未満の場合もある。内側ステントは他の材料で形成されてもよい。1つ以上のカバー854が、2つのステント850及び852の間に挟まれる。
図18に示す他の実施形態では、外側ステント860は、織成材料、例えばブレードによって形成されており、内側ステントは、レーザー切断チューブや他の方法により形成された金属材料からなる。内側ステントは、自己拡張が可能な材料で形成されるか、金属材料またはポリマー材料を含む、バルーン拡張可能な材料または機械的に拡張可能な材料で形成される。1つ以上のカバー864が、2つのステント860及び862の間に挟まれる。これらの実施形態のいずれにおいても、一又は複数のカバーを、外側ステントの外壁、内壁、内側ステントの外壁および/または内壁、又はこれらの組み合わせに対して取り付けることができる。
【0100】
図20A~20Cは、カバーのない多層ステントの実施形態を示す。これらの実施形態では、外側ステントは編まれた又は織られた素材で形成されている。内側ステントは、外側ステントよりも開放されている、すなわち外側ステントよりも気孔率が大きい。内側ステントは、金属材料またはポリマー材料を含む、自己拡張型材料、又はバルーン(もしくは機械的な)拡張型材料で形成されており、外側ステントの拡張を促す。
図20Aに示される外側ステント870は、内側ステント872と同じ長さである。
図20B及び
図20Cに示す実施形態では、外側ステント885は内側ステント887よりも長く、外側ステント885は内側ステント887の近位端および遠位端の両方を超えて延びている。
図20D及び
図20Eの実施形態でも、外側ステント888は内側ステント887より長く、外側ステント888は内側ステント889の一端(近位端または遠位端)を超えて延びている。実施形態によっては、内側ステントが外側ステントよりも長く、内側ステントが外側ステントの一端または両端を超えて延びていることもある。これらの実施形態では、最外層である織成層が血管壁に当接する。ブレードステントは「怠け者」であり、一旦圧着されるとなかなか展開しないことがある。内側の層は、つぶれた状態にあるステントがより容易に展開状態に移行できるよう補助する。また、気孔率の高いステントは、一般に、密編まれた又は織られたステントのような低気孔率のステントよりも、効率的に拡張する。
【0101】
図17A~20Cの実施形態では、気孔率の低い層は血流を逸らし、内皮に接触する孔が少ないので、エンドリーク、例えば動脈瘤へのエンドリークが生じにくい。例えば、気孔率を減少させて血流動態を変化させると、動脈瘤は時間とともに縮小する。
【0102】
実施形態によっては、気孔率の高いステントは、50%を超える気孔率、好ましくは80%を超える気孔率を有する。気孔率の低いステントは、気孔率の高いステントの気孔率に応じて、0%から約80%の間、実施形態によっては約40%から75%の間の気孔率を有する。すなわち気孔率の低いステントの気孔率は、気孔率の高いステントの気孔率未満である。但し、気孔率はこれ以外となることもあり得る。
【0103】
本発明のカバードステントは、カテーテル又はシース(図示せず)を用いて送達および設置されることが好ましい。カバードステントは、マイクロカテーテル又はシースに形成された遠位端の孔または側孔のいずれかから配備することができる。本発明のカバードステントは、送達器具から送り出されたときに展開されるよう自己拡張型にするか、プルワイヤーやステント内の拡張機構によって機械的に展開させるか、カテーテルに装着され、ステント内に配置されたバルーンの膨張によって展開させるか、及び/又はこれらを組み合わせて展開させることができる。
【0104】
本発明のカバードステントでは、上述したように、カバー(ケープ)は、ステント本体の遠位端またはその近傍に、ステント本体の近位端またはその近傍に、あるいは、ステント本体に沿って、例えばその中間部分を含む他の部分に取り付けられる。ステントがバルーンを用いて展開/拡張される場合、バルーンがステントを押して広げる/開くため、カバーはステント本体の近位端に向かって取り付けられることが好ましい。ワイヤ(図示せず)を用いてステントを展開する場合、ワイヤは近位側に向かって引っ張られるため、カバーはステント本体の遠位端に向かって取り付けられることが好ましい。但し、各方式による拡張においては、別の構成も考えられる。
【0105】
上述したように、屋根板効果(shingling effect)は様々な幾何学的形状のカバーにより得ることができ、カバーは必ずしもステント全体を周回する必要はない。限定されない例としては複数の三角形が挙げられる。これらにより覆われた部分は、「覆われた」領域を効果的に、かつ完全にカバーする屋根板(shingling)を有する。この場合も、屋根板状のカバーは、ステント本体の内面または外面、もしくは内外面の両方に設けることができる。
【0106】
上述したように、本発明のカバーはステント本体の外側または内側に設けられ、ステント本体の外壁/外側構造または内壁/内側構造に取り付けることができる。実施形態によっては、一又は複数のカバーが外側に取り付けられる一方、一又は複数の他のカバーが内側に取り付けられることもある。また実施形態によっては、取り付けは、カバーされた領域の(ごく小さな/ごく短い)遠位端に対して行われる。カバーは、ステント本体の約0.1%から100%の範囲を覆う。実施形態によっては、カバーは、ステント本体(骨格)の遠位側の部分および近位側の部分を覆わずに、その中央または中間部分を覆う。他の実施形態では、カバーは、近位側の部分を覆わずに遠位側の部分を覆い、また他の実施形態では、遠位側の部分を覆わずに近位側の部分を覆う。実施形態によっては、ステントの遠位側の部分にその円周方向に沿って取付領域を設けることで、ステントの送達を容易にすることができる。一方、上述のように、これを近位側の部分に設けることもできる。中間部分にカバーを取り付ける場合は、ステントの両端に、2つの取り付けられていない自由端を有するようにこれを取り付けることができる。
【0107】
非固定の自由な両端を有する本発明のカバードステントは、カバーとステント本体(骨格)との間に複数の又は広範な結合部を有する従来のステントと比較して、キンクしたり血管を伸ばしたりすることなく、曲がりくねった血管の形状に沿ってより自由に曲がることができる。このことはまた、解剖学的構造により曲がりくねった血管に対して、これらのカバードステントを安全かつ効果的に送達・展開できるということでもある。あらゆるカーブの外縁は内縁よりも大きな半径となる。従来のカバードステントの広範な取付部は、ステントの隙間や領域ごとに固定量のカバー、例えば布を必要とするため、ステントがはるかに硬くなる。
【0108】
本発明のカバーは、ナイロン、ダクロン、心膜、ポリエステル、PET、PTFE、その他の無孔質材料または最小限の多孔質材料などからなる、「布」の形態とすることができ、布は、その遠位端または近位端などの片側のみがステント本体に取り付けられる。取付領域は、ステントの円周上の穿刺点程度の小さなものから、上述のように、剛性を低下させるのに十分な自由端部分があれば、98%程度まで可能である。取り付け点は非常に短いことが好ましい。「布」層は「フレーム/骨格」層の外側にあることが好ましいが、内側にあってもよい。布層が外側(ステント本体の外面)に取り付けられた場合、展開時には、ステントが血管の周面まで完全に拡張し、布層は血管壁に接触する。一方、布層がステントの骨格内に配置されるよう、布層がステントの内面に取り付けられた場合は、骨格の外面が血管壁に接触する
【0109】
骨格は、1つ以上のカバーが取り付けられる別個の部品である。好ましくは、カバーはステント本体とは異なる材料で構成される。本発明の「骨格」は、金属合金(クロムコバルト、及び/又は白金、及び/又はニッケル、チタン、鋼などを含む)又はビクリルなどの合成繊維のような、半硬質だが柔軟な材料で構成される。カバードステントは、その製造時にカバーがステント本体に装着され、カバーがステント本体に装着された状態で体内に挿入され、設置されることが好ましい。
【0110】
ステントカバーは、取付位置を除き、互いに独立して、及び/又はステント本体から独立して拡張することができる。
【0111】
本明細書に開示される各実施形態では、カバードステントに少なくとも1つのカバーされていない開口を設けてもよい。
【0112】
本明細書に開示される各実施形態は、複数のカバーされた領域を有してもよく、複数のカバーされていない領域を有してもよい。
【0113】
本発明のカバードステントの各部は、生分解性であっても、非分解性であってもよい。あるいは、各部は、生分解性の部分と非分解性の部分の両方から成ってもよい。各部は、本発明のカバードステントの特定の部分の完全な構成要素であっても、特定の部分の副次的な構成要素であってもよい。
【0114】
カバードステントは、放射線不透過性の要素および/または放射線不透過性マーカーを含んでもよい。これらはステントの端部およびカバー領域の端部において特に有益である。放射線不透過性材料およびマーカーは、カバードステントの他の部分に設けてもよく、実施形態によってはカバードステントの全体に設けられることもある。
【0115】
実施形態によっては、重ねられたカバー及び/又は屋根板状のカバー(例えば、布層)は、それを支持する追加の格子「フレーム/骨格」を有する場合がある。その骨格/フレームは、主にその「布」層を支持しており、ステントの主骨格となるシリンダーに対して、独立した(しかし、取り付けられた)骨格層である。例えば、メインの金属製の骨格/シリンダーの外面に、三角形のその一端が取り付けられ、屋根板状に重ねられた布製の三角形のカバーがある場合、各三角形の布は、それらを支持する金属製の追加的な支柱を有することができる。このような骨格はその大部分がメインのシリンダーから自由である(例えば、布のその取り付けられていない部分を支持する支持骨格は、その70%以下しかメインの骨格シリンダーに取り付けられていない)。
【0116】
実施形態によっては、ステントの骨格は半円筒状で、不連続な直径を有し、展開されていない状態ではその長手方向に延びる端部がゆるやかなコイル状に重ねられている。ステントは、対象の血管内に挿入されると、骨格が拡張し、重なり合いつつも実質的に円筒形または半円筒形に展開する。このようなステント構成では、ケープ(カバー)は長手方向に沿って取り付けられる。
【0117】
本発明のカバードステントは、分岐したステント要素を有してもよい。ステントは完全にリシース可能でも、部分的にリシース可能でもよい。本発明のステント要素は取り外し可能であってもよい。
【0118】
尚、骨格(ステント本体)と、製造工程で取り付けられるカバー層/布層の代表的な例としては、布層は、十分な自由端が形成されていれば、(布に対する)その取り付け長は、0.00001%程度に小さくてもよく、98%程度に大きくてもよい。これらの実施形態では、布は、骨格表面の何パーセントかを覆うような位置に取り付けられる。好ましい実施形態においては、取り付け領域は比較的小さい。
【0119】
ステントカバーの重なり具合は、展開されたステントの骨格の直径やステントが設置される管腔の直径によって異なる。
【0120】
上記の特定の実施形態は、例示のためにのみ示され、記載されていることが当業者には理解されるであろう。本開示の原理および特徴は、特許請求の範囲および思想から逸脱することなく、その様々な多数の実施形態に採用され得る。上記実施形態は、本開示の範囲を例示するが、本開示の範囲を制限するものではない。
【0121】
本発明は、例示のため上記実施形態において詳細に説明されているが、このような細部は、もっぱらその例示のためのものであり、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、当業者によってそこに変形がなされ得る。
【0122】
本発明に係る装置および方法について、その好ましい実施形態を説明してきたが、これらの例は本発明を限定するものではなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の技術的思想および範囲から逸脱することなく、変更および修正を加え得る。
【0123】
さらに、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、1つの実施形態に関連して示され又は説明された要素および特徴を、別の実施形態のものと組み合わせることができ、また、ここで述べられた説明に基づいて、現在開示されている内容のさらなる特徴および利点を理解することができる。
【0124】
本発明の全体を通して、「およそ」、「約」、「概して」、「実質的に」などの用語は、それらが関連する任意の数値範囲または概念における変動を許容するものと理解されるべきである。「およそ」、「約」、「実質的に」、及び「一般的に」などの用語の使用は、およそ25%の変動を包含するように、又は製造公差および/または設計における偏差を許容するものと理解されるべきである。
【0125】
端点による数値範囲の説明は、範囲内のすべての数値を含む。
【0126】
本明細書では、様々な操作、要素、部分、範囲、及び/又は部分を説明するために、「第1」、「第2」、「第3」などの用語が使用されることがあるが、これらの用語は、1つの操作、要素、部分、範囲、又は部分を別の操作、要素、部分、範囲、又は部分から区別するために使用されるという点で、これらの操作、要素、部分、範囲、及び/又は部分は、これらの用語の使用によって限定されるべきではない。したがって、明示的に別段の記載がない限り、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の操作、要素、部分、範囲、又は部分を第2の操作、要素、部分、範囲、又は部分と呼ぶことができる。
【0127】
各請求項および全ての請求項は、さらなる開示として本明細書に組み込まれ、本開示の実施形態を代表する。また、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」及び「A及び/又はB及び/又はC」という表現は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、Cのみ、又はA、B、及びCの任意の組み合わせを含むと解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)長手方向に延びる軸線及び複数の開口を有するステント本体と、
b)前記ステント本体の一部である第1部分に重なるように長手方向に延び、該第1部分をカバーする、第1カバーと、を備え、
前記第1部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第1カバーは自由端を有し、該自由端を前記ステント本体に対して遊動可能とすることにより前記ステント本体の剛性の上昇を抑え、
d)前記ステント本体が曲げられたときには、
前記第1カバーの一部が前記ステント本体に対して軸線方向に移動し、前記ステント本体の
長さに対する、前記第1カバーに覆われた部分の
相対的な長さが、カーブの外側に沿って短くなる、
血管内ステント。
【請求項2】
前記ステント本体の一部である第2部分に重ねられ、該第2部分をカバーする、第2カバーをさらに備え、
前記第2部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第2カバーは自由端を有し、
前記ステント本体が曲げられたときには、前記第2カバーの一部が前記ステント本体に対して軸線方向に移動し、前記ステント本体の
長さに対する、前記第2カバーに覆われた部分の
相対的な長さが、カーブの外側に沿って短くな
り、前記カーブの内側に沿って、前記ステント本体の長さに対する前記第2カバーの一部の相対的な長さが、長くなる、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項3】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、
その取付端部の取付位置を除き、前記ステント本体から独立して展開可能である、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項4】
前記第2カバーに重ねられる第3カバーをさらに備え、
前記第2カバーには前記第1カバーが重ねられ、
前記第1カバー、前記第2カバー、及び前記第3カバーは、屋根板(shingle)状に並べられている、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項5】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステントを血管内に挿入・設置するよりも前に、前記ステント本体に装着される、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項6】
前記ステント本体および前記第1カバーの一方または両方の少なくとも一部には、ハイドロゲルが付着している、
請求項1に記載の血管内ステント。
【請求項7】
前記ステント本体は、
a)編まれた又は織られた素材により構成される外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え、
前記内側層は、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、前記外側層の展開を促す、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の血管内ステント。
【請求項8】
前記ステント本体は、
a)第1の気孔率を有する外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え、
前記内側層は、前記第1の気孔率よりも大きな第2の気孔率を有し、
前記内側層は、つぶされた状態から展開された状態に移行可能である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の血管内ステント。
【請求項9】
前記第1カバー及び前記第2カバーは、前記ステント本体の外壁に取り付けられ、
前記第1カバー及び前記第2カバーを覆うように配置される、第2ステント本体をさらに備える、
請求項2に記載の血管内ステント。
【請求項10】
前記ステント本体の一部である第2部分に重ねられ、該第2部分をカバーする、第2カバーをさらに備え、
前記第2部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第2カバーは自由端を有し、
前記第1カバーは、前記外側層の外壁および内壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である
前記第1部分と重なるように長手方向に延び
て該第1部分をカバー
し、
前記第1カバーは
取付部、及び非結合領域を有し、
前記第1カバーの前記非結合領域は
該第1カバーの前記自由端を有し、
前記第1カバーは、前記
取付部が
前記外側層に取り付けられ、
該外側層の気孔率を低下させ
、
前記第2カバーは、前記外側層の外壁および内壁の一方または両方に取り付けられ、前記外側層の一部である前記第2部分と重なるように長手方向に延びて該第2部分をカバーし、
前記第2カバーは取付部、及び非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は該第2カバーの前記自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記取付部に重なり、前記第2カバーの前記自由端には重ならず、
前記第1カバーの前記自由端と、前記第2カバーの前記自由端とは、軸線方向に離れている、
請求項8に記載の血管内ステント。
【請求項11】
前記ステント本体の一部である第2部分に重ねられ、該第2部分をカバーする、第2カバーをさらに備え、
前記第2部分は第1領域および第2領域を有し、
前記第2カバーは自由端を有し、
前記第1カバーは、前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられており、
前記第1カバーは
取付部および非結合領域を有し、
前記第1カバーの前記非結合領域は
該第1カバーの前記自由端を有し、
前記第1カバーは前記
取付部が前記内壁に取り付けられ、
前記第2カバーは、前記内側層の内壁および外壁の一方または両方に取り付けられており、
前記第2カバーは取付部および非結合領域を有し、
前記第2カバーの前記非結合領域は該第2カバーの自由端を有し、
前記第1カバーは、前記第2カバーの前記取付部に重ねられ、前記第2カバーの前記自由端には重ねられない、
請求項8に記載の血管内ステント。
【請求項12】
前記内側層および前記外側層の一方または両方にはハイドロゲルが付着している、
請求項8に記載の血管内ステント。
【請求項13】
前記内側層は、前記外側層が患者の体内に設置された後で、該外側層の中に挿入される、
請求項8に記載の血管内ステント。
【請求項14】
請求項1に記載の血管内ステントが収容された送達部材を備え、
前記血管内ステントの一部である第1の部位が前記送達部材から露出すると、該第1の部位は展開されて血管壁に接触し、
前記第1カバーの前記第1領域が前記血管壁に対して固定される一方、
前記
血管内ステントの第2の部位は前記送達部材に収容されているため、前記第1カバーの前記自由端は前記血管壁から離れたままとなる、
患者の血管内にステントを送達するシステム。
【請求項15】
前記血管内ステントは、該血管内ステントの一部である第2部分に重なるように長手方向に延び、該第2部分をカバーする、第2カバーを有し、
前記
血管内ステントの前記第1の部位を完全に露出させるまでは、
前記第2カバーの少なくとも一部は前記送達部材に収容されている、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
a)編まれた又は織られた素材により構成される外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え、
前記内側層は、拡張可能な材料で構成され、つぶされた状態から展開された状態に移行可能であり、前記外側層の展開を促す、
患者の血管内に設置可能な血管内ステント。
【請求項17】
前記内側層の気孔率は、前記外側層の気孔率よりも高い、
請求項16に記載の血管内ステント。
【請求項18】
a)第1の気孔率を有する外側層と、
b)前記外側層の中に設置される内側層と、を備え
前記内側層は、前記第1の気孔率よりも大きな第2の気孔率を有し、
前記内側層は、つぶされた状態から展開された状態に移行可能である、
患者の血管内に設置可能な血管内ステント。
【請求項19】
前記内側層は前記外側層に取り付けられ、ともに患者の体内に挿入される、
請求項18に記載の血管内ステント。
【請求項20】
前記内側層は、前記外側層が患者の体内に設置された後で、該外側層の中に挿入される、
請求項18に記載の血管内ステント。
【国際調査報告】