(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】複数の多機能電極ペアを備えた自動体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547083
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2022050836
(87)【国際公開番号】W WO2022167919
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519451740
【氏名又は名称】セルエーイーディー ライフ セーバー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テーバー エロール
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ドノヴァン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ13
4C053JJ23
(57)【要約】
自動体外式除細動器(AED)は、患者に配置される2つのパッドと、上記患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、上記2つのパッド上、又はパッド間に提供された複数の電極ペアと、上記複数の電極ペアに接続されたスイッチング回路及びショック生成回路と、上記スイッチング回路及び上記ショック生成回路に接続されたコントローラとを含み、上記コントローラは、上記複数の電極ペア間を高速で切り替えることで、空間分割多重を実行し、上記複数の電極ペアを複数方向で使用して、上記患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を自動的に実行するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動体外式除細動器(AED)であって、
患者に配置される2つのパッドと、
前記患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、前記2つのパッド上、又は前記パッド間に提供された複数の電極ペアと、
前記複数の電極ペアに接続されたスイッチング回路及びショック生成回路と、
前記スイッチング回路及び前記ショック生成回路に接続されたコントローラとを備え、前記コントローラは、前記複数の電極ペア間を高速で切り替えることで、空間分割多重を実行し、前記複数の電極ペアを複数方向で使用して、前記患者の心臓の電気測定及び刺激の前記複数の機能を自動的に実行するように構成される、自動体外式除細動器(AED)。
【請求項2】
複数方向で前記複数の電極ペアによって実行される前記患者の心臓の電気測定及び刺激の前記複数の機能は、
前記2つのパッドの位置を検出するために心臓電気信号を測定することと、
ショック可能な心調律を検出するためにECG信号を測定することと、
ショック可能な心調律が検出された場合、前記2つのパッドにより、前記パッドの検出された位置に基づく投与量の除細動ショックを送達することとを含む、請求項1に記載のAED。
【請求項3】
前記2つのパッドの一方は1つ以上の電極を有し、他方は2つ以上の電極を有する、請求項1に記載のAED。
【請求項4】
前記2つのパッドの位置を検出するために使用される前記測定後の心臓電気信号は、電圧、電流、インピーダンス、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2に記載のAED。
【請求項5】
前記コントローラは、前記測定後の心臓電気信号を解析して、複数の電極ペア間の複数方向での前記測定後の心臓電気信号の信号強度に基づいて、前記2つのパッドの位置を検出するよう更に構成される、請求項2に記載のAED。
【請求項6】
前記2つのパッドの前記検出された位置は、前記2つのパッドの互いに対する、並びに前記患者の心臓の心室に対する位置を含む、請求項2に記載のAED。
【請求項7】
前記コントローラは、前記2つのパッドにより、前記パッドの検出された位置に基づいて送達される除細動ショックの前記投与量を制御するよう更に構成される、請求項2に記載のAED。
【請求項8】
前記コントローラは、前記複数の電極ペア間を高速で切り替え、前記複数の電極ペア間の複数のポイントツーポイント電気回路経路を複数方向で走査した後で、前記複数の機能を実行するために最適な電極ペアを自動的に選択するよう更に構成される、請求項1に記載のAED。
【請求項9】
前記コントローラは、前記複数の電極ペアの任意の組み合わせにより、前記複数の電極ペア間の前記複数のポイントツーポイント電気回路経路の任意の組み合わせを複数方向の任意の組み合わせで使用して、前記複数の機能の任意の組み合わせを実行するために、前記複数の電極ペア間を高速で切り替えるよう更に構成される、請求項8に記載のAED。
【請求項10】
患者に配置される2つのパッドを含むAEDを使用する方法であって、前記方法は、
前記患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、前記2つのパッド上、又は前記パッド間に複数の電極ペアを提供することと、
前記複数の電極ペア間を高速で切り替えて、前記複数の電極ペアを複数方向で使用して、前記患者の心臓の電気測定及び刺激の前記複数の機能を自動的に実行することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複数の多機能電極ペアを備えた除細動パッドを有する自動体外式除細動器(AED)に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、AEDは、2つの除細動パッドにわたって分割された単一ペアの電極(パッドごとに1つの電極)を使用して、ショック可能な心調律を検出するために心電図(ECG)信号を測定し、除細動ショックを平均心臓電気軸に送達する機能を実行する。
【0003】
従来の単一電極ペアAEDは、幾つかの欠点を抱えている。電極の配置がわずかに変化するだけでも、ECG信号の信号品質及び除細動ショックの有効性は大きく変化することが多いため、単一電極パッドの効果的な配置は、AEDの電気測定及び刺激機能にとって決定的に重要である。
【0004】
AEDには、パッド配置用の視覚的なガイドが付いたものが多いが、このようなガイドは、成人の胸部の前方-前方の位置等、特定位置に単一のパッド電極を配置することに依存する。しかし、パッドを適切に配置するためのこのような手作業によるアプローチは、時間がかかり、ショック送達の遅延を最小限に抑えることが最優先事項であることを踏まえると、望ましくない。訓練を受けていても、従来のAEDでは、電極配置の誤りが起こりやすいことが知られている。
【0005】
更に、AEDに求められる重要要件の1つは、電極のレイアウト及びパッケージングで必要なパッドの占有面積を抑えた、コンパクトなデバイス・フォーム・ファクタである。同時に、パッドは、ECG信号を高品質で取得し、高い有効性で除細動ショックを送達できるものでなければならない。
【0006】
優れたAEDの設計ソリューションでは、デバイスサイズの小型化と、除細動の高い有効性及び高い信号品質との最適なトレードオフをもたらす必要がある。とは言え、製品要件及び規制基準が複雑に絡み合っていることにより、単一電極ペアを備えたAEDについて、係る最適なトレードオフを見出すことは困難である。
【0007】
こうした背景を鑑みれば、患者の心臓を電気的に測定、刺激するための電極構成を改善させた除細動パッドを備えたAEDを求めるニーズは満たされていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明によると、AEDが提供されており、上記AEDは、
患者に配置される2つのパッドと、
患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、2つのパッド上、又はパッド間に提供された複数の電極ペアと、
上記の複数の電極ペアに接続されたスイッチング回路及びショック生成回路と、
上記スイッチング回路及びショック生成回路に接続されたコントローラとを含み、上記コントローラは、複数の電極ペア間を高速で切り替えることで、空間分割多重(SDM)を実行し、複数の電極ペアを複数方向で使用して、患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を自動的に実行するように構成される。
【0009】
複数方向で複数の電極ペアによって実行される患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能は、
2つのパッドの位置を検出するために心臓電気信号を測定することと、
ショック可能な心調律を検出するためにECG信号を測定することと、
ショック可能な心調律が検出された場合、2つのパッドの検出された位置に基づく投与量の除細動ショックを送達することとを、含み得る。
【0010】
2つのパッドの一方には1つ以上の電極があり、他方には2つ以上の電極があり得る。
【0011】
2つのパッドの位置を検出するために使用される測定後の心臓電気信号は、電圧、電流、インピーダンス、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0012】
コントローラは、測定後の心臓電気信号を解析して、複数の電極ペア間の複数方向での測定後の心臓電気信号の信号強度に基づいて、2つのパッドの位置を検出するよう、更に構成され得る。
【0013】
2つのパッドの検出された位置は、2つのパッドの互いに対する、並びに患者の心臓の心室に対する位置を含むことができる。
【0014】
コントローラは、2つのパッドにより、これらパッドの検出された位置に基づいて送達される除細動ショックの投与量を制御するよう、更に構成され得る。
【0015】
コントローラは、複数の電極ペア間を高速で切り替え、複数の電極ペア間の複数の電気回路経路を複数方向で走査した後に、複数の機能を実行するために最適な電極ペアを自動的に選択するよう、更に構成され得る。
【0016】
コントローラは、複数の電極ペアの任意の組み合わせにより、複数の電極ペア間の複数の電気回路経路の任意の組み合わせを複数方向の任意の組み合わせで使用して、複数の機能の任意の組み合わせを実行するために、複数の電極ペア間を高速で切り替えるよう、更に構成され得る。
【0017】
更に、本発明は、患者に配置される2つのパッドを含むAEDの使用方法も提供しており、上記方法は、
患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、2つのパッド上、又はパッド間に複数の電極ペアを提供することと、
複数の電極ペア間を高速で切り替えて、複数の電極ペアを複数方向で使用して、患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を自動的に実行することとを、含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
これから、以下の添付の図面を参照することで、本発明の実施形態について、ほんの一例として説明する。
【
図1】本発明の一実施形態に係るAEDの上面斜視図である。
【
図2】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図3】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図4】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図5】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図6】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図7】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図8】種々の複数電極構成を有するAEDの除細動パッドの底面図である。
【
図9】成人患者で使用される、異なる複数の多機能電極構成を備えた除細動パッドを有するAEDの概略図である。
【
図10】成人患者で使用される、異なる複数の多機能電極構成を備えた除細動パッドを有するAEDの概略図である。
【
図11】成人患者で使用される、異なる複数の多機能電極構成を備えた除細動パッドを有するAEDの概略図である。
【
図12】成人患者で使用される、異なる複数の多機能電極構成を備えた除細動パッドを有するAEDの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るAED100は、全般に、互いに分離されて、患者上、例えば、成人の前方-前方の位置に配置されることを目的とした2つの除細動パッド110を含むことができる。AED100は、パッドの占有面積が小さい、コンパクトなデバイス・フォーム・ファクタを有することができる。好適なコンパクトAED100は、本出願人のWO2018/232450号で更に詳細に記載されており、同特許は、その全体を参照により本明細書で援用する。
【0020】
図2~
図8を参照すると、複数の電極ペア120は、患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するために、2つのパッド110上、又はパッド間に提供されてもよい。複数の電極ペア120は、2つのパッド110の同じ一方に配列された電極120のペア、及び/又は、2つのパッド110にわたって、あるいはこれらパッドの間で画定された電極120のペアを含み得る。例えば、2つのパッド110の一方には1つ以上の電極120があり、他方には2つ以上の電極120があり得る。2つのパッド110は、同じ又は異なる数の電極120を有することができる。電極120の形状、サイズ、表面積は同じ、又は異なっていてもよい。電極120は、電極120の同一の、又は異なる規則的で反復する均一なパターン、あるいはレイアウトを有する、電極120の2つのサブアレイの2つのパッド110上に配置(パッド当たり1つのサブアレイ)されてもよい。
【0021】
2つのパッド110上の電極120のサイズ、間隔、表面積、配置、電気的絶縁、パッケージング、レイアウト等は、空いている占有面積スペース、並びに最小電極表面積、利用可能な電力、コスト等の他の設計パラメータ、製品要件、及び規制基準に依存し得る。
【0022】
電子機器モジュール(図示せず)は、2つのパッド110の一方、又は、双方のエンクロージャにパッケージされてもよい。電子機器モジュールは、複数の電極ペア120に接続されたスイッチング回路及びショック生成回路を含むことができる。電子機器モジュールは、スイッチング回路及びショック生成回路に接続された、1つ以上のプロセッサ等のコントローラも更に含むことができる。
【0023】
電子機器モジュールは、1つ以上のバッテリ等の他の電子構成部品も更に含んでもよく、これらも同様に、2つのパッド110の一方、又は、双方のエンクロージャにパッケージングされている。AED100の電子構成部品については、上記で述べた本出願人のWO2018/232450号で更に詳述されている。
【0024】
図9~
図12を参照すると、2つのパッド110は、分離されて、患者130に配置される際、リード線(図示せず)によって互いに、且つ電子機器モジュールに接続されてもよい。使用に際して、コントローラは、複数の電極ペア120間を高速で切り替えることで、SDMを実行し、複数の電極ペア120を複数方向で使用して、患者の心臓140の電気測定及び刺激の複数の機能を自動的に実行するように構成され得る。
【0025】
複数方向で複数の電極ペア120によって実行される患者の心臓140の電気測定及び刺激の複数の機能は、2つのパッド110の位置を検出するために心臓電気信号を測定することと、ショック可能な心調律を検出するためにECG信号を測定することと、ショック可能な心調律が検出された場合、2つのパッド110により、これらパッドの検出された位置に基づく投与量の除細動ショックを送達することとを、含み得る。
【0026】
複数の電気測定機能は、複数の電極ペア120によって、逐次的、又は連続的に実行されてもよい。例えば、複数の電極ペア120を使用して、除細動ショック投与の送達前後に、心臓電気信号とECG信号を測定することができる。
【0027】
幾つかの実施形態において、各電極ペア120は、所定の特定機能を有してもよく、例えば、一方の電極ペア120を使用して、2つのパッド110の位置を検出するために心臓電気信号を測定することができ、他方の電極ペア120を使用して、2つのパッド110により、これらパッドの検出された位置に基づく投与量の除細動ショックを送達することができる。更に、又は代替え的に、各電極ペア120は、上述した複数の機能の一部、あるいは全てを逐次的、又は連続的に実行することができる。例えば、同じ電極ペア120を使用して、ECG信号を測定し、除細動ショックの投与を交互の順序で送達することができる。
【0028】
他の実施形態において、各電極ペア120は、所定の特定機能を持たない場合がある。その代わりに、コントローラは、複数の電極ペア120間を切り替え、複数の電極ペア間の複数のポイントツーポイント電気回路経路の一部、又は全てを複数方向で走査した後に、複数の機能を実行するために最適な電極ペア120を自動的に選択するよう、更に構成され得る。この文脈において、「空間分割多重」(SDM)とは、複数の電極ペア120の任意の組み合わせにより、複数方向又は極性の任意の組み合わせとして、複数の電極ペア120間の複数のポイントツーポイント電気回路経路の任意の組み合わせを使用して、複数の機能の任意の組み合わせを実行できることを、意味し得る。
【0029】
コントローラは、測定後の心臓信号及び検出された2つのパッド110の位置に基づいて、複数の機能を実行するために最適な電極ペア120を自動的に選択することができる。つまり、コントローラは、複数の機能を実行するための2つのパッド110間の最適なポイントツーポイント回路の始点及び終点それぞれとしての最適な電極ペア120として、2つのパッド110上又はこれらパッド間の個々の電極120をそれぞれ自動的に選択することができる。
【0030】
例えば、二相性除細動ショックの第1相を成人に送達するための最適な位置は、負極性が割り当てられる、患者の右心室に最も近くにある電極120のことである。除細動の有効性を最適化するために、コントローラは、2つのパッド110のうち、患者の右心室に最も近い位置にあるものを検出し、更に、この検出されたパッド110上の電極ペア120の一方の電極120を、回路経路の終点として機能する他方のパッド110上の電極ペア120においてペアとなった第2電極120に二相性除細動ショックの第1相を送達するための負極性を有する開始点として自動的に選択することができる。
【0031】
2つのパッド110の位置を検出するために使用される測定後の心臓電気信号は、電圧、電流、インピーダンス、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。2つのパッド110の検出された位置は、2つのパッド110の互いに対する、並びに患者の心臓130の心室150に対する位置と向きを含むことができる。
【0032】
例えば、
図9~
図12で見られるように、2つのパッド100の互いに対する、並びに心室150に対する検出された位置と向きは、一方のパッド110が胸部の右上側にあり、他方のパッド110が胸部の左下側にある成人患者の前方-前方位置を構成し得る。小児患者(図示せず)については、2つのパッド100の互いに対する、並びに心室150に対する検出された位置と向きは、一方のパッド110が胸部の前方にあり、他方のパッド110が胸部の後方にある前方-後方位置を構成し得る。
【0033】
幾つかの実施形態において、コントローラは、2つのパッド110の互いに対する、並びに心室150に対する検出された位置と向きに基づいて、患者が成人であるか、あるいは小児であるかを検出するように構成されてもよい。コントローラは、2つのパッド110の互いに対する、並びに心室150に対する検出された位置と向きに少なくとも部分的に基づいて、除細動ショックの成人投与量、又は小児投与量を自動的に選択するよう、更に構成されてもよい。
【0034】
コントローラは、測定後の心臓電気信号を解析して、複数の電極ペア120間の複数方向での測定後の心臓電気信号の信号強度に基づいて、2つのパッド110の位置と向きを検出するように構成され得る。
【0035】
例えば、複数方向での複数の電極ペア120間の測定後の心臓電圧の最高信号強度を使用して、2つのパッド110のうち、患者の心室150に最も近いもの、あるいは、心室150から左下に延びる患者130の平均心臓電気軸(図示せず)上に、2つのパッド120が位置するか、又は配向しているかを検出することができる。
【0036】
コントローラは、2つのパッド110により、これらパッドの検出された位置と向きに基づいて送達された投与量(強度と方向)の除細動ショックを制御するよう、更に構成され得る。除細動ショックの投与量は、その極性とエネルギーを変動させることで制御することができる。除細動ショックの投与エネルギーは、電圧、電流、波形、持続時間、又はこれらの組み合わせを変動させることで制御することができる。除細動ショックは、単相性ショック又は二相性ショックを含むことができる。
【0037】
コントローラによって実行される複数の電極ペア120のSDMにより、除細動ショックの投与量を患者130の平均心臓電気軸に集中させることができる。そして、これにより、除細動の有効性を低下させることなく、除細動ショックの投与エネルギーレベルを低下させ、個々の電極120の表面積を小さくすることができる。これによって、AED100の電力要件、バッテリサイズ、フォームファクタ、及びコストを削減したり、あるいは、保存期間、又は耐用年数を延ばすことができる。
【0038】
更に、コントローラによって実行される複数の電極ペア120のSDMは、信号品質を低下させることなく、表面積を小さくした電極120を使用して、心臓電気信号及びECG信号を測定可能とし得る。
【0039】
したがって、本発明の実施形態は、デバイスサイズの小型化と、除細動の高い有効性及び高い心臓信号品質との最適なトレードオフを改善するAED100を提供できる。
【0040】
本発明の実施形態は、患者の心臓の電気測定及び刺激の複数の機能を実行するための一般目的、及び専用目的で有用な複数の多機能電極ペアを備えた除細動パッドを有するAEDを提供する。
【0041】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「comprising(含む)」という単語は、「~を含むが、これに限定されない」という意味であり、「comprises(含む)」という単語は、それに対応する意味を持つ。
【0042】
上記実施例によって実現、裏付けられる本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】