(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置用のシリコン-炭素電極の製造
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240129BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240129BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240129BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240129BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240129BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240129BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240129BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240129BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240129BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20240129BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240129BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01G11/86
H01G11/36
H01G11/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544541
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2022013596
(87)【国際公開番号】W WO2022164763
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513295777
【氏名又は名称】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】FastCAP SYSTEMS Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ユー,トーマス エム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ワンジュン ベン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078BA15
5E078BA27
5E078BA47
5E078BB23
5E078BB32
5E078BB33
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置用の電極を製造する方法が提供される。本方法は、エネルギー貯蔵媒体として使用するための溶媒および材料の混合物を加熱することと、混合物に活物質を添加することと、分散剤を混合物に添加してスラリーを得ることと、スラリーを集電体にコーティングすることと、集電体上のスラリーのコーティングをカレンダ加工して、電極を提供することと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置用の電極を製造する方法であって、
エネルギー貯蔵媒体として使用するための溶媒と材料との混合物を加熱することと、
前記混合物に活物質を添加することと、
分散剤を前記混合物に添加してスラリーを得ることと、
前記スラリーを集電体にコーティングすることと、
前記スラリーのコーティングを前記集電体上にカレンダ加工して、電極を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記エネルギー貯蔵媒体が、シリコン材料およびナノカーボンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー貯蔵媒体が、高アスペクト比炭素要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高アスペクト比炭素要素の長寸法の長さが、その短寸法の5倍、10倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍のうちの少なくとも1つである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵媒体が、その表面処理を含むナノカーボンを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面処理が、前記ナノカーボンへの前記活物質の接着を促進する材料の添加を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面処理が、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミン基、およびシラン基の少なくとも1つを含む官能基の少なくとも1つの添加を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記表面処理が、前記ナノカーボン上に配置されたポリマー層と、ナノカーボンおよび官能化材料を含む凍結乾燥水性分散液とのうちの少なくとも1つから形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記官能化材料が界面活性剤を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー層の熱分解形態をさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記活物質が、コバルト酸リチウムと、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物と、リチウムマンガン酸化物と、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物と、チタン酸リチウム酸化物と、リン酸鉄リチウム酸化物と、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物とのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記活物質の粒子が、0.1マイクロメートルから50マイクロメートルの範囲またはその任意の部分範囲のメジアン粒径を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記活物質質量の質量負荷が、少なくとも20mg/cm
2、30mg/cm
2、40mg/cm
2、50mg/cm
2、60mg/cm
2、70mg/cm
2、80mg/cm
2、90mg/cm
2、100mg/cm
2またはそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分散剤がポリビニルピロリドン(PVP)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記分散剤が、水性バインダーと、ポリアクリル酸と、ポリアクリル酸ナトリウムとのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記スラリーのコーティングを焼結することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
エネルギー貯蔵装置用の電極であって、
集電体上に配置されたエネルギー貯蔵材料のコーティングであって、分散剤を含む溶媒中のカーボンナノフォーム材料および活物質の懸濁液を含むコーティングを備える、電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年1月25日に出願された米国仮特許出願第63/141,038号の優先権を主張し、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書に開示される発明は、エネルギー貯蔵装置に関し、特に、電池およびウルトラキャパシタ用の電極の製造に関する。
【0003】
再生可能エネルギーの使用の増加は、多くの利益および課題をもたらしている。おそらく最も重要な課題は、効率的なエネルギー貯蔵の開発である。再生可能エネルギー源を真に活用するためには、安価で高出力のエネルギー貯蔵が必要である。実際に、無数の他の産業がエネルギー貯蔵の改善から恩恵を受けるであろう。一例は、電気自動車およびハイブリッド自動車への駆動が増加している自動車産業である。
【0004】
おそらく、エネルギー貯蔵の最も広く便利な形態は、電池の形態である。電池は、電解二重層コンデンサ(EDLC)と様々な特徴を共有している。例えば、そのような装置は、典型的には、セパレータによってカソード材料の層から分離されたアノード材料の層を含む。電解質は、これらの電極間のイオン輸送を提供してエネルギーを提供する。
【0005】
従来技術では、エネルギー貯蔵装置の電極は、典型的には、エネルギー貯蔵材料に混合された何らかの形態のバインダーを含む。すなわち、バインダーは、本質的に接着剤の形態であり、集電体への接着を確実にする。残念なことに、電極の物理的完全性を提供するバインダー材料は、典型的には非導電性であり、性能が低下し、経時的に動作が低下する。多くの場合、バインダー材料は、有毒であり、高価であり得る。
【0006】
多くの現代の用途は、エネルギー密度、使用可能寿命(すなわち、サイクル性)、安全性、等価直列抵抗(ESR)、製造コスト、物理的強度、および他のそのような態様のうちの少なくとも1つの性能の改善を必要としている。さらに、改善された装置は、広い温度範囲にわたって確実に動作することが好ましい。バインダー材料の使用は、これらの性能要件を損なう。したがって、電極(例えば、アノードおよびカソード)の製造に使用される技術を改善することは、電極が使用されるエネルギー貯蔵装置の性能を改善する最大の機会を提供する。
【0007】
想像できるように、エネルギー貯蔵装置内の空間は貴重である。すなわち、空隙は、単にエネルギー貯蔵材料を組み込む機会を失わせる。したがって、効率的な製造技術は、高性能エネルギー貯蔵装置の開発に不可欠である。一例として、集電体へのエネルギー貯蔵媒体の適用は、粗い表面を有する電極をもたらし得ることが多く、本質的にエネルギー貯蔵装置内に空隙を作り出す。
【0008】
したがって、必要とされるのは、エネルギー貯蔵装置を製造するときに、集電体上へのスラリーの均一な分散を確実にする方法および装置である。
【発明の概要】
【0009】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置用の電極を製造する方法が提供される。本方法は、エネルギー貯蔵媒体として使用するための溶媒および材料の混合物を加熱することと、混合物に活物質を添加することと、分散剤を混合物に添加してスラリーを得ることと、スラリーを集電体にコーティングすることと、集電体上のスラリーのコーティングをカレンダ加工して、電極を提供することと、を含む。
【0010】
別の実施形態では、電極を組み込んだエネルギー貯蔵装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の説明から明らかになる。
【0012】
【
図1】従来技術のエネルギー貯蔵装置(ESD)の態様を示す概略切欠図である。
【
図2】
図1のエネルギー貯蔵装置(ESD)の従来技術の貯蔵セルの態様を示す概略切欠図である。
【
図3A】
図2の貯蔵セル内の電極間のイオン輸送の態様を示す概略図である。
【
図3B】
図2の貯蔵セル内の電極間のイオン輸送の態様を示す概略図である。
【
図3C】
図2の貯蔵セル内の電極間のイオン輸送の態様を示す概略図である。
【
図5】スラリー調製のための例示的なプロセスの態様を示すフローチャートである。
【
図7】電極調製のための例示的なプロセスの態様を示すフローチャートである。
【
図8】
図4~
図7に示すプロセスにおいて組み立てられた材料の実施形態の顕微鏡写真である。
【
図9】
図4~
図7に示すプロセスにおいて組み立てられた材料の実施形態の顕微鏡写真である。
【
図10】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図11】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図12】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図13】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図14】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図15】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図16】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図17】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図18】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図19】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図20】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図21】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図22】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図23】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【
図24】本明細書に開示される材料によって組み立てられたエネルギー貯蔵セルの電気的性能の態様を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、エネルギー貯蔵装置に有用な電極を提供するための方法および装置が開示される。一般に、開示された技術の適用は、高出力、高エネルギーを供給することができ、長い寿命を示し、広範囲の環境条件にわたって動作することができるエネルギー貯蔵装置をもたらすことができる。開示された技術は、様々なエネルギー貯蔵装置の大量生産および様々な形態で展開可能である。有利には、本技術は、エネルギー貯蔵装置の低減した製造コストをもたらす。
【0014】
本技術は、電池、ウルトラキャパシタ、またはエネルギー貯蔵のために電極を利用する任意の他の同様のタイプの装置であるエネルギー貯蔵装置に使用され得る。本技術を導入する前に、エネルギー貯蔵技術の定義および概要によっていくつかの文脈が提供される。
【0015】
本明細書で論じるように、「エネルギー貯蔵装置」(「ESD」とも呼ばれる)という用語は、一般に電気化学セルを指す。電気化学セルは、化学反応から電気エネルギーを生成するか、または電気エネルギーを使用して化学反応を引き起こすことができる装置である。電流を発生させる電気化学セルは、「ボルタ電池」または「ガルバニ電池」と呼ばれ、電気分解などにより化学反応を発生させるものは電解セルと呼ばれる。ガルバニ電池の一般的な例は、消費者使用に指定された標準的な1.5ボルト電池である。電池は、並列、直列または直列および並列パターンで接続された1つまたは複数のセルからなる。一般に充電式電池と呼ばれる二次電池は、ガルバニ電池および電解電池の双方として動作することができる電気化学電池である。これは、電気を貯蔵するための便利な方法として使用され、電流が一方向に流れると、1つまたは複数の化学物質のレベルが蓄積する(すなわち、充電中)。逆に、セルが放電している間に化学物質が減少し、結果として生じる起電力が使用されて仕事を行い得る。充電式電池の一例はリチウムイオン電池であり、そのいくつかの実施形態が本明細書で論じられる。
【0016】
慣例として、電気化学セル内の電極は、「アノード」または「カソード」のいずれかと呼ばれる。アノードは、電子が電気化学セルを出て酸化が起こる電極(マイナス記号「?」によって示される)であり、カソードは、電子がセルに入り、還元が起こる電極(プラス記号「+」によって示される)である。各電極は、セルを通る電流の方向に応じてアノードまたはカソードのいずれかになり得る。一般に、エネルギー貯蔵装置(ESD)の様々な構成および状態を考えると、この慣例は、本明細書の教示を限定するものではなく、そのような用語の使用は、単に技術を導入するためのものである。したがって、「カソード」、「アノード」、および「電極」という用語は、少なくともいくつかの例では交換可能であることを認識されたい。例えば、電極内に活性層を製造するための技術の態様は、アノードおよびカソードに等しく適用され得る。より具体的には、任意の特定の例で説明した化学的および/または電気的構成は、アノードまたはカソードの1つとして特定の電極の使用を知らせ得る。
【0017】
一般に、本明細書に開示されるエネルギー貯蔵装置(ESD)の例は例示である。すなわち、エネルギー貯蔵装置(ESD)は、本開示の実施形態に限定されない。
【0018】
エネルギー貯蔵装置(ESD)のより具体的な例は、二重層キャパシタ(静電的に電荷を蓄積する装置)、擬似キャパシタ(電気化学的に電荷を蓄積する装置)、ハイブリッドキャパシタ(静電的および電気化学的に電荷を蓄積する装置)などのスーパーキャパシタを含む。一般に、静電二重層キャパシタ(EDLC)は、電気化学的な擬似静電容量よりもはるかに大きい静電二重層容量を有する炭素電極または誘導体を使用し、導電性電極の表面と電解質との間の界面でヘルムホルツ二重層における電荷の分離を達成する。一般に、電気化学擬似キャパシタは、二重層容量に加えて大量の電気化学擬似容量を有する金属酸化物または導電性ポリマー電極を使用する。擬似容量は、酸化還元反応、インターカレーションまたは電気吸着によるファラデー電子電荷移動によって達成される。リチウムイオンキャパシタなどのハイブリッドキャパシタは、以下の異なる特性を有する電極を使用する:一方は主に静電容量を示し、他方は主に電気化学容量を示す。
【0019】
エネルギー貯蔵装置(ESD)の他の例は、充電、負荷への放電、および多数回の再充電が可能な電気電池のタイプである充電池、蓄電池、または二次電池を含む。充電中、正極活物質は酸化されて電子を生成し、負極材料は還元されて電子を消費する。これらの電子は、外部回路からの電流の流れを構成する。一般に、電解質は、電極(例えば、アノードおよびカソード)間の内部イオン流のためのバッファとして機能する。電池の充放電速度は、電流の「C」レートを参照することによって論じられることが多い。Cレートは、理論的に1時間で電池を完全に充電または放電するレートである。「放電深さ」(DOD)は、通常、公称アンペア時容量のパーセンテージとして表される。例えば、ゼロパーセント(0%)DODは、放電がないことを意味する。
【0020】
エネルギー貯蔵装置(ESD)10の態様の概要を提供する
図1から
図3に関して、さらなる文脈が提供される。
【0021】
図1には、エネルギー貯蔵装置(ESD)10の断面が示されている。エネルギー貯蔵装置(ESD)10は、ハウジング11を含む。ハウジング11は、その外部に配置された2つの端子8を有する。端子8は、ハウジング11内に収容された貯蔵セル12への内部電気接続、および負荷または充電装置などの外部装置(図示せず)への外部電気接続を提供する。
【0022】
貯蔵セル12の切欠部分が
図2に示されている。この図に示すように、貯蔵セル12は、エネルギー貯蔵材料の多層ロールを含む。すなわち、エネルギー貯蔵材料のシートまたはストリップは、ロール形式に一緒に巻かれる。エネルギー貯蔵材料のロールは、「アノード3」および「カソード4」と呼ばれる対向する電極を含む。アノード3とカソード4とは、セパレータ5によって分離されている。図示されていないが、貯蔵セル12の一部として含まれているのは電解質である。一般に、電解質は、カソード4およびアノード3を透過または湿潤させ、貯蔵セル12内のイオンの移動を促進する。イオン輸送は、
図3に概念的に示されている。
【0023】
本明細書ではまとめて
図3と呼ばれる
図3A、
図3B、および
図3Cは、エネルギー貯蔵装置(ESD)10の充電状態の関数としてのセル化学の態様を示す概念図である。具体的には、
図3には、エネルギー貯蔵装置(ESD)10の放電シーケンスが示されている。このシリーズにおいて、エネルギー貯蔵装置(ESD)10は、電池である。電池は、アノード3と、カソード4と、セパレータ5と、電解質6とを含む(これらの各要素についてより詳しくは以下に示す)。一般に、アノード3およびカソード4は、イオンを貯蔵する活物質を貯蔵する。
【0024】
図3Aには、完全に充電されたエネルギー貯蔵装置(ESD)10の態様が示されている。この図では、アノード3は、集電体2上に配置されたエネルギー貯蔵媒体1を含む。完全に充電されたエネルギー貯蔵装置(ESD)10についてのアノード3のエネルギー貯蔵媒体1は、貯蔵セル12内の全てのイオンを実質的に含む。構造において同様に、カソード4は、集電体2上に配置されたエネルギー貯蔵媒体1を含む。
【0025】
エネルギー貯蔵装置(ESD)10には負荷(例えば、図示されていないが、携帯電話、コンピュータ、工具、または自動車などの電子機器)が接続されてエネルギーを引き出し、アノード3から電子(e-)が引き出される。正に帯電したリチウムイオンは、貯蔵セル12内をカソード4に移動する。これは、
図3Bに示す電荷計に示すように、電荷の空乏化を引き起こす。エネルギー貯蔵装置(ESD)10が完全に空乏化すると、
図3Cに示すように、実質的に全てのイオンがカソード4に移動する。
【0026】
負荷に対して充電装置を交換し、充電装置に通電すると、アノード3への電子(e-)の流れを引き起こし、それに伴ってカソード4からアノード3にイオンが移動する。セパレータ5は、放電時でも充電時でも、エネルギー貯蔵装置(ESD)10内の電子の流れを遮断する。
【0027】
典型的な電池では、アノード3は、炭素系マトリックスに活物質がインターカレートされた炭素系マトリックスから実質的に作製され得る。従来技術では、炭素系マトリックスは、多くの場合、グラファイトとバインダー材料との混合物を含む。従来技術では、カソード4は、バインダー材料とともにリチウム金属酸化物系材料を含むことが多い。電極を製造するための従来のプロセスは、次いでエネルギー貯蔵媒体1として集電体2に適用される材料の混合物の開発を必要とする。かなり多くの場合、スラリー内の凝集および不整合は、粗くなるか、または山と谷を含む電極の表面をもたらす。従来技術において見出され、エネルギー貯蔵媒体1のスラリーの開発によって生じる問題は、本明細書の教示にかかるスラリーの製造によって改善されることができる。スラリーを混合するプロセスの例が
図4に提供されている。
【0028】
図4では、概念的な概要として、スラリーが調製される。一般に、スラリーは、足場材料としてナノカーボンを有する活物質粉末およびグラファイト粉末、ならびに懸濁液としてのポリマーバインダーおよび水/アルコールの均一な分散を提供する。スラリーの調製プロセスの例が
図5に提示されている。
【0029】
図5を参照すると、一例では、スラリーは、多段階プロセスで調製される。この例では、調製部は、ミキサー容器として600mlビーカーを洗浄して拭き取り、それが水またはエタノール系懸濁液であるかどうかに注目して、固形分に基づいて正確な量の予め混合されたNXスラリーまたは市販のCNT混合物を得る。次いで、所望の量のシリコン活物質(SiOxまたはuSi)粉末を添加し、混合ブレードを用いて1分間手動で混合する。NXスラリーの固形分が<1%である場合、水またはエタノール20~40mlを添加する(NXスラリーが水系である場合、エタノールをさらに添加し、逆もまた同様である)。追加の水またはエタノールを添加する場合、噴出ボトルを使用してビーカーの壁から残留する粉末を洗浄する。その後、1.5k RPMで1時間、剪断ブレードを使用して得られたミキサーをロータリーミキサーと混合し、ビーカーの上部がアルミニウム箔によって覆われて密閉されていることを確実にし、次いで、所望の量のグラファイトを添加し、添加されたグラファイトの量に基づいて5~20mlのエタノールを添加し、噴出ボトルを使用してビーカーの壁から残留する粉末を洗浄し、次いで、1.5~1.8k RPMで2時間回転混合しながら混合し、ビーカーの上部がアルミニウム箔によって覆われて密閉されていることを確実にする。その後、所望の量のバインダーを添加し、さらなる水および/またはエタノールを添加して、以下の仕様が満たされるのを確実にする:固形分:20~25%;エタノール含有量:約25~30%;および含水量:約50%。最後に、1.4k RPMで1時間混合し、次いで800~1000RPMで一晩(12~16時間)混合する。
【0030】
その後、スラリーが使用されて、
図6に示すような電極を調製する。製造の目標は、非毒性の水および/またはアルコールベースの溶媒系を使用することにより、ナノカーボン材料およびポリマーバインダーによって強化されたシリコン活物質およびグラファイト粉末の高密度(1.3~1.6g/cm3のプレス密度)コーティング層を得ることである。シリコン系活物質は、LiB用途に使用される場合、電極の高い重量および体積容量を可能にするが、ナノカーボンおよびポリマーバインダーによって構築された複合足場は、優れた機械的安定性(リチウム化およびリチウム脱離中のシリコンの体積膨張に対応するため)および電極多孔性(良好な電解質浸漬およびイオン拡散を確実にし、高出力密度LiB用途によって要求される高い充放電性能を可能にするため)を確実にする。製造プロセスの例が
図7に概説されている。
【0031】
図7を参照すると、si-炭素電極を製造するための例示的なプロセスが示されている。さらに、このプロセスは、90Cに設定された温度で0.5~1時間、大型コーター加熱要素およびコーティング床を予熱し、コーティング床上にCu箔を置き(Cu箔によってしわがないことを確実にする)、より大きなドクターブレードを使用して、設定されたギャップにおいて1スプーンのスラリーをコーティングすることを必要とする。ブレード速度は約60mm/sであってもよく、乾燥後(15~30分)に質量負荷を試験してもよい。質量負荷が正確である場合、1枚の完全なCu箔を大きなドクターブレードによってコーティングする。乾燥後(視認可能な濡れスポットが残っていないことを確実にする)、真空の助けを借りてコーティング面をコーティング床に対して慎重に反転させ平坦にする。小さいドクターブレードによって互いに隣接する/平行なスラリーの2連をコーティングすると、新たにコーティングされた領域が他方の面のコーティング領域によって覆われ、その結果、小さいドクターブレードは、コーティング長さの全運転中に均一にCu箔上に着座し、次いで15~30分間乾燥する。
【0032】
その後、カレンダ加工が行われる。カレンダ加工では、調製部は、両面電極のコーティングされていない縁部をカミソリ刃および金属製定規によってトリミングし、次いで所望のプレス密度およびパンチ電極でカレンダ加工し、透明タブを電極乾燥(真空オーブン内で一晩100~120C)およびセルアセンブリのために調製し得る。
【0033】
図8および
図9は、得られた電極の様子を示すSEM画像である。
図8には、酸化シリコン系電極の態様が示されている。この図において、電極は、80重量%SiOx粉末(信越7131)および9重量%グラファイト(BTR AGP8)および1重量%予備分散単層カーボンナノチューブネオカルボニックスエタノール系懸濁液+10重量%AquaChargeバインダー(10重量%水系溶液)を含有した。
図9には、マイクロシリコン系電極の態様が示されている。この図において、電極は、89重量%Wacker マイクロ-シリコン粉末+1重量%予備分散単層カーボンナノチューブネオカルボニックスエタノール系懸濁液+10重量%AquaChargeバインダー(10重量%水系溶液)を含有した。
【0034】
図10~
図18は、第1の電極(
図8)の性能データを提示している。上述したSi-Cアノード電極に基づくLiイオン電池の性能例。実施例1:NX NMC811||80%SiOx-Cアノード電極ベースのLIB性能:NX NMC811カソードは、本発明者らが既に出願した特許出願(PCT出願1および新たな暫定特許出願NLB0132)に基づいており、NX Si-Cアノードは、この特許出願プロセスの説明に基づいており、電解質は、炭酸塩溶媒系電解質中のFEC系Li塩に基づいている。N/P=1.05から1.25の範囲。カソード質量負荷25から35mg/cm2、プレス密度3.0から3.7g/cc。Si-Cアノード質量負荷4~8mg/cm2、プレス密度1.3~1.6g/cc。本発明のSi-Cアノード電極活性層において、炭素(ナノカーボン+グラファイト):バインダー比は、1:10から1:1の範囲で変化することができる。ナノカーボン:グラファイトの比は、1:9から9:1まで変化することができる。電極活性層中のSiOx%は、70%から95%とすることができる。電極活性層中のバインダー%は、5%から15%とすることができる。
【0035】
図19~
図24は、第1の電極(
図9)の性能データを提示している。上述したSi-Cアノード電極に基づくLiイオン電池の性能例。実施例2:NX NMC811||マイクロSi-Cアノード電極ベースのLIB性能:NX マイクロ-Si-Cアノードは、この特許出願プロセスの説明に基づいており、電解質は、炭酸塩溶媒系電解質中のFEC系Li塩に基づいている。N/P=1.50から2.50の範囲。カソード質量負荷15から25mg/cm2、プレス密度3.0から3.7g/cc。マイクロSiアノード質量負荷2~6mg/cm2、プレス密度1.0~1.4g/cc。本発明のマイクロSi-Cアノード電極活性層において、炭素(ナノカーボン+グラファイト):バインダー比は、1:10から1:1の範囲まで変化することができる。ナノカーボン:グラファイトの比は、1:9から9:1まで変化することができる。電極活性層中のマイクロ-Si%は、70%から95%とすることができる。電極活性層中のバインダー%は、10%から20%とすることができる。低コストマイクロSiアノード電極のための発明概念:NX 3Dナノカーボンマトリックスと、高引張強度バインダー(例えばポリイミド)およびより弾性のポリマーバインダー(例えば、CMC、LiPAA、SBR)を含むバインダーのハイブリッドブレンドで構成されるハイブリッドバインダーシステムと組み合わせた、低コストマイクロSiドミナントアノード電極。同時に、Liイオン電池のフルセルN/P比は、Siアノード体積膨張を制限するために1.5から2.5の最適化された範囲に制御される。したがって、そのようなSiアノード電極構造は、SOC100の完全充電段階で30~40%以内でマイクロSiアノードの体積膨張を効果的に制御することができる。Nanoramicはまた、非炭酸塩室温イオン液体(NC-RTIL)電解質の組成を調整することによって機械的に堅牢で電気化学的に安定なSEI層を形成するためのNC-RTIL電解質系を開発している。SEI層の安定性は、NC-RTIL電解質および結果として生じる分解生成物の化学的構成に起因する。例えば、FSI-アニオンの分解はF-を放出し、これはSEI安定性を改善することが知られているLiFを形成する。
【0036】
高アスペクト比炭素要素が電極製造プロセスに使用され得る。本明細書で使用される場合、「高アスペクト比炭素要素」という用語および他の同様の用語は、横寸法(「短寸法」)の元素のサイズよりも有意に大きい1つまたは複数の寸法(「長寸法」)のサイズを有する炭素質元素を指す。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素は、2つの長寸法および1つの短寸法を有するフレークまたはプレート形状要素を含んでもよい。例えば、いくつかのそのような実施形態では、長寸法のそれぞれの長さの比は、短寸法の長さの少なくとも5倍、10倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍またはそれ以上であってもよい。このタイプの例示的な要素は、グラフェンシートまたはフレークを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素は、1つの長寸法および2つの短寸法を有する細長ロッドまたは繊維形状要素を含み得る。例えば、いくつかのそのような実施形態では、長寸法の長さの比は、各短寸法の長さの少なくとも5倍、10倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍またはそれ以上であり得る。このタイプの例示的な要素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの束、カーボンナノロッド、および炭素繊維を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素は、単層ナノチューブ(SWNT)、二層ナノチューブ(DWNT)または多層ナノチューブ(MWNT)、カーボンナノロッド、炭素繊維またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素は、CNTまたは他の高アスペクト比炭素材料の相互接続された束、クラスタ、または凝集体から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素は、シート、フレーク、または湾曲したフレークの形態で、および/または高アスペクト比の円錐、ロッドなどに形成されたグラフェンを含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、1つまたは2つの長寸法に沿った高アスペクト比炭素要素のサイズ(例えば、平均サイズ、中央サイズ、または最小サイズ)は、少なくとも0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、7000μm、800μm、900μm、1,000μm、またはそれ以上であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、要素のサイズ(例えば、平均サイズ、中央サイズ、または最小サイズ)は、1μmから1,000μmの範囲、または1μmから600μmなどのその任意の部分範囲であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、要素のサイズは、比較的均一とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の要素は、要素の平均サイズの10%以内の1つまたは2つの長寸法に沿ったサイズを有し得る。
【0042】
ナノカーボンの官能化は、一般に、ナノカーボンの表面処理を含む。表面処理は、本明細書に記載されているものまたは当該技術分野において公知のものなどの任意の適切な技術によって実行され得る。ナノカーボンに適用される官能基は、活物質粒子とナノカーボンとの間の接着を促進するように選択され得る。例えば、様々な実施形態では、官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミン基、シラン基、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、官能化炭素要素は、ナノフォーム炭素および界面活性剤などの官能化材料を含む乾燥(例えば、凍結乾燥)水性分散液から形成される。いくつかのこのような実施形態では、水性分散液は、酸などの炭素要素を損傷する材料を実質的に含まない。
【0044】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素の表面処理は、ネットワークへの活物質の接着を促進する炭素要素上に配置された薄いポリマー層を含む。いくつかのこのような実施形態では、薄いポリマー層は、自己組織化および/または自己制限ポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えば水素結合を介して活物質に結合する。
【0045】
いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、炭素要素の外面に垂直な方向の厚さが、要素の短寸法の3倍、2倍、1倍、0.5倍、0.1倍未満(またはそれ以下)であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して活物質に結合する官能基(例えば、側官能基)を含む。いくつかのそのような実施形態では、薄いポリマー層は、要素の少なくとも一部の上に安定した被覆層を形成し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、要素のいくつかの上の薄いポリマー層は、エネルギー貯蔵(すなわち、活性)材料を含む活性層の上および下に配置された集電体または接着層と結合し得る。例えば、いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して、集電体または接着層の表面に結合する側官能基を含む。いくつかのそのような実施形態では、薄いポリマー層は、要素の少なくとも一部の上に安定した被覆層を形成し得る。いくつかの実施形態では、この配置は、電極の優れた機械的安定性を提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、上記の例に記載のタイプの溶媒に混和性である。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、メタノール、エタノールもしくは2-プロパノール(IPAと呼ばれることもあるイソプロピルアルコール)またはそれらの組み合わせなどのアルコールを含む溶媒に混和性である。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の特性をさらに改善するために使用される1つ以上の添加剤、例えば、アセトニトリル(ACN)、脱イオン水、およびテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。この例では、混合物は、NMPを含まない溶媒中で形成される。
【0049】
ポリマー層を形成するために使用され得る材料の適切な例は、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、例えば、1,000,000g/mol、500,000g/mol、100,000g/mol、50,000g/mol、10,000g/mol、5,000g/mol、2,500g/mol以下の低分子質量を有する。
【0050】
上述した薄いポリマー層は、従来の電極において使用されるバルクポリマーバインダーとは質的に異なることに留意されたい。薄いポリマー層は、活性層の体積のかなりの部分を充填するのではなく、高アスペクト比炭素要素の表面上に存在し、活物質粒子を保持するために利用可能な空隙空間の大部分を残す。
【0051】
例えば、いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、ネットワークの外面に垂直な方向の最大厚さが、それらの短寸法に沿った炭素要素201のサイズの1倍以下、0.5倍以下、0.25倍以下である。例えば、いくつかの実施形態では、薄いポリマー層は、僅か数分子の厚さ(例えば、100、50、10、5、4、3、2、またはさらには1分子以下の厚さ)であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、活性層100の体積の10%、5%、1%、0.1%、0.01%、0.001%またはそれ未満が、薄いポリマー層によって充填される。
【0052】
さらに別の例示的な実施形態では、表面処理は、高アスペクト比炭素要素上に配置されたポリマー材料の熱分解から生じる炭素質材料の層を形成し得る。この炭素質材料の層(例えば、黒鉛状または非晶質炭素)は、活物質粒子に付着(例えば、共有結合を介して)するか、そうでなければ活物質粒子との接着を促進し得る。適切な熱分解技術の例は、2020年5月22日に出願された米国特許出願第63/028,982号に記載されている。この技術における使用に適したポリマー材料の1つは、ポリアクリロニトリル(PAN)である。
【0053】
【0054】
いくつかの実施形態では、例えば、電極がアノードとして使用される場合、活物質は、グラファイト、ハードカーボン、活性炭、ナノフォーム炭素、シリコン、酸化シリコン、炭素カプセル化シリコンナノ粒子を含み得る。いくつかのそのような実施形態では、電極の活性層は、例えば、当該技術分野において公知のプレリチウム化方法を使用して、リチウムによってインターカレートされ得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、優れた機械的特性(例えば、本明細書に記載のタイプのエネルギー貯蔵装置における動作中の層間剥離の欠如)を依然として示しながら、活性層が、例えば、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%、99.8%またはそれを超える重量で、活性層中の材料の大部分で作られることを可能にし得る。例えば、いくつかの実施形態では、活性層は、優れた機械的特性(例えば、本明細書に記載のタイプのエネルギー貯蔵装置における動作中の層間剥離の欠如)を依然として示しながら、そのような大量の活物質および大きな厚さ(例えば、50μm超、100μm超、150μm超、200μm超、またはそれ以上)を有し得る。
【0056】
活物質の粒子は、例えば、0.1μmから50μmの範囲、またはその任意の部分範囲のサイズのメジアン粒子を特徴とし得る。活物質の粒子は、単峰性、二峰性または多峰性の粒径分布である粒径分布によって特徴付けられ得る。活物質の粒子は、0.1平方メートル/グラム(m2/g)および100メートル平方/グラム(m2/g)の範囲、またはその任意の部分範囲の比表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、活性層は、例えば、少なくとも20mg/cm2、30mg/cm2、40mg/cm2、50mg/cm2、60mg/cm2、70mg/cm2、80mg/cm2、90mg/cm2、100mg/cm2、またはそれ以上の活物質の粒子の質量負荷を有し得る。
【0057】
【0058】
分散剤および添加剤が混合物に添加されてもよい。分散剤の例は、PVPである。ポリビニルピロリドン(PVP)は、一般に「ポリビドン」または「ポビドン」とも呼ばれ、モノマーN-ビニルピロリドンから作製される水溶性ポリマーである。一般に、分散剤は、溶液重合のための乳化剤および崩壊剤として、ならびにナノ粒子合成およびそれらの自己集合における界面活性剤、還元剤、形状制御剤および分散剤として機能する。分散剤の別の例は、水溶性樹脂技術を応用して開発された電極用水性バインダーの商品名であるAQUACHARGEを含む。AQUACHARGEは、兵庫県の住友精化株式会社製である。同様の例は、「Binder for electrode formation,slurry for electrode formation using the binder,electrode using the slurry,rechargeable battery using the electrode,and capacitor using the electrode」と題する米国特許第8,124,277号明細書に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる例は、アクリル酸の合成高分子量体であるポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸のナトリウム塩であるポリアクリル酸ナトリウムなどを含む。
【0059】
【0060】
【0061】
第4の工程44では、集電体へのスラリーのコーティング、次いでコーティングされた集合体の乾燥が行われる。いくつかの実施形態では、最終スラリーがシートに形成され、必要に応じて集電体または接着層などの中間層に直接コーティングされ得る。いくつかの実施形態では、最終スラリーがスロットダイを通して塗布され、塗布層の厚さを制御し得る。他の実施形態では、スラリーが塗布され、次いで、例えばドクターブレードを使用して所望の厚さに均され得る。スラリーを塗布するために、様々な他の技術が使用され得る。例えば、コーティング技術は、限定されないが、コンマコーティング;コンマリバースコーティング;ドクターブレードコーティング;スロットダイコーティング;直接グラビアコーティング;エアドクターコーティング(エアナイフ);チャンバドクターコーティング;オフセットグラビアコーティング;ワンロールキスコーティング;小径グラビアロールによるリバースキスコーティング;バーコーティング;3リバースロールコーティング(トップフィード);3リバースロールコーティング(注入ダイ);リバースロールコーティングなどを含み得る。
【0062】
最終スラリーの粘度は、適用技術に応じて変化し得る。例えば、コンマコーティングの場合、粘度は、約1,000cpsから約200,000cpsの範囲であり得る。リップダイコーティングは、約500cpsから約300,000cpsの粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。リバースキスコーティングは、約5cpsから1,000cpsの粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。いくつかの用途では、それぞれの層が複数パスによって形成され得る。
【0063】
【0064】
いくつかの実施形態では、最終スラリーから形成された層は、集電体に適用される前または後に(直接または中間層上で)圧縮されてもよい(例えば、カレンダ加工装置を使用して)。いくつかの実施形態では、スラリーは、カレンダ加工(すなわち、圧縮)プロセスの前または間に部分的または完全に乾燥され得る(例えば、熱、真空またはそれらの組み合わせを適用することによって)。例えば、いくつかの実施形態では、層は、圧縮前の厚さの90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%またはそれ未満の(例えば、集電体層101の法線方向における)最終厚さに圧縮されてもよい。
【0065】
様々な実施形態では、コーティングまたは圧縮プロセス中に部分的に乾燥した層が形成される場合、層は、その後完全に乾燥され得る(例えば、熱、真空またはそれらの組み合わせを適用することによって)。いくつかの実施形態では、実質的に全ての溶媒が活性層100から除去される。
【0066】
いくつかの実施形態では、スラリーの形成に使用される溶媒は回収され、スラリー製造プロセスにリサイクルされる。
【0067】
いくつかの実施形態では、層は、例えば、構成する高アスペクト比炭素要素または他の炭素質材料の一部を破壊してそれぞれの層の表面積を増加させるために圧縮されてもよい。いくつかの実施形態では、この圧縮処理は、接着、イオン輸送速度、および表面積のうちの1つまたは複数を増加させ得る。様々な実施形態では、層が電極に適用されるかまたは電極上に形成される前または後に圧縮が適用されることができる。
【0068】
カレンダ加工が層を圧縮するために使用されるいくつかの実施形態では、カレンダ加工装置は、層の圧縮前の厚さ(例えば、層の圧縮前の厚さの約33%に設定される)の90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%以下に等しいギャップ間隔で設定されてもよい。カレンダロールは、例えば、ロール長さ1cm当たり1トン超、ロール長さ1cm当たり1.5トン超、ロール長さ1cm当たり2.0トン超、ロール長さ1cm当たり2.5トン超、またはそれ以上の適切な圧力を提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、後圧縮層は、1g/ccから10g/ccの範囲、または2.5g/ccから4.0g/ccなどのその任意の部分範囲の密度を有する。いくつかの実施形態では、カレンダ加工プロセスは、20℃から140℃の範囲またはその任意の部分範囲の温度で実行され得る。いくつかの実施形態では、層は、カレンダ加工の前に、例えば、20℃から100℃の範囲またはその任意の部分範囲の温度で予熱されてもよい。
【0069】
【0070】
本明細書の教示の態様を提供するために、様々な他の構成要素が含まれ、必要とされてもよい。例えば、本明細書の教示の範囲内にある追加の実施形態を提供するために、追加の材料、材料の組み合わせ、および/または材料の省略が使用されてもよい。本明細書の教示の様々な変更が実現され得る。一般に、変更は、ユーザ、設計者、製造者、または他の同様の関係者のニーズにしたがって設計され得る。変更は、その当事者が重要と考える特定の性能基準を満たすことを意図し得る。
【0071】
添付の特許請求の範囲または特許請求の範囲の要素は、「のための手段」または「のためのステップ」という単語が特定の特許請求の範囲において明示的に使用されない限り、米国特許法第(35 U.S.C.)112条(f)を行使すると解釈されるべきではない。
【0072】
本発明またはその実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、1つまたは複数の要素があることを意味することを意図している。同様に、形容詞「別の(another)」は、要素を導入するために使用される場合、1つまたは複数の要素を意味することを意図している。「含む(including)」および「有する(having)」という用語は、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得るように包括的であることを意図している。本明細書で使用される場合、「例示的」という用語は、上位の例を意味することを意図しない。むしろ、「例示的」は、多くの可能な実施形態のうちの1つである実施形態の例を指す。
【0073】
例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い得て、その要素を均等物で置き換え得ることが当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の器具、状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの変更が当業者によって理解されるであろう。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】