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特表2024-505332微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング
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  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図1
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図2A
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図2B
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図2C
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図3A
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図3B
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図4
  • 特表-微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】微細加工装置を用いた蛍光性微生物のスクリーニング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20240130BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536869
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 US2021064101
(87)【国際公開番号】W WO2022133256
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,999
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517368062
【氏名又は名称】アイソレーション バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124659
【弁理士】
【氏名又は名称】白洲 一新
(72)【発明者】
【氏名】エメリー,クリスタル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB02
4B029BB06
4B029BB07
4B029BB11
4B029BB12
4B029FA03
4B029GA03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを用いてサンプル内の蛍光性細胞を同定する方法。サンプル中の少なくとも一つの細胞が複数のマイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルに投入される。微細加工チップをインキュベーションし、少なくとも一つのマイクロウェルの少なくとも一つの細胞から細胞集団を増殖させる。少なくとも一つのマイクロウェルの示す蛍光が、微細加工チップの画像を解析することにより検出され、これによりサンプルにある蛍光性細胞の存在が決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを使用して蛍光性細胞を同定する方法であって、
(a) 少なくとも一つのサンプル細胞を複数のマイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルに投入することと、
(b) 前記少なくとも一つのマイクロウェル内の少なくとも一つの細胞から細胞集団を成長させるために、前記微細加工チップをインキュベートすることと、
(c) 前記マイクロ加工チップのイメージを解析することで、少なくとも一つのマイクロウェルで発現する蛍光を検出し、これによって、前記サンプルにある蛍光性細胞の存在を判定することと、を含む方法。
【請求項9】
複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを使用してサンプル中の蛍光性細胞を同定する方法であって、
(a) サンプル中の少なくとも一つの細胞と蛍光性代謝指示薬を複数のマイクロウェルの中の少なくとも一つのマイクロウェルに投入し、代謝指示薬の蛍光状態が細胞代謝活性の有無を示すことと、
(b) 微細加工チップをインキュベーションし、少なくとも一つのマイクロウェルの少なくとも一つの細胞から細胞集団を増殖させることと、
(c) 微細加工チップの画像を分析することにより、少なくとも一つのマイクロウェルが示す蛍光を検出し、これによりサンプル中にある蛍光性細胞の存在を判定することと、を含む方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つのマイクロウェルが示す蛍光を検出することが、代謝指示薬の蛍光と細胞集団の蛍光を同時に別々の蛍光検出チャンネルで検出することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細菌は遍在する微小な単一細胞生物で、人体には何百万もの細菌が存在する。大部分の細菌は人体には無害であるが、一部の細菌は重大な健康問題を引き起こすことができる。多剤抵抗性病原性細菌は、抗生物質が広く使用されているため、世界的にも深刻な問題となっている。人体の細菌微生物叢における細菌株または種の同定は、細菌感染症の治療と抗生物質の開発にとって極めて重要である。
【0002】
様々な技術が細菌の検出に使用されており、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、グラム染色、免疫学的技術、ラマン分光法などがある。しかし、これらの方法は、しばしば時間がかかり、高価であり、複雑な手順を要し、偽陽性結果を生み出す場合がある。
【0003】
蛍光ベースの色素は、小さな有機物質のプローブであり、細菌の鑑別に使用できる場合がある。蛍光性細菌の検出は、大規模培養用に非蛍光性細菌から蛍光性細菌を分離する目的で、様々な方法を用いて達成可能であるが、通常、蛍光活性化細胞選別(FACS)が使用されている。FACS装置は、励起源としてのレーザーと発光を検出する一連の波長検出器を使い、単一蛍光細菌細胞を同定する。次いで、電磁石を使用し細菌を選別する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一つの態様において、サンプル中の蛍光性細胞を同定する方法が提供される。この方法は、複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを使用する蛍光性細胞を同定する方法であって、(a)少なくとも一つのサンプル細胞を複数のマイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルに投入することと、(b)前記少なくとも一つのマイクロウェル内の少なくとも一つの細胞から細胞集団を成長させるために、前記微細加工チップをインキュベートすることと、(c)前記マイクロ加工チップのイメージを解析することで、少なくとも1つのマイクロウェルで発現する蛍光を検出し、これによって、前記サンプルにある蛍光性細胞の存在を判定することと、を含む方法。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態において、前記投入することが、複数のサンプル細胞を前記複数のマイクロウェルに載せ、少なくとも一部のマイクロウェルがそれぞれ1つの細胞のみを含むようにし、マイクロウェルの統計的に無視できる割合が1つ以上の細胞を含むことである。一方でその複数のマイクロウェルが2つ以上の細胞を含むことが無いか、含んでも統計的に有意でないパーセンテージだけとなるようにすることを含む。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、複数のマイクロウェルの少なくとも一つへ、細胞代謝活性を示す代謝指示薬も投入される。その指示薬は、蛍光性である場合があり、その蛍光状態は、例えば細胞成長や増殖などの細胞代謝活性を示すことができる。そうしたいくつかの実施形態において、検出することは、代謝指示薬の蛍光と細胞集団の蛍光を同時に別々の蛍光検出チャンネルで検出することを含む。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、細胞集団の蛍光が検出された場合、少なくとも一つのマイクロウェルの中の細胞集団からの少なくとも一つの細胞を標的位置に移動させることができる。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも一つのマイクロウェルに投入された少なくとも一つの細胞を保持するため、微細加工された装置に膜を貼付することができる。
【0009】
本発明のもう一つの態様では、サンプル中の蛍光性細胞を同定する方法が提供される。この方法は、複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを使用してサンプル中の蛍光性細胞を同定する方法であって、(a)サンプル中の少なくとも一つの細胞と蛍光性代謝指示薬を複数のマイクロウェルの中の少なくとも一つのマイクロウェルに投入し、代謝指示薬の蛍光状態が細胞代謝活性の有無を示すことと、(b)微細加工チップをインキュベーションし、少なくとも一つのマイクロウェルの少なくとも一つの細胞から細胞集団を増殖させることと、(c)微細加工チップの画像を分析することにより、少なくとも一つのマイクロウェルが示す蛍光を検出し、これによりサンプル中にある蛍光性細胞の存在を判定することとからなる。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのマイクロウェルが示す蛍光を検出することが、代謝指示薬の蛍光と細胞集団の蛍光を同時に別々の蛍光検出チャンネルで検出することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
当業者は、これら図面が元来説明目的のものであり、本明細書に記載されている発明の主題の範囲を制限することを意図するものではないことを理解するであろう。図面は、必ずしも原寸に比例してはいない。例によっては、様々な特徴の理解を促進するため、本明細書に開示されている発明の主題の様々な態様が図面では強調され、または拡大されて示されている場合がある。図面では、同様の参照符号は、一般に同様の特徴を示す(例、機能的に類似および/または構造的に類似の要素)。
【0011】
図1】いくつかの実施形態に記載の微細加工装置またはチップを説明する透視図である。
図2A-2C】それぞれ、いくつかの実施形態に記載の微細加工装置またはチップの寸法を説明する上面図、側面図、端面図である。
図3A-3B】それぞれ、いくつかの実施形態に記載の微細加工装置またはチップを説明する分解組立図および上面図である。
図4A】いくつかの実施形態に記載の、GFP発現想定E.coli(低赤/高青点群、青点(三角形)および非GFP発現想定(低赤/低青点群、緑点(四角形)E.coliの分離を示す分散図である。
図5】いくつかの実施形態に記載の、GFP発現群および非GFP発現群を96ウェルプレートへ移動した場合における蛍光倍率変化変動性の箱ひげ図を表す。
【発明の実施形態の詳細な説明】
【0012】
本発明の目的は、高密度細胞培養とスクリーニングプラットフォームとを用いて、蛍光微生物を同定する方法を提供することである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、高密度細胞培養プラットフォームは微細加工装置(もしくは「微細加工チップ」)であることができる。本明細書で使用される場合、微細加工装置またはチップはマイクロウェル(または実験単位)のアレイを画定する場合がある。例えば、「高密度の」マイクロウェルを備える微細加工チップはcm当たり約150マイクロウェルからcm当たり約160,000マイクロウェルを含むことができる(例えば、1cm当たり少なくとも150マイクロウェル、1cm当たり少なくとも250マイクロウェル、1cmたり少なくとも400マイクロウェル、1cm当たり少なくとも500マイクロウェル、1cm当たり少なくとも750マイクロウェル、1cm当たり少なくとも1,000マイクロウェル、1cm当たり少なくとも2,500マイクロウェル、1cm当たり少なくとも5,000マイクロウェル、1cm当たり少なくとも7,500マイクロウェル、1cm当たり少なくとも10,000マイクロウェル、1cm当たり少なくとも50,000マイクロウェル、1cm当たり少なくとも100,000マイクロウェル、1cm当たり少なくとも160,000マイクロウェル)。当該微細加工チップの基板は約10,000,000以上のマイクロウェルまたは場所を含む場合がある。例えば、マイクロウェルのアレイは、少なくとも96の場所、少なくとも1,000の場所、少なくとも5,000の場所、少なくとも10,000の場所、少なくとも50,000の場所、少なくとも100,000の場所、少なくとも500,000の場所、少なくとも1,000,000の場所、少なくとも5,000,000の場所、少なくとも10,000,000の場所を含む場合がある。マイクロウェルのアレイは格子状パターンを形成し、離れた領域または区域にまとめることができる。マイクロウェルの寸法はナノスケール(例えば、直径約1から100ナノメートル)からミクロスケールまでにわたる場合がある。例えば、各マイクロウェルは、直径約1μmから約800μm、直径約25μmから約500μm、または直径約30μmから約100μmのことがある。マイクロウェルは直径約1μm以下、約5μm以下、約10μm以下、約25μm以下、約50μm以下、約100μm以下、約200μm以下、約300μm以下、約400μm以下、約500μm以下、約600μm以下、約700μm以下、約800μm以下の場合がある。例示的実施形態において、マイクロウェルの直径は約100μm以下、または50μm以下であることが好ましい。マイクロウェルは深さ約25μmから約100μm、例えば、約1μm、約5μm、約10μm、約25μm、約50μm、約100μmの場合がある。これはまたより深い場合もあり獲、例えば、約200μm、約300μm、約400μm、約500μmのことがある。隣接するマイクロウェルの間隔は約25μmから約500μm、または約30μmから約100μmにおよぶ場合がある。
【0014】
微細加工チップは2つの主要表面を持つことができる。上部表面と底面であり、ここでマイクロウェルは上部表面において開口部を有する。マイクロウェルのそれぞれは、いかなる形態の開口部または横断面を持つことができ、例えば、円形、六角形、正方形、またはその他の形であることができる。各マイクロウェルは側壁を含むことができる。開口部または横断面が円形でないマイクロウェルの場合、本明細書に説明されているマイクロウェルの直径とは、相当面積を有する円形の有効径を表す。例えば、10x10ミクロンの辺長を有する正方形のマイクロウェルの場合、相当面積(100平方ミクロン)を持つ円の直径は11.3ミクロンである。各マイクロウェルは側壁を含むことができる。その側壁は直線、斜め、および/または湾曲状の断面形状を持つことができる。各マイクロウェルは底面を有し、これは平坦、円形、あるいは他の形態であることができる。微細加工チップ(その上にマイクロウェルを伴う)は重合体、例えば環状オレフィン重合体から精密射出成形またはエンボス加工などの他の行程を介して作成されることができる。その他の構成材料、例えばシリコンやガラスも利用可能である。チップは大幅に平面的な主要表面を持つことができる。図1は、微細加工チップの概略図を示し、このチップの縁は一般にチップ上の行と列の方向に並行である。
【0015】
微細加工チップ上の高密度マイクロウェルは、少なくとも一つの生物学的存在(例、少なくとも一つの細胞)を含むサンプルを受容するために使用される。「生物学的存在」という用語は、有機体、細胞、細胞構成要素、細胞産物、およびウィルスを含むことができるがこれらに限定されず、「種」という用語は、分類の単位を記述するために使用される場合があり、操作的分類単位(OUT)、遺伝子型、系統型、表現型、生態型、歴史、行動または相互作用、産物、変異型、および進化的に有意の単位を含むが、これらに限定されない。微細加工チップ上の高密度マイクロウェルは、さまざまな実験、例えば、さまざまな種の細菌や好気性、嫌気性、および/または通性好気性微生物などのその他の微生物(または細菌)の増殖または培養などを行うために使用されることができる。マイクロウェルは哺乳類細胞などの真核細胞を用いる実験を行うために使用される場合がある。また、マイクロウェルは、さまざまなゲノム実験またはプロテオーム実験を行うために使用でき、細胞産物または構成要素、またはその他の生物学的物資または存在、例えば、細胞表面(例、細胞膜または壁)、代謝産物、ビタミン、ホルモン、神経伝達物質、抗体、アミノ酸、酵素、タンパク質、単糖類、ATP,脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド(例、DNAまたはRNA)、化学物質、例えば色素、酵素基質などを含む場合がある。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、高密度細胞培養プラットフォームは、液滴ベースであることができる。例えば、微細加工チップ上の実験単位としてのウェルのアレイの代わりに、個別の液滴の集団が細胞、培養基、およびその他の細胞培養のための構成要素を保持するために使用されることができる。液滴生成方法は、特にチップ上細胞選別機タイプの機器類と組み合わせたとき、複雑な環境レイから微生物を増殖させ、スクリーニングするために使用されることができる。液滴は数百Hzで作成されることができ、これは、数時間で数百万の液滴が作成されることができることを意味する。単純な微小流体チップベースの装置は、液滴を生成するために使用される場合があり、液滴は、単一細胞を含むように操作することができる。細胞懸濁液を含む液滴を生成するシステムは、一つまたは少数の細胞を含む場合がある。液滴は乳濁液、二重乳濁液、ヒドロゲル、泡、および複合粒子などであることができる。例えば、液滴を混和できない液体の中に懸濁し、お互いから離れ、どの面も接触や汚染の起こらないようにする場合がある。水滴の容積は、10flと1μLの間であることができ、高度単分散液滴は数ナノメートルから500μmまで作成することができる。液滴ベースの微小流体システムは、小液滴を生成、操作、および/またはインキュベーションするために使用される場合がある。細胞の生存と増殖は、バルク溶液における実験の管理と類似する場合がある。液滴の蛍光スクリーニングは、チップ上で、例えば、1秒当たり500滴の速度でなされることができる。液滴は一列にマイクロチャンネルを通し、分光法で、例えば、液滴から発せられる蛍光を検出する蛍光検出器を使用して、検査可能であり、ある基準(例、ある波長で蛍光を発する)を満たすと判定されるこうした液滴は、ダイバージョンを介して分岐流路へと選択可能であり、そこから液滴は貯留、または回収されることができる。ダイバージョンまたは流れの切り替えは弁、ポンプ、外部電場の適用等で達成することができる。
【0017】
本発明のさまざまな実施形態において、一つの細胞は古細菌、細菌、あるいは真核細胞(例、真菌)である場合がある。例えば、一つの細胞は、好気性、嫌気性、あるいは通性好気性微生物のような微生物である場合がある。ビールスはバクテリオファージである場合がある。他の細胞構成要素/産物は、タンパク質、アミノ酸、酵素、単糖類、アデノシン三リン酸(ATP)、脂質、核酸(例、DNAおよびRNA)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、細胞膜/壁)、鞭毛、線毛、細胞小器官、代謝産物、ビタミン、ホルモン、神経伝達物質、抗体などを含む場合があるが、これらに限定はされない。
【0018】
本発明の細胞の培養の場合、栄養素がしばしば提供される。栄養素は定義される場合もあり(例、化学的に定義される、あるいは合成培養基) 、あるいは定義されない場合もある(例、基礎または複合培地)。栄養素は実験室調製された、および/または市販用に製造された培養基(例、2つ以上の化学物質の混合)を含むことも、あるいはこれらの構成要素であることができる。栄養素は、液体培養液(例、普通ブイヨン)を含むことも、その構成要素であることもあり、例としてはマリンブロス、溶原生ブロス(例、LBブロス)、等がある。栄養素は、寒天を混ぜた液体培地を含むことも、その構成要素であることもあり、固形培地および/または市販の製造された寒天プレート、例えば血液寒天培地を形成することがある。
【0019】
栄養素は選択培地を含むことも、その構成要素であることができる。例えば、選択培地はある種の生物学的存在のみ、あるいはある性質(例、抗生物質抵抗性、またはある代謝産物の合成)を有する生物学的存在のみの増殖のために使用される場合がある。栄養素は、鑑別培地を含む場合もあり、その構成要素であることもあり、あるタイプの生物学的存在を他のタイプの生物学的存在から、またはその他のタイプの生物学的存在から、特定の指示薬(例、中性赤、フェノール赤、エオシンy、またはメチレン青)の存在下における生化学的特性を用いて区別する。
【0020】
栄養素は、自然環境からの抽出成分または自然環境由来の培養基を含む場合もあり、その構成要素である場合もある。例えば、栄養素は、特定のタイプの生物学的存在にとって自然な環境、異なる環境、または複数の環境由来のことがあることができる。環境には、一つまたはそれ以上の生物学的組織(例、結合織、筋肉、神経組織、上皮組織、植物表皮、血管組織、基本組織など)、生物学的液体またはその他の生物学的産物(例、羊水、胆汁、血液、脳脊髄液、耳垢、浸出液、糞便物質、胃液、間質液、細胞内液、リンパ液、乳、粘液、瘤胃内容、唾液、皮脂、精液、汗、尿、膣分泌液、吐物、など)、微生物懸濁液、空気(例えば、異なる気体内容を含む)、超臨界二酸化炭素、土壌(例えば、鉱物、有機物質、気体、液体、有機体などを含む)、堆積物(れい、農業、海洋、など)、有機生命体(例、植物、昆虫、孫田の小有機体と微生物)、死んだ有機物質、飼料(例、イネ科植物、マメ科植物、貯蔵牧草、作物残渣など)、鉱物、油、油脂製品(例、動物、野菜、石油化学)、水(例、天然由来淡水、飲料水、海水など)、下水(例、汚水、商業排水、産業排水、および/または農業排水、および表面流出水)を含むが、これらに限定はされない。
【0021】
図1はいくつかの実施形態に記載の微細加工装置またはチップを説明する透視図である。チップ100は、上部表面102に射出成形特性を持つ顕微鏡スライド形式で形成された基盤を含む。この特性には、4つの離れたマイクロウェルアレイ(またはマイクロアレイ)104並びにエジェクターマーク106を含む。各マイクロアレイのマイクロウェル113(格子間隙114で隔てられている)は格子状パターンで配列し、チップ100の縁の周りおよびマイクロアレイ104の間にはウェルのない縁がある。
【0022】
図2A-2Cはそれぞれ、いくつかの実施形態に記載のチップ100の寸法を説明する上面図、側面図、端面図である。図2Aでは、チップ100の上部表面は、約25.5mm×75.5mmである。図2Bでは、チップ100の端面は約25.5mm×0.8mmである。図2Cでは、チップ100の側面は約75.5mm×0.8mmである。
【0023】
微細加工装置にサンプルが投入された後、膜が微細加工装置の少なくとも一部に被せられる。図3Aは微細加工装置300の分解組立図で、いくつかの実施形態に記載の図3Bの上部表面から見て示したものである。装置300は例えば、土壌細菌またはヒト微生物叢を容れるウェルのアレイ302を持つチップを含む。膜304はウェルのアレイ302の上部表面に置かれる。ガスケット306は膜304の上に置かれる。充填孔310を有するカバー308は、ガスケット306の上に置かれる。最後にシーリングテープ312がカバー308に被せられる。
【0024】
膜は、一つまたはそれ以上の実験単位またはマイクロウェルを含め、微細加工装置の少なくとも一部をカバーすることができる。例えば、微細加工装置にサンプルが投入された後、少なくとも一枚の膜が、高密度マイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルに被せられる。複数の膜が微細加工装置の複数部分に被せられることができる。例えば、別々の膜が、マイクロウェルの高密度アレイの別々のサブセクションに被せられることができる。
【0025】
膜は微細加工装置に結合、付着、部分的に付着、貼付、密封、および/または部分的に密封されマイクロウェルの高密度アレイの少なくとも一つのマイクロウェルの少なくとも一つの生物学的存在を保持することができる。例えば、膜はラミネート加工を用い、微細加工装置に可逆的に貼付できる。マイクロウェルの高密度アレイの少なくとも一つのマイクロウェルの中の少なくとも一つの生物学的存在にアクセスするために、膜は、穴を開け、剥がし、取り外し、部分的に取り外し、除去し、および/または部分的に除去することができる。
【0026】
少なくとも一つの実験単位、ウェル、またはマイクロウェルの細胞集団の一部は、膜に付着することができる(例えば、吸着を介して)。もしそうなら、少なくとも一つの実験単位、ウェル、またはマイクロウェルの細胞集団のその一部は膜に付着したままであるため、少なくとも一つの実験単位、ウェル、またはマイクロウェルの細胞集団は膜を剥がすことにより採取することができる。
【0027】
膜は不透過性、半透過性、選択的透過性、特異的透過性、および/または部分的透過性であり得、少なくとも一つの栄養素をマイクロウェルの高密度アレイの少なくとも一つのマイクロウェルへ拡散させることができる。例えば、膜は、天然素材および/または合成素材を含むことができる。膜は、ヒドロゲル層および/または濾紙を含むことができる。いくつかの実施形態において、マイクロウェルに少なくともいくつか、またはすべての細胞を保持するのに十分小さい細孔径を持つ膜が選択される。哺乳類細胞の場合、細孔径は数ミクロンで、まだ細胞を保持できる場合がある。しかし、いくつかの実施形態において、細孔径は、0.2μm以下、例えば、0.1μmの場合がある。膜は、決まった細孔径のある場合も、ない場合もある複雑な構造を有する場合があることは理解されている。
【0028】
本発明の一つの態様において、複数のマイクロウェルを含む上部表面を有する微細加工チップを用いてサンプル中の蛍光性細胞を同定する方法が提供される。この方法には、次が含まれる。(a)サンプルの少なくとも一つの細胞を、複数のマイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルに投入すること。(b)微細加工チップをインキュベーション(細胞のタイプおよび成長条件等に適合した、適切な温度および適切な期間で)して少なくとも一つのマイクロウェルの少なくとも一つの細胞から細胞集団を増殖させること。(c)微細加工チップの画像を分析することにより、少なくとも一つのマイクロウェルの示す蛍光を検出し、これによりサンプル内の興味の対象となっている蛍光性細胞の存在を決定すること。
【0029】
いくつかの実施形態において、投入することは、サンプル中の複数の細胞を複数のマイクロウェルに投入し、複数のマイクロウェルの少なくともいくつかのそれぞれが一つの細胞を含むようにし、その複数のマイクロウェルには、2つ以上の細胞を含むものがない、または統計的に有意でないパーセンテージのみであるようにすることを含む。「統計的に有意でない」とは、マイクロウェルが2つ以上の細胞を含む可能性が0.1パーセント未満であり、0.01パーセント未満であることが望ましく、0.01パーセント未満であることがより望ましい。このようにして、単一マイクロウェル内で増殖する細胞集団が単一株または種であるようにすることができ、下流の純粋単離株回収と分析が容易になる。
【0030】
いくつかの実施形態において、複数のマイクロウェルの少なくとも一つのマイクロウェルには、細胞の代謝活性を示すレザズリンのような代謝指示薬も投入することができる。この投入は、細胞の投入に先立ち、同時に、または後に実行することができる。代謝指示薬は、細胞の代謝活性、例えば細胞の成長や増殖により影響されることができる蛍光特性を有する場合がある。例えば、一般的に使用される蛍光性色素であるレザズリンが使用されることができる。レザズリンの蛍光は、生細胞成長環境では減弱し、青/紫からピンク色に変化することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、マイクロウェルの蛍光を検出することは、代謝指示薬の蛍光と細胞集団の蛍光を同時に別々の蛍光検出チャンネルで検出することを含む。検出は、同時に異なるチャンネルで行われる場合がある。
【0032】
本明細書において、細胞集団の検出された蛍光は、興味の対象である蛍光性細胞(天然に存在する蛍光性細胞、または蛍光特性を有する遺伝子組み換え細胞)の固有の蛍光を反映し、これがマイクロウェルの中の細胞が成長・増数する時、天然の蛍光を増強する。(マイクロウェルで細胞が成長・増殖すると自然に増強される)いくつかの実施形態において、マイクロウェルに含まれる細胞集団の蛍光が検出されると、少なくとも一つのマイクロウェルにおける細胞集団からの少なくとも一つの細胞を、例えば培地を含む96ウェルプレートといった標的位置に、更なる培養、増殖、分析などのため移動することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、投入の後、インキュベーションの前に、少なくとも一つのマイクロウェルに一つの細胞を保持するために膜が貼付される。
【0034】
少なくとも一つの細胞は、細胞、細菌細胞、古細菌細胞、または真核細胞を含むことができる。
【0035】
一つの例において、本明細書におけるスクリーニング方法は、Applicant’s Prospectorシステムを使用するが、これはハイスループット単離、培養およびスクリーニングシステムであり、本明細書に記載の微細加工チップを使い、自動ワークフローを利用して、別々のマイクロウェルで並行して複雑なサンプルからの数百から数千の微生物の培養を行う。このシステムは統合内蔵光学系を有し、この光学系は励起波長を発し、赤(635nm)、緑(532nm)そして青(488nm)チャンネルで蛍光画像を捕捉できる。この光学系は、青色から紫外線領域の光に曝露された時、蛍光を示すGFPを発現する細菌を検出するために使用することができる。
【実施例
【0036】
E.coli ATCC25922およびE.coli ATCC25922GFPの混合集団(American Type Culture Collection,Manassas,Virginia,USA)が作成された。ATCC 25922GFPはATCC25922から由来し、Placプロモーターの制御下で発現されるGFPmut3をコードする多コピーベクター、グラム陰性細菌の蛍光標識のために設計された構築物を含む。
【0037】
これら2つのE.coli株の液体培養を、別々に室温でLB細菌増殖培地にて一晩行った。次いで培養物を50/50に混合、LB培地で1:100,000に希釈し、最終濃度が100μMとなるようレザズリン指示薬を添加し、微細加工チップの6109のマイクロウェルに投入し、平均して各マイクロウェルに0.4細胞未満が投入されるようにした。希釈倍率とマイクロウェル投入技術を調整し、少なくともいくつかのマイクロウェルがそれぞれただ一つの細胞を投入され、2つ以上の細胞を投入されるマイクロウェルが無い(もしくは、マイクロウェルが2つ以上の細胞を投入されることは、極めて可能性が低い)ようにすることが可能である。微細加工チップは、室温で24時間インキュベーションした。約1600の陽性マイクロウェルが、以下の分析に使用された微細加工装置のレザズリンの色の変化により検出され、これは、微細加工チップの6109のマイクロウェルの4分の1以上において微生物増殖が検出されたことを意味する。
【0038】
微細加工チップを室温で24時間インキュベーション後、各蛍光チャンネルで撮像し、青色蛍光と赤色蛍光を比較する散布図(図4)を生成した。散布図の各点は、微細加工チップのマイクロウェル1つを表している。細菌増殖のあるすべてのマイクロウェルは低赤色蛍光であるが、これは赤色チャンネルで検出されたレザズリンは代謝により緑色チャンネルで蛍光を発するレゾルフィンとなるためである。GFP E.coliを含むマイクロウェルのみが高青色蛍光となるであろう。微生物増殖の2つの明瞭な点群が散布図(図4)に明らかであり、GFP発現想定E.coliの低赤/高青点群と野生型想定E.coliの低赤/低青点群を表している。高赤/低青点群(丸点)は、微生物増殖のないマイクロウェルを示す。
【0039】
一群のマイクロウェルを選んでLBを含む96ウェルプレートに移し、Prospector光学系で検出された陽性の青と緑の点群が本当にそれぞれGFP発現E.coliおよび野生型E.coliを表していることを検証した。GFP発現を伴う微生物増殖を示す合計48のマイクロウェルが低赤/高青蛍光を発するウェル(図4、青点)の点群から無作為に選択され、野生型微生物増殖、すなわちGFP発現のない微生物増殖を示す44のマイクロウェルが低赤/低青蛍光ウェル(図4、緑点)の点群から無作為に選ばれた。96ウェルプレートの4ウェルはLBのみを含む陰性対照として使用された。
【0040】
96ウェル移動プレートを24時間30℃でインキュベーションした後、488nmで励起、526nmで蛍光プレートリーダーで測定した。4つの陰性対照ウェルの平均値に対する蛍光の倍率変化を野生型E.coliおよびGFP発現E.coli間で比較した(表1)。結果は移動に関してGFPウェル選択および非GFPウェル選択における精度が100%であること、どの場合も回収されたものが意図した標的であったことを示す。
【表1】
【0041】
表1に示され、箱ひげ図(図5)で図示されているGFP E.coliを含むウェル全体に渡る倍率変化がより広い範囲に渡っていることは、GFP発現の自然の変化によるものの可能性が高い。この測定は、Prospectorの画像システムが、微細加工チップのGFP標識細菌を野生型細菌から明瞭に区別できること、およびこれらの単離株の移動が成功したことを示す。これらの結果は、開示された方法が、実行可能な培養において、GFP発現細菌のスクリーニングを行う能力があることを証明するものである。
【0042】
特定の実施形態において示されるように、大まかに説明されている発明の精神または範囲から逸脱することなく、数多くのバリエーションおよび/または修飾を発明に加えることができるということが、当業者には認識されよう。従って、本実施形態は、すべての面において例示的なものであり、制限的なものではないとみなされるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】