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特表2024-505474カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置
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  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図1
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図2a
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図2b
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図3
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図4a
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図4b
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図5a
  • 特表-カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置 図5b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】カルダンシャフト装置において圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するための装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/30 20060101AFI20240130BHJP
   B60C 23/00 20060101ALI20240130BHJP
   B60C 23/16 20060101ALI20240130BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60K17/30 Z
B60C23/00 Z
B60C23/16
F16D3/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544482
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2022013280
(87)【国際公開番号】W WO2022159680
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】102021101246.5
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】523278504
【氏名又は名称】カーテー プロジェクテントビクルングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン ツィベリディス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン スピントラー
【テーマコード(参考)】
3D043
【Fターム(参考)】
3D043AA05
3D043AB01
3D043CA01
3D043CA07
(57)【要約】
本発明は、特に、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を、第1の、特にトランスミッション側の、カルダンシャフト部3の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクト4と、第1のカルダンシャフト部3の端部領域に関節式に接続された第2の、特にホイール側の、カルダンシャフト部5の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクト6との間で伝達するための装置であって、第1の流体ダクト4及び第2の流体ダクト6に流体接続された又は流体接続可能な管路部7を有し、管路部7の長さが可逆的に変更可能である、装置に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を第1のカルダンシャフト部(3)、特にトランスミッション側の第1のカルダンシャフト部(3)、の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクト(4)と、前記第1のカルダンシャフト部(3)の端部領域に関節式に接続された第2のカルダンシャフト部(5)、特にホイール側の第2のカルダンシャフト部(5)、の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクト(6)との間で伝達するための装置であって、前記第1の流体ダクト(4)及び前記第2の流体ダクト(6)に流体接続された又は流体接続可能な管路部(7)を有し、前記管路部(7)の長さが可逆的に変更可能である、装置。
【請求項2】
前記管路部(7)は、少なくとも一部の領域においてスクリュー状又は螺旋状の線に沿って延びる管状又はホース状の中空体(8)を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記管路部(7)は、少なくとも一部の領域において渦巻状の線に沿って延びる管状又はホース状の中空体(8)を有する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記管路部(7)は、第1の端部領域(9)、好ましくは少なくとも実質的に直線状に延びる第1の端部領域(9)と、反対側の第2の端部領域(10)、好ましくは少なくとも実質的に直線状に延びる第2の端部領域(10)とを備える管状又はホース状の中空体(8)を有し、前記管状又はホース状の中空体(8)は、前記第2の端部領域(10)を前記第1の端部領域(9)に対して可逆的にオフセット及び/又は偏向して配置可能であるように設計される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記管状又はホース状の中空体(8)は、前記第1の端部領域(9)及び前記第2の端部領域(10)が互いに対してオフセット及び偏向されていない状態において、前記第1の端部領域(9)の長手方向軸が前記第2の端部領域(10)の長手方向軸に対して同心に配置されるように設計される、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第1の端部領域(9)は、前記第1のカルダンシャフト部(3)の、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の、収容部(11)であって、前記第1の流体ダクト(4)に流体接続された収容部(11)に収容される、特に差し込まれる、ように設計され、かつ/又は、
前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第2の端部領域(10)は、前記第2のカルダンシャフト部(5)の、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の、収容部(12)であって、前記第2の流体ダクト(6)に流体接続された収容部(12)に収容される、特に差し込まれる、ように設計される、
請求項2から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
車両車軸のカルダンシャフト装置であって、
特にトランスミッション側の第1のカルダンシャフト部(3)であって、内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクト(4)を備えた第1のカルダンシャフト部(3)と、
特にホイール側の第2のカルダンシャフト部(5)であって、内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクト(6)を備えた第2のカルダンシャフト部(5)と、
加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を前記第1の流体ダクト(4)と前記第2の流体ダクト(6)との間で伝達するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置と、
を有する、カルダンシャフト装置。
【請求項8】
前記カルダンシャフト装置は、特にカルダン継手(52)の形態の継手装置を更に有し、前記継手装置を介して、前記第1のカルダンシャフト部(3)が前記第2のカルダンシャフト部(5)に関節式に接続され、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管路部(7)は、少なくとも一部の領域において前記継手装置を通って延びる、
請求項7に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項9】
前記第1のカルダンシャフト部(3)の端部領域に、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(11)が設けられ、前記収容部(11)内に、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の第1の端部領域(9)が収容される、
請求項7又は8に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項10】
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(11)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第1の端部領域(9)を、特にセルフセンタリング式に、収容するように設計され、かつ/又は、
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(11)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第1の端部領域(9)を、特にセルフシール式に、収容するように設計される、
請求項9に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項11】
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(11)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第1の端部領域(9)を、前記第1のカルダンシャフト部(3)の前記端部領域に対し固定的に、又は回転運動を許容するように、収容するように設計される、
請求項9又は10に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項12】
前記第2のカルダンシャフト部(5)の端部領域に、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(12)が設けられ、前記収容部(12)内に、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の第2の端部領域(10)が収容される、
請求項7から11のいずれか一項に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項13】
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(12)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第2の端部領域(10)を、特にセルフセンタリング式に、収容するように設計され、かつ/又は、
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(12)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第2の端部領域(10)を、特にセルフシール式に、収容するように設計される、
請求項12に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項14】
前記好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部(12)は、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力、を伝達するための前記装置の前記管状又はホース状の中空体(8)の前記第2の端部領域(10)を、前記第2のカルダンシャフト部(5)の前記端部領域に対し固定的に、又は回転運動を許容するように、収容するように設計される、
請求項12又は13に記載のカルダンシャフト装置。
【請求項15】
空気タイヤを備えたホイール付き車両の、少なくとも1つのホイールのためのタイヤ圧力調整システムであって、前記少なくとも1つのホイールは、車体に対し回転するよう駆動され、前記タイヤ圧力調整システムは、前記ホイールを駆動するための、請求項7から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのカルダンシャフト装置を備える、タイヤ圧力調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、包括的には、特に回転可能に支持された車両(ビークル)タイヤを有する駆動シャフトにおいて、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するためのシステムに関する。
【0002】
本発明の態様によれば、本発明は、特に、制御圧力及び/もしくは作動圧力又は加圧媒体、例えば圧縮空気を、シャフト、特に駆動シャフトの内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された流体ダクトに伝達するための回転伝達装置に関する。
【0003】
更なる態様によれば、本発明は、そのような回転伝達装置と、回転伝達装置が取り付けられたシャフトとを有するシステムであって、シャフトが特に車両の駆動シャフトとして具現化される、システムに関する。
【0004】
本発明は、さらに、空気タイヤを有し、ホイールを駆動する少なくとも1つの駆動シャフトを備えるホイール付き車両の、車体に対して回転駆動される少なくとも1つのホイールのタイヤ圧力調整システムであって、流体ダクトが駆動シャフトの内部に収容又は形成され、必要に応じて、駆動シャフトに収容又は形成された流体ダクトに加圧流体を供給する及び/又はそこから加圧流体を排出する、少なくとも1つの回転伝達装置が設けられる、タイヤ圧力調整システムに関する。
【背景技術】
【0005】
車両タイヤには、通常、圧縮空気が充填される。他の加圧媒体、例えば窒素を充填することも考えられる。本開示の意味における車両タイヤは、例えば、チューブ付き又はチューブレスタイヤとすることができる。車両タイヤは、例えば、乗用車、バス、商用車に使用され、航空機にも使用される。
【0006】
従来の車両タイヤには、通常、外部接続部を介して加圧媒体、すなわち、圧縮空気又は窒素充填物が供給される。この目的のために、標準的な弁が一般に使用される。それぞれの用途及び動作条件に応じて、車両タイヤは、典型的には、1つの最適な動作/充填圧力を有する。例えば、自動車、バス、及びトラック等の陸上車両の場合、可能な限り最適な転がり抵抗、横方向の案内、縦方向の案内、発熱、及び/又は摩耗挙動を保証することができる動作圧力又は圧力範囲が存在する。
【0007】
例えば、タイヤ内に存在する実際の圧力は、周囲温度又は動作温度に応じて或る特定の限度内で変動する可能性がある。さらに、長期的には、いわゆる「クリーピング」圧力降下等の或る特定の圧力降下を完全に回避することができないことが多い。
【0008】
タイヤ内の動作圧力/充填圧力の監視を可能にする車両用システムが知られている。これらは、いわゆる能動システム又は受動システムであり得る。例えば、1つの車軸のタイヤの回転円周を求めて比較するために、受動システムを設計することができる。有意な差が見出された場合、これは、それぞれのタイヤに圧力差があることを示す。圧縮空気を測定及び/又は監視する能動システムは、典型的には、ホイールアセンブリに一体化された圧力検知用のセンサーを含む。このような圧力センサーは、例えば、対応する圧力信号を(回転している)タイヤから車両の固定された構成要素に無線又は有線で送信するように構成することができる。
【0009】
さらに、一般に、車両タイヤの充填圧力の自己充足的な調整を可能にするシステムが知られている。このようなシステムは、例えば、オフロード車両、軍用車両、及び同様の専用車両に見出すことができる。システムは、原則として、車両のアイドリング状態において、すなわち、車両が動いていないときに、充填圧力の調整を可能にするように構成することができる。
【0010】
車両における自己充足的な圧力規制用の既知のシステムは、中央構造を有する。換言すれば、これは、タイヤを充填するための加圧媒体を供給する装置が1つしかないことを意味する。加圧媒体を供給するいくつかの装置を、例えばトラクターマシンとトレーラー又はセミトレーラーとの組合せで設けることも考えられる。それでもなお、圧縮空気のそのような中央供給装置は、特に異なる車軸又はシャフト上の複数のホイールアセンブリを充填するために設けられる。
【0011】
この目的のために、中央圧縮空気/加圧媒体供給ユニットは、複数のホイールアセンブリに連結される。したがって、供給ユニットは、通常、車両のシャーシ側又はボディー側又は車体側に取り付けられる。供給ユニットは、例えば、圧縮機又は空気圧縮機を含むことができる。
【0012】
供給ユニットに始まり、複数の圧縮空気又は加圧媒体管路を個々のホイールアセンブリに敷設することが必要である。その際に、加圧媒体管路のための複数のいわゆる回転導通部(rotary lead-throughs)が規則的に設けられていなければならない。これは、ホイールアセンブリのタイヤが典型的には車両の車軸上に回転可能に収容されることに起因する。
【0013】
制御圧力及び/もしくは作動圧力又は対応する加圧媒体を固定された車軸から車軸に対して回転しているホイールアセンブリに伝達するように機能する回転伝達装置とは対照的に、制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達する、又は加圧媒体を車両の回転シャフト、特に駆動シャフトに伝達する回転伝達装置は、そのような回転伝達装置を収容又は一体化するには特に小さい設計空間しか利用可能でないので、特定の課題を提示する。このことは、操舵運動に対応する動きのバランスを取るために関節ヘッドが設けられた駆動シャフトに特に当てはまる。
【0014】
典型的には、制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達する、又は加圧媒体を伝達するための回転導通部は、例えばシャフトの車軸本体の外側に環状に設置されたステーターリング及びローターリングを備える。車軸本体内の回転導通部は、これまで、高い製造コスト及び重大なリスクを伴うものであった。これは、例えば、全輪駆動及び外部遊星歯車列を有するオフロード車両に当てはまる。車軸本体内の回転導通部の故障は、車軸ハウジング内への空気の侵入をもたらし、車軸歯車列の油が歯車列ベントから漏出する可能性がある。
【0015】
回転導通部の寿命及びタイヤ圧力調整システムの動作安全性を高めるために、タイヤ圧力調整システムはホイール上に特殊な切換弁を装備することが多くなっており、この切換弁は、調整プロセスの間のみ回転導通部に空気圧力を供給する。そうであっても、直径が大きくなるにつれて、摺動速度に加えて、特に摩擦トルクが急激に増加するので、より大きな直径及び従来のシールを有する回転導通部の寿命は、非常に注意深く評価されるべきである。
【0016】
特に、回転導通部又は回転伝達装置がカルダンシャフトと関連付けられる場合、カルダンシャフトの関節ヘッドの移行領域に特定の弱点が存在する。
【0017】
カルダンシャフト内に収容又は形成され、必要に応じて回転伝達装置又は回転導通部の補助により、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作動圧力が負荷される流体ダクトは、カルダンシャフトの関節ヘッドの領域において増大した応力を受ける。なぜなら、関節ヘッドは、カルダンシャフトの第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部を第2のホイール側のカルダンシャフト部に接続し、流体ダクトは、ホイール側のカルダンシャフト部とトランスミッション側のカルダンシャフト部との間で起こり得る相対運動に起因して、車両の動作中、特に操舵運動中に増大した応力を受けるからである。
【発明の概要】
【0018】
これに鑑みて、本発明は、特に、圧縮空気等の加圧媒体又は制御圧力及び/もしくは作動圧力をカルダンシャフト内に収容又は形成された流体ダクトに伝達する回転伝達装置を備えたタイヤ圧力調整システムの場合に、高レベルの堅牢性によって特徴付けられるように上記システムを最適化するという根本的な問題に基づいている。
【0019】
特に、システム全体は、低い摩耗傾向及び顕著な寿命によって特徴付けられるように設計される。
【0020】
独立請求項1に記載の装置は、とりわけ、流体ダクトがカルダンシャフトの内部に収容又は形成される、空気タイヤを有するホイール付き車両の、車体に対して回転するように駆動される少なくとも1つのホイールの圧力調整システムにおいて、流体ダクトが、特にカルダンシャフトの関節ヘッドにおいて、車両の動作中に可能な限り摩耗に耐えることを確実にするために提案される。
【0021】
この装置は、第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクトと、第1のカルダンシャフト部の端部領域に関節式に接続された第2のホイール側のカルダンシャフト部の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクトとの間で圧縮空気若しくは加圧媒体又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達する装置である。
【0022】
圧縮空気/圧力伝達装置は、特に、第1の流体ダクト及び第2の流体ダクトと流体接続(流体流通可能に接続)するか、又は流体接続させることができ、長さを可逆的に変更することができる管路部を備えることを特徴とする。
【0023】
この手段によって、車両の動作中に、カルダンシャフトの関節ヘッドを通過する流体ダクト部が、第1の流体ダクトと第2の流体ダクトとの間の距離の変動を均等化することができることを効果的に実現することができる。
【0024】
トランスミッション側のカルダンシャフト部内の第1の流体ダクトをホイール側のカルダンシャフト部内に流体接続するように機能する管路部の実装には、様々な実施の形態が考えられる。例えば、管路部が、少なくとも2つの同軸に、好ましくは相互に同心に形成された中空体部から構築された管状又はホース状の中空体を備えることが考えられ、中空体部は、管路部の長さを可逆的に変更するために、互いに対してテレスコープ状に摺動可能である。これに関連して、特に、少なくとも2つの中空体部が、少なくとも1つの付勢要素の助けにより静止位置に付勢されるようにすることもできる。
【0025】
しかしながら、代替的に、管路部が、少なくとも一部の領域においてスクリュー状又は螺旋状の線に沿って延びる管状又はホース状の中空体を有することも考えられる。この実施の形態は、その単純でありながら堅牢な構造によって特徴付けられる。加えて、この実施の形態は、カルダンシャフトの関節ヘッド内に特に省スペースで一体化することができる。
【0026】
管路部の管状又はホース状の中空体が少なくとも一部の領域において螺旋状又は螺旋状の線に沿って延びる、直前に述べた実施の形態に対して代替的又は付加的に、管状又はホース状の中空体が少なくとも一部の領域において螺旋状の線に沿って延びることも考えられる。
【0027】
特に、管路部の管状又はホース状の中空体は、好ましくは少なくとも実質的に直線状に延びる第1の端部領域を有する。さらに、管状又はホース状の中空体は、反対側の第2の端部領域を有し、この第2の端部領域もまた、好ましくは少なくとも実質的に真っ直ぐに延びる。管状又はホース状の中空体は、例えば、管状又はホース状の中空体が螺旋状又は螺旋状の線に沿って延びる領域を設けることによって、管状又はホース状の中空体の第2の端部領域が少なくとも一部の領域において第1の端部領域に対してオフセットされる及び/又は操作可能であるように、(可逆的に)柔軟に構成される。
【0028】
この手段によって、流体伝達装置は、ヒンジシャフトの関節ヘッドの領域において、第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部と第2のトランスミッション側のヒンジシャフト部との間の相対運動に対して可能な限り影響を受けないように設計される。
【0029】
管状又はホース状の中空体の中立位置において、すなわち、管状又はホース状の中空体の第1の端部領域及び第2の端部領域が互いにオフセットされておらず互いに偏向されていない状態において、中空体の第1の端部領域の長手方向軸は、好ましくは、中空体の第2の端部領域の長手方向軸に対して同心に配置される。
【0030】
圧縮空気/圧力伝達装置の実施態様によれば、管状又はホース状の中空体の第1の端部領域は、第1の(トランスミッション側の)カルダンシャフト部の好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部内に収容されるように、特に差し込まれるように設計され、この好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部は、第1の流体ダクトに流体接続されることが提供される。
【0031】
代替的又は付加的に、管状又はホース状の中空体の第2の端部領域は、第2の(ホイール側の)カルダンシャフト部の好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部内に収容されるように、特に差し込まれるように設計され、この好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部は、第2の流体ダクトに流体接続されることが提供されることが有利である。
【0032】
本発明は、さらに、車両車軸のカルダンシャフト装置に関し、カルダンシャフト装置は、内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクトを有する、特にトランスミッション側の第1のカルダンシャフト部と、内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクトを有する、特にホイール側の第2のカルダンシャフト部とを備える。カルダンシャフト装置は、特に、第1の流体ダクトと第2の流体ダクトとの間で圧縮空気若しくは加圧媒体又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するために、前述の性質の圧縮空気/圧力伝達装置を更に備えることを特徴とする。
【0033】
カルダンシャフト装置は、好ましくは、第1の(トランスミッション側の)関節シャフト部を第2の(ホイール側の)カルダンシャフト部に関節式に接続する関節装置を更に備え、圧縮空気/圧力伝達装置の管路部は、少なくとも一部の領域において関節装置を(その内部で)通過する。
【0034】
実施の形態によれば、カルダンシャフト装置の可能な限り簡単な取付けを確実にするために、ブッシュ形状又はブッシュ状の収容部が、好ましくは、第1の(トランスミッション側の)カルダンシャフト部の端部領域に設けられ、その収容部内に、圧縮空気/圧力伝達装置の管状又はホース状の中空体の第1の端部領域が収容されることが提供される。特に、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部は、管状又はホース状の中空体の第1の端部領域を収容部に挿入することができるように構成され得る。収容部は、さらに、トランスミッション側のカルダンシャフト部内に形成された第1の流体ダクトに流体接続される。
【0035】
好ましくは、収容部は、管状又はホース状の中空体の第1の端部領域が挿入されるときに、上記領域を第1の流体ダクトに対して位置合わせするセルフセンタリング部を備える。
【0036】
転じて同じことが、第2の(ホイール側の)カルダンシャフト部にも当てはまり、第2のカルダンシャフト部は、一方の端部領域に、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部を備え、収容部は、第2のカルダンシャフト部内に形成された流体ダクトに流体接続され、収容部は、ブッシュ/プラグ構成の原理に従って圧縮空気/圧力伝達装置の管状又はホース状の中空体の第2の端部領域を接続するように構成され、その際、好ましくはそれを同時にセンタリング及び/又は封止するようにも構成される。
【0037】
本発明は、添付図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】操舵及び駆動される車両ホイールのホイール駆動部の駆動シャフト(全体)の一例示的な実施形態の概略頂面図である。
図2a】駆動シャフトの例示的な実施形態の図1の線A-Aに沿った概略断面図であり、加圧媒体、特に圧縮空気を必要に応じて駆動シャフトに伝達するために、駆動シャフトに関連付けられた回転伝達装置が設けられている。
図2b図2aの線B-Bに沿った概略断面図である。
図3】カルダンシャフトとして形成された駆動シャフトの関節ヘッドにおける流体接続に関する図2bの概略詳細図である。
図4a図1に係るカルダンシャフトとして具現化された駆動シャフトの関節ヘッドにおける、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作業圧力を伝達する圧縮空気/圧力伝達装置の第1の例示的な実施形態を示す図である。
図4b図4aの概略詳細図である。
図5a図1に係るカルダンシャフトとして具現化された駆動シャフトの関節ヘッドにおける、加圧媒体、特に圧縮空気又は制御圧力及び/もしくは作業圧力を伝達する圧縮空気/圧力伝達装置の更なる(第2の)例示的な実施形態を示す図である。
図5b図5aの概略詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図1図2a、図2b、及び図3を参照して、まず、回転伝達装置1を備えた駆動シャフト50の一例示的な実施形態について説明する。回転伝達装置1は、必要に応じて、圧縮空気等の加圧媒体を、駆動シャフト50内に収容又は形成された流体ダクト51に伝達するように機能する。
【0040】
図1図2a及び図2bに示されている駆動シャフト50は、特に、操舵及び駆動される車両ホイール54のホイール駆動部の駆動シャフト50である。
【0041】
駆動シャフト50は、本開示においては「第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部3」とも称する第1のトランスミッション側又は車軸側のシャフトを備える。
【0042】
さらに、駆動シャフト50は、本開示においては「第2のギア側のカルダンシャフト部5」とも称する第2のギア側のシャフトを備える。
【0043】
第1のトランスミッション側若しくは車軸側のシャフト又は第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部3と、第2のトランスミッション側のシャフト又は第2のホイール側のカルダンシャフト部5との間には、それぞれ、第2のホイール側のシャフト5を第1のトランスミッション側又は車軸側のシャフト3に対して偏向させることができるように、特にカルダン継手52の形態で関節装置が構成される。
【0044】
そのような駆動シャフト50は、操舵回転半径が可能な限り小さく保たれるように、ホイールの操舵車軸がホイール平面に可能な限り近くなることを必要とするので、回転伝達装置1に関して、並びに必要に応じて加圧媒体を車両ホイールに供給するように機能する、回転伝達装置1に関連する構成要素に関して、或る特定の空間問題がある。したがって、特に、操舵及び駆動される車両ホイール54のそのような駆動シャフト50は、一般に、可能な限り摩耗しないように設計された回転伝達装置1を有する、特にコンパクトに設計されたシステムを提供する必要がある。
【0045】
回転伝達装置1は、図面において駆動シャフト50と共に示されているように、特に、車両、特に自動車のタイヤ圧力制御システムの一部とすることができる。
【0046】
図2a及び図2bに概略的に示されている回転伝達装置1は、駆動シャフト50上に取り付けられており、特に、駆動シャフト50にねじれ接続されている。図示されていないが、駆動シャフト50は、車両側の車軸ハウジングによって外接され得る。車軸ハウジングは、少なくとも一部の領域において、回転伝達装置1のステーターアセンブリのハウジングを形成することができる。
【0047】
既に述べたように、駆動シャフト50の第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部3の自由端領域は、上述のカルダン継手52を介してホイールアセンブリ54に接続され、したがって、転じて、1つ以上のホイールを駆動シャフト50によって駆動することができるように駆動シャフト50上に取り付けるように機能する。
【0048】
図3の詳細図において見ることができるように、図3に示されている駆動シャフト50においては、第1のトランスミッション側のカルダンシャフト部3に収容又は形成された第1の流体ダクト4を第2のホイール側のカルダンシャフト部5内に収容又は形成された第2の流体ダクト6に流体的に接続するために、直線的で特に剛性の流体接続部53がカルダン継手52の領域に設けられている。
【0049】
車両の動作中、このような剛性の流体接続部53は、特に、発生する振動と、駆動側/トランスミッション側のカルダンシャフト部3とホイール側のヒンジシャフト部5との間の相対運動とに起因して、特定の摩耗を受ける。
【0050】
本発明によれば、特にこの点に関してシステム全体を最適化するために、圧縮空気/圧力伝達装置が提供され、その例示的な実施形態について、図4a、図4b及び図5a、図5bを参照して以下で説明する。
【0051】
一般的に、図4及び図5に概略的に示されている圧縮空気/圧力伝達装置の実施形態は、必要に応じて、第1の、特にトランスミッション側のカルダンシャフト部3の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第1の流体ダクト4と、第1のカルダンシャフト部3の端部領域に関節式に接続された第2の、特にトランスミッション側のカルダンシャフト部5の内部の少なくとも一部の領域に収容又は形成された第2の流体ダクト6との間で、圧縮空気若しくは加圧媒体又は制御圧力及び/もしくは作動圧力を伝達するように機能する。
【0052】
図3に概略的に示されている実施形態とは対照的に、図4及び図5に概略的に示されている圧縮空気/圧力伝達装置の実施形態は、トランスミッション側のカルダンシャフト部3の第1の流体ダクト4をホイール側のカルダンシャフト部5の第2の流体ダクト6に流体接続する圧縮空気/圧力伝達装置の管路部7が、その長さに関して可逆的に可変であることを特徴とする。
【0053】
この実現可能な柔軟性に起因して、管路部7は、一方では組立てがはるかに容易であり、他方では摩耗しにくい。
【0054】
図4及び図5において、特に対応する詳細図に見ることができるように、図面において提供される実施形態においては、管路部7は、少なくとも一部の領域において管状又はホース状の中空体8として具現化され、管路部7の管状又はホース状の中空体8は、少なくとも一部の領域においてスクリュー状又は螺旋状の線に沿って延びる。
【0055】
図面には示されていないが、代替的に、管路部7の管状又はホース状の中空体8が、少なくとも一部の領域において渦巻状の線に沿って延びることも考えられる。管路部7は、テレスコープ状の構造を有することもできる。
【0056】
全体として、管路部7の管状又はホース状の中空体8は、少なくとも実質的に直線状に延びる第1の端部領域9と、好ましくは同様に実質的に直線状に延びる反対側の第2の端部領域10とを備え、管状又はホース状の中空体8は、特に、第2の端部領域10が第1の端部領域9に対して可逆的にオフセット及び/又は偏向され得るように構成されることに留意されたい。
【0057】
しかしながら、図4及び図5に示されているように、管状又はホース状の中空体8がその中立位置に存在する場合、管状又はホース状の中空体8の第1の好ましくは直線状の端部領域9及び第2の好ましくは直線状の端部領域10が互いに対して同心に配置されることが役立つ。
【0058】
特に図4b及び図5bの詳細図に見ることができるように、第1の(トランスミッション/駆動側の)カルダンシャフト部3の端部領域には、ブッシュ形状又はブッシュ状の収容部11が設けられており、この収容部11内に、管状又はホース状の中空体8の第1の端部領域9が、特にセルフセンタリング式に収容され、相応に保持されている。
【0059】
管状又はホース状の中空体8の第1の端部領域9は、好ましくは第1のカルダンシャフト部3のブッシュ形状又はブッシュ状の収容部11に固定して接続され得ることが考えられる。しかしながら、代替的に、例えば滑り軸受も考えられる。
【0060】
特に、管状又はホース状の中空体8の組付けを簡単にするために、第1のカルダンシャフト部3の好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部11は、セルフセンタリング機能を有するべきである。なぜなら、その場合、管状又はホース状の中空体8の第1の端部領域9のみを収容部11に挿入し、場合によってはその中に固定すればよいからである。
【0061】
さらに、第1のカルダンシャフト部3の好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部11は、管状又はホース状の中空体8を介した空気圧力/圧力の伝達中の流体漏れを防止するために、セルフシール機能を有することが好ましい。
【0062】
同様に、第2の(ホイール側の)カルダンシャフト部5の端部領域にも、このようなブッシュ形状又はブッシュ状の収容部12が設けられており、この収容部12内に、圧縮空気/圧力伝達装置の管状又はホース状の中空体8の第2の端部領域10が収容されていることが好ましい。ここでも、好ましくはブッシュ形状又はブッシュ状の収容部12がセルフセンタリング式及び/又はセルフシール式に形成されていることが役立つ。
【0063】
第1のカルダンシャフト部3に関連付けられたブッシュ形状又はブッシュ状の収容部11と同様に、第2のカルダンシャフト部5に関連付けられたブッシュ形状又はブッシュ状の収容部12は、好ましくは、管状又はホース状の中空体8の第2の端部領域10を収容するために、第2の端部領域10が収容部12若しくは第2のカルダンシャフト部5に対して固定されるか、又はそれに対して第2のカルダンシャフト部5の長手方向軸の周りで回転可能に支持されるように設計することができる。
【0064】
例えば中空又は一部が中空のシャフトとして具現化された駆動シャフト50は、任意の数のチャネルガイド又は流体ダクトを有することができる。
【0065】
駆動シャフト50の回転軸に対して平行に延びる駆動シャフト50の任意の流体ダクトは、駆動シャフト表面に対して任意の数の分岐ダクトを有することができ、ステーターアセンブリの領域に配置された全ての分岐ダクトは、同じ制御圧力を「受ける」。駆動シャフト50の外側輪郭(トポロジー)は、駆動シャフト50が伝達領域において回転軸に対して封止部を有するように形成される。封止部は、2つのシール、特にシールリップによって、又は駆動シャフト50の長手方向軸上の回転対称の材料集合体によって画定された部分である。
【0066】
本発明は、図示した実施形態に限定されるものではなく、本開示に開示した特徴を全て併せて検討した結果生まれるものである。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
【国際調査報告】