(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】カテーテル補強層およびカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61M25/00 620
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547385
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2022071230
(87)【国際公開番号】W WO2022166538
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110164303.7
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユンユン
(72)【発明者】
【氏名】ツン,ユーシー
(72)【発明者】
【氏名】スン,リー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB15
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH01
(57)【要約】
カテーテル補強層(100)およびこれを含むカテーテル。カテーテル補強層(100)は、編組コンポーネント(110)と、少なくとも1つの軸方向コンポーネント(120a、120b、120c、120d、120e、120f、120g、120h、120j、120k、120l、120m、120n)を含む。編組コンポーネント(110)は、ワイヤを横方向に編組することにより形成されているメッシュチューブ構造からなり、軸方向コンポーネント(120a、120b、120c、120d、120e、120f、120g、120h、120j、120k、120l、120m、120n)は、編組コンポーネント(110)に沿って近位端から遠位端まで伸長し、編組コンポーネント(110)との少なくとも1点の交差を有する。カテーテル補強層(100)の構造では、1以上の軸方向コンポーネント(120a、120b、120c、120d、120e、120f、120g、120h、120j、120k、120l、120m、120n)を既存のカテーテルの補強層内に導入することによって、器具の送達中の軸方向剪断応力下でのカテーテルのカテーテル本体の軸方向の変形を防ぐように、カテーテルの軸方向のモジュラスが増加される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組コンポーネントと、
少なくとも1つの軸方向コンポーネントと、を備え、
前記編組コンポーネントは、ワイヤを交差して編組することによって形成されるメッシュチューブ構造であり、
前記軸方向コンポーネントは、近位端から遠位端まで前記編組コンポーネントに沿って伸長し、前記編組コンポーネントと少なくとも1つの交点を有する、カテーテル補強層。
【請求項2】
前記軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントである、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項3】
前記軸方向コンポーネントは、直線、波線またはらせん線のいずれか1つまたは組み合わせとして成形されているフィラメント状構造である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項4】
前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向と平行に配置される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置される、または、
前記軸方向コンポーネントの少なくとも一部は、前記編組コンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置され、前記軸方向コンポーネントのその他の部分は、前記編組コンポーネントの前記軸線方向と平行である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項5】
前記軸方向コンポーネントは、1~45,000個の前記編組コンポーネントとの交点を有する、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項6】
前記編組コンポーネントの編組ワイヤは、メッシュを形成するように交差して編組されており、メッシュ交点は、編組ワイヤが交差する位置に形成され、
前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点の全てが、前記メッシュ交点と一致する、または、
前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点の一部が、前記メッシュ交点と一致する、または、
前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点が、前記メッシュ交点と一致しない、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項7】
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントの内面または外面に取り付けられた直線またはらせん線として成形される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントの内面と外面との間に千鳥状に取り付けられた波線として成形される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントのメッシュに配置され、前記軸方向コンポーネントおよび前記編組コンポーネントは同じ平面にある、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項8】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置される、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項9】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向に沿ってらせん状に配置されている、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項10】
複数の前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は同じまたは異なっている、および/または、
複数の前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は同じまたは異なっている、請求項9に記載のカテーテル補強層。
【請求項11】
前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、および/または、
前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、請求項10に記載のカテーテル補強層。
【請求項12】
前記軸方向コンポーネントの数は、1~16,000の範囲である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項13】
前記編組コンポーネントの軸線方向に隣接する2つの軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、0.001~0.1インチの範囲である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項14】
少なくとも1つの前記軸方向コンポーネントの材料は、ラジオオートグラフ材料である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項15】
前記軸方向コンポーネントは、モノフィラメントまたは複数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントである、請求項1~14のいずれか1項に記載のカテーテル補強層。
【請求項16】
前記モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲であり、前記撚り合わせフィラメントに含まれた前記モノフィラメントの数は1~20の範囲である、請求項15に記載のカテーテル補強層。
【請求項17】
前記軸方向コンポーネントは、接着、重合、溶接または加熱によって前記編組コンポーネントに接続される、または、編組によって前記編組コンポーネントと一体に形成される、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項18】
内側から外側へと順番に配置されて、全てチューブ状の内層、補強層、及び外層を備え、
前記補強層は、請求項1~17のいずれか1項に記載の前記カテーテル補強層を含む、カテーテル。
【請求項19】
前記カテーテルは直列で接続される複数のカテーテルセグメントを備え、前記軸方向コンポーネントは所定位置に配置され、
前記所定位置は、隣接するカテーテルセグメントの接続継ぎ目と対応する編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントと対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、前記カテーテルの前記内層または外層における厚さの比較的薄い部分であり、もしくは、前記内層または外層における柔軟性の比較的高いカテーテルセグメントと対応する編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントと対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記内層は0.0001~0.002インチの厚さを有するポリマー材料層である、請求項18に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記内層の厚さは、0.0003~0.0006インチである、請求項18に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の分野に関し、特に、カテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルサブトラクション血管造影撮影法(DSA: Digital Subtraction Angiography)システムの支援により、低侵襲介入手術は、埋め込み型医療機器または治療薬剤を、血管内カテーテル送達システムを通じて最小限の外傷で病変に送達するものであって、病変は機械的または化学的に治療される。送達システムの重要な部分として、カテーテルが様々な低侵襲介入治療において幅広く使用されている。目下のところ、このような介入処置は、多くの場合、小さな血管(例えば、大腿動脈および橈骨動脈)を穿刺することで入り口を形成する。入り口を通過すると、カテーテルは、シースおよびガイドワイヤの支援によって血管に沿って対象の病変へと送達される。その後、カテーテルは、ステント、コイル、その他のカテーテル等のその他のデバイスのためのアクセスとして機能する。
【0003】
目下のところ、臨床での使用中にカテーテルを病変へと円滑に送達するための要求事項を満たすために、既存の医療用カテーテルは、多くの場合、異なる剛性を有するセグメントとして設計されている。例えば、近位端はより硬く、遠位端はより柔軟で、つまり、剛性が近位端から遠位端へと次第に低下している。異なるセグメントの柔軟性および剛性の設計は、血管の構造に応じて決定される必要がある。柔軟な遠位端を有するカテーテルは、曲がりくねった血管を通過することがより容易であり、血管に対して損傷を与える危険性を低減させる。しかしながら、カテーテルの材料特性に起因して、柔軟なカテーテルの軸方向の伸びはより大きく、例えば、軸方向の力の作用下において引き伸ばされて長くされた場合、軸方向に変形しやすい。従って、臨床業務中、その他のデバイスがカテーテル内に送達された場合、カテーテルの管状体は軸方向の剪断応力を受けることとなる。カテーテルの管状体の軸方向の伸びがより大きな場合、その中に送達されるデバイスの力の下で軸方向に引き伸ばされる可能性がより高くなる。カテーテルの管状体は、引き伸ばされた後に変形することがあり、送達されたデバイスを放出または回収することが困難になり、これは臨床業務に重大な悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、既存のカテーテルの大きな伸びに起因して、デバイスがカテーテル内に送達される際にカテーテルが軸方向に伸長されやすいという問題を解決する、カテーテル補強層およびカテーテルを提供することを目的とする。
【0005】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明は、編組コンポーネントと、少なくとも1つの軸方向コンポーネントと、を備え、前記編組コンポーネントは、ワイヤを交差して編組することによって形成されるメッシュチューブ構造であり、前記軸方向コンポーネントは、近位端から遠位端まで前記編組コンポーネントに沿って伸長し、前記編組コンポーネントと少なくとも1つの交点を有する、カテーテル補強層を提供する。
【0006】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントである。
【0007】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、直線、波線またはらせん線のいずれか1つまたは組み合わせとして成形されているフィラメント状構造である。
【0008】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向と平行に配置される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置される、または、前記軸方向コンポーネントの少なくとも一部は、前記編組コンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置され、前記軸方向コンポーネントのその他の部分は、前記編組コンポーネントの前記軸線方向と平行である。
【0009】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、1~45,000個の前記編組コンポーネントとの交点を有する。
【0010】
任意選択で、前記編組コンポーネントの編組ワイヤは、メッシュを形成するように交差して編組されており、メッシュ交点は、編組ワイヤが交差する位置に形成され、前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点の全てが、前記メッシュ交点と一致する、または、前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点の一部が、前記メッシュ交点と一致する、または、前記軸方向コンポーネントと前記編組コンポーネントとの交点が、前記メッシュ交点と一致しない。
【0011】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントの内面または外面に取り付けられた直線またはらせん線として成形される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントの内面と外面との間に千鳥状に取り付けられた波線として成形される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記編組コンポーネントのメッシュに配置され、前記軸方向コンポーネントおよび前記編組コンポーネントは同じ平面にある。
【0012】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置される。
【0013】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記編組コンポーネントの軸線方向に沿ってらせん状に配置されている。
【0014】
任意選択で、複数の前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は同じまたは異なっている、および/または、複数の前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は同じまたは異なっている。
【0015】
任意選択で、前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、および/または、前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい。
【0016】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントの数は、1~16,000の範囲である。
【0017】
任意選択で、前記編組コンポーネントの軸線方向に隣接する2つの軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、0.001~0.1インチの範囲である。
【0018】
任意選択で、前記少なくとも1つの軸方向コンポーネントの少なくとも1つの材料は、ラジオオートグラフ材料である。
【0019】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、モノフィラメントまたは複数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントである。
【0020】
任意選択で、前記モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲であり、前記撚り合わせフィラメントに含まれた前記モノフィラメントの数は1~20の範囲である。
【0021】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、接着、重合、溶接または加熱によって前記編組コンポーネントに接続される、または、編組によって前記編組コンポーネントと一体に形成される。
【0022】
本発明は、内側から外側へと順番に配置されて、全てチューブ状の内層、補強層、及び外層を備え、前記補強層は、上述のカテーテル補強層を含む、カテーテルも提供する。
【0023】
任意選択で、前記カテーテルは直列で接続される複数のカテーテルセグメントを備え、前記軸方向コンポーネントは所定位置に配置され、前記所定位置は、隣接するカテーテルセグメントの接続継ぎ目と対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントと対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、前記カテーテルの前記内層または外層における厚さの比較的薄い部分であり、もしくは、前記内層または外層における柔軟性の比較的高いカテーテルセグメントと対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントと対応する前記編組コンポーネントの周面または編組ワイヤのクリアランスの間にある。
【0024】
任意選択で、前記内層は0.0001~0.002インチの厚さを有するポリマー材料層である。
【0025】
任意選択で、前記内層の厚さは、0.0003~0.0006インチである。
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を提供する。
【0027】
(1)本発明に係るカテーテル補強層およびカテーテルは、既存のカテーテルの補強層内に軸方向コンポーネントを導入することによって、カテーテルの軸方向のモジュラスを増加させる、新規の補強層を有する。これは、カテーテルの管状体内にデバイスが送達される際にカテーテルの管状体の軸方向の剪断応力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を防ぐ。このようにして、カテーテルの軸方向の引張性能が向上される。従って、カテーテルの伸びが減少し、これは、互換性のあるデバイスによる軸方向の引張から引き起こされるカテーテルの疲労破壊の危険性を防止する。
【0028】
(2)1以上の軸方向コンポーネントがカテーテルの機械的な弱い点に配置されることで、カテーテル上の応力集中を防ぐことが可能になり、その結果、デバイスの送達中にカテーテルの管状体の変形を防止できる。
【0029】
(3)軸方向に伸長している1以上の軸方向コンポーネントをカテーテル補強層内へと導入することで、カテーテルの軸方向の力の伝達における効率を向上させ、カテーテルの伝達性能を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係るカテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルの構造的模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る軸線方向に沿って拡張されるカテーテル補強層の概略平面図である。
【
図3a】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図3b】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図3c】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る軸線方向に沿って拡張されるカテーテル補強層の他の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明のカテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルについてさらに詳述する。本発明はここから、本発明の好適な実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に説明される。当業者が本明細書中に説明されている本発明を改修して、本発明の有益な効果を依然として実現してもよいことは理解される必要がある。従って、以下の説明は、当業者の幅広い知見として理解される必要があるが、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0032】
明確さのため、実用的な実装の全ての特性が説明されているわけではない。以下の説明では、周知の機能については、不必要に詳細な説明によって本発明が曖昧になり得るため、詳細には説明していない。いかなる実用的な実施形態の開発においても、システム関連またはビジネス関連の制約に従って1つの実施形態から他の実施形態に変更する等、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装の詳細を検討しなくてはならないことが理解されるべきである。さらに、このような開発の努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでもなお、当業者にとっては日常的な作業にすぎないことを認識すべきである。
【0033】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、「1つ」、「1個n」および「該」の単数形は、別途、文脈で明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の請求項で使用されるように、「または」という用語は、別途、文脈で明確な指示がない限り、「および/または」を指す。「複数」という用語は、別途、内容が明確に述べていない限り、多くの場合、2以上の対象物を含むために使用される。「いくつかの」という用語は、別途、内容が明確に述べていない限り、一般的に不明確な個数の対象物を含むために使用される。別途、内容が明確に示していない限り、「近位端」という用語は、一般的に医療機器のオペレータに近い端部を指し、「遠位端」は、一般的に人体へと最初に進入するデバイスの端部を指す。
【0034】
背景技術で述べたように、目下のところ、臨床での使用の際にカテーテルを病変へと円滑に送達するための要求事項を満たすために、既存のカテーテルは、多くの場合、異なる剛性を有するセグメントとして設計されている。例えば、近位端がより硬く、遠位端がより柔らかくなっており、つまり、近位端から遠位端へと硬度が次第に低下している。異なるセグメントの柔軟さおよび硬さの設計は、血管の構造に応じて決定される必要がある。柔軟な遠位端を有するカテーテルは、曲がりくねった血管を通過することがより容易であり、血管に対して損傷を与える危険性を低減させる。しかしながら、カテーテルの材料特性に起因して、柔軟なカテーテルの軸方向の伸びはより大きく、例えば、軸方向の力の作用下において引き伸ばされて長くされた場合、軸方向に変形しやすい。従って、臨床業務中、その他のデバイスがカテーテル内に送達された場合、カテーテルの管状体は軸方向の剪断応力を受けることとなる。カテーテルの管状体の軸方向の伸びがさらにより大きな場合、その中に送達されるデバイスからの力の下で軸方向に引き伸ばされる可能性がより高い。カテーテルの管状体は、引き伸ばされた後に変形することがあり、送達されたデバイスを放出または回収することが困難になり、これは臨床業務に重大な悪影響を及ぼす。
【0035】
上述の問題を鑑みて、本発明の研究者たちは、カテーテルの全体的な機械特性は、ポリマー材料のモジュラスおよび剛性ならびに補強層の金属ワイヤの強度および金属被覆率に関連することを発見した。従来技術では、カテーテルは、三層構造をなす、内層と、補強層と、外層とで主に構成される。編組構造を有する補強層を持つカテーテルは、軸方向の破砕に対する抵抗能力は相対的に強く、引き伸ばされた際に簡単に破壊されない。カテーテルの軸方向の伸びは、内層および外層のポリマー材料によって決まる。従って、カテーテルの内層および外層が、熱可塑性エラストマ(TPE)、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマまたはその他の材料等の低硬度のポリマー材料製である場合、材料の弾性に起因して、カテーテルの硬度は下がる。さらに、カテーテルの軸方向の伸びの増加が実現されるため、軸方向の力の下で容易に引き伸ばされて薄くされ、これは、臨床での使用中に内部互換性デバイスが押圧される、放出されるまたは引き抜かれることが不可能になり、手術効果に影響を与える状況を容易に引き起こしかねない。
【0036】
従って、本発明は、既存のカテーテルの大きな伸びに起因して、デバイスがカテーテル内に送達される際にカテーテルが軸方向に伸長されやすいという問題を解決するためのカテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルを提供する。
【0037】
本発明の実施形態に係るカテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルの構造的模式図である
図1を参照する。
図1に示されるように、本発明は、デリバリーカテーテルとしてまたはその他の医療目的のために使用されることができるカテーテルを提供する。カテーテルは、例えば、中空チューブを有する。本実施形態では、カテーテルは、例えば、血管内介入装置のための送達経路を提供するため、血管内介入装置の放出および引き抜きのため、などに使用される、デリバリーカテーテルである。カテーテルは、神経介入手術、心臓介入手術、大動脈介入手術または末梢血管介入手術においてカテーテルが介入器具を血管内へと送達することを可能にできるように、6F~12Fの直径を有するが、これに限定されるものではない。その他の実施形態では、カテーテルの直径は、実際のニーズに応じて改修することができる。
【0038】
図1に示されるように、本発明は、カテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルを提供する。カテーテルは、内側から外側へと順番に配置され、全てチューブ状の内層、補強層、及び外層を含む。カテーテルの補強層は、編組コンポーネントと、少なくとも1つの軸方向コンポーネントとを含むカテーテル補強層を含む。編組コンポーネントは、編組ワイヤを交差して編組することにより形成されたメッシュチューブであり、メッシュチューブは、複数の編組ワイヤを交差して編組することにより形成されたメッシュを含み、メッシュの交点はワイヤが交差する位置に形成されている。軸方向コンポーネントは、編組コンポーネントに沿って近位端から遠位端へと伸長し、編組コンポーネントと少なくとも1つの交点を有する。
【0039】
具体的には、本発明の実施形態に係る軸線方向に沿って拡張されるカテーテル補強層の概略平面図である
図2を参照する。
図2に示されるように、編組コンポーネント110は、複数の編組ワイヤを交差して編組することによって形成されるメッシュセルを含んでもよく、ワイヤ間の交点のそれぞれを交点aと呼ぶこととする。軸方向コンポーネント120aと編組コンポーネント110との間の交点b1等の軸方向コンポーネントと編組コンポーネント110との間の全ての交点は、編組コンポーネント110の交点aと一致してもよい。任意選択で、軸方向コンポーネント120bと編組コンポーネント110との間の交点b2等の軸方向コンポーネントと編組コンポーネント110との間の全ての交点は、編組コンポーネント110の交点aと一致しなくてもよい。任意選択で、軸方向コンポーネント120cと編組コンポーネント110との間の交点b3等の軸方向コンポーネントと編組コンポーネント110との間の交点のいくつかは、交点aと一致してもよく、軸方向コンポーネント120cと編組コンポーネント110との間の交点b4等の交点のその他のものは編組コンポーネント110の交点aと一致しなくてもよい。
【0040】
任意選択で、本発明の実施形態では、軸方向コンポーネントと編組コンポーネントとの間には1~45000の交点があってもよい。各軸方向コンポーネントと編組コンポーネントとの間の交点の具体的な数は、実際のニーズに応じて決定可能であり、本発明では限定されない。
【0041】
図2を引き続き参照し、
図2の左側を近位とすると、編組コンポーネント110に含まれる軸方向コンポーネントは、近位端から遠位端へと伸長する。軸方向コンポーネント120aおよび軸方向コンポーネント120b等の軸方向コンポーネントは、カテーテルの軸線方向と平行に配置されてもよい。任意選択で、軸方向コンポーネント120c等の軸方向コンポーネントは、カテーテルの軸線方向に対して、例えば、0~45°の特定の角度で配置されてもよい。さらに、編組コンポーネント110が複数の軸方向コンポーネントを含む場合、軸方向コンポーネントの一部は、カテーテルの軸線方向と平行に配置されてもよいが、その他の部分は、カテーテルの軸線方向に対して特定の角度で配置されてもよく、特定の角度は、3°、5°、10°、15°、30°、45°等の0~45°内の任意の角度を含んでもよい。軸方向コンポーネントの一部または全てがカテーテルの軸線方向と特定の角度で配置されている場合、同じ軸方向コンポーネントは、長さ方向にカテーテルの軸線方向と同じまたは異なる角度を有してもよく、異なる軸方向コンポーネントは、カテーテルの軸線方向と同じまたは異なる角度を有してもよい。編組コンポーネントは、順番に接続されている複数のメッシュセルを含み、メッシュセルの頂点は、編組コンポーネントのワイヤ間の交点である。軸方向コンポーネントの少なくとも1つは、編組コンポーネントのメッシュセルの少なくとも1つを部分的に通過する、および/または、軸方向コンポーネントの少なくとも1つは、編組コンポーネントのメッシュセルの1つまたは複数の連続的なメッシュセルを完全に通過する。軸方向コンポーネントは、フィラメント状の構造を有してもよく、直線、波線、もしくはらせん線またはそれらの組み合わせとして成形されてもよい。さらに、編組コンポーネントは、カテーテルの軸線方向に沿って均一にまたは不均一に形成されてもよいが、本発明では限定されていない。
【0042】
カテーテルの内層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマおよび熱可塑性エラストマのうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせであってもよい。カテーテルの外層の材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性エラストマおよびポリアミドのうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせであってもよい。本発明の実施形態例では、内層の材料および外層の材料は、好適には熱可塑性エラストマである。カテーテル補強層の編組コンポーネントの材料は、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタニウム合金、コバルトクロム合金、およびタングステンのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせなどの金属であってもよい。任意選択で、編組コンポーネントの材料は、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、液晶ポリマーのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせからできている、ポリマーフィラメントであってもよい。任意選択で、編組コンポーネントの材料は、金属とポリマーフィラメントとの組み合わせであってもよい。さらに、カテーテル補強層の軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントであってもよい。具体的には、軸方向コンポーネントの材料は、ステンレス鋼、ニッケルチタニウム合金、コバルトクロム合金、タングステン、銀および金等の金属のいずれか1つもしくはいずれかの組み合わせ、またはポリエチレン、ポリアミド、液晶等のポリマーフィラメントのいずれか1つもしくはいずれかの組み合わせであってもよい。任意選択で、軸方向コンポーネントの材料は、金属およびポリマーフィラメントの組み合わせであってもよい。複数の軸方向コンポーネントの場合、軸方向コンポーネントのいくつかの材料は、金属であってもよく、軸方向コンポーネントのいくつかの材料は、ポリマーフィラメントであってもよい。本発明の実施形態例では、少なくとも1つの軸方向コンポーネントの材料は、ラジオオートグラフ材料(radioautographic material)である。
【0043】
本発明に係るカテーテルでは、既存のカテーテルの内層および外層の材料を変更しないことでカテーテルの柔軟性を維持しつつ、既存のカテーテルの補強層の編組コンポーネントの軸方向に1以上の軸方向コンポーネントが設けられており、その結果、カテーテルの軸方向のモジュラスを増加させて、カテーテルの管状体内にデバイスが送達される際にカテーテルの管状体の軸方向剪断応力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を防ぐことに留意すべきである。このようにして、カテーテルの軸方向の引張性能が改善される。従って、カテーテルの伸びが低減され、これによって互換性のあるデバイスによる軸方向の引張から引き起こされるカテーテルの疲労破壊の危険性が回避される。従って、編組コンポーネントの軸方向に様々な方法で軸方向コンポーネントが設けられる限り、本発明の目的は達成できる。軸線方向は、カテーテルの軸線方向と0~45°の範囲の特定の角度の方向を指してもよい。
【0044】
本発明に係るカテーテルに含まれるカテーテル補強層内の編組コンポーネントと軸方向コンポーネントとの様々な組み合わせを添付の図面を参照して以下に詳述する。
【0045】
[実施形態1]
本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である
図3a~3cを参照する。
図1だけではなく
図3a~3cにも示されるように、カテーテル補強層100は、編組コンポーネント110と、編組コンポーネント110の軸線方向に沿って近位端から遠位端へと伸長し、編組コンポーネント110に亘って伸長している軸方向コンポーネント120とを含む。具体的には、
図3aに示されるように、軸方向コンポーネント120dは、近位端から遠位端へと、編組コンポーネント110とカテーテルの内層(不図示)との間に取り付けられ、つまり、編組コンポーネント110の内面に取り付けられる直線またはらせん線として成形されている。代替的に、
図3bに示されるように、軸方向コンポーネント120eは、近位端から遠位端へと、編組コンポーネント110とカテーテルの外層(不図示)との間に取り付けられ、つまり、編組コンポーネント110の外面に取り付けられる直線またはらせん線として成形されてもよい。代替的に、
図3cに示されるように、軸方向コンポーネント120fは、近位端から遠位端へと、千鳥状に編組コンポーネント110の内面および外面に取り付けられている波線として成形されていてもよい。
【0046】
[実施形態2]
図4を参照して、本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図4に示されるように、軸方向コンポーネント120gは、近位端から遠位端へと編組コンポーネント100のメッシュ内に配置されてもよく、軸方向コンポーネント120gは、編組コンポーネント110と同じ平面にある(すなわち、軸方向コンポーネントの各セグメントは対応するメッシュセル内に配置されている)。実施形態2において、軸方向コンポーネント120gは、溶接、結合などによって編組コンポーネント110に接続されてもよく、または、軸方向コンポーネント120dは、編組によって編組コンポーネント110と一体に形成することもできる。
図3a~3cに示されるカテーテル補強層100に比べて、
図4に示されるカテーテル補強層110は、カテーテル補強層を含むカテーテルの外径がカテーテル補強層に含まれた軸方向コンポーネント120の存在によっても増大しないという利点を有する。
【0047】
上記の実施形態1および実施形態2で説明されたように、軸方向コンポーネント120が設けられて(つまり、軸方向コンポーネント120が近位端から遠位端へと編組コンポーネント110を完全に亘って伸長して)、カテーテル補強層100を編組コンポーネント110と共に形成する場合に追加して、軸方向コンポーネント120が代替的に編組コンポーネント110を部分的に亘って伸長して、カテーテル補強層100を編組コンポーネント110と共に形成してもよいことに留意すべきである。本発明は、これに具体的に限定されているわけではない。
【0048】
加えて、1以上の軸方向コンポーネント120が含まれてもよい。具体的には、1つの軸方向コンポーネント120のみ含まれる場合、軸方向コンポーネント120は、実施形態1および実施形態2に説明されたように片側に配置されてもよい。複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120が編組コンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されてもよく、および/または、軸方向コンポーネント120が編組コンポーネント110の軸線方向に沿って間隔を置いて配置されてもよい。本明細書で言及される「間隔」とは、2つの隣接する軸方向コンポーネントの近位端が同じ軸方向位置にあるわけではなく、千鳥状に軸方向に配置されていることを意味することを強調しておく必要がある。いくつかの実施形態では、2つの隣接する軸方向コンポーネントは、軸方向に「重なり(overlap)」がないこともある。その他の実施形態では、2つの隣接する軸方向コンポーネントは、軸方向に部分的な「重なり(overlap)」を有してもよい。ここでの「重なり(overlap)」とは、同じ軸方向位置に、上述の2つの隣接する軸方向コンポーネントの断面が両方とも補強層の断面に位置していることを意味する。
【0049】
以下、軸方向コンポーネントと編組コンポーネント110との位置関係を紹介するための、複数の軸方向コンポーネント120が編組コンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されている例を提供する。詳しくは、以下の実施形態を参照する。
【0050】
[実施形態3]
図5は、本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図5に示されるように、好適には、カテーテル補強層100は、編組コンポーネント110と、編組コンポーネント110の軸線方向に沿って近位端から遠位端へと編組コンポーネント110に亘って伸長し、対称に配置される複数の軸方向コンポーネント120hとを含む。軸方向コンポーネント120が編組コンポーネント100の表面に対称に配置されているため、カテーテル補強層を含むカテーテルの構造的安定性が確保できる。実施形態1および実施形態2と同様に、カテーテルの管状体内にデバイスが送達される際にカテーテルの管状体の軸方向の剪断応力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を防ぐ。従って、カテーテルの伸びが減少され、これは互換性のあるデバイスによる軸方向の引張から引き起こされるカテーテルの疲労破壊の危険性を回避する。
【0051】
任意選択で、本発明の実施形態における軸方向コンポーネントの数は、2~10の範囲、例えば、2、3、5、6、8または10であってもよい。
【0052】
複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120は任意の位置に編組コンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されることができることが理解できる。しかしながら、従来技術では、カテーテルの近位端は、多くの場合、比較的に剛性があり、遠位端は比較的に柔軟である。言い換えると、硬度が近位端から遠位端へと次第に低下している。この場合、異なる硬度および/または厚さを有する複数のカテーテルセグメントが接続されて、カテーテルを形成していてもよい。複数のカテーテルセグメントの接続部(接続の継ぎ目または移行部)およびカテーテルの管状体の比較的薄い部分は、応力に対する弱点になりがちである。該弱点は、臨床業務中の軸方向の力の作用下で軸方向に変形しやすく、または引き裂かれやすいことすらある。従って、本発明の実施形態では、複数の軸方向コンポーネント120は、所定位置で編組コンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されてもよく、および/または、軸方向コンポーネント120は、所定位置で編組コンポーネント110の軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置される。所定位置は、カテーテル補強層に含まれた複数のカテーテルセグメントの接続部(すなわち、内層または外層の接続部または移行部)、内層または外層における柔軟性の比較的高い位置、内層または外層における厚さの比較的小さい位置、カテーテルのモジュラス値の比較的低い位置、およびカテーテルの管状体の比較的薄い位置であってもよい。
【0053】
[実施形態4]
本発明の他の実施形態よるカテーテル補強層の構造的模式図である、
図6および7を参照する。
図6または
図7に示されるように、複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、編組コンポーネント110の円周方向に沿ってらせん状に配置されてもよく、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、隣接するカテーテルセグメントの接続継ぎ目と対応する編組コンポーネント110の周面または編組ワイヤのクリアランスの間に位置してもよい。任意選択で、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントに含まれる編組コンポーネント110の周面または編組ワイヤのクリアランスの間に位置し、および、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントに含まれる編組コンポーネント110の周面または編組ワイヤのクリアランスの間に位置してもよい。任意選択で、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、カテーテルの内層または外層における厚さの比較的薄い部分、もしくは、内層または外層における柔軟性の比較的高い部分に位置してもよい。
【0054】
具体的には、各軸方向コンポーネント120jまたは軸方向コンポーネント120kは、編組コンポーネント110とカテーテルの内層との間、または編組コンポーネント110とカテーテルの外層200との間に配置されてもよい。任意選択で、軸方向コンポーネント120jまたは軸方向コンポーネント120kの一部が、編組コンポーネント110とカテーテルの内層との間に配置され、他の部分が編組コンポーネント110とカテーテルの外層との間に配置されてもよい。各軸方向コンポーネント120jまたは軸方向コンポーネント120kは、編組コンポーネント110のメッシュセル間に配置されてもよい。加えて、各軸方向コンポーネント120の軸方向長さは、
図7に示される軸方向コンポーネント120kを参照すると、編組コンポーネント110の1つのメッシュセルの軸方向長さに等しくてもよい。任意選択で、各軸方向コンポーネント120の軸方向長さは、
図6に示される軸方向コンポーネント120jを参照すると、編組コンポーネント110の複数のメッシュセル(整数または非整数)の軸方向長さに等しくてもよい。本発明はこれに限定されない。複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、編組コンポーネント110の円周方向に沿ってらせん状に配置されてもよく、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120j間の軸方向距離は、同じであっても異なっていてもよく、および/または、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jの円周角距離は、同じであっても異なっていてもよい。さらに、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jでは、編組コンポーネント110の近位端に位置する軸方向コンポーネント120kまたは軸方向コンポーネント120jの軸方向距離は、編組コンポーネント110の遠位端に位置する軸方向コンポーネント120kまたは軸方向コンポーネント120jのそれよりも小さくてもよく、および/または近位端の軸方向コンポーネント120kまたは軸方向コンポーネント120jの円周角距離は、遠位端の軸方向コンポーネント120kまたは軸方向コンポーネント120jの軸方向距離よりも小さくてもよい。
【0055】
本実施形態では、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、編組コンポーネント110の円周方向に沿ってらせん状に配置されている。その他のいくつかの実施形態では、複数の軸方向コンポーネント120kまたは複数の軸方向コンポーネント120jは、同じ円周方向に位置してもよいが、軸方向に間隔を空けて離れている。本実施形態では、1以上の軸方向コンポーネントは、カテーテルの機械的な弱点に配置されてもよく、このようにして、カテーテル上の応力集中を防ぐことができ、その結果、デバイスの送達中にカテーテルの管状体の変形を防ぐことが可能になる。さらに、軸方向に伸長している1以上の軸方向コンポーネントをカテーテル補強層に導入することで、カテーテルの軸方向の力の伝達における効率を向上させ、カテーテルの伝達性能を最適化できる。
【0056】
任意選択で、本発明の実施形態における軸方向コンポーネントの数は、1、2、4、8、20、100、800、2000、5000、10000、12000、16000等の1~16000の範囲であってもよい。
【0057】
編組コンポーネントの近位端は、カテーテル補強層を含むカテーテルのオペレータ側を指すことに留意すべきである。言い換えると、カテーテルの近位端は、編組コンポーネント、カテーテル補強層および軸方向コンポーネントの近位端でもある。同様に、編組コンポーネントの遠位端は、カテーテル補強層を含むカテーテルのオペレータから離れる側を指す。
【0058】
任意選択で、詳細について
図8を参照する。
図8は、本発明の実施形態に係る軸線方向に沿って拡張されるカテーテル補強層の他の概略平面図である。
図8に示されるように、編組コンポーネント110の左側が近位端であるとすると、編組コンポーネント110の軸方向に隣接する2つの軸方向コンポーネント120l、120m間の軸方向距離D1または隣接する軸方向コンポーネント120m、120n間の軸方向距離D2が0.001~0.1インチの範囲であってもよい。
【0059】
軸方向距離は、軸線方向と平行な方向の2つの軸方向コンポーネントの近位端間の距離を指し、円周角距離は、L1に対応するラジアン(つまり、同じ円周上の2つの軸方向コンポーネントの2つの点から形成される中心角度)を指す。
【0060】
任意選択で、軸方向コンポーネント120は、モノフィラメントまたは多数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントであってもよい。モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲にあり、撚り合わせフィラメント内に含まれるモノフィラメントの数は1~20の範囲であってもよい。好適には、上記の実施形態の軸方向コンポーネント120が、重合によって0.001インチの単一のフィラメントサイズを有するポリアミドポリマーフィラメントからできる場合、編組コンポーネント110の柔軟なカテーテルに対する影響は素晴らしい。
【0061】
例として、本発明の研究者たちは、実験を通して、本発明の実施形態に提供されたカテーテル補強層を含むカテーテルの様々なパラメータに対する軸方向コンポーネントの影響を示す以下の表を得ている。この実験では、軸方向コンポーネントの具体的な配置が
図3aに示され、軸方向コンポーネントは編組コンポーネント110の軸線方向に沿って近位端から遠位端へと伸長し、編組コンポーネント110に亘って伸長している。軸方向コンポーネントの数が多数(例えば、N=2または3)の場合、多数の軸方向コンポーネントは互いと平行に配置される。
【表1】
【0062】
軸方向コンポーネントのないカテーテルと比べて、カテーテルの軸方向の伸びは、軸方向コンポーネントの数の増加に応じて、次第に減少し、カテーテルの外径および柔軟性は、基本的に変化のないままとなることが上記表1から見ることができる。従って、カテーテルに軸方向コンポーネントを追加することは、カテーテルの外径および柔軟性への影響は無視できるほどで、カテーテルの軸方向の伸びを効果的に減少させることができる。
【0063】
図面に示される軸方向コンポーネント120は、接着、重合、溶接または加熱によって編組コンポーネント100に接続できる、または、三軸編組(Triaxial Braiding)による等の特定の方法の編組によって編組コンポーネント110と一体的に形成できることが理解できる。
【0064】
要約すれば、本発明に係るカテーテル補強層およびカテーテルは、既存のカテーテルの補強層内に軸方向コンポーネントを導入することによってカテーテルの軸方向のモジュラスを上げる新規の補強層を有する。これによって、カテーテルの管状体内にデバイスが送達される際にカテーテルの管状体の軸方向の剪断応力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を回避する。このようにして、カテーテルの軸方向の引張性能を向上させることができる。従って、カテーテルの伸びは減少され、これは、互換性のあるデバイスによる軸方向の引張から引き起こされるカテーテルの疲労破壊の危険性を回避する。
【0065】
加えて、1以上の軸方向コンポーネントは、カテーテルの機械的な弱点に配置されてもよく、このようにして、カテーテル上の応力集中を防ぐことができ、その結果、デバイスの送達中にカテーテルの管状体の変形を防ぐことが可能になる。さらに、軸方向に伸長している1以上の軸方向コンポーネントをカテーテル補強層に導入することは、カテーテルの軸方向の力の伝達における効率を向上させ、カテーテルの伝達性能を最適化できる。
【0066】
以上、本発明が好適な実施形態と共に説明されてきたが、上記の実施形態に本発明を限定する意図はないことに留意すべきである。当業者であれば、本発明の技術的な解決手段の範囲から逸脱することなく、上記に開示された技術内容を使用して、本発明の技術的な解決手段に多くの可能な変更および改修を行うことができる、または、同等の実施形態へと改修されるようにできる。従って、本発明の技術的な解決手段の内容から逸れない、本発明の技術的な本質による上記の実施形態に行われるいかなる単純な改修、同等な変更および改修も、依然として本発明の技術的な解決手段の保護範囲におさまる。
【0067】
別途、明記または指摘されない限り、「第1」、「第2」、「第3」という用語、および明細書内の他の説明は、明細書内で各コンポーネント、要素、ステップなどを区別するために使用されるのみであり、様々なコンポーネント、要素、およびステップ間の論理的関係または順番的関係を表すために使用されているわけではないことが理解されるべきである。
【0068】
加えて、本明細書中に説明されている専門用語は、特定の実施形態のみを説明するために使用され、本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「1つ」および「1個」は、別途、文脈で明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。例えば、「1つのステップ」または「1つの手段」に対する指示対象は、1以上のステップまたは手段への指示対象を意味し、サブステップおよびサブ手段を含んでもよい。全ての使用される接続詞は、それらの最も広い意味で理解されるべきである。そして、「または」という言葉は、文脈で明確に反対の意味を表現していない限り、論理的な「排他的論理和(exclusive or)」というよりはむしろ論理的な「または」の定義を有すると理解されるべきである。さらに、本発明の実施形態の方法および/または装置の実装は、選択されたタスクを手作業で、自動的にまたは組み合わせて行うことを含んでもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 カテーテル補強層
200 外層
110 編組コンポーネント
120 軸方向コンポーネント
【国際調査報告】