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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電磁鋼板積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240130BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240130BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240130BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240130BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240130BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240130BHJP
   H01F 1/18 20060101ALI20240130BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B15/08 G
H02K1/18 B
C21D9/46 501B
B05D7/14 H
B32B7/12
B05D1/28
H01F1/18
B05D3/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537541
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2021019436
(87)【国際公開番号】W WO2022139383
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180179
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハ, ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, テヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ギョンリョル
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4K033
5E041
5H601
【Fターム(参考)】
4D075AC21
4D075BB26Z
4D075DA06
4D075DB03
4D075EA35
4D075EB33
4D075EC02
4F100AA20C
4F100AA21C
4F100AA25C
4F100AB16A
4F100AB16B
4F100AK01C
4F100AK53C
4F100BA03
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JK06
4F100JL11C
4F100YY00C
4K033RA02
4K033RA03
4K033TA03
5E041BC05
5E041BD09
5E041CA02
5E041CA04
5E041HB14
5H601AA09
5H601FF01
5H601FF03
5H601FF10
5H601FF12
5H601FF15
5H601GC01
5H601HH21
5H601KK08
5H601KK10
5H601KK21
(57)【要約】
【課題】溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる高分子接着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
複数の電磁鋼板と、前記電磁鋼板の間に位置する高分子接着層と、を含む積層体であって、前記高分子接着層のコーティングの厚さは、1.8ないし5.4μmであり、前記積層体の占積率が95.8ないし98.5%であり、下記数学式1を満たすものであり、
[数学式1]
172.4≦占積率(%)×厚さ(μm)≦531
下記数学式2を満たすことを特徴とする。
[数学式2]
40≦せん断接着強度(MPa)×高温接着強度(MPa)≦130
(但し、高温接着強度は、150℃の条件で、ISO 4587規格で測定した値である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板と、
前記電磁鋼板の間に位置する高分子接着層と、を含む積層体であり、
前記高分子接着層のコーティングの厚さは、1.8ないし5.4μmであり、
前記積層体の占積率が95.8ないし98.5%であり、
下記数学式1を満たすものであることを特徴とする電磁鋼板積層体。
[数学式1]
172.4≦占積率(%)×厚さ(μm)≦531
【請求項2】
下記数学式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
[数学式2]
40≦せん断接着強度(MPa)×高温接着強度(MPa)≦130
(但し、高温接着強度は、150℃の条件で、ISO 4587規格で測定した値である。)
【請求項3】
前記積層体のせん断接着強度は、4.8ないし17.9MPaであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項4】
前記積層体の高温接着強度は、5ないし7.2MPaであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項5】
前記積層体内の高分子接着層の表面絶縁抵抗は、90ないし160Ωであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項6】
前記積層体内の高分子接着層内の無機物の含有量は、5ないし30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項7】
前記積層体内の高分子接着層の耐スティッキング性温度は、110ないし195℃であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項8】
前記積層体の耐ATF性温度は、150ないし190℃であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項9】
前記積層体の引張接着強度は、1.2ないし13N/mmであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項10】
固形分で、樹脂70ないし95重量%、およびSiO、TiO、ZnOのうち1種以上の無機物ナノ粒子5ないし30重量%含むコーティング組成物を鋼板に塗布し、熱処理して硬化し、コーティング組成物の塗布時にロールコータおよび鋼板の圧力を50ないし1500kgfに調節して電磁鋼板上に高分子接着層を形成するステップと、
前記高分子接着層が形成された電磁鋼板を積層するステップと、を含むことを特徴とする電磁鋼板積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板積層体に係り、より詳しくは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる高分子接着層を形成した電磁鋼板積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、圧延板上のすべての方向に磁気的特性が均一な鋼板であって、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに幅広く用いられている。
電磁鋼板は、打抜加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きい場合、応力除去焼鈍を省略するもの、2つの形態に区分される。
絶縁被膜は、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などの積層体の仕上げ製造工程でコーティングされる被膜であって、通常、渦電流の発生を抑制させる電気的特性が要求される。その他にも、連続打抜加工性、耐粘着性および表面密着性などが要求される。連続打抜加工性とは、所定の形状に打抜加工後、複数を積層して鉄心に作るとき、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。
耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後に鉄心鋼板間の密着しない能力を意味する。
このような基本的な特性の他に、コーティング溶液の優れた塗布作業性と配合後に長時間使用可能な溶液安定性なども要求される。このような絶縁被膜は、溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を用いてこそ、電磁鋼板積層体に製造することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が目的とするところは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる高分子接着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板と、前記電磁鋼板の間に位置する高分子接着層と、を含む積層体であり、前記高分子接着層のコーティングの厚さは、1.8ないし5.4μmであり、前記積層体の占積率が95.8ないし98.5%であり、下記数学式1を満たすことを特徴とする。
[数学式1]
172.4≦占積率(%)×厚さ(μm)≦531
前記積層体は、下記数学式2を満たすことができる。
[数学式2]
40≦せん断接着強度(MPa)×高温接着強度(MPa)≦130
(但し、高温接着強度は、150℃の条件で、ISO 4587規格で測定した値である。)
【0005】
前記積層体のせん断接着強度は、4.8ないし17.9MPaであってもよい。
前記積層体の高温接着強度は、5ないし7.2MPaであってもよい。
前記積層体内の高分子接着層の表面絶縁抵抗は、90ないし160Ωであってもよい。
前記積層体内の高分子接着層内の無機物の含有量は、5ないし30重量%であってもよい。
前記積層体内の高分子接着層の耐スティッキング性温度は、110ないし195℃であってもよい。
前記積層体の耐ATF性温度は、150ないし190℃であってもよい。
前記積層体の引張接着強度は、1.2ないし13N/mmであってもよい。
【0006】
本発明の電磁鋼板積層体の製造方法は、固形分で、樹脂70ないし95重量%、およびSiO、TiO、ZnOのうち1種以上の無機物ナノ粒子5ないし30重量%含むコーティング組成物を鋼板に塗布し、熱処理して硬化し、コーティング組成物の塗布時にバーコータおよびロールコータおよび鋼板の圧力を50ないし1500kgfに調節して電磁鋼板上に高分子接着層を形成するステップと、前記高分子接着層が形成された電磁鋼板を積層するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着することができ、電磁鋼板積層体の磁性にさらに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電磁鋼板積層体の模式図である。
図2】本発明の電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は、後述する請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
本発明では、電磁鋼板積層体を提供する。
本発明に係る電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板と、複数の電磁鋼板の間に位置する高分子接着層と、を含む。図1には、本発明の電磁鋼板積層体の模式図を示す。図1に示しているように、複数の電磁鋼板が積層されている形態である。
【0010】
図2には、本発明の電磁鋼板積層体の断面の概略図を示す。図2に示しているように、本発明の電磁鋼板積層体100は、複数の電磁鋼板10と、複数の電磁鋼板の間に位置する高分子接着層30と、を含む。
本発明の電磁鋼板積層体は、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の方法を用いず、単に前述の接着コーティング組成物を用いて高分子接着層を形成することによって、互いに異なる電磁鋼板を熱融着させた積層体であってもよい。
このとき、電磁鋼板積層体は、熱融着した後にも、高温接着性および高温耐油性に優れた特性がある。
【0011】
以下では、各構成別に詳しく説明する。
電磁鋼板10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく用いることができる。本発明では、複数の電磁鋼板10の間に高分子接着層30を形成し、電磁鋼板積層体100を製造することが主要構成であるので、電磁鋼板10に対する具体的な説明は省略する。
高分子接着層30は、複数の電磁鋼板10の間に形成され、複数の電磁鋼板10を、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いずに接着できる程度に接着力が強い。
高分子接着層30は、接着コーティング組成物を表面にコーティングし、硬化して接着コーティング層を形成し、これを積層して熱融着して高分子接着層30を形成する。
接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板10を積層して熱融着すると、接着コーティング層内の樹脂成分が熱融着するようになり、高分子接着層を形成するようになる。
【0012】
このような高分子接着層は、有機物の主成分に無機金属化合物が含まれている。高分子接着層内で、有機物内に無機物成分が均一に分散して微細相を形成することができる。
より具体的に、電磁鋼板積層体は、高分子接着層のコーティングの厚さは、1.8ないし5.4μmであり、前記積層体の占積率が95.8ないし98.5%であり、下記数学式1を満たすことができる。
[数学式1]
172.4≦占積率(%)×厚さ(μm)≦531.0
素材の厚さが同一であるという仮定下で、コーティングの厚さが高くなると、占積率が低くなることが一般的であり、これによる表面絶縁抵抗も高くなる。しかし、コーティングの厚さによる占積率の下向きが線状変化ではないので、最適の範囲で調節することは、現在市場の要求事項に必須の部分である。さらに具体的に数学式1の値は390ないし450であってもよい。
【0013】
より具体的に前記積層体は、下記数学式2を満たすことができる。
[数学式2]
40≦せん断接着強度(MPa)×高温接着強度(MPa)≦130
(但し、高温接着強度は、150℃の条件で、ISO 4587規格で測定した値である。)
せん断接着強度と高温接着強度とは、無機物の含有量および高分子の組成によって同時に向上し難い特性である。せん断接着強度は、ボンディング溶液に高分子樹脂の含有量が多いほど、無機物の含有量が少ないほど良くなるのに対し、高温接着強度は、ボンディング溶液の樹脂の含有量が少ないほど、無機物の含有量が多いほど良くなる。しかし、ボンディング溶液の樹脂および無機物の含有量によってせん断接着強度および高温接着強度は、線形的な反比例の関係にあるのではないので、最適の範囲で調節することは、現在市場の要求事項に必須の部分である。二律背反的に見える、このようなファクターを調節して市場のニーズに合わせて調節することができる。さらに具体的に数学式2の値は80ないし130であってもよい。
【0014】
このような要素等を満たすことができるように積層体を構成すると、現在、EV市長で要求される多様な特性をいずれも満たすことができる積層体(コア)が得られる。
前記要素等は、固形分で、樹脂70ないし95重量%、およびSiO、TiO、ZnOのうち1種以上の無機物ナノ粒子5ないし30重量%含むコーティング組成物を鋼板に塗布し、熱処理して硬化し、コーティング組成物の塗布時にロールコータおよび鋼板の圧力を50ないし1500kgfに調節して得られる。さらに具体的に100ないし1200kgfに調節して得られる。
SiOの平均粒径は、10ないし30nm、TiOの平均粒径は、30ないし50nm、ZnOの平均粒径は、70ないし100nmであってもよい。
樹脂は、エポキシ系樹脂であり、重量平均分子量は、8,000ないし15,000g/molであり、ガラス転移温度は、70ないし90℃であってもよい。
【0015】
以下、それぞれの要素について、具体的に検討する。
コーティングの厚さ
セルフボンディング製品のコーティングの厚さは、1.8以上5.4μm以下である。コーティングの厚さが1.8μm以下の場合、接着強度に劣ることがあり、高い周波数領域で絶縁破壊が発生することがある。これに対し、コーティングの厚さが厚すぎる場合、モータコア占積率(Stacking factor)に劣ることがある。より具体的な範囲は、4.0ないし4.5μmであってもよい。
より具体的に、コーティングの厚さが1.8μm未満であると、モータが高速回転する時に一枚のコア間の絶縁破壊現象が発生してモータ効率が低下する。また、コーティングの厚さが5.4μm以上であり、コーティング層の厚さが過度に高くなり、モータコアの組立過程でボンディング層が側面から流れ出る現象が発生するだけでなく、モータコアの占積率が低下することがある。
【0016】
コーティングの厚さは、ボンディング溶液物性(比重、粘度、固形分)で制御することができる。ボンディング溶液の比重1.05ないし1.4、粘度(cps)5ないし100、または、固形分(wt.%)5ないし50を含む場合、前記範囲のコーティングの厚さを満たすことができる。
コーティングの厚さは、赤外線分光分析法(FT-IR、Fourier Transform Infra-Red Spectroscopy)コーティング厚さ測定器によって測定した。赤外線分光分析法は、分子が固有の振動数に該当する周波数を吸収する性質を用いた分析法で、赤外線を物質に反射させて探知される波長のスペクトルを読む原理である。
【0017】
占積率
セルフボンディング製品の占積率(Stacking factor)は、素材の厚さ0.27mmtを基準に95.8ないし98.5%である。モータコアの締結強度、製造不良率、モータ効率および絶縁破壊を勘案して、このような範囲で調節することができる。
占積率が95.8%以下の場合、コーティングの厚さが厚いためモータ効率に劣るだけでなく、モータコアの製造過程でボンディング溶液が漏れ出る不良が発生することがある。これに対し、占積率が98.5%以上の場合、コーティングの厚さが薄すぎて締結強度に劣るだけでなく、一枚のコア間の絶縁破壊現象が発生することがある。
占積率は、無方向性電磁鋼板の表面に塗布されたコーティングの厚さで制御することができる。
占積率は、電磁鋼板から切断されたストリップで構成された試料の積層係数を測定して%と表現する[{圧力:1N/10.2kgf/cm}/{Stacking factor(%)=実際重量/計算された重量(幅×の長さ×密度×高さ)×100}]。
【0018】
せん断(Shear)接着強度
セルフボンディング製品のせん断(Shear)接着強度は、4.8ないし17.9MPaである。セルフボンディング製品の180℃でのせん断接着強度は、モータ組立過程で熱衝撃による組立不良を防止するために、好ましくは14.9MPa以上17.9MPa以下である。
せん断接着強度は、前記範囲より低いと、モータコアの製造時にコアの側面およびスロット(Slot)部に接着が行われていないため、モータ組立過程で不良が発生するだけでなく、モータの騒音/振動が増加することになる。
これに対し、せん断接着強度が前記範囲を超える場合、接着強度が高すぎて金型内で融着する場合、コアの分離が容易でなく生産性を低下することになる。
せん断接着強度を制御するために、高分子樹脂に含まれた無機物の含有量で制御することができる。全体重量%を基準に、0.1ないし60重量%の無機物を含む場合、前記範囲のせん断接着強度を満たすことができる。このとき、より好ましい無機物の含有量は、5ないし30重量%であってもよい。
このとき、用いる無機物の種類は、ナノサイズのシリカ粒子および金属リン酸塩の単独または二つの無機物の混合物である。
せん断接着強度は、せん断測定器を用いて測定した値にした。試片(厚さ0.27mmt、大きさ100×25mm)を二枚準備して試片の両端部12.5mmを重ねた後、一定の条件(温度220度、加圧3MPa、時間30分)下で融着した後、ISO 4587規格によって測定した値である。
【0019】
高温接着強度(150℃以上)
高温接着強度(150℃以上)は、180℃を基準にせん断(Shear)接着強度が5以上7.2MPa以下である。
高温接着強度(150℃以上)が180℃を基準に5MPa以下であると、ボンディングコアの製作時の締結力に劣るだけでなく、耐ATF性に劣ることがある。これに対し、高温接着強度が7.2MPa以上の場合、高い高温接着強度のために、高い温度で熱融着する必要があるので、ボンディングコアの製作時の作業性に劣ることがある。
高温接着強度は、高分子鎖の種類とコーティング硬化温度(Curing temp.)によって制御することができる。ボンディング溶液100重量%を基準に網状型または架橋型高分子鎖の比率が50ないし99重量%であり、硬化温度が150ないし300℃であるとき、前記範囲の高温接着強度を満たすことができる。
高温接着強度は、万能材料試験器(Universal Testing Systems)を用いて測定した値にした。試片(厚さ0.27mmt、大きさ100×25mm)を二枚準備して試片の両端部12.5mmを重ねて熱融着してせん断接着強度測定用Sampleを準備した後、準備されたSampleを150℃以上で1分間維持した後、ISO 4587規格によって測定した値である。
【0020】
表面絶縁抵抗
セルフボンディング製品の表面絶縁抵抗(Insulation resistance)は、90ないし160Ω・mm/lam.)以下である。高い絶縁抵抗の確保のために、コーティングの厚さが厚すぎる場合、モータコア占積率(Stacking factor)に劣ることがある。コーティングの厚さが薄すぎる場合、高周波領域で作動する駆動モータの場合、一枚のコア間の絶縁破壊現象が発生してモータ効率の低下が発生することがある。
表面絶縁抵抗が90Ω・mm/lam.未満であると、モータが高速回転する時に一枚のコア間の絶縁破壊現象が発生してモータ効率が低下することがある。また、表面絶縁抵抗が160Ω・mm/lam.以上であると、コーティング層の厚さが過度に高くなり、モータコアの組立過程で不良が発生するだけでなく、モータコアの占積率が低下することがある。
【0021】
表面絶縁抵抗は、セルフボンディング製品の一面に塗布されたコーティングの厚さおよびコーティング層内に入っている無機物の含有量で制御することができる。一面に塗布されたコーティングの厚さが1.0ないし6.0μmの場合、前記範囲の表面絶縁抵抗を満たすことができる。
また、コーティングの厚さを1.8ないし5.4μmで限定した場合、全体重量%を基準に無機物の含有量が5ないし30重量%の無機物を含む場合、前記範囲の表面絶縁抵抗を満たすことができる。
このとき、用いる無機物の種類は、ナノサイズのシリカ粒子および金属リン酸塩の単独または二つの無機物の混合物である。
表面絶縁抵抗は、Franklin Insulation Testerによって測定された電流値を数式(Ri(絶縁抵抗)=645(1/I(電流mA))-1Ω・mm/lam.)によって切換えた抵抗値である。この測定器は、単板試験法装置であって、一定の圧力および一定の電圧下で電磁鋼板の表面絶縁抵抗を測定する装置(ASTMA717)で、電流の範囲は0~1.000Ampであり、一定の加圧(20.4atm)下で測定する。
【0022】
耐スティッキー性温度
セルフボンディング製品の耐スティッキー(Anti-Sticky)性温度は、110ないし195℃である。
耐スティッキング性(Anti-Sticky性)温度が110℃未満であると、コイルの巻取り時にボンディング層同士くっ付いてスリッティング性、打抜性およびボンディングコアの形状品質に劣ることがあり、これに対し、耐スティッキー性温度が195℃超過であると、ボンディングコアの製作時に熱融着温度が高すぎてモータコアの生産性に劣ることがある。
耐スティッキー性温度は、ボンディング溶液のガラス転移温度(Tg)によって制御することができる。ガラス転移温度(Tg)が-50ないし100℃であるとき、前記範囲の耐スティッキー性温度を満たすことができる。
耐スティッキング性(Anti-Sticky性)温度は、0.27mmtの素材であり、100mm×100mm×10mmに積層した素材を3MPa下で30分間加圧した後、試片が互いにくっ付く温度と表現した。
【0023】
耐ATF(Automatic Transmission Fluid)温度
耐ATF性温度は、150ないし190℃である。モータが実際にATF Oilの直/ 間接な接触によって冷却されることを勘案して調節することができる。
耐ATF性温度が150℃未満であると、ATFオイルによってモータコアの締結強度に劣り、窮極的にモータの騒音/振動が増加するだけでなく、効率も低下することがある。
これに対し、190℃超過であると、ATFオイルが劣化するだけでなく、高いATF温度によってロータ(Rotor)コアに取り付けられたマグネット(Magnetic)の温度上昇による減磁現象で、モータ効率が低下することがある。
耐ATF性温度は、ボンディング溶液のガラス転移温度(Tg)によって制御することができる。ガラス転移温度(Tg)が-50ないし100℃であるとき、前記範囲の耐ATF性温度を満たすことができる。
耐ATF性温度は、ボンディングされた試片を180℃および500時間の間ATF Oilに浸漬した後、締結強度が低下しない温度と示した。試片は、ISO 4587規格に合わせて製作および締結強度が測定された。
【0024】
引張(Tensile)接着強度
一枚のボンディング層の引張(Tensile)接着強度は、常温を基準に1.2以上13N/mm以下である。
製品の引張接着強度が、常温を基準に1.2N/mm未満であると、ボンディングコアの製作時の締結力に劣ることがあり、これに対し、引張強度が13N/mm以上の場合、引張強度が強すぎてボンディングコアの製作時の作業性に劣ることがある。
引張接着強度を制御するために、ボンディングコア融着温度によって制御することができる。ボンディングコアの製作時に熱融着温度が100℃ないし250℃前記範囲の引張強度を満たすことができる。このとき、必要な熱融着圧力は、1.0ないし5N/mmである。
引張強度は、50mm×50mm×10mmであり、前記で提示した100℃ないし250℃で熱融着した後、常温で引張測定器によって測定された値にした。
【0025】
打抜性
セルフボンディング製品の打抜性(Punchability)は、300万打以上500万打以下である。
打抜性(Punchability)が300万打未満であると、金型製造単価が上昇するようになり、これに対し、打抜性が500万打以上であると、金型の摩耗度の増加によるモータコアバー(Burr)の高さが上昇してモータコアの形状不良が発生することがある。
打抜性をセルフボンディング製品のコーティングの厚さおよびコーティング層内の無機物の含有量によって制御することができる。
打抜性は、0.27mmtのセルフボンディング製品であり、電磁鋼板専用金型器で評価した。打抜評価条件は、クリアランス8%であり、SPM(Spot Per Minute)350で1日を基準に8時間作業した。
【0026】
硬化温度
セルフボンディング製品の硬化温度は、100以上300℃以下である。コーティング作業時耐のスティッキー性および現場作業性を勘案して、好ましくは150以上250℃以下である。
セルフボンディング製品の硬化温度が100℃未満であると、In-lineコーティング作業後、コイルの巻取時にボンディング層同士くっ付く現象が発生することがある。これに対し、硬化温度が250℃以上であると、ボンディング層が劣化またはハードして締結力に劣ることがある。
硬化温度を制御するために、ボンディング溶液に添加する硬化剤の量を制御することができる。全体重量%を基準に、0.01ないし10重量%の硬化剤を含む場合、前記範囲の硬化温度を満たすことができる。
セルフボンディング製品の硬化温度は、素材の板温(PMT:Pick Metal Temperature)を非接触TC(Thermocouple)によって測定した。
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であるだけで、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
[実験例1]
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として準備した。接着コーティング溶液をBar CoaterおよびRoll Coater用いて、各準備された供試片に上部と下部に一定の厚さ(約5.0μm)で塗布して板温を基準に220℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させて、接着コーティング層を形成した。塗布時にRoll Coaterおよび鋼板の圧力を1000kgfに調節した。
接着コーティング層がコーティングされた電磁鋼板を高さ20mmに積層した後、0.1MPaの力で加圧して120℃、10分間熱融着した。熱融着層の成分および熱融着された電磁鋼板の多様な特性を、下記表1ないし3にまとめた。
このとき、用いたコーティング溶液の組成は、次のとおりである。用いた無機物の含有量は、下記表のように調節されてテストした。
【0028】
適用されたボンディング溶液の成分は、下記に表記した。本発明に用いられた樹脂は、エポキシ系樹脂であり、重量平均分子量が10,000g/molであり、ガラス転移温度が80℃である。また、無機物は、SiO、TiO、ZnOの単独または2種以上混合して用い、無機物ナノ粒子大きさは、それぞれSiOが15nm、TiOが40nm、ZnOが80nmである。樹脂および無機物の重量%は溶液に含まれている水またはSolventを除いた固形分重量%である。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
比較例2および比較例3の場合、無機物の含有量が多く、コーティングの厚さが薄いにもかかわらず、占積率が低く、また高い無機物の含有量と低いコーティングの厚さでせん断および高温接着強度に劣るだけでなく、打抜性にも劣る。また、比較例4は、コーティングの厚さが厚すぎて、占積率に劣るだけでなく、高温接着強度および耐スティッキー性温度が高いため、発明としては不適切であると判断できる。
また、比較例1の場合、コーティングの厚さおよび占積率が好ましい範囲に属するにもかかわらず、[数学式1]の占積率(%)×厚さ(μm)の範囲を満たさないため、高温接着強度に劣り、表面絶縁抵抗に劣り、引張強度にも劣る特性を示した。これにより、コーティングの厚さおよび占積率がそれぞれ独立して制御されるべき要素ではなく、コーティングの厚さによる占積率の下向きが線状変化ではないので、[数学式1]の関係を満たしてこと、優れた積層体が得られることが分かる。
【0032】
<総合評価>
(総合評価の主要基準:せん断(Shear)接着強度×高温接着強度×表面絶縁抵抗×コーティングの厚さ×占積率)
表1および表2に示しているように、実施例1ないし4に関連するセルフボンディング製品およびボンディング層は、いずれも比較例に関連するセルフボンディング製品およびボンディング層に比べてせん断および引張接着強度が大きく、高温接着強度、抵抗がいずれも適切な範囲を満たし、総合評価が全て「A」であった。
比較例1ないし4の場合、実際のモータ製品に適用されるにはせん断(Shear)接着強度、高温接着強度、表面絶縁抵抗、コーティングの厚さおよび占積率のうちの2つ以上の特性を満たしておらず、総合評価も「B」となり、劣っていることが分かった。
【0033】
[実験例2]
実験例1と同様に実施するが、コーティング溶液組成を下記表3のように用いて、コーティング溶液の塗布時にRoll Coaterおよび鋼板の圧力を、下記表3のように調節した。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
実施例の場合、すべての特性に優れていることが確認できる。これに対し、比較例5ないし8の場合、実際のモータ製品に適用されるにはせん断(Shear)接着強度、高温接着強度、表面絶縁抵抗、コーティングの厚さおよび占積率のうちの2つ以上の特性を満たしておらず、総合評価も「B」となり、劣っていることが分かった。
【0037】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることが理解できるであろう。したがって、以上で述べた一実施例等はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0038】
10 電磁鋼板
30 セルフボンディング層
100 電磁鋼板積層体
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板と、
前記電磁鋼板の間に位置する高分子接着層と、を含む積層体であり、
前記高分子接着層のコーティングの厚さは、1.8ないし5.4μmであり、
前記積層体の占積率が95.8ないし98.5%であり、
下記数学式1を満たすものであることを特徴とする電磁鋼板積層体。
[数学式1]
172.4≦占積率(%)×厚さ(μm)≦531
【請求項2】
下記数学式2を満たすものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
[数学式2]
40≦せん断接着強度(MPa)×高温接着強度(MPa)≦130
(但し、高温接着強度は、150℃の条件で、ISO 4587規格で測定した値である。)
【請求項3】
前記積層体のせん断接着強度は、4.8ないし17.9MPaのものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項4】
前記積層体の高温接着強度は、5ないし7.2MPaのものであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項5】
前記積層体内の高分子接着層の表面絶縁抵抗は、90ないし160Ωのものであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項6】
前記積層体内の高分子接着層内の無機物の含有量は、5ないし30重量%のものであることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項7】
前記積層体内の高分子接着層の耐スティッキング性温度は、110ないし195℃のものであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項8】
前記積層体の耐ATF性温度は、150ないし190℃のものであることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項9】
前記積層体の引張接着強度は、1.2ないし13N/mmのものであることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項10】
固形分で、樹脂70ないし95重量%、およびSiO、TiO、ZnOのうち1種以上の無機物ナノ粒子5ないし30重量%含むコーティング組成物を鋼板に塗布し、熱処理して硬化し、コーティング組成物の塗布時にロールコータおよび鋼板の圧力を50ないし1500kgfに調節して電磁鋼板上に高分子接着層を形成するステップと、
前記高分子接着層が形成された電磁鋼板を積層するステップとを含むことを特徴とする電磁鋼板積層体の製造方法。
【国際調査報告】