(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240130BHJP
H05H 3/06 20060101ALI20240130BHJP
G21G 1/06 20060101ALI20240130BHJP
G21G 4/02 20060101ALI20240130BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 T
A61N5/10 Z
H05H3/06
G21G1/06
G21G4/02
G21K5/02 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544546
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2022074192
(87)【国際公開番号】W WO2022170986
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202110175204.9
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100198650
【氏名又は名称】小出 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼威▲ふぁ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲貢▼秋平
(72)【発明者】
【氏名】徐浩磊
【テーマコード(参考)】
2G085
4C082
【Fターム(参考)】
2G085BE07
2G085DA03
4C082AA01
4C082AC07
4C082AE01
4C082AL02
4C082AT04
4C082AT06
(57)【要約】
本発明は、中性子捕捉療法システム提供し、加速器に基づいて動作がより安全で確実であり、かつよりコンパクトな構造及び合理的な配置を有し、病院などの治療場所に適用することができる。本発明の中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、荷電粒子ビーム発生部は、イオン源と、イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、加速器により発生した荷電粒子ビームは、ビーム転送部によりターゲットに照射し、かつターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した中性子は、順にビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成し、中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、照射室、加速器室及びビーム転送室を含み、中性子ビーム発生部は、照射室とビーム転送室との仕切り壁内に少なくとも部分的に収容される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子捕捉療法システムであって、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子を発生させるイオン源と、前記イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、前記中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、前記ターゲットは、前記ビーム転送部と前記ビーム整形体との間に設置され、前記加速器により発生した前記荷電粒子ビームは、前記ビーム転送部により前記ターゲットに照射し、かつ前記ターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した前記中性子は、順に前記ビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成し、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、照射室、加速器室及びビーム転送室を含み、薬剤が注射された被照射体は、前記照射室内に前記治療用中性子ビームの照射による治療を受け、前記加速器室は、前記荷電粒子ビーム発生部を少なくとも部分的に収容し、前記ビーム転送室は、前記ビーム転送部を少なくとも部分的に収容し、前記中性子ビーム発生部は、前記照射室と前記ビーム転送室との仕切り壁内に少なくとも部分的に収容される、ことを特徴とする中性子捕捉療法システム。
【請求項2】
薬剤制御室と、照射治療時に前記被照射体に薬剤を注射する薬剤注射装置とをさらに含み、前記薬剤注射装置は、薬剤通過アセンブリ、薬剤収容機構及び薬剤制御機構を含み、前記薬剤通過アセンブリは、前記薬剤制御室と前記照射室との間に設置され、前記薬剤収容機構及び薬剤制御機構は、前記薬剤制御室内に設置され、かつ前記薬剤制御室内に前記被照射体に対する薬剤注射を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項3】
前記薬剤通過アセンブリは、薬剤を注射する薬剤通過部材と、薬剤通過部材を少なくとも部分的に収容する収容部材とを含み、前記収容部材は、前記仕切り壁内に設置され、かつ前記薬剤通過部材が前記仕切り壁を通過する通路を形成する、ことを特徴とする請求項2に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項4】
治療台、治療台位置決め装置及び前記治療台位置決め装置の遮蔽装置をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項5】
前記治療台位置決め装置は、前記治療台を支持し位置決めし、少なくとも1つのアーム部を含むロボットアームを含み、前記遮蔽装置は、前記アーム部を包むロボットアーム保護カバーを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項6】
前記ロボットアーム保護カバーに衝突防止用保護機構が設置される、ことを特徴とする請求項5に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項7】
前記治療台位置決め装置は、線形軸をさらに含み、前記ロボットアームは、前記線形軸と前記治療台との間に設置され、前記線形軸は、前記建築物内に固定されたスライドレールと、前記ロボットアームに接続された支持台とを含み、前記支持台は、前記治療台及びロボットアームが共に前記スライドレールに沿って摺動するように駆動し、前記遮蔽装置は、スライドレールカバー部材を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項8】
前記建築物内に中性子遮蔽空間が形成され、前記中性子遮蔽空間は、前記ビーム転送室又は前記照射室内に形成され、前記コンクリートは、ホウ素及び重晶石を含有するコンクリートであるか、又は、前記中性子遮蔽空間を形成するように表面に中性子遮蔽板が設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項9】
前記建築物内に、前記中性子捕捉療法システムの動作用のケーブル、又はガス及び液体通過用の管状部材、又は前記建築物内の固定及び取り付け用の棒状部材、又は前記ケーブル若しくは管状部材を支持する支持装置が設置され、前記支持装置、管状部材又は棒状部材の材料の90%(重量パーセント)以上は、C、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなり、或いは、前記ケーブル、管状部材又は棒状部材の外周に環状遮蔽装置が設置され、前記環状遮蔽装置は、内部スリーブ、外部スリーブ、及び前記内部スリーブと外部スリーブとの間に設置された遮蔽材を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項10】
前記加速器室又は前記ビーム転送室内に少なくとも部分的に設置され、冷却装置、又は絶縁ガスの充填回収装置、又は圧縮空気を提供する空気圧縮装置、又は真空環境を提供する真空ポンプを含む補助装置をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項11】
前記冷却装置の冷却媒体は、硬さが60mg/Lより小さい、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項12】
前記冷却装置は、前記イオン源又は加速器又はターゲットの冷却に用いられ、冷却媒体の硬さが17mg/Lより小さく、又は冷却媒体が脱イオン水であり、前記脱イオン水の導電率が0.5~1.5μS/cmである、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項13】
前記冷却装置は、外部循環装置、内部循環装置及び熱交換器を含み、前記内部循環装置は、冷却媒体を前記中性子捕捉療法システムの冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、次に吸熱後に昇温した前記冷却媒体を前記熱交換器に輸送して、前記外部循環装置から前記熱交換器に輸送されてきた冷水と熱交換を行い、降温した前記冷却媒体を前記冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、前記外部循環装置は、前記冷水を前記熱交換器に連続的に提供し、かつ吸熱後に昇温した前記冷水を回収することができる、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項14】
前記加速器は、加速エネルギーを提供する加速器高圧電源を含み、前記加速器高圧電源内に絶縁ガスが提供され、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記加速器高圧電源に前記絶縁ガスを提供するか、又は前記絶縁ガスを前記加速器高圧電源から回収する、ことを特徴とする請求項10に記載の中性子捕捉療法システム。
【請求項15】
前記絶縁ガスの充填回収装置は、ガス源と、前記ガス源及び前記加速器高圧電源にそれぞれ接続された貯留容器とを含み、前記ガス源は、前記絶縁ガスが収容された容器を含む、ことを特徴とする請求項14に記載の中性子捕捉療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射システムに関し、特に中性子捕捉療法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかしながら、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路での数多くの正常組織に損傷を与え、また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法は、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を低減するために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の概念が、放射線療法に適用され、また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記2つの概念を組み合わせたものであり、例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線に比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
従来の中性子捕捉療法システムは、原子炉に基づくことが多く、原子炉自体は、価格が高く、かつ使用が限られ、不安全因子も存在し、施設が複雑であり、医療に使用されにくい。いたがって、上記問題を解決するために新たな技術手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明の一態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子を発生させるイオン源と、前記イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、前記中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、前記ターゲットは、前記ビーム転送部と前記ビーム整形体との間に設置され、前記加速器により発生した前記荷電粒子ビームは、前記ビーム転送部により前記ターゲットに照射し、かつ前記ターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した前記中性子は、順に前記ビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成し、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、照射室、加速器室及びビーム転送室を含み、薬剤が注射された被照射体は、前記照射室内に前記治療用中性子ビームの照射による治療を受け、前記加速器室は、前記荷電粒子ビーム発生部を少なくとも部分的に収容し、前記ビーム転送室は、前記ビーム転送部を少なくとも部分的に収容し、前記中性子ビーム発生部は、前記照射室と前記ビーム転送室との仕切り壁内に少なくとも部分的に収容される。中性子捕捉療法システムは、加速器に基づいて動作がより安全で確実であり、かつよりコンパクトな構造及び合理的な配置を有し、病院などの治療場所に適用することができる。
【0006】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、薬剤制御室と、照射治療時に前記被照射体に薬剤を注射する薬剤注射装置とをさらに含み、前記薬剤注射装置は、薬剤通過アセンブリ、薬剤収容機構及び薬剤制御機構を含み、前記薬剤通過アセンブリは、前記薬剤制御室と前記照射室との間に設置され、前記薬剤収容機構及び薬剤制御機構は、前記薬剤制御室内に設置され、かつ前記薬剤制御室内に前記被照射体に対する薬剤注射を制御することにより、照射室内の操作を回避し、安全性及び信頼性を向上させるとともに、照射室内の中性子放射線が薬剤収容機構及び薬剤制御機構に影響を与えることを回避することができる。
【0007】
さらに、前記薬剤通過アセンブリは、薬剤を注射する薬剤通過部材と、薬剤通過部材を少なくとも部分的に収容する収容部材とを含み、前記収容部材は、前記仕切り壁内に設置され、かつ前記薬剤通過部材が前記仕切り壁を通過する通路を形成する。
【0008】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、治療台、治療台位置決め装置及び前記治療台位置決め装置の遮蔽装置をさらに含む。治療台位置決め装置の遮蔽装置は、中性子捕捉療法システムにより発生した中性子及び他の放射線の治療台位置決め装置に対する放射線損傷を低減又は回避し、耐用年数を延長することができる。
【0009】
さらに、前記治療台位置決め装置は、前記治療台を支持し位置決めし、少なくとも1つのアーム部を含むロボットアームを含み、前記遮蔽装置は、前記アーム部を包むロボットアーム保護カバーを含む。
【0010】
またさらに、前記ロボットアーム保護カバーに衝突防止用保護機構が設置され、或いは、前記治療台位置決め装置は、線形軸をさらに含み、前記ロボットアームは、前記線形軸と前記治療台との間に設置され、前記線形軸は、前記建築物内に固定されたスライドレールと、前記ロボットアームに接続された支持台とを含み、前記支持台は、前記治療台及びロボットアームが共に前記スライドレールに沿って摺動するように駆動し、前記遮蔽装置は、スライドレールカバー部材を含む。スライドレールカバー部材は、支持台がスライドレールに沿って摺動する場合に引き起こされた放射線漏れを低減することができる。
【0011】
好ましくは、前記建築物内に中性子遮蔽空間が形成され、前記中性子遮蔽空間は、前記ビーム転送室又は前記照射室内に形成され、前記コンクリートは、ホウ素及び重晶石を含有するコンクリートであるか、又は、前記中性子遮蔽空間を形成するように表面に中性子遮蔽板が設置される。中性子捕捉療法過程において、特に中性子ビーム発生部の近傍に大量の中性子を発生させるため、中性子遮蔽空間を設置することにより中性子の漏れ又は室内の他の装置に対する放射線損傷及び放射線汚染をできるだけ回避又は低減する。
【0012】
好ましくは、前記建築物内に、前記中性子捕捉療法システムの動作用のケーブル、又はガス及び液体通過用の管状部材、又は前記建築物内の固定及び取り付け用の棒状部材、又は前記ケーブル若しくは管状部材を支持する支持装置が設置され、前記支持装置、管状部材又は棒状部材の材料の90%(重量パーセント)以上は、C、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなり、管状部材、固定ロッド及びケーブル、管状部材の支持装置を設置し、かつ中性子により照射された後に発生した二次放射が少ない材料を選択することにより、放射線損傷及び放射線汚染を低減することができ、或いは、前記ケーブル、管状部材又は棒状部材の外周に環状遮蔽装置が設置され、前記環状遮蔽装置は、内部スリーブ、外部スリーブ、及び前記内部スリーブと外部スリーブとの間に設置された遮蔽材を含み、環状遮蔽装置を設置することにより、中性子捕捉療法システムにより発生した中性子の建築物内に設置されたケーブル、管状部材及び固定ロッドに対する放射線損傷及び放射線汚染を低減することができる。
【0013】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、前記加速器室又は前記ビーム転送室内に少なくとも部分的に設置され、冷却装置、又は絶縁ガスの充填回収装置、又は圧縮空気を提供する空気圧縮装置、又は真空環境を提供する真空ポンプを含む補助装置をさらに含む。
【0014】
さらに、前記冷却装置の冷却媒体は、硬さが60mg/Lより小さく、冷却装置を用いて中性子捕捉療法システムの冷却すべきアセンブリを冷却することにより、装置の耐用年数を延長し、冷却装置の冷却媒体は、軟水を用いることにより、冷却過程において水管にスケールが形成して熱交換効率に影響を与えにくい。
【0015】
またさらに、前記冷却装置は、前記イオン源又は加速器又はターゲットの冷却に用いられ、冷却媒体の硬さが17mg/Lより小さく、又は冷却媒体が脱イオン水であり、前記脱イオン水の導電率が0.5~1.5μS/cmであり、或いは、前記冷却装置は、外部循環装置、内部循環装置及び熱交換器を含み、前記内部循環装置は、冷却媒体を前記中性子捕捉療法システムの冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、次に吸熱後に昇温した前記冷却媒体を前記熱交換器に輸送して、前記外部循環装置から前記熱交換器に輸送されてきた冷水と熱交換を行い、降温した前記冷却媒体を前記冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、前記外部循環装置は、前記冷水を前記熱交換器に連続的に提供し、かつ吸熱後に昇温した前記冷水を回収することができる。
【0016】
さらに、前記加速器は、加速エネルギーを提供する加速器高圧電源を含み、前記加速器高圧電源内に絶縁ガスが提供されることにより、加速器高圧電源内の電子部品が破壊されることを回避し、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記加速器高圧電源に前記絶縁ガスを提供するか、又は前記絶縁ガスを前記加速器高圧電源から回収し、関連装置を保守し、点検する場合に絶縁ガスを回収することができるため、絶縁ガスの利用率が向上する。
【0017】
またさらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、ガス源と、前記ガス源及び前記加速器高圧電源にそれぞれ接続された貯留容器とを含み、前記ガス源は、前記絶縁ガスが収容された容器を含む。
【0018】
本発明の第2態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、前記建築物内に、前記中性子捕捉療法システムの動作用のケーブル、又はガス及び液体通過用の管状部材、又は前記建築物内の固定及び取り付け用の棒状部材が設置され、前記ケーブル、管状部材又は棒状部材の外周に環状遮蔽装置が設置される。環状遮蔽装置を設置することにより、中性子捕捉療法システムにより発生した中性子の建築物内に設置されたケーブル、管状部材及び固定ロッドに対する放射線損傷及び放射線汚染を低減することができる。
【0019】
好ましくは、前記環状遮蔽装置は、内部スリーブ、外部スリーブ、及び前記内部スリーブと外部スリーブとの間に設置された遮蔽材を含む。
【0020】
さらに、前記内部スリーブ又は外部スリーブの材料の90%(重量パーセント)以上がC、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなる。
【0021】
さらに、前記内部スリーブ又は外部スリーブの材料はPVCである。
【0022】
さらに、前記外部スリーブは、中性子減速体とされ、減速後の中性子が遮蔽材によってよりよく吸収することができる。
【0023】
さらに、前記遮蔽材は、中性子遮蔽材料で構成される。
【0024】
さらに、前記遮蔽材は、ホウ素含有樹脂である。
【0025】
また好ましくは、前記管状部材は、通風管又は消防管であり、前記棒状部材は、支持ロッド又はスクリューである。
【0026】
また好ましくは、前記荷電粒子ビーム発生部は、加速器を含み、前記中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、前記ターゲットは、前記ビーム転送部と前記ビーム整形体との間に設置され、前記加速器により発生した荷電粒子ビームは、前記ビーム転送部により前記ターゲットに照射し、かつ前記ターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した前記中性子は、順に前記ビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成する。
【0027】
さらに、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射線遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットで発生した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ逸脱した中性子を前記減速体に戻して熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、熱中性子を吸収して、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、前記放射線遮蔽体は、前記ビーム出口を囲んで前記反射体の後部に設置されて、漏れた中性子と光子を遮蔽して非照射領域における正常組織への線量を減少させ、前記コリメータは、前記ビーム出口の後部に設置されて中性子ビームを集める。
【0028】
本発明の第3態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、照射室及び薬剤制御室を含み、薬剤が注射された被照射体は、前記照射室内に中性子ビームの照射による治療を受け、前記照射室は、前記薬剤制御室と隔てられた仕切り壁を有し、前記中性子捕捉療法システムは、前記薬剤制御室と照射室との間に設置された薬剤通過アセンブリを含む薬剤注射装置をさらに含み、前記薬剤通過アセンブリは、薬剤を注射する薬剤通過部材と、薬剤通過部材を少なくとも部分的に収容する収容部材とを含み、前記収容部材は、前記仕切り壁内に設置され、かつ前記薬剤通過部材が前記仕切り壁を通過する通路を形成する。薬剤注射装置は、仕切り壁を通過した薬剤通過アセンブリにより薬剤を照射室内の被照射体に注射し、照射室内の操作を回避し、安全性及び信頼性を向上させ、収容部材を設置することにより、薬剤通過部材の通過を容易にする一方で、コンクリート壁を隔て、塵などが薬剤通過部材を汚染することを防止する。
【0029】
好ましくは、前記薬剤注射装置は、照射治療時に前記被照射体に薬剤を注射する。
【0030】
好ましくは、前記薬剤注射装置は、薬剤収容機構及び薬剤制御機構をさらに含み、前記薬剤収容機構及び薬剤制御機構は、前記薬剤制御室内に設置され、かつ前記薬剤制御室内に前記被照射体に対する薬剤注射を制御することにより、照射室内の中性子放射線が薬剤収容機構及び薬剤制御機構に影響を与えることを回避することができる。さらに、前記薬剤通過部材は、前記薬剤収容機構に接続され、かつ前記薬剤制御機構により薬剤を前記被照射体内に注射する。
【0031】
好ましくは、前記収容部材は、前記仕切り壁の厚さ方向における貫通孔内に設置される。
【0032】
さらに、前記貫通孔の中心軸線は、地面と、前記仕切り壁の厚さ方向に沿って地面に垂直な平面の両方に交差して、放射線漏れを低減することができる。
【0033】
さらに、前記仕切り壁の前記薬剤制御室に向かう第1側壁における前記貫通孔の中心から地面までの距離は、前記仕切り壁の前記照射室に向かう第2側壁における前記貫通孔の中心から地面までの距離より大きい。
【0034】
さらに、前記貫通孔は、数が2つ以上であり、そのうちの1つが塞がれるか又は他の問題が発生した場合、予備のものがある。
【0035】
好ましくは、前記収容部材の材料は、PVCであり、中性子により照射された後の生成物は、放射性を有さず、又は放射能が非常に低く、発生した二次放射を低減する。
【0036】
好ましくは、前記薬剤通過部材は、少なくとも部分的に中性子遮蔽材料で製造され、照射室内の中性子放射線の薬剤通過部材内のホウ素含有薬剤に対する影響を低減することができる。
【0037】
本発明の第4態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、前記コンクリート構造の建築物内に中性子遮蔽空間が形成される。中性子捕捉療法過程において、特に中性子ビーム発生部の近傍に大量の中性子を発生させるため、中性子遮蔽空間を設置することにより中性子の漏れ又は室内の他の装置に対する放射線損傷及び放射線汚染をできるだけ回避又は低減する。
【0038】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、照射室及びビーム転送室を含み、前記ビーム転送室は、前記ビーム転送部を少なくとも部分的に収容し、前記中性子ビーム発生部は、前記照射室と前記ビーム転送室との仕切り壁内に少なくとも部分的に収容され、前記中性子遮蔽空間は、前記ビーム転送室又は前記照射室内に形成される。
【0039】
また好ましくは、前記中性子遮蔽空間を形成するように前記コンクリートの表面に中性子遮蔽板が設置される。
【0040】
さらに、前記中性子遮蔽板は、支持アセンブリにより前記コンクリートの表面に設置され、前記支持アセンブリは、一側が前記コンクリートに接続され、他側が前記中性子遮蔽板に接続される。
【0041】
またさらに、前記中性子遮蔽板は、ホウ素含有のPE板である。前記支持アセンブリの材料は、アルミニウム合金であり、前記支持アセンブリは、互いに接続された2つのL字状の板状部材である。
【0042】
また好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、補助装置をさらに含み、前記補助装置の周囲に中性子遮蔽板が設置されて前記中性子遮蔽空間を形成して、中性子捕捉療法過程における中性子の補助装置に対する放射線損傷及び放射線汚染を低減する。
【0043】
さらに、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子を発生させるイオン源と、前記イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、前記中性子捕捉療法システムは、加速器室及びビーム転送室をさらに含み、前記加速器室は、前記荷電粒子ビーム発生部を少なくとも部分的に収容し、前記ビーム転送室は、前記ビーム転送部を少なくとも部分的に収容し、前記補助装置は、前記加速器室又はビーム転送室内に少なくとも部分的に設置される。
【0044】
さらに、前記補助装置を収容するか又は囲む補助装置収容室が設置され、前記補助装置収容室は、少なくとも部分的に、支持アセンブリと、前記支持アセンブリに固定された前記中性子遮蔽板とで構成される。
【0045】
またさらに、前記補助装置収容室は、ドア及びその移動機構を含み、前記移動機構は、操作者が前記補助装置収容室の内部に入って装置を容易に点検するために前記ドアを開くことができる。
【0046】
またさらに、前記移動機構は、ガイドレール及びスライドロッドを含み、前記ドアは、前記スライドロッドにより前記ガイドレールに沿って水平方向において摺動することができる。
【0047】
またさらに、前記移動機構は、引き上げアセンブリ及び滑車をさらに含み、前記引き上げアセンブリは、前記ドアを鉛直方向において引き上げることにより前記滑車を前記ドアの底部に置くことができるため、前記ドアは、前記滑車により水平方向において摺動することができ、より省力化となる。
【0048】
本発明の第5態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部と、治療台と、治療台位置決め装置とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記治療台位置決め装置は、前記治療台を支持し位置決めするロボットアームを含み、前記中性子捕捉療法システムは、前記治療台位置決め装置の遮蔽装置をさらに含み、前記ロボットアームは、少なくとも1つのアーム部を含み、前記遮蔽装置は、前記アーム部を包むロボットアーム保護カバーを含む。治療台位置決め装置の遮蔽装置は、中性子捕捉療法システムにより発生した中性子及び他の放射線の治療台位置決め装置に対する放射線損傷を低減し、耐用年数を延長することができる。
【0049】
好ましくは、前記ロボットアーム保護カバーの材料は、少なくとも部分的に中性子遮蔽材料であり、該アーム部及び該アーム部に設置された機構内の金属部材、電子機器などが中性子により活性化されて故障するか又は損傷されることを防止する。さらに、前記ロボットアーム保護カバーの材料は、少なくとも部分的にホウ素含有のガラス繊維樹脂複合材料であり、ガラス繊維複合材料は、一定の強度を有し、中性子により活性化されにくく、ホウ素は、中性子を吸収することができる。
【0050】
また好ましくは、前記治療台位置決め装置は、線形軸をさらに含み、前記ロボットアームは、前記線形軸と前記治療台との間に設置され、前記治療台は、前記線形軸に接続され、かつ前記ロボットアームと共に前記線形軸に沿って平行に移動することができる。さらに、前記中性子捕捉療法システムは、照射室及び準備室を含み、前記線形軸は、前記照射室又は準備室内に固定されたスライドレールと、前記ロボットアームに接続された支持台とで構成され、前記支持台は、前記スライドレールに沿って摺動し、前記遮蔽装置は、前記支持台と共に移動し、かつ前記スライドレールの露出部分を常にカバーするスライドレールカバー部材を含む。
【0051】
また好ましくは、前記ロボットアーム保護カバーは、一体に固定接続され前記アーム部を包む第1ケース及び第2ケースを含む。さらに、前記第1ケース及び第2ケースの材料は、ホウ素含有のガラス繊維樹脂複合材料であり、ガラス繊維複合材料は、一定の強度を有し、中性子により活性化されにくく、ホウ素は、中性子を吸収し、該アーム部及び該アーム部に設置された機構内の金属部材、電子機器などが中性子により活性化されて故障するか又は損傷されることを防止することができる。
【0052】
また好ましくは、前記ロボットアーム保護カバーは、一体に固定接続され前記アーム部を包む第1ケース及び第2ケースと、一体に固定接続され前記第1ケース及び第2ケースを包む第3ケース及び第4ケースとを含み、前記治療台位置決め装置は、前記第1ケースと第3ケースとの間及び/又は前記第2ケースと第4ケースとの間に設置されたセンサを含む衝突防止用保護機構をさらに含む。
【0053】
さらに、前記第1ケース及び第2ケースの材料は、ホウ素含有のガラス繊維樹脂複合材料であり、前記第3ケース及び第4ケースの材料は、ガラス繊維樹脂複合材料であり、前記センサのケースは、アルミニウム合金であり、或いは、前記第3ケース及び第4ケースの材料は、ホウ素含有のガラス繊維樹脂複合材料であり、ガラス繊維複合材料は、一定の強度を有し、中性子により活性化されにくく、ホウ素は、中性子を吸収し、該アーム部及び該アーム部に設置された機構内の金属部材、電子機器などが中性子により活性化されて故障するか又は損傷されることを防止することができる。
【0054】
さらに、前記第3又は第4ケースの前記センサに対応する位置に、前記センサの電源及び通信ケーブルが通過する貫通孔が設置される。
【0055】
さらに、前記第1ケース及び第2ケースに、前記センサを収容する収容キャビティが設置され、前記センサは、前記収容キャビティ内に設置され、前記第1ケースと第3ケースとの間及び/又は第2ケースと第4ケースとの間に締りばめで取り付けられる。
【0056】
さらに、前記第1ケースと第3ケースとの間及び/又は第2ケースと第4ケースとの間に、前記センサを取り付けるか又は前記センサの電源及び通信ケーブルが通過する隙間が設置される。
【0057】
さらに、前記衝突防止用保護機構は、センサ制御アセンブリ及びヒューマンマシンインタフェースをさらに含み、前記センサは、圧力センサであり、前記第3ケース又は第4ケースが受けた圧力を圧力信号に変換し、前記センサ制御アセンブリに転送し、かつ前記ヒューマンマシンインタフェースに数値表示を行い、前記センサにより受信された圧力信号が所定の値を超える場合、所定の値を超える前記圧力信号を優先的に前記センサ制御アセンブリに転送し、かつ前記ヒューマンマシンインタフェースに警報表示を行う。
【0058】
また好ましくは、前記治療台位置決め装置は、前記ロボットアーム保護カバーに設置されるか又は前記ロボットアーム保護カバーと前記アーム部との間に設置されたセンサを含む衝突防止用保護機構をさらに含む。
【0059】
さらに、前記衝突防止用保護機構は、センサ制御アセンブリ及びヒューマンマシンインタフェースをさらに含み、前記センサから送信した信号を前記センサ制御アセンブリに転送し、かつ前記ヒューマンマシンインタフェースに表示し、前記センサ制御アセンブリは、受信した信号に基づいて、対応する制御を行う。
【0060】
さらに、前記治療台位置決め装置は、駆動機構をさらに含み、前記中性子捕捉療法システムは、前記駆動機構に接続され、かつ前記駆動機構を制御することにより前記ロボットアームの動作を制御する治療台制御装置をさらに含み、前記センサ制御アセンブリは、受信した信号を治療台制御装置に転送して、対応する制御を行う。
【0061】
本発明の第6態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部と、治療台と、治療台位置決め装置とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、前記治療台位置決め装置は、線形軸及びロボットアームを含み、前記ロボットアームは、前記線形軸と前記治療台との間に設置されて前記治療台を支持し位置決めし、前記線形軸は、前記建築物内に固定されたスライドレールと、前記ロボットアームに接続された支持台とを含み、前記支持台は、前記治療台及びロボットアームが共に前記スライドレールに沿って摺動するように駆動し、前記中性子捕捉療法システムは、前記治療台位置決め装置の遮蔽装置をさらに含み、前記遮蔽装置は、スライドレールカバー部材を含む。治療台位置決め装置の遮蔽装置は、中性子捕捉療法システムにより発生した中性子及び他の放射線の治療台位置決め装置に対する放射線損傷を低減又は回避し、耐用年数を延長することができ、スライドレールカバー部材は、支持台がスライドレールに沿って摺動する場合に引き起こされた放射線漏れを低減することができる。
【0062】
好ましくは、前記スライドレールカバー部材の材料は、中性子遮蔽材料を含む。
【0063】
また好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、照射室を含み、被照射体は、前記照射室内に前記中性子ビームの照射による治療を受け、前記スライドレールは、前記照射室内の固定表面に固定される。
【0064】
さらに、前記スライドレールカバー部材は、前記支持台と共に移動し、かつ前記スライドレールの露出部分を常にカバーする。
【0065】
好ましくは、前記固定表面に中性子遮蔽板が設置され、前記スライドレールカバー部材は、前記支持台と前記中性子遮蔽板との間に設置される。
【0066】
また好ましくは、前記スライドレールカバー部材は、いずれも順に接続された平板を含む第1部分及び第2部分を含む。
【0067】
さらに、各前記平板が順に摺動可能に接続されるか又は回動可能に接続される。
【0068】
さらに、前記スライドレールカバー部材は、前記スライドレールカバー部材の支持部材により支持され、前記第1部分及び第2部分は、支持台の摺動方向に沿って前記支持台に近接する一端が前記支持台に固定接続され、他端が前記支持部材に固定接続される。
【0069】
またさらに、前記支持部材の材料は、中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い材料であり、前記中性子遮蔽板は、前記支持部材をカバーし、或いは、前記支持部材の材料は、中性子遮蔽材料を含み、前記中性子遮蔽板は、前記支持部材に合わせる。
【0070】
本発明の第7態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、前記建築物内に、前記中性子捕捉療法システムの動作用のケーブル、又はガス及び液体通過用の管状部材、又は前記建築物内の固定及び取り付け用の棒状部材、又は前記ケーブル若しくは管状部材を支持する支持装置が設置される。前記支持装置、管状部材又は棒状部材の材料の90%(重量パーセント)以上は、C、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなる。管状部材、固定ロッド及びケーブル、管状部材の支持装置を設置し、かつ中性子により照射された後に発生した二次放射が少ない材料を選択することにより、放射線損傷及び放射線汚染を低減することができる。
【0071】
好ましくは、前記支持装置、管状部材又は棒状部材の材料は、アルミニウム合金又はプラスチック又ゴムである。
【0072】
また好ましくは、前記支持装置は、前記ケーブルを通過させ支持するための電線管を含み、前記電線管は、前記ケーブルの延伸方向に沿って延伸し、かつ前記ケーブルの延伸方向を囲んで周方向に少なくとも部分的に密閉される。
【0073】
さらに、前記電線管は、前記ケーブルの延伸方向に垂直な横断面の形状が円形、多角形、V字形、横V字形、U字形又は横U字形である。
【0074】
さらに、前記電線管は、接続部材により前記建築物内の壁又は床板又は天井板に固定される。
【0075】
さらに、前記中性子捕捉療法システムは、照射室、加速器室及び制御室を含み、被照射体は、前記照射室内に前記中性子ビームの照射による治療を受け、前記加速器室は、前記荷電粒子ビーム発生部を少なくとも部分的に収容し、前記制御室は、前記中性子ビームの照射による治療を制御し、前記電線管は、前記照射室、加速器室又は制御室内に配置される。
【0076】
また好ましくは、前記支持装置は、支持フレームを含み、前記支持フレームは、前記管状部材又はケーブルを載置し、かつガイドする。
【0077】
さらに、前記支持フレームは、前記管状部材又はケーブルを支持する載置面を有し、前記支持フレームは、前記載置面が地面に平行であるか又は前記載置面が地面に垂直である方式で固定される。またさらに、前記支持フレームは、側板と、前記側板の間に所定の間隔をおいて接続された複数の横板とを含み、前記横板は、前記載置面を形成する。
【0078】
さらに、前記中性子捕捉療法システムは、加速器室及びビーム転送室を含み、前記加速器室は、前記荷電粒子ビーム発生部を少なくとも部分的に収容し、前記ビーム転送室は、前記ビーム転送部を少なくとも部分的に収容し、前記支持フレームは、前記加速器室又はビーム転送室内に設置される。
【0079】
また好ましくは、前記荷電粒子ビーム発生部は、加速器を含み、前記中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、前記ターゲットは、前記ビーム転送部と前記ビーム整形体との間に設置され、前記加速器により発生した荷電粒子ビームは、前記ビーム転送部により前記ターゲットに照射し、かつ前記ターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した前記中性子は、順に前記ビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成する。
【0080】
さらに、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射線遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットで発生した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ逸脱した中性子を前記減速体に戻して熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、熱中性子を吸収して、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、前記放射線遮蔽体は、前記ビーム出口を囲んで前記反射体の後部に設置されて、漏れた中性子と光子を遮蔽して非照射領域における正常組織への線量を減少させ、前記コリメータは、前記ビーム出口の後部に設置されて中性子ビームを集める。
【0081】
本発明の第8態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記中性子捕捉療法システムは、冷却装置をさらに含み、前記冷却装置の冷却媒体は、硬さが60mg/Lより小さい。冷却装置を用いて中性子捕捉療法システムの冷却すべきアセンブリを冷却することにより、装置の耐用年数を延長し、冷却装置の冷却媒体は、軟水を用いることにより、冷却過程において水管にスケールが形成して熱交換効率に影響を与えにくい。
【0082】
好ましくは、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子を発生させるイオン源と、前記イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、前記冷却装置は、前記イオン源又は加速器を冷却する。
【0083】
また好ましくは、前記中性子ビーム発生部は、ターゲットを含み、前記荷電粒子ビームは、前記ターゲットと作用して前記中性子ビームを発生させ、前記冷却装置は、前記ターゲットを冷却することにより、ターゲットの耐用年数を延長する。
【0084】
さらに、前記冷却装置の冷却媒体は、硬さが17mg/Lより小さく、特に熱交換部分が銅管を用いる場合に、冷却過程において水管にスケールが形成して熱交換効率に影響を与えにくく、或いは、前記冷却装置の冷却媒体は、導電率が10μS/cmより小さく、高電圧条件での使用要件を満たし、高電圧環境でのリーク電流の発生、及び中性子ビームの発生に対する干渉を防止することができる。
【0085】
さらに、前記冷却装置は、冷却媒体が脱イオン水であり、前記脱イオン水の導電率が0.5~1.5μS/cmである。
【0086】
好ましくは、前記冷却装置は、外部循環装置、内部循環装置及び熱交換器を含み、前記内部循環装置は、冷却媒体を前記中性子捕捉療法システムの冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、次に吸熱後に昇温した前記冷却媒体を前記熱交換器に輸送して、前記外部循環装置から前記熱交換器に輸送されてきた冷水と熱交換を行い、降温した前記冷却媒体を前記冷却すべきアセンブリに輸送して吸熱し、前記外部循環装置は、前記冷水を前記熱交換器に連続的に提供し、かつ吸熱後に昇温した前記冷水を回収することができる。
【0087】
さらに、前記外部循環装置は、冷熱源ユニットと、第1ポンプと、前記冷熱源ユニット及び前記第1ポンプを制御する第1制御装置とを含み、前記外部循環装置は、前記熱交換器からの、吸熱後に昇温した前記冷水を前記冷熱源ユニットに輸送して冷却し、冷却後の前記冷水を前記第1ポンプにより前記熱交換器に圧送し、前記第1制御装置は、前記冷水の輸送を制御する。
【0088】
さらに、前記内部循環装置は、フィルタと、第2ポンプと、前記フィルタ及び前記第2ポンプを制御する第2制御装置とを含み、一端が前記冷却すべきアセンブリに接続され、他端が前記熱交換器に接続され、前記冷却媒体は、前記冷却すべきアセンブリの熱量を吸収した後に、前記第2ポンプにより前記熱交換器に圧送されて前記冷水と熱交換を行い、冷却及び降温後の前記冷却媒体は、前記フィルタにより濾過された後に前記冷却すべきアセンブリの内部に輸送され、熱交換を行い、前記第2制御装置は、前記冷却媒体の輸送を制御する。
【0089】
さらに、前記内部循環装置は、圧力安定化回路又は冷却媒体補充回路を含み、前記圧力安定化回路及び前記冷却媒体補充回路は、前記第2制御装置により制御され、前記外部循環装置は、前記第1制御装置により制御された冷水補充回路を含む。
【0090】
本発明の第9態様に係る中性子捕捉療法システムは、荷電粒子ビーム発生部と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子ビームを発生させ、前記ビーム転送部は、前記荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部に転送し、前記中性子ビーム発生部は、治療用中性子ビームを発生させ、前記荷電粒子ビーム発生部は、荷電粒子を発生させるイオン源と、前記イオン源により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームを得る加速器とを含み、前記加速器は、加速エネルギーを提供する加速器高圧電源を含み、前記加速器高圧電源内に絶縁ガスが提供される。加速器高圧電源内に絶縁ガスが提供されることにより、加速器高圧電源内の電子部品が破壊されることを回避する。
【0091】
好ましくは、前記中性子捕捉療法システムは、絶縁ガスの充填回収装置を含む補助装置をさらに含み、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記加速器高圧電源に前記絶縁ガスを提供するか、又は前記絶縁ガスを前記加速器高圧電源から回収し、関連装置を保守し、点検する場合に絶縁ガスを回収することができるため、絶縁ガスの利用率が向上する。
【0092】
好ましくは、前記絶縁ガスの充填回収装置は、ガス源と、前記ガス源及び前記加速器高圧電源にそれぞれ接続された貯留容器とを含み、前記ガス源は、前記絶縁ガスが収容された容器を含む。
【0093】
さらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、真空ポンプをさらに含み、充填前に、真空ポンプを起動して絶縁ガスの充填回収装置の貯留容器、管路、部品などに対して真空排気を行って装置内の空気を排出する。
【0094】
さらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、充填及び回収(返送)過程に動力を提供する圧縮機をさらに含む。
【0095】
さらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記貯留容器と前記加速器高圧電源との間に設置され、回収された絶縁ガス中の大部分の水分子を除去してガスを相対的な乾燥の状態に維持する乾燥装置をさらに含む。
【0096】
さらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記貯留容器と前記加速器高圧電源との間に設置され、回収された絶縁ガス中の油、粗大粒子の不純物などを除去して絶縁ガスの純度を維持する濾過装置をさらに含む。
【0097】
さらに、前記絶縁ガスの充填回収装置は、前記ガス源の容器と前記加速器高圧電源との間に設置された冷凍装置及び圧縮装置をさらに含み、前記絶縁ガスを前記加速器高圧電源から前記ガス源の容器内に返送する場合、前記冷凍装置は、前記絶縁ガスを液態に変換し、前記圧縮装置は、気態又は液態の前記絶縁ガスを圧縮することにより、前記ガス源の容器内に注入する。
【0098】
好ましくは、前記中性子ビーム発生部は、ターゲット、ビーム整形体及びコリメータを含み、前記ターゲットは、前記ビーム転送部と前記ビーム整形体との間に設置され、前記加速器により発生した荷電粒子ビームは、前記ビーム転送部により前記ターゲットに照射し、かつ前記ターゲットと作用して中性子を発生させ、発生した前記中性子は、順に前記ビーム整形体及びコリメータを通過して治療用中性子ビームを形成する。
【0099】
さらに、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射線遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットで発生した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ逸脱した中性子を前記減速体に戻して熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、熱中性子を吸収して、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、前記放射線遮蔽体は、前記ビーム出口を囲んで前記反射体の後部に設置されて、漏れた中性子と光子を遮蔽して非照射領域における正常組織への線量を減少させ、前記コリメータは、前記ビーム出口の後部に設置されて中性子ビームを集める。
【0100】
本発明の中性子捕捉療法システムは、加速器に基づいて動作がより安全で確実であり、かつよりコンパクトな構造及び合理的な配置を有し、病院などの治療場所に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの冷却装置のブロック図である。
【
図3】
図2における外部循環装置のブロック図である。
【
図4】
図2における内部循環装置のブロック図である。
【
図5】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの絶縁ガスの充填回収装置のブロック図である。
【
図6】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの平面レイアウト図である。
【
図7】
図6における制御室と照射室との仕切り壁の概略図である。
【
図8a】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの照射室とビーム転送室との仕切り壁のビーム転送室に向かう側に設置された中性子遮蔽板及び支持アセンブリのレイアウト図であり、ここで、
図8aは、中性子遮蔽板のレイアウト図であり、
図8bは、支持アセンブリのレイアウト図である。
【
図8b】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの照射室とビーム転送室との仕切り壁のビーム転送室に向かう側に設置された中性子遮蔽板及び支持アセンブリのレイアウト図であり、ここで、
図8aは、中性子遮蔽板のレイアウト図であり、
図8bは、支持アセンブリのレイアウト図である。
【
図9】
図8a-
図8bにおける中性子遮蔽板及び支持アセンブリの固定方式の概略図である。
【
図10】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムのビーム転送室内に設置された補助装置収容室の概略図である。
【
図11】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台位置決め装置の概略図である。
【
図13】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台位置決め装置及びその制御装置のブロック図である。
【
図14】
図11の治療台位置決め装置のスライドレールカバー部材の一実施例の概略図である。
【
図15】
図11の治療台位置決め装置のスライドレールカバー部材の別の実施例の概略図である。
【
図16】
図11の治療台位置決め装置のロボットアーム保護カバーの一実施例の概略図である。
【
図17】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの電線管及び支持フレームのレイアウト図である。
【
図18】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの環状遮蔽装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を更に詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0103】
図1に示すように、本実施例における中性子捕捉療法システムは、好ましくは、ホウ素中性子捕捉療法システム100であり、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、ホウ素中性子捕捉療法を利用してがん治療を行う装置である。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(B-10)を注射した被照射体200に対して中性子ビームNを照射して、がん治療を行い、被照射体200は、ホウ素(B-10)含有薬剤を服用するか又は注射された後、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞Mに選択的に集められ、次にホウ素(B-10)含有薬剤が熱中性子に対して高い捕捉断面を有するという特性を利用して、
10B(n,α)
7Li中性子捕捉及び核分裂反応により、
4He及び
7Liという2種類の重荷電粒子を発生させる。2種類の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特性を有し、α粒子の線エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、
7Li重荷電粒子の線エネルギー付与と飛程は、175keV/μm、5μmであり、2種類の粒子の総飛程は、約1つの細胞の大きさに相当するため、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑え、正常組織にあまりにも大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を局所的に殺すという目的を達成することができる。
【0104】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、ビーム発生装置10及び治療台20を含み、ビーム発生装置10は、荷電粒子ビーム発生部11、ビーム転送部12及び(第1)中性子ビーム発生部13を含む。荷電粒子ビーム発生部11は、陽子ビームのような荷電粒子ビームPを発生させ、ビーム転送部12は、荷電粒子ビームPを中性子ビーム発生部13に転送し、中性子ビーム発生部13は、治療用中性子ビームNを発生させ、かつ治療台20上の被照射体200に照射する。
【0105】
荷電粒子ビーム発生部11は、イオン源111及び加速器112を含み、イオン源111は、H-、陽子、重陽子などの荷電粒子を発生させ、加速器112は、イオン源111により発生した荷電粒子を加速して、所望のエネルギーを有する荷電粒子ビームP、例えば、陽子ビームを得る。
【0106】
中性子ビーム発生部13は、ターゲットT、ビーム整形体131及びコリメータ132を含み、加速器112により発生した荷電粒子ビームPは、ビーム転送部12によりターゲットTに照射し、かつターゲットTと作用して中性子を発生させ、発生した中性子は、順にビーム整形体131及びコリメータ132を通過して治療用中性子ビームNを形成し、治療台20上の被照射体200に照射する。ターゲットTは、好ましくは、金属ターゲットである。必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理的・化学的特性などに応じて、適切な核反応を選択し、一般的に検討されている核反応は、7Li(p,n)7Be及び9Be(p,n)9Bであり、これらの2種類の反応は、いずれも吸熱反応である。これらの2種類の核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVであり、ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源がkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりわずかに高い陽子を金属リチウムターゲットに衝撃させることで、比較的低いエネルギーの中性子を発生させることができ、あまり多くの減速処理を必要とせずに臨床的に使用することができるが、金属リチウム(Li)及び金属ベリリウム(Be)の2種類のターゲットと閾値エネルギーの陽子との作用断面が高くなく、十分な中性子束を発生させるために、一般的に比較的高いエネルギーを持つ陽子を用いて核反応を引き起こす。理想的なターゲットは、中性子収率が高く、発生した中性子のエネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域(以下に詳細に説明する)に近く、強い透過性を有する放射線があまり多く発生せず、安全で、安価で、操作しやすく、かつ耐高温などの特性を有するが、実際には全ての要件を満たす核反応を見つけることは不可能である。当業者に周知のように、ターゲットTは、Li、Be以外の金属材料で製造されてもよく、例えば、Ta又はW及びその合金などで形成される。加速器112は、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロンであってもよい。
【0107】
ビーム整形体131は、荷電粒子ビームPがターゲットTと作用して発生した中性子ビームNのビーム品質を調整することができ、コリメータ132は、中性子ビームNを集めることにより、中性子ビームNは、治療過程において高い標的性を有する。ビーム整形体131は、反射体1311、減速体1312、熱中性子吸収体1313、放射線遮蔽体1314及びビーム出口1315をさらに含み、荷電粒子ビームPがターゲットTと作用して発生した中性子のエネルギースペクトルが広いため、治療需要を満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量をできるだけ減少させて、操作者又は被照射体に損傷を引き起こすことを回避する必要があるため、ターゲットTから出た中性子は、減速体1312を通して高速中性子のエネルギー(>40keV)が熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整され、かつ熱外中性子(<0.5eV)をできるだけ減少させる必要があり、減速体1312は、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい材料で製造され、本実施例において、減速体1312は、D2O、AlF3、Fluental、CaF2、Li2CO3、MgF2及びAl2O3のうちの少なくとも1種で製造され、反射体1311は、減速体1312を囲み、かつ減速体1312を通過して周囲に拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、本実施例において、反射体1311は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体1312は、後部に熱中性子吸収体1313があり、熱中性子との作用断面が大きい材料で製造され、本実施例において、熱中性子吸収体1313は、Li-6で製造され、減速体1312を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射線遮蔽体1314は、ビーム出口1315以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射線遮蔽体1314の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、本実施例において、放射線遮蔽体1314の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。理解できるように、ビーム整形体131は、さらに他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを得ればよい。コリメータ132は、ビーム出口1315の後部に設置され、コリメータ132から出た熱外中性子ビームは、被照射体200に照射され、浅層正常組織を通した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着し、理解できるように、コリメータ132は、除去されてもよく、他の構造であってもよく、中性子ビームは、ビーム出口1315から出て被照射体200に直接的に照射される。本実施例において、被照射体200とビーム出口1315との間に、ビーム出口1315から出たビームの被照射体の正常組織に対する放射を遮蔽する放射線遮蔽装置30が設置され、理解できるように、放射線遮蔽装置30が設置されなくてもよい。ターゲットTは、ビーム転送部12とビーム整形体131との間に設置され、ビーム転送部12は、荷電粒子ビームPを加速又は転送する転送管Cを有し、本実施例において、転送管Cは、荷電粒子ビームPの方向に沿ってビーム整形体131に伸び込み、かつ順に反射体1311と減速体1312を貫通し、ターゲットTは、減速体1312内に設置され、かつ転送管Cの端部に位置して、高い品質の中性子ビームを得る。理解できるように、ターゲットは、他の設置方式を用いてもよく、さらに、ターゲットを交換しやすくするか又は荷電粒子ビームをターゲットに均一に作用させるために、加速器又はビーム整形体に対して移動可能であってもよい。
【0108】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、補助装置14をさらに含み、補助装置14は、荷電粒子ビーム発生部11、ビーム転送部12及び中性子ビーム発生部13の動作の前提条件を提供する任意の補助装置を含んでもよい。一実施例において、補助装置14は、冷却装置141、圧縮空気を提供する空気圧縮装置、絶縁ガスの充填回収装置142、真空環境を提供する真空ポンプ143などを含み、本発明は、これを具体的に限定しない。
【0109】
冷却装置141は、荷電粒子ビーム発生部11、ターゲットT及び他の補助装置14などの冷却すべきアセンブリCPの冷却に用いられ、装置の耐用年数を延長することができる。冷却装置141の冷却媒体は、軟水であってもよく、特に熱交換部分が銅管を用いる場合に、冷却過程において水管にスケールが形成して熱交換効率に影響を与えにくく、例えば、硬さが60mg/Lより小さく、荷電粒子ビーム発生部11及びターゲットTを冷却する場合、高電圧条件での使用要件を満たし、高電圧環境でのリーク電流の発生、及び中性子ビームの発生に対する干渉を防止するために、冷却媒体は、非常に低い導電率を有さなければならず、例えば、冷却媒体の導電率が10μS/cmより小さい。本実施例において、2つの冷却装置を設置し、1つは、硬さが17mg/Lより小さい軟水を用い、もう1つは、導電率が0.5~1.5μS/cmの脱イオン水を用い、理解できるように、他の種類の冷却媒体を用いてもよい。
【0110】
図2に示すように、冷却装置141は、外部循環装置1411、内部循環装置1412及び熱交換器1413を含み、内部循環装置1412は、冷却媒体(例えば、軟水又は脱イオン水)を冷却すべきアセンブリCPに輸送して吸熱し、次に吸熱後に昇温した冷却媒体を熱交換器1413に輸送して、外部循環装置1411から熱交換器1413に輸送された冷水と熱交換を行い、降温した冷却媒体を冷却すべきアセンブリCPに輸送して吸熱し、このように繰り返し、外部循環装置1411は、冷水を熱交換器1413に連続的に提供し、かつ吸熱後に昇温した冷水を回収することができる。外部循環装置1411は、熱量を大気に排出するように、室外、すなわち、ホウ素中性子捕捉療法システム100を収容する建築物(以下に詳細に説明する)の外部に設置され、本実施例において、建築物の屋上に設置され、内部循環装置1412及び熱交換器1413は、冷却すべきアセンブリCPの熱量を吸収するように、室内、すなわち、ホウ素中性子捕捉療法システム100を収容する建築物の内部に設置され、理解できるように、他の設置であってもよく、例えば、熱交換器が室外に配置される。
【0111】
図3に示すように、外部循環装置1411は、冷熱源ユニット1411a、第1ポンプ1411b、冷熱源ユニット1411a及び第1ポンプ1411bを制御する第1制御装置1411cなどを含んでもよく、熱交換器1413からの、吸熱後に昇温した冷水を冷熱源ユニット1411aに輸送して冷却し、冷却後の冷水を第1ポンプ1411bにより熱交換器1413に圧送し、第1制御装置1411cは、冷水の輸送を制御する。
図4に示すように、内部循環装置1412は、フィルタ1412a、第2ポンプ1412b、フィルタ1412a及び第2ポンプ1412bを制御する第2制御装置1412cなどを含んでもよく、一端が冷却すべきアセンブリCPに接続され、他端が熱交換器1413に接続され、冷却媒体は、末端で冷却すべきアセンブリCPの熱量を吸収した後に、第2ポンプ1412bにより熱交換器1413に圧送されて冷水と熱交換を行い、冷却及び降温後の冷却媒体は、フィルタ1412aにより濾過された後に冷却すべきアセンブリCPの内部に輸送され、熱交換を行い、第2制御装置1412cは、冷却媒体の輸送を制御する。冷却媒体は、脱イオン水を用いる場合、循環過程において様々な要因による影響を受けることにより導電率が連続的に向上し、フィルタにより冷却媒体の導電率を、要件を満たすように維持し、要件を満たすように確保するために、導電率センサ(図示せず)を設置してフィルタ1412aの出口での冷却媒体の導電率を検出してもよい。本実施例において、熱交換器1413も第1制御装置1411cにより制御され、理解できるように、単独の制御装置を有してもよく、第2制御装置1412cにより制御されてもよい。
【0112】
内部循環装置1412は、圧力安定化回路1412dを含み、かつ第2制御装置1412cにより制御されてもよい。一実施例において、圧力安定化回路1412dは、バッファタンク、窒素ガスタンク、圧力センサなどを含んでもよく、圧力センサにより窒素ガスタンク内の圧力を検出し、圧力が所定の値より小さい場合にバッファタンクに窒素ガスを補充し、圧力を増加させ、システム内の正圧を保証し、空気がシステム内に入ることを防止する。外部循環装置1411、内部循環装置1412はそれぞれ、冷水補充回路1411d、冷却媒体補充回路1412eを含み、かつそれぞれ第1制御装置1411c、第2制御装置1412cにより制御されてもよく、冷水/冷却媒体が足りない場合に警報通知を発し、かつ冷水補充回路1411d/冷却媒体補充回路1412eにより補充され、外部循環装置1411及び内部循環装置1412は、温度センサ、調整弁、圧力センサなどを含み、かつ第1制御装置1411c及び第2制御装置1412cにより制御されてもよく理解できるように、冷却装置141は、他の構造であってもよい。
【0113】
加速器112は、加速エネルギーを提供する加速器高圧電源(ELV)1121を含み、加速器高圧電源1121内の電子部品が破壊されることを防止するために、加速器高圧電源1121に絶縁ガスを提供する(例えば、加速器高圧電源1121のケース内に提供される)必要があり、絶縁ガスは、SF6を用いてもよく、理解できるように、他の絶縁ガスを用いてもよい。絶縁ガスの充填回収装置142により、加速器高圧電源1121に絶縁ガスを提供するか、又は絶縁ガスを加速器高圧電源1121から回収し、関連装置を保守し、点検する場合に絶縁ガスを回収することができるため、絶縁ガスの利用率が向上する。
【0114】
図5に示すように、絶縁ガスの充填回収装置142は、ガス源1421(例えば、SF
6が収容されるボンベ)と、ガス源1421及び加速器高圧電源1121にそれぞれ接続された貯留容器1422とを含む。初期状態では、ガス源1421の容器内に絶縁ガスが収容され、まず、絶縁ガスをガス源1421の容器から貯留容器1422内に充填し、次に絶縁ガスを貯留容器1422からELV内に充填すると、ELVが正常に動作し始め、ELVを開いて保守し、点検する必要がある場合、絶縁ガスをELVから貯留容器1422内に回収し、保守及び点検が終わる場合、絶縁ガスを貯留容器1422からELV内に充填し、絶縁ガスの充填回収装置142の貯留容器1422、管路、部品などが保守を必要とする場合又は故障して、点検を必要とする場合、絶縁ガスを貯留容器1422からガス源1421の容器内に返送して初期状態に戻し、保守及び点検が終わる場合、充填を再び行う。
【0115】
絶縁ガスの充填回収装置142は、貯留容器1422とELVとの間に設置された濾過装置1423及び乾燥装置1424を含んでもよく、絶縁ガスをELVから貯留容器1422内に回収する場合、濾過装置1423は、回収された絶縁ガス中の油、粗大粒子の不純物などを除去して絶縁ガスの純度を維持し、乾燥装置1424は、回収された絶縁ガス中の大部分の水分子を除去してガスを相対的な乾燥の状態に維持する。濾過装置1423は、ストレーナーを用いてもよく、乾燥装置1424は、電気加熱により乾燥を行ってもよく、他の方式により乾燥又は濾過を行ってもよく、本実施例において、絶縁ガスは、まず濾過装置1423を通過し、次に乾燥装置1424を通過し、理解できるように、まず乾燥し、次に濾過されてもよく、濾過装置1423及び乾燥装置1424は、一体とされてもよく、水分検出部品又は油分検出部品又は不純物検出部品を含んでもよい。
【0116】
絶縁ガスの充填回収装置142は、ガス源1421の容器と貯留容器1422との間に設置された冷凍装置1425及び圧縮装置1426を含んでもよく、絶縁ガスを貯留容器1422からガス源1421の容器内に返送する場合、冷凍装置1425は、絶縁ガスを液態に変換し、圧縮装置1426は、気態又は液態の絶縁ガスを圧縮することにより、ガス源1421の容器内に注入し、理解できるように、冷凍装置1425及び圧縮装置1426は、先後順序が限定されず、一体とされてもよい。
【0117】
絶縁ガスの充填回収装置142は、真空ポンプを含んでもよく、充填前に、真空ポンプを起動して絶縁ガスの充填回収装置142の貯留容器1422、管路、部品などに対して真空排気を行って装置内の空気を排出する。加速器高圧電源1121には真空ポンプ143が設置されてもよく、ELVの充填及びELVの動作の前にELVに対して真空排気を行って空気を排出する。絶縁ガスの充填回収装置142は、上記充填及び回収(返送)過程に動力を提供する圧縮機を含んでもよい。絶縁ガスの充填回収装置142は、上記充填及び回収(返送)過程を制御する弁、真空度検出部品、圧力検出部品などを含んでもよい。理解できるように、絶縁ガスの充填回収装置142は、他の構造であってもよい。
【0118】
図6に示すように、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、具体的には、(第1)照射室101、加速器室102及びビーム転送室103を含み、治療台20上の被照射体200は、照射室101において中性子ビームNの照射による治療を受け、加速器室102は、荷電粒子ビーム発生部11(例えば、イオン源111、加速器112)を少なくとも部分的に収容し、ビーム転送室103は、ビーム転送部12を少なくとも部分的に収容し、中性子ビーム発生部13は、照射室101とビーム転送室103との仕切り壁W1内に少なくとも部分的に収容され、補助装置14は、加速器室102又はビーム転送室103内に少なくとも部分的に設置される。
【0119】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、第2照射室101’を含んでもよく、ビーム発生装置10は、第2照射室101’に対応する第2中性子ビーム発生部13’をさらに含み、ビーム転送部12は、ビーム方向切替アセンブリ121を含み、ビーム方向切替アセンブリ121により、ビーム転送部12は、荷電粒子ビーム発生部11により発生した荷電粒子ビームPを第1中性子ビーム発生部13又は第2中性子ビーム発生部13’に選択的に転送することにより、ビームを第1照射室101又は第2照射室101’に放出する。なお、第2照射室101’内に照射する中性子ビームNは、第2照射室101’内の治療台20’上の別の被照射体への中性子ビームNの照射による治療に用いられてもよく、サンプルの検出などに用いられてもよく、本発明は、これを限定しない。
【0120】
なお、ビーム発生装置10は、他の構造であってもよい。例えば、第3照射室がある場合、第3照射室に対応する第3中性子ビーム発生部を増設してもよく、中性子ビーム発生部の数は、照射室の数に対応し、本発明の実施例は、中性子ビーム発生部の数を具体的に限定せず、1つの荷電粒子ビーム発生部を設置して荷電粒子ビームを各中性子ビーム発生部に転送することにより、システムのコストを効果的に低減することができる。理解できるように、ビーム発生装置は、複数の荷電粒子ビーム発生部を含んでもよく、それにより荷電粒子ビームを各中性子ビーム発生部に転送して、複数の照射室で同時に複数の中性子ビームを発生させて照射することができる。
【0121】
本発明の一実施例において、ビーム方向切替アセンブリ121は、荷電粒子ビームPの方向を偏向させる偏向磁石(図示せず)を含み、第1照射室101に対応する偏向磁石がオンになると、ビームを第1照射室101に導入し、本発明は、これを具体的に限定しない。ホウ素中性子捕捉療法システム100は、ビームを必要としない場合にビームを収集するか又は治療前に荷電粒子ビームPの出力を確認するビーム収集器40を含んでもよく、ビーム方向切替アセンブリ121は、荷電粒子ビームPを正規の軌道から外してビーム収集器に導くことができる。
【0122】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、準備室(図示せず)、制御室104及び治療を補助する他の空間(図示せず)を含んでもよい。各照射室に1つの準備室が配置されてもよく、照射治療の前に被照射体を治療台に固定し、被照射体の体位をシミュレーションし、治療計画をシミュレーションするなどの準備仕事を行う。制御室104は、加速器、ビーム転送部、治療台などを制御し、照射過程全体を制御して管理し、管理者は、制御室内に複数の照射室を同時に監視することができ、図面には制御室の1種の配置方式のみが示され、理解できるように、制御室は、他の配置であってもよい。
【0123】
ホウ素中性子捕捉療法過程において、連続的に投与する必要があるため、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、照射治療時に被照射体200にホウ素(B-10)含有薬剤を注射する薬剤注射装置50をさらに含む。薬剤注射装置50は、薬剤制御室(本実施例において制御室104)と照射室101との間に設置された薬剤通過アセンブリ51を含み、薬剤通過アセンブリ51は、ホウ素(B-10)含有薬剤を注射する薬剤通過部材511と、薬剤通過部材511を少なくとも部分的に収容する収容部材512とを含み、照射室101は、薬剤制御室と隔てられた仕切り壁W2を有し、収容部材512は、仕切り壁W2内に設置され、かつ薬剤通過部材511が仕切り壁W2を通過する通路を形成し、さらに、薬剤通過部材511を支持することができる。本実施例において、収容部材512は、仕切り壁W2内に固定設置され、例えば、締りばめで取り付けられ、理解できるように、他の方式で設置されてもよい。収容部材512は、薬剤通過部材511の通過を容易にする一方で、コンクリート壁を隔て、塵などが薬剤通過部材511を汚染することを防止する。図面には、第1照射室101内の被照射体200にホウ素含有薬剤を注射する装置のみが示され、理解できるように、他の照射室内の被照射体に対するホウ素含有薬剤の注射は、同様な薬剤注射装置50を用いてもよい。
【0124】
薬剤注射装置50は、薬剤収容機構52及び薬剤制御機構53を含んでもよく、薬剤収容機構52及び薬剤制御機構53は、薬剤制御室内に設置され、かつ薬剤制御室内に被照射体200に対するホウ素(B-10)含有薬剤の注射を制御してもよく、照射室101内の中性子放射線が薬剤収容機構52及び薬剤制御機構53に、薬剤制御機構53内の電子部品が正常に動作せず、又は薬剤収容機構52内に収容されたホウ素含有薬剤と反応するなどの影響を与えることを回避することができる。薬剤通過部材511は、薬剤収容機構52に接続され、かつ薬剤制御機構53によりホウ素(B-10)含有薬剤を被照射体200内に注射する。薬剤収容機構52は、輸液バッグ又は輸液ボトルなどを用いてもよく、薬剤制御機構53は、薬剤通過部材511に接続され、かつ薬剤通過部材511内のホウ素(B-10)含有薬剤の流れを制御し、例えば、ポンプを用いて液体(ホウ素(B-10)含有薬剤)が流れる動力を提供してもよく、流速を制御してもよく、検出、警報などの機能を有してもよい。薬剤通過部材511は、ディスポーザブル輸液チューブなどであってもよく、例えば、被照射体に挿入される静脈針、プロテクター、チューブ、及び薬剤収容機構52に接続されたびん針などを含む。薬剤通過部材511は、少なくとも一部、例えば、静脈針、照射室101内に設置されたチューブ部分が中性子遮蔽材料で製造されてもよく、照射室内の中性子放射線が薬剤通過部材511内のホウ素含有薬剤に影響を与えることを低減することができる。
【0125】
図7に示すように、本実施例において、収容部材512は、仕切り壁W2の厚さ方向の貫通孔513内に設置され、貫通孔513の中心軸線Xはいずれも、地面、及び仕切り壁W2の厚さ方向に沿って地面に垂直な平面と交差し、すなわち、貫通孔513は、水平及び鉛直方向においていずれも傾斜する方式で仕切り壁W2を貫通して放射線漏れを低減し、貫通孔513の中心軸線Xは直線であり、理解できるように、貫通孔513は、他の設置方式を用いてもよく、例えば、貫通孔513の中心軸線Xは、折れ線又は曲線であり、貫通孔513の横断面は、円形、四角形などであってもよい。一実施例において、仕切り壁W2の制御室104に向かう第1側壁S1における貫通孔513の中心から地面までの距離D1は、仕切り壁W2の照射室101に向かう第2側壁S2における貫通孔513の中心から地面までの距離D2より大きく、例えば、仕切り壁W2の制御室104から照射室101までの方向に沿って貫通孔513の中心から地面までの距離は、徐々に減少する。本実施例において、収容部材512は、貫通孔513内に設置された管状部材であり、管状部材の外壁は、貫通孔の内壁に嵌合し、管状部材の内壁の形状は、限定されず、理解できるように、収容部材512は、薬剤通過部材511が貫通する孔が形成された箱体であってもよく、1つ又は複数のバックルなどであってもよい。
【0126】
収容部材512は、PVCであり、中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は放射能が非常に低く、発生した二次放射を低減し、理解できるように、中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料を用いてもよい。収容部材512及び貫通孔513は、各仕切り壁に少なくとも2つ設置されてもよく、そのうちの1つが、塞がれるか又は他の問題が発生した場合、予備のものがある。
【0127】
照射治療時にホウ素(B-10)含有薬剤を注射する過程について、照射治療を開始する前に、適切な薬剤通過部材511を選択し、かつ薬剤通過部材511と薬剤収容機構52及び薬剤制御機構53とを接続し、薬剤通過部材511が収容部材512を貫通して照射室101内の適切な位置に置かれ、照射室101内に被照射体200に対する位置決めを完了し、かつ治療計画を決定した後、薬剤制御室内の操作者は、薬剤制御機構53を開き、照射室101内の医者は、プロテクターを取り外し、静脈針を被照射体200に挿入するか又は被照射体200の位置決めの前に被照射体200に挿入し、医者が照射室101から離れた後、操作者は、制御室104内に中性子ビームを被照射体に照射するように制御し、かつホウ素(B-10)含有薬剤の注射を制御する。理解できるように、照射治療前にホウ素(B-10)含有薬剤の注射は、同様な薬剤注射装置50を用いてもよく(収容部材512を除く)、照射室101に入る前に薬剤通過部材511を遮断し、例えば、静脈針を外すか、又は留置針を用い、照射室101に入った後に薬剤通過部材511を再度接続するか又は薬剤通過部材511を取り替え、準備室内に、照射前のホウ素(B-10)含有薬剤の注射を行うか又は照射治療時のホウ素(B-10)含有薬剤の注射に関する制御を行ってもよく、この場合、準備室は、薬剤制御室となる。理解できるように、薬剤注射装置50は、他の種類の中性子捕捉療法システムに適用されてもよく、ホウ素(B-10)含有薬剤は、他の薬剤に置き換えられてもよい。
【0128】
中性子捕捉療法過程において、特に中性子を発生させるターゲットTの近傍に大量の中性子を発生させるため、中性子の漏れをできるだけ回避する必要がある。一実施例において、少なくとも一部の空間(例えば、ビーム転送室103、照射室101、101’)を形成するコンクリートは、中性子遮蔽材料が添加されたコンクリートであり、例えば、ホウ素及び重晶石を含有するコンクリートであり、これにより中性子遮蔽空間を形成する。別の実施例において、室内(例えば、ビーム転送室103、照射室101、101’の天井板、床板、壁)のコンクリートの表面に中性子遮蔽板60が設置され、例えば、ホウ素含有のPE板が設置されて中性子遮蔽空間を形成し、理解できるように、中性子遮蔽板60は、コンクリートの表面に密着してもよく、所定の距離を隔ててもよく、コンクリート壁全体の表面に設置されてもよく、一部の領域にのみ設置されてもよく、例えば、照射室の中心領域の床板の表面に中性子遮蔽板が設置され、照射室の入口領域の床板の表面に中性子遮蔽板が設置されず、2つの領域の間は、坂道により接続されて高度差を形成する。中性子遮蔽板60は、支持アセンブリ61によりコンクリートの表面に設置され、例えば、
図8a、bは、照射室101とビーム転送室103との仕切り壁W1のビーム転送室103に向かう側に設置された中性子遮蔽板60及び支持アセンブリ61のレイアウトを示し、
図9は、中性子遮蔽板60及び支持アセンブリ61の固定方式を示し、中性子遮蔽板60は、複数枚の板を組み合わせて形成され、仕切り壁W1のコンクリートに、アンカーボルトにより所定の距離をおいて長尺形の支持アセンブリ61が設置され、中性子遮蔽板60の各板は、順にねじで支持アセンブリ61の対応する位置に固定され、すなわち、支持アセンブリ61は、一側がコンクリートに接続され、他側が中性子遮蔽板60に接続される。本実施例において、支持アセンブリ61は、ボルトにより接続された2つのL字状の板状部材であり、理解できるように、支持アセンブリ61及び固定方式は、他の設置方式を用いてもよく、例えば、支持アセンブリ61は、少なくとも部分的に型材で構成され、中性子遮蔽板60は、コンクリートの表面に直接的に固定されてもよく、仕切り壁W1における、中性子ビーム発生部13を収容する収容溝の側壁は、中性子遮蔽板60が設置されてもよい。
【0129】
中性子捕捉療法過程における中性子の室内の他の装置、例えば、補助装置14に対する放射線損傷及び放射線汚染を低減するために、補助装置14の周囲に中性子遮蔽板60が設置されて遮蔽空間を形成することができ、
図10に示すように、一実施例において、ビーム転送室103内に、補助装置14などを収容するか又は囲む補助装置収容室105が設置される。補助装置収容室105は、少なくとも部分的に支持アセンブリ61及び支持アセンブリ61に固定された中性子遮蔽板60で構成され(図面には一部の中性子遮蔽板のみが示される)、本実施例において、補助装置収容室105は、ビーム転送室103の曲がり角に設置され、かつビーム転送室103の一部の壁及び床板を共用し、支持アセンブリ61及び支持アセンブリ61に固定された中性子遮蔽板60は、ビーム転送室103の一部の壁及び床板と共に補助装置14を収容し囲む空間を形成し、すなわち、支持アセンブリ61に固定された中性子遮蔽板60は、立方体の収容空間の3つの面を形成し、ビーム転送室103の一部の壁及び床板は、立方体の収容空間の別の3つの面を形成する。補助装置収容室105は、ドア1051及びその移動機構1052を含み、移動機構1052は、装置の点検時に操作者が補助装置収容室105の内部に入るためにドア1051を開き、ガイドレール1052a及びスライドロッド1052bを含み、ドア1051は、スライドロッド1052bによりガイドレール1052aに沿って水平方向において摺動することができ、本実施例において、ドア1051は、ドア支持アセンブリ1051a及びドア支持アセンブリ1051aに固定された中性子遮蔽板60で構成され、スライドロッド1052bは、ドア支持アセンブリ1051aに固定接続され、例えば、ドア1051の頂端に設置され、ガイドレール1052aは、補助装置収容室105の支持アセンブリ61に固定接続され、理解できるように、移動機構1052は、他の構造であってもよく、例えば、ドアが回転可能である。移動機構1052は、引き上げアセンブリ1052c及び滑車1052dをさらに含み、引き上げアセンブリ1052cは、ドア1051を鉛直方向において引き上げることにより滑車1052dをドア1051の底部に置くことができるため、ドア1051は、滑車1052dにより水平方向において摺動することができ、本実施例において、引き上げアセンブリ1052cは、ジャッキ1052e及びドア支持アセンブリ1051aに固定された接続板1052fで構成され、ジャッキ1052eが接続板1052fに作用することにより、ドア1051は、スライドロッド1052bによりガイドレール1052aに沿って鉛直方向において摺動することにより、鉛直方向において引き上げられ、理解できるように、引き上げアセンブリ1052cは、他の構造であってもよい。補助装置収容室105は、ドア1051が閉じるときの固定部材1053を含んでもよく、該固定部材は、ドア1051と補助装置収容室105とを一体に固定し、固定を補強し、横倒しを防止し、本実施例において、固定部材1053は、L字状の板に構成され、L字状の板の2つの側板はそれぞれ、ドア支持アセンブリ1051aと補助装置収容室105の支持アセンブリ61又は中性子遮蔽板60に固定される。補助装置収容室105は、管路、ケーブルなどが通過する開口1054を有してもよく、本実施例において、開口1054は、壁及び床板の曲がり角に近接するように設置される。補助装置収容室105の支持アセンブリ61及びドア支持アセンブリ1051aは、互いに接続された型材で構成され、理解できるように、補助装置収容室105は、他の構造であってもよく、他の空間内に補助装置収容室が設置されてもよい。
【0130】
中性子遮蔽板60は、ホウ素含有のPE板であり、支持アセンブリ61、ドア支持アセンブリ1051a、ガイドレール1052a、スライドロッド1052b、及び固定部材1053の材料は、アルミニウム合金であり、理解できるように、中性子遮蔽板60の材料は、他の中性子遮蔽材料であってもよく、異なる位置には、必要に応じて異なる厚さがあってもよく、表面には、他の装飾を行うか又は溝を付けて他の部品を取り付けてもよく、アルミニウム合金は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料、例えば、炭素繊維複合材料又はガラス繊維複合材料に置き換えられてもよい。
【0131】
図11~
図13に示すように、照射室101、101’内に治療台位置決め装置70A及び治療台位置決め装置の遮蔽装置70Bが設置されてもよく、治療台位置決め装置70Aは、線形軸71a及びロボットアーム72aを含み、ロボットアーム72aは、線形軸71aと治療台20との間に設置され、治療台20を支持し位置決めし、治療台20を線形軸71aに接続し、かつ治療台20及びロボットアーム72aを共に線形軸71aに沿って平行に移動させることができる。本実施例において、線形軸71aは、照射室の天井板に取り付けられ、ロボットアーム72a全体は、照射室の床板に向かって延伸し、理解できるように、線形軸71aは、他の表面、例えば、壁又は床板に取り付けられてもよく、線形軸71aは、天井板に固定されたスライドレール711a、及びロボットアーム72aに接続された支持台712aで構成され、支持台712aは、スライドレール711aに沿って摺動し、理解できるように、他の構造であってもよい。線形軸71aは、天井板に直接的に固定され、線形軸固定機構、例えば、鋼構造ガントリーを別途設置せず、照射室内の鋼の使用量を減少させ、固定機構が中性子によって活性化されて二次放射が発生することを低減する。ロボットアーム72aは、支持台712a及び治療台20に接続された多軸ロボットアームであり、複数のアーム部721a(721a’)を含む。
【0132】
支持台712aがロボットアーム72aに接続されスライドレール711aに沿って摺動し、天井板又は他の固定表面に設置された中性子遮蔽板60が摺動空間を予め保留する必要があるため、スライドレールの露出及び放射線漏れを引き起こす。したがって、遮蔽装置70Bは、スライドレールカバー部材71bを含み、スライドレールカバー部材71bは、支持台712aと共に移動し、かつスライドレール711aの露出部分を常にカバーする。遮蔽装置70Bは、ロボットアーム72aの少なくとも1つのアーム部721a(721a’)を包むロボットアーム保護カバー72bをさらに含み、ロボットアーム保護カバー72bの材料は、少なくとも部分的に中性子遮蔽材料であり、該アーム部及び該アーム部に設置された機構内の金属部材、電子機器などが中性子により照射された後に故障するか又は損傷されることを防止し、例えば、ホウ素含有のガラス繊維複合材料であり、理解できるように、他の遮蔽材料であってもよい。
【0133】
治療台位置決め装置70Aは、駆動機構73aを含んでもよく、照射室101、101’又は制御室104内に、治療台制御装置70Cが設置されてもよい。治療台制御装置70Cは、駆動機構73aに接続され、かつ駆動機構73aを制御することにより線形軸71a及びロボットアーム72aの移動を制御し、線形軸71a及びロボットアーム72aの位置情報は、治療台制御装置70Cにフィードバックされてもよく、駆動機構73aは、線形軸71a又はロボットアーム72a、例えば、支持台712a又は少なくとも1つのアーム部721aに設置されてもよい。
【0134】
治療台位置決め装置70Aは、センサ741a、センサ制御アセンブリ742a及びヒューマンマシンインタフェース743aを含む衝突防止用保護機構74aを含んでもよく、センサ741aは、ロボットアーム保護カバー72bに設置され、理解できるように、ロボットアーム保護カバー72bとロボットアーム72aとの間に設置されてもよい。ロボットアーム72a又はロボットアーム保護カバー72bの縁部が他の物体と接触するか又は他の物体がセンサ741aの所定の範囲に到達する場合にセンサ741aがトリガーされて信号を送信し、センサ741aが送信した信号は、センサ制御アセンブリ742aに転送され、かつヒューマンマシンインタフェース743aに表示され、センサ制御アセンブリ742aは、受信した信号を治療台制御装置70Cに転送し、対応する制御を行い、例えば、治療台制御装置70Cは、駆動機構73aを制御して、線形軸71a及びロボットアーム72aの移動を駆動することを停止し、すなわち、治療台20を制御して移動を停止する。理解できるように、センサ制御アセンブリは、受信した信号に基づいて、対応する制御を行ってもよく、操作者は、ヒューマンマシンインタフェースの表示に基づいて、駆動機構を手動で制御して、駆動を停止してもよく、治療台を制御して移動を停止するのではなく、他の安全操作を実行し、例えば、衝突前の逆向き移動を行ってもよい。センサ741aは、機械センサ、光電センサ、レーダセンサ、超音波センサ、レーザ距離計などであってもよく、他の位置に設置されてもよい。
【0135】
線形軸71a及びその駆動機構73aは、固定部材又は支持部材(図示せず)により照射室101、101’の固定表面に取り付けられてもよく、固定部材及び支持部材は、アルミニウム型材で構成されてもよく、例えば、スライドレール711aは、固定部材により天井板に固定され、支持台712a及び線形軸71aの駆動機構73aは、支持部材により天井板に固定又は支持され、スライドレールカバー部材71bは、支持台712aと線形軸71aの固定表面の中性子遮蔽板60との間に設置される。
図14及び
図15に示すように、一実施例において、スライドレールカバー部材71bは、いずれも順に接続された平板を含みスライドレールカバー部材の支持部材713bにより支持された第1部分711b及び第2部分712bを含み、第1部分711b及び第2部分712bは、支持台712aの摺動方向Aに沿って支持台712aに近接する一端が接続板7111b、7121bにより支持台712aに固定接続され、他端が支持部材713bに固定接続され、理解できるように、固定接続の方式は、ねじ接続、接着などであってもよく、第1部分711b及び第2部分712bの各平板の間は、順に摺動可能に接続されるか(
図14の左側に示す第1部分711b)又は回動可能に接続され(
図14の右側に示す第2部分712b)、理解できるように、各平板の間は、他の接続方式であってもよく、図面には、異なる接続方式のみが示され、必要に応じて第1部分711b及び第2部分712bが同じ又は異なる接続方式で接続されてもよい。支持部材713bは、線形軸71a及びその駆動機構73aの固定部材又は支持部材に接続されて固定されてもよく、固定表面に直接的に固定されてもよく、支持部材713bは、アルミニウム合金であり、スライドレールカバー部材71bの材料は、ホウ素含有のPE又は他の中性子遮蔽材料を含み、中性子遮蔽板60は、支持部材713bをカバーし、かつスライドレールカバー部材71bと共に線形軸71a、線形軸71aの駆動機構73a及びその取り付け部分(支持台712aの中性子遮蔽板60を貫通する部分を除く)をカバーし、理解できるように、アルミニウム合金は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料に置き換えられてもよく、支持部材713bは、中性子遮蔽材料で製造されてもよく、この場合、中性子遮蔽板60は、支持部材713bをカバーするのではなく、支持部材713bと嵌合してもよく、中性子遮蔽板60、支持部材713b及びスライドレールカバー部材71bは、共に線形軸71a、線形軸71aの駆動機構73a及びその取り付け部分(支持台712aの中性子遮蔽板60を貫通する部分を除く)をカバーする。支持台712aがスライドレール711aに沿って移動する過程において、スライドレールカバー部材71bの第1部分711b及び第2部分712bが伸縮することにより、全移動過程における中性子の漏れを低減する。
【0136】
図16に示すように、本実施例において、アーム部721aを包むロボットアーム保護カバー72bは、一体に固定接続されアーム部721a及び該アーム部721aに設置された駆動機構73a(例えば、モータ、回路基板など)又は制御機構(例えば、センサ制御アセンブリ742a又は治療台制御装置70Cの構成部分)を包む第1ケース721b及び第2ケース722bを含む。第1ケース721b及び第2ケース722bの材料は、ホウ素含有のガラス繊維複合材料であり、ガラス繊維複合材料は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は放射能が非常に低く、二次放射の発生を防止し、ホウ素は、中性子を吸収し、該アーム部及び該アーム部に設置された駆動機構又は制御機構内の金属部材、電子機器などが中性子により照射された後に故障するか又は損傷されることを防止することができる。理解できるように、第1ケース及び第2ケースの材料は、一定の強度を有する他の中性子遮蔽材料であってもよい。
【0137】
本実施例において、アーム部721a’を包むロボットアーム保護カバー72b’は、第1ケース721b及び第2ケース722bを含む以外、一体に固定接続され第1ケース721b及び第2ケース722bを包む第3ケース723b及び第4ケース724bをさらに含み、センサ741aは、第1ケース721bと第3ケース723bとの間及び第2ケース722bと第4ケース724bとの間に設置される。センサ741aは、複数があり、アーム部721aの周囲に分布する。第1ケース721b及び第2ケース722bに、センサ741aを収容する収容キャビティ725bが設置され、センサ741aは、収容キャビティ725b内に設置され、かつ第1ケース721bと第3ケース723bとの間及び第2ケース722bと第4ケース724bとの間に締りばめで取り付けられ、具体的には、第1ケース721bと第3ケース723bとの間及び第2ケース722bと第4ケース724bとの間に、センサ741aが取り付けられる隙間726bが設置される。センサ741aの電源、通信ケーブルなどは、隙間726bを貫通し、センサ制御アセンブリ742aに接続されもてよく、第3ケース723b及び第4ケース724bのセンサ741aに対応する位置に、センサ741aの電源、通信ケーブルなどが貫通する貫通孔727b(図示せず)が設置されてもよい。理解できるように、センサ741aは、他の取り付け方式を用いてもよい。本実施例において、センサ741aは、圧力センサであり、第3ケース723b及び第4ケース724bが受けた圧力を圧力信号に変換し、センサ制御アセンブリ742aに転送し、かつヒューマンマシンインタフェース743aに数値表示を行い、センサ741aにより受信された圧力信号が所定の値を超える場合、所定の値を超える圧力信号を優先的にセンサ制御アセンブリ742aに転送し、かつヒューマンマシンインタフェース743aに警報表示を行い、例えば、照明又は音声により警報し、センサ制御アセンブリ742aは、該信号を治療台制御装置70Cに転送し、線形軸71a及びロボットアーム72aを制御して移動を停止し、操作者が手動で操作して線形軸71a及びロボットアーム72aの移動を停止してもよい。
【0138】
第3ケース723b及び第4ケース724bの材料は、ガラス繊維樹脂複合材料であり、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は放射能が非常に低く、二次放射の発生を防止し、理解できるように、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料を用いてもよい。理解できるように、第3ケース及び第4ケースの材料をホウ素含有のガラス繊維複合材料に置き換えてもよく、すなわち、ロボットアーム保護カバー72bの最外層のケースは、中性子を吸収できる材料を用い、該アーム部に設置された駆動機構又は制御機構内の金属部材、電子機器などが中性子により照射された後に故障するか又は損傷されることを防止し、第1ケース及び第2ケースの材料は、限定されない。センサ741aのケースは、アルミニウム合金であり、従来の鋼材を使用して中性子により照射された後に半減期が長い放射性同位体、例えば、コバルト60を生成して、二次放射が発生することを回避し、理解できるように、アルミニウム合金は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料に置き換えられてもよい。理解できるように、センサ741aは、第1ケース721bと第3ケース723bとの間及び/又は第2ケース722bと第4ケース724bとの間に設置されてもよい。
【0139】
第1ケース721bと第2ケース722bとの間及び第3ケース723bと第4ケース724bとの間の固定接続の方式は、ねじ接続、溶接などであってもよく、接続部材は、アルミニウム合金であり、一定の強度を有し、かつアルミニウムが中性子により活性化されて生成された放射性同位体の半減期が短く、アルミニウム合金は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料に置き換えられてもよい。
【0140】
本実施例において、第3ケース723b及び第4ケース724bとセンサ741aは、移動範囲が大きいアーム部721a’に設置され、移動範囲が小さいアーム部721aに第1ケース721b及び第2ケース722bのみが設置される。理解できるように、ロボットアーム72aの全てのアーム部にいずれも第3ケース723b及び第4ケース724bとセンサ741aが設置されてもよく、駆動機構73aが設置されないアーム部にはロボットアーム保護カバー72bが設置されなくてもよく、この場合、アーム部は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料、例えば、アルミニウム合金で製造されてもよく、中性子遮蔽材料で製造されてもよい。
【0141】
理解できるように、治療台位置決め装置70Aは、線形軸を含まなくてもよく、この場合、遮蔽装置70Bもスライドレールカバー部材71bを含まず、準備室内に、照射室101、101’と同様な治療台20、治療台位置決め装置70A及び治療台位置決め装置の遮蔽装置70Bが設置されてもよい。
【0142】
理解できるように、他の警報、測定、監視装置などに対して放射線遮蔽装置を設置してもよい。
【0143】
システムの各装置の動作、治療過程における制御を実現するために、電源、通信及び制御ケーブルを設置し、かつ合理的に配置する必要がある。
図17に示すように、照射室101、制御室104及び加速器室102内に、ケーブルを通過させ支持するための電線管80Aが設置され、電線管80Aは、ケーブルの延伸方向に沿って延伸し、かつケーブルの延伸方向を囲んで周方向に少なくとも部分的に密閉され、ケーブルの延伸方向に垂直な横断面の形状が円形、多角形、V字形、横V字形、U字形、横U字形などであり、接続部材(例えば、ボルト)により壁又は床板又は天井板に固定される。本実施例において、電線管80Aは、天井板及び壁の曲がり角に沿って照射室101、制御室104及び加速器室102内に配置され、理解できるように、電線管80Aは、他の位置又は他の空間に設置されてもよく、電線管80Aのサイズは、収容されるケーブルの数に応じて設計することができる。加速器室102及びビーム転送室103に支持フレーム80Bが設置され、加速器112、ビーム転送部12、補助装置14などが多くの電源、通信、制御ケーブル及び液体(例えば、冷却媒体)又はガス(例えば、絶縁ガス)管路が有するため、支持フレーム80Bを設置することによりケーブル及び管路を載置し、かつガイドし、支持フレーム80Bは、ケーブル又は管路を支持する載置面Sを有し、載置面Sが地面に平行である方式で地面又は天井板又は他の物体に固定されるか、或いは、載置面Sが地面に垂直である方式で壁に固定され、必要に応じて他の空間内に支持フレーム80Bを設置してもよい。図面には、ビーム転送室103内のビーム転送部12に沿って設置された支持フレーム80Bのみが示され、支持フレーム80Bは、載置面Sが地面に平行である方式で地面に固定され、側板81bと、所定の間隔で側板81bに接続された複数の横板82bとで構成され、横板82bは、載置面Sを形成する。電線管80A及び支持フレーム80Bの材料は、アルミニウム合金であり、理解できるように、アルミニウム合金は、一定の強度を有し、かつ中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短く、例えば、90%(重量パーセント)以上がC、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなる他の材料に置き換えられてもよい。
【0144】
システムの正常な動作及び安全要件を満たすために、室内に管状部材90A(例えば、通風管、消防管などの、ガス及び液体が通過する管路)、及び棒状部材90B(様々な装置を固定的に取り付けることに必要な支持ロッド、スクリューなどの固定ロッド)がさらに設置され、これらは、一般的に鋼材で製造され、中性子により照射された後に半減期が長い放射性同位体、例えば、コバルト60を生成して、二次放射が発生し、管路及び固定ロッドに対する放射線損傷及び放射線汚染を低減するために、管状部材90A(以上に記載の冷却媒体、絶縁ガスの管路)又は棒状部材90Bは、中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い材料(例えば、90%(重量パーセント)以上がC、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなり、アルミニウム合金、プラスチック又はゴムなどを含む)で製造されてもよく、管状部材90A又は棒状部材90Bの外周に環状遮蔽装置91を設置してもよい。
図18に示すように、一実施例において、環状遮蔽装置91は、内部スリーブ911、外部スリーブ912及び内部スリーブ911と外部スリーブ912との間に設置された遮蔽材913を含み、内部スリーブ911及び外部スリーブ912は、PVCの管状部材であり、横断面の形状が具体的な必要に応じて設定されてもよく、理解できるように、内部スリーブ911及び外部スリーブ912は、中性子により照射された後の生成物が放射性を有さず、又は中性子により照射された後の生成物の放射能が非常に低く、又は中性子により照射された後に生成された放射性同位体の半減期が短い他の材料で製造されてもよく、例えば、内部スリーブ911及び外部スリーブ912の材料の90%(重量パーセント)以上がC、H、O、N、Si、Al、Mg、Li、B、Mn、Cu、Zn、S、Ca、Tiのうちの少なくとも1種の元素からなり、外部スリーブ912は、中性子減速体とされてもよく、減速後の中性子は、遮蔽材913により、よりよく吸収することができ、遮蔽材913は、中性子遮蔽材料、例えば、ホウ素含有の樹脂で構成される。一実施例において、液態のホウ素含有樹脂をPVCの内部スリーブ911と外部スリーブ912との間に充填し、ホウ素含有樹脂が凝固した後に環状遮蔽装置91の全体を形成し、次に環状遮蔽装置91のその中心軸線が所在する平面を2つの部分に分割して、両側からケーブル、管状部材90A又は棒状部材90Bを包み、そして、接着、結束などの方式で2つの部分を固定接続し、理解できるように、遮蔽材913は、他の中性子遮蔽材料を用いてもよく、他の形態で内部スリーブ911と外部スリーブ912との間に設置されてもよく、環状遮蔽装置91は、他の方式で管状部材90A又は棒状部材90Bの外周に設置されてもよく、例えば、管状部材90A又は棒状部材90Bの取り付け前に管状部材90A又は棒状部材90Bを環状遮蔽装置91の内部スリーブ911内に挿入する。理解できるように、ケーブルの外周に環状遮蔽装置91が設置されてもよく、ケーブルが中性子により照射された後に発生した二次放射をさらに低減する。
【0145】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】