(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】外科手技において輸尿管を可視化するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 49/00 20060101AFI20240130BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240130BHJP
C07K 7/04 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
A61K49/00
A61B10/00 E
C07K7/04 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542754
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022012379
(87)【国際公開番号】W WO2022155385
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143287
【氏名又は名称】アルーム・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Alume Biosciences, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】グエン,クエン
(72)【発明者】
【氏名】ホイットニー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085HH11
4C085JJ02
4C085KA27
4C085KB55
4C085KB56
4C085KB82
4C085LL11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA70
4H045EA50
4H045FA10
(57)【要約】
対象にペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを投与することを含む、外科手技中の輸尿管および他の標的組織の蛍光可視化を含む、輸尿管を可視化する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における輸尿管を可視化する方法であって、
(a)対象にペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートの有効量を投与し;そして
(b)投与後輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出する
ことを含み;
ここで、蛍光コンジュゲートのペプチドは、配列番号1~14、16、18~82および84~748からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
対象が外科手技を受ける、請求項1の方法。
【請求項3】
蛍光コンジュゲートが外科手技前に先ず投与される、請求項2の方法。
【請求項4】
蛍光コンジュゲートが初めの投与の後対象にさらに投与されない、請求項3の方法。
【請求項5】
外科手技が婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含む、請求項2~4の何れかの方法。
【請求項6】
外科手技が腹部または骨盤内手技を含む、請求項2~4の何れかの方法。
【請求項7】
外科手技が腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施される、請求項2~4の何れかの方法。
【請求項8】
外科手技が開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技または内視鏡的手技である、請求項2~4の何れかの方法。
【請求項9】
外科手技が癌外科手技、より具体的に、前立腺癌外科手技または結腸直腸癌外科手技である、請求項2~4の何れかの方法。
【請求項10】
(a)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして
(b)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより対象における輸尿管を可視化する;
ここで、蛍光コンジュゲートのペプチドが配列番号1~14、16、18~82および84~748からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項11】
蛍光コンジュゲートが外科手技前に先ず投与される、請求項10の方法。
【請求項12】
蛍光コンジュゲートが初めの投与の後対象にさらに投与されない、請求項11の方法。
【請求項13】
外科手技が婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含む、請求項10~12の何れかの方法。
【請求項14】
外科手技が腹部または骨盤内手技を含む、請求項10~12の何れかの方法。
【請求項15】
外科手技が腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施される、請求項10~12の何れかの方法。
【請求項16】
外科手技が開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技または内視鏡的手技である、請求項10~12の何れかの方法。
【請求項17】
外科手技が癌外科手技、より具体的に、前立腺癌外科手技または結腸直腸癌外科手技である、請求項10~12の何れかの方法。
【請求項18】
輸尿管に対する傷害を減少する方法であって、
(a)外科手技前に輸尿管損傷のリスクのある対象を同定し
(b)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして
(c)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより輸尿管を可視化する
ことを含み、ここで、蛍光コンジュゲートのペプチドが配列番号1~14、16、18~82および84~748からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項19】
蛍光コンジュゲートが外科手技前に先ず投与される、請求項18の方法。
【請求項20】
蛍光コンジュゲートが初めの投与の後対象にさらに投与されない、請求項19の方法。
【請求項21】
輸尿管傷害が結紮、アンギュレーション、切断、裂傷、挫滅、出血または切除に起因する、請求項18~20の何れかの方法。
【請求項22】
外科手技が婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含む、請求項18~21の何れかの方法。
【請求項23】
外科手技が腹部または骨盤内手技を含む、請求項18~21の何れかの方法。
【請求項24】
外科手技が腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施される、請求項18~21の何れかの方法。
【請求項25】
外科手技が開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技または内視鏡的手技である、請求項18~21の何れかの方法。
【請求項26】
外科手技が癌外科手技、より具体的に、前立腺癌外科手技または結腸直腸癌外科手技である、請求項18~21の何れかの方法。
【請求項27】
ペプチドが神経ターゲティングペプチドである、請求項1~26の何れかの方法。
【請求項28】
蛍光部分がペプチドのN末端、C末端またはN末端およびC末端両方にコンジュゲートされる、請求項1~27の何れかの方法。
【請求項29】
投与後少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または少なくとも8時間の時間以内の蛍光部分の蛍光の検出をさらに含む、請求項1~28の何れかの方法。
【請求項30】
投与後1時間超、2時間超、3時間超、4時間超、5時間超、6時間超、7時間超または8時間超の時間;または30分後、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間または8時間後超の投与後の蛍光部分の蛍光の検出をさらに含む、請求項1~29の何れかの方法。
【請求項31】
輸尿管における蛍光部分の蛍光の検出が輸尿管における尿流の検出、より具体的に輸尿管における尿の蠕動流における蛍光部分の検出を含む、請求項1~30の何れかの方法。
【請求項32】
ペプチドが配列番号1、配列番号2および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項33】
ペプチドが配列番号1~14、16、20~28および96~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項34】
ペプチドが配列番号1、4、7~14、20~28および96~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項35】
ペプチドが配列番号18、19、29~82、84~95および103~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項36】
ペプチドが配列番号75~82、84~95および103~187からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項37】
ペプチドが配列番号55~74および188~362からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項38】
ペプチドが配列番号33~54および363~446からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項39】
ペプチドが配列番号18、19、29~32および447~471からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項40】
ペプチドが配列番号472~678からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項41】
ペプチドが配列番号679~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項42】
ペプチドが配列番号1、配列番号7、配列番号11、配列番号20、配列番号21、配列番号25および配列番号99からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項43】
ペプチドが配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
ペプチドが配列番号1またはN末端またはC末端から2~8アミノ酸が欠失したそのバリアントのアミノ酸配列を含む、請求項42の方法。
【請求項45】
ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27または配列番号28を含む、請求項44の方法。
【請求項46】
アミノ酸配列がC末端にさらにGC、GGまたはGGCアミノ酸配列を含む、請求項45の方法。
【請求項47】
アミノ酸配列が配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号21、配列番号102、配列番号101、配列番号100、配列番号99、配列番号98、配列番号97および配列番号96からなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
蛍光部分が蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~47の何れかの方法。
【請求項49】
蛍光部分がキサンテン;ビマン;クマリン;芳香族アミン;ベンゾフラン;蛍光シアニン;カルバゾール;ジシアノメチレンピラン;ポリメチン;オキサベンズアントラン;ピリリウム;カルボスチリル;ペリレン;アクリドン;キナクリドン;ルブレン;アントラセン;コロネン;フェナントレセン;ピレン;ブタジエン;スチルベン;ポルフィリン;フタロシアニン;ランタニド金属キレート錯体;希土類金属キレート錯体;またはそれらの誘導体を含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項50】
蛍光部分がカルボキシフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネート、5,6-ジカルボキシフルオレセイン、5-スルホフルオレセイン、6-スルホフルオレセイン、スルホンフルオレセイン、スクシニルフルオレセイン、5-カルボキシSNARF-1、6-カルボキシSNARF-1、カルボキシフルオレセインスルホネート、カルボキシフルオレセイン双性イオン、カルボキシフルオレセイン4級アンモニウム、カルボキシフルオレセインホスホネート、カルボキシフルオレセインGABA、カルボキシフルオレセイン-cys-Cy5またはフルオレセイングルタチオンを含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項51】
蛍光部分がカルボキシフルオレセイン(FAM)を含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項52】
蛍光部分が5-カルボキシローダミン110、6-カルボキシローダミン110、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチルおよびテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルおよびジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロライドまたは他のローダミン色素を含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項53】
蛍光部分がCy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7またはインドシアニングリーンを含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項54】
蛍光部分がIR800CW、シアン蛍光タンパク質(CFP)、EGFP、5-FAM、6-FAM、FAM、フルオレセイン、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、TRITC、Cy5、Cy3、YFP、LC Red 640、Alexa Fluor 546、テトラメチルローダミン、ダブシル、QSY7、QSY9、QSY21またはBBQ-650色素を含む、請求項1~48の何れかの方法。
【請求項55】
蛍光コンジュゲートが配列番号747を含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項56】
ペプチドが配列番号20を含み、蛍光部分がFAMを含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項57】
ペプチドが配列番号21を含み、蛍光部分がFAMを含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項58】
蛍光コンジュゲートが静脈内投与される、請求項1~57の何れかの方法。
【請求項59】
蛍光コンジュゲートが経口投与される、請求項1~57の何れかの方法。
【請求項60】
薬学的に許容される添加物を含む医薬組成物における蛍光コンジュゲートの投与をさらに含む、請求項1~59の何れかの方法。
【請求項61】
蛍光コンジュゲートの蛍光検出による対象における神経の可視化をさらに含む、請求項1~60の何れかの方法。
【請求項62】
神経および輸尿管の可視化が、手術中に対象において同時に検出される、請求項61の方法。
【請求項63】
神経および輸尿管の可視化がが、手術中に対象において異なる時点に検出される、請求項61の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する記載
本願と関連する配列表を、書面の代わりにテキスト形式で提供し、引用により本明細書に包含させる。配列表を含むテキストファイルの名称は110267_405WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは142KBであり、2022年1月13日に作成し、EFS-Webにより電子的に提供した。
【0002】
分野
本発明は、一般に外科手技における術中造影方法、より具体的には、輸尿管および神経の蛍光可視化に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
輸尿管は一対の多層筋肉管を含み - 各々平均的成人で約10~12インチ長である- 尿を腎臓から膀胱に輸送する。輸送は、ペースメーカにより開始される輸尿管壁の筋肉層の収縮に起因する蠕動運動を利用する。壁がリズミカルに緊張および弛緩することにより、尿は輸尿管から膀胱に拍動的に流動する。
【0004】
腹部から骨盤に伸びるため、輸尿管は、性腺および子宮血管、腸骨動脈、下腸間膜およびS状結腸血管ならびに子宮頸、結腸および直腸などの腹骨盤腔における多くの構造に近位である。さらに、輸尿管は、しばしば崩壊状態にある薄壁の管であり、周囲組織との区別が困難である。その位置および物理状況を考えると、輸尿管は、婦人科、泌尿器、結腸直腸および心血管を含む多くの外科手技でかなりの損傷リスクがある。例えば、Engelsgjerd and LaGrange, 2020, StatPearls, Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2020 Jul 10; Ferrara and Kann, 2019, Clin. Colon Rectal Surg. 32, 196-203; Ahn et al., 2019, Quant. Imaging Med. Surg. 9,1056-1065; Gild et al., 2018, Asian J. Urol. 5, 101-106参照。実際、輸尿管損傷はしばしば手術中に気づかれず、ある場合には腎不全などの長期合併症に至り得る診断の遅れおよび処置の遅延となり得る。Tan-Kim et al. 2015, J. Minimally Invasive Gynecol. 22, 1278-1286; Al-Awadi et al. 2005, Int. Urol. Nephrol. 37, 235-241。
【0005】
結果として、輸尿管損傷は患者罹病率および付随する医療費に重大な影響を与える。米国では、年間約60万の子宮摘出術および30万の結腸手術が実施されており、輸尿管損傷率はそれぞれ2.5%および7.6%と高い。Gild et al. 2018, Asian J. Urol. 5, 101-106; Doll et al. 2016, JAMA Surg. 151, 876-877; Teeluckdharry et al. 2015, Obstet. Gynecol. 126, 1161-1169; Briggs and Goldberg, 2011, Clin. Colon. Rectal Surg. 30, 130-135参照。下部腹部外科手技において、医原性輸尿管損傷(IUI)の推定発生率は、癌手術で0.5~1%、腹腔鏡婦人科手術で0.3%~2.5%そして婦人科腫瘍手術で最大10%である。例えば、de Valk et al. 2019, Nat. Commun. 16, 3118; Anderson et al. 2015, Surg. Endosc. 29, 1406-1412; Engel et al. 2015, Curr. Opin. Urol. 25, 331-335; Minas et al. 2014, Obstet. Gynecol. 16, 19-28; Zafar et al. 2014, JSLS. 18, e2014.00158; Silva et al. 2012, Asian J. Endosc. Surg. 5, 1050110; Delacroix and Winters, 2010, Clin. Colon Rectal Surg. 23,104-112参照。輸尿管損傷の合わせた経済的影響は、米国のみで10億ドルを超え、損傷あたり4日の平均入院および30,000ドルを超える費用を発生させる。
【0006】
手術中の輸尿管損傷のリスクの軽減をもたらすためにいくつかのアプローチが探索されている。これらは、輸尿管へのステントまたは照明カテーテルの挿入を含む泌尿器外科手技を含むが、例えば、泌尿器科医または他の専門家との術中の協議が必要となることより、手術のワークフローが阻害され、望まない遅延が生じる可能性がある。例えば、Wood et al. 1996, J. Am. Assoc. Gynecol. Laparosc, 3, 393-397; Chahin et al. 2002, JSLS 6, 49-52参照。他のアプローチは、輸尿管を可視化するための放射性色素またはフルオロフォア(またはあるコンジュゲート)の投与または注射を含む。しかしながら、このような手技には、さらなるリスクおよび複雑さが存在し得て、薬剤の感受性、強度および作用時間は限定的であり得る。例えば、Ikeda et al., 2017, Am. J. Physiol. Renal Physiol. 312, F629-F639; Al-Taher et al., 2016, J. Laparoendosc. Adv. Surg. Tech. A. 26, 870-875; Verbeek et al., 2014, Ann. Surg. Oncol. 21, S528-S537; Hyun et al. 2012, Contrast Media Mol. Imaging 7, 516-524; Choi et al., 2011, Angew Chem. Int. Ed. Engl. 50, 6258-6263; Tanaka, et al. 2007, J. Urol. 178, 2197-2201; Cadeddu et al., 2001, J. Endourology 15, 111-116参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野で、外科手技中輸尿管の可視化を含む望ましい性質を有する組成物を同定する必要性が残っている。本発明は、投与後に感受性および長期の輸尿管可視化を可能とし、さらに同時の神経および輸尿管可視化を含む神経可視化を支持し得る、ペプチド組成物、特に蛍光ペプチドコンジュゲートの提供により、これらおよびその他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
ここに開示するのは、外科手技中の輸尿管の蛍光可視化の方法を含む、輸尿管を可視化する方法である。
【0009】
ある態様において、本発明は、対象における輸尿管を可視化する方法であって、(a)対象にペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートの有効量を投与し、そして(b)投与後輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することを含む、方法に関する。ある実施態様において、対象は外科手技を受ける。
【0010】
他の態様において、本発明は、(a)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして(b)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより対象における輸尿管を可視化することを含む、方法に関する。
【0011】
他の態様において、本発明は、輸尿管に対する損傷を減少する方法であって、(a)外科手技前に輸尿管傷害のリスクのある対象を同定し;(b)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして(c)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより輸尿管を可視化することを含む、方法に関する。ある実施態様において、輸尿管損傷は結紮、アンギュレーション、切断、裂傷、挫滅、出血または切除に起因する。
【0012】
方法のある実施態様において、ペプチドは神経ターゲティングペプチドであり得る。方法の何れにおいても、ペプチドは国際特許出願PCT/US2018/045054および国際特許出願PCT/US21/61821に示すものを含む、ここに開示するアミノ酸配列の何れかからなるかまたはそれを含むことができる。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートのペプチドは、配列番号1~14、16、18~82および84~748からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
方法の何れかのある実施態様において、蛍光部分は、ペプチドのN末端、C末端またはN末端およびC末端両方に直接的またはリンカーを介して間接的にコンジュゲートされ得る。方法の何れかのある実施態様において、蛍光部分は、ここに開示する蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
ある実施態様において、方法の何れも投与後、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または少なくとも8時間以内に蛍光部分の蛍光を検出することをさらに含み得る。ある実施態様において、方法は、さらに、投与後1時間超、2時間超、3時間超、4時間超、5時間超、6時間超、7時間超または8時間超の時間蛍光部分の蛍光を検出することを含む。
【0015】
ある実施態様において、方法の何れかにおける蛍光コンジュゲートを、最初の投与後対象にさらに投与しない。方法の何れにおいても、輸尿管における蛍光部分の蛍光の検出は、輸尿管における尿流の検出、より具体的に輸尿管における尿の蠕動流の検出を含み得る。方法の何れにおいても、蛍光コンジュゲートを静脈内投与し得る。方法の何れにおいても、蛍光コンジュゲートを経口投与し得る。方法の何れにおいても、蛍光コンジュゲートを外科手技前に対象に投与し得る。
【0016】
ある実施態様において、方法の何れかにおける外科手技は婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含み得る;腹部または骨盤が関連し得る;腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施し得る;開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技または内視鏡的手技であり得る;または癌外科手技、より具体的に、前立腺癌外科手技または結腸直腸癌手技であり得る。
【0017】
ある実施態様において、方法の何れかにおける蛍光コンジュゲートは、ここに記載する蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素またはそれらの組み合わせからなる群から選択される蛍光部分を含む。
【0018】
ある実施態様において、方法の何れも、薬学的に許容される添加物を含み得る医薬組成物における蛍光コンジュゲートの投与を含む。
【0019】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは、対象における神経可視化ならびに付随する(または同時の)神経および輸尿管可視化を可能とし得る。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは、外科手技中の種々の時点で対象における神経可視化および輸尿管可視化をもたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】約2000ナノモルの蛍光コンジュゲート(配列番号747)静脈内投与後の生存野生型マウスにおける輸尿管の明視野および蛍光オーバーレイ画像。画像を、カスタマイズした蛍光検出顕微鏡を使用して投与2時間後に得た。左パネル:白色反射率画像。右パネル:蛍光重ね合わせ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な記載
ここに開示するのは、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲート(ここでは「コンジュゲート」とも称する)の投与による、輸尿管を可視化する方法、より具体的に、輸尿管を蛍光可視化する方法である。神経ターゲティングペプチドを含むものを含む、ある蛍光コンジュゲートの代謝および排泄が輸尿管中の腎臓から膀胱への排尿中の蛍光の感受性および長期検出を支持することが本発明により発見された。有利に、ここでの蛍光コンジュゲートの使用により、投与後早期および後期両方での輸尿管検出が可能となる。これらの性質は、投与後短期および長期の輸尿管可視化をもたらす、このようなコンジュゲートの広範な有用性を強調する。
【0022】
従って、ある実施態様において、方法は、尿の輸尿管流、より具体的に尿の蠕動輸尿管流における蛍光部分の検出による、対象における輸尿管の可視化を含む。蛍光コンジュゲートは静脈内投与でき、外科手技前に対象に投与できる。
【0023】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートにおけるペプチドは神経ターゲティングペプチドを含み、より具体的に、両者とも引用により全体として本明細書に包含させる国際特許出願PCT/US2018/045054または国際特許出願PCT/US21/61821に開示される神経ターゲティングペプチドを含む。従って、ある実施態様において、ここに開示する蛍光コンジュゲートは、輸尿管および神経の同時の検出を可能とし得る。
【0024】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートにおけるペプチドは、国際特許公開WO2019028281A2に開示のアミノ酸配列QVPWEEPYYVVKKSSGG(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号21)を含む。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは5FAM-QVPWEEPYYVVKKSSGG-NH2(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号747)である。
【0025】
本発明は、実施例を含む次の記載を参照して、より完全に認識され得る。他に定義されない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、当分野における当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。ここに記載するものに類似するまたは等価な方法および材料を、本発明の実施または試験に使用できるが適当な方法および材料はここに記載される。さらに、材料、方法および実施例は例示のみであり、限定的を意図しない。
【0026】
簡潔化のために、特許、特許出願、論文、本、マニュアルおよび専門書を含む、本明細書で引用する全ての文献または文献の一部を、あらゆる目的のために引用により全体として本明細書に明示的に包含させる。しかしながら、あらゆるこのような刊行物の引用は、それが本発明の先行文献であると認めるとして解釈されてはならない。
【0027】
本明細書のセクションにおける表題および副題は、単に構成上の目的のためであり、本明細書を全体として参照することにより解釈されるべき記載される主題を限定すると解釈されてはならない。例えば、当業者は、異なる表題およびセクションからの種々の態様の組み合わせがここに記載する本発明の精神および範囲に従い適切であるとして有用であることを認識する。
【0028】
本明細書の記載から、当業者には明らかとなるとおり、説明する実施態様およびその種々の代替は、説明する実施例への詳述を要することなく実行され得る。
【0029】
I. 定義
ここで使用する単数表現は、列挙される成分の「1以上」をいう。代替(例えば、「または」)の使用は、代替の何れか一方、両方またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。さらに、ここに記載する構造および置換基の種々の組み合わせに由来する個々の化合物または化合物群は、各化合物または化合物群が個々に示されているのと同程度、本明細書により開示される。故に、特定の構造または特定の置換基の選択は、本発明の範囲内である。
【0030】
ここで使用する用語「約」または「おおよそ」は、当業者が特定した値と合理的に類似すると考える、特定した値を含む値の範囲を意味する。ある実施態様において、「約」は、当分野で一般に許容される測定を使用した標準偏差内を意味する。ある実施態様において、「約」は、特定した値の±10%にわたる範囲を意味する。ある実施態様において、「約」は特定した値を意味する。
【0031】
用語「約」が明示的に使用されていてもいなくても、ここに示す全ての数値は、実際に示す値およびこのような示す値の実験および/または測定条件により等価または近似であるものを含む、当分野の従来技術に基づき合理的に推測されるこのような示す値の近似を意味する。従って、数値の前に「約」または「おおよそ」がある本発明のあらゆる実施態様に関して、本発明は、正確な値が言及されている実施態様を含む。逆に、数値の前に「約」または「おおよそ」がない本発明のあらゆる実施態様に関して、本発明は値の前に「約」または「おおよそ」がある実施態様を含む。
【0032】
用語「含む」および「包含する」は、ここでは、その開放的、非限定的意味で使用する。本明細書で使用する他の用語および表現およびそれらのバリエーションは、他に明示的に示されない限り、末端限定的ではなく、オープンエンドとして解釈されるべきである。前記の例として、用語「例」は、議論されている項目の例示的場合を提供するために援用され、その徹底的または限定的一覧ではない。「慣用の」、「通常の」、「既知の」などの形容詞および類似の意味の用語は、記載される項目をある時期にまたはある時点で利用可能な項目に限定すると解釈すべきではなく、むしろ現在または将来のいかなる時点でも利用可能または既知であり得る慣用のまたは通常の技術を包含すると解釈すべきである。同様に、本明細書が当業者に明らかであるかまたは既知である技術について記載するとき、そのような技術は、現在または将来のいかなる時点でも当業者に明らかでありまたは既知であるものを含む。
【0033】
ここで使用する次の用語は、特に特定しない限り、それらが包含する意味を有する。
【0034】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうためにここで相互交換可能に使用される。本用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび1以上のアミノ酸残基が天然に存在しないアミノ酸(例えば、アミノ酸アナログ)であるアミノ酸ポリマーに適用される。本用語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合により連結されている、完全長タンパク質(すなわち、神経ターゲティング分子)を含むあらゆる長さのアミノ酸鎖を包含する。ここで使用する用語「ペプチド」は、典型的に2~約50残基長の範囲のアミノ酸残基のポリマーをいう。ある実施態様において、ペプチドは約2、3、4、5、7、9、10または11残基~約50、45、40、45、30、25、20または15残基長の範囲である。ある実施態様において、ペプチドは約8、9、10、11または12残基~約15、20または25残基長の範囲である。ここでアミノ酸配列が記載されるとき、配列のL-、D-またはベータアミノ酸バージョンならびに逆、反転および逆-反転アイソフォームも考慮される。ペプチドはまた1以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的アナログであるアミノ酸ポリマーおよび天然に存在するアミノ酸ポリマーも含む。さらに、本用語は、ペプチド結合または他の修飾結合により連結されるアミノ酸にも適用される(例えば、ペプチド結合がα-エステル、/3-エステル、チオアミド、ホスホンアミド、カルバメート、ヒドロキシラートなどに置き換わるとき(例えば、Spatola 1983, Chem. Biochem. Amino Acids and Proteins 7: 267-357参照)、アミドが飽和アミンに置き換わるとき(例えば、引用により本明細書に包含させるSkiles et al.、米国特許4,496,542およびKaltenbronn et al., 1990, pp. 969-970 in Proc. 1lth American Peptide Symposium, ESCOM Science Publishers, The Netherlandsなど参照))。
【0035】
従って、用語「アミノ酸」は、天然に存在するおよび合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の方法で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体をいう。天然に存在するアミノ酸は遺伝暗号によりコードされるものならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンをいう。アミノ酸はL-またはD-アミノ酸であり得る。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合した炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシドをいう。このようなアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド主鎖を有するが天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する、化学化合物をいう。
【0036】
アミノ酸は、その一般に知られる三文字記号またはIUP AC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一文字記号で示し得る。ヌクレオチドは、同様に、一般に許容される一文字子コードで示し得る。
【0037】
当業者は、コード化配列における一アミノ酸または小パーセンテージのアミノ酸を変える、加えるまたは欠失するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、アミノ酸に化学的に類似するアミノ酸での置換をもたらす「保存修飾バリアント」であることを認識する。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当分野で周知である。このような保存修飾バリアントは、さらに多形バリアント、種間ホモログおよびアレルであり、これらを除外しない。
【0038】
次の8群は各々互いに保存的置換であるあるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)参照)。
【0039】
ここで使用する「配列同一性」(または「同一性」)は、単一のある配列におけるアミノ酸残基の、配列の整列および、必要であれば、最大パーセント配列同一性の達成に必要であるギャップ導入後、およびあらゆる保存的置換を配列同一性とみなさず、他の参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一であるパーセンテージをいう。ここで使用する「配列相同性」(または「相同性」)は、単一のある配列におけるアミノ酸残基の、配列の整列および、必要であれば、最大パーセント配列相同性の達成に必要であるギャップ導入後、他の参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一または類似する化学性質を有するアミノ酸残基のパーセンテージをいう。故に、配列同一性とは対照的に、配列相同性は、あらゆる保存的置換(上記のとおり)を配列アラインメントの一部としてみなす。配列同一性または配列相同性は、Altschul et al. 1997, Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402により定義されるNCBI BLAST 2.0ソフトウェアなどの、一般に利用可能なコンピュータプログラムを含む周知方法を使用して、決定できる。これらのプログラムは、ある配列と参照配列の間の最高レベルの配列同一性または配列相同性を粗油汁ために、デフォルトギャップ加重を使用して、配列を最適に整列させる。
【0040】
ここで使用する用語「標識」は、ここに開示するターゲティング分子の可視化および/または検出を容易にする分子をいう。ある実施態様において、標識は蛍光部分である。
【0041】
用語「個体」、「患者」または「対象」は相互交換可能に使用される。ここで使用するそれらは、あらゆる哺乳動物(すなわち分類学による分類動物界:脊索動物:脊椎動物:哺乳類内のあらゆる目、科および属の種)を意味する。ある実施態様において、哺乳動物はウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類またはヒトである。ある実施態様において、哺乳動物はヒト対象、より具体的に、外科手技を受けるヒト対象である。ここでの用語は、医療従事者(例えば医師、正看護師、診療看護師、医師助手、雑役係またはホスピス従業員)の監督(例えば絶えずまたは間欠的に)により特徴づけられる状況を必要としないまたはそれに限定されない従業者を含む。
【0042】
ここで使用する用語「投与」、「投与する」、「投与し」などは、所望の生物学的作用部位への薬剤または組成物の送達を可能とするために使用され得る方法をいう。これらの方法は、非経腸注射(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、髄腔内、硝子体内、注入または局所)を含むがこれらに限定されない。所望によりここに記載する薬剤および方法とともに使用される投与技術は、例えば、Gennaro: Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed. (Lippincott Williams & Wilkins, 2005)およびGoodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw-Hill Professional, 2005)に記載のものを含む。ある実施態様において、投与は、ヒト患者への全身静脈内注射を介する。
【0043】
用語「有効量」は「治療有効量」と相互交換可能であり、記載する目的の達成、例えば、輸尿管手術中(手術の経過、外科手技、手術方法またはオペ中)の蛍光可視化を可能とするなどの投与対象における効果の達成に十分な量を意味する。「有効量」の例は、腹部外科手技中の医原性輸尿管損傷(IUI)などの外科または医療手技が原因の有害事象の処置、予防または低減に寄与するのに十分である量である。所望の効果は、1回の投与で生じ得るが必ずしもではない。一連の投与後にも生じ得る。故に、有効量は、1以上の投与で投与され得る。組成物の治療有効量の決定は、特に本明細書における詳細な記載に鑑み、当業者の能力の範囲内である。例えば、ヒトのための用量は、動物で有効であることが判明している濃度を達成するために公式化され得る。ヒトにおける投与量は、ここに開示する薬剤または組成物の有効性をモニタリングし、投与量を上方または下方に調節することにより調節し得る。ここに記載する方法および他の方法に基づきヒトにおいて最大有効性を達成するための用量の調製は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0044】
ここで使用する用語「薬学的に許容される」は、ここに記載する薬剤および組成物の生物学的活性または性質を抑止せず、比較的非毒性(すなわち、物質の毒性が物質の利益を顕著に上回らない)である、物質をいう。ある場合、薬学的に許容される物質を、個体に顕著な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなくまたは組成物に含まれる成分の何れかと、有害な方法で顕著に相互作用することなく、投与され得る。
【0045】
ここで使用する用語「手術」は、物理的介入による効果を操作、変化または引き起こすために使用され得るあらゆる方法または手技をいう。手術手技は、開腹手術、顕微鏡的手術、内視鏡的手術、腹腔鏡下手術、最小侵襲手術、ロボット手術を含むがこれらに限定されない。ある場合、手術対象はヒト対象またはヒト患者である。外科手技は、婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含み得る。外科手技は、腹部または骨盤内手技も含み得るがこれらに限定されない。ある場合、外科手技は腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施される。外科手技は、例えば、前立腺癌外科手技または結腸直腸手技を含む、癌外科手技であり得る。外科手技は、ここに記載する組成物および方法が手術中の対象における同時の神経および輸尿管可視化を含む手術中神経可視化を支持し得るため、輸尿管損傷のリスクがある、およびある場合、同様に神経に影響し得る手技も含み得る。
【0046】
II. 方法
本発明は、蛍光部分に結合したペプチド、すなわち、標識ペプチドを含む蛍光コンジュゲートの使用による、特に、手術中の輸尿管を可視化する方法を提供する。ある実施態様において、ペプチドは神経ターゲティングペプチドを含む。ある実施態様において、ここに記載する蛍光コンジュゲート(およびその組成物)は、外科手技中の輸尿管損傷および特に医原性輸尿管損傷(IUI)の可能性を減らすために、このような方法における手術補助剤として有用である。
【0047】
ここにさらに記載するとおり、神経ターゲティング蛍光コンジュゲートが輸尿管を通過中の顕著なかつ長期の蛍光を可能にする条件下、腎臓排泄により除去され得ることが観察された。結果として、輸尿管可視化は、輸尿管を通る尿の流れ、より具体的に、輸尿管を通る尿の蠕動流における蛍光部分の検出により達成され得る。輸尿管可視化は、ある蛍光コンジュゲートの投与後、数時間以上持続する長時間持続し得る。
【0048】
従って、ある実施態様において、本発明は、ここに記載する分子および組成物の何れかを使用する、対象における輸尿管の可視化の方法を提供する。ある実施態様において、対象は、診断手技、医療手技または外科手技などの手技を受けている。
【0049】
ある態様において、方法は、(a)対象にペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートの有効量を投与し;そして(b)投与落ち対象の輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することを含む。
【0050】
他の態様において、方法は、(a)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして(b)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより対象における輸尿管を可視化することを含む。
【0051】
他の態様において、方法は、(a)外科手技前に輸尿管傷害のリスクのある対象を同定し;(b)外科手技を受ける対象に、ペプチドおよび蛍光部分を含む蛍光コンジュゲートを有効量投与し;そして(c)輸尿管における蛍光部分の蛍光を検出することにより輸尿管を可視化することを含む。ここで使用する輸尿管傷害のリスクのある対象は、ここに記載する診断、医療または外科手技を必要とする対象を含む。
【0052】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートをまず外科手技の前に投与する。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートを、最初の投与後投与しない。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートを外科手技中投与する。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートを外科手技前および中に投与する。
【0053】
ある実施態様において、外科手技は婦人科、泌尿器、結腸直腸または心血管外科手技を含む。ある実施態様において、外科手技は腹部または骨盤内手技を含む。ある実施態様において、外科手技は腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸で実施される。ある実施態様において、外科手技は開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技または内視鏡的手技である。ある実施態様において、外科手技は癌外科手技、より具体的に、前立腺癌外科手技である。
【0054】
これらの方法の何れかのある実施態様において、蛍光コンジュゲートは、ヒトおよび哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌおよびウマ)を含む、ここに記載する対象に投与される。ある実施態様において、対象は哺乳動物である。ある実施態様において、対象は霊長類である。ある実施態様において、対象はヒトである。ある実施態様において、ヒト対象は小児対象(21歳以下)、成人対象(22歳~65歳)または老年対象(65歳以上)である。
【0055】
蛍光コンジュゲートは、ここにさらに記載するとおり任意の経路で投与され得る。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは静脈内投与される。ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは経口投与される。ある実施態様において、任意の経路で投与される蛍光コンジュゲートは、薬学的に許容される添加物を含み得る、ここに記載する医薬組成物として投与され得る。
【0056】
蛍光コンジュゲートの蛍光部分は、当分野で知られる任意の適当な方法により輸尿管で検出され得る。例えば、蛍光部分は、適切な波長の光での手術野におけるフルオロフォアの励起およびフィルター、レンズおよびカメラの組み合わせを使用する得られた蛍光(および手術野)の検出により検出され得る。
【0057】
方法のある実施態様において、蛍光部分は、蛍光ガイド下手術(FGS)に適合させた医療デバイスにより輸尿管において検出される。このような適応されたデバイスは、開腹手術で使用する携帯型または固定型デバイス;腹部および骨盤内手技で使用する腹腔鏡および内視鏡などの最小侵襲デバイス;前立腺手術で使用するロボット手術系;および手術用拡大鏡などのその他のデバイスを含み得るがこれらに限定されない。デバイスは、明視野照明および蛍光放射からのリアルタイム同期情報を提供し得る。1以上の光源を使用して、サンプルまたは手術野を励起および照射し得る。蛍光部分の放射スペクトルに対してカスタマイズした光学フィルター、結像レンズおよびデジタルカメラ(例えばCCDおよびCMOS検出器系)を使用して、光を集めて、最終画像を作り得る。ライブビデオ処理を実施して、蛍光検出中のコントラストの強調および蛍光シグナルの感受性の改善もし得る。
【0058】
方法のある実施態様において、蛍光部分の蛍光は、輸尿管で、投与後少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または少なくとも8時間の時間以内に検出される。
【0059】
方法のある実施態様において、蛍光部分の蛍光は、輸尿管で、投与後1時間超、2時間超、3時間超、4時間超、5時間超、6時間超、7時間超または8時間超の時間検出される。
【0060】
方法のある実施態様において、蛍光部分の蛍光は、投与後、輸尿管で30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後または8時間後超検出される。
【0061】
方法のある実施態様において、蛍光コンジュゲートは、手術中神経および輸尿管可視化を含む、付随する神経検出ならびに輸尿管可視化を可能とする。このような神経は、例えば、‘054出願に開示のとおり、運動神経、感覚神経、交感および副交感神経、末梢神経ならびに自律神経などのヒト神経を含み得る。
【0062】
より一般的に、ここに記載する方法、コンジュゲートおよび組成物は、開腹外科手技、腹腔鏡下外科手技、顕微鏡的手技および内視鏡的手技も包含し得る。
【0063】
さらに、ここに記載する方法、コンジュゲートおよび組成物は、神経および輸尿管の可視化が望ましい外科手技でも使用され得る。
【0064】
III. 蛍光コンジュゲート
本方法で使用する蛍光コンジュゲートは、
ペプチド、より具体的に、蛍光部分に結合した神経ターゲティングペプチド(またはそれ以外の方法で蛍光標識を含むペプチド)を含む。
【0065】
ペプチド
ある実施態様において、神経ターゲティングペプチドは、国際特許出願PCT/US2018/045054(「‘054出願」、WO2019028281A2として公開、引用により全体として本明細書に包含させる)に開示の、任意の欠失またはリンカーバリアントを含む、任意のペプチドである。従って、このようなペプチドは、表1(配列番号1~17、20~28および96~102)に挙げる次のアミノ酸配列(ペプチド配列)の何れかを含むまたはそれからなる。
【表1】
【0066】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかを含むまたはそれからなる。
【0067】
さらに、ペプチドは、‘054出願に記載するアミノ酸配列の任意のバリアントを含むかまたはそれからなることができる。このようなバリアントは、表1におけるアミノ酸配列と75%~99%同一性または75%~99%相同性を共有する(または‘054出願に他に開示されているとおり)アミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドを含み得るがこれらに限定されない。
【0068】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも85%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも97%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0069】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも80%相同性を共有するペプチド配列を含むかまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも80%相同性を共有するペプチド配列を含むかまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも85%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも90%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも95%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかと少なくとも99%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0070】
ある実施態様において、ペプチドは、コア結合ドメイン、PYYVVKK(配列番号40)およびQVPWEE(配列番号41)のN末端配列を含む約13~約25アミノ酸のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0071】
ある実施態様において、ペプチドは、PYYまたはPYYVV(配列番号83)のアミノ酸コア結合ドメインおよびQVPWEE(配列番号41)のN末端配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、PYYのアミノ酸コア結合ドメインおよびQVPWEE(配列番号41)のN末端配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、PYYのアミノ酸コア結合ドメインVV(配列番号83)およびQVPWEE(配列番号41)のN末端配列を含む。
【0072】
ある実施態様において、ペプチドは、QVPWEEPYYVVKKSSGG(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号21)を含むまたはそれからなる。
【0073】
ある実施態様において、ペプチドは、SGQVPWEEPYYVVKKSS(HNP401;配列番号1)、WEYHYVDLNWTSQHPQ(HNP402;配列番号2)およびDLPDIIWDFNWETA(HNP403;配列番号3)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0074】
ある実施態様において、ペプチドは、SGQVPWEEPYYVVKKSS(HNP401;配列番号1)、Ac-QVPWEEPYYVVKKSSGGC(GGCリンカーを伴うHNP401-N-2;配列番号7)、Ac-SGQVPWEEPYYVVKKGGC(GGCリンカーを伴うHNP401-C-2;配列番号11)、QVPWEEPYYVVKKSS(HNP401-N-2;配列番号20)、QVPWEEPYYVVKKSSGG(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号21)およびSGQVPWEEPYYVVKK(HNP401-C-2;配列番号25)およびSGQVPWEEPYYVVKKGG(GGリンカーを有するHNP401-C-2;配列番号99)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0075】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1、4、7~14、20~28および96~102の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0076】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1、20および22~24の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0077】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1および25~28の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0078】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号4および7~10の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0079】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号4および11~14の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0080】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号21および100~102の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0081】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号96~99の何れかのアミノ配列を含むまたはそれからなる。
【0082】
ある実施態様において、ペプチドは、引用により全体として本明細書に包含させるPCT出願PCT/US21/61821(「‘821出願」)に開示の神経ターゲティングペプチドである。ある実施態様において、これらのペプチドは、4つの異なる神経標的タンパク質:ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質(ミエリンPLP)およびナイドジェン-2の何れかへの選択的結合に基づくファージディスプレイライブラリースクリーニングに由来した。このようなペプチドは表2に挙げるアミノ酸配列(配列番号18、19、29~82、84~95および103~471)の何れかを含むまたはそれからなる。ある実施態様において、これらのペプチドは、ラミニン三量体421、521または両方への選択的結合に基づくファージディスプレイスクリーニングに由来した。このようなペプチドは表3に挙げるアミノ酸配列の何れか(配列番号472~678)を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、これらのペプチドは、筋肉抽出物ではなく、ニューロンおよび神経抽出物への選択的結合に基づくファージディスプレイスクリーニングに由来した。このようなペプチドは表4に挙げるアミノ酸配列の何れか(配列番号679~746)を含むまたはそれからなる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表4-1】
【表4-2】
【0083】
従って、ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号75~82、84~95および103~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号55~74および188~362からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号75~82、84~95および103~187からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号33~54および363~446からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~32および447~471からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号472~678からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号679~746からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0084】
ある実施態様において、ペプチドは、国際特許出願PCT/US21/61821(「‘821出願」)に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むまたはそれからなる。このようなそれらのバリアントは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746と75%~99%同一性または75%~99%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチド含むがこれらに限定されない。
【0085】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも85%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0086】
ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも80%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも85%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも90%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも95%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19、29~82、84~95および103~746の何れかと少なくとも99%相同性を共有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0087】
本発明のペプチドは、本明細書に包含される‘054および‘821出願に開示のものを含む、当業者に知られる任意の適当な方法により合成される。例として、本発明のペプチドは固相ペプチド合成により化学合成され得る。ある実施態様において、本発明のペプチドは、N末端でアセチル化(「Ac」または「アセチル」)、C末端でアミド化(「CONH2」または「NH2」)または両方されている。例えば、配列番号747は、グリシンアミドで終わるアミド化ペプチドに対応する。
【0088】
蛍光部分
ここで使用する用語「蛍光部分」は、蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、フルオロフォア(例えば蛍光色素)またはあらゆる他の蛍光リガンドまたはマーカーを含む、あらゆる蛍光分子を意味する。
【0089】
ここに記載する蛍光部分の具体例は単なる例示であり、ここに開示するペプチドで使用する蛍光部分を限定することを意図しない。
【0090】
フルオロフォア(または蛍光色素)は、可視および近赤外(NIR)領域で機能する分子を含む。
【0091】
フルオロフォアの一般的クラスは、ローダミン、ロドールおよびフルオレセインおよびそれらの誘導体などのキサンテン;ビマン;クマリンおよびウンベリフェロンおよびアミノメチルクマリンなどのそれらの誘導体;ダンシルなどの芳香族アミン;スクアリン酸色素;ベンゾフラン;蛍光シアニン;カルバゾール;ジシアノメチレンピラン;ポリメチン;オキサベンズアントラン;ピリリウム;カルボスチリル;ペリレン;アクリドン;キナクリドン;ルブレン;アントラセン;コロネン;フェナントレセン;ピレン;ブタジエン;スチルベン;ポルフィリン;フタロシアニン;ランタニド金属キレート錯体;希土類金属キレート錯体;およびそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。蛍光色素は、例えば、米国特許4,452,720;米国特許5,227,487;および米国特許5,543,295に開示される。
【0092】
ここに開示するコンジュゲートと使用するための典型的フルオレセイン色素は、カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネート、5,6-ジカルボキシフルオレセイン、5-(および6)-スルホフルオレセイン、スルホンフルオレセイン、スクシニルフルオレセイン、5-(および6)-カルボキシSNARF-1、カルボキシフルオレセインスルホネート、カルボキシフルオレセイン双性イオン、カルボキシフルオレセイン4級アンモニウム、カルボキシフルオレセインホスホネート、カルボキシフルオレセインGABA、カルボキシフルオレセイン-cys-Cy5およびフルオレセイングルタチオンを含むがこれらに限定されない。フルオレセイン色素の例は、例えば、米国特許6,008,379、米国特許5,750,409、米国特許5,066,580および米国特許4,439,356にも見られ得る。
【0093】
ある実施態様において、蛍光部分は、カルボキシフルオレセイン分子(FAM)、すなわちカルボキシル基が付加されたフルオレセイン分子を含む。それゆえに、用語「FAM」は、5位(5-FAM)または6位(6-FAM)にカルボキシル基を有するフルオレセイン分子を含む。
【0094】
ある実施態様において、蛍光部分は、IR800CW、シアン蛍光タンパク質(CFP);EGFP;5-FAM;6-FAM;FAM;フルオレセイン;IAEDANS;EDANS;BODIPYFL;TRITC;Cy5;Cy3;YFP;LC Red 640;Alexa Fluor 546;テトラメチルローダミン;ダブシル;QSY7;QSY9;QSY21;およびBBQ-650色素を含み得る。
【0095】
ある実施態様において、蛍光部分は、例えば、5-(および6)-カルボキシローダミン110、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチルおよびテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルおよびジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロライド(TEXAS RED)および他のローダミン色素などのローダミン色素を含む。他のローダミン色素は、例えば、米国特許6,080,852;米国特許6,025,505;米国特許5,936,087;米国特許5,750,409に見られ得る。
【0096】
ある実施態様において、蛍光部分は、例えば、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7およびインドシアニングリーンなどのシアニン色素を含む。
【0097】
ある実施態様において、フルオロフォアは、緑色蛍光(例えば494nm/519nmまたは494/524nm)、橙色蛍光(例えば554nm/570nm)、赤色蛍光(例えば590nm/617nm)または遠赤色蛍光(例えば651nm/672nm)励起/放射ペクトルを示す。ある実施態様において、フルオロフォアは、約350nm~約775nmの範囲の励起および放射ペクトルを有するフルオロフォアである。ある実施態様において、励起および放射ペクトルは約346nm/446nm、約494nm/519nm、約554nm/570nm、約555nm/572nm、約590nm/617nm、約651nm/672nm、約679nm/702nmまたは約749nm/775nmである。
【0098】
ある実施態様において、フルオロフォアの励起および放射スペクトルは可視ペクトル領域(約380nm~約700nm)にある。
【0099】
ある実施態様において、フルオロフォアの励起および放射スペクトルは、NIR-Iペクトル領域(約700nm~約900nm)およびNIR-IIペクトル領域(約1000nm~約1700nm)を含む近赤外(NIR)範囲にある。例えば、Zhu et al. 2018, Theranostics 8, 4141-4151参照。
【0100】
ある実施態様において、フルオロフォアは、AlexaFluor 3、AlexaFluor 5、AlexaFluor 350、AlexaFluor 405、AlexaFluor 430、AlexaFluor 488、AlexaFluor 500、AlexaFluor 514、AlexaFluor 532、AlexaFluor 546、AlexaFluor 555、AlexaFluor 568、AlexaFluor 594、AlexaFluor 610、AlexaFluor 633、AlexaFluor 647、AlexaFluor 660、AlexaFluor 680、AlexaFluor 700およびAlexaFluor 750(Molecular Probes AlexaFluor色素、Life Technologies, Inc. (USA)から入手可能)を含み得るがこれらに限定されない。ある実施態様において、フルオロフォアは、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5およびCy7(GE Life SciencesまたはLumiprobesから入手可能)を含むCy色素を含み得るがこれらに限定されない。ある実施態様において、フルオロフォアは、DyLight 350、DyLight 405、DyLight 488、DyLight 550、DyLight 594、DyLight 633、DyLight 650、DyLight 680、DyLight 750およびDyLight 800(Thermo Scientific (USA)から入手可能)を含み得るがこれらに限定されない。ある実施態様において、フルオロフォアは、FluoProbes 390、FluoProbes 488、FluoProbes 532、FluoProbes 547H、FluoProbes 594、FluoProbes 647H、FluoProbes 682、FluoProbes 752およびFluoProbes 782、AMCA、DEAC(7-ジエチルアミノクマリン-3-カルボン酸);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン-3;7-ヒドロキシクマリン-3;MCA(7-メトキシクマリン-4-酢酸);7-メトキシクマリン-3;AMF(4’-(アミノメチル)フルオレセイン);5-DTAF(5-(4,6-ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン);6-DTAF(6-(4,6-ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン);FAM(カルボキシフルオレセイン);6-FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、5(6)-FAMカダベリン;5-FAMカダベリン;5(6)-FAMエチレンジアミン;5-FAMエチレンジアミン;5-FITC(FITC異性体I;フルオレセイン-5-イソチオシアネート);5-FITCカダベリン;フルオレセイン-5-マレイミド;5-IAF(5-ヨードアセトアミドフルオレセイン);6-JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン);5-CRl l0(5-カルボキシローダミン110);6-CRl l0(6-カルボキシローダミン110);5-CR6G(5-カルボキシローダミン6G);6-CR6G(6-カルボキシローダミン6G);5(6)-カルボキシローダミン6Gカダベリン;5(6)-Carオキシローダミン6Gエチレンジアミン;5-ROX(5-カルボキシ-X-ローダミン);6-ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン);5-TAMRAカダベリン;6-TAMRAカダベリン;5-TAMRAエチレンジアミン;6-TAMRAエチレンジアミン;5-TMR C6マレイミド;6-TMR C6マレイミド;TR C2マレイミド;TRカダベリン;5-TRITC;G異性体(テトラメチルローダミン-5-イソチオシアネート);6-TRITC;R異性体(テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート);ダンシルカダベリン(5-ジメチルアミノナフタレン-l-(N-(5-アミノペンチル))スルホンアミド);EDANS C2マレイミド;フルオレスカミン;NBD;およびピロメテンおよびそれらの誘導体を含み得るがこれらに限定されない。
【0101】
ある実施態様において、蛍光部分は環境感受性蛍光色素またはフルオロフォアを含む。環境感受性蛍光色素またはフルオロフォアの例は、5,6-カルボキシ-ジエチルロドール(pH感受性)、メロシアニン(膜電位感受性)およびナイルレッドカルボン酸(脂質感受性)を含む。
【0102】
ある実施態様において、蛍光部分は蛍光ペプチドまたは蛍光タンパク質である。ある実施態様において、蛍光タンパク質は緑色蛍光タンパク質(GFP)である。ある実施態様において、蛍光部分は、例えばEGFP、エメラルド、スーパーフォルダーGFP、アザミグリーンmWasabi、TagGFP、TurboGFP、AcGFP、ZsGreen、T-Sapphire、EBFP、EBFP2、Azurite、mTagBFP、ECFP、mECFP、Cerulean、mTurquoise、CyPet、Amシアン1、Midori-Ishiシアン、TagCFP、mTFP1(Teal)、EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、TagYFP、PhiYFP、ZsYellow1、mBanana、クサビラ・オレンジ、クサビラ・オレンジ2、mOrange、mOrange2、dTomato、dTomato-Tandem、TagRFP、TagRFP-Y、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)、DsRed-モノマー、mTangerine、mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、dKeima-Tandem、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143、mKalamal、YFPおよびシトリンを含むGFPの誘導体またはバリアントである。
【0103】
ある実施態様において、蛍光部分は、引用により全体として本明細書に包含させる‘054および‘821出願に開示の蛍光分子を含む。
【0104】
ある実施態様において、蛍光部分は、デキストラン、PEG、血清アルブミンまたはポリ(アミドアミン)デンドリマーを含むがこれらに限定されない水可溶性ポリマーなどの高分子量分子にコンジュゲートされる。
【0105】
ここに開示する蛍光部分は、ペプチドのN末端、C末端または内部位置(例えば、内部アミノ酸)に結合し得る。ある実施態様において、2個、3個、4個またはそれ以上のペプチドが蛍光部分に直接または間接的に結合する。ある実施態様において、ここに開示する任意のペプチドは同一でも異なってもよい2以上の蛍光部分に結合する。
【0106】
ある実施態様において、ここに開示する蛍光部分はここに開示する任意のペプチドに直接結合する。
【0107】
リンカー
ある実施態様において、蛍光部分は、例えば、リンカーを介して、ペプチドに間接的に結合する。ここで使用する「リンカー」は、ここに開示するペプチドに結合(例えば、共有結合で)できるあらゆる分子である。リンカーは、直鎖または分岐鎖炭素含有リンカー、ヘテロ環式炭素含有リンカー、アミノ酸リンカー(例えば、D-またはL-アミノ酸)、親油性残基、ペプチドリンカー、ペプチド核酸リンカー、ヒドラゾンリンカー、SPDB ジスルフィド、スルホ-SPDB、マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシラート(MCC)、アミノヘキサン酸リンカーおよびポリエーテルリンカー(例えば、PEG)を含むがこれらに限定されない。リンカーは、例えば、Quanta Biodesign, Powell, OHから入手可能なポリ(エチレングリコール)リンカーを含む。これらのリンカーは、所望によりアミド結合、スルフヒドリル結合またはヘテロ官能基結合を有する。リンカーはまた本明細書に包含させる‘054および‘821出願に記載のものを含む、文献に開示または記載の他のリンカー分子も含む。
【0108】
ある実施態様において、リンカーは、共有結合によりここに開示するターゲティング分子に結合する。リンカーは、蛍光部分などのカーゴ分子を、ペプチドに、ある位置でカーゴ分子への共有結合および他の位置でペプチドへの共有結合を形成することにより、接続し得る。共有結合はまたリンカーの官能基と、ペプチドおよびカーゴ分子の官能基の反応により経営され得る。ある実施態様において、共有結合はエーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、アミド結合、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合または炭素-硫黄結合を含む。例えば、共有結合は、蛍光コンジュゲート5-FAM-QVPWEEPYYVVKKSSGG-NH2(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号747)におけるような、フルオレセインの5位のカルボン酸官能基とペプチドのN末端の1級アミンの縮合反応により形成され得る。
【0109】
ある実施態様において、リンカーは可動性である。ある実施態様において、リンカーは剛性である。ある実施態様において、リンカーは、可動性のセグメントおよび剛性のセグメントを有する。
【0110】
ある実施態様において、リンカーは直線状構造を含む。ある実施態様において、リンカーは非直線状構造を含む。ある実施態様において、リンカーは分岐構造を含む。ある実施態様において、リンカーは環状構造を含む。
【0111】
ある実施態様において、リンカーはアルキルである。ある実施態様において、リンカーはヘテロアルキルである。
【0112】
ある実施態様において、リンカーはアルキレンである。ある実施態様において、リンカーはアルケニレンである。ある実施態様において、リンカーはアルキニレンである。ある実施態様において、リンカーはヘテロアルキレンである。
【0113】
「アルキル」基は脂肪族炭化水素基をいう。アルキル部分は飽和アルキルでも不飽和アルキルでもよい。構造に依存して、アルキル基はモノラジカルまたはジラジカル(すなわち、アルキレン基)であり得る。
【0114】
「アルキル」部分は1~10炭素原子を有し得る(「1~10」などの数値範囲は、本明細書で使用するとき、該範囲の各整数をいう;例えば、「1~10炭素原子」は、アルキル基が1炭素原子、2炭素原子、3炭素原子など、10までおよび10を含む炭素原子からなり得ることを意味するが本定義はまた数値範囲が指定されない用語「アルキル」の場合も包含する)。アルキル基は、1~6炭素原子を有する「低級アルキル」でもある。ここに記載する化合物のアルキル基は、「C1-C4アルキル」または類似の指定として指定し得る。単なる例として、「C1-C4アルキル」は、アルキル鎖に1~4炭素原子があることを示し、すなわち、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルから選択される。典型的アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニルなどを含むがいかなる方法でもこれらに限定されない。
【0115】
ある実施態様において、リンカーは環構造(例えば、アリール)を含む。ここで使用する用語「環」は、任意の共有結合で閉環された構造をいう。環は、例えば、炭素環(例えば、アリールおよびシクロアルキル)、ヘテロ環(例えば、ヘテロアリールおよび非芳香族ヘテロ環)、芳香族(例えばアリールおよびヘテロアリール)および非芳香族(例えば、シクロアルキルおよび非芳香族ヘテロ環)を含む。環は場合により置換されていてよい。環は単環式でも多環式でもよい。
【0116】
ここで使用する用語「アリール」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である芳香環をいう。アリール環は、5、6、7、8、9または9以上の炭素原子から形成され得る。アリール基は場合により置換されていてよい。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニルおよびインデニルを含むがこれらに限定されない。構造に依存して、アリール基はモノラジカルまたはジラジカル(すなわち、アリーレン基)であり得る。
【0117】
用語「シクロアルキル」は、環を形成する原子の各々(すなわち骨格原子)が炭素原子である単環式または多環式非芳香族ラジカルをいう。シクロアルキルは飽和でも一部不飽和でもよい。シクロアルキル基は3~10環原子を有する基を含む。シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含むがこれらに限定されない。
【0118】
ある実施態様において、環はシクロアルカンである。ある実施態様において、環はシクロアルケンである。
【0119】
ある実施態様において、環は芳香環である。用語「芳香族」は、4n+2 π電子(ここで、nは整数である)を含む非局在化π電子系を有する平面的環をいう。芳香環は5、6、7、8、9または9以上の原子から形成され得る。芳香族は場合により置換されていてよい。用語「芳香族」は炭素環式アリール(例えば、フェニル)およびヘテロ環式アリール(または「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」)基(例えば、ピリジン)両方を含む。本用語は、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接炭素原子対により共有される環)基を含む。
【0120】
ある実施態様において、環はヘテロ環である。用語「ヘテロ環」は、各ヘテロ環式基がその環系に4~10原子を有し、該基の環が2個の隣接OまたはS原子を含まないことを条件とする、各々O、SおよびNから選択される1~4ヘテロ原子を含むヘテロ芳香族およびヘテロ脂環式基をいう。非芳香族ヘテロ環式基はその環系に3原子しかない基を含むが芳香族ヘテロ環式基はその環系に少なくとも5原子を有しなければならない。ヘテロ環式基はベンゾ縮合環系を含む。3員ヘテロ環式基の例は、アジリジニルである。4員ヘテロ環式基の例は、アゼチジニル(アゼチジン由来)である。5員ヘテロ環式基の例は、チアゾリルである。6員ヘテロ環式基の例は、ピリジルであり、10員ヘテロ環式基の例は、キノリニルである。非芳香族ヘテロ環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリルおよびキノリジニルである。芳香族ヘテロ環式基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニルおよびフロピリジニルである。前記基は、可能であるならば、C結合でもN結合でもよい。例えば、ピロール由来の基は、ピロール-1-イル(N結合)またはピロール-3-イル(C結合)であり得る。さらに、イミダゾール由来の基は、イミダゾール-1-イルまたはイミダゾール-3-イル(いずれもN結合)またはイミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イルまたはイミダゾール-5-イル(全C結合)であり得る。ヘテロ環式基は、ベンゾ縮合環系およびピロリジン-2-オンなどの1個または2個のオキソ(=0)部分で置換された環系を含む。構造に依存して、ヘテロ環基はモノラジカルまたはジラジカル(すなわち、ヘテロシクレン基)であり得る。
【0121】
ある実施態様において、環は縮合である。用語「縮合」は、2以上の環が1以上の結合を共有する構造をいう。ある実施態様において、環は二量体である。ある実施態様において、環は三量体である。ある実施態様において、環は置換されている。
【0122】
用語「炭素環式」または「炭素環」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である環をいう。炭素環はアリールおよびシクロアルキルを含む。本用語は、故に、炭素環と、環骨格が炭素と異なる少なくとも1個の原子(すなわち、ヘテロ原子)を含むヘテロ環(「ヘテロ環式」)を区別する。ヘテロ環はヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルを含む。炭素環およびヘテロ環は場合により置換されていてよい。
【0123】
ある実施態様において、リンカーは置換されている。用語「場合により置換されている」または「置換」は、言及される基がCi-Ceアルキル、C3-Cgシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C2-C6ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、アリールオキシ、C1-C6アルキルチオ、アリールチオ、C1-C6アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、C1-C6アルキルスルホン、アリールスルホン、シアノ、ハロ、C2-C8アシル、C2-C8アシルオキシ、ニトロ、C1-C6ハロアルキル、C1-C6フルオロアルキルおよびC1-C6アルキルアミノを含むアミノおよびそれらの保護された誘導体から個々におよび独立して選択される1以上のさらなる基で置換され得ることを意味する。例として、任意的置換基はLSRSであってよく、ここで、各Lは独立して結合、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(O)2-、-NH-、-NHC(O)-、-C(O)NH-、S(O)2NH-、-NHS(O)2-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-(CpC6アルキル)-または-(C2-C6アルケニル)-から選択され;そして各RはH、(C1-C4アルキル)、(C3-C8シクロアルキル)、ヘテロアリール、アリールおよびC1-C6ヘテロアルキルから独立して選択される。場合により置換されている非芳香族基は、1以上のオキソ(=O)で置換され得る。上記置換基の保護された誘導体を形成し得る保護基は当業者に知られる。
【0124】
ある実施態様において、ある分子(例えば、ターゲティング分子)上の基と反応性のある官能基および他の分子(例えば、蛍光部分または薬物)と反応性の他の基を有する二官能性リンカーを使用して、所望のコンジュゲートを形成する。あるいは、官能基を提供するために誘導体化を実施する。故に、例えば、ペプチド上に遊離スルフヒドリル基を作製する方法も知られている(米国特許4,659,839参照)。リンカーは、あるいはターゲティング分子と相互作用できるヘテロ環式環を形成する2以上の異なる反応性基を含むヘテロ二官能性架橋剤を含み得る。例えば、システインなどのヘテロ二官能性架橋剤は、アミン反応性基を含み得て、チオール反応性基は誘導体化ターゲティング分子のアルデヒドと相互作用できる。ヘテロ二官能性架橋剤に適する反応性基のさらなる組み合わせは、例えば、アミンおよびスルフヒドリル反応性基;カルボニルおよびスルフヒドリル反応性基;アミンおよび光反応性基;スルフヒドリルおよび光反応性基;カルボニルおよび光反応性基;カルボキシラートおよび光反応性基;およびアルギニンおよび光反応性基を含む。ヘテロ二官能性架橋剤の例は、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)およびマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシラート(MCC)を含む。
【0125】
ある実施態様において、リンカーは開裂可能である。ある実施態様において、リンカーは非開裂可能である。リンカー細胞外環境に対して化学的に安定、例えば、血流中で化学的に安定であり得るおよび/または安定ではない結合を含み得る。リンカーは、細胞内で特異的または非特異的に開裂および/または崩壊(immolate)または他の方法で破壊されるよう設計された結合を含み得る。開裂可能リンカーは、細胞外プロテアーゼなどの特定部位での酵素に対する感受性であり得る。
【0126】
開裂可能リンカーは、バリン-シトルリンペプチド、バリン-アラニンペプチド、フェニルアラニン-リシンまたはプロテアーゼ認識および切断部位を形成するペプチドなどの他のペプチドを含み得る。このようなペプチド含有リンカーは、ペンタフルオロフェニル基を含み得る。ペプチド含有リンカーは、スクシンイミドまたはマレイミド基を含み得る。ペプチド含有リンカーは、パラアミノ安息香酸(PABA)基を含み得る。ペプチド含有リンカーはアミノベンジルオキシカルボニル(PABC)基を含み得る。ペプチド含有リンカーはPABAまたはPABC基およびペンタフルオロフェニル基を含み得る。ペプチド含有リンカーはPABAまたはPABC基およびスクシンイミド基を含み得る。ペプチド含有リンカーはPABAまたはPABC基およびマレイミド基を含み得る。
【0127】
非開裂可能リンカーは、一般にプロテアーゼ非感受性および細胞内プロセスに非感受性である。非開裂可能リンカーはマレイミド基を含み得る。非開裂可能リンカーはスクシンイミド基を含み得る。非開裂可能リンカーはマレイミド-アルキル-C(O)-リンカーであり得る。非開裂可能リンカーはマレイミドカプロイルリンカーであり得る。マレイミドカプロイルリンカーはN-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシラートであり得る。マレイミドカプロイルリンカーはスクシンイミド基を含み得る。マレイミドカプロイルリンカーはペンタフルオロフェニル基を含み得る。
【0128】
ある実施態様において、1以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーを使用して、ターゲティング分子および蛍光部分または薬物を結合する。一般に、ペプチドリンカーは、分子を結合するまたはそれらの間のある最小距離もしくは他の空間関係を保持する以外の特異的生物学的活性を有しない。しかしながら、リンカーの構成アミノ酸は、折り畳み、正味荷電または疎水性などの分子のある性質に影響するよう選択され得る。ある実施態様において、ペプチドリンカーは比較的短い、典型的に約10未満のアミノ酸、好ましくは約8未満のアミノ酸、より好ましくは5未満のアミノ酸である。非限定的説明的例は、ペプチドのC末端に付加できるグリシンおよびグリシン-セリンリンカーを含む。ある実施態様において、ペプチドリンカーは、部位特異的コンジュゲーションのためのシステイン残基または非天然アミノ酸残基、例えば、セレノシステイン(Sec)、p-アセトフェニルアラニン(pAcF)、p-アジドメチル-L-フェニルアラニン(pAMF)およびアジド-リシン(AzK))を含む。ある実施態様において、ペプチドリンカーはグリシン-グリシン-グリシン-システイン(GGGC)(配列番号15)リンカー、グリシン-グリシン-システイン(GGC)リンカー、グリシン-グリシン(GG)リンカーまたはシステイン(C)リンカーである。ある実施態様において、GGGC(配列番号15)、GGC、GGまたはCリンカーがペプチドのN末端またはC末端に付加される。
【0129】
ある実施態様において、本発明の蛍光コンジュゲートは、所望により結合の多価およびアビディティーを増加する高分子量分子にコンジュゲートされ得る。ある実施態様において、高分子量分子は水可溶性ポリマーである。適当な水可溶性ポリマーの例は、ペプチド、糖、ポリ(ビニル)、ポリ(エーテル)、ポリ(アミン)、ポリ(カルボン酸)などを含むがこれらに限定されない。ある実施態様において、水可溶性ポリマーはデキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、デンプンまたはヒドロキシエチルデンプンである。任意の適当な方法を使用して、ペプチドを水可溶性ポリマーにコンジュゲートする(Hermanson G., Bioconjugate Techniques 2nd Ed., Academic Press, Inc. 2008参照)。
【0130】
ある実施態様において、本発明の蛍光コンジュゲートを溶解度を増加させるために修飾し得る。溶解度を増加させるペプチド修飾は、親水性アミノ酸、PEG部分または両方の付加を含む。ある実施態様において、PEG部分は8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEA);12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸;または15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサペンタ-デカン酸である。ある実施態様において、約1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)親水性アミノ酸を溶解度を増加させるためにペプチドのN末端、C末端、内部位置またはそれらの任意の組み合わせに付加し得る。親水性アミノ酸はD、E、H、K、N、Q、R、S、TおよびGを含む。ある実施態様において、ペプチドはN末端またはC末端にK、KK、GまたはGGを含む。
【0131】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは5-FAM-QVPWEEPYYVVKKSSGG-NH2(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号747)を含み、ここに記載する方法の何れにおいても使用され得る。
【0132】
ある実施態様において、蛍光コンジュゲートは、GCCリンカーを有するHNP401のC末端システインに結合したFAM(Ac-SGQVPWEEPYYVVKKSSGGC-CONH2;配列番号748)を含む。
【0133】
IV. 医薬組成物
ある実施態様において、ここに開示されるのは、ここに開示する蛍光コンジュゲートを含む医薬組成物である。本発明の医薬組成物は、活性剤の薬学的に使用される製剤への処理を促進する添加物および助剤を含む、1以上の生理学的に許容される担体を使用して、製剤化される。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。このような組成物は、例えば、Gennaro: Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed. (Lippincott Williams & Wilkins, 2005); Allen: Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 11th Ed. (Wolters Kluwer, 2018); Brunton et al.: Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw-Hill Professional, 2005); およびRowe: Handbook of Pharmaceutical Excipients (Pharmaceutical Press, 2005)に見られるような、当分野で知られる方法および添加物を用いて調製し得る。
【0134】
医薬組成物のある実施態様において、蛍光コンジュゲートにおけるペプチドは、ここに記載する全バリアントおよび組み合わせを含む、任意のアミノ酸配列からなるまたはそれを含むことができる。ある実施態様において、ペプチドは、ここに記載する表1に挙げる任意のアミノ酸配列またはその任意のバリアントからなるまたはそれを含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号1~14、16、20~28および96~102の何れかを含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、表2~4に挙げる任意のアミノ酸配列またはその任意のバリアントを含むまたはそれからなる。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号75~82、84~95および103~187から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号55~74および188~362から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号33~54および363~446から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号18、19および29~32および447~471から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号472~678から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは、配列番号679~746から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ペプチドは配列番号21のアミノ酸配列からなるまたはそれを含む。
【0135】
ある実施態様において、医薬組成物における蛍光コンジュゲートは配列番号747を含む。
【0136】
ある実施態様において、ここに開示する医薬組成物は、さらに薬学的に許容される希釈剤、添加物、担体または溶媒を含む。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレン-グリコール、グリセロール、クレモフォールなど)、それらの適当な混合物、植物油s(例えばオリーブ油)およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。ツィーン、スパンおよび他の乳化剤などの他の一般的に使用される界面活性剤または薬学的に許容される固体、液体または他の投与形態の製造において一般的に使用されるバイオアベイラビリティ増強剤も、製剤の目的で使用され得る。バイオアベイラビリティ増強剤は、浸透または透過増強剤を含み得る。例えば、Muheem et al., 2016, Saudi Pharm. J. 24, 413-428; Brayden et al. 2020, Adv. Drug Deliv. Rev. 2020 May 29:S0169-409X(20)30040-5; Ibrahim et al. 2020, J. Pham. Sci. 28, 403-416参照。ある製剤において、適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散体の場合必要な粒子径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持され得る。
【0137】
ある実施態様において、医薬組成物は、他の薬剤または医薬、担体、アジュバント、例えば保存、安定化、湿潤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩類および/または緩衝液を含む。さらに、医薬組成物はまた他の治療上価値ある物質も含む。
【0138】
ある実施態様において、ここに開示するペプチドコンジュゲートは、対象に薬物送達媒体または担体により送達される。ある実施態様において、送達媒体は天然または合成材料または両方から製造される。ある実施態様において、送達媒体はナノ粒子、ミクロ粒子、ポリマーミセル、ナノカプセル、デンドリマー、大PEG、ナノゲル、リポソーム、フラーレン、ナノ構造脂質担体、ナノシェル、量子ドット、タンパク質ベースのナノ担体(例えば、アルブミン、エラスチン、グリアジン、レグミン、ゼイン、大豆タンパク質、牛乳タンパク質、ホエイベースのナノ担体)、有機ナノ担体(例えば、ゼラチン、デキストラン、グアーガム、キトサン、コラーゲン)、多糖ベースの担体(例えば、デキストラン、キトサン、ペクチン)、脂質エマルジョンまたはそれらの組み合わせである。
【0139】
ある実施態様において、ここに開示する医薬組成物を、局所、経口、直腸内、膣内、鼻腔内、吸入、非経腸(静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、髄腔内、硝子体内注入)投与を含むがこれらに限定されない、任意の適当な投与経路により対象に投与する。ある実施態様において、ここに開示する医薬組成物を対象に局所的にまたは全身性に投与する。ある実施態様において、ここに開示する医薬組成物は静脈内投与される。
【0140】
筋肉内、皮下または静脈内注射に適する製剤は、生理学的に許容される無菌水性または非水溶液、分散体、懸濁液またはエマルジョンおよび無菌注射用溶液または分散体に再構築するための無菌粉末を含む。皮下注射に適する製剤は、当分野で知られるとおり、保存、湿潤、乳化および分散剤などの任意的添加物も含む。ある実施態様において、静脈内注射に適する製剤は、食塩水緩衝液および当分野で知られる他の生理学的に適合性の緩衝液などの水溶液で調製され得る。静脈内注射のために、活性剤は、所望により水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的食塩水緩衝液などの生理学的に適合性の緩衝液に製剤化される。
【0141】
非経腸注射は、所望によりボーラス注射または連続的注入を含む。注射用製剤は、所望により、単位剤形、例えば、アンプル、または防腐剤の添加と共に多回コンテナに提供される。ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は、油性または水性媒体中の無菌懸濁液、溶液またはエマルジョンとして非経腸注射に適する形態であり、懸濁、安定化および/または分散剤などの製剤用薬剤を含む。非経腸投与用医薬製剤は、水可溶性形態の活性剤の水溶液を含む。さらに、懸濁液は所望により適切な油性注射懸濁液として調製される。
【0142】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は経口投与される。経口投与に適する投与形態は固体でも液体でもよく、例えば、丸剤、カプセル、トローチ、錠剤、カプレット、ジェルカプレット(ジェルキャップ)、シロップ、水性懸濁液または溶液、チュアブル形態、嚥下可能形態、溶解可能形態、発泡性、粒状形態および経口液体溶液を含み得る。具体的実施態様において、剤形は固体剤形であり、より具体的に、錠剤またはカプセルを含むかまたはここに開示する媒体または担体により経口投与される。
【0143】
ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は、厳密な投与量の単回投与に適する単位剤形である。単位剤形において、製剤は、適切な量のここに開示する活性剤を含む単位用量に分割される。ある実施態様において、単位投与量は、製剤の別々の量を含むパッケージの形である。非限定的例は、包装された錠剤またはカプセルおよびバイアルまたはアンプル中の粉末である。ある実施態様において、水性懸濁液組成物は、単回用量再密閉不可能コンテナに包装される。あるいは、多回用量再密閉可能コンテナが使用され、この場合、組成物に防腐剤を含めるのが典型的である。単なる例として、非経腸注射用製剤は、アンプルを含むがこれに限定されない単位剤形または防腐剤の添加と共に多回コンテナに提供される。
【0144】
ある実施態様において、医薬組成物は、対象、特に、ヒト患者、より具体的に、手術を受けるヒト患者に、全身性に静脈内投与される。
【0145】
ある実施態様において、医薬組成物は、対象、特に、ヒト患者、より具体的に、手術を受けるヒト患者に経口投与される。
【実施例】
【0146】
実施例1
輸尿管可視化における神経ターゲティング蛍光コンジュゲートの使用
序論
ファージディスプレイスクリーニングは、ヒト神経ホモジネートまたは単離ヒト神経タンパク質に結合するペプチドの同定のために以前に使用された。‘054および‘821出願参照。このようなペプチドは、種々の適用のために、カーゴ分子に結合またはタグ付けされ得る。蛍光部分でタグ付けされたとき、例えば、このようなコンジュゲートは、蛍光支援手術中神経のインビボターゲティングに有用な可能性があり、活性剤に結合されたら、例えば、このようなコンジュゲートは標的療法に有用な可能性がある。
【0147】
ペプチドの例は、蛍光コンジュゲートを生ずるように蛍光色素にコンジュゲートされ(ここではコンジュゲートとも称する)、齧歯類モデルで評価され、静脈内投与後感受性神経検出を示した。これらのコンジュゲートは、リシンアミド結合を介してアセチル化NP41(Ac-SHSNTQTLAKAPEHTGK;配列番号749)のC末端リシンに結合した、蛍光色素、カルボキシフルオレセイン(FAM)を含むFAM-NP41ならびにGCCリンカーでアセチル化HNP401(Ac-SGQVPWEEPYYVVKKSSGGC-CONH2;配列番号748)のC末端システインにコンジュゲートしたFAMを含むFAM-HNP401を含んだ。‘054出願;Hingorani et al. 2018, Theranostics 8, 4226-4237; Whitney et al. 2011, Nat. Biotechnol. 29, 352-356参照。
【0148】
さらなる研究により、FAM-NP41、FAM-HNP401および配列番号20、22~24および25~28に対応するHNP401のN末端およびC末端欠失バリアントを含む他のコンジュゲートの局所投与後のヒト(および齧歯類)切除神経組織の蛍光ターゲティングを示した。Whitney et al. 2011, Nat. Biotechnol. 29, 352-356;Wu et al. 2011, Laryngoscope 121, 805-810;Hussain et al. 2015, PloS One 10, e0119600;Hingorani et al. 2018, Theranostics 8, 4226-4237。
【0149】
しかしながら、これらの研究は、活性、代謝および排除などのコンジュゲートの性質を明らかにしていない - 特に投与後後期における。齧歯類モデルにおいて、例えば、NP41の血清半減期(血清蛍光で測定して)は約10分であり、血中からのコンジュゲートの迅速な排除が示される。FAM-HNP401でも血中の類似の短半減期(15分)が観察された。対照的に、NP41の神経蛍光は約50分の半減期を有し、数時間組織内に低レベルで持続し得る。同様に、FAM-HNP401の蛍光がラット坐骨および前立腺神経で、静脈内投与後数時間観察された。例えば、Whitney et al. 2011, Nat. Biotechnol. 29, 352-356; Hingorani et al. 2018, Theranostics 8, 4226-4237参照。
【0150】
神経(または他の組織)に結合したコンジュゲートの排除およびその後の活性は未知であり、このような性質が蛍光ガイド下手術におけるコンジュゲートのための他の用途を支持し得るか未知である。ここに記載する試験は、神経ターゲティングコンジュゲートが腎臓排泄と併せて輸尿管の感受性および長期蛍光可視化(照明)を提供できることを示す。結果は、手術補助剤としてのこのようなコンジュゲートのレパートリーの拡張を支持する。神経のハイライトにより、神経傷害の予防を助け得る、頭頚部外科手技などの手術における誘導剤として有用である。そして、ここに記載するとおり、輸尿管のハイライトにより、輸尿管傷害のリスクがある、多くの腹部および骨盤内外科手技などの他の手術に有用である。
【0151】
結果
齧歯類モデルを使用して、静脈内投与後の5-FAM-QVPWEEPYYVVKKSSGG-NH
2(GGリンカーを有するHNP401-N-2;配列番号747)の蛍光可視化の動態を評価した。コンジュゲートを広範囲の量で投与し、蛍光をカスタマイズした顕微鏡を使用して検出した。例えば、
図1に示すとおり、輸尿管は、マウスモデルにおいて約2000ナノモル(約200mg/kg)の静脈内投与2時間後、容易に照射される。約10mg/kg~約200mg/kgの用量に対応する100ナノモル~2000ナノモルの範囲の量を探索するさらなる研究は、マウスモデルにおける、蛍光コンジュゲート、配列番号747の静脈内投与後の輸尿管照明を示した。ラットモデルでも類似する所見が観察された。しかしながら、このような蛍光可視化は輸尿管の特異的または直接ターゲティングを反映しなかった。むしろ、輸尿管を腎臓から膀胱に流れる尿の蛍光を反映した。さらに、リアルタイム術中造影は、尿を濃縮し、輸尿管の蛍光可視化を増強する輸尿管脈動を示す。さらなる研究は、このコンジュゲート投与後の長時間の輸尿管照明を示した。例えば、輸尿管の蛍光可視化は、コンジュゲート投与後1時間未満におよび同様に少なくとも6時間まで観察された。
【0152】
齧歯類モデルにおける他の研究は、さらなるペプチドおよび蛍光部分を含む他のコンジュゲートの投与後の長期輸尿管照明を示している。これらは、FAMにコンジュゲートした関連HNP401ペプチドからなる分子および他の蛍光部分にコンジュゲートした関連HNP401ペプチドからなる分子を含む。さらに、ここに示す試験は、輸尿管と併せた、神経の同時の可視化を可能とする。
【0153】
考察:
これらの観察は、輸尿管照明におけるここに記載する神経ターゲティング蛍光コンジュゲートの一般的適用性を支持する。従って、ここに開示するコンジュゲートを使用して、外科手技中に、外科医が輸尿管に物理的に遭遇し、故に、それらを損傷する可能性がある前に、それを可視化することを助けることができる。さらに、外科手技中の不慮の損傷、すなわち、医原性傷害の場合、このような可視化により、傷害のより迅速な認識と早期処置および介入が可能となる。
【0154】
さらに、ここに記載する蛍光コンジュゲートの投与は、投与後長時間の輸尿管可視化を提供できることが観察されている。具体的機構に限定されないがこの長期の可視化は、末梢神経系などのニューロンまたは神経または他の組織における蛍光コンジュゲートの徐々の蓄積と、徐々の放出、代謝および泌尿器系による排泄を反映すると考えられる。故に、蛍光色素単独の全身投与または蛍光色素の直接注射とは対照的に、ペプチド-蛍光コンジュゲートの投与は、手術を妨害しない簡便な投与により、有利に輸尿管照明の時間を延長し、早期かつ長期両方の照明を提供することができる。さらに、このようなコンジュゲートの投与は、同時のまたは一過性の神経または輸尿管の別個の検出を提供できる。
【0155】
このような蛍光介在補助は、外科手技中輸尿管傷害、特に医原性輸尿管傷害(IUI)の相当なリスクのある外科手技中、特に重要である。輸尿管が腹部から骨盤まで伸びるため、このリスクは広範な外科手技に当てはまり得る。輸尿管照明から利益を受け得る適用できる手技は、婦人科、泌尿器および結腸直腸外科手技などの複雑な腹部および骨盤内手術ならびに心血管外科手技を含み得る。腎臓、膀胱、前立腺、子宮、男性もしくは女性生殖器系、直腸、結腸、小腸または大腸などの輸尿管近くの臓器および系で実施される外科手技も含む。前立腺癌外科手技または結腸直腸癌手技または輸尿および神経の可視化の増強が望まれる手技などの癌外科手技も含まれ売る。
【0156】
実施例2
手術患者の尿中の蛍光コンジュゲートの生物分析
尿サンプルを、500mgの親試験薬物(蛍光-コンジュゲートペプチド、配列番号747に対応)の静脈内投与30分前、頭頚部手術前注入30分後および22時間後に採取した。インタクト親試験薬物の濃度を、正規の生物学的分析方法を使用するタンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)を伴う液体クロマトグラフィーにより決定した。蛍光部分にコンジュゲートした親ペプチドの短縮バージョンに対応する代謝物M3-M8(インビトロ試験から最初に同定された)の存在も評価した。結果を表5に示す。
【表5】
* BQL:定量限界未満(10ng/ml)
【0157】
30分時点で、定量可能レベルの試験薬物(または蛍光代謝物M4、M6およびM7)が評価した5名の対象中4名で検出された。22時間時点で、蛍光代謝物M4およびM6は、評価した両対象で検出された。予想どおり、試験薬物および蛍光代謝物は何れの投与前サンプルでも検出されなかった。
【0158】
これらのデータは、齧歯類モデルにおける投薬および輸尿管結像実験に一致し、試験薬物の単回投与が尿における蛍光分子の即時(例えば、30分)および長期蓄積(例えば、22時間)をもたらし得ることを示す。次に、これは、外科手技における早期および後期段階の拡張された輸尿管可視化を提供し、また外科手技または他の適用における神経および輸尿管の同時のまたは別個の可視化を支持する。
【0159】
実施例3
手術中の輸尿管および神経照明
本発明の蛍光コンジュゲートが輸尿管(および神経)を造影する能力は、消化器/泌尿生殖器(GI/GU)手術を受ける患者について下記のような適切に設計された臨床試験を使用して、評価され得る。
【0160】
この予想例において、臨床治験は、GI/GU手術を受ける80名の対象における、試験薬物(蛍光-コンジュゲートペプチド、配列番号747に対応)の投与を評価する非盲検、多施設試験である。本試験の登録のための編入基準は、対象が神経(および輸尿管)が損傷されるリスクがある可能性のある、GI/GU領域の外科手技を受ける必要があることを含む。例えば、このような手技は、結腸直腸または前立腺手術を包含し得る。
【0161】
登録対象は、手術2~5時間前に静脈内注入により試験薬物(500mg)を単回投与される。試験薬物の蛍光は、腹腔鏡を介するリアルタイム白色光反射率(WLR)および蛍光(FL)画像により評価される。
【0162】
主要および副次有効性目的の評価のために複数エンドポイントが使用される。
【0163】
神経検出に関して、エンドポイントは、WLR単独対ペア(WLRとFL重ね合わせ)を使用する、コントラスト強調、分岐描出および神経の長さの改善における試験薬物の有効性を測定するための可視化スコアリング系を含む。WLR対FLを使用する神経可視化の改善における、試験薬物の有効性を測定するための神経(および隣接非神経)組織の複数領域のシグナル対バックグラウンド比の計算も含む。
【0164】
輸尿管検出に関して、エンドポイントは、WLR単独対WLRとFL重ね合わせを使用する輸尿管のコントラスト強調の改善における試験薬物の有効性を測定するための可視化スコアリング系を含む。WLR対FLを使用する輸尿管可視化の改善における試験薬物の有効性を測定するための輸尿管(および隣接非輸尿管)組織の複数領域のシグナル対バックグラウンド比の計算も含む。
【0165】
試験薬物での神経および輸尿管検出の有効性の顕著な改善が複数エンドポイントで示される。改善は外科手技の早期および後期時点で観察される。従って、本発明の蛍光コンジュゲートは、神経、輸尿管または両方の可視化増強を含む、蛍光ガイド下GI/GU外科手技に有用であり得る。このような可視化増強の利益は、外科医が外科手技における輸尿管および神経の確実な同定の顕著な改善およびこのような外科手技の時間の顕著な短縮を含む。
【0166】
上記実施例は、当業者に、本発明の組成物および方法の実施態様を製造しかつ使用する方法の可完全な開示および記載を提供し、本発明者らが開示とみなす範囲を限定することを意図しない。当業者には明らかな上記の本発明を実施する形態の修飾は次の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。本明細書に記載する全ての特許および刊行物は、本発明が属する分野の当業者の技術レベルの指標である。本明細書に引用する全引用文献は、各引用文献が個々にその全体を引用により包含させるとの同程度に引用により本明細書に包含させる。
【0167】
当業者には明らかなとおり、本出願の多くの修飾および改変を、その精神および範囲から逸脱することなく実施できる。ここに記載する具体的実施態様および実施例は、単なる例として提供し、本出願は、特許請求の範囲が権利を付与する均等物の完全な範囲と共に、添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるべきものである。
【0168】
さらに、本発明のある詳細が添付する特許請求の範囲により定義される本発明の完全な理解をもたらすために提供されているが、ある実施態様はこのような詳述がなくとも実施し得ることは当業者には理解される。さらに、ある場合、周知方法、手技または他の具体的詳述は、添付する特許請求の範囲により定義される本発明の態様の不必要な曖昧さを回避するために記載していない。
【0169】
本出願は、2021年1月14日出願の米国仮出願63/137,621に基づく優先権の利益を主張し、該出願は、引用により全体として本明細書に包含させる。
【配列表】
【国際調査報告】