IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップの特許一覧

特表2024-505356マイクロ波遮蔽用のPBT-炭素繊維コンポジット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】マイクロ波遮蔽用のPBT-炭素繊維コンポジット
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240130BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240130BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240130BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240130BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K7/06
C08K3/04
C08L69/00
H01Q17/00
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539954
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 IB2021062524
(87)【国際公開番号】W WO2022144854
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20217988.3
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
5J020
【Fターム(参考)】
4F071AA45
4F071AB03
4F071AD01
4F071AE15
4F071AF36Y
4F071AH07
4F071BC01
4F071BC12
4J002AA01W
4J002AA01X
4J002BB02X
4J002BB12X
4J002CF00W
4J002CF00X
4J002CF03W
4J002CF03X
4J002CG00X
4J002CG02Y
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002CM04X
4J002DA036
4J002FA046
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD180
4J002GQ00
5J020EA03
5J020EA04
5J020EA09
(57)【要約】
【解決手段】 開示されるのは、ポリエステルを含んでなる約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤であって、炭素繊維が、少なくとも500g/lのかさ密度および2,000μΩ・cm未満の体積電気抵抗率を有し、個々のフィラメントが、少なくとも300の直径対長さ比を有する炭素繊維充填剤と、を含んでなるコンポジットであって、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の15%未満の透過を発揮し、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、少なくとも15%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮し、全成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt.%を超えず、全重量パーセント値が前記コンポジットの全重量を基準にする、コンポジットである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含んでなる約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;
約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤であって、炭素繊維が、少なくとも500g/lのかさ密度および2,000μΩ・cm未満の体積電気抵抗率を有し、個々のフィラメントが、少なくとも300の直径対長さ比を有する炭素繊維充填剤と、
を含んでなるコンポジットであって、
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の15%未満の透過を発揮し、
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、少なくとも15%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮し、
全成分の一つに合わせた重量パーセントが100wt.%を超えず、全重量パーセントの値が前記コンポジットの全重量を基準にする、コンポジット。
【請求項2】
前記ポリエステルがポリアルキレンテレフタラートポリマーを含んでなる、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項3】
前記ポリエステルがポリブチレンテレフタラートを含んでなる、請求項1から2いずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項4】
前記コンポジットを含んでなる3.175mm厚のモールド成形板状体が、75GHzから110GHzの周波数で入射マイクロ波放射の約5%未満を透過させる、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項5】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定される場合に、40dBから120dBの間の全遮蔽有効度を発揮する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項6】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定された、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物の全遮蔽有効度よりも大きい全遮蔽有効度を発揮する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項7】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され18から26.5GHzの、および75から110GHzの周波数で測定される場合に、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物よりも高いマイクロ波放射の反射を発揮する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項8】
前記炭素繊維充填剤の個々のフィラメントが、5から10mmの長さである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項9】
前記炭素繊維充填剤料の個々のフィラメントが、少なくとも500の直径対長さの比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項10】
前記炭素繊維充填剤が、300:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項11】
前記炭素繊維充填剤が、200:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項12】
前記炭素繊維充填剤が、50:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項13】
前記炭素繊維充填剤が、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体ではない、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項14】
カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体を含まないか、または実質的に含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなり、前記炭素繊維充填剤が、0.15wt.%から2wt.%の量で存在し、前記コンポジットの3.175mmのモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75から110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の透過モードで測定された少なくとも55%のパーセント吸収電力を発揮する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも500J/mの、-30℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも45J/mの、-30℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、請求項15に記載のコンポジット。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも600J/mの、23℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも60J/mの、23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、請求項15に記載のコンポジット。
【請求項18】
前記炭素繊維系充填剤が、約0.12wt.%から約0.98wt.%の間の量で存在し、77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも70%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、請求項15から17のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして少なくとも5wt.%のシロキサン含有量を有するポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなる、請求項15から18のいずれか一項に記載のコンポジットであって、前記コンポジットの全重量を基準にして1wt.%から15wt.%の間の全シロキサン含有量を有するコンポジット。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のコンポジットを含んでなり、電磁放射線用の自動車レーダーセンサである物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロ波遮蔽特性を示す材料に関するものであり、詳細には、自動車用レーダーセンサ用途のマイクロ波遮蔽特性を示す材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業では、車間距離制御装置、駐車/車線変更アシスト、後退警報器、死角検知機能、衝突回避機能、その他多くの機能を用いた運転支援を提供するために、電子レーダーセンサの採用が増加している。これらのセンサの適切な動作を保証するために、これらの装置は、考えられる擬似的電磁放射源から保護されなければならない。マイクロ波放射は、約1ギガヘルツGHz(約300ミリメートル、mmの波長)から300GHzの周波数(約1mmの波長)であり、自動車用用途向けレーダーセンサの動作に使用される最も一般的な電磁エネルギー源である。金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼など)、金属充填剤、例えば、アルミニウムフレーク、ステンレス鋼繊維、および銀コートされたポリアミド繊維を含有するポリマーコンポジット材料、金属化コーティング剤、本質的に導電性のポリマー(例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリンなど)、炭化ケイ素、フェライト類(酸化鉄(III)Fe+Ni/Zn/Cd/Co酸化物)、ならびにカルボニル鉄は、有害なマイクロ波電磁放射から自動車用レーダーセンサを遮蔽するために使用されている材料の一部である。
【0003】
金属はマイクロ波(MW)遮蔽用の最も一般的な材料であるが、重くて高価である。また、金属は、最終部品に成形するための複雑な加工が必要である。ポリマーまたは炭素コンポジットが典型的には好ましく、その理由は、それらが、低密度、低コストであり、成形が容易で、大量のモールド成形部品に製造するのが容易であるからである。さらに、マイクロ波放射を筐体壁に捕捉し、これによって空洞内の電子センサを保護するために、炭素充填剤をコンポジット中で使用してもよい。本開示の態様は、これらの、そして他の要望に対処するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、ポリエステルを含んでなる、約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;少なくとも500グラム/リットル(g/l)のかさ密度および少なくとも7×10ジーメンス/メートル(S/m)の電気伝導率を有する、約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤と、を含んでなるコンポジットに関する。このコンポジットは、自由空間法に従って観測され75から110GHzの周波数で測定される場合に、マイクロ波放射の3%未満の透過を発揮する場合があり、自由空間法に従って観測され18から26.5GHz、および75から110GHzの周波数で測定される場合に、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物よりも高いマイクロ波放射の反射を示す場合がある。コンポジットのモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから110GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも40%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮する。すべての成分の一つに合わせた重量パーセント値は100wt.%を超えず、すべての重量パーセント値はコンポジットの全重量を基準にする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1Aおよび1Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてKバンド(18~26.5GHz)における散乱パラメータを示す。
図2図2Aおよび2Bはそれぞれ、CE-5およびEX-5についてKバンド(18~26.5GHz)における散乱パラメータを示す。
図3図3Aおよび3Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてWバンド(75~110GHz)における散乱パラメータを示す。
図4図4Aおよび4Bはそれぞれ、CE-5およびEX-5についてWバンド(75~110GHz)における散乱パラメータを示す。
図5図5Aおよび5Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図6図6Aおよび6Bはそれぞれ、CE-2およびEX-2についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図7図7Aおよび7Bはそれぞれ、CE-3およびEX-3についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図8図8Aおよび8Bはそれぞれ、CE-4およびEX-4についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図9図9Aおよび9Bはそれぞれ、CE-5およびEX-5についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図10図10Aおよび10Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図11図11Aおよび11Bはそれぞれ、CE-2およびEX-2についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図12図12Aおよび12Bはそれぞれ、CE-3およびEX-3についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図13図13Aおよび13Bはそれぞれ、CE-4およびEX-4についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図14図14Aおよび14Bはそれぞれ、CE-5およびEX-5についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す。
図15図15Aおよび15Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてKバンド(18~26.5GHz)における全遮蔽有効度を示す。
図16図16Aおよび16Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてWバンド(75~110GHz)における全遮蔽有効度を示す。
図17図17Aおよび17Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてKバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント吸収電力を示す。
図18図18Aおよび18Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント吸収電力を示す。
図19図19は、自由空間法に従って誘電特性を測定するために透過モード(左)および金属裏打ち反射モード(右)において使用される装置の図を表す。
図20図20は、CE-1からCE-5およびEX-1およびEX-5の体積電気抵抗率および表面電気抵抗率をそれぞれ表す表3を示す。
図21図21Aおよび21Bはそれぞれ、試料CE-1からCE-5およびEX-1からEX-5の体積電気抵抗率および表面電気抵抗率のグラフ表示である。
図22図22は、PBT-ポリ(カルボナート-シロキサン)配合物についての表4を示す。
図23図23は、CE-6およびEX-6からEX-9の誘電特性についての表5を示す。
図24図24は、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-6、およびEX-6からEX-9についてのε’のグラフ表示である。
図25図25は、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-6、およびEX-6からEX-9についてのε”のグラフ表示である。
図26図26は、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-6、およびEX-6からEX-9についての減衰定数のグラフ表示である。
図27図27は、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-6、およびEX-6からEX-9についての全遮蔽有効度のグラフ表示である。
図28図28は、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-6およびEX-6からEX-9についての透過モードでのパーセント吸収電力のグラフ表示である。
図29図29は、75~110GHzにおけるCE-6についてのε’およびε”のグラフ表示である。
図30図30は、75~110GHzにおけるCE-6についての透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図31図31は、75~110GHzにおけるEX-6についてのε’およびε”のグラフ表示である。
図32図32は、75~110GHzにおけるEX-6についての透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図33図33は、75~110GHzにおけるEX-7についてのε’およびε”のグラフ表示である。
図34図34は、75~110GHzにおけるEX-7についての透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図35図35は、75~110GHzにおけるEX-8についてのε’およびε”のグラフ表示である。
図36図36は、75~110GHzにおけるEX-8についての透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図37図37は、75~110GHzにおけるEX-9についてのε’およびε”のグラフ表示である。
図38図38は、75~110GHzにおけるEX-9についての透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図39図39は、77GHzにおけるCE-6、およびEX-6からEX-9についてのε、ε”のグラフ表示である。
図40図40は、77GHzにおけるCE-6、およびEX-6からEX-9についての反射、吸収、および透過された透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。
図41図41は、23℃でのCE-6、およびEX-6からEX-9の曲げ特性および引張特性を示す表6Aを表す。
図42図42は、23℃でのCE-6、およびEX-6からEX-9の衝撃強度特性を示す表6Bを表す。
図43図43は、30℃でのCE-6、およびEX-6からEX-9の衝撃強度特性を示す表7を表す。
図44図44は、23℃でのCE-6、およびEX-6からEX-9の衝撃強度特性のグラフ表示である。
図45図45は、30℃でのCE-6、およびEX-6からEX-9の衝撃強度特性のグラフ表示である。
図46図46は、CE-6、およびEX-6からEX-9のさらなる特性を示す表8を表す。
図47図47は、CE-6、およびEX-6からEX-9の体積抵抗率および表面抵抗率を示す表9を表す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、マイクロ波遮蔽コンポジット材料に関する。電子レーダーセンサは、自動車産業では、車間距離制御装置、車線変更支援、セルフパーキング、死角検知機能などを含む様々な操作においてドライバーを支援するために使用されている。これらのセンサは、その正常な動作を損なう可能性のある電磁気的干渉から保護されなければならない。金属、例えばアルミニウムおよびステンレス鋼が、マイクロ波遮蔽材料として一般的に使用されているが、重くて高価であり、最終部品に成形するための複雑な加工が必要である。ポリマー/炭素コンポジットは、より低密度で低コストの代替材料として望ましい場合がある。ポリマー/炭素コンポジットはまた、より容易にモールド成形でき、大量のモールド成形部品に製造される。コンポジットの炭素充填剤は、空洞内の電子センサを保護するための筐体の壁の中にマイクロ波放射を隔離する場合がある。
【0007】
従って、適度な電気伝導率、および比較的大きな誘電損失と磁気損失は、マイクロ波遮蔽に使用される材料に要求される特徴の一部である。金属は、マイクロ波(MW)遮蔽にとって最も一般的な材料であるが、重くて高価であり、複雑な加工が必要である。材料の遮蔽有効度(SE)は、導電性材料および/または磁性材料で作られた障壁または遮蔽を用いて電磁場を遮断することによりその周囲の電磁場を低減させる材料の能力を記述する。これらの場合、遮蔽は、保護されることになる材料に入射する電磁放射の一部または全部を吸収するかまたは反射するかのいずれかによって影響を受ける可能性がある。この有害な放射を遮蔽する遮蔽材料の能力は概して、入射放射の周波数(または波長)と保護層の厚さに依存する。また、遮蔽は、材料の電気伝導率および/または誘電特性によっても変化することが予想される。
【0008】
本開示は、モールド成形時に一定の形状を維持する剛性で高弾性率の熱可塑性物系の炭素繊維充填剤について記載しており、これらの材料は、剛性で、モールド成形されると特定の形状を維持する高弾性率のものであり、自動車用センサ用途において電磁放射を捕捉する内部または外部部品として使用することができる。ポリマー系コンポジットは、マイクロ波遮蔽充填剤として炭素繊維を含んでなる。炭素繊維充填剤のアスペクト比によって、炭素粉体または微粒子状充填剤とは異なるMW遮蔽特性が付与される場合がある。
【0009】
本化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法が開示され記載されるのに先立って、それらが、別途指定されていない限り特定の合成方法に限定されず、または別途指定されていない限り特定の試薬に限定されず、それゆえに様々であり得るのが言うまでもないことは、理解されるものとする。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載する目的だけのものであり、限定することを意図するものではないことは、理解されるものとする。本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項に由来する構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
【0010】
さらに、別途言明されていない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが特定の順序で実行されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されていないと理解されるものとする。従って、方法請求項が、そのステップに従うべき順序を実際には記載していない場合、またはステップが特定の順序に限定されることが特許請求の範囲もしくは明細書において別途具体的に言明されていない場合には、いかなる点においても、順序が推論されることが意図されるものではない。このことは、ステップの並びまたは操作の流れに関する論理的な事項;文法的な構成や句読点から導かれる平易な意味;および本明細書に記載される実施形態の数またはタイプを含め、解釈上の非明示的ないかなる可能な根拠についても当てはまる。
コンポジット
【0011】
本開示の態様は、熱可塑性ポリマー成分(ポリエステルを含む)と炭素繊維充填剤とを含んでなるコンポジットに関する。熱可塑性ポリマー成分は、いかなる好適な熱可塑性ポリマーを含んでいてもよい。例には、ポリカルボナート、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、それらのコポリマー、それらのブレンド、またはそれらの組み合わせなど挙げられるが、これらには限定されない。特定の例では、ポリマー成分はポリアルキレンテレフタラートである。
【0012】
開示されたコンポジットから形成されたモールド成形板状体は、マイクロ波の吸収、反射、または遮蔽用途に使用される電気装置の外部または内部部品として好適である場合がある。実験によれば、本開示の材料からモールド成形された板状体は、約75GHzから約110GHzの周波数で約3%未満のマイクロ波放射を透過させることが可能である。モールド成形板状体は、1ミリメートル(mm)から約5mmの厚さを有する場合がある。様々な例では、モールド成形板状体は0.125インチ(3.175mm)の厚さを有する場合がある。本開示の組成物のマイクロ波吸収および反射特性を測定するのに使用された射出成形板状体は、サイズが6インチ×8インチ×1/8インチであった。
【0013】
様々な態様では、本開示は、有害なマイクロ波電磁エネルギーから電子センサを隔離できる筐体の製造にとって有用なコンポジット材料を提供する。これらの材料は、誘電特性、例えば、とりわけ約10GHzから120GHzの周波数での反射、透過、および遮蔽有効度について評価されている。さらに本明細書で開示されるのは、これらの材料から製造されたレーダーセンサ部品(プレート、筐体、カバーなど)、およびこれらの部品から製造された物品(センサ、カメラ、電子制御ユニット(ECU))である。
【0014】
さらなる態様では、コンポジットは、熱可塑性ポリマー成分(ポリエステルを含む)および炭素繊維充填剤を含んでなる場合がある。コンポジットは、ポリエステルと;約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤と、を含んでなる、約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂を含んでなる場合がある。炭素繊維は、少なくとも300g/lのかさ密度および約2,000マイクロオーム-センチメートルμΩ・cm未満の電気抵抗率を有する場合があり、その個々のフィラメントは5~10mmの長さであり、少なくとも300という直径に対する長さの比を有する。開示されたコンポジットは、自由空間法に従って観測され75から110GHzの周波数で測定される場合に、マイクロ波放射の3%未満の透過を発揮する場合がある。開示された組成物は、特にWバンドにおいて、マイクロ波放射の高い反射および低い透過を発揮する。例えば、コンポジットのモールド成形試料は、自由空間法に従って約75GHzから120GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも45%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮する場合がある。
【0015】
さらに開示されるのは、自動車用レーダーセンサの部品、例えばプレート、筐体、またはカバーなどであり、この部品は、ポリマーと炭素充填剤とを含んでなる材料からモールド成形され、モールド成形部品は、特定の設計、平均厚さ、マイクロ波遮蔽効率、吸収バンド幅、および特定の表面電気抵抗率および体積電気抵抗率を有する。本開示のさらに別の態様は、物品、例えば、レーダーセンサ、カメラ、電子制御ユニット(ECU)などであって、レーダー遮蔽材料から作られたモールド成形部品を含んでなり、そのようなモールド成形部品は、センサのプリント回路基板に配置された送信アンテナと受信アンテナとの間のマイクロ波放射の透過を可能にする少なくとも二つの開口部を有する。車線変更支援、セルフパーキング、死角検知機能、衝突回避のための自動車用レーダーセンサは、典型的には24GHzの周波数で動作し、適合車間距離制御装置用のものは、77GHzの周波数で動作する。したがって、本開示のコンポジットは、24GHzの周波数を含むKバンドにおいて、そして77GHzの周波数を含むWバンドにおいて観測されている。
熱可塑性樹脂
【0016】
様々な態様では、コンポジットは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含むものとすることができる。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン系コポリマー、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート(PCT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド-ポリスチレンブレンド、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマー、アクリルポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)系ポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、およびそれらの組み合わせを含んでなる場合がある。熱可塑性樹脂はまた、ポリアミドおよびポリエステル系のエラストマーなどの熱可塑性エラストマーを含むものとすることができる。基本となる基材は、上記の樹脂のブレンドおよび/または他のタイプの組み合わせを含んでなるものとすることもできる。様々な態様では、コンポジットはまた、熱硬化性ポリマーを含んでなる場合がある。適切な熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒドラテックス、キシレン樹脂、ジアリルフタラート樹脂、エポキシ樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、またはそれらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0017】
本開示の様々な態様では、熱可塑性樹脂は、ポリエステルを含んでなる場合がある。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリアルキレンエステル(ポリエステル)、例えばポリアルキレンテレフタラートポリマーを含んでなる場合がある。
【0018】
ポリエステル類は、以下の式(A):
【0019】
【化1】
の繰り返し単位を有し、式中、Tは、テレフタル酸またはその化学的均等物から誘導される残基であり、Dは、エチレングリコール、ブチレンジオール、具体的には1,4-ブタンジオール、またはその化学的均等物の重合から誘導される残基である。二酸の化学的均等物には、ジアルキルエステル類、例えばジメチルエステル類、ジアリールエステル類、無水物、塩類、酸塩化物、酸臭化物、および同類のものなどが挙げられる。エチレンジオールおよびブチレンジオールの化学的均等物には、エステル類、例えばジアルキルエステル類、ジアリールエステル類、および同類のものなどが挙げられる。テレフタル酸またはその化学的均等物、およびエチレングリコールまたはブチレンジオール、具体的には1,4-ブタンジオールまたはその化学的均等物から誘導される単位に加えて、他のTおよび/またはD単位がポリエステル中に存在することができるが、ただし、そのような単位のタイプまたは量が、熱可塑性組成物の所望の特性に著しく悪影響を及すことのないのが前提である。ポリ(アルキレンアリーラート類)は、式(A)によるポリエステル構造を有するものとすることができ、式中、Tは、芳香族ジカルボキシラート類、シクロ脂肪族ジカルボン酸類、またはそれらの誘導体から誘導される基を含んでなる。
【0020】
特に有用なT基の例には、1,2-、1,3-、および1,4-フェニレン;1,4-および1,5-ナフチレン類;シス-またはトランス-1,4-シクロヘキシレン;および同類のものなどが挙げられるが、これらには限定されない。具体的には、Tが1,4-フェニレンである場合には、ポリ(アルキレンアリーラート)は、ポリ(アルキレンテレフタラート)である。加えて、ポリ(アルキレンアリーラート)の場合、特に有用なアルキレン基Dには、例えば、エチレン、1,4-ブチレン、ならびにシス-および/またはトランス-l,4-(シクロヘキシレン)ジメチレンを含むビス-(アルキレン二置換シクロヘキサン)などが挙げられる。
【0021】
ポリアルキレンテレフタラートの例には、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)(PBT)、およびポリ(プロピレンテレフラレート)(PPT)などが挙げられる。また、ポリ(アルキレンナフトアート類)、例えばポリ(エチレンナフタノアート)(PEN)、およびポリ(ブチレンナフタノアート)(PBN)も有用である。有用なポリ(シクロアルキレンジエステル)は、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)(PCT)である。前述のポリエステル類の少なくとも一つを含む組み合わせもまた使用してもよい。
【0022】
他のエステル基を有するアルキレンテレフタラート繰り返しエステル単位を含むコポリマーもまた有用である可能性がある。有用なエステル単位は、異なるアルキレンテレフタラート単位を含むことができ、これらの単位は、個々の単位として、またはポリ(アルキレンテレフタラート類)のブロックとしてポリマー鎖中に存在することができる。そのようなコポリマーの特定の例には、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)-コ-ポリ(エチレンテレフタラート)などが挙げられ、50モル%以上のポリ(エチレンテレフタラート)をポリマーが含む場合にはPETGと略称され、50モル%以上のポリ(l,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)をポリマーが含んでなる場合にはPCTGと略称される。ポリ(シクロアルキレンジエステル)類は、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシラート)類も含むものとすることができる。これらのうち、特定の例が、式(B):
【0023】
【化2】
の繰り返し単位を有するポリ(l,4-シクロヘキサンジメタノール-l,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)(PCCD)であり、式中、式(A)を使用して記載されるとおり、Rは、1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導される1,4-シクロヘキサンジメチレン基であり、Tは、シクロヘキサンジカルボキシラートまたはその化学的均等物から誘導されるシクロヘキサン環であって、シス異性体、トランス異性体、または前述の異性体の少なくとも一つを含んでなる組み合わせを含んでなるものとすることができる。
【0024】
別の態様では、コンポジットは、ポリ(l,4-ブチレンテレフタラート)すなわち「PBT」樹脂をさらに含んでなるものとすることができる。PBTは、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%がテトラメチレングリコールからなるグリコール成分と、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%がテレフタル酸および/またはそのポリエステル形成性誘導体からなる酸またはエステル成分とを重合させることによって得られる場合がある。市販のPBTの例には、SABIC(商標)製のVALOX(商標) 315、VALOX(商標) 195、およびVALOX(商標) 176の商品名で入手可能なものが挙げられ、これらは、摂氏(℃)23度から30度で、60:40のフェノール/テトラクロロエタン混合物または同様の溶媒中で測定される、0.1デシリットル/グラム(dl/g)から約2.0dl/g(または0.1dl/gから2dl/g)の固有粘度を有する。一態様では、PBT樹脂は、0.1dl/gから1.4dl/g(または約0.1dl/gから約1.4dl/g)、具体的には0.4dl/gから1.4dl/g(または約0.4dl/gから約1.4dl/g)の固有粘度を有する。
【0025】
さらなる態様では、コンポジットは、ポリカルボナート-ポリシロキサンコポリマーまたはポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなる場合がある。ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの非限定的な例は、SABIC(商標)から入手可能な種々のコポリマーを含んでなる場合がある。一態様では、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーは、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして1wt.%から45wt.%の間の全シロキサン含有量を有する場合がある。一例として、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーは、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして6重量%のポリシロキサン含有量を有する場合がある。様々な態様では、6重量%ポリシロキサンブロックコポリマーは、ビスフェノールAポリカルボナート絶対分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、約23,000から24,000ダルトンの重量平均分子量(M)を有する場合がある。特定の態様では、6重量%のシロキサンポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、300℃/1.2kgで約10cm/10分のメルトボリュームフローレート(MVR)を有する場合がある(例えば、SABICイノベーティブ・プラスティックス社(Innovative Plastics)から「透明」EXL C9030T樹脂ポリマーとして入手可能な6重量%のポリシロキサン含有量のコポリマーであるC9030Tを見られたい)。さらなる例では、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーは、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして20重量%のポリシロキサンを含んでなる場合がある。好適なポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーは、パラ-クミルフェノール(PCP)でエンドキャップされた、そして20%のポリシロキサン含有量を有する、ビスフェノールAポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーを含んでなる場合がある(SABIC(商標)から「不透明」EXL C9030Pとして市販されているC9030Pを見られたい)。様々な態様では、20%のポリシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラム上でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してポリカルボナート標準に従って試験し、約1.0ml/分の流量で溶出した1mg/mlの試料上で264nmに設定されたUV-VIS検出器を使用してポリカルボナート参照に対して較正した場合に、約29,900ダルトンから約31,000ダルトンである場合がある。さらに、20%のポリシロキサンブロックコポリマーは、7cm/10分の、300℃/1.2kgでのMVRを有する場合があり、約5μmから約20μmの範囲のサイズのシロキサン領域を発揮する可能性がある。ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーは、コンポジットの全重量を基準にして1wt.%から15wt.%の間の全シロキサン含有量を有するような量で、コンポジット中に存在する場合がある。
【0026】
本明細書に記載されるとおり、組成物は、約40wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマーを含んでなる場合がある。さらなる例では、組成物は、約50wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約40wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約55wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約60wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約70wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約40wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約55wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマー、または約60wt.%から約95wt.%のポリアルキレンポリマー、または約75wt.%から約99wt.%のポリアルキレンポリマーを含んでなる場合がある。
【0027】
組成物の特定の態様は、約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約40wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約55wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約60wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約70wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約40wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約55wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約60wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂、または約75wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂を含む。様々な態様では、コンポジットは、熱可塑性樹脂のブレンド、例えば好適なポリエステル樹脂のブレンドを含んでなる。
炭素繊維充填剤
【0028】
様々な態様では、コンポジットは炭素繊維充填剤を含んでなる。様々なタイプの導電性炭素繊維を組成物中で使用してもよい。炭素繊維は概して、その直径、形態、および黒鉛化の程度(形態および黒鉛化の程度は相互に関連している)に従って分類される。これらの特徴は現状、炭素繊維の合成に使用される方法によって決まる。さらに、炭素繊維充填剤またはコンポジットは、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体もしくは微粒子を含まない、または実質的に含まない場合がある。
【0029】
特定の態様では、炭素繊維充填剤は、コーティング剤またはサイジング剤を含む。好適なコーティング剤は、ポリウレタンまたはポリアミドなどのポリマーを含んでなる場合がある。特定の例として、炭素繊維は、ポリウレタンのコーティング剤またはサイジング剤を有する場合がある。その量またはサイジング剤の含有量は様々である場合がある。サイジング剤は繊維の重量を基準にして最高10%である場合がある。例えば、炭素繊維は、2%から8%、または3%から6%のサイジング剤を含んでなる場合がある。特定の例では、炭素繊維は、2.7%のポリウレタンサイジング剤を有する場合がある。
【0030】
炭素繊維充填剤は、特定のかさ密度を有する場合がある。一例では、炭素繊維充填剤は、少なくとも100グラム/リットル(g/l)、少なくとも200g/l、少なくとも250g/l、少なくとも300g/l、または少なくとも400g/l、または少なくとも500g/l、または少なくとも600g/lのかさ密度を発揮する場合がある。
【0031】
さらなる態様では、炭素繊維は、特定の長さを有する場合がある。炭素繊維は、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mmの長さを有する場合がある。特定の態様では、炭素繊維は、約5mmから約10mmの長さを有する場合がある。例えば、炭素繊維は、少なくとも6mmの長さを有する場合がある。所与の炭素繊維の個々のフィラメントは、繊維束にまとめられている場合がある。個々の炭素繊維フィラメントは、約7マイクロメートル(μm)の直径を有する場合がある。個々のフィラメントは、1~2mmの直径を有する繊維束にまとめられている場合がある。
【0032】
炭素繊維充填剤は、特定の導電率を有する場合がある。例えば、炭素繊維充填剤の導電率は、9・10S/mである場合がある。炭素繊維充填剤は、約2,000μΩ・cm未満の電気抵抗率を発揮する場合がある。特定の炭素繊維充填剤は、帝人/東邦アメリカ社(Teijin/Toho America Inc.)Tenax(商標)からTenax-J HT C493として市販されているHT C493タイプである場合がある。
【0033】
いくつかの態様では、組成物は、ポリマー組成物の全重量を基準にして約0.01wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤を含んでなるものとすることができる。炭素充填剤に対する熱可塑性樹脂の比は、約10,000:1から約5:1、1000:1から約5:1、100:1から約5:1、1000:1から約3:1、32:1から約5:1、または約24:1から約6:1である場合がある。さらなる態様では、組成物は、約4wt.%から約8wt.%、または約0.1wt.%から約6wt.%、または約0.1wt.%から約10wt.%、または約1wt.%から約8wt.%、または約0.5wt.%から約7wt.%の炭素繊維充填剤、または約1wt.%から約12wt.%の炭素系充填剤、または約2wt.%から約10wt.%の炭素繊維充填剤を含む場合がある。
添加剤
【0034】
開示された熱可塑性組成物は、モールド成形熱可塑性部品の製造に従来使用されている一つまたは複数の添加剤を含んでなるものとすることができるが、ただし、随意の添加剤が、得られる組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさないことが条件である。随意の添加剤の混合物もまた使用することができる。そのような添加剤は、コンポジット混合物を形成するための成分の混合の最中の好適な時点で混合することができる。例示的な添加剤には、紫外線剤、紫外線安定化剤、熱安定化剤、帯電防止剤、抗微生物剤、滴下防止剤、放射線安定化剤、顔料、染料、繊維、充填剤、可塑剤、繊維、難燃剤、酸化防止剤、潤滑剤、木材、ガラス、および金属、ならびにそれらの組み合わせなどを挙げることができる。特定の態様によれば、ポリマー組成物は、高レベルの(例えば、ポリマー組成物の全重量を基準にして30wt.%を超える)充填剤を用いてさえ、機械的および誘電的性能を維持している場合がある。
【0035】
本明細書で開示するコンポジットは、一つまたは複数のさらなる充填剤を含んでなるものとすることができる。充填剤は、さらなる衝撃強度を付与するように、および/またはポリマー組成物の最終的な選択された特性に基づくさらなる特性を提供するように、選択することができる。いくつかの態様では、充填剤は、粘土、酸化チタン、アスベスト繊維、シリカート類およびシリカ粉体、ホウ素粉体、炭酸カルシウム類、タルク、カオリン、硫化物、バリウム化合物、金属および金属酸化物、珪灰石、ガラス球、ガラス繊維、フレーク状充填剤、繊維状充填剤、天然の充填剤および補強剤、ならびに補強用の有機繊維状充填剤を含むことのできる、無機材料を含んでなるものとすることができる。特定の態様では、コンポジットは、ガラス繊維充填剤を含んでなる場合がある。例えば、コンポジットは、コンポジットの全重量を基準にして約0.01wt.%から約25wt.%、約10wt.%から約25wt.%、約15wt.%から約25wt.%のガラス繊維充填剤を含んでなる場合がある。さらなる態様では、コンポジットは、ガラス充填剤を含まない、または実質的に含まない場合がある。
【0036】
適切な充填剤または補強剤には、例えば、ウンモ、粘土、長石、石英、珪石、パーライト、トリポリ、珪藻土、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、砂、窒化ホウ素粉体、ケイ酸ホウ素粉体、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム類(チョーク、石灰石、大理石、および合成沈殿炭酸カルシウム類など)、タルク(繊維状、モジュラー(modular)、針状、薄板状タルクを含む)、珪灰石、中空または中実のガラス球、シリカート球、セノスフェア、アルミノケイ酸塩または(アーモスフェア)、カオリン、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、または銅のウィスカー、連続およびチョップド炭素繊維またはガラス繊維、硫化モリブデン、硫化亜鉛、チタン酸バリウム、フェライトバリウム、硫酸バリウム、重晶石、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、微粒子状または繊維状のアルミニウム、青銅、亜鉛、銅、もしくはニッケル、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、フレーク状二ホウ化アルミニウム、フレーク状アルミニウム、スチールフレーク、天然の充填剤であって、木粉、繊維状セルロース、綿、サイザル麻、ジュート、デンプン、リグニン、粉砕したナッツ殻、または籾殻などの充填剤、補強用有機繊維状充填剤であって、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル類、ポリエチレン、芳香族ポリアミド類、芳香族ポリイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリ(ビニルアルコール)などの充填剤のみならず、前述の充填剤または補強剤の少なくとも一つを含んでなる組み合わせなどを挙げることができる。充填剤および補強剤は、例えばシランでコーティングまたは表面処理されて、ポリマーマトリクスとの接着性および分散性を向上させる場合がある。充填剤は概して、全組成物100重量部を基準にして1から200重量部の量で使用することができる。
【0037】
いくつかの態様では、熱可塑性組成物は相乗剤を含む場合がある。様々な例では、充填剤は難燃性相乗剤としての役割を果たす場合がある。相乗剤は、難燃性組成物に加えられた場合に、相乗剤を除いて同一成分を同量で含有する比較組成物に勝る、難燃特性の向上を促進する。相乗剤としての役割を果たす可能性のある鉱物充填剤の例は、ウンモ、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、珪灰石、硫酸バリウム、シリカ、カオリン、長石、重晶石、もしくは同類のもの、または前述の鉱物充填剤の少なくとも一つを含んでなる組み合わせである。金属相乗剤、例えば酸化アンチモンもまた難燃剤と共に使用することができる。一例では、相乗剤は、水酸化マグネシウムとリン酸とを含んでなる場合がある。鉱物充填剤は、約0.1から約20μm、具体的には約0.5から約10μm、より具体的には約1から約3μmの平均粒子サイズを有する場合がある。
【0038】
熱可塑性組成物は、酸化防止剤を含んでなるものとすることができる。酸化防止剤は、一次酸化防止剤または二次酸化防止剤のいずれかを含むものとすることができる。例えば、酸化防止剤には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、もしくは同類のものなどの有機ホスファイト類;アルキル化モノフェノール類もしくはポリフェノール類;ポリフェノール類と、ジエン類、例えばテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタンとのアルキル化反応生成物;パラ-クレゾールもしくはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン類;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類;アルキリデンビスフェノール類;ベンジル化合物;ベータ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸と一価もしくは多価アルコール類とのエステル類;ベータ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸と一価もしくは多価アルコール類とのエステル類;ジステアリルチオプロピオナート、ジラウリルチオプロピオナート、ジトリデシルチオジプロピオナート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、もしくは同類のものなどのチオアルキルもしくはチオアリール化合物のエステル類;ベータ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸、もしくは同類のものなどのアミド類、または前述の酸化防止剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。酸化防止剤は概して、充填剤を除いた全組成物100重量部を基準にして0.01から0.5重量部の量で使用することができる。
【0039】
様々な態様では、熱可塑性組成物は離型剤を含んでなるものとすることができる。例示的な離型剤には、例えば、金属ステアラート、ステアリルステアラート、ペンタエリスリトールペンタステアラート、蜜ろう、モンタンろう、パラフィンろう、もしくは同類のもの、または前述の離型剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。離型剤は概して、充填剤を除いた全組成物100重量部を基準にして、約0.1から約1.0重量部の量で使用される。
【0040】
一態様では、熱可塑性組成物は、熱安定化剤を含んでなるものとすることができる。一例として、熱安定化剤には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス-(2,6-ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス-(モノ-およびジ-ノニルフェニルの混合物)ホスファイト、もしくは同類のものなどの有機ホスファイト類;ジメチルベンゼンホスホナート、もしくは同類のものなどのホスホナート類、トリメチルホスファート、もしくは同類のものなどのホスファート類、または前述の熱安定化剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。熱安定化剤は概して、充填剤を除いた全組成物100重量部を基準にして0.01から0.5重量部の量で使用することができる。
【0041】
さらなる態様では、光安定化剤を、熱可塑性組成物中に存在させることができる。例示的な光安定化剤には、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、および2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、もしくは同類のものなどのベンゾトリアゾール類、または前述の光安定化剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。光安定化剤は概して、充填剤を除く全組成物100重量部を基準にして、約0.1から約1.0重量部の量で使用することができる。熱可塑性組成物はまた、可塑剤を含むものとすることができる。例えば、可塑剤には、ジオクチル-4,5-エポキシ-ヘキサヒドロフタラートなどのフタル酸エステル類、トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌラート、トリステアリン、エポキシ化大豆油、もしくは同類のもの、または前述の可塑剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。可塑剤は概して、いかなる充填剤料をも除いた全組成物100重量部を基準にして、約0.5から約3.0重量部の量で使用される。
【0042】
紫外線(UV)吸収剤もまた、開示された熱可塑性組成物中に存在させることができる。例示的な紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類;ヒドロキシベンゾトリアゾール類;ヒドロキシベンゾトリアジン類;シアノアクリラート類;オキサニリド類;ベンゾオキサジノン類;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール(CYASORB(商標) 5411);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標) 531);2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(CYASORB(商標) 1164);2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(CYASORB(商標) UV-3638);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標) 3030);2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛など、いずれも粒子サイズ100ナノメートル未満のナノサイズ無機材料;もしくは同類のもの、または前述のUV吸収剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。UV吸収剤は概して、いかなる充填剤をも除いた全組成物100重量部を基準にして、0.01から3.0重量部の量で使用される。
【0043】
熱可塑性組成物は、潤滑剤をさらに含むものとすることができる。一例として、潤滑剤は、例えば、アルキルステアリルエステル類、例えば、メチルステアラート、または同類のものなどの脂肪酸エステル;適切な溶媒中、メチルステアラートと、ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、およびそれらのコポリマーを含む親水性および疎水性界面活性剤との、例えば、メチルステアラートと、ポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーとの混合物;または前述の潤滑剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。潤滑剤は概して、いかなる充填剤をも除いた全組成物100重量部を基準にして、約0.1から約5重量部の量で使用することができる。
【0044】
滴下防止剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成または非フィブリル形成フルオロポリマーもまた、組成物中で使用することができる。滴下防止剤は、硬質コポリマー、例えばスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)によってカプセル化することができる。SANの中にカプセル化されたPTFEはTSANとして公知である。一例では、TSANは、カプセル化されたフルオロポリマーの全重量を基準にして50wt.%のPTFEと50wt.%のSANとを含んでなるものとすることができる。SANは、例えば、コポリマーの全重量を基準にして75wt.%のスチレンと25wt.%のアクリロニトリルとを含んでなるものとすることができる。滴下防止剤、例えばTSANは、いかなる充填剤をも除いた全組成物100重量部を基準にして0.1から10重量部の量で使用することができる。
【0045】
一例として、開示された組成物は、耐衝撃性改良剤を含んでなるものとすることができる。耐衝撃性改良剤は、化学反応性の耐衝撃性改良剤とすることができる。定義によれば、化学反応性の耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤がポリマー組成物に加えられた場合に、組成物の耐衝撃特性(アイゾッド衝撃強度の値で表される)が向上するような少なくとも一つの反応性基を有するものとすることができる。いくつかの例では、化学反応性の耐衝撃性改良剤は、無水物、カルボキシル、ヒドロキシル、およびエポキシから選択されるがこれらに限定されない反応性官能基を有するエチレンコポリマーとすることができる。本開示のさらなる態様では、組成物は、ゴム状耐衝撃性改良剤を含んでなるものとすることができる。ゴム状耐衝撃性改良剤は、力を除去した後に形状およびサイズが室温で実質的に回復可能であるポリマー材料とすることができる。しかし、ゴム状耐衝撃性改良剤は典型的には、0℃未満のガラス転移温度を有することが望ましい。特定の態様では、ガラス転移温度(T)は-5℃未満、-10℃未満、-15℃未満とすることができ、典型的には-30℃未満のTで、より良好な性能が得られる。代表的なゴム状耐衝撃性改良剤には、例えば、機能化ポリオレフィンエチレン-アクリラートターポリマー、例えばエチレン-アクリル酸エステル類-無水マレイン酸(MAH)、またはグリシジルメタクリラート(GMA)などを挙げることができる。機能化されたゴム状ポリマーは随意に、モノマーを含有する無水物基、例えば無水マレイン酸に由来する、骨格内の繰り返し単位を含有するものとすることができる。別のシナリオでは、機能化されたゴム状ポリマーは、重合後のステップにおいてポリマーにグラフトされる無水物部分を含有するものとすることができる。耐衝撃性改良剤には、エチレン-エチルアクリラートコポリマー、ポリブチレンテレ/イソフタラート-コ-ポリオキシブチレン、またはエチレン-メチルアクリラート-グリシジルメタクリラートコポリマー、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。
特性および物品
【0046】
特定の態様では、開示されたコンポジットは、炭素粉体を含んでなる、そして開示された炭素繊維充填剤が存在しない、実質的に同様の参照組成物と比較して、より望ましいマイクロ波遮蔽特性を発揮する場合がある。例えば、ポリブチレンテレフタラートの同一混合物を含むが、導電性充填剤として(炭素繊維充填剤ではなく)カーボンブラック粉体を含む参照配合物と比較して、(重量パーセントとして)同量の炭素繊維を含有する組成物は、以下の特性:
- Kバンド(18~26.5GHz)およびWバンド(75~110GHz)におけるマイクロ波放射のより高い反射;
- Kバンド(18~26.5GHz)およびWバンド(75~110GHz)におけるマイクロ波放射のより低い透過;
- Kバンド(18~26.5GHz)、5~80dB対2~25dB、およびWバンド(75~110GHz)、45~120dB対5~55dBの、マイクロ波放射のより高い範囲の遮蔽有効度(SE);
- 調査した全ての組成物について、高周波数のWバンド(75~110GHz)でのほぼ完全に不透明なマイクロ波性能(約3%未満の透過);
- 4wt%以上の炭素繊維を含有する配合物について、より低周波数のKバンド(18~26.5GHz)でのほぼ完全に不透明なマイクロ波性能(約3%未満の透過)
を発揮する。
【0047】
開示されたコンポジットからモールド成形された板状体は、特定のマイクロ波遮蔽特性を発揮する場合がある。例えば、約0.125インチ(3.175mm)の厚さでのモールド成形板状体は、約75GHzから110GHzの周波数で入射マイクロ波放射の少なくとも45%を反射する場合があり、約18GHzから26.5GHzの周波数で入射マイクロ波放射の少なくとも30%を反射する場合がある。さらに、炭素繊維を含有する組成物EX1から5は、KバンドおよびWバンドにおいて調べたすべての周波数について、そして炭素粉体および炭素繊維の同一充填量について、炭素粉体を含有する組成物CE-1からCE-5よりも多くのマイクロ波放射を反射することが見出された(図5から図14)。実施例EX-3、EX-4、およびEX-5は、Kバンド(18~26.5GHz)において約70%より高い、Wバンド(75~110GHz)において約65%より高いパーセント反射を示した。また、比較例組成物CE-1からCE-5のいずれも、Kバンド(18~26.5GHz)において約45%より高い、そしてWバンド(75~110GHz)において約40%より高い反射を生じないことも見いだされた。そのような性能が、1mmから5mmの間の厚さのモールド成形板状体について見られる可能性がある。開示されたコンポジットからモールド成形された板状体は、特定の減衰特性を発揮する場合がある。
【0048】
このコンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料は、自由空間法に従って観測され18から26.5GHzおよび75から110GHzの周波数で測定される場合に、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物よりも高いマイクロ波放射の反射を発揮することが見出された。
【0049】
PBTとポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなるコンポジットは、さらなる特性を発揮する。これらの配合物は概して、より低い炭素繊維充填剤含有量でかなりの性能を達成した。Wバンド(75~110GHz)における透過モードで測定されたパーセント吸収電力は、ポリエステルのみを有し炭素繊維の充填量が高い組成物については、入射放射の55%より低かった一方、この値は、炭素繊維を含む量は少ないがポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーを特徴的とする組成物については、55%より高かった。0.15wt.%から2wt.%の量で存在する炭素繊維充填剤を有するポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーを含むコンポジットは、77GHzで少なくとも70%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する場合がある。これらのコンポジットはまた、ASTM D256に従って測定される場合、少なくとも500J/mの、-30℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度と、少なくとも45J/mの、-30℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮した。
【0050】
よって、開示されたコンポジットを、マイクロ波吸収とマイクロ波反射との間のバランスを最適化するために使用して、所望の遮蔽有効度(吸収による遮蔽と反射による遮蔽との両方の組み合わせ)を達成できるようにしてもよい。開示された材料のポリマー/充填剤の比は、それらの材料の電磁応答を修正するように操作してもよい。
【0051】
自動車産業では、電子レーダーセンサを、その正常な動作を損なう電磁気的干渉から保護するために、遮蔽特性を利用してきた。金属(アルミニウム、ステンレス鋼)は、マイクロ波(MW)遮蔽用の最も一般的な材料であるが、重く高価であり、最終部品に成形するには複雑な加工が必要である。炭素充填剤は、空洞内の電子センサを保護する筐体壁の中でMW放射を捕捉または偏向させる。ポリマー-炭素コンポジットは、例えば、自動車のボンネットの下の筐体に使用される場合には、外部起源の電磁放射がセンサの電子性能を劣化させるのを防止することにより、筐体内に位置するレーダーセンサを保護することができる。また、とりわけシリコーン、ポリウレタン、およびニトリルゴムなどの炭素含有エラストマーも、空洞内のセンサの通常動作によって発生する共振周波数を減衰させる高損失保護ブランケットとして使用することができる。比較的高い誘電定数と電気伝導率、大きな誘電損失と磁気損失は、マイクロ波遮蔽に使用される材料に要求される特徴の一部である。本開示は、レーダーセンサを有害な電磁気的干渉から保護するのに使用できるPBT-炭素繊維コンポジットを提供する。これらのコンポジットのポリマー/充填剤の比は、マイクロ波吸収および反射の相対量を調整してこれらの材料の遮蔽有効度を最大にするように、操作することができる。
【0052】
レーダー遮蔽材料は、主にエラストマー系の柔軟なシートまたはブランケット、液体塗料、および独立気泡ポリマー発泡体の形態で市販されている。本開示は、剛性があってモールド成形時に一定の形状を維持する、熱可塑性物を用いた炭素繊維充填材料を提供し、それらの材料は、自動車用センサ用途において電磁放射を反射する内部または外部部品として使用することができる。本明細書で開示されるのは、自動車用センサ用途で電磁放射を捕捉する内部または外部部品として使用できる、熱可塑性物を用いた炭素繊維充填材料である。開示された組成物は、エラストマー樹脂ではなく熱可塑性樹脂を含むので、同等のエラストマー樹脂よりも大きい弾性率を発揮する場合がある。本開示のさらなる態様は、ポリマーと炭素繊維充填剤とを含んでなる材料からモールド成形される自動車用レーダーセンサの部品(とりわけ、プレート、筐体、カバー)を含み、このモールド成形部品は、特定の設計、平均厚さ、マイクロ波遮蔽効率、吸収バンド幅、遮蔽有効度、および減衰を有する。
【0053】
本開示のさらに別の実施形態は、レーダー遮蔽材料から作られたモールド成形部品を含んでなる物品(とりわけ、レーダーセンサ、カメラ、ECU)であり、そのようなモールド成形部品は、センサのプリント回路基板内に位置する送信アンテナと受信アンテナとの間のマイクロ波放射の透過を可能にする少なくとも二つの開口部を有する。様々な態様では、本開示は、本明細書の組成物を含んでなる物品に関する。組成物は、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの物品を形成するための様々な手段によって、有用な形状の物品にモールド成形することができる。組成物は、良好な流動性、良好な衝撃強度、および良好な誘電性能を有する材料を必要とする物品の製造に有用である可能性がある。様々な態様では、組成物は、導電性の目的にも有用である場合がある。
【0054】
本明細書で開示される組成物の有利な特性は、一連の用途とって適切なものとなり得る。
コンポジットの製造方法
【0055】
本開示の態様はさらに、熱可塑性ポリマー成分を含むコンポジットを製造する方法に関する。多くの態様では、組成物は、様々な方法に従って準備することができる。本開示の組成物は、配合物において所望されるいずれかのさらなる添加剤との材料の親密な混和が関与する様々な方法によって、前述の成分とブレンドする、配合する、またはそうでければ一つに合わせることができる。商業的なポリマー加工設備において溶融混合装置が利用可能であるため、溶融成形法を使用することができる。様々なさらなる態様では、そのような溶融成形法において使用される装置には、共回転および逆回転押出機、単軸スクリュ押出機、共混練機、ディスク・パック・プロセッサ(disc-pack processor)、および様々な他のタイプの押出装置を挙げることができるが、これらには限定されない。さらなる態様では、押出機は二軸スクリュ押出機である。様々なさらなる態様では、組成物は、約180℃から約350℃、特に250℃から300℃の温度で、押出機中で加工することができる。
【0056】
方法は、所望の厚さの板状体を提供するコンポジットを加工することをさらに含んでなる場合がある。板状体は、押出成形、射出成形、圧縮成形、または射出圧縮成形することができて、約0.5mmから6mmの間の厚さを有する場合がある。薄い熱可塑性フィルムには、ラミネート加工、共押出、熱成形、またはホットプレスなどであるがこれらに限定されない他の工程も適用できる可能性もある。そのような態様では、他の材料のさらなる層(例えば、他の熱可塑性ポリマー層、金属層など)をコンポジットと組み合わることができる可能性がある。本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項に由来する構成要素の組み合わせが、本開示に包含される。
定義
【0057】
また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載する目的だけのものであり、限定することを意図するものではないことは、理解されるものとする。本明細書、および特許請求の範囲で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprising)」は、実施形態「からなる(comprising of)、および「から実質的になる(comprising essentially of)」を含むことができる。別途定義されているのでない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲では、本明細書で定義されるものとされる複数の用語が参照されることになる。
【0058】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとおり、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが規定されているのでない限り、複数の指示を含む。従って、例えば、「熱可塑性ポリマー成分」への指示は、2種類以上の熱可塑性ポリマー成分の混合物を含む。本明細書で使用されるとおり、用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、および同類のものを含む。
【0059】
一態様では、「実質的に含まない」は、約0.5重量パーセント(wt.%)未満とすることができる。別の態様では、実質的に含まないは、約0.1wt.%未満とすることができる。別の態様では、実質的に含まないは、約0.01wt.%未満とすることができる。さらに別の態様では、実質的に含まないは、約100ppm未満とすることができる。さらに別の態様では、実質的に含まないは、存在するとしても検出可能なレベル以下の量を指すものとすることができる。例えば、炭素繊維充填剤またはコンポジットは、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体を含まないか、または実質的に含まない場合がある。
【0060】
本明細書で使用されるとおり、材料の遮蔽有効度は、その反射、吸収、および内部反射損失の結果である。最も一般的な定義では、材料の遮蔽有効度(SE)は、導電性材料および/または磁性材料で作られた障壁または遮蔽を用いてその材料の周囲の電磁場を遮断することによって場を低減させる材料の能力を記述する。こうした場合、遮蔽は、保護されることになる材料に入射する電磁放射の一部または全部を吸収するかまたは反射するかのいずれかによって、行うことができる。この有害な放射を遮断する遮蔽材料の能力は通常、入射放射の周波数(または波長)、保護層の厚さに依存するものであり、材料の電気伝導率および/または誘電特性によって変化すると予想される。M. H. Al-Saleh, W. H. Saadeh, U. Sundararaj, “EMI shielding effectiveness of carbon based nanostructured polymeric materials: A comparative study,” CARBON 60, PP. 146-156, 2013を見られたい。これは、以下の式:
SE(dB)=SE+SE+SE
で表される。
【0061】
遮蔽効率>10dBである場合には、多重反射SEに起因する遮蔽有効度は、通常無視できる。したがって、全遮蔽有効度は:
SE(dB)=SE+SE
と簡単になり、ここでSEおよびSEは、ベクトルネットワークアナライザを使用したSパラメータ測定から以下の:
【0062】
【数1】
のとおり、直接計算される。
【0063】
上記の式において、S11は反射の散乱パラメータであり、S21は透過の散乱パラメータである。20dB未満の遮蔽有効度が最低と見なされ、ほとんどの用途では35dBより上のSEが要求される。
【0064】
本明細書では、範囲を、ある値(第1の値)から別の値(第2の値)までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合には、その範囲は、いくつかの態様では、第1の値および第2の値のうちの一つまたは両方を含む。同様に、値が近似値として表現される場合には、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の態様を形成することは理解されよう。さらに、各範囲の端点は、もう一方の端点との関連でも、他の端点から独立にも、どちらでも有効であることが理解されよう。本明細書で開示される複数の値が存在すること、そして各値は本明細書において、その特定の値自体に加えて、「約」その値としても開示されることもまた理解される。例えば、値「10」が開示されている場合には、約「10」も開示される。また、二つの特定の単位の間の各単位も開示されることが理解される。例えば、10と15が開示されている場合には、11、12、13、14もまた開示される。
【0065】
本明細書で使用されるとおり、用語「約」および「のところまたはその周辺」は、問題となっている量または値が、指定値、近似的に指定値、または指定値とほぼ同じであり得ることを意味する。本明細書で使用されるとおり、別途指示または推測がない限り、その値は、表示された公称値±10%の変動であるとおおむね理解される。この用語は、特許請求の範囲に記載された均等な結果または効果がそうした類似の値によって促されることを伝えるよう意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、およびその他の量および特性は、正確ではなく、正確である必要もないが、公差、換算係数、丸め、測定誤差、および同類のもの、ならびに当業者に公知のその他の要因を反映して、所望に応じて近似的であり得る、および/または大きくもしくは小さくなり得ることは理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特性は、そのように明示的に定められているかどうかにかかわらず、「約」または「近似値」である。定量的な値の前に「約」が使用される場合には、パラメータもまた、別途具体的に定められていない限りその特定の定量的な値自体をも含むと理解される。本明細書で使用されるとおり、用語「随意の」または「随意に」は、それ以降に記載される事象または状況が発生するまたはしない可能性があること、およびその記載が、前記事象または状況が発生する実例と発生しない実例とを含むことを意味する。例えば、語句「随意のさらなる工程」は、そのさらなる工程を含むことができるまたはできないこと、そして、その記載が、そのさらなる工程を含む方法と含まない方法との両方を含むことを意味する。
【0066】
開示されるのは、本開示の組成物を準備するのに使用される成分のみならず、本明細書に開示される方法の範囲内で使用される組成物自体である。これらのそして他の材料は、本明細書に開示されるものであるが、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示される場合には、これらの化合物のそれぞれ様々な個別のおよび集合的な組み合せと並び換えの特定の参照を明示的に開示することはできなくとも、それぞれが本明細書に具体的に企図され記載されるものとして理解される。例えば、特定の化合物が開示され、考察され、それらの化合物を含む複数の分子に対して行うことができる多数の修正形態が考察される場合には、具体的に企図されるのは、特に反対の指示がない限り、その化合物と可能な修正形態のそれぞれおよびすべての組み合わせと並び換えである。よって、分子A、B、およびCの集合のみならず、分子D、E、およびFの集合が開示され、組み合わせ分子の例であるA-Dが開示されている場合には、それぞれが個別に言及されていない場合であっても、それぞれが個別に、そして集合的に企図され、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると見なされる。同様に、これらのいずれの部分集合または組み合わせもまた開示されている。よって、例えば、A-E、B-F、C-Eの部分群が、開示されているとみなされる。この考え方は、本開示の組成物を製造するおよび使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願のすべての態様に当てはまる。よって、実行できる様々な追加のステップがある場合には、これらの追加のステップのそれぞれは、本開示の方法のいずれかの特定の態様または態様の組み合わせを用いて実行できることが理解される。
【0067】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、組成物または物品中の特定の構成要素または成分の重量部が参照されていれば、それは、その構成要素または成分と、組成物または物品中の他の構成要素または成分との間の、重量部で表現される重量関係を示すものである。よって、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物では、XとYは2:5の重量比で存在し、化合物中に追加の成分が含有されているかどうかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0068】
成分の重量パーセントは、具体的に反対の記載があるのでない限り、その成分が含まれる配合物または組成物の全重量を基準にする。
【0069】
ポリマーの構成成分に関して使用される用語「残基」および「構造単位」は、本明細書を通じて同義である。
【0070】
本明細書で使用されるとおり、用語「重量パーセント」、「wt%」、および「wt.%」は、互換的に使用することができ、他に指定がない限り、組成物の全重量を基準にした所与の成分の重量パーセントを示す。よって、別途指定されているのでない限り、すべてのwt%の値は、組成物の全重量を基準にする。開示された組成物または配合物中の全成分のwt%値の総和は100に等しいと理解されるのが望ましい。
【0071】
本明細書で別途反対の記載があるのでない限り、すべての試験規格は、本出願時に有効な最新の規格である。本明細書に開示される材料のそれぞれは、市販されている、および/またはその製造方法が当業者に公知である。本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することが理解される。本明細書で開示されるのは、開示される機能を実行する特定の構造的要件であり、開示される構造に関連する同一の機能を実行できる様々な構造が存在すること、そしてこれらの構造が典型的に同じ結果を実現することが理解される。
本開示の態様
【0072】
本開示は、少なくとも以下の態様に関するものであり、それらを含む。
【0073】
態様1A. ポリエステルを含んでなる約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤であって、炭素繊維が、少なくとも500g/lのかさ密度および2,000μΩ・cm未満の体積電気抵抗率を有し、個々のフィラメントが、少なくとも300の直径対長さ比を有する炭素繊維充填剤と、を含んでなるコンポジットであって、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の15%未満の透過を発揮し、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、少なくとも15%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮し、全成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt.%を超えず、全重量パーセント値が前記コンポジットの全重量を基準にする、コンポジット。
【0074】
態様1B. ポリエステルを含んでなる約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤であって、炭素繊維が、少なくとも500g/lのかさ密度および2,000μΩ・cm未満の体積電気抵抗率を有し、個々のフィラメントが、少なくとも300の直径対長さ比を有する炭素繊維充填剤と、から本質的になるコンポジットであって、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の15%未満の透過を発揮し、前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、少なくとも15%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮し、全成分の一つに合わせた重量パーセント値が100wt.%を超えず、全重量パーセント値が前記コンポジットの全重量を基準にする、コンポジット。
【0075】
態様2. 前記ポリエステルがポリアルキレンテレフタラートポリマーを含んでなる、態様1Aから1Bのいずれか一つに記載のコンポジット。
【0076】
態様3. 前記ポリエステルがポリブチレンテレフタラートを含んでなる、態様1Aから2いずれか一つに記載のコンポジット。
【0077】
態様4. 前記コンポジットを含んでなる3.175mm厚のモールド成形板状体が、75GHzから110GHzの周波数で入射マイクロ波放射の約5%未満を透過させる、態様1Aから3のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0078】
態様5. 前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定される場合に、40dBから120dBの間の全遮蔽有効度を発揮する、態様1Aから4のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0079】
態様6. 前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定された、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物の全遮蔽有効度よりも大きい全遮蔽有効度を発揮する、態様1Aから5のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0080】
態様7. 前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され18から26.5GHzの、および75から110GHzの周波数で測定される場合に、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物よりも高いマイクロ波放射の反射を発揮する、態様1Aから5のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0081】
態様8. 前記炭素繊維充填剤の個々のフィラメントが、5から10mmの長さである、態様1Aから7のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0082】
態様9. 炭素繊維充填剤の個々のフィラメントが、少なくとも500の直径対長さの比を有する、態様1Aから7のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0083】
態様10. 前記炭素繊維充填剤が、300:1より大きいアスペクト比を有する、態様1Aから7のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0084】
態様11. 前記炭素繊維充填剤が、200:1より大きいアスペクト比を有する、態様1Aから7のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0085】
態様12. 前記炭素繊維充填剤が、50:1より大きいアスペクト比を有する、態様1Aから7のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0086】
態様13. 前記炭素繊維充填剤が、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体ではない、態様1Aから12のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0087】
態様14. カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体を含まないか、または実質的に含まない、態様1Aから12のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0088】
態様15. 前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなり、前記炭素繊維充填剤が、0.15wt.%から2wt.%の量で存在し、前記コンポジットの3.175mmのモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75から110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の透過モードで測定された少なくとも55%のパーセント吸収電力を発揮する、態様1Aから14のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0089】
態様16. 前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも500J/mの、-30℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも45J/mの、-30℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、態様15に記載のコンポジット。
【0090】
態様17. 前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも600J/mの、23℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも60J/mの、23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、態様15に記載のコンポジット。
【0091】
態様18. 前記炭素繊維系充填剤が、約0.12wt.%から約0.98wt.%の間の量で存在し、77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも70%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、態様15から17のいずれか一つに記載のコンポジット。
【0092】
態様19. 前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして少なくとも5wt.%のシロキサン含有量を有するポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなる、態様15から18のいずれか一つに記載のコンポジットであって、前記コンポジットの全重量を基準にして1wt.%から15wt.%の間の全シロキサン含有量を有するコンポジット。
【0093】
態様20. 態様1Aから19のいずれか一つに記載のコンポジットを含んでなり、電磁放射線用の自動車レーダーセンサである物品。
【実施例
【0094】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がいかにして製造され評価されるかの完全な開示および記載を当業者に提供するように提示されるものであり、純粋に例示的であることが意図され、開示を限定することは意図されないものである。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証するよう努力がなされているが、幾分かの誤差および偏差を考慮に入れることが望ましい。別途指示されているのでない限り、部は重量部であり、温度は℃であるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。別途指示されているのでない限り、組成に言及するパーセンテージはwt%に関するものである。
【0095】
混合条件、例えば、成分濃度、押出機の設計、供給速度、スクリュスピード、温度、圧力、および記載された工程から得られる生成物の純度および収率を最適化するのに使用することができる他の混合範囲および条件の多数の変形形態および組み合わせが存在する。そのような工程条件を最適化するには、妥当で定型的な実験しか必要でないであろう。
実施例I
炭素粉体または炭素繊維マイクロ波遮蔽充填剤を含有するPBT樹脂の比較
【0096】
様々なコンポジット試料を準備した。比較配合物を表1に表す。比較試料は、ポリエチレンテレフタラートValox(商標) 195とValox(商標) 315とのブレンドを、1.408に等しい(Valox(商標) 195/Valox(商標) 315)比で含み、さらにカーボンブラック粉体(カーボンブラック粉体は、Ensaco(商標) 360 Gである)を含むものであって、CE-1からCE-5として指定した。
表1. 比較配合物
【0097】
【表1】
【0098】
本発明の試料EX-1からEX-5は、以下の表2に示されており、ポリブチレンテレフタラート樹脂と炭素繊維充填剤とのブレンドを組み合わせたものである。炭素繊維充填剤はTENAX J HT C493 6mmチョップド繊維である。比較配合物の場合のとおり、本発明の配合物の(Valox(商標) 195/Valox(商標)315)比もまた、1.408に等しい。
表2.
本発明の配合物
【0099】
【表2】
【0100】
コンポジット試料を直径40mmの共回転噛合式二軸スクリュ押出機上で準備したが、この場合、異なる配合物の成分を押出機に加え、溶融、混合し、比較配合物については5孔ダイプレートを通して、本発明の配合物については6孔ダイプレートを通して、押出機から押し出した。押出機は、ほとんどの配合物について200rpmのスクリュスピードで、そして比較配合物については29~45Kg/時(0.029~0.045トン/時)、本発明の配合物については68Kg/時(0.068トン/時)の速度で稼働させた。押出機トルクは、最大トルクの約35%から約65%に維持した。押出機バレル温度は、約185~200℃(上流、押出機のフィードスロート近傍)と、約250℃(下流、押出機のダイプレート近傍)との間に維持した。ダイプレート温度を約250℃に維持し、押出機を出る溶融物の温度を約275℃で測定した。
【0101】
Kバンドにおける反射についての散乱パラメータS11、および透過についての散乱パラメータS21(両方とも測定され計算されたもの)を観測した。0dBでのS11は、完全な反射体である(金属プレート、例えばステンレス鋼、アルミニウムなど、反射損失がない)一方、0dBでのS21は、完全な透過体である(空気など、透過損失がない)ことに留意されたい。図1Aおよび1Bはそれぞれ、Kバンド(18~26.5GHz)におけるCE-1およびEX-1についての散乱パラメータを示している。示されているとおり、Kバンドにおいて、EX-1はCE-1よりも少ない反射損失を示しており、CE-1はEX-1よりも少ない透過損失を示していることから、この周波数範囲では、EX-1がより良好なマイクロ波反射体である一方、CE-1がより良好なマイクロ波透過体であることが示唆される。
【0102】
図2Aおよび2Bは、それぞれCE-5およびEX-5についてのKバンド(18~26.5GHz)における散乱パラメータを示している。示されているとおり、Kバンドにおいて、EX-5はCE-5よりも少ない反射損失を示し、CE-5はEX-5よりも少ない透過損失を示していることから、この周波数範囲では、EX-5がより良好なマイクロ波反射体である一方、CE-5がより良好なマイクロ波透過体であることが示唆される。図3Aおよび3Bはそれぞれ、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-1およびEX-1についての散乱パラメータを示している。示されている通り、Wバンドにおいて、EX-1はCE-1よりも少ない反射損失を示し、CE-1はEX-1よりも少ない透過損失を示していることから、この周波数範囲では、EX-1がより良好なマイクロ波反射体である一方、CE-1がより良好なマイクロ波透過体であることが示唆される。また、CE-1については、S11の値は、調べられた周波数ごとに異なっている。図4Aおよび4Bはそれぞれ、Wバンド(75~110GHz)におけるCE-5およびEX-5についての散乱パラメータを示している。CE-5とEX-5について測定された、反射についての散乱パラメータS11は両方とも、観測された周波数にわたって0dBに近づいているが、EX-5についてのS11はCE-5についてのS11よりも0dBに近いことから、この周波数範囲ではEX-5がCE-5よりも良好なマイクロ波反射体であることが示唆される。同様に、CE-5についてのS21は、EX-5よりも0dBの線に近いので、CE-5は、Wバンド周波数範囲では、EX-5よりも良好なマイクロ波透過体である。
【0103】
Kバンド(18~26.5GHz)およびWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力も観測した。図5Aおよび5Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてのKバンドにおける透過モードでのパーセント電力のグラフ表示である。各周波数での吸収、反射、透過の総和は、100%の入射MW放射になっていなければならない。透過モードでは、ポリマー中に分散させた高レベルの炭素粒子が存在することによって、試料を通過する透過の一部が自然に遮断され、よって、金属裏打ち反射モードでの測定を使用する場合に金属プレートが透過放射を遮断するように作用するのとまったく同じようにして、試料から受信アンテナへのマイクロ波エネルギーのいかなる通過も遮断するように作用する。この図が示すとおり、Kバンド(18~26.5GHz)において観測した場合には、比較試料CE-1の透過率は約65~75%であった一方、本発明の試料EX-1の透過率は約5~15%であった。EX-1はまた、Kバンドで観測した場合には、透過モードでのより大きなマイクロ波吸収を発揮した(CE-1における15~25%をEX-1における~35~60%と比較)。マイクロ波反射もまた、Kバンドにおいて調べた全ての周波数について、CE-1(約0から20%)と比較してEX-1の方が高かった(約30から50%)。
【0104】
図6Aおよび6Bはそれぞれ、CE-2およびEX-2についてのKバンドにおける透過モードでのパーセント電力を示している。同様に、EX-2(約2%)については、比較試料CE-2(約22%~45%)と比較して透過がはるかに少ない。図7Aおよび7Bはそれぞれ、CE-3およびEX-3についてのKバンドにおける透過モードでのパーセント電力を示している。EX-3についてのパーセント透過は、約1%以下にまで著しく減少しているが、CE-3についてのパーセント透過は、約7%から13%の間に留まっている。また、両組成物中の炭素充填剤の濃度を同じに保った場合には、比較試料CE-3については、本発明の試料EX-3と比較してマイクロ波吸収は高く、マイクロ波反射は低い。
【0105】
図8Aおよび8Bはそれぞれ、CE-4およびEX-4についてのKバンド(18~26.5GHz)における透過モードで測定されたパーセント電力のグラフ表示である。8wt.%のチョップド炭素繊維を有する本発明の試料EX-4については、透過がほぼゼロまで低下しており、したがって、吸収と反射の総和が、試料に入射する放射の量のほぼ100%を占めている。炭素粉体試料の吸収は約60%から67%に高いままである一方、炭素繊維試料の吸収率は約25%にとどまっている。これらの傾向は、Kバンド(18~26.5GHz)における透過モードでのパーセント電力を示す図9Aおよび9Bにそれぞれ示されるCE-5およびEX-5について、一貫している。これらの傾向は、Wバンドのさらに高い周波数でも観測された。図10Aおよび10Bはそれぞれ、CE-1およびEX-1についてのWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示している。より高い周波数では、2wt.%のチョップド炭素繊維を有する本発明の試料EX-1は、ほぼ0%の透過を有し、吸収と反射は、ほぼ均等にそれぞれ約50%に分かれる。図11Bに示される本発明の試料EX-2(図11AのCE-2を見られたい)についても、透過率はほぼ0%である。図12Aおよび12Bはそれぞれ、CE-3およびEX-3についてのWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示している。グラフが示すとおり、比較試料CE-3では、本発明の試料EX-3と比較してマイクロ波吸収が高い一方、6wt.%の炭素充填剤の充填量でのEX-3(CE-3では粉体であるのに対してEX-3では繊維)については、マイクロ波反射が高い。図13Aおよび13Bはそれぞれ、CE-4およびEX-4についてのWバンド(75~110GHz)における透過モードでのパーセント電力を示している。CE-4とEX-4は、比較試料について、8wt.%の炭素充填剤充填量での本発明の試料についてよりも、マイクロ波吸収率が高く、マイクロ波反射率が低いという先の傾向を引き続き示している。比較試料CE-4について%吸収/%反射の比が約70/30である一方、同じ炭素充填剤充填量を考慮した場合には、本発明の試料EX-4について、それがまた約70/30の%反射/%吸収の比であることは、言及するに値する。図14Aおよび14Bはそれぞれ、CE-5およびEX-5についてWバンド(75~110GHz)で測定した透過モードでのパーセント電力を示している。再び、マイクロ波吸収は、比較試料CE-5について、同じ炭素充填剤含有量での本発明の試料EX-5についてよりも大きい。マイクロ波透過率は、両試料について無視できるほど小さい。また、マイクロ波捕捉充填剤としてチョップド炭素繊維を含有する五つの本発明の組成物のWバンド(75~110GHz)において測定したパーセント反射電力は、EX-1(2wt%充填剤)における約50%から、EX-2(4wt%充填剤)における約60%まで、EX-3(6wt%充填剤)における約70%まで、EX-4(8wt%充填剤)における約72%まで、EX-5(10wt%充填剤)における約75%まで増加したこともまた、言及するに値する。
【0106】
これらの値は、開示されたコンポジットが、所与の周波数範囲において組成物のマイクロ波吸収および反射の相対量を最適化するのに使用できることを示唆している。開示された材料のポリマー/充填剤の比は、それらの材料の電磁応答を修正するように操作してもよい。例えば、これらの樹脂をKバンドにおいて試験する場合には、マイクロ波透過は15%からほぼ0%の間で修正してもよく、マイクロ波反射は30%から75%の間で修正してもよい。ポリマー/炭素繊維充填剤の比は、高周波数Wバンドにおけるマイクロ波エネルギーの吸収に対する反射の比の値に直接影響し、EX-1(2wt.%の炭素繊維充填量)における50%/50%からEX-5(10wt%の炭素繊維充填量)における75%/25%までとなる。
【0107】
遮蔽有効度は、材料のマイクロ波吸収と反射の組み合わせ効果を記述する。図15Aおよび15Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてのKバンド(18~26.5GHz)における全遮蔽有効度のグラフ表示である。図15Aは、Kバンドで観測した場合には、比較組成物CE-1からCE-5までの全遮蔽有効度が、約2dBから約25dBまで変化したことを示している。同様に図15Bは、Kバンドで観測した場合には、本発明の組成物EX-1からEX-5までの全遮蔽有効度が、約5dBから約80dBまで変化したことを示している。図16Aおよび16Bはそれぞれ、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5についてのWバンド(75~110GHz)における全遮蔽有効度を示している。これらのグラフが示すとおり、比較組成物CE-1からCE-5の遮蔽有効度は、約5dBから55dBの間で変化した一方、本発明の組成物EX-1からEX-5の遮蔽有効度は、約50dBから110dBの間で変化した。これらの結果が示すとおり、遮蔽有効度は、材料によって吸収または反射されるマイクロ波放射の量の組み合わせであり、配合物中、同量の炭素充填剤、粉体、または繊維を考慮する場合には、比較組成物と比較して本発明の組成物においてはるかに高い。これらの結果から、調べた二つの周波数範囲、Kバンド(18~26.5GHz)およびWバンド(75~110GHz)の両方について、そのことが事実であるように見えることが示された。
【0108】
Kバンド(18~26.5GHz)において観測した透過モードでのパーセント吸収電力を、CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5について、それぞれ図17Aおよび図17Bに示す。これらの結果は、本開示の本発明の組成物において、約20%から60%の間の、Kバンドにおける%吸収値が期待できることを示している。図18Aおよび18Bはそれぞれ、比較配合物CE-1からCE-5、および本発明の配合物EX-1からEX-5について、Wバンド(75~110GHz)において観測した透過モードでのパーセント吸収電力を示している。これらの結果は、本開示の本発明の組成物において、約25%から50%の間の、Wバンドにおける%吸収値が期待できることを示している。
【0109】
前述の結果は、同一充填量の炭素粉体を含んでなる材料と比較して、MW放射をより高度に反射する材料が炭素繊維から生み出されることを示している。炭素粉体を含んでなる材料は、よりMW吸収性であった。これは特にWバンドにおいて真であり、その理由は、EX-1からEX-5は、入射MW放射の約20~60%を吸収する一方、CE-1からCE-5は、約50~80%を吸収するからである。これらの違いは、同量の炭素充填剤(粉体対繊維)を含有する組成物を比較すると、さらに顕著である。図18Aおよび18Bを見られたい。CE-1からCE-5、およびEX-1からEX-5の%吸収の範囲は、Kバンドにおいて同様であった。またしても、同量の炭素充填剤(粉体対繊維)を含有する組成物を比較した場合、パーセント吸収電力に比較的大きな差が観測された。図17Aおよび17Bを見られたい。いかなる特定の理論にも拘泥することなしに、炭素粉体系の比較組成物はこのように、主に吸収によってMW放射を遮蔽するように見える一方、炭素繊維系の本発明の組成物は、主に反射によってMW放射を遮蔽する。
【0110】
本開示のコンポジットについて測定された吸収電力、反射電力、および透過電力の値は、自由空間法に従って観測した。自由空間法は、材料のスラブのところで、またはスラブを通してマイクロ波エネルギーを集束させる二つのアンテナ(送信アンテナおよび受信アンテナ)に接続されたベクトルネットワークアナライザからなる。この方法は、透過モード(透過、吸収、反射の三つのエネルギー移送モードが全て可能)、または金属裏打ち反射モード(吸収と反射のみが可能で、透過は試料と受信アンテナの間に金属プレートを置くことによって抑制される)で実行することができる。この方法は非接触であり、特にミリ波周波数で有効である。試料は、図19に表されるとおり、透過モードで評価した。
【0111】
電気的な表面抵抗率と体積抵抗率とを、比較試料および本発明の試料について室温で観測し、ASTM D257に従って、4インチ×5インチで1/8インチ厚(10.2cm×12.7cmで0.32cmの厚さ)のモールド成形板状体上、電圧10~100Vの範囲、相対湿度(RH)50%、および23℃の周囲条件で測定した。表3は、異なる比較試料CE-1からCE-5、および本発明の試料EX-1からEX-5についての値を示している。図20は、CE-1からCE-5、EX-1およびEX-5の体積電気抵抗率および表面電気抵抗率を示す表3をそれぞれ表している。図21Aおよび21Bはそれぞれ、異なる試料による体積抵抗率および表面抵抗率のグラフ表示である。
実施例II. 炭素繊維を有し、さらにポリ(カルボナート-シロキサン)を含んでなるPBT樹脂の比較
【0112】
炭素繊維の性能をさらに評価するために、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなる様々なコンポジット試料を準備した。配合物を表4に表わす(図22に示す)。すべての試料は、PBTとPC-シロキサンとの組み合わせを含んでいたが、比較試料CE-6に含まれる炭素繊維は少なかった(0.1wt.%)。コンポジット試料は、実施例Iで提供したとおりに準備した。誘電特性を、3.175mm(0.125インチ)の公称厚の試料について77GHzで観測した。値を表5に表わす(図23)。複素誘電率もまた、Wバンド(75~110GHz)の周波数で観測した。複素誘電率の実数部および虚数部は、テフロンを対照または標準として観測した。試料CE-6、およびEX-6からEX-9の75から110GHzの間の周波数での誘電性能を観測した。図24図25は、75GHzから110GHzの周波数での複素誘電率の実数部ε’と虚数部ε”をそれぞれ示している。図26は、減衰定数のグラフ表示であり、炭素繊維の量が増加するとともに、減衰定数もさらに負になるように見えた。図27は、全遮蔽有効度のグラフ表示であり、試料全体を通して炭素繊維が多いほど増加した。図28は、配合物に加えられた炭素繊維の量に関する、透過モードで吸収されたパーセント電力をグラフ表示である。
【0113】
CE-6の3.066mm試料について、複素誘電率の実数部および虚数部の値のみならず、透過モードで測定された反射、透過、および吸収されたパーセント電力の値を、それぞれ図29および30に示す。EX-6の3.067mm試料について、複素誘電率の実数部および虚数部の値のみならず、透過モードで測定された反射、透過、および吸収されたパーセント電力の値を、それぞれ図31および32に示す。EX-7の3.037mm試料について、複素誘電率の実数部および虚数部の値のみならず、透過モードで測定された反射、透過、および吸収されたパーセント電力の値を、それぞれ図33および34に示す。EX-8の3.024mm試料について、複素誘電率の実数部および虚数部の値のみならず、透過モードで測定された反射、透過、および吸収されたパーセント電力の値を、それぞれ図35および36に示す。EX-9の3.054mm試料について、複素誘電率の実数部および虚数部の値のみならず、透過モードで測定された反射、透過、および吸収されたパーセント電力の値を、それぞれ図37および38に示す。PBT/PC-シロキサンブレンド中に0.2wt.%未満の炭素繊維を有する比較例CE-6は、本発明の試料EX-6からEX-9よりもはるかに高い透過率を有する。反射は、EX-6からEX-9まで、炭素繊維含有量の増加とともに増加するように見えた。77GHzで、透過モードで測定されたパーセント吸収電力は、組成物中の炭素繊維の濃度が約0.5wt.%である場合に最大(近似的に71.5%)となる。図39および40は、77GHzでの、実誘電率および虚誘電率のみならず、吸収、反射、および透過された透過でのパーセント電力をそれぞれグラフ表示したものである。
【0114】
CE-6およびEX6-9について、さらなる物理的および機械的特性も評価し、23℃でのものを表6Aおよび6Bに(それぞれ図41および42に示す)、そして30℃でのものを表7に表す(図43に示す)。ASTM D256に従った23℃および30℃でのアイゾッド衝撃強度のグラフ表示を、それぞれ図44および45に表す。ポリ(カルボナート-シロキサン)の存在は、配合物の低温での衝撃強度および延性を改善するように見えた。表8(図46に示す)は、CE-6、およびEX-6からEX-9について、熱たわみHDT、比重、流量、および粘度の値を表している。表9(図47に示す)は、CE-6、およびEX-6からEX-9について、体積抵抗率および表面抵抗率の値を表している。
【0115】
上記は、例示的なものであって制限的なものではないことが意図される。例えば、上記の実施例(またはそれらの一つまたは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用してもよい。他の実施形態は、例えば、上記を検討した時点で当業者が使用することができる。要約書は、読者が技術開示の性質を速やかに把握できるようにするために提供される。これはまた、特許請求の範囲の趣旨または意味の限定に使用されないであろうという理解のもとで提出される。また、上の、発明を実施するための形態では、開示を簡素化するために、様々な特徴がいっしょにグループ化される場合がある。これは、特許請求されていない開示された特徴がいずれの請求項にも必須であることを意図しているとは解釈されないのが望ましい。むしろ、発明の主題が、特定の開示された実施形態の全特徴よりも少ない特徴の中にある場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、例または実施形態として、発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体で独立しており、そのような実施形態は、様々な組み合わせまたは並び換えで互いに組み合わせることができることが企図される。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照しつつ、そうした請求項が権利を与えられた、均等物の可能な限り広い範囲と共に決定されるのが望ましい。
【0116】
当業者には、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示において様々な修正および変形を行うことができることは明らかであろう。本開示の他の実施形態は、当業者には、本明細書に開示された本開示の詳述および実施例を考慮すれば明らかであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとしてしか見なされないことが意図され、本開示の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。本開示の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者によって想起される他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合には、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含んでなる約50wt.%から約99wt.%の熱可塑性樹脂と;
約0.1wt.%から約15wt.%の炭素繊維充填剤であって、炭素繊維が、少なくとも500g/lのかさ密度および2,000μΩ・cm未満の体積電気抵抗率を有し、個々のフィラメントが、少なくとも300の直径対長さ比を有する炭素繊維充填剤と、
を含んでなるコンポジットであって、
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の15%未満の透過を発揮し、
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75GHzから110GHzの周波数で測定される場合に、少なくとも15%の、透過モードで測定されたパーセント反射電力を発揮し、
全成分の一つに合わせた重量パーセントが100wt.%を超えず、全重量パーセントの値が前記コンポジットの全重量を基準にする、コンポジット。
【請求項2】
前記ポリエステルがポリアルキレンテレフタラートポリマーを含んでなる、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項3】
前記ポリエステルがポリブチレンテレフタラートを含んでなる、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項4】
前記コンポジットを含んでなる3.175mm厚のモールド成形板状体が、75GHzから110GHzの周波数で入射マイクロ波放射の約5%未満を透過させる、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項5】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定される場合に、40dBから120dBの間の全遮蔽有効度を発揮する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項6】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、75GHzから110GHzの周波数で自由空間法に従って測定された、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物の全遮蔽有効度よりも大きい全遮蔽有効度を発揮する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項7】
前記コンポジットの3.175mm厚のモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され18から26.5GHzの、および75から110GHzの周波数で測定される場合に、炭素繊維充填剤ではなく同量の炭素粉体充填剤を含んでなる参照組成物よりも高いマイクロ波放射の反射を発揮する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項8】
前記炭素繊維充填剤の個々のフィラメントが、5から10mmの長さである、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項9】
前記炭素繊維充填剤料の個々のフィラメントが、少なくとも500の直径対長さの比を有する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項10】
前記炭素繊維充填剤が、300:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項11】
前記炭素繊維充填剤が、200:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項12】
前記炭素繊維充填剤が、50:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項13】
前記炭素繊維充填剤が、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体ではない、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項14】
カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、または炭素粉体を含まないか、または実質的に含まない、請求項1に記載のコンポジット。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなり、前記炭素繊維充填剤が、0.15wt.%から2wt.%の量で存在し、前記コンポジットの3.175mmのモールド成形試料が、自由空間法に従って観測され75から110GHzの周波数で測定される場合に、入射マイクロ波放射の透過モードで測定された少なくとも55%のパーセント吸収電力を発揮する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンポジット。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも500J/mの、-30℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも45J/mの、-30℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、請求項15に記載のコンポジット。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂が、ASTM D256に従って測定される場合に、少なくとも600J/mの、23℃でのノッチなしアイゾッド衝撃強度、および少なくとも60J/mの、23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃強度を発揮する、請求項15に記載のコンポジット。
【請求項18】
前記炭素繊維系充填剤が、約0.12wt.%から約0.98wt.%の間の量で存在し、77GHzの周波数で観測される場合に、少なくとも70%の、透過モードで測定されたパーセント吸収電力を発揮する、請求項15に記載のコンポジット。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーの全重量を基準にして少なくとも5wt.%のシロキサン含有量を有するポリ(カルボナート-シロキサン)コポリマーをさらに含んでなる、請求項15に記載のコンポジットであって、前記コンポジットの全重量を基準にして1wt.%から15wt.%の間の全シロキサン含有量を有するコンポジット。
【請求項20】
請求項1から14のいずれか一項に記載のコンポジットを含んでなり、電磁放射線用の自動車レーダーセンサである物品。
【国際調査報告】