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特表2024-505263高厚度多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法
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  • 特表-高厚度多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】高厚度多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240129BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20240129BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240129BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20240129BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C65/02
C08G73/10
C01B32/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546538
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 KR2022001437
(87)【国際公開番号】W WO2022169193
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0015285
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011489
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ドン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ジェ-ホ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F211
4G146
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA86
4F071AF13Y
4F071AF15Y
4F071AF19Y
4F071AF45Y
4F071AG01
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F211AA40
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA01
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN07
4G146AA02
4G146AB07
4G146AC26B
4G146AD20
4G146BA15
4G146BB02
4G146BB06
4G146BC23
4G146BC36B
4J043PA04
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB03
4J043UA122
4J043UA131
4J043XA16
4J043YA08
4J043ZB11
4J043ZB47
(57)【要約】
本発明は、厚さが50μm以上であり、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の一面または両面に積層された接着層とを含むポリイミドユニットフィルムを2枚以上含み、前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムが前記接着層を介して接着積層されている、多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)が0.025以下である、
ポリイミドフィルム。
(ただし、前記塑性変形区間は、前記ポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)において変形率(Elongation)30%から破断直前までの区間に相当し、前記弾性変形区間は、前記変形率が3%以下の区間に相当する。)
【請求項2】
前記塑性変形区間の傾きが0.05GPa以下である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記弾性変形区間の傾きが2.1GPa以上である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
引張強度が200MPa以下である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
請求項1に記載のポリイミドフィルムを含むポリイミドコア層と、
前記ポリイミドコア層の一面または両面に積層された接着層とを含み、
前記接着層は、イミド基を含み、
厚さが50μm以上である、
ポリイミドユニットフィルム。
【請求項6】
前記ポリイミドコア層と前記接着層との厚さの比(ポリイミドコア層の厚さ:接着層の厚さ)が1:0.004~1:0.095である、
請求項5に記載のポリイミドユニットフィルム。
【請求項7】
前記接着層のガラス転移温度(Tg)が300℃以下であり、
前記ポリイミドコア層のガラス転移温度(Tg)が350℃以上であり、
前記ポリイミドコア層は、非熱可塑性ポリイミドを含み、
前記接着層は、熱可塑性ポリイミドを含む、
請求項5に記載のポリイミドユニットフィルム。
【請求項8】
前記ポリイミドコア層は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含む二無水物単量体、および
4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、またはこれらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成された、
請求項5に記載のポリイミドユニットフィルム。
【請求項9】
前記接着層は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含む二無水物単量体、および
4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス
(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、またはこれらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成された、
請求項5に記載のポリイミドユニットフィルム。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか1項に記載のポリイミドユニットフィルムを2枚以上積層して製造した、
多層ポリイミドフィルム。
【請求項11】
積層された前記ポリイミドユニットフィルム間の接着力が0.3kgf/cm以上である、
請求項10に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項12】
600℃以上で1時間以下加熱時、
積層された前記ポリイミドユニットフィルムの間に層間分離が起こらない、
請求項10に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項13】
グラファイトシート製造用である、
請求項10に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項14】
ポリイミドコア層の一面または両面に接着層が積層一体化されたポリイミドユニットフィルムを2枚以上形成するステップと、
前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムが前記接着層を介して接着できるように積層するステップと、
積層された前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムを熱圧着するステップと、を含み、
前記ポリイミドユニットフィルムの厚さが50μm以上であり、
前記ポリイミドコア層は、請求項1に記載のポリイミドフィルムを含む、
多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高厚度ポリイミドユニットフィルム、これを含む多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は、軽量化、小型化、薄型化および高集積化されており、これによって電子機器には多くの熱が発生している。このような熱は、製品の寿命を短縮させたり、故障、誤作動などを誘発することがある。したがって、電子機器に対する熱管理が重要な懸案として浮上している。
【0003】
グラファイトシートは、銅やアルミニウムなどの金属シートより高い熱伝導率を有し、電子機器の放熱部材として注目されている。特に、薄型グラファイトシート(例えば、約40μm以下の厚さを有するグラファイトシート)に比べて、熱収容量の面で有利な高厚度グラファイトシートに関する研究が活発に進められている。
【0004】
グラファイトシートは、多様な方法で製造できるが、例えば、高分子フィルムを炭化および黒鉛化させて製造できる。特に、ポリイミドフィルムは、優れた機械的熱的寸法安定性、化学的安定性などによってグラファイトシート製造用高分子フィルムとして注目されている。
【0005】
高厚度グラファイトシートを製造するためには、高厚度ポリイミドフィルム(例えば、約100μm以上の厚さを有するポリイミドフィルム)の製造が先行されなければならないが、ポリアミック酸溶液をキャスティングし、熱処理してポリイミドフィルムを製造する通常の方法では、内外部の均一な硬化が難しくて分層、気泡などが発生するため、高厚度ポリイミドフィルムの製造が難しい問題があった。また、接着剤を用いて2枚以上のポリイミドフィルムを接着して高厚度ポリイミドフィルムを製造する場合、炭化および黒鉛化のためにポリイミドフィルムが高温の熱を受ける過程で接着層の耐熱性問題による層分離現象や接着層で黒鉛化が進行せず、高厚度グラファイトシートの製造が不可能な問題があった。
【0006】
あるいは、高厚度グラファイトシートを製造するために両面テープを用いて2枚以上の薄型グラファイトシートを積層することができるが、この場合、両面テープが熱拡散を妨げて全体積層されたグラファイトシートの熱伝導度を低下させる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2017-0049912号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高厚度ポリイミドユニットフィルムおよびこれを含む多層ポリイミドフィルムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、多層ポリイミドフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための、本発明の一実施形態は、弾性変形区間の傾きに対する塑
性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)が0.025以下である、
ポリイミドフィルムを提供する。
(ただし、前記塑性変形区間は、前記ポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)において変形率(Elongation)30%から破断直前までの区間に相当し、前記弾性変形区間は、前記変形率が3%以下の区間に相当する。)
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含むポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の一面または両面に積層された接着層とを含み、
前記接着層は、イミド基を含み、
厚さが50μm以上である、
ポリイミドユニットフィルムを提供する。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態は、前記ポリイミドユニットフィルムを2枚以上積層して製造した、
多層ポリイミドフィルムを提供する。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態は、ポリイミドコア層の一面または両面に接着層が積層一体化されたポリイミドユニットフィルムを2枚以上形成するステップと、
前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムが前記接着層を介して接着できるように積層するステップと、
積層された前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムを熱圧着するステップと、を含み、
前記ポリイミドユニットフィルムの厚さが50μm以上である、
多層ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高厚度ポリイミドユニットフィルム、これを含む多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一製造例によるポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線(stress-strain curve、SS-curve)であり、塑性変形区間および弾性変形区間を示すグラフである。
図2】本発明の一実施例による多層ポリイミドフィルムの模式図である。
図3】本発明の一実施例による多層ポリイミドフィルムの模式図である。
図4】本発明の製造例1、2および比較製造例1のポリイミドフィルムの塑性結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態および実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態および実施例に限定されない。本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0017】
本明細書中、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0018】
構成要素を解釈するにあたり、別の明示的記載がなくても誤差範囲を含むと解釈する。
【0019】
本明細書において、数値範囲を示す「a~b」の「~」は≧aかつ≦bで定義する。
【0020】
本発明の一態様によるポリイミドフィルムは、弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)が0.025以下であってもよく、好ましくは0.023以下であってもよい。
【0021】
前記塑性変形区間は、図1に示した前記ポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線(stress-strain curve、SS-curve)において変形率(Elongation)30%から破断直前までの区間に相当し、前記弾性変形区間は、前記変形率が3%以下の区間に相当する。
【0022】
一方、前記ポリイミドフィルムの弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)は、0.01以上であってもよい。
【0023】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムの前記塑性変形区間の傾きが0.05GPa以下であってもよい。
【0024】
一方、前記ポリイミドフィルムの前記塑性変形区間の傾きが0.020GPa以上であってもよい。前記ポリイミドフィルムの前記塑性変形区間の傾きが、好ましくは0.027GPa以上、さらに好ましくは0.030GPa以上であってもよい。
【0025】
また、前記ポリイミドフィルムの前記弾性変形区間の傾きが2.1GPa以上であってもよい。前記ポリイミドフィルムの前記弾性変形区間の傾きが、好ましくは2.11GPa以上であってもよい。
【0026】
一方、前記ポリイミドフィルムの前記弾性変形区間の傾きは、3.0GPa以下であってもよい。
【0027】
前記ポリイミドフィルムの弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の比および/または前記ポリイミドフィルムの塑性変形区間の傾きが前記範囲を上回ったり下回ると、グラファイトシート製造のための焼成(黒鉛化)が容易でない。
【0028】
すなわち、ポリイミドユニットフィルムを貼り合わせて製造した多層ポリイミドフィルムは、厚さが非常に厚くなって焼成(黒鉛化)が容易でなく、グラファイトシートの製造が難しくなるので、できるだけ焼成が容易なポリイミドコア層を使用する必要がある。
【0029】
焼成を容易にするために、コア層として使用されるポリイミドのイミド化の進行を抑制する必要性があり、これはポリイミドの製造時に熱量を調整して達成できる。
【0030】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムの引張強度が200MPa以下であってもよく、好ましくは195MPa以下であってもよい。
【0031】
また、前記ポリイミドフィルムの引張強度は、170MPa以上であってもよい。
【0032】
これは、焼成を容易にするための熱量の調整結果、ポリイミドフィルムの引張強度が影響を受けて、引張強度が低くなるからである。
【0033】
本発明のポリイミドフィルムを製造するための二無水物単量体は、ピロメリット酸二無
水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、またはこれらの誘導体、またはこれらの組み合わせであってもよく、ジアミン単量体としては、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、またはこれらの誘導体、またはこれらの組み合わせが使用できる。
【0034】
本発明の他の態様によるポリイミドユニット(unit)フィルムは、前記ポリイミドフィルムを含むポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の一面または両面に積層された接着層とを含み、前記接着層は、イミド基を含み、ポリイミドユニットフィルムの厚さは、50μm以上であってもよい。
【0035】
例えば、前記ポリイミドユニットフィルムは、50μm~500μm、他の例としては100μm~300μm、さらに他の例としては125μm~250μmの厚さを有することができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
一実施形態において、前記ポリイミドユニットフィルムにおいて、前記ポリイミドコア層の厚さと前記接着層の厚さとの比率は、1:0.004~1:0.095であってもよい。
【0037】
すなわち、前記ポリイミドユニットフィルムが前記ポリイミドコア層の一面にのみ積層された接着層を有する場合、前記ポリイミドコア層の厚さと前記接着層の厚さとの比率は、1:0.004~1:0.095であってもよい。
【0038】
また、前記ポリイミドユニットフィルムが前記ポリイミドコア層の両面に積層された接着層を有する場合、前記ポリイミドコア層の厚さと前記接着層の厚さ(両面に積層された接着層の厚さの合計)との比率は、1:0.008~1:0.19であってもよい。
【0039】
一実施形態において、前記接着層のガラス転移温度(Tg)が300℃以下であり、前記ポリイミドコア層のガラス転移温度(Tg)が350℃以上であってもよい。
【0040】
特に、前記ポリイミドコア層は、非熱可塑性ポリイミドを含み、前記接着層は、熱可塑性ポリイミドを含むことができ、好ましくは、前記ポリイミドコア層は、非熱可塑性ポリイミドのみからなり、前記接着層は、熱可塑性ポリイミドのみからなる。
【0041】
一実施形態において、前記ポリイミドコア層および前記接着層は、二無水物単量体とジアミン単量体から形成される。例えば、前記ポリイミドコア層および前記接着層は、二無水物単量体とジアミン単量体との反応によって形成されたポリアミック酸をイミド化して製造できる。前記ポリイミドコア層および前記接着層の形成に使用可能な二無水物単量体とジアミン単量体の種類は、上述した二無水物単量体とジアミン単量体であってもよいし、これに制限せず特に限定せず、ポリイミドフィルムの製造分野において通常用いられる多様な単量体が使用可能である。
【0042】
一例として、前記ポリイミドコア層は、二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物(PMDA)100mol%と、ジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)100mol%とを反応させて形成させることができる。また、前記接着層は、二無水物単量体として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)100mol%と、ジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)100mol%とを反応させて形成させることができる。
【0043】
例えば、前記ポリイミドコア層および前記接着層形成のための二無水物単量体として、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、またはこれらの誘導体、またはこれらの組み合わせが、ジアミン単量体としては、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェ
ニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、またはこれらの誘導体、またはこれらの組み合わせが使用できる。
【0044】
一実施形態において、前記非熱可塑性ポリイミドコア層形成のための二無水物単量体としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを使用し、ジアミン単量体としては、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、またはこれらの組み合わせを使用することができ、この場合、配向性に優れたポリイミド層の形成が可能で、炭化、黒鉛化時に優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
一実施形態において、前記熱可塑性ポリイミド接着層形成のための二無水物単量体としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを使用し、ジアミン単量体としては、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0046】
一例として、前記ポリイミドコア層は、二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物(PMDA)100mol%と、ジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)100mol%とを反応させて形成させることができる。また、前記接着層は、二無水物単量体として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)100mol%と、ジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)100mol%とを反応させて形成させることができる。
【0047】
一実施形態において、前記ポリイミドユニットフィルムの製造には、公知のフィルムの積層方法であればいかなる方法でも適用可能である。
【0048】
例えば、コーティング法、ボンディングシート(bonding sheet)法、共押出法などが適用可能である。コーティング法は、通常の方法で製造されたポリイミドコア層上に接着層を一定の厚さに形成させた後に、乾燥してポリイミドユニットフィルムを製造する方法である。
【0049】
そして、ボンディングシート法は、ポリイミドコアフィルムとシート状に作られた接着層フィルム(ボンディングシート)とをカレンダリング(calendering)工程に同時に投入して、ポリイミドユニットフィルムを製造する方法である。
【0050】
また、共押出法は、ポリアミック酸溶液を金属支持層上にキャスティングするステップにおいて、共押出ダイを用いて接着層とポリイミドコア層とを同時に形成させて、ポリイミドユニットフィルムを製造する方法である。
【0051】
本発明の他の態様による多層ポリイミドフィルムは、前記ポリイミドユニットフィルムを2枚以上積層して製造することができる。
【0052】
多層ポリイミドフィルムの厚さは、積層されるポリイミドユニットフィルムの厚さ(例えば、ポリイミドコア層の厚さ、接着層の厚さ)、個数などを調節して容易に制御することができる。例えば、所定の厚さを満足するように、多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドユニットフィルムを2枚以上(例えば、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚、10枚、11枚、12枚、13枚、14枚または15枚以上)、他の例として2枚~1,000枚、さらに他の例として2枚~100枚、さらに他の例として2枚~50枚、さらに他の例として2枚~10枚積層して形成することができる。
【0053】
すなわち、前記多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の一面または両面に積層された接着層とを含むポリイミドユニットフィルムを2枚以上含むものであり、この時、前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムは、前記接着層を介して接着積層されたものであってもよい。
【0054】
例えば、接着層が熱可塑性ポリイミド層の場合、熱圧着などによって容易に接着可能であり、優れた接着力を有する。
【0055】
一実施形態において、前記多層ポリイミドフィルムの厚さは、100μm以上であってもよい。
【0056】
例えば、前記多層ポリイミドフィルムは、100μm~20,000μm、他の例として150μm~2,000μm、さらに他の例として200μm~1,000μmの厚さを有することができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
一実施形態において、前記多層ポリイミドフィルムに含まれるそれぞれのポリイミドユニットフィルムは、互いに同一でも異なっていてもよい。例えば、それぞれのポリイミドユニットフィルムは、ポリイミドコア層および/または接着層材質(例えば、ポリイミド前駆体成分、成分の含有量)、厚さなどが互いに同一でも異なっていてもよい。
【0058】
また、ポリイミドユニットフィルムが非熱可塑性ポリイミドからなるポリイミドコア層の両面に積層されて熱可塑性ポリイミド層を含む接着層を有する場合、接着層それぞれの熱可塑性ポリイミド層も、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0059】
さらに、前記ポリイミドユニットフィルムに含まれる非熱可塑性ポリイミド層および/または熱可塑性ポリイミド層は、単層または複数の層からなってもよい。
【0060】
一実施形態において、それぞれのポリイミドユニットフィルムに含まれた熱可塑性ポリイミド層は、同一材質であってもよいし、この場合、熱可塑性ポリイミド層間の接着力により優れ、後工程時に剥離防止効果がより優れることができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
図2は、本発明の一実施形態による多層ポリイミドフィルム100を概略的に示す図である。図2を参照すれば、多層ポリイミドフィルム100は、ポリイミドコア層111、121と、前記ポリイミドコア層111、121の一面に積層された接着層112、122とを含むポリイミドユニットフィルム110、120を含むことができ、選択的に、ポリイミドユニットフィルム110、120の間に、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の両面に積層された接着層とを含むポリイミドユニットフィルム(図示せず)を1枚以上(例えば、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚または10枚以上)さらに含むことができる。
【0062】
例えば、多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の一
面に積層された接着層とを含む2枚の第1ポリイミドユニットフィルムと、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の両面に積層された接着層とを含む1枚以上の第2ポリイミドユニットフィルムとを含み、前記2枚の第1ポリイミドユニットフィルムの間に前記1枚以上の第2ポリイミドユニットフィルムが介在しかつ、前記第1ポリイミドユニットフィルムと前記第2ポリイミドユニットフィルムは、前記第1ポリイミドユニットフィルムと前記第2ポリイミドユニットフィルムに含まれた接着層を介して接着積層されたものであってもよい。
【0063】
図3は、本発明の他の実施形態による多層ポリイミドフィルム200を概略的に示す図である。図3を参照すれば、多層ポリイミドフィルム200は、ポリイミドコア層211、221と、前記ポリイミドコア層211、221の両面に積層された接着層212、222とを含むポリイミドユニットフィルム210、220を含むことができ、選択的に、ポリイミドユニットフィルム210、220の間に、ポリイミドコア層と、前記ポリイミドコア層の両面に接着層とを含むポリイミドユニットフィルム(図示せず)を1枚以上(例えば、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚または10枚以上)さらに含むことができる。
【0064】
一実施形態において、前記多層ポリイミドフィルムの積層された前記ポリイミドユニットフィルム間の接着力は、0.3kgf/cm以上であってもよく、例えば、0.5kgf/cm以上、他の例として0.6kgf/cm以上であってもよい。
【0065】
一方、前記多層ポリイミドフィルムの積層された前記ポリイミドユニットフィルム間の接着力は、1.5kgf/cm以下であってもよい。
【0066】
一実施形態において、前記多層ポリイミドフィルムは、600℃以上で1時間以下加熱時、積層された前記ポリイミドユニットフィルムの間に層間分離が起こらず、例えば、層間分離が起こらない加熱時間は、50分以下、他の例として30分以下であってもよい。
【0067】
また、前記積層されたポリイミドユニットフィルムの間に層間分離が起こらない温度は、例えば650℃以上、他の例として700℃以上であってもよい。
【0068】
一方、前記積層されたポリイミドユニットフィルムの間に層間分離が起こらない温度は、3,000℃以下であってもよい。
【0069】
一実施形態において、前記多層ポリイミドフィルムは、グラファイトシート製造用であってもよい。
【0070】
前記多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドユニットフィルム間の接着力に優れていて、前記多層ポリイミドフィルムの炭化および黒鉛化時、接着界面での層分離なく熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシートを製造することができる。
【0071】
前記多層ポリイミドフィルムがグラファイトシート製造用の場合、前記ポリイミドユニットフィルムは、無機充填剤をさらに含むことができ、好ましくは、昇華性無機充填剤を含むことができる。
【0072】
ここで、「昇華性無機充填剤」とは、グラファイトシートの製造時、炭化および/または黒鉛化工程中に熱によって昇華する無機充填剤を意味することができる。ポリイミドフィルムが昇華性無機充填剤を含む場合、グラファイトシートの製造時、昇華性無機充填剤の昇華により発生する気体によってグラファイトシートに空隙が形成され、これによってグラファイトシートの製造時に発生する昇華ガスの排気が円滑に行われて良質のグラファ
イトシートが得られるだけでなく、グラファイトシートの柔軟性を向上させて、終局的にグラファイトシートの取扱性および成形性を向上させることができる。昇華性無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
昇華性無機充填剤の平均粒径(D50)は、0.05μm~5.0μm(例えば、0.1μm~4.0μm)であってもよいし、前記範囲で良質のグラファイトシートを得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
昇華性無機充填剤の含有量は、ポリイミドフィルム100重量部対比0.001~0.5重量部であってもよいし、前記範囲で良質のグラファイトシートを得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0075】
一実施形態において、ポリイミドユニットフィルム中において、ポリイミドコア層および接着層ともに昇華性無機充填剤が含まれる。他の実施形態によれば、接着層には昇華性無機充填剤が含まれ、ポリイミドコア層には昇華性無機充填剤が含まれなかったり、その逆であってもよい。
【0076】
本発明のさらに他の態様による多層ポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドコア層の一面または両面に接着層が積層一体化されたポリイミドユニットフィルムを2枚以上形成するステップと、前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムが前記接着層を介して接着できるように積層するステップと、積層された前記2枚以上のポリイミドユニットフィルムを熱圧着するステップと、を含むことができ、前記ポリイミドユニットフィルムの厚さが50μm以上であり、前記ポリイミドコア層は、前記ポリイミドフィルムを含むことができる。
【0077】
まず、公知のフィルムの積層方法によりポリイミドコア層の一面または両面に接着層が積層一体化されたポリイミドユニットフィルムを形成することができる。
【0078】
ポリイミドユニットフィルムは、例えば、ポリイミドコア層として非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を製造し、接着層として熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を製造し、前記非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および前記熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を支持体上に2層以上のフィルム形状に製造し、乾燥してゲルフィルムを形成し、前記ゲルフィルムを熱処理して製造することができる。
【0079】
非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物は、例えば、溶媒、ジアミン単量体および二無水物単量体を混合してポリアミック酸溶液を形成するステップを含んで製造され、選択的に、前記ポリアミック酸溶液に昇華性無機充填剤、脱水剤および/またはイミド化剤を添加するステップをさらに含むことができる。熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物は、例えば、溶媒、ジアミン単量体および二無水物単量体を混合してポリアミック酸溶液を形成するステップを含んで製造され、選択的に、前記ポリアミック酸溶液に昇華性無機充填剤、脱水剤および/またはイミド化剤を添加するステップをさらに含むことができる。ジアミン単量体、二無水物単量体および昇華性無機充填剤については上述したものを参照する。
【0080】
溶媒は、ポリアミック酸を溶解させることができるものであれば特に限定されない。例えば、溶媒は、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)を含むことができる。非プロトン性極性溶媒の例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)など
が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わされて使用可能である。場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いてポリアミック酸の溶解度を調節することもできる。
【0081】
一実施形態によれば、ポリアミック酸溶液は、固形分含有量、すなわち、ジアミン単量体、二無水物単量体および溶媒の総重量に対するジアミン単量体および二無水物単量体の重量百分率が、例えば5~35重量%、他の例として10~30重量%であってもよい。前記範囲でポリアミック酸溶液はフィルムを形成するのに適当な分子量と粘度を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
一実施形態によれば、非熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミック酸溶液は、23℃で粘度が100,000cP~500,000cPであってもよい。前記範囲でポリアミック酸が所定の分子量を有するようにしながらも、ポリイミドフィルム製膜時の工程性に優れることができる。ここで、「粘度」は、ハーケマース(HAAKE Mars)粘度計を用いて測定できる。例えば、ポリアミック酸溶液の粘度は、23℃で150,000cP~450,000cP、他の例として200,000cP~400,000cP、さらに他の例として220,000cP~350,000cPであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0083】
一実施形態によれば、熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミック酸溶液は、23℃で粘度が1,000cP~500,000cPであってもよい。前記範囲でポリアミック酸が所定の分子量を有するようにしながらも、ポリイミドフィルム製膜時の工程性に優れ、適切な温度および圧力下に熱圧着可能である。ここで、「粘度」は、ハーケマース(HAAKE Mars)粘度計を用いて測定できる。例えば、ポリアミック酸溶液の粘度は、23℃で1,000cP~100,000cP、他の例として1,000cP~50,000cP、さらに他の例として5,000cP~50,000cPであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0084】
一実施形態によれば、非熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミック酸は、重量平均分子量が50,000g/mol~500,000g/molであってもよい。前記範囲でより優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを製造するのに有利であり得る。ここで、「重量平均分子量」は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンを標準試料として用いて測定できる。例えば、ポリアミック酸の重量平均分子量は、150,000g/mol~500,000g/mol、他の例として100,000g/mol~400,000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0085】
一実施形態によれば、熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミック酸は、重量平均分子量が5,000g/mol~500,000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。前記範囲でより優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを製造するのに有利であり得る。ここで、「重量平均分子量」は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンを標準試料として用いて測定できる。
【0086】
脱水剤とは、ポリアミック酸に対する脱水作用により閉環反応を促進するものであり、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’-ジアルキルカルボジイミド、ハロゲン化低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリルホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して使用可能である。その中でも、入手の容易性および費用の観点から、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、乳酸無水物などの脂肪族酸無水物を単独でまたは2種以上混合して使用可能である。脱水剤は、ポリアミック酸中のアミック酸基1モルに対して0.5モル~5
モル(例えば、1モル~4モル)添加され、前記範囲で十分なイミド化が可能であり、フィルム状にキャスティングするのに有利であり得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
イミド化剤とは、ポリアミック酸に対する閉環反応を促進するものであり、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、および複素環式3級アミンなどが用いられる。その中でも、触媒としての反応性の観点から、複素環式3級アミンが使用できる。複素環式3級アミンの例としては、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどがあり、これらは単独でまたは2種以上混合して使用可能である。イミド化剤は、ポリアミック酸中のアミック酸基1モルに対して0.05モル~3モル(例えば、0.2モル~2モル)添加され、前記範囲で十分なイミド化が可能であり、フィルム状にキャスティングするのに有利であり得るが、これに限定されるものではない。
【0088】
以後、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を支持体上に2層以上のフィルム形状に製造し、乾燥してゲルフィルムを形成することができる。
【0089】
2層以上のフィルム形状の製造には、公知の製造方法であればいかなるものでも適用可能であり、例えば、コーティング法、ボンディングシート(bonding sheet)法、共押出法などが適用可能である。
【0090】
特に、共押出を利用して製造する場合、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を2層以上の押出成形用ダイを有する押出成形機に同時に供給し、前記ダイの吐出口から前記2つの組成物を2層以上のフィルム形状に共押出し、乾燥してゲルフィルムを製造することができる。
【0091】
より詳しくは、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を2層以上の成形用ダイに同時に供給し、2層以上の押出成形用ダイから吐出された前記2つの組成物を支持体上に連続的にフィルム形状にした後に、加熱乾燥(例えば、30℃~300℃)して自己支持性を有するゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを支持体から分離した後、高温(例えば、50℃~700℃)処理することにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。2層以上の成形用ダイとしては、公知の多様な構造を用いることができ、例えば、多層フィルム製造用Tダイ(例えば、フィードブロックTダイまたはマルチマニホールドTダイ)などを用いることができる。
【0092】
一実施形態によれば、ポリイミドユニットフィルムの非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層は、直接(direct)接触していてもよい。ここで、「直接接触」とは、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との間に他の層が介在しないことを意味することができる。
【0093】
支持体としては、ガラス板、アルミニウム箔、エンドレス(endless)ステンレスベルト、ステンレスドラムなどが挙げられる。乾燥は、例えば、30℃~300℃(例えば80℃~200℃、他の例として100℃~180℃、さらに他の例として100℃~150℃)の温度で行われるが、これに限定されるものではない。乾燥時間は、例えば1分~10分、他の例として2分~7分、さらに他の例として2分~5分間行われるが、これに限定されるものではない。
【0094】
場合によっては、最終的に得られるポリイミドユニットフィルムの厚さおよび大きさを調節し、配向性を向上させるために、ゲルフィルムを延伸させるステップを含むことができ、延伸は、MD(machine direction)およびTD(transverse direction)の少なくとも1つの方向に行われる。このような延伸工程
は、高分子の円滑な配向形成のために50℃未満の低温で行われなければならない。50℃以上の温度ではイミド化反応が促進されて高分子の配向が妨げられるからである。
【0095】
以後、ゲルフィルムを熱処理してポリイミドユニットフィルムを製造することができる。ゲルフィルムの熱処理により、ゲルフィルムに残存する大部分のアミック酸基がイミド化してポリイミドフィルムを得ることができる。熱処理温度は、50℃~700℃、例えば150℃~600℃、他の例として200℃~600℃、さらに他の例として350℃~500℃、さらに他の例として400℃~450℃であってもよいが、これに限定されるものではない。熱処理時間は、例えば1分~20分、他の例として1分~10分、さらに他の例として2分~8分間行われるが、これに限定されるものではない。
【0096】
次に、2枚以上のポリイミドユニットフィルムが接着層(例えば、熱可塑性ポリイミド層)を介して接着できるように積層することができる。より詳しくは、接着層が互いに向かい合うようにそれぞれのポリイミドユニットフィルムを積層することができる。
【0097】
次に、積層された2枚以上のポリイミドユニットフィルムを熱圧着することができる。熱圧着は、例えば、0.1MPa~30MPaの圧力および250℃~450℃の温度で10秒~150秒間行われるが、これに限定されるものではない。
【0098】
一実施形態によれば、ポリイミドユニットフィルムの熱可塑性ポリイミド層同士(例えば、ポリイミドユニットフィルムを2枚含む場合、1枚のポリイミドユニットフィルムの熱可塑性ポリイミド層と他の1枚のポリイミドユニットフィルムの熱可塑性ポリイミド層)で互いに直接(direct)接触していてもよい。
【0099】
上述により製造された多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドコア層の一面または両面に接着層が積層一体化された2枚以上のポリイミドユニットフィルムを熱圧着して前記接着層を介して接着積層されることにより、ポリイミドユニットフィルムが優れた接着力で接着できる。
【0100】
このような優れた接着力は、多層ポリイミドフィルムがグラファイトシート用に炭化使用される場合、および/または黒鉛化時に接着界面での層分離なく熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシートに変換できる。
【0101】
本発明のさらに他の態様によれば、上述した多層ポリイミドフィルム、または上述した製造方法で製造された多層ポリイミドフィルムから製造されたグラファイトシートが提供される。このようなグラファイトシートは、50μm以上、例えば、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmまたは200μm以上、他の例として50μm~4,000μm、さらに他の例として50μm~500μmの厚さを有しながらも優れた熱伝導度を有することができる。
【0102】
一実施形態によれば、グラファイトシートは、熱伝導度が500W/m・K以上(例えば、500W/m・K、600W/m・K、700W/m・K、800W/m・K、900W/m・K、1,000W/m・K、1,100W/m・K、1,200W/m・K、1,300W/m・K、1,400W/m・Kまたは1,500W/m・K以上)であってもよい。例えば、グラファイトシートの熱伝導度は、500W/m・K~2,000W/m・K、他の例として1,000W/m・K~2,000W/m・Kであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
上述したグラファイトシートは、グラファイトシート製造分野にて通常用いられる多様な方法で製造できる。例えば、グラファイトシートは、上述した多層ポリイミドフィルム
を炭化および黒鉛化して製造できる。
【0104】
「炭化」は、ポリイミドフィルムの高分子鎖を熱分解して、非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体を含む予備グラファイトシートを形成する工程であり、例えば、ポリイミドフィルムを減圧下または不活性気体雰囲気下で常温から最高温度の1,000℃~1,500℃の範囲の温度まで10時間~30時間かけて昇温および維持するステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、炭化時にホットプレスなどを用いてポリイミドフィルムに圧力を加えることもでき、この時の圧力は、例えば5kg/cm以上、他の例として15kg/cm以上、さらに他の例として25kg/cm以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0105】
黒鉛化は、非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体の炭素を再配列してグラファイトシートを形成する工程であり、例えば、予備グラファイトシートを、選択的に不活性気体雰囲気下で常温から最高温度の2,500℃~3,000℃の範囲の温度まで2時間~30時間かけて昇温および維持するステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、黒鉛化時にホットプレスなどを用いて予備グラファイトシートに圧力を加えることもでき、この時の圧力は、例えば100kg/cm以上、他の例として200kg/cm以上、さらに他の例として300kg/cm以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されるとは解釈できない。
【0107】
製造例
反応器に溶媒としてジメチルホルムアミド205.0gを投入し、温度を20℃に合わせた。これにジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)21.5gを添加し、次に、二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物(PMDA)23.4gを添加して、粘度が230,000cPのポリアミック酸溶液を製造した。次に、製造されたポリアミック酸溶液に脱水剤として酢酸無水物39.5g、イミド化剤としてβ-ピコリン4.8g、昇華性無機充填剤として第2リン酸カルシウム(平均粒径(D50):2.5μm)0.12g、および溶媒としてジメチルホルムアミド30.4gを混合して、非熱可塑性ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0108】
製膜装置で用意された非熱可塑性ポリイミド前駆体溶液をSUS板(100SA、Sandvik社)上に製膜し、乾燥させてゲルフィルムを製造した。製造されたゲルフィルムをSUS板と分離した後、熱処理してポリイミドフィルムを製造した。
【0109】
前記熱処理時、熱処理中の最高温度を、製造例1は510℃、製造例2は520℃、製造比較例1は550℃となるように熱量を調節して、製造例1、2および製造比較例1のポリイミドフィルムを製造した。
【0110】
製造例1、2および製造比較例1のポリイミドフィルムを、ASTM D882により、引張特性を測定した結果を、縦軸が引張強度(MPa)、横軸が変形率(%)である応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)で示し、下記表1に示すように、塑性変形区間の傾きと弾性変形区間の傾きを測定した後、その比を計算した。
【0111】
前記塑性変形区間は、図1に示した前記ポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線(st
ress-strain curve、SS-curve)において変形率(Elongation)30%から破断直前までの区間に相当し、前記弾性変形区間は、前記変形率が3%以下の区間に相当する。
【0112】
各区間の傾きは、各区間での引張強度の変化量/変形率の変化量を計算して導出され、この時、例えば、変形率3%は0.03に変更して計算した。
【0113】
【表1】
【0114】
製造例1、2のポリイミドフィルムは、本願の弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)および塑性変形区間の傾きの範囲内に相当したが、製造比較例1は、本願の弾性変形区間の傾きに対する塑性変形区間の傾きの比(塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾き)および塑性変形区間の傾きの範囲を外れた。また、製造例1、2のポリイミドフィルムの引張強度はそれぞれ180MPa、191Mpaで、いずれも200MPa以下に相当した。
【0115】
一方、製造比較例1のポリイミドフィルムの引張強度は約210MPaと測定された。製造例1、2および製造比較例1のポリイミドフィルムを、電気炉を用いてアルゴン気体下で平均0.5℃/分の速度で1,200℃まで昇温した後、前記温度で3時間維持させて炭化を進行させた後、再びアルゴン気体下で平均1.0℃/分の速度で2,800℃まで昇温した後、前記温度で1時間維持させて黒鉛化を進行させた。
【0116】
図4に示すように、製造例1および製造例2のポリイミドフィルムは、黒鉛化に問題がなかったが(それぞれ図4a、図4b)、本願の塑性変形区間の傾きおよび塑性変形区間の傾き/弾性変形区間の傾きの範囲を外れた製造比較例1のポリイミドフィルムは、イミド化が過度に進行して焼成が容易でなく、うまく黒鉛化されないことを確認することができた(図4c)。
【0117】
実施例および実験例
実施例1
上述した製造例と同様に、非熱可塑性ポリイミド前駆体溶液(ポリイミドコア層として使用)を製造した。
【0118】
別個の反応器に溶媒としてジメチルホルムアミド217.5gを投入し、温度を20℃に合わせた。これにジアミン単量体として4,4’オキシジアニリン(ODA)(13.2)gを添加し、次に、二無水物単量体として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)19.3gを添加して、粘度が10,000cPのポリアミック酸溶液を製造した。次に、製造されたポリアミック酸溶液に、脱水剤として酢酸無水物23.2g、イミド化剤としてβ-ピコリン3.0g、昇華性無機充填剤として第2リン酸カルシウム(平均粒径(D50):1.5μm)0.09g、および溶媒としてジメチルホルムアミド18.6gを混合して、接着層(熱可塑性ポリイミド層)用前駆体溶液を製造した。
【0119】
製造した非熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液および熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液を非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が積層一体化されるように、3層押出用ダイスを設けた製膜装置を用いてSUS板(100SA、Sandvik社)上に製膜し、130℃で3分間乾燥させてゲルフィルムを製造した。製造されたゲルフィルムをSUS板と分離した後、420~550℃で4分間熱処理して、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層(厚さ:3μm/46μm/3μm)構造のポリイミドユニットフィルムを製造した。
【0120】
製造したポリイミドユニットフィルム4枚を積層した後、20MPaの圧力を加えながら、350℃で1分間熱圧着して、202μmの厚さを有する多層ポリイミドフィルムを製造した。
【0121】
実験例1
実施例1により製造された多層ポリイミドフィルム試験片を用いてポリイミドユニットフィルム間の接着力を測定した。接着力の測定は、幅10mm、長さ100mmの試験片を作製した後、一方を25mm/minの速度で90゜の角度で剥離して接着力を測定した。
【0122】
積層されたポリイミドユニットフィルム間の平均接着力は0.63kgf/cmと測定された。
【0123】
実験例2
実施例1のポリイミドユニットフィルムのポリイミドコア層および接着層それぞれのガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度は、DMAを用いて各層の損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、これらのタンジェントグラフにおいて変曲点をガラス転移温度として測定した。
【0124】
測定結果、ポリイミドコア層のガラス転移温度は395℃であり、接着層のガラス転移温度は280℃であった。
【0125】
実験例3
実施例1により製造された多層ポリイミドフィルム試験片を加熱炉で700℃に30分間加熱後、層間分離の有無をSEMで確認したが、層間分離は確認されなかった。
【0126】
実施例2
実施例1の多層ポリイミドフィルムを、電気炉を用いて窒素気体下で1℃/分の速度で1,200℃まで昇温した後、前記温度で2時間維持させて炭化させた。以後、アルゴン気体下で20℃/分の速度で2,800℃まで昇温した後、前記温度で1時間維持させて黒鉛化させた後に、常温で上下2つの金属ロールの間を通過させて、100μmの厚さを有するグラファイトシートを製造した。
【0127】
実験例4
実施例2のグラファイトシートを直径25.4mmの円形に切断して試験片を製造し、前記試験片に対して、熱拡散率測定機器(LFA467、Netsch社)を用いてlaser flash法で熱拡散率を測定した後、前記熱拡散率測定値に密度および比熱(理論値:0.85kJ/kg・K)を乗じて熱伝導度を求めた。その結果、実施例2のグラファイトシートは1,030W/m・Kの優れた熱伝導度を有することが確認された。
【0128】
本発明の製造方法の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当
業者が本発明を容易に実施できるようにする好ましい実施例に過ぎず、前述した実施例に限定されるものではないので、これによって本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められなければならない。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形および変更が可能であることが当業者にとって明らかであり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、高厚度ポリイミドユニットフィルム、これを含む多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する効果を有する。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】