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特表2024-505392イルジン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを用いた脳転移及びCNS転移の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】イルジン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを用いた脳転移及びCNS転移の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/17 20060101AFI20240130BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240130BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20240130BHJP
【FI】
A61K31/17 ZNA
A61P35/04
A61P25/00
A61K45/00
G01N33/50 P
G01N33/68
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541651
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 US2022070126
(87)【国際公開番号】W WO2022150851
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,370
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400268
【氏名又は名称】ランタン ファルマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、アディティア
(72)【発明者】
【氏名】バティア、キショー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA12
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZB26
4C084ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA29
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本出願は、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを使用して、対象の脳に転移したがんを治療する方法を開示する。更に、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び薬学的に許容される担体、賦形剤、添加剤又はそれらの組合せを有する医薬組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において脳に転移したがんを治療、減少又は抑制する方法であって、(a)前記対象が脳転移を有すると診断することと、(b)治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを前記対象に投与することとを含み、前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが負の光学活性を有する、方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが単剤療法として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが併用療法として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記併用療法が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン並びにテモゾロミド、ベバシズマブ、エベロリムス、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ビンクリスチン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、メトトレキサート、エトポシド、ビンブラスチン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド及びイホスファミドからなる群から選択される少なくとも1つの治療薬の投与を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象を放射線療法に供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記放射線療法が、全脳照射、分割放射線療法、放射線手術、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンによる治療の前、後、又は間に、前記対象を放射線療法に供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
それを必要とする対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与することが、前記治療に曝露されていない脳転移と比較して、前記対象において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%超の脳転移の阻害をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)酵素の発現増加に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記対象から得られた試料におけるPTGR1遺伝子の発現を決定することと、(b)工程aにおいて前記PTGR1遺伝子の発現レベルが上昇している対象を選択することと、(c)工程bで選択された前記対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって前記対象の脳転移を治療、抑制又は減少させることとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PTGR1遺伝子が、配列番号2又は配列番号4に記載の核酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(a)前記対象から得られた試料におけるPTGR1タンパク質の発現を決定することと、(b)工程aにおいてPTGR1タンパク質の発現レベルが上昇している対象を選択することと、(c)工程bで選択された前記対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって前記対象の脳転移を治療又は減少させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記PTGR1タンパク質が、配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
がんを有する対象における脳転移又はCNS転移を阻害又は減少させる方法であって、
(a)脳転移又はCNS転移を有すると前記対象を決定又は診断することと、
(b)前記対象から得られた生体試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルを測定することと、
(c)前記試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルを、PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現の標準と比較することであって、PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルが増加しているか又は高い、比較することと、
(d)治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって前記脳転移を阻害又は減少させることと、を含む、方法。
【請求項15】
がんを有する対象における脳転移を阻害又は減少させる方法であって、
(a)前記対象から得られた生体試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルを測定することと、
(b)前記試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルを、PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現の標準と比較することと、
(c)PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルがヒドロキシウレアメチルアシルフルベン感受性の閾値以上である場合、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって前記脳転移を阻害又は減少させることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン感受性を決定することが、PDX由来の脳転移の3Dモデルを使用することを含む、請求項1又は15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法に従って、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに対する検体の感受性を決定する際に使用するためのキットであって、前記キットが、1つ以上の試薬、標準物質、及びそれらの使用のための説明書を含み、前記標準物質が、前記ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに対する前記検体の感受性をスクリーニングするための閾値レベル又は標的レベルを提供する、PTGR1の発現又は転写を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年1月8日に出願された米国仮出願第63/135,370号の利益を主張し、参照によりその開示の全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による組み込み
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別的に示されているのと同程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0003】
本出願は、化学及び腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本出願は、イルジン及びヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを使用して脳転移を治療する方法に関する。本発明は、CNS転移を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
脳転移又は転移がん患者の大部分は、一般的に転帰不良である。中枢神経(CNS)転移、特に脳では、肺がん(患者の20~56%)、乳がん(患者の5~20%)及び黒色腫(患者の7~16%)が多い。脳転移の発生率は、脳における疾患を制御することができない全身治療の改善のために増加していると考えられている。脳転移の発生は、患者の生存を損ない、最大50%の患者の死因である。脳転移発生の顕著な特徴が同定されている。
【0005】
転移性腫瘍は一般に多くの化学療法剤に耐性であり、脳機能を維持する外科的切除の選択肢が限られているため、脳転移に治療的に介入することは腫瘍学者にとって特に困難であった。脳の独特の微小環境は、転移性がん細胞及び治療に対する手強い障壁をもたらす。脳転移性腫瘍細胞は、血液脳関門(BBB)を通過しなければならない。BBBは不均一であり、ほとんどの薬物に対して不透過性である。最近まで、脳転移療法は、外科手術、定位放射線療法、及び全脳放射線療法を含む主に局所的なものであった。現在、治療の選択肢は限られている。
【0006】
したがって、脳転移を治療するための治療的介入が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、治療有効量のイルジン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベン、特に負の光学活性を有する光学異性質体を対象に投与することを含む、がんを有する対象における1つ又は複数の脳/CNS転移又は転移性脳腫瘍を治療、抑制又は減少させるための方法が提供される。がんは、肺がん、乳がん、黒色腫、結腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、中皮腫、卵巣がん、膵臓がん、肉腫、白血病、リンパ腫、尿路上皮がん、頭頸部がん、骨肉腫、膠芽腫、星状細胞腫、及び膀胱がんからなる群から選択することができる。本明細書では、イルジン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが単剤療法として投与される、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。本明細書では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンが併用療法として投与され、併用療法が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン並びにテモゾロミド、ベバシズマブ、エベロリムス、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ビンクリスチン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、メトトレキサート、エトポシド、ビンブラスチン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド及びイホスファミドからなる群から選択される少なくとも1つの治療薬の投与を含む、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法は、対象を放射線療法に供することを更に含み得る。放射線療法は、全脳照射、分割放射線療法、放射線手術、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0008】
本明細書では、それを必要とする対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与することにより、治療に曝露されていない脳転移と比較して、対象において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%超の脳転移の阻害をもたらす、対象において脳転移又はCNS転移を治療又は減少させるための方法が提供される。
【0009】
本明細書では、プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)酵素の発現増加に関連するがんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が提供される。本明細書では、配列番号2又は配列番号4に示される核酸配列の発現増加に関連するがんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。本明細書では、配列番号2又は配列番号4に示されるアミノ酸配列の発現増加に関連するがんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。
【0010】
本明細書では、(a)対象から得られた試料におけるPTGR1遺伝子の発現を決定することと、(b)工程aにおいてPTGR1遺伝子の発現レベルが上昇している対象を選択することと、(c)工程bで選択された対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって対象の脳転移を治療又は減少させることと、を含む、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が提供される。本明細書では、(a)対象から得られた試料中のPTGR1タンパク質の発現を決定することと、(b)工程aにおいてPTGR1タンパク質の発現レベルが上昇している対象を選択することと、(c)工程bで選択された対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって対象の脳転移を治療又は減少させることと、を含む、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。本明細書では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを代謝するのに十分な、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が更に提供される。
【0011】
本明細書では、治療有効量の(a)第1の医薬組成物であって、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物、並びに(b)第2の医薬組成物であって、追加の治療薬及び薬学的に許容される担体を含む第2の医薬組成物を対象に投与することを含む、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が提供される。第1の医薬組成物及び第2の医薬組成物は、1つの組成物として、又は別個の組成物として投与される。追加の治療薬は、テモゾロミド、ベバシズマブ、エベロリムス、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ビンクリスチン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、メトトレキサート、エトポシド、ビンブラスチン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド、及びイホスファミドからなる群から選択される。
【0012】
本明細書では、(a)対象から得られた試料におけるPTGR1遺伝子の発現を決定することと、(b)工程aにおいてPTGR1遺伝子の発現レベルが上昇している対象を選択することと、(c)工程bで選択された対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって対象の脳転移を治療又は減少させることとを含み、がんが、肺がん、乳がん、黒色腫、結腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、中皮腫、卵巣がん、膵臓がん、肉腫、白血病、リンパ腫、尿路上皮がん、頭頸部がん、骨肉腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、及び膀胱がんからなる群から選択され得る、がんを有する対象において脳転移を治療又は減少させるための方法が提供される。
【0013】
本明細書では、脳転移をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含み、接触させることが、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを脳転移を有する対象に投与することを含む、脳転移を阻害する方法が提供される。本明細書では、脳転移をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含み、脳転移が、プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)の発現増加に関連する、脳転移を阻害する方法が提供される。
【0014】
本明細書では、脳腫瘍細胞をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含み、接触させることが、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを脳転移を有する対象に投与することを含む、脳転移においてアポトーシスを誘導する方法が提供される。
【0015】
本明細書では、(a)対象から得られた生物学的試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルを測定することと、(b)試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルを、PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現の標準と比較することと、(c)PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルが増加しているか又は高い場合、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって脳転移を阻害又は減少させることと、を含む、がんを有する対象において脳転移を阻害又は減少させる方法が提供される。
【0016】
本明細書では、(a)対象から得られた生物学的試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルを測定することと、(b)試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルを、PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現の標準と比較することと、(c)PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパクの発現レベルがヒドロキシウレアメチルアシルフルベン感受性の閾値以上である場合、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって脳転移を阻害又は減少させることと、を含む、がんを有する対象において脳転移を阻害又は減少させる方法が提供される。本明細書では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン感受性を決定することが、PDX由来の脳転移の3Dモデルを使用することを含む、がんを有する対象において脳転移を阻害又は減少させる方法が更に提供される。
【0017】
本明細書では、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法に従って、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに対する検体の感受性を決定する際に使用するためのキットであって、キットが、1つ以上の試薬、標準物質、及びそれらの使用のための説明書を含み、標準物質が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンに対する検体の感受性をスクリーニングするための閾値レベル又は標的レベルを提供する、PTGR1の発現又は転写を含む、キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の新規な特徴は、添付の「特許請求の範囲」に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の「発明を実施する形態」、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【0019】
図1】LP-184及びテモゾロミド(TMZ)の見かけの透過性を示す。
【0020】
図2】細胞生存率及びBBB完全性に対するLP-184の影響を示す。
【0021】
図3】GEOデータセット、GSE100534の分析を示す。
【0022】
図4】GEO、データセットGSE132226の分析を示す。
【0023】
図5】PDX由来の脳転移の3DモデルにおけるLP-184の効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書の主題が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、本出願の理解を容易にするために、以下の定義が提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「患者」、「対象」、「個体」、及び「宿主」という用語は、異常な生物学的若しくは細胞増殖活性又は脳転移と関連する疾患若しくは障害に罹患しているか、又は罹患していると疑われるヒト又はヒトでない動物のいずれかを指す。
【0026】
かかる疾患又は障害の「治療する」及び「治療すること」という用語は、疾患又は障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。これらの用語は、がんなどの状態に関連して使用される場合、以下のうちの1つ以上を指す:がんの成長を妨げる、がんの重量又は体積を縮小させる、患者の予想生存期間を延ばす、腫瘍の成長を阻害する、腫瘍量を減少させる、転移性病変のサイズ又は数を減少させる、新しい転移性病変の発生を抑制する、生存期間を延ばす、無増悪生存期間を延ばす、進行までの時間を延ばす、及び/又は生活の質を向上させる。脳転移の「治療」又は「治療すること」という用語は、脳転移の発生を阻止すること、又は症状を逆転させること、及び/又は脳転移に罹患している患者の臨床転帰を改善することを含み得る。臨床転帰の改善の例としては、生存期間の延長、腫瘍サイズの縮小、腫瘍サイズの非増殖、及び/又は神経学的症状の悪化の欠如が挙げられる。
【0027】
がんなどの状態又は疾患に関連して使用される場合の「予防する」という用語は、状態又は疾患の症状の頻度の減少又は発症の遅延を指す。したがって、がんの予防には、例えば、未治療の対照集団と比較して予防的治療を受けている患者の集団における検出可能ながん性増殖の数を減らすこと、及び/又は例えば、統計的及び/又は臨床的に有意な量によって、治療された集団対未治療の集団における検出可能ながん性増殖の出現を遅らせることが含まれる。
【0028】
「薬学的に許容される」という用語は、一般に安全で毒性がなく、生物学的にも他の方法でも望ましい薬学的組成物を調製するのに有用であることを意味し、獣医並びにヒトの医薬使用に許容されるものを含む。
【0029】
「治療効果」という用語は、本発明の化合物又は組成物の投与によって引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトにおける有益な局所的又は全身的効果を指す。「治療有効量」という語句は、合理的な利益/リスク比で脳転移によって引き起こされる疾患又は状態を治療するのに有効である本発明の化合物又は組成物の量を意味する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1mg/日、2mg/日、4mg/日、5mg/日、10mg/日、15mg/日、20mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、及び720mg/日からなる群から選択される。
【0030】
かかる物質の治療有効量は、対象及び治療される病状、対象の体重及び年齢、病状の重症度、投与方法などに応じて変化し、これらは、当業者によって容易に決定され得る。
【0031】
プロスタグランジンレダクターゼ-1(Ptgr1)は、エイコサノイドの異化及び4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)などの脂質過酸化に関与するalkenal/one oxidoreductaseである。PTGR1アイソフォーム1のタンパク質配列及びmRNA配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。PTGR1アイソフォーム2のタンパク質配列及びmRNA配列を、それぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。
【0032】
用語「発現レベル」は、本明細書で使用される場合、目的の特定の遺伝子(例えば、PTGR1)のタンパク質、RNA、又はmRNAレベルを指し得る。発現レベルを決定するために、本明細書に記載される及び/又は当技術分野で公知の任意の方法を利用することができる。例としては、逆転写及び増幅アッセイ(PCR、ライゲーションRT-PCR又は定量RT-PCTなど)、ハイブリダイゼーションアッセイ、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、免疫染色、又は質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。アッセイは、生物学的試料に対して、又は試料から単離されたタンパク質/核酸に対して直接行うことができる。これらのアッセイを実施することは、関連分野において日常的に行われている。例えば、本明細書中に記載される任意の方法における測定工程は、対象から得られた生物学的試料由来の核酸試料を、本明細書中に提示される目的の遺伝子に特異的にハイブリダイズする1つ又は複数のプライマーと接触させる工程を含む。あるいは、本明細書中に記載される任意の方法における測定工程は、対象から得られた生物学的試料由来のタンパク質試料を、本明細書中に提示される目的のバイオマーカーに結合する1つ又は複数の抗体と接触させる工程を含む。
【0033】
PTGR1遺伝子の発現レベルの増加は、参照値又は同じ対象から得られた異なる(又は以前の)試料において測定されたこの遺伝子の発現レベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、1500%、又はそれを超えるその発現レベルの増加を含み得る。
【0034】
「参照又はベースラインレベル/値」は、本明細書で使用される場合、互換的に使用することができ、類似の年齢範囲、疾患状態(例えば、ステージ)を有する対象、同じ若しくは類似の民族群の対象を含むがこれらに限定されない集団研究から得られる数若しくは値に対して、又はがんの治療を受けている対象の出発試料に対して相対的であることを意味する。そのような参照値は、数学的アルゴリズム及び計算されたがんの指数から得られる母集団の統計分析及び/又はリスク予測データから導出することができる。参照指数はまた、統計的及び構造的分類のアルゴリズム及び他の方法を使用して構築及び使用することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、参照値又はベースライン値は、1人又は複数人の健康な対象又はがんと診断されていない対象に由来する対照試料中のPTGR1遺伝子の発現レベルである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、参照値又はベースライン値は、任意のがん治療の前に同じ対象から得られた試料中のPTGR1遺伝子の発現レベルである。本発明の他の実施形態では、参照値又はベースライン値は、がん治療中に同じ対象から得られた試料中のPTGR1遺伝子の発現レベルである。あるいは、参照値又はベースライン値は、同じ対象から、又は試験対象と同様の年齢範囲、疾患状態(例えば、ステージ)を有する対象から以前に得られた試料中のPTGR1遺伝子の発現レベルの以前の測定値である。
【0037】
本明細書で使用される場合、PTGR1の機能的活性が高い「細胞に関連する脳転移」という語句は、PTGR1の機能的活性が高い可能性がある細胞、又はそれらの細胞におけるSMARCB1の機能的活性が高いことが確認されている細胞を含むがんを指す。
【0038】
「試料」という用語は、本明細書で使用される場合、対象に由来する任意の生物学的試料を指し、細胞、組織試料、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液、及び精液を含むが、これらに限定されない)、腫瘍細胞、及び腫瘍組織を含むが、これらに限定されない。試料は、治療又は試験下の対象によって提供することができる。あるいは、試料は、当技術分野における日常的な実践に従って医師によって得ることができる。
【0039】
「感受性」、「応答性の」及び「応答性」という用語は、本明細書で使用される場合、がん治療(例えば、LP184)が所望の効果を有する(例えば、誘導する)可能性を指すか、あるいは、細胞(例えば、がん細胞)、組織(例えば、腫瘍)又はがんを有する患者(例えば、がんを有するヒト)における治療によって引き起こされる又は誘導される所望の効果の強度を指す。例えば、所望の効果は、治療に曝露されていないがん細胞の増殖と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を超える、インビトロでのがん細胞の増殖の阻害を含み得る。所望の効果はまた、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の脳転移の減少を含み得る。治療に対する感受性は、細胞増殖アッセイ、例えば、入射光ビームの細胞の吸光度の関数として治療された細胞の増殖を測定する細胞ベースのアッセイ(例えば、本明細書中に記載されるNCI60アッセイ)によって決定され得る。このアッセイでは、吸光度が低いほど細胞増殖が少ないことを示し、したがって治療に対する感受性を示す。増殖のより大きな減少は、治療に対するより高い感受性を示す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「治療」、「治療すること」などは、効果を得る目的で、薬剤を投与すること、又は処置を行うことを指す。効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であり得、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患の症状の部分的又は完全な治癒をもたらすという点で治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける腫瘍の治療を含んでもよく、(a)疾患の素因を有する可能性があるが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患又は疾患の症状が発生するのを予防すること(例えば、原因疾患に関連し得るか、又はそれによって引き起こされ得る疾患を含む)、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること、及び(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0041】
本出願は、キノコ毒素イルウジンSに由来する半合成又は合成抗腫瘍剤であり得るヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(現在、Lantern Pharma,Inc.によってLP-184と呼ばれる)を使用して脳転移を治療するための治療方法を開示又は提供する。ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを以下に示し、負の光学活性を有するヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、そのような治療においてより効果的であった。
【化1】
【0042】
ある特定の実施形態では、本出願は、脳転移を治療するための方法を提供する。「転移」は、本明細書で使用される場合、がん(例えば、原発性がん)の元の位置と物理的に連続していない位置に1つ又は複数のがん細胞が存在することを指す。例えば、限定するものではないが、がんは、肺がん、乳がん、黒色腫、結腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、中皮腫、卵巣がん、膵臓がん、肉腫、白血病、リンパ腫、尿路上皮がん、頭頸部がん、骨肉腫及び膀胱がんを含むことができる。特定の実施形態では、がんは、神経膠芽腫及び星状細胞腫を含むことができる。CNS又は脳転移は、臨床医によって診断することができる。
【0043】
具体的な実施形態は、脳転移を治療する方法に関する。本方法は、有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベン、特に負の光学活性を有する光学異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む。脳転移に罹患している患者又は対象は、黒色腫、肺がん、乳がん、結腸がん、又は腎臓がんに起因するものであってもよい。治療方法は、一般に、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを含む製剤の治療有効量の用量を対象に投与することを伴う。一例では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを単剤療法として投与することができる。他の例では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを併用療法として投与することができる。負の光学活性を有するヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、かかる治療に有効であった。
【0044】
一実施形態は、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び追加の治療薬を別々の組成物又は同じ組成物で同時投与することを含む。したがって、いくつかの実施形態は、(a)治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はその薬学的に許容される塩、及び(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組合せを含む第1の医薬組成物と、(a)治療有効量の追加の治療薬、及び(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組合せを含む第2の医薬組成物と、を含む。いくつかの実施形態は、(a)治療有効量の追加の治療薬、及び(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組合せを含む薬学的組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象を放射線療法に供することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、放射線療法は、全脳照射、分割放射線療法、及び放射線手術であり得る。対象は、CNS及び/又は脳転移を有すると診断されるべきである。
【0045】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、テモゾロミド、ベバシズマブ、エベロリムス、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ビンクリスチン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、メトトレキサート、エトポシド、ビンブラスチン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、シクロホスファミド、及びイホスファミドからなる群から選択される。
【0046】
別の実施形態は、がんを有する対象において脳転移を阻害又は減少させる方法を含む。工程は、対象が脳転移を有するかどうかを医学的に決定することと、対象から得られた生物学的試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルを測定することと、当該試料中のPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルをPTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現の標準と比較することと、を含む。PTGR1遺伝子又はそれがコードするタンパク質の発現レベルは増加又は高くてもよく、その場合、本方法は、治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによって脳転移を阻害、治療、抑制又は減少させることを含む。
【0047】
脳転移は、通常、画像検査、典型的にはコンピュータ断層撮影(CTスキャン)及び磁気共鳴画像法(MRI)スキャンによって検出することができる。疾患を探索するためにトレーサと呼ばれる放射性物質を使用する陽電子放出断層撮影(PET)スキャンもまた、腫瘍が大きくなったときに腫瘍を検出することができるが、これらのスキャンは感度がはるかに低く、脳転移を探すために依拠されるべきではない。CT又はMRIで脳に腫瘍が見られ、がんの既存の診断がない場合、医師は通常、身体の残りの部分のスキャンを取得して、がんが脳の外側から来たかどうかを決定する。供給源が体内に見出される場合、生検は脳からではなくそこから得ることができ、脳腫瘍は体内に見出されるがんに関連すると推定することができる。発見された唯一の腫瘍が脳内の腫瘍である場合、それががんであるかどうか、及びがんである場合、それが発生した場所を決定するために脳内の生検が必要とされ得る。
【0048】
いくつかの実施形態は、脳転移を阻害する方法に関し、本方法は、脳転移をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法を使用して原発性CNS腫瘍又は脳転移を治療することができる。
【0049】
一実施形態は、対象における中枢神経系(CNS)転移を治療するための方法であって、a)対象がCNS転移を有すると診断されるCNS転移を有するかどうかを決定することと、b)CNS転移を有すると診断された対象に治療有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与し、それによってCNS転移を阻害、治療、抑制、又は減少させることと、を含む方法を含む。
【0050】
いくつかの実施形態は、脳転移におけるアポトーシスを誘導する方法を含み、本方法は、脳腫瘍細胞をヒドロキシウレアメチルアシルフルベンと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、脳転移を有する対象に有効量のヒドロキシウレアメチルアシルフルベンを投与することを含む。
【0051】
投与期間は、腫瘍が制御下にあり、レジメンが臨床的に耐用される限り、数週間の治療サイクルであり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又は他の治療薬の単回用量は、週に1回、好ましくは3週間(21日)治療サイクルの1日目及び8日目に各1回投与することができる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又は他の治療薬の単回用量は、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間(又はそれ以上)の治療サイクル中に、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、又は毎日投与することができる。投与は、治療サイクルの各週の同じ日又は異なる日に行うことができる。
【0052】
ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、主に、具体的には皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、髄腔内投与、硬膜外投与、関節内投与及び局所投与を含む非経口投与によって、又は、例えば、可能であれば様々な剤形でも投与され得る。
【0053】
非経口投与のための注射剤としては、例えば、無菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液が挙げられる。水溶液及び懸濁液としては、例えば、注射用蒸留水及び生理食塩水が挙げられる。非水性溶液及び懸濁液としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、及びポリソルベート80(商品名)が挙げられる。このような組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤(例えば、乳糖)及び溶解補助剤(例えば、メグルミン)などの補助剤を含有し得る。これらは、バクテリア保持フィルターによる濾過、殺菌剤の配合、又は照射によって殺菌される。代替的に、これらは、無菌固体組成物に一度製造され、次いで、使用前に無菌水又は注射用無菌溶媒に溶解又は懸濁され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、転移性脳腫瘍、退形成性星細胞腫、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄膜腫、混合性神経膠腫、及びそれらの組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は多形性膠芽腫である。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は転移性脳腫瘍である。
【0055】
経口投与のための液体組成物は、例えば、薬学的に許容されるエマルジョン、液体、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含み、例えば、蒸留水及びエタノールの一般的な使用のための不活性希釈剤を含む。組成物は、不活性希釈剤以外に、湿潤剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤及び防腐剤などの助剤を含んでもよい。
【0056】
任意の患者に対する特定の投与量及び治療計画は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、排泄率、薬剤の組合せ、治療を行う医師の判断、及び治療されている特定の疾患の重症度を含む、様々な要因に依存することも理解されたい。組成物中の本発明の化合物の量はまた、組成物中の特定の化合物に依存するであろう。
【実施例
【0057】
負のキラリティーを有するヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はLP-184は、ヒト血液脳関門を厳密に再現するインビトロ3Dモデルにおいて血液脳関門を透過する。このモデルは、タイトジャンクションの形成、特異的担体のより高い発現、及び/又は大きな細胞生存率に起因して、BBBの輸送特性を模倣する。この3DインビトロモデルのBBBは、脳内皮細胞と周皮細胞及び星細胞をインサートに層状に共培養することによって作り出され、内皮細胞の分極を改善し、接合帯の形成を促進し、バリアの発達に重要であるより良い内皮細胞間接触を提供し、分泌された神経栄養因子の希釈を防ぐ。これらの条件が一緒に合わさって、BBBを模倣するインビボモデルの開発につながる。
【0058】
このアッセイは、BBBの構造と機能に対する化合物の影響だけでなく、関門を通過する化合物輸送の両方を研究することを可能にする新規の3D BBBモデルを活用している。LP-184及びテモゾロミド(TMZ)、脳腫瘍の標準治療剤と共に、この実施例は、既知の陽性及び陰性対照薬であるアンチピリン及びシクロスポリンAの挙動の比較をベンチマークとして示す。LP-184は、血液脳関門を貫通することにおいては、標準治療剤TMZと同じくらい効果的である。TMZ用に測定された見かけのBBB透過性は、30分で1.72×10cm/秒、LP-184では、30分で1.53×10cm/秒であった(図1)。化合物の相互作用及び処理によるBBBの調節を分析すると、LP-184が細胞生存率に及ぼす影響はわずかであり、BBB完全性は損なわれなかったことが観察された(図2)。
【0059】
臨床データ分析は、脳に転移した腫瘍におけるPTGR1レベルが、LP-184を代謝させるのに十分であることを示している。LP-184についての脳転移性組織におけるPTGR1レベルの閾値を決定するために、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から2つのGene Expression Omnibus(GEO)データセット、GSE100534及びGSE132226を得た。
【0060】
以下の表1に示すように、LP-184は、血漿と比較して約20%の脳腫瘍曝露(AUCに基づく)、及び正常脳と比較して約2倍高い脳腫瘍曝露を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
更に、LP-184は、腫瘍のないマウスと比較して腫瘍を有するマウスにおいてより遅いクリアランスを示し(2389ml/h/kg対5284ml/h/kg)、これはより高い血漿曝露をもたらし得る。
【0063】
図3は、GSE100534の分析が、(原発性乳房腫瘍由来の)脳転移性組織におけるPTGR1レベルが、LP-184感受性についての閾値を上回ることを実証したことを示す。
【0064】
図4は、GSE132226の分析が、(原発性結腸直腸腫瘍由来の)脳転移性組織におけるPTGR1レベルが、LP-184感受性についての閾値を上回ることを実証したことを示す。
【0065】
図5は、LP-184が、患者由来異種移植片(PDX)由来脳転移の3Dモデルにおいて効力を保持することを示す。原発性肺がん及び乳がんの種々の脳転移モデルは、試験条件に応じて、低ナノモル濃度からマイクロモル濃度の範囲のLP-184に対する用量依存的感受性を示した。72時間の治療期間にわたるLP184のIC50は、88nM~4.283μMの範囲であることが見出された。
【0066】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明は更なる修正が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従い、本開示からの逸脱を含む本発明の任意の変形、使用、又は適合を包含することを意図しており、本開示は、本発明が属する技術分野における公知又は慣習的な実施の範囲内にあり、本明細書で前述した本質的な特徴に適用することができ、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
【0067】
配列
配列番号1-プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)アイソフォーム1[ホモサピエンス]:
【化2】
【0068】
配列番号2-プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)アイソフォーム1[ホモサピエンス]転写バリアント1、mRNA:
【化3】
【0069】
配列番号3-プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)アイソフォーム2[ホモサピエンス]:
【化4】
【0070】
配列番号4-プロスタグランジンレダクターゼ1(PTGR1)アイソフォーム2[Homo sapiens]転写バリアント3、mRNA:
【化5】
【配列表フリーテキスト】
【0071】
配列番号2 <223> mRNAに対する相補的DNA
配列番号4 <223> DNAコード配列
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024505392000001.app
【国際調査報告】