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特表2024-505275電力発生および/または電力貯蔵装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電力発生および/または電力貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/14 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
F03B13/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547032
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 GB2022050249
(87)【国際公開番号】W WO2022162394
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2101376.8
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523291329
【氏名又は名称】ヴァーダーグ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ピーター
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA04
3H074BB10
3H074CC08
3H074CC11
3H074CC21
(57)【要約】
浮体フライホイールを含む電力発生および/または電力貯蔵装置であって、フライホイールが、使用時に、実質的に垂直な軸を中心とした回転のために液体域と接触するようになされ、フライホイールの下側が、円周方向に延びる開口を含み、使用時に、前記フライホイールを支持するための気体クッションを画定するように液体の表面によって開口内に気体が閉じ込められる、電力発生および/または電力貯蔵装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体フライホイールを含む電力発生および/または電力貯蔵装置であって、前記フライホイールが、使用時に、実質的に垂直な軸を中心とした回転のために液体域と接触するようになされ、前記フライホイールの下側が、円周方向に延びる開口を含み、使用時に、前記フライホイールを支持するための気体クッションを画定するように前記液体の表面によって前記開口内に気体が閉じ込められる、電力発生および/または電力貯蔵装置。
【請求項2】
前記円周方向の開口が、前記フライホイールの全周に実質的に連続して延びている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フライホイールが実質的に円環である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
気密性であって前記円環の中央を閉鎖するカバーを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記カバーが、セル状であってもよい円板か、または鋼、コンクリート、ガラス強化プラスチックまたは気密性繊維を含み得る外殻によって閉鎖されたフレームを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記カバーが前記開口を閉鎖する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記フライホイールが、使用時に前記フライホイールから垂れ下がる1対の間隔を空けて配置された円周壁を含み、前記開口が前記壁の間に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記円周壁のうちの一方が外周壁である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記フライホイールが、使用時に前記フライホイールから垂れ下がる単一の円周壁を含み、前記開口が前記円周壁によって設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記円周壁が、前記フライホイールの外周に設けられるか、または前記フライホイールの前記外周の半径方向内側に間隔を空けて配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記円周壁が、使用時に、前記液体の表面に侵入する、請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記円周壁が、使用時に、実質的に垂直に垂れ下がる、請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記開口が、前記壁と前記壁がそこから垂れ下がるデッキとによって完全にまたは部分的に閉鎖され、前記デッキが、使用時に、前記液体の前記表面と実質的に平行である、請求項7から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記フライホイールがセル状構造を有する、請求項1から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
請求項6から13のいずれかに従属する場合、前記デッキ、前記円周壁および前記カバーのうちの1つまたは複数あるいは全部がセル状構造を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
1つまたは複数のバルブを含むバラストシステムをさらに含み、前記バラストシステムが、前記セルの前記液体の注入と排出とを制御するようになされている、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記バラストシステムが、前記セルに前記液体をポンプ注入するため、および/または前記セルから水をポンプ排出するためのポンプをさらに含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記開口に空気を供給するための1つまたは複数のコンプレッサを含む、請求項1から17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記フライホイールに取り付けられた1つまたは複数のセイルを含む、請求項1から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記セイルが、前記フライホイールの実質的に全周に延びている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記セイルが剛体または可撓性である、請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
前記フライホイールが回転するにつれて、風向を基準にして前記セイルの向きを変更するために制御システムが設けられている、請求項19から21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記セイルがマストに取り付けられ、前記マストが自立しているか、または前記マスト間に延びる支持物によって支持され、前記支持物が索具を含んでもよく、前記セイルと前記索具とが平らに置かれることができるようになされてもよい、請求項19から22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
2つ以上の半径方向に間隔を空けて配置された、円周方向に延びる前記セイルの配列が設けられている、請求項19から23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記フライホイールが1500メートル以上の直径を有する、請求項1から24のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力発生および/または電力貯蔵装置に関し、具体的には、浮体フライホイールを使用したそのようなシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電のために化石燃料から脱却してより環境に優しい代替手段へと向かう、広く公にされた長期的構想が世界的に広まっている。風力、太陽光などの再生可能エネルギー源には、化石燃料への依存を減らす明らかな可能性がある。他の要因もあるが特に気候変動問題により、両方の技術がますます配備されるようになっている。太陽光発電と風力エネルギーは両方とも、出力が断続的である。これらの供給源の変動性は、エネルギーの大部分をこれらの発生源から得る電力網の信頼性に関する当然の問題を生じさせる。特に再生可能エネルギー源への依存が増大するにつれて、エネルギー貯蔵が、進展するエネルギーシステムの根幹をなすことになるものと広く理解されている。
【0003】
揚水水力発電エネルギー貯蔵、バッテリー、圧縮空気エネルギー貯蔵およびフライホイールを含む、電気エネルギー貯蔵のいくつかの方法が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、改良型エネルギー発生および/またはエネルギー貯蔵装置の提供に関する研究の結果としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、浮体フライホイールを含む電力発生および/または電力貯蔵装置であって、フライホイールが、使用時に、実質的に垂直な軸を中心にした回転のために液体域と接触するようになされ、フライホイールの下側が実質的に円周方向に延びる開口を含み、使用時に、フライホイールを支持するための気体クッションを画定するように液体の表面によって開口内に気体が閉じ込められる、電力発生および/または電力貯蔵装置を提供する。
【0006】
このような構成により、フライホイールは、使用時に気体のクッションの表面上に浮かぶようになされる。フライホイールの液体域との接触が、気体クッションに流体シールを与える。液体域は、海または湖などの開放水域であるか、または適切なトラフまたはその他を含み得る。開口は、気体クッションが液体域の表面によって支持されるように、液体域に対向してもよく、または、気体クッションが支持面によって支持されるように液体域以外の支持面に対向してもよい。さらなる構成では、開口は、水域と、水域以外の支持面の両方に対向してもよい。構成を問わず、フライホイールは液体域との接触により縦揺れと横揺れにおいて安定化される。液体域との接触は、好ましくは1つまたは複数の円周垂下壁を介し、その場合、安定化は1つまたは複数の円周垂下壁の液体域への変位によって起こる。
【0007】
気体は、最も好ましくは空気である。液体は、最も好ましくは水である。開口は、フライホイールの全周に実質的に連続して延びている。
【0008】
この構成によると、フライホイールは、1つまたは複数の気体クッション、最も好ましくは空気クッション上で支持されている。気体クッションは、摩擦力を低減する役割を果たす。また、開放水域設置の場合は、波浪によって誘起される動きが実質的に低減される。気体クッションの量とフライホイールの喫水は、より多くの気体を注入することによって維持または回復可能である。これは、エアコンプレッサを使用して行われてもよい。
【0009】
前述のように、気体は空気には限らないが、簡単にするために、以下の説明では空気クッションを設けることに焦点を合わせることとする。しかし、当業者には容易にわかるように、空気以外の気体を使用するように、記載されている構成のいずれも適切に変更可能であることを理解されたい。
【0010】
実施形態は、垂直軸を中心に回転することによって機械エネルギーを貯蔵する大型浮体水平フライホイールを提供する。このフライホイールは、回転機械エネルギーとして、自然発生風力エネルギーを貯蔵および/または他所から取り込まれる変換電気エネルギーを貯蔵するように機能することができる。このような機械エネルギーは、必要に応じて電気エネルギーに実質的に再変換可能であり、ケーブルによってエンドユーザに配給可能である。あるいは、この電気は、他の目的に使用することができる。たとえば、このエネルギーは、電気分解によって水素を生成するために装置上でまたは装置に隣接して使用することができ、次に、パイプラインでエンドユーザまで、必要であれば別途のパイプラインで副産物の酸素とともに、送配することができる。
【0011】
自然発生風力エネルギーの場合、フライホイールは取り付けられた複数のセイルを備えることができる。
【0012】
きわめて大型のフライホイールを含む実施形態は、ギガワット級のエネルギーを貯蔵、発生および送配する潜在能力を有する。
【0013】
1つまたは複数の実施形態によると、装置は、開放水域の沖合に設置され、海底に係留することができる。他の実施形態では、装置は水域沿岸陸上の円形トラフ内またはその他に浮かぶことができる。
【0014】
好ましい構成では、開放水域での設置の場合、フライホイールの全体寸法は、入射波長と比較して、フライホイールの縦揺れと横揺れの動きが入射波から実質的に切り離されて最小限に維持されるのに十分に大きくすることができる。この切り離しを実現するための固有最小全体寸法は、たとえば、典型的な波スペクトルが優勢である開放水域では約1500メートルとすることができる。
【0015】
実質的なジャイロ安定化が、性能にとっても有利である様々な実施形態の特徴である。
【0016】
フライホイールは、実質的に円環状とすることができる。フライホイールは、気密性で円環の中央を閉鎖するカバーを含み得る。カバーは、セル状とすることができる円板を含むことができ、または鋼、コンクリート、ガラス強化プラスチックまたは気密性繊維とすることができる外殻によって閉鎖されたフレームを含むことができる。カバーは開口を閉鎖することができる。
【0017】
フライホイールは、どのような形態でも、使用時にフライホイールから垂れ下がる1対の間隔を空けて配置された円周壁を含むことができ、その場合、開口は壁の間に設けられる。円周壁の一方が外周壁であってもよく、または両方の壁がフライホイールの外周の半径方向内側に間隔を空けて配置されてもよい。あるいは、フライホイールは、使用時にフライホイールから垂れ下がる単一の円周壁を含んでもよく、その場合、開口は円周壁によって設けられる。円周壁は、フライホイールの外周に設けられてもよく、またはフライホイールの外周の半径方向内側に間隔を空けて配置されてもよい。円周壁は、好ましくは、使用時に実質的に垂直に垂れ下がる。円周壁は、好ましくは、使用時に液体の表面に侵入する。このような侵入は、液体の表面上でフライホイールを支持する水没面を与えることになる。前述のように、液体域中への円周壁の変位によって、縦揺れと横揺れにおける安定化が得られる。
【0018】
洋上のこのような実施形態における回転する水没面と周囲の水との表面摩擦が、環流を生じさせることになる。これは、利用可能なさらなるエネルギー貯蔵能力をさらに提供することができ、回転する水没面と水との間の相対速度の低下の結果として表面摩擦を低減する役割を果たすことになる。
【0019】
入射波のエネルギーの大部分が壁の下を通り、空気クッションの下側を画定する低下した水面を通って伝播し、次にその後の壁の下を通って開放水域に戻り、それによって入射波の力を低減することになるため、様々な実施形態による装置は波に対して半透過的となる。このようにして波がフライホイールの下を通るとき、空気クッションにおける波頭によって押しのけられた空気が、構造体にかかる空気圧の変化が実質的にゼロの状態で単純に波の谷の中に移動する。これは、フライホイールが空気クッションによって支持されているが表面を貫通する要素/壁によって安定化させられている半潜水機構であるかのような、流体静力学的および流体力学的な挙動をし、それによって浮力と安定性を切り離すという観察によって特徴づけることができる。
【0020】
空気クッションの存在と、支持体として機能する表面貫通要素の浮力によって生じる最小の曲げモーメントとが、比較的軽量の構造の採用を可能にする。
【0021】
フライホイールは、鋼またはコンクリートなどであるが他の材料を排除しない、任意の適切な材料で形成することができる。好ましい実施形態は、ポストテンションコンクリートで形成される。
【0022】
フライホイールは、区画化/セル状構造を特徴とすることができ、それによって、区画/セルは水をバラストさせることができる。セルをバラストすることにより、フライホイールの極二次慣性モーメントを増大させ、それによっていずれの角速度についてもエネルギー貯蔵能力を増大させることができる。
【0023】
バラストされたセル内の水は、相当な遠心圧力を受けることがあり、その場合、電気エネルギーを再生するために水を接線方向に排水することができる。ある実施形態では、適切な数のセルを浸水しないままにすることによって、および/または、空気クッションの円周方向の区画化を設けることによって、損傷安定性の向上が得られる。
【0024】
流体シールは、セグメント化された迷路を含み得る。迷路は、各セルがフライホイール1から垂れ下がった下垂壁と、下垂壁に対して反対側に突出する対向壁とによって形成された複数の連結セルによって形成可能である。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、他所から取り込まれた電気エネルギーを、固定設備とフライホイールとの界面においてフライホイールによる貯蔵のために固定設備によって回転機械エネルギーに可逆的に変換することができ、フライホイールはその回転機械エネルギーによって回転させられる。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、他所から取り込まれた電気エネルギーは、フライホイールに伝導させることができ、そこで、フライホイールによる貯蔵のためにフライホイール上にある設備によって回転機械エネルギーに可逆的に変換可能であり、フライホイールはその回転機械エネルギーによって回転させられる。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、フライホイールに取り付けられた設備が、風力エネルギーをフライホイールによる貯蔵のために直接回転機械エネルギーに変換することができ、フライホイールはその回転機械エネルギーによって回転させられる。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、フライホイールに取り付けられた設備が、周囲の水からの回転流体力学エネルギーを、フライホイールによる貯蔵のための回転機械エネルギーに直接、可逆的に変換し、フライホイールはその回転機械エネルギーによって回転させられる。
【0029】
また、好ましい特徴が従属クレームに示されている。
【0030】
以下、本発明の実施形態について、非限定的な実施例としてのみ、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の構成によるエネルギー電力貯蔵装置を示す平面図と断面立図である。
図2図1の線A-Aで切り取られた図1の装置のフライホイールの拡大部分断面図である。
図3図2の視点面AおよびBを詳細に示す図である。
図4】フライホイールの拡大部分断面図とともに、エネルギー取り込み/送出構成を示す図である。
図5図5は、さらなるエネルギー取り込み/送出構成を示す図である。
図6図6は、さらなるエネルギー取り込み/送出構成を示す図である。
図7図7は、異なるバラスティングおよび係留構成を開示する図である。
図8図8は、異なるバラスティングおよび係留構成を開示する図である。
図9図9は、異なるバラスティングおよび係留構成を開示する図である。
図10図10A図10Bおよび図10Cは、3つの異なるフライホイール構成の断面図である。
図11図11Aおよび図11Bは、異なるオンショア構成を示す図である。
図12図12Aおよび図12Bは、異なるセイル構成を示す図である。
図13図13は、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図14図14は、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図15図15Aおよび図15Bは、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図16図16は、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図17図17は、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図18図18A図18Bおよび図18Cは、図12Aおよび図12Bのセイル構成の異なる構成を開示する図である。
図19図19は、典型的な損傷安定性強化構成を開示する図である。
図20図20は、典型的な損傷安定性強化構成を開示する図である。
図21】好ましい最適化フライホイール構成を示す断面立図である。
図22図21のフライホイールを示す平面図である。
図23図12Aおよび図12Bの好ましい最適化構成Cを示す図である。
図24】好ましいシーリング構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般には、本発明の実施形態は、新規な浮体フライホイールを含む電力発生および/または電力貯蔵のための装置を提供する。
【0033】
本明細書全体を通してフライホイールの時計回り回転を想定しているが、当業者には容易にわかるように、反時計回り回転も受容可能であることに留意されたい。
【0034】
図1に、第1の実施形態による電力発生および/または電力貯蔵装置を示す。装置は円環状のフライホイール1を含む。
【0035】
フライホイール1は浮力があり、使用時に、フライホイールの下側が液体の表面に対向した状態で液体域の表面と接触するようになされる。フライホイールは、実質的に垂直の軸を中心にして回転するようになされる。下側は、円周方向に延びる開口2を含む。使用時、液体の表面によって開口内に気体が閉じ込められる。これにより、フライホイール1に支持を与える役割を果たし、前述のように大幅に低減された回転摩擦を与える気体クッションが提供される。この構成では、好ましくは、円周方向の開口がフライホイール1の全周に実質的に連続して延びる。あるいは、以下で詳述するように、複数の別個の区分を含んでもよい。
【0036】
この構成では、フライホイールは、使用時にフライホイール1から垂れ下がる1対の間隔を空けて配置された円周壁3、4を含み、断面図A-Aにおいて明らかにわかるように、開口は壁の間に設けられる。この構成では、壁の間にデッキ5が延び、開口2の上側を閉鎖する。デッキは、開口内に気体を閉じ込めるように閉じられる。
【0037】
図のように、壁は使用時に好ましくは垂直に垂れ下がる。壁3、4は使用時に液体の表面を貫通し、壁3、4はそれによってフライホイール1のための支持面を画定する。
【0038】
このような構成により、フライホイールは使用時に開口2内に閉じ込められた気体のクッションの表面上に浮かぶようになされる。フライホイールの液体域との接触が、壁3、4を通して、気体クッションにシールを与える。フライホイール1は、壁3、4の液体域中への変位による液体域との接触によって、縦揺れと横揺れにおいて安定する。開口2は液体域に対向する。たとえば図11および図24に関して後述するもののようなオンショア構成では、開口2は代わりに地面またはプラットフォームなどの固体支持面に対向してもよい。
【0039】
この構成のフライホイール1は、深さZと、デッキ幅Xと、内径Yとを有する。当業者にはわかるように、これらの寸法のいずれかを増大させると、フライホイール1の極二次慣性モーメントが増大し、それによっていかなる角速度においてもそのエネルギー貯蔵能力が増大する。
【0040】
図1を参照すると、ある例示の非限定的な外部電気エネルギー取り込みおよび送配設備6が示されている。図1の実施形態は、以下の各段落で説明するようにこれらの設備の存在または形態には限定されず、当業者にはわかるように、様々な代替構成が実装可能であることに留意されたい。
【0041】
典型的なエネルギー発生モジュールは、フライホイールが回転するときにグローバル座標において静止したままとなる。エネルギー発生モジュールとフライホイールとの間の相対運動が、エネルギー発生モジュールの内面に支持され、フライホイールの外面にもたれかかる発電機/モーターに連結された車輪付きボギーなどであるがこれには限定されない任意の適切な従来の手段によって、電気を発生するために、または回転機械エネルギーを増大させるために使用される。あるいは、エネルギー発生モジュールの内面上の発電コイルまたはパワーコイルに対向されるフライホイール外周の励磁コイルまたは永久磁石の列が、文脈の要求に応じて発電機またはモーターを形成することができる。さらなる好ましい代替形態は、空気クッションの深度低減、垂下壁寸法の縮小、および摩擦損失の低減を生じさせる空気クッション上で支えられる総重量の一部または全部を引き受けることに加えて、回転機械エネルギーとして貯蔵される取り込み電気エネルギーを変換し、その逆も行う二重目的を果たす、円環状磁気浮上軌道である。当業者には多くの適切な構成が容易に想到されるであろうし、本発明はこれに関して限定されないものとする。
【0042】
エネルギー発生モジュールは、自由な相対的円周方向の移動と、フライホイールがエネルギー発生モジュールを載せながら垂直方向に移動する自由とを可能にするように、たとえば、適切な車輪付きボギーまたは軸受上のフライホイールの外周のレールまたはレッジによって支持することができる。
【0043】
あるいは、電力が送配のためにフライホイール上で発生させられるか、またはフライホイール上で回転機械エネルギーに変換するためにフライホイールに取り込まれる場合、必要に応じて、当業者には容易にわかるように、エネルギー発生モジュールは、電気をフライホイールに送るかまたはフライホイールから送るために、単にスリップリング、パンタグラフ、またはその他の従来型装置を保持することができる。
【0044】
選択されるエネルギー発生モジュールは、一部の例示の構成では、オフショア浮体構造物の従来の方式でケーブルおよび/またはチェーンからなる係留脚の上端も保持する。このような場合、フライホイールを所定位置に保持し、付随するエネルギー発生モジュールをグローバル位置に維持するとともに、所望の垂直範囲にわたってフライホイールの自由な垂直移動を可能にするために、円周方向に設けられた3対以上の係留脚対があってもよい。
【0045】
代替構成では、エネルギー発生モジュールまたは組み込みモジュールが、係留脚対を保持しなくてもよい。モジュールは、たとえば、当業者にはわかるように、適切なモジュールコネクタによってグローバル位置に維持されてもよい。
【0046】
図1に示すもののような組み込みモジュールは、好ましくは、エネルギー発生モジュールと電力管理設備も含む多重処理モジュールである。組み込みモジュールは、たとえば水素と酸素とを発生するための電気分解設備を含むがこれには限定されない追加設備を含んでもよい。組み込みモジュールは、さらに、たとえば宿泊施設を提供してもよい。
【0047】
一部の構成では、組み込みモジュールは、フライホイールに隣接する固定構造体上に位置してもよく、その場合、エネルギー発生モジュールは、フライホイール上に別個に取り付けられ、それによって発生した電気エネルギーが組み込みモジュールに送られることになることに留意されたい。たとえば、電気エネルギーは1つまたは複数の懸垂ケーブルまたはその他により送られてもよい。懸垂ケーブルの場合、付近の円周方向の場所における目的の組み込みモジュールに達する前に、まずモジュールコネクタから吊り下げられてもよい。
【0048】
図2に、フライホイールの例示の構成であるが好ましい構成を示す。デッキ幅Xが、図1の線A-Aで切り取られた拡大部分断面図に示されている。
【0049】
上述のように、フライホイールを支持する役割を果たす空気クッションを設けることができるように、開口2が設けられている。開放水域で使用される場合、空気クッションは、フライホイールの下をわずかしか減衰せずに通過して伝播する入射波からフライホイールの縦揺れおよび横揺れ反応を切り離して入射波の力をさらに軽減することになる。
【0050】
上述のように、フライホイールはセル状構造を有することが好ましい。セル状構造を設けることによって、材料の量(およびコスト)を削減することができるとともに、バラスティングによって質量を変化させることができるようにする。壁またはデッキのいずれも、フライホイールの円周方向に均一な質量分布を保つ任意の組合せでバラストすることができることに留意されたい。
【0051】
フライホイール1のエネルギー貯蔵能力は、その質量、したがってその極二次慣性モーメントを増大させることによって強化することができる。セル状構造により、セル7に水をバラストすることによって質量を増大させることができる。これは、フライホイールの質量を変化させ、それによって必要に応じてそのエネルギー貯蔵能力と回転の角速度とを管理する経済的な解決策を与える。
【0052】
この構成におけるように、各セルは、フライホイール全体の流体静力学安定性に与える満杯でないセルの自由表面効果を最小限にするように、半径方向と円周方向の両方の壁によって境界が区切られていることが(必須でないが)好ましい。好ましい運用実施では、自由表面効果を最小限にするために、バラストされたセルの大多数がいっぱいに押圧される。
【0053】
注目すべきことに、フライホイール構造全体の下の均一な空気圧は、実現されると図2に示す断面において形成される曲げモーメントを低減する役割を果たすことになり、それによって、デッキ構造においてきわめて経済的な薄壁設計を採用することを可能にする。
【0054】
必要に応じて、セルの選択的バラスティングを可能にするために、バラストシステムが設けられてもよい。バラストシステムは、複数のバルブ8を含み、好ましくはポンプ9をさらに含む。バラストシステムは、セル7の水の制御された注水と排水を可能にする。
【0055】
図2に、例示のために、バラストされたセル(網掛けされている)と無水セルの両方を有する構成を示す。
【0056】
この例示の構成では、セル7は、注水マニホールド10によって給水され、排水マニホールド11によって排水され、好ましくは遠隔作動されるバルブ8によって制御される。本発明は、このような例示の構成には限定される必要はない。たとえば、代替構成はマニホールドを省いてもよい。マニホールド10、11を含むこの構成では、それぞれ注水マニホールド10と排水マニホールド11とに接続された、注水口12と排水口13が設けられる。注水口12と排水口13は、好ましくは、バラスティングとデバラスティングの両方がフライホイールの回転によって補助されるような向きとされる。バラストシステムは、このようにしてポンプ9を使用せずに実装されることも可能である。しかし、図のように1つまたは複数のポンプが備えられることが好ましい。
【0057】
ポンプは、特に使用時に注水マニホールドが注水口の上方のレベルにあるとき、またはフライホイールがシステムに自動的に呼び水するには不十分な速さで回転している場合に、バラスティングを有用に補助することになる。
【0058】
1つまたは複数のポンプの導入は、特定の例示の構成において、特にポンプがポンプとタービンの両方として機能するように構成される場合に、さらに実用性向上を可能にする。
【0059】
取り込まれた電気エネルギーが電動式ボギーにより上記で例示したような使用によってエネルギー発生モジュールにおいて機械エネルギーに変換される好ましい構成において、または、エネルギー発生モジュールが固定子を形成した状態でフライホイールの外周が電気モーター/発電機のローターとして機能する場合、このようにして変換された回転機械エネルギーがこの境界面においてフライホイールに直接加えられ、それによってその角速度を増す。あるいは、一定した角速度を維持することが望まれる場合は、典型的には目標接線速度をその設定点に維持するために、フライホイールの角慣性モーメントを対応する量だけ増大させるように、たとえば追加のバラストが搭載されてもよい。貯蔵回転機械エネルギーから電気エネルギーを再生する場合は、この逆が適用される。
【0060】
フライホイールにおいて電気エネルギーが、フライホイールによって貯蔵されている回転運動エネルギーから変換される場合、別の好ましい選択肢は、電気エネルギーを発生するために、遠心圧力下でバラストされたセル7からバルブ8を通って排水マニホールド11内に入り、次に、タービンとして機能するポンプ9を通るか、または1つまたは複数の別個のタービンを通る流れを可能にすることである。
【0061】
逆に、外部発生源、たとえばウィンドファームまたはその他からの電気エネルギーが、フライホイール1において電気エネルギーからフライホイール1によって貯蔵される回転運動エネルギーに変換されるようにフライホイール1に取り込まれる場合、この変換の1つの好ましい選択肢は、取り込まれた電気エネルギーが、高エネルギー水を排水口を通して排水するためのジェットポンプとして機能するポンプ9に給電し、フライホイール1の角速度を増して、それによって貯蔵される回転運動エネルギーの量を増大させる、フライホイール1上の接線力を生じさせることである。このようにして排水口から排水される水は、バラストされたセル7からバルブ8を通って排水マニホールド11まで引き込まれてもよく、それによってさらに極二次慣性モーメントを減少させて、接線速度が目標値に向かって上昇する速度を加速するのを助ける。
【0062】
あるいは、排水口13から排水される水は、遠心圧力下で排水マニホールド11を通って注水口12から直接、マニホールドの排水マニホールド(図示せず)に交差接続された部分を通り、次に、接線速度を増すように、取り込まれた電気エネルギーによってポンプ駆動タービンとして機能するポンプ9を通り、回転機械エネルギーとして貯蔵されてもよい。
【0063】
上述の各構成は、一方または他方が機能することができるように適切なマニホールドに装着可能な別個のポンプ兼タービンを使用して実現されてもよいことに留意されたい。
【0064】
本明細書で説明されている原理によるフライホイールは比較的平坦な性能曲線を示し、「往復」エネルギー貯蔵および回収効率が実際の角回転速度にある程度耐えることを示しているが、どのような特定の設計においても、目標接線速度と、対応する角回転速度があることが予想される。上述の例示の構成またはその他によるバラスト構成を設けることにより、フライホイールは、第1に、変換と回転運動エネルギーとしての貯蔵のための電気エネルギーを受け入れるときにバラストを取り込み、第2に、フライホイールの回転運動エネルギーから電気エネルギーを発生する逆の文脈ではバラストを排出する能力を提供することになる。これは、フライホイールの極二次慣性モーメントが貯蔵エネルギーの変化量を補償するように変動するように、フライホイールの総質量を変動させることを可能にし、一定した接線速度を保持することができ、それによってピーク動作効率を維持し、さらに性能曲線を有用に平坦化する。
【0065】
フライホイール1は、図2に例として示すように、任意によりドラッグ部材14を備えることができる。ドラッグ部材14の形態は特に限定される必要はない。ドラッグ部材14はプレートを含むことができる。ドラッグ部材の使用は、フライホイールが開放水域に配置される場合に特に注目される。このようなドラッグ部材14は、フライホイール1の外周の規則的な点に設置されてもよい。ドラッグ部材14は、好ましくは格納式に取り付けられてもよく、その場合、必要に応じて開かれ、使用しないときにはフライホイール1の外周と面一に格納することができる。ドラッグ部材14は、このような目的のために旋回可能に取り付けられてもよい。多くの適切な取り付け構成が、当業者には容易にわかるであろう。図3の視点面Aに、完全に展開された例示のドラッグプレート14の側面立図を示し、ドラッグプレート14を格納可能な凹部15も示す。
【0066】
前述のように、空気クッションの1つの機能は、濡れ面積を最小限にすることによってフライホイール1と水との表面摩擦を制限することである。接線速度を低下させ、濡れ面とともに水をある程度引きずり回すことによって付近の水を循環させるように働く、いくらかの摩擦が残ることになる。ドラッグ部材14を設けることにより、この循環水の運動エネルギーの一部を回収することができる。循環水の速度プロファイルは、フライホイールから離れる方向に半径が大きくなるにつれて低下するが、その平面視における有効サイズは、エネルギーが増大するにつれて時間の経過とともに半径方向外側に増大し続けることになり、フライホイールの周囲に環流を形成する。このような環流は、かなりゆっくりと自然減衰するきわめて効率的な回転運動エネルギー貯蔵先である。
【0067】
この環流がフライホイール1からのエネルギーを吸収し、サイズが大きくなるにつれて、フライホイール1の外側濡れ面との界面付近において環流の接線速度も増して、環流とフライホイール1との間の相対速度を低下させ、両者の間の剪断力を低下させ、それによって環流に失われるエネルギー損失を自己限定することにも留意されたい。
【0068】
このような文脈において、ドラッグ部材14は以下のような2つの機能を果たすことができる。
【0069】
第1に、たとえば何らかの予定外のメンテナンスまたはその他のためにフライホイール1を可能な限り迅速に停止することが必要になった場合、貯蔵エネルギーを放散させる必要がある。これが電気エネルギーを変換するための発電システムの能力を超える場合、またはエネルギー送配設備の送出または消費能力を超える場合、増大した抗力を受け、それによって回転速度を遅くするように、ドラッグ部材14を採用することができる。このような抗力は、ドラッグ部材14の付近に、エネルギーが熱として永久に失われる乱流を生じさせることになる。しかし、この抗力は、損失エネルギーの一部が貯蔵されることになる環流のサイズと運動エネルギーも大きくする。
【0070】
第2に、ほとんどまたはまったく補充されずに長期の需要によって貯蔵エネルギーが大幅に消耗した場合、周囲の環流がフライホイール1よりも高速に回転している状況が発生する可能性がある。このような状況では、ドラッグ部材14を採用してフライホイール1にかかる環流の接線抗力を増すこと、すなわち、上記のプロセスとは逆のプロセスによって、フライホイールの貯蔵エネルギーの一部を有用に回収することができる。
【0071】
図3に、特に図2を参照しながら上述したような注水口12と排水口13の側面立図を示す。図の構成例では、注水口12は、流入を円滑にするように構成された鐘形口を備える。当業者には容易にわかるように、注水口は他の形態に構成されてもよい。注水口12と排水口13は両方とも、好ましくは抗力を最小限にするように図のように滑らかなナセルに収容されている。構成によっては、これらのナセルは格納式であってもよく、その場合、使用されないときにそれらを格納することで、抗力をさらに制限するためにフライホイールに円滑な円周面を残す。
【0072】
装置は、好ましくは、排水口13からの排水の流れの速度が変動し得るように構成される。ある構成例では、排水口13は、任意により、内径が徐々に大きくなる2つ以上の格納式の区分にセグメント化して、過度の乱流損失なしに排水口から出る流れを減速するためのドラフト管を形成することができる。図3に、そのような3つの区分を有する一例を示す。別の構成ではこのようでなくてもよい。具体的には、排水の速度を制御するために実装された代替手段があってもよい。
【0073】
上述のように、本発明の原理によるフライホイールは、一般に、最適化接線速度Vを含む最適性能点で、またはその付近で動作するように設計されることになる。そのような場合、フライホイール1を基準にした排水口13からの流れの排水速度は、流れが排水される隣接する水に対して相対的にほぼゼロに近い速度を有するように設定することができる。このような構成は、乱流損失を最小にするように機能することになる。しかし、フライホイール1がその最適設計点から離れる方向に動作している場合は、排出された流れと、排出された流れが過度の損失なしに混じることができる必要がある環流における水との速度不一致を低減またはなくすように、フライホイール1の回転角速度を加速させることが望ましい場合がある。
【0074】
図3の構成例を使用した速度制御について、以下でさらに詳細に考察する。
【0075】
フライホイールが接線速度Vの完全設計値に達したときに、排水口13からの排水と周囲の水との間の比較的高い相対速度が適切な場合がある。そのような場合、ナセルの最初の上流区分のみが採用されてもよく、排水口の出口直径は利用可能な最小直径となる。
【0076】
フライホイールがまだ低速で回転している始動時には、排水と周囲の水との速度不一致ははるかにより小さく、排水は、エネルギー損失を最小限にするように、周囲の水の中に出て行く前に、より長いドラフト管においてより減速できるようにすることが好ましいであろう。ここで、排水の速度と周囲の水の速度とをより近く一致させることによって乱流損失を最小にするために、たとえば(図3に示すように)3つの区分のすべてが採用されてもよい。
【0077】
さらに、中間の回転速度の場合には2つの区分のみを採用するのが適切な場合もある。
【0078】
上述のように、当業者には容易にわかるように、上記の制御を別法により実施して、排水の速度を制御する代替手段が実装されてもよいことに留意されたい。
【0079】
図2に、海底17を示す。水深がきわめて浅い場合、底部クリアランスが限られることになり、引き起こされた環流が侵食を生じさせる可能性がある。これは、据え付けの前にその領域の適切な岩石投棄によって回避することができる。
【0080】
間隔を空けて配置された円周垂下壁3、4を含むフライホイール1の任意の円環状構成において、壁は互いに実質的に同じであってもよく、または互いに異なっていてもよいことに留意されたい。壁は、内周壁4と外周壁3とを含むように構成可能である。内周壁と外周壁は、両方ともバラストされることができるようにセル7を含んでもよく、または、内周壁と外周壁のうちの一方のみがセルを含んでもよく、または、円周壁のいずれもセルを含まなくてもよい。内周壁と外周壁は同じ厚さを有してもよく、または互いに厚さが異なっていてもよい。例示の構成においてこれらの特徴の異なる組合せが備えられてもよい。
【0081】
図4に、外周壁3の厚さが内周壁4の厚さよりも厚い構成例を示す。両方の壁はバラストされる容量を有するが、上記の説明に沿って必ずしもそうでなくてもよい。
【0082】
外周壁3はフライホイールの最大全径にあり、したがってその水中での変位がフライホイールの流体静力学的縦揺れおよび横揺れ安定性の維持の主要な要因であるという理由で、外周壁3の方がより厚くされる。内周壁4は、流体静力学的安定性に対する二次的要因であり、外周壁の選択された厚さによって十分な流体静力学安定性がすでにより効率的に与えられている場合は、内周壁4の厚さは、主として十分な構造的強度をもたせるように選定されてよい。
【0083】
この場合もフライホイールのすべての円環状構成に適用可能な別個の考慮事項として、デッキ5の厚さと構成も異なり得る。厚さは、エネルギー貯蔵能力を効率的に増大させるために、その体積、したがってセル7内のバラスト水の質量を最大にするように設定することができる。注目すべきことに、空気クッションの利点として、デッキ、およびバラストがある場合はバラストの重量が均一に支持される。これにより、比較的軽量の構造を設けることが可能になる。空気クッションの均一な支持によって曲げモーメント応力が最小限にされる。これにより、そのような均一な支持がない構造と比較して、フライホイールの総コストの削減が可能になる。
【0084】
図4に示すフライホイール1の上記の特徴のみに関係するわけではないが、図4の構成は、次に詳述する送配システム6も例として開示している。このような構成は、本出願の他の箇所で説明されているものなど、別様に構成されたフライホイールを含む別の装置に組み込まれてもよいことに留意されたい。
【0085】
送配システム6は、電力管理システムが設置された組み込みモジュールを含む。これはたとえば、高圧直流ケーブルなどであるがこれには限定されない送電用の従来型ケーブルを含むことができる。さらに、組み込みモジュールにおいて電気エネルギーから任意により水素が生成される場合に水素を送配するための、鋼パイプラインなどであるがこれには限定されないパイプラインを含むことができる。
【0086】
このような種類のエネルギー送配システムは、図のように、電気ケーブルを取り付けることができる固定構造体から送配するのに適している。電気ケーブルは、たとえば、J管を通して引き上げることによって取り付けるか、または、その他により据え付け後に固定構造体の支持部または脚に取り付けることができる。パイプが設けられる場合、後でパイプラインに海底接続するために固定構造体にパイプラインライザーが設置されてもよい。あるいは(小径の場合)J管を通して引き上げられてもよい。
【0087】
図5Aに、固定構造体が存在しない構成を開示する。このような構成は、たとえば、エネルギー送配システムが、フライホイールから海底までの懸垂線で垂れ下がるのに十分な構造的完全性を有する可撓ケーブルまたは可撓パイプライン19の形態で設けられるのに十分な水深である場合に実装可能である。
【0088】
図5Bに、図4の詳細Bを示す。この構成例では、組み込みモジュール6は整備要員がアクセスするためのヘリデッキを備えることに留意されたい。ヘリデッキの装備は完全に任意によるものである。
【0089】
図6に、組み込みモジュール6が、エネルギー発生モジュールに係留された半潜水機構20上に配置されているさらなる代替形態を開示する。このような構成は、深海環境において有用な場合がある。このような構成では、半潜水機構のための支持手段を設けることが好ましいであろう。この図の構成例では、関節連結式係留フレーム21が備えられている。これは、半潜水機構に縦揺れ、横揺れおよびうねりの自由を与えるように構成されることが好ましい。さらに、整備要員および装置によるフライホイール1へのアクセス構成を提供するように構成されてもよい。本明細書で説明されている様々な代替構成で実装可能な、エネルギー発生モジュールのための任意による水平構成も示されていることに留意されたい。
【0090】
図7に、中央逆ナセル23を特徴とするフライホイール1を含むさらなる構成例を開示する。上述のエネルギーシステムのいずれも実装可能であり、この構成はこれに関して限定されない。中央ナセル23は、バラストを取り込む代替手段を提供する。このような構成では、ナセル23は、適切な半径方向に延びる流体搬送部材24を通してフライホイール構造体のセル7と流体連通していることが好ましい。この構成では、これらの流体搬送部材24はパイプを含む。パイプは、スポーク状とすることができる。ナセル23に流入する液体は、遠心圧力下でパイプを通って半径方向外側に流れることになる。上述のように、または他の方法により、デバラスティングが適切な排水口を通して行われてもよい。前述の構成のように、ポンプが設けられてもいなくてもよく、ポンプはタービンとしても機能することができるか、または別個のタービンに加えて設けられてもよい。
【0091】
一般的な点として、デバラスティング水の流出速度を上げるためにポンプ/タービンがいずれの構成からも省かれてもよい。このような構成は、簡略化された補機装着と表面摩擦低減とをもたらす。
【0092】
図8に、係留/支持脚25を備える構成例を示す。このような係留/支持脚25は、図のように中央スイベル27に取り付けることができる。これにかかわらず、これらは好ましくは、コンパクトな構成を実現するように、実質的にフライホイール1の計画フットプリント内の海底に配備される。
【0093】
図8は、必要に応じて上述の構成のいずれにでも設置可能であるが、特に搭載エネルギー発生のある構成に設置可能な、搭載モジュール26も開示している。搭載モジュール26は、必要に応じて様々な補機装着およびユーティリティを収容することができ、この補機は、代替構成ではその他の方式により組み込みモジュールに収容されてもよく、またはその他の方式で配置/収容されてもよい。
【0094】
このような従来型補機は、以下のもののうちのいずれか1つまたは複数を含み得るが、これらには限定されない。
・ 空気クッションの圧力と量を管理して、極端な天候の際に、または海水中に吸収されることによって構造体の下で失われた空気を元に戻すためのエアコンプレッサ。
・ 複数の供給源からの電気エネルギー供給と、陸上電力網への経済的送配との組合せを可能にする電圧制御。
・ 非常用発電。
・ 消火用主ポンプ。
・ 一時または永続居住域。任意のそのような有人空間に、中心フライホイール軸に向かって傾斜する床を取り付けることができる。傾斜角度は、目標周速Vにおいて要員が妨げられずに動き回ることができるように、重力と求心力の複合力の作用線が標準重力作用線を模擬するように設定することができる。
・ バラスティングおよび/またはデバラスティングポンプ。
・ 通信およびAI支援計器および制御システム。
・ 水素を生成し、それを圧縮し、調整して送配するための電解プラント。必要であれば、副産物の酸素を乾燥、加圧および送配することもできる。
【0095】
スイベル27を含む構成では、スイベル27は、上記の説明に沿って、電気ケーブルおよび/または可撓性水素パイプラインによるエネルギー送配のために備えることができる。スイベル27は、さらに、回転運動エネルギーとして貯蔵するための外部供給源からの電気エネルギー取り込みに備えるように構成することも可能である。
【0096】
好ましい構成では、スイベルは浮力タンク30を含む。浮力タンク30は、好ましくは、使用時に部分的に潜水するように構成される。
【0097】
浮力タンク30は、フライホイール1の構成部品の重量を支持する助けとなり得る。浮力タンク30は、以下の構成部品が設けられる場合にそれらのうちの1つまたは複数あるいは全部の重量を支持する助けとなり得る。すなわち、構成部品は、スイベル、ヘリデッキ31、上述のように液体搬送するかまたは図の構成におけるように純粋に構造的であってもよいスポーク要素である。
【0098】
浮力タンク30は、上記に加えて、または上記に代えて、係留/支持脚25が設けられる場合に係留/支持脚25を、それらの作用線が、スイベル27がスポーク要素24と接する位置でスイベル27と交わるように構成することができる。このような構成は、支持/係留脚によって抑制される横力に起因してスポーク要素にかかる有意な曲げモーメントを最小限にすることになる。
【0099】
前述のように、フライホイール1は、任意によりヘリデッキ31を備えることができる。備えられる場合、ヘリデッキはフライホイールの中央に設置可能である。スポーク要素24を有する構成では、スポーク要素24はヘリデッキ31に支持を与えることができ、さらにアクセス設備を提供することができる。図10Aに示すもののようなフライホイールの閉円形構成では、たとえば、ヘリデッキはデッキ上に単純にマークすることができる。本開示の範囲内で予想されるように、十分に大きいフライホイールでは、中央にヘリコプターが着陸するように十分に空いた進入路があることになる。また、中央位置では、フライホイールが動作中に回転速度がヘリコプター操作を妨げないように十分に低速となる。たとえば、大型フライホイールが1回転するのに数分を要する可能性がある。
【0100】
図9に、図8のものと類似する構成、すなわちスイベル27を含むが、図7に関して説明したような中央逆ナセル23をさらに含む構成を示す。スイベル27とナセル23は単一のユニットとして組み合わせてもよい。図7の構成と同様に、スポーク要素24が好ましくはバラスティングのためのパイプを含む。図8の構成による係留支持/脚25が設けられる。
【0101】
前述したように、また、当業者には容易にわかるように、上述の異なる構成の異なる特徴/特徴の組合せが、組み合わされ/変更されてもよい。具体的には、特定の構成の他の特徴と組み合わせた特定の特徴の開示は、それらの特徴を互いに結び付けない。これらの実施形態は非限定的であり、例示を目的としているに過ぎない。
【0102】
図10A図10Bおよび図10Cに、記載されている構成に関して上述した特徴のいずれかを含む構成において実装可能な、フライホイール構造の3つの異なる構成例を示す。
【0103】
図10Aは、閉円形構成を示す。これは、上述のフライホイールの円環形態と対照をなす。閉構成は、1つの濡れ面侵入しかないため、円環構成より低い表面摩擦を生じさせることになる。
【0104】
図10Bは、円環構成を示す。これが図10Aの閉円形構成と同じ平面表面積と質量とを有する場合、その質量がその外周付近に集中しているため、より大きいエネルギー貯蔵能力を有することになる。
【0105】
図10Cは層状円環構成を示す。これが図10Bの構成と同じ平面寸法を有するが質量が2倍である場合、2倍のエネルギー貯蔵能力を有することになる。
【0106】
しかし、いずれのフライホイール構成の目標接線速度Vも、妥当なレベルまで、外周面と周囲の水との間の表面摩擦を制限する類似した最大値を有するように選定可能であることに留意されたい。接線速度の上限は、たとえば80km/時に設定されてもよい。たとえば、図10Aに示すもののような閉円形構成と、図10Cに示すもののような層状円環構成とが同じ接線速度Vを有する場合、後者の固有のエネルギー貯蔵優位は、それより大きい直径(そのように仮定した場合)の結果として回転角速度がより低速であることによって弱められる。
【0107】
図10Aから図10Cは、本開示による設計原理の例示を支援するために示すものであり、その他の点では非限定的である。
【0108】
図11に、例示の非限定的なフライホイールを完全断面図で示す。このフライホイールは層状円環構成であるが、このように限定される必要はない。フライホイールは、円環状で、上述の構成のいずれかにより形成可能である。あるいはフライホイールは閉円形構成で形成されてもよい。
【0109】
図11Aに、フライホイールの内周部と外周部の下端が、平面視で完全に円形となる別々のトラフ33、34に沈められている、オンショア構成選択肢を示す。
【0110】
図11Bに、端部が単一のトラフ35に沈められている別のオンショア構成選択肢を示す。
【0111】
これらの2つの選択肢からの選択は、経済的問題である。たとえば、別々のトラフは、単一のトラフよりも現場における掘削がより少なくて済む可能性がある。しかし、空気クッションの必要目標ヘッドを経済的に維持するために、別々のトラフを含む構成の2つの同心トラフの間の露出地面に気密目潰しが必要となる可能性がある。当業者には容易にわかるように、トラフは任意の適切な従来の方式で構築可能である。
【0112】
オフショアフライホイールとは異なり、オンショア構成における水は分離された量である場合があるため、フライホイールにかかる抗力を低減するため、または目標接線速度Vを増してより大きいエネルギー貯蔵能力を与えるために、長鎖ポリマーなどであるがこれには限らない摩擦低減化学物質を水に添加することが可能であり、望ましい場合があることに留意されたい。
【0113】
地上クリアランスを設けるためのフライホイールの下の掘削が、外側の別個のトラフを支持する盛り土を築くのに十分な量の根切り土を与えるように、フライホイールの高度を選定することによって、現場経済を向上させることができることにも留意されたい。
【0114】
複数のエネルギー発生モジュール6が設けられてもよい。適切な支持構造体によって円周方向および半径方向の所定の位置に保持された、3つ以上の等間隔に配置されたエネルギー発生モジュールがあってもよい。エネルギー発生モジュールの垂直高度は、フライホイールの位置によって制御可能である。支持構造体は、フライホイールを平面視で所定場所に維持するようにも構成可能である。
【0115】
例示のオンショア構成は円環形態であるが、閉円形構成も同様に含むことができる。
【0116】
閉円形構成と、円環構成と、層状円環構成との比較経済の尺度は、オンショアの場合、以下の理由を含む理由により、オフショア構成の選択を制御する尺度とは異なることに注目すべきである。
・ 約1500mの最小全径を有することによってフライホイールを入射スペクトル波浪エネルギーから切り離す必要性が適用されなくなる。オンショアフライホイールの現場要件を満たすのに、より小さい直径で十分である可能性がある。
・ 最も外側の別個のトラフだけが必要である。
・ 空気クッションがフライホイールの平面領域全体に延びるため、目潰しの面積が実質的により大きくなる可能性がある。
【0117】
オフショア据え付けに関してはその他のシステムおよび考慮事項も残されており、当業者には容易にわかるように、本開示のオフショア構成のうちの構成の様々な態様がオンショア構成に導入可能であることに留意されたい。
【0118】
簡単に言及したが、この装置について、ここまでは主として外部発生エネルギーの貯蔵に関して説明した。図12から図20を参照しながら、この装置を使用した発電について検討する。装置は、風力で発電するように構成可能であり、風力はいかなる変換もなしに貯蔵のためにフライホイールに回転運動エネルギーを与える。
【0119】
このような目的のために、本明細書に記載のいずれの構成によるフライホイール1も、装着された複数のセイル37を備えることができる。セイルは、フライホイールのデッキ5上に取り付けることができ、実質的に、大型のクロスフロー風力タービンを形成する。セイルは他の方式で取り付けられてもよい。当業者にはわかるように、そのようないずれのセイルも多くの構成をとることができる。以下、いくつかの非限定的なセイル構成例について説明する。
【0120】
図12Aに、セイルを備えた一構成例を示す。この構成は、好ましくは、連続可変セイル形態を含む。この構成例では、水の上方の細かい刻みの任意の高度において優勢な風向に対する最適アタック角度にひねることができる、単一の可撓性セイルが設けられる。
【0121】
この構成は、異なる高度における連続可変風速および風向を正確に考慮に入れる。このような変動は自然に起こるが、クロスフロータービンを通る流れの特性でもある。この構成例では、好ましくは剛体である垂直マスト38がある。このマストにより対応されるセイルからの風荷重を考慮に入れて、マストをいくつかのセグメントにセグメント化することができる。セグメントの数は、各マストセグメントの最大許容曲げモーメントと軸オイラー座屈荷重とに基づいて決定可能である。
【0122】
図12Aは、そのような2つのセグメントを含む構成を示し、上記の説明に沿ってわかるように、本原理により提供されるいずれの構成においても、より多数またはより少数のセグメントがあってもよい。そのような各セグメントの垂直方向の長さは、好ましくは、セグメントがフライホイールまたは別のセグメントに接続する位置に自在継手を設けることによって増強され、それによってこれらの交差点における曲げモーメントが実質的になくなる。各セグメントは、好ましくは対角状とすることができる索具39によって平面視で円周方向および半径方向内側が制約され、実質的に水平とすることができる索具40によって半径方向外側が制約されてもよい。
【0123】
高度の各刻み、および/またはマストセグメントの長さ刻みにおける応力レベルにおける、連続可変セイル形態の連続変化最適アタック角度および/またはエーロフォイル形状を判定するために、適切な計器/検知デバイスが設けられてもよい。当業者には容易にわかるように、先進航空業務で使用されているものと同等のAIシステムが実装されてもよい。
【0124】
図12Bに、図12Aと類似したセイル構成を示す。図12Bの構成も、複数のセイル区分を含む。しかし、この構成では、複数の剛体セイル区分が採用されている。各区分は、たとえば、従来の航空機の翼の構成の方式で構成可能である。剛体セイル区分を設けることで、別個の剛体垂直マストは不要であるが、そのようなマストを備えた構成も可能である。各個別セイル区分は、その区分にわたる揚力の利用可能な最良の方向と大きさとを得るために、その長さにわたる平均風速および風向に合わせて、独立して回転させることができる。区分の数が多いほど、セイル区分は各高度刻みにおける優勢な風速および風向をより正確に追従することができる。図12Bに、一例としてこのような4つの区分を示す。これには限定されない。これより多いかまたは少ない数の区分を設けることもできる。図12Aと同様、セイル構造体を支持するために索具39、40が設けられている。実装される区分の数を考慮する際、セイル区分の区分数を増やすと、必要な索具も増えることになる。索具が増えると、抗力が大きくなる。効率的なバランスをとることが望ましいであろう。
【0125】
図12Aの構成と同様、セイルの制御システムへの入力のために適切な計器/検知デバイスが設けられてもよい。この場合もAIシステムを実装可能である。
【0126】
図13に、図12Aの構成を平面視で示す。図13には、それぞれAおよびBとラベル付けされた2つの可能な索具選択肢例が部分的に示されていることに留意されたい。これらは、一度にこれらの索具構成のうちの一方のみが、装備されているマストごとに実装可能な代替手段であることを理解されたい。構成Aによると、索具39の各撚りひもがフライホイールの中心まで延びている。構成Bでは、各撚りひも39が、フライホイールの中心から半径方向外側に支持されるように延びている。このような目的のために適切な支持構造体が設けられてもよい。当然ながら、フライホイールが円環でない構成では、索具撚りひもの端を取り付けるためにトップデッキが利用可能となる。コストと動作時の抗力の比較経済が、任意の設計の索具の好ましい構成を恐らく決定することになるであろう。また、AおよびBに代わる代替構成が当業者には容易にわかるであろう。前述のように、これらの構成は例示に過ぎず、当業者にはわかるように、多くの方式で変更または修正可能である。
【0127】
メンテナンスのためとその後に図のような動作構成に戻すために、セイル全体と索具設備をフライホイールのデッキ上に適宜、半径方向または円周方向に安全に平らに置くために、索具ケーブルの長さを調節することができるような設備が設けられてもよいことに留意されたい。
【0128】
図14は、図12Aに関して説明したような連続可変セイル形態と、図12Bに関して説明したような剛体セイル区分との両方のエーロフォイル形状が反転し、矢印で示されている平均風向を基準にして対称な形状も採用する方式を例示するために示されている。
【0129】
この風向から見ると、セイル区分は、その特定の構成には関係なく、図のようなエーロフォイル形態が採用され、それによってフライホイール形状の遠位半分の領域と近位半分の領域におけるセイル区分が時計回りの回転に寄与するように、構成可能である。近位半分の領域と遠位半分の領域との接合部におけるセイル区分は、好ましくは図のように対称遷移形状である。左端のセイル区分は好ましくは、時計回りの回転に寄与するように風向に対して直角である。右端のセイル区分は、抗力を最小限にするために風向に直面するように、風向から見て対称遷移形状を有することが好ましい。
【0130】
各エーロフォイル部の向きと形状は、好ましくは、制御システムによって最大横揚力を与えるように単純には最大化されず、接線速度を制御するパラメータは、回転の中心垂直軸を中心としたその横揚力のモーメントとすることができることに留意されたい。したがって、制御システムは、好ましくは、揚力と、中心軸を中心としたモーメントアームとの積を連続的に計算し、最大化し、それに応じてエーロフォイル形態と方向を調整する。したがって、制御システムは、最大揚力未満の揚力であるが、より大きいモーメントアームの方向に揚力を生じさせるアタック角度を設定するように構成可能である。
【0131】
次に図15から図18を参照すると、セイルを適切な形状と方向に向ける制御システムの機械構成要素の例示の非限定的構成が示されている。本開示のシステムは、連続可変セイル形態または剛体セイル区分のいずれかについて実装可能である。剛体垂直マストの文脈で説明するが、上述のように剛体セイル区分を含む構成などであるがこれには限定されない、マストを省く構成での使用のために適切に適化することができる。当業者には容易にわかるように、多くの代替の機械構成も可能である。
【0132】
図15Aに、剛体垂直マスト38を囲む短いエーロフォイル形状制御シリンダ41を開示する。エーロフォイル形状制御シリンダ41は、球面軸受42を保持し、対向するラックと係合する歯車44を駆動するように剛体垂直マスト38内のブッシュに取り付けられたアクチュエータ43によって、剛体垂直マスト38を基準にして図のように両方向に回転させることができる。エーロフォイル形状制御シリンダ41は、2つ以上の遊動輪45と同心に維持され、遊動輪45によって支持される。水圧供給および戻り管46が、ケーブルから受信した信号の制御下でシステム全体のすべての要素に動力供給する。ケーブルによって状況フィードバック信号も送り返される。好ましくはAIを利用する、すべての制御システム要素のコンピュータ化管理は、適宜、組み込みモジュールまたは搭載モジュール26に収容可能な機構の1つである。
【0133】
図15Bに、エーロフォイル形状制御シリンダの周囲の同心のより短いセイル方向づけシリンダ47の装備を開示する。セイル方向づけシリンダは、剛体垂直マストに取り付けられ、複数の、好ましくは少なくとも3つの遊動輪によって支持された、同心円状に保持されたアクチュエータによって両方向に回転させられる。
【0134】
図16に、セイル方向づけシリンダ47がセイルプロファイルストレッチャ48を保持する構成例を開示する。エーロフォイル先端形状プロファイラ49が、テレスコープ状部50aを含む支持アーム50に取り付けられている。支持アームは、セイル方向づけシリンダ上に保持されたトラニオンに取り付けられ、球面軸受42内に保持されたブッシングを通ってスライドする。
【0135】
図17に、図16の断面「A-A」を示し、図16に平面視で開示されているものと同じ構成要素を立面図で示す。
【0136】
図15から図17に開示されている完全アセンブリは、連続可変セイル形態が配備される高度の細かい刻みにおいて設置可能であることに留意されたい。それに対して、剛体セイル区分が配備される場合は、1つの完全アセンブリを、たとえば各剛体セイル区分の基部に装着することができる。
【0137】
図18A図18Bおよび図18Cに、上記の図14の説明に沿ったエーロフォイル部の3つの可能な主要形状の詳細を例示的に開示する。
【0138】
好ましい一構成例では、エーロフォイル部の前縁は、それ自体が鋼板、アルミニウム、プラスチックまたは複合材料などであるがこれらには限定されない薄い可撓性材料製のセイルプロファイルストレッチャに、エーロフォイル部の上面と下面の両面で取り付けられた強力な繊維からなってもよい。エーロフォイル部は、図18に示すように後縁に戻り、連続可変セイル形態または剛体セイル区分の全面にわたって垂直に続くセイルプロファイルストレッチャをさらに含むことができる。あるいは、エーロフォイル部の後部も強力な繊維からなることができ、その場合、エーロフォイル部の後部本体の形状を変更するために、エーロフォイル部の前方本体を変更するための図16および図17に示すような類似の機構を追加で設置することができる。
【0139】
代替の好ましい解決策の一例は、セグメントの後縁に戻るように続き、点線で示すように航空機の翼のフラップと類似した方式で最端部にある作動ヒンジ部に取り付けられたセイルプロファイルストレッチャを含む。
【0140】
任意の高度においてエーロフォイルの形状を変化させずに図14に示すように平面視でいずれのセイルでも回転させるために、アクチュエータ間に相対的回転がないようにアクチュエータを一体として動作させることができる。エーロフォイル部の形状を変えるには、エーロフォイル形状制御シリンダとセイル方向づけシリンダとの間に相対的回転を生じさせるようにアクチュエータ43またはアクチュエータ53を動作させる。この相対的回転は、図16でエーロフォイル先端形状プロファイラを両方向に移動させるように示されている。エーロフォイル部の前縁を形成する可撓性繊維の摩耗を防ぐために、エーロフォイル先端形状プロファイラを、時計回りまたは半時計回りに回転するように構成することができる。可撓性繊維は、支持アームに取り付けられたテレスコープ状部によって収容可能である。
【0141】
制御システムがそのように要求する場合、エーロフォイル部の形状をさらに変更するために作動ヒンジ部が同時に採用されてもよい。
【0142】
図19に、上記の構成のいずれかによるフライホイールの損傷安定性を強化するためにとることができる、いくつかの非限定的な手段の例を開示する。図19は、円環フライホイールの2つの異なる部品部分を立面図で示していることに留意されたい。
【0143】
図19は、まず、「二重ハル」を形成するセル状構造によって与えられる、任意のフライホイールの基本的に優れた固有損傷安定性を開示している。空気逃がしを可能にするために、2つの別々の面に隙間を設けることが必要になる。デッキレベルの下であるが、開放セル円周壁と開放セル半径方向壁とを形成する空気クッションの下部境界の上方にある、選択された半径方向セル壁53と円周方向セル壁54とを延ばすことによって、さらなる強化を得ることができる。空気クッションが大気に放出された場合、理由のいかんを問わず大気に開放された1つまたは複数のセル以外で、開放セル円周壁と開放セル半径方向壁とが水面に入り、それに閉じ込められた空気が浮力平衡が回復される点まで圧縮する点まで水中で下に位置するため、フライホイールの乾舷が縮小する。多くの影響を受けないセルにおける多くの空気クッションは、縮小しているが十分である乾舷を維持するのに十分な波の作用に従う適切な手段を提供し、損傷を与える曲げモーメントを、損傷したフライホイールが浅い水深まで回復して必要な修理を行うのに十分に長い間にわたって軽減するように設計される。
【0144】
1つまたは複数の円周方向セル55壁を空気クッションを通って下の水中まで下方に延ばすことによって、損傷時のさらなる保全性を与えることができる。これは、意図せずに大気に開放された1つまたは複数の環状リングに対して失われる空気クッションの損失を分離し、損傷状態における結果の乾舷縮小を制限することになる。ただし、動作時の表面摩擦増大という犠牲がある。
【0145】
図19は、逆三角記号がすべての図における水位を示していることと、自由水面と空気クッションの表面とのヘッド差がヘッドhであることも示している。
【0146】
図20に、2つの概念上のフライホイールである、閉円形構成と円環構成とを平面視で示す。図19を参照しながら説明したような、例示の非限定的な開放セル円周壁と開放セル半径方向壁とが、示されている。
【0147】
上記の説明の文脈内で多くのさらなる構成が考えられる。2つの好ましいが非限定的な例について、図21から図23を参照しながら説明する。これらの構成の態様は、上述の構成のいずれの態様とでも組み合わせることができることに留意されたい。図に示された例は限定的ではない。たとえば、図21および図22のフライホイール構成は、上述の構成のいずれかにおける代替フライホイール構造のうちの1つの代わりに実装可能であり、および/または、それらのフライホイールのうちのいずれの特徴でも、ここで説明する構成によるフライホイールに組み込むことができる。また、図12から図20を参照しながら説明した発電構成のいずれも、以下の説明により構成されたフライホイールとともに実装することができる。
【0148】
図21および図22に、閉フライホイール構成をそれぞれ立面図と平面図で示す。フライホイール1は、円環構造を有する。しかし、円環の開放された中央はカバー60によって閉鎖される。カバーの形態は特に限定されない。図の構成例では、カバーは軽量気密円板の形態をとる。円環の中央が閉鎖された状態で、単一の円周壁3を設けることができる。これは前述の円環構造と対照をなす。しかし、ここで説明するもののようなカバーは、上述の円環フライホイールのいずれとでも、または1対の円周壁3、4を含む円環フライホイールのいずれの他の形態とでも使用可能であることに留意されたい。単一の垂下円周壁3の使用は、水からの表面摩擦抗力の低減に役立つため、好ましい。
【0149】
カバー60はセル状形態であってもよい。これは、剛体軽量フライホイール構造を可能にする。また、セル状カバーは、上述のバラスティングの説明に沿ってバラストさせることができる。バラストされたカバーは、エネルギー貯蔵能力を増大させ、場合によっては空気クッションにおける空気圧をより厳密にバランスさせるように円板の自重を増加させ、動作時にカバーを比較的軽く応力がかけられた状態にしておく。カバーの代替構造には、鋼、コンクリート、ガラス強化プラスチック、気密性繊維またはその他の適切な材料の気密性外殻で閉じられた、鋼またはその他からなる軽量フレームが含まれるが、これには限定されない。
【0150】
このように円環フライホイールに閉円板構成を使用することにより、空気クッションの厚さを大幅に低減することができ、垂下壁深度とその濡れ面の面積とを最小限にする。
【0151】
垂下円周壁は円環の外周からかなりの距離に入り込ませてもよく、すなわち、円周壁はフライホイールの外周から半径方向内側にシフトされてもよい。これは、図22に示すようにその円周長さを短くする役割を果たし、それによって表面摩擦抗力を低減するとともに十分な流体静力学的安定性を維持するため、有利である。しかし、代替構成では、円周壁は外周に設けられてもよい。円環および中央円板は、好ましくは、波浪の衝撃を少なくするのに十分な距離だけ水位の上方に留まるようになされる。
【0152】
図23に、図12の索具構成の第3の好ましい例Cを示す。この構成は、実際にはマスト間の間隔を図13に図示されているよりもはるかに狭くすることができ、その結果、各マストに対する対角索具が、いくつかの隣接マストの対角索具と重なってケーブル群を形成し、場合によってはセイルに後流の影を落とし、それによってセイルの空力性能をある程度まで制限する可能性があるという観察に対応する。対角索具脚の数は、マストを異なる半径におけるいくつかの列に配置し、それらを水平索具によって円周方向と横方向に支持することによって、図23に示すように劇的に減らすことができる。総水平索具の対応する増加は、対角索具の節減よりもはるかに少なく、それによって抗力とコストの両方の低減が実現される。当業者には容易にわかるように、多くの代替マストおよび/または索具構成も可能である。
【0153】
また、図23の構成において、水平索具は、垂直方向の隣接セイル間の接合部のレベルにおいて水平円板を形成する後流の影を落とし、これはセイルにわたる気流プロファイルにほとんど破損を生じさせず、それによって性能を向上させる。索具の1つの完全な水平パターンが共通の乱流後流内に存在する程度は対角索具よりも大きいため、各水平索具レベルにおけるケーブルも、対角索具よりも少ない単位長当たり抗力を生じさせる。
【0154】
マストは、円環の外周から距離Wだけ入り込んでいるように示されている。距離Wは、対角索具に実用に合った幾何形状を与えるように十分に大きく選定される。Wをさらに大きくすると、設置可能なマストの数が減り、フライホイールの縦軸を中心にしたセイルの揚力のレバーアームを縮小する。当業者にはわかるように、特定の実装形態に基づいて適切なバランスがとられることになる。
【0155】
図24を参照すると、オンショア構成における使用に特に適した、代替流体シールを含む装置の構成の部分断面図が示されている。流体シールは、セグメント化された迷路を含む。この構成では、迷路は複数の連結セルによって形成され、各セルはフライホイール1から垂れ下がる垂下壁70と、垂下壁70の反対側に突出する対向壁71とによって形成される。図の構成では4つの連結セルがある。代替構成ではこれより多いかまたは少ない連結セルを設けることができることを理解されたい。図24でわかるように、各連結セルは壁70、71の間に閉じ込められた水またはその他の流体Fにおけるヘッド差Kをもたらす。空気クッションにおける圧力ヘッドに等しいヘッド差が累積的に形成される。4つのセルがある図24では、空気クッションヘッドは4Kに等しい。壁70、71は円周方向に延びる。当業者には容易にわかるように、壁70、71は材料または形態に関しては特に限定されない。垂下壁70はフライホイール1の円周壁3から垂れ下がるように示されているが、代替構成では、円周壁3が省かれてもよく、垂下壁70がデッキ5の下側82に直接取り付けられてもよい。壁71は、コンクリートまたはその他のものであってもよい適切な基盤72に取り付けることができる。迷路シール内の流体Fは、空気クッションを画定するように開口2内に気体を閉じ込める。フライホイール1は、上述のフライホイールの特徴のいずれでも任意の組合せで組み込むことができる。好ましい例では、フライホイールは、図21を参照しながら説明したフライホイール1などの形態をとった、カバーを有する円環であってよい。当然ながら、他の方式で形成されてもよい。
【0156】
図24はさらに、矢印80によって示された任意による流体注入ポートを示しており、流体注入ポートは、以下のものを含むがこれらには限定されない望ましい動作機能を与えるために、迷路の外周の適切な点において封止迷路の全部のセルまたは選択されたセルへの流体注入のために、任意により配置することができる。
・ 選択された迷路セルに水をポンプ注入し、または排出することによって、各セルにおける最適ヘッド差Kを維持すること。
・ 選択された迷路セルに圧縮空気をポンプ注入し、または放出することによって、各セルにおける最適ヘッド差Kを維持すること。
・ 流体摩擦によって生じた過度の温水を選択された迷路セルから排出し、それを冷水に交換すること。
・ 選択された迷路セル内の水に流体摩擦低減化学薬品を注入すること。
代替構成では、流体注入ポート80は省かれてもよい。
【0157】
図24には、さらに、任意による磁気浮上(「MAGLEV」)ユニット81が示されており、MAGLEVユニット81は、当業者にはわかるように、以下のものを含むがこれらには限定されない望ましい動作機能を提供することができる。
・ 電気エネルギー入力を誘起接線トルクによって貯蔵機械エネルギーに変換すること。
・ その逆に、貯蔵回転機械エネルギーを誘起接線トルクによって電気エネルギー出力に変換すること。
・ 空気クッションにより与えられる追加の垂直支持補助を与えること。
・ 実用許容範囲内の建設を容易にするために、フライホイールアセンブリ全体の垂直位置および水平位置を十分に厳しい制限内に保持すること。
・ フライホイールアセンブリ全体による共振振動を示す傾向を制限すること。
【0158】
MAGLEVユニット81の図示されている構成は概略図に過ぎず、限定的であるものと解釈されるべきではないことを理解されたい。MAGLEVユニット81は、当業者には容易にわかるように、任意の適切な形態をとることができる。回転する上部と静止した下部との間の境界面の図示されている逆「V」字形状は、垂直と水平の支持と位置合わせの両方を与える多くの任意による構成のうちの1つに過ぎない。他のこのような任意による構成には、垂直と水平の別々のMAGLEVユニット、または、そのような一方の別個のユニットがMAGLEVユニットであり、他方が従来型機械構造物である構成、MAGLEVユニット81の全外周の周囲の大型の円錐形または逆円錐形の錐台を形成する対角線界面、正立「V」字形、「W」または「M」字形が含まれるが、これらには限定されない。
【0159】
当業者にはわかるように、MAGLEVユニット81は省かれてもよく、またはさらに、迷路封止を省いた代替構成に組み込まれてもよいことを理解されたい。
【0160】
本明細書および特許請求の範囲で使用されている場合、「含んでいる(comprises)」および「含む(comprising)」という用語およびその変形は、指定されている特徴、ステップまたは整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素の存在を排除するものと解釈されるべきではない。
【0161】
適宜、特定の形態で、または開示されている機能を実行する手段によって、または開示されている結果を得るための方法もしくはプロセスで表された、上記の説明または以下の特許請求の範囲あるいは添付図面で開示されている特徴は、別々に、またはそのような任意の特徴の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために使用可能である。
【0162】
本発明の特定の例示の実施形態について説明したが、添付の特許請求の範囲はこれらの実施形態のみに限定されることを意図していない。特許請求の範囲は、文字通りに、意図通りに、および/または均等物を包含するものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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【国際調査報告】