IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2024-505337イソピペリテノールの不斉合成のための方法
<>
  • 特表-イソピペリテノールの不斉合成のための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】イソピペリテノールの不斉合成のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/56 20060101AFI20240130BHJP
   C07C 35/18 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 35/12 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 37/16 20060101ALI20240130BHJP
   C07B 53/00 20060101ALI20240130BHJP
   C07D 311/80 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 39/23 20060101ALI20240130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C07C29/56 Z
C07C35/18
C07C35/12
C07C37/16
C07B53/00 B
C07D311/80
C07C39/23
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537588
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021087886
(87)【国際公開番号】W WO2022144436
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20217996.6
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.DOWEX
(71)【出願人】
【識別番号】591091515
【氏名又は名称】シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Platz 1, D-45470 Muelheim an der Ruhr, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リスト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】グリム・ジョイス
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ・フイ
(72)【発明者】
【氏名】リュー・ルーピン
(72)【発明者】
【氏名】ツヴェルシュケ・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB14
4H006AB21
4H006AB84
4H006AC11
4H006AC25
4H006AC28
4H006AC41
4H006BA25
4H006BA53
4H006BA67
4H006BB12
4H006BB14
4H006FC22
4H006FC52
4H006FC72
4H006FE10
4H006FG22
4H039CA40
4H039CB10
4H039CH40
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、イソピペリテノールおよび後続化合物の不斉合成のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のイソピペリテノールの不斉合成のための方法であって、
【化1】
ネラール[(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール]およびゲラニアール[(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール]のうちの少なくとも一方を含む基質を、任意選択的に有機溶媒中において、下記式(II)で表される二量体ホスファゼン由来触媒での処理に付し、それによってイソピペリテノールを含有する反応混合物が得られ、
【化2】
前記式において、
- Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、ハロゲン、SF、NO、シアノ、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、脂肪族炭化水素上に1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFもしくはCl、SF、NOまたはシアノを有する)、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、各芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素は、任意選択的に、ハロゲン、SF、NO、シアノ、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、脂肪族炭化水素上に1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOまたはシアノを有する)から選択される1つまたは複数の置換基で置換されており、
- Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてRの意味を有するか、あるいは、同一のアリール環上の2つのRは互いに、芳香族環構造または脂肪族環構造であることができる環を形成してもよく、前記芳香族および/または脂肪族環構造は、1つまたは複数の置換基Rで置換されていてよく、
- XおよびYは、同一であるかまたは異なっており、そして酸素またはNRのいずれかであり、
は、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一であるかまたは異なっており、そして以下から選択され:
i.-アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
ii.-アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン類、アリールアルキルホスホラン類、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
iii.-ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン類、ヘテロアリールアリールホスホラン類、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン類、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここでヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
および
- Wは、水素、ハロゲン、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uから選択される金属、またはカチオン性有機基、置換されたボラン-BRIIIII、または置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、ここで、R、RIIおよびRIIIは、同一であってもまたは異なっていてもよく、それぞれは、水素、ハロゲン、任意選択的に-O-で結合されたC~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、鎖中に1つもしくは複数の不飽和結合または1つもしくは複数のヘテロ原子を有する)、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはそれらの部分的にアレーンが水素化された形態を表し、各炭化水素は、任意選択的に、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素から選択される1つもしくは複数の基、または1つしくは複数のヘテロ置換基で置換されており、Wは好ましくは、水素および置換されたケイ素-SiRIIIII(式中、R、RIIおよびRIIIは上記で定義されるとおりである)から選択される、
前記方法。
【請求項2】
前記の二量体ホスファゼン由来触媒が、下記式(III)によって表される、請求項1に記載の方法:
【化3】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、請求項1で定義したとおりであり、XおよびYは請求項1で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【請求項3】
前記の二量体ホスファゼン由来触媒が、下記式(IVa)によって表される、請求項1に記載の方法:
【化4】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、請求項1で定義したとおりであり、XおよびYは請求項1で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【請求項4】
前記の二量体ホスファゼン由来触媒が、下記式(IVb)によって表される、請求項1に記載の方法:
【化5】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、請求項1で定義したとおりであり、XおよびYは請求項1で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【請求項5】
置換基Rが、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてハロゲン、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素、またはC~C18芳香族炭化水素を表し、前記脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素が、1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NO、または直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素(脂肪族炭化水素上で1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOによって置換されている)で置換されている、請求項2、3または4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)のいずれかにおいて、YがOまたはNRとして定義され、XがNRとして定義され、ここで、Rが、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一であるかまたは異なっており、そして以下から選択され:
i.スルフィニルアルキルまたはスルホニルアルキル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、C~C アルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
ii.スルフィニルアリールまたはスルホニルアリール、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
iii.スルフィニルヘテロアリールまたはスルホニルヘテロアリール、ここでヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;そして
R、RおよびWが、請求項1または請求項5で定義される意味を有する、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記基質が、ネラール(Z:E=>99:1)からゲラニアール(Z:E=<1:99)までの範囲のネラールとゲラニアールとの比を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
得られた反応混合物がさらに水素化処理に付され、それによって、メントール、イソメントール、ネオメントールおよびネオイソメントールの少なくとも1つを含有する反応混合物が得られる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
得られた反応混合物がさらに、ルイス酸またはブレンステッド酸、好ましくは式(II)、(III)または(IV)の触媒の存在下で、オリベトールと反応され、それによってTHCおよび/またはCBDを含有する反応混合物が得られる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
式(V)のネラール誘導体が、
【化6】
請求項1~6のいずれか1つで定義される式の二量体ホスファゼン由来触媒の存在下で環化され、そして反応混合物をさらに、ルイス酸またはブレンステッド酸、好ましくは式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の触媒の存在下で、式(VI)のレゾルシン由来化合物とさらに反応させ、
【化7】
それにより、一般式(VIIa)および(VIIb)のラセミまたは光学活性CBD-および/またはTHC-誘導体を含有する反応混合物が得られ;
【化8】
式中、Rは、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、C~Cアルキル基、特にメチル、-CHOH、または-COORであり、ここでRはHまたはC~Cアルキル基であり;
は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、C~Cアルキル基、特にメチルであるか;あるいは、2つのRまたは2つのRがそれぞれ、互いの間で環を形成してよく、
は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、C~Cアルキル基、特にメチルであるか;あるいは、2つのRまたは2つのRがそれぞれ、互いの間で環を形成してよく、
およびRは、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素または-COORであり、ここでRはHまたはC~Cアルキル基であり;
は、ヒドロキシ、C~C12アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基を表し、任意選択的に、1つまたは複数のヒドロキシル基によってさらに置換されている、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
R、R、Y、XおよびWが請求項1~6のいずれか1つに定義されるとおりである前記の二量体ホスファゼン由来触媒が、任意選択的にリンカーを介して、固体の担体に結合されており;
前記リンカーは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基であり、各炭化水素基は、任意選択的に、1つまたは複数のヘテロ置換基、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基でさらに置換されており、各炭化水素基は、任意選択的に、1つまたは複数のヘテロ置換基で置換されており;および
前記の固体担体は、反応混合物中に不溶性であり、ウール、綿、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコールおよびポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択され、それぞれは任意選択的に、脂肪族炭化水素上に少なくとも1つのハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、ヒドロキシ、スルホニル、アルコキシ、ハロゲン置換アルコキシを、または脂肪族炭化水素鎖中に酸素を有する、
請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1つで定義される式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒が、固体担体と芳香族または脂環式基本骨格との間のリンカーを介して、好ましくは二量体ホスファゼン由来触媒の1つ、2つ、3つまたは全ての芳香族または脂環式基本骨格の6位において、固体担体に結合されており、前記リンカーおよび固体担体は請求項10で定義されるとおりであり;YおよびXは、酸素またはNRとして定義され、Rは請求項1で定義され、RおよびRは請求項1~4のいずれか1つで定義されるとおりである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1つで定義される式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒が、NR置換基と固体担体との間のリンカーを介して固体担体に結合されており、前記リンカーおよび固体担体は請求項10で定義されるとおりであり、式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒において、Yは酸素またはNRであり、XはNRであり、Rは線状または分岐状のアルキル鎖またはポリエーテルアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素を有し、RおよびRは請求項1~4のいずれか1つで定義されるとおりである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソピペリテノールおよび後続化合物の不斉合成のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソピペリテノールは、産業的に重要な物質、例えばメントール、CBD、THCおよび他のレゾルシノール由来天然産物の合成に使用される重要な前駆体化合物である。従来技術におけるメントール立体異性体の工業的合成のための重要な方法の1つは、いわゆるBASF法である。
【0003】
前記のBASFのメントール法は、ゲラニアールまたはネラールから出発する2つの水素化ステップを含む。従って、第1の不斉C=C-結合水素化が、以下のスキームに示すように、シトロネラールのβ位に立体中心を導入するために使用される。ルイス酸またはブレンステッド酸の存在下でのシトロネラールの環化により、イソプレゴールが得られ、それは、さらなるC=C-結合水素化を受けて、いくつかのメントール立体異性体を含有する反応混合物を生じさせる。
【0004】
【化1】
代替的な産業的に有用な前駆体としてのイソピペリテノールの合成に言及する科学論文および特許出願はごくわずかであり、これらは以下のように要約することができる:
- リモネンから出発するC-H酸化(J.-P.Rioult et al.,Flavour Fragr.J.2000,15,223(非特許文献1); WO2004/013339(特許文献1);Verhoeven et al.,The Plant Journal 2004,39,135(非特許文献2))、
- 出発材料としての修飾シトラール誘導体または他のモノテルペンの使用(Marshall et al.,J.Org.Chem.1988,53,4108(非特許文献3);Nakamura et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1992,65,929-931(非特許文献4);Semikolenov et al.Kinet.Catal.Lett.2004,82,165(非特許文献5));
- 環状ケトンの還元(Tetrahedron:Asymmetry 2007,17,717,Rao(非特許文献6))
- Diels-Alder反応(Tetrahedron Asymmetry 2003,14,3313 Serra(非特許文献7))、および
- シトラールの環化。
【0005】
19世紀の終わりから、シトラールの不飽和環状アルコールへの酸触媒変換がA.Verley(Bull.Soc.Chim III 1899,21,408)(非特許文献8)ならびにO.ZeitschelおよびH. Schmidt(Journal fuer praktische Chemie 1932,Volume133,370-373)(非特許文献9)の研究によって知られていたが、そこでは収率が非常に低く、物質の複雑な混合物が得られた。後に、C.Price(Industrial and Engineering Chemistry 1948,40,2,257)(非特許文献10)およびB.Clark(Tetrahedron 1977,33,17,2187)(非特許文献11)からのこの変換に関する速度論的研究において、環化はいくつかの環状生成物をもたらす非常に複雑な変換として確認され、イソピペリテノールは酸性反応条件下では安定でない中間体であると考えられた。
【0006】
さらに、酸の非存在下でシトラールから出発する熱環化(G.Ohloff,THL 1960,11,10(非特許文献12))が可能であり、ならびに触媒量の弱酸を添加することにより(DE2305629C2(特許文献2))、所望の生成物を立体異性体の混合物としてもたらす。アキラルな無機酸/有機酸が用いられるので後者の方法に関して収率は非常に良好であるが、生成物は立体異性体の混合物として得られた。
【0007】
従来技術において、単一の高収率ステップで実施でき、かつイソピペリテノールがエナンチオピュアな形態で得られる、市販のシトラールから出発するエナンチオピュアなイソピペリテノールを製造するための方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/013339
【特許文献2】DE2305629C2
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.-P.Rioult et al.,Flavour Fragr.J.2000,15,223
【非特許文献2】Verhoeven et al.,The Plant Journal 2004,39,135
【非特許文献3】Marshall et al.,J.Org.Chem.1988,53,4108
【非特許文献4】Nakamura et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1992,65,929-931
【非特許文献5】Semikolenov et al.Kinet.Catal.Lett.2004,82,165
【非特許文献6】Tetrahedron:Asymmetry 2007,17,717,Rao
【非特許文献7】Tetrahedron Asymmetry 2003,14,3313 Serra
【非特許文献8】A.Verley(Bull.Soc.Chim III 1899,21,408)
【非特許文献9】O.ZeitschelおよびH. Schmidt (Journal fuer praktische Chemie 1932,Volume133,370-373)
【非特許文献10】C.Price(Industrial and Engineering Chemistry 1948,40,2,257)
【非特許文献11】Clark(Tetrahedron 1977,33,17,2187)
【非特許文献12】G.Ohloff,THL 1960,11,10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、メントール、CBDおよびTHCの前駆体化合物としての鏡像異性的に富化されたイソピペリテノールの製造を可能にし、従って従来技術の欠点を克服する方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、下記のスキームに例示されるように、シトラール/ネラールから出発するイソピペリテノールへの不斉環化を利用し、従ってメントールへの現在の工業的プロセスを短縮し、他の物質、例えばカンナビジオール(CBD)およびテトラヒドロカンナビノール(THC)への可変的な手段を見出すための選択肢を開く方法を開発した。
【0012】
【化2】
前記課題は、イソピペリテノールの不斉合成のための改善された方法であって、ネラール[(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール]が、任意選択的に溶媒中で、キラル二量体ホスファゼン由来触媒の存在下で環化される方法により解決される。
【0013】
より詳細には、本発明は、式(I)のイソピペリテノールの不斉合成のための改良された方法であって、
【0014】
【化3】
ネラール[(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール]およびゲラニアール[(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール]のうちの少なくとも一方を含む基質を、任意選択的に有機溶媒中において、下記式(II)で表される二量体ホスファゼン由来触媒での処理に付し、それによってイソピペリテノールを含有する反応混合物が得られ、
【0015】
【化4】
前記式(II)において、
- Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、ハロゲン、SF、NO、シアノ、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、脂肪族炭化水素上に1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFもしくはCl、SF、NOまたはシアノを有する)、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、各芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素は、任意選択的に、ハロゲン、SF、NO、シアノ、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、脂肪族炭化水素上に1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOまたはシアノを有する)から選択される1つまたは複数の置換基で置換されており、
- Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてRの意味を有するか、あるいは、同一のアリール環上の2つのRは互いに、芳香族環構造または脂肪族環構造であることができる環を形成してもよく、前記芳香族環構造および/または脂肪族環構造は、1つまたは複数の置換基Rで置換されていてよく、
- XおよびYは、同一であるかまたは異なっており、そして酸素またはNRのいずれかであり、
ここで、Rは、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一であるかまたは異なっており、そして以下から選択され:
i.-アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
ii.-アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン類、アリールアルキルホスホラン類、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
iii.-ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン類、ヘテロアリールアリールホスホラン類、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン類、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここでヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
および
- Wは、水素、ハロゲン、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uから選択される金属、またはカチオン性有機基、置換されたボラン-BRIIIII、または置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、ここで、R、RIIおよびRIIIは、同一であってもまたは異なっていてもよく、それぞれは、水素、ハロゲン、任意選択的に-O-で結合されたC~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、鎖中に1つもしくは複数の不飽和結合または1つもしくは複数のヘテロ原子を有する)、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはそれらの部分的にアレーンが水素化された形態を表し、各炭化水素は、任意選択的に、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素から選択される1つまたは複数の基、または1つまたは複数のヘテロ置換基で置換されており、Wは好ましくは、水素および置換されたケイ素-SiRIIIII(式中、R、RIIおよびRIIIは上記で定義される)から選択される、
前記方法に関する。
【0016】
本発明の方法のための反応条件は重大ではなく、反応は、-100℃~30℃の温度範囲、または80℃までのより高い温度範囲でさえも実施することができる。反応は無溶媒で、または非プロトン有機溶媒、例えばCHCl、CHCl、EtO、THF、PhMe、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン中で、一般には大気圧下で実施することができる。
【0017】
前記方法の一実施態様において、二量体ホスファゼン由来触媒は、式(III)を有する:
【0018】
【化5】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、上記で定義した通りであり、XおよびYは上記で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【0019】
前記方法の一実施態様において、二量体ホスファゼン由来触媒は、式(IVa)を有する:
【0020】
【化6】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、上記で定義した通りであり、XおよびYは上記で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【0021】
式(III)、(IVa)および下記式(IVb)において、破線は、二重結合を表し、従ってナフタレン環系を示すか、または水素化された二重結合を表して4H-ナフタレン環系を示し、そして両方の形態が、本発明の方法において使用される触媒中に存在し得る。
【0022】
本発明の方法の別の実施態様において、二量体ホスファゼン由来触媒は、下記式(IVb)によって表される:
【0023】
【化7】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、上記で定義した通りであり、XおよびYは上記で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【0024】
本発明の方法の別の実施態様では、式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)のいずれか1つにおいて、置換基Rは、好ましくは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてハロゲン、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素、またはC~C18芳香族炭化水素を表し、前記脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素は、1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NO、または直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素(脂肪族炭化水素上で1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOによって置換されている)で置換されており、XおよびYは、上記で定義される意味を有し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。
【0025】
本発明の方法の別の実施態様では、式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)のいずれか1つにおいて、YはOまたはNRとして定義され、XはNRとして定義され、ここで、Rは、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一であるかまたは異なっており、そして以下から選択され:
i.スルフィニルアルキルまたはスルホニルアルキル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(任意選択的に、C~C アルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
ii.スルフィニルアリールまたはスルホニルアリール、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;
iii.スルフィニルヘテロアリールまたはスルホニルヘテロアリール、ここでヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素(任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である;そして
Rは、上記で定義される意味を有し、好ましくは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてハロゲン、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素、またはC~C18芳香族炭化水素を表し、前記脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素は、1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NO、または直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素(脂肪族炭化水素上で1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOによって置換されている)で置換されており、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。
【0026】
本発明の方法のいずれかの好ましい実施態様では、前記式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)において、YはOまたはNR、好ましくはOとして定義され、XはNRとして定義され、ここで、Rは、電子求引性基であり、好ましくはスルホニルアルキル(アルキルは部分的にもしくは完全に水素化された直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素である)、またはスルホニルアリール(アリールは、C~C18芳香族炭化水素であり、任意選択的に、少なくとも1つのハロゲン、C~Cアルコキシ、ハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、シアノ、ニトロまたはSFで任意選択的に置換されている、C~Cアルキルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)、Rは、上記で定義される意味を有し、好ましくは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてハロゲン、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素、またはC~C18芳香族炭化水素を表し、前記脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素は、1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NO、または直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素(脂肪族炭化水素上で1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOによって置換されている)で置換されており、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。
【0027】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施態様において、二量体ホスファゼン由来触媒は、下記式(IVb)によって表される:
【0028】
【化8】
[式中、置換基Rは、各位置において同一であるかまたは異なっており、そしてC~C18芳香族炭化水素であり、前記芳香族炭化水素は、1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NO、または直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素(脂肪族炭化水素上で1つまたは複数のハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、SF、NOによって置換されている)で置換されており、YはOであり、XはNRであり、ここで、Rは、スルホニルアルキル(アルキルは部分的にもしくは完全に水素化された直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のC~C20脂肪族炭化水素である)であり、破線はそれぞれ二重結合を表し、そして、Wは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す]。
【0029】
本発明の方法は、ネラール(Z:E=>99:1)からゲラニアール(Z:E=<1:99)までの範囲のネラールおよびゲラニアールの比、好ましくはZ:E=80:20を超える範囲のネラールのより高い含有量を有する、基質を使用することを可能にする。
【0030】
イソピペリテノールを含む得られた反応混合物をさらに水素化処理に付すことができ、それによって、メントール、イソメントール、ネオメントールおよびネオイソメントールの少なくとも1つを含有する反応混合物が得られることが特に有用である。反応混合物の前記水素化処理は概して、水素および水素化触媒を用いて行われる。
【0031】
得られた反応混合物は個々の化合物に分離することができ、またはルイス酸もしくはブレンステッド酸の存在下でオリベトールもしくはその置換誘導体とさらに反応させることができ、それによってカンナビジオール(CBD)および/またはテトラヒドロカンナビノール(THC)およびそれらの異性体を含有する反応混合物が得られる。
【0032】
【化9】
従って、本発明はまた、THCおよびCBDの誘導体の製造を、式(V)のネラール誘導体を用いて開始することを可能にし、
【0033】
【化10】
式(V)のネラール誘導体は、上記で定義される式(II)の二量体ホスファゼン由来触媒、好ましくは上記の種々の改変で定義される式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の触媒の存在下で環化され、そして反応混合物はさらに、ルイス酸またはブレンステッド酸の存在下で、式(VI)の置換オリベトール様レゾルシン系化合物とさらに反応させ、
【0034】
【化11】
これにより、一般式(VIIaおよびVIIb)のラセミまたは光学活性THC-および/またはCBD-類似体を含有する反応混合物が得られる;
【0035】
【化12】
式中、Rは、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、C~Cアルキル基、特にメチル、-CHOH、または-COORであり、ここでRはHまたはC~Cアルキル基であり;
は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素、C~Cアルキル基、特にメチルであるか;あるいは、2つのRまたは2つのRがそれぞれ、互いの間で環を形成してよく、
は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、C~Cアルキル基、特にメチルであるか;あるいは、2つのRまたは2つのRがそれぞれ、互いの間で環を形成してよく、
およびRは、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、そしてそれぞれ、水素または-COORであり、ここでRはHまたはC~Cアルキル基であり;
は、ヒドロキシ、C~C12アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基を表し、任意選択的に、1つまたは複数のヒドロキシル基によってさらに置換されている。
【0036】
特に連続プロセスのためには、式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)のいずれかの触媒を、上記のプロセスのいずれかにおいて固定化された形態で使用することが望ましい。
【0037】
一実施態様において、式(II)(式中、Y、XおよびRは上記で定義されるとおりである)の二量体ホスファゼン由来触媒は、任意選択的にリンカーを介して、固体担体に結合されていてよく、前記リンカーは、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基であり、各炭化水素基は、50個までの炭素原子を有し、それぞれは任意選択的に、1つまたは複数のヘテロ置換基、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族炭化水素基でさらに置換されており、各炭化水素基は、任意選択的に、1つまたは複数のヘテロ置換基で置換されており;ならびに、前記の固体担体は、反応混合物中に不溶性であり、ウール、綿、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコールおよびポリアミド、およびそれらのコポリマーから選択され、それぞれは任意選択的に、脂肪族炭化水素上に少なくとも1つのハロゲン、好ましくはFおよび/もしくはCl、ヒドロキシ、スルホニル、アルコキシ、ハロゲン置換アルコキシを、および/または脂肪族炭化水素鎖中に酸素を有する。
【0038】
別の実施態様では、上記で定義される式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒は、固体担体と芳香族または脂環式基本骨格との間のリンカーを介して、好ましくは二量体ホスファゼン由来触媒の1つ、2つ、3つまたは全ての芳香族または脂環式基本骨格の6位において、固体担体に結合されてよく、ここで前記リンカーおよび固体担体は上記で定義される通りである。
【0039】
さらに別の実施態様では、上記で定義される式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒は、NR置換基と固体担体との間のリンカーを介して、固定相としての固体担体に結合されてよく、式(II)、(III)、(IVa)または(IVb)の二量体ホスファゼン由来触媒において、YはOまたはNRであり、XはNRであり、ここで、Rは、線状または分岐状のアルキル鎖またはポリエーテルアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素を有し、RおよびRは上記で定義されるとおりであり、例えば固体担体としてスルホン化テトラフルオロエチレンポリマーNafion(登録商標)である。
【0040】
プロセスの説明:
現在、ネラールおよびゲラニアールはMnOを用いるネロールおよびゲラニオールのアリル酸化により合成することができ、後続の蒸留後に、対応のアルデヒドが、少なくとも96:4(ネラールの場合)および2:98(ゲラニアールの場合のゲラニオールに関してはそれを超える)のZ:E純度で得られる。
【0041】
本明細書において使用される触媒は、イミドジホスフェート(IDP)触媒、イミノイミドジホスホリミデート(iIDP:iminoimidodiphosphorimidate)触媒(List et al., J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 34, 10822)、およびイミドジホスホリミデート(IDPi:imidodiphosphorimidate)触媒をベースとし、EP20200632.6に記載されている方法を使用して調製することができる。使用される溶媒は、使用前に乾燥させておく。
【0042】
触媒を溶媒に溶解し、使用する溶媒に応じて異なる温度に冷却することができる。ネラールを添加し、反応を撹拌し、例えば一定時間後にトリエチルアミンを添加して、停止させた。
【0043】
定義
以下の定義は、個々の基R、R、RおよびWに等しく以下のように適用される。
【0044】
本発明に従って定義されるヘテロ置換基は、OH、F、Cl、Br、I、CN、NO、I-R 2、NO、NCO、-NCS、-SCN、SOH、モノハロゲノメチル基、ジハロゲノメチル基、トリハロゲノメチル基、CF(CF3)、SF、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、一級、二級、三級アミンまたはアンモニウム(N原子を介して結合される)、-O-アルキル(アルコキシ)、-O-アリール、-O-ヘテロアリール -O-SiR 、-S-S-R、-S-R、-S(O)-R、-S(O)-R、-COOH、-CO-R、-BR 、-PR 2、-OPR 、アミド(CまたはN原子を介して結合される)、ホルミル基、-C(O)-R、-COOM(ここでMは金属、例えばLi、Na、K、Cs、Agである)から選択することができる。Rは、互いに独立して、同一であってもまたは異なっていてもよく、そしてそれぞれ、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であり、それぞれは任意選択的に、1つまたは複数のヘテロ置換基、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族基でさらに置換されており;および/または任意選択的に、-O-原子によって架橋されており、ハロゲニドを表す。
【0045】
アルキル、アルケニルおよびアルキニルを含む脂肪族炭化水素は、直鎖状、分枝状および環状炭化水素を含み得る。
【0046】
ヘテロ脂肪族は、アルキル、アルケニルおよびアルキニルを含む炭化水素であり、これは、少なくとも1個のヘテロ原子で置き換えられた、1つまたは複数の炭素原子を有する直鎖状、分枝状および環状炭化水素を含み得る。
【0047】
より詳細には、C-C20-アルキルは、直鎖状または分岐状であることができ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有する。アルキルは、C-C-アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルもしくはtert-ブチル、同様にペンチル、1-、2-もしくは3-メチルプロピル、1,1-、1,2-もしくは2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、へキシル、1-、2-、3-もしくは4-メチルペンチル、1,1-、1,2-、1,3-、2,2-、2,3-もしくは3,3-ジメチルブチル、1-もしくは2-エチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-もしくは1,2,2-トリメチルプロピルであってもよい。置換アルキル基は、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび1,1,1-トリフルオロエチルである。
【0048】
シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり得る。アルケニルは、C-C20アルケニルであってもよい。アルキニルは、C-C20アルキニルであってもよい。
【0049】
前記不飽和アルケニル-またはアルキニル基は、本発明の化合物を、固定化された触媒に役立つポリマーなどの担体に連結するために使用することができる。
【0050】
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
【0051】
アルコキシは、好ましくは、C-C10アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ等、およびそれらの異性体である。
【0052】
N、OおよびSの中から選択される1つまたは複数のヘテロ原子を有するC-C-ヘテロシクロアルキルは、好ましくは、2,3-ジヒドロ-2-、-3-、-4-もしくは-5-フリル、2,5-ジヒドロ-2-、-3-、-4-もしくは-5-フリル、テトラヒドロ-2-もしくは-3-フリル、1,3-ジオキソラン-4-イル、テトラヒドロ-2-もしくは-3-チエニル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピロリル、2,5-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピロリル、1-、2-もしくは3-ピロリジニル、テトラヒドロ-1-、-2-もしくは-4-イミダゾリル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピラゾリル、テトラヒドロ-1-、-3-もしくは-4-ピラゾリル、1,4-ジヒドロ-1-、-2-、-3-もしくは-4-ピリジル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-もしくは-6-ピリジル、1-、2-、3-もしくは4-ピペリジニル、2-、3-もしくは4-モルホリニル、テトラヒドロ-2-、-3-もしくは-4-ピラニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサン-2-、-4-もしくは-5-イル、ヘキサヒドロ-1-、-3-もしくは-4-ピリダジニル、ヘキサヒドロ-1-、-2-、-4-もしくは-5-ピリミジニル、1-、2-もしくは3-ピペラジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-もしくは-8-キノリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-もしくは-8-イソキノリル、2-、3-、5-、6-、7-もしくは8-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニルである。
【0053】
任意選択的に置換されているは、炭化水素上において、置換されていないか、あるいは一置換、二置換、三置換、四置換、五置換されているか、または各水素に関してさらに置換されている、例えば過置換されていることを意味する。
【0054】
アリールは、C~C22芳香族炭化水素であってよく、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルまたはビフェニルであってもよい。
【0055】
アリールアルキルは、ベンジルであってもよい。
【0056】
ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であってよく、N、OおよびSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を有することができ、好ましくは、2-もしくは3-フリル、2-もしくは3-チエニル、1-、2-もしくは3-ピロリル、1-、2-、4-もしくは5-イミダゾリル、1-、3-、4-もしくは5-ピラゾリル、2-、4-もしくは5-オキサゾリル、3-、4-もしくは5-イソオキサゾリル、2-、4-もしくは5-チアゾリル、3-、4-もしくは5-イソチアゾリル、2-、3-もしくは4-ピリジル、2-、4-、5-もしくは6-ピリミジニル、また好ましくは、1,2,3-トリアゾール-1-、-4-もしくは-5-イル、1,2,4-トリアゾール-1-、-3-もしくは-5-イル、1-もしくは5-テトラゾリル、1,2,3-オキサジアゾール-4-もしくは-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-3-もしくは-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-もしくは-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-もしくは-5-イル、1,2,3-チアジアゾール-4-もしくは-5-イル、3-もしくは4-ピリダジニル、ピラジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-インドリル、4-もしくは5-イソインドリル、1-、2-、4-もしくは5-ベンズイミダゾリル、1-、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾピラゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾオキサゾリル、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンズイソオキサゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾチアゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンズイソチアゾリル、4-、5-、6-もしくは7-ベンズ-2,1,3-オキサジアゾリル、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-キノリル、1-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-イソキノリル、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-シンノリニル、2-、4-、5-、6-、7-もしくは8-キナゾリニル、5-もしくは6-キノキサリニル、2-、3-、5-、6-、7-もしくは8-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニル、また好ましくは、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル、1,4-ベンゾジオキサン-6-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-もしくは-5-イルまたは2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-イルである。
【実施例
【0057】
実験欄
材料と特性分析
化学物質:化学物質(Abcr, Acros, Aldrich, Gelest, Fluka, Fluorochem, Strem, TCI)は試薬グレードとして購入し、別段の記載がないかぎり、さらに精製することなく使用した。ネラールおよびゲラニアールは、MnOを用いるネロールおよびゲラニオールのアリル酸化により合成することができ、後続の蒸留後に、対応のアルデヒドが、少なくとも96:4(ネラールの場合)および2:98(ゲラニアールの場合)のZ:E純度で得られる。
【0058】
溶媒:溶媒(CHCl、CHCl、EtO、THF、PhMe)を、マックスプランク石炭研究所(Max-Planck-Institut fuer Kohlenforschung)の技術部門において適切な乾燥剤からの蒸留により乾燥させ、アルゴン下でシュレンクフラスコに入れた。他の溶媒(n-ペンタンおよびピリジン)は市販の供給業者から購入し、モレキュラーシーブ上で乾燥させた。
【0059】
ガラス器具:別段の記載がない限り、スクリューキャップバイアル、丸底フラスコまたはシュレンクフラスコを反応に使用した。薄層クロマトグラフィー:薄層クロマトグラフィー(TLC)を、シリカゲルプレコートプラスチックシート(Polygram SIL G/UV254、0.2mm、蛍光指示薬付き;Macherey-Nagel)を用いて実施し、これらをUVランプ(254または366nm)で可視化し、過マンガン酸カリウム(KMnO)で染色した。KMnO染色:水(200mL)中、KMnO(1.5g)、KCO(10g)、10%NaOH(1.25mL)。
【0060】
フラッシュカラムクロマトグラフィー:フラッシュカラムクロマトグラフィー(FCC)は、Merckシリカゲル(60Å、230-400mesh、粒径0.040-0.063mm)を用いてテクニカルグレードの溶媒を用いて行った。溶出は圧縮窒素を用いて加速した。全ての報告された収率は、特に明記しない限り、分光学的およびクロマトグラフィー的に純粋な化合物を表す。
【0061】
ガスクロマトグラフィー:キラル固体担体上でのガスクロマトグラフィー(GC)分析を、HP6890および5890シリーズ機器(スプリットモードキャピラリー注入システム、フレームイオン化検出器(FID)、水素キャリアガス)で行った。すべての分析は、マックスプランク石炭研究所のGC部門で行った。使用される条件は、個々の実験において詳細に記載されている。
【0062】
触媒合成
本発明に使用する触媒は、EP出願20200632.6に開示されているようなホスファゼン試薬を用いる方法により、またはWO2017/037141に従う調製によって、合成した。
【0063】
触媒合成の手順:
直火乾燥した(flame-dried)シュレンクに、ホスファゼン試薬および対応する置換(S)-または(R)-BINOLまたはビフェノール(2.0当量)を仕込んだ。乾燥ピリジンを添加し、両方の固体を溶解させて透明な溶液を得た。ピリジンの量は、使用されるホスファゼン試薬約50mgに対して1mLである。透明な溶液はゆっくりと析出物を形成し、3時間後、スルホンアミド(5.0当量)を反応物に添加し、次いで一晩撹拌する。水(10重量%)を反応物に添加し、さらに3時間撹拌した。過剰量のHCl水溶液(10%)を加えた後、反応を後処理し、水性相をCHClで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。触媒をカラムクロマトグラフィーで精製し、DOWEXで酸性化した。
【0064】
DOWEXによる酸性化:
DOWEXをカラムに充填し、0.05M HSO水溶液およびCHClで洗浄した。精製された触媒をCHClに溶解し、引き続きカラムを通過させ、カラムをUV活性物質が放出されなくなるまでCHClでリンスした。溶媒を蒸発させ、触媒を得た。高真空中で乾燥した後、対応する触媒をNMRおよびMSによって分析した。
【0065】
本発明の方法のための例示的な反応プロトコール
シトラール、ネラール、ゲラニアールの例示的な触媒不斉環化を以下に示す。
【0066】
【化13】
スクリューキャップバイアルに、マグネチックスターラーバー、iIDP-触媒(1mol%)およびジクロロメタン(0.1M)を仕込んだ。反応溶液を-20℃に冷却し、10分間撹拌した。ネラール(Z:E 96:4の比)を反応バイアルに添加し、反応物を前記温度で16時間撹拌した。反応混合物をEtNで処理し、引き続き、反応物をゆっくりと室温に温めた。溶媒を40℃および500mbarで蒸発させた。報告収率は、メシチレンまたはトリフェニルメタンを内部標準として使用するNMRによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
いくつかのパラメーターについての例示的な反応プロトコール評価を、異なる量の様々な基質および触媒を含む様々な反応条件について、図1に示す。結果によれば、前記の一般反応プロトコールが、種々の条件および種々の基質に適用可能であることが示される。
【0068】
実験結果
触媒クラス
pKaスケールで広い範囲をカバーするいくつかのブレンステッド酸触媒(有機もしくは無機およびアキラルもしくはキラル酸)は、シトラールの環化反応を触媒することができる。弱酸(MeCN中のpKa>10)はほとんど転化を示さないが、純粋な反応プロファイルを維持し、一方で強酸(MeCN中のpKa<8)は、より複雑な反応プロファイルをもたらす。より強い酸を用いる反応の複雑さは、文献に記載されているように、環化中間体イソピペリテノールの、いくつかの脱離生成物(例えば、トリエン類)への速い分解経路によって説明し得る。弱酸と強酸の間のpKaスケールにわたる触媒クラス(IDP、iIDPおよびIDPi)は、両方の利点、すなわち所望の生成物へのより高い転化率、および純粋な反応プロファイルの維持を組み合わせることができる。
【0069】
濃度
シトラールの環化反応は、無溶媒~非常に希薄な0.005M反応条件の範囲の異なる濃度を有するいくつかの有機溶媒中で行うことができる。所望の環化生成物のジアステレオマーおよびエナンチオマー過剰率は、反応混合物の異なる希釈下でほぼ一定である。対照実験を、生成物の分解経路における速度論的分割を排除するために、反応の異なる段階でエナンチオマー過剰率を決定することによって実施した。
【0070】
触媒量(Catalyst loading)
シトラールの環化反応は、使用される溶媒および温度に応じて、0.05~100mol%の範囲の種々の触媒量を用いることにより、所望の生成物のジアステレオマーおよびエナンチオマー過剰率を著しく損なうことなく行うことができる。
【0071】
含水率/Molesieves
シトラールの環化反応は、類似のジアステレオマーおよびエナンチオマー比が得られる、改変された反応条件下(例えば、水の存在下)で行うことができる。
【0072】
結論
本発明の触媒を使用するシトラール/ネラールの環化反応は、-80℃~25℃の温度、30分~48時間の反応時間、いくつかの溶媒中の無溶媒~0.005Mの濃度、および0.05mol%~100mol%の触媒量の範囲で実施することができる。種々の触媒のスクリーニングを図1に示す。シトラールの環化反応は、電子不足基を有する触媒を用いた場合に高収率で行われる。最良の3,3’-置換基と組合せたいくつかの異なるコアのスクリーニングは、最小の内部コアCFが、最適化された標準的反応条件下で、最も高い収率ならびにジアステレオマーおよびエナンチオマー比で、生成物を提供するという結論を導く。
【0073】
シトラール、ネラール、ゲラニアールの例示的な触媒不斉環化は上記に示される。
【0074】
生成物の単離および触媒回収
丸底フラスコにマグネチックスターラーバー、iIDP-触媒(2.5mol%)および乾燥ペンタン(0.1M)を仕込み、0℃に冷却した。20分後、ネラール(5.8mmol、比96:4)を反応フラスコに添加し、反応物を前記温度で16時間撹拌した。反応混合物をトリエチルアミンで処理し、引き続き、反応物をゆっくりと室温に温めた。溶媒を蒸発させると、環化生成物を含む反応粗製生成物が得られた。CC(シリカ)による粗製反応混合物の精製により、環状のアリル型アルコール(収率40%、d.r.12:1(トランス:シス)、e.r. 96:4)
【0075】
異なる基質の合成およびそれらの環化
(Z)-4,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエナール:
4,4,7-トリメチルオクタ-6-エン-2-イナール
【0076】
【化14】
CBr(16.55g、49.9mmol、2.0当量)のCHCl(20mL)撹拌溶液に、トリフェニルホスフィン(26.2g、99.8mmol、4.0当量)を0℃で添加し、得られた反応混合物を15分間撹拌した。この懸濁液に、CHCl(15mL)中の(Z)-4,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエナール(Schindler et al., Science 2018, 361, 1363-1369に従って調製)(3.5g、24.9mmol,1.0等量)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物をHOでクエンチし、水性層をCHClで抽出した。合わせた有機層を、H(HO中5%)、水、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。次いで、粗製反応生成物をTHF(130mL)に溶解し、nBuLi(ヘキサン中2.5M、24mL、59.9mmol、2.4当量)を-78℃で滴加した。反応混合物をゆっくりと0℃に温め、20分間撹拌した後、反応物を室温に達するように置いた。出発物質を完全に転化させた後、反応をNHCl飽和水溶液でクエンチし、水性層をジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた粗製混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(10% DCM/ペンタン)で精製して、4,4,7-トリメチルオクタ-6-エン-2-イナールを無色油状物として得た(1.74g、収率42%)。
【0077】
(Z)-4,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエナール
【0078】
【化15】
直火乾燥フラスコに、4,4,7-トリメチルオクタ-6-エン-2-イナール(500mg、3.0mmol、1.0当量)、シクロヘキサン/酢酸エチル(1:5)の溶媒混合物およびキノリン(0.36mL、3.0mmol、1.0当量)を仕込んだ。Lindlar触媒を室温で添加し、反応懸濁液を水素化条件に供した(バルーンにより1気圧のH)。ほぼ完全な転化後、反応物をセライトパッドでろ過し、これをEtOAcで広範囲に洗浄した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色油状物としての所望のα,β-不飽和アルデヒド4,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエナール(120mg、収率24%)、およびジアステレオ異性体の混合物(Z:E=93:7)を得た。
【0079】
(Z)-4,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエナールの環化
【0080】
【化16】
一般反応手順に従って環化反応を行い、所望の環状アリル型アルコールを95%の収率で得た(d.r.=98:2、e.r.(major)=0.4:99.6)。
【0081】
(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール
エチル(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート
【0082】
【化17】
THF(21mL)中のエチル2-(ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスホリル)プロパノエート(925mg、2.67mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、THF中の18-クラウン-6(735mg、2,78mmol、1.05当量)を添加した。反応物を-78℃に冷却し、KHMDS(5.3mL、2.67mmol、PhMe中の0.5M溶液)を反応物に滴加した。-78℃で20分間撹拌した後、5-メチルヘキサ-4-エナール(文献Braddock et al., Chem. Commun. 2006, 2483およびNakada et al., Tett. Let. 2014, 55, 50, 6847に従って調製)(300mg、2.67mmol、1.0当量)を添加し、同じ温度で完全に転化するまで撹拌した。完全に転化した後、反応を飽和NHCl水溶液でクエンチした。有機相を分離し、水性相をジエチルエーテルで抽出した。合わせた層を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、α,β-不飽和エステル(223mg、収率42%)を得た。
【0083】
(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール
【0084】
【化18】
直火乾燥フラスコに、エチル(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート(344mg、1.75mmol、1.0当量)およびDCM(7mL)を仕込み、DIBAL-Hを-78℃で滴加した(3.8mL、1M、3.8mmol、2.2当量)した。出発物質が所望のアルコールへ完全に転化した後、反応を1:1水/MeOH混合物でクエンチした。混合物を室温で2時間撹拌した。得られたゲルをNaSO/セライトパッド上で濾過し、これをジクロロメタンで広範囲に洗浄した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製反応生成物(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オールを再びDCM(2mL)に溶解した。二酸化マンガン(685mg、7.89mmol、4.5当量)を反応フラスコに加え、反応物を出発物質が完全に転化するまで室温で撹拌した。完全な転化後、反応物をセライトのパッドで濾過し、これをDCMで広範囲に洗浄した。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた粗製生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナールをジアステレオ異性体の混合物として得た(160mg、収率60%、Z:E=86:14)。
【0085】
(Z)-2,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナールの環化:
【0086】
【化19】
一般反応手順に従って環化反応を行い、所望の環状アリル型アルコールを72%の収率で得た(d.r.=2:1、e.r.(major)=97:3、e.r.(minor)=93:7)。
【0087】
CBDおよびTHCの合成
キラル触媒リン酸、IDP-、iIDP-またはIDPi-触媒(5モル%)を反応容器に仕込み、無水CHCl(0.1M)、オリベトール(1.1当量)および鏡像異性的に純粋なイソピペリテノール(0.3mmol)をシリンジをとおして添加した。反応物を室温で撹拌し、イソピペリテノールの完全な転化時にトリエチルアミンでクエンチした。溶媒を蒸発させ、CBDおよび/またはTHC化合物(Δ-THC(シスおよびトランス)、Δ-THC、Δ-regio-THC(シスおよびトランス))を含有する反応混合物を得た。
【0088】
カンナビジオール(CBD)を含有する反応混合物の合成
スクリューキャップバイアルに、5~20モル%の触媒またはルイス酸(例えば、BFOEt)、乾燥CHCl、オリベトールおよび精製した鏡像異性的に純粋なイソピペリテノールを添加した。反応混合物はその色を強め、数分後に退色した。反応混合物を室温で撹拌し、2つの出発物質の完全な転化時にトリエチルアミンで処理した。溶媒を蒸発させ、CC(シリカ)による粗製反応混合物の精製により、主要化合物としてカンナビジオールを得た。
【0089】
カンナビジオール(CBD)を含有する反応混合物の合成
直火乾燥したシュレンク管に、オリベトール(1mmol、180mg)、イソピペリテノール(シス:トランス=5:1、1.5当量、0.16mL)およびBF・EtO(62.5μL、0.5mmol)を6.25mLのDCM中にアルゴン下0℃で適切に添加した。1.5時間後、出発物質はTLC(5~20% EtOAc/ヘキサン)によって示されるように、完全に消費された。反応を100mgのNaHCOでクエンチし、ろ過し、DCMで洗浄した。減圧下で溶媒を蒸発させ、粗製混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、5~30% EtOAc/ヘキサン)で精製した。3つの主要な化合物を単離することができたが、そのうちの1つがCBDである(収率32%、101.2mg)。
【0090】
THCを含有する反応混合物の合成
直火乾燥したシュレンクフラスコに、molesieveおよび5mol%のiIDP触媒を仕込んだ。乾燥CHCl、オリベトールおよび精製された鏡像異性的に純粋なイソピペリテノールをフラスコに加えた。反応混合物はその色を強め、数分後に退色した。反応物を室温で撹拌し、2つの出発物質の完全な転化時にEtNでクエンチした。溶媒を蒸発させ、粗製反応混合物を分取TLCによって精製することにより、主生成物としてTHC物質(Δ-THC(シスおよびトランス)、Δ-THC、Δ-regio-THC(シスおよびトランス))を得た。
【0091】
CBD/THCのワンポット合成
反応容器にiIDP触媒(5モル%)および無水CHCl(0.1M)を仕込んだ。反応物を所望の温度まで冷却し、数分間撹拌した後、ネラール(0.3mmol)を反応混合物に添加し、反応物を一定時間撹拌した。出発物質の完全な転化に達した後、オリベトール(1当量)を反応混合物に添加し、反応物を室温に到達させた。オリベトールの完全な転化時、反応をトリエチルアミンでクエンチした。溶媒を蒸発させ、CBDおよび/またはTHC物質(Δ-THC(シスおよびトランス)、Δ-THC、Δ-regio-THC(シスおよびトランス))を含有する反応混合物を得た。
【0092】
Δ -THC合成:
直火乾燥したシュレンクフラスコに、オリベトール(36mg、0.2mmol)、エナンチオピュアなイソピペリテノール(d.r. シス:トランス=5:1、1.1当量)およびBF・EtO(0.2当量)を4mLのDCM中にアルゴン下60℃で適切に添加した。14時間後、出発物質(オリベトール)がTLC分析(5% EtOAc/ヘキサンを使用)によって示されるように完全に転化し、反応物を1滴のトリエチルアミンで処理した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、5% EtOAc/ヘキサン)によって精製して、Δ-THCを所望の生成物として得た(53%収率、33.3mg、e.r. 99:1)。
【0093】
Δ -THC合成:
直火乾燥したシュレンクフラスコに、オリベトール(0.42mmol、75.7mg)、イソピペリテノール(シス:トランス=5:1、73μL、1.1当量)およびBF3・EtO(0.2当量)を8mLのDCM中にアルゴン下室温で適切に添加した。22時間後、生成した生成物の比は、THC:CBD=2.3:1であり、42時間後は、THC:CBD=13.5:1である。反応を1滴のトリエチルアミンによってクエンチした。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、5% EtOAc/ヘキサン)によって精製して、Δ-THCを所望の生成物として得た(55%収率、72mg)。
【0094】
イソピペリテノールの例示的な水素化:
不均一水素化触媒(64mg、10mol%Pt/C、0.2当量)を丸底フラスコに移し、対応するイソピペリテノールのメタノール溶液(3mL、0.2M)を反応フラスコに加えた。反応混合物を水素(1気圧)でフラッシュし、反応物を水素雰囲気(1気圧)下、室温で48時間激しく撹拌した。出発物質の完全な転化時に、不均一触媒をろ過により除去し、ろ液を蒸発させて、メントール、イソメントール、ネオメントールおよびネオイソメントールを含有する反応混合物を得た。
【0095】
メントール:
直火乾燥フラスコに、エナンチオ富化イソピペリテノール(d.r.=11:1、e.r.98.5:1.5)(31mg、0.20mmol、1.0当量)、3mLのMeOHおよびLindlar触媒(48.7mg、0.11当量)を仕込んだ。数分間攪拌した後、反応物を1気圧のHガスに供した(バルーンにより)。2日後、反応は完全な転化に達し(TLCによって示される)、ろ過された。溶媒の蒸発後、粗製反応混合物をGC分析に供した(>99%転化率、92%生成物、メントール対イソメントールの比74.3:25.7、e.r.(メントール/イソメントール)=98.5:1.5)。
【0096】
固体担持触媒の合成
2-(アリルオキシ)-1,1,2,2-テトラフルオロエタン-1-スルホンアミド:
直火乾燥したシュレンクフラスコにマグネチックスターラーバーを装備し、アンモニア(約25mL、過剰)を-78℃で反応フラスコ中に凝縮させた。5.0gの1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)エタン-1-スルホニルフルオリド(1.0当量、21mmol)をフラスコにゆっくりと添加し、反応物を前記温度で1.5時間撹拌した後、徐々に室温に温めた。さらに1.5時間後、得られた白色スラリーを1MのHSOで約2のpHに酸性化した。水性層をジエチルエーテルで抽出し、得られた有機層をNaSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。対応するスルホンアミドが、高真空下で乾燥した後、無色の固体として得られた(4.9g、収率90%)。
【0097】
固体担持閉じ込め酸(solid supported confined acids)の以下の製造に使用される触媒を、2-(アリルオキシ)-1,1,2,2-テトラフルオロエタン-1-スルホンアミドを使用することにより、一般反応プロトコールに従って製造した。
【0098】
固体スチレン-ジビニルベンゼン担持触媒の合成:
直火乾燥した反応管において、対応するiIDP(50mg、0.026mmol)を0.25mLのクロロホルムに溶解した。スチレン(0.5mL、4.35mmol)、ジビニルベンゼン(0.25mL、1.76mmol)(使用前にシリカの短いパッドを通してろ過)およびAIBNをフラスコに加えた。得られた混合物を菅中に置き、共重合を80℃で行った。16時間後、加熱源を除去し、得られた固体を破砕した。得られたポリマー粉末をジクロロメタンで広範囲に洗浄し、6M HCl中に3時間懸濁させることによって酸性化した。懸濁液を濾過し、水およびジクロロメタンで洗浄した。得られた固体担持触媒を、高真空下、40℃で一晩乾燥した。
【0099】
固体担持スルホンアミドの合成:
Nafion(登録商標)R-1100樹脂(フッ化スルホニル形態、500mg)を、-196℃でクライオミルを使用して、微細な灰色がかった粉末に粉砕した。得られた粉末を無水DMF(3mL)に懸濁し、過剰の液体アンモニアを反応フラスコ中に-78℃で凝縮させた。界面反応を連続撹拌しながら行った。-78℃の初期温度において液体アンモニア中で一晩撹拌した後、残留アンモニアを放出し、混合物を室温から90℃に2時間加熱した。得られた固体担持スルホンアミドを水から析出させ、脱イオン水で洗浄し、真空下60℃で24時間乾燥させた(497mg、quant.)。対応する固体担持触媒を、上記の一般手順を用いて製造した。
【0100】
固体担持触媒を用いるシトラール、ネラール、ゲラニアールの例示的な触媒不斉環化:
スクリューキャップバイアルに、マグネチックスターラーバー、固体担持iIDP触媒および乾燥n-ペンタン(0.5M)を仕込んだ。ネラール(Z:E 96:4)を反応バイアルに加え、反応物を室温で一晩撹拌した。出発物質の完全な転化後、シリンジフィルターを用いて固体担持触媒を除去し、フィルターをさらにペンタンですすぎ、得られたろ液をトリメチルアミンで処理した。溶媒を蒸発させ、収率およびd.r.を、メシチレンを内部標準として使用するNMR分光法によって決定し、エナンチオマー過剰率をGCによって決定した(28%収率、d.r. 15:1(トランス:シス)、e.r. 96:4)。
【0101】
固体担持触媒を用いたネラールの環化
直火乾燥バイアルに、10mol%固体担持触媒およびジクロロメタンを仕込んだ。ネラール(5μL)をバイアルに加え、反応物を室温で16時間撹拌した。反応を一滴のトリエチルアミンでクエンチした後、反応物を濾過し、反応物を内部標準を使用する1H-NMR分光法により分析した。所望の生成物を13%の収率で得た(d.r.(トランス/シス)=5:1, e.r.=96:4)エナンチオマーおよびジアステレオマー比をGC分析により決定した。
図1
【国際調査報告】