(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】メソテリン結合分子およびその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240130BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240130BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240130BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240130BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240130BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240130BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240130BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240130BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240130BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N7/01
C07K16/30
C12N15/62 Z
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/7088
A61K35/12
A61K47/69
A61K48/00
G01N33/574 A
G01N33/53 D
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540714
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2021141734
(87)【国際公開番号】W WO2022143550
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011582948.4
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011584014.4
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523247795
【氏名又は名称】浙江納米抗体技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG NANOMAB TECHNOLOGY CENTER CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 加国
(72)【発明者】
【氏名】于 海翔
(72)【発明者】
【氏名】劉 祥箴
(72)【発明者】
【氏名】朱 偉民
(72)【発明者】
【氏名】孫 艶
(72)【発明者】
【氏名】丁 娜
(72)【発明者】
【氏名】銭 其軍
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA12
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA98X
4B065AA98Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE56
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
本発明は、抗メソテリウム単一ドメイン抗体を含むメソテリン結合分子を提供し、前記単一ドメイン抗体の相補性決定領域CDRはSEQ ID NO:1に示されるCDR1、SEQ ID NO:2に示されるCDR2、SEQ ID NO:3に示されるCDR3を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む相補性決定領域CDRを有する抗メソテリウム単一ドメイン抗体を含むメソテリン結合分子であって、CDR1がSEQ ID NO:1に示される配列を含み、CDR2がSEQ ID NO:2に示される配列を含み、CDR3がSEQ ID NO:3に示される配列を含み、
SEQ ID NO:1はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11であり、ただし、X
1はG、E、TまたはAであり、X
2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X
3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X
4はF、S、I、A、LまたはGであり、X
5はN、S、G、A、D、T、E、RまたはHであり、X
6はI、L、F、Y、EまたはNであり、X
7はN、A、G、D、K、Y、LまたはSであり、X
8はA、Y、V、DまたはNであり、X
9はEまたは無しであり、X
10はFまたは無しであり、X
11はAまたは無しであり、
SEQ ID NO: 2はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12であり、ただし、X
1はI、M、A、TまたはLであり、X
2はS、G、N、D、TまたはVであり、X
3はS、N、A、R、GまたはTであり、X
4はS、T、G、DまたはNであり、X
5はN、G、TまたはIであり、X
6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X
7はD、T、S、IまたはKであり、X
8はN、T、G、Dまたは無しであり、X
9はT、K、Gまたは無しであり、X
10はG、Rまたは無しであり、X
11はV、Tまたは無しであり、X
12はTまたは無しであり、
SEQ ID NO: 3はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19X
20X
21X
22X
23であり、ただし、X
1はN、H、AまたはQであり、X
2はL、A、GまたはVであり、X
3はS、R、E、G、DまたはTであり、X
4はN、A、R、G、D、K、V、T、I、EまたはQであり、X
5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X
6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X
7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X
8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X
9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、T、RまたはVであり、X
10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、C、LまたはSであり、X
11はY、D、E、P、F、S、L、Iまたは無しであり、X
12はP、V、Q、A、Y、F、N、D、Rまたは無しであり、X
13はD、A、Y、V、Q、Pまたは無しであり、X
14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X
15はC、S、M、P、Tまたは無しであり、X
15はC、S、M、Pまたは無しであり、X
16はV、D、S、Yまたは無しであり、X
17はL、F、V、Dまたは無しであり、X
18はR、G、M、Sまたは無しであり、X
19はD、N、Sまたは無しであり、X
20はY、Lまたは無しであり、X
21はYまたは無しであり、X
22はAまたは無しであり、X
23はDまたは無しである、メソテリン結合分子。
【請求項2】
請求項1に記載のメソテリン結合分子において、
SEQ ID NO:1はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8であり、ただし、X
1はG、E、TまたはAであり、X
2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X
3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X
4はF、S、I、A、LまたはGであり、X
5はN、S、G、A、D、T、EまたはHであり、X
6はI、L、F、YまたはNであり、X
7はN、A、G、D、K、YまたはSであり、X
8はA、Y、VまたはNであり;好ましくは、SEQ ID NO: 1はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8であり、ただし、X
1はG、E、TまたはAであり、X
2はS、N、P、HまたはIであり、X
3はI、S、T、D、LまたはAであり、X
4はF、IまたはLであり、X
5はS、TまたはEであり、X
6はI、FまたはYであり、X
7はN、A、DまたはYであり、X
8はAまたはYであり、
SEQ ID NO: 2はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12であり、ただし、X
1はI、M、A、TまたはLであり、X
2はS、G、N、D、TまたはVであり、X
3はS、N、A、RまたはTであり、X
4はS、T、G、DまたはNであり、X
5はN、G、TまたはIであり、X
6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X
7はD、T、S、IまたはKであり、X
8はN、T、G、Dまたは無しであり、X
9はT、K、Gまたは無しであり、X
10はG、Rまたは無しであり、X
11はV、Tまたは無しであり、X
12はTまたは無しであり;好ましくは、SEQ ID NO:2はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12であり、ただし、X
1はI、AまたはTであり、X
2はS、G、NまたはTであり、X
3はSまたはRであり、X
4はT、GまたはDであり、X
5はN、GまたはTであり、X
6はS、R、N、KまたはTであり、X
7はD、T、S、IまたはKであり、X
8はN、Gまたは無しであり、X
9はT、Gまたは無しであり、X
10はGまたは無しであり、X
11はVまたは無しであり、X
12はTまたは無しであり、
SEQ ID NO: 3はX
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19X
20X
21X
22X
23であり、ただし、X
1はN、H、AまたはQであり、X
2はL、A、GまたはVであり、X
3はS、R、E、G、DまたはTであり、X
4はN、A、R、G、D、K、V、T、IまたはQであり、X
5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X
6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X
7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X
8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X
9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、TまたはVであり、X
10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、CまたはSであり、X
11はY、D、E、P、F、S、Lまたは無しであり、X
12はP、V、Q、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X
13はD、A、Y、V、Qまたは無しであり、X
14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X
15はC、S、M、Pまたは無しであり、X
16はV、D、S、Yまたは無しであり、X
17はL、F、V、Dまたは無しであり、X
18はR、G、M、Sまたは無しであり、X
19はD、N、Sまたは無しであり、X
20はY、Lまたは無しであり、X
21はYまたは無しであり、X
22はAまたは無しであり、X
23はDまたは無しであり;好ましくは、SEQ ID NO: 3はAX
2X
3X
4X
5X
6X
7X
8X
9X
10X
11X
12X
13X
14X
15X
16X
17X
18X
19であり、ただし、X
2はAまたはVであり、X
3はS、E、GまたはDであり、X
4はN、R、DまたはIであり、X
5はY、F、K、DまたはHであり、X
6はD、G、P、CまたはSであり、X
7はR、Y、D、KまたはLであり、X
8はK、Q、GまたはNであり、X
9はD、S、YまたはQであり、X
10はR、Y、D、VまたはSであり、X
11はY、D、F、S、Lまたは無しであり、X
12はP、F、または無しであり、X
13はD、Vまたは無しであり、X
14はPまたは無しであり、X
15はSまたは無しであり、X
16はDまたは無しであり、X
17はFまたは無しであり、X
18はGまたは無しであり、X
19はNまたは無しであることを特徴とする、メソテリン結合分子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメソテリン結合分子において、前記単一ドメイン抗体のCDR1はSEQ ID NO: 4-27、73の何れか1つに示される配列を含み、CDR2はSEQ ID NO: 28-47、74の何れか1つに示される配列を含み、CDR3はSEQ ID NO: 48-72、75の何れか1つに示される配列を含み、
好ましくは、前記単一ドメイン抗体は下記群a1-群a26のいずれかの群に示されるCDR1、CDR2とCDR3を含むことを特徴とする、メソテリン結合分子:
【表1】
【請求項4】
請求項1または2に記載のメソテリン結合分子において、
前記単一ドメイン抗体のFR領域はSEQ ID NO: 76-120から選ばれるいずれか1つのVHHのFR領域を含み、および/または
前記単一ドメイン抗体VHHはSEQ ID NO: 76-120から選ばれる何れか1つに示され、および/または
前記メソテリン結合分子は1本、2本または複数本の前記単一ドメイン抗体を含む一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体またはその抗原結合断片、抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする、メソテリン結合分子。
【請求項5】
請求項4に記載のメソテリン結合分子において、前記メソテリン結合分子は重鎖抗体であり、前記重鎖抗体はさらに重鎖定常領域CH2とCH3を含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域はSEQ ID NO: 121に示される配列を含むことを特徴とする、メソテリン結合分子。
【請求項6】
ポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドは
(1)請求項1~5のいずれか1つに記載のメソテリン結合分子のコード配列;
(2)(1)の相補配列;
(3)(1)または(2)のいずれかの配列の5-50bpの断片
から選ばれることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項7】
核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは請求項6に記載のポリヌクレオチドを含み、
好ましくは、前記核酸コンストラクトが組換えベクタまたは発現ベクターであることを特徴とする、核酸コンストラクト。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子を含むファージであって、
好ましくは、前記メソテリン結合分子は前記ファージ表面に提示される、ファージ。
【請求項9】
宿主細胞であって、前記宿主細胞は、
(1)請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子を発現し;および/または
(2)請求項6に記載のポリヌクレオチドを含み;および/または
(3)請求項7に記載の核酸コンストラクトを含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項10】
メソテリン結合分子を産生する方法であって、メソテリン結合分子の産生に適した条件で請求項9に記載の宿主細胞を培養すること、および任意選択で、培養物からメソテリン結合分子を精製することを含む、方法。
【請求項11】
医薬組成物であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子と、請求項6に記載のポリヌクレオチドと、請求項7に記載の核酸コンストラクトと、請求項8に記載のファージまたは請求項9に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される補助剤とを含み、
好ましくは、前記医薬組成物ががんを治療するために利用される、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子の、がんを予防または治療するための薬物の製造における応用。
【請求項13】
薬物治療の効果評価またはがん診断に使われるメソテリンまたはMD50検出キットであって、前記キットは請求項1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子と、請求項6に記載のポリヌクレオチドと、請求項7に記載の核酸コンストラクトと、請求項8に記載のファージまたは請求項9に記載の宿主細胞とを含み、
好ましくは、前記キットは単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合断片へのメソテリンまたはMD50の結合を検出するための試薬をさらに含み、
さらに好ましくは、前記試薬は酵素免疫測定法によって前記結合を検出する試薬である、キット。
【請求項14】
試料中のメソテリンまたはMD50の存在を検出するための非診断的方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子を試料と共にインキュベートすることと、単一ドメイン抗体、抗体またはその抗原結合断片へのメソテリンまたはMD50の結合を検出し、それによって試料中のメソテリンまたはMD50の存在を決定することとを含む、方法。
【請求項15】
試料中のメソテリンまたはMD50の検出、薬物治療の効果の評価、または癌の診断のためのキットの調製における、請求項1~5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学または生物製薬技術の分野に関し、より具体的には、メソテリン結合分子およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
メソテリン(MSLN)遺伝子は、染色体1p13.3に位置し、全長は8kDである。当該遺伝子は1884bpのオープンリーディングフレームを含み、l7のエクソン、628のアミノ酸をコードする。MSLNの前駆体タンパク質は、グリコシルリン脂質ペプチドイノシトールで細胞膜にアンカーされ、長さが69kDである糖タンパク質であり、タンパク質分解酵素によって2つの部分に加水分解でき、そのN末端は巨核球刺激活性を有する31kDの可溶性タンパク質であり、巨核球増強因子(megakaryocyte potentiating factor、MPF)と呼ばれ、C末端は細胞接着性を有する約40kDの膜結合タンパク質であり、MSLNと呼ばれる。膜タンパク質におけるMSLNの構造は3つの異なる領域に分けることができ、そのうちI領域はリガンドCA125の結合部位である。
【0003】
メソテリンは、分化抗原として様々な悪性腫瘍において高発現し、腫瘍の発生、進展に深く関与し、この標的は最も有望な抗腫瘍標的の一つであり、多くの大手製薬会社はこの標的に対して開発を重ね、現在臨床試験に入っている薬物の形態としてはCAR-T、モノクローナル抗体、ADCなどがある。過去20年近くにわたり、主にSS1P免疫毒素及びMORAB-009を含む、様々の抗メソテリンモノクローナル抗体が開発された。SS1Pは、scFvとトランケートされた緑膿菌外毒素の融合で構成される組換え免疫毒素であり、主に細胞殺傷を媒介する。一方、MORAB-009は、SS1P配列により組み換えられたIgG1抗体であり、主に抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)を引き起こす。
【0004】
SS1P抗体は、メソテリンI領域に結合し、CA125とメソテリンとの結合を遮断することができる。この抗体はCAR-Tの治療にも用いられるが、いずれも治療効果が不十分である(Jiang, H.ら、Protein Cell 8, 926-931、2017; Adusumilli, P. S.ら、Sci. Transl. Med. 6, 261ra151、2014; Lanitis, E.ら、Mol. Ther. 20, 633-643、2012)。
ナノボディは、安定性が高く、浸透圧が高く、結合エピトープが広いという天然の利点を有し(Muyldermans S. Annu Rev Biochem. 2013;82:775-97.)、MSLN膜近位端のナノボディについてはほとんど研究されていない。優れた特異性、遮断活性、臨床的薬効を有し、且つ生産が簡単で、低コストで、薬物負荷を軽減する新規な抗メソテリウムナノボディの開発が、早急に解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はメソテリン結合分子およびその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、抗メソテリウム単一ドメイン抗体を含むメソテリン結合分子を提供し、前記単一ドメイン抗体の相補性決定領域CDRはCDR1、CDR2およびCDR3を含み、そのうち、CDR1がSEQ ID NO:1に示される配列を含み、CDR2がSEQ ID NO:2に示される配列を含み、CDR3がSEQ ID NO:3に示される配列を含む。
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、E、RまたはHであり、X6はI、L、F、Y、EまたはNであり、X7はN、A、G、D、K
、Y、LまたはSであり、X8はA、Y、V、DまたはNであり、X9はEまたは無しであり、X10はFまたは無しであり、X11はAまたは無しである。
【0007】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、EまたはHであり、X6はI、L、F、YまたはNであり、X7はN、A、G、D、K、YまたはSであり、X8はA、Y、VまたはNである。
【0008】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 1はGX2X3X4X5X6X7Aであり、ただし、X2はS、N、A、D、IまたはFであり、X3はI、V、T、D、A、LまたはSであり、X4はF、S、I、AまたはLであり、X5はN、S、A、D、E、TまたはHであり、X6はI、F、NまたはYであり、X7はN、G、DまたはYである。
好ましくは、SEQ ID NO: 1はX1X2X3X4X5X6X7X8であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、HまたはIであり、X3はI、S、T、D、LまたはAであり、X4はF、IまたはLであり、X5はS、TまたはEであり、X6はI、FまたはYであり、X7はN、A、DまたはYであり、X8はAまたはYである。
【0009】
1つまたは複数の実施形態において、CDR1がSEQ ID NO:4-27、73の何れか1つに示される配列を含む。好ましくは、CDR1がSEQ ID NO: 5、11、14、15、17、21、27、73の何れか1つに示される配列を含む。
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、M、A、TまたはLであり、X2はS、G、N、D、TまたはVであり、X3はS、N、A、R、GまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はN、G、TまたはIであり、X6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、T、G、Dまたは無しであり、X9はT、K、Gまたは無しであり、X10はG、Rまたは無しであり、X11はV、Tまたは無しであり、X12はTまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、X3はS、N、A、RまたはTである。
【0010】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 2はIX2X3X4X5X6X7X8X9であり、ただし、X2はS、G、NまたはDであり、X3はS、N、AまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はNまたはGであり、X6はS、R、N、DまたはKであり、X7はD、T、SまたはKであり、X8はN、Tまたは無しであり、X9はT、Kまたは無しである。
好ましくは、SEQ ID NO:2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、AまたはTであり、X2はS、G、NまたはTであり、X3はSまたはRであり、X4はT、GまたはDであり、X5はN、GまたはTであり、X6はS、R、N、KまたはTであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、Gまたは無しであり、X9はT、Gまたは無しであり、X10はGまたは無しであり、X11はVまたは無しであり、X12はTまたは無しである。
1つまたは複数の実施形態において、CDR2はSEQ ID NO: 28-47、74のいずれか1つに示される配列を含む。好ましくは、CDR2がSEQ ID NO: 29、35、37、38、39、43、40、74の何れか1つに示される配列を含む。
【0011】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 3はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23であり、ただし、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、I、EまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、T、RまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、C、LまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、L、Iまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、D、Rまたは無しであり、X1
3はD、A、Y、V、Q、Pまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、P、Tまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しである。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 3はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23であり、ただし、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、IまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、TまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、CまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X13はD、A、Y、V、Qまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しである。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 3はAX2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19であり、ただし、X2はA、GまたはVであり、X3はS、E、G、DまたはTであり、X4はN、R、D、K、TまたはIであり、X5はY、F、K、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、G、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、LまたはGであり、X8はK、S、F、D、Q、G、P、YまたはNであり、X9はD、G、I、S、Y、Q、KまたはVであり、X10はR、Y、H、T、D、P、V、KまたはCであり、X11はY、D、E、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、V、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X13はD、A、Y、Vまたは無しであり、X14はY、P、Eまたは無しであり、X15はS、Pまたは無しであり、X16はD、Yまたは無しであり、X17はF、Dまたは無しであり、X18はG、Sまたは無しであり、X19はNまたは無しである。
【0014】
好ましくは、SEQ ID NO: 3はAX2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19であり、ただし、X2はAまたはVであり、X3はS、E、GまたはDであり、X4はN、R、DまたはIであり、X5はY、F、K、DまたはHであり、X6はD、G、P、CまたはSであり、X7はR、Y、D、KまたはLであり、X8はK、Q、GまたはNであり、X9はD、S、YまたはQであり、X10はR、Y、D、VまたはSであり、X11はY、D、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、F、または無しであり、X13はD、Vまたは無しであり、X14はPまたは無しであり、X15はSまたは無しであり、X16はDまたは無しであり、X17はFまたは無しであり、X18はGまたは無しであり、X19はNまたは無しである。
【0015】
1つまたは複数の実施形態において、前記抗メソテリウム単一ドメイン抗体はメソテリンIII領域(膜近位端)の特異的な単一ドメイン抗体である。
1つまたは複数の実施形態において、CDR3はSEQ ID NO: 48-72、75のいずれか1つに示される配列を含む。好ましくは、CDR3がSEQ ID NO: 49、55、58、59、61、65、72、75の何れか1つに示される配列を含む。
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のCDR1はSEQ ID NO: 4-27、73のいずれか1つに示される配列を含み、CDR2はSEQ ID NO: 28-47、74のいずれか1つに示される配列を含み、CDR3はSEQ ID NO:48-72、75のいずれか1つに示される配列を含む。
【0016】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、以下の群a1-群a26のいずれか1群に示されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む:
【表1】
【0017】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHのFR1は表1における各抗体番号のVHHのFR1から選ばれ、VHHのFR2は表1における各抗体番号のVHHのFR2から選ばれ、VHHのFR3は表1における各抗体番号のVHHのFR3から選ばれ、VHHのFR4は表1における各抗体番号のVHHのFR4から選ばれる。
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のFR領域はSEQ ID NO: 76-120から選ばれるいずれか1つのVHHのFR領域である。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHはSEQ ID NO: 76-120のいずれか1つに示される。好ましくは、前記単一ドメイン抗体はSEQ ID NO: 74、83、86、87、89、93、100、103のいずれか1つに示される。
1つまたは複数の実施形態において、前記メソテリン結合分子は1本、2本または複数本の本明細書に記載の抗メソテリン単一ドメイン抗体を含む一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体またはその抗原結合断片、抗体またはその抗原結合断片である。
1つまたは複数の実施形態において、前記多価の単一ドメイン抗体または多重特異性単一ドメイン抗体はリンカーにより複数の単一ドメイン抗体に連結される。前記リンカーはGとSから選ばれ1-15のアミノ酸からなる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体の抗原結合断片は一本鎖重鎖抗体である。
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体はラクダ科動物の重鎖抗体または軟
骨魚類の重鎖抗体である。
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体はさらに重鎖定常領域を含む。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖定常領域はラクダ科動物の重鎖抗体の定常領域であり、CH2とCH3を含む。1つまたは複数の実施形態において、前記CH2とCH3はヒトIgG FcのCH2とCH3であり、例えばIgG4のCH2とCH3である。好ましくは、前記重鎖定常領域はSEQ ID NO: 121に示される。
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖定常領域は軟骨魚類の重鎖抗体の定常領域であり、CH1、CH2、CH3、CH4およびCH5を含む。
【0021】
1つまたは複数の実施形態において、前記抗体は重鎖可変ドメインの抗体として前記抗メソテリン単一ドメイン抗体を含む。
1つまたは複数の実施形態において、前記抗体はさらに軽鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。
1つまたは複数の実施形態において、抗体の抗原結合断片はFab、F(ab’)2、Fv、scFvから選ばれる。
1つ又は複数の実施形態において、本発明の何れか1つの実施形態に係る結合分子はキメラ抗体又は完全ヒト抗体であり、好ましくは完全ヒト抗体である。
【0022】
本発明はさらにポリヌクレオチドを提供し、
(1)本明細書の実施形態のいずれかに記載の単一ドメイン抗体または本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片のコード配列;
(2)(1)の相補配列;
(3)(1)または(2)のいずれかの配列の5-50bpの断片
から選ばれる。
【0023】
1つ又は複数の実施形態において、前記断片がプライマーである。
本発明はさらに、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクトを提供する。
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトが組換えベクター又は発現ベクターである。
【0024】
本発明はまた、本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子のファージを提供する。
1つまたは複数の実施形態において、前記メソテリン結合分子は前記ファージ表面に提示される。
本発明はさらに宿主細胞を提供し、
(1)本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子を発現させること;
(2)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むこと;および/または
(3)本明細書に記載の核酸コンストラクトを含むことから選ばれる。
【0025】
本発明はまた、メソテリン結合分子を産生する方法であって、メソテリン結合分子(例えば一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体またはその抗原結合断片)の産生に適した条件で本明細書に記載の宿主細胞を培養すること、および任意選択で、培養物から前記メソテリン結合分子を精製することを含む方法を提供する。
本発明は医薬組成物を提供し、本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子、ポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、ファージまたは宿主細胞、および薬学的に許容される補助剤を含む。
1つ又は複数の実施形態において、前記医薬組成物ががんを治療するために利用される
。
1つまたは複数の実施形態において、前記がんはメソテリン関連がんである。好ましくは、前記がんには、中皮腫、膵臓がん、卵巣がん、肺腺がん、胃がんなどが含まれる。
【0026】
本発明はさらに本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子の、がんを予防または治療するための薬物の製造における応用を提供する。
1つまたは複数の実施形態において、前記がんはメソテリン関連がんである。好ましくは、前記がんには、中皮腫、膵臓がん、卵巣がん、肺腺がん、胃がんなどが含まれる。
本発明はまた、がんを治療または予防するための方法を提供し、前記方法は、必要な患者に治療有効量の本発明の何れか1つの実施形態によるメソテリン結合分子、または本発明の何れか1つの実施形態によるメソテリン結合分子を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、前記がんはメソテリン関連がんである。好ましくは、前記がんには、中皮腫、膵臓がん、卵巣がん、肺腺がん、胃がんなどが含まれる。
本発明はまた、薬物治療の効果評価またはがん診断に使われるメソテリン検出キットを提供し、前記キットは本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子、ポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、ファージ、宿主細胞を含む。
【0028】
1つまたは複数の実施形態において、前記キットは単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合断片へのメソテリンの結合を検出するための試薬をさらに含む。前記試薬は例えば酵素免疫測定法によって前記結合を検出する試薬である。
1つまたは複数の実施形態において、前記結合検出試薬は、例えばビオチンなどメソテリン結合分子に結合することができるの検出可能な標識である。前記検出可能な標識は前記メソテリン結合分子に結合され、またはに個別にキットに存在する。
【0029】
本発明は、試料中のメソテリンの存在を検出するための非診断的方法であって、本明細書のいずれかの実施形態に記載のメソテリン結合分子を試料と共にインキュベートすることと、メソテリンの、単一ドメイン抗体、抗体またはその抗原結合断片への結合を検出し、それによって試料中のメソテリンの存在を決定することとを含む方法も提供する。前記検出は酵素免疫測定法による検出である。
本発明はさらに、試料中のメソテリンの検出、薬物治療の効果の評価、またはがん診断のためのキットの調製における、本明細書の実施形態のいずれかに記載のメソテリン結合分子の応用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、MSLNタンパク質に対するアルパカ抗血清の力価検出である。
【
図2】
図2は、MSLN過剰表現細胞株に対するアルパカ抗血清の力価検出である。
【
図3】
図3は、候補抗体とMSLN III領域タンパク質過剰発現細胞株との結合検出である。
【
図4】
図4は、候補抗体とSKOV3腫瘍細胞株との結合検出である。
【
図5】
図5は、候補抗体とAspc-1腫瘍細胞株との結合検出である。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、M044抗体とYP218抗体とのエピトープ競合検出であり、
図6AはYP218抗体と最初に結合し、次いでM044抗体の結合状況を検出するものであり、
図6Bは
図6Aとは結合順序が逆である。 EC50の単位はnMである。Isotypeはアイソタイプ対照(陰性対照)であり、そのアミノ酸配列はCN106046152Aに記載のSEQ ID NO.:2に示されるようである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者は、鋭意研究を重ね、多くの選別を経て、抗メソテリン単一ドメイン抗体を含
むメソテリン結合分子を見出し、実験の結果によると、本発明の結合分子は、メソテリンの膜近位端を特異的に認識し、メソテリンまたはメソテリンを発現する細胞および腫瘍細胞に高い親和性で結合でき、且つ組織交叉反応を起こしないことが分かる。本発明の単一ドメイン抗体の製造が簡単である。
具体的には、本発明は、ヒト由来のメソテリンを用いてアルパカを免疫し、高品質の免疫単一ドメイン抗体遺伝子ライブラリーを取得する。次に、MSLNタンパク質と膜近位端断片をELISAプレートに結合し、免疫単一ドメイン抗体遺伝子ライブラリーをファージディスプレイ技術によりスクリーニングし、MSLN特異的単一ドメイン抗体遺伝子を得る。次いで、この遺伝子を哺乳動物細胞に導入することにより、哺乳動物細胞で高度に発現でき、高い特異性を有する単一ドメイン抗体株が得られる。次に、プラズモン共鳴技術、フローサイトメトリー、エピトープ競合試験、ビオチンレポーター遺伝子検出システムなどの方法により、高い親和性と低い組織交差反応性を有する単一ドメイン抗体を同定する。
【0032】
抗体
本明細書において、「メソテリン結合分子」または「MSLN結合分子」は、メソテリンに特異的に結合するタンパク質であり、抗体、抗体の抗原結合断片、重鎖抗体、ナノボディ、ミニボディ、アフィボディ、受容体の標的結合ドメイン、細胞接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、及びケモカインを含むが、これらに限定されない。本明細書に記載の「MD50」は、メソテリンの膜近位端にある94アミノ酸長(GenBank:AAH09272.1、487-580)のタンパク質である。
【0033】
本明細書において、用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、マルチエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ダイアボディ、一本鎖分子、及び抗体断片(特に、抗原結合断片、例えば、Fab、F(ab’)2及びFv)を含む。本明細書において、用語「免疫グロブリン」(Ig)と「抗体」は互いに代用できる。
【0034】
基本的な4本鎖抗体ユニットは2本の同じ軽鎖(L)と2本の同じ重鎖(H)により構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は5個の基本的なヘテロ四量体ユニット及びJ鎖と呼ばれるその他のポリペプチドからなり、10個の抗原結合部位を含む。IgA抗体は2-5個の基本的な4本鎖ユニットを含み、J鎖と重合して、多価集合体が形成できる。IgGの場合、4本鎖ユニットは通常約150,000ダルトンである。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖と連結され、2本の重鎖は1つ又は複数のジスルフィド結合により互いに連結されるが、ジスルフィド結合の数が重鎖のアイソタイプによって決定される。各重鎖と軽鎖との間は規則的な間隔の鎖間ジスルフィド架橋を更に有する。各重鎖はN-末端に可変ドメイン(VH)を有し、更に3つ(各α及びγ鎖に対しては、CH1、CH2とCH3である)及び4つ(μ及びεアイソタイプに対しては、CH1、CH2、CH3とCH4である)の定常ドメイン(CH)、およびCH1ドメインとCH2ドメインの間のヒンジ領域(Hinge)を有する。各軽鎖はN-末端に可変ドメイン(VL)を有し、更にその他端に定常ドメインを有する(CL)。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖可変ドメインとの間に界面が形成されると考えられる。対となるVHとVLは一緒に1つの抗原結合部位を形成する。抗体の種々のクラスの構造及び特性について、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P. Sties、Abba I. Terr及びTristram G. Parsolw編集、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994、71ページ及び第6章を参照する。任意の脊椎動物種に由来する軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列によって、κ及びλと呼ばれる異なる2種のうちの1種に割り当てることができる。免疫グロブリンは、それらの重鎖定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列によって、種々のクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5種類があり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的に小さい相違によって、更に、例えば、ヒトに発現されるIgG1、IgG2A、IgG2B、Ig
G3、IgG4、IgA1及びIgA2のサブクラスに分けられる。
【0035】
本明細書に記載の「重鎖抗体」はラクダ科生物または軟骨魚類生物由来の抗体である。上記の4鎖抗体と比べ、重鎖抗体は、軽鎖および重鎖定常領域1(CH1)を欠如し、可変領域(VHH)および他の定常領域からなる重鎖を2つのみ含み、可変領域は、ヒンジ領域構造に類似する構造によって定常領域と連結されている。ラクダ科動物の重鎖抗体の各重鎖は、1つの可変領域(VHH)及び2つの定常領域(CH2及びCH3)を含み、軟骨魚類の重鎖抗体の各重鎖は、1つの可変領域及び5つの定常領域(CH1-CH5)を含む。重鎖抗体の抗原結合断片はVHHと一本鎖重鎖抗体を含む。重鎖抗体は、ヒトIgG Fcの定常領域との融合により、ヒトIgG FcのCH2およびCH3を有することができる。
【0036】
本明細書において、用語「単一ドメイン抗体」、「抗メソテリン単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体の重鎖可変領域ドメイン」、「VHH」、「ナノボディ」は互いに交換して使用でき、いずれもメソテリンを特異的に認識し、それに結合する単一ドメイン抗体を指す。単一ドメイン抗体は重鎖抗体の可変領域である。通常、単一ドメイン抗体は3つのCDRと4つのFRを含む。好ましくは、本発明の単一ドメイン抗体はSEQ ID NO:1に示されるCDR1、SEQ ID NO: 2に示されるCDR2、およびSEQ ID NO: 3に示されるCDR3を含む。単一ドメイン抗体は最も小さい機能性抗原結合断片である。通常、軽鎖および重鎖定常領域1(CH1)を天然に欠如した抗体を取得してから、抗体重鎖の可変領域をクローニングし、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を構築する。
【0037】
2つ以上の単一ドメイン抗体を含む結合分子は、多価単一ドメイン抗体であり;2つ以上の異なる特異性単一ドメイン抗体を含む結合分子は、多重特異性単一ドメイン抗体である。多価の単一ドメイン抗体または多重特異性単一ドメイン抗体はリンカーにより複数の単一ドメイン抗体に連結される。前記リンカーは通常、GとSから選ばれ1-15のアミノ酸からなる。
【0038】
本明細書において、重鎖抗体および抗体は、抗体の異なる組み合わせ方式を区別することを意図している。構造的に類似性を有するため、下記抗体に対する構造説明は軽鎖に関する内容以外は、重鎖抗体に適用する。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ基末端ドメインである。重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ「VH」及び「VL」と呼ばれる。これらのドメインは通常、抗体の最も可変できる部分(同じタイプのその他の抗体)であり、抗原結合部位を含む。
【0039】
用語「可変」は、可変ドメインにおける特定のセグメントが抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。可変ドメインは、抗原結合を媒介して、特定抗体の、その特定抗原に対する特異性を限定する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全てのアミノ酸スパンにわたって均一に分布しているわけではない。代わりに、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメント(軽鎖及び重鎖可変ドメインのどちらにもある)に集中し、即ち、それぞれ重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、HCDR3及(重鎖抗体において、CDR1、CDR2、CDR3と略称してもよい)び軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3である。可変ドメインにおけるより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)を含み、通常、βプリーツシート構造を採用するが、環状連結を形成すると共に場合によってβプリーツシート構造の一部を形成する3つのHVRにより連結される。各鎖におけるHVRは、FR領域により非常に近い距離で保持されており、且つ他方の鎖におけるHVRと一緒に抗体の抗原結合部位の形成を促進する。通常、軽鎖可変領域の構造はFR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4であり、重鎖可変領域の構造はFR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4である。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接的に関与しないが、例えば、抗体依存性細胞に仲介される細
胞毒性における抗体の関与などの、様々なエフェクター機能を示している。
【0040】
「Fc領域」(結晶性断片領域)または「Fcドメイン」または「Fc」は、抗体重鎖のC末端領域を指し、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)に位置するFc受容体への結合、または古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介する。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の2本の重鎖のCH2ドメインおよびCH3ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片から構成され;IgMおよびIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2-4)を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、様々であり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、一般的に、例えば、Kabatにおけるように、重鎖の位置C226またはP230のアミノ酸残基からカルボキシル末端までの配列セグメントとして定義され、その番号付けはEUインデックスに従う。本明細書において、Fc領域は天然配列Fcまたは変異体Fcであり得る。
【0041】
「抗体断片」は無傷抗体の一部、好ましくは無傷抗体の抗原結合領域及び/又は可変領域を含む。抗体断片は抗体の抗原結合断片が好ましい。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片や、ダイアボディや、線状抗体や、一本鎖抗体分子や、scFv-Fc断片や、抗体断片により形成される多重特異性抗体や、化学的修飾又はリポソームに組込まれることにより半減期が増加可能な任意の断片が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、ならびに1つの残りの「Fc」断片を産生し、その名称は容易に結晶化する能力を反映している。Fab断片は完全な軽鎖及び重鎖可変ドメイン(VH)と1本の重鎖第1定常ドメイン(CH1)により構成される。各Fab断片は抗原結合に関して1価であり、即ち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、1つの大型F(ab’)2断片を生じ、これは、ジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片にほぼ相当し、異なる抗原結合活性を有し、且つ依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ基末端に幾つかのその他の残基(抗体ヒンジ領域に由来する1つ又は複数のシステインを含む)が付加されているため、Fab断片と異なる。F(ab’)2抗体断片は、元来対となるFab’断片として産生され、Fab’断片の間にヒンジシステインがある。抗体断片のその他の化学カップリングは既に知られている。Fc断片はジスルフィド結合により一体に保持されている2本の重鎖のカルボキシ基末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域における配列によって決定されるが、該領域は幾つかの種類の細胞に発見されたFc受容体(FcR)により認識された領域でもある。
【0042】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は、堅く、非共有的に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原特異性を付与する6つの超可変ループ(各々重鎖および軽鎖からの3つのループ)を生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、完全結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。「一本鎖Fv」は「sFv」又は「scFv」と略され、抗体VH及びVLドメインを含むと共に1本のポリペプチド鎖に連結される抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVHとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、sFvを所望の抗原結合構造に形成させる。
【0043】
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団により得られた抗体であり、即ち、天然に発生できる少量で存在可能な突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、集団を構成する各抗体が同様である。モノクローナル抗体は高度的な特異性を持ち、単一の抗原部位に対応するものである。ポリクローナル抗体製剤(異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を代表的に含む)に対して、各モノクローナル抗体は抗原における単一の決定基に対応する。これらの特異
性の他に、モノクローナル抗体の優位性は、ハイブリドーマの培養によって合成されるため、その他の免疫グロブリンに汚染されていないことである。修飾語「モノクローナル」は、抗体が実質的に均質な抗体の集団により得られた特徴を示し、任意の特定方法による抗体の産生を要請すると解釈するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法、組換えDNA法、及び一部若しくは全体のヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物からヒト又はヒト様抗体を生成するための技術、単細胞シーケンシング法を含む様々な技術によって生成され得る。
【0044】
本明細書において、モノクローナル抗体は、「キメラ」抗体を含み、これは、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である一方、鎖の残部は、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、並びに、このような抗体の断片である。
【0045】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含むキメラ抗体である。従って、「ヒト化抗体」は、通常、可変ドメインフレームワーク領域がヒト抗体に発見された配列と交換した非ヒト抗体である。通常、ヒト化抗体において、抗体全体(CDRを除く)は、ヒト由来のポリヌクレオチドによりコードされ、又はこのような抗体(CDRを除く)と同じである。CDR(その一部又は全部が非ヒト生体に由来する核酸によりコードされる)がヒト抗体可変領域のβ-プリーツシート骨格に移植されて抗体が産生されるが、その特異性は移植されるCDRによって決定される。このような抗体を産生する方法は本分野において周知されており、例えば、遺伝子操作された免疫系を有するマウスを利用して作製する。本発明において、抗体、単一ドメイン抗体、重鎖抗体等はいずれも、各抗体のヒト化変異体を含む。
【0046】
「ヒト抗体」は、ヒトから産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、及び/又は本願に開示されたヒト抗体を産生するための任意の技術を利用して産生されるような抗体である。このヒト抗体の定義は非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明らかに排除した。ヒト抗体は、ファージ提示ライブラリーを含む、本分野における様々な既存技術を利用して産生してもよい。
幾つかの実施形態において、本発明はまた、本発明の任意の抗メソテリン単一ドメイン抗体と同じメソテリンエピトープ(例えば、メソテリンIII領域の膜近位端又はMD50)に結合する単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体又はその抗原結合断片、すなわち、本発明の任意の単一ドメイン抗体と、メソテリンへの結合について交差競合することができる単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0047】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR1はSEQ ID NO:1に示される配列を含み、SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、E、RまたはHであり、X6はI、L、F、Y、EまたはNであり、X7はN、A、G、D、K、Y、LまたはSであり、X8はA、Y、V、DまたはNであり、X9はEまたは無しであり、X10はFまたは無しであり、X11はAまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、EまたはHであり、X6はI、L、F、YまたはNであり、X7はN、A、G、D、K、YまたはSであり、X8はA、Y、VまたはNである。好ましくは、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、HまたはIであり、X3はI、S、T、D、LまたはAであり、X4はF、IまたはLであり、X5はS、Tま
たはEであり、X6はI、FまたはYであり、X7はN、A、DまたはYであり、X8はAまたはYである。1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 1はGX2X3X4X5X6X7Aであり、ただし、X2はS、N、A、D、IまたはFであり、X3はI、V、T、D、A、LまたはSであり、X4はF、S、I、AまたはLであり、X5はN、S、A、D、E、TまたはHであり、X6はI、F、NまたはYであり、X7はN、G、DまたはYである。1つまたは複数の実施形態において、CDR1はSEQ ID NO: 4-27、73のいずれか1つに示される配列を含む。
【0048】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR2はSEQ ID NO:2に示される配列を含み、SEQ ID NO: 2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、M、A、TまたはLであり、X2はS、G、N、D、TまたはVであり、X3はS、N、A、R、GまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はN、G、TまたはIであり、X6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、T、G、Dまたは無しであり、X9はT、K、Gまたは無しであり、X10はG、Rまたは無しであり、X11はV、Tまたは無しであり、X12はTまたは無しである。好ましくは、X1はI、AまたはTであり、X2はS、G、NまたはTであり、X3はSまたはRであり、X4はT、GまたはDであり、X5はN、GまたはTであり、X6はS、R、N、KまたはTであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、Gまたは無しであり、X9はT、Gまたは無しであり、X10はGまたは無しであり、X11はVまたは無しであり、X12はTまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、X3はS、N、A、RまたはTである。1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 2はIX2X3X4X5X6X7X8X9であり、ただし、X2はS、G、NまたはDであり、X3はS、N、AまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はNまたはGであり、X6はS、R、N、DまたはKであり、X7はD、T、SまたはKであり、X8はN、Tまたは無しであり、X9はT、Kまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、CDR2はSEQ ID NO: 28-47、74のいずれか1つに示される配列を含む。
【0049】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR3はSEQ ID NO:3に示される配列を含み、SEQ ID NO: 3はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23であり、ただし、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、I、EまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、T、RまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、C、LまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、L、Iまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、D、Rまたは無しであり、X13はD、A、Y、V、Q、Pまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、P、Tまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、IまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、TまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、CまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X13はD、A、Y、V、Qまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しである。1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO: 3はAX2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19であり、ただし、X2はA、GまたはVであり、X3はS、E、G、DまたはTであり、X4はN、
R、D、K、TまたはIであり、X5はY、F、K、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、G、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、LまたはGであり、X8はK、S、F、D、Q、G、P、YまたはNであり、X9はD、G、I、S、Y、Q、KまたはVであり、X10はR、Y、H、T、D、P、V、KまたはCであり、X11はY、D、E、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、V、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X13はD、A、Y、Vまたは無しであり、X14はY、P、Eまたは無しであり、X15はS、Pまたは無しであり、X16はD、Yまたは無しであり、X17はF、Dまたは無しであり、X18はG、Sまたは無しであり、X19はNまたは無しである。好ましくは、X1はAであり、X2はAまたはVであり、X3はS、E、GまたはDであり、X4はN、R、DまたはIであり、X5はY、F、K、DまたはHであり、X6はD、G、P、CまたはSであり、X7はR、Y、D、KまたはLであり、X8はK、Q、GまたはNであり、X9はD、S、YまたはQであり、X10はR、Y、D、VまたはSであり、X11はY、D、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、F、または無しであり、X13はD、Vまたは無しであり、X14はPまたは無しであり、X15はSまたは無しであり、X16はDまたは無しであり、X17はFまたは無しであり、X18はGまたは無しであり、X19はNまたは無しであり、X20-X23は無しである。1つまたは複数の実施形態において、CDR3はSEQ ID NO: 48-72、75のいずれか1つに示される配列を含む。
【0050】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のCDR1はSEQ ID NO: 5、11、14、15、17、21、27、73の何れか1つに示される配列を含み、CDR2はSEQ ID NO: 29、35、37、38、39、43、40、74の何れか1つに示される配列を含み、CDR3はSEQ ID NO:49、55、58、59、61、65、72、75の何れか1つに示される配列を含む。
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、表1の群a1-群a26のいずれか1群に示されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む:
【0051】
【表2】
好ましくは、a2、a8、a11、a12、a14、a18、a25、a26から選ばれるいずれか1つの群に示されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0052】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHのFR1は表1における各抗体番号のVHHのFR1から選ばれ、VHHのFR2は表1における各抗体番号のVHHのFR2から選ばれ、VHHのFR3は表1における各抗体番号のVHHのFR3から選ばれ、VHHのFR4は表1における各抗体番号のVHHのFR4から選ばれる。
好ましい実施形態では、本発明の単一ドメイン抗体VHHのFR領域は、抗体SEQ ID NO: 76-120から選ばれるいずれか1つのVHHのFR領域である。さらに好ましくは、このような抗体のCDRは前記群a1-群a25のいずれか1群から選ばれる。1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHはSEQ ID NO: 76-120のいずれか1つに示される。好ましくは、前記単一ドメイン抗体はSEQ ID NO: 77、83、86、87、89、93、100、103のいずれか1つに示される。
【0053】
本明細書に記載のメソテリン結合分子は1本、2本または複数本の本明細書に記載の抗メソテリン単一ドメイン抗体を含む一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体またはその抗原結合断片、抗体またはその抗原結合断片であり得る。前記重鎖抗体はさらに重鎖定常領域、例えばラクダ科動物の重鎖抗体または軟骨魚類の重鎖抗体の定常領域を含む。好ましくは、前記重鎖定常領域はSEQ ID NO: 121に示される。
【0054】
本発明はさらに前記抗体誘導体と類似体を含む。「誘導体」及び「類似体」とは、本発明の抗体と相同な生物学機能又は活性を基本的に保持するタンパク質を指す。本発明の誘導体或いは類似体は、(i)1つ又は複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(ii)成熟したポリペプチドがその他の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどの、ポリペプチドの半減期を延長する化合物)に融合して形成されたポリペプチド、或いは(iii)付加されたアミノ酸配列が当該ポリペプチド配列に融合されて形成されたポリペプチド(例えば、リーダー配列、分泌配列、当該ポリペプチドを精製するための配列又はタンパク質構成配列、或いは6Hisタグと形成された融合タンパク質)であってもよい。本明細書に教示されるように、これらの誘導体及び類似体は、当業者の周知範囲である。
【0055】
抗体活性に実質的な影響を与えない前提で、当業者は本発明の配列に対して1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個以上)のアミノ酸を変更して、前記抗体又はその機能性断片配列の変異体を得ることができる。これらの変異体は、1つ又は複数の(通常は1-50個であり、好ましくは1-30個であり、より好ましくは1-20個であり、最も好ましくは1-10個である)アミノ酸が欠如、挿入及び/又は置換され、及びC末端及び/又はN末端に1つ又は複数の(通常は20個以下であり、好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下である)アミノ酸が付加されることで得られたものを含むが、これらに限定されない。本分野において、近い特性又は類似的な特性を持つアミノ酸で性保存的な置換した場合、通常、タンパク質の機能が変化することはない。例えば、可変領域のFR及び/又はCDR領域で類似する特性を有するアミノ酸を置換する。保存的な置換できるアミノ酸残基は本分野で周知されている。このような置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされてもされなくてもよい。また、例えば、C末端及び/又はN末端に1つ又は複数のアミノ酸が付加された場合でも、通常、タンパク質の機能が変化することはない。これらは本発明により請求される範囲内に含まれると見なされる。表2はM2339抗体およびその例示的変異体のVHH配列を示す。
【0056】
【0057】
本明細書に記載される抗体の変異型には、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然変異体、誘導変異体、および高または低ストリンジェンシー条件下で本発明の抗体をコードするDNAとハイブリダイズできるDNAによってコードされるタンパク質、および本発明の抗体に対する抗血清を用いて得られるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明に係る変異体の配列はその由来配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有してもよい。本発明に係る配列同一性は配列分析ソフトウエアを利用して測定できる。例えば、デフォルト引数を使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNが挙げられる。本発明は、それらのCDRが本明細書で同定されるCDRと90%を超える(好ましくは95%を超え、最も好ましくは98%を超える)相同性を有する限り、CDRを有する抗体重鎖可変領域を有する分子をさらに含む。
【0059】
例えば、本分野でよく知られているハイブリドーマ技術など、本分野の常用方法により本発明の抗体を製造してもよい。例えば、本分野でよく知られているファージディスプレイ技術など、本分野の常用方法により本発明の重鎖抗体を製造してもよい。または、本発明の抗体または重鎖抗体は他の細胞系で発現してもよい。本発明の抗体をコードする配列で適切な哺乳動物宿主細胞を変換してもよい。変換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(又はウイルスベクター)にパッケージングしてウイルス(又はベクター)で宿主細胞に対して形質導入を行うことなどを含む、任意の既知方法を採用してもよい。使用される変換工程は変換する宿主によって決定される。ヘテロポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は本分野においてよく知られており、デキストランにより仲介されるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレンにより仲介されるトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、及びDNAの細胞核への直接マイクロインジェクションなどを含む。発現するための宿主として利用できる哺乳動物細胞系は本分野においてよく知られており、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手できる様々な不死化細胞系を含むが、これらに限定されず、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、HepG2)などを含むが、これらに限定されない。特に好ましい細胞系は、高発現レベルを有するとともに、基本的なメソテリン結合特性を有する抗体を産生する細胞系を特定することで選定する。
【0060】
核酸
本発明はさらに、前記抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。本明細書は重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、軽鎖及び各CDRをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドはDNA形態又はRNA形態であってもよい。DNA形態はcDNA、ゲノムDNA又は人工合成DNAを含む。DNAは一本鎖又は二本鎖であってもよい。DNAはコード鎖又は非コード鎖であってもよい。
【0061】
当業者に理解されるように、遺伝コードの縮重により大量の核酸を製造できるが、このような核酸の全ては本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする。従って、特定のアミノ酸配列が既に同定された場合、当業者はタンパク質をコードするアミノ酸配列を改変しない方式で1つ又は複数のコドンを簡単に修飾する配列により、任意数の異なる核酸を製造できる。したがって、本発明は、上記ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズし、且つ2つの配列間で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドにも関する。本発明は、特に、本発明のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、(1)例えば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃など低いイオン強度および高い温度でのハイブリダイゼーションおよ
び溶出;または(2)例えば50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子ウシ血清/0.1%Ficoll、42℃など変性剤によるハイブリダイゼーション;または(3)2つの配列間の同一性が少なくとも90%以上であり、より好ましくは95%以上である場合のみハイブリダイゼーションが発生する。さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0062】
本発明の抗体のヌクレオチドの全長配列或いはその断片は、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成の方法により得られる。特に断片の長さが短い場合、人工合成方法により関連配列を合成してもよい。通常、複数の小さい断片を合成した後に、これらを結合して長い配列の断片を得る。さらに、重鎖のコード配列と発現タグ(6Hisなど)を融合して融合タンパク質を形成することもできる。
【0063】
関連の配列を取得すると、組換え法により関連配列を大量に得ることができる。通常、それをベクターにクローニングして、細胞に導入した後に、通常の方法により増殖した宿主細胞から分離して関連配列を得る。本発明に係る生体分子(核酸、タンパク質等)には、単離された形態で存在する生体分子も含まれる。現在、化学合成だけにより、本発明のタンパク質(又はその断片、あるいはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。その後、当該DNA配列を本分野における既知の様々な既存DNA分子(例えば、ベクター)と細胞に導入する。また、化学合成により突然変異を本発明のタンパク質配列に導入してもよい。
【0064】
したがって、本発明はさらに、上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含む、発現ベクターおよび組換えベクターなどの核酸構築物に関する。これらのベクターは、タンパク質を発現させるように、適切な宿主細胞の形質転換に利用できる。ベクターは、通常、プラスミドの維持及び外因性ヌクレオチド配列のクローンと発現に使用される配列を含む。前記配列(幾つかの実施形態において「隣接配列」と総称される)は通常、1つ又は複数の下記ヌクレオチド配列、即ち、プロモーター、1つ又は複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、供与体及び受容体スプライス部位を含む完全イントロン配列、ポリペプチド分泌に利用されるリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現しようとする抗体をコードする核酸を挿入するためのマルチコネクソン領域及び任意の標識エレメントを含む。
【0065】
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、酵母細胞などの下等真核細胞、または哺乳類細胞などの高等真核細胞であり得る。代表的な例としては、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラ・ティフィムリウムなどの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ミバエS2又はSf9などの昆虫細胞、CHO、COS7、293細胞などの動物細胞などが挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は例えば様々なキラー細胞など、当技術分野で知られている様々な機能細胞であり得、サイトカイン誘導キラー細胞(CIK)、樹状細胞刺激サイトカイン誘導キラー細胞(DC-CIK)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、CD3AK細胞(抗CD3モノクローナル抗体キラー細胞)およびCAR-T/TCR-T細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記キラー細胞はT細胞またはNK細胞である。例示的なNK細胞は初代NK細胞、NK細胞株(例えばNK92)およびNKT細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記NK細胞は初代NK細胞である。例示的なT細胞は末梢血Tリンパ球、細胞傷害性キラーT細胞(CTL)、ヘルパーT細胞、サプレッサー/制御性T細胞、γδT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞(CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの混合細胞集団のT細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記T細胞は末梢血Tリンパ球およびTIL由来のT細胞である。
【0067】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術で行うことができる。宿主が大腸菌などの原核生物である場合、DNAを取り込むことができるコンピテントセルを指数増殖期後に採取でき、当技術分野で周知の手順を用いてCaCl2法で処理することができる。もう1つの方法はMgCl2を利用することである。必要な場合、形質転換はエレクトロポレーション法で行うこともできる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法などのDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームパッケージングなどの通常機械方法生体してもよい。
【0068】
得られた形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。培養に使用される培地は、使用される宿主細胞によって、様々な通常の培地から選べても良い。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度まで増殖した後、適切な方法(温度変換や化学誘導など)によって選択されたプロモーターを誘導し、さらに一定期間細胞を培養する。
【0069】
上記方法におけるポリペプチドは、細胞内、または細胞膜に発現され、又は細胞外に分泌される。必要に応じて、その物理的、化学的、及びその他の特性を利用して、様々な分離方法で組換えタンパク質を分離および精製してもよい。これらの方法は、当業者に周知するものである。これらの方法は、通常の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析方法)、遠心分離、浸透殺菌、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びその他の様々な液体クロマトグラフィー技術、並びにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0070】
治療用途と医薬組成物
ナノボディのライブラリーを構築することにより、本発明者は、MSLNタンパク質およびMD50タンパク質に結合することができる25個のナノボディを発見し、発現および精製した。タンパク質レベルの親和性検出、細胞レベルの親和性検出、腫瘍細胞MSLN結合検出、エピトープ競合実験および組織交差反応によって、抗原および細胞に対するこれらの抗体の結合能力および薬物安全性を検証した。
従い、本明細書に記載される抗体の全ての様態は本明細書に記載される様々な病状及び疾患を予防または治療するための薬物の製造に利用できるが、前記病状及び疾患、特に病状はメソテリンを発現する細胞に関連する疾患又は病状である。幾つかの実施形態において、前記病状及び疾患はがんであり、中皮腫、膵臓がん、卵巣がん、肺腺がん、胃がんなどを含むが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書に記載の医薬組成物は本明細書に記載の結合分子、および薬学的に許容される補助剤、を含み、前記補助剤は希釈剤、ベクター、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又はアジュバントを含むが、これらに限定されない。補助剤は、好ましくは、用いられる用量および濃度において受容者に毒性はない。このような補助剤としては、食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、組成物のpH値、浸透性、粘度、清澄度、色、等張性、におい、無菌性、安定性、溶解又は放出速度、吸収又は浸透を改善、維持又は保留するための物質を含んでもよい。これらの物質は既存技術でよく知られている。所望の投与経路、送達方式及び必要とされる用量によって最適な医薬組成物を決定する。
【0072】
インビボで投与する医薬組成物は、通常、無菌製剤の形態で提供する。無菌ろ過膜によりろ過することで殺菌を実現する。組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥及び再構成の前に又はその後にこの方法により殺菌する。本発明の医薬組成物は非経口送達で使用してもよい。非経口投与に利用される組成物は凍結乾燥の形態又は溶液で保存できる。例えば、
生理食塩水、グルコースおよびその他の添加物を含む水溶液を用いて通常の方法により調製することができる。非経口組成物は、通常、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって穿通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ、またはバイアルに入れられる。或いは、組成物は吸入又は消化器(例えば、経口)送達で使用してもよい。前記薬学的に許容される組成物は本分野の技術により製造する。その他の医薬組成物は当業者にとって明らかであり、持続的に又は制御的に放出される送達調製物に抗体が含まれる調製物を含む。幾つかのその他の持続的又は制御可能な送達方式を提供するための技術(例えば、リポソームベクター、生分解性微粒子又は多孔質ビーズ及びデポ注射)も当業者によく知られている。
【0073】
医薬組成物は、調製されると、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体、結晶、或いは脱水又は凍結乾燥粉末の形態で無菌バイアルに保存される。前記調製物はレディー・ツー・ユースの形態又は投与直前再構成の形態(例えば、凍結乾燥)のいずれで保存できる。本発明は単回用量投与単位を生成するための試薬キットを更に提供する。本発明の試薬キットは乾燥タンパク質を有する第1容器と含水調製物を有する第2容器をそれぞれ含む。本発明の幾つかの実施形態において、シングルチャンバー及びマルチチャンバープレフィルドシリンジ(例えば、液体用シリンジ及び凍結乾燥用シリンジ)を含む試薬キットを提供する。
【0074】
本発明は、本発明の何れか1つの実施形態に係る結合分子又はその医薬組成物を投与することで、患者(特に患者のメソテリン関連疾患)を治療する方法を提供する。本明細書において、用語「患者」、「被験者」、「個体」、「対象」は互いに交換して使用できるが、任意の生体を含み、好ましくは動物であり、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギなど)であり、最も好ましくはヒトである。「治療」は、被験者に対して本明細書に記載される治療方案を採用して、少なくとも1つの陽性治療効果(例えば、がん細胞数減少、腫瘍体積減少、がん細胞の周辺器官への浸潤速度低下又は腫瘍転移又は腫瘍成長の速度低下)を得ることである。患者を有効的に治療する治療方案は様々な要素(例えば、患者の疾患状態、年齢、体重及び療法の被験者の抗がん反応を活性化させる能力)によって変更する。
【0075】
採用しようとする本発明の結合分子を含む医薬組成物の治療有効量は、例えば、治療程度及び目標によって決定される。当業者に理解されるように、治療に使用される適切な用量レベルは部分的に送達される分子、適応症、投与経路及び患者の大きさ(体重、体表又は器官の大きさ)及び/又は状況(年齢及び一般健康状況)によって変化する。幾つかの実施形態において、最適の治療効果を得るために、臨床医が投薬量を設定して、投与経路を改変してもよい。例えば1日当たり約10μg/kg体重-約50μg/kg体重である。
投与頻度は使用される調製物における結合分子の薬物動態パラメータに依存する。代表的には、臨床医は組成物を所望の効果を実現する投薬量まで投与する。従って、組成物は1回用量として投与してもよく、或いは2回以上の用量(必要とされる分子を同じ量で含んでもよく又は含まなくてもよい)として経時的に、または移植デバイス又はカテーテルを介して連続注入として投与してもよい。
【0076】
医薬組成物の投与経路は、持続放出システムによるかまたは移植デバイスによる、例えば、経口、静脈内、腹膜内、脳内(脳実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈又は病巣内の経路による注射を通じた公知の方法に従う。
【0077】
診断、検出及び試薬キット
本発明の結合分子は、そのメソテリンに対する高親和性により測定に利用でき、例えば、測定と合わせて組織または細胞に発現するメソテリンを検出及び/又は定量する。例えば単一ドメイン抗体などの結合分子はメソテリンの疾患における作用のさらなる研究に利用できる。メソテリンを検出する方法は大体次の通りである:細胞および/または組織試料
を取得する;試料中のメソテリンのレベルを検出する。
【0078】
本発明のメソテリンはメソテリンに関連する疾患及び/又は病状を検出、診断又は監視するための診断目的に利用できる。本発明は当業者によく知られている代表的な免疫組織学方法により試料におけるメソテリンの存在を検出することを提供する。インビボ又はインビトロでメソテリンを検出できる。メソテリンの存在検出に適する方法の実例はELISA、FACS、RIAなどを含む。
【0079】
診断応用について、通常、検出できる標識基により例えば単一ドメイン抗体などの結合分子を標識する。適切な標識基は、下記のもの、即ち、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、発蛍光団(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光剤)、酵素団(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光団、ビオチン団又は二次レポーターにより認識された予定ポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー配列、二次抗体に利用される結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、MRI(磁気共鳴映像)またはCT(コンピュータ断層撮影)造影剤を含むが、これらに限定されない。タンパク質を標識するための各方法は本分野においてよく知られていると共に、本発明を実施できる。
【0080】
本発明の別の様態は本発明の抗体に対してメソテリンと競合的に結合する試験分子の存在の検出方法を提供する。前記測定の実例は、試験分子が存在する、又は存在しない場合の、メソテリンを一定量で含む溶液における遊離抗体の量の検出に関する。遊離抗体(即ち、メソテリンと結合していない抗体)の量の増加は、該抗体に対して試験分子がメソテリンと競合的に結合できることを示す。一実施形態において、標識基で抗体を標識する。或いは、試験分子を標識すると共に、抗体が存在する、又は存在しない場合に遊離試験分子の量を監視する。
【0081】
本発明はまた、メソテリンのレベルを検出するための検出キットを提供し、このキットは、メソテリンを認識する抗体、試料を溶解するための溶解媒体、検出に必要な一般的な試薬および緩衝液、例えば様々な緩衝液、検出用標識、検出用基質などを含む。当該検出キットは、体外診断装置であってもよい。
【0082】
本発明、具体的には、以下の実施形態のいずれかを含む。
1、CDR1、CDR2およびCDR3を含む相補性決定領域CDRを有する抗メソテリウム単一ドメイン抗体を含むメソテリン結合分子であって、CDR1がSEQ ID NO:1に示される配列を含み、CDR2がSEQ ID NO:2に示される配列を含み、CDR3がSEQ ID NO:3に示される配列を含み、
【0083】
SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、E、RまたはHであり、X6はI、L、F、Y、EまたはNであり、X7はN、A、G、D、K、Y、LまたはSであり、X8はA、Y、V、DまたはNであり、X9はEまたは無しであり、X10はFまたは無しであり、X11はAまたは無しであり、
【0084】
SEQ ID NO: 2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、M、A、TまたはLであり、X2はS、G、N、D、TまたはVであり、X3はS、N、A、R、GまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はN、G、TまたはIであり、X6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、T、G、Dまたは無しであり、X9はT、K、Gまたは無しであり、X10はG、Rまたは無しであり、X11はV、Tまたは無しであり、X12はTまたは無しであり、
【0085】
SEQ ID NO: 3はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23であり、ただし、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、I、EまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、T、RまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、C、LまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、L、Iまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、D、Rまたは無しであり、X13はD、A、Y、V、Q、Pまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、P、Tまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しである、メソテリン結合分子。
【0086】
2、項目1に記載のメソテリン結合分子において、
SEQ ID NO:1はX1X2X3X4X5X6X7X8であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、A、H、D、K、IまたはFであり、X3はI、S、V、T、D、L、A、MまたはHであり、X4はF、S、I、A、LまたはGであり、X5はN、S、G、A、D、T、EまたはHであり、X6はI、L、F、YまたはNであり、X7はN、A、G、D、K、YまたはSであり、X8はA、Y、VまたはNであり;好ましくは、SEQ ID NO: 1はX1X2X3X4X5X6X7X8であり、ただし、X1はG、E、TまたはAであり、X2はS、N、P、HまたはIであり、X3はI、S、T、D、LまたはAであり、X4はF、IまたはLであり、X5はS、TまたはEであり、X6はI、FまたはYであり、X7はN、A、DまたはYであり、X8はAまたはYであり、
【0087】
SEQ ID NO: 2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、M、A、TまたはLであり、X2はS、G、N、D、TまたはVであり、X3はS、N、A、RまたはTであり、X4はS、T、G、DまたはNであり、X5はN、G、TまたはIであり、X6はS、R、N、D、K、TまたはGであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、T、G、Dまたは無しであり、X9はT、K、Gまたは無しであり、X10はG、Rまたは無しであり、X11はV、Tまたは無しであり、X12はTまたは無しであり;好ましくは、SEQ ID NO:2はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12であり、ただし、X1はI、AまたはTであり、X2はS、G、NまたはTであり、X3はSまたはRであり、X4はT、GまたはDであり、X5はN、GまたはTであり、X6はS、R、N、KまたはTであり、X7はD、T、S、IまたはKであり、X8はN、Gまたは無しであり、X9はT、Gまたは無しであり、X10はGまたは無しであり、X11はVまたは無しであり、X12はTまたは無しであり、
【0088】
SEQ ID NO: 3はX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21X22X23であり、ただし、X1はN、H、AまたはQであり、X2はL、A、GまたはVであり、X3はS、R、E、G、DまたはTであり、X4はN、A、R、G、D、K、V、T、IまたはQであり、X5はY、F、K、S、C、I、D、G、HまたはRであり、X6はD、A、V、G、R、N、P、T、C、QまたはSであり、X7はR、Y、T、A、D、K、L、E、SまたはGであり、X8はK、S、F、T、D、Q、E、G、P、R、YまたはNであり、X9はD、G、I、H、S、Y、Q、K、TまたはVであり、X10はR、Y、H、N、T、D、P、V、K、CまたはSであり、X11はY、D、E、P、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、V、Q、A、Y、F、N、Dまたは無しであり、X13はD、A、Y、V、Qまたは無しであり、X14はY、L、P、A、Eまたは無しであり、X15はC、S、M、Pまたは無しであり、X16はV、D、S、Yまたは無しであり、X17はL、F、V、Dまたは無しであり、X18はR、G、M、Sまたは無しであり、X19はD、N、Sまたは無しであり、X20はY、Lまたは無しであり、X21はYまたは無しであり、X22はAまたは無しであり、X23はDまたは無しであり;好ましくは、SEQ ID NO: 3はAX2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19であり、ただし、X2はAまたはVであり、X3はS、E、GまたはDであり、X4はN、R、DまたはIであり、X5はY、F、K、DまたはHであり、X6はD、G、
P、CまたはSであり、X7はR、Y、D、KまたはLであり、X8はK、Q、GまたはNであり、X9はD、S、YまたはQであり、X10はR、Y、D、VまたはSであり、X11はY、D、F、S、Lまたは無しであり、X12はP、F、または無しであり、X13はD、Vまたは無しであり、X14はPまたは無しであり、X15はSまたは無しであり、X16はDまたは無しであり、X17はFまたは無しであり、X18はGまたは無しであり、X19はNまたは無しであることを特徴とする、メソテリン結合分子。
【0089】
3、項目1または2に記載のメソテリン結合分子において、前記単一ドメイン抗体のCDR1はSEQ ID NO: 4-27、73の何れか1つに示される配列を含み、CDR2はSEQ ID NO: 28-47、74の何れか1つに示される配列を含み、CDR3はSEQ ID NO: 48-72、75の何れか1つに示される配列を含み、
好ましくは、前記単一ドメイン抗体は表1の群a1-群a26のいずれかの群に示されるCDR1、CDR2とCDR3を含むことを特徴とする、メソテリン結合分子。
【0090】
4、項目1または2に記載のメソテリン結合分子において、
前記単一ドメイン抗体のFR領域はSEQ ID NO: 76-120から選ばれるいずれか1つのVHHのFR領域を含み、および/または
前記単一ドメイン抗体VHHはSEQ ID NO: 76-120から選ばれる何れか1つに示され、および/または
前記メソテリン結合分子は1本、2本または複数本の前記単一ドメイン抗体を含む一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体またはその抗原結合断片、抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする、メソテリン結合分子。
【0091】
5、項目4に記載のメソテリン結合分子において、前記メソテリン結合分子は重鎖抗体であり、前記重鎖抗体はさらに重鎖定常領域CH2とCH3を含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域はSEQ ID NO: 121に示される配列を含むことを特徴とする、メソテリン結合分子。
【0092】
6、ポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドは
(1)項目1-5のいずれか1つに記載のメソテリン結合分子のコード配列;
(2)(1)の相補配列;
(3)(1)または(2)のいずれかの配列の5-50bpの断片
から選ばれることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【0093】
7、核酸コンストラクトであって、前記核酸コンストラクトは項目6に記載のポリヌクレオチドを含み、
好ましくは、前記核酸コンストラクトが組換えベクタまたは発現ベクターであることを特徴とする、核酸コンストラクト。
【0094】
8、項目1-5のいずれか1つに記載のメソテリン結合分子を含むファージであって、
好ましくは、前記メソテリン結合分子は前記ファージ表面に提示される、ファージ。
【0095】
9、宿主細胞であって、前記宿主細胞は、
(1)項目1-5のいずれか1つに記載のメソテリン結合分子を発現し;および/または
(2)項目6に記載のポリヌクレオチドを含み;および/または
(3)項目7に記載の核酸コンストラクトを含むことを特徴とする宿主細胞。
【0096】
10、メソテリン結合分子を産生する方法であって、メソテリン結合分子の産生に適した条件で項目9に記載の宿主細胞を培養すること、および任意選択で、培養物から前記メソテリン結合分子を精製することを含む、方法。
【0097】
11、医薬組成物であって、項目1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子と、項目6に記載のポリヌクレオチドと、項目7に記載の核酸コンストラクトと、項目8に記載のファージまたは項目9に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される補助剤とを含み、
好ましくは、前記医薬組成物ががんを治療するために利用される、医薬組成物。
【0098】
12、項目1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子の、がんを予防または治療するための薬物の製造における応用。
【0099】
13、薬物治療の効果評価またはがん診断に使われるメソテリンまたはMD50検出キットであって、前記キットは項目1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子と、項目6に記載のポリヌクレオチドと、項目7に記載の核酸コンストラクトと、項目8に記載のファージまたは項目9に記載の宿主細胞とを含み、
好ましくは、前記キットは単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合断片へのメソテリンまたはMD50の結合を検出するための試薬をさらに含み、
さらに好ましくは、前記試薬は酵素免疫測定法によって前記結合を検出する試薬である、キット。
【0100】
14、試料中のメソテリンまたはMD50の存在を検出するための非診断的方法であって、項目1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子を試料と共にインキュベートすることと、単一ドメイン抗体、抗体またはその抗原結合断片へのメソテリンまたはMD50の結合を検出し、それによって試料中のメソテリンまたはMD50の存在を決定することとを含む方法。
【0101】
15、試料中のメソテリンまたはMD50の検出、薬物治療の効果の評価、またはがん診断のためのキットの調製における、項目1-5のいずれか1項に記載のメソテリン結合分子の応用。
【0102】
下記は具体的な実施例により本発明を説明する。これらの実施例は説明するためのものであり、意図的に本発明の範囲を限定するものではない。実施例に使用される方法及び材料は別途で断りのない限り、本分野でよく知られている材料及び方法である。
【実施例】
【0103】
実施例1、アルパカ免疫
1.1免疫原調製:
NCBIでメソテリン配列を調べ、ヒトIgG Fc断片配列と融合し、ジェンスクリプト社(南京)に合成委託し、pCDNA3.4(Thermo)プラスミドの真核発現ベクターを構築し、合成後のプラスミドをExpiCHOTM(Thermo Fisher)発現系で発現させ、発現後、5mLのProtein Aプレパックカラム(GE)でさらにアフィニティー精製を行い、精製後の試料を例えばPBSバッファーに置き換え、SDS-PAGE電気泳動ゲルとHPLCで純度を同定し、ELISAで活性を同定した後、小分けしてその後の免疫のために-80度の冷蔵庫に冷凍保存した。
【0104】
1.2アルパカ免疫:
初回免疫抗原(MSLN.hFc)の量は400μgであり、アジュバント(GERBU FAMA)と均一に混合し、アルパカの背部から4か所を選択して皮下注射し、各箇所の免疫量は1mLとした。2回目から6回目までの免疫:免疫抗原の量は200μgであり、アルパカの背部から4か所を選択して皮下注射し、各箇所の免疫量は1mLとした。各免疫の間隔は1週間であった。
【0105】
1.3免疫血清力価検出:
1.3.1 タンパク質レベルの力価検出
4度で一晩MSLN.His抗原をコーティングし、ブロッキングおよび洗浄後、勾配希釈され
た血清をELISAプレートに加えてインキュベートし、さらにanti-llama(抗アルパカ)IgG HRP(Abcam)抗体を用いてインキュベートし、洗浄後TMB発色液を加えて発色させ、2M HClで反応を終結させた後、マイクロプレートリーダーでOD450nmにおける吸光値を検出した。実験結果は
図1に示されるように、6回の免疫後、アルパカの力価は比較的高いレベルに達した(>243000)。
1.3.2 細胞レベルの力価検出
MSLNでトランスフェクトされたHEK293T細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、細胞の量は3×10
5細胞/ウェルであった。次いで、細胞を3倍勾配希釈した血清とともにインキュベートした。インキュベートと洗浄後、anti-llama IgG PE(Jackson)抗体を加えてインキュベートし、洗浄後PBSで細胞を再懸濁させ、フローサイトメーター(Beckman)によって蛍光強度(MFI)を検出した。結果は
図2に示される。
【0106】
実施例2、MSLNに対するナノボディ免疫ライブラリーの構築とスクリーニング
(1)6回の免疫後、ラクダ末梢血リンパ球100mLを抽出し、総RNAを抽出した。RNAの抽出はTAKARA社のRNAiso試薬の取扱説明書に従って行った。
(2)RNAをテンプレートとし、オリゴdTをプライマーとして、TAKARA社の逆転写酵素の説明書に従ってcDNAの第1鎖を合成した。
(3)PrimeSTARハイフィデリティーDNAポリメラーゼを用い、ネステッドPCRにより、重鎖抗体の可変領域をコードする遺伝子を得た。ネステッドPCRにより重鎖抗体の可変領域断片を増幅:
【0107】
1回目のPCR:
上流プライマー:GTCCTGGCTGCTCTTCTACAAGGC
下流プライマー:GGTACGTGCTGTTGAACTGTTCC
重鎖抗体ガイドペプチドと抗体CH2との間の断片を増幅し、55℃でアニールし、30サイクルし;約600bpのDNA断片を回収し、2回目のPCRのテンプレートとした。
2回目のPCR:
上流プライマー:GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGRGGAGG
下流プライマー:GGACTAGTGCGGCCGCTGGAGACGGTGACCTGGGT
重鎖抗体FR1領域と長、短のヒンジ領域との間の断片(長断片および短断片)を増幅し、55℃でアニールし、30サイクルし、標的とする断片を回収した結果、当該断片のサイズは約500bpであり、つまりナノボディ遺伝子の電気泳動バンドは約500bpであった。
【0108】
(4)ファージミドpME207およびPCR増幅産物をそれぞれSfi IおよびNot Iで二重酵素切断(NEB)し、回収し、定量してから、1:3のモル比で2つの断片をT4 DNAリガーゼ(TaKaRa)でライゲーションし、16℃で一晩ライゲーションした。
(5)ライゲーション産物をエタノールで沈殿させた後、100μLの滅菌水に溶解し、エレクトロポレーションを10回行い、大腸菌TG1を形質転換した。電気ショック、培養された菌液を100μL取り、数倍希釈し、アンピシリンLB培養プレートに塗布し、ライブラリ容量を計算し、残りを全てアンピシリン2×YT培養プレートに塗布し、37℃で、13~16時間反転培養した。培養プレート上の菌叢を10mLで2×YTの培地でこすって洗浄してから、終濃度25%のグリセリンを加えて小分けして、-80℃で保存しておいた。ライブラリ容量は4.3×109であった。ライブラリーの挿入率を検出するために、無作為に48のクローンを取りコロニーPCRを行った結果、90%以上の挿入率に達した。
【0109】
(6)計算されたライブラリ容量により、10倍のライブラリ容量の生細胞を、2×YT(2%グルコース、100μg/mLアンピシリンを含む)200mLに播種し、37℃、200rpmでOD600が0.5になるまで培養し、ヘルパーファージを感染多重度20:1で添加し、37℃で30min静置した後、37℃、200rpmで30分間インキュベートした。培養物を遠心分離し、200mLの2×YT(100μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLカナマイシンを含む)で再懸濁沈殿させ、37℃、250r/
minで一晩インキュベートした後、8000rpmで遠心分離し上清を取り、5×PEG/NaCl溶液を加え、氷上で60min放置し、8000rpmで30min遠心分離し、5mLのPBSに再懸濁させ、抗MSLNの単一ドメイン重鎖抗体(VHH)免疫ライブラリーを得、力価を測定するために10μL取り、残りは小分けして-80℃で保存しておいた。
【0110】
(7)メソテリンの膜近位端にある94アミノ酸長(GenBank:AAH09272.1、487-580)のたんぱく質MD50を使用し、そのMD50を10μg/mL、100μL/ウェルでELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩置いて、同時にネガティブコントロールを設定した。2日目に、200μLの3%BSAを5つのウェルのそれぞれに添加し、室温で2時間ブロックした。2時間後に、PBST(PBSに0.05%のtween20を含有)で3回洗浄した。プレート洗浄後、まず5%のスキムミルクで予めブロックしたファージ(2~3×1011tfu免疫ラクダ・ナノボディ・ファージ・ディスプレイ・ライブラリー)100μLを各ネガティブセレクションウェルに添加し、室温で1.5時間作用し、次いでネガティブセレクションされた後の上清を標的の抗原コーディングウェルに移し、室温で1.5時間作用させた。PBST(PBSに0.05%のtween20を含有)で12回洗浄し、結合されていないファージを洗い流した。Glycine(SIGMA)を用いてMSLNに特異的に結合するファージを解離させ、溶出したファージをTris(Invitrogen、1M、PH8.0)で中和した後、対数期にあるTG1を感染し、増殖増幅してから、次回の「吸着-溶出」を行った。最後に溶出されたファージにTG1を感染させ、IPTG(Thermo)を用いてナノボディを発現するようにTG1を誘導し、ELISAプレートをMSLNタンパク質及びMD50タンパク質でコーティングし、上清を取りELISA検出を行い、OD450>0.5のクローンを取り、シーケンシングを行った。
【0111】
(8)配列解析により、MSLNタンパク質とMD50タンパク質とに結合可能なクローンが合計25個、MSLN.Hisタンパク質(Sino Biological, Inc. (China)、MSN-H5223)と結合可能なクローンが1個得られ、以下の表に示す。陰性対照のアミノ酸配列はCN106046152Aに記載のSEQ ID NO.:2に示されるようである。
【0112】
【0113】
実施例3、候補抗体の発現と精製
ナノボディをpCDNA3.4-IgG4ベクターに構築され、ExpiCHOTM(Thermo Fisher)発現システムによって1週間発現され、その後上清を取りProtein A(GE)精製を行った。次に、Nanodropでタンパク質の質量と濃度を検出し、HPLCでタンパク質の純度を検出した。得られたたんぱく質の純度と収量は、その後の実験のニーズを満たした。
【0114】
実施例4、候補抗体の特性評価
(1) タンパク質レベルの親和性検出:表面プラズモン共鳴(SPR)により、重鎖抗体がヒトMSLN.His抗原に対する結合動態および親和性を検出した。精製された抗体を、protein Aを予め固定化したセンサーチップに流し、protein Aによって抗体を捕捉し、次いで、5つの異なる濃度のMSLN.Hisタンパク質を流動相として利用し、結合時間と解離時間はそれぞれ30minと60minであった。Biacore Evaluation Software 2.0 (GE)により、結合速度(konまたはkaと称する)、解離速度(koffまたはkdと称する)及び平衡定数(KD)を分析した。メソテリンIII領域に結合するウサギ抗体YP218を陽性対照(Zhangら、Sci Rep
2015, 21;5:9928.)として選択した。結果を下表に示す。
【表6】
【0115】
(2) 細胞レベルの親和性検出:MSLN Ш領域を発現するHEK293T細胞を96ウェルプレートに3×10
5細胞/ウェルでプレーティングし、勾配希釈した重鎖抗体をHEK293T MSLN-Ш細胞ともにインキュベートし、半時間インキュベートしてから、検出二次抗体Anti-human(抗ヒト)IgG PE(Jackson Immuno Research、Code:109-117-008、Lot:145501)を加えインキュベートし、そしてCytoFLEXフローサイトメーターを使用して検出した。カーブフィッティングによって抗体のEC50を計算した。Isotypeはアイソタイプ対照(陰性対照)であり、そのアミノ酸配列はCN106046152Aに記載のSEQ ID NO.:2に示されるようである。結果を
図3と
図7に示す。残りの重鎖抗体のEC50は3.637-171.4nMであった。
【0116】
(3) 腫瘍細胞に対するMSLN結合検出:MSLNを発現するSKOV3とAspc-1の2種類の腫瘍細胞をそれぞれ96ウェルプレートに3×10
5細胞/ウェルでプレーティングし、勾配希釈した重鎖抗体を腫瘍細胞ともにインキュベートし、氷上で半時間インキュベートしてから、検出二次抗体Anti-human IgG PE(Jackson Immuno Research、Code:109-117-008、Lot:145501)を加えインキュベートし、そしてCytoFLEXフローサイトメーターを使用して検出した。カーブフィッティングによって抗体のEC50を計算した。Isotypeはアイソタイプ対照(陰性対照)である。結果を
図4と
図5に示す。残りの重鎖抗体のSKOV3腫瘍細胞株に対するEC50は0.429-10.253nMであり、Aspc-1腫瘍細胞株に対するEC50は2.337-31.764nMであった。
【0117】
実施例5、エピトープ競合実験
装置Biacore T200(GE)を使用して、検出温度25℃、バッファー1×HBS-EP+(10mM HEPES,
150 mM NaCl, 3 mM EDTA and 0.05% v/v Surfactant P20, GE)、流速30ul/minであった。MSLN-Hisを、pH4.0(Biacore Amine Coupling Kit、GE)の酢酸緩衝液に最終濃度10ug/mlまで溶解し、アミノカップリングキット製品の説明書に従い、MSLN-Hisを、CM5チップ(GE)チャネル2(FC-2)に固定化し、約21RUであった。チャネル1(FC-1)をブランク対照とした。M044抗体及びYP218抗体をそれぞれ1×HBS-EP+で目標濃度に希釈し、MSLN固定化を完了した上記のチップFC-1及びFC-2に、一方の抗体を飽和レベルで注入し、続いて他方の抗体を飽和レベルで注入して、両抗体の競合関係を評価した。第2の抗体注射の完了後、複合体が400s解離した。最後に、50mM NaOHを15s注入してチップ表面を再生させた。データ処理にはBiacore Evaluation Software 2.0 (GE)を使用し、センサーグラムには二重参照減算を使用し、FC2-1シグナルを記録した。結果を
図6Aと
図6Bに示す。結果によれば、M044とYP218抗体の結合エピトープが完全に異なることがわかる。残りのナノボディとYP218エピトープの関係は以下のようである
【0118】
【0119】
実施例6、抗体のヒト化
ナノボディをヒト化する方法(J. Biol. Chem. 2009; 284 : 3273-3284)を参照して、CDR領域移植の方法を使用してM2339をヒト化した。IgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)データベースで、M2339と相同性の高い系列(germline)をテンプレートとしてスクリーニングした。下記表に示されるヒト化ナノボディを得た。Biacoreを使用してヒト化前後の抗体の親和性を検出した。精製された抗体を、protein Aを予め固定化したセンサーチップに流し、protein Aによって抗体を捕捉し、次いで、5つの異なる濃度のMSLN.Hisタンパク質を流動相として利用し、結合時間と解離時間はそれぞれで30minと60minであった。Biacore Evaluation Software 2.0 (GE)により、結合速度(ka)、解離速度(kd)及び平衡定数(KD)を分析した。
【0120】
【0121】
実施例7、組織交差反応性
34個の組織を選択し、凍結切片を作り、室温で乾燥させた後、アセトンで固定した。内因性ビオチンブロッキングキット(Sangon、E674001)の試薬Aおよび試薬Bをに使用してブロックをした。ビオチン標識抗体試料を30minインキュベートし、洗浄してから西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Abcam、ab7403)を加え、15minインキュベートした。DABによる発色反応、ヘマトキシリンによる対比染色をして、中性プラスチックで切片を封入し、顕微鏡検査のために自然乾燥させた。陽性対照はAnti-Mesothelin(抗メソテリン)抗体(Biotin)(ab271813)であり、陰性対照はビオチン標識のIgG4アイソタイプ対照であった。以下の表は、M044、YP218、およびM2339-z11-2の組織交差反応性の結果を示す。残りのナノボディの多く(表2に示されるM2339関連抗体を除く)は、正常なヒト組織に対してM044と同じ結合特性を有し、いずれも特異的な結合を示し;そのうち5つの抗体、つまりM010、M032、M050、M137、M169、M182は非特異的結合を示し、主にニューロンの細胞膜および神経線維と結合した。残りのM2339関連抗体は、正常なヒト組織に対してM2339-z11-2と同じ結合特性を有する。
【0122】
【配列表】
【国際調査報告】