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特表2024-505211タンパク質液状製剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】タンパク質液状製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/19 20060101AFI20240129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K38/19
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/02
A61P7/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/337
A61K31/675
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545327
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001406
(87)【国際公開番号】W WO2022164204
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0011802
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、スン ヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076CC14
4C076CC27
4C076DD23D
4C076DD43Z
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF56
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF67
4C076GG42
4C076GG45
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DA01
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA06
4C084NA08
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA02
4C086DA35
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA06
4C086NA08
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
タンパク質液状製剤及びその製造方法に係り、一態様による高濃度のエフラペグラスチムを含む液状製剤及びその製造方法によれば、高濃度のタンパク質を含むものでもあるが、溶解度及び安定性にすぐれ、投与部位の刺激/苦痛、または患者の不快感を低減させ、患者親和的な注入が可能である液状製剤を提供しうるという効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフラペグラスチム及び緩衝物質を含む液状製剤であって、
11mg/mLないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチムを含み、
下記数式1で定義された患者親和(PF:patient friendly)指数が10以下であり、
数式1
PF指数=Osm(mOsm/kg)/100+MGF(N)
数式1で、Osmは、液状製剤の浸透圧の数値であり、MGFは、29ケージの注射器でもって、液状製剤を2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力の数値であり、
浸透圧が100mOsm/kgないし800mOsm/kgであり、
前記液状製剤を29ケージの注射器でもって、2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力が5N以下であるか、あるいは4.725mm/s速度で投与するとき、最大滑走力が7N以下であり、
23ないし27℃、及び55ないし65%相対湿度で4週間保存した後で測定したエフラペグラスチムの残存率が、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)基準及びサイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)基準で、95%以上である、エフラペグラスチム液状製剤。
【請求項2】
前記液状製剤の伝導度が15mS/cm以下である、請求項1に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項3】
前記残存率が98%以上である、請求項1または2に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項4】
前記液状製剤は、20℃ないし25℃の常温において、粘度が4cP以下である、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項5】
前記緩衝物質の濃度が5ないし100mMである、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項6】
前記緩衝物質は、クエン酸及び/またはクエン酸塩である、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項7】
前記液状製剤は、安定化剤を含むものである、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項8】
前記安定化剤がマンニトールを含むものである、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項9】
前記マンニトールの濃度が、前記液状製剤対比で、1ないし20%(w/v)である、請求項8に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項10】
前記液状製剤は、界面活性剤を含むものである、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項11】
前記界面活性剤がポリソルベート系非イオン性界面活性剤である、請求項10に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項12】
前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80によってなる群のうちから選択されるものである、請求項11に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項13】
前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の最終濃度が、前記液状製剤対比で、0.001ないし5%(w/v)である、請求項12に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項14】
前記液状製剤のpHが4ないし8である、請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項15】
張性改質剤をさらに含むものである、請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項16】
前記張性改質剤は、塩化ナトリウムである、請求項15に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項17】
前記張性改質剤の濃度は、5ないし200mMである、請求項15に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項18】
前記液状製剤は、精製カラムを利用して前処理されたものである、請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項19】
前記前処理された液状製剤を、前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を含んでいないバッファでバッファ交換した後、濃縮されたものである、請求項18に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項20】
エフラペグラスチム及び緩衝物質を含む液状製剤であって、
11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度の緩衝物質、及び0.001ないし5%(w/v)濃度の界面活性剤を含み、
前記界面活性剤の最終濃度が、前記液状製剤対比で、0.001ないし5%(w/v)である、エフラペグラスチム液状製剤。
【請求項21】
前記界面活性剤は、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤である、請求項20に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項22】
前記液状製剤は、
11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度のクエン酸及び/またはクエン酸塩、及び0.001ないし5%(w/v)濃度のポリソルベート系非イオン性界面活性剤を含むものである、請求項20に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項23】
前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80によってなる群のうちから選択されるものである、請求項21に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項24】
前記液状製剤は、11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度のクエン酸ナトリウム、0.001ないし0.5%(w/v)濃度のポリソルベート80、1ないし20%(w/v)濃度のマンニトール、及び5ないし200mM濃度の塩化ナトリウムを含むように製剤化されたものである、請求項21に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項25】
前記液状製剤の浸透圧が、100mOsm/kgないし800mOsm/kgである、請求項20に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項26】
前記液状製剤の伝導度が15mS/cm以下である、請求項20に記載のエフラペグラスチム液状製剤。
【請求項27】
治療学的に有効量の請求項1ないし26項のうちいずれか1項に記載のエフラベグラスチム液状製剤を患者に投与することを含む白血球生産が低下された患者の好中球減少症を予防、緩和または治療する、方法。
【請求項28】
前記好中球減少症は、重症慢性好中球減少症または熱性好中球減少症である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エフラベグラスチム液状製剤は、患者が補助療法または先行化学療法で治療された後に投与されるものである、請求項27または28に記載の 方法。
【請求項30】
前記エフラベグラスチム液状製剤は、患者が補助療法または先行化学療法で治療された後、1日ないし5日の間に投与されるものである、請求項27ないし29のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記補助療法または先行化学療法は、ドセタキセルとシクロホスファミドとの組み合わせである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記エフラベグラスチム液状製剤の第2服量は、前記エフラベグラスチム液状製剤の第1服量が患者に投与された後、15日ないし25日の間に投与されるものである、請求項27ないし31のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療学的有効量は、25μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、または200μg/kgから選択される単位用量形態である、請求項27ないし32のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療学的有効量は、0.6mL用量体積内において、13.2mgのエフラベグラスチム液状製剤である、請求項27ないし33のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
患者に治療学的有効量の第2作用剤を投与することをさらに含むものである、請求項27ないし34のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2作用剤は、抗癌剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エフラベグラスチム液状製剤は、化学療法の完了から、約6時間、約5時間、約2時間、約1時間以内に患者に投与されるものである、請求項27ないし37のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質液状製剤及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年1月27日に韓国知的財産庁に出願された韓国特許出願第10-2021-0011802号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に編入される。
【背景技術】
【0003】
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF:granulocyte-colony stimulating factor)は、骨髄幹細胞と白血球との分裂と分化とを指示するサイトカインであり、骨髄外において、細胞の分裂及び分化を促進させる役割を行う。分子量は、18,000ないし19,000ダルトンであり、等電点(pI)が6.1(糖鎖化程度により、pI値が、5.5~6.1)である糖蛋白質である。
【0004】
組み換えDNA技術は、G-CSFの分子的及び遺伝的な性質を究明し、CHU-2細胞とヒト膀胱癌細胞5637とからmRNAを分離して調製されたcDNAライブラリからヒトG-CSF遺伝子がクローニングされた後、哺乳動物細胞と原核細胞とからG-CSFを生産することができることになった。
【0005】
なお、前述のところのようなG-CSFのようなタンパク質を含む薬剤学的タンパク質製剤の商業的な実行可能性及び効率において、剤形安定性は、当該剤形に、さらなる分子を含ませることによっても克服される。タンパク質安定性は、溶液内において、当該タンパク質と相互作用し、当該タンパク質を、安定しており、溶解性であり、非凝集状態に維持させる賦形剤を含ませることによって改善させることができる。例えば、塩化合物、及びその他イオン種(inonic species)が、タンパク質製剤に対する添加剤である。それらは、非特異的方式でタンパク質に結合し、熱的安定性を増大させることにより、タンパク質の変性防止に一助となる。塩化合物(例:NaCl、KCl)は、凝集及び沈澱を防止するために、商業的インスリン製剤において成功裏に使用されてきた。アミノ酸(例:ヒスチジン、アルギニン)は、製剤添加剤として使用される場合、タンパク質の二次構造の変更を低減させると明らかにされた。通常使用される添加剤のその他例には、グリセロール及び糖のようなポリアルコール物質、及び非イオン性(例:Tween、Pluronic)界面活性剤などが含まれる。
【0006】
薬剤学的添加剤は、可溶性、無毒性でなければならず、特定の治療学的タンパク質に対する安定化効果を提供する特定の濃度で使用されなければならない。添加剤の安定化効果は、タンパク質依存性及び濃度依存性であるために、薬剤学的剤形で使用されるそれぞれの添加剤は、不安定性を誘発したり、当該剤形の化学的または物理的な構成に対するその他副作用を誘発したりしないように注意深く試験されなければならない。タンパク質の安定化に使用された成分は、経時的なタンパク質安定性と係わったり、保存の間の環境変化によったりして、タンパク質安定性と係わる問題を誘発しうる。
【0007】
また、タンパク質の薬剤学的製剤は、治療効果を向上させるために、高濃度に剤形化されなければならない。高濃度タンパク質製剤は、さらに小さい容積の容量が可能であり、包装及び保存がさらに経済的あるために、治療学的使用に有利である。しかしながら、高濃度タンパク質製剤の開発は、製造、安定性、患者の痛症のような多数の課題が存在する。例えば、タンパク質の凝集または不溶性は、剤形中のタンパク質濃度が上昇することにより、一般的に増大する(Shire, S.J. et al., J. Pharm. Sci., 93, 1390 (2004))。そのために、高濃度タンパク質製剤においては、低濃度剤形で現れない副作用、例えば、非天然形態のタンパク質凝集及び微粒子形成などが、低濃度タンパク質製剤においては、有利な効果を提供した添加剤を使用した場合にも、現れうる。また、高濃度タンパク質の高粘度は、濾過方式の製造工程を妨害しうるが、注射時、患者に苦痛、及びさらなる副作用を与え、患者親和性が低くなる可能性が存在する。従って、薬剤学的タンパク質製剤は、通常、注意深く、任意の副作用を制限しながら、タンパク質安定性、患者親和性及び治療学的要件を向上させるために、成分と濃度との均衡が要求される。
【0008】
そのために、凝集可能性が高い非天然のタンパク質を高濃度で含むタンパク質製剤において、治療学的使用に有用なだけではなく、溶解度及び安定性の側面において有利であり、患者親和的な製剤の開発が必要である実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様は、高濃度のエフラペグラスチム(eflapegrastim)、及び緩衝物質を含む液状製剤を提供するものである。
【0010】
他の態様は、前記液状製剤を製造する方法を提供するものである。
【0011】
さらに他の態様は、前記液状製剤を含む製造物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、エフラペグラスチム(eflapegrastim)及び緩衝物質を含む液状製剤であって、
6mg/mLないし150mg/mL濃度のエフラペグラスチムを含むか;
下記数式1で定義された患者親和(PF:patient friendly)指数が10以下であるか、
数式1
PF(patient friendly)指数=Osm(mOsm/kg)/100+MGF(N)
数式1で、Osmは、液状製剤の浸透圧(osmolarity)の数値であり、MGFは、29ケージの注射器でもって、液状製剤を2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力(maximum gliding force)の数値である;
浸透圧が100mOsm/kgないし1,000mOsm/kgであるか;
前記液状製剤を29ケージの注射器でもって、2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力(maximum gliding force)が7N以下であるか、あるいは4.725mm/s速度で投与するとき、最大滑走力(maximum gliding force)が10N以下であるか;
23ないし27℃、及び55ないし65%相対湿度で4週間保存した後で測定したエフラペグラスチムの残存率が、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)基準またはサイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)基準で95%以上であるエフラペグラスチム液状製剤を提供する。
【0013】
いくつかの実施例において、液体製剤は、15mS/cm以下の導電率を有する。いくつかの実施例において、エフラペグラスチムの残存率は、98%以上である。
【0014】
いくつかの実施例において、液体製剤は、20℃~25℃の室温で4cP以下の粘度を有する。
【0015】
いくつかの実施例において、緩衝材の濃度は、約5mM~約100mMである。いくつかの実施例において、該緩衝材は、クエン酸および/またはクエン酸塩である。
【0016】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤は、安定化剤をさらに含む。いくつかの実施例において、該安定化剤は、マンニトールを含む。いくつかの実施例において、マンニトールの濃度は、液体製剤の約1%~約20%(w/v)である。
【0017】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤は、界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施例において、該界面活性剤は、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施例において、該ポリソルベート系非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80からなる群のうちから選択される。いくつかの実施例において、液体製剤を濃縮した後のポリソルベート系非イオン界面活性剤の最終濃度は、液体製剤全体の約0.0001%~約0.5%(w/v)である。
【0018】
いくつかの実施例において、液体製剤は、約4~約8のpHを有する。
【0019】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤は、張性調節剤をさらに含む。いくつかの実施例において、該張性調整剤は、塩化ナトリウムである。いくつかの実施例において、張性調節剤の濃度は、約5mM~約200mMである。
【0020】
いくつかの実施例において、液体製剤は、精製カラムを用いて前処理される。いくつかの実施例において、前処理された液体製剤は、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を含んでいない緩衝液との緩衝液交換後に濃縮される。
【0021】
他の態様において、本開示は、エフラペグラスチム、緩衝材及び界面活性剤を含む液体エフラペグラスチム製剤を提供し、ここで、
エフラペグラスチムの濃度が、約11mg/mL~約66mg/mLであり、緩衝材の濃度が約5mM~約100mMであり、
液体製剤が濃縮された後の界面活性剤の濃度は、全液体製剤の約0.001%~約5%(w/v)であり、該液体製剤が濃縮された後の界面活性剤の濃度は、全液体製剤の約0.001%~約5%(w/v)である。
【0022】
いくつかの実施例において、界面活性剤は、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤である。
【0023】
いくつかの実施例において、液体製剤は、以下を含む:
約11mg/mL~約66mg/mLのエフラペグラスチム、約5mM~約100mMのクエン酸及び/またはクエン酸塩、並びに約0.001%~約5%(w/v)のポリソルベート系非イオン性界面活性剤。
【0024】
いくつかの実施例において、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80からなる群より選択される。
【0025】
いくつかの実施例において、液体製剤は、以下を含む:
約11mg/mL~約66mg/mLのエフラペグラスチム、約5mM~約100mMのクエン酸ナトリウム、約0.001%~約0.5%(w/v)のポリソルベート80、約1%~約20%(w/v)のマンニトール、及び約5mM~約200mMの塩化ナトリウム。
【0026】
いくつかの実施例において、液体製剤の浸透圧は、約100mOsm/kg~約800mOsm/kgである。いくつかの実施例において、液体製剤は、15mS/cm以下の導電率を有する。
【0027】
他の態様は、前記液状製剤を製造する方法を提供する。
【0028】
さらに他の態様は、前記液状製剤を含む製造物品を提供する。
【0029】
さらに別の態様において、本開示は、白血球産生が低下した患者において、好中球減少症を予防、緩和または治療する方法であって、本明細書に記載された液体エフラペグラスチム製剤の治療有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施例において、好中球減少症は、重度の慢性好中球減少症または発熱性好中球減少症である。
【0031】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤は、患者がアジュバント化学療法またはネオアジュバント化学療法で治療された後に投与される。いくつかの実施例において、該液体エフラペグラスチム製剤は、患者が補助化学療法または新補助化学療法で治療された1~5日後に投与される。いくつかの実施例において、該アジュバント化学療法または該ネオアジュバント化学療法は、ドセタキセルとシクロホスファミドとの組み合わせである。
【0032】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤の第2の用量は、液体エフラペグラスチム製剤の第1の用量が患者に投与されてから、15~25日の間に投与される。
【0033】
いくつかの実施例において、治療上有効な量は、25μg/kg、50μg/kg、100μg/kg及び200μg/kgのうちから選択される単位剤形である。
【0034】
いくつかの実施例において、治療上有効な量は、0.6mLの投薬量中の液体エフラペグラスチム製剤の13.2mgである。
【0035】
いくつかの実施例において、本方法は、治療上有効な量の第2の薬剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施例において、第2の薬剤は、抗癌剤である。
【0036】
いくつかの実施例において、液体エフラペグラスチム製剤は、化学療法の終了から、約6時間、約5時間、約2時間、約1時間以内に患者に投与される。
【発明の効果】
【0037】
一態様による高濃度のエフラペグラスチムを含む液状製剤及びその製造方法によれば、高濃度のタンパク質を含むものでもあるが、溶解度及び安定性にすぐれ、投与部位の刺激/苦痛、または患者の不快感(discomfort)を低減させ、患者親和的な注入が可能な液状製剤を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施例による液状製剤において、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度によるエフラペグラスチムの残存率変化を、逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)を介して確認した結果である。
図2】一実施例による液状製剤において、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度によるエフラペグラスチムの残存率変化を、サイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)を介して確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付図面に例示されている実施例について詳細に参照するが、ここで、同様の参照番号は、全体を介して同様の要素を指す。この点につき、本実施例は、異なる形態を有することができ、本明細書に記載された説明に限定されると解釈されるものではない。従って、本実施例は、本明細書の態様について説明するために、ただ図面を参照して以下で説明される。本明細書で使用される場合、用語「及び/または」は、関連する列挙された項目の1または複数の任意及び全ての組み合わせを含む。要素のリストに先行する場合、「少なくとも1つ」のような表現は、要素のリスト全体を修飾し、リストの個々要素を修飾するものではない。
【0040】
一態様は、高濃度のエフラペグラスチム(eflapegrastim)及び緩衝物質を含む液状製剤を提供する。
【0041】
エフラペグラスチム(eflapegrastim)
本明細書において、用語「エフラペグラスチム」は、組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF:human granulocyte-colony stimulating factor)変異体を含む持続型G-CSF結合体の国際一般名(INN)である(WHO Drug Information Volume 29, 2015)。前記エフラペグラスチムは、生理活性ペプチド、顆粒球コロニー刺激因子、生分解性高分子、免疫グロブリンFc領域が連結された形態の結合体でもある。
【0042】
また、本明細書において、有用な免疫グロブリンFcは、ヒト免疫グロブリンFc、その密接に係わる類似体の配列を有するものであり、牛、ヤギ、豚、マウス、ラビット、ハムスター、ラットまたはギニアピッグのような動物起源でもある。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG,IgA,IgD,IgEまたはIgM由来、またはそれらの組み合わせ(combination)、あるいはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域でもある。具体的には、免疫グロブリンFc領域は、ヒト血液に最も豊富なIgG由来またはIgM由来のものであり、さらに具体的には、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させると公知されたIgG由来である。該免疫グロブリンFcは、天然IgGを、特定タンパク質分解酵素で処理して製造することができ、組み換え技術を利用して形質転換された細胞からも製造することができる。具体的には、該免疫グロブリンFcは、大腸菌(E.coli)形質転換体から製造した組み換えヒト免疫グロブリンFcである。
【0043】
なお、IgGも、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明においては、それらの組み合わせ、またはそれらのハイブリッドも可能である。具体的には、IgG2サブクラス及びIgG4サブクラスであり、さらに具体的には、補体依存的毒性(CDC:complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc領域である。すなわち、本明細書の薬物のキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc領域である。ヒト由来のFc領域は、ヒト生体において抗原に作用し、それに対する新たな抗体を生成するというような望ましくない免疫反応を起こしうる非ヒト由来のFc領域に比べて望ましい。
【0044】
本明細書で使用されるエフラペグラスチムは、前記hG-CSF変異体と免疫グロブリンFc領域とを結合させて製造する。このときに利用される結合方法として、前記hG-CSF変異体と免疫グロブリンFc領域とを非ペプチド性重合体を利用して交差結合させるか、あるいは組み換え技術を利用し、前記hG-CSF変異体と免疫グロブリンFc領域とが連結された形態の融合タンパク質に製造することができる。交差結合時に使用される非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)及びポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA:polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちからも選択される。当該分野にすでに知られたものの誘導体、及び当該分野の技術レベルで容易に製造することができる誘導体も、本明細書の範囲に含まれる。
【0045】
本明細書における前記hG-CSF変異体は、哺乳動物から抽出されるか、あるいは化学的に合成されうる。また、遺伝子組み換え技法を利用し、hG-CSF変異体をコーディングするDNAによってで質転換された原核生物または真核生物から得ることもできるが、宿主として、大腸菌(例えば、E.coli)または酵母(例えば、出芽酵母(S. cerevisiae))、及び哺乳動物細胞(例えば、中国ハムスター卵巣細胞、猿細胞)を使用することができる。使用した宿主により、hG-CSF変異体発現産物は、哺乳動物、または他の真核の炭水化物と、糖鎖化されたり糖鎖化されなかったりする。また、原核生物で発現させる場合には、前記hG-CSF変異体発現産物は、初期メチオニン残基を含むものでもある(位置1)。本発明に適するhG-CSF変異体は、大腸菌を宿主細胞として利用して製造されたhG-CSF変異体でもある。
【0046】
一具体例において、前記エフラペグラスチムは、天然型G-CSFの17番目システイン及び65番目プロリン残基がセリンで置換され、1番目スレオニンが削除された組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子誘導体17,65 Ser-G-CSFを含む。前述のところで言及されたように、前記エフラペグラスチムの非天然のタンパク質は、天然タンパク質または17Ser-G-CSFと比較し、さらなるタンパク質の凝集の可能性、及び任意の副作用を提供しうる。該タンパク質凝集は、タンパク質溶液において一般的な問題であり、タンパク質の濃度または粘度の増大を起こす。本明細書は、高濃度の低凝集タンパク質製剤を達成する手段を提供する。本明細書の製剤は、溶液において、タンパク質の安定した高濃度を達成することができ、治療学的目的に有利でもある。
【0047】
なお、ポリペプチドのようなタンパク質の機能及び生理活性は、タンパク質の立体構造によって決定され、タンパク質の立体構造において、機能と係わる部分が異なれば、本来の特定機能を発揮することができなくなる。例えば、アミノ酸配列が一つだけ異なっても、そのアミノ酸がタンパク質立体構造において機能部位に該当し、その部位の立体構造を変化させることになれば、そのタンパク質の機能に影響を与えることになることは、公知されている事実である。また、薬学製剤分野において、タンパク質製剤及びペプチド剤形の最も共通している論議は、薬物の物理化学的安定性に係わるものであり、実際、薬物の特性は、成功裏の供給及び安定性のための適切な製剤を決定するのに重要である。タンパク質薬物製剤の開発における最初段階は、薬物特性、及び異なる製剤内における安定性に対する完全な特性化を含み、当該技術分野の通常の技術者であるならば、等電点、分子量及び総体的アミノ酸構成のようなタンパク質の物理化学的特性を考慮することでもって始まる(Jeffrery L. et al., 1994)。すなわち、異なるタンパク質薬物(例えば、IL-1β)はもとより、天然型タンパク質においてアミノ酸配列1個だけ異なっても、天然型タンパク質とは異なる物理化学的特性を示すタンパク質安定化製剤において、安定性アプローチに対する固有解法が必要とされる。
【0048】
本発明の液状製剤は、天然型hG-CSFまたは17Ser-G-CSFと比較し、さらなるアミノ酸変形を有した17,65 Ser-G-CSFを含むエフラペグラスチムに対し、高濃度条件下においても、高い安定性を示すことができるという点に技術的特徴がある。
【0049】
本明細書において、用語「高濃度」は、治療学的使用に有利な効果を増大させることができる程度の用量を意味する。例えば、高濃度のエフラペグラスチムは、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL9mg/mL10mg/mL11mg/mL12mg/mL13mg/mL14mg/mL15mg/mL16mg/mL17mg/mL18mg/mL19mg/mLまたは20mg/mL以上の濃度で製剤内に含まれるものでもある。具体的には、高濃度のエフラペグラスチムは、6mg/mLないし150mg/mL、10mg/mLないし150mg/mL、11mg/mLないし150mg/mL、10mg/mLないし100mg/mL、11mg/mLないし100mg/mL、10mg/mLないし80mg/mL、11mg/mLないし70mg/mL、12mg/mLないし70mg/mL、14mg/mLないし70mg/mL、11mg/mLないし66mg/mL、12mg/mLないし66mg/mL、13mg/mLないし66mg/mL、14mg/mLないし66mg/mL、15mg/mLないし66mg/mL、16mg/mLないし66mg/mL、17mg/mLないし66mg/mL、18mg/mLないし66mg/mL、19mg/mLないし66mg/mL、または20mg/mLないし66mg/mLの濃度で製剤内に含まれるものでもある。
【0050】
本明細書において、用語「安定している」は、タンパク質保存時、その物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的安定性を実質的に保有することを意味しうる。典型的には、一定時間の間、特定保存条件下において、活性成分の損失が、特定量未満、例えば、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満または3%未満である場合、そのような製剤は、安定していると理解される。
【0051】
エフラペグラスチムの濃度及び残存率
前述のところのように、エフラペグラスチムの濃度上昇は、残存率に否定的な影響を及しうる。また、エフラペグラスチムは、天然型hG-CSF対比で、さらなる突然変異体であるという側面において、残存率に非予測性の影響を及しうる。そのために、前記液状製剤の安定性は、タンパク質薬物の凝集体(aggregate)形成を主要因子にしても評価される。タンパク質薬物は、剪断応力が与えられたり、他の物理的または化学的な環境が与えられたりすれば、凝集体を形成することになり、そのような凝集体形成は、効能低減のような生体利用率低下に影響を与える因子あるために、液状製剤の開発に考慮される主要構成要素である。
【0052】
一具体例による液状製剤は、23ないし27℃、及び55ないし65% RH(relative humidity)において、RP-HPLC(reversed-phase high-performance liquid chromatography)またはSE-HPLC(size exclusion-high performance liquid chromatography)による測定時、4週間保存試験後のタンパク質(例えば、エフラペグラスチム)の残存率が、95%以上、96%以上、97%以上または98%以上のものでもある。このとき、前記残存率は、初期のタンパク質純度対比で、特定時点純度の相対的な比率を称するものであり、液状製剤内タンパク質(例えば、エフラペグラスチム)のn週目残存率は、数式2によっても定義される。
数式2
n週目残存率(%)=n週目純度値/初期純度値x100
【0053】
一具体例において、前記RP-HPLC測定は、液状製剤試料に対し、適切なカラム(例えば、C4カラム(粒子サイズ5μm、内径(interior diameter)X長さ(length):4.6mmX250mm))でもって、40ないし80℃条件で測定されたものでもある。HPLC条件を要約すれば、0.5ないし2.0mL/min流速(望ましくは、1.0ml/min)を有するeluent linear gradientシステムを使用することができ、移動相Aは、0.05ないし1.0%トリフルオロアセトサン(望ましくは、0.1%)、及び10ないし40%アセト二トリル(望ましくは、20%)を含み、移動相Bは、0.05ないし1.0%トリフルオロアセトサン(望ましくは、0.1%)、及び60ないし95%アセト二トリル(望ましくは、80%)を含むものでもある。また、探知器は、214nmに設定されたものでもある。
【0054】
一具体例において、前記SE-HPLC測定は、液状製剤試料に対し、適切なカラム(例えば、Protein LW-803カラム(粒子サイズ5μm、内径(interior diameter)X長さ(length):8.0mmX300mm))で測定されたものでもある。HPLC条件を要約すれば、0.3ないし1.2ml/min流速(望ましくは、0.6ml/min)を有するisocratic gradientシステムを使用することができ、移動相は、10ないし10mMリン酸ナトリウム、50ないし300mM塩化ナトリウム、または1ないし15%イソプロピルアルコールを含むものでもある。また、探知器は、214nmに設定されたものでもある。
【0055】
例えば、本明細書の液状製剤は、前述のところのような条件において、タンパク質薬物の初期純度の95%以上、96%以上、97%以上または98%以上が凝集体または分解物を生成せず、モノマー形態に維持される。言い換えて表現すれば、本明細書の液状製剤は、前述のところのような条件において、タンパク質薬物の初期含量の5%以下、例えば4%以下または3%以下が凝集体形態または分解物形態に変換される。
【0056】
一般的には、4週間保存試験後の加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、タンパク質(例えば、エフラペグラスチム)の残存率が95%ほど維持される場合、そのような製剤は、安定していると理解される。4週間保存試験後の加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、タンパク質の残存率が97%以上維持される場合、そのような製剤は、すぐれた安定性を有すると理解される。4週間保存試験後の加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、タンパク質の残存率が98%以上維持される場合、そのような製剤は、非常にすぐれた安定性を有すると理解される。
【0057】
特定理論に拘束されるものではないが、本明細書の液状製剤が、高濃度のエフラペグラスチムを含むことにより、タンパク質間の相互作用により、長期保存後のエフラペグラスチムの残存率が上昇されうる。また、hG-CSF変異体の具体的なアミノ酸配列も、残存率上昇に影響を与えることができ、それは、電荷を有したアミノ酸の静電気的結合や化学構造に起因するアミノ酸産間の相互作用によるものと見られる。
【0058】
前記製剤の安定性のために、前記エフラペグラスチム及び緩衝物質以外に、本発明の液状製剤の効果を損傷させない範囲内において、当業界に公知されているその他の成分ないし物質が、液状製剤に選択的にさらに含まれるものでもある。
【0059】
安定化剤
一具体例において、前記液状製剤は、安定化剤を含むものでもある。
【0060】
用語「安定化剤」は、安定性を改善させるか、あるいは向上させる賦形剤を意味しうる。前記安定化剤の例は、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、トレハロース、スクロース、ラフィノース、マルトース、ベンジルアルコール、ビオチン、亜硫酸水素塩化合物、ボロン化合物、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸及びそのエステル、カロテノイド、クエン酸カルシウム、アセチル-L-カミチン、キレート化剤、コンドロイチン、クロミウム、クエン酸、補酵素Q-10、システイン、システインヒドロクロリド、3-デヒドロシキミ酸(DHS)、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸、エデト酸二ナトリウム)、ビタミンA及びそのエステル、ビタミンB及びそのエステル、ビタミンC及びそのエステル、ビタミンD及びそのエステル、ビタミンE及びそのエステル、例えば、ビタミンEアセテート、亜鉛、及びそれらの任意の配合物が含まれる。前記安定化剤は、前記液状製剤に対し、0.2ないし30%(w/v)、0.5ないし30%(w/v)、0.5ないし20%(w/v)、0.5ないし10%(w/v)、1ないし30%(w/v)、1ないし25%(w/v)、1ないし20%(w/v)、1ないし15%(w/v)、2ないし20%(w/v)、2ないし15%(w/v)、または2ないし10%(w/v)で含まれるものでもある。
【0061】
一具体例において、前記安定化剤は、アルブミンが実質的に含有されていない安定化剤である。タンパク質の安定化剤に利用されうるヒト血清アルブミンは、人体の血液から製造されるので、ヒト由来の病原性ウイルスによる汚染可能性が存在し、ゼラチンや牛血清アルブミンは、疾患を引き起こすか、あるいは一部患者の場合には、アレルギー反応を誘発する可能性がある。本明細書のアルブミン非含有安定化剤は、ヒト由来または動物由来の血清アルブミン、または精製されたゼラチンなどの異種タンパク質を含まず、ウイルス感染の憂いがないのである。
【0062】
本明細書において、「実質的に含んでいない(substantially does not comprise)」は、言及された物質が、組成物の製剤または活性、あるいは製剤の特性または活性に寄与しないほどに含まれるか、あるいは全く含まれないものを意味する。
【0063】
特定理論に拘束されるものではないが、前述のところのような製剤の安定性を改善させる役割を行うことがができる。従って、特定含量のそれら物質の使用によって変化された物理的または化学的な環境により、エフラペグラスチムの残存率は、変化することになる。
【0064】
界面活性剤
一具体例において、前記液状製剤は、界面活性剤を含むものでもある。
【0065】
本明細書において、用語「界面活性剤」は、一般的に、空気/溶液界面誘導された変形力及び溶液/表面誘導された変形力からタンパク質を保護する製剤を含む意味でもある。例えば、該界面活性剤は、タンパク質を凝集から保護することができる。適する界面活性剤には、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80を含むものでもある。また、該界面活性剤の例としては、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー188、ツイン、例えば、ツイン20及びツイン80、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、トリトンX-100、Brij30、またはBrij35を含むものでもある。
【0066】
ポリソルベート系非イオン性界面活性剤が全体溶液対比で、最終濃度5%(w/v)を基準に、それ以上である場合、エフラペグラスチムを含む液状製剤の安定性に相当な影響を与え、前記安定性評価尺度として、残存率が適用されうる。例えば、4週間保存試験後の加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、タンパク質の残存率が97%以上維持される場合、そのような製剤は、すぐれた安定性を有すると理解される。
【0067】
なお、ヨーロッパで最初に許容された以後、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤は、薬学/化粧品分野において、添加剤として広く使用されるが、最近、人体に否定的な影響を示すという一部報告がある。例えば、ポリソルベート80を人体に注入したとき、アナフィラキシー(anaphylaxis)を誘発するという報告がある(Palacios Castano MI et al., Anaphylaxis Due to the Excipient Polysorbate 80, 2016)。従って、タンパク質薬物の安定性に影響を与えず、注入時、患者不快感(discomfort)を誘発しない範囲内において、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度を調節する必要があり、液状製剤製造工程過程中、不可避的にポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度が高くなることを技術的に防止する必要がある。
【0068】
一具体例において、前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤は、全体溶液対比で、最終濃度として、0.0001ないし5%(w/v)、0.0001ないし0.5%(w/v)、0.0001ないし0.05%(w/v)、0.0001ないし0.005%(w/v)、0.0001ないし0.0005%(w/v)、0.001ないし5%(w/v)、0.001ないし0.5%(w/v)、0.001ないし0.05%(w/v)、0.001ないし0.005%(w/v)、0.01ないし5%(w/v)、0.01ないし0.5%(w/v)、0.01ないし0.05%(w/v)、0.1ないし5%(w/v)、または0.1ないし0.5%(w/v)で含まれることができ、例えば、0.0001ないし4.5%(w/v)、0.0001ないし0.45%(w/v)、0.0001ないし0.045%(w/v)、0.0001ないし0.0045%(w/v)、0.0001ないし0.00045%(w/v)、0.001ないし4.5%(w/v)、0.001ないし0.45%(w/v)、0.001ないし0.045%(w/v)、0.001ないし0.0045%(w/v)、0.01ないし4.5%(w/v)、0.01ないし0.45%(w/v)、0.01ないし0.045%(w/v)、0.1ないし4.5%(w/v)、または0.1ないし0.45%(w/v)で含まれるものでもある。
【0069】
本明細書において、用語「最終濃度(final concentration)」は、記述された濃度(stated concentration)と区分される概念であり、実質的に液状製剤内に含まれる実際濃度(actual concentraion)を意味する。例えば、液状製剤の製造において、緩衝物質の交換後、目標とする濃度までエフラペグラスチムを濃縮する過程において、前記溶液内界面活性剤の最終濃度は、記述された濃度よりさらに高くなりうる。例えば、界面活性剤として、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を使用する実施例においては、記述された濃度が0.005%(w/v)である場合には、ポリソルベート系界面活性剤がエフラペグラスチムと共に濃縮され、製剤内のその実際濃度または最終濃度は、0.005%(w/v)の最小1,000倍を超えうる。例えば、エフラペグラスチムではない顆粒球コロニー刺激因子結合体を含む液状製剤を記載した大韓民国登録特許公報第10-1340710号(公開日付2013.12.12.)の実施例に記載された0.005%(w/v)または0.01%(w/v)のポリソルベート80の最終濃度(すなわち、実際濃度)は、最小5%(w/v)または10%(w/v)を超えうる。それに反し、本明細書において、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の最終濃度を0.005%(w/v)と表示する場合は、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を実質的に含んでいない緩衝物質で交換、例えば、透析濾過を使用して交換した後、目標エフラペグラスチム濃度まで緩衝物質の濃縮を終えた後、0.005%(w/v)濃度になるまで、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を0.005%(w/v)にスパイキング(spiking)して得た製剤であるということを意味する。従って、一具体例による前記液状製剤は、精製カラムを利用し、前処理されたものであるか、あるいは前記前処理された液状製剤を、前記ポリソルベート系非イオン性界面活性剤を実質的に含まない緩衝物質で交換した後、濃縮したものでもある。それにより、特定理論に制限されることなしに、本明細書の液状製剤は、従来の液状製剤に比べ、高濃度でありながら、凝集可能性が高い非天然タンパク質を含む液状製剤の、顕著な製剤の安定性及び改善された任意の特性を提供しうる。
【0070】
張性改質剤
一具体例において、前記液状製剤は、張性改質剤を含むものでもある。
【0071】
本明細書で使用された用語「張性(tonicity)改質剤」は、液体製剤の張性を調整するために使用されうる化合物または化合物らを意味しうる。
【0072】
張性改質剤は、薬学的に許容可能な塩、糖類、及びアミノ酸によってなる群のうちから1種以上選択されたものでもある。具体的には、前記張性改質剤は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどによってなる群のうちから選択された1種以上でもあり、さらに具体的には、塩化ナトリウムなどでもある。また、前記張性改質剤は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類によってなる群のうちから選択された1種以上でもあり、例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、ラクトース、デキストランなどによってなる群のうちから選択された1種以上でもある。また、前記張性改質剤は、プロリン、アラニン、アルギニン(例えば、L-アルギニン)、アスパラギン、アスパラギン酸(例えば、L-アスパラギン酸)、グリシン、セリン、リシン、ヒスチジンなどによってなる群のうちから選択された1種以上でもある。
【0073】
本明細書の製剤の安定化のための前記張性改質剤の濃度は、前記浸透圧範囲を維持または調節することができる量でもあり、例えば、1ないし600mM、5ないし600mM、5ないし400mM、5ないし300mM、10ないし400mM、10ないし300mM、10ないし200mM、20ないし400mM、20ないし200mM、30ないし400mM、30ないし200mM、50ないし600mM、50ないし400mM、80ないし400mM、80ないし200mM、100ないし400mM、100ないし300mM、または100ないし200mMでもある。
【0074】
張性改質剤は、下記で後述されるように、適切な浸透圧を提供するのに十分な量で添加されうる。
【0075】
緩衝物質及びpH
本明細書において、用語「緩衝物質」は、水溶液に添加するとき、酸またはアルカリを添加する場合、または溶媒に希釈する場合、pHの変化に対して溶液を保護することができる1種以上の成分を意味しうる。前記緩衝物質は、製剤の安定化のための組成物のpHを特定範囲にすることができる全ての物質、例えば、有機酸バッファまたは無機酸バッファ、例えば、有機酸、無機酸、あるいは有機酸または無機酸の塩でもある。さらに詳細には、前記緩衝剤は、コハク酸、酢酸、クエン酸、ヒスチジン、リン酸、グリシン、乳酸、トリス、ビストリスなどによってなる群のうちから選択された1種以上の有機酸または無機酸、あるいは前記有機酸または前記無機酸のナトリウム塩、スクシネート、アセテート、シトレート、ホスフェート、ラクテートなどによってなる群のうちから選択された1種以上でもある。さらに詳細には、前記緩衝物質の例は、アルカリ塩(酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム、またはそれらの水素塩または二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸を含め、当業界に公知された任意の他の製薬上許容可能なpH緩衝物質を含むものでもあり、それらの混合物も使用されうる。
【0076】
一具体例において、前記緩衝物質の濃度は、5ないし100mM、5ないし80mM、10ないし80mM、10ないし60mM、10ないし50mM、または15ないし25mMでもある。
【0077】
一具体例において、前記液状製剤の特定pH範囲は、4ないし8、5ないし8、5ないし7、または5ないし6、具体的な実施例において、5.5でもある。
【0078】
前記緩衝物質は、水のような液状媒質に溶解され、pHは、4ないし8、5ないし8、5ないし7、または5ないし6である溶液状態で使用されうる。
【0079】
浸透圧
さまざまな文献を総合し、薬物の浸透圧は、300±30mOsm/kgにも調節されるが、多様な賦形剤が使用されなければならないために、技術産業上、高張性溶液に製造されもする。静脈内投与または血管内投与において、浸透圧の上限は、一般的に1,000mOsm/kgを超えないことが提案され、血清の浸透圧は、約285mOsm/Lであるために、浸透圧の下限は、一般的に、100mOsm/Lまたは200mOsm/Lを超えることが提案される。従って、一般的に、患者は、100ないし1,000mOsm/kg、200ないし1,000mOsm/kg、100ないし800mOsm/kg、または200ないし800mOsm/kgに耐えることができると予想される。一具体例において、すぐれた安定化効果を示すための液状製剤の浸透圧は、400ないし800mOsm/kgでもある。
【0080】
なお、浸透圧は、当該技術分野に知られた測定方法及び測定機器を利用して測定することができる。
【0081】
特定理論に拘束されるものではないが、本明細書の液状製剤の浸透圧は、エフラペグラスチムの濃度に影響を受けるか、あるいは追加して含まれるものでもある安定化剤や張性改質剤の濃度に影響を受けると推測されている。本明細書の液状製剤が、一定濃度範囲のエフラペグラスチム、及び/または特定アミノ酸配列を有するhG-CSF変異体によって安定性が増大されることにより、従来の液状製剤の組成と比較し、安定性に影響を与えうる液状製剤の組成を、さらに柔軟に調節することができる。それにより、発明の効果を達成するための液状製剤の浸透圧を有するための組成を、さらに柔軟に調節することができる。例えば、液状製剤の安定性のために追加して含まれるものでもある安定化剤または張性改質剤の濃度を相対的に低くし、浸透圧を調節することができる。
【0082】
伝導度
他の具体例において、本明細書の製剤は、伝導度(conductivity)が20mS/cm、19mS/cm、18mS/cm、17mS/cm、16mS/cmまたは15mS/cm以下のものでもある。前述の引用された数値の中間範囲、例えば、1ないし20mS/cmは、本発明に含まれると意図される。例えば、上限値及び/または下限値として、前述の引用された数値の組み合わせを使用する数値範囲は、含まれると意図される。また、引用された数値に含まれる数値、例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20mS/cmなども、本明細書に含まれる。
【0083】
本明細書に使用された用語「伝導度」は、水溶液が、2個電極間において電流を伝導させる能力を意味する。一般的に、電気伝導度及び比(specific)伝導度は、電流を伝導する物質能の尺度である。溶液において、電流は、イオン輸送によって流れる。従って、水溶液中に存在するイオン量が増加することにより、溶液は、さらに高い伝導度を有するのである。伝導度の測定単位は、mmhos(mS/cm)であり、市場で販売される伝導度測定器を使用して測定することができる。
【0084】
最大滑走力及び粘度
本明細書において、用語「最大滑走力(MGF:maximum gliding force)」は、注射器を利用して薬物を投与するときに加えられる最大力を意味し、製剤の粘度、注射速度、及び注射器特性に影響を受ける。また、タンパク質製剤の流動学的特性は、タンパク質の濃度によって影響を受けることになる。また、29G以上の細いニードルは、実質的に最大滑走力を増大させる。結局、高濃度のタンパク質による凝集現象、及びそれによる粘度増大は、最大滑走力の増大を起こし、最大滑走力低減のために、29G未満のニードルによって投与しなければならない場合が生じ、それは、患者に不快感を起こさせてしまう。一般的に、患者は、15Nないし20Nほどの最大滑走力に耐えることができると報告されている(Development of Syringeability Guide for Subcutaneous Protein Formulations, L. Joseph et al., Pfizer Global Research & Development, 2010)。
【0085】
一具体例において、治療的効果のために、十分な高濃度のエピルラペグラスティムを含みながらも、液状製剤を、29ケージの注射器でもって、2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力が、7N、6N、5N、4Nまたは3N以下でもある。また、液状製剤を、29ケージの注射器でもって、4.725mm/s速度で投与するとき、最大滑走力が、10N、9N、8N、7N、6N、5N、4N、3.5Nまたは3N以下でもある。最大滑走力は、当該技術分野に公知された滑走力(gliding force)測定装置を利用して測定することができ、例えば、DAEGO TRADING CO.(ソウル・韓国)で販売しているレオメータ(rheometer)を利用して測定することができる。一具体例において、本明細書の液状製剤は、20℃ないし25℃の常温において、粘度(viscosity)が10cP、9cP、8cP、7cP、6cP、5cP、4cP、3cP、3.5cP、3cP、2.5cPまたは2cP以下でもある。粘度は、当該技術分野に知られた測定方法及び測定機器を利用して測定することができる。
【0086】
前述のところのように、最大滑走力は、製剤の粘度によって影響を受け、粘度、すなわち、タンパク質製剤の流動学的特性は、濃度によって影響を受けることになる。従って、前記最大滑走力は、タンパク質薬物(エフラペグラスチム)の残存率、濃度、または緩衝物質によって影響を受け、また追加して含まれるものでもある界面活性剤、安定化剤または張性改質剤によっても影響を受けうる。
【0087】
患者親和製剤
タンパク質薬物の場合、治療効果のために、高濃度に剤形化されることが要求されるが、一般的に、凝集、不溶性、劣化などの問題は、タンパク質濃度が上昇することによって増大されるという問題がある。従って、薬剤学的タンパク質製剤において、任意の副作用を制限しながら、安定性及び治療的要件を向上させるために、成分と濃度との均衡を合わせることが、当業界で解決されなければならない技術的課題中の一つである。そのために、本明細書は、高濃度の活性成分を含みながらも、製剤の安定性及び溶解度が高い製剤を製造することができた。そのような治療学的使用のためのタンパク質製剤の本明細書の驚くべき進歩以外にも、そのようなタンパク質薬物の液状製剤を個体に投与するとき、投与部位における刺激(irritation)/痛症(pain)及び不快感は、相変らず解決されなければならない課題として残っている。
【0088】
浸透圧、及び投与部位刺激/痛症
組織と細胞とにおける浸透圧変化は、人体において危険な信号と感知され、樹枝状細胞を活性化させ、免疫反応と炎症反応とを刺激する(Gallo and Gallucci, 2013)。ヒト幼児の消化管における高張性は、懐死性結腸炎(necrotizing colitis)を起こしうると報告されている(Atakent et al., 1984)。痛症受容体の存在が、注射を含む多様なイベントによって誘発される痛症を感じることの原因ということは、すでに周知されている。末梢の苦痛に対する感覚は、痛覚受容器と呼ばれる求心性繊維(感覚神経繊維)を介して媒介される(Brazeau at al., 1998)。機能的には、該痛覚受容器は、2個の主要タイプに分類されるが、化学物質に反応する多類刺激受容器(polymodal nociceptor)と、機械的、熱的な刺激に反応する機械的熱的刺激受容器(mechanothermal nociceptor)がある。そのために、痛覚受容器の痛症に対する感度は、化学物質の種類だけではなく、注入位置、注入速度、注入ボリュームにも依存する。高張性溶液(または、保存性溶液)は、細胞から水を外に引き出すことができ(または、細胞への水吸収を起こすことができる)、compression(または、stretch)-sensitive channelを活性化させて苦痛を起こす。
【0089】
最大滑走力及び粘度、並びに患者不快感(uncomfortablness)
注入ボリューム(注射時の薬物注入ボリューム(injection volume))を少なくすること、及び保存空間を確保することにつき、さらに高濃度のタンパク質製剤が関心を集めている。高濃度のタンパク質製剤の開発は、安定性、製造、供給につき、いくつかの現実的な問題点が存在し、それらは、タンパク質が高濃度で凝集する傾向があることに起因する。高濃度のタンパク質製剤の物理的な物性は、それらを容易に移入させるための能力に影響を与え、そのような高濃度の溶液は、折々高粘度を示し、注射器針を溶液が通過することができなくように阻んでしまう。そのために、物質粘度とタンパク質濃度は、相関関係を有し、高濃度のタンパク質製剤であるほど粘度が高く、患者に不快感を引き起こす。従って、タンパク質製剤の濃度上昇及び粘度低下を介し、治療的効果を高めながら、患者の受容性をさらに高くすることができる製剤の開発は、タンパク質製剤の設計において、進歩した発展を提示する。
【0090】
最大滑走力を低減させ、治療的効果を高めるために、さらに細いニードルでタンパク質製剤を投与するためには、高濃度のタンパク質を含みながら、凝集現象が少なくなければならならず、粘度が低くなければならないが、互いに相反する数値(高濃度タンパク質及び低粘度)を解決しなければならない。
【0091】
患者親和度(PF:patient friendly)指数
前述のところのように、高濃度タンパク質製剤の生成は、乳白光、凝集及び沈澱と係わり、相当な問題を誘導してしまう。非天然タンパク質凝集及び微粒子形成の可能性以外に、可逆的自家結合が生じ、それは、注入による供給を複雑にさせる粘度増大、及びその他特性を生成してしまう。高粘度は、また濾過方式による高濃度タンパク質の製造を複雑にさせてしまう。そのために、製剤の安定性が高く、患者親和的な製剤の開発は、多様な因子が、注意深く複合的に考慮されなければならない。すなわち、製剤の安定性と係わる因子である残存率は、安定化剤、界面活性剤によって影響を受け、それは、さらに物質の粘度に影響を及ぼし、最大滑走力に影響を及ぼす。また、浸透圧は、張性改質剤と緩衝物質とによって影響を受け、それは、伝導度に影響を及ぼしうる。
【0092】
一具体例において、本明細書は、特定範囲の下記数式1の患者親和指数を満足する液状製剤を提供する;
数式1
PF(patient friendly)指数=Osm(mOsm/kg)/100+MGF(N)
数式1で、Osmは、液状製剤の浸透圧(osmolarity)の数値であり、MGFは、29ケージの注射器でもって、液状製剤を2.835mm/s速度で投与するとき、最大滑走力(maximum gliding force)の数値である。
【0093】
前記患者親和指数は、適正浸透圧及び適正最大滑走力の数値を考慮したとき、10以下でもある。もし前記患者親和指数が10を超える場合、体液との浸透圧差、及び/または高い最大滑走力により、患者の不快感が急激に増大してしまう。また、前記患者親和指数は、適正浸透圧及び適正最大滑走力の数値を考慮したとき、3以上でもある。もし前記患者親和指数が3未満である場合、それは、また体液との浸透圧差、及び/または低い最大滑走力により、患者の不快感が急激に増大してしまう。
【0094】
具体的には、液状製剤の患者親和指数は、3ないし10、5ないし10、6ないし10、または6ないし9でもある。粘度によって影響を受ける最大滑走力が、少なくとも1N以上である場合がほとんどであることを考慮したとき、浸透圧が1,000mOsm/kgである場合、患者親和指数が10を超えるために、患者親和注入が困難になってしまう。また、最大滑走力がほとんど1N以上である場合がほとんどであることを考慮したとき、浸透圧が200mOsm/kg未満である場合、患者親和指数が3を超えないために、患者親和注入が困難になってしまう。
【0095】
従って、前記患者親和指数の範囲内に入る液状製剤は、高濃度のタンパク質製剤の考慮された低い粘度、低い滑走力、及び適正浸透圧の範囲を有するために、前述のところで言及されたような技術的課題を解決することにより、高い剤形安定性有しながら、患者親和注入が可能である。
【0096】
本発明の液状製剤は、11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、及び5ないし100mM濃度の緩衝物質を含むものでもあるか、あるいは11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度の緩衝物質、及び0.001ないし5%(w/v)濃度のポリソルベート系非イオン性界面活性剤を含むものでもある。また、本発明の液状製剤は、11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度の緩衝物質、1ないし20%(w/v)濃度の安定化剤、0.001ないし5%(w/v)濃度の界面活性剤、及び5ないし200mM濃度の張性改質剤を含むものでもある。例えば、本発明の液状製剤は、11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、及び5ないし100mM濃度のクエン酸ナトリウムを含むものでもあるか、あるいは11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度のクエン酸ナトリウム、及び0.001ないし5%(w/v)濃度のポリソルベート80を含むものでもある。また、本発明の液状製剤は、11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度のクエン酸ナトリウム、1ないし20%(w/v)濃度のマンニトール、0.001ないし5%(w/v)濃度のポリソルベート80、及び5ないし200mM濃度の塩化ナトリウムを含むものでもあるか、あるいは11ないし66mg/mL濃度のエフラペグラスチム、5ないし100mM濃度のクエン酸ナトリウム、1ないし20%(w/v)濃度のマンニトール、0.001ないし0.5%(w/v)濃度のポリソルベート80、及び5ないし200mM濃度の塩化ナトリウムを含むものでもある。
【0097】
本発明の液状製剤の注入ボリュームは、投与部位の刺激/苦痛、または患者不快感の最小化を考慮し、適切に調節されうる。例えば、該液状製剤は、0.2ないし1.2mLの注入ボリュームを有しうる。
【0098】
さらに他の態様は、前記液状製剤を含む製造物品を提供する。
【0099】
本明細書の他の実施例において、薬物製品を含み、その使用に係わる指示事項を提供する製造物品が提供される。該製造物品は、容器を含む。適する容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器及び試験チューブを有しうる。該容器は、ガラス、プラスチックまたは金属のようなさまざまな物質からも形成される。
【実施例
【0100】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0101】
実施例1.患者親和注入可能(patient friendly injectable)液状製剤の分析
本実施例においては、製剤投与時、患者に影響を及ぼす前述の製造された製剤のさまざまな変数を活用し、最終液状製剤の患者親和注射製剤を導き出すものである。そのために、前述のところのように、浸透圧の適正数値は、「Tolerability of hypertonic injectables, Wei Wang, International Journal of Pharmaceutics 490 (2015) 308-315」及び「Tonicity Agents Clarity - American Pharmacists Association」の記載を基に、本発明の製剤に適用し、100ないし1,000mOsm/kg、または望ましくは、200ないし1,000mOsm/kgに決定された。最大滑走力の適正数値は、「Development of Syringeability Guide for Subcutaneous Protein Formulations, L. Joseph et al., Pfizer Global Research & Development, 2010」の記載を参照し、5N以下に算定した。
【0102】
それら数値間における相互補完性を考慮し、媒介変数を導入し、それを下記数式1に示した。下記数式1を満足する場合、患者親和度が高い液状製剤を製造することができることを知ることができ、数式1の結果値を、患者親和(patient friendly)指数と命名した。
【0103】
数式1
患者親和(patient friendly)指数=Osm(mOsm/kg)/100+MGF(N)
Osm:液状製剤の浸透圧
MGF:29ケージの注射器でもって、液状製剤を2.835mm/s速度で投与するときの最大滑走力
【0104】
前記患者親和指数は、適正浸透圧及び適正最大滑走力の数値を考慮したとき、3ないし10に決定された。少なくとも最大滑走力が1N以上である場合がほとんどであることを考慮したとき、液状製剤の浸透圧が1,000mOsm/kgを超える場合、患者親和指数が10を超えるために、患者親和注入が困難にもなる。また、少なくとも最大滑走力が1N以上でる場合がほとんどであることを考慮したとき、浸透圧が200mOsm/kg未満である場合、患者親和指数が3を超えないために、患者親和注入が困難にもなる。すなわち、前記患者親和指数が3ないし10である場合、すぐれた患者親和注射製剤であると見なされる。
【0105】
従って、前記患者親和指数の範囲内に入る液状製剤は、高濃度のタンパク質製剤の考慮された低い粘度、低い滑走力、及び適正浸透圧の範囲を有するために、前述のところで言及されたような技術的課題を解決することにより、高い製剤安定性を有しながら、患者親和注入が可能であると見られる。
【0106】
実施例2.液状製剤の安定性分析
高濃度タンパク質製剤における安定性は、4週間保存試験後の残存率を介して測定した。具体的には、液状製剤の残存率を測定するために、加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、4週間保存試験後、エフラペグラスチムの残存率を、RP-HPLC及びSE-HPLCで測定した。前記液状製剤内エフラペグラスチムのn週目残存率は、数式2によって算出された。
数式2
n週目残存率(%)=n週目純度値/初期純度値x100
【0107】
純度は、HPLCによる主ピークの相対的な比率である。
【0108】
HPLCは、Agilent 1200シリーズを使用し、RP-HPLCは、PhenomenexJ upiter C4カラムでもって、60℃条件で測定した。1.0mL/min流速を有する2-eluent linear gradientシステムが使用され、移動相Aは、0.1%トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)を含む20%アセト二トリル(acetonitrile)が使用され、移動相Bは、0.1%トリフルオロ酢酸を含む80%アセト二トリルがそれぞれ使用された。76%移動相Aと、24%移動相Bとによる、最小1時間の初期安定化後、0ないし15分間の24ないし60%移動相B、15ないし48分間の60ないし73%移動相B、48ないし75分間の73ないし100%移動相Bでもって、線形勾配システムで測定した。そして、75ないし85分間の24%移動相Bで再平衡させた。試料注入量は、20μgに設定され、探知器は、214nm波長に設定され、Agilent Chemstation softwareで全過程を調整した。
【0109】
SE-HPLCは、Shodex Protein KW-803カラムでもって、常温条件で測定された。0.6mL/min流速を有するisocratic gradientシステムが使用され、移動相は、50mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、5%イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)が使用された。最小1時間の安定化後、60分間測定し、試料注入量は、20μgに設定され、探知器は、214nm波長に設定され、Agilent Chemstation softwareでもって、全過程を調整した。
【0110】
なお、エフラペグラスチムの物理化学的特性、及びタンパク質製剤分野の一般的な常識を考慮し、4週間保存試験後の加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、エフラペグラスチムの残存率が、下記のように維持される場合、安定性を有すると理解された:
95%以上維持:安定性を有する
97%以上維持:すぐれた安定性を有する
98%以上維持:非常にすぐれた安定性を有する
【0111】
製造例1-46 エフラペグラスチム含有液状製剤の製造
高濃度エフラペグラスチムを含みながら、実施例1及び2で提示する患者親和的であり、剤形安定性を示す液状製剤を設計した。
【0112】
シミュレーション予測により、剤形安定性と患者親和注入とが可能であると見られる製造例1ないし36の液状製剤を製造した。なお、従来の製法により、高濃度のポリソルベート系非イオン性界面活性剤が含有される場合の剤形安定性を知るために、製造例37ないし39の液状製剤を製造した。さらには、患者の不快感引き起こし、または剤形安定性の側面において問題があると予想される製造例40ないし43の液状製剤を製造し、剤形安定性の主な因子であるエフラペグラスチムの残存率に影響を及ぼす因子として、ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度による変化を確認するために、製造例44ないし46の液状製剤を製造した。
【0113】
1.製造例1ないし36
エフラペグラスチムを含む液状製剤は、次のように製造した。
【0114】
まず、22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80の組成に製造された液状製剤を準備した。その後、試料前処理のために、S.Q精製カラム(Source 15Q, GE Healthcare)を利用し、前述の製造された液状製剤のポリソルベート80を除去した。その後、精製プロファイルのうち、最も主な分画のみを回収した。次に、前述の前処理された液状製剤に対し、バッファ交換を濾過法を使用して行った。具体的には、ポリソルベート80を含んでいないバッファにおいて、VivaSpin 20(Sartorius)を使用し、3,700rpmで1時間、総5回バッファ交換を行った。その後、バッファ交換された液状製剤を、ターゲット濃度の2ないし3倍ほどになるように濃縮した。最終体積及びターゲット濃度を考慮し、ポリソルベート80を含んでいないバッファを、前記濃縮された液状製剤に添加した。ターゲット濃度より100倍濃縮されたポリソルベート80ストックを利用し、液状製剤のポリソルベート最終濃度(実際濃度)が0.005%(w/v)になるようにスパイキングし、最終濃度0.005%(w/v)ポリソルベート80を含む液状製剤を製造した。また、製造例2ないし37は、製造例1と同一方法により、製造例1の製剤とは異なる組成に液状製剤を製造した。
【0115】
すなわち、製造例1ないし36の液状製剤の組成は、以下の通りである。
【0116】
[製造例1]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0117】
[製造例2]
11mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0118】
[製造例3]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0119】
[製造例4]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0120】
[製造例5]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、1%(w/v)マンニトール、10mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0121】
[製造例6]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)マンニトール、50mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0122】
[製造例7]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0123】
[製造例8]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0124】
[製造例9]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0125】
[製造例10]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0126】
[製造例11]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0127】
[製造例12]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0128】
[製造例13]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0129】
[製造例14]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0130】
[製造例15]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0131】
[製造例16]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0132】
[製造例17]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0133】
[製造例18]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のソルビトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0134】
[製造例19]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0135】
[製造例20]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0136】
[製造例21]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、5%(w/v)のスクロース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0137】
[製造例22]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0138】
[製造例23]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0139】
[製造例24]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのヒスチジン(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0140】
[製造例25]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0141】
[製造例26]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0142】
[製造例27]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0143】
[製造例28]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、25mMのアルギニン、20mMのヒスチジン、及び0.2%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0144】
[製造例29]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、25mMのアルギニン、20mMのヒスチジン、及び0.2%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0145】
[製造例30]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)のマンニトール、25mMのアルギニン、20mMのヒスチジン及び0.2%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0146】
[製造例31]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート20
【0147】
[製造例32]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート20
【0148】
[製造例33]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、3%(w/v)のプロリン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.01%(w/v、最終濃度)のポリソルベート20
【0149】
[製造例34]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、及び125mMの塩化ナトリウム
【0150】
[製造例35]
44mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、及び125mMの塩化ナトリウム
【0151】
[製造例36]
66mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、及び125mMの塩化ナトリウム
【0152】
2.製造例37ないし39
製造例37の液状製剤は、大韓民国登録特許第10-1340710号を参照して製造され、ただし、大韓民国登録特許第10-1340710号に記載されたhG-CSF変異体アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するhG-CSF変異体を含むエフラペグラスチムを活性成分として使用し、その濃度も異ならせて製造された。
【0153】
具体的には、22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v)(濃縮過程前の濃度)のポリソルベート80を使用して液状製剤を準備した。その後、試料の前処理なしに、即座にバッファ交換を濾過法を使用して行った。具体的には、ポリソルベート80を含むバッファにおいて、VivaSpin 20(Sartorius)を使用し、3,700rpmで1時間、総5回バッファ交換を行った。その後、バッファ交換された液状製剤を、ターゲット濃度の2倍ほどになるように濃縮した。最終体積及びターゲット濃度を考慮し、全ての賦形剤が含まれたバッファで希釈し、最終液状製剤を製造した。前述の製造例37の液状製剤において、前述のポリソルベート80の濃度は、濃縮過程前の濃度であり、下記試験例においては、濃縮過程により、最小5%(w/v(最終濃度))を超えるポリソルベート80が適用された。
【0154】
すなわち、製造例37の液状製剤の組成は、以下の通りである。
【0155】
[製造例37]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0156】
また、製造例38及び39は、製造例37と同一方法により、製造例37の製剤とは異なる組成に、下記のように液状製剤を製造した。
【0157】
[製造例38]
31.5mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0158】
[製造例39]
40mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0159】
3.製造例40ないし43
前述の製造例1の製剤とは組成を異ならせ、前記製造例1と同一方法により、エフラペグラスチムを含む液状製剤を製造した。
【0160】
すなわち、製造例40ないし43の液状製剤の組成は、以下の通りである。
【0161】
[製造例40]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0162】
[製造例41]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、10%(w/v)マンニトール、500mMの塩化ナトリウム及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0163】
[製造例42]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、20%(w/v)グルコース、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0164】
[製造例43]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)ゼラチン、150mMの塩化ナトリウム、及び0.005%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0165】
4.製造例44ないし46
前述の製造例1の製剤とは組成を異ならせ、前述の製造例1と同一方法により、エフラペグラスチムを含む液状製剤を製造した。
【0166】
すなわち、製造例44ないし46の液状製剤の組成は、以下の通りである。
【0167】
[製造例44]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び0.5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0168】
[製造例45]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び2.5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0169】
[製造例46]
22mg/mLのエフラペグラスチム、20mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)、5%(w/v)マンニトール、150mMの塩化ナトリウム、及び5%(w/v、最終濃度)のポリソルベート80
【0170】
試験例1.液状製剤の残存率及び患者親和指数の評価
製造例1ないし6、及び製造例37ないし43の液状製剤を対象に、浸透圧測定、伝導度測定、粘度測定及び最大滑走力測定を実施し、その後、加速条件(25±2℃/60±5% RH)における4週間保存試験後のエフラペグラスチムの残存率を測定した。
【0171】
1.製造例1の液状製剤試験
製造例1の液状製剤の浸透圧は、自動浸透圧計(Gonotec, OSMOMAT auto)を使用して測定し、645mOsm/kgであった。
【0172】
また、製造例1の液状製剤の伝導度は、常温において、伝導度測定器(Compact Conductivity Meter EC33, LAQUAtwin, Horiba)を使用し、製造社の説明によって測定された。その結果、製造例1の液状製剤の伝導度は、14.37mS/cmであった。
【0173】
また、製造例1の液状製剤の粘度は、室温(20ないし25℃)において、Vibration viscometer((A&D, SV-1A)を使用して測定し、粘度値は、1.86cPであった。
【0174】
また、製造例1の液状製剤の最大滑走力は、Rheo Meter(Sun scientific, Compac-100)を使用し、29ケージの注射器(400μLを基準に、長さ22.68mm)でもって、液状製剤を、4.725mm/s速度(500μL/6sec)、及び2.835mm/s速度(500μL/10sec)で投与するときの数値を測定し、Reology Data System Ver 3.0を使用してその値を確認し、その値は、それぞれ3.099N及び2.099Nであった。
【0175】
また、製造例1の液状製剤の残存率を測定するために、加速条件(25±2℃/60±5% RH)において、4週間保存試験後、エフラペグラスチムの残存率を、RP-HPLC及びSE-HPLCで測定した。
【0176】
RP-HPLC及びSE-HPLCで測定されたエフラペグラスチムの残存率を、下記表1に示した。
【0177】
【表1】
【0178】
2.製造例2の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0179】
製造例2の製剤の浸透圧は、643.3mOsm/kgであり、伝導度は、14.80mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、1.39cPであった。また、製造例2の製剤の最大滑走力は、2.648N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに2.285N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0180】
また、前記製造例2の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表2に示されている。
【0181】
【表2】
【0182】
3.製造例3の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0183】
製造例3の製剤の浸透圧は、657.7mOsm/kgであり、伝導度は、13.45mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、2.32cPであった。また、製造例3の製剤の最大滑走力は、3.177N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに2.775N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0184】
また、前記製造例3の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表3に示されている。
【0185】
【表3】
【0186】
4.製造例4の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0187】
製造例4の製剤の浸透圧は、679mOsm/kgであり、伝導度は、12.67mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、3.54cPであった。また、製造例4の製剤の最大滑走力は、3.815N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに2.716N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0188】
また、前記製造例4の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表4に示されている。
【0189】
【表4】
【0190】
5.製造例5の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0191】
製造例5の製剤の浸透圧は、135.3mOsm/kgであり、伝導度は、4.27mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、1.40cPであった。また、製造例5の製剤の最大滑走力は、2.442N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに1.657N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0192】
また、前記製造例5の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表5に示されている。
【0193】
【表5】
【0194】
6.製造例6の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0195】
製造例6の製剤の浸透圧は、334.7mOsm/kgであり、伝導度は、7.49mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、1.50cPであった。また、製造例6の製剤の最大滑走力は、2.746N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに1.285N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0196】
また、前記製造例6の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表6に示されている。
【0197】
【表6】
【0198】
7.製造例37の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製造例37の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表7に示されている。
【0199】
【表7】
【0200】
8.製造例38の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製造例38の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表8に示されている。
【0201】
【表8】
【0202】
9.製造例39の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製造例39の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表9に示されている。
【0203】
【表9】
【0204】
10.製造例40の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0205】
製造例40の製剤の浸透圧は、59.3mOsm/kgであり、伝導度は、3.45mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、1.26cPであった。また、製造例40の製剤の最大滑走力は、2.471N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに1.834N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0206】
また、前記製造例40の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表10に示されている。
【0207】
【表10】
【0208】
11.製造例41の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0209】
製造例41の製剤の浸透圧は、1721.7mOsm/kgであり、伝導度は、31.20mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、2.02cPであった。また、製造例41の製剤の最大滑走力は、2.952N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに1.922N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0210】
また、前記製造例41の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表11に示されている。
【0211】
【表11】
【0212】
12.製造例42の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0213】
製造例42の製剤の浸透圧は、1964.3mOsm/kgであり、伝導度は、10.56mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、2.66cPであった。また、製造例42の製剤の最大滑走力は、7.482N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに5.688N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0214】
また、前記製造例42の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表12に示されている。
【0215】
【表12】
【0216】
13.製造例43の液状製剤試験
前述の試験例1と同一に、製剤の浸透圧、伝導度、粘度、最大滑走力及び残存率を測定した。
【0217】
製造例43の製剤の浸透圧は、316.3mOsm/kgであり、伝導度は、13.38mS/cmであり、室温(20ないし25℃)における粘度値は、64.9cPであった。また、製造例43の製剤の最大滑走力は、7.482N(4.725mm/s速度及び29G注射器)、並びに5.688N(2.835mm/s速度及び29G注射器)であった。
【0218】
また、前記製造例43の製剤の加速条件(25±2℃/60±5% RH)における残存率は、下記表13に示されている。
【0219】
【表13】
【0220】
14.患者親和指数の評価
前述の製造された液状製剤が、数式1に符合するか否かということを確認するために、それぞれの製剤の患者親和指数を計算し、その結果を下記表14に示した。
【0221】
【表14】
【0222】
前述の表1ないし表13に示されているように、高濃度のポリソルベート系非イオン性界面活性剤を含む製造例37ないし39の場合、一部データにおいて、残存率に問題が生じている。また、製造例43の液状製剤においては、深刻な残存率問題を示している。
【0223】
また、前記表14に示されているように、製造例43の場合、適正浸透圧の範囲内であるが、最大滑走力が大きく、依然として患者の苦痛を誘発し、製造例41の場合、適正最大滑走力範囲内であるが、高い浸透圧により、依然として患者の苦痛を誘発しうるものであった。それに反し、一具体例による液状製剤は、適正浸透圧の範囲に入り、最大滑走力の範囲が5N以下であり、患者親和指数が適正範囲である3ないし10以内であることを知ることができた。従って、浸透圧と最大滑走力とを主要因子にする患者親和値が3ないし10である一具体例による液状製剤の場合、患者に苦痛を誘発することなしに、望ましい液状製剤の投与が可能であることを知ることができた。
【0224】
試験例2.ポリソルベート系非イオン性界面活性剤の濃度による液状製剤の残存率評価
製造例1、及び製造例44ないし46の液状製剤を対象に、前述の試験例1と同一方法により、加速条件(25±2℃/60±5% RH)における4週間保存試験後のエフラペグラスチム残存率を測定した。
【0225】
1.製造例1の液状製剤試験
前記製造例1の製剤に係わる加速条件における残存率は、下記表15に示されている。
【0226】
【表15】
【0227】
2.製造例44の液状製剤試験
前記製造例44の製剤に係わる加速条件における残存率は、下記表16に示されている。
【0228】
【表16】
【0229】
3.製造例45の液状製剤試験
前記製造例45の製剤に係わる加速条件における残存率は、下記表17に示されている。
【0230】
【表17】
【0231】
4.製造例46の液状製剤試験
前記製造例46の製剤に係わる加速条件における残存率は、下記表18に示されている。
【0232】
【表18】
【0233】
図1及び図2は、一実施例による液状製剤において、界面活性剤の濃度によるエフラペグラスチムの残存率変化を確認した結果である。前述の図1及び図2に示されているように、界面活性剤の濃度は、一実施例による液状製剤の残存率と高い相関関係を示しており、そのような実験結果は、前記界面活性剤の濃度が、高濃度のエフラペグラスチムを含む液状製剤の残存率に影響を及ぼす主な因子であるということを示すものである。
【0234】
以上の結果から、一具体例による液状製剤は、既存の液状製剤と、成分含量と製造方法とが異なっており、それにより、高濃度の活性成分を含みながらも、剤形安定性(例えば、残存率)が高いだけではなく、患者親和数値が高く、患者に苦痛を誘発することなしに、投与が可能であるということを知ることができる。
【0235】
本明細書に記載される実施例は、説明的な意味においてのみ考慮されるものであり、限定を目的とするものではないということが理解されなければならない。それぞれの実施例内の特徴または態様の説明は、典型的には、他の実施例における他の同様の特徴または態様に利用可能であるとされるものである。1または複数の実施例が図面を参照して説明されたにしても、以下の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部におけるさまざまな変更が、そこにおいてなされうるということが、当業者には、理解されるであろう。
図1
図2
【国際調査報告】