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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】カテーテル補強層およびカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61M25/00 620
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547390
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2022071231
(87)【国際公開番号】W WO2022166539
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110164311.1
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユンユン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イークン ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,シュエリ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB16
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH01
(57)【要約】
カテーテル補強層(100)およびカテーテル(10)。カテーテル補強層(100)は、ばねコンポーネント(110)と、少なくとも1つの軸方向コンポーネント(120)とを含み、少なくとも1つの軸方向コンポーネント(120)は、近位端から遠位端までばねコンポーネント(110)に沿って伸長し、少なくとも1つの軸方向コンポーネント(120)は、ばねコンポーネント(110)との少なくとも1つの交点を有する。カテーテル補強層(100)によれば、1以上の軸方向コンポーネント(120)を既存のばねコンポーネント(110)の補強層内に導入することによって、カテーテル(10)の軸方向のモジュラスを増加させ、これにより、軸方向の力が原因のカテーテル(10)の管状体の軸方向の変形と破損を回避する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねコンポーネントと、
少なくとも1つの軸方向コンポーネントと、を備え、
前記少なくとも1つの軸方向コンポーネントのそれぞれは、近位端から遠位端まで前記ばねコンポーネントに沿って伸長し、前記ばねコンポーネントと少なくとも1つの交点を有する、カテーテル補強層。
【請求項2】
前記軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントである、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項3】
前記軸方向コンポーネントは、直線、波線またはらせん線のいずれか1つまたは組み合わせとして成形されるフィラメント状構造である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項4】
前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向と平行に配置される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置される、または、
前記軸方向コンポーネントの少なくとも一部は、前記ばねコンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置され、前記軸方向コンポーネントのその他の部分は、前記ばねコンポーネントの前記軸線方向と平行である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項5】
前記軸方向コンポーネントは、1~80,000個の前記ばねコンポーネントとの交点を有する、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項6】
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントの内面または外面に取り付けられた直線またはらせん線として成形される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントの内面と外面との間に千鳥状に取り付けられた波線として成形される、または、
前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントのクリアランスに配置され、前記軸方向コンポーネントおよび前記ばねコンポーネントは同じ平面にある、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項7】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置されている、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項8】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
複数の前記軸方向コンポーネントは、所定位置に前記ばねコンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、
複数の前記軸方向コンポーネントは、所定位置に前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置されている、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項9】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿ってらせん状に配置される、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項10】
複数の前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は同じまたは異なっている、および/または、
複数の前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は同じまたは異なっている、請求項9に記載のカテーテル補強層。
【請求項11】
前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、および/または、
前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、請求項10に記載のカテーテル補強層。
【請求項12】
前記軸方向コンポーネントの数は、1~16,000の範囲である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項13】
前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、
前記ばねコンポーネントの軸線方向に隣接する2つの軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、0.001~0.1インチの範囲である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項14】
少なくとも1つの前記軸方向コンポーネントの材料は、ラジオオートグラフ材料である、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項15】
前記軸方向コンポーネントは、モノフィラメントまたは複数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントである、請求項1~14のいずれか一項に記載のカテーテル補強層。
【請求項16】
前記モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲であり、前記撚り合わせフィラメントに含まれた前記モノフィラメントの数は1~20の範囲である、請求項15に記載のカテーテル補強層。
【請求項17】
前記軸方向コンポーネントは、接着、重合、結合またはレーザ溶接によって前記ばねコンポーネントに接続される、または、切断成形によって前記ばねコンポーネントと一体に形成される、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項18】
前記軸方向コンポーネントは、カテーテルオペレータに近い側から反対に伸長される制御ワイヤを備える、請求項1に記載のカテーテル補強層。
【請求項19】
内側から外側へと順番に配置されて、全てチューブ状の内層、補強層、及び外層を備え、
前記補強層は、請求項1~17のいずれか一項に記載の前記カテーテル補強層を含む、カテーテル。
【請求項20】
前記カテーテルは直列で接続される複数のカテーテルセグメントを備え、前記軸方向コンポーネントは所定位置に配置され、
前記所定位置は、隣接するカテーテルセグメントの接続部と対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、前記カテーテルの前記内層または外層における厚さの比較的薄い部分であり、もしくは、前記内層または外層における柔軟性の比較的高いカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、
前記所定位置は、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記軸方向コンポーネントは、カテーテルオペレータが制御ワイヤを通して前記カテーテルの回転方向を調整できるように、カテーテルオペレータに近い側から反対に伸長される制御ワイヤを備える、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記内層は0.0001~0.002インチの厚さを有するポリマー材料層である、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記内層の厚さは、0.0003~0.0006インチである、請求項22に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の技術分野に関し、特に、カテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルサブトラクション血管造影撮影法(DSA: Digital Subtraction Angiography)システムの支援により、低侵襲介入手術は、埋め込み型医療機器または治療薬剤を、血管内カテーテル送達システムを通じて最小限の外傷で病変に送達するものであって、病変は機械的または化学的に治療される。送達システムの重要な一部として、カテーテルが様々な低侵襲介入治療で幅広く使用されている。目下のところ、このような介入処置は、多くの場合、小さな血管(例えば、大腿動脈および橈骨動脈)を穿刺することで入り口を形成する。入り口を通過すると、カテーテルは、シースおよびガイドワイヤの支援によって血管に沿って対象の病変へと送達される。その後、カテーテルは、ステント、コイル、その他のカテーテル等のその他のデバイスのためのアクセスとして機能する。
【0003】
目下のところ、臨床での使用中にカテーテルを病変へと円滑に送達するための要求事項を満たすために、既存の医療用カテーテルは、多くの場合、より硬い近位端と、より柔軟な遠位端とを有するように設計されており、例えば、剛性が近位端から遠位端へと次第に低下している。カテーテルは、異なる剛性を有する多数のセグメントで構成されている。カテーテルの遠位端および近位端が異なる柔軟性を有することを可能にするために、カテーテルの外層および/または内層は、多くの場合、(軸方向に)異なる剛性を有する材料からできている。さらに、カテーテルの遠位端は、可能な限り柔軟である必要があり、カテーテル全体は柔軟性の移行が良好である必要がある。しかしながら、材料および設計の特性に起因して、柔軟なカテーテルの軸方向のモジュラスは低く、カテーテルセグメントの接続部(例えば、内層もしくは外層のセグメント間の接続部または特定の特性の移行部)およびカテーテル本体のより薄い部分は、応力に対する弱い点になりがちで、そのため、臨床業務中、カテーテルは軸方向の力の作用下で軸方向に変形しやすく、または引き裂かれやすいことすらあり、これは臨床業務に重大な悪影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、不十分な軸方向の引張性能の問題を解決し、もって既存のカテーテルの破損問題を解決するカテーテル補強層およびカテーテルを提供することを目的とする。
【0005】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明は、ばねコンポーネントと、少なくとも1つの軸方向コンポーネントと、を備え、前記少なくとも1つの軸方向コンポーネントのそれぞれは、近位端から遠位端まで前記ばねコンポーネントに沿って伸長し、前記ばねコンポーネントと少なくとも1つの交点を有する、カテーテル補強層を提供する。
【0006】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントである。
【0007】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、直線、波線またはらせん線のいずれか1つまたは組み合わせとして成形されるフィラメント状構造である。
【0008】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向と平行に配置される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置される、または、前記軸方向コンポーネントの少なくとも一部は、前記ばねコンポーネントの軸線方向と0~45°の角度で配置され、前記軸方向コンポーネントのその他の部分は、前記ばねコンポーネントの前記軸線方向と平行である。
【0009】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、1~80,000個の前記ばねコンポーネントとの交点を有する。
【0010】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントの内面または外面に取り付けられた直線またはらせん線として成形される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントの内面と外面との間に千鳥状に取り付けられた波線として成形される、または、前記軸方向コンポーネントは、前記近位端から前記遠位端へと、前記ばねコンポーネントのクリアランスに配置され、前記軸方向コンポーネントおよび前記ばねコンポーネントは同じ平面にある。
【0011】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置されている。
【0012】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、複数の前記軸方向コンポーネントは、所定位置に前記ばねコンポーネントの円周に沿って対称にまたは非対称に配置される、および/または、複数の前記軸方向コンポーネントは、所定位置に前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿って間隔を置いて順番に配置されている。
【0013】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、複数の前記軸方向コンポーネントは、前記ばねコンポーネントの軸線方向に沿ってらせん状に配置されている。
【0014】
任意選択で、複数の前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は同じまたは異なっている、および/または、複数の前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は同じまたは異なっている。
【0015】
任意選択で、前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい、および/または、前記近位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の円周角距離は、前記遠位端に位置している前記軸方向コンポーネント間の軸方向距離より小さい。
【0016】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントの数は、1~16,000の範囲である。
【0017】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントが複数備えられ、前記ばねコンポーネントの軸線方向に隣接する2つの軸方向コンポーネント間の軸方向距離は、0.001~0.1インチの範囲である。
【0018】
任意選択で、少なくとも1つの前記軸方向コンポーネントの材料は、ラジオオートグラフ材料である。
【0019】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、モノフィラメントまたは複数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントである。
【0020】
任意選択で、前記モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲であり、前記撚り合わせフィラメントに含まれた前記モノフィラメントの数は1~20の範囲である。
【0021】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、接着、重合、結合またはレーザ溶接によって前記ばねコンポーネントに接続される、または、切断成形によって前記ばねコンポーネントと一体に形成される。
【0022】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、カテーテルオペレータに近い側から反対に伸長される制御ワイヤを備える。
【0023】
本発明は、内側から外側へと順番に配置されて、全てチューブ状の内層、補強層、及び外層を備え、前記補強層は、上記のカテーテル補強層を備えるカテーテルを提供する。
【0024】
任意選択で、前記カテーテルは直列で接続される複数のカテーテルセグメントを備え、前記軸方向コンポーネントは所定位置に配置され、前記所定位置は、隣接するカテーテルセグメントの接続部と対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、前記カテーテルの前記内層または外層における厚さの比較的薄い部分であり、もしくは、前記内層または外層における柔軟性の比較的高いカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある、または、前記所定位置は、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントと対応する前記ばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間にある。
【0025】
任意選択で、前記軸方向コンポーネントは、カテーテルオペレータが制御ワイヤを通して前記カテーテルの回転方向を調整できるように、カテーテルオペレータに近い側から反対に伸長される制御ワイヤを備える。
【0026】
任意選択で、前記内層は0.0001~0.002インチの厚さを有するポリマー材料層である。
【0027】
任意選択で、前記内層の厚さは、0.0003~0.0006インチである。
【0028】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点の少なくとも1つを提供する。
【0029】
(1)本発明に係るカテーテル補強層およびカテーテルは、既存のカテーテルのばねコンポーネントの補強層内に1以上の軸方向コンポーネントを導入することによって、カテーテルの軸方向のモジュラスを増加させる、新規の補強層を有する。これによって、カテーテルの管状体の軸方向の力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を回避し、もって破損問題を回避できる。
【0030】
(2)1以上の軸方向コンポーネントがカテーテルの機械的な弱い点に配置されてもよく、このようにして、カテーテル上の応力集中を防ぐことが可能になり、その結果、デバイスの送達または引き抜き中にカテーテルの破損を防止する。
【0031】
(3)軸方向に伸長している1以上の軸方向コンポーネントをカテーテルの補強層内へと導入することで、カテーテルの軸方向の力の伝達における効率を向上させ、カテーテルの伝達性能を最適化できる。
【0032】
(4)カテーテルの内層の厚さが特に小さい場合、軸方向に伸長する1以上の軸方向コンポーネントがカテーテルの補強層に導入され、これはカテーテルの柔軟性を確保できるのみならず、カテーテルの軸方向の変形および破損も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るカテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルの構造的模式図である。
図2a】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図2b】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図2c】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図3】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。
図7】本発明の実施形態に係るカテーテルの構造的概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明のカテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルについてさらに詳述する。本発明はここから、本発明の好適な実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に説明される。当業者が本明細書中に説明されている本発明を改修して、本発明の有益な効果を依然として実現してもよいことは理解される必要がある。従って、以下の説明は、当業者の幅広い知見として理解される必要があるが、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0035】
明確さのため、実用的な実装の全ての特性が説明されているわけではない。以下の説明では、周知の機能については、不必要に詳細な説明によって本発明が曖昧になり得るため、詳細に説明していない。いかなる実用的な実施形態の開発においても、システム関連またはビジネス関連の制約に従って1つの実施形態から他の実施形態に変更する等、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装の詳細を検討しなくてはならないことが理解されるべきである。さらに、このような開発の努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでもなお、当業者にとっては日常的な作業にすぎないことを認識すべきである。
【0036】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、「1つ」、「1個」および「該」の単数形は、別途、文脈で明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の請求項で使用されるように、「または」という用語は、別途、文脈で明確な指示がない限り、「および/または」を指す。「複数」という用語は、別途、内容が明確に述べていない限り、多くの場合、2以上の対象物を含むために使用される。「いくつかの」という用語は、別途、内容が明確に述べていない限り、一般的に不明確な個数の対象物を含むために使用される。別途、内容が明確に示していない限り、「近位端」という用語は、一般的に医療機器のオペレータに近い端部を指し、「遠位端」は、一般的に人体へと最初に進入するデバイスの端部を指す。
【0037】
背景技術で述べたように、目下のところ、臨床での使用の際にカテーテルを病変へと円滑に送達できるようにするための要求事項を満たすために、既存の医療用カテーテルは、多くの場合、より硬い近位端と、より柔軟な遠位端とを有するように設計されており、例えば、剛性が近位端から遠位端へと次第に低下している。カテーテルは、異なる剛性を有する多数のセグメントで構成されている。カテーテルの遠位端および近位端が異なる柔軟性を有することを可能にするために、カテーテルの外層および/または内層は、多くの場合、(軸方向に)異なる剛性を有する材料からできている。さらに、カテーテルの遠位端は、可能な限り柔軟である必要があり、カテーテル全体は柔軟性の移行が良好である必要がある。しかしながら、材料および設計の特徴に起因して、柔軟なカテーテルの軸方向のモジュラスは低く、カテーテルセグメントの接続部(例えば、内層もしくは外層のセグメント間の接続部または特定の特性の移行部)およびカテーテル本体の比較的薄い部分は、応力に対する弱い点になりがちで、そのため、臨床業務中、カテーテルは軸方向の力の作用下で軸方向に変形しやすく、または引き裂かれやすいことすらあり、これは臨床業務に重大な悪影響を与える。
【0038】
上述の問題を鑑みて、本発明の研究者たちは、カテーテルの全体的な機械特性は、ポリマー材料のモジュラスおよび剛性ならびに補強層の金属ワイヤの強度および金属被覆率に関連することを発見した。従来技術では、カテーテルは、三層構造をなす、内層と、補強層と、外層とで主に構成される。ばねの形の補強層を有するカテーテルは、その特別な構造が原因で、柔軟性の高いカテーテルの要求事項を満たすことはできるが、ばねの形の補強層は、軸方向の変形に対するカテーテルの全体的な抵抗への貢献はほとんどない。ばねの形の補強層を有するカテーテルの軸方向の引張性能は、主に内層および外層のポリマー材料の強度によって決まる。内層および外層が低剛性のポリマー材料製の場合、または内層および外層に軸方向移行部がある場合、カテーテルの軸方向引張性能は、不十分で、深刻な場合、破損の故障モードが起こる。
【0039】
従って、本発明は、既存のカテーテルの不十分な軸方向の引張性能、および深刻な場合、破損の故障モードが発生するという問題を解決するように、カテーテル補強層およびカテーテル補強層を含むカテーテルを提供する。
【0040】
本発明の実施形態に係るカテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルの構造的模式図である図1を参照する。図1に示されるように、本発明は、デリバリーカテーテルとしてまたはその他の医療目的のために使用することができるカテーテルを提供する。カテーテルは、例えば、中空チューブである。本実施形態では、カテーテルは、例えば、血管内介入装置のための送達経路を提供するため、血管内介入装置の放出および引き抜きのため、などに使用される、デリバリーカテーテルである。カテーテルは、神経介入手術、心臓介入手術、大動脈介入手術または末梢血管介入手術においてカテーテルが介入器具を血管内へと送達することを可能にできるように、6F~12Fの直径を有するが、これに限定されるものではない。その他の実施形態では、カテーテルの直径は、実際のニーズに応じて改修することができる。
【0041】
図1に示されるように、本発明は、カテーテル補強層およびカテーテル補強層を使用するカテーテルを提供する。カテーテルは、内側から外側へと順番に配置され、全てチューブ状の内層、補強層、および外層を含む。カテーテルの補強層は、ばねコンポーネントと、少なくとも1つの軸方向コンポーネントとを含むカテーテル補強層を含む。任意選択で、各軸方向コンポーネントは、ばねコンポーネントに沿って近位端から遠位端へと伸長し、ばねコンポーネントとの少なくとも1つの交点を有する。具体的には、軸方向コンポーネントは、カテーテルの軸線方向と平行に配置されてもよく、またはカテーテルの軸線方向と3°、5°、10°、15°、30°、45°等の0~45°の範囲の特定の角度で配置されてもよい。任意選択で、複数の軸方向コンポーネントの少なくとも一部が、ばねコンポーネントの軸線方向と0~45°の範囲の特定の角度を形成してもよく、複数の軸方向コンポーネントのその他の部分は、ばねコンポーネントと平行な軸線方向に沿って配置されている。軸方向コンポーネントは、フィラメント状構造を有してもよく、直線、波線、もしくはらせん線またはそれらの組み合わせとして形成されてもよい。実施形態例では、ばねコンポーネントは、カテーテルの内層と外層との間に配置されている時計回りのらせん線として成形されていてもよく、カテーテルの内層と外層との間の反時計回りのらせん線等のその他の曲線として成形されていてもよい。ばねコンポーネントは、カテーテルの軸線方向に沿って均一にまたは不均一に配置されてもよいが、本発明では特に限定されていない。
【0042】
具体的には、カテーテルの内層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマおよび熱可塑性エラストマ等のポリマー材料のうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせであってもよく、内層の厚さは、0.0001インチ~0.002インチの範囲であってもよい。任意選択で、内層の厚さは、0.0003インチ~0.0006インチの範囲であってもよい。カテーテルの外層の材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性エラストマおよびポリアミド等のポリマー材料のうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせであってもよい。実施形態例では、内層の材料および外層の材料は、好適に熱可塑性エラストマであってもよい。補強層のばねコンポーネントの材料は、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタニウム合金、コバルトクロム合金およびタングステンのうちのいずれか1つの金属等の金属であってもよい。任意選択で、ばねコンポーネントの材料は、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、液晶ポリマーからできているポリマーフィラメントであってもよい。任意選択で、ばねコンポーネントの材料は、金属とポリマーフィラメントとの組み合わせであってもよい。さらに、補強層の軸方向コンポーネントの材料は、金属および/またはポリマーフィラメントであってもよい。具体的には、軸方向コンポーネントの材料は、ステンレス鋼、ニッケルチタニウム合金、コバルトクロム合金、タングステン、銀および金等の金属のいずれか1つまたはポリエチレン、ポリアミド、液晶等のポリマーフィラメントのいずれか1つであってもよい。任意選択で、軸方向コンポーネントの材料は、金属およびポリマーフィラメントの組み合わせであってもよい。複数の軸方向コンポーネントの場合、軸方向コンポーネントのいくつかの材料は、金属であってもよく、軸方向コンポーネントのいくつかの材料は、ポリマーフィラメントであってもよい。実施形態例では、多数の軸方向コンポーネントが含まれ、少なくとも1つの軸方向コンポーネントの材料はラジオオートグラフ材料(radioautographic material)であってもよい。
【0043】
任意選択で、軸方向コンポーネントとばねコンポーネントとの間の交点は、1~80000個であってもよく、例えば、1、4、10、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000、40000、60000、80000個である。
【0044】
本発明に係るカテーテルでは、既存のカテーテルの内層および外層の材料を変更しないことでカテーテルの柔軟性を維持しつつ、既存のカテーテルの補強層(カテーテル補強層)のばねコンポーネントの軸方向に1以上の軸方向コンポーネントが設けられており、その結果、カテーテルの軸方向のモジュラスを増加させて、カテーテルの管状体の軸方向の力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を回避し、もって破損問題を回避することに留意すべきである。従って、ばねコンポーネントの軸方向に様々な方法で軸方向コンポーネントが設けられる限り、本発明の目的は達成できる。
【0045】
本発明によるカテーテルの主な改善点は、三層構造のうちのカテーテル補強層(補強層)にあり、従って、以下では、カテーテル補強層の構造に注目して、時計回りのらせん線として成形されたばねコンポーネントを例として取り上げ、本発明に係るカテーテルの補強層内のばねコンポーネントおよび軸方向コンポーネントの様々な組み合わせを添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
[実施形態1]
本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である図2a~2cを参照する。図1と同様に図2a~2cにも示されるように、カテーテル補強層100は、ばねコンポーネント110と、ばねコンポーネント110に沿って近位端から遠位端へと伸長し、ばねコンポーネント110に亘って伸長する軸方向コンポーネント120とを含む。具体的には、図2aに示されるように、軸方向コンポーネント120aは、ばねコンポーネント110に沿って近位端から遠位端へと、ばねコンポーネント110(の内面)と内層(不図示)との間に取り付けられている直線またはらせん線として成形されてもよい。代替的に、図2bに示されるように、軸方向コンポーネント120bは、近位端から遠位端へと、ばねコンポーネント110(の外面)と外層(不図示)との間に取り付けられている直線またはらせん線として成形されてもよい。代替的に、図2cに示されるように、軸方向コンポーネント120cは、近位端から遠位端へと、千鳥状にばねコンポーネント110の内面と外面との間に取り付けられている波線として成形されてもよい。
【0047】
[実施形態2]
本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である図3を参照する。図3に示されるように、カテーテル補強層100はばねコンポーネント110と軸方向コンポーネント120dとの組み合わせである。軸方向コンポーネント120dは、ばねコンポーネント110に沿って近位端から遠位端へ、ばねコンポーネント100のクリアランス間に配置されていてもよく、軸方向コンポーネント120dは、ばねコンポーネント110と同じ平面にあってもよい。図2a~2cに示されるカテーテル補強層100と比較して、図3に示されるカテーテル補強層110は、カテーテル補強層を含むカテーテルの外径が軸方向コンポーネント120の存在によっても増大していないという利点を有する。
【0048】
軸方向コンポーネント120が、上記実施形態1および実施形態2に記載されたように、近位端から遠位端へとばねコンポーネント110を全体に亘って伸長して、ばねコンポーネント110と共にカテーテル補強層100を形成している場合に加えて、軸方向コンポーネント120は、代替的に、ばねコンポーネント110を部分的に亘って伸長して、ばねコンポーネント110と共にカテーテル補強層100を形成してもよいことに留意すべきである。本発明は、これに具体的に限定されているわけではない。
【0049】
加えて、1以上の軸方向コンポーネント120が含まれてもよい。好適には、軸方向コンポーネントの数は、1、2、4、8、20、100、800、2000、5000、10000、12000、16000等の1~16000の範囲であってもよい。具体的には、軸方向コンポーネント120が1つしか含まれていない場合、軸方向コンポーネント120は、実施形態1および実施形態2に記載されるように片側に配置されてもよく、つまり、軸方向コンポーネント120はばねコンポーネント110の片側に配置される。複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120は、ばねコンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されてもよく、および/または、軸方向コンポーネント120は、ばねコンポーネント110の軸線方向に沿って間隔を置いて配置されてもよい。本明細書で言及される「間隔」とは、2つの隣接する軸方向コンポーネントの近位端が同じ軸方向位置にあるわけではなく、千鳥状に軸方向に配置されていることを意味することを強調しておく必要がある。いくつかの実施形態では、2つの隣接する軸方向コンポーネントは、軸方向に「重なり(overlap)」がないこともある。その他の実施形態では、2つの隣接する軸方向コンポーネントは、軸方向に部分的な「重なり(overlap)」を有してもよい。ここでの「重なり(overlap)」とは、同じ軸方向位置に、上述の2つの隣接する軸方向コンポーネントの断面が両方とも補強層の断面に位置していることを意味する。
【0050】
以下、複数の軸方向コンポーネント120がばねコンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されて、軸方向コンポーネントとばねコンポーネント110との位置関係を紹介する例を提供する。詳しくは、以下の実施形態を参照する。
【0051】
[実施形態3]
図4は、本発明の実施形態に係るカテーテル補強層の構造的模式図である。図4に示されるように、好適には、カテーテル補強層100は、ばねコンポーネント110と、近位端から遠位端へとばねコンポーネント110に亘って伸長し、対称に配置される複数の軸方向コンポーネント120eとを含む。軸方向コンポーネント120eがばねコンポーネント100の表面に対称に配置されているため、カテーテル補強層を含むカテーテルの構造的安定性が確保できる。実施形態1および実施形態2と同様に、それはカテーテルの管状体内にデバイスが送達される際にカテーテルの管状体の軸方向の剪断応力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を回避し、カテーテルの軸方向の引張性能を増加させる。従って、カテーテルの伸びが減少され、これは、互換性のあるデバイスによる軸方向の引張から引き起こされるカテーテルの疲労破壊の危険性を回避する。
【0052】
任意選択で、軸方向コンポーネント120eの数は、2~10の範囲であってもよく、例えば、2、3、5、6、8または10である。
【0053】
複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120は、任意の位置にばねコンポーネント110の周面に沿って対称にまたは非対称に配置することができることが理解できるだろう。しかしながら、従来技術では、カテーテルは、多くの場合、より硬い近位端と、より柔軟な遠位端とを有するように設計されている。言い換えると、近位端から遠位端へと硬度が次第に低下している。この場合、カテーテルは、複数のカテーテルセグメントで構成されている。カテーテルの遠位端および近位端が異なる柔軟性を有することを可能にするために、外層および/または内層は、多くの場合は、異なる硬度を有する材料製のセグメントを接続することから形成される。さらに、カテーテルの遠位端は、可能な限り柔軟である必要があり、カテーテル全体は、柔軟性の移行が良好である必要がある。しかしながら、材料および設計の特性によって、柔軟なカテーテルの軸方向のモジュラスは低く、複数のカテーテルセグメントの接続部(例えば、内層もしくは外層のセグメント間の接続部または特定の特性の移行部)およびカテーテルの管状体の比較的薄い部分は、応力に対して弱点になりがちである。該弱点は、臨床業務中の軸方向の力の作用下で軸方向に変形しやすく、または引き裂かれやすいことすらある。従って、本発明の実施形態では、複数の軸方向コンポーネント120は、好適には、所定位置にカテーテルのばねコンポーネント110の円周に沿って対称にまたは非対称に配置されてもよく、および/または軸方向コンポーネント120は、所定位置にばねコンポーネント110の軸線方向に沿って間隔を置いて順次配置される。所定位置は、カテーテル補強層に含まれた複数のカテーテルセグメントの接続部(例えば、内層もしくは外層のセグメント間の接続部または特定の特性の移行部)、内層または外層における柔軟性の比較的高い位置、内層または外層における厚さの比較的小さい位置、カテーテルのモジュラス値の比較的低い位置、およびカテーテルの管状体の比較的薄い位置にあってもよい。詳細は以下の実施形態を参照してください。
【0054】
[実施形態4]
本発明の他の実施形態よるカテーテル補強層の構造的模式図である図5および6を参照する。図5または図6に示されるように、複数の軸方向コンポーネント120が含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120gまたは複数の軸方向コンポーネント120fは、ばねコンポーネント110の円周方向に沿ってらせん状に配置されてもよく、複数の軸方向コンポーネント120gまたは複数の軸方向コンポーネント120fは、隣接するカテーテルセグメントの内層または外層の接続部と対応するばねコンポーネント110の周面またはばねワイヤのクリアランスの間に位置してもよく、複数の軸方向コンポーネント120gまたは複数の軸方向コンポーネント120fの端部以外が、上記接続部と対応するばねコンポーネント110の周面またはばねワイヤに接続されてもよい。任意選択で、複数の軸方向コンポーネント120gまたは複数の軸方向コンポーネント120fは、モジュラス値が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントのモジュラス値より低いカテーテルセグメントと対応するばねコンポーネント110の周面またはばねワイヤのクリアランスの間に位置してもよく、および、直径が隣接する両側または片側のカテーテルセグメントの直径より小さいカテーテルセグメントと対応するばねコンポーネント110の周面またはばねワイヤのクリアランスの間に位置してもよい。任意選択で、複数の軸方向コンポーネント120gまたは複数の軸方向コンポーネント120fは、カテーテルの内層または外層における厚さの比較的薄い部分に位置し、もしくは、内層または外層における柔軟性の比較的高いカテーテルセグメントと対応するばねコンポーネントの周面またはばねワイヤのクリアランスの間に位置してもよい。
【0055】
具体的には、各軸方向コンポーネント120gまたは各軸方向コンポーネント120fは、ばねコンポーネント110とカテーテルの内層との間、またはばねコンポーネント110とカテーテルの外層200との間、またはばねコンポーネント110のクリアランスの間に配置されてもよい。加えて、各軸方向コンポーネント120の軸方向長さは、図6に示される軸方向コンポーネント120gを参照すると、時計回りにらせん状に巻かれたばねコンポーネント110の2巻き間の軸方向距離に等しくてもよい。任意選択で、各軸方向コンポーネント120の軸方向長さは、図5に示される軸方向コンポーネント120fを参照すると、正弦波の形のばねコンポーネント110の2つのピーク間の軸方向距離に等しくてもよい。
【0056】
複数の軸方向コンポーネントが含まれる場合、複数の軸方向コンポーネント120間の軸方向距離は同じであっても異なっていてもよく、および/または複数の軸方向コンポーネント120間の円周角距離は同じであっても異なっていてもよい。さらに、複数の軸方向コンポーネント120において、近位端に位置している軸方向コンポーネント120間の軸方向距離は、遠位端に位置している軸方向コンポーネントのそれよりも小さくてもよく、および/または近位端の軸方向コンポーネント間の円周角距離は、遠位端の軸方向コンポーネント間の軸方向距離よりも小さくてもよい。複数の軸方向コンポーネントが含まれる場合、ばねコンポーネント110の軸方向の2つの隣接する軸方向コンポーネント120g(または軸方向コンポーネント120f)間の軸方向距離は、0.001~0.1インチの範囲である。
【0057】
本明細書で言及される軸方向距離は、図5のD1およびD2を参照し、軸線方向と平行な方向の2つの軸方向コンポーネントの近位端間の距離を指し、その軸方向の2つの隣接する軸方向コンポーネント間の円周角距離は、Lに対応するラジアン(つまり、同じ円周上の2つの軸方向コンポーネントの2つの点から形成される中心角度)を指す。
【0058】
任意選択で、軸方向コンポーネント120は、モノフィラメントまたは多数のモノフィラメントで構成されている撚り合わせフィラメントであってもよい。モノフィラメントの直径は、0.0005~0.003インチの範囲であり、撚り合わせフィラメントに含まれるモノフィラメントの数は、1~20の範囲であってもよい。
【0059】
例として、本発明の研究者たちは、実験を通して、従来技術のカテーテルの様々なパラメータに対する軸方向コンポーネントの影響を示す以下の表を得ている。この実験では、軸方向コンポーネントの具体的な配置が図3aに示され、軸方向コンポーネントは編組コンポーネント110の軸線方向に沿って近位端から遠位端へと伸長し、ばねコンポーネント110に亘って伸長している。軸方向コンポーネントの数が多数(例えば、N=2または3)の場合、多数の軸方向コンポーネントは互いと平行に配置される。
【表1】
【0060】
軸方向コンポーネントのないカテーテルと比べて、カテーテルの軸方向引張破断荷重は、軸方向コンポーネントの数の増加に応じて、次第に増加し、カテーテルの外径および柔軟性は、基本的に変化のないままとなることが上記表1から見ることができる。従って、カテーテルに軸方向コンポーネントを追加することは、カテーテルの外径および柔軟性への影響は無視できるほどで、カテーテルの軸方向引張破断荷重を効果的に増加させることができる。
【0061】
図面に示される軸方向コンポーネント120は、接着、重合、結合またはレーザ溶接によってばねコンポーネント110に接続できる、または、切断成形によってばねコンポーネント110と一体に形成されており、すなわち、チューブを切断することによって、軸方向コンポーネント120とばねコンポーネント110とを一体成形させる構造であることが理解できる。
【0062】
加えて、本発明の実施形態に係るカテーテルの構造概略図である図7を参照してください。図7に示されるように、上述の実施形態のいずれか1つにおいて、カテーテルの曲がりくねった血管領域の通過が容易になるようにカテーテルオペレータが制御ワイヤ130を通してカテーテル10の回転方向を動的に調整できるよう、軸方向コンポーネント120は、カテーテルオペレータに近い側から反対に伸長される制御ワイヤ130も含んでもよく(つまり、制御ワイヤ130がオペレータに近いばねコンポーネントの端部から伸長し、伸長方向は、ばねコンポーネントのらせん方向の反対である)。制御ワイヤ130の長さは、実際のニーズに応じて具体的に決定でき、本発明では特に限定されていない。
【0063】
要約すれば、本発明に係るカテーテル補強層およびカテーテルは、既存のカテーテルのばねコンポーネントの補強層内に1以上の軸方向コンポーネントを導入することによってカテーテルの軸方向のモジュラスを上げる新規の補強層を有する。これによって、カテーテルの管状体の軸方向の力から引き起こされるカテーテルの軸方向の変形を回避し、もって破損問題を回避する。加えて、1以上の軸方向コンポーネントが、カテーテルの機械的な弱点に配置されてもよく、このようにして、カテーテル上の応力集中を防ぐことが可能になり、その結果、デバイスの送達または引き抜き中にカテーテルの破損を防止できる。
【0064】
さらに、軸方向に伸長する1以上の軸方向コンポーネントをカテーテル補強層内に導入することで、カテーテルの軸方向の力の伝達における効率を向上させ、カテーテルの伝達性能を最適化できる。カテーテルの内層の厚さが特に薄い場合、軸方向に伸長する1以上の軸方向コンポーネントがカテーテルの補強層に導入され、これはカテーテルの柔軟性を確保できるのみならず、カテーテルの軸方向の変形および破損も防止できる。
【0065】
以上、本発明が好適な実施形態と共に説明されてきたが、上記の実施形態に本発明を限定する意図はないことに留意すべきである。当業者であれば、本発明の技術的な解決手段の範囲から逸脱することなく、上記に開示された技術内容を使用して、本発明の技術的な解決手段に多くの可能な変更および改修を行うことができる、または、同等の実施形態へと改修されるようできる。従って、本発明の技術的な解決手段の内容から逸れない、本発明の技術的な本質による上記の実施形態に行われるいかなる単純な改修、同等な変更および改修も、依然として本発明の技術的な解決手段の保護範囲におさまる。
【0066】
別途、明記または指摘されない限り、「第1」、「第2」、「第3」という用語、および明細書内の他の説明は、明細書内で各コンポーネント、要素、ステップなどを区別するために使用されるのみであり、様々なコンポーネント、要素、およびステップ間の論理的関係または順番的関係を表すために使用されているわけではないことが理解されるべきである。
【0067】
加えて、本明細書中に説明されている専門用語は、特定の実施形態のみを説明するために使用され、本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「1つ」および「1個」は、別途、文脈で明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。例えば、「1つのステップ」または「1つの手段」に対する指示対象は、1以上のステップまたは手段への指示対象を意味し、サブステップおよびサブ手段を含んでもよい。全ての使用される接続詞は、それらの最も広い意味で理解されるべきである。そして、「または」という言葉は、文脈で明確に反対の意味を表現していない限り、論理的な「排他的論理和(exclusive or)」というよりはむしろ論理的な「または」の定義を有すると理解されるべきである。さらに、本発明の実施形態の方法および/または装置の実装は、選択されたタスクを手作業で、自動的にまたは組み合わせて行うことを含んでもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 カテーテル
100 カテーテル補強層
200 外層
110 ばねコンポーネント
120 軸方向コンポーネント
130 制御ワイヤ
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】