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特表2024-505225肺損傷を減少させ、肺機能を改善し、炎症促進性サイトカインを低下させる脂質
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  • 特表-肺損傷を減少させ、肺機能を改善し、炎症促進性サイトカインを低下させる脂質 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】肺損傷を減少させ、肺機能を改善し、炎症促進性サイトカインを低下させる脂質
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/683 20060101AFI20240129BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K31/683
A61P11/00
A61P11/06
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546043
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022013283
(87)【国際公開番号】W WO2022164721
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,511
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514306065
【氏名又は名称】サインパス ファルマ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SIGNPATH PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ソーディロ ピーター ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァイル ダン
(72)【発明者】
【氏名】ラビー セバスチャン エム.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086DA37
4C086DA41
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA65
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
(57)【要約】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を治療する方法であって、対象に式(I)の化合物を与えることを含み、式中、Rは、C-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは(II)であり;Rは、H又は薬学的に許容されるカチオンであり;Rは、1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、C-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、H、又はC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、方法。
【化1】

【化2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を治療する方法であって、式Iの化合物、
【化1】

を含み、式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【化2】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法。
【請求項2】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態が、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肺疾患が、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物が、
【化3】

のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物が、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化合物が、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化合物が、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化合物が、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組成物が、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
対象が、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
化合物が、
【化4】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
肺炎症、肺窮迫、又は肺不全を治療する方法であって、
式Iの化合物、
【化5】

を含み、式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【化6】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法。
【請求項17】
肺疾患が、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
化合物が、
【化7】

のうちの少なくとも1つから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
化合物が、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
化合物が、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
化合物が、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
組成物が、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤されている、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
化合物が、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤されている、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤されている、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
対象が、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
化合物が、
【化8】

である、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を予防又は治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)、若しくは、DMPC/DMPG、
リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、若しくは、エルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含むリゾホスファチジルグリセロール、
又は、式(I)の化合物、若しくはその立体異性体、エナンチオマー、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【化9】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【化10】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法。
【請求項31】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態が、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む肺疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
化合物が、
【化11】

のうちの少なくとも1つから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
化合物が、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
化合物が、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
化合物が、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
組成物が、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤されている、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
化合物が、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤されている、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
組成物が、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤されている、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
対象が、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
化合物が、
【化12】

である、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
肺炎症、肺窮迫、又は肺不全の治療を必要とする対象を、前記治療の前に特定するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT国際出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,511号の優先権を請求し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は一般に、炎症促進性サイトカインを減少させるための組成物及び方法、並びに肺損傷、肺機能障害、及び/又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS、acute respiratory distress syndrome)を含む、炎症促進性サイトカインに起因する疾患症状の治療の分野に関する。
【0003】
連邦政府の資金による研究の明記
なし。
【背景技術】
【0004】
炎症促進性サイトカインが関与する多くの病状及び病態があり、例えば、敗血症、アルツハイマー病、外傷性脳傷害、エボラ、関節炎、及び炎症促進性サイトカインの低減が有益でありうる他の状況がある。本発明の範囲を限定するものではないが、その背景は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と関連して説明される。
【0005】
炎症促進性サイトカインが関与する疾患の一例は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)であり、これは、急性肺傷害後の重篤な低酸素血症によって特徴付けられる、高い死亡率をもたらす肺での激しい炎症プロセスである。ARDSの病因因子としては、敗血症、肺炎、急性膵炎、化学薬品又は煙の吸入、胃内容物の誤嚥、外傷性ショック、化学療法毒性、又はウイルス性疾病、例えばCOVID-19が挙げられる(Thompson BT, Chambers RC, Liu KD. Acute respiratory distress syndrome. NEJM. 2017 Aug 10;377(6):562-72、Dushianthan A, Grocott MP, Postle AD, Cusack R. Acute respiratory distress syndrome and acute lung injury. PMJ. 2011 Sep 1;87(1031):612-22、Confalonieri M, Salton F, Fabiano F. Acute respiratory distress syndrome. ERR. 2017 Jun 30;26(144):160116、Kirch C, Blot F, Fizazi K, Raynard B, Theodore C, Nitenberg G. Acute respiratory distress syndrome after chemotherapy for lung metastases from non-seminomatous germ-cell tumors. SCC. 2003 Sep 1;11(9):575-80、Xu Z, Shi L, Wang Y, Zhang J, Huang L, Zhang C, Liu S, Zhao P, Liu H, Zhu L, Tai Y. Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. Lancet Respir Med. 2020 Apr 1;8(4):420-2、Grasselli G, Tonetti T, Protti A, Langer T, Girardis M, Bellani G, Laffey J, Carrafiello G, Carsana L, Rizzuto C, Zanella A. Pathophysiology of COVID-19-associated acute respiratory distress syndrome: a multicentre prospective observational study. Lancet Respir Med. 2020 Dec 1;8(12):1201-8)。心原性肺水腫に続発する低酸素血症は、ARDSの診断から除外される。ARDSの患者において、肺の損傷は最初の傷害の数時間後又は数日後に始まる可能性があり、肺胞の損傷及び肺での大規模な浮腫を伴い、これらは胸部X線写真のびまん性浸潤によって明らかにされる。7~10日後、肺の損傷は線維症に進行する可能性がある(Spadaro S, Park M, Turrini C, Tunstall T, Thwaites R, Mauri T, Ragazzi R, Ruggeri P, Hansel TT, Caramori G, Volta CA. Biomarkers for acute respiratory distress syndrome and prospects for personalised medicine. J Inflamm. 2019 Dec 1;16(1):1、Ware LB, Matthay MA. The acute respiratory distress syndrome. NEJM. 2000 May 4;342(18):1334-49)。ARDS肺損傷の患者では、患者らの肺が酸素を取り込むことができる程度を示すPaO/FiO比(動脈血酸素分圧/吸気中酸素分画)が減少している。P/FiO値の減少は、肺損傷が悪化していることを示す。
【0006】
好中球の増加はARDS患者の気管支肺胞洗浄液(BALF、bronchoalveolar lavage fluid)中で顕著に見られ、この細胞はこの疾患の進行に重要である(Juss JK, House D, Amour A, Begg M, Herre J, Storisteanu DM, Hoenderdos K, Bradley G, Lennon M, Summers C, Hessel EM. Acute respiratory distress syndrome neutrophils have a distinct phenotype and are resistant to phosphoinositide 3-kinase inhibition. Am J Respir Crit Care Med. 2016 Oct 15;194(8):961-73、Matute-Bello G, Liles WC, RADELLA F, Steinberg KP, Ruzinski JT, Jonas M, Chi EY, Hudson LD, Martin TR. Neutrophil apoptosis in the acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 1997 Dec 1;156(6):1969-77、Windsor AC, Mullen PG, Fowler AA, Sugerman HJ. Role of the neutrophil in adult respiratory distress syndrome. BJS. 1993 Jan;80(1):10-7)。好中球のレベル及び好中球対リンパ球比のレベルは、この患者における予後指標であり(Wang Y, Ju M, Chen C, Yang D, Hou D, Tang X, Zhu X, Zhang D, Wang L, Ji S, Jiang J. Neutrophil-to-lymphocyte ratio as a prognostic marker in acute respiratory distress syndrome patients: a retrospective study. J Thorac Dis. 2018 Jan;10(1):273、Ma A, Cheng J, Yang J, Dong M, Liao X, Kang Y. Neutrophil-to-lymphocyte ratio as a predictive biomarker for moderate-severe ARDS in severe COVID-19 patients. Crit Care. 2020 Dec;24(1):1-4)、動物モデルにおける好中球の欠乏は、肺損傷を部分的に減少させることがある(Williams AE, Chambers RC. The mercurial nature of neutrophils: still an enigma in ARDS?. Am J Physiol Lung Cell Mol. 2014 Feb 1;306(3):L217-30)。肺炎症に反応して肺に移動する好中球は、炎症促進性サイトカインの放出を引き起こす。これにより炎症のカスケードが起こり、肺損傷が増加する(Scott BN, Kubes P. Death to the neutrophil! A resolution for acute respiratory distress syndrome?. Eur Respir J. 2018;52:1801274、Yang SC, Tsai YF, Pan YL, Hwang TL. Understanding the role of neutrophils in acute respiratory distress syndrome. Biomed J. 2020 Sep 10)。好中球は、特にインターロイキン(IL、interleukin)の分泌を刺激することが知られており、ARDS肺損傷の重症度と相関することが知られている(Rebetz J, Semple JW, Kapur R. The pathogenic involvement of neutrophils in acute respiratory distress syndrome and transfusion-related acute lung injury. Transfus Med Hemother. 2018;45(5):290-8)。分泌されたサイトカインが今度は追加の好中球を肺に補充する(Chen K, Kolls JK. Innate Lymphoid Cells and Acute Respiratory Distress Syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2016 Feb 15;193(4):350-2)。最近の総説(2020年9月)において、Yang et al.は、著名なサイトカイン、例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子-α(TNF-α、tumor necrosis factor-α)、インターフェロンγ(IFN-γ、interferon-γ)、及び顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF、granulocyte colony-stimulating factor)が肺で顕著に増加することを報告した(Yang SC, Tsai YF, Pan YL, Hwang TL. Understanding the role of neutrophils in acute respiratory distress syndrome. Biomed J. 2020 Sep 10)。他の人々も、これらのサイトカインが深刻な炎症及び重篤な疾患を引き起こすのに特に重要であることを報告している(Meduri GU, Kohler G, Headley S, Tolley E, Stentz F, Postlethwaite A. Inflammatory cytokines in the BAL of patients with ARDS: persistent elevation over time predicts poor outcome. Chest. 1995 Nov 1;108(5):1303-14、Preira P, Forel JM, Robert P, Negre P, Biarnes-Pelicot M, Xeridat F, Bongrand P, Papazian L, Theodoly O. The leukocyte-stiffening property of plasma in early acute respiratory distress syndrome (ARDS) revealed by a microfluidic single-cell study: the role of cytokines and protection with antibodies. Crit Care. 2015 Dec 1;20(1):8、Wilson JG, Simpson LJ, Ferreira AM, Rustagi A, Roque J, Asuni A, Ranganath T, Grant PM, Subramanian A, Rosenberg-Hasson Y, Maecker HT. Cytokine profile in plasma of severe COVID-19 does not differ from ARDS and sepsis. MedRxiv. 2020 Jan 1)。患者におけるこのデータは、様々な動物モデルで確かめられている。例えば、マウスARDSモデルにおいて、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-12、IL-17、血管内皮増殖因子(VEGF、vascular endothelial growth factor)、INF-γ、単球走化性タンパク質-1(MCP-1、monocyte chemoattract protein-1、CCL-2)、ケラチノサイト由来ケモカイン(KC、keratinocytes-derived chemokine、CXCL-1)、マクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α、macrophage inflammatory protein-1α、CCL-3)、及びインターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP-10、interferon gamma-induced protein 10、CXCL-10)が、18時間後に全て有意に上昇した(Juskewitch JE, Knudsen BE, Platt JL, Nath KA, Knutson KL, Brunn GJ, Grande JP. LPS-induced murine systemic inflammation is driven by parenchymal cell activation and exclusively predicted by early MCP-1 plasma levels. Am J Pathol. 2012 Jan 1;180(1):32-40)。さらに、必要な場合、機械的換気がさらなる肺損傷及びさらなる炎症を引き起こすことになることが知られている(Spadaro S, Park M, Turrini C, Tunstall T, Thwaites R, Mauri T, Ragazzi R, Ruggeri P, Hansel TT, Caramori G, Volta CA. Biomarkers for acute respiratory distress syndrome and prospects for personalised medicine. J Inflamm. 2019 Dec 1;16(1):1、Ware LB, Matthay MA. The acute respiratory distress syndrome. NEJM. 2000 May 4;342(18):1334-49、Henderson WR, Chen L, Amato MB, Brochard LJ. Fifty years of research in ARDS. Respiratory mechanics in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2017 Oct 1;196(7):822-33)。炎症の抑制がこの疾患を治療する鍵である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Thompson BT, Chambers RC, Liu KD. Acute respiratory distress syndrome. NEJM. 2017 Aug 10;377(6):562-72
【非特許文献2】Dushianthan A, Grocott MP, Postle AD, Cusack R. Acute respiratory distress syndrome and acute lung injury. PMJ. 2011 Sep 1;87(1031):612-22
【非特許文献3】Confalonieri M, Salton F, Fabiano F. Acute respiratory distress syndrome. ERR. 2017 Jun 30;26(144):160116
【非特許文献4】Kirch C, Blot F, Fizazi K, Raynard B, Theodore C, Nitenberg G. Acute respiratory distress syndrome after chemotherapy for lung metastases from non-seminomatous germ-cell tumors. SCC. 2003 Sep 1;11(9):575-80
【非特許文献5】Xu Z, Shi L, Wang Y, Zhang J, Huang L, Zhang C, Liu S, Zhao P, Liu H, Zhu L, Tai Y. Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. Lancet Respir Med. 2020 Apr 1;8(4):420-2
【非特許文献6】Grasselli G, Tonetti T, Protti A, Langer T, Girardis M, Bellani G, Laffey J, Carrafiello G, Carsana L, Rizzuto C, Zanella A. Pathophysiology of COVID-19-associated acute respiratory distress syndrome: a multicentre prospective observational study. Lancet Respir Med. 2020 Dec 1;8(12):1201-8
【非特許文献7】Spadaro S, Park M, Turrini C, Tunstall T, Thwaites R, Mauri T, Ragazzi R, Ruggeri P, Hansel TT, Caramori G, Volta CA. Biomarkers for acute respiratory distress syndrome and prospects for personalised medicine. J Inflamm. 2019 Dec 1;16(1):1
【非特許文献8】Ware LB, Matthay MA. The acute respiratory distress syndrome. NEJM. 2000 May 4;342(18):1334-49
【非特許文献9】Juss JK, House D, Amour A, Begg M, Herre J, Storisteanu DM, Hoenderdos K, Bradley G, Lennon M, Summers C, Hessel EM. Acute respiratory distress syndrome neutrophils have a distinct phenotype and are resistant to phosphoinositide 3-kinase inhibition. Am J Respir Crit Care Med. 2016 Oct 15;194(8):961-73
【非特許文献10】Matute-Bello G, Liles WC, RADELLA F, Steinberg KP, Ruzinski JT, Jonas M, Chi EY, Hudson LD, Martin TR. Neutrophil apoptosis in the acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 1997 Dec 1;156(6):1969-77
【非特許文献11】Windsor AC, Mullen PG, Fowler AA, Sugerman HJ. Role of the neutrophil in adult respiratory distress syndrome. BJS. 1993 Jan;80(1):10-7
【非特許文献12】Wang Y, Ju M, Chen C, Yang D, Hou D, Tang X, Zhu X, Zhang D, Wang L, Ji S, Jiang J. Neutrophil-to-lymphocyte ratio as a prognostic marker in acute respiratory distress syndrome patients: a retrospective study. J Thorac Dis. 2018 Jan;10(1):273
【非特許文献13】Ma A, Cheng J, Yang J, Dong M, Liao X, Kang Y. Neutrophil-to-lymphocyte ratio as a predictive biomarker for moderate-severe ARDS in severe COVID-19 patients. Crit Care. 2020 Dec;24(1):1-4
【非特許文献14】Williams AE, Chambers RC. The mercurial nature of neutrophils: still an enigma in ARDS?. Am J Physiol Lung Cell Mol. 2014 Feb 1;306(3):L217-30
【非特許文献15】Scott BN, Kubes P. Death to the neutrophil! A resolution for acute respiratory distress syndrome?. Eur Respir J. 2018;52:1801274
【非特許文献16】Yang SC, Tsai YF, Pan YL, Hwang TL. Understanding the role of neutrophils in acute respiratory distress syndrome. Biomed J. 2020 Sep 10
【非特許文献17】Rebetz J, Semple JW, Kapur R. The pathogenic involvement of neutrophils in acute respiratory distress syndrome and transfusion-related acute lung injury. Transfus Med Hemother. 2018;45(5):290-8
【非特許文献18】Chen K, Kolls JK. Innate Lymphoid Cells and Acute Respiratory Distress Syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2016 Feb 15;193(4):350-2
【非特許文献19】Meduri GU, Kohler G, Headley S, Tolley E, Stentz F, Postlethwaite A. Inflammatory cytokines in the BAL of patients with ARDS: persistent elevation over time predicts poor outcome. Chest. 1995 Nov 1;108(5):1303-14
【非特許文献20】Preira P, Forel JM, Robert P, Negre P, Biarnes-Pelicot M, Xeridat F, Bongrand P, Papazian L, Theodoly O. The leukocyte-stiffening property of plasma in early acute respiratory distress syndrome (ARDS) revealed by a microfluidic single-cell study: the role of cytokines and protection with antibodies. Crit Care. 2015 Dec 1;20(1):8
【非特許文献21】Wilson JG, Simpson LJ, Ferreira AM, Rustagi A, Roque J, Asuni A, Ranganath T, Grant PM, Subramanian A, Rosenberg-Hasson Y, Maecker HT. Cytokine profile in plasma of severe COVID-19 does not differ from ARDS and sepsis. MedRxiv. 2020 Jan 1
【非特許文献22】Juskewitch JE, Knudsen BE, Platt JL, Nath KA, Knutson KL, Brunn GJ, Grande JP. LPS-induced murine systemic inflammation is driven by parenchymal cell activation and exclusively predicted by early MCP-1 plasma levels. Am J Pathol. 2012 Jan 1;180(1):32-40
【非特許文献23】Henderson WR, Chen L, Amato MB, Brochard LJ. Fifty years of research in ARDS. Respiratory mechanics in acute respiratory distress syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2017 Oct 1;196(7):822-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必要とされているのは、ARDSの予防及び治療のための新規組成物及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、本発明は、炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を治療する方法であって、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC、1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG、1,2-Dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphoglycerol)、若しくは、DMPC/DMPG、
リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、若しくは、エルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含むリゾホスファチジルグリセロール、
又は、式Iの化合物を含み、
【0010】
【化1】
【0011】
式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【0012】
【化2】
【0013】
であり、
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法を含む。一態様において、炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態は、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全である。別の態様において、肺疾患は、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む。別の態様において、Rは、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである。別の態様において、化合物は、以下のうちの少なくとも1つから選択される。
【0014】
【化3】
【0015】
別の態様において、化合物は、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である。別の態様において、化合物は、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される。別の態様において、化合物は、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される。別の態様において、組成物は、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、化合物は、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、組成物は、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤化されている。別の態様において、方法は、1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む。別の態様において、方法は、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む。別の態様において、対象は、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である。別の態様において、化合物は以下のものである。
【0016】
【化4】
【0017】
別の態様において、本発明は、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全を治療する方法であって、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)、若しくは、DMPC/DMPG、
リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、若しくは、エルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含むリゾホスファチジルグリセロール、
又は、式Iの化合物を含み、
【0018】
【化5】
【0019】
式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、
【0020】
【化6】
【0021】
であり、
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、方法を含む。一態様において、肺疾患は、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む。別の態様において、Rは、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである。別の態様において、化合物は、以下のうちの少なくとも1つから選択される。
【0022】
【化7】
【0023】
別の態様において、化合物は、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である。別の態様において、化合物は、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される。別の態様において、化合物は、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される。別の態様において、組成物は、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、化合物は、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、組成物は、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤化されている。別の態様において、方法は、1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む。別の態様において、方法は、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む。別の態様において、対象は、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である。別の態様において、化合物は以下のものである。
【0024】
【化8】
【0025】
別の態様において、本発明は、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全を予防又は治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)、若しくは、DMPC/DMPG、
リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含むリゾホスファチジルグリセロール、
又は、式(I)の化合物、若しくはその立体異性体、エナンチオマー、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を投与することを含み、
【0026】
【化9】
【0027】
式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【0028】
【化10】
【0029】
であり、
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;Rは、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法を含む。一態様において、肺疾患は、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つを含む。一態様において、Rは、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである。別の態様において、化合物は、以下のうちの少なくとも1つから選択される。
【0030】
【化11】
【0031】
別の態様において、化合物は、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である。別の態様において、化合物は、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される。別の態様において、化合物は、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される。別の態様において、組成物は、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、化合物は、経口投与、静脈内投与、経鼻投与、肺投与、肺胞投与、経腸投与、非経口投与、又は局所投与用に適合された医薬組成物に製剤化されている。別の態様において、組成物は、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤化されている。別の態様において、方法は、1又は2以上のポリマー、塩、又は緩衝剤をさらに含む。別の態様において、方法は、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む。別の態様において、対象は、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物である。別の態様において、化合物は以下のものである。
【0032】
【化12】
【0033】
別の態様において,方法は、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全の治療を必要とする対象を、治療の前に特定するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のため、これより本発明の詳細な説明を添付の図面と共に言及する。
図1図1Aは、SPPCT-800で治療した動物において、LPS処置後48時間及び72時間で体重減少が有意に減少していることを示す図であり、図1Bは、肺重量/体重比が減少していることを示す図である。
図2図2A~2Eは、(図2A)血中酸素レベル、(図2B):吸息時間、(図2C):呼息時間、(図2D):呼吸数、(図2E):肺鬱血指数を示す図である。赤丸=SPPCT-800で治療したマウス、黒丸=LPS及び媒体で処置したマウス、中白の丸=未処置マウス。
図3図3A~3Nは、3-肺傷害スコア(図3A)24時間における肺傷害スコア;(図3B+C)24時間におけるシャムマウスでの組織構造;(図3D+E)24時間における、LPS+媒体を与えたマウスでの組織構造;(図3F+G)24時間における、予防としてSPP4040を与えたマウスでの組織構造;(図3H)72時間における肺傷害スコア;(図3I+J)72時間におけるシャムマウスでの組織構造;(図3K+L)72時間における、LPS+媒体を与えたマウスでの組織構造;(図3M+N)72時間における、SPPCT-800を与えたマウスでの組織構造を示す図である。
図4図4A~4Cは、(図4A)LPSの1時間半前にSPPCT-800が与えられたとき、(図4B)LPSの3時間後にSPP4040が与えられたときの、24時間におけるBALF中のタンパク質含量、(図4C)24時間におけるBALF中全細胞数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について以下で詳細に論じるが、本発明は、広範な特定の状況で実施されうる、適用可能な多くの発明概念を提供することを理解すべきである。本明細書で論じる特定の実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
本発明の理解を容易にするため、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義される用語は、本発明と関連する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「a」、「an」、及び「the」等の用語は、単数のもののみを指すことを意図するものではなく、特定の例が例示のために使用されうる一般的なクラスを含む。本明細書の用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、その使用は、特許請求の範囲で概説されている場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0037】
本明細書において使用される場合、「インビボ」という用語は、身体内部であることを指す。本出願において使用される「インビトロ」という用語は、非生存系で行われる操作を示すと理解されるものとする。
【0038】
本明細書において使用される場合、「治療」という用語は、特に疾患又は障害の症状を示す患者における、本明細書において言及する状態の治療を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「治療」又は「治療すること」という用語は、本発明の化合物のあらゆる投与を指し、(i)疾患の病態若しくは総体的症状を経験している若しくは示している対象において疾患を阻害すること(すなわち、病態及び/若しくは総体的症状のさらなる発症を阻止すること)、又は(ii)疾患の病態若しくは総体的症状を経験している若しくは示している対象において疾患を寛解させること(すなわち、病態及び/若しくは総体的症状を回復させること)を含む。「制御すること」という用語は、制御される状態を予防すること、治療すること、根絶すること、寛解させること、又は他の方法でその重症度を減少させることを含む。
【0040】
本明細書において使用される場合、本明細書に記載される「有効量」又は「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出すことになる対象化合物の量を意味する。
【0041】
本明細書において使用される場合、本明細書において使用される化合物「の投与」又は化合物「を投与すること」という用語は、治療を必要とする個体に、治療上有用な形態及び治療上有用な量でその個体の体に導入されうる形態、例えば、限定されるものではないが、経口投与形態、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤等;注射可能投与形態、例えばIV、IM、又はIP等;経皮投与形態、例えばクリーム、ゼリー、粉末、又はパッチ;口腔投与形態;吸入粉末、スプレー、懸濁剤等;及び直腸座剤で本発明の化合物を与えることを意味すると理解されるべきである。
【0042】
本明細書において使用される場合、「静脈内投与」という用語は、注射及び他の様式の静脈内投与を含む。
【0043】
本明細書において使用される場合、担体、希釈剤、又は賦形剤を説明するために本明細書において使用される「薬学的に許容される」という用語は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないものとする必要がある。
【0044】
本発明の式(I)の脂質の使用のための投与量単位は、単一化合物又はそれと他の化合物の混合物としてもよい。化合物は、一緒に混合されてもよく、イオン結合又はさらには共有結合を形成してもよい。本発明の脂質は、経口、静脈内(ボーラス若しくは輸液)、腹腔内、皮下、又は筋肉内の形態で投与されてもよく、全ての使用投与形態は、薬学分野の当業者に周知である。送達の特定の部位又は方法に応じて、様々な投与形態、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤、及び乳剤を使用して、肺疾患、例えば限定されるものではないが、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症を含む治療を必要とする患者に本発明の脂質を与えてもよい。脂質はまた、公知の塩の形態のうちのいずれか1種として投与してもよい。
【0045】
式(I)の脂質は、典型的に、意図された投与形態に基づいて、従来の薬学的慣習と一致するように選択された適切な薬学的な塩、緩衝剤、希釈剤、増量剤、賦形剤、及び/又は担体(本明細書において集合的に、薬学的に許容される担体又は担体材料と呼ぶ)との混合剤で投与される。最適な投与の部位に応じて、例えば、経口、直腸、局所、静脈内注射、又は非経口投与用の特定の形態に、最大の及び/又は一貫した投与量をもたらすように脂質を製剤してもよい。脂質は単独で投与してもよいが、薬学的に許容される担体と混合された安定な塩の形態で通常与えられることになる。担体は、選択された投与の種類及び/又は部位に応じて、固体又は液体としてもよい。
【0046】
本発明を使用して有用な投与形態を作製するための技術及び組成物は、以下の参考文献:Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 2007;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000、及びその最新版;Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999)のうちの1又は2以上に記載されており、これらは全て、参照によって組み入れられ、同様の関連部分が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0047】
例えば、脂質は錠剤に含まれてもよい。錠剤は、例えば、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、流動誘導剤、及び/又は溶融剤を含有してもよい。例えば、経口投与は、錠剤、ジェルキャップ、カプレット、又はカプセルの投与量単位形態としてもよく、活性薬物成分は、薬学的に許容される無毒性の不活性な担体、例えばラクトース、ゼラチン、寒天、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、これらの混合物等と組み合わせてもよい。本発明と用いるのに適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコース又はベータ-ラクトース)、コーン甘味料、天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。本発明と用いるための滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、これらの混合物等が挙げられうる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴム、これらの混合物等が挙げられうる。
【0048】
脂質は、リポソームの形態、例えば、荷電又は非荷電の小さな単層膜ベシクル、大きな単層膜ベシクル、及び多層膜ベシクルで投与してもよい。リポソームは、リン脂質(例えば、コレステロール)、ステアリルアミン、及び/又はホスファチジルコリン、これらの混合物等のうちの1又は2以上を含んでもよい。
【0049】
式(I)の脂質はまた、薬物担体又はプロドラッグとして、1又は2以上の可溶性、生分解性、生体許容性のポリマーと結合させてもよい。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジン、これらの混合物等が挙げられうる。さらに、脂質を1又は2以上の生分解性ポリマーと結合させて、脂質の制御放出を達成してもよく、本発明と使用するための生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマー、これらの混合物等が挙げられる。
【0050】
一実施形態において、ゼラチンカプセル(ジェルキャップ)は、式(I)の脂質及び粉末化担体、例えばラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等を含んでもよい。同様の希釈剤を使用して、打錠を作製してもよい。錠剤とカプセル剤のいずれも、即時放出、混合放出、又は持続放出製剤として製造して、数分から数時間の期間にわたる、ある範囲の薬剤の放出をもたらしてもよい。打錠は、不快な味を遮蔽し、錠剤を大気から保護するために、糖衣又はフィルムコーティングがなされていてもよい。腸溶性コーティングを使用して、例えば胃腸管内での選択的崩壊をもたらしてもよい。
【0051】
液体投与形態で経口投与するために、経口薬物成分を、薬学的に許容される経口用で無毒性の任意の不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水等と組み合わせてもよい。適切な液体投与形態の例としては、水、薬学的に許容される脂肪及び油、アルコール、又はエステルを含む他の有機溶媒中の溶液又は懸濁剤、乳剤、シロップ剤、又はエリキシル剤、懸濁剤、非発泡性顆粒剤から再構成された溶液及び/又は懸濁剤、並びに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性調合物が挙げられる。このような液体投与形態は、例えば、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、増粘剤、及び溶融剤、これらの混合物等を含有してもよい。
【0052】
経口投与用の液体投与形態はまた、患者の許容性を向上させ、したがって投与計画の遵守を向上させる着色剤及び香味剤を含んでもよい。一般に、水、適切な油、生理的食塩水(saline)、水性デキストロース(例えば、グルコース、ラクトース、及び関連する糖溶液)、並びにグリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)を、非経口溶液に適切な担体として使用してもよい。非経口投与用の溶液は、一般的に、活性成分の水溶性の塩、適切な安定化剤、及び必要であれば緩衝塩を含む。抗酸化剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及び/又はアスコルビン酸は、単独で又は組合せで、適切な安定化剤である。クエン酸及びその塩、並びにEDTAナトリウムも、安定性を向上させるのに含まれてもよい。加えて、非経口溶液は、薬学的に許容される防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチル若しくはプロピルパラベン、及び/又はクロロブタノールを含んでもよい。適切な薬学的担体は、この分野における標準的な参考文献テキストであるMack Publishing Company社のRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されており、参照により関連部分が本明細書に組み入れられる。
【0053】
鼻腔、副鼻腔、口、咽頭、食道、気管、肺、及び肺胞に直接送達するために、脂質はまた、適切な鼻腔内媒体を使用することにより鼻腔内形態として送達してもよい。皮膚及び経皮送達には、当業者に周知のように、ローション、クリーム、油、エリキシル、セラム、経皮皮膚パッチ等を使用して脂質を送達してもよい。非経口及び静脈内形態は、それらを注射又は選ばれた送達システムのタイプと適合させるために、薬学的に許容される塩及び/又は無機物、並びに他の材料、例えば緩衝化等張液も含んでもよい。脂質の投与に有用な薬学的投与形態の例としては、以下の形態が挙げられうる。
【0054】
カプセル剤。カプセル剤は、標準的な2ピースの硬質ゼラチンカプセルの各々に、粉末活性成分10~500ミリグラム、ラクトース5~150ミリグラム、セルロース5~50ミリグラム、及びステアリン酸マグネシウム6ミリグラムを充填することにより調製してもよい。
【0055】
軟質ゼラチンカプセル剤。活性成分の混合物を消化性の油、例えば大豆油、綿実油、又はオリーブ油に溶解させる。活性成分を調製し、容積式ポンプを使用してゼラチン中に注入して、例えば活性成分100~500ミリグラムを含有する軟質ゼラチンカプセル剤を形成する。カプセル剤を洗浄し、乾燥させる。
【0056】
錠剤。投与量単位が、活性成分100~500ミリグラム、コロイド状二酸化ケイ素0.2ミリグラム、ステアリン酸マグネシウム5ミリグラム、微晶質セルロース50~275ミリグラム、デンプン11ミリグラム、及びラクトース98.8ミリグラムとなるように、従来の手順によって多数の錠剤を調製する。嗜好性又は吸収の遅延を向上させるために、適切なコーティングを施してもよい。
【0057】
発泡性錠剤を提供するために、適量の例えばクエン酸一ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを一緒にブレンドし、次に水の非存在下でローラー圧縮してフレークを形成し、次いで粉砕して顆粒を生成する。次に顆粒を活性成分、薬物及び/又はその塩、従来の撥水(beading)又は充填剤、並びに任意の甘味料、香味料、及び滑沢剤と組み合わせる。
【0058】
注射溶液。注射による投与に適切な非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を脱イオン水中で撹拌し、例えば最大10容量%のプロピレングリコール及び水と混合することによって調製する。溶液を塩化ナトリウムで等張とし、例えば限外濾過を使用して滅菌する。
【0059】
懸濁剤。水性懸濁剤は、各5mlが、微細に分割された活性成分100mg、カルボキシメチルセルロースナトリウム200mg、安息香酸ナトリウム5mg、米国薬局方ソルビトール溶液1.0g、及びバニリン0.025mlを含むようにして、経口投与用に調製する。
【0060】
ミニ錠剤では、活性成分を6~12Kpの範囲の硬度に圧縮する。最終的な錠剤の硬度は、顆粒の調製において使用される直線ローラー圧縮強度に影響され、これは例えば炭酸水素一ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの粒径に影響される。より小さな粒径では、約15~20KN/cmの直線ローラー圧縮強度を使用してもよい。
【0061】
キット。本発明は、例えばがんの治療に有用な医薬キットも含み、キットは、治療有効量の脂質を含む医薬組成物を含有する1又は2以上の容器を含む。このようなキットは、所望の場合、当業者には容易に明らかであるように、様々な従来の医薬キット構成要素、例えば、1又は2以上の薬学的に許容される担体を含む容器、追加の容器等のうちの1又は2以上をさらに含んでもよい。投与される成分の量を示す、挿入物若しくはラベルのいずれかとして印刷された使用説明書、投与のためのガイドライン、及び/又は成分を混合するためのガイドラインもキットに含まれてもよい。本発明を行う上で、明記された材料及び状態は重要であるが、明記されていない材料及び状態は、本発明の利益を実現するのを妨げない限り、除外されないことが理解されるべきである。
【0062】
適切な液体投与形態の例としては、水、薬学的に許容される脂肪及び油、アルコール、若しくは、エステルを含む他の有機溶媒中の溶液又は懸濁剤、乳剤、シロップ剤、又はエリキシル剤、懸濁剤、非発泡性顆粒剤から再構成された溶液及び/又は懸濁剤、並びに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性調合物が挙げられる。このような液体投与形態は、例えば、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、増粘剤、及び溶融剤を含有してもよい。経口投与形態は、香味剤及び着色剤を含有してもよい。非経口及び静脈内形態は、それらを注射又は選ばれた送達システムのタイプと適合させるために、無機物及び他の材料も含んでもよい。
[実施例]
【0063】
ARDSの治療としての本発明の脂質、例えばSPPCT-800の役割を調べるために、本発明者らは、マウスLPSモデルを使用して、組織学的変化、肺及び体の重量、酸素血液飽和度及び他の肺機能パラメータ、BALFタンパク質及び細胞数、並びに血漿及びBALF中の炎症促進性サイトカインレベルを測定した。
【0064】
C57Bl6/NマウスをCharles River Laboratories社(ケベック州モントリオール)から入手した。体重20~25gの雄マウスを、試験を通して使用した。動物は病原体を含まない特定の条件で収容し、全実験はInstitutional Animal Care and Use Committee(IPST_SL20200402-1)により承認された。動物試験は、AAALACガイドラインに従って報告される。
【0065】
届けられたマウスは全て、あらゆる実験を行う前に、順化期間として1週間保った。1ケージ当たり最大2匹のマウスで、12時間明期/12時間暗期サイクルで、温度約20~22℃及び湿度40~60%で動物を収容した。餌及び水は自由に入手可能であった。マウスの各ケージを、実験デザインに従って異なる処置に盲検的に割り当てるか、又は対照群として維持した。実験を行った個人は処置に関して盲検化されなかったが、データ解析及び実験は、バイアスを避けるために他の方法で盲検化された。
【0066】
ARDS群において、マウスに大腸菌(Escherichia coli)O111:B4リポポリサッカリド(生理的食塩水0.05mL中50μg、i.t.)を投与し、対照群において、動物に生理的食塩水(0.05mL、i.t.)の滴注を行った。気管内滴注では、マウスをイソフルランでわずかに麻酔した。
【0067】
脂質SPPCT-800を水に溶解させた(低用量-2mg/ml;高容量-20mg/ml)。24時間試験では、2種の治療法を使用した。マウスに、予防としてSPPCT-800(1回の胃管栄養当たり200mg/kg)の単回投与(LPS滴注の30分前)、又は治療として20mg/kg若しくは200mg/kgのいずれかの単回投与(LPS滴注の3時間後)を行った。72時間試験では、LPS滴注の3時間後に始まる、合計8回のSPPCT-800(200mg/kg)の治療をマウスに行った。マウスにおける疾患の進行は、肺機能、血中酸素飽和度、及び体重変化の評価によって調べた。各試験(24時間又は72時間)の最終日に、血漿及びBALF中のサイトカインレベルの測定、並びに病理組織学的評価を行った。
【0068】
化学式が[C427812P]MgのSPPCT-800は、以下である。
【0069】
【化13】
【0070】
本発明と使用するための他の化合物としては、一般にリン脂質及びホスファチジルグリセロールと共に、以下の化合物、例えば1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)、又はDMPC/DMPGリポソームが挙げられる。一態様において、リゾホスファチジルグリセロールは、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つ、及び以下のうちの1又は2以上を含む。
【0071】
【化14】
【0072】
呼吸機能。全てのマウスをプレチスモグラフチャンバー環境に導入した。順化期間後、全身プレチスモグラフ(VivoFlow、SCIREQ社、カナダ、モントリオール)により、0時間(ベースライン)、LPS滴注後24時間、並びにLPS滴注後48時間及び72時間において機能的呼吸パラメータを調べた。各測定は、呼吸機能を測定するための無拘束の全身プレチスモグラフィー(WBP、whole-body plethysmography)チャンバーに単独で置かれたマウスで行った。WBPトレースにより、呼吸パターンに関する特定の情報を決定すること、及び炎症の発症に関連する重要な情報を引き出すことが可能となった。解析された機能的呼吸パラメータは、呼吸数、PenH(肺鬱血指数)、及び吸気/呼気時間測定を含んだ。PenHは、浮腫、炎症、及び鬱血(気管支制限)の指標として用いた(Lomask M. Further exploration of the Penh parameter. Toxicol Pathol. 2006 Jun 15;57:13-20)。
【0073】
0時間(ベースライン)、LPS滴注後24時間、並びにLPS滴注後48時間及び72時間で、意識のあるマウスにおいて動脈血酸素飽和度(SpO)を記録した。SpOは、頸動脈レベルに取り付けられたマウス首輪プローブを備えたパルスオキシメーター(STARR Life Sciences社MouseOx Plus system、ペンシルバニア州オークモント)から読み取った。飽和度の値は、パーセント(%)で測定した。
【0074】
BALF中の細胞分類。肺の右葉から気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取できるように、冷PBS 1X 0.9mL、プロテアーゼ阻害剤1X(SigmaFast(登録商標))溶液(3×300μL)を注射する間、左肺をクランプした。タンパク質アッセイは、製造業者の使用説明書BCA Protein Assay(Pierce(商標)-#23227)に従って行った。簡単に述べると、希釈倍率5を用いた(BALF1部:PBS 1X 4部)。希釈した試料10μLをマイクロプレートウェルに添加した。作業試薬200μLを各ウェルに添加した。プレートを覆い、37℃で30分間インキュベートした。冷却期間後、単色分光光度計(SpectraMAX(登録商標)plus-Molecular Devices社)を使用して、562nmの吸光度を速やかに測定した。BALFタンパク質総含量は、タンパク質濃度に希釈倍率を乗じ、次に採取したBALF体積の合計を乗じることによって報告した。
【0075】
メディエーターの多重分析。本発明者らは、Discovery Assay(登録商標)(Mouse Cytokine and Chemokine Array 31-Plex (MD31)、Eve Technologies Corp社、カナダ、アルバータ州カルガリー)を使用して、BALF及び血漿中の異なる31種のメディエーターを定量した。多重アッセイは、Eve Technologies社においてBio-Plex(商標)200システム(Bio-Rad Laboratories, Inc.社、米国、カリフォルニア州ハーキュリーズ)及びMilliplex Mouse Cytokine/Chemokineキット(Millipore社、米国、ミズーリ州セント・チャールズ)を使用し、Eve Techプロトコールに従って行った。31種の多重は、エオタキシン、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12(p40)、IL-12(p70)、IL-13、IL-15、IL-17、IP-10、KC、LIF、MCP-1、M-CSF、MIG、MIP-1α、MIP-1β、MIP-2、RANTES、TNFα、及びVEGFからなった。これらのマーカーのアッセイ感度は、0.1pg/mL~33.3pg/mLの範囲である。個々の分析物の値及び他のアッセイの詳細は、Eve Technologies社のウェブサイト及びMilliplexプロトコールで入手可能である。
【0076】
病理組織学的評価。肺気道を0.9%NaClで洗浄し、固定液(10%NBF)で満たして先端の丸い針(23G)を付けた10mLシリンジを使用して、左葉を膨張させた。肺葉が完全に、均一に、かつ一貫して拡張するまで、固定液(10%NBF)を用いて20cmHOの圧力で肺を穏やかに膨張させた(固定液が肺表面を通してにじみ出ないようにした)。これにより、組織の破壊を引き起こすことなく、最適な気道拡張がもたらされた。左葉を固定液中で48時間保ち、10%NBFをPBSで置き換え、4℃で保存した。左肺をパラフィンブロックに包埋し、厚さ5μmの縦方向の2枚の切片にスライスし、各切片は肺の中央部で50μmの間隔をあけた。組織の包埋及びマウント後、2枚の切片をヘマトキシリン及びエオジン(H&E)で染色した。盲検化された組織学者が、Matute-Bello, et al.によって記載され採用された一般的スコアリングに従って、肺胞中隔、肺構造、及び炎症の一般的形態を評価した(Matute-Bello G, Frevert CW, Martin TR. Animal models of acute lung injury. Am J Physiol Lung Cell Mol. 2008 Sep;295(3):L379-99、Aeffner F, Bolon B, Davis IC. Mouse models of acute respiratory distress syndrome: a review of analytical approaches, pathologic features, and common measurements. Toxicol Pathol. 2015 Dec;43(8):1074-92)。
【0077】
統計解析。結果は、平均値±SEMで表す。比較は、LPS+媒体群間の差を評価するため、GraphPad Prism Softwareバージョン8.0(米国、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用し、正規分布データにおいてANOVAとその後のFisher事後検定を用いて行った。P値が0.05未満であった場合、差は統計的に有意と考えられた。(はシャム動物に対する差を示し、#はLPS+媒体群に対する差を示す。はP<0.05、**P<0.01、***P<0.001を意味し、#はP<0.05、##P<0.01、及び###P<0.001を意味する)。
【0078】
SPPCT-800は全3種の試験においてARDSに対し有効であった。最も良好な結果は72時間試験で見られた。これは、72時間試験では3日間にわたる累積用量1600mg/kgをマウスに与えた事実に起因すると考えられ、これは、24時間試験で使用した単回の「高用量」(200mg/kg)の8倍である。しかし、SPPCT-800のポジティブな効果が24時間で完全には見られないこともありうる。
【0079】
生理学的及び呼吸パラメータ。治療の有効性の重要な尺度は、ARDSを有する動物の体重減少を減らす程度である。24時間において、LPSマウスとSPPCT-800で治療したLPSマウスの両方が、シャムマウスと比較して体重の大きな減少を示し、その時間においてSPPCT-800による保護効果はなかった(LPS単独での12%と比較して、SPPCT-800で14%の体重減少)。48時間における体重減少は、SPPCT-800群において14%で安定したが、未治療LPS群では20%に達した(P<0.05)。重要なことには、72時間において、未治療LPS群での18%の減少と比較して、SPPCT-800では体重減少が8%に減少した(P<0.05)(図1A)。SPPCT-800は、72時間で屠殺した動物の肺重量を減少させる傾向もあった(P=0.1100)。したがって、SPPCT-800は肺指数(肺重量/体重×100;P<0.05)を有意に減少させ、湿性肺重量/乾性肺比を減少させた(図1B)。ARDS患者における別の重要な尺度は、動脈血中の十分なレベルの酸素の維持である。この72時間試験において、SpOレベルが低下した未治療LPS群と比較して、SPPCT-800群においてSpOレベルは維持されたが、この結果は統計学的有意性に達しなかった。SPPCT-800治療後の改善は、肺機能試験においても全ての測定時間で見られた。24時間における、吸気時間及び肺鬱血指数(PenH)の有意な減少(P<0.001)、並びに48時間における、呼気時間及びPenHの有意な減少が見られた(P<0.001)(図2)。
【0080】
肺の炎症。24時間という早いときに行われた組織学的解析では、LPSによって誘発された肺の傷害をSPPCT-800が減少させうることが示された。LPSの30分前に予防薬として与えられたSPPCT-800により、肺傷害スコア値が有意に減少した。マウスにLPSを単独で与えた場合、24時間における肺傷害スコアは1.4であったが、SPPCT-800を予防として与えた場合はたった0.3であった(P<0.01)(図3A)。72時間においても、肺障害スコアは減少した。複数回投与SPPCT-800治療群のマウスでは、SPPCT-800を与えなかったマウスでのスコア3.0と比較して、スコアが2.2に減少した(図3H)。組織学的変化も図3に示されている。予防薬として与えられたSPPCT-800の単回投与も、BALFタンパク質含量が有意に減少し(P<0.05)、LPS注射後早くも24時間で炎症を低下させうるという証拠を示した。72時間において、複数回投与のSPPCT-800治療を行ったマウスでは、BALFタンパク質レベルの大きな減少、並びにBALF総細胞数(P=0.1714)及びBALF好中球数(P=0.1493)の減少があったが、これらは統計学的有意性に達しなかった(図4)。
【0081】
炎症促進性サイトカイン。SPPCT-800での治療後、24時間及び72時間において、血漿中とBALF中の両方で、試験した炎症促進性サイトカインの劇的な減少が見られた(表1及び表2を参照のこと)。TNF-α、INF-γ、G-CSF、GM-CSF、インターロイキン、VEGF、MCP-1、KC、及びMIP-1αの大きな減少は、単回投与24時間試験(200mg/mL予防、20mg/mL治療、200mg/mL治療)及び反復投与72時間試験において、マウスの3つ全ての群において見られた。例えば、非常に重要なサイトカインであるTNF-αは、24時間において血漿中で、上記の単回投与群の3つ全てにおいて(P<0.001)及びBALF中で(P=0.0959)、SPPCT-800により顕著に減少した。同様に、72時間試験において、TNF-αレベルは、血漿中(P<0.05)及びBALF中(P=0.0613)で顕著に減少した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
SPPCT-800は、マウス群の全てにおいて、24時間における3つ全ての単回投与群で、血漿中(3つ全ての群においてP<0.01)及びBALF中(P<0.001)で、別の重要なサイトカインであるIFN-γのレベルを大いに低下させた。IFN-γレベルの大きな減少は、72時間においても、血漿中とBALF中の両方で見られた。
【0085】
好中球、単球、及び他の細胞の分泌を引き起こし、したがってARDS患者で肺損傷を引き起こすのに主要な役割を果たすと考えられるGM-CSFは、SP4040で治療した全てのマウスで顕著に減少した。24時間における3つ全てのマウス群(200mg/kg予防、20mg/kg治療、及び200mg/kg治療)において、血漿中とBALF中の両方で、SPPCT-800によるGM-CSFの高度に有意な低下(P<0.001)があった。同様に、72時間において、血漿中(P<0.01)とBALF中(P<0.001)の両方で、GM-CSFの有意な減少が認められた。
【0086】
試験した15種のインターロイキンのうち、SPPCT-800での大きな減少は14種で一貫して認められた。24時間において、IL-1β、IL-2(P<0.05)、IL-3(200mg治療群においてP=0.0859)、IL-4、IL-5(P<0.05)、IL-6(P=0.0624)、IL-7、IL-9(P<0.001)、IL-10(予防群においてP=0.0767)、IL-12(p 40)(予防群においてP=0.1101)、IL-12(p70)、IL-13(P<0.001)、IL-15、及びIL-17が顕著に減少した。SPPCT-800は、24時間においてマウス群のいずれにおいても血漿中IL-1αのレベルを減少させなかった。IL-6を除き、これらのインターロイキンの同様の大きな減少が24時間においてBALF中で見られ、IL-1β、IL-2(P<0.001)、IL-3(P<0.001)、IL-4(P<0.05)、IL-5(P<0.01)、IL-7(P<0.001)、IL-9(P<0.01)、IL-10(P<0.01)、IL-12(p40)(P<0.001)、IL-12(p70)(P<0.01)、IL-13(P<0.001)、及びIL-15(P<0.001)で大きく減少した。72時間においても、血漿中及びBALF中で有意な結果が見られた。SPPCT-800は、血漿及びBALF中のG-CSF、VEGF、KC、LIF(leukemia inhibitory factor、白血病抑制因子)、LIX(LPS-induced CXC chemokine 5、LPS誘導CXCケモカイン5)、及びM-CSF(macrophage colony stimulating factor、マクロファージコロニー刺激因子)も抑制した。MCP-1は、24時間において血漿中で、及び72時間において血漿中とBALF中の両方で、SPPCT-800により阻害された。MIP-1α及びMIP1-β(macrophage inflammatory protein 1-β、マクロファージ炎症性タンパク質1-β)に対する抑制効果は、24時間において血漿中とBALF中の両方で、さらに72時間において血漿で見られた。RANTES(Regulated on Activation, Normal T cell Expressed and Secreted;CCL5)は、血漿中では24時間と72時間の両方において抑制されたが、BALF中では抑制されなかった。MIG(monokine induced by human interferon、ヒトインターフェロンにより誘導されるモノカイン)、IP10、及び好酸球走化性タンパク質であるエオタキシンについては、血漿又はBALF中ではSPPCT-800によって顕著に抑制されたが、その両方では抑制されず、結果は混じっていた。
【0087】
本発明は、ARDSに対する本発明の脂質、例えばSPPCT-800の保護及び治療効果が、複数の尺度により示されたことを示している。この薬剤で治療したマウスは、体重減少の低下、肺機能試験及び酸素飽和レベルの改善、並びにより良好な肺傷害スコアによって、肺損傷の減少及び確実な臨床的改善を示した。BALF中のタンパク質含量及び好中球数は減少した。それに対応して、SPP4040で治療した動物において炎症が大いに抑制された。多数の疾患の病因で決定的である、重要なサイトカインのTNF-α、及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの抑制剤となる能力で中心的なインターフェロンγ(Sordillo LA, Sordillo PP. Optical spectroscopy of tryptophan metabolites in neurodegenerative disease. In: Alfano RR, Shi L, eds. Neurophotonics and Biomedical Spectroscopy. Elsevier; 2019: 137-157)、並びにほぼ全てのインターロイキンが著しく抑制された。ARDSで見られる大規模な肺損傷及び肺水腫において主要な役割を果たすと考えられるVEGFのレベルも顕著に低下した(Barratt S, Medford AR, Millar AB. Vascular endothelial growth factor in acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Respiration. 2014;87(4):329-42)。化学療法を受けている患者において好中球を刺激するのに使用されるが、ARDS様症候群を誘発しうる(Kudlak K, DeMuro JP, Hanna AF, Brem H. Acute lung injury following the use of granulocyte-macrophage colony-stimulating factor. Int J Crit Illn Inj Sci. 2013 Oct;3(4):279、Inokuchi R, Manabe H, Ohta F, Nakamura K, Nakajima S, Yahagi N. Granulocyte colony-stimulating factor-producing lung cancer and acute respiratory distress syndrome. Clin Respir J. 2015 Apr;9(2):250-2、Takatsuka H, Takemoto Y, Mori A, Okamoto T, Kanamaru A, Kakishita E. Common features in the onset of ARDS after administration of granulocyte colony-stimulating factor. Chest. 2002 May 1;121(5):1716-20、Rhee CK, Kang JY, Kim YH, Kim JW, Yoon HK, Kim SC, Kwon SS, Kim YK, Kim KH, Moon HS, Park SH. Risk factors for acute respiratory distress syndrome during neutropenia recovery in patients with hematologic malignancies. Crit Care. 2009 Dec 1;13(6):R173)、G-CSF及びGM-CSFも劇的に抑制された。
【0088】
炎症の増加は、がん(Sordillo PP, Sordillo LA. Glioblastoma cell-induced immunosuppression causing chemoresistance. In: Massoud and Paulmurugan Eds, Glioblastoma Resistance to Chemotherapy: Molecular mechanisms and innovative reversal strategies,. Elsevier, Cambridge, MA (in press)、Greten FR, Grivennikov SI. Inflammation and cancer: triggers, mechanisms, and consequences. Immunity. 2019 Jul 16;51(1):27-41)、パーキンソン病(Matute-Bello G, Frevert CW, Martin TR. Animal models of acute lung injury. Am J Physiol Lung Cell Mol. 2008 Sep;295(3):L379-99)、及び冠動脈心疾患(Sordillo PP, Sordillo DC, Helson L. The prolonged QT Interval: role of pro-inflammatory cytokines, reactive oxygen species and the ceramide and sphingosine-1 phosphate pathways. In Vivo. 2015 Nov 1;29(6):619-36、Stanciu AE. Cytokines in heart failure. In: Advances in clinical chemistry 2019 Jan 1 (Vol. 93, pp. 63-113). Elsevier)を含む多くの疾患の発症の決定的部分である。多くの神経傷害後の脳損傷は脳内のサイトカインの大規模な蓄積に起因するが(Sordillo PP, Sordillo LA, Helson L. Bifunctional role of pro-inflammatory cytokines after traumatic brain injury. Brain Inj. 2016 Jul 28;30(9):1043-53)、ARDSも同様に肺内のサイトカインの大規模な蓄積として考えることができる。敗血症はそれ自体、全身感染によって起こされる全身の炎症プロセスと解釈することができる。したがって、ARDS患者においてサイトカインを抑制する薬剤の試験が複数行われている。抗炎症剤を用いた臨床試験ではあいまいな結果が得られており、これらの薬剤の多くは患者に追加の毒性を受けさせる(Dushianthan A, Grocott MP, Postle AD, Cusack R. Acute respiratory distress syndrome and acute lung injury. PMJ. 2011 Sep 1;87(1031):612-22、Koh Y. Update in acute respiratory distress syndrome. J Intensive Care Med. 2014 Dec;2(1):1-6、Boyle AJ, Mac Sweeney R, McAuley DF. Pharmacological treatments in ARDS; a state-of-the-art update. BMC Med. 2013 Dec 1;11(1):166、Patel VJ, Biswas Roy S, Mehta HJ, Joo M, Sadikot RT. Alternative and natural therapies for acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. BioMed Res Int. 2018 May 16;2018)。コルチコステロイドはARDSの患者において最も一般的に使用される治療であるが、COVID-19に続発する一部のARDSの患者を治療するために、抗ウイルス剤を含む多くの新しい治療が導入されている。繰り返すと、コルチコステロイドでの治療には議論の余地があり、生存期間を増加させることが証明されておらず、多数の追加のリスク、例えば重篤な高血糖症、低カリウム血症、胃腸管出血、重篤な高血圧症、及び真菌又は細菌感染症に患者を曝す(Villar J, Ferrando C, Martinez D, Ambros A, Munoz T, Soler JA, Aguilar G, Alba F, Gonzalez-Higueras E, Conesa LA, Martin-Rodriguez C. Dexamethasone treatment for the acute respiratory distress syndrome: a multicentre, randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2020 Mar 1;8(3):267-76、Zhang Z, Chen L, Ni H. The effectiveness of Corticosteroids on mortality in patients with acute respiratory distress syndrome or acute lung injury: a secondary analysis. Sci Rep. 2015 Dec 2;5:17654、Schacke H, Docke WD, Asadullah K. Mechanisms involved in the side effects of glucocorticoids. Pharmacol Ther. 2002 Oct 1;96(1):23-43)。
【0089】
化学式が[C427812P]MgのSPPCT-800は、経口摂取することができる白色結晶性粉末である。これは、1mg/kgの単回投与後に検出可能な活性を有し、1日当たり最大800mg/kgの投与で無毒性である。本試験は、インビボマウスLPS ARDSモデルにおいて、LPS負荷の30分前に与えた単回投与の200mg/kgのSPPCT-800が、炎症を抑制することによって肺の重篤な損傷を有意に減少させることを実証している。さらに、このモデルにおいて、治療用量のSPPCT-800が、ARDSの治療及び肺損傷の低減に有効であることが示された。
【0090】
本明細書で論じられるいずれの実施形態も、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に関して実施することができ、逆も同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するのに使用することができる。
【0091】
本明細書において記載される特定の実施形態は例示目的で示され、本発明を限定するものではないことが理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態で使用されうる。当業者であれば、本明細書において記載される特定の手順の多数の均等物を認識するか、又はただの日常的な実験法を用いて確認することができる。このような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲によって包含される。
【0092】
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者の技能のレベルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、各々の別個の刊行物又は特許出願が参照によって組み入れられることが明確にかつ別個に示されているような場合と同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0093】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「含むこと(comprising)」という用語と一緒に使用される場合、「a」又は「an」という語の使用は、「1」を意味することがあるが、「1又は2以上」、「少なくとも1」、及び「1又は1超」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すように明確に示されている場合を除き、又は代替物が互いに排他的である場合を除き、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願を通し、「約」という用語は、値を決定するのに使用される装置、方法の固有の誤差の変動、又は研究対象間に存在する変動を値が含むことを示すために使用される。
【0094】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(及びcomprisingのあらゆる形態、例えば「comprise」及び「comprises」)、「有する(having)」(及びhavingのあらゆる形態、例えば「have」及び「has」)、「含む(including)」(及びincludingのあらゆる形態、例えば「includes」及び「include」)、又は「含有する(containing)」(及びcontainingのあらゆる形態、例えば「contains」及び「contain」)という語は、包含的又は非限定的であり、追加の記載されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において提示される組成物及び方法のいずれの実施形態においても、「含む(comprising)」は、「~から本質的になる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」と置き換えることができる。本明細書において使用される場合、「~から本質的になる」というフレーズは、明記されたインテジャー(integer)又はステップ、及び特許請求される発明の特質又は機能に著しく影響を与えないものを必要とする。本明細書において使用される場合、「なる」という用語は、記載されたインテジャー(例えば、特徴、要素、性質、特性、方法(method)/方法(process)のステップ、若しくは限定)、又はインテジャーの群(例えば、特徴、要素、性質、特性、方法(method)/方法(process)のステップ、若しくは限定)のみの存在を示すように使用される。
【0095】
本明細書において使用される場合、「又はこれらの組合せ」という用語は、その用語の前に列挙された項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の文脈で順序が重要な場合はさらにBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図される。この例を続けると、1又は2以上の項目又は用語の繰返しを含む組合せ、例えば、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等が明示的に含まれる。当業者であれば、文脈から特に明らかな場合を除き、典型的にはあらゆる組合せにおいて項目又は用語の数に制限はないことを理解する。
【0096】
本明細書において使用される場合、近似の語、例えば限定するものではないが、「約」、「実質的な」、又は「実質的に」は、そのように修飾された場合、必ずしも絶対的又は完全なものではないと理解されるが、当業者には、その状態が存在すると指定することを正当であるとするのに十分近いと考えられるであろう状態を指す。その記載が変動しうる程度は、変化がどの程度の大きさで設けられうるか、かつ、変更された特徴が、変更されていない特徴の要求される性質及び能力を依然として有すると当業者に依然として認識させることができるかによることになる。前の論述に従うが、一般に、本明細書において「約」等の近似の語によって修飾された数値は、述べられた値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12、又は15%変動しうる。
【0097】
さらに、本明細書におけるセクション見出しは、連邦規則集第37巻1.77項の推奨と一致するように、又はそれ以外の点では体系的な手がかりを提供するために設けられるものである。これらの見出しは、本開示から公表されうるいずれの特許請求の範囲に記載された本発明も限定しない又は特徴付けないものとする。具体的に、かつ例としては、見出しが「発明の分野」を指しても、係る特許請求の範囲は、いわゆる技術分野を説明するためのこの見出しの下の言葉によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」セクションにおける技術の説明は、その技術が、本開示のいずれかの発明の先行技術であると認めるものとして解釈されるべきではない。「概要」もまた、公表される特許請求の範囲に記載される本発明を特徴付けるものと考えられるべきではない。さらに、本開示における単数形での「発明」への言及はいずれも、本開示には単一の新規な点しかないとの議論に用いられるべきではない。本開示から公表される複数の特許請求の範囲の限定に従って複数の発明が記載されることがあり、したがってこのような特許請求の範囲により、発明及びその均等物が規定され、これらはそれによって保護される。全ての例において、このような特許請求の範囲は、本開示に照らしてその真価に基づいて考慮されるものとし、本明細書に記載される見出しによって制限されるべきではない。
【0098】
本明細書において開示及び特許請求される組成物及び/又は方法は全て、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製し実行することができる。本発明の組成物及び方法が好ましい実施形態の観点で記載されたが、本発明の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書において記載された組成物及び/又は方法に対して、並びに方法のステップ又は方法のステップの順序において、変形形態が適用されうることが当業者には明らかとなる。当業者に明らかなこのような類似の置換及び変更は全て、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の趣旨、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。
【0099】
本明細書に添付の特許請求の範囲の解釈において、特許庁及び本出願で公表されるいかなる特許のいかなる読者も助けるために、本願出願人らは、「~のための手段」又は「~のためのステップ」という語が特定の請求項において明確に用いられている場合を除き、本願の出願の日に存在する米国特許法第112条の段落6、米国特許法第112条段落(f)、又は同等物を、添付の特許請求の範囲のいずれかに行使されることを意図しないことを注記したい。
【0100】
請求項の各々について、各従属請求項は、請求項の用語又は要素の適した先行詞を前の請求項が提供する限り、独立請求項と、各々全ての請求項の前の従属請求項の各々との両方から従属することができる。
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図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を治療する化合物であって、式Iの化合物、
【化1】

を含み、式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【化2】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC-C10の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、若しくは0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC-C20の分岐状若しくは非分岐状の炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O、又はNHであり;
各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミである、前記方法。
【請求項2】
肺疾患が、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、気管支拡張症、肺炎症、肺窮迫、又は肺不全のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の化合物
【請求項3】
が、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cs、アンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムである、請求項1に記載の化合物
【請求項4】
【化3】

のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の化合物
【請求項5】
化合物が、単一体、溶媒和物、水和物、結晶、非晶質固体、液体、又は油である
前記化合物が、少なくとも1回、1日1回、1日2回、1日3回投与される;
前記化合物が、0.1、1、2、3、4、5、6、7、89、10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90、100、125、150、175、200、255、250、300、400、又は500mg/Kgで投与される;
前記化合物が、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、又は塩を含む医薬組成物に製剤化されている;
前記組成物が、エアロゾル、噴霧器、又は吸引器に製剤化されている;及び、
前記組成物が、子供若しくは成人のヒト、又は子供若しくは成体の動物への投与量に製剤化されている;
のうちの、少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の化合物
【請求項6】
コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗コリン薬、血管拡張薬、利尿薬、降圧薬、アセタゾラミド、抗生物質、抗ウイルス薬、免疫抑制薬、及び界面活性剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに含む、請求項1に記載の化合物
【請求項7】
【化4】

である、請求項1に記載の化合物
【請求項8】
肺炎症、肺窮迫、又は肺不全の治療のための医薬に製剤化されており、
【化5】

【化6】


のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化7】


である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
炎症性サイトカインのレベルの上昇によって引き起こされる疾患又は病態を治療するための組成物であって、
治療有効量の、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)、若しくは、DMPC/DMPG、
リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン、若しくは、エルコイル-リゾホスファチジルコリンのうちの少なくとも1つを含むリゾホスファチジルグリセロール、
及び/又は、式(I)の化合物、若しくはその立体異性体、エナンチオマー、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を含み、
【化8】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC -C 20 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC -C 20 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、
【化9】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであって、前記薬学的に許容されるカチオンを組み入れることによって塩が生じるカチオンであり;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC -C 10 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br、及びIから選択される1又は2以上の基で置換されていてもよいC -C 10 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC 0 -C 20 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
は、H、又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合、又は0~10個の二重結合と三重結合の組合せを有するC -C 20 の分岐状又は非分岐状の炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH 、O、又はNHであり;
Yは、直接結合、CH 、O、又はNHであり;
各不斉中心は、独立してR、S、又はラセミであり、
前記疾患又は病態が、気管支肺異形成症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、慢性若しくは急性気管支収縮、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、サイトカインストーム、又は気管支拡張症のうちの少なくとも1つである、前記組成物。
【請求項11】
化合物が、
【化10】

【化11】

のうちの少なくとも1つから選択される、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
化合物が、
【化12】

である、請求項10に記載の組成物。
【国際調査報告】