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特表2024-505369組織に対する薬物または他の薬剤の影響を決定するためのex vivoシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】組織に対する薬物または他の薬剤の影響を決定するためのex vivoシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240130BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240130BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240130BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240130BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240130BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/483 C
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/68
G01N21/64 B
G01N21/64 F
C12Q1/04
C12M3/00 B
C12M1/34 D
C12M1/26
G01N33/48 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540750
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2021065696
(87)【国際公開番号】W WO2022147259
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,725
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/236,282
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523248596
【氏名又は名称】エレファス バイオサイエンシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー, ニール
(72)【発明者】
【氏名】キンピール, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】フライシニアック, ローラ キャサリン ファンク
(72)【発明者】
【氏名】ラフター, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ザル, トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】オリナー, ジョナサン ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA07
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA09
2G043LA02
2G043LA03
2G045AA24
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FA16
2G045FB12
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB11
4B029FA01
4B029HA02
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
組織に対する薬物または他の薬剤の応答を予測するex vivoのシステムおよび方法が提供される。一部の実施形態では、これらのシステムおよび方法は、組織を組織断片にカットするステップ、推定された腫瘍含量に基づいて、薬物または他の薬剤を組織断片に添加するステップ、および組織断片に対してex vivo測定を実施するステップを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、組織断片に添加される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータが、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に対する薬物または薬剤の影響を決定するex-vivo方法であって、
a)前記組織を組織断片にカットするステップ;
b)前記組織断片の特徴に基づいて前記組織断片を選別し、制御された数の組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップ;
c)前記培養プラットフォームの前記チャンバー中に分配された前記組織断片をイメージングして、前記組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;
d)薬物または薬剤を前記組織断片に添加するステップ;ならびに
e)前記組織断片に対して実施された1回または複数のex-vivo測定からのデータに基づいて、前記組織断片に対する前記薬物または前記薬剤の前記影響を決定するステップであって、
a.前記薬物または前記薬剤が、前記推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、前記組織断片に添加される、および/あるいは
b.前記1回または複数のex-vivo測定からの前記データが、前記推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される
ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記培養プラットフォームの前記チャンバー中に分配された前記組織断片が、所望のサイズ、完全性、マルチプレットの非存在、または外因性薬剤の非存在から選択される1つまたは複数の基準を満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各組織断片のサイズが、少なくとも1つの次元において、約50ミクロンと約500ミクロンとの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1回または複数のex-vivo測定からの前記データが、前記推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に関して正規化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記推定された腫瘍含量が、腫瘍含量カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、および/または前記推定された細胞生存度が、細胞生存度カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、前記組織断片に対して実施された前記1回または複数のex-vivo測定からの前記データが分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記推定された腫瘍含量が、腫瘍含量カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、および/または前記推定された細胞生存度が、細胞生存度カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、前記薬物または前記薬剤が前記組織断片に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)におけるイメージングする前記ステップが、1つまたは複数の内因性標識の蛍光放射、蛍光寿命、蛍光寿命組成または第二次高調波発生のうち1つまたは複数を使用して、生組織断片をイメージングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組織断片をイメージングして、細胞生存度を推定する前記ステップが、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度、蛍光寿命組成および/または蛍光寿命を測定することを含み、前記内因性フルオロフォアが、生細胞を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内因性フルオロフォアの蛍光放射強度が強度閾値よりも大きい場合に、前記薬物または前記薬剤が添加され、前記内因性フルオロフォアの前記強度閾値が、死細胞を染色する外因性標識で標識された組織断片の訓練用セットを利用して決定され、前記内因性フルオロフォアの前記強度閾値が、前記外因性標識の強度で訓練される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
外因性標識の添加なしに前記生組織断片をイメージングして、無標識の生組織画像を得るステップをさらに含み、前記腫瘍含量の推定が、前記無標識の生組織画像の組織学的評価を含み、組織学的評価の前記ステップが、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
無標識の生組織画像の組織学的評価の前記ステップが、機械学習アルゴリズムを前記無標識の生組織画像に適用して、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定することを含み、前記機械学習アルゴリズムが、無標識の生組織画像と、マッチし注釈付けされ染色された組織画像とを含む複数の訓練用組織画像で訓練される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
イメージングする前記ステップが、内因性フルオロフォアの蛍光放射または蛍光寿命イメージングのうち1つまたは複数を含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、前記内因性フルオロフォアの空間的分布を定量化することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
イメージングする前記ステップが、NAD(P)Hの蛍光寿命イメージングを含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、NAD(P)Hの平均寿命および/または蛍光寿命によって識別されるNAD(P)Hの1つもしくは複数の集団の平均振幅を定量化することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
イメージングする前記ステップが、第二次高調波発生構造の第二次高調波発生イメージングを含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、前記第二次高調波発生構造の線維パラメーターの決定を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記組織断片が前記培養プラットフォームの前記チャンバー中に分配された後に、前記組織断片をゲルマトリックス中に包埋するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記薬物または前記薬剤の存在下で前記組織断片を培養するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施する前記ステップが、前記組織断片をイメージングすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施する前記ステップが、NAD(P)Hの蛍光寿命および/または蛍光寿命によって識別される1つもしくは複数のNAD(P)H集団の蛍光放射強度を測定することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施する前記ステップが、Il-2、Il-4、Il-6、Il-10、Il-17A、TNF-α、sFas、sFasL、IFN-g、グランザイムA、グランザイムB、パーフォリンおよびグラニュリシンのうち1つもしくは複数を測定すること、ならびに/またはIl-8、IP-10、エオタキシン、TARC、MCP-1、RANTES、MIP-1α、MIG、ENA-78、MIP-3α、GROα、I-TACもしくはMIP-1bからなるパネルから選択される1つもしくは複数の因子を測定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組織断片が、前記組織からカットされた後に、低温保存および/または凍結保存条件下で保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記組織断片が、約-120℃と約-200℃との間の温度での凍結保存条件下で保存される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組織断片が、ステップb)における選別するステップの前に解凍される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組織を組織断片にカットする前記ステップが、酸素添加されたカッティング培地中で前記組織をカットすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性を予測する方法であって、
a)組織断片を提供するステップであって、前記組織断片が、対象から得られた組織から生成される、ステップ;
b)前記組織断片をイメージングして、前記組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;
c)薬物または薬剤を前記組織断片に添加するステップ;
d)前記組織断片に対して1回または複数のex-vivo測定を実施するステップ;ならびに
e)前記1回または複数のex-vivo測定から得られたデータに基づいて、前記薬物または前記薬剤に対する前記対象の前記臨床的応答性を予測するステップであって、
i.前記薬物または前記薬剤が、前記推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、前記組織断片に添加される、および/あるいは
ii.前記1回または複数のex-vivo測定からの前記データが、前記推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される
ステップ
を含む、方法。
【請求項25】
ステップb)におけるイメージングする前記ステップが、1つまたは複数の内因性標識の蛍光放射、蛍光寿命、蛍光寿命組成または第二次高調波発生のうち1つまたは複数を使用して、生組織断片をイメージングするステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組織断片をイメージングして、細胞生存度を推定する前記ステップが、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度を測定することを含み、前記内因性フルオロフォアが、生細胞を示し、前記内因性フルオロフォアの蛍光放射強度が強度閾値よりも大きい場合に、前記薬物または前記薬剤が添加される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
外因性標識の添加なしに前記生組織断片をイメージングして、無標識の生組織画像を得るステップをさらに含み、腫瘍含量の前記推定が、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定するための、前記無標識の生組織画像の組織学的評価を含み、組織学的評価の前記ステップが、機械学習アルゴリズムを前記無標識の生組織画像に適用するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
イメージングする前記ステップが、内因性フルオロフォアの蛍光放射イメージングまたは蛍光寿命イメージングのうち1つまたは複数を含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、前記内因性フルオロフォアの空間的分布を定量化することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
イメージングする前記ステップが、NAD(P)Hの蛍光寿命イメージングを含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、NAD(P)Hの平均寿命および/またはNAD(P)Hの短寿命成分の平均振幅を定量化することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
イメージングする前記ステップが、第二次高調波発生構造の第二次高調波発生イメージングを含み、腫瘍含量の推定の前記ステップが、前記第二次高調波発生構造の線維パラメーターを定量化することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記薬物または前記薬剤に対する前記対象の前記臨床的応答性を予測する前記ステップが、前記1回または複数のex-vivo測定から得られた前記データを、予測アルゴリズムに入力することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記予測アルゴリズムを生成するためのステップが、
a)薬物または薬剤でex-vivoで処置された組織断片のセットに対して実施された1回または複数のex-vivo組織パラメーター測定から生成された訓練用組織パラメーターデータのセットを得るステップであって、組織断片の前記セットが、対象の訓練用コホートから得られた組織から生成される、ステップ;
b)前記薬物または前記薬剤で処置された対象の前記訓練用コホートに対して実施された1回または複数の臨床的パラメーター測定から生成された訓練用臨床的パラメーターデータのセットを得るステップ;ならびに
c)訓練用組織パラメーターデータの前記セットおよび訓練用臨床的パラメーターデータの前記セットを使用して、前記薬物または前記薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムを生成するステップ
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
組織断片を提供する前記ステップが、前記組織断片の光学的特徴に基づいて前記組織断片を選別すること、および前記選別された組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記組織断片が、約0℃と約-200℃との間の温度で保存され、組織断片を提供する前記ステップが、選別するステップの前に前記組織断片を解凍するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象を処置する方法であって、
a)薬物または薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を受け取るステップ;ならびに
b)前記予測された臨床的応答性に基づいて前記対象を処置するステップであって、薬物または他の薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を生成するためのステップが、
i.前記対象から得られた組織から、組織断片を生成すること;
ii.前記組織断片の光学的特徴に基づいて前記組織断片を選別すること;
iii.前記組織または前記組織断片の推定された腫瘍含量または推定された細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、前記選別された組織断片を、薬物または薬剤でex-vivoで処置すること;
iv.前記薬物または前記薬剤で処置された前記組織断片に対して実施されたex-vivo組織パラメーター測定から、ex-vivo組織パラメーターデータを得ること;および
v.前記ex-vivo組織パラメーターデータに基づいて、前記薬物または前記薬剤に対する前記対象の予測された臨床的応答性を生成すること
を含む、ステップ
を含む、方法。
【請求項36】
a)組織を組織断片にカットするように構成された組織カッティングデバイス;
b)前記組織断片の光学的特徴に基づいて前記組織断片を選別し、前記選別された組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するように構成された、選別器;
c)前記組織断片をイメージングするように構成されたイメージングシステム;および
d)前記培養プラットフォームを収容するように構成されたインキュベーター
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月31日出願の米国仮特許出願第63/132,725号および2021年8月24日出願の同第63/236,282号に基づく優先権を主張し、それらの全開示は、それらの全体が本明細書によって本明細書に援用される。
【0002】
分野
組織に対する薬物または他の薬剤の影響のex vivo決定のためのシステムおよび方法が、本明細書で提供される。特に、組織をex vivoで評価することによって、がんの処置について薬物または他の薬剤の影響を評価するためのシステムおよび方法が、本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
がん患者において薬物応答を予測することは、腫瘍学治療薬の大部分にとって、依然として手ごわい課題である。多くの治療で発生するかなりの金銭的コストおよび著明な有害な副作用を考慮すると、この方面での進歩は、患者に有意義な利益を提供する。予測的バイオマーカーが、いくつかの承認されたがん治療薬について利用可能であるが、ほんの僅かな患者のみが、これらの実施可能なバイオマーカーを有する腫瘍を保有する。さらに、バイオマーカーガイドされる治療を受ける個体のうち、サブセットだけが、処置から臨床的利益を引き出す(Zehir et al. Nat Med. 2017 Jun; 23(6): 703)。腫瘍に対する薬物または薬物組合せの有効性を評価するために、患者の腫瘍に対してex vivoで化学感受性試験を実施するための技術が存在する。しかし、各かかる技術は、それらの臨床的有用性または商業的成功を大いに限定してきたそれ自体の欠点を有する。二次元(2D)細胞単層モデルに基づく従来の研究は、三次元組織アーキテクチャが失われるという点で、限定的である。さらに、2D単層モデルでは、腫瘍細胞は、薬物処置の開始前に、培養物中で著明に拡大増殖され、これは、クローンの選択/拡大増殖を生じ得る。球状またはオルガノイドモデルに基づく三次元培養システムは、そのネイティブの環境での腫瘍のより近い模倣物であるが、かかるシステムであっても、間質アーキテクチャを完全に保持しているわけではない。腫瘍組織断片は、ネイティブ腫瘍の最も近いex vivoレプリカであるが、その利用可能性は、信頼性のある一貫した培養物を樹立する際の困難によって厳しく制限されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zehir et al. Nat Med. 2017 Jun; 23(6): 703
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔な説明
一部の実施形態は、組織に対する薬物または薬剤の影響を決定するex vivo方法に関し、方法は、組織を組織断片にカットするステップ;組織断片の特徴(例えば、光学特徴)に基づいて組織断片を選別し、制御された数の組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップ;保存後に、培養プラットフォームのチャンバー中に分配された組織断片をイメージングして、組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;薬物または薬剤を組織断片に添加するステップ;ならびに組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定からのデータに基づいて、組織断片に対する薬物または薬剤の影響を決定するステップを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、組織断片に添加される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータが、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される。
一部の実施形態は、薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性を予測する方法に関し、方法は、a)組織断片を提供するステップであって、組織断片が、対象から得られた組織から生成される、ステップ;b)組織断片をイメージングして、組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;c)薬物または薬剤を組織断片に添加するステップ;d)薬物または薬剤で処理された組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施するステップ;ならびにe)組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定から得られたデータに基づいて、薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性を予測するステップを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、組織断片に添加される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータが、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される。
【0006】
一部の実施形態は、対象を処置する方法に関し、方法は、薬物または薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を受け取るステップ;ならびに予測された臨床的応答性に基づいて対象を処置するステップであって、薬物または薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を生成するためのステップは、a)対象から得られた組織から、組織断片を生成すること;b)組織断片の光学的特徴に基づいて組織断片を選別すること;b)組織または組織断片の推定された腫瘍含量または推定された細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、選別された組織断片を、薬物または薬剤でex vivoで処置すること;b)薬物または薬剤で処置された組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から、ex vivo組織パラメーターデータを得ること;およびc)ex vivo組織パラメーターデータに基づいて、薬物または薬剤に対する対象の予測された臨床的応答性を生成することを含む、ステップを含む。
【0007】
一部の実施形態は、a)組織を組織断片にカットするように構成された組織カッティングシステム;組織断片の特徴(例えば、光学的特徴)に基づいて組織断片を選別し、組織断片を、培養プラットフォームの領域(例えば、チャンバー)中に分配するように構成された、選別器;組織断片をイメージングするように構成されたイメージングシステム;および培養プラットフォームを収容するように構成されたインキュベーターのうちの1つまたは複数または全てを含む、システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1-1】図1A~Bは、組織に対する薬物または薬剤の影響を決定するためのワークフローの機能的ブロック図を示す。
図1-2】図1A~Bは、組織に対する薬物または薬剤の影響を決定するためのワークフローの機能的ブロック図を示す。
【0009】
図2図2は、ある実施形態に従う断片化および選別が関与するワークフローの流れ図を示す。
【0010】
図3図3は、ある実施形態に従う、腫瘍含量(tumor content)推定と、推定された腫瘍含量に基づく薬物または他の薬剤の添加とが関与するワークフローの流れ図を示す。
【0011】
図4-1】図4Aは、低温(冷却)保存条件下で維持した腫瘍断片、凍結保存条件下で維持した腫瘍断片、および新鮮な組織断片中の細胞生存度を示す。凍結:凍結保存。冷却輸送:シミュレートされた冷却輸送条件、このとき、腫瘍断片は、低温保存の条件下で維持される。新鮮:いずれの保存条件にも供されていない組織断片。
図4-2】図4Bは、対照(新鮮)組織断片、低温条件(冷却輸送)下で維持した組織断片および凍結保存条件(凍結)下で維持した組織断片中の生、死および漏出性有核細胞の数を示す。
図4-3】図4Cは、低温保存条件(冷却輸送)下で維持したヒト組織断片、凍結保存条件(凍結)下で維持したヒト組織断片、および新鮮な組織断片(新鮮)中の細胞生存度を示す。5人の異なる患者からの5つの異なる腫瘍型を選択した。
【0012】
図5図5Aは、冷却輸送前に組織を組織断片にカットした条件下(カットし、次いで冷却輸送) 対 カットする前に組織を冷却輸送条件に供した条件下(冷却輸送し、次いでカット)での細胞生存度の比較を示す。これら2つの条件を、新鮮な組織断片(新鮮)とさらに比較した。図5Bは、凍結保存前に組織を組織断片にカットした条件下(カットし、次いで凍結) 対 カットする前の組織の凍結保存(凍結し、次いでカット)での細胞生存度の比較を示す。これら2つの条件を、新鮮な組織断片(新鮮)とさらに比較した。
【0013】
図6図6Aは、組織カッティングプロセスの間にカッティング培地が酸素添加された条件下でカットされた組織断片の生存度(O+) 対 組織カッティングプロセスの間に過剰な酸素が提供されなかった条件下でカットされた組織断片の生存度(O-)を示す。x軸上で、O(-)は、酸素がカッティング培地に通気されなかったカッティング条件を示し、O(+)は、酸素がカッティング培地に通気されたカッティング条件を示す。図6Bは、カッティング培地(カッティング培地の酸素添加あり)にグルタチオンおよびHEPES緩衝液が補充された条件下でカットされた組織断片(L15+補充物) 対 カッティング培地(酸素添加あり)にグルタチオンおよびHEPES緩衝液が補充されなかった条件下でカットされた組織断片(L15)の生存度を示す。
【0014】
図7図7A~Dは、選別のための任意初期ゲート設定を示す。A)選別ゲート;B)ゲートR1から分配された断片。A)およびB)について、各ドットは、断片を示す;C)鋭い縁(複数可)を有し、2つの次元のうち1つにおいて所望の300μmのサイズを有する、分配された断片;D)変形したまたは望ましくない断片。画像スケールバー=300μm。
【0015】
図8図8A~Cは、R1からR2へのゲート最適化を示す。A)ゲートR1の内側の、図7B中の分配された断片の位置;B)ゲートR2は、ゲートR1から望ましくない断片を排除することによって作成した;C)ゲートR1とR2との間の比較。A)およびC)について、各ドットは、断片を示す。
【0016】
図9図9A~Cは、ゲートR2を使用して選別された断片を示す。A)選別プロファイル;B)ゲートR2の内側の、分配された断片の位置;C)ゲートR2からの、分配された断片の画像。画像スケールバー=300μm。A)およびB)について、各ドットは、断片を示す。図9Aは、ゲートR2の内側に入る組織断片およびゲートの外側に入る組織断片を示す。
【0017】
図10図10A~Eは、R2からR3へのゲート最適化を示す。A)鋭い縁(複数可)を有し、2つの次元のうち1つにおいて300μmのサイズを有する、ゲートR2から分配された断片の代表的画像;B)ゲートR2から分配された、変形したまたは所望されない断片;C)ゲートR2の内側の、図10A中に示される、鋭い縁を有し、2つの次元のうち少なくとも1つにおいて約300μmのサイズを有する代表的断片(2、7、9、10、11、12)の位置、および図10Bに示される所望されない断片(1、3、4、5、6、8)の位置。D)ゲートR3は、ゲートR2から所望されない断片の大部分を排除することによって作成した。E)ゲートR2とR3との間の比較。
【0018】
図11図11A~Cは、ゲートR3を使用して選別された断片を示す。A)選別プロファイル;B)ゲートR3の内側の、分配された断片の位置;C)ゲートR3からの、分配された断片の画像。画像スケールバー=300μm。A)およびB)について、各ドットは、組織断片を示す。
【0019】
図12-1】図12A~Eは、下位分割を介したゲートR3最適化を示す。A)は、ゲートR3A、R4~R8へと区分けされたゲートR3を示す;B)ゲートR4を使用した、使用可能な分配された断片の画像;C)ゲートR4を使用した、望ましくない分配された断片の画像;D)ゲートR4を使用した選別プロファイル。E)改変された区分けされたゲート。B)およびC)について、断片位置をD)においてマークした。画像スケールバー=300μm。
図12-2】図12A~Eは、下位分割を介したゲートR3最適化を示す。A)は、ゲートR3A、R4~R8へと区分けされたゲートR3を示す;B)ゲートR4を使用した、使用可能な分配された断片の画像;C)ゲートR4を使用した、望ましくない分配された断片の画像;D)ゲートR4を使用した選別プロファイル。E)改変された区分けされたゲート。B)およびC)について、断片位置をD)においてマークした。画像スケールバー=300μm。
【0020】
図13-1】図13A~Eは、改変された区分けされたゲートR3を示す。A)改変された区分けされたCOPASゲートR3のレイアウト;B)精緻化されたゲートR4A(図13A中、黒でマークされる)を使用した選別プロファイル;C)精緻化されたゲートR4Aを使用した、分配された断片の画像(使用可能な断片(破線の囲み)および望ましくない断片(実線の囲み));D)使用可能な断片の大部分が位置する領域;E)精緻化されたゲートR11。
図13-2】図13A~Eは、改変された区分けされたゲートR3を示す。A)改変された区分けされたCOPASゲートR3のレイアウト;B)精緻化されたゲートR4A(図13A中、黒でマークされる)を使用した選別プロファイル;C)精緻化されたゲートR4Aを使用した、分配された断片の画像(使用可能な断片(破線の囲み)および望ましくない断片(実線の囲み));D)使用可能な断片の大部分が位置する領域;E)精緻化されたゲートR11。
【0021】
図14-1】図14A~Dは、ゲートR11を使用して選別された断片を示す。A)選別プロファイル;B)ゲートR11の内側の、分配された断片の位置。下流の実験に使用可能な(C)および望ましくない(D)、ゲートR11からの分配された断片の代表的な画像。画像スケールバー=300μm。
図14-2】図14A~Dは、ゲートR11を使用して選別された断片を示す。A)選別プロファイル;B)ゲートR11の内側の、分配された断片の位置。下流の実験に使用可能な(C)および望ましくない(D)、ゲートR11からの分配された断片の代表的な画像。画像スケールバー=300μm。
【0022】
図15図15は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数に対する、組織断片のカッティングおよび選別の影響を示す。
【0023】
図16図16は、生組織断片の無標識画像中の腫瘍細胞の領域および正常の領域を同定するための機械学習アルゴリズム(AIモデル)を開発するための代表的な図を示す。
【0024】
図17-1】図17A~Eは、腫瘍を正常組織から識別するために使用される固有の組織蛍光イメージングを示す。図17Aは、多光子蛍光寿命イメージング顕微鏡(MP-FLIM)を使用したNAD(P)Hの蛍光イメージングによる、腫瘍組織および正常組織の画像を示す。この図は、NAD(P)H短寿命成分の振幅(a1)から生じる固有のコントラストを示す。図17Bは、それぞれ腫瘍および正常組織における平均寿命(tm)および短寿命成分(a1)を示す。それぞれ腫瘍および正常組織における平均tm(tm平均)および平均a1(a1平均)の値もまた示される。図17Cは、それぞれ腫瘍および正常組織中の、エントロピーパラメーター(中央値エントロピーおよびエントロピー歪度)を利用して定量化されたNAD(P)H強度の画像エントロピーを示す。図17Dは、それぞれ腫瘍および正常組織の第二次高調波発生(SHG)画像を示す。図17Dは、正常(N) 対 腫瘍(T)における差異を示す、第二次高調波発生構造についての幅の定量化を示す。
図17-2】図17A~Eは、腫瘍を正常組織から識別するために使用される固有の組織蛍光イメージングを示す。図17Aは、多光子蛍光寿命イメージング顕微鏡(MP-FLIM)を使用したNAD(P)Hの蛍光イメージングによる、腫瘍組織および正常組織の画像を示す。この図は、NAD(P)H短寿命成分の振幅(a1)から生じる固有のコントラストを示す。図17Bは、それぞれ腫瘍および正常組織における平均寿命(tm)および短寿命成分(a1)を示す。それぞれ腫瘍および正常組織における平均tm(tm平均)および平均a1(a1平均)の値もまた示される。図17Cは、それぞれ腫瘍および正常組織中の、エントロピーパラメーター(中央値エントロピーおよびエントロピー歪度)を利用して定量化されたNAD(P)H強度の画像エントロピーを示す。図17Dは、それぞれ腫瘍および正常組織の第二次高調波発生(SHG)画像を示す。図17Dは、正常(N) 対 腫瘍(T)における差異を示す、第二次高調波発生構造についての幅の定量化を示す。
図17-3】図17A~Eは、腫瘍を正常組織から識別するために使用される固有の組織蛍光イメージングを示す。図17Aは、多光子蛍光寿命イメージング顕微鏡(MP-FLIM)を使用したNAD(P)Hの蛍光イメージングによる、腫瘍組織および正常組織の画像を示す。この図は、NAD(P)H短寿命成分の振幅(a1)から生じる固有のコントラストを示す。図17Bは、それぞれ腫瘍および正常組織における平均寿命(tm)および短寿命成分(a1)を示す。それぞれ腫瘍および正常組織における平均tm(tm平均)および平均a1(a1平均)の値もまた示される。図17Cは、それぞれ腫瘍および正常組織中の、エントロピーパラメーター(中央値エントロピーおよびエントロピー歪度)を利用して定量化されたNAD(P)H強度の画像エントロピーを示す。図17Dは、それぞれ腫瘍および正常組織の第二次高調波発生(SHG)画像を示す。図17Dは、正常(N) 対 腫瘍(T)における差異を示す、第二次高調波発生構造についての幅の定量化を示す。
【0025】
図18図18A~Dは、生組織断片中の生細胞を死細胞から識別するためのNAD(P)H蛍光放射強度の無標識イメージングを示す。図18Aは、組織断片中のNAD(P)H蛍光(生細胞)を示す;図18Bは、同じ組織断片中の、グラウンドトゥルースとしてのヨウ化プロピジウム(PI)蛍光(死細胞)を示す;図18Cは、図18Aおよび18B中の画像の人工知能(AI)ベースのセグメント化を示し、このとき、細胞および細胞核形状を、組み合わされた蛍光シグナルに基づいてセグメント化した。図18Dは、組織断片内の細胞の生存度評価のための、PIで訓練されたNAD(P)H強度閾値の決定を示す。
【0026】
図19-1】図19Aおよび19Bは、組織断片の培養の間の、最適な酸素濃度の影響を示す。図19Aは、周囲酸素濃度で培養したものと比較した、組織断片を過酸素の条件で培養した場合の低減された生存度を示し、図19Bは、周囲酸素濃度で培養したものと比較した、組織断片を低酸素(5%酸素)の条件で培養した場合の増加した数の生細胞および低減された数の死細胞を示す。
図19-2】図19Aおよび19Bは、組織断片の培養の間の、最適な酸素濃度の影響を示す。図19Aは、周囲酸素濃度で培養したものと比較した、組織断片を過酸素の条件で培養した場合の低減された生存度を示し、図19Bは、周囲酸素濃度で培養したものと比較した、組織断片を低酸素(5%酸素)の条件で培養した場合の増加した数の生細胞および低減された数の死細胞を示す。
【0027】
図20図20は、培養物中で7日間維持した組織断片の生存度(Y軸上に発光シグナルとして表される)を示す。各データポイントは、各々10個の断片を含有する1つのウェルからのシグナルを示す。
【0028】
図21-1】図21A~Cは、培養の3日目における(0日目と比較した)細胞回復を示す。図21Aは、細胞生存度の尺度としてのATP発光を示し、図21Bは、生細胞および死細胞の数を示し、図21Cは、それぞれ0日目および3日目における死細胞のパーセンテージを示す。
図21-2】図21A~Cは、培養の3日目における(0日目と比較した)細胞回復を示す。図21Aは、細胞生存度の尺度としてのATP発光を示し、図21Bは、生細胞および死細胞の数を示し、図21Cは、それぞれ0日目および3日目における死細胞のパーセンテージを示す。
【0029】
図22図22A~Bは、組織断片中への小分子(ドキソルビシン)および巨大分子(抗CD45抗体)の拡散の速度論を示す。
【0030】
図23-1】図23Aは、それぞれ0時間および24時間の時点における、ビヒクル(Veh)およびスタウロスポリン(STS)で処置した組織断片中のNAD(P)Hの、ピコ秒(ps)での平均蛍光寿命(tm)を示す。図23Bは、それぞれ0時間および24時間の時点における、ビヒクル(Veh)およびスタウロスポリン(STS)で処置した組織断片中のNAD(P)Hの短寿命成分の蛍光強度(短寿命成分の振幅(a1)として測定される)を示す。
図23-2】図23Cは、0~7時間にわたる、処置なし(なし)、ビヒクル処置(Veh)およびスタウロスポリン処置(STS)の条件下での、組織断片中のNAD(P)Hの短寿命成分の振幅における変化(a1%)を示す。図23Dは、0~7時間にわたる、処置なし(なし)、ビヒクル処置(Veh)およびスタウロスポリン処置(STS)の条件下での、組織断片中のNAD(P)Hの平均蛍光寿命における変化(psで)を示す。
【0031】
図24図24は、未処置のまたはスタウロスポリン(STS)処置した、培養された腫瘍断片中の無標識NAD(P)H顕微鏡と細胞生存度グラウンドトゥルース(PI蛍光)との比較を示す。パネル(a)は、STS処置した断片と比較して未処置においてより高い、NAD(P)H蛍光(生細胞を示す)を示す。パネル(b)は、未処置の断片と比較してSTS処置した断片においてより高い、PI蛍光(死細胞を示す)を示す。
【0032】
図25-1】図25Aは、未処置の組織断片と比較した上清に分泌された因子濃度の増加倍数として表される、免疫療法薬物抗PD1、および抗PD1と抗CTLA4との組合せによる処置に応答したヒト組織断片における免疫応答を示す。
図25-2】図25Bは、未処置の組織断片と比較した上清に分泌された因子濃度の増加倍数として表される、免疫療法薬物抗PD1と抗CTLA4処置との組合せによる処置に応答したマウス組織断片における免疫応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。近似的な言葉は、明細書および特許請求の範囲を通じて本明細書で使用される場合、それが関連する基本的機能における変化を生じることなく許容可能に変動し得る任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。したがって、「約」などの用語によって修飾された値は、特定された正確な値に限定されない。他に示されない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される構成成分の量、特性、例えば、分子量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。したがって、逆が示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数的パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。最低でも、各数的パラメーターは、報告された有効数字の数の観点から、通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0034】
語句「および/または」は、明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、そのように結合された要素、例えば、一部の場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解すべきである。
【0035】
「対象」は、本明細書で使用される場合、任意の哺乳動物または非哺乳動物対象である。対象は、霊長類または非霊長類対象であり得る。一部の実施形態では、対象は、がんの疑いがある、またはがんと診断されている。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。がんは、任意の固形または血液学的悪性腫瘍であり得る。がんは、任意のステージおよび/またはグレードのものであり得る。がんの非限定的な例には、頭頸部、口腔、乳房、卵巣、子宮、胃腸、結腸直腸、膵、前立腺、脳および中枢神経系、皮膚、甲状腺、腎臓、膀胱(bladder)、肺、肝臓、骨ならびに他の組織のがんが含まれる。
【0036】
「組織」は、本明細書で使用される場合、対象から得られる生物学的材料である。一部の実施形態では、組織は、腫瘍細胞を含有するまたは含有すると疑われる(腫瘍含有組織とも呼ばれる)。腫瘍細胞、がん性細胞および悪性細胞という用語は、相互交換可能に使用されている。一部の実施形態では、組織は、固形腫瘍組織である。組織は、がんが起源するまたはがんが転移した、対象の身体中の任意の臓器または部位から得ることができる。
【0037】
組織は、当業者に公知の任意のアプローチによって、対象から得ることができる。組織は、がんの疑いがある、またはがんと診断された対象に対して実施された外科的切除、外科的生検、調査的生検、骨髄吸引または任意の他の治療的もしくは診断的手順によって得ることができる。組織は、腫瘍細胞含有組織であると予想されるが、組織が、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色などによる病理学評価を受けるまで、正確な腫瘍含量を知る方法はない。さらに、腫瘍組織の固有の不均一性のせいで、同じ組織からカットされた異なる断片(組織断片)は、高度に可変性の腫瘍含量を有する場合が多く、一部の組織断片は、腫瘍細胞を全く有さない場合がある(またはほぼゼロの腫瘍含量を有する場合がある)。かかるシナリオでは、ex vivo薬物応答の決定は、信頼性がなく、統計的に有意なデータを生じない場合が多い。例えば、組織が適切な数の悪性細胞を欠如する場合、その組織は、薬物または薬剤に対する対象の腫瘍の応答を適切に示さない場合がある。非破壊的イメージング法などによるex vivoでの生組織断片に対する前もっての腫瘍含量の推定と、その後の、推定された腫瘍含量に基づく、イメージングされた組織断片への薬物もしくは薬剤の添加、および/または推定された腫瘍含量に基づく、組織断片に対する薬物もしくは薬剤の影響の分析とが、この課題を克服することが見出された。例えば、推定された腫瘍含量が閾値を上回る場合、薬物(または任意の他の薬剤)が添加される。他の実施形態では、組織断片は、組織断片の腫瘍含量に基づいて、薬物応答分析中に含まれ得るまたはそこから排除され得る。なお他の実施形態では、組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定(薬物応答の決定のため)から生成されたデータは、組織断片の前もっての腫瘍含量推定に基づいて正規化され得る。さらに、適切な数の生細胞または生存細胞(例えば、生存腫瘍細胞または免疫細胞)の欠如もまた、引き続く分析を混乱させる一貫性のないデータを生じる。例えば、適切な数の生存腫瘍細胞を欠如する組織断片への薬物の添加は、薬物に対する腫瘍の機能的応答に関するいずれの分析可能な知見も提供しない。一部の実施形態では、組織断片の細胞生存度の前もっての決定は、これらの可変性から生じる交絡因子に対処する。例えば、前もっての評価に基づいて、組織または組織断片が、適切な数の生存細胞(例えば、生存腫瘍細胞および/または生存免疫細胞)を有すると決定される場合に、薬物(または試験されている任意の薬剤)が添加される。これは、試験されている各薬物または薬剤について、試験されている各薬物濃度において、所定の数の複製が維持され得ることを確実にする。例えば、薬物曝露-応答研究を実施する間、EC50またはIC50を計算するために用量-応答曲線が生成され得ることを確実にするために、ウェルプレートの全てのウェルが適切である(例えば、その中に含まれる組織断片(単数)または断片(複数)が、適切な腫瘍含量および細胞生存度を有すると決定される)ことを確実にすることが重要である。一部の実施形態では、組織断片は、組織断片の細胞生存度に基づいて、薬物応答分析中に含まれ得るまたはそこから排除され得る。一部の実施形態では、組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定(薬物応答分析のため)から生成されたデータは、組織断片の細胞生存度に関して正規化され得る。
【0038】
温虚血時間は、本明細書で使用される場合、組織が身体から摘出され、室温に置かれるまでの、血液供給が遮断された後に組織が体温である時間を指す。冷虚血時間は、本明細書で使用される場合、組織が適切な培地(例えば、輸送培地、保存培地または培養培地のうち1つ)中に置かれるまでの、組織が室温である時間を指す。
【0039】
用語「凍結保存」は、氷結温度を下回る温度における(例えば、ゼロ未満の温度における)生物学的材料(例えば、組織または組織断片)の保存を意味する。「凍結保存された組織」または「凍結保存された組織断片」は、氷結温度を下回る温度において(例えば、ゼロ未満のセルシウス温度において)保存された、それぞれ組織または組織断片を指す。
【0040】
用語「凍結保存培地」または「氷結培地」は、生物学的材料が凍結保存もしくは氷結の前にその中に浸漬される培地、または氷結前に生物学的材料を処置するために使用され得る培地を指す。凍結保存培地は、1つまたは複数の凍結保護剤を含有する。ある特定の実施形態では、凍結保存培地は、氷結溶液、ガラス化溶液、および/またはかかる溶液の混合物であり得る。ある特定の実施形態では、凍結保存培地は、その温度での組織または組織断片の生存度を維持するために、ゼロ未満のセルシウス温度において生物学的材料を貯蔵するまたは氷結させるための培地を指す。
【0041】
ゼロ未満のセルシウス温度(またはゼロ未満の温度)は、0℃を下回る任意の温度、例えば、約-10℃未満、約-20℃未満、約-50℃未満、約-100℃未満、約-120℃未満、約-150℃未満などである。一部の実施形態では、ゼロ未満の温度は、液体窒素の温度、例えば、大気圧における液体窒素の沸点である。一部の実施形態では、ゼロ未満の温度は、約0℃と約-200℃との間の温度である。一部の実施形態では、ゼロ未満の温度は、約-196℃の温度である。
【0042】
用語「低温(hypothermic)保存」または「低温(hypothermal)保存」は、生理的温度(これは約37℃である)を下回るが、氷結の温度を上回る温度における保存を意味し、このとき、生物学的プロセスは減速され、そうして、生物学的材料の長期の貯蔵を可能にする。一部の実施形態では、低温保存は、約0℃と約10℃との間の温度で実施される。「低温で保存された組織」または「低温で保存された組織断片」は、低温条件下で保存された、それぞれ組織または組織断片を指す。用語「低温保存」および「冷却保存」は、相互交換可能に使用されている。同様に、用語「低温輸送」および「冷却輸送」は、相互交換可能に使用されている。
【0043】
用語「低温保存培地」は、かかる温度におけるその生存度を維持するために、生物学的材料が、生理的温度を下回る温度、例えば、10℃を下回る温度に耐えるのを可能にする保存組成物を意味する。
【0044】
1つまたは複数の実施形態で使用される場合、組織または組織断片を保存するとは、組織または組織断片中の細胞の生存度が維持される条件下で組織または組織断片を維持することを意味する。
【0045】
腫瘍含量は、組織または組織から生成された組織断片内の腫瘍細胞のex vivo尺度である。尺度は、腫瘍細胞の、または組織断片の腫瘍細胞含有領域の、定性的決定または定量的決定であり得る。一部の実施形態では、腫瘍含量は、組織断片内の腫瘍細胞の割合またはパーセンテージである。一部の実施形態では、腫瘍含量は、組織断片内の腫瘍細胞の数である。腫瘍含量の推定は、生組織断片、例えば、当業者に公知のいずれの組織固定技法(例えば、ホルマリン処置)にも供されていない、または生存細胞の数を有意に低減させるいずれの条件下でもいずれの持続時間にわたっても貯蔵されていない組織断片に対して実施される。腫瘍含量の推定は、非破壊的に、例えば、組織断片をイメージングすることによって、実施される。一部の実施形態では、組織断片をイメージングすることによって、腫瘍含量の推定は、各個々の組織断片について、または組織断片がそこからカットされる組織全体について、実施される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、組織断片内の個々の細胞をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、イメージングは、組織断片内の異なる深度にある複数の焦点面において実施される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、組織断片への外因性標識の添加なしに実施される。組織断片をイメージングすることによる腫瘍含量の推定は、薬物または薬剤の添加の前に、および所望されるまたは要求される場合には、薬物または薬剤の添加後の複数の時点において、実施され得る。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、腫瘍細胞を数え上げることによって実施される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、腫瘍細胞を含有する組織面積を決定することによって実施される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、生組織断片の組織学(例えば、組織アーキテクチャ、細胞外マトリックス(ECM)組織化、間質テクスチャー、細胞組織化、細胞形態学など)を決定することによって実施される。一部の実施形態では、生組織断片の組織学は、生組織断片をイメージングし、還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(集合的にNAD(P)Hと呼ばれる)などの内因性フルオロフォアからの固有の放射、および/または組織コラーゲンなどの他の内因性分子から生じる第二次高調波発生(SHG)を利用することによって、決定される。一部の実施形態では、組織学は、手動で決定される。一部の実施形態では、組織学は、1つまたは複数の機械学習アルゴリズムを生組織断片の画像などに適用することによって決定される。一部の実施形態では、腫瘍含量は、細胞のサイズおよび形状、核のサイズおよび形状、核の細胞質に対する面積比または体積比が含まれるがこれらに限定されない、細胞および/または組織の形態学を示すNAD(P)H強度および/または寿命組成画像を評価することによって推定される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、組織断片内の細胞組織化または空間的不均一性の決定によって提供される。がん性細胞を有する組織断片または組織断片の領域は、正常細胞を含有する組織断片またはその領域と比較して、あまり組織化されていないと予想される。一部の実施形態では、腫瘍含量は、組織断片の局所的エントロピーパラメーターを定量化することによって、例えば、組織断片の画像の分析によって、推定される。一部の実施形態では、エントロピーパラメーターは、中央値エントロピーまたはエントロピー歪度である。一部の実施形態では、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域は、正常細胞を含有する組織断片または組織断片の領域と比較して、より高い中央値エントロピーを有する。一部の実施形態では、エントロピー分布は、正常領域と比較して、組織断片の腫瘍細胞含有領域において、より負に歪む。一部の実施形態では、腫瘍含量は、細胞外マトリックス(ECM)の1つまたは複数の成分から、例えば、コラーゲン線維の評価から、決定される。例えば、腫瘍細胞を含有する領域は、正常細胞の領域と比較して、より狭い幅のコラーゲン線維によって特徴付けられる。
【0046】
一部の実施形態では、免疫含量(immune content)は、組織または組織断片内の免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージなど)の数、割合またはパーセンテージである。一部の実施形態では、免疫含量の推定は、組織断片をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、免疫含量の推定は、組織断片への外因性標識の添加なしに実施される。
【0047】
一部の実施形態では、生存度評価は、生および/または死細胞(例えば、腫瘍細胞および/または免疫細胞)の数、割合またはパーセンテージを推定するために、組織または組織断片を試験することである。一部の実施形態では、生存度評価は、生組織断片をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、生存度評価は、外因性標識の添加なしに生組織断片をイメージングすることによって実施される。本明細書で使用される場合、「生存腫瘍含量」は、生存腫瘍細胞の尺度、例えば、生存腫瘍細胞の数、割合またはパーセンテージである。本明細書で使用される場合、「生存免疫含量」は、生存免疫細胞の尺度、例えば、生存免疫細胞(例えば、T細胞またはマクロファージ)の数、割合またはパーセンテージである。
【0048】
細胞生存度は、組織または組織断片内の生存細胞の尺度である。一部の実施形態では、細胞生存度は、組織断片をイメージングすることによって決定される。一部の実施形態では、細胞生存度は、1つまたは複数の内因性標識によって提供される固有のコントラストから、組織断片をイメージングすることによって決定される。
【0049】
生組織または生組織断片は、細胞がその中で生存している組織または組織断片である。一部の実施形態では、生組織または生組織断片は、対象から新鮮に摘出された組織と比較して細胞の生存度が有意に変更されていない、組織または組織断片である。一部の実施形態では、生組織または生組織断片は、いずれの組織固定技法(例えば、ホルマリン固定)にも供されていない組織または組織断片である。一部の実施形態によれば、生存細胞は、インタクトな細胞膜を有する細胞である。一部の実施形態によれば、生存細胞の細胞膜は、ある特定の生存度試験分子、例えば、ヨウ化プロピジウム、7-AADなどに対して概して不透過性である。
【0050】
外因性標識は、イメージングの間のコントラストを増強する任意の薬剤であり得る。当業者は、イメージングのモダリティに依存して、複数の型の外因性標識を想定することができ、その非限定的な例には、光学的標識(例えば、蛍光標識)、磁気標識、音響標識などが含まれ得る。一部の実施形態では、外因性標識は、蛍光標識である。外因性標識は、組織断片に添加される標識である。対照的に、内因性または固有の(相互交換可能に使用される)標識は、組織断片中の、または組織断片に起源する、天然に存在する分子である。内因性標識(内因性分子と相互交換可能に使用される)は、組織断片をイメージングしている間にコントラストを増強する、組織または組織断片内の固有の天然に存在する分子である。一部の実施形態では、内因性標識は、組織または組織断片内に存在する固有の蛍光分子(内因性フルオロフォアと呼ばれる)である。内因性フルオロフォアは、組織または組織断片中の天然に存在する蛍光分子である。内因性フルオロフォアの非限定的な例には、NADH(還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADPH(還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、フラビンおよびフラビン誘導体(例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD))、芳香族アミノ酸、例えば、トリプトファン、チロシンなどが含まれる。内因性標識の他の非限定的な例には、第二次高調波発生などの非線形光学的シグナルを担う、コラーゲンなどの第二次高調波発生(SHG)構造が含まれる。
【0051】
薬物は、1つの抗がん薬物、または抗がん薬物の組合せ、または1つもしくは複数の抗がん薬物と適切なアジュバントとの組合せである。一部の実施形態では、抗がん薬物は、標的化された抗がん剤、例えば、標的化された抗体(例えば、抗her2抗体)、抗体断片、二特異性抗体(例えば、二特異性T細胞係合剤またはBiTe)、抗体-薬物コンジュゲート(例えば、トラスツズマブエムタンシン)または標的化された小分子(例えば、タンパク質阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤)である。一部の実施形態では、抗がん薬物は、細胞分裂阻害剤または細胞傷害剤であり、その非限定的な例には、アドリアマイシン、ゲムシタビン、パルボシクリブ、ドセタキセル、フルベストラント、アルペリシブ、トラメチニブ、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、エキセメスタン、エベロリムス、ビノレルビン、オラパリブ、カペシタビン、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、マイトマイシンC、テモゾロミド、セツキシマブ、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、抗がん薬物は、免疫療法薬剤または薬物であり、その非限定的な例には、免疫チェックポイント阻害剤または免疫刺激剤が含まれる。一部の非限定的な実施形態では、免疫療法薬物には、ニボルマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、薬物は、干渉RNA、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)である。一部の実施形態では、薬物は、生物学的薬剤、例えば、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、タリモジーン・ラハーパレプベック)または細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞)であり得る。
【0052】
「薬剤」は、単独で、または他の治療的アプローチと組み合わせてのいずれかで潜在的治療利益を提供する任意の化合物、材料、物質または条件を指す。薬剤は、薬物である必要はない。薬剤には、食品および食品製品または成分、内因性分子(例えば、遺伝子発現産物または人工的に誘導されたホルモン)、代謝物、放射線、熱、冷却、酸素または他の気体などが含まれるがこれらに限定されない。
【0053】
臨床的パラメーターは、抗がん処置に対する対象の実際の臨床的応答性である、対象における抗がん処置の転帰を提供するin-vivoパラメーターである。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、腫瘍パラメーター、例えば、腫瘍のサイズまたは代謝活性である。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、対象の放射線学的評価によって、例えば、ポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)などのうち1つまたは複数によって、決定される。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、RECISTまたは改変型RECIST基準に従う転帰を提供する。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、連続的スケールでの応答性を提供する。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、対象の全生存期間、無病生存期間または無増悪生存期間のうち1つまたは複数である。種々の他の臨床的パラメーターは、がん型に依存して想定され得る。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、バイオマーカー(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)または他の可溶性因子)である。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、最小残存疾患(minimum residual disease)である。一部の実施形態では、臨床的パラメーターを測定することは、サイトカインなどの因子を測定することを含む。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、循環腫瘍DNA(ct-DNA)または循環腫瘍細胞(CTC)である。一部の実施形態では、臨床的パラメーター測定は、1つまたは複数の臨床的パラメーターの測定を含む。臨床的パラメーターは、抗がん処置の開始後の任意の時点で測定され得る。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、抗がん処置の間に、またはその完了の後に、医師が決定した間隔で測定される。一部の実施形態では、臨床的パラメーターは、少なくとも1サイクルの抗がん処置の完了後に測定される。一部の実施形態では、抗がん処置は、対象にまたは対象中に薬物または他の薬剤を適用または投与することを含む。
【0054】
組織パラメーターは、組織断片に対して実施されたex vivo測定から得られた組織断片のex vivoパラメーターである。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定は、組織断片をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターには、組織断片のゲノム、トランスクリプトームまたはプロテオミクスパラメーターが含まれる。語句「組織パラメーター」および「ex vivo組織パラメーター」は、相互交換可能に使用されている。組織断片のex vivoパラメーターは、組織断片の細胞パラメーター、組織断片の細胞外パラメーター、または組織断片の細胞パラメーターと細胞外パラメーターとの組合せであり得る。「細胞パラメーター」は、組織断片内の細胞またはその細胞内オルガネラの任意のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオミクス、形態学的、代謝的、機能的、位置的または動的パラメーターである。細胞パラメーターの非限定的な例には、生存度、運動性、細胞膜透過性、DNA内容および局在化、細胞死、代謝活性、ミトコンドリア膜電位、細胞膜中の脂質分子配向、細胞活性化状態、細胞増殖、細胞形態学、細胞体積、細胞サイズ、または互いに対する細胞の近接性および/もしくは位置が含まれる。一部の実施形態では、細胞パラメーターを測定するステップは、細胞型の正体を決定することを含む。細胞は、腫瘍細胞または非腫瘍細胞(例えば、間質細胞、免疫細胞、または組織断片内の任意の他の細胞)であり得る。一部の実施形態では、細胞は、腫瘍細胞である。本開示の種々の実施形態によれば、細胞パラメーターを測定することは、1つの細胞の1つもしくは複数の細胞パラメーターを測定すること、複数の細胞(例えば、複数の腫瘍細胞)の1つもしくは複数の細胞パラメーターを測定すること、または異なる型の複数の細胞(例えば、腫瘍細胞および非腫瘍細胞)の1つもしくは複数の細胞パラメーターを測定することを含み得る。一部の実施形態では、細胞パラメーターの測定には、腫瘍細胞の生/死状態の測定が含まれる。一部の実施形態では、細胞パラメーターには、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化状態が含まれる。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、イメージングすることによって測定される。一部の実施形態では、細胞パラメーターを測定するステップは、組織断片内の細胞をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、細胞パラメーターを測定するステップは、組織断片内の個々の細胞をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、組織断片への外因性標識の添加によって測定される。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、組織断片への外因性標識の添加なしに、例えば、内因性標識をイメージングすることによって、測定される。一部の実施形態では、組織パラメーターは、対象の組織に対する薬物または薬剤の影響を評価するために使用される。
【0055】
「細胞外パラメーター」は、細胞外間質、細胞外間質成分、分泌された因子(例えば、サイトカイン)などのパラメーターである。細胞外間質成分の非限定的な例には、種々のタンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンなど)、プロテオグリカン、多糖などが含まれる。一部の実施形態では、細胞外パラメーターは、イメージングすることによって測定される。
【0056】
組織断片に対して実施されたex vivo測定(またはex vivo組織パラメーター測定)は、組織断片が培養物中にあるままでの、薬物または薬剤で処置した組織断片の動力学的な非破壊的評価であり得る。ex vivo組織パラメーター測定は、培養の終結時に組織断片に対して実施される終末的評価であり得る。ex vivo組織パラメーター測定は、生のインタクトな組織断片、固定された組織断片、解離された組織断片から得られた細胞懸濁物、組織断片の細胞の分泌物などに対して実施され得る。ex vivo組織パラメーター測定の非限定的な例には、生組織断片のイメージング、解離された組織断片から得られた細胞懸濁物に対して実施されたフローサイトメトリー分析、サイトカインおよび他の分泌された因子の分析などが含まれる。
【0057】
一部の実施形態では、組織パラメーターを測定することは、細胞パラメーターを測定すること、複数の細胞パラメーターを測定すること、細胞パラメーターおよび細胞外パラメーターを測定すること、または1つもしくは複数の細胞パラメーターおよび1つもしくは複数の細胞外パラメーターを測定することを含む。
【0058】
データは、構造化データ(例えば、数的データ)または非構造化データ(例えば、画像)であり得る。組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定から得られたデータは、組織パラメーターデータまたはex vivo組織パラメーターデータとも呼ばれる。組織パラメーターデータは、組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られる。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターデータは、1つまたは複数の細胞パラメーターデータを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターデータは、1つまたは複数の細胞パラメーターデータおよび1つまたは複数の細胞外パラメーターデータを含む。語句「組織パラメーターデータ」および「ex vivo組織パラメーターデータ」は、相互交換可能に使用されている。細胞パラメーターデータは、細胞パラメーター測定から得られる。細胞外パラメーターデータは、細胞外パラメーター測定から得られる。例えば、細胞パラメーターが細胞生存度である場合、細胞パラメーターデータは、生存細胞の数もしくは割合であり得、または細胞パラメーターが代謝活性である場合、細胞パラメーターデータは、NAD(P)HのFADに対する蛍光強度の比であり得る。一部の実施形態では、顕微鏡によって生成されたex vivo組織パラメーターデータは、単独で、または細胞(例えば、免疫細胞、がん細胞、上皮細胞など)を自動同定し、それらの細胞の代謝的健康(例えば、生きているおよび健康な、アポトーシス、死または瀕死)および組織アーキテクチャ(例えば、細胞外マトリックス要素と高度に構造化された、壊死、灌流の程度など)を決定することを目的として顕微鏡を介して生成された他のデータと組み合わせて、使用される。臨床的パラメーターデータは、臨床的パラメーター測定から得られる。具体的に言及されない限り、「データ」には、単数形または複数形の指示対象が含まれ得る。
【0059】
コホートは、共通の臨床的特色を共有する対象の群である。一部の実施形態では、コホート内の対象は、がんの疑いがある、またはがんと診断されている。一部の実施形態では、所与のコホート内の全ての対象は、同じがん型の疑いがある、または同じがん型と診断されている。訓練用コホートは、予測アルゴリズムを訓練するためにそのデータ(例えば、臨床的パラメーターデータおよび/または組織パラメーターデータ)が使用される対象の群である。検証コホートは、予測アルゴリズムを検証するためにそのデータ(例えば、臨床的パラメーターデータおよび/または組織パラメーターデータ)が使用される対象の独立した群である。
【0060】
薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性は、薬物または薬剤に対する対象の応答性の評価を提供する。一部の実施形態では、臨床的応答性は、ビニングされた応答性、例えば、完全臨床奏効、部分臨床奏効、安定疾患または進行性疾患であり得る。一部の実施形態では、臨床的応答性は、応答性の連続的スケールである。実際の臨床的応答性は、対象に対して実施されたin-vivo測定(例えば、臨床的パラメーター測定)に基づく、薬物または薬剤による対象の処置の後の対象の臨床的応答性の評価である。予測された臨床的応答性は、対象の組織断片に対して実施されたex vivo測定(例えば、ex vivo組織パラメーター測定)に基づく、対象の臨床的応答性の予測であり、このとき、組織断片は、薬物または薬剤でex vivoで処置される。
【0061】
組織断片は、対象から得られた組織をカットすることによって得られる。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において、1000μmと等しいまたはそれ未満(例えば、1000μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、100μmまたは50μm)である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において50μmと1000μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において100μmと500μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において150μmと350μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、少なくとも2つの次元において50μmと500μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、2つの次元において150μmと350μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、3つ全ての次元において50μmと500μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、3つ全ての次元において150μmと350μmとの間である。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、任意の2つの次元において約300μmであり、第3の次元において約100μmである。一部の実施形態では、各組織断片のサイズは、3つ全ての次元において約300μmである。一部の実施形態では、組織断片は、形状が実質的に立方体である。一部の実施形態では、組織断片は、サイズが均一である。本明細書で使用される場合、均一は、実質的に均一であることを意味し、このとき、組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において、互いの±20%以内である。
【0062】
一部の実施形態では、組織は、対象から得られた後、組織断片に最初にカットされる。一部の実施形態では、組織断片は、細胞生存度の延長された保存のために、例えば、組織断片のさらなる処理(例えば、選別、イメージング、培養など)が実施される実験室への輸送のために、適切な培地中に置かれる。一部の実施形態では、組織断片は、低温保存条件下で保存される。一部の実施形態では、組織断片は、凍結保存条件下で(例えば、ゼロ未満の温度において)保存される。一部の実施形態では、組織断片は、組織断片の引き続く処理が実施される目的場所、例えば、実験室に到達したら、引き続く処理のために解凍される。一部の実施形態では、組織断片は、解凍した後に、組織断片中の細胞の生存度が有意には低減されない条件下で保存される。一部の実施形態では、凍結保存条件下または低温保存条件下での組織断片の保存は、細胞生存度における有意な低減も、その代謝的プロファイルにおける変更もなしに、延長された期間にわたって組織断片が貯蔵されるのを可能にする。これは、ワークフローおよび物流における高い柔軟性を可能にする。例えば、これは、組織の供給場所(例えば、病院)と目的場所(例えば、実験室)との間の距離の制限も、組織の摘出と培養の開始との間の時間経過の制限も、未然に防ぐ。
【0063】
一部の実施形態では、組織は、組織断片にカットされる前に、保存のために適切な培地中に置かれる。一部の実施形態では、組織は、適切な低温保存培地中で低温保存条件下で、または適切な凍結保存培地中で凍結保存条件下で、維持される。一部の実施形態では、低温で保存されたまたは凍結保存された組織は、目的場所、例えば、さらなる処理のための実験室に輸送される。一部の実施形態では、組織は、輸送後に組織断片にカットされる。一部の実施形態では、凍結保存された組織は、組織断片にカットされる前に解凍される。
【0064】
ゲルマトリックスは、合成、半合成または天然の成分を含み得る。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、少なくとも1つの合成ポリマーまたはコポリマーを含み、その非限定的な例には、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メタクリル酸(poly(methycrylic acid)))(PMMA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリヒドロキシ酪酸-吉草酸、ポリ(エチレングリコール)-ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)-ビニルスルホンなどが含まれる。一部の実施形態では、ポリマーまたはコポリマーは、さらに官能化される。ゲル前駆体は、ゲル化の適切な条件下でゲルマトリックスを形成する成分である。ゲル前駆体は、任意の物理的形態、例えば、液体形態または固体形態であり得る。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、ゲル前駆体の共有結合的架橋によって形成されるが、一部の他の実施形態では、ゲルマトリックスは、ゲル前駆体の物理的凝集によって形成される。一部の実施形態では、組織型に依存して、ゲル前駆体のパーセンテージおよび/またはゲル化条件は、変動する機械的剛性のゲルマトリックスを得るために、変動され得る。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、ゲル前駆体に光源が照射された場合に形成される。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、ゲル前駆体が温度変化に供された場合に形成される。当業者は、複数の型の適切なゲルマトリックスおよびゲル化条件を想定することができるが、好ましくは、ゲルマトリックスを形成するためのゲル化のプロセスは、速くなくてはならず、組織または組織断片に対する最小限の損傷を引き起こし、生物学的分子に対して不活性な条件下であるべきである。さらに、ゲル化のプロセスおよび/またはゲルマトリックスは、組織断片中の細胞の生物学的挙動を有意に変更すべきではない。一部の実施形態では、ゲルマトリックスを形成するためのゲル化は、5分未満(例えば、4分、3分、2分、1分または30秒)で発生する。
【0065】
一部の実施形態では、ゲル前駆体は、PEGポリマー、例えば、線状または分岐鎖PEGポリマーである。特に適切な官能化されたポリマーは、例えば、ノルボルネンで官能化された末端ヒドロキシル(-OH)基を有するマルチアームの分岐鎖PEGポリマー、例えば、4アームまたは8アームのPEGであり得る。一部の実施形態では、ゲルマトリックスを形成するためのゲル化は、適切な架橋剤、例えば、ジ-チオール化された分子(例えば、二官能性PEG-ジチオール)の存在下で発生する。一部の実施形態では、ゲル形成は、ノルボルネン官能化されたマルチアームPEGポリマーおよび二官能性PEG-ジチオールに光源が照射された場合に発生する。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、外因性光学的標識、例えば、蛍光標識をさらに含む。蛍光標識は、ゲルマトリックスに共有結合的に結合され得る、またはゲルマトリックス中に非共有結合的に包埋され得る。
【0066】
犠牲ケーシングは、カッティングの間に組織を保持するケーシングである。一部の実施形態では、ゲルマトリックス内に封入された組織は、犠牲ケーシング内に含有される。一部の実施形態では、犠牲ケーシングは、カッティング機構でカットすることができる材料で形成される。犠牲ケーシングの材料の非限定的な例には、ポリプロピレン、蝋、シリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))および種々の熱可塑性エラストマーが含まれる。材料は、好ましくは、組織特性の損傷または変更を回避するために、生体適合性かつ非毒性でなければならない。一部の実施形態では、犠牲ケーシングは、外因性標識、例えば、蛍光標識をさらに含む。一部の実施形態では、犠牲ケーシングは、その中に組織を収容するための中空空洞を含む。一部の実施形態では、犠牲ケーシングは、組織を保持するための溝を含む。
【0067】
培養プラットフォームは、組織断片を培養するための任意の適切な培養デバイスまたはシステムである。培養プラットフォームの非限定的な例には、ウェルプレートまたは流体デバイスが含まれる。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、酸素透過性材料を含む。種々の型の酸素透過性材料が使用され得る。一部の実施形態では、酸素透過性材料は、フルオロポリマーを含み、その非限定的な例には、FEP(フッ化エチレン-プロピレン)、TFE(テトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ)、PVF(ポリビニルフルオリド)、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)、FFPM/FFKM(ペルフルオロエラストマー)、FPM/FKM(クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオリド)、PFPE(ペルフルオロポリエーテル)、MFA(テトラフルオロエチレン(tetrafuoroethylene)およびペルフルオロメチルビニル-エーテル(perfuoromethyl vinyl-ether)コポリマー)、CTFE/VDF(クロロトリフルオロエチレン-ビニリデンフルオリド(chlorotrifuoroethylene-vinylidene fluoride)コポリマー)、およびTFE/HFP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(tetrafuoroethylene-hexafuoropropylene)コポリマー)、またはそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、酸素透過性材料は、環状オレフィンポリマー(COP)および環状オレフィンコポリマー(COC)を含む。一部の実施形態では、酸素透過性材料は、シリコーン材料(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))を含む。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、1つまたは複数の酸素透過性材料の極度に薄い区域で形成される。一部の実施形態では、培養プラットフォームの領域には、培養プラットフォームのチャンバーが含まれる。培養プラットフォームのチャンバーは、ウェルプレートのウェルまたは流体デバイスのチャネルであり得る。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、灌流培養のために構成される。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、非灌流静置培養のために構成される。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、光学的に透明な材料で形成され、それにより、組織断片が培養プラットフォームのチャンバー内にありつつの、組織断片の光学的調査を可能にする。
【0068】
組織断片をイメージングすることは、1つまたは複数のイメージングモダリティを用いて実施され得る。一部の実施形態では、1つまたは複数のイメージングモダリティのうち少なくとも1つのイメージングモダリティは、点の3次元アレイ(ボクセル)での、20μmと等しいまたはそれ未満の(例えば、約20μm、10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μmなどの)空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、2μm未満またはそれと等しい空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、点の3次元アレイでの、サブミクロンレベルの空間分解能(例えば、0.1~0.999μm)でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングモダリティは、組織断片の異なる深度においてイメージングするように構成される。一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、組織断片の非破壊的イメージングのために構成される。一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、生組織断片(例えば、いずれの組織固定技法にも供されていない、または生存細胞の数を有意に低減させるいずれの条件下でもいずれの持続時間にわたっても貯蔵されていない組織断片)をイメージングするように構成される。一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、未染色の組織断片(例えば、いずれの外因性標識も含有しない組織断片)をイメージングするように構成される。一部の実施形態では、1つまたは複数のイメージングモダリティは、イメージングシステムの一部である。一部の実施形態では、イメージングシステムは、少なくとも2つのイメージングモダリティを含む。
【0069】
一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、インターフェロメトリーイメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングは、光干渉断層撮影法(OCT)のために構成されたイメージングデバイスを用いて実施される。一部の実施形態では、OCTイメージングデバイスは、2μm未満の空間分解能でのイメージングのために構成される。異なる型の高分解能OCTアプローチが企図され得るが、一部の実施形態では、イメージングデバイスは、フルフィールドOCT(FF-OCT)のために構成される。一部の実施形態では、イメージングデバイスは、光の走査ビームを使用して獲得されるOCTのために構成される。一部の実施形態では、FF-OCTのために構成されたイメージングデバイスは、干渉計(例えば、Linnik、Mirau、Michaelson型)、低時間コヒーレンスの光源(例えば、LED、熱光、タングステンフィラメント電球など)および検出器(例えば、CCD、CMOSなど)を含む。FF-OCTイメージングデバイスは、異なる深度において2次元(2D)画像を得るように構成される。一部の実施形態では、FF-OCTイメージングデバイスの1つまたは複数のシステム構成要素は、異なる深度において2D画像を得るために、試料内の異なる深度に焦点面を移動させるために動かすことができる。
【0070】
一部の実施形態では、少なくとも1つのイメージングモダリティは、蛍光イメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングモダリティは、イメージング、または共焦点蛍光イメージング、または光の走査平面の使用を採用するイメージング(蛍光分子の1、2または3光子励起を使用する)を達成するための、蛍光分子の多光子励起(2または3光子励起のいずれか)のために構成される。一部の実施形態では、蛍光イメージングのために構成されたイメージングモダリティは、光源(例えば、レーザー、例えば、超高速パルスを生成するためにチタンサファイア利得媒体およびオプティクスを使用するパルスレーザー、またはピコ秒パルスレーザー、またはパルス持続時間30~500fsの任意の超高速パルスレーザー)、スキャナ(例えば、1つもしくは複数のガルバノミラー、または回転ポリゴンミラー、または共振型ガルバノミラーなど)および検出器(例えば、電荷結合素子(CCD)、CMOSベースの検出器、アバランシェフォトダイオードまたは光電子増倍管(PMT、またはハイブリッドPMT)など)を含む。一部の実施形態では、蛍光イメージングモダリティは、好ましくは600~1700nmの間の範囲内の励起波長で励起するように構成された光源を含む。一部の実施形態では、蛍光イメージングモダリティは、点の3次元アレイ(ボクセル)での、ミクロン(例えば、1~20μm)および/またはサブミクロン(例えば、100~999ナノメートル、即ち、0.1~0.999μm)レベルの空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、蛍光イメージングモダリティは、固有の放射(例えば、生物学的組織中に天然に存在する分子、即ち、内因性標識の自己蛍光)を検出するように構成される。一部の実施形態では、イメージングモダリティは、組織断片中の成分によって生成された第二次高調波散乱光を検出するように構成される。一部の実施形態では、第二次高調波散乱光は、試料中を引き続いて伝搬し、かつ励起レーザー源に向かって戻って散乱される、超高速パルスレーザー光(30~500fs)またはピコ秒のパルス持続時間のパルスレーザー光と相互作用する成分として生成される。一部の実施形態では、イメージングモダリティは、1つまたは複数のアプローチ(本明細書で以後、蛍光寿命イメージングまたはFLIM)(例えば、時間相関単一光子計数、周波数領域法、光子のゲート検出など)を使用して、固有の蛍光標識の蛍光寿命を測定するように構成される。一部の実施形態では、イメージングモダリティは、放射および散乱された蛍光光の偏光を検出するように構成される。一部の実施形態では、円形にまたは楕円形に偏光される励起光が、ミュラー行列イメージングを実施するために使用される。一部の実施形態では、生成された画像は、画像分解能を強化するためにデコンボリューションされる。
【0071】
一部の実施形態は、組織に対する薬物または薬剤の影響を決定するex vivo方法に関し、方法は、組織を組織断片にカットするステップ;組織断片の特徴(例えば、光学特徴)に基づいて組織断片を選別し、制御された数の組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップ;保存後に、培養プラットフォームのチャンバー中に分配された組織断片をイメージングして、組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;薬物または薬剤を組織断片に添加するステップ;ならびに組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定からのデータに基づいて、組織断片に対する薬物または薬剤の影響を決定するステップを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、組織断片に添加される(例えば、図1Aに示される)。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータが、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される(例えば、図1Bに示される)。
【0072】
一部の実施形態では、対象から(例えば、生検によって)取り出された後の組織、または組織断片は、保存のために適切な培地中に置かれる。組織または組織断片は、凍結保存条件または低温保存条件に供され得る。組織断片中の細胞の生存度は、新鮮な組織断片中の細胞の生存度と比較して、低温保存後に有意には変更されない(図4A~Cに示される通り)。これは、マウス(図4A)およびヒト(図4C)の両方の腫瘍組織試料において観察された。一部の実施形態では、組織または組織断片は、凍結保存される。一部の実施形態では、組織または組織断片は、延長された期間、例えば、24時間またはそれよりも長い時間にわたって、凍結保存条件下で維持される。次いで、凍結保存された組織または組織断片は、引き続く処理のために解凍される。一部の実施形態では、凍結保存が生細胞の数におけるいくらかの低減を引き起こす場合であっても(図4B)、引き続く研究、例えば、薬物応答の機能的評価のために適切な数の生細胞がなおも存在する。
【0073】
一部の実施形態では、組織は、(例えば、外科的摘出によって)対象から摘出された後に、組織断片にカットされる。一部の実施形態では、組織を組織断片にカットするステップは、組織の供給場所(例えば、組織が対象から摘出される病院)またはその近傍において実施される。一部の実施形態では、組織断片は、適切な培地(例えば、低温保存培地または凍結保存培地)中に置かれる。一部の実施形態では、低温で保存されたまたは凍結保存された組織断片は、目的場所(例えば、組織がさらに処理される実験室)に輸送される。一部の実施形態では、凍結保存された組織断片は、引き続くプロセス(例えば、選別、イメージング、培養など)を実施する前に、(例えば、37℃で)解凍される。一部の実施形態では、カットした後、組織断片は、約-120℃と約-200℃との間の温度での凍結保存条件下で保存される。一部の実施形態では、組織断片は、少なくとも24時間にわたって(例えば、24時間、48時間、72時間またはそれよりも長い時間にわたって)、凍結保存条件下で保存または貯蔵される。これは、患者の組織から得られた組織断片が、さらなる評価のために、延長された期間にわたって貯蔵され得ることを確実にする。
【0074】
組織(例えば、外科的に摘出された組織)を最初に組織断片にカットし、組織断片を、低温保存条件(例えば、0℃と10℃との間)下で輸送または保存した場合、細胞の生存度は、カットする前にバルク組織を低温で保存した場合と比較して、より高かったことが見出された。例えば、図5Aでは、「カットし、次いで冷却輸送」の群における細胞の生存度は、「冷却輸送し、次いでカット」の群中よりも高かった。同様に、図5Bに示されるように、組織を最初に組織断片にカットし、組織断片を凍結保存した場合(カットし、次いで凍結)、細胞の生存度は、カットする前にバルク組織を凍結保存した場合(凍結し、次いでカット)の条件と比較して、より高かった。
【0075】
カットするステップは、手動、半自動または自動であり得る。種々の適切なカッティングデバイスが、組織をカットするために使用され得る。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、組織または組織断片に対する最小限の機械的損傷を伴って、組織を正確にカットするように構成される。非限定的な例では、カッティングデバイスは、ナイフ、刃、ワイヤ、メス、レーザーなどを含む。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、複数の刃を含む。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、コーティングされたワイヤ、例えば、ダイヤモンド粒子コーティングされた鋼鉄ワイヤ(例えば、ダイヤモンドワイヤ)を含む。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、均一に間隔を空けたワイヤ(例えば、ダイヤモンドワイヤまたは裸の鋼鉄ワイヤ)を含む。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、カッティング構成要素を含む。一部の実施形態では、カッティング構成要素は、少なくとも1つのカッティング部材、例えば、ナイフ、刃、ワイヤ、メス、レーザーなどを含む。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、組織を3つの次元でカットするために3つのカッティング構成要素を含み、各カッティング構成要素は、1つの次元で組織をカットする。カッティングデバイスは、組織を、規定されたサイズの組織断片に精密かつ正確にカットするように構成される。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、ユーザーから受け取った(ユーザー定義された)サイズ入力に基づいて、組織を組織断片にカットするように構成される。一部の実施形態では、ユーザー定義されたサイズ入力は、組織の物理的特性、例えば、機械的剛性、壊れやすさなどに基づく。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、予め定義されたサイズ入力に基づいて、組織を組織断片にカットするように構成される。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、組織全体が組織断片にカットされるまで、組織を組織断片に、自動的に繰り返しカットするように構成される。一部の実施形態では、カッティングデバイスは、組織を、サイズが等しい組織断片にカットするように構成される。本明細書で使用される場合、等しいは、実質的に等しいことを意味し、このとき、組織断片のサイズは、少なくとも1つの次元において、互いの±20%以内である。一部の実施形態では、組織の堅固さに依存して、カッティングデバイスまたはその構成要素は、ユーザー定義されたまたは予め定義された周波数で振動または回転される。カッティングデバイスの断片化設定、例えば、組織断片の厚さ、周波数、振幅、速度などは、ユーザー定義されるまたは予め定義される。
【0076】
一部の実施形態では、組織は、高い酸素濃度、即ち、周囲酸素濃度よりも高い酸素濃度(例えば、21%よりも高いまたは30%よりも高いまたは50%よりも高いまたは70%よりも高いまたは90%よりも高いなど)の条件下でカットされる。一部の実施形態では、組織は、酸素添加されたカッティング培地中で組織断片にカットされる。一部の実施形態では、これは、カッティングに使用される培地(またはカッティング培地)にOを通気することによって達成された。酸素添加されたカッティング培地(O培地)は、組織断片の生存度の保存において、酸素添加されていないカッティング培地(非O培地)よりも良好であったことが見出された(図6A)。一部の実施形態では、カッティング緩衝液には、組織および組織断片を酸化的損傷から保護するために、グルタチオンなどの添加剤がさらに補充される(図6B)。
【0077】
一部の実施形態では、組織は、カットする前に調製される。一部の実施形態では、組織は、ゲルマトリックス中に封入される。一部の実施形態では、組織は、適切な接着剤または封止剤中に封入される。一部の実施形態では、カットするステップは、ゲルマトリックス中に封入された組織をカットすることを含む。一部の実施形態では、ゲルマトリックスは、蛍光標識で標識される。一部の実施形態では、組織は、犠牲ケーシング内に含有される。一部の実施形態では、犠牲ケーシングは、蛍光標識で標識される。ゲルマトリックス、犠牲ケーシングまたはそれら両方は、カットする間に組織を保持し安定化することを助けるが、残留ゲルマトリックスまたは残留犠牲ケーシングは、組織断片の栄養素入手可能性、薬物応答および/または下流の分析を妨害し得るので、組織断片の培養の間には、いずれの微量をも有さないことが好ましい。一部の実施形態では、残留ゲルマトリックス、残留犠牲ケーシングまたはそれら両方は、組織断片が培養プラットフォームのチャンバー中に分配される前に除去される。一部の実施形態では、カットするステップは、組織を含有する犠牲ケーシングを、カッティングデバイスのカッティング構成要素に向けて駆動すること、またはカッティングデバイスのカッティング構成要素を、組織を含有する犠牲ケーシングに向けて駆動することを含み、このとき、カッティングデバイスは、犠牲ケーシングを通り抜けることによって、組織を組織断片にカットする。一部の実施形態では、組織は、ゲルマトリックス中にさらに封入される。
【0078】
一部の実施形態は、培養および薬物応答評価に適切な組織断片を選別および選択することに関する。一部の実施形態では、選別は、例えば、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第6657713B2号に記載されるように、光学的選別器を用いて実施される。光学的選別器は、照明供給源を含む。一部の実施形態では、照明供給源は、1つまたは複数のレーザーを含む。光学的選別器は、検出器(例えば、フォトダイオード、光電子増倍管、電荷結合素子(CCD)カメラなど)およびフローセルをさらに含む。フローセルは、組織断片が通過する流体路を含む。照明供給源からの光は、フローセル内の1つまたは複数の感知ゾーンに向かって指向される。
【0079】
一部の実施形態では、カットした後、組織断片は、選別のために自動的に指向される。一部の実施形態では、組織断片は、ユーザー駆動性の様式で、選別のために指向される。一部の実施形態では、カットした後、組織断片は、断片収集位置において収集される。一部の実施形態では、組織断片は、断片収集位置において、流体(例えば、緩衝液または培養培地)中に収集される。一部の実施形態では、移行デバイス、例えば、自動試料採取機は、組織断片を断片収集位置から吸引し、それらを選別器中に移行させる。一部の実施形態では、選別器への移行は、インライン濾過要素を介して実施される。組織断片は、組織断片の特徴に基づいて選別される。一部の実施形態では、組織断片は、組織断片の光学的特徴に基づいて選別される。光学的特徴には、蛍光、反射率、吸光度または光散乱のうち1つまたは複数が含まれ得る。一部の実施形態では、組織断片は、適切な流体(例えば、緩衝液または培養培地)中に懸濁され、フローセルを横切る1つまたは複数の光ビーム(例えば、レーザービーム)を通過させられる。一部の実施形態では、組織断片は、1列縦隊で通過させられる。各組織断片が(例えば、感知ゾーン中の)光ビームを通過する際に、組織断片の光学的特徴を示す光学的シグナルが検出される。検出器シグナルは、感知ゾーンの下流に位置する適切な分流手段(例えば、流体スイッチ)を操作するために、処理され使用される。一部の実施形態では、光学的特徴は、組織断片のサイズ、組織断片の完全性、組織デブリの存在、または組織断片内の外因性薬剤(例えば、外因性標識、微量の残留ゲルマトリックスなど)の存在のうち1つまたは複数を示す。一部の実施形態では、選別は、残留ゲルマトリックス、残留犠牲ケーシング、組織デブリ、崩壊した組織断片、またはサイズ基準を満たしていない組織断片のうち1つまたは複数を除去する。光学的特徴に基づいて、組織断片は、培養プラットフォームのチャンバー中に分配される、または廃棄物処理機中に指向される。一部の実施形態では、光学的特徴に基づいて、組織断片はまた、追加の処理、検査または回復のために、第3の位置または再収集位置に指向され得る。一部の実施形態では、選別のプロセスは、組織断片の特徴(例えば、光学的特徴)に基づいて各組織断片を分析すること、品質基準を満たす組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配すること、および品質基準を満たしていない組織断片を廃棄することを含む(図2)。一部の実施形態では、品質基準を満たしていない組織断片(望ましくない断片)は、追加の処理のために指向される。一部の実施形態では、品質基準は、組織断片サイズ、組織デブリの存在、損傷した組織、外因性薬剤(例えば、夾雑物、例えば、残留犠牲ケーシングまたは残留ゲルマトリックス)の存在のうち1つまたは複数に基づく。一部の実施形態では、培養プラットフォームのチャンバー中に分配される組織断片は、所望のサイズ、完全性(損傷しても折り畳まってもいない組織断片)、マルチプレット(multiplet)の非存在、および外因性薬剤の非存在から選択される1つまたは複数の基準を満たす。「マルチプレット」は、本明細書で使用される場合、一緒に塊になった、フローセル中を群として流れる複数の独立した組織断片、あるいはカットされていない、または独立した断片に他の方法でカットされているが一緒に保持されている、組織の2つまたはそれよりも多くの隣接ピースを構成する部分的にカットされた断片を意味する。マルチプレットの非存在は、制御された数の組織断片が培養プラットフォームのチャンバー中に分配され得ることをさらに確実にする。
【0080】
一部の実施形態では、組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップは、制御された数の組織断片を、培養プラットフォームの各チャンバー中に分配することを含む。一部の実施形態では、組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップは、1つの組織断片を、培養プラットフォームの各チャンバー中に分配することを含む。一部の実施形態では、組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップは、1つよりも多くの組織断片を、培養プラットフォームの各チャンバー中に分配することを含む。一部の実施形態では、培養プラットフォームのチャンバー中に分配された組織断片は、ゲルマトリックス中にさらに包埋され得る。一部の実施形態では、組織断片は、培養プラットフォームのチャンバー中に分配され、これらのチャンバーには、ゲル前駆体が事前充填されている。一部の実施形態では、ゲル前駆体は、1つまたは複数の組織断片がその中に分配された後に、チャンバーに添加される。一部の実施形態では、ゲル前駆体は、ゲルマトリックスを形成するためのゲル化の適切な条件に供され、組織断片(単数)または断片(複数)は、ゲルマトリックス内に包埋される。一部の実施形態では、ゲル前駆体は、光重合可能であり、ゲル化のステップは、その中に組織断片(単数)または断片(複数)を含有するゲル前駆体の光照射を含む。
【0081】
一部の実施形態では、選別後に培養プラットフォームのチャンバー中に分配される組織断片(または選別された組織断片)は、要求されるサイズ基準を満たし、外因性薬剤(例えば、残留ゲルマトリックス、残留犠牲ケーシング)、組織デブリ、崩壊した組織断片、マルチプレット、またはサイズカットオフを満たしていない組織断片のうち1つまたは複数が無い。選別のために使用されるゲーティング戦略は、図7図14に示されている。これらの組織断片は、さらなる下流のプロセスのために使用可能である、または使用可能な組織断片である。本明細書で使用される場合、無いは、実質的に無いを意味する。当業者によって理解されるように、選別が、上述の成分(例えば、残留ゲルマトリックス、犠牲ケーシング、組織デブリ、崩壊した組織断片)を完全に除去しない場合であっても、それらのレベルは、組織断片に対して実施される下流のプロセス(例えば、培養または組織パラメーター測定)が影響を受けないように、実質的に低減される。組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップ、またはそれらを廃棄物処理機中にもしくは追加の処理のために指向させるステップは、組織断片を含有する流体の流れを制御された様式で方向転換させることによって実施され得る。種々の適切な分流手段が、組織断片に対する最小限の損傷を確実にしつつ、制御された様式で流れを方向転換させるために企図され得る。かかる方法は、適切な流体スイッチおよび他の弁の使用を含み得る。一部の実施形態では、組織断片は、追加の処理のステップの後に再度選別される。
【0082】
一部の実施形態では、組織断片をカットし、選別し、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するステップは、閉鎖システム内で実施される。これは、プロセス全体を通じた組織断片の最大限の無菌性を確実にする。一部の実施形態では、カットするプロセスは、1つのシステム中で実施され、組織断片は、別のシステム中で選別される。
【0083】
一部の実施形態では、光学的特徴は、蛍光である。ゲルマトリックス内に封入された(必要に応じて犠牲ケーシング内に含有された)組織が組織断片にカットされる場合、組織断片のごく一部、特に、末梢からカットされた組織断片は、ゲルマトリックスもしくは犠牲ケーシングまたはそれら両方の残留部分を含有する。一部の実施形態では、ゲルマトリックス、犠牲ケーシングまたはそれら両方は、蛍光標識で標識される。組織断片がレーザービームを通過する際に、それらは、蛍光標識の蛍光に基づいて選別される。蛍光標識の蛍光が検出されない組織断片は、培養プラットフォームのチャンバー中に分配される。蛍光標識の蛍光が検出される組織断片は、廃棄物処理機中に、または追加の処理のための再収集位置に指向される。一部の実施形態では、追加の処理のステップは、組織断片の損傷した部分、マルチプレット、微量の残留ゲルマトリックスまたは残留犠牲ケーシングのうち1つまたは複数の除去を含む。図15に示されるように、カットおよび選別のステップは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の内容を保存する。CD4+およびCD8+T細胞の数は、これらのプロセスに供されていない対照組織と比較して、本明細書で引用される1つまたは複数の実施形態に従ってカットされ選別された組織断片において、有意には変更されなかった。
【0084】
一部の実施形態では、組織断片をイメージングして、腫瘍含量を推定するステップは、組織断片が選別され、培養プラットフォームのチャンバー中に分配された後に(即ち、選別された組織断片に対して)実施される。一部の実施形態では、組織断片をイメージングするステップは、培養プラットフォームの各チャンバーを光学的に問い合わせて、その中に含有される組織断片(単数)または断片(複数)をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、イメージングは、FF-OCTもしくはスペクトルOCTのうち1つもしくは複数のために構成されたイメージングデバイス、または蛍光イメージング、蛍光寿命イメージング、透過光イメージングもしくは反射光イメージングのために構成されたイメージングデバイスを用いて実施される。一部の実施形態では、イメージングデバイスは、点の3次元アレイでのミクロン(例えば、1~20μm)レベルの空間分解能、および/またはサブミクロンレベルの空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングデバイスは、10μmと等しいまたはそれ未満の(例えば、約10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μmなどの)空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングデバイスは、5μmと等しいまたはそれ未満の(例えば、約5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μmなどの)空間分解能でのイメージングのために構成される。一部の実施形態では、イメージングデバイスは、2μmと等しいまたはそれ未満の(例えば、約2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μmなどの)空間分解能でのイメージングのために構成される。
【0085】
一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、外因性フルオロフォアの添加なしに生組織断片をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、イメージングするステップは、1つまたは複数の内因性標識の蛍光放射、蛍光寿命、蛍光寿命組成または第二高調波イメージングのうち1つまたは複数を使用して、生組織断片をイメージングすることを含む。非限定的な例では、内因性標識は、NAD(P)H、FAD、コラーゲン、または他の第二高調波生成分子である。一部の実施形態では、蛍光寿命組成は、蛍光寿命によって識別される内因性フルオロフォアの1つまたは複数の集団の組成を指す。一部の実施形態では、蛍光寿命組成は、蛍光寿命によって識別される内因性フルオロフォアの1つまたは複数の集団の相対的組成を指す。一部の実施形態では、NAD(P)Hの蛍光寿命組成は、短蛍光寿命成分(約0.2ナノ秒(ns)と1ナノ秒(ns)との間の寿命を有する)および長蛍光寿命成分(約1nsと5nsとの間の寿命を有する)の組成である。一部の実施形態では、NAD(P)Hの蛍光寿命組成は、NAD(P)Hの総蛍光寿命成分に対する、短蛍光寿命成分のパーセンテージとして表される。
【0086】
一部の実施形態では、この方法は、生組織断片を外因性標識の添加なしにイメージングして、無標識の生組織画像を得ることを含む。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定は、無標識の生組織画像の組織学的評価を含み、組織学的評価のステップは、生組織断片内の腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定することを含む。
【0087】
「生組織画像」は、本明細書で使用される場合、生組織または生組織断片の画像である。一部の実施形態では、これらの画像は、例えば、多光子蛍光(例えば、2または3光子イメージング)、第二次高調波発生などの技法に基づいて、非線形顕微鏡法によって得られる。一部の実施形態では、生組織画像は、内因性組織フルオロフォア(例えば、NAD(P)H、FAD、エラスチンなど)の放射、内因性フルオロフォアの蛍光寿命、および/またはコラーゲンなどの内因性分子から生じる第二次高調波発生から得られる無標識(外因性標識無し)の蛍光画像である。組織学的評価は、手動で実施され得る、または画像処理ソフトウェアを使用して自動もしくは半自動様式で実施され得る。一部の実施形態では、無標識の生組織画像の組織学的評価のステップは、機械学習アルゴリズムを無標識の生組織画像に適用して、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定することを含み、機械学習アルゴリズムは、複数の訓練用組織画像で訓練される(例えば、図16に示される)。訓練用組織画像は、無標識の生組織画像と、マッチし注釈付けされ染色された組織画像とを含む。
【0088】
一部の実施形態では、画像処理ソフトウェアは、ディープニューラルネットワークなどに基づく、訓練された機械学習アルゴリズムを実行する。非限定的な実施形態では、染色された組織画像は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色され得る、トリクローム染色され得る、または免疫組織化学(IHC)染色で標識され得る。一部の実施形態では、染色された組織画像は、正常細胞の領域(正常)および腫瘍細胞の領域(腫瘍)を同定するために、(例えば、1人または複数の訓練された病理学者によって)手動で注釈付けされる。病理学者が注釈付けした染色された組織画像は、アルゴリズムを訓練するためのグラウンドトゥルースを構成する。生組織画像を生成するためにイメージングされる各生組織断片から、複数の組織切片がカットされ、これらは、マッチし注釈付けされ染色された組織画像を生成するために、引き続いて染色され、イメージングされ、注釈付けされる。一部の実施形態では、アルゴリズムを訓練することは、組織断片の無標識の生組織画像と、マッチした組織切片の染色された組織画像との交差モダリティ画像レジストレーションをさらに含む。訓練用組織画像は、組織断片の訓練用セットから生成される。一部の実施形態では、組織断片の訓練用セットは、それに対する薬物または薬剤の影響が決定される組織断片とは異なる。一部の実施形態では、組織断片の訓練用セットは、それに対する薬物または薬剤の影響が決定される組織断片と同じ組織型のものである。例えば、肺腫瘍組織からカットされた組織断片に対するex vivo薬物有効性を決定するために、腫瘍含量を推定するための機械学習アルゴリズムは、これもまた肺腫瘍組織から得られた組織断片の訓練用セットで訓練される。一部の実施形態では、画像処理ソフトウェア上で実行されるアルゴリズムは、生組織画像内の目的の領域を自動的に同定またはセグメント化するために使用され得る。一部の実施形態では、アルゴリズムは、例えば、生組織画像中の腫瘍および正常を示す組織学的特色を同定することによって、生組織断片の組織病理学的評価を実施するために使用され得る。一部の実施形態では、アルゴリズムは、生組織画像をバーチャルでまたはデジタルで染色するためにさらに使用され得る。
【0089】
一部の実施形態では、図16に示されるように、モデル(相関組織学モデル)を訓練するために、約100μmと約1mmとの間の厚さの生組織断片(例えば、組織断片の訓練用セットに属する)は、固有の(外因性標識無しの)多光子顕微鏡を使用してイメージングされる。複数の視野(FOV)が、合理的な範囲の組織断片にわたってデータのセクションを生成するために、3つの次元でイメージングされ、スティッチされる。次いで、組織断片は、標準的な組織学的プロセスに従って薄く切片化され(連続切片化)、(例えば、H&Eを使用して)染色される。次いで、全ての染色された切片は、標準的な明視野スライドスキャナでイメージングされる。次いで、染色された連続切片は、元の3次元組織断片を可能な限り密接に示す体積(3-D体積と呼ばれる)を生成するために互いにレジストレーションされる。交差モダリティレジストレーションは、多光子固有セクションと3-D体積との間で実施される。多光子データのセクションとマッチする(染色された組織切片からの)組織学データのセクションは、モデル訓練のための腫瘍/正常標識を形成する注釈付けのために、病理学者に提示される。固有のデータ(無標識の生組織画像)およびマッチした組織切片からの染色され注釈付けされた画像から生成された複数のデータセットは、機械学習モデルへの入力として使用される。相関組織学モデル予測のために、生組織断片からの固有の多光子イメージングデータが獲得される。機械学習アルゴリズムは、腫瘍および正常(または腫瘍/正常確率)を予測するために使用される。
【0090】
一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のためにイメージングするステップは、内因性フルオロフォアの蛍光放射または蛍光寿命イメージングのうち1つまたは複数を含み、腫瘍含量の推定のステップは、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、内因性フルオロフォアの空間的不均一性を定量化することを含む。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のステップは、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、内因性フルオロフォアの蛍光強度の空間的不均一性を定量化することを含む。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアは、NAD(P)Hである。エントロピーパラメーターの非限定的な例には、中央値エントロピー、エントロピー歪度、尖度および標準偏差が含まれる。エントロピーパラメーターは、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域と正常細胞を含有する組織断片または組織断片の領域との間で区別される(図17C、表1)。一部の実施形態では、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域は、正常細胞を含有する組織断片または組織断片の領域と比較して、より高い中央値エントロピーを有する。一部の実施形態では、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域は、正常細胞を含有する組織断片またはその領域と比較して、より負に歪んだエントロピー分布を有する。
【0091】
一部の実施形態では、図17A~Bに示されるように、イメージングするステップは、NAD(P)Hの蛍光寿命イメージングを含み、腫瘍含量の推定のステップは、NAD(P)Hの平均寿命(tm)および/またはNAD(P)Hの短蛍光寿命成分の平均振幅(a1平均)を定量化することを含む。一部の実施形態では、平均tm(またはtm平均)は、腫瘍細胞を含有する組織断片またはその領域と比較して、正常細胞を含有する組織断片または組織断片の領域においてより高い。一部の実施形態では、短寿命成分の平均振幅(またはa1平均)は、正常細胞を含有する組織断片またはその領域と比較して、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域においてより高い。
【0092】
一部の実施形態では、イメージングするステップは、第二次高調波発生(SHG)構造、例えば、ECM線維の第二次高調波発生(SGH)イメージングを含み、腫瘍含量の推定のステップは、SGH構造の線維パラメーターの決定を含む。一部の実施形態では、線維パラメーターは、線維幅、線維真直度または線維長さである。一部の実施形態では、SHG構造の線維パラメーターは、正常細胞を含有する組織断片または組織断片の領域と比較して、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域において区別される。一部の実施形態では、腫瘍細胞を含有する組織断片または組織断片の領域は、正常細胞を含有する組織断片またはその領域と比較して、より狭い幅、より高い真直度および/またはより大きい平均長さのコラーゲン線維によって特徴付けられる(図17D)。本明細書で使用される「第二次高調波発生構造」または「SHG構造」は、第二次高調波発生を生じる内因性分子(例えば、ECM成分)である。SGH構造の非限定的な例には、コラーゲン、ミオシンなどが含まれる。
【0093】
一部の実施形態では、薬物または薬剤を組織断片に添加するステップは、推定された腫瘍含量に基づいて薬物または薬剤を添加することを含む。一部の実施形態では、推定された腫瘍含量に基づいて薬物または薬剤を添加することは、その組織断片の推定された腫瘍含量に基づいて、薬物または薬剤を組織断片に添加することを含む。例えば、当該組織断片の推定された腫瘍含量が、カットオフと等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤が組織断片に添加される。一部の実施形態では、推定された腫瘍含量に基づいて薬物または薬剤を添加することは、そのチャンバー内の最小数の組織断片の推定された腫瘍含量に基づいて、薬物または薬剤を、培養プラットフォームのチャンバー内に含有される組織断片に添加することを含む。例えば、そのチャンバー内の最小数の組織断片の推定された腫瘍含量が、カットオフと等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤が、チャンバー内に含有される組織断片に添加される。一部の実施形態では、推定された腫瘍含量に基づいて薬物または薬剤を添加することは、組織の推定された腫瘍含量(これは次に、組織断片をイメージングし、当該組織からカットされた組織断片の腫瘍含量を推定することによって得られる)に基づいて、薬物または薬剤を組織断片に添加することを含む。例えば、最小数のチャンバーが、カットオフと等しいかそれよりも大きい腫瘍含量を有する組織断片(単数)または断片(複数)を含有する場合に、薬物または薬剤が添加される。したがって、一部の実施形態では、腫瘍含量の前もっての推定が、薬物または薬剤を組織断片に添加するかどうかを決定するために利用される。
【0094】
一部の実施形態では、腫瘍含量についてのカットオフ(または腫瘍含量カットオフ)は、悪性細胞の数またはパーセンテージに基づく。一部の実施形態では、腫瘍含量カットオフは、腫瘍含量の1つまたは複数の代理パラメーター、例えば、エントロピーパラメーター(例えば、中央値エントロピー、エントロピー歪度など)、ECM線維パラメーター(例えば、コラーゲン線維などのSHG構造の幅、真直度および平均長さ)、内因性フルオロフォアの1つまたは複数の蛍光パラメーター(例えば、NAD(P)Hの1つまたは複数の寿命成分の蛍光寿命および/または放射強度)などに基づく。
【0095】
一部の実施形態では、推定された腫瘍含量に基づいて薬物または他の薬剤を添加するステップは、培養プラットフォームのチャンバー中の組織断片をイメージングして、組織断片の腫瘍含量を推定すること、推定された腫瘍含量がカットオフにあるまたはそれを上回る場合には、薬物または他の薬剤の添加のために組織断片を選択し、推定された腫瘍含量がカットオフを下回る場合には、組織断片を廃棄すること、および培養プラットフォームの次のチャンバー中の組織断片をイメージングして、腫瘍含量を推定することを含む(例えば、図3に示される)。カットオフは、予め定義されたカットオフ(ここで、カットオフは、プリセットされており、組織変数、例えば、温虚血および冷虚血時間、組織断片のサイズ、性質、型、代謝ステータス、免疫含量など、添加される薬物または他の薬剤の型、培養条件、培養時間などとは無関係に一定のままである)またはユーザー定義されたカットオフ(ここで、ユーザーは、上述の1つまたは複数の組織変数に依存して、カットオフを設定する)であり得る。一部の実施形態では、カットオフ(例えば、腫瘍細胞のパーセンテージに基づく)は、1%である。一部の実施形態では、推定された腫瘍含量がカットオフを超える場合、薬物または他の薬剤の添加のステップは、自動的である。一部の実施形態では、薬物または他の薬剤の添加のステップは、ユーザー定義される。一部の実施形態では、組織または組織断片内の腫瘍細胞のパーセンテージが、少なくとも1%(例えば、1%または5%、または6%または7%または10%または20%または50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%など)である場合に、薬物または他の薬剤が組織断片に添加される。一部の実施形態では、組織断片内の腫瘍細胞のパーセンテージが少なくとも5%である場合、例えば、組織断片内の腫瘍細胞のパーセンテージが1%または5%、または6%または7%または10%または20%または50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%などである場合に、薬物または他の薬剤が組織または組織断片に添加される。
【0096】
一部の実施形態は、各組織断片の免疫含量を推定することをさらに含む。一部の実施形態では、推定された免疫含量が、カットオフ(例えば、免疫含量カットオフ)と等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物(例えば、免疫モジュレーター)または他の薬剤が添加される。一部の実施形態では、免疫細胞(例えば、細胞傷害性T細胞、エフェクターT細胞、NK細胞など)が組織断片中で検出される場合に、薬物または他の薬剤が添加される。
【0097】
一部の実施形態は、組織断片の生存度評価を実施して、細胞生存度を決定することを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤を組織断片に添加するステップは、細胞生存度がカットオフ(細胞生存度カットオフ)と等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤を添加することを含む。一部の実施形態では、生存度評価は、組織断片をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、生存度評価は、組織断片をイメージングして、細胞生存度を示す内因性分子からの1つまたは複数のシグナル(例えば、1つまたは複数の光学的シグナル)を検出することを含む。一部の実施形態では、細胞生存度カットオフは、内因性分子からの1つまたは複数のシグナルから決定される。一部の実施形態では、生存度評価のステップは、組織断片をイメージングして、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度および/または蛍光寿命を測定することを含む。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアは、生または生存細胞を示す。一部の実施形態では、生細胞の数が多くなるほど、内因性フルオロフォア(例えば、図18Aに示されるNAD(P)H蛍光)の放射強度は大きくなる。一部の実施形態では、細胞生存度カットオフは、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度から決定される。一部の実施形態では、この方法は、内因性フルオロフォアの蛍光強度が強度閾値よりも大きい場合に、薬物または薬剤を添加することをさらに含む。一部の実施形態では、細胞生存度カットオフは、内因性フルオロフォアの強度閾値によって提供される。一部の実施形態では、強度閾値は、死細胞を染色する外因性標識(例えば、図18Bに示されるPI蛍光)で標識された組織断片の訓練用セットを使用して決定される。死細胞に対する外因性標識は、グラウンドトゥルースとして機能する。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアの強度閾値は、死細胞に対する外因性標識の強度で訓練される。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアの強度閾値を訓練するステップは、外因性標識の強度閾値を最初に決定することを含む。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアの強度閾値は、外因性標識高細胞(外因性標識の強度閾値によって同定される)の90%よりも多くが内因性フルオロフォアの強度閾値によって排除されるように、設定される(図18C~D)。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアは、NAD(P)Hである。一部の実施形態では、外因性標識は、死細胞の核を染色するヨウ化プロピジウム(PI)である。一部の実施形態では、組織断片の訓練用セットは、それに対する薬物または薬剤の影響が決定される組織断片とは異なる。一部の実施形態では、組織断片の訓練用セットは、それに対する薬物または薬剤の影響が決定される組織断片と同じ組織型のものである。一部の実施形態では、内因性フルオロフォアの強度閾値は、各実験の前に決定され、組織断片の訓練用セットと、それに対する薬物または薬剤の影響が決定される組織断片とは、同じ組織からカットされる。
【0098】
一部の実施形態では、内因性フルオロフォアの強度閾値から決定されるように、十分な数またはパーセンテージの生存細胞が存在する場合(または細胞生存度がカットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合)に、薬物または薬剤が添加される。一部の実施形態では、生存度評価は、組織断片をイメージングすることによって実施される。一部の実施形態では、組織断片が、生存細胞を有すると推定される場合(または細胞生存度がカットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合)に、薬物または薬剤が組織断片に添加される。一部の実施形態では、チャンバーが1つよりも多くの組織断片を含有する場合、チャンバー内の最小数の組織断片が、生存細胞を有する(またはカットオフと等しいもしくはそれよりも大きい細胞生存度を有する)と推定される場合、薬物または薬剤が、そのチャンバー内に含有される組織断片に添加される。一部の実施形態では、最小数のチャンバーが生存細胞を有する(またはカットオフと等しいもしくはそれよりも大きい細胞生存度を有する)組織断片を含有する場合、薬物または薬剤が組織断片に添加される。
【0099】
一部の実施形態では、薬物または他の薬剤を組織断片に添加するステップは、薬物または他の薬剤の異なる希釈を異なる組織断片に添加することを含む。一部の実施形態では、薬物は、2つまたはそれよりも多くの薬物の組合せである。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの薬物(または薬剤)は、同時発生的に添加される。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの薬物(または薬剤)は、順次添加される。一部の実施形態では、薬物または薬物の組合せは、適切なアジュバントまたは賦形剤と共に添加される。一部の実施形態では、薬物(または薬剤)は、単一のボーラス用量で添加されるが、一部の他の実施形態では、薬物(または薬剤)は、規定された間隔でより小さい用量で添加される。一部の実施形態では、薬物(または薬剤)を組織断片に添加するステップは、異なる薬物もしくは薬物組合せ(または異なる薬剤、もしくは薬剤の異なる組合せ)を異なる組織断片に添加することを含む。
【0100】
一部の実施形態では、組織断片は、培養される。組織断片は、任意の適切な培養培地中で培養される。組織断片は、薬物または薬剤の存在下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、少なくとも12時間にわたって(例えば、12時間または24時間、または48時間、または72時間、または96時間、または120時間などにわたって)培養される。組織断片は、機能的血液供給およびリンパ性脈管構造を欠如する。組織断片は、例えば、組織型に依存して、最適な酸素濃度の条件下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、高い酸素濃度の条件下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、少なくとも20%(例えば、20%、または30%または40%または50%または60%または70%または80%など)酸素の条件下で培養される。
【0101】
一部の実施形態では、ある特定の組織型について、細胞生存度は、過酸素の条件下で低減される(例えば、図19Aに示される)。一部の実施形態では、組織断片は、低酸素の条件下で(例えば、20%未満、例えば、15%または10%または5%の酸素濃度で)培養される。一部の実施形態では、周囲酸素中で培養した組織断片と比較して、低酸素の条件(例えば、5%酸素)下で培養した組織断片において、細胞生存度は増加し、死細胞数は低減した(図19B)。一部の実施形態では、組織断片は、灌流培養され、このとき、培養培地は、連続的または間欠的に灌流される。一部の実施形態では、組織断片は、予め定義された間隔(例えば、12時間毎、24時間毎など)で、または組織断片および/もしくは培養培地のステータスに依存する間隔で培養培地が交換される条件下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、非灌流条件下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、インサートを利用して培養される。インサートは、組織断片が培養の間にその上に配置される、培養プラットフォームのチャンバー内の支持構造である。組織断片をインサート上に配置することで、培養培地が組織断片周囲を灌流することが可能になり、それにより、組織断片にとっての酸素および栄養素入手可能性を増強する。当業者は、組織断片のサイズ、型および/または他の特性に依存して、種々のサイズ、材料および特性のインサートを想定することができる。一部の実施形態では、インサートは、ステンレス鋼メッシュ構造を含む。一部の実施形態では、インサートは、培養プラットフォームのチャンバー内に取り外し可能に置かれる。一部の実施形態では、組織断片は、酸素透過性材料で作製された培養プラットフォーム上で培養される。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、酸素透過性ベースを含む。一部の実施形態では、組織断片は、培養プラットフォームの定常条件下で培養される。一部の実施形態では、組織断片は、培養プラットフォームの動的条件下で培養され、このとき、培養プラットフォームは、運動、例えば、揺動運動、軌道運動などに供される。本明細書に記載される実施形態に記載される1つまたは複数の方法は、細胞生存度におけるいずれの喪失もなしに、組織断片を、3日間よりも長い期間にわたって(例えば、5日間よりも長い期間にわたって)培養物中で維持することを助ける(図20)。一部の実施形態では、組織断片は、細胞生存度におけるいずれの喪失もなしに、最大で7日間にわたって培養物中で維持された。一部の実施形態では、細胞生存度および細胞数は、培養物中で1日間の後に改善した。一部の実施形態では、培養の3日目の細胞生存度および細胞数は、0日目の細胞生存度および細胞数よりも有意に高く、死細胞のパーセンテージもまた、0日目と比較して、3日目においてより小さかった(図21A~C)。一部の実施形態では、薬物添加のタイミングは、薬物クラスに依存する。一部の実施形態では、組織断片が、ある持続時間にわたって(例えば、5時間、10時間、12時間または24時間などにわたって)培養された後に、薬物または薬剤が組織断片に添加される。一部の実施形態では、特に、薬物または薬剤が細胞傷害性化学療法薬である場合、この期間は、細胞生存度および生細胞数における増加から分かるように、組織断片が(例えば、カット、選別などのうち1つまたは複数のプロセスから)回復するのを可能にする。一部の実施形態では、免疫モジュレーター薬物または薬剤について、追加の回復時間は要求されず、薬物または薬剤は、培養の0日目に添加される。
【0102】
一部の実施形態では、組織断片および/または培養培地のステータスは、センサーを使用してモニタリングされる。一部の実施形態では、培養プラットフォームは、1つまたは複数のセンサーを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のセンサーは、培養培地の1つまたは複数の特徴をモニタリングし、その非限定的な例には、溶存酸素ステータス、pH、乳酸塩濃度、グルコース濃度などが含まれる。一部の実施形態では、1つまたは複数のセンサーからの入力に基づいて、培養条件は最適化または変動される。培養条件は、酸素濃度、培養培地交換のタイミング、灌流速度、培養プラットフォームの運動などのうち1つまたは複数を含む。
【0103】
一部の実施形態では、培養プラットフォームは、組織断片の培養の間、インキュベーター内に収容される。一部の実施形態では、インキュベーターは、培養に適切な温度、湿度および酸素濃度で、組織断片を維持するように構成される。一部の実施形態では、インキュベーターは、約37℃の温度で、約5%のCOで、かつ加湿条件下で、組織断片を維持するように構成される。一部の実施形態では、インキュベーターは、適切な酸素濃度下で組織断片を維持するように構成される、例えば、インキュベーターは、5%、10%または20%と等しいまたはそれよりも高い(例えば、5%、10%、20%、または30%または40%または50%または60%または70%または80%などの)最適な制御された酸素濃度下で、組織断片を維持するように構成される。
【0104】
一部の実施形態では、組織断片に対してex vivo測定を実施するステップは、ex vivo組織パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、組織断片に対してex vivo測定を実施するステップは、ex vivo組織パラメーターを測定するために、組織断片をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、細胞パラメーターである。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、細胞外パラメーターである。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定することは、細胞パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定することは、細胞パラメーターおよび細胞外パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、薬物または他の薬剤の添加後に1回、または複数の時点で測定される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、組織断片が培養物中にあるままで、例えば、薬物または薬剤の存在下で、測定される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、組織断片が培養物中にあるままで、種々の時点で測定される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、培養の終結の前に1回測定される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、培養の終結の後に測定される。一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞パラメーターは、組織断片中の腫瘍細胞の尺度である。一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞パラメーターは、組織断片中の腫瘍細胞および非腫瘍細胞(例えば、免疫細胞、間質細胞)の尺度である。一部の実施形態では、細胞パラメーター測定のステップは、各組織断片内の個々の細胞をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、イメージングするステップは、1つまたは複数のイメージングモダリティを用いてイメージングすることを含む。一部の実施形態では、イメージングするステップは、蛍光イメージングモダリティを用いてイメージングすることを含む。一部の実施形態では、細胞パラメーターを測定することは、内因性フルオロフォア、外因性フルオロフォアまたはそれら両方からの蛍光強度、蛍光寿命または蛍光偏光のうち1つまたは複数を測定することを含む。一部の実施形態では、細胞パラメーターの測定は、細胞の固有の蛍光(例えば、内因性フルオロフォアからの蛍光)をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、固有の細胞蛍光は、1つまたは複数の内因性フルオロフォア、例えば、NADH(還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADPH(還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、フラビンおよびフラビン誘導体(例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD))、芳香族アミノ酸、例えば、トリプトファン、チロシンなどに起因して生じる細胞自己蛍光を含む。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、NAD(P)Hの蛍光強度のFADの蛍光強度に対する比から得られる細胞代謝活性である。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、NAD(P)Hの蛍光寿命の尺度である。一部の実施形態では、細胞パラメーターは、FADの蛍光寿命の尺度である。一部の実施形態では、細胞外パラメーターは、コラーゲンによって生成された散乱光の強度および/または偏光の尺度である。一部の実施形態では、細胞パラメーター測定のステップは、蛍光標識された細胞をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、細胞パラメーター測定は、細胞を生/死細胞標識で標識することによって実施される。一部の実施形態では、細胞パラメーター測定は、細胞を、形態学的標識、例えば、核、細胞骨格、ミトコンドリア、小胞体、原形質膜などを染色する1つまたは複数の標識で標識することによって実施される。一部の実施形態では、細胞パラメーター測定は、細胞を機能的または代謝的標識で標識することによって実施される。一部の実施形態では、少なくとも1つのex vivo組織パラメーターを測定することは、1つまたは複数の細胞パラメーターおよび必要に応じて1つまたは複数の細胞外パラメーターを測定することを含む。
【0105】
一部の実施形態では、組織断片のex vivo組織パラメーターを測定するステップは、NAD(P)Hおよび/またはFADの蛍光放射強度および蛍光寿命のうち1つまたは複数を測定することを含む。一部の実施形態では、組織断片のex vivo組織パラメーターを測定するステップは、蛍光寿命によって識別される1つまたは複数のNAD(P)H集団の蛍光放射強度を測定することを含む。一部の実施形態では、1つのNAD(P)H集団は、より短い持続時間のNAD(P)H蛍光寿命成分によって特徴付けられるが、他のNAD(P)H集団は、より長い持続時間のNAD(P)H蛍光寿命成分によって特徴付けられる。一部の実施形態では、測定は、薬物または薬剤の添加後の複数の時点で実施される長期的な測定である。一部の実施形態では、薬物添加後のNAD(P)Hの短寿命成分の蛍光放射強度において減少が存在する(図23Bおよび23C)。一部の実施形態では、薬物添加後の平均寿命において増加が存在する(図23Aおよび23D)。
【0106】
一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定するステップは、インターロイキン-2(Il-2)、インターロイキン-4(Il-4)、インターロイキン-6(Il-6)、インターロイキン-10(Il-10)、インターロイキン-17A(Il-17A)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、可溶性Fas(sFas)、可溶性Fasリガンド(sFasL)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、グランザイムA、グランザイムB、パーフォリン、グラニュリシン、インターロイキン-8(Il-8)、インターフェロン(iterferon)ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、エオタキシン、胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)、単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)、RANTES、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1α、インターフェロン-γによって誘導されるモノカイン(MIG)、上皮-好中球活性化ペプチド(ENA-78)、MIP-3α、GROα、I-TACまたはMIP-1bが含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数の因子を測定することを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、免疫療法または免疫モジュレート性の薬物または薬剤である。
【0107】
一部の実施形態では、組織断片に対する薬物または薬剤の影響を決定するステップは、組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施することを含む。腫瘍含量および/または細胞生存度の前もっての決定は、ex vivo薬物応答評価を、1つまたは複数の方法で支援するまたは容易にする。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータ(またはex vivo組織パラメーターデータ)は、推定された腫瘍含量および/または推定された細胞生存度に基づいて分析される。一部の実施形態では、推定された腫瘍含量が、腫瘍含量カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、および/または推定された細胞生存度が、細胞生存度カットオフと等しいもしくはそれよりも大きい場合に、組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定からのデータが分析される。例えば、組織断片が、それぞれのカットオフ値と等しいまたはそれよりも大きい腫瘍含量および/または細胞生存度を有すると推定される場合に、組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定からのデータが分析される。他の例では、複数の組織断片がチャンバー中に分配される場合、そのチャンバー内の最小数の組織断片が、それぞれのカットオフ値と等しいまたはそれよりも大きい腫瘍含量および/または細胞生存度を有すると推定される場合に、ex vivo測定(チャンバー中の組織断片に対して実施された)からのデータが分析される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータを分析することは、推定された腫瘍含量および/または推定された細胞生存度に関してデータを正規化することを含む。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータは、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に関して正規化される。
【0108】
一部の実施形態では、組織断片に対する薬物または薬剤の影響を決定するステップは、ex vivo組織パラメーターデータを、予測アルゴリズムに入力することを含む。一部の実施形態では、組織断片に対する薬物または薬剤の影響を決定するステップは、ex vivo組織パラメーターデータを対照データと比較することを含む。一部の実施形態では、対照データは、参照組織パラメーターデータであり、参照組織パラメーターデータは、参照組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られ、参照組織断片は、薬物または薬剤で処置されていない。一部の実施形態では、対照データは、時点t0において組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られたex vivo組織パラメーターデータであり、t0は、薬物もしくは他の薬剤の添加の時点、薬物もしくは薬剤の添加の直前の時点、または薬物もしくは薬剤の添加の直後の時点である。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターデータは、薬物または薬剤の添加後の1つまたは複数の時点(tn)において(例えば、12時間(t12)、24時間(t24)、36時間(t36)、48時間(t48)、72時間(t72)、120時間(t120)などにおいて)組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られる。一部の実施形態では、組織断片に対する薬物または他の薬剤の影響を決定するステップは、1つまたは複数の時点tnにおいて得られたex vivo組織パラメーターデータを、時間t0において得られたex vivo組織パラメーターデータと比較することを含む。一部の実施形態では、この方法は、薬物または他の薬剤の添加後の1つまたは複数の時点(tn)において組織断片の腫瘍含量を推定することをさらに含む。一部の実施形態では、薬物または他の薬剤応答をex vivoで決定する方法は、各時点tnにおいて組織断片から得られたex vivo組織パラメーターデータを、同じ組織断片の推定された腫瘍含量に対して正規化することをさらに含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定のステップは、生組織断片をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定のステップは、外因性薬剤の添加なしに生組織断片をイメージングすることを含む。
【0109】
一部の実施形態は、薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性を予測する方法に関し、方法は、a)組織断片を提供するステップであって、組織断片が、対象から得られた組織から生成される、ステップ;b)組織断片をイメージングして、組織断片の腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数を推定するステップ;c)薬物または薬剤を組織断片に添加するステップ;d)薬物または薬剤で処理された組織断片に対して1回または複数のex vivo測定を実施するステップ;ならびにe)組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo測定から得られたデータに基づいて、薬物または薬剤に対する対象の臨床的応答性を予測するステップを含む。一部の実施形態では、薬物または薬剤は、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、組織断片に添加される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータが、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて分析される。
【0110】
組織断片は、生組織断片であり、腫瘍含量を推定するステップまたは細胞生存度を推定するステップは、生組織断片に対して実施される。一部の実施形態では、組織断片は、外因性標識の添加なしにイメージングされる。一部の実施形態では、組織断片は、組織をカッティングデバイスでカットすることによって生成される。一部の実施形態では、組織断片を提供するステップは、組織断片の光学的特徴に基づいて組織断片を選別することおよび選別された組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配することを含む。培養プラットフォームのチャンバー中に分配された組織断片は、残留ゲルマトリックス、残留犠牲ケーシング、マルチプレット、組織デブリ、崩壊した組織断片、またはサイズ基準を満たしていない組織断片のうち1つまたは複数が無い。一部の実施形態では、培養プラットフォームのチャンバー中に分配された組織断片は、サイズ、完全性、マルチプレットの非存在、および外因性薬剤の非存在から選択される1つまたは複数の基準を満たす。一部の実施形態では、組織断片は、約0℃と約-200℃との間(好ましくは、約-120℃と約-200℃との間)の温度で保存され、組織断片を提供するステップは、選別の前に組織断片を解凍することをさらに含む。一部の実施形態では、組織断片は、組織から(例えば、カットすることによって)生成された後に、約0℃と約-200℃との間の温度で凍結保存される。
【0111】
一部の実施形態では、イメージングするステップは、1つまたは複数の内因性標識の蛍光放射、蛍光寿命、蛍光寿命組成または第二次高調波発生のうち1つまたは複数を使用して、生組織断片をイメージングすることを含む。一部の実施形態では、この方法は、生組織断片を外因性標識の添加なしにイメージングして、無標識の生組織画像を得ることを含み、腫瘍含量の推定は、無標識の生組織画像の組織学的評価を含み、組織学的評価のステップは、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定することを含む。一部の実施形態では、組織学的評価は、機械学習アルゴリズムの助けによって実施される。一部の実施形態(例えば、図16に示され、本明細書中で以前に記載した)では、機械学習アルゴリズムは、無標識の生組織画像と、マッチし注釈付けされ染色された組織画像とを含む複数の訓練用組織画像で訓練される。
【0112】
一部の実施形態では、組織または組織断片が、カットオフ(例えば、腫瘍含量カットオフ)よりも大きい腫瘍含量を有すると推定される場合に、薬物または薬剤が組織断片に添加される。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のステップは、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、内因性フルオロフォア(例えば、NAD(P)H)の空間的分布を定量化することを含む(図17C)。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のステップは、NAD(P)Hの平均寿命および/または蛍光寿命によって識別されるNAD(P)Hの1つもしくは複数の集団の平均振幅を定量化することを含む(図17A~B)。一部の実施形態では、NAD(P)Hの集団は、短蛍光寿命成分(約0.2ナノ秒(ns)と1ナノ秒(ns)との間の寿命を有する)および長蛍光寿命成分(約1nsと5nsとの間の寿命を有する)によって同定される。一部の実施形態では、NAD(P)Hの集団は、NAD(P)H)の短蛍光寿命成分である。一部の実施形態では、イメージングするステップは、SHG構造、例えば、コラーゲン線維の第二次高調波発生(SHG)イメージングを含み、腫瘍含量の推定のステップは、SHG構造の線維パラメーター(例えば、線維の幅、真直度または平均長さ)の決定を含む(図17D)。
【0113】
腫瘍含量カットオフは、予め定義されたカットオフまたはユーザー定義されたカットオフであり得る。以前に記載したように、腫瘍含量カットオフは、腫瘍細胞の数もしくはパーセンテージであり得る、または腫瘍含量の代理パラメーター(例えば、エントロピーパラメーター、ECM線維パラメーターなど)に基づき得る。一部の実施形態では、カットオフは、組織または組織断片内の少なくとも1%の腫瘍細胞である。一部の実施形態では、組織断片内の腫瘍細胞の推定されたパーセンテージが少なくとも1%である場合に、薬物または他の薬剤が組織断片に添加される。
【0114】
一部の実施形態では、この方法は、組織断片の生存度評価を実施して、細胞生存度を推定することを含む。一部の実施形態では、生存度評価を実施するステップは、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度、蛍光寿命および/または蛍光寿命組成を決定するために、組織断片をイメージングすることを含み、内因性フルオロフォアは、生細胞を示す。一部の実施形態では、推定された細胞生存度がカットオフ(細胞生存度カットオフ)と等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤が添加される。一部の実施形態では、細胞生存度は、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度から決定される。一部の実施形態では、内因性フルオロフォア(例えば、NAD(P)H)の蛍光強度が強度閾値よりも大きい場合に、薬物または薬剤が添加され、強度閾値は、死細胞を染色する外因性標識(例えば、PI)で標識された組織断片の訓練用セットで訓練され、内因性フルオロフォアの強度閾値は、外因性標識の強度で訓練される。一部の実施形態では、細胞生存度カットオフは、内因性フルオロフォアの強度閾値によって提供される。
【0115】
一部の実施形態では、組織断片に対してex vivo測定を実施するステップは、ex vivo組織パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターは、組織断片をイメージングすることによって測定される。組織断片のex vivo組織パラメーター測定のステップは、組織断片を薬物または他の薬剤で処置した後に実施される。ex vivo測定のステップは、薬物または他の薬剤による処置の後、1回実施され得る、または複数の時点において実施され得る。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定するステップは、細胞パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定するステップは、複数の細胞パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターを測定するステップは、細胞パラメーターおよび細胞外パラメーターを測定することを含む。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定は、生組織断片に対して実施される。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定は、外因性標識の添加なしに実施される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータは、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数がそれぞれのカットオフと等しいまたはそれよりも大きい場合にのみ、(臨床的応答性を予測するために)分析される。一部の実施形態では、1回または複数のex vivo測定からのデータは、推定された腫瘍含量または細胞生存度のうち1つまたは複数に関して正規化される。
【0116】
一部の実施形態では、ex vivo組織測定を実施するステップは、組織断片をイメージングして、NAD(P)Hの蛍光放射強度、蛍光寿命またはNAD(P)Hの蛍光寿命組成のうち1つまたは複数を測定することを含む。一部の実施形態では、組織断片に対してex vivo測定を実施するステップは、Il-2、Il-4、Il-6、Il-10、Il-17A、TNF-α、sFas、sFasL、IFN-g、グランザイムA、グランザイムB、パーフォリン、グラニュリシン、Il-8、IP-10、エオタキシン、TARC、MCP-1、RANTES、MIP-1α、MIG、ENA-78、MIP-3α、GROα、I-TACまたはMIP-1bが含まれるがこれらに限定されない因子を測定することをさらに含む。
【0117】
一部の実施形態では、組織断片に対して実施されたex vivo測定に基づいて臨床的応答性を予測するステップは、ex vivo測定からデータ(ex vivo組織パラメーターデータ)を得ること、およびex vivo組織パラメーターデータを、予測アルゴリズムに入力することを含む。
【0118】
一部の実施形態では、ex vivo測定に基づいて臨床的応答性を予測するステップは、ex vivo測定からex vivo組織パラメーターデータを得ること、およびex vivo組織パラメーターデータを対照データと比較することを含む。一部の実施形態では、対照データは、参照組織パラメーターデータであり、参照組織パラメーターデータは、参照組織断片に対して実施されたex vivo測定から得られ、参照組織断片は、薬物または他の薬剤で処置されていない。一部の実施形態では、参照組織断片は、対象から得られた組織から生成される。一部の実施形態では、対照データは、時点(t0)において組織断片に対して実施されたex vivo測定から得られたex vivo組織パラメーターデータであり、t0は、薬物もしくは他の薬剤の添加の時点、薬物もしくは他の薬剤の添加の直前の時点、または薬物もしくは他の薬剤の添加の直後の時点である。一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーターデータは、薬物または他の薬剤の添加後の1つまたは複数の時点(tn)において(例えば、12時間(t12)、24時間(t24)、36時間(t36)、48時間(t48)、72時間(t72)、120時間(t120)などにおいて)組織断片に対して実施されたex vivo測定から得ることができる。一部の実施形態では、臨床的応答性を予測するステップは、時点tnにおいて組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られたex vivo組織パラメーターデータを、t0において同じ組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から得られたex vivo組織パラメーターデータと比較することを含む。
【0119】
一部の実施形態によれば、予測アルゴリズムは、ex vivo組織パラメーターデータを入力として使用し、予測された臨床的応答性を示す出力を生成する、アルゴリズムである。一部の実施形態では、出力は、数的値であり、予測された臨床的応答性は、数的値に基づく。一部の実施形態では、数的スケールは、一端での完全奏効と他端での非応答との間に及ぶ。予測された臨床的応答性は、数的スケール上の数的値の相対的位置に基づいて、予測された臨床応答または予測された臨床的非応答のものであり得る。一部の実施形態では、数的値は、カットオフと比較される。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性は、数的値がカットオフを上回る場合には予測された臨床応答のものであり、数的値がカットオフを下回る場合には予測された臨床的非応答のものであり、逆もまた然りである。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性は、予測された臨床応答または予測された臨床的非応答のいずれかの二元予測である。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性は、予測された完全奏効、予測された部分奏効、予測された安定疾患、または予測された進行性疾患であり得る。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性は、完全臨床奏効と進行性疾患との間の連続的スケールである。
【0120】
一部の実施形態は、薬物または他の薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムを生成するためのコンピュータにより実行される方法であって、a)薬物または薬剤でex vivoで処置された組織断片のセットに対して実施された1回または複数のex vivo組織パラメーター測定から生成された訓練用組織パラメーターデータのセットを得るステップであって、組織断片のセットが、対象の訓練用コホートから得られた組織から生成される、ステップ;b)薬物または薬剤で処置された対象の訓練用コホートに対して実施された1回または複数の臨床的パラメーター測定から生成された訓練用臨床的パラメーターデータのセットを得るステップ;ならびにc)訓練用組織パラメーターデータのセットおよび訓練用臨床的パラメーターデータのセットを使用して、薬物または薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムを生成するステップ、を含む方法に関する。一部の実施形態では、この方法は、検証組織パラメーターデータおよび検証臨床的パラメーターデータを使用して、薬物または他の薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムを検証することをさらに含む。
【0121】
検証組織パラメーターデータは、薬物または薬剤でex vivoで処置された組織断片に対して実施された1回または複数のex vivo組織パラメーター測定から生成され、組織断片は、検証コホート中の対象から得られた組織から生成される。検証臨床的パラメーターデータは、検証コホート中の当該対象に対して実施された1回または複数の臨床的パラメーター測定から生成され、対象は、薬物または薬剤で処置される。一部の実施形態では、薬物または薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムを検証するステップは、a)検証組織パラメーターデータを、薬物または薬剤に対する応答性の予測アルゴリズムに入力して、検証コホート中の対象について、予測された臨床的応答性を生成するステップ;およびb)予測された臨床的応答性を実際の臨床的応答性と比較するステップであって、実際の臨床的応答性が、検証臨床的パラメーターデータから決定される、ステップ、を含む。一部の実施形態では、薬物応答の予測アルゴリズムを検証するステップは、検証コホート中の全ての対象について、ステップa)およびb)を実施することを含む。
【0122】
一部の実施形態は、対象を処置する方法に関し、方法は、薬物または薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を受け取るステップ;ならびに予測された臨床的応答性に基づいて対象を処置するステップであって、薬物または薬剤に対する、対象の予測された臨床的応答性を生成するためのステップは、a)対象から得られた組織から、組織断片を生成すること;b)組織断片の光学的特徴に基づいて組織断片を選別すること;c)組織または組織断片の推定された腫瘍含量または推定された細胞生存度のうち1つまたは複数に基づいて、選別された組織断片を、薬物または薬剤でex vivoで処置すること;d)薬物または薬剤で処置された組織断片に対して実施されたex vivo組織パラメーター測定から、ex vivo組織パラメーターデータを得ること;およびe)ex vivo組織パラメーターデータに基づいて、薬物または薬剤に対する対象の予測された臨床的応答性を生成することを含む、ステップを含む。
【0123】
薬物または他の薬剤に対する対象の予測された臨床的応答性に基づいて対象を処置するステップは、対象が薬物もしくは薬剤に応答すると予測される場合に、対象を薬物または薬剤で処置すること、または対象が薬物もしくは薬剤に応答しないと予測される場合に、対象を代替的処置で処置することを含む。一部の実施形態では、この方法は、複数の薬物または薬剤に対する対象の予測された臨床的応答性を受け取ること、および対象を、それに対して対象が応答すると予測される薬物もしくは他の薬剤で、またはそれに対する予測された臨床的応答性が最も高い薬物もしくは他の薬剤で処置することを含む。
【0124】
一部の実施形態では、推定された腫瘍含量に基づいて、組織断片を薬物または薬剤でex vivoで処置するステップは、組織または組織断片の推定された腫瘍含量がカットオフと等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤を組織断片に添加することを含む。一部の実施形態では、推定された細胞生存度に基づいて、組織断片を薬物または薬剤でex vivoで処置するステップは、組織または組織断片の推定された細胞生存度が、カットオフと等しいまたはそれよりも大きい場合に、薬物または薬剤を組織断片に添加することを含む。一部の実施形態では、腫瘍含量および細胞生存度は、組織断片をイメージングすることによって推定される。一部の実施形態では、イメージングするステップは、1つまたは複数の内因性標識の蛍光放射イメージング、蛍光寿命イメージングまたは第二高調波イメージングのうち1つまたは複数を使用して、(例えば、組織断片を固定することなしに)生組織断片をイメージングすることを含む。
【0125】
一部の実施形態では、この方法は、生組織断片を外因性標識の添加なしにイメージングして、無標識の生組織画像を得ることを含み、腫瘍含量の推定は、無標識の生組織画像の組織学的評価を含み、組織学的評価のステップは、腫瘍細胞の領域および正常細胞の領域を同定することを含む。一部の実施形態では、組織学的評価は、機械学習アルゴリズムの助けによって実施される。一部の実施形態(例えば、図16に示され、本明細書中で以前に記載した)では、機械学習アルゴリズムは、無標識の生組織画像と、マッチし注釈付けされ染色された組織画像とを含む複数の訓練用組織画像で訓練される。
【0126】
一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のステップは、1つまたは複数のエントロピーパラメーターを使用して、内因性フルオロフォア(例えば、NAD(P)H)の空間的分布を定量化することを含む。一部の実施形態では、腫瘍含量の推定のステップは、NAD(P)Hの平均寿命および/またはNAD(P)Hの短寿命成分の平均振幅を定量化することを含む。一部の実施形態では、イメージングするステップは、SHG構造のSHGイメージングを含み、腫瘍含量の推定のステップは、SHG構造の線維パラメーター(例えば、線維の幅、長さまたは真直度)を定量化することを含む。
【0127】
一部の実施形態では、細胞生存度は、内因性フルオロフォアの蛍光放射強度から決定される。一部の実施形態では、内因性フルオロフォア(例えば、NAD(P)H)の蛍光強度が強度閾値よりも大きい場合に、薬物または薬剤が添加され、強度閾値は、死細胞を染色する外因性標識(例えば、PI)で標識された組織断片の訓練用セットで訓練され、内因性フルオロフォアの強度閾値は、外因性標識の強度で訓練される。一部の実施形態では、細胞生存度カットオフは、内因性フルオロフォアの強度閾値によって提供される。
【0128】
一部の実施形態では、ex vivo組織パラメーター測定は、生組織断片に対して実施される。ex vivo組織パラメーター測定は、薬物または薬剤の添加のステップの後に、組織断片に対して実施される。組織断片に対するex vivo組織パラメーター測定は、薬物処置後に1回または複数回(例えば、薬物または他の薬剤の添加後の任意の時点tnにおいて)実施され得る。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性を生成するステップは、ex vivo組織パラメーターデータを、予測アルゴリズムに入力することを含む。一部の実施形態では、予測された臨床的応答性を生成するステップは、ex vivo組織パラメーターデータを対照データと比較することを含む。一部の実施形態では、対照データは、参照組織パラメーターデータであり、参照組織パラメーターデータは、参照組織断片から得られ、参照組織断片は、薬物または他の薬剤で処置されていない。一部の実施形態では、参照組織断片は、対象から得られた組織から生成される。一部の実施形態では、対照データは、時点t0において組織断片から得られたex vivo組織パラメーターデータであり、t0は、薬物もしくは他の薬剤の添加の時点、薬物もしくは他の薬剤の添加の直前の時点、または薬物もしくは他の薬剤の添加の直後の時点である。
【0129】
一部の実施形態は、a)組織を組織断片にカットするように構成された組織カッティングデバイス;光学的特徴に基づいて組織断片を選別し、組織断片を、培養プラットフォームのチャンバー中に分配するように構成された、選別器;組織断片をイメージングするように構成されたイメージングシステム;および培養プラットフォームを収容するように構成されたインキュベーターを含む、システムに関する。一部の実施形態では、このシステムは、単一の閉鎖システムである。一部の実施形態では、このシステムは、a)i)組織を組織断片にカットするように構成された組織カッティングデバイスと、ii)光学的特徴に基づいて組織断片を選別し、組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するように構成された、選別器、とを含む第1の閉鎖サブシステム;およびb)i)組織断片をイメージングするように構成されたイメージングシステムと、ii)培養プラットフォームを収容するように構成されたインキュベーターとを含む、第2の閉鎖サブシステムを含む、2つの閉鎖サブシステムを含む。
【0130】
一部の実施形態では、第2の閉鎖サブシステムは、測定された量の薬物を組織断片に添加するように構成された液体取り扱いシステムをさらに含む。一部の実施形態では、第1および第2のサブシステムは、動作可能に接続される。一部の実施形態では、第1のサブシステムは、4℃の温度で維持されるように構成される。一部の実施形態では、イメージングシステムは、1つまたは複数のイメージングモダリティを含む。
【0131】
一部の実施形態では、このシステムは、a)組織を組織断片にカットするように構成された組織カッティングデバイスを含む第1の閉鎖サブシステム;b)光学的特徴に基づいて組織断片を選別し、組織断片を培養プラットフォームのチャンバー中に分配するように構成された選別器を含む第2の閉鎖サブシステム;およびc)i)組織断片をイメージングするように構成されたイメージングシステムと、ii)培養プラットフォームを収容するように構成されたインキュベーターとを含む、第3の閉鎖サブシステム、を含む、3つの閉鎖サブシステムを含む。
【実施例
【0132】
以下の実施例は、本発明に従う方法および実施形態を例示することだけを意図しており、したがって、特許請求の範囲に対して制限を課すと解釈すべきではない。
【0133】
(実施例1)
断片化手順:
摘出した腫瘍組織試料を、生態動物園から得、10mM HEPESおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンストック溶液(Pen/Strep)を補充したKrebs-Henseleit緩衝液、pH=7.40(KHB)中で氷上で一時的に貯蔵した。組織を100μm×300μm×300μmの断片にカットするために、Compresstome(登録商標)(Precisionary Instruments、USA)を、第1の次元(100μm)をカットするために使用し、McIlwain組織チョッパー(Ted Pella,Inc. CA、USA)を、第2および第3の次元(300μm)をカットするために使用した。第1の次元でカットするために、シアノアクリル酸エチル接着剤(Krazy Glue(登録商標))を使用して組織試料を検体チューブ上に乗せ、それらをKHB中3%のアガロース中に包埋することによって、Compresstome(登録商標)を、100μm厚の断片をカットするように準備した。包埋した組織を、冷KHB中で100μm切片にカットした(速度設定1;周波数設定7)。カットした後、アガロースを、鉗子を使用して組織断片(第1の次元でカットした)から分離し、断片を、McIlwain組織チョッパーでカットする前に一時的貯蔵のために氷冷KHB中に移した。
【0134】
McIlwain組織チョッパー上の刃をレベリングし、300μmの厚さに設定した後に、組織断片(第1の次元でカットした)を、第2および第3の次元で断片にカットした。100μm厚の断片を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ディスクの上に平らに置き、過剰な流体をピペッティングによって除去して、組織の移動を防止した。最初の一連のカットの後、ディスクを90°回転させ、カッティング手順を反復した。カットした後、断片を、ピペットおよび氷冷KHBを使用して、ディッシュに移した。穏やかなピペッティングを使用して、断片を分離した。次いで、断片を、750μmフィルターを介して、次いで、40μmフィルター(Pluriselect、USA)を介して濾過した。目的の断片は、750μmフィルターを通過し、40μmフィルター上で保持された。断片を、裏返した40μmフィルターから、氷冷KHBでリンスして外した。洗浄した後、目的の断片を、50mLのコニカルチューブ中で、氷冷KHB中で一時的に貯蔵した。
【0135】
(実施例2)
低温(冷却)保存条件および凍結保存条件下での腫瘍断片中の細胞生存度と、新鮮な組織断片(貯蔵/保存なし)中の細胞生存度との比較
組織断片を1つの場所(例えば、供給場所、例えば、病院)から別の場所(例えば、目的場所、例えば、断片が処理される実験室)に輸送することの実現可能性を決定するために、生存度を、異なる輸送方法のシミュレーション後にアッセイした。皮下EMT6マウス乳房がん腫瘍を回収し、100×300×300μmの断片にカットした。最初に、腫瘍を、Compresstome(VF-310-0Z;Precisionary Instruments、USA)の試験管中で、37℃で3.5%アガロース(A0576-100G;Sigma Aldrich)中に包埋した。次いで、腫瘍試料を、氷上で、酸素添加されたL15培地を用いた無菌条件下で、Compresstomeで断片化した。Compresstomeは、固化したアガロースのリングを伴う、100μm厚の腫瘍切片を創出した。アガロースを、2セットの鉗子を使用して穏やかに除去した。組織切片を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ディスクを装着し、300μmをカットするように設定したMcIlwain組織チョッパー(Ted Pella,Inc. CA、USA)を使用してさらにカットした。第1ラウンドのチョップの後に、McIlwain試料プラットフォームを90度回転させ、第2の次元でカットするようにプラットフォームをリセットした。PMMAディスクを、氷冷L15緩衝液を使用して組織断片からリンスして外し、チューブ中に収集した。次に、組織断片を、3つのチューブに均等に分離して、以下の条件の影響を試験した:i)新鮮、ii)24時間の冷却輸送、およびiii)凍結保存。
【0136】
新鮮
断片を、COPAS選別器(Union Biometrica)を使用して、V底96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)中に分配した。ゲートを適用して、望ましいサイズの断片を選択した。このゲートの選択を、他の場所(実施例8)に記載したように、実験的に実施した。10個の組織断片を、ウェルプレートの各ウェル中に分配し、50μlのPBSを、COPAS選別のためのシース流体として使用した。断片を、周囲温度で300×gで5分間遠心分離した。約25μlのPBSを、各ウェルから除去した。断片を、完全イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDMフェノール無し21056-023;Fisher Scientific)、10%胎仔ウシ血清(FBS、16000-044;Thermo Fisher)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(15140-122;Gibco)、SP-111ヒドロゲル(Stempharm Inc.)、重炭酸ナトリウム(S5761-500G;Sigma Aldrich)およびコラーゲン(08-115;Sigma Aldrich)を使用して封入した。3分間のUV光をプレートに適用して、ヒドロゲルを固化した。完全IMDM(37℃)を、各ウェルに添加した。断片を72時間培養した(37℃;5%CO)。
【0137】
冷却輸送(または冷却保存)
断片を、遠心分離によってペレット化し、次いで、50mLのコニカルチューブ中で、5mlのHypoThermosol(101104;BioLife Solutions、WA、USA)中に再懸濁した。次いで、チューブを氷上に置き、5℃の冷蔵庫中に一晩置いた。24時間後、断片を、COPAS選別器を使用して、V底96ウェルプレート中に分配した。ゲートを適用して、望ましいサイズの断片を選択した。このゲートの選択を、実施例8に記載したように、実験的に実施した。以前に記載したように、10個の断片を、10個のウェルの各々中に分配し、50μlのPBSを、選別のためのシース流体として使用した。断片を、周囲温度で300×gで5分間遠心分離した。前述のように、25μlのPBSを、各ウェルから除去した。組織断片を、完全イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDMフェノール無し21056-023;Fisher Scientific)、10%胎仔ウシ血清(FBS、16000-044;Thermo Fisher)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(15140-122;Gibco)、0.5×SP-111ヒドロゲル(Stempharm Inc.)、重炭酸ナトリウム(S5761-500G;Sigma Aldrich)およびコラーゲン(08-115;Sigma Aldrich)を使用して封入した。3分間のUV光をプレートに適用して、ヒドロゲルを固化した。完全IMDM(37℃)を、各ウェルに添加した。断片を72時間培養した(37℃;5%CO)。
【0138】
凍結保存
組織断片を、遠心分離によってペレット化し、次いで、1mlのCS10(210373 BioLife Solutions)中に再懸濁した。断片を、Cool Cell(Corning、USA)中に置き、これを、-80℃の冷凍庫中に一晩置いた。断片を、液体窒素(LN2)に移動させ、そこで2日間貯蔵した。次いで、小さい氷の結晶だけが残存するまで、断片を37℃の水浴中で解凍した。事前に温めた完全IMDMを滴下した。次いで、断片をスピンダウンし、完全IMDM中に再懸濁した。断片を、COPAS選別器を使用して、V底96ウェルプレート中に分配した。ゲートを適用して、望ましいサイズの断片を選択した。このゲートの選択を、他の場所(実施例8)に記載したように、実験的に実施した。以前のセクションに記載されたように、10個の断片を、10個のウェルの各々中に分配し、100μlのPBSを、シース流体として使用した。断片を、周囲温度で300×gで5分間遠心分離した。その後、25μlのPBSを、各ウェルから除去した。断片を、以前のセクションに記載されたように、ヒドロゲル中に封入し、72時間培養した。
【0139】
3D CellTiter-Glo(登録商標)アッセイ
培養物中で72時間の後、各群中の組織断片を、3D CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存度アッセイ(3D CTG;G9683;Promega)を使用してアッセイした。コラゲナーゼD(25mg/ml)を、組織断片を含有する各ウェルに添加した。次いで、プレートを、インキュベーター中で振盪機上に4時間置いて(37℃;5%CO)、封入材料および断片を消化した。コラゲナーゼの除去を、ペレット化し、PBSで洗浄することによって実施した。3D CTG試薬を、1×の最終濃度になるように添加した。プレートを、周囲温度で30分間振盪して、細胞を溶解させ、ATPを放出させた(37℃;5%CO)。発光を、プレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して読み取った。グラフおよび統計分析を、GraphPad Prismにおいて実施した。この研究の結果は、図4Aに示される。
【0140】
フローサイトメトリーアッセイ
異なるシミュレートされた輸送後の生存度を、フローサイトメトリーによっても評価した。72時間にわたる培養の後、断片を、コラゲナーゼによって、単一細胞へと解離させた。細胞を、全ての核についてHoechst 33342(Invitrogen)で染色し、死細胞の核についてヨウ化プロピジウム(PI;Invitrogen)によって染色した。次いで、これらの細胞を、フローサイトメーター(Northern Lights、Cytek)を通過させて、細胞を計数し、総核およびPI陽性核を探した。ゲートを描いて、有核細胞を3つのカテゴリーに分離させた:非常に低いPIシグナルを有した細胞は、「生きている」と分類され、中程度のレベルのPIシグナルを有した細胞は、「漏出性」と分類され、最も高いレベルのPIシグナルを有した細胞は、「死」と分類された。この研究の結果は、図4Bに示される。
【0141】
(実施例3)
低温(冷却)保存条件下および凍結保存条件下でのヒト組織断片中の細胞生存度と、新鮮な組織断片(いずれの貯蔵/保存にも供されていない)中の細胞生存度との比較
摘出の場所(供給場所)から処理のための第2の場所(目的場所)に腫瘍を輸送することの実現可能性を評価するために、腫瘍保存の異なる方法を、初代ヒト腫瘍組織において評価した。初代患者試料は、外科的摘出(IRB承認された)の日に、University of Wisconsin-Madison BioBankから得た。5人の個々の患者からの腫瘍型は、それぞれ、膵-胆管、膀胱(urinary bladder)、結腸直腸、腎および膀胱(bladder)であった。次いで、この組織を、CompresstomeとMcIlwain組織チョッパーとの組合せを使用して、100μmと300μmとの間で変動する(ただし、各患者試料について一貫している)厚さを有する300μm×300μmへと断片化した。断片を、以下の3つの条件のうち1つに供した:i)即座に培養物中に置いた(新鮮);ii)HypoThermosol中に24時間置いた(冷却輸送);iii)CS10中で凍結保存し(凍結保存された)、培養前に引き続いて解凍した。保存条件の詳細は、実施例2に提供される。培養の準備をするために、断片を選別して(Copas;Union Biometrica)、不完全にカットされた断片およびデブリを排除し、組織断片を、96ウェルV底プレート(Thermo Fisher)中に分配した。1ウェル当たり10個の断片を、1つの条件当たり10個のウェル中に分配した。培養のために、断片を、完全IMDM、コラーゲンおよび重炭酸ナトリウム中のPEGベースのヒドロゲル(SP-111)中に封入し、完全IMDMで覆った。組織断片を、5%CO中37℃で培養した。培養(24~72時間;患者試料について一貫している)の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼXを使用して実施し、次いで、3D Cell Titer Glo(G9683 Promega)を使用して、発光読み出しを使用してATP濃度を評価した。図4Cに示されるように、シミュレートされた輸送の両方の方法が、新鮮な組織の生存度を保持した。これは、24時間の冷却輸送または凍結保存のどちらもが、処理場所への輸送のための初代患者組織の保存のための実現可能な方法であることを示唆している。
【0142】
(実施例4)
冷却輸送の前にカットすることは、カットする前の冷却輸送と比較して、生存度における増加を生じる
冷却輸送の前に腫瘍をカットすることが、試料の生存度を変更させるかどうかを評価するために、腫瘍を二等分し、冷却輸送のシミュレーションを、腫瘍のインタクトな半分および腫瘍の事前に断片化した他方の半分に対して実施した。EMT6マウス乳房がん腫瘍をマウスから回収し、ex vivoで二等分した。一方の半分を、氷冷HypoThermosol(101104;BioLife Solutions、WA、USA)中に即座に置き、氷上で24時間インキュベートした。他方の半分を、Compresstome(Precisionary Instruments、USA)およびMcIlwain組織チョッパー(TedPella、USA)を使用して、100μm×300μm×300μmの断片へと即座に断片化した。これらの断片を収集し、2つの群に分離した。1つの群を、氷冷HypoThermosol中に置き、氷上で24時間インキュベートした。第2の群を、即座に選別して(COPAS;Union Biometrica)、カットされていない断片およびデブリを除去し、96ウェルV底プレート中に分配した。各々10個の断片の10個のウェルをプレートした。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム、SP-111)中に封入し、完全IMDMで覆った。断片を、37℃および5%COで96時間培養した。培養の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼ(I、II、III、IV;各々10mg/ml)を使用して実施した。3D Cell Titer Glo(G9683 Promega)を使用して、発光読み出しを使用してATP濃度を評価した。24時間にわたる氷上でのインキュベーションの前にカットすること(「カットし、次いで冷却輸送」)は、カットする前にインタクトな腫瘍を輸送すること(「冷却輸送し、次いでカット」)を超えて、有意に増加した生存度を生じた(図5A)。
【0143】
群1(新鮮):寸法100μm×300μm×300μmのこれらの組織断片(腫瘍の一方の半分から新鮮にカットした)を、選別し、封入し、即座に、96時間にわたる培養下に入れた。
【0144】
群2(カットし、次いで冷却輸送):寸法100μm×300μm×300μmのこれらの組織断片(腫瘍の一方の半分から新鮮にカットした)を、氷上で24時間、HypoThermosol中に置いた。このインキュベーションの後に、これらを、選別し、封入し、96時間にわたる培養下に入れた。
【0145】
群3(冷却輸送し、次いでカット):この腫瘍半分を、二等分後に(腫瘍半分を断片にカットせずに)、HypoThermosol中に即座に置き、氷上に24時間置いた。このインキュベーションの後に、腫瘍半分を、カットし、選別し、封入し、96時間にわたる培養下に入れた。
【0146】
(実施例5)
凍結保存の前にカットすることは、凍結保存の後にカットする場合と比較して、より大きい生存度を生じる
凍結保存の前に腫瘍をカットすることが、試料の生存度を変更させるかどうかを評価するために、腫瘍を二等分し、その後、インタクトな半分および事前に断片化した半分の両方を、凍結保存した。EMT6マウス乳房がん腫瘍をマウスから回収し、ex vivoで二等分した。一方の半分を、CS10中で即座に凍結保存した。他方の半分を、Compresstome(Precisionary Instruments、USA)およびMcIlwain組織チョッパー(TedPella、USA)を使用して、100μm×300μm×300μmの断片へと即座に断片化した。これらの断片を収集し、2つの群に分離した。1つの群を、CS10を使用して凍結保存した。第2の群を、即座に選別して(COPAS;Union Biometrica)、カットされていない断片およびデブリを除去し、96ウェルV底プレート中に分配した。各々10個の断片の10個のウェルをプレートした。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム、SP-111)中に封入し、完全IMDMで覆った。断片を、37℃および5%COで48時間培養した。培養の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼ(I、II、III、IV;各々10mg/ml)を使用して実施した。3D Cell Titer Gloを使用して、発光読み出しを使用してATP濃度を評価した(G9683 Promega)。凍結保存の前にカットすることは、カットする前のインタクトな腫瘍の凍結保存を超えて、有意に増加した生存度を生じた(図5B)。
【0147】
群1(新鮮):寸法100μm×300μm×300μmのこれらの組織断片(腫瘍の一方の半分から新鮮にカットした)を、選別し、封入し、即座に、48時間にわたる培養下に入れた。
【0148】
群2(カットし、次いで凍結):寸法100μm×300μm×300μmのこれらの組織断片(腫瘍の一方の半分から新鮮にカットした)を、CS10中で凍結保存した。このインキュベーションの後に、これらを解凍し、選別し、封入し、48時間にわたる培養下に入れた。
【0149】
群3(凍結し、次いでカット):この腫瘍半分を、カットすることなしにCS10中で即座に凍結保存した。次いで、この半分を、解凍し、カットし、選別し、封入し、48時間にわたる培養下に入れた。
【0150】
(実施例6)
腫瘍カッティングの間のカッティング緩衝液の酸素添加は、腫瘍断片の生存度を増加させる
カッティングプロセスの間に腫瘍に酸素を提供することがそれらの生存度を増加させるかどうかを決定するために、EMT6マウス乳房がん腫瘍を二等分した。腫瘍の一方の半分を、過剰な酸素の存在下で断片化し、他方の半分を、酸素の非存在下で断片化した。EMT6乳房がん腫瘍を摘出し、ex vivoで二等分した。一方の半分を、カッティング培地に酸素を通気させながらCompresstomeを使用してカットし、他方の半分は、追加の酸素なしにCompresstomeを使用してカットした。両方の半分を、無菌環境中で、L-15緩衝液(L-15培地、グルタチオン、HEPES)中で氷上でカットした。培養の準備をするために、断片を選別して(COPAS;Union Biometrica)、不完全にカットされた断片およびデブリを排除し、96ウェルV底プレート(Thermo Fisher)中に分配した。1ウェル当たり10個の断片を、1つの条件当たり10個のウェル中に分配した。培養のために、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全IMDMで覆った。培養を、酸素正常条件において、37℃で5%COで実施した。培養物中で48時間の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼ(I、II、III、IV;各々10mg/ml)を使用して実施した。次いで、3D Cell Titer Glo(G9683 Promega)を使用して、発光読み出しを使用してATPを評価した。図6Aに示されるように、通気された酸素の存在下で断片化した腫瘍半分は、48時間の培養の後に、より高いATPを示した。これは、カッティング緩衝液の酸素添加を組み込むことが、腫瘍断片の生存度を改善することを示唆している。
【0151】
(実施例7)
グルタチオンおよびHEPESをカッティング緩衝液に添加することは、断片生存度を改善する
酸素を通気した二酸化炭素非依存的L15培地を、カッティングのために使用する。抗酸化剤としての還元型グルタチオンとpHを緩衝化するためのHEPESとを添加することが、腫瘍断片の生存度を増加させるかどうかを決定するために、EMT6腫瘍を、これら2つの補充物の添加ありおよびなしでカットした。EMT6マウス乳房がん腫瘍をマウスから回収し、ex vivoで二等分した。腫瘍半分を、CompresstomeおよびMcIlwain組織チョッパーを使用して、各々100μm×300μm×300μmの断片にカットした。各腫瘍半分を、無菌環境において、酸素添加ありで氷上でCompresstomeで即座にカットした。一方の半分は、L15緩衝液中でカットしたが、他方の半分は、グルタチオン(163nM)およびHEPES(25mM)を含有するL15緩衝液中でカットした。カットした断片を、COPAS選別器を使用して、上記のように選別し分配した。10個の断片を、腫瘍半分1つにつき、10個のウェルの各々中に置いた。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全IMDMで覆った。断片を、5%CO中37℃で48時間培養した。培養の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼI、II、IIIおよびIV(各々10mg/ml)を使用して実施した。3D Cell Titer Gloを使用して、発光読み出しを介してATP濃度を評価した(G9683 Promega)。補充物の添加は、培養物中で48時間の後に、腫瘍断片の生存度における中程度の増加をもたらした(図6B)。
【0152】
(実施例8)
選別最適化手順
任意ゲートR1
目的の組織断片をウェルプレート中に分配するために、COPAS FP-1000(Union Biometrica、USA)を使用した。最初に、飛行時間(TOF)および消衰に基づく任意ゲートR1(図7AおよびBを参照されたい)を、断片の大部分を捕捉するために設定した。そのゲートを使用して、断片を選別し、96ウェルプレート中に分配した。明視野画像を、分配された断片について取得した。各断片について、表面積および寸法を、画像分析のためのオープンソースソフトウェアプログラムFijiを使用して測定した(Nat Methods. 2012 Jun 28;9(7):676-82)。品質基準を満たす組織断片(例えば、鋭い縁を有し、3つの次元のうち少なくとも2つにおいて、およそ300μmの所望のサイズを有する、損傷していない組織断片)が、下流の研究に使用可能であった。これらは、図7Cに示される。品質基準を満たしていない組織断片または所望されない組織断片は、図7Dに示される。測定された断片を、TOF 対 消衰のドットプロット中のそれらの元の位置に戻しマッピングすることによって(図8A)、最適なゲートR2を実験的に決定した(図8Bに示される通り)。
【0153】
ゲートR2
精緻化されたゲーティングR2を、図8Cに示されるように、所望されない参照断片2、6、7および10を使用して実施した。このゲートは、理想的断片の収量を最大化し、所望されない寸法を有する断片の大部分を排除した(図9A~C)。図9Aは、ゲートの内側に入る組織断片およびゲートR2の外側に入る組織断片を示す。最適化されたゲート設定R2を用いると、選別された断片の43%は、図9Cで見られるように、鋭い縁を有し、3つの次元のうち2つにおいて、所望の300μmのサイズを有する、立方体であった。断片の排除のための基準は、分析には小さすぎる断片、ひどく損傷した断片、折り畳まれた断片、および互いの上部に積み重なった複数の断片を含んだ。
【0154】
ゲートR3
図10に示されるように、さらなるゲーティング最適化を実施して、最適化されたゲート設定R3を選択した。ゲートR2を用いて選別された断片の画像は、図10AおよびBに示される。図10Aは、品質基準を満たす組織断片を示す。図10Bは、所望されない組織断片を示す。これらの組織断片を参照として使用して(図10Cに示される通り)、さらに精緻化されたゲーティングR3を選択した(図10Dに示される通り)。図10Eは、ゲートR2とR3との間での比較を示す。ゲート設定R3を使用すると、断片の63%は、鋭い縁および所望の300μmの寸法を有する立方体であった(図11A~Cを参照されたい)。
【0155】
ゲートR3区分け
さらなるゲーティング最適化を、ゲートR3をより小さいゲートへと下位分割することによって実施した(図12Aを参照されたい)。断片を、分配された組織断片のカッティング品質および測定に基づいて精緻化された各ゲートについて分配した。品質基準を満たす断片または使用可能な組織断片は、図12Bに示される。所望されない断片は、図12Cに示される。図12Dに示されるように、使用可能な断片(1、2、4、6、7、8、11、12)の位置に基づいて、ゲートを縮小させること、および/または2つのゲートを一緒に組み合わせることのいずれかによって、ゲートを精緻化した。例えば、R4およびR8を精緻化し、精緻化されたR4Aとして組み合わせた(図12E)。
【0156】
図12Eに示されるような精緻化された区分けされたゲートを、同じ手順に従って、さらに最適化した(図13A~Bを参照されたい)。使用可能な断片(B10、H9、B6、D12)および所望されない断片(B8、F10、H3)は、図13B~Cに示される。使用可能な組織断片の大部分が位置する領域に基づいて(図13D)、区分けされたゲートを精緻化し、ゲートR11へと組み合わせた(図13E)。使用可能な組織断片は、鋭いおよび/または荒い縁を有し、所望のサイズを有する2つまたはそれよりも多くの次元は、つぶれておらず、下流の実験に使用可能であった。
【0157】
ゲートR11
図14に示されるように、さらなるゲーティング最適化を実施して、最適化されたゲート設定R11を選択した。ゲート設定R11を使用すると、断片の68%は、ゲートR11内に入った(図14A)。ゲートR11から分配された96個の断片のおよそ80%(図14B)は、下流の実験に使用可能であった(図14Cを参照されたい)。図14Dは、所望されない断片を示す。断片の追加の集団を選別し、所望の断片幾何学を有する理想的断片の高い収量をゲートが提供していることを立証することによって、ゲートを検証した。
【0158】
(実施例9)
腫瘍スライス断片化および選別の手順は、腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)含量を保存する
皮下CT26腫瘍をマウスから回収し、100μm厚のスライスにカットした。スライスを、2つの等しい群へとランダム化し、その一方は、「対照」と称して取り置き、他方は、断片化し(300×300μm)、予め定義された前方および側方光散乱ゲートパラメーターに基づいて組織断片を使用して選別した(実施例8で上記された通り)。次いで、両方の調製物を、コラゲナーゼIV型、0.25mg/mL、40U/mL/ヒアルロニダーゼ、0.025mg/mL/DNase I、0.01mg/mLを使用して、1.25時間酵素的に消化した。細胞懸濁物を、Hoechst、ヨウ化プロピジウム、ならびにCD3、CD4、CD8、CD45、CD25、CD69、OX-40およびICOSが含まれる免疫細胞マーカーに特異的な蛍光標識された抗体を使用して染色した。洗浄した後、3レーザーCytek Northern Lightsフローサイトメーターと、その後の、生細胞およびCD45陽性かつCD3陽性細胞(T細胞)に対するゲーティングとを使用して、細胞を分析した。CD4およびCD8の蛍光強度に関する代表的ドットプロットが示される。それぞれの細胞含量を、総生細胞含量に対して計算する。対照腫瘍調製物(スライスのみした)におけるCD4+およびCD8+の含量値は、断片化し選別した腫瘍組織調製物におけるそれぞれの含量値と実質的に類似していることは注目に値し、これは、腫瘍断片化および選別の方法が、TIL含量を好ましく保存することを意味している(図15)。
【0159】
(実施例10)
MP-FLIMは、外的標識なしに、生組織断片中の腫瘍を正常組織から識別することができる
生EMT6腫瘍および乳腺脂肪体を、組織断片にカットし、これらを次いで、選別し、ガラス底マルチウェルプレート中で培養した。生組織断片(LTF)の構造および代謝ステータスを、時間相関単一光子計数による多光子蛍光寿命イメージング顕微鏡(MP-FLIM)を使用して、固有に蛍光の代謝補因子ニコチンアミドジヌクレオチドおよびリン酸化ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD(P)H)の蛍光強度および寿命に基づいてイメージングした。個々のピクセルでの蛍光減衰曲線を二重または三重指数とフィットさせて、平均のおよび個々の成分の寿命および振幅が含まれる寿命パラメーターの画像を生成することによって、データを分析した。図17Aは、細胞および組織の構造を明らかにする、多光子イメージングからの固有のコントラストを示す。NAD(P)H短寿命成分の振幅(a1)が図中に示される。図17Bは、腫瘍組織と正常組織との間でのtm(平均)およびa1(平均)における差異を示す、腫瘍および正常組織中のNAD(P)Hの平均寿命(tm)および短寿命成分(a1)を示す、図17A中の画像の分析を示す。2つの重要なNAD(P)H蛍光寿命測定基準である平均NAD(P)H蛍光寿命(tm)、および短寿命成分(a1)のパーセンテージにおける、腫瘍 対 正常の間の区別は、注目に値する。特に、腫瘍は、正常のtm(>1000ps)よりも小さい値のtm(<1000ps)によって特徴付けられる。短寿命振幅a1を見ると、腫瘍は、正常の平均a1値(59.6%)よりも大きい平均a1値(73.7%)によって特徴付けられる。
【0160】
NAD(P)H)蛍光強度のエントロピー分析のために、空間的に移動するエントロピー計算を、画像を横断して実施した。エントロピー値を、移動する円形領域(カーネル)内の蛍光強度計数から計算し、全ての重複(中心ピクセル当たり)の分布を生成し、分析した。移動する円形領域のサイズを、漸増サイズ(直径14μm、28μmおよび42μm)について試験したところ、14μmの直径が、得られた分布においてより多くの情報内容を強調することが見出された。14μm~42μmの範囲を、概算の細胞に関して、それぞれ脂肪細胞サイズまでの細胞長さのスケールアップのために選択した。画像中の全てのピクセル(各ピクセルを中心とする円形領域)から計算したエントロピー値の分布測定基準(中央値、標準偏差、歪みおよび尖度)。図17Cは、中央値エントロピーおよびエントロピー歪みが含まれるエントロピーパラメーター(エントロピー測定基準とも呼ばれる)を利用して定量化した、NAD(P)H蛍光強度の空間的不均一性を示す。中央値エントロピーは、対応する起源の正常組織であるマウス乳腺脂肪体と比較して、EMT6腫瘍組織についてより高く、エントロピー分布は、負に歪んだ(p<0.01)(図17C、表1)。尖度にも差異が存在し、腫瘍は、ガウス分布により近く、正常組織は、より高い尖度を有した(表1)。
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0161】
図17Dに示されるように、腫瘍 対 起源の正常組織の第二次高調波発生イメージングを実施した。画像中で見られ、CT-FIRE V2.0およびGraphPad Prismソフトウェアを使用してグラフで定量化したように(図17E)、腫瘍中のコラーゲン線維は、正常組織中のコラーゲン線維と比較して、より狭い幅を有する(p<0.0011)。
【0162】
(実施例11)
NAD(P)H蛍光強度の無標識イメージングは、培養された腫瘍断片中の生細胞の死細胞からの区別を可能にする
生EMT6腫瘍を、組織断片にカットし、これらを次いで、選別し、ガラス底マルチウェルプレート中で培養した。がん細胞死を誘導するために、LTFを、アルキル化剤シスプラチンで24時間処置した。処置の後、LTF構造および代謝ステータスを、MP-FLIMを使用して、蛍光代謝補因子である還元型ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD(P)H)の蛍光強度および寿命に基づいてイメージングした。グラウンドトゥルース生存度参照として、同じLTFを、核細胞生存度プローブであるヨウ化プロピジウム(PI)を使用して染色した。図18Aは、NAD(P)H蛍光強度画像を示す。図18Bは、同じ組織画像上のPI蛍光強度画像を示す。図18Cでは、細胞および細胞核の形状を、組み合わされたシグナルに基づいてセグメント化した。図18Dは、細胞毎を基準にしたNAD(P)H強度の関数としてプロットした各細胞中心領域のPI蛍光強度を示す。高いNAD(P)H強度を示す細胞の、高いPI強度を有する細胞からの明確な区別は、注目に値する。NAD(P)H閾値を決定するために、最初に、水平線によって示されるPI核強度の閾値を、核セグメント化に基づいて設定し、それにより、PI閾値を上回るPI高細胞を同定した。次いで、PI高細胞(PI閾値によって同定される)の90%よりも多くがNAD(P)H閾値によって排除されるように、NAD(P)H強度の閾値を決定した。これは、PIで訓練されたNAD(P)H強度閾値と呼ばれる。PIの高いまたは低いシグナルとNAD(P)Hの高いまたは低いシグナルとの特定の組合せを示した細胞のパーセンテージを、PI閾値とNAD(P)H閾値との組合せによって決定される、各四分円中の細胞の数に基づいて計算した。ほとんどのPI高細胞が低いNAD(P)Hシグナルを示し、逆もまた然りであり、ほとんどのNAD(P)H高細胞が低いPIシグナルを示したことは、注目に値した。
【0163】
(実施例12)
培養の間の過酸素は、減少した断片生存度をもたらす
カットする間の酸素添加は、腫瘍断片生存度を改善することが示された。培養の間の酸素レベルを増加させることもまた生存度を増加させるかどうかを試験するために、EMT6腫瘍断片を、周囲酸素において、または80%酸素を含有するインキュベーター中のいずれかで、培養した。EMT6腫瘍を、CompresstomeおよびMcIlwain組織チョッパーを使用してカットして、100μm×300μm×300μmの寸法の断片を産生した。Compresstomeを、酸素を通気しながら、グルタチオンおよびHEPESを含むL15培地を含有する無菌環境中で氷上で使用した。カットした断片を、COPAS選別器を使用して、上記のように選別し分配した。10個の断片を、2つのポリスチレン96ウェルプレート中に、10個のウェルの各々中に置いた。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全IMDMで覆った。両方のプレートを、37℃で72時間培養した。1つのプレートを、5%COおよび周囲O(21%)を含むインキュベーター中に置き、1つのプレートを、5%COおよび80%Oを含むインキュベーター中に置いた。培養の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼI、II、IIIおよびIV(各々10mg/ml)を使用して実施した。3D Cell Titer Gloを使用して、発光読み出しを介してATP濃度を評価した(G9683 Promega)。80%酸素中で腫瘍断片を培養することで、それらを周囲酸素で培養した場合と比較して、生存度における有意な減少がもたらされた(図19A)。
【0164】
(実施例13)
培養の間の低酸素は、断片生存度を増加させる
多くの腫瘍は、低レベルの腫瘍内酸素を有することが報告されているので、培養の間の低酸素を試験した。培養の間の酸素レベルを減少させることが生存度を増加させるかどうかを試験するために、本発明者らは、EMT6腫瘍断片を、周囲酸素において、または5%酸素を含有するインキュベーター中のいずれかで、培養した。EMT6腫瘍を、CompresstomeおよびMcIlwain組織チョッパーを使用して、100μm×300μm×300μmで断片化した。Compresstomeを、酸素をさらに通気しながら、グルタチオンおよびHEPESを補充したL15培地を含有する無菌環境中で氷上で使用した。カットした断片を、COPAS選別器を使用して、上記のように選別し分配した。10個の断片を、2つのポリスチレン96ウェルプレート中に、10個のウェルの各々中に置いた。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全IMDMで覆った。両方のプレートを、37℃で72時間培養した。1つのプレートを、5%COおよび周囲O(21%)を含むインキュベーター中に置き、1つのプレートを、5%COおよび5%Oを含むインキュベーター中に置いた。培養の後、ヒドロゲルと断片との解離を、コラゲナーゼD(25mg/ml)を使用して実施した。断片からの細胞を、Hoechst 33342およびヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメトリー(Cytek、USA)によってアッセイした。5%O中で断片を培養することで、生細胞の数における増加およびPI陽性細胞のパーセンテージにおける減少がもたらされた(図19Bおよび19C)。したがって、低酸素は、EMT6腫瘍断片中の生存度を増加させる。
【0165】
(実施例14)
腫瘍断片生存度は、培養物中で7日間にわたって保持される
腫瘍断片生存度を経時的に理解するために、3D Cell Titer Gloを、同じ腫瘍由来の腫瘍断片に対して、処理後3~7日間実施した。EMT6腫瘍を、CompresstomeおよびMcIlwain組織チョッパーを使用して、100μm×300μm×300μmで断片化した。Compresstomeを、酸素をさらに通気しながら、グルタチオンおよびHEPESを補充したL15培地を含有する無菌環境中で氷上で使用した。カットした断片を、COPAS選別器を使用して、上記のように選別し分配した。10個の断片を、5つのポリスチレン96ウェルV底プレート中に、10個のウェルの各々中に置いた。次いで、断片を、PEGベースのヒドロゲル(完全IMDM、コラーゲン、重炭酸ナトリウム中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全IMDMで覆った。全てのプレートを、37℃および5%COで培養した。72時間(3日)後に開始して、3D Cell Titer Gloを使用して、次の5日間にわたって毎日、断片の1つのプレートからATP濃度を評価した(G9683 Promega)。断片を、3D Cell Titer Gloアッセイの前に、コラゲナーゼD(25mg/ml)を使用して解離させた。生存度は、培養物中で経時的に維持され、3日後と比較して、7日後に有意に高かった(図20)。これは、腫瘍断片が、3~7日間の培養期間の間成長している可能性があることを示している。
【0166】
(実施例15)
培養物中での組織断片の回復
新鮮なEMT6腫瘍を、100×300×300μmのサイズの組織断片にカットした。10個のウェルに、2つのv底プレートの各々中に、10個の断片を充填した。第1のプレートでは、コラゲナーゼ(I、II、III、IV;各々10mg/ml)を添加し、断片を、ATP濃度を決定するための3D Cell Titer Gloアッセイを実行する前に解離させた。次いで、断片の第2のプレートを、PEGベースのヒドロゲル(DMEM、MEMおよびRPMI培地の完全な組合せ中のSP-111(StemPharm、WI、USA))中に封入し、完全な組合せ培地(DMEM、MEM、RPMI)で覆った。このプレートを、72時間培養した(37℃;5%CO)。培養の後、コラゲナーゼ(I、II、III、IV;各々10mg/ml)を添加し、断片を、ATP濃度を決定するための3D Cell Titer Gloアッセイを実行する前に解離させた。ATP濃度は、処理の直後よりも、3日間の培養後により高かった(図21A)。これは、断片が培養物中で経時的に回復するという着想を支持している。
【0167】
断片のフローサイトメトリー分析により、処理の直後よりも、3日間の培養後に、より高い数の生細胞およびより低いパーセンテージの死細胞が確認された(図21B~C)。断片の経時的な回復をフローサイトメトリーによって決定するために、CT26断片を、CompresstomeおよびMcIlwainチョッパーを使用して、100×300×300μmの断片にカットした。0日目の試料セットについて、100個の断片を、1.5mlのチューブ中に選別し、コラゲナーゼD(0.2mg/ml)で消化した。これらの細胞を、Hoechst 33342およびヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメーターを通して送った。3日目の試料セットについて、96ウェルU底低付着プレートの10個のウェルに、各々10個の断片を充填した。完全IMDM培地をこれらの断片に添加し、これらを次いで、3日間培養した(37℃;5%CO)。培養の後、断片を、単一のチューブ中にプールし、コラゲナーゼD(0.2mg/ml)で消化した。これらの細胞を、Hoechst 33342およびヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメーターを通して送った。両方の群について、PI低細胞を生きているとみなしたが、PI高細胞は死とみなした。培養物中で3日間の後、生細胞の総数は増加し(図21B)、死細胞のパーセンテージは減少した(図21C)。これは、断片が培養中の時間の間に回復し、成長することを示唆している。
【0168】
(実施例16)
小分子化学療法薬物および抗体の、生腫瘍断片中への拡散。
図22Aに示されるように、生腫瘍断片を、37℃で培養し、ドキソルビシンの添加前にイメージングし、その15分後および2時間後にイメージングした。15分の時点での、組織断片の末梢におけるドキソルビシンに特徴的な蛍光の最初の段階的出現と、その後の、2時間の時点での断片面積全体の全厚の染色とは、注目に値した。図22Bに示されるように、蛍光標識された抗CD45抗体の拡散の速度論を、培養培地への添加の時点から開始して、経過時間の関数として定量化した。約5時間以内のプラトー染色は注目に値する。この実験によって指摘されるように、小分子薬物および大きい抗体の両方が、生組織断片中に拡散した。
【0169】
(実施例17)
無標識顕微鏡は、培養された腫瘍断片の細胞傷害剤誘導性の死を検出する。
生EMT6腫瘍を、組織断片にカットし、これらを次いで、選別し、ガラス底マルチウェルプレート中で培養した。がん細胞死を誘導するために、1つの群を、マルチキナーゼ阻害剤スタウロスポリン(STS)で処置し、対照群をビヒクル(Veh)で処置した。処置の前(0時間)および後(24時間)に、腫瘍断片の構造および代謝ステータスを、時間相関単一光子計数によるMP-FLIMを使用して、固有に蛍光の代謝補因子ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD(P)H)の蛍光強度および寿命に基づいてイメージングした。蛍光減衰曲線を二重指数とフィットさせることによって、データを分析した。図23Aに示されるように、平均寿命(tm)を、図23Bに示されるように、短寿命振幅(a1)を、目的の組織断片領域について測定した。各ドットは、1つの断片を示す。24時間のスタウロスポリン曝露の時点での断片全体の平均寿命における統計的に有意な増加(tm、p<0.002)および短寿命成分における付随する減少(α1、p<0.002)は、注目に値する。図23Cは、短寿命成分a1の時間経過を示し、図23Dは、ビヒクルもしくはスタウロスポリンを添加した組織断片、または未処置の組織断片(なし)における平均寿命の時間経過を示す。
【0170】
(実施例18)
培養された腫瘍断片中の、無標識NAD(P)H顕微鏡と細胞生存度グラウンドトゥルースとの比較
生EMT6腫瘍を、組織断片にカットし、これらを次いで、選別し、ガラス底マルチウェルプレート中で培養した。がん細胞死を誘導するために、1つの群を、マルチキナーゼ阻害剤スタウロスポリン(STS)で処置し、対照群を未処置とした。24時間後、腫瘍断片の構造および代謝ステータスを、多光子顕微鏡を720nm励起と共に使用して、固有に蛍光の代謝補因子ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD(P)H)蛍光強度に基づいてイメージングした。図24、パネル(a)は、それぞれ、未処置断片およびSTS処置した断片におけるNAD(P)H強度を示す。図24、パネル(b)に示されるように、同じ断片を、死細胞の核を染色する核色素ヨウ化プロピジウム(PI)で染色した後に、再イメージングした(赤)。構造的参照のために、第二次高調波発生もまたイメージングした(青)。スタウロスポリン処置は、細胞死と一致した、増加した数のPI染色された核を生じた(パネルb、STS処置 対 未処置)。この効果には、NAD(P)H強度の喪失が付随した(パネルa、STS処置 対 未処置)。
【0171】
(実施例19)
免疫療法薬物抗PD1、または抗CTLA4と組み合わせた抗PD1による処置に応答した、生腫瘍断片によって分泌された免疫調節因子の検出。
ヒト腫瘍摘出を、University of Wisconsinから得(Institutional Review Board(IRB)承認された)、CT26腫瘍をマウス中で成長させた。腫瘍摘出を、100~300μmの厚さの300×300μmの生腫瘍断片にカットし、マルチウェルプレート中に選別し、抗PD1(ニボルマブまたはマウス等価物)、抗PD1プラス抗CTLA4(イピリムマブまたはマウス等価物)、または陽性対照としてのコンカナバリンA(ConA)の存在下または非存在下で、48または72時間培養した。細胞生存度を、ATP発光アッセイまたはフローサイトメトリーによって確認した(示さず)。上清サイトカインを、LEGENDPlexビーズイムノアッセイを使用して測定した。ヒト試料では、未処置の対照と比較して、ConA(示さず)処置した試料および抗PD1処置した試料の両方において、免疫活性化に関連するIFN-γおよび16種のサイトカインのより高い存在が見出された(図25A)。ヒトLTFでは、サイトカインパネルの上方調節が、抗PD1について観察され、未処置対照と比較した増加倍数として表された(p=1.1e-5)。さらに、抗PD1プラス抗CTLA4による処置は、抗PD1単独による処置よりも、全体により高い程度のサイトカイン上方調節(未処置の対照を超えた増加倍数として)を生じた(p=3.7e-9)。図25Bでは、同様に、マウス検体において、未処置の対照と比較した増加倍数として、抗PD1処置された試料において、免疫活性化に関連するIFN-γおよび10種のサイトカインのより高い存在が見出された。サイトカインの存在は、3個の断片を有するウェルよりも、10個の断片を有するウェルにおいてより高く、これは、培養条件の適切さを示している。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
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図13-2】
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図15
図16
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図17-2】
図17-3】
図18
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図21-2】
図22
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図23-2】
図24
図25-1】
図25-2】
【国際調査報告】