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特表2024-505304車両、特に商用車用のステアリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】車両、特に商用車用のステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240129BHJP
   B62D 3/06 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D3/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547231
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2022050236
(87)【国際公開番号】W WO2022167169
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102616.4
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ラング
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ペーターラインス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン カルテンバッハ
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB03
3D333CB22
3D333CB52
3D333CC14
3D333CC15
3D333CD14
3D333CD16
3D333CE03
3D333CE04
3D333CE05
(57)【要約】
本発明は、車両、特に商用車用のステアリングシステム(110)であって、少なくとも1つのステアリング伝動装置(112)、特にボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置と、少なくとも1つの第1の車両ホイールを操舵し、かつ少なくとも1つの第2の車両ホイールを操舵する少なくとも1つのステアリング機構(114)であって、ステアリング伝動装置(112)は、ステアリング機構(114)に連結されている、ステアリング機構(114)と、ステアリング伝動装置(112)に液圧流体を供給する少なくとも1つの液圧ポンプ(116)と、車両のトラクション駆動装置に依存せず、かつ/または別個に設けられた少なくとも1つの駆動モータ(118)であって、液圧ポンプ(116)に、この液圧ポンプ(116)を駆動するために連結されている、駆動モータ(118)とを備え、ステアリング伝動装置(112)と、液圧ポンプ(116)と、駆動モータ(118)とは、組み付けられた状態において、構造ユニット(120)として形成されている、ステアリングシステム(110)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に商用車用のステアリングシステム(110)であって、
少なくとも1つのステアリング伝動装置(112)、特にボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置と、
少なくとも1つの第1の車両ホイールを操舵し、かつ少なくとも1つの第2の車両ホイールを操舵する少なくとも1つのステアリング機構(114)であって、前記ステアリング伝動装置(112)は、前記ステアリング機構(114)に連結されている、ステアリング機構(114)と、
前記ステアリング伝動装置(112)に液圧流体を供給する少なくとも1つの液圧ポンプ(116)と、
前記車両のトラクション駆動装置に依存せず、かつ/または別個に設けられた少なくとも1つの駆動モータ(118)であって、前記液圧ポンプ(116)に、該液圧ポンプ(116)を駆動するために連結されている、駆動モータ(118)と
を備え、
前記ステアリング伝動装置(112)と、前記液圧ポンプ(116)と、前記駆動モータ(118)とは、組み付けられた状態において構造ユニット(120)として形成されている、ステアリングシステム(110)。
【請求項2】
前記駆動モータ(118)は、前記液圧ポンプ(116)に直接に、特にクラッチなしに連結されている、請求項1記載のステアリングシステム(110)。
【請求項3】
前記駆動モータ(118)および前記液圧ポンプ(116)は、少なくとも1つの共通の駆動軸(122)を有している、請求項2記載のステアリングシステム(110)。
【請求項4】
前記ステアリングシステム(110)は、少なくとも1つの第1の軸・軸受装置(124)と、少なくとも1つの第2の軸・軸受装置(126)とを有しており、該軸・軸受装置(124,126)により、前記駆動軸(122)は、組み付けられた状態において、少なくとも部分的に支持されている、請求項3記載のステアリングシステム(110)。
【請求項5】
前記第1の軸・軸受装置(124)および前記第2の軸・軸受装置(126)は、ハイブリッド式の軸受システムを構成する、請求項4記載のステアリングシステム(110)。
【請求項6】
前記第1の軸・軸受装置(124)は、組み付けられた状態において、前記駆動モータ(118)と前記液圧ポンプ(116)との間で前記駆動軸(122)に配置されている、請求項4または5記載のステアリングシステム(110)。
【請求項7】
前記第1の軸・軸受装置(124)は、特に2列の深溝玉軸受として形成されている、請求項4から6までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【請求項8】
前記駆動軸(122)は、軸方向の端部(122a)を有しており、該軸方向の端部(122a)は、組み付けられた状態において、前記液圧ポンプ(116)の、前記駆動モータ(118)とは反対に位置する側で突出しており、前記第2の軸・軸受装置(126)は、前記駆動軸(122)の前記軸方向の端部(122a)に配置されている、請求項4から7までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【請求項9】
前記第2の軸・軸受装置(126)は、流体力学的な滑り軸受として形成されている、請求項4から8までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【請求項10】
前記駆動軸(122)は、前記駆動モータ(118)の領域において、モータ・軸部分(122b)を有しており、前記液圧ポンプ(116)の領域において、ポンプ・軸部分(122c)を有しており、前記モータ・軸部分(122b)は、前記ポンプ・軸部分(122c)よりも大きな直径を有している、請求項3から9までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【請求項11】
前記駆動モータ(118)は、電動モータとして構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【請求項12】
前記液圧ポンプ(116)は、双方向の液圧ポンプ(116)として形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のステアリングシステム(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に商用車用のステアリングシステムであって、少なくとも1つのステアリング伝動装置、特にボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置と、少なくとも1つの第1の車両ホイールを操舵し、かつ少なくとも1つの第2の車両ホイールを操舵する少なくとも1つのステアリング機構とを備える、ステアリングシステムに関する。
【0002】
本発明は特に、電気液圧の原理に基づくEPSステアリングアシスト装置(電動パワーステアリングElectronic Power Steering:EPS)を備えた、軽量および重量の商用車のステアリングシステムのために規定されている。EPSステアリングシステムは、断続的な動作挙動を有し、すなわち、ステアリング装置の液圧回路内にある液圧油は、操舵運動時にのみ液圧ポンプによって圧送される(原理:パワーオンデマンドPower on Demand)。操舵されない場合、液圧油は静止したままである(液圧ポンプの吐出体積は実質的にゼロである)。液圧ポンプのための駆動装置としては、モータ、例えば車両駆動装置もしくはトラクション駆動装置に依存しない駆動モータ(例えば電気的なBLCDラジアル磁束モータの形態の電動モータ)が用いられる。この種のステアリングシステムは、パワーオンデマンド式のステアリングシステムとして機能するために(例えば内燃機関を有しない電化された商用車において、または例えばドライバアシストシステムにより自動的にドライバの介入なしに自動化された走行要求を実現するために)使用することができる。
【0003】
したがって、車両、特に商用車用のステアリングシステムには、将来的にさらに増大する機能要求が課される。なぜなら、ステアリングシステムは、車両の(部分的な)自動化において重要な役割を果たすからである。
【0004】
その際に、ステアリングシステムを、正確にかつ確実に機能させ、これらの増大する機能要求を考慮し、それにもかかわらず、構造スペース要求に関してさらに最適化することができることが特に重要である。車両における機能密度の増加は、ステアリングシステムのみに関するのではなく、車両内で構造スペースが実質的に変わらない場合、ステアリングシステムの別の機能および車両自体の別の機能も実現するために、ステアリングシステムも構造スペースに関して最適化されることが望ましい。
【0005】
従来技術からは、既に、車両用のステアリングシステムが公知である。
【0006】
したがって、独国特許出願公開第10114600号明細書は、ドライバによって操作可能なステアリング操作装置、特にステアリングホイールと、車体に設けられた、操舵可能な車両アクスルのホイール対の操舵可能なそれぞれ1つの左右のホイールを制御するためのそれぞれ1つの電気機械的な作動ユニットと、操舵可能な車両アクスルに対応配置された作動ユニットの一方の故障または異常時に、まだ機能しているそれぞれ他方の作動ユニットによって、この車両アクスルの両車両ホイールの制御を保証するための手段とを有している車両ステアリングを示している。
【0007】
さらにDE112012806263T5は、車両ステアリング装置を開示しており、この車両ステアリング装置は、車両ステアリングホイールの操作に応じて操舵されるホイールを回転させるように構成されているステアリング装置を有し、ステアリング装置は、互いに対して共通して設定されている電気的な特性を有する、操舵のための第1のモータと第2のモータとを含んでおり、第1のモータを流れる電流の第1の電流値を検出するように構成されている第1の電流センサと、第2のモータを流れる電流の第2の電流値を検出するように構成されている第2の電流センサと、異常診断ユニットとを含んでいる。
【0008】
さらに、独国特許出願公開第102011121827号明細書は、サーボステアリングシステムを示しており、このサーボステアリングシステムは、1対の圧力チャンバを備えたパワーシリンダであって、操舵力を、圧力チャンバの対の間の圧力差に基づいて、操舵されるホイールの少なくとも一方のホイールに提供することができる、パワーシリンダと、ステアリングホイールの操舵回転操作に応じて操舵されるホイールを回転させるためのステアリング機構と、パワーシリンダに作業流体を供給するために、第1の駆動軸の回転に伴って作業流体を吸い込み、かつ吐出するための、第1の駆動軸を備えた第1のポンプであって、第1のポンプが、第1の駆動力源により回転駆動されている、第1のポンプと、パワーシリンダに作業流体を供給するために、第2の駆動軸の回転に伴って作業流体を吸い込み、かつ吐出するための、第2の駆動軸を備えた第2のポンプと、第1の駆動力源とは異なる駆動力源である第2の駆動力源であって、電動モータにより形成されていて、かつ第2のポンプを回転駆動する、第2の駆動力源と、ステアリング機構内に配置されている制御弁であって、第1のポンプまたは第2のポンプにより供給された作業流体を、ステアリングホイールの操舵回転運動に応じて圧力チャンバの対に選択的に供給することができる、制御弁とを含んでいる。
【0009】
従来技術に基づくこのようなステアリング装置は、依然として高価かつ複雑であり、もしくは多数の構成部品を有するように構成されており、大きな構造スペースを必要とし、高い重量を有する。したがって、最も不都合な場合には車両の故障をもたらし得る多様なエラー源が生じる。
【0010】
ゆえに、本発明の課題は、冒頭に述べた形式のステアリングシステムを有利な形式で改良して、特に、ステアリングシステムがより少ない重量を有し、構造スペースに関して最適化されており、かつより車両ホイールに対する正確なもしくは動的な操舵命令を実現することである。
【0011】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の特徴を備えるステアリングシステムにより解決される。したがって、車両、特に商用車用のステアリングシステムが、少なくとも1つのステアリング伝動装置、特にボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置と、少なくとも1つの第1の車両ホイールを操舵し、かつ少なくとも1つの第2の車両ホイールを操舵する少なくとも1つのステアリング機構であって、ステアリング伝動装置が、ステアリング機構に連結されている、ステアリング機構と、ステアリング伝動装置に液圧流体を供給する少なくとも1つの液圧ポンプと、車両のトラクション駆動装置に依存せず、かつ/または別個に設けられた少なくとも1つの駆動モータであって、液圧ポンプに、この液圧ポンプを駆動するために連結されている、駆動モータとを備え、ステアリング伝動装置と、液圧ポンプと、駆動モータとが、組み付けられた状態において構造ユニットとして形成されていることが規定されている。
【0012】
本発明は、ステアリングシステムが、構造的かつ機能的に統合されたステアリング伝動装置を有している、という基本思想に基づいている。特に液圧ポンプならびに補機、例えば補償容器、場合によっては弁等が、トラクション駆動装置の近傍に配置されている従来技術とは異なり、本発明によれば、ステアリング伝動装置と、液圧ポンプと、駆動モータとは、1つの共通の構造ユニットとしてまとめられる。これにより液圧管路が、大幅に短く形成されていてもよく、これにより付加的により少ない熱損失および流れ損失が生じる。その他に、ステアリングシステムは、この種の構成により、軽量化され、より少ない所要構造スペースで形成され得る。この統合されたプラグ・アンド・プレイアプローチでは、液圧回路が、車両のトラクション駆動装置(通常は内燃機関もしくはハイブリッド駆動装置)から分離され、コンパクトなユニットとしてステアリング伝動装置に取り付けられる。これに関連して、液圧ポンプと駆動モータとが、予め組み付けられた共通のモータ・ポンプユニットとして形成されていて、構造ユニットを形成するためにステアリング伝動装置にフランジ結合されていることも同様に考えられる。
【0013】
その他に、駆動モータが、液圧ポンプに直接に、特にクラッチなしに連結されていることが規定されていてもよい。これにより、モータ・ポンプユニットは、さらにコンパクトになり、これにより構造スペースおよび重量に関する別の利点が生じる。その他に、これによってこのモータ・ポンプユニットをより剛性に構成することができるので、より少ない材料疲労もしくはより少ない摩耗が生じ、ひいてはモータ・ポンプユニットのより良好な効率が達成可能である。
【0014】
さらに、駆動モータと液圧ポンプとが、少なくとも1つの共通の駆動軸を有していることが想定可能である。この構成によって、モータ・ポンプユニットはさらにコンパクトになり、これにより、構造スペースおよび重量に関する別の利点が生じる。さらに、駆動軸の構成により(例えば意図的な直径選択により)、液圧ポンプおよび駆動モータの個別の要求に特有に対処することができる。したがって、モータ・ポンプユニットは、より少ない構成部材で機能することができ、これによって、よりあまり複雑でないように構成されており、かつ故障しにくく、それにもかかわらず、駆動軸に対する液圧ポンプおよび駆動モータの要求に適合させることができる。
【0015】
さらに、ステアリングシステムが、少なくとも1つの第1の軸・軸受装置と、少なくとも1つの第2の軸・軸受装置とを有し、これらの軸・軸受装置により、駆動軸が、組み付けられた状態において、少なくとも部分的に支持されていることが考えられる。第1の軸・軸受装置および第2の軸・軸受装置に対して付加的に、電動モータおよび/または液圧ポンプが、そのそれぞれのハウジング内に別の支持装置を有していてもよい。第1の軸・軸受装置および第2の軸・軸受装置は特に、駆動軸に対する液圧ポンプおよび駆動モータの、部分的に相反する要求をまとめるために働く。つまり駆動モータは、例えば駆動モータとしての電動モータにおいて、(ステータとロータとの間の)空隙を種々異なるトルクおよび軸速度において一定に保持するために、軸受を含めてできるだけ剛性であり、もしくは屈曲しない駆動軸を必要とする。これに対して液圧ポンプは、特に液圧ポンプ内での半径方向運動を所定の範囲内で可能にするために、できるだけフレキシブルであり、弾性的な、もしくは屈曲する軸を必要とする。このことは、ポンプ内における圧力補償および温度補償を保証し、これにより圧力要求および温度要求に関するポンプの運転領域をできるだけ大きく保持するために必要である。
【0016】
さらに、第1の軸・軸受装置と第2の軸・軸受装置とが、ハイブリッド式の軸受システムを構成することが可能である。ハイブリッド式の軸受システムは、駆動軸に対するモータ・ポンプユニットの、部分的に相反する要求をまとめるために特に良好に適している。したがって、例えば第1の軸・軸受装置は、少なくとも駆動軸の発生する曲げ負荷に関して、駆動モータの領域において剛性に形成されていてもよい。これに対して、液圧ポンプに対する、第2の軸・軸受装置の軸方向で規定された間隔により、かつ対応する構成により、駆動軸を、少なくとも発生する曲げ負荷に関して、液圧ポンプの領域において弾性的または屈曲可能に形成することが可能である。
【0017】
さらに、第1の軸・軸受装置が、組み付けられた状態において、駆動モータと液圧ポンプとの間で駆動軸に配置されていることが規定されていてもよい。この配置は、駆動モータの領域における駆動軸の曲げ補強にとって特に有利である。つまり、第1の軸・軸受装置は、液圧ポンプと駆動モータとの間で半径方向の軸受反力を形成し、この半径方向の軸受反力は、液圧ポンプにより生じる半径方向力あるいは曲げ力と、これにより生じる曲げモーメントとを補償する。これにより、駆動モータ内では、駆動軸の極めて小さな曲げ変形しか生じず、このことは効率に有利に影響する。
【0018】
第1の軸・軸受装置が、特に2列の深溝玉軸受として形成されていることが想定可能である。深溝玉軸受は、小さな半径方向の軸受遊びと同時に、定義された半径方向力耐荷重性および小さなコストのような、明確に定義された利点を有する、極めて完成された、何百万回も使用された構成部材として、第1の軸・軸受装置を形成するために極めて良好に適している。しかし特に、2列の深溝玉軸受が適している。なぜならば、2列の深溝玉軸受の軸方向の寸法は、確かに1列の玉軸受よりも大きいものの、これにより、より耐荷重性のある、より頑丈な軸受を設けることができるからである。さらに、付加的な軸方向の延長により、より剛性の支持が可能になり、これにより駆動モータの効率が、既に上述したのと同じ理由に基づいて向上する。
【0019】
さらに、駆動軸が、軸方向の端部を有しており、この軸方向の端部が、組み付けられた状態において、液圧ポンプの、駆動モータとは反対に位置する側で突出しており、第2の軸・軸受装置が、駆動軸のこの軸方向の端部に配置されていることが考えられる。この種の構成により、第2の軸・軸受装置の半径方向の反力と、液圧ポンプ内で生じる半径方向力との間のレバーアームが拡大される。拡大されたレバーアームは、結果として液圧ポンプの領域における駆動軸の比較的大きな弾性もしくは屈曲性を有しているので、液圧ポンプ内における駆動軸の屈曲性に対する要求は、第2の軸・軸受装置のこのような配置により、さらに良好に対処され得る。
【0020】
さらに、第2の軸・軸受装置が、流体力学的な滑り軸受として形成されていることが可能である。流体力学的な滑り軸受は、深溝玉軸受に比べて、半径方向でより大きな軸受遊びを有している。これにより、液圧ポンプ内の駆動軸の弾性もしくは屈曲性がさらに増大させられ、これにより液圧ポンプの領域における駆動軸に対する要求に、より良好に対応することができる。さらに流体力学的な滑り軸受も、既に極めて完成された構成要素であり、この構成要素は、特に高い半径方向力を小さな構造スペースで受け止めることができる。
【0021】
付加的に、駆動軸が、駆動モータの領域において、モータ・軸部分を有しており、液圧ポンプの領域において、ポンプ・軸部分を有しており、モータ・軸部分が、ポンプ・軸部分よりも大きな直径を有していることが規定されていてもよい。第1の軸・軸受装置および第2の軸・軸受装置の上述した構成の他に、軸部分の構成は、駆動軸に対する駆動モータおよび液圧ポンプの部分的に相反する要求をさらに有利にまとめるために別の構造的な可能性を提供する。ポンプ・軸部分の減じられた直径により、ポンプ・軸部分の極抵抗モーメントが減じられ、これにより、要求された弾性特性が、特に曲げ荷重下でさらに改良される。モータ・軸部分ではこれとは逆になり、拡大された直径が対応して拡大された極抵抗モーメントを招き、したがって剛性の軸部分を形成し、これにより駆動モータの効率を、上記で既に説明したようにさらに改善することができる。
【0022】
さらに、駆動モータが、電動モータとして構成されていることが想定可能である。付加的に液圧ポンプとステアリング伝動装置とから成る構造ユニットに電動モータを統合することは、電動モータが極めて良好に開ループ制御可能もしくは閉ループ制御可能である、すなわち、電動モータの閉ループ制御を極めて動的に行うことができ、特に回転方向転換が極めて簡単、正確かつ迅速に閉ループ制御可能もしくは開ループ制御可能であるという利点を有している。さらに電動モータを既存の開ループ制御もしくは閉ループ制御機器アーキテクチャに簡単に組み込むことができるか、もしくはこれに連結することができる。したがって、電動モータが、固有の制御機器を有することが可能である。付加的もしくは代替的に、電動モータがステアリングシステムの制御機器よって、または車両制御機器によって駆動制御され得ることが可能である。これらの制御機器は、当然ながら、電動モータの閉ループ制御タスクを引き受けることもできる。さらに、例えば車線維持支援、渋滞運転支援、風力補償支援または部分的または完全に自律式の操舵命令のようなドライバアシストシステムを実現するために、電動モータを開ループ制御または閉ループ制御することができる。
【0023】
同様に、この液圧ポンプが、双方向の液圧ポンプとして形成されていることも考えられる。この構成は、ステアリング伝動装置において複動式のピストンに圧力を加える液圧流が、ポンプにより反転可能であるという特別な利点を有している。結果として、場合によっては手間がかかる高価な制御弁を省くことができるので、ステアリング伝動装置の駆動制御もしくはステアリング伝動装置への供給が簡単になる。同様に、ステアリングシステムのための閉ループ制御コストおよび/または開ループ制御コストも低減される。なぜなら、この付加的な弁の駆動制御を省くことができるからである。
【0024】
本発明の別の詳細および利点を、図示した実施例につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術によるステアリングシステムを概略的に示す斜視図である。
図2a】本発明に係るステアリングシステムの実施例を概略的に示す第1のブロック図である。
図2b図2aに示した本発明に係るステアリングシステムの実施例を概略的に示す第2のブロック図である。
【0026】
図1は、従来技術によるステアリングシステム10の概略的な斜視図を示している。
【0027】
ステアリングシステム10は、実質的に、ボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置の形態のステアリング伝動装置12と、このステアリング伝動装置12に連結された、両車両ホイール(図1には図示せず)を操舵するステアリング機構14とを有している。
【0028】
ステアリング機構は、第1のステアリングロッド14aおよび第2のステアリングロッド14bならびに第1のタイロッド14cおよび第2のタイロッド14dを有している。
【0029】
図1によれば、第1のステアリングロッド14aと第1のタイロッド14cとは、第1のホイールキャリアに、この第1のホイールキャリアを操舵するもしくは旋回させるために枢着式に結合されており、第1のステアリングロッド14aは、ステアリング伝動装置12の出力軸に連結されている。
【0030】
第2のステアリングロッド14cも、連行体を介して第1のホイールキャリアに枢着されていて、したがって第1のホイールキャリアを、連行体および第2のタイロッド14dを介して、第2のホイールキャリアに枢着式に連結している。
【0031】
さらに、ステアリングシステム10は、液圧ポンプ16を有する。この液圧ポンプ16は、配管16aを介してステアリング伝動装置12に、このステアリング伝動装置12に液圧油を供給するために連結されている。
【0032】
ステアリング伝動装置12の液圧的な出口と液圧ポンプ16の入口との間で、配管16a内に補償容器16bが配置されている。
【0033】
さらに、図1に示したステアリングシステムは、多部材のリンク機構の形態のステアリングコラム17と、このステアリングコラム17に相対回動不能に連結された、ステアリング伝動装置12を手動で制御するためのステアリングホイール17aとを含み、このことは、ステアリング機構14の旋回と、ひいては車両ホイールの操舵とをもたらす。
【0034】
図2aは、本発明に係るステアリングシステム110の実施例の第1の概略的なブロック図を示している。
【0035】
従来技術の図1に示したステアリングシステム10に対して、本発明に係るステアリングシステム110の同一または類似の構成部材は、それぞれ、100を足した参照符号を有している。
【0036】
車両用のステアリングシステム110は、図2aによれば、ステアリング伝動装置112を有している。
【0037】
ステアリング伝動装置112は、ボール・ナット-液圧式のステアリング伝動装置として構成されており、車両は、対応して商用車として構成されている。
【0038】
さらにステアリングシステム110は、第1の車両ホイールを操舵し、かつ第2の車両ホイールを操舵するステアリング機構114を有している。
【0039】
ステアリング機構114を代表して、図2aには専ら、第1のステアリングロッド114aがステアリング伝動装置112の出力軸112aにどのように相対回動不能に連結されているかが、概略的に図示されている。
【0040】
したがって、第1のステアリングロッド114aを介して、ステアリング伝動装置112がステアリング機構114に結合されている。
【0041】
さらに、ステアリングシステム110は、ステアリング伝動装置112に液圧流体を供給する液圧ポンプ116を有している。
【0042】
液圧ポンプ116は、双方向の液圧ポンプ116として構成されている。
【0043】
この場合、双方向とは、液圧ポンプ116が、(駆動モータ118により行われる)回転方向の切替えにより、吐出側と吸込側とを交換することができ、ひいては操舵方向に応じて液圧流を反転することができることを意味している。
【0044】
次いで、この反転された液圧流は、要求されたもしくは制御された操舵運動に応じて、ステアリング伝動装置の内部に設けられた複動式のステアリングシリンダに負荷を加える。
【0045】
さらに、車両のトラクション駆動装置に依存せず、かつ別個に配置された駆動モータ118が設けられており、駆動モータ118は、液圧ポンプ116に、この液圧ポンプ116を駆動するために連結されている。
【0046】
本発明の基本思想によれば、ステアリング伝動装置112、液圧ポンプ116および駆動モータ118は、組み付けられた状態において共通の構造ユニット120として構成されている。
【0047】
例えば液圧ポンプ116の補償容器または駆動モータ118の開ループ制御ユニットもしくは閉ループ制御ユニットのような別の補機が同様に構造ユニット120内に統合されていてもよいが、図2aには図示されていない。
【0048】
さらに、液圧ポンプ116と駆動モータ118とが、予め組み付けられた共通のモータ・ポンプユニット120aとして構成されており、構造ユニット120を形成するために、端面側でステアリング伝動装置112にフランジ結合されていることが規定されていてもよい。
【0049】
モータ・ポンプユニット120aは、特に、ステアリングコラムとの機械的な結合のための機械的な貫通駆動部112bとは反対側の端面側で、ステアリング伝動装置112にフランジ結合されていてもよい。
【0050】
代替的には、モータ・ポンプユニット120aは、機械的な貫通駆動部112bの領域における端面側で、ステアリング伝動装置112にフランジ結合されていてもよいことも考えられる。
【0051】
代替的には、モータ・ポンプユニット120aは、ステアリング伝動装置112の外面において、このステアリング伝動装置112の軸方向の延在部にフランジ結合されていてもよい。
【0052】
図2aからさらに判るように、液圧管路または付加的な液圧式の切換弁は図示されておらず、専らステアリングコラムとの機械的な連結のための機械的な貫通駆動部112bが図示されている。
【0053】
図2bは、図2aに示した本発明に係るステアリングシステムの実施例の第2の概略的なブロック図を示している。
【0054】
図2bでは、実質的に液圧ポンプ116と駆動モータ118とから成るモータ・ポンプユニットを確認することができる。
【0055】
駆動モータ118は、液圧ポンプ116に直接に連結されている。
【0056】
これに関連して、駆動モータ118と液圧ポンプ116とが相対回動不能に中間構成部材なしに互いに直接に結合されていることを意味し得る。
【0057】
したがって、クラッチは省略される。
【0058】
さらに直接的な連結に関して、駆動モータ118と液圧ポンプ116とは、直接的な連結のために1つの共通の駆動軸122を有していると云うことができる。
【0059】
駆動軸122は、軸方向で、駆動モータ118から液圧ポンプ116にまで延びていて、駆動軸122は、組み付けられた状態において、ステアリング伝動装置112の方向に、軸方向で液圧ポンプ116から突出している。
【0060】
駆動モータ118は、電動モータとして構成されていて、駆動軸122に相対回動不能に連結されているロータ118aと、ステータ118bとを有している。
【0061】
さらに、ステアリングシステム110、特にモータ・ポンプユニット120aは、第1の軸・軸受装置124と、第2の軸・軸受装置126とを有している。
【0062】
第1の軸・軸受装置124および第2の軸・軸受装置126により、駆動軸は、組み付けられた状態において、少なくとも部分的に第1の軸・軸受装置124および第2の軸・軸受装置126内に支持されている。
【0063】
付加的に、駆動モータ118および液圧ポンプ116は、そのそれぞれのハウジング内に別の支持装置(図2bには図示せず)を有していてもよい。
【0064】
図2bに示すように、第1の軸・軸受装置124は、組み付けられた状態において、駆動モータ118と液圧ポンプ116との間の駆動軸122に配置されている。
【0065】
この場合、第1の軸・軸受装置124は、軸方向で液圧ポンプ116よりも駆動モータ118の近傍に配置されていることが規定されている。
【0066】
これに関連して同様に、第1の軸・軸受装置124が、カバーにより直接に駆動モータ118のハウジングにフランジ結合されているか、または第1の軸・軸受装置124が、駆動モータ118のハウジング内に直接に支持されていることが考えられる。
【0067】
付加的にまたは代替的には、駆動モータ118と液圧ポンプ116とが、フランジ(図2bには図示せず)により互いに連結されており、第1の軸・軸受装置124が、フランジにより収容もしくは支持されていることが規定されていてもよい。
【0068】
第1の軸・軸受装置124は、深溝玉軸受として形成されている。
【0069】
深溝玉軸受自体は、特に有利には2列の深溝玉軸受として構成されていてもよい。
【0070】
上述したように、駆動軸122は軸方向の端部122aを有しており、この軸方向の端部122aは、組み付けられた状態において、液圧ポンプ116の、駆動モータ118とは反対に位置する側において突出している。
【0071】
この軸方向の端部122aに、第2の軸・軸受装置126が配置されている。
【0072】
第2の軸・軸受装置126は、直接に液圧ポンプ116のハウジングに配置されているか、もしくはフランジ結合されていてもよく、または液圧ポンプ116に対して定義された軸方向の間隔を有していてもよい。
【0073】
さらに、第2の軸・軸受装置126は、カバーにより液圧ポンプ116にフランジ結合されているか、または液圧ポンプ116のハウジングの直接的な構成部分であることも考えられる。
【0074】
第2の軸・軸受装置126は、流体力学的な滑り軸受として形成されている。
【0075】
したがって、第1の軸・軸受装置124および第2の軸・軸受装置126は、ハイブリッド式の軸受システムを形成している。
【0076】
ハイブリッド式の軸受システムは、第1の軸・軸受装置124および第2の軸・軸受装置126が、そのそれぞれの軸受コンセプトあるいは軸受構成により異なっていると理解することが望ましい。
【0077】
したがって、2列の深溝玉軸受ならびに流体力学的な滑り軸受の形態のハイブリッド式の軸受システムは、単に例示的であり、したがって別のハイブリッド式の軸受構成も考えられる。
【0078】
別の転がり軸受形態、例えば円筒ころ軸受、ニードル軸受、円錐ころ軸受、バレルローラー軸受またはトロイダルころ軸受を使用することもできる。
【0079】
同様のことは滑り軸受にも当てはまり、例えば静圧式の滑り軸受が考えられる。
【0080】
軸受材料として、滑り軸受ブシュのためには、青銅(銅スズ合金)、白色合金(鉛スズ合金)、鉛合金化された軸受金属、アルミニウム合金、プラスチック(例えばPTFE)、セラミック(繊維強化も可能)、グラファイトまたは真鍮合金が使用され得る。
【0081】
図2bからさらに看取され得るように、駆動軸122は、駆動モータ118の領域においてモータ・軸部分122bを有しており、液圧ポンプの領域にポンプ・軸部分122cを有している。
【0082】
モータ・軸部分122bは、ポンプ・軸部分122cよりも大きな直径を有している。
【0083】
図2bによれば、第1の軸・軸受装置124は、ポンプ・軸部分122cの直径に相当する軸部分上に支持されている。
【0084】
代替的には、第1の軸・軸受装置124は、モータ・軸部分122bの直径に対応する軸部分またはこれら2つの直径の間にある直径に対応する軸部分に支持されていてもよい。
【0085】
図2bによれば、駆動軸122は一回段付けされた軸として概略的に図示されているが、駆動軸122は複数の段部もしくは軸ショルダを有していてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ステアリングシステム
12 ステアリング伝動装置
14 ステアリング機構
14a 第1のステアリングロッド
14b 第2のステアリングロッド
14c 第1のタイロッド
14d 第2のタイロッド
16 液圧ポンプ
16a 配管
16b 補償容器
17 ステアリングコラム
17a ステアリングホイール
110 ステアリングシステム
112 ステアリング伝動装置
112a ステアリング伝動装置の出力軸
112b 貫通駆動部
114 ステアリング機構
14a 第1のステアリングロッド
116 液圧ポンプ
118 駆動モータ
18a ロータ
118b ステータ
120 構造ユニット
120a モータ・ポンプユニット
122 駆動軸
122a 駆動軸の軸方向の端部
122b モータ・軸部分
122c ポンプ・軸部分
124 第1の軸・軸受装置
126 第2の軸・軸受装置
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】