(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】共通の真空空間内で区分された複数の極低温システム
(51)【国際特許分類】
H10N 60/81 20230101AFI20240130BHJP
H10N 60/35 20230101ALI20240130BHJP
H10N 60/12 20230101ALI20240130BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H10N60/81 ZAA
H10N60/35
H10N60/12 A
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541600
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2022050127
(87)【国際公開番号】W WO2022148766
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルコレス-ゴンザレス、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】グマン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ジェリー
【テーマコード(参考)】
4M113
4M114
【Fターム(参考)】
4M113AA00
4M113AC06
4M113AC45
4M113AC50
4M114AA28
4M114BB03
4M114BB05
4M114CC05
4M114CC09
4M114CC17
4M114DA01
4M114DA03
4M114DA45
4M114DB39
4M114DB63
(57)【要約】
共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする技法が提供される。一例において、クライオスタットは、複数の熱ステージ及び熱スイッチを備え得る。複数の熱ステージは、4-ケルビン(K)ステージ及び冷却板ステージの間に介在し得る。複数の熱ステージは、スチルステージ、及び、支柱を介してスチルステージに機械的に直接的に結合され得る中間熱ステージを有し得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合され得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にし得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオスタットであって、
4-ケルビン(K)ステージ及び冷却板ステージの間に介在する複数の熱ステージ、前記複数の熱ステージは、スチルステージ、及び、支柱を介して前記スチルステージに機械的に直接的に結合されている中間熱ステージを有する;及び
前記中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合された熱スイッチ、前記熱スイッチは、前記中間熱ステージ及び前記隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、前記クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にする
を備える、クライオスタット。
【請求項2】
前記複数の熱ステージは、共通の真空空間を画定する外側真空チャンバ内に封じ込められている、請求項1に記載のクライオスタット。
【請求項3】
前記中間熱ステージは、約300ミリケルビン(mK)又は約1ケルビン(K)の温度で動作する、請求項1又は2に記載のクライオスタット。
【請求項4】
前記熱スイッチは、磁気作動型超流体漏れ防止弁である、請求項1から3のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項5】
前記隣接する熱ステージは、前記スチルステージ又は前記4-Kステージである、請求項1から4のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項6】
前記4-Kステージに結合され、前記4-Kステージ及び前記中間熱ステージの間に追加的な切り替え可能な熱経路を提供することにより、前記クライオスタットの前記熱プロファイルを変更することを容易にする、追加的な熱スイッチ、前記熱スイッチ及び前記追加的な熱スイッチは、前記中間熱ステージの両側に結合されている
を更に備える、請求項1から5のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項7】
前記熱スイッチは、磁場内に配置された超伝導材料を有する、請求項1から6のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項8】
前記熱スイッチは、ヘリウム媒体を収容する毛細管を有する、請求項1から7のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項9】
前記ヘリウム媒体は、ヘリウム-3又はヘリウム-4である、請求項8に記載のクライオスタット。
【請求項10】
前記ヘリウム媒体は、前記中間熱ステージを前記隣接する熱ステージに熱的に短絡させる、請求項8から9のいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項11】
前記中間熱ステージは、ポンプ、及び、ヘリウム-3の気化を容易にする、追加的な中間熱ステージの密封ポットを結合するポンピング線への通路を提供する、請求項1から10のうちいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項12】
クライオスタットであって、
支柱を介して中間熱ステージに機械的に直接的に結合されたスチルステージ、前記スチルステージ及び前記中間熱ステージは、4-ケルビン(K)ステージ及び冷却板ステージの間に介在する複数の熱ステージの中に含まれる;及び
前記中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合された熱スイッチ、前記熱スイッチは、前記中間熱ステージ及び前記隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、前記クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にする
を備える、クライオスタット。
【請求項13】
前記中間熱ステージに結合され、封じ込められた熱容積を形成する熱シールドを更に備える、請求項12に記載のクライオスタット。
【請求項14】
前記スチルステージは、前記封じ込められた熱容積内に配置されている、請求項13に記載のクライオスタット。
【請求項15】
前記スチルステージは、前記封じ込められた熱容積の外部に配置されている、請求項13に記載のクライオスタット。
【請求項16】
前記冷却板ステージは、前記封じ込められた熱容積内に配置されている、請求項13から15のいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項17】
前記封じ込められた熱容積内に入れ子にされた、追加的な封じ込められた熱容積、前記追加的な封じ込められた熱容積は、追加的な熱シールドに結合された追加的な中間熱ステージにより形成され、前記追加的な中間熱ステージは、前記複数の熱ステージの中に含まれる
を更に備える、請求項13から16のいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項18】
クライオスタットであって、
熱シールドに結合された中間熱ステージにより形成された、封じ込められた熱容積、前記中間熱ステージは、支柱を介してスチルステージに機械的に直接的に結合されており、前記スチルステージ及び前記中間熱ステージは、4-ケルビン(K)ステージ及び冷却板ステージの間に介在する複数の熱ステージの中に含まれる;及び
前記中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合された熱スイッチ、前記熱スイッチは、前記中間熱ステージ及び前記隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、前記クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にする
を備える、クライオスタット。
【請求項19】
前記封じ込められた熱容積は、追加的な熱シールドに結合された追加的な中間熱ステージにより形成された、追加的な封じ込められた熱容積内に入れ子にされており、前記追加的な中間熱ステージは、前記複数の熱ステージの中に含まれる、請求項18に記載のクライオスタット。
【請求項20】
前記追加的な封じ込められた熱容積は、前記クライオスタットの外側真空チャンバにより画定された共通の真空空間内に封じ込められている、請求項19に記載のクライオスタット。
【請求項21】
前記隣接する熱ステージは、前記スチルステージ又は前記4-Kステージである、請求項18から20のいずれか一項に記載のクライオスタット。
【請求項22】
前記クライオスタットの混合チャンバステージは、前記封じ込められた熱容積内に配置されている、請求項18から21のいずれか一項に記載のクライオスタット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極低温環境に関し、より具体的には、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする技法に関する。
【発明の概要】
【0002】
以下、本発明の1つ又は複数の実施形態の基本的な理解を提供するための概要を示す。この概要は、主要又は重要な要素を識別すること、又は、特定の実施形態の範囲又は特許請求の範囲を定義することを意図するものではない。その唯一の目的は、後に示されるより詳細な説明の前置きとして、概念を簡略化された形式で示すことである。本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態において、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にするシステム、デバイス、及び/又は方法が説明される。
【0003】
一実施形態によれば、クライオスタットは、複数の熱ステージ及び熱スイッチを備え得る。複数の熱ステージは、4-ケルビン(K)ステージ及び冷却板ステージの間に介在し得る。複数の熱ステージは、スチルステージ(Still stage)、及び、支柱を介してスチルステージに機械的に直接的に結合され得る中間熱ステージを有し得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合され得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にし得る。
【0004】
別の実施形態によれば、クライオスタットは、スチルステージ及び熱スイッチを備え得る。スチルステージは、支柱を介して中間熱ステージに機械的に直接的に結合され得る。スチルステージ及び中間熱ステージは、4-Kステージ及び冷却板ステージの間に介在する複数の熱ステージの中に含まれ得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合され得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にし得る。
【0005】
別の実施形態によれば、クライオスタットは、封じ込められた熱容積及び熱スイッチを備え得る。封じ込められた熱容積は、熱シールドに結合された中間熱ステージにより形成され得る。中間熱ステージは、支柱を介してスチルステージに機械的に直接的に結合され得る。スチルステージ及び中間熱ステージは、4-Kステージ及び冷却板ステージの間に介在する複数の熱ステージの中に含まれ得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージに結合され得る。熱スイッチは、中間熱ステージ及び隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタットの熱プロファイルを変更することを容易にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、例示的で非限定的なクライオスタットを示す。
【0007】
【
図2】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、例示的で非限定的なクライオスタットの回路概略図を示す。
【0008】
【
図3】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする切り替え可能な熱経路を有する、例示的で非限定的なクライオスタットを示す。
【0009】
【
図4】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする切り替え可能な熱経路を有する、別の例示的で非限定的なクライオスタットを示す。
【0010】
【
図5】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする複数の切り替え可能な熱経路を有する、例示的で非限定的なクライオスタットを示す。
【0011】
【
図6】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、結合状態にある切り替え可能な熱経路を容易にする、例示的で非限定的な熱スイッチを示す。
【0012】
【
図7】分離状態にある
図6の例示的で非限定的な熱スイッチを示す。
【0013】
【
図8】本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、切り替え可能な熱経路を容易にする、別の例示的で非限定的な熱スイッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は単なる例示であり、実施形態及び/又は実施形態の用途又は使用を限定することを意図するものではない。更に、前述の技術分野又は発明の概要の章、又は、発明を実施するための形態の章に提示されるいかなる明示的又は黙示的情報によっても拘束される意図はない。
【0015】
1つ又は複数の実施形態が、ここで、図面を参照して説明されるが、図面において、同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指すために使用される。以下の説明では、説明の目的で、多くの特定の詳細が、1つ又は複数の実施形態のより完全な理解を提供すべく記載される。しかしながら、様々な場合において、1つ又は複数の実施形態が、これらの特定の詳細なくして実施され得ることは明白である。
【0016】
図1は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、例示的で非限定的なクライオスタット100を示す。
図1において示される通り、クライオスタット100は、天板130及び底板140の間に介在する側壁120により形成された外側真空チャンバ110を備える。動作中、外側真空チャンバ110は、外側真空チャンバ110の周囲環境150及び外側真空チャンバ110の内部160の間の圧力差を維持し得る。クライオスタット100は、内部160内に配設され、それぞれが天板130に機械的に結合されている複数の熱ステージ(又はステージ)170を更に備える。複数のステージ170は、ステージ171、ステージ173、ステージ175、ステージ177、及びステージ179を有する。複数のステージ170のうちの各ステージは、異なる温度に関連付けられ得る。例えば、ステージ171は、50ケルビン(K)の温度に関連付けられる50-ケルビン(50-K)ステージであり得、ステージ173は、4Kの温度に関連付けられる4-ケルビン(4-K)ステージであり得、ステージ175は、700ミリケルビン(mK)の温度に関連付けられ得、ステージ177は、100mKの温度に関連付けられ得、ステージ179は、10mKの温度に関連付けられ得る。複数のステージ170のうちの各ステージは、複数の支柱(例えば、支柱172及び174)により、複数のステージ170の他のステージから空間的に隔離されている。一実施形態において、ステージ175はスチルステージであり得、ステージ177は冷却板ステージであり得、またステージ179は混合チャンバステージであり得る。
【0017】
図2は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、例示的で非限定的なクライオスタット200の回路概略図を示す。クライオスタット(例えば、
図1のクライオスタット100)は、クライオスタット内に位置する試料設置面上に配置された試料又はデバイスを絶対零度に近い温度で維持し、そのような試料又はデバイスを極低温条件下で評価することを容易にし得る。クライオスタットは通常、外側真空チャンバの常温板(例えば、天板130)に機械的に結合された5つの熱ステージを用いて、そのような低温を提供する。クライオスタットの5つの熱ステージは、後続の各熱ステージが、先行する熱ステージで存在するよりも漸進的により低い温度を有する熱プロファイルを有し得る。極低温条件下で試料又はデバイスを評価することは、通常、クライオスタットの外部の常温状態に置かれた1つ又は複数のデバイスを用いて、そのような試料又はデバイスと相互作用することを伴う。そのために、クライオスタットは、クライオスタット内に配置された試料及びクライオスタットの外部のデバイスの間の電気信号の伝搬を容易にする入/出力(I/O)線を備え得る。
【0018】
例として、超伝導量子ビットは、クライオスタット200の試料設置面260上に配置され得る。試料設置面260上に配置された超伝導量子ビットを、クライオスタット200の外部の1つ又は複数のデバイスに結合するのは、4本のI/O線、すなわち、駆動線271;磁束線273;ポンプ線275;及び出力(又は読み出し)線277である。当業者であれば、これらの4本のI/O線が、クライオスタット200にかけられた熱負荷に多くの方法で寄与し得ることを理解するであろう。4本のI/O線が熱負荷に寄与し得る1つの方法は、各I/O線が、熱経路を提供し得、それに沿って、より高温の熱ステージからより低温の熱ステージに熱が伝導され得ることである。例えば、
図2において、駆動線271は、クライオスタット200の50-Kステージ210から混合チャンバステージ250へとルーティングされる。クライオスタット200を通るそのルーティングパスに沿って、駆動線271は、熱経路を提供し得、それを通じて、50-Kステージ210から4-Kステージ220へなど、より高温の熱ステージからより低温の熱ステージへと熱が伝導され得る。
【0019】
4本のI/O線が熱負荷に寄与し得る別の方法は、所与の各I/O線に沿って、又は介在する電気コンポーネントを介して、伝搬する信号の散逸に起因して生成される熱(例えば、ジュール加熱)に関連する。例えば、試料設置面260上に配置された超伝導量子ビットに関連付けられたSQUIDループに向かい、磁束線273に沿って伝搬するマイクロ波磁束信号は、熱結合274を介してクライオスタット200のスチルステージ230上に熱を導入し得る。別の例として、進行波パラメトリック増幅器(TWPA)281の動作のために磁束線273に沿って伝搬するマイクロ波ポンプ信号は、磁束線273及び冷却ステージ240に結合された減衰器283を介して、冷却ステージ240上に熱を導入し得る。
【0020】
4本のI/O線が熱負荷に寄与し得る別の方法は、より高温の熱ステージがより低温の熱ステージに呈する放射負荷に関わる。例えば、出力線277を介して試料設置面260上に配置された超伝導量子ビットの測定を容易にするために、高電子移動度トランジスタ(HEMT)増幅器285にバイアスを与える直流(DC)信号は、4-Kステージ220上に熱を導入し得る。4-Kステージ220上に導入されたそのような熱は、より低温の熱ステージ(例えば、スチルステージ230)を、4-Kステージ220が4K黒体放射としてより低温の熱ステージに呈する放射負荷に曝露し得る。
【0021】
上述の通り、クライオスタットは、クライオスタット内に位置する試料設置面上に配置された試料又はデバイスを絶対零度に近い温度で維持し、そのような試料又はデバイスを極低温条件下で評価することを容易にし得る。そのような極低温条件を提供するために通常用いられるクライオスタットの5つの熱ステージは、後続の各熱ステージが、先行する熱ステージで存在するよりも漸進的により低い温度を有する熱プロファイルを有し得る。その熱プロファイルは、5つの熱ステージを封じ込めるクライオスタットの外側真空チャンバにより画定される共通の真空空間内に存在し得る。
【0022】
幾つかの事例において、絶対零度に近い温度は、極低温条件下で試料又はデバイスを評価するにあたり有利であり得る。例えば、絶対零度に近い温度は、超伝導回路におけるインコヒーレントノイズ、閉じ込められた超流体ヘリウム-3におけるエキゾチックな相転移、及び、高相関のシステムにおける局在性及び無秩序のトポロジー効果を評価するにあたり有利であり得る。他の事例において、より高い温度は、極低温条件下で試料又はデバイスを評価するのに十分であり得る。例えば、約4Kの温度は、極低温条件下でHEMTデバイス又は幾つかのニオブ(Nb)共振器を評価するのに十分であり得る。別の例として、約1Kの温度は、極低温条件下で幾つかのジョセフソン接合(JJ)デバイス(例えば、JJ電界効果トランジスタ)又は幾つかのNB共振器を評価するのに十分であり得る。別の例として、約300mKの温度は、量子ビットデバイス、マイクロ波コンポーネント、又は幾つかのJJデバイスを評価するのに十分であり得る。従って、クライオスタットの共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムは、異なる評価条件に対応すべくクライオスタットの熱プロファイルを柔軟に変更することにより、効率の改善を容易にし得る。本明細書に記載の実施形態は、クライオスタットに追加的な冷却能力を提供する中間熱ステージ及び隣接する熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする。
【0023】
図3は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする切り替え可能な熱経路を有する、例示的で非限定的なクライオスタット300を示す。
図3により示される通り、クライオスタット300は、外側真空チャンバ(図示せず)の常温板(例えば、
図1の天板130)に結合され得る50-Kステージ305を備える。外側真空チャンバは、クライオスタット300の様々な熱ステージを共通の圧力で封じ込める共通の真空空間(例えば、内部160)を画定し得る。
【0024】
クライオスタット300は、4-Kステージ310及び冷却板ステージ325の間に介在する複数の熱ステージを更に備える。それらの複数の熱ステージは、スチルステージ320及び中間熱ステージ315を有する。中間熱ステージ315は、支柱311を介して4-Kステージ310に、及び支柱316を介してスチルステージ320に、機械的に直接的に結合されている。中間熱ステージ315は、支柱306を介して50-Kステージ305に、支柱321を介して冷却板ステージ325に、及び支柱326を介して混合チャンバステージ330に、機械的に間接的に結合されている。
【0025】
図3はまた、クライオスタット300が、中間熱ステージ315に結合された熱シールド342により形成され得る、封じ込められた熱容積340を更に備えることを示す。封じ込められた熱容積340は、封じ込められた熱容積340の外部に存在するクライオスタット300の容積345から熱的に隔離され得る。
図3において、熱シールド342は、中間熱ステージ315及び熱プレート344の間に介在し、封じ込められた熱容積340を形成するものとして示されている。しかしながら、他の実施形態において、熱シールド342及び熱プレート344は、単一の要素を中間熱ステージ315に結合することで、封じ込められた熱容積340を形成し得るよう、単一の要素として実装され得る。
【0026】
中間熱ステージ315は、4-Kステージ310及び冷却板ステージ325の間の電気信号の伝搬を容易にする配線構造370に介在する、フィードスルー要素317を有し得る。配線構造370は、クライオスタット300内に配置された試料及びクライオスタット300の外部の1つ又は複数のデバイスを結合するI/O線を含み得る。例えば、配線構造370は、
図2の駆動線271、磁束線273、ポンプ線275、及び/又は出力(又は読み出し)線277などのI/O線を含み得る。一実施形態において、中間熱ステージ315は、銅、金、銀、真鍮、プラチナ、又はこれらの組み合わせを有し得る。
【0027】
中間熱ステージ315は、中間熱ステージ315に結合された密封ポット350を介して、クライオスタット300のために追加的な冷却能力を提供し得る。そのために、密封ポット350は、ヘリウム媒体、すなわちヘリウム-4の気化冷却を容易にする。コンデンサ線352は、4-Kステージ310を介して、ポンプ360の出口ポート362を密封ポット350に結合し得る。一実施形態において、ポンプ360は、密封ポット350を通じてヘリウム媒体を循環させるための真空ポンプであり得る。一実施形態において、ポンプ360は、クライオスタット300の外部に位置し得る。一実施形態において、ポンプ360は、クライオスタット300内に位置し得る。この実施形態において、ポンプ360は、吸着ポンプ(sorb pump)として実装され得る。コンデンサ線352は、ヘリウム媒体のための密封ポット350への戻り経路を提供し得る。ポンピング線354は、4-Kステージ310を介して、ポンプ360の入口ポート364を密封ポット350に結合し得る。4-Kステージ310は、フィードスルー要素312などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線352及び/又はポンピング線354のための通路を提供し得る。
【0028】
図3により示される通り、クライオスタット300は、中間熱ステージ315及び隣接する熱ステージに結合された熱スイッチ380を更に備える。
図3の例において、その隣接する熱ステージは、4-Kステージ310である。熱スイッチ380を実装するにあたり好適である例示的で非限定的な熱スイッチは、
図6~
図7に関して以下でより詳細に論述される。熱スイッチ380は、中間熱ステージ315及び4-Kステージ310の間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタット300の熱プロファイルを変更することを容易にし得る。そのために、熱スイッチ380の伝達媒体は、熱スイッチ380が結合状態にある場合に、中間熱ステージ315を4-Kステージ310に熱的に結合(又は短絡)させる熱経路を提供し得る。熱スイッチ380が結合状態から分離状態へと遷移する場合、熱スイッチ380の伝達媒体により提供された熱経路は除去され、それにより、中間熱ステージ315を4-Kステージ310から熱的に分離させ得る。
【0029】
一実施形態において、伝達媒体は、ヘリウム媒体を含み得る。一実施形態において、伝達媒体は、超伝導材料(例えば、アルミニウム)を含み得る。この実施形態において、熱スイッチ380は、伝達媒体を非超伝導状態から超伝導状態へと遷移させることにより、分離状態へと遷移され得る。一実施形態において、伝達媒体は、伝達媒体の温度を、超伝導材料の臨界温度未満に低下させることにより、非超伝導状態から超伝導状態へと遷移され得る。一実施形態において、超伝導材料は、磁場内に配置され得る。一実施形態において、伝達媒体は、磁場の強度を超伝導材料の臨界磁場よりも上に高めることにより、超伝導状態から非超伝導状態へと遷移され得る。
【0030】
動作中において、ヘリウム-4は、出口ポート362から密封ポット350に向かって、気体状態で流れ得る。フィードスルー要素312は、コンデンサ線352を4-Kステージ310に熱的に固定し得る。ヘリウム-4がフィードスルー要素312を流れ出ると、ヘリウム-4は、気体状態から液体状態へと遷移し得る。液体状態にあるヘリウム-4は、密封ポット350内に集積し得る。熱スイッチ380が分離状態にある場合、ポンプ360の入口ポート364は、密封ポット350内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を低下させるように動作され得る。気体状態にあるヘリウム-4は、気化により密封ポット350内に集積された液化ヘリウム-4の上方に形成され、ポンピング線354を介してポンプ360の入口ポート364に流れ得る。ポンピング線354を通じて流れる気体状態のヘリウム-4により熱が運ばれることで、密封ポット350内に残存する液化ヘリウム-4の温度を低下させ得る。密封ポット350内における液化ヘリウム-4のそのような気化冷却は、中間熱ステージ315の温度を低下させ得、それにより、中間熱ステージ315は、約1Kの温度で動作し得る。
【0031】
中間熱ステージ315を約1Kの温度で動作させることは、クライオスタット300を、共通の真空空間内で異なる温度で動作する複数の極低温システム(例えば、封じ込められた熱容積340及び容積345)に区分することを容易にし得る。例えば、クライオスタット300は、中間熱ステージ315及びスチルステージ320の間に介在する熱スイッチ;スチルステージ320及び冷却板ステージ325の間に介在する熱スイッチ;及び冷却板ステージ325及び混合チャンバステージ330の間に介在する熱スイッチなどの追加的な熱スイッチ(図示せず)を更に備え得る。この例において、それぞれの介在する熱スイッチは結合状態へと遷移され得、それにより、スチルステージ320、冷却板ステージ325、及び混合チャンバステージ330はそれぞれ、中間熱ステージ315と均熱化され、約1Kの温度で動作し得る。
【0032】
熱スイッチ380が結合状態にある場合、ポンプ360の入口ポート364は、密封ポット350内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を、共通の真空空間の共通の圧力に維持するように動作され得る。密封ポット350内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を共通の圧力に維持することは、密封ポット350内の液化ヘリウム-4の気化冷却を阻害し得る。そのような気化冷却が行われない場合、中間熱ステージ315は、熱スイッチ380により提供された熱経路を介して4-Kステージ310と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ315は、約4Kの温度で動作し得る。一実施形態において、密封ポット350は、真空密封又は極低温密封され得る。一実施形態において、密封ポット350は、熱履歴の最適化を容易にする焼結材料を含み得る。焼結材料は、銀、金、銅、及びプラチナなどを含み得る。
【0033】
図4は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする切り替え可能な熱経路を有する、別の例示的で非限定的なクライオスタット400を示す。
図4により示される通り、クライオスタット400は、外側真空チャンバ(図示せず)の常温板(例えば、
図1の天板130)に結合され得る50-Kステージ405を備える。外側真空チャンバは、クライオスタット400の様々な熱ステージを共通の圧力で封じ込める共通の真空空間(例えば、内部160)を画定し得る。
【0034】
クライオスタット400は、4-Kステージ410及び冷却板ステージ425の間に介在する複数の熱ステージを更に備える。それらの複数の熱ステージは、スチルステージ415及び中間熱ステージ420を有する。中間熱ステージ420は、支柱416を介してスチルステージ415に、及び支柱421を介して冷却板ステージ425に、機械的に直接的に結合されている。中間熱ステージ420は、支柱406を介して50-Kステージ405に、支柱411を介して4-Kステージ410に、及び支柱426を介して混合チャンバステージ430に、機械的に間接的に結合されている。
【0035】
図4はまた、クライオスタット400が、中間熱ステージ420に結合された熱シールド442により形成され得る、封じ込められた熱容積440を更に備えることを示す。封じ込められた熱容積440は、封じ込められた熱容積440の外部に存在するクライオスタット400の容積445から熱的に隔離され得る。
図4において、熱シールド442は、中間熱ステージ420及び熱プレート444の間に介在し、封じ込められた熱容積440を形成するものとして示されている。しかしながら、他の実施形態において、熱シールド442及び熱プレート444は、単一の要素を中間熱ステージ420に結合することで、封じ込められた熱容積440を形成し得るよう、単一の要素として実装され得る。
【0036】
中間熱ステージ420は、4-Kステージ410及び冷却板ステージ425の間の電気信号の伝搬を容易にする配線構造470に介在する、フィードスルー要素422を有し得る。スチルステージ415はまた、配線構造470に介在するフィードスルー要素418を含み得る。配線構造470は、クライオスタット400内に配置された試料及びクライオスタット400の外部の1つ又は複数のデバイスを結合するI/O線を含み得る。例えば、配線構造470は、
図2の駆動線271、磁束線273、ポンプ線275、及び/又は出力(又は読み出し)線277などのI/O線を含み得る。一実施形態において、中間熱ステージ420は、銅、金、銀、真鍮、プラチナ、又はこれらの組み合わせを有し得る。
【0037】
中間熱ステージ420は、中間熱ステージ420に結合された密封ポット450を介して、クライオスタット400のために追加的な冷却能力を提供し得る。そのために、密封ポット450は、ヘリウム媒体、すなわちヘリウム-3の気化冷却を容易にする。コンデンサ線452は、4-Kステージ410を介して、ポンプ460の出口ポート462を密封ポット450に結合し得る。一実施形態において、ポンプ460は、密封ポット450を通じてヘリウム媒体を循環させるための真空ポンプであり得る。一実施形態において、ポンプ460は、クライオスタット400の外部に位置し得る。一実施形態において、ポンプ460は、クライオスタット400内に位置し得る。この実施形態において、ポンプ460は、吸着ポンプとして実装され得る。コンデンサ線452は、ヘリウム媒体のための密封ポット450への戻り経路を提供し得る。ポンピング線454は、4-Kステージ410を介して、ポンプ460の入口ポート464を密封ポット450に結合し得る。4-Kステージ410は、フィードスルー要素412などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線452及び/又はポンピング線454のための通路を提供し得る。スチルステージ415は、フィードスルー要素422などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線452及び/又はポンピング線454のための通路を提供し得る。
【0038】
図4により示される通り、クライオスタット400は、中間熱ステージ420及び隣接する熱ステージに結合された熱スイッチ480を更に備える。
図4の例において、その隣接する熱ステージは、スチルステージ415である。熱スイッチ480を実装するにあたり好適である例示的で非限定的な熱スイッチは、
図6~
図7に関して以下でより詳細に論述される。熱スイッチ480は、中間熱ステージ420及びスチルステージ415の間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタット400の熱プロファイルを変更することを容易にし得る。そのために、熱スイッチ480の伝達媒体は、熱スイッチ480が結合状態にある場合に、中間熱ステージ420をスチルステージ415に熱的に結合(又は短絡)させる熱経路を提供し得る。熱スイッチ480が結合状態から分離状態へと遷移する場合、熱スイッチ480の伝達媒体により提供された熱経路は除去され、それにより、中間熱ステージ420をスチルステージ415から熱的に分離させ得る。
【0039】
一実施形態において、伝達媒体は、ヘリウム媒体を含み得る。一実施形態において、伝達媒体は、超伝導材料(例えば、アルミニウム)を含み得る。この実施形態において、熱スイッチ480は、伝達媒体を非超伝導状態から超伝導状態へと遷移させることにより、分離状態へと遷移され得る。一実施形態において、伝達媒体は、伝達媒体の温度を、超伝導材料の臨界温度未満に低下させることにより、非超伝導状態から超伝導状態へと遷移され得る。一実施形態において、超伝導材料は、磁場内に配置され得る。一実施形態において、伝達媒体は、磁場の強度を超伝導材料の臨界磁場よりも上に高めることにより、超伝導状態から非超伝導状態へと遷移され得る。
【0040】
動作中において、ヘリウム-3は、出口ポート462から密封ポット450に向かって、気体状態で流れ得る。フィードスルー要素412及び/又は417は、コンデンサ線452を、4-Kステージ410及び/又はスチルステージ415にそれぞれ熱的に固定し得る。ヘリウム-3がフィードスルー要素412及び/又は417を流れ出ると、ヘリウム-3は、気体状態から液体状態へと遷移し得る。液体状態にあるヘリウム-3は、密封ポット450内に集積し得る。熱スイッチ480が分離状態にある場合、ポンプ460の入口ポート464は、密封ポット450内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を低下させるように動作され得る。気体状態にあるヘリウム-3は、気化により密封ポット450内に集積された液化ヘリウム-3の上方に形成され、ポンピング線454を介してポンプ460の入口ポート464に流れ得る。ポンピング線454を通じて流れる気体状態のヘリウム-3により熱が運ばれることで、密封ポット450内に残存する液化ヘリウム-3の温度を低下させ得る。密封ポット470内における液化ヘリウム-3のそのような気化冷却は、中間熱ステージ420の温度を低下させ得、それにより、中間熱ステージ420は、約300mKの温度で動作し得る。
【0041】
中間熱ステージ420を約300mKの温度で動作させることは、クライオスタット400を、共通の真空空間内で異なる温度で動作する複数の極低温システム(例えば、封じ込められた熱容積440及び容積445)に区分することを容易にし得る。例えば、クライオスタット400は、中間熱ステージ420及び冷却板ステージ425の間に介在する熱スイッチ;及び冷却板ステージ425及び混合チャンバステージ430の間に介在する熱スイッチなどの追加的な熱スイッチ(図示せず)を更に備え得る。この例において、それぞれの介在する熱スイッチは結合状態へと遷移され得、それにより、冷却板ステージ425及び混合チャンバステージ430はそれぞれ、中間熱ステージ420と均熱化され、約300mKの温度で動作し得る。
【0042】
熱スイッチ480が結合状態にある場合、ポンプ460の入口ポート464は、密封ポット450内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を、共通の真空空間の共通の圧力に維持するように動作され得る。密封ポット450内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を共通の圧力に維持することは、密封ポット450内の液化ヘリウム-3の気化冷却を阻害し得る。そのような気化冷却が行われない場合、中間熱ステージ420は、熱スイッチ480により提供された熱経路を介してスチルステージ415と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ420は、約700mKの温度で動作し得る。一実施形態において、密封ポット450は、真空密封又は極低温密封され得る。一実施形態において、密封ポット450は、熱履歴の最適化を容易にする焼結材料を含み得る。焼結材料は、銀、金、銅、及びプラチナなどを含み得る。
【0043】
図5は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、共通の真空空間内で区分された複数の極低温システムを容易にする複数の切り替え可能な熱経路を有する、例示的で非限定的なクライオスタット500を示す。
図5により示される通り、クライオスタット500は、外側真空チャンバ(図示せず)の常温板(例えば、
図1の天板130)に結合され得る50-Kステージ505を備える。外側真空チャンバは、クライオスタット500の様々な熱ステージを共通の圧力で封じ込める共通の真空空間(例えば、内部160)を画定し得る。クライオスタット500は、4-Kステージ510及び冷却板ステージ530の間に介在する複数の熱ステージを更に備える。それらの複数の熱ステージは、スチルステージ520及び複数の中間熱ステージ(例えば、中間熱ステージ515及び中間熱ステージ525)を有する。
【0044】
図5はまた、クライオスタット500が、封じ込められた熱容積540、及び、封じ込められた熱容積540内に入れ子にされた封じ込められた熱容積550を更に備えることを示す。封じ込められた熱容積540は、封じ込められた熱容積550及び封じ込められた熱容積540の外部に存在するクライオスタット500の容積545から熱的に隔離され得る。封じ込められた熱容積540は、中間熱ステージ515に結合された熱シールド542により形成され得る。
図5において、熱シールド542は、中間熱ステージ515及び熱プレート544の間に介在し、封じ込められた熱容積540を形成するものとして示されている。しかしながら、他の実施形態において、熱シールド542及び熱プレート544は、単一の要素を中間熱ステージ515に結合することで、封じ込められた熱容積540を形成し得るよう、単一の要素として実装され得る。封じ込められた熱容積550は、中間熱ステージ525に結合された熱シールド552により形成され得る。
図5において、熱シールド552は、中間熱ステージ525及び熱プレート554の間に介在し、封じ込められた熱容積550を形成するものとして示されている。しかしながら、他の実施形態において、熱シールド552及び熱プレート554は、単一の要素を中間熱ステージ525に結合することで、封じ込められた熱容積550を形成し得るよう、単一の要素として実装され得る。
【0045】
中間熱ステージ515は、支柱511を介して4-Kステージ510に、及び支柱516を介してスチルステージ520に、機械的に直接的に結合されている。中間熱ステージ515は、支柱506を介して50-Kステージ505に、支柱521を介して中間熱ステージ525に、支柱526を介して冷却板ステージ530に、及び支柱531を介して混合チャンバステージ535に、機械的に間接的に結合されている。中間熱ステージ525は、支柱521を介してスチルステージ520に、及び支柱526を介して冷却板ステージ530に、機械的に直接的に結合されている。中間熱ステージ525は、支柱506を介して50-Kステージ505に、支柱511を介して4-Kステージ510に、支柱516を介して中間熱ステージ515に、及び支柱531を介して混合チャンバステージ535に、機械的に間接的に結合されている。中間熱ステージ515及び525は、支柱516及び521をそれぞれ介して、スチルステージ520の両側に機械的に直接的に結合されている。
【0046】
中間熱ステージ515及び525は、4-Kステージ510及び冷却板ステージ530の間の電気信号の伝搬を容易にする配線構造580に介在する、フィードスルー要素518及び527をそれぞれ有し得る。スチルステージ520はまた、配線構造580に介在するフィードスルー要素523を含み得る。配線構造580は、クライオスタット500内に配置された試料及びクライオスタット500の外部の1つ又は複数のデバイスを結合するI/O線を含み得る。例えば、配線構造580は、
図2の駆動線271、磁束線273、ポンプ線275、及び/又は出力(又は読み出し)線277などのI/O線を含み得る。一実施形態において、中間熱ステージ515及び/又は525は、銅、金、銀、真鍮、プラチナ、又はこれらの組み合わせを有し得る。
【0047】
中間熱ステージ515は、中間熱ステージ515に結合された密封ポット560を介して、クライオスタット500のために追加的な冷却能力を提供し得る。そのために、密封ポット560は、ヘリウム媒体、すなわちヘリウム-4の気化冷却を容易にする。コンデンサ線562は、4-Kステージ510を介して、ポンプ565の出口ポート567を密封ポット560に結合し得る。コンデンサ線562は、そのヘリウム媒体のための密封ポット560への戻り経路を提供し得る。ポンピング線564は、4-Kステージ510を介して、ポンプ565の入口ポート569を密封ポット560に結合し得る。4-Kステージ510は、フィードスルー要素512などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線562及び/又はポンピング線564のための通路を提供し得る。
【0048】
中間熱ステージ525は、中間熱ステージ525に結合された密封ポット570を介して、クライオスタット500のために追加的な冷却能力を提供し得る。そのために、密封ポット570は、ヘリウム媒体、すなわちヘリウム-3の気化冷却を容易にする。コンデンサ線572は、4-Kステージ510を介して、ポンプ575の出口ポート577を密封ポット570に結合し得る。一実施形態において、ポンプ565及び/又は575は、密封ポット560及び/又は570をそれぞれ通じて対応するヘリウム媒体を循環させるための真空ポンプであり得る。一実施形態において、ポンプ565及び/又は575は、クライオスタット500の外部に位置し得る。一実施形態において、ポンプ565及び/又は575は、クライオスタット500内に位置し得る。この実施形態において、ポンプ565及び/又は575は、吸着ポンプとして実装され得る。コンデンサ線572は、そのヘリウム媒体のための密封ポット570への戻り経路を提供し得る。ポンピング線574は、4-Kステージ510を介して、ポンプ575の入口ポート579を密封ポット570に結合し得る。4-Kステージ510は、フィードスルー要素513などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線572及び/又はポンピング線574のための通路を提供し得る。中間熱ステージ515は、フィードスルー要素517などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線572及び/又はポンピング線574のための通路を提供し得る。スチルステージ520は、フィードスルー要素522などのフィードスルー要素を介して、コンデンサ線572及び/又はポンピング線574のための通路を提供し得る。
【0049】
図5により示される通り、クライオスタット500は、クライオスタット500の様々な熱ステージに結合された複数の熱スイッチを更に備える。複数の熱スイッチは、4-Kステージ510及び中間熱ステージ515に結合された熱スイッチ591;中間熱ステージ515及びスチルステージ520に結合された熱スイッチ593;及びスチルステージ520及び中間熱ステージ525に結合された熱スイッチ595を有する。熱スイッチ591、593、及び/又は595を実装するにあたり好適である例示的で非限定的な熱スイッチは、
図6~
図7に関して以下でより詳細に論述される。熱スイッチ591、593、及び/又は595はそれぞれ、クライオスタット500の様々な熱ステージの間に切り替え可能な熱経路を提供することにより、クライオスタット500の熱プロファイルを変更することを容易にし得る。
【0050】
そのために、各熱スイッチは、その熱スイッチが結合状態にある場合に、それぞれの熱ステージを熱的に結合(又は短絡)させる熱経路を提供し得る伝達媒体を有し得る。例えば、熱スイッチ591は、熱スイッチ591が結合状態にある場合に、中間熱ステージ515を4-Kステージ510に熱的に結合する熱経路を提供し得る伝達媒体を有し得る。所与の熱スイッチが結合状態から分離状態へと遷移する場合、その熱スイッチの伝達媒体により提供された熱経路は除去され、それにより、それぞれの熱ステージを熱的に分離させ得る。上記の例に続き、熱スイッチ591の伝達媒体により提供された熱経路は、熱スイッチ591が分離状態へと遷移する場合に除去され、それにより、中間熱ステージ515を4-Kステージ510から熱的に分離させ得る。
【0051】
一実施形態において、伝達媒体は、ヘリウム媒体を含み得る。一実施形態において、伝達媒体は、超伝導材料(例えば、アルミニウム)を含み得る。この実施形態において、熱スイッチ830は、伝達媒体を非超伝導状態から超伝導状態へと遷移させることにより、分離状態へと遷移され得る。一実施形態において、伝達媒体は、伝達媒体の温度を、超伝導材料の臨界温度未満に低下させることにより、非超伝導状態から超伝導状態へと遷移され得る。一実施形態において、超伝導材料は、磁場内に配置され得る。一実施形態において、伝達媒体は、磁場の強度を超伝導材料の臨界磁場よりも上に高めることにより、超伝導状態から非超伝導状態へと遷移され得る。
【0052】
動作中において、ヘリウム-4は、出口ポート567から密封ポット560に向かって、気体状態で流れ得る。フィードスルー要素512は、コンデンサ線562を4-Kステージ510に熱的に固定し得る。ヘリウム-4がフィードスルー要素512を流れ出ると、ヘリウム-4は、気体状態から液体状態へと遷移し得る。液体状態にあるヘリウム-4は、密封ポット560内に集積し得る。熱スイッチ591が分離状態にある場合、ポンプ565の入口ポート567は、密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を低下させるように動作され得る。気体状態にあるヘリウム-4は、気化により密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方に形成され、ポンピング線564を介してポンプ560の入口ポート569に流れ得る。ポンピング線564を通じて流れる気体状態のヘリウム-4により熱が運ばれることで、密封ポット560内に残存する液化ヘリウム-4の温度を低下させ得る。密封ポット540内における液化ヘリウム-4のそのような気化冷却は、中間熱ステージ515の温度を低下させ得、それにより、中間熱ステージ515は、約1Kの温度で動作し得る。
【0053】
中間熱ステージ515を約1Kの温度で動作させることは、クライオスタット500を、共通の真空空間内で異なる温度で動作する複数の極低温システム(例えば、封じ込められた熱容積540及び容積545)に区分することを容易にし得る。例えば、クライオスタット500は、中間熱ステージ525及び冷却板ステージ530の間に介在する熱スイッチ;及び冷却板ステージ530及び混合チャンバステージ535の間に介在する熱スイッチなどの追加的な熱スイッチ(図示せず)を更に備え得る。この例において、中間熱ステージ515及び混合チャンバステージ535の間に介在する各熱スイッチ(すなわち、中間熱ステージ525、冷却板ステージ530、及び混合チャンバステージ535の間に介在する追加的な熱スイッチに加えて熱スイッチ593及び595)は、結合状態へと遷移され得る。それらの介在する熱スイッチを結合状態へと遷移させることにより、混合チャンバステージ535、及び、中間熱ステージ515及び混合チャンバステージ535の間に介在する各熱ステージは、中間熱ステージ515と均熱化され、約1Kの温度で動作し得る。
【0054】
熱スイッチ591が結合状態にある場合、ポンプ565の入口ポート567は、密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を、共通の真空空間の共通の圧力に維持するように動作され得る。密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を共通の圧力に維持することは、密封ポット560内の液化ヘリウム-4の気化冷却を阻害し得る。そのような気化冷却が行われない場合、中間熱ステージ515は、熱スイッチ591により提供された熱経路を介して4-Kステージ510と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ515は、約4Kの温度で動作し得る。
【0055】
動作中において、ヘリウム-4は、出口ポート567から密封ポット560に向かって、気体状態で流れ得る。フィードスルー要素512は、コンデンサ線562を、4-Kステージ510に熱的に固定し得る。ヘリウム-4がフィードスルー要素512を流れ出ると、ヘリウム-4は、気体状態から液体状態へと遷移し得る。液体状態にあるヘリウム-4は、密封ポット560内に集積し得る。熱スイッチ591が分離状態にある場合、ポンプ565の入口ポート567は、密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を低下させるように動作され得る。気体状態にあるヘリウム-4は、気化により密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方に形成され、ポンピング線564を介してポンプ560の入口ポート569に流れ得る。ポンピング線564を通じて流れる気体状態のヘリウム-4により熱が運ばれることで、密封ポット560内に残存する液化ヘリウム-4の温度を低下させ得る。密封ポット540内における液化ヘリウム-4のそのような気化冷却は、中間熱ステージ515の温度を低下させ得、それにより、中間熱ステージ515は、約1Kの温度で動作し得る。
【0056】
中間熱ステージ515を約1Kの温度で動作させることは、クライオスタット500を、共通の真空空間内で異なる温度で動作する複数の極低温システム(例えば、封じ込められた熱容積540及び容積545)に区分することを容易にし得る。例えば、クライオスタット500は、中間熱ステージ525及び冷却板ステージ530の間に介在する熱スイッチ;及び冷却板ステージ530及び混合チャンバステージ535の間に介在する熱スイッチなどの追加的な熱スイッチ(図示せず)を更に備え得る。この例において、中間熱ステージ515及び混合チャンバステージ535の間に介在する各熱スイッチ(すなわち、中間熱ステージ525、冷却板ステージ530、及び混合チャンバステージ535の間に介在する追加的な熱スイッチに加えて熱スイッチ593及び595)は、結合状態へと遷移され得る。それらの介在する熱スイッチを結合状態へと遷移させることにより、混合チャンバステージ535、及び、中間熱ステージ515及び混合チャンバステージ535の間に介在する各熱ステージは、中間熱ステージ515と均熱化され、約1Kの温度で動作し得る。
【0057】
熱スイッチ591が結合状態にある場合、ポンプ565の入口ポート567は、密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を、共通の真空空間の共通の圧力に維持するように動作され得る。密封ポット560内に集積された液化ヘリウム-4の上方の圧力を共通の圧力に維持することは、密封ポット560内の液化ヘリウム-4の気化冷却を阻害し得る。そのような気化冷却が行われない場合、中間熱ステージ515は、熱スイッチ591により提供された熱経路を介して4-Kステージ510と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ515は、約4Kの温度で動作し得る。
【0058】
動作中において、ヘリウム-3は、出口ポート577から密封ポット570に向かって、気体状態で流れ得る。フィードスルー要素513、517及び/又は522は、コンデンサ線572を、4-Kステージ510、中間熱ステージ515、及び/又はスチルステージ520にそれぞれ熱的に固定し得る。ヘリウム-3がフィードスルー要素513、517、及び/又は522を流れ出ると、ヘリウム-3は、気体状態から液体状態へと遷移し得る。液体状態にあるヘリウム-3は、密封ポット570内に集積し得る。熱スイッチ591、593及び595がそれぞれ分離状態にある場合、ポンプ575の入口ポート579は、密封ポット570内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を低下させるように動作され得る。気体状態にあるヘリウム-3は、気化により密封ポット570内に集積された液化ヘリウム-3の上方に形成され、ポンピング線574を介してポンプ575の入口ポート579に流れ得る。ポンピング線574を通じて流れる気体状態のヘリウム-3により熱が運ばれることで、密封ポット570内に残存する液化ヘリウム-3の温度を低下させ得る。密封ポット570内における液化ヘリウム-3のそのような気化冷却は、中間熱ステージ525の温度を低下させ得、それにより、中間熱ステージ525は、約300mKの温度で動作し得る。
【0059】
中間熱ステージ525を約300mKの温度で動作させることは、クライオスタット500を、共通の真空空間内で異なる温度で動作する複数の極低温システム(例えば、封じ込められた熱容積550及び容積545)に区分することをも容易にし得る。例えば、クライオスタット500は、中間熱ステージ525及び冷却板ステージ530の間に介在する熱スイッチ;及び冷却板ステージ530及び混合チャンバステージ535の間に介在する熱スイッチなどの追加的な熱スイッチ(図示せず)を更に備え得る。この例において、中間熱ステージ525及び混合チャンバステージ535の間に介在する各熱スイッチは、結合状態へと遷移され得る。それらの介在する熱スイッチを結合状態へと遷移させることにより、冷却板ステージ530及び混合チャンバステージ535は、中間熱ステージ525と均熱化され、約300mKの温度で動作し得る。
【0060】
熱スイッチ591、593、及び595がそれぞれ結合状態にある場合、ポンプ575の入口ポート579は、密封ポット570内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を、共通の真空空間の共通の圧力に維持するように動作され得る。密封ポット570内に集積された液化ヘリウム-3の上方の圧力を共通の圧力に維持することは、密封ポット570内の液化ヘリウム-3の気化冷却を阻害し得る。そのような気化冷却が行われない場合、中間熱ステージ525は、クライオスタット500の1つ又は複数のより高温の熱ステージと均熱化され得る。例えば、中間熱ステージ525は、熱スイッチ591、593、及び595により提供された熱経路を介して4-Kステージ510と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ515は、約4Kの温度で動作し得る。別の例として、中間熱ステージ525は、熱スイッチ593及び595により提供された熱経路を介して中間熱ステージ515と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ525は、約1Kの温度で動作し得る。別の例として、中間熱ステージ525は、熱スイッチ595により提供された熱経路を介してスチルステージ520と均熱化され得、それにより、中間熱ステージ525は、約700mKの温度で動作し得る。一実施形態において、密封ポット560及び/又は570は、真空密封又は極低温密封され得る。一実施形態において、密封ポット560及び/又は570は、熱履歴の最適化を容易にする焼結材料を含み得る。焼結材料は、銀、金、銅、及びプラチナなどを含み得る。
【0061】
図6~
図7は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、切り替え可能な熱経路を容易にする、例示的で非限定的な熱スイッチ600を示す。
図6~
図7により示される通り、熱スイッチ600は、取り付け機構620を用いて、内部容積630を画定するように頂部612を底部614に結合することにより形成されるハウジング610を有する。
図6~
図7において、取り付け機構620は、ボルトとして示されている。しかしながら、他の実施形態において、取り付け機構620を実装するために、異なる取り付け機構が使用され得る。例えば、取り付け機構620は、頂部612を底部614に結合する溶接接合として実装され得る。熱スイッチ600は、内部容積630内に配設されたピストン640、及び、ピストン640を囲む1つ又は複数の永久磁石650を更に有する。一対の超伝導線材660を用いて底部614を囲むことにより、ヘルムホルツコイルシステムが形成され得る。ヘルムホルツコイルシステムは、ピストン640を囲む1つ又は複数の永久磁石650と相互作用して、熱スイッチ600の磁気作動を容易にし得る。
【0062】
動作中において、ヘリウム媒体は、熱スイッチ600が
図6により示される結合状態にある場合、ポンプの出口ポート(図示せず)に結合された毛細管672を介して内部容積630に収容され得る。結合状態にある間、内部容積630内のヘリウム媒体は、熱スイッチ600に結合された隣接する熱ステージを熱的に結合し得る。熱スイッチ600は、ヘルムホルツコイルシステムを形成する一対の超伝導線材660に電気信号を印加することにより、
図6により示される結合状態から、
図7により示される分離状態へと遷移し得る。
図7により示される通り、ヘルムホルツコイルシステムを形成している一対の超伝導線材660に電気信号を印加することは、ルビービード690をポリマーシート680に接触させ得る。ルビービード690をポリマーシート680に接触させることは、内部容積630へのヘリウム媒体の更なる進入を防止し得る。一実施形態において、ポリマーシート680は、ポリアミドイミドを含む。ヘリウム媒体の内部容積630への更なる進入が防止されるため、ポンプの入口ポート(図示せず)は、毛細管674を介して、内部容積630から残留ヘリウム媒体を除去し、熱スイッチ600に結合された隣接する熱ステージを熱的に分離させ得る。一実施形態において、ヘリウム媒体は、ヘリウム-4であり得る。この実施形態において、熱スイッチ600は、磁気作動型超流体漏れ防止弁であり得る。一実施形態において、ヘリウム媒体は、ヘリウム-3であり得る。この実施形態において、熱スイッチ600は、磁気作動型流体漏れ防止弁であり得る。
【0063】
図8は、本明細書に記載の1つ又は複数の実施形態に係る、切り替え可能な熱経路を容易にする、別の例示的で非限定的な熱スイッチ800を示す。熱スイッチ800は、密封容器810により画定された内部容積820内に配設された金属製物体830を有する。一実施形態において、金属製物体830は、真鍮を含み得る。一実施形態において、密封容器810は、ステンレス鋼を含み得る。
図8により示される通り、1つ又は複数の炭ペレット840及び加熱要素850は、金属製物体830に結合され得る。一実施形態において、1つ又は複数の炭ペレット840及び/又は加熱要素850は、エポキシを用いて金属製物体830に結合され得る。
【0064】
密封容器810の内部容積820は、ヘリウム媒体を含み得る。一実施形態において、ヘリウム媒体は、密封容器810の内部容積820内に、常温で導入され得る。一実施形態において、ヘリウム媒体は、密封容器810の壁内に配設された弁(図示せず)を介して、密封容器810の内部容積820内に導入され得る。一実施形態において、ヘリウム媒体は、密封容器810の内部容積820内に、約10ミリバール(約1キロパスカル)の圧力で導入され得る。密封容器810の内部容積820内の温度が10Kを下回ると、炭ペレット840は、ヘリウム媒体を吸収することにより、内部容積820からヘリウム媒体を除去し得る。ヘリウム媒体がヘリウム-4である一実施形態において、炭ペレット840は、内部容積820内の温度が4.2Kを下回る場合、内部容積820からヘリウム媒体を効率的に除去し得る。ヘリウム媒体がヘリウム-3である一実施形態において、炭ペレット840は、内部容積820内の温度が3.1Kを下回る場合、内部容積820からヘリウム媒体を効率的に除去し得る。炭ペレット840による吸収を通じて内部容積820からヘリウム媒体を除去することは、熱スイッチ800を分離状態へと遷移させる。分離状態において、熱スイッチ800に結合された隣接する熱ステージは、熱的に分離される。電気信号は、導電要素852及び854を介して、加熱要素850に印加され得る。加熱要素850により生成された熱は、金属製物体830を介して炭ペレット840に加えられ得る。炭ペレット840に熱を加えることは、炭ペレット840が吸収したヘリウム媒体を内部容積820に放出し、それにより、熱スイッチ800を分離状態から結合状態へと遷移させ得る。結合状態において、熱スイッチ800に結合された隣接する熱ステージは、熱的に結合される。
【0065】
本発明の実施形態は、任意の可能な技術的詳細レベルの統合におけるシステム、方法、及び/又は装置であり得る。上記で説明された事柄は、システム、方法、及び装置の単なる例を含む。当然、本開示を説明する目的で、コンポーネント又はコンピュータ実装方法の想定されるあらゆる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者であれば、本開示の多くの更なる組み合わせ及び入れ替えが可能であることを認識し得る。更に、「含む」、「有する」、「備える」等の用語が詳細な説明、特許請求の範囲、添付書類、及び図面において使用される限り、そのような用語は、「備える」という用語が請求項において移行句として利用される場合に解釈されるのと同様の態様で包括的であることが意図される。
【0066】
加えて、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別様に指定されない限り、又は、文脈から明らかでない限り、「XがA又はBを採用する」は、自然で包括的な入れ替えのいずれかを意味することが意図されている。すなわち、XはAを採用する;XはBを採用する;又は、XはA及びBの両方を採用する場合、「XはA又はBを採用する」が前述の事例のいずれのもとでも充足される。更に、本明細書及び添付の図面において使用される冠詞「a」及び「an」は一般に、単数形を対象としていることが別様に指定されない限り、又は文脈からそれが明らかではない限り、「1つ又は複数」を意味すると解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、用語「例」及び/又は「例示的」は、例、事例、又は例示として機能することを意味するために用いられる。疑義を回避するために、本明細書において開示される主題は、そのような例に限定されるものではない。加えて、「例」及び/又は「例示的」として本明細書に記載の任意の態様又は設計は、他の態様又は設計より好ましい、又は有利であると必ずしも解釈されるべきものではなく、それは、当業者において既知の同等の例示的な構造及び技法を除外することも意図されていない。
【0067】
様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、包括的である、又は、開示された実施形態に限定されることは意図されていない。説明された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの修正及び変形が、当業者には明らかであろう。本明細書において使用される専門用語は、実施形態の原理、市場で見られる技術の実際的な適用又はそれに対する技術的改善を最適に説明する、又は、本明細書において開示された実施形態を他の当業者が理解することを可能にするように選択されたものである。
【0068】
特定の例示的な実施形態が説明されたが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されたものであり、本明細書における開示の範囲を限定する意図はない。従って、前述の説明は、いかなる特定の特徴、特性、段階、モジュール、又はブロックも、必要である、又は不可欠であることを示唆する意図はない。実際に、本明細書に記載の新規の方法及びシステムは、様々な他の形態において具現化されてよく;更に、本明細書に記載の方法及びシステムの形態における様々な省略、置換及び変更は、本明細書における開示の趣旨から逸脱することなく行われてよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本明細書における特定の開示の範囲及び趣旨に含まれるような形態又は修正を包含することを意図したものである。
【国際調査報告】