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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電池用セパレータコーティング
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/426 20210101AFI20240130BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240130BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240130BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240130BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20240130BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M50/426
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/44
H01M50/446
H01M50/403 F
H01G11/52
H01G11/84
C08L27/16
C08F214/22
H01M50/443 M
H01M50/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537659
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021084968
(87)【国際公開番号】W WO2022135954
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216012.3
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オリアーニ, アンドレーア ヴィットーリオ
(72)【発明者】
【氏名】ソルミ, マティルデ バレリア
(72)【発明者】
【氏名】マッツォラ, ミルコ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002GQ00
4J002HA07
4J100AC24P
4J100AC27Q
4J100CA04
4J100DA09
4J100DA24
4J100DA39
4J100DA41
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA21
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA43
5E078AA15
5E078AB01
5E078CA12
5E078CA21
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE22
5H021EE31
5H021EE33
5H021EE34
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、フッ化ビニリデンポリマー水分散液を含むコーティング組成物、及びセパレータ等の電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置用セパレータの製造に使用するための水性組成物[組成物(C)]であって、
少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ポリマー(A)]であって、前記ポリマー(A)がフッ化ビニリデン(VDF)モノマーに由来する75.0モル%超の繰り返し単位を含む、少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ポリマー(A)]を含み、
前記ポリマー(A)が以下の要件:
45℃においてN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)中の不溶性成分の割合が60重量%超であること;及び
(II)DSC測定によって得られる結晶化度が48%未満であること
を満たす、水性組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
ポリマー(A)が、式:
【化1】
(式中、R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、水素原子、又はC~C炭化水素基であり、ROHは、ヒドロキシル基、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)の少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
ポリマー(A)が、水素化コモノマー[コモノマー(H)]又はフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]から選択される少なくとも1つのコモノマー(CM)に由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
コモノマー(CM)が、
(a)C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン、
(b)C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレン;
(c)式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン、
(d)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロ-、及び/又はブロモ-、及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
(e)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば-CF、-C、-Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
(f)式CF=CFOX(式中、Xは、1つ以上のエーテル基を有するC~C12オキシアルキル基又はC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
(g)式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば-CF、-C、-C、又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば-C-O-CFである)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
(h)式:
【化2】
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、及びRf6のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC~Cフルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル基、例えば、-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)のフルオロジオキソール
からなる群から選択されるフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]である、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
コモノマー(CM)が、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)及びフッ化ビニルからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコモノマー(CM)が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して0.05モル%~25.0モル%、好ましくは0.5モル%~5モル%の量で存在する、請求項3~5のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
上記で詳述した粘度調整剤、消泡剤、分散剤、及び非フッ素化界面活性剤等からなる群から選択される1つ又は2つ以上のさらなる添加剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
共結合剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
電気化学セル用のセパレータを製造するためのプロセスであって:
i)コーティングされていない基材層[層(P)]を準備する工程;
ii)請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)を準備する工程;
iii)工程(ii)で得られた前記組成物(C)を、前記基材層(P)の少なくとも一部に少なくとも部分的に塗布し、これにより少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを得る工程;及び
iv)工程(iii)で得られた前記少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを乾燥させる工程
を含む、プロセス。
【請求項10】
層(P)が、セラミック材料を含む多孔質層及び布帛層を含む多層基材である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
工程iii)において、前記組成物(C)が、流延、スプレーコーティング、回転スプレーコーティング、ロールコーティング、浸漬コーティング、ドクターブレード、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング及びスクリーン印刷、ブラシ、スキージ、泡付与装置、カーテンコーティング、真空コーティングから選択される技術によって、前記層(P)の少なくとも1つの表面に塗布される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)で少なくとも部分的にコーティングされた基材層[層(P)]を含む、電気化学セル用のセパレータ。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを含む、二次電池又はキャパシタ等の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月21日出願の欧州特許出願公開第20216012.3号からの優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、フッ化ビニリデンポリマーを含むコーティング組成物、及びセパレータ等の電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、人間の日常生活に欠かせないものになっている。持続可能な開発に関連して、リチウムイオン電池は、電気自動車及び再生可能エネルギー貯蔵での使用が一層注目されているため、それらは、より重要な役割を果たすことが期待されている。
【0004】
セパレータ層は、電池の重要な構成要素である。これらの層は、電解質がそれを通過できるようにしながら、電池のアノードとカソードとの接触を防ぐのに役立つ。更に、サイクル寿命及び電力などの電池性能属性は、セパレータの選択によって大きく影響を受ける可能性がある。
【0005】
フッ化ビニリデン(VDF)ポリマーは、電極及び/又は複合セパレータを製造するためのバインダーとして且つ/又は電池、好ましくは二次電池及び電気二重層キャパシタなどの非水性型電気化学装置での使用のための多孔質セパレータのコーティングとして好適であることが当技術分野において知られている。
【0006】
しかしながら、セパレータコーティング組成物に使用されるいくつかのVDFポリマーは、電解質溶液に高い溶解度を有し、電解質溶液に溶解すると、それらは電池の周りを自由に移動する。これは、より高い電解質粘度、リチウムイオンの流れに対する抵抗の増加、容量低下及びセル組立ての点で問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
積層は、電極とセパレータとの間に均一な界面を形成する効果を有する電池セル組立てにおける重要なプロセスであり、サイクル前及びサイクル中の欠陥を低減し、組立てをより容易にし、電池性能特性を改善することができる。積層プロセスは、特定の圧力及び温度条件下にて対面の関係でセパレータを電極と接触させる工程を含む。
【0008】
適切に積層された界面は、積層されていない界面よりもインピーダンス(抵抗)が低いことが多く、これによりセルの電力特性が向上する。
【0009】
電解質-結合剤相互作用による電解質中に浸漬した後のポリマーの体積変化又は有機電解質の取込みは、物理的膨潤と呼ばれる。ある程度の膨潤度を示すポリマーは、通常、より良好な積層を可能にするポリマーである。
【0010】
電池、特にリチウム電池の技術分野では、セパレータ基材材料及び電極に対して優れた接着性を提供することができ、電解質に溶解しないコーティングされたセパレータを提供するという問題が感じられる。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本出願人は、電気化学セル用のセパレータの基材材料をコーティングするのに適した組成物を提供することによって前記問題に直面し、前記コーティング組成物は、セパレータ基材及び電極、特に電解質による浸漬後のカソードへの顕著な接着を提供するようなものである。
【0012】
驚くべきことに、本出願人は、電気化学セル用のセパレータが、標準的な極性非プロトン性溶媒中に不溶性成分の割合が高い、少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマーを含む組成物で少なくとも部分的にコーティングされると、前記問題を解決できることを見出した。
【0013】
同時に、前記コーティング組成物は、電解質溶液への溶解度の低下を示し、したがってイオン伝導性への影響を低減し、電池の長期性能を改善する。
【0014】
したがって、第1の態様では、本発明は、電気化学装置用のセパレータの製造に使用するための水性組成物[組成物(C)]に関し、上記組成物は、
少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ポリマー(A)]であって、前記ポリマー(A)がフッ化ビニリデン(VDF)モノマーに由来する75.0モル%超の繰り返し単位を含む、少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ポリマー(A)]を含み、
前記ポリマー(A)は以下の要件:
45℃においてN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)中の不溶性成分の割合が60重量%超であること;及び
(II)DSC測定による結晶化度が48%未満であること
を満たす。
【0015】
第2の態様では、本発明は、電気化学セル用のセパレータを製造するためのプロセスにおける本発明の組成物(C)の使用に関し、上記プロセスは、以下の工程:
i)コーティングされていない基材層[層(P)]を準備する工程;
ii)上記で定義された組成物(C)を準備する工程;
iii)工程(ii)で得られた前記組成物(C)を、前記基材層(P)の少なくとも一部に少なくとも部分的に塗布し、これにより少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを得る工程;及び
iv)工程(iii)で得られた前記少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを乾燥させる工程
を含む。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義された組成物(C)で少なくとも部分的にコーティングされた基材層[層(P)]を含む電気化学セル用のセパレータに関する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義された少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを含む、二次電池又はキャパシタなどの電気化学セルに関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関連して、用語「重量パーセント」(重量%)は、特定の成分の重量と混合物の総重量との間の比として算出される、混合物中の特定の成分の含量を示す。ポリマー/コポリマー中のある種のモノマーに由来する繰り返し単位に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、ポリマー/コポリマーの総重量に対する当該モノマーの繰り返し単位の重量の間の比を示す。液体組成物の総固形分に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、液体中の全ての非揮発性成分の重量の間の比を示す。
【0019】
「セパレータ」という用語は、電気化学セルの反極性の電極を電気的及び物理的に隔て、且つそれらの間に流れるイオンに対して透過性である多孔質単層又は複数層ポリマー材料を意味することが本明細書によって意図される。
【0020】
「電気化学セル」という用語は、本明細書では、正極、負極及び液体電解質を含む電気化学セルであって、単層又は多層のセパレータが前記電極の一方の少なくとも1つの表面に付着している電気化学セルを意味することが意図される。
【0021】
電気化学セルの非限定的な例としては、とりわけ、電池、好ましくは二次電池及び電気二重層キャパシタが挙げられる。
【0022】
本発明の目的のために、「二次電池」とは、再充電可能な電池を意味することを意図する。二次電池の非限定的な例としては、とりわけ、アルカリ又はアルカリ土類二次電池が挙げられる。
【0023】
本発明の電気化学セル用セパレータは、有利には、電気化学セルに使用するのに適した電気絶縁複合セパレータであり得る。電気化学セルにおいて使用される場合、一般的には、複合セパレータは、有利には、電気化学セル内のイオン伝導を可能にする電解質で充填される。
【0024】
「水性」という用語は、本明細書においては、純水と、水が示す物理的及び化学的特性を実質的に変化させない他の成分と組み合わされた水を含む媒体を意味することを意図する。
【0025】
少なくとも1つのフッ化ビニリデン(VDF)系ポリマー[ポリマー(A)]は、フッ化ビニリデン(VDF)モノマーに由来する75.0モル%超の繰り返し単位を含む。
【0026】
ポリマー(A)は、以下の式:
【化1】
(式中、R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、水素原子、又はC~C炭化水素基であり、ROHは、ヒドロキシル基、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)の少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を更に含み得る。
【0027】
用語「少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)」は、ポリマー(A)が、上で記載されたような1つ又は2つ以上の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本明細書の残りの部分において、表現「親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)」及び「モノマー(MA)」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方において理解され、すなわち、それらは、1つ又は2つ以上の両方の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)を意味すると理解される。
【0028】
親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)は、好ましくは式:
【化2】
(式中、R1、R2、ROHのそれぞれは、上で定義されたような意味を有し、及びR3は、水素であり;より好ましくは、R1、R2、R3のそれぞれは、水素である一方、ROHは、上で詳述したのと同じ意味を有する)
に従う。
【0029】
親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)の非限定的な例は、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0030】
モノマー(MA)は、より好ましくは:
- 下式のヒドロキシエチルアクリレート(HEA):
【化3】
- 下式のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA):
【化4】
- 下式のアクリル酸(AA):
【化5】
- 及び、その混合物から選択される。
【0031】
より好ましくは、モノマー(MA)は、AA及び/又はHEA、更に好ましくはAAである。
【0032】
ポリマー(A)中の(MA)モノマー繰り返し単位の量の決定は、任意の適切な方法によって実施することができる。特に、例えばアクリル酸含有量の決定によく適している酸塩基滴定法、側鎖に脂肪族水素を含む(MA)モノマー(例えば、HPA、HEA)の定量に適切なNMR法、ポリマー(A)の製造中の供給された(MA)モノマーと未反応の残留物(MA)モノマーとの合計に基づく重量差、及びIR法に言及することができる。
【0033】
少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)が存在する場合、ポリマー(A)は、典型的には、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して0.05~10.0モル%を含む。
【0034】
ポリマー(A)は、上で詳述されたとおり、VDF及びモノマー(MA)とは異なる、少なくとも1つの他のコモノマー(CM)に由来する繰り返し単位を更に含むことができる。
【0035】
コモノマー(CM)は、水素化コモノマー[コモノマー(H)]又はフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]のいずれかであり得る。
【0036】
「水素化コモノマー[コモノマー(H)]」という用語は、本明細書中では、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和コモノマーを意味することが意図されている。
【0037】
適切な水素化コモノマー(H)の非限定的な例としては、特に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、並びにスチレン及びp-メチルスチレンなどのスチレンモノマーが挙げられる。
【0038】
「フッ素化コモノマー[コモノマー(F)]」という用語は、本明細書中では、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和コモノマーを意味することが意図されている。
【0039】
コモノマー(CM)は、好ましくは、フッ素化コモノマー[コモノマー(F)]である。
【0040】
好適なフッ素化コモノマー(F)の非限定的な例としては、特に以下のものが挙げられる:
(a)C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン、
(b)C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレン;
(c)式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン、
(d)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロ-、及び/又はブロモ-、及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
(e)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば-CF、-C、-Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
(f)式CF=CFOX(式中、Xは、1つ以上のエーテル基を有するC~C12オキシアルキル基又はC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
(g)式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば-CF、-C、-C、又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば-C-O-CFである)のフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
(h)式:
【化6】
(式中、Rf3、f4、f5、及びRf6のそれぞれは、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC~Cフルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル基、例えば、-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)のフルオロジオキソール。
【0041】
最も好ましいフッ素化コモノマー(F)は、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)及びフッ化ビニルであり、これらの中ではHFPが最も好ましい。
【0042】
少なくとも1つのコモノマー(CM)(好ましくはHFP)が存在する場合、ポリマー(A)中に、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して、典型的には0.05モル%~25.0モル%、好ましくは0.5モル%~5モル%の量で存在する。
【0043】
しかしながら、ポリマー(A)内のフッ化ビニリデン由来の繰り返し単位の量は、化学物質耐性、耐候性及び耐熱性等のフッ化ビニリデン樹脂の優れた特性を損なうことがないように、少なくとも75.0モル%、好ましくは少なくとも90.0モル%、より好ましくは少なくとも95.0モル%であることが必要である。
【0044】
特定の実施形態によると、ポリマー(A)は、本質的にVDF及びコモノマー(F)由来の繰り返し単位からなる。
【0045】
他の実施形態によると、ポリマー(A)は、本質的にVDF及びHFP由来の繰り返し単位からなる。
【0046】
ポリマー(A)は、その物理化学的特性に影響を与えることも損なうこともない、欠陥、末端基等などの他の部分を更に含み得る。
【0047】
組成物(C)は、1つ又は2つ以上の更なる添加剤を更に含み得る。
【0048】
組成物(C)における任意の添加剤には、特に、上記で詳述した粘度調整剤、消泡剤、分散剤、非フッ素化界面活性剤などが含まれる。
【0049】
非フッ素化界面活性剤の中でも、特にアルコキシル化アルコール、例えばエトキシレートアルコール、プロポキシル化アルコール、混合エトキシル化/プロポキシル化アルコール等の非イオン性乳化剤;アニオン性界面活性剤、特に脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、アルキルアリールスルホン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩等;ポリエーテル、第一級ヒドロキシル基又は二重結合を有する側鎖で修飾されたシロキサン等の有機修飾シロキサンが挙げられる。
【0050】
分散剤の中で、アクリレートコポリマーが挙げられる。
【0051】
組成物(C)は、共結合剤を更に含んでもよい。用語「共結合剤」は、本明細書において、乾燥したコーティングの強度を改善し、湿潤コーティングのレオロジーに影響を及ぼす物質を示すことを意図している。組成物(C)に添加することができる共結合剤の適切な例は、アクリル酸、アクリル酸エステル、スチレン-アクリル酸エステル、ビニルアルコール(PVA)又はアクリロニトリル(PAN)のポリマー又は修飾ポリマーである。
【0052】
典型的には、組成物(C)の総固形分は、組成物(C)の総重量に対して5~50重量%の範囲である。
【0053】
組成物(C)の総固形分は、その全ての不揮発性成分の累積であると理解される。
【0054】
本発明の水性組成物(C)で使用されるポリマー(A)の量は、約2.0から97.0重量%まで変動し、上記重量%は、組成物(C)の総固形分重量に基づく。
【0055】
組成物(C)は、表面、特に電気化学セル用のセパレータのものなどの多孔質表面のコーティングに特に適している。
【0056】
本発明による水性組成物は、リチウムイオン二次電池及びリチウム金属二次電池等のリチウム系二次電池に使用するのに適したコーティングされた又は半コーティングされたセパレータの製造に特に有利である。
【0057】
したがって、一態様では、本発明は、電気化学セル用のセパレータを製造するためのプロセスにおける水性組成物(C)の使用に関し、上記プロセスは、以下の工程:
i)コーティングされていない基材層[層(P)]を準備する工程;
ii)上記で定義された組成物(C)を準備する工程;
iii)工程(ii)で得られた前記組成物(C)を、前記基材層(P)の少なくとも一部に少なくとも部分的に塗布し、これにより少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを得る工程;及び
iv)工程(iii)で得られた前記少なくとも部分的にコーティングされたセパレータを乾燥させる工程
を含む。
【0058】
本発明に関連して、用語「基材層」は、本明細書では、単一層からなる単層基材又は互いに隣接した少なくとも2つの層を含む多層基材のいずれかを意味することを意図する。
【0059】
基材層(P)は、非多孔質の基材層であっても、又は多孔質の基材層であってもよい。基材層が複数層基材である場合、前述の基材の外層は、非多孔質の基材層又は多孔質の基材層であることができる。「多孔質の基材層」という用語は、本明細書においては、有限寸法の孔を含む基材層を意味することを意図する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、基材層(P)は、セラミック材料を含む多孔質層と、布帛層とを含む多層基材である。
【0061】
好ましいセラミック材料としては、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、x及びyは、独立して、0~1である)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、BaTiO、HfO(ハフニア)、SrTiO、TiO(チタニア)、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、ZrO(ジルコニア)、SnO、CeO、MgO、CaO、Y及びその任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
布帛層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、及びポリプロピレン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、電気化学装置のセパレータに一般的に使用される任意の布帛によって作製されることができる。好ましくは、基材(P)は、ポリエチレン又はポリプロピレンである。
【0063】
層(P)は、典型的には、有利には少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、又は少なくとも40%、及び有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%の気孔率を有する。
【0064】
層(P)の厚さは、特に限定されないが、典型的には3~100マイクロメートル、好ましくは5~50マイクロメートルである。
【0065】
本発明のプロセスの工程iii)において、組成物(C)は、典型的には、流延、スプレーコーティング、回転スプレーコーティング、ロールコーティング、ドクターブレード、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング及びスクリーン印刷、ブラシ、スキージ、泡付与装置(foam applicator)、カーテンコーティング、真空コーティングから選択される技術によって、層(P)の少なくとも1つの表面に塗布される。
【0066】
本発明による少なくとも部分的にコーティングされたセパレータにおけるコーティングの重量と支持層の重量との比は、典型的には、3:1~0.5:1、例えば2:1、1.5:1、1:1、又は0.75:1である。
【0067】
本発明の方法の工程iv)では、コーティング組成物層は、好ましくは25℃~200℃、好ましくは60℃~180℃に含まれる温度で乾燥させられる。
【0068】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義された組成物(C)で少なくとも部分的にコーティングされた基材層[層(P)]を含む電気化学セル用のセパレータに関する。
【0069】
本出願人は、驚くべきことに、本発明の水性組成物(C)中で使用される場合、標準的な極性非プロトン性溶媒中の一定の程度の結晶化度及び高い割合の不溶性成分を特徴とするポリマー(A)は、電解質と接触した際に高いゲル分率の形成をもたらすことを見出した。
【0070】
前記高いゲル分率の形成のために、ポリマー(A)を含む水性組成物(C)は電解質溶液への溶解度が低下し、それによりポリマー(A)は電池内を自由に移動することができず、電解質の粘度は変化しない。これにより、イオン伝導度への影響が低減され、電池の長期性能が改善される。
【0071】
特に、ポリマー(A)は、炭酸アルキル中で非常に限られた溶解度を有する。
【0072】
同時に、ポリマー(A)は、電解質と接触した際に適切な膨潤を示し、これにより、基材材料及び電極の両方に対する顕著な接着、それによる良好な積層強度に達することが可能になる。
【0073】
したがって、ポリマー(A)を含む組成物(C)は、セパレータ基材及び電極、特にカソードへの顕著な接着のために、電気化学セル用セパレータの基材材料をコーティングするための組成物における使用に特に適している。
【0074】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0075】
本発明は、以下の実施例に関連してより詳細に以下で説明されるが、それらは、本発明を単に例示する目的で提供され、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例
【0076】
原材料
Arkemaから市販されているKynar Flex(登録商標)LBG(LBG)。
【0077】
実施例1-水性VDF-HFP-ポリマーラテックス-ポリマーA1の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を110℃にした後、それぞれ98:2のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して42Bar Assの圧力で一定に維持した。60mLの過硫酸アンモニウム(APS)及び酢酸ナトリウム(NaOAc)の1:1水溶液10,8g/Lを4分間にわたって添加した(900mL/h)。
【0078】
点火から30分後、APS/NaOAc 1:1溶液の添加を、試行の全期間にわたって流速60mL/hで再開した。混合物4000gを供給した際に、供給混合物を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は185分間であった。
【0079】
反応器を室温まで冷却し、固形分23.8重量%を有する水性ラテックスを回収した。
【0080】
このようにして得られたVDF-HFPポリマーは、1.6モル%のHFPを含有し、149℃の融点(Tm2)及び40.4J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、814kDaltonのMw及び76%の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0081】
実施例2-水性VDF-HFP-ポリマーラテックス-ポリマーA2の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を110℃にした後、それぞれ99.5:0.5のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して42Bar Assの圧力で一定に維持した。60mLの過硫酸アンモニウム(APS)及び酢酸ナトリウム(NaOAc)の1:1水溶液10,8g/Lを4分間にわたって添加した(900mL/h)。
【0082】
点火から30分後、APS/NaOAc 1:1溶液の添加を、試行の全期間にわたって流速60mL/hで再開した。混合物4000gを供給した際に、供給混合物を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は155分間であった。
【0083】
反応器を室温に冷却し、ラテックスを回収した。
【0084】
そのようにして得られた水性ラテックスは、23.5重量%の固形分含有率を有していた。このようにして得られたVDF-HFPポリマーは、0.4モル%のHFPを含有し、155℃の融点(Tm2)及び46.2J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、832kDaltonのMw及び78%の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0085】
実施例3-水性VDF-HFP-ポリマーラテックス-ポリマーA3の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を110℃にした後、それぞれ99:1のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して42Bar Assの圧力で一定に維持した。60mLの過硫酸アンモニウム(APS)及び酢酸ナトリウム(NaOAc)の1:1水溶液10.8g/Lを4分間にわたって添加した(900mL/h)。
【0086】
点火から30分後、APS/NaOAc 1:1溶液の添加を、試行の全期間にわたって流速60mL/hで再開した。混合物4000gを供給した際に、供給混合物を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は163分間であった。
【0087】
反応器を室温に冷却し、ラテックスを回収した。
【0088】
そのようにして得られた水性ラテックスは、24.1重量%の固形分含有率を有していた。このようにして得られたVDF-HFPポリマーは、1モル%未満のHFPを含有し、152℃の融点(Tm2)及び43.5J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、849kDaltonのMw及び80%の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0089】
実施例4-水性VDFポリマーラテックス-ポリマーA4の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を110℃にした後、VDFガス状モノマーを供給することによって試行全体を通して50Bar Assの圧力で一定に維持した。60mLの過硫酸アンモニウム(APS)及び酢酸ナトリウム(NaOAc)の1:1水溶液10.8g/Lを10分間にわたって添加した(360mL/h)。
【0090】
点火から30分後、試行の全継続時間にわたり60ml/時の流動速度で過硫酸アンモニウム(APS)の溶液の添加を再開する。4000gのVDFを供給した際に、供給を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は162分間であった。
【0091】
反応器を室温に冷却し、ラテックスを回収した。
【0092】
そのようにして得られた水性ラテックスは、23.5重量%の固形分含有率を有していた。このようにして得られた含有VDFポリマーは、157℃の融点(Tm2)及び47.5J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、773kDaltonのMw及び64%の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0093】
比較例1-水性VDFポリマーラテックス-ポリマーC1の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を122.5℃にした後、VDFガス状モノマーを供給することによって試行全体を通して46Bar Assの圧力で一定に維持した。純粋なジ-ter-ブチルパーオキシド(DTBP)溶液70mL及び0.9g/Lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液300mLを添加した。
【0094】
VDF200gが供給された場合、3.26g/Lのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水溶液に、試行の全期間にわたって供給されたVDF 200gごとに40mLの流束速度が供給された。反応終了時の総SDSは760mLであった。
【0095】
VDF4000gを供給した際に、供給を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は216分間であった。
【0096】
反応器を室温に冷却し、ラテックスを回収した。
【0097】
そのようにして得られた水性ラテックスは、21.2重量%の固形分含有率を有していた。このようにして得られたVDFポリマーは、149℃の融点(Tm2)及び40.4J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、508kDaltonのMw及び3%未満の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0098】
比較例2-水性VDF-HFPポリマーラテックス - ポリマーC2の製造
バッフル及び50rpmで作動するスターラーを装備した21リットルの水平反応器オートクレーブ内に13.5リットルの脱イオン水を導入した。温度を125℃にした後、それぞれ98:2のモル比でVDF/HFPガス状混合物モノマーを供給することにより、試行全体を通して50Bar Assの圧力で一定に維持した。純粋なジ-ter-ブチルパーオキシド(DTBP)溶液70mL及び6.75g/Lの過硫酸アンモニウム(APS)水溶液120mLを添加した。
【0099】
VDF200gが供給された場合、反応温度は115℃に下がり、3.26g/Lのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水溶液に、試行の全期間にわたって供給されたVDF 200gごとに40mLの流束速度が供給された。反応終了時の総SDSは760mLであった。
【0100】
VDF4000gを供給した際に、供給を中断し、次いで、反応温度を一定に保ちながら圧力を30分間低下させた。最終反応時間は263分間であった。
【0101】
反応器を室温に冷却し、ラテックスを回収した。
【0102】
そのようにして得られた水性ラテックスは、22.0重量%の固形分含有率を有していた。このようにして得られたVDF-HFPポリマーは、1.5モル%のHFPを含有し、155℃の融点(Tm2)及び44.9J/gの結晶化度(ASTM D3418に従って測定)、632kDaltonのMw及び6%の不溶性画分を有することが明らかになった。
【0103】
DMA中の不溶性画分の決定のための一般的手順
実施例A1~A4又は比較例C1若しくはC2のラテックスのサンプルを剪断凝固技術によって乾燥させ、前記ラテックスを遠心分離に供し;そのように得られた重量比(0.25% wt/vol濃度)の粉末を重量比1:375でN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)+LiBr 0,01Nの溶液中で45℃で磁気撹拌しながら4時間溶解させた。室温冷却後、Sorvall RC-6 Plus遠心分離機(ロータモデル:F21S-8X50Y)を用いて20,000rpmで1時間遠心分離した。
【0104】
150℃で48時間乾燥させた後、不溶性画分を分離及び定量し、凝固した粉末試料の全重量で除算することによって不溶性画分を決定した。
【0105】
DMA中の重量平均分子量(Mw)を決定するための一般的手順
得られたラテックスのサンプルを剪断凝固技術によって乾燥させ、前記ラテックスを遠心分離に供し;そのように得られた重量比(0.25% wt/vol濃度)の粉末を重量比1:375でN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)+LiBr 0,01Nの溶液中で45℃で磁気撹拌しながら4時間溶解させた。室温冷却後、Sorvall RC-6 Plus遠心分離機(ロータモデル:F21S-8X50Y)を用いて20,000rpmで1時間遠心分離した。
【0106】
各試料の上清を、下で詳述される機器及び条件を用いて分析した。
移動相:DMA
流量:1mL/分
温度:45℃
注入システム:Waters 717plus Autosampler
注入量:200 μL
ポンプ:Waters Isocratic Pump model 1515
カラム:Four Water Styragel HT(300x7.5)mm、10μm粒径:Styragel HT-6、HT-5、HT-4、HT-3 ガード付きカラム
検出器:Waters refractive index model 2414
データ取得及び処理のためのソフトウェア:Waters Empower
【0107】
炭酸プロピレン中のVDF系ポリマーの溶解度を決定するための一般的手順
炭酸プロピレン(PC)を攪拌棒を備えたガラス容器に注ぐ。実施例A1~A4又は比較例C1若しくはC2のラテックスのいずれかを剪断凝固技術によって乾燥させ、前記ラテックスを遠心分離に供することによって得られたポリマー粉末を、90℃の磁気プレート上で撹拌しながらPCに添加する。一般的に使用される濃度は2.5重量%(すなわち、ポリマー0.5g及びPC19.5g)である。溶液/分散液を撹拌しながら90℃で2時間維持する。
【0108】
2時間後、溶液/分散液を20,000rpmで1時間遠心分離する。固体は液体部分(上清)から分離する。上清を更に分析して、総固形分(熱天秤を使用)及び粘度を確認する。
【0109】
総固形分測定:
液体約4gを、ガラス繊維フィルタを載せたアルミニウムパン上に広げる。溶液は、沸騰による質量の損失を回避するために別のガラス繊維フィルタで覆われる。材料を3分間で155℃まで加熱し、50秒間の重量変化が1mg未満になるまで温度を維持する。
【0110】
残りは、溶液中の固体残留物の%を示す。
【0111】
溶解ポリマーは、以下の式を用いて計算される:
【数1】
【0112】
炭酸アルキル中のVDF系ポリマーの膨潤度を決定するための一般的手順
ポリマーA1~A4及び比較VDF系ポリマーC1又はC2の試験片(上記のようにして得られた圧縮成形粉末によって得られた厚さ1.5mm及び直径25mmを有するポリマーディスク)を浸漬した後の膨潤度をECで決定した:DMC:45℃におけるDEC(1:1:1体積)を、ASTM D471に従って質量の変化として決定した。
【0113】
結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
ポリマーA1~A4は、膨潤と炭酸プロピレンへの溶解度との間のより良好な妥協点を示し、電気化学セル用セパレータの基材材料をコーティングするのに特に適している。
【0116】
粘度測定:
粘度は、SC-21スピンドルを備えたブルックフィールド粘度計で測定した。
【0117】
PCの粘度は2.6cPである。
【0118】
溶解ポリマーのゲル化が始まる前に、粘度を測定すべきである。
【0119】
この結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
データは、本発明によるポリマーA1が、電解質溶液への溶解度が低いために、電池内を自由に移動することができず、電解質の粘度が変化しないことを示している。これは、24時間にわたる粘度上昇が無視できるものであるという事実によって確認される。反対に、LBG及び比較例2のポリマーは電解質溶液への高い溶解度を有し、一旦電解質溶液に溶解すると、それらは電池の周りを自由に移動し、より高い電解質粘度並びに対応するリチウムイオンの流れ及び容量低下に対する抵抗の増加に関する問題を引き起こす。
【国際調査報告】