(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】歯科矯正装具、歯科矯正システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/28 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61C7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547030
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2022050683
(87)【国際公開番号】W WO2022167899
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シナダー,デイヴィッド ケー.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ミンーライ
(72)【発明者】
【氏名】ペール,ラルフ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブレース,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】シュリンペル,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルヒャー,アンドレ
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ04
4C052JJ05
(57)【要約】
歯科矯正装具が、スロットを画定している本体を含み、スロットが、開放端を含む挿入部分と、開放端から間隔を空けて、挿入部分に連通している受入部分とを含む。ロック部材が、開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられる。ロック部材は、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも第1の軸に沿って移動可能であり、通常はロック状態に付勢されている。ロック状態において、ロック部材は、アーチワイヤを受入部分内に取り外し可能に保持するために少なくとも部分的に挿入部分内に延びる。ロック解除状態において、ロック部材は、第1の軸に沿ってロック状態から開口部内に変位し、それにより、外力が加えられると、ロック部材は、挿入部分と受入部分との間でのアーチワイヤの移動を可能にするために、ロック解除状態に移動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチワイヤを取り外し可能に受け入れるための歯科矯正装具であって、
スロットを画定している本体であって、前記スロットが、
開放端を有する挿入部分であって、前記開放端から第1の軸に沿って延びており、前記開放端を介して前記挿入部分内に前記アーチワイヤを取り外し可能に受け入れるように構成されている、挿入部分と、
前記開放端から間隔を開け、前記挿入部分に連通している受入部分であって、前記第1の軸に対してある傾斜角で傾斜した第2の軸に沿って延びている、受入部分と、を備え、
前記本体が、前記スロットの前記挿入部分に連通し、前記スロットの前記受入部分から間隔を開けた、開口部をさらに画定している、本体と、
前記開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられるロック部材であって、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも前記第1の軸に沿って移動可能であり、通常は前記ロック状態に付勢されており、前記ロック解除状態に移動可能であり、前記ロック部材が、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記第1の軸に沿って前記ロック状態から前記開口部内に変位し、それにより、
外力が加えられると、前記ロック部材が、前記挿入部分と前記受入部分との間での前記アーチワイヤの移動を可能にするために、前記ロック解除状態に移動可能であり、かつ
前記外力が除去されると、前記ロック部材が、前記スロットの前記受入部分内に前記アーチワイヤを取り外し可能に保持するために、前記ロック状態に移動可能である、ロック部材と、
を備える歯科矯正装具。
【請求項2】
前記ロック部材が、互いに接続された一対の弾性アームを備え、各弾性アームが、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記開口部内に少なくとも部分的に後退する、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項3】
前記開口部が、前記スロットの前記挿入部分からテーパ状になっており、それにより、
前記外力が加えられると、前記ロック部材の各弾性アームが、前記第1の軸及び前記第2の軸のそれぞれに実質的に直交する第3の軸に沿って弾性的に移動するように、前記ロック部材が、前記開口部に対して前記第1の軸に沿って移動し、かつ、
前記外力が除去されると、前記ロック部材の前記弾性アームが、付勢されて前記ロック状態に移動する、
請求項2に記載の歯科矯正装具。
【請求項4】
前記ロック部材が、アイレットを画定しており、前記本体が、前記ロック部材の前記ロック状態において前記アイレットに連通して配置された空洞を画定している、請求項2に記載の歯科矯正装具。
【請求項5】
前記外力が、前記空洞を介して前記アイレットに少なくとも部分的に挿入されたツールによって加えられる、請求項4に記載の歯科矯正装具。
【請求項6】
各弾性アームの最大厚さが、前記スロットの前記挿入部分の幅以下である、請求項2に記載の歯科矯正装具。
【請求項7】
前記ロック部材が、
前記開口部内に移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れられる細長い部分と、
前記細長い部分に接続され、前記スロットの前記挿入部分の遠位に配置されている頭部と、
を備え、
前記細長い部分が、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記開口部内に少なくとも部分的に後退する、
請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項8】
前記開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、通常は前記ロック部材を前記ロック状態に付勢するように構成された付勢部材をさらに備える、請求項7に記載の歯科矯正装具。
【請求項9】
前記細長い部分が、前記細長い部分を通る孔をさらに画定しており、前記付勢部材が、前記孔内に少なくとも部分的に受け入れられている、請求項8に記載の歯科矯正装具。
【請求項10】
前記付勢部材が、弾性バーであり、前記弾性バーが、前記細長い部分の前記孔を介して受け入れられている、請求項9に記載の歯科矯正装具。
【請求項11】
前記本体がさらに、前記開口部の両端に配置された一対のアパーチャを画定しており、前記弾性バーが、前記本体の各アパーチャ内に少なくとも部分的に受け入れられている、請求項10に記載の歯科矯正装具。
【請求項12】
前記開口部が、
前記スロットの前記挿入部分に連通し、実質的に均一な幅を有する第1の部分と、
前記第1の部分に隣接して配置され、前記第1の部分から離れるようにテーパ状になる第2の部分であって、前記本体の各アパーチャが、前記第2の部分に連通しており、それにより、前記弾性バーが、前記開口部の前記第2の部分内に少なくとも部分的に受け入れられる、第2の部分と、
前記第1の部分とは反対側で前記第2の部分に隣接して配置され、実質的に均一な幅を有する第3の部分と、
を備え、
前記第2の部分の最大幅が、前記第1及び第3の部分のそれぞれの前記幅よりも大きく、前記第1、第2及び第3の部分がそれぞれ、それらを介して前記細長い部分を少なくとも部分的に受け入れている、
請求項11に記載の歯科矯正装具。
【請求項13】
前記付勢部材が、コイルばねである、請求項8に記載の歯科矯正装具。
【請求項14】
前記開口部に隣接して、前記スロットの前記挿入部分の遠位に配置された支持部材をさらに備え、前記本体が、前記開口部に隣接して、前記スロットの前記挿入部分の近位に配置された支持面をさらに備え、前記コイルばねが、前記支持部材と前記支持面との間に支持されている、請求項13に記載の歯科矯正装具。
【請求項15】
前記付勢部材が、超弾性金属を含む、請求項8に記載の歯科矯正装具。
【請求項16】
前記外力が、前記頭部に加えられる、請求項7に記載の歯科矯正装具。
【請求項17】
前記開口部の幅が、前記挿入部分の幅以下である、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項18】
前記傾斜角が、約70度~約110度である、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項19】
前記傾斜角が、約90度である、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項20】
前記ロック部材が、超弾性金属を含む、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項21】
前記本体が、第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とをさらに備え、前記第1の表面と前記第2の表面が、それらの間に前記スロットの前記挿入部分を少なくとも部分的に画定している、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項22】
前記本体が、
前記第1の表面に隣接して、前記第1の表面に対して傾斜して配置された第3の表面と、
前記第2の表面に隣接して、前記第2の表面に対して傾斜して配置され、前記第3の表面に対向して配置された第4の表面と、
前記第3の表面と前記第4の表面との間に延びている第5の表面と、
をさらに備え、
前記第3、第4及び第5の表面が、それらの間に前記スロットの前記受入部分を少なくとも部分的に画定している、
請求項21に記載の歯科矯正装具。
【請求項23】
前記開口部が、前記第4の表面から延びている、請求項22に記載の歯科矯正装具。
【請求項24】
前記第1、第2、第3及び第4の表面のそれぞれが、実質的に平面状である、請求項22に記載の歯科矯正装具。
【請求項25】
前記第2の軸に沿った前記第3の表面の最大長さが、前記第2の軸に沿った前記第4の表面の最大長さよりも小さい、請求項22に記載の歯科矯正装具。
【請求項26】
前記第1の軸に沿った前記第5の表面の最大長さが、前記第1の軸に沿った前記第2の表面の最大長さよりも小さい、請求項22に記載の歯科矯正装具。
【請求項27】
前記第1の軸に沿った前記第1の表面の最大長さが、前記第1の軸に沿った前記第2の表面の最大長さよりも小さい、請求項21に記載の歯科矯正装具。
【請求項28】
前記外力が、前記スロットの前記挿入部分への前記アーチワイヤの挿入中、前記アーチワイヤによって加えられる、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項29】
前記ロック部材が、前記ロック状態及び前記ロック解除状態のそれぞれにおいて前記本体に係合する、請求項1に記載の歯科矯正装具。
【請求項30】
前記開口部が、前記スロットの前記挿入部分の近位の第1の端と、前記第1の端とは反対側の第2の端とを有し、前記アイレットが、前記第2の端の近位で前記開口部の外側に配置されており、前記アイレットの最大幅が、前記開口部の前記第2の端の幅よりも大きい、請求項4に記載の歯科矯正装具。
【請求項31】
複数の歯のための歯科矯正システムであって、
アーチワイヤと、
複数の歯科矯正装具と、を備え、前記複数の歯科矯正装具のうちの少なくとも1つの歯科矯正装具が、その中に前記アーチワイヤを少なくとも部分的にかつ取り外し可能に受け入れるように構成されており、前記少なくとも1つの歯科矯正装具が、前記複数の歯のうちの対応する歯に着脱可能に結合されるように構成されており、前記少なくとも1つの歯科矯正装具が、
スロットを画定している本体であって、前記スロットが、
開放端を有する挿入部分であって、前記開放端から第1の軸に沿って延びており、前記開放端を介して前記アーチワイヤを取り外し可能に受け入れるように構成されている、挿入部分と、
前記開放端から間隔を開け、前記挿入部分に連通している受入部分であって、前記第1の軸に対してある傾斜角で傾斜した第2の軸に沿って延びている受入部分と、を備え、
前記本体が、前記スロットの前記挿入部分に連通し、前記スロットの前記受入部分から間隔を開けた、開口部をさらに画定している、本体と、
前記開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられるロック部材であって、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも前記第1の軸に沿って移動可能であり、通常は前記ロック状態に付勢されており、前記ロック解除状態に移動可能であり、前記ロック部材が、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記第1の軸に沿って前記ロック状態から前記開口部内に変位し、それにより、外力が加えられると、前記ロック部材が、前記挿入部分と前記受入部分との間での前記アーチワイヤの移動を可能にするために、前記ロック解除状態に移動可能であり、かつ
前記外力が除去されると、前記ロック部材が、前記スロットの前記受入部分内に前記アーチワイヤを取り外し可能に保持するために、前記ロック状態に移動可能である、ロック部材と、
を備える歯科矯正システム。
【請求項32】
前記ロック部材が、互いに接続された一対の弾性アームを備え、各弾性アームが、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記開口部内に少なくとも部分的に後退する、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項33】
前記開口部が、前記スロットの前記挿入部分からテーパ状になっており、それにより、
前記外力が加えられると、前記ロック部材の各弾性アームが、前記第1の軸及び前記第2の軸のそれぞれに実質的に直交する第3の軸に沿って弾性的に移動するように、前記ロック部材が、前記開口部に対して前記第1の軸に沿って移動し、かつ
前記外力が除去されると、前記ロック部材の前記弾性アームが、付勢されて前記ロック状態に移動する、
請求項32に記載の歯科矯正システム。
【請求項34】
前記ロック部材が、アイレットを画定しており、前記本体が、前記ロック部材の前記ロック状態で前記アイレットに連通して配置された空洞を画定している、請求項32に記載の歯科矯正システム。
【請求項35】
前記外力が、前記空洞を介して前記アイレットに少なくとも部分的に挿入されたツールによって加えられる、請求項34に記載の歯科矯正システム。
【請求項36】
各弾性アームの最大厚さが、前記スロットの前記挿入部分の幅以下である、請求項32に記載の歯科矯正システム。
【請求項37】
前記ロック部材が、
前記開口部内に移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れられる細長い部分と、
前記細長い部分に接続され、前記スロットの前記挿入部分の遠位に配置されている頭部と、を備え、
前記細長い部分が、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延び、前記ロック解除状態において、前記開口部内に少なくとも部分的に後退する、
請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項38】
前記開口部内に少なくとも部分的に受け入れられ、通常は前記ロック部材を前記ロック状態に付勢するように構成された付勢部材をさらに備える、請求項37に記載の歯科矯正システム。
【請求項39】
前記細長い部分が、前記細長い部分を通る孔をさらに画定しており、前記付勢部材が、前記孔内に少なくとも部分的に受け入れられている、請求項38に記載の歯科矯正システム。
【請求項40】
前記付勢部材が、弾性バーであり、前記弾性バーが、前記細長い部分の前記孔を介して受け入れられる、請求項39に記載の歯科矯正システム。
【請求項41】
前記本体がさらに、前記開口部の両端に配置された一対のアパーチャを画定しており、前記弾性バーが、前記本体の各アパーチャ内に少なくとも部分的に受け入れられる、請求項40に記載の歯科矯正システム。
【請求項42】
前記開口部が、
前記スロットの前記挿入部分に連通し、実質的に均一な幅を有する第1の部分と、
前記第1の部分に隣接して配置され、前記第1の部分から離れるようにテーパ状になる第2の部分であって、前記本体の各アパーチャが、前記第2の部分に連通しており、それにより、前記弾性バーが、前記開口部の前記第2の部分内に少なくとも部分的に受け入れられる、第2の部分と、
前記第1の部分とは反対側で前記第2の部分に隣接して配置され、実質的に均一な幅を有する第3の部分と、を備え、
前記第2の部分の最大幅が、前記第1及び第3の部分のそれぞれの前記幅よりも大きく、前記第1、第2及び第3の部分がそれぞれ、それらを介して前記細長い部分を少なくとも部分的に受け入れている、
請求項41に記載の歯科矯正システム。
【請求項43】
前記付勢部材が、コイルばねである、請求項38に記載の歯科矯正システム。
【請求項44】
前記少なくとも1つの歯科矯正装具が、前記開口部に隣接して、前記スロットの前記挿入部分の遠位に配置された支持部材をさらに備え、前記本体が、前記開口部に隣接して、前記スロットの前記挿入部分の近位に配置された支持面をさらに備え、前記コイルばねが、前記支持部材と前記支持面との間に支持されている、請求項43に記載の歯科矯正システム。
【請求項45】
前記付勢部材が、超弾性金属を含む、請求項38に記載の歯科矯正システム。
【請求項46】
前記外力が、前記頭部に加えられる、請求項37に記載の歯科矯正システム。
【請求項47】
前記開口部の幅が、前記挿入部分の幅以下である、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項48】
前記傾斜角が、約70度~約110度である、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項49】
前記傾斜角が、約90度である、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項50】
前記ロック部材が、超弾性金属を含む、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項51】
前記本体が、第1の表面と、前記第1の表面に対向する第2の表面とをさらに備え、前記第1の表面と前記第2の表面が、それらの間に前記スロットの前記挿入部分を少なくとも部分的に画定している、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項52】
前記本体が、
前記第1の表面に隣接して、前記第1の表面に対して傾斜して配置された第3の表面と、
前記第2の表面に隣接して、前記第2の表面に対して傾斜して配置され、前記第3の表面に対向して配置された第4の表面と、
前記第3の表面と前記第4の表面との間に延びている第5の表面と、をさらに備え、
前記第3、第4及び第5の表面が、それらの間に前記スロットの前記受入部分を少なくとも部分的に画定している、
請求項51に記載の歯科矯正システム。
【請求項53】
前記開口部が、前記第4の表面から延びている、請求項52に記載の歯科矯正システム。
【請求項54】
前記第1、第2、第3及び第4の表面のそれぞれが、実質的に平面状である、請求項52に記載の歯科矯正システム。
【請求項55】
前記第2の軸に沿った前記第3の表面の最大長さが、前記第2の軸に沿った前記第4の表面の最大長さよりも小さい、請求項52に記載の歯科矯正システム。
【請求項56】
前記第1の軸に沿った前記第5の表面の最大長さが、前記第1の軸に沿った前記第2の表面の最大長さよりも小さい、請求項52に記載の歯科矯正システム。
【請求項57】
前記第1の軸に沿った前記第1の表面の最大長さが、前記第1の軸に沿った前記第2の表面の最大長さよりも小さい、請求項51に記載の歯科矯正システム。
【請求項58】
前記外力が、前記スロットの前記挿入部分への前記アーチワイヤの挿入中、前記アーチワイヤによって加えられる、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項59】
前記ロック部材が、前記ロック状態及び前記ロック解除状態のそれぞれにおいて前記本体に係合する、請求項31に記載の歯科矯正システム。
【請求項60】
前記開口部が、前記スロットの前記挿入部分の近位の第1の端と、前記第1の端とは反対側の第2の端とを有し、前記アイレットが、前記第2の端の近位で前記開口部の外側に配置されており、前記アイレットの最大幅が、前記開口部の前記第2の端の幅よりも大きい、請求項34に記載の歯科矯正システム。
【請求項61】
アーチワイヤ及び歯科矯正装具と共に使用するための方法であって、前記歯科矯正装具が、第1の軸に沿って延びている挿入部分と、前記第1の軸に対して傾斜した第2の軸に沿って延びている受入部分とを備えるスロットを備え、前記方法が、
ロック部材が、通常はロック状態に付勢されており、前記ロック状態において、前記スロットの前記挿入部分内に少なくとも部分的に延びるように、前記歯科矯正装具の開口部に前記ロック部材を移動可能かつ少なくとも部分的に受け入れることと、
前記アーチワイヤが、前記ロック部材に係合し、前記第1の軸に沿って前記ロック状態から前記開口部内に前記ロック部材を移動させるように、前記スロットの前記挿入部分に前記アーチワイヤを挿入することと、
前記ロック部材が、前記ロック状態に付勢され、前記スロットの前記受入部分内に前記アーチワイヤを取り外し可能に保持するように、前記スロットの前記受入部分に前記アーチワイヤを挿入することと、
を含む方法。
【請求項62】
前記開口部内に前記ロック部材を少なくとも部分的に後退させるように、前記第1の軸に沿って前記ロック状態からロック解除状態に前記ロック部材を移動させることと、
前記第2の軸に沿って前記受入部分から前記挿入部分に前記アーチワイヤを移動させることと、
前記アーチワイヤを前記挿入部分から取り外すことと、
をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ロック部材を、前記ロック状態から前記ロック解除状態にツールによって移動させる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ロック部材を、前記ロック部材の頭部を把持することによって前記ロック状態から前記ロック解除状態に移動させる、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記歯科矯正装具の前記開口部内に前記ロック部材を移動可能かつ少なくとも部分的に受け入れることが、前記ロック部材の一対の弾性アームを前記開口部内に移動可能かつ少なくとも部分的に受け入れることをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
各弾性アームが第3の軸に沿って弾性的に移動するように、前記ロック部材の前記弾性アームを前記開口部に対して前記第1の軸に沿って移動させることをさらに含み、前記第3の軸が前記第1の軸及び前記第2の軸のそれぞれに実質的に直交する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記歯科矯正装具の前記開口部内に前記ロック部材を移動可能かつ少なくとも部分的に受け入れることが、前記ロック部材の細長い部分を前記開口部内に移動可能かつ少なくとも部分的に受け入れることをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記ロック部材を付勢部材によって前記ロック状態に付勢することをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、歯科矯正装具、歯科矯正システム、及び方法に関し、特に、アーチワイヤを受け入れるための歯科矯正装具、複数の歯科矯正装具を含む歯科矯正システム、並びにアーチワイヤ及び歯科矯正装具と共に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正ブラケットなどの歯科矯正装具は、患者の1本以上の歯を位置異常から患者の歯列における所望の位置に移動させるために、歯科医による歯科矯正治療において使用することができる。歯科矯正治療は、患者の顔立ちを改善することができる。場合によっては、歯科矯正治療は、咀嚼中の咬合を改善することによって歯の機能を改善することもできる。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、アーチワイヤを取り外し可能に受け入れるための歯科矯正装具を提供する。歯科矯正装具は、スロットを画定している本体を含む。スロットは、挿入部分を含む。挿入部分は、開放端を有する。挿入部分は、開放端から第1の軸に沿って延びている。挿入部分は、開放端を介して挿入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に受け入れるように構成されている。スロットは、開放端から間隔を空けて挿入部分に連通している受入部分をさらに含む。受入部分は、第1の軸に対してある傾斜角で傾斜した第2の軸に沿って延びている。本体は、スロットの挿入部分に連通し、スロットの受入部分から間隔を空けた、開口部をさらに画定している。歯科矯正装具は、開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられるロック部材をさらに含む。ロック部材は、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも第1の軸に沿って移動可能である。ロック部材は、通常はロック状態に付勢されており、ロック解除状態に移動可能である。ロック部材は、ロック状態において、スロットの挿入部分内に少なくとも部分的に延びる。ロック部材は、ロック解除状態において、第1の軸に沿ってロック状態から開口部内に変位する。外力が加えられると、ロック部材は、挿入部分と受入部分との間でのアーチワイヤの移動を可能にするために、ロック解除状態に移動可能である。さらに、外力が除去されると、ロック部材は、スロットの受入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に保持するために、ロック状態に移動可能である。
【0004】
別の態様では、本開示は、複数の歯のための歯科矯正システムを提供する。歯科矯正システムは、アーチワイヤを含む。歯科矯正システムは、複数の歯科矯正装具をさらに含む。複数の歯科矯正装具のうちの少なくとも1つの歯科矯正装具は、その中にアーチワイヤを少なくとも部分的にかつ取り外し可能に受け入れるように構成されている。さらに、少なくとも歯科矯正装具は、複数の歯のうちの対応する歯に着脱可能に結合されるように構成されている。少なくとも1つの歯科矯正装具は、スロットを画定している本体を含む。スロットは、挿入部分を含む。挿入部分は、開放端を有する。挿入部分は、開放端から第1の軸に沿って延びている。挿入部分は、開放端を介して挿入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に受け入れるように構成されている。スロットは、開放端から間隔を空けて挿入部分に連通している受入部分をさらに含む。受入部分は、第1の軸に対してある傾斜角で傾斜した第2の軸に沿って延びている。本体は、スロットの挿入部分に連通し、スロットの受入部分から間隔を空けた、開口部をさらに画定している。少なくとも1つの歯科矯正装具は、開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられるロック部材をさらに含む。ロック部材は、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも第1の軸に沿って移動可能である。ロック部材は、通常はロック状態に付勢されており、ロック解除状態に移動可能である。ロック部材は、ロック状態において、スロットの挿入部分内に少なくとも部分的に延びる。ロック部材は、ロック解除状態において、第1の軸に沿ってロック状態から開口部内に変位する。外力が加えられると、ロック部材は、挿入部分と受入部分との間でのアーチワイヤの移動を可能にするために、ロック解除状態に移動可能である。さらに、外力が除去されると、ロック部材は、スロットの受入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に保持するために、ロック状態に移動可能である。
【0005】
別の態様では、本開示は、アーチワイヤ及び歯科矯正装具と共に使用するための方法を提供する。歯科矯正装具は、第1の軸に沿って延びている挿入部分と、第1の軸に対して傾斜した第2の軸に沿って延びている受入部分とを備えるスロットを含む。方法は、ロック部材が通常はロック状態に付勢されるように、歯科矯正装具の開口部内にロック部材を移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れることを含む。ロック部材は、ロック状態において、スロットの挿入部分内に少なくとも部分的に延びる。方法は、アーチワイヤが、ロック部材に係合し、第1の軸に沿ってロック状態から開口部内にロック部材を移動させるように、スロットの挿入部分にアーチワイヤを挿入することをさらに含む。方法は、ロック部材が、ロック状態に付勢され、スロットの受入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に保持するように、スロットの受入部分にアーチワイヤを挿入することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の図と共に以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本明細書に開示する例示的実施形態を、より完全に理解することができる。図は、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。図面で使用されている同様の番号は、同様の構成要素を示す。しかし、所与の図内における構成要素を示すための番号の使用は、同じ番号で示されている別の図内の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。
【
図1】本開示の一実施形態による歯科矯正システムの概略斜視図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図2B】本開示の一実施形態による歯科矯正装具の概略側面図である。
【
図3A】本開示の一実施形態による歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図3B】本開示の一実施形態による、キャップ部分及びロック部材が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図4A】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図4B】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図4C】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図4D】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図5A】本開示の一実施形態による、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図5B】本開示の一実施形態による、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図5C】本開示の一実施形態による、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図5D】本開示の一実施形態による、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない歯科矯正装具の概略正面図である。
【
図7A】本開示の一実施形態による、ロック部材が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図7B】本開示の一実施形態による、ロック部材が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図8A】本開示の一実施形態による歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図8B】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図8C】本開示の一実施形態による歯科矯正装具のロック部材の斜視図である。
【
図9A】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図9B】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図9C】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図9D】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図10A】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図10B】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図11A】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図11B】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図11C】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図11D】本開示の一実施形態による、キャップ部分が示されていない、異なる機能段階にある歯科矯正装具の概略斜視図である。
【
図12】本開示の一実施形態による、アーチワイヤ及び歯科矯正装具と共に使用するための方法の様々なステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明では、説明の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付の図面が参照される。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0008】
本開示は、アーチワイヤを取り外し可能に受け入れるための歯科矯正装具に関する。本開示はさらに、複数の歯科矯正装具を含む、複数の歯のための歯科矯正システムに関する。本開示はさらに、アーチワイヤ及び歯科矯正装具と共に使用するための方法に関する。歯科矯正装具は、患者の1本以上の歯を位置異常から患者の歯列における所望の位置に移動させるための歯科矯正治療に使用することができる。
【0009】
歯科矯正装具は、スロットを画定している本体を含む。スロットは、挿入部分を含む。挿入部分は、開放端を有する。挿入部分は、開放端から第1の軸に沿って延びている。挿入部分は、開放端を介して挿入部分内にアーチワイヤを取り外し可能に受け入れるように構成されている。スロットは、開放端から間隔を空け、挿入部分に連通している、受入部分をさらに含む。受入部分は、第1の軸に対してある傾斜角度で傾斜した第2の軸に沿って延びている。本体は、スロットの挿入部分に連通し、スロットの受入部分から間隔を空けた、開口部をさらに画定している。歯科矯正装具は、開口部内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられるロック部材をさらに含む。ロック部材は、ロック状態とロック解除状態との間で少なくとも第1の軸に沿って移動可能である。ロック部材は、通常はロック状態に付勢されており、ロック解除状態に移動可能である。ロック部材は、ロック状態において、スロットの挿入部分内に少なくとも部分的に延びる。ロック部材は、ロック解除状態において、第1の軸に沿ってロック状態から開口部内に変位する。外力が加えられると、ロック部材は、挿入部分と受入部分との間でのアーチワイヤの移動を可能にするために、ロック解除状態に移動可能である。さらに、外力が除去されると、ロック部材は、アーチワイヤをスロットの受入部分内に取り外し可能に保持するために、ロック状態に移動可能である。
【0010】
歯科矯正治療に使用される従来の自己結紮式ブラケットは典型的に、複雑な設計を有し、大きな設置面積又はプロファイルを有する。これは、チェアタイム及び治療の複雑さを増加させる場合がある。さらに、従来の自己結紮式ブラケットは、特定の用途に適さない場合がある。
【0011】
本開示の歯科矯正装具は、歯科矯正装具へのアーチワイヤのツールなし結紮を可能にすることができる。具体的に、アーチワイヤは、挿入部分の開放端を介して挿入され、追加のツールを必要とせずに、スロットの受入部分内に取り外し可能に保持することができる。したがって、歯科矯正装具は、歯科治療中の患者のチェアタイムを短縮することができる。さらに、歯科矯正装具は、ロック部材がアーチワイヤを歯科矯正装具に確実に固定するため、頑丈な設計を有してもよい。したがって、歯科矯正装具を故障しにくくすることができる。さらに、挿入部分及び受入部分を含むスロットと、通常はロック状態に付勢されているロック部材との組み合わせは、本開示の歯科矯正装具が、従来の自己結紮式ブラケットと比較して、より単純な設計及びより小さなプロファイルを有することを可能にし得る。したがって、歯科矯正装具は、プロファイルの小さな歯科矯正装具を必要とする歯科矯正治療に好適であり得る。
【0012】
ここで図を参照すると、
図1は、本開示の実施形態による、複数の歯50のための歯科矯正システム10を示す。複数の歯50は、歯科矯正治療を受けている患者のものであり得る。複数の歯50は、中切歯、側切歯、犬歯、小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、及び第3大臼歯のうちの1つ以上を含むことができる。さらに、複数の歯50は、患者の下顎歯列弓又は上顎歯列弓のものであり得る。
【0013】
歯科矯正システム10は、アーチワイヤ70を含む。アーチワイヤ70は、複数の歯50に力を加えて、1本以上の歯50を位置異常から患者の歯列における所望の位置に移動させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、アーチワイヤ70は、ニッケル-チタン(NiTi)合金を含むことができる。いくつかの他の実施形態では、アーチワイヤ70は、複数の歯50に力を加えるための任意の好適な材料を含むことができる。例えば、アーチワイヤ70は、金属、金属合金、非金属合金、複合材料、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
歯科矯正システム10は、複数の歯科矯正装具100をさらに含む。複数の歯科矯正装具100のうちの少なくとも1つの歯科矯正装具100は、自己結紮式歯科矯正装具であってもよい。少なくとも1つの歯科矯正装具100は、本体110を含む。複数の歯科矯正装具100のうちの少なくとも1つの歯科矯正装具100は、アーチワイヤ70を少なくとも部分的にかつ取り外し可能に受け入れるように構成されている。さらに、少なくとも1つの歯科矯正装具100は、複数の歯50のうちの対応する歯50に着脱可能に結合されるように構成されている。
【0015】
少なくとも1つの歯科矯正装具100は、対応する歯50の唇側面、すなわち、患者の唇の方に向いた歯表面において、対応する歯50に着脱可能に結合される。
図1に示す実施形態では、各歯科矯正装具100は、唇側歯科矯正装具である。しかし、いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの歯科矯正装具100は、対応する歯50の舌側面、すなわち、患者の舌の方に向いた歯表面において、対応する歯50に着脱可能に結合されてもよい。言い換えれば、少なくとも1つの歯科矯正装具100は、舌側歯科矯正装具であってもよい。
【0016】
図2Aは、本開示の実施形態による歯科矯正装具100の斜視図を示す。
図2Bは、歯科矯正装具100の側面図を示す。歯科矯正装具100は、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸を規定する。X軸及びY軸は、歯科矯正装具100の面内軸である一方、Z軸は、歯科矯正装具100の厚さに沿って配置された横軸である。言い換えれば、X軸及びY軸は、歯科矯正装具100の平面に沿って配置される一方、Z軸は、歯科矯正装具100の平面に垂直である。
【0017】
図2A及び
図2Bを参照すると、歯科矯正装具100は、本体110を含む。
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、本体110は、キャップ部分112を含む。本体110は、Z軸に沿ってキャップ部分112とは反対側に配置されるベース部分(図示せず)をさらに含むことができる。本体110のベース部分は、(
図1に示す)対応する歯50に着脱可能に結合されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、本体110のベース部分は、患者の(
図1に示す)対応する歯50のために特注することができる。本体110は、任意の好適な製造プロセスによって任意の好適な材料から作製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本体110は、積層造形プロセスによって金属合金から作製することができる。いくつかの実施形態では、本体110は、単一の部品として製造することができる。いくつかの他の実施形態では、本体110の異なる部品が、別個に製造された後、好適なプロセスによって組み立てられてもよい。例えば、キャップ部分112及びベース部分(図示せず)は、別個に製造された後、本体110を形成するように(例えば、レーザ溶接によって)互いに取り付けられてもよい。
【0018】
本体110は、スロット120を画定している。スロット120は、スロット120内に(
図1に示す)アーチワイヤ70を取り外し可能に受け入れて保持するように構成することができる。具体的に、スロット120は、スロット120がアーチワイヤ70を取り外し可能に内部に保持できるように、本体110の両側端から開放している。
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、本体110のキャップ部分112は、スロット120を少なくとも部分的に画定することができる。スロット120は、挿入部分122及び受入部分124を含む。
【0019】
挿入部分122は、開放端123を有する。挿入部分122は、開放端123から第1の軸170に沿って延びている。
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、第1の軸170は、Y軸と実質的に揃えられている。したがって、挿入部分122は、開放端123から実質的にY軸に沿って延びている。挿入部分122は、開放端123を介して(
図1に示す)挿入部分122内にアーチワイヤ70を取り外し可能に受け入れるように構成されている。
【0020】
受入部分124は、開放端123から間隔を空けている。いくつかの実施形態では、受入部分124は、第1の軸170に沿ってある距離だけ開放端123から間隔を空けることができる。受入部分124は、挿入部分122に連通している。言い換えれば、(
図1に示す)アーチワイヤ70は、スロット120の挿入部分122と受入部分124との間で移動可能であり得る。受入部分124は、第1の軸170に対して(
図2Bに示す)傾斜角αで傾斜した第2の軸180に沿って延びている。
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、第2の軸180は、Z軸と実質的に揃えられている。したがって、受入部分124は、実質的にZ軸に沿って延びている。
【0021】
さらに、
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、傾斜角αは約90度である。したがって、スロット120は、第1の軸170及び第2の軸180によって形成される平面に沿って略「L」字形状を有してもよい。言い換えれば、スロット120は、Y-Z平面に沿って略「L」字形状を有してもよい。しかし、いくつかの他の実施形態では、傾斜角αは、約70度~約110度である。
【0022】
いくつかの他の実施形態では、第1の軸170及び第2の軸180は、カーブしていてもよい。そのような実施形態では、第1の軸170と第2の軸180との交点における第1の軸170に対する接線と第2の軸180に対する接線とが、傾斜角αを画定している。さらに、そのような実施形態では、傾斜角αは、約50度~約130度の範囲であってもよい。
【0023】
歯科矯正装具100は、ロック部材140をさらに含む。言い換えれば、少なくとも1つの歯科矯正装具100は、ロック部材140をさらに含む。ロック部材140については、
図3Aをさらに参照して詳細に後述する。
【0024】
図3Aは、歯科矯正装具100の斜視図を示す。
図3Aでは、本体110のキャップ部分112は、破線によって透明に示されている。
図3Bは、キャップ部分112及びロック部材140のそれぞれが取り外された状態における歯科矯正装具100の斜視図を示す。
【0025】
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bを参照すると、本体110は、開口部130をさらに画定している。開口部130は、スロット120の挿入部分122に連通している。
図2Bに示すように、開口部130は、スロット120の受入部分124から間隔を空けている。開口部130は、第2の軸180に沿って受入部分124から間隔を空けることができる。開口部130は、
図2Bに破線で示されている。
【0026】
さらに、
図2Bに示すように、いくつかの実施形態では、開口部130の幅130Wが、挿入部分122の幅122Wに等しい。いくつかの実施形態では、開口部130の幅130Wは、挿入部分122の幅122W以下である。開口部130の幅130W及び挿入部分122の幅122Wは、第2の軸180に沿っていてもよい。
図2Bに示す実施形態では、第2の軸180は、Z軸と実質的に揃えられている。したがって、開口部130の幅130W及び挿入部分122の幅122Wは、実質的にZ軸に沿っていてもよい。
【0027】
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bに示す実施形態では、開口部130は、スロット120の挿入部分122の近位に(
図3Bに示す)第1の端131を有する。第1の端131は、幅131Wを有する。開口部130は、第1の端131とは反対側の(
図3Bに示す)第2の端133をさらに有する。第2の端133は幅133Wを有する。第1の端131の幅131W及び第2の端133の幅133Wは、それぞれ、第1の軸170及び第2の軸180のそれぞれに直交する軸に沿っていてもよい。
図3Bに示す実施形態では、第1の端131の幅131W及び第2の端133の幅133Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、開口部130は、スロット120の挿入部分122からテーパ状になっている。具体的に、開口部130は、挿入部分122に隣接する第1の端131から第2の端133に向けてテーパ状になっている。
図3Bに示すように、いくつかの実施形態では、開口部130は、対向する一対の第1の部分130Aと、対向する一対の第2の部分130Bと、対向する一対の第3の部分130Cと、対向する一対の第4の部分130Dとを含むことができる。開口部130は、異なる部分130A、130B、130C、130Dに対応する、異なる幅をX軸に沿って有してもよい。開口部130の第1の部分130Aは、それらの間の第1の平均幅を画定している。開口部130の第2の部分130Bは、それらの間の第2の平均幅を画定している。開口部130の第3の部分130Cは、それらの間の第3の平均幅を画定している。開口部130の第4の部分130Dは、それらの間の第4の平均幅を画定している。いくつかの実施形態では、
図3Bに示すように、X軸に沿った開口部130の幅が、開口部130の第1の端131から開口部130の第2の端133まで単調に減少してもよい。いくつかの実施形態では、第1の部分130Aの間の第1の平均幅、第2の部分130Bの間の第2の平均幅、及び第3の部分130Cの間の第3の平均幅は、それぞれ、X軸に沿って、第2の部分130Bの間の第2の平均幅、第3の部分130Cの間の第3の平均幅及び第4の部分130Dの間の第4の平均幅よりも大きくてもよい。具体的に、第1の部分130Aの間の第1の平均幅は、第2の部分130Bの間の第2の平均幅よりも大きい。さらに、第2の部分130Bの間の第2の平均幅は、第3の部分130Cの間の第3の平均幅よりも大きい。さらに、第3の部分130Cの間の第3の平均幅は、第4の部分130Dの間の第4の平均幅よりも大きい。
【0029】
いくつかの実施形態では、開口部130の第1の部分130A、第2の部分130B、第3の部分130C及び第4の部分130Dのそれぞれは、異なるテーパ勾配を有してもよい。
図3Bに示す実施形態では、第1の部分130Aのそれぞれは、第1のテーパ勾配を有する。第2の部分130Bのそれぞれは、第2のテーパ勾配を有する。第1のテーパ勾配は、第2のテーパ勾配よりも大きい。同様に、第3の部分130Cのそれぞれは、第3のテーパ勾配を有し、第4の部分130Dのそれぞれは、第4のテーパ勾配を有する。第2の部分130Bの第2のテーパ勾配は、第3の部分130Cの第3のテーパ勾配よりも大きく、第3の部分130Cの第3のテーパ勾配は、第4の部分130Dの第4のテーパ勾配よりも大きい。
【0030】
しかし、開口部130は、所望の適用属性に応じて異なる構成を有してもよい。いくつかの実施形態では、開口部130の構成は、ロック部材140に依存してもよい。
【0031】
ロック部材140は、開口部130内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられる。すなわち、ロック部材140は、(
図2B及び
図3Aに示す)ロック状態141と(
図4Bに示す)ロック解除状態143との間で少なくとも第1の軸170に沿って移動可能である。
図2B及び
図3Aに示すように、ロック部材140は、通常はロック状態141に付勢されており、ロック解除状態143に移動可能である。ロック部材140は、ロック状態141において、スロット120の挿入部分122内に少なくとも部分的に延びる。ロック部材140は、ロック状態141において、スロット120の受入部分124内に(
図4Dに示す)アーチワイヤ70を「ブロックする」又は取り外し可能に保持することができる。さらに、(
図4Bに示す)ロック解除状態143において、ロック部材140は、第1の軸170に沿ってロック状態141から開口部130内に変位される。いくつかの実施形態では、ロック部材140は、ロック状態141及びロック解除状態143のそれぞれにおいて本体110に係合する。具体的に、ロック部材140は、ロック状態141及びロック解除状態143のそれぞれにおいて、本体110のキャップ部分112の表面に係合することができる。したがって、ロック部材140は、(
図1に示す)アーチワイヤ70によって加えられる圧縮力のみを受けることができる。言い換えれば、ロック部材140は、アーチワイヤ70によって加えられる曲げ力を受けることがない。それゆえ、ロック部材140は、歯科矯正装具100の使用中に偶発的に変形することがなく、したがって、アーチワイヤ70の強固なロックをもたらすことができる。
【0032】
図2A及び
図2B~
図3A及び
図3Bに示す実施形態では、ロック部材140は、V字形クリップを含む。具体的に、ロック部材140は、互いに接続された一対の弾性アーム145を含む。いくつかの実施形態では、弾性アーム145は、ロック部材140に付勢力をもたらすことができる。弾性アームによってもたらされる付勢力は、通常はロック部材140をロック状態141に付勢することができる。各弾性アーム145は、ロック状態141において、スロット120の挿入部分122内に少なくとも部分的に延びる。
図2Bに示すように、いくつかの実施形態では、各弾性アーム145の最大厚さ145Tが、スロット120の挿入部分122の幅122W以下である。いくつかの実施形態では、最大厚さ145T及び幅122Wは、第2の軸180に沿っていてもよい。したがって、各弾性アーム145の最大厚さ145T及び挿入部分122の幅122Wは、実質的にZ軸に沿っていてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ロック部材140は、アイレット142を画定している。
図2A及び
図3Aに示すように、いくつかの実施形態では、本体110は、空洞114をさらに画定している。具体的に、本体110のキャップ部分112は、空洞114を画定している。空洞114は、ロック部材140のロック状態141において、アイレット142に連通して配置されている。さらに、
図2A~
図3Bに示す実施形態では、アイレット142は、第2の端133の近位で開口部130の外側に配置される。いくつかの実施形態では、アイレット142の(
図3Aに示す)最大幅142Wが、開口部130の第2の端133の幅133Wよりも大きい。
図3Aに示す実施形態では、最大幅142W及び幅133Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0034】
ロック部材140は、ロック部材140が開口部130内に受け入れられると、歯科矯正装具100に固定することができる。言い換えれば、ロック部材140は、歯科矯正装具100から誤って取り外されることがない。具体的に、アイレット142の最大幅142Wが、開口部130の第2の端133の幅133Wよりも大きいので、ロック部材140を、歯科矯正装具100に固定することができる。したがって、アイレット142は、ロック部材140が第1の端131を通って開口部130から摺動可能に取り外されることを防止することができる。言い換えれば、アイレット142は、ロック部材140が第2の端133から第1の端131の方向に沿って開口部130から摺動可能に取り外されることを防止することができる。さらに、開口部130の第2の端133の幅133Wは、アイレット142の最大幅142Wに依存してもよい。具体的に、第2の端133の幅133Wは、ロック部材140の材料の弾性限界内でアイレット142を変形させることにより、アイレット142を開口部130の第1の端131を通って第1の軸170に沿って挿入可能であるように、調整することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ロック部材140は、超弾性金属を含む。例えば、ロック部材140は、形状記憶合金を含むことができる。好適な形状記憶合金の例としては、チタン及びその合金、ニッケルチタン合金(NiTi)、銅ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、熱処理ステンレス鋼などを挙げることができるが、これらに限定されない。しかし、いくつかの他の実施形態では、ロック部材140は、プラスチック、シリコーン、及び弾性材料と金属との様々な組み合わせなどの弾性材料を含んでもよい。
【0036】
歯科矯正装具100の組み立て中、アイレット142は、アイレット142の最大幅142Wが開口部130の第2の端133の幅133Wよりも小さくなるように、圧縮することができる。圧縮後、ロック部材140は、開口部130内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れられ得る。具体的に、アイレット142は、アイレット142が開口部130の第2の端133の近位で開口部130の外側に配置されるように、開口部130の第1の端131を介して挿入することができる。
【0037】
NiTiを含むロック部材140の実施形態では、アイレット142の圧縮は、ロック部材140を冷却してNiTiを軟化させることによって支援することができる。さらに、ロック部材140を開口部130内に少なくとも部分的にかつ移動可能に受け入れた後、NiTiの温度は、動作温度まで上昇することができ、アイレット142の最大幅142Wは、開口部130の第2の端133の幅133Wよりも大きくなり得る。同様に、(
図4Cに示す)ロック解除状態143におけるロック部材140の弾性アーム145の合計最大幅が、開口部130の第2の端133の幅133Wよりも大きくなり得る。したがって、弾性アーム145は、ロック部材140が第2の端133を通って開口部130から摺動可能に取り外されることを防止することができる。言い換えれば、弾性アーム145は、ロック部材140が第1の端131から第2の端133の方向に沿って開口部130から摺動可能に取り外されることを防止することができる。したがって、ロック部材140が歯科矯正装具100内に受け入れられると、ロック部材140は、歯科矯正装具100から誤って取り外されることがない。具体的に、ロック部材140が開口部130内に受け入れられると、ロック部材140は、歯科矯正装具100から誤って取り外されることがない。
【0038】
図4A~
図4Dは、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具100を示す。具体的に、
図4A~
図4Dは、本開示の実施形態による、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具100と共に使用するための様々なステップを示す。より具体的に、
図4A~
図4Cは、歯科矯正装具100の受入部分124内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するための様々なステップを示す。本体110のキャップ部分112は、説明のために
図4A~
図4Cには示されていない。
【0039】
図4A及び
図4Dを参照すると、ロック部材140は、通常はロック状態141に付勢されている。
図4Aに示すように、ロック部材140は、ロック状態141において、スロット120の挿入部分122内に少なくとも部分的に延びる。具体的に、
図4A~
図4Cに示す実施形態では、各弾性アーム145は、ロック状態141において、スロット120の挿入部分122内に少なくとも部分的に延びる。挿入部分122は、開放端123を介して挿入部分122内にアーチワイヤ70を取り外し可能に受け入れるように構成されている。言い換えれば、アーチワイヤ70は、挿入部分122の開放端123を介して挿入することができる。
【0040】
図4Bに示すように、スロット120の挿入部分122へのアーチワイヤ70の挿入中、アーチワイヤ70によって外力F1が加えられる。しかし、いくつかの他の実施形態では、外力F1は、他の手段によって(例えば、アイレット142を引き下げることによって)加えられてもよい。いくつかの実施形態では、外力F1は、実質的に第1の軸170に沿うことができる。
図4Aに示す実施形態では、第1の軸170は、Y軸と実質的に揃えられている。したがって、外力F1は、実質的にY軸に沿うことができる。外力F1は、アーチワイヤ70を介してロック部材140に加えることができる。
【0041】
外力F1が加えられると、ロック部材140は、挿入部分122と受入部分124との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にするためにロック解除状態143に移動可能である。外力F1は、ロック部材140をロック解除状態143に移動させるのに十分な大きさを有してもよい。したがって、ロック部材140は、外力F1が加えられるとロック解除状態143に移動する。さらに、ロック解除状態143で、ロック部材140は、第1の軸170に沿って(
図4Aに示す)ロック状態141から開口部130内に変位される。
図4Bに示す実施形態では、ロック解除状態143において、各弾性アーム145は、開口部130内に少なくとも部分的に後退する。具体的に、外力F1が加えられると、ロック部材140は、ロック部材140の各弾性アーム145が第3の軸190に沿って弾性的に移動するように、開口部130に対して第1の軸170に沿って移動する。第3の軸190は、第1の軸170及び第2の軸180のそれぞれに実質的に直交している。
図4Bに示す実施形態では、第3の軸190は、X軸と実質的に揃えられている。したがって、ロック部材140の各弾性アーム145は、X軸に沿って弾性的に移動する。さらに、ロック部材140に外力F1を加えた後、ロック部材140に力E1を加えることができる。
【0042】
図4Cに示すように、スロット120の挿入部分122からスロット120の受入部分124にアーチワイヤ70を移動させるために、アーチワイヤ70に力E1を加えることができる。いくつかの実施形態では、力E1は、実質的に第2の軸180に沿うことができる。例えば、力E1は、歯科医によってアーチワイヤ70に加えることができる。
【0043】
図4Dに示すように、アーチワイヤ70は、スロット120の受入部分124に挿入される。スロット120の受入部分124にアーチワイヤ70を挿入することにより、アーチワイヤ70によってロック部材140に加えられる(
図4Bに示す)外力F1を除去することができる。外力F1が除去された後、ロック部材140は、ロック状態141に付勢され、スロット120の受入部分124内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持する。具体的に、外力F1が除去されると、ロック部材140は、スロット120の受入部分124内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するためにロック状態141に移動可能である。いくつかの実施形態では、外力F1が除去されると、ロック部材140は、(
図4Cに示す)ロック解除状態143に保持される。ロック部材140は、ロック部材140の弾性アーム145と本体110との間の摩擦により、ロック解除状態143に保持することができる。いくつかの実施形態では、ロック部材140は、本体110に切欠きなどを組み込むことにより、ロック解除状態143に保持することができる。したがって、摩擦力を克服し、ロック部材140をロック解除状態143からロック状態141に移動させるために、別の外力が必要になる場合がある。
【0044】
いくつかの他の実施形態では、外力F1が除去されると、ロック部材140は、スロット120の受入部分124内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するためにロック状態141に移動する。より具体的に、外力F1が除去されると、ロック部材140の弾性アーム145は、ロック状態141に移動するように付勢される。弾性アーム145は、スロット120の受入部分124内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持することができる。場合によっては、弾性アーム145は、スロット120の受入部分124からアーチワイヤ70が摺動可能に取り外されることを防止するために、ロック状態141においてアーチワイヤ70に係合してもよい。いくつかの実施形態では、挿入部分122内に延び、受入部分124に隣接する、ロック部材140の一部分が、面取りされ、面取りされた縁を有してもよい。面取りされた縁は、アーチワイヤ70の受入部分124への挿入及び受入部分124からの取り外しを容易にすることができる。
【0045】
図5A~
図5Dは、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具100を示す。具体的に、
図5A~
図5Dは、本開示の実施形態による、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具100と共に使用するための様々なステップを示す。より具体的に、
図5A~
図5Dは、歯科矯正装具100の受入部分124からアーチワイヤ70を取り外すための様々なステップを示す。本体110のキャップ部分112は、説明のために
図5A~
図5Cには示されていない。
【0046】
図5A及び
図5Dを参照すると、ロック部材140は、通常はロック状態141に付勢されている。
図5Aに示すように、ツール150が、アイレット142に少なくとも部分的に挿入される。いくつかの実施形態では、ツール150は、プローブを含むことができる。しかし、ツール150は、ロック部材140のアイレット142に少なくとも部分的に挿入されるのに適した少なくとも1つの端部を有する任意の歯科矯正ツールを含んでもよい。ロック部材140のアイレット142へのツール150の挿入は、(
図2Aに示す)キャップ部分112の空洞114の形状によって案内することができる。
【0047】
図5Bに示すように、空洞114を介してアイレット142に少なくとも部分的に挿入されるツール150によって外力F2が加えられる。上述したように、十分な大きさの外力(例えば、外力F2)が加えられると、ロック部材140は、挿入部分122と受入部分124との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にするためにロック解除状態143に移動可能である。図示の実施形態では、外力F2が加えられると、ロック部材140は、スロット120の挿入部分122と受入部分124との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にするためにロック解除状態143に移動可能である。したがって、ロック部材140は、ツール150によって外力F2が加えられると、ロック解除状態143に移動する。
図5B~
図5Cに示すように、ロック部材140は、ツール150によって外力F2を連続的に加えることによってロック解除状態143に保つことができる。
【0048】
図5Cに示すように、ロック部材140のロック解除状態143において、力E2が加えられることにより、スロット120の受入部分124から挿入部分122にアーチワイヤ70を移動させることができる。スロット120の受入部分124からスロット120の挿入部分122にアーチワイヤ70を移動させるために、アーチワイヤ70に力E2を加えることができる。いくつかの実施形態では、力E2は、第2の軸180に沿ってもよい。例えば、力E2は、アイレット142に挿入されたツール150によって外力F2を連続的に加えている間に、歯科医によってアーチワイヤ70に加えることができる。
【0049】
図5Dに示すように、アーチワイヤ70は、次いで、挿入部分122の開放端123を介してスロット120の挿入部分122から取り外すことができる。開放端123を介してアーチワイヤ70を取り外した後、ツール150をアイレット142から取り外すことができる。すなわち、ロック部材140から外力F2を除去することができる。ツール150によって加えられた外力F2が除去された後、ロック部材140は、(
図3Aに示すように)ロック状態141に付勢される。
【0050】
図6は、キャップ部分112が取り外された歯科矯正装具100の正面図を示す。上述したように、開口部130は、スロット120の挿入部分122からテーパ状になっている。開口部130のテーパが、中心軸160に関して実質的に対称であり得る。いくつかの実施形態では、中心軸160は、(
図3Aに示す)第1の軸170に実質的に沿うことができる。開口部130の平均テーパが、テーパ軸162によって示される。
【0051】
開口部130及びロック部材140の設計は、様々な設計パラメータに依存してもよい。設計パラメータは、ロック部材140と本体110との間の摩擦係数μを含むことができる。設計パラメータは、開口部130の開き角θをさらに含むことができる。開き角θは、半分の角度であってもよい。開き角θは、中心軸160とテーパ軸162との間で画定されてもよい。設計パラメータは、開口部130に対応する本体110の部分に対してロック部材140によって加えられるばね力FSをさらに含むことができる。
【0052】
図6を参照すると、ロック部材140は、ロック解除状態143で示されている。ロック部材140の弾性アーム145は、開口部130に対応する本体110の部分に対してばね力FSを加える。開き角θが0度~90度の範囲である場合、弾性アーム145によって本体110に加えられる垂直力FNを、以下の式で計算することができる。
FN=FS*cosθ
【0053】
テーパ軸162に沿って弾性アーム145によってもたらされる持ち上げ力FLを、以下の式で計算することができる。
FL=FS*sinθ
【0054】
持ち上げ力FLに抗して加えられる摩擦力FF、及びロック解除状態143からロック状態141へのロック部材140の移動を、以下の式で計算することができる。
FF=μ*FN
【0055】
したがって、弾性アーム145によってもたらされる有効力Feffを、以下の式で計算することができる。
Feff=FL-FF
【0056】
上記の式から持ち上げ力FL及び摩擦力FFの式を代入すると、以下のようになる。
Feff=(FS*sinθ)-μ*(FS*cosθ)
【0057】
弾性アーム145によってもたらされる有効力Feffは、ロック部材140を(
図4Cに示す)ロック状態141に付勢することを可能にするために、正である必要がある。すなわち、持ち上げ力FLは、摩擦力FFよりも大きい(FL>FF)必要がある。
【0058】
さらに、ばね力FSに起因して弾性アーム145によってもたらされる垂直力FVを、以下の式で計算することができる。
FV=Feff*cosθ
【0059】
上記の式から有効力Feffの式を代入すると、以下のようになる。
FV=FS*(sinθ-μ*cosθ)*cosθ
【0060】
上述したように、有効力Feffは、(垂直力Fvが正であるために)正である必要がある。したがって、
(Fs*sinθ)≧(μ*Fs*cosθ)
であり、これは、
sinθ≧μ*cosθ
又は、
tanθ≧μ
を意味する。
【0061】
したがって、ロック部材140の材料を、上記の式を満たすように、摩擦係数μに従って選択することができる。さらに、第3の軸190に沿った開口部130の幅は、開き角θを調整するために調整することができる。摩擦係数μの増加に伴い、開き角θを増加させる必要がある場合があり、すなわち、開口部130の第1の端131の(
図3Bに示す)幅131Wを増加させる必要がある場合がある。
【0062】
図7A及び
図7Bは、ロック部材140なしで本体110の斜視図を示す。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、本体110は、第1の表面115と、第1の表面115に対向する第2の表面116とをさらに有する。第2の表面116は、本体110のキャップ部分112に画定されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の表面115及び第2の表面116は、それらの間にスロット120の挿入部分122を少なくとも部分的に画定している。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第1の軸170に沿った第1の表面115の最大長さ115Lが、第1の軸170に沿った第2の表面116の最大長さ116Lよりも小さい。
【0063】
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、本体110は、第3の表面117、第4の表面118、及び第5の表面119をさらに有する。第3の表面117は、第1の表面115に隣接し、第1の表面115に対して傾斜して配置される。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第3の表面117は、第1の表面115に対して約90度で傾斜している。しかし、いくつかの実施形態では、第3の表面117は、第1の表面115に対して約70度~約110度で傾斜していてもよい。第4の表面118は、第2の表面116に隣接し、第2の表面116に対して傾斜して配置される。第4の表面118は、第3の表面117に対向して配置される。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第4の表面118は、第2の表面116に対して約90度で傾斜している。しかし、いくつかの実施形態では、第4の表面118は、第2の表面116に対して約70度~約110度で傾斜していてもよい。
【0064】
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第2の軸180に沿った第3の表面117の最大長さ117Lが、第2の軸180に沿った第4の表面118の最大長さ118Lよりも小さい。
【0065】
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、開口部130は、第4の表面118から延びている。具体的に、開口部130は、第4の表面118から第1の軸170に沿って延びている。
【0066】
さらに、
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第5の表面119は、第3の表面117と第4の表面118との間に延びている。いくつかの実施形態では、第3の表面117、第4の表面118及び第5の表面119は、それらの間にスロット120の受入部分124を少なくとも部分的に画定している。
図7A及び
図7Bに示す実施形態では、第1の軸170に沿った第5の表面119の最大長さ119Lが、第1の軸170に沿った第2の表面116の最大長さ116Lよりも小さい。いくつかの実施形態では、
図7A及び
図7Bに示すように、第1の表面115、第2の表面116、第3の表面117及び第4の表面118のそれぞれは、実質的に平面状である。
【0067】
図8A及び
図8Bは、本開示の別の実施形態による歯科矯正装具200を示す。
図8A及び
図8Bに示す歯科矯正装具200は、
図2A~
図7Bに示す歯科矯正装具100の構造及び機能と実質的に同様の1つ以上の構造及び機能を有する。しかし、歯科矯正装具200は、(
図1に示す)アーチワイヤ70のロック及びロック解除に関して、歯科矯正装具100とは異なる構成を有する。
【0068】
歯科矯正装具200は、歯科矯正装具100の本体110とは異なる構成を有する本体210を含む。具体的に、本体210は、本体110の(
図2A及び
図3Aに示す)空洞114を含まない。より具体的に、本体210の(破線によって透明に示されている)キャップ部分212が、空洞114を含まない。
【0069】
本体210は、本体110の(
図2B及び
図3Aに示す)スロット120と実質的に同様のスロット220を画定している。したがって、スロット220は、歯科矯正装具100のスロット120の挿入部分122及び受入部分124とそれぞれ実質的に同様の挿入部分222及び受入部分224を画定している。さらに、挿入部分222は、挿入部分122の開放端123と実質的に同様の開放端223を有する。
【0070】
本体210は、本体110の開口部130の機能と同様の機能を有する開口部230をさらに画定している。しかし、開口部230は、本体110の開口部130とは異なる構成を有する。
図8A及び
図8Bに示す実施形態では、本体210はさらに、開口部230の両端に配置された一対のアパーチャ213を画定している。
【0071】
図8Aに示すように、歯科矯正装具200は、ロック部材240を含む。
図8Cは、ロック部材240を示す。
図8A及び
図8Cを参照すると、ロック部材240は、開口部230内に移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れられる細長い部分242を含む。いくつかの実施形態では、細長い部分242は、円形断面を有してもよい。いくつかの実施形態では、細長い部分242は、多角形、楕円形、卵形、長方形、又は正方形の断面を有してもよい。いくつかの実施形態では、ロック部材240は、細長い部分242に接続された頭部244をさらに含む。頭部244は、スロット220の挿入部分222の遠位に配置されている。いくつかの実施形態では、ロック部材240は、T字形であってもよい。
【0072】
図8A及び
図8Cに示す実施形態では、細長い部分242は、細長い部分242を通る孔246をさらに画定している。言い換えれば、孔246は、貫通孔である。いくつかの実施形態では、孔246は、
図8Cに示すように実質的に円形であってもよい。いくつかの他の実施形態では、孔246は、任意の好適な形状、例えば、限定されないが、多角形、楕円形、卵形などを有してもよい。
【0073】
ロック部材240は、ロック状態241と(
図9Bに示す)ロック解除状態243との間で少なくとも第1の軸170に沿って移動可能である。さらに、ロック部材240は、ロック状態241において、スロット220の挿入部分222内に少なくとも部分的に延びる。
図8Aに示す実施形態では、細長い部分242は、ロック状態241において、スロット220の挿入部分222内に少なくとも部分的に延びる。
【0074】
図8Aに示す実施形態では、歯科矯正装具200は、開口部230内に少なくとも部分的に受け入れられる付勢部材245をさらに含む。さらに、付勢部材245は、細長い部分242の孔246内に少なくとも部分的に受け入れられる。付勢部材245は、通常はロック部材240をロック状態241に付勢するように構成されている。いくつかの実施形態では、付勢部材245は、超弾性金属を含む。例えば、付勢部材245は、形状記憶合金を含むことができる。好適な形状記憶合金の例としては、チタン及びその合金、ニッケルチタン合金、銅ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、熱処理ステンレス鋼などを挙げることができるが、これらに限定されない。しかし、いくつかの他の実施形態では、付勢部材245は、通常はロック部材240をロック状態241に付勢することができる任意の材料を含んでもよい。
図8Aに示す実施形態では、付勢部材245は、弾性バーである。いくつかの実施形態では、弾性バーは、細長い部分242の孔246を介して受け入れられる。いくつかの実施形態では、弾性バーは、本体210の各アパーチャ213内に少なくとも部分的に受け入れられる。したがって、弾性バーは、アパーチャ213を介して本体210に取り付けることができる。
【0075】
図8A及び
図8Bに示す実施形態では、開口部230は、スロット220の挿入部分222に連通する第1の部分232を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分232は、実質的に均一な幅232Wを有する。第1の部分232の幅232Wは、第3の軸190に沿っていてもよい。言い換えれば、第1の部分232の幅232Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、開口部230は、第1の部分232に隣接して配置された第2の部分234をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の部分234は、第1の部分232から離れるようにテーパ状になる。さらに、本体210の各アパーチャ213は、弾性バーが開口部230の第2の部分234内に少なくとも部分的に受け入れられるように、第2の部分234に連通する。いくつかの実施形態では、第2の部分234は、最大幅234Wを有する。第2の部分234の最大幅234Wは、第3の軸190に沿っていてもよい。言い換えれば、第2の部分234の最大幅234Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、開口部230は、第1の部分232とは反対側で第2の部分234に隣接して配置された第3の部分236をさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の部分236は、実質的に均一な幅236Wを有する。第3の部分236の幅236Wは、第3の軸190に沿っていてもよい。言い換えれば、第3の部分236の幅236Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0078】
図8A及び
図8Bに示すように、第2の部分234の最大幅234Wは、第1の部分232及び第3の部分236のそれぞれの幅232W、236Wよりも大きい。さらに、第1の部分232、第2の部分234、及び第3の部分236のそれぞれは、細長い部分242を少なくとも部分的に受け入れる。
【0079】
図9A~
図9Dは、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具200を示す。具体的に、
図9A図9Dは、本開示の実施形態による、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具200と共に使用するための様々なステップを示す。より具体的に、
図9A~
図9Dは、歯科矯正装具200の受入部分224内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するための様々なステップを示す。本体210のキャップ部分212は、説明のために
図9A~
図9Dには示されていない。
【0080】
図9A及び
図9Dを参照すると、ロック部材240は、通常はロック状態241に付勢されている。
図9Aに示すように、ロック部材240は、ロック状態241において、スロット220の挿入部分222内に少なくとも部分的に延びる。具体的に、細長い部分242は、ロック状態241において、スロット220の挿入部分222内に少なくとも部分的に延びる。挿入部分222は、開放端223を介して挿入部分222内にアーチワイヤ70を取り外し可能に受け入れるように構成されている。言い換えれば、アーチワイヤ70は、挿入部分222の開放端223を介して挿入することができる。
【0081】
図9Bに示すように、スロット220の挿入部分222へのアーチワイヤ70の挿入中、アーチワイヤ70によって外力F3が加えられる。しかし、いくつかの他の実施形態では、外力F3は、他の手段によって加えられてもよい。例えば、外力F3は、ロック部材240の頭部244を把持することによって加えられてもよい。頭部244は、フォークなどのツールによって把持することができる。いくつかの実施形態では、外力F3は、実質的に第1の軸170に沿うことができる。
図9Bに示す実施形態では、第1の軸170は、Y軸と実質的に揃えられている。したがって、外力F3は、実質的にY軸に沿うことができる。外力F3は、アーチワイヤ70を介してロック部材240に加えることができる。
【0082】
外力F3が加えられると、ロック部材240は、挿入部分222と受入部分224との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にするためにロック解除状態243に移動可能である。
図9Bに示すように、ロック部材240は、外力F3が加えられるとロック解除状態243に移動する。具体的に、
図9Bに示す実施形態では、ロック解除状態243において、細長い部分242は、開口部230内に少なくとも部分的に後退する。
【0083】
図9Cに示すように、スロット220の挿入部分222からスロット220の受入部分224にアーチワイヤ70を移動させるために、アーチワイヤ70に力P1を加えることができる。いくつかの実施形態では、力P1は、第2の軸180に沿ってもよい。例えば、力P1は、歯科医によってアーチワイヤ70に加えることができる。
【0084】
図9Dに示すように、アーチワイヤ70は、スロット220の受入部分224に挿入される。スロット220の受入部分224にアーチワイヤ70を挿入することにより、アーチワイヤ70によって加えられた(
図9Bに示す)外力F3をロック部材240から除去することができる。
図9Dに示すように、外力F3が除去された後、ロック部材240は、ロック状態241に付勢され、スロット220の受入部分224内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持する。具体的に、
図9Cに示す実施形態では、外力F3が除去されると、細長い部分242は、スロット220の挿入部分222内に少なくとも部分的に延び、スロット220の受入部分224内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持する。いくつかの実施形態では、ロック状態241において、挿入部分222内に延び、受入部分224に隣接する、ロック部材240の一部分が、受入部分224へのアーチワイヤ70の挿入を容易にするために、面取りされた縁を有してもよい。
【0085】
アーチワイヤ70を受入部分224から取り外すためのステップは、
図5A~
図5Dを参照して説明した、歯科矯正装具100の受入部分124からアーチワイヤ70を取り外すためのステップと同様であってもよい。しかし、外力F3は、頭部244に加えられる。すなわち、外力F3は、ツール、例えばフォークによって頭部244に加えることができる。
【0086】
図10A及び
図10Bは、本開示の別の実施形態による歯科矯正装具300を示す。歯科矯正装具300は、
図2A~
図7Bに示す歯科矯正装具100及び
図8A~
図9Cに示す歯科矯正装具200の構造及び機能と実質的に同様の1つ以上の構造及び機能を有する。しかし、歯科矯正装具300は、(
図1に示す)アーチワイヤ70のロック及びロック解除に関して、歯科矯正装具100及び歯科矯正装具200とは異なる構成を有する。
【0087】
歯科矯正装具300は、歯科矯正装具100の本体110とは異なる構成を有する本体310を含む。具体的に、本体310は、本体110の(
図2A及び
図3Aに示す)空洞114を含まない。
【0088】
本体310は、本体110の(
図2B及び
図3Aに示す)スロット120と実質的に同様のスロット320を画定している。したがって、スロット320は、歯科矯正装具100のスロット120の挿入部分122及び受入部分124とそれぞれ実質的に同様の挿入部分322及び受入部分324を画定している。さらに、挿入部分322は、挿入部分122の開放端123と実質的に同様の開放端323を有する。
【0089】
本体310は、歯科矯正装具100の本体110の開口部130の機能と同様の機能を有する開口部330をさらに画定している。しかし、歯科矯正装具300の開口部330は、歯科矯正装具100の開口部130とは異なる構成を有する。
【0090】
図10Aに示すように、歯科矯正装具300は、歯科矯正装具200のロック部材240と実質的に同様のロック部材340を含む。具体的に、ロック部材340は、ロック部材240の細長い部分242及び頭部244とそれぞれ同様の細長い部分342及び頭部344を含む。さらに、ロック部材340は、ロック部材240のロック状態241及びロック解除状態243とそれぞれ同様のロック状態341及び(
図11Bに示す)ロック解除状態343を有する。しかし、ロック部材340は、ロック部材240の孔246を画定していなくてもよい。
図10Aに示す実施形態では、ロック部材340は、尾部348をさらに含む。いくつかの実施形態では、尾部348は、細長い部分342に接続され、ロック部材340の頭部344の遠位に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、尾部348の最大幅348Wが、細長い部分342の最大幅342Wよりも大きくてもよい。尾部348の最大幅348W及び細長い部分342の最大幅342Wは、実質的にX軸に沿っていてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、歯科矯正装具300は、開口部330に隣接して、スロット320の挿入部分322の遠位に配置された、支持部材314をさらに含む。
図10A及び
図10Bに示す実施形態では、支持部材314は、ワッシャである。
図10A及び
図10Bに示す実施形態では、支持部材314は、その中を通る孔314Hを含む。いくつかの実施形態では、孔314Hの最大幅314Wが、細長い部分342の最大幅342Wよりも大きい。
図10A及び
図10Bに示す実施形態では、孔314Hの最大幅314Wは、実質的にX軸に沿っている。さらに、孔314Hの最大幅314Wは、尾部348の最大幅348Wよりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、支持部材314は、溶接、接着剤、ろう付け、機械的締結具などの任意の好適な方法によって本体310に固定して結合される。本体310のキャップ部分(図示せず)が本体310とは別個に形成されるいくつかの実施形態では、支持部材314は、本体310と一体的に形成することができる。いくつかの実施形態では、支持部材314は、ロック部材340の細長い部分342が支持部材314の孔314H内に少なくとも部分的に受け入れられた後に組み立てられる2つ以上の部品から構成される。
【0092】
図10A及び
図10Bに示す実施形態では、本体310は、開口部330に隣接して、スロット320の挿入部分322の近位に配置された、支持面316をさらに有する。支持面316は、開口部330内に延びている肩部であってもよい。
【0093】
歯科矯正装具300は、歯科矯正装具200の付勢部材245とは異なる付勢部材345をさらに含む。
図10A及び
図10Bに示す実施形態では、付勢部材345は、コイルばねである。コイルばねは、支持部材314と支持面316との間に支持される。コイルばねは、通常はロック状態341において、ロック部材340をスロット320の挿入部分322内に付勢することができる。具体的に、コイルばねは、通常はロック状態341において、細長い部分342をスロット320の挿入部分322内に付勢することができる。
図10Aに示す実施形態では、コイルばねは、通常はロック状態341において、尾部348をスロット320の挿入部分322内に付勢することができる。
【0094】
図11A~
図11Dは、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具300を示す。具体的に、
図11A~
図11Dは、本開示の実施形態による、アーチワイヤ70及び歯科矯正装具300と共に使用するための様々なステップを示す。より具体的に、
図11A~
図11Dは、歯科矯正装具300の受入部分324内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するための様々なステップを示す。
【0095】
図11A及び
図11Dを参照すると、ロック部材340は、通常はロック状態341に付勢されている。
図11Aに示すように、ロック部材340は、ロック状態341において、スロット320の挿入部分322内に少なくとも部分的に延びる。具体的に、細長い部分342は、ロック状態341において、スロット320の挿入部分322内に少なくとも部分的に延びる。具体的に、コイルばねは、通常はロック状態341において、尾部348をスロット320の挿入部分322内に付勢することができる。挿入部分322は、開放端323を介して挿入部分322内にアーチワイヤ70を取り外し可能に受け入れるように構成されている。言い換えれば、アーチワイヤ70は、挿入部分322の開放端323を介して挿入することができる。
【0096】
図11Bに示すように、スロット320の挿入部分322へのアーチワイヤ70の挿入中、アーチワイヤ70によって外力F4が加えられる。しかし、いくつかの他の実施形態では、外力F4は、他の手段によって加えられてもよい。例えば、外力F4は、ロック部材340の頭部344を把持することによって加えられてもよい。頭部244は、フォークなどのツールによって把持することができる。いくつかの実施形態では、外力F4は、実質的に第1の軸170に沿うことができる。
図11Bに示す実施形態では、第1の軸170は、Y軸と実質的に揃えられている。したがって、外力F4は、実質的にY軸に沿うことができる。外力F4は、アーチワイヤ70を介してロック部材340に加えることができる。
【0097】
外力F4が加えられると、ロック部材340は、挿入部分322と受入部分324との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にするためにロック解除状態343に移動可能である。
図11Bに示すように、ロック部材340は、外力F3が加えられるとロック解除状態343に移動する。具体的に、細長い部分342は、ロック解除状態343において、開口部330内に少なくとも部分的に後退する。より具体的に、
図11Bに示す実施形態では、外力F4が加えられると、コイルばねは圧縮し、ロック部材340の尾部348は、開口部330内に少なくとも部分的に後退する。上述したように、ロック部材340は、ロック解除状態343において、挿入部分322と受入部分324との間でのアーチワイヤ70の移動を可能にすることができる。
【0098】
図11Cに示すように、スロット320の挿入部分322からスロット320の受入部分324にアーチワイヤ70を移動させるために、アーチワイヤ70に力G1を加えることができる。いくつかの実施形態では、力G1は、第2の軸180に沿ってもよい。例えば、力G1は、歯科医によってアーチワイヤ70に加えることができる。
【0099】
図11Dに示すように、アーチワイヤ70は、スロット320の受入部分324に挿入される。スロット320の受入部分324にアーチワイヤ70を挿入することにより、アーチワイヤ70によって加えられる(
図11Bに示す)外力F4をロック部材340から除去することができる。
図11Dに示すように、外力F4が除去された後、ロック部材340は、ロック状態341に付勢され、スロット320の受入部分324内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持する。具体的に、
図11Cに示す実施形態では、外力F4が除去されると、細長い部分342は、スロット320の挿入部分322内に少なくとも部分的に延び、スロット320の受入部分324内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持する。いくつかの実施形態では、ロック状態341において、挿入部分322内に延び、受入部分324に隣接する、ロック部材340の一部分が、受入部分324内へのアーチワイヤ70の挿入を容易にするために、面取りされた縁を有してもよい。
【0100】
アーチワイヤ70を受入部分324から取り外すためのステップは、
図5A~
図5Dを参照して説明した、歯科矯正装具100の受入部分124からアーチワイヤ70を取り外すためのステップと同様であってもよい。しかし、外力F4は、頭部344に加えられる。すなわち、外力F4は、ツール、例えばフォークによって頭部344に加えることができる。
【0101】
図12は、(
図4A~
図4D、
図5A~
図5D、
図9A~
図9D、及び
図11A~
図11Dに示す)アーチワイヤ70及び歯科矯正装具100、200、300と共に使用するための方法400を示すフローチャートを示す。歯科矯正装具100、200、300は、第1の軸170に沿って延びているそれぞれの挿入部分122、222、322と、第1の軸170に対して傾斜した第2の軸180に沿って延びているそれぞれの受入部分124、224、324とを含む、それぞれのスロット120、220、320を含む。方法400について、
図1A~
図10Bを参照して説明する。方法400は、以下のステップを含む。
【0102】
ステップ410で、方法400は、ロック部材140、240、340が通常はロック状態141、241、341に付勢されるように、歯科矯正装具100、200、300の開口部130、230、330内にロック部材140、240、340を移動可能に、かつ少なくとも部分的に受け入れることを含む。ロック部材140、240、340は、ロック状態141、241、341において、スロット120、220、320の挿入部分122、222、322内に少なくとも部分的に延びる。
【0103】
図3Aに示すように、いくつかの実施形態では、歯科矯正装具100の開口部130内にロック部材140を移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れることは、ロック部材140の一対の弾性アーム145を開口部130内に移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れることをさらに含む。
【0104】
図9A及び
図10Aに示すように、いくつかの実施形態では、歯科矯正装具200、300の開口部230、330内にロック部材240、340を移動可能にかつ少なくとも部分的に受け入れることは、ロック部材240、340の細長い部分242、342を開口部230、330内に移動可能に、かつ少なくとも部分的に受け入れることをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法400は、付勢部材245、345によってロック部材240、340をロック状態241、341に付勢することをさらに含む。
【0105】
方法400は、ステップ420で、アーチワイヤ70がロック部材140、240、340に係合し、第1の軸170に沿ってロック状態141、241、341から開口部130、230、330内にロック部材140、240、340を移動させるように、スロット120、220、320の挿入部分122、222、322にアーチワイヤ70を挿入することを含む。
【0106】
図5A~
図5Bに示すように、いくつかの実施形態では、方法400は、各弾性アーム145が第3の軸190に沿って弾性的に移動するように、ロック部材140の弾性アーム145を開口部130に対して第1の軸170に沿って移動させることをさらに含む。上述したように、第3の軸190は、第1の軸170及び第2の軸180のそれぞれに実質的に直交している。
【0107】
方法400は、ステップ430で、ロック部材140、240、340が、ロック状態141、241、341に付勢され、スロット120、220、320の受入部分124、224、324内にアーチワイヤ70を取り外し可能に保持するように、スロット120、220、320の受入部分124、224、324にアーチワイヤ70を挿入することを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、方法400は、開口部130、230、330内にロック部材140、240、340を少なくとも部分的に後退させるように、第1の軸170に沿ってロック状態141、241、341からロック解除状態143、243、343にロック部材140、240、340を移動させることをさらに含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、
図5A~
図5Cに示すように、ロック部材140は、ツール150によってロック状態141からロック解除状態143に移動する。
【0110】
いくつかの他の実施形態では、ロック部材240、340は、ロック部材240、340の頭部244、344を把持することにより、ロック状態241、341からロック解除状態243、343に移動する。
【0111】
いくつかの実施形態では、方法400は、第2の軸180に沿って受入部分124、224、324から挿入部分122、222、322にアーチワイヤ70を移動させることをさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、方法400は、アーチワイヤ70を挿入部分122、222、322から取り外すことをさらに含む。
【0113】
本開示の歯科矯正装具100、200、300及び方法400は、歯科矯正装具100、200、300のそれぞれに対するアーチワイヤ70のツールなし結紮を可能にすることができる。具体的に、追加のツールを必要とせずに、アーチワイヤ70を、挿入部分122、222、322の開放端123、223、323を介して挿入し、スロット120、220、320の受入部分124、224、324内に取り外し可能に保持することができる。したがって、歯科矯正装具100、200、300は、歯科治療中の患者のチェアタイムを短縮することができる。さらに、歯科矯正装具100、200、300は、ロック部材140、240、340がアーチワイヤ70を歯科矯正装具100、200、300に確実に固定するため、頑丈な設計を有してもよい。したがって、歯科矯正装具100、200、300を故障しにくくすることができる。さらに、挿入部分122、222、322及び受入部分124、224、324を含むスロット120、220、320と、通常はロック状態141、241、341に付勢されるロック部材140、240、340との組み合わせは、本開示の歯科矯正装具100、200、300が、従来の自己結紮式ブラケットと比較して、より単純な設計及びより小さなプロファイルを有することを可能にし得る。したがって、歯科矯正装具100、200、300は、プロファイルの小さな歯科矯正装具を必要とする歯科矯正治療に好適であり得る。本開示のロック部材140、240、340は、アーチワイヤ70による曲げ荷重を受けることがなく、危険ではない圧縮荷重のみを受けることができる。したがって、ロック部材140、240、340は、アーチワイヤ70の頑丈なロックをもたらすことができる。
【0114】
本明細書に提示される構成は、本明細書の開示の範囲内にありながらも、任意の数の態様で変更され得ることが理解されるであろう。
【0115】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0116】
特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【国際調査報告】