(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】作動機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/295 20060101AFI20240129BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20240129BHJP
A61B 34/30 20160101ALN20240129BHJP
【FI】
A61B17/295
A61B17/29
A61B34/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547159
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 GB2022050317
(87)【国際公開番号】W WO2022175642
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522063697
【氏名又は名称】プレシジョン ロボティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャン ジャンジュン
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA04
4C130AA13
4C130AA18
4C130AA42
4C160FF12
4C160FF19
4C160GG22
4C160GG40
(57)【要約】
作動機構は、ジョー軸の周りで回転可能であり、第1ジョー係合部を備える第1ジョーと、ジョー軸の周りで回転可能であり、第2ジョー係合部を備える第2ジョーと、ジョー軸に平行な駆動軸の周りで回転可能であり、第1駆動係合部及び第2駆動係合部を備えるドライバーとを備える。第1ジョー係合部と駆動係合部は互いにスライド可能に係合可能であり、第2ジョー係合部と駆動係合部は互いにスライド可能に係合可能である。それにより、第1ジョー係合部が第1駆動係合部と係合し、第2ジョー係合部が第2駆動係合部と係合するとき、駆動軸の周りのドライバーの回転により、第1ジョーは第1向きに回転し、第2ジョーは反対の向きに回転する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動機構であって、
ジョー軸の周りで回転可能であり、第1ジョー係合部を備える第1ジョーと、
前記ジョー軸の周りで回転可能であり、第2ジョー係合部を備える第2ジョーと、
前記ジョー軸に平行な駆動軸の周りで回転可能であり、第1駆動係合部及び第2駆動係合部を備えるドライバーと、を備え、
前記第1ジョー係合部と前記第1駆動係合部は、互いにスライド可能に係合可能であり、前記第2ジョー係合部と前記第2駆動係合部は、互いにスライド可能に係合可能であり、それにより、前記第1ジョー係合部が前記第1駆動係合部と係合し、前記第2ジョー係合部が前記第2駆動係合部と係合するとき、前記駆動軸の周りの前記ドライバーの回転により、前記第1ジョーは第1向きに回転し、前記第2ジョーは反対の向きに回転する、ことを特徴とする作動機構。
【請求項2】
それぞれ前記ドライバーに取り付け可能な第1腱と第2腱をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の作動機構。
【請求項3】
各ジョーは、駆動部、ツール部、及びジョーアクスル受け部を備え、前記ジョーアクスル受け部は、前記駆動部と前記ツール部との間に位置決めされ、前記ジョー軸に沿って延びる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作動機構。
【請求項4】
前記第1と第2ジョー係合部はそれぞれ、それぞれのジョーの駆動部に位置決めされる、ことを特徴とする請求項3に記載の作動機構。
【請求項5】
前記第1と第2ジョーのツール部は、鋏刃、鉗子、ディセクター又は把持器として構成される、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の作動機構。
【請求項6】
各ジョーは、開位置と閉位置との間で回転可能である、ことを特徴とする請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項7】
前記作動機構は、各ジョーがその開位置にある開構成と、各ジョーがその閉位置にある閉構成との間で移動可能である、ことを特徴とする請求項6に記載の作動機構。
【請求項8】
ジョーアクスルを備えるハウジングをさらに備え、
前記ジョーアクスルは、前記ジョー軸に沿って延び、各ジョーが前記ジョーアクスルの周りで前記ハウジングに対して回転可能であるように、各ジョーの前記ジョーアクスル受け部内に回転可能に受け入れ可能である、ことを特徴とする請求項3~請求項7のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項9】
前記ドライバーは、駆動アクスル受け部をさらに備え、前記ハウジングは、駆動アクスルをさらに備え、前記駆動アクスルは、前記駆動軸に沿って延び、前記ドライバーが前記駆動アクスルの周りで前記ハウジングに対して回転可能であるように、前記ドライバーの前記駆動アクスル受け部内に回転可能に受け入れ可能である、ことを特徴とする請求項8に記載の作動機構。
【請求項10】
前記第1ジョー係合部は第1ピンを備え、前記第2ジョー係合部は第2ピンを備え、前記第1駆動係合部は第1スロットを備え、前記第2駆動係合部は第2スロットを備える、ことを特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項11】
前記第1ジョー係合部は第1スロットを備え、前記第2ジョー係合部は第2スロットを備え、前記第1駆動係合部は第1ピンを備え、第2駆動係合部は第2ピンを備える、ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項12】
前記第1ジョー係合部は第1ピンを備え、前記第2ジョー係合部は第2スロットを備え、前記第1駆動係合部は第1スロットを含み、前記第2駆動係合部は第2ピンを備える、ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の作動機構。
【請求項13】
手術器具であって、シャフトと、前記シャフトに結合された関節部と、前記関節部に結合されたエンドエフェクタとを備え、前記エンドエフェクタは、先行請求項のいずれか一項に記載の作動機構を備える、ことを特徴とする手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動機構に関し、特に、限定するものではないが、単一対の腱による2つのジョー部材の作動を容易にする作動機構に関する。本発明は、低侵襲外科手術のための手術器具のエンドエフェクタの一部を形成する2つのジョー部材の作動を容易にするために、外科用ロボット工学の分野で特に用途を有する。ただし、本発明はそのような用途に限定されず、ジョー部材などの2つ以上の可能部分を有する腱駆動エンドエフェクタを備える他の医療/手術装置又はロボット装置にも使用することができる。
【0002】
本明細書では、本発明は、主に、サージカルロボティクスの分野における応用に関連して説明される。しかしながら、これは、例示のみを目的としており、他の分野における本発明の応用を排除するものではない。
【背景技術】
【0003】
ロボティック手術システムの一部を形成する既知の手術器具は、シャフト、関節部及びエンドエフェクタを備える。シャフトは、関節部とエンドエフェクタの移動を制御及び駆動する手術用ロボットの他のコンポーネントから延在し得る。それによって、シャフトは、関節部とエンドエフェクタを患者の必要な領域に配置することを容易にし得る。関節部は、シャフトに対するエンドエフェクタの移動の自由度を提供するために、互いに隣接して位置決めされた複数のジョイントを含んでもよい。最後に、エンドエフェクタは、外科手術に必要な特定の動作を実行するように適合化されてもよい。
【0004】
既知のエンドエフェクタは、例えば、把持器、鉗子、鋏及びディセクターなどの2つの可動ジョー部材を有するエンドエフェクタを含む。既知のエンドエフェクタも腱駆動型であり、これは、エンドエフェクタの各可能な関節動作が、エンドエフェクタ又はエンドエフェクタの一部に固着された腱の引っ張りによって引き起こされることを意味する。さらに、既知のエンドエフェクタは、各関節動作が確実に反転できるように、拮抗する腱の対によって駆動される。例えば、第1方向へのジョー部材の作動が第1腱の引張によって引き起こされる場合、第2の反対方向へのジョー部材の作動は、第2(拮抗する)腱の引張を必要とする可能性がある。
【0005】
幾つかの既知のエンドエフェクタでは、各ジョー部材は、別個の対の拮抗腱によって駆動され得る。しかしながら、これは、エンドエフェクタの動作のために4つの腱が必要であり、各腱には、腱の作動を駆動し、腱の動きをエンドエフェクタのそれぞれのジョー部材に変換する関連する可動部分があることを意味する。このような既知のエンドエフェクタは、すべての4つの腱及び関連する可動部分を容易にするために手術器具をどれだけ小さくできるか、また、それらの4つの腱を駆動するために必要なモーター及び他のコンポーネントのすべてを備えながらいかにコスト効率よく製造できるかなどの制限を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様によれば、作動機構が提供される。この作動機構は、ジョー軸の周りで回転可能であり、第1ジョー係合部を備える第1ジョーと、ジョー軸の周りで回転可能であり、第2ジョー係合部を備える第2ジョーと、ジョー軸に平行な駆動軸の周りで回転可能であり、第1駆動係合部及び第2駆動係合部を備えるドライバーとを備える。前記第1ジョー係合部と前記第1駆動係合部は、互いにスライド可能に係合可能であり、前記第2ジョー係合部と前記第2駆動係合部は、互いにスライド可能に係合可能であり、それにより、前記第1ジョー係合部が前記第1駆動係合部と係合し、前記第2ジョー係合部が前記第2駆動係合部と係合するとき、前記駆動軸の周りの前記ドライバーの回転により、前記第1ジョーは第1向きに回転し、前記第2ジョーは反対の向きに回転する。
【0007】
各ジョーの回転は、それぞれの駆動係合部に対する各ジョー係合部の構成により、ドライバーの回転によって引き起こされ得る。例えば、第1ジョー係合部は、ジョー軸から一定距離にあってもよく、第1駆動係合部は、駆動軸の周りで回転するとき、第1ジョー係合部が第1駆動係合部に対してスライドしながらジョー軸の周りで回転することを引き起こすように配置されてもよい。一方、第2ジョー係合部と第2駆動係合部は、ドライバーの同じ回転が第2ジョーを等しく且つ逆方向に回転させるように、相補的に構成されてもよい。
【0008】
従って、本発明によれば、単一のドライバーを回転させることによって、作動機構の第1ジョー及び第2ジョーの両方を同時に回転又は作動させることができる。ドライバーに固定されたモーター駆動軸を介して、又はそれぞれドライバーに取り付けられた一対の拮抗腱を介してなど、任意の手段によってドライバーの回転を駆動することができる。
【0009】
本発明の実施形態では、作動機構は、それぞれドライバーに取り付け可能な第1と第2腱をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明のこのような実施形態では、第1と第2腱は、一対の拮抗腱を形成してもよく、第1腱の作動によりドライバーが第1向きに回転し、第2腱の作動によりドライバーが反対向きに回転する。従って、作動機構は、単一対の拮抗腱を作動させることによって操作することができる。言い換えれば、幾つかの既知のエンドエフェクタの場合のように、作動機構を操作するために2つの別個の対の拮抗腱(各ジョーに1つ)を必要とする必要がない。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態では、第1と第2腱は、接合されてもよく、さらに一体的に形成されてもよい。
【0012】
本発明の実施形態では、各ジョーは、駆動部、ツール部、及び、駆動部とツール部との間に位置決めされジョー軸に沿って延びるジョーアクスル受け部をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明のこのような実施形態では、ジョーアクスル受け部は、ジョー軸の周りのジョーの回転を容易にし得るジョー軸に沿って延びる開口を備えてもよい。ツール部は、ジョーアクスル受け部から、ジョー軸に垂直な第1方向に延びてもよく、駆動部は、第1方向と実質的に反対の第2方向に延びてもよい。幾つかの実施形態では、ツール部は、駆動部と一体であってもよく、他の実施形態では、ツール部は別個であってもよいが、駆動部に取り付け可能である。
【0014】
本発明の実施形態では、第1と第2ジョー係合部は、それぞれのジョーの駆動部に位置決めされてもよい。
【0015】
本発明のこのような実施形態では、各ジョーの駆動部は、それぞれのジョーと駆動係合部が互いに係合するために好適に、ドライバーと少なくとも部分的に重なるように位置決め可能であってもよい。
【0016】
本発明の実施形態では、第1と第2ジョーのツール部は、鋏刃、鉗子、ディセクター又は把持器として構成されてもよい。さらに、本発明の実施形態では、ツール部は、単一のドライバー及びオプションで単一対の拮抗腱によって駆動されることから利益を得ることができる任意の適切なバイポーラツールを形成するように構成されてもよい。それに応じて、本発明による作動機構は、異なるタスクを実行するために好適な一連の装置を提供するように適合されてもよい。
【0017】
本発明の実施形態では、各ジョーは、開位置と閉位置との間で回転可能である。さらに、作動機構は、各ジョーがその開位置にある開構成と、各ジョーがその閉位置にある閉構成との間で移動可能である。言い換えれば、ドライバーを回転させることによって、ジョーを開閉することができる。ドライバー及び2つのジョーは、各ジョーがそれぞれの開位置と閉位置との間の任意の位置に回転できるように、連続的に回転可能であってもよい。
【0018】
本発明の実施形態では、作動機構は、ジョーアクスルを備えるハウジングをさらに備えてもよい。このジョーアクスルは、ジョー軸に沿って延び、各ジョーがジョーアクスルの周りでハウジングに対して回転可能であるように、各ジョーのジョーアクスル受け部内に回転可能に受け入れ可能である。
【0019】
本発明のこのような実施形態では、ハウジングは、各ジョーを支持するように適合されてもよく、ピン及びスロット機構がブロック又は妨害されるリスクを低減するために、駆動部を少なくとも部分的に隠して保護してもよい。
【0020】
ハウジングはまた、内部組織ofa患者if the作動機構が手術器具又はロボットの一部として使用されている場合に、患者の内部組織を損傷する可能性のある鋭いエッジ又はコーナーが最小限に抑えられた、実質的に滑らかで規則的及び/又は連続的な外面を有するように適合されてもよい。ハウジングはまた、作動機構の一部を形成するドライバー、駆動部、及び係合部の不規則な表面から患者の内部組織を保護するように構成されてもよい。
【0021】
本発明の実施形態では、ドライバーは、駆動アクスル受け部をさらに備えてもよく、ハウジングは、駆動軸に沿って延び、ドライバーが駆動アクスルの周りでハウジングに対して回転可能であるように、ドライバーの駆動アクスル受け部内に回転可能に受け入れ可能な駆動アクスルをさらに備えてもよい。
【0022】
本発明のこのような実施形態では、ハウジングは、ドライバーを支持するように適合されてもよく、ドライバー及び/又は腱がブロック、妨害又は損傷されるリスクを低減するために、ドライバー及び取り付けられた第1と第2腱を少なくとも部分的に隠して保護してもよい。
【0023】
本発明の実施形態では、第1ジョー係合部は第1ピンを備えてもよく、第2ジョー係合部は第2ピンを備えてもよく、第1駆動係合部は第1スロットを備えてもよく、第2駆動係合部は第2スロットを備えてもよい。
【0024】
本発明のこのような実施形態では、各スロットは、駆動アクスル受け部から一定距離、従って、駆動軸から一定距離にあってもよい。使用中、駆動軸の周りのドライバーの回転により、第1と第2スロットが駆動軸の周りで回転する。スロットの各々が回転すると、それぞれのピンがスロット内に留まるように移動する。各ピンは、ジョーアクスル受け部から一定距離(従って、ジョー軸から一定距離)にあってもよい。これは、ピンがそれぞれのスロット内でスライドしている間、ピンの動きがジョー軸の周りの回転に制限されることを意味する。各ピンがジョー軸の周りで回転すると、それに応じて、各ジョーもジョー軸の周りで回転する。従って、ドライバーの回転は、ジョーの回転を引き起こす。各ピンは、ジョーアクスル受け部に対して位置決めされてもよく、各スロットは、ドライバーによって引き起こされる各ジョーの回転が他方のジョーの回転方向と反対の方向にあるように、駆動アクスル受け部に対して位置決め及び配向されてもよい。本発明の幾つかの実施形態では、ドライバーによって引き起こされる各ジョーの回転度は、他方のジョーと等しくてもよい。言い換えれば、ジョーは、互いに実質的に対称に移動可能であってもよい。本発明の他の実施形態では、ドライバーは、ジョーを異なる量、即ち互いに非対称に回転させることができる。
【0025】
本発明の実施形態では、第1ジョー係合部は第1スロットを備えてもよく、第2ジョー係合部は第2スロットを備えてもよく、第1駆動係合部は第1ピンを備えてもよく、第2駆動係合部は第2ピンを備えてもよい。
【0026】
本発明のこのような実施形態では、各ピンは、駆動アクスル受け部から一定距離、従って、駆動軸から一定距離にあってもよい。使用中、駆動軸の周りのドライバーの回転により、第1と第2ピンが駆動軸の周りで回転する。ピンの各々が回転すると、ピンがその中に留まるように、それぞれのスロットが移動する。各スロットは、ジョーアクスル受け部から一定距離、従って、ジョー軸から一定距離にあってもよい。これは、スロットの動きが、それぞれのピンをスロット内に保持するためにスライドしながらジョー軸の周りの回転に制限されることを意味する。各スロットがジョー軸の周りで回転すると、それに応じて、各ジョーもジョー軸の周りで回転する。従って、ドライバーの回転は、ジョーの回転を引き起こす。各ピンは、駆動アクスル受け部に対して位置決めされてもよく、各スロットは、ドライバーによって引き起こされる各ジョーの回転が他方のジョーの回転方向と反対の方向にあるように、ジョーアクスル受け部に対して位置決め及び配向されてもよい。本発明の幾つかの実施形態では、ドライバーによって引き起こされる各ジョーの回転度は、他方のジョーと等しくてもよい。言い換えれば、ジョーは、互いに実質的に対称に移動可能であってもよい。本発明の他の実施形態では、ドライバーは、ジョーを異なる量、即ち互いに非対称に回転させることができる。
【0027】
本発明の実施形態では、第1ジョー係合部は第1ピンを備えてもよく、第1駆動係合部は第1スロットを備えてもよく、第2ジョー係合部は第2スロットを備えてもよく、第2駆動係合部は第2ピンを備えてもよい。各ピンとスロットの配置は、上記のように動作することができる。
【0028】
各ピンの位置及び各スロットの位置と配向は、それがジョー係合部又は駆動係合部であるかに関係なく変更されてもよい。さらに、使用中の作動機構の性能は、ピン及びスロットの位置及び/又は配向を適合することによって変更、調整及び/又は最適化することができる。例えば、ドライバーの半径と、各ピンと駆動軸との間の距離との間の比は、それぞれのジョーの力増幅率に比例する。言い換えれば、ピンが駆動軸に近づくほど、ドライバーを回転させることによってピンに加えられる力が大きくなり、それぞれのジョーが及ぼす可能性のある力が大きくなる。従って、所与の位置から開閉するときにジョーによって及ぼされる力は、それぞれのジョーがその位置にあるときに駆動軸に近づくか又は遠ざかるように、それぞれのピンを構成することによって増加又は減少することができる。
【0029】
また、スロットによってピンに及ぼされる可能性のある力は、スロットがそれぞれのジョーの中心線(即ち、ジョー中心線)とどれだけ平行に近いかによって決まり、ここで、ジョー中心線は、ジョー軸とそれぞれのピンの中心とを通って延びる。スロットがジョー中心線と実質的に平行である場合、スロットとピンとの間に及ぼされる力は、ジョー中心線に対して実質的に垂直であり、角度によって摩擦で失われる力の割合は小さくなる。逆に、スロットがジョー中心線と垂直に近い場合、スロットとピンとの間に及ぼされる力は鋭角となり、結果としてジョーに伝達される力の量が損失する。
【0030】
本発明の第2態様によれば、手術器具が提供される。この手術器具は、シャフトと、シャフトに結合された関節部と、関節部に結合されたエンドエフェクタとを備え、エンドエフェクタは、本発明の第1態様による作動機構を備える。
【0031】
手術器具は、外科手術に使用されてもよく、ロボティック手術器具であってもよい。関節部は、最大6自由度でシャフトに対するエンドエフェクの移動を容易にするように作動することができる。さらに、関節部は、例えば、腱の作動を駆動することができるアクチュエータ及びモーターまでシャフトに沿って延びる複数の腱によって作動することができる。
【0032】
使用中、エンドエフェクタ、関節部及びシャフトは、エンドエフェクタが(関節部の作動を介して)操作され、駆動機構を介して、より具体的にはドライバーの回転によって作動され、関連する外科手術に必要なタスクを実行できるように、患者に対して必要に応じて位置決めされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
ここでは、添付の図面を参照して、例としてのみ本発明を説明する。
【0034】
【
図1】本発明の第1態様の実施形態による作動機構の模式図である。
【
図2】ジョーが開位置にある、
図1に示される作動機構の模式図である。
【
図4】ジョーが閉位置にある、
図1に示される作動機構の模式図である。
【
図6a-6c】それぞれ正面図、背面図、側面図を示す、本発明の第1態様の別の実施形態による作動機構の模式図である。
【
図7a-7b】内部コンポーネントを示し、ジョーが閉位置にある、
図6a、6b及び6cに示される作動機構の模式図である。
【
図8a-8b】内部コンポーネントを示し、ジョーが開位置にある、
図6a、6b及び6cに示される作動機構の模式図である。
【
図9a-9b】それぞれ正面図及び背面図を示す、本発明の第1態様の別の実施形態による作動機構の模式図である。
【
図10a-10b】それぞれ正面図及び背面図を示す、本発明の第1態様の別の実施形態による作動機構の模式図である。
【
図11a-11b】それぞれ正面図及び背面図を示す、本発明の第1態様の別の実施形態による作動機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最初に
図1を参照すると、本発明の一実施形態による作動機構は、一般に参照番号2で指定されている。作動機構2は、第1ジョー4、第2ジョー6、ドライバー8、及びハウジング40を備える。各ジョー4、6はジョーアクスル受け部34を備え、ハウジング40はジョーアクスル42を備える。ジョーアクスル42は、ジョー軸に沿って延び、各ジョー4、6がジョーアクスル42の周りでハウジング40に対して回転可能であるように、ジョーアクスル受け部34内に回転可能に受け入れ可能である。
【0036】
各ジョー4、6は、それぞれのジョー上に形成されたツール部32をさらに備える。各ジョーは、ツール部が離間する開位置とツール部が互いに接触する閉位置との間でジョーアクスル42を中心に回転可能である。本発明のこの実施形態では、第1と第2ジョー4、6のツール部32は把持器として構成されているが、本発明の他の実施形態では、ツール部は、鋏、鉗子、又はディセクターなどの任意の適切なツールの一部を形成するように構成さてもよい。
【0037】
各ジョー4、6は、ドライバー8と係合可能な駆動部30をさらに備える。ドライバー8は駆動アクスル受け部36を備え、ハウジング40は、ジョー軸に平行な駆動軸に沿って延びる駆動アクスル44をさらに備える。駆動アクスル44は、ドライバー8が駆動アクスル44の周りでハウジング40に対して回転可能であるように、駆動アクスル受け部36内に回転可能に受け入れ可能である。
【0038】
駆動軸はジョー軸から離間したが、駆動機構全体はドライバーを備え、両方のジョーの駆動部はコンパクトである。これは、ジョーの作動を駆動するための大きなリンク機構を備える幾つかの既知のバイポーラエンドエフェクタとは対照的である。ドライバー8及び駆動部30の相対的なコンパクトさにより、作動機構2のより効果的な小型化が可能となり、外科用ロボット工学及び低侵襲外科手術用装置の分野において特に有利となり得る。
【0039】
本発明のこの実施形態では、ドライバー8はディスク形状である。しかしながら、本発明の他の実施形態では、ドライバー8は、駆動アクスル44の周りで回転可能である限り、任意の適切な形状であってもよい。
【0040】
また、本発明のこの実施形態では、ドライバー8は、ドライバー8を駆動軸44の周りで異なる方向に回転させるために、それぞれを作動又は引っ張ることができる第1と第2腱(図示せず)に取り付け可能である。本発明の他の実施形態では、ドライバー8は、それを駆動軸の周りで回転させるために適切な任意の駆動手段に取り付け可能であってもよい。例えば、駆動軸44はドライバー8に固定されてもよく、駆動アクスル44は、ハウジング40に取り付けられたモーターによって回転可能であってもよい。
【0041】
図2と3は、
図1の作動機構2の各側を示す。第1ジョー4は、第1ジョーの駆動部30に位置決めされた第1ジョー係合部、具体的には第1ピン12を備え、第2ジョー6は、第2ジョーの駆動部30に位置決めされた第2ジョー係合部、具体的には第2ピン14を備え、ドライバー8は、第1駆動係合部(第1スロット16)と第2駆動係合部(第2スロット18)を備える。本発明の他の実施形態では、ジョーとドライバーとの間のピンとスロットの他の配置も可能である。このような他の配置の例は、
図9a~11bを参照して以下に説明される。
【0042】
第1ピン12は、第1スロット16とスライド可能に係合可能であり、第2ピン14は、第2スロット18とスライド可能に係合可能である。使用中、各ピン12、14がそれぞれのスロット16、18と係合すると、駆動アクスル44の周りのドライバー8の回転は、各ジョー4、6をジョーアクスル42の周りで他方のジョーと反対の方向に回転させる。第1と第2ピン12、14が、ジョーアクスル42が延びるジョー軸から一定距離にあり、第1と第2スロット16、18が、駆動アクスル44が延びる駆動軸の周りで回転すると、それぞれのピン4、6をスロット内でスライドさせながらジョー軸に対して回転させるように、ドライバー内に位置決めされ、配向されるため、ジョー4、6の回転は生じる。
【0043】
さらに、各ピン12、14は、それぞれのジョーの駆動部に位置決めされ、各スロット16、18は、ジョー4、6の一方がその開位置にあるとき、他方のジョーもその開位置にあり、ジョー4、6の一方がその閉位置にあるとき、他方のジョーもその閉位置にあるように、ドライバー内に位置決めされ、配向される。これにより、作動機構2は、ドライバー8の回転位置に依存して、全開構成と全閉構成との間で移動することができる。
図2と3は、ジョーの開構成を示し、
図4と5は、ジョーの閉構成を示す。
【0044】
本発明のこの実施形態では、ジョー4、6は、互いに実質的に対称的に移動する。言い換えれば、第1ジョー4の移動範囲は、第2ジョー106の移動範囲と実質的に等しいので、開構成では、第1ジョー4と第2ジョー6は、それらのそれぞれの閉構成位置から実質的に等しい量だけ回転している。
【0045】
ピンとスロット機構の利点は、そのシンプルさと信頼性である。作動機構2全体は、3つの移動部分(ドライバー8及び各ジョー4、6)のみからなる。また、各ピンとそれぞれのスロットとのスライド可能な係合の性質により、ドライバーをある向き又は別の向き(即ち、時計回り又は反時計回り)にさらに回転させるだけでオフセットされる可能性がある不正確さのマージンが許容される。それに応じて、作動機構2は、特に、確実かつ正確に動作するために複雑で精密に設計されたコンポーネントを必要とする幾つかの既知のエンドエフェクタと比較して、費用効率よく製造することができる。
【0046】
ピンとスロット機構の別の利点は、ドライバー8によって各ピンに及ぼされる力が、ドライバー8の半径と、各ピン12、14と駆動軸との間の距離との比に基づいて可変であることである。この半径は、それぞれのジョー部材4、6の力の増幅率に比例する。言い換えれば、ドライバーの半径と、ピンと軸との間の距離との比が大きくなるほど、開閉時にそれぞれのジョーが及ぼす力も大きくなる。ジョーが閉じたときに及ぼす力を増大させることは、例えば縫合針の強力なグリップを維持するなど、外科的用途において特に有利である可能性がある。
【0047】
ピンとスロット機構の更なる利点は、ドライバーの各回転によって両方のジョーが反対方向に回転するので、回転の効果が本質的に2倍になるため、ジョーによって達成可能な全範囲の移動がドライバーの小さな回転(例えば180°未満)によって引き起こされることである。これにより、ジョー4、6の移動がドライバー8の作動に非常によく反応することが可能となる。また、ドライバーのサイズは、作動機構2が使用される用途に応じて変化してもよい。例えば、ドライバー8は、コンパクトさが好ましい用途ではより小さく作られ、ジョーがより大きな回転力を生成することが好ましい用途(即ち、把握又は切断により大きな力が必要な場合)ではより大きく作られてもよい。
【0048】
今、
図6a、6b及び6cを参照すると、本発明の別の実施形態による作動機構は、一般に参照番号102で指定されている。作動機構102は、
図1~5に示される作動機構2と同様であり、参照を容易にするために、同様の特徴には対応する参照番号が与えられている。例えば、作動機構102は、
図1~5に示される作動機構2の第1ジョー4と同様の第1ジョー104を備える。
【0049】
本発明のこの実施形態では、ドライバー108は、第1腱122及び第2腱124に取り付け可能である。例えば閉位置に向けてジョー104、106を回転させるための、第1向きへのドライバー8の回転は、第1腱122を作動又は引っ張ることによって達成され得る。逆に、例えば開位置に向けてジョー104、106を回転させるための、第2向きへのドライバー8の回転は、第2腱122を作動又は引っ張ることによって達成され得る。
【0050】
それに応じて、単一対の拮抗腱(第1と第2腱122、124)は、
図7a及び7bに示される閉構成と、
図8a及び8bに示される閉構成との間で作動機構102を作動するために使用されてもよい。
【0051】
図7a及び7bでは、第1ジョー104は第1ピン112を備え、第2ジョーは第2ピン114を備え、ドライバー108は第1と第2スロット116、118(
図1~5に示される作動機構2と同様に)を備える。
図7aでは、ジョーアクスル142が延びるジョー軸142と、第1ピン112の中心とを通って延びる第1ジョー中心線105が強調表示されている。一方、
図7bでは、ジョー軸と第2ピン114の中心とを通って延びる第2ジョー中心線107が強調表示されている。
【0052】
図8a及び8bでは、第1腱122は、ドライバー108が
図7a及び7bで保持していた位置に対してドライバー108を駆動軸の周りで回転させ、作動機構102が現在開構成にあるようにジョー104、106を回転させるために引っ張られた。
図8aでは、ドライバー108は、
図7aにおいてそれが有する配向に対して反時計回りに回転した一方、第1ジョー104及び第1ジョー中心線105は、ジョーアクスル142の周りで時計回りに回転した。
図8bでは、ドライバー108は、
図7bにおいてそれが有する配向に対して時計回りに回転した一方、第2ジョー106及び第2ジョー中心線107も、ジョーアクスル142の周りで時計回りに回転した。
【0053】
本発明のこの実施形態では、ジョー104、106は、互いに非対称移動する。言い換えれば、第1ジョー104の移動範囲は、第2ジョー106の移動範囲よりも大きいので、開構成では、第1ジョー104は、第2ジョー106よりも閉構成位置からさらに回転している。
【0054】
使用中、腱122、124のうちの1つによって、ドライバー108を回転させるためにドライバー108に及ぼすことができる力は、本明細書では腱力と呼ばれる。ドライバー108は、それぞれのピン112、114に押しつける各スロット116、118を介して、各ジョー104、106に腱力を伝達する。スロット116、118によってピン112、114に及ぼされる力は、本明細書では駆動力と呼ばれ、スロットの配向に対して垂直に作用する。各ジョー104、106がジョーアクスル142の周りを旋回すると、駆動力が各ツール部によって及ぼされる力に伝達される。この力は、ジョーが開閉する力であり、本明細書では把持力と呼ばれる。各ジョーによって及ぼされる把持力は、それぞれのジョー中心線105、107に対して垂直作用する。従って、それぞれのジョー中心線105、107に対して垂直に作用する各駆動力の割合は把持力に伝達されるが、それぞれのジョー中心線に平行に作用する駆動の割合は摩擦として失われる。
【0055】
それに応じて、ピンとスロット機構の利点は、ツール部によって強い力を及ぼす必要がある場合に、把持力を高めることができることである。
【0056】
今、
図9a及び9bを参照すると、本発明の別の実施形態による作動機構は、一般に参照番号202で指定されている。作動機構202の幾つかの部分は、
図6a~8bに示される作動機構102の部分に対応するため、参照を容易にするために同じ参照番号が与えられている。
【0057】
作動機構202は、
図1~5に示される作動機構2の場合のようにその逆ではなく、第1と第2駆動係合部が第1と第2ピン212、214を備え、第1と第2ジョー係合部が第1と第2スロット216、218を備えるという点で、
図6a~8bに示される作動機構102とは異なる。言い換えれば、第1ジョー204は第1スロット216を備え、第2ジョーは、第2スロット218を備え、ドライバー208は、第1と第2ピン212、214を備える。第1ピン212は、第1スロット216とスライド可能に係合可能であり、第2ピン114は、第1と第2ジョー204、206の回転がドライバー208を回転させることによって実現可能であるように、第2スロット218とスライド可能に係合可能である。本発明のこの実施形態では、駆動アクスル144が延びる駆動軸の周りの第1と第2ピン212、214の回転により、それぞれのスロット216、218は、各ピン212、214がそのスロット216、218内に留まるように、ジョーアクスル142が延びるジョー軸に対して回転する。
【0058】
ドライバー208は、
図6a~8bに示されるドライバー108と同様に、第1腱122及び第2腱124に取り付け可能である。
【0059】
本発明の他の実施形態では、上述したように両方のピン又は両方のスロットではなく、ドライバーが1つのピンと1つのスロットを備えるように、ピンとスロット機構を変更することが可能である。
【0060】
例えば、
図10aと10bにおいて、本発明の一実施形態による作動機構は、一般に参照番号302で指定されている。作動機構302は、第1ジョー104と第2ジョー206を備える。作動機構302は、第1及び第2ジョー104、206と係合するように適合されたドライバー308を備える。従って、ドライバー308は、第1ジョー104の一部を形成する第1ピン(ここには示されていないが、
図7a~8bに示される)と係合可能な第1スロット(図示されていないが、
図7a~8bに示される第1スロット116と同様)を備える。ドライバー308はまた、第2ジョー206の第2スロット218と係合可能な、
図91及び9bに示される第2ピン214と同一の第2ピン214を備える。
【0061】
あるいは、
図11aと11bにおいて、本発明の一実施形態による作動機構は、一般に参照番号402で指定されている。作動機構402は、第1ジョー204と第2ジョー106を備える。作動機構402は、第1及び第2ジョー204、106と係合するように適合されたドライバー408を備える。従って、ドライバー308は、第1ジョー204の一部を形成する第1スロット216と係合可能な第1ピン212を備える。ドライバー308はまた、第2ジョー106の第2ピン118(ここには示されていないが、
図7a~8bに示される)と係合可能な第2スロット(図示されていないが、
図7a~8bに示される第2スロット118と同様)を備える。
【0062】
本発明の所与の態様、特徴、又はパラメーターの好み及び選択肢は、文脈が別段の指示をしない限り、本発明の他のすべての態様、特徴、及びパラメーターのあらゆる好み及び選択肢と組み合わせて開示されたと見なされるべきである。
【国際調査報告】