(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】マイクロLEDデバイスの分離による発光システム
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20240130BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240130BHJP
H01L 33/14 20100101ALI20240130BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
H01L33/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542745
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 US2022012493
(87)【国際公開番号】W WO2022155455
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リー
(72)【発明者】
【氏名】シチ,マイケル・ジョセフ
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA41
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA74
5F241CB22
5F241CB36
5F241FF01
(57)【要約】
発光システムは、マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを含む。マイクロLEDのアレイは、半導体基板と、半導体基板の少なくとも一部の上に形成されているプレップ層と、プレップ層の上に形成されている活性領域とを含む。マイクロLEDのアレイはまた、活性領域の上にアレイを形成する複数の厚いサブ構造体と、活性領域の上に形成されている複数の薄いサブ構造体とを含み、薄いサブ構造体の各々は、各隣接する厚いサブ構造体の組の間に配置されている。厚いサブ構造体の各々は、マイクロLEDのうちの対応する1つの形状およびサイズを画定する。薄いサブ構造体の各々は、厚いサブ構造体の各々を厚いサブ構造体のその他すべてのそれぞれから電気的に分離するために、複数の薄いサブ構造体を通じた自由電子キャリアの移動を防ぐように構成されている。さらに、複数のマイクロLEDは、活性領域を共有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを備え、前記マイクロLEDの前記アレイは、
半導体基板と、
前記半導体基板の少なくとも一部の上に形成されている少なくとも1つのプレップ層と、
前記少なくとも1つのプレップ層の上に形成されている活性領域と、
前記活性領域の上にアレイを形成する複数の厚いサブ構造体と、
前記活性領域の上に形成されている複数の薄いサブ構造体とを含み、前記複数の薄いサブ構造体の各々は、それぞれ隣接する厚いサブ構造体の組の間に配置されており、
前記複数の厚いサブ構造体の各々は、前記マイクロLEDのアレイの中で、前記マイクロLEDのうちの対応する1つの形状およびサイズを画定し、
前記複数の薄いサブ構造体の各々は、前記厚いサブ構造体の各々を前記厚いサブ構造体のその他すべてのそれぞれから電気的に分離するために、前記複数の薄いサブ構造体を通じた自由電子キャリアの移動を防ぐように構成されており、
前記複数のマイクロLEDは、前記活性領域を共有している、発光システム。
【請求項2】
前記複数の薄いサブ構造体の各々は、電子阻止層を含む、請求項1に記載の発光システム。
【請求項3】
前記薄いサブ構造体の各々は、p型のAl(In)GaNで形成されている、請求項2に記載の発光システム。
【請求項4】
前記薄いサブ構造体の各々の厚さは、1ミクロン未満である、請求項2に記載の発光システム。
【請求項5】
前記薄いサブ構造体の各々の厚さは、約0.5ミクロンである、請求項4に記載の発光システム。
【請求項6】
前記活性領域は、量子井戸構造体、複数の量子ドット、およびダブルヘテロ接合構造のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の発光システム。
【請求項7】
半導体基板上にマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを製造する方法であって、前記方法は、
前記半導体基板の少なくとも一部の上に少なくとも1つのプレップ層を堆積することと、
前記少なくとも1つのプレップ層の上に活性領域を形成することと、
前記活性領域の上に少なくとも1つのp層を堆積することと、
前記少なくとも1つのp層の上に、前記複数のマイクロLEDの各々のサイズおよび形状を画定するように構成されている少なくとも1つのマスク構造体を堆積することと、
前記少なくとも1つのマスク構造体によって覆われていない少なくとも1つのp層の領域を薄くすることと、
前記少なくとも1つのマスク構造体を除去することとを含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのp層を部分的にエッチング除去することは、前記少なくとも1つのp層が前記少なくとも1つのマスク構造体によって覆われていないところで、前記少なくとも1つのp層の厚さを1ミクロン未満まで減少させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのp層の前記厚さを減少させることは、前記少なくとも1つのp層が前記少なくとも1つのマスク構造体によって覆われていないところで、前記少なくとも1つのp層の厚さを約0.5ミクロンに減少させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体基板、前記少なくとも1つのプレップ層、前記活性領域、および前記少なくとも1つのp層の組合せは、第1の波長での発光を示し、
前記マイクロLEDの各々は、前記少なくとも1つのマスク構造体を除去した後に、前記第1の波長での発光を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体基板、前記少なくとも1つのプレップ層、前記活性領域、および前記少なくとも1つのp層の組合せは、所与の波長において第1の内部量子効率(IQE)値を示し、
前記マイクロLEDの各々は、前記少なくとも1つのマスク構造体を除去した後に、前記所与の波長において前記第1のIQEと実質的に同様のIQE値を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのp層を部分的にエッチング除去することは、前記活性領域および前記少なくとも1つのプレップ層を完全な状態のままで残す、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
活性領域を形成することは、量子井戸構造体、複数の量子ドット、およびダブルヘテロ接合構造のうちの少なくとも1つを形成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを備え、前記マイクロLEDの前記アレイは、
半導体基板と、
前記半導体基板の少なくとも一部の上に形成されている少なくとも1つのプレップ層と、
前記少なくとも1つのプレップ層の上に形成されている活性領域と、
前記活性領域の上に形成されている電子阻止層と、
前記電子阻止層の上にアレイを形成する複数の厚いサブ構造体とを含み、
前記複数の厚いサブ構造体の各々は、前記複数の厚いサブ構造体のその他すべてのそれぞれから物理的に切り離されており、前記マイクロLEDのうちの対応する1つの形状およびサイズを画定し、
前記電子阻止層は、前記厚いサブ構造体の各々を前記厚いサブ構造体のその他すべての1つから電気的に分離するために、前記電子阻止層を通じた自由電子キャリアの移動を防ぐように構成されており、
前記マイクロLEDのアレイは、前記活性領域を共有している、発光システム。
【請求項15】
半導体基板上にマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを製造する方法であって、前記方法は、
前記半導体基板の少なくとも一部の上に少なくとも1つのプレップ層を堆積することと、
前記少なくとも1つのプレップ層の上に活性領域を形成することと、
前記活性領域の上に電子阻止層を堆積することと、
前記電子阻止層の上に少なくとも1つのp層を堆積することと、
前記p層の上に、前記マイクロLEDの各々のサイズおよび形状を画定するように構成されている少なくとも1つのマスク構造体を堆積することと、
前記少なくとも1つのp層が前記少なくとも1つのマスク構造体によって覆われていないところで、前記電子阻止層を貫通することなく、前記少なくとも1つのp層をエッチング除去することと、
前記少なくとも1つのマスク構造体を除去することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/137,355号に対する優先権を主張し、その内容全体を参照によって本明細書に引用する。
【0002】
背景
本開示の態様は、一般に、様々なタイプのディスプレイや他のデバイスで使用されている発光ダイオードの構造体などの発光構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
発光デバイスおよびディスプレイにおいて画素(またはピクセル)の個数が増えると、ユーザー体験を改善し、新たな用途を可能にする場合がある。しかしながら、ピクセルを形成する発光素子の個数を増加させ、または密度を上げることは、挑戦的なことである。発光ダイオード(LED:light emitting diode)のサイズを縮小することにより、ピクセルを形成する発光素子の総数と密度の両方を高めることが可能になる。
【0004】
LED製造技法における最近の開発により、各LEDが数ミクロンから数分の一ミクロンのオーダーのピッチを有するマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)の製造が可能になってきた。たとえば、Heらによる国際特許公開WO2019/209945A1、WO2019/209957A1、WO2019/209961A1、およびWO2020/210563A1を参照されたく、これらのすべてをその全体において参照により本明細書に引用する。そのようなマイクロLEDは、発光素子を用いるディスプレイおよび他の用途のための新たな構成のホストを可能にする。
【0005】
図1に、一般的に実装されているLED用のエピタキシャル層構造体が示されている。LED構造体100は、1つまたは複数のバルク層もしくはプレップ層120を支持している半導体基板または半導体テンプレート110を含む。一例では、半導体テンプレートは、n型エピタキシャル基板上に形成されているn型GaNテンプレートである。バルク層もしくはプレップ層120の上に、活性量子井戸(QW:quantum well)130が形成されている。バルク層もしくはプレップ層120は、たとえば、1つの材料の厚い層、または2つ以上の材料の構造体であり、半導体テンプレート110から活性QW130に熱膨張係数の遷移および/または格子整合をもたらすように構成されている。バルク層もしくはプレップ層120の材料組成を調整することによって、より柔軟に活性QW130用の材料選択を行うことができ、そうして、所望の発光特性を伴う活性領域を形成することが可能になる。最後に、LED構造体100に電子接点を設けるため、1つまたは複数のp層140が活性QW130の上に堆積する。p層140は、pドープ層および/または接触層を含む。次いでLED構造体100は、指定された用途に対する所望のマイクロLED形状因子を形成するように、エッチングされ、または他の方法で形状を定められ得る。
【0006】
いくつかの実施態様では、半導体テンプレート110上のLED構造体100の位置、形状、およびサイズを画定するために、エピタキシャル成長およびドライエッチング、または選択成長法(SAG:selective area growth)などの技法が使用されてもよい。すなわち、基板上にマイクロLEDのアレイを形成する1つのやり方は、発光のために必要な層構造体をエピタキシャル成長させ(たとえば、プレップ層、活性量子井戸層、電子阻止層、p層、および
図1に示す他の機能層を格子整合させ、またはひずみ管理し)、次いでマスクエッチング工程(たとえば、ドライエッチングまたはウェットエッチング)を用いて、層構造体から所望のマイクロLEDのアレイの形状を定め、分離することである。エッチングは通常、活性発光領域を含めて層構造体全体をエッチングして、各マイクロLEDの活性発光領域を周囲のマイクロLEDから分離することを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来のマイクロLED製造工程には欠点があり、たとえば、エッチング前および分離前のLED層構造体からの波長シフト、および量子効率の低下である。したがって、本明細書において、マイクロLEDの効果的かつ効率的な設計および製造を可能にする技法ならびにデバイスを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の概要
1つまたは複数の態様の基本的理解を提供するために、以下には、そのような態様の簡易化した概要を提示する。この概要は、考え得るすべての態様の広範な要約ではなく、すべての態様の重要な要素または決定的な要素を特定することも、いずれかの態様またはすべての態様の範囲を描写することも意図するものではない。概要の目的は、より詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の態様のいくつかの概念を簡易化した形態で提示することである。
【0009】
本開示の一態様では、発光システムが説明されている。発光システムは、マイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを含む。マイクロLEDのアレイは、半導体基板と、半導体基板の少なくとも一部の上に形成されている少なくとも1つのプレップ層と、少なくとも1つのプレップ層の上に形成されている活性領域とを含む。マイクロLEDのアレイはまた、活性領域の上にアレイを形成する複数の厚いサブ構造体と、活性領域の上に形成されている複数の薄いサブ構造体とを含み、複数の薄いサブ構造体の各々は、各隣接する厚いサブ構造体の組の間に配置されている。複数の厚いサブ構造体の各々は、マイクロLEDのうちの対応する1つの形状およびサイズを画定する。複数の薄いサブ構造体の各々は、厚いサブ構造体の各々を厚いサブ構造体のその他すべてのそれぞれから電気的に分離するために、複数の薄いサブ構造体を通じた自由電子キャリアの移動を防ぐように構成されている。さらに、複数のマイクロLEDは、活性領域を共有している。
【0010】
別の態様では、半導体基板上にマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)のアレイを製造する方法が説明されている。方法は、半導体基板の少なくとも一部の上に少なくとも1つのプレップ層を堆積することと、少なくとも1つのプレップ層の上に活性領域を形成することと、活性領域の上に少なくとも1つのp層を堆積することと、少なくとも1つのp層の上に、複数のマイクロLEDの各々のサイズおよび形状を画定するように構成されている少なくとも1つのマスク構造体を堆積することとを含む。方法はさらに、少なくとも1つのp層が少なくとも1つのマスク構造体によって覆われていないところで、少なくとも1つのp層を部分的にエッチング除去することと、少なくとも1つのマスク構造体を除去することとを含む。
【0011】
添付の図面は、いくつかの実施態様のみを示しており、したがって範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の態様による、一般的に実装されるマイクロLED構造体の一例を示す図である。
【
図2】本開示の態様による、ディスプレイで使用するためのアレイの部品として多数のマイクロLED構造体を含むLEDアレイの一部の上面図である。
【
図3】本開示の態様による、LED用のエピタキシャル層構造体の断面図である。
【
図4】本開示の態様による、LED用のエピタキシャル層構造体を選択的にエッチングすることにより形成された複数のマイクロLEDの断面図である。
【
図5】本開示の態様による、LED用のエピタキシャル層構造体を選択的にエッチングすることにより形成された複数のマイクロLEDの断面図である。
【
図6】本開示の態様による、マイクロLEDを形成するための工程を示す図である。
【
図7】本開示の態様による、マイクロLEDを形成するための代替的な工程を示す図である。
【
図8】本開示の態様による、マイクロLEDを形成するための代替的な工程を示す図である。
【
図9】本開示の態様による、マイクロLEDを形成するための代替的な工程を示す図である。
【
図10】本開示の態様による、マイクロLEDを形成するための代替的な工程を示す図である。
【
図11】本開示の態様による、複数のマイクロLEDの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
添付の図面に関連して下記に記述される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されており、本明細書で説明する概念が実行される場合のある構成のみを表すことを意図するものではない。詳細な説明は、様々な概念の徹底的な理解を提供する目的で、具体的な詳細を含む。これらの具体的な詳細がなくともこれらの概念が実行される場合があることが、当業者には明らかであろう。いくつかの例では、そのような概念が不明瞭になることを避けるために、周知の構成要素をブロック図形態で示している。
【0014】
本開示は、赤色、緑色、および青色の波長を含む可視スペクトル内の様々な波長を含む所望の波長範囲で、効率が改善された発光を可能にするLEDの態様を提供する。本明細書で提示される態様は、縮小されたデバイスのサイズにおいて、高い効率および指定の波長範囲の発光を維持するマイクロLED技術の適用を可能にする。いくつかの例では、発光体は、ミクロンスケール、またはさらにサブミクロンスケールのサイズを有する場合がある。
【0015】
図2は、本開示の態様による、ディスプレイで使用するためのアレイの部品として多数のマイクロLED構造体を含むLEDアレイ200の一部の上面図を示している。
図2に示すように、LEDアレイ200は、基板240上に支持されている複数のマイクロLED構造体210、220、および230を含み、一例として、これらはそれぞれ赤色、緑色、および青色の波長で発光する。あるいは、すべてのマイクロLED構造体は、赤色波長範囲などの単一の波長範囲内で発光してもよい。
図2には4×4のアレイのLEDのみが示されているが、LEDアレイ200は、たとえばディスプレイを形成するより大きなアレイの発光体の部品であってもよく、ピクセルの配列、形状、個数、サイズ、および対応する波長の発光は、特定の用途に対して調整され得る。たとえば、特定の用途では円形または六角形の発光体が実装され得、この発光体は、2つ、3つ、またはそれ以上のグループにグループ分けされる場合がある。ディスプレイは、ライトフィールドの用途で用いられるものなどの高解像度かつ高密度のディスプレイであり得る。
【0016】
図2のマイクロLED構造体を画定し、形状を定めるために、平面的なエピタキシャル堆積および次いで上述したエッチングなどの工程が使用されてもよい。一例として、
図3は、LED用のエピタキシャル層構造体300の断面図を示している。エピタキシャル層構造体は、本質的に、
図1に示すマイクロLED構造体100の一種であり、簡易化されたより大きな平面である。
図3に示すように、エピタキシャル層構造体300は、半導体基板または半導体テンプレート310を含み、半導体基板または半導体テンプレート310は、その上に1つまたは複数のプレップ層320を支持する。プレップ層320の上には、たとえばエピタキシャル堆積によって、活性領域330が形成される。実施形態では、活性領域330は、そこから発光するように構成されている1つまたは複数の量子井戸、量子ドット、またはダブルヘテロ接合構造を含む。特定の実施形態では、活性領域310は、活性QW領域130の一例である。活性領域330の上面には、p層340が形成されている。半導体基板310、プレップ層320、活性領域330、およびp層340の各々は、種々の材料組成を潜在的に組み込む複数の層を内部に含んでもよい。
【0017】
エピタキシャル層構造体300からマイクロLED構造体のアレイを画定し、形状を定めるために、ドライまたはウェットのエッチング工程が用いられてもよい。たとえば、マイクロLED構造体に対応する区域にわたって、エピタキシャル層構造体300上にマスク350を堆積させ、プリントし、または形成してもよい。次いで、ドライまたはウェットのエッチング工程が用いられて、エピタキシャル構造体300のうちのマスク350で保護されていない部分を特定の深さまで除去する。このようにして、エピタキシャル層構造体300から複数のマイクロLED構造体の形状を定め、分離する。実施形態では、マスク350は、貫通する開口のパターン化されたアレイを含む1つまたは複数の材料層である。
【0018】
図4には、従来のエッチング工程の結果が示されている。
図4は、
図3に示されているもののようなLEDエピタキシャル層構造体を選択的にエッチングした結果として得られる、複数のマイクロLED400(中括弧で示されている)の断面図を示している。複数のマイクロLED400は、深さ412(両矢印で示されている)までエッチングされた開口部410によって切り離されている。マイクロLED400の形成の際、上述した従来の方法では、開口部410の深さ412は、プレップ層320’の中に延在し、そうして活性領域330’およびp層340’を切り離す。各マイクロLED400を個別に電気的にアドレス指定できるように、各マイクロLED400に対してp層340’を切り離すことが求められる一方で、プレップ層320’の中にエッチングして活性領域を切り離すと、エピタキシャル層構造体300と比較して、結果として得られるマイクロLED400における内部量子効率(IQE:internal quantum efficiency)の低下、および青色シフト(すなわち、発光波長がより短い波長に向かうシフト)につながることが示されてきた。
【0019】
対照的に、
図5は、一実施形態による、
図3に示すエピタキシャル層構造体からマイクロLEDを分離するための代替的な方法を用いて形成された複数のマイクロLEDの断面図を示している。
図5に示すように、マイクロLED500(中括弧で示されている)は、開口部510をエッチングすることによって形成されており、開口部510は深さ512(両矢印で示されている)までエッチングされている。言い換えれば、開口部510は、元はp層340だったところの中にエッチングされて、厚いサブ構造体542と、開口部510内の薄いサブ構造体544とを形成しており、厚いサブ構造体542は、個別のマイクロLED500のサイズおよび形状を画定する。厚いサブ構造体542は、個別のマイクロLED500を電気的にアドレス指定するように構成されており、薄いサブ構造体544は、薄いサブ構造体544を通る自由キャリアの移動を防ぐように構成されている。一方で、活性領域330およびプレップ層320は、完全な状態のままで保たれている。このようにすると、マイクロLED500は、マイクロLEDの形状因子、および切り離され個別にアドレス指定可能なマイクロLEDとしての動作を有しながら、元々の
図3のエピタキシャル層構造体300のIQEおよび発光波長を維持する。さらに、完全な状態のままの活性領域330およびプレップ層320を含むマイクロLED500は、切り離された活性領域330’およびp層340’を伴う
図4のマイクロLED400よりも、光取り出し効率(LEE:light extraction efficiency)がはるかに高いことが示された。
【0020】
図5に示す開口部510の寸法は、特定の用途のためにマイクロLED500間に求められる間隔に従って、カスタマイズされてもよい。たとえば、マイクロLED500間の間隔は、数分の一ミクロン(たとえば高密度マイクロLED用途の場合)から、3~5ミクロン(たとえばマイクロLED500間に追加の構造体が必要である用途の場合)のオーダーであってもよく、またはさらに広くてもよい(たとえば低密度マイクロLED用途の場合)。また、特定の実施形態では、所与の半導体基板の一部のみが、
図3および
図5で示した方式で形成されたマイクロLEDを含み、そうして、異なるタイプの処理またはデバイスの製造をするための半導体基板上のスペースを残している。
【0021】
特定の一例として、薄いサブ構造体544として活性領域330の上面に残されたp層340の0.5ミクロンの層は、開口部510内の薄いサブ構造体544が自由電子キャリアの空乏であり、そのため各マイクロLED500を互いに電気的に分離することを確実にするのに十分であることが示された。たとえば、p層340は、Al(In)GaN電子阻止層(EBL:electron blocking layer)を含むp型材料で形成されてもよい。このようにしてp層は、マイクロLEDの形状とサイズを画定するサブ構造体のアレイへと形づけられる。続いて、各マイクロLED500に対応する各p層サブ構造体は、各マイクロLED500を個別に制御できるように、個別にアクセス指定されることができる。マイクロLED500は、連続した活性QW構造体を共有し、エピタキシャル層構造体300の元々の平面的なLED構造体の発光性能が維持される。そのような構造体は、たとえば、
図3に示す構造体上に浅いエッチングを行い、それからそのエッチング工程を活性領域330に到達する前に停止させることによって形成されてもよい。
【0022】
図6は、一実施形態による、半導体基板または半導体テンプレート上にマイクロLEDを形成するための工程を示している。
図6に示すように、工程600は、開始ステップ602で始まり、それからステップ610で、半導体基板または半導体テンプレート上にプレップ層が堆積される。ステップ612で、プレップ層の上に活性領域が形成され、ステップ614でのp層の堆積が続く。ステップ616で、p層の上には、形成されるべき各マイクロLEDのサイズおよび形状を画定するための1つまたは複数のマスク構造体が堆積される。それからステップ620で、浅いエッチング工程を行ってマイクロLEDを形成し、そしてステップ622で、マスク構造体を除去する。工程600は、終了ステップ630で終了する。
【0023】
ステップ620は、たとえば、活性領域が露出する前にエッチングを確実に停止させるように、エッチングされている層構造体を監視することを含んでもよい。たとえば、ステップ620は、活性領域の中にエッチングしないように特定の既知の深さでエッチングを停止させるための、正確なエッチング深さの監視(たとえば、光学装置または他の感知装置)を含んでもよい。代替として、プレップ層が、特定の既知の材料で形成された(電子阻止層などの)特有の層を含む場合には、エッチング機器は、(たとえば、光学装置または他の感知装置を用いて)その材料を監視して、その特定の既知の材料が感知されたときにエッチング工程を停止させるべきことを示すように構成されていてもよい。
【0024】
浅いエッチング工程は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:heterojunction bipolar transistor)などを伴うトランジスタ技術において既知であることに留意されたい。たとえば、HBTの形成におけるパッシベーションレッジの使用が、文献で論じられてきた(たとえば以下を参照。https://parts.jpl.nasa.gov/mmic/3-V.PDF accessed 2020-12-21)。しかしながら、マイクロLEDを形成するためのこのタイプのエッチング操作は、現在使用されていない。
【0025】
図7~
図9には、代替的なマイクロLEDアレイ構造体が示されている。
図7に示すように、半導体基板または半導体テンプレート310は、その上にプレップ層320および活性領域330を支持する。それから、活性領域の上に直接p層構造体を堆積するのではなく、活性領域330の上に電子阻止層744が堆積される。それから、形成されるべきマイクロLEDの形状およびサイズを画定するために、電子阻止層744の上にマスク750が形成される。一例では、マスク750は、本質的に、
図3のマスク350のネガティブである。実施形態では、マスク750は、貫通する開口のパターン化されたアレイを含む1つまたは複数の材料層であり、各開口のサイズおよび形状は、形成されるべきマイクロLEDのサイズおよび形状を少なくとも部分的に画定する。
【0026】
図8を参照すると、電子阻止層744の上にp層842が堆積される。p層842は、p層842を介して各マイクロLEDの個別のアドレス指定を可能にしながら、マイクロLEDの形状およびサイズを画定するために電子阻止層744と協働するように構成され得る。それから
図9に示すように、マスク構造体750を除去すると、開口部910によって切り離されたマイクロLED900が残存する。マイクロLED900は、
図5のマイクロLED500のように、連続した活性領域を共有すると同時に、p層842および近接したマイクロLED900間での自由電子キャリアの移動を防ぐ電子阻止層744を介して個別にアドレス指定可能なままである。したがって、プレップ層320および活性領域330の完全性は、完全な状態のままで保たれており、そうして、個別にアドレス指定可能なマイクロLEDを画定しながら、元々の平面的な構造体のIQEおよび発光波長を保存する。
【0027】
図10は、本開示の態様による、
図7~
図9に示すような半導体基板または半導体テンプレート上のマイクロLEDを形成するための代替的な工程を示している。
図10に示すように、工程1000は、開始ステップ1002で始まり、半導体基板または半導体テンプレート上へと1つまたは複数のプレップ層が堆積するステップ1010に進む。それからステップ1012で、プレップ層の上に活性領域(たとえば、活性QW領域)が形成される。ステップ1014で、活性領域の上に電子阻止層が堆積される。ステップ1016では、電子阻止層上に、マイクロLEDの形状およびサイズを画定するための1つまたは複数のマスク構造体が堆積される。それからステップ1020で、追加のp層が堆積される。ステップ1022で、マスク構造体を除去し、工程1000は、終了ステップ1030で終わる。
【0028】
図11は、本開示の態様による、半導体基板または半導体テンプレート上に形成されたマイクロLEDの代替的な配列を示している。
図11に示すように、間隔1105によって切り離されている複数のマイクロLED1100A~1100Cは、半導体基板または半導体テンプレート1110上に形成されている。各々のマイクロLED1100A~1100C内には、1つまたは複数のプレップ層1120と、活性領域1130と、1つまたは複数のp層1160とがある。マイクロLED1100A~1100Cの各々には、そのマイクロLEDを電気的にアドレス指定するための電気接点1150も示されている。間隔1105は、活性領域1130を含めて隣接するマイクロLEDを切り離し、半導体基板1110の中に延在しているように示されているが、マイクロLED1100A~1100Cの各々は、浅い段差1160も含むことに留意されたい。このようにすると、各マイクロLEDの発光部(すなわち活性領域1130)の寸法を最大化できる可能性があると同時に、特定のデバイス用途に対する要件に対して、マイクロLED1100A~1100Cの各々の電気的なアドレス指定に必要なデバイススペースをカスタマイズすることができる。さらに、
図11に示す構成では、すべてのマイクロLEDが、同じ波長範囲で発光するように構成される場合があり、またはマイクロLED1100A~1100Cの各々が、別個の波長で発光するように構成され得る。たとえば、マイクロLED1100Aが赤色波長で発光するように構成されていてもよく、マイクロLED1100Bが緑色波長で発光するように構成されていてもよく、マイクロLED1100Cが青色波長で発光するように構成されていてもよい。浅い段差1160は、すべてのマイクロLED1100A~1100Cに組み込まれても、特定のマイクロLEDのみに組み込まれてもよい。
【0029】
上述した技法は、(たとえば、異なる波長範囲で発光するように構成されている)多数のタイプのマイクロLEDが、共通基板上にモノリシックに統合されている構成で使用されてもよい。そのような一実施形態では、マイクロLEDのうちの1つまたは複数は、上述の浅いエッチング工程によって形成された浅い分離構造体に基づいていてもよい。さらに、浅い分離構造体は、異なるタイプのマイクロLEDのための(たとえば
図4に示す)従来の深い分離構造体と組み合わされてもよい。そのような深い分離構造体は、たとえば、浅い分離区域の外側に使用される場合がある。そのような浅い分離構造体と深い分離構造体との組合せは、光学分離および光取り出しなどの、マイクロLEDの特定の所望の特性に最適化される場合がある。
【0030】
上述した技法が、赤色波長範囲で動作するマイクロLEDの形成に対して、特に魅力的である場合がある一方で、同じ技法は、青色、緑色、赤外線などの他の波長範囲で動作するマイクロLEDの形成に使用されてもよい。すなわち、本明細書で提示したマイクロLED構造体の態様は、より広い範囲の波長においてより高い効率を可能にする。たとえば、本明細書で提示した態様は、平面的なLED構造体からマイクロLED形式への青色シフトを最小化しながら、より長い波長の発光において効率を改善する場合がある。本明細書で提示したデバイス構成および技法は、任意の半導体QW構造体およびデバイスに適用可能であってもよいことに留意されたい。
【0031】
さらに、上述の浅いエッチング技法は、他のマイクロLED形成技法と組み合わせて使用されてもよい。たとえば、浅いエッチング技法を用いて形成されたマイクロLED間の開口部(たとえば開口部510および910)に、追加のマイクロLEDが形成されてもよい。一例として、上述の浅いエッチング技法を用いて、第1の波長範囲で動作する第1の組のマイクロLEDを形成して、その第1の組のマイクロLED間に十分な空間を残し、開口部の中に追加のマイクロLEDを形成すことができる。追加のマイクロLEDは、第1の組のマイクロLEDの活性領域と協働して、第1の波長範囲の外側の波長範囲で発光するように構成されていてもよい。あるいは、追加の半導体デバイス(たとえば、センサ、トランジスタ、または他の発光しないデバイス)が、上述の浅いエッチング技法を用いて形成されたマイクロLED間の開口部に配設されてもよい。
【0032】
先の説明は、本明細書で説明する様々な態様を任意の当業者が実行することができるように、提供されている。当業者には、これらの態様に対する様々な修正形態が容易に理解され、本明細書で定義した包括的な原理は、他の態様に適用されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示した態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲を与えられるべきである。単数形の要素への言及は、特に明記されない限り、「1つおよび1つだけ」を意味するものではなく、「1つまたは複数」を意味するものである。その他の方法で特に明記されない限り、「いくつか」という用語は、1つまたは複数に言及する。「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの1つまたは複数」「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つまたは複数」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組合せ」などの組合せは、A、B、および/またはCの任意の組合せを含んでもよく、多数のA、多数のB、または多数のCを含んでもよい。特に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの1つまたは複数」「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つまたは複数」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組合せ」などの組合せは、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCであってもよく、そのような組合せはどれも、A、B、またはCのうちの1つまたは複数の構成要素を包含してもよい。本開示全体を通して説明した様々な態様の要素に対する、当業者に既知であるかのちに既知となるべき構造体的等価物および機能的等価物はすべて、参照によって本明細書に明確に組み込まれており、特許請求の範囲によって網羅されることを意図している。さらに、本明細書で開示するもので、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記されているか否かにかかわらず、公共に捧げされることを意図するものはない。
【国際調査報告】