(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】遂行機能障害の処置のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/16 20060101AFI20240129BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240129BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240129BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240129BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K31/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P25/28
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547057
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022052587
(87)【国際公開番号】W WO2022167527
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522044364
【氏名又は名称】サンチェス,エクトル マリオ
【氏名又は名称原語表記】SANCHEZ, Hector Mario
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス,エクトル マリオ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC32
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA22
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA19
4C206GA28
4C206GA37
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA22
(57)【要約】
本発明は、ラコサミドとオクスカルバゼピンの両方による遂行機能障害、例えば注意欠陥多動性障害(ADHD)および/または自閉症の処置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンの組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項2】
遂行機能障害が、注意欠陥多動性障害(ADHD)または自閉症である、請求項1に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項3】
遂行機能障害が、ADHDである、請求項1または2に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項4】
(a)ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、750~1800mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、請求項3に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項5】
(a)ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、900~1200mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、請求項3または4に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項6】
ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、請求項3~5のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項7】
オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600mg/日を6~7週間、続いて:
(ii)900mg/日で1日量を維持し、所望により1~4週間後に、続いて:
i. 1200mg/日で1日量を維持するか;または
ii. 600mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、請求項3~6のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項8】
遂行機能障害が、自閉症である、請求項1または2に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項9】
(a)ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、900~2400mg/日の範囲の量まで150~300mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、請求項8に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項10】
(a)ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、1200mg/日の最大量まで300mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、請求項8または9に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項11】
ラコサミドを下記処置レジメン:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項12】
オクスカルバゼピンを下記処置レジメン:
(i)600mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)900mg/日を1~2週間、続いて:
(iii)1200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iv)1800mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(v)2400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項13】
対象体がてんかんにも罹患していない、および/または使用がてんかんの処置のためではない、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項14】
遂行機能障害が、下記:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念
より選択される症状の1つ以上、好ましくは少なくとも2、3、4、5つまたはすべてで特徴付けられるかまたはそれらと関連する、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項15】
処置が、下記:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念
より選択される(遂行機能障害の)症状の1つ以上、好ましくは少なくとも2、3、4、5つまたはすべてを軽減する、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項16】
ラコサミド単剤療法またはオクスカルバゼピン単剤療法での処置を以前受けていた対象体における、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための組合せまたはキットオブパーツであって、以前の処置が、好ましくは遂行機能障害の処置である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項17】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンを、1~3回/日、好ましくは2回/日で投与する、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項18】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンを、同時に投与する、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項19】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンを、別個に、例えば連続して投与する、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項20】
処置が下記:
(i)認知機能の改善;
(ii)認知能力の改善;
(iii)多動性および/または衝動性の軽減;
(iv)不随意遺尿の軽減;
(v)睡眠の質の改善;
(vi)ソーシャルスキルの改善;
(vii)気分の改善;
(viii)無快感の軽減;
(ix)時間知覚異常の軽減;
(x)不快感の調節;および/または
(xi)固定観念の軽減
の1つ以上またはすべてをもたらす、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項21】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンが、単一の医薬組成物中で共に製剤化されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項22】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンが、別個の医薬組成物中である、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項23】
(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを含み、所望により、ラコサミドを含む第1医薬組成物とオクスカルバゼピンを含む第2医薬組成物を含む、キット、キットオブパーツまたはシステム。
【請求項24】
遂行機能障害の1つ以上の症状の軽減における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンの組合せまたはキットオブパーツ。
【請求項25】
(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の両方による遂行機能障害、例えば注意欠陥多動性障害(ADHD)および/または自閉症の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
遂行機能は、身体的、認知的および/または感情的な自己制御を可能にし、効果的な目標指向型行動を維持するために必要な精神的制御プロセスを指す用語である。遂行機能の欠陥は、自閉症および注意欠陥多動性障害(ADHD)などの障害と関連する("Examining executive functioning in children with autism spectrum disorder, attention deficit hyperactivity disorder and typical development" Corbett et al., Psychiatry Research 166 (2009) 210-222)。
【0003】
自閉症は、コミュニケーション、相互の社会的相互作用(reciprocal social interaction)の障害ならびに活動および興味の範囲の制限を特徴とする重度の神経障害である。自閉症の症状は、自閉症スペクトラム障害(ASD)として知られる重症度の連続体に該当し、これには自閉症障害、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)が含まれる。自閉症に罹患している患者は、計画、認知の柔軟性および作業記憶を含む多くの遂行機能に欠陥を示す。
【0004】
ADHDは、注意を払うことに問題があり、行動および衝動性を制御することが困難であることを特徴とする神経障害である。自閉症患者と同様に、ADHD患者は、計画、作業記憶および柔軟性を含む多くの遂行機能に欠陥を示す("Executive function and attention deficit hyperactivity disorder: stimulant medication and better executive function performance in children"; Kempton et al.; 1999, Psychological medicine, 29(3), 527-538)。
【0005】
研究により、ADHDと自閉症の間の遺伝的関連性が染色体の位置2q24と16p13に存在することが示された("A Genomewide Scan for Loci Involved in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder", Fisher et al. 2002, Am. J. Hum. Genet. 70, 1183-1196)。また、様々な神経科学モデルは、自閉症とADHDの間の共通の行動特徴、生物学的経路および神経解剖学的相関関係を強調しており、前頭葉および大脳基底核を含む前頭線条体系(frontostriatal system)が関与している。これらの脳領域は、遂行機能の欠陥と関連している。
【0006】
ADHDと自閉症の根本的な原因は十分に解っていない。これらはドーパミンの産生/発火および/またはノルアドレナリンの産生/発火の欠乏に関連しているという仮説がある(例えば"Binding of Dopamine D1 Receptor and Noradrenaline Transported in Individuals with Autism Spectrum Disorder: A PET Study", Kubota et al., 2020, Cerebral Cortex, 30: 6458-6468)。
【0007】
結果として、当技術分野では、メチルフェニデートなどの分子刺激薬を用いてADHDおよび自閉症を処置するのが一般的である(例えば"Methylphenidate for children and adolescents with autism spectrum disorder."; Sturman et al., Cochrane Database of Systematic Reviews 11 (2017))。分子刺激薬(例えばメチルフェニデート)は、脳における神経伝達物質の放出またはトランスポーターの再捕捉を刺激/調節することにより作用する。メチルフェニデートの特定のケースでは、この化合物は、脳細胞膜のノルエピネフリントランスポーターとドーパミントランスポーターの両方をブロックすることにより、ノルエピネフリンとドーパミンの再取り込みを阻害する。これにより、シナプスからのドーパミンのクリアランスが妨げられ、シナプスにおけるドーパミンレベルが上昇し、脳におけるドーパミンシグナル伝達が増加する。しかしながら、米国食品医薬品局は現在、メチルフェニデートのパッケージ警告に、この薬が依存症を引き起こし得るとの警告を課し、フランス国立医薬品安全保障庁は、不眠症、発作、チック障害、不安、神経過敏、攻撃性、うつ病および気分変動を含むメチルフェニデートの中長期の使用によって引き起こされる広範囲の二次症状に関する詳細な報告を発表した("Methylphenidate : donnees d'utilisation et de securite d'emploi en France", Juillet 2013)。
【0008】
また、メチルフェニデートを摂取した小児の3分の1が強迫行為の症状を発症することが実証されている("Methylphenidate-induced obsessive-compulsive symptoms: A case report and review of literature"; Jhanda et al.; J Pediatr Neurosci. 2016; 11(4): 316-318)。さらに、この薬は幻覚、自殺念慮および精神異常行動を引き起こし、攻撃的で暴力的なエピソードを引き起こし得る。米国食品医薬品局によると、胃腸障害および食欲不振、体重減少および他の成長上の問題を引き起こす内分泌障害、頻脈、心室細動などの心臓事象につながることがしばしばあり、場合によっては突然死の原因となる("Weight, Height, and Body Mass Index in Patients with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Treated with Methylphenidate", Diez-Suarez et al.; J Child Adolesc Psychopharmacol. 2017 Aug 17)。
【0009】
さらに、分子刺激薬の使用は、処置に対する耐性の発現としばしば関連し、そのため処置が進むにつれて用量の増量調節を必要とする。データは、ADHDなどの遂行機能障害の処置における刺激薬の短期的な有効性のみを裏付ける。数年間の分子刺激薬処置後の追跡調査は、刺激薬を服用している患者は、一度も薬物治療を受けていない患者と同じレベルの症状を有することを示した("3-year follow-up of the NIMH MTA study". Jensen et al., 2007, J. Am. Acad. Child Adolesc. Psychiatry., 46(8):989-1002)。
【0010】
遂行機能障害、例えば自閉症およびADHDを処置するための現在の戦略は、高率の副作用および処置に対する耐性の発現のために長期投与に適さない分子を利用するため、遂行機能障害の更なる処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
第一態様において、本発明は、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツを提供する。
【0012】
本明細書で定義される各態様または実施態様は、反対のことが明確に示されない限り、他の態様または実施態様と組み合わせ得る。特に、好ましいまたは有利であると示されるあらゆる特徴が、好ましいまたは有利であると示される他の1つまたは複数の特徴と組み合わせ得る。
【0013】
更なる態様において、本発明は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む、キット、キットオブパーツまたはシステムを提供する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、遂行機能障害の1つ以上の症状の軽減における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツを提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
更なる態様において、本発明は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害またはその症状に罹患している対象体に投与することを含む、遂行機能障害の処置方法を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、遂行機能障害の処置方法における使用のためのラコサミドまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体に関する。
【0018】
更なる態様において、本発明は、遂行機能障害の処置方法における使用のためのオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、(a)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体と(b)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を提供する。
【0019】
更なる態様において、本発明は、遂行機能障害の処置のための医薬の製造における、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の使用を提供する。医薬は、例えば、連続投与できる医薬、または共投与できる医薬である。
【0020】
また、治療における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツを提供する。
【0021】
また、遂行機能障害の処置方法における使用のための、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を提供する。
【0022】
本発明による使用、方法、キット、システム、キットオブパーツおよび組成物の他の好ましい実施態様は、本明細書を通して、特に実施例で明らかにされている。
【0023】
本発明者は、驚くべきことに、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せが、遂行機能障害、例えばADHDまたは自閉症に罹患している対象体において遂行機能障害の症状を効果的に処置および管理できることを発見した。
【0024】
実施例によって例示されるとおり、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せでの処置は、有利には、処置の長期投与の際に望ましくない副作用および/または耐性の発現の証拠を示さない(またはほとんど示さない)。
【0025】
驚くべきことに、遂行機能障害の症状の軽減に対するラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せの効果は、ラコサミド単剤療法またはオクスカルバゼピン単剤療法の投与の際に見られる効果をはるかに上回る。また、併用量におけるラコサミドの用量は、ラコサミド単剤療法より実質的に少なくなり、これは望ましくない副作用を示す可能性が減少し得る。
【0026】
理論に拘束されることを望むものではないが、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せは、ナトリウムおよび/またはカリウムのイオン調節を改善することにより上記の有利な効果を示す傾向があると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
メチルフェニデートなどの刺激薬は、遂行機能障害の1つ以上の症状を迅速に制御するように見えることがあるが、根本的な病因に対処することなく、症状を短期的に処置するだけである。したがって、このような刺激薬は、適切な長期処置解決策を提供しない。
【0028】
本発明者は、驚くべきことに、脳内で活性であるが、脳内の神経伝達物質の放出またはトランスポーターの再捕捉を刺激しない特定の化合物を、遂行機能障害、例えば自閉症またはADHDの処置に使用できることを発見した。この「非刺激性」アプローチは、遂行機能障害の症状の進行的で長期的な安定化を提供する。これは、これらの化合物が障害の病因に機能的に対処することを示している。
【0029】
例えば、このアプローチは、下記の1つ以上またはすべてをもたらし得る:
(i)認知機能の改善;
(ii)認知能力の改善;
(iii)多動性および/または衝動性の軽減;
(iv)不随意遺尿の軽減;
(v)睡眠の質の改善;
(vi)ソーシャルスキルの改善;
(vii)気分の改善;
(viii)無快感の軽減;
(ix)時間知覚異常(tachypsichia)の軽減;
(x)不快感の調節;および/または
(xi)固定観念の軽減。
【0030】
「非刺激性」化合物は、てんかんおよび双極性障害などの状態を処置することが当該技術分野で知られている。例示的な化合物は、ラコサミドである。ラコサミドの化学名は、(2R)-2-(アセチルアミノ)-N-ベンジル-3-メトキシプロパンアミドであり、下記構造を有する:
【化1】
【0031】
ラコサミドは、部分発作および神経障害性疼痛の補助処置として承認されている周知の抗けいれん化合物である。
【0032】
ラコサミドは、官能化アミノ酸であり、電位依存性ナトリウムチャネルを介して作用すると考えられている("Current understanding of the mechanism of action of the antiepileptic drug lacosamide" Rogawski et al., 2015, Epilepsy Research, 110: 189-205)。ラコサミドは、電位依存性ナトリウムチャネルの急速な不活性化に影響を与えることなく、電位依存性ナトリウムチャネルの遅い不活性化を強化する。この不活性化は、チャネルが開くのを妨げ、活動電位の停止に役立つ。ラコサミドは、不活化からの回復を遅らせるため、活動電位を発火させるニューロンの能力を低下させる。不活化は、活動電位を発火させるニューロンでのみ生じ;これは、迅速な不活化を調節する薬物が活性細胞での発火を選択的に減少させることを意味する。遅い不活化も同様であるが、電位依存性ナトリウムチャネルの完全な遮断を生じるのではなく、活性化と不活化の両方が数百ミリ秒以上にわたって生じる。ラコサミドは、あまり脱分極していない膜電位でこの不活化を引き起こす。これは、ラコサミドが、てんかんの焦点にあるニューロンに典型的な、長期間脱分極または活動しているニューロンにのみ影響を与えることを意味する("The investigational anticonvulsant lacosamide selectively enhances slow inactivation of voltage-gated sodium channels" Errington et al., 2008, Molecular Pharmacology, 73(1): 157-69)。ラコサミドの投与は、反復ニューロン発火の抑制、過剰興奮性のニューロン膜の安定化、長期的なチャネル利用可能性の低下をもたらすが、生理学的機能には影響を及ぼさない("Development of lacosamide for the treatment of partial-onset seizures" Doty et al., 2013, Ann N Y Acad Sci. 1291: 56-68)。ラコサミドは、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)、カイニン酸、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、GABAA、GABABまたは様々なドーパミン作動性、セロトニン作動性、アドレナリン作動性、ムスカリン性またはカンナビノイド受容体に影響を及ぼさず、カリウムまたはカルシウム電流を遮断しない("Seeking a mechanism of action for the novel anticonvulsant lacosamide" Errington et al., 2006, Neuropharmacology, 50(8): 1016-29)。ラコサミドは、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびセロトニンを含む神経伝達物質の再取り込みを調節しない("Lacosamide: a review of preclinical properties" Beyreuther et al., 2007, CNS Drug Reviews, 13 (1): 21-42)。また、GABAトランスアミナーゼを阻害しない。
【0033】
「非刺激性」化合物の更なる例示的化合物は、オクスカルバゼピンである。オクスカルバゼピンの化学名は、5-オキソ-6H-ベンゾ[b][1]ベンズアゼピン-11-カルボキサミドであり、下記構造を有する:
【化2】
【0034】
オクスカルバゼピンは、てんかんエピソードの発生を軽減し、焦点(局所)発作を処置するために用いられる抗けいれん薬である。
【0035】
オクスカルバゼピンは、大部分がその薬理学的に活性な10-モノヒドロキシ誘導体リカルバゼピン(MHDと略されることがある)に代謝される、プロドラッグである。オクスカルバゼピンおよびMHDは、電位感受性ナトリウムチャネルをブロックすることにより作用を発揮し、これにより、過剰に興奮した神経膜の安定化、反復ニューロン発火の抑制、およびシナプスインパルスの伝播の減少を引き起こす。オクスカルバゼピンの抗けいれん効果は、カリウム伝導の増強および高電圧活性化カルシウムチャネルの調節に起因すると考えられる。
【0036】
重要なことに、本発明者は、驚くべきことに、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せが、遂行機能障害、例えばADHDおよび/または自閉症に罹患している対象体において遂行機能障害の症状を効果的に処置および管理できることを発見した。遂行機能障害の症状の軽減に対するラコサミドおよびオクスカルバゼピンなどの非刺激性化合物の組合せの効果は、ラコサミド単剤療法またはオクスカルバゼピン単剤療法の投与の際に見られる効果をはるかに上回る。
【0037】
したがって、本発明は、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツを提供する。好ましくは、本発明は、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンの組合せまたはキットオブパーツを提供する。
【0038】
また、ラコサミドの類似体も企図されており、この類似体は、ラコサミドと機能的に等価である。類似体は、ラコサミドの構造と著しく構造的類似性を有し得る。ラコサミドの「機能的に等価な類似体」は、類似体が、非刺激性であり、および/またはラコサミドのものと同等である遂行機能障害に罹患している患者に対する治療的効果を有することを意味する。類似体は、例えば、S-エナンチオマーである(S)-2-(アセチルアミノ)-N-ベンジル-3-メトキシプロパンアミド;R-エナンチオマーとS-エナンチオマーのラセミ混合物;またはルフィナミドであり得る。ルフィナミドの化学名は、1-[(2,6-ジフルオロフェニル)メチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-4カルボキサミド(ブランド名BANZEL(登録商標)またはInovelon(登録商標)で市販されている)である。したがって、好ましい実施態様において、ラコサミドと機能的に等価な類似体は、ラコサミドのSおよびR-ラセミ体、またはルフィナミドである。
【0039】
また、オクスカルバゼピンの類似体も企図されており、この類似体は、オクスカルバゼピンと機能的に等価である。類似体は、オクスカルバゼピンの構造と著しく構造的類似性を有して、好ましくはオクスカルバゼピンの代謝物であり得る。オクスカルバゼピンの「機能的に等価な類似体」は、類似体が、非刺激性であり、および/またはオクスカルバゼピンのものと同等である遂行機能障害に罹患している患者に対する治療的効果を有することを意味する。類似体は、例えば、(L-および/またはR-)リカルバゼピン(10-モノヒドロキシ誘導体(MHD)としても知られる)、エスリカルバゼピンおよび酢酸エスリカルバゼピンであり得る。したがって、好ましい実施態様において、オクスカルバゼピンと機能的に等価な類似体は、(L-および/またはR-)リカルバゼピン、エスリカルバゼピンまたは酢酸エスリカルバゼピンである。
【0040】
遂行機能障害は、好ましくは、ADHDおよび/または自閉症であり得る。例えば、対象体は、ADHDと自閉症の両方に罹患していてもよく、処置は、これらの障害の両方を処置するためにこのような対象体に投与され得る。あるいは、対象体は、ADHAに罹患していてもよく、所望により、任意の更なる遂行機能障害に罹患していなくてもよい。あるいは、対象体は、自閉症に罹患していてもよく、所望により、任意の更なる遂行機能障害に罹患していなくてもよい。
【0041】
本明細書で用いる用語「自閉症」は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を包含することを意図しており、これには、自閉症障害、アスペルガー症候群および特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)が含まれる。したがって、いくつかの実施態様において、遂行機能障害は、自閉症であり、例えば自閉症障害、アスペルガー症候群および特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)から選択され得る。
【0042】
本明細書で用いる用語「ADHD」は、以下を含むすべてのADHDサブタイプを包含することを意図する:
(i)ADHD不注意優勢型(ADHD-PIまたはADHD-I)は、気が散りやすい、忘れっぽい、白日夢を見る、秩序の破壊、集中力が低い、課題の完了困難を含む症状を示す;
(ii)ADHD、多動性衝動性優勢型(ADHD-PHまたはADHD-HI)は、過度のそわそわ感および落ち着きのなさ、多動、待つことおよび座ったままでいることが困難、および未熟な行動を示し;破壊的な行動も呈することがある;そして
(iii)ADHD、複合型(ADHD-C)は、上記サブタイプ(i)と(ii)の組合せである。
【0043】
ADHDの不注意優勢型(ADHD-PIまたはADHD-I)は、多動性の要素を欠き、注意欠陥障害(ADD)としても知ら得る。
【0044】
いくつかの実施態様において、遂行機能障害は、ADHDであり、例えば、ADHD-PI、ADHD-PHおよび/またはADDより選択され得る。
【0045】
実施例に示すように、遂行機能障害、例えばADHDおよび/または自閉症に罹患している対象体のラコサミドおよびオクスカルバゼピンでの処置は、これらの遂行機能障害の特定の症状を除去、軽減または改善した。例えば、多動性および/または衝動性が減少し、社会的相互作用が改善され、不随意遺尿が解消され、睡眠活動が改善された。
【0046】
遂行機能障害、例えば自閉症および/またはADHDの処置は、これらの遂行機能障害の1つ以上の症状除去、軽減または改善をもたらし得て、患者が処置前に経験した遂行機能障害のすべての症状を必ずしも緩和または改善する必要はないことが理解される。
【0047】
症状の「除去」とは、対象体が本質的にその症状を経験しなくなることを意味する。症状の「軽減」とは、対象体が症状の顕著な改善を経験することを意味する。軽減は、重度から軽度になることが好ましい。症状の「改善」とは、対象体が症状の適度な改善を経験することを意味する。
【0048】
したがって、特定の実施態様において、本明細書で提供される処置、使用などは、遂行機能障害の1つ以上の症状の除去、軽減または改善をもたらし得る。例えば、1つ以上の症状が軽減され得て、そして1つ以上の異なる症状が改善され得る。下記の1つ以上、またはこれらのカテゴリー内の1つ以上の症状が、除去、軽減または改善され得る:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念。
【0049】
したがって、処置は、下記の1つ以上のまたはすべてをもたらし得る:
(i)認知機能の改善;
(ii)認知能力の改善;
(iii)多動性および/または衝動性の軽減;
(iv)不随意遺尿の軽減;
(v)睡眠の質の改善;
(vi)ソーシャルスキルおよびコミュニケーションの改善;
(vii)気分の改善;
(viii)無快感の軽減;
(ix)時間知覚異常の軽減;
(x)不快感の調節;および/または
(xi)固定観念の軽減。
【0050】
したがって、本発明は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害またはその症状に罹患している対象体に投与することを含む、遂行機能障害の処置方法を提供する。好ましくは、遂行機能障害は、ADHDおよび/または自閉症である。好ましくは、方法は、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを投与することを含み、これらの投与は、同時、連続または別個であり得る。
【0051】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、対象体に投与されるラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体の量は、治療有効量である。
【0052】
本明細書で用いる語句「治療有効量」または「臨床有効用量」は、遂行機能障害、例えば自閉症またはADHDを処置するために対象体に投与されるとき、遂行機能障害の処置に影響を及ぼすのに十分であるラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の量を意味する。この量は、例えば、使用される特定の薬物、対象体の症状の重症度、対象体の年齢、体重および相対的な健康状態、ならびに投与の経路および形態などの要因に応じて変化する。このような要因に基づいて特定の対象体に対する関連する治療/臨床有効量を決定することは、本発明の教示が提供されると、当業者(例えば担当医)にとって日常的なことである。本明細書に記載する遂行機能障害の処置は、1つ以上の症状の改善を意味すると理解されるべきである。これには、例えば、焦点、集中力、睡眠の質、認知機能、睡眠の質、認知機能、認知能力、気分、コミュニケーションスキルおよび/または記憶の改善、より組織的になる、より社会的に活動的になる、および/またはより簡単にタスクを完了できることが含まれ得る。また、多動性、衝動性、不随意遺尿、そわそわ感および/または落ち着きのなさの減少、および/または未熟および/または破壊的な行動の減少も含まれ得る。当業者であれば、処置が、一般に記載される症状の1つ以上の改善、典型的には進行性かつ長期にわたる改善を指すことを理解するであろう。
【0053】
更なる態様において、本発明は、遂行機能障害の処置方法における使用のためのラコサミドまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を提供する。好ましくは、遂行機能障害は、ADHDおよび/または自閉症である。好ましくは、方法は、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを対象体に投与することを含み、これらの投与は、同時、連続または別個であり得る。好ましくは、対象体に投与されるラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体の量は、治療有効量である。
【0054】
更なる態様において、本発明は、遂行機能障害の処置方法における使用のためのオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、(a)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体と(b)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を提供する。好ましくは、遂行機能障害は、ADHDおよび/または自閉症である。好ましくは、方法は、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを対象体に投与することを含み、これらの投与は、同時、連続または別個であり得る。好ましくは、対象体に投与されるラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体の量は、治療有効量である。
【0055】
より具体的には、次の1つ以上を除去、軽減または改善し得る:過剰な思考;突然の断絶;悲惨な思想;気分変動;軽躁または過眠;攻撃的行動;不随意遺尿、注意処理障害;コミュニケーション障害;無気力;疲労感;非言語的推論の障害;ソーシャルスキルの欠如;無快感;時間知覚異常;不快感;および/または固定観念。
【0056】
したがって、別の見方をすると、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せを、それを必要とする対象体に投与することにより、上記症状の1つ以上を除去、軽減および/または改善する方法を提供する。好ましくは、対象体は、遂行機能障害に罹患している。さらにより好ましくは、対象体は、ADHDおよび/または自閉症に罹患している。好ましくは、方法は、ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せを投与することを含み、これらの投与は、同時、連続または別個であり得る。好ましくは、対象体に投与されるラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体の量は、治療有効量である。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、ラコサミドの用量は、特に小児患者において、1日当たり対象体の1kg当たり約1~12mgの薬物の範囲(mg/kg/日)であり得る。特定の実施態様において、量は、少なくともまたは約1mg/kg/日、少なくともまたは約2mg/kg/日、少なくともまたは約4mg/kg/日、少なくともまたは約6mg/kg/日、少なくともまたは約8mg/kg/日、または少なくともまたは約10mg/kg/日であり得る。更なる実施態様において、量は、約2~6mg/kg/日、1~10mg/kg/日または1~15mg/kg/日の範囲であり得る。
【0058】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、オクスカルバゼピンの用量は、特に小児患者において、1日当たり対象体の1kg当たり約1~60mgの薬物の範囲(mg/kg/日)であり得る。
【0059】
典型的に、本発明による処置は、遂行機能障害の処置のためにのみ投与される。好ましくは、遂行機能障害は、脳の前頭葉および大脳基底核を含む前頭線条体系の欠損に関連する。
【0060】
さらにより好ましくは、本発明による処置は、自閉症および/またはADHDの処置のためにのみ、または自閉症および/またはADHDの1つ以上の症状の処置のために投与される。
【0061】
したがって、いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、下記障害のいずれかの1つ以上に罹患していない、遂行機能障害、例えば自閉症および/またはADHDに罹患している対象体の処置であり;および/または本発明による処置は、下記障害のいずれかの1つ以上の処置のために投与されない:てんかん、双極性障害、発作、神経障害性疼痛、うつ病、不安、統合失調症、強迫性障害(OCD)、アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、慢性外傷性脳症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、血管性認知障害、虚血性脳卒中、前頭側頭骨性認知症、レヴィー小体認知症、トゥレット症候群および/または脳への外傷性傷害、好ましくはてんかん。例えば、下記障害:てんかん、双極性障害、発作、神経障害性疼痛、うつ病、不安、統合失調症、強迫性障害(OCD)、アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、慢性外傷性脳症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、血管性認知障害、虚血性脳卒中、前頭側頭骨性認知症、レヴィー小体認知症、トゥレット症候群および/または脳への外傷性傷害のいずれかの1つ以上、好ましくはてんかんに罹患していない自閉症に罹患している対象体の処置であり得る。別の例として、下記障害:てんかん、双極性障害、発作、神経障害性疼痛、うつ病、不安、統合失調症、強迫性障害(OCD)、アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、慢性外傷性脳症、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、血管性認知障害、虚血性脳卒中、前頭側頭骨性認知症、レヴィー小体認知症、トゥレット症候群および/または脳への外傷性傷害のいずれかの1つ以上、好ましくはてんかんに罹患していないADHDに罹患している対象体の処置であり得る。
【0062】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、対象体は、例えば同じまたは異なる遂行機能障害であり得る遂行機能障害を処置するために、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)療法(オクスカルバゼピンなし)、例えばラコサミド単剤療法を以前受けていてもよい。したがって、例えば遂行機能障害を処置するために、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)療法(オクスカルバゼピンなし)、例えばラコサミド単剤療法を以前受けていた対象体の処置であり得る。
【0063】
例えば、処置は、対象体が、自閉症または別の遂行機能障害を処置するために、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)療法(オクスカルバゼピンなし)、例えばラコサミド単剤療法を以前受けていてもよい、自閉症の処置であり得る。別の例として、処置は、対象体が、ADHDまたは別の遂行機能障害を処置するために、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)療法(オクスカルバゼピンなし)、例えばラコサミド単剤療法を以前受けていてもよい、ADHDの処置であり得る。
【0064】
「以前の」ラコサミド療法(オクスカルバゼピンなし)、例えばラコサミド単剤療法は、例えば、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピンでの処置開始の少なくともまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12年、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日前に、開始していてもよく;および/またはラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピンでの処置開始の少なくともまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12年、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日前に、好ましくは少なくともまたは約30、45または60日前に終了していてもよい。
【0065】
したがって、
(i)オクスカルバゼピンの投与の比存在下でのラコサミドの投与を含む処置計画、例えばラコサミド単剤療法;その後
(ii)同時、連続または別個であり得る、ラコサミドとオクスカルバゼピンの投与を含む処置計画
を含む、遂行機能障害の処置方法もまた提供する。
【0066】
処置計画(i)および(ii)の各々は、数日間、数週間または数か月であり得る。計画(i)と(ii)の間に数日間、数週間または数か月の間隔があり得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、対象体は、例えば同じまたは異なる遂行機能障害であり得る遂行機能障害を処置するために、オクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)療法(ラコサミドなし)、例えばオクスカルバゼピン単剤療法を以前受けていてもよい。したがって、例えば遂行機能障害を処置するために、オクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)療法(ラコサミドなし)、例えばオクスカルバゼピン単剤療法を以前受けていた対象体の処置であり得る。
【0068】
例えば、処置は、対象体が、自閉症または別の遂行機能障害を処置するために、オクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)療法(ラコサミドなし)、例えばオクスカルバゼピン単剤療法を以前受けていてもよい、自閉症の処置であり得る。別の例として、処置は、対象体が、ADHDまたは別の遂行機能障害を処置するために、オクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)療法(ラコサミドなし)、例えばオクスカルバゼピン単剤療法を以前受けていてもよい、ADHDの処置であり得る。
【0069】
「以前の」オクスカルバゼピン療法(ラコサミドなし)、例えばオクスカルバゼピン単剤療法は、例えば、オクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)およびラコサミドでの処置開始の少なくともまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12年、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日前に、開始していてもよく;および/またはオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)およびラコサミドでの処置開始の少なくともまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12年、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日前に、好ましくは少なくともまたは約6か月、1年または1.5年前に終了していてもよい。
【0070】
したがって、
(i)ラコサミドの投与の比存在下でのオクスカルバゼピンの投与を含む処置計画、例えばオクスカルバゼピン単剤療法;その後
(ii)同時、連続または別個であり得る、ラコサミドとオクスカルバゼピンの投与を含む処置計画
を含む、遂行機能障害の処置方法もまた提供する。
【0071】
処置計画(i)および(ii)の各々は、数日間、数週間または数か月であり得る。計画(i)と(ii)の間に数日間、数週間または数か月の間隔があり得る。
【0072】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、遂行機能障害の処置における、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)とオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の組合せの使用は、オクスカルバゼピンなしのラコサミド療法、例えばラコサミド単剤療法の使用より効果的である。好ましくは、オクスカルバゼピンなしのラコサミド療法に対する併用療法の使用は、下記の改善された結果の1つ以上またはすべてを提供する:
(i)認知機能の改善;
(ii)認知能力の改善;
(iii)多動性および/または衝動性の軽減;
(iv)不随意遺尿の軽減;
(v)睡眠の質の改善;
(vi)ソーシャルスキルおよびコミュニケーションの改善;
(vii)気分の改善;
(viii)無快感の軽減;
(ix)時間知覚異常の軽減;
(x)不快感の調節;および/または
(xi)固定観念の軽減。
【0073】
いくつかの実施態様において、併用療法を受けている患者に投与されるラコサミドの量は、少なくとも同じ効果または結果を引き起こすために単剤療法中に投与されるラコサミドの量より少ない。処置が最初に投与される場合、量は、維持用量に達するまで段階的に増量される必要があり得ることが理解され;この比較のために、ラコサミドの維持量が示されている。好ましくは、併用療法を受けている患者に投与されるラコサミドの量は、単剤療法で用いられるラコサミドの量より少なくとも20、30または40%少ない。さらにより好ましくは、併用療法を受けている患者に投与されるラコサミドの量は、単剤療法で用いられるラコサミドの量より少なくとも65%少ない。例えば、ラコサミド単剤療法を受けている患者は、1日当たり600mgのラコサミドの投与を必要とし得て、一方、オクスカルバゼピンとの併用療法を受けている同じ患者は、少なくとも同じ効果または結果を引き起こすために1日当たり200mgのラコサミドを投与され得る。好ましくは、療法は、遂行機能障害、例えば自閉症またはADHDに罹患している対象体を処置するためである。好ましくは、併用療法により引き起こされる効果または結果は、単剤療法により引き起こされる効果または結果より実質的に良好である。したがって、いくつかの実施態様において、併用療法を受けている患者に投与されるラコサミドの量は、約300mg/日以下である。好ましくは、ラコサミドの量は、約200mg/日である。
【0074】
本発明のすべての態様によれば、対象体は哺乳類、好ましくはヒトである。特定の実施態様において、対象体は小児(すなわち、成人の表現型に向かって生理学的および神経学的に成長/成熟中の者)である。例えば、「小児」は、思春期前の対象体、または思春期を完了過程にある対象体であると考えられ得る。特に対象体がヒトのとき、「小児」は、場合によっては18歳未満の個人であるとも考えられ得る。好ましい実施態様において、小児は、2~12歳、または少なくとも2、3、4、5、6、7もしくは8歳であり、18、17もしくは16歳以下である。より好ましい実施態様において、小児は10~16歳である。したがって、対象体の体重は、例えば、約60、50、40または30kg以下満であり得る。さらに好ましくは、小児は、ADHDの症状に罹患している。しかしながら、本発明は、いくつかの実施態様において成人にも適用され、その場合、対象体の体重は、例えば、50、60、70、80、90、100または110kg以上であり得る。好ましくは、成人は、自閉症またはADHDに罹患している。
【0075】
処置(ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せの定期的、例えば毎日の投与)は、適切な期間、例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10週間、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10か月、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10年、実施され得る。忍容性が良好の場合、処置は、無期限に実施され得る。好ましくは、処置は、最低約3か月または約9週間実施される。
【0076】
特定の実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の各々は、1日1回(の単回用量組み合わせた単回用量または別個の単回用量であり得る)として投与され得る。好ましい実施態様において、各々は、1日を通して2回、3回またはそれ以上の別個の用量として、好ましくは2回、投与され得る。すなわち、1日当たりのラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)の各々の量は、1日を通して別個に対象体に投与される2回、3回またはそれ以上の用量に分けられ得る。例えば、ラコサミドの場合、200mg/日の量を、1日当たり2回の100mg用量として投与し得る。同様に、オクスカルバゼピンの場合、600mg/日の量を、1日当たり2回の300mg用量として投与し得る。1日当たりの複数回の用量は、必ずしも同じ量である必要はない。
本明細書で提供される教示を考慮すると、当業者(例えば、医師)は、対象体の特定の状況に従って、対象体に対する適切な投与レジメンを決定することが十分可能である。
【0077】
いくつかの実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)を、同時に投与する。他の実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)を、別個に、例えば連続して投与する。好ましくは、投与は、同時である。
【0078】
いくつかの実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、単一の医薬組成物として共に製剤化され得る。あるいは、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、別個の医薬組成物として製剤化され得る。両方の場合において、医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される添加物/溶媒をさらに含み得る。例えば、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、1つ以上の医薬的に許容される固形担体とそれぞれ組み合わせて個々の丸剤、錠剤もしくはカプセル剤;または1つ以上の医薬的に許容される溶媒中の液剤;または1つ以上の医薬的に許容される溶媒または担体中の乳剤、懸濁剤もしくは分散剤として製剤化され得る。いくつかの実施態様において、各製剤はまた、他の医薬的に許容される添加剤、安定化剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤または乳化剤または矯味剤および徐放性処方を含み得る。いくつかの実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、(一緒にまたは別個に)医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは代謝物、例えばラコサミドおよび/またはオクスカルバゼピンの医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは代謝物として製剤化され得る。
【0079】
したがって、更なる態様において、本発明は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを含む。あるいは、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、別個の医薬組成物として、所望によりキットの一部として、製剤化される。
【0080】
例えば、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、単一のカプセル剤または複数のカプセル剤(すなわち、シェルまたは充填物からなる固形経口剤形)として製剤化され得て、ここで、シェルは、単一の密閉された包体、または互いに合わさって、場合によってはバンドで密閉された、2つの半部からから構成され、そしてここで、カプセル剤シェルが、ゼラチン、デンプンもしくセルロースまたは他の適切な材料から作られ得て、軟質または硬質であってもよく、そして、固形成分、または注がれもしくは絞られ得る液体成分で充填されている。ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、1つまたは複数のカプセル剤またはコーティングペレットとして製剤化され得て、ここで、薬剤は、適切な形態のゼラチンで作られた軟質または硬質可溶性容器またはシェルのいずれかに封入されている。薬物自体は、様々な量のコーティングが適用された顆粒の形態であってもよく、または徐放性コーティングされたカプセル中であってもよく、ここで、薬剤は、適切な形態のゼラチンで作られた軟質または硬質可溶性容器またはシェルのいずれかに封入されている。また、1つまたは複数のカプセル剤は、従来の剤形として提供される1つまたは複数の薬物と比較して、少なくとも1つの薬剤、好ましくは両方の薬剤の投与頻度の減少を少なくとも可能にするような方法で薬剤を放出する所定のコーティングで覆われていてもよい。
【0081】
更なる実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、1つまたは複数の遅放性カプセル剤として製剤化され得て、ここで、薬剤は、適切な形態のゼラチンで作られた硬質または軟質可溶性容器のいずれかに封入されており、投与直後以外の時点で薬剤を放出し、これにより、腸溶性コーティング品は、遅放性剤形である。薬剤が硬質または軟質容器または「シェル」のいずれかに封入されている、カプセル剤遅放性ペレットも有用である。これらの場合、薬剤自体は、腸溶性コーティングが施された顆粒の形態であるため、少なくとも1つの薬剤、好ましくは両方の薬剤の放出が腸に通過するまで遅延される。徐放性カプセル剤およびフィルムコーティングされた徐放性カプセル剤も有用である。
【0082】
また、1つまたは複数のカプセル剤は、従来の剤形として提供される薬剤と比較して、少なくとも1つの薬剤、好ましくは両方の薬剤の投与頻度の減少を少なくとも可能にするような方法で薬剤を放出する所定のフィルムコーティングで覆われていてもよい。例としては、ゼラチンコーティングされた1つまたは複数のカプセル剤(薬剤が適切な形態のゼラチンで作られた硬質または軟質可溶性容器のいずれかに封入されている、固形剤形;バンド処理によって、カプセル剤を更なるゼラチン層でコーティングし、完全なシールが形成する);液体充填された1つまたは複数のカプセル剤(ポリオール、例えばソルビトールまたはグリセリンの添加により可塑化され、これにより硬質シェルカプセル剤のものよりいくらか厚い硬さを有する、可溶性のゼラチンシェルに薬剤が封入されている、固形剤形)が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施態様において、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、1つまたは複数の液体ビヒクルに溶解または懸濁されてもよく、あるいは1つまたは複数の顆粒(小さな粒子または粒)、1つまたは複数のペレット(顆粒の形成、または圧縮および成形によって作られた、添加剤を含むまたは含まない、高度に精製された薬剤からなる小さな滅菌固形塊)、または徐放性コーティングされた1つまたは複数のペレット(薬物自体が様々な量のコーティングが適用された顆粒の形態であり、従来の剤形として提供される薬剤と比較して、少なくとも1つの薬剤、好ましくは両方の薬剤の投与頻度の減少を少なくとも可能にするような方法で薬剤を放出する、固形剤形)として製剤化されてもよい。
【0084】
ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、丸剤(経口投与を意図した薬剤を含む、小さな丸い固体剤形)、散剤(内用または外用を意図し得る、1つ以上の医薬的に許容される添加物との乾燥した微粉砕した薬剤との混合物)、エリキシル剤(溶解した薬剤を含む、澄明で口当たりのよい風味と甘味のあるヒドロアルコール性液体;経口用が意図される)、チューインガム(噛むと口腔内に薬剤物質を放出する、様々な形状の風味と甘味のある不溶性プラスチック材料)、シロップ剤(薬剤と、高濃度のスクロースまたは他の糖類を含む経口溶液;当該用語は、経口懸濁液を含む、甘く粘性のあるビヒクル中で調製された他のあらゆる液体剤形を含むためにも使用されてきた)、1つまたは複数の錠剤(適切な希釈剤と共にまたはそれなしで薬剤を含む経口剤形)、チュアブル錠(適切な希釈剤と共にまたはそれなしで薬剤を含み、噛むことを意図した固形剤形で、口腔内に心地よい味の残留物を生成し、容易に飲み込み、苦味または不快な後味を残さない固形剤形)、1つまたは複数のコーティング錠剤、または1つまたは複数の遅放性錠剤、1つまたは複数の分散性錠剤、1つまたは複数の発泡性錠剤、1つまたは複数の徐放性錠剤、1つまたは複数のフィルムコーティング錠剤、1つまたは複数のフィルムコーティング徐放性錠剤(ここで、1つまたは複数の錠剤は、含まれる薬剤の少なくとも1つ、好ましくは含まれる薬剤の両方を、摂取後長時間にわたって利用可能となるような方法で製剤化される)として製剤化され得る。
【0085】
他の形態において、1つまたは複数の溶液用錠、1つまたは複数の懸濁液用錠、1つまたは複数の多層錠、1つまたは複数の多層徐放性錠が提供され得て、ここで、1つまたは複数の錠剤は、従来の剤形として提供される薬剤と比較して、少なくとも1つの薬剤、好ましくは両方の薬剤の投与頻度の減少を少なくとも可能にするような方法で製剤化される。1つまたは複数の口腔内崩壊錠、1つまたは複数の口腔内崩壊遅放性錠、1つまたは複数の可溶性錠、1つまたは複数の糖コーティング浸透圧錠なども適している。
【0086】
経口剤形の組成物は、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)および/またはオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)に加えて、1つ以上の非活性医薬成分、例えば希釈剤、可溶化剤、アルコール、結合剤、制御放出ポリマー、腸溶性ポリマー、崩壊剤、添加剤、着色剤、香料、甘味剤、抗酸化剤、防腐剤、色素、添加物、賦形剤、懸濁剤、界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性)などを含み得る。様々なFDA承認局所用活性成分は、製造業者が特に意図した非活性医薬成分を含むFDAの「The Inactive Ingredients Database」で見つけられる。
【0087】
本発明の特定の実施態様において、特に遂行機能障害がADHDである場合、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与し得る:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、750~1800mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する。
【0088】
さらにより好ましくは、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)6~7週間後、900~1200mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する。
【0089】
更なる実施態様において、特に遂行機能障害がADHDである場合、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与し得る:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)500~900mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、600~1800mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する。
【0090】
更なる実施態様において、ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する。
【0091】
更なる実施態様において、オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600mg/日を6~7週間、続いて:
(ii)900mg/日で1日量を維持し、所望により1~4週間後に、続いて:
i. 1200mg/日で1日量を維持するか;または
ii. 600mg/日で1日量を維持する。
【0092】
本発明の別の実施態様において、特に遂行機能障害が自閉症である場合、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与し得る:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、900~2400mg/日の範囲の量まで150~300mgずつ増量し、その1日量を維持する。
【0093】
さらにより好ましくは、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、1200mg/日の最大量まで300mgずつ増量し、その1日量を維持する。
【0094】
更なる実施態様において、特に遂行機能障害が自閉症である場合、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与し得る:
(a)ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する;および/または
(b)オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)400~900mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、600~2400mg/日の範囲の量まで150~600mgずつ増量し、その1日量を維持する。
【0095】
更なる実施態様において、ラコサミドを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する。
【0096】
更なる実施態様において、オクスカルバゼピンを下記処置レジメンに従って投与する:
(i)600mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)900mg/日を1~2週間、続いて:
(iii)1200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iv)1800mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(v)2400mg/日で1日量を維持する。
【0097】
本発明のすべての態様によれば、正確な維持量は、本明細書で提供される教示を考慮して、特定の対象体の健康状態、遂行機能障害の症状の重症度および投与される薬剤の耐性に基づいて当業者によって日常的に決定され得る。一般に、正確な維持量は、遂行機能障害の症状の改善と、その正確な量に対する特定の対象体の生理学的耐性(例えば、望ましくない副作用の観察/可能性)との間の妥協点となる。これは個々の対象体に特有であり、本明細書で提供される教示を考慮して前記の要因に基づいて特定の対象体の正確な維持量を決定することは当業者(例えば医師)に日常的である。
【0098】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、ラコサミドの投与量は、400mg/日以下、例えば350、300、250、200、150、100または150mg/日以下であり、好ましくはラコサミドの投与量は、200mg/日である。
【0099】
本明細書での「X以下」の量の活性物質の投与についての言及は、最小量、例えば少なくとも10、20、30、40または50mg/日の投与を必要とすることが理解されよう。
【0100】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、体重が50kg未満の対象体では、オクスカルバゼピンの投与量は、1200mg/日以下、例えば1200、900、600mg/日以下であり、好ましくはオクスカルバゼピンの投与量は、600~1200mg/日である。
【0101】
いくつかの実施態様において、本発明のすべての態様によれば、体重が50kg以上の対象体では、オクスカルバゼピンの投与量は、2400mg/日以下、例えば2400、2100、1800、1500、1200、900、600mg/日以下であり、好ましくはオクスカルバゼピンの投与量は、1200mg/日である。
【0102】
更なる態様において、本発明は、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む、キット、キットオブパーツまたはシステムを提供する。好ましくは、キット、キットオブパーツまたはシステムは、(a)ラコサミドと(b)オクスカルバゼピンを含む。
【0103】
本発明のすべての態様によれば、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、経口、局所、非経腸もしくは経皮または吸入により投与され得る。ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、適切な滅菌溶液を用いて、注射または静脈内注入により投与され得る。局所剤形は、クリーム剤、軟膏剤、パッチ剤、または経皮および局所剤形に適した同様のビヒクルであり得る。経口が好ましい。例えば、ラコサミドの場合、いくつかの実施態様において、フィルムコーティング錠または経口液剤(例えば、商品名VIMPAT(登録商標))として投与されるが、静脈内投与も可能である。オクスカルバゼピンの場合、いくつかの実施態様において、フィルムコーティング錠または経口懸濁剤(例えば、商品名TRILEPTAL(登録商標))として投与される。
【0104】
本発明のすべての態様によれば、医薬組成物、キットまたはキットオブパーツは添加剤を含み得ると理解されるが、ラコサミド(またはその機能的に等価な類似体)およびオクスカルバゼピン(またはその機能的に等価な類似体)は、好ましくは、医薬組成物、キットまたはキットオブパーツ中に存在する唯一の治療活性物質であってもよく;あるいは本発明の処置の一部として投与されてもよい。
【0105】
上記の詳細な説明は、説明および例示として提供されたものであり、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書に例示する現在好ましい実施態様における多くの変形が当業者に明らかであり、特許請求の範囲およびその均等物の範囲内のままである。
【0106】
本発明を以下の項でさらに開示する:
【0107】
1. 遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツ。
【0108】
2. 遂行機能障害が、注意欠陥多動性障害(ADHD)または自閉症である、項1に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0109】
3. 遂行機能障害が、ADHDである、項1または2に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0110】
4. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、750~1800mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、項1~3のいずれか一項、好ましくは項3に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0111】
5. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)6~7週間後、900~1200mg/日の範囲の量まで増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、項1~3のいずれか一項、好ましくは項3または4に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0112】
6. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0113】
7. オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600mg/日を6~7週間、続いて:
(ii)900mg/日で1日量を維持し、所望により1~4週間後に、続いて:
i. 1200mg/日で1日量を維持するか;または
ii. 600mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0114】
8. 遂行機能障害が、自閉症である、項1または2に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0115】
9. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)1~2週間ごとに、200~500mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600~750mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、900~2400mg/日の範囲の量まで150~300mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、項1~3または8のいずれか一項、好ましくは項8に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0116】
10. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)50~100mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)続いて:
(ii)毎週、200~400mg/日の範囲の最大量まで50~100mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与し;および/または
(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600mg/日の初期量、(患者が忍容性を有する場合)所望により、続いて:
(ii)毎週、1200mg/日の最大量まで300mgずつ増量し、その1日量を維持する
に従って投与する、項1~3、8または9のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0117】
11. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)100mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iii)300mg/日を1~2週間、所望により、続いて:
(iv)400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、項1~3または8~10のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0118】
12. オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、下記処置レジメン:
(i)600mg/日を1~2週間、続いて:
(ii)900mg/日を1~2週間、続いて:
(iii)1200mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(iv)1800mg/日で1日量を維持し、所望により1~2週間後に、続いて:
(v)2400mg/日で1日量を維持する
に従って投与する、項1~3または8~11のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0119】
13. てんかん、双極性障害、発作、神経障害性疼痛、うつ病、不安、統合失調症、強迫性障害(OCD)、アルツハイマー病、前頭側頭骨性認知症、レヴィー小体認知症、トゥレット症候群および/または脳への外傷性傷害に罹患していない対象体における、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための、項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0120】
14. 遂行機能障害が、下記:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念
より選択される症状の1つ以上、好ましくは少なくとも2、3、4、5つまたはすべてで特徴付けられるかまたはそれらと関連する、項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0121】
15. 処置が、下記:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念
より選択される(遂行機能障害の)症状の1つ以上、好ましくは少なくとも2、3、4、5つまたはすべてを軽減する、項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0122】
16. ラコサミド、例えばラコサミド単剤療法での処置を以前受けていた対象体における、遂行機能障害の処置における同時、別個または連続使用のための組合せまたはキットオブパーツであって、以前の処置が、好ましくは遂行機能障害の処置である、項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0123】
17. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、400mg/日以下、例えば400、350、300、250、200、150、100または150mg/日以下であり、好ましくは、ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、200mg/日である、項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0124】
18. 成人のオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、2400mg/日以下、例えば2400、2100、1800、1500、1200、900、750または600mg/日以下であり、好ましくは、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、600~1800mg/日であり、より好ましくは、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、1200mg/日である、項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0125】
19. オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、1350mg/日以下、例えば1350、1200、1050、900、750、600mg/日以下であり、好ましくはオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の投与量が、600~1200mg/日である、項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0126】
20. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、1~3回/日、好ましくは2回/日で投与する、項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0127】
21. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、同時に投与する、項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0128】
22. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、別個に、例えば連続して投与する、項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0129】
23. ラコサミドの機能的に等価な類似体が、ラコサミドSエナンチオマー、ラコサミドラセミ体またはルフィナミドより選択され;および/またはオクスカルバゼピンの機能的に等価な類似体が、(L-および/またはR-)リカルバゼピン、エスリカルバゼピンまたは酢酸エスリカルバゼピンより選択される、項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0130】
24. 処置が下記:
(i)認知機能の改善;
(ii)認知能力の改善;
(iii)多動性の軽減;
(iv)不随意遺尿の軽減;
(v)睡眠の質の改善;および/または
(vi)気分の改善;
(vii)無快感の軽減;
(viii)時間知覚異常の軽減;
(ix)不快感の調節;および/または
(x)固定観念の軽減
の1つ以上またはすべてをもたらす、項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0131】
25. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体が、単一の医薬組成物中で共に製剤化されている、1~21のいずれか一項または項23もしくは24に記載の使用のための組合せ。
【0132】
26. ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体とオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体が、別個の医薬組成物中である、項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0133】
27. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体、例えばラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を含む第1医薬組成物;およびオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む第2医薬組成物を含む、キット、キットオブパーツまたはシステム。
【0134】
28. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害またはその症状に罹患している対象体に投与することを含む、遂行機能障害の処置方法。
【0135】
29. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、同時に、別個にまたは連続して投与する、項28に記載の方法。
【0136】
30. 遂行機能障害の1つ以上の症状の軽減における同時、別個または連続使用のための、(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体の組合せまたはキットオブパーツ。
【0137】
31. 遂行機能障害が、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)または自閉症である、項30に記載の使用のための組合せまたはキットオブパーツ。
【0138】
32. 1つ以上の症状が、下記:
(i)多動性および/または衝動性;
(ii)不随意遺尿;
(iii)攻撃的行動;
(iv)不眠または過眠;
(v)注意処理障害;
(vi)コミュニケーション障害;
(vii)ソーシャルスキル障害;
(viii)視覚および/または聴覚処理障害;
(ix)無快感;
(x)時間知覚異常;
(xi)不快感;および/または
(xii)固定観念
より選択される、項30または31に記載の使用のための組合せ。
【0139】
33. (a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を含む、医薬組成物。
【0140】
34. 遂行機能障害の処置方法における使用のためのラコサミドまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、治療有効量の(a)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体と(b)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体。
【0141】
35. 遂行機能障害の処置方法における使用のためのオクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体であって、方法が、治療有効量の(a)オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体と(b)ラコサミドまたはその機能的に等価な類似体を、遂行機能障害に罹患している対象体に投与することを含み、好ましくは、投与が連続、同時または別個である、オクスカルバゼピンまたはその機能的に等価な類似体。
【実施例】
【0142】
本発明は、以下の実験例を参照してさらに理解される。
【0143】
実施例1 ADHDの処置におけるラコサミド単剤療法と、ラコサミドとオクスカルバゼピンの併用療法の比較試験
ラコサミド単剤療法の効果を、ADHAに罹患している3名の患者(10歳と16歳の少年2名、13歳の少女1名)において6か月間にわたって試験した。6か月の期間後、処置を45日間中止した。次に、3名の患者をラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せで3か月間処置した。単独療法と併用療法の結果を比較した。
【0144】
(材料および方法)
試験の全期間中、患者を毎週臨床的にモニタリングした。また、ラコサミド単独療法および併用処置の処置前、中間期および終了時まで、教育学的状態および進歩についてもモニタリングした。さらに、処置前および処置後に様々な検査を実施することで、患者を神経心理学的にモニタリングした。彼らの遂行能力の基礎的測定を処置前に定めた。
【0145】
処置の投与
ラコサミドを、ラコサミド(Vimpat(登録商標))について4歳からのてんかん小児で承認された処置レジメンの前に患者に投与した。これを下記表に示す。
【表1】
【0146】
オクスカルバゼピンを、オクスカルバゼピン(TRILEPTAL(登録商標))について2~16歳の発作のある小児で承認された処置レジメンの前に患者に投与した。
【0147】
処置は1日2回行われ、少なくとも3か月間継続された。
【0148】
単剤療法
最初に、50mg/12時間の用量のラコサミドを、全患者に投与した。試験を通じて、臨床反応(注意力、睡眠、疲労感、気分の安定、理解力および全般的な認知機能の改善)に従って、ラコサミドの用量を全患者について300mg/12時間まで増量した(100mg/週ずつ)。
【0149】
併用処置
最初に、50mg/12時間の用量のラコサミドと、300mg/12時間の用量のオクスカルバゼピンを、全患者に投与した。試験を通じて、臨床反応(注意力、睡眠、疲労感、気分の安定、理解力および全般的な認知機能の改善)に従って、ラコサミドの用量を全患者について200mg/12時間まで増量した(100mg/週ずつ)。オクスカルバゼピンの用量を、全患者について7週目に450mg/12時間まで増量して、以前に到達したラコサミドのそれぞれの用量は維持した。
【0150】
(結果)
この初期用量(50mg/12時間)から開始して、ラコサミドの用量を、臨床徴候に基づいて臨床有効用量を反映するように調整した。ラコサミドを、最初は2回の摂取で100mg/24時間ずつ増加した。ラコサミドの最高用量は、400mg/24時間であった。併用療法では、ラコサミドの投与量に関係なく、オクスカルバゼピンを6週間後に全参加者について600mgから900mgに増量した。
【0151】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンの最終用量を、遂行機能障害および神経生理学的症状(例えば、多動性、遺尿および無気力)に関する患者の臨床結果に基づいて定めた。全患者における併用療法のラコサミドの臨床有効用量は、200mg/日であった。同様に、オクスカルバゼピンの最終用量は、600~1200mg/日(患者1:600mg/日、患者2:900mg/日および患者3:1200mg/日)であった。単剤療法におけるラコサミドの臨床有効用量は、2名の患者では600mg/日、1名の患者では350mgであった(表2)。
【表2】
【0152】
併用療法中の臨床有効用量の決定は、極めて重要であった:両方の分子は、臨床有効用量下で良好に忍容性を示したが、低すぎるまたは高すぎる用量では忍容性を示さず;望ましくない副作用(遺尿、頭痛、疲労感、意志の欠如、めまい)を示し、これらは投与量の再評価によってのみ回復させることができた。
【0153】
重要なことは、併用療法の一部として用いたラコサミドの臨床有効用量は、単剤療法のラコサミドの用量より実質的に少なかったことである。単剤療法のラコサミドの用量は、患者に投与できる認可量の上限ぎりぎりの範囲であった。
【0154】
(処置下での臨床進行)
(重度の多動の停止)
3名の患者のうち1名のみが多動に罹患していた。
【0155】
ラコサミド単独は、いずれの用量であっても、多動性制御を改善しなかった。多くの機能および精神能力がラコサミド単独療法中に改善されたが、最高用量のラコサミドであっても、患者は継続して動くことを止めるほどには改善しなかった。
【0156】
オクスカルバゼピンおよびラコサミドの組合せの投与は、患者の多動性を軽減した。
【0157】
(重度の認知障害/重度の言語障害)
3名の患者のうち2名は、極めて重度の認知障害を有していた。
【0158】
症例001のラコサミド単独投与は、多くの認知障害を改善したが、言語障害および極度の衝動性は、ラコサミド単独療法の投与後も変化しなかった。併用療法の投与により、衝動性の軽減という更なる利点が得られた。
【0159】
症例002およびと003は、ラコサミド単独投与で改善したが、障害の程度が実際に消失することはなかった。併用療法の投与により、一貫した認知改善が得られ、単独療法中に観察された改善をはるかに上回った。併用療法を受けた患者の両方で会話能力が実質的に改善したが、単独療法では影響がなかった。
【0160】
(遺尿)
ラコサミド単独療法は、遺尿に罹患した2名の患者における遺尿エピソードを部分的に止めた。組み合わせて投与した臨床有効用量のラコサミドとオクスカルバゼピンは、遺尿を完全に止めた。
【0161】
(気分の制御)
他者に対する攻撃的な行動(喧嘩)、意図的に抑えられた怒りおよび悲しみは、ラコサミドとオクスカルバゼピンの併用療法の適用により完全に消失した3つの形態の気分不安定であった。これらの症状は、ラコサミド単独療法中に部分的にのみ軽減された。
【0162】
(睡眠)
3例はいずれも、処置の不存在下で著しく機能不全の睡眠パターンを経験した。患者001は、入眠中に不安行動を示し、睡眠導入が遅くなり、極めて早く目覚めていた。患者002は、毎晩12時間の過眠であった。患者003は、睡眠サイクルの中断があった。睡眠パターンが、併用療法の投与により3例すべてで改善された。睡眠中の過眠および多動性の改善は、ラコサミド単独療法と比較して、併用療法の投与により実質的に良好であった。
【0163】
(無気力)
2名の患者は、エネルギーの欠如および緊張による疲労感(tense tiredness)を示し、必ずしも(necessary)睡眠を誘発しなかった。無気力状態は、ラコサミド単剤療法および併用処置で消失した。しかしながら、存在の質、注意の有効性、ならびに無気力に代わる覚醒および現実とのつながりは、併用療法下で臨床的により一貫していた。
【0164】
(社会的相互作用)
他者と共有し、社会的に密接に介入することができるかは、コミュニケーション能力に依存する。コミュニケーション能力がない場合、患者は孤立する傾向がある。同様に、患者が仲間からの安心できる「サイン」を感じないとき、良いことは何もないと常に思い込む。
【0165】
3名の患者のうち2名は、社会的交流が極度に限られていた。3人目の患者は、多動性と衝動性の特徴を持ち、頻繁な攻撃的な相互作用および不安定な(短く、突然)交流を有していた。
【0166】
併用療法はすべての症例で改善を示した(患者およびチューターと無関係に)。併用療法の効果は、単独療法の効果よりも有意に優れていた。
【0167】
(神経心理学的評価)
ラコサミド単独療法およびラコサミドとオクスカルバゼピンの併用療法についての神経心理学的検査の結果を評価した。3名の患者のうち2名は、神経心理学的指標の著しい改善を示した。もう1名の患者は、単剤療法および併用処置について同様の結果を示した。
【0168】
比較結果を以下に示す。
【0169】
症例001
Conners' Continuous Performance Test(CPT2-O)を用いた最初の評価(2020年6月)において、患者は進行するほど注意能力が低下することを示した。同じ試験の2回目の評価(試験終了)にて、この患者は不注意の指標が6から2に低下し、76.92%のスコアで「重度の障害」から「中等度の障害」として示される50%のスコアになった(表3)。これは、患者の多動が臨床的に改善し、したがって知的能力と能力(intellectual ability and capacity)が改善したという事実と相関している。
【0170】
Stroop-Pにより測定される名目上の能力は、ほぼ10%(51から60)改善し、「わずかな障害」から「平均」になった。これは、言語的推論(発話)の向上により示される。
【表3】
【0171】
症例002
症例002は、患者がラコサミド単独療法を受けている間に得られなかった教育的進歩を含む、臨床面で著しく進歩した:患者は、併用療法の投与後3か月以内に包括的読解まで向上した(表4)。
【表4】
【0172】
症例003
この患者は、社会的空間において特に抑制されており、学業上および神経認知上に極めて大きな困難があった。ラコサミド単独での処置の6か月後、およびラコサミドとオクスカルバゼピンでの併用療法の3か月後に実施した試験は、併用療法の投与後、8つの試験のうち5つで患者が有意に改善したことを示した(表5)。
【表5】
【0173】
患者の非言語的推論能力は、95ポイントから118ポイントに上昇し(6か月のラコサミド単独療法後の同じ試験に対して24%増加)、分類および抽象化(わずかな障害から高い平均へ)および認知の柔軟性(わずかな障害から平均的な障害へ)の能力が向上したことを示している。
【0174】
(考察)
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンでの併用処置は、様々なADHD指標の処置において、ラコサミド単独療法より優れた結果を示した。併用処置でのラコサミドの用量が単剤療法より実質的に少ないにもかかわらず、併用処置の優れた結果が得られた。
【0175】
ラコサミドとオクスカルバゼピンの併用療法では、自律神経系機能ならびに神経心理学的感覚、知的収量、教育的進歩および社会的相互作用が著しく改善し、ラコサミド単独療法中に観察されたものを超えていた。
【0176】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンの投与後の改善は緩やかであり、維持可能であった。これは、メチルフェニデート、リスペリドンおよびベンゾジアゼピンなどの分子刺激薬の投与後に現れ、短時間である突然の改善とは対照的である。これは、ラコサミドおよびオクスカルバゼピンの作用機序のタイプは、シナプス間空間内で作用する分子刺激因子の効果とは対照的に、細胞内にあるという仮説を裏付ける。
【0177】
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンの作用のタイプは細胞内メカニズムに関与しているため、これら2つの分子の長期投与が継続してADHD症状の改善をもたらす可能性が極めて高い。
【0178】
本試験で論じるアプローチは、著者または発明者が、少量の抗てんかん薬を患者に投与したときに得られるプロセロトニン作用または他の刺激薬/低用量効果に依存した同じ性質の様々なアプローチとは異なる。本試験において、用いた用量は既知の臨床範囲内である。
【0179】
実施例2 自閉症の処置におけるラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せ
自閉症に罹患している21歳の患者を、ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せで9週間処置した。
【0180】
患者は、本試験の一部として併用療法の投与前に、ラコサミドおよび/またはオクスカルバゼピン単剤療法を受けていない。
【0181】
(材料および方法)
患者を、処置の投与前後に神経心理学的に評価した。処置前と処置後の結果を比較した。テストには下記が含まれる:
1. Non Verbal Intelligence Test(TONI-4)
2. Conners' Continuous Performance Test(CPT-II)
3. Wisconsin Cards Sorting Test(WCST)
4. Trail Making Test(TMT)
5. Digit Symbol Substitution Test(DIGIT-SYM)
6. Stroop Colours and Words Test
7. Controlled Oral Association Test
8. Rey-Osterrieth Auditory Verbal Learning Test
9. Rey-Osterrieth Complex Figure Test(ROXCARBAZEPINEF)
10. Test Purdue Pegboard
【0182】
チューターまたは最も近い家族は、試験期間終了に向けて「ビフォーアフター」評価のために試験終了までに面接を受けた。
【0183】
患者は、週に1回9週間にわって精神科医および医師による診察および評価を受け、処置中の進行のキャンバスを作成した。
【0184】
ラコサミド+オクスカルバゼピンの治療を確立し、患者の臨床症状に応じて用量を調整した。2つの薬を一緒に開始した。
【0185】
(処置)
患者は、600mg/24時間でオクスカルバゼピンを、100mg/24時間でラコサミドと共に投与された。用量を臨床評価に従って段階的に変更し、各適応の間隔は7日間であった。分子それぞれを独立して投与した(一方を変更した場合、もう一方は7日間の投与を確認するまで変更しなかった)。
【0186】
(結果)
(処置前の患者の最初の臨床所見)
21歳の患者は、幼少時(4~6歳)に自閉症と診断された。患者はいくつかの大きな能力障害(社会的、認知的)を示した。EEGおよびIRMは、完全に正常であった。
【0187】
患者は以前、怒りのエピソードを和らげるために(精神科医によって)処方された投薬(神経弛緩薬処置)を受けていた。本試験の過程で、ラコサミドおよびオクスカルバゼピン以外の薬を服用しなかった。
【0188】
診察では、患者は自閉症および知的障害の複合症状を示した。しかしながら、試験前に行われたテストは、患者のIQは約99点であり、同年齢の対象体の平均範囲内であることを示した。
【0189】
患者は、典型的な動きまたはフラッピングを示さなかった。比較的発達した運動能力(ゆっくりとした動きおよびジェスチャーの脆い連鎖)を持っていた。
【0190】
患者の精神活動は、極めて秩序的であったが、不安な思考(約6/10が否定的だった)、固着したイメージおよび言語障害状態で満ちていた。患者はまた、吃音を示し、特定の言葉を何度も声に出して繰り返したいという強い衝動に駆られていた。
【0191】
患者には疲労または無気力症状は見られなかったが、母親は、参加するよう誘われた多くの活動を終えるにはエネルギーが不足することがあると言った。患者は感情過多であった。
【0192】
患者を最も悩ませている症状は、抑えられない怒りである。また、小さな出来事に対する過剰な反応、怒りの反応およびほとんど克服できない不安、ならびに断続的な落ち着きのなさを伴って、気分が不安定になりやすい。これらの現象の衝動的な性質は明らかである。
【0193】
患者はまた、運動幻覚(存在、視覚、嗅覚)も示した。
【0194】
患者は、対人関係に困難があり、相互関係において一定の未熟さがあり、規範を維持し理解することが明白だが相対的に困難であり、これは特に家族環境の外で顕著であった。通常の会話では極めて限定的で機能不全の表現力を示す。
【0195】
患者は、夢を思考としてコントロールしている感覚とともに、極めて軽い睡眠活動を目撃した。一晩中、自分の周りで何が起こっているかを聞くことができる。眠りにつくのが極めて困難であった - 肉体的緊張を感じる。疲れて目覚める。
【0196】
(処置下での臨床的進歩)
ラコサミド+オクスカルバゼピン治療の実施下での改善は徐々にであり、肉体的疲労を生じることなかった。
【0197】
患者が言語と現実に適応していることは、試験当初から患者自身、チューター、相談者にとって明らかであった。漸進的な秩序の感覚は、より重要な集中力のスキルの印象と同様に患者の思考を制した。
【0198】
睡眠導入が改善され、目覚めに伴う気分の質も改善された。用量を増やすことにより、社会的交流における明瞭さのパラメータが徐々に明らかになり、患者はより多くのエネルギーと意志力を回復した。
【0199】
処置の投与量の増加に従って、9週間の試験中に衝動性が著しく軽減した。
【0200】
思考の流れ、睡眠の質、気分の安定性および行動力または社会的交流の4つのパラメータの改善が顕著であった。
【0201】
併用療法における最高有効用量は、オクスカルバゼピン1200mg/日+ラコサミド200mg/日の用量であった。この用量では、自閉症の症状に対するプラスの効果が徐々に強化され、安定した。
【0202】
処置の60日目にて、患者は全体的に「極めて良い」と感じていると述べた。
【0203】
「対話の能力」および表現の質について、患者の評価は「優れている」であった。患者が対応するときの言語を理解する能力は「極めて良くなった」。人と交流するとき、患者は「うまくいっている」と感じ、以前より楽に定期的に行っていた。
【0204】
患者は、現在は良好な気分であり、以前は「悪い気分であった」ことに気づいた。一定のマンネリ感は残っているが、口頭表現の質は間違いなくより安定しており、流動的である。吃音は消失した。患者は、とてもよく眠れている(睡眠の導入、質、長さおよび朝の目覚めの質)と述べた。
【0205】
ラコサミドとオクスカルバゼピンの併用療法の投与は、患者が気分障害および異質攻撃性として認識しているものだけでなく、以下の点でも臨床上の利点があった:
〇認知機能:
・会話能力の向上
・集中力の向上
・言われたこと、聞かれたこと(意味)の理解の好ましい変化
〇睡眠の質;および
〇社会的アプローチ。
【0206】
患者の診断の定義において決定的となったこれらの臨床要素は、自閉症スペクトラム障害の原則の構成要素である。
【0207】
(神経心理学的評価)
ラコサミドおよびオクスカルバゼピンでの2か月の処置後、患者は試験開始時と同じ神経心理学的テストを受けた。
【0208】
比較結果を表6にまとめる。
【表6-1】
【表6-2】
【0209】
テストを実施した独立した神経心理学センターは以下のとおり結論づけた:
「患者は、大脳皮質の前頭前部が介在する遂行機能の顕著な向上を示している。この向上は次の指標に表れている:
患者のセルフコントロール(抑制性コントロール)のレベルは客観的に改善した。まだ臨床レベル内であるが、以前より重症度は低い。
患者の注意能力は著しく改善し、まだ臨床レベルにあるが、当初示した6つの不注意指標のうち、現在3つの不注意指標のみを示す。これは、注意機能の回復に進展があったことを示唆している。
患者は、臨床的に不注意な人から、不注意の診断基準はないが、より衝動性を示す指標がいくつかある人になった(したがって、患者は依然として持続的な注意を必要とする活動に失敗する)。推論能力(抽象化)は、臨床レベルから通常のレベルになり、これは、患者が自分の思考をよりよく整理し、経験を理解する能力を身につけ、それによって自分の行動をよりよく整理できるようになったことを示唆している。
運動の機敏性、視覚運動協調、視覚的保持、認知の柔軟性などの指標がわずかに改善し、これは、さらに3か月の処置でこれらの指標の実質的な改善が見られることを示唆している。
言語流暢性および計画性など、一部の指標は依然として反応せず、臨床レベルにとどまっている。」
【0210】
これらの結果は、臨床評価全体を通じて行われた観察を立証するものであれる。
【0211】
この改善は、いかなる種類の処置的、学術的または補助的な投薬モニタリングなしで得られたことに留意すべきである。
【0212】
(考察)
ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せは、幅広い自閉症症状の処置に極めて効果的である。自閉症症状の改善は、併用療法の継続投与によって徐々にであり、長期間持続する。
【0213】
本試験は、ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せが神経生理学的側面(睡眠の質、日中のエネルギー不足、運動能力)の制御を達成するだけでなく、神経学的問題の精神的発現(不安、集中力、圧縮/表現能力、言語との関係、したがって現実との関係)も調節し、患者の生活の質(認知的、生理学的、心理的および社会的)を向上させ、処置前には存在しなかった快適さと満足感のレベルに達するような統合を達成することを示している。
【0214】
ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せは、遂行機能障害、例えば自閉症に罹患している患者に対して明らかに極めて強力な解決策である。
【0215】
実施例3 遂行機能障害の処置におけるラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せ
ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せを、遂行機能障害に関連する様々な症状がある更なる3名の患者に投与した。ラコサミドとオクスカルバゼピンの組合せは、遂行機能障害の様々な症状の軽減に成功した。結果を表7~9に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【国際調査報告】