(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ダニ媒介性回帰熱(TBRF)の種特異的抗原配列及び利用法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240130BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240130BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240130BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240130BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20240130BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20240130BHJP
C07K 17/08 20060101ALI20240130BHJP
C07K 17/10 20060101ALI20240130BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240130BHJP
C07K 16/12 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
G01N33/53 N ZNA
G01N33/569 A
G01N33/543 541A
G01N33/543 575
G01N33/545 A
G01N33/543 545A
C07K14/195
C07K17/08
C07K17/10
C12N1/21
C07K16/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543104
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2022012229
(87)【国際公開番号】W WO2022155279
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508027752
【氏名又は名称】アイデイー-フイツシユ・テクノロジー・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ジョツナ・エス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA86
4H045DA89
(57)【要約】
本開示は、一部の態様において、ダニ媒介性回帰熱ボレリア種の抗原特異的アミノ酸配列を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列を含む組成物であって、前記1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸配列は、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、磁気ビーズ、及びアガロースからなる群より選択される物質に結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1種又は複数のアミノ酸配列のそれぞれは、前記アミノ酸配列に対する特異性を持つ抗体でタグ付けされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
回帰熱(TBRF)ボレリア属の1種又は複数のメンバーによる感染から生じる抗体を検出する方法であって、前記属は、ダニ媒介性回帰熱(TBRF)を有することが疑われる対象由来の試料中に存在する場合、B.ハームシー、B.ツリカタエ、B.ミヤモトイ、B.デュトニイ、及びB.パルケリを含み、前記方法は、以下:
TBRFを有することが疑われる対象から得られる生体試料を用意することと、
前記生体試料を、請求項1に記載の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列のうち1種又は複数と混合することと、並びに
前記試料中にTBRF特異的抗体が存在することを示す陽性免疫結合反応を検出すること、
を含む、前記方法。
【請求項5】
前記標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列のうち2種以上が前記生体試料と混合され、及び少なくとも2種のアミノ酸配列が検出される場合に試料はTBRF陽性と見なされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、検出可能部分を連結した抗ヒトIgG抗体又は抗ヒトIgM抗体で検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能部分は、発色団、放射性部分、及び酵素からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出可能部分は、アルカリホスファターゼを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能部分は、ビオチンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列と、異種核酸配列とを含む、ベクター。
【請求項11】
前記核酸配列は、プロモーター配列が作動的に連結されている、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
前記ベクターは、原核生物ベクターである、請求項10に記載のベクター。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項14】
前記細胞は、細菌細胞である、請求項13に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、多様なダニ媒介性回帰熱(TBRF)ボレリア(Borrelia)種による感染から生じるTBRFを診断するための新規組成物及び方法を提供する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIテキストファイルの配列表を参照として組み込み、このファイルは、ファイル名が0153-2015WO01_SL.txt、作成日が2022年6月17日、及びファイルサイズが27,349バイトである。
【背景技術】
【0003】
ボレリア症は、ボレリア属の2つの群、B.ブルグドルフェリ(burgdorferi)群及びダニ媒介性回帰熱(TBRF)ボレリア群(本明細書中、RFB(回帰熱ボレリア)とも称する)により引き起こされる。B.ブルグドルフェリ群は、一度は、感染した対象においてライム様症候を引き起こす唯一の群であると考えられていたが、現在は、TBRFボレリアもライム様症候を引き起こすことが知られている。複数のボレリア種がTBRFを引き起こし、これらは、通常、特定種のマダニとの関連性がある。例えば、B.ハームシー(hermsii)は、オルニソドラス・ヘルムシ(Ornithodorus hermsi)マダニにより伝播し、B.パルケリ(parkerii)はO.パルケリ(parkeri)マダニにより伝播し、B.ツリカタエ(turicatae)はO.ツリカタ(turicata)マダニにより伝播する。各マダニ種には、主要生息地及び主要なホストセットがある。典型的には、カタダニ(マダニ属(Ixodes))は、ライム病病原を伝播し、一方軟ダニ(ヒメダニ属(Ornithodorus))は、TBRF病原を伝播するが、そこにはこの規則が存在すると予想される:一部のRFB病原体は、カタダニ(例えば、B.ミヤモトイ(miyamotoi))によってのみ伝播し、1つの種、B.レカレンティス(recurrentis)は、シラミ媒介性である。
【0004】
TBRFの主な症候は、高熱(例えば、103°F)、頭痛、並びに筋肉痛及び関節痛である。症候は再発する可能性があり、おおよそ3日間続く発熱、続いて発熱のない7日間、続いて別の3日間の発熱という表示パターンをもたらす。抗生物質治療がなければ、この過程は、複数回繰り返される可能性がある。
【0005】
現在、検出基準は、TBRFに一致する症候を呈している対象の血液スメアでのTBRFスピロヘータの同定によるものである。血液を採取した後、試料は、同定を促進するために少なくとも24時間培養しなければならない。しかしながら、スピロヘータが最も多い疾患初期においてさえ、陽性の同定は、約70%の確率でしかなされない。(非特許文献1を参照)。すなわち、当該分野の現状の材料及び方法は、診断の遅れをもたらしており、提供する感度及び特異性も比較的低レベルである。アッセイ時間が短縮されており感度及び特異性が向上した、TBRF原因病原体を同定するのに適した新規材料及び方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】www.cdc.gov/relapsing-fever/clinicians/index.html
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的には、TBRFを有することが疑われる対象由来の試料において、1種又は複数のTBRFボレリア種による感染に対する抗体を同定するのに使用可能な、組成物及び方法に関する。本発明の組成物及び方法を用いることで、対象試料中のTBRFボレリアの同定を、既存の組成物及び方法を用いるよりも高い速度、感度、及び特異性で行うことが可能である。本発明の抗原特異的アミノ酸配列は、診断アッセイ及び学術アッセイにおいて使用可能である。適切なアッセイの限定ではなく例として、免疫ブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)等が挙げられる。本発明のアミノ酸配列は、TBRFボレリア特異的T細胞の検出(例えば、IgXSPOT試験;IGeneX、Palo Alto、CA)に使用することができる。
【0008】
本発明のある態様に従って、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列(bound amino acid sequence)を含む組成物が提供され、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、組成物は、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、磁気ビーズ、及びアガロースからなる群より選択される物質に結合させたアミノ酸配列も含む。一部の実施形態において、上記1種又は複数のアミノ酸配列はそれぞれ、上記アミノ酸配列に対する特異性を持つ抗体でタグ付けされる。
【0009】
本発明のある態様に従って、回帰熱(TBRF)ボレリア属の1種又は複数のメンバーによる感染から生じる抗体を検出する方法が提供され、このボレリア属は、ダニ媒介性回帰熱(TBRF)を有することが疑われる対象由来の試料中に存在する場合には、B.ハームシー、B.ツリカタエ、B.ミヤモトイ、B.デュトニイ(duttonii)、及びB.パルケリ(parkeri)、を含み、本方法は以下:TBRFを有することが疑われる対象由来の生体試料を用意することと;生体試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択される標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列のうち1種又は複数と混合することと;並びに、試料中にTBRF特異的抗体が存在することを示す陽性の免疫結合反応を検出することと、を含む。一部の実施形態において、標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列のうち2種以上が、生体試料と混合され、試料は、少なくとも2種のアミノ酸配列が検出される場合に、陽性と判断される。一部の実施形態において、標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、検出可能部分を連結した抗ヒトIgG又は抗ヒトIgM抗体で検出される。一部の実施形態において、検出可能部分は、発色団、放射性部分、及び酵素からなる群より選択される。一部の実施形態において、検出可能部分は、アルカリホスファターゼを含む。一部の実施形態において、検出可能部分は、ビオチンを含む。
【0010】
本発明のある態様に従って、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列と、並びに異種核酸配列と、を含むベクターが提供される。一部の実施形態において、核酸配列は、プロモーター配列に作動的に連結されている。一部の実施形態において、ベクターは、原核生物ベクターである。一部の実施形態において、細胞は、ベクターを含む。一部の実施形態において、細胞は、細菌細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ラインイムノブロット(line immunoblot)の顕微鏡撮影画像を示す図である。TBRF免疫ブロットストリップを、ウサギ抗TBRFボレリア血清試料を用いて試験した。TBRFボレリア種B.ツルシカ(turcica)、B.ミヤモトイ、B.ハームシー、B.パルケリ、及びB.ツリカタエに対する抗体が、これら5種全てに由来する組換え抗原から調製したTBRF免疫ブロットストリップにより検出された。これにより、TBRF免疫ブロットが、TBRFボレリア群の抗体を検出したことが実証された。N、陰性対照;TC、B.ツルシカ;MI、B.ミヤモトイ;BH、B.ハームシー;PK、B.パルケリ、TT、B.ツリカタエ;及びM、陽性対照。
【
図2】代表的な患者血清試料のTBRF免疫ブロットの顕微鏡撮影画像を示す図である。患者血清試料を、ダニ媒介性回帰熱(TBRF)IgM及びIgG免疫ブロットで試験した。これらの結果は、TBRFボレリア種に対する抗体の検出が、ボレリア・ブルグドルフェリ種の抗原について試験するだけでは見過ごされてしまった可能性のある慢性ライム病症候を持つ患者をどのように同定したかを解説する。P、陽性対照;N、陰性対照;G、TBRF免疫ブロットIgG;M、TBRF免疫ブロットIgM;1、B.ハームシー陽性IgM;2、B.ツリカタエ陽性IgG;3、B.ミヤモトイ陽性IgM;4、B.ツルシカ陽性IgG;5、B.パルケリ陽性IgM及びIgG。
【
図3】患者血清試料での、配列番号1~11を用いたTBRF免疫ブロットIgM及びIgG試験の代表的な結果を示す表である。Pos、陽性;I、不明;Tt、B.ツリカタエ;Pk、B.パルケリ;Mia、B.ミヤモトイ;Du、B.デュトニイ;Bh、B.ハームシー;
【0012】
配列の記載
配列番号1、B.ハームシーVlp7
MQQPEAGKTGVSGGVNGNLGNSLMELGRSAENAFYAFIELVSDVLGFTAKSDTTKQEVGGYFNSLGAKLGEASNDLEQVAVKAETGVDKSDSSKNPIREAVNEAKEVLGTLKGYVESLGTIGDSNPVGYANNAAGSGTTAADDELRKAFKALQEIVKAATDAGVKALKIGATTLQANGGADNKEGAKILATSGGNPAAADVAKAAAILSSVSGEEMLSSIVKSGENDAQLAAAADGNTSAISFAKGGSDAHLAGANTPKAAAVAGGIALRSLVKTGKLAAGAADNATGGGKEVQGVGVAAANKLLRAVEDVIKKTVKNVLEKAKEKIDKARGSQEPVSESSK
【0013】
配列番号2、B.ツリカタエBipA-2H
MDNVMSGIDNVIQGAGTFATAAMQGVGTVIDVLQDVGTFVISDIQNMGARMLFGTGENSSVASEGSESVMSLSSNDSSEAKDVTVVLSSDVTSKGNDVAVGLSSDETQVIGRLEKYLQSAIKINGRSDSDQSNLESGRKKFFNWLKTSDTNASKRKELVQDLQKVFDLIKEKSSDSTELKHWVQSIVDRIEDKSTIVDIDSDDELNNDKEVDFLIENTLASRDYSGFAVSLLFQSLADTLYDSDNNRDKSEEQIFQDLRKVFSDSSDKSEGVLGFKSKIEATN
【0014】
配列番号3、B.ツリカタエBpcA/fHbp
MSETSLLNIETNLLNTLDDNQKQALITFKDLLQDKKHLSILEKQQKSILEDLKANQKNYNLQDKLKKTLNSEYDKNQLNKLFDELGNIKTKQFLQQLHIILQSIKDGKPTNFASSNFNNLNQTLEQKKEQALKYIKDKLYTDYYLYINGIQDANYFFERIMSLLE
【0015】
配列番号4、B.ツリカタエP41/FlaB
MRNNSINAANLSKTQEKLSSGHRINRASDDAAGMGVAGKINAQIRGLSQASRNTSKAINFIQTTEGNLNEVEKVLVRMKELAVQSGNGTYSDADRGSIQIEIEQLTDEINRIADQAQYNQMHMLSNKSAAQNIKTAEELGMQPAKINTPASLAGSQASWTLRVHVGANQDEAIAVNIYAANVANLFAGEGAQVSPAQEGAQQEGVQAAPAPAAAPAQGGVNSPVNVTTTIDANMSLSKIENAIRMVSDQRANLGAFQNRLESIKASTEYAIENLKSSYAQIQDATMTDEIVASTTNSILTQSAMAMIAQANQVPQYVLSLLR
【0016】
配列番号5、B.パルケリBipA-1H
MDMGSTRDWLTNDDGFVRGTKGFDDSPFRRPDRVDKEVSAGGREIEKAFSRNLGVAGGQRKGTDDVKNGIAGARESGGVLKEAENAGQRDVDDSGEGIKNDVIQNLGSVGVQVAVGSENNGDDSGQEAEKGSQNLGDTGTQRVVSTSDLNSHLGVESKGGMSTNKEGISTNHVTENRNSINSITSTSSGLSTALQIAGTSTRASGYEGEVTTNAQDRSFIDTKTQDSKKQYSDFSDQDIRDKILGNVVGGVV
【0017】
配列番号6、B.パルケリBipA-2H
MGNVMSGIDNVIQGAGTFATAAMQGVGTVIDVLQDVGTFVISDIQNMGARMFFGTGESSSVASEDSESVMSLSSKASSEAKDTTVGLSSDVTSKGNNVAVGLSSDEIQIIGRLEKYLKSAIKINGRSDSDQSKLESGHKKFFQWLKTSDTNASKRKELVQNLQRVFNLIKEKSSDSTELKKWMQSIVDDIENKSTIIDINSDDKLNNDKEVDFLIEKTLGSSDYSGFAVSLLFQALADTLYDSENSRDKSEEQIFKDLRKVFSDKSEGVLEFKSKIEATN
【0018】
配列番号7、B.パルケリGlpQ
MCQNEKMSMTNKKSPLTIAHRGASGYLPEHTLESKAFAYALGADYLEQDIVLTKDNVPIIMHDPELDTTTNVAKLFPERARENGRYYSVDFTLDELKSLSLSERFDLETRKPIYPKRFPLNEYNFKIPTLEEEIQFIQGLNKSTGRNVGIYPEIKKPLWHKQQGKDISKIVIEILNKYGYKSKEDKIYLQTFDFDELKRIREELGYQGKLIMLVGENDWNEAPTDYEYIKSQEGMTEVAKYADGIGPWIPQIIIDGKITDLTSLAHKYNMEVHAYTFRIDSLPSYVKDANELLDLLFNQAKIDGLFTDFTDTVVKFIKQ
【0019】
配列番号8、B.パルケリBpcA/fHbp
MSETSLLNTLDNNQKQALITFKDLLQDKNHRSILEKQQKSILKDLEKHQENSNLQDKLKKTLNSEYDKTQLNKLFDELGNIKTKQFLQKLHIMLKSINNGTLTSFSSSNFKDSNQTLEQKKEQALQYIKGQLYTDYYLYINGIQDANYFFERIMSVLEI
【0020】
配列番号9、B.パルケリP41/FlaB
MRNNSINAANLRKTQEKLSSGHRINRASDDAAGMGVAGKINAQIRGLSQASRNTSKAINFIQTTEGNLNEVEKVLVRMKELAVQSGNGTYSDADRGSIQIEIEQLTDEINRIADQAQYNQMHMLSNKSAAQNIKTAEELGMQPAKINTPASLAGAQASWT
LRVHVGANQDEAIAVNIYASNVANLFAGEGAQVSPAQEGAQQEGVQAAPAPAAAPAQGGVNSPVNVTTTVDANMSLSKIENAIRMVSDQRANLGAFQNRLESIKASTEYAIENLKSSYAQIKDATMTDEIVASTTNSILTQSAMAMIAQANQVPQYVLSLLR
【0021】
配列番号10、B.デュトニイGlpQ
MENAKINKKSALIIAHRGASGYLPEHTLEAKAYAHALGADYIEQDIVLTKDDIPIVMHDPELDTTTNVAKLFPGRARENGKYYSVDFTLAEIKSLSLSERFDPETQQPIYPNRFPATEYDFKIPTLEEEIKFIQGLNKSTGKNIGIYPEIKKPLWHKQQGKDISKIVIDILNKYGYKSKEDKIYLQTFDFDEIKRIREELGYQGKLIMLVGENDWEEAPTDYEYIKSEEGMAEVAKYADGIGPWIPQIIINGQITGLISLAHKYNMQVHPYTFRIDALPSYVKDPNELLELLFIKAKVDGLFTDFVDISIKFMQ
【0022】
配列番号11、B.ミヤモトイGlpQ
MASMTGGQQMGRGSEMGENKKSPLIIAHRGASGYLPEHTLEAKAYAYALGADYLEQDIVLTKDNIPVIMHDPEIDTTTNVAQLFPNRARENGRYYATDFTLTELKSLNLSERFDPENKKPIYPNRFPLNEYNFKIPTLEEEIQFIQGLNKSTGKNVGIYPEIKKPFWHKQQGKDISKIVIEILNKYGYKSKEDKIYLQTFDFDELKRIRKELGYQGKLIMLVGENDWNEAPTDYEYIKSEEGIAEVAKYSDGIGPWIPQIIIDGKITELTNLAHKYNIEVHPYTFRTDALPSYVKNENELLDLLFNKAKVDGIFTDFTDTVMNFIKK
【発明を実施するための形態】
【0023】
アメリカ合衆国(USA)においてTBRFを引き起こすとして最もよく知られているRFB種は、B.ハームシー、B.ミヤモトイ、B.パルケリ、及びB.ツリカタエである。しかしながら、TBRFを引き起こすRFB種は他にも同定が続いている。例えば、B.ジョンソニイ(johnsonii)様種は、以前にコウモリダニでのみ見つかっていたが、これに感染した患者が、ウィスコンシン州で同定された。そのうえさらに、TBRFは、中央アメリカ及び南アメリカでも報告されている。B.ヒスパニカ(hispanica)、B.ペルシカ(persica)、及びB.ミヤモトイは、欧州及びアジアにおけるTBRFの重要な原因であり、B.ヒスパニカ、B.クロシデュラエ(crocidurae)、及びB.デュトニイは、アフリカにおけるTBRFの重要な原因であ。ほとんどのRFB種は、ヒメダニ属の軟ダニにより伝播するものの、B.ミヤモトイは、ライム病ボレリア(LDB)種を伝播するマダニ属の同じカタダニにより伝播する可能性がある。他のRFB種、B.ロネスタリ(lonestari)、最近記載されたB.ツルシシア(turcicia)、及びB.タキグロッシ(tachyglossi)は、爬虫類(B.ツルシカ)又はハリモグラ属(B.タキグロッシ)宿主に関連した急速に拡大しているボレリア系統群のメンバーであり、これらもカタダニによって伝播する。時宜を得た治療を提供する目的で、臨床医は、ダニ媒介疾患の症候を呈する患者がTBRF種に曝露したことがあるかどうかを迅速かつ正確に同定することが可能でなければならない。
【0024】
本発明の態様は、TBRFを有することが疑われる対象由来の試料において、ボレリア抗血清を迅速かつ正確に検出する方法を提供する。TBRFを有することが疑われる対象は、高熱(例えば、103°F)、頭痛、並びに筋肉痛及び関節痛等の症候を有すること
で同定可能である。症候は、典型的には再発し、おおよそ3日間続く発熱、続いて発熱のない7日間、続いて別の3日間の発熱という表示パターンをもたらす。適正な抗生物質治療がなければ、この過程は、複数回繰り返される可能性がある。TBRFの症候は、例えば、ウイルス性インフルエンザ様症候に類似する可能性があるため、対象に有効な治療を提供するためにはTBRFの正確な診断が重要である。本発明は、原因ボレリア種に特異的な抗体の存在を検出する迅速かつ簡便な診断試験を提供し、それにより、そのような試験への需要を満たす。
【0025】
TBRFは複数のRFB種により引き起こされる可能性があるため、及びRFB種の地理的範囲は重なり合う可能性があるため、RFB種の試験は、包括的である必要がある、すなわち、試験は、複数種に対して同時に抗体を検出することが可能である必要がある。本発明は、様々なTBRFボレリア種に特異的な抗原アミノ酸配列を提供する。本発明のアミノ酸配列は、指示される属に対して高い特異性及び/又は感度を有する抗原ペプチドをコードする。ボレリア種の境界にまたがり交差反応性を示す抗原ペプチドを含有することもまた、目的が感染症を検出することであり、感染症の原因である特定種を同定する必要がない場合の包括的血清学的アッセイ、又は他の免疫学に基づくアッセイの開発に関して重要である。例えば、本開示は、マルチパネル免疫アッセイを含み、この場合、単一試験スクリーンの状況で、複数のRFB種が検出可能である。
【0026】
本発明は、TBRFボレリア種による感染症を診断する新規組成物及び方法を提供する。本発明は、部分的に、本明細書中記載されるとおり、抗原ペプチド(これは、当該分野において、ペプチド抗原又は抗原とも称する場合がある)をコードする種特異的アミノ酸配列の発見に基づく。
【0027】
本発明は、1つの態様において、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列を含む組成物であり、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11と少なくとも90%、95%、98%、99%、99.5%、又は100%相同性を有する。100%未満の相同性を持つ配列は、本明細書中提供されるアミノ酸配列を基準にして1つ又は複数の置換、削除、挿入、又は他の修飾で修飾されている可能性がある。修飾の例として、保存的アミノ酸置換が挙げられるが、これに限定されない。保存的アミノ酸置換は、そのような修飾がなされる分子のものと類似した機能的特徴を有する分子をもたらすことになる。保存的アミノ酸置換は、選択されたポリペプチド又はタンパク質の活性又は立体構造に顕著な変化をもたらさない置換である。そのような置換は、典型的には、選択したアミノ酸残基を、類似の物理化学的特性を有する異なる残基で置き換えることを含む。例えば、GluとAspの置換は、どちらも類似したサイズの負電荷を帯びたアミノ酸であることから、保存的置換と見なされる。物理化学的特性によるアミノ酸のグループ分けは、当業者に既知である。以下のグループはそれぞれ、互いに保存的置換となるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照)。当業者なら、100%未満の相同性を持つ配列が天然に生じる又は天然に生じないTBRF関連抗体と結合することができるかどうか、並びに修飾配列に対する抗体の感度及び特異性を特定することができる。当業者なら、本明細書の教示に照らして、必要以上の実験を行わずに本発明の方法において許容可能な又は等価な反応を与える、本発明の配列番号1~11と顕著な相同性を持つ配列を同定することができる。
【0028】
一部の実施形態において、本発明は、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列を含む組成物であり、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。本明細書中使用される場合、「~からなる(consisting of)」は、アミノ酸配列に言及するクレーム移行句として使用される場合、指定されるアミノ酸配列(すなわち、配列番号1~11)と100%相同性を有するアミノ酸配列を指す。
【0029】
本発明の態様は、TBRFボレリアの特定種に対する抗原特異的アミノ酸配列を提供する。これらの新規アミノ酸配列は、TBRFを有することが疑われる対象由来の試料においてTBRFの特定ボレリアを同定するためにアッセイで使用することができる。本発明のアミノ酸配列を用いることで、対象試料におけるTBRFボレリアの同定が、他の現行法よりも高い速度、感度、及び特異性で行われる。本発明のアミノ酸配列は、診断アッセイ及び学術アッセイにおいて使用可能である。適切なアッセイの限定ではなく例として、免疫ブロット、ラインイムノブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)等が挙げられる。本発明のアミノ酸配列は、例えば、IgXSPOT試験(IGeneX、Milpitas、CA)を用いた、TBRFボレリア特異的T細胞の検出に使用可能である。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列を含む組成物であり、1種又は複数の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びにそれら配列のバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。「バリアント」という表現は、指定されるアミノ酸配列(すなわち、配列番号1~11)の任意の修飾物(複数可)であって
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するものを包含する。そのような修飾は、挿入及び削除(内部又はN末端若しくはC末端での、あるいはその両方)を含むことができる。
【0031】
本発明のアミノ酸配列及びその一部分をコードする核酸配列は、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドも含めて、本発明のアミノ酸配列がコードする抗原ペプチドの生物学的(例えば、免疫学的)特性を提示するペプチドを単離可能な量で提供するために、培養細胞で発現させることができる。遺伝暗号の重複性により、複数の核酸配列が、本発明のペプチド配列の生成に適切である可能性がある。当業者なら、本発明のペプチド配列の生成用に1種又は複数の核酸配列を特定することができる。本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、当業者に既知である任意の適切な標識により標識化可能である。
【0032】
これに関して、本発明のアミノ酸配列の生成に適切な核酸配列は、天然に生じる配列と実質的に相同である可能性がある。核酸配列の実質的相同性とは、本明細書中使用される場合、以下を意味する:(a)天然に生じる配列との65%、75%、85%、95%、98%、又は99%超の相同性が存在すること、あるいは(b)相同核酸配列が、温度及び塩濃度のストリンジェントな条件下、比較される配列又はその相補鎖とハイブリダイズすること。このようなストリンジェントな条件は、一般に、約22℃超、通常は約30℃超、より一般的には約45℃超の温度、及び一般的には約1M未満、通常は約500mM未満、好ましくは約200mM未満の塩濃度になる。温度と塩濃度の組み合わせは、ストリンジェンシーの定義において、温度又は塩濃度いずれか単独よりも重要である。ストリンジェンシーに影響を及ぼす他の条件として、比較される配列のGC含有量、配列の相補性の度合い、及びハイブリダイゼーションに関与する配列の長さ、並びにハイブリダイゼ
ーション混合物に使用される緩衝液(複数可)の組成が挙げられる。ストリンジェンシーに影響を及ぼすこれら及び他の要因は、学術文献及び特許文献において十分に記載されている。当業者なら、本発明の抗原ペプチドをコードする核酸配列の相同性を特定するのに適切な条件を決定することができる。
【0033】
相同核酸配列は、核酸配列中のヌクレオチド置換の性質に基づき特定することができる。例えば、同義ヌクレオチド置換、すなわち、コードされるアミノ酸配列を改変しない核酸配列内でのヌクレオチド変更は、非同義ヌクレオチド置換よりも許容性が良くなり、したがって、特定の核酸配列においてより多く存在する可能性がある。当業者なら、必要以上の実験を行わずに、コードされる抗原ペプチドの抗原性に悪影響を及ぼすことのない、本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列に許容することができる、置換の適切な数及び位置を特定することができる。
【0034】
標識及びタグ
本発明の1種又は複数のアミノ酸配列は、標識化及び/又はタグ付及び/又は結合させることができる。本明細書中使用される場合、「標識」又は「タグ」とは、本発明のアミノ酸配列に付着させることが可能な検出可能部分である。標識又はタグは、本発明のアミノ酸配列に共有結合で付着させることも非共有結合で付着させることもできる。そのような「タグ」の限定ではなく例として、天然及び合成の(すなわち、天然に生じない)核酸及びアミノ酸配列(例えば、ポリAAAタグ)、抗体、並びに標識等の検出可能部分(本明細書中いずれかの箇所で検討される)がある。すなわち、「標識化」及び「タグ付」という語句の定義は、タグが、場合によっては、標識としても機能し得るという点で、重複している場合がある。そのうえさらに、本発明で有用なタグは、標識と連結させることができる。
【0035】
本発明のアミノ酸配列、又は本発明のアミノ酸配列に付着させた任意のタグは、当業者に既知である任意の適切な標識で標識化することができる。そのような標識として、ビオチン/ストレプトアビジン、酵素複合体(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ、及びβ-ガラクトシダーゼ)、蛍光部分(例えば、FITC、フルオレセイン、ローダミン等)、生物学的フルオロフォア(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、R-フィコエリトリン)、又は他の発光タンパク質等を挙げることができるが、これらに限定されない。当業者に既知である任意の適切な標識を、本発明で使用することができる。
【0036】
一部の実施形態において、本発明のアミノ酸配列は、「結合」されていることが可能である。「結合」アミノ酸配列とは、例えば、免疫アッセイ等の生物学的試験において、アミノ酸配列の使用を可能にする目的で、固定されてしまったアミノ酸配列である。本発明の文脈において、「結合」アミノ酸配列とは、非天然の表面又は物質に直接又は間接的に付着させた(例えば、共有結合又は非共有結合等)アミノ酸配列である。これに加えて又はこれに換えて、本発明の「結合」アミノ酸配列は、天然の表面又は物質に直接又は間接的に付着させることができ、天然の表面又は物質はいずれも、そのアミノ酸配列とは天然に関連しない。本発明のアミノ酸配列を結合させることができる物質の限定ではなく例として、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)プラスチック、金属、磁気ビーズ、及びアガロース(例えば、ビーズ)が可能である。本発明のアミノ酸配列が表面又は物質に結合することを補助する又は促進するために、当業者に既知である連結剤を使用することができる。
【0037】
アミノ酸配列の生成
一部の実施形態において、本発明のアミノ酸配列は、非天然の合成配列、例えば、組換え技術により生成した配列又はタンパク質合成装置により合成された配列等が可能である
。そのため、本発明のアミノ酸配列は、文献に記載されるとおり及び可能であるとおりに、並びに一般的にマニュアル、例えば、Short Protocols in Molecular Biology, Second Edition, F.M. Ausubel, Ed., all John Wiley & Sons, N.Y., edition as of 2008;及びSambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 2001等で言及されるとおりに、並びに当業者に周知であるとおりに、組換え技術により生成することができる。1つの実施形態において、本発明のアミノ酸配列は、組換えによりE.コリ(coli)において作られる。
【0038】
本明細書中使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸分子であって、その核酸分子が作動的に連結された別の核酸を異なる遺伝子環境間で輸送することができる核酸分子を指す。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11、並びに
図3の免疫学的結合プロファイルを保持するそれらのバリアントからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列に加えて、本発明のベクターは、異種核酸配列も含有する。本明細書中使用される場合、異種は、マーカッシュグループ配列の由来元である生物中には天然に生じない核酸配列を指す。「ベクター」という用語は、核酸分子を輸送することができるウイルス又は生物も指すことができる。ベクターの1つの種類は、プラスミド、すなわち、染色体DNAとは物理的に分離しており染色体DNAから独立して自己複製することが可能な、小さな円形二本鎖染色体外DNA分子である。一部の有用なベクターとして、ベクターに連結させた核酸の自律増殖及び/又は発現を可能にするものがある。作動的に連結された核酸の発現を指示することができるベクターは、本明細書中、「発現ベクター」と称する。他の有用なベクターとして、細菌プラスミド及び細菌人工染色体(BAC)、コスミド、並びにウイルス、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びファージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の方法において有用なベクターは、追加の配列を含むことができ、追加の配列として、1つ又は複数のシグナル配列及び/又はプロモーター配列、あるいはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法及びベクターに使用可能なプロモーターとして、細胞特異的プロモーター又は普遍的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のベクターに使用可能なプロモーターの限定ではなく例として、以下がある:偏在性プロモーター、例えば、CMVプロモーター、CAGプロモーター、CBAプロモーター、及びEF1aプロモーター等であるが、これらに限定されない。適切なプロモーターの選択法及び使用法は、当該分野で周知である。
【0040】
本発明の方法で有用なベクターは、細胞中で、本発明の配列を含む融合タンパク質を発現させるのに使用することができる。発現ベクター並びにそれらの調製法及び使用法は、当該分野で周知である。本発明の一部の実施形態において、発現ベクターの核酸配列は、本発明のアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする。ポリペプチド配列を含む融合タンパク質の調製の仕方及び利用の仕方は、当該分野で周知である。一部の実施形態において、本発明のアミノ酸配列を含む融合タンパク質は、融合タンパク質の精製に使用可能な又は本発明の方法で使用可能なエピトープタグも含むことができる。エピトープタグの限定ではなく例として、FLAGタグ、蛍光タグ(緑色蛍光タンパク質(GFP)が挙げられるが、これに限定されない)、GSTタグ、ヘマグルチニン(HA)、ポリヒスチジン(ポリHis)タグ、Mycタグ、MBPタグ、又はV5タグがある。一部の実施形態において、本発明のアミノ酸配列を含む融合タンパク質は、本明細書中いずれかの箇所で記載されるとおりに、検出可能な標識も含むことができる。
【0041】
対象及び細胞
本明細書中使用される場合、対象は、動物、例えば、哺乳類又は非哺乳類等が可能である。哺乳類対象の限定ではなく例として、霊長類(ヒトが挙げられるが、これに限定されない)、齧歯類(マウス、ラット、リス、シマリス、プレーリードッグが挙げられるが、これらに限定されない)、ウサギ類、シカ、イヌ属(イヌ、キツネ、コヨーテ、及びオオカミが挙げられるが、これらに限定されない)、ネコ科(イエネコ、ボブキャット、クーガー、及び他の野生ネコが挙げられるが、これらに限定されない)、クマ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及びブタが挙げられる。非哺乳類対象の限定ではなく例として、鳥類、両生類、トカゲ、昆虫、及び節足動物が挙げられる。本明細書中使用される場合、細胞は、E.コリに限定されないがそれをはじめとする細菌細胞、又は哺乳類若しくは非哺乳類いずれかである動物細胞が可能である。
【0042】
アッセイ及び検出法
本発明のアミノ酸配列は、当該アミノ酸配列のいずれかに対して特異性を持つ抗体でタグ付けすることができる。当該アミノ酸配列に対する特異性、すなわち、抗体特異性は、抗体が一部の抗原決定基と優先的に反応して他とは反応しないことを可能にする、抗体の特性である。特異性は、化学組成、物理的力、及び結合部位での分子構造に依存する。感度は、抗体が抗原決定基とどのくら強く結合するかである。当業者なら、標準の親和性アッセイ、例えば、免疫ブロット法、オークタロニーアッセイ、力価アッセイ等を用いて、特定のアミノ酸配列に対する抗体の特異性及び感度を特定することができる。別の態様において、本発明は、TBRFを有することが疑われる対象由来の試料中のTBRFボレリア抗血清を迅速かつ正確に検出する方法を提供する。TBRFを有することが疑われる対象由来の試料中のTBRFボレリア抗血清を検出する本発明の方法は、例えば、TBRFを有することが疑われる対象から得られる生体試料(血液、唾液が挙げられるが、これらに限定されない)を用意することと、生体試料を本発明の標識化及び/又はタグ付及び/又は結合アミノ酸配列のうち1種又は複数と混合することと、並びに試料中にライム病抗血清が存在することを示す陽性反応を検出することと、を含むことができる。抗血清は、例えば、免疫ブロット法、ELISPOT、ELISA、ウエスタンブロット法、ラテラルフローアッセイ、又は当業者に既知の任意の他の適切な免疫アッセイにより検出することができる。これらの技法は、当業者に既知であり、一般的な技術参照において見つけることができる。これらの技法は、類似しているものの、それぞれに一長一短がある。他の適切な技法も、当業者に既知である可能性があり、本明細書に組み込まれる。
【0043】
試験限界の影響を評価するため、及びTBRFボレリアに対する曝露レベルを特定するため、改変ウエスタンブロット手法、すなわちラインイムノブロットが開発され、本明細書中記載される本発明の態様に採用された。ラインイムノブロットは、ダニ媒介疾患の疑われる患者由来の血清において、TBRFを血清学的に同定及び診断するため、TBRFボレリア複合体の共通株及び種由来の組換え抗原を使用する。本明細書中いずれかの箇所で記載されるとおり、TBRFボレリア曝露の血清型構成(serotype makeup)は、以前に認められていたよりも複雑である可能性があり、1種を超えるTBRFボレリア種による感染が起こり得る。
【0044】
ウエスタンブロット法は、電気泳動によりタンパク質を分離することと、次いでニトロセルロース又は他の固形媒体(例えば、ポリビニリデンフルオリドすなわちPVDF膜及びナイロン膜)に移すことと、を含むことができ、これについては、以下により詳細に記載する。免疫ブロット法も、タンパク質を固形媒体に、手作業で又は機械により添加することを含むことができる。好ましくは、タンパク質は、直線で又はスポットで添加されて乾燥され、それらは、固形支持媒体、例えば、ニトロセルロースに結合する。免疫ブロットで使用するタンパク質は、当業者に周知であるとおり、生体試料から単離されたもので
も組み換え技術により生成したものでも可能である。次いで、結合したタンパク質を、標的タンパク質に対して特異的である抗体を有することが疑われる試料(単数又は複数)と接触させる。この手法を用いることで、既知の抗体を使用して、例えば、溶解細胞のタンパク質を電気泳動により分離させて固形媒体に移した場合等に、試料中にタンパク質が存在するかどうかを特定することができる。ウエスタンブロット法は、サイズにより、並びに特定抗体に対する特異性によりタンパク質を同定することを可能にする。
【0045】
同様に、免疫ブロット法と呼ばれる手法を用いることで、既知のタンパク質を固形媒体に結合させることができ、及び試料、例えば感染症を有することが疑われる対象由来の試料等を、結合タンパク質を試料と接触させることにより、試料中の特異的抗体の存在について試験することができる。標的タンパク質に結合する抗体は、通常、一次抗体と称する。二次抗体は、一次抗体の保存領域に対して特異的であり(例えば、ウサギ抗ヒトIgG抗体は、一次ヒト抗体を検出するのに使用可能である)、これは、結合した一次抗体をどれでも検出するのに使用される。二次抗体は、通常、視覚化のため、検出可能部分で標識される。適切な標識の限定ではなく例として、例えば、ビオチン等の発色団、放射性部分、及びアルカリホスファターゼ等の酵素等が挙げられる。抗体視覚化のためのこれら及び他の材料の使用は、当業者に周知である。
【0046】
酵素免疫スポット(Enzyme-Linked ImmunoSpot、ELISPOT)法は、in vitroで、ライム特異的抗原に反応するヒトT細胞を検出することができる。ELISPOTアッセイでは、96ウェルマイクロタイタープレートのPVDF膜の表面を、例えば、抗インターフェロンガンマ(IFNγ)又は他のサイトカイン特異的抗体に結合する捕捉抗体でコートする。細胞インキュベーション及び刺激工程の間、患者全血から単離したT細胞を、プレートのウェルに、上記配列(複数可)と一緒に播種し、ウェルの膜表面上に実質的に単層を形成させる。任意の抗原特異的細胞を本発明の配列のうち1種又は複数で刺激することで、それら細胞は活性化されて、IFNγを放出する。このIFNγが、固定化抗体により、膜表面で直接捕捉される。すなわち、IFNγは、培養培地中に拡散する、又はプロテアーゼにより分解されバイスタンダー細胞の受容体に結合する機会を得る前に、分泌細胞を直接取り囲む範囲で「捕捉される」。引き続いての検出工程は、固定化IFNγを免疫スポットとして視覚化する。免疫スポットは、本質的に、活性化細胞の分泌の足跡である。
【0047】
ELISPOT試験の具体例に関して、プレートの各ウェルを、試験又は検出される細胞に特異的な精製サイトカイン特異的抗体でコートする。T細胞を、対象(例えば、ライム病又はTBRFを有することが疑われる対象)から単離し、各ウェルで培養し、本発明の1種又は複数の配列の組換え抗原で刺激する。ライム陽性患者細胞は、刺激に反応してサイトカインを分泌し、これが、ウェルにコートした抗体により捕捉され、ELISAで更に検出される。
【0048】
ELISAアッセイも、抗原の検出に使用することができる。ELISAアッセイは、タンパク質混合物(例えば、ライセート)中の特定タンパク質を定量することを可能にする、又は試料中にあるペプチドが存在するかどうか特定するのに使用することができる。同様に、ELISAアッセイは、標的として特定抗原を使用することにより、特異的抗体が存在するかどうか特定するのに使用することができる。本発明で使用する場合、標的アミノ酸配列(複数可)を、表面に付着させる。そうすると、試験される試料中に存在する場合、活性抗体は、抗原に結合することができる。酵素を連結した二次抗体を加え、最終工程で、酵素の基質を含有する物質を加える。続く反応工程により、検出可能なシグナルが生成する。このシグナルは、最も一般的には基質の変色である。
【0049】
ラテラルフローアッセイは、他にも様々な名前で称し、そのような名前として、ラテラ
ルフロー試験、ラテラルフロー装置、ラテラルフロー免疫アッセイ、ラテラルフロー免疫クロマトグラフィーアッセイ、及び迅速検査(rapid test)が挙げられるが、これらに限定されない。ラテラルフローアッセイは、混合物、例えば液体試料中の1種又は複数の分析物、例えば抗原等の存在を検出及び/又は定量する、簡便で万能な、紙を利用したプラットフォームである。ラテラルフローアッセイは、定性的であることも定量的であることも可能である。ラテラルフローアッセイでは、関心対象の1種又は複数の分析物を含有する試料を、試料吸着パッドに添加すると、試料は、分析物(複数可)と相互作用することができる分子が付着している様々な重合体試験ストリップゾーンを通じて毛細管作用により吸引される。試料は、複合体放出パッドへと遊走するが、このパッドは、関心対象の分析物(複数可)に特異的に結合する、蛍光、有色、又はそれ以外で検出可能な粒子と複合した分子を含有している。最後に、試料は、結合した分析物(複数可)も含めて、検出ゾーンへと遊走する。検出ゾーンの多孔質膜内には、抗体又は抗原等の生物学的成分があり、これらは、列になって固定されており、検出可能な粒子と反応することになる。ラテラルフローアッセイは、典型的には、試料がストリップを通じて流れていることを確認する対照ラインと、及び関心対象の分析物(複数可)の存在を検出するための1つ又は複数の試験ラインと、を有する。結果は、目で読むことも可能であるし、結果を読んで解釈することができる機械で読むことも可能である。ラテラルフローアッセイは、直接アッセイとして設計することも、「サンドイッチ」アッセイとして設計する(その場合、試験ライン位置の着色ラインの存在が、試験陽性を示す)ことも、競合アッセイとして設計する(その場合、着色ラインの不在が試験陽性を示す)ことも可能である。直接アッセイ及び競合アッセイは、多重化可能である。
【0050】
本発明の方法の1つの態様において、本発明の標識化及び/又は結合アミノ酸配列のうち2種以上が生体試料と混合される場合、少なくとも2種のアミノ酸配列が検出される場合に陽性結果が示されている。本発明の別の態様において、本発明の標識化及び/又は結合アミノ酸配列のうち少なくとも1種が生体試料と混合される場合、少なくとも1種のアミノ酸配列が検出される場合に陽性結果が示されている。
【0051】
本発明の方法において、本発明のアミノ酸配列がコードするペプチドに結合した任意の一次抗体が、検出可能部分と複合体形成した二次抗体として使用される抗ヒト抗体、例えば、IgG又はIgM等を用いて検出可能である。本明細書中いずれかの箇所で記載されるとおり、検出可能部分は、発色団、放射性部分、及び酵素からなる群より選択することが可能であるか、又は当業者に既知である他の検出可能部分であることが可能である。1つの実施形態において、検出可能部分は、アルカリホスファターゼを含む。別の実施形態において、検出可能部分は、ビオチンを含む。
【0052】
本発明の別の態様において、試料中の様々なボレリア種を検出及び識別する方法が提供される。試料は、ライム病を有することが疑われる対象に由来するものが可能である。本方法は、例えば、試料、例えば、TBRFを有することが疑われる対象から得られる生体試料を用意することと、及び生体試料を本発明の標識化及び/又は結合アミノ酸配列のうち1種又は複数と混合又は接触させることと、を含むことができる。アミノ酸は、アッセイで陽性結果が得られない場合に、それらの存在を確認するために標識化することができる。
【0053】
本発明の一部の実施形態において、少なくとも1種のアミノ酸配列が検出される場合に、試料を、TBRFボレリアの複数種パネルアッセイにおいて陽性であると見なすことができる。本発明の一部の実施形態において、少なくとも2種のアミノ酸配列が検出される場合に、試料を、TBRFボレリアの複数種パネルアッセイにおいて陽性であると見なすことができる。本発明の一部の実施形態において、種が同定される少なくとも2種のアミノ酸配列が検出される場合に、試料を、TBRFボレリアの複数種パネルアッセイにおい
て陽性であると見なすことができる。
【0054】
等価物
本発明の複数の実施形態を、本明細書中、記載及び解説してきたものの、当業者なら、本明細書中記載される、機能を実行するための及び/又は結果及び/又は1つ又は複数の利点を得るための、様々な他の手段及び/又は構造を、すぐに企図するだろうし、そのような改変及び/又は修飾はそれぞれが、本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者なら、本明細書中記載される全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成が、例示を意味していること、及び現実のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示を利用する具体的応用(単数又は複数)に依存することになることを、すぐに認めるだろう。当業者なら、本明細書中記載される本発明の具体的実施形態の等価物を数多く、認識するだろう、又は常用実験にすぎないものを用いて確定することができるだろう。したがって、当然のことながら、上記実施形態は、例としてのみ、提示されるものであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内において、本発明は、具体的に記載されるとおり及び特許請求されるとおり以外のやり方で実施することができる。本発明は、本明細書中記載される個別の特長、システム、物品、材料、及び/又は方法のそれぞれに関する。また、そのような特長、システム、物品、材料、及び/又は方法が、相互に矛盾するのではない場合、そのような特長、システム、物品、材料、及び/又は方法の2つ以上の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
本明細書中定義及び使用されるとおりの全ての定義は、定義される用語の、辞書での定義、参照として援用される文書での定義、及び/又は通常の意味よりも優先されると解釈されなければならない。
【0056】
不定冠詞の「a」及び「an」は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書中使用される場合、明確に否定が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解釈されなければならない。「及び/又は」という語句は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書中使用される場合、そのように結合されている要素の「いずれか又は両方」、すなわち、複数の要素が、ある場合には共同して存在し、別の場合には分離して存在することを意味すると解釈されなければならない。「及び/又は」節により具体的に特定される要素以外の他の要素は、明確に否定が示されない限り、そのような具体的に特定される要素に関連するか否かに関わらず、任意選択で存在することができる。
【0057】
本出願において引用又は言及される全ての参照、特許、及び特許出願、並びに刊行物は、本明細書中そのまま全体が参照として援用される。
【実施例】
【0058】
実施例1.TBRF免疫ブロット抗原包括性試験
TBRF免疫ブロットIgG及びIgM試験、すなわち定性的免疫ブロットアッセイを、設計及び実行して、回帰熱又はライム様症候を有することが疑われる血清試料中のTBRFボレリア種に対するIgG抗体及びIgM抗体を検出した。組換えTBRFボレリア抗原を、ニトロセルロースストリップに直線状に噴射し、次いで、これをTBRF免疫ブロット試験に使用した。実験を行って、TBRF免疫ブロット試験の特異性を特定した。
【0059】
方法
抗原の調製
以前に記載されたとおり[Liu et al., Healthcare (2018) 6(3) pii: E99; Shah et al., Healthcare (2019) 7:121]、ハイブリッド遺伝子構築物又は遺伝子の一部分をpETベクターにクローン導入し、エシェリキア・コリ(Escherichia coli
)(GenScript、Piscataway、NJ)で遺伝子産物を発現させ、次いで、タンパク質を純度>90%で単離することにより、組換え標的タンパク質を得た。以前に記載されたとおり[Shah et al., Healthcare (2019) 7:121]、組換えタンパク質は、4種の標的抗原、BipA、GlpQ、BpcA/fHbp、及びP41/FlaBを検出するため、複数のTBRFボレリア種(B.ハームシー、B.ミヤモトイ、B.ツリカタエ、及びB.ツルシカ)に由来した。
【0060】
抗原ストリップの調製
以前に記載されたとおり[Liu et al., Healthcare (2018) 6(3) pii: E99; Shah et al., Healthcare (2019) 7:121]、TBRF免疫ブロット用の抗原ストリップを調製した。精製タンパク質及び対照タンパク質を希釈し(7~19ngタンパク質/ライン)、BioDot液体ディスペンサー(BioDot、Irvine、CA)を用いて、ニトロセルロースシート(Cytiva、Marlborough、MA)に直線状に噴射した。次いで、シートを5%脱脂粉乳でブロックし、スライスして3mm幅のストリップにした。
【0061】
抗体反応性の検出
血清学的免疫ブロット試験は、臨床検査室改善修正法(Clinical Laboratory Improvement Amendments、CLIA)認定を受けた高度複雑性試験を行う施設であるIGeneX Reference Laboratoryで行った。
【0062】
以前に記載されたとおり[Liu et al., Healthcare (2018) 6(3) pii: E99; Shah et al., Healthcare (2019) 7:121]、試験血清のTBRFボレリア特異的抗体と免疫ブロットのTBRFボレリア抗原の間の反応性を検出した。ストリップを標識化し、槽中の希釈剤(100mMのTris、0.9%NaCl、0.1%Tween-20、及び1%脱脂粉乳)に5分間(min)浸漬した。次いで、試験血清又は対照血清いずれかを分取量10μLで、ストリップに加えた。ストリップを、血清とともに室温で1時間インキュベートし、室温で洗浄緩衝液(KPL、Gaithersburg、MD)で3回洗い、次いで、最終洗浄液を吸引した。IgG及びIgM反応性を検出するため、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGを1:10,000希釈で又はアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgMを1:6,000希釈でそれぞれ用いて(KPL、Gaithersburg、MD)、1時間ストリップとともにインキュベートし、次いで、3回洗った。抗体/抗原反応性のバンドを視覚化するため、ストリップを、発色基質である、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸とニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT、KPL、Gaithersburg、MD)と反応させ、較正対照が39kDaに視認可能なバンドを生成した後、蒸留水で洗うことにより、反応を終了させた。較正対照のものより低い強度を示すバンドを、陰性として記録した。ボレリア感染症であることが確認されている患者由来のヒト血清を陽性対照として用い、未感染の個人由来の血清を陰性対照として用いた。患者試料の免疫ブロット試験は全て、陽性及び陰性対照血清試料の試験と同時進行で行った。
【0063】
免疫ブロットのスコアリング
TBRFボレリア免疫ブロットの場合、P41/FlaB(41kDa)、並びに4種の抗原、BipA(75kDa)、GlpQ、BpcA/fHbp(21~23kDa)のうちいずれか2種に対するIgG抗体又はIgM抗体いずれかの検出が、TBRF種に関する最良の特異性を与えた。
【0064】
各抗原型内の2種以上のタンパク質に対するIgG抗体又はIgM抗体いずれかの検出を、その抗原型の陽性反応と見なした。以前に記載されたとおり[Shah et al., Healthcare (2019) 7:121]、4種のTBRFボレリア抗原に対するIgG抗体又はIgM抗体いずれかの反応性について同じ基準を適用することで、最適な検出感度が導かれた。
【0065】
結果
図1に示すとおり、TBRFボレリア種、B.ツリシカ、B.ミヤモトイ、B.ハームシー、B.パルケリ、及びB.ツリカタエ種に対する抗体が、5種全てに由来する組換え抗原から調製したTBRF免疫ブロットストリップにより検出された。このことは、TBRF免疫ブロットがTBRFボレリアグループ抗体を検出したことを示す。
【0066】
実施例2.ダニ媒介疾患が疑われる患者のTBRF免疫ブロット臨床試験
慢性ライム病(CLD)の症例定義に当てはまる患者の試験を行なって、試験限界の影響を評価し、及びTBRFボレリアに対する曝露レベルを特定した。結果は、全員が、B.ブルグドルフェリ種に曝露していたことも明らかにした。
【0067】
方法
使用した方法は、実施例1及び本明細書中いずれかの箇所で記載したとおりであった。
【0068】
抗原調製及び抗原ストリップの調製
標的抗原BipA、GlpQ、BpcA/fHbp、P41/FlaB、及びVlp7を検出するため、追加の組換えタンパク質は、本明細書中いずれかの箇所で記載のとおり複数のTBRFボレリア種(B.ハームシー、B.ミヤモトイ、B.ツリカタエ、B.パルケリ、及びB.デュトニイ)に由来した。配列番号1~11のアミノ酸配列を含むこれらの組換えタンパク質を、TBRF免疫ブロットストリップに含ませた。
【0069】
臨床試験
合計265の患者血清試料を、TBRF免疫ブロットIgM及びIgGにより試験した。これには、CLD症候の患者90人、及びTBRF陰性であった患者212人の血清試料が含まれた。
【0070】
慢性ライム病患者コホート(n=90)
CLD患者90人の患者コホートを、ダニ媒介疾患の診断及び治療を専門とする、San Francisco、CAに所在する医療機関から採用した。西部治験審査委員会(Western Institutional Review Board(WIRB)、Puyallup、WA)により、無記名後向きデータ収集プロトコル及び同意書式が承認された。患者は、どちらの性別であっても、患者が少なくとも年齢18歳であり、LDに一致する筋骨格系症候、精神神経系症候、及び/又は心臓系症候の病歴を有し、データ収集に関して説明と同意の文書を提出することを条件に、本試験に認定された。対象が、6ヶ月超続く症候を持つ未処置の又は以前に処置されたCLDの症例定義に当てはまる場合、その対象を本試験に含めた。これは、いずれかの箇所で詳細に記載されるとおりであった[Cameron et al., Expert Rev Anti Infect Ther. (2014) 12:1103-1135; Stricker et al., Am J Infect Dis (2018) 14:1-44]。本試験への参加に関して、患者は、文書化されたダニ咬傷又は遊走性紅斑発疹を有していることを求められなかった。なぜなら、血清学的試験は、活動性感染症ではなく曝露を検出するために用いられたからである。非特定化された患者試料を、患者の居住場所に従ってコード付けした。血液を採取し、血清を、独立研究施設(BioReference(登録商標)、LabCorp(登録商標)、及びAnyLabTestNow(登録商標)
を含む)で分離し、血清試料を、免疫ブロット試験を行うためリファレンス研究施設に移送した。
【0071】
対照患者(n=175)
B.ブルグドルフェリ種及びTBRFボレリア種について陰性であることが予想される合計175のヒト血清を、疾病管理予防センター(CDC、Atlanta、GA)、米国病理医協会、ニューヨーク州保険省、New York Biologics(Southampton、NY、USA)、及びIGeneX Reference Laboratory(Milpitas、CA、USA)から得た。IGeneX試料は、ダニ媒介疾患のルーチン検査用に受理された血清の残部であって、この試験で使用しなければ廃棄されていたと思われる。患者血清及び対照血清の免疫ブロットIgM及びIgG試験は、検査技師により、TBRF患者由来の臨床試料の試験と同じ様式で、盲検式に行われた。結果を表1~2及び
図2~3に示す。
【0072】
結果
代表的な患者血清試料でのTBRFボレリアの免疫ブロット反応性を、
図2に示す。これは、TBRF免疫ブロットが、血清試料中のTBRFボレリアグループ抗体の検出に成功していることを実証する。
【0073】
B.ブルグドルフェリ種及びRFBについて陰性であることが予想される175の対照血清で得られた結果は、B.ブルグドルフェリ種免疫ブロットで2.3%(4/175試料)及びRFB免疫ブロットで2.9%(5/175試料)という偽陽性率をもたらした(表1)。RFBの試験偽陽性は、アレルギー患者血清(1つの対照)、多発性硬化症(1つの対照)、ウイルス感染(1つの対照)、及び梅毒(2つの対照)で見られた。
【0074】
配列番号1~11を含む実施例1に記載のTBRF免疫ブロットを用いることで、CLD症例定義に当てはまる患者の試験から、全員が、B.ブルグドルフェリ種に曝露しており、62%はTBRF種に曝露していたことが明らかとなった。CLDコホートにおいて(表2)、免疫ブロット試験から、LDが疑われる対象90人のうち、合計48人の患者(53%)は、TBRFについてのみ血清反応陽性であり、8人の患者(9%)は、TBRFボレリア種とB.ブルグドルフェリ種に混合感染していた。
図2は、代表的な患者血清試料のTBRF免疫ブロットを示す。陽性免疫ブロットを、1種又は複数のRFB種に対する抗体の存在について更に特性分析し、1種より多いRFB種に感染している例を同定した(表2)。対照血清の免疫ブロット試験から、TBRFアッセイに関して97.1%という優れた特異性が実証された(表2)。
図3に示すとおり、配列番号1~11の様々な組み合わせが患者血清試料で同定された。このことから、包括的試験には、複数種由来の抗原が必要とされることが実証された。
【0075】
これらの結果は、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原について試験するだけでは見逃されてしまうと思われる慢性ライム病症候を持つ患者を、TBRFボレリア種に対する抗体の検出がどのようにして同定したかについて解説した。これらの結果は、TBRFボレリア曝露の血清型構成が複雑であることも裏付けたものであり、それにより、TBRF試験における包括性、すなわち複数のTBRF種由来の抗原を同時試験することの威力及び重要性を示すものである。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例1~2の考察
TBRFは、世界中で見つかり、特に原因不明の発熱症例に関して、罹患率及び死亡率の大きな原因である。分子試験の進歩は、ヒト検体におけるボレリア種の幅広い同定をもたらしてきたが、その結果、RFB感染症の地理的分布及び有病率に関する支配的な考えに異議が唱えられている。RFBは、米国西部、中央アメリカ、及び南アメリカにおいて増大しつつある懸念であるが、TBRFは、米国では全国的に報告義務はなく、標準の症例定義が存在しない。2011年に、TBRFは、西部の12州で報告が義務づけられ、症例数は504であった。報告された症例のうち70%は、3つの州に含まれていた:カリフォルニア州(33%)、ワシントン州(25%)、及びコロラド州(11%)である。米国において、病原となる種には、B.ミヤモトイ、B.ハームシー、B.ロネスタリ
、B.パルケリ、B.ツリカタエ、及びB.マツォッティイ(mazzotii)が含まれる。米国における大部分の症例は、オルニソドラス・ヘルムシ(Ornithodoros hermsi)マダニにより伝播するB.ハームシーによるものであるが、B.ミヤモトイ、B.ハームシー、及びB.パルケリのヒト感染が、カリフォルニアで報告されており、ヒト感染は確認されていないものの、マダニにおいてB.コリアセアエ(coriaceae)が検出された[Fesler et al. Healthcare 8(2): 97-112 (2020)]。
【0079】
ボレリアスピロヘータの遺伝子多様性、並びに感染症を引き起こす生物と同じぐらい多様である感染症症候は、ボレリア関連疾患の診断を困難なものにしている。まとめると、TBRFボレリアへの曝露が懸念の原因であり、TBRFボレリアは、広義のB.ブルゴドルフェリ種の血清反応陰性である患者のライム病症候を説明できる。本明細書中示すとおり、一部の患者で、B.ブルゴドルフェリ種及びTBRF種両方に対する二重曝露を実証することができるが、このことは、診断及び治療を更に複雑にするものである。本発明の方法及び組成物を用いたRFB種の免疫ブロット試験は、多様なTBRFボレリア血清型のグループの検出を可能にし、病原性ボレリアに対するヒト曝露についてのより深い理解をもたらす。
【0080】
等価物
本発明の複数の実施形態を、本明細書中、記載及び解説してきたものの、当業者なら、本明細書中記載される、機能を実行するための及び/又は結果及び/又は1つ又は複数の利点を得るための、様々な他の手段及び/又は構造を、すぐに企図するだろうし、そのような改変及び/又は修飾はそれぞれが、本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者なら、本明細書中記載される全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成が、例示を意味していること、及び現実のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示を利用する具体的応用(単数又は複数)に依存することになることを、すぐに認めるだろう。当業者なら、本明細書中記載される本発明の具体的実施形態の等価物を数多く、認識するだろう、又は常用実験にすぎないものを用いて確定することができるだろう。したがって、当然のことながら、上記実施形態は、例としてのみ、提示されるものであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内において、本発明は、具体的に記載されるとおり及び特許請求されるとおり以外のやり方で実施することができる。本発明は、本明細書中記載される個別の特長、システム、物品、材料、及び/又は方法のそれぞれに関する。また、そのような特長、システム、物品、材料、及び/又は方法が、相互に矛盾するのではない場合、そのような特長、システム、物品、材料、及び/又は方法の2つ以上の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
本明細書中定義及び使用されるとおりの全ての定義は、定義される用語の、辞書での定義、参照として援用される文書での定義、及び/又は通常の意味よりも優先されると解釈されなければならない。
【0082】
不定冠詞の「a」及び「an」は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書中使用される場合、明確に否定が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解釈されなければならない。「及び/又は」という語句は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書中使用される場合、そのように結合されている要素の「いずれか又は両方」、すなわち、複数の要素が、ある場合には共同して存在し、別の場合には分離して存在することを意味すると解釈されなければならない。「及び/又は」節により具体的に特定される要素以外の他の要素は、明確に否定が示されない限り、そのような具体的に特定される要素に関連するか否かに関わらず、任意選択で存在することができる。
【0083】
本出願において引用又は言及される全ての参照、特許、及び特許出願、並びに刊行物は
、本明細書中そのまま全体が参照として援用される。
【配列表】
【国際調査報告】