(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】改善された作動機構を有する医療装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20240130BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61M5/14 540
A61M31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544504
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022051967
(87)【国際公開番号】W WO2022162102
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シグルザルソン, ヌコヴィ ステイン
(72)【発明者】
【氏名】ホウゴー, フィン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA02
4C066BB01
4C066CC06
4C066DD13
(57)【要約】
患者の消化管の内腔内に移動するための摂取に好適なカプセル装置(100)であって、内腔が、内腔壁を有し、カプセル装置(100)が、自己復元カプセルとして構成されており、自己復元カプセルが、a)区画と、区画からカプセルの外部に通じる出口開口部(124)を画定する、外部組織係合表面(123)と、を備える、カプセルハウジング(110、120)と、b)軸に沿って配設され、かつ区画内の第1の位置から、出口開口部(124)を通って、標的場所で内腔壁内へと軸方向に前進するように構成された組織貫通部材(130)と、c)組織貫通部材(130)に結合するためのアクチュエータ(140、150)であって、アクチュエータ(140、150)が、作動時に、第1の構成から第2の構成に移動し、それによって、第1の位置から、内腔壁内に軸方向に組織貫通部材(130)を前進させるように構成されている、アクチュエータ(140、150)と、を備え、アクチュエータ(140、150)が、先細の螺旋状張力ばねとして形成されたばね(140)を含み、ばね(140)が、カプセルハウジング(110、120)に結合された幅が広い第1の端部と、組織貫通部材(130)に結合する幅が狭い第2の端部と、を有し、第1の構成では、ばね(140)に蓄積された張力が維持され、作動時に、ばね(140)に蓄積された張力が解放され、それによって、アクチュエータ(140、150)を第2の構成に向かって移動させる、カプセル装置(100)。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の消化管の内腔内に移動するための摂取に好適なカプセル装置(100、100’)であって、前記内腔が、内腔壁を有し、前記カプセル装置(100、100’)が、自己復元カプセルとして構成されており、前記自己復元カプセルが、
-区画と、前記区画から前記カプセルの外部に通じる出口開口部(124)を画定する、外部組織係合表面(123)と、を備える、カプセルハウジング(110、120)と、
-軸に沿って配設され、かつ前記区画内の第1の位置から、前記出口開口部(124)を通って、標的場所で前記内腔壁内へと軸方向に前進するように構成された組織貫通部材(130)と、
-前記組織貫通部材(130)に結合するためのアクチュエータ(140、150)であって、前記アクチュエータ(140、150)が、第1の構成および第2の構成を有し、前記アクチュエータ(140、150)が、作動時に、前記第1の構成から第2の構成に移動し、それによって、前記第1の位置から、前記内腔壁内に軸方向に前記組織貫通部材(130)を前進させるように構成されている、アクチュエータ(140、150)と、を備え、
前記アクチュエータ(140、150)が、先細の螺旋状張力ばねとして形成されたばね(140)を含み、前記ばね(140)が、前記カプセルハウジング(110、120)に結合された幅が広い第1の端部と、前記組織貫通部材(130)に結合する幅が狭い第2の端部と、を有し、前記第1の構成では、前記ばね(140)に蓄積された張力が維持され、作動時に、前記ばね(140)に蓄積された張力が解放され、それによって、前記アクチュエータ(140、150)を前記第2の構成に向かって移動させる、カプセル装置(100、100’)。
【請求項2】
前記組織貫通部材(130)が、組織を貫通するように形状決めされた遠位端と、前記アクチュエータ(140、150)に結合されるか、または結合可能な近位端と、を有し、前記組織貫通部材(130)が前記第1の位置をとるときに、前記遠位端が、分離距離だけ前記出口開口部(124)から軸方向に分離され、それによって、前記分離距離に対応する加速ストロークによって、前記組織貫通部材(130)が前記出口開口部(124)に向かって前進することを可能にする、請求項1に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項3】
前記加速ストロークが、1mm~8mm、例えば、2~7mm、例えば、3mm~5mmである、請求項2に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項4】
ガイド構造(180)が、前記カプセルハウジング(110、120)と前記組織貫通部材(130)との間に配設され、前記ガイド構造(180)が、前記組織貫通部材(130)の前記遠位端と協働し、それによって、前記組織貫通部材(130)の前記遠位端が前記出口開口部(124)に向かって移動するときに、前記軸に沿って移動するように前記遠位端を誘導するように構成されている、中央部分(182)を備える、請求項1~3のいずれかに記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項5】
前記ガイド構造(180)が、前記加速ストロークの、例えば、60パーセントより大きい、例えば、70パーセントより大きい、例えば、80パーセントより大きい、例えば、90パーセントより大きい、前記加速ストロークの変位の大部分に沿って、前記組織貫通部材(130)の前記遠位端を誘導するように構成されている、請求項4に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項6】
前記中央部分(182)が、前記組織貫通部材(130)と係合するように、かつ前記組織貫通部材(130)が前記カプセルハウジング(110、120)の前記出口開口部(124)を通って前進されるのにつれて、前記組織貫通部材(130)が前記中央部分を通って脱出することを可能にするように形成される、請求項4または5に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項7】
前記ガイド構造(180)が、前記カプセルハウジング(110、120)に結合された周辺部分(181)を備え、前記中央部分(182)が、軸方向移動のために構成されており、前記ガイド構造(180)が、前記周辺部分を前記中央部分(182)と接続する少なくとも1つの可撓性コネクタ(183)を備える、請求項4~6のいずれかに記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項8】
前記第1の構成では、前記少なくとも1つの可撓性コネクタ(183)が、半径方向内向きかつ近位方向で前記周辺部分(181)から前記中央部分(182)まで延在するように、前記軸に対して傾斜する、部分を有する、形状をとる、請求項7に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項9】
前記組織貫通部材(130)の前記遠位端が前記出口開口部(124)で軸方向位置をとるときに、前記可撓性コネクタ(183)の前記部分が、半径方向内向きかつ遠位方向で前記周辺部分(181)から前記中央部分(182)まで延在するように、前記軸に対して傾斜している形状をとるようにシフトされている、請求項8に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項10】
前記ガイド構造(180)が、ゴムなどの弾性材料から少なくとも部分的に形成され、前記第1の構成では、前記少なくとも1つの可撓性コネクタ(182)が、円錐形状である、請求項7~9のいずれか一項に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項11】
前記第1の構成における前記ばね(140)が、前記軸に沿って延在する円錐形状をとる、請求項1~10のいずれかに記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項12】
前記ばね(140)が、遠位方向に、かつその後に近位方向に、前記アクチュエータ(140、150)の作動部材(150)を移動させるように構成されている、請求項11に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項13】
前記ばね(140)が、複数の巻線を備え、前記第1の構成では、前記複数の巻線のうちの少なくとも1つが、軸方向に重なる様式で前記組織貫通部材(130)を囲む、請求項12に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項14】
前記ばね(140)が、複数の巻線を備え、前記第1の構成では、前記複数の巻線の大部分が、軸方向に重なる様式で前記組織貫通部材(130)を囲む、請求項13に記載のカプセル装置(100、100’)。
【請求項15】
前記組織貫通部材(130)が、治療ペイロードを含む調製物から部分的または完全に形成された固体送達部材であり、前記調製物が、前記内腔壁の組織内に挿入されたときに溶解して、前記治療ペイロードを血流中に少なくとも部分的に放出する、溶解可能な材料から作製される、請求項1~14のいずれかに記載のカプセル装置(100、100’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の内腔に挿入され、組織貫通部材を組織内に移動させるために作動されることを可能にするように適合された、薬剤送達のためのシステムを含む、医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に治療薬の送達による疾患または他の症状の治療が参照されるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
多くの人々が、疾患に罹り、定期的に、および多くの場合、日常的に、薬剤の注射を受けることを必要としている。疾患を治療するために、これらの人々は、複雑であるとみなされ得る、かつ不快な経験となり得る、異なるタスクを実施する必要がある。さらに、その人々は、外出時に注射装置、針、薬剤を持参することが必要となる。したがって、治療が錠剤またはカプセルの経口摂取に基づき得る場合、そのような疾患の治療の有意な改善とみなされることになる。
【0004】
しかしながら、タンパク質ベースの薬剤は、摂取時に吸収されるのではなく、分解および消化されることになるため、そのような溶液は、実現が非常に困難である。
【0005】
経口摂取を通して治療用物質を血流中に送達するための作用溶液を提供するために、薬剤は、まず消化管の内腔に送達され、さらに消化管の壁(内腔壁)内に送達されなければならない。これは、以下の数個の課題を提示する:(1)薬剤は、胃内の酸による分解または消化から保護されなければならない。(2)薬剤は、胃内、または下部消化管、すなわち、胃の後に放出されなければならず、これは、薬剤放出の絶好の機会を制限する。(3)薬剤は、胃および下部消化管内の流体の分解環境に曝される時間を制限するために、内腔壁に送達されなければならない。壁で放出されない場合、薬剤は、放出点から壁への移動中に分解され得るか、または分解流体から保護されない限り、吸収されずに下部消化管を通過し得る。
【0006】
活性薬剤の経口投与および上記の課題のうちの1つ以上への対処に関する先行技術文献は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4を含む。
【0007】
その文献に開示されているものなどの医療用カプセルについて、内部構成設計は、いくつかの設計上の課題のトレードオフを提供する。例えば、固体針形状のAPIの形態でのAPIの送達のために、経口装置が実行可能であるためには、意図される療法に十分な量のAPIを送達する必要がある。同時に、固体針形状のAPI錠剤については、API錠剤は、全身取り込みを可能にするのに十分な深さで組織層内に確実に送達される必要がある。典型的には、適切な深さでAPI錠剤を送達するために、大きな注射力が必要である。したがって、課題は、十分な量のAPIを充分な深さで確実に自己復元および注射しながら、嚥下可能なほど小さい装置を設計することである。さらに、低コストで安定した性能が不可欠である。
【0008】
この種の作動機構について、良好に機能する機構を得るための典型的な制約および要件は、以下を含む:
-たとえ大きな荷重がかかる駆動ばねであっても、駆動ばねの負荷に対して作動部材を長期間維持する能力、
-作動されるときの所望の加速度を維持するために、作動部材が、溶解可能な保持部材の溶解中に、定位置を保つべきであること、および
-作動機構を閉塞し得る未溶解片を回避するために、好ましくは溶解可能な保持部材が完全に溶解される必要があること。
【0009】
上記に関して、本発明の目的は、力のある作動力を提供するために最適化されたカプセル設計を提供することであり、ここで、カプセルの外形寸法が最小化される。
【0010】
本発明の別の目的は、実施形態において、内腔壁の標的場所で組織に対して組織貫通部材を配向するための自己復元能力に依存することが、作動力および/または外部寸法を損なうことなく、自己復元カプセル装置の自己復元能力を改善することである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、患者の内腔に摂取するための医療装置を提供することであり、その医療装置は、組織貫通部材を対象の内腔の組織壁に挿入することを高度に効果的かつ確実に可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2018/213600(A1)号
【特許文献2】国際公開第2020/160399(A1)号
【特許文献3】米国特許公開第2020/0129441(A1)号
【特許文献4】国際公開第2020/157324(A1)号
【発明の概要】
【0013】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明からも明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様では、患者の消化管の内腔内に移動するための摂取に好適なカプセル装置が提供されており、内腔は、内腔壁を有する。カプセル装置は、自己復元カプセルとして構成されており、自己復元カプセルは、
-区画と、区画からカプセルの外部に通じる出口開口部を画定する、外部組織係合表面と、を備える、カプセルハウジングと、
-軸に沿って配設され、かつ区画内の第1の位置から、出口開口部を通って、標的場所で内腔壁内へと軸方向に前進するように構成された組織貫通部材と、
-組織貫通部材に結合するためのアクチュエータであって、アクチュエータが、第1の構成および第2の構成を有し、アクチュエータが、作動時に、第1の構成から第2の構成に移動し、それによって、第1の位置から、内腔壁内に軸方向に組織貫通部材を前進させるように構成されている、アクチュエータと、を備え、
アクチュエータは、先細の螺旋状張力ばねとして形成されたばねを含み、ばねは、カプセルハウジングに結合された幅が広い第1の端部と、組織貫通部材に結合する幅が狭い第2の端部と、を有し、第1の構成では、ばねに蓄積された張力が維持され、作動時に、ばねに蓄積された張力が解放され、それによって、アクチュエータを第2の構成に向かって移動させる。
【0015】
国際公開第2020/157324(A1)号に開示されているような、自己復元カプセル装置の以前に提案された設計では、提案されたカプセル装置は、駆動ばねとして構成された直線円筒形圧縮ばねを組み入れる。これらの設計では、アクチュエータは、駆動ばねと軸方向に重なる溶解可能なペレットトリガ配設を備え、すなわち、ばねがペレットトリガ配設の周りに、すなわちペレットトリガ配設の半径方向外側に嵌合する必要があることを意味する。
【0016】
カプセルの所与のサイズについて、組織貫通部材の衝撃力を増加させる試みにおいて、ばね特性は、コイル径を減少し、かつ/またはワイヤ径を増大することによって、最適化され得る。しかしながら、トリガシステムに残る利用可能なスペースは減少する。
【0017】
第1の態様によれば、代わりに駆動ばねを先細の螺旋状張力ばねとして提供することによって、ばねの力は、カプセル装置の全体的な外形寸法を増大させる必要なく増加させることができる。カプセルハウジングと作動可能な構成要素との間に配設される円錐形状の螺旋状ばねの形態の張力ばねを利用することによって、駆動ばねは、ここで自己配向にポジティブな役割を果たす。力/速度およびAPIペイロードは、装置の全体的なサイズを増大することなく、ここで同時に増加させることができる。
【0018】
一部の形態では、組織貫通部材は、組織を貫通するように形状決めされた遠位端と、アクチュエータに結合されるか、または結合可能な近位端と、を有し、組織貫通部材が第1の位置をとるときに、遠位端は、分離距離だけ出口開口部から軸方向に分離され、それによって、分離距離に対応する加速ストロークによって、組織貫通部材が出口開口部に向かって前進することを可能にする。加速ストロークを増加させることによって、粘膜組織を貫通するためのより多くのエネルギーが利用可能となる。
【0019】
異なる実施形態では、加速ストロークは、1mm~8mm、例えば、2~7mm、例えば、3mm~5mmである。
【0020】
さらなる実施形態では、ガイド構造は、カプセルハウジングと組織貫通部材との間に配設され、ガイド構造は、組織貫通部材の遠位端と協働し、それによって、組織貫通部材の遠位端が出口開口部に向かって移動するときに、軸に沿って移動するように遠位端を誘導するように構成されている、中央部分を備える。
【0021】
一部の形態では、ガイド構造は、例えば、60パーセントより大きい、例えば、70パーセントより大きい、例えば、80パーセントより大きい、例えば、90パーセントより大きい加速ストロークである、加速ストロークの大部分に沿って、組織貫通部材の遠位端を誘導するように構成されている。
【0022】
なおもさらなる形態では、中央部分は、組織貫通部材と係合するように、かつ組織貫通部材がカプセルハウジングの出口開口部を通って前進されるのにつれて、組織貫通部材が中央部分を通って脱出することを可能にするように形成される。
【0023】
ガイド構造は、カプセルハウジングに結合された周辺部分を備えるように形成され得、中央部分は、軸方向移動のために構成されており、ガイド構造は、周辺部分を中央部分と接続する少なくとも1つの可撓性コネクタを備える。
【0024】
第1の構成では、少なくとも1つの可撓性コネクタは、半径方向内向きかつ近位方向で周辺部分から中央部分まで延在するように、軸に対して傾斜する、部分を有する、形状をとるように形成され得る。
【0025】
例示的な実施形態では、可撓性コネクタは、組織貫通部材の遠位端が出口開口部で軸方向位置をとるときに、可撓性コネクタのその部分が、半径方向内向きかつ遠位方向で周辺部分から中央部分まで延在するように、軸に対して傾斜している形状をとるようにシフトされるように構成されている。
【0026】
一部の形態では、ガイド構造は、ゴムなどの弾性材料から少なくとも部分的に形成され、第1の構成では、少なくとも1つの可撓性コネクタは、円錐形状である。
【0027】
ばねは、第1の構成では、ばねが軸に沿って延在する円錐形状をとるように提供され得る。
【0028】
一部の形態では、アクチュエータは、作動部材を備える。一部の実施形態では、作動部材は、第1の構成と第2の構成との間のアクチュエータの移動中に組織貫通部材を保持するようになど、組織貫通部材に対して結合するように構成され得る。
【0029】
一部の例示的な実施形態では、ばねは、最初に遠位方向に、かつその後に近位方向に、作動部材を移動させるように構成されている。
【0030】
ばねは、複数の巻線を備える。一部の実施形態では、第1の構成にあるときに、複数の巻線のうちの少なくとも1つは、軸方向に重なる様式で組織貫通部材を囲む。
【0031】
他の実施形態では、第1の構成にあるときに、複数の巻線の大部分は、軸方向に重なる様式で組織貫通部材を囲む。
【0032】
一部の形態では、組織貫通部材は、治療ペイロードを含む調製物から部分的または完全に形成された固体送達部材であり、調製物は、内腔壁の組織内に挿入されたときに溶解して、治療ペイロードを血流中に少なくとも部分的に放出する、溶解可能な材料から作製される。
【0033】
一部の実施形態では、第1の構成にあるときに、ばねの第2の幅が狭い端部は、ばねの第1の幅が広い端部に対して近位に位置するが、第2の構成では、ばねの第2の幅が狭い端部は、ばねの第1の幅が広い端部に対して遠位に位置する。
【0034】
アクチュエータは、駆動ばねが予め定義された状態の発生時に作動部材を駆動させることを可能にするように、作動機構を作動させるように構成された射出機構を備える、作動機構として提供され得る。一部の実施形態では、予め定義された状態は、内腔内の予め定義された状態、内腔内の予め定義された状態のセット、またはカプセル装置によって受信され、かつ外部制御装置によって放射される信号のうちの1つ以上として提供される。なおもさらなる実施形態において、射出機構は、環境感受性機構を含む。射出機構は、作動前構成では、射出機構がアクチュエータを第1の構成に保持し、射出構成では、ばねが第1の構成から第2の構成へと作動部材を駆動できるようにアクチュエータを解放するように構成され得る。
【0035】
一部の実施形態では、射出機構は、溶解可能なペレットトリガ機構として提供され、溶解可能なペレットは、カプセルハウジングに対して、かつばねによって提供される機械的負荷に対して作動部材を解放可能に保持するように構成されている。溶解可能なペレットは、例えば、カプセルハウジングに対して作動部材を解放することによって、溶解可能なペレットの溶解を可能にし、それによって、作動機構を作動させるために、GI抽出物の胃液などの生体流体に曝されるように構成され得る。
【0036】
一部の実施形態では、射出機構の非限定的な例は、溶解可能なペレットトリガ機構として提供され、国際公開第2020/157324(A1)号に開示されている原理のいずれかを利用し得る。
【0037】
第1の態様によるなおもさらなる実施形態では、カプセル装置は、
-近位端と、遠位端と、を有する、カプセルハウジングであって、カプセルハウジングが、複数の保持部分を備える、カプセルハウジングと、
-作動前構成と作動構成との間で動作可能な作動機構と、によって画定され、
作動機構は、
-カプセルハウジング内に配設され、かつ第1の位置から第2の位置に向かう軸に沿った遠位移動のために構成された、作動部材であって、作動部材が、基部と、そこから近位に延在する複数のラッチアームと、を備え、各ラッチアームが、半径方向外向きに面するラッチ表面および半径方向内向きに面するラッチ表面を画定し、各ラッチアームが、半径方向に偏向可能である、作動部材と、
-軸に沿って配設された螺旋状巻線を有する駆動ばねであって、駆動ばねが、ハウジングに結合された第1の端部と、作動部材に結合された反対側の第2の端部と、を有し、作動前構成における駆動ばねが、作動部材を第2の位置に向かって駆動させるために、作動部材上に負荷をかけるように引っ張られる、駆動ばねと、
-溶解可能なラッチ支持体と、を備え、
溶解可能なラッチ支持体は、軸上に中央に配設され、保持部分は、溶解可能なラッチ支持体の周りに同軸に配設され、ラッチアームは、それらの間に半径方向に配設され、
作動前構成では、半径方向外向きに面するラッチ表面は、ラッチ係合においてそれぞれの保持部分と係合し、半径方向内向きに面するラッチ表面は、溶解可能なラッチ支持体のそれぞれの半径方向外向きに面する表面との係合を支持し、それによって、ラッチアームが半径方向内向きに移動することを制限し、かつラッチ係合の解放を防止し、
溶解可能なラッチ支持体が少なくとも部分的に溶解している作動構成では、ラッチアームは、半径方向内向きに移動することが可能になり、それによって、ラッチ係合を解放し、かつ駆動ばねが作動部材を第2の位置に向かって移動させることが可能になる。
【0038】
一部のこのようなカプセルの実施形態では、作動前構成では、ラッチアームは、各ラッチアームの半径方向内向きに面するラッチ表面が軸に対して傾斜するように、作動部材の基部から近位および半径方向外向きに延在しており、溶解可能なラッチ支持体のそれぞれの半径方向外向きに面する表面が傾斜し、それによって、半径方向内向きに面するラッチ表面に沿ってそれぞれのラッチアームを支持する。
【0039】
各ラッチアームの半径方向内向きに面するラッチ表面が軸に対して傾斜するように、基部から近位および半径方向外向きに延在する、ラッチアームを有するラッチ機構を構成することによって、これにより、作動構成では、ラッチアームが半径方向でほとんど空間を占有しないような様式で、ラッチアームが互いに向かって半径方向に折り畳まれることが可能になる。これにより、カプセルハウジングに関連付けられた保持部分が半径方向に小さな寸法で形成されることが可能になる。
【0040】
先行技術のラッチ機構と比較して、提案されたラッチ機構は、耐荷重面に改善をもたらし、ラッチ機構構成要素のクリープのリスクが低減される。
【0041】
さらに、本解決策は、溶解可能なラッチ支持体のより効果的な湿潤を可能にし、ラッチ係合のタイムリーな解放のための精度の向上をもたらす。
【0042】
一部の実施形態では、作動前構成にあるときに、溶解可能なラッチ支持体は、溶解可能なラッチ支持体に向かって半径方向に付勢されるラッチアームによって溶解可能なラッチ支持体上に及ぼされる圧縮力によって主に作用される。
【0043】
一部の実施形態において、作動前構成では、ラッチアームおよび保持部分の少なくとも1つの対が、作動部材を維持するように、すなわち、解放可能に保持するように、構造化される。
【0044】
カプセル装置の一部の形態では、作動前構成をとるときに、ばねは、作動部材上に負荷をかけ、ラッチアームおよび保持部分の少なくとも1つの対は、ばねによって及ぼされる負荷に対抗して、ベース部材に対して作動部材を保持する。
【0045】
他の形態では、カプセル装置が使用されるとき、ばねは、作動部材に対して最初から負荷をかけないが、ユーザが開始した工程などによって、負荷を提供するために動作され得る。
【0046】
一部の実施形態では、複数のラッチアームは、V字形状の構成に配設された2つの半径方向に対向するラッチアームとして提供され、溶解可能なラッチ支持体部材は、概してくさび形状または円錐としての形状である。他の実施形態では、ラッチアームの数は、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上であってもよく、ラッチアームは、軸の周りに分布する。
【0047】
カプセル装置は、流体進入開口部がカプセルハウジングの近位端内に提供されるように形成され得、溶解可能なラッチ支持体は、流体進入開口部内に配置されて、溶解可能なラッチ支持体の湿潤を可能にする。
【0048】
一部の実施形態では、複数の保持部分は各々、近位および半径方向内向きに向いた表面法線を有する傾斜表面を備え、各ラッチアームの半径方向外向きに面するラッチ表面は、対応する傾斜表面を備える。
【0049】
カプセルハウジングは、外部表面を画定する。保持部分の傾斜表面は、カプセルハウジングの外部表面と交差するように形成され得る。
【0050】
半径方向外向きに面するラッチ表面とそれぞれの保持部分との間の係合境界面は、特定の実施形態では、平面境界面、または円錐形状の境界面などの単一湾曲境界面のいずれかとして提供され得る。
【0051】
さらなる実施形態では、半径方向内向きに面するラッチ表面と溶解可能なラッチ支持体のそれぞれの半径方向外向きに面する表面との間の係合境界面は、平面境界面、または円錐形状の境界面などの単一湾曲境界面として提供され得る。
【0052】
カプセルハウジングの外部は、ハウジング外部の最近位端表面を画定する。一部の実施形態では、溶解可能なラッチ支持体は、溶解可能なラッチ支持体の近位端表面を画定し、作動前構成では、溶解可能なラッチ支持体の近位端表面は、ハウジング外部の最近位端に対して近位に位置する。代替的な実施形態では、溶解可能なラッチ支持体の近位端表面は、ハウジング外部の最近位端から2mm以内、例えば、1.5mm以内、例えば、1.0mm以内、例えば、0.5mm以内の遠位に位置する。
【0053】
一部の形態では、組織貫通部材は、治療ペイロードを備える。
【0054】
一部のさらなる形態では、組織貫通部材は、治療ペイロードを含む調製物から部分的または完全に形成された固体送達部材として提供され、調製物は、内腔壁の組織内に挿入されたときに溶解して、治療ペイロードを血流中に少なくとも部分的に放出する、溶解可能な材料から作製される。
【0055】
他の実施形態では、治療ペイロードは、封入された固体、液体、ゲルもしくは粉末、またはそれらの任意の組み合わせの形態であり得、かつ組織貫通部材を画定する送達部材を通して送達するように構成され得る。
【0056】
一部の実施形態では、カプセル装置は、治療ペイロードと関連付けられている送達部材を備え、送達部材は、治療ペイロードの少なくとも一部分を送達するために内腔壁内への挿入のために構成されている。送達部材は、針のような外形を有し得る。しかしながら、代替的な実施形態では、送達部材の異なる形状が提供され得る。
【0057】
なおも他の実施形態では、送達部材は、注射針内に延在する長手方向の内腔を有する注射針であり、治療ペイロードは、カプセル装置内に収容された貯蔵部から注射針を通して排出可能である液体、ゲル、または粉末として提供される。
【0058】
一部の形態では、カプセル装置は、患者による嚥下、および胃または小腸などの患者の消化管の内腔内への移動のために好適な摂取可能な装置を画定する。装置のカプセルハウジングは、ヒトなどの対象によって嚥下されることを可能にするように形状設定およびサイズ設定され得る。
【0059】
上記の配置によって、経口投与された薬剤は、ヒトなどの生存哺乳類被験体の胃または腸壁内に安全に、かつ確実に送達され得る。
【0060】
一部の実施形態では、作動部材は、組織貫通部材を、カプセルハウジング内に格納された第1の位置から、第1の位置とは異なる第2の位置へと移動させるように構成されたハブを画定し、その結果、第2の位置では、組織貫通部材の少なくとも一部が、カプセルハウジングの外部の組織と直接係合する。
【0061】
一部の形態では、アクチュエータは、アクチュエータが第1の構成から第2の構成に移動するときに、第1の位置から第2の位置に移動する作動部材を備える。
【0062】
一部の実施形態では、作動機構は、作動前構成から、作動構成を通して、作動構成で終わるように作動可能である。作動構成は、作動機構が作動構成に向かって移動するために作動部材を解放する、中間構成と呼んでもよい。
【0063】
一部の実施形態では、作動前構成では、組織貫通部材は、ハブに取り付けられる。
【0064】
他の実施形態では、作動前構成では、組織貫通部材は、ハブによって係合されないが、ハブが第1の位置から第2の位置へと移動する間に、ハブは、最初に組織貫通部材と係合し、その後、組織貫通部材の少なくとも一部がカプセルハウジングの外部の組織内に挿入されるように組織貫通部材を移動させる。
【0065】
ハブは、治療ペイロード、送達部材、およびセンサのうちの1つ以上を、カプセルハウジングに対する第1の位置からカプセルハウジングに対する第2の位置まで担持または押すように構成され得る。
【0066】
特定の形態では、ハブ自体は、カプセルハウジングに対する第1の位置からカプセルハウジングに対する第2の位置まで移動する、治療ペイロード、送達部材、およびセンサのうちの1つ以上を形成する。
【0067】
一部の形態では、ハブは、境界面部分を備え、組織貫通部材は、ハブの境界面部分に対して取り付く。
【0068】
そのような実施形態では、ハブは、ハブを第1の位置から第2の位置まで移動させるために作動され得、組織貫通部材は、ハブが第2の位置をとるときに、ハブの境界面部分に対する取り外しのために構成されている。
【0069】
さらなる例示的な実施形態では、カプセル装置は、丸みを帯びた物体として形成され、外面を画定する外形を有するカプセルハウジングを備えるカプセル装置を画定する。カプセル装置は、針またはダーツ状形態を有し、治療ペイロードを含む調製物から部分的または完全に形成される、固体送達部材をさらに備え、調製物は、内腔壁の組織内に挿入されるときに溶解する溶解可能な材料から作製される。作動部材は、境界面部分を備えるハブとして形成され、固定送達部材は、ハブの境界面部分に対して保持されるか、または取り付けられる。カプセル装置は、幾何学的中心および軸に沿った幾何学的中心からオフセットされる質量中心を有する、自己復元カプセルとして構成され、質量中心は幾何学的中心から横方向にオフセットされるように配向されながらカプセル装置が内腔壁の組織によって支持されるとき、カプセル装置は、固体送達部材が標的場所で内腔壁と相互作用することを可能にするために、重力の方向に沿って配向された軸を有するカプセル装置を配向するように、重力作用に起因する、外部から適用されるトルクを受ける。作動構成に入ると、ハブは、軸に沿って移動し、それによって、固体送達部材を組織内に挿入する。挿入に続いて、固体送達部材は、1つ以上の治療薬を少なくとも部分的に溶解して組織内に放出し得る。
【0070】
自己復元カプセル装置の非限定的な例としては、装置が患者の胃内腔に位置するときに作動するように構成された装置が挙げられ得る。他の非限定的な例は、装置を含み得、装置は、小腸または大腸に位置するときに作動するように構成される。
【0071】
本開示は、主に、カプセル装置から内腔壁までの薬剤送達を指すが、その最も広い態様における本発明は、薬剤または物質の送達に限定されない。本発明によるカプセル装置は、他の使用のために構成され得る。非限定的な使用としては、例えば、体腔壁からカプセル装置に試料を導入するための試料採取装置を含むことによる、体腔から1つ以上の試料を得ること、および、例えば、カプセル装置から内腔壁内にセンサ装置を配置または位置付けることによる、モニタリングまたは分析装置を送達することが挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「薬剤」、「治療薬」、「ペイロード」、または「治療ペイロード」という用語は、指定された標的部位内またはその上に送達されることができる任意の薬剤製剤を包含することを意味する。薬剤は、単一の薬剤化合物、または予混合もしくは予配合された複数の薬剤化合物であり得る。代表的な非限定的な薬剤としては、固体、粉末または液体の両方の形態における、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤ならびにその誘導体)、タンパク質、およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養製剤、ならびに他の物質が挙げられる。具体的には、薬剤は、インスリンまたはGLP-1含有薬剤であってもよく、これは、その類似体、および1つ以上の他の薬剤との組み合わせを含む。
【0073】
以下では、本発明の実施形態が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1a-1b】
図1aおよび
図1bは、本発明による第1の実施形態のカプセル装置100の断面正面図を各々示し、装置は、それぞれ、作動前構成および作動構成をとる。
【
図2】
図2は、作動前構成における第1の実施形態のカプセル装置100の部分的に切り取られた斜視図である。
【
図3a-3b】
図3aおよび
図3bは、第1の実施形態による、カプセル装置100のハブ150の2つの異なる斜視図であり、
【
図4a-4b】
図4aおよび
図4bは、第1の実施形態による、カプセル装置100の溶解可能なラッチ支持体160の2つの異なる斜視図である。
【
図5a-5c】
図5a~
図5cは、本発明による第2の実施形態のカプセル装置100’の断面正面図を各々示し、装置は、それぞれ、作動前構成、中間構成、および作動構成をとる。
【
図6】
図6は、作動前構成における第2の実施形態のカプセル装置100’の部分的に切り取られた斜視図である。
【
図7a-7b】
図7aおよび
図7bは、第2の実施形態による、カプセル装置100’のハブ150の2つの異なる斜視図である。
【
図8a-8b】
図8aおよび
図8bは、第2の実施形態による、カプセル装置100’の溶解可能なラッチ支持体160の2つの異なる斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
異なる実施形態の図を表す図において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【0076】
例示的な実施形態の説明
以下で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用されるとき、これらは、添付の図に言及するだけであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示された図は、概図であり、そのため、異なる構造の構成、およびそれらの相対寸法は、例示的な目的のみを果たすことが意図される。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは概して、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを示すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を備え得る。「組立品」および「サブ組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に単一の、または機能組立品またはサブ組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとしてともに分類される構成要素を説明するために使用されるに過ぎない。
【0077】
図1a、
図1b、および
図2を参照すると、本発明の態様による薬剤送達装置の第1の実施形態が説明され、実施形態は、固形用量カプセル装置からの固形用量の展開のための所望の作動構成を有するカプセル装置100を提供するように設計される。開示される実施形態は、カプセル装置100であって、患者によって摂取されて、カプセル装置が、胃内腔に入り、その後、胃壁に対して配向し、最終的に胃壁の組織内の標的場所における挿入のための固形用量ペイロードを展開することを可能にするために好適な、カプセル装置100に関する。一般に、固形用量ペイロードの少なくとも一部分が対象の組織に貫通し、ペイロード内の治療薬の少なくとも一部分が対象の血流中での取り込みのために組織に溶解する。カプセル装置100について、胃壁に対してカプセルを配向するための一般原理は、国際公開第2018/213600(A1)号に開示されている原理のいずれかを利用し得る。
図1aおよび
図2に示す状態は、カプセルの嚥下前の作動前構成を表すのに対し、
図1bに示す状態は、作動構成を表し、すなわち、送達後状態に対応する。
【0078】
摂取可能な自己復元カプセル装置100は、ある平均密度を有する第1の部分100Aと、第1の部分100Aの平均密度とは異なる平均密度を有する第2の部分100Bと、を備える。カプセル装置100は、物品を摂取する対象ユーザの内部放出のために薬剤を担持するためのペイロード部分130を形成する組織貫通部材を収容する。示される実施形態では、展開前のカプセル装置の平均密度は、消化液の密度よりも大きく、カプセル装置が胃内腔の底部まで沈むことを可能にする。自己復元物品の外形は、ゴンボック形状、すなわち、形状の単一の安定した配向以外の任意の配向で表面上に配置されたとき、形状がその単一の安定した配向に再配向する傾向がある、ゴンボックタイプの形状である。
【0079】
示されるカプセル装置は、上部(近位)カプセルハウジング110を含み、これは、下部(遠位)カプセルハウジング120に嵌合して取り付く。上部カプセルハウジング110および下部カプセルハウジング120は、装置のカプセルハウジングをともに形成する。示される実施形態では、上部カプセルハウジング110および下部カプセルハウジング120は、スナップ係合によって互いに対して装着される。カプセルハウジング部110/120は、ペイロード部分130を収容する内部中空、ならびに作動および推進機構を有する、シェルを画定する。後者は、予め引っ張られた駆動ばね140の形態のエネルギー源と、駆動ばね140からのエネルギーの放出時にペイロード送達のためにペイロード部分130を保持し、かつ前方に駆動する、ハブ150の形態の作動部材と、を備える。ペイロード部分130は、作動軸に沿って配向され、作動軸に沿った移動のために構成される。示される実施形態では、上部カプセルハウジング部110および下部カプセルハウジング部120は、作動軸に沿って配設された対称軸を有する回転対称部を概して形成する。図面では、装置は、作動軸が垂直に向き、ペイロード部分130が下部カプセルハウジング120の中央に配設された出口開口部/出口孔124に向かって垂直に下向きに向いた状態で配向され、出口孔は、ペイロード部分130が、出口孔を通って輸送され、カプセル装置100の外側に移動することを可能にする。下部カプセルハウジング部120は、出口孔124を取り囲む、実質的に平坦な下部外部表面として形成される、組織係合表面123を含む。
【0080】
図1aに示す実施形態では、ペイロード部分130の遠位に向いた端部は、軸が組織係合表面123と交差する作動軸上の点に対して軸方向の距離に位置し、この距離は分離距離と呼ばれる。これにより、分離距離に対応する加速ストロークによって、組織貫通部材を出口開口部124に向かって前進させることができる。
【0081】
図1aおよび
図1bに示される実施形態のカプセルハウジングに好適な材料について、上部カプセルハウジング110は、ポリカプロラクトン(PCL)などの低密度材料から好適に作製され得るが、一方、下部カプセルハウジング120は、316Lステンレス鋼などの高密度材料から好適に作製され得る。他の実施形態では、他の材料を使用し得る。
【0082】
示される実施形態では、カプセル装置100全体の密度分布に起因して、および装置の外部形状に起因して、カプセル装置が組織壁などの壁に支持され、かつ重力を受けるときに、カプセル装置100は、作動軸が表面(例えば、重力に実質的に直交する表面、消化管の壁などの組織の表面)に対して実質的に垂直な状態で、それ自体を配向する傾向がある。したがって、カプセル装置は、組織係合表面123が垂直に下向きに面するように、重力の方向に対して配向する傾向がある。
【0083】
上部カプセルハウジング110の内部は、上部カプセルハウジング110の上部から、下部カプセルハウジング120に形成された近位に面する底面に向かって、作動軸と同心状に延在する内部スリーブ115として提供された装着構造を含む。
【0084】
さらに、示される実施形態では、ハブ保持構造113は、作動軸と同心に配設され、上部カプセルハウジング110から内側スリーブ115に対して半径方向内向きに、かつ作動軸に沿って下方に延在する、内向きに延在する周回フランジとして設けられる。ハブ保持構造113は、カプセル内に配設された引っ張られた駆動ばね140から放出する駆動力に対抗して、ハブ150を取り外し可能に保持するための保持幾何学的形状としての役割を果たす。主に
図1bを参照すると、示される実施形態では、ハブ保持構造113は、円錐形状保持表面113aを提供し、円錐形状保持表面113aに対して垂直な表面は、近位および半径方向内向きに向けられる。示される実施形態では、円錐形状保持表面113aは、上部カプセルハウジング110の近位端部分で、外側の丸みを帯びた表面と直接的に接合する。カプセル装置100の示される第1の実施形態では、ハブ保持構造113の円錐形状保持表面113aは、作動軸に対して25度の角度を形成する。
【0085】
円錐形状保持表面113aの最遠位部分では、中央開口部がその中心に形成される。中央開口部は、ハブ150が解放状態をとるときに、ハブが中央開口部を通して軸方向に移動可能であるように寸法を付けられるが、ハブ150が作動構成に対応する状態をとるときに、ハブ150は、中央開口部を通して軸方向に移動することができない。円錐形状保持表面113の上縁部がカプセルハウジング110の外部表面と交差する場所で、円錐形状保持表面113の構造は、胃液が流体動作式作動機構と接触することを可能にする流体侵入開口部を画定する。
【0086】
図1aおよび
図1bに示される第1の実施形態では、ペイロード部分130は、治療ペイロードを含む調製物から完全にまたは部分的に形成される固体送達部材を画定する。示される実施形態では、固体送達部材は、内腔壁の組織を貫通するように形状決めされた薄い円筒形ロッドとして形成され、円筒形ロッドは、組織貫通端(すなわち、先端部分)および組織貫通端の反対側の後端を有する。示される実施形態では、ロッドの組織貫通端は、内腔壁の粘膜組織内への容易な挿入を促進するために向けられるが、示される実施形態では、後端は、90度の切断によって切断された切頭円筒を画定する。カプセル装置100による送達に好適な薬剤の非限定的な例は、インスリンなどの乾燥圧縮APIである。
【0087】
主に
図3aおよび
図3bを参照すると、ハブ150は、カプセルハウジングに対してハブを取り外し可能に保持するよう構成される上部保持部151と、ペイロード部分130の後端を定位置に保持するよう構成される下部境界面部155と、を備える。示される実施形態では、下部境界面部155は、ペイロード部分130が孔内に堅固に取り付けられるように、ペイロード部分130の後端を受容する下向き開口孔157を含む。下部境界面部155は、環状ばねシートをさらに画定し、これは、以下では「第2のばねシート」146と称する。
【0088】
ハブ150の上部保持部151は、近位端で、2つの独立して偏向可能なラッチアーム153の形態で提供される2つのラッチと接続する、基部を形成する。
図1aに示す状態では、ラッチアーム153は、作動軸の周りに対称的に配設される。各ラッチアームは、軸に対してある角度で保持部分151から延在し、その結果、各ラッチアームは、基部から近位および半径方向外向きに傾斜して延在する。したがって、2つのラッチアームは、V字形状の構成で構成される。各ラッチアーム153は、上部保持部151に対する旋回運動によって半径方向内向き方向に弾性的に移動可能である。ラッチアーム153は各々、ラッチ係合において円錐形状保持表面113aのそれぞれの部分と係合するように構成された半径方向外向きに面するラッチ表面153aを画定する。ラッチアーム153の各々は、中央に配置された溶解可能なラッチ支持体160と協働するように構成された半径方向内向きに面するラッチ表面153bをさらに含む(
図1aおよび
図4a/
図4bを参照)。示される実施形態では、全ての表面153aおよび153bは、円錐表面として形成される。
【0089】
示される第1の実施形態では、
図1aに示す作動前構成では、半径方向外向きに面するラッチ表面153aの傾斜角は、軸に対して25度の角度を形成するのに対し、半径方向内向きに面するラッチ表面153bの傾斜角は、軸に対して22度の角度を形成する。したがって、基部151からラッチアームの自由端部に向かって、各ラッチアームの横方向の厚さは、自由端部でより大きな横方向の厚さに向かって徐々に増加する。他の実施形態では、表面153aおよび153bに対して、異なる傾斜角を使用し得る。また、傾斜の角度は、表面153aおよび153bに対して同じであってもよく、または表面153aおよび153bの間の傾斜の角度の差はさらに大きくなり得る。
【0090】
ハブ150の示された実施形態では、ラッチアーム153は、ヒンジセクションによって上部保持部分151の基部部分に接続され、
図1aでとる位置に対して、それにより、2つのラッチアームが、ラッチアームが互いに接触するか、またはそれらの間に小さな半径方向の間隔を置いて位置付けられる、折り畳み位置に向かって半径方向内向きに偏向することが可能になる。したがって、半径方向内向きに偏向すると、偏向可能ラッチアームは、円錐形状保持表面113aから取り外され、それによって、ハブ150が、円錐形状保持表面113a内に形成された中央開口部を通してカプセルハウジング110/120に対して遠位に移動することを可能にする。
【0091】
図3aおよび
図3bは、
図1aに示される作動前構成に対応する状態にあるハブ150を示している。しかしながら、カプセル装置100の組立前、すなわち、ハブ150を上部カプセルハウジング110内に挿入する前に、ラッチアームは、それらが弛緩状態をとるときに、異なる配向をとり得る。したがって、ポリオキシメチレン(POM)または類似の材料などの高強度熱可塑性材料を使用した成形によってなど、注射成形によって製造され得るハブ150の製造中に、ラッチアーム153は、ラッチアームが弛緩状態にあるときに、ラッチアームが、アームが互いに向かって半径方向に折り畳まれる折り畳み位置をとるように形成され得る。これにより、ラッチアームを折り畳み状態に向けて動かす別個の工程を必要とせずに、円錐形状保持表面113a内に形成された中央開口部を通してハブ150を近位方向に挿入することが可能になり、カプセル装置の容易な組み立てが可能になる。
【0092】
図4および
図4bは、溶解可能なラッチサポート160の2つの斜視図を示している。示される実施形態では、溶解可能なラッチ支持体160は、2つのラッチアーム153の間に、ラッチアーム153をハブ保持構造113の円錐形状保持表面113aと緊密に接触させるように、くさび様式に挿入されるようにサイズ設定された略円錐形状部材として形成される。示される実施形態では、円錐表面163bは、ラッチアームの表面153bと、円錐の中心軸に対して22度の傾斜角と合致する。
【0093】
溶解可能なラッチ支持体160については、異なる形態および組成物を使用し得る。非限定的な例としては、ソルビトールまたは微結晶性セルロース(MCC)から作製されたペレットが挙げられる。他の非限定的な例としては、射出成形イソマルトペレット、圧縮造粒イソマルトペレット、クエン酸/NaHCO3の顆粒組成物から作製された圧縮ペレット、またはイソマルト/クエン酸/NaHCO3の顆粒組成物から作製された圧縮ペレットが挙げられる。
【0094】
こうした溶解可能なラッチ支持体は、GI-抽出物の胃液などの液体に供されると分解する。組成物、溶解可能なラッチ支持体の幾何学的形状、および任意選択で溶解可能なラッチ支持体の湿潤を確実にするための露出チャネルを慎重に選択することによって、カプセル装置100の嚥下後に選択された時間遅延内に解放時間が発生するように制御することができる。
【0095】
第1の実施形態のカプセル装置100は、作動前に、組織貫通部材、すなわち、カプセル装置100の外部環境から流体的に分離されたペイロード部分130を維持するための一対の密封要素170、180をさらに備える。示される実施形態では、軟質の可撓性材料(例えば、弾性材料)のリングとして形成される上部密封要素170が、円錐形状保持表面113aの最も下の環状表面と、ハブ150の環状近位に面するフランジ表面158との間に挿入されている。
【0096】
さらなる密封要素、すなわち、下部密封要素180は、作動前に出口孔124が流体的に遮断された状態を維持するように構成された流体ゲートを形成する。示される実施形態では、密封要素180は、概ね円盤形状の形態を有するエラストマー密封部材を備える。密封要素180の外周は、駆動ばね140の最も下の巻線の下に装着され、かつ下部カプセルハウジング120の環状近位に面する表面の上方に圧着される。米国特許公開第2020/0129441(A1)号に開示されるように、密封要素180の中央領域は、流体ゲートの厚さを部分的または完全に延在する1つ以上の薄い切断(例えば、1つ以上の薄いスリット)によって形成されるなど、自己密封弁を提供するために形成される流体ゲートを備え得る。
【0097】
したがって、密封要素170と180が協働して、カプセル装置100の内部に区画を形成し、それにより、作動前に、カプセル装置100に対して外部に生体流体から流体的に分離されたペイロード部分130を維持するが、ペイロード部分が、組織へのペイロード送達のための作動時に、密封要素180を通して容易に貫通できるようにする。
【0098】
組立中、ハブ150のラッチアームが、円錐形状保持表面113a内に形成された中央開口部を通して完全に近位に挿入された後、かつ密封要素170がハブ150と上部カプセルハウジング110との間に圧着された状態で、ラッチサポート160は、ラッチアーム153の間で遠位方向に軸方向に押し付けられる。溶解可能なラッチ支持体160とラッチアーム153との間の円錐形状境界面に起因して、溶解可能なラッチ支持体160は、ラッチアーム153が円錐形状保持表面113aと係合するように半径方向外向きに広がるようになる間に、湿潤作用で遠位に移動することが可能になる。この組立工程の終了時に、湿潤作用は、溶解可能なラッチ支持体160とラッチアーム153との間に固定を提供し、結果として、溶解可能なラッチ支持体160がラッチアーム153に固定して取り付けられるような取付係合がもたらされる。これにより、溶解可能なラッチ支持体160がラッチアーム153から誤って取り外れるリスクを伴わずに、安全な保管および取り扱いが可能になる。
図1aに見られるように、溶解可能なラッチ支持体の上面162は、円錐形状保持表面113aによって画定される近位開口部と実質的に同一平面に位置する。これは、胃液中に浸漬されたときに、溶解可能なラッチサポート160の適切な湿潤を確実にするのに役立つ。他の実施形態では、上面162は、上部カプセルハウジング110の最近位端に対して近位または遠位のいずれかに位置付けられ得る。
【0099】
上述の駆動ばね140に関して、カプセル装置100では、駆動ばねは、カプセルハウジング内の作動軸と同軸に配設される予め引っ張られた螺旋状張力ばねの形態で提供される。
図1aに示される作動前構成における駆動ばねは、カプセルハウジング110/120に対して装着された幅が広い第1の端部147、およびアクチュエータ150上に装着された幅が狭い第2の端部146を画定し、すなわち、その結果、駆動ばね140は、第1の端部147の大直径部分、および第2の端部146の狭い直径部分を画定し、大直径部分は、狭い直径部分よりも大きい。作動前構成では、第1の端部147は、第2の端部146の遠位に位置する。示される実施形態では、駆動ばね140は、張力モードで動作するように排他的に配設される円錐形状の先細のばねとして提供される。この実施形態では、駆動ばねの第1の端部147は、カプセルの最遠位部分、すなわち、出口孔124に近い軸方向の場所に装着され、したがって、下部のカプセルハウジング120によって囲まれた空間に収容される。
【0100】
駆動ばね140の第1の端部147は、カプセル装置100の遠位端部分に配設された第1のばねシートに対して着座する。示される実施形態では、第1のばねシートは、内側スリーブ115の遠位端面によって形成される。内側スリーブ115の遠位端面は、下部カプセルハウジング120の近位に面する表面に対してわずかに軸方向の間隔を置いて配設される。駆動ばね140の最も下の巻線の実質的な部分は、内側スリーブ115の直径と同等の直径を画定する。内側スリーブ115は、下部カプセルハウジング120の近位に面する端部面に対してある程度の距離で配置された遠位端面が形成されており、遠位端面は、駆動ばね140の最も下の巻線のその部分が内側スリーブ115と半径方向に重なることを可能にし、このようにして、内側スリーブ115と下部カプセルハウジング120との間の円周スロットに圧着されるようになる。
【0101】
駆動ばね140の第2の端部146は、ハブ150の下部境界面部155によって形成された第2のばねシート156に対して着座する。カプセル装置100の組み立ての一部として、駆動ばね140は、2つのばねシートの間で駆動ばね140を軸方向に引っ張ることによって付勢される。したがって、ハブ150は当初、駆動ばねからの張力負荷下にある。
【0102】
示される実施形態では、最終組立の前に、駆動ばね140が作動軸に沿って配設されるが、駆動ばねが非付勢状態をとる状態で、ばねの第2の幅が狭い端部146は、ばねの第1の幅が広い端部147に対して遠位に位置付けられるであろう。しかしながら、駆動ばね140が徐々に引っ張られる組立中、第2の幅が狭い端部146は、第1の幅が広い端部147に対して近位に移動して、駆動ばねが完全に付勢されている
図1aに示す作動前状態に入る。
【0103】
ここでカプセル装置100の動作に目を向け、最初に
図1および
図2を参照すると、カプセル装置が貯蔵中または摂取直後をとっている状態を表す初期状態が示されている。この状態では、アクチュエータ150は、2つのラッチアーム153が、溶解可能なラッチ支持体160の半径方向外向きに面する表面163bがラッチアームの半径方向内向きに面するラッチ表面153bを付勢する状態の係合によって示される位置に維持される、作動前構成をとる。結果として、ラッチアームの半径方向外向きに面するラッチ表面153aは、円錐形状保持表面113aと係合して保持され、ラッチアームが円錐形状保持表面に対して摺動することを防止する。ラッチアーム153が円錐形状保持表面113aに近位に閉じ込められるため、駆動ばね140がアクチュエータ150上にその最大張力負荷を及ぼしても、ハブ150は遠位に移動することができない。
【0104】
上部密封要素170は、フランジ158ならびにハブ保持構造113の下面と係合して、この境界面の流体密封を維持する。また、下部密封要素180は、出口孔124の流体密封を維持する。
【0105】
カプセル装置100の摂取後、カプセル装置は、胃の底部に急速に沈む。胃壁によって支持されると、カプセル装置の自己矯正能力により、カプセル装置は、その組織接合表面123が実質的に垂直に配向されたカプセル装置の射出軸と、すなわち、ペイロード部分130が下向きに向いた組織胃壁と係合するように、速やかに再配向することになる。溶解可能なラッチ支持体160の溶解は、胃液への曝露により開始されている。これは、参照文献160に関連して
図1bに表される。ラッチアーム153に対する溶解可能なラッチ支持体160からの支持は、嚥下後に特定の時点で停止する。駆動ばね140の負荷は、ラッチアーム153を半径方向内向きに徐々に偏向させ、それによって、ラッチアームが円錐形状保持表面113aとの係合から離れて摺動することを可能にする。ペイロード部分130を有するハブ150がハブ保持構造113から解放された後のいくつかの時点で、ラッチアーム153は、それらの折り畳み位置に到達する。この状態は、作動構成に対応する。駆動ばね140がハブ150上に張力をかけると、ハブおよびペイロード部分130は、出口孔124に向かって妨げられることなく移動し、ペイロード部分は、下部密封要素180を貫通し、標的場所の粘膜組織内にさらに進入する。
図1bに示すように、作動構成では、カプセルハウジング120の底部に配設された近位に面するハブ停止面128は、ハブ150がさらに遠位に移動することを防止する。ばね146の第2の端部は、送達ストロークの過程で、ばね147の第1の端部に対してわずかに遠位に軸方向に移動していることが分かる。張力ばねの先細状の性質により、ハブは、カプセルハウジングに対してさらに放射方向の誘導を必要とせずに、作動軸に沿って移動する、自己中心的傾向が顕著となる。
【0106】
意図される使用の状況では、ペイロード部分130は、内腔壁の組織内に挿入され、概して作動軸に沿った方向にアンカー固定されることになる。上述のように、カプセル装置の特定の設計に応じて、ペイロード部分130は、挿入ストロークの終了時にカプセルの残りの部分から能動的に解放され得る。カプセル装置100が意図される用量を送達したときに、カプセルは、対象の血流中に治療剤を放出するために組織壁の内側に留まる、堆積されたペイロード部分130に対して放出される。
【0107】
本明細書に開示される実施形態には示されていないが、実施形態のうちのいくつかは、ペイロード部分130が組み立てられて、かつハブ150がカプセルハウジングの最遠位位置に到着したときに、ペイロード部分130をハブ150から分離するための機構を含むように修正され得る。適切な非限定的な原理は、国際公開第2020/245448(A1)号に開示されている原理を含んでもよく、ここでラム(ハブに類似する)は、送達部材の組織挿入部分をラムから切り離すための挿入ストロークの終了時に傾く。
【0108】
別の方法として、カプセルは、ペイロード部分130が、カプセルが組織に対して静止して保持されているときに、対象の血流中に治療剤を放出することを可能にするために、長期間静止状態に保持され得る。これらのいずれの場合でも、薬剤送達に続いて、カプセル装置の残りの部分は、ユーザの消化器系を通って移動し、処分されることになる。
【0109】
ここで、本発明によるカプセル装置100’の第2の実施形態に切り替えると、
図5a~
図5c、
図6、
図7aおよび
図7b、ならびに
図8aおよび8bが参照される。カプセル装置100’は、上述のカプセル装置100の対応する特徴と多くの構成的特徴を共有しており、動作の一般原則は同じである。しかしながら、駆動ばね140は、修正されており、送達ストローク中にペイロード部分を誘導するためのガイドシステムが導入されている。
【0110】
図5aおよび
図6を
図1aおよび
図2と比較すると、それら全てが作動前構成のカプセルを示しているが、作動の全体的な設計は、第1の実施形態の装置100と比較して、第2の実施形態の装置100’について同じであり、すなわち、溶解可能なラッチ支持体が、円錐として形成され、ラッチアームは、上述と同じ構造および機能を有する。
図7aおよび
図7bに示すように、第2の実施形態によるハブ150は、わずかに修正されているに過ぎない。また、上部密封要素170は類似している。さらに、
図8aおよび
図8bに示すように、溶解可能なラッチ支持体160は、略円錐形状要素として形成される。
【0111】
第2の実施形態のカプセル装置100’では、下部密封要素180は、上部カプセルハウジング110と下部カプセルハウジング120との間に圧着されている。これに伴い、下部密封要素180の周辺部分181は、カプセルハウジング110/120の遠位端部分と近位端部分との間の軸方向の中間点のわずかに下方に配設される。示される実施形態では、駆動ばねの第1の端部147は、下部密封要素180に対して近位に装着され、ここで、その第1の端部147は、上部カプセルハウジング110と下部カプセルハウジング120との間の境界面に配設されるばねシート部分の間に圧着される。示される実施形態では、上部カプセルハウジング110は、その最遠位部分に、駆動ばね140の第1の端部のシートを提供するように適合された遠位に面する表面を有する環状フランジを含む。
【0112】
下部密封要素180は、さらに、ペイロード部分130を誘導する機能、より具体的には、ペイロード部分130が送達ストローク中に移動する際に、すなわち、カプセル装置100’の区画内で出口孔124に向かって内部に移動する際に、ペイロード部分130の先端部分を誘導する機能を実施する。密封要素180は、一般に円盤形状の構造を再び含み、シリコーンゴムなどの弾性ゴム様材料で作製され得る。示される実施形態では、作動前構成では、密封要素180の中央部分182は、ペイロード部分130の尖った先端にセルフセンタリングガイド部分を提供するように、ペイロード部分130の遠位形状に適合するようにサイズ設定され、かつ形状決めされた円錐部分を画定する。密封要素180は弾性材料で作製されるので、周辺部分181を中央部分182と接続する材料部分は、可撓性コネクタ183を形成し、かつ中央部分182を周辺部分181に対して軸方向に遠位に移動させることができる。
【0113】
最初に、作動前構成では、密封要素180は、区画の外部にある流体が区画内に入るのを防ぐ密封バリアを提供し得、したがって、ペイロード部分130を分解から保護する。第1の実施形態に類似して、下部密封要素180の中央部分182は、1つ以上の薄い切断、スコア、または類似の弱体化部分を含んでもよく、これにより、ペイロード部分130の先端は、送達ストローク中に下部密封要素を通ってその経路を強制的に通過できるようになる。
【0114】
図5bでは、ペイロード部分130の先端部分が出口孔124の軸方向位置に移動するように、ハブおよびペイロード部分からなるアセンブリが遠位に移動した、カプセル装置100’の中間状態が示されている。この実施形態では、先端部分は、すでにこの時点で下部密封要素180に貫通している。しかしながら、その最初の移動の間、先端部分は、中央部分182を周辺部分181と接続する可撓性コネクタ183が伸張された際に、中央部分182によって誘導されている。この状態では、張力ばね、すなわち、駆動ばね140は、幅が狭い第2の端部146が、幅が広い第1の端部147に対してわずかに近位に位置付けられる、ほぼ平坦な構成をとる。
【0115】
図5cを参照すると、カプセル装置100’は作動構成をとっており、ハブ150は、遠位に完全に移動し、カプセルハウジング120の底部に配設された近位に面するハブ停止面128との協働によって停止し、ペイロード部分は、ペイロード部分が貫通し、かつ組織に挿入される位置に移動している。駆動ばね140は、幅が狭い第2の端部146が、幅が広い第1の端部147に対して遠位に、かつ出口孔124に近接して位置付けられるように、初期の作動前構成に対してほぼ反転する構成をとる。
【0116】
本発明によるさらに示されていない実施形態は、第1、第2、および第3の実施形態に関連して示される円錐形状の境界面表面とは異なるように形成されたアクチュエータ境界面を有するアクチュエータ機構を含み得ることに留意されたい。例えば、アクチュエータ境界面は、ハブ保持構造113とラッチアーム153との間の、および/またはラッチアーム153と溶解可能なラッチ支持体160との間の境界面のいずれかで、円錐表面の代わりに平面で形成され得る。2つの半径方向に対向するラッチアームを有するこうした実施形態では、溶解可能なラッチ支持体160は、くさび状の鋭い縁部で互いに交差する2つの平面を有するくさびとして形成され得る。
【0117】
さらに、ラッチアームの数は、2つ以外でもよく、例えば、3つ、4つ、またはそれ以上の個々のラッチアームであってもよい。特定の実施形態において、複数のラッチアームは、作動軸の周りに等しく配置されてもよいが、これは、本発明の原理による任意の実施形態に厳密には必要とされない場合がある。
【0118】
上記のペイロード部分130とハブ150との間の境界面の変形例は、単に例示的であり、他の構成が代わりに使用され得る。ペイロード部分とハブとの間の取り外し可能な取り付けは、摩擦嵌めまたは圧入を使用することによって得られ得る。あるいは、スクロースなどの接着剤が、境界面で使用され得る。さらに代替的に、取り付けは、最初にペイロード部分を湿潤させ、ハブとペイロード部分との間の固有スティクションを利用することによって得られ得る。使用の状況では、ハブがその最終目的地に到達すると、ペイロード部分とハブとの間の境界面で取り外しが生じ得る。他の実施形態では、所望の取り外しは、ペイロード部分の大部分を、ハブに依然として接着または固定されている残りのペイロード部分から取り外すことによって得られ得る。一部の実施形態では、ペイロード部分は、分離点を決定する脆弱点を含む。なおもさらなる実施形態では、ハブおよびペイロード部分は、APIを含有する組成物で全て作製された一体構成要素として形成され得、カプセル装置から押し出される意図されたペイロード部分は、ハブ部分から分離される。また、代替的な実施形態では、ペイロードは、カプセル装置から完全に離れて輸送されるように、それ自体によってハブとして作用し得る。
【0119】
例示的な実施形態の上記の説明は、主に、胃の中の送達のための摂取可能なカプセルに関するが、本作動原理は、概して、カプセル装置において、カプセル装置が本体内腔内に位置付けられ、流体が、構成要素を、第1の位置から第2の位置などの、第1の構成から第2の構成にするために溶解可能なラッチ支持体を溶解することによって作動機構を起動する、内腔挿入全般に有用性を見出すものである。カプセル装置の非限定的な例としては、腸内腔内への送達または腸内腔の組織壁内への送達のいずれかによるペイロードまたは薬剤の腸送達のためのカプセル装置が挙げられ得る。薬剤送達は、液剤または粉末の注射用針などの送達部材を使用して、または内腔の組織壁内に挿入されるか、もしくは内腔内に直接的に作動するマイクロニードルを介して、実施され得る。あるいは、薬剤送達は、内腔壁の粘膜内壁への液剤または粒子流のいずれかジェット注入によるなどの、送達部材を使用せず、カプセル装置の1つ以上の出口開口部を通して実施され得る。
【0120】
例示的な実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
【国際調査報告】