(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240130BHJP
C01C 3/12 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M4/58
C01C3/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532821
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2021143828
(87)【国際公開番号】W WO2023123415
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100212392
【氏名又は名称】今村 悠
(72)【発明者】
【氏名】田 佳瑞
(72)【発明者】
【氏名】張 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 楚英
(72)【発明者】
【氏名】郭 永勝
(72)【発明者】
【氏名】蘭 加佃
(72)【発明者】
【氏名】汪 済翔
(72)【発明者】
【氏名】林 文光
(72)【発明者】
【氏名】万 月娟
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA09
5H050BA15
5H050CA01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA18
5H050EA10
5H050EA24
5H050EA28
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本願は、粒子状であり、且つNa
xA
yM1[M2(CN)
6]
δ・zH
2O(式1)で表される化合物を含み、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きく、M1及びM2はそれぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する正極活物質を提供する。本願の正極活物質はサイクル特性及びレート特性に優れており、比容量が高い。本願はさらに前記正極活物質の製造方法、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状であり、且つ下記式(1)で表される化合物を含み、
Na
xA
yM1[M2(CN)
6]
δ・zH
2O (1)
式中、
Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きく、M1及びM2はそれぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する、正極活物質。
【請求項2】
04≦y≦0.2である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質の粒子において、A元素含有量漸次変化層の厚さは10~100nmの範囲内にあり、好ましくは10~75nmの範囲内にあり、前記A元素含有量漸次変化層の厚さとは、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法によって正極活物質粒子の元素含有量を定量測定した時、測定されたNaとA元素との含有量の比がNa:A=50At%:50At%に達する層から粒子表面までの距離である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記Aは、Li、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaのうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはK、Rb、Cs、Mg及びCaのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記M1及びM2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質の体積平均粒子径Dv50は、1~5μmの範囲内、好ましくは2~3.5μmの範囲内にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質の比表面積は、1~10m
2/gの範囲内にあり、好ましくは2~6m
2/gの範囲内にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質の含水量は≦2重量%であり、好ましくは、前記正極活物質の含水量は≦0.5重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
下記式(2)で表される化合物である正極活物質前駆体を溶媒に添加し、分散させて懸濁液を得、
Na
nM1[M2(CN)
6]
δ (2)
式中、前記M1及びM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<n≦2であり、且つ0<δ≦1であるステップ1と、
ステップ1で得られた懸濁液を冷却した後、該冷却状態で該懸濁液にAの塩を加え、且つ撹拌とエージングを行い、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きいステップ2と、
ステップ2で得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させ、正極活物質を得、
前記正極活物質は、粒子状であり、且つ下記式(1)で表される化合物を含み、
Na
xA
yM1[M2(CN)
6]
δ・zH
2O (1)
式中、A、M1、M2及びδはそれぞれ前記定義したとおりであり、0<y≦0.2、0<x+y≦2であり且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有するステップ3と、を含む正極活物質の製造方法。
【請求項10】
ステップ1における前記溶媒は極性溶媒であり、前記正極活物質前駆体の前記溶媒における溶解度は0.02mol/L以下であり、前記Aの塩の前記溶媒における溶解度は0.05mol/L以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒はアセトニトリル、アジポニトリル、メタノール、エタノール、水、ホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの1つ以上から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ2において、ステップ1で得られた懸濁液を10℃以下まで冷却し、好ましくは、ステップ1で得られた懸濁液を-20~10℃の温度範囲内まで冷却する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記Aの塩におけるAと前記正極活物質前駆体におけるナトリウムとのモル比は1:5以下であり、好ましくは1:20~1:5である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ1における正極活物質前駆体の製造方法は、
遷移金属元素M1の可溶性塩及び任意のNa含有徐放剤を水に溶解して、溶液aを調製するステップiと、
遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して、溶液bを調製するステップiiと、
撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下終了後に撹拌とエージングを行うステップiiiと、
ステップiiiで得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させるステップivと、を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属元素M1の可溶性塩におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、1:0.8~0.8:1の範囲内、好ましくは1:0.9~0.9:1の範囲内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップiiiにおいて、溶液を20℃~120℃の温度範囲内、好ましくは60℃~95℃の温度範囲内に保持させる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ2における前記撹拌とエージングは、50~1800rpmの撹拌速度で1~30分間行う、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質又は請求項9~17のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法で得られた正極活物質を含む、ことを特徴とする二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池の技術分野に関し、特に正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の需要が増加しているが、リチウム資源が限られていることで、リチウムイオン電池の持続可能な発展が制限されている。リチウムイオン電池の重要な補完として、ナトリウムイオン二次電池がますます注目されている。
【0003】
プルシアンブルー系材料は高容量、高電位平坦部、迅速なナトリウムイオン輸送チャネル及び低コスト、製造が容易である等、商業化における一連の優位性を有することから広く注目されている。しかし、既存のプルシアンブルー材料は、長期保存中に電気的、化学的特性の劣化が発生しやすい。従って、プルシアンブルー材料を改良することでその貯蔵特性、サイクル特性等の面をさらに向上させる必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯蔵特性及びサイクル特性が向上した正極活物質としてのプルシアンブルー材料を提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、本願の第1態様は、粒子状であり、且つ下記式(1)で表される化合物を含む正極活物質を提供し、
NaxAyM1[M2(CN)6]δ・zH2O (1)
式中、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きく、M1及びM2はそれぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する。
【0006】
これにより、特定の組成及びA元素の特定の分布により、前記正極活物質の貯蔵特性及びサイクル特性がいずれも向上し、且つA元素がドープされていないプルシアンブルー材料に比べて、材料の比容量が顕著に低下することがない。
【0007】
任意の実施形態において、0.04≦y≦0.2である。A元素の含有量を制御することにより、正極活物質が水をより吸収しにくくなる。
【0008】
任意の実施形態において、前記正極活物質の粒子において、A元素含有量漸次変化層の厚さは10~100nmの範囲内にあり、好ましくは10~75nmの範囲内にあり、前記A元素含有量漸次変化層の厚さとは、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法によって正極活物質粒子の元素含有量を定量測定した時、測定されたNaとA元素との含有量の比がNa:A=50At%:50At%に達する層から粒子表面までの距離である。A元素含有量漸次変化層の厚さを制御することにより、材料の貯蔵特性、サイクル特性及び比容量をさらに向上させることができる。
【0009】
任意の実施形態において、前記Aは、Li、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaのうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはK、Rb、Cs、Mg及びCaのうちの少なくとも1つから選択され、さらに好ましくはK及びCsのうちの少なくとも1つから選択される。A元素を選択することにより、材料の貯蔵特性、サイクル特性及び比容量をさらに改善することができる。
【0010】
任意の実施形態において、前記M1及びM2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも1つから選択される。M1及びM2の種類を選択することによって、構造的な完全性を保証しながら、材料が所望の電気的、化学的特性及び電気的、化学的容量を有するようにすることができる。
【0011】
任意の実施形態において、前記正極活物質の体積平均粒子径Dv50は、1~5μmの範囲内、好ましくは2~3.5μmの範囲内にある。材料の体積平均粒子径Dv50を制御することにより、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0012】
任意の実施形態において、前記正極活物質の比表面積は、1~10m2/gの範囲内にあり、好ましくは2~6m2/gの範囲内にある。材料の比表面積を制御することにより、A元素の使用量が少ない状況で必要なドーピング効果を達成することができ、吸水の抑制と材料の比容量の低下の回避との間で良好なバランスを実現する。
【0013】
任意の実施形態において、前記正極活物質の含水量は≦2重量%であり、好ましくは、前記正極活物質の含水量は≦0.5重量%である。含水率が低いほどサイクル特性が良好である。
【0014】
本願の第2態様は、正極活物質の製造方法をさらに提供し、該製造方法は、
1)下記式(2)で表される化合物である正極活物質前駆体を溶媒に添加し、分散させて懸濁液を得、
NanM1[M2(CN)6]δ (2)
式中、M1及びM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<n≦2であり、且つ0<δ≦1であるステップ1と、
2)ステップ1で得られた懸濁液を冷却した後、該冷却状態で該懸濁液にAの塩を加え、且つ撹拌とエージングを行い、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きいステップ2と、
3)ステップ2で得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させ、正極活物質を得、
前記正極活物質は、粒子状であり、下記式(1)で表される化合物を含み、
NaxAyM1[M2(CN)6]δ・zH2O (式1)
式中、A、M1、M2及びδはそれぞれ前記定義したとおりであり、0<y≦0.2、0<x+y≦2であり且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有するステップ3と、を含む。
【0015】
これにより、本願の正極活物質を製造することができる。
【0016】
任意の実施形態において、ステップ1における前記溶媒は極性溶媒であり、前記正極活物質前駆体の前記溶媒における溶解度は0.02mol/L以下であり、前記Aの塩の前記溶媒における溶解度は0.05mol/L以上である。溶媒を選択することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減するA元素の分布傾向をより良好に制御することができる。
【0017】
任意の実施形態において、前記溶媒はアセトニトリル、アジポニトリル、メタノール、エタノール、水、ホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記溶媒はアセトニトリルである。溶媒を選択することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かってA元素が減少する分布傾向をより良好に制御することができる。
【0018】
任意の実施形態において、前記ステップ2において、ステップ1で得られた懸濁液を10℃以下まで、好ましくは-20~10℃の温度範囲まで冷却する。反応温度を制御することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減するA元素の分布傾向をより良好に制御することができる。
【0019】
任意の実施形態において、前記Aの塩におけるAと前記正極活物質前駆体におけるナトリウムとのモル比は1:5以下であり、好ましくは1:20~1:5である。Aの塩の添加量を制御することにより、正極活物質の貯蔵特性及びサイクル特性の向上を実現しながら、材料の比容量が過度に低下することを回避する。
【0020】
任意の実施形態において、前記ステップ1における正極活物質前駆体の製造方法は、
i)遷移金属元素M1の可溶性塩及び任意のNa含有徐放剤を水に溶解して、溶液aを調製するステップiと、
ii)遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して、溶液bを調製するステップiiと、
iii)撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下終了後に撹拌とエージングを行うステップiiiと、
iv)ステップiiiで得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させるステップivと、を含む。
【0021】
該方法により、構造的により安定した材料を得ることができる。
【0022】
任意の実施形態において、前記遷移金属元素M1の可溶性塩におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、1:0.8~0.8:1の範囲内、好ましくは1:0.9~0.9:1の範囲内にある。M1とM2のモル比を制御することにより、材料の格子欠陥が低減し、より高い比容量を発揮することに有利である。
【0023】
任意の実施形態において、前記ステップiiiにおいて、溶液を20℃~120℃の温度範囲内、好ましくは60℃~95℃の温度範囲内に保持させる。これにより、粒子が完全な形状に成長することを保証することができ、屈曲度が低下して、粒径が適切になりやすく、同時に元素の比率がより設計要件に適合する。
【0024】
任意の実施形態において、ステップ2における前記撹拌とエージングは、50~1800rpmの撹拌速度で1~30分間行う。撹拌とエージングの条件を制御することにより、均一なドーピング効果を迅速に達成することに有利である。
【0025】
本願の第3態様は、本願の第1態様の正極活物質又は本願の第2態様の方法によって製造された正極活物質を含む二次電池を提供する。
【0026】
本願の第4態様は、本願の第3態様に係る二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本願の一実施形態に係る二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示した本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
【
図3】本願の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る二次電池を電源として用いる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願の正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0029】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータについて60~120及び80~110の範囲が列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も企図されていると理解する。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、及び最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、そのパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0030】
本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0031】
本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に説明しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0032】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、又は順に実施されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいという場合、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを意味し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、又はステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、又はステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよいなどを示す。
【0033】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含する」は、列挙されていない他の成分も含む又は包含してもよいことを示すことができ、又は列挙された成分のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0034】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0035】
既存のプルシアンブルー材料は貯蔵特性の面で不十分であり、長期貯蔵中に電気的、化学的特性の劣化が発生しやすい。例えば、長期保存すると材料のサイクル特性の劣化が生じる。
【0036】
プルシアンブルー材料の長期保存後の性能低下は、この期間中のプルシアンブルー材料の吸水と大きく関連する。発明者らは、イオン半径が大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンを用いてプルシアンブルー材料を改質することにより、本来、結晶水が存在することができる位置を大半径イオンが占めるようになり、格子構造における結晶水を減少させ、プルシアンブルー材料の貯蔵特性が改善されることを発見した。発明者らはさらなる研究から、前記イオン半径が大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンを、プルシアンブルー材料粒子内に特定の方法で分布させることにより、プルシアンブルー材料の貯蔵特性をさらに改善することができ、且つサイクル特性の改善がもたらされ、同時にイオン半径が大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンをドープすることによる材料の比容量の低下を軽減することを発見した。
【0037】
本願の改質されたプルシアンブルー材料は、ナトリウムイオン電池における正極活物質としての使用に適している。
【0038】
したがって、本願の第1態様は、粒子状であり、下記式(1)で表される化合物を含む正極活物質を提供し、
NaxAyM1[M2(CN)6]δ・zH2O (1)
式中、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きく、M1及びM2はそれぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する。
【0039】
Aが2種以上の元素である場合、上記yの数値範囲の限定は、Aとしての各元素の化学量数の和を限定したものである。
【0040】
正極活物質の化学組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)によって測定することができ、x、y、δを決定した後、材料の含水量に基づいてさらにzの値を決定することができる。
【0041】
メカニズムは明確ではないが、本出願人は、前記正極活物質の特定の組成及びA元素の特定の分布により、前記正極活物質の貯蔵特性及びサイクル特性がいずれも向上し、且つA元素がドープされていないプルシアンブルー材料に比べて、材料の比容量が顕著に低下しないことも発見した。
【0042】
いくつかの実施形態において、0.04≦y≦0.2である。A元素の含有量を制御することにより、正極活物質の吸水量をより低下させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記正極活物質の粒子において、A元素含有量漸次変化層の厚さは10~100nmの範囲内であり、例えば10~90nm、10~80nm、10~75nm、10~60nm、10~60nm、10~30nm、10~25nm、20~100nm、20~90nm、20~80nm、20~50nm、20~40nm、30~100nm、30~90nm、30~80nm、30~75nm、30~60nmであってもよい。前記A元素含有量漸次変化層の厚さとは、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法によって正極活物質粒子の元素含有量を定量測定した時、測定されたNaとA元素との含有量の比がNa:A=50At%:50At%に達する層から粒子表面までの距離である。
【0044】
本願において、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法により測定される特定の元素の含有量を満たす層とは、粒子内部の該特定の元素の含有量を満たす全ての点からなる抽象的な意味での層を意味し、実際の厚さを有する層を意味するものではない。At%とは、Na及びA元素の原子数の和に対して占めるNa又はA元素の原子数のパーセンテージを意味し、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法において測定される。前記透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法は、透過電子顕微鏡(STEM、ThermoFisher、Talos F200i)を、サイド挿入型のスケーラブルエネルギー分散型X線分光法(EDS、ThermoFisher)と組み合わせて使用して、ディスプレイ内の材料のラインスキャン分析(Line Scan Analysis)を行うことによって実施される。
【0045】
A元素含有量漸次変化層の厚さを制御することにより、材料の貯蔵特性、サイクル特性及び比容量をさらに向上させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記正極活物質の最外層におけるNaの含有量は、前記最外層におけるNa及びAの原子の総数に対して、0.1At%~15At%の範囲内である。前記最外層とは、透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析法によって正極活物質粒子の元素含有量を定量測定した時、NaとAとの含有量の比がNa:A=10At%:90At%となる層と粒子表面との間の領域を指す。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記Aは、Li、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaのうちの少なくとも1つから選択され、好ましくはK、Rb、Cs、Mg及びCaのうちの少なくとも1つから選択され、さらに好ましくはK及びCsのうちの少なくとも1つから選択される。A元素を選択することにより、材料の貯蔵特性、サイクル特性及び比容量をさらに改善することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記M1及びM2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも1つから選択される。M1及びM2の種類を選択することによって、構造的な完全性を保証しながら、材料が所望の電気的、化学的特性及び電気的、化学的容量を有するようにすることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記正極活物質の体積平均粒子径Dv50は、1~5μmの範囲内、好ましくは2~3.5μmの範囲内にある。材料の体積平均粒子径Dv50を制御することにより、材料の比容量をさらに改善することができる。体積平均粒子径Dv50は、当業者に知られている一般的な方法で測定することができ、例えば、推奨標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析装置(Malvern Master Size 3000など)を使用して測定することができる。Dv50の物理的定義は、材料粒子の累積体積分布パーセンテージが50%に達した時の対応する粒径である。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記正極活物質の比表面積は、1~10m2/gの範囲内にあり、好ましくは2~6m2/gの範囲内にある。材料の比表面積を制御することにより、A元素の使用量が少ない状況で必要なドーピング効果を達成することができ、且つドーピングが均一であり、できるだけ少ないA元素で、できるだけ広いドーピング効果を達成することができる。また、均一なドーピングは、吸水の抑制と材料の比容量の低下の回避との間で良好なバランスを実現するのに有利である。比表面積は、当業者に知られている一般的な方法で測定することができ、例えば、推奨標準GB/T 19587-2004に基づいて、一定の低温下で、異なる相対圧下での固体表面の気体の吸着量を測定した後、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)の多層吸着理論及びその式に基づいて試料の単分子層吸着量を求め、固体の比表面積を算出する。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記正極活物質の含水量は≦2重量%であり、好ましくは、前記正極活物質の含水量は≦0.5重量%である。前記含水量とは、材料を完全に脱水してから、露点-30℃の乾燥室内に1日以上置いた後の飽和吸水量を指す。電池の動作中、正極活物質内の水はNaイオンの挿入脱離に伴って同時に移動し、電解液中に溶解して分解されて不可逆反応を発生させ、サイクル特性に影響を及ぼす。したがって、含水量が低いほど、サイクル特性が良好である。含水率は、上記1日以上置いた正極活物質を加熱して水分を除去し、その結果生じる質量減少量を測定することにより決定する。
【0052】
本願の第2態様は以下のステップを含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0053】
1)ステップ1:下記式(2)で表される化合物である正極活物質前駆体を溶媒に添加し、分散させて懸濁液を得、
NanM1[M2(CN)6]δ (2)
式中、前記M1及びM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、0<n≦2であり、且つ0<δ≦1である。
【0054】
2)ステップ2:ステップ1で得られた懸濁液を冷却した後、該冷却状態で該懸濁液にAの塩を加え、且つ撹拌とエージングを行い、その中、Aはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素のうちの少なくとも1つから選択され、且つAのイオン半径はナトリウムのイオン半径より大きい。
【0055】
3)ステップ3:ステップ2で得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させ、正極活物質を得、
前記正極活物質は、粒子状であり、下記式(1)で表される化合物を含み、
NaxAyM1[M2(CN)6]δ・zH2O (1)
式中、A、M1、M2及びδはそれぞれ前記定義したとおりであり、0<y≦0.2、0<x+y≦2であり且つ0≦z≦10であり、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する。
【0056】
正極活物質について説明した部分のM1、M2、A、x、y、δ、zの説明及び限定は、正極活物質の製造方法にも同様に適用される。
【0057】
反応温度を制御することにより、上記方法は正極活物質粒子中のA元素の特定の分布を実現することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、ステップ1における前記溶媒は極性溶媒であり、前記正極活物質前駆体の前記溶媒における溶解度は0.02mol/L以下であり、前記Aの塩の前記溶媒における溶解度は0.05mol/L以上である。溶媒を選択することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減するA元素の分布傾向をより良好に制御することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記溶媒はアセトニトリル、アジポニトリル、メタノール、エタノール、水、ホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記溶媒はアセトニトリルである。溶媒を選択することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かってA元素が逓減する分布傾向をより良好に制御することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記ステップ2において、ステップ1で得られた懸濁液を10℃以下まで、好ましくは-20~10℃の温度範囲までで冷却する。反応温度を制御することにより、正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減するA元素の分布傾向をより良好に制御することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記Aの塩におけるAと前記正極活物質前駆体におけるナトリウムとのモル比は1:5以下であり、好ましくは1:20~1:5である。Aの添加量を制御することにより、所望の組成の正極活物質を得ることができ、正極活物質の貯蔵特性及びサイクル特性の向上を実現しながら、材料の比容量が過度に低下することを回避する。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記ステップ1における正極活物質前駆体は、以下のステップを含む方法によって製造される。
【0063】
i)ステップi:遷移金属元素M1の可溶性塩及び任意のNa含有徐放剤を水に溶解して、溶液aを調製する。
【0064】
ii)ステップii:遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して、溶液bを調製する。
【0065】
iii)ステップiii:撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下終了後に撹拌とエージングを行う。
【0066】
iv)ステップiv:ステップiiiで得られた懸濁液を濾過し且つ得られた沈殿物を洗浄し、乾燥させる。
【0067】
該方法で製造された正極活物質前駆体は欠陥が少なく、ナトリウム含有量が高く、構造が安定した材料を得ることに役立つ。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記遷移金属元素M1の可溶性塩におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、1:0.8~0.8:1の範囲内、好ましくは1:0.9~0.9:1の範囲内にある。M1とM2のモル比を制御することにより、材料の格子欠陥を低減させ、より多くのNaを貯蔵し、より高い比容量を発揮することに有利である。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記ステップiiiにおいて、溶液を20℃~120℃の温度範囲内、好ましくは60℃~95℃の温度範囲内、好ましくは70℃~80℃の温度範囲内に保持させる。適切な合成温度により粒子が完全な形状に成長することを保証することができ、屈曲度が低下し、粒径が適切になりやすく、同時に元素の比率がより設計要件に適合する。
【0070】
いくつかの実施形態において、ステップ2における前記撹拌とエージングは、50~1800rpmの撹拌速度で1~30分間行う。撹拌とエージングの条件を制御することにより、均一なドーピング効果を迅速に達成することに有利である。
【0071】
いくつかの実施形態において、ステップ1における前記分散は、当業者によって適切な方法を選択し実施することができる。いくつかの実施形態において、ステップ1において、超音波処理及び撹拌によって分散を補助する。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記ステップiのNa含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つである。
【0073】
いくつかの実施形態において、ステップiにおいて、遷移金属元素M1と徐放剤とのモル比は1:0.1~10である。好ましくは、遷移金属元素M1と徐放剤とのモル比は1:1~5である。
【0074】
ステップiにおける遷移金属元素M1の可溶性塩のアニオンは、該塩が可溶性塩である限り特に限定されない。いくつかの実施形態において、遷移金属元素M1の可溶性塩は、2価硫酸塩、硝酸塩、塩化物、又はシュウ酸塩などの弱酸の塩である。溶液中のその濃度は、例えば0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0075】
いくつかの実施形態において、ステップiにおけるNa含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つである。
【0076】
いくつかの実施形態において、ステップiiにおける可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価の遷移金属シアン化ナトリウムである。溶液中のその濃度は、例えば0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0077】
いくつかの実施形態において、ステップiiiにおいて、撹拌速度は200rpm~1200rpmの範囲内である。
【0078】
いくつかの実施形態において、ステップiiiにおいて、溶液aは、0.1ml/分~10ml/分の速度、例えば、1ml/分~5ml/分の速度で滴下される。
【0079】
いくつかの実施形態において、ステップiiiにおいて、エージングは0.01h~48h、例えば12h~24h行われ、且つエージングは例えば撹拌下で行うことができる。
【0080】
ステップivにおける洗浄は、当業者が適切な溶媒を選択することによって実施することができる。いくつかの実施形態において、ステップivにおいて、洗浄は脱イオン水とエタノールの混合液、エタノール又はアセトンなどを使用して行うことができ、1回又は複数回行うことができる。
【0081】
ステップivにおける乾燥は、当業者が適切な乾燥方法を選択することによって実施することができる。いくつかの実施形態において、ステップivにおいて、乾燥は真空乾燥によって、例えば0~300℃、例えば120℃~150℃の範囲の温度で行われ、真空度は例えば10~15mTorrである。
【0082】
前記ステップ2において、前記Aの塩のアニオンは特に限定されない。いくつかの実施形態において、前記Aの塩のアニオンは、Cl-、SO4
2-、NO3
-、C2O4
2-、PO4
3-のうちの1つから選択され、好ましくはSO4
2-、NO3
-、C2O4
2-のうちの1つである。
【0083】
ステップ3における乾燥は、当業者が適切な乾燥方法を選択することによって実施することができる。いくつかの実施形態において、ステップ3において、乾燥は真空乾燥によって、例えば0~300℃、例えば120℃~150℃の範囲の温度で行われ、真空度は例えば100~150mTorrである。
【0084】
以下、適宜図面を参照して、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について説明する。
【0085】
本願の一実施形態において、ナトリウムイオン二次電池を提供する。
【0086】
一般的に、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、イオンを通過させることができる。
【0087】
[正極シート]
正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極フィルム層を含み、前記正極フィルム層は、本願の第1態様の正極活物質又は本願の第2態様の方法によって製造された正極活物質を含む。
【0088】
一例として、正極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、正極フィルム層は、正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、正極フィルム層は選択的にバインダーをさらに含むことができる。一例として、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、正極フィルム層は選択的に導電剤をさらに含むことができる。一例として、前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、以下の方法で正極シートを製造することができる。上記正極シートを製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等のステップを経て、正極シートを得ることができる。
【0093】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置された負極フィルム層を含み、前記負極フィルム層は、負極活物質を含む。
【0094】
一例として、負極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、負極フィルム層は、負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えば銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、負極活物質は公知の二次電池用負極活物質を使用することができる。一例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムなどのうち少なくとも1つを含むことができる。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層は選択的にバインダーをさらに含むことができる。前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層は選択的に導電剤をさらに含むことができる。導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、負極フィルム層は選択的に、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤をさらに含むことができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、以下の方法で負極シートを製造することができる。上記負極シートを製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等のステップを経て、負極シートを得ることができる。
【0101】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を特に限定せず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は液体、ゲル又は完全な固体であってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記電解質は液体の状態、すなわち、電解液である。前記電解液は電解質塩と溶媒を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、電解質塩はNaClO4、NaPF6、NaBF4、NaTFSI(ナトリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、NaFSI(ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド)、NaDFOB(ナトリウムジフルオロオキサレートボレート)などから選択することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1、4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、及びジエチルスルホンのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記電解液は選択的に添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極フィルム形成添加剤、正極フィルム形成添加剤が含まれていてもよく、さらに、電池の特定の特性を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤などが含まれていてもよい。
【0106】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池はセパレータをさらに含む。本願はセパレータの種類を特に限定せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、セパレータの材料はガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択することができる。セパレータは単層フィルムであっても多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同一でも異なっていてもよく、特に限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又はラミネートプロセスを介して電極アセンブリに製造することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装材を含むことができる。該外装材は上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0110】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装材は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装材は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0111】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0112】
いくつかの実施形態において、
図2を参照すると、外装材は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含み、底板及び側板で囲まれた収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口をカバーして、前記収容キャビティを密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又はラミネートプロセスを介して電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容キャビティ内に封入される。電解液は電極アセンブリ52内に含浸している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際の要件に応じて選択することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0114】
図3は一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方法で配置してもよい。また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0115】
好ましくは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0117】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照すると、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4と、を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せることができ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
【0118】
また、本願は、さらに、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。前記電力消費装置はモバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
前記電力消費装置として、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0120】
図6は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0121】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0122】
以下、本願の実施例について説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものと理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が示されていない場合、本分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の説明書に従って実行される。使用した試薬又は機器にメーカーが記載されていない場合、いずれも市販の一般的な製品である。
【0123】
実施例1
1. 正極活物質の製造
(1)フェロシアン化ナトリウム十水和物19.3624g、クエン酸ナトリウム一水和物35.292g、塩化マンガン四水和物7.9164gを秤量する。上記フェロシアン化ナトリウム十水和物を100mlの脱イオン水に加え、30min撹拌した後に溶液bを形成する。塩化マンガン四水和物及びクエン酸ナトリウム一水和物を100mlの脱イオン水に加え、30min撹拌した後に溶液aを形成し、均一に撹拌した後に上記溶液bに滴下する。滴下速度は1ml/minであり、滴下終了後に24h撹拌し、撹拌速度は400rpmであり、温度は80℃であり、懸濁液を形成する。上記懸濁液中の固体材料をブフナー漏斗で濾過し、生成物中にナトリウム塩及び遷移金属イオンが残らなくなるまで脱イオン水で3回洗浄する。得られた材料を120℃で24h真空乾燥させ、相対真空度<-0.1Mpaであり、10gのプルシアンブルーNa2MnFe(CN)6前駆体を得る。
【0124】
(2)上記10gのプルシアンブルー前駆体を100mlのアセトニトリルに加え、10min超音波分散して懸濁液を形成し、溶液を-20℃まで冷却する。0.745gの塩化カリウムを秤量して上記懸濁液に加え、撹拌を続けて30minエージングする。撹拌速度は400rpmであり、温度は-20℃である。
【0125】
(3)懸濁液中の固体材料をブフナー漏斗で濾過し、生成物中にナトリウム塩とカリウム塩及び遷移金属イオンが残らなくなるまで、-20℃のエーテルで3回洗浄する。得られた材料を120℃で24h真空乾燥させ、相対真空度は-0.085MPaであり、正極活物質を得る。ICP試験によってその化学式がNa1.9K0.1MnFe(CN)6であることを決定し、EDSラインスキャン検出によって確定する。得られた正極活物質粒子は、K元素の含有量が該正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する。
実施例2
【0126】
ステップ(2)において、懸濁液の温度を-5℃に制御し、ステップ(3)の洗浄に用いたエーテルを-5℃とした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例3
【0127】
ステップ(2)において、懸濁液の温度を5℃に制御し、ステップ(3)の洗浄に用いたエーテルを5℃とした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例4
【0128】
ステップ(2)において、懸濁液の温度を10℃に制御し、ステップ(3)の洗浄に用いたエーテルを10℃とした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例5
【0129】
ステップ(2)で用いた溶媒を水とした以外は、実施例4と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例6
【0130】
ステップ(2)で用いた溶媒をメタノールとした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例7
【0131】
ステップ(2)で用いた溶媒をホルムアミドとした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例8
【0132】
ステップ(2)で用いた溶媒をジメチルスルホキシドとした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例9
【0133】
ステップ(2)において、塩化カリウムの添加量を0.894gとした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例10
【0134】
ステップ(2)において、塩化カリウムの添加量を0.298gとした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例11
【0135】
ステップ(2)において、懸濁液に塩化カリウム1.065gを添加した以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例12
【0136】
ステップ(1)において、溶液aと溶液bとを反応させた時の温度を60℃とした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例13
【0137】
(1)において、溶液aと溶液bとを反応させた時の温度を95℃とした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例14
【0138】
ステップ(1)において、溶液aと溶液bとを反応させた時の温度を50℃とした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
実施例15
【0139】
ステップ(1)において、溶液aと溶液bとを反応させた時の温度を106℃とした以外は、実施例3と同様のステップで正極活物質を製造した。
比較例1
【0140】
実施例1のステップ(1)に従って10gのプルシアンブルーNa2MnFe(CN)6を調製した。
比較例2
【0141】
ステップ(2)において、懸濁液の温度を20℃に制御し、ステップ(3)の洗浄に用いたジエチルエーテルを20℃とした以外は、実施例1と同様のステップで正極活物質を製造した。
【0142】
電池の製造
(1)正極電極シートの製造
上記各実施例及び比較例で製造された正極活物質、導電剤のカーボンブラック(Super-P)、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、質量比7:2:1でN-メチルピロリドン(NMP)に加え、回転子で1-3h撹拌し、スラリーを製造する。スラリーを集電体アルミニウム箔上に150μmの厚さで塗布する。真空乾燥ボックスにおいて90~110℃で10~15h乾燥させた後、室温まで自然に冷却し、正極シートを得る。製造された正極シートを切断機で直径14mmの小円形シートに切断する。
【0143】
(2)負極シートの製造
日本クラレから購入したTypeII商用ハードカーボン負極活物質、導電剤のカーボンブラック(Super-P)、バインダーのスチレンブタジエンゴム(SBR)及び分散剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を、質量比90:2:4:4で脱イオン水に加え、回転子で1~3h撹拌し、スラリーを製造する。スラリーを集電体銅箔上に塗布し、塗布量は正極絶対容量に基づいて決定され、負極絶対容量:正極絶対容量=1.16であり、絶対容量(mAh)=初回放電可逆比容量(mAh/g)*活物質総重量(g)であり、可逆比容量の測定方法は以下のとおりである。真空乾燥ボックスにおいて90~110℃で10~15h乾燥させた後、室温まで自然に冷却し、負極シートを得る。製造された負極シートを切断機で直径16mmの小円形シートに切断する。
【0144】
(3)電解液の製造
含水量<10ppmのアルゴン雰囲気グローブボックスにおいて、等体積のエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを均一に混合して、有機溶媒を得て、有機溶媒中に添加剤のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加え、次にナトリウム塩NaPF6を上記有機溶媒中に均一に溶解して、電解液を得、電解液中のFECの質量パーセンテージは2%であり、ナトリウム塩の濃度は1mol/Lである。
【0145】
(4)セパレータ
セパレータとしてPEセパレータを使用する。
【0146】
(5)ボタン型全電池の製造
アルゴン充填雰囲気グローブボックスにおいて、上記各部を組み立て、下記の二次電池としてCR 2032ボタン型全電池を製造した。
性能試験方法
【0147】
1. 正極活物質の試験
(1)ICP試験
被測定物質を500℃まで加熱して2h焼成した後、室温まで下げる。王水を加えて焼成後の生成物を溶解した後、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP、Ametek社、型番:SPECTRO ARCOS ICP-OES)によって元素分析を行った。該試験により各元素の割合が得られ、各元素の割合から化学式NaxAyM1[M2(CN)6]δにおけるx、y、δを決定する。
【0148】
(2)透過電子顕微鏡-X線ラインスキャン分析(EDSラインスキャン)による検出
透過電子顕微鏡(STEM、ThermoFisher、Talos F200i)を、サイド挿入型のスケーラブルエネルギー分散型X線分光法(EDS、ThermoFisher)と組み合わせて使用して、ディスプレイ内の材料のラインスキャン分析を行った。加速電圧は50kVであり、拡大倍率は100kxであり、ビーム電流は500~1000pAの間にある。Na、A元素の個数(Counts)ラインスキャンスペクトルを得る。Na、A元素の個数の割合から、Na:A=50At%:50At%の層及び正極活物質表面を決定し、漸次変化層の厚さを得ることができる。正極活物質粒子上の5つの位置をランダムに選択して漸次変化層の厚さをそれぞれ測定し、測定結果に対して算術平均を取り、表1における漸次変化層の厚さとして記録する。
【0149】
同様に、Na、A元素の個数の割合に基づいてNa:A=10At%:90At%の層を決定し、該層は最外層の内側境界であり、正極活物質表面は最外層の外側境界であり、Na、Aの2種類の元素のEDSラインスキャン曲線に対して、最外層の内側境界及び外側境界の間で曲線積分を行うことにより、2種類の元素の総含有量の割合を得て、それにより最外層におけるNa含有量を測定する。
【0150】
(3)含水量試験
実施例及び比較例で製造された正極活物質を完全に脱水してから、露点-30℃の乾燥室内に1日置いた。次いで、それを取り出して200℃まで加熱し、30分間保持した。加熱前後の被測定物質の質量を電子天秤で測定し、両者の差を算出し、これを加熱前の被測定物質の質量で除して、被測定物質の含水量とした。
【0151】
(4)Dv50試験
推奨標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析装置(Malvern Master Size 3000など)を使用して測定した。
【0152】
Dv50の物理的定義は、材料粒子の累積体積分布パーセンテージが50%に達した時の対応する粒径である。
【0153】
(5)比表面積試験
比表面積の試験はGB/T 19587-2017を参照し、窒素吸着法による比表面積を分析する試験方法を用いて測定し、且つBET(Brunauer Emmett Teller)法で計算して得られ、窒素吸着法による比表面積を分析する試験は、米国Micromeritics社のTri-Star 3020型の比表面積孔径分析試験装置で実施した。
【0154】
2. 電池性能試験
[可逆比容量]
ボタン式半電池の製造
正極シート、電解液及びセパレータはいずれも上記ボタン式全電池と同一である。負極には金属ナトリウムシート(直径13 mmの小円形シート)を用い、ニッケルメッシュを負極集電体とした。上記各部をアルゴン保護グローブボックス内で組み立てて、CR 2032ボタン型半電池とした。
【0155】
2.5~4.0V区間において、25℃で、20mA/gの電流密度で上記ボタン型半電池の充放電を行い、電池の初回充放電過程における容量を記録し、容量を正極活物質の質量で除して、可逆比容量を得た。各実施例及び比較例の正極活物質を用いて製造した電池の、初回放電可逆比容量試験の結果を下記表1に示す。
【0156】
[貯蔵特性]
25℃で、各実施例及び比較例で製造された二次電池を1Cレートで充電カットオフ電圧4Vまで充電した後、電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cレートで放電カットオフ電圧2Vまで定電流放電し、電池の初期容量を得る。その後25℃で、電池を1Cレートで充電カットオフ電圧4Vまで充電した後、電流0.05Cまで定電圧充電し、この時電池は満充電状態であり、満充電後の電池を60℃のインキュベータに入れて保存する。100日間保存した後、電池の容量を測定し、具体的には、1Cレートで充電カットオフ電圧4Vまで充電した後、電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに0.33Cレートで放電カットオフ電圧2Vまで定電流放電し、電池の保存後容量を得る。電池の初期容量に対する電池の貯蔵後容量のパーセンテージを計算し、100日間貯蔵特性として表1に記入した。
【0157】
[長期サイクル特性]
25℃で、実施例及び比較例で製造された二次電池を1Cレートで充電カットオフ電圧4Vまで定電流充電した後、電流≦0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに1Cレートで放電カットオフ電圧2Vまで定電流放電し、電池の初回サイクル放電容量を測定し、5min静置し、これは1つの充放電サイクルである。この方法に従って電池に対してサイクル充放電試験を行い、合計200サイクルであり、最後の1サイクルの放電容量を得る。200サイクル容量保持率(%)=最後の1サイクルの放電容量/初回サイクル放電容量。
【0158】
【0159】
【0160】
EDSラインスキャン検出により、実施例1~15のA元素の分布状態はいずれも正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈し、比較例2のA元素の分布状態は正極活物質の粒子表面から粒子内部に向かって逓増傾向を呈することが確認された。
【0161】
比較例1と比較して、実施例の正極活物質粒子は表面にA元素がドープされた層を有することにより、含水量が著しく低下し、且つサイクル特性及び貯蔵特性の両方が著しく向上していることがわかる。比較例2と比較して、正極活物質の粒子が、A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓減傾向を呈する漸次変化層を有する場合、A元素の含有量が粒子表面から粒子内部に向かって逓増傾向を呈する場合に比べて、含水量が低く、且つ比容量、サイクル特性及び貯蔵特性に優れていることがわかる。
【0162】
漸次変化層の厚さが10~100nmの範囲内にある場合、正極活物質は良好な貯蔵特性、サイクル特性及び比容量を有し、特に漸次変化層の厚さが10~75nmの範囲内にある場合、貯蔵特性、サイクル特性及び比容量がさらに改善される。
【0163】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の変更を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0164】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 キャップアセンブリ
【国際調査報告】