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▶ オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“インスティテュート・レグキフ・マテリアロフ・アイ・テクノロジー”の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】高い熱伝導率を有する粉状材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20240130BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20240130BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240130BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240130BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240130BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B22F1/00 N
C22C21/02
B22F10/28
B33Y70/00
B33Y80/00
C22C21/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539105
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 RU2021050395
(87)【国際公開番号】W WO2022139629
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020143201
(32)【優先日】2020-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522221253
【氏名又は名称】オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“インスティテュート・レグキフ・マテリアロフ・アイ・テクノロジー”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOJ OTVETSTVENNOST’YU ’INSTITUT LEGKIKH MATERIALOV I TEKHNOLOGIJ’
【住所又は居所原語表記】Leninskij prospect,dom 6,stroenie 21,ofis 103,Moscow,119049,RUSSIAN FEDERATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マン,ビクトル クリスティアノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァフロモフ,ローマン オレゴビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ニャザ,キリル ヴヤチェスラヴォヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】コロレフ,ウラジミール アレクサンドロビッチ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA15
4K018BA20
4K018BB04
4K018CA44
4K018KA01
4K018KA70
(57)【要約】
本発明は、冶金の分野に関し、具体的には、選択的レーザ合金化を含む付加技術を使用して部品を製造するために使用されるアルミニウム合金をベースとした粉状材料に関する。ケイ素、鉄、マグネシウム及びジルコニウムを含有し、Si≧Mg6.5+Fe5である粉状アルミニウム材料を提案する。技術的結果は、中強度アルミニウム合金に対応する強度特性を維持しながら、添加剤を含む粉末技術を使用して部品を製造するためのアルミニウム合金の強度及び熱伝導率特性の増加である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加技術を使用して部品を生産するためのアルミニウム粉末材料であって、高い伸びを維持しながら改善された強度及び熱伝導率特性を有し、以下の組成物比率(重量%):
2.00~5.00のケイ素;
0.10~0.50の鉄;
0.10~0.80のマグネシウム;
0.10~0.40のジルコニウム;
最大0.02の銅;
最大0.02のマンガン;
最大0.02のチタン;
残りはアルミニウム及び不可避的不純物を有する、ケイ素、鉄、マグネシウム及びジルコニウムを含有し、
一方で、合金中のケイ素、鉄及びマグネシウムの比率は、Si≧Mg6.5+Fe5の条件に対応する、アルミニウム粉末材料。
【請求項2】
290MPaを超える引張強度、210MPaを超える降伏強度、8%を超える伸び、及び190W/mKを超える熱伝導率を有する、請求項1に記載のアルミニウム粉末材料を用いた製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金、特に、付加技術によって部品を生産するために使用されるアルミニウム合金粉末材料に関する。
【0002】
付加製造は、金属粉末材料から部品を生産するためにますます使用されている。選択的レーザ溶融(Selective laser melting、SLM)は、金属部品を生産するために最も広く使用されている付加技術である。従来のアルミニウム合金生産技術に対する付加技術の重要な利点は以下の通りである:最終製品を生産するためのより短い時間、最小の機械加工許容量で成形部品を生産する能力、改善された重量効率を有する部品を生産するためにトポロジ最適化及びバイオニック設計方法を使用する能力、並びに現在使用されている連続合金と比較してより高い特性のセットを確保する新しい材料組成を使用する能力。
【0003】
これは、航空宇宙産業及び自動車産業のための先進製品の生産を専門とする企業の関心を集めている。競争力及び費用対効果を確保するために、これらの分野で使用される部品及び構造要素は、それらの重量効率に関して厳しい要件を受ける。熱交換器は、航空宇宙産業及び自動車産業の製品の動作を確保するために使用される最も重要なデバイスのうちの1つである。その効率は、エネルギー変換効率係数によって決定される。この係数は、より多くの熱伝達領域が存在することを確保する設計の複雑さを増大させることによって、及び高い熱伝導性材料を使用することによって、増大させることができる。現在、銅は、400W/mKの最も高い熱伝導率係数の1つを有するので、熱交換器のために選択される主要な材料である。しかしながら、銅の高い密度、8.9g/cmは、非常に競争力のある製品に対する厳しい重量効率要件を満たさない。2.7g/cmの密度及び200W/mKの熱伝導率を有するアルミニウム合金の使用、並びに増加した数の熱交換領域を有する複雑な構造の生産を可能にする付加技術の使用により、航空宇宙及び自動車両における熱交換器の重量を、銅と比較して最大10倍減らすことができる。
【0004】
AlSi10Mg合金は、現在、SLM技術に最も広く使用されているアルミニウム合金であり、9~11重量%のケイ素及び0.20~0.60重量%のマグネシウムを含有する(Process optimisation and microstructural analysis for selective laser melting of AlSi10Mg.K.Kempen,L.Thijs,E.Yasa,M.Badrossamay,W.Verheecke,JP.Kruth.Solid Freeform Fabrication Symposium Conference,Vol.22,484-495頁、2011を参照)。
【0005】
この材料は、良好な鋳造性及び高温亀裂の低い傾向を有する中強度アルミニウム合金(引張強度:320MPa、降伏強度:210MPa)であり、そのため、SLMプロセスに好適である。しかしながら、高いケイ素含有量は、この合金の熱伝導率を160W/mKに低下させる。
【0006】
200℃までの範囲の温度で動作する、熱伝達媒体から熱を放散するように設計された熱交換器部品では、より高い熱伝導率係数を有する材料が必要とされる一方で、材料の強度特性は、中強度アルミニウム合金の強度特性と一致すべきである。
【0007】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム合金が知られている(出願公開第2008308760(A)号、2008年12月25日公開):
0.3~1.2のケイ素;
0.7~2.0の鉄;
0.2~0.8のマンガン;
0.1~1.0の亜鉛;
0.0001~1.0のスカンジウム;
0.05~0.8の銅;
0.01~0.05のマグネシウム;
0.001~0.3のジルコニウム;
0.01~0.25のチタン;
0.01~0.1のクロム;
0.01~0.1のバナジウム;
残りはアルミニウム。
【0008】
この合金の十分な強度は、とりわけ、様々な元素の添加による固溶体硬化によって達成される。しかしながら、固溶体中に多量の元素があると、熱伝導率係数を160W/mKへと大幅に低下させる。
【0009】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-マンガン合金が知られている(出願公開第2004176091(A)号、2004年6月24日公開):
2.0~3.0のマンガン;
0.8~1.5のケイ素;
0.05~0.4の鉄;
0.1~3.0の亜鉛;
0.01~1.0のニッケル;
0.01~0.3のジルコニウム;
0.01~0.30のチタン;
0.001~0.2のインジウム;
0.01~0.5のスズ;
残りはアルミニウム。
【0010】
この合金は、自動車熱交換器に使用されるように設計されており、良好な熱伝導率を有する。しかしながら、この合金の主な欠点は、その不十分な高強度特性(σ=145MPa)であり、したがって、航空宇宙産業用の熱交換器材料とみなすことができない。加えて、この合金は、高い蒸気圧を有する亜鉛を含有するので、この合金はSLMプロセスにおいて部分的に失われ、その結果、その強度特性が低下する。
【0011】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-鉄合金が知られている(特許第5301750(B1)号、2013年9月25日公開):
0.00~2.30の銅;
1.20~2.60の鉄;
0.00~1.50のケイ素。
【0012】
この合金の利点は、中強度アルミニウム合金の強度特性を維持しながら、高い熱伝導率を有することである。この合金の主な欠点は、この含有量の合金元素では凝固範囲が広いために、SLM法を使用して製品を生産する際の加工性が低いことである。加えて、合金の高い鉄及び銅含有量は、材料の耐食性に悪影響を及ぼし、腐食環境においてこの合金から製造された部品の耐用年数を著しく減少させる。
【0013】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-マグネシウム-ケイ素合金が知られている(ロシア特許第2014110911(A)号、2015年9月27日公開):
1.0~4.0のケイ素;
1.7~8.0のマグネシウム;
0.1~0.5のスカンジウム;
0.3~0.6のコバルト;
0.2~1.2のチタン/ジルコニウム;
0.4の鉄(最大);
残りはアルミニウム。
【0014】
この合金は、固溶体硬化及び析出硬化のおかげで高い機械的特性を有する。この合金の主な欠点は、マグネシウム含有量が高いことであり、このマグネシウム含有量は、SLMプロセスにおけるスラグに起因して元の粉末と比較して溶融材料の化学組成の変化を引き起こし得るので、SLM中の合金加工性を損なう。加えて、この合金は低い鋳造性を有し、これは、溶融中に高温亀裂をもたらす熱応力に起因してSLMプロセス中の欠陥の可能性を増加させる。この合金は、高価な合金元素であるスカンジウムも含有しており、これは合金の経済的実行可能性を低下させる。
【0015】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-ケイ素-銅合金が知られている(独国特許第112004001160(B4)号、2008年1月10日公開):
11.25~11.75のケイ素;
0.35~0.65の鉄;
1.75~2.75の銅;
0.15~0.3のマグネシウム;
0.42~1.2のマンガン;
最大0.5の亜鉛;
最大0.2のチタン;
0.01~0.03のストロンチウム。
【0016】
マンガン/鉄比は1.2/1.75である。
【0017】
この合金の機械的特性は、中強度アルミニウム合金(310MPa)の機械的特性に等しい。この合金中に1重量%を超える銅が存在するため、この合金は孔食を起こす傾向がある。加えて、この合金の全体的な高い合金化特性は、その熱伝導率の著しい低下をもたらす。
【0018】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-マグネシウム-ケイ素合金が知られている(欧州特許第1167560(A1)号、2002年1月2日公開):
1.0~2.6のマグネシウム;
0.5~2.0のケイ素;
0.5の鉄(最大);
1.0の銅(最大);
0.30の亜鉛(最大);
0.20のチタン(最大);
0.003のベリリウム(最大)。
【0019】
この合金は、低い機械的特性(鋳造時の引張強度:230MPa、降伏強度:140MPa)を有し、これは、分散硬化を確保する元素との不十分な合金化によるものである。
【0020】
以下の成分(重量%)を含有するアルミニウム-ケイ素-銅合金が知られている(米国特許第8758529(B2)号、2014年6月24日公開):
0.5~14のケイ素;
0.25~2.0の銅;
0.1~3.0のニッケル;
0.1~1.0の鉄;
0.1~2.0の亜鉛;
0.1~1.0のマグネシウム;
0~1.0の銀;
0~0.2のストロンチウム;
0~1.0のマンガン;
0~0.5のカルシウム;
0~0.5のゲルマニウム;
0~0.5のスズ;
0~0.5のコバルト;
0~0.2のチタン;
0~0.1のホウ素;
0~0.3のカドミウム;
0~0.3のクロム;
0~0.5のインジウム;
及び以下の元素のうちの少なくとも1つ:
0~0.1のスカンジウム;
0.1~0.2のジルコニウム;
0.25~0.5のイットリウム。
【0021】
この合金は、2つの硬化タイプ:固溶体硬化及び析出硬化によって確保される高い機械的特性を有する。しかしながら、この合金の欠点は、固溶体の高い合金化特性及び熱処理中に放出される多数の相に起因するその低い熱伝導率である。この合金中の高い銅含有量は、材料を孔食しやすくするので、この合金の別の主要な欠点である。
【0022】
アルミニウムをベースとした合金(米国特許出願公開第20050106410(A1)号、2005年5月19日公開)は、特許請求されたものに最も近く、以下の元素(重量%)を含有する:
0.1~1.5のケイ素;
0.1~0.6の鉄;
0.0~1.0の銅;
0.0~0.4のマグネシウム;
0.7~1.8のマンガン;
0.1~3.0の亜鉛;
0.0~0.3のチタン;
0.0~0.3のジルコニウム;
残りはアルミニウム。
【0023】
この合金の欠点は、機械的特性が低いことである(極限引張強度:204MPa、降伏強度:190MPa)。亜鉛はその高い蒸気圧のためにSLM中に損失しやすいので、この合金の別の欠点はその亜鉛含有量である。マグネシウム及び鉄の存在下でのマンガン含有量は、板状のAl(Mn、Fe)相の形成をもたらす可能性があり、これは熱伝導率を著しく低下させる。別の欠点は、合金組成物中に銅が存在することであり、これは、合金結晶化間隔を増加させ、SLMプロセス中に高温亀裂をもたらす。
【0024】
本発明の技術的課題は、付加技術によって熱交換器及びラジエータの部品を生産するための中強度アルミニウム合金に対応する高い熱伝導率及び機械的特性を有するアルミニウム粉末材料を開発する一方で、溶融材料中に高温亀裂部及び大きな孔がないことを確保することである。
【0025】
技術的結果は、アルミニウム合金の熱伝導率特性を増加させること、及び付加生産技術を使用して部品を生産することができるように強度特性を改善することである。
【0026】
以下の割合(重量%)で元素を含有する新規なアルミニウム粉末材料を提案することによって、この問題が解決され、結果が達成される:
2.00~6.00のケイ素;
0.10~0.50の鉄;
0.10~0.80のマグネシウム;
0.10~0.40のジルコニウム;
最大0.02の銅;
最大0.02のマンガン;
最大0.02のチタン;
残りは、アルミニウム及び不可避的不純物。
【0027】
ケイ素、マグネシウム及び鉄の含有量について以下の比率が適切である:Si≧Mg6.5+Fe5。
【0028】
本発明者らはまた、290MPaを超える極限引張強度及び210MPaを超える引張降伏強度を有し、8%を超える伸び及び190W/mKを超える熱伝導率を有する、上述のアルミニウム粉末材料から付加技術を使用して生産された物品を提供する。
【0029】
以下の技術を使用して粉末を生産することが可能である:
- 必要な化学組成の制御を伴うアルミニウムをベースとした溶融物の調製;
- アルミニウム溶融物を精製し、液相温度より少なくとも100℃高い温度への過熱;
- 窒素、アルゴン又はそれらの混合物であるガスによるアルミニウム溶融物のガス噴霧;
- 粉末の必要な部分の分離。
【0030】
ケイ素含有量は、SLM法を使用して製品を作製するときの加工性を確保し、材料の十分なレベルの熱伝導率を確保するために、材料の高い鋳造性の必要性に基づいて選択された。
【0031】
マグネシウム添加剤は、熱処理硬化中にMgSi相を形成することによって合金強度を増加させる。
【0032】
鉄の合金化は、アルミニウム、ケイ素及び鉄をベースとした不溶性金属間化合物介在物の形成に寄与し、これは、追加の硬化を確保し、合金の熱安定性を増加させ、合金元素によるアルミニウムマトリックスの枯渇にも寄与し、これは、熱伝導率の増加をもたらす。
【0033】
ジルコニウムは、熱処理を行う際に過飽和固溶体の分解中に微細に分散したAlZr相を形成するために導入される。ジルコニウムは、アルミニウムマトリックス中で低い拡散係数を有し、その結果、高温エージング中にナノスケール相が形成され、そのサイズのために熱伝導率にほとんど影響を及ぼさない。相はアルミニウムマトリックスとコヒーレントであるので、強い硬化効果を達成することができる。ジルコニウム含有量は、融合した材料中に大きな金属間化合物が形成されるのを回避するように選択され、その結果、硬化効果及び熱伝導率が著しく低下する。
【0034】
実験的に、予期せぬことに、合金中の鉄、ケイ素及びマグネシウムの比率Si≧Mg6.5+Fe5が、印刷材料の強度、延性及び熱伝導率の最適な組み合わせが存在することを確保することが示された。合金元素のこの比率は、硬化相の最適量及び固溶体の最適組成が存在することを確保する。マグネシウム及び鉄の含有量を超えると、固溶体中の過剰な鉄及びマグネシウムに起因して材料の伸び及び降伏強度が低下し、これも材料の熱伝導率の低下に寄与する。
【0035】
以下の実施例1は、この比率が満たされるときの合金特性を示す。実施例2は、Si<Mg6.5+Fe5での材料研究の結果を示す。
【0036】
提案された合金は、マンガン、銅及びチタンの制限された含有量を有する。マンガンをベースとした金属間化合物相を形成するためには、高温処理が必要である。
【0037】
高温処理は、MgSi及びAlZrの成長による硬化効果を低減し、合金の熱伝導率及び強度特性に悪影響を及ぼす。
【0038】
鉄含有アルミニウム合金中に存在するマンガンの別の欠点は、(熱処理中の)粗い非球状相(MnFe)Alの形成であり、これは熱伝導率に悪影響を及ぼす。
【0039】
合金中の銅及びチタン含有量の上限は、合金の凝固範囲を狭めるために制限される。加えて、チタン含有量は、合金の熱伝導率を著しく低下させないように制限される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態例1からのガス流中への溶融物の噴霧によって得られた提案された合金の組成物2、3、4及び6の粉末粒子。
図2】選択的レーザ溶融プロセス及び融合試料の外観。
図3】本発明の実施形態例1からの試料組成物2、3、4及び6の構造の画像。
【0041】
提案された発明を以下の実施例によって説明する。
【0042】
実施例1
合金を以下の順序で調製した。
【0043】
アルミニウムを溶融し、800~810℃の温度まで加熱した。次いで、それを結晶シリコンと合金化した。鉄をFe80F20タブレット(80%Fe、20%フラックス)として720~740℃で導入した。
【0044】
次いで、溶融物を780℃まで加熱した。Al15Zr母合金を添加した後、15~20分毎に撹拌しながら1時間インキュベートした。
【0045】
浸漬後、スラグを除去した。スラグを除去した後、カーナル石フラックスを2kg/tの速度で溶融物表面上に装入した。フラックスが溶融した後、フラックス層の下にマグネシウムを注入した。
【0046】
マグネシウム注入に続いて、15分毎に撹拌しながら60分間浸漬した。
【0047】
浸漬後、スラグを溶融物表面から除去し、化学組成を制御するために試料を採取した。
【0048】
球状粉末は、エジェクタノズルを通して溶融物を噴霧することによって生産した。窒素-酸素混合物を噴霧ガスとして使用し、混合物中の酸素含量は0.8体積%以下であった。
【0049】
得られた粉砕体積を、20~63μmの標的部分を分離するために、ガス動的分離及びふるい分けに供した。
【0050】
その結果、表1に示す化学組成を有する粉末を生産した。
【0051】
【表1】
【0052】
得られた粉末を使用して、SLMによって試料を作製した。試料を作製するために、EOS M290 SLMプリンタを使用した。試料は、レーザパワーを220~350W、走査速度を450~1000mm/秒の範囲内で変化させて生産した。
【0053】
得られた試料の品質を定性的及び定量的金属組織学により決定した。これらの研磨した試料は、標準的な技術を使用し、ミクロ組織を、コーティングされていない表面上で、倒立金属顕微鏡で分析した。
【0054】
強度及び熱伝導率特性を決定するために、試料ブランクを溶融した。溶融した試料ブランクをGOST 1497-84に従って機械加工した。熱伝導率は、LFA 467装置を用いたレーザフラッシュ法を使用して決定した。引張試験は、GOST 1497-84に従って行った。
【0055】
300℃で1時間エージングした後、試料を分析した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
この材料は、プロトタイプと比較して、熱伝導率が23%増加し、引張強度が41%増加することを特徴とする。
【0058】
提案された化学組成を有するアルミニウム粉末材料は、プロトタイプと比較して増加した熱伝導率、引張強度及び降伏強度を有する。
【0059】
実施例2
表3に示す化学組成のアルミニウム合金粉末を、実施例1に記載したプロセスを使用して調製した。これらの合金はケイ素、鉄及びマグネシウムの比率が異なっていた。
【0060】
【表3】
【0061】
試料を作製するために、EOS M290 SLMユニットを使用した。融合試料(長さ80mm、直径12mmの円柱)を機械加工して、GOST 1497-84に従う引張試験、並びに熱伝導率試験のための試料にした。熱伝導率は、LFA 467装置を用いたレーザフラッシュ法を使用して円形試料について決定した。引張試験は、GOST 1497-84に従って行った。試料を300℃で45分間エージングした後に分析した。
【0062】
表4は、熱処理後の表3に従う化学組成を有する試料についてのGOST 1497-84に従う引張試験の結果、及び熱処理前後の熱伝導率分析の結果を示す。
【0063】
【表4】
【0064】
したがって、提案された化学組成を有するアルミニウム粉末材料は、プロトタイプと比較して、増加した熱伝導率、引張強度及び降伏強度を有する。
【0065】
MgSi及びAlZr分散質、並びに鉄、アルミニウム及びケイ素をベースとする多成分介在物の形成は、合金の強度特性を改善した。小さな丸い介在物の形成を伴う固溶体濃度の低減による熱処理(エージング)は、熱伝導率の増加を可能にした。しかしながら、Si<Mg6.5+Fe5では、Si≧Mg6.5+Fe5に対応する表1に示される化学組成を有する合金と比較して、アルミニウムマトリックス中に高いMg及びFe含有量が存在するので、特性は低い。
【0066】
したがって、提案される本発明は、高い伸びを維持しながら、付加技術を使用して部品を生産するためのアルミニウム合金の改善された強度及び熱伝導率特性を提供する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】