(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】多元素化合物ナノ粒子およびシステムならびにその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20240130BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240130BHJP
C25B 11/065 20210101ALI20240130BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240130BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20240130BHJP
C25B 11/093 20210101ALI20240130BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240130BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20240130BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240130BHJP
C25B 1/27 20210101ALI20240130BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240130BHJP
C25B 3/25 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B11/052
C25B11/065
C25B11/081
C25B11/077
C25B11/093
C25B9/00 A
C25B11/054
H01M4/90 X
H01M4/96 B
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 K
C25B1/27
C25B3/26
C25B3/25
C25B9/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536346
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2021063487
(87)【国際公開番号】W WO2022132883
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,リアンビン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ヨンガン
(72)【発明者】
【氏名】リー,タンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ツゥイ,ミンジン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジンロン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA30
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB20
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
5H018AA07
5H018BB01
5H018BB08
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE02
5H018EE03
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5H018EE11
5H018EE13
5H018EE17
5H018HH00
5H018HH01
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH10
(57)【要約】
構造は、1つまたは多元素化合物(MEC)ナノ粒子を含むことができる。各MECナノ粒子は、1つ以上の元素を含む複数の部位を有することができる。各部位は、MECナノ粒子の少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成することができる。1つ以上の化合物結合は、共有結合、イオン結合、または金属結合を含むことができる。各MECナノ粒子は、少なくとも3つの異なる元素から形成することができる。例えば、1つ以上のMECナノ粒子は、多元素酸化物ナノ粒子、多元素炭化物ナノ粒子、多元素金属間ナノ粒子、または任意の他の種類の化合物ナノ粒子であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の多元素化合物(MEC)ナノ粒子を含む構造であって、
各MECナノ粒子は、1つまたは複数の元素を含む複数の部位を有し、各部位は、化合物ナノ粒子の少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成し、
前記化合物結合の1つまたは複数は、共有結合、イオン結合、金属結合、または前述の任意の組合せを含み、
各MECナノ粒子は、少なくとも3つの異なる元素から形成される、構造。
【請求項2】
各MECナノ粒子が、25nm以下の最大断面寸法を有する、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記1つまたは複数のMECナノ粒子が、多元素酸化物ナノ粒子、多元素炭化物ナノ粒子、多元素金属間ナノ粒子、多元素窒化物ナノ粒子、多元素非晶質ガラスナノ粒子、多元素二ホウ化物ナノ粒子、多元素リン化物ナノ粒子、多元素硫化物ナノ粒子、多元素カルコゲナイドナノ粒子、多元素ケイ化物ナノ粒子、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
さらに基板を含み、前記基板が、1つ以上のMECナノ粒子が、前記基板の1つ以上の表面上に形成され、1つ以上のMECナノ粒子が、前記基板の1つ以上の表面に結合され、またはその両方である、請求項1に記載の構造。
【請求項5】
前記基板が、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくは粒子、グラファイト粉末もしくは粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の構造。
【請求項6】
前記1つまたは複数のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素酸化物(MEO)ナノ粒子を含み、前記MEOナノ粒子が、単一の均質相中に酸素および少なくとも3つのカチオンを含む、請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記MEOナノ粒子が、前記単一の均質相中に5つよりも多いカチオンを含む、請求項6に記載の構造。
【請求項8】
前記MEOナノ粒子が、岩塩、スピネル、ルチル、フルオライト、タングステンブロンズ、およびペロブスカイトからなる群から選択される結晶構造を有する、請求項6に記載の構造。
【請求項9】
前記MEOナノ粒子を形成する前記少なくとも3つのカチオンが、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrである、請求項6に記載の構造。
【請求項10】
前記少なくとも3つのカチオンが、少なくとも1つの遷移金属および少なくとも1つの貴金属を含む、請求項6に記載の構造。
【請求項11】
前記MEOナノ粒子が、Pdを含む、請求項6に記載の構造。
【請求項12】
前記ナノ粒子は、(Zr,Ce)
0.6(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)
0.3Pd
0.1O
2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、請求項11に記載の構造。
【請求項13】
前記ナノ粒子は、(Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Ca,Mg,Mn)O
2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、請求項6に記載の構造。
【請求項14】
前記MEOナノ粒子が、13.5J/mol/K以上の配位エントロピーを有する、請求項6に記載の構造。
【請求項15】
前記MEOナノ粒子上に形成され、前記MEOナノ粒子の少なくとも一部を取り囲むコーティングをさらに含む、請求項6に記載の構造。
【請求項16】
前記コーティングが、C、OおよびHを含むポリマーを含む、請求項15に記載の構造。
【請求項17】
前記コーティングが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の構造。
【請求項18】
前記1つ以上のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素金属間(MEI)ナノ粒子を含み、前記MEIナノ粒子が、単相中に少なくとも3つの金属元素を含む、請求項1に記載の構造。
【請求項19】
前記MEIナノ粒子が、約3~6nmの最大断面寸法を有する、請求項18に記載の構造。
【請求項20】
前記MEIナノ粒子が、第1および第2の副格子を有し、前記少なくとも3つの金属元素のうちの1つが、前記第1の副格子中に分布し、前記少なくとも3つの金属元素のうちの他の元素が、前記第2の副格子中に分布する、請求項18に記載の構造。
【請求項21】
前記第1の副格子が、貴金属原子のランダム分布を有し、前記第2の副格子が、非貴金属原子のランダム分布を有する、請求項20に記載の構造。
【請求項22】
前記MEIナノ粒子が、幾何学的に閉鎖充填された相またはトポロジー的に閉鎖充填された相を有する、請求項18に記載の構造。
【請求項23】
前記幾何学的に閉鎖充填された相が、L1
0、L1
1、L1
2、またはB
2の格子構造を含み、前記トポロジー的に閉鎖充填された相が、ラーベス相、σ相、またはμ相を含む、請求項22に記載の構造。
【請求項24】
前記MEIナノ粒子が、5つよりも多い金属元素を含む、請求項18に記載の構造。
【請求項25】
前記MEIナノ粒子が、(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)の式を有する八元ナノ粒子である、請求項18に記載の構造。
【請求項26】
前記MEIナノ粒子が、少なくとも90%の長時間秩序化(LRO)を示す、請求項18に記載の構造。
【請求項27】
前記MEIナノ粒子が、約100%のLROを示す、請求項26に記載の構造。
【請求項28】
前記1つ以上のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素炭化物ナノ粒子を含み、前記多元素炭化物ナノ粒子が、単一の均質相中に炭素および少なくとも3つの金属元素を含む、請求項1に記載の構造。
【請求項29】
前記多元素炭化物ナノ粒子が、前記単一の均質相中に5つよりも多い金属元素を含む、請求項28に記載の構造。
【請求項30】
前記多元素炭化物ナノ粒子を形成する前記少なくとも3つの金属元素が、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrからなる群から選択される、請求項28に記載の構造。
【請求項31】
前記多元素炭化物ナノ粒子が、(TiZrVNbMo)C
xの式を有する五元炭化物である、請求項28に記載の構造。
【請求項32】
前記構造が、熱化学反応または電気化学反応における触媒としての使用のために構成される、請求項1~31のいずれか1項に記載の構造。
【請求項33】
(a)その上に複数の金属塩前駆体を有する基板を提供し、前記金属塩前駆体の少なくとも1つが、Oを含み、前記複数の金属塩前駆体が、少なくとも3つの異なる金属元素を含み;
(b)前記基板を初期温度から少なくとも10
4K/sの第1の加熱速度で第1の温度まで加熱し;
(c)前記基板を前記第1の温度に第1の期間にわたって維持し;
(d)前記第1の時間の終わりに、前記基板を前記第1の温度から少なくとも10
5K/sの第1の冷却速度で第2の温度まで冷却し;
前記初期温度および前記第2の温度は、500K未満であり、
前記(b)の加熱、前記(c)の維持、および前記(d)の冷却により、前記基板上の前記金属塩前駆体が、1つ以上の多元素酸化物(MEO)ナノ粒子に変換され、各MEOナノ粒子は、単一の均質相中にOおよび少なくとも3つの金属元素を含む、方法。
【請求項34】
前記初期温度、前記第2の温度、または両方が、約290~300Kである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の温度が、1400K以上1600K以下の範囲であり、前記第1の時間が、約50~55msである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の温度が、1200K以上1400K以下の範囲であり、前記第1の時間が、約200msである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記(b)の加熱、前記(c)の維持、および前記(d)の冷却が、希ガスの雰囲気中で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記希ガスが、Arを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の金属塩前駆体が、Ni、Cu、またはFeを含み、前記(b)の加熱、前記(c)の維持、および前記(d)の冷却が、酸素分圧を有する雰囲気中で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記雰囲気が、周囲空気を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも3つの金属元素が、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記複数の金属塩前駆体が、10種の異なる金属元素を含み、そのうちの少なくとも1種が、貴金属である、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記貴金属が、Pdである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノ粒子は、(Zr,Ce)
0.6(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)
0.3Pd
0.1O
2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、請求項42に記載のナノ粒子。
【請求項45】
前記ナノ粒子は、(Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Ca,Mg,Mn)O
2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、請求項33に記載のナノ粒子。
【請求項46】
前記基板が、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくは粒子、グラファイト粉末もしくは粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記加熱が、直接ジュール加熱、伝導加熱、放射加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記冷却が、(i)放射、伝導、またはそれらの両方による受動的冷却、(ii)伝導、対流、または両方による能動的冷却、(iii)熱吸収によって誘発される相または化学転移による能動的冷却、または(iv)前記(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記(d)の冷却の後にさらに以下を含む、請求項33に記載の方法:
(e)1つまたは複数のMEOナノ粒子上にコーティングを提供すること、および1つまたは複数のMEOナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むこと、
(f)第1の加熱速度よりも遅い第2の加熱速度で基板を第3の温度から第4の温度に加熱すること、
(g)前記基板を第2の期間にわたって前記第4の温度に維持すること、
(h)前記第2の期間の終わりに、前記第4の温度から少なくとも10
5K/sの第2の冷却速度で前記第4の温度から第5の温度まで基板を冷却すること、
を含み、
前記第3の温度および前記第5の温度は、500K未満であり、
前記(f)の加熱、前記(g)の維持、および前記(h)の冷却により、1つまたは複数のMEOナノ粒子およびコーティングが、1つまたは複数の多元素炭化物ナノ粒子に変換され、各多元素炭化物ナノ粒子は、単一の均質相中にカーボンおよび少なくとも3つの金属元素を含む。
【請求項50】
前記(d)の冷却の後にさらに以下を含む、請求項33に記載の方法:
(e)1つまたは複数のMEOナノ粒子上にコーティングを提供すること、および1つまたは複数のMEOナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むこと、
(f)前記基板を少なくとも10
4K/sの第3の加熱速度で第3の温度から第4の温度に加熱すること、
(g)前記基板をある期間にわたって第4の温度に維持すること、
(h)前記期間の終わりに、少なくとも10
5K/sの第2の冷却速度で、前記基板を前記第4の温度から第5の温度まで冷却すること、
(i)前記(f)の加熱、前記(g)の維持、および前記(h)の冷却を1回以上繰り返して、第2の期間を画定すること、
を含み、
前記第3の温度および前記第5の温度は、500K未満であり、
前記(f)の加熱、前記(g)の維持、前記(h)の冷却、および前記(i)の繰り返しにより、1つまたは複数のMEOナノ粒子およびコーティングが、1つまたは複数の多元素炭化物ナノ粒子に変換され、各多元素炭化物ナノ粒子は、炭素および少なくとも3つの金属元素を単一の均質相中に含む。
【請求項51】
前記第3の温度、前記第5の温度、またはそれらの両方が、約290~300Kである、請求項49~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第4の温度が、前記第1の温度よりも少なくとも200K高く、前記第2の期間が、前記第1の期間よりも少なくとも100倍長い、請求項49~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記第4の温度が、約2000Kであり、前記第2の期間が、約60秒である、請求項49~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記コーティングが、C、O、およびHを含むポリマーを含む、請求項49~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記コーティングが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項49~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
(a)1つ以上の高エントロピー合金(HEA)ナノ粒子をその上に有する基板を提供し、各HEAナノ粒子は、少なくとも5つの異なる金属元素を含み;
(b)少なくとも10
4K/sの第1の加熱速度で前記基板を第1の温度に加熱し;
(c)前記基板を第1の期間にわたって第1の温度に維持し;
(d)前記第1の期間の終わりに、前記基板を前記第1の温度から少なくとも10
5K/sの第1の冷却速度で第2の温度まで冷却し;
前記第2の温度は、500K未満であり、前記第1の温度は、1000Kより高く、前記第1の期間は、1分~10分の範囲内であり、
前記(b)の加熱、前記(c)の維持、および前記(d)の冷却により、1つまたは複数のHEAナノ粒子が、1つまたは複数の多元素金属間(MEI)ナノ粒子に変換され、各MEIナノ粒子は、少なくとも5つの金属元素を単相中に含む、方法。
【請求項57】
前記(a)の提供は、
(a1)前記基板上に複数の金属塩前駆体を提供することであって、複数の金属塩前駆体が、少なくとも5つの異なる金属元素を含むこと;
(a2)少なくとも10
4K/sの第2の加熱速度で基板を初期温度から第3の温度に加熱すること;
(a3)前記基板を第2の期間にわたって第3の温度に維持すること;
(a4)前記第2の期間の終了時に、少なくとも10
5K/sの第2の冷却速度で前記第3の温度から第4の温度まで基板を冷却すること;
を含み、
前記初期温度および前記第4の温度は、500K未満であり、
前記第3の温度は、1000Kより高く、前記第2の期間は、10ms~100msの範囲内であり、
前記(a2)の加熱、前記(a3)の維持、および前記(a4)の冷却により、前記基板上の前記金属塩前駆体が、1種または複数のHEAナノ粒子に変換される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記初期温度、前記第2の温度、および前記第4の温度のうちの1つ、いくつか、または全てが、約290~300Kである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第3の温度が、約1100Kであり、前記第2の期間が、約50~55msである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の温度が、約1100Kであり、前記第1の期間が、約5分である、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
各MEIナノ粒子が、幾何学的に閉鎖充填された相またはトポロジー的に閉鎖充填された相を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記幾何学的に閉鎖充填された相は、L1
0、L1
1、L1
2、またはB
2の格子を含み、前記トポロジー的に閉鎖充填された相は、ラーベス相、σ相、またはμ相を含む、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記1つ以上のMEIナノ粒子が、7つを超える金属元素を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
各MEIナノ粒子が、(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)の化合物を有する八元ナノ粒子である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
各MEIナノ粒子が、少なくとも90%の長時間秩序化(LRO)を示す、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
各MEIナノ粒子が、約100%のLROを示す、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月15日に出願された「多元素化合物ナノ粒子およびその作製方法」と題された米国仮出願第63/125,918号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、操作された多元素粒子に関し、より詳細には、多元素化合物ナノ粒子、ならびにそのようなナノ粒子を作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多元素化合物(MEC)ナノ粒子は、異なる元素間の相乗的相互作用を提供することができ、これはしばしば、それらの単独の対応物よりも優れている。しかしながら、MECナノ粒子を合成することは、一部にはナノスケールで複数の異なる元素を混合することが困難であるため、依然として重要な課題である。比較的低い温度(例えば、300~673K)で行われる従来の湿式化学アプローチ(例えば、水熱および共沈)は、複数の元素を混合するための運動障壁を克服し、化合物形成を駆動するための活性化エネルギーを欠いている場合がある。結果として、従来のアプローチは、相分離を伴う最終生成物を生じる傾向がある。高温熱処理(例えば、>700K)は、より高い活性化エネルギーおよびより速い動力学を提供し、それによって、単一相への多元素混合を促進する。しかしながら、従来の高温戦略(例えば、焼結)は、エネルギー集約的であり、ナノ材料の合成のための制御が困難である。例えば、従来のアプローチは、所望の高温に加熱するためにかなりの時間を必要とし得、比較的長い反応時間(例えば、数分程度)をもたらし、これは、粒子の広範な過剰成長および凝集をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示される主題の実施形態は、とりわけ、上述の問題および欠点のうちの1つまたは複数に対処し得る。
【0005】
開示される主題のシステムの実施形態は、多元素化合物(MEC)ナノ粒子、ならびにその作製および使用のシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される高温製造戦略は、単独でまたは組み合わせて、基板上の前駆体の分解、および複数の元素(例えば、5~10種の異なる元素などの3種以上の異なる元素)のその後の混合、ならびに多元素酸化物(MEO)ナノ粒子、多元素炭化物(ME-炭化物)ナノ粒子、および多元素金属間(MEI)ナノ粒子などであるが、これらに限定されない多様な組成の化合物の形成を駆動するために使用することができる。加熱は、所望の組成、構造、および/または他の特性を達成するように正確に制御することができる。例えば、いくつかの実施形態では、高温への曝露は、構造劣化および/または粒子凝集を回避するために十分に短くすることができる。いくつかの実施形態では、同じまたは異なる温度(例えば、より高い)および/またはより長い持続時間(例えば、1~10分)での追加の加熱が、例えば、MEOナノ粒子をME-炭化物ナノ粒子に変換するために、または無秩序多金属粒子をMEIナノ粒子に変換するために、続いて投与され得る。
【0007】
1つ以上の実施形態において、構造は、1つ以上のMECナノ粒子を含むことができる。各MECナノ粒子は、1つ以上の元素を含む複数の部位を有することができる。各部位は、化合物ナノ粒子の少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成することができる。1つ以上の化合物結合は、共有結合、イオン結合、および/または金属結合を含むことができる。各MECナノ粒子は、少なくとも3つの異なる元素から形成することができる。
【0008】
1つ以上の実施形態では、方法は、その上に複数の金属塩前駆体を有する基板を提供することを含むことができる。金属塩前駆体の少なくとも1つは、酸素(O)を含むことができ、複数の金属塩前駆体は、少なくとも3つの異なる金属元素を含むことができる。該方法は、基板を初期温度から少なくとも104K/sの第1の加熱速度で第1の温度に加熱することと、基板を第1の時間にわたって第1の温度に維持することとをさらに含むことができる。該方法は、また、第1の時間の終わりに、少なくとも105K/sの第1の冷却速度で基板を第1の温度から第2の温度に冷却することを含むことができる。初期温度および第2の温度は、500K未満であり得る。加熱、維持、および冷却は、基板上の金属塩前駆体が1つ以上のMEOナノ粒子に変換されるようなものであり得る。各MEOナノ粒子は、Oおよび少なくとも3つの金属元素を単一の均質相中に含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、1つまたは複数のMEOナノ粒子上にコーティングを提供すること、および1つまたは複数のMEOナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むことをさらに含むことができる。本方法は、また、第1の加熱速度よりも遅い第2の加熱速度で、基板を第3の温度から第4の温度に加熱することを含むことができる。該方法は第4の温度で第2の期間にわたって基板を維持することと、第2の期間の終了時に、少なくとも105K/sの第2の冷却速度で第4の温度から第5の温度まで基板を冷却することとをさらに含むことができる。第3の温度および第5の温度は、500K未満であり得る。第4の温度への加熱、第4の温度での維持、および第4の温度からの冷却は、1つまたは複数のMEOナノ粒子およびコーティングが1つまたは複数のME-炭化物ナノ粒子に変換されるようにすることができる。各多元素炭化物ナノ粒子は、炭素(C)および少なくとも3種の金属元素を単一の均質相で含むことができる。
【0010】
1つまたは複数の実施形態では、別の方法は、1つまたは複数の高エントロピー合金(HEA)ナノ粒子をその上に有する基板を提供することを含むことができる。各HEAナノ粒子は、少なくとも3つの異なる金属元素を含むことができる。該方法は、基板を少なくとも104K/sの第1の加熱速度で第1の温度に加熱する工程と、基板を第1の時間にわたって第1の温度に維持する工程とをさらに含むことができる。該方法は、また、第1の時間の終わりに、少なくとも105K/sの第1の冷却速度で基板を第1の温度から第2の温度に冷却することを含むことができる。第2の温度は、500K未満とすることができ、第1の温度は、1000Kを超えることができ、第1の期間は、両端値を含む1分~10分の範囲内とすることができる。加熱、維持、および冷却は、1つまたは複数のHEAナノ粒子が1つまたは複数の多元素金属間(MEI)ナノ粒子に変換されるようにすることができる。各MEIナノ粒子は、少なくとも5つの金属元素を単相で含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、基板上に1つ以上のHEAナノ粒子を提供することは、基板上に複数の金属塩前駆体を提供することと、基板を初期温度から少なくとも104K/sの第2の加熱速度で第3の温度まで加熱することと、基板を第2の時間にわたって第3の温度に維持することと、第2の時間の終わりに、基板を第3の温度から少なくとも105K/sの第2の冷却速度で第4の温度まで冷却することとを含むことができる。複数の金属塩前駆体は、少なくとも5種の異なる金属元素を含むことができる。初期温度および第4の温度は、500K未満とすることができ、第3の温度は、1000Kより大きくすることができ、第2の期間は、10ms以上100ms以下の範囲とすることができる。第3の温度への加熱、第3の温度での維持、および第3の温度からの冷却は、基板上の金属塩前駆体が1つまたは複数のHEAナノ粒子に変換されるようなものであり得る。
【0012】
本開示の様々な革新のいずれも、組み合わせて、または別々に使用することができる。この概要は、以下の詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図するものでもない。開示された技術の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、実施形態について、必ずしも一定の縮尺で描かれていない添付の図面を参照して説明する。適用可能な場合、いくつかの要素は、基礎となる特徴の例示および説明を助けるために、簡略化されるか、または、そうでなければ、図示されない場合がある。図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【
図1A】
図1Aは、複数の相を有する従来の多元素ナノ粒子の態様を示す簡略化された概略図である。
【
図1B】
図1Bは、開示される主題の1つまたは複数の実施形態による、単一の均質相を有する多元素酸化物(MEO)ナノ粒子の態様を示す簡略化された概略図である。
【
図1C】
図1Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEOナノ粒子を有するカーボンナノファイバー(CNF)基板の簡略化された概略図である。
【
図1D-1E】
図1D-1Eは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEOナノ粒子が作製されたCNF基板の概要および拡大図を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2A】
図2Aは,不秩序固溶体相を形成する多元素高エントロピー合金(HEA)の態様を示す簡略化した概略図である。
【
図2B】
図2Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、秩序的な固溶体相を有する多元素金属間(MEI)ナノ粒子の態様を示す簡略化された概略図である。
【
図2C】
図2Cは、開示された主題の1つ以上の実施形態による、八元MEIナノ粒子の例示的な格子構造を示す。
【
図2D-2F】
図2D-2Fは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、作製された八元(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)MEIナノ粒子の高角度環状暗視野撮像(HAADF)走査透過型エレクトロン顕微鏡(STEM)画像を示す。
【
図2G】
図2Gは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEIナノ粒子を有するCNF基板の簡略化された概略図である。
【
図3A】
図3Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEOナノ粒子を形成するための例示的な方法のプロセスフロー図である。
【
図3B】
図3Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEOナノ粒子を形成するために使用され得る例示的なパルス加熱プロファイルの態様を示すグラフである。
【
図3C】
図3Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、単相MEOナノ粒子を形成するための例示的な合成戦略を図示する概略図である。
【
図3D】
図3Dは、異なる元素の酸化電位を示す温度の関数としての、異なる酸化物のGibbs形成自由エネルギーのグラフである。
【
図3E】
図3Eは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、1000Kで合成された(Zr,Ce,Hf,Ti)O
Xナノ粒子(相分離を示す)、1550Kで合成された(Zr,Ce,Hf,Ti)O
2ナノ粒子、および1150KでCNF基板上に合成された(Ca,Mg)(Ti,Nb,Mn)O
3-Xナノ粒子のx線回折(x線回折)図形を示す。
【
図3F】
図3Fは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、低P
O2(~1ppm)合成によって作製された(Fe,Co,Ni,Cu)ナノ粒子、高P
O2(空気)合成によって作製された(Fe,Co,Ni,Cu)O
xナノ粒子、および高P
O2(空気)合成によって作製された(Mn,Fe,Co,Ni)
3O
4-xナノ粒子のx線回折図形を示す。
【
図3G】
図3Gは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、(Zr,Ce,Hf)
0.9 Pd
0.1 O
xナノ粒子(相分離を示す)および(Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Sm,Dy,Pd)O
2-xナノ粒子(単相を示す)のx線回折図を示す。
【
図4A】
図4Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多元素炭化物(ME-炭化物)ナノ粒子を形成するための例示的な方法のプロセスフロー図である。
【
図4B】
図4Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、単相ME-炭化物ナノ粒子の例示的合成を図示する概略図である。
【
図4C】
図4Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、ME-炭化物ナノ粒子を形成するために使用され得る、炭化のための例示的な加熱プロファイルの態様を示すグラフである。
【
図4D】
図4Dは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、ME-炭化物ナノ粒子を形成するために使用され得る、炭化のための別の例示的な加熱プロファイルの態様を示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、多元素金属間(MEI)ナノ粒子を形成するための例示的な方法のプロセスフロー図である。
【
図5B】
図5Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、MEIナノ粒子を形成するための例示的な加熱プロファイルの態様を示すグラフである。
【
図5C】
図5Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、~1100Kでの様々なアニール時間から得られる、五元Pt(白金)(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)MEIナノ粒子のX線回折図形を示す。
【
図5D】
図5Dは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、五元MEIナノ粒子サイズの関数としての長時間秩序化(LRO)のグラフである。
【
図6】
図6は、開示される技術が実装され得るコンピューティング環境の一般化された例を示す。
【
図7A】
図7Aは、(Zr,Ce)
0.6(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)
0.3 Pd
0.1O
2-xナノ粒子(10-MEO-PdO)および(Zr,Ce)
0.6(Mg,Hf,Ti,Cr,Mn,Fe,Cu)
0.3 Pd
0.1 O
xナノ粒子(10-MEO-FeCu)の対照試料を用いた実験装置におけるメタン転化率のグラフである。
【
図7B】
図7Bは、PdO
x、Pdを含まない9-MEO((Zr,Ce)
0.66(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)
0.34O
2-x)、および10-MEO-PdOを触媒として用いた実験装置におけるメタン転化率対反応温度の図である。
【
図7C】
図7Cは、触媒としてPdOx、4-MEO-Pd((Zr,Ce)
0.6Mg
0.3Pd
0.1O
x)、および10-MEO-PdOを用いた実験装置におけるメタン転化率の経時変化を示す図である。
【
図7D】
図7Dは、開示された合成技術を用いて製造された、異なるPd含有量を有する拒否元素粒子のXRDパターンを示す。
【
図7E】
図7Eは、1273Kで2時間Ar雰囲気中においてアニールすることによって合成された、10at%のPdを有する拒否元素粒子のXRDパターンを示す。
【
図8A】
図8Aは、5mV/sの走査速度での線形掃引ボルタンメトリーを使用した、様々な酸化物および炭化物ナノ粒子の水素発生反応(HER)性能を比較するグラフである。
【
図8B】
図8Bは、10mA/cm
2でのクロノアンペロメトリーを用いた、MoO
2および(TiZrVNbMo)C
xナノ粒子のHER性能を比較する図である。
【
図9A】
図9Aは、五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)ナノ粒子のオーダー加熱時間の関数としてのLROの図である。
【
図9B】
図9Bは、様々なオーダーの加熱時間における五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)ナノ粒子のX線回折図形を示す。
【
図9C-9E】
図9C-9Eは、0.5秒のオーダー加熱時間における五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)ナノ粒子のSTEM画像である。
【
図9F】
図9Fは、陽極触媒として八元(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)金属間ナノ粒子を使用するエタノール燃料電池試験装置の簡略化された概略図である。
【
図9G】
図9Gは、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いた、1M KOHおよび1M EtOH中での、八元(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)金属間ナノ粒子、二元PtFeナノ粒子、および市販のPt/C触媒のエタノール電気酸化反応(EOR)性能の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般的な考慮事項
本説明の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載される。開示された方法およびシステムは、決して限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに互いの様々な組合せおよび下位組合せで、開示される様々な実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。方法およびシステムは、任意の特定の態様、特徴、またはそれらの組み合わせに限定されず、開示される実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。任意の実施形態または実施例からの技術は、他の実施形態または実施例のうちの任意の1つまたは複数において説明される技術と組み合わせることができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例示的なものにすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。
【0015】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便利な提示のために特定の順番で説明されるが、特定の順序付けは、以下で説明される特定の言語によって必要とされない限り、この説明の方式は、並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、連続して説明される動作は、場合によっては並べ替えられるか、または同時に実行され得る。さらに、簡略化のために、添付の図面は、開示された方法が他の方法と併せて使用され得る様々な方法を示していない場合がある。さらに、説明は、開示された方法を説明するために、「提供する」または「達成する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なり得、当業者によって容易に認識可能である。
【0016】
数値範囲の開示は、特に断りのない限り、端点を含む範囲内の各離散点を指すものと理解されるべきである。別段の指示がない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、百分率、温度、時間などを表す全ての数は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、別段の暗示的または明示的な指示がない限り、または文脈がより明確な構成を有すると当業者によって適切に理解されない限り、記載される数値パラメータは、当業者に知られているように、求められる所望の特性および/または標準試験条件/方法下での検出の限界に依存し得る近似値である。議論された先行技術から実施形態を直接的かつ明示的に区別する場合、実施形態番号は、「約」という単語が列挙されない限り、近似ではない。「実質的に」、「およそ」、「約」、または同様の言語が特定の値と組み合わせて明示的に使用される場合は、常に、明示的に別段の定めがない限り、その値の10%までの変動が意図される。
【0017】
方向および他の相対参照は、本明細書における図面および原理の説明を容易にするために使用され得るが、限定することを意図されない。例えば、「内側」、「外側」、「上側」、「下側」、「上部」、「底部」、「内側」、「外側」、「左側」、「右側」、「前側」、「後側」、「後部」等のような用語を使用することができる。このような用語は、該当する場合、特に図示の実施形態に関して、相対的関係を扱う際に、記述のいくつかの明確性を提供するために使用される。しかし、このような用語は、絶対的な関係、位置、および/または方向を意味することを意図していない。例えば、物体に関して、「上側」部分は、単に物体を反転させることによって「下側」部分になる。それにもかかわらず、それは依然として同じ部分であり、物体は同じままである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「含む」という手段、および単数形「a」または「an」または「the」は、文脈が明らかに、そうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。用語「または」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、記載された代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。
【0019】
本明細書に記載される様々な構成要素、パラメータ、動作条件などの代替があるが、それらの代替が必ずしも同等であり、および/または等しく良好に機能することを意味しない。また、特に明記しない限り、選択肢が好ましい順序で列挙されていることも意味しない。特に明記しない限り、以下に定義する基のいずれも、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0020】
別段の説明がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本開示の主題の特徴は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0021】
用語の概要
特定の用語および略語の以下の説明は、開示される主題の様々な態様の説明を容易にし、開示される主題の実施において当業者を案内するために提供される。
【0022】
ナノ粒子:複数の元素(例えば、少なくとも2つの元素、例えば、少なくとも3つの元素、少なくとも5つの元素、または少なくとも8つの元素)から形成され、1μm以下、例えば、約100nm以下の、最大限の断面寸法(例えば、粒子は、球形、例えば、
図1BのD
1または
図2BのD
2である場合の径)を有する、加工された粒子。いくつかの実施形態では、各ナノ粒子は、約20~25nmの最大断面寸法を有する。他の実施形態では、各ナノ粒子は、10nm以下、例えば、約3~6nmの最大断面寸法を有する。
【0023】
多元素化合物(MEC)ナノ粒子:1つ以上の元素を含む複数の部位を有し、各部位が少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成するナノ粒子。いくつかの実施形態において、化合物結合は、共有結合、イオン結合、および/または金属結合である。いくつかの実施形態において、MECナノ粒子は、多元素酸化物(MEO)ナノ粒子、多元素炭化物(ME-炭化物)ナノ粒子、多元素中間体(MEI)ナノ粒子、多元素窒化物ナノ粒子、多元素非結晶ガラスナノ粒子、多元素ジボリドナノ粒子、多元素リン化物ナノ粒子、多元素硫化物ナノ粒子、多元素カルコゲニドナノ粒子、または多元素シリサイドナノ粒子である。
【0024】
相分離:2つ以上の異なる相が単一の均一な相または混合物から生じるナノ粒子または他の構造。
【0025】
導入部
開示される主題の実施形態は、相分離を伴わない少なくとも3つの異なる元素(例えば、単結晶構造を示す単相、例えば、単一固溶体)と、その製造(本明細書では、合成または作製とも呼ばれる)のための高温技術とを有する多元素化合物(MEC)ナノ粒子を提供する。それぞれの多元素化合物ナノ粒子は、少なくとも3つの元素、例えば、Ax,By,Czを有することができ、ここで、A,B,およびCは、分子化合物中の様々な元素(例えば、1つ以上の金属、1つ以上の非金属、または前述の任意の組合せ)を表し、x,y,およびzは、分子化合物中のそれぞれの元素の原子の数を表す。いくつかの実施形態では、MECナノ粒子は、複数の部位からなり、各部位(例えば、部位A、部位B、部位Cなど)における元素のうちの1つの少なくとも1つの原子を有する。各部位は、ナノ粒子中の少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成することができる。
【0026】
MECナノ粒子を製造するために、高温を使用して、前駆体の分解およびその後の多元素混合および化合物形成を促進することができる。しかしながら、温度印加は、例えば、高温の短いパルスを印加するように加熱プロファイルを調整することによって、構造劣化および粒子凝集を回避するように正確に制御することができる。いくつかの実施形態では、MECナノ粒子を合成するために使用される高温が例えば、500K~4000K(例えば、1000~2000Kを含む)の範囲内であり得、高温の持続時間は、例えば、1ミリ秒(ms)~1秒(s)(例えば、10~100msを含む)の範囲内であり得る。高温への移行/高温からの移行は、例えば、10K/分以上107K/分以下の加熱速度および/または冷却速度で、比較的迅速に達成することができる。いくつかの実施形態では、同じまたは異なる温度(例えば、2000K以上)および/またはより長い持続時間(例えば、1~10分)での追加の加熱を、その後に投与して、異なる組成物および/または材料特性のナノ粒子を達成することができる。
【0027】
そのようなMECナノ粒子は、(1)強い共有結合を有する化合物形成構造、および/または(2)構造安定性を熱力学的および動力学的に改善することができる高い混合エントロピーに少なくとも部分的に起因して、安定な構造を示すことができる。加えて、開示された技術によって可能になる迅速な合成能力は、特定の用途における適合性のための要素の組み合わせのハイスルーPtスクリーニングを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、人工知能(AI)(例えば、機械学習)は、特定の用途のために異なるMECナノ粒子組成物を製作および評価するために、ならびにMECナノ粒子の特性を最適化するために(例えば、加熱温度、温度持続時間、加熱ランプ速度、冷却ランプ速度などの製作パラメータを変更することによって)、開示された技術と併せて使用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、MECナノ粒子が熱化学反応および/または電気化学反応のための触媒として特に有用であり得る。例えば、熱化学反応は、アンモニア(NH3)合成または分解、メタン(CH4)熱分解および変換、二酸化炭素(CO2)メタン化および変換、石炭ガス化、水性ガスシフト反応、合成ガス変換反応、または前述の任意の組合せを含むことができるが、これらに限定されない。例えば、電気化学反応は、水分解(例えば、水素および酸素発生)、燃料電池用途(例えば、水素酸化および酸素還元反応)、CO2還元反応、窒素(N2)還元反応、または前述の任意の組合せを含むことができるが、これらに限定されない。
【0029】
多元素酸化物(MEO)ナノ粒子およびMEOナノ粒子構造
上述のように、従来の製造技術は、単相を有する多元素ナノ粒子を製造することができない。むしろ、
図1Aに示されるように、少なくとも2つの異なる元素102、104から形成される従来のナノ粒子100は、明確な相分離をもたらす。対照的に、開示された技術に従って製造されたMECナノ粒子は、複数の異なる元素を組み合わせて、単一の均一な酸化物相を有する化合物ナノ粒子にすることができる。例えば、
図1Bは、酸素(O)112および少なくとも3つの異なるカチオン118a~118cの組み合わせから形成される例示的な多元素酸化物(MEO)ナノ粒子110を示す。いくつかの実施形態では、カチオン118a~118cのうちの1つ、いくつか、または全ては、金属の群116、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、アクチノイド、遷移金属、または遷移後金属から選択され得る。例えば、いくつかの実施形態では、群116の少なくとも1つのカチオン118a~118cは、遷移金属であり得、群116の少なくとも別のカチオン118a~118cは、貴金属(例えば、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、およびAu)であり得る。いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子110は、約20~25nmの最大限の断面寸法(例えば、直径)D
1を有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子110は、従来の酸化物ナノ粒子100の構成エントロピーよりも大きい構成エントロピーを有することができる。一般に、配位エントロピーは、カチオンの数とともに増加する可能性があり、カチオンの数は、従来の製造プロセスの制限のために、5以下に制限される可能性がある。配位エントロピーΔSconfigは、MEO材料(例えば、Mがカチオン性元素であるフッ化物酸化物(MO2))について、下記の式1で表される。
【0031】
【0032】
式中、Rはガス定数であり、xiは金属カチオンのモル分率を表し、Mサイトはカチオン部位を表し、nはカチオンの総数である。例えば、従来の酸化物ナノ粒子の配位エントロピーは、13.38J/mol/K未満(例えば、5カチオンについて)であり得、一方、開示される主題の実施形態に従って製造されたMEOナノ粒子は、13.5J/mol/Kを超える配位エントロピー、例えば、10カチオンを有するMEOナノ粒子について約19.14J/mol/Kを実証し得る。いくつかの実施形態では、このようなエントロピーの増加は、例えば、特定の用途において過酷な環境に曝露された場合、MEOナノ粒子の構造安定性を向上させることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、複数のMECナノ粒子110は、構造(例えば、触媒構造)を形成するために、基板上に支持され、および/または基板と一体化され得る。いくつかの実施形態では、基板は、最初に、その上に装填され、その後加熱される複数の前駆体(例えば、金属塩)からナノ粒子を形成するために使用されるのと同じ構造であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、基板が炭素系構造であってもよく、開示された精密制御加熱(例えば、熱衝撃プロセス)のための加熱要素として機能することができる。代替的にまたは追加的に、基板は、前駆体を複数の分離されたナノ粒子に変換するための所望の熱衝撃を提供する加熱要素と熱連通(例えば、伝導性、対流性、または放射性)して配置され得る(例えば、隣接するナノ粒子110間の最小間隔は、~10nmから~100nmまで変化する)。
【0034】
図1Cを参照すると、例示的な触媒構造120の簡略図が示されている。図示の例では、触媒構造120は、実質的に同じ組成を有するMEOナノ粒子110のランダム配列を有する基板122(例えば、炭素系構造)を有する。例えば、いくつかの実施形態では、基板122は、
図1Cに示すように、カーボンナノファイバー(CNF)124のネットワークで形成することができる。MEOナノ粒子110は、CNF124の表面上に直接形成することができる。したがって、MEOナノ粒子110のうちのいくつかは、CNFネットワーク内に配置され得るが、他のものは、CNFネットワーク(例えば、基板122)の外部に面する表面上に配置されると考えられ得る。結果として生じる触媒構造120は、反応物の流れが基板122に対して垂直に方向付けられ得るように(例えば、反応物がCNFネットワーク内のナノ粒子110に接触することを可能にするように)、多孔性であると考えることができる。代替的にまたは追加的に、反応物は、基板122の主表面または活性外部表面に実質的に平行に方向付けることができる。
【0035】
図1Cでは、基板122は、概して、矩形プリズムとして成形される。しかしながら、いくつかの実施形態では、基板は、
図1Cに示されるものとは異なる形状(例えば、フィルム、膜、多面体プリズム、不秩序形状構造、粒子など)、および/または
図1Cに示されるものとは異なるMEOナノ粒子110の配列(例えば、基板の露出表面上のMEOナノ粒子の秩序的なアレイ)を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子を形成および/またはその後支持するために使用される基板は、CNF、カーボンナノチューブ(CNT)、メソ多孔性カーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくは粒子、グラファイト粉末もしくは粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、または前述のもの任意の組み合わせを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される迅速な非平衡技術の使用は、単相構造および均一な分散を有するMEOナノ粒子の合成を可能にする。非平衡合成は、MEOを形成するための多元素混合を促進する急速な高温加熱を特徴とし、一方、短い加熱時間は、粒子凝集および酸化物還元を効果的に回避する。いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子のための元素間の差異(例えば、酸化電位、カチオン半径、結晶構造など)のために、加熱は、酸素分圧の存在下で行われてもよく、および/またはエントロピーを増加させるために追加の元素が加えられてもよく、そうでなければ従来の技法では、可能ではないカスタマイズされた構造を有する独特のMEOナノ粒子の合成を可能にする。
【0037】
【0038】
【0039】
表1A~1Bは、異なる結晶構造を有するMEOナノ粒子の例示的な組成物を提供する。一例とXして、例えば、前駆体でコーティングされた基板を約1500~1550Kで約50ms加熱することによって、10-MEO-MgMn(ここで、xは酸素空孔を表す)として示される十元MEOナノ粒子(例えば、Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Ca,Mg,Mn)O
2―xが製造された。製造後の走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングにより、
図1D~1Eに示すように、基板のCNF124上に均一で高密度のナノ粒子110が形成されていることが明らかになった。
【0040】
いくつかの実施形態では、製造されたMEOナノ粒子をさらに処理して、異なる組成を有するナノ粒子を得ることができる。例えば、多元素炭化物(ME-炭化物)ナノ粒子は、MEOナノ粒子と炭素との反応から誘導することができる。いくつかの実施形態では、ME-炭化物ナノ粒子は、炭素と共有結合した3つ以上の金属元素の炭化物化合物であり得る。ME-炭化物ナノ粒子中の異なる元素は、高いエントロピーでランダムに分布させることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ME-炭化物ナノ粒子は、本明細書の他の箇所でさらに詳細に記載されるように、MEOナノ粒子を少なくとも炭素(C)を含有するコーティングで(部分的にまたは完全に)封入し、次いで、コーティングされたMEOナノ粒子をさらなる加熱(例えば、炭化)に供することによって形成することができる。例えば、コーティングは、C、酸素(O)、および水素(H)を含むポリマー、例えば、限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。ME-炭化物ナノ粒子は、MEOナノ粒子とCとの反応から直接誘導されるので、ME-炭化物は、MEOナノ粒子と同様の組成空間を有する。表1A~1Bに上記した実施例に加えて、表2は、ME-炭化物ナノ粒子のためのさらなる例示的な組成物を示す。
【0042】
【0043】
多元素金属間(MEI)ナノ粒子およびMEIナノ粒子構造
いくつかの実施形態では、多金属無秩序(MMD)ナノ粒子は、長時間秩序化(LRO)を有する多元素金属間(MEI)ナノ粒子に変換することができる。MMDナノ粒子は、例えば、加熱パルス(例えば、10~100msの間≧1000K)を基板上の金属前駆体に印加することによって形成される、少なくとも3つの異なる金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、MMDナノ粒子は、5つ以上の異なる金属を有することができ、したがって、高エントロピー合金(HEA)ナノ粒子とみなすことができる。例えば、
図2Aは、複数の金属202、例えば、無秩序な固溶体合金を形成する少なくとも5つの異なる元素204a~204eから形成されるHEAナノ粒子200を示す。MEIナノ粒子を形成するために、MMDナノ粒子は、MMDナノ粒子を形成するために使用される加熱パルスよりも長い持続時間の間、第2の加熱(例えば、アニーリングまたは秩序化加熱期間)に供され得る。第2の加熱は、MMD形成加熱パルスと同じ温度、または異なる温度(例えば、MMD形成加熱パルスよりも小さいかまたは大きい)であり得る。いくつかの実施形態では、MMDナノ粒子は、MMD形成加熱パルスより少なくとも2桁大きい期間、例えば、≧1000Kで1~10分間加熱することによってMEIナノ粒子に変換することができる。
【0044】
より長い時間のアニーリングは、MMD中の原子を、より熱力学的に安定な金属間構造(例えば、無秩序から秩序への転移)に再配列することを可能にし、続いて、急冷(例えば、少なくとも10
4K/s)が、最終的な秩序構造を適所に固定する。例えば、
図2Bは、MMD-ナノ粒子(例えば、
図2AのHEAナノ粒子200)をアニールすることによって形成された例示的なMEIナノ粒子210を示す。図示の例では、MEIナノ粒子210は、LROを有する単一の固溶体相を形成する複数の金属212、例えば少なくとも5つの異なる元素214a~214eから形成される。MMDナノ粒子から形成される場合、MEIナノ粒子210の金属212は、MMDナノ粒子の金属202(例えば、HEAナノ粒子200)と同じであり得る。いくつかの実施形態では、元素214a~214eのうちの1つ、いくつか、または全ては任意の公知の金属、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、アクチノイド、遷移金属、または遷移後金属から選択され得る。いくつかの実施形態では、MEIナノ粒子210は、10nm以下(例えば、3~6nm、例えば、3.5~5nm)の最大限の断面寸法(例えば、直径)、D
2を有し得る。
【0045】
MEIナノ粒子210は、2つの副格子(例えば、超格子および非超格子)上で長時間秩序化を示すことができる。いくつかの実施形態において、MEIナノ粒子は、少なくとも70%、例えば、少なくとも90%(例えば、約100%)のLROを示すことができ、これは次式2で定義される。
【0046】
【0047】
ここで、I110およびI111は、それぞれ、超格子(110)および非超格子(111)のピーク強度であり、I*は、完全に秩序化された構造の対応するピーク強度である(例えば、LRO =100%)。いくつかの実施形態では、MEIナノ粒子は、幾何学的に閉鎖充填された相またはトポロジー的に閉鎖充填された相を有することができ、その形成は、ナノ粒子の材料選択および化学量論比に依存し得る。例えば、MEIナノ粒子の幾何学的に閉鎖充填された相の格子構造は、L10(例えば、面心立方(fcc)構造の正方晶歪み)、L11、L12、B2などを含むことができ、トポロジー的に閉鎖充填された相の格子構造は、ラーベス相、σ相、μ相などを含むことができる。
【0048】
二元金属間化合物において、各副格子は、単一の元素によって占有され得る。しかしながら、利用可能な副格子よりも多くの構成要素を有するMEI相では、少なくとも1つの副格子(または両方の副格子)は、その部位を占める2つ以上の元素を有することができる。例えば、八角形ABCDEFGHの金属間化合物220は、
図2Cに概略的に示されているように、1つの副格子220a上に元素A、BおよびC(例えば、Pt、PdおよびAu)のランダム分布と、第2の副格子220b上に元素D、E、F、GおよびH(例えば、Fe、Co、Ni、CuおよびSn)のランダム分布とを有していてもよい。作製した例では、(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)の組成を有する八元MEIナノ粒子を合成した。八元MEIナノ粒子は、
図2D~2FのSTEM画像に示されるように、それぞれ3.73、2.76、および2.34Åの間隔を有する(001)、(110)、および(111)面を特徴とするL1
0金属間化合物を形成した。
【0049】
いくつかの実施形態では、複数のMEIナノ粒子210は、構造(例えば、触媒構造)を形成するために、基板上に支持され、および/または基板と一体化され得る。いくつかの実施形態では、基板は、最初に、その上に装填された複数の前駆体(例えば、金属塩)から(またはHEAナノ粒子200などの予め形成されたMMDナノ粒子から)ナノ粒子を形成し、その後加熱するために使用されるのと同じ構造であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、基板は、炭素系構造とすることができ、開示された精密制御加熱(例えば、熱衝撃プロセス)および/または順序付けのための後続のアニーリングのための加熱要素として機能することができる。代替的または追加的に、基板は、所望の熱衝撃および/または順序付けのためのアニーリングを提供する加熱要素と熱連通(例えば、伝導性、対流性、または放射性)して配置され得る。
【0050】
図2Gを参照すると、例示的な触媒構造230の簡略図が示されている。図示の例では、触媒構造230は、実質的に同じ組成を有するMEIナノ粒子210のランダム配列を有する基板122(例えば、炭素系構造)を有する。例えば、いくつかの実施形態では、基板122は、
図2Gに示すように、カーボンナノファイバー(CNF)124のネットワークで形成することができる。MEIナノ粒子210は、CNF124の表面上に直接形成することができる。したがって、MEIナノ粒子210のうちのいくつかは、CNFネットワーク内に配置され得るが、他のものは、CNFネットワーク(例えば、基板122)の外部に面する表面上に配置されると考えられ得る。結果として生じる触媒構造120は、反応物の流れが基板122に対して垂直に方向付けられ得るように(例えば、反応物がCNFネットワーク内のナノ粒子210に接触することを可能にするように)、多孔性であると考えることができる。代替的にまたは追加的に、反応物は、基板122の主表面または活性外部表面に実質的に平行に方向付けることができる。
【0051】
図2Gでは、基板122は、概して、矩形プリズムとして成形される。しかしながら、いくつかの実施形態では、基板は、
図2Gに示されるものとは異なる形状(例えば、フィルム、膜、多面体プリズム、不秩序形状構造、粒子など)、および/または
図2Gに示されるものとは異なるMEIナノ粒子210の配列(例えば、基板の露出表面上のMEIナノ粒子の秩序的なアレイ)を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、MEIナノ粒子を形成および/またはその後支持するために使用される基板がCNF、カーボンナノチューブ(CNT)、メソ多孔性カーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくは粒子、グラファイト粉末もしくは粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、または前述の任意の組み合わせを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、2段階加熱技術(例えば、前駆体を無秩序ナノ粒子に変換する急速パルス加熱、その後、ナノ粒子の無秩序-秩序転移を引き起こすためのより長い持続時間のアニール加熱)の使用は、明確な原子配列、小さい粒径(例えば、<10nm)、およびカスタマイズされた組成物および相構造(例えば、二元PtFe、三元PtCoNi、五元PtFeCoNiCu、八元PtPdAuFeCoNiCuSnなど)を有する秩序ある金属間ナノ粒子を生じ得、そうでなければ、従来の技術では不可能であろう。限定されるものではないが、開示される主題の実施形態によるMEIナノ粒子のためのさらなる例示的な組成物が表3に示される。
【0053】
【0054】
他の多元素化合物(MEC)ナノ粒子および構造
本明細書に開示される技術は、MEOナノ粒子(例えば、(Ce,Zr,Hf,Ti)O2)、ME-炭化物ナノ粒子(例えば、Ti,Zr,Mo,V,Nb)C)、およびMEIナノ粒子(例えば、(FeCoNiCu)Pt)などの様々なタイプのMECナノ粒子を製造するために使用することができる。本明細書に提示される議論および具体例は、MEO、ME-炭化物、およびMEIナノ粒子に焦点を当てているが、開示される主題の実施形態は、それらに限定されない。むしろ、当業者は、本明細書に提示される教示が限定されないが、多元素窒化物ナノ粒子、多元素二ホウ化物ナノ粒子、多元素リン化物ナノ粒子、多元素硫化物ナノ粒子、多元素カルコゲニドナノ粒子、多元素シリサイドナノ粒子、多元素アモルファスガラスナノ粒子などの他のタイプのMECナノ粒子を形成するように拡張され得ることを容易に理解できるであろう。例えば、表4A~4Bは、開示される主題の実施形態に従って形成されてもよい様々な他のMECナノ粒子の例示的な組成物を提供する。
【0055】
さらに、上記および本明細書の他の箇所での議論は、実質的に球状のMECナノ粒子の特定の例に焦点を当てているが、本明細書に提示される教示は、異なる組成(例えば、様々な化合物および/または異なる元素)、異なるサイズ(例えば、原子化合物から断面寸法(例えば、最大または最小断面寸法)で1μmまで)、異なる形状(例えば、三角形、円筒形ロッド、長方形など)、異なる微細構造、異なる構成(例えば、中空、異種混合物、コア-シェルなど)、または前述の任意の組合せを有する変形形態を提供するように容易に拡張することができる。いくつかの実施形態では、製造されたナノ粒子のサイズは、例えば、前駆体負荷を変化させること、基板のタイプまたは構成を変化させること、合成条件(例えば、パルス温度および/または持続時間)を変化させること、または前述の任意の組み合わせによって変化させることができる。いくつかの実施形態では、製造されたナノ粒子の形状は、例えば、合成条件(例えば、パルス温度および/または冷却速度)を変更することによって変化させることができる。いくつかの実施形態では、製造されたナノ粒子の微細構造が例えば、(例えば、コア-シェル構造を形成するために)段階的合成プロセスを使用することによって変化させることができる。いくつかの実施形態では、製造されたナノ粒子の構成は、例えば、別の基板および/またはナノ粒子と組み合わせることによって変化させることができる。
【0056】
【0057】
【0058】
MEOナノ粒子の製造方法
図3Aは、
図1BのMEOナノ粒子110および/または
図1CのMEOナノ粒子を組み込んだ構造120などのMEOナノ粒子を形成するための例示的な方法300を示す。方法300は、処理工程302で開始することができ、所望のMEOナノ粒子中の複数の元素の前駆体が選択される。上述のように、各MEOナノ粒子は少なくとも3つの異なるカチオン(例えば、金属元素)と組み合わせてOから形成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、前駆体は、溶液(例えば、エタノール、水、またはそれらの混合物)中の金属塩(例えば、金属塩化物塩、金属硝酸塩水和物塩など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、前駆体のうちの少なくとも1つは、Oを含み得る。
【0059】
方法300は、決定工程304に進むことができ、ここで、選択されたカチオンの1つが貴金属であるかどうかが決定される。以下により詳細に記載されるように、貴金属の選択は、MEOナノ粒子の適切な形成を可能にするために、追加の合成戦略を必要とし得る。貴金属が選択される場合、方法300は、決定工程304から決定工程306に進むことができ、ここで、選択された構成要素の数が、MEOナノ粒子の形成を可能にするのに十分なエントロピーを提供するかどうかがさらに決定される。例えば、いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子中に貴金属を含めることは、化合物酸化物の適切な形成のために、6つ以上の他の金属元素(例えば、少なくとも10種の異なる金属合計)を必要とし得る。不十分な数の元素が選定された場合、方法300は、追加の前駆体の選定を介して追加のカチオンを含めるために処理工程302に戻ることができる。
【0060】
決定工程306で十分な数の元素が選択されたと判定された場合、または決定工程304でMEOナノ粒子が貴金属を含まないと判定された場合、方法300は、処理工程308に進み、選択された前駆体が基板上に装填される。いくつかの実施形態では、装填が選択された前駆体を含有する1つ以上の溶液中に基板を浸漬コーティングし、次いで(例えば、室温で)乾燥させることによって提供することができる。代替的にまたは追加的に、装填は、限定されないが、溶液を基板上に注ぐこと、刷毛塗りすること、噴霧すること、印刷すること、または圧延することなど、任意の他の適用技術を介することができる。前駆体の装填は、例えば、所望の原子比のカチオンが達成されるように、得られるナノ粒子の混合物のための所望の組成を反映することができる。
【0061】
方法300は、決定工程310に進むことができ、ここで、選択されたカチオンのいずれかが容易に還元されるかどうかが決定される(例えば、1400~1600Kなどの粒子合成に必要な高温に曝されるとき)。1つまたは複数のカチオンが容易に還元される場合、方法300は、処理工程312に進むことができ、前駆体を有する基板は、後続の加熱のために酸素分圧を有する雰囲気中に置かれる。例えば、基板は、周囲空気の雰囲気中に置くことができる。代替的にまたは追加的に、基板は、少なくとも15体積%のO(例えば、~20.95体積%)を含有し、および/または少なくとも150mbar(例えば、~212.3mbar)の酸素分圧を有する雰囲気中に置くことができる。そうではなく、カチオンが容易に還元されない場合、方法300は、決定工程310から処理工程314に進むことができ、ここで、基板は、後続の加熱のために、実質的に酸素分圧を有さない雰囲気(例えば、≦1ppmのO)に置かれる。例えば、基板は、アルゴン(Ar)などの希ガスの雰囲気中に置くことができる。
【0062】
方法300は、処理工程312または処理工程314のいずれかから処理工程316に進むことができ、ここで、前駆体がその上にある基板は、選択された大気中で高温Thighに加熱される。該方法300は、判定工程318に進むことができ、ここで、該基板が、所定のパルス周期または滞留時間tdwellの間、高温に維持されているかどうかが判定される。所定の滞留時間が満たされていない場合、方法300は、処理工程316に戻り、加熱が継続されて基板を高温に維持する。そうでなければ、所定の滞留時間が満たされると、方法300は、判定工程318から処理工程320に進むことができ、ここで、基板は、比較的低温のTlowに急速に冷却される。
【0063】
いくつかの実施形態では、方法300の工程316~320が基板を熱衝撃プロセスに供することができる。熱衝撃プロセスは例えば、
図3Bに示すように、パルス加熱プロファイル330によって達成することができる。パルス加熱プロファイル330は、比較的低温(例えば、<500K、例えば、室温(例えば、290~300K))で開始することができ、(i)急速加熱ランプ332a(例えば、(T
high-T
low)/(t
1-t
0)≧10
4K/s)、(ii)ピーク温度またはピーク温度付近、T
high(例えば、≧1200K)における短い滞留期間332b(例えば、(t
2-t
1)≦200msまたは≦100ms)、および(iii)急速冷却ランプ332c(例えば、(T
high-T
low)/(t
3-t
2)≧10
4K/s)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、滞留時間332bのピープ温度T
highは、約50~55msの間、1400~1600K(両端を含む)の範囲(例えば、約1500~1550K)であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、滞留時間332bの持続時間は、ピーク温度がより低い場合、例えば、1200~1400Kの範囲のピーク温度T
highについて約200msだけ延長することができる。いくつかの実施形態では、冷却ランプ速度(例えば、約10
5K/s)は、加熱ランプ速度(例えば、約10
4K/s)よりも大きくてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、パルス加熱プロファイルは、ジュール加熱を提供するために、電流を基板に通すことによって提供され得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、パルス加熱プロファイルが基板と熱連通し、
図3Bの加熱プロファイルを提供することができる別個の加熱機構(例えば、直接ジュール加熱、伝導加熱、放射加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱、または前述の任意の組合せ)によって提供され得る。開示された主題の実施形態において使用することができる熱衝撃プロセスに関するさらなる詳細は、2019年5月30日に公開された米国特許出願公開第2019/0161840号に見出すことができ、その詳細は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
図3Aに戻ると、処理工程316での基板の急速加熱は、その上の前駆体の急速な熱分解および混合を誘導することができ、処理工程320でのその後の急速冷却は、集合、凝集、元素偏析、または相分離を受けることなく、混合前駆体を化合物酸化物ナノ粒子に形成することができる。方法300は、処理工程322に進むことができ、ここで、得られたMEOナノ粒子を特定の用途で使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、MEOナノ粒子は、ME-炭化物ナノ粒子などの他のMECナノ粒子の製造のための出発材料として使用することができる。代替的にまたは追加的に、MEOナノ粒子(製造のために使用される基板の有無にかかわらず)は、熱化学反応および/または電気化学反応のための触媒として使用することができる。
【0066】
方法300の工程302~322のうちのいくつかは、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法300の工程302~322が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程が一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。さらに、
図3Aは、工程302~322の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程が図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に生じてもよい。
【0067】
金属元素は、高温(例えば、エリングハム図による)で広範囲の酸化ポテンシャルを有することができ、そうでなければ、多元素系における逐次相分離または金属不純物(例えば、均一混合の失敗)をもたらし得る。したがって、上述のように、方法300は、例えば、系のギブス自由エネルギー(ΔG=ΔH-T×ΔS)に基づいて、最終MEOナノ粒子の所望の組成に基づいて異なる合成戦略を採用することができる。実際、酸化物材料は、純粋な金属よりも複雑な元素の組み合わせを特徴とするので、単相MEOナノ粒子の形成は、綿密な設計および合成ガイドラインを必要とする。MEOナノ粒子のための元素の選択は、Ni、Cu、およびPdなどのいくつかが高温で金属に還元され得るか、または還元条件(例えば、炭素および5% H
2/Ar)によって金属に還元され得るので、重要であり得る。元素の酸化物形成ポテンシャルは、
図3Dに示すように、高温での酸化物の形成ギブス自由エネルギー(ΔG)を示すエリングハム図によって評価することができる。
【0068】
エリングハム図をガイドとして用いて、開示された熱衝撃法を用いて、安定な酸化物ナノ粒子を形成することができる24個の個々の元素について単元素ナノ粒子を合成した。この最初の単元素スクリーニングの後、元素を3つのカテゴリーに分けた:容易に酸化される元素(例えば、Y、Ca、Ti、Zr)、容易に還元可能な元素(例えば、Ni、Cu、Fe)、および希元素(例えば、Pd)。
図3Cは、例示的な元素分類344a~344cの態様と、異なる酸化電位342を有する元素から様々な構造(例えば、蛍光体348a、ペロブスカイト348b、スピネル348c、岩塩348d)を有する単相MEOナノ粒子346を生成するための関連する戦略とを示す概略
図340である。これらの戦略(単独またはナノ粒子の構成元素に基づく組み合わせ)を用いることによって、ギブス自由エネルギーΔGを低減することができ、それによって単相MEOナノ粒子の形成を促進する。
【0069】
第1の分類344aは、容易に酸化されると決定される元素に割り当てることができ(例えば、別個の元素の実験的試験を介して)、温度駆動混合(例えば、合成温度、T
high、増加)を使用して、そこからMEOナノ粒子を形成することができる。例えば、温度駆動混合は、元素を熱衝撃(例えば、1200~1600K、≦200ms、例えば、~1500K、55ms)にさらすことによって生成することができる。例えば、
図3(e)に示すように、~1000Kで合成した(Zr,Ce,Hf,Ti)O
Xナノ粒子のx線粉末回折(x線回折)で相分離が観察されたが、合成温度を~1550Kに上げることにより、単相のフルオライト組織が成功裏に得られた。六元酸化物(Zr、Ce、Hf、Ti、La、Y)O
2-x、十元酸化物(Zr、Ce、Hf、Ti、La、Y、Gd、Ca、Mg、Mn)O
2-x(フルオライト)、十元酸化物(Zr、Ce、Hf、Ti、La、Y、V、Nb、Ca、Mn)O
2-x(フルオライト)、および五元酸化物(Ca、Mg)(Ti、Nb、Mn)O
3-x(ペロブスカイト)ナノ粒子もまた、この方法で成功裏に合成され、
図3E、STEM原子イメージング、およびTEMマッピングのXRDパターンは、これらの材料の単相構造を確認する。
【0070】
第2の分類344bは、容易に還元されると決定される元素に割り当てることができ(例えば、別個の元素の実験的試験を介して)、また、酸化駆動混合(例えば、混合エンタルピー、ΔH、低減)を使用して、そこからMEOナノ粒子を形成することができる。例えば、酸化駆動混合は、熱衝撃合成中に酸素分圧(P
O2)(例えば、~1ppmの酸素から~212.3ミリバールの酸素分圧まで)を増加させることによって生成することができる。例えば、岩塩構造を特徴とする均質な酸化物(Fe,Co,Ni,Cu)O
xナノ粒子は、
図3FのXRDパターン、STEM原子イメージング、およびTEM元素マッピングによって確認されるように、空気中(例えば、高いP
o2)で合成を行うことによって、Fe、Co、Ni、およびCuを含む前駆体から形成することができる。対照的に、アルゴン充填グローブボックス(例えば、~1ppmの低いP
o2)中で同様の合成を行った場合、
図3Fに示されるように、面心立方(fcc)金属構造が観察された。四元酸化物(Mn,Fe,Co,Ni)
3O
4-x(スピネル構造)と単元素酸化物(Mg,Co,Ni,Zn,Cu)Oナノ粒子(岩塩構造)も成功裡に合成された。
【0071】
第3の分類344cは、貴金属(例えば、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、およびAu)である元素に割り当てることができ、また、エントロピー駆動混合(例えば、混合エントロピーの増加、ΔS)を使用して、そこからMEOナノ粒子を形成することができる。例えば、エントロピー駆動混合は、元素の数(例えば、10カチオン)を増加させて、MEOナノ粒子中の貴金属の含有および安定化を可能にすることによって生成することができる。例えば、
図3Gに示されるように、空気中において高温(~1500K)で合成された(Zr,Ce,Hf)
o。9Pd
o。1O
x中のPd金属および酸化物の相分離を観察することができる。しかしながら、組成物にさらに6つのカチオンを添加することによって、エントロピーが効果的に増加し、それによって、
図3Gに示されるように、その酸化状態でPd(~10at%)を含有する十元MEOナノ粒子の形成が可能になる。そうでなければ、そのような組成物は、従来の加熱方法(例えば、
図7D~7Eに示されるような方法)を用いて合成される場合、金属Pdの相分離をもたらす。同様の結果は、十元MEO中の酸化Rhの安定化についても達成された。
【0072】
ME-炭化物ナノ粒子の製造方法
図4Aは、ME-炭化物ナノ粒子を形成するための例示的な方法400を示す。方法400は、MEOナノ粒子が基板上に提供される処理工程402を開始することができる。例えば、MEOナノ粒子は、
図3Aの方法300を介して基板上に形成され、その後、ME-炭化物ナノ粒子への別々の変換のために提供され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、
図3Aおよび
図4Aの方法は、例えば、
図4Aの方法400の処理工程402を
図3Aの方法300の工程302~320に置き換えることによって組み合わせることができる。
【0073】
方法400は、処理工程404に進むことができ、ここで、炭素源は、薄層またはコーティング(例えば、MEOナノ粒子の最大断面寸法以下の厚さを有する)としてMEOナノ粒子上に形成される。例えば、炭素源コーティングは、MEOナノ粒子(例えば、基板から露出したMEOナノ粒子の全ての外面)を少なくとも部分的に取り囲むか、または取り囲むことができる。いくつかの実施形態では、基板は、追加の炭素源(例えば、CNF、カーボンナノチューブ(CNT)、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末または粒子、グラファイト粉末または粒子、グラフェン、炭化木材など)として作用することができ、その結果、コーティングおよび基板の組み合わせは、各MEOナノ粒子を完全に取り囲み、隣接するMEOナノ粒子からMEOナノ粒子を隔離する。いくつかの実施形態では、炭素源コーティングは、少なくとも炭素(C)を含むことができ、酸素(O)および/または水素(H)も含むことができるが、これらに限定されない。例えば、コーティングは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)および/またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、コーティングがポリマー-アルコール溶液を基板上に注ぎ、続いて(例えば、空気中で)乾燥させることによって適用することができる。代替的または追加的に、コーティングは、浸漬コーティング、ブラッシング、噴霧、印刷、圧延、堆積、前駆体のin situ重合などの任意の他の適用技術によって適用することができるが、これらに限定されない。
【0074】
方法400は、決定工程406に進むことができ、ここで、炭化のための加熱プロファイルを選択することができる。例えば、衝撃波加熱が所望される場合、方法400は、処理工程408に進むことができ、ここで、MEOナノ粒子をその上に有する基板は、MEOナノ粒子を形成するために使用される、高温Thighと同じであっても異なっていてもよい(例えば、より高いまたはより低い)高温Tcarbに加熱される。該方法400は、判定工程410に進むことができ、ここで、該基板が、所定のパルス周期または滞留時間tpulseの間、高温に維持されているかどうかが判定される。所定のパルス期間が満たされていない場合、方法400は、処理工程408に戻ることができ、加熱は、基板を炭化温度に維持するために継続される。そうでなければ、所定のパルス周期が満たされると、方法400は、判定工程410から処理工程412に進むことができ、ここで、基板は、MEOナノ粒子を形成するために使用される低温Tlowと同じであっても異なっていてもよい(例えば、より高いまたはより低い)、比較的低い温度に急速に冷却される。該方法400は、判定工程414に進むことができ、ここで、炭化に必要な全加熱時間tcarbが満たされたかどうかが判定される。総加熱時間が満たされていない場合、方法400は、加熱パルスの繰り返し印加のために処理工程408に戻ることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法400の工程408~414は、基板を熱衝撃波プロセスに供することができる。熱衝撃波プロセスは、例えば、
図4Dに示すように、マルチパルス加熱プロファイル470によって達成することができる。マルチパルス加熱プロファイル470は、それぞれが実質的に同一の形状および/または持続時間であり得る、複数の個々のパルス472から構成され得る。それぞれの個々のパルス472は、比較的低温(例えば、<500K、例えば、室温(例えば、290~300K))で開始することができ、(i)急速加熱ランプ474a(例えば、≧10
4K/s)、(ii)炭化温度またはその付近における短い滞留期間474b(例えば、10ms~1sを含む)、T
carb(例えば、1500~3000K)、および(iii)急速冷却ランプ474c(例えば、≧10
4K/sを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、各々の滞留時間474bの炭化温度T
carbは、MEOナノ粒子の生成に使用される最高温度T
high (例えば、T
carbでは約2000K、T
highでは約1500K)よりも高くすることができる。いくつかの実施形態では、それぞれのパルスt
pulseの周期は、例えば、約50~55msの、ナノ粒子の生成に使用される滞留時間t
dwellと同様であり得る。加熱プロファイル470は、炭化の総時間t
carbに達するまで、個々のパルス472を順番に印加することができる。例えば、総時間t
carbは、約1~2分(例えば、両端を含む10~100回のパルス472の繰り返し)であり得る。
【0076】
図4Aに戻ると、判定工程406において衝撃波加熱が望まれない場合、方法400は、処理工程418に進むことができ、ここで、MEOナノ粒子をその上に有する基板は、高温T
carbに加熱される。該方法400は、判定工程420に進むことができ、ここで、炭化に必要な全加熱時間t
carbが満たされたかどうかが判定される。炭化時間が満たされていない場合、方法400は、処理工程418に戻り、加熱は、基板を炭化温度に維持するために継続される。そうでなければ、炭化時間が満たされると、方法400は、判定工程420から処理工程422に進み、ここで、基板は、比較的低温、例えば、T
lowに急速に冷却される。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法400の工程418~422は、炭化のための連続アニーリングに基板を供することができる。連続アニールは、例えば、
図4Cに示すように、加熱プロファイル460によって達成することができる。加熱プロファイル460は、比較的低温(例えば、<500K、例えば、室温(例えば、290~300K))で開始することができ、(i)加熱ランプ462a(例えば、<10
4K/s)、(ii)炭化温度、T
carb(例えば、1500~3000K)またはその付近の延長された滞留期間462b(例えば、1~2分を含む)、および(iii)急速冷却ランプ474c(例えば、≧10
4K/s)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、滞留期間462bの炭化温度T
carbは、MEOナノ粒子の生成に使用される最高温度T
high (例えば、T
carbでは約2000K、T
highでは約1500K)よりも高くすることができる。いくつかの実施形態では、加熱ランプ462a速度は、MEOナノ粒子形成に使用される速度よりも少なくとも1桁遅くすることができ、および/または冷却ランプ462c速度は、MEOナノ粒子形成に使用される速度と実質的に同じであることができる。
【0078】
図4Aに戻ると、処理工程408または418のいずれかにおいて、それぞれの加熱プロファイルは、ジュール加熱を提供するために、電流を基板に通すことによって提供され得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、加熱プロファイルは、基板と熱的に連通し、
図4Cまたは4Dの加熱プロファイルを提供することができる別個の加熱機構(例えば、直接ジュール加熱、伝導加熱、放射加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱、または前述の任意の組合せ)によって提供され得る。いくつかの実施形態では、高温適用中に、コーティングを炭素(例えば、非晶質炭素)に変換することができ、それによって、ME-炭化物形成のための炭素源として作用する。方法400は、処理工程422から、または決定工程414から処理工程416に進むことができ、ここで、得られたMECナノ粒子を特定の用途で使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、MECナノ粒子(製造のために使用される基板の有無にかかわらず)は、熱化学反応および/または電気化学反応のための触媒として使用することができる。
【0079】
方法400の工程402~422のうちのいくつかは1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法400の工程402~422が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程が一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。さらに、
図4Aは、工程402~422の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に生じてもよい。
【0080】
図4Bを参照すると、MECナノ粒子の製造のための例示的な2段階加熱プロセスが示されている。金属塩前駆体432は、基板434上に均一に装填されて、初期アセンブリ430を形成することができる。例えば、金属塩を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メチルエーテルなど)に溶解することができ、得られた溶液を基板上に塗布(例えば、注入、滴下、コーティングなど)し、続いて乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、基板434は、炭素(例えば、CNF)を有することができ、および/または炭素から形成することができる。アセンブリ430への急速熱衝撃(例えば、
図3Bのパルス加熱プロファイル330;1000~2000K;10ms~1sのパルス持続時間)の適用436は、金属塩前駆体432をMEOナノ粒子440(例えば、高エントロピー酸化物ナノ粒子)に変換することができ、高温は、前駆体分解、酸化物の形成、および高エントロピー均一混合へのさらなる混合を駆動する。
【0081】
酸化物を炭化物に変換するために、アセンブリ438は、コーティングプロセス442に供され、それによって、ポリマー層446がMEOナノ粒子440上に提供され、炭素源として作用する。例えば、ポリマー(例えば、PVA、PVP、PVDF、PTFEなど)は、アルコールに溶解することができ、基板上に適用され(例えば、注入され、滴下され、コーティングされ、など)、その後、乾燥されて、ポリマー層446を形成することができる。アセンブリ444への延長加熱(例えば、
図4Cの炭化アニールまたは
図4Dの衝撃波加熱)の適用448は、MEOからの炭化物形成反応を駆動し、それによってMEOナノ粒子440を基板434上の均一なME-炭化物ナノ粒子452に変換する(例えば、それによって構造450を形成する)。高温変換プロセスの間、MEOナノ粒子440は、コーティングされたポリマー層446によって物理的に閉じ込められ、したがって、それらのサイズおよび分布を維持した。コーティングされたポリマー層446は、炭素源を供給するだけでなく、炭化中のナノ粒子440の望ましくない凝集または熟成を制限した。いくつかの実施形態では、基板434(例えば、CNF)は、ME-炭化物ナノ粒子452がエッチングされた基板表面上にしっかりと固定されるようにする完全な変換を確実にするための別の炭素源としても機能することができる。
【0082】
ME-炭化物の形成は、固相反応(例えば、MEO+CがME-炭化物に変換する)であり、したがって、拡散および相転移のためにさらなる時間を必要とし得る。したがって、加熱の適用448は、アニーリングまたは衝撃波プロファイルを介してであろうと、MEO 440からME-炭化物452への完全な変換を可能にするために、比較的より長い期間(例えば、1~2分など、数十秒程度)にわたって提供される。いくつかの実施形態では、連続アニーリングは、長時間拡散によるナノ粒子の凝集をもたらし得る。したがって、いくつかの実施形態では、衝撃波加熱は、短時間拡散しか生じず、したがって、反応時間および粒径に関してより制御可能であり得るので、好ましい場合がある。
【0083】
いくつかの実施形態では、ME-炭化物ナノ粒子構造設計および合成からのその全体的な安定性への寄与が3倍であり得る。第1に、結合強度は、金属-金属(M-M)から金属-酸素(M-O)(例えば、MEOナノ粒子440中)、金属-炭素(M-C)(例えば、ME-炭化物ナノ粒子452中)への製造シーケンスに続いて増大させることができる。したがって、炭化物構造は、過酷な動作条件において電極触媒として使用される場合、望ましい特定の化学的安定性を可能にすることができる。第2に、均一な混合および高エントロピー安定化効果は、電気触媒反応中の寄生反応に対する化学的および構造的安定性をさらに改善することができる。熱力学的に、系の反応温度(T)およびエントロピー(ΔS)の増大は、ギブス(Gibbs)自由エネルギー(ΔG)の減少につながる可能性があり、高温および高エントロピーが共にME-炭化物ナノ粒子を形成するのに好ましいことを示唆している。第3に、ME-炭化物形成中のエッチング機構のために、これらのナノ粒子は、(緩く付着されるのではなく)CNF基板内および/または上にしっかりと埋め込まれ、それによって構造の安定性を改善し、ナノ粒子の脱離を回避することができる。まとめると、埋め込まれたME-炭化物ナノ粒子は、共有結合、高エントロピー安定化、および超高安定性に向かう表面構造の利点を組み合わせることができる。
【0084】
MEIナノ粒子の製造方法
図5Aは、
図2BのMEIナノ粒子210および/または
図2GのMEIナノ粒子を組み込んだ構造230などのMEIナノ粒子を形成するための例示的な方法500を示す。方法500は、決定工程502で開始することができ、多元素出発ナノ粒子(例えば、高エントロピー合金(HEA)または多金属無秩序(MMD))が提供されるかどうかが決定される。出発ナノ粒子が提供された場合、方法500は、処理工程512に進むことができ、そうでない場合、方法500は、処理工程504に進んで、出発ナノ粒子の製造を開始することができる。
【0085】
処理工程504では、所望のMEIナノ粒子のための複数の金属前駆体が基板上に装填される。上述のように、各MEIナノ粒子は、少なくとも3つの異なる金属元素(例えば、高エントロピー構成のための少なくとも5つの異なる金属元素)から形成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、前駆体は、溶液中の金属塩(例えば、金属塩化物塩)(例えば、エタノール、水、またはそれらの混合物)を含むことができる。いくつかの実施形態では、装填が選択された前駆体を含有する1つ以上の溶液中に基板を浸漬コーティングし、次いで(例えば、室温で)乾燥させることによって提供することができる。代替的にまたは追加的に、装填は、限定されないが、溶液を基板上に注ぐこと、刷毛塗りすること、噴霧すること、印刷すること、または圧延することなど、任意の他の適用技術を介することができる。前駆体の装填は、例えば、金属の所望の原子比が達成されるように、得られるナノ粒子の混合物のための所望の組成を反映することができる。
【0086】
方法500は、処理工程506に進むことができ、そこで、前駆体をその上に有する基板は、第1の高温TH1に加熱される。該方法500は、判定工程508に進むことができ、ここで、該基板が、所定のパルス時間または滞留時間tdwellの間、第1の高温に維持されているかどうかが判定される。所定の滞留時間が満たされていない場合、方法500は、処理工程506に戻り、加熱が継続されて、基板を第1の高温に維持する。そうでなければ、所定の滞留時間が満たされると、方法500は、判定工程508から処理工程510に進むことができ、ここで、基板は、第1の比較的低温TL1に急速に冷却され、それによって、基板上に複数のMMDナノ粒子(例えば、HEAナノ粒子)を形成する。
【0087】
方法500は、処理工程512に進むことができ、ここで、MMDナノ粒子をその上に有する基板は、第2の高温TH2に加熱され、この第2の高温は、第1の高温と同じであっても異なっていてもよい(例えば、より高いまたはより低い)。方法500は、決定工程514に進むことができ、ここで、基板は、ナノ粒子内の金属原子の長時間秩序化(例えば、LRO≧90%)を引き起こすために、所定の期間、第2の高温に維持されたかどうかが決定される。所定の順序付け期間が満たされていない場合、方法500は、処理工程512に戻り、加熱は、基板を第2の高温に維持するために継続される。そうでなければ、所定の順序付け周期が満たされると、方法500は、判定工程514から処理工程516に進むことができ、ここで、基板は、第2の比較的低温TL2(例えば、TL1と同じ、またはTL1より高い、あるいはTL1より低い)に急速に冷却され、それによって、基板上に複数のMEIナノ粒子を形成する。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法500の工程504~516は、基板を2段階加熱プロセスに供することができる。2段階加熱プロセスは、例えば、
図5Bに示すように、加熱プロファイル520によって達成することができる。いくつかの実施形態では、第1の段階522において、加熱プロファイル520は例えば、(例えば、
図3Bに示されるよう)MEOナノ粒子を製造するために、および/または(例えば、
図4Dの個々のパルス472によって示されるように)ME-炭化物ナノ粒子を製造するために使用されるものと形状および/またはタイミングが類似する、急速加熱パルスを含むことができる。例えば、第1の段階522の加熱は、比較的低温、T
L(例えば、室温(例えば、290~300K)など、<500K)で開始することができ、(i)急速加熱ランプ524a(例えば、≧10
4K/s)、(ii)第1の高温、T
H(例えば、>1000K、例えば、約1100K)またはその付近における短い滞留時間524b(例えば、10~100ms、例えば、約50~55ms)、(iii)急速冷却ランプ524c(例えば、≧10
4K/s)を含むことができる。
【0089】
第1の段階522の後、第2の段階526の加熱を、例えば、急速冷却ランプ524cの完了後の遅延(例えば、(t
2-t
1)≧100ms、例えば1秒)で実行することができる。いくつかの実施形態では、第2の段階526において、加熱プロファイル520は、例えば、(例えば、
図4Cのプロファイル460によって示されるように)ME-炭化物ナノ粒子を製造するために使用されるものと形状および/またはタイミングが類似する、長時間加熱を含むことができる。例えば、第2の段階526の加熱は、比較的低温、T
L(例えば、<500K、例えば、室温(例えば、290~300K))で開始することができ、(i)急速加熱ランプ528a(例えば、≧10
4K/s)、(ii)第2の高温、T
H(例えば、>1000K、例えば、約1100K)またはその付近における長期滞留時間528b(例えば、1~10分、例えば、約5分を含む)、(iii)急速冷却ランプ528c(例えば、≧10
4K/s)を含むことができる。
【0090】
図5Aに戻ると、処理工程506または512のいずれかにおいて、それぞれの加熱プロファイルは、ジュール加熱を提供するために、電流を基板に通すことによって提供され得る。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、加熱プロファイルは、基板と熱的に連通し、
図5Bの加熱プロファイルを提供することができる別個の加熱機構(例えば、直接ジュール加熱、伝導加熱、放射加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱、または前述の任意の組合せ)によって提供され得る。方法500は、処理工程516から処理工程518に進むことができ、ここで、得られたMEIナノ粒子を特定の用途で使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、MEIナノ粒子(製造のために使用される基板の有無にかかわらず)は、熱化学反応および/または電気化学反応のための触媒として使用することができる。
【0091】
方法500の工程502~518のうちのいくつかは1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法500の工程502~518が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程が一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。さらに、
図5Aは、工程502~518の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程が図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に生じてもよい。
【0092】
開示される主題の実施形態は例えば、低エンタルピーによって駆動される秩序的な金属間化合物の制御可能な合成を使用することによって、複数の元素を有するMEIナノ粒子を提供することができる。いくつかの実施形態では、製造がより熱力学的に安定な構成をもたらす多元素無秩序-秩序相転移戦略(例えば、HEAからMEI)に依存することができる。開示された技術は、例えば、約4~5nmのサイズおよび/または8個もの異なる金属元素を有するMEIナノ粒子を、従来の金属間製造技術において一般に遭遇する粒子成長および/または相分離なしに合成するために使用することができる。MEI形成を可能にする無秩序‐秩序相転移を調べるために、種々の時間~1100Kで加熱することにより、五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)試料のアレイを合成し、
図5Cに示すように、XRDを介してそれらの秩序度を特性化した。計算された仮想XRDパターンによれば、24.2°の(001)と33.4°の(110)の回折ピークは、Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)の理想的なL1
0金属間構造の超格子ピークである。これらのピークの強度に基づいて、異なる五元素試料の秩序化度を、LROパラメータを用いて定量化した(上記の式(2)参照)。
【0093】
0.05sの加熱で作製した試料では、超格子回折ピークは観察されず、短い加熱時間は、Pt
1Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1の無秩序-秩序相転移を誘導できないことを示唆した。加熱時間が0.5秒から5分に増加することにつれて、L1
0,(001)および(110)の特徴的な回折ピークは、
図5Cに示されるように、徐々に増強した。その結果、LOは、10%(0.5秒)から60%(1分)、最終的には、~100%(5分)に増加し(
図9A参照)、5分の加熱後に完了する無秩序相から秩序相への転移プロセスを実証した。五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)のLROに及ぼす加熱温度と時間の影響は、~100%のLROを~1100Kで~5分間加熱することによってのみ達成できた。この無秩序から秩序への転移過程(0.5秒~5分)は、異なる加熱時間の間、~1100Kで合成された五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)MEIナノ粒子の走査透過電子顕微鏡(STEM)画像化(
図9C~9E)とも一致する。例えば、
図9C~9Eは、無秩序なHEAナノ粒子構造が~5分間の加熱の過程でMEI構造に変換されることを示す。
【0094】
不混和性元素の単相MEIへのこの無秩序相から秩序相への転移は、ナノスケールでのみ達成され得る。五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)ナノ粒子について、4~5nmの直径を有する粒子について完全秩序化L1
0構造(LRO=100%)を得ることができた。しかしながら、
図5Dに示されるように、LROは、粒子合成方法(例えば、低速冷却またはより長い加熱時間)にかかわらず、5nmより大きい粒子の粒子サイズと共に減少する。粒径が約60nm以上に増加すると、STEMおよびエネルギー分散X線分析(EDX)によって確認されるように、粒子は、無秩序または他の相分離ヘテロ構造を示す。
【0095】
ナノ粒子製造のためのシステム
いくつかの実施形態では、MECナノ粒子製造のためのシステムは、例えば、本明細書に開示される加熱プロファイルのいずれかを達成するために、加熱機構と、加熱機構に動作可能に結合され、加熱機構を制御するように構成されたコントローラとを含むことができる。例えば、加熱メカニズムは、ダイレクトジュール加熱器、伝導加熱器、放射加熱器、マイクロ波加熱器、レーザー、プラズマ、またはこれらの任意の組合せ、または半連続加熱もしくはパルス加熱のための任意の他の手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、MECナノ粒子は、提供および/または結合される基板が加熱機構の一部であり得る(例えば、ジュール加熱を提供するために基板に電流を流すことによって)。
【0096】
いくつかの実施形態では、製造システムは、任意選択で、急速冷却機構を含むことができる。例えば、急速冷却メカニズムは、放射、伝導、または両方による受動的冷却;伝導、対流、または両方による能動的冷却;吸熱によって誘発される相または化学転移による能動的冷却;急速冷却のための任意の他の手段(例えば、少なくとも104K/s);または前述の任意の組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、例えば、本明細書に開示される加熱プロファイルのいずれかを達成するために、急速冷却機構に動作可能に結合され、急速冷却機構を制御するように構成され得る。
【0097】
ナノ粒子製造システムの構成要素および/またはその構成の構成要素は、2021年12月7日に公開された米国特許出願公開第11,193,191号、2019年12月27日に公開された米国特許出願公開第2018/0369771号、2020年12月17日に公開された国際公開WO2020/252435号、および/または2020年11月26日に公開された国際公開WO2020/236767号に記載された加熱システムと同様とすることができ、これらは、全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
図6は、上述のナノ粒子製造システム、方法300、方法400、および/または方法500の態様など、上記に説明したイノベーションが実装され得る、適切なコンピューティング環境631の一般化された例を示す。コンピューティング環境631は、様々な汎用または専用コンピューティングシステムにおいて革新が実装され得るので、使用または機能性の範囲に関していかなる限定も示唆することを意図していない。例えば、コンピューティング環境631は、様々なコンピューティングデバイス(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、サーバコンピュータ、タブレットコンピュータなど)のいずれかであり得る。
【0099】
図6を参照すると、コンピューティング環境631は、1つまたは複数の処理ユニット635、637と、メモリ639、641とを含む。
図6において、この基本構成651は、破線内に含まれる。処理ユニット635、637は、コンピュータ実行可能命令を実行する。処理ユニットは、汎用中央処理ユニット(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)内のプロセッサ、または任意の他のタイプのプロセッサであり得る。マルチ処理システムでは、複数の処理ユニットがコンピュータ実行可能命令を実行して、処理能力を増大させる。例えば、
図6は、中央処理ユニット635と、グラフィック処理ユニットまたはコプロセッシングユニット637とを示す。有形なメモリ639、641は、揮発性メモリ(例えばレジスタ、キャッシュ、RAM)、不揮発性メモリ(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなど)、または処理ユニットによってアクセス可能な2つの何らかの組合せであり得る。メモリ639、641は、処理ユニット(複数可)による実行に適したコンピュータ実行可能命令の形態で、本明細書で説明する1つまたは複数のイノベーションを実装するソフトウェア633を記憶する。
【0100】
コンピューティングシステムは、追加の特徴を有することができる。例えば、コンピューティング環境631は、ストレージ661、1つ以上の入力デバイス671、1つ以上の出力デバイス681、および1つ以上の通信接続691を含む。バス、コントローラ、またはネットワークなどの相互接続機構(図示せず)が、コンピューティング環境631の構成要素を相互接続する。典型的には、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)がコンピューティング環境631において実行する他のソフトウェアのためのオペレーティング環境を提供し、コンピューティング環境631の構成要素のアクティビティを調整する。
【0101】
有形なストレージ661は、取り外し可能または取り外し不可能であってもよく、磁気ディスク、磁気テープまたはカセット、CD-ROM、DVD、または非一時的な方法で情報を記憶するために使用することができ、コンピューティング環境631内でアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。ストレージ661は、本明細書で説明する1つまたは複数のイノベーションを実装するソフトウェア633のための命令を記憶することができる。
【0102】
(1つまたは複数の)入力デバイス671は、キーボード、マウス、ペン、またはトラックボールなどのタッチ入力デバイス、音声入力デバイス、走査デバイス、またはコンピューティング環境631に入力を与える別のデバイスであり得る。出力デバイス671は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、CDライタ、またはコンピューティング環境631からの出力を提供する別のデバイスとすることができる。
【0103】
(1つまたは複数の)通信接続691は、通信媒体を介して別のコンピューティングエンティティへの通信を可能にする。通信媒体は、コンピュータ実行可能命令、オーディオもしくはビデオ入力もしくは出力、または変調データ信号内の他のデータなどの情報を伝達する。変調データ信号は信号内の情報を符号化するように、その特性のうちの1つまたは複数が設定または変更された信号である。限定ではなく例として、通信媒体は、電気、光、無線周波数(RF)、または別のキャリアを使用することができる。
【0104】
開示された方法のいずれも、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体(例えば、1つまたは複数の光媒体ディスク、揮発性メモリ構成要素(DRAMまたはSRAMなど)、または不揮発性メモリ構成要素(フラッシュメモリまたはハードドライブなど))上に記憶され、コンピュータ(例えば、コンピューティングハードウェアを含むスマートフォンまたは他のモバイルデバイスを含む、任意の市販のコンピュータ)上で実行される、コンピュータ実行可能命令として実装され得る。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、信号および搬送波などの通信接続を含まない。開示された技術を実施するための任意のコンピュータ実行可能命令、ならびに開示された実施形態の実施中に作成され、使用される任意のデータは、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。コンピュータ実行可能命令は、例えば、ウェブブラウザまたは他のソフトウェアアプリケーション(リモートコンピューティングアプリケーションなど)を介してアクセスまたはダウンロードされる専用ソフトウェアアプリケーションまたはソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。そのようなソフトウェアは、例えば、単一のローカルコンピュータ(例えば、任意の適切な市販のコンピュータ)上で、または1つまたは複数のネットワークコンピュータを使用してネットワーク環境(例えば、インターネット、ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、クライアントサーバネットワーク(クラウドコンピューティングネットワークなど)、または他のそのようなネットワークを介して)で実行され得る。
【0105】
明確にするために、ソフトウェアベースの実装形態のいくつかの選択された態様のみが説明される。当技術分野で周知の他の詳細は省略する。例えば、開示される技術は、任意の特定のコンピュータ言語またはプログラムに限定されないことを理解されたい。例えば、開示される技術の態様は、C++、Java、Perl、任意の他の適切なプログラミング言語で書かれたソフトウェアによって実装することができる。同様に、開示される技術は、任意の特定のコンピュータまたはハードウェアのタイプに限定されない。適切なコンピュータおよびハードウェアの特定の詳細は周知であり、本開示で詳細に説明する必要はない。
【0106】
本明細書で説明される任意の機能は、ソフトウェアの代わりに、少なくとも部分的に、1つまたは複数のハードウェア論理構成要素によって実行され得ることもまた、十分に理解されるべきである。例えば、限定ではなく、使用することができる例示的なタイプのハードウェア論理構成要素は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム特定集積回路(ASIC)、プログラム特定標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)などを含む。
【0107】
さらに、ソフトウェアベースの実施形態のいずれか(例えば、コンピュータに開示された方法のいずれかを実行させるためのコンピュータ実行可能命令を含む)は、適切な通信手段を介してアップロード、ダウンロード、または遠隔アクセスすることができる。そのような好適な通信手段は、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、ソフトウェアアプリケーション、ケーブル(光ファイバーケーブルを含む)、磁気通信、電磁気通信(高周波、マイクロ波、および赤外線通信を含む)、電子通信、または他のそのような通信手段を含む。上記の例および実施形態のいずれにおいても、システム、構成要素、デバイスなどの間の要求(例えば、データ要求)、指示(例えば、データ信号)、命令(例えば、制御信号)、または任意の他の通信の規定は、有線接続またはワイヤレス接続による適切な電気信号の生成および送信によるものであり得る。
【0108】
作製例と実験結果
MEOナノ粒子
酸化物(Zr、Ce、Hf、Ti、La、Y、Gd、Ca、Mg、Mn)O2-x(10-MEO-MgMn(xは酸素空孔を表す)と表記)ナノ粒子を、開示された製造技術に従って合成した。特に、導電性カーボンナノファイバー(CNF)を基板として選択し、制御可能な大きさおよび持続時間で急速な高温加熱を提供するためにジュール加熱に利用した。ジメチルホルムアミド中8重量%の濃度を有するポリアクリロニトリルの溶液を、13kVの電圧および15cmの紡糸距離で、ポリアクリロニトリル繊維にエレクトロスピニングした。これらの紡糸されたままのフィルムを、まず、空気中において553Kで6時間安定化させ、次いで、アルゴン中において1273Kで2時間炭化させて、基板としてのCNFを調製した。それぞれの元素の多数の塩前駆体を、溶液相(0.05mol/L)中で等モル量で混合し、混合した前駆体塩を100μL/cm2の負荷でCNF基板上に均一にコーティングした。例えば、CeN3O9・6H2O(99.0%),LaN3O9・6H2O(99.99%),YN3O9・6H2O(99.9%),CaN2O6・4H2O(99.0%),MgN2O6・6H2O(99.0%),GdN3O9・6H2O(99.9%),MnN2O6・4H2O(97.0%),FeN3O9・9H2O(98.0%),CoN2O6・6H2O(98.0%),CuN2O6・6H2O(98.0%), NiN2O6・6H2O(98.0%),InN3O9・xH2O(99.9%),CrN3O9・9H2O(99.0%),ZnN2O6・6H2O(98.0%),PdCl2(99.0%),HfCl4(99.9%),ZrCl4(99.9%),TiCl4 (99.9%),VCl3(97.0%),および NbCl5(99.9%)を、9/1の体積比でエタノール/水混合物に溶解して、異なる塩溶液(0.05mol/L)を調製した。種々の塩を選択し、多元素合成において等モル量で混合した。これらの溶液を、100mL/cmの2の充填量でCNFフィルム上に充填し、次いで、高温加熱前に室温で乾燥させた。
【0109】
電気ジュール加熱による高温合成をアルゴン雰囲気(Po2: ~1ppm)または制御酸素分圧(高Po2:空気中)中で行った。CNFまたはカーボンペーパーフィルムを5mm×20mmのサイズに切断し、これを、銀ペーストを用いてスライドガラスによって支持された銅電極に接着し、次いで電流供給装置で接続した。異なる入力電流を材料に印加し、得られた高温は、放出光を生成し、これを、高速度カメラを用いて記録して、試料温度を決定した。高温加熱(例えば、1500K、50ms)後、走査電子顕微鏡(SEM)イメージングにより、CNF上に均一で高密度のナノ粒子が形成されることが明らかになった。粒径および分布は、合成の持続時間を調節することによってさらに調整することができ、例えば、より短い加熱時間は、より狭い粒径分布を有するより小さい粒径(例えば、10ms加熱パルスについて8nm)を生じ、より長い加熱時間は、より大きい粒径分布を有するより大きい粒径(例えば、500ms加熱パルスについて40nm)を生じる。
【0110】
10‐MEO-MgMnナノ粒子の走査透過電子顕微鏡(STEM)元素マッピングにより、明らかな元素偏析または相分離なしに、作製したナノ粒子全体に10種の異なる元素が均一に混合することを明らかにした。10個のカチオン性元素およびそれらのそれぞれの単一元素酸化物は、カチオン半径(0.74~1.16Å)および結晶構造(例えば、蛍光体、ルチル、および岩塩)の範囲を含む非常に異なる物理化学的特性を有し、そうでなければ、従来の製造技術における単相均一混合を防止することになることに留意されたい。対照的に、開示された技術は、高温を使用して、MEOナノ粒子形成のための多元素混合を促進する一方で、加熱持続時間が粒子の粗大化および相分離を防止するのに十分に短いことを確実にする。したがって、この独特の高速加熱技術および上述の3つのMEO合成戦略により、バルク材料中で観察されず、必ずしも安定ではない、調整可能な組成(単一元素混合から十元素混合まで)を有する酸化物ナノ粒子のライブラリが達成された。
【0111】
密度汎関数理論(DFT)計算を行い、一連の酸化物系の形成における各熱力学パラメータを評価した。例えば、対応する単一元素酸化物からの二元(Zr,Ti)O2の形成温度は、2828Kであると予測されたが、四元(Zr,Ce,Hf,Ti)O2は、1075Kの温度で単相構造を形成することができた。この結果は、単一相MEO形成(温度駆動混合)には高温が必要であることを示し、一方、成分数の増加を伴う高エントロピー系のより低い形成温度は、エントロピー駆動混合効果を示す。(Zr,Ce,Hf,Ti)O2の計算したギブス自由エネルギーは、PO2の増加と共に減少し、材料の酸化駆動安定化を示した。さらに、DFT計算結果は、形成された単相MEOの格子歪と種々の分解経路を考慮することにより、合理的な構造的および化学的安定性を予測する。したがって、DFTの結果は、温度、酸化、およびエントロピーが単相MEOの形成を駆動するのに重要な役割を果たすことを確認するものである。
【0112】
速度論的には、高温は、多元素混合のための速度論的障壁を克服するために重要であるが、温度が高すぎると、粗大化、凝集、および相分離(例えば、金属不純物)などの粒子劣化を不利に誘発する可能性がある。実験的に、(Zr,Ce,Hf,Ti,Mn,Co)O2-xについて、約1200Kの低合成温度で、均一なナノ粒子の形成は、CNF基板上に観察されなかった。むしろ、不十分な反応のために、テラス形状の酸化物が存在した。一方、合成温度を1800Kまで上昇させると、粒子の成長と凝集(>80nm)が加速され、炭素熱還元による金属不純物(例えばCo)が導入される。したがって、最適化された温度(~1500K)は、例えば、形成されたままの酸化物が凝集して炭素と反応するのを防ぎながら、全ての元素を混合するのにちょうど十分なエネルギーを提供することによって、CNF上に均一なMEOナノ粒子を合成するために使用され得る。
【0113】
高温合成およびエントロピー安定化により、MEOナノ粒子は、当然、優れた熱安定性を有する。実験的に、MEOの構造安定性を、三元酸化物(Ce,Gd,Y)O2-x、四元酸化物(Zr,Ce,Hf,Ti)O2、および10‐MEO-MgMnナノ粒子を298Kから1073Kまでin situ STEMで加熱することにより観察した(試料は画像を撮る前に各温度で1時間安定化した)。1073Kで、10‐MEO-MgMnナノ粒子は、優れた形態とサイズ安定性を示し、相分離なしに均一な混合を維持した。対照的に、三元試料の形態およびサイズの変化、ならびに三元酸化物および四元酸化物の両方の元素分離が観察された。MEOの熱安定性に関するこれらの実験結果は、力場シミュレーションと一致し、本発明者らの十元MEOナノ粒子の優れた熱安定性を明らかにしたが、このことは、熱力学的安定性と動力学的安定性の両方を特徴とするその高エントロピー構造によるものと思われる。
【0114】
開示されたハイスループット合成方法は、例えば、周期表中のほとんどの元素を混合することによって、MEOナノ粒子の大きなライブラリの理論的設計および迅速な探索を可能にすることができる。このようなMEOナノ粒子は、触媒用途、例えばメタン燃焼に特に有利であり得る。従来の火炎燃焼と比較して、メタンの触媒燃焼は、低温での燃料の完全な酸化を安定化することができ、同時に、排出物(例えば、最小のNOx排出)を低減する。しかしながら、そのような反応に典型的に使用されるPdOx触媒は、ナノ粒子の焼結および反応中のPdOxの金属Pdへの変換による不活性化を被る。したがって、性能および安定性が向上したPd系触媒の開発は、触媒CH4燃焼プロセスのエネルギー効率を効果的に改善することができる。
【0115】
MEO触媒を配合する場合、異なる群からの元素、例えば、アルカリ金属、3d~5d遷移金属、および貴金属Pdを含めることができ、これらは、別個の触媒機能を提供し、例えば、レドックス工程中の電子の移動を促進し、レドックス能力を改善し、より多くの酸素欠陥を作り出し、CH4をそれぞれ活性化する。MEO触媒は、開示された高温合成法を用いて、各触媒中に~2重量%の酸化物担持量で調製した。単一元素PdOxナノ粒子も同様のPd装填量で合成し、本研究における対照として役立った。第1の工程では、カーボンペーパー上に担持された4-MEO(X Y)0.6Mg0.3Pd0.1Ox(ここで、XおよびYは、異なる金属元素を表す)ナノ粒子をCH4燃焼のための触媒としてスクリーニングし、PdOx対照試料と比較した。ガス空間速度(GHSV)10,800L/(gpd h)および5vol%CH4および供給ガスの20vol%O2をN2でバランスさせた栓流反応器を用いて、573~973Kで触媒活性を系統的に測定した。熱重量分析(TGA)により973K以下では、裸のカーボン紙基板は、大気中で劣化せず、さらにCH4燃焼に対して不活性であることが確認された。4‐MEOでは、反応開始温度は、~623Kであり、CH4転化率は、反応温度と共に増加した。ふるい分けした4‐MEO触媒の中で、(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Oxは、最良の性能(~823Kで100%の転化率)を示し、これは、対照制御PdOx(823Kで74%の転化率)よりはるかに活性である。
【0116】
第2の工程では、4‐MEO(例えば、(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Ox)の間でスクリーニングした後、3d‐5d遷移金属の8種の異なる元素を(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Oxに添加して、(Zr,Ce)0.6(Z)0.15Mg0.15Pd0.1Ox(Z= La、Y、Hf、Ti、Cr、Mn、Fe、およびCu)の組成を有する一連の5‐MEOを構築した。5‐MEO試料の触媒活性を623Kで測定し、4‐MEO(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Oxと比較した。Z = La、Y、Hf、Ti、Cr、Mnの場合、これらの5‐MEOは、(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Oxを上回ったが、FeとCuの添加で毒作用が観察された。最後に、第2の工程(例えば、La、Y、Hf、Ti、Cr、およびMn)から遮蔽された6つの元素を、最良の性能の(Zr,Ce)0.6Mg0.3Pd0.1Ox (4-MEO-Pd)と組み合わせることによって、これらのMEO触媒の中で最も高いエントロピーを有する非金属酸化物(Zr、Ce)0.6(Mg、La、Y、Hf、Ti、Cr、Mn)0.3Pd0.1O2-x(10-MEO-PdO)を合成した。
【0117】
触媒メタン燃焼は、固定床フロー反応器中において大気圧で行った。開示された高温ストラテジーを用いて、カーボンペーパーまたはAl2O3被覆カーボンペーパー上に~2wt%の充填量で、非金属酸化物ナノ粒子を形成した。使用したカーボンペーパーを、二酸化炭素雰囲気中、1173Kで180分間、最初に活性化した。さらに、カーボンペーパーおよびAl2O3被覆カーボンペーパーは、973Kまで安定であることが確認された。対照PdOx試料については、含浸法(例えば、前駆体を最初にカーボンペーパー上に装填し、次いで試料を空気雰囲気の炉中で熱処理(3K/分、773K、120分)して、同じPd装填で粒子を調製した。例えば、50mgの触媒(例えば、2重量%の酸化物負荷を有するカーボンペーパー)を、マイクロフロー石英反応器(7mmの内径)に充填した。触媒床を、反応器中の石英ウールプラグの間に配置した。N2(20mL/min)中で5K/minの速度で473K、523K、または573Kに加熱し、気体流を反応物供給物(18mL/min、空間速度=10,800L(gpdh)-1または180mL/min、空間速度=108,000L(gpd h)-1)に切り替えた。残部としてN2を有する反応物CH4(99.99%)およびO2(99.999%)を、CH4:O2モル比1:4の較正質量流量制御装置を用いて反応器に共に供給した。
【0118】
水の存在下での触媒性能を試験するために、約4vol%のH2Oを、303Kに維持された蒸気発生器を用いてガス供給物に添加した。反応温度を473K、523K、または573Kから973Kに段階的に上げ、転化率が一定になるまで各温度で反応を行った。反応物の転化率および生成物の形成を決定するために、シリカキャピラリーカラムおよびバリアイオン化放電(BID)検出器を備えたガスクロマトグラフを使用した。反応器出口とGCサンプリングループ入口との間の全てのラインを、生成物の凝縮を防ぐために423Kまで熱トレースした。メタン転化率は、次式(3)のように計算した:
【0119】
【0120】
10-MEO-PdOは、他の触媒(単一のPdO
x、4-MEO、および5-MEO)と比較して高い触媒活性を示し、
図7Aに示されるように、673Kで完全な転化に達した。対照9-MEO(Zr, Ce)
0.66(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)
0.34O
2―x試料(Pd無し)は、CH
4燃焼に対してはるかに活性が低く(例えば、
図7Bに示されるように)、触媒性能を改善するために10-MEO-PdO試料中のPdを安定化することの重要性を示した。
【0121】
図7Cに示すように、PdO
x、最良性能の4-MEO-Pd、および10-MEO-PdOの触媒安定性も評価し、648Kで連続的に比較した(973Kでの触媒反応後)。10-MEO-PdO触媒の高い触媒活性は、極めて安定であり、100時間後に明らかな低下はなかったが、4-MEO-PdのCH
4転化率は、26時間後に31%から20%に減少した。対照的に、PdO
x制御のCH
4変換は、より速く低下し、22時間後に失活をもたらし、これは、延長安定性試験後のXRDによって確認されるように、高温での動作中のPdO
xの金属Pdへの還元に起因し得る。耐久性の傾向は、エントロピー効果((Zr、Ce)
0.6(Mg、La、Y、Hf、Ti、Cr、Mn)
0.3Pd
0.1O
2-x>Zr,Ce)
0.6Mg
0.3Pd
0.1O
x>PdO
x)の利点をさらに確認し、これは、実質的に改善された全体的な触媒安定性のために高エントロピー構造においてカチオン状態でPdを安定化することができる。10‐MEO-PdO十元酸化物触媒は、元素マッピングによる100時間の耐久性試験後にも特性化され、構造均一性の変化は、ほとんど観察されなかった。
【0122】
過酷で実用的な応用下で触媒にさらにストレスを与えるために、10‐MEO-PdO触媒を水(~4vol%)の存在下でのメタン燃焼について評価した。湿潤条件下での加速された炭素エッチングを回避するために、カーボンペーパー基板をAl2O3コーティングの薄層(原子層堆積を使用して堆積される)によって保護した。10‐MEO-PdO触媒は、これらの過酷な条件にもかかわらず、~673Kで完全なCH4転化の高い活性を示した。特に、108,000L(gpd h)-1の高いGHSVは、速度論的に制御されたレジームでの安定性評価を確実にする。特に、10-MEO-PdO試料は、100時間の連続操作の両方の場合において安定した性能を示し、触媒の固有の安定性を実証した。
【0123】
ME-炭化物ナノ粒子
Mo2Cは、2段階高温変換中の詳細な機構を研究するためのモデル材料として最初に選択した。まず、金属塩前駆体で均一に被覆された静電紡糸法を用いてCNF基板を調製した。ポリアニリン(Mw>15,000)をN,N-ジメチルホルムアミドに8wt.%で溶解した。CNFの前駆体は、適切な厚さを有する静電紡糸法(例えば、15kV)によって調製した。CNF膜は、CNF前駆体を空気中において280°Cで6時間活性化し、その後Ar中において1000°Cで2時間炭化した。TiCl4、ZrCl4、VCl4、NbCl5およびMoCl5を、別々に0.05Mの濃度でアルコールに溶解した。5つの等価な溶液を混合し、100μL/cm2の面密度でCNF基板上に注いだ。
【0124】
次に、装填されたCNF基板をジュール加熱装置(例えば、熱衝撃装置)に移した。例えば、乾燥後、混合前駆体塩をその上に有する1×0.5cmのCNF基板を、銀ペーストを使用することによって、2つの銅テープ(ガラスシート上に固定された)の間に接着させた。次いで、得られたデバイスをグローブボックスに移し、銅テープの両端をワイヤによって電流源に接続した。MEOナノ粒子(例えば、MoO2中間体ナノ粒子)は、55ミリ秒の熱衝撃処理後に得ることができる。高速熱感知カメラを使用して、加熱設定から発する検出された光スペクトルを使用して、(例えば、黒体放射に基づいて)温度プロファイルを決定した。ジュール加熱設定は、急速加熱(例えば、ランプ速度>104K/s)および冷却(例えば、ランプ速度>105K/s)速度を可能にし、これは、~20nmの径を有する超小型MoO2ナノ粒子がCNF基板上に均一に分布することを確実にした。これらのナノ粒子のX線回折パターンは、MoO2相とよく一致し、合成の成功を示唆した。
【0125】
第2の工程では、CNF基板上の得られたMoO2ナノ粒子を、ポリマーの薄く均一な層(例えば、50μL/cm2ポリビニルピロリドン(PVP)/アルコール溶液(0.05g/mL))でコーティングした。次いで、第2の高温処理(例えば、炭化)を行い、CNF基板上に支持された最終ME-炭化物ナノ粒子を得た。CNF基板に印加される電流を徐々に増加させることによって、システム温度を2000Kまで徐々に上昇させ、1分間にわたって維持し、その後、電気信号を遮断することによって室温まで急速に急冷し、それによって、CNF基板上にME-炭化物ナノ粒子を得た。
【0126】
同じMEOからME-炭化物への変換プロセスのために、Ar雰囲気中での従来の炉加熱を用いて、制御実験を並行して行った。炉システムの制限により、達成された最高加熱速度は、20K/分であり、最高温度は、1273Kであった。したがって、プロセス全体は、開示されたジュール加熱法と比較して、~4-5桁長かった。加熱時間が長く、炉加熱による冷却速度が遅いため、ME-炭化物粒子は、激しく凝集することが分かった。対照的に、開示されたジュール加熱技術を用いて形成された全てのME-炭化物ナノ粒子は、~15nmの均一なサイズを有し、CNF基板上にしっかりと埋め込まれた。基板上のME-炭化物ナノ粒子(例えば、Mo2C)の均一な分配をX線回析によって確認した。Mo2Cに加えて、TiC、ZrC、VC、およびNbCなどの他の単元金属炭化物ナノ粒子も同様に良好な材料品質で調製した。高エントロピー炭化物(HEC)ナノ粒子(例えば、(TiZrVNbMo)C
x)を、上記の単炭化物と同様の様式で、例えば、金属塩前駆体の混合物をCNF基板上に装填し、続いて2段階ジュール加熱することによって調製した(例えば、
図3Bおよび
図4Cまたは
図4D)。
【0127】
選択された炭化物成分の中で、Mo2Cは、触媒活性成分として水素発生反応(HER)および酸素発生反応(OER)プロセスに対して良好な性能を示したが、TiC、ZrC、VC、およびNbCの添加は、安定性を高めるためにエントロピーを増加させることができる。炭化時に、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認されるように、~20nmの直径を有する均一に分布したHECナノ粒子がCNF基板上に形成された。TEM画像は、また、エッチング機構(例えば、CNFがポリマーコーティングに加えて炭素源として働く場合)により、CNF基板内に埋め込まれたHECナノ粒子を示した。高エントロピー酸化物(HEO)ナノ粒子およびHECナノ粒子のX線回折パターンを収集し、相転移を確認するために比較した。合成時間が短い(例えば、55ms)にもかかわらず、得られたHEOナノ粒子は、高度に結晶性であった。炭化後、(TiZrVNbMo)Oxナノ粒子は、(TiZrVNbMo)Cxナノ粒子に完全に変換されることが分かった。
【0128】
各ジュール加熱段階の後、Mo 3dおよびZr 3dスペクトルをX線光電子分光法(XPS)によって収集した。MoOxの229.7、232.9および235.9eVのピークは、それぞれMo4+、Mo6+/Mo4+およびMo6+に対応する。対照的に、MoCxは、炭素による金属還元のために、それぞれMo2+およびMo2+/Mo5+に対応する228.8および231.9eVに2つの異なるピークを示す。同様の結果がZr 3dについてXPSによって得られ、ここで、179.7eVでのピークは、第2のジュール加熱段階での炭化中のZr4+のZr2+への部分的還元を示す。
【0129】
電極触媒として調製したままのHECナノ粒子の安定性を評価するために、HERをモデル反応として用いた。電気化学的試験は、0.5M H
2SO
4中、カーボンロッドの対電極およびAg/AgCl参照電極を用いて行った。CNF基板上に固定されたHECナノ粒子は、作用電極として直接使用することができる。線形掃引ボルタンメトリー(LSV)曲線を、0.1Vからピークが現れるまで5mV/sの走査速度で行い、室温で可逆水素電極(RHE)に電位を補正した。安定性は、一定電位(例えば、~10mA/cm
2の電流密度)で試験した。
図8Aは、それぞれのCNF基板上に担持されたMoO
2、Mo2C、および(TiZrVNbMo)O
xナノ粒子の結果を示す。試験した試料の中で、(TiZrVNbMo)C
xは、10mA/cm
2の電流密度で140mVの最低過電圧を示した。電流密度は、200mVの過電圧で(TiZrVNbMo)C
xで最も高く、単一元素炭化物、単一元素酸化物およびHEO対応物と比較した。
【0130】
HECナノ粒子の安定性を評価するために、クロノアンペロメトリーを、
図8Bに示すように、長時間の操作時間で行った。MoO2の電流密度は、10時間で~0mA/cm
2まで急速に減衰した。対照的に、(TiZrVNbMo)Cxナノ粒子は、約10mA/cm
2の電流密度で250時間安定なままであった。このような優れた安定性は、炭化物の共有結合、高いエントロピー安定化効果、および合成中の基板エッチングプロセスに起因し得る。長時間HER操作後のHECのTEM画像は、優れた構造安定性をさらに確認した。CNF基板上のナノ粒子は、250時間の操作後でさえ、観察可能な凝集または脱離なしに均一に分散したままである。
【0131】
MEIナノ粒子
MEIナノ粒子を合成するために、炭素基板に、所望の金属塩前駆体の組み合わせ/比を装填し、加熱し、基板に印加される電力を調整することによって、温度および加熱/冷却速度を正確に制御した。特に、MEIナノ粒子は、炭化木材基板上でのジュール加熱によって合成された。例えば、バスウッド(例えば、サイズ1.5cmx0.5cmx0.5cm)を空気中において533Kで6時間、加熱速度5K/分で処理し、次いでアルゴン流中1273Kでさらに6時間維持して炭化した。得られた基板をCO2流中において1023Kで6時間さらに活性化し、表面欠損を導入した。
【0132】
H
2PtCl
6、PdCl
2、HAuCl
4、FeCl
3、CoCl
2、NiCl
2、CuCl
2、およびSnCl
2などの金属塩前駆体をエタノール(0.05mol/L)中で提供した。前駆物質溶液(二元PtFe、五元PtFe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1/Pt
1Fe
0.25Co
0.25Ni
0.25Cu
0.25、および八元Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)を化学量論的比率で混合し、~800μL/cmの負荷でマイクロピペットを用いてカーボン基板上に分配した。炭素基板の反対側の端部をスライドガラス上に懸濁し、銀ペーストを用いて2つの銅電極に接続した。次いで、前駆体装填炭素基板を353Kオーブン中で6時間乾燥させ、ジュール加熱法のために直接使用した。例えば、調整可能な電流源を、Ar充填グローブボックス内の前駆体充填炭素基板に接続した。異なる持続時間(0.05秒、0.5秒、1分、および5分)を有する電気パルスを炭素基板に印加して、所望の温度および加熱時間(例えば、
図5Bに示されるように)を生成し、MEIナノ粒子を合成した。
【0133】
まず、例えば~1100Kで数十ミリ秒間金属前駆体を加熱することにより固溶体(HEA)ナノ粒子を合成し、相分離なしに異なる元素を混合した。次に、無秩序相から秩序相への転移は、ナノ粒子の成長および/または凝集を同時に回避しながら、無秩序HEA構造から秩序化された単相MEI構造への所望の転移を完了するのに十分な制限された時間量で、材料を~1100Kまでさらに~5分間急速に再加熱することによって達成される。最後に、素材を急冷する(~104K/s)ことにより、単相MEI組織と小粒径(~5nm)を保存した。
【0134】
提案した合成の多様性を実証するために、二元、五元、および八元金属間ナノ粒子を作製し、走査透過電子顕微鏡(STEM)、原子分解能STEM、およびエネルギー分散X線分光法(EDX)によって特性化した。PtFe二元とPt(Fe0.7Co0.1Ni0.1Cu0.1)五元金属間化合物ナノ粒子は、それぞれ5.4±0.8nmと4.4±0.5nmの小さな粒径と狭い粒径分布を示した。二元PtFeナノ粒子の高角度環状暗視野STEM(HAADF-STEM)画像は、L10金属間構造に典型的なFeとPt柱の交互層を示す。[1‐10]方向に沿った秩序化L10構造の(001)、(110)および(111)ファセットに対応するSTEM像における3.71、2.73および2.20Åの面間隔から、二元PtFe試料の秩序化L10構造をさらに確認した。
【0135】
同様に、五元Pt(Fe0.7Co0.1Ni0.1Cu0.1)ナノ粒子は、Fe、Co、Ni,Cu原子の暗い列とPt原子の明るい列を交互に示した。原子分解能EDXマッピングは、良く定義されたPt原子が1つの副格子中にあり、一方、Fe、Co、Ni、およびCu原子が、L10構造の両方で、他の副格子中に均一に分布していることを示す。適合した拡張X線吸収微細構造(EXAFS)によれば、Fe-Pt(6)の配位数は、Fe-Cu(1.2)、Cu-Fe(1.0)、Co-Ni(2.0)、およびNi-Co(2)の配位数よりはるかに大きい。これらの結果は、静的金属間化合物中のFe-Cu、Cu-Fe、Co-Ni、およびNi-Co結合が局在し、秩序構造中の二次元層結合に限定される一方で、Fe-Pt結合が金属間化合物中の三次元構造中で起こるL10構造に従う。
【0136】
五元MEIナノ粒子はまた、異なる元素比ならびに異なる金属間構造(例えば、(Pt
0.8Au
0.1Pd
0.1)3(Fe
0.9Co
0.1)のL1
2相)で合成され、可能な金属間材料の範囲を広げるためのこの急速/限定加熱法の可能性を示した。最後に、八元(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)ナノ粒子も合成され、それぞれ3.73、2.76、および2.34Åの間隔を有する(001)、(110)、および(111)面(例えば、
図2D~2FのSTEM画像に示されるように)を特徴とし、またL1
0金属間化合物構造を形成した。したがって、無秩序-秩序転移に基づく開示されたプロセスは、複数の元素(例えば、8まで)、ならびに異なる元素比および様々な金属間構造を有するナノスケールMEIの合成を可能にする。
【0137】
対照的に、従来の方法による相分離なしにナノスケールMEIを合成することは、非常に困難である。対照として、Pt0.8Pd0.1Au0.1Fe0.6Co0.1Ni0.1Cu0.1Sn0.1ナノ粒子を従来のアニーリング(例えば~1100K,3h)により作製した。これらの八元ナノ粒子は、STEMイメージングおよびXRDに従って、所望の原子秩序化なしに、相分離ヘテロ構造を形成することが分かった。従来のアニーリングの緩慢な加熱/冷却速度は、開示された技術によって合成されたMEIナノ粒子(~5nm)とは異なる、八元Pt0.8Pd0.1Au0.1Fe0.6Co0.1Ni0.1Cu0.1Sn0.1ナノ粒子の大きな粒径および分布(~76.2±4.2nm)をもたらすため、相分離が生じる。したがって、開示された技術を使用することによってのみ、相分離を回避することができ、それは、少なくとも部分的にはMEIナノ粒子を、構成要素が十分に混合されているHEAナノ粒子で開始することによって可能になる。この技術の制限された加熱時間はまた、MEIナノ粒子をうまく製造するために、粒子の成長を防ぎながら、無秩序から秩序への転移を可能にする。
【0138】
MEI形成を可能にする無秩序‐秩序相転移をさらに調べるために、五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)試料のアレイを~1100Kで種々の時間加熱することにより合成した。次いで、XRDを実施して、それらの秩序化の程度を特徴付けた。計算された仮想XRDパターンによれば、24.2°の(001)と33.4°の(110)の回折ピークは、Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)の理想的なLL1
0金属間構造の超格子ピークである。これらのピークの強度に基づいて、上記の式(2)によって定義されるように、LROパラメータを使用して、異なる五元試料の秩序化度を定量化することができる。0.05sのジュール加熱のみで作製した試料では、超格子回折ピークは観察されず、短い加熱時間は、Pt
1Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1の無秩序相転移を誘起できないことを示唆した。加熱時間が0.5秒から5分に増加することにつれて、L1
0、(001)および(110)の特徴的な回折ピークは、徐々に増強した。その結果、LROは、
図9Aに示されるように、10%(0.5秒)から60%(1分)、最後に~100%(5分)に増加した。
図9Bに示されるように、五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)MEIのXRD結果のリートベルト微細化は、5分間加熱された試料の完全に秩序化されたL1
0金属間構造の形成も明らかにし、ここで、Co、Ni、Cu、およびFe元素は、1つの副格子を占め、Ptは、他の副格子を占める。
【0139】
この無秩序から秩序への転移過程(0.5秒~5分)は、異なる加熱時間(
図9C~9Eに示されるように)で~1100Kで合成された五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)MEIナノ粒子のSTEMイメージングとも一致し、これは、無秩序HEAナノ粒子構造が~5分加熱の過程でMPEI構造に変換することを示す。不混和性元素からなる単相MPEIへのこの無秩序相から秩序相への転移は、ナノスケールでしか達成できない。五元Pt(Fe
0.7Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1)ナノ粒子の場合、完全に秩序化したL1
0構造(LRO=100%)が4~5nmの粒子で得られた。しかしながら、より大きい粒子については、LROが粒子合成方法にかかわらず、粒径と共に減少する(
図5Dに示されるように)。粒径が約60nm以上に増加すると、STEMとEDXにより確認されるように、粒子は、無秩序または他の相分離ヘテロ構造を示す。
【0140】
異なるサイズのナノ粒子のモンテカルロ(MC)シミュレーションを行い、LRO変化を1100KでのMC段階(反応時間に対応)の関数として追跡し、ナノスケールでの転移をさらに理解した。3.1nmと4.6nmの粒径の粒子のLROは、MC段階と共に増大し、3x10
7段階内で~100%に達し、両粒子は、模擬進行のこの時点で無秩序‐秩序相転移を完了した。しかし、粒径が7.7nmの場合、3x10
7のシミュレーション段階後には、部分的な無秩序-秩序転移(LRO =40%)しか達成できない。シミュレートした最大粒子は、10.8nmであり、同数のMCシミュレーション段階後に5%のさらに低いLROを示した。これらの知見は、XRD(例えば、
図5C)およびSTEMを用いた実験的観察と一致し、完全な無秩序-秩序相転移は、超小型ナノ粒子(<5nm)において主に達成され、安定化される。
【0141】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、無秩序-秩序転移に対するサイズ効果は、表面エネルギーの差に起因し得る。例えば、MEIは、より強い原子-原子相互作用を形成するので、MEIは、HEAよりも低い表面エネルギーを有することができる。小さなナノ粒子の大きな相対表面積のために、MEIとHEAの小さなナノ粒子(~5nm)の間の表面エネルギーの差は、無秩序から秩序への転移を駆動するのに重要な役割を果たすことができる。より大きな粒子(例えば、10~20nm)は、無秩序-秩序転移を完了するために、より高いエネルギー障壁を克服する必要があることも可能である。5nmよりも著しく大きい粒子(例えば、150nm)の場合、そのような大きなエネルギー障壁は、完全に秩序正しいMEIの形成を妨げ得る。無秩序-秩序転移は、相安定なMEIナノ粒子を形成するために熱力学的に好まれ得る。4~5nmのサイズを有するMEIナノ粒子のより低いエンタルピーを、五元および八元MEIおよびそれらの対応する無秩序HEA出発材料について高温酸化物溶融液滴熱量測定を行うことによって検証した。熱量測定によれば、五元HEAからMEIへのエンタルピー変化は、Pt(Fe0.7Co0.1Ni0.1Cu0.1)式あたり-0.20eVであり、八元HEAからMEIへのエンタルピー変化は、(Pt0.8Pd0.1Au0.1)(Fe0.6Co0.1Ni0.1Cu0.1Sn0.1)式あたり-0.32eVであり、秩序化MEIが熱力学的に有利であることを示した。
【0142】
1100Kでの五元Pt(Fe0.7Co0.1Ni0.1Cu0.1)ナノ粒子の原子配列のMCモデリングにより、無秩序相から秩序相への転移をさらにシミュレートした。これは、他の金属間化合物の転移過程と同様に、無秩序HEA出発物質の原子が拡散して秩序MEIを形成することを示した。転移の間、スピン‐軌道結合と非貴金属3dと貴金属5d状態間のハイブリダイゼーションを介した強い相互作用によって駆動されて、5次MEIの生成エンタルピー(ΔHf)は、実質的に減少する。MCモデリングによれば、減少したエンタルピーは、広い温度範囲(~273-1500K)で(同じ五元組成PtFe0.7Co0.1Ni0.1Cu0.1に基づく)HEA(Gd)試料よりもMEI(Go)のより低いギブス自由エネルギーを導いた。1500K以下(および金属塩の分解温度以上)の温度では、MEIの低エンタルピーがギブス自由エネルギーを支配し、したがってGo<Gdである。したがって、合成温度(~1100K)では、無秩序から秩序への転移が熱力学的に有利であり(ΔGd→o=Go-Gd<0)、室温では秩序化MEIは、熱力学的に安定な相である。
【0143】
無秩序から秩序への転移が完了すると、超小型MEIナノ粒子は、静的Pt(Fe0.7Co0.1 Ni0.1Cu0.1)MEIナノ粒子をin situ加熱し、同時にSTEMによるその相発生をモニタリングすることによって証明されるように、優れた相安定性を示すことができる。ジュール加熱により合成した五元MEIナノ粒子は、約1100Kで13分間加熱した後でも完全に秩序化した構造を示した。ナノ粒子は、さらに47分間~1100Kに維持されたが、相変化は、まだ観察されず、それによってMEIナノ粒子の熱安定性を示した。対照的に、約1100Kでの二元PtFeナノ粒子(~5nm)は、秩序的な金属間構造(14分)を示したが、徐々に無秩序合金(60分)に変換し、二元金属間化合物と比較してMEIの優れた熱安定性を示した。
【0144】
エタノール酸化反応(EOR)用の電極触媒として使用するために、(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)の八元MEIナノ粒子をケッチェンブラックカーボン担体(
図S22)上に作製した。EORは、
図9Fの燃料電池900などの直接アルコール燃料電池における重要な反応である。特に、燃料電池900は、その上にガス拡散層904を有するアノード902と、カソード910と、アノード902とカソード910との間に配置されたプロトン交換膜(PEM)908とを含む。PEM 908は、例えば、八元MEIナノ粒子の触媒構造を含む触媒層906をさらに含むことができる。エタノールは、PEM908のアノード側の入口流912を介して、アノード902で酸化されてCO
2の出口流914を形成する。同時に、PEM908のカソード側の入口流916を介して、カソード910で還元されて、H
2Oの出口流918を形成する。プロトンは、PEM908を通って輸送され、一方、電子は、外部回路(図示せず)を通ってアノード902からカソード910に輸送され、それによって、負荷に電力を供給する。
【0145】
しかしながら、EORは、高表面積、調整可能な組成、および良好な安定性を有する効率的な触媒を必要とし、その特徴は、アノード触媒906として八元MEIナノ粒子((Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1))を使用することによって可能になり得る。
図9Gは、(Pt
0.8Pd
0.1Au
0.1)(Fe
0.6Co
0.1Ni
0.1Cu
0.1Sn
0.1)MEIナノ粒子、二元PtFe金属間ナノ粒子、および1M KOHおよび1M EtOH中で試験した市販のPt/C触媒について得られたEOR定電圧(CV)曲線を示す。
図9Gによって示されるように、MEIナノ粒子は、二元PtFe金属間化合物および市販のPt/C触媒よりそれぞれ8倍および12倍高い改善されたEOR活性を示す。さらに、八元MEIナノ粒子は、材料の多元素組成、秩序的な金属間構造、およびナノサイズに起因し得る、長期触媒操作中の優れた耐久性を実証する。
【0146】
開示された技術のさらなる追加の例
開示された主題の上述の実装を考慮して、本出願は、以下に列挙される付記条項における追加の例を開示する。単独での付記の1つの特徴、または組み合わせて記載された付記条項の2つ以上の特徴、および任意選択で、1つ以上のさらなる付記条項の1つ以上の特徴と組み合わせたさらなる例も、本出願の開示の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0147】
付記1.
1つまたは複数の多元素化合物(MEC)ナノ粒子を含む構造であって、
各MECナノ粒子は、1つまたは複数の元素を含む複数の部位を有し、各部位は、化合物ナノ粒子の少なくとも1つの他の部位と化合物結合を形成し、化合物結合の1つまたは複数は共有結合、イオン結合、金属結合、または前述の任意の組合せを含み、各MECナノ粒子は、少なくとも3つの異なる元素から形成される、ナノ粒子の構造。
【0148】
付記2.
本明細書の任意の節または例、特に付記1に記載の構造であって、
各MECナノ粒子が、25nm以下の最大断面寸法を有する、構造。
【0149】
付記3.
本明細書のいずれかの節または例の構造であって、
特に、1つまたは複数のMECナノ粒子が、多元素酸化物ナノ粒子、多元素炭化物ナノ粒子、多元素金属間ナノ粒子、多元素窒化物ナノ粒子、多元素非晶質ガラスナノ粒子、多元素二ホウ化物ナノ粒子、多元素リン化物ナノ粒子、多元素硫化物ナノ粒子、多元素カルコゲナイドナノ粒子、多元素ケイ化物ナノ粒子、または前述の任意の組合せを含む、付記1~2のいずれか1つに記載の構造。
【0150】
付記4.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~3のいずれか1つに記載の構造であって、
基板をさらに含み、前記基板は、1つ以上のMECナノ粒子が当該基板の1つ以上の表面上に形成され、1つ以上のMECナノ粒子が基板の1つ以上の表面に結合され、またはその両方である、構造。
【0151】
付記5.
本明細書、特に付記4の任意の節または例の構造であって、
基板が、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、メソ多孔性カーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくはカーボン粒子、グラファイト粉末もしくはグラファイト粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、またはこれらの任意の組み合わせを含む、構造。
【0152】
付記6.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~5のいずれか1つに記載の構造であって、
1つまたは複数のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素酸化物(MEO)ナノ粒子を含み、MEOナノ粒子が、単一の均質相中に酸素および少なくとも3つのカチオンを含む、構造。
【0153】
付記7.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6に記載の構造であって、
MEOナノ粒子が、単一の均質相中に5つを超えるカチオンを含む、構造。
【0154】
付記8.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~7のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子が、岩塩、スピネル、ルチル、フルオライト、タングステンブロンズ、およびペロブスカイトからなる群から選択される結晶構造を有する、構造。
【0155】
付記9.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記6~8のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子を形成する少なくとも3つのカチオンが、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrからなる群から選択される、構造。
【0156】
付記10.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~9のいずれか1つに記載の構造であって、
少なくとも3つのカチオンが、少なくとも1つの遷移金属および少なくとも1つの貴金属を含む、構造。
【0157】
付記11.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~10のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子が、Pdを含む、構造。
【0158】
付記12.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~11のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子は(Zr,Ce)0.6(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)0.3Pd0.1O2-xの式を有する十元酸化物であり、xは酸素空孔を表す、構造。
【0159】
付記13.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~11のいずれか1つに記載の構造であって、
前記ナノ粒子は、(Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Ca,Mg,Mn)O2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、構造。
【0160】
付記14.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~13のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子が、13.5J/mol/K以上の配位エントロピーを有する、構造。
【0161】
付記15.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記6~14のいずれか1つに記載の構造であって、
MEOナノ粒子上に形成され、MEOナノ粒子の少なくとも一部を囲むコーティングをさらに含む、構造。
【0162】
付記16.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記15に記載の構造であって、
コーティングが、C、O、およびHを含むポリマーを含む、構造。
【0163】
付記17.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記15~16のいずれか1つに記載の構造であって、
コーティングが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または前述のものの任意の組合せを含む、構造。
【0164】
付記18.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~17のいずれか1つに記載の構造であって、
1つまたは複数のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素金属間(MEI)ナノ粒子を含み、MEIナノ粒子が、単相中に少なくとも3つの金属元素を含む、構造。
【0165】
付記19.
本明細書の任意の節または例、特に付記18に記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、約4~6nmの最大断面寸法を有する、構造。
【0166】
付記20.
本明細書のいずれかの節または例の構造、特に、付記18~19のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、第1および第2の副格子を有し、少なくとも3つの金属元素のうちの1つが、第1の副格子中に分布し、少なくとも3つの金属元素のうちの別のものが、第2の副格子中に分布する、構造。
【0167】
付記21.
本明細書のいずれかの節または例の構造、特に付記20に記載の構造であって、
第1の副格子が、貴金属原子のランダム分布を有し、第2の副格子が、非貴金属原子のランダム分布を有する、構造。
【0168】
付記22.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記18~21のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、幾何学的に閉鎖充填された相またはトポロジー的に閉鎖充填された相を有する、構造。
【0169】
付記23.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記22に記載の構造であって、
幾何学的に閉鎖充填された相が、L10、L11、L12、またはB2の格子構造を含み、トポロジー的に閉鎖充填された相が、ラーベス相、σ相、またはμ相を含む、構造。
【0170】
付記24.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記18~23のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、5つを超える金属元素を含む、構造。
【0171】
付記25.
本明細書のいずれかの節または実例、特に、付記18~24のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、(Pt0.8Pd0.1Au0.1)(Fe0.6Co0.1Ni0.1Cu0.1Sn0.1)の構造を有する八元ナノ粒子である、構造。
【0172】
付記26.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記18~25のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、少なくとも90%の長時間秩序化(LRO)を示す、構造。
【0173】
付記27.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記18~26のいずれか1つに記載の構造であって、
MEIナノ粒子が、約100%のLROを示す、構造。
【0174】
付記28.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~27のいずれか1つに記載の構造であって、
1つまたは複数のMECナノ粒子のうちの少なくとも1つが、多元素炭化物ナノ粒子を含み、多元素炭化物ナノ粒子が、単一の均質相中に炭素および少なくとも3つの金属元素を含む、構造。
【0175】
付記29.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記28に記載の構造であって、
多元素炭化物ナノ粒子が、単一の均質相中に5つを超える金属元素を含む、構造。
【0176】
付記30.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記28~29のいずれか1つに記載の構造であって、
多元素炭化物ナノ粒子を形成する少なくとも3つの金属元素が、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrからなる群から選択される、構造。
【0177】
付記31.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記28~30のいずれか1つに記載の構造であって、
多元素炭化物ナノ粒子が、(TiZrVNbMo)Cx。である、構造。
【0178】
付記32.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~31のいずれか1つに記載の構造であって、
熱化学反応または電気化学反応における触媒としての使用のために構築される、構造。
【0179】
付記33.
(a)その上に複数の金属塩前駆体を有する基板を提供し、前記金属塩前駆体の少なくとも1つがOを含み、前記複数の金属塩前駆体が少なくとも3つの異なる金属元素を含み;
(b)基板を初期温度から少なくとも104K/sの第1の加熱速度で第1の温度まで加熱し;
(c)基板を第1の温度に第1の期間にわたって維持し;
(d)前記第1の時間の終わりに、前記基板を前記第1の温度から少なくとも105K/sの第1の冷却速度で第2の温度まで冷却し;
初期温度および第2の温度は、500K未満であり、
(b)の加熱、(c)の維持、および(d)の冷却により、基板上の金属塩前駆体が1つ以上の多元素酸化物(MEO)ナノ粒子に変換され、各MEOナノ粒子は、単一の均質相中に酸素および少なくとも3つの金属元素を含む、方法。
【0180】
付記34.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33に記載の方法であって、
初期温度、第2の温度、または両方が、約290~300Kである、方法。
【0181】
付記35.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~34のいずれか1つに記載の方法であって、
第1の温度が、1400K以上1600K以下の範囲であり、第1の時間が、約50~55msである、方法。
【0182】
付記36.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~34のいずれか1つに記載の方法であって、
第1の温度が、1200K以上1400K以下の範囲内にあり、第1の期間が、約200msである、方法。
【0183】
付記37.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~36のいずれか1つに記載の方法であって、
(b)の加熱、(c)の維持、および(d)の冷却が、希ガスおよび/または雰囲気の雰囲気中で実施される、方法。
【0184】
付記38.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記37に記載の方法であって、
希ガスがArを含む、方法。
【0185】
付記39.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~38のいずれか1つに記載の方法であって、
複数の金属塩前駆体が、Ni、Cu、またはFeを含み、
(b)の加熱、(c)の維持、および(d)の冷却が、酸素分圧を有する雰囲気中で行われる、方法。
【0186】
付記40.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記39に記載の方法であって、
雰囲気が、周囲空気を含み、および/または雰囲気が、少なくとも15体積%のO(例えば、~20.95体積%)を含み、および/または雰囲気が、少なくとも150mbar(例えば、~212.3mbar)の酸素分圧を有する、方法。
【0187】
付記41.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記33~40条のいずれか1つに記載の方法であって、
少なくとも3つの金属元素が、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Pb、Pd、Pr、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、Y、Zn、およびZrからなる群から選択される、方法。
【0188】
付記42.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~41のいずれか1つに記載の方法であって、
複数の金属塩前駆体が、10種の異なる金属元素を含み、そのうちの少なくとも1種が、貴金属である、方法。
【0189】
付記43.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記42に記載の方法であって、
貴金属が、Pdである、方法。
【0190】
付記44.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~43のいずれか1つに記載の方法であって、
MEOナノ粒子が、(Zr,Ce)0.6(Mg,La,Y,Hf,Ti,Cr,Mn)0.3Pd0.1O2-xの式を有する十元酸化物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、方法。
【0191】
付記45.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~43のいずれか1つに記載の方法であって、
MEOナノ粒子が、(Zr,Ce,Hf,Ti,La,Y,Gd,Ca,Mg,Mn)O2-xの式を有する十元化合物であり、ここで、xは酸素空孔を表す、方法。
【0192】
付記46.
本明細書のいずれかの節または例、特に、33~45のいずれか1つに記載の方法であって、
基板が、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、メソ多孔性カーボンモレキュラーシーブ(CMK)、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンブラック粉末もしくは粒子、グラファイト粉末もしくは粒子、グラフェン、炭化木材、半導体、テキスタイル、金属、誘電体、酸化物、または前述のもの任意の組合せを含む、方法。
【0193】
付記47.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~46のいずれか1つに記載の方法であって、
加熱が、直接ジュール加熱、伝導加熱、放射加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱、または前述の任意の組み合わせを含む、方法。
【0194】
付記48.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~47のいずれか1つに記載の方法であって、
冷却が、(i)放射、伝導、または両方による受動的冷却、(ii)伝導、対流、または両方による能動的冷却、(iii)熱吸収によって誘発される相または化学転移による能動的冷却、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組合せを含む、方法。
【0195】
付記49.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~48のいずれか1つに記載の方法であって、
(d)の冷却後に、
(e)1つまたは複数のMEOナノ粒子上にコーティングを提供すること、および1つまたは複数のMEOナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むこと;
(f)第1の加熱速度よりも遅い第2の加熱速度で基板を第3の温度から第4の温度に加熱すること;
(g)基板を第2の期間にわたって第4の温度に維持すること;
(h)第2の期間の終わりに、第4の温度から少なくとも105K/sの第2の冷却速度で第4の温度から第5の温度まで基板を冷却すること、
を含み、
第3の温度および第5の温度は500K未満であり、
(f)の加熱、(g)の維持、および(h)の冷却により、1つまたは複数のMEOナノ粒子およびコーティングが1つまたは複数の多元素炭化物ナノ粒子に変換され、それぞれの多元素炭化物ナノ粒子は、単一の均質相中にカーボンおよび少なくとも3つの金属元素を含む、方法。
【0196】
付記50.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記33~48のいずれか1つに記載の方法であって、
(d)の冷却後に、
(e)1つまたは複数のMEOナノ粒子上にコーティングを提供すること、および1つまたは複数のMEOナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むこと;
(f)基板を少なくとも104K/sの第3の加熱速度で第3の温度から第4の温度に加熱すること;
(g)基板をある期間にわたって第4の温度に維持すること;
(h)該期間の終わりに、少なくとも105K/sの第2の冷却速度で、基板を第4の温度から第5の温度まで冷却すること;および
(i)(f)の加熱、(g)の維持、および(h)の冷却を1回以上繰り返して、第2の期間を画定すること、
を含み、
第3の温度および第5の温度は、500K未満であり、
(f)の加熱、(g)の維持、(h)の冷却、および(i)の繰り返しにより、1つまたは複数のMEOナノ粒子およびコーティングが、1つまたは複数の多元素炭化物ナノ粒子に変換され、各多元素炭化物ナノ粒子は、炭素および少なくとも3つの金属元素を単一の均質相で含む、方法。
【0197】
付記51.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記49~50のいずれか1つに記載の方法であって、
第3の温度、第5の温度、または両方が、約290~300Kである、方法。
【0198】
付記52.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記49~51のいずれか1つに記載の方法であって、
第4の温度が、第1の温度よりも少なくとも200K高く、第2の時間が、第1の時間よりも少なくとも100倍高い、方法。
【0199】
付記53.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記49~52のいずれか1つに記載の方法であって、
第4の温度が、約2000Kであり、第2の期間が、約60秒である、方法。
【0200】
付記54.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記49~53のいずれか1つに記載の方法であって、
前記コーティングが、C、O、およびHを含むポリマーを含む、方法。
【0201】
付記55.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記49~54のいずれか1つに記載の方法であって、
コーティングが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または前述のものの任意の組み合わせを含む、方法。
【0202】
付記56.
(a)1つ以上の高エントロピー合金(HEA)ナノ粒子をその上に有する基板を提供し、各HEAナノ粒子は、少なくとも5つの異なる金属元素を含み;
(b)少なくとも104K/sの第1の加熱速度で基板を第1の温度に加熱し;
(c)基板を第1の期間にわたって第1の温度に維持し;
(d)第1の時間の終わりに、前記基板を前記第1の温度から少なくとも105K/sの第1の冷却速度で第2の温度まで冷却し、
第2の温度は、500K未満であり、
第1の温度は、1000Kより高く、第1の時間は、1分~10分の範囲内であり、
(b)の加熱、(c)の維持、および(d)の冷却により、1つまたは複数のHEAナノ粒子が、1つまたは複数の多元素金属間(MEI)ナノ粒子に変換され、各MEIナノ粒子が、少なくとも5つの金属元素を単相で含む、方法。
【0203】
付記57.
本明細書の任意の節または例、特に、付記56に記載の方法であって、
(a)の提供は、
(a1)基板上に複数の金属塩前駆体を提供することであって、複数の金属塩前駆体が、少なくとも5つの異なる金属元素を含むこと;
(a2)少なくとも104K/sの第2の加熱速度で基板を初期温度から第3の温度に加熱すること;
(a3)基板を第2の期間にわたって第3の温度に維持すること;
(a4)第2の期間の終了時に、少なくとも105K/sの第2の冷却速度で第3の温度から第4の温度まで基板を冷却すること、
を含み、
初期温度および第4の温度は、500K未満であり、
第3の温度は、1000Kより大きく、第2の時間周期は、10ms~100msを含み、
(a2)の加熱、(a3)の維持、および(a4)の冷却により、基板上の金属塩前駆体が、1つ以上のHEAナノ粒子に変換される、方法。
【0204】
付記58.
本明細書中の任意の付記または例の方法、特に、付記57に記載の方法であって、
初期温度、第2温度、および第4温度の1つ、一部、または全てが、約290~300Kである、方法。
【0205】
付記59.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記57~58のいずれか1つに記載の方法であって、
第3の温度が約1100Kであり、第2の期間が約50~55msである、方法。
【0206】
付記60.
(a)その上に1つ以上の無秩序ナノ粒子を有する基板を提供し、1つ以上の無秩序ナノ粒子は、少なくとも3つの異なる金属元素を含み、50%未満の長時間秩序化(LRO)を有し;
(b)少なくとも104K/sの第1の加熱速度で基板を第1の温度に加熱し;
(c)基板を第1の期間にわたって第1の温度に維持し;
(d)前記第1の時間の終わりに、前記基板を前記第1の温度から少なくとも105K/sの第1の冷却速度で第2の温度まで冷却し、
第2の温度は、500K未満であり、
第1の温度は、1000Kより高く、第1の時間は、1分~10分の範囲内であり、
(b)の加熱、(c)の維持、および(d)の冷却により、1つまたは複数の無秩序ナノ粒子が、1つまたは複数の多元素金属間(MEI)ナノ粒子に変換され、各MEIナノ粒子は、少なくとも3つの金属元素を単相で含む、方法。
【0207】
付記61.
本明細書の任意の節または例、特に、付記60に記載の方法であって、
(a)の提供は、
(a1)基板上に複数の金属塩前駆体を提供することであって、前記複数の金属塩前駆体は、少なくとも3つの異なる金属元素を含むこと;
(a2)少なくとも104K/sの第2の加熱速度で基板を初期温度から第3の温度に加熱すること;
(a3)第3の温度で第2の期間にわたって基板を維持すること;
(a4)第2の期間の終了時に、少なくとも105K/sの第2の冷却速度で第3の温度から第4の温度まで基板を冷却すること;
を含み、
初期温度および第4の温度は、500K未満であり、
第3の温度は、1000Kより大きく、第2の時間周期は、10ms~100msを含み、
(a2)の加熱、(a3)の維持、および(a4)の冷却により、基板上の金属塩前駆体が、1つ以上の無秩序ナノ粒子に変換される、方法。
【0208】
付記62.
本明細書中の任意の節または例の方法、特に、付記61に記載の方法であって、
初期温度、第2温度、および第4温度の1つ、一部、または全てが、約290~300Kである、方法。
【0209】
付記63.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記61~62のいずれか1つに記載の方法であって、
第3の温度が約1100Kであり、第2の期間が約50~55msである、方法。
【0210】
付記64.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~63のいずれか1つに記載の方法であって、
第1の温度が約1100Kであり、第1の期間が約5分である、方法。
【0211】
付記65.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~64のいずれか1つに記載の方法であって、
各MEIナノ粒子が、幾何学的に閉鎖充填された相またはトポロジー的に閉鎖充填された相を有する、方法。
【0212】
付記66.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記65に記載の方法であって、
幾何学的に閉鎖充填された相が、L10、L11、L12、またはB2の格子組織を含み、トポロジカルに閉鎖充填された相が、ラーベス相、σ相、またはμ相を含む、方法。
【0213】
付記67.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~66のいずれか1つに記載の方法であって、
1つまたは複数のMEIナノ粒子が、6つを超える金属元素、7つを超える金属元素、または8つを超える金属元素を含む、方法。
【0214】
付記68.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~67のいずれか1つに記載の方法であって、
それぞれのMEIナノ粒子が、(Pt0.8Pd0.1Au0.1)(Fe0.6Co0.1Ni0.1Cu0.1Sn0.1)の化合物を有する八元ナノ粒子である、方法。
【0215】
付記69.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~68のいずれか1つに記載の方法であって、
各MEIナノ粒子が、少なくとも90%の長時間秩序化(LRO)を示す、方法。
【0216】
付記70.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記56~69のいずれか1つに記載の方法であって、
各MEIナノ粒子が、約100%のLROを示す、方法。
【0217】
付記71.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記1~32のいずれか1つの多元素化合物ナノ粒子を製造するためのシステムであって、
パルスまたは半連続加熱機構を備える、システム。
【0218】
付記72.
本明細書のいずれかの節または例、特に、付記71に記載のシステムであって、
パルスまたは半連続加熱機構が、直接ジュール加熱器、伝導加熱器、放射加熱器、マイクロ波加熱器、レーザー、プラズマ、または前述のものの任意の組合せ、または加熱のための任意の他の手段のうちの1つまたは複数を備える、システム。
【0219】
付記73.
本明細書のいずれかの節または例のシステム、特に、付記71~72のいずれか1つに記載のシステムであって、
急速冷却機構をさらに備える、システム。
【0220】
付記74.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記73に記載のシステムであって、
急速冷却メカニズムが、(i)放射、伝導、または両方による受動的冷却、(ii)伝導、対流、または両方による能動的冷却、(iii)吸熱によって誘発される相または化学転移による能動的冷却、(iv)急速冷却のための任意の他の手段、または(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組合せを含む、システム。
【0221】
付記75.
本明細書のいずれかの節または例のシステム、特に、付記71~74のいずれか1つに記載のシステムであって、
パルス加熱機構および/または急速冷却機構に動作可能に結合され、それを制御するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0222】
付記76.
本明細書の任意の節または例、特に付記75に記載のシステムであって、
コントローラが、1つまたは複数のプロセッサおよびコンピュータ可読記憶媒体を備える、システム。
【0223】
付記77.
本明細書のいずれかの節または例、特に付記76のシステムであって、
コンピュータ可読記憶媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、コントローラに、本明細書のいずれかの節または例に記載の方法の1つまたは複数の態様、特に付記33~70のいずれか1つの実行を行わせる、および/または制御信号を発行させる命令を記憶する、システム。
【0224】
結論
例えば、
図1B~1E、2B~2G、3~7D、および8A~9Gならびに付記1~77に関して本明細書に図示または説明される特徴のいずれかを、例えば、
図1B~1E、2B~2G、3~7D、および8A~9Gならびに付記1~77に関して本明細書に図示または説明される任意の他の特徴と組み合わせて、本明細書に他に図示または具体的に説明されない材料、構造、方法、および実施形態を提供することができる。本明細書に記載される全ての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能な場合を除いて、本明細書に記載される任意の他の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0225】
開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例にすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内に入る全てを権利請求するものである。
【国際調査報告】