IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アボット・ダイアグノスティックス・スカボロー・インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ヤング,カイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】磁性粒子空気移送
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240129BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240129BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240129BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240129BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12N15/10 114Z
G01N1/10 C
G01N1/28 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546032
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022014422
(87)【国際公開番号】W WO2022165257
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,494
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520474495
【氏名又は名称】アボット・ダイアグノスティックス・スカボロー・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523285627
【氏名又は名称】ヤング,カイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフス,オースティン・エム
(72)【発明者】
【氏名】クマラバディベル,カーシキーヤン
(72)【発明者】
【氏名】クルート,エイドリアン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ダレン・エス
(72)【発明者】
【氏名】トバル,アルマンド・アール
(72)【発明者】
【氏名】コバヤシ,トモコ
(72)【発明者】
【氏名】コモリ,トモタカ
(72)【発明者】
【氏名】ワダ,ヨシコ
(72)【発明者】
【氏名】オリカサ,マサト
(72)【発明者】
【氏名】ヨシムラ,トオル
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA24
2G052CA03
2G052CA07
2G052EB12
2G052ED04
2G052GA09
2G052GA29
2G052JA08
2G052JA11
4B029AA21
4B029BB01
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG08
4B029GB02
4B063QA01
4B063QA11
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR83
4B063QS10
4B063QS12
(57)【要約】
本明細書に開示される試料調製のための方法は、空気相を利用して、核酸に結合した磁性粒子と関連する水相を低減し、細胞デブリ、カオトロピック剤、非特異的に付着した分子などのような、1つ以上の汚染物質のキャリーオーバーを減少させる。この空気移送ステップは、磁性粒子の第1の集団と磁性粒子の第2の集団との組み合わせを使用することによって改善され、磁性粒子の第1の集団は、核酸と会合することが可能であり、第2の集団内の磁性粒子は、第1の集団内の磁性粒子のサイズよりもサイズが少なくとも2倍大きい。本明細書で考察されるように、磁性粒子のこの第2の集団の使用は、移送中の第1の磁性粒子の損失を低減することによって、磁性粒子の第1の集団の移送を改善する。試料調製方法は、半自動であるか又は完全に自動化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分析物を含むか、又は含む疑いのある試料を処理するための方法であって、
試料を、試料処理カートリッジの第1の領域において水相中の磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団と接触させることであって、
磁性粒子の前記第1の集団が、前記標的分析物と会合することが可能であり、
前記第2の集団内の前記磁性粒子が、第1の集団内の前記磁性粒子よりもサイズが少なくとも2倍大きい、接触させることと、
前記磁性粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を、前記第1の領域における前記水相から、前記カートリッジの第2の領域における空気相に輸送することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の集団内の前記磁性粒子が、500nm~10umの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の集団内の前記磁性粒子が、前記第1の集団内の前記磁性粒子の前記直径の2倍~20倍である直径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を、前記第2の領域における前記空気相から、前記カートリッジの第3の領域における水相に輸送することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁力を加えることが、前記磁性粒子を、前記第1の領域におけるエリアに凝集させ、前記エリアが、前記磁力の源に隣接しており、前記輸送することが、前記凝集された磁性粒子に対する前記磁力を維持することと、前記凝集された磁性粒子を、前記カートリッジの前記第2の領域における前記空気相に移動させることと、前記凝集された磁性粒子を、前記カートリッジの前記第3の領域における前記水相に移動させることと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を輸送することが、前記カートリッジの異なる領域に対して、前記磁力を発生させる磁石を移動させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を輸送することが、前記磁力を発生させる磁石に対して、前記カートリッジ又はその一部分を移動させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カートリッジが、実質的に平面的であるか又は実質的に円筒形である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カートリッジが、実質的に平面的であり、第2のプレートから離間して配置された第1のプレートを備え、前記第1のプレート及び前記第2のプレートが、互いに対して静止位置に保持されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カートリッジが、実質的に平面的であり、第2のプレートから離間して配置された第1のプレートを備え、前記第1のプレート及び前記第2のプレートは、前記プレートが離間して摺動可能な構成で保持されるように、互いに対して移動可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記カートリッジが、実質的に平面的であり、別個のチャンバを含まず、前記第1の領域における前記水相が、水性液滴であり、前記第2の領域における前記空気相が、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に存在する空気であり、存在する場合、前記第3の領域における前記水相が、水性液滴である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の領域が、前記水相を含む第1のチャンバであり、前記第2の領域が、前記空気相を含む第2のチャンバである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが、第1のチャネルを介して接続されており、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間の圧力差が、前記第1のチャネル内に液体-空気界面を確立する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第3の領域が、前記水相を含む第3のチャンバである、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが、第1のチャネルを介して接続されており、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間の圧力差が、前記第1のチャネル内に液体-空気界面を確立し、前記第2のチャンバ及び前記第3のチャンバが、第2のチャネルを介して接続されており、前記第2のチャンバと前記第3のチャンバとの間の圧力差が、前記第2のチャネル内に空気-液体界面を確立する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を、前記第2の領域における前記空気相から、別個のカートリッジ内の水相に輸送することを更に含み、前記輸送することは、前記第2の領域が、前記別個のカートリッジ内の前記水相と繋がるまで、前記磁性粒子に対する磁力を維持することと、前記磁力を除去し、それによって前記磁性粒子が前記水相中に放出されることを可能にすることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カートリッジの前記第1の領域及び前記第2の領域が、取り外し可能に繋がっている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の領域が、第1のチャンバであり、前記第2の領域が、移送プレートであり、前記第3の領域が、第3のチャンバである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触させることが、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を含む溶解緩衝液を、前記試料と接触させることを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記接触させることが、前記試料を前記第1の領域に配置し、続いて、前記第1の領域に、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を導入することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記標的分析物が、細胞、ウイルス、タンパク質、又は核酸を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記標的分析物が、細胞又はウイルス内に存在する核酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記接触させることが、前記試料中に存在する細胞又はウイルスの破壊をもたらし、それぞれ、前記細胞又はウイルス中に存在する前記核酸を放出させる、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
磁性粒子の前記第2の集団が、前記標的分析物と会合することが不可能であり、任意選択的に、前記標的分析物が、核酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のチャンバが、圧縮空気を含み、前記圧縮空気が、大気圧において前記第1のチャンバ及び前記第3のチャンバを水溶液で充填することによって発生する、請求項12~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第3の領域における前記水相が、溶出緩衝液を含む、請求項12~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第3の領域における前記水相が、洗浄液を含み、前記カートリッジが、空気又は不混和性物質を含む第4の領域と、溶出緩衝液を含む第5の領域と、を備え、任意選択的に、前記第4の領域及び前記第5の領域が、チャンバである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を、前記第3の領域から前記第4の領域を介して前記第5の領域に輸送することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記輸送することは、前記カートリッジが静止したままである間に、前記カートリッジに対して磁場を移動させることを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記輸送することが、静止した磁場に対して前記カートリッジを移動させることを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記輸送することが、前記カートリッジ及び前記磁場を互いに対して移動させることを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記接触させることが、前記試料、並びに磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を含む混合物を撹拌することを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
撹拌することが、前記カートリッジを振盪することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記磁力を加えることが、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団の凝集体を形成し、前記凝集体が、前記第1のチャネルへの入口と空間的に並ぶ、請求項13~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のチャネルへの前記入口は、前記第1のチャンバから前記第1のチャネルへサイズが減少し、前記第1のチャンバから前記第1のチャネルを介した前記第2のチャンバへの前記凝集体の輸送を容易にする、テーパ状領域を備える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記凝集体が、前記第2のチャネルへの入口と空間的に並ぶ、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2のチャネルへの前記入口は、前記第2のチャンバから前記第2のチャネルへサイズが減少し、前記第2のチャンバから前記第2のチャネルを介した前記第3のチャンバへの前記凝集体の輸送を容易にする、テーパ状領域を備える、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の前記第1の集団及び前記第2の集団を、前記第1のチャンバから前記カートリッジの第2のチャンバに前記輸送することが、前記第1のチャンバに隣接して磁石を配置し、前記磁性粒子を含む凝集体の形成を引き起こすことを含み、前記磁石は、前記凝集体が、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルへの前記入口と空間的に並ぶような位置に配置される、請求項13~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、半自動である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
試料を、試料処理カートリッジの第1の領域において磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団と接触させるステップが、ユーザによって、又はロボットを介して、前記試料を前記試料処理カートリッジの前記第1のチャンバ内に装填することを含み、残りのステップのうちの1つ以上が、前記カートリッジに動作可能に接続された機器によって自動的に行われる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
試料処理カートリッジであって、
第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバを備え、
前記第1のチャンバが、磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団を含み、
前記第1のチャンバが、第1のチャネルを介して前記第2のチャンバに流体的に接続されており、前記第2のチャンバが、第2のチャネルを介して前記第3のチャンバに流体的に接続されており、
磁性粒子の前記第1の集団が、標的分析物と会合することが可能であり、任意選択的に、前記標的分析物が、核酸を含み、前記第2の集団内の前記磁性粒子が、磁性粒子の前記第1の集団よりも直径が少なくとも2倍大きい、試料処理カートリッジ。
【請求項42】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、混合物中に存在する、請求項41に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項43】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、凍結乾燥されている、請求項41又は42に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項44】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、前記第1のチャンバへの投入口に配置されており、前記投入口を通る水溶液の流れが、前記磁性粒子を湿潤させ、前記試料処理カートリッジのその後の撹拌が、前記磁性粒子を懸濁させる、請求項41~43のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項45】
前記第1のチャンバへの前記投入口が、前記第1のチャンバに流体的に接続されたコンパートメントを備え、前記コンパートメントが、前記磁性粒子を含み、前記第1のチャンバ内へのコンパートメントを通る水溶液の流れが、前記磁性粒子を前記第1のチャンバ内に導入する、請求項44に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項46】
前記第1の集団内の前記磁性粒子が、500nm~10umの直径を有する、請求項41~45のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項47】
前記第2の集団内の前記磁性粒子が、前記第1の集団内の前記磁性粒子のサイズの2倍~20倍であるサイズを有する、請求項41~46のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項48】
磁性粒子の前記第2の集団が、前記標的分析物と会合することが不可能であり、任意選択的に、前記標的分析物が、核酸を含む、請求項41~47のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項49】
前記試料処理カートリッジが、円筒形であり、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記第3のチャンバが、前記カートリッジの外部壁に存在する、請求項41~48のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項50】
試料処理カートリッジであって、
第1のチャンバ、空気ギャップ、第2のチャンバ、空気チャンバ、及び第3のチャンバを備え、
前記空気ギャップが、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に配置されており、前記空気チャンバが、前記第2のチャンバと前記第3のチャンバとの間に配置されており、前記第1のチャンバが、第1のチャネルを介して前記第2のチャンバに流体的に接続されており、前記空気ギャップが、前記第1のチャネルを通って延在し、前記第2のチャンバが、第2のチャネルを介して前記空気チャンバに流体的に接続されており、前記空気チャンバが、第3のチャネルを介して前記第3のチャンバに流体的に接続されている、試料処理カートリッジ。
【請求項51】
前記第2のチャンバが、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルの下の位置に配置された2つのバッフルを備え、前記バッフルは、前記第2のチャンバ内に存在する液体が前記第1のチャネル及び前記第2のチャネル内に飛散するのを減少させるように構成されている、請求項50に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項52】
前記第3のチャンバが、棚バッフルを備え、前記棚バッフルの下の領域への液体の飛散を減少させながら、磁性ビーズが側壁に沿って前記棚バッフルの下の前記領域に輸送されることを可能にするように構成されている、請求項50又は51に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項53】
前記第1のチャンバが、磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団を含み、磁性粒子の前記第1の集団が、前記標的分析物と会合することが可能であり、任意選択的に、前記標的分析物が、核酸を含み、前記第2の集団内の前記磁性粒子が、磁性粒子の前記第1の集団よりも直径が少なくとも2倍大きい、請求項50~52のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項54】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、混合物中に存在する、請求項50~53のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項55】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、凍結乾燥されている、請求項50~54のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項56】
磁性粒子の前記第1の集団及び磁性粒子の第2の集団が、前記第1のチャンバへの投入口に配置されており、前記投入口を通る水溶液の流れが、前記磁性粒子を湿潤させ、前記試料処理カートリッジのその後の撹拌が、前記磁性粒子を懸濁させる、請求項50~55のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項57】
前記第1のチャンバへの前記投入口が、前記第1のチャンバに流体的に接続されたコンパートメントを備え、前記コンパートメントが、前記磁性粒子を含み、前記第1のチャンバ内へのコンパートメントを通る水溶液の流れが、前記磁性粒子を前記第1のチャンバ内に導入する、請求項50~56のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項58】
前記第1の集団内の前記磁性粒子が、500nm~10umの直径を有する、請求項50~56のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項59】
前記第2の集団内の前記磁性粒子が、前記第1の集団内の前記磁性粒子のサイズの2倍~20倍であるサイズを有する、請求項50~58のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項60】
磁性粒子の前記第2の集団が、前記標的分析物と会合することが不可能であり、任意選択的に、前記標的分析物が、核酸を含む、請求項50~59のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項61】
前記試料処理カートリッジが、円筒形であり、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記第3のチャンバが、前記カートリッジの外部壁に存在する、請求項50~60のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジ。
【請求項62】
試料を処理するためのシステムであって、
請求項41~61のいずれか一項に記載の試料処理カートリッジと、磁石とを備え、前記磁石が、前記磁性粒子に磁力を及ぼすことができるように、前記カートリッジと関連して動作可能に配置される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,494号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
序論
核酸の単離及び精製は、下流の用途で使用するためのDNA及びRNAの抽出に使用される一連の分子生物学的技法である。核酸単離及び精製手法には、カラムベースの単離及び精製、試薬ベースの単離及び精製、磁性ビーズベースの単離及び精製、並びに他の技術が含まれる。核酸の単離及び精製に使用される試薬、キット及び機器が、利用可能である。不十分な試料調製は、下流の用途において最適ではない結果をもたらす可能性があり、このため、血液、植物組織、真菌、又は細菌などの試料源の変動に対処するために、最適化されたバージョンのキットが現れた。
【0003】
試料調製プロセスは、カオトロピック核酸抽出技術を使用して、その天然の生物源から核酸標的を放出すること(例えば、患者細胞などの細胞の溶解、又はウイルス、細菌、真菌などの微生物の溶解など)と、シリカ又は酸化鉄核酸化学を使用して核酸を固相(例えば、常磁性粒子)に結合させることと、磁気分離技術を使用して残留溶解溶液から固相を分離することと、不要な材料を除去するために洗浄することと、流体取り扱い技術を使用して固相から核酸を溶出又は分離することと、を含む。試料調製プロトコルの完了時に、試料は、核酸検出のためにデバイスのPCRコンポーネントに移送される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、試料調製方法、試料調製カートリッジ、及び試料調製システムを含む。
【0005】
本明細書に開示される試料調製のための方法は、空気相を通して、分析物に結合した磁性粒子を移送するステップを利用する。この移送ステップは、空気移送と称される。空気移送ステップは、磁性粒子による水相のキャリーオーバーを低減する。磁性粒子による水相のキャリーオーバーの低減は、細胞デブリ、カオトロピック剤、非特異的に付着した分子などのような汚染物質を減少させる。この空気移送ステップは、磁性粒子の第1の集団と磁性粒子の第2の集団との組み合わせを使用することによって改善され、磁性粒子の第1の集団は、標的分析物と会合することが可能であり、第2の集団内の磁性粒子は、第1の集団内の磁性粒子のサイズよりもサイズが少なくとも2倍大きい。本明細書で考察されるように、磁性粒子のこの第2の集団の使用は、空気移送中の第1の磁性粒子の損失を低減することによって、磁性粒子の第1の集団の移送を改善する。試料調製方法は、半自動であるか又は完全に自動化され得る。
【0006】
また、本明細書で提供されるのは、磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団を含む第1のチャンバと、空気チャンバとして構成可能であり、第1のチャンバに隣接している第2のチャンバと、を含む、試料調製カートリッジであり、磁性粒子は、任意選択的にペレット形態で存在してもよく、任意選択的に凍結乾燥形態であってもよい。
【0007】
本明細書で提供される試料調製のためのシステムは、開示された試料調製カートリッジと、磁石であって、磁石が試料調製カートリッジ内に存在する磁性粒子に磁力を及ぼすことができるように、試料調製カートリッジと関連して動作可能に配置された、磁石と、を含む。システムは、任意選択的に、開示される方法の1つ以上のステップを実施するための命令を含むプロセッサを備える器具を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】開示される方法を実施するための試料調製カートリッジ及び試薬の概略図を示す。
図1B】開示される方法を実施するための試料調製カートリッジ及び試薬の概略図を示す。
図1C】3つの接続されたチャンバを有する試料調製カートリッジを示す。空気チャンバが、水相を含む2つのチャンバの間に配置されている。第1のチャンバに隣接して動作可能に配置された磁石を図1Dに示す。
図1D】3つの接続されたチャンバを有する試料調製カートリッジを示す。空気チャンバが、水相を含む2つのチャンバの間に配置されている。第1のチャンバに隣接して動作可能に配置された磁石を図1Dに示す。
図2】本開示の一実施形態による、試料調製カートリッジ及び試料調製のための方法ステップの概略図を示す。
図3】本開示の別の実施形態による、試料調製カートリッジ及び試料調製のための方法ステップの概略図を示す。
図4A】本開示の一実施形態による、円筒形の試料調製カートリッジを示す。
図4B】本開示の一実施形態による、円筒形の試料調製カートリッジの下部領域のズームイン画像を示す。
図4C】本開示の一実施形態による、円筒形の試料調製カートリッジの下部領域の更なるズームイン画像を示す。
図4D】本開示の一実施形態による、円筒形の試料調製カートリッジを示す。
図4E】チャンバの側壁を形成するフィルムが、チャンバ及び環状壁上に配置されたチャネルを示すために取り外された状態の、試料調製カートリッジを示す。
図4F】チャンバの側壁を形成するフィルムが、チャンバ及び環状壁上に配置されたチャネルを示すために取り外された状態の、試料調製カートリッジを示す。
図4G】チャンバを通って横断して延在する棚バッフル108を有するチャンバ103を示す。
図4H】一端部において上昇した底部壁を有するチャンバ103を示す。
図5】本開示の一実施形態による、試料調製カートリッジ100及びシリンダハウジング130を含む試料調製システムを示す。
図6】中間チャンバ内の空気相と、中間チャンバに隣接する2つのチャンバ内の水相との間の界面境界の図を示す。
図7】不混和相として空気又は油を使用して得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の態様は、試料調製方法、試料調製カートリッジ、及び試料調製システムを含む。
【0010】
本明細書に開示される試料調製のための方法は、空気相を利用して、核酸に結合した磁性粒子に関連する水相を低減し、細胞デブリ、カオトロピック剤、非特異的に付着した分子などのような、1つ以上の汚染物質のキャリーオーバーを減少させる。この空気移送ステップは、磁性粒子の第1の集団と磁性粒子の第2の集団との組み合わせを使用することによって改善され、磁性粒子の第1の集団は、核酸と会合することが可能であり、第2の集団内の磁性粒子は、第1の集団内の磁性粒子のサイズよりもサイズが少なくとも2倍大きい。本明細書で考察されるように、磁性粒子のこの第2の集団の使用は、移送中の第1の磁性粒子の損失を低減することによって、磁性粒子の第1の集団の移送を改善する。試料調製方法は、半自動であるか又は完全に自動化され得る。
【0011】
本試料調製カートリッジ及び方法がより詳細に記載される前に、本開示は、記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、もちろん、変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0012】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が、本試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットに包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、記載の範囲において任意の具体的に除外された限界に従って、同様に試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットに包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットに含まれる。
【0013】
「約」という用語によって先行されている数値を有する、ある特定の範囲は、本明細書で提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、及びその用語が先行する数に近い、又は近似する数について文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似するかどうかを判定するとき、その近い又は近似する列挙されない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙されている数の実質的な均等物を提供する数であり得る。
【0014】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料もまた、本試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットの実践又は試験において使用され得るが、代表的で例示的な試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットが、以下に記載される。
【0015】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、あたかも各個々の刊行物又は特許が参照によって組み込まれるように具体的かつ個々に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれ、参照によって本明細書に組み込まれることによって、それらの刊行物が引用される関連した方法及び/又は材料を開示及び記載する。任意の刊行物の引用は、出願日以前のその開示についてのものであり、本発明が、先行発明の特色によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なり得、これらは独立して確認する必要があり得る。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的な要素を排除するように設計され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」などのような排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0017】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例証される個々の実施形態の各々は、本試料調製カートリッジ、方法及び試料調製ユニットの範囲若しくは趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又はこれらと組み合わされ得る個別の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で行われ得る。
【0018】
試料調製のための方法
上記で要約されたように、本開示の態様は、試料調製のための方法を含む。「試料調製」及び「試料処理」という語句は、本明細書では互換的に使用され、標的分析物、例えば、試料中に存在する細胞、ウイルス、タンパク質、又は核酸を単離するためのプロセスを指す。このプロセスは、水相中に存在する標的分析物を、分析物に結合することが可能な磁性粒子に結合させることと、磁性粒子と関連した水相を低減する空気移送ステップと、磁性粒子に結合した標的分析物を放出する溶出ステップと、を伴う。他の場所で詳細に考察されるように、試料は、磁性粒子に結合する前に前処理されてもよい。試料が遊離標的分析物、例えば、タンパク質又は核酸を含まない場合、すなわち、タンパク質又は核酸が微生物又は細胞内に存在する場合、本明細書に開示される試料調製方法は、タンパク質又は核酸を水溶液に放出するための試料溶解を伴い得る。
【0019】
ある特定の実施形態によれば、試料を処理するための方法は、試料を、試料調製カートリッジの第1の領域において水相中の磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団と接触させることを含み得る。磁性粒子の第1の集団は、標的分析物と会合することが可能であり、第2の集団内の磁性粒子は、第1の集団内の磁性粒子のサイズよりもサイズが少なくとも2倍大きい。この方法は、磁性粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第1の領域における水相から、カートリッジの第2の領域における空気相に輸送することを更に含む。磁性粒子及び分析物の文脈において本明細書で使用される場合、「会合可能」という用語は、磁性粒子が分析物に結合することができることを意味する。磁性粒子は、磁性粒子が標的分析物に結合することができるように、標準的な方法を使用して官能化することができる。官能化は、溶解緩衝液の存在などの条件下で十分に特異的である。例えば、磁性粒子は、核酸又はタンパク質に結合するように官能化されてもよい。ある特定の例では、核酸は、シリカ又は酸化鉄核酸化学によってPMPの表面に付着し得る。
【0020】
第1の集団内の磁性粒子は、500nm~10umの直径を有し得る。例えば、第1の集団内の粒子の平均直径は、約500nm~3um、2um~6um、4~7um、又は8~10umであり得る。第2の集団内の磁性粒子は、第1の集団内の磁性粒子の直径の2倍~20倍、例えば、第1の集団内の磁性粒子の直径の2倍~10倍、3倍~10倍、又は3倍~5倍である直径を有し得る。例えば、第1の集団内の粒子の平均直径は、1um~3umであってもよく、第2の集団内の粒子の平均直径は、6~60um、例えば9um~50um、10um~30um、又は10um~20umであってもよい。他の例では、第1の集団内の粒子の平均直径は、2um~6umであってもよく、第2の集団内の粒子の平均直径は、10~60um、例えば10um~50um、10um~30um、又は10um~20umであってもよい。他の例では、第1の集団内の粒子の平均直径は、3um~7umであってもよく、第2の集団内の粒子の平均直径は、10~140um、例えば10um~120um、20um~120um、又は50um~120umであってもよい。また別の例では、第1の集団内の粒子の平均直径は、8um~10umであってもよく、第2の集団内の粒子の平均直径は、20~60um、例えば20um~50um、又は20um~30umであってもよい。
【0021】
第1及び第2の磁性粒子の量の比率は、1:1、2:1、1:2、3:1、1:3、1:10、1:30、1:100などの比率であってもよい。ある特定の場合に、第1及び第2の磁性粒子の量の比率は、1:1であってもよい。本明細書で使用される場合、量は、磁性粒子の質量を指す。第2の集団内の磁性ビーズの量は、変化し得る。その量は、反応当たりの総ビーズ質量の1%もの低さであるか又は99%であり得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、磁性粒子は、磁気的に応答する粒子を指す。磁気応答性粒子は、磁気応答性材料を含むか、又は磁気応答性材料から構成される。磁気応答性材料の例としては、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が挙げられる。好適な常磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、及びコバルト、並びにFe、BaFe1219、CoO、NiO、Mn、Cr、及びCoMnPなどの金属酸化物が挙げられる。第1及び第2の磁性粒子は、同じ磁気応答性材料を各々含み得る。例えば、両方のタイプの粒子は、同じ常磁性材料、例えば、酸化鉄、例えば、強磁性及び/又はフェリ磁性材料、酸化コバルト、酸化ニッケル、並びにそれらの混合物から作製され得る。ある特定の態様では、第1及び第2の磁性粒子は、かなりの量の非磁性元素、すなわち、磁場で分極されず、したがって磁石に引き付けられない元素を含まない。そのような非磁性元素には、第2の銀、金、銅などが含まれる。ある特定の実施形態では、磁性粒子の第1及び第2の集団の磁性粒子は、非磁性ポリマーに囲まれた常磁性材料、例えば、ポリマー材料で覆われた磁性材料、又はポリマーマトリックスに埋め込まれた磁性材料を含む。そのような粒子は、磁性ビーズ又は常磁性ビーズと称され得る。磁性粒子の第2の集団(「第2の磁性粒子」とも称される)の磁性粒子は、磁性粒子の第1の集団(「第1の磁性粒子」とも称される)の磁性粒子と比較して、より多くの常磁性材料を含み、より大きな直径をもたらし得る。サイズの違いの結果として、第2の磁性粒子は、第1の磁性粒子と比較して、磁場からのより強い引力を経験する。しかしながら、第2の磁性粒子は、第1の磁性粒子へのそれらの近接性のために、第1の磁性粒子に沿って引っ張ることが可能であり、したがって、第1の磁性粒子上の全体的な磁気引力を増加させる。
【0023】
ある特定の態様では、第2の磁性粒子は、常磁性であってもよく、一方で、第1の磁性粒子は、超常磁性であってもよい。他の態様では、第2の磁性粒子は、超常磁性であってもよく、一方で、第1の磁性粒子は、常磁性であってもよい。いくつかの例では、磁性粒子の第1の集団は、シリカで覆われた磁性粒子を含み得る。いくつかの例では、磁性粒子の第2の集団は、アガロース又はセファロース又はポリスチレンで覆われた磁性粒子を含み得る。磁性粒子は、磁性微粒子及びナノ粒子、並びに/又は超常磁性微粒子及びナノ粒子であり得る。
【0024】
第1及び第2の磁性粒子のサイズは、直径の観点から記載されるが、粒子は、必ずしも球形のサイズでなくてもよく、無定形の形状であり得る。無定形粒子の場合、直径は、片側から直径方向に反対側までの最大距離である。ある特定の実施形態では、磁性粒子は、実質的に球形であり得る。例示的な磁性粒子としては、Invitrogenによって提供されるDynabeads(登録商標)磁性ビーズ、Merck MilliporeによるEstapor(登録商標)超常磁性マイクロスフェア及びPureProteome(商標)磁性ビーズ、Bioclone Inc.によるBcMag(商標)、BangslabsからのProMag(商標)及びBioMag(登録商標)、Polymicrospheres Inc.によるSupraMag(商標)、Turbobeads Llc.によるTurboBeads(登録商標)、並びにSpherotechによるSPHERO(商標)ポリスチレン磁性粒子などのような商業的供給源から入手可能なものが挙げられる。超常磁性ビーズは、Sigma-Aldrich及びThermo Scientificから入手可能である。
【0025】
第1及び第2の磁性粒子は、標的分析物、例えば、DNA及びRNAなどの核酸に結合するように官能化されてもよい。ある特定の実施形態では、第1の磁性粒子のみが官能化されて、標的分析物に結合する一方で、第2の磁性粒子は、標的分析物に認め得るほどに結合しない。いくつかの態様では、標的分析物に結合するように官能化された、より小さい直径の磁性粒子を使用することは、試料中に存在する他の分子による非特異的な結合を低減する。
【0026】
ある特定の実施形態によれば、方法は、磁性粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第2の領域における空気相から、カートリッジの第3の領域における水相に輸送することを更に伴い得る。
【0027】
ある特定の例では、磁力を加えると、磁性粒子が、第1の領域におけるエリアに凝集し、そのエリアは、磁力の源に隣接しており、輸送することは、凝集された磁性粒子に対する磁力を維持することと、凝集された磁性粒子を、カートリッジの第2の領域における空気相に移動させることと、凝集された磁性粒子を、カートリッジの第3の領域における水相に移動させることと、を伴う。
【0028】
いくつかの場合に、磁性粒子の第1及び第2の集団を輸送することは、カートリッジの異なる領域に対して、磁力を発生させる磁石を移動させることを含む。他の場合では、磁性粒子の第1及び第2の集団を輸送することは、磁力を発生させる磁石に対して、カートリッジ又はその一部分を移動させることを含む。
【0029】
次のセクションでより詳細に記載するように、開示される方法は、試料調製カートリッジの特定の構成に依存しない。試料調製カートリッジの例示的な構成が記載されるが、他の構成も使用され得る。
【0030】
ある特定の例では、試料調製カートリッジは、平面的な試料調製カートリッジであってもよい。例えば、カートリッジは、矩形又は円形であってもよいが、実質的に平坦であるように低プロファイルを有する。別の例では、カートリッジは、実質的に円筒形であってもよい。また別の例では、カートリッジは、チャンバである第1の領域と、プレートである分離可能な第2の領域とを含んでもよく、このカートリッジは、プレートを介して磁性粒子が移送される第3の領域を含む、別のカートリッジと併せて使用される。
【0031】
一例では、カートリッジは、実質的に平面的であり、第2のプレートから離間して配置された第1のプレートを備え、第1及び第2のプレートは、互いに対して静止位置に保持されている。ある特定の実施形態では、カートリッジは、実質的に平面的であり、第2のプレートから離間して配置された第1のプレートを備え、第1及び第2のプレートは、プレートが離間して摺動可能な構成で保持されるように、互いに対して移動可能である。カートリッジは、実質的に平面的であってもよく、別個のチャンバを含まなくてもよく、第1の領域における水相は、水性液滴であってもよく、第2の領域における空気相は、第1のプレートと第2のプレートとの間に存在する空気であり、存在する場合、第3の領域における水相は、水性液滴である。そのようなカートリッジの特徴のうちの1つ以上を有する試料調製デバイスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,766,166号に記載されている。例えば、米国特許第9,766,166号の図1A~1Gを参照されたい。
【0032】
ある特定の実施形態によれば、第1の領域は、水相を含む第1のチャンバであり、第2の領域は、空気相を含む第2のチャンバである。第1及び第2のチャンバは、第1のチャネルを介して接続されており、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の圧力の差が、第1のチャネル内に液体-空気界面を確立する。ある特定の例では、カートリッジは、第3の領域を含み、第3の領域は、水相を含む第3のチャンバである。
【0033】
また別の実施形態では、開示される方法は、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第2の領域における空気相から、別個の試料調製カートリッジ内の水相に輸送することを含み、輸送することは、第2の領域が、別個のカートリッジ内の水相と繋がるまで、磁性粒子に対する磁力を維持することと、磁力を除去し、それによって磁性粒子が水相中に放出されることを可能にすることと、含む。カートリッジの第1及び第2の領域は、取り外し可能に繋がってもよい。例えば、第1の領域は、第1のチャンバであり、第2の領域は、移送プレートであり、第3の領域は、第3のチャンバである。そのようなカートリッジの特徴のうちの1つ以上を有する試料調製デバイスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,040,062号に記載されている。例えば、米国特許第10,040,062号の図1~5を参照されたい。
【0034】
ある特定の実施形態によれば、試料処理のための方法は、試料を、試料処理カートリッジの第1のチャンバにおいて、磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団と接触させることであって、磁性粒子の第1の集団は、標的分析物、例えば、核酸と会合することが可能であり、第2の集団内の磁性粒子は、磁性粒子の第1の集団の直径よりも直径が少なくとも2倍大きい、接触させることと、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第1のチャンバからカートリッジの第2のチャンバに輸送することであって、第2のチャンバは、空気を含み、第1のチャンバは、水溶液を含み、第1及び第2のチャンバは、第1のチャネルを介して接続されており、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の圧力の差が、第1のチャネル内の液体-空気界面を確立する、輸送することと、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第2のチャンバから、水溶液を含む第3のチャンバに輸送することであって、第2及び第3のチャンバは、第2のチャネルを介して接続されており、第2のチャンバと第3のチャンバとの間の圧力の差が、第2のチャネル内に空気-液体界面を確立する、輸送することと、を含み得る。そのような方法で使用され得る例示的なカートリッジは、次のセクションで更に記載され、図1A~1Bに概略的に描示されており、図1C~1Dに示されている。
【0035】
接触させることは、試料中に存在する標的分析物(例えば、核酸)を、少なくとも磁性粒子の第1の集団に結合するのに十分な条件下で行われ得る。ある特定の実施形態では、試料処理カートリッジの第1のチャンバは、磁性粒子が存在し、標的分析物に結合することができる水相を含み得る。ある特定の実施形態では、水相は、溶解緩衝液であり得る。溶解緩衝液は、当該技術分野で知られているように、標準的な溶解緩衝液であり得る。例えば、溶解緩衝液は、細菌、ウイルスなどのような微生物、並びに哺乳類細胞などの細胞の溶解を引き起こすカオトロピック剤を含み得る。ある特定の例では、グアニジン塩酸塩が、カオトロピック剤として使用され得る。
【0036】
接触させるステップは、任意選択的に、試料の混合物、並びに磁性粒子の第1及び第2の集団を含む水相を撹拌することを伴ってもよく、任意選択的に、水相は、溶解緩衝液を含み得る。接触させることは、核酸が少なくとも磁性粒子の第1の集団に結合するのに十分な期間にわたって行われ得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、試料を磁性粒子の第1及び第2の集団と接触させることは、磁性粒子の第1及び第2の集団を含む水溶液を試料と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、試料を第1のチャンバ内に配置し、続いて、第1のチャンバ内に、磁性粒子の第1及び第2の集団並びに水溶液を導入することを含む。いくつかの実施形態では、第1のチャンバは、磁性粒子の第1及び第2の集団を含み、水溶液を導入することは、磁性粒子を湿らせ、磁性粒子の分散を引き起こす。いくつかの実施形態では、第1のチャンバは、磁性粒子の第1及び第2の集団を含むコンパートメントを備え、水溶液を導入することは、磁性粒子を湿らせ、磁性粒子をコンパートメントから第1のチャンバ内に流れるようにする。水溶液は、溶解緩衝液であってもよい。溶解緩衝液は、遊離核酸を含まず、細胞又はウイルス内に存在する核酸を含む試料を処理するために使用することができる。
【0038】
多くのタイプの試料は、本開示の方法、カートリッジ、及びシステムを使用して処理することができる。試料は、細胞、ウイルス、タンパク質、若しくは核酸を含む目的の材料を含むか、又は含む疑いがある。ある特定の例では、目的の材料は、細胞又はウイルス内に存在する核酸であってもよい。ある特定の実施形態では、接触させることは、試料中に存在する細胞又はウイルスの破壊をもたらし、それぞれ、細胞又はウイルス中に存在する核酸を放出させる。
【0039】
ある特定の実施形態では、接触させることは、試料、並びに磁性粒子の第1及び第2の集団を含む混合物を撹拌することを含む。撹拌することは、細胞/ウイルス溶解を容易にし、及び/又は磁性粒子の均一な分散を確実にするために使用されてもよい。ある特定の実施形態では、撹拌することは、カートリッジを振盪することを含み得る。振盪することは、ロータリシェーカ又はボルテクサを使用して達成されてもよい。ある特定の態様では、試料調製カートリッジは、円筒形の形状であってもよく、シリンダの上端部と底端部との間に延在する中心軸を中心に往復して動くことによって回転されてもよい。
【0040】
ある特定の実施形態では、方法は、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、カートリッジの第1のチャンバから第2のチャンバに輸送することを含む。試料処理カートリッジの第2のチャンバは、空気、例えば、圧縮空気で充填されてもよい。圧縮空気は、大気圧において第1及び第3のチャンバを水溶液で充填することによって発生し得る。例えば、方法の開始時に、3つのチャンバ全てが空であってもよく、したがって空気のみを有する。試料処理中、第1及び第3のチャンバは、水相で充填される。水相は、第1及び第3のチャンバ内に存在する空気を第2の(中間の)チャンバ内に押し込み、第2のチャンバ内に存在する空気の圧縮をもたらす。水溶液はまた、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に延在する第1のチャネル、及び第2のチャンバと第3のチャンバとの間に延在する第2のチャネルに流入し、部分的に充填する。水相と気相との間の第1及び第2のチャネル内に形成された界面は、水性物質が水相から出て気相に入るのを防止するバリアとして機能する。したがって、界面は、第1のチャンバから第2のチャンバへの磁性ビーズ上又は磁性ビーズ間に捕捉された水溶液のキャリーオーバーを低減する。
【0041】
方法は、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第2のチャンバからカートリッジの第3のチャンバに輸送することを更に含む。ある特定の実施形態では、第3のチャンバは、洗浄緩衝液又は溶出緩衝液であり得る水相を含む。ある特定の実施形態では、第3のチャンバは、溶出緩衝液を含む。ある特定の実施形態では、第3のチャンバは、洗浄液を含み、カートリッジは、空気又は不混和性物質を含む第4のチャンバと、溶出緩衝液を含む第5のチャンバとを備える。試料処理方法は、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第3のチャンバから第4のチャンバを介して第5のチャンバに輸送することを更に含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、1つのチャンバからカートリッジの隣接するチャンバに輸送することは、チャンバに隣接して磁石を配置し、磁性粒子を含む凝集体の形成を引き起こすことを含み、磁石は、凝集体が、第1及び第2のチャネルへの入口と空間的に並ぶような位置に配置される。
【0043】
磁性粒子の第1及び第2の集団を輸送することは、カートリッジが静止したままである間に、カートリッジに対して磁場を移動させること、静止した磁場に対してカートリッジを移動させること、並びに/又はデバイスカートリッジ及び磁場を移動させることを含み得る。ある特定の態様では、方法は、接触させるステップの後に、磁性粒子を磁石に曝露することによって、磁性粒子を凝集させることと、磁石を使用して、凝集した磁性粒子を輸送することと、を伴い得る。ある特定の実施形態では、方法は、磁性粒子に磁力を加えて、磁性粒子の第1及び第2の集団の凝集体を形成することであって、凝集体は、第1のチャネルへの入口と空間的に並ぶ、加えることを伴う。言い換えると、磁石は、磁性粒子が、磁石に隣接するカートリッジ内のエリアに移動するように、試料調製カートリッジに対して配置されており、このエリアは、第1のチャネルへの入口と空間的に並んでいる。概して、磁性粒子が凝集するエリアは、試料調製カートリッジの壁、例えば、第1、第2、第3のチャンバ並びに第1及び第2のチャネルの側面のうちの1つを形成する壁の内側表面である。ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジの第1のチャンバは、第1のチャンバから第1のチャネルへサイズが減少し、第1のチャンバから第1のチャネルを介した第2のチャンバへの凝集した粒子の輸送を容易にする側面を有する。第1のチャネルへのこのテーパ状の入口は、磁石に隣接してコンパクトに凝集された磁性粒子の輸送だけでなく、磁力がコンパクトに凝集された磁性粒子を移動させるときに遅れ得る、緩く凝集された磁性粒子の輸送も容易にすることができる。
【0044】
前述のように、磁石の配置は、凝集体が、第2のチャネルへの入口と空間的に並ぶようなものであってもよく、したがって、凝集された磁性粒子を入口に移動させるために凝集された磁性粒子を更に移動させることは必要とされない。他の場合には、凝集された磁性粒子を、磁力によって移動させて、凝集体を第1のチャネルの入口に整列させてもよい。
【0045】
ある特定の実施形態では、第2のチャネルへの入口は、第2のチャンバから第2のチャネルへサイズが減少し、第2のチャンバから第2のチャネルを介した第3のチャンバへの凝集体の輸送を容易にするテーパ状領域を備える。
【0046】
いくつかの実施形態では、粒子に磁力を加えることによって、磁性粒子の第1及び第2の集団を、第1のチャンバからカートリッジの第2のチャンバに輸送することは、第1のチャンバに隣接して磁石を配置し、磁性粒子を含む凝集体の形成を引き起こすことを含み、磁石は、凝集体が、第1及び第2のチャネルへの入口と空間的に並ぶような位置に配置される。
【0047】
ある特定の実施形態によれば、外側磁石を、磁性粒子が存在するチャンバ/領域の壁を形成するカートリッジの外部表面から、1cm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1.5mm以下、又は1mm以下、又は0.5mm以下、又は0.2mm以下、又は0.1mm以下の距離に配置してもよい。ある特定の例では、外側磁石は、磁性粒子が存在するチャンバ/領域の壁を形成するカートリッジの外部表面に接触し得る。ある特定の例では、磁性粒子が存在するチャンバ/領域の壁は、2mm未満、1mm未満、0.5mm未満の厚さ、例えば、0.1mm~5mm、又は0.2mm~4mm、又は0.5mm~2mmの厚さを有し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、半自動である。例えば、方法の少なくとも1つのステップは、ユーザの代わりに機器によって行われ得る。ある特定の実施形態では、試料を、試料処理カートリッジの第1のチャンバ内の磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団と接触させるステップは、ユーザによって試料を試料処理カートリッジの第1のチャンバ内に装填することを含み、残りのステップのうちの1つ以上が、自動的に行われる。いくつかの場合に、試料並びに磁性粒子の第1及び第2の集団の混合物を撹拌するステップを、自動的に行ってもよい。いくつかの場合に、磁性粒子を輸送するステップを自動化してもよい。自動化は、例えば、試料調製カートリッジ及び/又は磁石の移動を制御するコンピュータによって達成されてもよい。
【0049】
ある特定の実施形態では、方法は、溶出緩衝液などの水溶液で充填された第3のチャンバ(又は第5のチャンバ)内に磁性粒子を凝集させることを更に含み得る。このチャンバは、溶出チャンバとも称され得る。磁性粒子が凝集され、移動が防止されると、試料から単離された核酸を含有する水溶液(例えば、PCR増幅緩衝液などの溶出緩衝液)が取り出されてもよい。水溶液は、手動又は自動でピペットアウトすることによって取り出されてもよい。水溶液は、例えば、孔に強制的に通すことによって、第3の(又は第5のチャンバ)から排出することによって取り出されてもよい。溶出チャンバは、水溶液が排水されることができる収集容器に接続され得る。
【0050】
例示的な方法を、図2及び3に概略的に描示する。図2は、3つのチャンバを備える試料処理カートリッジを使用する試料調製方法を示す。方法は、試料を溶解緩衝液又は溶解剤及び常磁性粒子(PMP)と混合して、PMPが溶液中にあるようにすることを含む(ステップ1)。PMPは、外側磁石をカートリッジに近接させることによって凝集され、凝集されたPMPは、溶解緩衝液を含む水相から空気相に輸送される(ステップ2)。ステップ3では、凝集されたPMPを、空気相から、溶出緩衝液を含むチャンバに輸送する。
【0051】
図3は、5つのチャンバを備える試料処理カートリッジを使用する試料調製方法を示す。方法は、試料を溶解緩衝液及び常磁性粒子(PMP)と混合して、PMPが溶液中にあるようにすることを含む(ステップ1)。PMPは、外側磁石をカートリッジに近接させることによって凝集され、凝集されたPMPは、溶解緩衝液を含む水相から空気相に輸送され、続いて、それらを、洗浄緩衝液(例えば、アルコール-メタノール又はエタノール)を含む第3のチャンバに輸送する(ステップ2)。ステップ3では、凝集されたPMPを、磁石を取り外し、任意選択的にカートリッジを撹拌することによって、再懸濁させる。PMPを、磁石を使用して再び捕捉し、溶出緩衝液を含むチャンバに輸送する。
【0052】
本明細書に提供される方法、カートリッジ、及びシステムによって処理される試料は、生体試料であってもよく、例えば、試料は、哺乳動物(例えば、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス)、又は目的の任意の他の哺乳動物)の全血、血清、血漿、痰、鼻液、唾液、粘液、精液、膣液、組織、尿、臓器、及び/又は同様のものの試料であってもよい。他の態様では、試料は、哺乳動物以外の源、例えば、細菌、酵母、昆虫(例えば、ショウジョウバエ)、両生類(例えば、カエル(例えば、ゼノパス))、ウイルス、植物、又は任意の他の非哺乳動物核酸試料源からの細胞の集合体である。
【0053】
試料調製カートリッジ
本明細書に開示される方法を行うために使用される試料調製カートリッジは、生体分子若しくは細胞の精製、修飾、分析、及び/又は検出のための試薬と、領域/チャンバのうちの2つ以上の間の(例えば、分離する)気相(空気)と、を含む、複数の試料処理領域又はチャンバを含んでもよい。いくつかの実施形態では、3つのチャンバがある。いくつかの実施形態では、4つのチャンバがある。いくつかの実施形態では、5つのチャンバがある。いくつかの実施形態では、6つ以上のチャンバ(例えば、7、8、9、10、11、及び最大30のチャンバ)がある。いくつかの実施形態では、空気は、チャンバのうちの2つ以上の間に連続的なバリアを提供する(すなわち、試料は、水相から空気中に通過し、空気から出て直接的に次の水相に入る)。
【0054】
本開示の方法に従って試料を調製するために使用され得る例示的なデバイスは、米国特許第9,766,166号の図1A~1G、米国特許第10,040,062号の図1~5、及び米国特許第8,304,188号の図2に描示されている。これらのデバイスの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。試料処理のための方法を実施するために使用され得る他のデバイスは、図1A~1Bに概略的に描示されており、図1C~1Dに示されている。
【0055】
ある特定の例では、方法は、試料調製カートリッジを使用して実施され得る。試料調製カートリッジは、実質的に円筒形形状を有し得る。例えば、試料調製カートリッジは、上端部、底端部、及び上端部と底端部との間に延在する環状壁を含む、円筒形構造を含む。円筒形構造は、環状壁に配置された複数のチャンバであって、環状壁の外側表面と円筒形構造の内側との間に延在し、環状壁は、チャンバの各々の開口側面を形成するキャビティを備える、複数のチャンバと、複数のチャンバ間に流体連通を提供する1つ以上のチャネルであって、環状壁内の凹部によって形成されており、開口側面を備える、1つ以上のチャネルと、チャンバの開口側面及び凹部の開口側面を覆い、かつ流体的に密封するために、環状壁の外側表面にわたって添着された、1つ以上のカバーと、を含む。
【0056】
加えて、ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジはまた、緩衝液パックと、密封蓋アセンブリと、保護カバーと、キャップと、を含み得る。カートリッジはまた、試料投入構成要素を含んでもよい。試料調製カートリッジは、磁石を備えるシリンダハウジングとともに使用するように構成されている。
【0057】
円筒形とは、円筒形構造が、実質的に直円柱であり得ることを意味する。円筒形構造は、円筒形構造の底端部の中心と円筒形構造の上端部の中心とを接続する線によって形成された軸の周りで回転可能であり得る。例えば、円筒形構造は、円筒形構造を、円筒形構造の上部を見下ろして上から見たときに、時計回りに回転してもよく、又は反時計回りに回転してもよい。代替的に、円筒形構造は、時計回り及び反時計回りの両方で回転してもよい。円筒形構造の回転は、1つ以上のチャンバの内容物を混合するため、又はチャンバに隣接するシリンダハウジング内に存在する磁石を配置して、チャンバ内に存在する磁性粒子の凝集を引き起こし、及び/若しくは凝集された磁性ビーズを、1つのチャンバから別のチャンバに移送するためなどに使用され得る。
【0058】
上記で要約されたように、円筒形構造は、環状壁上に複数の側面が開口したチャンバを形成する、環状壁内の複数のキャビティを備える。例えば、複数のキャビティは、環状壁の連続した表面を変形させる、環状壁内のくぼみであってもよい。側面が開口したとは、環状壁が、チャンバのそのような側面を覆わないことを意味する。ある特定の事例では、変形された環状壁は、チャンバの閉じた側面を形成し得、キャビティを形成するように変形された環状壁の側面に対応するエリアが、チャンバの開口側面を形成し得る。
【0059】
ある特定の実施形態によれば、複数のチャンバの開口側面は、環状壁の外側に配置されている。例えば、環状壁は、外部から内方に変形されて、内方に変形されたキャビティを環状壁に形成し得る。そのような場合、チャンバの開口側面は、キャビティを形成するために内方に変形された環状壁の側面に対応するエリアであってもよい。そのような事例では、内方に変形された環状壁は、チャンバの閉じた側面を形成し得る。チャンバの容積は、環状壁内のくぼみの容積に対応する測定値を表し得る。チャンバは、任意の都合の良い容積であってもよく、いくつかの事例では、1cm~3cm又は2cm~5cmなど、1cm~約5cmまで変化してもよい。他の事例では、チャンバは、任意の都合の良い体積の流体を収容してもよく、いくつかの事例では、1μL~100μL、又は1,000μL~3,000μL、又は2,000μL~5,000μLなど、1μL~約5,000μLまで変化してもよい。複数のチャンバの各チャンバは、同じ容積を有してもよく、又は異なる容積を有してもよい。環状壁の外部表面からチャンバの内部側面までの距離として測定されるチャンバの深さは、任意の都合の良いサイズであってもよく、いくつかの事例では、1cm又は5cmなどの、0.1cm以上であり得る。複数のチャンバの各チャンバは、同じ深さを有してもよく、又は異なる深さを有してもよい。
【0060】
ある特定の実施形態によれば、複数のチャンバは、環状壁上で互いに近接して配置されている。例えば、第1のチャンバの横方向の境界と第2のチャンバの最も近い横方向の境界との間の距離は、0.5cm~1cmなどの、約0.1cm以上であってもよく、例えば、0.5cm又は0.75cm又は5cmである。互いに隣り合って配置されたチャンバの対の側面間の距離は、複数のチャンバについて同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0061】
上記で要約されたように、試料調製カートリッジは、複数のチャンバ間に流体連通を提供する1つ以上のチャネルを含む。ある特定の態様では、チャネルは、1つ以上のPMPがそこを通って輸送され得るほど十分に広い。ある特定の実施形態では、チャンバ間のチャネルのうちの1つ以上は、環状壁内の凹部によって形成されている。環状壁内の凹部とは、チャンバ間に流体連通を提供することが可能な、環状壁内のくぼみ又はキャビティを意味する。いくつかの場合に、凹部は、環状壁の外部表面内に形成されており、それによって、環状壁の外側表面に開口側面を有して形成された第1のチャンバ及び第2のチャンバは、そのような第1のチャンバと第2のチャンバとの間の環状壁の外部表面内の凹部によって相互接続されている。環状壁内の凹部は、任意の都合の良い長さ、幅、及び深さであってもよい。ある特定の例では、凹部の高さは、0.5mm~5mmの範囲、例えば、2.5mmであり得、深さは、0.2mm~1mm、例えば、0.5mmであり得、長さは、1mm~10cm、例えば、4~5cmであり得る。
【0062】
ある特定の実施形態では、凹部は、複数のチャンバの側面に配置されている。複数のチャンバの側面とは、円筒形構造の底端部の中心と上端部の中心との間に形成された、円筒形構造の軸が、鉛直に配向されるとき、チャンバの上部側又は底部側ではなく、左側又は右側を意味する。複数のチャンバの側面に凹部を配置するとは、凹部が、第1のチャンバの右側を第2のチャンバの左側と相互接続することができ、それによって、そのような第1及び第2のチャンバが、凹部を介して互いに流体連通していることを意味する。チャンバ間の凹部は、凹部が円筒形構造の底端部によって画定された平面に実質的に平行になるように、第2のチャンバ上の点とは反対の第1のチャンバ上の点との間の実質的に直線であってもよい。第1のチャンバと第2のチャンバとの間の凹部は、凹部の全長にわたって環状壁において実質的に同じ幅及び深さを有してもよく、又は変化してもよい。異なる対のチャンバ間の凹部は、異なる寸法又は同じ寸法を有し得る。凹部は、PMPがそこを通って並進され得ることを可能にするように、都合の良いように成形され得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、凹部は、円筒形構造の底端部の上の実質的に一定の高さで、1つ以上のチャンバの側面に配置されている。これらの実施形態では、チャンバの対間の凹部は、実質的に直線状であり得る。これらの実施形態では、凹部及びチャンバは、直線で、左端のチャンバの左端の位置から開始して、複数のチャンバの各々を通って、右端のチャンバの右端の位置まで経路が存在するように、成形されてもよい。1つ以上のチャンバの側面上の凹部は、円筒形構造の底端部の上の任意の都合の良い高さに配置されてもよい。これらの実施形態のうちのある特定の実施形態では、凹部が配置される円筒形構造の底端部の上の高さは、チャンバのうちの1つ以上の縦の中点に対応する。
【0064】
ある特定の実施形態では、複数のチャンバのうちの1つ以上の形状は、概して矩形である。概して矩形のチャンバとは、環状壁へのくぼみの二次元形状が、その幅よりも長さがより長いことを意味する。各チャンバの高さ及び幅は、任意の都合の良い高さ及び幅であってもよい。各矩形のチャンバの高さ及び幅は、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0065】
ある特定の実施形態では、1つ以上のチャネルによって別のチャンバに接続されたチャンバの形状は、チャネルに近接したチャンバの横方向部分に関して、チャンバの各横方向位置でのチャンバの高さが、そのような位置がチャネルに近いほど減少するようなものである。いくつかの場合に、各横方向位置におけるそのようなチャンバの高さは、テーパ状領域を形成するように直線的に減少する。凹部へのそのようなテーパ状の入口は、チャンバからチャネルへの凝集されたPMPの輸送を容易にし得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、チャンバのうちの1つ以上は、排水孔を備える。排水孔とは、流体が通ってチャンバから出ることができる開口部を意味する。例えば、流体は、重力の影響下で、チャンバの底部に配置された排水孔から排出され得る。代替的に、流体は、プランジャによってチャンバ内の流体に圧力を加えることで、チャンバから突き出されてもよい。
【0067】
チャンバのうちの1つ以上は、チャンバの通気、チャンバの流体での充填、及び/又はチャンバからの流体の排出のために構成された開口部を含み得る。
【0068】
ある特定の実施形態では、円筒形構造の内側は、1つ以上のウェルを備える。ウェルとは、円筒形構造の内部内の1つ以上のエンクロージャを意味する。エンクロージャは、任意の都合の良いサイズ又は形状であってもよい。例えば、エンクロージャは、閉じた底端部、環状壁、及び開口した上端部を有する、実質的に円筒形であってもよい。これらの実施形態では、円筒形構造は、そのようなウェルと複数のチャンバのうちの1つ以上との間の流体連通を提供する、円筒形構造内のチャネルを更に備え得る。いくつかの事例では、各ウェルは、1つ以上のチャネルを介して異なるチャンバと相互接続されている。
【0069】
ある特定の実施形態では、複数のチャンバは、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバを形成している。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、第2のチャンバに隣接しており、第2のチャンバは、第1及び第3のチャンバに隣接しており、第3のチャンバは、第2のチャンバに隣接している。ある特定の実施形態では、円筒形構造は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流体連通を提供する、環状壁内の第1の凹部と、第2のチャンバと第3のチャンバとの間の流体連通を提供する、環状壁内の第2の凹部と、を更に含む。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、溶解チャンバであり、第2のチャンバは、不混和相チャンバ、すなわち空気であり、第3のチャンバは、溶出チャンバである。溶解チャンバとは、試料調製カートリッジの使用中に、溶解緩衝液である流体などの溶解緩衝液を収容するチャンバを意味する。不混和相チャンバとは、試料調製カートリッジの使用中に、水相と不混和性である流体などの不混和相を収容するチャンバを意味する。いくつかの場合に、不混和相は、例えば油であってもよく、この場合、PMPは、空気チャンバから洗浄液に輸送され、次いで不混和相チャンバ(油又は空気)に輸送され、最終的に溶出チャンバに輸送される。溶出チャンバとは、試料調製カートリッジの使用中に、PMPに結合した分析物が放出され得る流体を収容するチャンバを意味する。ある特定の実施形態では、流体は、溶出緩衝液と称され得る。ある特定の実施形態では、溶出緩衝液は、単離された分析物の後続の下流処理と適合し得る。例えば、溶出緩衝液は、増幅緩衝液であってもよい。増幅緩衝液は、例えば、等温増幅又はPCRによって、単離された分析物の増幅を実施するのに好適であり得る。
【0070】
第1のチャンバは、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、投入口として構成され得る。投入口は、溶解緩衝液若しくは溶解剤、試料、及び/又はそれらの混合物を導入するように構成され得る。したがって、投入口は、溶解緩衝液、試料、及び/又はそれらの混合物のピペッティング、注入、又は圧送に適合した直径を有し得る。いくつかの場合に、第2のチャンバも、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、不混和相、例えば、油を第2のチャンバ内に導入するための投入口として構成され得る。いくつかの場合に、第3のチャンバも、チャンバの上部に開口部を含み得る。この開口部は、溶出緩衝液を第3のチャンバ内に導入するための投入口として構成され得る。
【0071】
ある特定の例では、第1のチャンバは、第1のチャンバの底部領域上又は底部領域の下に配置されたコンパートメントを含み得る。コンパートメントは、コンパートメントを第1のチャンバの内側に流体的に接続する開口部を含み得る。コンパートメントは、試料調製の方法に関するセクションに記載されているように、磁性粒子の第1の集団及び磁性粒子の第2の集団を含み得る。磁性粒子は、一緒に混合され、次いで乾燥され、例えば凍結乾燥され得る。ある特定の実施形態では、磁性粒子は、一緒に混合され、コンパートメント内に配置され、続いて乾燥されて、凍結乾燥調製物を提供し得る。ある特定の実施形態では、磁性粒子は、一緒に混合され、乾燥され、続いてコンパートメント内に配置されて、凍結乾燥調製物を提供し得る。ある特定の実施形態では、第1のチャンバは、チャンバの底部に開口部を含み、開口部は、溶解緩衝液のための投入口として構成されており、第1のチャンバは、第1のチャンバの上部に、試料投入口として構成された開口部を備える。ある特定の実施形態では、コンパートメントは、コンパートメントをチャネルに流体的に接続する投入口と、コンパートメントを第1のチャンバの内側に流体的に接続する出口と、を含む。
【0072】
ある特定の例では、第2のチャンバは、第1及び第3のチャンバとの相互接続部以外の開口部を含まなくてもよい。第2のチャンバは、空気を収容し得る。第1及び第3のチャンバが液体で充填されるとき、第2のチャンバ内の空気は、第2のチャンバ内に通気口がないことに起因して、圧縮される。本明細書に記されるように、圧縮空気は、第1のチャンバから、圧縮空気を含む第2のチャンバを介して、第3のチャンバに移送されるPMPの「洗浄」環境として機能する。
【0073】
ある特定の例では、第3のチャンバは、チャンバの底部領域に開口部を含む。開口部は、第3のチャンバを充填するように構成されている。開口部は、チャンバの底部領域に存在する排水孔とは異なる。ある特定の場合に、排水孔は、排水孔が大気圧下では液体が通過することを可能にせず、液体の通過を可能にするためにより高い圧力を必要とするように、第3のチャンバを充填するように構成された開口部よりも小さい直径を有し得る。いくつかの場合に、第3のチャンバの底部の排水孔は、1つ以上の収集容器に流体的に接続されている。収集容器は、2つの別個のチューブ、例えば、PCRに好適な薄い壁のポリプロピレンチューブ、又は熱循環反応を助長する同様の薄い壁の容器若しくはストリップであってもよい。第3のチャンバの底部の排水孔は、排水孔から分かれて、第3のチャンバから排出された実質的に等量の液体で2つの収集容器を充填する2つのチャネルに流体的に接続されてもよい。
【0074】
一実施形態による円筒形カートリッジを図4Aに示す。この例では、円筒形カートリッジ100は、環状壁上に3つの側面が開口したチャンバ101、102、103を形成する、環状壁内の3つのキャビティと、側面が開口した相互接続部104を形成する2つの凹部と、を含む。見られるように、チャンバ101、102、103の開口側面は、環状壁の外側に配置されており、チャンバ101、102、103は、互いに隣接して配置されている。チャンバ101、102、103間の2つの相互接続部104は、チャンバ間の流体連通を提供する。この例では、相互接続部104は、環状壁内の凹部であるチャネルであり、相互接続部104は、複数のチャンバ101、102、103の側面に配置されている。図に示されるように、チャンバ101、102、103間に相互接続部104を形成する凹部は、円筒形構造100の底端部の上の実質的に一定の高さにある。また、図4Aに示されているのは、第1のチャンバの底部領域に配置されたコンパートメント125である。コンパートメントは、本明細書に開示される磁性粒子の第1及び第2の集団の乾燥混合物を含む。コンパートメントは、磁性粒子が第1のチャンバに通って入ることができる開口部130を含む。コンパートメントは、溶解緩衝液などの水相を、コンパートメントを介して第1のチャンバに供給する、緩衝液パックに接続されたチャネルに流体的に接続されている。図4Bは、試料調製のためのカートリッジの拡大画像を示し、この画像は、カートリッジを逆さまの配向で示す。第1のチャンバ101が見える。コンパートメント125も見える。PMP150は、コンパートメント125内に配設されている。図4Cは、下から見た試料調製カートリッジの底部領域の写真を示す。コンパートメント125を覆うフィルムが、PMP150の可視化を助けるために取り外されている。また、コンパートメント125の底部領域につながるチャネルが見え、水相(例えば、溶解緩衝液)をコンパートメントに供給するために使用することができる。
【0075】
試料調製カートリッジは、複数のチャンバの開口側面及びチャネルを形成するための相互接続部を閉じる1つ以上のカバーを含む。ある特定の態様では、カバーは、円筒形構造の外部表面と嵌合するように湾曲している。カバーがチャンバを閉じると、チャンバ内に配設された流体が、チャンバ内に完全に収容される。円筒形カートリッジ内のチャンバの壁を形成するためのカバーの使用は、円筒形構造の環状壁よりも大幅に薄い壁を可能にする。円筒形カートリッジ内のチャンバの壁を形成するためのカバーの使用は、円筒形構造の材料とは異なる材料から作られた壁を可能にする。
【0076】
カバーは、湾曲し、環状壁の外側表面に取り付けることができる任意の好適な材料から作られ得る。例えば、カバーは、プラスチック(例えば、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーなどの熱可塑性樹脂)、金属、紙、ガラスなどから作られ得る。カバーに金属材料を使用する場合、金属は非磁性であり得、すなわち、かなりの量の鉄を含まない。紙カバーは、非湿潤性コーティング、例えば、ワックスコーティングを含み得る。カバーは、実質的に不透明又は実質的に透明であり得る。カバーは、例えば接着剤、環状壁若しくはカバー又は両方の外側を局所的に加熱すること、カバーを環状壁に作成された溝にスナップすることによって、カバーを環状壁内にねじ留めすることなどによって、任意の好適な手段によって環状壁に取り付けられてもよい。カバーは、チャンバ内で外側磁石の磁力を著しく減少させないように十分に薄くてもよい。例えば、カバーは、チャンバ内に存在する常磁性粒子(PMP)が、チャンバに隣接して配置されている外側磁石に応答して凝集されることを可能にし、かつ凝集されたPMPが、円筒形構造及び外側磁石の相対的な動きに応答して、隣接するチャンバを接続するチャネルを横切ることを可能にするほど十分に薄くてもよい。カバーは、1cm未満、0.5cm未満、0.1cm未満、例えば、1mm~5mm、又は0.1mm~5mm、又は0.1mm~1mm、又は0.1mm~0.5mmの厚さを有し得る。ある特定の実施形態では、カバーは、フィルム、例えば、接着フィルムであってもよい。
【0077】
ある特定の実施形態によれば、カバーは、複数のチャンバの開口側面を流体的に密封する。複数のチャンバの開口側面を流体的に密封するとは、カバーが円筒形構造上に配置されたときに、チャンバ内の空間が、チャンバの開口側面を介して、円筒形構造の外側の空間と流体連通しないことを意味する。
【0078】
ある特定の実施形態によれば、カバーの内側表面は、それに接した磁性粒子の移動を容易にする。PMPの移動を容易にするとは、PMPがカバーの内側表面と接触したままで、カバー上の第1の位置からカバー上の第2の位置により確実に並進され得るように、カバーの内側表面が構成され得ることを意味する。例えば、カバーの内側表面は、PMPがカバーに沿って移動するときに、PMPとカバーの内側表面との間の摩擦を低減するように研磨されてもよい。カバー上の第1の位置からカバー上の第2の位置に並進されるとは、ある特定の場合には、PMPがカバーの内側に沿って移動されることを意味する。
【0079】
ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、緩衝液パックを含み得る。緩衝液パックは、1つ以上の流体パックを含み得る。各流体パックは、流体を収容し得る。いくつかの実施形態では、流体パックは、溶解緩衝液パック及び溶出緩衝液パックを含み得る。他の実施形態では、流体パックは、溶解緩衝液パック、不混和相パック、及び溶出緩衝液パックの各々を含み得る。ある特定の実施形態では、不混和相は、油を含み得る。ある特定の実施形態では、不混和相は、空気を含み得る。いくつかの事例では、流体パックのうちの1つ以上は、PMPを更に含み得る。流体パックは、例えば、PMPの体積又は重量に基づいて測定される、任意の都合の良い量のPMPを収容し得る。例えば、PMPは、流体パックに含まれる場合、流体と混合されてもよい。いくつかの事例では、PMPは、溶解緩衝液を含む流体パックに含まれてもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、緩衝液パックは、円筒形構造のウェル内に嵌まるように構成されている。例えば、ウェルが実質的に中空のシリンダとして成形されている場合、緩衝液パックは、円筒形構造のウェル内に嵌まるシリンダとして成形されてもよい。緩衝液パックは、本出願と共同出願された、代理人整理番号ADDV-082PRVである、「Magnetic Particle Separation Device Buffer Pack and Cap Design」と題する米国仮特許出願において、より詳細に記載されており、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶解緩衝液は、組織試料、細胞、ウイルス、又は体液試料などの広範囲の試料から核酸を放出するように配合することができる。溶解緩衝液はまた、ウイルス、細菌、真菌、及び原生動物病原体などの全てのタイプの病原体を溶解するように設計され得る。そのような溶解緩衝液は、カオトロピック剤、特に、グアニジン塩酸塩を含有することができる。加えて、溶解緩衝液は、界面活性剤、消泡剤、緩衝液などのような他の試薬を含み得る。
【0082】
ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、密封蓋アセンブリを含む。密封蓋アセンブリは、円筒形構造の上端部に配置された密封プレートと、密封プレートにわたって配置された保護カバーと、を含む。保護カバーは、密封プレートの周囲を囲み、密封プレートを所定の位置に維持するために、円筒形構造の上部領域上及びその周りにスナップすることができる。
【0083】
密封プレートは、円筒形構造の上端部に嵌まり、上端部を閉じる。ある特定の実施形態では、密封プレートは、溶出された核酸の分析のために溶出緩衝液を取り出すための、第3の(溶出)チャンバ内の開口部と並んだ開口部を含み得る。他の実施形態では、密封プレートは、プランジャアセンブリを更に含み得る。プランジャアセンブリは、シャフトに装着されたガスケットシールと、ばねと、ばねとシャフトとを係合させるトリガと、を含み得る。シャフトは、対応するチャンバの高さ以下である長さなどの、任意の都合の良い長さであってもよい。ガスケットシールは、ガスケットシールの動作端部のサイズが、プランジャが一体化された対応するチャンバと実質的に同様であるように成形され得る。これらの実施形態では、ばねは、後退位置においてプランジャに張力を加えてもよい。すなわち、プランジャが後退すると、ばねは張力下にある。後退するとは、プランジャのガスケットシール端部が後退することを意味する。後退位置にあるとき、プランジャは、対応するチャンバから流体を突き出すことができない。プランジャが後退しているときにばねによって加えられる張力の量は、プランジャがもはや後退していないときに、ばねによってプランジャに加えられる張力の量に対応し、所望に応じて変化させることができる。ばねとシャフトとを係合させるトリガとは、トリガが、プランジャを後退位置に保持している張力下でのばねの解放を制御し得ることを意味する。
【0084】
ある特定の実施形態では、トリガ及びばねは、プランジャが後退位置にあるときにトリガが作動可能であるように、機械的に連動している。作動可能であるとは、トリガを押下することが、ばねの張力を解放し、それによってプランジャを後退位置から突き出し位置に移動させることを意味する。
【0085】
これらの実施形態では、プランジャのガスケットシールは、チャンバのうちの1つと係合するように配置されてもよい。チャンバのうちの1つと係合するとは、プランジャアセンブリが突き出し位置にあるとき、プランジャのガスケットシールが、チャンバの底部部分をほぼ充填し、プランジャアセンブリが後退位置にあるとき、プランジャのガスケットシールが、チャンバの底部部分を充填しないように、プランジャアセンブリが配置されることを意味する。すなわち、後退位置から突き出し位置へのプランジャの移動は、プランジャがチャンバから突き出し得るようなものである。チャンバから突き出すとは、プランジャが後退位置から突き出し位置に遷移すると、プランジャのガスケットシールがチャンバと係合し、チャンバ内の任意の流体に圧力を加えることを意味する。
【0086】
これらの実施形態では、トリガは、円筒形構造の外部壁を越えた距離に突出するように、密封蓋アセンブリ上に配置され得る。円筒形構造の外部壁を越えた距離に突出するとは、円筒形構造の軸とトリガ上の最も遠い点との間の距離が、円筒形構造の軸と環状壁の外部縁部との間の距離よりも大きいことを意味する。トリガは、環状壁の外部縁部を越えた任意の都合の良い距離に突出することができる。これらの実施形態では、トリガは、横方向に押下されるように配向されてもよい。トリガを押下するとは、トリガが機械的に連動しているばねの張力を解放するためにトリガを作動させることを意味する。横方向に押下されるように配向されるとは、トリガを押下するために、トリガを実質的に横方向に移動させなければならないように、トリガが配置されることを意味する。
【0087】
上記で要約されたように、ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、円筒形構造の上部に摺動可能に配置されたキャップを更に含む。摺動可能に配置されるとは、キャップが、円筒形構造に向かって摺動することができるように、円筒形構造の上部に配置することができることを意味する。
【0088】
ある特定の実施形態では、キャップは、緩衝液パックと機械的に係合するように配置された1つ以上のアームを備え得る。例えば、キャップは、1つ以上のアームがキャップの一方の平坦な側面に取り付けられる、実質的に平坦な形状であってもよい。そのようなアームは、任意の都合の良いサイズ又は形状であってもよい。例えば、アームの長さは、キャップが円筒形構造の上部に配置されたときに、アームが円筒形構造の内部のウェルに到達することができるように十分に長くてもよい。
【0089】
ある特定の実施形態では、キャップは、キャップが円筒形構造内に摺動されると、プランジャが試料チャンバに入り、試料を溶解チャンバに吐出するように配置された、プランジャを含み得る。試料チャンバは、第1の(溶解)チャンバに隣接し、チャネルを介して溶解チャンバに接続され得る。キャップのアームのうちの1つは、溶解緩衝液パックに入ることができ、溶解緩衝液をパックから第1の(溶解)チャンバ内に強制的に出す。キャップの別のアームは、存在する場合、不混和相パックに入り、油を第2の(不混和相)チャンバ内に押し込むことができ、一方で、キャップの第3のアームは、溶出緩衝液パックに入り、溶出緩衝液を第3の(溶出)チャンバ内に押し込む。
【0090】
カートリッジは、磁石を備えた機器内に装填されてもよく、この場合、磁石は、溶解チャンバから不混和相チャンバを通って溶出チャンバ内にPMPを移動させるために使用することができるように、カートリッジに対して配置されている。機器は、カートリッジに係合してカートリッジを磁石に対して回転させるモータを含んでもよく、又は磁石は、カートリッジの環状表面に沿って移動するように構成されてもよい。
【0091】
本開示の一実施形態による試料調製カートリッジを、図4Dに示す。この例では、試料調製カートリッジ400は、円筒形構造410、カバー420、キャップ430を含む。
【0092】
図4A~4Dに示される試料調製カートリッジに対するある特定の変更を含む試料調製カートリッジを図4E~4Gに描示する。図4Eは、チャンバ101及び102の間に存在する空気遮断経路105と、チャンバ102及び103の間に配置された空気チャンバ106とを示す。この例では、空気遮断経路105は、空気ギャップチャンバ106に接続されている。他の例では、空気遮断経路105は、空気ギャップチャンバ106に接続されていなくてもよい。例えば、空気遮断経路は、カートリッジの底部領域で終端し得る。ある特定の実施形態では、空気ギャップチャンバの底部領域は、閉じていてもよい。空気ギャップの幅は、空気チャンバの幅よりも短く、又は逆もまた同様である。他の例では、空気ギャップ及び空気チャンバの幅は、同じであってもよい。ある特定の例では、バッフル107が、チャンバ102及び/又は101に導入されてもよい。図4Fは、例えば、カートリッジの往復回転による磁性ビーズの混合中に、液体がチャネル104内に飛散するのを防止することができるバッフル107を有するチャンバ102を描示する。バッフル107は、チャネル104の下の位置、例えば、チャネル104の下の2mm~10mm、3mm~8mm、又は5mm~7mmに配置されてもよい。バッフルは、バッフルが延在するチャンバの側壁から測定した場合、最大5mm、例えば、1mm~3mmの幅を有し得る。
【0093】
図4Gは、チャンバ103を示し、棚バッフル108が、チャンバを通って横断して延在する。棚バッフル108は、棚バッフルの下のエリアへの磁性ビーズの通過を可能にするためのノッチ109及び開口部190を含む。棚バッフルは、チャンバ102及び/又は103に存在する液体の混合中の液体の飛散を防止するために使用されてもよい。
【0094】
図4Hは、チャネル104により近い底部壁が、チャンバ103の側壁と鋭角を形成するように、一端部において上昇した底部壁111を有する、変更されたチャンバ103を示す。この構成は、チャンバ103内に存在する液体がチャネル104内に飛散するのを防止するために棚バッフルを使用することの代替形態であり得る。
【0095】
試料調製システム
本明細書に記載の試料処理カートリッジと、カートリッジ内の磁性粒子に磁力を及ぼすことができるように、カートリッジと関連して動作可能に配置された磁石と、を備える、試料調製システムが提供される。例示的な試料調製システムは、円筒形の試料調製カートリッジを取り外し可能に配設することができるシリンダハウジングを含む。取り外し可能に配設されるとは、円筒形カートリッジをそれでもなおシリンダハウジングから分離することができるように、円筒形カートリッジをシリンダハウジング内に嵌めることができることを意味する。例えば、ユーザは、円筒形カートリッジをシリンダハウジング内に配設してもよく、試料調製後に円筒形カートリッジをシリンダハウジングから取り外してもよい。上記で要約されたように、シリンダハウジングは、磁石を含む。磁石とは、それ自体の外側に磁場を生成する能力を有する任意の物体を意味する。例えば、磁石は、磁性粒子を引き付けることが可能な磁場を生成し得る。いくつかの事例では、磁石は、永久磁石又は電磁石であってもよい。本明細書で使用される場合、「磁石」は、磁場を自発的に又は能動的に発生させ得る材料又は物品を指し、磁場の強度は、従来のガウスメータによって測定され得る。磁石は、永久磁石又は電磁石であり得る。本明細書で使用される場合、「永久磁石」は、磁化され、それ自体の永続的な磁場を作り出す任意の物体を指す。永久磁石に好適な強磁性材料には、鉄、ニッケル、コバルト、希土類金属、及びそれらの合金が含まれる。用語「永久」は、そのような磁石が、例えば、熱、物理的衝撃、又は反対の磁場への曝露によって、その磁性を失うことができないことを意味しない。いくつかの例では、永久磁石は、サマリウムコバルト(SmCo)合金、アルミニウムニッケルコバルト合金(AlNiCo)、ネオジム鉄ホウ素(NdFeB)合金、NdFe14B、又はフェライトを含む。本明細書で使用される場合、「電磁石」は、電気エネルギーを加えることを通じて磁場を作り出すことが可能である任意のデバイスを指す。電磁石は、磁場を発生させるために電流を運ぶためのコア及びコイル又は他の要素を含むことができる。
【0096】
ある特定の実施形態では、磁石は、円筒形カートリッジの環状壁の外側に近接して配置されている。いくつかの実施形態では、磁石は、円筒形カートリッジの外側にあり、円筒形カートリッジのチャンバ間で磁性粒子を移送するために使用される。
【0097】
ある特定の実施形態では、円筒形カートリッジは、シリンダハウジング内で回転する。回転するとは、シリンダハウジングが、例えば、円筒形構造の上端部の中心を底端部の中心と接続することによって形成された円筒形カートリッジの軸の周りを回転する円筒形カートリッジの自由度を可能にすることを意味する。他の実施形態では、円筒形カートリッジは、空間内の定位置を維持し、シリンダハウジングは、円筒形カートリッジの周りを回転する。
【0098】
ある特定の実施形態では、試料処理機器内の使い捨ての消耗シリンダカートリッジを使用して試料を処理するために、再使用可能な磁石が使用される。再使用可能な磁石の使用は、各消耗品の廃棄物を低減する。ある特定の実施形態では、円筒形ハウジングは、再使用可能である。
【0099】
本開示の一実施形態による、試料調製カートリッジ100及びシリンダハウジング130を含む試料調製システムを図5に示す。この例では、試料調製カートリッジ100は、円筒形構造110と、カバー120と、保護カバー140と、キャップ150と、を含む。図にはまた、円筒形構造の環状壁155と、環状壁上に3つの側面が開口したチャンバ160a~160cを形成している、環状壁内の3つのキャビティと、が描示されている。図に見られるように、各チャンバ160a~160cの開口側面は、円筒形構造110の外側に向かって配向されている。加えて、チャンバ160a~160cの開口側面は、カバー120によって囲まれている。図5では、カバー120は、チャンバ160a~160cの可視化を助けるために透明なものとして描示されているが、カバー120は透明である必要はない。カバー120は、環状壁155の外部表面と嵌合するように湾曲しており、チャンバの開口側面を流体的に密封している。また、この図では、チャンバ間の相互接続部165も見える。図に見られるように、相互接続部165は、チャンバ間の環状壁内の凹部であるチャネルである。図はまた、シリンダハウジング130内の磁石170を描示する。見られるように、磁石170は、円筒形構造110の環状壁155の外側に近接して配置されている。
【0100】
図6は、本明細書に開示される円筒形の試料調製カートリッジにおける、中間チャンバ内の空気相と、中間チャンバに隣接する2つのチャンバ内の水相との間の界面境界の図を示す。図は、円筒形である試料調製カートリッジを使用するが、その描示は、空気相及び水相を含む他の試料調製カートリッジ、例えば、直線的な試料調製カートリッジにも適用されることが理解され、例えば、図1Cを参照されたい。図6は、両側に含水チャンバ610及び630を有する空気チャンバ620を有する試料調製カートリッジ600を示す。枠で囲まれた領域は、第1のチャネル604、空気チャンバ620、及び第2のチャネル605の一部を含む。PMPと水相との混合中に、第1の604及び第2の605チャネルは、水相で部分的に充填され得る。例えば、含水チャンバ610内に存在する溶解緩衝液は、試料調製カートリッジの撹拌中に第1のチャネル604内に流出し得る。含水チャンバ630内に存在する溶出緩衝液は、試料調製カートリッジの撹拌中に第2のチャネル605内に流出し得る。中間チャンバ620内の空気の存在は、水相と空気相との間の界面での界面境界の形成をもたらす。界面境界は、水相が空気チャンバ内に流入することを実質的に防止する。いくつかの例では、空気チャンバは、例えば、カートリッジの撹拌中に空気チャンバ内に流出し得る任意の水相を収容するためのリザーバエリアを含み、磁性粒子の第1及び第2の集団を試料と混合する。試料調製カートリッジの外側に配置されている磁石640が描示されている。磁石は、磁性粒子を引き付けて保持し、それらを液体-空気界面にわたって輸送し、これにより、磁性粒子と繋がった(例えば、磁性粒子に結合した、及び/又は磁性粒子の間に捕捉された)液体が大幅に取り出される。次いで、磁石は、磁性粒子を水相(例えば、溶出緩衝液)に輸送し戻す。
【0101】
試料調製カートリッジの使用方法の自動化
ある特定の実施形態はまた、モータを使用して作動させることができる試料調製カートリッジを提供する。モータを自動化することにより、本明細書に開示される試料調製カートリッジの使用方法を自動化することができる。モータはまた、プロセッサによって実行されると、モータに、本明細書に開示されるカートリッジの使用方法を実施させる、コンピュータプログラムによって制御され得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、モータは、1.8°の角度の増分で円筒形構造を回転させる。
【0103】
いくつかの実施形態では、モータは、円筒形構造を回転させて、例えば、磁石が溶解チャンバ、不混和相チャンバ、又は溶出チャンバに近接して配置される所定の位置に戻す。
【0104】
モータは、完全な360°回転のほんの一部を提供するように構成することができる。例えば、モータは、60°~120°の回転、好ましくは80°~110°の回転、更により好ましくは90°~100°の回転、最も好ましくは約90°の回転のみを提供するように構成することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、モータは、試料調製カートリッジの内容物の混合を更に容易にすることができる。そのような混合は、試料調製カートリッジのモータが介在した振盪によって実施することができる。適切な混合は、開始位置、振幅、及び/又は振盪速度の制御によって提供することができる。混合は、非特異的結合を低減し、均質な混合を改善することによって、試料調製時間を低減し、及び/又は試料調製を改善し得る。
【0106】
ある特定の態様では、円筒形カートリッジを第1の位置から第2の位置に回転させることは、溶解チャンバのスパン全体が磁石を横切って回転するように、円筒形カートリッジを回転させることを含む。すなわち、円筒形カートリッジは、溶解チャンバの横方向スパン全体が磁石に曝露されるように回転され得る。
【0107】
同様に、ある特定の態様では、円筒形カートリッジを第2の位置から第3の位置に回転させることは、不混和相チャンバのスパン全体が磁石を横切って回転するように、円筒形カートリッジを回転させることを含む。すなわち、円筒形カートリッジは、不混和相チャンバの横方向スパン全体が磁石に曝露されるように回転され得る。
【0108】
本開示の方法は、溶解チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの溶解緩衝液及び常磁性粒子で充填し、並びに、溶出チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの溶出緩衝液で充填する追加のステップを含み得る。非空気不混和相を利用する実施形態では、ステップは、不混和相チャンバを、緩衝液パック内に収容された流体パックからの不混和相で充填することを追加的に含み得る。
【0109】
ある特定の実施形態では、流体は、緩衝液パック内に収容された流体パックから、流体パック内の流体に圧力を加え、流体を、試料調製カートリッジの円筒形構造内のチャネルに強制的に通すことによって、チャンバに移送される。例えば、流体は、いくつかの場合に常磁性粒子を含む溶解緩衝液、不混和相、及び溶出緩衝液を含み得る。いくつかの場合に、不混和相は、油を含む。
【0110】
流体が流体パックから移送されるとき、ある特定の実施形態では、流体パックに係合するためのアームを備える試料調製カートリッジのキャップに機械的な力を加えることによって、流体パック内の流体に圧力が加えられる。キャップとは、流体パックと係合するためのアームを有する任意の都合の良い機械的構造を意味する。例えば、キャップは、アームが一方の側面から突出する実質的に平坦な基部を備えてもよく、それによって、力がキャップの平坦な側面に加えられると、そのような力は、基部から突出しているアームに沿って伝達され、これが次に、流体パック内の流体と係合し、それによって流体パック内の流体に圧力を加え、流体を、円筒形構造内のチャネルに強制的に通す。
【0111】
本開示の方法は、溶出した核酸を、チャンバ内の排水孔を通して溶出チャンバの内容物を突き出すことによって、試料調製カートリッジの溶出チャンバから移送する追加のステップを含み得る。溶出チャンバを突き出すことは、任意の都合の良い形態をとることができる。例えば、試料調製カートリッジは、円筒形構造を指定された位置に回転させると、溶出チャンバを突き出すように自動的にトリガされ得る、溶出チャンバと係合するように構成されたプランジャを含む、プランジャアセンブリを含んでもよい。
【0112】
溶出した核酸が溶出チャンバから突き出される場合、ある特定の実施形態では、試料調製カートリッジは、一緒に連動したプランジャ、ばね、及びトリガを更に備え、その結果、溶出チャンバを突き出すことは、トリガに圧力を加えてばねの張力を解放し、それによってプランジャを溶出チャンバ内に駆動することを含む。ある特定の実施形態では、円筒形構造は、機械的アームがトリガに圧力を加えることを可能にするために、第4の位置に回転される。そのような場合、トリガは、円筒形構造の外側半径を越えて突き出し得る。機械的アームとは、トリガを押下するときに使用するための任意の都合の良いデバイスを意味する。例えば、そのような機械的アームは、固定された位置に装着され、機械的アームがトリガに当接する位置に円筒形カートリッジが回転するときにのみ、トリガに係合するように配置され得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、細胞を含む試料は、試料調製カートリッジの試料投入構成要素に圧力を加え、それによって細胞を含む試料を溶解緩衝液中に導入することによって、溶解緩衝液に導入される。試料投入構成要素とは、力が構造に加えられると、圧力が試料に加えられ、それによって試料が構造から試料調製カートリッジの溶解チャンバ内に強制されるように、細胞を囲むための任意の都合の良い構造を意味する。
【実施例
【0114】
実施例1:試料調製のための空気相の使用
空気チャンバは、概して、より高い界面エネルギーを示し、はるかに高いプルスルー力(液体-空気貫通力)を必要とする。本発明は、この境界遷移を補助するために「ヘルパービーズ」を添加することによって、PMPを水相から空気相に輸送するためのより高い全体的な力の要件に対する解決策を提供する。これらのヘルパービーズは、典型的には親水性であり、サイズがより大きく、及び/又は磁鉄鉱においてより密であり、高い磁気応答を有する。ビーズ当たりのサイズ及びより大きい質量に起因して、永久磁石の存在下でわずかに磁化することができる。ヘルパービーズのこの誘発磁性は、それを取り囲む溶液中のより小さなビーズの凝集を補助し、加速させることができる。PMPは、標的分析物を捕捉するように官能化されるが、ヘルパービーズは、標的分析物に結合しない。
【0115】
直径2.7umの平均サイズを有するおよそ800,000個の磁性ビーズ(JSR Scientific MS300)を、反応当たりおよそ1:1(50%ビーズ質量)で、直径10umの平均サイズを有するおよそ16,000~32,000個のヘルパービーズ(Sigma 49664)と混合した。
【0116】
別個の実験では、直径3.7umの平均サイズを有するおよそ820万個の磁性ビーズ(Qiagen MagAttract)を、反応当たりおよそ1:1(50%ビーズ質量)で、直径100umの平均サイズを有するおよそ3,000~10,000個のヘルパービーズ(GE Healthcare)と混合した。
【0117】
図7は、不混和相として空気又は油を使用した結果を示す。空気移送は、外側磁石の近い配置を必要とした。油を通した移送は、磁石の配置にそれほど敏感ではない。Qiagen捕捉ビーズを単独で使用する場合、磁石とカートリッジ、例えば、図1Dに示すカートリッジとの間の最大分離距離は、0.5mmである。この距離を超えると、水-空気界面においてかなりの量のビーズが失われる。移送されるPMPの量は、アッセイ感度及び回収される核酸含有量に直接影響を及ぼすため、約90%の移送の許容基準が期待される。90%の移送収率は、ヘルパービーズを添加することによって達成可能である。ヘルパービーズはまた、カートリッジから最大1.5mm離れた磁石の配置を可能にする。PMPを含む水相の濁度を、PMP移送パーセントの測定値として使用した。阻害物質のキャリーオーバーを使用して、PMPを有する水相の移送の低減に対する不混和相(空気又は油)の効果を比較した。
【0118】
したがって、上記の説明は単に本開示の原理を例示するにすぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示していないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術分野の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。加えて、そのような均等物は、構造に関係なく、現在知られている均等物及び将来開発される均等価の両方、すなわち、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示及び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6
図7
【国際調査報告】