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特表2024-505326アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法
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  • 特表-アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 15/023 20060101AFI20240130BHJP
   G01N 33/00 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C01B15/023 G
G01N33/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533209
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2022103300
(87)【国際公開番号】W WO2023077844
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111313752.X
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520307724
【氏名又は名称】南京延長反応技術研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING YANCHANG REACTION TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO. LTD
【住所又は居所原語表記】ZHOU, Zheng No.88, South Tuan District, Jiangbei New District Nanjing , Jiangsu 210047 China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】張志炳
(72)【発明者】
【氏名】周政
(72)【発明者】
【氏名】張鋒
(72)【発明者】
【氏名】李磊
(72)【発明者】
【氏名】田洪舟
(72)【発明者】
【氏名】魏格林
(72)【発明者】
【氏名】呂文鈞
(72)【発明者】
【氏名】李夏氷
(72)【発明者】
【氏名】李永強
(57)【要約】
本発明は、酸化反応式を立てるステップa、反応ガスの巨視的な動力学方程式を立てるス
テップb、酸素の反応増大係数EBの数式を立てるステップc、及び液相中の各反応成分
の濃度の計算法を確立し、液相中の各反応成分の濃度を計算するステップdを含むアント
ラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法を
提供する。本発明は、アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系の構造・効率
調整数学モデルを構築することにより、気液界面面積、物質移動容量係数及び巨視的な反
応速度に対する気泡サイズの影響を考察し、マイクロ界面酸化反応の強化効果を評価し、
マイクロ界面反応強化反応器の設計及び操作に根拠を提供し、本発明の評価方法により設
計された反応器は、不均一な気液分布の問題を解決すると共に物質移動を増強できること
で、空時収量を最大化し、マイクロ界面反応強化技術の経済性を実現する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価
方法であって、以下の構成を有し、
a、酸化反応式を立てるステップ
アントラキノン法の酸化セクションは、2-エチルヒドロアントラキノンと酸素を反応さ
せて過酸化水素を生成することを含み、化学式は次の通りであり、

(1)
2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素反応の反応速度式は、次の通りであり、
(2)
式(2)中、krは、反応速度定数(単位:m3/(mol・s))、CA、CBは、そ
れぞれ液相中の2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素の濃度(単位:mol/m
3)であり、
b、反応ガスの巨視的な動力学方程式を立てるステップ、
酸化反応過程で、ガス・液膜中の酸素の物質移動速度は、液相中の反応速度と等しくなり
、次の式が得られ、
(3)
方程式(3)を求解すると、次の式が得られ、
(4)
式(4)中、rBは、酸素の巨視的な反応速度(単位:mol/(m3・s))、kG、
kLは、それぞれガス膜、液膜物質移動係数(単位:m/s)、aは、気液界面面積(単
位:m2/m3)、EBは、酸素の反応増大係数、PBは、気泡内の気相本体中の酸素分
圧(単位:Pa)、HBは、酸素のヘンリー係数(単位:Pa・m3/mol)であり、
式(4)のkG、kL及びaと反応系の気泡径d32の関係は、それぞれ以下の通りであ
り、
(5)
(6)
(7)
式(5)中、t32は、気泡の滞留時間(単位:s)であり、反応器の操作液面がH0の
場合、
(8)
式(6)中、υsは、気泡のスリップ速度(単位:m/s)、計算式は次のとおりであり

(9)
式(7)~(9)中、υ32は、気泡群の上昇速度(単位:m/s)、計算式は次のとお
りであり、
(10)
式(10)中、υ0は、無限静止液中における単一気泡の上昇速度(単位:m/s)、計
算式は次のとおりであり、
(11)
式(11)中、Moは、Morton数で、気泡が液相中を移動する時の外形を表す無次
元パラメータで、
となり、deは、無次元化した気泡径で、
となり、Kbは、系の物性関連定数で、
となり、有機溶媒又は混合物について、Kb0=10.2、Kb<12の場合、Kb=1
2として計算し、定数c及びnは系の物性にも関連し、実際の系の特徴により対応する経
験値を取り、
c、酸素の反応増大係数EBの数式を立てるステップ
2-エチルテトラヒドロアントラキノンが酸素と反応して過酸化水素を生成する反応系の
Ha数は、次の式(12)で表され、
(12)
Ha数は、液膜中の反応ガス分子の最大可能変換率と最大物質移動速度の相対的な大きさ
を特徴付ける無次元パラメータであるHatta数の略語で、反応と物質移動の相対的な
強さを示し、
E∞は、次の式(13)で表され、
(13)
E∞は、気液接触面から遠く離れた液相本体反応による物質移動の増強作用を示し、
この場合、反応増大係数EBの式は次のようになり、

(14)
d、液相中の各反応成分の濃度の計算法を確立し、液相中の各反応成分の濃度を計算する
ステップ、
反応器がプラグフロー反応器であると仮定すると、成分である2-エチルテトラヒドロア
ントラキノンAと酸素Bについて、式(15)~(16)が得られ、
(15)
(16)
同時に気相中の酸素と窒素Iの分圧とモル流量との関係から、式(17)が得られ、
(17)
入口でのFBとCAに基づき、式(3)、(5)~(14)及び(17)を連立して、出
入口でのCBを求め、式(15)及び式(16)に基づき軸方向の任意の位置における液
相中のCAとCBを求める
ことを特徴とする、アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイク
ロバブル強化の評価方法。
【請求項2】
前記ステップaの酸化反応式を立てる前にアントラキノン法の水素化反応セクションも含
み、前記水素化反応セクションで反応して水素化溶液を生成することを特徴とする、請求
項1に記載のアントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブ
ル強化の評価方法。
【請求項3】
前記水素化溶液内の反応生成物は、ヒドロアントラキノン、テトラヒドロアントラキノン
、2-エチルヒドロアントラキノン、2-エチルテトラヒドロアントラキノンのうち1種
以上を含むことを特徴とする、請求項2に記載のアントラキノン法による過酸化水素製造
の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法。
【請求項4】
前記アントラキノン法の酸化セクションは、ヒドロアントラキノンと酸素を反応させて過
酸化水素を生成すること、テトラヒドロアントラキノンと酸素を反応させて過酸化水素を
生成すること、2-エチルヒドロアントラキノンと酸素を反応させて過酸化水素を生成す
ることのうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載のアントラキノン法に
よる過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法。
【請求項5】
マイクロ界面反応強化反応器であって、請求項1~4のいずれか一項に記載のアントラキ
ノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法で設計
されることを特徴とする、マイクロ界面反応強化反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ界面強化の技術分野に関し、特に、アントラキノン法による過酸化水
素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アントラキノン法による過酸化水素製造は、現在成熟した信頼性の高い過酸化水素の工業
生産技術となっており、大規模な工業生産において最も幅広く応用される主流の製造プロ
セスである。基本的な製造プロセスは、作動溶液にパラジウム触媒の作用下で水素ガスを
添加し、ヒドロアントラキノンを含む水素化溶液を生成し、水素化溶液が酸素と反応して
アントラキノンと過酸化水素を含む酸化液を生成し、酸化液は純水で抽出され、純水で抽
出され、ラフィネートと粗・希薄過酸化水素が得られ、粗・希薄過酸化水素は芳香族化合
物で精製されて希薄過酸化水素製品が得られ、ラフィネートは脱水され、粘土床で再生さ
れた後、水素化工程に戻されて再利用する。酸化反応は、水素化溶液中のヒドロアントラ
キノンと酸素が酸化塔内で反応してアントラキノン及び過酸化水素を生成し、運転温度は
40~60℃、運転圧力は0.2~0.4MPa、過酸化水素の収率は95~98%に達
することができる。生産規模の増加に適応するため、業界は酸化塔を継続的に改良して気
液の均一な分布を促進させ、気液の物質移動を増強し、例えばガス分配装置の改良、圧縮
空気が塔に入る位置の変更、新しい充填物の採用などである。これらの改善策により増幅
効果をある程度克服したが、不均一な気液分布、大きな床抵抗、小さな気液界面面積、制
限された物質移動能力などのいくつかの欠点がまだある。
マイクロ界面反応強化技術は、マイクロ界面反応系を形成することにより気液分布を根本
的に均一化するとともに気液界面面積を極めて大きく増大させ、物質移動を増強させるこ
とで、充填物による不足を避けることができる。マイクロ界面強化反応器の気泡サイズと
構造・効率調整モデルのモデリング方法(中国特開第CN107563051A号公報)
は、反応器の気泡サイズと反応器の構造パラメータ、操作パラメータ及び物性パラメータ
との間の関係を定量化している。通気量が一定の場合、気泡サイズが小さいほど気液界面
面積が大きくなり、物質移動抵抗が小さくなり、巨視的な反応速度が大きくなる。San
tacesariaらによる研究では、2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素の
反応の固有速度は中程度から遅い反応であることが示されている。したがって生産能力が
一定の場合、空時収量を最大化し、マイクロ界面反応強化技術の経済性を実現するため、
アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価
方法をどのように決定するかが、重要な現実問題である。
上記の点に鑑みて本発明がなされた。
【発明の概要】
【0003】
そこで、本発明の目的は、マイクロ界面反応強化技術の経済性を実現し、アントラキノン
法による過酸化水素製造における酸化反応マイクロ界面反応強化の評価方法を決定し、酸
化塔の設計と操作を最適化し、アントラキノン法による過酸化水素製造におけるマイクロ
界面酸化反応系の構造・効率調整数学モデルを構築し、酸化反応のマイクロ界面反応強化
の評価方法を理論的に考察する。
実際の製造プロセスにおいて、反応速度は、一般的に固有反応速度ではなく、巨視的な反
応速度を指す。巨視的な反応速度は、物質移動によって制御され、固有反応速度が速く、
物質移動速度に遅く、又は固有反応速度と物質移動速度はどちらも反応プロセスに影響を
及ぼすことを意味する。物質移動の強化を研究するのは、反応プロセスの強化にとって重
要な意味を持つ。
気液物質移動を強化する科学的かつ有効な方法は、反応器に入る気相を可能な限りミクロ
ンサイズの気泡に壊れ、反応器内にマイクロ界面物質移動及び反応系を形成することであ
る。ミクロンスケールは3桁あるため、どのくらいの大きさの気泡が壊れるか、つまり「
スケール」をどう捉えるかが問題となる。相界面面積の強化観点からは、気泡が小さいほ
ど相界面面積は大きくなり、すなわち、一般に系内の気泡が大きい場合、物質移動速度は
固有反応速度より遅くなり、気泡サイズの縮小は物質移動速度の増大に役立つが、同時に
固有反応速度もそれに応じて低下する。したがって、マイクロ界面反応系の気泡サイズが
徐々に縮小していく過程では、必ず物質移動速度=固有反応速度という状況が現れる。そ
の後、気泡サイズの縮小により、系の物質移動速度が固有反応速度より大きくなり、この
時系の巨視的な反応速度に対する物質移動速度の影響は後回しになった。したがって、気
泡サイズを縮小し続けることは、エネルギー消費量を増加させるだけでなく、巨視的な反
応速度を高めさせることにとって実質的な意味もあまりない。
このため、実際の操業状況において、気泡は小さければ小さいほど良い。
上記目的を達成するため、本発明は、以下のステップa~dを含むアントラキノン法によ
る過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロバブル強化の評価方法を提供し、
a、酸化反応式を立てるステップ
アントラキノン法の酸化セクションは、2-エチルヒドロアントラキノンと酸素を反応さ
せて過酸化水素を生成することを含み、化学式は次の通りであり、
(1)
2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素反応の反応速度式は、次の通りであり、
(2)
式(2)中、krは、反応速度定数(単位:m3/(mol・s))、CA、CBは、そ
れぞれ液相中の2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素の濃度(単位:mol/m
3)であり、
b、反応ガスの巨視的な動力学方程式を立てるステップ、
酸化反応過程で、ガス・液膜中の酸素の物質移動速度は、液相中の反応速度と等しくなり
、次の式が得られ、
(3)
方程式(3)を求解すると、次の式が得られ、
(4)
式(4)中、rBは、酸素の巨視的な反応速度(単位:mol/(m3・s))、kG、
kLは、それぞれガス膜、液膜物質移動係数(単位:m/s)、aは、気液界面面積(単
位:m2/m3)、EBは、酸素の反応増大係数、PBは、気泡内の気相本体中の酸素分
圧(単位:Pa)、HBは、酸素のヘンリー係数(単位:Pa・m3/mol)であり、
式(4)のkG、kL及びaと反応系の気泡径d32の関係は、それぞれ以下の通りであ
り、
(5)
(6)
(7)
式(5)中、t32は、気泡の滞留時間(単位:s)であり、反応器の操作液面がH0の
場合、
(8)
式(6)中、υsは、気泡のスリップ速度(単位:m/s)、計算式は次のとおりであり

(9)
式(7)~(9)中、υ32は、気泡群の上昇速度(単位:m/s)、計算式は次のとお
りであり、
(10)
式(10)中、υ0は、無限静止液中における単一気泡の上昇速度(単位:m/s)、計
算式は次のとおりであり、
(11)
式(11)中、Moは、Morton数で、気泡が液相中を移動する時の外形を表す無次
元パラメータで、
となり、deは、無次元化した気泡径で、
となり、Kbは、系の物性関連定数で、
となり、有機溶媒又は混合物について、Kb0=10.2、Kb<12の場合、Kb=1
2として計算し、定数c及びnは系の物性にも関連し、実際の系の特徴により対応する経
験値を取り、
c、酸素の反応増大係数EBの数式を立てるステップ
2-エチルテトラヒドロアントラキノンが酸素と反応して過酸化水素を生成する反応系の
Ha数は、次の式(12)で表され、
(12)
Ha数は、液膜中の反応ガス分子の最大可能変換率と最大物質移動速度の相対的な大きさ
を特徴付ける無次元パラメータであるHatta数の略語で、反応と物質移動の相対的な
強さを示し、
E∞は、次の式(13)で表され、
(13)
E∞は、気液接触面から遠く離れた液相本体反応による物質移動の増強作用を示し、
この場合、反応増大係数EBの式は次のようになり、
(14)
d、液相中の各反応成分の濃度の計算法を確立し、液相中の各反応成分の濃度を計算する
ステップ、
反応器がプラグフロー反応器であると仮定すると、成分である2-エチルテトラヒドロア
ントラキノンAと酸素Bについて、式(15)~(16)が得られ、
(15)
(16)
同時に気相中の酸素と窒素Iの分圧とモル流量との関係から、式(17)が得られ、
(17)
入口でのFBとCAに基づき、式(3)、(5)~(14)及び(17)を連立して、出
入口でのCBを求め、式(15)及び式(16)に基づき軸方向の任意の位置における液
相中のCAとCBを求める。
さらに、前記ステップaの酸化反応式を立てる前にアントラキノン法の水素化反応セクシ
ョンも含み、前記水素化反応セクションで反応して水素化溶液を生成する。
さらに、前記水素化溶液内の反応生成物は、ヒドロアントラキノン、テトラヒドロアント
ラキノン、2-エチルヒドロアントラキノン、2-エチルテトラヒドロアントラキノンの
うち1種以上を含む。
さらに、前記アントラキノン法の酸化セクションは、ヒドロアントラキノンと酸素を反応
させて過酸化水素を生成すること、テトラヒドロアントラキノンと酸素を反応させて過酸
化水素を生成すること、2-エチルヒドロアントラキノンと酸素を反応させて過酸化水素
を生成することのうちの1種以上を含む。
本発明の評価方法では、まず反応ガスの巨視的な動力学方程式を立て、その後酸素の反応
増大係数EB数式の立式及び液相中の各反応成分濃度の計算方法の確立により、液相中の
反応成分濃度、巨視的な反応速度を計算して、反応系内の気泡サイズと対応する反応成分
濃度及び巨視的な反応速度を比較し、反応系の最適な気泡サイズを得て反応強化の効果を
評価する。
多くの実験により、気泡サイズが反応ガスの物質移動速度と液相での反応ガスの消費速度
が等しいことをちょうど満たすみたす場合にのみ、マイクロ界面強化反応状態は最適とな
り、その後決定された気泡サイズに基づいてXA、rA、CA等を計算する。気泡のサイ
ズを決定する方法は、先行特許も関与しており、先行技術に属するが、本発明の重要な改
良点は、アントラキノン法による過酸化水素製造のマイクロ界面反応系における最適な気
泡サイズの範囲をどのように決定するかである。
マイクロ界面強化反応器の気泡サイズの関連モデリング方法については、中国特開第CN
109684769A号公報、中国特開第CN107346378A号公報、中国特開第
CN107335390A号公報、中国特開第CN107561938A号公報などの多
くの先行特許も関与しており、本発明の評価方法を用いて立てられる巨視的な動力学方程
式内及びその他多くの計算式に関与する巨視的な反応速度rB、物質移動係数KG等のパ
ラメータは、いずれもd32と一定の相関関係を有するが、関連する式は従来技術に属し
、先行特許も関与しており、例えば本発明に開示されている式(3)、(5)~(14)
及び(17)であり、本発明は多くの先行特許に基づいて再革新され、アントラキノン法
による過酸化水素製造の反応系における気泡サイズが実際の操業状況に与える影響を考察
し、例えばrB、EB、CB等の計算法であり、これらパラメータは実際の操業状況の条
件下での気泡サイズとの関係をよく反映でき、かつこれら計算方法は先行特許には関与し
ていない。
本発明は、上述のアントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロ
バブル強化の評価方法で設計されたマイクロ界面反応強化反応器を提供し、アントラキノ
ン法による過酸化水素製造の反応系における最適な気泡サイズを考察する方法により、マ
イクロ界面強化反応器の設計及び操作を最適化させ、上記計算法により設計されたマイク
ロ界面強化反応器は、実際の応用状況に適し、気泡サイズを最も理想な状態に制御でき、
マイクロ界面強化反応器に優れた反応効果を奏させることができる。
なお、本発明の反応器構造は、本発明者の先願である中国特許第CN106187660
A号公報を参照にすることができ、本発明ではこの詳細な説明を省略する。本発明は、構
築された構造・効率調整数学モデル、反応ガス移動効果に対する操作パラメータの相関関
係の影響に基づいて、関連の反応器構造パラメータを設計する。
従来技術と比較して、本発明の有利な効果としては、
本発明は、アントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系の構造・効率調整数学モ
デルを構築することにより、気液界面面積、物質移動容量係数及び巨視的な反応速度に対
する気泡サイズの影響を考察し、マイクロ界面酸化反応の強化効果を評価し、マイクロ界
面反応強化反応器の設計及び操作に根拠を提供し、本発明の評価方法により設計された反
応器は、不均一な気液分布の問題を解決すると共に物質移動を増強できることで、空時収
量を最大化し、マイクロ界面反応強化技術の経済性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読めば、様々な他の利点及び効果が当業者にとっ
てより一層明らかになるであろう。添付の図面は、好ましい実施形態を例示することのみ
を目的としており、本発明を限定するものと見なされるべきではない。
図1】本発明の実施例の気液界面面積aに対する気泡サイズd32の影響を示すグラフである。
図2】本発明の実施例のガス側・液側物質移動容量係数kG、kLに対する気泡サイズd32の影響を示すグラフである。
図3】本発明の実施例の異なる気泡サイズd32下での異なる軸方向の高さにける2-エチルテトラヒドロアントラキノンの濃度CAを示すグラフである。
図4】本発明の実施例の異なる気泡サイズd32下での異なる軸方向の高さにおける液相中のO2の濃度CBを示すグラフである。
図5】本発明の実施例の巨視的な反応速度R巨視に対する気泡サイズd32の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここで、例示的な実施例を詳細に説明し、この例を添付の図面に示す。以下の描写が添付
の図面を参照するとき、別段の指示がない限り、異なる図面の同じ符号は同じ又は類似の
構成要素を意味する。以下の例示的な実施例の中で描写される実施形態は、本開示と一致
する全ての実施形態を表すわけではない。むしろ、これらは、添付の特許請求の範囲に記
載されている本開示のいくつかの態様と一致する装置及び製品の単なる例である。
本開示で使用される用語は、特定の実施例を説明することだけを目的としており、本開示
を限定することを意図していない。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される際に、
単数形の用語「一種」、「前記」、及び「該」は、文脈がそうでないことを明確に指示し
ない限り、複数の指示対象も含むことを意図している。本明細書に用いられている「及び
/又は」という用語は、関連して列挙される項目の1つ以上の、任意及び全ての組み合わ
せを含むことも理解されたい。
本開示において様々な情報を説明するため、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を
使用する場合があるが、これらの情報はこれらの用語に限定されるべきではないことを理
解されたい。 これらの用語は、同じタイプの情報を互いに区別するためにのみ使用され
る。例えば本開示の範囲から逸脱することなく、第1の情報を第2の情報と呼ぶこともで
き、同様に、第2の情報を第1の情報と呼ぶこともできる。文脈に応じて、本明細書で使
用される「場合」という用語は、「~のとき」又は「もし~の場合」又は「もし~ならば
」と解釈される場合がある。
本発明の目的、技術的手段及び利点をより明確にするため、以下、添付の図面及び実施例
を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の実施形態は、下記の実施例を含
むが、これらに限定されるものではない。
【0006】
実施例
本実施例は、本発明の評価方法に基づいて、ある企業のアントラキノン法による過酸化水
素製造の酸化セクションのバブリング反応器及び既存の操業状況について、気液界面面積
、気液物質移動係数及び2-エチルテトラヒドロアントラキノンの巨視的な反応速度に対
する反応器内の気泡サイズの影響を研究する。
計算条件は次の通りであり、
反応器の操作パラメータ:
元の反応器の操作液面高さH0=11.3m、反応器の断面積S0=0.1256m2、
液相密度ρL=906kg/m3、粘度μL=1.22mPa・s、表面張力σL=27
.02mN/m、
運転圧力PT=2.25bar(A)、運転温度T=323.15K、
液相流量QL=4.57×10-4m3/s、空気流量QG=0.0172Nm3/s、
2-エチルテトラヒドロアントラキノンのモル流量FA=0.439mol/h、
本発明の実施例のアントラキノン法による過酸化水素製造の酸化反応系におけるマイクロ
バブル強化の評価方法は、具体的に以下のステップを含み、
a、酸化反応式を立てるステップ
水素化溶液中の反応物は、ヒドロアントラキノン、テトラヒドロアントラキノン、2-エ
チルヒドロアントラキノン及び2-エチルテトラヒドロアントラキノンのうち1種以上を
含む。2-エチルテトラヒドロアントラキノンを例にすると、2-エチルテトラヒドロア
ントラキノンが酸素と反応して過酸化水素を生成する化学式は、次の通りであり、
(1)
2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素の反応は二次反応であり、その反応速度式
は次の通りであり、
(2)
式(2)中、krは、反応速度定数(単位:m3/(mol・s))、CA、CBは、そ
れぞれ液相中の2-エチルテトラヒドロアントラキノンと酸素の濃度(単位:mol/m
3)であり、
b、反応ガスの巨視的な動力学方程式を立てるステップ、
酸化反応過程で、ガス・液膜中の酸素の物質移動速度は、液相中の反応速度と等しくなり
、次の式が得られ
(3)
方程式(3)を求解すると、次の式が得られ、
(4)
ここで、rBは、酸素の巨視的な反応速度(単位:mol/(m3・s))、kG、kL
は、それぞれガス膜、液膜物質移動係数(単位:m/s)、aは、気液界面面積(単位:
m2/m3)、EBは、酸素の反応増大係数、PBは、気泡内の気相本体中の酸素分圧(
単位:Pa)、HBは、酸素のヘンリー係数(単位:Pa・m3/mol)であり、
式(4)中のkG、kL及びaは、いずれも構造・効率調整数学モデルを構築しており、
反応系の気泡径d32との関係は、それぞれ以下の通りであり、
(5)
(6)
(7)
式(5)中、t32は、気泡の滞留時間(単位:s)であり、反応器の操作液面がH0の
場合、
(8)
式(6)中、υsは、気泡のスリップ速度(単位:m/s)、計算式は次のとおりであり

(9)
式(7)~(9)中、υ32は、気泡群の上昇速度(単位:m/s)、計算式は次のとお
りであり、
(10)
式(10)中、υ0は、無限静止液中における単一気泡の上昇速度(単位:m/s)、計
算式は次のとおりであり、
(11)
式(11)中、Moは、Morton数で、気泡が液相中を移動する時の外形を表す無次
元パラメータで、
となり、deは、無次元化した気泡径で、
となり、Kbは、系の物性関連定数で、
となり、有機溶媒又は混合物について、Kb0=10.2、Kb<12の場合、Kb=1
2として計算し、定数c及びnは系の物性にも関連し、実際の系の特徴により対応する経
験値を取り、
c、酸素の反応増大係数EBの数式を立てるステップ
2-エチルテトラヒドロアントラキノンが酸素と反応して過酸化水素を生成する反応系の
Ha数は、次の式(12)で表され、
(12)
Ha数は、液膜中の反応ガス分子の最大可能変換率と最大物質移動速度の相対的な大きさ
を特徴付ける無次元パラメータであるHatta数の略語で、反応と物質移動の相対的な
強さを示し、
E∞は、次の式(13)で表され、
(13)
E∞は、液相本体反応(気液接触面から遠く離れた)による物質移動の増強作用を示し、
この場合、反応増大係数EBの式は次のようになり、
(14)
d、液相中の各反応成分の濃度の計算法を確立し、液相中の各反応成分の濃度を計算する
ステップ、
反応器がプラグフロー反応器であると仮定すると、成分である2-エチルテトラヒドロア
ントラキノンAと酸素Bについて、式(15)~(16)が得られ、
(15)
(16)
同時に気相中の酸素と窒素Iの分圧とモル流量との関係から、式(17)が得られ、
(17)
入口でのFBとCAに基づき、式(3)、(5)~(14)及び(17)を連立して、出
入口でのCBを求め、式(15)及び式(16)に基づき軸方向の任意の位置における液
相中のCAとCBを求める。
巨視的な反応速度と軸方向の任意の位置における液相中の酸素と2-エチルテトラヒドロ
アントラキノン濃度と気泡サイズの変化との関係以外に気液界面面積,ガス側、液側体積
物質移動容量係数と気泡サイズの変化との関係も得ることができる。具体的な変化関係を
図1図5に示す。
【0007】
図1は、気液界面面積aに対する気泡サイズd32の影響を示している。図1から、反応
システムの気泡サイズの縮小に伴い、気液界面面積が増加し続けることが分かる。この実
施例において、気泡サイズは8.4mmから0.2mmに縮小し、気液界面面積が168
m2/m3から26617m2/m3に増加し、157倍程度増加した。
図2は、ガス側・液側物質移動容量係数kG、kLに対する気泡サイズd32の影響を示
し、図2から、ガス側・液側の物質移動容量係数は、気泡サイズの縮小に伴って増加する
ことが分かる。
図3は、異なる気泡サイズの条件下での軸方向の2-エチルテトラヒドロアントラキノン
の濃度CAの変化を示している。図3から、気泡サイズが小さいほど軸方向の2-エチル
テトラヒドロアントラキノンの濃度の下降速度が速くなり、すなわち、気泡サイズが小さ
いほど反応速度が速いことが分かる。同時に、同じ変換率に達する要求の下で、所要の液
面高さは、気泡サイズの縮小に伴って低下した。この実施例において気泡サイズは、8.
4mmから0.5mmに縮小し、同じ変換率に達し、所要の液面高さは11.3mから5
.5mに低下した。
図4は、異なる気泡サイズの条件下での液相中のO2の軸方向濃度CBの変化を示してい
る。図4から物質移動と反応の影響により異なる気泡サイズの条件下での液相中のO2の
軸方向濃度の変化は一貫していないことが分かる。ただしガス側、液側の物質移動容量係
数は、気泡サイズの縮小に伴って増加するため、液相中のO2の濃度全体が気泡サイズの
縮小に伴って増加する。
図5は、巨視的な反応速度R巨視に対する気泡サイズd32の影響を示している。図5
ら、巨視的な反応速度は、気泡サイズの縮小に伴って増加することが分かる。この実施例
において、気泡サイズは8.4mmから0.2mmに縮小し、巨視的な反応速度が0.0
105mol/(m3・s)から0.0216 mol/(m3・s)に増加し、106
%程度増大した。
【0008】
添付の図面に示す好ましい実施形態と併せて本発明の技術的手段を説明するが、当業者で
あれば、本発明の保護範囲がこれらの具体的実施に明らかに限定されないことを容易に理
解するであろう。本発明の原理から逸脱することなく、当業者は関連する技術的特徴に対
して均等の変更又は置換を行うことができ、かかる変更又は置換後の技術的手段は本発明
の保護範囲内に収まる。
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではな
く、当業者にとって、本発明は多種多様な変更及び変化が可能である。本発明の精神及び
原則の範囲内で行われる任意の修正、均等物による置換、改良などは、均しく本発明の保
護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】