IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイキューブ リサーチの特許一覧

特表2024-505409パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具
<>
  • 特表-パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具 図1
  • 特表-パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具 図2
  • 特表-パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具 図3
  • 特表-パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】パルス高出力掘削ビットおよび掘削工具
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E21B7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542489
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022052229
(87)【国際公開番号】W WO2022167370
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】2101063
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263201
【氏名又は名称】アイキューブ リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100190414
【弁理士】
【氏名又は名称】芹澤 友之
(72)【発明者】
【氏名】アブリーヨ、ジーレ
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129BA03
2D129DA11
2D129EC22
2D129GA01
(57)【要約】
掘削工具(1)用の掘削ビット(230)は、流体流の通路のための貫通チャネル(231C)を規定すると共に、外面(232)を有するビット本体(231)を備える。外面(232)上に均等に分配された複数の掘削部材(233)が外面(232)から延出する。各掘削部材(233)は、外面(232)から延出したフィン(233A)と、フィン(233A)から延びる複数の掘削歯(233B)とを有する。各掘削歯(233B)は、基部(233B1)と、前記基部(233B1)の端部に配置された切削要素(233B2)とを有する。掘削ビット(230)は、前記中央面開口部(231A1)の中央に配置された高電圧電極(232C)を有する。各掘削部材(233)は、中央面開口部(231A1)に沿って少なくとも部分的に延びるように、高電圧電極(232C)において、フィン(233A)の端部に位置する接地電極(233C)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削工具(1)用のビット(230)であって、
前記ビット(230)は、掘削面(231A)と、前記ビット(230)を前記掘削工具(1)のロータ組立体(20)に取り付けるための取付面(231B)とを有するビット本体(231)を備え、
前記ビット本体(231)は、前記取付面(231B)を前記掘削面(231A)に接続する流体流を通過させるための貫通チャネル(231C)を、前記掘削面(231A)の円形の中央面開口部(231A1)での開口により規定し、
前記掘削面(231A)は、前記中央面開口部(231A1)を前記取付面(231B)に接続する外面(232)を有し、
前記外面(232)上に均等に分配された複数の掘削部材(233)は、前記外面(232)から延出し、
前記複数の掘削部材(233)の各々は、フィン(233A)と、前記フィン(233A)から延びる複数の掘削歯(233B)とを有し、
前記フィン(233A)は、前記取付面(231B)から前記中央面開口部(231A1)内に前記外面(232)から放射状に延出し、
前記複数の掘削歯(233B)は、前記掘削面(231A)の端部に位置する最初の掘削歯(233)と、前記取付面(231B)の側に位置する最後の掘削歯(233B)との間に並んで配置され、
前記複数の掘削歯(233B)の各々は、基部(233B1)と、前記基部(233B1)の端部に配置された切削要素(233B2)とを有し、
前記ビット(230)は、前記各掘削部材(233)の前記最初の掘削歯(233B)から凹んだ前記中央面開口部(231A1)の中央において、前記貫通チャネル(231C)内に配置された高電圧電極(232C)を有し、
前記複数の掘削部材(233)の各々は、接地電極(233C)を有し、
前記接地電極(233C)は、前記掘削部材(233)の前記最初の掘削歯(233B)から凹んだ前記中央面開口部(231A1)に沿って少なくとも部分的に延びるように、前記高電圧電極(232C)において、前記フィン(233A)の端部に配置される、
ビット(230)。
【請求項2】
前記複数の掘削部材(233)は、前記ビット本体(231)の周囲の前記外面(232)上に均等に分配されている、
請求項1に記載のビット(230)。
【請求項3】
前記ビット本体(231)は、少なくとも3つ、好ましくは4つ、5つまたは6つの掘削部材(233)を有する、
請求項1又は2に記載のビット(230)。
【請求項4】
前記フィン(233A)は、前記ビット本体(231)の外面と一体的に形成されている、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項5】
前記掘削部材(233)の前記歯(233B)の前記基部(233B1)は、前記掘削部材(233)の前記フィン(233A)と一体的に形成されている、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項6】
前記フィン(233A)は、前記掘削ビット(230)の回転とは反対に湾曲するように前記外面(232)上に延びている、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項7】
前記複数の掘削部材(233)の各々は、少なくとも3つ、好ましくは4つ、5つ、または6つの掘削歯(233B)を有する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項8】
前記基部(233B1)は、前記ビット(230)の回転軸(X)に対して直交する方向に延びる略円筒形状となっている、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項9】
前記切削要素(233B2)は、硬質で研磨性の掘削材料、例えば、相互に連結された多結晶ダイヤモンド粒子、特に、多結晶ダイヤモンドコンパクト(PDC)タイプの多結晶ダイヤモンド粒子からなる、
請求項1から8のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項10】
前記複数の接地電極(233C)は同一であり、
前記高電圧電極(232C)および前記複数の接地電極(233C)の各々は、少なくとも部分的に球形状を有する、
請求項1から9のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項11】
前記電極(232C、233C)の各々は、少なくとも部分的に球形状を有し、
前記高電圧電極(232C)の直径は、前記複数の接地電極(233C)の各々の直径の少なくとも2倍に等しいことから、前記高電圧電極(232C)と前記複数の接地電極(233C)のうちいずれか一方との間に電気アークの形成を可能とする、
請求項1から10のうちいずれか一項に記載のビット(230)。
【請求項12】
ステータ組立体(10)と、ロータ組立体(20)とを備えたパルス高出力回転の掘削工具(1)であって、
前記ステータ組立体(10)は、
掘削ロッド(2)に接続されるように構成された取付端部(110A)と、自由端部(110B)とを備えた中空円筒形状の本体(110)を備え、
前記ロータ組立体(20)は、
タービン(210)と、
高出力パルス発生器(220)と、
請求項1から11のうちいずれか一項に記載のビット(230)と、
を備え、
前記タービン(210)は、前記取付端部(110A)において前記本体(110)内に取り付けられる共に、前記ロータ組立体(20)を回転駆動するために前記掘削ロッド(2)によって供給される流体流によって駆動されるように構成され、
高出力パルス発生器(220)は、前記本体(110)内に取り付けられると共に、前記タービン(210)に一体的に接続され、
前記ビット(230)は、前記ステータ組立体(10)の前記自由端部(110B)において前記円筒形状の本体(110)から延出する、
パルス高出力回転の掘削工具(1)。
【請求項13】
前記高出力パルス発生器(220)に供給するために、回転する前記タービン(210)の機械エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された発電機(240)をさらに備える、
請求項12に記載の掘削工具(1)。
【請求項14】
前記本体(110)の内部に取り付けられると共に、前記高出力パルス発生器(220)に一体的に接続され、前記タービン(210)を通過した前記流体流によって駆動されるように構成された掘削モータ(250)をさらに備える、
請求項12又は13に記載の掘削工具(1)。
【請求項15】
前記ビット(230)に一体的に接続されたステアリング装置(260)をさらに備え、
前記ステアリング装置(260)は、
前記タービン(210)によって提供される動力または前記掘削モータ(250)によって提供される増大された動力を受け取ると共に、前記動力を前記ビット(230)に伝達し、前記ビット(230)を所定の方向に向け、前記タービン(210)から前記ビット(230)に流体流を伝達するように構成されたヒンジ付きチューブの形態である、
請求項12から14のうちいずれか一項に記載の掘削工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削分野に関し、特にパルス高出力回転式掘削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削の分野では、岩石を掘削するために回転掘削工具を使用することが知られている。公知の解決策では、この種の工具は、回転によって土壌または岩石を掘削する歯を備えたビットを備えている。このような純粋に機械的な回転掘削は、特に硬い岩石の場合、特に時間がかかることがある。
【0003】
別の既知の解決策としては、例えば数十キロボルトから数百キロボルトのオーダーの高い電位差を受けた高電圧電極と接地電極から、岩石に電気アークを誘発するパルス高出力工具を使用する方法がある。しかし、この解決策では、一対の電極で岩石を破壊するだけであるため、プロセスに比較的時間がかかる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8172006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ビットが電解研磨電極からなる掘削工具に関する。この文献の図5に記載された一実施形態では、ビットは、歯と、環状の接地電極に囲まれた高電圧電極の両方から構成されている。従って、電気パルスは、工具のヘッドの中心にのみ集中するため、その有効性を制限する可能性があり欠点を有する。さらに、電極は、ビットの回転中に岩石に直接曝されるため、損傷する可能性がある。本書の図6に記載された一実施形態では、ビットは、複数の歯列、高電圧電極、および所定の歯列の代わりに配置された遠隔電極から構成される。しかしながら、この構成では、電気パルスが工具の片側にのみ集中するため、効率が制限される可能性があり、再び欠点がある。さらに、電極は、ビットの回転中に岩石に直接曝されるため、損傷する可能性がある。この先行技術の図35から図37の実施形態では、工具は歯がなく、電極の損傷を避けるために回転しない。高電圧電極は、ビットの前面の中央に配置される。接地電極は、ビットの前面の周縁部において、高電圧電極の周囲に配置される。この構成では、各高圧電極と接地電極との間にパルスを発生させるために多くのエネルギーを必要とする点で欠点がある。そして、このような工具では、電動式のみであり機械回転式ではないため、掘削に時間がかかる場合がある。さらに、高電圧電極とアース電極の間の媒体の誘電特性に依存するため、電気パルスが効果的に生成されるかどうかは定かではない。
【0006】
したがって、これらの欠点の少なくともいくつかを克服する、シンプルで効果的な解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明は、まず、掘削工具用ビットに関する。前記ビットはビット本体を備える。ビット本体は、掘削面と、ビットを掘削工具のロータ組立体に取り付けるための面とを有する。前記ビット本体は、掘削面の円形の中央面開口部で開口することにより、取付面と掘削面とを接続する流体流を通すための貫通チャネルを画定する。前記掘削面は、前記中央面開口部と前記取付面とを接続する外面を有する。前記外面上に均等に分配された複数の掘削部材が前記掘削面から延出する。各掘削部材は、フィンと、前記フィンから延びる複数の掘削歯とを有する。前記フィンは、前記取付面から前記中央面開口部内へ前記外面から放射状に延出する。複数の掘削歯は、前記掘削面の端部に位置する最初の掘削歯と、前記取付面の側に位置する最後の掘削歯との間に並んで配置される。各掘削歯は、基部と、前記基部の端部に配置された切削要素とを含む。前記ビットは、各掘削部材の最初の掘削歯から凹んだ中央面開口部の中央において、前記貫通チャネル内に配置された高電圧電極を有する。各掘削部材は、接地電極を有する。前記接地電極は、前記掘削部材の最初の掘削歯から凹んだ中央面開口部に沿って少なくとも部分的に延びるように、前記高電圧電極において、フィンの端部に配置される。
【0008】
高電圧電極と接地電極とによって形成される複数の一対の電極の各々は、当該一対の電極が高出力パルス発生器によってこれを横切って供給される電圧を受けると、電気アークを引き起こすように構成される。このように、貫通チャネルはビット本体を通過して中央面開口部で開口するため、流体流が高電圧電極の周囲を連続的に循環するように、ビットを通して搬送されることを貫通チャネルは可能にする。従って、貫通チャネルは、高電圧電極と複数の接地電極の一方との間にアークを形成することを可能にする誘電要素機能を有する流体スクリーンを形成する。ロータ組立体がタービンによって回転駆動されると、ビットはそれ自体で回転し、歯を使って岩を機械的に掘削する。その際、接地電極の接線速度は、高電圧電極の接線速度よりも大きい。高電圧電極はビット本体の前面中央に位置するため、接線速度はゼロに近い。したがって、高圧電極と複数の接地電極の間に電圧が印加されると、ビットが回転している間に、岩石を通して高圧電極と複数の接地電極の一方との間および電気アークが発生する。このような配置と動作により、高電圧電極と接地電極を岩石との直接摩擦から保護しながら、回転ビットを電気的破砕によって弱体化される領域にできるだけ近づけることができる。高電圧電極と接地電極の間を循環する流体は、流体と岩石の間で、電気アークが岩石を通過するのを促進し、岩石を破砕するため、誘電体素子としての機能と、流体の循環により、岩石の破片を地表に搬送して排出することができるため、掘削泥水としての機能という2つの機能を持つ。さらに、流体流によって、電極間領域の洗浄が可能になる。
【0009】
本発明の一態様によれば、掘削部材は、ビット本体の周囲の外面に均等に分配されるため、掘削部材の間を掘削泥水が流れることを可能にしつつ、掘削効率、特に機械的掘削を向上させる。
【0010】
好ましくは、ビット本体は、少なくとも3つ、好ましくは4つ、5つ、または6つの掘削部材を有するため、掘削泥水が掘削部材間を流れるようにしながら掘削効率を向上させる。
【0011】
本発明の特徴によれば、フィンをビット本体の外面と一体的に形成することにより、ビットの堅固性を向上させ、ひいては掘削効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、ビットの堅固性を向上させ、ひいては掘削効率を向上させるために、掘削部材の歯の基部が前記掘削部材のフィンと一体的に形成されている。
【0013】
好ましくは、フィンは、掘削効率を目的として、ビットの回転とは反対に湾曲して外面に延びる。
【0014】
好ましくは、掘削効率を向上させるために、各掘削部材は、少なくとも3つ、好ましくは4つ、5つ、または6つの掘削歯を有する。
【0015】
本発明の特徴によれば、歯を強固なものとし、その結果、工具の掘削効率および寿命を向上させるために、基部は、略円筒形状であると共に、ビットの回転軸に対して直交する方向に延出している。
【0016】
有利なことに、切削要素は、硬質で研磨性の掘削材料、例えば、相互に連結された多結晶ダイヤモンド粒子、特に「多結晶ダイヤモンドコンパクト」(PDC)タイプの多結晶ダイヤモンド粒子からなる。
【0017】
好ましくは、複数の接地電極が同一であるため、電極の侵食を遅らせるために、高電圧電極と接地電極はそれぞれ少なくとも部分的に球形状を有する。あるいは、電極は、例えば円錐形などの尖った形状、または他の適合した形状を有することができる。
【0018】
一実施形態では、複数の電極のそれぞれは、少なくとも部分的に球形形状を有する。高電圧電極の直径は、高電圧電極と複数の接地電極のいずれかとの間に電気アークを形成できるように、各接地電極の直径の少なくとも2倍に等しい。
【0019】
本発明の一態様によれば、高電圧電極と6つのアース電極は導電性材料で作られ、例えば、好ましくは鋼鉄などの金属で作られている。
【0020】
本発明はまた、高パルス回転掘削工具に関する。前記掘削工具は、ステータ組立体とロータ組立体とを備える。前記ステータ組立体は、掘削ロッドに接続されるように適合された取付端部と、自由端部とを備えた中空円筒形状の本体を備える。前記ロータ組立体は、タービンと、高出力パルス発生器と、上記のビットとを備える。前記タービンは、前記取付端部において前記本体内に取り付けられ、前記ロータ組立体を回転駆動するために前記掘削ロッドによって供給される流体流によって駆動されるように構成される。高出力パルス発生器は、前記本体内部に取り付けられ、前記タービンに一体的に接続される。前記ビットは、前記ステータ組立体の自由端部において前記円筒状の本体から延出する。
【0021】
一実施形態では、掘削工具は、高出力パルス発生器に供給するために、回転タービンの機械エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された発電機をさらに備える。
【0022】
好ましくは、発電機はステータ組立体内に取り付けられる。
【0023】
有利には、掘削工具は、本体内部に取り付けられ、高出力パルス発生器に一体的に接続され、前記タービンを通過した前記流体流によって駆動されるように構成された掘削モータをさらに備える。
【0024】
有利には、掘削工具は、ビットに一体的に接続されたステアリング装置をさらに備える。前記ステアリング装置は、タービンによって提供される動力または掘削モータによって提供される増大された動力を受け取ると共に、前記動力を前記ビットに伝達し、前記ビットを所定の方向に向け、前記タービンから前記ビットへ流体流を伝達するように構成されたヒンジ付きチューブの形態である。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明を読めばさらに分かるであろう。これは純粋に例示であり、添付の図面と併せて読まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による掘削工具の一実施形態を示す切断部分側面図である。
図2図1の工具をステアリングするための装置とビットの透視部分側面図である。
図3図1の工具のビットの正面図である。
図4図1のビットの透視部分側面図であって、特に歯の一部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による掘削工具1の一例を図に示す。掘削工具1は回転式で、パルス状の高出力を有する。
【0028】
I)掘削工具1
図1を参照すると、掘削工具1は、ステータ組立体10とロータ組立体20を備える。
【0029】
1)ステータ組立体10
ステータ組立体10は、掘削ロッド2に接続されるように適合された取付端部110Aと、自由端部110Bとからなる中空円筒状の本体110を備える。
【0030】
2)ロータ組立体20
ロータ組立体20は、タービン210と、高出力パルス発生器220と、ビット230とを備える。この好ましいが限定するものではない実施例において、掘削工具1は、発電機240と、掘削モータ250と、ステアリング装置260とをさらに備える。
【0031】
a)タービン210
タービン210は、取付端部110Aにおいてステータ組立体10の本体110内に取り付けられ、ロータ組立体20を回転駆動するために、掘削ロッド2から供給される流体流によって駆動されるように構成されている。
【0032】
b)発電機240
発電機240は、回転するタービン210の機械エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されている。
【0033】
c)高出力パルス発生器220
高出力パルス発生器220は、ステータ組立体10の本体110内に取り付けられ、タービン210に一体的に接続されている。
【0034】
d)掘削モータ250
掘削モータ250は「マッドモータ(掘削モータ)」タイプである。掘削モータ250は、高出力パルス発生器220に一体的に接続されることによってステータ組立体10の本体110の内部に取り付けられる。掘削モータ250は、タービン210から発生したトルクを増大させ、当該増大したトルクをステアリング装置260を介してビット230に供給するために、タービン210を通過した流体流によって駆動されるように構成されている。
【0035】
e)ステアリング装置260
ステアリング装置260は、一方では掘削モータ250に接続され、他方ではビット230に一体的に接続されている。
【0036】
ステアリング装置260は、掘削モータ250によって供給される増大した動力を受け、当該増大した動力をビット230に伝達し、ビット230を所定の方向に向け、タービン210から掘削モータ250を介してビット230に流体流を伝達するように構成されたヒンジ付きチューブの形態である。
【0037】
f)ビット230
図2を参照すると、ビット230は、自由端部110Bを介してステータ組立体10の中空円筒状の本体110から延出するように、管状接続部270を介してステアリング装置260に接続されている。ビット230は回転軸Xを中心に回転する。
【0038】
ビット230は、掘削面231Aと取付面231B(図2)を有するビット本体231を備える。掘削面231Aは、岩石を研削するために岩石に接触するようになっている。取付面231Bは、ビット本体231と管状接続部270とが同軸に接続されるように、ビット230を管状接続部270に取り付けるように構成されている。
【0039】
ビット本体231は、特に岩屑を排出するために、掘削面231Aの円形の中央面開口部231A1(図3)で開口して、管状接続部270との接続部における取付面231Bを掘削面231Aに接続する流体流をビット230から岩石に循環させるための貫通チャネル231Cを区画する。
【0040】
図3及び図4を参照すると、ビット230は、中央面開口部231A1の中央に配置され、軸線が回転軸Xと同一である半球形状を有する高電圧電極232Cを備える。回転軸Xは、中央面開口部231A1の中心及び高電圧電極232Cの中心を通る。
【0041】
ビット本体231は、中央面開口部231A1から取付面231Bまで延びる外面232を有する。岩石を破壊するように適合された複数の掘削(または切断)部材233が外面232から延びる。
【0042】
掘削部材233は、好ましくはビット本体231と一体的に作られ、ビット本体231の周囲の外面232に均等に分配される。図示の例では、決して限定するものではないが、ビット230は6つの掘削部材233を備える。
【0043】
各掘削部材233はフィン233Aを有する。フィン233Aは、掘削効率を目的として、掘削ビット230の回転とは反対の半径方向に湾曲して延びており、外面232と一体的に形成される。
【0044】
各フィン233Aは、中央面開口部231A1内に部分的に延びる遠位端と、外面232と取付面231Bとの間の接合部に位置する近位端とを有する(図2参照)。隣接する一対のフィン233Aの各々は、特に掘削泥水が排出されることを可能にする溝234を画成する。
【0045】
掘削歯233Bは、遠位端から近位端に向かってフィン233Aに沿って並んで配置されることで、フィン233Aと一体的に形成されている。図示例、特に図4では、各掘削部材233は、5つの掘削歯233Bを有する。
【0046】
図2から図4に示すように、各掘削歯233Bは、岩盤を効率よく掘削するように、フィン233Aからビット230の回転軸Xと直交する方向に延びている。図2に示すように、各掘削部材233の各最初の掘削歯からなる組立体は、ビット本体231が最初に岩石に接触する端部を形成する。
【0047】
高電圧電極232Cは、ビット230の回転中の岩石からの摩擦から保護するために、各掘削部材233の最初の掘削歯233Bから凹んで、すなわち、流体通過用の貫通チャネル231Cに凹んで配置されている。
【0048】
図3及び図4を参照すると、各掘削歯233Bは、基部233B1と、切削要素233B2とを有する。基部233B1は、フィン233Aと一体的に形成され、ビット230の回転軸Xと直交する方向に延びる略円筒形状となっている。切削要素233B2は、ロータ組立体20の回転によって岩石を掘削するために、ビット230の回転方向における基部233B1の端部に配置されている。切削要素233B2は、硬質で研磨性の掘削材料、例えば、「多結晶ダイヤモンドコンパクト」(PDC)タイプを含む、相互に連結された多結晶ダイヤモンド粒子から形成される。切削要素233B2は、ビット本体231とは別個に製造された後、はんだ合金のような接合材料を用いて基部233B1に取り付けられてもよい。
【0049】
各掘削部材233は、接地電極233Cを備える。接地電極233Cは、高電圧電極232Cにおいて、フィン233Aの端部に配置され、中央面開口部231A1に少なくとも部分的に沿って延びる。高電圧電極232Cと同様に、各接地電極233Cは、ビット230の回転中の岩石からの摩擦から保護するために、掘削部材233の最初の掘削歯233Bから凹んで、すなわち、流体を通すための貫通チャネル231Cに凹んで配置される。有利には、各接地電極233Cは半球形状を有し、その軸線は、高電圧電極232Cと前記接地電極233Cとの間の電気アークの形成の向上のために、高電圧電極232Cに対してわずかに、例えば0から30°の間で傾斜していてもよい。
【0050】
高電圧電極232Cと接地電極233Cは、導電性材料、例えば好ましくは鋼鉄のような金属でできている。
【0051】
高電圧電極232Cと接地電極233Cとによって形成される各一対の電極は、高出力パルス発生器220によって当該一対の電極を横切って供給される電圧を受けると、電気アークを引き起こすように構成される。
【0052】
II)実施例
固定された切断掘削ビット230は、切削要素233B2が掘削される岩石層に突き当たるように孔内に配置されてもよく、高電圧電極232Cおよび接地電極233Cは、掘削歯233Bによって岩石から保護される。
【0053】
ロータ組立体20、ひいてはビット230を回転駆動するために、例えば泥水タイプの流体が掘削ロッド2によってタービン210に送り込まれる。
【0054】
その後、タービン210によって駆動される発電機240が充電電流を生成し、適合する電子回路を通じて高周波パルス発生器220のコンデンサを再充電できるようにする。
【0055】
流体がタービン210を通過すると、流体は掘削モータ250を通過し、回転によって岩石を掘削するためにビット230に伝達される動力(トルク)を増加させる。
【0056】
ビット230の回転中、切削要素233B2は、下層の地層の表面を削り、せん断する。同時に、高周波パルス発生器220は、例えば毎秒0.5から50パルス、好ましくは毎秒30パルスの電圧を高電圧電極232Cと接地電極233Cとの間に周期的に印加し、岩片の生成を可能にする電気アークの形成を引き起こし、これらの岩片を生成するためにビットに加えられるはずであった大きな機械的応力を除去する。
【0057】
ビット本体231を貫通して中央面開口部231A1で開口することにより、貫通チャネル231Cは、流体が高電圧電極232Cの周囲を連続的に循環するように流体流をビット本体231内を搬送することを可能にする。その結果、貫通チャネル231Cは、高電圧電極232Cと複数の接地電極233Cの1つとの間に電気アークを形成することを可能にする誘電機能を有する流体スクリーンを形成する。ビット230を通って搬送される流体流は、岩屑を掘削領域から掘削によりできた穴の上部に排出することも可能にする。
【0058】
ビットの回転に伴い、接地電極233Cは、高電圧電極232Cの接線速度よりも大きな接線速度を有する。高電圧電極232Cの接線速度は、ビット本体231の掘削面231Aの中心に位置するためゼロに近い。したがって、高電圧電極232Cと接地電極233Cとの間に電圧が印加されると、高電圧電極232Cを取り囲む流体流が、ビット230が回転している間、高電圧電極232Cと複数の接地電極233Cの1つとの間の岩石中に電気アークを確実に形成する有効な媒体を形成する。
【0059】
このように、流体は2つの機能を有する。即ち、流体は、流体と岩石の間では、電気アークが岩石を通過しやすくなるため、岩石を破砕する誘電体としての機能と、流体の循環によって岩石の破片を地表に運び、排出する掘削泥水としての機能を有する。さらに、流体流により、電極間領域の洗浄が可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1:掘削工具
2:掘削ロッド
X:回転軸
10:ステータ組立体
20:ロータ組立体
110:本体
110A:取付端部
110B:自由端部
210:タービン
220:高出力パルス発生器
230:ビット
231:ビット本体
231A:掘削面
231A1:中央面開口部
231B:取付面
231C:貫通チャネル
232:外面
232C:高電圧電極
233:掘削部材
233A:フィン
233B:掘削歯
233B1:基部
233B2:切削要素
233C:接地電極
234:溝
240:発電機
250:掘削モータ
260:ステアリング装置
270:管状接続部
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】