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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】係留システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/50 20060101AFI20240130BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B63B21/50 Z
B63B21/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544689
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 SE2022050083
(87)【国際公開番号】W WO2022164371
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2100015-3
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523280035
【氏名又は名称】ショーロロ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】TJOLOLO AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ベルティル モーリッツ
(57)【要約】
【解決手段】フロート(11)付きの複数の安定化アーム(6)を有する浮遊プラットフォーム(13)を係留するための係留システム(17)であって、前記係留システムを深海に固定するよう複数のアンカー(27)およびアンカリングケーブル(25)を含むアンカリングシステム(16)を備える、係留システムである。前記係留システム(17)の中央部は、複数の係留要素(19)および位置決めワイヤ(26)を含む係留ユニット(18)を備え、各係留要素は、位置決めワイヤ(26)で隣り合う係留要素に連結され、またアンカー(27)に連結される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート(11)付きの複数の安定化アーム(6)を有する浮遊プラットフォーム(13)を係留するための係留システム(17)であり、前記係留システムを深海に固定するよう複数のアンカー(27)およびアンカリングケーブル(25)を含むアンカリングシステム(16)を備える、該係留システム(17)であって、
前記係留システム(17)の中央部が、複数の係留要素(19)および位置決めワイヤ(26)を含む係留ユニット(18)を備え、各係留要素は、位置決めワイヤ(26)で隣り合う係留要素に連結され、またアンカー(27)に連結されることを特徴とする、係留システム。
【請求項2】
請求項1に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、空気およびバラスト水のための共通のキャビティを有する浮遊容器を含む、係留システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、前記係留要素の長さの8~20%の範囲内における円筒状の断面がある中間セクション(29)を有する細長い容器を含む、係留システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、漏斗形状の上部(21)および円筒状の下部本体部(30)を含む、係留システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、前記係留システム(17)は係留ユニット(18)を形成する3つの係留要素(19)を備え、前記アンカーシステム(16)は3つのアンカー(27)を含む、係留システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、第1の係留要素(19a)は3つのアンカー(27)によって位置決めされ、第2の係留要素(19b)はアンカーケーブル(25a)および位置決めワイヤ(26b)によって位置決めされ、また第3の係留要素(19c)はアンカリングケーブル(25c)および位置決めワイヤ(26c)によって位置決めされる、係留システム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、3つの係留要素(19a~c)は、各角部に係留要素を有する三角形のパターンを形成し、各係留要素(19)は、位置決めワイヤ(26)によって前記隣り合う係留要素に位置決めされ、またアンカーケーブル(25)でアンカー(27)に位置決めされる、係留システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の係留システム(17)を多数備える係留設備であって、3つのアンカリングケーブル(25)を備える全ての係留システム(17)が、隣り合うアンカーを共に使用し、アンカー(27)の六角形のパターンにおいて隣り合って固定され、それによって、必要なアンカーの限度個数が、2つのプラットフォーム当たり1つのアンカーとなる傾向があることを特徴とする、係留設備。
【請求項9】
深海にアンカリングケーブル(25)によって係留される複数の係留要素(19)を備える浮遊風力発電プラットフォーム(6)のための係留システム(17)を準備する方法であって、3つの係留要素(19a~c)を含む係留ユニット(18)を準備するステップと、各係留要素を隣り合う係留要素に位置決めワイヤ(26)で連結するステップと、及び各係留ユニットをアンカー(27)で固定するステップとにより、係留システム(17)を準備することを特徴とする、方法。
【請求項10】
複数のフロート(11)を有する浮遊プラットフォーム(13)を請求項1~6に記載の係留システム(17)にドッキングする方法であって、フロート位置(B)にある前記プラットフォーム(13)を係留場所に輸送するステップと、前記係留システム(17)の前記係留要素(19)のそれぞれを、前記係留要素の浮力隔室(30)にバラスト水を充填することによって受容位置(A)まで沈めるステップと、前記浮遊プラットフォーム(13)の前記フロート(11)を前記係留要素(19)と対向するように位置決めするステップと、前記フロート(11)および前記係留要素(19)それぞれの中のバラスト水の量を調節することにより、前記係留要素(19)を上昇させ、また前記フロート(11)を下降させて、ドッキング手段(31,32)を相互連結させるステップと、によって係留システム(17)にドッキングすることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深海における浮遊物体の係留システムに関する。特に、本発明は、複数のアンカーを有するアンカリングシステムを備える定置型の係留システムに関する。より正確に言うと、係留システムは、海上で浮遊プラットフォームを係留するための手段を備える。
【背景技術】
【0002】
海上で浮遊プラットフォームを固定するための非常に多くのアンカリングシステムが知られている。ほとんどのアンカリングシステムは、浮遊プラットフォームを所望の位置および向きに固定するための複数のアンカーを備える。アンカーは、あらゆる風および気象条件において、複数の浮遊プラットフォームを所望の地理的位置に保つためのパターンで編成されることが多い。アンカーは、伝統的に掘削式アンカー、重力式アンカーであってもよいが、好ましくはサクションアンカーである。アンカーラインは、カテナリーラインまたはピンと張ったレッグラインを備えてもよい。
【0003】
所望の位置に保持される浮遊物体は、半潜水式浮遊風力発電プラントを備えてもよい。このようなプラントは、複数の浮力要素を含む構造プラットフォームを備える。プラットフォームは、単一または複数のロータタワーを搭載している。浮力要素は、プラットフォームを沈めるために水が充填される内部キャビティを備える。プラットフォームの運転状態において、プラットフォームは、浮力要素のみが水面を貫く高さまで沈められる。したがって、プラットフォームの運転状態において、海面上にはタワーおよび浮力要素の頂部のみが見える。風力発電のための多数の異なるタイプの半潜水可能なプラットフォームが提案されている。それらの大部分は、タワーの頂部に1つの単一タービンを有する。
【0004】
浮遊プラットフォームは風力タービンタワーを備えてもよく、その目的はタービンのロータシャフトを風に向けることである。第1のタイプのプラットフォームは、風見の原理を使用する。この回転可能なプラットフォームは一点で固定され、プラットフォームは風によりロータシャフトが風に面する方向に風と共に回転される。したがって、タワーは旋回可能な風力タービンを必要としない。第2のタイプのプラットフォームは、旋回ロータを有するタワーを備える安定した向きの浮遊構造を備える。このタイプのプラットフォームは、多くの場合、浮遊要素を有する複数のアームを備えてタワーを安定させる。このようなプラットフォームは、旋回可能なロータを風に向けることができるように、所望の位置および向きに安定して固定される必要がある。
【0005】
風力発電ユニットの位置決めの長期的な精度は重要である。ドラッグアンカーが使用される場合、精度は十分ではない。アンカリングラインは、アンカーが海底に十分なグリップを得るまで引っ張られる。そのため、海底の状況により、アンカー、ひいてはプラットフォームの位置が、所望の位置から数百メートル変化する可能性がある。したがって、位置の信頼性を確保するにはサクションアンカーを使用する必要がある。
【0006】
特許文献1(Siegfriedsen)により、複数の基礎要素を有する洋上風力発電所が以前から知られている。複数の基礎要素は、複数の寄木細工の六角形(parquetted hexagons)の角部を形成するように、複数の浮遊洋上風力タービンと共に配置される。六角形内の各浮遊洋上風力タービンは、六角形を形成する基礎要素に連結される。浮遊洋上風力タービンは、チェーン、ケーブルまたはチェーンおよびケーブルの組み合わせとして設計されたサギングコネクタを介して基礎要素に連結される。連結手段は、洋上風力タービンが、各六角形の中心の周りの、六角形の外接円の半径の最大10%の半径を有する円形領域内で漂流できる長さを有する。
【0007】
浮遊洋上風力タービンは、風見のように構築される。つまり、風力タービンプラットフォームは、1つの点のみで固定される。その結果、プラットフォームは風の向きをとる。既知の洋上風力発電所によれば、プラットフォームは、1つのブイ要素のみで固定される。つまり、各ブイ要素は、六角形のパターンにおける6本のアンカーラインで固定される。
【0008】
特許文献2(高田)により、洋上風力発電設備が以前から知られている。その目的は、深海領域においても容易に海上に設置することができ、厳しい気象および海洋条件下においても各浮体を互いに適度に離しておくことができる洋上風力発電設備を提供することである。洋上風力発電設備は、風力発電機器の相対的な位置関係が変化した場合に、発電能力が低下することを防止する。洋上風力発電設備は、風力発電機器をそれぞれ支持する、または、制御機器を支持する、複数の浮体を備える。浮体は、それぞれがチェーンの中間に中間シンカーを有するアンカリングチェーンの手段によって互いに連結される。最も外側の場所に位置する浮体は、それぞれがチェーンの中間に中間シンカーを有するチェーンの手段によって、アンカーに対しそれらの一端でさらに連結される。浮体およびアンカーは、平面視正三角形の複数の要素構造を連結するように配置される。
【0009】
浮遊プラットフォームの利点は、造船所で完全に製造できるため、設置コストを低減できることである。浮遊プラットフォームは、その後、所望の場所に輸送され、アンカーシステムに永久的に固定される。しかしながら、大規模な修理およびメンテナンスのために、プラットフォームを造船所に引き戻すことができることが望ましい。そのため、毎回アンカリングシステムを設置することは避けることが好ましい。前もって複数の浮遊プラットフォームを有する風力発電所を計画および展開する場合、最初に電気配線およびアンカリングシステムの基礎構造を確立することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2019024635号明細書
【特許文献2】特開2004-176626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な目的は、深海におけるアンカリングシステムへの浮遊物体の係留を改善する方法を探求することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、本発明により、独立請求項1の特徴によって特徴付けられる係留システム、独立請求項8の特徴によって特徴付けられる係留設備、独立請求項9の特徴によって特徴付けられる係留システムを準備する方法、または独立請求項10の特徴によって特徴付けられる係留システムに浮遊プラットフォームをドッキングする方法、によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明による係留システムは、アンカリングシステムと係留ユニットとを備える。この文脈における係留ユニットは、浮遊物体を係留するための手段であると理解される。本発明の一実施形態において、係留ユニットは、位置決めワイヤによって共に保持される複数の固定された係留要素を備え、浮遊プラットフォームを係留できる三角形のパターンを形成する。アンカーシステムは、複数の広く広がったアンカーおよび三角形のパターンのアンカーラインを備える。したがって、係留ユニットがアンカリングシステムによって永久的に固定されている間、係留された物体は、係留ユニットに取り付けられ、係留ユニットから取り外され得る。本発明によれば、係留システムは、プラットフォームを特定の位置および向きで定置係留できるが、メンテナンス輸送のために解放することもできる。既知の係留システムは、アンカーおよびアンカリングケーブルのみを備えるが、本発明による係留システムは、アンカリングシステムに加えて、係留ユニットを備える。アンカリングシステムは、プレストレストケーブルによって係留ユニットに連結された複数のアンカーを備える。
【0014】
一実施形態において、係留ユニットは、アンカリングシステムの中央に配置された複数の係留要素を備える。各係留要素は、キャビティを有する浮遊容器を備える。この場合、キャビティ内の空気および水の量を調節できる。キャビティ内に水を充填することによって、海での高さ位置を下げることができる。この実施形態において、各係留要素は、3本のケーブルによって所定の位置に保持される。一実施形態において、これらのケーブルのうちの2つは、隣り合う係留要素に連結される位置決めワイヤを備える。第3のケーブルは、海底のアンカーに連結されたアンカリングケーブルを備える。位置決めワイヤによって、係留要素は、互いに分けられた所定の位置に保持される。
【0015】
本発明の一実施形態において、係留要素は、小さな断面積を有する細長い容器を備える。この文脈における小さな断面は、要素の長さの約10分の1を意味する。一実施形態において、細長い容器は、底部に加えられたバラスト重りによって垂直に整列される。一実施形態において、係留要素の頂部は漏斗形状の容器を備え、底部は円筒状の容器を備える。容器は、水または空気が充填され得る連通キャビティとして作用する。容器内の空気および水の含有量のバランスをとることによって、浮力および係留要素の高さ位置を制御できる。つまり、係留要素は、海の潜水可能なブイとして認識され得る。
【0016】
要素の円筒状中間部の小さな断面積は、係留要素の動き、ひいては、荒れた海でのプラットフォームの動きを静める効果を有する。浮力による要素の動きは、ばねの振動として見ることができる。断面積、ひいては水中における投影跡部(imprint)はバネ定数を備える。投影跡部を狭くすると、バネ定数が減少し、海でのプラットフォームの上下揺れおよび横揺れの固有振動数が低下する。漏斗形状の頂部は、その長さに沿って増加する浮力効果をもたらし、これは、大波の中での要素の動きをさらに静める。一実施形態において、要素の円筒状底部は、より大きな断面積を有し、主に海での係留要素の浮力および高さレベルを制御するために使用される。
【0017】
一実施形態において、係留ユニットは、アンカリングシステムの中央に編成された潜水可能な係留要素を備える。各係留要素は、位置決めワイヤを有する別の係留要素、および、アンカリングケーブルを有するアンカー、に連結されている。一実施形態において、係留要素は、各角部に係留要素を有する三角形に編成される。各係留要素は、2つの隣り合う係留要素およびアンカリングシステムに連結される。したがって、アンカリングシステムもまた、三角形のパターンで編成される。各係留要素は、位置決めワイヤによって、アンカーに部分的に連結されると共に隣り合う各係留要素に部分的に連結される。したがって、各係留要素は、3本のケーブル、アンカリングケーブルおよび2本の位置決めワイヤで固定される。この配置により、3つのアンカー要素は、3つのアンカーによって所定の位置に保持された安定した3角形の角部を形成する。
【0018】
一実施形態において、各係留要素は、ドッキング可能なブイを備える。この実施形態において、係留要素は、浮遊プラットフォームのドッキング可能なフロートとドッキングされるドッキング可能な手段を備える。一実施形態において、ドッキング可能な手段は複数の横棒を備える。この複数の横棒にフロートのドッキング手段が引っ掛かることで全体を形成できる。つまり、係留要素およびフロートを互いにきつく嵌合させることにより単一で共通の浮遊部材が形成され、それによって全ての固定力が、係留された物体に伝達され得る。同時に、係留要素は、プラットフォームの安定性に寄与する。
【0019】
浮遊プラットフォームは、通常、そのフロートによって安定化される。したがって、フロートの浮力は、最悪の気象条件において必要とされる安定化力に基づいて決定されなければならない。一方、係留要素をフロートにドッキングすることにより、共にプラットフォームを安定させる新しい実体物(entity)が形成される。そのため、フロートの浮力は、輸送条件のみを考慮して決定されるだけでよい。また、係留要素は、海での位置を維持できるような寸法にするだけでよい。
【0020】
アンカリングシステムのアンカーは、係留された物体が全ての風および気象条件において所望の地理的位置および向きに保たれるように編成される。アンカーは、伝統的に掘削式アンカー、重力式アンカーであってもよいが、好ましくはサクションアンカーである。アンカーラインは、カテナリーライン、好ましくはピンと張ったレッグライン、または、両者の混合を備えてもよい。一実施形態において、アンカーラインは、アーム付き非金属繊維のプレストレストケーブルを備える。
【0021】
係留システムに係留される浮遊物体は、浮遊半潜水風力発電プラントを備えてもよい。このようなプラントは、それぞれが浮力要素を含む複数のアームを含む構造プラットフォームを備える。プラットフォームは、枢動ナセルおよび風力タービンを有するタワーを備えてもよい。浮力要素は、プラットフォームを沈めるために水が充填される内部キャビティを有する浮遊容器を含む。プラットフォームは、その運転状態において、浮力要素のみが水面を貫く高さまで沈められる。浮遊プラットフォームの好ましいデザインは、フロート形状であり外側の浮力要素を有する3つのアームを備える。連結ケーブルを各フロートに連結することで、フロートおよびアームをタワーの周囲に均等に広げておくことができる。
【0022】
プラットフォームのドッキング可能なフロートおよび係留システムの係留要素の両方は、小さな断面積を有する細長い浮遊容器を備えてもよい。海での高さ位置は、フロート内および係留要素内それぞれに水を充填または排出することによって調整される。キャビティ内の水の量は、容器内に空気を送り込むか、容器から水を汲み出すことによって制御される。一実施形態では、キャビティ内に空気が送り込まれて、浮力効果および海での高さ位置を制御する。係留要素の底部にある開口部または弁は、水がキャビティに入ることを可能にする。
【0023】
ドッキングプロセスは、フロートおよび係留要素の相対的な高さの移動によって達成される。一実施形態において、方法は、海中での係留要素の高さを下げ、フロートの高さを上げることを含む。その後、浮遊部体は、係留要素とフロートとが向かい合ってドッキングする位置になるように、係留要素の間で移動される。次に、フロートの高さが下がり、係留要素の高さがそれぞれ上がる。このようにして嵌合した後、フロートおよび係留要素は、海中でのあらゆる動きに抵抗できると共に、アンカーおよび浮遊プラットフォームの間ですべての力を伝達できる、共通で単一の浮遊ユニットを形成する。一実施形態において、ドッキング要素のいずれかは、ロック手段を備えてもよい。
【0024】
海に係留システムの大きなパークを建設するには、3つのアンカーを使用する1つの係留システムから始めてもよい。第2の係留システムは、第1の係留システムと隣り合って固定される。さらなる係留システムは、6つの係留システムを備える六角形のパターンで互いに隣り合って固定される。複数のアンカーが2つ以上の係留システムによって使用され得るので、六角形のパターン内の6つの係留システムは、7つのアンカーのみを必要とする。多数の係留システムを備える係留パークのさらなる拡張は、各プラットフォームに必要なアンカーの数を減らす。膨大な数のプラットフォームによる限度個数は、アンカーごとに2つの係留システムとなる傾向がある。全てのアンカリングケーブルは、プレストレスが加えられ、係留要素とアンカーとの間に連結されるので、電気サービス配線(electric service cabling)は、アンカーケーブルによって取り付けられ、保持されてもよい。本発明の一実施形態において、電気配線および電気サービスの基礎構造は、係留要素に設置され、直接差し込まれる。ドッキング手段は、電気サービス用の接触デバイスを備えてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、複数の係留システムの第2の配置が編成される。この係留システムの第2のセットは、既存のアンカリングシステムのセットを使用するために、元のセットの係留システムに対していくらか回転される。そのため、六角形に配置された係留システムごとに、新しい係留システムを既存の係留システムに固定できる。係留システムの第1および第2の配置の両方を有する完全に拡張された係留プラントの場合、限度個数は、アンカーごとに3つの係留システムとなる傾向がある。
【0026】
第1の態様において、その目的は、フロート付きの複数の安定化アームを有する浮遊プラットフォームを係留するための係留システムによって達成され、係留システムは、深海で係留システムを固定するよう複数のアンカーおよびアンカリングケーブルを含むアンカリングシステムを備え、係留システムの中央部は、複数の係留要素および位置決めワイヤを含む係留ユニットを備え、各係留要素は、位置決めワイヤで隣り合う係留システムに連結される、またアンカーに連結される。さらなる態様において、各係留要素は、バラスト水のための共通のキャビティを有する細長い浮遊容器を含む。各係留要素は、漏斗形状の上部、小さな断面積を有する円筒状の中間部および円筒状の底部を備える。
【0027】
第2の態様において、その目的は、深海にアンカリングケーブルによって固定される複数のブイを備える浮遊風力発電プラットフォームのための係留システムを準備するための方法によって達成され、該方法は、3つの係留要素を含む係留ユニットを準備するステップと、各係留ユニットをアンカーで固定するステップと、及び位置決めワイヤによって3つの係留要素を分かれた状態に保つことによって、3つの係留要素を三角形のパターンに位置決めするステップと、を備える。
【0028】
第3の態様において、その目的は、複数のフロートを有するフロートプラットフォームを、ドッキング手段を含む係留システムにドッキングする方法によって達成され、この方法は、フロート位置にあるプラットフォームを係留場所に輸送するステップと、係留システムの係留要素のそれぞれを、係留要素の浮力隔室内にバラスト水を充填することによって受容位置まで沈めるステップと、浮遊プラットフォームのフロートを係留要素と対向するように位置決めするステップと、フロート内および係留要素内それぞれのバラスト水の量を調節することにより、係留要素を上昇させ、またフロートを下降させて、ドッキング手段を相互連結させるステップと、を備える。
【0029】
本発明の他の特徴および利点が、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から、当業者に対してより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による係留システム、および、係留される浮遊プラットフォームの平面図である。
図2】複数の係留システムを備える係留設備の平面図である。
図3】浮遊プラットフォームを係留させる方法の平面図である。
図4】係留要素とドッキングする準備ができている浮遊プラットフォームの一部の断面図である
図5】フロートおよび係留要素のドッキング工程の3次元概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
アンカリング(固定)システム16および係留ユニット18を備える係留システム17が図1に示されている。係留ユニットは、アンカリングシステムによって永久的に固定される。係留ユニット18は、図示される実施形態において、三角形のパターンの角部として3つの係留要素19を備える。係留要素は、位置決めワイヤ26によって互いに連結され、互いに所望の間隔で保たれる。したがって、各係留要素は、位置決めワイヤを有する2つの隣り合う係留要素、および、アンカリングケーブル25を有するアンカー27(図示せず)によって固定される。そのため、係留ユニットは、各角部に係留要素を有する係留三角形を形成する。係留要素19は、水および空気の混合物が充填されるのに適する垂直に細長い浮遊容器を備える。その混合物の含有量を制御することによって、浮力効果および係留要素の高さ位置を制御できる。
【0032】
係留ユニット18によって受容される浮遊プラットフォーム13もまた、図1に示される。図示される実施形態において、浮遊プラットフォームは、3つのアーム6によって安定化されたタワー1を備える。各アームの外側端部は、細長い浮遊容器を備えるフロート11を含む。細長い容器は垂直に整列される。全てのフロートは、連結ワイヤ12で互いに連結され、アームをタワーの周りに均等に広げる。フロートは、水および空気の混合物が充填されて、所望の浮力効果を受け、海中でのその高さレベルを画定できる。
【0033】
浮遊プラットフォームを係留するとき、浮遊プラットフォームは、まず、例えばタグボートによって係留ユニット18内に輸送される。プラットフォームが到着すると、係留要素19は、それらの内部隔室に水を充填することにより海中に降下される。これにより、プラットフォームは、その輸送時の高さで、位置決めワイヤを越えて係留ユニットの三角形内に入ることができる。浮遊プラットフォームが係留三角形の内側に位置するとき、浮遊プラットフォームの各フロート11は、係留要素19と対向する。つまり、各フロートは、対向する係留要素に係留され得る。一実施形態において、係留は、ロープ、ケーブルなどによって達成される。一実施形態において、フロートおよび係留要素はドッキング手段が装備され、このドッキング手段によってこれら2つの実体物がドッキングして単一のユニットを形成する。
【0034】
アンカリングケーブル25によってアンカー27に固定される多数の係留システム17の設備が図2に示される。図示される実施形態から分かるように、単一の係留システムは、3つのアンカーを使用しなければならない。しかし、係留設備に含まれる係留システムが多ければ多いほど、必要とされるアンカーは少なくなる。膨大な数の係留システムである場合、限度個数は、2つの係留システムごとに1つのアンカーとなる傾向がある。本発明によれば、第2のセットの係留システムBは、第1のセットの係留システムAに追加されてもよい。係留システムの第2のセットは、第1のセットに対してわずかに回転されるが、既知のアンカーを使用してもよい。係留システムA+Bの第1および第2のセットの使用により、アンカーの限度個数は、3つのアンカリングシステムごとに1つのアンカーとなる傾向がある。
【0035】
図3に示す実施形態において、係留ユニット18はV字形状のパターンに配置された3つの係留要素を備える。係留方法は、第1のフロート11aが位置Aにおいて第1の係留要素19aに係留されることから始まる。その後、浮遊プラットフォームは、位置Bまで時計回りに回転され、それによって第2のフロート11bは第2の係留要素19bに係留され得る。第2のフロート11bが第2の係留要素19bに係留されている間、浮遊プラットフォームは、第3のフロート11cが、第3のフロートが係留される位置Dの第3の係留要素19cに到達するまで、位置Cに示されるように反時計回りに回転される。この方法により、浮遊プラットフォームは、一度に1つのフロートで係留され得る。係留システムの最終形状は、三角形のパターンに似ており、全てのアンカー力が浮遊プラットフォームに対してアームの方向に直接伝達される。
【0036】
本発明によれば、定置型係留システムには、図4に示すように、ドッキング手段が装備される。図示される実施形態は、フロート11を有する浮遊プラットフォーム13の一部、および、係留システムの係留要素19を示している。浮遊プラットフォームは、メインフロート5を有するタワー1、第1の細長い要素8、第2の細長い要素7およびフロート11を備える。図示される実施形態において、第1の細長い要素8はカテナリー要素を備え、第2の細長い要素7は支柱要素を備える。フロートは、漏斗状の本体部21、中央部22および共通のキャビティを共に形成する下部本体部23を備える。浮遊プラットフォームは、フロート11の内部キャビティおよびメインフロート5から水20を排出することにより輸送レベルまで上昇される。
【0037】
図示される実施形態において、フロートは、フックの形をしたドッキング手段31を備える。係留システムは、細い円筒状の中間区域29と、より大きな円筒状の下部本体部30とを有する複数の係留要素19を備える。係留要素は、アンカリングケーブル25および2つの位置決めワイヤ26によって所定の位置に保持される。ワイヤおよびケーブルの両方は、スパン24によって係留要素に取り付けられる。安定化のため、フロートおよび係留要素の両方は、底部にバラスト重り36を備えてもよい。図4に示されるように、係留要素はまた、外部電気ケーブル33を内部電気ケーブル34に接続するためのコンタクト手段を備えてもよい。
【0038】
図示される実施形態において、位置決めワイヤ26およびアンカーケーブル25は、実際の現場でかなり長いラインを備えることを示すために切断されている。アンカーケーブルは、海底の状況および深さに応じて数百メートル備えてもよい。好ましくは、サクションアンカーが使用される。位置決めワイヤは、100~200メートルの範囲内にあってもよい。係留要素のそれぞれは、構造的に連結されて共通の隔室を形成する3つのキャビティを備える。隔室内または隔室外に空気または水を送ることにより、係留要素の高さを海中で調整し、所定のフロート位置を維持できる。
【0039】
浮遊風力発電プラットフォームは軽量構造であるため、構造を非常に大きくできる。そのため、ロータの直径は200mであってもよい。第1のフロートを含むタワーの海面からの総高さは、130~150mであってもよい。アームの長さは、90~120mの範囲であってもよい。したがって、アームおよびタワーの比率は、ほぼ1になる。係留手段の長さは、25~35mの範囲であり、中間部の断面は2~5mであってもよい。本発明によれば、プラットフォームの輸送位置は、潜水位置(submerged position)よりも約30m高い。輸送中のプラットフォームの喫水は、9メートル未満であってもよい。
【0040】
本発明の範囲は、好ましいが、提示された実施形態によって限定されるべきではなく、当業者にとって明らかな実施形態をも含む。アンカーラインは、良好な引張特性を有する任意の種類の材料を備えてもよい。係留要素は、アンカーラインに予め応力を加えるための定置型手段または一時的手段を備えてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート(11)付きの複数の安定化アーム(6)を有する浮遊プラットフォーム(13)を係留するための係留システム(17)であり、
前記係留システムを深海に固定するよう複数のアンカー(27)およびアンカリングケーブル(25)を含むアンカリングシステム(16)を備える、該係留システム(17)であって、
前記係留システム(17)の中央部が、複数の係留要素(19)および位置決めワイヤ(26)を含む係留ユニット(18)を備え、
各係留要素は、位置決めワイヤ(26)で隣り合う係留要素に連結され、またアンカー(27)に連結されることを特徴とする、係留システム。
【請求項2】
請求項1に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、空気およびバラスト水のための共通のキャビティを有する細長い浮遊容器を含む、係留システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、円筒状の断面を有する中間部(22)を含む、係留システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、各係留要素(19)は、漏斗形状の上部(21)および円筒状の底部(23)を備える、係留システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、前記係留システム(17)は3つの係留要素(19)を備え、前記アンカーシステム(16)は3つのアンカー(27)を含む、係留システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、第1の係留要素(19a)は3つのアンカー(27)によって位置決めされ、第2の係留要素(19b)はアンカーケーブル(25a)および位置決めワイヤ(26b)によって位置決めされ、また第3の係留要素(19c)はアンカリングケーブル(25c)および位置決めワイヤ(26c)によって位置決めされる、係留システム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の係留システムにおいて、3つの係留要素(19a~c)は、各角部に係留要素を有する三角形のパターンを形成し、各係留要素(19)は、位置決めワイヤ(26)によって前記隣り合う係留要素に、またアンカー(27)に位置決めされる、係留システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の係留システム(17)を膨大な数備える係留設備であって、3つのアンカリングケーブル(25)を備える全ての係留システム(17)が、隣り合うアンカーを共に使用し、アンカー(27)の六角形のパターンにおいて隣り合って固定され、それによって、必要なアンカーの限度個数が、2つのプラットフォーム当たり1つのアンカーとなる傾向があることを特徴とする、係留設備。
【請求項9】
深海にアンカリングケーブル(25)によって係留される複数のブイ(19)を備える浮遊風力発電プラットフォーム(6)のための係留システム(17)を準備する方法であって、3つの係留要素(19a~c)を含む係留ユニット(18)を準備するステップと、各係留ユニットをアンカー(27)で固定するステップと、3つの係留要素を位置決めワイヤ(26)によって分かれた状態に保つことにより三角形のパターンに位置決めするステップとにより、係留システム(17)を準備することを特徴とする、方法。
【請求項10】
複数のフロート(11)を有する浮遊プラットフォーム(13)を請求項1~6に記載の係留システム(17)にドッキングする方法であって、フロート位置(B)にある前記プラットフォーム(13)を係留場所に輸送するステップと、前記係留システム(17)の前記係留要素(19)のそれぞれを、前記係留要素の浮力隔室(23)にバラスト水を充填することによって受容位置(A)まで浸漬させるステップと、前記浮遊プラットフォーム(13)の前記フロート(11)を前記係留要素(19)と対向するように位置決めするステップと、前記フロート(11)および前記係留要素(19)それぞれの中のバラスト水の量を調節することにより、前記係留要素(19)を上昇させ、また前記フロート(11)を下降させて、ドッキング手段(31,32)を相互連結させるステップと、によって係留システム(17)にドッキングすることを特徴とする、方法。
【国際調査報告】