(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】抗TRPV6モノクローナル抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240130BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240130BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240130BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20240130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240130BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N5/12
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K31/7088
A61K35/12
A61P35/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542926
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2022071976
(87)【国際公開番号】W WO2022152236
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/072249
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210029357.7
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521330068
【氏名又は名称】コヒレント バイオファーマ (スーチョウ),リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】フアン,バオファ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ツォンボ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA10
4B064CC24
4B064DA03
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB02
4B065BA02
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA16
4C085AA19
4C085AA25
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045BA40
(57)【要約】
TRPV6タンパク質特徴的なポリペプチド抗原を選択してマウスへの免疫をしてからスクリーニングすることによりハイブリドーマ細胞系12CT 9.5.1、16CT 18.1.1.2と16CT 4.1.1.2を得て、該シリーズの細胞は、TRPV6に対するモノクローナル抗体を分泌し、TRPV6タンパク質及び腫瘍組織を特異的に認識することができる。該シリーズの抗体は、人工的又は自動的に、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、免疫蛍光(IF)、化学発光(CLIA)、免疫比濁(TIA)又はウェスタンブロット(Western Blot)方式によって細胞におけるTRPV6レベルを検出することができ、それによって腫瘍組織の診断方法に使用され、バイオアッセイの分野に属する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片であって、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の重鎖可変領域に含まれる三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、
(b) SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又は、
(c) SEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である、TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、
(b) SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、又は、
(c) SEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の軽鎖可変領域に含まれる三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、
(b) SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又は、
(c) SEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3、
(b) SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3、又は、
(c) SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3である、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される三つの重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2とHCDR3、及び三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、即ち
(a) SEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3、
(b) SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3、又は、
(c) SEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される重鎖可変領域V
Hを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、
(b) SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又は、
(c) SEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される軽鎖可変領域V
Lを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、
(b) SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又は、
(c) SEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である、請求項6に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される重鎖可変領域V
Hと軽鎖可変領域V
Lとを含み、即ち
(a) SEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、
(b) SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又は、
(c) SEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を特異的に認識又は結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合性断片と、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のKd値は、10
-7M未満である、請求項9に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
前記Kd値は、表面プラズモン共鳴法によって検出される、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
前記抗原結合性断片は、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv又はdAbから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項14】
前記重鎖定常領域は、マウスIgG1又はマウスIgG2a由来である、請求項13に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項15】
前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1由来である、請求項13に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、コンジュゲート部分をさらに有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項17】
前記コンジュゲート部分は、治療剤、放射性同位体、検出可能な標識、薬物動態学的に修飾された部分又は精製された部分である、請求項16に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項18】
前記コンジュゲート部分は、直接的に連結され又はリンカーを介して連結される、請求項15又は16に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片をコードする、単離された核酸。
【請求項20】
(a) SEQ ID NO:31に示される核酸配列又はSEQ ID NO:31と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:32に示される核酸配列又はSEQ ID NO:32と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方、
(b) SEQ ID NO:33に示される核酸配列又はSEQ ID NO:33と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:34に示される核酸配列又はSEQ ID NO:34と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方、又は、
(c) SEQ ID NO:35に示される核酸配列又はSEQ ID NO:35と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:6に示される核酸配列又はSEQ ID NO:6と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む、請求項19に記載の核酸。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片と、他の抗原に特異的に結合する一つ又は複数の抗体又はその抗原結合部分とを含む、多重特異性抗体。
【請求項24】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、又は請求項23に記載の多重特異性抗体を含む、抗体複合体。
【請求項25】
抗TRPV6モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株であって、前記ハイブリドーマ細胞株は、12CT9.5.1、16CT4.1.1.2又は16CT18.1.1.2であり、中国典型培養物保存センターに保存され、ここで前記12CT9.5.1の保存番号は、CCTCC NO:C202119であり、前記16CT4.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202124であり、前記16CT18.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202125である、抗TRPV6モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株。
【請求項26】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項19又は20に記載の単離された核酸、請求項21に記載のベクター、請求項22に記載の宿主細胞、請求項23に記載の多重特異性抗体又は請求項24に記載の抗体複合体と、薬学的に許容されるベクターとを含む、医薬組成物。
【請求項27】
請求項1から18に記載の一種又は複数種の抗体又はその抗原結合性断片を含む、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するための試薬。
【請求項28】
前記試薬は、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するために用いられる、請求項27に記載の試薬。
【請求項29】
被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法であって、
(1) 前記試料を、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片と接触することと、
(2) 任意選択的に、未結合の抗体又は抗体断片を除去することと、
(3) 前記試料におけるTRPV6に結合した抗体又は抗体断片を検出することとを含む、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法。
【請求項30】
前記ステップ(1)における前記の、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片は、基板上に固定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ステップ(1)における前記試料は、基板上に固定される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ステップ(3)は、二次抗体を使用することを含み、任意選択的に、前記二次抗体は、前記試料におけるTRPV6に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと異なり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと同じであり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受けず、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受ける、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ステップ(3)は、二次抗体を使用することを含み、任意選択的に、前記二次抗体は、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体は、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片の定常領域部分に結合可能である、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記二次抗体は、検出分子にカップリングし、任意選択的に、前記検出分子は、酵素、蛍光標識物質とビオチンを含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記検出分子は、酵素であり、任意選択的に、前記酵素は、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ又はその誘導体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記検出分子は、フルオレセインであり、任意選択的に、前記フルオレセインは、FITC、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン又はDylightを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記検出分子は、ビオチン又はその誘導体である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記試料におけるTRPV6に結合した抗体を定量することをさらに含む、請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、免疫蛍光(IF)、化学発光(CLIA)、免疫比濁(TIA)又はウェスタンブロット(Western Blot)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記被験者は、ヒトである、請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価するために用いられる、請求項29から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
請求項29から41のいずれか一項に記載の方法を使用して前記被験者由来の試料におけるTRPV6を検出することを含む、被験者疾患の形成又は形成のリスクを判断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングする方法。
【請求項43】
前記方法は、前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価することを含み、前記比率が所定の閾値を超えた場合、前記被験者が前記疾患を有するか又は治療により利益を得る可能性がより高いと考えられ、ここで前記閾値は、10%であり、好ましくは、前記治療は、標的薬による治療である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患は、癌疾患である、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記癌疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌であり、好ましくは、前記癌疾患は、HER2
+乳癌、トリプルネガティブ乳癌又は結直腸癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含み、任意選択的に、前記抗体又はその抗原結合性断片とTRPV6との結合状況を検出するための試薬をさらに含む、キット。
【請求項47】
被験者疾患の形成又は形成のリスクを診断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングするために用いられる、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
免疫組織化学による病理診断に用いられる、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
腫瘍組織の免疫組織化学による病理診断に用いられる、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記疾患は、癌疾患である、請求項47に記載のキット。
【請求項51】
前記疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌であり、好ましくは、前記疾患は、HER2
+乳癌、トリプルネガティブ乳癌又は結直腸癌である、請求項48に記載のキット。
【請求項52】
TRPV6に特異的に結合する抗体を作製する方法であって、
(1) SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列とベクタータンパク質とをカップリングして、TRPV6抗原ペプチドを得ることと、
(2) ステップ(1)によって得られた前記TRPV6抗原ペプチドを免疫原としてマウスへの免疫をすることと、
(3) 細胞融合と免疫ペプチドのクローンスクリーニングを経て、TRPV6に特異的に結合する抗体を高分泌する陽性ハイブリドーマ細胞系を得ることと、
(4) TRPV6に特異的に結合する抗体を得ることとを含む、TRPV6に特異的に結合する抗体を作製する方法。
【請求項53】
前記ベクタータンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列のN末端に一つのCysを追加し、且つ遊離チオール基を介して前記ベクタータンパク質にカップリングする、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記ハイブリドーマ細胞系は、マウスハイブリドーマ細胞系12CT 9.5.1、16CT 18.1.1.2又は16CT 4.1.1.2である、請求項52から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項19又は20に記載の単離された核酸、請求項21に記載のベクター、請求項22に記載の宿主細胞、請求項23に記載の多重特異性抗体、請求項24に記載の抗体複合体及び請求項25に記載の医薬組成物の、TRPV6に関連する疾患を治療及び/又は予防及び/又は診断するための医薬における用途。
【請求項57】
疾患を治療、予防又は診断する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片、請求項19又は20に記載の単離された核酸、請求項21に記載のベクター、請求項22に記載の宿主細胞、請求項23に記載の多重特異性抗体、請求項24に記載の抗体複合体及び請求項25に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含む、疾患を治療、予防又は診断する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトTRPV6タンパク質を認識できる一連の抗体、及び該シリーズの抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞系に関する。具体的には、本発明は、腫瘍細胞膜/質内のTRPV6分子に特異的に結合する一連のモノクローナル抗体を提供し、該抗体の重鎖と軽鎖可変領域のアミノ酸配列及び可変領域をコードするDNA配列を確定し、該抗体又はその抗原断片を人工的又は自動的に、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、免疫蛍光(IF)、化学発光(CLIA)、免疫比濁(TIA)又はウェスタンブロット(Western Blot)方式による細胞におけるTRPV6レベルの検出に用いることができ、それによってこれらの腫瘍の診断方法に使用され、バイオアッセイの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一過性受容体カチオンチャンネルサブファミリーVメンバ6(transient receptor potential cation channel subfamily V member 6)、即ちTRPV6は、高選択性のカルシウムイオンの膜貫通輸送チャンネルであり、細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの能動的な輸送を媒介する。TRPV6は、ヒトの正常な腎臓、胃と腸管、膵臓、乳腺、唾液腺などにおいて発現するが、主に腸管上皮細胞に発現し、それが細胞内へのカルシウムイオンの輸送に関与するため、TRPV6チャンネルの数又は機能が変化するとき、カルシウムイオンによる調節の変化を引き起こし、さらにそれに関連する組織と器官の構造又は機能の異常を引き起こすことがある。
【0003】
正常な組織に比べ、TRPV6は、乳癌、胆管癌、卵巣癌、肺扁平上皮癌、前立腺癌などの悪性腫瘍における発現が顕著に上昇し、その異常発現は、腫瘍の形成及び進展と関連する可能性がある。Prevarskayaチームの発見によると、TRPV6を高発現するヒト前立腺癌LNCap細胞のカルシウムイオンの摂取は、TRPV6によって媒介され、siRNA処理してTRPV6タンパク質のレベルを下げると、そのS期の細胞数が減少し、細胞増殖が抑制される。リドカインを利用してヒト乳癌MDA-MB-231細胞、前立腺癌PC-3細胞と卵巣癌ES-2細胞を処理して、TRPV6 mRNAとタンパク質のレベルを下げることもあり、細胞増殖が抑制されると同時に、カルシウムイオンの細胞内への進入速度が低下し、これは、癌細胞の抑制がカルシウムイオンの減少と関連する可能性があり、そしてTRPV6レベルと関連する可能性もあることを示している。このことから分かるように、TRPV6は、ヒトの多種類の腫瘍と密接な関係があり、その細胞内外のカルシウムイオン濃度変化の調節と関連する可能性がある。
【0004】
TRPV6は、腫瘍細胞マーカーとして、その検出が病理診断及び該当標的薬の使用にとって重要な意義を有する。現在、市販の診断のための抗TRPV6抗体がなく、本特許に係る抗体は、この面の空白を埋めることができる。
【発明の概要】
【0005】
本出願の一態様によれば、TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片を提供し、ここで前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の重鎖可変領域に含まれる三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又はSEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、又はSEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3である。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の軽鎖可変領域に含まれる三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又はSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3である。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される三つの重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2とHCDR3、及び三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、即ちSEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3、SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3、SEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3である。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される重鎖可変領域VHを含み、即ちSEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又はSEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される軽鎖可変領域VLを含み、即ちSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又はSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLとを含み、即ちSEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又はSEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域とを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を特異的に認識又は結合する。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片と、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のKd値は、10-7~10-10Mである。いくつかの実施形態では、前記Kd値は、10-7~10-10M、10-8~10-10M又は10-9~10-10Mである。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片と、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のKd値は、10-7M程度未満である。いくつかの実施形態では、前記Kd値は、10-7M程度未満、10-8M程度未満、10-9M程度未満又は10-10M程度未満である。いくつかの実施形態では、Kd値は、表面プラズモン共鳴法によって検出される。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合性断片は、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、 scFv、dsFv又はdAbから選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに有する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、マウスIgG1又はマウスIgG2a由来である。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1由来である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、コンジュゲート部分をさらに有する。いくつかの実施形態では、前記コンジュゲート部分は、治療剤、放射性同位体、検出可能な標識、薬物動態学的に修飾された部分又は精製された部分である。前記コンジュゲート部分は、直接的に連結され又はリンカーを介して連結される。
【0022】
一態様によれば、本出願は、単離された核酸をさらに提供し、それは、本出願に記載の、TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片をコードする。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:31に示される核酸配列又はSEQ ID NO:31と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:32に示される核酸配列又はSEQ ID NO:32と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:33に示される核酸配列又はSEQ ID NO:33と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:34に示される核酸配列又はSEQ ID NO:34と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:35に示される核酸配列又はSEQ ID NO:35と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:6に示される核酸配列又はSEQ ID NO:6と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。
【0024】
一態様によれば、本出願は、ベクターをさらに提供し、それは、本出願に記載の核酸配列を含む。
【0025】
一態様によれば、本出願は、宿主細胞をさらに提供し、それは、本出願に記載のベクターを含む。
【0026】
一態様によれば、本出願は、多重特異性抗体をさらに提供し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片と、他の抗原に特異的に結合する一つ又は複数の抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0027】
一態様によれば、本出願は、抗体複合体をさらに提供し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、又は本出願に記載の多重特異性抗体を含む。
【0028】
一態様によれば、本出願は、抗TRPV6モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株をさらに提供し、前記ハイブリドーマ細胞株は、12CT9.5.1、16CT4.1.1.2及び/又は16CT18.1.1.2であり、中国典型培養物保存センターに保存され、ここで12CT9.5.1の保存番号は、CCTCC NO:C202119であり、16CT4.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202124であり、16CT18.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202125である。
【0029】
一態様によれば、本出願は、医薬組成物をさらに提供し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の単離された核酸、本出願に記載のベクター、本出願に記載の宿主細胞、本出願に記載の多重特異性抗体又は本出願に記載の抗体複合体と、薬学的に許容されるベクターとを含む。
【0030】
一態様によれば、本出願は、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するための試薬をさらに提供し、前記試薬は、本出願に記載の一種又は複数種の抗体又はその抗原結合性断片を含む。いくつかの実施形態では、前記試薬は、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するために用いられる。
【0031】
一態様によれば、本出願は、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法をさらに提供し、前記方法は、(1)前記試料を、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片と接触することと、(2)任意選択的に、未結合の抗体又は抗体断片を除去することと、(3)前記試料におけるTRPV6に結合した抗体又は抗体断片を検出することとを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(1)において、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片は、基板上に固定される。いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(1)において、前記試料は、基板上に固定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(3)において、二次抗体を使用することをさらに含み、任意選択的に、前記二次抗体は、前記試料におけるTRPV6に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと異なり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと同じであり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受けず、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受ける。
【0034】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(3)において、二次抗体を使用することをさらに含み、任意選択的に、前記二次抗体は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の定常領域部分に結合可能である。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記二次抗体は、検出分子にカップリングし、任意選択的に、前記検出分子は、酵素、蛍光標識物質とビオチンを含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、酵素であり、任意選択的に、前記酵素は、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、フルオレセインであり、任意選択的に、前記フルオレセインは、FITC、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン又はDylightを含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、ビオチン又はその誘導体である。
【0036】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法は、前記試料におけるTRPV6に結合した抗体を定量することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光(IF)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、化学発光(CLIA、chemiluminescent immunoassay)、免疫比濁(TIA、Turbidimetric inhibition immuno assay)又はウェスタンブロット(Western Blot)である。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法において、前記被験者は、ヒトである。
【0038】
一態様によれば、本出願は、被験者疾患の形成又は形成のリスクを判断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングする方法をさらに提供し、前記方法は、本出願に記載の、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法によって、前記被験者由来の試料におけるTRPV6を検出することを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、被験者疾患の形成又は形成のリスクを判断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングする方法は、前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価することを含み、前記比率が所定の閾値を超えた場合、前記被験者が前記疾患を有するか又は治療により利益を得る可能性がより高いと考えられ、ここで前記閾値は、10%である。いくつかの実施形態では、前記治療は、標的薬による治療である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の疾患は、癌疾患である。いくつかの実施形態では、癌疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌である。
【0041】
一態様によれば、本出願は、キットをさらに提供し、前記キットは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含み、任意選択的に、前記抗体又はその抗原結合性断片とTRPV6との結合状況を検出するための試薬をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、被験者疾患の形成又は形成のリスクを診断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングするために用いられる。いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、免疫組織化学による病理診断に用いられる。いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、腫瘍組織の免疫組織化学による病理診断に用いられる。いくつかの実施形態では、前記疾患は、癌疾患であり、いくつかの実施形態では、癌疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌である。
【0043】
一態様によれば、本出願は、TRPV6に特異的に結合する抗体を作製する方法をさらに提供し、前記方法は、(1)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列とベクタータンパク質とをカップリングして、TRPV6抗原ペプチドを得ることと、(2)ステップ(1)によって得られた前記TRPV6抗原ペプチドを免疫原としてマウスへの免疫をすることと、(3)細胞融合と免疫ペプチドのクローンスクリーニングを経て、TRPV6に特異的に結合する抗体を高分泌する陽性ハイブリドーマ細胞系を得ることと、(4)TRPV6に特異的に結合する抗体を得ることとを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記ベクタータンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質である。
【0045】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列のN末端に一つのCysを追加し、且つ遊離チオール基を介して前記ベクタータンパク質にカップリングする。
【0046】
いくつかの実施形態では、本出願に記載のハイブリドーマ細胞系は、マウスハイブリドーマ細胞系12CT 9.5.1、16CT 18.1.1.2と16CT 4.1.1.2である。
【0047】
一態様によれば、本出願は、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の単離された核酸、本出願に記載のベクター、本出願に記載の宿主細胞、本出願に記載の多重特異性抗体、本出願に記載の抗体複合体及び本出願に記載の医薬組成物の、TRPV6レベルに関連する疾患を治療及び/又は予防及び/又は診断するための医薬における用途をさらに提供する。
【0048】
一態様によれば、本出願は、疾患を治療、予防又は診断する方法をさらに提供し、前記方法は、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の多重特異性抗体、本出願に記載の抗体複合体及び本出願に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含む。
図面は、本明細書の一部を構成し、本開示のいくつかの態様を示す。これらの図面のうちの一つ又は複数を参照し、本開示に記載の具体的な実施形態の詳細な説明を結び付けることで、本開示をよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1A】CB-Anti-0001により免疫細胞を介してTRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質を化学特異的に検出できるが(左図)、非TRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質検出の指示はない(右図)ことが示されている。
【
図1B】CB-Anti-0002により免疫細胞を介してTRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質を化学特異的に検出できるが(左図)、非TRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質検出の指示はない(右図)ことが示されている。
【
図1C】CB-Anti-0003により免疫細胞を介してTRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質を化学特異的に検出できるが(左図)、非TRPV6プラスミドトランスフェクション293T細胞におけるTRPV6タンパク質検出の指示はない(右図)ことが示されている。
【
図2A】CB-Anti-0001抗体の免疫組織化学による検出結果が示されている。
【
図2B】CB-Anti-0002抗体の免疫組織化学による検出結果が示されている。
【
図2C】CB-Anti-0003抗体の免疫組織化学による検出結果が示されている。
【
図3】ヒト膀胱移行細胞乳頭腫細胞(RT4)に対するACC-028抗体、MABN839抗体とCB-Anti-0001抗体のIHC比較結果実験が示されている。ここで図面3Aは、ACC-028抗体のIHC結果であり、図面3Bは、MABN839抗体のIHC結果であり、図面3Cは、CB-Anti-0001抗体のIHC結果である。図から分かるように、図面3Cにおける細胞膜は、鮮明で、顕著な染色効果を有する。
【
図4】異なる条件下で保存した抗体の組織染色強度と染色比率には顕著な変化がないことが示されている。ここで図面4Aは、4°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体原液のIHC結果であり、図面4Bは、37°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体原液のIHC結果であり、図面4Cは、37°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体作動液のIHC結果である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の記述は、本出願の様々な実施形態を説明するためのものに過ぎない。そのため、ここの具体的な実施形態は、出願範囲に対する制限として解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び本明細書の記述に基づいて、複数の同等な形態と修正を容易に得ることができ、これらの同等な実施形態は、本発明の範囲内に含まれると理解すべきである。本出願に援用された、刊行物、特許及び特許出願を含むすべての文献は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0051】
文脈で別途明確に指摘されていない限り、本明細書で使用される単数形「一」、「一つ」、「一種」及び「該」又は「前記」は、複数の援用を含む。
【0052】
本出願で使用される、例えば「含む」、「包含」、「含有」、「含有」と「有する」などの表現は、包括的又は開放式であり、追加的な、記載されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。本出願で使用される、「……から構成される」という表現は、閉鎖式である。
【0053】
出願者は、ハイブリドーマ細胞株(系)12CT9.5.1、16CT4.1.1.2と16CT18.1.1.2を中国典型培養物保存センターに寄託した。12CT9.5.1の保存番号は、CCTCC NO:C202119であり、16CT4.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202124であり、16CT18.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202125であり、三つのハイブリドーマ細胞株の保存アドレスは、中国武漢大学であり、保存日付は、2021年1月13日であり、保存先は、中国典型培養物保存センターである。
【0054】
本出願の一態様は、TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片を開示し、ここで前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の重鎖可変領域に含まれる三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又はSEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される三つの重鎖相補性決定領域HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、又はSEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3である。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の軽鎖可変領域に含まれる三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又はSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される三つの軽鎖相補性決定領域LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、即ちSEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:7に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9に示されるHCDR3、SEQ ID NO:10に示されるLCDR1、SEQ ID NO:11に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:13に示されるHCDR1、SEQ ID NO:14に示されるHCDR2、SEQ ID NO:15に示されるHCDR3、SEQ ID NO:16に示されるLCDR1、SEQ ID NO:17に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:18に示されるLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:19に示されるHCDR1、SEQ ID NO:20に示されるHCDR2、SEQ ID NO:21に示されるHCDR3、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:23に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:24に示されるLCDR3を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、以下の群から選択される重鎖可変領域VHを含み、即ちSEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域、又はSEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、さらに、以下の群から選択される軽鎖可変領域VLを含み、即ちSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域、SEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域、又はSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域である。
【0057】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:25に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:26に示される軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:27に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:28に示される軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:29に示される重鎖可変領域とSEQ ID NO:30に示される軽鎖可変領域とを含む。
【0058】
本出願で使用される「抗体」という用語は、任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体又は二重特異性(二価)抗体を含む。一つの天然のインタクト抗体は、ジスルフィド結合を介して互いに連結される二本の重鎖と二本の軽鎖とを含む。抗体の各重鎖は、一つの可変領域(VH)及び第1、第2と第3の定常領域(それぞれCH1、CH2、CH3である)から構成されるが、抗体の各軽鎖は、一つの可変領域(VL)及び一つの定常領域(CL)から構成される。軽鎖と重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。各鎖における可変領域は、大きく3つの超可変領域に分けられ、相補性決定領域と呼ばれる(CDR)(ここで軽鎖CDRは、LCDR1と、LCDR2と、LCDR3とを含み、重鎖CDRは、HCDR1と、HCDR2と、HCDR3とを含む)。
【0059】
本出願で使用される抗体の「抗原結合性断片」、抗体の「抗原結合部分」などは、天然に存在する、酵素触媒により得られる、合成された、又は遺伝子操作された任意のポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、抗原に特異的に結合して複合物を形成する。抗体の抗原結合性断片は、例えば、任意の適切な標準技術を使用することによってインタクトな抗体分子から誘導されてもよく、前記適切な標準技術は、例えばタンパク質加水分解消化、又は抗体の可変ドメインと任意選択的な定常ドメインをコードするDNAの操作と発現に係る遺伝子組換え工学技術である。DNAは、化学方法又は分子生物学的技術の使用によって配列決定と操作を行うことができ、それによって例えば、一つ又は複数の可変及び/又は定常ドメインを適切な構成に並べ替え、又はコドンを導入して、システイン残基を作製し、アミノ酸を修飾、追加又は削除するなどである。抗原結合性断片の非限定的な実例として、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)又はFR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。他の改造分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価のナノボディ、二価のナノボディなど)、小型モジュール化免疫薬(SMIP)とサメ変異体IgNARドメインも、本明細書に用いる「抗原結合性断片」の表現内に含まれる。
【0060】
本出願に開示された抗体と抗原結合性断片のCDR境界は、Kabat、Chothia又はAl-Lazikani命名法に従って命名又は認識されてもよい。(Al-Lazikani, B.,Chothia, C.,Lesk, A. M.,J. Mol. Biol.,273(4), 927 (1997)、Chothia, Cら,J Mol Biol. Dec 5;186(3):651-63 (1985)、Chothia, C.とLesk, A.M.,J.Mol.Biol.,196, 901 (1987)、Chothia, Cら,Nature. Dec 21-28;31(6252):877-83 (1989)、Kabat E.A.ら,National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。いくつかの実施形態では、Kabatデータベースに基づいて抗体のCDR境界を確定する。三つのCDRは、フレームワーク領域と呼ばれる(FRであって、重鎖FRは、HFR1と、HFR2と、HFR3と、HFR4とを含み、軽鎖FRは、LFR1と、LFR2と、LFR3と、LFR4とを含む)ものの側面の連続的な部分によって隔てられ、フレームワーク領域は、CDRよりも高度に保存され、ステントを形成して超可変ループを支持する。そのため、VHとVLは、それぞれ以下の順番で配置された3つのCDRと4つのFRとを含み(ヒトアミノ酸残基N末端からC末端)、即ちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。重鎖と軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。哺乳類の重鎖は、α、δ、ε、γとμに分けられ、哺乳類の軽鎖は、λ又はκに分けられる。抗体は、その重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき、α、δ、ε、γとμがそれぞれ存在するか否かに基づいて大別して、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという5つのクラスに分けられる。いくつかの主要な抗体クラスのサブクラスとして、例えばIgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)又はIgA2(α2重鎖)がある。
【0061】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を特異的に認識又は結合する。
【0062】
【0063】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片と、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のKd値は、10-7~10-10Mである。いくつかの実施形態では、前記Kd値は、10-7~10-10M、10-8~10-10M又は10-9~10-10Mである。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片と、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のKd値は、10-7M程度未満である。いくつかの実施形態では、前記Kd値は、10-7M程度未満、10-8M程度未満、10-9M程度未満又は10-10M程度未満である。いくつかの実施形態では、Kd値は、表面プラズモン共鳴法によって検出される。
【0064】
いくつかの実施形態では、本出願の抗原結合性断片は、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv又はdAbから選択される。いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに有する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、マウスIgG1又はマウスIgG2a由来である。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1由来である。
【0065】
いくつかの実施形態では、本出願の抗体又はその抗原結合性断片は、コンジュゲート部分をさらに有する。いくつかの実施形態では、前記コンジュゲート部分は、治療剤、放射性同位体、検出可能な標識、薬物動態学的に修飾された部分又は精製された部分である。前記コンジュゲート部分は、直接的に連結され又はリンカーを介して連結される。
【0066】
本出願で使用される「治療剤」という用語は、被験者における疾患を治療又は予防するための任意の医薬化合物であってもよく、分子量が500未満の小分子、ヌクレオチド(例えば、DNA、プラスミドDNA、RNA、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマーなど)、短いペプチド、タンパク質(例えば、酵素)を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、放射性同位体は、以下の群、3H、11C、14C、18F、32P、33P、 35S、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、 75Sc、77As、86Y、89Sr、89Zr、90Y、90Nb、94Tc、99Tc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、161Tb、166Dy、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra及び225Acから選択されてもよい。
【0068】
本出願で使用される「検出可能な標識」という用語は、本発明の抗体に直接的又は間接的にカップリングすると同時に、TRPV6レベルの検出に適し又は役立つ任意の検出分子であってもよい。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、酵素、蛍光標識物質とビオチンを含む。前記酵素は、ペルオキシダーゼ(例えば、ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、糖質酸化酵素、ウレアーゼ、複素環オキシダーゼ(例えば、キサンチンオキシダーゼ)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ又はそれらの誘導体を含む。前記蛍光標識物質は、フルオレセインであってもよく、任意選択的に、前記フルオレセインは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Dylight、Cy3又はCy5を含む。
【0069】
別の態様によれば、本出願は、単離された核酸をさらに開示し、それは、本出願に記載の、TRPV6に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片をコードする。いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:31に示される核酸配列又はSEQ ID NO:31と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:32に示される核酸配列又はSEQ ID NO:32と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:33に示される核酸配列又はSEQ ID NO:33と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:34に示される核酸配列又はSEQ ID NO:34と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸は、SEQ ID NO:35に示される核酸配列又はSEQ ID NO:35と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列と、SEQ ID NO:6に示される核酸配列又はSEQ ID NO:6と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列とのうちの一方又は両方を含む。
【0070】
別の態様によれば、本出願は、ベクターをさらに開示し、それは、本出願に記載の核酸配列を含む。
【0071】
別の態様によれば、本出願は、宿主細胞をさらに開示し、それは、本出願に記載のベクターを含む。
【0072】
別の態様によれば、本出願は、多重特異性抗体をさらに開示し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片と、他の抗原に特異的に結合する一つ又は複数の抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0073】
別の態様によれば、本出願は、抗体複合体をさらに開示し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、又は本出願に記載の多重特異性抗体を含む。
【0074】
別の態様によれば、本出願は、抗TRPV6モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株をさらに開示し、前記ハイブリドーマ細胞株は、12CT9.5.1、16CT4.1.1.2及び/又は16CT18.1.1.2であり、中国典型培養物保存センターに保存され、ここで12CT9.5.1の保存番号は、CCTCC NO:C202119であり、16CT4.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202124であり、16CT18.1.1.2の保存番号は、CCTCC NO:C202125である。
【0075】
別の態様によれば、本出願は、医薬組成物をさらに開示し、それは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の単離された核酸、本出願に記載のベクター、本出願に記載の宿主細胞、本出願に記載の多重特異性抗体又は本出願に記載の抗体複合体と、薬学的に許容されるベクターとを含む。
【0076】
本出願で使用される「薬学的に許容される」という表現は、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを有さずに、ヒト及び他の動物の細胞との接触に適するとともに、合理的な利益/リスク比に見合っていることを意味する。
【0077】
本出願で使用される「薬学的に許容されるベクター」という用語は、本出願による抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体を被験者に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤又は任意の他の薬学的に不活性なキャリア剤を指し、それは、抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体の構造、形態と性質に影響を与えない。一部のこのようなベクターにより、抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体を、被験者が口から服用するために、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤、トローチ剤などとして製剤化することができる。一部のこのようなベクターにより、抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体を、注射、注入、局所投与用の製剤として製剤化することができる。
【0078】
本出願による医薬組成物に用いる薬学的に許容されるベクターは、例えば薬学的に許容される液体、ゲル又は固体ベクター、水性キャリア剤(例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性ブドウ糖注射液、滅菌水注射液又はブドウ糖及び乳酸リンゲル注射液)、非水性キャリア剤(例えば、植物由来の不揮発性油、綿実油、コーン油、ごま油又は落花生油)、抗菌剤、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム又はブドウ糖)、緩衝剤(例えば、リン酸又はクエン酸緩衝剤)、酸化防止剤(例えば、硫酸水素ナトリウム)、麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン)、懸濁剤/分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドン)、キレート剤(例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はEGTA(エチレングリコール四酢酸))、乳化剤(例えば、ポリソルベート80(ツイーン80))、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は無毒性の補助物質、本分野における公知の他の成分又はその様々な組み合わせを含むが、これらに限らない。適切な成分として、例えば充填剤、バインダー、緩衝剤、防腐剤、潤滑剤、調味剤、増粘剤、着色剤又は乳化剤を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射用製剤である。注射用製剤は、滅菌水溶液又は分散剤、懸濁剤又は乳剤を含む。あらゆる状況下で、注射用製剤は、滅菌であるとともに、注射を容易にする流体であるべきである。注射用製剤は、生産と保存の条件下で安定性を維持するとともに、細菌や真菌などの微生物による汚染を防止しなければならない。ベクターは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)とその適切な混合物及び/又は植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。注射用製剤は、適度な流動性を保つべきである。例えば、レシチンのようなコーティングを使用し、界面活性剤などを使用することによって適度な流動性を保つことができる。様々な抗細菌剤と抗真菌剤によって微生物阻止の作用を実現することができ、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどである。
【0080】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与製剤である。経口投与製剤は、カプセル、扁平カプセル、丸剤、錠剤、トローチ剤(調味基質を使用し、一般的にはショ糖とアラビアガム又はトラガントガムである)、粉剤、顆粒剤、又は水性か非水性液体における溶液剤又は懸濁剤、又は水中油か油中水型液体乳剤、又はエリキシル剤かシロップ、又はソフトトローチ剤(不活性基質を使用し、例えばゼラチンとグリセリン、又はショ糖とアラビアガムである)及び/又は洗口剤などを含むが、これらに限らない。
【0081】
経口投与用の固体剤型(例えば、カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)では、抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体と、薬学的に許容される一種又は複数種のベクター、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、及び/又は以下のうちのいずれか一つとを混合し、即ち(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸、(2)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアラビアガム、(3)保湿剤、例えば、グリセリン、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯デンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、一部のケイ酸塩と炭酸ナトリウム、(5)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、(7)湿潤剤、例えば、アセチル基アルコールとモノグリセリド、(8)吸収剤、例えば、カオリンとベントナイト、(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びその混合物、及び(10)着色剤である。
【0082】
経口投与用の液体剤型では、抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体と、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション、溶液、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤のうちのいずれか一つとを混合する。抗体又はその抗原結合性断片、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、多重特異性抗体又は抗体複合体以外、液体剤型は、本分野でよく使われる不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤と乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ひまし油とごま油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールとソルビタン脂肪酸エステル及びその混合物を含有してもよい。不活性希釈剤以外、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤と懸濁剤、甘味料、調味剤、着色剤、着香剤と防腐剤をさらに含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、口腔用スプレー製剤又は鼻用スプレー製剤である。スプレー製剤は、水性エアゾール剤、非水性懸濁剤、リポソーム製剤又は固体顆粒製剤などを含むが、これらに限らない。水性エアゾール剤は、薬剤の水溶液又は懸濁液と、薬学的に許容される一般的なベクター及び安定剤とを混合することで製造される。ベクター及び安定剤は、具体的な薬物成分の需要に基づいて変更されるが、一般的には、それは、非イオン界面活性剤(ツイーン又はポリエチレングリコール)、オレイン酸、レシチン、アミノ酸、例えば、グリシン、緩衝溶液、塩、糖又は糖アルコールを含む。エアゾール剤は、一般的には等張液によって製造され、そしてスプレーによって送達することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、一種又は複数種の他の医薬と混合することで使用してもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも一種の他の医薬を含有する。いくつかの実施形態では、その他の医薬は、抗悪性腫瘍薬、心臓血管薬、抗炎症薬、抗ウイルス薬、消化器官用薬、神経系用薬、呼吸器系用薬、免疫系用薬、皮膚疾患用薬、代謝系用薬などである。
【0085】
いくつかの実施形態では、適切な経路を介して必要のある被験者に医薬組成物を投与してもよく、経口投与、注射(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、心腔内、脊髄腔内、胸膜腔内、腹腔内注射など)、粘膜(例えば、鼻腔内、口腔内投与など)、舌下、直腸、経皮、眼投与と経肺投与を含むが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、経口投与、筋肉内又は心腔内投与されてもよい。
【0086】
別の態様によれば、本出願は、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するための試薬をさらに開示し、前記試薬は、本出願に記載の一種又は複数種の抗体又はその抗原結合性断片を含む。いくつかの実施形態では、前記試薬は、被験者由来の試料におけるTRPV6を分析と検出するために用いられる。
【0087】
別の態様によれば、本出願は、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法をさらに開示し、前記方法は、(1)前記試料を、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片と接触することと、(2)任意選択的に、未結合の抗体又は抗体断片を除去することと、(3)前記試料におけるTRPV6に結合した抗体又は抗体断片を検出することとを含む。
【0088】
本出願で使用される「検出」という用語は、分子(例えば、ポリペプチド、タンパク質又は核酸分子)の存在又は非存在を確定と測定し、又は分子間の相互作用(例えば、結合、アゴニスト又はアンタゴニストなどの作用)、例えばタンパク質-タンパク質の相互作用(例えば、抗体と抗原との間の相互作用)、タンパク質-核酸の相互作用、又は核酸-核酸の相互作用を確定と測定することであってもよい。いくつかの実施形態では、「検出」と「測定」は、定量的検出と測定を含む。いくつかの実施形態では、検出は、抗体に直接的又は間接的にカップリングする検出分子の信号を確定と測定することによって行われる。当業者によく知られている方法によって検出を行ってもよい。いくつかの実施形態では、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、免疫蛍光(IF)、化学発光(CLIA)、免疫比濁(TIA)又はウェスタンブロット(Western Blot)を使用して検出を行う。
【0089】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(1)において、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片は、基板上に固定される。いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(1)において、前記試料は、基板上に固定される。いくつかの実施形態では、試料は、細胞又は組織である。試料は、細胞遠心分離作製物、細胞学的塗抹、コア生検、細針穿刺及び/又は組織切片(例えば、クライオスタット組織切片、パラフィン包埋組織切片)を含むが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、試料は、生細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、化学固定剤を使用して前記固定を行う。架橋固定剤(例えばアルデヒド類、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドを含む)を使用して組織学的試料を作製してもよい。組織試料は、ホルムアルデヒドで固定されてパラフィンに包埋されてもよい。パラホルムアルデヒドを使用して、温度感受性低温材料に包埋されて、液体窒素で急速凍結してもよい。その他の種類の化学固定剤として、酸化剤とアルコール固定剤をさらに含む。さらに、物理的方法によって固定してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(3)において、二次抗体を使用することをさらに含み、任意選択的に、前記二次抗体は、前記試料におけるTRPV6に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと異なり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープは、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片のエピトープと同じであり、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受けず、任意選択的に、前記二次抗体のエピトープとTRPV6との結合は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の影響を受ける。
【0091】
本出願で使用される「エピトープ」という用語は、抗体分子の可変領域における特定の抗原結合部位(相補的部位という)と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、一つを超えるエピトープを有してもよい。そのため、異なる抗体は、一つの抗原上の異なる領域に結合できるとともに異なる生物的作用を有することができる。エピトープは、立体配座エピトープ又は線状エピトープであってもよい。立体配座エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからのアミノ酸が空間的に並置されることによって形成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって形成されるエピトープである。いくつかの状況では、エピトープは、抗原上の糖、ホスホリル基又はスルホニル基の部分を含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法のステップ(3)において、二次抗体を使用することをさらに含み、任意選択的に、前記二次抗体は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片に直接的又は間接的に結合可能であり、任意選択的に、前記二次抗体は、本出願に記載の抗体又は抗原結合性断片の定常領域部分に結合可能である。本明細書で使用される「二次抗体」は、抗TRPV6抗体をより良く検出するためのものであり、二次抗体は、一般的には市販で購入できる。いくつかの実施形態では、本出願に記載の二次抗体は、検出分子にカップリングし、任意選択的に、前記検出分子は、酵素、蛍光標識物質とビオチンを含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、酵素であり、任意選択的に、前記酵素は、ペルオキシダーゼ(例えば、ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、糖質酸化酵素、ウレアーゼ、複素環オキシダーゼ(例えば、キサンチンオキシダーゼ)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、フルオレセインであり、任意選択的に、前記フルオレセインは、FITC、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン、GFP、Cy3、Cy5又はDylightを含む。いくつかの実施形態では、前記検出分子は、ビオチン又はその誘導体である。
【0093】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法は、前記試料におけるTRPV6に結合した抗体を定量することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着(ELISA)、免疫蛍光(IF)、化学発光(CLIA)、免疫比濁(TIA)又はウェスタンブロット(Western Blot)である。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法において、前記被験者は、ヒトである。
【0095】
別の態様によれば、本出願は、被験者疾患の形成又は形成のリスクを判断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングする方法をさらに開示し、前記方法は、本出願に記載の、被験者由来の試料におけるTRPV6を検出する方法によって、前記被験者由来の試料におけるTRPV6を検出することを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、被験者疾患の形成又は形成のリスクを判断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングする方法は、前記試料における、細胞表面上に発現するTRPV6の細胞の比率を評価することを含み、前記比率が所定の閾値を超えた場合、前記被験者が前記疾患を有するか又は治療により利益を得る可能性がより高いと考えられ、ここで前記閾値は、10%である。いくつかの実施形態では、前記治療は、標的薬による治療である。
【0097】
本出願で使用される「得する」、「利益を得る」又は「有益である」という表現は、あらゆる期待される効果を意味し、(1)疾患の進行をある程度抑制(例えば軽減、緩和又は完全に停止させ)し、速度低減と完全停止を含み、(2)疾患の発症及び/又は症状の数を減少させ、(3)病変のサイズを縮小させ、(4)疾患細胞の隣接する周りの器官及び/又は組織への浸潤を抑制し、(5)疾患の伝播を抑制し、(6)当該疾患に関連する一種又は複数種の症状を一定程度緩和し、(7)治療後の無病生存期間を延長し、(8)自己免疫反応が軽減し、疾患病変の消退又はアブレーションを引き起こし得るが必ずしもそうではなく、例えば無増悪生存期間であり、(9)全生存率を高め、(10)応答率をより高くし、及び/又は(11)治療後の所定時点における死亡率を低下させることを含むが、これらに限らない。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングすることは、被験者の腫瘍が軽減又は増悪したかどうかを評価することを含む。いくつかの実施形態では、前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングすることは、被験者が治療(例えば、特定の医薬品による治療)を受けた後に好転したかどうか、及び/又は好転の可能性を評価することを含む可能性がある。本出願の予測又は監督の方法は、臨床における治療決定に用いられてもよい。治療計画(例えば、所定の治療計画、例えば所定の治療剤又は組み合わせの投与、手術介入など)を実行した後、本出願の予測又は監督の方法は、特定の被験者の長期間生存の可能性を評価する際に有用なツールである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の疾患は、癌疾患である。いくつかの実施形態では、癌疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、癌疾患は、HER2+乳癌、トリプルネガティブ乳癌又は結直腸癌である。
【0100】
別の態様によれば、本出願は、キットをさらに開示し、前記キットは、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含み、任意選択的に、前記抗体又はその抗原結合性断片とTRPV6との結合状況を検出するための試薬をさらに含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、被験者疾患の形成又は形成のリスクを診断し、被験者疾患の進展又は予後を評価し、又は疾患治療を受けている被験者において前記被験者の治療への応答を予測又はモニタリングするために用いられる。いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、免疫組織化学による病理診断に用いられる。いくつかの実施形態では、本出願に記載のキットは、腫瘍組織の免疫組織化学による病理診断に用いられる。いくつかの実施形態では、前記疾患は、癌疾患であり、いくつかの実施形態では、癌疾患は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃癌、食道癌、肺癌、腸癌、膵臓癌である。またいくつかの実施形態では、前記癌疾患は、HER2+乳癌、トリプルネガティブ乳癌又は結直腸癌である。
【0102】
別の態様によれば、本出願は、TRPV6に特異的に結合する抗体を作製する方法をさらに開示し、前記方法は、(1)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列とベクタータンパク質とをカップリングして、TRPV6抗原ペプチドを得ることと、(2)ステップ(1)によって得られた前記TRPV6抗原ペプチドを免疫原としてマウスへの免疫をすることと、(3)細胞融合と免疫ペプチドのクローンスクリーニングを経て、TRPV6に特異的に結合する抗体を高分泌する陽性ハイブリドーマ細胞系を得ることと、(4)TRPV6に特異的に結合する抗体を得ることとを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、前記ベクタータンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質である。
【0104】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列のN末端に一つのCysを追加し、且つ遊離チオール基を介して前記ベクタータンパク質にカップリングする。
【0105】
SEQ ID NO:3:PLKPRTNNRTSPRDNTLLQQKLLQEAYMTPK。
【0106】
いくつかの実施形態では、本出願に記載のハイブリドーマ細胞系は、マウスハイブリドーマ細胞系12CT 9.5.1、16CT 18.1.1又は16CT 4.1.1.2である。ここで、細胞系12CT 9.5.1によって産生される抗体は、CB-Anti-0001抗体を含み、細胞系16CT4.1.1.2によって産生される抗体は、CB-Anti-0002抗体を含み、細胞系16CT18.1.1によって産生される抗体は、CB-Anti-0003抗体を含む。
【0107】
別の態様によれば、本出願は、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の多重特異性抗体、本出願に記載の抗体複合体及び本出願に記載の医薬組成物の、TRPV6に関連する疾患を治療及び/又は予防及び/又は診断するための医薬における用途をさらに開示する。
【0108】
別の態様によれば、本出願は、疾患を治療、予防又は診断する方法をさらに開示し、前記方法は、本出願に記載の抗体又はその抗原結合性断片、本出願に記載の多重特異性抗体、本出願に記載の抗体複合体及び本出願に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含む。
実施例
【0109】
以下の実施例は、本発明をより良く説明するために用いられ、本発明の範囲を限定するものとして理解すべきではない。以下に記載のすべての特定の組成物、材料と方法は、その全体と部分が、いずれも本発明の範囲内に属する。これらの特定の組成物、材料と方法は、本発明を限定するためのものではなく、特定の実施形態が本発明の範囲内に属することを説明するために用いられる。当業者であれば、創造性を追加することなく、本発明の範囲から逸脱せずに同等な組成物、材料と方法を開発することができる。理解すべきこととして、本発明の方法に対して行う様々な変更は、依然として本発明の範囲内に含まれる。発明者は、このような変更を本発明の範囲内に含めることを意図している。
実施例1 抗原ポリペプチドの合成と組換え抗原の作製
【0110】
1. 抗原ポリペプチドの選択
Uniprot及びGenbankにおける、登録番号がQ9H1D0とGI:1918017293のタンパク質配列(SEQ ID NO:2に示される)に対して配列と二次構造の解析を行った。該TRPV6タンパク質の全長は、765個のアミノ酸であり、その分子量は、約87kDaである。オンラインサーバhttp://www.cbs.dtu.dk/services/NetSurfP/で該タンパク質の二次構造及び表面アクセシビリティ(Surface Accessibility)パラメータを予測し、その抗原性指数の分析結果によって、アミノ酸配列IFQTEDPEELGHF(SEQ ID NO:4)、DGPANYNVDLPF(SEQ ID NO:5)又はPLKPRTNNRTSPRDNTLLQQKLLQEAYMTPK(SEQ ID NO:3)を抗原として選択し化学合成を行った。カップリングを容易にするために、該ポリペプチドのアミノ末端に、チオ基を提供するように一つのシステインを追加した。
【0111】
2. ポリペプチドのカップリング及び精製
Thermo Scientificのマレイミド活性化キーホールリンペットヘモシアニンタンパク質キットを選択して、キットにより提供されるフローに従って操作した。
【0112】
カップリングすべきポリペプチドに対し、まず以下のようにEllman試薬を用いてポリペプチドにおける遊離チオ基を検出した。96ウェルプレートに100μLのEllman試薬ストック液を加え、さらに10μLのポリペプチド溶液を加え、Nano Drop分光光度計を用いてλ=412nmでその紫外線吸収値を測定し、OD値>0.15であれば、次のステップを実行し、OD値<0.15且つ>0.05であれば、要件を満たすまでポリペプチドを追加して添加し、OD値<0.05であれば、ポリペプチド合成ステップに戻って改めて品質管理する。
【0113】
カップリング開始する時、各mcKLH包装に200μLの脱イオン水を加えて、10mg/mLのKLH溶液を調製し、500μLのImject EDCカップリング緩衝液に2mgのハプテンを溶解させ、500μLのポリペプチド溶液を200μLのベクタータンパク質溶液に加えた。1mLの脱イオン水を1包装のEDC(10 mg)に加え、完全に溶解させるまでゆっくりと振盪し、50μLを取ってmcKLHポリペプチド溶液に加え、2時間反応させてから、脱塩カラムで処理して未カップリングの架橋剤と塩類を除去した。
実施例2 ハイブリドーマ細胞系の構築
【0114】
1. 免疫
実施例1における架橋されたポリペプチドをフロイント完全アジュバントで乳化し、4~6週齢の雌性Balb/cマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)への免疫を行い、マウス毎に6箇所で、60μg/匹の用量で腹部皮下注射した。14日毎に1回追加免疫し、抗原をフロイント不完全アジュバントで乳化し、用量は、30μg/匹である。3回目の追加免疫してから7日目に、間接ELISA(波長450nm)でマウス血清中の抗免疫原のポリクローナル抗体力価を検出し、力価が最も高いマウスに対して尾静脈内注射してラッシュ免疫し、抗原を生理食塩水で均一に混合し、用量は、50μg/匹である。
【0115】
2. 細胞融合
免疫の標準に達したマウスの脾細胞懸濁液を作製し、マウス骨髄腫細胞F0と5:1の比率で混合し、1500rpmで、5分間遠心分離した。上清を捨ててから、遠沈管を37°Cの水浴中に入れ、1分以内で1mLのPEG1500(Roche社)をゆっくりと加えて、細胞をかき回した。温水中で1分間静置してから、10mLの無血清IMDM(Sigma社)を加え、均一に混合し、1000rpmで、5分間遠心分離した。上清を捨ててから、10mLの血清(PAA社)を加え、細胞を注意深く繰り返して吸引吐出し、10XHAT(Sigma社)を混合した胸腺細胞を5mL加え、均一に混合した。さらに2.1%のニトロセルロース(Sigma社)を含有する半固形培地を25mL加えて、十分に均一に混合させてから、20個の細胞培養ディッシュに均一に注いだ。細胞培養ディッシュをウェットボックスに入れ、37°Cで、5%CO2のインキュベータに入れて培養した。
【0116】
3. クローン化及びELISAによる陽性ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
融合してから7日目に、クローン細胞塊の大きさと密度がちょうどよく、実体顕微鏡下で、丸くて、コンパクトで、大きなクローン塊を吸い取り、事前に培地を用意した96ウェル培養プレートに吐出し、37°Cで、5%CO2のインキュベータに入れて培養した。
【0117】
3日後に、細胞量は、およそ底面積の2/3を占め、100μLの上清を取り、免疫原と合成ポリペプチドを用いてそれぞれELISAスクリーニングを行った。陽性クローンの培地を完全に交換し、フィーダー細胞と1%のHT(Sigma社)を含有する完全培地を200μL加えた。2日後に、2回目のELISAスクリーニングを行い、陽性クローンを、事前に培地(フィーダー細胞とHT含有)を用意した24ウェルプレートに移して培養した。5日後に、100μLの上清を取り、3回目のELISAスクリーニングを行い、スクリーニングにより12CT 9.5.1と16CT 18.1.1.2と16CT 4.1.1.2との三つの力価の高い陽性クローンを得て、逐次6ウェルプレートと細胞培養フラスコに移して拡大培養し、凍結保存した。
実施例3 腹水誘導法によるモノクローナル抗体の作製
【0118】
1. 腹水の作製
対数増殖期の細胞を無血清培地で洗浄して浮遊させ、計数~5x105/mLで、1mLの浮遊細胞を、事前にパラフィン油で感作したマウスに腹腔内注射した。7日後に、腹水採取し始めた。取り出された腹水を、4°Cで、4000rpmで、10分間遠心分離した。中間にある腹水を注意深く吸い取って遠沈管に入れ、4°C又は-20°Cで保存した。
【0119】
2. モノクローナル抗体の精製
Protein G(GE社)アフィニティークロマトグラフィー法を利用し、取扱説明書に従って腹水から抗体を精製した。SDS-PAGEゲルでの純度を同定し、Bradford法により濃度を測定した。精製された抗体を-20°Cで保存した。
実施例4 モノクローナル抗体特性同定
【0120】
1. 亜型の同定
100mLのMPBS(pH7.4)を用いてコーティングされたヤギ抗マウスIgGを0.5μg/mLに希釈し、ウェル毎に100μL加え、4°Cで一晩放置した。液を残らずに出し、0.05%のTweenを含有するPBSで3回洗浄し、ウェル毎に200μLのブロッキング溶液(2%のBSAと3%のショ糖を含有するPBS)を加え、37°Cで1時間インキュベートし、液を残らずに出し、PBSTで3回洗浄した。ウェル毎に0.1mLのハイブリドーマ上清を加え、37°Cで1時間インキュベートし、液を残らずに出し、PBSTで3回洗浄した。ブロッキング溶液を用いて1:1000でHRPによりマークされたヤギ抗マウス(κ、λ)抗体を希釈し、又は1:2000でHRPによりマークされたヤギ抗マウス(IgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA)抗体を希釈し、1ウェルあたり0.1mLでそれぞれ適切なウェルに加え、37°Cで1時間インキュベートし、液を残らずに出し、PBSTで3回洗浄した。ウェル毎に0.15%のABTSと0.03%のH2O2を含有するクエン酸緩衝液(pH4.0)を50μL加えて発色反応を行い、10~20分以内で405nm波長におけるOD値を測定した。結果によると、得られたCB-Anti-0001とCB-Anti-0002抗体は、IgG1型マウス由来モノクローナル抗体であり、CB-Anti-0003抗体は、IgG2a型マウス由来モノクローナル抗体である。
【0121】
2. 親和定数の測定
まず、得られた抗TRPV6抗体をSPRチップ上に固定し、それから1×PBSTを希釈液として、免疫ペプチドを11.52nMに希釈し、その後、1.3倍に希釈し、最終的な濃度は、4.04nMであり、計5つの濃度勾配である。SPR機器を利用して親和性の検出を行い、機器の自動分析により、CB-Anti-0001の親和定数は、5.19x10-10であると算出された。
【0122】
3. モノクローナル抗体の反応特異性と応用効果
TRPV6タンパク質をトランスフェクトした293T細胞を選択し、免疫細胞化学の方法で本発明のモノクローナル抗体の認識特異性を検出し、免疫細胞化学の実験プロセスは、以下のとおりである。293T細胞にTRPV6プラスミドをトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を、カバースリップを含む24ウェルプレートに敷き、IMDM+10%FBSの培地において細胞を72時間培養し、上清を除去し、PBSで1回洗浄し、メタノールを加えて30秒固定し、PBSで2回洗浄した。抗体希釈液を用いて適切な希釈比に従って抗TRPV6抗体作動液を調製し、24ウェルプレートにおけるPBSを除去し、抗体作動液を加えて、摂氏4度で一晩インキュベートし、PBSで3回洗浄し、二次抗体(ElivisionTM plus Polyer HRP (Mouse/Rabbit) IHC Kit、福州邁新生物技術開発有限公司から購入、製品番号KIT-9903)を滴加し、室温で15~20分間インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流し(即ち、3回洗い流し、毎回3分間持続する)、PBSを振り捨て、新鮮に調製されたDAB発色液を用いて3分間発色させた。ヘマトキシリンで二次的な染色を25秒行い、PBSで色出しを30秒実施した。75%、95%、100%、100%のアルコール勾配に従って順に脱水し、最後にキシレンで透徹を3分間行い、中性ガムで封入をした。
【0123】
図1A~1Cに示すように、CB-Anti-0001抗体、CB-Anti-0002抗体とCB-Anti-0003抗体は、それぞれ、TRPV6プラスミドをトランスフェクトした293T細胞において免疫細胞化学によってTRPV6タンパク質を特異的に検出できるが、それとともにTRPV6プラスミドをトランスフェクトしていない293T細胞においてTRPV6タンパク質の検出は、示されていない。該結果によると、得られた抗TRPV6抗体は、TRPV6タンパク質を特異的に認識することができ、即ち認識特性を有する。
実施例5 抗体の可変領域配列の測定
【0124】
培養したハイブリドーマ細胞系を1x10
6取り、遠心分離して上清を取り、細胞の沈殿を蘇州金唯智生物科技有限公司に依頼して抗体の重鎖と軽鎖可変領域配列の測定を行い、例示的な抗体重鎖可変領域配列と抗体軽鎖可変領域配列を以下に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
実施例6 組織切片の染色と同定
【0125】
1. 切片の作製プロセス
組織パラフィンブロックを粗切してから連続して切片にし、厚さを5μmにし、連続切片を45°Cの温水において広げ、正電荷付き剥離防止スライドグラスに切片を貼り付け、室温で陰干しを一晩してから、-20°Cで長期保存した。
【0126】
2. IHC染色及び分析
通常のキシレンで脱パラフィンを2回行い、毎回15分間実行し、100%、100%、95%、75%の勾配のエタノールにおいて水和をし、毎回3分間実行し、最後に水道水で洗い流した。抗原修復を行い、そして切片をウェットボックスに入れて、PBSで3X3分間洗い流した。3%のH2O2を滴加して10分間インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流した。PBSを振り捨て、ブロッキング溶液(動物非免疫血清)を滴加して室温で60分間インキュベートした。切片を振って乾燥させ、適切な比率に希釈された一次抗体を滴加し、4°Cで一晩インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流し、二次抗体(ElivisionTM plus Polyer HRP (Mouse/Rabbit) IHC Kit、福州邁新生物技術開発有限公司から購入、製品番号KIT-9903)を滴加し、室温で15~20分間インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流し、PBSを振り捨て、新鮮に調製されたDAB発色液を用いて3分間発色させた。ヘマトキシリンで二次的な染色を25秒行い、PBSで色出しを30秒実施した。75%、95%、100%、100%のアルコール勾配に従って順に脱水し、最後にキシレンで透徹を3分間行い、中性ガムで封入をした。
【0127】
3. データ統計
図2A~2Cに示すように、CB-Anti-0001抗体、CB-Anti-0002抗体とCB-Anti-0003抗体は、それぞれ免疫組織化学によって組織切片におけるTRPV6タンパク質を検出することができる。
【0128】
なお、発明者は、さらにH-score採点方法を用いて腫瘍細胞の細胞膜の染色状況を記録し、H-score60点以上を強染色として記録し、H-score1~60点を弱染色として記録し、強染色及び弱染色の合計を陽性とし、H-score0を陰性とした。IHC検出による各腫瘍組織におけるTRPV6のレベルをそれぞれ統計し、TCGAデータベースにおけるTRPV6 mRNAレベルとの比較検証を行うことによって、抗体の特異性を評価し、記録情報を表4に示す。結果によると、本発明の抗体によるTRPV6タンパク質レベルの検出において、陽性率が高い(特に強染色の比率が高い)癌種は、癌ゲノムアトラスデータベース(the Cancer Genome Atlas Program、即ちTCGAデータベース)において統計されたTRPV6 mRNAレベルも、それに対応して高い(例えば、TPMが1よりも大きい)。このことから分かるように、本発明の抗体の使用により、細胞表面におけるTRPV6の発現状況を正確に評価し、さらに被検試料がTRPV6を発現する癌細胞である否かを判断することができる。
【表5】
実施例7 IHC比較実験
【0129】
市販の抗体「Anti-Human TRPV6 (extracellular) Antibody」(品番ACC-028、Alomone Labsから購入、RRID:AB_2756545、本明細書では「ACC-028抗体」と略す)、抗体「Anti-TrpV6 Antibody, clone 4A5.1」(品番MABN839、Sigma-Aldrich社から購入、本明細書では「MABN839抗体」と略す)とCB-Anti-0001抗体に対して、比較実験を行った。
【0130】
実施例6の第2の部分と同様な手順を使用して、CDX腫瘍モデルRT4(ヒト膀胱移行細胞乳頭腫細胞)の切片を取得した。ACC-028抗体(希釈比率1:50)、MABN839抗体(希釈比率1:50)とCB-Anti-0001抗体(希釈比率1:2000)を滴加し、4°Cで一晩インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流し、二次抗体(ElivisionTM plus Polyer HRP (Mouse/Rabbit) IHC Kit、福州邁新生物技術開発有限公司から購入、製品番号KIT-9903)を滴加し、室温で15~20分間インキュベートし、PBSで3X3分間洗い流し、PBSを振り捨て、新鮮に調製されたDAB発色液を用いて3分間発色させた。ヘマトキシリンで二次的な染色を25秒行い、PBSで色出しを30秒実施した。75%、95%、100%、100%のアルコール勾配に従って順に脱水し、最後にキシレンで透徹を3分間行い、中性ガムで封入をし、染色結果を読み取った。結果によると、ACC-028抗体は、検出感度が低く、わずかな量のRT4細胞膜上で特異的信号が検出されており(図面3Aを参照)、MABN839抗体は、特異性に劣り、すべての組織細胞と間葉系細胞において信号が検出されており(図面3Bを参照)、これらに比べ、CB-Anti-0001抗体は、検出信号の位置決めが正確かつ明瞭で、特異性に優れ、感度が高く(図面3Cを参照)、好ましいIHC応用抗体である。
実施例8 安定性実験
【0131】
加速破壊方法を用いてCB-Anti-0001抗体安定性の検証を行い、即ちそれぞれに対し、(1)抗体原液を4°Cで14日間保存し、(2)抗体原液を37°Cの恒温インキュベーターに入れて14日間インキュベートし、且つ(3)抗体作動液(中杉金橋ZLI-9028抗体希釈液を使用し1:2000の比率で抗体原液を希釈して該抗体作動液を得る)を37°Cの恒温インキュベーターに入れて14日間インキュベートした。同じ実験条件下で、上記三種類の抗体液を使用してIHC検出を行うことにより、三つの処理方式における抗体の安定性を評価した。
【0132】
検出によると、異なる条件下で保存した抗体は、組織染色強度と染色比率にいずれも顕著な変化がなかった(図面4を参照し、ここで図面4Aは、4°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体原液のIHC結果であり、図面4Bは、37°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体原液のIHC結果であり、図面4Cは、37°Cで14日間保存したCB-Anti-0001抗体作動液のIHC結果である)。このことから分かるように、CB-Anti-0001抗体作動液を37°Cの温度下で14日間保存した後も、抗体は、依然として安定し、良好な検出能力を保持している。
【表6】
【配列表】
【国際調査報告】