(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】再充電可能エネルギー貯蔵モジュールを有するモジュラーバッテリー貯蔵システム、及びバッテリー貯蔵システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/497 20070101AFI20240129BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240129BHJP
【FI】
H02M7/497
H02M7/48 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547184
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021086206
(87)【国際公開番号】W WO2022167136
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502350250
【氏名又は名称】ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クロース ディーター
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA26
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA20X
5H770KA01Z
(57)【要約】
n個の再充電可能エネルギー貯蔵モジュール(110)の配列を有するモジュラーバッテリー貯蔵システム(100)において、エネルギー貯蔵モジュール(110)は各々、少なくとも1つの(好ましくは、数個の)再充電可能エネルギー貯蔵要素を含む。n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)のうち各個々の1つに、各エネルギー貯蔵モジュール(110)を作動及び動作停止させることができるスイッチ(120)が割り当てられている。n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)は、作動エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧Usingleが合計して全電圧UTotalになることができるような方法で、スイッチ(120)を介して相互接続可能である。バッテリー貯蔵システム(100)は、n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられているスイッチ(120)を制御する制御デバイス(130)を更に含む。本発明によれば、バッテリー貯蔵システムは、変調ユニット(200)を含む。変調ユニット(200)は、全電圧UTotalを変調することができるような方法で、切り換え可能なn個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に接続されている。変調ユニット(200)は、パルス幅変調スイッチ(210)、及びパルス幅変調スイッチ(210)を密閉し、パルス幅変調スイッチ(210)から発生する電磁干渉放射線(280)からハウジング(240)の外側の電子構成要素を遮蔽するように適合されているハウジング(240)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の再充電可能エネルギー貯蔵モジュール(110)の配列を有するモジュラーバッテリー貯蔵システム(100)であって、
a.前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)は各々、少なくとも1つの(好ましくは、数個の)再充電可能エネルギー貯蔵要素を含む、及び
b.前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)のうち各個々の1つに、前記各エネルギー貯蔵モジュール(110)を作動及び動作停止させることができるスイッチ(120)が割り当てられている、及び
c.前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)は、作動エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧U
singleが合計して全電圧U
Totalになることができるような方法で、前記スイッチ(120)を介して相互接続可能である、及び
d.前記バッテリー貯蔵システム(100)は、前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられている前記スイッチ(120)を制御する制御デバイス(130)を含む
という特徴を有し、
e.前記バッテリー貯蔵システム(100)は、
i.変調ユニット(200)は、前記全電圧U
Totalを変調することができるような方法で、前記相互接続可能なn個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に接続されている、
ii.前記変調ユニット(200)は、パルス幅変調スイッチ(210)を含む、及び
iii.前記変調ユニット(200)は、前記パルス幅変調スイッチ(210)を密閉し、前記パルス幅変調スイッチ(210)から発生する電磁干渉放射線(280)からハウジングの外側の電子構成要素を遮蔽するように適合されているハウジング(240)を含む
という特徴を有する変調ユニット(200)を含む
ことを特徴とする、モジュラーバッテリー貯蔵システム(100)。
【請求項2】
a.前記パルス幅変調スイッチ(210)は、複数の半導体スイッチ(211)を含む、
b.前記パルス幅変調スイッチ(210)は、4つの半導体スイッチ(211)を有するHブリッジ回路を含む、
c.前記パルス幅変調スイッチ(210)は、4つの半導体スイッチ(211)を有するHブリッジ回路を含み、前記Hブリッジ回路は、コンデンサ(212)を介して接続されている2つの半導体スイッチ(T1、T2及びT3、T4)を各々有する2つの線枝を含む
という追加特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項3】
a.前記変調ユニット(200)は、放電方向に前記パルス幅変調スイッチ(210)の下流に接続されているフィルターチョーク(220)を含む、
b.前記ハウジング(240)は、前記フィルターチョーク(220)を更に密閉する
という追加特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1又は2に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項4】
a.前記変調ユニット(200)は、前記放電方向に前記パルス幅変調スイッチ(210)の上流に接続されている低域通過フィルター(250)を含む、
b.前記変調ユニット(200)は、前記放電方向に前記パルス幅変調スイッチ(210)の下流に接続されている低域通過フィルター(260)を含む、
c.前記変調ユニット(200)は、前記放電方向に前記パルス幅変調スイッチ(210)の上流又は下流の低域通過フィルター(250)を含み、前記ハウジング(240)は、前記低域通過フィルター(250)及び/又は前記低域通過フィルター(260)を更に密閉する
という追加特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項5】
a.前記ハウジングは、金属及び/又は金属化プラスチックからなる
という追加特徴を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項6】
a.前記変調ユニット(200)は、冷却デバイスを含む、
b.冷却デバイスは、前記変調ユニット(200)に割り当てられている
という追加特徴のうちいずれか1つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項7】
a.前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられている前記スイッチ(120)は、パルス幅変調にセットアップされていない、
b.前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)は、受動冷却デバイスを有しない、又は1つの受動冷却デバイスだけを有する、又は、前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)は、前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられている受動冷却デバイスを有しない、又は前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられている1つの受動冷却デバイスだけを有する
という追加特徴のうち少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項8】
a.信号線(140)は、前記n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)に関連付けられている前記スイッチ(120)を制御するように設けられている
という追加特徴を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項9】
a.前記制御デバイス(130)は、時変全電圧U
Total(t)を生成するために、時間で重複する前記各関連スイッチ(120)を介して、異なる長さの作動期間にわたって前記エネルギー貯蔵モジュール(110)のうち少なくとも2つを作動させることができるように構成されている
という追加特徴を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項10】
a.前記制御デバイス(130)は、前記変調ユニット(200)における前記パルス幅変調スイッチ(210)を制御するように構成されている
という追加特徴を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項11】
a.前記制御デバイス(130)は、信号プロセッサである、
b.前記制御デバイス(130)は、マイクロコントローラーである
という追加特徴のうちいずれか1つを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のモジュラーバッテリー貯蔵システム(100)を動作させる方法であって、
a.n個のエネルギー貯蔵モジュール(110)を連続的に作動及び動作停止させることによって、階段状電圧(1)を生成するステップと、
b.前記階段状電圧(1)を、前記モジュラーバッテリー貯蔵システム(100)の変調ユニット(200)に供給し、パルス幅変調及び少なくとも1つのフィルタリングによって平滑化正弦波電圧(2)に変換するステップと
を含む方法。
【請求項13】
a.前記平滑化正弦波電圧(2)を、相として交流電力グリッドに供給する
という追加特徴を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a.前記モジュラーバッテリー貯蔵システム(100)の前記エネルギー貯蔵モジュール(110)を、50Hz~500Hzの間の周波数(特に、100Hz)で駆動する
という追加特徴を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
a.前記変調ユニット(200)のパルス幅変調スイッチ(210)を、1kHz~1Mhzの範囲にある高い周波数で駆動する
という追加特徴を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n個の再充電可能エネルギー貯蔵モジュールの配列を含むモジュラーバッテリー貯蔵システム、及びこのようなモジュラーバッテリー貯蔵システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュラーバッテリー貯蔵システムは、n個(但し、nは、少なくとも2である)のエネルギー貯蔵モジュールの配列を含む。エネルギー貯蔵モジュールは、再充電可能であるように設計されている。バッテリー貯蔵システム内で、エネルギー貯蔵モジュールは一般的に、並列及び/又は直列相互接続によって接続される。エネルギー貯蔵モジュールは、2つ以上のセルの個々の電気化学セル又は組立体を含むことができる。このような組立体内で、次に、個々の電気化学セルを、並列及び/又は直列相互接続によって接続することができる。
【0003】
このようなバッテリー貯蔵システムは殆ど、直流源として使用される。しかし、マルチレベル変換器を用いて、バッテリー貯蔵システムを、交流グリッドに接続することもできる。このような変換器において、個々のエネルギー貯蔵モジュールの電圧を、異なる期間に対する時間遅延で追加する。個々のエネルギー貯蔵モジュールの電圧が、追加全電圧に対して十分小さい場合、例えば、正弦波電圧特性を、優れた近似で生成することができる。
【0004】
国際公開第2018/162122A1号パンフレットには、各エネルギー貯蔵モジュールを作動及び動作停止させることができるスイッチを個々のエネルギー貯蔵モジュールに各々割り当てるモジュラーバッテリー貯蔵システムが記載されている。エネルギー貯蔵モジュールは、作動エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧が合計して全電圧になることができるような方法で、相互接続可能である。この場合、少なくとも1つの性能値を、エネルギー貯蔵モジュールの各々に対して判定し、異なる長さの作動期間にわたって時間で重複する少なくとも2つのエネルギー貯蔵モジュールを作動させることによって、時変全電圧を生成する。各性能値によって、異なる長さの作動期間を個々のエネルギー貯蔵モジュールに割り当て、その結果、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールを、システムにうまく統合することもできる。
【0005】
このようなモジュラーバッテリー貯蔵システムにおいて、正弦波半波長に近似するいわゆる階段状電圧を生成することができるように、エネルギー貯蔵モジュールを連続的に接続することによって、全電圧を徐々に増減することができる。原則として、適切な時に個々のエネルギー貯蔵モジュールの電源を適切にオン及びオフにすることによって、任意の曲線形状を生成することができる。
【0006】
しかし、エネルギー貯蔵モジュールの電源をオン及びオフにする、又はエネルギー貯蔵モジュールを作動及び動作停止させることによって、所望の出力電圧の粗い近似だけが可能である。従って、エネルギー貯蔵モジュールの適切な切り換えによって達成可能な階段状電圧の更なる近似のために、個々の生成電圧にパルス幅変調(PWM)を実行することが既に知られている。例えば、上述の国際公開第2018/162122A1号パンフレットには、個々のエネルギー貯蔵モジュールに割り当てられた各スイッチがこのようなパルス幅変調を実行するように設計されていることが既に記載されている。その結果、このように修正された個々の電圧は、合計して全電圧になることができ、従って、電圧の所望の正弦波に更に近似される。
【0007】
一般的に、高周波数は、パルス幅変調を実行するために必要である。しかし、これは、高周波数が電磁環境適合性(EMC)に悪影響を与え、複雑な遮蔽手段が必要になるという問題を引き起こす。しかし、特定の状況下で、精巧な遮蔽手段を用いても、これらの問題を解決することができず、その結果、全体として、バッテリー貯蔵システムの機能及び可能な用途は、実際に厳しく制限される。更に、高周波数に伴う加熱により、個々のエネルギー貯蔵モジュールを冷却する必要がある。
【0008】
国際公開第2018/162122A1号パンフレットには、必要に応じて、エネルギー貯蔵モジュールに割り当てられたスイッチのうち1つだけをPWM生成のために設計することが既に示唆されている。それにもかかわらず、これは、この種のバッテリー貯蔵システムで発生する問題、特に電磁干渉に関する問題に対する十分な解決を与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これと対照的に、本発明は、一方で、コスト効率の良い解決を与え、他方で、動作中に非常に頑強であり、障害を受けにくい改良モジュラーバッテリー貯蔵システムを提供するタスク自体を設定する。特に、バッテリー貯蔵システムは、個々のエネルギー貯蔵モジュールによって生成される電圧を交流グリッドに供給することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有するモジュラーバッテリー貯蔵システム、及び更なる独立請求項によるこのようなモジュラーバッテリー貯蔵システムを動作させる方法によって達成される。モジュラーバッテリー貯蔵システム、及びこのバッテリー貯蔵システムを動作させる方法の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、n個の再充電可能エネルギー貯蔵モジュールを含む。この状況で、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、
a.n個のエネルギー貯蔵モジュールは各々、少なくとも1つの(好ましくは、数個の)再充電可能エネルギー貯蔵要素を含む、及び
b.n個のエネルギー貯蔵モジュールのうち各個々の1つは、各エネルギー貯蔵モジュールを作動及び動作停止させることができるスイッチが割り当てられている、及び
c.n個のエネルギー貯蔵モジュールは、作動エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧Usingleが合計して全電圧UTotalになることができるような方法で、スイッチを介して相互接続可能である、及び
d.バッテリー貯蔵システムは、n個のエネルギー貯蔵モジュールに関連付けられているスイッチを制御する制御デバイスを含む
という特徴を常に有する。
【0012】
本発明の本質は、モジュラーバッテリー貯蔵システムが、次の特徴i.~iiiを特徴とする変調ユニット(特徴e.)を含むことである。
i.変調ユニットは、全電圧UTotalを変調することができるような方法で、接続可能なn個のエネルギー貯蔵モジュールに接続されている、
ii.変調ユニッには、パルス幅変調スイッチを含む、及び
iii.変調ユニットは、パルス幅変調スイッチを密閉し、パルス幅変調スイッチから発生する電磁干渉放射線からハウジングの外側の電子構成要素を遮蔽するように適合されているハウジングを含む。
【0013】
パルス幅変調用のスイッチは、先行技術であり、市販されている。本発明によれば、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、直後の追加特徴a.~c.のうち少なくとも1つを特徴とする。
a.パルス幅変調スイッチは、複数の半導体スイッチを含む。
b.パルス幅変調スイッチは、4つの半導体スイッチを有するHブリッジ回路を含む。
c.Hブリッジ回路は、コンデンサを介して接続されている2つの半導体スイッチを各々有する2つの線枝を含む。
特に好ましくは、直前の特徴a.~c.を、本発明で組み合わせて実現する。
【0014】
半導体スイッチは、好ましくは、MOSFETである。しかし、これらのMOSFETの代替案として、バイポーラトランジスタ、特に、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ(IGBT)を、半導体切り換え要素として使用することもできる。
【0015】
更に好ましい実施形態において、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、直後の追加特徴a.及びbのうち少なくとも1つを有する。
a.変調ユニットは、放電方向にパルス幅変調スイッチの下流に接続されているフィルターチョークを含む。
b.ハウジングは、フィルターチョークを更に密閉する。
特に好ましくは、直前の特徴a.及びb.を、本発明で組み合わせて実現する。
【0016】
個々のエネルギー貯蔵モジュールを作動及び動作停止させることによって、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、変調ユニットと変調ユニットに含まれるパルス幅変調スイッチとによって、所望の電圧曲線に非常に近い全パルス幅変調電圧曲線に変換される階段状全電圧を生成することができる。パルス幅変調(PWM)は、個々の電圧段の間の移行を緩和する。電圧波形を、下流のフィルターチョークによって更に平滑化し、その結果、所望の波形を生成する。これにより、例えば、個々のエネルギー貯蔵モジュールによって生成される直流電圧を、特に有利な方法で正弦波波形に変換することができ、この電圧を交流グリッドに供給することができる。
【0017】
本発明によるバッテリー貯蔵システムの特別な利点は、合計される個々の電圧を供給する変調ユニットにおける中心点でPWMを実行することである。従って、変調ユニットは、下流のフィルターチョークを有するパルス幅変調スイッチを組み合わせて、曲線の平滑化、従ってグリッドへの供給を可能にし、この変調ユニットは全体として、この処理中に生成される電磁干渉放射線が、確実に遮断され、外側に貫通しないような方法で、適切なハウジング(特に、金属ハウジング)によって遮蔽される。好ましくは、変調ユニットのハウジングは、パルス幅変調スイッチ及びフィルターチョークの両方を密閉する。
幾つかの好ましい実施形態において、制御デバイスを、ハウジング内に更に設置する。
【0018】
中心の位置におけるPWMは、様々な問題を伴う個々のエネルギー貯蔵モジュールでこのようなパルス幅変調を実行する必要性を回避する。特に、これは、分散電磁干渉の生成を回避する。従って、電磁遮蔽の要求は、変調ユニットに限定され、その結果、バッテリー貯蔵システムの全ての他の構成要素は、非常に一層単純でより安価になるように設計可能である。
【0019】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの変調ユニットにおけるPWMの中心の実装形態は、大幅なコストの利点と関連がある。例えば、先行技術のように個々のエネルギー貯蔵モジュール又は関連スイッチでPWMが行われた場合、この目的に必要な高速切り換え要素及び高速及び強力ドライバーのために、大幅なコストを負担する必要がある。一方、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムにおいて、エネルギー貯蔵モジュールを電源オンオフにする又は作動及び動作停止させることができることだけを関連スイッチが必要とするので、個々のエネルギー貯蔵モジュールは、非常に一層単純な方法で設計可能である。比較的低いクロック周波数で動作される低コストスイッチを、この目的のために使用することができる。
【0020】
従来のシステムの個々のエネルギー貯蔵モジュールにおけるPWMに必要な高周波数は、適切な冷却システムによって調節される必要がある従来のモジュラーバッテリー貯蔵システムにおけるシステム周辺での大量の発熱とも関連がある。この冷却システムは、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで省くこともでき、せいぜい変調ユニットの冷却が必要とされる。これは、大幅なコストの利点とも関連がある。
【0021】
個々のエネルギー貯蔵モジュールのスイッチでのPWMを用いた従来のモジュラーバッテリー貯蔵システムにおいて、一方で、システム自体の機能に攪乱の影響を与えることがあり、他方で、電磁環境適合性の規格に準拠することができるために外側から遮蔽される必要もある脈動電磁場のために、このようなバッテリー貯蔵システムの広範囲の配線におけるPWMクロッキングの結果として、大幅な干渉を観測することがある。このような遮蔽は、特に、このようなシステムの広い空間要求のために、大きい問題を引き起こす。この問題は、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで、殆ど完全に回避される。なぜなら、原則として、変調ユニットを電磁的に遮蔽しさえすればよいからである。
【0022】
個々のエネルギー貯蔵モジュールに割り当てられたPWM回路を有する従来のモジュラーバッテリー貯蔵システムで必要とされる各エネルギー貯蔵モジュールに対する厳密に正しい時刻における正確なPWM比の制御は、複雑であり、リアルタイム通信及びデータ伝送を必要とする。この態様も、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで省略され、その結果、モジュラーバッテリー貯蔵システムの実施形態は、従来のシステムと比較してこの点において非常に一層単純でより頑強な方法で更に設計可能である。特に、個々のエネルギー貯蔵モジュールのPWMの誤差は、排除され、従来のシステムで、ネットワーク障害、バッテリー貯蔵システム自体の動作中の動作障害、更にシステムのハードウェア欠陥を引き起こすことがある。
【0023】
バッテリー貯蔵システムの離れた変調ユニットにおける中心点でPWMを実行する別の特別な利点は、最適電磁遮蔽が、離れた変調ユニットで可能であり、その結果、PWMを非常に高い周波数で実行することができることである。これにより、高い周波数で最も有効である下流フィルターチョークを比較的小さくなるように設計することができる。これは、一般的に、フィルターチョークのサイズが増大するにつれて、フィルターチョークがシステムの最もコスト集約的な構成要素であるので、特に有利である。
変調ユニットは、非常にコンパクトに構成可能であり、電磁干渉放射線に対する遮蔽を更に単純化する。
【0024】
個々のエネルギー貯蔵モジュールで高周波電流及び電圧を回避することによって、電磁環境適合性は、従来のシステムと比較して大幅に改善され、必要な遮蔽及びフィルタリングの量は、従来のシステムよりも非常に少ない。エネルギー貯蔵モジュールのケーブル配線の要求も減少し、特に有利なことに、信号線に対する遮蔽を省くことができる。
【0025】
全体として、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで、個々のエネルギー貯蔵モジュールを、従来のバッテリー貯蔵システムよりも非常に単純に設計することができる。関連する節約は、個々のエネルギー貯蔵モジュールの数で増える。例えば、従来の技術を用いて、エネルギー貯蔵モジュールを製造することができる。なぜなら、エネルギー貯蔵モジュールの知能を必要としないからであり、個々のエネルギー貯蔵モジュールに対して、単純で安価なハードウェアを必要とし、ソフトウェアの労力を殆ど必要としないからである。更に、個々のエネルギー貯蔵モジュールで、従って全システムで、冷却の労力をあまり必要としない。制御デバイスと個々のエネルギー貯蔵モジュールとの間で、複雑な時間重視の通信を必要としない。例えば、個々のエネルギー貯蔵モジュールを制御するために、データバスを必要としない。従って、全体として、本発明によるバッテリー貯蔵システムを、非常に一層故障がなくてコスト効率の良い方法で製造することができる。
【0026】
本発明によるバッテリー貯蔵システムのエネルギー貯蔵モジュールの可能な構成について、最初に説明する。記載の構成も、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの状況で好ましい。エネルギー貯蔵要素は、例えば、他の用途(例えば、自動車用途)から生じ、このようなモジュラーバッテリー貯蔵システムで使用されることによって適切に使用され続けることができる、容量が既に低減した経年エネルギー貯蔵要素であることができる。
特に好ましくは、本発明によって使用可能なエネルギー貯蔵モジュールは、特に、リチウムイオン技術及び/又はニッケル水素技術に基づいて、電気化学セルを含む。
【0027】
バッテリー貯蔵システムによって含まれるエネルギー貯蔵モジュールは全て、同じ個々の電圧Usingleを有することができる。しかし、これは、必ずしも必要であるとは限らない。逆に、同じシステム内で異なる個々の電圧Usingleを有するエネルギー貯蔵モジュールを設置することが好ましいこともある。これは、全電圧UTotalの表現可能な変型例を増やすことができる。
【0028】
好ましくは、各割り当てエネルギー貯蔵モジュールを逆極性で作動させることもできるような方法で、スイッチを設計する。特に、異なる個々の電圧Usingleを有するエネルギー貯蔵モジュールを同じシステム内で同時に設置する場合、これも、全電圧UTotalの表現可能な変型例を増やす。これは、逆極性で作動されるエネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧Usingleが全電圧UTotalへの負の寄与を行うので、特に有利である。
【0029】
n個のエネルギー貯蔵モジュールのうち1つを動作停止させた場合、エネルギー貯蔵モジュールは、全電圧UTotalに寄与しない。特に好ましい実施形態において、必要に応じてスイッチに属するエネルギー貯蔵モジュールをバイパスすることができるように、スイッチを設計する。橋渡しされた動作停止エネルギー貯蔵モジュールは、配列の他のエネルギー貯蔵モジュールにもはや電気的に接続されていない。
【0030】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、非常に多くのエネルギー貯蔵モジュールを含むことができる。一般的に、変数nは、2から100000の範囲、好ましくは2から10000の範囲、特に好ましくは2から1000の範囲にある値である。これらの範囲内で、変数nは、5から100の範囲、特に好ましくは5から20の範囲、特に7から10の範囲にある値であることが更に好ましい。
【0031】
好ましい方法において、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、直後の追加特徴a.~cのうち少なくとも1つを有する。
a.変調ユニットは、放電方向にパルス幅変調スイッチの上流に接続されている低域通過フィルターを含む。
b.変調ユニットは、放電方向にパルス幅変調スイッチの下流に接続されている低域通過フィルターを含む。
c.ハウジングは、低域通過フィルター及び/又は低域通過フィルターを更に密閉する。
【0032】
好ましい実施形態において、パルス幅変調スイッチの上流及び/又は下流に接続されている低域通過フィルターは、全電圧の高周波数成分を100kHzから1GHzの範囲で遮断周波数まで減衰させる従来の低域通過フィルターであることができる。全電圧をパルス幅変調スイッチに導入する前の低域通過フィルタリングは、パルス幅変調スイッチにおけるPWMが高周波数成分の減少の結果としてあまり複雑でないという特別な利点を有する。
【0033】
特に好ましい方法において、上流低域通過フィルターの代替案として、又は上流低域通過フィルターに加えて、記載の特性を有する低域通過フィルターを、フィルターチョークの下流にも設ける。特に好ましい方法において、低域通過フィルターを変調ユニットの入力に設け、別の低域通過フィルターを変調ユニットの出力に設ける。
【0034】
好ましくは、特に変換器のクロック周波数及び小規模の高調波に対して、1kHzから10MHzの周波数範囲で比較的低い周波数成分を平滑化するようにフィルターチョークを設計するという点で、フィルターチョークは低域通過フィルターと異なる。
【0035】
好ましくは、特に適切なフィルターチョークは、変換器のクロック周波数及び小規模の高調波で効果的であるように設計されている強磁性コアを有する。好ましくは、適切な材料は、高透磁率を有し、その結果、巻数は少なくすることができ、銅損は限界の範囲内に保たれる。「パワーフェライト」としても知られているこのようなコアは、EMC関連の高周波数からの範囲、例えば、MHz範囲で、殆ど効果がない。銅巻線を軟磁性コアの高透磁率のために出来るだけ小さく保つという事実にもかかわらず、巻線は、言わば、高周波数用のフィルターチョークを橋渡しする、従って無効にする比較的高い寄生容量を受ける。全体として、好ましくは、フィルターチョークは、より低い周波数成分をフィルター処理する。
【0036】
好ましい低域通過フィルターは、低域通過フィルターが好ましくは、電磁干渉を除去するので、EMCフィルターと呼ばれることもある。好ましくは、低域通過フィルター又はフィルターは、高周波数に適しているコイルコアを有する。一方、これらの材料は一般的に、記載の「パワー」材料よりも大幅に低い透磁率及び飽和磁束密度を有し、その結果、材料は、基本周波数に対して非常に小さいインダクタンスを有する。しかし、他方、材料は、特にEMC関連の高周波数で効果的である。特に、低域通過フィルターは、低静電容量の巻線を特徴とする。コア材料のために、材料は、低インダクタンスを有する。
【0037】
好ましくは、低域通過フィルター又はフィルターは、平滑又はブリードコンデンサを更に含む。更に、低域通過フィルターは、追加の電流補償チョーク、及び必要に応じて、コモンモード干渉に有効であるYコンデンサを有することもできる。この場合、電流補償チョークは、発生する任意のコモンモード干渉に対する抑制インピーダンスを与える。Yコンデンサは、地面に残されるものを消散させる。
【0038】
4つの半導体スイッチを有するHブリッジ回路としてのパルス幅変調スイッチの設計は、原則として、それ自体知られているマルチレベル変換器段の基本的な電子構造に匹敵する。有利なことに、パルス幅変調で電力半導体デバイスを駆動することによって、コンデンサ間の電圧を調整又は制御する。これは、コンデンサが専用充電回路を必要としないという特別な利点を有する。
【0039】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの特に好ましい実施形態において、バッテリー貯蔵システムは、変調ユニットに関して、直後の追加特徴a.及びbのうち少なくとも1つを有する。
a.変調ユニットは、冷却デバイスを含む。
b.冷却デバイスは、変調ユニットに割り当てられている。
【0040】
原則として、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムにおける変調ユニットからの領域だけで発生する高周波電流は、変調ユニットを冷却する冷却デバイスによって適切に対応される、変調ユニット内で発熱を引き起こすことがある。この冷却デバイスを、変調ユニットのハウジング内に配置することができ、又は冷却デバイスは、変調ユニットに割り当てられた外部冷却デバイスであることができる。例えば、それ自体知られている冷却回路又は他の冷却要素を、この目的のために使用することができる。
【0041】
特に好ましい方法において、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、次の追加特徴a.及びb.のうち少なくとも1つ(好ましくは、両方)を特徴とする。
a.n個のエネルギー貯蔵モジュールに割り当てられているスイッチは、パルス幅変調にセットアップされていない。
b.n個のエネルギー貯蔵モジュールは、受動冷却デバイスを有しない、又は1つの受動冷却デバイスだけを有する、又は、n個のエネルギー貯蔵モジュールは、受動冷却デバイスを有しない、又は1つの受動冷却デバイスだけを有する。
【0042】
本発明によるバッテリー貯蔵システムのn個のエネルギー貯蔵モジュールがパルス幅変調にセットアップされていないという事実は、エネルギー貯蔵モジュールが、非常に単純に構成可能であり、任意の複雑な回路を必要としないので、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで大幅な節約を行うことができることを意味する。本発明の概念によれば、パルス幅変調を変調ユニットにおける中心点で実行するので、複雑なパルス幅変調スイッチを、個々のエネルギー貯蔵モジュールで必要としない。これは、様々な利点を有する。記載の節約の可能性に加えて、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムにおける発熱に関して更に特別な利点がある。個々のエネルギー貯蔵モジュールでパルス幅変調を省くことによって、高周波電流を領域で必要とせず、エネルギー貯蔵モジュールで過剰な発熱がないので、精巧な冷却システム又は冷却機器の必要がない。好ましい実施形態において、低コスト冷却手段(例えば、印刷回路基板上の拡大銅領域、及び/又ははんだ付けSMD(表面実装デバイス)ヒートシンク)を、発生する伝導損失を補償するのに十分なエネルギー貯蔵モジュールに設ける。更に、冷却手段は、個々のエネルギー貯蔵モジュールにおけるエネルギー貯蔵要素の動作中の抵抗損に対して必要又は有用であることがある。
【0043】
特に好ましい方法において、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、エネルギー貯蔵モジュールの制御に関して、直後の追加特徴a.を特徴とする。
a.信号線は、エネルギー貯蔵モジュールに割り当てられているスイッチを制御するように設けられている。
【0044】
パルス幅変調を個々のエネルギー貯蔵モジュールに実行せず、パルス幅変調を変調ユニットにおける中心点だけで実行するので、個々のエネルギー貯蔵モジュールの制御を、非常に単純に設計することもできる。特に、エネルギー貯蔵モジュールに割り当てられたスイッチを制御するために、0/1信号線だけを設ける場合、特に有利である。例えば、比較的遅い共通バスシステムを使用して、個々のエネルギー貯蔵モジュールのスイッチを制御することができる。なぜなら、個々のエネルギー貯蔵モジュールの1つの接続及び切断だけを必要とするからである。一方で、エネルギー貯蔵モジュールの制御のこの実施形態は、原則として、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの動作に十分であり、他方で、大幅なコスト節約を可能にする。
【0045】
好ましい実施形態において、干渉に対する電磁波耐性を改善するために、従来の銅線の代わりに、光ファイバーを、0/1信号線に使用することができる。光ファイバーは、銅線よりも若干高価であるけれども、光ファイバーは、固有のガルバニック絶縁を既に有し、原則として、電磁干渉の影響を受けない。一般的に、高いクロック速度が、本発明によるシステムに必要でないので、必要な送受信器は、非常に単純に、従って低コストで、設計可能である。
【0046】
0/1信号線の代替案として、いわゆるトライステート要素を使用することもできる。これらの要素は、出力が、0及び1だけでなく、第3の高インピーダンス状態も想定することができるデジタル切り換え要素である。
【0047】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの特に好ましい実施形態において、システムは、直後の追加特徴aを常に有する。
a.制御デバイスは、経時変化する全電圧UTotal(t)を生成するために、時間で重複する各割り当てスイッチを介して、異なる長さの作動期間にわたってエネルギー貯蔵モジュールのうち少なくとも2つを作動させることができるように構成されている。
【0048】
時変全電圧UTotal(t)を、基本的に任意の電圧波形で生成することができる。従って、鋸歯状電圧を、三角形電圧と同じ程度に良い近似で生成することができる。
特に好ましくは、UTotal(t)は、特に、最初に既述したように、正弦波電圧特性を有する電圧である。従って、好ましい実施形態において、直流電源からの電流を、直流電圧から交流電圧への変換を有する交流ネットワークに供給する放電処理の形で、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムを動作させることができる。
【0049】
エネルギー貯蔵モジュールの制御に加えて、特に好ましい方法において、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、制御デバイスの機能に関して、直後の追加特徴を更に特徴とする。
a.制御デバイスは、変調ユニットにおけるパルス幅変調スイッチを制御するように構成されている。
【0050】
従って、この好ましい実施形態において、制御デバイスは、n個のエネルギー貯蔵モジュールの制御及び切り換え、及び変調ユニットにおけるパルス幅変調スイッチの制御の両方を引き継ぐ。パルス幅変調スイッチの直接制御の場合、好ましくは、高速のために設計された信号バスを設ける。n個のエネルギー貯蔵モジュールの制御の場合、低周波数を用いた単純な0/1信号の伝送は、十分である。
【0051】
好ましい実施形態において、モジュラーバッテリー貯蔵システムの制御デバイスは、直後の追加特徴のうち1つを常に有する。
a.制御デバイスは、信号プロセッサである。
b.制御デバイスは、マイクロコントローラーである。
【0052】
本発明は、上述の説明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムを動作させる方法を更に含む。特に好ましい方法において、この方法は、直後のステップa.及びb.を含む。
a.n個のエネルギー貯蔵モジュールを連続的に作動及び動作停止させることによって、階段状電圧を生成する、及び
b.階段状電圧を、変調ユニットに供給し、パルス幅変調及び少なくとも1つのフィルタリングによって平滑化正弦波電圧に変換する。
【0053】
特に好ましい方法において、平滑化正弦波電圧を、相として交流電力グリッドに供給することができる。従って、個々のエネルギー貯蔵モジュールで生成される直流電圧を、個々のエネルギー貯蔵モジュールの適切な逐次制御によって交流電圧に変換し、対応する電力グリッドで使用することができる。同様に、システムは、多相システムを動作させる方法、例えば、三相電流を生成するのにも適している。
【0054】
更に、システムを使用して、直流用途(例えば、充電電気自動車又はその他)を提供することもできる。しかし、システムを使用して、例えば、任意の構造的変更を加える必要もなく、光起電力システムから直流電圧を供給して引き込むこともできる。このように貯蔵される電気を、交流としてグリッドに供給し、又は直流として使用し、例えば、電気自動車を充電することができる。
【0055】
従って、本発明によるシステムを、例えば、電気自動車用の充電デバイスとして設計することができ、ソフトウェアを介して構成可能な方法で直流電圧又は交流電圧を供給するように、システムのマルチレベルインバーターを設計する。これは、単一のパワーエレクトロニクスシステムを有する単一の充電デバイスが、異なる充電システムに役立つことができることを意味する。
【0056】
原則として、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムを動作させる場合、他の任意の波形を生成することもできる。例えば、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムは、例えば、光起電力システムの用途、又は電気自動車の充電、又は他の目的のために使用可能な直流電圧を生成するのにも適している。
【0057】
特に好ましい方法において、本発明による方法は、直後の追加特徴aを常に有する。
a.モジュラーバッテリー貯蔵システムのエネルギー貯蔵モジュールを、50Hz~500Hzの間の周波数(特に、100Hz)で駆動する。
【0058】
100Hzの周波数を用いた回路は、特に有利である。なぜなら、この周波数は、家庭用グリッドで半波長の周波数に対応するからであり、その結果、エネルギー貯蔵モジュールのこのような回路によって、生成交流電圧を、更に苦もなく、単相として家庭用グリッドに供給することができる。
【0059】
特に好ましい方法において、本発明による方法は、直後の追加特徴を更に有する。
a.変調ユニットのパルス幅変調スイッチを、高い周波数で駆動する。
【0060】
好ましくは、パルス幅変調スイッチを駆動する高い周波数は、1kHz~1Mhzの範囲にある。選択される実際の周波数範囲は、使用される回路技術及び/又は半導体技術に適切に適合される。特に好ましい実施形態において、周波数は、10kHzから200kHzの範囲にある。
【0061】
パルス幅変調スイッチを制御するために使用される高周波数のために、下流フィルターチョークの有効性は、特に高く、その結果、パルス幅変調に対する高いクロック周波数で、フィルターチョークのサイズを更に減少することができる。従って、フィルターチョークのサイズの減少は、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの実施形態又は変調ユニットの実施形態で、特別な節約の可能性を与え、その結果、パルス幅変調スイッチを駆動する場合、高いクロック周波数は、特に好ましい。本発明によるバッテリー貯蔵システムの実施形態のために、特に、変調ユニットのハウジングのために、高周波数に伴う電磁干渉放射線は、問題がない。なぜなら、例えば、金属ハウジングによって遮蔽要素を有する対応する実施形態は、変調ユニットのコンパクト設計のために多大な労力無しで可能であるからである。
【0062】
好ましい実施形態において、ハウジングは、金属ハウジングである。しかし、ハウジング、又は少なくともハウジングの遮蔽要素のために、金属化プラスチックを使用する、即ち、ハウジングは、金属被覆を有するプラスチック部分からなることを提供することもできる。
【0063】
好ましい実施形態において、ハウジングは、パワーエレクトロニクスを基本的に完全に密閉し、発生する周波数で共振又はアンテナを形成することができる任意のスリット又は他の開口部を形成しないファラデー箱を形成するような方法で、遮蔽するために設計されている。更に、換気口を覆う金属グリッドを、例えば、遮蔽手段として設けることができる。
【0064】
システムの特に好ましい実施形態において、個々のエネルギー貯蔵モジュールとのデータ通信を行う。しかし、従来のシステムと比較して、対応する通信バスは、非常に一層単純であるように設計可能である。特に、リアルタイム対応のデータ伝送を必要とせず、その結果、好ましいデータ通信線は、リアルタイム対応でない。例えば、低コストインターフェース(例えば、CAN又はRS485)を、この状況で使用することができる。
【0065】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの更に好ましい実施形態において、又はこのようなバッテリー貯蔵システムを動作させる方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つの性能パラメータ又は少なくとも1つの性能値を、n個のエネルギー貯蔵モジュールの各々に対して判定することを提供することもできる。判定性能パラメータによって、異なる長さの作動期間を、個々のエネルギー貯蔵モジュールに割り当てることができる。換言すれば、少なくとも1つの性能パラメータによって、どのエネルギー貯蔵モジュールを短時間(短い作動期間)だけ作動させるか、及びどのエネルギー貯蔵モジュールをより長い時間(より長い作動期間)作動させるかに関して、割り当てを行う。
【0066】
一般的に、バッテリー貯蔵システムによって含まれるエネルギー貯蔵モジュールの実際の残存容量(充電状態、手短に言えばSOC)及び最大利用可能容量(健全状態、手短に言えばSOH)は、バッテリー貯蔵システムの動作に役立つ。ここで、潜在的な問題は、バッテリー貯蔵システムにおける個々のエネルギー貯蔵モジュールのSOC及びSOHが、例えば、異なる経年劣化速度の結果として、大幅に発散する可能性があることである。一般的に、最悪性能値を有するエネルギー貯蔵モジュールは、バッテリー貯蔵システムの全体的性能を判定する。
【0067】
平衡システムを使用して、不均等な荷電状態及び/又は電圧状態を有するエネルギー貯蔵モジュールの間の荷電及び/又は電圧を等しくすることが知られている。しかし、このような平衡システムは、関連ハードウェア及びソフトウェアのコストがかなり高いので、実装するのが安価でない。
【0068】
本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの好ましい実施形態において、又は本発明による方法の好ましい実施形態において、個々のエネルギー貯蔵モジュールを制御する場合、性能パラメータを考慮することによって、不均等な荷電状態及び/又は電圧状態を補償することができる。
【0069】
性能値又は性能パラメータは、エネルギー貯蔵モジュールの性能の特性である状態値である。特に、性能値又は性能パラメータは、判定時における各エネルギー貯蔵モジュールの現在のSOC又は現在のSOHであることができる。しかし、少なくとも1つの性能値は、各エネルギー貯蔵モジュールの現在のSOC及び/又は現在のSOHと相関がある値であることもできる。
【0070】
SOCを判定する幾つかの既知の手続きがある。例えば、放電電圧を測定する場合、既知の放電曲線を用いて、現在のSOC値を推論することができる。しかし、本発明の状況で、SOC判定のために選択される方法は、補助的である。判定性能値は、互いに比較できる、即ち、比較できる方法で得られることが単に重要であり、その結果、エネルギー貯蔵モジュールの性能を、値に基づいて比較することができる。
【0071】
更に、SOHを判定する幾つかの既知の手続きがある。エネルギー貯蔵モジュールのSOHの1つの特性は、エネルギー貯蔵モジュールの内部抵抗である。例えば、エネルギー貯蔵モジュールを、既定の条件(温度、充電状態、放電電流、放電持続時間など)の下で動作させる場合、内部抵抗に対する基準値を判定することができる。(同じ既定の条件の下で測定される)内部抵抗の変化に基づいて、SOHを推論することができる。しかし、本発明の状況で、もしあれば、SOC判定のために選択される方法も、補助的である。再度、バッテリー貯蔵システムのエネルギー貯蔵モジュールに対する判定性能値は、互いに比較できる、即ち、比較できる方法で得られることが単に重要であり、その結果、エネルギー貯蔵モジュールの性能を、得られた値に基づいて互いに比較することができる。
【0072】
一般的に、エネルギー貯蔵モジュールの初期動作中の形成サイクルは別として、エネルギー貯蔵モジュールのSOHは、直接連続充電及び放電サイクルの間で大幅に変化しない。従って、少なくとも1つの性能値が、現在のSOH、又は現在のSOHと相関がある値である場合、一般的に、単に間隔を置いて(例えば、10個の充電及び放電サイクルの間隔で)性能値を判定するのに十分である。その結果、少なくとも2つのエネルギー貯蔵モジュールを異なる長さの作動期間に割り当てる場合、判定値が更新されるまで、判定値を記憶して使用することができる。
【0073】
対照的に、SOCは、非常に短い期間でかなりの程度まで変化することがあるので、現在のSOCを判定する、又は代わりに、割り当ての直前に現在のSOHと相関がある値を判定することは一般的に適切である。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、次の追加ステップのうち少なくとも1つ、特に好ましくは、次の追加ステップの3つ全てを有する。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールの各々に対する判定性能値を、データメモリに記憶し、その結果、エネルギー貯蔵モジュールの性能に従ってn個のエネルギー貯蔵モジュールをソートすることができる。
・エネルギー貯蔵モジュールを、データメモリにソートされた性能値に基づいて、異なる長さの作動期間に割り当てる。
・比較的高い性能を有するエネルギー貯蔵モジュールを、比較的低い性能を有するエネルギー貯蔵モジュールよりも長い作動期間、割り当てる。
【0075】
一般的に、作動期間は、個々のモジュールの判定性能能力と相関がある。例えば、少なくとも1つの性能値が現在のSOHである場合、SOHを増加することによって、エネルギー貯蔵モジュールをソートすることができる。その結果、最大SOH値は、最高性能能力を示し、最小SOH値は、最低性能能力を示す。本発明によれば、最大SOHを有するエネルギー貯蔵モジュールを最長作動期間に割り当てる一方、最小SOHを有するエネルギー貯蔵モジュールを最短作動期間に割り当てることが好ましい。
【0076】
その結果、より強力なエネルギー貯蔵モジュールを、あまり強力でないエネルギー貯蔵モジュールよりも動作中に一層高い負荷にかける。異なる負荷の結果、より高い負荷にかけられたモジュールは、より低い負荷にかけられたモジュールよりも平均で速く老化するので、エネルギー貯蔵モジュールの性能能力を、長期的に再度互いに合致させる。従って、本発明による方法は、エネルギー貯蔵モジュールの対称化を間接的に保証し、従って、上述の平衡システムと同様な効果を有する。
【0077】
エレクトロモビリティからの経年エネルギー貯蔵モジュールは、最大容量変動を有する。このような経年エネルギー貯蔵モジュールを、ここに記載の方法による問題なく、事前選択される必要なしに、バッテリー貯蔵システムで一緒に動作させることもできる。エネルギー貯蔵モジュールが、エネルギー貯蔵モジュールの寿命の末期に達している場合、このエネルギー貯蔵モジュールを、高価な予備手段(マッチングなど)の必要なく、交換モジュールと容易に交換することができる。新しいエネルギー貯蔵モジュールでも、エネルギー貯蔵モジュールの初期容量及び生産の散乱にかかわらず、予備手段なしで、接続して動作させることができる。
【0078】
全体として、これらの手段は、本発明によって動作されるバッテリー貯蔵システムで使用されるエネルギー貯蔵モジュールの有用寿命を延ばし、生態学的利点及び経済的利点の両方をもたらす。
【0079】
特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、次の追加ステップのうち少なくとも1つ、特に好ましくは、後述の追加ステップの5つ全てを有する。
・ピーク電圧UGes(t)を生成するために必要なエネルギー貯蔵モジュールの数mを判定する。
・m個のエネルギー貯蔵モジュールを、利用できるn個のエネルギー貯蔵モジュールから選択する。
・電圧UGes(t)の所望の電圧曲線を生成するために、m個のエネルギー貯蔵モジュールを作動させるべきである時間間隔及び作動期間を指定する。
・ソーティング基準「性能」及び「エネルギー貯蔵モジュールに割り当てられた作動期間の長さ」を考慮して、選択されたm個のエネルギー貯蔵モジュールを、2つのソーティング基準の両方が同じ方向に増加又は減少する順序にソートする。
m個のエネルギー貯蔵モジュールを、エネルギー貯蔵モジュールの容量、エネルギー貯蔵モジュールの長さに応じた作動期間に従ってソートすることができる。作動期間を、m個のエネルギー貯蔵モジュールに割り当てる。割り当ての後、エネルギー貯蔵モジュールの容量、及びエネルギー貯蔵モジュールに割り当てられた作動期間の長さに従ってエネルギー貯蔵モジュールをソートすると、同じ結果をもたらすような方法で、割り当てを行う。従って、容量の増加に応じてソートすると、最長作動期間を最も強力なモジュールに割り当て、2番目に長い作動期間を2番目に強力なモジュールに割り当て、3番目に長い作動期間を3番目に強力なモジュールに割り当てるなどの順序になる。
・m個のエネルギー貯蔵モジュールを、この順序及び指定時間間隔で作動させる。
【0080】
ピーク電圧は、周期的に変化する電圧の瞬時値の最大量である。正弦波電圧曲線の場合、ピーク電圧は、正弦波振動の振幅に対応している。
【0081】
同じ個々の電圧Usingle)、mを、個々のエネルギー貯蔵モジュールによって供給される個々の電圧Usingleの値でピーク電圧の値を割ることによって判定する。
【0082】
特に好ましい実施形態において、モジュラーバッテリー貯蔵システムは、ピーク電圧を生成するのに必要である場合よりも多くのエネルギー貯蔵モジュールを含む。簡単に言えば、n>mであることが好ましい。例えば、m個のエネルギー貯蔵モジュールを、利用可能モジュール性能データに基づいて選択してもよい。例えば、常に、m個の強力なモジュールを選択することができる。
【0083】
特別な利点に関して、欠陥エネルギー貯蔵モジュールを選択で考慮しないことを提供することもできる。この目的のために、例えば、エネルギー貯蔵モジュールを動作停止させるn個のエネルギー貯蔵モジュールの各々に対して、性能閾値を定義することができる。
【0084】
必要に応じて、動作停止及び/又は交換の必要性を示すアンダーカットの結果として信号又はメッセージをトリガする動作停止に備えることができる。原則として、欠陥エネルギー貯蔵モジュールを、動作中に交換することができる。この目的のために、本発明による方法を停止させる必要がない。この目的のために、エネルギー貯蔵モジュールに割り当てられたスイッチは、橋渡しに対する上述の選択肢を有し、エネルギー貯蔵モジュールは、更なるエネルギー貯蔵モジュールにもはや電気的に接続されていない。
【0085】
更に特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、次の追加特徴のうち少なくとも1つ及び/又は次の追加ステップのうち1つを有する。
・所望の電圧曲線は、正弦波である。
・最高容量を有するエネルギー貯蔵モジュールを、最初に作動させ、最低容量を有するエネルギー貯蔵モジュールを、最後に作動させる。
・最高容量を有するエネルギー貯蔵モジュールを、最長作動期間にわたって作動させ、最低容量を有するエネルギー貯蔵モジュールを、最短作動期間にわたって作動させる。
【0086】
正弦半波長を生成するために、最長作動期間が割り当てられているエネルギー貯蔵モジュールを、最初に作動させ、最後に動作停止させることは適切である。一方、最短作動期間が割り当てられているエネルギー貯蔵モジュールを、最後に作動させ、最初に動作停止させるべきである。従って、最長作動期間が割り当てられているエネルギー貯蔵モジュールは、比較的高い性能を有する。一方、最短作動期間が割り当てられているエネルギー貯蔵モジュールは、比較的低い性能を示すことがある。
【0087】
更に特に好ましい実施形態において、本発明によるバッテリー貯蔵システムは、次の追加特徴のうち少なくとも1つを有する。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールだけからなる配列は、リチウムイオンタイプのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、ニッケル水素タイプのエネルギー貯蔵モジュールだけを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、LFP(リン酸鉄リチウム)に基づく陰極を有する少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)に基づく陰極を有する少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、LTO(チタン酸リチウム)に基づく陰極を有する少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールからなる配列は、NCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)に基づく陰極を有する少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・n個のエネルギー貯蔵モジュールの配列は、少なくとも1つのPb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
【0088】
本発明によるバッテリー貯蔵システムにおいて、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールを、容易に相互接続することができる。個々のタイプの強度を、目標とされる方法で使用することができる。異なるエネルギー貯蔵モジュールを、要求に従って駆動することができる。例えば、LTOに基づく陰極を有するエネルギー貯蔵モジュールは、高い負荷ピークを吸収するのに適している。
原則として、バッテリー貯蔵システムにおいてニッケル水素タイプのエネルギー貯蔵モジュール及びリチウムイオンタイプのエネルギー貯蔵モジュールを更に相互接続することができる。
【0089】
Pb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュールは従来、鉛蓄電池の個々のセルとして硫酸電解質で使用される。本発明の範囲内で、バッテリー貯蔵システムにおいてPb/PbO2タイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールをリチウムイオンタイプのエネルギー貯蔵モジュールに相互接続することは特に好ましい。Pb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュールは、頂点での使用に特に適している。
【0090】
上述によれば、本発明によるバッテリー貯蔵システム又は方法は、次の特徴のうち少なくとも1つを有する。
・好ましくは、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールは、異なる個々の電圧Usingleを有する。
従って、例えば、n個のエネルギー貯蔵モジュールの配列は、2Vの公称電圧を有するエネルギー貯蔵モジュール(例えば、Pb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュール)と組み合わせた1.2Vの公称電圧を有するエネルギー貯蔵モジュール(例えば、ニッケル水素タイプのエネルギー貯蔵モジュール)を含んでもよい。
・好ましくは、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールは、リチウムイオンタイプのエネルギー貯蔵モジュール、ニッケル水素タイプのエネルギー貯蔵モジュール、及びPb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュールからなる群から選択されたエネルギー貯蔵モジュールを含む。
・好ましくは、様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールは、リチウムイオンタイプのエネルギー貯蔵モジュール、ニッケル水素タイプのエネルギー貯蔵モジュール、及びPb/PbO2タイプのエネルギー貯蔵モジュールからなる群から選択された少なくとも2つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
従って、n個のエネルギー貯蔵モジュールの配列は、例えば、2Vの公称電圧を有するPb/PbO2タイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールと組み合わせた、又はリチウムイオンタイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールと組み合わせた1.2Vの公称電圧を有するニッケル水素タイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。代わりに、n個のエネルギー貯蔵モジュールの配列は、記載の3つのタイプの各々の少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュール、又はリチウムイオンタイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールと組み合わせたPb/PbO2タイプの少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを更に有することができる。
・様々なタイプのエネルギー貯蔵モジュールは、LFPに基づく陰極を有するエネルギー貯蔵モジュール、NMCに基づく陰極を有するエネルギー貯蔵モジュール、LTOに基づく陰極を有するエネルギー貯蔵モジュール、及びNCAに基づく陰極を有するエネルギー貯蔵モジュールからなる群から選択された少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを含む。
【0091】
特に好ましい実施形態において、本発明によるバッテリー貯蔵システムを、バッテリー管理システムで動作させ、個々のモジュールを、エネルギー貯蔵セル又はエネルギー貯蔵モジュールの測定可能パラメータに基づいて特別に制御する。
【0092】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面と併せて実施例の次の説明から明白になるであろう。これに関連して、個々の特徴をそれぞれ、別々に、又は互いに組み合わせて実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】モジュラーバッテリー貯蔵システムの全電圧曲線である。
【
図2】先行技術のモジュラーバッテリー貯蔵システムである。
【
図3】本発明の好ましい実施形態によるモジュラーバッテリー貯蔵システムである。
【
図4】本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムの一部としての変調ユニットの構造である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
モジュラーバッテリー貯蔵システムの基本動作について、例えば、ここで参照される国際公開第2018/162122A1号パンフレットで詳細に説明する。
【0095】
図1は、モジュラーバッテリー貯蔵システムで生成可能な階段状電圧1を、特に、交流グリッドに供給するために使用可能な正弦波電圧2に平滑化又は「漸減」する原理を例示する。モジュラーバッテリー貯蔵システムの個々のエネルギー貯蔵モジュールの電源を連続的にオン及びオフにすることによって、階段状電圧を生成し、その結果、全電圧が階段状の漸次的変化になる。この階段状電圧1を、電力グリッドで正弦波電圧に近似する。しかし、エネルギー貯蔵モジュールの切り換えによって、所望の出力電圧への粗い近似だけが可能である。従って、電圧段を緩和又は補償する所望の正弦波電圧2に階段状電圧1を近似するために、パルス幅変調(PWM)を実行することが既に知られている。
階段状電圧1は、モジュラーバッテリー貯蔵システムの可能性のほんの1例である。実際に、モジュラーバッテリー貯蔵システムの個々のエネルギー貯蔵モジュールで、任意の曲線形状を原則として生成することができる。
【0096】
図2は、スイッチ12に各々関連付けられた複数の個々のエネルギー貯蔵モジュール11を有する従来のモジュラーバッテリー貯蔵システムを例示する。エネルギー貯蔵モジュール11は、再充電可能エネルギー貯蔵モジュールである。各スイッチ12に1つのエネルギー貯蔵モジュール11を正確に割り当て、逆もまた同様である。スイッチ12によって、各エネルギー貯蔵モジュール11を、作動及び動作停止させることができる。
各スイッチ12は、幾つかの切り換え位置を有することができる。第1の切り換え位置で、スイッチ12に割り当てられたエネルギー貯蔵モジュール11を作動させ、エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧U
singleは、有効である。第2の切り換え位置で、スイッチ12に関連付けられたエネルギー貯蔵モジュール11を動作停止させ、エネルギー貯蔵モジュールの個々の電圧U
singleは、有効でない。必要に応じて、スイッチ12に割り当てられたエネルギー貯蔵モジュール11を逆極性で作動させる第3の切り換え位置を設けることができる。
【0097】
有利なことに、全スイッチ12は、動作停止の場合、スイッチ12に関連付けられたエネルギー貯蔵モジュール11を橋渡しすることができるように構成されている。これは、例えば、動作停止エネルギー貯蔵モジュール11を、動作中に交換することができることを意味する。
スイッチ12を、直列接続する。従って、作動エネルギー貯蔵モジュール11の個々の電圧Usingleが合計して全電圧UTotalになるような方法で、エネルギー貯蔵モジュール11を、スイッチ12を介して接続することができる。スイッチ12のうち1つのスイッチが、第2の切り換え位置にある場合、スイッチ12は、スイッチ12に割り当てられた動作停止エネルギー貯蔵モジュール11をバイパスする。スイッチ12のうち1つのスイッチが、第3の切り換え位置にある場合、スイッチ12に割り当てられたエネルギー貯蔵モジュール11の個々の電圧Usingleは、全電圧UTotalへの負の寄与を行う。制御デバイス13を介して個々のスイッチ12を適切に作動させることによって、正弦波電圧曲線に近似する個々の電圧を合計することによって、階段状電圧を生成することができる。エネルギー貯蔵モジュール11の電源を連続的にオンにすると、所望のピーク値に達するまで、全電圧UTotalは、徐々に増加する。次に、個々のエネルギー貯蔵モジュールの連続的動作停止によって、全電圧を徐々に減少する。
【0098】
交流の正弦波曲線への十分な近似を達成するために、個々のエネルギー貯蔵モジュール11において従来、変調された個々の電圧を結合する前に、各関連スイッチ12を介して、生成された個々の電圧をPWMにかける。モジュラーバッテリー貯蔵システム10は、中性導線16及び出力17を有し、特に、正弦波電圧に近似する全電圧を、出力導線17を介して電源電圧に供給することができる。
【0099】
高いクロック周波数がPWMに必要であり、その結果、個々のスイッチ12の対応する高周波作動14は、個々のエネルギー貯蔵モジュール11からの領域、及び更にスイッチ12の作動14用の線からの領域で、電磁干渉放射線15を形成することになる。スイッチ12における高速切り換え動作は、大電流で強い交番磁界を引き起こし、モジュラーバッテリー貯蔵システムは実際に、殆ど使用できないことがある。この場合、モジュラーバッテリー貯蔵システム10の構造は、電磁干渉放射線のためにそれ自体の動作に干渉するだけでなく、外部への大幅な干渉を放射し、隣接導線に磁気結合することもある。これは、モジュラーバッテリー貯蔵システム10の全領域で電磁干渉放射線に対する広範囲の遮蔽を必要とする。更に、出力導線17は、遮蔽されるべき電磁干渉放射線18を引き起こす。
【0100】
図3は、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システム100を例示する。ここで更に、スイッチ120に各々割り当てられた複数のエネルギー貯蔵モジュール110を設ける。
図3に示す中性導線160は、必須でない。従って、システムを、三相システムとして設計することもできる。
図2を参照して説明された従来のバッテリー貯蔵システムと対照的に、いずれの場合にも、比較的単純な回路120を設け、回路120は、主として、個々のエネルギー貯蔵モジュール110の電源をオン及びオフにすることができ、低い周波数で制御される。従って、制御デバイス130による対応する作動140は、遅く、例えば、電源の半波長のクロックに対応する100Hzの周波数を有することができる。例えば、単純な0/1信号線は、ここで十分である。データバスは、必要でなく、又は、非常に単純に設計された通信バスを設けることができる。特に、リアルタイム対応の線は、必要でない。単純なスイッチ120及び単純な信号線140のために、個々のエネルギー貯蔵モジュール110からの範囲で電磁干渉の関連放射線がなく、その結果、この領域で、複雑な遮蔽手段を省くことができる。
【0101】
個々の接続又は作動エネルギー貯蔵モジュール110で生成される個々の電圧Usingleを、全電圧UTotalに追加し、出力導線170を介して中央変調ユニット200に供給する。変調ユニット200のコアは、全電圧UTotalの微調整に必要な電圧曲線のパルス幅変調を実行するパルス幅変調スイッチ210である。パルス幅変調スイッチ210の下流に、フィルターチョーク220があり、フィルターチョーク220は、パルス幅変調によってある程度まで切断される全電圧の更なる平滑化を行う。
【0102】
制御デバイス130の駆動線230を介した直接制御によって実行されるパルス幅変調に対するクロック周波数は、比較的高くなるように選択される。なぜなら、フィルターチョーク220は、その後特に効果的であり、従って、比較的小さくなるように設計可能であるからである。フィルターチョーク220は一般的に、全バッテリー貯蔵システム100の最も高価な構成要素であるので、この手段は、大幅な節約の可能性を与える。
【0103】
高周波パルス幅変調に関連して発生する電磁干渉放射線280を、変調ユニット200のハウジング240によって効果的に遮蔽し、ハウジング240又は変調ユニット200は、特にコンパクト及び頑強な設計である。
特に好ましい実施形態において、低域通過フィルター250、260を、それぞれ変調ユニット200の入力及び出力に設けて、全電圧UTotalを更に平滑化してもよい。
【0104】
変調ユニット200を通過した後に得られる全電圧UTotal171は、例えば、三相のうち1つの相として、例えば、交流ネットワークに供給されるのに特に適している。
制御デバイス130は、変調ユニット200の一体部分であることが好ましい。なぜなら、これは、更に制御デバイス130に特に適している方法で外側からの保護及び遮蔽を行うからである。
パルス幅変調スイッチ210を、接続部230を介して制御デバイス130によって直接制御してもよく、高速データバスは、接続部230に必ずしも必要であるとは限らない。
【0105】
高周波パルス幅変調スイッチ210に起因する電磁干渉280を、ハウジング240によって確実に遮蔽する。一方、フィルターチョーク220も統合する変調ユニット200のコンパクト及び集中設計は、高い切り換え周波数を可能にし、従って、個々の構成要素のサイズ及びコストを減少することができる。他方、本発明によるバッテリー貯蔵システム100において、個々のエネルギー貯蔵モジュール110の空間占有構造を、更なる遮蔽手段無しで形成することができ、コストを更に削減し、バッテリー貯蔵システムの周辺領域でハウジング構造を単純化する。
好ましい実施形態において、変調ユニット200は、ここで更に例示されない冷却デバイスを含む。
【0106】
図4は、変調ユニット200の基本的な電力電子構造を例示する。パルス幅変調スイッチ210は、コンデンサ(212)を介して(C_L)接続されている2つの半導体スイッチ(T1、T2及びT3、T4)を各々有する2つの線枝を有するHブリッジ回路を含む。エネルギー貯蔵モジュールからの全電圧U
Total(ここで図示せず)を、出力導線170を介してスイッチ構造の入力に供給する。この例において、全電圧U
Totalは、階段状電圧1の形を有する。
【0107】
コンデンサ212に印加される電圧を、電力半導体211を駆動することによって、特に、パルス幅変調によって、調整又は制御する。回路210を通過し、下流フィルターリアクター220(L_f)を通過した後、平滑化正弦波電圧波形2が生じ、平滑化正弦波電圧波形2を、例えば、三相のうち1つの相として電源電圧に供給することができる。しかし、得られる電圧のこのような正弦波形状は、本発明によるモジュラーバッテリー貯蔵システムで生成可能な電圧の可能な例の1つにすぎない。同様に、他の波形又は直流を生成することもできる。
【国際調査報告】