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特表2024-5054083次元画像表示システム及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】3次元画像表示システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/52 20200101AFI20240130BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240130BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240130BHJP
   H04N 13/388 20180101ALI20240130BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240130BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G02B30/52
G02B5/02 E
G02B5/02 B
G02B5/18
G02B5/32
G02B27/02 Z
G02B27/01
H04N13/388
B60K35/00 A
G02B5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542478
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021084907
(87)【国際公開番号】W WO2022152471
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】17/148,920
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520329911
【氏名又は名称】ライトスペース テクノロジーズ, エスアイエー
【氏名又は名称原語表記】LIGHTSPACE TECHNOLOGIES, SIA
【住所又は居所原語表記】Ziedleju iela 1, Marupe, 2167 Marupes novads Latvia
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】オスマニス イルマス
(72)【発明者】
【氏名】ガートナーズ ウギス
(72)【発明者】
【氏名】オスマニス クリス
(72)【発明者】
【氏名】ナールス マーティンス
(72)【発明者】
【氏名】ザベル ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】バロデ サンドラ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
2H249
3D344
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA05
2H042AA19
2H042AA26
2H042BA01
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA20
2H199BA23
2H199BB02
2H199BB17
2H199BB23
2H199BB27
2H199BB33
2H199BB52
2H199BB59
2H199BB62
2H199CA24
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA48
2H199CA68
2H199CA97
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA18
2H199DA26
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA25
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA64
2H249CA04
2H249CA09
2H249CA22
3D344AA03
3D344AA19
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
表示システム(100)及び3次元画像を表示するための方法。光源(102)は、第1の光学系(104)に向けて光ビームを出射する。第1の光学系は光ビームをコリメートして空間光変調器(106、520)に提供する。空間光変調器はコリメート光ビームを変調する。変調された光ビームは第1の方向(D1)へ提供される。第1の光学的イメージエキスパンダ(108、200、300、402、502、600A、600B、600C)は、第1の方向に対して第1の角度αで傾斜しており、変調された光ビームを第2の方向(D2)へ反射する。第2のイメージエキスパンダ(110、404、504)は、第2の方向に対して第2の角度βで傾斜しており、第1の光学的イメージエキスパンダに反射した光ビームを更に第3の方向(D3)に反射する。光路上に、3次元画像を表示するためのスクリーン素子(112)が配置される。
【選択図】図5D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像を表示するための表示システムであって、
第1の光学系に向けて光ビームを出射するために用いられる光源と、
前記光ビームをコリメートし、コリメートされた光ビームを空間光変調器に向けて提供するために用いられる前記第1の光学系と、
前記コリメートされた光ビームを変調する前記空間光変調器と、
を備え、前記変調された光ビームは第1の方向(D1)に供給され、前記表示システムは更に、
前記第1の方向に対して第1の角度(α)で傾斜して配され、前記変調された光ビームを第2の方向(D2)に反射するために用いられる第1の光学的イメージエキスパンダと、
前記第2の方向に対して第2の角度(β)で傾斜して配されると共に前記第1の光学的イメージエキスパンダの後の光路上に配され、前記第1の光学的イメージエキスパンダにより反射された光ビームを第3の方向(D3)に反射するために用いられる第2の光学的イメージエキスパンダと、
前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素と、
を備え、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチ(P)を少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度(γ)で傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である、
表示システム。
【請求項2】
前記第1の光学系は、レンズ、プリズム、メタサーフェス、ホログラフィック光学素子、回折光学素子、反射光学素子の少なくとも1つの光学部品の系として選択される、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記新しいパラメータは、ネクスト・ホップ・チェイニング・カウンタ(NCC)を含む、請求項1に記載の方法。前記第1光学系においてコリメートされた後の前記光ビームの発散角は1.5度未満である、請求項1又は2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記第1の角度(α)及び前記第2の角度(β)は各々1度から10度までである、請求項1から3のいずれかに記載の表示システム。
【請求項5】
前記第3の角度(γ)及び前記第4の角度(δ)は各々45度である、請求項1から4のいずれかに記載の表示システム。
【請求項6】
前記第1のファセット、前記第2のファセット、前記第3のファセット及び前記第4のファセットの少なくとも1つは、フラットファセット、カーブファセットの少なくとも1つから選択される、請求項1から5のいずれかに記載の表示システム。
【請求項7】
前記光源が、可視光スペクトルを発するレーザー、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)の少なくとも1つであるように選択される、請求項1から6のいずれかに記載の表示システム。
【請求項8】
前記空間光変調器が、反射型空間光変調器、透過型光変調器の少なくとも1つであるように選択される、請求項1から7のいずれかに記載の表示システム。
【請求項9】
前記空間光変調器が、デジタルマイクロミラーデバイス、エルコス(LCoS)、強誘電性液晶を用いたLCOS(FLCoS)変調器、液晶表示マイクロパネルのうちの少なくとも1つであるように選択される、請求項1から8のいずれかに記載の表示システム。
【請求項10】
前記スクリーン要素は、複数の表示要素を有するマルチプレーンボリュメトリックディスプレイである、請求項1から9のいずれかに記載の表示システム。
【請求項11】
前記複数の表示要素は、2つの光学状態を有するように構成された少なくとも1つの液晶ベースの光拡散要素を有し、該2つの光学状態のうち
第1の光学状態は高い光透過率を有し、
第2の光学状態は高いヘイズ値を有する、
請求項10に記載の表示システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの液晶ベースの光拡散要素の液晶は、ポリマーを含まないコレステリック液晶である、請求項11に記載の表示システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの液晶ベースの光拡散体要素は、少なくとも2つの活性拡散層を有する、請求項10又は11に記載の表示
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の表示システムであって、
前記スクリーン要素は2つ以上の画像投影面を有し、
前記表示システムはコントローラを備え、該コントローラは、前記光源と前記空間光変調器と前記スクリーン要素の動作を同期させて、前記スクリーン要素の2つ以上の画像投影面のそれぞれにイメージプレーン情報を提供するように構成される、
表示システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の表示システムを備える、ヘッドマウントディスプレイシステム。
【請求項16】
請求項1から14のいずれかに記載の表示システムを備える、ヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項17】
3次元画像の表示方法であって、
光源から第1の光学系に向かって光ビームを出射することと、
前記光ビームを前記第1の光学系で受光すると共に該光ビームを空間光変調器に向けてコリメートすることと、
前記コリメートされた光ビームを前記空間光変調器で変調し、該光ビームを第1の方向(D1)に提供することと、
前記変調された光ビームを、前記第1の方向に対して第1の角度(α)で、第1の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該変調された光ビームを第2の方向(D2)に反射することと、
前記反射した光ビームを、前記第2の方向に対して第2の角度(β)で、第2の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該光ビームを第3の方向(D3)に反射することと、
前記第3の方向(D3)に反射した光ビームを、前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素で受光することと、
を含み、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチ(P)を少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度(γ)で傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である、
方法。
【請求項18】
前記第1の角度(α)及び前記第2の角度(β)は各々1度から10度までである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の角度(γ)及び前記第4の角度(δ)は各々45度である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1光学系においてコリメートされた後の前記光ビームの発散角は1.5度未満である、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、一般に表示装置に関し、より具体的には、3次元(3D)の画像(イメージ)を表示するための表示システムに関する。また本開示は、3次元画像を表示するための方法に関する。更に本開示は、開示された表示システムを実装するヘッドマウントディスプレイシステム及びヘッドアップディスプレイシステムを含む、ボリュメトリックディスプレイに関する。
【背景】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイやニアアイディスプレイ等の立体表示装置は、航空、工学、ゲーム、医療等の分野で広く使用されている。このような立体表示装置は、3次元画像を本当の意味で伝えることができる。このような表示装置は、3D画像を知覚するための最も強力な奥行き情報として、両眼視差に依存している。しかし、このような表示装置では、人間の視覚装置に備わっている他の自然なメカニズムが考慮されていない。人間の視覚システムの特性、例えば遠近調節(accommodation)と両眼転導(vergence)との関係性を無視することは、立体表示装置を近接作業に適用する際の制約となる。これは、利用可能な単一のディスプレイの焦点面がユーザから2~10mの距離にあり、ユーザに見せるべきコンテンツが腕の届く範囲にある場合、遠近調節と両眼転導の深度情報との間のミスマッチが大きすぎるため、不快な視聴体験になるという事実に由来する。このような場合、ユーザは、視界がぼやけ、眼精疲労を経験し、形成された画像に集中することが困難となる可能性がある。そのため、3D映像の視聴中に不快感を感じ、視聴時間を短くせざるを得なくなることがある。
【0003】
ステレオニアアイディスプレイにおける両眼転導と遠近調節の対立を緩和するために、いくつかの解決策が提案されており、ライトフィールドディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、ボリュメトリックディスプレイなどがある。しかし、これらの装置は、両眼転導と遠近調節の相反を解決する一方で、実用化においては、一般に、嵩張るという問題がある。例えば、ボリュメトリックディスプレイを採用した3Dディスプレイ装置は、良質な画像を提供し、両眼転導と遠近調節の対立に対処するが、かなり嵩張るものである。一般的に、ボリュメトリックディスプレイは、高リフレッシュレートの背面画像投影ユニットに組み合わされる投影ボリュームを有する。この投影ボリュームは、例えば、振動膜(reciprocating membrane)や、電気的に切り替え可能な光拡散要素のスタックである場合があり、また、他の手段により又は投影画像により直接励起される固体、液体又は気体の媒体である場合がある。これらの場合、特にリフォーカスされない可能性がある投影ユニットは、投影ユニットから投影ボリュームまでの光路をかなり延長することによって達成される十分な被写界深度を確保するために、大きな空間を必要とする。投影ユニットによってもたらされる大きなフットプリントは、不利な要因であり、それゆえ、このようなボリュメトリックディスプレイが広く受け入れられることを制限している。
【0004】
別の例では、受け入れられやすいフットプリントを実現するために、ライトフィールドアプローチが採用されている。ここでは、8Kディスプレイ(又は複数の8Kディスプレイ)のような非常に高い画像解像度のディスプレイパネルと、マイクロレンズ又はレンズレットアレイが使用されている。しかし、このようなシステムには、画像アーチファクトや一般的な知覚画質に関する欠点がある。ライトフィールドの知覚的にシームレスな表現を保証するためには、60ビュー、100ビュー、200ビューなど、数十から数百に達する複数のビューが提示されなければならない。このアーキテクチャでは、ビュー又は光線は、レンズ要素を通じてディスプレイパネルを分割することによって生成される。従って、非常に高い画像リフレッシュレートのパネルを使用する場合であっても、有効解像度は小さくなり得る。あるいは、画像解像度が妥当な値に保たれている場合、生成されるビュー又はレイの数が少なくなり、知覚可能な画像アーチファクトを画像に与える可能性がある。
【0005】
更に別の例では、電気的に切り替え可能な光拡散要素のスタックを有する背面画像投影ユニット及び固体投影ボリュームからなるボリュメトリックディスプレイ装置において、テレセントリック光学系を採用することによりフットプリントを改善することが提案されている。光拡散要素と同程度の大きさの大型反射型光学素子を採用することで、光路、ひいては3Dディスプレイ全体の体積を小さくしている。この方法によって、均一な倍率と大きな奥行き視野を持つ最適な画質を維持しながら、システムの体積を半分にすることができる。しかし、この場合の設置面積の削減は中程度であり、次世代3Dディスプレイ技術に望ましい設置面積を得るには至っていない。
【0006】
従って、前述の議論に照らして、特に、純粋な仮想現実環境及び拡張現実シナリオのように、近接作業を重視した3D画像表示に関する従来の表示システムに関連する種々の問題を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0007】
本開示は、3次元画像を表示するためのディスプレイシステム及び方法を提供しようとするものであり、特に、両眼転導と遠近調節の競合及び大きなフットプリントに関する問題に対処する。また本開示は、ディスプレイ装置をコンパクトかつ実質的に軽量にするためにフットプリントを低減しながら、単眼フォーカスキュー及び眼球遠近調節サポートを伝えることができるヘッドマウントディスプレイシステム及びヘッドアップディスプレイシステムを提供しようとするものである。本開示の目的は、先行技術で遭遇した問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することであり、3次元画像の正しい表示のための表示システム及び方法を提供することである。
【0008】
第1の捉え方によれば、本開示の実施形態は、3次元画像を表示するための表示システムを提供する。この表示システムは、
・ 第1の光学系に向けて光ビームを出射するために用いられる光源と、
・ 前記光ビームをコリメートし、コリメートされた光ビームを空間光変調器に向けて提供するために用いられる前記第1の光学系と、
・ 前記コリメートされた光ビームを変調する前記空間光変調器と、
を備え、前記変調された光ビームは第1の方向に供給され、前記表示システムは更に、
・ 前記第1の方向に対して第1の角度αで傾斜して配され、前記変調された光ビームを第2の方向に反射するために用いられる第1の光学的イメージエキスパンダと、
・ 前記第2の方向に対して第2の角度βで傾斜して配されると共に前記第1の光学的イメージエキスパンダの後の光路上に配され、前記第1の光学的イメージエキスパンダにより反射された光ビームを第3の方向に反射するために用いられる第2の光学的イメージエキスパンダと、
・ 前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素と、
を備え、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
・ 少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
・ 前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチを少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
・ 少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
・ 前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。
【0009】
第2の捉え方によれば、本開示の実施形態は、3次元画像を表示するため方法を提供する。この方法は、
・ 光源から第1の光学系に向かって光ビームを出射することと、
・ 前記光ビームを前記第1の光学系で受光すると共に該光ビームを空間光変調器に向けてコリメートすることと、
・ 前記コリメートされた光ビームを前記空間光変調器で変調し、該光ビームを第1の方向に提供することと、
・ 前記変調された光ビームを、前記第1の方向に対して第1の角度αで、第1の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該変調された光ビームを第2の方向(D2)に反射することと、
・ 前記反射した光ビームを、前記第2の方向に対して第2の角度βで、第2の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該光ビームを第3の方向に反射することと、
・ 前記第3の方向に反射した光ビームを、前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素で受光することと、
を含み、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
・ 少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
・ 前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチを少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
・ 少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
・ 前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。
【0010】
本開示の実施形態は、先行技術における前述の問題を実質的に排除するか、又は少なくとも部分的に解決し、3次元画像の正しい表示を可能とする。3次元画像を表示するための、本開示による表示装置は、先行技術の表示装置と比較してフットプリントが小さく、生成される3次元画像において、両眼転導と遠近調節の衝突も少ないという利点を有する。
【0011】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0012】
当然ながら、本願に開示されるものの特徴は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本願の開示の範囲から逸脱することなく様々に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
前述した概要と以下の例示的実施形態の詳細説明は、添付の図面と合わせて読むことでより理解されることになる。本願に開示されるものを説明する目的で、本願に開示されるもの(以下、本開示という)の例示的構成を図面に示す。ただし、本開示はここで記載される特定の方法及び手段に限定されるものではない。また、当業者であれば、図面は正確な縮尺率で描かれていないことも理解されよう。同じ構成要素は可能な限り同一番号で示すようにした。
以下、本開示の実施形態を、一例として次の図面を参照しながら説明する。
図1】本開示の一実施形態に係る、3次元画像を表示するための表示システムの構成を示すブロック図である。
図2】本開示のある実施形態による、図1の表示システムのための第1の光学式イメージエキスパンダの略図である。
図3】本開示のある実施形態による、図2の第1の光学的イメージエキスパンダの略図である。第1の光学的イメージエキスパンダによって変調された光ビームの反射も描かれている。、
図4】本開示の実施形態に従う表示システムの一部の概略図である。この表示システムは、3次元画像を表示するための投影ボリュームと共に第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダを実装する。
図5A】本開示のある実施形態による、第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダを有する光学的画像拡大系を示す略図である。
図5B】本開示のある実施形態による、図5Aの開口部の断面図である。
図5C】本開示のある実施形態による、投影ボリュームを有する光学的画像拡大系を備える表示システムの一部を示す略図である。
図5D】本開示の別の実施形態による、投影ボリュームを有する光学的画像拡大系を備える表示システムの一部の略図である。
図6図6A、6B及び6Cは、本開示のそれぞれ異なる実施形態による、第1の光学的イメージエキスパンダの略図である。
図7A】本開示のある実施形態による、第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが大きい場合に得られる画像要素の説明図である。
図7B】本開示の他の実施形態による、第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが小さい場合に得られる画像要素の説明図である。
図7C】本開示のある実施形態による、スクリーン要素に形成された画像要素の説明図である。
図7D】本開示の別の実施形態による、スクリーン要素に形成された画像要素の説明図である。
図8】本開示のある実施形態による、複合光拡散要素の説明図である。
図9】本開示のある実施形態による3次元画像の表示方法のステップを列挙したフローチャートである。
【実施形態の詳細説明】
【0014】
添付の図面において、下線付きの番号は、その番号が書かれている場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすのに使用される。下線無しの番号は、その番号を繋ぐ線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示す汎用アイテムを特定するのに使用される。
【0015】
次に、本願の開示事項の例示的実施形態とそれを実装し得る方法を詳述していく。本願の開示事項を実装する幾つかの方法が説明されているが、本願の開示事項を実装又は実施する他の実施形態も可能であることは、当業者には理解されよう。
【0016】
第1の捉え方によれば、本開示の実施形態は、3次元画像を表示するための表示システムを提供する。この表示システムは、
・ 第1の光学系に向けて光ビームを出射するために用いられる光源と、
・ 前記光ビームをコリメートし、コリメートされた光ビームを空間光変調器に向けて提供するために用いられる前記第1の光学系と、
・ 前記コリメートされた光ビームを変調する前記空間光変調器と、
を備え、前記変調された光ビームは第1の方向に供給され、前記表示システムは更に、
・ 前記第1の方向に対して第1の角度αで傾斜して配され、前記変調された光ビームを第2の方向に反射するために用いられる第1の光学的イメージエキスパンダと、
・ 前記第2の方向に対して第2の角度βで傾斜して配されると共に前記第1の光学的イメージエキスパンダの後の光路上に配され、前記第1の光学的イメージエキスパンダにより反射された光ビームを第3の方向に反射するために用いられる第2の光学的イメージエキスパンダと、
・ 前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素と、
を備え、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
・ 少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
・ 前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチを少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
・ 少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
・ 前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。
【0017】
第2の捉え方によれば、本開示の実施形態は、3次元画像を表示するため方法を提供する。この方法は、
・ 光源から第1の光学系に向かって光ビームを出射することと、
・ 前記光ビームを前記第1の光学系で受光すると共に該光ビームを空間光変調器に向けてコリメートすることと、
・ 前記コリメートされた光ビームを前記空間光変調器で変調し、該光ビームを第1の方向に提供することと、
・ 前記変調された光ビームを、前記第1の方向に対して第1の角度αで、第1の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該変調された光ビームを第2の方向(D2)に反射することと、
・ 前記反射した光ビームを、前記第2の方向に対して第2の角度βで、第2の光学的イメージエキスパンダで受光すると共に、該光ビームを第3の方向に反射することと、
・ 前記第3の方向に反射した光ビームを、前記第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素で受光することと、
を含み、
前記第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面を有し、該第1の微細パターン面は、
・ 少なくとも第1のファセットと、前記第1のファセットに対して傾斜している少なくとも第2のファセットとを有すると共に、
・ 前記第1のファセットと前記第2のファセットとからなる第1のピッチを少なくとも有し、
前記第1のファセットは前記第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、前記第1のファセットの少なくとも一部は反射性であり、
前記第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有し、該第2の微細パターン面は、
・ 少なくとも第3のファセットと、前記第3のファセットに対して傾斜している少なくとも第4のファセットとを有すると共に、
・ 前記第3のファセットと前記第4のファセットとからなる第2のピッチとを少なくとも有し、
前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。
【0018】
本明細書において、「3次元画像」という用語は、画像を見る者に奥行きの知覚を提供する画像に関連する。以降、本明細書では、「ユーザ」、「視聴者」、「見る者」、「観察者」、「人間」という用語が、制限なく交換可能に使用される。3次元画像はボリュメトリック画像であってもよい。ここでボリュメトリック画像は、3次元空間において、高さ、幅、及び奥行きを有する画像であってもよい。3次元(3D)画像は、少なくとも1つの3次元物体(例えば彫像、車両、武器、楽器、抽象的なデザインなど)、3次元シーン(例えばビーチの景色、山岳環境、室内環境など) 等のボリュメトリック画像であり得る。更に、「3次元画像」という用語は、3次元的にコンピュータ生成された面も包含する。更に、用語「3次元画像」は、3次元の点群も包含する。
【0019】
本明細書で使用する「表示システム」又は「ディスプレイシステム」という用語は、3次元(3D)画像を、3次元画像があたかも実際の物理的な奥行きを本当に有するように見えるようにユーザに提示するように構成された装置に関する。言い換えれば、表示システムは、3次元画像を3次元空間内に視覚的に提示するための装置として動作できる。このような表示システムの例としては、テレビ、コンピュータモニタ、ポータブルデバイスディスプレイなどがある。また表示システムは、例えば、ユーザがニアアイ表示装置をその頭部に装着する(マウントする)ことにより、そのユーザの目の近くに配置され得る表示装置を含む。このようなニアアイディスプレイシステムの例としては、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、仮想現実表示システム、拡張現実表示システム、混合現実表示システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
表示システムは、第1の光学系に向けて光ビームを出射するために用いられる光源を備える。光源は、光ビームを生成し得るものであればいろいろなものであることができる。例えば光源は、自然光源や人工光源であってもよい。光源は光ビームを出射する。一般に、光ビームは一群の光ビームである。光ビームは、平行光ビーム、収束光ビーム、発散光ビームのいずれであってもよい。光ビームは第1の光学系に向けられる。第1の光学系は、後で詳細に説明するように、光ビームを拡大、形成、及び/又はコリメートするために使用され得る。
【0021】
実施形態によっては、光源は、可視光スペクトルを発するレーザー、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)の少なくとも1つであるように選択される。レーザー(LASER)は、Light Amplification by the Stimulated Emission of Radiationの略であり、原子や分子を刺激して特定の波長の光線を放射させることにより、光ビームを発生させる装置である。本開示で使用されるレーザーは、レーザーによって生成された光ビームが画像情報を符号化するために使用されるため、可視光スペクトルを放出する必要がある。発光ダイオード(LED)は、電流が流されると光ビームを出射する半導体デバイスであってもよい。ここで、電子や正孔などの電流のキャリアは、発光するために半導体と結合することができる。スーパールミネッセンス発光ダイオード(SLED)は、半導体端面放射素子である。レーザーから出射される光ビームは、既にコリメート(平行化)されているか、又は実質的にコリメートされている可能性がある。光源によって出射される光ビームが発散角を有する場合、例えば発光ダイオード(LED)によって放出される光ビームと比較して、レーザーから出射される光ビームは、容易に高い程度までコリメートすることができることが期待できる。従って、いくつかの例では、光源がレーザーである場合、コリメートすることは、本開示の目的のために必要でない場合がある。しかし、レーザービームが小さい場合、SLMの幾何学的形状に適合させるために、拡大(拡張)及び成形する必要がある。
【0022】
光源としてレーザーを使用する場合、レーザーのコヒーレントな性質が、スペックル現象を引き起こす可能性がある。スペックルとは小さな光強度変化のランダム分布であって、凹凸を有する光学面を通過する光の干渉に起因して発生し得る。これはレーザーを使用することの副作用である。しかし、光強度を平均化し、スペックルを隠すのに役立つ小型振動ディフューザーやミラーなどのデスペックル装置(スペックル除去装置)を使用することで、軽減されうる。従って、光源としてレーザーを使用する場合、第1の光学系の前に、デスペックル装置を利用することができる。SLEDは、LED及びレーザーの特徴を有しうる。SLEDから出射される光ビームは、高い指向性を有し、スペクトル分布が広い場合がある。従って、レーザーから出射される光ビームに関連するスペックルパターンは、SLEDから出射される光ビームには存在しないことがある。従って、レーザーとは逆に、SLEDは、スペックル除去装置のような、能動的にスペックルを緩和するような手段を必要としない場合がある。
【0023】
表示システムは第1の光学系を備える。第1の光学系は、光ビームを拡大、形成、成形及び/又はコリメートし、拡大、形成、成形及び/又はコリメートした光ビームを空間光変調器に向けて提供するために用いられる。第1の光学系は、光ビームのコリメートに使用される任意の適切な光学装置であってよい。ここで、コリメートされた光ビームは、実質的に、平行な光ビームを有する光ビームである。光源から第1の光学系に向かって進む光ビームは、コリメートされていない場合がある。第1の光学系は光ビームをコリメートする。それによって、光ビームを平行とし、発散をできるだけ小さくし、表示要素に向かって伝播する間にコリメートが崩れることができるだけ小さくなるようにする。前述のように、光源がレーザーである場合、本開示の表示システムにおいて、コリメートは必要でない場合がある。
【0024】
実施形態によっては、第1の光学系は、レンズ、プリズム、メタサーフェス、ホログラフィック光学素子、回折光学素子、反射光学素子の少なくとも1つの光学部品の系として選択される。レンズは、それを通過する光ビームを曲げるのに役立ち得る、湾曲したガラス面の一部であってもよい。ここで、使用されるレンズは、それを通過する際に光ビームをコリメートすることができる。プリズムは、それを通過する光ビームの屈曲に役立つ多角形の透明な光学素子であってもよい。ここで、使用されるプリズムは、プリズムから現れる光ビームがコリメートされるように、それに入射する光ビームの粒子を整列させることができる。メタサーフェスは、薄いナノ構造の人工光学素子である。メタサーフェスにおいては、従来の光学素子(例えばレンズなど)による、屈折による光ビームの曲がりとは逆に、光ビームの曲がりは、サイズが異なるナノ構造による光ビームの散乱によって行われる。ここで使用されるメタサーフェスは、コリメート光ビームを生成するように光ビームの光ビームを散乱させ得る。回折光学素子は、それを通過する光ビームの位相を制御するのに役立ち得る微細構造パターンを有しうる。本開示で使用される回折光学素子は、そこから出る光ビームが平行になるように、それを通過する光ビームの光ビームの位相を変化させる場合がある。すなわち、コリメートすることがある。本明細書で使用される反射型光学素子は、入射する光ビームを反射によってコリメートすることができる。
【0025】
第1の光学系においてコリメートされた後の光ビームの発散角(divergence angle)は1.5度未満でありうる。1.5度未満のそのような発散角は、本開示の実施形態にあるように、光ビームが3次元画像を生成するために適切に利用され得ることを保証する。一例では、光ビームは、1度の発散角を有する。別の例では、光ビームは、0.5度の発散角を有する。更に別の例では、光ビームは、0度の発散角を有する。
【0026】
表示システムは、コリメートされた光ビームを変調するために用いられる空間光変調器を備える。変調された光ビームは第1の方向へ供給される。空間光変調器は表示システムの一構成要素であり、光変調素子のアレイを有し、光ビームに対して何らかの形態の変調を行い得るデバイスとして定義され得る。本開示の目的上、「空間光変調器」又は「SLM(Spatial Light Modulator)」という用語は、入射光又は出射光を制御又は修正する光変調素子と、デバイス上の光変調素子を制御するために用いられる回路と、空間光変調を実行しているデバイス上の全ての制御回路及びメモリを指す。光変調素子は1つの場合、2つの場合、複数の光変調素子のアレイである場合がある。例えば、空間光変調器の各要素は、入射光又は出射光の方向、入射光又は出射光の強度、入射光又は出射光の極性(polarity)、入射光又は出射光の波長、入射光又は出射光の焦点等を変化させることができる。典型的には、空間光変調器は、光ビームの振幅を変化させることができる。一部の空間光変調器は光ビームの位相を変化させうる。ここで使用される空間光変調器は、コリメートされた光ビームの振幅を変化させ、それを第1の方向に向かって提供してもよい。実施形態によっては、空間光変調器は、光源及び空間光変調器の動作を同期させる制御ロジック又は制御ユニットによって制御されてもよい。
【0027】
実施形態によっては、空間光変調器は、反射型空間光変調器、透過型光変調器のうちの少なくとも1つであるように選択される。反射型空間光変調器の例としては、デジタルマイクロミラーデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。表示システムが典型的に有する反射型空間光変調器は2次元型であってよく、プリズムアセンブリを介して空間光変調器の活性領域に向けられたコリメート光ビームを変調することができる。反射型空間光変調器は、高い画像リフレッシュレートに対応可能なデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であることができる。あるいは、シリコン上の高速スイッチング液晶(LCoS)又はシリコン上の強誘電性液晶FLCoSタイプの変調器とすることができる。実施形態によっては、透過型空間光変調器でも同様の効果を得ることが可能である。
【0028】
実施形態によっては、空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイス、エルコス(LCoS)、強誘電性液晶を用いたLCOS(FLCoS)変調器、液晶表示マイクロパネルのうちの少なくとも1つであるように選択される。デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)は、高リフレッシュレートを有し、3D画像の画素構造に対応する極小ミラーのマトリックスで構成されうる。極小ミラーのマトリックスは電気的にアドレス可能である。LCoSは、液晶層が堆積されたシリコンバックプレーンを有する高リフレッシュレートのミニチュアであってもよい。強誘電性液晶オンシリコン(FLCoS)変調器は、強誘電性液晶が堆積されたシリコン製バックプレーンであってもよい。ここで、「強誘電体」という用語は、自発的な電気分極特性を有し得る材料を指す場合がある。デジタルマイクロミラーデバイス型、LCoS型及びFLCoS型変調器は反射型空間光変調器であってもよく、液晶ディスプレイマイクロパネルは透過型空間光変調器であってもよいことが理解されよう。
【0029】
空間光変調器の構成は、プリズムアセンブリがないことを意味する場合があることに留意する必要がある。これは、デジタルマイクロミラーデバイスを使用する場合により一般的なことであろう。しかしながら、これは表示システムの典型的な実施例ではないかもしれない。ある実施形態では、空間光変調器はLCoSであり、プリズムアセンブリは偏光感受性ビームスプリッタキューブである。空間光変調器による変調後のコリメート光ビームの高い平行性により、コリメート光ビームの形状はほとんど変化しない。つまり、コリメートの度合いが保たれる。これにより、実質的にフォーカスフリーのレンズレス投影システムを実現することができる。つまり、追加の投影レンズが不要になる可能性がある。
【0030】
空間光変調器によって形成される2D画像は、非常に小さく、直接見るのに適していない場合があるだろう。空間光変調器は、典型的には小型のマイクロディスプレイデバイスであるため、実用的な利用のためには、形成された2D画像を拡大する必要があるだろう。
【0031】
表示システムは、第1の方向に対して第1の角度αで傾斜している第1の光学的イメージエキスパンダを備える。第1の光学的イメージエキスパンダは、変調された光ビームを第2の方向へ反射するために用いられる。第1の光学的イメージエキスパンダは、2次元画像を1次元的に(すなわち一方向に)拡大するために用いられる反射フレネル型鏡面であってよい。従って、全高が'a'の画像は、第1の光学的イメージエキスパンダを用いることによって、a<a'である拡大長a'を有するように拡大され得る。フレネル型ミラー面は、第1の方向に対して第1の角度αで傾斜している第1の微細パターン面であってもよい。ここで第1の方向は、空間光変調器からの光ビームの光軸であってもよい。第1の光学的イメージエキスパンダのパターンピッチは、典型的には空間光変調器の画素サイズに相当する。
【0032】
表示システムは、第2の方向に対して第2の角度βで傾斜している第2の光学的イメージエキスパンダを備える。第2の光学的イメージエキスパンダは、第1の光学的イメージエキスパンダの後の光路上にあり、第1の光学的イメージエキスパンダで反射された光ビームを第3の方向へ反射するために用いられている。すなわち、変調された光ビームは、第1の光学的イメージエキスパンダによる最初の反射の後、第2の光学的イメージエキスパンダの方向に向けられて第2の光学的イメージエキスパンダで更に反射され、第3の方向に向けられる。第2の光学的イメージエキスパンダは、第1の光学的イメージエキスパンダと同様に、第2の微細パターン面を含む反射フレネル型ミラー面であってもよい。第2の微細パターン面は第2の方向に対して第2の角度βに配置される。前述のように、第1の光学的イメージエキスパンダは、画像を1つの方向にのみ拡大すると共に、拡大した光ビームを第2の方向に向ける。しかし、画像は両方の方向に拡大することが要求される。そこで、第2の光学的イメージエキスパンダが画像を別の方向に拡大し、従って、完全な2D画像拡大を可能とする。
【0033】
第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダは、成形、リソグラフィ、エッチング又は他の適切な製造方法を用いて、有機又は無機材料で実現できる。表面構造の形成に使用される材料は、ミネラルガラス、アクリルガラス、ポリカーボネート、又は同様のもの、ならびに金属、例えば、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金であり得る。反射率の向上のために、表面は、金属ミラーの薄膜反射コーティングや、広帯域誘電体ミラーのスタックの薄膜反射コーティングで被覆することができる。好ましくは、目標とする入射角-反射角において、可視スペクトル全体にわたって98%以上の反射率を確保する。
【0034】
実施形態によっては、第1の角度α及び第2の角度βは各々1度から10度までである。第1の角度α及び第2の角度βは各々1、2、3、4、5、6度から5、6、7、8、9、10度までとすることができる。必要な画像拡大率に応じて第1の角度αと第2の角度βを変化させることができる。より大きな画像拡大が必要な場合、第1の角度α及び第2の角度βは、減少され得る。しかしながら、そのような場合、第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダを有する光学的画像拡大系の全長が増加する可能性がある。画像拡大率が小さくてよい場合、第1の角度α及び第2の角度βは増加することがある。1°から10°の間というαとβの範囲は、実用的なシナリオのほとんどに対して機能する。しかし、空間光変調器からの非常に小さな画像を拡大することが望まれる場合、第1の角度αと第2の角度βは1度を下回ってよい。同様に、所望の画像拡大が小さい場合、すなわち、高い画像拡大の必要性がない場合、第1の角度α及び第2の角度βの上限には制限がなく、10度より大きくてもよい。
【0035】
光の変調及び画像情報の出力を担う空間光変調器はx及びyの断面寸法を有し、従って、コリメート光ビームの寸法もx及びyであろうことが理解され得る。当該構成において、拡大画像の寸法は、以下のように表される。
【0036】
x'=y/(tan(α))
【0037】
y'=x/(tan(β))
【0038】
第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダのサイズ、並びにこれらに対応する第1の角度α及び第2の角度βは、元の画像のアスペクト比を維持するように選択され得る。拡大画像が不自然な画像アスペクト比を有するように構成されている場合、前述の構成パラメータを用いれば、得られる拡大画像の正常なアスペクト比を達成することができる。
【0039】
第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面と第1のピッチとを有する。第1の微細パターン面は、第1のファセットと、第1のファセットに対して傾斜した第2のファセットとを少なくとも有する。第1のピッチは、第1のファセットと第2のファセットとからなる。第1のファセットは第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、第1のファセットの少なくとも一部は反射性である。ここで、第1の微細パターン面は、例えば隆起や突起等の形態の1つ以上の微細パターンを含む表面として定義することができる。本明細書において、ファセットとは、微細パターン面における面の一つを指す場合がある。第1の微細パターン面における第1のファセットは第1の面に対応してもよく、第1の微細パターン面における第2のファセットは第2の面に対応してもよい。第1のファセットと第2のファセットとは同一面にはなく、第2のファセットは第1のファセットに対して傾斜していてもよい。第2のファセットは第1のファセットに対して傾斜して、第1の微細パターン面において概ね三角形又は歯の形状を形成することができる。第1のピッチは、第1の光学的イメージエキスパンダにおける第1の微細パターン面における2つの頂点の間の距離として定義される。あるいは第1のピッチは、第1の光学的イメージエキスパンダにおいて、隣接する2つの微細パターンの先端間の距離として定義される。
【0040】
前述のように、第1のファセットは、第1の方向に対して第3の角度γで傾斜している。ここで第1の方向とは、第1の光学的イメージエキスパンダに当たる、変調された光ビームの方向である。第1の微細パターン面の三角形の形状のために、第1のファセットの一部は、第1の光学的イメージエキスパンダに当たる変調光ビームに関して第2のファセットの影に位置することになりうる。それゆえ、変調光ビームは、第1のファセットの一部、具体的にはその先端付近にのみ当たる可能性がある。それゆえ、変調された光ビームが第1のファセットに当たって第2の方向に反射するために、第1のファセットにおいて反射性にされる必要があるのは、第2のファセットの影にならない部分のみである。第1のファセットにおいて第2のファセットの影となる部分については、不要な反射を生じないように、光吸収性コーティングを施してもよい。同様に、変調光ビームを受光せず反射もしない第2のファセットについても、不要な反射を生じないように、光吸収コーティングを施してもよい。しかし、実施形態によっては、製造の容易さと費用対効果のために、微細パターンを有する第1の光学的イメージエキスパンダ全体が、反射性の面を有するように作られている。
【0041】
第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面と第2のピッチとを有する。第2の微細パターン面は、第3のファセットと、第3のファセットに対して傾斜した第4のファセットとを少なくとも有する。第2のピッチは、第3のファセットと第4のファセットとからなる。前記第3のファセットは、前記第2の方向に対して第4の角度δで傾斜しており、前記第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。第1の光学的イメージエキスパンダと同様に、第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面を有する。第2の微細パターン面は、第1の微細パターン面と同様に、第3のファセットと第4のファセットとから構成され、第4のファセットは、概ね三角形の形状を形成するように、第3のファセットに対して傾斜している場合がある。第2のピッチは、第2の光学的イメージエキスパンダにおける第2の微細パターン面における2つの頂点の間の距離として定義される。あるいは第2のピッチは、第2の光学的イメージエキスパンダにおいて、隣接する2つの微細パターンの先端間の距離として定義される。
【0042】
第1のピッチ及び第2のピッチは、空間光変調器のピッチよりもはるかに大きくてもよい。これは、第1の微細パターン面の例を取ることによってよりよく理解され得る。空間光変調器の各ピクセルは、第1の微細パターン面の各歯から反射することができる。典型的には、議論されたように、第1の微細パターン面は、約1度から10度の角度で傾斜していることがある。従って、光学的イメージエキスパンダの典型的なピッチは、空間光変調器のピッチをsin(α)で割ったものに対応するだろう。一例では、空間光変調器の最小ピッチは、約4マイクロメートルと考えられるであろう。第1の微細パターン面の最小ピッチは、約10度という大きな傾斜角で達成されるであろう。この場合、sin(10)=0.17であるから、ピッチは4/0.17=23.5ミクロンとなる。空間光変調器のピッチが約7マイクロメートルであり、第1の微細パターン面の傾斜角が約4度というケースでは、マイクロパターンのピッチは、上記のように計算すると、空間光変調器のピッチよりもかなり大きい約100マイクロメートルになるだろう。第1の微細パターン面及び第2の微細パターン面のいずれかのピッチが小さいと、入射する光ビームの回折が生じ、望ましくないことが理解され得る。従って、第1の微細パターン面の第1のピッチ及び第2の微細パターン面の第2のピッチは、一般に、空間光変調器のピッチよりも大きくてもよい。
【0043】
第1の光学的イメージエキスパンダで反射した光ビームは、第2の光学的イメージエキスパンダに向かって第2の方向に進むことができる。前述のように、第3のファセットは、第2の方向に対して第3の角度δで傾斜している。第2の微細パターン面の三角形の形状のために、第3のファセットの一部は、第2の光学的イメージエキスパンダに当たる反射光ビームに関して第4のファセットの影に位置することになりうる。このため光ビームは、第3のファセットの一部、具体的にはその先端付近にのみ当たる可能性がある。それゆえ、光ビームが第3のファセットに当たって反射するために、第3のファセットにおいて反射性にされる必要があるのは、第4のファセットの影にならない部分のみである。第3のファセットにおいて第4のファセットの影となる部分については、不要な反射を生じないように、光吸収性コーティングを施してもよい。同様に、変調光ビームを受光せず反射もしない第4のファセットについても、不要な反射を生じないように、光吸収コーティングを施してもよい。しかし、実施形態によっては、製造の容易さと費用対効果のために、微細パターンを有する第2の光学的イメージエキスパンダ全体が、反射性の面を有するように作られている。
【0044】
実施形態によっては、第1~第4のファセットの少なくとも1つは、フラットファセット、カーブファセットの少なくとも1つから選択される。典型的には、第1のファセット、第2のファセット、第3のファセット及び第4のファセットは、フラット(平坦)なファセットであってよい。フラットファセットは、可視光領域の光ビームを高い効率で反射する。発散する光ビームを反射するためには、カーブ(湾曲)したファセットが用いられてもよい。カーブファセットは、特に、発散角を補償するために、及び/又は、投影ボリューム内の画像のフィルファクター(充填率)を改善するために、使用されてもよい。上述の実施形態は、第1のファセット、第2のファセット、第3のファセット及び第4のファセットがフラットファセットであるとして説明されてきたが、当業者であれば、説明された実施形態に僅かな変更を加えることで、第1のファセット、第2のファセット、及び/又は第3のファセット及び/又は第4のファセットがカーブファセットでも適用可能であることが理解できるだろう。
【0045】
実施形態によっては、第3の角度γ及び第4の角度δは各々45度である。前述のように、第1のファセットは、第1の方向に関して第3の角度γで傾斜し、第3のファセットは、第2の方向に関して第4の角度δで傾斜している。実用化される典型的なケースとして、直交配置が挙げられる。この場合、第1の光学的イメージエキスパンダで第1の方向から受光された光ビームは、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第2の光学的イメージエキスパンダに向かって進むように反射され、更に第2の方向に直交する第3の方向に沿って、第2の光学的イメージエキスパンダから離れる方向に進むように反射され得る。これを実現するために、第3の角度δ及び第4の角度δの各々は、実質的に45度に等しい。この場合、反射は、入射角が反射角に等しいという幾何光学のルールに従う。
【0046】
動作時、第1の光学的イメージエキスパンダは、入射変調光ビームに対して第1の角度αに配置され、反射ファセットである第1のファセットは、変調光ビームに対して第3の角度δに配置される。第1の光学的イメージエキスパンダを製造する際、第1の光学的イメージエキスパンダの第2の方向である所望の反射方向を確かにするために、第3の角度δを正しく選択することを考慮して、第1の光学的イメージエキスパンダが傾斜する第1の角度αを知っておくとよい。
【0047】
開示された第1の光学的イメージエキスパンダユニットの形状の特徴は、第1の光学的イメージエキスパンダのピッチが動作に不利な要因にならないことである。第1の光学的イメージエキスパンダは、第1ピッチが小さくとも大きくとも動作することができる。第1の光学的イメージエキスパンダの第1のピッチの特定の選択を決定する差異は、第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路上に配置されたスクリーン要素の光拡散特性によって調節される。(スクリーン要素については後で詳細に説明する。)前述のように、第1の光学的イメージエキスパンダにおいて、第1のファセットの一部のみが、変調光ビームの再指向のために有効に利用され得る。第1のファセットの一部は、前のファセットの影にある場合があり、従って、反射には効果的に関わらない可能性がある。このために、拡大された画像に不連続性が生じる可能性がある。変調された光ビームが第1のファセットに当たるとき、そのごく一部のみが反射されるだろう。反射された光ビームは、拡大された画像の中の「有用な画像情報(useful image information)」に対応するであろう。画像情報を運ばないようにされうる変調光ビームの残りの部分は、反射されない可能性があり、拡大画像において「影領域(shadow region)」に対応する可能性がある。第1の光学式イメージエキスパンダの傾斜角である第1の角度αが減少するにつれて、拡大画像の有効な線形充填率(「有用な画像情報」の「影領域」に対する比率)も減少する。拡大画像の実効線形充填率であって第1の微細パターン面のピッチに依存しない実効線形充填率を決定するために、以下の式を適用することができる。
【0048】
「有用な画像情報」/「影領域」 = tan(γ)/tan(α)
【0049】
例えば、第3の角度δが45°に等しく、第1の角度αが2°に等しい場合、拡大画像の有効線形充填率は3.5%となる。第1の微細パターン面の第1のピッチが細かい場合、拡大画像の有効線形充填率は、隣接する画像要素間の隙間がより少なくなるようなものとなり得る。画像情報は失われないとはいえ、隣接する画像要素間の間隔が大きく、投影ボリュームの散乱力が低い場合、結果として得られる拡大画像は、空白に関連する知覚可能なアーチファクトを有する可能性があることが分かる。このような観点から、第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダをより微細なピッチで使用し、隣接する画像要素間の間隙を小さくすることがより好ましいと考えられる。投影ボリュームの拡散要素内での光の散乱は、複数の画像要素を平滑化された画像へと融合することを助け、知覚される画質を好ましいものとするだろう。本開示の範囲から逸脱することなく、第1の微細パターン面について説明してきた事項は、第2の微細パターン面にも適用可能であることが理解され得るだろう。
【0050】
表示システムは、第2の光学的イメージエキスパンダの後の光路に配されるスクリーン要素を備える。ここでいうスクリーン要素とは、第2の光学的イメージエキスパンダから受け取った画像情報を表示するための表示部を意味する。スクリーン要素は、第3の方向に沿って配置されてもよいことが理解され得る。本開示において、スクリーン要素は「投影ボリューム」とも呼ばれ、2つの用語は制限なく交換可能に使用されてきた。
【0051】
実施形態によっては、スクリーン要素は2つ以上の画像投影面を有する。そして表示システムはコントローラを備え、該コントローラは、光源と空間光変調器とスクリーン要素の動作を同期させて、スクリーン要素の2つ以上の画像投影面のそれぞれにイメージプレーン(image plane)情報を提供するように構成される。本開示全体を通じて、「投影面」という用語は、動作時に、所定の深度のイメージプレーンをそこに表示する光学部品に関するものである。注意すべきは、3D画像は、それぞれ深度が異なる少なくとも2つのイメージプレーンを有するであろうことである。従ってスクリーン要素は、少なくとも2つの投影面を含んでいてもよい。コントローラは、光源と空間光変調器とスクリーン要素とを同期させることができる。スクリーン要素は、光源及び空間光変調器と同期して、所定の深度のイメージプレーンの投影を受けて、所定の投影面において、所定のイメージプレーンで表されたグラフィック情報を表示してもよい。
【0052】
前述のように、3D画像を表示するために、3D画像は、「画像情報」として参照され得る2つ以上の2次元(2D)画像スライスに分割され得る。これらの画像スライス(イメージスライス)はそれぞれ3D画像の個々の平面部分に対応し、各画像情報はそれぞれ画像スライスに対応する。あるオブジェクトについてのこのような画像スライスを組み合わせることで、3D画像の表示が可能になり、これを見る者は、3D画像として表示されたオブジェクトの奥行きを認識することができる。各画像スライスは、見る者に対してそれぞれ異なる焦点距離で表現されることができ、それによって見る者は、画像の複数の深度面に対応する深度を知覚することができる。
【0053】
実施形態によっては、上記スクリーン要素は、複数の表示要素を有するマルチプレーンボリュメトリックディスプレイである。上記複数の表示要素は、2~40個の個別の光拡散要素で構成されてもよく、これらは、互いにある距離だけ離間していてもよい。実施形態によっては、隣接する表示要素を奥行き方向にずらすためにスペーサが利用され得る。ここで、上記複数の表示要素は、見る者に対してそれぞれ異なる焦点距離に配置される。このようにして投影ボリュームが離散化され、時系列的な方法でアドレスされ得る。3D画像を生成するために、複数の2D画像スライスが、それぞれ異なる焦点距離でこれらの表示要素に提示されることができる。
【0054】
実施形態によっては、上記複数の表示要素は、2つの光学状態を有するように構成された少なくとも1つの液晶ベースの光拡散要素を備える。この2つの光学状態の1つは高い光透過率を有する第1の光学状態であり、もう1つは高いヘイズ値を有する第2の光学状態である。本開示全体を通じて、「光拡散」という用語は、動作時に、所定の深度のイメージプレーンをそこに表示する光学部品に関するものである。第1の光学状態は高い光透過率を表し、そのような第1の光学状態において、各光拡散要素は透明である。このため第1の光学状態において、光拡散要素を通過する光ビームは、光拡散要素の媒質と相互作用しないであろう。従って、第1の光学状態においては、光拡散要素上に画像情報が提示されないであろう。第2の光学状態は高いヘイズ値を表し、かかる第2の光学状態において、各光拡散要素は不透明である。このため第2の光学状態において、光拡散要素は、入射する可視光ビームを大きく散乱させるように作用する。従って第2の光学状態においては、光拡散要素上に画像情報が提示される。
【0055】
前述のように、光拡散要素が第1の光学状態に構成される場合、入射光ビームは実質的な相互作用なしにそれを通過する。一方、光拡散要素が第2の光学状態に構成される場合、入射光ビームは散乱し、画像が所定の物理的距離で焦点を合わせられる場合、広い視野角から画像を観察することを可能にする。投影ボリューム内において、ある瞬間に、1つを除く全ての光拡散要素が第1の光学状態に構成され、1つの光拡散要素が第2の光学状態に構成されてもよい。そしてそれと同期して、投影システム(ここでは光源)が、対応する2D画像スライスを、第2の光学状態にある光拡散要素上に投影してもよい。次の瞬間に、投影システムはオフにされ、投影ボリュームは再構成されるかもしれない。ここで、上記1つの光拡散要素は第2の光学状態から第1の光学状態に構成され、隣接する光拡散要素が第1の光学状態から第2の光学状態に構成されるかもしれない。その後投影システムは、第2の光学状態にある光拡散要素に向けて新たな2次元画像スライスを投影するようにされてもよい。このプロセスは連続的に繰り返され、光拡散要素の全てが第2の光学状態を通して循環され、所定の投影ボリュームにおいて知覚可能な3D画像を再構成することができる。光拡散要素を第1の光学状態や第2の光学状態に構成することは、電圧の印加によって実施されてもよい。ここで、印加された電圧は第1の光学状態に対応し、印加されない電圧は第2の光学状態に対応してもよい。
【0056】
実施形態によっては、前記少なくとも1つの液晶ベースの光拡散要素の液晶は、ポリマーを含まないコレステリック液晶である。このような光拡散要素に典型的に使用されるポリマーフリーコレステリック液晶は、第1の光学状態から第2の光学状態への高速遷移、及び第2の光学状態から第1の光学状態への逆方向の遷移を可能にし得る。遷移は、200~600マイクロ秒など、数百マイクロ秒のオーダーであってよい。
【0057】
あるいは、焦点のない画像の拡大又は縮小に関連して生じる可能性のある画像アーチファクトに対抗するために、投影ボリュームの光拡散要素は、複合構造を有することができる。光拡散要素の散乱力は、液晶層である活性層の厚さに関連付けられる。厚い活性層は投影画像の平滑化の程度も高い。このため、(第1の光学的イメージエキスパンダと第2の光学的イメージエキスパンダの組み合わせを使用してなされた)画像拡大によってもたらされる、空白に関連する画像アーチファクトを隠すのに役立ちうる。しかし、厚い活性層は高い駆動電圧を必要とする場合があり、例えば、電源供給をバッテリーに依存する携帯用ディスプレイシステムなどでは望ましくない場合がある。
【0058】
実施形態によっては、上記少なくとも1つの液晶ベースの光拡散要素は、少なくとも2つの活性拡散層を有する。ここで、少なくとも2つの活性拡散層を含む光拡散要素は、複合光拡散要素と称されることがある。上記2つの活性拡散層は、第1活性拡散層及び第2活性拡散層であってもよい。複合光拡散要素は、内部基板とともに、2つの最外部基板を更に含んでいてもよい。典型的には、全ての基板は、ミネラルガラス製であってもよい。特に、全ての基板は、高透明ディスプレイガラスであってもよい。あるいは基板は、ポリマー基板として実装されてもよい。最外層の基板は、全体的な構造に剛性を与えるために、厚い材料で作られてもよい。最外層の基板の厚さの範囲は、典型的には0.4~1.1ミリメートルの範囲にある。しかし、投影ボリュームが個々の光拡散要素を貼り合わせる方法で実装される場合、ターゲット活性層間に特定のギャップを確保するために、最外層の基板の厚さは1.1ミリメートルを超えることがある。内部基板は、2つの活性液晶層を分離する薄い誘電体層であってもよい。典型的には、内部基板は可能な限り薄いものを選択することができる。例えば、内部基板は、100~300マイクロメートルの厚さを有するフィルム状の基板であってもよい。内部基板は、酸化インジウムスズ(ITO)及びドープ酸化亜鉛(ZnO)の透明電極などの透明導体で両面を被覆してもよいが、これに限定されない。また、外側基板も活性層に面する透明電極で被覆されていてもよい。第1の活性拡散層は、入射光ビームの方向に配置され、前散乱層であるように構成されてもよい。第1の活性拡散層は、第2の活性拡散層よりもかなり薄くてもよい。例えば、第1の活性拡散層の典型的な厚さの範囲は、1~6マイクロメートルである。これに対して第2の活性拡散層はかなり厚くてもよく、7~25マイクロメートルの厚さを有することができる。両方の活性層の厚さは、当該技術分野で知られているように、堆積されたスペーサやフォトスペーサなどのスペーサによって決定される。現在の例では、活性層は、周縁部にポリマーガスケットを適用することにより、液晶セル内に収容することができる。
【0059】
動作中、画像に帰属する画像情報を運ぶ入射光ビームは、まず第1の薄い活性拡散層によって散乱されてもよい。これは薄い層であるため、散乱力は弱く、散乱円錐は狭い。次に、前散乱された光ビームは内部基板を通過して第2の活性拡散層に入る。
【0060】
第2活性拡散層は、対応する画像深度面を形成し、強い光散乱特性を有する。前散乱された光は、画像の高いフィルファクター(充填率)を保証する。そのため、画像が拡大されても、滑らかな画像として認識される。単一の光拡散要素のこのようなアーキテクチャにより、低い画像フィルファクターに起因する画像アーチファクトに対抗することができ、光拡散要素を効率的に駆動するための最大必要電圧を抑えることができる。更にこの例では、電界強度を下げることで、電波(RF)の漏洩も最小限に抑えることができ、さらなる利点につながる。
【0061】
つまり、まず、活性層(画像深度面)が、第1の光学状態から第2の光学状態へ遷移するように開始される。次に、前散乱層が第1の光学状態から第2の光学状態へ遷移するように構成される。画像深度面が第2の光学状態に達したことを確認するために、遅延が導入される。その後、空間変調された光(画像)が前散乱層に向かって投影される。その後、(投影ユニットの)光源をしばらく停止させる。その後、前記画像深度面の、第2の光学状態から第1の光学状態への遷移が開始される。その後、前散乱層も、第2の光学状態から第1の光学状態へ遷移するように構成される。全てのプロセスが、投影ボリュームの次の拡散要素で繰り返される。
【0062】
本開示のボリュメトリックディスプレイシステムは、レーザーやSLEDのような出射された光ビームの実質的なコリメートを可能にする光源を備え、実施形態によっては、光ビームを形成、整形及び/又はコリメートするための第1の光学系と、第1の光学的イメージエキスパンダと、第2の光学的イメージエキスパンダとを備える。第1及び第2の光学的イメージエキスパンダは、典型的には、DMDやLCoSなどの反射型であってもよく、技術的にはLCDなどの透過型であってもよい。空間光変調器の開口に合わせるために、第1の光学系又は他の適切な光学系を、ビーム拡大光学系として使用してもよい。光ビームは第1の光学イメージエキスパンダの方に向けられる。第1の光学的イメージエキスパンダは、典型的には、最小寸法が空間光変調器のそれぞれの寸法に実質的に対応するフレネル型ミラーアレイの薄片である。変調された光ビームがいずれかの方向に拡大され、反射されると、そのサイズが投影ボリュームの断面のサイズと同等である第2の光学的イメージエキスパンダにぶつかる。その結果、拡大された光ビームは、第2の光学的イメージエキスパンダに反射して投影ボリュームに向けられ、光散乱により、ある物理的深度で可視化される。第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダは、入射光線に対して小さな角度又は非常に小さな角度で配置されるので、表示システムの全体のフットプリントはコンパクトになる。これに対して従来技術では、同様のサイズの画像を確保するための技術的解決策として、大判の放物面反射鏡を含む投影レンズの利用が想定されており、それは全体的な設置面積の縮小に寄与するものの、依然としてかさばるものである。本明細書で説明する表示システムは、画像品質を大幅に改善するが、画像拡大ユニットを用いることやボリュメトリックディスプレイ装置の全体的なフットプリントを心配することはない。
【0063】
実施形態によっては、空間光変調器と第1の光学的イメージエキスパンダとの間に追加のビーム形成光学系を用いることができる。あるいは、第2の光学的イメージエキスパンダと投影ボリュームの間に第2のビーム形成光学系を配することもできる。更に、ボリュメトリックディスプレイシステムは、光源、投影ボリューム、空間光変調器、及び外部画像ソースを連動させ、知覚的に3D画像を出力するための同期動作を可能とする制御ロジックを備える。実施形態によっては、投影ボリュームの前の光経路に追加の光学系が使用される場合がある。この追加の光学系は、ホログラフィック光学素子、ホログラフィック拡散素子、マイクロレンズ(レンズレット)アレイを含むことができ、又は、制御された拡散要素及び/又はレンズレットアレイの機能性を模倣するように光学特性を調整した光学的メタサーフェスなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0064】
本開示の表示システムは、多くの用途に採用することができる。例えば、従来、大きなフォームファクタに悩まされ、かさばり、合理的なフットプリントを確保するために光学的に複雑な投影レンズや追加の光学部品を必要とし得た、直視型ボリュメトリックディスプレイ装置として使用され得る。
【0065】
実施形態によっては、ヘッドマウントディスプレイシステムが、上記に開示されたような表示システムを有する。本開示のある実施形態によると、「ヘッドマウントディスプレイシステム」は、ユーザに着用され得るディスプレイデバイスであり、例えば、着用者の頭部に着用されるヘルメットの一部である。ヘッドマウントディスプレイシステムは、片目又は両目の前に表示システムを有志、仮想現実環境及び拡張現実環境において3Dビューを提供しうる。ヘッドマウントディスプレイシステムは、軍事、航空、ゲーム、バーチャルシネマ、医療などの用途で使用されてもよいが、これらに限定されない。ここで投影ボリュームは、接眼レンズのような二次画像形成光学系によって再画像化される場合がある。拡張現実ディスプレイの場合、イメージコンバイナ(画像結合器)も備えることがある。イメージコンバイナは、投影光の反射と周囲光の透過を可能にする半反射型ビームスプリッタの一種でありうる。あるいは、接眼レンズとイメージコンバイナは、例えば、非球面ビームスプリッタや自由曲面ビームスプリッタのような曲面ビームスプリッタのような、単一のユニットであってもよい。いくつかの例では、画像ソースは、屈折導波路と組み合わされることがある。
【0066】
実施形態によっては、ヘッドマウントアップシステムが、上記に開示されたような表示システムを有する。ヘッドアップディスプレイシステムは、パイロットやドライバーの視界に位置するディスプレイであり、重要な情報を提供する。例えば、本開示の表示システムを採用したヘッドアップディスプレイシステムは、自動車に採用され得る。自動車のダッシュボードでは、常に省スペース化が求められており、最小限の設置面積の表示装置が望まれている。本開示の表示システムはコンパクトであるため、自動車や他の同様の利用分野のヘッドアップディスプレイに採用することができる。従来のヘッドアップディスプレイシステムは、通常、様々な奥行きで知覚される3D情報を伝えることができない。ボリュメトリックディスプレイ技術に基づくマルチフォーカル(多焦点)アーキテクチャは、これを解決する可能性がある。しかしながら、マルチフォーカルアーキテクチャは、かなりかさばり、例えば、車両のダッシュ内に大きな容積を必要とする場合がある。本開示の表示システムを採用することにより、マルチフォーカルエンジンは、薄いフォームファクタで実現され得る。ここで、直視型ボリュームメトリックディスプレイに相当する表示システムは、複数の仮想画像深度面をもたらすために、二次光学系と組み合わされてもよい。この表示システムは、本質的に、同様の構成要素を有する直視型ボリュームメトリックディスプレイの縮小版であってよい。更に、表示システムは、アイピースやイメージコンバイナなどの二次イメージング光学系によって補完されることがある。接眼レンズは、イメージコンバイナの一部として実装されてもよい。実施形態によっては、接眼レンズは、フレネルレンズ又は複数のフレネルレンズ、ホログラフィックレンズ、回折レンズ、メタサーフェスレンズ、屈折レンズ、又はそれらの任意の組み合わせなどの個別のレンズ又はレンズアセンブリであるが、これらに限定されない。イメージコンバイナは、半反射コーティングで被覆された風防であってもよい。この風防は、画像ソースの狭い波長を効果的に反射し、逆スペクトル領域と広い波長領域を透過するノッチ型反射コーティングで被覆されてもよく、従って、透明度が高く邪魔にならない風防に寄与する。代替実施形態では、接眼レンズの機能は、波長選択性ホログラフィック光学素子、回折光学素子又は光学メタサーフェスの形態で風防内に直接埋め込まれる場合がある。
【0067】
本明細書は、上記のような3D画像の表示方法にも関する。上に開示された様々な実施形態及び変形例は、3D画像を表示するための方法にも準用される。
【0068】
実施形態によっては、第1の角度α及び第2の角度βは各々1度から10度までである。
【0069】
実施形態によっては、第3の角度γ及び第4の角度δは各々45度である。
【0070】
第1の光学系においてコリメートされた後の光ビームの発散角は1.5度未満でありうる。
【図面の詳細説明】
【0071】
図1を参照すると、本開示のある実施形態による、3次元画像を表示するための表示システム のブロック図が示されている。表示システム100は、光源102、第1光学系104、空間光変調器106、第1の光学的イメージエキスパンダ108、第2の光学的イメージエキスパンダ110、スクリーン素子112及びコントローラ114を備える。光源102は、第1の光学系104に向かって光ビームを放出するために用いられている。第1の光学系104は、光ビームを拡大、成形、形成及び/又は平行化(コリメート)し、コリメートされた光ビーム(コリメート光ビーム)を空間光変調器106に向けて提供するために用いられている。空間光変調器106は、コリメート光ビームを変調するために用いられている。変調された光ビームは、第1の方向へ提供される。第1の光学的イメージエキスパンダ108は、第1の方向に対して第1の角度αで傾斜している。第1の光学的イメージエキスパンダ108は、変調された光ビームを第2の方向へ反射するために用いられている。第2の光学的イメージエキスパンダ110は、第2の方向に対して第2の角度βで傾斜している。第2の光学的イメージエキスパンダ110は、第1の光学的イメージエキスパンダ108の後の光路上にあり、反射された光ビームを第3の方向へ反射するために用いられている。スクリーン素子112は、第2の光学的イメージエキスパンダ110の後の光路上に配置されている。コントローラ116は、光源102、空間光変調器106及びスクリーン素子112の動作を同期させて、スクリーン素子112の2つ以上の像面それぞれに像面情報を提供するように構成される。
【0072】
図2を参照すると、本開示のある実施形態による、表示システム(例えば、図1の表示システム100)のための第1の光学的イメージエキスパンダ200の略図が図示されている。図示されるように、第1の光学的イメージエキスパンダ200は、例えば、フレネル型ミラーのような微細な表面回折格子として実装される。第1の光学的イメージエキスパンダ200は、第1のファセット(小平面)204と第2のファセット206とを有する、微細パターン化された第1の表面202を有する。ここで、第1の微細パターン面202のピッチPは、第1のファセット204と第2のファセット206とで構成される。本開示において、第2の光学的イメージエキスパンダは、第1の光学的イメージエキスパンダ200と同様の構成であり、その中の第2の微細パターン面は、第1の微細パターン面202と同様の構成であり、第2の微細パターン面の第3ファセット及び第4ファセットは、第1の光学的イメージエキスパンダ200の第1の微細パターン面202の第1ファセット204及び第2ファセット206と同様である。
【0073】
図3を参照すると、本開示のある実施形態による、第1の光学的イメージエキスパンダ300の略図が示されている。第1の光学的イメージエキスパンダ300は図2の第1の光学的イメージエキスパンダ200と同様の要素である。図3には、第1の光学的イメージエキスパンダ300によって変調された光ビームの反射も描かれている。第1の光学的イメージエキスパンダ300は、画像情報を運ぶコリメート光ビーム302の第1の方向D1に関して、第1の角度αで位置決めされる。イメージがどのくらい拡大されるべきかの要求に応じて、第1の角度αは変化される。コリメート光ビーム302が第1の光学的イメージエキスパンダ300に当たると、第2の方向D2に向かって反射される。図から、全高aを有する入力画像が、長さa'(a<a')を有する拡大画像に拡大されることが観察できるだろう。
【0074】
図4を参照すると、本開示の実施形態に従う表示システム400の一部の略図が示されている。表示システム400は、3次元画像を表示するための投影ボリューム406とともに、(図3の第1の光学的イメージエキスパンダ300と同様の)第1の光学的イメージエキスパンダ402と、第2の光学的イメージエキスパンダ404とを実装する 。図示されるように、第1の光学的イメージエキスパンダ402は、変調された光ビームを第2の方向D2に向けて反射する。第2の光学的イメージエキスパンダ404は、反射された光ビームを第3の方向D3に向かって反射する。投影ボリューム406は第3の方向410に配置されており、光ビームが第3の方向410に進むと、投影ボリューム406のスクリーン要素に当たって3D画像を形成する。ここで、第1の光学的イメージエキスパンダ402及び第2の光学的イメージエキスパンダ404は、表示システム400の投影ボリューム406に向けた、完全な2D画像の拡大と方向付けとを可能とする。
【0075】
図5Aを参照すると、本開示のある実施形態によるディスプレイシステム(例えば図4のディスプレイシステム400)のための、光学的画像拡大系500Aの略図が示されている 。光学画像拡大系500Aは、第1の光学的イメージエキスパンダ502と第2の光学的イメージエキスパンダ504とを有する。画像情報を運ぶ変調された光ビームは、開口506を通って入射する。開口506は、仮想的で概念的な開口であってもよく、又は物理的に実際の開口であってもよい変調された光ビームは、変調された光ビームの最初の伝搬方向に対して第1の角度αで配置されている第1の光学的イメージエキスパンダ502に向けられる。第1の光学的イメージエキスパンダ502によって、光ビームはある1つの次元において線形に拡大され、第2の光学的イメージエキスパンダ504に向かって反射される。第2の光学的イメージエキスパンダ504は、第1の光学的イメージエキスパンダ502から反射した反射光ビームの伝搬方向に関して第2の角度βに位置する。
【0076】
図5Bを参照すると、本開示のある実施形態による、図5Aの開口部506の断面図が図示されている。開口の寸法は、長さx及び幅yで与えられる。光の変調及び画像情報の出力を担う空間光変調器(図1の空間光変調器106など)もx及びyの断面寸法を有し、従って、コリメート光ビームの寸法もx及びyであろうことが理解され得る。
【0077】
図5Cを参照すると、本開示のある実施形態による、投影ボリューム512を有する光学画像拡大系(例えば図5Aの光学画像拡大系500A)を含む表示システム500C(例えば図4の表示システム400)の一部の略図が示されている。第1の光学的イメージエキスパンダ502及び第2の光学的イメージエキスパンダ504を含む構成は、3次元画像を表示するための投影ボリューム512によって補完される。ここで、投影ボリューム512のレイヤー上に表示される拡大画像は、長さx'と幅y'を有することが分かる。当該構成において、拡大画像の寸法は、以下のように表される。
【0078】
x'=y/(tan(α))
【0079】
y'=x/(tan(β))
【0080】
第1の光学的イメージエキスパンダ502及び第2の光学的イメージエキスパンダ504のサイズ、並びにこれらに対応する第1の角度α及び第2の角度βは、元の画像のアスペクト比を維持するように選択され得る。拡大画像が不自然な画像アスペクト比を有するように構成されている場合、前述の構成パラメータを用いれば、得られる拡大画像の正常なアスペクト比を達成することができる。
【0081】
図5Dを参照すると、本開示の別の実施形態によるディスプレイシステム500Dの一部の略図が示されている。図示されるディスプレイシステム500Dの一部は、光学画像拡大系(例えば図5Aの光学画像拡大系500A)と投影ボリューム512を有する。表示システム500Dは更に、空間光変調器520及びプリズムアセンブリ524を有する。ここで、空間光変調器520の活性領域に向けられたコリメート光ビーム526は、プリズムアセンブリ524を通過して変調される。プリズムアセンブリ524及び開口506を通過した、変調された光ビームは、典型的には、最小寸法が空間光変調器520のそれぞれの寸法に実質的に対応するフレネル型ミラーアレイの薄片である第1の光学的イメージエキスパンダ502の方に向けられる。変調された光ビームがいずれかの方向に拡大され、反射されると、そのサイズが投影ボリューム512の断面のサイズと同等である第2の光学的イメージエキスパンダ504にぶつかる。その結果、拡大された光ビーム530は、第2の光学的イメージエキスパンダ504に反射して投影ボリューム512に向けられ、光散乱により、ある物理的深さで可視化される。第1の光学的イメージエキスパンダ502及び第2の光学的イメージエキスパンダ504は、入射光線に対して小さな角度又は非常に小さな角度で配置されるので、表示システム500Dの全体のフットプリントはコンパクトになる。
【0082】
図6Aを参照すると、本開示のある実施形態による第1の光学的イメージエキスパンダ600Aの略図が示されている。第1の光学的イメージエキスパンダ600Aは、変調された光ビームを第2の方向に反射する。第1の光学的イメージエキスパンダ600Aは、マイクロパターン化された第1の表面602を有し、第1の方向D1に進む変調光ビームと第1の角度αにある。第1の微細パターン面602は第1のピッチP1を有し、変調された光ビームを反射するとき、そのほんの一部だけを反射して、拡大画像内の「有用な」情報のセグメント612をもたらす。一方、拡大画像のセグメント610は、影領域に相当し、画像情報を伝達しない。
【0083】
図6Bを参照すると、本開示のある実施形態による第1の光学的イメージエキスパンダ600Bの略図が示されている。第1の光学的イメージエキスパンダ600Bは、変調された光ビームを第2の方向に反射する。第1のイメージエキスパンダ600Bは、図6Aの第1のイメージエキスパンダ600Aの第1のピッチP1よりも小さい第1のピッチP2を有する。
【0084】
図6Cを参照すると、本開示のある実施形態による第1の光学的イメージエキスパンダ600Cの略図が示されている。第1の光学的イメージエキスパンダ600Cは、変調された光ビームを第2の方向に反射する。第1のイメージエキスパンダ600Cは、図6Aの第1のイメージエキスパンダ600Aの第1のピッチP1及び図6Bの第1のイメージエキスパンダ600Bの第1のピッチP2よりも更に小さい第1のピッチP3を有する。
【0085】
図7Aを参照すると、本開示のある実施形態による画像要素700Aの説明図が示されている。画像要素700Aは、第1の光学的イメージエキスパンダ(例えば図6Aの第1の光学的イメージエキスパンダ600A)及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが、例えば図6Aに示される第1のピッチP1のように、粗い又は大きい場合に得られる。
【0086】
図7Bを参照すると、本開示の別の実施形態による画像要素700Bの説明図が示されている。画像要素700Bは、第1の光学的イメージエキスパンダ(例えば図6Cの第1の光学的イメージエキスパンダ600C)及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが、例えば図6Cに示される第1のピッチP3のように、細かい又は小さい場合に得られる。
【0087】
図7Cを参照すると、本開示のある実施形態に従ってスクリーン要素に形成される画像要素700Cの説明図が示されている。画像要素700Cは、第1の光学的イメージエキスパンダ(例えば図6Aの第1の光学的イメージエキスパンダ600A)及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが、例えば図6Aに示すように第1のピッチP1のように、粗い又は大きい場合に形成される。ピッチがどうであろうと画像情報は失われないであろう。しかし、画像情報が失われないとしても、画像特徴点と呼ばれる隣接する画像要素間の間隔が大きく、スクリーン要素の散乱力が低い場合、結果として得られる画像は、図7Cに示すように、空白に関連する知覚可能なアーチファクトを含むことがある。
【0088】
図7Dを参照すると、本開示のある実施形態に従ってスクリーン要素に形成される画像要素700Dの説明図が示されている。画像要素700Dは、第1の光学的イメージエキスパンダ(例えば図6Cの第1の光学的イメージエキスパンダ600C)及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが、例えば図6Cに示される第1のピッチP3のように、細かい又は小さい場合に形成される。第1の光学的イメージエキスパンダ及び第2の光学的イメージエキスパンダのピッチが細かい又は小さいため、隣接する画像要素間の隙間は減少する。投影ボリュームの拡散要素内での光の散乱は、複数の画像要素を平滑化された画像へと融合することを助け、知覚される画質を好ましいものとする。
【0089】
図8を参照すると、本開示のある実施形態による複合光拡散要素800が示されている。複合光拡散要素800は、第1の活性拡散層802、第2の活性拡散層804、第1の最外層基板806、第2の最外層基板808及び内部基板810を有する。第1の最外層基板806及び第2の最外層基板808は、全体の構造に剛性を与えるために、厚い材料で作られてもよい。内部基板810は、典型的には可能な限り薄くなるように選択される。内部基板の第1の面812及び第2の面814は透明導電体で被覆されている。第1の活性拡散層802及び第2の活性拡散層804にそれぞれ面する第1の最外層基板806及び第2の最外層基板808の側面も、透明導電体で被覆されている。図示されるように、第1の活性拡散層802及び第2の活性拡散層804にそれぞれ面する第1の最外層基板806及び第2の最外層基板808は、それぞれ透明電極826及び828で被覆されている。更に、第1の活性拡散層802は、入射光ビームの方向Dに配置され、前散乱層となるように構成される。第1活性拡散層802は第2活性拡散層804よりもかなり薄い。第1活性拡散層802は、側面818、820に沿ってポリマーガスケットを適用することによって、液晶セル内に収容される。第2の活性拡散層804は、側面822、824に沿ってポリマーガスケットを適用することによって、液晶セル内に収容される。
【0090】
図9は、本開示の別の実施形態による、3D画像を表示するための方法のステップを列挙したフローチャート900である。本方法は、ステップ902において、光ビームを出射することを含む。ここで光ビームは、光源から第1の光学系に向かって出射され得る。本方法は、ステップ904において、光ビームをコリメートし形成する(拡大し整形する)ことを含む。ここで、光ビームは第1の光学系に受け取られ、光ビームは空間光変調器に向かってコリメートされる。本方法は、ステップ906において、コリメートされた光ビームを変調することを含む。ここで、コリメートされた光ビームは、空間光変調器上で変調され、第1の方向に提供される。本方法は、ステップ908において、変調された光ビームを第2の方向へ反射させることを含む。ここで、変調された光ビームは、第1の方向に対して第1の角度αで第1の光学的イメージエキスパンダで受け取られ、拡大されて、第2の方向に反射される。第1の光学的イメージエキスパンダは第1の微細パターン面と第1のピッチとを有する。第1の微細パターン面は、第1のファセットと、第1の反射ファセットに対して傾斜した第2のファセットとを少なくとも有する。第1のピッチは、第1のファセットと第2の反射ファセットとからなる。ここで、少なくとも第1の反射ファセットは、第1の方向に対して第3の角度γで傾斜しており、少なくとも第1のファセットの少なくとも一部は反射性である。本方法は、ステップ910において、光ビームを第3の方向に反射させることを含む。反射させられた光ビームは、第2の方向に対して第2の角度βで第2の光学的イメージエキスパンダに受け取られ、拡大されて、第3の方向へと反射される。第2の光学的イメージエキスパンダは第2の微細パターン面と第2のピッチとを有する。第2の微細パターン面は、第3のファセットと、第3のファセットに対して傾斜した第4のファセットとを少なくとも有する。第2のピッチは、第3のファセットと第4の反射ファセットとからなる。第3のファセットは、第2の方向に対して第4の角度「δ」で傾斜しており、第3のファセットの少なくとも一部は反射性である。本方法は、ステップ912において、反射させられた光ビームをスクリーン要素で受光することを含む。本明細書において、スクリーン要素は、第2の光エキスパンダの後の光路上に配置される。
【0091】
前述した本開示の実施形態の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される開示範囲から逸脱しない限り可能である。本開示を記述及び請求するのに使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「在る」等の表現は、非限定的に解釈されることを意図したものであり、明示されない項目や部品、要素等が存在してもよい。単数表現もまた、複数に関連するものと解釈されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
【国際調査報告】