(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】チタン不含のニッケル-クロム-鉄-モリブデン合金の使用
(51)【国際特許分類】
B23K 35/30 20060101AFI20240130BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20240130BHJP
C23C 4/08 20160101ALI20240130BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20240130BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20240130BHJP
B23K 10/02 20060101ALI20240130BHJP
B23K 25/00 20060101ALI20240130BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20240130BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20240130BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240130BHJP
B23K 9/18 20060101ALI20240130BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240130BHJP
C22C 30/02 20060101ALI20240130BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B23K35/30 340L
B23K35/30 A
B23K35/30 320Q
B23K35/30 320X
C23C4/129
C23C4/08
B23K9/04 H
B23K9/04 M
B23K26/342
B23K10/02 501A
B23K25/00 K
B23K15/00 501B
B23K9/04 Z
B23K9/04 G
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K9/18 Z
B22F1/00 T
B22F1/00 M
C22C30/02
C22C33/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540570
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 DE2022100082
(87)【国際公開番号】W WO2022167042
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102590.7
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022101851.2
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516236078
【氏名又は名称】ファオデーエム メタルズ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDM Metals International GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2, D-58791 Werdohl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エレナ アルベス
(72)【発明者】
【氏名】ユリア ボティーニャ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴォルフ
【テーマコード(参考)】
4E001
4E066
4E168
4K018
4K031
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB05
4E001BB06
4E001CA07
4E001DB03
4E066AB09
4E168BA33
4E168BA35
4E168BA81
4E168BA82
4K018AA08
4K018AA30
4K018BA04
4K018BA16
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K031AA08
4K031AB09
4K031CB07
4K031CB22
4K031CB23
4K031CB24
(57)【要約】
本発明は、以下の組成: C 最大0.02%、S 最大0.01%、N 最大0.03%、Cr 20.0~23.0%、Ni 39.0~44.0%、Mn 0.4~<1.0%、Si 0.1~<0.5%、Mo >4.0~<7.0%、Nb 最大0.15%、Cu >1.5~<2.5%、Al 0.05~<0.3%、Co 最大0.5%、B 0.001~<0.005%、Mg 0.005~<0.015%、Fe 残部、並びに溶融に起因する不純物を質量%で有する合金の使用であって、溶融相を介して、ワイヤ、帯材、棒材または粉末の形態での合金固体としてさらに加工され、且つ石油産業およびガス産業並びに化学産業における湿式腐食用途の分野において用いられる、前記使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成:
C 最大0.02%
S 最大0.01%
N 最大0.03%
Cr 20.0~23.0%
Ni 39.0~44.0%
Mn 0.4~<1.0%
Si 0.1~<0.5%
Mo >4.0~<7.0%
Nb 最大0.15%
Cu >1.5~<2.5%
Al 0.05~<0.3%
Co 最大0.5%
B 0.001~<0.005%
Mg 0.005~<0.015%
Fe 残部、
並びに溶融に起因する不純物
を質量%で有する合金の使用であって、前記合金が溶融相を介して、ワイヤ、帯材、棒材または粉末の形態での合金固体としてさらに加工され、且つ石油産業およびガス産業並びに化学産業における湿式腐食用途の分野において用いられる、前記使用。
【請求項2】
C 最大0.015%
S 最大0.005%
N 最大0.02%
Cr 21.0~<23.0%
Ni >39.0~<43.0%
Mn 0.5~0.9%
Si 0.2~<0.5%
Mo >4.5~6.5%
Nb 最大0.15%
Cu >1.6~<2.3%
Al 0.06~<0.25%
Co 最大0.5%
B 0.002~0.004%
Mg 0.006~0.015%
Fe 残部、
並びに溶融に起因する不純物
を質量%で有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
C 最大0.010%
S 最大0.005%
N 最大0.02%
Cr 22.0~<23.0%
Ni >39.0~<43.0%
Mn 0.55~0.9%
Si 0.2~<0.5%
Mo >5.0~6.5%
Nb 最大0.15%
Cu >1.6~<2.2%
Al 0.06~<0.20%
Co 最大0.5%
B 0.002~0.004%
Mg 0.006~0.015%
Ti 最大0.10%
P 最大0.025%
W 最大0.50%
Fe 最小22%、
並びに溶融に起因する不純物
を質量%で有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記材料がワイヤ状または棒状の溶加材として、アークプロセスまたはレーザープロセスを用いた肉盛溶接のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記材料がワイヤ状または棒状の溶加材として、母材、例えばAlloy 825またはAlloy 825 CTPのための接合溶接のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記材料がワイヤ状または棒状の溶加材として、超オーステナイト鋼および/またはニッケル基合金のための接合溶接のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記材料が、アーク溶接プロセス、レーザー溶接プロセス、または電子ビーム溶接プロセスによって溶接ワイヤを使用して、付加製造を用いて加工されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記材料が粉末の形態で、いわゆるプラズマ粉末溶接法のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記材料が粉末の形態で、構造部材を製造するための、いわゆる付加製造印刷法のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記材料が帯材の形態で、肉盛溶接のための、または接合溶接のための、いわゆるエレクトロスラグ溶接および/またはサブマージアーク溶接のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記材料が粉末の形態で、溶射プロセス、殊にフレーム溶射のために用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記材料が被覆された棒電極の形態で用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記材料がコアードワイヤ電極の形態で用いられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐孔食性および耐すきま腐食性並びに高い降伏点および強度を有するチタン不含のニッケル-クロム-鉄-モリブデン合金の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合金Alloy825は、石油産業、ガス産業、並びに化学産業において用いられる高い防食性を有する材料である。合金Alloy 825は材料番号2.4858として販売されており、且つ以下の化学組成を有する: C≦0.05%、S≦0.03%、Cr 19.5~23.5%、Ni 38~46%、Mn≦1.0%、Si≦0.5%、Mo 2.5~3.5%、Ti 0.6~1.2%、Cu 1.5~3.0%、Al≦0.2%、Fe 残部。
【0003】
合金Alloy825は、チタンで安定化された材料であり、つまり、チタンの添加が材料中の有害な炭素をできるだけ中和すべきである。合金Alloy825は湿式腐食合金として、石油産業およびガス産業も含む様々な産業分野において用いられ、且つPREN30を有し、殊に海水用途において孔食およびすきま腐食に対する中程度の耐性のみを有する。当業者は、有効合計PRENが耐孔食指数であると理解する。
【0004】
PREN=1×%Cr+3.3×%Mo
【0005】
PRENは、耐孔食性および耐すきま腐食性についてのプラスの作用を有する合金元素を、材料に特異的な係数においてまとめている。
【0006】
Alloy 825(ISO 18274: Ni8065)は、溶加材もしくはフィラー金属(FM)としては今のところ確立されておらず、ほとんど用いられていない。これについての理由は困難な加工性であり、それは多くの場合、溶接金属が凝固割れおよび再溶融割れの形での高温割れを有することにおいて示される。特に、石油産業およびガス産業の重要な用途において、材料に固有であるこの加工の問題は、除外基準となり、それは多くの場合、FM 825の代わりに代替的な溶加材、つまり溶加材FM 625(ISO 18274: Ni6625)が用いられることをみちびく。ただし、FM 625はFM 825に対して以下の欠点を有する:
1) FM 625はFM 825に比して非常に高く合金化されており、少なくとも58.0%のニッケル、少なくとも8.0%のモリブデン、および少なくとも3.0%のニオブを含有する。従ってAlloy 825製の構造部材を溶接するために、FM 625は溶加材として不必要に強く合金化され過ぎており、そのことによって高いコストが発生し、資源、例えば稀少元素のニオブが不必要に消費される。
【0007】
2) FM 625製の溶接金属は、FM 825に比して、例えば肉盛溶接の旋削仕上げの際、または溶接シーム部の過度の高まりを平らにする際に、機械的に再加工し難く、なぜなら明らかに高い硬度を有するからである。例えばFM 825溶接金属の硬度は250 HV10以下である一方で、FM 625の硬度は通常、310 HV10である。
【0008】
3) FM 625の場合、殊に溶接後の熱処理(いわゆる溶接後熱処理; Post Weld Heat Treatment、PWHT)の際、または例えば肉盛溶接された管の誘導曲げによる熱間成形の際、合金元素ニオブによって望ましくないγ”相もしくはデルタ相が形成されるリスクがある。γ''相もしくはδ相の形成によって、耐食性および/または延性の劇的な損失が生じる。
【0009】
比較的低いPREN、および高温割れの形成による溶接性の悪さの他に、FM 825はさらなる欠点、つまり合金元素としてのチタンを有する。チタンは、溶融溶接の場合に材料が液相として存在する際、制御されずに容易に酸化されることがあり、そのことは溶接金属中の侵入型チタンの欠乏、ひいてはその安定化作用が定義されずに減少することをみちびくことがある。さらに、溶接の間のチタンの酸化もしくは窒化は、生成され且つ溶接金属中に分布する酸化チタン粒子または窒化チタン粒子が溶接金属の強度、延性および/または耐食性を低減することによって、溶接接合部の品質が明らかに低下することをみちびくことがある。
【0010】
独国特許出願公開第102014002402号明細書(DE 10 2014 002 402 A1)に記載される材料はAlloy 825 CTPの名称でも知られ、板材、帯材、管材(縦にシーム溶接された、およびシームレス)、棒材、または鍛造部品としての製品の形でのみ使用されている。
【0011】
上記の刊行物は、高い耐孔食性および耐すきま腐食性、並びに加工硬化状態における高い降伏点を有するチタン不含の合金であって、質量%で
C 最大0.02%
S 最大0.01%
N 最大0.03%
Cr 20.0~23.0%
Ni 39.0~44.0%
Mn 0.4~<1.0%
Si 0.1~<0.5%
Mo >4.0~<7.0%
Nb 最大0.15%
Cu >1.5~<2.5%
Al 0.05~<0.3%
Co 最大0.5%
B 0.001~<0.005%
Mg 0.005~<0.015%
Fe 残部、
並びに溶融に起因する不純物
を有する前記合金を開示している。
【0012】
さらに、この合金の製造方法であって、
a) 合金をそのままで連続鋳造またはインゴット鋳造において溶融し、
b) モリブデン含有率の増加によって引き起こされた偏析を除去するために、製造されたスラブ/ビレットの均質化熱処理を1150~1300℃で15時間~25時間にわたって実施し、ここで、
c) 均質化熱処理が殊に最初の熱間成形に続いて実施される、
前記製造方法が記載されている。
【0013】
先述の材料(Alloy 825 CTP)は、Alloy 825に対して、約42の高いPRENを有し、チタン合金化されていない。材料Alloy 825 CTPは、Alloy 825の以下の欠点を克服するために開発された:
1) チタン含分による悪い溶解性および鋳造性(キーワード: 目詰り)
2) 組織内での望ましくないTiCもしくはTi(C,N)の析出
3) 海水耐性ではないこと/比較的悪い耐孔食性および耐すきま腐食性。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014002402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、前記独国特許出願公開第102014002402号明細書に記載される材料に新たな用途分野を提供することである。
【0016】
前記の課題は、以下の組成:
C 最大0.02%
S 最大0.01%
N 最大0.03%
Cr 20.0~23.0%
Ni 39.0~44.0%
Mn 0.4~<1.0%
Si 0.1~<0.5%
Mo >4.0~<7.0%
Nb 最大0.15%
Cu >1.5~<2.5%
Al 0.05~<0.3%
Co 最大0.5%
B 0.001~<0.005%
Mg 0.005~<0.015%
Fe 残部、
並びに溶融に起因する不純物
を質量%で有する、チタン不含の合金の使用であって、前記合金が溶融相を介して、ワイヤ、帯材、棒材または粉末の形態での合金固体としてさらに加工され、且つ石油産業およびガス産業並びに化学産業における湿式腐食用途の分野において用いられる、前記合金の使用によって解決される。
【0017】
本発明の対象の有利なさらなる態様は、従属請求項から得られる。
【0018】
溶加材としてのAlloy 825 CTPの適性は、独国特許出願公開第102014002402号明細書には記載されておらず、溶接ワイヤ、溶接帯材および粉末の製品形態(例えば付加製造法用)は言及されていない。前記の新たな応用分野は、材料が基本的に溶融相を介して加工されることによって特徴付けられる。
【0019】
元素の炭素は合金中で以下のように与えられる:
・ 最大0.02%。
【0020】
代替的に、炭素は以下のように限定され得る:
・ 最大0.015%
・ 最大0.01%
・ <0.01%。
【0021】
クロム含有率は20.0~23.0%である。好ましくはCrは合金中で以下のような広がりの範囲内で調整され得る:
・ 20.0~22.0%
・ 21.0~23.0%
・ 20.5~22.5%
・ 22.0~23.0%。
【0022】
ニッケル含有率は39.0~44.0%であり、好ましい範囲は以下のように調整され得る:
・ 39.0~<42.0%
・ 39.0~<41.0%
・ 39.0~<40.0%。
【0023】
モリブデン含有率は>4.0~<7.0%であり、ここで、合金を用いる分野に応じて、好ましいモリブデン含有率は以下のように調整され得る:
・ >5.0~<7.0%
・ >5.0~<6.5%
・ >5.5~<6.5%
・ >6.0~<7.0%。
【0024】
前記材料は、好ましくは以下の用途のために用いられ得る:
・ 母材Alloy 825またはAlloy 825 CTPのための接合溶接用のワイヤまたは棒材の形態での溶加材として、
・ 超オーステナイト鋼またはニッケル基合金のための接合溶接用のワイヤまたは棒材の形態での溶加材として、
・ ワイヤーアーク付加製造法(WAAM)、つまり、溶接ワイヤを使用してアーク溶接プロセスを用いて構造部材を製造する用途のために、
・ いわゆるプラズマ粉末溶接法のための粉末の形態で、
・ 構造部材を製造するためのいわゆる付加製造印刷法のための粉末の形態で、
・ 肉盛溶接または接合溶接用の、いわゆるエレクトロスラグおよび/またはサブマージアーク溶接のための帯材の形態で、
・ 溶射プロセス、例えばフレーム溶射のための粉末の形態で、
・ 被覆された棒電極の形態で、
・ コアードワイヤ電極の形態で。
【0025】
高温割れの調査、溶接試験およびモデリングの考察を実施する際に、意外なことに、高温割れの安全性、つまり、凝固割れの形成に対する材料の耐性、および上記の材料の溶融加工の間の再溶融割れが、溶接ワイヤFM 825の場合よりも飛躍的に良好であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】高温割れ耐性を評価するための経験的セクターを備えたMVTグラフ
【
図3】FM 825 CTP(Alloy 825 CTP)およびFM 825(Alloy 825)の凝固区間の冷却速度依存性の比較
【
図4】肉盛溶接を用いたFM 825 CTPの溶接性検査の模式図。
【実施例】
【0027】
修正バレストレイン・トランスバレストレイン(MVT)高温割れ試験を用いた調査は、FM 825に対するFM 825 CTPの利点を以下の結果によって示す:
【0028】
MVT試験は外的な応力をかける高温割れ試験であり、材料FM 825 CTPの試料およびFM 825の試料を用いて順次、単位長さあたりのエネルギー(Streckenergie)7.5kJ/cmおよび14.5kJ/cmを用い、それぞれの試料の合計曲げひずみ1%、2%および4%を適用して検査された。評価は、試験工程後に試料表面上で溶接金属領域および熱作用領域にある高温割れの長さに従って行われた。一連の試験の値を比較してグラフに示し、ここで、材料は、判明した検査値により基本的に3つの高温割れの分類に区分され得る(
図1)。実施された調査について、純粋な溶接金属製の試料が用いられた。
【0029】
これらのMVT結果によれば、単位長さあたりのエネルギー7.5kJ/cmを用い、それぞれ合計曲げひずみ1%、2%および4%を適用して溶接されたFM 825は、測定された高温割れの値(高温割れの全体の長さ)が、「高温割れの傾向」を意味するセクター2、および「高温割れのリスク」を意味するセクター3にある。FM 825 CTPを用いて同様に実施されたMVT試験の場合、全ての高温割れの値(高温割れの全体の長さ)は、材料が「高温割れ耐性である」として区分されるセクター1にある。従って、MVT調査は、FM 825 CTPの高い耐高温割れ性の形で、予想外に良好な溶接適性を示す。
【0030】
MTV調査の意外な結果は、プラズマ溶接法を用いて、バッチ番号130191を有するAlloy 825 CTPの2つのプレートを突き合わせ接合において一緒に溶接することによって検証され、ここで以下の溶接パラメータセットが使用された: 溶接電流220A、溶接電圧=19.5V、溶接速度=30cm/分、プラズマガス流量=1l/分、シールドガス流量=20l/分、ワークディスタンス=5mm。
【0031】
図2は溶接接合の巨視的な断面を示す。溶接シーム部において高温割れは見られなかった。
【0032】
意外なほど良好な溶接性をさらに調査するために、J-Mat Proでの計算を実施した。
図3は、FM 825 CTPおよびFM 825の凝固区間の冷却速度依存性の比較を示す。モデルにおいて、凝固区間は材料の高温割れのしやすさについての指標であり、理想的な場合には(例えば純粋な材料の場合)は0である。溶接の際、冷却速度は方法、構造部材の厚さ、溶接パラメータなどに応じて非常に変化するので、個々の冷却速度のみの観察だけでなく、0℃/秒から50℃/秒の冷却速度の範囲の観察が特に有意義である。FM 825 CTPについては全体的に調査された冷却速度範囲においてFM 825よりも40℃~70℃低い凝固区間がモデル化されたことが
図3に示される。
【0033】
Alloy 825もしくはFM 825 CTPは、以下の組成において溶融された:
【表1-1】
【0034】
【0035】
材料FM 825 CTPは溶加材として工業規模で溶融され、とりわけ直径1.00mmを有する溶接ワイヤとしての溶加材へとさらに加工された。
【0036】
図4に原理的に示されるように、バッチ132490のワイヤを用いて、金属・不活性ガス溶接プロセス(MIG法)によって、パルスアークを使用してS 355 C鋼上で、完全に機械化された肉盛溶接を実施した。溶接パラメータとして、溶接電流=170A、溶接電圧=24V、ワイヤ速度=7.4m/分、溶接速度=55cm/分が使用され、且つ保護ガスとして純粋なアルゴンが用いられた。肉盛溶接は部分的に2層で仕上げられた。目視検査でも染色浸透検査でも、溶接物表面上で巨視的な割れも微視的な割れも検出されないことが示された。
【0037】
前記結果は、以下の新たな知見を裏付ける:
・ FM 825 CTPを、例えば機械的にクラッドされた管の端部のための肉盛溶接のために使用できる、
・ FM 825 CTPを、Alloy 825および/またはAlloy 825 CTP構造部材を接合するための接合溶接材料として用いることができる、
・ FM 825 CTPを、造形肉盛溶接(WAAM)のための材料として用いることができ、その際、例えばFM 625製の相応の付加製造された構造部材よりも再加工性が良好である、
・ FM 825 CTPを、粉末の形態で付加製造の分野のために用いることができ、その際、費用効率が良く、省資源で且つより良好に機械的に再加工可能なFM 625の代替であることができる、
・ FM 825とは対称的に、FM 825 CTPの場合、チタンは合金元素ではない。従って、それ以外の場合に用いられる希ガスの代わりに、溶接および/または印刷のために窒素(含分)を有する保護ガスが可能であり、そのことは製造コストを低減する。
【国際調査報告】