(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】天然エデスチンタンパク質単離物及びテクスチャ化成分としての使用
(51)【国際特許分類】
A23J 3/14 20060101AFI20240129BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240129BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240129BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240129BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20240129BHJP
A23C 20/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A23J3/14
A23J3/00 502
A23L5/00 M
A23L13/00 Z
A23L15/00 Z
A23C20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560253
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021063412
(87)【国際公開番号】W WO2022132838
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523225564
【氏名又は名称】シュトイベン フーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エリス,シェリル,ミッチェル
【テーマコード(参考)】
4B001
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC04
4B001BC12
4B001BC99
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4B001EC99
4B035LG12
4B035LG15
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4B035LK19
4B035LP24
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4B042AK06
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4B042AK10
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4B042AP14
4B042AP17
4B042AP20
4B042AP21
4B042AP30
4B042AT10
(57)【要約】
優れたヘンプタンパク質肉及び乳製品類似体を製造するために、ヘンプタンパク質の単離、原材料投入の準備、及び原材料投入の処理に関する問題を解決するプロセス及び製品。組成物及びプロセスには、麻粒タンパク質の単離、低温殺菌、液体溶液の形成、ゲル形成、テクスチャ化、ならびに肉及び乳製品類似物製造のためのプロセスが含まれる。本開示のプロセスによって、既存の製品または既知の技術を使用して製造された類似の製品と比較した場合に、優れた特性を有する構造化タンパク質食品または肉類似物がもたらされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻粒を選択すること;
前記麻粒を低温で水性湿式粉砕して麻粒スラリーを生成すること;
タンパク質収量を実質的に低下させることなく、前記麻粒スラリーを160~200の間のメッシュサイズでふるい分けし、前記麻粒スラリーからクロロフィル含有粒子を除去すること;
遠心分離デカントにより、前記ふるい分けされた麻粒スラリー中で可溶性材料から不溶性材料を実質的に分離して、天然エデスチンタンパク質単離物及びアルブミン油水性エマルションを生成すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物が約20%W/Wの固形分含有量を超えるように維持するために水を供給し、混合してタンパク質ヒドロゾルを形成すること;
顆粒化を避けるために、155°F未満の温度で前記天然エデスチンタンパク質単離物を熱低温殺菌すること;
顆粒化を避けるために適切な温度を維持しながら、前記天然エデスチンタンパク質単離物を油と組み合わせて、タンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成すること;
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを、約75℃~95℃の間の温度で押出機に加えて、調理された動物肉の繊維状テクスチャに類似の繊維状テクスチャを有する構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、アルブミンを実質的に含有しない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
脱殻麻粒が、実質的に白身構造のタンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
全粒麻粒が、実質的に暗色構造のタンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
全粒麻粒及び脱殻麻粒の混合物を使用して、明色と暗色との間の中間色の構造化タンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
殻が、明色と暗色との間の中間色の構造化タンパク質食品を製造するために、脱殻麻粒と組み合わされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、低温殺菌された後、タンパク質の凝集を避けるために、155°F未満の温度で噴霧乾燥される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
噴霧乾燥された天然エデスチンタンパク質単離物は、前記タンパク質ヒドロゾルを形成しながら低温殺菌条件を維持するために、約145°Fに予熱された水と混合され、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成しながら低温殺菌条件を維持するために、約145°Fの温度で、油が前記タンパク質ヒドロゾルに加えられ、低温殺菌条件が維持されながら、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルが前記押出機に加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルが、前記押出機に加えられるときに液体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記押出機が、蒸気加熱オーガーを有し、
160~200の間のメッシュサイズで、前記麻粒スラリーをふるい分けし、タンパク質収量を実質的に低下させることなく、前記麻粒スラリーからクロロフィル含有粒子を麻粒除去すること;
遠心分離デカントにより、前記可溶性材料から前記不溶性材料を実質的に分離して、天然エデスチンタンパク質単離物及びアルブミン油水性エマルションを製造すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物が約20%W/Wの固形分含有量を超えるように維持するために水を供給し、混合してタンパク質ヒドロゾルを形成すること;
顆粒化を避けるために、155°F未満の温度で、前記天然エデスチンタンパク質単離物を低温殺菌すること;
顆粒化を避けるために適切な温度を維持しながら、前記天然エデスチンタンパク質単離物を油と組み合わせてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成すること;
約75℃~95℃の間の温度で前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを約押出機に加えて、調理された動物肉の繊維状テクスチャに類似の繊維状テクスチャを有する構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月14日出願の米国仮特許出願第63/124,973号出願の利益を主張し、この仮特許出願は、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、タンパク質の単離、ならびに植物ベースの肉及び乳製品類似物に関し、より具体的には、肉または乳製品のテクスチャ、外観、及び味を有する植物ベースの製品に関する。本開示はまた、肉及び乳製品類似品の製造に使用するための液体、ゲルまたは固体製品を調製するための組成物及び方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク源として麻粒のみを使用して製造されるヘンプベースの肉または乳製品類似物は、市販されていることが知られておらず、食品産業または食品科学の文献にも記載されていない。食品に使用する場合、ヘンプタンパク質は、特に肉及び乳製品類似物の製造に必要な特性に関して、大豆及びエンドウ豆のタンパク質よりも劣ると考えられている。本明細書では構造化タンパク質食品とも呼ばれる肉及び乳製品の類似物は、強力なゲルマトリックスを形成することができるタンパク質を必要とするが、ヘンプタンパク質にはその点で強力な能力があることは見出されていない。
【0004】
Wangによると、「ヘンプタンパク質の乳化特性及びゲル形成特性は、一般に大豆プロテインよりも劣っていることが見出されている。」(Wang et al., 2019)。Malomoは、ヘンプタンパク質の塩ミセル化単離がそのゲル形成能力を改善することができることを示したが、Shenは、この複雑で費用と時間がかかるタンパク質単離方法はタンパク質の構造に悪影響を及ぼし、ヘンプタンパク質における十分なゲル形成能力を得るには化学架橋剤が必要である場合があることを明らかにしている。(Shen et al., 2021;Malomo et al, 2014;Wang et al, 2019)。
【0005】
Wangが示したように、現在、肉類似物の製造にはヘンプタンパク質よりも大豆タンパク質が好まれている。「現在、主に大豆タンパク質は、その好ましいゲル化特性のため及びその結果としてインターレース化した繊維状のマトリックスが生成されるため、動物タンパク質を模倣するために使用されている」(Schreuders et al., 2019)。後者の大豆の繊維化は、典型的な温度である130℃(266°F)で発生する。例えば、IMPOSSIBLE FOODSは、IMPOSSIBLE BURGERに大豆タンパク質を使用している。しかし、主に大豆製品についての健康及び栄養関連の懸念のため、IMPOSSIBLE FOODSの最大の競合企業であるBEYOND MEATは、自社のBEYOND BURGERに黄エンドウ豆タンパク質を使用している。しかし、黄エンドウ豆は「大豆タンパク質よりもゲル化能力がはるかに低く」、「大豆タンパク質単離物(SPI)の熱誘導ゲルは、エンドウ豆タンパク質単離物(PPI)の熱誘導ゲルよりも強い」。(Schreuders et al., 2019)。
【0006】
大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質は、肉及び乳製品類似物製造用のタンパク質源として味、テクスチャ、植物化学物質に限界があることが知られているが、植物ベースの代替タンパク質が肉類似物に対する代替として成功したものは、まだ見出されていない。しかし、ヘンプタンパク質は、肉類似物における大豆タンパク質の潜在的な代替品として研究されている。最近、Zahariは、ヘンプタンパク質はその優れた栄養的及び機能的特性が認識されているものの、肉類似物製造にはまだ使用されていないと報告した。「これまでの研究により、特にヘンプシードタンパク質には高タンパク質品質及び機能性があることが示されている。しかし、ヘンプシードタンパク質を肉類似物製造の原料として使用した研究はない」(Zahari et al, 2020)。
【0007】
Zahariは続けて、ヘンプタンパク質濃縮物(HPC)を大豆タンパク質単離物(SPI)と組み合わせて使用して、従来の押出成形によって肉類似物を製造できるが、唯一のタンパク質源としては使用できないことを実証した。この研究は、「したがって、HPCは押出製品に含まれる有望な新規材料である可能性があり、この研究は、得られた肉類似物がSPI単独に匹敵するテクスチャを与え、大豆タンパク質を最大60%ほどヘンプタンパク質に置き換えることができることを示している」と結論付けている(Zahari et al, 2020)。配合物に高濃度のヘンプタンパク質を使用すると、肉類似品の硬度及び噛みごたえが許容できないほど低下することが研究で示された。したがって、Zahari、Wang及びShenは、肉類似物製造における唯一のタンパク源としてヘンプタンパク質を使用しないことを教示している。
【0008】
植物ベースの食品産業の需要の高まりに応えるために、新しいかつ改良された植物タンパク質源が必要であるにもかかわらず、ヘンプタンパク質は食品製造においてまだ大きな市場シェアを達成していない。ヘンプの栄養的及び環境的利点にもかかわらず、大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質が植物ベースの食品市場を支配し続けている。大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質は、数十年にわたる研究及び広範な市販の恩恵を受け、肉類似品の製造及びその他の食品に使用されることにより、成分及び製品の品質が大幅に向上し、規模の費用便益がもたらされた。
【0009】
大豆及びエンドウ豆ベースの肉類似物の改良は、肉及び乳製品類似物製造のすべての段階における広範な研究開発を通じて行われてきた。肉類似物製造は、一般に4つのステップを伴う。第1のステップでは、選択した植物材料からのタンパク質単離を伴う。第2のステップは、単離されたタンパク質を水及び油と組み合わせて、熱ゲル化または押出成形用のマトリックスを形成することを伴う。第3のステップは、タンパク質を硬化させテクスチャ化するための原材料の熱ゲル化または押出成形を伴う。最終ステップでは、結合剤及び水結合剤、例としてカラギーナン、セルロース繊維、デンプン、グルテン、または小麦粉などを使用して肉類似品を形成し、これをその後調理してハンバーガー、フィレ、鶏肉片、及びプルドポークなどの製品を模倣する。
【0010】
肉類似物製造の第1のステップは、植物材料からのタンパク質単離を伴う。従来、タンパク質単離用の植物材料として大豆タンパク質及びエンドウタンパク質が使用されている。しかし、麻粒タンパク質は、優れた消化性及び望ましい必須アミノ酸組成を有し、肉類似物の可能なタンパク質源として考えられている(Tang, Ten, Wang, & Yang, 2006;Wang, Tang, Yang, & Gao, 2008;Russo and Reggiani, 2015a;Callaway, 2004;House et al., 2010;Docimo et al., 2014;Zahari et al., 2020)。最近の麻粒のプロテオミクス特性評価では、麻粒は開発が不十分な非マメ科植物であり、タンパク質が豊富な穀物であると結論付けられている(Aiello et al., 2016)。
【0011】
ヘンプタンパク質の栄養学的可能性は高いが、アミノ酸組成及び消化率によって測定される植物タンパク質の栄養価は、多くの要因の影響を受ける。アミノ酸組成は、遺伝子型の変動性、または土壌肥沃度及び穀物成分の比率を変える収穫後処理(例えば、脱殻り)などの農業条件によって影響を受ける場合がある。タンパク質の消化率は、タンパク質の構造、及び植物材料中の、またはアルカリもしくは高温処理中に形成される抗栄養化合物の存在によって影響を受ける場合がある(Sarwar,1997)。しかし、Aielloは、縮合型タンニン、フィチン酸、及びトリプシン阻害剤などの抗栄養因子が麻粒中に低濃度で存在することを見出した(Aiello et al., 2016)。
【0012】
ヘンプタンパク質の機能的特徴により、食品のタンパク源としての使用が妨げられてきた。ヘンプタンパク質濃縮物は、ヘンプシード油製造の結果として市販されている。ヘンプシードは、収益性の高い油を得るために粉砕及び圧搾された後、タンパク質が豊富なシードケーキとなる。シードケーキは緑色で、繊維が豊富であり、約40%のタンパク質濃縮物を表す。残念なことに、シードケーキには非常に青臭い、土臭い風味があり、ほとんどの食品では許容されない。このケーキを粉砕し、乾式ふるい分けを行うことにより、タンパク質含有量を約50%まで増加させることができる。このタンパク質が豊富な供給源の栄養価を認識した多くの研究者は、ヘンプタンパク質を単離し、ヘンプタンパク質の味及び機能的品質を改良するための出発材料としてこれを使用してきた。Tangは、シードケーキからのヘンプタンパク質単離物(HPI)が、植物ベースの食品の作製に使用するにはSPIよりも劣ることを見出した(Tang et al., 2006)。Tangは、HPIの場合、ヘンプグロブリンの水溶性が不十分であるため、大豆タンパク質単離物と比較した場合、乳化特性及び保水特性が不十分であると考えられていることを示した。(Tang et al., 2006)。” (Malomo & Aluko, 2015)。Tangによると、「このデータは、HPIは、乳児及び子供にとって貴重な栄養源として使用することができるが、SPIと比較すると機能的特性が不十分であることを示唆している。HPIの機能的特性が不十分であることは、硫黄含有アミノ酸からの遊離スルフヒドリル含有量が高いことによる、個々のタンパク質間のジスルフィド共有結合の形成、及び中性または酸性pHでのその後の凝集に主に起因している。」(Tang et al., 2006)。さらに、「示差走査熱量測定(DSC)分析により、HPIは、エデスチン成分に起因する変性温度(T(d))が約95.0℃の吸熱ピークを1つだけ有することが示された。」(Tang et al., 2006)。
【0013】
ヘンプタンパク質の機能的態様は明らかに劣っているにもかかわらず、その優れた栄養価により、食品製造におけるヘンプタンパク質の使用に対する継続的な関心が引き起こされている。この目的を達成するために、ヘンプから個々のタンパク質が単離され、潜在的な機能的特性についてさらに研究が行われてきた。さらに、研究者は、ヘンプタンパク質のさまざまな抽出及び単離方法によって機能性を向上させることができるかどうかを調査した。「食品におけるヘンプタンパク質の価値及び用途は、タンパク質の構造及び機能的特性に密接に関連している。」(Wang et al.,2019)。
【0014】
個々の麻粒タンパク質の栄養学的及び機能的特性を調査するために、研究者は麻粒に存在する2つの主要なタンパク質を抽出して分離する方法を採用した。麻粒タンパク質は、主にタンパク質エデスチン及びアルブミンで構成されている。グロブリンであるエデスチンは総タンパク質含有量の約60%~80%を占めるが(Odani & Odani 1998;Tang et al., 2006)、球状タンパク質であるがグロブリンではない、アルブミンがその差を占めている。エデスチン及びアルブミンは、異なるアミノ酸組成及び機能的特徴を有する。
【0015】
Malamoは、麻粒中のエデスチンとアルブミン間の栄養の違いを研究し、ヘンプタンパク質のエデスチン画分が、より多くの硫黄含有アミノ酸(メチオニン及びシステイン)、芳香族アミノ酸(AAA)、分岐鎖アミノ酸、及び疎水性アミノ酸を含み、栄養的に優れていると結論付けた(Malomo及びAluko 2015)。Malamoは、エデスチンをアルブミンから分離し、それぞれの栄養価及び機能性の特徴を測定した。これらの特性には、水への溶解性、アミノ酸含有量、及び消化率が含まれる
【0016】
Malomoは、アルブミン画分は水に可溶であるのに対し、エデスチン画分は塩溶液に可溶であると報告した。抽出されたエデスチンは、中性または酸性pHでは水への溶解性が極めて低く、高いイオン強度またはアルカリ性pHでのみ溶解する(Malomo & Aluko, 2015)。「界面活性特性などのタンパク質の機能の多くは、タンパク質の溶解性と相関関係がある。」(Jackman & Yada, 1989;Malomo & Aluko, 2015)。麻粒では、エデスチンの方が優れたエマルジョン形成能力を有するが、アルブミンの溶解性及び起泡能力はエデスチンの溶解性及び起泡能力よりも高いことが見出された(Malomo & Aluko, 2015)。
【0017】
研究によると、エデスチンは麻粒にのみ見られる場合があるが、エデスチン様タンパク質はパンプキン(pumpkin)及びカボチャ(squash)を含む科由来の穀粒に存在する場合があることが示されている(Vickery、1940)。したがって、本開示及びその用途は、エデスチン及びエデスチンと類似または同一の特性を有し得るエデスチン様タンパク質に関する場合がある。Vickeryは、エデスチンの潜在的な代替物がカボチャの種子を含むウリ科の植物において見出される可能性があることを開示した。Hirohataは、この科の8属の38品種及び種のグロブリンを調査し、近縁種由来のグロブリンのかなりの類似性に注目した (Vickery, 1940;hirotata, 1932)。Vickeryは、ウリ科のグロブリンには、麻粒エデスチンの栄養代替物の要件を満たすエデスチン様タンパク質が含まれている場合があると示唆した(Vickery 1940)。
【0018】
エデスチンは、Thomas Osborneによって初めて単離され、分析された(Osborne, 1892)。完全な天然型では、エデスチンは6つの同一のサブユニットで構成されており、それぞれのサブユニットは1つのジスルフィド結合で連結した酸性(AS)サブユニット及び塩基性(BS)サブユニットで構成されている(Farinon 2020;Patel, Cudney, & McPherson 1994)。最近、エデスチンは、単一品種のヘンプの中でも複数の形態で存在し得ることが示された(Docimo et al., 2014)。例えば、Cannabis Sativa(カンナビス・サティバ)の 1つの品種では、7つの遺伝子がエデスチングロブリンをコードしており、それらは2つのエデスチン型の分岐形態をもたらす。ヘンプのある特定の株内では、ある型のエデスチンは実質的に互いに同一であるが、第2の型のエデスチンは第1の型とは実質的に異なっている。Ponzoniは、3型エデスチン遺伝子であるCsEde3を同定し、これは、ゲノム形態のCsEde1及びCsEde2と比較した場合、それぞれ約65%及び58%の配列相同性を示している(Ponzoni、Brambilla、及びGalasso、2018)。アミノ酸組成は2つの型のエデスチン間で著しく異なる場合があり、ある型の方が栄養価が高くなる(Docimo et al., 2014)。
【0019】
エデスチン自体は309,000という大きな粒子量を有するが、変性すると、解重合して濃尿素溶液中では51,000になり[Burk & Greenberg、1930]、希塩酸中では17,000になる[Adair & Adair、1934]。これらの単位はそれぞれ、天然分子の約1/6及び1/18のサイズである。天然状態では、それらは特定のポリペプチドパターンを有し、部分的にはおそらく何らかの形態の化学結合(例えばS-S結合)によって統合されるが、主に隣接するCO基とNH基の間の横方向の引力、及び側鎖の遊離酸基と塩基性基の間の相互作用によって統合される。以下の分析データからわかるように、これらの後者の群の数は多くなる:グルタミン酸、19~2%;アスパラギン酸、10~2%[Jones&Moeller、1928];アルギニン、17~76%[Vickery、1940];リジン、2~4%、ヒスチジン、2~03%[Tristram、1939];アミド-N、1~73%[Bailey、1937、2]。アミド化されたCOOH基を考慮すると、これらは309,000個の分子あたり合計670個の荷電基に相当する。このような電荷の空間配置によって、分子の安定性が最終的に依存する特定の電荷の対称性が生じ、これは、pHの明確な制限内で、双極子モーメントの変化に反映されるように、ある程度の変動が可能である。これらの制限を超えると、酸または塩基性基のイオン化がさらに抑制され、これにより分子内で引力及び反発が生じ、特に小さな可動イオンが存在しない場合、固有のポリペプチドの立体配置が歪み、最終的には破壊される。(Bailey、1940)。
【0020】
したがって、本開示で言及されるエデスチンには、本開示の目的で開示されるエデスチンと同様または同一の特性を有する、現在知られているかまたは現在知られていないエデスチンのすべての形態を組み込んでもよい。
【0021】
エデスチンは、弱酸性条件下では急速に分解されてエデスタンになる。エデスチンに由来する中間生成物であるエデスタンは、エデスチンの変性中に発生し、Osborneによって最初に同定された(Osborne,1901;1902)。エデスタンは、エデスチンが希酸と接触すると形成される。エデスタンによりSH基が遊離する(Bailey、1942)。Baileyは、酸性条件下ではエデスチンを、20分未満で急速にエデスタンに変換することができることを実証した(Bailey、1942)。この研究は、SH基の遊離がエデスチンのエデスタンへの変換と同時に起こることを示した。Baileyはまた、エデスチンと比較してエデスタンの窒素含有量が減少していると報告しているが、これはエデスチン中のトリプトファンの減少によって説明することができる。非変性の天然状態のエデスチンは、変性もしくは部分変性エデスチンまたはエデスタンとは異なる機能的特性を有する。
【0022】
ヘンプタンパク質を単離する、またはアルブミンからエデスチンを分離する従来の技術は、タンパク質における構造変化を引き起こす場合があり、その一部は不可逆的なものであり得る。さまざまなタンパク質抽出技術及び条件ならびに単離技術及び条件(pH、一価及び多価塩の有無、タンパク質抽出に使用される媒体のイオン強度、時間、温度など)は、タンパク質の機能的特性に影響を与える可能性がある(Hadnadev et al., 2018)。これらの変化はタンパク質の機能に悪影響を及ぼす可能性がある(Hadnadev et al., 2018;Shen et al., 2021)。これらの悪影響には、消化性、タンパク質-油の相互作用、味、溶解性、ならびに乳化及びゲル形成能力の変化が含まれる場合がある(Shen et al., 2021)。したがって、特に食品使用でエデスチンを抽出及び単離する場合、タンパク質の天然構造を可能な限り維持することが非常に重要である。
【0023】
ヘンプタンパク質とエデスチンを分離するために、多数の技術が利用されてきた。これらの技術には、高温、アルカリ性または酸性条件の水性または溶媒スラリーでの使用、等電点電気泳動、ミセル化、限外濾過、及び機械的プロセス、例として穀粒もしくは脱殻粒の圧搾、粉砕もしくはふるい分け、または穀粒の粉砕及び穀粒スラリーのふるい分け、が含まれる。これらの技術のいずれも、タンパク質の構造を変化させ、その機能を低下させる可能性がある。
【0024】
機械的プロセスによって生じる高温は、タンパク質の機能に悪影響を与える可能性がある。例えば、細粉を製造するために穀粒を粉砕すると、タンパク質の構造が変化する程度の高温が発生する場合がある。これらの温度は、エデスチンの変性、及びエデスチン、アルブミンもしくは繊維間の結合または凝集を潜在的に引き起こし、それによってそれらの独立した単離を妨げる場合がある。
【0025】
穀粒の乾式粉砕では少なくとも80℃~100℃の温度が発生し、潜在的にエデスチンが変性する場合がある。Mohammadは、粉砕中に発生する熱及び機械的な力が球状タンパク質を変性させる可能性があることを見出した(Mohommad,2015)。Mohommadは、粉砕中に加えられる機械的ストレスによって球状タンパク質のバルク特性が変化する可能性があることを示した。
【0026】
したがって、細粉を製造するための乾式粉砕によって引き起こされる高温によって、ヘンプタンパク質の構造が変化する可能性がある。Farinonは、麻粒タンパク質(エデスチン)の変性温度を92℃であると計算した(Farinon et al., 2020)。さらに、Malamoは、pHの変化と同様に、熱処理によって、麻粒アルブミン及びエデスチンの二次構造が変化する可能性があることを示した(Malomo及びAluko、2015)。高温によって、タンパク質の解きほぐし(unfold)が起こり、それによって疎水性基が露出し、タンパク質-水の相互作用よりもタンパク質-タンパク質の相互作用が促進される場合がある。
【0027】
タンパク質抽出の化学的手段を使用することにより、抽出中の加熱を回避または最小限に抑えることができるが、多くの化学的抽出方法では、最初に粒径を機械的に縮小させる必要がある。溶媒抽出は、植物材料からタンパク質を分離する一般的な方法であり、タンパク質含有材料が加えられる液体溶媒の使用を伴う。溶媒は、水、アルコール、アセトン、ヘキサン、または他の液体溶媒であってもよい。溶媒抽出は、最初に植物材料を破壊してタンパク質を放出させる機械的または他の抽出手段と組み合わせることができる。溶媒抽出には、植物の細胞壁または繊維状材料を破壊し、それによってタンパク質が放出される溶媒の使用を伴う場合がある。
【0028】
タンパク質の抽出に使用される溶媒の中には、タンパク質を変性させるという欠点を有するものがある。さらに、これらの溶媒は有毒であり得、たとえ少量であっても摂取には好適ではない。さらに、溶媒は一般に長い抽出時間、労力を要する手順を必要とし、食品中に溶媒が残留し、安全に廃棄することが難しい場合がある。ヘキサンはこのタイプの溶媒の例である。多くの溶媒は、米国農務省(USDA)の有機食品のラベル表示に関するガイドラインに基づいて、認定された有機食品の製造に使用することができない。
【0029】
溶媒を必要としないタンパク質抽出の代替プロセスの1つは水抽出であり、この抽出では、粉砕または圧搾した植物材料を水に加え、その後、水性画分中のタンパク質の溶解性または植物材料中の脂肪が水から分離されるときの脂肪含有画分中のタンパク質の溶解性に基づいてタンパク質を分離することを伴う。水抽出の後に等電点電気泳動または塩抽出を行ってタンパク質を単離してもよい。
【0030】
アルカリ抽出は、高塩基性溶媒により細胞構造が破壊され、それによって細胞からタンパク質を放出させる一般的な技術である。しかし、このプロセスは、アミノ酸のラセミ化、リシノアラニンの形成、消化性の低下、及び必須アミノ酸の損失など、タンパク質への損傷をもたらす可能性がある(Moure et al., 2006)。Xuによれば、アルカリ性条件下では、麻粒を含む多くの植物材料中に見られるポリフェノールが酸化し、その後タンパク質と反応し、その結果、抽出されたタンパク質溶液の色が濃い緑色または茶色になる可能性がある(Xu及びDiosady、2002)。
【0031】
麻粒タンパク質の抽出中に使用される場合、アルカリ抽出のpHを、一般にマメ科植物タンパク質抽出の場合(pH8)よりも高い9または10に上げる、これは、天然麻粒タンパク質がしっかりと圧縮されており、他の成分、例えば、フェノール化合物と緊密に統合されている場合があるためである(Wang及びXiong、2019)。一般に、アルカリ抽出の後に等電点で標的ヘンプタンパク質を沈殿させ、数回の洗浄ステップの後、多くの場合、タンパク質単離物から誘発された色を除去することができない。
【0032】
一般に、水抽出またはアルカリ抽出の後に、等電点電気泳動または塩抽出を行って、タンパク質を単離する。等電点電気泳動は、アルカリ抽出または溶媒抽出後に可溶性タンパク質を抽出するために使用してもよく、標的タンパク質と溶媒の間の電荷平衡に達するまでpHを調整し、それによってタンパク質を溶液から沈殿させることを伴う。等電点電気泳動には、pHの変化が必要であり、これによりタンパク質の構造が変化する場合があり、それによってタンパク質の機能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0033】
エデスチンの等電点電気泳動に関して、Baileyは、エデスチンの等電点ゾーンがpH5.5であることを開示している(Bailey、1942)。このプロセスでは、等電点でのエデスチンの沈殿中にアルブミンを大部分除去することができる(Papalamprou et al., 2009)。この結果は、麻粒グロブリン(<10%)と比較して、pH5.0における麻粒アルブミンの高い溶解性(>75%)に起因し得る(Malomo & Aluko、2015)。他のタンパク質単離法を上回る等電点電気泳動の利点の1つは、ミセル化抽出によって得られた同じ単離物と比較して、等電点電気泳動によって得られたタンパク質単離物については水結合能力が高いことが見出されていることである(Krause et al., 2002)。しかし、エデスチン単離中の等電点電気泳動の欠点は、塩抽出によって単離されたエデスチンと比較してタンパク質の溶解性が低いことであり、タンパク質がもはや天然の状態ではないことを示唆している(Hadnadev、2018)。
【0034】
アルカリ抽出及び等電点電気泳動と比較すると、塩抽出はミセル化を伴う場合があって、より穏やかな抽出手順であり、ポリフェノールの酸化、重合、及びタンパク質との共抽出をもたらさない。塩抽出では、一群のタンパク質を「塩溶(salting in)」し、続いて標的タンパク質を「塩析(salting out)」する。「塩溶」とは、溶液のイオン強度が増加すると、タンパク質などの溶質の溶解性が増加する効果を指す。この効果は、イオン強度が低い場合に観察される傾向がある。「塩析」とは、塩濃度をさらに高めることで、塩イオンの存在量により、塩イオンの溶媒和力が低下し、したがって標的タンパク質の溶解性が低下し、沈殿が生じることを伴う。
【0035】
塩抽出の1つの方法には、Murrayの米国特許第6,005,076号に記載されているように、ミセル化ステップが含まれる。ミセル化を使用した塩抽出では、まずタンパク質を一定のイオン強度を有する塩溶液で可溶化する。次に、生理食塩水溶媒を濃縮タンパク質溶液で希釈してイオン強度を一定レベル未満に低下させ、それによって水相中に少なくとも部分的にタンパク質ミセルの形態で離散したタンパク質粒子を形成する。タンパク質ミセルはその後沈降して、標的タンパク質単離物の塊を形成する。次いで、タンパク質単離物を上清から分離することができる。
【0036】
Murrayによって開示されたような塩ベースのミセル化抽出には、等電点電気泳動によって得られた単離物と比較して、溶解性がより高いタンパク質単離物を生成するという利点がある(Karaca et al., 2011;Krause et al., 2002;Paredes‐Lopez and Ordorica‐Falomir 1986。溶解性の向上に加えて、等電点電気泳動と比較して、ミセル化技術によって得られたタンパク質単離物の界面活性が高かった。さらに、Krause及びPapalamprouによれば、ミセル化抽出により、等電点沈殿タンパク質と比較して、天然タンパク質構造がより保存されたタンパク質単離物がもたらされた(Krause et al., 2002;Papalamprou et al. 2009)。一般に、等電点電気泳動によって、抽出されたタンパク質がある程度変性され、これによりタンパク質分子間に疎水性相互作用が生じ、不溶性タンパク質凝集体の形成につながる可能性がある。塩抽出及びミセル化は、ヘンプタンパク質を単離する既知の方法の中で最も損傷が少ない方法であり得るが、単離中に塩を加えるとタンパク質の構造及び機能が悪影響を受ける。「NaClの添加もゲル構造に異なる影響を及ぼす。具体的には、NaCl濃度の増加(最大300mM)によって、集中的なタンパク質間相互作用及び凝集が促進され、より大きな細孔径を有するHMI[ヘンプタンパク質ミセル化単離物]ゲル構造の形成がをもたらされる。」(Shen et al., 2021)。
【0037】
塩抽出は、麻粒からエデスチンを単離するために使用された最初の方法であった(Osborne 1892)。この方法は、ミセル化技術を利用してエデスチンを抽出したMalomoによってさらに開発された(Malomo及びAluko、2015)。Malomoが実証しているように、塩ベースのミセル化抽出中、透析ステップで塩を除去した後、アルブミンは上清に残るが、グロブリンは沈殿し、遠心分離によって収集することができる。Malomoにおいて、麻粒粉の塩抽出及びそれに続く透析チューブ内での水に対する透析によってグロブリン単離物を生成した。
【0038】
麻粒粉の塩抽出物の透析により、アルブミンは溶液中に残る一方で、水不溶性グロブリンがミセル形態で沈殿した(Malomo及びAluko、2015)。次いで、沈殿物を収集し、凍結乾燥した。ヘンプタンパク質のアルブミン画分とグロブリン画分を比較すると、アルブミンはグロブリンよりもタンパク質の溶解性及び起泡能力が著しく高い一方で、2つのタンパク質画分間でエマルジョン形成能力には差は観察されなかった。塩抽出とミセル化では、人件費、時間、材料費、設備費、及び廃棄物処理費が高くなり、現在、食品に使用するためのタンパク質抽出には商業的に実行可能であるとは考えられていない。
【0039】
限外濾過は、他の従来のタンパク質抽出技術と比較して機能的特性が向上したタンパク質単離物を生成するために使用することができる別の方法である。例えば、アルカリ抽出と比較した場合、限外濾過によって得られたタンパク質単離物は一般により良好な乳化特性を有する。しかし、限外濾過の欠点の1つは、最終生成物中に形成される沈殿物による膜の詰まりであり、抽出費用が高くなる可能性がある。
【0040】
より新しいタンパク質抽出方法としては、超音波支援抽出、酵素支援タンパク質抽出、及び電気的タンパク質抽出方法が挙げられる。これらの方法には、高費用、低収量、タンパク質の分解、及びタンパク質の不純物などの欠点がある。したがって、塩抽出、アルカリ抽出、及び等電点電気泳動などの従来の抽出方法が、麻粒などの植物材料からタンパク質を抽出する方法として依然として主流である。
【0041】
本明細書において上記の方法を使用してヘンプを抽出及び単離する公開された方法に関して、麻粒の水性タンパク質抽出及びその後の等電点電気泳動の例が、Crankの米国特許第10,555,542号に開示されている。Crankは、ハンマーミル、ローラーミル、またはスクリュー型ミルを使用した粉砕を含む任意の好適な手段を使用して麻粒を粉砕することを最初に開示している。これらのプロセスによる粉砕は高エネルギープロセスであり、一般に約140°F~150°Fの高温になる。ピーナッツバター製造の技術分野で知られているように、固体からペーストを形成するには一定の高温が必要であるため、ペーストを得るにはこれらの高温が必要である。これらの温度は、製品の最終用途によっては、穀物材料のタンパク質成分間に望ましくない相互作用を引き起こす場合がある。Crankにおいて、粉砕によりペーストまたは細粉(油を除去するために最初に穀粒を圧搾する場合、細粉)が生成され、植物材料の各部分に対して約4~約16重量部の比率で水を粉砕材料に加えることができる。Crankは、タンパク質の抽出を容易にするために、水酸化カルシウムなどの塩基を加えることによってpHを約7.5に調整することを開示している。
【0042】
次いで、得られた溶液を遠心分離して、水性画分または減脂肪抽出物から脂肪画分を分離する減脂肪抽出物は、減脂肪植物乳として使用することも、さらに加工してタンパク質濃縮物またはタンパク質単離物を製造することもできる。Crankにおいて、減脂肪抽出物中のタンパク質を沈殿によって濃縮し、分離して、部分的に脱脂した植物材料からの植物タンパク質濃縮物、または単離物を製造した。Crankは、クエン酸などの酸をタンパク質の等電点まで加えることによって、減脂肪抽出物中のタンパク質を沈殿させることができることを開示している。Crankは、水抽出のみを使用してエデスチンとアルブミンを分離できることを開示していない。さらに、Crankは出願の中で、ヘンプシードがCrankプロセスに従って食品用に単離されたタンパク質源である可能性があること、及びヘンプシードにエデスチンが含まれていることについて言及しているが、Crankはエデスチンの精製及び単離については開示していない。Crankは、遠心分離後にヘンプタンパク質の繊維及びタンパク質含有部分を廃棄することを開示している。
【0043】
Beranのチェコスロバキア特許第33,545号は、麻粒からエデスチンを抽出してヒトの消費用のタンパク質を製造する方法を開示している。Beranはこの特許の背景技術セクションで、多くの場合、ヘンプタンパク質は噴霧乾燥ヘンプタンパク質単離物として製造され、これは多くの場合、高熱を利用し、タンパク質の変性を引き起こす場合があることを開示している。Beranによると、噴霧乾燥には150℃~250℃の温度;ヘンプタンパク質が変性する可能性のある温度が必要になる場合がある。Beranは、「タンパク質の熱変性は、溶解性及び分散性、起泡特性及び乳化特性に悪影響を与える」と開示している。
【0044】
噴霧乾燥によって引き起こされるエデスチンの調製中の熱変性を回避するために、Beranは、最初に麻粒を粉砕または圧搾して油を除去し、その後、水抽出及び等電点電気泳動または塩抽出のいずれかを行ってエデスチンを精製することを含む方法を開示している。Beranにおいて使用される粒径縮小の好ましい方法は、乾式粉砕であると思われる。この特許によれば、次に、粉砕した粉末を、水対粉末の比が5:1の濃度で水に加える。次に、Beranは、溶液を振盪してアルブミン含有水画分及び沈殿物画分を製造することを開示している。
【0045】
Beranは、沈殿物にエデスチンが含まれていることを開示しているが、食品に使用するためにエデスチンを単離するためのさらなるステップを開示している。これらのステップには、等電点電気泳動、塩抽出、または限外濾過によるタンパク質の抽出が含まれる。Beranは、エデスチンを単離するための追加のステップの前に、沈殿物中のエデスチンの純度のレベルを開示していないが、そのような追加のステップの必要性は、沈殿物中のエデスチンの純度が、エデスチンを使用して「高タンパク質食品及びスムージータンパク質飲料のタンパク質含有量を増加させる」という、Beranの特許の記載された目的には十分ではないことを示している。結論として、Beranは「その乳化特性及び最終製品の感覚受容特性に対する有益な効果により、この製品はこれらの食品に使用できる」と開示している。
【0046】
Crank及びBeranはいずれも、(油を除去するために)粉砕または圧搾した麻粒を使用し、その後粉砕してヘンプ細粉をタンパク質抽出の出発材料として使用することを一般的に開示している。その結果、ヘンプ細粉は、タンパク質の構造及び機能に影響を与える乾式粉砕または製粉、及び搾油プロセスを受けてきた。さらに、Crank及びBeranはいずれも、少なくとも等電点電気泳動によるエデスチンの単離であって、これによりタンパク質に構造変化が生じ、その結果、その機能が低下するものを開示している。
【0047】
植物ベースの肉に使用するために穀粒からタンパク質を抽出するプロセス中では、油もまた穀粒から抽出する場合がある。植物ベースの油は食品及び化粧品としての価値を有するため、油の抽出が主な目的になる場合もある。穀粒、ナッツ、及び種子から油を抽出する一般的な方法としては、低温圧搾法及びエクスペラー圧搾などの圧搾ベースの抽出方法、ならびに溶媒抽出が挙げられる。
【0048】
穀粒を圧搾して油を抽出するには、植物材料を機械的に圧縮して固体から油を搾り出すことを伴う。溶媒抽出は、植物材料を液体に入れて油を抽出することを伴う。場合によっては、圧搾と溶媒抽出を組み合わせてもよい。押出機圧搾法からの油の回収は比較的非効率である場合があり、ケーキ中にかなり高いパーセンテージの脂肪が残る場合がある。したがって、油可溶化溶媒を使用して、圧搾ケーキをさらに抽出してもよい。圧搾法または圧搾及び溶媒法で製造した市販のケーキ及び粉末は、タンパク質の機能が低下していると考えられる。
【0049】
従来的に製造された麻粒油は緑色をしている場合があるが、これは抽出中の原形質体または葉緑体の破壊に起因する可能性がある。麻粒は、破壊されるとクロロフィルを放出するクロロフィル含有物質を含有している場合がある。他のタイプの穀粒と比較すると、麻粒にはこれらの物質がより多く含まれているため、従来の方法でヘンプ油を抽出すると緑色になる傾向がある。
【0050】
Leonardらによると、「未精製のヘンプシード油は濃緑色をしているが、これはクロロフィルが含まれているためである。」(Leonard,2019)。さらに、油中のクロロフィルの存在によって脂肪の酸化が起こり、異臭が起こる可能性がある。Soeの米国特許第9,493,749号は、「大豆油、ヤシ油、菜種(キャノーラ)油、綿実油、及びピーナッツ油などの油糧種子に由来する植物油には、通常、ある程度のクロロフィルが含まれている。しかし、植物油中に高レベルのクロロフィル色素が存在することは、一般に望ましくない。これは、クロロフィルが望ましくない緑色を与え、保存中に油の酸化を引き起こし、油の劣化につながる可能性があるためである。」ことを開示している。
【0051】
植物油からクロロフィルを除去するために、種々の方法が使用されてきた。これらの方法には、化学漂白及び超音波漂白が含まれる。クロロフィルは、穀物の粉砕、油の抽出、脱ガム、苛性処理、及び漂白などの油製造プロセスの多くの段階中で除去してもよい。しかし、漂白ステップは通常、クロロフィル残留物を許容レベルまで減らすために最も重要である。漂白中、典型的には、油を加熱して、吸着剤に通して、完成した油の外観及び/または安定性に影響を与えるクロロフィル及びその他の色を帯びた化合物を除去する。漂白ステップで使用される吸着剤は、典型的には粘土である。
【0052】
ヘンプ油からクロロフィルを除去するための従来の方法は費用がかかり、廃棄物処理に問題が生じる場合がある。さらに、葉緑体が破壊された後にヘンプ油からクロロフィルを除去する方法では、クロロフィルへの一時的な曝露により油が酸化する場合がある。したがって、麻粒から油を抽出するための改良された方法が必要とされている。
【0053】
肉及び乳製品類似物の製造では、タンパク質単離物及び好ましい油源を得た後、ステップ2で、単離されたタンパク質を水、場合によっては油と組み合わせて、硬化または押出用の材料を形成する。タンパク質が麻粒または他の植物製品から単離された後、最終肉類似品を形成するには、肉または乳製品類似物の他の成分と組み合わせる必要がある。肉類似物製造用の3つの基本成分は、タンパク質、水、及び脂肪である。これらの成分は、肉及び乳製品類似物を形成するために、さまざまな濃度で組み合わせ、さまざまな方法で処理することができる。
【0054】
肉類似物にはゲル化、または噛みごたえのある肉に似たテクスチャをもたらす構造化が必要であることを考慮すると、タンパク質は、典型的には、水及び場合によっては油と結合してゲルを形成し、それを熱によって硬化してテクスチャを作出することができる。これらの成分、またはタンパク質と水のみを使用したヘンプタンパク質単離ゲルの形成に関して、研究ではヘンプタンパク質が良好なゲル形成特性を有していないことが示されている。上で開示したように、Wang、Shen、及びZahariは、ヘンプは良好なゲル形成能力を有していないため、肉または乳製品類似物の一次タンパク質として使用する可能性が低い候補者となると教示している(Wang et al., 2019;Shen et al., 2021;Zahari et al., 2020)。例えば、Wangは、ヘンプタンパク質単離物と水の組み合わせだけでは、加熱しても望ましいゲルを形成しないことを示した。Wangはまた、Wangのタンパク質と水の混合物に油を加えて加熱した場合でも、ヘンプタンパク質、水、及び油の混合物は加熱時に望ましいゲルを形成しないことも示した。
【0055】
肉類似品の製造では、典型的には、タンパク質、水、及び油を熱硬化させる第3のステップに押出成形が含まれ、これにより、製品をテクスチャ化し、より肉に似た素材が形成される。テクスチャ化された肉を形成するために、押出機を使用してテクスチャ化植物性タンパク質(TVP)を形成する。TVPは典型的には、大豆ベースの製品であるが、エンドウ豆などの他の植物タンパク質を単独で使用することも、大豆と組み合わせて使用することもできる。TVPを生成するには、植物ベースの成分を押出機に供給してテクスチャ化する。従来、乾燥植物タンパク質を押出機に供給し、タンパク質が押出機を通って搬送される際に、水、デンプン、及び場合によっては脂肪を、別の投入部を介してタンパク質に加える。押出後、押出機の放出物はマリネ、コーティング、及び/または冷却のステップを経る場合がある。
【0056】
TVP及びHMMAを含む従来の植物ベースの肉代替製品に共通する問題は、肉と比較した場合の非分散性テクスチャ及びゴム状の口当たりに関する。従来の肉類似物のこのテクスチャ及び口当たりは、脂肪、油、またはそれらの組み合わせがタンパク質ペプチド鎖または「繊維」の分子構造に組み込まれていないことに部分的に起因する。動物由来の肉には、動物の肉製品の大部分を構成する筋肉繊維の間に脂肪分子が組み込まれている。この脂肪は咀嚼中に放出され、咀嚼が続くにつれて消費者に味及び口当たりに関して肯定的で継続的な感覚フィードバックを提供する。現在の従来の肉類似物を咀嚼する際に得られる感覚フィードバックは、肉の場合に得られる感覚フィードバックと同等ではなく、その理由の一部は、タンパク質のペプチド層の間に脂肪がないためである。従来の肉類似物では、脂肪は、タンパク質が完全に変性した後に加えられるため、かなりのサイズの調理済みタンパク質片を取り囲む場合があるが、タンパク質自体のペプチド層内には組み込まれない。
【0057】
TVP及びHMMAの繊維を生成するために一般的に使用される大豆及びエンドウ豆タンパク質は、それらの重量の約10%しか脂肪を保持しない場合がある。通常、肉の筋繊維は、肉の供給源に応じて、その重量の5~約50%程度を脂肪としてタンパク質繊維内に組み込んでいる。したがって、従来の大豆及びエンドウ豆の肉類似物では、押出中に製品に加えられる脂肪の多くが繊維の外側に残り、それを咀嚼したときに制御されたジューシーな様式で脂肪が放出されない、脂っぽくて魅力のない製品が作出される。その結果、従来の肉類似品は主に限られた人数の熱心なビーガンまたはベジタリアンの消費者に訴求しており、肉を食する大多数の消費者には訴求できていない。
【0058】
異なる押出成形方法により、異なる肉類似テクスチャが製造される場合がある。押出成形は、より肉に似た肉類似物を作出するために数十年にわたって開発されてきた。肉類似物の押出成形及び押出成形の準備には、押出混合物のタンパク質成分内の複雑な化学変化及びプロセスが含まれる。押出成形中に、タンパク質単離物の構造が大幅に変化し、それによってタンパク質が部分的もしくは全体的に変性または解きほぐしされたり(unfolded)、再配置されて、他のタンパク質分子と架橋されたり、押出混合物の他の成分に化学的に結合したりする場合がある。押出機は、温度及び圧力の変化に加えて、混合物が機械内を移動する場合にスクリューによって加えられる剪断力の適用によってこれらの変化を引き起こす。押出成形によって製造される肉類似物の最終的なテクスチャ、味、及び口当たりは、押出成形前、押出成形中、及び押出成形後に押出混合物の成分間に形成される種々のタイプの化学結合によって決定される。
【0059】
テクスチャ化された肉類似物を製造するための押出成形プロセスの初期の開発に関しては、Tivall LTD.に譲渡されたShemerらの米国特許第6,319,539号は、タンパク質を大部分の水及び潜在的に脂肪と混合し、得られたペーストを加熱、ゲル化させ、押出機で成形することを開示した。Shemerは、押出装置への移送中に、ペーストが加熱され、所定の速度で搬送され、その後、開口部を通って押出されることを開示している。得られた食品は、実質的に整列した軸方向の繊維を含む繊維状のテクスチャを有する。しかし、このプロセスの問題は、流速が制限されており、ある特定の原材料、特にグルテンを使用してのみ実行できるため、製品の種類が制限されることである。グルテンは既知のアレルゲンであり、これによりこれまで大豆ベースのTVPの使用も制限されてきた。
【0060】
Shemerプロセス及び他の初期の押出機プロセスのさらなる欠点は、高温の製品が冷却されるにつれて水蒸気が放出されるため、加熱された製品が押出機から搬送されるときに膨張することである。水蒸気は整列したタンパク質繊維の乱れを引き起こし、肉類似物の許容可能なテクスチャにとっては望ましくない。
【0061】
この問題を解決するために、Clextral S.A.S.は、一軸スクリュー装置とは対照的に、細長い冷却チャンバーを有し、蒸気が最終製品タンパク質繊維の整列を乱さないように制御された温度で原料を混合し、押出すことが可能になる、二軸スクリューローター押出機を記載している特許出願である、BouvierらのWO2003/007729に開示された技術を開発した。冷却及び水蒸気の問題に対処することに加えて、‘729出願は、従来の原材料配合を使用して押出製品に所望の量の油脂を組み込むことに関する既存技術における問題も認識していた。
【0062】
所望の脂肪含有量を達成するために、‘729出願は、レシチンまたはカゼイネート、タンパク質、繊維、デンプン、及び水を混合した脂肪成分を含有する新規な押出混合物を開示した。この混合物を混練してペーストを得、これを押出機内で加熱してゲル化させた。しかし、肉類似物にデンプンなどの大量の炭水化物が含まれることは、味及び栄養上の懸念から望ましくない。
【0063】
デンプンを加えず、また押出機への油の導入に伴うその他の関連問題も発生させずに、肉類似物に脂肪を導入する問題を解決するために、Ojah B.V.は、GiezenらのWO2012/158023に開示されている技術を開発し、これには、大豆タンパク質などの植物性タンパク質組成物を繊維状の肉に似た構造に変えるための押出プロセスが記載されている。Giezenは、押出出口温度が水の沸点よりも高いと、油を注入して望ましい脂肪含有量に達することができる開放製品構造がもたらされることを開示している。Giezenの問題には、押出成形後のプロセスステップを追加すること、及び最終製品が消費者に、あまりに油っぽく、脂肪が多すぎると認識されることが含まれる。
【0064】
肉類似物押出成形の技術分野で一般的に認識されている問題は、押出混合物中の油の量が多いと動物肉のテクスチャを有する製品を得ることが妨げられることである。従来の肉類似物押出成形では、油の存在により、理想的な肉類似物の繊維構造を形成する押出機内の高い機械的剪断力が低下する。したがって、従来のプロセスを使用する場合、最適量の油を加えると、最適以下の繊維構造及びテクスチャを備えた肉類似物が得られる。
【0065】
油含量が高く、テクスチャ化された肉類似物において油含有量がより高いとテクスチャが最適以下になるという問題を克服するために、Nestecは、Trottetらの米国特許出願第20180064137号に開示された、押出成形中に他の原材料とは別に油を加えるプロセスを開発した。このプロセスには、押出機バレルに40~70重量%の水及び15~35重量%の植物タンパク質を供給し、続いてフィーダーの下流の点で押出機バレルに2~15重量%の油を注入することが含まれる。この開示によれば、液体油を注入する下流位置は、好ましくは、押出機バレルの全長の後半以内である。表面上、この構成により、押出機の前半で高い剪断力が発生して繊維の形成が促進され、繊維の形成を妨げることなく油を下流に加えることができる。
【0066】
Trottetのプロセスは、従来技術と比較して改良された製品をもたらすが、Trottetでは、タンパク質繊維のコアに大量の油が組み込まれることはない。繊維に油が組み込まれていないと、得られる製品は消費者に脂っぽいと感じられ、咀嚼中に脂肪の放出が制御されない。この不満足な結果は、人々が筋肉繊維に多量の脂肪が組み込まれた動物肉を食することに慣れているためである。動物肉のタンパク質繊維には、その重量の最大約50%の脂肪が含まれているが、これは肉の供給源によって異なる。Trottetプロセスでは、植物タンパク質繊維の重量の約10%の量の脂肪のみを、繊維に組み込む。Trottetのプロセスに関するこの問題は、Trottetでは大豆と小麦として開示されているが、押出成形の原料として使用されるタンパク質のタイプと、油をタンパク質繊維に加える方法の両方によって引き起こされる。
【0067】
肉類似物の脂肪含有量に対処する別の特許出願において、Nestleによって、Pibarotの特許出願WO2020/208104が2020年に出願された。「Meat analogs and meat analog extrusion devices and methods(肉類似物及び肉類似物の押出装置及び方法)」と題された出願の中で、Pibarotは、タンパク質マトリックス内外に脂肪組織が含まれる動物肉の脂肪含有量を模倣することの問題を認めている。Pibarotは、この複雑な構造によって、肉の外観ならびに肉のテクスチャ及びジューシーさが操作される場合があると示唆している。
【0068】
この問題を解決するために、Pibarotは、ダイ内で冷却されている押出混合物の内部に脂肪を注入することを開示している。Pibarotでは、押出成形中に押出混合物のタンパク質繊維間に隙間が発生する。加熱され剪断された製品が冷却ダイを通って搬送されると、脂肪がこれらの隙間の間に注入され、タンパク質繊維の間に脂肪が堆積する。Pibarotは、このプロセスにより赤身肉に類似した大理石のような外観が得られ、製品のテクスチャ及び旨味が向上すると主張している。Pibarotは、大豆、エンドウ豆、及び他の従来の植物タンパク質源にこのプロセスを使用することを開示している。しかし、Pibarotは、脂肪をタンパク質繊維の分子構造に組み込む方法を教示していない。
【0069】
要約すると、Shemerプロセスは限られた数の成分でしか使用できず、温度及び冷却の制御が欠如しているため、粗悪な製品が生じた。Bouvierは、Shemerの冷却の問題を解決したが、所望の脂肪含有量を達成するために、原料の押出材料と大量のデンプンをブレンドし、これにより望ましくない味及び栄養価が生じた。Giezenは、押出成形後に脂肪を加えることでBouvierプロセスのデンプンの問題を解決したが、これには追加のステップが必要となり、油っぽくて口当たりが良くない製品が生じた。Trottetは、押出成形の後期段階で油を導入することによりGiezenとBouvierの両方を改良したが、Trotetは肉類似物のタンパク質繊維への油の組み込みが少ないという問題を依然として抱えている。Pibarotは、冷却時に肉類似物に脂肪を注入することを開示しており、これによりタンパク質繊維間に脂肪が導入されるが、タンパク質繊維に脂肪が組み込まれた最終製品は製造されない。
【0070】
麻粒は、タンパク質源としても油源としても非常に価値がある。麻粒から食品を製造するためのさまざまな方法が存在するが、優れた純度、ゲル化機能、栄養価、消化性、及び風味を備えたヘンプタンパク質、ならびに料理及び化粧品に好適であるすっきりした風味及び明るい色を有する酸化的に安定な油を製造するために、すっきりした口当たりの良い味覚の、非酸化麻粒からタンパク質と油を抽出する、より効果的、効率的な、より清潔で低コストの方法が必要であることは明らかである。さらに、様々な動物肉及び乳製品の外観、味、テクスチャ、ジューシーさ及び咀嚼性を有する様々な肉類似物を作出するために使用することができるプロセス及び原材料が引き続き必要とされている。より具体的には、最終製品中に最適量の油または飽和脂肪が含まれ、肉の外観、テクスチャ及び味を有し、油または飽和脂肪が、動物の肉もしくは乳製品源の油または飽和脂肪に近いレベルでタンパク質繊維に組み込まれた肉類似品が必要である。
【発明の概要】
【0071】
本開示は、優れた植物ベースの肉及び乳製品類似物を製造するために、ヘンプタンパク質の単離、原材料投入の準備、及び原材料投入の処理に関する従来技術の問題を解決する。本開示の組成物及びプロセスには、麻粒タンパク質の単離、低温殺菌、液体溶液、ゲル形成、テクスチャ化、ならびに肉及び乳製品類似物製造のためのプロセスが含まれる。本開示のプロセスによって、既存の製品または既知の技術を使用して製造された類似の製品と比較した場合に、優れた特性を有する構造タンパク質食品または肉類似物がもたらされる。
【0072】
本開示のプロセスによる肉または乳製品類似物の調製は、3つの大きなステップに分割することができる。第1のステップは、麻粒からのタンパク質の抽出、または単離を伴う。第2のステップは、単離タンパク質を水及び油と組み合わせて、熱ゲル化または押出成形用の原材料を形成することを伴う。第3のステップは、肉類似物を硬化させるかまたはテクスチャ化するための原材料の熱ゲル化または押出を伴う。最終的な肉類似物は、したがって鶏肉、魚、及びチーズなどの肉または乳製品を模倣するように調理してもよい。
【0073】
第1のステップであるヘンプタンパク質の単離に関して、本開示のプロセスには、Mitchellの米国特許第7,678,403号(「Mitchell」または「‘403特許」)に開示されている既知の穀物処理方法が、一部変更を加えて組み込まれている。‘403特許はその全体が本明細書に組み込まれる。Mitchell法は、低温での水性湿式粉砕及び得られた製品のふるい分けを開示している。本開示では、水性湿式粉砕は、スラリーの温度を、好ましくは33°F~38°Fの間に維持しながら行ってもよい。高温、特に42°F以上では、微生物の増殖が懸念されまる。
【0074】
いくつかの実施形態では、粉砕は、全粒麻粒または脱殻麻粒(脱皮麻粒とも呼ばれる)を用いて実行することができる。全粒麻粒が使用されるか、それとも脱殻麻粒が使用されるかによって、最終的な肉または乳製品類似品の色が異なる場合がある。全粒麻粒を使用すると、より濃く、より牛肉に似た色が得られるが、脱殻麻粒を使用すると、より白く、鶏肉や魚に似た色になる。一部の全粒麻粒及び一部の脱殻麻粒の使用は、一実施形態では、全粒麻粒が、脱殻麻粒の量に対して約20~30重量%の濃度で使用され、最終製品に牛肉に似た色をもたらす。一実施形態では、麻粒の脱皮によって以前に除去された殻を脱殻麻粒に再導入して、色を加えることができ、ここで、一実施形態では、牛肉に似た色を達成するために、殻を、脱殻麻粒に対して約10~15重量%の量で、脱殻穀粒に加えることができる。
【0075】
水性湿式粉砕の後、Mitchellは、‘403特許において、本開示とは異なるメッシュサイズでふるい分けすることを教示しており、本開示では170~200メッシュサイズでふるい分けすることが好ましい。Mitchellは、‘403特許中で、牛乳製造のための米粒のふるい分けについて考察した際、メッシュサイズ150以下を開示したが、これはある特定の穀粒には適切であるが、麻粒の葉緑体の除去には適切ではない。本開示では、驚くべきことに、170~200メッシュサイズ、好ましくは、または約160~200の間のメッシュサイズが、葉緑体またはクロロフィル含有粒子のフィルター通過を防止する一方で、タンパク質または栄養素の収量を大幅には減少させることなく、十分なタンパク質粒子がフィルターを通過する可能性があることを発見した。
【0076】
麻粒を改変Mitchellプロセスに従って処理すると、不溶性タンパク質含有沈殿副産物がもたらされる。このタンパク質含有材料は、固有かつ貴重な特性を有し、特に肉及び乳製品の類似体の製造に非常に好適であることがMitchellによって発見された。この麻粒タンパク質含有材料は公開されていない。さらなる調査により、Mitchellは、この材料は主にエデスチンで構成されており、重要なことに、麻粒のもう1つの主要なタンパク質成分であるアルブミンが実質的に含まれていないと判定した。Mitchellプロセスの処理パラメータにより、エデスチンは実質的にその天然の状態に維持されるようである。実質的に天然のエデスチンが高濃度に含まれているため、この材料は以後天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)と呼ばれる。NEPIは、約80%がタンパク質で構成され、油、繊維、炭水化物、及び灰分も含有している。
【0077】
粉砕及びふるい分けの後、遠心分離及びデカントによって、NEPIをアルブミン油水性エマルジョン(AOAE)から分離することができる。アルブミン油水性エマルジョンを、場合によりさらに加工して、ヘンプ油及びアルブミンを製造してもよい。本開示に従って抽出されたNEPIは、肉または乳製品を再現するさまざまな異なる植物ベースの食品に使用することができる。NEPIは、場合により油と組み合わせてタンパク質ヒドロゾル及びタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成することができ、蒸発または噴霧乾燥製品を製造するために加工することができる。ヒドロゾルを使用して、植物ベースの肉類似物を製造することができる。
【0078】
本開示は、動物肉のテクスチャ、ジューシーさ、繊維性、及びテクスチャの均一性を含む、肉製品をより厳密に再現する植物ベースの製品を製造するための方法及び材料に基づいている。タンパク質の解きほぐし(unfolding)、または変性、特性及び脂肪保持能力に基づいてタンパク質を選択することを含む、肉類似物を製造するためのプロセスが本明細書に記載される。さらに、本明細書に記載のプロセスには、押出混合物または投入物を調製する方法であって、押出混合物または投入物は、水と脂肪が液体マトリックスを形成するような様式で、選択されたタンパク質に水と脂肪を組み込む、押出成形前のタンパク質-脂肪ヒドロゾルであってもよく、タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、タンパク質を含むタンパク質-脂肪ヒドロゲルとも呼んでもよい、方法が含まれる。いくつかの実施形態では、液体マトリックスは追加の成分を有してもよいが、タンパク質-脂肪ヒドロゲルはタンパク質-脂肪及び水以外の成分を有さなくてもよい。さらに、本明細書に記載のプロセスには、液体マトリックスを押出成形または別様に加熱する方法であって、液体マトリックスは、本明細書では押出投入物または押出混合物とも呼ばれ、液体マトリックスは脂肪タンパク質ヒドロゾルであり得る。液体マトリックスを押出成形するプロセスは、液体マトリックスを押出チャンバーの第1の端にあるポンプに供給することを含む。液体マトリックスを押出機に供給し、押出機は、液体マトリックスに合わせたパラメータに設定する。
【0079】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する組成物、及び麻粒からエデスチンを単離する方法に関する。本明細書に開示されるように、エデスチンは、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する麻粒または他の穀粒及び種子から単離することができる。一実施形態では、麻粒を水性タンパク質抽出中に湿式粉砕し、これによりエデスチン含有画分及びアルブミン油水性エマルジョンが得られる。
【0080】
本開示は、一態様では、水性湿式粉砕の方法を利用して、葉緑体を破壊して油中にクロロフィルを放出することなく、麻粒内に保存された脂肪を分離することができる。このプロセスによって種子を粉砕すると、得られた粉砕製品を、さまざまなサイズのメッシュに通してふるい分けする。約170メッシュ~200の間、またはいくつかの実施形態では160~200メッシュの間、またはいくつかの実施形態では200~270メッシュの間のふるい分けにより、殻、葉緑体及び繊維を除去する。より好ましくは、160~200の間のメッシュサイズを使用することができる。1つの好ましい実施形態では、170のメッシュサイズを使用することができる。メッシュサイズ150では開口部が大きすぎるため、繊維及びクロロフィル含有材料などの望ましくない材料が濾液に入る場合がある。驚くべきことに、クロロフィル含有粒子は170メッシュの細孔開口部より大きいサイズのままであるが、タンパク質含有粒子のほとんどはこのサイズのメッシュを通過する。本発明の方法によれば、異なるサイズのメッシュによるふるい分けにより、葉緑体、原形質体、または他のクロロフィル含有粒子をヘンプ油及びタンパク質含有画分から分離し、これにより淡黄色の最終油製品が得られる。
【0081】
本開示のプロセスでは、ふるい分け後の濾液中には、NEPI及びアルブミン油水性エマルジョンを含有する不溶性画分が存在する場合がある。AOAEは、遠心分離後にデカントしてもよい。不溶性画分及びペレット含有部分を洗浄して、残留油を除去してもよい。いくつかの実施形態では、冷水による洗浄を2回行ってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、AOAEは、アルブミンがエマルション中の油から分離し始めて沈殿するまで、約33F~38Fの間で、好ましくは35Fで冷却することができ、いくつかの実施形態では、これを遠心分離によって支援することができる。本開示のプロセスによれば、アルブミンはヘンプ穀油と強く結合し、それによって不溶性エデスチン画分、すなわちNEPIからの油とアルブミンの分離が改良される。このプロセスにより、アルブミンをヘンプ穀油から分離することができる。ゲル電気泳動は、このプロセスによって実質的にすべてのアルブミンがNEPIから除去され、NEPI中に主にエデスチンが残る場合があることを示している。AOAEは、遠心分離及びデカントによってNEPIから除去することができ、NEPIを固体材料として残し、これを洗浄して残留材料を除去することができる。
【0083】
一実施形態では、次いで、NEPIを約145°Fの温度に約30分間加熱して、製品を低温殺菌することができる。一部の管轄区域では、145°Fが低温殺菌の法的下限値となる場合がある。ここで、本開示で観察された高温で起こる粒状化を防ぐために、温度は約145°F、または145°F~155°Fの間に維持されるべきである。NEPIでは、エデスチンの変性よりもはるかに低い温度、例えば約158°Fで顆粒化が発生する可能性がある;したがって、当業者が低温殺菌に通常使用する温度よりも低い温度で低温殺菌することが非常に重要である。当業者は従来、製品を迅速に処理するために、本開示において顕著な顆粒化を引き起こす温度でタンパク質単離物を低温殺菌する。低温殺菌が完了した後、NEPIは、噴霧乾燥するか、肉及び乳製品類似体に使用するために濃縮物として保存する。噴霧乾燥は、タンパク質の顆粒化または凝集を防ぐために、より低い温度、好ましくは約145°F~155°Fで行うべきである。
【0084】
いくつかの実施形態では、特に商業用途の場合、NEPIを製造ラインから出して145°Fに加熱されたタンクに入れ、製品を、この温度で30分間インキュベートした後、冷却タンクに送り、約35°Fまで冷却する。冷却後、必要に応じて、噴霧乾燥、凍結、フリーズドライ、または真空マイクロ波乾燥のためにNEPIを出荷して、その後、肉及び乳製品類似体、または構造化タンパク質食品の製造に使用する。
【0085】
肉類似体の製造の場合、低温殺菌製品は、乾燥している場合は最初にNEPIを水和するか、そうでない場合は適切な水和度を維持することによって調製することができる。一実施形態では、水の量は、NEPI1部に対して水約3部であり得る。NEPIに加える前に、水を好ましくは約135°Fに予熱して、硬化する前にタンパク質ヒドロゾルを形成してもよい。タンパク質のヒドロゾル構造を破壊する場合があるため、このプロセス中に塩を加えるべきではない。塩は硬化直前または硬化後に加えてもよいが、硬化の前には加えることはできない。いくつかの実施形態では、タンパク質の水和及び解きほぐしは、100°F~135°Fで、またはいくつかの実施形態では100°F~155°Fの間で実行することができる;あるいは、他の実施形態では、タンパク質ヒドロゾル形成は、より低い温度で実行してもよいが、その温度は、タンパク質を解きほぐしすることができない低温より高くなければならない。好ましくは、水和及びタンパク質調製ステップ中の温度は、製品の顆粒化を生じる温度に達することなく、低温殺菌の最低温度と考えられる145°Fにできるだけ近いままにするべきである。
【0086】
タンパク質が水和されると、一実施形態では、油を加え、タンパク質ヒドロゾルと混合して、タンパク質-脂肪ヒドロゾルが形成することができる。タンパク質ヒドロゾルが滑らかな外観になるように、NEPIが十分に水和されるまでは、油を加えるべきではない。水和及びタンパク質調製前に油を加えると、顆粒形成が発生する場合がある。さらに、本開示のプロセスによれば、油は材料の硬化前に加えるべきであり、硬化とは、より固体化したゲル生成物を作出するためにタンパク質結合が形成される場合、タンパク質の凝集が起こる場合、一般にタンパク質の変性が起こる高温で、タンパク質が凝集する場合を意味する。本開示の場合、硬化プロセス中に遊離油は存在せず、押出機または他の熱硬化手段で製品を硬化させる前に、すべての油がエマルジョンまたはタンパク質構造に組み込まれる。従来の押出成形では、押出機内で部分的または完全に硬化する材料に遊離油が存在する。したがって、本開示では、押出成形または硬化中に遊離油が存在しないようにするために、油を加える前に水を加えてNEPIを完全に水和させ、解きほぐしすることが重要である。次いで、このタンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱または押出成形して肉類似物を形成することができる。例えば大豆やエンドウ豆タンパク質を使用する従来の押出成形では、押出機内で高温で硬化が始まった後、油の組み込みというよりも潤滑のために油をタンパク質材料に加える。
【0087】
タンパク質ヒドロゾルが十分に水和されたら、油を加えてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成することができる。油は好ましくは予熱して、油の温度は、好ましくは約130°F~135°Fの間であり得る。他の実施形態では、油は100°F~135°Fの間、または100°F~155°Fの間で予熱することができ、一方、他の実施形態では、油はより低い温度で加えることができるが、油は、タンパク質ヒドロゾルの構造を破壊し、油がタンパク質ヒドロゾルに組込まれてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成するのを妨げる低温で加えるべきではない。材料をレトルトシステムにセットすることもできるが、レトルトでは押出成形のように繊維化製品を製造することができない場合がある。
【0088】
レトルト処理NEPI肉類似物のテクスチャは、驚くほど良好であり、同じ条件下で市販されているヘンプタンパク質濃縮物及び分離物よりもはるかに優れた硬度及び噛みごたえなどのテクスチャ特性を有していた。本開示のプロセスによって、タンパク質源としてヘンプのみを使用して製造された高品質の繊維化肉類似物の熱ゲル化及び押出成形が予想外にもたらされた。大豆及びヘンプなど、従来から使用されてきた肉及び乳製品類似タンパク質の性質により、従来の肉及び乳製品類似体では、鶏胸肉など、動物肉製品に類似しているテクスチャ化された肉フィレを再現することができない。本開示で説明されるNEPIの使用及びそれを使用するプロセスから得られる予想外に有利な特性及び結果により、他の市販製品と比較した場合、ヘンプタンパク質のみをタンパク質源として使用して、はるかに優れた構造化肉類似物が作出された。現時点では、ヘンプタンパク質は、肉類似体を製造するために大豆または他の植物タンパク質と組み合わせて使用されることしか知られていない。
【0089】
一態様では、本文書は、タンパク質対脂肪の比が約4:1~0.5:1の範囲であり得る肉類似押出成形投入物、または液体マトリックスを特徴とする。
【0090】
一態様では、本文書は、水を本明細書で以下に開示する比率でタンパク質単離物に加えるか、または水を、タンパク質単離物中に特定の比率で維持するプロセスを特徴とし、水をタンパク質単離物に加えるかまたはその中に維持した後、水対脂肪及びタンパク質対脂肪のほぼ一定の比率で、脂肪をタンパク質と水の混合物に加える。
【0091】
一態様では、本文書は、含水量標的が35重量%~75重量%の間である製品を特徴とする。
【0092】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、液体マトリックス中の単離植物タンパク質としては、エデスチン、アルブミン、グロブリン、またはそれらの混合物などの種子油タンパク質を挙げることができる。
【0093】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、単離タンパク質は、植物内の他のすべての植物タンパク質から最初に単離することができる。
【0094】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、使用される単離タンパク質は、天然の状態、または非変性の状態で単離されたものであってもよく;天然とは、完全に天然、実質的に天然、部分的に天然、または別様にタンパク質構造を検出する従来の方法により実質的に天然として同定される、または当業者によって理解されるような天然を意味することができる。
【0095】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、種子タンパク質から単離されたタンパク質は、好ましくは、大豆またはカゼインに典型的に見出されるシステイン含有量よりも高いシステイン含有量を有する。
【0096】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、液体マトリックスは、香味剤、デンプン、繊維、または他の炭水化物源を含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される肉及び乳製品類似品は、畜産物、小麦グルテン、大豆タンパク質、またはエンドウ豆タンパク質を含まなくてもよい。
【0098】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。パーセントへの言及はすべて重量による。
【0099】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面及びに以下の記述で説明される。本発明の他の特性、目的、及び利点が、記述、図面及び実施例から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】本開示による天然エデスチンタンパク質単離物すなわちNEPIを生成するプロセスを示すフロー図である。
【
図2】本開示による低温殺菌NEPI天然エデスチンタンパク質単離物を製造するプロセスを示すフロー図である。
【
図3】本開示によるNEPIを噴霧乾燥するプロセスを示すフロー図である。
【
図4】本開示による着色NEPIを製造するプロセスを示すフロー図である。
【
図5】本開示による麻粒からヘンプ油を抽出するプロセスを示すフロー図である。
【
図6】本開示によるヒドロゾルを形成するプロセスを示すフロー図である。
【
図7】本開示によるレトルトによる肉及び乳製品類似体を製造プロセスを示すフロー図である;
【
図8】本開示によるNEPIの押出プロセスを示すフロー図である;
【
図9】本開示による、NEPIタンパク質及び市販のヘンプタンパク質濃縮物及び単離物からのヘンプタンパク質の非還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図10】本開示による、NEPIタンパク質及び市販のヘンプタンパク質濃縮物及び単離物からのヘンプタンパク質の還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図11A】先行技術刊行物からのヘンプ粉末及びヘンプタンパク質単離物の還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図11B】先行技術刊行物からのヘンプタンパク質単離物のヘンプタンパク質の非還元条件及び還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである。
【
図12A】NEPI 250の脱殻麻粒噴霧乾燥粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図12B】NEPI 250全粒麻粒濃縮物(スラリー)の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図13A】VICTORY HEMPの脱殻麻粒噴霧乾燥粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図13B】NUTIVAヘンプ粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図14】Aは、茹で鶏胸肉の断面の写真である。Aは、
図14Aの茹で鶏胸肉の断面の拡大写真である;Cは、
図14Bの茹で鶏胸肉の拡大断面の写真である。
【
図15】Aは、NEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図15AのNEPI脱殻ヘンプ濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図16】Aは、NEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図16AのNEPI脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図16BのNEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図17】Aは、VICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図16AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図16BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図18】Aは、HEMPLAND脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図18AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図18BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図19】本開示による、テクスチャ及び繊維の類似性を示す、脱殻粉末からの押出NEPI及び茹で鶏胸肉片の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。パーセントへの言及はすべて重量による。本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面ならびに以下の記述で説明される。本発明の他の特性、目的、及び利点が、記述及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【0102】
一般に、本開示は、麻粒タンパク質から、本明細書では構造化タンパク質食品とも呼ばれる、植物ベースの肉または乳製品類似物を製造するための方法及び材料を提供する。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、及びいくつかの実施形態では、抽出されたタンパク質含有生成物は、他の麻粒タンパク質から分離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、エデスチンは、麻粒中の他のタンパク質の一部またはすべてから実質的に単離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、穀物タンパク質から単離されたタンパク質は、好ましくは、大豆またはカゼインに典型的に見出されるシステイン含有量よりも高いシステイン含有量を有する。
【0103】
本開示により使用される植物タンパク質は、単離植物タンパク質であってもよい。本開示の目的上、「天然」タンパク質とは、生きている活性細胞と同じ三次構造及び四次構造を有し得るタンパク質である。いくつかの実施形態では、「天然」タンパク質は、実質的に天然のものであり得る。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、単離タンパク質は、ほぼ天然の、実質的に天然の、または非変性の状態で単離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、使用される単離タンパク質は、天然の状態、または非変性の状態で単離されたものであってもよく;ここで、天然とは、完全に天然、実質的に天然、部分的に天然、または別様にタンパク質構造を検出する従来の方法により実質的に天然として同定される、または当業者によって理解されるような天然を意味し得る。サブユニット構造及び三次構造の変化及び破壊は、温度の変化(典型的には41℃超)、あるいは酸もしくはアルカリ水溶液、酸化剤もしくは還元剤、または有機溶媒との接触により発生する場合がある。四次構造の破壊により、生細胞内でタンパク質が生物学的に不活性になる、または生物学的に不活性になる場合がある。しかし、放出されたサブユニットの三次構造は、水素結合、ファンデルワールス力、ジスルフィド結合によって作出された特定の形状を有し、機能的に活性であり、生細胞と同様の機能を示す場合がある。この一例は、タンパク質の三次形状に起因する酵素の鍵と鍵穴機能である。
【0104】
したがって、四次構造または三次構造が抽出後に生細胞と同じ状態で実質的に維持される場合、本開示の目的では、これらは、「天然」タンパク質と考えてもよい。本開示は、ある特定の油穀粒球状タンパク質であって、三次構造が温度の変化(典型的には41℃超)、あるいは酸もしくはアルカリ水溶液、酸化剤もしくは還元剤、または有機溶媒とによって変性されていないという意味で天然であると考えることができるものが、固有で優れた機能的特性を有することを見出した。
【0105】
従来の植物タンパク質抽出プロセスは、タンパク質の四次構造及び三次構造を破壊することが知られている。場合によっては、この破壊により、四次構造または三次構造の機能が失われるか低下する場合がある。三次構造は、水素結合、ファンデルワールス力、またはジスルフィド結合であって、これらすべてが連携して特定のタンパク質の三次構造を形成するものなどの機能的な結合及び力の破壊によって変性する場合がある。タンパク質の環境の変化及び三次構造の変性様式により、タンパク質の三次構造または形状、結合、力、及び連結が変化する場合がある。
【0106】
本明細書で使用される場合、「単離植物タンパク質」という用語は、エデスチン、グルテリン、アルブミン、レグミン、ビシリン、コンビシリン、グリシニンなどのタンパク質を含み得る、植物タンパク質、及び大豆、エンドウ豆、レンズ豆など、もしくはそれらの組み合わせを含む任意の種子もしくは豆からのタンパク質単離物、または植物タンパク質画分(例えば、7S画分)が、原料物質の他の成分(例えば、他の動物、植物、真菌、藻類、または細菌のタンパク質)から分離されており、タンパク質またはタンパク質画分には、乾燥重量で、原料材料の他の成分が少なくとも2%(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%含まれていないことを示す。例えば、高いシステイン含有量を有する単離天然球状タンパク質は、単独で、または1つ以上の他のタンパク質(例えば、アルブミン)と組み合わせて、または大豆、エンドウ豆、ホエーなどの任意の他のタンパク質源からのものを使用することができる。
【0107】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、脂肪は非動物性脂肪、動物性脂肪、または非動物性脂肪と動物性脂肪の混合物であり得る。脂肪は、藻類油、真菌油、コーン油、オリーブ油、大豆油、落花生油、クルミ油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、アヒ油、ババス油、シアバター、マンゴーバター、ココアバター、小麦胚芽油、ルリヂサ油、カシス油、シーバックソーン(sea-buckhorn)油、マカダミア油、ノコギリヤシ油、共役リノール油、アラキドン酸富化油、ドコサヘキサエン酸(DHA)濃縮油、エイコサペンタエン酸(EPA)濃縮油、パームステアリン酸、シーバックソーン(sea-buckhorn)ベリー油、マカダミア油、ノコギリヤシ油、もしくは米ぬか油;またはマーガリンもしくは他の水素化脂肪であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、脂肪は藻類油である。脂肪は、香味剤及び/または単離植物タンパク質(例えば、コングリシニンタンパク質)を含有することができる。液体マトリックスの脂肪または油組成は、類似物の標的原料物質の飽和及び不飽和組成に優先的に適合するように作製することができる。
【0108】
したがって、いくつかの実施形態では、単離タンパク質は実質的に、麻粒、またはエデスチンもしくはエデスチン様タンパク質を有し得る他の穀物から単離された天然エデスチンなどのタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、膜を通過する限外濾過、または密度遠心分離によって、それらの分子量に基づいて分離することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば等電点沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーによって、その表面電荷に基づいて分離することができる。タンパク質はまた、その溶解性に基づいて、例えば硫酸アンモニウム沈殿、等電点沈殿、界面活性剤(surfactant)、界面活性剤(detergent)、または水抽出を含む溶媒抽出によって分離することもできる。タンパク質は、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィー、反応性色素、またはヒドロキシアパタイトを使用して、別の分子に対する親和性によって分離することもできる。アフィニティークロマトグラフィーには、ヘム含有タンパク質に対して特異的結合親和性を有する抗体、Hisタグ付き組換えタンパク質に対するニッケルニトリロ酢酸(nitroloacetic acid)(NTA)、糖タンパク質上の糖部分に結合するレクチン、またはタンパク質に特異的に結合する他の分子を使用することも含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の植物ベースの肉は、実質的にまたは完全に、非動物源、例えば、植物、真菌、または微生物ベースの源に由来する成分から構成される。いくつかの実施形態では、植物ベースの肉または植物ベースの乳製品は、1つ以上の動物ベースの製品を含み得る。例えば、肉レプリカは植物ベース源と動物ベース源を組み合わせて作製することができる。
【0109】
定義:
ヘンプシード(HS)は、本明細書では一般に、さらなる繁殖及び植栽に通常使用される発芽力がある種子として定義される。HSは、洗浄実施方法及び種子の農業保存実施方法に基づいて、食品グレードである場合とそうでない場合がある。
【0110】
全粒麻粒(WHG)は、本明細書では一般に、発芽力がある麻粒と低温殺菌された麻粒の両方を含む麻粒として定義される。
【0111】
発芽力がある麻粒(VHG)は、本明細書では一般に、塵や異物がすべてさらに除去され、食品グレードに好適であり、中心部及び殻が完全に無傷である発芽力があるヘンプの種子として定義される。
【0112】
低温殺菌麻粒(PHG)は、本明細書では一般に、熱または照射によって処理されて、種子の発芽力が破壊された麻粒として定義される。
【0113】
脱脂麻粒ケーキ(DHGC)は、本明細書では一般に、麻粒からの油の非水性除去から生じる乾燥固体残留物として定義される。
【0114】
麻粒油(HGO)は、本明細書では一般に、麻粒の非水抽出から得られる未加工の緑色の油として定義される。
【0115】
麻粒油スラッジ(HGOS)は、本明細書では一般に、麻粒からの油の非水抽出から得られる原油スラッジスラリーとして定義される。
【0116】
脱殻麻粒(HHG)は、本明細書では一般的にヘンプの中心部またはヘンプナッツ;外殻を取り除いた麻粒と同等のものとして定義される。
【0117】
脱脂脱殻麻粒ケーキ(DHHGC)は、本明細書では一般に、ヘンプ脱殻穀粒からの油の非水性除去から生じる乾燥固体残留物として定義される。
【0118】
外皮付き麻粒油(HHGO)は、本明細書では一般に、脱殻麻粒の非水抽出から得られる黄色の油として定義される。
【0119】
ヘンプタンパク質単離物(HPI)は、本明細書では一般に、アルブミン、エデスチンまたはそれらの凝集体の単離物として定義される。
【0120】
アルブミン油水性エマルジョン(AOAE)は、本明細書では一般に、油及び可溶性アルブミンタンパク質の水系エマルジョンとして定義される。
【0121】
天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)は、本明細書では一般に、本明細書に開示されるタンパク質単離プロセスの生成物として定義され、その使用との適切な関係において当業者に理解されるように、液体、スラリー、及び粉末形態のNEPIを指すことができる。
【0122】
フローチャートに記載されるすべての製品は、その使用との適切な関係において当業者に理解されるように、液体、ゲル、または固体を含む種々の物理的形態で存在することができる。
【0123】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)を含油する組成物、ならびに肉及び乳製品類似物を製造するためにNEPIを抽出及び使用する方法に関するものであり得る。本開示は、優れた植物ベースの肉及び乳製品類似物を製造するために、ヘンプタンパク質の単離、原材料投入の準備、及び原材料投入の処理に関する従来技術の問題を解決する。本開示の組成物及びプロセスには、麻粒タンパク質の単離、低温殺菌、ゾル形成、ゲル形成、テクスチャ化、ならびに肉及び乳製品類似物製造のためのプロセスが含まれる。本開示のプロセスによって、既存の製品または既知の技術を使用して製造された同様の製品と比較した場合に、優れた特性を有する肉または乳製品類似品がもたらされる。
【0124】
タンパク質の単離に加えて、本文書は、動物肉のテクスチャ、ジューシーさ、繊維性、及びテクスチャの均一性を含む、肉製品をより厳密に再現する植物ベースの製品を製造するための方法及び材料に基づいている。タンパク質の解きほぐし、または変性、特性及び脂肪保持能力に基づいてタンパク質を選択することを含み得る、肉類似物を製造するためのプロセスが本明細書に記載される。さらに、本明細書に記載のプロセスには、押出前に、押出混合物を調製する方法であって、水と脂肪がタンパク質とともに液体マトリックス(本明細書では、液体-脂肪ヒドロゾル、ヒドロゾル、押出機または押出投入、及び投入材料とも呼ばれる)を形成するような様式で、選択されたタンパク質に水と脂肪を組み込む、方法が含まれる。さらに、本明細書に記載のプロセスには、液体マトリックスを押し出すか、または別様に加熱する方法が含まれる。液体マトリックスを押出成形するプロセスは、液体マトリックスを押出チャンバーの第1の端にあるポンプに供給することを含む。液体マトリックスを押出機の押出チャンバーに供給し、押出機は、液体マトリックスに合わせたパラメータに設定する。
【0125】
本明細書に開示されるように、NEPIは、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する麻粒または他の穀物、ナッツまたは種子から抽出することができる;ただし、現時点では麻粒がエデスチンの唯一の供給源であると考えられている(though)。一実施形態では、麻粒を、湿式粉砕し、水性抽出に供し、それによって、本明細書ではNEPIと呼ばれる不溶性エデスチン含有抽出物及びアルブミン油水性エマルジョンを生成する。
【0126】
本開示によるプロセスでは、低温殺菌された機能性麻粒タンパク質濃縮物を製造することができ、この濃縮物は、製造ラインから、もしくは遠心分離及びデカントから得られる濃縮液体、またはNEPI粉末であり得、これは、いくつかの実施形態では、トリプシン阻害剤の量が少ないか含まれておらず、高い栄養価及び機能性を備えている。このプロセスでは、等電抽出、アルカリまたはCO2可溶化方法を使用しない場合がある。テクスチャ化可能なタンパク質NEPI濃縮物またはNEPI粉末は、麻粒の自然なpHと油分を水と組み合わせて利用し、油抽出及びアルブミンの分離によって製造されると考えられている。可溶性アルブミンのエマルジョン形成能力により、遠心分離によって不溶性エデスチンから容易に分離できるエマルジョンを形成することができる。凍結乾燥、pH再調整、及び限外濾過による分離は必要ではない。さらに、繊維及びクロロフィルは、NEPIプロセス中に除去される場合がある。低温、好ましくは33°F~38°Fの間を維持すると、グロブリンの不溶性が促進され、アルブミンの凝固も促進される。
【0127】
本開示の一態様は、麻粒を含む植物材料からのエデスチン及びエデスチン様タンパク質の単離に関する。エデスチンは、ヘンプ植物;特に麻粒中に見出されている。麻粒が最も一般的な、または唯一のエデスチン源であると考えられているが、他の植物にもエデスチンが含まれている可能性がある。
【0128】
本開示の方法に従って調製されたエデスチン抽出物組成物、または天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)を使用して、タンパク質含有組成物を作製することができる。NEPIは、好ましくは約80%の乾燥ベースのタンパク質で構成することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、少なくとも65%の乾燥ベースのタンパク質を含むことができ、いくつかの実施形態では、少なくとも90%の乾燥ベースのタンパク質を含むことができる。したがって、NEPIは、本開示に記載される機能的特徴を有する製品をもたらす、本開示に記載される方法に従って製造されるエデスチン含有組成物として定義することができる。本開示に記載される水性油アルブミンエマルション(AOAE)をさらに加工して、ヘンプ油または穀物油及びアルブミンを含む他の植物ベースの製品を製造することができる。
【0129】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する好適な穀粒、種子または植物材料を使用して実施することができ、そのようなエデスチン様タンパク質は相同であるか、または類似の構造及び機能を有することができる。
【0130】
本開示で使用される穀粒は、実質的に全脂肪植物穀粒、すなわち粉砕前に脱脂または圧搾されていない穀粒であり得る。いくつかの実施形態では、穀粒は部分的に脱脂されていてもよい。部分的に脱脂された穀粒には、脂肪の少なくとも一部が除去された任意の植物材料が含まれる。
【0131】
当業者には知られているように、実質的に全脂肪の麻粒は、10重量%以上の脂肪(または油)含有量を有し得る。本開示では、脂肪及び油という用語は互換的に使用される場合がある。好適には、実質的に全脂肪である穀物の脂肪含有量は、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはさらに50重量%である。麻粒の脂肪含有量は、通常少なくとも30%である。部分的に脱脂された植物材料の脂肪含有量は、約5重量%、10重量%、または15重量%を超える場合がある。殻を除去した後の麻粒の可食部分には、平均して46.7%の油及び35.9%のタンパク質が含まれている。
【0132】
図1に示されるように、麻粒102は、構造化タンパク質食品プロセス100で使用するために選択することができる。全粒麻粒101及び脱殻麻粒105を使用することができる。低温殺菌された全粒麻粒103も使用することができる。本開示に従って使用される麻粒102は、限定されないが、乾燥、平衡水分レベルを達成するためのコンディショニング、脱皮、クラッキング、及び向流空気吸引による洗浄、選別方法、発芽力がある種子を損傷しない低温殺菌、または当技術分野で知られている他の方法、を含む好適な手段によって処理するために調製することができる。麻粒102は、あらゆる種類のヘンプ植物から選択することができるが、本開示では、0.3%以下のTHCを含有するCannabis Sativa(カンナビス・サティバ)を、好ましく使用する。麻粒102は、全粒麻粒または脱殻(脱皮)麻粒102であってもよく、麻粒102は、構造化タンパク質食品プロセス100における処理の前に脱殻し、それによって、
図4に示されるように、脱殻麻粒150を製造することができる。
【0133】
ここで
図1を参照すると、構造化タンパク質食品プロセス100における麻粒102は、天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)250を抽出するために、天然エデスチンタンパク質単離プロセス200(
図2に示す)を受ける。天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)スラリー252もしくは粉末254、またはNEPI 250を使用して、肉または乳製品類似物であり得る構造化タンパク質食品120を製造することができる。麻粒からヘンプタンパク質もしくはエデスチンを抽出する、またはヘンプタンパク質単離物を製造する従来の方法では、エデスチンとアルブミンの凝集またはタンパク質の変性が生じる場合があり、満足のいく構造化タンパク質食品または肉類似物を製造できない場合がある。しかし、NEPI 250は、Zahariによって説明されているように、大豆または他のタイプの植物ベースのタンパク質分離物と組み合わせることなく、肉類似物における唯一のタンパク質源として使用すると、優れた新規な肉類似物を製造することができる(Zahari et al., 2020)。
【0134】
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、NEPI 250を低温殺菌104し、水106と混合してタンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。NEPI 250は、予熱された水106と結合して、タンパク質ヒドロゾル108を形成することができる(
図6に示すように)。NEPI 250は、水に対して少なくとも20%重量/重量~水に対して最大80%重量/重量以上存在する必要がある。タンパク質を完全に水和させる。水和時間は状況によって異なる。水和を促進するには、高剪断で混合することが好ましい。
【0135】
次いで、油をタンパク質ヒドロゾルに加える110ことができ、続いて高剪断混合112を行うことができる。いくつかの実施形態では、高剪断混合112の後、混合物は、場合により、混合せずにインキュベートしてもよい113。油110の添加及び混合112により、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114が製造される。
【0136】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、にタンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱して製品を硬化させる116手段の投入物として使用される。硬化は、マイクロ波、蒸気トンネル、オーブン、レトルト、及び押出成形を含む手段による加熱を伴ってもよい(
図7及び8に示すように)。加熱して硬化させる手段には、当業者には知られているように、タンパク質またはデンプンベースの食品を加熱して硬化物を形成する他の手段を含めてもよい。タンパク質脂肪ヒドロゾル114を硬化させる場合、構造化タンパク質食品120を製造する。構造化タンパク質食品120は、肉または乳製品の類似物であってもよい。
【0137】
図2に示されるように、NEPI 250を製造するには、麻粒102を冷水に加えて202麻粒スラリー204を形成することができる。粉砕中及び天然エデスチンタンパク質単離プロセス200全体にわたる抽出温度は、より好ましくは35°F、または33°F~38°Fの間、または約120°F未満であり得、麻粒102に加えられ、麻粒スラリー204を形成する。麻粒は、水溶液、好適には水で抽出してもよい。本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語には、溶質を実質的に含まない水(例えば、水道水、蒸留水、または脱イオン水)及び溶質を含む水が含まれる。本開示によれば、水溶液は、塩、緩衝液、酸、塩基及び解乳化剤などの添加剤を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、水溶液は、タンパク質の構造を変化させるイオン強度よりも低いイオン強度を有し得る。ある程度の水を使用してもよい。
【0138】
本プロセスでは、NEPIを単離するためにpHを調整する必要はない。好ましくは、構造化タンパク質食品プロセス100全体を通じて、pHは6.5~7の間でほぼ中性に維持される。一実施形態では、溶液のpHは、穀物の粉砕中に実質的な程度まで変化しない。
【0139】
麻粒スラリー204は、実質的にMitchellの米国特許第7,678,403号に記載されているように湿式粉砕206することができる。一実施形態では、麻粒の粉砕206は、シルバーソンローターステーター型粉砕機を使用して実行することができる。湿式粉砕206は、水性抽出プロセスの一部として実行してもよい。好適には、水性湿式粉砕206は、好適な期間実行することができ、より好適には、湿式粉砕206は、好適な期間実行する。当業者であれば理解するように、より長い抽出期間を使用してもよい。いくつかの実施形態では、処理を助けるために酵素を使用することができる。例えば、液化は、液化スラリーを生成するデキストリン化活性を有するアルファ-アミラーゼ酵素を使用して達成することができる。このような酵素には、アミラーゼ、または食品加工の分野で知られている他のカルボヒドラーゼを含めてもよい。本開示は、一態様では、水性湿式粉砕の方法を利用して、葉緑体を破壊して油中にクロロフィルを放出することなく、麻粒102内に保存された脂肪を分離することができる。遠心分離デカント222後の香味を改良するために、塩化カルシウムをNEPI 250に加えてもよい。
【0140】
麻粒206を水性湿式粉砕した後、抽出物を、メッシュを用いて不溶性副生成物または繊維状スラリー210(例えば、不溶性繊維画分)の少なくとも一部から分離することができる。いくつかの実施形態では、麻粒スラリー208は2ステップでふるい分けしてもよい。ふるい分けすることにより、エデスチンに不快な色または味を与える不要な不純物を除去してもよい。不溶性繊維は、第1のふるい分けステップによって除去することができる。驚くべきことに、タンパク質収量に実質的な影響を与えることなくふるい分けすることによって除去することができる別の望ましくない生成物は、麻粒及び脱殻ヘンプの葉緑体からのクロロフィルであり、これは油画分またはタンパク質画分に望ましくない色、味、及び脂肪の酸化を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、クロロフィル含有粒子は、第2のふるい分けステップ212で除去することができる。ふるい分け212の後、葉緑体及び繊維スラッジが、濾液中のDSB上の脂肪対タンパク質の比率が約1:3:1である生ヘンプ乳とともに、保持液中に存在する場合がある。
【0141】
第1のふるい分けステップでは、麻粒スラリーを、いくつかの実施形態では、30メッシュにわたってふるい分けして、殻を除去することができる。第1のふるい分けステップの副生成物は、繊維状スラリー210であり得る。第2のふるい分けステップ212では、麻粒スラリーをふるい分けして212、約170メッシュで葉緑体を除去することができ、またはいくつかの実施形態では160~200メッシュの間、またはいくつかの実施形態では200~220メッシュの間で葉緑体、またはクロロフィル含有材料及び残りの繊維を除去することができる。メッシュサイズ150の開口部は一般に大きすぎる場合があり、繊維及びクロロフィル含有粒子などの望ましくない物質が濾液に入る場合がある。驚くべきことに、クロロフィル含有粒子は、170メッシュの細孔開口部より大きいサイズのままであるが、タンパク質含有粒子のほとんどはこのサイズのメッシュを通過する。異なるサイズのメッシュによるふるい分けにより、葉緑体、原形質体、または他のクロロフィル含有粒子をヘンプ油及びタンパク質含有画分から分離し、これにより淡黄色の最終油製品が得られる。
【0142】
エデスチン抽出プロセス100によって単離された葉緑体218は、いくつかの実施形態では、栄養補助食品として使用することができる。本開示のプロセスによれば、クロロフィル含有粒子214は、麻粒スラリー204から選択的に除去される一方、タンパク質含有粒子は、濾液に通過することが可能になる。本方法は、水性湿式粉砕の前に殻が除去されていない全粒麻粒と、脱殻麻粒の両方に有効である。
【0143】
麻粒スラリーを170メッシュでふる分けし、クロロフィル含有粒子212を除去した後、得られる生成物は水性油アルブミンエマルション(AOAE)とエデスチンの混合物220であり、ある程度の麻粒102の他の成分も含み得る。AOAEとエデスチンの混合物220を、遠心分離によりデカントして222、その結果、NEPI 250及びAOAE 230が得られる。AOAE230は、NEPI 250から分離した後、さらに処理して、
図5に示されるように、アルブミン550及びヘンプ油518を製造することができる。
【0144】
NEPI 250は、いくつかの実施形態では、約76%のタンパク質、2%の油、4%の繊維、1%の炭水化物、及び17%の灰分から構成することができる。AOAE220は、約14%のタンパク質、76%の油、3%の繊維、4%の炭水化物、及び3%の灰分から構成することができる。NEPIは、好ましくは約80%の乾燥ベースのタンパク質で構成することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、少なくとも65%の乾燥ベースのタンパク質を含有することができ、いくつかの実施形態では、少なくとも90%の乾燥ベースのタンパク質を含有することができる。したがって、NEPIは、本開示に記載される機能的特徴を有する製品をもたらす、本開示に記載される方法に従って製造されるエデスチン含有組成物として定義することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、乾燥重量ベースで少なくとも約65%、75%、85%、または90%のタンパク質を含有することができる。
【0145】
表2は、NEPI 250及び市販のヘンプタンパク質製品の栄養組成の概略分析データを示している。表2は、NEPI 250製品が、VICTORY HEMPと同様に、タンパク質含有量とタンパク質対脂肪の比率が高いことを示している。他の市販製品は、タンパク質含有量とタンパク質対脂肪の比率がはるかに低い。これは、試験された製品の中で、NEPI 250及びVICTORY HEMPが、他の製品よりもはるかに優れている可能性があることを示している。
【0146】
図9~11は、タンパク質組成、構造、及び完全性を示す、NEPI 250製品及び市販製品のSDS PAGEゲルデータを示す(非還元条件を
図9に示し、還元条件を
図10に示す)。
図9に関して、910はエデスチン二量体であり、920はアルブミンである。
図10に関して、930はエデスチン酸性サブユニットであり、940はエデスチン塩基性サブユニットであり、950はアルブミンである。
図11は、エデスチン及び同様の条件下でのエデスチン生成物の既知の分子量を示す従来技術のSDS PAGEデータを示す。レーンは以下で識別され、
図9及び10に適用される。
M=分子量標準
1=DP-276 HempLife 粉末 SD HPI
2=DP-276 HempLife 粉末 SD HPI
3=DC-344 HempLife 液体 濃HPI
4=GH-350 Good 粉末 Hemp HPI
5=A-560 Anthonyの粉末HPC
6=LP-643 脱殻HempLife SD 粉末 HPI
7=VH-794 Victory Hemp 粉末 V70 HPI
8=N-950 Nutiva 粉末 HPC
9=N-950 Nutiva 粉末 HPC
【0147】
図11Aは、Mamone及びWangによって発表されたヘンプタンパク質からの従来技術のSDS PAGEを示す(Mamone et al., 2019;Wang及びXiongから、2019)。
図11Bは、Shenによって発表されたヘンプタンパク質からの従来技術のSDS PAGEを示す(Shen et al., 2020)。
【0148】
まとめると、
図9~10は、NEPI 250製品が他の市販製品とは異なるタンパク質組成を有し、一般に構造的により無傷であり、天然エデスチン含有量及び非分解タンパク質製品に関してVICTORY HEMPが最も近いことを示している。興味深いことに、予想どおり、NEPI 250製品にはアルブミンが実質的に含まれていなかった。本開示では、アルブミンが、優れたテクスチャ特性を有する良好な構造化タンパク質食品120を形成するヘンプタンパク質単離物の能力を妨げるという仮説が立てられている。この理論は、表2に示すテクスチャプロファイル分析データによって裏付けられており、ここで、NEPI製品は、市販のヘンプタンパク質製品と比較して、はるかに優れた硬度及び噛みごたえを有する。NEPI 250のエデスチンの優れた天然の構造的特徴が、表2に示すNEPI 250の予想外に優れたテクスチャ特性の形成に寄与している可能性もある。エデスチンの天然状態の優れた構造的保存は、表3にさらに示されており、
図12及び13は、製品の示差走査熱量測定データを示す。
【0149】
表3は、NEPI 250及び市販製品に含まれるエデスチンに関する構造情報を提供する示差走査熱量測定サーモグラフを示す。2つのNEPI製品(
図12)及び2つの市販のヘンプタンパク質粉末、VICTORY HEMP及びNUTIVA(
図13)のDSCサーモグラフ。DSC結果に基づくと、NEPI製品は市販製品と比較して構造の点で優れており、NEPI 250のエデスチンが市販製品よりも天然状態にあることを示している。
【0150】
従来の手段で生成されたヘンプタンパク質単離物と比較すると、背景技術で前述したように、NEPI 250のエデスチンの品質が優れている。さらに、本開示のプロセスと比較した場合、従来技術のタンパク質抽出方法には重大な欠点及び制限がある。例えば、HMIプロセスにおける塩抽出及び透析では、最終製品から残留フェノール類は除去されない。さらに、HMIは、商業的にはあまり有望ではない。
【0151】
本開示のプロセスは、従来技術に比べて多くの利点を有する。本プロセスにより、NEPI 250及びAOAE230からフェノール及びトコフェロールが放出される場合がある。本開示のプロセスによって、ヘンプ油518がより酸化的に安定になる場合がある。本開示のプロセスでは、水性湿式粉砕中に、フェノール類がヘンプ油518と分離し、それによって安定性がもたらされる場合がある。
【0152】
本開示のプロセスは、従来の方法が一般に、穀物を圧搾して油を抽出し、麻粒ケーキを製造することを伴い、その後、製粉し、ふるい分けして細粉を製造することができるという点で、麻粒からタンパク質を抽出する従来の方法とは異なる。得られたケーキまたは細粉には、油、炭水化物、フェノール類、及びミネラルにとともに、凝集したエデスチン及びアルブミンが含まれる場合がある。場合によっては、種子を乾式粉砕して直接細粉を製造することもできる。
【0153】
穀物を圧搾するなど、高温または高圧となる機械的プロセスにより、エデスチンとアルブミンの間に化学結合が形成される場合がある。全粒麻粒または脱殻麻粒を圧搾すると、エデスチンとアルブミンが凝集する可場合がある。
【0154】
高圧によってタンパク質の構造が変化し、タンパク質の凝集が起こる可能性がある。Yangによれば、タンパク質の高圧修飾は、天然状態から中間状態を経て完全に変性した状態まで、タンパク質の二次、三次、及び四次構造が変化することを伴う(Yang et al., 2016)。高圧によって、主に非共有結合-電子の相互作用、疎水性相互作用、及び水素結合の変化を通じてタンパク質の構造が変化する。高圧によってまた、新しいジスルフィド結合の形成が生じ、それによって変性タンパク質が安定化し、またはタンパク質の凝集が起こる可能性がある(Yang et al., 2016)。
【0155】
熱によっても、タンパク質の構造が変化することが知られている。穀物を粉砕する際の摩擦によって生じる熱により、タンパク質の構造が変化する可能性がある。熱によってタンパク質の変性及びタンパク質凝集体の形成が生じる可能性がある。エデスチンとアルブミンの間の凝集は、温度が100℃以上に達する場合がある乾式粉砕中に発生する可能性がある。
【0156】
一実施形態では、次いで、NEPIを約145°Fの温度に約30分間加熱して、製品を低温殺菌することができる。一部の管轄区域では、145°Fが低温殺菌の法的下限である場合がある。一実施形態では、粒状化を防ぐために、温度を約145°F、または145°F~155°Fの間に維持することができる。本開示では、顆粒の形成は約158°Fの温度で起こることが観察されている。NEPIでは、エデスチンの変性温度よりもかなり低い温度、例えば約158°Fで顆粒化が起こる場合があり、ここで、エデスチンの変性温度は約95℃であることが示されている。食品に使用する植物タンパク質の低温殺菌のために当業者が通常使用する温度よりも低い温度で、NEPIを低温殺菌することが非常に重要である。当業者は従来、製品を迅速に処理するために、本開示において顕著な顆粒化を引き起こす温度でタンパク質単離物を低温殺菌する。低温殺菌NEPI 270は、冷水232で洗浄し、希釈した結果である。
【0157】
図3に示されるように、低温殺菌104が完了した後、NEPI 250は、NEPI噴霧乾燥プロセス300によって噴霧乾燥させるか、構造化タンパク質食品120の製造に使用するための濃縮物として冷蔵保存することができる。遠心デカンター分離直後のNEPI濃縮物の固形分は、約35%~45%の範囲にあり、ポンプ圧送するのが難しい濃厚なペーストである。この時点で冷水を加えてNEPI 250濃縮物の固形分を、好ましくは約30%に低減させ、158Fを超えない温度に維持された加熱パイプに通してスラリーを素早くポンプ圧送しやすくする。希釈により、より乱流が可能になり、145Fまで加熱する際の熱分布が改善され、完成した乾燥エデスチン製品に望ましくない過熱したタンパク質の凝集体及び顆粒が形成されることなく低温殺菌が可能になる。噴霧乾燥の前に、NEPI濃縮物を、タンク内で約145°F、または低温殺菌温度で保持することができる。次いで、噴霧乾燥306は、より高い噴霧乾燥306の温度、または、既存製品が約158°F以上に達する可能性があり、タンパク質の凝集を引き起こし、機能的に劣ったNEPI 250をもたらす場合がある温度で実行することができる。このタンパク質の凝集は、非還元SDS-PAGEゲル上で約100kDaで目に見える場合があり(
図9に示す)、ここで、予想されるエデスチンまたは麻粒タンパク質のバンド以外のバンドが目に見える。非還元条件下で、エデスチン二量体に予想される約50kDaのバンドを超える高分子量で存在するバンドは、噴霧乾燥300中の過剰な熱によって引き起こされる凝集を表している場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、噴霧乾燥300の最高温度が顕著なタンパク質凝集が起こる温度より低いかどうかを測定する1つの潜在的な方法は、非還元SDS-PAGEゲル上で予想外の高分子量バンドを同定することであってもよい。マイクロ波乾燥は、本開示で使用することができる別の方法であり、マイクロ波乾燥中、NEPI 250は、130F殻140Fの間などの低温に保たれる一方、真空圧下で水分が除去される。
【0158】
図4は、構造化タンパク質食品120に色を加えるプロセスを示す。白身肉及び血合肉類似物プロセス400は、鶏肉または魚を再現することができる白身肉NEPI 412と、牛肉または鶏モモ肉を再現することができる血合肉NEPI 422のいずれかを製造することができる。白身NEPI 422を製造するには、脱殻麻粒105を使用することができる。一実施形態では、脱殻麻粒105を天然エデスチンタンパク質単離プロセス200にかけることができ、これにより、白身肉NEPI 412が得られ、これを構造化タンパク質食品プロセス100で使用して白身肉レプリカを製造することができる。血合肉NEPI 412を製造するには、全粒麻粒101を使用することができる。一実施形態では、全粒麻粒101を天然エデスチンタンパク質単離プロセス200にかけることができ、その結果、血合肉NEPI 412が得られ、これを構造化タンパク質食品プロセス100で使用して血合肉レプリカを製造することができる。一実施形態では、一部の全粒麻粒と一部の脱殻麻粒の使用により、全粒麻粒が、脱殻麻粒の量に対して約20~30重量%の濃度で使用され、血合NEPI 412または中間色NEPI 432が得られる場合がある。一実施形態では、麻粒の脱皮によって以前に除去された殻を脱殻麻粒105に再導入して、色を加えることができ、ここで、一実施形態では、血合肉色を達成するために、殻を、脱殻麻粒に対して約10~15重量%の量で、脱殻穀粒105に加えて、中間色NEPI 422を製造することができる。
【0159】
図5は、油及びアルブミン抽出プロセス500を示す。天然エデスチンタンパク質単離プロセス200の生成物であるAOAE230は、アルブミン550及びヘンプ油518を製造するプロセスであり得る。油及びアルブミン抽出プロセス500では、AOAE230を蒸発させて濃縮物504にすることができる。製品を、均質化して504、加熱して低温殺菌する530。AOAEを清澄化することが有用であり得る。180Fまで加熱する520と、エマルジョンが分解する場合がある。蒸発させて好ましくは水よりも油が多くなる506。凍結近くまでまたは凍結まで冷却する508。クリーマリーセパレーターで遠心分離して510、アルブミン550またはヘンプ油560を得る。
【0160】
図6は、ヒドロゾル形成プロセス600を示し、このプロセスでは、NEPI 250を予熱した水と組み合わせて、
図2に実質的に記載したタンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。ヒドロゾル形成プロセス600では、約135°Fに予熱した水を、NEPI 250に加え、高剪断下で混合して106、タンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。タンパク質ヒドロゾルは、タンパク質ヒドロゾルの形成前、形成中、または形成後に145°Fで低温殺菌することができる。NEPI 250の製造後には、低温殺菌条件を維持または作出する必要がある。低温殺菌製品104は、噴霧乾燥306してNEPI粉末308を形成する場合には、最初にNEPI 250を水和することによって、または別様にNEPI 250の適切な程度の水和を維持し、低温殺菌条件を可能な限り最大限に維持することによって調製することができる一実施形態では、NEPI 250に加えられる予熱水の量は、溶液を乾燥固体重量でNEPI1部に対して水約3部にすることができる。いくつかの実施形態では、NEPIを冷却機で凍結し310、凍結乾燥312して、NEPI粉末308を製造することができる。ヒドロゾルを130Fまで加熱する111と、有用であり得る。油を、110~115Fに加熱すると、有用であり得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、予熱水は水道水であってもよく、いくつかの実施形態では、エリー湖から供給される水道水であってもよく、実質的に溶質を含まなくてもよい(例えば、水道水、蒸留水、または脱イオン水)。塩は、タンパク質ヒドロゾル108またはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の構造を破壊する場合があるため、水和及びタンパク質調製プロセス中に溶液に加えるべきではない。塩は、硬化後に加えてもよいが、硬化前には加えてはいけない。いくつかの実施形態では、タンパク質の水和及び解きほぐしは、(理論に拘束されることなく、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成中に油との適切な相互作用を可能にするために、タンパク質の構造がわずかに変化または解きほぐされるように、)100°F~135°Fで、またはいくつかの実施形態では100°F~155°Fの間で実行することができる;あるいは、他の実施形態では、タンパク質ヒドロゾル形成は、より低い温度で実行してもよいが、その温度は、タンパク質を水和及び解きほぐしすることができない低温より高くなければならない。好ましくは、水和及びタンパク質調製ステップ中の温度は、タンパク質の凝集及び顆粒化を引き起こす場合がある温度に達することなく、145°Fまたは低温殺菌104温度にできるだけ近いままにするべきである。タンパク質ヒドロゾルが形成されると、予熱油109は、いくつかの実施形態では110°F~115°Fの間、他の実施形態では100°F~155°Fの間に加熱してもよく、または場合によっては、油の添加によりタンパク質のヒドロゾル構造が破壊されるような低温であるとみなされる温度よりも高い温度に保持して、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の顆粒を生成することができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、脂肪を、pH6.5~pH7.8の間(例えば、pH7.5)を有する水和タンパク質の温めた懸濁液(例えば、エデスチンを含有するタンパク質単離物)と組み合わせることによって製造することができる。ワーリング型ブレンダーもしくは手持ち式ホモジナイザーなどでの急速撹拌、またはこの混合物の均質化により、エマルションが形成される。これらのタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の物理的特性は、タンパク質のタイプ、タンパク質濃度、均質化時のpHレベル、均質化の速度、及び脂肪対水の比を変えることによって制御することができる。
【0163】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成するには、多価不飽和脂肪酸(PUFA)油または脂肪であって、好ましくはココナッツ油または脂肪であり得るものを、脂肪の融点をわずかに超えるまで加熱し、タンパク質ヒドロゾル108に加えることができる。理論に拘束されるものではないが、脂肪は、水和した天然エデスチンを取り囲む層を形成し、それによって、本質的に水和タンパク質を封入する液体マトリックス、すなわちタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成し、濃厚かつ安定なゲルを効果的に作出する油中水和タンパク質エマルジョンを形成することができる。効果的に、油は水和タンパク質構造を密閉して保護することができる。水和タンパク質は、乾燥タンパク質よりもかなり多くの脂肪をゲル状態で保持することができる。一般に、本出願で考察するように、最初に水和され、次にその変性温度未満に穏やかに加熱される天然の球状タンパク質は、その重量の最大2倍の脂肪を保持できることが見出されている。タンパク質-脂肪ヒドロゾルの含水量は、いくつかの実施形態では、約30重量%~約70重量%の範囲であり得る。含水量とは、試料から水分が蒸発した後の質量変化のパーセンテージとして計算される、分析方法によって測定される材料中の水分の量を指す。
【0164】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、タンパク質脂肪ヒドロゾル114は、香味剤または他の添加成分を含んでもよい。以下の成分:脂溶性または他の香味系、塩化ナトリウムを含む塩、植物ベースのアルブミン源、植物ベースの不溶性または可溶性繊維を、完成したタンパク質-脂肪ヒドロゾル114基準で、典型的には2重量%未満で、場合により加えることができる。デンプンは、単独で、または必要に応じて複合炭水化物または糖を含む他の可溶性炭水化物と組み合わせて、最大約10重量%、より好ましくは5重量%未満のレベルで加えることができる。補助成分は、香味またはテクスチャを改良及び変更する目的で、硬化前にタンパク質-脂肪ヒドロゾル114に加えてもよい。繊維は、構造化タンパク質食品120の「きしみ感(squeakiness)」を低下させるために加えてもよい。
【0165】
一実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、重量で約15重量%~約25重量%、より好ましくは約18重量%~約22重量%のタンパク質を含むことができ、ここで、タンパク質は天然の油糧種子タンパク質であり得;一実施形態では、タンパク質単離物の約75重量%~約85重量%が球状タンパク質を含み、好ましくはタンパク質単離物は15重量%未満のアルブミンを含み、より好ましくは5重量%未満のアルブミンを含む。さらに重要なことは、球状タンパク質はその天然の状態にあってもよく、好ましくはカゼインまたは大豆タンパク質単離物よりも多い量のアミノ酸システインをかなりの量で有してもよい。タンパク質組成物のバランスは、いくつかの実施形態では、主にカルシウム及びリンなどのミネラルであり得る。天然の油糧種子球状タンパク質は、好ましくは、相当量のシステインを有し得る。
【0166】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、約40重量%~約70重量%、またはより好ましくは40重量%~60重量%の水を含み得る。
【0167】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、約0重量%~約35重量%の脂肪を含み得る;飽和脂肪酸対多価不飽和脂肪酸(PUFA)の比は、100重量%の飽和脂肪と100重量%のPUFAとの間である。これら2つの量の間の脂肪を組み合わせると、脂肪と組み合わせて使用されるタンパク質の量に応じて、これまで報告されていないさまざまな固有のテクスチャが得られる。
【0168】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、いくつかの実施形態では、約0重量%~約5重量%のデンプンを場合により含んでもよい。加えられるデンプンの量は、タンパク質の水和に必要な、タンパク質に加えられる水の量を超えて、加えられる水の量に依存する場合がある。
【0169】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成するための成分を手動または機械的に混合することによって形成することができる。好ましくは、水和タンパク質を最初にタンパク質の造粒温度の直下まで温め、油及び/または溶融脂肪を加え、好ましくは混合物を穏やかに均質化する。
【0170】
一態様では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、120°F~150°Fの温度で混合することができる。形成されたゲルまたはマトリックスを破壊することなく、タンパク質を加熱環境に置くための温度範囲は、70℃~100℃であることが見出されている。これらの温度は、大豆などの従来の肉類似タンパク質の押出に一般に必要な押出温度よりも大幅に低い。押出機で通常使用される条件下での大豆タンパク質の変性及び繊維化の温度は、約130℃~140℃の範囲にある。本開示によれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114のオーブン加熱によって、及び/またはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を加圧調理(レトルト処理)してタンパク質を積極的に硬化させることによって、良好なテクスチャ化を得ることができる。
【0171】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の物理的特性は、ヒドロゾルの物理的特性である。粘度は、油、脂肪、及び水、及びタンパク質の含有量に依存する。水分をより多くすると、タンパク質対脂肪の比率が低くても粘度が実質的に低下する。同様に、タンパク質対脂肪の比率が非常に低く、水分が少ないと、粘度が非常に高くなる可能性がある。脂肪系及びタンパク質系の品質及び選択も、粘度に著しい影響を与える。
【0172】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成は、天然タンパク質の変性点未満で行うことができる。しかし、本開示によれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は微生物学的に安定ではないため、その温度で保存することは望ましくない。直ちに加熱処理してタンパク質の形状を硬化することが好ましい。液体マトリックスは、さらなる処理の前に、熱交換器または他の方法で6℃未満に冷却して保存することもできる。
【0173】
図7は、構造化タンパク質食品120をもたらすNEPI 770のレトルトプロセスを示す。NEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を、形成されたTetrapak200mL容器702内に分配し、一実施形態では、各容器に180gを満たす。上部はtetra recart機械を使用して密閉する704ことができる。充填されたNEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾルを、レトルト機械内に配置する706ことができる。次いで、NEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾルを、レトルト条件下で加熱して708硬化する710ことができる。いくつかの実施形態では、このプロセスにより、構造化タンパク質食品120が得られる。
【0174】
本開示によるレトルトに関して、
図14~18は、種々のNEPI製品及び市販のヘンプタンパク質粉末のレトルト処理の結果の写真を示す。各図にはレトルト処理製品の拡大図が含まれている。茹で鶏肉を標準として使用した。以下の表6は、レトルト処理ヘンプ製品のテクスチャプロファイル分析の結果を示す。表7及び8は、茹で鶏胸肉を標準として使用して、レトルト処理によって製造され、試験された各製品の比色データを示す。
【0175】
図14~18は、レトルト処理NEPI脱殻粉末250の写真を示し、固体は、タンパク質対脂肪(NEPI 250対ココナッツ油)が約2:1であり、固体対液体(水)の比が約2:3である。タンパク質-脂肪ヒドロゲルの調製後、当業者に知られているように、レトルト処理製品を製造した。
【0176】
【0177】
図15Aは、NEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図15Bは、
図15AのNEPI脱殻ヘンプ濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図15Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0178】
図16Aは、NEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図16Bは、
図16AのNEPI脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図16Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0179】
図17Aは、VICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図16Bは、
図16AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図16Cは、本開示による
図16BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
【0180】
図18Aは、HEMPLAND脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図18Bは、
図18AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図18Cは、本開示による
図18BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0181】
図8は、NEPI 250を押出成形してテクスチャ化構造化タンパク質食品120を製造するプロセスを示す。加熱オーガー、好ましくは、一実施形態では、中空の蒸気加熱オーガー800、または他のタイプの加熱オーガー押出機を有する押出機を提供する。一実施形態では、押出機は、SOURCE TECHNOLOGYによって提供されるPOWERHEATER PH 100であってもよい。本開示で利用することができるこの機械で使用される技術は、米国特許第10,893,688号、同第10,624,382号、同第10,149,484号、同第10,092,013号、同第10,028,516号、同第9,931,603号、米国特許出願公開第2010/0062093号、同第2011/0091627号、同第2019/0299179号、同第2020/0113222号、同第2020/012095号、及び同第2020/02680205号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。POWERHEATER PH 100は、本開示において、オーガーを加熱し、より均一に加熱されたタンパク質脂肪ヒドロゾルを提供するために、蒸気をオーガーに導入できる中空オーガー設計により、オーガーと押出パイプまたはチャンバーの内壁の温度をより適切に制御することができ、これは、本開示を適切に設定するために非常に重要である。CLEXTRALまたはWENGERによって開発されたものなどの従来の押出機は、本開示に従って試験されたが、満足のいく最終製品を提供しなかった。従来の押出機は、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルが押出機パイプの内壁に付着する原因となった。
【0182】
POWERHEATER PH 100は、繊維化された投入材料とともに使用されることが知られているが、一般的にはタンパク質ではなくデンプンを投入材料に設定するために使用されることが知られている。タンパク質硬化物の押出成形は、一般に100℃をはるかに超える温度で実行されるため、タンパク質硬化の投入材料はPOWERHEATER PH 100とともに使用されるとは考えられない。しかし、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルは、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルを繊維化する際に、75℃でPOWERHEATER PH100によって効果的にテクスチャ化され、繊維化され、これは約75℃~85℃の間の比較的低い温度で達成され、オーガー及び押出機は75℃~85℃の間に予熱され、押出成形は約70℃~95℃の範囲で起こる。一実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル押出機では、75℃でPOWERHEATER PH 100を使用して、3mmスクリューサイズではなく、8mmスクリューサイズを使用する。タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、吸引ポンプまたはスタッフィングポンプを使用してPOWERHEATER PH 100に投入することができ、開始温度は約85℃ 804であり得る。タンパク質-脂肪ヒドロゾルを押出機804にポンプ移送した後、約75℃~85℃で押出を進めることができ、タンパク質-脂肪ヒドロゾルは押出パイプ806の内壁に付着しない。このプロセスにより、テクスチャ化構造化タンパク質食品120が製造される。本開示に従って押出成形されたテクスチャ化構造化タンパク質食品120は、試験において、調理された鶏胸肉と類似のテクスチャ、繊維、及び色を有することが実証されており、従来技術及び当業者の知識を考慮すると、優れた予想外の特性を有する。
【0183】
図19は、上述のようにPOWERHEATER PH 100上で押出された、本開示による、テクスチャ及び繊維の類似性を示す、脱殻粉末からの押出NEPI及び茹で鶏胸肉片の写真を示す。茹で鶏胸肉1910は、本開示に従って噴霧乾燥脱穀麻粒NEPIから製造され、加工された押出成形NEPI 250鶏肉製品1920の隣に示されている。麻粒、NEPI 250、ココナッツ油、及び水の3つの材料のみを、それぞれ2:1:3の比率で使用することは、予想外である。
【0184】
大豆ベースの肉類似物の押出成形を含むほとんどの押出成形では、タンパク質と脂肪の比率が、典型的には10:1より大きいことがわかっている。そのため、押出成形され、変性され、繊維化された大豆は、脂肪をほとんど保持することができない。しかし、エデスチンなどの天然の球状タンパク質の水和ゲルは、本開示によれば、輻射、マイクロ波、または直接加熱もしくは押出成形を含む他の形式の加熱の適用によって生成されるゲルの硬化物または固体形態の形成後であっても、その重量の2倍までの脂肪を保持することができる。
【0185】
本開示のプロセスによれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、系内のタンパク質の濃度に応じて、約70℃~100℃の温度で固体状態に硬化することができる。低い硬化温度は、NEPI 250の天然タンパク質の変性と一致する。
【0186】
本開示によれば、押出成形中に形成される固体構造は冷却することができ、硬化物を代表するものであるが、未調理のタンパク質または「生の」肉と同様に不完全な変性を伴う。「未調理」タンパク質をさらに加熱すると、タンパク質がさらに変性することで形状、弾力性、テクスチャなどが強化され、最終的にはある程度の水分も放出される。本開示のプロセスによれば、押出機内の硬化物からかなりの量の水が放出される程度に製品を加熱することは望ましくない。むしろ、ゲル及びタンパク質の形状またはテクスチャを単に固化させることが望ましい。一実施形態では、本開示は、生の肉もしくは乳製品類似物、または生の動物肉に類似した構造化タンパク質食品120を押出機内で調製するためのプロセスを記載する。この生の肉類似物を伝統的または商業的な手段でさらに調理すると、肉が強化され、硬質になる。
【0187】
本開示によるプロセスは、完全に変性したタンパク質を使用し、次に脂肪、デンプン、及び他のタンパク質を含む他の結合剤と共ブレンドしてハンバーガータイプ素材の外観を形成することによって肉類似テクスチャを作出する既存の技術とは対照的である。既存の技術によれば、このタイプの硬化物は、主にデンプンまたはグルテンなどの添加された生タンパク質のゲル化を通じて調理中に達成される。
【0188】
構造化タンパク質食品120の最終テクスチャは、タンパク質、脂肪、及び水の比率を含む液体マトリックスの特性、ならびに押出成形条件に依存し得る。本明細書に記載されるように、単離植物タンパク質の押出混合物は、構造化タンパク質食品120と呼ばれることがあり、これは、肉類似物であってもよく、肉類似物の繊維性及び引張強度は、温度、圧力、スループット、及びダイサイズなどの押出パラメータの共変動によって制御することができる。例えば、より低い押出温度、中程度/低スループット、及びより小さなダイの組み合わせは、引張強度が低い、繊維性の高い組織の製造に有利であるが、より高い押出温度、より高いスループット、及びより大きなダイの組み合わせは、引張強度が非常に高い、繊維性の低い組織レプリカの製造に有利である。
【0189】
肉類似物の繊維性及び引張強度も、押出混合物の組成を変更することによって調整することができる。例えば、単離植物タンパク質の脂肪及び水に対する比率を増加させることによって、または押出混合物中の含水量を低減させることによって、より細い繊維及びより大きな引張強度を備えた肉類似体を作製することができる。
【0190】
液体マトリックスの押出は、液体マトリックスを押出機に供給することを伴う。いくつかの実施形態では、押出機は、SOURCE TECHNOLOGY POWERHEATER PH 100であってもよい。CLEXTRAL及びWENGER二軸押出機を試験したが、満足のいく結果が得られなかった。本開示のプロセスによれば、押出成形においては、21℃未満の温度を達成するために冷却が重要であり、これにより、飽和脂肪が構造内で容易に硬化され、製品を冷蔵温度または冷凍温度までより効率的に冷却できるようになる。
【0191】
製品ごとに、湿潤成分ブレンドをフィーダーに移送し、押出機のフィードポートを通じて、液体マトリックスをある一定の投入速度で計量する。従来の押出成形では、乾燥タンパク質製品が機械の投入口に供給される。乾燥製品が機械内を移動すると、水と脂肪が別々の投入口から導入される。対照的に、本開示によるプロセス中、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成中に起こる化学反応を厳密に制御するために、本明細書で上述したように、水和タンパク質と油を最初に混合する。したがって、いくつかの実施形態では、押出中に追加の水、デンプン、または脂肪を押出機に加えても加えなくてもよい。いくつかの実施形態では、繊維もまた加えてもよい。
【0192】
植物ベースの肉類似体の従来の押出成形では、押出成形を開始する前に水及び脂肪を加えると、温度が上昇するにつれて製品から水が逃げるため、望ましくない蒸気の放出が生じる場合がある。したがって、本開示では、水及び脂肪を加えるプロセスを、押出中に厳密に制御する。本開示によるプロセスでは、液体マトリックス押出混合物は、ゲルの形成によって製品から水が放出されるのを防ぐように特別に設計されている。本開示による液体マトリックスの調製中に、水和タンパク質に油を加えると、押出成形中に、これにより機械から蒸気が放出されるであろうが、製品から水が放出されるのを防ぐエマルジョンゲルが形成される。ゲルの形成により、押出成形中及び最終製品中の液体マトリックス中の高水分の維持も可能になり、これは構造化タンパク質食品120の優れたテクスチャにとって望ましい。
【0193】
押出成形時の温度は、得られる製品にとって重要である。温度は、約70℃~100℃の間、または100℃~110℃の間に徐々に上昇させ、維持されるべきである。従来の押出成形では、押出機内の温度は、一般に130℃を超える。本開示のプロセスでは、低温によりタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の破壊が防止され、それによって化合物の分子構造が実質的にまたは部分的に無傷のまま残ることが可能になる。タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の温度は、好ましくはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を硬化させるために約75℃~85℃に維持し、その後、冷却して押出プロセス中に温度を21℃未満に低下させることができる。本開示のプロセスでは、従来の押出成形中に使用される温度よりも低い温度を維持することが重要である。ここで、脂肪がタンパク質のすべてのペプチド層の間に完全に取り込まれるように、温度をジスルフィド結合の設定が可能になる温度までのみ上昇させる。押出機または加熱環境内の滞留時間は、液体マトリックスの投入温度が70℃~110℃の間、好ましくは75℃~85℃の間に達することができるのに十分な時間でなければならない。
【0194】
好ましくは、押出機は、押出成形中に、毎分回転数(rpm)で測定される比較的低いスクリュー速度でタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を回転させて、ゲル構造を維持し、製品中の高度の水分を維持する肉類似品を形成する。スクリュー速度を注意深く監視して、温度上昇を防ぎ、液体マトリックスの化学構造の破壊を防ぐことができる。
【0195】
水和タンパク質及び脂肪の封入よって形成される、ゆるいタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の構造の破壊を防ぐために、ゲルを熱システム内でゆっくりと移動させて、形状の形成及び若干の繊維化があるが、初期のゲル硬化(部分的なタンパク質変性)を維持することが不可欠であり得る。発酵(チーズ製造で起こるような)、または完全な調理及び変性は、最終的にはその後の製品の使用中に起こる。いくつかの実施形態では、35重量%~75重量%の間の含水量を有する完成した押出製品は、その後、所望であれば、通常のまたは商業的な調理プロセスにより高温で完全に調理して、消費する前に所望の完成されたテクスチャが得られるまでの時間、微生物学的安定性のために発酵、冷蔵または冷凍することができる。追加の関連する押出成形パラメータには、ダイの直径、ダイの長さ、ダイの端での製品温度、及び供給速度を含めてもよい。
【0196】
押出成形後の最終製品は、肉及び乳製品類似物などの従来のまたは既知の構造化タンパク質食品よりも動物の肉により類似の構造を有する場合がある。理論に拘束されるものではないが、本開示によるタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の押出成形によっては、タンパク質は、実質的に整列したタンパク質繊維を形成することができ、タンパク質繊維は、分子間力、例としてジスルフィド結合、水素結合、静電結合、疎水性相互作用、ペプチド鎖の絡み合い、タンパク質の側鎖間に共有結合架橋を形成するメイラード反応化学、によって一緒に保持されたタンパク質から構成される離散的な長さの連続フィラメントとして定義することができる。最初の押出(initial extruder)後の硬化物の強度は完全ではないか、または可能な限りの十分な強度ではない。実際、完成した熱硬化製品を取り出し、直接または間接熱、一般的な調理法、数例を挙げると、茹でる、焼く、揚げる、ローストする、電子レンジ処理する、発酵する、及び圧搾する(塩漬け及び酸の添加を含むチーズの製造におけるように)などによるさらなる加熱にかけて、初期硬化製品の強度及び形状を完成させることが望ましい場合がある。
【0197】
本開示のプロセスによるタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の調製及び押出条件によって、いくつかの実施形態では、実質的に整列したタンパク質繊維がタンパク質内に最大約50重量%の脂肪を保持することが可能になる場合がある。したがって、最終製品は油っぽくなく、既存の肉類似物よりも動物肉に近い口当たり及び咀嚼中の脂肪放出を有する。口当たりとは、満足のいく感覚体験を提供する、しっとり感、噛みごたえ、咬合力、分解、及び脂肪質などの特性の組み合わせを指す場合がある。
【0198】
構造化タンパク質食品120の予想される最終構造は、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の組成に基づいて変化し得る。本開示の一実施形態では、構造化タンパク質食品120の予想される最終組成を、タンパク質の重量、炭水化物(存在する場合)の重量、脂質の重量、及び水の重量により、及び他の潜在的な成分とともに、表4に示す。される構造化タンパク質食品120の物理的特性を示す。表5は、表4に示される構造化タンパク質食品120の物理的特性を示す。押出成形が完了した後、製品を冷却、成形または切断することができる。押出製品に対して後処理ステップを実行することができる。
【0199】
肉類似物は、本明細書では構造化タンパク質食品120とも呼ばれ、押出成形以外の方法によってタンパク質-脂肪ヒドロゾル114から製造することができる。タンパク質-脂肪ヒドロゾル114から肉類似物を製造する追加の方法には、機械エネルギー(例えば、剪断、圧力、摩擦)、放射線エネルギー(例えば、マイクロ波、電磁)、熱エネルギー(例えば、加熱、蒸気テクスチャ化)の適用が含まれる。
【0200】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0201】
実施例1
天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)の調製
麻粒は、Hemp Oil Canada、Manitoba Canada及びRiver Valley Specialty Farms、Manitoba Canadaから入手した。脱殻麻粒はRiver Valley Specialty Farms社から入手し、全粒麻粒はHemp Oil Canada社から入手した。
【0202】
HHGは、5.5重量%の水分、46重量%の乾燥基準ケルダールタンパク質、35重量%の乾燥基準脂肪、及び重量で1.3対1のタンパク質対脂肪比を含有していた。WHGは、8.8重量%の水分、22重量%の乾燥基準ケルダールタンパク質、30重量%の乾燥基準脂肪、及び重量で0.7対1のタンパク質対脂肪比を含有していた。
【0203】
1000ポンドのHHGを、800ガロンの撹拌タンク内で34°Fにて5000ポンドの水と混合した。HHGを、34F~38Fの間の温度を維持しながら湿式粉砕した。ヘンプスラリーをシルバーソンローターステータータンク内で、毎分56ガロンの速度で30分間粉砕して、HHGを湿式粉砕した。希釈したスラリーを平均時間30分間保持した。Sweco60インチスクリーンのサイズ120メッシュを使用して抽出物を不溶性副生成物から分離し、固体の大部分を除去した。次いで、120メッシュスクリーンの通過物を、別のSweco振動ふるい機上の200メッシュスクリーン上に通過させてスラリーを得、次いで、これを500ガロンのジャケット付きタンクに移して、スラリーの温度を34F~38Fの間に維持した。次いで、スラリーを、13gpmの速度でDeLaval遠心分離デカンターに供給して、AOAEエマルジョンからエデスチン固体の分離物を得た。次いで、AOAEエマルションを、管状熱交換器システムに通して最高温度185で10分間低温殺菌した。次いで、AOAEを、処理のために900ガロンのタンクに保持した。固形分40%のエデスチン固形分を、冷水で固形分30%に希釈し、150F未満に設定した予熱した管状システムに通してポンプ移送し、これは146Fでそのシステムから出て、ジャケット内で145Fの温度を有するジャケット付き保持タンク中に入った。30分後、材料を熱交換器に通して35Fまで冷却し、さらなる処理及び噴霧乾燥機による乾燥のために冷蔵庫内のトートに入れた。
【0204】
1000ポンドのHHGを、800ガロンの撹拌タンク内で34°Fにて5000ポンドの水と混合した。HHGを、34F~38Fの間の温度を維持しながら湿式粉砕した。ヘンプスラリーをシルバーソンローターステータータンク内で、毎分48ガロンの速度で30分間粉砕して、WHGを湿式粉砕した。希釈したスラリーを平均時間30分間保持した。二段式Sweco60インチスクリーン上のサイズ60メッシュを使用して抽出物を不溶性副生成物から分離し、殻を除去した。swecoの第2段に200メッシュのスクリーンを取り付け、シルバーソンからのスラリーが最初に60メッシュを通過して殻が除去され、直ちに200メッシュのスクリーンの上部に落ちて、これにより葉緑体及び微細繊維が除去された。swecoを通過する速度は約6gpmであり、ふるい分けされたスラリーを、500ガロンのジャケット付きタンク(jacketed 500 gallon jacketed tank)に直接送り、スラリーの温度を34F~38Fの間に維持した。タンクが満杯になると、殻、繊維、または葉緑体を含まないスラリーを、13gpmの速度でDeLaval遠心分離デカンターに供給して、AOAEエマルジョンからエデスチン固体の分離物を得た。次いで、AOAEエマルションを、管状熱交換器システムに通して最高温度185で10分間低温殺菌した。次いで、AOAEを、処理のために900ガロンのタンクに保持した。デカンターから出た固形分40%の薄茶色のエデスチン固形物を、冷水で固形分30%に希釈し、150F未満に設定した予熱した管状システムに通してポンプ移送し、これは146Fでそのシステムから出て、ジャケット内で145Fの温度を有するジャケット付き保持タンク中に入った。30分後、材料を熱交換器に通して35Fまで冷却し、さらなる処理及び噴霧乾燥機による乾燥のために冷蔵庫内のトートに入れた。出発材料のWGH重量に基づくNEPIの乾燥物質基準収率は、理論値の15%または79%であった。AOAE収率はDSB上で25.3%であり、殻、繊維及び葉緑体(Chlorplast)画分はDSB上で46.9%であった。全体の回収率は92%であった。HHGからのNEPI収率は理論値の30%または86%であった。AOAE収率はDSBで40.9%であり、殻、繊維及び葉緑体(Chlorplast)画分はDSB上で22.5%であった。全体の回収率は98%であった。WGH及びHHGから得られたNEPI製品の分析を、以下の表2に示す。
【表1】
【0205】
本開示のプロセスによって調製されたNEPI濃縮物は、プロセス温度を38F未満に維持しながらも、低温殺菌及び粉末への噴霧乾燥の前に依然として高い微生物活性を示す。(表1を参照のこと)。入ってくる原材料は、麻粒または脱殻ヘンプのいずれであっても、総プレート計数(TPC)が通常2,000TPC~250,000TPCの範囲にある。タンパク質が豊富な水性媒体では、温度を42F未満、好ましくは38F未満に維持することが重要である。温度が低いにもかかわらず、水性粉砕の開始後すぐに低温殺菌しないと、TPCは増加し続け、タンパク質の損傷につながる。プロセスの持続時間が短く、遠心分離デカンターによる分離直後にAOAEとエデスチンスラリーの両方を低温殺菌できることは、プロセスにおいて不可欠な要素である。得られたエデスチン製品は145Fの低温で殺菌されており、前述したようにゲル化機能が保たれている。AOAEは、145F、より好ましくは195Fを超えるはるかに高い温度で短時間加熱することができ、これは、遠心分離により残留不溶性固形物を除去し、その後、エマルジョン破壊により水性アルブミン相と油相を分離するさらなる処理に有利である。最終粉末形態のNEPI製品の低温殺菌の成功は、表1の製品のTPCに反映されている。
【表2】
【0206】
表3には、DSCサーモグラフを示す。DSCサーモグラフで測定したNEPIの構造(
図12A~12B及び
図13A~Bに部分的に示す)は、以下の市販製品と比較することができる。
【表3】
【0207】
SDS-PAGEゲル電気泳動によって測定した、NEPI及び市販のヘンプタンパク質製品のさらなる構造及び組成分析を
図9及び
図10に示す。
【0208】
実施例2
噴霧乾燥NEPI
実施例1から得られたNEPI冷却スラリーを、乾燥のために市販の噴霧乾燥機に送った。毎時1200lbの水分除去能力を有するノズル付きAlfa Laval型噴霧乾燥機を使用して粉末を乾燥させた。冷蔵製品をジャケット付き250ガロンタンクにポンプ移送し、ジャケットを155Fに保つように水温を設定した。タンクには低速撹拌機が付いており、約200ガロンの30%濃縮エデスチンスラリーを加熱するのに数時間かかった。製品は、温度に達すると、乾燥機に供給される別のタンクに送られた。NEPIは、乾燥機の壁に付着せずに、非常に容易に乾燥することに注意すべきである乾燥製品の最終出口温度は、85Fであった。実施例1から得られた各NEPI(WG及びHHG)製品について、乾燥製品の組成を以下の表2に示す。
【0209】
実施例3
NEPI及び市販のヘンプパウダーからのタンパク質-脂肪ヒドロゾルの製造
タンパク質ヒドロゾルは、5ガロンのプラスチックバケツ内で、140Fに予熱した14lbの水を加えることによって容易に作製される。1/4馬力の手持ち式工業用均質化棒を使用して撹拌しながら、14lbのNEPI乾燥粉末を水にゆっくりと加える。全ての粉末を加えるまで均質化を維持する。現在の温度は130Fで、約15分間保持した後、7ポンドのキャノーラ油を一度に加え、混合物を均質化棒で約1分間、またはスラリーがよくブレンドしたように見えるまで手短に混合し、油を均一なエマルジョンとして組み込む。
【0210】
実施例4
さまざまなタイプの肉及び乳製品類似物のタンパク質-脂肪ヒドロゾル配合物及び特性
実施例4は、種々のタイプの肉類似物を製造するために使用される液体マトリックスを含む配合物を開示する。本開示によれば、タンパク質、脂肪及び水の比率に応じて、魚介類、白身肉、血合肉、卵及びチーズを再現する植物ベースの肉類似物標的を含む、異なるタイプの肉類似物品を得ることができる。
【表4】
【0211】
表4に関して、含水量の標的は35重量%~75重量%の間である。最小70重量%の球状天然植物タンパク質は、15重量%未満、好ましくは5重量%未満のアルブミン含有量を有する。液体マトリックスの温度は、混合ブレンドから加工まで140°Fに維持する必要がある。表4では、天然エデスチンであり得る天然種子油タンパク質の能力により、異なるタイプの肉類似品を得るために脂肪の量を変えることができる。
【0212】
得られた製品の構造的特徴は、複製した材料の構造的特徴と類似している。例えば、魚介類のテクスチャは白色で、生のエビまたはホタテに類似した非常に弾力のある構造を有していた。白身肉は白色であり、部分的に調理済みの鶏フィレ肉から予想されるものに類似のテクスチャを有していた。血合肉はやや薄茶色であり、やはり鶏モモ肉に類似のテクスチャを有しており、白身肉と比較して脂身が多く、水分が多かった。卵はスクランブルエッグに予想されるものに類似しており、色も白かった。チーズはチーズカードに類似しており、実際にフレッシュチーズカードに類似した部分をかじるときしむ音がした。
【表5】
【0213】
実施例5
レトルトによる構造化タンパク質食品の製造
レトルト条件は、77Fの温度から270Fのピークまで15分を超え、15分で95Fまで低下した。圧力は1分で0.20バールであり、4分で3.0バールに増加し、15分で0.8バールに低下した。使用した機械はSundry RETORTタイプ:AP-95、シリアル番号:705であった。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0214】
実施例6
押出成形による構造化タンパク質食品の製造
実施例3からのこのヒドロゲルを、毎分6lbの流速及び185Fで3MMスクリューオーガー直径に設定されたPower 100 Source Technology押出機で使用して、白身鶏肉の外観及びテクスチャを有する構造ゲルを作成した。白身鶏肉及び押出成形によるヒドロゲル構造化タンパク質食品の比較写真の
図Xを参照のこと。
【0215】
本開示は、予想外にも、麻粒、油、及び水の3つのみの成分を使用して、驚くほど優れたヘンプベースの構造化タンパク質製品を製造できることを実証する。本開示に従って製造されたヘンプ肉類似物は、色、テクスチャ及び味の点で、驚くべき程度に鶏肉を再現することが本明細書で示される。市販のタンパク質製品には、優れた肉類似物を製造すると主張するものもあるが、この目的に使用した場合、味、色、またはテクスチャの点で天然のエデスチンタンパク質単離物にたとえられなかった。
【0216】
肉類似物を製造するためにヘンプタンパク質のみを使用した市販製品は発見されなかった。さらに、先行技術は、ヘンプタンパク質単独では、肉及び乳製品類似物などの構造化タンパク質食品を製造するための有望なタンパク質ではないことを教示している。本開示は、そうではないことを実証する。
【0217】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月14日出願の米国仮特許出願第63/124,973号出願の利益を主張し、この仮特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、タンパク質の単離、ならびに植物ベースの肉及び乳製品類似物に関し、より具体的には、肉または乳製品のテクスチャ、外観、及び味を有する植物ベースの製品に関する。本開示はまた、肉及び乳製品類似品の製造に使用するための液体、ゲルまたは固体製品を調製するための組成物及び方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク源として麻粒のみを使用して製造されるヘンプベースの肉または乳製品類似物は、市販されていることが知られておらず、食品産業または食品科学の文献にも記載されていない。食品に使用する場合、ヘンプタンパク質は、特に肉及び乳製品類似物の製造に必要な特性に関して、大豆及びエンドウ豆のタンパク質よりも劣ると考えられている。本明細書では構造化タンパク質食品とも呼ばれる肉及び乳製品の類似物は、強力なゲルマトリックスを形成することができるタンパク質を必要とするが、ヘンプタンパク質にはその点で強力な能力があることは見出されていない。
【0004】
Wangによると、「ヘンプタンパク質の乳化特性及びゲル形成特性は、一般に大豆プロテインよりも劣っていることが見出されている。」(Wang et al., 2019)。Malomoは、ヘンプタンパク質の塩ミセル化単離がそのゲル形成能力を改善することができることを示したが、Shenは、この複雑で費用と時間がかかるタンパク質単離方法はタンパク質の構造に悪影響を及ぼし、ヘンプタンパク質における十分なゲル形成能力を得るには化学架橋剤が必要である場合があることを明らかにしている。(Shen et al., 2021;Malomo et al, 2014;Wang et al., 2019)。
【0005】
Wangが示したように、現在、肉類似物の製造にはヘンプタンパク質よりも大豆タンパク質が好まれている。「現在、主に大豆タンパク質は、その好ましいゲル化特性のため及びその結果としてインターレース化した繊維状のマトリックスが生成されるため、動物タンパク質を模倣するために使用されている」(Schreuders et al., 2019)。後者の大豆の繊維化は、典型的な温度である130℃(266°F)で発生する。例えば、IMPOSSIBLE FOODSは、IMPOSSIBLE BURGERに大豆タンパク質を使用している。しかし、主に大豆製品についての健康及び栄養関連の懸念のため、IMPOSSIBLE FOODSの最大の競合企業であるBEYOND MEATは、自社のBEYOND BURGERに黄エンドウ豆タンパク質を使用している。しかし、黄エンドウ豆は「大豆タンパク質よりもゲル化能力がはるかに低く」、「大豆タンパク質単離物(SPI)の熱誘導ゲルは、エンドウ豆タンパク質単離物(PPI)の熱誘導ゲルよりも強い」。(Schreuders et al., 2019)。
【0006】
大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質は、肉及び乳製品類似物製造用のタンパク質源として味、テクスチャ、植物化学物質に限界があることが知られているが、植物ベースの代替タンパク質が肉類似物に対する代替として成功したものは、まだ見出されていない。しかし、ヘンプタンパク質は、肉類似物における大豆タンパク質の潜在的な代替品として研究されている。最近、Zahariは、ヘンプタンパク質はその優れた栄養的及び機能的特性が認識されているものの、肉類似物製造にはまだ使用されていないと報告した。「これまでの研究により、特にヘンプシードタンパク質には高タンパク質品質及び機能性があることが示されている。しかし、ヘンプシードタンパク質を肉類似物製造の原料として使用した研究はない」(Zahari et al, 2020)。
【0007】
Zahariは続けて、ヘンプタンパク質濃縮物(HPC)を大豆タンパク質単離物(SPI)と組み合わせて使用して、従来の押出成形によって肉類似物を製造できるが、唯一のタンパク質源としては使用できないことを実証した。この研究は、「したがって、HPCは押出製品に含まれる有望な新規材料である可能性があり、この研究は、得られた肉類似物がSPI単独に匹敵するテクスチャを与え、大豆タンパク質を最大60%ほどヘンプタンパク質に置き換えることができることを示している」と結論付けている(Zahari et al, 2020)。配合物に高濃度のヘンプタンパク質を使用すると、肉類似品の硬度及び噛みごたえが許容できないほど低下することが研究で示された。したがって、Zahari、Wang及びShenは、肉類似物製造における唯一のタンパク源としてヘンプタンパク質を使用しないことを教示している。
【0008】
植物ベースの食品産業の需要の高まりに応えるために、新しいかつ改良された植物タンパク質源が必要であるにもかかわらず、ヘンプタンパク質は食品製造においてまだ大きな市場シェアを達成していない。ヘンプの栄養的及び環境的利点にもかかわらず、大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質が植物ベースの食品市場を支配し続けている。大豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質は、数十年にわたる研究及び広範な市販の恩恵を受け、肉類似品の製造及びその他の食品に使用されることにより、成分及び製品の品質が大幅に向上し、規模の費用便益がもたらされた。
【0009】
大豆及びエンドウ豆ベースの肉類似物の改良は、肉及び乳製品類似物製造のすべての段階における広範な研究開発を通じて行われてきた。肉類似物製造は、一般に4つのステップを伴う。第1のステップでは、選択した植物材料からのタンパク質単離を伴う。第2のステップは、単離されたタンパク質を水及び油と組み合わせて、熱ゲル化または押出成形用のマトリックスを形成することを伴う。第3のステップは、タンパク質を硬化させテクスチャ化するための原材料の熱ゲル化または押出成形を伴う。最終ステップでは、結合剤及び水結合剤、例としてカラギーナン、セルロース繊維、デンプン、グルテン、または小麦粉などを使用して肉類似品を形成し、これをその後調理してハンバーガー、フィレ、鶏肉片、及びプルドポークなどの製品を模倣する。
【0010】
肉類似物製造の第1のステップは、植物材料からのタンパク質単離を伴う。従来、タンパク質単離用の植物材料として大豆タンパク質及びエンドウタンパク質が使用されている。しかし、麻粒タンパク質は、優れた消化性及び望ましい必須アミノ酸組成を有し、肉類似物の可能なタンパク質源として考えられている(Tang, Ten, Wang, & Yang, 2006;Wang, Tang, Yang, & Gao, 2008;Russo and Reggiani, 2015a;Callaway, 2004;House et al., 2010;Docimo et al., 2014;Zahari et al., 2020)。最近の麻粒のプロテオミクス特性評価では、麻粒は開発が不十分な非マメ科植物であり、タンパク質が豊富な穀物であると結論付けられている(Aiello et al., 2016)。
【0011】
ヘンプタンパク質の栄養学的可能性は高いが、アミノ酸組成及び消化率によって測定される植物タンパク質の栄養価は、多くの要因の影響を受ける。アミノ酸組成は、遺伝子型の変動性、または土壌肥沃度及び穀物成分の比率を変える収穫後処理(例えば、脱殻り)などの農業条件によって影響を受ける場合がある。タンパク質の消化率は、タンパク質の構造、及び植物材料中の、またはアルカリもしくは高温処理中に形成される抗栄養化合物の存在によって影響を受ける場合がある(Sarwar,1997)。しかし、Aielloは、縮合型タンニン、フィチン酸、及びトリプシン阻害剤などの抗栄養因子が麻粒中に低濃度で存在することを見出した(Aiello et al., 2016)。
【0012】
ヘンプタンパク質の機能的特徴により、食品のタンパク源としての使用が妨げられてきた。ヘンプタンパク質濃縮物は、ヘンプシード油製造の結果として市販されている。ヘンプシードは、収益性の高い油を得るために粉砕及び圧搾された後、タンパク質が豊富なシードケーキとなる。シードケーキは緑色で、繊維が豊富であり、約40%のタンパク質濃縮物を表す。残念なことに、シードケーキには非常に青臭い、土臭い風味があり、ほとんどの食品では許容されない。このケーキを粉砕し、乾式ふるい分けを行うことにより、タンパク質含有量を約50%まで増加させることができる。このタンパク質が豊富な供給源の栄養価を認識した多くの研究者は、ヘンプタンパク質を単離し、ヘンプタンパク質の味及び機能的品質を改良するための出発材料としてこれを使用してきた。Tangは、シードケーキからのヘンプタンパク質単離物(HPI)が、植物ベースの食品の作製に使用するにはSPIよりも劣ることを見出した(Tang et al., 2006)。Tangは、HPIの場合、ヘンプグロブリンの水溶性が不十分であるため、大豆タンパク質単離物と比較した場合、乳化特性及び保水特性が不十分であると考えられていることを示した。(Tang et al., 2006;Hadnadev et al. 2020)。Tangによると、「このデータは、HPIは、乳児及び子供にとって貴重な栄養源として使用することができるが、SPIと比較すると機能的特性が不十分であることを示唆している。HPIの機能的特性が不十分であることは、硫黄含有アミノ酸からの遊離スルフヒドリル含有量が高いことによる、個々のタンパク質間のジスルフィド共有結合の形成、及び中性または酸性pHでのその後の凝集に主に起因している。」(Tang et al., 2006)。さらに、「示差走査熱量測定(DSC)分析により、HPIは、エデスチン成分に起因する変性温度(T(d))が約95.0℃の吸熱ピークを1つだけ有することが示された。」(Tang et al., 2006)。
【0013】
ヘンプタンパク質の機能的態様は明らかに劣っているにもかかわらず、その優れた栄養価により、食品製造におけるヘンプタンパク質の使用に対する継続的な関心が引き起こされている。この目的を達成するために、ヘンプから個々のタンパク質が単離され、潜在的な機能的特性についてさらに研究が行われてきた。さらに、研究者は、ヘンプタンパク質のさまざまな抽出及び単離方法によって機能性を向上させることができるかどうかを調査した。「食品におけるヘンプタンパク質の価値及び用途は、タンパク質の構造及び機能的特性に密接に関連している。」(Wang et al.,2019)。
【0014】
個々の麻粒タンパク質の栄養学的及び機能的特性を調査するために、研究者は麻粒に存在する2つの主要なタンパク質を抽出して分離する方法を採用した。麻粒タンパク質は、主にタンパク質エデスチン及びアルブミンで構成されている。グロブリンであるエデスチンは総タンパク質含有量の約60%~80%を占めるが(Odani & Odani 1998;Tang et al., 2006)、球状タンパク質であるがグロブリンではない、アルブミンがその差を占めている。エデスチン及びアルブミンは、異なるアミノ酸組成及び機能的特徴を有する。
【0015】
Malamoは、麻粒中のエデスチンとアルブミン間の栄養の違いを研究し、ヘンプタンパク質のエデスチン画分が、より多くの硫黄含有アミノ酸(メチオニン及びシステイン)、芳香族アミノ酸(AAA)、分岐鎖アミノ酸、及び疎水性アミノ酸を含み、栄養的に優れていると結論付けた(Malomo及びAluko 2015)。Malamoは、エデスチンをアルブミンから分離し、それぞれの栄養価及び機能性の特徴を測定した。これらの特性には、水への溶解性、アミノ酸含有量、及び消化率が含まれる
【0016】
Malomoは、アルブミン画分は水に可溶であるのに対し、エデスチン画分は塩溶液に可溶であると報告した。抽出されたエデスチンは、中性または酸性pHでは水への溶解性が極めて低く、高いイオン強度またはアルカリ性pHでのみ溶解する(Malomo & Aluko, 2015)。「界面活性特性などのタンパク質の機能の多くは、タンパク質の溶解性と相関関係がある。」(Jackman & Yada, 1989;Malomo & Aluko, 2015)。麻粒では、エデスチンの方が優れたエマルジョン形成能力を有するが、アルブミンの溶解性及び起泡能力はエデスチンの溶解性及び起泡能力よりも高いことが見出された(Malomo & Aluko, 2015)。
【0017】
研究によると、エデスチンは麻粒にのみ見られる場合があるが、エデスチン様タンパク質はパンプキン(pumpkin)及びカボチャ(squash)を含む科由来の穀粒に存在する場合があることが示されている(Vickery、1940)。したがって、本開示及びその用途は、エデスチン及びエデスチンと類似または同一の特性を有し得るエデスチン様タンパク質に関する場合がある。Vickeryは、エデスチンの潜在的な代替物がカボチャの種子を含むウリ科の植物において見出される可能性があることを開示した。Hirohataは、この科の8属の38品種及び種のグロブリンを調査し、近縁種由来のグロブリンのかなりの類似性に注目した (Vickery, 1940;hirotata, 1932)。Vickeryは、ウリ科のグロブリンには、麻粒エデスチンの栄養代替物の要件を満たすエデスチン様タンパク質が含まれている場合があると示唆した(Vickery 1940)。
【0018】
エデスチンは、Thomas Osborneによって初めて単離され、分析された(Osborne, 1892)。完全な天然型では、エデスチンは6つの同一のサブユニットで構成されており、それぞれのサブユニットは1つのジスルフィド結合で連結した酸性(AS)サブユニット及び塩基性(BS)サブユニットで構成されている(Farinon 2020;Patel, Cudney, & McPherson 1994)。最近、エデスチンは、単一品種のヘンプの中でも複数の形態で存在し得ることが示された(Docimo et al., 2014)。例えば、Cannabis Sativa(カンナビス・サティバ)の 1つの品種では、7つの遺伝子がエデスチングロブリンをコードしており、それらは2つのエデスチン型の分岐形態をもたらす。ヘンプのある特定の株内では、ある型のエデスチンは実質的に互いに同一であるが、第2の型のエデスチンは第1の型とは実質的に異なっている。Ponzoniは、3型エデスチン遺伝子であるCsEde3を同定し、これは、ゲノム形態のCsEde1及びCsEde2と比較した場合、それぞれ約65%及び58%の配列相同性を示している(Ponzoni、Brambilla、及びGalasso、2018)。アミノ酸組成は2つの型のエデスチン間で著しく異なる場合があり、ある型の方が栄養価が高くなる(Docimo et al., 2014)。
【0019】
エデスチン自体は309,000という大きな粒子量を有するが、変性すると、解重合して濃尿素溶液中では51,000になり[Burk & Greenberg、1930]、希塩酸中では17,000になる[Adair & Adair、1934]。これらの単位はそれぞれ、天然分子の約1/6及び1/18のサイズである。天然状態では、それらは特定のポリペプチドパターンを有し、部分的にはおそらく何らかの形態の化学結合(例えばS-S結合)によって統合されるが、主に隣接するCO基とNH基の間の横方向の引力、及び側鎖の遊離酸基と塩基性基の間の相互作用によって統合される。以下の分析データからわかるように、これらの後者の群の数は多くなる:グルタミン酸、19~2%;アスパラギン酸、10~2%[Jones&Moeller、1928];アルギニン、17~76%[Vickery、1940];リジン、2~4%、ヒスチジン、2~03%[Tristram、1939];アミド-N、1~73%[Bailey、1937、2]。アミド化されたCOOH基を考慮すると、これらは309,000個の分子あたり合計670個の荷電基に相当する。このような電荷の空間配置によって、分子の安定性が最終的に依存する特定の電荷の対称性が生じ、これは、pHの明確な制限内で、双極子モーメントの変化に反映されるように、ある程度の変動が可能である。これらの制限を超えると、酸または塩基性基のイオン化がさらに抑制され、これにより分子内で引力及び反発が生じ、特に小さな可動イオンが存在しない場合、固有のポリペプチドの立体配置が歪み、最終的には破壊される。(Bailey、1940)。
【0020】
したがって、本開示で言及されるエデスチンには、本開示の目的で開示されるエデスチンと同様または同一の特性を有する、現在知られているかまたは現在知られていないエデスチンのすべての形態を組み込んでもよい。
【0021】
エデスチンは、弱酸性条件下では急速に分解されてエデスタンになる。エデスチンに由来する中間生成物であるエデスタンは、エデスチンの変性中に発生し、Osborneによって最初に同定された(Osborne,1901;1902)。エデスタンは、エデスチンが希酸と接触すると形成される。エデスタンによりSH基が遊離する(Bailey、1942)。Baileyは、酸性条件下ではエデスチンを、20分未満で急速にエデスタンに変換することができることを実証した(Bailey、1942)。この研究は、SH基の遊離がエデスチンのエデスタンへの変換と同時に起こることを示した。Baileyはまた、エデスチンと比較してエデスタンの窒素含有量が減少していると報告しているが、これはエデスチン中のトリプトファンの減少によって説明することができる。非変性の天然状態のエデスチンは、変性もしくは部分変性エデスチンまたはエデスタンとは異なる機能的特性を有する。
【0022】
ヘンプタンパク質を単離する、またはアルブミンからエデスチンを分離する従来の技術は、タンパク質における構造変化を引き起こす場合があり、その一部は不可逆的なものであり得る。さまざまなタンパク質抽出技術及び条件ならびに単離技術及び条件(pH、一価及び多価塩の有無、タンパク質抽出に使用される媒体のイオン強度、時間、温度など)は、タンパク質の機能的特性に影響を与える可能性がある(Hadnadev et al., 2018)。これらの変化はタンパク質の機能に悪影響を及ぼす可能性がある(Hadnadev et al., 2018;Shen et al., 2021)。これらの悪影響には、消化性、タンパク質-油の相互作用、味、溶解性、ならびに乳化及びゲル形成能力の変化が含まれる場合がある(Shen et al., 2021)。したがって、特に食品使用でエデスチンを抽出及び単離する場合、タンパク質の天然構造を可能な限り維持することが非常に重要である。
【0023】
ヘンプタンパク質とエデスチンを分離するために、多数の技術が利用されてきた。これらの技術には、高温、アルカリ性または酸性条件の水性または溶媒スラリーでの使用、等電点沈殿、等電点電気泳動、ミセル化、限外濾過、及び機械的プロセス、例として穀粒もしくは脱殻粒の圧搾、粉砕もしくはふるい分け、または穀粒の粉砕及び穀粒スラリーのふるい分け、が含まれる。これらの技術のいずれも、タンパク質の構造を変化させ、その機能を低下させる可能性がある。
【0024】
機械的プロセスによって生じる高温は、タンパク質の機能に悪影響を与える可能性がある。例えば、細粉を製造するために穀粒を粉砕すると、タンパク質の構造が変化する程度の高温が発生する場合がある。これらの温度は、エデスチンの変性、及びエデスチン、アルブミンもしくは繊維間の結合または凝集を潜在的に引き起こし、それによってそれらの独立した単離を妨げる場合がある。
【0025】
穀粒の乾式粉砕では少なくとも80℃~100℃の温度が発生し、潜在的にエデスチンが変性する場合がある。Mohammadは、粉砕中に発生する熱及び機械的な力が球状タンパク質を変性させる可能性があることを見出した(Mohommad,2015)。Mohommadは、粉砕中に加えられる機械的ストレスによって球状タンパク質のバルク特性が変化する可能性があることを示した。
【0026】
したがって、細粉を製造するための乾式粉砕によって引き起こされる高温によって、ヘンプタンパク質の構造が変化する可能性がある。Farinonは、麻粒タンパク質(エデスチン)の変性温度を92℃であると計算した(Farinon et al., 2020)。さらに、Malamoは、pHの変化と同様に、熱処理によって、麻粒アルブミン及びエデスチンの二次構造が変化する可能性があることを示した(Malomo及びAluko、2015)。高温によって、タンパク質の解きほぐし(unfold)が起こり、それによって疎水性基が露出し、タンパク質-水の相互作用よりもタンパク質-タンパク質の相互作用が促進される場合がある。
【0027】
タンパク質抽出の化学的手段を使用することにより、抽出中の加熱を回避または最小限に抑えることができるが、多くの化学的抽出方法では、最初に粒径を機械的に縮小させる必要がある。溶媒抽出は、植物材料からタンパク質を分離する一般的な方法であり、タンパク質含有材料が加えられる液体溶媒の使用を伴う。溶媒は、水、アルコール、アセトン、ヘキサン、または他の液体溶媒であってもよい。溶媒抽出は、最初に植物材料を破壊してタンパク質を放出させる機械的または他の抽出手段と組み合わせることができる。溶媒抽出には、植物の細胞壁または繊維状材料を破壊し、それによってタンパク質が放出される溶媒の使用を伴う場合がある。
【0028】
タンパク質の抽出に使用される溶媒の中には、タンパク質を変性させるという欠点を有するものがある。さらに、これらの溶媒は有毒であり得、たとえ少量であっても摂取には好適ではない。さらに、溶媒は一般に長い抽出時間、労力を要する手順を必要とし、食品中に溶媒が残留し、安全に廃棄することが難しい場合がある。ヘキサンはこのタイプの溶媒の例である。多くの溶媒は、米国農務省(USDA)の有機食品のラベル表示に関するガイドラインに基づいて、認定された有機食品の製造に使用することができない。
【0029】
溶媒を必要としないタンパク質抽出の代替プロセスの1つは水抽出であり、この抽出では、粉砕または圧搾した植物材料を水に加え、その後、水性画分中のタンパク質の溶解性または植物材料中の脂肪が水から分離されるときの脂肪含有画分中のタンパク質の溶解性に基づいてタンパク質を分離することを伴う。水抽出の後に等電点沈殿または等電点電気泳動または塩抽出を行ってタンパク質を単離してもよい。
【0030】
アルカリ抽出は、高塩基性溶媒により細胞構造が破壊され、それによって細胞からタンパク質を放出させる一般的な技術である。しかし、このプロセスは、アミノ酸のラセミ化、リシノアラニンの形成、消化性の低下、及び必須アミノ酸の損失など、タンパク質への損傷をもたらす可能性がある(Moure et al., 2006)。Xuによれば、アルカリ性条件下では、麻粒を含む多くの植物材料中に見られるポリフェノールが酸化し、その後タンパク質と反応し、その結果、抽出されたタンパク質溶液の色が濃い緑色または茶色になる可能性がある(Xu及びDiosady、2002)。
【0031】
麻粒タンパク質の抽出中に使用される場合、アルカリ抽出のpHを、一般にマメ科植物タンパク質抽出の場合(pH8)よりも高い9または10に上げる、これは、天然麻粒タンパク質がしっかりと圧縮されており、他の成分、例えば、フェノール化合物と緊密に統合されている場合があるためである(Wang及びXiong、2019)。一般に、アルカリ抽出の後に等電点で標的ヘンプタンパク質を沈殿させ、数回の洗浄ステップの後、多くの場合、タンパク質単離物から誘発された色を除去することができない。
【0032】
一般に、水抽出またはアルカリ抽出の後に、等電点沈殿または塩抽出を行って、タンパク質を単離する。等電点沈殿は、アルカリ抽出または溶媒抽出後に可溶性タンパク質を抽出するために使用してもよく、標的タンパク質と溶媒の間の電荷平衡に達するまでpHを調整し、それによってタンパク質を溶液から沈殿させることを伴う。等電点沈殿には、pHの変化が必要であり、これによりタンパク質の構造が変化する場合があり、それによってタンパク質の機能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0033】
エデスチンの等電点沈殿に関して、Baileyは、エデスチンの等電点ゾーンがpH5.5であることを開示している(Bailey、1942)。このプロセスでは、等電点でのエデスチンの沈殿中にアルブミンを大部分除去することができる(Papalamprou et al., 2009)。この結果は、麻粒グロブリン(<10%)と比較して、pH5.0における麻粒アルブミンの高い溶解性(>75%)に起因し得る(Malomo & Aluko、2015)。他のタンパク質単離法を上回る等電点沈殿の利点の1つは、ミセル化抽出によって得られた同じ単離物と比較して、等電点沈殿によって得られたタンパク質単離物については水結合能力が高いことが見出されていることである(Krause et al., 2002)。しかし、エデスチン単離中の等電点沈殿の欠点は、塩抽出によって単離されたエデスチンと比較してタンパク質の溶解性が低いことであり、タンパク質がもはや天然の状態ではないことを示唆している(Hadnadev、2018)。
【0034】
アルカリ抽出及び等電点沈殿と比較すると、塩抽出はミセル化を伴う場合があって、より穏やかな抽出手順であり、ポリフェノールの酸化、重合、及びタンパク質との共抽出をもたらさない。塩抽出では、一群のタンパク質を「塩溶(salting in)」し、続いて標的タンパク質を「塩析(salting out)」する。「塩溶」とは、溶液のイオン強度が増加すると、タンパク質などの溶質の溶解性が増加する効果を指す。この効果は、イオン強度が低い場合に観察される傾向がある。「塩析」とは、塩濃度をさらに高めることで、塩イオンの存在量により、塩イオンの溶媒和力が低下し、したがって標的タンパク質の溶解性が低下し、沈殿が生じることを伴う。
【0035】
塩抽出の1つの方法には、Murrayの米国特許第6,005,076号に記載されているように、ミセル化ステップが含まれる。ミセル化を使用した塩抽出では、まずタンパク質を一定のイオン強度を有する塩溶液で可溶化する。次に、生理食塩水溶媒を濃縮タンパク質溶液で希釈してイオン強度を一定レベル未満に低下させ、それによって水相中に少なくとも部分的にタンパク質ミセルの形態で離散したタンパク質粒子を形成する。タンパク質ミセルはその後沈降して、標的タンパク質単離物の塊を形成する。次いで、タンパク質単離物を上清から分離することができる。
【0036】
Murrayによって開示されたような塩ベースのミセル化抽出には、等電点沈殿によって得られた単離物と比較して、溶解性がより高いタンパク質単離物を生成するという利点がある(Karaca et al., 2011;Krause et al., 2002;Paredes‐Lopez and Ordorica‐Falomir 1986。溶解性の向上に加えて、等電点沈殿と比較して、ミセル化技術によって得られたタンパク質単離物の界面活性が高かった。さらに、Krause及びPapalamprouによれば、ミセル化抽出により、等電点沈殿タンパク質と比較して、天然タンパク質構造がより保存されたタンパク質単離物がもたらされた(Krause et al., 2002;Papalamprou et al. 2009)。一般に、等電点沈殿によって、抽出されたタンパク質がある程度変性され、これによりタンパク質分子間に疎水性相互作用が生じ、不溶性タンパク質凝集体の形成につながる可能性がある。塩抽出及びミセル化は、ヘンプタンパク質を単離する既知の方法の中で最も損傷が少ない方法であり得るが、単離中に塩を加えるとタンパク質の構造及び機能が悪影響を受ける。「NaClの添加もゲル構造に異なる影響を及ぼす。具体的には、NaCl濃度の増加(最大300mM)によって、集中的なタンパク質間相互作用及び凝集が促進され、より大きな細孔径を有するHMI[ヘンプタンパク質ミセル化単離物]ゲル構造の形成がをもたらされる。」(Shen et al., 2021)。
【0037】
塩抽出は、麻粒からエデスチンを単離するために使用された最初の方法であった(Osborne, 1892)。この方法は、ミセル化技術を利用してエデスチンを抽出したMalomoによってさらに開発された(Malomo及びAluko、2015)。Malomoが実証しているように、塩ベースのミセル化抽出中、透析ステップで塩を除去した後、アルブミンは上清に残るが、グロブリンは沈殿し、遠心分離によって収集することができる。Malomoにおいて、麻粒粉の塩抽出及びそれに続く透析チューブ内での水に対する透析によってグロブリン単離物を生成した。
【0038】
麻粒粉の塩抽出物の透析により、アルブミンは溶液中に残る一方で、水不溶性グロブリンがミセル形態で沈殿した(Malomo及びAluko、2015)。次いで、沈殿物を収集し、凍結乾燥した。ヘンプタンパク質のアルブミン画分とグロブリン画分を比較すると、アルブミンはグロブリンよりもタンパク質の溶解性及び起泡能力が著しく高い一方で、2つのタンパク質画分間でエマルジョン形成能力には差は観察されなかった。塩抽出とミセル化では、人件費、時間、材料費、設備費、及び廃棄物処理費が高くなり、現在、食品に使用するためのタンパク質抽出には商業的に実行可能であるとは考えられていない。
【0039】
限外濾過は、他の従来のタンパク質抽出技術と比較して機能的特性が向上したタンパク質単離物を生成するために使用することができる別の方法である。例えば、アルカリ抽出と比較した場合、限外濾過によって得られたタンパク質単離物は一般により良好な乳化特性を有する。しかし、限外濾過の欠点の1つは、最終生成物中に形成される沈殿物による膜の詰まりであり、抽出費用が高くなる可能性がある。
【0040】
より新しいタンパク質抽出方法としては、超音波支援抽出、酵素支援タンパク質抽出、及び電気的タンパク質抽出方法が挙げられる。これらの方法には、高費用、低収量、タンパク質の分解、及びタンパク質の不純物などの欠点がある。したがって、塩抽出、アルカリ抽出、及び等電点沈殿などの従来の抽出方法が、麻粒などの植物材料からタンパク質を抽出する方法として依然として主流である。
【0041】
本明細書において上記の方法を使用してヘンプを抽出及び単離する公開された方法に関して、麻粒の水性タンパク質抽出及びその後の等電点沈殿の例が、Crankの米国特許第10,555,542号に開示されている。Crankは、ハンマーミル、ローラーミル、またはスクリュー型ミルを使用した粉砕を含む任意の好適な手段を使用して麻粒を粉砕することを最初に開示している。これらのプロセスによる粉砕は高エネルギープロセスであり、一般に約140°F~150°Fの高温になる。ピーナッツバター製造の技術分野で知られているように、固体からペーストを形成するには一定の高温が必要であるため、ペーストを得るにはこれらの高温が必要である。これらの温度は、製品の最終用途によっては、穀物材料のタンパク質成分間に望ましくない相互作用を引き起こす場合がある。Crankにおいて、粉砕によりペーストまたは細粉(油を除去するために最初に穀粒を圧搾する場合、細粉)が生成され、植物材料の各部分に対して約4~約16重量部の比率で水を粉砕材料に加えることができる。Crankは、タンパク質の抽出を容易にするために、水酸化カルシウムなどの塩基を加えることによってpHを約7.5に調整することを開示している。
【0042】
次いで、得られた溶液を遠心分離して、水性画分または減脂肪抽出物から脂肪画分を分離する減脂肪抽出物は、減脂肪植物乳として使用することも、さらに加工してタンパク質濃縮物またはタンパク質単離物を製造することもできる。Crankにおいて、減脂肪抽出物中のタンパク質を沈殿によって濃縮し、分離して、部分的に脱脂した植物材料からの植物タンパク質濃縮物、または単離物を製造した。Crankは、クエン酸などの酸をタンパク質の等電点まで加えることによって、減脂肪抽出物中のタンパク質を沈殿させることができることを開示している。Crankは、水抽出のみを使用してエデスチンとアルブミンを分離できることを開示していない。さらに、Crankは出願の中で、ヘンプシードがCrankプロセスに従って食品用に単離されたタンパク質源である可能性があること、及びヘンプシードにエデスチンが含まれていることについて言及しているが、Crankはエデスチンの精製及び単離については開示していない。Crankは、遠心分離後にヘンプタンパク質の繊維及びタンパク質含有部分を廃棄することを開示している。
【0043】
Beranのチェコスロバキア特許第33,545号は、麻粒からエデスチンを抽出してヒトの消費用のタンパク質を製造する方法を開示している。Beranはこの特許の背景技術セクションで、多くの場合、ヘンプタンパク質は噴霧乾燥ヘンプタンパク質単離物として製造され、これは多くの場合、高熱を利用し、タンパク質の変性を引き起こす場合があることを開示している。Beranによると、噴霧乾燥には150℃~250℃の温度;ヘンプタンパク質が変性する可能性のある温度が必要になる場合がある。Beranは、「タンパク質の熱変性は、溶解性及び分散性、起泡特性及び乳化特性に悪影響を与える」と開示している。
【0044】
噴霧乾燥によって引き起こされるエデスチンの調製中の熱変性を回避するために、Beranは、最初に麻粒を粉砕または圧搾して油を除去し、その後、水抽出及び等電点沈殿または塩抽出のいずれかを行ってエデスチンを精製することを含む方法を開示している。Beranにおいて使用される粒径縮小の好ましい方法は、乾式粉砕であると思われる。この特許によれば、次に、粉砕した粉末を、水対粉末の比が5:1の濃度で水に加える。次に、Beranは、溶液を振盪してアルブミン含有水画分及び沈殿物画分を製造することを開示している。
【0045】
Beranは、沈殿物にエデスチンが含まれていることを開示しているが、食品に使用するためにエデスチンを単離するためのさらなるステップを開示している。これらのステップには、等電点沈殿、塩抽出、または限外濾過によるタンパク質の抽出が含まれる。Beranは、エデスチンを単離するための追加のステップの前に、沈殿物中のエデスチンの純度のレベルを開示していないが、そのような追加のステップの必要性は、沈殿物中のエデスチンの純度が、エデスチンを使用して「高タンパク質食品及びスムージータンパク質飲料のタンパク質含有量を増加させる」という、Beranの特許の記載された目的には十分ではないことを示している。結論として、Beranは「その乳化特性及び最終製品の感覚受容特性に対する有益な効果により、この製品はこれらの食品に使用できる」と開示している。
【0046】
Crank及びBeranはいずれも、(油を除去するために)粉砕または圧搾した麻粒を使用し、その後粉砕してヘンプ細粉をタンパク質抽出の出発材料として使用することを一般的に開示している。その結果、ヘンプ細粉は、タンパク質の構造及び機能に影響を与える乾式粉砕または製粉、及び搾油プロセスを受けてきた。さらに、Crank及びBeranはいずれも、少なくとも等電点沈殿によるエデスチンの単離であって、これによりタンパク質に構造変化が生じ、その結果、その機能が低下するものを開示している。
【0047】
植物ベースの肉に使用するために穀粒からタンパク質を抽出するプロセス中では、油もまた穀粒から抽出する場合がある。植物ベースの油は食品及び化粧品としての価値を有するため、油の抽出が主な目的になる場合もある。穀粒、ナッツ、及び種子から油を抽出する一般的な方法としては、低温圧搾法及びエクスペラー圧搾などの圧搾ベースの抽出方法、ならびに溶媒抽出が挙げられる。
【0048】
穀粒を圧搾して油を抽出するには、植物材料を機械的に圧縮して固体から油を搾り出すことを伴う。溶媒抽出は、植物材料を液体に入れて油を抽出することを伴う。場合によっては、圧搾と溶媒抽出を組み合わせてもよい。押出機圧搾法からの油の回収は比較的非効率である場合があり、ケーキ中にかなり高いパーセンテージの脂肪が残る場合がある。したがって、油可溶化溶媒を使用して、圧搾ケーキをさらに抽出してもよい。圧搾法または圧搾及び溶媒法で製造した市販のケーキ及び粉末は、タンパク質の機能が低下していると考えられる。
【0049】
従来的に製造された麻粒油は緑色をしている場合があるが、これは抽出中の原形質体または葉緑体の破壊に起因する可能性がある。麻粒は、破壊されるとクロロフィルを放出するクロロフィル含有物質を含有している場合がある。他のタイプの穀粒と比較すると、麻粒にはこれらの物質がより多く含まれているため、従来の方法でヘンプ油を抽出すると緑色になる傾向がある。
【0050】
Leonardらによると、「未精製のヘンプシード油は濃緑色をしているが、これはクロロフィルが含まれているためである。」(Leonard, et al., 2019)。さらに、油中のクロロフィルの存在によって脂肪の酸化が起こり、異臭が起こる可能性がある。Soeの米国特許第9,493,749号は、「大豆油、ヤシ油、菜種(キャノーラ)油、綿実油、及びピーナッツ油などの油糧種子に由来する植物油には、通常、ある程度のクロロフィルが含まれている。しかし、植物油中に高レベルのクロロフィル色素が存在することは、一般に望ましくない。これは、クロロフィルが望ましくない緑色を与え、保存中に油の酸化を引き起こし、油の劣化につながる可能性があるためである。」ことを開示している。
【0051】
植物油からクロロフィルを除去するために、種々の方法が使用されてきた。これらの方法には、化学漂白及び超音波漂白が含まれる。クロロフィルは、穀物の粉砕、油の抽出、脱ガム、苛性処理、及び漂白などの油製造プロセスの多くの段階中で除去してもよい。しかし、漂白ステップは通常、クロロフィル残留物を許容レベルまで減らすために最も重要である。漂白中、典型的には、油を加熱して、吸着剤に通して、完成した油の外観及び/または安定性に影響を与えるクロロフィル及びその他の色を帯びた化合物を除去する。漂白ステップで使用される吸着剤は、典型的には粘土である。
【0052】
ヘンプ油からクロロフィルを除去するための従来の方法は費用がかかり、廃棄物処理に問題が生じる場合がある。さらに、葉緑体が破壊された後にヘンプ油からクロロフィルを除去する方法では、クロロフィルへの一時的な曝露により油が酸化する場合がある。したがって、麻粒から油を抽出するための改良された方法が必要とされている。
【0053】
肉及び乳製品類似物の製造では、タンパク質単離物及び好ましい油源を得た後、ステップ2で、単離されたタンパク質を水、場合によっては油と組み合わせて、硬化または押出用の材料を形成する。タンパク質が麻粒または他の植物製品から単離された後、最終肉類似品を形成するには、肉または乳製品類似物の他の成分と組み合わせる必要がある。肉類似物製造用の3つの基本成分は、タンパク質、水、及び脂肪である。これらの成分は、肉及び乳製品類似物を形成するために、さまざまな濃度で組み合わせ、さまざまな方法で処理することができる。
【0054】
肉類似物にはゲル化、または噛みごたえのある肉に似たテクスチャをもたらす構造化が必要であることを考慮すると、タンパク質は、典型的には、水及び場合によっては油と結合してゲルを形成し、それを熱によって硬化してテクスチャを作出することができる。これらの成分、またはタンパク質と水のみを使用したヘンプタンパク質単離ゲルの形成に関して、研究ではヘンプタンパク質が良好なゲル形成特性を有していないことが示されている。上で開示したように、Wang、Shen、及びZahariは、ヘンプは良好なゲル形成能力を有していないため、肉または乳製品類似物の一次タンパク質として使用する可能性が低い候補者となると教示している(Wang et al., 2019;Shen et al., 2021;Zahari et al., 2020)。例えば、Wangは、ヘンプタンパク質単離物と水の組み合わせだけでは、加熱しても望ましいゲルを形成しないことを示した。Wangはまた、Wangのタンパク質と水の混合物に油を加えて加熱した場合でも、ヘンプタンパク質、水、及び油の混合物は加熱時に望ましいゲルを形成しないことも示した。
【0055】
肉類似品の製造では、典型的には、タンパク質、水、及び油を熱硬化させる第3のステップに押出成形が含まれ、これにより、製品をテクスチャ化し、より肉に似た素材が形成される。テクスチャ化された肉を形成するために、押出機を使用してテクスチャ化植物性タンパク質(TVP)を形成する。TVPは典型的には、大豆ベースの製品であるが、エンドウ豆などの他の植物タンパク質を単独で使用することも、大豆と組み合わせて使用することもできる。TVPを生成するには、植物ベースの成分を押出機に供給してテクスチャ化する。従来、乾燥植物タンパク質を押出機に供給し、タンパク質が押出機を通って搬送される際に、水、デンプン、及び場合によっては脂肪を、別の投入部を介してタンパク質に加える。押出後、押出機の放出物はマリネ、コーティング、及び/または冷却のステップを経る場合がある。
【0056】
TVP及びHMMAを含む従来の植物ベースの肉代替製品に共通する問題は、肉と比較した場合の非分散性テクスチャ及びゴム状の口当たりに関する。従来の肉類似物のこのテクスチャ及び口当たりは、脂肪、油、またはそれらの組み合わせがタンパク質ペプチド鎖または「繊維」の分子構造に組み込まれていないことに部分的に起因する。動物由来の肉には、動物の肉製品の大部分を構成する筋肉繊維の間に脂肪分子が組み込まれている。この脂肪は咀嚼中に放出され、咀嚼が続くにつれて消費者に味及び口当たりに関して肯定的で継続的な感覚フィードバックを提供する。現在の従来の肉類似物を咀嚼する際に得られる感覚フィードバックは、肉の場合に得られる感覚フィードバックと同等ではなく、その理由の一部は、タンパク質のペプチド層の間に脂肪がないためである。従来の肉類似物では、脂肪は、タンパク質が完全に変性した後に加えられるため、かなりのサイズの調理済みタンパク質片を取り囲む場合があるが、タンパク質自体のペプチド層内には組み込まれない。
【0057】
TVP及びHMMAの繊維を生成するために一般的に使用される大豆及びエンドウ豆タンパク質は、それらの重量の約10%しか脂肪を保持しない場合がある。通常、肉の筋繊維は、肉の供給源に応じて、その重量の5~約50%程度を脂肪としてタンパク質繊維内に組み込んでいる。したがって、従来の大豆及びエンドウ豆の肉類似物では、押出中に製品に加えられる脂肪の多くが繊維の外側に残り、それを咀嚼したときに制御されたジューシーな様式で脂肪が放出されない、脂っぽくて魅力のない製品が作出される。その結果、従来の肉類似品は主に限られた人数の熱心なビーガンまたはベジタリアンの消費者に訴求しており、肉を食する大多数の消費者には訴求できていない。
【0058】
異なる押出成形方法により、異なる肉類似テクスチャが製造される場合がある。押出成形は、より肉に似た肉類似物を作出するために数十年にわたって開発されてきた。肉類似物の押出成形及び押出成形の準備には、押出混合物のタンパク質成分内の複雑な化学変化及びプロセスが含まれる。押出成形中に、タンパク質単離物の構造が大幅に変化し、それによってタンパク質が部分的もしくは全体的に変性または解きほぐしされたり(unfolded)、再配置されて、他のタンパク質分子と架橋されたり、押出混合物の他の成分に化学的に結合したりする場合がある。押出機は、温度及び圧力の変化に加えて、混合物が機械内を移動する場合にスクリューによって加えられる剪断力の適用によってこれらの変化を引き起こす。押出成形によって製造される肉類似物の最終的なテクスチャ、味、及び口当たりは、押出成形前、押出成形中、及び押出成形後に押出混合物の成分間に形成される種々のタイプの化学結合によって決定される。
【0059】
テクスチャ化された肉類似物を製造するための押出成形プロセスの初期の開発に関しては、Shemerらの米国特許第6,319,539号は、タンパク質を大部分の水及び潜在的に脂肪と混合し、得られたペーストを加熱、ゲル化させ、押出機で成形することを開示した。Shemerは、押出装置への移送中に、ペーストが加熱され、所定の速度で搬送され、その後、開口部を通って押出されることを開示している。得られた食品は、実質的に整列した軸方向の繊維を含む繊維状のテクスチャを有する。しかし、このプロセスの問題は、流速が制限されており、ある特定の原材料、特にグルテンを使用してのみ実行できるため、製品の種類が制限されることである。グルテンは既知のアレルゲンであり、これによりこれまで大豆ベースのTVPの使用も制限されてきた。
【0060】
Shemerプロセス及び他の初期の押出機プロセスのさらなる欠点は、高温の製品が冷却されるにつれて水蒸気が放出されるため、加熱された製品が押出機から搬送されるときに膨張することである。水蒸気は整列したタンパク質繊維の乱れを引き起こし、肉類似物の許容可能なテクスチャにとっては望ましくない。
【0061】
この問題を解決するために、BouvierらのWO2003/007729は、一軸スクリュー装置とは対照的に、細長い冷却チャンバーを有し、蒸気が最終製品タンパク質繊維の整列を乱さないように制御された温度で原料を混合し、押出すことが可能になる、二軸スクリューローター押出機を開示している。冷却及び水蒸気の問題に対処することに加えて、‘729出願は、従来の原材料配合を使用して押出製品に所望の量の油脂を組み込むことに関する既存技術における問題も認識していた。
【0062】
所望の脂肪含有量を達成するために、‘729出願は、レシチンまたはカゼイネート、タンパク質、繊維、デンプン、及び水を混合した脂肪成分を含有する新規な押出混合物を開示した。この混合物を混練してペーストを得、これを押出機内で加熱してゲル化させた。しかし、肉類似物にデンプンなどの大量の炭水化物が含まれることは、味及び栄養上の懸念から望ましくない。
【0063】
デンプンを加えず、また押出機への油の導入に伴うその他の関連問題も発生させずに、肉類似物に脂肪を導入する問題を解決するために、GiezenらのWO2012/158023は、大豆タンパク質などの植物性タンパク質組成物を繊維状の肉に似た構造に変えるための押出プロセスを開示している。Giezenは、押出出口温度が水の沸点よりも高いと、油を注入して望ましい脂肪含有量に達することができる開放製品構造がもたらされることを開示している。Giezenの問題には、押出成形後のプロセスステップを追加すること、及び最終製品が消費者に、あまりに油っぽく、脂肪が多すぎると認識されることが含まれる。
【0064】
肉類似物押出成形の技術分野で一般的に認識されている問題は、押出混合物中の油の量が多いと動物肉のテクスチャを有する製品を得ることが妨げられることである。従来の肉類似物押出成形では、油の存在により、理想的な肉類似物の繊維構造を形成する押出機内の高い機械的剪断力が低下する。したがって、従来のプロセスを使用する場合、最適量の油を加えると、最適以下の繊維構造及びテクスチャを備えた肉類似物が得られる。
【0065】
油含量が高く、テクスチャ化された肉類似物において油含有量がより高いとテクスチャが最適以下になるという問題を克服するために、Trottetらの米国特許出願第20180064137号は、押出成形中に他の原材料とは別に油を加えることを開発した。このプロセスには、押出機バレルに40~70重量%の水及び15~35重量%の植物タンパク質を供給し、続いてフィーダーの下流の点で押出機バレルに2~15重量%の油を注入することが含まれる。この開示によれば、液体油を注入する下流位置は、好ましくは、押出機バレルの全長の後半以内である。表面上、この構成により、押出機の前半で高い剪断力が発生して繊維の形成が促進され、繊維の形成を妨げることなく油を下流に加えることができる。
【0066】
Trottetのプロセスは、従来技術と比較して改良された製品をもたらすが、Trottetでは、タンパク質繊維のコアに大量の油が組み込まれることはない。繊維に油が組み込まれていないと、得られる製品は消費者に脂っぽいと感じられ、咀嚼中に脂肪の放出が制御されない。この不満足な結果は、人々が筋肉繊維に多量の脂肪が組み込まれた動物肉を食することに慣れているためである。動物肉のタンパク質繊維には、その重量の最大約50%の脂肪が含まれているが、これは肉の供給源によって異なる。Trottetプロセスでは、植物タンパク質繊維の重量の約10%の量の脂肪のみを、繊維に組み込む。Trottetのプロセスに関するこの問題は、Trottetでは大豆と小麦として開示されているが、押出成形の原料として使用されるタンパク質のタイプと、油をタンパク質繊維に加える方法の両方によって引き起こされる。
【0067】
肉類似物の脂肪含有量に対処する別の特許出願において、Pibarotの特許出願WO2020/208104が2020年に出願された。「Meat analogs and meat analog extrusion devices and methods(肉類似物及び肉類似物の押出装置及び方法)」と題された出願の中で、Pibarotは、タンパク質マトリックス内外に脂肪組織が含まれる動物肉の脂肪含有量を模倣することの問題を認めている。Pibarotは、この複雑な構造によって、肉の外観ならびに肉のテクスチャ及びジューシーさが操作される場合があると示唆している。
【0068】
この問題を解決するために、Pibarotは、ダイ内で冷却されている押出混合物の内部に脂肪を注入することを開示している。Pibarotでは、押出成形中に押出混合物のタンパク質繊維間に隙間が発生する。加熱され剪断された製品が冷却ダイを通って搬送されると、脂肪がこれらの隙間の間に注入され、タンパク質繊維の間に脂肪が堆積する。Pibarotは、このプロセスにより赤身肉に類似した大理石のような外観が得られ、製品のテクスチャ及び旨味が向上すると主張している。Pibarotは、大豆、エンドウ豆、及び他の従来の植物タンパク質源にこのプロセスを使用することを開示している。しかし、Pibarotは、脂肪をタンパク質繊維の分子構造に組み込む方法を教示していない。
【0069】
要約すると、Shemerプロセスは限られた数の成分でしか使用できず、温度及び冷却の制御が欠如しているため、粗悪な製品が生じた。Bouvierは、Shemerの冷却の問題を解決したが、所望の脂肪含有量を達成するために、原料の押出材料と大量のデンプンをブレンドし、これにより望ましくない味及び栄養価が生じた。Giezenは、押出成形後に脂肪を加えることでBouvierプロセスのデンプンの問題を解決したが、これには追加のステップが必要となり、油っぽくて口当たりが良くない製品が生じた。Trottetは、押出成形の後期段階で油を導入することによりGiezenとBouvierの両方を改良したが、Trotetは肉類似物のタンパク質繊維への油の組み込みが少ないという問題を依然として抱えている。Pibarotは、冷却時に肉類似物に脂肪を注入することを開示しており、これによりタンパク質繊維間に脂肪が導入されるが、タンパク質繊維に脂肪が組み込まれた最終製品は製造されない。
【0070】
麻粒は、タンパク質源としても油源としても非常に価値がある。麻粒から食品を製造するためのさまざまな方法が存在するが、優れた純度、ゲル化機能、栄養価、消化性、及び風味を備えたヘンプタンパク質、ならびに料理及び化粧品に好適であるすっきりした風味及び明るい色を有する酸化的に安定な油を製造するために、すっきりした口当たりの良い味覚の、非酸化麻粒からタンパク質と油を抽出する、より効果的、効率的な、より清潔で低コストの方法が必要であることは明らかである。さらに、様々な動物肉及び乳製品の外観、味、テクスチャ、ジューシーさ及び咀嚼性を有する様々な肉類似物を作出するために使用することができるプロセス及び原材料が引き続き必要とされている。より具体的には、最終製品中に最適量の油または飽和脂肪が含まれ、肉の外観、テクスチャ及び味を有し、油または飽和脂肪が、動物の肉もしくは乳製品源の油または飽和脂肪に近いレベルでタンパク質繊維に組み込まれた肉類似品が必要である。
【発明の概要】
【0071】
本開示は、優れた植物ベースの肉及び乳製品類似物を製造するために、ヘンプタンパク質の単離、原材料投入の準備、及び原材料投入の処理に関する従来技術の問題を解決する。本開示の組成物及びプロセスには、麻粒タンパク質の単離、低温殺菌、液体溶液、ゲル形成、テクスチャ化、ならびに肉及び乳製品類似物製造のためのプロセスが含まれる。本開示のプロセスによって、既存の製品または既知の技術を使用して製造された類似の製品と比較した場合に、優れた特性を有する構造タンパク質食品または肉類似物がもたらされる。
【0072】
本開示のプロセスによる肉または乳製品類似物の調製は、3つの大きなステップに分割することができる。第1のステップは、麻粒からのタンパク質の抽出、または単離を伴う。第2のステップは、単離タンパク質を水及び油と組み合わせて、熱ゲル化または押出成形用の原材料を形成することを伴う。第3のステップは、肉類似物を硬化させるかまたはテクスチャ化するための原材料の熱ゲル化または押出を伴う。最終的な肉類似物は、したがって鶏肉、魚、及びチーズなどの肉または乳製品を模倣するように調理してもよい。
【0073】
第1のステップであるヘンプタンパク質の単離に関して、本開示のプロセスには、Mitchellの米国特許第7,678,403号(「Mitchell」または「‘403特許」)に開示されている既知の穀物処理方法が、一部変更を加えて組み込まれている。‘403特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。Mitchell法は、低温での水性湿式粉砕及び得られた製品のふるい分けを開示している。本開示では、水性湿式粉砕は、スラリーの温度を、好ましくは33°F~38°Fの間に維持しながら行ってもよい。高温、特に42°F以上では、微生物の増殖が懸念されまる。
【0074】
いくつかの実施形態では、粉砕は、全粒麻粒または脱殻麻粒(脱皮麻粒とも呼ばれる)を用いて実行することができる。全粒麻粒が使用されるか、それとも脱殻麻粒が使用されるかによって、最終的な肉または乳製品類似品の色が異なる場合がある。全粒麻粒を使用すると、より濃く、より牛肉に似た色が得られるが、脱殻麻粒を使用すると、より白く、鶏肉や魚に似た色になる。一部の全粒麻粒及び一部の脱殻麻粒の使用は、一実施形態では、全粒麻粒が、脱殻麻粒の量に対して約20~30重量%の濃度で使用され、最終製品に牛肉に似た色をもたらす。一実施形態では、麻粒の脱皮によって以前に除去された殻を脱殻麻粒に再導入して、色を加えることができ、ここで、一実施形態では、牛肉に似た色を達成するために、殻を、脱殻麻粒に対して約10~15重量%の量で、脱殻穀粒に加えることができる。
【0075】
水性湿式粉砕の後、Mitchellは、‘403特許において、本開示とは異なるメッシュサイズでふるい分けすることを教示しており、本開示では170~200メッシュサイズでふるい分けすることが好ましい。Mitchellは、‘403特許中で、牛乳製造のための米粒のふるい分けについて考察した際、メッシュサイズ150以下を開示したが、これはある特定の穀粒には適切であるが、麻粒の葉緑体の除去には適切ではない。本開示では、驚くべきことに、170~200メッシュサイズ、好ましくは、または約160~200の間のメッシュサイズが、葉緑体またはクロロフィル含有粒子のフィルター通過を防止する一方で、タンパク質または栄養素の収量を大幅には減少させることなく、十分なタンパク質粒子がフィルターを通過する可能性があることを発見した。
【0076】
麻粒を改変Mitchellプロセスに従って処理すると、不溶性タンパク質含有沈殿副産物がもたらされる。このタンパク質含有材料は、固有かつ貴重な特性を有し、特に肉及び乳製品の類似体の製造に非常に好適であることがMitchellによって発見された。この麻粒タンパク質含有材料は以前に公開されていない。さらなる調査により、Mitchellは、この材料は主にエデスチンで構成されており、重要なことに、麻粒のもう1つの主要なタンパク質成分であるアルブミンが実質的に含まれていないと判定した。Mitchellプロセスの処理パラメータにより、エデスチンは実質的にその天然の状態に維持されるようである。実質的に天然のエデスチンが高濃度に含まれているため、この材料は以後天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)と呼ばれる。NEPIは、約80%がタンパク質で構成され、油、繊維、炭水化物、及び灰分も含有している。
【0077】
粉砕及びふるい分けの後、遠心分離及びデカントによって、NEPIをアルブミン油水性エマルジョン(AOAE)から分離することができる。アルブミン油水性エマルジョンを、場合によりさらに加工して、ヘンプ油及びアルブミンを製造してもよい。本開示に従って抽出されたNEPIは、肉または乳製品を再現するさまざまな異なる植物ベースの食品に使用することができる。NEPIは、場合により油と組み合わせてタンパク質ヒドロゾル及びタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成することができ、蒸発または噴霧乾燥製品を製造するために加工することができる。ヒドロゾルを使用して、植物ベースの肉類似物を製造することができる。
【0078】
本開示は、動物肉のテクスチャ、ジューシーさ、繊維性、及びテクスチャの均一性を含む、肉製品をより厳密に再現する植物ベースの製品を製造するための方法及び材料に基づいている。タンパク質の解きほぐし(unfolding)、または変性、特性及び脂肪保持能力に基づいてタンパク質を選択することを含む、肉類似物を製造するためのプロセスが本明細書に記載される。さらに、本明細書に記載のプロセスには、押出混合物または投入物を調製する方法であって、押出混合物または投入物は、水と脂肪が液体マトリックスを形成するような様式で、選択されたタンパク質に水と脂肪を組み込む、押出成形前のタンパク質-脂肪ヒドロゾルであってもよく、タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、タンパク質を含むタンパク質-脂肪ヒドロゾルとも呼んでもよい、方法が含まれる。いくつかの実施形態では、液体マトリックスは追加の成分を有してもよいが、タンパク質-脂肪ヒドロゾルはタンパク質-脂肪及び水以外の成分を有さなくてもよい。さらに、本明細書に記載のプロセスには、液体マトリックスを押出成形または別様に加熱する方法であって、液体マトリックスは、本明細書では押出投入物または押出混合物とも呼ばれ、液体マトリックスは脂肪タンパク質ヒドロゾルであり得る。液体マトリックスを押出成形するプロセスは、液体マトリックスを押出チャンバーの第1の端にあるポンプに供給することを含む。液体マトリックスを押出機に供給し、押出機は、液体マトリックスに合わせたパラメータに設定する。
【0079】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する組成物、及び麻粒からエデスチンを単離する方法に関する。本明細書に開示されるように、エデスチンは、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する麻粒または他の穀粒及び種子から単離することができる。一実施形態では、麻粒を水性タンパク質抽出中に湿式粉砕し、これによりエデスチン含有画分及びアルブミン油水性エマルジョンが得られる。
【0080】
本開示は、一態様では、水性湿式粉砕の方法を利用して、葉緑体を破壊して油中にクロロフィルを放出することなく、麻粒内に保存された脂肪を分離することができる。このプロセスによって種子を粉砕すると、得られた粉砕製品を、さまざまなサイズのメッシュに通してふるい分けする。約170メッシュ~200の間、またはいくつかの実施形態では160~200メッシュの間、またはいくつかの実施形態では200~270メッシュの間のふるい分けにより、殻、葉緑体及び繊維を除去する。より好ましくは、160~200の間のメッシュサイズを使用することができる。1つの好ましい実施形態では、170のメッシュサイズを使用することができる。メッシュサイズ150では開口部が大きすぎるため、繊維及びクロロフィル含有材料などの望ましくない材料が濾液に入る場合がある。驚くべきことに、クロロフィル含有粒子は170メッシュの細孔開口部より大きいサイズのままであるが、タンパク質含有粒子のほとんどはこのサイズのメッシュを通過する。本発明の方法によれば、異なるサイズのメッシュによるふるい分けにより、葉緑体、原形質体、または他のクロロフィル含有粒子をヘンプ油及びタンパク質含有画分から分離し、これにより淡黄色の最終油製品が得られる。
【0081】
本開示のプロセスでは、ふるい分け後の濾液中には、NEPI及びアルブミン油水性エマルジョンを含有する不溶性画分が存在する場合がある。AOAEは、遠心分離後にデカントしてもよい。不溶性画分及びペレット含有部分を洗浄して、残留油を除去してもよい。いくつかの実施形態では、冷水による洗浄を2回行ってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、AOAEは、アルブミンがエマルション中の油から分離し始めて沈殿するまで、約33°F~38°Fの間で、好ましくは35°Fで冷却することができ、いくつかの実施形態では、これを遠心分離によって支援することができる。本開示のプロセスによれば、アルブミンはヘンプ穀油と強く結合し、それによって不溶性エデスチン画分、すなわちNEPIからの油とアルブミンの分離が改良される。このプロセスにより、アルブミンをヘンプ穀油から分離することができる。ゲル電気泳動は、このプロセスによって実質的にすべてのアルブミンがNEPIから除去され、NEPI中に主にエデスチンが残る場合があることを示している。AOAEは、遠心分離及びデカントによってNEPIから除去することができ、NEPIを固体材料として残し、これを洗浄して残留材料を除去することができる。
【0083】
一実施形態では、次いで、NEPIを約145°Fの温度に約30分間加熱して、製品を低温殺菌することができる。一部の管轄区域では、145°Fが低温殺菌の法的下限値となる場合がある。ここで、本開示で観察された高温で起こる粒状化を防ぐために、温度は約145°F、または145°F~155°Fの間に維持されるべきである。NEPIでは、エデスチンの変性よりもはるかに低い温度、例えば約158°Fで顆粒化が発生する可能性がある;したがって、当業者が低温殺菌に通常使用する温度よりも低い温度で低温殺菌することが非常に重要である。当業者は従来、製品を迅速に処理するために、本開示において顕著な顆粒化を引き起こす温度でタンパク質単離物を低温殺菌する。低温殺菌が完了した後、NEPIは、噴霧乾燥するか、肉及び乳製品類似体に使用するために濃縮物として保存する。噴霧乾燥は、タンパク質の顆粒化または凝集を防ぐために、より低い温度、好ましくは約145°F~155°Fで行うべきである。
【0084】
いくつかの実施形態では、特に商業用途の場合、NEPIを製造ラインから出して145°Fに加熱されたタンクに入れ、製品を、この温度で30分間インキュベートした後、冷却タンクに送り、約35°Fまで冷却する。冷却後、必要に応じて、噴霧乾燥、凍結、フリーズドライ、または真空マイクロ波乾燥のためにNEPIを出荷して、その後、肉及び乳製品類似体、または構造化タンパク質食品の製造に使用する。
【0085】
肉類似体の製造の場合、低温殺菌製品は、乾燥している場合は最初にNEPIを水和するか、そうでない場合は適切な水和度を維持することによって調製することができる。一実施形態では、水の量は、NEPI1部に対して水約3部であり得る。NEPIに加える前に、水を好ましくは約135°Fに予熱して、硬化する前にタンパク質ヒドロゾルを形成してもよい。タンパク質のヒドロゾル構造を破壊する場合があるため、このプロセス中に塩を加えるべきではない。塩は硬化直前または硬化後に加えてもよいが、硬化の前には加えることはできない。いくつかの実施形態では、タンパク質の水和及び解きほぐしは、100°F~135°Fで、またはいくつかの実施形態では100°F~155°Fの間で実行することができる;あるいは、他の実施形態では、タンパク質ヒドロゾル形成は、より低い温度で実行してもよいが、その温度は、タンパク質を解きほぐしすることができない低温より高くなければならない。好ましくは、水和及びタンパク質調製ステップ中の温度は、製品の顆粒化を生じる温度に達することなく、低温殺菌の最低温度と考えられる145°Fにできるだけ近いままにするべきである。
【0086】
タンパク質が水和されると、一実施形態では、油を加え、タンパク質ヒドロゾルと混合して、タンパク質-脂肪ヒドロゾルが形成することができる。タンパク質ヒドロゾルが滑らかな外観になるように、NEPIが十分に水和されるまでは、油を加えるべきではない。水和及びタンパク質調製前に油を加えると、顆粒形成が発生する場合がある。さらに、本開示のプロセスによれば、油は材料の硬化前に加えるべきであり、硬化とは、より固体化したゲル生成物を作出するためにタンパク質結合が形成される場合、タンパク質の凝集が起こる場合、一般にタンパク質の変性が起こる高温で、タンパク質が凝集する場合を意味する。本開示の場合、硬化プロセス中に遊離油は存在せず、押出機または他の熱硬化手段で製品を硬化させる前に、すべての油がエマルジョンまたはタンパク質構造に組み込まれる。従来の押出成形では、押出機内で部分的または完全に硬化する材料に遊離油が存在する。したがって、本開示では、押出成形または硬化中に遊離油が存在しないようにするために、油を加える前に水を加えてNEPIを完全に水和させ、解きほぐしすることが重要である。次いで、このタンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱または押出成形して肉類似物を形成することができる。例えば大豆やエンドウ豆タンパク質を使用する従来の押出成形では、押出機内で高温で硬化が始まった後、油の組み込みというよりも潤滑のために油をタンパク質材料に加える。
【0087】
タンパク質ヒドロゾルが十分に水和されたら、油を加えてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成することができる。油は好ましくは予熱して、油の温度は、好ましくは約130°F~135°Fの間であり得る。他の実施形態では、油は100°F~135°Fの間、または100°F~155°Fの間で予熱することができ、一方、他の実施形態では、油はより低い温度で加えることができるが、油は、タンパク質ヒドロゾルの構造を破壊し、油がタンパク質ヒドロゾルに組込まれてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成するのを妨げる低温で加えるべきではない。材料をレトルトシステムにセットすることもできるが、レトルトでは押出成形のように繊維化製品を製造することができない場合がある。
【0088】
レトルト処理NEPI肉類似物のテクスチャは、驚くほど良好であり、同じ条件下で市販されているヘンプタンパク質濃縮物及び分離物よりもはるかに優れた硬度及び噛みごたえなどのテクスチャ特性を有していた。本開示のプロセスによって、タンパク質源としてヘンプのみを使用して製造された高品質の繊維化肉類似物の熱ゲル化及び押出成形が予想外にもたらされた。大豆及びヘンプなど、従来から使用されてきた肉及び乳製品類似タンパク質の性質により、従来の肉及び乳製品類似体では、鶏胸肉など、動物肉製品に類似しているテクスチャ化された肉フィレを再現することができない。本開示で説明されるNEPIの使用及びそれを使用するプロセスから得られる予想外に有利な特性及び結果により、他の市販製品と比較した場合、ヘンプタンパク質のみをタンパク質源として使用して、はるかに優れた構造化肉類似物が作出された。現時点では、ヘンプタンパク質は、肉類似体を製造するために大豆または他の植物タンパク質と組み合わせて使用されることしか知られていない。
【0089】
一態様では、本文書は、タンパク質対脂肪の比が約4:1~0.5:1の範囲であり得る肉類似押出成形投入物、または液体マトリックスを特徴とする。
【0090】
一態様では、本文書は、水を本明細書で以下に開示する比率でタンパク質単離物に加えるか、または水を、タンパク質単離物中に特定の比率で維持するプロセスを特徴とし、水をタンパク質単離物に加えるかまたはその中に維持した後、水対脂肪及びタンパク質対脂肪のほぼ一定の比率で、脂肪をタンパク質と水の混合物に加える。
【0091】
一態様では、本文書は、含水量標的が35重量%~75重量%の間である製品を特徴とする。
【0092】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、液体マトリックス中の単離植物タンパク質としては、エデスチン、アルブミン、グロブリン、またはそれらの混合物などの種子油タンパク質を挙げることができる。
【0093】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、単離タンパク質は、植物内の他のすべての植物タンパク質から最初に単離することができる。
【0094】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、使用される単離タンパク質は、天然の状態、または非変性の状態で単離されたものであってもよく;天然とは、完全に天然、実質的に天然、部分的に天然、または別様にタンパク質構造を検出する従来の方法により実質的に天然として同定される、または当業者によって理解されるような天然を意味することができる。
【0095】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、種子タンパク質から単離されたタンパク質は、好ましくは、大豆またはカゼインに典型的に見出されるシステイン含有量よりも高いシステイン含有量を有する。
【0096】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、液体マトリックスは、香味剤、デンプン、繊維、または他の炭水化物源を含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される肉及び乳製品類似品は、畜産物、小麦グルテン、大豆タンパク質、またはエンドウ豆タンパク質を含まなくてもよい。
【0098】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。パーセントへの言及はすべて重量による。
【0099】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面及びに以下の記述で説明される。本発明の他の特性、目的、及び利点が、記述、図面及び実施例から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】本開示による天然エデスチンタンパク質単離物すなわちNEPIを生成するプロセスを示すフロー図である。
【
図2】本開示による低温殺菌NEPIを製造するプロセスを示すフロー図である。
【
図3】本開示によるNEPIを噴霧乾燥するプロセスを示すフロー図である。
【
図4】本開示による着色NEPIを製造するプロセスを示すフロー図である。
【
図5】本開示による麻粒からヘンプ油を抽出するプロセスを示すフロー図である。
【
図6】本開示によるヒドロゾルを形成するプロセスを示すフロー図である。
【
図7】本開示によるレトルトによる肉及び乳製品類似体を製造プロセスを示すフロー図である;
【
図8】本開示によるNEPIの押出プロセスを示すフロー図である;
【
図9】本開示による、NEPIタンパク質及び市販のヘンプタンパク質濃縮物及び単離物からのヘンプタンパク質の非還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図10】本開示による、NEPIタンパク質及び市販のヘンプタンパク質濃縮物及び単離物からのヘンプタンパク質の還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図11A】先行技術刊行物からのヘンプ粉末及びヘンプタンパク質単離物の還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである;
【
図11B】先行技術刊行物からのヘンプタンパク質単離物のヘンプタンパク質の非還元条件及び還元条件におけるSDS-PAGE電気泳動ゲルである。
【
図12A】NEPI 250の脱殻麻粒噴霧乾燥粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図12B】NEPI 250全粒麻粒濃縮物(スラリー)の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図13A】VICTORY HEMPの脱殻麻粒噴霧乾燥粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図13B】NUTIVAヘンプ粉末の示差走査熱量測定サーモグラムである。
【
図14】Aは、茹で鶏胸肉の断面の写真である。Bは、
図14Aの茹で鶏胸肉の断面の拡大写真である;Cは、
図14Bの茹で鶏胸肉の拡大断面の写真である。
【
図15】Aは、NEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図15AのNEPI脱殻ヘンプ濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図16】Aは、NEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図16AのNEPI脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図16BのNEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図17】Aは、VICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図17AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図17BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図18】Aは、HEMPLAND脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;Bは、
図18AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;Cは、本開示による
図18BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【
図19】本開示による、テクスチャ及び繊維の類似性を示す、脱殻粉末からの押出NEPI及び茹で鶏胸肉片の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実践に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。パーセントへの言及はすべて重量による。本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面ならびに以下の記述で説明される。本発明の他の特性、目的、及び利点が、記述及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【0102】
一般に、本開示は、麻粒タンパク質から、本明細書では構造化タンパク質食品とも呼ばれる、植物ベースの肉または乳製品類似物を製造するための方法及び材料を提供する。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、及びいくつかの実施形態では、抽出されたタンパク質含有生成物は、他の麻粒タンパク質から分離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、エデスチンは、麻粒中の他のタンパク質の一部またはすべてから実質的に単離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、穀物タンパク質から単離されたタンパク質は、好ましくは、大豆またはカゼインに典型的に見出されるシステイン含有量よりも高いシステイン含有量を有する。
【0103】
本開示により使用される植物タンパク質は、単離植物タンパク質であってもよい。本開示の目的上、「天然」タンパク質とは、生きている活性細胞と同じ三次構造及び四次構造を有し得るタンパク質である。いくつかの実施形態では、「天然」タンパク質は、実質的に天然のものであり得る。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、単離タンパク質は、ほぼ天然の、実質的に天然の、または非変性の状態で単離することができる。本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、使用される単離タンパク質は、天然の状態、または非変性の状態で単離されたものであってもよく;ここで、天然とは、完全に天然、実質的に天然、部分的に天然、または別様にタンパク質構造を検出する従来の方法により実質的に天然として同定される、または当業者によって理解されるような天然を意味し得る。サブユニット構造及び三次構造の変化及び破壊は、温度の変化(典型的には41℃超)、あるいは酸もしくはアルカリ水溶液、酸化剤もしくは還元剤、または有機溶媒との接触により発生する場合がある。四次構造の破壊により、生細胞内でタンパク質が生物学的に不活性になる、または生物学的に不活性になる場合がある。しかし、放出されたサブユニットの三次構造は、水素結合、ファンデルワールス力、ジスルフィド結合によって作出された特定の形状を有し、機能的に活性であり、生細胞と同様の機能を示す場合がある。この一例は、タンパク質の三次形状に起因する酵素の鍵と鍵穴機能である。
【0104】
したがって、四次構造または三次構造が抽出後に生細胞と同じ状態で実質的に維持される場合、本開示の目的では、これらは、「天然」タンパク質と考えてもよい。本開示は、ある特定の油穀粒球状タンパク質であって、三次構造が温度の変化(典型的には41℃超)、あるいは酸もしくはアルカリ水溶液、酸化剤もしくは還元剤、または有機溶媒とによって変性されていないという意味で天然であると考えることができるものが、固有で優れた機能的特性を有することを見出した。
【0105】
従来の植物タンパク質抽出プロセスは、タンパク質の四次構造及び三次構造を破壊することが知られている。場合によっては、この破壊により、四次構造または三次構造の機能が失われるか低下する場合がある。三次構造は、水素結合、ファンデルワールス力、またはジスルフィド結合であって、これらすべてが連携して特定のタンパク質の三次構造を形成するものなどの機能的な結合及び力の破壊によって変性する場合がある。タンパク質の環境の変化及び三次構造の変性様式により、タンパク質の三次構造または形状、結合、力、及び連結が変化する場合がある。
【0106】
本明細書で使用される場合、「単離植物タンパク質」という用語は、エデスチン、グルテリン、アルブミン、レグミン、ビシリン、コンビシリン、グリシニンなどのタンパク質を含み得る、植物タンパク質、及び大豆、エンドウ豆、レンズ豆など、もしくはそれらの組み合わせを含む任意の種子もしくは豆からのタンパク質単離物、または植物タンパク質画分(例えば、7S画分)が、原料物質の他の成分(例えば、他の動物、植物、真菌、藻類、または細菌のタンパク質)から分離されており、タンパク質またはタンパク質画分には、乾燥重量で、原料材料の他の成分が少なくとも2%(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは99%含まれていないことを示す。例えば、高いシステイン含有量を有する単離天然球状タンパク質は、単独で、または1つ以上の他のタンパク質(例えば、アルブミン)と組み合わせて、または大豆、エンドウ豆、ホエーなどの任意の他のタンパク質源からのものを使用することができる。
【0107】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、脂肪は非動物性脂肪、動物性脂肪、または非動物性脂肪と動物性脂肪の混合物であり得る。脂肪は、藻類油、真菌油、コーン油、オリーブ油、大豆油、落花生油、クルミ油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、アヒ油、ババス油、シアバター、マンゴーバター、ココアバター、小麦胚芽油、ルリヂサ油、カシス油、シーバックソーン(sea-buckhorn)油、マカダミア油、ノコギリヤシ油、共役リノール油、アラキドン酸富化油、ドコサヘキサエン酸(DHA)濃縮油、エイコサペンタエン酸(EPA)濃縮油、パームステアリン酸、シーバックソーン(sea-buckhorn)ベリー油、マカダミア油、ノコギリヤシ油、もしくは米ぬか油;またはマーガリンもしくは他の水素化脂肪であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、脂肪は藻類油である。脂肪は、香味剤及び/または単離植物タンパク質(例えば、コングリシニンタンパク質)を含有することができる。液体マトリックスの脂肪または油組成は、類似物の標的原料物質の飽和及び不飽和組成に優先的に適合するように作製することができる。
【0108】
したがって、いくつかの実施形態では、単離タンパク質は実質的に、麻粒、またはエデスチンもしくはエデスチン様タンパク質を有し得る他の穀物から単離された天然エデスチンなどのタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、膜を通過する限外濾過、または密度遠心分離によって、それらの分子量に基づいて分離することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば等電点沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーによって、その表面電荷に基づいて分離することができる。タンパク質はまた、その溶解性に基づいて、例えば硫酸アンモニウム沈殿、等電点沈殿、界面活性剤(surfactant)、界面活性剤(detergent)、または水抽出を含む溶媒抽出によって分離することもできる。タンパク質は、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィー、反応性色素、またはヒドロキシアパタイトを使用して、別の分子に対する親和性によって分離することもできる。アフィニティークロマトグラフィーには、ヘム含有タンパク質に対して特異的結合親和性を有する抗体、Hisタグ付き組換えタンパク質に対するニッケルニトリロ酢酸(nitroloacetic acid)(NTA)、糖タンパク質上の糖部分に結合するレクチン、またはタンパク質に特異的に結合する他の分子を使用することも含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の植物ベースの肉は、実質的にまたは完全に、非動物源、例えば、植物、真菌、または微生物ベースの源に由来する成分から構成される。いくつかの実施形態では、植物ベースの肉または植物ベースの乳製品は、1つ以上の動物ベースの製品を含み得る。例えば、肉レプリカは植物ベース源と動物ベース源を組み合わせて作製することができる。
【0109】
定義:
ヘンプシード(HS)は、本明細書では一般に、さらなる繁殖及び植栽に通常使用される発芽力がある種子として定義される。HSは、洗浄実施方法及び種子の農業保存実施方法に基づいて、食品グレードである場合とそうでない場合がある。
【0110】
全粒麻粒(WHG)は、本明細書では一般に、発芽力がある麻粒と低温殺菌された麻粒の両方を含む麻粒として定義される。
【0111】
発芽力がある麻粒(VHG)は、本明細書では一般に、塵や異物がすべてさらに除去され、食品グレードに好適であり、中心部及び殻が完全に無傷である発芽力があるヘンプの種子として定義される。
【0112】
低温殺菌麻粒(PHG)は、本明細書では一般に、熱または照射によって処理されて、種子の発芽力が破壊された麻粒として定義される。
【0113】
脱脂麻粒ケーキ(DHGC)は、本明細書では一般に、麻粒からの油の非水性除去から生じる乾燥固体残留物として定義される。
【0114】
麻粒油(HGO)は、本明細書では一般に、麻粒の非水抽出から得られる未加工の緑色の油として定義される。
【0115】
麻粒油スラッジ(HGOS)は、本明細書では一般に、麻粒からの油の非水抽出から得られる原油スラッジスラリーとして定義される。
【0116】
脱殻麻粒(HHG)は、本明細書では一般的にヘンプの中心部またはヘンプナッツ;外殻を取り除いた麻粒と同等のものとして定義される。
【0117】
脱脂脱殻麻粒ケーキ(DHHGC)は、本明細書では一般に、ヘンプ脱殻穀粒からの油の非水性除去から生じる乾燥固体残留物として定義される。
【0118】
外皮付き麻粒油(HHGO)は、本明細書では一般に、脱殻麻粒の非水抽出から得られる黄色の油として定義される。
【0119】
ヘンプタンパク質単離物(HPI)は、本明細書では一般に、アルブミン、エデスチンまたはそれらの凝集体の単離物として定義される。
【0120】
アルブミン油水性エマルジョン(AOAE)は、本明細書では一般に、油及び可溶性アルブミンタンパク質の水系エマルジョンとして定義される。
【0121】
天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)は、本明細書では一般に、本明細書に開示されるタンパク質単離プロセスの生成物として定義され、その使用との適切な関係において当業者に理解されるように、液体、スラリー、及び粉末形態のNEPIを指すことができる。
【0122】
フローチャートに記載されるすべての製品は、その使用との適切な関係において当業者に理解されるように、液体、ゲル、または固体を含む種々の物理的形態で存在することができる。
【0123】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)を含油する組成物、ならびに肉及び乳製品類似物を製造するためにNEPIを抽出及び使用する方法に関するものであり得る。本開示は、優れた植物ベースの肉及び乳製品類似物を製造するために、ヘンプタンパク質の単離、原材料投入の準備、及び原材料投入の処理に関する従来技術の問題を解決する。本開示の組成物及びプロセスには、麻粒タンパク質の単離、低温殺菌、ゾル形成、ゲル形成、テクスチャ化、ならびに肉及び乳製品類似物製造のためのプロセスが含まれる。本開示のプロセスによって、既存の製品または既知の技術を使用して製造された同様の製品と比較した場合に、優れた特性を有する肉または乳製品類似品がもたらされる。
【0124】
タンパク質の単離に加えて、本文書は、動物肉のテクスチャ、ジューシーさ、繊維性、及びテクスチャの均一性を含む、肉製品をより厳密に再現する植物ベースの製品を製造するための方法及び材料に基づいている。タンパク質の解きほぐし、または変性、特性及び脂肪保持能力に基づいてタンパク質を選択することを含み得る、肉類似物を製造するためのプロセスが本明細書に記載される。さらに、本明細書に記載のプロセスには、押出前に、押出混合物を調製する方法であって、水と脂肪がタンパク質とともに液体マトリックス(本明細書では、液体-脂肪ヒドロゾル、ヒドロゾル、押出機または押出投入、及び投入材料とも呼ばれる)を形成するような様式で、選択されたタンパク質に水と脂肪を組み込む、方法が含まれる。さらに、本明細書に記載のプロセスには、液体マトリックスを押し出すか、または別様に加熱する方法が含まれる。液体マトリックスを押出成形するプロセスは、液体マトリックスを押出チャンバーの第1の端にあるポンプに供給することを含む。液体マトリックスを押出機の押出チャンバーに供給し、押出機は、液体マトリックスに合わせたパラメータに設定する。
【0125】
本明細書に開示されるように、NEPIは、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する麻粒または他の穀物、ナッツまたは種子から抽出することができる;ただし、現時点では麻粒がエデスチンの唯一の供給源であると考えられている。一実施形態では、麻粒を、湿式粉砕し、水性抽出に供し、それによって、本明細書ではNEPIと呼ばれる不溶性エデスチン含有抽出物及びアルブミン油水性エマルジョンを生成する。
【0126】
本開示によるプロセスでは、低温殺菌された機能性麻粒タンパク質濃縮物を製造することができ、この濃縮物は、製造ラインから、もしくは遠心分離及びデカントから得られる濃縮液体、またはNEPI粉末であり得、これは、いくつかの実施形態では、トリプシン阻害剤の量が少ないか含まれておらず、高い栄養価及び機能性を備えている。このプロセスでは、等電抽出、アルカリまたはCO2可溶化方法を使用しない場合がある。テクスチャ化可能なタンパク質NEPI濃縮物またはNEPI粉末は、麻粒の自然なpHと油分を水と組み合わせて利用し、油抽出及びアルブミンの分離によって製造されると考えられている。可溶性アルブミンのエマルジョン形成能力により、遠心分離によって不溶性エデスチンから容易に分離できるエマルジョンを形成することができる。凍結乾燥、pH再調整、及び限外濾過による分離は必要ではない。さらに、繊維及びクロロフィルは、NEPIプロセス中に除去される場合がある。低温、好ましくは33°F~38°Fの間を維持すると、グロブリンの不溶性が促進され、アルブミンの凝固も促進される。
【0127】
本開示の一態様は、麻粒を含む植物材料からのエデスチン及びエデスチン様タンパク質の単離に関する。エデスチンは、ヘンプ植物;特に麻粒中に見出されている。麻粒が最も一般的な、または唯一のエデスチン源であると考えられているが、他の植物にもエデスチンが含まれている可能性がある。
【0128】
本開示の方法に従って調製されたエデスチン抽出物組成物、または天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)を使用して、タンパク質含有組成物を作製することができる。NEPIは、好ましくは約80%の乾燥ベースのタンパク質で構成することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、少なくとも65%の乾燥ベースのタンパク質を含むことができ、いくつかの実施形態では、少なくとも90%の乾燥ベースのタンパク質を含むことができる。したがって、NEPIは、本開示に記載される機能的特徴を有する製品をもたらす、本開示に記載される方法に従って製造されるエデスチン含有組成物として定義することができる。本開示に記載される水性油アルブミンエマルション(AOAE)をさらに加工して、ヘンプ油または穀物油及びアルブミンを含む他の植物ベースの製品を製造することができる。
【0129】
本開示は、エデスチンまたはエデスチン様タンパク質を含有する好適な穀粒、種子または植物材料を使用して実施することができ、そのようなエデスチン様タンパク質は相同であるか、または類似の構造及び機能を有することができる。
【0130】
本開示で使用される穀粒は、実質的に全脂肪植物穀粒、すなわち粉砕前に脱脂または圧搾されていない穀粒であり得る。いくつかの実施形態では、穀粒は部分的に脱脂されていてもよい。部分的に脱脂された穀粒には、脂肪の少なくとも一部が除去された任意の植物材料が含まれる。
【0131】
当業者には知られているように、実質的に全脂肪の麻粒は、10重量%以上の脂肪(または油)含有量を有し得る。本開示では、脂肪及び油という用語は互換的に使用される場合がある。好適には、実質的に全脂肪である穀物の脂肪含有量は、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはさらに50重量%である。麻粒の脂肪含有量は、通常少なくとも30%である。部分的に脱脂された植物材料の脂肪含有量は、約5重量%、10重量%、または15重量%を超える場合がある。殻を除去した後の麻粒の可食部分には、平均して46.7%の油及び35.9%のタンパク質が含まれている。
【0132】
図1に示されるように、麻粒102は、構造化タンパク質食品プロセス100で使用するために選択することができる。全粒麻粒101及び脱殻麻粒105を使用することができる。低温殺菌プロセス107によって製造された低温殺菌された全粒麻粒103も使用することができる。本開示に従って使用される麻粒102は、限定されないが、乾燥、平衡水分レベルを達成するためのコンディショニング、脱皮、クラッキング、及び向流空気吸引による洗浄、選別方法、発芽力がある種子を損傷しない低温殺菌、または当技術分野で知られている他の方法、を含む好適な手段によって処理するために調製することができる。麻粒102は、あらゆる種類のヘンプ植物から選択することができるが、本開示では、0.3%以下のTHCを含有するCannabis Sativa(カンナビス・サティバ)を、好ましく使用する。麻粒102は、全粒麻粒または脱殻(脱皮)麻粒102であってもよく、麻粒102は、構造化タンパク質食品プロセス100における処理の前に脱殻し、それによって、
図4に示されるように、脱殻麻粒150を製造することができる。
【0133】
ここで
図1を参照すると、構造化タンパク質食品プロセス100における麻粒102は、天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)250を抽出するために、天然エデスチンタンパク質単離プロセス200(
図2に示す)を受ける。天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)スラリー252もしくは粉末254、またはNEPI 250を使用して、肉または乳製品類似物であり得る構造化タンパク質食品120を製造することができる。麻粒からヘンプタンパク質もしくはエデスチンを抽出する、またはヘンプタンパク質単離物を製造する従来の方法では、エデスチンとアルブミンの凝集またはタンパク質の変性が生じる場合があり、満足のいく構造化タンパク質食品または肉類似物を製造できない場合がある。しかし、NEPI 250は、Zahariによって説明されているように、大豆または他のタイプの植物ベースのタンパク質分離物と組み合わせることなく、肉類似物における唯一のタンパク質源として使用すると、優れた新規な肉類似物を製造することができる(Zahari et al., 2020)。
【0134】
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、NEPI 250を低温殺菌104し、水106と混合してタンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。NEPI 250は、予熱された水106と結合して、タンパク質ヒドロゾル108を形成することができる(
図6に示すように)。NEPI 250は、水に対して少なくとも20%重量/重量~水に対して最大80%重量/重量以上存在する必要がある。タンパク質を完全に水和させる。水和時間は状況によって異なる。水和を促進するには、高剪断で混合することが好ましい。
【0135】
次いで、油をタンパク質ヒドロゾルに加える110ことができ、続いて高剪断混合112を行うことができる。いくつかの実施形態では、高剪断混合112の後、混合物は、場合により、混合せずにインキュベートしてもよい113。油110の添加及び混合112により、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114が製造される。
【0136】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、にタンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱して製品を硬化させる116手段の投入物として使用される。硬化は、マイクロ波、蒸気トンネル、オーブン、レトルト、及び押出成形を含む手段による加熱を伴ってもよい(
図7及び8に示すように)。加熱して硬化させる手段には、当業者には知られているように、タンパク質またはデンプンベースの食品を加熱して硬化物を形成する他の手段を含めてもよい。タンパク質脂肪ヒドロゾル114を硬化させる場合、構造化タンパク質食品120を製造する。構造化タンパク質食品120は、肉または乳製品の類似物であってもよい。
【0137】
図2に示されるように、NEPI 250を製造するには、麻粒102を冷水に加えて202麻粒混合物204を形成することができる。粉砕中及び天然エデスチンタンパク質単離プロセス200全体にわたる抽出温度は、より好ましくは35°F、または33°F~38°Fの間、または約120°F未満であり得、麻粒102に加えられ、麻粒混合物204を形成する。麻粒は、水溶液、好適には水で抽出してもよい。本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語には、溶質を実質的に含まない水(例えば、水道水、蒸留水、または脱イオン水)及び溶質を含む水が含まれる。本開示によれば、水溶液は、塩、緩衝液、酸、塩基及び解乳化剤などの添加剤を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、水溶液は、タンパク質の構造を変化させるイオン強度よりも低いイオン強度を有し得る。ある程度の水を使用してもよい。
【0138】
本プロセスでは、NEPIを単離するためにpHを調整する必要はない。好ましくは、構造化タンパク質食品プロセス100全体を通じて、pHは6.5~7の間でほぼ中性に維持される。一実施形態では、溶液のpHは、穀物の粉砕中に実質的な程度まで変化しない。
【0139】
麻粒混合物204は、実質的にMitchellの米国特許第7,678,403号に記載されているように湿式粉砕206することができる。一実施形態では、麻粒の粉砕206は、シルバーソンローターステーター型粉砕機を使用して実行することができる。湿式粉砕206は、水性抽出プロセスの一部として実行してもよい。好適には、水性湿式粉砕206は、好適な期間実行することができ、より好適には、湿式粉砕206は、好適な期間実行する。当業者であれば理解するように、より長い抽出期間を使用してもよい。いくつかの実施形態では、処理を助けるために酵素を使用することができる。例えば、液化は、液化スラリーを生成するデキストリン化活性を有するアルファ-アミラーゼ酵素を使用して達成することができる。このような酵素には、アミラーゼ、または食品加工の分野で知られている他のカルボヒドラーゼを含めてもよい。本開示は、一態様では、水性湿式粉砕の方法を利用して、葉緑体を破壊して油中にクロロフィルを放出することなく、麻粒102内に保存された脂肪を分離することができる。遠心分離デカント222後の香味を改良するために、塩化カルシウムをNEPI 250に加えてもよい。
【0140】
麻粒206を水性湿式粉砕した後、抽出物を、メッシュを用いて不溶性副生成物または繊維状スラリー210(例えば、不溶性繊維画分)の少なくとも一部から分離することができる。いくつかの実施形態では、麻粒スラリー208は2ステップでふるい分けしてもよい。ふるい分けすることにより、エデスチンに不快な色または味を与える不要な不純物を除去してもよい。不溶性繊維は、第1のふるい分けステップによって除去することができる。驚くべきことに、タンパク質収量に実質的な影響を与えることなくふるい分けすることによって除去することができる別の望ましくない生成物は、麻粒及び脱殻ヘンプの葉緑体からのクロロフィルであり、これは油画分またはタンパク質画分に望ましくない色、味、及び脂肪の酸化を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、クロロフィル含有粒子は、第2のふるい分けステップ212で除去することができる。ふるい分け212の後、葉緑体及び繊維スラッジが、濾液中のDSB上の脂肪対タンパク質の比率が約1:3:1である生ヘンプ乳とともに、保持液中に存在する場合がある。
【0141】
第1のふるい分けステップでは、麻粒スラリーを、いくつかの実施形態では、30メッシュにわたってふるい分けして、殻を除去することができる。第1のふるい分けステップの副生成物は、繊維状スラリー210であり得る。第2のふるい分けステップ212では、麻粒スラリーをふるい分けして212、約170メッシュで葉緑体を除去することができ、またはいくつかの実施形態では160~200メッシュの間、またはいくつかの実施形態では200~220メッシュの間で葉緑体、またはクロロフィル含有材料及び残りの繊維を除去することができる。メッシュサイズ150の開口部は一般に大きすぎる場合があり、繊維及びクロロフィル含有粒子などの望ましくない物質が濾液に入る場合がある。驚くべきことに、クロロフィル含有粒子は、170メッシュの細孔開口部より大きいサイズのままであるが、タンパク質含有粒子のほとんどはこのサイズのメッシュを通過する。異なるサイズのメッシュによるふるい分けにより、葉緑体、原形質体、または他のクロロフィル含有粒子をヘンプ油及びタンパク質含有画分から分離し、これにより淡黄色の最終油製品が得られる。
【0142】
エデスチン抽出プロセス100によって単離された葉緑体は、いくつかの実施形態では、栄養補助食品として使用することができる。本開示のプロセスによれば、クロロフィル含有粒子214は、麻粒スラリー208から選択的に除去される一方、タンパク質含有粒子は、濾液に通過することが可能になる。本方法は、水性湿式粉砕の前に殻が除去されていない全粒麻粒と、脱殻麻粒の両方に有効である。
【0143】
麻粒スラリーを170メッシュでふる分けし、クロロフィル含有粒子212を除去した後、得られる生成物は水性油アルブミンエマルション(AOAE)とエデスチンの混合物220であり、ある程度の麻粒102の他の成分も含み得る。AOAEとエデスチンの混合物220を、遠心分離によりデカントして222、その結果、NEPI 250及びAOAE 230が得られる。AOAE230は、NEPI 250から分離した後、さらに処理して、
図5に示されるように、アルブミン550及びヘンプ油560を製造することができる。
【0144】
NEPI 250は、いくつかの実施形態では、約76%のタンパク質、2%の油、4%の繊維、1%の炭水化物、及び17%の灰分から構成することができる。AOAE220は、約14%のタンパク質、76%の油、3%の繊維、4%の炭水化物、及び3%の灰分から構成することができる。NEPIは、好ましくは約80%の乾燥ベースのタンパク質で構成することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、少なくとも65%の乾燥ベースのタンパク質を含有することができ、いくつかの実施形態では、少なくとも90%の乾燥ベースのタンパク質を含有することができる。したがって、NEPIは、本開示に記載される機能的特徴を有する製品をもたらす、本開示に記載される方法に従って製造されるエデスチン含有組成物として定義することができる。いくつかの実施形態では、NEPIは、乾燥重量ベースで少なくとも約65%、75%、85%、または90%のタンパク質を含有することができる。
【0145】
表2は、NEPI 250及び市販のヘンプタンパク質製品の栄養組成の概略分析データを示している。表2は、NEPI 250製品が、VICTORY HEMPと同様に、タンパク質含有量とタンパク質対脂肪の比率が高いことを示している。他の市販製品は、タンパク質含有量とタンパク質対脂肪の比率がはるかに低い。これは、試験された製品の中で、NEPI 250及びVICTORY HEMPが、他の製品よりもはるかに優れている可能性があることを示している。
【0146】
図9~11は、タンパク質組成、構造、及び完全性を示す、NEPI 250製品及び市販製品のSDS PAGEゲルデータを示す(非還元条件を
図9に示し、還元条件を
図10に示す)。
図9に関して、910はエデスチン二量体であり、920はアルブミンである。
図10に関して、930はエデスチン酸性サブユニットであり、940はエデスチン塩基性サブユニットであり、950はアルブミンである。
図11は、エデスチン及び同様の条件下でのエデスチン生成物の既知の分子量を示す従来技術のSDS PAGEデータを示す。レーンは以下で識別され、
図9及び10に適用される。
M=分子量標準
1=DP-276 HempLife 粉末 SD HPI
2=DP-276 HempLife 粉末 SD HPI
3=DC-344 HempLife 液体 濃HPI
4=GH-350 Good 粉末 Hemp HPI
5=A-560 Anthonyの粉末HPC
6=LP-643 脱殻HempLife SD 粉末 HPI
7=VH-794 Victory Hemp 粉末 V70 HPI
8=N-950 Nutiva 粉末 HPC
9=N-950 Nutiva 粉末 HPC
【0147】
図11Aは、Mamone及びWangによって発表されたヘンプタンパク質からの従来技術のSDS PAGEを示す(Mamone et al., 2019;Wang及びXiongから、2019)。
図11Bは、Shenによって発表されたヘンプタンパク質からの従来技術のSDS PAGEを示す(Shen et al., 2020)。
【0148】
まとめると、
図9~10は、NEPI 250製品が他の市販製品とは異なるタンパク質組成を有し、一般に構造的により無傷であり、天然エデスチン含有量及び非分解タンパク質製品に関してVICTORY HEMPが最も近いことを示している。興味深いことに、予想どおり、NEPI 250製品にはアルブミンが実質的に含まれていなかった。本開示では、アルブミンが、優れたテクスチャ特性を有する良好な構造化タンパク質食品120を形成するヘンプタンパク質単離物の能力を妨げるという仮説が立てられている。この理論は、表2に示すテクスチャプロファイル分析データによって裏付けられており、ここで、NEPI製品は、市販のヘンプタンパク質製品と比較して、はるかに優れた硬度及び噛みごたえを有する。NEPI 250のエデスチンの優れた天然の構造的特徴が、表2に示すNEPI 250の予想外に優れたテクスチャ特性の形成に寄与している可能性もある。エデスチンの天然状態の優れた構造的保存は、表3にさらに示されており、
図12及び13は、製品の示差走査熱量測定データを示す。
【0149】
表3は、NEPI 250及び市販製品に含まれるエデスチンに関する構造情報を提供する示差走査熱量測定サーモグラフを示す。2つのNEPI製品(
図12)及び2つの市販のヘンプタンパク質粉末、VICTORY HEMP及びNUTIVA(
図13)のDSCサーモグラフ。DSC結果に基づくと、NEPI製品は市販製品と比較して構造の点で優れており、NEPI 250のエデスチンが市販製品よりも天然状態にあることを示している。
【0150】
従来の手段で生成されたヘンプタンパク質単離物と比較すると、背景技術で前述したように、NEPI 250のエデスチンの品質が優れている。さらに、本開示のプロセスと比較した場合、従来技術のタンパク質抽出方法には重大な欠点及び制限がある。例えば、HMIプロセスにおける塩抽出及び透析では、最終製品から残留フェノール類は除去されない。さらに、HMIは、商業的にはあまり有望ではない。
【0151】
本開示のプロセスは、従来技術に比べて多くの利点を有する。本プロセスにより、NEPI 250及びAOAE230からフェノール及びトコフェロールが放出される場合がある。本開示のプロセスによって、ヘンプ油560がより酸化的に安定になる場合がある。本開示のプロセスでは、水性湿式粉砕中に、フェノール類がヘンプ油560と分離し、それによって安定性がもたらされる場合がある。
【0152】
本開示のプロセスは、従来の方法が一般に、穀物を圧搾して油を抽出し、麻粒ケーキを製造することを伴い、その後、製粉し、ふるい分けして細粉を製造することができるという点で、麻粒からタンパク質を抽出する従来の方法とは異なる。得られたケーキまたは細粉には、油、炭水化物、フェノール類、及びミネラルにとともに、凝集したエデスチン及びアルブミンが含まれる場合がある。場合によっては、種子を乾式粉砕して直接細粉を製造することもできる。
【0153】
穀物を圧搾するなど、高温または高圧となる機械的プロセスにより、エデスチンとアルブミンの間に化学結合が形成される場合がある。全粒麻粒または脱殻麻粒を圧搾すると、エデスチンとアルブミンが凝集する可場合がある。
【0154】
高圧によってタンパク質の構造が変化し、タンパク質の凝集が起こる可能性がある。Yangによれば、タンパク質の高圧修飾は、天然状態から中間状態を経て完全に変性した状態まで、タンパク質の二次、三次、及び四次構造が変化することを伴う(Yang et al., 2016)。高圧によって、主に非共有結合-電子の相互作用、疎水性相互作用、及び水素結合の変化を通じてタンパク質の構造が変化する。高圧によってまた、新しいジスルフィド結合の形成が生じ、それによって変性タンパク質が安定化し、またはタンパク質の凝集が起こる可能性がある(Yang et al., 2016)。
【0155】
熱によっても、タンパク質の構造が変化することが知られている。穀物を粉砕する際の摩擦によって生じる熱により、タンパク質の構造が変化する可能性がある。熱によってタンパク質の変性及びタンパク質凝集体の形成が生じる可能性がある。エデスチンとアルブミンの間の凝集は、温度が100℃以上に達する場合がある乾式粉砕中に発生する可能性がある。
【0156】
一実施形態では、次いで、NEPIを約145°Fの温度に約30分間加熱して、製品を低温殺菌することができる。一部の管轄区域では、145°Fが低温殺菌の法的下限である場合がある。一実施形態では、粒状化を防ぐために、温度を約145°F、または145°F~155°Fの間に維持することができる。本開示では、顆粒の形成は約158°Fの温度で起こることが観察されている。NEPIでは、エデスチンの変性温度よりもかなり低い温度、例えば約158°Fで顆粒化が起こる場合があり、ここで、エデスチンの変性温度は約95℃であることが示されている。食品に使用する植物タンパク質の低温殺菌のために当業者が通常使用する温度よりも低い温度で、NEPIを低温殺菌することが非常に重要である。当業者は従来、製品を迅速に処理するために、本開示において顕著な顆粒化を引き起こす温度でタンパク質単離物を低温殺菌する。低温殺菌NEPI 270は、冷水232で洗浄し、希釈した結果である。
【0157】
図3に示されるように、低温殺菌104が完了した後、NEPI 250は、NEPI噴霧乾燥プロセス300によって噴霧乾燥させるか、構造化タンパク質食品120の製造に使用するための濃縮物として冷蔵保存することができる。遠心デカンター分離直後のNEPI濃縮物の固形分は、約35%~45%の範囲にあり、ポンプ圧送するのが難しい濃厚なペーストである。この時点で冷水を加えてNEPI 250濃縮物の固形分を、好ましくは約30%に低減させ、158Fを超えない温度に維持された加熱パイプに通してスラリーを素早くポンプ圧送しやすくする。希釈により、より乱流が可能になり、145Fまで加熱する際の熱分布が改善され、完成した乾燥エデスチン製品に望ましくない過熱したタンパク質の凝集体及び顆粒が形成されることなく低温殺菌が可能になる。噴霧乾燥の前に、NEPI濃縮物を、タンク内で約145°F、または低温殺菌温度で保持することができる。次いで、噴霧乾燥306は、より高い噴霧乾燥306の温度、または、既存製品が約158°F以上に達する可能性があり、タンパク質の凝集を引き起こし、機能的に劣ったNEPI 250をもたらす場合がある温度で実行することができる。このタンパク質の凝集は、非還元SDS-PAGEゲル上で約100kDaで目に見える場合があり(
図9に示す)、ここで、予想されるエデスチンまたは麻粒タンパク質のバンド以外のバンドが目に見える。非還元条件下で、エデスチン二量体に予想される約50kDaのバンドを超える高分子量で存在するバンドは、噴霧乾燥300中の過剰な熱によって引き起こされる凝集を表している場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、噴霧乾燥300の最高温度が顕著なタンパク質凝集が起こる温度より低いかどうかを測定する1つの潜在的な方法は、非還元SDS-PAGEゲル上で予想外の高分子量バンドを同定することであってもよい。マイクロ波乾燥は、本開示で使用することができる別の方法であり、マイクロ波乾燥中、NEPI 250は、130F殻140Fの間などの低温に保たれる一方、真空圧下で水分が除去される。
【0158】
図4は、構造化タンパク質食品120に色を加えるプロセスを示す。白身肉及び血合肉類似物プロセス400は、鶏肉または魚を再現することができる白身肉NEPI 412と、牛肉または鶏モモ肉を再現することができる血合肉NEPI 422のいずれかを製造することができる。白身NEPI 422を製造するには、脱殻麻粒105を使用することができる。一実施形態では、脱殻麻粒105を天然エデスチンタンパク質単離プロセス200にかけることができ、これにより、白身肉NEPI 412が得られ、これを構造化タンパク質食品プロセス100で使用して白身肉レプリカを製造することができる。血合肉NEPI 412を製造するには、全粒麻粒101を使用することができる。一実施形態では、全粒麻粒101を天然エデスチンタンパク質単離プロセス200にかけることができ、その結果、血合肉NEPI 412が得られ、これを構造化タンパク質食品プロセス100で使用して血合肉レプリカを製造することができる。一実施形態では、一部の全粒麻粒と一部の脱殻麻粒の使用により、全粒麻粒が、脱殻麻粒の量に対して約20~30重量%の濃度で使用され、血合NEPI 412または中間色NEPI 432が得られる場合がある。一実施形態では、麻粒の脱皮によって以前に除去された殻を脱殻麻粒105に再導入して、色を加えることができ、ここで、一実施形態では、血合肉色を達成するために、殻を、脱殻麻粒に対して約10~15重量%の量で、脱殻穀粒105に加えて、中間色NEPI 422を製造することができる。
【0159】
図5は、油及びアルブミン抽出プロセス500を示す。天然エデスチンタンパク質単離プロセス200の生成物であるAOAE230は、アルブミン550及びヘンプ油560を製造するプロセスであり得る。油及びアルブミン抽出プロセス500では、AOAE230を蒸発させて濃縮物506にすることができる。製品を、均質化して504、加熱して低温殺菌する530。AOAEを清澄化すること502が有用であり得る。180Fまで加熱する520と、エマルジョンが分解する場合がある。蒸発させて好ましくは水よりも油が多くなる506。凍結近くまでまたは凍結まで冷却する508。クリーマリーセパレーターで遠心分離して510、アルブミン550またはヘンプ油560を得る。
【0160】
図6は、ヒドロゾル形成プロセス600を示し、このプロセスでは、NEPI 250を予熱した水と組み合わせて、
図2に実質的に記載したタンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。ヒドロゾル形成プロセス600では、約135°Fに予熱した水を、NEPI 250に加え、高剪断下で混合して106、タンパク質ヒドロゾル108を形成することができる。タンパク質ヒドロゾルは、タンパク質ヒドロゾルの形成前、形成中、または形成後に145°Fで低温殺菌することができる。NEPI 250の製造後には、低温殺菌条件を維持または作出する必要がある。低温殺菌製品104は、噴霧乾燥306してNEPI粉末308を形成する場合には、最初にNEPI 250を水和することによって、または別様にNEPI 250の適切な程度の水和を維持し、低温殺菌条件を可能な限り最大限に維持することによって調製することができる一実施形態では、NEPI 250に加えられる予熱水の量は、溶液を乾燥固体重量でNEPI1部に対して水約3部にすることができる。いくつかの実施形態では、NEPIを冷却機で凍結し310、凍結乾燥312して、NEPI粉末308を製造することができる。ヒドロゾルを130Fまで加熱する111と、有用であり得る。油を、110~115Fに加熱すると、有用であり得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、予熱水は水道水であってもよく、いくつかの実施形態では、エリー湖から供給される水道水であってもよく、実質的に溶質を含まなくてもよい(例えば、水道水、蒸留水、または脱イオン水)。塩は、タンパク質ヒドロゾル108またはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の構造を破壊する場合があるため、水和及びタンパク質調製プロセス中に溶液に加えるべきではない。塩は、硬化後に加えてもよいが、硬化前には加えてはいけない。いくつかの実施形態では、タンパク質の水和及び解きほぐしは、(理論に拘束されることなく、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成中に油との適切な相互作用を可能にするために、タンパク質の構造がわずかに変化または解きほぐされるように、)100°F~135°Fで、またはいくつかの実施形態では100°F~155°Fの間で実行することができる;あるいは、他の実施形態では、タンパク質ヒドロゾル形成は、より低い温度で実行してもよいが、その温度は、タンパク質を水和及び解きほぐしすることができない低温より高くなければならない。好ましくは、水和及びタンパク質調製ステップ中の温度は、タンパク質の凝集及び顆粒化を引き起こす場合がある温度に達することなく、145°Fまたは低温殺菌104温度にできるだけ近いままにするべきである。タンパク質ヒドロゾルが形成されると、予熱油109は、いくつかの実施形態では110°F~115°Fの間、他の実施形態では100°F~155°Fの間に加熱してもよく、または場合によっては、油の添加によりタンパク質のヒドロゾル構造が破壊されるような低温であるとみなされる温度よりも高いが、タンパク質-脂肪ヒドロゾルの顆粒114が生じる温度よりも低い温度に保持してもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、脂肪を、pH6.5~pH7.8の間(例えば、pH7.5)を有する水和タンパク質の温めた懸濁液(例えば、エデスチンを含有するタンパク質単離物)と組み合わせることによって製造することができる。ワーリング型ブレンダーもしくは手持ち式ホモジナイザーなどでの急速撹拌、またはこの混合物の均質化により、エマルションが形成される。タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の物理的特性は、タンパク質のタイプ、タンパク質濃度、均質化時のpHレベル、均質化の速度、及び脂肪対水の比を変えることによって制御することができる。
【0163】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成するには、多価不飽和脂肪酸(PUFA)油または脂肪であって、好ましくはココナッツ油または脂肪であり得るものを、脂肪の融点をわずかに超えるまで加熱し、タンパク質ヒドロゾル108に加えることができる。理論に拘束されるものではないが、脂肪は、水和した天然エデスチンを取り囲む層を形成し、それによって、本質的に水和タンパク質を封入する液体マトリックス、すなわちタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成し、濃厚かつ安定なゲルを効果的に作出する油中水和タンパク質エマルジョンを形成することができる。効果的に、油は水和タンパク質構造を密閉して保護することができる。水和タンパク質は、乾燥タンパク質よりもかなり多くの脂肪をゲル状態で保持することができる。一般に、本出願で考察するように、最初に水和され、次にその変性温度未満に穏やかに加熱される天然の球状タンパク質は、その重量の最大2倍の脂肪を保持できることが見出されている。タンパク質-脂肪ヒドロゾルの含水量は、いくつかの実施形態では、約30重量%~約70重量%の範囲であり得る。含水量とは、試料から水分が蒸発した後の質量変化のパーセンテージとして計算される、分析方法によって測定される材料中の水分の量を指す。
【0164】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれかでは、タンパク質脂肪ヒドロゾル114は、香味剤または他の添加成分を含んでもよい。以下の成分:脂溶性または他の香味系、塩化ナトリウムを含む塩、植物ベースのアルブミン源、植物ベースの不溶性または可溶性繊維を、完成したタンパク質-脂肪ヒドロゾル114基準で、典型的には2重量%未満で、場合により加えることができる。デンプンは、単独で、または必要に応じて複合炭水化物または糖を含む他の可溶性炭水化物と組み合わせて、最大約10重量%、より好ましくは5重量%未満のレベルで加えることができる。補助成分は、香味またはテクスチャを改良及び変更する目的で、硬化前にタンパク質-脂肪ヒドロゾル114に加えてもよい。繊維は、構造化タンパク質食品120の「きしみ感(squeakiness)」を低下させるために加えてもよい。
【0165】
一実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、重量で約15重量%~約25重量%、より好ましくは約18重量%~約22重量%のタンパク質を含むことができ、ここで、タンパク質は天然の油糧種子タンパク質であり得;一実施形態では、タンパク質単離物の約75重量%~約85重量%が球状タンパク質を含み、好ましくはタンパク質単離物は15重量%未満のアルブミンを含み、より好ましくは5重量%未満のアルブミンを含む。さらに重要なことは、球状タンパク質はその天然の状態にあってもよく、好ましくはカゼインまたは大豆タンパク質単離物よりも多い量のアミノ酸システインをかなりの量で有してもよい。タンパク質組成物のバランスは、いくつかの実施形態では、主にカルシウム及びリンなどのミネラルであり得る。天然の油糧種子球状タンパク質は、好ましくは、相当量のシステインを有し得る。
【0166】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、約40重量%~約70重量%、またはより好ましくは40重量%~60重量%の水を含み得る。
【0167】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、一態様では、約0重量%~約35重量%の脂肪を含み得る;飽和脂肪酸対多価不飽和脂肪酸(PUFA)の比は、100重量%の飽和脂肪と100重量%のPUFAとの間である。これら2つの量の間の脂肪を組み合わせると、脂肪と組み合わせて使用されるタンパク質の量に応じて、これまで報告されていないさまざまな固有のテクスチャが得られる。
【0168】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、いくつかの実施形態では、約0重量%~約5重量%のデンプンを場合により含んでもよい。加えられるデンプンの量は、タンパク質の水和に必要な、タンパク質に加えられる水の量を超えて、加えられる水の量に依存する場合がある。
【0169】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114を形成するための成分を手動または機械的に混合することによって形成することができる。好ましくは、水和タンパク質を最初にタンパク質の造粒温度の直下まで温め、油及び/または溶融脂肪を加え、好ましくは混合物を穏やかに均質化する。
【0170】
一態様では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、120°F~150°Fの温度で混合することができる。形成されたゲルまたはマトリックスを破壊することなく、タンパク質を加熱環境に置くための温度範囲は、70℃~100℃であることが見出されている。これらの温度は、大豆などの従来の肉類似タンパク質の押出に一般に必要な押出温度よりも大幅に低い。押出機で通常使用される条件下での大豆タンパク質の変性及び繊維化の温度は、約130℃~140℃の範囲にある。本開示によれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114のオーブン加熱によって、及び/またはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を加圧調理(レトルト処理)してタンパク質を積極的に硬化させることによって、良好なテクスチャ化を得ることができる。
【0171】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の物理的特性は、ヒドロゾルの物理的特性である。粘度は、油、脂肪、及び水、及びタンパク質の含有量に依存する。水分をより多くすると、タンパク質対脂肪の比率が低くても粘度が実質的に低下する。同様に、タンパク質対脂肪の比率が非常に低く、水分が少ないと、粘度が非常に高くなる可能性がある。脂肪系及びタンパク質系の品質及び選択も、粘度に著しい影響を与える。
【0172】
タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成は、天然タンパク質の変性点未満で行うことができる。しかし、本開示によれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は微生物学的に安定ではないため、その温度で保存することは望ましくない。直ちに加熱処理してタンパク質の形状を硬化することが好ましい。液体マトリックスは、さらなる処理の前に、熱交換器または他の方法で6℃未満に冷却して保存することもできる。
【0173】
図7は、構造化タンパク質食品120をもたらすNEPI 770のレトルトプロセスを示す。NEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を、形成されたTETRAPAK200mL容器702内に分配し、一実施形態では、各容器に180gを満たす。上部はTETRA RECART機械を使用して密閉する704ことができる。充填されたNEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾルを、レトルト機械内に配置する706ことができる。次いで、NEPIタンパク質-脂肪ヒドロゾルを、レトルト条件下で加熱して708硬化する710ことができる。いくつかの実施形態では、このプロセスにより、構造化タンパク質食品120が得られる。
【0174】
本開示によるレトルトに関して、
図14~18は、種々のNEPI製品及び市販のヘンプタンパク質粉末のレトルト処理の結果の写真を示す。各図にはレトルト処理製品の拡大図が含まれている。茹で鶏肉を標準として使用した。以下の表6は、レトルト処理ヘンプ製品のテクスチャプロファイル分析の結果を示す。表7及び8は、茹で鶏胸肉を標準として使用して、レトルト処理によって製造され、試験された各製品の比色データを示す。
【0175】
図14~18は、レトルト処理NEPI脱殻粉末250の写真を示し、固体は、タンパク質対脂肪(NEPI 250対ココナッツ油)が約2:1であり、固体対液体(水)の比が約2:3である。タンパク質-脂肪ヒドロゾルの調製後、当業者に知られているように、レトルト処理製品を製造した。
【0176】
【0177】
図15Aは、NEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図15Bは、
図15AのNEPI脱殻ヘンプ濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図15Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒濃縮物を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0178】
図16Aは、NEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図16Bは、
図16AのNEPI脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図16Cは、本開示による
図15BのNEPI脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0179】
図17Aは、VICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図17Bは、
図17AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図17Cは、本開示による
図17BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0180】
図18Aは、HEMPLAND脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の写真である;
図18Bは、
図18AのVICTORY HEMP脱殻ヘンプ粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である;
図18Cは、本開示による
図18BのVICTORY HEMP脱殻麻粒粉末を使用したレトルト肉類似物の断面の拡大写真である。
【0181】
図8は、NEPI 250を押出成形してテクスチャ化構造化タンパク質食品120を製造するプロセスを示す。
図8は、加熱オーガー、好ましくは、一実施形態では、中空の蒸気加熱オーガー800、または他のタイプの加熱オーガー押出機を有する押出機を提供するステップを示す。一実施形態では、押出機は、SOURCE TECHNOLOGYによって提供されるPOWERHEATER PH 100であってもよい。本開示で利用することができるこの機械で使用される技術は、米国特許第10,893,688号、同第10,624,382号、同第10,149,484号、同第10,092,013号、同第10,028,516号、同第9,931,603号、米国特許出願公開第2010/0062093号、同第2011/0091627号、同第2019/0299179号、同第2020/0113222号、同第2020/012095号、及び同第2020/02680205号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。POWERHEATER PH 100は、本開示において、オーガーを加熱し、より均一に加熱されたタンパク質脂肪ヒドロゾルを提供するために、蒸気をオーガーに導入できる中空オーガー設計により、オーガーと押出パイプまたはチャンバーの内壁の温度をより適切に制御することができ、これは、本開示を適切に設定するために非常に重要である。CLEXTRALまたはWENGERによって開発されたものなどの従来の押出機は、本開示に従って試験されたが、満足のいく最終製品を提供しなかった。従来の押出機は、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルが押出機パイプの内壁に付着する原因となった。
【0182】
POWERHEATER PH 100は、繊維化された投入材料とともに使用されることが知られているが、一般的にはタンパク質ではなくデンプンを投入材料に設定するために使用されることが知られている。タンパク質硬化物の押出成形は、一般に100℃をはるかに超える温度で実行されるため、タンパク質硬化の投入材料はPOWERHEATER PH 100とともに使用されるとは考えられない。しかし、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルは、本開示のタンパク質-脂肪ヒドロゾルを繊維化する際に、75℃でPOWERHEATER PH100によって効果的にテクスチャ化され、繊維化され、これは約75℃~85℃の間の比較的低い温度で達成され、オーガー及び押出機は75℃~85℃の間に予熱され、押出成形は約70℃~95℃の範囲で起こる。一実施形態では、タンパク質-脂肪ヒドロゾル押出機では、75℃でPOWERHEATER PH 100を使用して、3mmスクリューサイズではなく、8mmスクリューサイズを使用する。タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、吸引ポンプまたはスタッフィングポンプを使用してPOWERHEATER PH 100に投入することができ、開始温度は約85℃ 802であり得る。タンパク質-脂肪ヒドロゾルを押出機804にポンプ移送した後、約75℃~85℃で押出を進めることができ、タンパク質-脂肪ヒドロゾルは押出パイプ806の内壁に付着しない。このプロセスにより、テクスチャ化構造化タンパク質食品120が製造される。本開示に従って押出成形されたテクスチャ化構造化タンパク質食品120は、試験において、調理された鶏胸肉と類似のテクスチャ、繊維、及び色を有することが実証されており、従来技術及び当業者の知識を考慮すると、優れた予想外の特性を有する。
【0183】
図19は、上述のようにPOWERHEATER PH 100上で押出された、本開示による、テクスチャ及び繊維の類似性を示す、脱殻粉末からの押出NEPI及び茹で鶏胸肉片の写真を示す。茹で鶏胸肉1910は、本開示に従って噴霧乾燥脱穀麻粒NEPIから製造され、加工された押出成形NEPI 250鶏肉製品1920の隣に示されている。麻粒を、NEPI 250、ココナッツ油、及び水の3つの材料のみを、それぞれ2:1:3の比率で使用することから生じるこの結果は、予想外である。
【0184】
大豆ベースの肉類似物の押出成形を含むほとんどの押出成形では、タンパク質と脂肪の比率が、典型的には10:1より大きいことがわかっている。そのため、押出成形され、変性され、繊維化された大豆は、脂肪をほとんど保持することができない。しかし、エデスチンなどの天然の球状タンパク質の水和ゲルは、本開示によれば、輻射、マイクロ波、または直接加熱もしくは押出成形を含む他の形式の加熱の適用によって生成されるゲルの硬化物または固体形態の形成後であっても、その重量の2倍までの脂肪を保持することができる。
【0185】
本開示のプロセスによれば、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114は、系内のタンパク質の濃度に応じて、約70℃~100℃の温度で固体状態に硬化することができる。低い硬化温度は、NEPI 250の天然タンパク質の変性と一致する。
【0186】
本開示によれば、押出成形中に形成される固体構造は冷却することができ、硬化物を代表するものであるが、未調理のタンパク質または「生の」肉と同様に不完全な変性を伴う。「未調理」タンパク質をさらに加熱すると、タンパク質がさらに変性することで形状、弾力性、テクスチャなどが強化され、最終的にはある程度の水分も放出される。本開示のプロセスによれば、押出機内の硬化物からかなりの量の水が放出される程度に製品を加熱することは望ましくない。むしろ、ゲル及びタンパク質の形状またはテクスチャを単に固化させることが望ましい。一実施形態では、本開示は、生の肉もしくは乳製品類似物、または生の動物肉に類似した構造化タンパク質食品120を押出機内で調製するためのプロセスを記載する。この生の肉類似物を伝統的または商業的な手段でさらに調理すると、肉が強化され、硬質になる。
【0187】
本開示によるプロセスは、完全に変性したタンパク質を使用し、次に脂肪、デンプン、及び他のタンパク質を含む他の結合剤と共ブレンドしてハンバーガータイプ素材の外観を形成することによって肉類似テクスチャを作出する既存の技術とは対照的である。既存の技術によれば、このタイプの硬化物は、主にデンプンまたはグルテンなどの添加された生タンパク質のゲル化を通じて調理中に達成される。
【0188】
構造化タンパク質食品120の最終テクスチャは、タンパク質、脂肪、及び水の比率を含む液体マトリックスの特性、ならびに押出成形条件に依存し得る。本明細書に記載されるように、単離植物タンパク質の押出混合物は、構造化タンパク質食品120と呼ばれることがあり、これは、肉類似物であってもよく、肉類似物の繊維性及び引張強度は、温度、圧力、スループット、及びダイサイズなどの押出パラメータの共変動によって制御することができる。例えば、より低い押出温度、中程度/低スループット、及びより小さなダイの組み合わせは、引張強度が低い、繊維性の高い組織の製造に有利であるが、より高い押出温度、より高いスループット、及びより大きなダイの組み合わせは、引張強度が非常に高い、繊維性の低い組織レプリカの製造に有利である。
【0189】
肉類似物の繊維性及び引張強度も、押出混合物の組成を変更することによって調整することができる。例えば、単離植物タンパク質の脂肪及び水に対する比率を増加させることによって、または押出混合物中の含水量を低減させることによって、より細い繊維及びより大きな引張強度を備えた肉類似体を作製することができる。
【0190】
液体マトリックスの押出は、液体マトリックスを押出機に供給することを伴う。いくつかの実施形態では、押出機は、SOURCE TECHNOLOGY POWERHEATER PH 100であってもよい。CLEXTRAL及びWENGER二軸押出機を試験したが、満足のいく結果が得られなかった。本開示のプロセスによれば、押出成形においては、21℃未満の温度を達成するために冷却が重要であり、これにより、飽和脂肪が構造内で容易に硬化され、製品を冷蔵温度または冷凍温度までより効率的に冷却できるようになる。
【0191】
製品ごとに、湿潤成分ブレンドをフィーダーに移送し、押出機のフィードポートを通じて、液体マトリックスをある一定の投入速度で計量する。従来の押出成形では、乾燥タンパク質製品が機械の投入口に供給される。乾燥製品が機械内を移動すると、水と脂肪が別々の投入口から導入される。対照的に、本開示によるプロセス中、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の形成中に起こる化学反応を厳密に制御するために、本明細書で上述したように、水和タンパク質と油を最初に混合する。したがって、いくつかの実施形態では、押出中に追加の水、デンプン、または脂肪を押出機に加えても加えなくてもよい。いくつかの実施形態では、繊維もまた加えてもよい。
【0192】
植物ベースの肉類似体の従来の押出成形では、押出成形を開始する前に水及び脂肪を加えると、温度が上昇するにつれて製品から水が逃げるため、望ましくない蒸気の放出が生じる場合がある。したがって、本開示では、水及び脂肪を加えるプロセスを、押出中に厳密に制御する。本開示によるプロセスでは、液体マトリックス押出混合物は、ゲルの形成によって製品から水が放出されるのを防ぐように特別に設計されている。本開示による液体マトリックスの調製中に、水和タンパク質に油を加えると、押出成形中に、そうでなければ機械から蒸気が放出されるであろうが、製品から水が放出されるのを防ぐエマルジョンゲルが形成される。ゲルの形成により、押出成形中及び最終製品中の液体マトリックス中の高水分の維持も可能になり、これは構造化タンパク質食品120の優れたテクスチャにとって望ましい。
【0193】
押出成形時の温度は、得られる製品にとって重要である。温度は、約70℃~100℃の間、または100℃~110℃の間に徐々に上昇させ、維持されるべきである。従来の押出成形では、押出機内の温度は、一般に130℃を超える。本開示のプロセスでは、低温によりタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の破壊が防止され、それによって化合物の分子構造が実質的にまたは部分的に無傷のまま残ることが可能になる。タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の温度は、好ましくはタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を硬化させるために約75℃~85℃に維持し、その後、冷却して押出プロセス中に温度を21℃未満に低下させることができる。本開示のプロセスでは、従来の押出成形中に使用される温度よりも低い温度を維持することが重要である。ここで、脂肪がタンパク質のすべてのペプチド層の間に完全に取り込まれるように、温度をジスルフィド結合の設定が可能になる温度までのみ上昇させる。押出機または加熱環境内の滞留時間は、液体マトリックスの投入温度が70℃~110℃の間、好ましくは75℃~85℃の間に達することができるのに十分な時間でなければならない。
【0194】
好ましくは、押出機は、押出成形中に、毎分回転数(rpm)で測定される比較的低いスクリュー速度でタンパク質-脂肪ヒドロゾル114を回転させて、ゲル構造を維持し、製品中の高度の水分を維持する肉類似品を形成する。スクリュー速度を注意深く監視して、温度上昇を防ぎ、液体マトリックスの化学構造の破壊を防ぐことができる。
【0195】
水和タンパク質及び脂肪の封入よって形成される、ゆるいタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の構造の破壊を防ぐために、ゲルを熱システム内でゆっくりと移動させて、形状の形成及び若干の繊維化があるが、初期のゲル硬化(部分的なタンパク質変性)を維持することが不可欠であり得る。発酵(チーズ製造で起こるような)、または完全な調理及び変性は、最終的にはその後の製品の使用中に起こる。いくつかの実施形態では、35重量%~75重量%の間の含水量を有する完成した押出製品は、その後、所望であれば、通常のまたは商業的な調理プロセスにより高温で完全に調理して、消費する前に所望の完成されたテクスチャが得られるまでの時間、微生物学的安定性のために発酵、冷蔵または冷凍することができる。追加の関連する押出成形パラメータには、ダイの直径、ダイの長さ、ダイの端での製品温度、及び供給速度を含めてもよい。
【0196】
押出成形後の最終製品は、肉及び乳製品類似物などの従来のまたは既知の構造化タンパク質食品よりも動物の肉により類似の構造を有する場合がある。理論に拘束されるものではないが、本開示によるタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の押出成形によっては、タンパク質は、実質的に整列したタンパク質繊維を形成することができ、タンパク質繊維は、分子間力、例としてジスルフィド結合、水素結合、静電結合、疎水性相互作用、ペプチド鎖の絡み合い、タンパク質の側鎖間に共有結合架橋を形成するメイラード反応化学、によって一緒に保持されたタンパク質から構成される離散的な長さの連続フィラメントとして定義することができる。最初の押出(initial extruder)後の硬化物の強度は完全ではないか、または可能な限りの十分な強度ではない。実際、完成した熱硬化製品を取り出し、直接または間接熱、一般的な調理法、数例を挙げると、茹でる、焼く、揚げる、ローストする、電子レンジ処理する、発酵する、及び圧搾する(塩漬け及び酸の添加を含むチーズの製造におけるように)などによるさらなる加熱にかけて、初期硬化製品の強度及び形状を完成させることが望ましい場合がある。
【0197】
本開示のプロセスによるタンパク質-脂肪ヒドロゾル114の調製及び押出条件によって、いくつかの実施形態では、実質的に整列したタンパク質繊維がタンパク質内に最大約50重量%の脂肪を保持することが可能になる場合がある。したがって、最終製品は油っぽくなく、既存の肉類似物よりも動物肉に近い口当たり及び咀嚼中の脂肪放出を有する。口当たりとは、満足のいく感覚体験を提供する、しっとり感、噛みごたえ、咬合力、分解、及び脂肪質などの特性の組み合わせを指す場合がある。
【0198】
構造化タンパク質食品120の予想される最終構造は、タンパク質-脂肪ヒドロゾル114の組成に基づいて変化し得る。本開示の一実施形態では、構造化タンパク質食品120の予想される最終組成を、タンパク質の重量、炭水化物(存在する場合)の重量、脂質の重量、及び水の重量により、及び他の潜在的な成分とともに、表4に示す。される構造化タンパク質食品120の物理的特性を示す。表5は、表4に示される構造化タンパク質食品120の物理的特性を示す。押出成形が完了した後、製品を冷却、成形または切断することができる。押出製品に対して後処理ステップを実行することができる。
【0199】
肉類似物は、本明細書では構造化タンパク質食品120とも呼ばれ、押出成形以外の方法によってタンパク質-脂肪ヒドロゾル114から製造することができる。タンパク質-脂肪ヒドロゾル114から肉類似物を製造する追加の方法には、機械エネルギー(例えば、剪断、圧力、摩擦)、放射線エネルギー(例えば、マイクロ波、電磁)、熱エネルギー(例えば、加熱、蒸気テクスチャ化)の適用が含まれる。
【0200】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0201】
実施例1
天然エデスチンタンパク質単離物(NEPI)の調製
麻粒は、Hemp Oil Canada、Manitoba Canada及びRiver Valley Specialty Farms、Manitoba Canadaから入手した。脱殻麻粒はRiver Valley Specialty Farms社から入手し、全粒麻粒はHemp Oil Canada社から入手した。
【0202】
HHGは、5.5重量%の水分、46重量%の乾燥基準ケルダールタンパク質、35重量%の乾燥基準脂肪、及び重量で1.3対1のタンパク質対脂肪比を含有していた。WHGは、8.8重量%の水分、22重量%の乾燥基準ケルダールタンパク質、30重量%の乾燥基準脂肪、及び重量で0.7対1のタンパク質対脂肪比を含有していた。
【0203】
1000ポンドのHHGを、800ガロンの撹拌タンク内で34°Fにて5000ポンドの水と混合した。HHGを、34°F~38°Fの間の温度を維持しながら湿式粉砕した。ヘンプスラリーをシルバーソンローターステータータンク内で、毎分56ガロンの速度で30分間粉砕して、HHGを湿式粉砕した。希釈したスラリーを平均時間30分間保持した。SWECO60インチスクリーンのサイズ120メッシュを使用して抽出物を不溶性副生成物から分離し、固体の大部分を除去した。次いで、120メッシュスクリーンの通過物を、別のSWECO振動ふるい機上の200メッシュスクリーン上に通過させてスラリーを得、次いで、これを500ガロンのジャケット付きタンクに移して、スラリーの温度を34F~38Fの間に維持した。次いで、スラリーを、13gpmの速度でDELAVAL遠心分離デカンターに供給して、AOAEエマルジョンからエデスチン固体の分離物を得た。次いで、AOAEエマルションを、管状熱交換器システムに通して最高温度185Fで10分間低温殺菌した。次いで、AOAEを、処理のために900ガロンのタンクに保持した。固形分40%のエデスチン固形分を、冷水で固形分30%に希釈し、150F未満に設定した予熱した管状システムに通してポンプ移送し、これは146Fでそのシステムから出て、ジャケット内で145Fの温度を有するジャケット付き保持タンク中に入った。30分後、材料を熱交換器に通して35Fまで冷却し、さらなる処理及び噴霧乾燥機による乾燥のために冷蔵庫内のトートに入れた。
【0204】
1000ポンドのHHGを、800ガロンの撹拌タンク内で34°Fにて5000ポンドの水と混合した。HHGを、34F~38Fの間の温度を維持しながら湿式粉砕した。ヘンプスラリーをシルバーソンローターステータータンク内で、毎分48ガロンの速度で30分間粉砕して、WHGを湿式粉砕した。希釈したスラリーを平均時間30分間保持した。二段式SWECO60インチスクリーン上のサイズ60メッシュを使用して抽出物を不溶性副生成物から分離し、殻を除去した。SWECOの第2段に200メッシュのスクリーンを取り付け、シルバーソンからのスラリーが最初に60メッシュを通過して殻が除去され、直ちに200メッシュのスクリーンの上部に落ちて、これにより葉緑体及び微細繊維が除去された。SWECOを通過する速度は約6gpmであり、ふるい分けされたスラリーを、500ガロンのジャケット付きタンク(jacketed 500 gallon jacketed tank)に直接送り、スラリーの温度を34F~38Fの間に維持した。タンクが満杯になると、殻、繊維、または葉緑体を含まないスラリーを、13gpmの速度でDELAVAL遠心分離デカンターに供給して、AOAEエマルジョンからエデスチン固体の分離物を得た。次いで、AOAEエマルションを、管状熱交換器システムに通して最高温度185Fで10分間低温殺菌した。次いで、AOAEを、処理のために900ガロンのタンクに保持した。デカンターから出た固形分40%の薄茶色のエデスチン固形物を、冷水で固形分30%に希釈し、150F未満に設定した予熱した管状システムに通してポンプ移送し、これは146Fでそのシステムから出て、ジャケット内で145Fの温度を有するジャケット付き保持タンク中に入った。30分後、材料を熱交換器に通して35Fまで冷却し、さらなる処理及び噴霧乾燥機による乾燥のために冷蔵庫内のトートに入れた。出発材料のWGH重量に基づくNEPIの乾燥物質基準収率は、理論値の15%または79%であった。AOAE収率はDSB上で25.3%であり、殻、繊維及び葉緑体画分はDSB上で46.9%であった。全体の回収率は92%であった。HHGからのNEPI収率は理論値の30%または86%であった。AOAE収率はDSBで40.9%であり、殻、繊維及び葉緑体画分はDSB上で22.5%であった。全体の回収率は98%であった。WGH及びHHGから得られたNEPI製品の分析を、以下の表1及び2に示す。
【表1】
【0205】
本開示のプロセスによって調製されたNEPI濃縮物は、プロセス温度を38F未満に維持しながらも、低温殺菌及び粉末への噴霧乾燥の前に依然として高い微生物活性を示す。(表1を参照のこと)。入ってくる原材料は、麻粒または脱殻ヘンプのいずれであっても、総プレート計数(TPC)が通常2,000TPC~250,000TPCの範囲にある。タンパク質が豊富な水性媒体では、温度を42F未満、好ましくは38F未満に維持することが重要である。温度が低いにもかかわらず、水性粉砕の開始後すぐに低温殺菌しないと、TPCは増加し続け、タンパク質の損傷につながる。プロセスの持続時間が短く、遠心分離デカンターによる分離直後にAOAEとエデスチンスラリーの両方を低温殺菌できることは、プロセスにおいて不可欠な要素である。得られたエデスチン製品は145Fの低温で殺菌されており、前述したようにゲル化機能が保たれている。AOAEは、145F、より好ましくは195Fを超えるはるかに高い温度で短時間加熱することができ、これは、遠心分離により残留不溶性固形物を除去し、その後、エマルジョン破壊により水性アルブミン相と油相を分離するさらなる処理に有利である。最終粉末形態のNEPI製品の低温殺菌の成功は、表1の製品のTPCに反映されている。
【表2】
【0206】
表3には、DSCサーモグラフを示す。DSCサーモグラフで測定したNEPIの構造(
図12A~12B及び
図13A~Bに部分的に示す)は、以下の市販製品と比較することができる。
【表3】
【0207】
SDS-PAGEゲル電気泳動によって測定した、NEPI及び市販のヘンプタンパク質製品のさらなる構造及び組成分析を
図9及び
図10に示す。
【0208】
実施例2
噴霧乾燥NEPI
実施例1から得られたNEPI冷却スラリーを、乾燥のために市販の噴霧乾燥機に送った。毎時1200lbの水分除去能力を有するノズル付きALFA LAVAL型噴霧乾燥機を使用して粉末を乾燥させた。冷蔵製品をジャケット付き250ガロンタンクにポンプ移送し、ジャケットを155Fに保つように水温を設定した。タンクには低速撹拌機が付いており、約200ガロンの30%濃縮エデスチンスラリーを加熱するのに数時間かかった。製品は、温度に達すると、乾燥機に供給される別のタンクに送られた。NEPIは、乾燥機の壁に付着せずに、非常に容易に乾燥することに注意すべきである乾燥製品の最終出口温度は、85Fであった。実施例1から得られた各NEPI(WG及びHHG)製品について、乾燥製品の組成を以下の表2に示す。
【0209】
実施例3
NEPI及び市販のヘンプパウダーからのタンパク質-脂肪ヒドロゾルの製造
タンパク質ヒドロゾルは、5ガロンのプラスチックバケツ内で、140Fに予熱した14lbの水を加えることによって容易に作製される。1/4馬力の手持ち式工業用均質化棒を使用して撹拌しながら、14lbのNEPI乾燥粉末を水にゆっくりと加える。全ての粉末を加えるまで均質化を維持する。現在の温度は130Fで、約15分間保持した後、7ポンドのキャノーラ油を一度に加え、混合物を均質化棒で約1分間、またはスラリーがよくブレンドしたように見えるまで手短に混合し、油を均一なエマルジョンとして組み込む。
【0210】
実施例4
さまざまなタイプの肉及び乳製品類似物のタンパク質-脂肪ヒドロゾル配合物及び特性
実施例4は、種々のタイプの肉類似物を製造するために使用される液体マトリックスを含む配合物を開示する。本開示によれば、タンパク質、脂肪及び水の比率に応じて、魚介類、白身肉、血合肉、卵及びチーズを再現する植物ベースの肉類似物標的を含む、異なるタイプの肉類似物品を得ることができる。
【表4】
【0211】
表4に関して、含水量の標的は35重量%~75重量%の間である。最小70重量%の球状天然植物タンパク質は、15重量%未満、好ましくは5重量%未満のアルブミン含有量を有する。液体マトリックスの温度は、混合ブレンドから加工まで140°Fに維持する必要がある。表4では、天然エデスチンであり得る天然種子油タンパク質の能力により、異なるタイプの肉類似品を得るために脂肪の量を変えることができる。
【0212】
得られた製品の構造的特徴は、複製した材料の構造的特徴と類似している。例えば、魚介類のテクスチャは白色で、生のエビまたはホタテに類似した非常に弾力のある構造を有していた。白身肉は白色であり、部分的に調理済みの鶏フィレ肉から予想されるものに類似のテクスチャを有していた。血合肉はやや薄茶色であり、やはり鶏モモ肉に類似のテクスチャを有しており、白身肉と比較して脂身が多く、水分が多かった。卵はスクランブルエッグに予想されるものに類似しており、色も白かった。チーズはチーズカードに類似しており、実際にフレッシュチーズカードに類似した部分をかじるときしむ音がした。
【表5】
【0213】
実施例5
レトルトによる構造化タンパク質食品の製造
レトルト条件は、77Fの温度から270Fのピークまで15分を超え、15分で95Fまで低下した。圧力は1分で0.20バールであり、4分で3.0バールに増加し、15分で0.8バールに低下した。使用した機械はSundry RETORTタイプ:AP-95、シリアル番号:705であった。
【表6】
【表7】
【表8】
【0214】
【0215】
実施例6
押出成形による構造化タンパク質食品の製造
実施例3からのタンパク質―脂肪ヒドロゾルを、毎分6lbの流速及び185Fで3MMスクリューオーガー直径に設定されたPower 100 Source Technology押出機で使用して、白身鶏肉の外観及びテクスチャを有する構造ゲルを作成した。白身鶏肉及び押出成形によるヒドロゲル構造化タンパク質食品の比較写真の
図19を参照のこと。
【0216】
本開示は、予想外にも、麻粒、油、及び水の3つのみの成分を使用して、驚くほど優れたヘンプベースの構造化タンパク質製品を製造できることを実証する。本開示に従って製造されたヘンプ肉類似物は、色、テクスチャ及び味の点で、驚くべき程度に鶏肉を再現することが本明細書で示される。市販のタンパク質製品には、優れた肉類似物を製造すると主張するものもあるが、この目的に使用した場合、味、色、またはテクスチャの点で天然のエデスチンタンパク質単離物にたとえられなかった。
【0217】
肉類似物を製造するためにヘンプタンパク質のみを使用した市販製品は発見されなかった。さらに、先行技術は、ヘンプタンパク質単独では、肉及び乳製品類似物などの構造化タンパク質食品を製造するための有望なタンパク質ではないことを教示している。本開示は、そうではないことを実証する。
【0218】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻粒を選択すること;
前記麻粒を低温で水性湿式粉砕して麻粒スラリーを生成すること;
タンパク質収量を実質的に低下させることなく、前記麻粒スラリーを160~200の間のメッシュサイズでふるい分けし、前記麻粒スラリーからクロロフィル含有粒子を除去すること;
遠心分離デカントにより、前記ふるい分けされた麻粒スラリー中で可溶性材料から不溶性材料を実質的に分離して、天然エデスチンタンパク質単離物及びアルブミン油水性エマルションを生成すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物が約20%W/Wの固形分含有量を超えるように維持するために水を供給し、混合してタンパク質ヒドロゾルを形成すること;
顆粒化を避けるために、155°F未満の温度で前記天然エデスチンタンパク質単離物を熱低温殺菌すること;
顆粒化を避けるために適切な温度を維持しながら、前記天然エデスチンタンパク質単離物を油と組み合わせて、タンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成すること;
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを、約75℃~95℃の間の温度で押出機に加えて、調理された動物肉の繊維状テクスチャに類似の繊維状テクスチャを有する構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、アルブミンを実質的に含有しない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
脱殻麻粒が、実質的に白身構造のタンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
全粒麻粒が、実質的に暗色構造のタンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
全粒麻粒及び脱殻麻粒の混合物を使用して、明色と暗色との間の中間色の構造化タンパク質食品を製造するために使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
殻が、明色と暗色との間の中間色の構造化タンパク質食品を製造するために、脱殻麻粒と組み合わされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、低温殺菌された後、タンパク質の凝集を避けるために、155°F未満の温度で噴霧乾燥される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
噴霧乾燥された天然エデスチンタンパク質単離物は、前記タンパク質ヒドロゾルを形成しながら低温殺菌条件を維持するために、約145°Fに予熱された水と混合され、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成しながら低温殺菌条件を維持するために、約145°Fの温度で、油が前記タンパク質ヒドロゾルに加えられ、低温殺菌条件が維持されながら、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルが前記押出機に加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルが、前記押出機に加えられるときに液体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記押出機が、蒸気加熱オーガーを有し、
160~200の間のメッシュサイズで、前記麻粒スラリーをふるい分けし、タンパク質収量を実質的に低下させることなく、前記麻粒スラリーからクロロフィル含有粒子を麻粒除去すること;
遠心分離デカントにより、前記可溶性材料から前記不溶性材料を実質的に分離して、天然エデスチンタンパク質単離物及びアルブミン油水性エマルションを製造すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物が約20%W/Wの固形分含有量を超えるように維持するために水を供給し、混合してタンパク質ヒドロゾルを形成すること;
顆粒化を避けるために、155°F未満の温度で、前記天然エデスチンタンパク質単離物を低温殺菌すること;
顆粒化を避けるために適切な温度を維持しながら、前記天然エデスチンタンパク質単離物を油と組み合わせてタンパク質-脂肪ヒドロゾルを形成すること;
約75℃~95℃の間の温度で前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを約押出機に加えて、調理された動物肉の繊維状テクスチャに類似の繊維状テクスチャを有する構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
麻粒を選択すること;
前記麻粒に水を加えること;
前記麻粒を水性湿式粉砕して麻粒スラリーを製造すること;
ふるい分けして前記麻粒スラリーから不溶性繊維を除去すること;
前記麻粒スラリーをデカントして水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造することであって、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物は、天然エデスチンタンパク質単離物及び水、並びに液体上清画分を含み、前記液体上清画分は、可溶性アルブミン及び麻油を含み;
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を加熱してタンパク質ヒドロゾルを生成すること;
前記タンパク質ヒドロゾルを油と組み合わせて、タンパク質―脂肪ヒドロゾルを生成すること;及び
前記前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項12】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、実質的にアルブミンを含有しない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記麻粒が、全粒麻粒及び脱殻麻粒のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記麻粒が脱殻麻粒であり、全粒麻粒が使用された場合のより濃い色に対して、より明るい色の天然エデスチンタンパク質単離物水性スラリー、より明るい色のタンパク質ヒドロゾル、及びより明るい色のヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
前記麻粒が全粒麻粒であり、脱穀麻粒が使用された場合のより明るい色に対して、より濃い色の天然エデスチンタンパク質単離物水性スラリー、より濃い色のタンパク質ヒドロゾル、及びより濃い色のヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
前記麻粒が全粒麻粒であり、脱殻麻粒と組み合わされて、前記脱穀麻粒のみが使用された場合のより明るい色に対して、及び前記全粒麻粒のみが使用された場合のより濃い色に対して、中間色の天然タンパク質水性スラリー、中間色のタンパク質ヒドロゾル、及び中間色のヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
前記麻粒に加えられる前記水の温度が低温である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
前記麻粒に加えられる前記水の温度が約32°F~38°Fの間である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項19】
前記水性湿式粉砕の前に、前記水は、約5対1の重量比で前記麻粒に加えられる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水性湿式粉砕は、ローターステーター型粉砕機を用いて行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項21】
前記水性湿式粉砕は、粉砕機を通る循環ループを介して約30分間行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項22】
前記水性湿式粉砕は、低温で行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項23】
選択的かつ逐次的にふるい分けすることにより、前記麻粒スラリーから、殻及び繊維、ならびに実質的にすべてのクロロフィル含有粒子が麻粒除去され、前記クロロフィル含有微粒子は、ふるい分けし、デカントした後、拡大しなければ、前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項24】
選択的にふるい分けすることにより、前記麻粒スラリーから、殻及び繊維、ならびに実質的にすべてのクロロフィル含有粒子が麻粒除去され、前記クロロフィル含有微粒子は、ふるい分けし、デカントした後、拡大しなければ前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項25】
選択的にふるい分けすることにより、実質的にすべての目に見えるクロロフィル含有粒子が除去される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項26】
選択的にふるい分けすることにより、実質的にすべてのクロロフィル含有粒子が除去される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項27】
前記麻粒スラリーから不溶性タンパク質を実質的に損失することなく、前記麻粒スラリーから実質的にすべてのクロロフィル含有粒子を除去するためにふるい分けすることをさらに含み、前記クロロフィル含有粒子は、ふるい分けし、デカントした後、拡大しなければ、前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項28】
前記麻粒スラリーから不溶性タンパク質を実質的に損失することなく、約160~200の間のメッシュサイズを使用して、実質的にすべてのクロロフィル含有粒子をふるい分けして除去することをさらに含み、前記クロロフィル含有微粒子は、ふるい分けし、デカントした後、拡大しなければ、前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項29】
約30~120の間のメッシュサイズを使用して、初めてふるい分けし、前記麻粒スラリーから前記不溶性繊維を除去すること;及び
前記麻粒スラリーから不溶性タンパク質を実質的に損失することなく、前記麻粒スラリーから約160~200の間のメッシュサイズを使用して、実質的にすべてのクロロフィル含有粒子を、2回目のふるい分けをして除去すること、をさらに含み、前記クロロフィル含有微粒子は、前記2回目のふるい分けをし、デカントした後、拡大しなければ、前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項30】
デカントは、遠心分離デカントによって行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項31】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物に水を加えて、天然エデスチンタンパク質単離物水性スラリーを製造すること;及び
前記天然エデスチンタンパク質単離水性スラリーを加熱して前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項32】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物の含水量を調整すること;及び
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項33】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物が、前記タンパク質ヒドロゾルを製造する前に、水溶液中で少なくとも約20%の固形分を有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項34】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約155°F未満の温度まで加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項35】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約130°F~155°Fの間の温度まで加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること、及び前記タンパク質ヒドロゾルを、少なくとも約30分間、約145°F~155°Fの間の温度で約保持して、前記タンパク質ヒドロゾルを低温殺菌することをさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項36】
微生物の増殖を制限するために、低温殺菌後に前記タンパク質ヒドロゾルを冷却することをさらに含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
熱交換器内で、低温殺菌後に、前記タンパク質ヒドロゾルを約32°F~42°Fの間の温度まで冷却することをさらに含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
冷却後、前記タンパク質ヒドロゾルを、約32°F~42°Fの間で保存することをさらに含む、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
天然エデスチンタンパク質を著しく変性させることなく、前記タンパク質ヒドロゾルを乾燥させて、天然エデスチンタンパク質単離物粉末を製造すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物粉末に水を加えて、第2の水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造すること;
前記第2の水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約130°F~155°Fの間の温度まで加熱して、第2のタンパク質ヒドロゾルを製造すること;及び
前記第2のタンパク質ヒドロゾルと油とを組み合わせて、タンパク-質脂肪ヒドロゾルを製造すること;及び
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを、約75℃~95℃の間の温度に加熱して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項40】
前記天然エデスチンタンパク質単離物を、約155°F未満の温度に維持しながら、前記天然エデスチンタンパク質を著しくに変性させることなく、前記タンパク質ヒドロゾルを噴霧乾燥して、前記天然エデスチンタンパク質単離物粉末を製造することをさらに含む、請求項38に記載のプロセス。
【請求項41】
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを約75℃~95℃の間の温度まで加熱して、前記ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項42】
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを押出機に加え、前記押出機が、約75℃~95℃の間の温度に設定されて、前記ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項43】
麻粒を選択すること;
前記麻粒に水を加えることであって、前記麻粒に加えられる前記水の温度が、約32°F~38°Fの間である、前記麻粒に水を加えること;
前記麻粒を水性湿式粉砕して、麻粒スラリーを製造することであって、前記水性湿式粉砕は、約42°F未満の温度で行われる、前記麻粒を水性湿式粉砕して、麻粒スラリーを製造すること;
約150のメッシュサイズを使用して、初めてふるい分けし、前記麻粒スラリーから不溶性繊維を除去すること;
前記麻粒スラリーから不溶性タンパク質を実質的に損失することなく、前記麻粒スラリーから約160~200の間のメッシュサイズを使用して、クロロフィル含有粒子を、2回目のふるい分けをして除去すること;
前記麻粒スラリーをデカントして、水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造することであって、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物は、天然エデスチンタンパク質単離物及び水、並びに液体上清画分を含み、前記液体上清画分は、可溶性アルブミン及び麻油を含み;
前記クロロフィル含有微粒子は、前記2回目のふるい分けをし、デカントした後、拡大しなければ、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物中には見えず;
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約130°F~155°Fの間の温度まで加熱して、タンパク質ヒドロゾルを製造すること;
前記タンパク質ヒドロゾルを、約30分間、約145°F~155°Fの間で約保持して、前記タンパク質ヒドロゾルを低温殺菌すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物を、約155°F未満の温度に維持しながら、前記タンパク質ヒドロゾルを噴霧乾燥して、天然エデスチンタンパク質単離物粉末を製造すること;
第2の水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造すること;
前記第2の水性天然エデスチンタンパク質混合物を、約130°F~155°Fの間の温度まで加熱して、第2のタンパク質ヒドロゾルを製造すること;
前記第2のタンパク質ヒドロゾルを油と組み合わせて、タンパク質―脂肪ヒドロゾルを製造すること;及び
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを、約75℃~95℃の間の温度に加熱して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項44】
デカントは、遠心分離デカントによって行われる、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、実質的にアルブミンを含有しない、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物に水を加えて、天然エデスチンタンパク質単離物水性スラリーを製造すること;及び
前記天然エデスチンタンパク質単離水性スラリーを加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項47】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物の含水量を調整すること;及び
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項48】
麻粒を選択すること;
前記麻粒に水を加えることであって、前記麻粒に加えられる前記水の温度が、約32°F~38°Fの間である、前記麻粒に水を加えること;
前記麻粒を水性湿式粉砕して、麻粒スラリーを製造することであって、前記水性湿式粉砕が、約45°F未満の温度で行われること;
約30~120のメッシュサイズを使用して、初めてふるい分けし、麻粒スラリーから不溶性繊維を除去すること;
前記麻粒スラリーから不溶性タンパク質を実質的に損失することなく、前記麻粒スラリーから約160~200の間のメッシュサイズを使用して、クロロフィル含有粒子を、2回目のふるい分けをして除去すること;
前記麻粒スラリーを遠心分離デカントして、水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造することであって、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物は、天然エデスチンタンパク質単離物及び水、並びに液体上清画分を含み、前記液体上清画分は、可溶性アルブミン及びヘンプ油を含み;
前記クロロフィル含有微粒子は、前記2回目のふるい分けをし、デカントした後、拡大しなければ、前記天然エデスチンタンパク質単離物中には見えず;
前記天然エデスチンタンパク質単離物は、実質的にアルブミンを含有せず;
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を水で調整し、約130°F~155°Fの間の温度に加熱して、タンパク質ヒドロゾルを製造すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物を、約155°F未満の温度に維持しながら、前記タンパク質ヒドロゾルを噴霧乾燥して、天然エデスチンタンパク質単離物粉末を製造すること;
前記天然エデスチンタンパク質単離物粉末に水を加えて、第2の水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造すること;
前記第2の水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約130°F~155°Fの間の温度に加熱して、タンパク質ヒドロゾルを製造すること;
前記タンパク質ヒドロゾルと油とを組み合わせて、タンパク質―脂肪ヒドロゾルを製造すること;及び
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを、約75℃~95℃の間の温度に加熱して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項49】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物に水を加えて、天然エデスチンタンパク質単離物水性スラリーを製造すること;及び
前記天然エデスチンタンパク質単離水性スラリーを加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物の含水量を調整すること;及び前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を加熱して、前記タンパク質ヒドロゾルを製造すること;をさらに含む、請求項48に記載のプロセス。
【請求項51】
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造した後に、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を、約130°F~155°Fの間の温度に加熱して、タンパク質ヒドロゾルを製造すること;及び噴霧乾燥の前に、前記タンパク質ヒドロゾルを、約30分間、約145°F~155°Fの間で約保持して、前記タンパク質ヒドロゾルを低温殺菌すること;をさらに含む、請求項48に記載のプロセス。
【請求項52】
麻粒を選択すること;
前記麻粒に水を加えること;
前記麻粒を水性湿式粉砕して麻粒スラリーを製造すること;
前記麻粒スラリーから不溶性繊維を除去すること;
前記麻粒スラリーをデカントして、水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造することであって、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物は、天然エデスチンタンパク質単離物及び水、並びに液体上清画分を含み、前記液体上清画分は、可溶性アルブミン及び麻油を含み;
前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を加熱して、タンパク質ヒドロゾルを製造すること;
前記タンパク質ヒドロゾルと油とを組み合わせて、タンパク質―脂肪ヒドロゾルを製造すること;及び
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項53】
前記麻粒スラリーからの前記不溶性繊維は、ふるい分けによって除去される、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
麻粒を選択すること;
前記麻粒に水を加えること;
前記麻粒を水性湿式粉砕して、麻粒スラリーを製造すること;
ふるい分けして前記麻粒スラリーから不溶性繊維を除去すること;
前記麻粒スラリーをデカントして、水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造することであって、前記水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物は、天然エデスチンタンパク質単離物及び水、並びの液体上清画分を含み、前記液体上清画分は、可溶性アルブミン及びヘンプ油を含む、前記麻粒スラリーをデカントして、水性天然エデスチンタンパク質単離物混合物を製造すること;ならびに
前記天然エデスチンタンパク質単離物を使用して、ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造すること、を含む、プロセス。
【請求項55】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、少なくとも約75%重量/重量のエデスチンを含む、請求項54に記載のプロセス。
【請求項56】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、少なくとも約85%重量/重量のエデスチンを含む、請求項54に記載のプロセス。
【請求項57】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、従来のテクスチャプロファイル分析によって測定した場合に、少なくとも約2500の硬度を有するレトルト加工された構造化タンパク質製品を製造するように適合される、請求項54に記載のプロセス。
【請求項58】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、従来のテクスチャプロファイル分析によって測定した場合に、約2500~約4500の硬度を有するレトルト処理された構造化タンパク質製品を製造するように適合される、請求項54に記載のプロセス。
【請求項59】
前記天然エデスチンタンパク質単離物は、従来のテクスチャプロファイル分析によって測定した場合に、少なくとも2500の硬度及び少なくとも2000の噛みごたえを有するレトルト処理されたヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造するように適合されている、請求項54に記載のプロセス。
【請求項60】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、従来のテクスチャプロファイル分析によって測定された場合、約2500~約4500の間の硬度及び約2000~約3500の間の噛みごたえを有するレトルト処理されたヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造するように適合される、請求項54に記載のプロセス。
【請求項61】
前記天然エデスチンタンパク質を水と合わせ、約155°F未満の温度に加熱して、前記天然エデスチンタンパク質を調製することによってタンパク質ヒドロゾルを生成すること;
前記タンパク質ヒドロゾルに油を加えることであって;
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、約40%~約70%重量/重量の水を含み、
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、約0%~約35%重量/重量の脂肪を含み;
タンパク質対脂肪の比は、約4:1~約0.7:1の間である、前記タンパク質ヒドロゾルに油を加えること;
タンパク質-脂肪ヒドロゾルを約145°F~155°Fの間まで加熱して、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを低温殺菌すること;及び
低温殺菌の後、前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルを加熱して、前記ヒドロゲル構造タンパク質食品を製造すること、をさらに含む、請求項54に記載のプロセス。
【請求項62】
前記タンパク質-脂肪ヒドロゾルは、約75℃~95℃の間の温度まで加熱される、請求項61に記載のプロセス。
【請求項63】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、実質的にアルブミンを含有しない、請求項61に記載のプロセス。
【請求項64】
ヒドロゲル構造化タンパク質食品を製造するのに適合した天然エデスチンタンパク質単離物、を含む、タンパク質単離物。
【請求項65】
前記天然エデスチンタンパク質単離物が、実質的にアルブミンを含有しない、請求項64に記載のタンパク質単離物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】