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特表2024-505434断熱多層シート、製作の方法、及びそれを使用する物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】断熱多層シート、製作の方法、及びそれを使用する物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/14 20060101AFI20240130BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240130BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240130BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 50/229 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/231 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240130BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240130BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 50/122 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/222 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20240130BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20240130BHJP
   H01M 10/627 20140101ALN20240130BHJP
【FI】
B32B25/14
B32B7/027
B32B5/18
B32B27/18 B
H01M50/229
H01M50/231
H01M10/658
H01M50/209
H01M50/211
H01M50/213
H01M50/204 401F
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/126
H01M50/103
H01M50/105
H01M50/107
F16L59/02
H01M50/122
H01M50/222
H01M50/227
H01M10/625
H01M10/627
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543014
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022011533
(87)【国際公開番号】W WO2022155056
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,838
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ダブリュー・クリスティ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・エー・マズィク
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
5H011
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB18
3H036AC03
3H036AD09
4F100AA19A
4F100AA19C
4F100AA19H
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AK52A
4F100AK52C
4F100AK75B
4F100AL09B
4F100AN02B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA08A
4F100CA08C
4F100CB10D
4F100CB10G
4F100DJ01A
4F100DJ01C
4F100EC182
4F100EC18G
4F100GB90
4F100JJ02
4F100JJ07
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5H011AA13
5H011CC02
5H011CC05
5H031CC02
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS02
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT02
5H040AT04
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN00
5H040NN01
(57)【要約】
熱暴走を防止するための断熱多層シートは、第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;
障壁層の第1の表面に配置された可撓性発泡体層;
及び難燃剤成分を含み、ここで、難燃剤成分は、可撓性発泡体層内に分布するか、可撓性発泡体層の表面と接触するか、又はその両方である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;
前記障壁層の前記第1の表面に配置された可撓性発泡体層;及び
難燃剤成分を含み、
前記難燃剤成分は、
前記可撓性発泡体層内に分布するか、
前記可撓性発泡体層の表面と接触するか、
又はその両方である、
バッテリーの熱暴走を防止するための断熱多層シート。
【請求項2】
前記非多孔性エラストマー障壁層の前記第2の表面に配置された追加の可撓性発泡体層を更に含む、請求項1に記載の断熱多層シート。
【請求項3】
前記非多孔性エラストマー障壁層が、
それぞれ25℃及び1気圧で測定して20g-mm/m・日未満、若しくは10g-mm/m・日未満、若しくは5g-mm/m・日未満の水の透過係数;
ASTM 412に従って21℃で測定して0.5~15メガパスカルの100%伸びでの引張応力;又は
それらの組み合わせ
を有するエラストマーを含む、請求項1又は請求項2に記載の断熱多層シート。
【請求項4】
前記非多孔性エラストマー障壁層が、0.25~1ミリメートル又は0.4~0.8ミリメートルの厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項5】
前記非多孔性エラストマー障壁層が、アクリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン-アクリルゴム、エチレン-ブチルアクリルゴム、エチレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、エチレン-酢酸ビニル、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリオレフィンゴム、ポリイソプレン、ポリスルフィドゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、フッ素化シリコーンゴム、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、ビニルゴム、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項6】
前記非多孔性エラストマー障壁層が、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、ポリクロロプレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項7】
各可撓性発泡体層が独立して、
ASTM D3574-17に従ってそれぞれ25%のたわみで求めて、0.2~125ポンド毎平方インチ(1~862キロパスカル)、若しくは0.25~20ポンド毎平方インチ(1.7~138キロパスカル)、若しくは0.5~10ポンド毎平方インチ(3.4~68.90.5キロパスカル)の圧縮力たわみ;
ASTM D 3574-95試験Dに従って70℃で求めて、0~15%、若しくは0~10%、若しくは0~5%の圧縮永久歪;
5~65ポンド/立方フィート(80~1,041キログラム/立方メートル)、若しくは6~20ポンド/立方フィート(96~320キログラム/立方メートル)、若しくは8~15ポンド/立方フィート(128~240キログラム/立方メートル)の密度;又は
それらの組み合わせ
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項8】
各可撓性発泡体層が独立して、0.1~5ミリメートル、又は1~3ミリメートル、又は1.5~2.5ミリメートルの厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項9】
各可撓性発泡体層が独立して、シリコーン、ポリウレタン、エアロゲル、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸ブチル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項10】
各可撓性発泡体層が独立して強化用材料を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項11】
前記強化用材料が、
カーボンブラック、ガラス、ガラス微小球体、リグニン、微粒子金属酸化物、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、雲母、石英、シリカ、タルク、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、若しくはそれらの組み合わせを含む、強化用微粒子材料;
強化用繊維材料であって、前記強化用繊維材料の繊維が、ポリエステル、酸化ポリアクリロニトリル、炭素、シリカ、ポリアラミド、ポリカルボナート、ポリオレフィン、レーヨン、ナイロン、ガラス繊維、高密度ポリオレフィン、セラミック、アクリル樹脂、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、若しくはそれらの組み合わせを含む、強化用繊維材料;又は
前記強化用微粒子材料及び前記強化用繊維材料の組み合わせである、請求項9に記載の断熱多層シート。
【請求項12】
前記難燃剤成分が可撓性発泡体層の細孔内の微粒子である、請求項1から11のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項13】
前記難燃剤成分が、前記可撓性発泡体層の表面と接触する難燃剤層である、請求項1から12のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項14】
前記難燃剤層が、0.1~2ミリメートル、0.5~1.5ミリメートル、又は0.8~1.1ミリメートルの厚さを有する、請求項13に記載の断熱多層シート。
【請求項15】
前記難燃剤層が、水酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、ベーマイト、水酸化マグネシウム、膨張性材料、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13又は14に記載の断熱多層シート。
【請求項16】
前記難燃剤層が、チャー形成剤、好ましくはポリリン酸アンモニウム、ベーマイト、セルロース、粘土ナノ複合材、シアヌラート、膨張可能なグラファイト、ハント石、水苦土石、リグニン、リグノスルホナート、メラミン、ナノシリカ、ペンタエリトリトール、ホウ酸亜鉛、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項17】
前記難燃剤層が、ポリマー結合剤、好ましくはシリコーン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸ブチル、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項18】
前記難燃剤成分が前記可撓性発泡体層のマトリックス内に分布し、前記難燃剤成分が、
アルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物、又はホウ酸亜鉛、
好ましくはアルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛の少なくとも2つを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項19】
前記可撓性発泡体層の前記マトリックス内に分布した前記難燃剤成分が、有機系難燃剤を更に含む、請求項18に記載の断熱多層シート。
【請求項20】
23℃で0.01~0.09ワット/メートルケルビンの熱伝導率;
0.2~30ミリメートル、又は0.2~20ミリメートル、又は0.2~15ミリメートル、又は0.2~10ミリメートル、又は0.5~10ミリメートル、又は0.5~8ミリメートル、又は1~6ミリメートルの厚さ;
6~30ポンド/立方フィート(96~481キログラム/立方メートル)、10~25ポンド/立方フィート(160~400キログラム/立方メートル)、又は15~20ポンド/立方フィート(240~320キログラム/立方メートル)の密度;又は
それらの組み合わせ
を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【請求項21】
電気化学セルであって、前記電気化学セルの表面の少なくとも一部に配置された、請求項1から20のいずれか一項に記載の断熱多層シートを含む、電気化学セル。
【請求項22】
前記断熱多層シートが前記電気化学セルの少なくとも2つの表面に配置される、請求項21に記載の電気化学セル。
【請求項23】
プリズムセル、パウチセル、又は円筒状セル、好ましくはパウチセルを含む、請求項21又は22に記載の電気化学セル。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか一項に記載の電気化学セルの少なくとも2つを含む、非接続アレイ。
【請求項25】
請求項21から23のいずれか一項に記載の電気化学セル又は請求項24に記載の非接続アレイを含む、バッテリー。
【請求項26】
前記電気化学セル又は前記非接続アレイを少なくとも部分的に包むバッテリーケースを更に含む、請求項25に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月15日に出願された米国特許出願第63/137,838号の利益を主張し、これはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、バッテリーに使用するための、特にバッテリーにおいて熱暴走を遅延させる又は防止するのに使用するための断熱多層シートを対象とする。本出願は、更に断熱多層シート、バッテリーコンポーネント及び断熱多層シートを含むバッテリーの製作の方法を対象とする。
【0003】
リチウムイオンバッテリー等の電気化学エネルギー貯蔵装置に対する需要は、電気自動車及び送電網エネルギー貯蔵システム等の用途、並びに、電動バイク、無停電バッテリーシステム、及び鉛酸蓄電池の代替品等の他のマルチセルバッテリー用途の成長により絶えず増加している。それらの使用が増加することにより、熱管理の方法が所望される。送電網貯蔵及び電気自動車等の大規模方式の用途としては、直列及び並列アレイに接続した多数の電気化学セルがしばしば使用されるが、これは熱暴走を引き起こす恐れがある。セルが熱暴走モードになると、セルによって生成された熱が隣接セルの熱暴走伝播反応を誘発し得て、バッテリー全体を発火させ得るカスケード効果を引き起こす可能性がある。
【0004】
バッテリーの熱暴走を低減する試みが検討されてきたが、その多くは欠点を有する。例えば、難燃性添加剤を添加すること、又は本質的に不燃性の電解質を使用することによって電解質を改質することが検討されてきたが、これらの手法は、リチウムイオンセルの電気化学的性能に悪影響を与える可能性がある。熱管理のため又はカスケード的熱暴走を防止するための他の手法は、セル間又はセル群間の絶縁材量を増やして、熱事象発生時の熱移動量を低減させることを含む。しかしながら、これらの手法は、達成可能なエネルギー密度の上限を制限する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱管理が改善され又は熱暴走のリスクが低減されたバッテリーに対する需要の増加に伴い、それに応じて、周囲のセルへの熱、エネルギー又はその両方の広がりを防止する又は遅延させるバッテリーに使用するための方法及びコンポーネントに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様において、熱暴走を防止するための断熱多層シートは、第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;障壁層の第1の表面に配置された可撓性発泡体層;及び難燃剤成分を含み、ここで、難燃剤成分は可撓性発泡体層内に分布するか、可撓性発泡体層の表面と接触するか、又はその両方である。
【0007】
上記の断熱多層シートを含む電気化学セル、非接続のアレイ及びバッテリーもまた記載される。
【0008】
上記及び他の特徴は、以下の図、詳細な記載、実施例及び請求項によって例示される。
【0009】
下記は図面の簡単な説明であり、本明細書において開示される例示の実施形態を説明する目的で提示されるが、それを限定する目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】パウチセルの外側に接着された断熱多層シートを含むパウチセルを示す模式図である。
図1B】電気化学セル及び断熱多層シートの別の態様の模式図である。
図2】2つのセル間に位置する断熱多層シートの態様を示す図である。
図3】2つのセル間に位置する断熱多層シートの態様を示す図である。
図4】セルアレイ間に位置する断熱多層シートの態様を示す図である。
図5】断熱多層シートを含むバッテリーの態様を示す図である。
図6】可撓性発泡体層内に分布した難燃剤成分の態様を示す模式的断面図である。
図7】ホットプレート試験用設備の模式図である。
図8】実施例1~3のシミュレートした熱暴走試験の結果を示す温度(℃)対時間(分(min))のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
バッテリー、殊に多数の電気化学セルを含むバッテリーでの熱暴走の防止は難問であるが、それは、熱暴走を経験するセルに隣接したセルが、その設計された作動温度を超える原因となるのに十分なエネルギーをその事象から吸収することができ、隣接セルもまた熱暴走に突入する引き金を引くからである。熱暴走事象を開始するこの伝播によって、セルがカスケード的に一連の熱暴走に突入するという連鎖反応を引き起こし、セルが隣接セルを発火させる可能性がある。そのようなカスケード的熱暴走事象が起こるのを防止するために、断熱多層シートを使用することができる。しかしながら、非常に薄い多層シート、例えば30ミリメートル(mm)以下、又は20mm以下、又は15mm以下、又は10mm以下、又は8mm以下、又は6mm以下の総厚さを有するシートにおいて効果的な熱暴走性を達成することは特に困難であった。薄い多層シートは、物品サイズ及び質量を低減し、材料を節約するためにますます所望される。
【0012】
バッテリーの熱暴走を防止するための断熱多層シートは、第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;障壁層の第1の表面に配置された可撓性発泡体層;及び難燃剤成分を含み、ここで、難燃剤成分は、可撓性発泡体層内に分布するか、可撓性発泡体層の表面と接触するか、又はその両方である。予想外にも、水蒸気透過が低い固体非多孔性エラストマー障壁層の使用が、殊に非常に薄い、すなわち30mm以下、又は20mm以下、又は15mm以下、又は10mm以下、又は8mm以下、又は6mm以下であり、良好な断熱性を有する多層シートの製作に有用であることが分かった。断熱多層シートは、追加の有利な性質、例えば良好な穴あけ耐性を有することができる。断熱多層シートは多数の加熱及び冷却サイクルにかけられ、なお、良好な断熱性を提供することができる。断熱多層シートは、電気化学セル及びバッテリーに圧力管理を更に提供することができる。断熱多層シートによって得られる熱障壁は、熱暴走を防止するためにバッテリーにおいて様々な部位に使用することができる。断熱多層シートは、更にバッテリーの耐炎性を改善することができる。
【0013】
断熱多層シートは、23℃で0.01~0.09ワット/メートルケルビン(W/m*K)の熱伝導率;0.2~30mm、又は0.2~20mm、又は0.2~15mm、又は0.2~10mm、又は0.5~10mm、又は0.5~8mm、又は1~6mmの厚さ;又は6~30ポンド/立方フィート(lb/ft)(96~481キログラム/立方メートル(kg/m))、10~25lb/ft(160~400kg/m)、又は15~20lb/ft(240~320kg/m)の密度;又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0014】
図1に図示されるように、断熱多層シート100は、前もって形成されたバッテリーセルの外表面、例えばパウチセル200の外表面に直接に設置又は接着することができる。示すように、非多孔性エラストマー障壁層10はパウチセル200に配置され、可撓性発泡体層22は非多孔性エラストマー障壁層10に配置され、難燃剤成分は、可撓性発泡体層22の表面と接触する難燃剤層24である。好ましくは、エラストマー障壁層10は単純に、発泡体の輪郭に沿う発泡体の表面に接着されたコーティングではなく、平滑な外側表面を与えるのに十分な厚さを有する。
【0015】
図1に示される態様において、難燃剤層24は可撓性発泡体層22の外側表面と接触する。代替として又はその上に、難燃剤層は、可撓性発泡体層内の細孔の内側表面と接触することができる。例えば、難燃剤層24は、可撓性発泡体層22の表面に塗工することができる。そのようなコーティングは、難燃剤層で充填され(すなわち、完全に含浸され)、又は難燃剤層で部分的に塗工された細孔をもたらすことができる。好ましくは、細孔の内側表面は、圧力管理を提供するように空の細孔体積を維持するのに効果的な難燃剤成分の量で塗工される。態様において、細孔の一部は難燃剤層での充填を完了することができる。別の態様において、難燃剤層は、細孔の一部のみの内側表面、例えば、難燃剤層24と隣接する細孔の一部と接触する。前述の態様において、難燃剤層は連続であっても又は不連続であってもよい。好ましくは、難燃剤層は連続であり、可撓性発泡体層22の少なくとも外側表面に存在する。
【0016】
断熱多層シート100は接着剤層によってパウチセル200に結合することができる。更に図1Aに示すように、接着剤層30はパウチセルと非多孔性エラストマー障壁層10の間に配置される。態様において、接着剤は存在せず、可撓性発泡体層は、セル、例えばパウチセル200に直接に配置することができる。場合によって、1つ又は複数の接着剤層を個々の各層間に配置することができる。多数の接着剤層が存在することができる。これらの層のそれぞれは、更に詳細に以下に説明される。
【0017】
理論によって束縛されることはないが、優れた結果は協調して働く異なるメカニズムにより得られると考えられる。第1に、可撓性発泡体及び難燃剤層のそれぞれは、熱伝導に対する障壁を提供する。熱は、難燃剤層の熱容量及び難燃剤層からの水蒸気生成の熱により更に吸収される。しかし、水蒸気生成は可撓性発泡体層を通して熱対流の増加をもたらす。非多孔性エラストマー障壁層は水蒸気及び高温ガスを遮断し、それによって、断熱多層シートに改善された耐熱性を提供する。特に、断熱多層シートの熱した表面に生成された水蒸気は、非多孔性エラストマー障壁層によって閉じ込められる。
【0018】
態様において、複数の非多孔性エラストマー障壁層、可撓性発泡体層又は難燃剤層が存在することができる。例えば、図1Bは、非多孔性エラストマー障壁層10に配置された第1の可撓性発泡体層22aに直接配置された第1の難燃剤層24aを示す。更に第2の難燃剤層24bは、第1の可撓性発泡体層22a及び第1の難燃剤層24aと反対の非多孔性エラストマー障壁層10に配置された第2の可撓性発泡体層22bに直接配置される。断熱多層シート102はセル202に配置される。各可撓性発泡体層及び各難燃剤層は、同じであっても異なっていてもよい。やはり、1つ又は複数の接着剤層が、各層間、又は層と電気化学セルの間に存在することができる。他の態様におけるように、1つ又は複数の接着剤層は、任意の2つの層の間、又は層と電気化学セルの間に存在することができる。
【0019】
図2は、マルチセル配列1000において断熱多層シートの位置決めの非限定的な例を図示する。図3は、マルチセル配列2000において断熱多層シートの位置決めの非限定的な例を図示し、図4は、マルチセル配列3000において断熱多層シートの位置決めの非限定的な例を図示する。図2及び図3は、第1のセル300と第2のセル400の間に断熱多層シート100が位置することができることを図示する。図2は、断熱多層シート100が、セル300及び400の高さ及び幅とほぼ同じサイズであり得ることを図示する。図3は、断熱多層シート100がそれぞれのセル300及び400より小さくなり得ることを図示する。
【0020】
図4は、マルチセル配列3000が2つのセル(例えば300、400)より多くを含むことができ、断熱多層シート100がそれぞれのセル300、400の間に位置することを図示する。セルはリチウムイオン電池、特にパウチセルであってもよい。
【0021】
態様において、2~10の耐火性断熱多層シートをセルの製作時に、セルに/セル内に配置することができる。例えば、2~10の断熱多層シートを、バッテリーの内部に、例えば電極に面して、又はバッテリーの外部に、バッテリーの外側に面して配置することができる。例えば、2~10の耐火性断熱多層シートを、パウチセルに配置する(接着剤は外に面する)か、又はパウチセルに接着するか、又はその両方が可能である。態様において、図5に図示されるように、断熱多層シート100はバッテリー4000において、圧力又は熱の管理を提供することができる。例えば、バッテリー4000は、ハウジング又はセル担体600の内側に複数の非接続アレイ500を含むことができる。本明細書において使用される場合、語句「非接続アレイ」とは、バッテリーの端子に接続されていないセルの群を指す。断熱多層シート100は、非接続アレイの個々のセル間に設置することができる。断熱多層シート100は、バッテリー4000の非接続アレイ500、その一部、又は非接続アレイの選択されたセルの側の、上部、中間、下に、隣接して、又はそれらを組み合わせて、設置、接着することができ、又はそれらを組み合わせることができる。断熱多層シート100は、バッテリー4000、各セル又は非接続アレイの一部、又はセルの選択された一組又は非接続アレイの下に設置、接着することができ、又はそれらを組み合わせることができる。前面又は裏面を含む、1つ又は複数の側への配置又は接着もまた可能である。やはり、断熱多層シート100は、1つ又は複数の側の一部又は全体に設置、接着することができ、又はそれらを組み合わせることができる。
【0022】
態様において、バッテリーは、1つ又は複数のセル又は非接続アレイを収容するバッテリーケースを含む。断熱多層シートは、バッテリーの個々のセル又は非接続アレイの間に設置することができる。断熱多層シートは、バッテリーのセル又は非接続アレイの側、その一部、又はバッテリーのセルの選択された一組又は非接続アレイの側の、上部、中間、下に、隣接して、又はそれらを組み合わせて設置することができる。断熱多層シートは、例えば、接着剤が露出していない状態で、複数のパウチセル、圧力管理パッド、冷却プレート、又は他の内部のバッテリーコンポーネントに設置又は接着することができる。バッテリーの組立圧力によって、積層されたコンポーネントを所定の位置に保持することができる。
【0023】
断熱多層シートは、非接続アレイ、すなわち複数の電気化学セルを含むバッテリーに使用することができる。セルはプリズムセル、パウチセル、円筒セル等を含む。
【0024】
断熱多層シート100の個々の層及び成分が次に説明される。
【0025】
非多孔性エラストマー障壁層
非多孔性エラストマー障壁層は、特に非常に薄い多層構造において熱暴走を遅延させる又は防止するように構成される。非多孔性エラストマー障壁層は、25℃及び1気圧でそれぞれ測定して、20g-mm/m・日未満又は10g-mm/m・日未満、又は5g-mm/m・日未満の水の透過係数;又はASTM 412に従って21℃で測定して0.5~15メガパスカルの100%伸びでの引張応力;又はそれらの組み合わせを有するエラストマーを含む。非多孔性エラストマー障壁層は、0.25~1mm又は0.4~0.8mmの厚さを有することができる。
【0026】
非多孔性エラストマー障壁層は、水又は水蒸気透過を防止するために疎水性であるエラストマー材料を含むことができる。例えば、エラストマー障壁層は、それが好ましい疎水性(水又は水蒸気透過の欠如)を有することを条件として、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むことができる。TPEのクラスは、スチレンブロックコポリマー(TPS又はTPE-s)、(TPO又はTPE-o)、熱可塑性加硫物(TPV又はTPE-v)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル(TPC又はTPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPA又はTPE-A)他を含む。
【0027】
好ましい疎水性(水又は水蒸気透過の欠如)を有することができるエラストマー材料の特定の例としては、アクリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、コポリエステル、エピクロロヒドリンゴム、エチレン-アクリルゴム、エチレン-ブチルアクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等のエチレン-ジエンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM)、エチレン-酢酸ビニル、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリオレフィンゴム、ポリイソプレン、ポリスルフィドゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、シリコーンゴム、フッ素化シリコーンゴム、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、ビニルゴム又はそれらの組み合わせを含む。態様において、障壁層は、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、ポリクロロプレン又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
可撓性発泡体層
可撓性発泡体層は圧力管理を提供し、セルの膨張を可能にする低密度気泡体であってもよい。可撓性発泡体層はまた、良好な圧縮永久歪耐性及び最小限の応力緩和、好ましくは10%未満の圧縮及び50%を超える力保持を有することができる。可撓性発泡体層は熱伝導性であってもよい。例えば、可撓性発泡体層は、低い熱伝導度(Tc)、例えば23℃で0.01~0.5W/m*K、又は23℃で0.01~0.09W/m*KのTcを有することができる。可撓性発泡体層はポリマー発泡体又は可撓性エアロゲルであってもよい。
【0029】
態様において、各可撓性発泡体層は、独立してASTM D3574-17に従ってそれぞれ25%のたわみで求めて0.2~125ポンド毎平方インチ(psi)(1~862キロパスカル(kPa))、若しくは0.25~20psi(1.7~138kPa)、若しくは0.5~10psi(3.4~68.90.5kPa)の圧縮力たわみ;ASTM D 3574-95試験Dに従って70℃で求めて0~15%、若しくは0~10%、若しくは0~5%の圧縮永久歪;又は5~65lb/ft(80~1,041kg/m)、若しくは6~20lb/ft(96~320kg/m)、若しくは8~15lb/ft(128~240kg/m)の密度を有する。
【0030】
各可撓性発泡体層は、独立して0.1~5mm、1~3mm又は1.5~2.5mmの厚さを有することができる。各可撓性発泡体層は、独立してシリコーン、ポリウレタン、エアロゲル、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル(EBA)又はそれらの組み合わせであってもよい。例示の可撓性発泡体層は、ポリウレタン発泡体又はシリコーン発泡体等のポリマー発泡体、又は酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、EPM(エチレン-プロピレンゴム)又はEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンモノマー)ゴム等のエラストマーポリマーを含むことができる。例えば、可撓性発泡体層は、例えば、広範囲の温度にわたって信頼できる圧縮永久歪耐性(c-セット)及び応力緩和性能を有する、PORON(登録商標)ポリウレタン発泡体又はBISCO(登録商標)シリコーン発泡体を含むことができる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「発泡体」とは、永続的な、例えば熱硬化性気泡構造を有する材料を指す。発泡体は、剛性とは対照的に可撓性である。可撓性発泡体層で使用される例示の発泡体は、65lb/ft(1,041kg/m)未満、好ましくは55lb/ft(881kg/m)と等しいか又はそれ未満、より好ましくは25lb/ft(400kg/m)と等しいか又はそれ未満の密度、ポリマー発泡体の全体積に対して、少なくとも5~99%、好ましくは30%と等しいか又はそれを超える空隙体積含有率、又はそれらの組み合わせを有する。態様において、発泡体は、5~30lb/ft(80~481kg/m)の密度を有する。
【0032】
発泡体として使用されるポリマーは、種々様々の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂のブレンド、又は熱硬化性樹脂の1つ又は複数であってもよい。使用することができる熱可塑性樹脂の例としては、ポリアセタール、ポリアクリル、スチレン-アクリロニトリル、ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリカルボナート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート及びポリブチレンテレフタラート等のエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11又はナイロン12等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーラート、ポリウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等を含む。
【0033】
ポリマー発泡体において使用することができる熱可塑性ポリマーのブレンドの例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン/ナイロン、ポリカルボナート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリカルボナート/熱可塑性ウレタン、ポリカルボナート/ポリエチレンテレフタラート、ポリカルボナート/ポリブチレンテレフタラート、熱可塑性エラストマーアロイ、ポリエチレンテレフタラート/ポリブチレンテレフタラート、スチレン-マレイン酸無水物/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタール、エチレンプロピレンゴム(EPR)等又はそれらの組み合わせを含む。
【0034】
ポリマー発泡体において使用することができるポリマー状熱硬化性樹脂の例としては、ポリウレタン、エポキシ、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン等、又はそれらの組み合わせを含む。熱硬化性樹脂のブレンド、並びに熱硬化性樹脂との熱可塑性樹脂のブレンドも使用することができる。
【0035】
ポリシロキサンポリマーを含むシリコーン発泡体も使用することができる。態様において、シリコーン発泡体は、ポリシロキサンポリマー前駆体組成物中の水とヒドリド基の間の反応の結果として、その後の水素ガスの遊離を伴って生成する。この反応は、貴金属、好ましくは白金触媒によって触媒することができる。態様において、ポリシロキサンポリマーは、25℃で100~1,000,000ポイズの粘度を有し、ヒドリド、メチル、エチル、プロピル、ビニル、フェニル及びトリフルオロプロピル等の鎖置換基を有する。ポリシロキサンポリマーの末端基は、ヒドリド、ヒドロキシル、ビニル、ビニルジオルガノシロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アリル、オキシム、アミノキシ、イソプロペンオキシ、エポキシ、メルカプト基、又は他の反応性末端基であってもよい。シリコーン発泡体はまた、組み合わせた粘度が所定値内にある限り、それぞれ異なる分子量(例えば二峰性又は三峰性の分子量分布)を有する数種のポリシロキサンポリマーの使用により製造することができる。また、所望の発泡体を生成するために、異なる官能性又は反応性基を含む数種のポリシロキサンベースポリマーを有することも可能である。態様において、ポリシロキサンポリマーは、水1モル当たり0.2モルのヒドリド(Si--H)基を含む。
【0036】
使用されるポリシロキサンポリマーの化学作用に依存して、触媒、例えば白金、白金含有触媒を、発泡及び硬化反応を触媒するために使用することができる。触媒は、シリカゲル、アルミナ又はカーボンブラック等の不活性担体上に堆積することができる。態様において、非担持触媒は、塩化白金酸、その六水和物形態、そのアルカリ金属塩であってもよく、有機誘導体とのその錯体が使用される。
【0037】
ある種のエアロゲルは可撓性発泡体層として使用することができる。エアロゲルは、50体積パーセント(vol%)を超え、より好ましくは90vol%を超える空隙率を有する相互連結したナノ構造体の網目を含む連続気泡型固体マトリックスである。エアロゲルは、ゲル中の液体成分をガスに置き換えることによって、又は含湿ゲルの乾燥によって、例えば、超臨界的乾燥によって、ゲルに由来することができる。例示のエアロゲルは、ポリマーエアロゲル、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリイミド、レゾルシノールホルムアルデヒドポリマー、ポリイソシアナート、エポキシ及びポリアクリルアミドエアロゲル;キチン及びキトサンのエアロゲルを含むポリサッカライドエアロゲル;及び無機エアロゲル、例えば炭素(例えばグラフェン)エアロゲル、セラミックエアロゲル(例えば窒化ホウ素エアロゲル)、及び金属酸化物及びメタロイド酸化物エアロゲル(例えば酸化アルミニウム、酸化バナジウム及びシリカエアロゲル)を含む。前述の材料の組み合わせ、例えば、有機ジイソシアナートによって架橋されたシリカエアロゲルを使用することができる。
【0038】
エアロゲルは、ASTM D3574-17に従ってそれぞれ25%のたわみで求めて、0.2~150psi(1.4~1,034kPa)、好ましくは2~25psi(13.8~172kPa)の圧縮力たわみを有することができる。エアロゲルの密度は、1~20lb/ft(16~320kg/m)、好ましくは2~15lb/ft(32~240kg/m)、より好ましくは2~10lb/ft(32~160kg/m)であってもよい。エアロゲルの厚さは、0.5~10mm、好ましくは1~6mm、より好ましくは1~3mmであってもよい。
【0039】
態様において、エアロゲルは、強化用繊維を含むシリカエアロゲルであってもよい。強化用繊維は、ポリエステル、酸化ポリアクリロニトリル、炭素、シリカ、ポリアラミド、ポリカルボナート、ポリオレフィン、レーヨン、ナイロン、ガラス繊維、高密度ポリオレフィン、セラミック、アクリル樹脂、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0040】
任意選択の添加剤は、エラストマーポリマー、ポリマー発泡体又はエアロゲル中に存在することができる。例えば、添加剤は、強化用微粒子材料又は強化用繊維材料等の強化用材料を含むことができる。例示の強化用微粒子材料は、リグニン、カーボンブラック、タルク、雲母、シリカ、石英、金属酸化物、ガラス微小球体、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、置換多面体オリゴマーシルセスキオキサン又はそれらの組み合わせを含む。例示の強化用繊維材料は、強化用繊維材料の繊維がポリエステル、酸化ポリアクリロニトリル、炭素、シリカ、ポリアラミド、ポリカルボナート、ポリオレフィン、レーヨン、ナイロン、ガラス繊維、高密度ポリオレフィン、セラミック、アクリル樹脂、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド又はそれらの組み合わせを含む繊維材料を含み、ここで、繊維は織布マット又は不織布マット等の任意の形態であってもよい。強化用微粒子材料及び強化用繊維材料の組み合わせを使用することができる。添加剤は、充填剤(例えば炭酸カルシウム又は粘土)、染料、顔料(例えば二酸化チタン又は酸化鉄)、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、紫外線安定剤、熱伝導性微粒子材料(例えば窒化ホウ素又はアルミナ)、又は導電性充填剤(例えば、微粒子導電性ポリマー)を含むことができる。添加剤の組み合わせを使用することができる。
【0041】
例示のガラス繊維は、織布であっても、フェルト等の不織布であってもよい。ガラス繊維は例えば、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維、Lガラス繊維、石英繊維又はそれらの組み合わせを含むことができる。ガラス繊維は、例えば0.005~10mm、0.05~5mm、0.25~3mm、0.005~0.05mm、0.05~0.5mm、0.5~3mm、0.25~10mm、0.5~5mm又は1~3mmの厚さを有することができる。ガラス繊維は、場合によって、熱硬化性又は熱可塑性ポリマーで含浸又は塗工することができる。例示の熱硬化性ポリマーはエポキシ、ポリエステル及びビニルエステルを含む。
【0042】
例示の微小球体は、セノスフィア、ガラス微小球体、例えばホウケイ酸塩微小球体又はそれらの組み合わせを含む。微小球体は、300マイクロメートル未満(μm)、例えば15~200μm又は20~100μmの平均径を有する中空球体である。中空微小球体の密度は、0.1グラム/立方センチメートル(g/cc)以上、例えば、0.2~0.6g/cc、又は0.3~0.5g/ccの範囲であってもよい。
【0043】
中空微小球体は、例えばTrelleborg Offshore社(Boston)(以前のEmerson and Cuming, Inc.社)、W.R. Grace and Company社(Canton, MA)及び3M Company社(St. Paul, MN)からの幾つかの商用供給源から入手可能である。そのような中空微小球体は、マイクロバルーン、泡ガラス、微小バブル等と称され、例えば、密度、サイズ、コーティング、表面処理又はそれらの組み合わせに従って変動し得る様々な等級で販売されている。
【0044】
例えば、微小球体は、ガラスの表面に存在するヒドロキシル基と反応することができるカップリング剤を用いる処理によって化学的改質された外表面を有することができる。態様において、カップリング剤は、シラン又はエポキシ、例えば、ガラス微小球体の外表面に存在するヒドロキシル基と反応することができる基を1つの末端に、低極性を有するポリマーマトリックス中に微小球体の分散性を援助する有機基を他の末端に有するオルガノシランである。二官能性シランカップリングは、ビニル、ヒドロキシ及びアミノ基、例えば3-アミノ-プロピルトリエトキシシランから選択される基の組み合わせを有することができる。シランコーティングはまた吸水率を最小限にすることができる。
【0045】
ホウケイ酸塩微小球体はアルカリホウケイ酸ガラスから製造することができる。アルカリホウケイ酸塩の例示の酸化物組成物は76.6質量パーセント(wt%)のSiO、21.3wt%のNaO、1.9wt%のB及び0.2wt%の他の成分を含むことができる。例示のソーダライムホウケイ酸塩は、80.7wt%のSiO、6.9wt%のNaO、10.3wt%のCaO、2.1wt%のB及び1.9wt%の不純物を含むことができる。したがって、組成物(ほとんどがSiOであり、少なくとも1パーセントのBを含むが)は、出発材料に応じて、ある程度まで変動することができる。
【0046】
微小球体のサイズ及びそれらの粒度分布は変動することができる。例示の態様において、ホウケイ酸塩微小球体は、20~100μm、例えば20~75μm、25~70μm、30~65μm、35~60μm、又は40~55μmの平均粒子径を示す。粒度分布は二峰性又は三峰性等であってもよい。
【0047】
強化用微粒子材料は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(一般に「POSS」と称され、本明細書において「シルセスキオキサン」とも称される)、置換多面体オリゴマーシルセスキオキサン、又はそれらの組み合わせを含むことができる。シルセスキオキサンの包含によって、酸化環境において可撓性発泡体層の耐久性を改善する付加利益を有することができる。シルセスキオキサンは、表面に反応性官能基を有することができるシリカコアを含むナノサイズの無機材料である。シルセスキオキサンは、頂点にケイ素原子及び相互連結する酸素原子を含む立方体又は立方体状構造を有することができる。ケイ素原子のそれぞれは、共有結合でペンダントR基に結合することができる。式(I)(RSi12)のシルセスキオキサンは、8個のペンダントR基を含むコアのまわりにケイ素及び酸素原子のケージを含む。
【0048】
【化1】
【0049】
シルセスキオキサンは置換されていても置換されていなくてもよく、そうして、各R基は、独立して水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基又はアルケニル基であってもよく、ここで、R基は1~12の炭素原子及び1個又は複数のヘテロ原子(例えば酸素、窒素、リン、ケイ素又はハロゲンの少なくとも1つ)を含むことができる。各R基は、独立してアルコール、エポキシ基、エステル、アミン、ケトン、エーテル、ハロゲン化物又はそれらの組み合わせの少なくとも1つ等の1個又は複数の反応性基を含むことができる。各R基は、独立してシラノール、アルコキシド又は塩化物の少なくとも1つを含むことができる。シルセスキオキサンの一例はオクタ(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンである。
【0050】
可撓性発泡体層、例えばシリコーン可撓性発泡体層は、溶媒、例えば水中に、24時間等の期間、シリコーン可撓性発泡体層へ水を吸い込むように浸漬することができる。液体水の大きい熱容量は、可撓性発泡体層の一方の表面から可撓性発泡体層の他方の表面への伝熱を著しく遅延させることに寄与することができる。
【0051】
難燃剤成分
難燃剤成分は、更に以下に記載されるような膨張性材料、例えばベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃性無機材料、又はそれらの組み合わせを含むことができる。上記のように、難燃剤成分は、可撓性発泡体の表面と接触する難燃剤層として存在することができる。特に可撓性発泡体層の外側表面と接触する場合、各難燃剤層は、0.1~2mm、0.5~1.5mm、又は0.8~1.1mmの厚さを有することができる。細孔の内側表面と接触する難燃剤層はより薄く、例えば0.01~1mm、0.01~0.8mm、又は0.01~0.8mmであってもよい。
【0052】
代替として、又はその上に、難燃剤成分は、可撓性発泡体層自体のマトリックス内に分布した難燃性材料であってもよい。図6は、可撓性発泡体層12のマトリックス内に分布した難燃剤成分の態様を例示する。可撓性発泡体層12は、第1の外側表面14及び反対の第2の外側表面16を有する。平坦なものとして示されているが、外側表面の1つ若しくは両方又はすべての輪郭は、電気化学セルの表面とぴったり合わせることができる。
【0053】
可撓性発泡体層12は更に複数の細孔18を含む。細孔は、ポリマー発泡体マトリックスにおいて細孔の内側表面20によって画定される。細孔は相互連結するか又は離散的であってもよい。相互連結細孔と離散的細孔の組み合わせが存在することができる。細孔は、全体としてシート内に含むことができ、又は、細孔の少なくとも一部は開き、周辺環境との連絡を可能にし得る。態様において、細孔の少なくとも一部は相互連結し、細孔の少なくとも一部は開き、第1の外側表面14から反対の第2の外側表面16への、空気、水、水蒸気等の通過を可能にし、これは、本明細書において「連続気泡型発泡体」と称される。別の態様において、細孔は、相互連結せず、一方の外側表面から他方の外側表面へ空気、水、水蒸気等の通過を可能にしない。
【0054】
更に図6を参照して、難燃剤成分は、可撓性発泡体層12のマトリックス内に分布した2種以上の異なる難燃剤成分23、25を含むことができる。難燃剤成分は、基本的に一様に、又は傾斜して、例えば第1の外側表面14から第2の外側表面16の方向に増加して分布することができる。図6に示すように、難燃剤成分は、微粒子形態の可撓性発泡体層マトリックス内に分布することができる。微粒子形態の難燃剤成分は、それらの製作中に可撓性発泡体層へ容易な組み込みを可能にすることができる。
【0055】
代替として、又はその上に、微粒子形態の難燃剤成分は、可撓性発泡体層の細孔内に存在することができる。可撓性発泡体層中の細孔の数の一部は、微粒子難燃剤成分を含むことができ、もしくは、細孔の基本的にすべて、又はすべては微粒子難燃剤成分を含むことができる。微粒子難燃剤成分を含む各細孔は、独立して、部分的に充填するか、基本的に完全に充填するか、又は完全に充填することができる。微粒子難燃剤粒子が細孔の直径に比較して大きい態様において、又は、細孔が複数のより小さな粒子で基本的に又は完全に充填される態様において、細孔内の難燃剤粒子の動きを限定することができる。この態様において、微粒子難燃剤成分は層の製作中に細孔中に位置することができ(例えば、可撓性発泡体層を形成するのに使用される組成物に微粒子難燃剤成分を含むことによって)、又は、微粒子難燃剤成分は、適切な液体担体、真空又は他の公知の方法を使用して、可撓性発泡体層の製作の後に細孔へ含浸させることができる。
【0056】
異なるタイプ、形態又は配置を含む異なる難燃剤成分の組み合わせを使用することができる。例えば、難燃剤層は、可撓性発泡体マトリックス内に分布した難燃剤微粒子材料と組み合わせて使用することができ;又は、難燃剤層は、可撓性ポリマー層の細孔内に配置された微粒子難燃剤成分と組み合わせて使用することができる。態様において、可撓性発泡体マトリックス内に分布した難燃剤微粒子材料と組み合わせて、難燃剤の膨張性層は使用される。好ましい態様において、難燃剤膨張性層は、製作の容易さのために、また可撓性ポリマー発泡体の所望の薄さ及び可撓性を維持するために単独で使用される。
【0057】
膨張性材料は、酸供給源、発泡剤及び炭素源を含むことができる。各成分は、別個の層中に、又は混合物、好ましくは緻密な混合物として存在することができる。例えば、膨張性材料は、ポリホスファート酸供給源、発泡剤及びペンタエリトリトール炭素源を含むことができる。理論によって束縛されることはないが、膨張性材料は、チャーの形成、次にチャーの膨潤を含む2つのエネルギー吸収機構を使用して、火炎の広がりを低減することができると考えられる。例えば、温度が、例えば200~280℃の値に到達すると、酸性種(例えばポリホスファート酸の)は、炭素源(例えばペンタエリトリトール)と反応してチャーを形成することができる。温度が例えば280~350℃に上昇すると、次に発泡剤が分解してチャーを膨潤させるガス状の生成物を与えることができる。
【0058】
酸供給源は、例えば、有機又は無機リン化合物、有機又は無機硫酸塩(例えば硫酸アンモニウム)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。有機又は無機リン化合物は、オルガノホスファート又はオルガノホスホナート(例えばトリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスファート、トリス(2-クロロエチル)ホスファート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスファート、トリス(l-クロロ-3-ブロモイソプロピル)ホスファート、ビス(1-クロロ-3-ブロモイソプロピル)-1-クロロ-3-ブロモイソプロピルホスホナート、ポリアミノトリアジンホスファート、メラミンホスファート、リン酸トリフェニル又はグアニル尿素ホスファート);有機亜リン酸エステル(例えば亜リン酸トリメチル、又は亜リン酸トリフェニル);ホスファゼン(例えばヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン);リン含有無機化合物(例えばリン酸、亜リン酸、ホスファイト、尿素ホスファート、リン酸アンモニウム(例えばリン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム又はポリリン酸アンモニウム));又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0059】
発泡剤は、120℃と等しいか又はそれを超える温度で、例えば120~200℃、又は130~200℃で分解する(例えばアンモニア又は二酸化炭素等のより小さな化合物へ)試剤を含むことができる。発泡剤は、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、メラミン、グアニジン、グリシン、尿素(例えば尿素ホルムアルデヒド樹脂又はメチロール化グアニル尿素ホスファート)、ハロゲン化有機材料(例えば塩素化パラフィン)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0060】
膨張性材料は、炭素源を含むことができる。可撓性発泡体層は炭素源として機能することができる。炭素源は、デキストリン(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)、ペンタエリトリトール(例えばそれらのダイマー又はトリマー)、粘土、ポリマー(例えばポリアミド6、アミノ-ポリ(イミダゾリン-アミド)又はポリウレタン)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。アミノ-ポリ(イミダゾリン-アミド)は、アミド連結基とイミダゾリン基の繰り返しを含むことができる。
【0061】
膨張性材料は、場合によって、結合剤を更に含むことができる。結合剤は、エポキシ、ポリスルフィド、ポリシロキサン、ポリシラーリレン又はそれらの組み合わせを含むことができる。結合剤は、膨張性材料の総質量に対して50wt%と等しいか若しくはそれ未満、又は5~50wt%、又は35~45wt%の量で膨張性材料中に存在することができる。結合剤は、膨張性材料の総質量に対して5~95wt%又は40~60wt%の量で膨張性材料中に存在することができる。
【0062】
膨張性材料は、膨張性材料の難燃性を更に改善するために、場合によって相乗的な化合物を含むことができる。相乗的な化合物は、ホウ素化合物(例えばホウ酸亜鉛、リン酸ホウ素又は酸化ホウ素)、ケイ素化合物、アルミノケイ酸塩、金属酸化物(例えば酸化マグネシウム、酸化鉄又は酸化アルミニウム水和物(ベーマイト))、金属塩(例えば有機スルホン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又は炭酸アルカリ土類金属塩)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。好ましい相乗的な組み合わせは、前述のものの少なくとも1つを含むリン含有化合物を含む。
【0063】
難燃剤層は、チャー形成剤、好ましくはリグニン、ベーマイト、粘土ナノ複合材、膨張可能なグラファイト、ペンタエリトリトール、セルロース、ナノシリカ、ポリリン酸アンモニウム、リグノスルホナート、メラミン、シアヌラート、ホウ酸亜鉛、ハント石、水苦土石又はそれらの組み合わせを更に含むことができる。理論によって束縛されることはないが、膨張性材料と同じように、チャー形成剤は、チャーを形成し、次にチャーを膨潤させることを含む、2つのエネルギー吸収メカニズムを使用して、火炎の広がりを低減することができると考えられる。
【0064】
難燃剤成分は、有機系難燃性化合物、例えばメラミン、トリアジン、ホスホンアミダート、リン酸アリール又はアルキル、ホスホン酸アリール又はアルキル、ホスフィン酸アリール又はアルキル、アリール又はアルキルホスフィン又はその対応するオキシド、ホスファゼン等、又はそれらの組み合わせを含むことができる。態様において、ハロゲン、例えば、臭素又は塩素を含む難燃性化合物は存在しない。難燃剤成分は、無機系難燃剤、例えば水酸化アルミニウム(本明細書において使用される場合、アルミニウム三水和物及び酸化アルミニウムの様々な水和物を含む)、ベーマイト、ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム五水和物)、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物、又はホウ酸亜鉛、好ましくは、アルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛の少なくとも2つを含むことができる。例えば、難燃剤成分は、アルミニウム三水和物及びホウ酸亜鉛;又はホウ砂及び含水ケイ酸ナトリウム;又はアルミニウム三水和物、ホウ酸亜鉛及び含水ケイ酸ナトリウム;又はホウ砂及びホウ酸亜鉛;又はホウ砂、ホウ酸亜鉛及びアルミニウム三水和物を含むことができる。
【0065】
態様において、有機系及び無機系難燃剤は難燃剤成分中に存在し、別の態様において、無機系難燃剤のみが難燃剤成分中に存在する。無機系難燃剤は一般に、粒子の形態で入手可能である。粒子は、不規則的又は規則的、例えばほぼ球状、球状又は板状の任意の形状であってもよい。重要な特徴において、大半の、基本的にすべての、又はすべての粒子は、層に平滑な表面を与えるためにそれらが位置する層又は細孔の厚さ未満の最大寸法を有する。したがって、使用される特定の直径は、粒子の位置に依存する。二、三、又はより高次の分布モードの粒子を使用することができる。例えば、難燃剤粒子が可撓性発泡体層のマトリックス内、及び可撓性発泡体層の細孔内に存在する場合、二峰性分布の粒子が存在することができる。
【0066】
上記のように、難燃剤成分、例えば膨張性材料、チャー形成剤、難燃剤(好ましくは無機系難燃剤)は、層の形態とすることができる。難燃剤層は、難燃剤成分用のポリマー結合剤を更に含むことができる。可撓性発泡体層と同じように、難燃剤層のポリマー結合剤は、例えば、シリコーン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸ブチル又はそれらの組み合わせを含むことができる。そのような材料の説明は繰り返されない。膨張性材料、チャー形成剤及び難燃剤(好ましくは無機系難燃剤)の量に対する結合剤の量は、難燃剤層の所望される特性及び層を形成するのに使用される組成物の加工性等の因子に応じて変動し得る。例えば、結合剤は、それぞれ難燃剤層を形成するのに使用される組成物の全体積に対して20~80体積パーセント(vol.%)の量、又は40~70体積%の量で存在することができる。
【0067】
態様において、難燃剤成分は、可撓性発泡体層のマトリックス内に分布することができる。可撓性発泡体層及び非多孔性エラストマー層のみを使用して所望される難燃性及び発泡体特性を達成することはより難題となり得るので、好ましくは、難燃剤成分が可撓性発泡体層のマトリックス内に分布する場合、また、上記のような難燃剤層が存在する。この態様において、難燃剤成分は、膨張性組成物、チャー形成剤、有機系難燃剤化合物、無機系難燃剤又はそれらの組み合わせ、例えば、有機系及び無機系難燃剤の組み合わせを含むことができる。代替として、可撓性発泡体層のマトリックス内に分布した難燃剤成分は、有機系難燃剤のみを含む。別の態様において、難燃剤成分は上記のような無機系難燃剤のみを含む。例えば、難燃剤成分は、本明細書において開示されるように、可撓性発泡体層内に分布したアルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛を含むことができる。
【0068】
難燃剤成分、例えばアルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物、又はホウ酸亜鉛は、発泡体形成組成物を発泡し硬化される前に可撓性発泡体層の発泡体形成組成物に組み込むことができる。難燃剤成分、例えばアルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛は、基本的に一様に、又は傾斜して、例えば、難燃剤成分が分布する可撓性発泡体層の厚さ方向に増加して分布することができる。
【0069】
膨張性材料、チャー形成剤及び難燃剤(好ましくは無機系難燃剤)の量に対する可撓性発泡体層を形成するのに使用される組成物の量は、難燃剤層の所望される特性及び層を形成するのに使用される組成物の加工性等の因子に応じて変動し得る。例えば、無機系難燃剤が存在する場合、難燃剤成分は、それぞれ、可撓性発泡体層を形成するのに使用される組成物の全体積に対して、10~90体積パーセント(vol.%)の量、又は20~80体積%の量で存在することができる。有機系難燃剤又はチャー形成剤のみが存在する場合、難燃剤成分は、それぞれ、可撓性発泡体層を形成するのに使用される組成物の全体積に対して0.1~15質量パーセント(wt.%)の量、又は1~10質量%の量で存在することができる。
【0070】
接着剤層
当業界で公知の種々様々の接着剤を、断熱多層シートに使用することができる。接着剤は、バッテリーの適用の容易さ及び作動条件下での安定性のために選択することができる。各接着剤層は、同じであっても異なっていてもよく、同じ厚さであっても異なった厚さであってもよい。適切な接着剤は、フェノール樹脂、エポキシ接着剤、ポリエステル接着剤、ポリフッ化ビニル接着剤、アクリル若しくはメタクリル接着剤、又はシリコーン接着剤、好ましくはアクリル接着剤若しくはシリコーン接着剤を含む。態様において、接着剤はシリコーン接着剤である。溶媒流延される、ホットメルトの二液型接着剤を使用することができる。接着剤層のそれぞれは、独立して0.00025~0.010インチ(0.006~0.25mm)、又は0.0005~0.003インチ(0.01~0.08mm)の厚さを有することができる。
【0071】
追加の層
追加の層は、製作、取り扱い、性能又は他の所望の特性を改善するために断熱多層シート中に存在することができる。例えば、担持層は、取り扱いの容易さを改善するために可撓性発泡体層に、又は直接に配置することができる。そのような層は、ポリマー層、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル(例えばポリブチレンテレフタラート又はポリエチレンテレフタラート)等であってもよい。
【0072】
断熱多層シートが接着剤層を含む場合、断熱多層シートは離型層を更に含むことができる。「離型層」は、場合によって離型ライナーを含む1つ又は複数の追加の層に担持された離型コーティングを含む任意の単一層又は複合層を意味する。離型層のそれぞれの厚さは、5~150μm、10~125μm、20~100μm、40~85μm又は50~75μmであってもよい。
【0073】
断熱多層シートは当業界で公知の方法によって集成することができる。シートは、セル又はバッテリーの他のコンポーネント(例えばバッテリーケースの壁)の表面に集成することができる。態様において、シートは別々に集成され、次に、セル、コンポーネント又はその両方に設置又は接着される。シートのそれぞれは、別々に製作することができ、次いで、所望の順序に積層(設置、又は例えば、1つ又は複数の接着剤層を使用して接着)することができる。代替として、1つ又は複数の個々の層は、例えば、コーティング、流延、又は熱及び圧力を使用してラミネートすることにより、別の個々の層に製作することができる。態様において、例えば、可撓性発泡体層は、直接に非多孔性エラストマー障壁層の上に流延することができる。ラミネーション及び直接コーティング又は流延は、厚さを減少させて、接着剤層の削除により難燃性を改善することができる。
【0074】
断熱多層シートは、バッテリー、特に、電気自動車、ハイブリッド車、送電網エネルギー貯蔵システム、並びに無停電バッテリーシステム及び鉛酸蓄電池の代替品等の他のマルチセルバッテリー用途を含む、種々様々の分野のリチウムイオンバッテリーにおいて使用することができる。本明細書において使用される「車両」とは、自動車、バス、オートバイ、スクーター、自転車、汽車、船舶等を含む。他の分野は、携帯端末を含むすべてのタイプの電子デバイスを含む。
【0075】
上に明示したように、低い質量又は厚さが所望される場合には、断熱多層シートを使用することができる。したがって、実施形態において、バッテリーの熱暴走を防止するための断熱多層シートは、第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;障壁層の第1の表面に配置された可撓性発泡体層;及び難燃剤成分を含み、ここで、難燃剤成分は、可撓性発泡体層のマトリックス内に分布し、可撓性発泡体の表面と接触し、又はその両方であり、断熱多層シートは、30mm以下、又は20mm以下、又は15mm以下、又は10mm以下、又は8mm以下、又は6mm以下の厚さを有する。この態様において、非多孔性エラストマー障壁層はエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム又はポリクロロプレンであってもよく、可撓性発泡体層はシリコーン発泡体、ポリウレタン発泡体又はエアロゲルであってもよい。
【0076】
以下の実施例が本開示を例証するために提供される。実施例は単なる例証であり、本明細書において述べられる材料、条件又はプロセスパラメーターに対する開示に従って製造されるデバイスを限定するようには意図されない。
【実施例
【0077】
実施例ではTable 1(表1)に列挙された材料を使用した。
【0078】
【表1】
【0079】
(実施例1)
2つのシリコーン可撓性発泡体層の表面を、シリコーンエラストマー中に66質量パーセントの水酸化アルミニウムを含むコーティングで5.8mmの厚さに塗工し、対流式オーブン中85℃で15分間硬化した。シリコーン可撓性発泡体層のそれぞれを、アクリル接着剤でポリクロロプレン層の反対表面に接着して、外向きに面するシリコーン可撓性発泡体層の塗工した表面を有する断熱性多層の層を形成した。
【0080】
(実施例2)
ポリウレタン可撓性発泡体層の表面にパイロジェル層を多目的接着剤で接着した。
【0081】
(実施例3)
ポリクロロプレン層の反対表面にシリコーン可撓性発泡体層を接着し、液体水の高い熱容量が一方の表面から他方の表面に伝熱を著しく遅延させることに有益となるように、層状複合材を70℃で24時間水中に浸してシリコーン可撓性発泡体層へ水を吸い込ませた。
【0082】
熱暴走のシミュレーション
熱暴走事象の高温をシミュレートするように設計した試験において実施例1-3それぞれの試料を評価した。図7は、使用したホットプレート試験設備5000を図示する。断熱多層シート102を、550℃に設定したホットプレート700に直接配置した。ホットプレートに実施例2のパイロジェル表面を設置した。断熱多層シート102の上面に12.7mmの雲母板セル類似物900を設置した。雲母板セル類似物900に空けた孔に熱電対センサー800を挿入して断熱多層シート102の上面に熱電対センサー800を配置した。ホットプレートからの熱は試料へ拡散し、およそ220℃に到達すると、水蒸気を発生する。
【0083】
図8は、経時的に測定した各試料について熱電対によって検出された温度上昇を示す。実施例2及び3と比較して、実施例1の断熱多層シートは反対表面に対して良好な熱の保護を提供した。10分後に、実施例1について測定した温度は、実施例2及び3のそれよりそれぞれ低かった。電気自動車バッテリー用途に関して、技術的可能性は、150℃に到達する時間、望ましくは、可能な限り長く、例えば少なくとも10分間によって決定することができる。20分の長時間曝露に対してさえ、実施例1の断熱多層シートの反対表面はわずか140℃であり、150℃に到達しなかった。
【0084】
理論によって束縛されることはないが、実施例1によって生まれた優れた結果は協調して働く異なるメカニズムによると考えられる。第1に、すべての実施例において、水酸化アルミニウム、ポリクロロプレン、シリコーン発泡体、ポリウレタン発泡体及びパイロジェル層はすべて、熱伝導に対する障壁を提供する。熱伝導は実施例3より実施例2で遅い。難燃剤層(すなわち水酸化アルミニウム)が存在する場合、水酸化アルミニウムの熱容量、及び水酸化アルミニウムからの水蒸気生成の熱により、熱は更に吸収される。しかし、水蒸気生成は、多孔性材料(すなわち発泡体)を通して熱対流の増加をもたらす。非多孔性ポリクロロプレン層は水蒸気及び高温ガスを遮断し、それによって、多層シートに改善された耐熱性を提供する。特に、実施例1の断熱多層シートの熱した表面に生成された水蒸気は、ポリクロロプレン層によって閉じ込められる。
【0085】
以下に、本開示の非限定的な態様を述べる。
【0086】
態様1:第1の表面及び第2の反対表面を有する非多孔性エラストマー障壁層;障壁層の第1の表面に配置された可撓性発泡体層;及び難燃剤成分を含み、ここで、難燃剤成分は、可撓性発泡体層内に分布するか、可撓性発泡体層の表面と接触するか、又はその両方である、熱暴走を防止するための断熱多層シート。
【0087】
態様2:非多孔性エラストマー障壁層の第2の表面に配置された追加の可撓性発泡体層を更に含む、態様1に記載の断熱多層シート。
【0088】
態様3:非多孔性エラストマー障壁層が、それぞれ25℃及び1気圧で測定して20g-mm/m・日未満、若しくは10g-mm/m・日未満、若しくは5g-mm/m・日未満の水の透過係数;ASTM 412に従って21℃で測定して0.5~15メガパスカルの100%伸びでの引張応力;又はそれらの組み合わせを有するエラストマーを含む、態様1又は態様2に記載の断熱多層シート。
【0089】
態様4:非多孔性エラストマー障壁層が、0.25~1ミリメートル又は0.4~0.8ミリメートルの厚さを有する、態様1から3のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0090】
態様5:非多孔性エラストマー障壁層が、アクリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン-アクリルゴム、エチレン-ブチルアクリルゴム、エチレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、エチレン-酢酸ビニル、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリオレフィンゴム、ポリイソプレン、ポリスルフィドゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、フッ素化シリコーンゴム、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、ビニルゴム又はそれらの組み合わせを含む、態様1から4のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0091】
態様6:非多孔性エラストマー障壁層が、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、ポリクロロプレン又はそれらの組み合わせを含む、態様1から5のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0092】
態様7:各可撓性発泡体層が独立して、ASTM D3574-17に従ってそれぞれ25%のたわみで求めて0.2~125ポンド毎平方インチ(1~862キロパスカル)、若しくは0.25~20ポンド毎平方インチ(1.7~138キロパスカル)若しくは0.5~10ポンド毎平方インチ(3.4~68.90.5キロパスカル)の圧縮力たわみ;ASTM D 3574-95試験Dに従って70℃で求めて0~15%、若しくは0~10%、若しくは0~5%の圧縮永久歪;5~65ポンド/立方フィート(80~1,041キログラム/立方メートル)、若しくは6~20ポンド/立方フィート(96~320キログラム/立方メートル)、若しくは8~15ポンド/立方フィート(128~240キログラム/立方メートル)の密度;又はそれらの組み合わせを有する、態様1から6のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0093】
態様8:各可撓性発泡体層が独立して、0.1~5ミリメートル、1~3ミリメートル又は1.5~2.5ミリメートルの厚さを有する、態様1から7のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0094】
態様9:各可撓性発泡体層が独立して、シリコーン、ポリウレタン、エアロゲル、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸ブチル又はそれらの組み合わせを含む、態様1から8のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0095】
態様10:各可撓性発泡体層が独立して強化用材料を含む、態様1から9のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0096】
態様11:強化用材料が、カーボンブラック、ガラス、ガラス微小球体、リグニン、微粒子金属酸化物、多面体オリゴマーシルセスキオキサン、雲母、石英、シリカ、タルク、多面体オリゴマーシルセスキオキサン若しくはそれらの組み合わせを含む強化用微粒子材料;強化用繊維材料の繊維が、ポリエステル、酸化ポリアクリロニトリル、炭素、シリカ、ポリアラミド、ポリカルボナート、ポリオレフィン、レーヨン、ナイロン、ガラス繊維、高密度ポリオレフィン、セラミック、アクリル樹脂、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド若しくはそれらの組み合わせを含む強化用繊維材料;又は強化用微粒子材料及び強化用繊維材料の組み合わせである、態様9に記載の断熱多層シート。
【0097】
態様12:難燃剤成分が可撓性発泡体層の細孔内の微粒子である、態様1から11のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0098】
態様13:難燃剤成分が、可撓性発泡体層の表面と接触する難燃剤層である、態様1から12のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0099】
態様14:難燃剤層が、0.1~2ミリメートル、0.5~1.5ミリメートル、又は0.8~1.1ミリメートルの厚さを有する、態様13に記載の断熱多層シート。
【0100】
態様15:難燃剤層が、ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、膨張性材料又はそれらの組み合わせを含む、態様13又は14に記載の断熱多層シート。
【0101】
態様16:難燃剤層が、チャー形成剤、好ましくはポリリン酸アンモニウム、ベーマイト、セルロース、粘土ナノ複合材、シアヌラート、膨張可能なグラファイト、ハント石、水苦土石、リグニン、リグノスルホナート、メラミン、ナノシリカ、ペンタエリトリトール、ホウ酸亜鉛又はそれらの組み合わせを更に含む、態様13から15のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0102】
態様17:難燃剤層が、ポリマー結合剤、好ましくはシリコーン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸ブチル又はそれらの組み合わせを更に含む、態様13から16のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0103】
態様18:難燃剤成分が可撓性発泡体層内に分布し、難燃剤成分が、アルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛、好ましくはアルミニウム三水和物、ホウ砂、含水ケイ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム水酸化物五水和物、リン酸三マグネシウム八水和物又はホウ酸亜鉛の少なくとも2つを含む、態様1から17のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0104】
態様19:可撓性発泡体層のマトリックス内に分布した難燃剤成分が、有機系難燃剤を更に含む、態様18に記載の断熱多層シート。
【0105】
態様20:23℃で0.01~0.09ワット/メートルケルビンの熱伝導率;0.2~30ミリメートル、若しくは0.2~20ミリメートル、若しくは0.2~15ミリメートル、若しくは0.2~10ミリメートル、若しくは0.5~10ミリメートル、若しくは0.5~8ミリメートル、若しくは1~6ミリメートルの厚さ;6~30ポンド/立方フィート(96~481キログラム/立方メートル)、10~25ポンド/立方フィート(160~400キログラム/立方メートル)、若しくは15~20ポンド/立方フィート(240~320キログラム/立方メートル)の密度;又はそれらの組み合わせを有する、態様1から19のいずれか一項に記載の断熱多層シート。
【0106】
態様21:電気化学セルであって、電気化学セルの表面の少なくとも一部に配置された、態様1から20のいずれか一項に記載の断熱多層シートを含む電気化学セル。
【0107】
態様22:断熱多層シートが電気化学セルの少なくとも2つの表面に配置される、態様21に記載の電気化学セル。
【0108】
態様23:プリズムセル、パウチセル又は円筒状セル、好ましくはパウチセルを含む、態様21又は22に記載の電気化学セル。
【0109】
態様24:態様21から23のいずれか一項に記載の電気化学セルの少なくとも2つを含む非接続アレイ。
【0110】
態様25:態様21から23のいずれか一項に記載の電気化学セル又は態様24に記載の非接続アレイを含むバッテリー。
【0111】
態様26:電気化学セル又は非接続アレイを少なくとも部分的に包むバッテリーケースを更に含む態様25に記載のバッテリー。
【0112】
組成物、方法及び物品は、代替として本明細書において開示される任意の好適な材料、ステップ又は部品を含み、それからなり、又は基本的にそれからなることができる。組成物、方法及び物品は更に、又は代替として、組成物、方法及び物品の機能又は目的の達成に他の方法では必要でない任意の材料(又は種)、ステップ又は部品が欠如するように又は実質上含まないように、配合することができる。
【0113】
用語「a」及び「an」は、量の限定を表すのではなく、言及する項目の少なくとも1つの存在を表す。用語「又は」は、文脈が明瞭に別様に指定しない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書の全体にわたる「態様」、「別の態様」等に対する言及は、態様に関連して記載される特定の要素(例えば、特色、構造、ステップ又は特性)が、本明細書において記載の少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様中に存在してもしなくてもよいことを意味する。更に、記載の要素が様々な態様中の任意の適切な方式で組み合わせられてもよいことは理解されるべきである。
【0114】
層、膜、領域又は基材等の要素が別の要素「に接して」あると称する場合、それは、他の要素に直接にあってもよく、又は、介在要素もまた存在してもよい。対照的に、要素が別の要素「に直接」あると称する場合、介在要素は存在しない。要素が「接触すること」と称されるか、又は別の要素と「接触する」場合、存在する介在要素はない。
【0115】
本明細書において反対に指定しない限り、試験標準はすべて、本出願の出願日、優先権を主張する場合には、試験標準が世に出る最初の優先出願の出願日の時点で最新の有効な標準である。
【0116】
同一の部品又は性質を対象とする全範囲の終点は、終点を包括し、独立して結合可能であり、中間点及び範囲をすべて含む。例えば「25wt%まで又は5~20wt%」の範囲は、「5~25wt%」、例えば10~23wt%等の範囲の終点及びすべての中間値を包括する。用語「第1」、「第2」等、「第一級」、「第二級」等は、本明細書において使用される場合、任意の順序、量又は重要性を示さず、むしろ、要素を互いに区別するのに使用される。「それらの組み合わせ」という用語はオープンエンドであり、リストが各要素を個々に包括し、そのうえ、リストの2つ以上の要素の組み合わせ、及びリストの少なくとも1つの要素の、指名されない類似要素との組み合わせを包括することを意味する。また、「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を包含する。
【0117】
他に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に共通して理解されるのと同一の意味を有する。
【0118】
すべての引用特許、特許出願及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。しかしながら、本出願中の用語が組み込まれている参考文献中の用語と相容れない又は矛盾する場合、本出願からの用語が、組み込まれている参考文献からの矛盾する用語に対して優先する。
【0119】
図面において、層及び領域の幅及び厚さは、明細書の明確性及び説明の便宜のために誇張されている。図面における同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【0120】
例示的な実施形態は、理想化された実施形態の模式図である断面図を参照して本明細書で説明される。そのため、例えば、製作技法及び/又は公差の結果として、図示の形状からの変動が予想されるはずである。したがって、本明細書に記載された実施形態は、本明細書に図示されたような領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば製造に起因する形状の逸脱を含むものである。例えば、平坦と図示又は説明された領域は、典型的には、粗い及び/又は非線形の特徴を有していてもよい。更に、図示されている鋭角は、丸みを帯びていてもよい。したがって、図に示された領域は、本質的に模式的であり、それらの形状は、領域の正確な形状を例示することを意図したものではなく、本請求項の範囲を限定することを意図したものではない。
【0121】
特定の態様が記載されたが、現在は予知されないか又は予知できない代替法、修正、変形、改善、及び実質的等価物が、出願人又は当業者に生じることがある。したがって、出願され、それらが修正されてもよい添付の特許請求の範囲は、そのような代替法、修正、変形、改善及び実質的等価物をすべて包含するように意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 非多孔性エラストマー障壁層
12 可撓性発泡体層
14 第1の外側表面
16 反対の第2の外側表面
18 細孔
20 細孔の内側表面
22 可撓性発泡体層
22a 第1の可撓性発泡体層
22b 第2の可撓性発泡体層
24 難燃剤層
24a 第1の難燃剤層
24b 第2の難燃剤層
30 接着剤層
100 断熱多層シート
102 断熱多層シート
200 パウチセル
202 セル
300 第1のセル
400 第2のセル
500 非接続アレイ
600 セル担体
700 ホットプレート
800 熱電対センサー
900 雲母板セル類似物
1000 マルチセル配列
2000 マルチセル配列
3000 マルチセル配列
4000 バッテリー
5000 ホットプレート試験設備
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】