(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】低い曲げ変形を有する低粗度表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20240129BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20240129BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20240129BHJP
C25D 5/16 20060101ALI20240129BHJP
C25D 5/14 20060101ALI20240129BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C25D7/06 A
C25D1/00 311
C25D1/04 311
C25D5/16
C25D5/14
H05K1/09 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546150
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 KR2022000439
(87)【国際公開番号】W WO2022191402
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0032133
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ソ、チョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キドク
(72)【発明者】
【氏名】リ、ソンヒョン
【テーマコード(参考)】
4E351
4K024
【Fターム(参考)】
4E351AA04
4E351BB01
4E351BB30
4E351BB32
4E351BB33
4E351CC06
4E351DD04
4E351DD08
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4E351DD19
4E351GG02
4E351GG07
4K024AA03
4K024AA09
4K024AB02
4K024AB09
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA01
4K024CA02
4K024DB01
4K024DB10
4K024GA16
(57)【要約】
本発明は、樹脂基板との接着強度に優れ、樹脂基板との接着後に低い曲げ変形を示し、伝送損失が少ないので、高周波箔として適合する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板に関する。本発明は、銅原箔の少なくとも一面に形成された表面処理層と、前記表面処理層上に形成された酸化防止層を含む表面処理銅箔であって、表面処理銅箔の少なくとも一面は、平均粒径が100nm以下である微細銅粒子を含み、前記表面処理銅箔は、下の数式で表現される変形数値(Y)が5以下であることを特徴とする表面処理銅箔;変形数値(Y)=引張強度変形数値(Y1)+延伸率変形数値(Y2)(ここで、Y1=(T1-T2)/(kgf/mm
2)であり、Y2=(E2-E1)/%であり、T2及びE2はそれぞれ、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間熱処理後に測定した引張強度及び延伸率であり、T1及びE1はそれぞれ、常温で測定した引張強度及び延伸率である。)を提供する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅原箔の少なくとも一面に形成された表面処理層と、前記表面処理層上に形成された酸化防止層を含む表面処理銅箔であって、
表面処理銅箔の少なくとも一面は、平均粒径が100nm以下である微細銅粒子を含み、
前記表面処理銅箔は、下の数式で表現される変形数値(Y)が5以下であることを特徴とする表面処理銅箔;
変形数値(Y)=引張強度変形数値(Y1)+延伸率変形数値(Y2)
(ここで、Y1=(T1-T2)/(kgf/mm
2)であり、Y2=(E2-E1)/%であり、T2及びE2はそれぞれ、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間熱処理後に測定した引張強度及び延伸率であり、T1及びE1はそれぞれ、常温で測定した引張強度及び延伸率である。)
【請求項2】
前記表面処理銅箔は、低誘電樹脂(low DK Prepreg)、ポリイミド(PI)、ハイドロカーボン(Hydrocarbon)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムと接着して銅箔積層板として製造された場合に、曲げ変形が0.5mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記表面処理銅箔の少なくとも一面の十点平均粗度は0.5μm以下であり、光沢度は200以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記銅原箔は、電解銅箔であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムとの接着強度が0.5kgf/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
前記表面処理銅箔は、20GHzでの伝送損失(S21)が3.0dB/100mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
前記酸化防止層は、ニッケル、コバルト、亜鉛、ニッケル、スズ及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
前記酸化防止層はニッケル及びリンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の表面処理銅箔。
【請求項9】
樹脂基板上に、請求項1~8のいずれか一項に記載の表面処理銅箔が積層された銅箔積層板。
【請求項10】
請求項9に記載の銅箔積層板を用いて形成されたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔に関し、より詳細には、樹脂基板との接着強度に優れ、樹脂基板との接着後に低い曲げ変形を示し、伝送損失が少ないので、高周波箔として適合する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気/電子機器の小型化、軽量化が加速化するにつれて、基板上に形成された印刷回路が微細化、高集積化、小型化しつつあり、これにより、印刷回路基板に用いられる銅箔にも様々な物性が要求されている。
【0003】
これらに用いられるフレキシブル(flexible)基板、高密度実装用多層基板、高周波回路基板など(以下、これらを総称して「回路基板」又は「プリント配線板」という。)の製造に用いられる基板用複合材は、導体(銅箔)とそれを支持する絶縁基板(フィルムを含む。)で構成され、絶縁基板は、導体間の絶縁を確保し、部品を支持する程度の強度を有する。
【0004】
従来、絶縁基板に対する接着強度を高めるために、表面処理時に流れる電流を大きくし、表面処理時の粒状銅の付着量を増やして十点平均粗度Rzを高める方法が行なわれた。しかし、このような方法は、接着強度を向上させる方法としては適合するが、接着強度を高めるために銅箔表面を過処理すると、高周波信号伝送への妨害要素が増加し、信号伝送に悪影響を及ぼすことがあるため、高周波特性を考慮した回路基板には適合しない。
【0005】
一方、近年、電子製品基板の薄型化及び高集積化の傾向により、絶縁体の厚さも薄くなりつつある。このような薄い厚さの絶縁基板に銅箔を加圧加熱積層すると、積層後の銅箔積層板(Copper Clad Laminate,CCL)に曲げ変形が発生するが、このような曲げ変形の問題は、絶縁基板及び/又は銅箔積層板の厚さが薄くなるにつれてより深刻に台頭するだろう。
【0006】
このような問題点を解決するために、米国特許公報第6194056号は、銅箔の物性変化を最小化するために、様々な添加剤を用いて高強度の銅箔を製造する方法を提示しているが、このように製造された銅箔は依然して高い表面粗度を有するため高周波箔に利用し難く、積層後の曲げ変形減少に対する考慮がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明の発明者らは、積層前後の銅箔の物性変化が積層後の銅箔積層板の曲げ発生に影響を及ぼすことを発見した。
【0008】
そこで、本発明は、樹脂基板との接着強度に優れながらも、積層プレス前と後に曲げ発生を抑制する高周波箔として適合する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びこれを含むプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、銅原箔の少なくとも一面に形成された表面処理層と、前記表面処理層上に形成された酸化防止層を含む表面処理銅箔であって、表面処理銅箔の少なくとも一面は、平均粒径が100nm以下である微細銅粒子を含み、前記表面処理銅箔は、下の数式で表現される変形数値(Y)が5以下であることを特徴とする表面処理銅箔;
【0010】
変形数値(Y)=引張強度変形数値(Y1)+延伸率変形数値(Y2)
【0011】
(ここで、Y1=(T1-T2)/(kgf/mm2)であり、Y2=(E2-E1)/%であり、T2及びE2はそれぞれ、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間熱処理後に測定した引張強度及び延伸率であり、T1及びE1はそれぞれ、常温で測定した引張強度及び延伸率である。)
【0012】
本発明において、前記表面処理銅箔は、低誘電樹脂(low DK Prepreg)、ポリイミド(Polyimide,PI)、ハイドロカーボン(Hydrocarbon)又はポリテトラフルオロエチレン(Polyetrafluoroethylene,PTFE)フィルムと接着して銅箔積層板として製造された場合に、曲げ変形が0.5mm以下であってよい。
【0013】
また、本発明において、前記表面処理銅箔の少なくとも一面の十点平均粗度は0.5μm以下であり、光沢度は200以上であってよい。
【0014】
また、本発明において、前記表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムとの接着強度が0.5kgf/cm以上であってよい。
【0015】
本発明において、前記表面処理銅箔は、20GHzでの伝送損失(S21)が3.0dB/100mm以下であってよい。
【0016】
本発明において、前記酸化防止層は、ニッケル、コバルト、亜鉛、ニッケル、スズ及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することができ、好ましくは、ニッケル及びリンを含有してよい。
【0017】
また、上記の他の技術的課題を達成するために、本発明は、樹脂基板上に前述の表面処理銅箔が積層された銅箔積層板を提供する。
【0018】
また、上記のさらに他の技術的課題を達成するために、本発明は、前述した銅箔積層板を用いて形成されたプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂基板との接着強度に優れながらも、プレス前と後に曲げ発生を抑制する高周波箔として適合する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びこれを含むプリント配線板を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、実施例で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後(酸化防止層形成後)の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【
図1B】
図1Bは、実施例で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後(酸化防止層形成後)の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0021】
【
図2A】
図2Aは、実施例で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後の集束イオンビーム(Focused Ion Beam,FIB)装備で試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【
図2B】
図2Bは、実施例で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後の集束イオンビーム(Focused Ion Beam,FIB)装備で試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0022】
【
図3A】
図3Aは、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【
図3B】
図3Bは、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0023】
【
図4A】
図4Aは、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後の集束イオンビーム装備で試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【
図4B】
図4Bは、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後の集束イオンビーム装備で試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0024】
【
図5A】
図5Aは、比較例2で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【
図5B】
図5Bは、比較例2で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理後の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載された実施例と図面に示されている構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て表すものではなく、よって、本出願時点においてそれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0026】
本発明の表面処理銅箔は、原箔、前記原箔の少なくとも一面の表面処理層、及び前記表面処理層上の酸化防止層を含む。以下において、本発明の原箔、表面処理層及び酸化防止層を詳細に説明する。
【0027】
A.原箔
【0028】
本発明において、銅原箔としては、公知の銅箔が制限なく用いられてよい。一具現例によれば、未処理銅箔は、電解銅箔又は圧延銅箔であってよい。
【0029】
本発明において、原箔の厚さは特に限定されないが、表面処理銅箔をプリント配線板に使用する場合に、原箔の厚さは、例えば、6~35μm、好ましくは7~17μmであってよい。
【0030】
本発明において、原箔は、35kgf/mm2~60kgf/mm2、35kgf/mm2~50kgf/mm2、又は35kgf/mm2~45kgf/mm2の引張強度を有することが好ましい。
【0031】
また、本発明において、原箔は、銅箔積層板又はプリント配線板の成形のためのプリプレグ(Prepreg)との接合過程で高温プレス前後の原箔の機械的物性が一定に維持されることが好ましい。本発明において、原箔は、プレス前後の結晶粒の変化が非常に小さい。
【0032】
例えば、原箔は、常温での引張強度値に対して4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で所定時間熱処理後の引張強度値の変化率が5%未満、又は3%未満であってよい。また、前記原箔は、常温での延伸率に対する4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で所定時間熱処理後の延伸率の変化率は5%未満又は3%未満であってよい。
【0033】
B.表面処理層
【0034】
本発明において、表面処理層は原箔の一面又は両面に形成されてよい。本発明の表面処理層形成のための表面処理方法は特に限定されないが、例えば、原箔を電解メッキして形成することができる。電解液としては、銅塩5~60g/L及び添加剤50~200g/Lを含有する水溶液を、例えば、pH 1~8(例えば、6~7)に調整したものを使用することができる。銅塩の種類としては硫酸銅(CuSO4)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、塩化銅(CuCl2)、酢酸銅(Cu(CH3COO)2)などを挙げることができ、添加剤としてはクエン酸(C6H8O7)、エチレンジアミンテトラ酢酸(C10H16N2O8)、ニトリロ三酢酸(C6H9NO6)、クエン酸ナトリウム(C6H5Na3O7)、酒石酸(C4H6O6)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することができるが、これに限定されるものではない。電解メッキは、例えば、不溶性電極を陽極とし、未処理原箔を陰極として電解液に浸漬し、25~45℃の液温度及び0.5~10A/dm2の電流密度において、例えば5~20秒間電解させて行われてよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
C.酸化防止層
【0036】
本発明において、前記表面処理層上には酸化防止層が形成されてよい。酸化防止層は、ニッケル(Ni)及びリン(P)を含んでよい。酸化防止層は、ニッケル、リンの他にも、必要によって、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、スズ(Sn)などをさらに含んでよい。
【0037】
酸化防止層の付着量は、例えば、30~300mg/m2、他の例としては50~120mg/m2であってよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明において、酸化防止層の形成方法は特に限定されないが、例えば、表面処理層含有銅箔を電解メッキして形成することができる。例えば、電解液としては、ニッケル塩3~15g/L及びリン酸(H3PO4)15~60g/Lを含有する水溶液を使用することができる。電解メッキは、例えば、不溶性電極を陽極とし、表面処理層含有銅箔を陰極として電解液に浸漬し、25~45℃の液温度、1~5A/dm2の電流密度において、例えば5~20秒間電解させて行われてよいが、これに限定されるものではない。ニッケル塩の種類には、硫酸ニッケル(NiSO4)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、塩化ニッケル(NiCl2)、酢酸ニッケル(C4H6NiO4)などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0039】
前述したように、銅原箔の少なくとも一面に形成された表面処理層と、前記表面処理層上に形成された酸化防止層を含む表面処理銅箔を提供する。このとき、表面処理銅箔の表面処理層形成面は、平均粒径が100nm以下である微細銅粒子を含むことが好ましい。例えば、表面処理銅箔表面の微細銅粒子は、平均粒径が10~100nm、20~100nm、又は50~100nmであってよい。本発明において、銅粒子の平均粒径は、表面処理層の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)イメージを得、イメージ分析によって銅粒子の粒径を測定して計算できるが、総100個の粒子の測定値を平均することによって計算されてよい。前記表面処理層の微細銅粒子の平均粒径がこの範囲にあると、樹脂基板との接着強度に優れ、伝送損失が少ないので、高周波箔として適合する。
【0040】
また、本発明において、前記表面処理銅箔は、下の数式1で表現される変形数値(Y)が5以下であることが好ましい。
【0041】
(数式1)
【0042】
変形数値(Y)=引張強度変形数値(Y1)+延伸率変形数値(Y2)
【0043】
ここで、Y1=(T1-T2)/(kgf/mm2)であり、Y2=(E2-E1)/%であり、T2及びE2はそれぞれ、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間熱処理後に測定した引張強度と延伸率(百分率)であり、T1及びE1はそれぞれ、常温で測定した引張強度及び延伸率である。したがって、変形数値(Y)は無単位である。このとき、表面処理銅箔の引張強度及び延伸率はIPC-TM-650 2.4.18B規格にしたがって引張試験機を用いて測定されてよい。
【0044】
前述した変形数値を満たす範囲において本発明の表面処理銅箔はプレス前後の結晶粒の変化が少ないので、薄型のプリプレグとの接着時に発生する曲げ変形を抑制する効果を得ることができる。より好ましくは、前記変形数値(Y)は4.5以下、4.0以下、又は3.5以下であってよい。
【0045】
本発明において、表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムと接着して銅箔積層板として製造された場合に、その曲げ変形は0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下であることを特徴とする。このとき、曲げ変形は、銅箔積層板の中央部に50mm*50mmの十字状カッティング後に銅箔の巻き上がる程度(mm)をスチール定規で測定して評価することができる。
【0046】
本発明において、表面処理銅箔の十点平均粗度Rzは、0.4μm以下、0.5μm以下、0.6μm以下、又は0.7μm以下であってよい。また、十点平均粗度Rzは、0.2μm以上又は0.3μm以上であってよい。
【0047】
また、表面処理銅箔の光沢度(Gs 60゜)は、200以上、250以上、300以上であってよく、400未満又は500未満であってよい。
【0048】
この範囲において、樹脂基板との接着強度に優れ、伝送損失が少ないので、高周波箔として適合する。ここで、「十点平均粗度Rz」は、JIS B 0601-1994「表面粗さの定義と表示」の5.1 十点(ten point)平均粗度の定義において規定する十点平均粗度Rzを意味でき、「光沢度(Gs 60゜)」は、JIS Z 874に基づいて、銅箔表面に測定光を60゜の入射角で照射し、60゜の反射角で反射された光の強度を測定した値を意味できる。例えば、表面処理銅箔の十点平均粗度Rzは、0.25~0.5μm、他の例として0.3~0.45μmであってよく、光沢度(Gs 60゜)は、例えば200~400、他の例としては220~380であってよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明において、表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムとの接着強度が0.5kgf/cm以上であってよい。ここで、接着強度は、JIS C6481基準に基づいて測定された接着強度であってよい。例えば、表面処理銅箔の低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムとの接着強度は、0.5~1.0kgf/cm、0.5~2.0kgf/cm、0.5~3.0kgf/cm、0.5~4.0kgf/cm、又は0.5~7.0kgf/cmであってよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、前記表面処理銅箔は、20GHzでの伝送損失(S21)が3.0dB/100mm以下であってよい。ここで、「20GHz」での伝送損失(S21)は、表面処理銅箔をポリテトラフルオロエチレン樹脂の両面に貼り合わせた後、特性インピーダンスが50Ωとなるようにマイクロストリップ線路を形成した後、ネットワーク分析機を用いて測定した20GHzでの伝送損失を意味できる。例えば、表面処理銅箔の20GHzでの伝送損失(S21)は、0.5~3.0dB/100mm、1.0~3.0dB/100mm、又は1.5~2.5dB/100mmであってよい。
【0051】
上述の表面処理銅箔は樹脂基板上に積層されることによって銅箔積層板として使用可能であり、このような銅箔積層板はプリント配線板を製造するのに用いられてよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が限定されるものと解釈されてはならない。
【0053】
実施例
【0054】
<実施例1>
【0055】
電気メッキ法による銅箔の製造のために、20L/minで循環可能な2L容量の電解槽システムを準備した。このとき、銅電解液の温度は45℃に一定に維持し、陽極は、厚さ10mm、大きさ10cm×10cmのDSE(Dimentionally Stable Electrode)極板を使用し、陰極は、陽極と同じ大きさ及び厚さを有するチタン極板を使用した。
【0056】
最終12μm厚の電解銅箔を作製するために、まず、11μm厚の表面処理前原箔を製造した。銅100g/L、硫酸150g/L、塩素イオン30ppm、ポリエチレングリコール30ppm、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィド40ppm、3-(ベンゾチアゾリ-2-メルカプト)-プロピル-スルホン酸ナトリウム40ppm、ジエチルチオウレア2ppmからなる銅電解液を用いて電流密度35A/dm2で表面処理前原箔を作製した。
【0057】
次に、表面処理は、銅5g/L、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度3A/dm2の条件下で10秒間メッキをした。
【0058】
その後、表面処理された銅箔をニッケル5g/L、リン酸20g/Lで構成された水溶液で液温度40℃、pH 4、電流密度1A/dm2の条件で酸化防止層を形成した。
【0059】
<比較例1>
【0060】
表面処理前原箔の製造において、銅250~400g/L、硫酸80~150g/L、塩素イオン1ppmのみで構成された銅電解液でメッキして表面処理前原箔を作製した以外は、実施例1と同じ方法を用いて表面処理銅箔を製造した。
【0061】
<比較例2>
【0062】
銅25g/L、硫酸150g/Lで構成された銅電解液で電解液温度30℃、電流密度15A/dm2の条件下で10秒間メッキをして表面処理した以外は、実施例1と同じ方法を用いて表面処理銅箔を製造した。
【0063】
<物性評価>
【0064】
実施例及び比較例で製造された各表面処理銅箔サンプルの物性を測定した。物性評価項目及び測定方法は、次の通りである。
【0065】
a.引張強度及び延伸率
【0066】
- 常温引張強度及び延伸率測定:IPC-TM-650 2.4.18B規格にしたがって引張試験機を用いて引張強度及び延伸率測定した。
【0067】
- 高温引張強度及び延伸率測定
【0068】
プレス装備を用いて4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間表面処理銅箔をプレスした後、IPC-TM-650 2.4.18B規格にしたがって引張試験機を用いて引張強度及び延伸率を測定した。
【0069】
b.十点平均粗度Rz(単位:μm)
【0070】
JIS B0601基準に基づいて表面粗度測定機を用いて銅箔の表面処理後十点平均粗度Rzを測定した。
【0071】
c.銅粒子の平均粒径(単位:nm)
【0072】
表面処理後の銅箔表面に対して電子走査顕微鏡を用いてSEMイメージを撮影し、100μm×100μm面積内の100個の銅粒子に対して粒径を測定し、その平均値を求めた。
【0073】
d.光沢度(Gs 60゜)
【0074】
JIS Z 8741基準に基づいて表面処理後の銅箔表面に対して光沢度を測定した。
【0075】
e.接着強度(単位:kgf/cm)
【0076】
JIS C 6481基準に基づいて表面処理銅箔の接着強度を測定した。絶縁体は、パナソニック社の製品名MEGTRON(R-5785)である厚さ40μmの製品を使用した。
【0077】
f.伝送損失(S21)(単位:dB/100mm)
【0078】
12μm厚の表面処理銅箔を、厚さ12μmのポリテトラフルオロエチレン樹脂(AGC社)の両面に貼り合わせた後、特性インピーダンスが50Ωとなるようにマイクロストリップ線路を形成した後、HP社のネットワーク分析機を用いて20GHzの伝送損失を求めた。S21は、数値が0に近いほど伝送損失が少ないので、高速伝送に適合する。
【0079】
g.熱変色評価
【0080】
オーブン機を用いて220℃*2hr熱処理後に変色の有無を肉眼観察した。発生の有無は、発生(O)、未発生(X)と区分した。
【0081】
h.銅箔曲げ変形評価
【0082】
厚さ40μmであるパナソニック社の製品名MEGTRON(R-5785)絶縁体に表面処理銅箔を、プレス装備を用いて4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で90分間接着して試片を製造した後、刃物を用いて試片中央部位に50mm*50mm十字状カッティング後に銅箔の巻き上がる程度(mm)をスチール定規で測定した。
【0083】
図1A及び
図1Bはそれぞれ、実施例で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理及び酸化防止層形成後の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0084】
図1A及び
図1Bを参照すると、実施例の試片表面は、表面処理前(
図1A)にはなめらかな表面を示しており、表面処理後(
図1b)には、試片表面に100nm以下の微細銅粒子が生成されていることが確認できる。
【0085】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、実施例で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後のFIBで試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0086】
図2A及び
図2Bを参照すると、実施例の試片は、プレス前(
図2A)とプレス後(
図2B)に結晶粒の形状やサイズに大きな変化がないことが分かる。
【0087】
一方、
図3A及び
図3Bはそれぞれ、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前と表面処理及び酸化防止層形成後の表面を観察した電子顕微鏡写真であり、
図4A及び
図4Bはそれぞれ、比較例1で製造された表面処理銅箔試片の高温プレス前後のFIBで試片断面の結晶粒変化を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0088】
まず、
図3A及び
図3Bを参照すると、比較例1の試片は、表面処理前(
図3A)実施例(
図1A)に比べて比較的高い粗度を示していることが分かり、表面処理後(
図3B)微細銅粒子が生成されたことが確認できる。また、
図4A及び
図4Bを参照すると、比較例1の試片は、プレス前(
図4A)に比べてプレス後(
図4B)の結晶粒のサイズが大幅に成長したことが分かる。
【0089】
図5A及び
図5Bはそれぞれ、比較例2で製造された表面処理銅箔試片の表面処理前(
図5A)と表面処理及び酸化防止層形成後(
図5B)の表面を観察した電子顕微鏡写真である。図示のように、比較例2の試片は、表面処理及び酸化防止層形成後(
図5B)に表面に粗大な銅粒子が形成されていることが分かる。
【0090】
表1は、実施例1、比較例1及び比較例2で製造された試片に対する変化数値(Y)計算結果を整理した表であり、表2は、実施例、比較例1及び比較例2で製造された試片の物性評価結果を整理した表である。
【0091】
【0092】
【0093】
表1及び表2を参照すると、高温プレス前/後変形数値(Y)が少ない実施例と比較例2は、比較例1に比べて曲げ変形が少なく発生することが分かる。また、上の表2及び上記の
図2~
図4を参照すると、曲げ変形数値が少ない実施例は、比較例1の試片と違い、プレス前後結晶粒変化が少ないし、曲げ変形が高温プレス過程の結晶粒の形状変化と関連することが分かる。また、比較例1、2とは違い、高い光沢度と小さい銅粒子で表面処理された実施例の試片は、非常に低い粗度にもかかわらず、高い接着強度、及び20Ghzでの少ない伝送損失から、高周波銅箔として適合することが確認ができる。
【0094】
また、比較例1の試片は、実施例の試片に比べて表面処理面の粗度が高いが、プレス後の強度低下によって接着強度が低下する現象を示すことが分かる。
【0095】
一方、比較例2は、実施例に比べて高い接着強度を示したが、相対的に大きい銅粒子と高い粗度によって伝送損失特性に劣ることが確認できた。
【0096】
一方、別に整理していないが、酸化防止層が処理された実施例、比較例1及び2はいずれも熱変色評価において良好な状態であることが確認できた。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施例を詳細に説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、上述した実施例に対して本発明の範ちゅうから逸脱しない限度内で様々な変形が可能であることが理解できよう。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲及びその均等物によって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、電解銅箔、銅箔積層板及びプリント配線板に利用可能である。
【国際調査報告】