(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】低侵襲手術のための同心チューブ器具
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20240130BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/94
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544435
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 US2022014989
(87)【国際公開番号】W WO2022169907
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555616
【氏名又は名称】ヴィルトゥオーソ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【氏名又は名称】森 智香子
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ディロン、ニール
(72)【発明者】
【氏名】ブルム、エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ブランコム、ローレン
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA33
4C130AA37
4C130AA42
4C130AB02
4C130AC05
4C160NN01
4C160NN03
4C160NN09
(57)【要約】
低侵襲手術装置は、チャネル内に収容された高度に湾曲した遠位端(72)を有するガイドチューブ(72)を含む。高度に湾曲した遠位端は、組織作業空間における三角測量が改善されるように最適化された曲率で構成される。ガイドチューブの高度に湾曲した遠位端は、手術ロボットの内視鏡装置内部の湾曲したチャネル(32、34)から延伸する。湾曲したチャネルとガイドチューブの高度に湾曲した遠位端との組み合わせにより、作業空間における操作性が改善される。いくつかの実施形態では、高度に湾曲した遠位端はニチノールを含み、所望の曲率に設定された形状である。高度に湾曲した遠位端は、再現可能な性能を有する安定した形状を達成するように湾曲させ得る。いくつかの実施形態では、第1および第2のガイドチューブの各々は、二重曲率構成を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術ロボットから延伸する内視鏡装置を含む手術ロボットであって、前記内視鏡装置が、アウターシースと、インナーシースと、前記インナーシースの内部に配置されたチャネルとを含む、手術ロボットと、
前記チャネルの内部に位置づけられたガイドチューブであって、前記ガイドチューブが、前記手術ロボットに向かって延伸する近位端と、手術機器から離れるように延伸する高度に湾曲した遠位端とを含む、ガイドチューブと、
前記ガイドチューブの内部に収容されたインナーチューブであって、前記インナーチューブが、前記ガイドチューブを基準として軸方向に可動かつ回転可能である、インナーチューブとを備え、
前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含む、手術を行うための器具。
【請求項2】
前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、約70m^(-1)~約75m^(-1)の間の曲率を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、約72m^(-1)の曲率を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記ガイドチューブと、前記ガイドチューブの内部に収容された前記インナーチューブとの組み合わせが、約40m^(-1)~約100m^(-1)の間の組み合わせられた有効曲率を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記ガイドチューブと、前記ガイドチューブの内部に収容された前記インナーチューブとの組み合わせが、約60m^(-1)~約65m^(-1)の間の組み合わせられた有効曲率を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記ガイドチューブと、前記ガイドチューブの内部に収容された前記インナーチューブとの組み合わせが、約40m^(-1)を上回る組み合わせられた有効曲率を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記ガイドチューブと、前記ガイドチューブの内部に収容された前記インナーチューブとの組み合わせが、約63m^(-1)を上回る組み合わせられた有効曲率を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記ガイドチューブが、第1の湾曲領域および第2の湾曲領域を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記第1の湾曲領域および前記第2の湾曲領域が、略同一の曲率面内で互いに対向して向けられる、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記第1の湾曲領域が第1のアーク長を含み、前記第2の湾曲領域が、前記第1のアーク長未満である第2のアーク長を含み、前記第2の湾曲領域が、約35m^(-1)~約45^(-1)の間の曲率を含む、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、ニチノールを備える、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記インナーシースの内部に配置された前記チャネルが湾曲している、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記チャネルの曲率が、前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端の曲率未満である、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記インナーチューブが湾曲している、請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記インナーチューブの曲率が、前記ガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端の曲率未満であり、前記チャネルの曲率未満である、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
手術ロボットから延伸する内視鏡装置を含む手術ロボットであって、前記内視鏡装置が、アウターシースと、インナーシースと、前記インナーシースの内部に配置された第1および第2のチャネルとを含む、手術ロボットと、
前記チャネルの内部に位置づけられた第1のガイドチューブであって、前記第1のガイドチューブが、前記手術ロボットに向かって延伸する近位端と、前記手術ロボットから離れるように延伸する第1の高度に湾曲した遠位端とを含む、第1のガイドチューブと、
前記チャネルの内部に位置づけられた第2のガイドチューブであって、前記第2のガイドチューブが、前記手術ロボットに向かって延伸する近位端と、前記手術ロボットから離れるように延伸する第2の高度に湾曲した遠位端とを含む、第2のガイドチューブと、
前記第1のガイドチューブの内部に収容された第1のインナーチューブであって、前記第1のインナーチューブが、前記第1のガイドチューブを基準として軸方向に可動かつ回転可能である、第1のインナーチューブと、
前記第2のガイドチューブの内部に収容された第2のインナーチューブであって、前記第2のインナーチューブが、前記第2のガイドチューブを基準として軸方向に可動かつ回転可能である、第2のインナーチューブとを備え、
前記第1のガイドチューブの前記第1の高度に湾曲した遠位端が、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含み、
前記第2のガイドチューブの前記第2の高度に湾曲した遠位端が、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含む、手術を行うための器具。
【請求項17】
前記第1のガイドチューブの前記第1の高度に湾曲した遠位端が、約72m^(-1)の曲率を含み、
前記第2のガイドチューブの前記第2の高度に湾曲した遠位端が、約72m^(-1)の曲率を含む、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記第1のガイドチューブと、前記第1のガイドチューブの内部に収容された前記第1のインナーチューブとの組み合わせが、約60m^(-1)~約65m^(-1)の間の組み合わせられた有効曲率を有し、
前記第2のガイドチューブと、前記第2のガイドチューブの内部に収容された前記第2のインナーチューブとの組み合わせが、約60m^(-1)~約65m^(-1)の間の組み合わせられた有効曲率を有する、請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記第1のガイドチューブと、前記第1のガイドチューブの内部に収容された前記第1のインナーチューブとの組み合わせが、約40m^(-1)を上回る組み合わせられた有効曲率を有し、
前記第2のガイドチューブと、前記第2のガイドチューブの内部に収容された前記第2のインナーチューブとの組み合わせが、約40m^(-1)を上回る組み合わせられた有効曲率を有する、請求項16に記載の器具。
【請求項20】
前記第1のガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、第1の湾曲領域および第2の湾曲領域を含む二重曲率構成を含み、前記第1の湾曲領域が、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含み、前記第2の湾曲領域が、約35m^(-1)~約45m^(-1)の間の曲率を含み、
前記第2のガイドチューブの前記高度に湾曲した遠位端が、第3の湾曲領域および第4の湾曲領域を含む二重曲率構成を含み、前記第3の湾曲領域が、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含み、前記第4の湾曲領域が、約35m^(-1)~約45m^(-1)の間の曲率を含む、請求項16に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術を行うための手術装置および関連する方法に関する。より特定的には、本発明は、同心チューブアセンブリを用いた低侵襲手術のためのツールおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械ロボットを用いた低侵襲手術は、医学における発展している分野である。低侵襲手術を行うための従来の装置、たとえば内視鏡および切除鏡は、一般的には患者の体内の切開部または自然の開口部から挿入される遠位先端部を含む。遠位先端部は光学レンズを含み、これが体内に置かれると、外科医は遠位先端部に近接した視野を目視することができる。内視鏡は通常、手術室のモニタに視野を表示するためにレンズに取り付けられたカメラを有する。いくつかの用途では、内視鏡は、内視鏡の遠位先端部に設置されたカメラを含む。該装置はまた、装置を通って延伸する狭窄した作業チャネルを含む。1以上の細長い手術具を、作業チャネルを通して挿入し得る。切開装置、バスケット、またはレーザー光学系等の器具が、手術具に含まれ得る。手術具の遠位端は、装置の遠位先端部から突出し、それによって、外科医が手術中に患者の体内におけるツールの操作を視覚的に観察することが可能になる。
【0003】
内視鏡または切除鏡の狭い作業チャネルを通して用いるための従来の手術具は、一般的にサイズが制限され、特に内視鏡または切除鏡の遠位端から延伸するツール端部の可動範囲および操作の自由度が制限される。より良好な可動範囲および作業空間におけるより良好なツール操作能力を達成するための可能な解決策として、内視鏡または切除鏡内の湾曲したチャネルが提案されてきた。しかしながら、内視鏡または切除鏡の狭い範囲内に手術具を通過させるための湾曲したチャネルを設けることは、さらなる課題を提示する。たとえば、湾曲した同心チューブは、同心チューブが収容されるチャネルの曲率平面に整合する傾向がある。結果として、内視鏡の湾曲したチャネル内部に位置づけられた手術具の湾曲したチューブは、チャネルの遠位端から延伸すると、改善された可動範囲を提供し得るが、チャネルの平面曲率外での操作が所望される場合、そのような構成は最適な解決策を提供しない。
【0004】
過去数十年にわたり、手術中にできるだけ最も低侵襲な方法で体内に進入することが、患者に多大な利点をもたらすことがますます明らかになってきている。低侵襲手術とは、大きく開く切開なしに体内に進入するあらゆる外科処置を表現する一般的な用語である。低侵襲手術を行うための従来の装置、たとえば内視鏡および切除鏡は、一般的に硬性で、患者の体内の切開部または患者の体内の自然の開口部から挿入される遠位先端部を含む。遠位先端部は、体内に置かれると外科医が遠位先端部に近接した視野を目視することができる光学レンズを含む。内視鏡は通常、手術室のモニタ上に視野を表示するために取り付けられたカメラを有する。いくつかの用途では、内視鏡は、内視鏡の遠位先端部に設置されたカメラを含む。装置はまた、装置を通って延伸する作業チャネルを含む。作業チャネルを通して、1以上の細長い手術具を挿入し得る。切断装置、バスケット、レーザー光学系等のツールが手術具に含まれ得る。手術具の遠位端は、装置の遠位先端部から突出し、それによって、外科医が手術中に患者の体内におけるツールの操作を視覚的に観察することが可能になる。
【0005】
低侵襲手術は腹腔鏡手術を含み、これは、可視化をもたらし、術野を目視するためのチューブ(内視鏡)、および体内の小さなポートを通過する長尺の硬性器具を用いる。従来の腹腔鏡手術では、内視鏡は通常、術野を視覚化するためだけに使用され、ツールはその中を通過しない。ツールは体外で、切開ポートを通して向きを変えられ、手術部位における機器操作を提供する。腹腔鏡下手術におけるツール操作は、体内のポートを通して長尺で硬性のシャフトを旋回させることによって行われる。気腹部、胸腔、骨盤、またはあらゆる他の解剖学的に十分な空間を有する作業容積における手術については、本概念は機器操作を与えるための優れた低侵襲ソリューションを提供することが多い。しかしながら、手術部位が細長いチャネルの下にある場合、これらの長尺で硬性のシャフトを旋回させる能力は低下する。アクセスチャネルがより長く、および/または狭くなると、ツールの操作能力は急激に低くなる。
【0006】
低侵襲手術は、内視鏡手術をさらに含む。腹腔鏡手術では、内視鏡を用いて可視化をもたらすのに対し、内視鏡手術は、手術機器を内視鏡チューブ自体の作業チャネルに通す点において異なる。内視鏡手術中に用いることができる手術機器の例は、はさみ、鉗子、レーザーファイバ、モノポーラ/バイポーラ焼灼器等である。内視鏡には硬性内視鏡および軟性内視鏡の両方があり、硬性内視鏡は、体外から手術部位まで直線状の経路を通る手術に用いられ、軟性内視鏡は、湾曲した解剖学的組織を通る曲がりくねった経路が必要とされる手術に用られる。硬性内視鏡は現在、神経外科、胸部外科、整形外科、泌尿器科、婦人科等を含むがこれらに限定されないほとんどすべての手術分野で用いられている。硬性内視鏡は現在、全身の手術で用いられているが、欠点がないわけではない。硬性内視鏡の作業チャネルを通して操作するツールは、通常、直線状で硬性のツールであるという点で、腹腔鏡ツールに類似している。一般的には、これらのツールもまた、内視鏡に対して2自由度の動作に制限され、これらは軸方向への挿入/後退および回転が可能である。場合によっては、外科医が体外で内視鏡を旋回/傾斜させる能力を有し得るが、これは、内視鏡が動くと内視鏡の視野もそれに伴って動くため、作業を特に困難にさせる。また、外科医は、内視鏡の作業チャネルの大きさの制約に起因して、ほとんどの時間、手術部位に一度に1つの機器しか到達させることができず、両手による双手作業の能力が事実上排除される。このように、一度に1つのツールのみという制限、常に変化する視野、限られた自由度、および内視鏡先端部における機器巧緻性の欠如により、内視鏡手術は特に困難なタイプの低侵襲手術となっている。
【0007】
電気機械手術ロボットは、精度、空間的推論、巧緻性に特に長けているため、手術機器操作を支援する大きな可能性を有し、急速に発展している医療分野である。手術ロボットは世界中で広く適合され、何十万件の手術に利用されてきた。これまでに設計された手術用ロボットシステムのほとんどが、機器操作を補助するものであり、概して旋回式ツールおよび可撓性ツールに分類することができる。旋回式の腹腔鏡式システム、たとえば広範に用いられているda Vinci Xiロボット(Intuitive Surgical社製)は、腹腔鏡ツールと同様に、体内のポートを介して傾けることによって機器操作を得る。体外でツールを傾けたり回転させたりすることが可能ではない手術用途のために、研究コミュニティーのいくつかのグループが、可撓性要素ベースのロボットシステムを開発している。これらのシステムは、多くの場合連続体ロボット、あるいは連続的に曲がる、弾性構造を持つロボットと称される。また、同心弾性チューブで構成された、針サイズの小型連続体ロボットの一種である同心チューブマニピュレータも存在する。同心チューブロボットは、体内において関節を有する小径ロボットを必要とする多くの種類の低侵襲外科的介入において有望視されている。眼球、耳、副鼻腔、肺、前立腺、脳等における手術が例として含まれる。これらの用途の多くでは、一般的に、ロボットが人体内で「より狭いコーナー」を曲がり、手術部位で巧緻に作業することを可能にするために、高い曲率が望ましい。内視鏡手術の文脈において、同心チューブの予備曲率は、マニピュレータが内視鏡の先端にどの程度近づいて作業を行うことができるかを決定し、これは内視鏡手術中には非常に重要である。
【0008】
従来の内視鏡手術では、外科医は通常、一方の手に内視鏡を保持し、他方の手に内視鏡機器を保持するが、このことは外科医が2つの器具を同時に操作することを一般的に不可能にするものである。ヒューマンエラーという側面に起因して、外科医が内視鏡機器を別のものと交換する必要があるときは、結果として常に注意を要し、潜在的に危険な内視鏡の動きになる可能性がある。しかしながら、外科医は、特定の状況において、特に物質を精密に把持、操作、および切断しようとする場合、2つの器具を同時に正確に操作する能力を必要とする場合が多い。内視鏡が同時に1つ以上のツールに対応することができる場合であっても、ツールは直線状で互いに対して平行な方向にしか向けることができないため、ツール間の真の協働が妨げられる。外科医は、ロボット手術システムが提供する向上された精度、巧緻性、視覚から多大な恩恵を受けることができるが、そのような従来のシステムでは操作性に限界がある。
【0009】
従来の手術ロボットのもう一つの問題点は、内視鏡装置から延伸する平行なチューブ構成は、内視鏡の先端部付近の視野内の作業空間においてツールの三角測量をもたらさないことである。加えて、そのような従来の構成は、長手方向軸に沿って概ね平行に延伸するチューブを含み、このため、組織を左右に押したり引いたりするための軸外力を加えることが略不可能である。また、そのような構成では、第1のツールおよび第2のツールが相互作用する公称相互作用点が、内視鏡の先端部の視野および有効作業空間を著しく超えて位置する。このように、従来の装置を用いて、2つの内視鏡ツールを協働させて組織を操作することは困難である。
【0010】
そこで、ロボット手術を行うための装置および方法、特に内視鏡装置の先端付近の視野で、第1および第2のツールを協調させて制御および操作するための装置と方法の改良が要求されている。
【発明の概要】
【0011】
本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の一部を簡略化して提示するために提供される。本概要は、クレームにおける主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、クレームにおける主題の範囲の決定を補助するものとして用いられることも意図されていない。
【0012】
低侵襲手術を行うための装置は、小切開部または開口部から患者の体内に挿入するように構成された遠位先端部を有する同心チューブアセンブリを含む。チューブアセンブリは、チャネルと、チャネル内に収容されたガイドチューブとを含む。ガイドチューブは、軸方向に平行移動し、チャネルに対して回転するように構成されている。インナーチューブは、ガイドチューブ内に位置づけられ、ガイドチューブに対して軸方向に平行移動および回転するように独立して移動可能である。ガイドチューブは、チューブアセンブリの端部に画定された組織作業空間内の所望の位置にインナーチューブの遠位端を誘導するように操作可能である。
【0013】
ガイドチューブは、あらかじめ形状付けられた、高度に湾曲した遠位端を含む。また、チャネルは、その遠位開口部近くで湾曲した形状を有する。湾曲したチャネルと高度に湾曲したガイドチューブとは、肘形状構成を形成するように協働し、ガイドチューブが中心線軸を基準として角度をもって組織の作業空間に進入することを可能にする。このような作業空間への角度をもった進入は、組織の優れた三角測量と操作を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、手術を行うための装置を提供し、手術ロボットから延伸する内視鏡装置を含む手術ロボットを備え、内視鏡装置は、アウターシースと、インナーシースと、インナーシース内に位置づけられたチャネルとを含む。ガイドチューブはチャネル内に位置づけられ、ガイドチューブは、手術ロボットに向かって延伸する近位端と、手術機器から離れるように延伸する高度に湾曲した遠位端とを含む。インナーチューブはガイドチューブ内に収容され、インナーチューブは軸方向に移動可能であり、ガイドチューブを基準として回転可能である。ガイドチューブの高度に湾曲した遠位端は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含む。
【0015】
さらなる実施形態では、ガイドチューブの高度に湾曲した遠位端は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含む。
【0016】
さらなる実施形態では、本開示は、外科手術を行うための装置を提供し、外科手術ロボットから延伸する内視鏡装置を含む外科手術ロボットを備え、内視鏡装置は、アウターシースと、インナーシースと、インナーシースの内側に位置づけられた第1および第2のチャネルとを含む。第1のガイドチューブは、チャネル内に位置づけられ、第1のガイドチューブは、手術ロボットに向かって延伸する近位端と、手術ロボットから離れるように延伸する第1の高度に湾曲した遠位端とを含む。第2のガイドチューブは、チャネル内に位置づけられ、第2のガイドチューブは、手術ロボットに向かって延伸する近位端と、手術ロボットから離れるように延伸する第2の高度に湾曲した遠位端とを含む。第1のインナーチューブは、第1のガイドチューブ内に収容され、第1のインナーチューブは軸方向に移動可能であり、第1のガイドチューブを基準として回転可能である。第2のインナーチューブは、第2のガイドチューブ内に収容され、第2のインナーチューブは、第2のガイドチューブを基準として軸方向に移動可能かつ回転可能である。第1のガイドチューブの第一の高度に湾曲した遠位端は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含み、第2のガイドチューブの第2の高度に湾曲した遠位端は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を含む。
【0017】
さらなる実施形態では、第1のガイドチューブの第1の高度に湾曲した遠位端は、約72m^(-1)の曲率を含み、第2のガイドチューブの第2の高度に湾曲した遠位端は、約72m^(-1)の曲率を含む。
【0018】
本開示の別の目的は、内視鏡装置の先端部付近の視野において、第1および第2のツールを用いて組織を効果的に操作するための装置および方法を提供することである。
【0019】
当業者においては、本開示の多数の他の目的、利点および特徴が、以下の図面および好ましい実施形態の説明を検討することにより容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による低侵襲手術器具の一実施形態を示す側面斜視図である。
【
図2】
図1の低侵襲手術器具の詳細な側面図である。
【
図3A】
図1の低侵襲手術器具の一実施形態の分解斜視図である。
【
図3B】
図1の低侵襲手術装置の一実施形態の詳細な分解斜視図である。
【
図4】低侵襲手術装置用ツールカートリッジ器具の一実施形態の斜視図である。
【
図5】アウターシースと、インナーシースと、第1および第2のチャネルを含むシース挿入部とを含む低侵襲手術装置のチューブアセンブリの一実施形態の分解上面図である。
【
図6】シース内部での位置づけのために構成されたチャネル挿入部の一実施形態の部分断面図である。
【
図7】第1および第2のチャネル開口部およびチャネルブッシングを含むインナーシースの遠位端の実施形態の斜視図である。
【
図8】第1および第2のチャネルを含むシース挿入部の一実施形態の斜視図である。
【
図9】シース挿入部で用いるためのステアリングプラグの一実施形態の斜視図である。
【
図10】第1および第2のチャネルがその中に収容されたインナーシースの一実施形態の斜視図である。
【
図11】インナーチューブの一実施形態を示す側面図である。
【
図12】高度に湾曲したガイドチューブの一実施形態を示す側面図である。
【
図13】組み合わせられたインナーチューブおよび高度に湾曲したガイドチューブの実施形態の側面図である。
【
図14】第1および第2の高度に湾曲したガイドチューブと、そこから延伸する第1および第2のインナーチューブとを含む手術ロボット器具の一実施形態の斜視図である。
【
図15】後退位置にあるチャネル内部の高度に湾曲したガイドチューブの一実施形態の部分断面図である。
【
図16】二重湾曲構成を有するガイドチューブの一実施形態の側面図である。
【
図17】後退位置にあるチャネル内に位置づけられた二重湾曲構成を有するガイドチューブの一実施形態の部分断面図である。
【
図18】第1および第2のガイドチューブと、そこから延伸する第1および第2のインナーチューブとを含む組織作業空間の視野の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の様々な実施形態の製造および使用を以下に詳細に説明するが、本発明は、多種多様な特定の文脈で具現化される多くの適用可能な発明概念を提供することを理解するべきである。本明細書で説明する具体的な実施形態は、単に本発明を製造および用いる具体的な方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者においては、本明細書に記載された特定の装置および方法に対する多数の等価物を認識するであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲に包含されると考えられる。
【0022】
図中では、明瞭化のため、各図面にすべての参照番号が含まれてはいない。加えて、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「側部(side)」、「頂部(top)」、「底部(bottom)」等の位置に関する用語は、図中に示された向きにおける器具を指す。当業者においては、使用時に器具が異なる向きになることを前提とする可能性があることを認識するであろう。
【0023】
本開示は、高度に湾曲した遠位端を有するガイドチューブを含む低侵襲手術器具を提供する。ガイドチューブは、内視鏡型または切除鏡型チューブアセンブリの長さに沿った長手方向チャネル内に収容される。チャネルは、様々な実施形態において、直線状または湾曲したプロファイルを有し得る。ガイドチューブは、作業空間における優れた三角測量と、外科医が内視鏡または切除鏡の遠位端付近の組織に係合するための可操作性とを提供する高度に湾曲した構成を含む。ガイドチューブの遠位端における曲率のパラメータは、高度な性能を提供するように最適化される。
【0024】
ガイドチューブの遠位セクションは、高度に湾曲し、患者の体内の内視鏡の遠位先端部を越えて組織作業空間内に配置されるように構成される。ガイドチューブの遠位セクションは、その中に収容されるチャネルを基準として回転および並進し得、手術具(電気外科手術具または切開装置等)を含むインナーチューブは、ガイドチューブ内の内側に位置づけられ、ガイドチューブの遠位端外に延伸して、カメラレンズの視野内の組織作業空間にアクセスし得る。ガイドチューブの高度に湾曲した遠位端は、作業空間内における高度な三角測量および巧緻性を提供し、低侵襲手術のための最適化された性能を提供する。
【0025】
一例として、
図1には、低侵襲手術器具100が概して示される。該器具は、サポート部12に装着された手術ロボット器具10を含む。いくつかの実施形態では、サポート部12は、定置ベース12bから延伸するロボットアーム12aを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアーム12aの端部のマウント14は、ブレース16を介して手術ロボット器具10に取り付けられるように構成される。サポート部12は、装置下方の手術台上に位置づけられた人間または動物の患者を基準として、三次元空間内で手術ロボット器具10の位置および方向を精密に制御するためのプログラム可能な位置づけ装置を提供する。
【0026】
入力コンソール200は、サポート部12および手術ロボット器具10から遠隔して位置する。入力コンソール200は、手術ロボット器具10上に位置する1以上の装置を制御するための入力を提供する。
【0027】
図1および
図2をさらに参照すると、手術ロボット器具10は、硬性のチューブアセンブリ20と機器ベース22とを接続するインターフェース18を含む。チューブアセンブリ20は、アウターシース26と、アウターシース26内部に収容された複数のチューブとを備える長手方向の内視鏡または切除鏡型構造を含む。チューブアセンブリ20には1以上のポート27a、27b、27cが結合され、外科手術中の洗滌、吸引または他の機能を提供する。チューブアセンブリ20は、機器ベース22から離れるように向けられた、患者の組織内に挿入するための遠位端21を含む。ベース22上には、遠位端21に向かってチューブアセンブリ20を通過して、チューブアセンブリ20が患者の体内に挿入されたときに遠位端21に隣接する組織作業空間の視覚化を提供するためのレンズを含むカメラ24が位置づけられる。また、手術ロボット器具10は、
図1に示されるマウント14に取り付けるように構成されたアダプタ14aを含む。
【0028】
図3Aを参照すると、カメラ24は機器ベース22上に位置づけられ、外科処置中に外科医が目視するためのリアルタイム画像を遠隔ディスプレイ上に提供する。カメラ24は、チューブアセンブリ20内部の長手方向レンズ通路80を通って延伸する棒状のレンズ25を含み、それによって、チューブアセンブリの遠位先端部を越えてすぐ向こうの組織作業空間を含む視野を提供するようにされている。いくつかの実施形態では、レンズ通路80は、チューブアセンブリ20内部に沿って延伸し、レンズ25が装置内に収容され、挿入され、および/またはそこから取り外されたときにレンズ25を保護する硬性チューブを含む。いくつかの実施形態では、レンズ通路80は、その近位端に漏斗形の挿入ポートを含む。
【0029】
図3Aおよび
図3Bをさらに参照すると、チューブアセンブリ20は、アウターシース26およびインナーシース28を含む。インナーシース28の外面とアウターシース26の内面との間には環状のプレナムが画定され、それによって、外科処置中に気体または流体がプレナムを通って運ばれ得るようにされる。
【0030】
図3Aをさらに参照すると、いくつかの実施形態では、手術ロボット器具10は、第1のツールカートリッジ60aおよび第2のツールカートリッジ60bを含む。各ツールカートリッジは、機器ベース22に設置されることができるモジュール部品として構成される。各ツールカートリッジは、カートリッジに結合されたチューブアレイを操作するように構成された駆動機構を含む。たとえば、第1のツールカートリッジ60aは、第1のチューブアレイ70aの近位端に結合され、それによって、第1のチューブアレイ70aは、第1のツールカートリッジ60aから離れ、インターフェース18に向かって延伸するようにされる。同様に、第2のツールカートリッジ60bは、第2のチューブアレイ70bの近位端に結合され、それによって、第2のチューブアレイ70bは、第2のツールカートリッジ60bから離れ、インターフェース18に向かって延伸するようにされる。各ツールカートリッジ60a、60bは、機器ベース22上の他の同様のツールカートリッジと交換可能であってもよい。いくつかの実施形態では、各ツールカートリッジは使い捨て可能である。
【0031】
連動するチューブアレイ70を備えるツールカートリッジ60の一実施形態が、
図4に示される。ツールカートリッジ60は、チューブアレイ70の近位端に接合されたハウジングを含む。チューブアレイ70は、ガイドチューブ、すなわちアウターチューブ72と、ガイドチューブ72内部に位置づけられたインナーチューブ74とを備える同心チューブアレイを含む。ガイドチューブ72は、高度に湾曲した遠位端78を有し、インナーチューブ74は、ガイドチューブ72の遠位先端部73から突出している。いくつかの実施形態では、インナーチューブ74は、その遠位端から突出する電気外科手術先端部、切断器具、または組織マニピュレータ等の手術具82を含む。外科処置中、インナーチューブ74は、ガイドチューブ72から独立して、その長手方向軸を中心として軸方向に並進または回転し得る。高度に湾曲したガイドチューブ72は、インナーチューブ74を組織作業空間内の所望の場所に導く。いくつかの実施形態では、インナーチューブ74は、ツールカートリッジ60内部の1以上の内部駆動部品に結合され、独立した軸方向の並進および回転制御を提供する。
【0032】
使用中、ガイドチューブ72はまた、ツールカートリッジ60内部の独立した駆動部品によって平行移動および回転してもよい。このように、ガイドチューブ72の湾曲部78に起因して、ツールカートリッジ60内の独立した駆動部品を用いて、ガイドチューブ72およびインナーチューブ74を回転および平行移動させることによって、可動域が達成され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、チューブアレイ70は、内視鏡または切除鏡型装置の内側に設けられた長手方向のチャネルアセンブリ、すなわちシース挿入部30の内部に収容される。
図5に示されるように、シース挿入部30は、第1の同心チューブアレイ70aを収容するための第1のチャネル32と、第2の同心チューブアレイ70bを収容するための略平行な第2のチャネル34とを含む。シース挿入部30は、内視鏡または切除鏡インナーシース28の内部に軸方向に位置づけられ、1以上の同心チューブアレイを収容するための内部チャネルを提供する。組み立てられると、第1および第2のチャネル32、34は、インナーシース28内部に位置づけられ、アウターシース26は、インナーシース28外部に位置づけられる。いくつかの実施形態では、第1および第2のチャネル32、34は、各同心チューブアレイ70a、70bが内部に密接に適合すると同時に、各ガイドチューブ72、172がその対応するチャネル内部で独立して回転および軸方向に平行移動することを可能にするような寸法にされた略円形の断面形状を形成する中空の内部空間を各々含む。
【0034】
図6を参照すると、シース挿入部30の遠位端の実施形態が、内視鏡または切除鏡のインナーシースとともに示される。シース挿入部30は、第1のチャネル32および第2のチャネル34を含む。第1および第2のチャネル32、34は、遠位端で分岐する。第1のチャネル32は、第1のチャネル開口部38で終端し、第2のチャネル34は、第2のチャネル開口部48で終端する。チャネルブッシング36は、シース挿入部30の遠位端において、第1および第2のチャネル32、34の遠位端に配置される。いくつかの実施形態では、チャネルブッシング36は、第1および第2のチャネル32、34の遠位端を取り囲む。チャネルブッシング36は、分岐領域において第1および第2のチャネル32、34に支えを提供する。チャネルブッシング36はまた、インナーシース28の内壁とインターフェースし、インナーシース28の遠位開口部50上の所望の場所において、第1および第2のチャネル32、34を正しく整列させる。いくつかの実施形態では、チャネルブッシング36は、その遠位開口部50においてインナーシース28の内径51に略等しいチャネルブッシング幅49を含む。いくつかの実施形態では、チャネルブッシング36はポリマー材料からなる。
図6に示されるように、レンズ溝53は、チャネルブッシング36内に、カメラに結合されたロッドレンズを収納するような形状にされた凹部を提供する。チャネルブッシング36と第1および第2のチャネル32、34とが接合され、それによって、使用後にアセンブリ全体がインナーシース28内に軸方向に挿入されるか、またはインナーシース28から軸方向に引き抜かれるようにされ得る。いくつかの実施形態では、シース挿入部30は使い捨て可能である。他の実施形態では、シース挿入部30は、他の同様のシース挿入部と交換可能である。たとえば、特定の処置について、内径、チャネル形状または遠位端における曲率等の一定の特性を有する第1および第2のチャネル32、34を用いることが望ましい場合がある。しかしながら、他の処置については、異なる特性を有する第1および第2のチャネル32、34を用いることが望ましい場合がある。このように、本開示のシステムおよび方法を用いて、ユーザは、異なる操作に対して異なる特性を有するシース挿入部30を交換し得る。
【0035】
図7を参照すると、第1および第2のチャネル32、34を含むシース挿入部28の実施形態が示される。第1のチャネル32は、第1のチャネル遠位開口部38で開口し、第2のチャネル34は、第2のチャネル遠位開口部48で開口する。第1および第2のチャネル遠位開口部38、48は、チャネル間隔55によって隔てられている。いくつかの実施形態では、チャネル間隔55は、第1または第2のチャネル32、34の内径を上回る。いくつかの実施形態では、チャネル間隔55は、第1のチャネル32または第2のチャネル34の内径の約2倍を上回る。第1および第2のチャネル遠位開口部38、48は間隔を置いて配置されているが、これは、第1および第2のチャネル32、34の両方が、湾曲した向きでインナーシース28の軸方向中心線から離れるように分岐しているためである。
図7に示すように、レンズは、チャネルブッシング38の上方のインナーシース28内部のレンズ溝53に位置づけられ得る。
【0036】
図5および
図8~9を再度参照すると、いくつかの実施形態では、シース挿入部30は、一端が第1および第2のチャネル32、34に接続され、他端がカメラ24からのチューブアレイ70a、70bおよびロッドレンズ25の挿入のために開放された硬性の漏斗状構造を提供するインターフェース18を含む。たとえば、いくつかの実施形態では、ステアリングプラグ40がインターフェース18内に位置づけられる。ステアリングプラグ40は、(いくつかの実施形態では、第1のカートリッジ60aに結合された)第1のチューブアレイ70aの長手方向挿入部を受けるような形状にされた第1のポート42と、(いくつかの実施形態では、第2のカートリッジ60bに結合された)第2のチューブアレイ70bの長手方向挿入部を受けるような形状にされた第2のポート44とを画定する。ステアリングプラグ40はまた、いくつかの実施形態では、ロッドレンズ25の長手方向挿入部を受けるように位置づけられたレンズ挿入ポート46を画定する。
【0037】
図8に示されるように、ステアリングプラグ40は、第1および第2のチャネル32、34の近位端を取り囲むシースアダプタ45を含む。シースアダプタ45は、いくつかの実施形態では、チャネルブッシング36と同様の形状および機能を有する。シースアダプタ45は、インナーシース28の内径に近い外径を含み、それによって、シースアダプタ45が、インナーシース28に受けられると、インナーシース28の内壁に沿って密着するようにされる。レンズガイド43がシースアダプタ上に画定され、インナーシース28の内部長さに沿って長手方向に通過するレンズの一部を受けるための溝を形成する。挿入ブッシング41は、シースアダプタ45の近位端において硬性シリンダーを形成し、インナーシース28と係合するように構成される。いくつかの実施形態では、挿入ブッシング41は、内視鏡または切除鏡のインナーシース28内部の周囲にシールを形成する。
【0038】
図9に示されるように、ステアリングプラグ40は、ポリマー材料等の非金属材料で一体成型片として形成されていてもよい。ステアリングプラグ40は、インターフェース18から取り外して交換し得る。いくつかの実施形態では、ステアリングプラグ40は、使い捨て可能である。いくつかの実施形態では、ステアリングプラグ40は、摩擦嵌合を用いて、インターフェース18内部の適所に保持され得る。また、いくつかの実施形態では、ステアリングプラグ40は、インターフェース18の内部輪郭の内側に密着して、インターフェース18とステアリングプラグ40との間にシールを形成し得る。
【0039】
ステアリングプラグ40は、第1のチャネル32の近位端を受けるような形状にされた第1ソケットの132と、第2のチャネル34の近位端を受けるような形状にされた第2のソケット134とを含む。レンズガイド43は、シースアダプタ45内において、内視鏡または切除鏡の遠位端に向かってステアリングプラグを通過するレンズ、たとえば光ファイバーレンズの通過を受けるような形状にされた中空通路を画定する。
図10に見られるように、第1のチャネル32の近位端は、
図9に示される第1のソケット132内に密着し得、同様に、第2のチャネル34の近位端は、第2ソケット134内に密着し得る。このように、第1および第2のチャネル32、34は、
図5に示される第1のポート42および第2のポート44とそれぞれ開放連通し得る。ガイドチューブ72およびインナーチューブ74を含む第1のチューブアレイは、第1のポート42内に、そしてステアリングアダプタ40を通って、第1のチャネル32内に位置づけられ得る。同様に、第2のガイドチューブ172および第2のインナーチューブ174を含む第2のチューブアレイは、第2のポート44内に、そしてステアリングアダプタ40を通して、第2のチャネル34内に位置づけられ得る。
【0040】
図11~13を参照すると、本開示は、高度に湾曲した遠位端73を有するガイドチューブ72内に位置づけられた略直線状のインナーチューブ74を含むチューブアレイを提供する。インナーチューブ74は、いくつかの実施形態では、その遠位先端部に位置づけられた手術具を含む。インナーチューブ74は、その長さに沿って略直線状であるが、いくつかの実施形態では、湾曲したチャネル内および/または湾曲したガイドチューブ内で使用されることに起因して、わずかな曲率を得る場合がある。インナーチューブ74が高度に湾曲した端部を有するガイドチューブ72内部に収容されるため、インナーチューブ74は、収容される湾曲したガイドチューブによってわずかに歪むことにより、使用中にいくらかの湾曲を得る場合がある。いくつかの実施形態では、インナーチューブ74は、約10m^(-1)を下回る曲率を達成する遠位端を有し、約100mmを上回る半径を有する。いくつかの実施形態では、インナーチューブ74は、約100mm~約500mmの間の半径を有する部分を含む。
【0041】
図12を参照すると、ガイドチューブ、すなわちアウターチューブ72は、高度に湾曲した遠位端73を含む。いくつかの実施形態では、ガイドチューブ72は、ニチノールからなり、ガイドチューブ72の高度に湾曲した遠位端73の曲率は、最適化された性能を提供するために、所望の曲率に設定された形状である。いくつかの実施形態では、ガイドチューブ72の高度に湾曲した遠位端73の曲率は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率に設定された形状である。さらなる実施形態では、ガイドチューブ72の高度に湾曲した遠位端73は、約60m^(-1)~約80m^(-1)の間の曲率に設定された形状である。さらなる実施形態では、ガイドチューブ72の高度に湾曲した遠位端73は、作業空間内で最適化された性能および操作性を提供するために、約72m^(-1)の曲率に設定された形状である。
【0042】
図13をさらに参照すると、インナーチューブ74がガイドチューブ72内部に位置づけられると、インナーチューブ74の湾曲が少ない構成が、ガイドチューブ72の遠位端73をわずかに直線化し、ガイドチューブ72の遠位端73の曲率を約60m^(-1)~約65m^(-1)の間の曲率までさらに減少させる。さらなる実施形態では、組み合わせられたインナーチューブ74およびガイドチューブ72は、組み合わせられた有効曲率約63m^(-1)を有する遠位先端73を含む。さらなる実施形態では、本開示は、ガイドチューブ72と、ガイドチューブ72の内部に収容されたインナーチューブ74とを含むチューブアレイを含み、チューブアレイは、約40m^(-1)を上回り、約100m^(-1)を下回る組み合わせられた有効曲率を有する組み合わせられた遠位先端部を含む。いくつかの実施形態では、これらのパラメータは、第1のチャネル32内部に収容された第1のガイドチューブ72および第1のインナーチューブ74と、第2のチャネル34内部に収容された第2のガイドチューブ172および第2のインナーチューブ174との両方に適用される。
【0043】
図14を参照すると、いくつかの実施形態では、第1および第2のガイドチューブ72、172は、上記のように両方とも湾曲している。高度に湾曲した遠位端73、173を各々有する第1および第2のガイドチューブ72、172を設けることによって、湾曲した端部は両方とも、内視鏡または切除鏡の端部において各々のチャネル32、34の端部それぞれから同時に延伸し得る。第1および第2のガイドチューブ72、172の湾曲は、ツールの操作作業空間を内視鏡の先端部のより近くに、かつ視野内に移動させる。加えて、第1および第2のガイドチューブの高度に湾曲した遠位端は、第1および第2のチャネル32、34の分岐する湾曲とともに、作業空間において高度な三角測量を提供する。これにより、第1および第2のインナーチューブ74、174と、対応する第1および第2の手術具82、182とが、ガイドチューブ72 172およびチャネル32、34のより小さな曲率を有する従来の手術装置と比較して、より大きなアプローチ角度で中心線軸CLにアプローチすることが可能になる。この構成では、第1および第2のインナーチューブ74、174は、より大きな三角測量角度で作業空間にアプローチし、作業空間内の組織をより良好に操作するために軸外力ベクトルを適用し得る。
【0044】
いくつかの先行技術による従来の装置は、約3%の歪みで湾曲した遠位端を有するガイドチューブを含む。そのような実施形態は、高度に湾曲しているとはみなされず、本開示の三角測量の利点を得ることが可能ではないであろう。いくつかの実施形態では、本開示は、約5%を上回る歪みを有する高度に湾曲した遠位端73、173を各々有する第1のガイドチューブ72および第2のガイドチューブ172を提供し、
図14に示されるように、手術を行うための改善された三角測量の向きを提供する肘形状構成を形成する。いくつかの実施形態では、各ガイドチューブ72、172は、約8%の歪みを有する高度に湾曲した遠位端73、173を含む。さらなる実施形態では、各ガイドチューブ72、172は、約8%~約10%の間の歪みを有する高度に湾曲した遠位端を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、インナーチューブ74、174は、一般的な手術具が低減された曲率を有するか、または略直線的な向きを有することに起因して、外科医に自然な感覚を提供するように、より低い曲率の形状寸法を備える。たとえば、腹腔鏡機器で訓練された外科医は、作業空間内に向かって軸方向に平行移動するツールに慣れている。このため、内視鏡ツールを用いる手術ロボットを、ツールの遠位先端部で軸方向に平行移動させるように適合させることは、外科医に直感的なアプローチを提供する。このように、ガイドチューブ72の遠位先端開口部から後退もしくは伸縮可能な、ガイドチューブよりも小さい曲率を有するインナーチューブ74、174を提供することによって、本開示は、インナーチューブ74の遠位先端部上のツールを内視鏡または切除鏡の視野内で使用して組織を操作するための直感的な構成を有するシステムを提供する。
【0046】
図14をさらに参照すると、高度に湾曲した遠位端を有するガイドチューブは、操作性を向上させるが、内視鏡または切除鏡の中心線CLから離れて湾曲した分岐遠位端32a、34aを有する第1および第2のチャネル32、34を設けることによって、さらなる利点が実現される。たとえば、
図14に示すように、第1のチャネル32は、インナーシース28内部で長手方向に延伸し、第1のチャネル32は、中心線CLから離れて分岐する湾曲した遠位端32aを含む。同様に、第2のチャネル34は、第1のチャネル32と並んでインナーシース28内部で長手方向に延伸し、第2のチャネル34は、中心線CLから離れるように、かつ第1のチャネル32から離れるように分岐する湾曲した遠位端34aを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のチャネル32、34は、シース挿入部30上のチューブである。第1および第2のチャネル32、34の各々は、第1および第2のガイドチューブ72、172のための通路をそれぞれ提供する。第1のガイドチューブ72は、第1のチャネル32内部で軸方向に平行移動することできるとともに回転することができ、第2ガイドチューブ172は、第2のチャネル34内で軸方向に平行移動することができるとともに回転することができる。
【0047】
図14に示されるように、互いから離れ、かつ中心線CLから離れるように湾曲する遠位端32a、34aを有する第1および第2のチャネル32、34を設けることによって、ガイドチューブ72、172上の高度に湾曲した遠位端73、173は、各チャネルの第1および第2の遠位端開口部38、48から延伸すると、中心線CLから離れるように斜めに延伸することが可能である。いくつかの実施形態では、第1および第2のチャネル32、34は、約15m^(-1)~約30m^(-1)の間の曲率を含む。このような曲率範囲は、約10~15度の角度で中心線CLから離れるような角度にされた第1および第2のチャネル32、34をそれぞれ提供する。このように、湾曲したチャネル32、34に起因して中心線CLから最初は離れるように延伸し、その後、延伸に続いて中心線CLに向かって戻る第1および第2の高度に湾曲したガイドチューブ72、172の可動範囲は、内視鏡または切除鏡の端部に隣接する作業空間において優れた三角測量を提供する。このような構成はまた、直線状のチャネルを有する類似した構成とは対照的に、公称相互作用点を内視鏡により近づけたより良好な位置に動かす。
【0048】
図15を参照すると、いくつかの実施形態では、ガイドチューブ72がチャネル32内に完全に後退したとき、ガイドチューブ72の高度に湾曲した領域78の曲率は、チャネル32の内径によって制約される。この位置から、ガイドチューブ72の遠位端73の向きは、ガイドチューブ72に対して延伸したときにインナーチューブが移動する直線延伸軸52に沿って突出する。ガイドチューブ72の曲率がチャネル32内で制約されることに起因して、延伸軸52と基準長手方向軸54との間の空間によって画定される小容積の空間56は、内視鏡の遠位端に隣接する作業空間領域にアクセス不可能にされ得る。
【0049】
図16を参照すると、この課題を克服するために、いくつかの実施形態では、ガイドチューブ72は、第1の湾曲領域78aおよび第2の湾曲領域78bを含む逆湾曲、または二重曲率の構成を含む。第1の湾曲領域78aは、第1の曲率半径R1を含み、第2の湾曲領域78bは、第2の曲率半径R2を含む。R1およびR2は、いくつかの実施形態では同じである。代替的には、R1およびR2は、他の実施形態では異なる。第1および第2の湾曲領域78a、78bは、いくつかの実施形態では、同一平面内で湾曲している。第1の湾曲領域78aは、第1のアーク長を含み、第2の湾曲領域78bは、第1の円弧長さよりも小さい第2のアーク長を含む。
【0050】
図17を参照すると、二重曲率構成を含むガイドチューブ72は、基準長手方向軸54に向かって角度をなす延伸軸52を画定する。このように、第2の湾曲領域78bは、ガイドチューブ72がチャネル32内に完全に後退したときに、インナーチューブを中心線に向かう方向に向ける。このような構成により、延伸軸52に沿って延伸したときにインナーチューブ74がアクセス不可能とされる空間56のサイズが減少する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2の湾曲領域78bは、ガイドチューブ72の端部に約10.0mm未満を含む。さらなる実施形態では、第2の湾曲領域78bは、改善された可動範囲を提供するために約40m^(-1)の曲率を含む。さらなる実施形態では、第2の湾曲領域78bは、ガイドチューブ72の端部に約5.0mmを含み、約35m^(-1)~約45m^(-1)の間の曲率を含む。いくつかの実施形態では、第1の湾曲領域は、約50m^(-1)~約100m^(-1)の間の曲率を有する。さらなる実施形態では、第1の湾曲領域は、約72m^(-1)の曲率を有し、第2の湾曲領域は、約40m^(-1)の曲率を有する。
【0052】
さらなる実施形態では、本開示は、第1および第2のガイドチューブを提供し、各ガイドチューブは、二重湾曲構成を含む。いくつかの実施形態では、各ガイドチューブの第1の湾曲領域は、約70m^(-1)~約75m^(-1)の間の形状設定曲率を含む。各ガイドチューブの第2の湾曲領域は、各ガイドチューブの後ろ5ミリメートルに沿って約40m^(-1)の形状設定曲率を含む。
【0053】
図18を参照すると、処置中に外科医によって目視される内視鏡の遠位端における視野が図示されている。この視野は、第1の高度に湾曲したガイドチューブ72と、そこから延伸する第1のインナーチューブ74とを含む。また、第2の高度に湾曲したガイドチューブ172がさらに示され、そこから延伸する第2のインナーチューブ174を含む。第1のインナーチューブ74上には第1の手術具82が配置され、第2のインナーチューブ174上には第2の手術具182が配置される。第1および第2のインナーチューブ74、174は、各ガイドチューブ72、172それぞれを基準として軸方向に平行移動および回転し得、第1および第2のインナーチューブ74、174は、協働して組織を操作する。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明は、低侵襲手術を行う方法を提供する。本方法は、ベースとチューブアセンブリとを含む手術機器を提供することを含む。チューブアセンブリは、チャネルと、チャネル内に配置されたガイドチューブとを含み、ガイドチューブは、チャネル内部で軸方向に移動可能かつ回転可能である。ガイドチューブは、近位セクションと、ベースから離れるように位置づけられた高度に湾曲した遠位セクションとを含む。インナーチューブは、チューブアセンブリのベースから遠位先端部まで、ガイドチューブ内に収容されることができる。本方法は、ガイドチューブの近位セクションを回転させて、ガイドチューブの遠位端の対応する回転を生じさせる工程と、ガイドチューブを組織作業空間内の所望の位置に平行移動させる工程と、インナーチューブの遠位端がガイドチューブによって組織作業空間内の所望の場所に案内されるまで、高度に湾曲したガイドチューブを通してインナーチューブを平行移動させる工程と、手術具を用いて外科処置を行う工程とをさらに含む。
【0055】
このように、本発明の低侵襲手術のための新規かつ有用な同心チューブ器具の特定の実施形態を説明してきたが、そのような言及が本発明の範囲に対する限定として解釈されることは意図されていない。
【国際調査報告】