(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ピストンリング溝インサートおよび作製方法
(51)【国際特許分類】
F16J 9/00 20060101AFI20240130BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20240130BHJP
F16J 9/26 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16J9/00 A
F02F3/00 N
F16J9/26 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541603
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022011595
(87)【国際公開番号】W WO2022150576
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508348680
【氏名又は名称】マテリオン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】タラント,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】トリッカー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】マック,ステッフェン
(72)【発明者】
【氏名】クルス,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ルゼック,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】グレンシング,フリッツ
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA08
3J044BA00
3J044BA01
3J044BA04
3J044BC06
3J044BC20
3J044DA09
3J044DA16
3J044DA17
3J044EA00
(57)【要約】
本開示は、円周溝を有するピストンと、ピストンの円周溝内のリング溝インサートとを含む、ピストンアセンブリに関する。特に、リング溝インサートは、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料である。第2の材料は、下記:a)第1の材料の密度の90%から120%の密度;b)第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);またはc)第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率の、少なくとも1つを有する。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンアセンブリであって、
円周溝を有するピストンと、
前記ピストンの前記円周溝内のリング溝インサートとを含み、前記リング溝インサートが外面および内面を有し、前記リング溝インサートが前記ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であり、前記第2の材料が、下記の
a)前記第1の材料の密度の90%から120%の密度、
b)前記第1の材料の熱膨張係数(CTE)の50%から90%のCTE、または
c)前記第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する、ピストンアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、またはこれらの組合せである、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、またはスズの1種または複数の合金元素を含む、請求項2に記載のピストンアセンブリ。
【請求項4】
前記第2の材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せの母材と、前記母材中に分散された、前記第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子とを含む、金属基複合材である、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項5】
前記強化粒子が8よりも大きい硬度を有し、前記母材が4未満の硬度を有し、硬度はモース硬度スケールに従い測定される、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項6】
前記強化粒子が、炭化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、またはこれらの組合せを含む少なくとも1種の複数のセラミック粒子を含む、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1種の複数のセラミック粒子が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、アルミナ、またはこれらの組合せを含む、請求項6に記載のピストンアセンブリ。
【請求項8】
前記金属基複合材が、前記第2の材料の全体積に対して15体積%から30体積%の前記強化粒子を含む、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項9】
前記金属基複合材が、
2.5g/cm
3から3.0g/cm
3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項10】
前記強化粒子が0.01μmから10μmの平均粒度を有する、または前記強化粒子が100mm
2/mm
3から1000mm
2/mm
3の内表面積を有する、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項11】
前記第2の材料の母材が、
91.2重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.15重量%から4.9重量%の銅、および0.1重量%から1.8重量%のマグネシウム、または
91.2重量%から94.7重量%のアルミニウム、3.8重量%から4.9重量%の銅、1.2重量%から1.8重量%のマグネシウム、および0.3重量%から0.9重量%のマンガン、または
95.8重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.8重量%から1.2重量%のマグネシウム、および0.4重量%から0.8重量%のケイ素、または
92.8重量%から95.8重量%のアルミニウム、3.2重量%から4.4重量%の銅、0から0.2重量%の鉄、1.0から1.6重量%のマグネシウム、0から0.6重量%の酸素、0から0.25重量%のケイ素、および0から0.25重量%の亜鉛
を含む、アルミニウム合金である、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項12】
前記リング溝インサートの内面と前記ピストンとの間の界面領域をさらに含み、前記界面領域は、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属間二次相を含む、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項13】
ピストンアセンブリ用のリング溝インサートであって、
前記リング溝インサートが、
2.5g/cm
3から3.0g/cm
3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、事前に形成された固体であり、
前記事前に形成された固体が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せの母材と、前記金属母材中に分散された、事前に形成された固体の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子とを含む、金属基複合材である、
ピストンアセンブリ用のリング溝インサート。
【請求項14】
ピストンアセンブリを作製する方法であって、
請求項13に記載のリング溝インサートを調製するステップと、
金属または金属合金の固相線温度以上で前記リング溝インサートの周りに金属または金属合金をダイキャストして、鋳造ピストンアセンブリを形成するステップと
を含み、前記金属または金属合金は第1の材料であり、前記リング溝インサートは、前記第1の材料とは異なる第2の材料であり、前記第2の材料は、下記の
a)前記第1の材料の密度の90%から120%の密度、
b)前記第1の材料の熱膨張係数(CTE)の50%から90%のCTE、または
c)前記第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する、ピストンアセンブリを作製する方法。
【請求項15】
内燃機関であって、
ピストンシリンダー、
前記ピストンシリンダー内のピストンアセンブリ
を含み、前記ピストンアセンブリは、
円周溝を有するピストン、および
請求項13に記載された、外面および内面を有し、前記ピストンの円周溝内に配置された、リング溝インサート
を含み、前記リング溝インサートは、前記ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であり、前記第2の材料は、下記の
a)前記第1の材料の密度の90%から120%の密度、
b)前記第1の材料の熱膨張係数(CTE)の50%から90%のCTE、または
c)前記第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2021年1月8日に出願された米国仮特許出願第63/135,473号に関し、その優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、使用される、内燃機関のピストンリング溝インサートに関し、詳細には、ピストンとは異なる物理的性質を有する固体材料で作製されたピストンリング溝インサートに関する。本明細書では、固体材料で作製されたピストンリング溝インサートを生成するための方法についても記述する。
【背景技術】
【0003】
[0003]乗用車におけるほとんどのターボチャージ付きのまたはその他の手法でブーストされた内燃機関は、圧縮リング溝として機能する鋼製ピストンリングインサートの周りに鋳造されたアルミニウムのピストンを使用する。ピストンリングの機能は、溝の早期の摩耗、トップランドでの疲労クラックを防止し、溝の内部および周りにおける予備燃焼事象による腐食から保護することである。
【0004】
[0004]鋼製リング溝インサートは、強化されていないアルミニウムまたはさらに陽極酸化されたアルミニウムの寿命およびそこへの適用を制限する摩耗、腐食、および疲労の問題に対して十分な耐性を実証するが、ピストンのリング溝インサート、鋼製リング溝インサートは、多くの欠点を提示する。鋼は、アルミニウムよりも高い密度を有し、したがって鋼製インサートは、往復質量をピストンに付加し、そのことがエンジン効率を低減させかつ燃費を増大させる。アルミニウムと比較すると、鋼製リング溝インサートは非常に低い熱伝導率を有し、したがって熱源(燃焼室)からピストンリングを経てエンジンブロック内に入りかつ油冷式ピストンアンダークラウンに至る熱伝達経路に直接配置された熱障壁として、作用する。さらに、鋼の熱膨張係数(CTE)は一般に、アルミニウムの場合の半分である。したがってピストンが加熱されるにつれ、アルミニウムは鋼製インサートよりも速く膨張することになり、インサートとピストンとの間の結合に応力を与え、疲労をもたらし得る。
【発明の概要】
【0005】
簡単な説明
[0005]ピストン形成温度でインサートを変形または溶融させることなく、インサートの周りに鋳造もしくは鍛造またはその他の技法によってピストンを生成することを可能にする、金属基複合材(MMC)で作製されたリング溝インサートを作製するための処理する方法が、本明細書に記述される。プロセスは、金属母材中に分散した複数のセラミック粒子を有して事前に形成された固体(preformed solid)であるリング溝インサート材料に関して、特定の使用を見い出す。セラミック粒子は、ピストンアセンブリを作製する処理温度で溶融または変形せず、動作温度で長期寿命も提供する。
【0006】
[0006]本明細書に記述されるリング溝インサートは、ピストンアセンブリに適切な密度、CTE、熱伝導率、および耐摩耗性など、調整された性質を提供する。改善されたエンジン効率のためにピストン全体に質量を付加せず、かつピストンとインサートとの間の改善された結合のためにピストン材料に対して緊密に一致したCTEを有し、しかし溝の外へのおよびピストンリング内へのまたは油冷式アンダークラウンへのより良好な熱放散のために高い熱伝導率も有する、事前に形成された固体インサート材料を有するピストンを製造できることが、望ましいと考えられる。
【0007】
[0007]一態様では、円周方向の溝を有するピストンと、ピストンの円周方向の溝内にリング溝インサートとを含む、ピストンアセンブリが提供される。リング溝インサートは、好ましくは外面(外表面)および内面(内表面)を有する。リング溝インサートは、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であり、第2の材料は、下記:
a) 第1の材料の密度の90%から120%の密度;
b) 第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);または
c) 第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する。
【0008】
[0008]ピストンの第1の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、またはこれらの組合せであってもよい。一部の実施形態では、ピストンは、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、またはスズの1種または複数の合金元素を含むアルミニウム合金である。アルミニウム合金は、第2の材料とは異なる溶融温度を有していてもよく、特にその差は20℃から80℃である。
【0009】
[0009]リング溝インサートは、最高で725℃の温度、またはより好ましくは1000℃など、第1の材料の溶融温度よりも上でその寸法形状を好ましくは維持する第2の材料である。一部の実施形態では、第2の材料は、アルミニウムの母材(マトリックス)、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せを含む金属基複合材(MMC)であってもよく、第2の材料の全体積に対して、強化粒子の5体積%から60体積%が母材中に分散される。一部の実施形態では、母材は、アルミニウムが88重量%よりも多いアルミニウム合金である。
【0010】
[0010]第2の材料を含むリング溝インサートは、母材の硬度よりも大きい硬度を有する強化粒子を含んでいてもよい。一部の実施形態では、強化粒子は8よりも大きい硬度を有し、母材は4未満の硬度を有し、または強化粒子は9から10の硬度を有し、母材は2から3の硬度を有し、この硬度は、モース硬度スケールにより測定される。強化粒子は、少なくとも1種の複数のセラミック粒子を含んでいてもよい。一部の実施形態では、強化粒子は、炭化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、またはこれらの組合せを含む。少なくとも1種の複数の強化粒子は、好ましくは炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、アルミナ、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。強化粒子の平均粒度は、0.01μmから10μmであってもよい。
【0011】
[0011]リング溝インサート材料は、第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子、または好ましくは、第2の材料の全体積に対して15体積%から50体積%の強化粒子、またはより好ましくは、第2の材料の全体積に対して15体積%から30体積%の強化粒子を含む、MMCであってもよい。
【0012】
[0012]リング溝インサート材料は、2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度を有していてもよい。リング溝インサート材料は、140から170W/m°Kの熱伝導率を有していてもよい。リング溝インサート材料は、15ppm/℃から25ppm/℃の熱膨張係数を有していてもよい。リング溝インサート材料は、0.5%以下の多孔度を有していてもよい。好ましくは、リング溝インサート材料は、前述の任意の組合せまたは全てを有する。
【0013】
[0013]一態様では、事前に形成されたリング溝インサートが提供される。リング溝インサートは:
2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、事前に形成された固体であってもよく、このインサートは、金属母材中に複数のセラミック粒子を5体積%から60体積%含む。事前に形成された固体リング溝インサートは、0.01μmから10μmの平均粒度分布(D50)を有する複数のセラミック粒子を含んでいてもよい。事前に形成されたリング溝インサートは、100mm2/mm3から1000mm2/mm3の内部表面積を有する複数のセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0014】
[0014]リング溝インサート材料は、強化粒子の第2の体積分率の表面積に対する、別のアルミニウム合金母材の第1の体積分率の表面積により測定されたときの、その寸法形状を維持してもよい。リング溝インサートの内面は、0.4μm以上の表面粗さ(Ra)を有していてもよい。リング溝インサートの内面は、0.4μm以上の表面粗さ(Ra)を有していてもよい。リング溝インサートの割合は、ピストンのトップランドまで拡がってもよい。最上部の1つまたは複数の溝の頂部からピストンの頂部まで測定された距離は、参照鋼製インサートと比較して少なくとも10%低減する。
【0015】
[0015]ピストンアセンブリは、リング溝インサートの内面とピストンとの間に界面領域を含んでいてもよい。界面領域は、少なくとも1つの金属間二次相を含んでいてもよい。界面領域は、ピストンの第1の材料およびリング溝インサートの第2の材料を分離する拡散制御コーティングを含んでいてもよい。界面領域は、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せのコーティングを含んでいてもよい。一部の実施形態では、界面領域は、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属間二次相を含む。界面領域は、ピストンの第1のアルミニウム合金から移行する銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、またはニッケルの1種または複数の合金元素が豊富であってもよく、特に界面領域は、マグネシウムおよびニッケルの少なくとも1種が豊富であってもよい。リング溝インサート材料は、アルミニウム合金と5体積%から60体積%の強化粒子とを含むMMCであってもよく、この界面領域は、1/500以下の強化粒子対母材相の比を有する。界面領域は、5%以下の多孔度を有していてもよい。
【0016】
[0016]別の態様では、リング溝インサートを提供するステップと、金属または金属合金の固相線温度以上でリング溝インサートの周りに金属または金属合金をダイキャストして、鋳造ピストンアセンブリを形成するステップとを含む、ピストンアセンブリを作製する方法が提供される。リング溝インサートは:
2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、事前に形成された固体であってもよい。
【0017】
[0017]方法は、ダイキャスト前にリング溝インサートをコーティングするステップを含んでいてもよい。方法は、ダイキャスト前にリング溝インサートの表面積を増大させるステップを含んでいてもよい。方法はさらに、ダイキャスト後に鋳造ピストンアセンブリを熱処理し、クエンチ処理し、およびエージングする少なくとも1つを含んでいてもよい。方法はさらに、リング溝インサートに、ピストンリングを受容する少なくとも1つのリング溝を形成するステップを含んでいてもよい。
【0018】
[0018]さらに別の態様では、ピストンシリンダーおよびピストンシリンダー内のピストンアセンブリを含む、内燃機関が提供される。ピストンアセンブリは、円周方向の溝を有するピストンと、ピストンの円周方向の溝内のリング溝インサートとを含んでいてもよい。リング溝インサートは、外面および内面を有していてもよい。リング溝インサートは、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であってもよい。第2の材料は、下記:
a) 第1の材料の密度の90%から120%の密度;
b) 第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);または
c) 第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する。
【0019】
[0019]内燃機関は、リング溝インサートの外面から内向きに半径方向に延びる別の円周方向の溝においてピストンアセンブリとピストンシリンダーとの間に配置された少なくとも1つのピストンリングを含んでいてもよい。リング溝インサートは、比較の鋼製リング溝インサートに対して2.5重量%の低減を提供し、その結果、内燃機関において、少なくとも2.3kg CO2/リットル石油のCO2低減をもたらし得る。エンジンは、炭化水素、亜酸化窒素、および二酸化炭素の放出の低減を有していてもよいが、燃焼圧力および/またはエンジン効率の低減はない。CO2放出は、参照鋼製インサートと比較して少なくとも10%低減されてもよい。
【0020】
[0020]さらに別の態様では、上述の内燃機関を含む車両が提供される。本開示のこれらおよびその他の非限定的特徴を、以下にさらに具体的に開示する。
【0021】
[0021]下記は、図面の簡単な説明であり、本明細書に開示される例示的な実施形態を示す目的で提示されるものであり、それを限定する目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】[0022]本開示の一部の実施形態による例示的な車両を示す図である。
【
図2】[0023]本開示の一部の実施形態により生成されたピストンアセンブリの図である。
【
図3A】[0024]本開示の一部の実施形態によるピストンアセンブリに関するピストンの図である。
【
図3B】[0025]本開示の一部の実施形態によるピストンアセンブリに関するリング溝インサートの図である。
【
図3C】[0026]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートの周りに鋳造されたピストンを含むピストンアセンブリの図である。
【
図3D】[0027]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートの周りに鋳造されたピストンを含むピストンアセンブリの別の図である。
【
図3E】[0028]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートの周りに鍛造されたピストンを含むピストンアセンブリの、さらに別の図である。
【
図4】[0029]本開示の一部の実施形態により生成されたピストンアセンブリの界面領域の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5A】[0030]本開示の一部の実施形態により生成されたピストンとインサートとの間の銅の層を含むピストンアセンブリの界面領域の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5B】[0031]本開示の一部の実施形態により生成されたピストンとインサートとの間のニッケル/銅の層を含むピストンアセンブリの界面領域の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】[0032]本開示の一部の実施形態による、ピストンとリング溝インサートとの間にニッケル/銅の層を含みかつ後で熱処理された、ピストンアセンブリの界面領域の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7A】[0033]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートを含む様々な材料に関する最終接触圧力(psi)の関数として、リング比摩耗率(k)(1/psi)を示す、プロットである。
【
図7B】[0034]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートを含む様々な材料に関する、荷重の関数としてリング比摩耗率(k)(1/psi)を示すプロットである。
【
図8A】[0035]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートを含む様々な材料に関する、ASTM G99による、20N、35N、および50Nでのディスク損失対鋼製ピンデータを示すプロットである。
【
図8B】[0036]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートを含む様々な材料に関する、20N、35N、および50Nでのディスク損失対鋼製ピンデータを示す、別のプロットである。
【
図9】[0037]本開示の一部の実施形態により生成されたインサートを含む様々な材料に関する、20N、35N、および50Nでの、組み合わせた鋼製ピンの損失およびディスク損失(摩耗連結側)対ディスクを示す、プロットである。
【
図10A】[0038]本開示の一部の実施形態による、0.1μmから50μmの平均粒度分布を有するセラミック粒子に関するインサート材料の母材中のセラミック粒子の体積分率(10体積%から50体積%)の関数としてMMCインサート材料の母材の内表面積(mm
2/mm
3)を示す、プロットである。
【
図10B】[0039]本開示の一部の実施形態による、1.0μmから10μmの平均粒度分布を有するセラミック粒子を使用した、10体積%から30体積%のセラミック粒子の体積分率の関数として、MMCインサート材料の母材の内表面積(mm
2/mm
3)の好ましい領域を示す、プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0040]本明細書に開示される構成要素、プロセス、および装置のより完全な理解は、添付図面を参照することによって得ることができる。これらの図は、本開示を実証するための便宜上および容易さに基づいて単に概略的な表示であり、したがって、デバイスまたはその構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すものではなく、および/または例示的な実施形態の範囲を定めまたは限定するものではない。
【0024】
[0041]特定の用語が、明瞭にするために以下の記述で使用されるが、これらの用語は、図面での例示のために選択される実施形態の特定の構造のみを指すものとし、本開示の範囲を定めるものでは限定するものでもない。図面および以下に続く記述では、同様の番号表示は同様の機能の構成要素を指すと理解されたい。
【0025】
[0042]単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
[0043]本明細書および特許請求の範囲で使用される、「含む」という用語は、「~からなる」および「~から本質的になる」実施形態を含んでいてもよい。本明細書で使用される、「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」、およびこれらの変形例である用語は、名称が付された成分/構成成分/ステップの存在を必要としかつその他の成分/構成成分/ステップの存在を可能にする、オープンエンドな変換文言、用語、または単語であるものとする。しかしながらそのような記述は、そこから得られる可能性のある任意の不純物と共に名称が付された成分/構成成分/ステップのみの存在を可能にし、かつその他の成分/構成成分/ステップを除外して、列挙された成分/構成成分/ステップ「~からなる」および「~から本質的になる」として、組成物、物品、またはプロセスも記述すると解釈されるべきである。
【0027】
[0044]本出願の本明細書および特許請求の範囲における数値は、同じ有効数字の桁数まで低減したときと同じ数値、および値を決定するため本出願で記述されるタイプの従来の測定技法の実験誤差未満だけ、言及される値とは異なる数値を、含むことを理解すべきである。
【0028】
[0045]本明細書に開示される全ての範囲は、列挙される端点を含み、独立して組合せ可能である(例えば、「2グラムから10グラム」の範囲は端点、2グラムまたは10グラムと、全ての中間値とを含む)。
【0029】
[0046]材料が、平均粒度または平均粒度分布を有すると記述されるとき、粒子の総数の50%(体積で)の累積パーセンテージが得られる粒径と定義される。言い換えれば、粒子の50%が平均粒度よりも上の直径を有し、粒子の50%が平均粒度よりも下の直径を有する。粒子のサイズ分布はGaussianであり、言及される平均粒度の25%および75%で上位および下位四分位数があり、全ての粒子は、言及される平均粒度の150%未満である。
【0030】
[0047]本明細書に記述されるプロセスステップは温度を指し、他に提示されない限り、熱源(例えば、炉、オーブン)が設定される温度ではなく、言及される材料によって実現された温度を指す。「室温」という用語は、20℃から25℃(68°Fから77°F)の範囲を指す。
【0031】
内燃機関
[0048]本明細書に記述されるピストンアセンブリは、車両用の内燃機関で使用するのに適している。本明細書に記述されるリング溝インサートを提供することにより、ピストンアセンブリの全体質量は、アルミニウムピストン/鋼製インサートアセンブリと比較して低減される。ピストンアセンブリ内にリング溝インサートを組み込むことから得られる効率性効果は、いかなる追加の材料費をも上回るが、さらに、CO2排出を低減することによって環境に利益を提供する。振動質量の推定される15%の低減は、燃費を1.6~2.6リットル/100km低減させる(Schwaderlapp,ら、“Friction Reduction - the Engine’s Mechanical Contribution to Saving Fuel”; Seoul 2000 FISITA World Automotive Congress、Paper No. F2000A165、1~8ページ、June 12-15, 2000、Seoul, Korea)。「インサートA」は、例示的な目的で本明細書に記述されるピストンアセンブリに関するリング溝インサートの代表例を指すことになる。インサートAに関する質量低減の例示的な計算は、結果的に、車両当たり76ユーロの罰金の軽減に変換される(計算のためのベースラインとして2.3リットルのEcoBoostを使用する)。計算は、1082gのシリンダー当たりの往復質量に基づく。インサート「A」は、鋼製インサートよりも27g少ない重量になり、2.5%の質量低減をもたらす。2.5%の質量低減は、2.1 lの(1/6)/100km=-0.35 l/100kmを提供し、2.1 l/100kmを、参照範囲1.6~2.6リットル/100kmの平均として使用する。次いでCO2削減は、-0.35 l/100kmまたは-0.8g/km(2.3kg CO2/リットル石油)である。したがって罰金の軽減は、0.8g/km×95ユーロ/g CO2/kmであり、車両当たり76ユーロに等しい。事前に形成された固体インサートであるインサートAなどのインサートは、現行の製造プロセスにおいて容易に鋼製インサートの代わりをすることができ、さらに上記にて詳述した環境上のならびにコスト上の利益をもたらす。
【0032】
[0049]
図1に概略的に示すように、車両100は、車両を動かすためのその他の構成要素の中でもエンジン150、ドライブトレイン110、およびホイール120を含む。エンジン150は、内燃機関であってもよくまたは内燃機関を含んでいてもよい。内燃機関は、ピストンを強制的に下向きに動かす燃焼ガスと共に、ピストンシリンダー内で生じる燃焼を含む。エンジン150は、上記にてインサートAなどのインサートを含む、本明細書に記述されるピストンアセンブリを含む。
【0033】
[0050]次いで
図2に概略的に示すように、熱を加えることに起因する内燃機関200内のガスの膨張は、ガスを強制的に圧縮し、ピストン220のヘッド部(または最上部)に対して作用させ、シリンダー210内で下向きに移動させる。ピストンは上下に移動可能であり、クランクシャフト275に接続している接続棒265を介して円形運動を発生させる。ピストンアセンブリ250は、ピストンシリンダー内で本明細書の実施形態によれば、少なくとも1つの円周方向の溝230を有するピストン220を含む。本明細書に記述される実施形態では、少なくとも1つの円周方向の溝230を含むピストン220は、さらに、リング溝インサート(
図3Aに示されるように)をピストン円周溝230内に含む。当業者に理解されるように、リング溝インサートという用語、または単にインサートは、担体またはリング溝担体として同義で呼んでもよい。
【0034】
[0051]一部の実施形態では、リング溝インサートは有利な重量低減を提供する。例えば、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料で作製されたリング溝インサートは、比較の鋼製リング溝インサートよりも、2.5%の重量低減を内燃機関に提供して、少なくとも2.3kg CO2/リットル石油のCO2削減をもたらす。
【0035】
[0052]全体的なピストン温度は、リング溝インサートが従来使用されてきた鋳鉄などの材料よりも3×から6×大きい熱伝導率を有することになるので、より低くなる。このことは、最上部のピストンリングからシリンダー壁への熱伝達を促進させる。
【0036】
[0053]本明細書に記述されるピストンリングインサートを使用することによって提供された、著しく冷たいピストンクラウンは、圧縮比を増大させ、および/または効率の利得をもたらし、および完全圧縮させることによってノッキングを防止しまたは低減させる。
【0037】
[0054]一部の実施形態では、内燃機関は、リング溝インサートの耐摩耗性が、ピストンアセンブリにおけるピストン材料の場合よりも大きいことを実証する。リング溝インサートの耐摩耗性は、鋳鉄以上である。
【0038】
[0055]一部の実施形態では、内燃機関は、炭化水素、亜酸化窒素、および酸化炭素排出の低減を実証するが、燃焼圧力および/またはエンジン効率の低減がない。本明細書の実施形態は、リング溝インサートをピストンの最上部まで高く上昇させる。ピストンリングの上部からピストンのトップランドまでの間の、この低減された距離は、インサートの高い熱伝導率を含む、強化された冷却特性に起因して、可能である。ピストンリングとピストンの最上部との間の低減した距離は、低減したクレビス体積、低減した炭化水素排出、および増大したエンジン効率をもたらす。次いでエンジン設計に依存する圧縮比も低下し得る。
【0039】
ピストンアセンブリ構成
[0056]
図2に示されるような内燃機関用にピストンシリンダー内に設けられるピストンアセンブリ350を、断面図である
図3A~3Cに例示する。ピストン320は、
図3Aに示されるようにヘッド325またはトップランド部分を有する。ピストン320のピストンヘッド325内には、円周方向の溝330がある。リング溝インサート360は、ピストンヘッド325の円周方向の溝330内に配置される。
図3Bのリング溝インサート360は、内面370および外面380を有する。外面380は、
図3Cに示されるように、ピストン320の外周面340と同一平面にある。外面380はさらに、リング溝インサートの外面380から内向きに半径方向に延びる別の円周溝を含んで、ピストンリング(図示せず)を保持するための円周溝390を提供する。リング溝インサート360の内面370は、例えば図示される370Aおよび370Bを含む1つまたは複数の表面を含む。リング溝インサート360の内面370は、モノリシックピストンアセンブリを作製するようピストン内で処理するのに適した任意の形状のものであってもよい。内面370は、丸みの付いた、面取りされた、正弦波形状の、波形の表面を含んでいてもよい。内面の形体は、リング溝インサート360へと機械加工され、型打ちされ、または鋳造されてもよい。好ましくは、内面370と円周溝330との間に隙間がなく、多孔度もない。内面370は、本明細書では、円周溝330に連結されたまたはその他の手法で一体となった表面と定義される。円周溝330は、内面370の周りにおよび順応するよう形成するため、丸みの付いた、面取りされた、正弦波形状の、波形の表面などの、相補的形状を含んでいてもよい。内面370は、コーティングなしで直接またはコーティングにより間接的に、円周溝330に結合される。一部の実施形態では、界面領域は、以下に詳述されるように、内面370と円周溝330との間に配置される。ピストンリング305は、ピストン320とピストンシリンダー壁310との間のリング溝インサート360の円周溝390内に配置される。距離Dは、ピストンリング305の最上部とピストン320の最上部との間に定められ、または溝390の点345とピストン320の最上部との間の距離と定義される。ピストン320とシリンダー壁310との間の、距離Dを含む円周体積は、クレビス体積と定義される。インサート360は、クレビス体積が最小限に抑えられるように、インサート360で距離Dを最小限にすることが可能になる。距離Dは、トップランド長さと呼んでもよい。一部の実施形態では、距離Dは、従来の鋼製インサートと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%低減される。
【0040】
[0057]
図3に示されるピストンアセンブリの構成に加え、本明細書で企図されるピストンアセンブリは、複数のリング溝インサートおよび/またはインサートの外面(
図3Bおよび
図3Cのリング溝インサートの表面380など)から内向きに延びる1つもしくは複数の円周溝を含んでいてもよい。言い換えれば、本明細書に記述されるピストンアセンブリは、1つまたは複数のピストンリングに順応するように構成されてもよい。
図3Dは、インサート460の周りに鋳造されたピストン420を有するピストンアセンブリ450を示す。インサート460は、例えばインサート460の外面を機械加工してピストン420の外面と同一平面になるようにさらに加工される前の状態、および溝(
図3Cにおける溝390など)がピストンアセンブリ450のインサート部分に機械加工される前の状態が示される。
図3Eは、インサート560の周りに鍛造されたピストン520を有するピストンアセンブリ550を示す。インサート560は、さらに加工する前、例えば1つまたは複数の溝をインサート560の外面に機械加工する前の状態が示される。
【0041】
[0058]一部の実施形態では、リング溝インサートの一部分がピストンヘッドのトップランド内に延び、またはピストンリングが、ピストンクラウン(ピストンヘッドの最上部)の近くへと移動して、
図3Cの距離Dを低減し、したがってクレビス体積を低減しかつ過早着火の傾向を低減し得る。構成は、より短いピストンおよび/またはより長い接続棒を含んでいてもよい。より短いピストンは、エンジンの往復質量を低減させ、より長い接続棒は、ピストンをライナーに対して押し遣る、半径方向の力によって引き起こされた摩擦損失を低減させる。体積および過早着火の傾向の減少は共に、エンジン効率を増大させる。
【0042】
[0059]本明細書に記述されるピストンアセンブリに適したピストンリングは、圧縮リングをまたは任意の市販のピストンリングを作製するのに使用される、従来の鉄ベースの材料を含んでいてもよい。最も一般的なピストンリング材料は、通常はCrN、硬質クロム、DLC、または別の低摩擦、耐摩耗性コーティングでコーティングされるクロム(ステンレス)鋼である。ピストンリングは、クロム(ステンレス)鋼上で使用される類似のコーティングでコーティングされた鋳鉄から作製することもできる。ピストンリングは、ピストン溝リングインサートに対して高い熱伝導率およびさらに低い摩擦係数を有する材料で作製されてもよい。非限定的な例では、ピストン圧縮リングは、銅、ニッケル、ケイ素、およびクロムを含む銅含有合金で作製される。これらの銅合金は、圧縮リングを作製するのに使用される従来の鉄ベースの材料と比較して数倍の熱伝導率を有していてもよい。銅-ニッケル-ケイ素-クロム含有合金は、他の高い伝導率合金の場合よりも、ピストン動作温度でさらに高い強度を有する。これらの合金は、圧縮リングに必要とされる応力緩和耐性および耐摩耗性も保有する。ピストンリングは、良好な封止のために、溝(例えば、
図3Aおよび3Cの溝390)内に適合するようにサイズが決められる。リングのサイズは、エンジンサイズに依存することになる。リングは、1000ミリメートル程度に大きい、またはさらに大きい内径(即ち、ボア)を有することができることが企図される。
【0043】
[0060]より高い熱伝導率を持つピストンリング材料を使用することにより、熱は、リング溝から離れてピストンリングを経てシリンダーライナー内へと、より迅速に伝達されることになる。リング溝でのより低い温度は、溝におけるピストン材料の降伏強度を増大させ、疲労強度も増大させる。より高い熱伝導率のリング材料は、最上部のリング溝を、過剰な溝の摩耗のリスクなしにピストンクラウンの近くに配置させる。
【0044】
ピストンアセンブリ材料
[0061]本明細書に記述されるピストンアセンブリは、ピストンおよびリング溝インサートを含み、これら2つの構成要素は、異なる材料のものであるが一緒に接合されて、
図3Dおよび3Eの実施例に示されるようにモノリシックユニットを提供する。一部の実施形態では、ピストンは第1の材料であり、リング溝インサートは第2の材料である。第2の材料またはインサート材料は、ピストンヘッドの第1の材料とは異なる。リング溝インサートの第2の材料は、以下に詳述される様々な方法のいずれかにより、ピストンと一体化する前に事前に形成された固体の稠密な材料であってもよい。
【0045】
[0062]ピストン材料は、ピストンに適した任意の材料を含んでいてもよい。一部の実施形態では、ピストンは、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、またはこれらの組合せである。好ましくは、ピストン材料は、アルミニウム合金であり、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、またはスズを含む1種または複数の合金元素を含んでいてもよい。
【0046】
[0063]ピストン材料のアルミニウム合金は、アルミニウムが82重量%よりも多くてもよい。ピストンで使用されるアルミニウム合金は、2000シリーズアルミニウム合金(即ち、銅と合金を形成するアルミニウム)、6000シリーズアルミニウム合金(即ち、マグネシウムおよびケイ素と合金を形成するアルミニウム)、または7000シリーズアルミニウム合金(即ち、亜鉛と合金を形成するアルミニウム)を含んでいてもよい。適切なアルミニウム合金の非限定的な例は、2124および2168を含む。
【0047】
[0064]一部の実施形態では、ピストン材料のアルミニウム合金は、93.5重量%のアルミニウム、4.4重量%の銅、1.5重量%のマグネシウム、および0.6重量%のマンガンを含む、2124合金である。
【0048】
[0065]他の実施形態では、ピストン材料のアルミニウム合金は、82.5重量%から86.3重量%のアルミニウム、11.0重量%から13.0重量%のケイ素、0.7重量%から2.5重量%のニッケル、0.7重量%から2.5重量%のマグネシウム、および0.7重量%から2.5重量%の銅を含む合金である。好ましい実施形態では、ピストン材料は、11.0重量%から13.0重量%のケイ素、0.7重量%から2.5重量%のニッケル、1.0重量%のマグネシウム、1.0重量%の銅、および残分がアルミニウムからなる、アルミニウム合金である。一部の実施形態では、ピストン材料は、12.6重量%のケイ素を含むアルミニウム合金である。
【0049】
[0066]さらに他の実施形態では、ピストン材料のアルミニウム合金は、92.6重量%から94.9重量%のアルミニウム、0.10重量%から0.25重量%のケイ素、0.9重量%から1.3重量%の鉄、1.9重量%から2.7重量%の銅、1.3重量%から1.8重量%のマグネシウム、0.9重量%から1.2重量%のニッケル、0.04重量%から0.10重量%のチタン、および必要に応じて最大0.10重量%の亜鉛を含む、2618合金である。好ましい実施形態では、ピストン材料は、0.10重量%から0.25重量%のケイ素、0.9重量%から1.3重量%の鉄、1.9重量%から2.7重量%の銅、1.3重量%から1.8重量%のマグネシウム、0.9重量%から1.2重量%のニッケル、0.04重量%から0.10重量%のチタン、必要に応じて最大0.10重量%の亜鉛、および残分のアルミニウムからなる、アルミニウム合金である。
【0050】
[0067]第1の材料を含む、
図3Cのピストン320など、本明細書に記述されるピストンは、第1の密度(ρ
1)、第1の熱膨張(CTE
1)、および第1の熱伝導率(TC
1)によって特徴付けられる。
【0051】
[0068]インサート材料は、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料で作製される。一部の実施形態では、インサート材料は、金属基複合材(MMC)である。金属母材は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せの母材を含んでいてもよい。金属母材はさらに、第2の材料の全体積に対し、母材中に分散した強化粒子を5体積%から60体積%含んでいてもよい。
【0052】
[0069]第2の材料を含む、
図3Cのインサート360などの本明細書に記述されるリング溝インサートは、第2の密度(ρ
2)、第2の熱膨張(CTE
2)、および第2の熱伝導率(TC
2)によって特徴付けられる。
【0053】
[0070]リング溝インサートの第2の材料は、下記a)ピストンの第1の材料の密度の90%から120%の密度;b)ピストンの第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨脹係数(CTE);またはc)ピストンの第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率の、少なくとも1つを有していてもよい。一部の実施形態では、インサートの第2の材料は、下記a)ピストンの第1の材料の密度の90%から120%の密度;b)ピストンの第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);またはc)ピストンの第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率の、少なくとも2つを有する。他の実施形態では、インサートの第2の材料は、下記a)ピストンの第1の材料の密度の90%から120%の密度;b)ピストンの第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);およびc)ピストンの第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する。
【0054】
[0071]インサートの密度、ρ2は、0.9ρ1から1.2ρ1であってもよい。一部の実施形態では、インサートの密度、ρ2は、ピストンの密度、ρ1にほぼ等しく;またはρ1=ρ2である。インサートの例示的な密度、ρ2は、2.5g/cm3から3.5g/cm3、例えば2.7g/cm3から3.1g/cm3、2.8g/cm3から3.0g/cm3、または2.85g/cm3から2.90g/cm3であってもよい。インサートの比較的低い密度、ρ2は、従来の鋼製インサートに勝る著しい利点を提供する。一般に、ピストン溝インサートの密度は、従来の鋼製インサートの場合(ρsteel)の少なくとも3分の1である。より低い密度を有することにより、ピストンリングインサートで0.25ρsteelから0.50ρsteelの密度、ρ2を実現することが可能になる。低密度比は、本明細書に記述されるインサートがさらに低い往復質量を有することを可能にし、それによってエンジン効率を増大させ、および/または燃費を減少させる。
【0055】
[0072]一部の実施形態では、インサートの熱膨張係数、CTE2は、ピストン材料の0.5CTE1から0.9CTE1である。一部の実施形態では、インサートの熱膨張係数、CTE2は、ピストンの熱膨張係数、CTE1未満である。一部の実施形態では、インサートの熱膨張係数、CTE2は、ピストンの熱膨張係数、CTE1に等しくまたはほぼ等しく;またはCTE1=CTE2である。インサートの例示的なCTE、CTE2は、10ppm/℃から30ppm/℃、15ppm/℃から25ppm/℃、または15ppm/℃から20ppm/℃であってもよい。比較により、鋼のCTE、CTEsteelは、アルミニウムピストンと熱膨張ミスマッチであり、CTEは一般にアルミニウムピストンの場合の半分である。アルミニウムピストン/鋼製インサートを有する比較例のアセンブリが過熱されるにつれ、アルミニウムは鋼製インサートよりも速く膨張し、インサートとピストンとの間の結合に応力を与える。本明細書に記述される第1のピストン材料および第2のインサート材料の熱膨張を調整することにより、ピストンとインサートとの間の改善された結合がもたらされ、それと共にアセンブリのさらに長い寿命も提供される。
【0056】
[0073]一部の実施形態では、インサートの熱伝導率、TC2は、ピストン材料の熱伝導率、TC1よりも大きく;またはTC2>TC1である。インサートの例示的な熱伝導率、TC2は、140W/m°Kから170W/m°K、または150W/m°Kから160W/m°Kであってもよい。一部の実施形態では、ピストンの熱伝導率、TC1は、100から150W/m°Kである。一部の実施形態では、インサートの熱伝導率、TC2は、ピストンの熱伝導率、TC1に等しくまたはほぼ等しく;またはTC1=TC2である。さらに他の実施形態では、インサートの熱伝導率、TC2は、ピストンの熱伝導率、TC1未満である。アルミニウムピストン/鋼製インサートを有する比較アセンブリでは、鋼製インサートは、熱障壁を創出するアルミニウムピストンと比較して、非常に低い熱伝導率を有する。このことは、熱源または燃焼室からピストンリングを経てエンジンブロック内に、および油冷式ピストンアンダークラウンへの熱伝導経路に、直接配置された熱障壁をもたらす。一部の実施形態では、インサート材料は、140から170W/m°Kの熱伝導率を有する金属基複合材(MMC)である。一部の実施形態では、インサート材料は、156W/m°Kの熱伝導率を有する金属基複合材(MMC)である。
【0057】
[0074]一部の実施形態では、ピストン材料は、インサート材料とは異なる温度で溶融する。一部の実施形態では、インサートの融点、MP2は、ピストン材料の融点、MP1よりも高く;またはMP2>MP1である。ピストン材料は、インサート材料の融点MP2の場合よりも、5℃から200℃、または20℃から80℃の差だけ低い、融点、MP1を有していてもよい。より高い融点を有することによって、インサート材料は、寸法上の一体性を実証し、言い換えれば、インサート材料は、ピストンアセンブリに一体化したとき、形成プロセス中に溶融または変形しない。一部の実施形態では、ピストン材料は、アルミニウム合金であり、インサート材料よりも低い融解温度を有する。一部の実施形態では、インサート材料は、その寸法形状を、ピストン材料の融解温度よりも上で維持する。一部の実施形態では、インサート材料は、その寸法形状を、最高725℃の温度まで、または最高1000℃の温度まで維持する。
【0058】
MMCとしてリング溝インサート
[0075]リング溝インサート材料または第2の材料は、下記の、第1の材料の密度の90%から120%の密度、第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数、または第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率の少なくとも1つを有する、金属基複合材(金属マトリックス複合材)(MMC)であってもよい。金属基複合材は、金属母材および金属母材中に分散された強化粒子を含む、複合材料である。金属母材相は、典型的には連続しており、それに対して強化粒子は、金属母材相内に分散相を形成する。
【0059】
[0076]本開示のMMCでは、母材相が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せから形成される。強化粒子は、炭化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物、および窒化物から選択されるセラミック材料である。特定の強化粒子は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ、またはこれらの組合せを含む。特定の実施形態では、炭化ケイ素が使用される。
【0060】
[0077]金属母材へのセラミック強化粒子の添加は、母材の溶融温度よりも上で、ある程度の機械的安定性を可能にする。これにより固体インサート材料は、変化または希釈されることなく、形成プロセスを生き残ることが可能になる。
【0061】
[0078]強化粒子は、好ましくは母材内に分布され、均一に分布され得る。一部の実施形態では、第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子が、母材内に分散される。一部の実施形態では、インサート材料は、アルミニウム合金の母材と、母材内に分散された、第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子とを含む、金属基複合材(MMC)である。
【0062】
[0079]インサート材料の全体積に対する、母材内の強化粒子の体積分率。体積分率の例は、5体積%から60体積%、例えば5から50体積%、5から45体積%、10から40体積%、10から35体積%、または15から35体積%であってもよい。一部の実施形態では、MMCは、第2の材料の全体積に対して15体積%から50体積%の強化粒子を含む。一部の実施形態では、MMCは、第2の材料の全体積に対して15体積%から30体積%の強化粒子を含む。
【0063】
[0080]一部の実施形態では、インサート材料はその寸法形状を、強化粒子の第2の体積分率の表面積に対する、金属または金属合金母材の第1の体積分率の表面積により、測定されたままで維持する。
【0064】
[0081]一部の実施形態では、強化粒子は、インサート材料の金属母材の硬度よりも大きい硬度を有する。強化粒子は8よりも大きい硬度を有することができ、母材は4未満の硬度を有することができ、この硬度はモース硬度スケールにより測定されたものである。強化粒子に関する例示的な硬度値は8から10、例えば8.0から8.5、8.0から9.0、8.0から9.5、8.0から10.0、8.5から9.0、8.5から9.5、8.5から10.0、9.0から9.5、9.0から10.0、または9.5から10.0であってもよい。母材に関する例示的な硬度値は、2から5、例えば2.0から2.5、2.0から3.0、2.0から3.5、2.0から4.0、2.0から4.5、2.0から5.0、2.5から3.0、2.5から3.5、2.5から4.0、2.5から4.5、2.5から5.0、3.0から3.5、3.0から4.0、3.0から4.5、3.0から5.0、3.5から4.0、3.5から4.5、3.5から5.0、4.0から4.5、4.0から5.0、または4.5から5.0であってもよい。一部の実施形態では、強化粒子は9から10の硬度を有し、強化粒子は2から3の硬度を有し、この硬度はモース硬度スケールに従い測定されたものである。
【0065】
[0082]上述のように、強化粒子は、少なくとも1種の複数のセラミック粒子を含んでいてもよい。少なくとも1種の複数の強化粒子は、炭化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。少なくとも1種の複数の強化粒子の例には、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ、またはこれらの組合せが含まれる。インサート材料の強化粒子は、母材合金の融解温度で溶融せず、強化粒子は上述の第1の材料の金属または金属合金の融解温度でも溶融しない。
【0066】
[0083]強化粒子は、長いピストン寿命が得られるように、インサートとピストンとの間で、室温でおよび動作温度でもおよび-20℃から40℃の冷間始動条件温度を含む温度で、十分な耐摩耗性が可能になるようなサイズを有する。強化粒子の粒度は、非攻撃的耐摩耗性を可能にするようにも選択されるサイズを有し、これはインサートまたはピストンリング溝内での摩耗を防止すると共にピストンリング材料の摩耗を最小限に抑えることを意味する。
【0067】
[0084]強化粒子は、ミクロン範囲またはサブミクロンで平均粒度分布(D50)を有していてもよい。平均粒度分布は、粒子の全体積の50体積%(vol%)の累積パーセンテージが実現される粒子直径と定義される。言い換えれば、粒子の50体積%が平均粒度分布の上の直径を有し、粒子の50体積%が平均粒度分布よりも下の直径を有する。限定するものではないが、平均粒度分布(D50)は、0.01μmから10μm、例えば0.01μmから5μm、0.01μmから3.5μm、0.01μmから3μm、0.1μmから3μm、0.5μmから3μm、または0.9μmから3.0μmであってもよい。より大きい粗製粒子は、過剰な摩耗をピストン壁にもたらし、したがって、より微細な粒子を使用することが好まれる。平均粒度は、当技術分野で公知のBrunauer、Emmett、およびTeller(BET)等価球径を使用することによって、レーザー散乱によって、または篩技法によって、計算され得る。強化粒子は好ましくは、球形、非球形、不規則形状、レンズ形状、または細長い形状を有する。強化粒子のアスペクト比は、4:1以下、例えば3:1以下、2:1以下、または1:1である。
【0068】
[0085]強化粒子は、より大きいアスペクト比を有すると考えられる繊維を持っておらずまたは実質的に持っていない。強化繊維は、4:1以下のアスペクト比を有する強化粒子と比較したとき、そのさらに低い熱伝導率に起因して、不適切である。
【0069】
[0086]強化粒子のサイズは、熱伝導率および摩耗特性にも影響を及ぼし得る。理論に拘泥するものではないが、MMCの熱伝導率の低下は、強化-母材界面での界面熱障壁に起因して強化粒子サイズの低下により観察されると考えられる。強化粒子のサイズは、摩耗、即ちピストンリングへの摩耗の際の攻撃性が高過ぎないように、例えば12μmよりも上など、粗くなり過ぎないようにも選択される。
【0070】
[0087]インサート材料のアルミニウム合金は、アルミニウムの88重量%よりも多くてもよい。一部の実施形態では、MMCで使用されるアルミニウム合金は、2000シリーズアルミニウム合金(即ち、銅と合金形成するアルミニウム)、6000シリーズアルミニウム合金(即ち、マグネシウムおよびケイ素と合金形成するアルミニウム)、または7000シリーズアルミニウム合金(即ち、亜鉛と合金形成するアルミニウム)である。適切なアルミニウム合金の非限定的な例には、2009、2124、2090、2099、6061、および6082が含まれる。
【0071】
[0088]一部の実施形態では、インサート材料のアルミニウム合金は、91.2重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.15重量%から4.9重量%の銅、および0.1重量%から1.8重量%のマグネシウムを含む。好ましい実施形態では、インサート材料は、0.15重量%から4.9重量%の銅、0.1重量%から1.8重量%のマグネシウム、および残分のアルミニウムからなるアルミニウム合金である。
【0072】
[0089]一部の実施形態では、インサート材料のアルミニウム合金は、91.2重量%から94.7重量%のアルミニウム、3.8重量%から4.9重量%の銅、1.2重量%から1.8重量%のマグネシウム、および0.3重量%から0.9重量%のマンガンを含む。好ましい実施形態では、インサート材料は、3.8重量%から4.9重量%の銅、1.2重量%から1.8重量%のマグネシウム、0.3重量%から0.9重量%のマンガン、および残分のアルミニウムからなるアルミニウム合金である。
【0073】
[0090]一部の実施形態では、インサート材料のアルミニウム合金は、95.8重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.8重量%から1.2重量%のマグネシウム、および0.4重量%から0.8重量%のケイ素を含む。好ましい実施形態では、インサート材料は、0.8重量%から1.2重量%のマグネシウム、0.4重量%から0.8重量%のケイ素、および残分のアルミニウムからなるアルミニウム合金である。
【0074】
[0091]一部の実施形態では、インサート材料のアルミニウム合金は、92.8重量%から95.8重量%のアルミニウム、3.2重量%から4.4重量%の銅、0から0.2重量%の鉄、1.0から1.6重量%のマグネシウム、0から0.6重量%の酸素、0から0.25重量%のケイ素、および0から0.25重量%の亜鉛を含む。好ましい実施形態では、インサート材料は、3.2重量%から4.4重量%の銅、0から0.2重量%の鉄、1.0から1.6重量%のマグネシウム、0から0.6重量%の酸素、0から0.25重量%のケイ素、0から0.25重量%の亜鉛、および残分のアルミニウムからなるアルミニウム合金である。
【0075】
[0092]一部の特定の実施形態では、MMCインサート材料は、15体積%から30体積%および30体積%から50体積%の炭化ケイ素粒子を含む10体積%から50体積%の炭化ケイ素粒子で強化された、6061シリーズまたは2124シリーズのアルミニウム合金を含む。
【0076】
[0093]インサート材料または第2の材料であって上述の金属基複合材(MMC)を含み得るものは、稠密でありかつ最小限に抑えられた多孔度を有するとして特徴付けることができる、事前に形成された固体であってもよい。この低い多孔度は、ピストン形成プロセスにさらに供されるプリフォームインサートから維持され、したがってインサートはピストンと一体的に形成されてピストンアセンブリを形成するようになる。インサート材料に関する例示的な低い多孔度値は、5%以下、例えば2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、または0.5%以下であってもよい。一部の実施形態では、リング溝インサートは、0.5%以下の多孔度を有する。低い多孔度は、金属基複合材への鋳造中に、第1の材料の浸潤を低減させ得る。低多孔度の材料から形成されるリング溝インサートは、事前に形成された固体を提供する。
【0077】
[0094]ピストンアセンブリを形成する前、リング溝インサートの内面(
図3Bおよび
図3Cのリング溝インサートの表面370など)は、0.4μm以上の表面粗さ(Ra)を有していてもよい。インサート材料の内面に関する例示的な表面粗さの値は、0.2μmから1.6μm、例えば0.2μmから0.4μm、0.2μmから0.8μm、0.2μmから1.6μm、0.4μmから0.8μm、0.4μmから1.6μm、または0.8μmから1.6μmであってもよい。一部の実施形態では、表面粗さ(Ra)は、0.4μm以上である。リング溝インサートの内面は、ピストンアセンブリが形成されるようにピストンと共にプリフォームインサートが加工される前に、当技術分野で公知の方法により必要に応じて表面粗さが増大しまたは減少するように変化してもよい。表面粗さは、その他の表面調製法の中で、研削、ホーニング、機械加工、ショットブラスト、アクアブラスト、グリットまたはビーズブラストによって、変化させることができる。表面粗さは、表面形状測定によって測定される。
【0078】
ピストンアセンブリ界面領域
[0095]インサートは、コーティングなしで直接、またはコーティングと共に間接的にピストンに接触して、界面を形成してもよい。任意の適切なコーティングは、薄膜、箔として、めっきにより、陽極酸化、冷間スプレー、電解、フラッシング、またはこれらの組合せにより付着されてもよい。インサートは、当技術分野で公知のように「フラッシュ」されてもよく、例えば鋳造または鍛造前に溶融金属に浸漬されてもよい。フラッシュするための溶融金属は、アルミニウム、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、スズ、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。理論に拘泥するものではないが、インサートは、ピストンとの鋳造前にフラッシュされると考えられ、例えば、界面領域を介してピストンとの十分な結合を提供し、したがってリング溝インサートはピストンから脱結合も層剥離もしない。
【0079】
[0096]一部の実施形態では、本明細書に記述されるピストンアセンブリは、さらに、リング溝インサートの内面とピストンヘッドとの間に界面領域を含む(例えば、ピストン円周溝330に直接または間接的に結合された
図3Bおよび
図3Cのリング溝インサートの内面370)。
【0080】
[0097]ピストンアセンブリの形成後、ピストン円周溝330に接触するリング溝インサートの内面は、酸化物を持たずにまたは実質的に持たずに非陽極酸化される。一部の実施形態では、ピストンアセンブリは、酸化アルミニウム対アルミニウムの比が、インサートとピストンとの界面で1/1000以下である。
【0081】
[0098]強化粒子は、界面に移行せず、むしろピストンとの形成および/または後続の熱処理中に熱機械的プロセスに耐えるインサート材料の微細構造の安定性に起因して、インサートのMMC内に分散して滞在する。一部の実施形態では、インサート材料は、アルミニウム合金と、5体積%から60体積%の強化粒子とを含む金属基複合材(MMC)であり、界面領域は、強化粒子対母材相との比が1/500以下である。
【0082】
[0099]界面領域は、少なくとも1つの金属間二次相を含んでいてもよい。金属間二次相は、アルミニウム、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、スズ、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0083】
[0100]インサートおよびピストンの界面の結合は、性能、長期寿命、および耐摩耗性に関して極めて重要である。多孔度および/または隙間は有害であり、回避されることになる。インサートとピストンとの間の最大接触を実現するため、形成プロセスならびに後続の熱処理が企図される。一部の実施形態では、界面領域は、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、または0.5%以下の多孔度を有する。一部の実施形態では、界面領域は、0.5%以下の多孔度を有する。
【0084】
[0101]拡散制御コーティングは、インサートとピストンとの間の界面で、必要に応じて利用されてもよい。一部の実施形態では、界面領域は、ピストンの第1の材料とインサートの第2の材料とを分離する拡散制御コーティングを含む。界面領域は、ピストン金属または金属合金からの合金元素が移行するのを防止する、拡散制御コーティングを含んでいてもよい。拡散制御コーティングは、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。コーティングは、形成プロセス前にリング溝インサートの内面に付着されて、ピストンをピストンアセンブリに一体化してもよい。一部の実施形態では、界面領域は、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せを含む少なくとも1つの金属間二次相を含む。一部の実施形態では、界面領域は、ピストンヘッドの第1のアルミニウム合金から移行する銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、またはニッケルの1種または複数の合金元素に富む。一部の実施形態では、界面領域は、マグネシウムおよびニッケルの少なくとも1種に富む。
【0085】
インサートを形成する方法
[0102]本開示によるインサート材料は、当技術分野で公知の様々な方法によってピストンリングを受け取るための少なくとも1つの溝を有するインサートリングに形成することができる。したがって、リング溝インサートは、好ましくは事前に形成された固体である。リング溝インサートは、2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度、140から170W/m°Kの熱伝導率、15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および0.5%以下の多孔度を有する。
【0086】
[0103]リング溝インサートを形成する方法は、限定するものではないが粉末のプレスおよび焼結、熱間粉末プレス、プレスおよび鍛造、固体または粉末プリフォームのいずれかの鍛造、直接および間接的な押出し、ロールシートからの打ち抜きまたは圧印、および/または事前に形成された固体からの機械加工を含む。
【0087】
[0104]形状は一般に、
図3Bに示されるリング形状である。リング溝インサートを形成する方法は、さらに、表面の改質を含む。表面改質は、リング溝インサート上に丸みの付いた、切欠きの、正弦波状の、または波形の表面を提供するように、任意の角部を変化させまたは排除することを含む。ピストン鋳造により接触しているまたはその他の手法で包封されているリング溝インサートの内面(例えば、
図3Cのような370Aおよび370Bを含む表面370)は、丸みの付いた、切欠きの、正弦波状の、または波形の表面を含む。インサート形状は、インサートとピストンとの間の結合を高めるように、即ち隙間または多孔度の導入なしに結合を提供するように、改質されてもよい。
【0088】
[0105]リング溝インサートの形状を改質するその他の方法は、さらに、または代わりに、穴または突起などを通して形体を付加して、インサートとピストンとの間の改善された結合を容易にすることを含んでいてもよい。例えば、リング溝インサートは、リング溝インサートの円周の厚みを通して穴を開け、それによってピストン材料の一部が、ピストンアセンブリの形成中にインサートリングを貫通するように、機械加工されてもよい。さらに、または代わりに、突起またはピンの形体は、粉末プリフォーム形状の焼結によってまたは機械加工によって、リング溝インサートに含まれてもよい。
【0089】
[0106]一部の実施形態では、リング溝インサートの表面およびより特別には内面は、表面積を増大させることによって接着および熱伝導率を改善するように改質される。内面の表面積は、様々な周期および振幅の溝を表面に付加すること、および/または表面を粗面化して表面粗さ(Ra)を調整することの少なくとも1つによって増大させてもよい。
【0090】
[0107]リング溝インサートを形成する方法は、インサートの周りのピストンのダイキャストまたは鍛造前に、既に記述されたリング溝インサートをコーティングすることを、さらに含んでいてもよい。コーティングは、鋳造材料とインサートとの間の接着を促進させるのに使用される。コーティングの厚さは、数ナノメートルから数ミクロンの範囲であり得る。コーティングは、薄膜、箔として、めっき、陽極三環、冷間スプレー、電解、フラッシング、またはこれらの組合せによって付着させてもよい。限定するものではないが、コーティングの厚さは、0.01μmから5.0μm、例えば0.01μmから4μm、0.01μmから3.5μm、0.01μmから3μm、0.1μmから3μm、0.5μmから3μm、または1.0μmから3.0μmであってもよい。
【0091】
[0108]形状改質、表面改質、および/またはコーティングを含む上記方法は、ピストンアセンブリを形成するため、以下に記述されるように、事前に形成された固体リング溝インサートをピストンと一体化する前に行ってもよい。
【0092】
ピストンアセンブリを作製する方法
[0109]ピストンアセンブリを作製する方法は、上述のリング溝インサートを提供することを含み、このインサートは、事前に形成された固体であってもよい。アルミニウムピストンと共に従来の鋼製インサートを使用する公知の製造プロセスは、本明細書の実施形態に適用可能である。次いで事前に形成された固体のリング溝インサートは、ピストン材料の金属または金属合金、または本明細書に記述される第1の材料と、ダイキャストまたは鍛造されて、事前に形成された固体のリング溝インサートの周りに形成されてもよい。ピストンおよびリング溝インサートを含むピストンアセンブリは、鋳造または鍛造を含んでいてもよい。ピストンアセンブリの形成は、ピストン金属または金属合金の固相線温度以上で行われてもよい。好ましい実施形態では、鋳造は、ピストン金属または金属合金の固相線温度以上で行われて、鋳造ピストンアセンブリを形成する。重力、低および高圧ダイキャスト、スクイズ鋳造、チキソ鍛造、半固体鍛造、および付加製造などの他の方法も、企図される。付加製造は、ピストンからインサートまで形成し、インサートを粉末中に配置し、次いで付加製造を継続して、モノリシックピストン/インサートユニットへの一体化を完了するのに使用することができる。
【0093】
[0110]ピストンアセンブリを作製する方法はさらに、ピストンアセンブリを形成するためのダイキャストまたはその他の形成技法の後の、ピストンアセンブリの均質化、クエンチ処理、エージング、および熱処理の少なくとも1つを含んでいてもよい。ピストンアセンブリを作製する方法は、少なくとも1つのピストンリングを受け取るためのリング溝に少なくとも1つのリング溝を形成することを含む。少なくとも1つのリング溝(例えば、
図3Cの溝390)は、ピストンアセンブリを形成した後の任意の時間にインサート(例えば、
図3Cのインサート360)に機械加工されてもよい。
【0094】
[0111]リング溝インサートを含むピストンアセンブリを形成するためのピストン材料の鋳造の実施例では、本明細書に開示される方法は、種々の合金元素(アルミニウム、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、またはスズなど)をマスター合金または純金属(アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、またはこれらの組合せ)に添加して、溶融液体プールに添加することを含んでいてもよい。このことは、磁石を使用してまたは手作業による撹拌で、炉を撹拌することも含んでいてもよい。本明細書に開示される方法は、溶融液体を調製するために、誘導炉またはガス焚き炉または電気抵抗炉を使用することを含んでいてもよい。
【0095】
[0112]本明細書に開示される方法は、溶融アルミニウム合金を鋳造して、リング溝インサートを有するアルミニウム合金鋳造ピストンを形成することを含んでいてもよい。一部の実施形態では、溶融合金は、鋳造前に処理されてもよい。処理は、炉のフラックス処理、インライン脱気、インラインフラックス処理、およびフィルタリングの1つまたは複数を含むことができる。アルミニウム合金鋳造ピストンは、直接鋳造および連続鋳造法によることを含む、当業者に公知のアルミニウム工業で一般に使用される規格に従い行われる任意の鋳造プロセスを使用して形成することができる。いくつかの非限定的な例として、鋳造プロセスは、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは永続的成型プロセスを含んでいてもよい。一部の態様では、DC鋳造が使用される。
【0096】
[0113]本明細書に開示される方法は、均質化を含んでいてもよい。均質化は、本明細書に記述される合金組成物から調製された鋳造ピストンアセンブリを加熱して、少なくとも400℃(例えば、少なくとも400℃、少なくとも410℃、少なくとも420℃、少なくとも430℃、少なくとも440℃、少なくとも450℃、少なくとも460℃、少なくとも470℃、少なくとも480℃、少なくとも490℃、少なくとも500℃、少なくとも510℃、少なくとも520℃、または少なくとも530℃)のピーク金属温度(PMT)を得ることを含んでいてもよい。例えば、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、400℃から580℃、420℃から575℃、440℃から570℃、460℃から565℃、485℃から560℃、500℃から560℃、または520℃から580℃の温度に加熱することができる。必要に応じて、PMTへの加熱速度は、100℃/時以下、75℃/時以下、50℃/時以下、40℃/時以下、30℃/時以下、25℃/時以下、20℃/時以下、または15℃/時以下である。必要に応じて、PMTへの加熱速度は、10℃/分から100℃/分(例えば、10℃/分から90℃/分、10℃/分から70℃/分、10℃/分から60℃/分、20℃/分から90℃/分、30℃/分から80℃/分、40℃/分から70℃/分、または50℃/分から60℃/分)である。
【0097】
[0114]次いである場合には、アルミニウム合金鋳造ピストンアセンブリは、ある期間にわたり浸漬される(即ち、PMTなど特定の温度で保持される)。一部の実施形態では、アルミニウム合金鋳造ピストンアセンブリは、最長24時間(例えば、包括的に30分から6時間)浸漬される。例えば、一部の実施形態では、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、少なくとも400℃の温度で30分間以上(例えば、最長24時間)浸漬される。本明細書に記述される均質化は、多段階均質化プロセスで実施することができる。一部の実施形態では、均質化プロセスは、均質化加熱および浸漬サイクルの2つ以上の段階を含むことができる。
【0098】
[0115]均質化後、クエンチ処理水をピストンアセンブリの表面に数秒間付着させて、外面を素早く冷却し、内面をより高い温度で維持するようにし、それによって断面を横断する微細構造での勾配も促進され得る。微細構造の勾配は、化学組成の勾配、一次粒度分布、不溶性金属間粒子(タイプ、サイズ、形状、分布)、テクスチャ、または再結晶粒の分布、沈殿の強化、および/または強化粒子の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0099】
[0116]次いで一部の実施形態では、ピストンアセンブリは、選択されたゲージに基づくクエンチ処理ステップで、50℃/秒から400℃/秒の間のクエンチ処理速度で、室温まで冷却することができる。例えば、クエンチ処理速度は、50℃/秒から375℃/秒、60℃/秒から375℃/秒、70℃/秒から350℃/秒、80℃/秒から325℃/秒、90℃/秒から300℃/秒、100℃/秒から275℃/秒、125℃/秒から250℃/秒、150℃/秒から225℃/秒、または175℃/秒から200℃/秒とすることができる。
【0100】
[0117]クエンチ処理ステップでは、アルミニウム合金ピストンアセンブリが、液体(例えば、水)および/または気体または別の選択されたクエンチ処理媒体で、急速にクエンチ処理される。ある特定の態様では、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、水で急速にクエンチ処理することができる。一部の実施形態では、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、空気でクエンチ処理される。
【0101】
[0118]一部の実施形態では、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、T6またはT7テンパーをもたらすよう人工的にエージングさせるなど、ある期間にわたり人工的にエージングさせることができる。一部の実施形態では、硬化プロセスを加速させるため、アルミニウム合金ピストンアセンブリを、100℃から225℃で、ある期間にわたり人工的にエージングさせることができる。必要に応じて、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、15分から48時間の期間にわたり人工的にエージングさせることができる。多数のエージング処理を使用することもできる。
【0102】
[0119]一部の実施形態では、生成中または生成後の熱処理は、上述の界面領域での改善された結合のため、アルミニウム合金ピストンアセンブリを生成するのに適用することもできる。一部の実施形態では、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、400℃から600℃で、ある期間にわたり熱処理することができる。必要に応じて、アルミニウム合金ピストンアセンブリは、15分から48時間の期間にわたり熱処理することができる。ある特定の態様では、ピストンアセンブリは、500℃で24時間熱処理される。
【0103】
鍛造によりピストンアセンブリを形成する方法
[0120]ピストンアセンブリは、300℃から550℃の温度での、より好ましくは400℃から500℃の温度での、適切な工具での熱間鍛造により形成されてもよい。
【0104】
[0121]以下の実施例は、本開示の組成、物品、および方法を例示するために提供する。実施例は、単なる例示であり、本開示を本明細書に記述される材料、条件、またはプロセスパラメータに限定するものではない。
【実施例】
【0105】
実施例1
[0122]リング溝インサートを、本明細書の本開示の態様に従い調製した。インサート材料[SupremEX(登録商標)225CA合金(MATERION PERFORMANCE ALLOYS AND COMPOSITES、Mayfield Heights、OH 44124、USA)]は、金属基複合材(MMC)を生成するために、25体積%の炭化ケイ素粒子で強化された高品質アルミニウム合金(2124A)を含んでいた。炭化ケイ素は、3μmの平均粒度分布(D50)を有する。25体積%の炭化ケイ素粒子で強化された2124アルミニウム合金の物理的性質を、表1に示す。
【0106】
【表1】
[0123]インサート材料を、機械式合金プロセスを使用して、粉末冶金経路を介して製造した。得られた微細構造は、強化粒子および精製粒構造の均質分布を実証した。インサート材料特性は、2.88g/cm
3の密度、115GPaの弾性率、16.1μm/mKの熱膨張係数、および156W/m°Kの熱伝導率(TC
insert)を含む。
【0107】
[0124]ピストンアセンブリは、リング溝インサートの周りに12.6重量%のケイ素(Al-12.6Si)を含むピストン材料アルミニウム合金を鋳造することによって形成される。ピストンを形成するAl-12.6Si合金は、2.68g/cm3の密度、18.0μm/mKの熱膨張係数(CTE)、および154W/m°Kの熱伝導率を有する。
【0108】
[0125]インサート材料の密度(2.88g/cm3)は、ピストン材料の密度(2.68g/cm3)の107%である。さらに、インサート材料は、鋼よりも著しく低い密度を有する。インサート材料の熱膨張係数(16.1μm/mK)は、ピストン材料のCTE(18.0μm/mK)の89%であり、インサートとピストンとの間の結合応力を低減させる。インサート材料の熱伝導率(156W/m°K)は、ピストン材料の熱伝導率(154W/m°K)よりも大きく、熱障壁を低減させることによって、ピストンに対して改善された冷却を提供する。
【0109】
[0126]
図4は、ピストン620およびインサート660を有するピストンアセンブリ650の界面領域655の走査型電子顕微鏡写真である。
【0110】
実施例2
[0127]事前に形成された固体リング溝インサートを、実施例1のように調製した。次いでインサートの内面を銅でめっきして、拡散障壁コーティングを厚さ2μmで形成し、ピストンに対するインサートの結合を強化した。
【0111】
[0128]ピストンアセンブリを、実施例1のように事前に形成された固体リング溝インサートの周りに、12.6重量%のケイ素を含むピストン材料アルミニウム合金、Al-12.6Siを鋳造することによって、形成した。
【0112】
[0129]
図5Aは、ピストン720およびインサート760を有するピストンアセンブリ750の界面領域755の走査型電子顕微鏡写真である。界面領域755は、ピストンとインサートとの間に銅層765を含む。
【0113】
実施例3
[0130]事前に形成された固体リング溝インサートを、実施例1のように調製した。次いでインサート内面をニッケル/銅でめっきして、拡散障壁コーティングを2μmの厚さで形成し、ピストンに対するインサートの結合を強化した。
【0114】
[0131]ピストンアセンブリを、実施例1のように事前に形成された固体リング溝インサートの周りに、12.6重量%のケイ素を含むピストン材料アルミニウム合金を鋳造することによって形成した。
【0115】
[0132]
図5Bは、ピストン820およびインサート860を有するピストンアセンブリ850の界面領域855の走査型電子顕微鏡写真である。界面領域855は、ピストンとインサートとの間にニッケル/銅層865を含む。
【0116】
実施例4
[0133]ピストンアセンブリを、実施例3のように形成した。次いでアセンブリを、500℃で24時間熱処理した。
【0117】
[0134]
図6は、ピストン920およびインサート960を有するピストンアセンブリ950の界面領域955の走査型電子顕微鏡写真である。界面領域955は、ピストンとインサートとの間のニッケル/銅層965を含む。界面は、良好な結合を実証する。走査型電子顕微鏡法(SEM)およびエネルギー分散性X線分光測定(EDS)を使用して、ピストン鋳造のケイ素含量が局所的に低減し、有意なマグネシウムの存在が予期せずに界面に移行したことを観察した。
【0118】
実施例5
[0135]
図7Aは、摩耗を測定する様々な材料に関する最終接触圧力(psi)の関数として、リングの比摩耗率(k)(1/psi)を示す、プロット1000を示す。実施例5は、インサートリング上のCrNでコーティングされたブロックであり、金属基複合材(MMC)を生成するよう25体積%の炭化ケイ素粒子で強化された高品質航空宇宙グレードアルミニウム合金(2124A)を含みかつ以下の表2に示される物理的性質を有する、インサート材料[SupremEX(登録商標)225XE Alloy(MATERION PERFORMANCE ALLOYS AND COMPOSITES、Mayfield Heights、OH 44124、USA)]に関するプロット点E5-1およびE5-2として示されるデータを含む。
【0119】
【表2】
[0136]比較例C1は、プロット点C1-1およびC1-2に示されるデータを含み、実施例5の場合と同じCrNブロック材料を有するが、鍛造合金AA2618に対して従来の鋼製インサート(CrNでコーティングされた)を表すようにAA2618リング上にありかつ鋳造アルミニウムピストン材料に類似の摩耗率を有するものを使用する。図示されるように、実施例5は、比較材料の場合よりも少なくとも500×低い摩耗率を実証する。
【0120】
[0137]
図7Bは、荷重(lbf)の関数としてリングの比摩耗率(k)(1/psi)を示す、プロット1100を示す。実施例5は、プロット点E5-3およびE5-4として示されるデータを含み、比較例C1は、プロット点C1-3およびC1-4として示されるデータを含む。この場合も、実施例5は、鋼製の比較材料よりも著しく低い摩耗率を実証する。
【0121】
実施例6
[0138]ASTM G99によるピンオンディスク摩耗試験を、ピンおよびディスクでの重量損失を測定するため、実施例5におけるようにインサート材料を含む様々な材料に関して行った。ピンオンディスク摩耗試験に関するパラメーターを、表3に示す。
【0122】
【表3】
[0139]
図8Aは、ディスク損失対実施例5のインサート材料を含む実施例6の鋼製ピン、および比較例C2、2618アルミニウム合金に関する、20N、35N、および50Nでのインサート材料を含むプロット1200を含む。実施例6は、2618アルミニウム合金の場合の約10分の1である重量損失を実証する。
【0123】
[0140]
図8Bは、ディスク損失対実施例6の鋼製ピン、比較例C2、ならびに比較例C3の300M鋼、および比較例C4のTi6Al4Cチタン合金に関する、20N、35N、および50Nでのデータを示す、プロット1300を含む。実施例6は、比較例の場合よりも著しく低い重量損失を実証する。
【0124】
[0141]
図9は、組み合わせた鋼製ピンの損失およびディスク損失(摩耗連結側)対実施例6および比較例C2、C3、およびC4に関するディスクの、20N、35N、および50Nでのデータを示す、プロット1400を含む。実施例6は、比較例の場合よりも著しく低い重量損失を実証する。
【0125】
実施例7
[0142]
図10Aは、0.1μから50μmの平均粒度分布を有するセラミック粒子に関するインサート材料の母材中のセラミック粒子の体積分率(10体積%から50体積%)の関数として、MMCインサート材料の母材の内表面積(mm
2/mm
3)を示す、プロット1500を含む。
【0126】
[0143]
図10Bは、1.0μmから10μmの平均粒度分布を有するセラミック粒子を使用する、10体積%から30体積%のセラミック粒子の体積分率の関数として、MMCインサート材料の母材の内表面積(mm
2/mm
3)の好ましい領域を示す、プロット1600を含む。プロット1500および1600は、母材内のセラミック粒子の粒度および体積分率のバランスをとることにより、MMC内の安定性および耐摩耗性の好ましい領域を理論的に予測する。高過ぎる内表面積は不十分な摩耗を提供し、低過ぎる内表面積は、鋳造中に不十分な安定性と動作中のピストンリングに対する過剰に攻撃的な摩耗とを提供する。
【0127】
実施例8
[0144]加速耐久性試験を、実施例1のように調製されたMMCリング溝インサートに対して行った。この試験を、標準のFord 150時間試験(スロットル全開で96時間)後にモデル化した。改質試験は、Ford 2.3L EcoBoostをベースエンジンとして使用した。材料選択に起因して、ピストン、ピン、およびロッドの全質量は、従来のエンジン材料と比較して30%(1.4kg)低減した。150時間の加速耐久試験に関する試験手順は、40分の反復サイクルを含んだ。各サイクルは、アイドル(2000rpmで)、ピークトルク(3000rpmで)、ピークパワー(6000rpmで)、および90% e-max(5850rpmで低下した速度でのピークパワー)を含んだ。40分のサイクルを225回、合計で150時間にわたり繰り返した。表4の概要を参照されたい。したがってこの攻撃性試験は、90%以上のWOT(全開スロットル)で96時間費やすエンジンを含んだ。ヘッドガスケットを試験中に2回吹き付け、試験中のハードランニングを示している。ヘッドガスケットのこの不良は、試験レジームの強度を実証する。
【0128】
【表4】
[0145]加速耐久試験の過酷な条件であっても、MMCリング溝インサートの摩耗は示されなかった。さらに、ピストンアセンブリ全体に関する任意の寸法変化は最小限に抑えられた。ピストン溝は、最上部の溝の平坦さの寸法変化を実証し、試験の過程で平均で15ミクロンから平均で42ミクロンまで増大したが、これは最小限に抑えられた。重要なことは、結果は、MMCリング溝インサートの目に見えない摩耗または変形のない、試験の全体を通して一貫したエンジン性能を実証した。
【0129】
実施形態
[0146]以下の実施形態が企図される。特徴および実施形態の全ての組合せが企図される。
【0130】
[0147]実施形態1:円周溝を有するピストンと;ピストンの円周溝内のリング溝インサートとを含み、リング溝インサートが外面および内面を有し、リング溝インサートがピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であり、第2の材料が、下記:
a)第1の材料の密度の90%から120%の密度;
b)第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);または
c)第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する、ピストンアセンブリ。
【0131】
[0148]実施形態2:第1の材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、またはこれらの組合せである、実施形態1の実施形態。
【0132】
[0149]実施形態3:アルミニウム合金が、ケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、スカンジウム、リチウム、チタン、ジルコニウム、またはスズの1種または複数の合金元素を含む、実施形態1または2の実施形態。
【0133】
[0150]実施形態4:アルミニウム合金が、20℃から80℃の差の範囲内で第2の材料とは異なる融解温度を有する、実施形態1~3の実施形態のいずれかの実施形態。
【0134】
[0151]実施形態5:第1の材料のアルミニウム合金が、第2の材料よりも低い溶融温度を有する、実施形態1~4の実施形態のいずれかの実施形態。
【0135】
[0152]実施形態6:第2の材料が、第1の材料の溶融温度よりも上でその寸法形状を維持する、実施形態1~5の実施形態のいずれかの実施形態。
【0136】
[0153]実施形態7:第2の材料が、最高725℃の温度までその寸法形状を維持する、実施形態1~6の実施形態のいずれかの実施形態。
【0137】
[0154]実施形態8:第2の材料が、最高1000℃の温度までその寸法形状を維持する、実施形態1~7の実施形態のいずれかの実施形態。
【0138】
[0155]実施形態9:第2の材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、またはこれらの組合せの母材と、この母材中に分散された、第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子とを含む金属基複合材(MMC)である、実施形態1~8の実施形態のいずれかの実施形態。
【0139】
[0156]実施形態10:第2の材料が、アルミニウム合金の母材と、この母材中に分散された、第2の材料の全体積に対して5体積%から60体積%の強化粒子とを含む金属基複合材(MMC)である、実施形態1~9の実施形態のいずれかの実施形態。
【0140】
[0157]実施形態11:強化粒子が、母材の硬度よりも大きい硬度を有する、実施形態1~10の実施形態のいずれかの実施形態。
【0141】
[0158]実施形態12:強化粒子が8よりも大きい硬度を有し、母材が4未満の硬度を有し、硬度はモース硬度スケールに従い測定される、実施形態1~11のいずれかの実施形態。
【0142】
[0159]実施形態13:強化粒子が9から10の硬度を有し、母材が2から3の硬度を有し、硬度はモース硬度スケールに従い測定される、実施形態1~12の実施形態のいずれかの実施形態。
【0143】
[0160]実施形態14:強化粒子が、少なくとも1種の複数のセラミック粒子を含む、実施形態1~13の実施形態のいずれかの実施形態。
【0144】
[0161]実施形態15:少なくとも1種の複数の強化粒子が、炭化物、酸化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、またはこれらの組合せを含む、実施形態1~14の実施形態のいずれかの実施形態。
【0145】
[0162]実施形態16:少なくとも1種の複数の強化粒子が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、アルミナ、またはこれらの組合せを含む、実施形態1~15の実施形態のいずれかの実施形態。
【0146】
[0163]実施形態17:MMCが、第2の材料の全体積に対して15体積%から50体積%の強化粒子を含む、実施形態1~16の実施形態のいずれかの実施形態。
【0147】
[0164]実施形態18:MMCが、第2の材料の全体積に対して15体積%から30体積%の強化粒子を含む、実施形態1~17の実施形態のいずれかの実施形態。
【0148】
[0165]実施形態19:MMCが、140から170W/m°Kの熱伝導率を有する、実施形態1~18の実施形態のいずれかの実施形態。
【0149】
[0166]実施形態20:強化粒子の平均粒度が0.01μmから10μmである、実施形態1~19の実施形態のいずれかの実施形態。
【0150】
[0167]実施形態21:第2の材料のアルミニウム合金が、88重量%よりも多いアルミニウムである、実施形態1~20の実施形態のいずれかの実施形態。
【0151】
[0168]実施形態22:第2の材料のアルミニウム合金が、91.2重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.15重量%から4.9重量%の銅、および0.1重量%から1.8重量%のマグネシウムを含む、実施形態1~21の実施形態のいずれかの実施形態。
【0152】
[0169]実施形態23:第2の材料のアルミニウム合金が、91.2重量%から94.7重量%のアルミニウム、3.8重量%から4.9重量%の銅、1.2重量%から1.8重量%のマグネシウム、および0.3重量%から0.9重量%のマンガンを含む、実施形態1~22の実施形態のいずれかの実施形態。
【0153】
[0170]実施形態24:第2の材料のアルミニウム合金が、95.8重量%から98.6重量%のアルミニウム、0.8重量%から1.2重量%のマグネシウム、および0.4重量%から0.8重量%のケイ素を含む、実施形態1~23の実施形態のいずれかの実施形態。
【0154】
[0171]実施形態25:第2の材料のアルミニウム合金が、92.8重量%から95.8重量%のアルミニウム、3.2重量%から4.4重量%の銅、0から0.2重量%の鉄、1.0から1.6重量%のマグネシウム、0から0.6重量%の酸素、0から0.25重量%のケイ素、および0から0.25重量%の亜鉛を含む、実施形態1~24の実施形態のいずれかの実施形態。
【0155】
[0172]実施形態26:第2の材料が、強化粒子の第2の体積分率の表面積に対し、別のアルミニウム合金母材の第1の体積分率の表面積により測定されたときに、その寸法形状を維持する、実施形態1~25の実施形態のいずれかの実施形態。
【0156】
[0173]実施形態27:リング溝インサートの内面が、1/1000以下の酸化アルミニウム対アルミニウムの比を有する、実施形態1~26の実施形態のいずれかの実施形態。
【0157】
[0174]実施形態28:リング溝インサートの内面が、0.4μm以上の表面粗さ(Ra)を有する、実施形態1~27の実施形態のいずれかの実施形態。
【0158】
[0175]実施形態29:リング溝インサートが、0.5%以下の多孔度を有する、実施形態1~28の実施形態のいずれかの実施形態。
【0159】
[0176]実施形態30:リング溝インサートが、外面から内向きに延びる1つまたは複数の溝を含む、実施形態1~29の実施形態のいずれかの実施形態。
【0160】
[0177]実施形態31:リング溝インサートの一部分がピストンのトップランド内に延び、最上部にある1つまたは複数の溝の上部からピストンの上部まで測定された距離が、参照鋼製インサートと比較して少なくとも10%低減する、実施形態1~30の実施形態のいずれかの実施形態。
【0161】
[0178]実施形態32:リング溝インサートとピストンとの内面と間に界面領域をさらに含む、実施形態1~31の実施形態のいずれかの実施形態。
【0162】
[0179]実施形態33:界面領域が、少なくとも1つの金属間二次相を含む、実施形態1~32の実施形態のいずれかの実施形態。
【0163】
[0180]実施形態34:界面領域が、第1の材料および第2の材料を分離する拡散制御コーティングを含む、実施形態1~33の実施形態のいずれかの実施形態。
【0164】
[0181]実施形態35:界面領域が、アルミニウム、銅、ニッケル、または亜鉛のコーティングを含む、実施形態1~34の実施形態のいずれかの実施形態。
【0165】
[0182]実施形態36:界面領域が、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組合せを含む、少なくとも1つの金属間二次相を含む、実施形態1~35の実施形態のいずれかの実施形態。
【0166】
[0183]実施形態37:界面領域が、ピストンの第1のアルミニウム合金から移行する、銅、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、またはニッケルの1種または複数の合金元素に富む、実施形態1~36の実施形態のいずれかの実施形態。
【0167】
[0184]実施形態38:界面領域が、マングネシウムおよびニッケルの少なくとも1種に富む、実施形態1~37の実施形態のいずれかの実施形態。
【0168】
[0185]実施形態39:第2の材料が、アルミニウム合金と5体積%から60体積%の強化粒子とを含む金属基複合材(MMC)であり、界面領域が、1/500以下の強化粒子対母材相の比を有する、実施形態1~38の実施形態のいずれかの実施形態。
【0169】
[0186]実施形態40:界面領域が、5%以下の多孔度を有する、実施形態1~39の実施形態のいずれかの実施形態。
【0170】
[0187]実施形態41:
方法が:
2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、事前に形成された固体であるリング溝インサートを提供するステップと;
金属または金属合金の固相線温度以上でリング溝インサートの周りに金属または金属合金をダイキャストして、鋳造ピストンアセンブリを形成するステップと
を含む、ピストンアセンブリを作製するステップを含む、実施形態1~40の実施形態のいずれかの方法。
【0171】
[0188]実施形態42:方法がさらに、ダイキャスト前にリング溝インサートをコーティングするステップを含む、実施形態1~41の実施形態のいずれかの方法。
【0172】
[0189]実施形態43:方法がさらに、ダイキャスト前にリング溝インサートの表面積を増大させるステップを含む、実施形態1~42の実施形態のいずれかの方法。
【0173】
[0190]実施形態44:方法がさらに、ダイキャスト後に鋳造ピストンアセンブリを熱処理し、クエンチ処理し、およびエージングさせるステップの少なくとも1つを含む、実施形態1~43の実施形態のいずれかの方法。
【0174】
[0191]実施形態45:方法がさらに、リング溝インサートの少なくとも1つのリング溝を形成するステップを含む、実施形態1~44の実施形態のいずれかの方法。
【0175】
[0192]実施形態46:内燃機関が:
ピストンシリンダー;
ピストンシリンダー内のピストンアセンブリ
を含み;ピストンアセンブリは
円周溝を有するピストン;および
外面および内面を有する、ピストンの円周溝内のリング溝インサート
を含み、リング溝インサートは、ピストンの第1の材料とは異なる第2の材料であり、第2の材料は、下記:
a)第1の材料の密度の90%から120%の密度;
b)第1の材料のCTEの50%から90%の熱膨張係数(CTE);または
c)第1の材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率
の少なくとも1つを有する、
実施形態1~45の実施形態のいずれかの実施形態。
【0176】
[0193]実施形態47:少なくとも1つのピストンリングが、リング溝インサートの外面から内向きに半径方向に延びる別の円周溝でピストンアセンブリとピストンシリンダーとの間に配置される、実施形態1~46の実施形態のいずれかの実施形態。
【0177】
[0194]実施形態48:リング溝インサートは、比較例の鋼製リング溝インサートに対して2.5重量%の低減を提供して、少なくとも2.3kg CO2/リットル石油のCO2低減をもたらす、実施形態1~47の実施形態のいずれかの実施形態。
【0178】
[0195]実施形態49:エンジンが、炭化水素、亜酸化窒素、および酸化炭素排出の低減を有するが、燃焼圧力および/またはエンジン効率の低減がない、実施形態1~48の実施形態のいずれかの実施形態。
【0179】
[0196]実施形態50:CO2排出が、参照の鋼製インサートと比較して少なくとも10%低減する、実施形態1~49の実施形態のいずれかの実施形態。
【0180】
[0197]実施形態51:車両が、先行する実施形態のいずれかの内燃機関を含む、実施形態1~50の実施形態のいずれかの実施形態。
【0181】
[0198]実施形態52:
2.5g/cm3から3.0g/cm3の密度、
140から170W/m°Kの熱伝導率、
15ppm/℃から25ppm/℃のCTE、および
0.5%以下の多孔度
を有する、事前に形成された固体である、事前に形成されたリング溝インサートを含み、インサートは、金属母材中に複数のセラミック粒子を5体積%から60体積%含む、実施形態1~51の実施形態のいずれかの実施形態。
【0182】
[0199]実施形態53:事前に形成された固体リング溝インサートは、0.01μmから10μmの平均粒度分布(D50)を有する複数のセラミック粒子を含む、実施形態1~52の実施形態のいずれかの実施形態。
【0183】
[0200]実施形態54:事前に形成されたリング溝インサートは、100mm2/mm3から1000mm2/mm3の内表面積を有する複数のセラミック粒子を含む、実施形態1~53の実施形態のいずれかの実施形態。
【0184】
[0201]上記開示されたおよびその他の特徴および機能の変形例、またはそれらの代替例は、多くのその他の種々のシステムまたは適用例と組み合わされてもよいことが理解されよう。以下の請求項またはその均等物により包含されることも意図される、様々な、現在予期せぬまたは期待されない代替例、修正例、変形例またはその改善例が、引き続き当業者によりなされ得る。
【国際調査報告】