IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイザー アイルランド ファーマシューティカルズの特許一覧

特表2024-505509CGRP阻害薬の医薬組成物およびそれらを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】CGRP阻害薬の医薬組成物およびそれらを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240130BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/36
A61P17/02
A61P3/10
A61P19/02
A61P21/00
A61P35/00
A61P17/00
A61P25/32
A61P31/18
A61P25/00
A61P7/00
A61P9/10
A61P31/04
A61P15/00
A61P17/06
A61P9/00
A61P25/08
A61P27/16
A61P3/04
A61P1/04
A61P1/16
A61P13/12
A61P21/04
A61P29/00 101
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/496
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/12
A61P31/22
A61P17/04
A61P11/00
A61P11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545756
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 US2022014476
(87)【国際公開番号】W WO2022165291
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,980
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308033504
【氏名又は名称】ファイザー アイルランド ファーマシューティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール コーリク
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エム. コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート クループ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシ クマール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD37E
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA59
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA06
4C084ZA08
4C084ZA15
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA68
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC35
4C084ZC39
4C084ZC41
4C084ZC55
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC35
4C086ZC39
4C086ZC41
4C086ZC55
(57)【要約】
それを必要とする対象において疼痛障害を処置するための医薬組成物であって、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む医薬組成物を提供する。それを必要とする対象において疼痛障害を処置する方法であって、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための医薬組成物であって、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記疼痛障害が急性片頭痛、慢性片頭痛、群発性頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記疼痛障害が慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発筋肉痛、がん性疼痛、慢性炎症性皮膚疼痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、職業性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚性神経障害、がん性神経障害、急性疼痛自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼疼痛、および歯痛から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記疼痛障害が、インスリン非依存性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱損傷、循環性ショック、敗血症、アルコール禁断症候群、オピエート禁断症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経期と関連するフラッシング、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、バラ色の皮膚、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎障害、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーングレン症候群、変形性関節症、骨関節炎性変性椎間板疾患、顎関節症、頸椎捻挫、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容できる可溶化剤を、前記治療活性な成分を可溶化するために有効な量でさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記可溶化剤が水、アルコール、またはそれらの組合せである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記可溶化剤が水である、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象内、またはその上における投与位置で、またはその付近で前記医薬組成物に対する望ましくない応答を緩和し得る受容剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記受容剤が、天然甘味剤、合成甘味剤、香味剤、香料化合物、矯味化合物、またはそれらの組合せを含む感覚受容増強剤である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
それを必要とする対象において、異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための装置であって、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む噴霧可能な液体組成物を含む貯蔵器、(b)鼻腔に挿入するように設計された噴霧デバイス、および(c)前記鼻腔に前記組成物の液滴を送達するように前記デバイスを操作するための手段を含む装置。
【請求項13】
前記疼痛障害が急性片頭痛、慢性片頭痛、群発性頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記疼痛障害が慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発筋肉痛、がん性疼痛、慢性炎症性皮膚疼痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、職業性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚性神経障害、がん性神経障害、急性疼痛自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼疼痛、および歯痛から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記疼痛障害が、インスリン非依存性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱損傷、循環性ショック、敗血症、アルコール禁断症候群、オピエート禁断症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経期と関連するフラッシング、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、バラ色の皮膚、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎障害、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーングレン症候群、変形性関節症、骨関節炎性変性椎間板疾患、顎関節症、頸椎捻挫、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が単回用量用装置、2回用量用装置、または多回用量用装置である、請求項12から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
それを必要とする対象において異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための方法であって、CGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、前記対象に鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項20】
前記CGRP阻害薬がCGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で少なくとも22.5%の疼痛消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象における単回用量としての20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で少なくとも23.1%の疼痛消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で、光過敏、音過敏、または悪心の最も煩わしい症状の少なくとも41.9%の消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で、光過敏、音過敏、または悪心の最も煩わしい症状の少なくとも42.5%の消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
10mgまたは20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、単回用量を使用して2時間で、疼痛消失と、光過敏、音過敏、または悪心を含む最も煩わしい症状の消失との多重主要評価項目において、プラセボよりも統計学的に優れている、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記対象における5mg、10mg、または20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が前記投与から2~48時間後に、持続的疼痛消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記対象における5mg、10mg、または20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が前記投与から2~24時間後に、持続的疼痛消失をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記対象における5mg、10mg、または20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が前記投与から2~24時間後に、持続的疼痛軽減をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記対象における5mgまたは10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が前記投与から2~48時間後に、持続的疼痛軽減をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記状態が、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発性頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される障害である、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記状態が、慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発筋肉痛、がん性疼痛、慢性炎症性皮膚疼痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、職業性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚性神経障害、がん性神経障害、急性疼痛自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼疼痛、および歯痛から選択される障害である、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記状態が、インスリン非依存性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱損傷、循環性ショック、敗血症、アルコール禁断症候群、オピエート禁断症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経期と関連するフラッシング、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、バラ色の皮膚、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎障害、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーングレン症候群、変形性関節症、骨関節炎性変性椎間板疾患、顎関節症、頸椎捻挫、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される障害である、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記皮膚疾患が再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性掻痒症、および尿毒症性掻痒症から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記状態が、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支反応亢進、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳、および毒性損傷から選択される障害である、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記毒性損傷が、塩素ガス損傷、マスタードガス損傷、アクロレイン損傷、煙害、オゾン損傷、戦争化学物質曝露、および工業化学物質曝露から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
それを必要とする対象において疼痛障害を処置または予防するためのキットであって、
(a)請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物;および
(b)前記医薬組成物を投与するための指示書
を含むキット。
【請求項38】
前記医薬組成物を投与するための装置をさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
薬物乱用頭痛を処置するための方法であって、治療有効量のCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、前記対象に鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項40】
前記CGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
外傷後頭痛を処置するための方法であって、治療有効量のCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、前記対象に鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項43】
前記CGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
脳震盪後症候群を処置するための方法であって、治療有効量のCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、前記対象に鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項46】
前記CGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
めまいを処置するための方法であって、治療有効量のCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、前記対象に鼻腔内投与することを含む方法。
【請求項49】
前記CGRP阻害薬が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記低分子CGRP受容体アンタゴニストが、ザベゲパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で少なくとも19.6%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後2時間で、光過敏、音過敏、または悪心の最も煩わしい症状の少なくとも39.0%の消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後15分で少なくとも14.2%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後15分で少なくとも18.2%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記対象における単回用量としての20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後15分で少なくとも14.7%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後30分で少なくとも26.6%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後30分で少なくとも29.9%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記対象における単回用量としての20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後30分で少なくとも26.6%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後60分で少なくとも47.0%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後60分で少なくとも46.0%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記対象における単回用量としての20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後60分で少なくとも49.8%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
前記対象における単回用量としての5mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後120分で少なくとも57.9%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
前記対象における単回用量としての10mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後120分で少なくとも60.6%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
前記対象における単回用量としての20mgでのザベゲパントの前記鼻腔内投与が、前記投与後120分で少なくとも61.2%の疼痛消失をもたらす、請求項50に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月1日出願の米国特許仮出願第63/143,980号の優先権、および米国特許法第119条の下にそこから生じる利益すべてを主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)アンタゴニストの鼻腔内医薬組成物およびそれらを送達する方法に関する。前記組成物および方法は、疼痛などのCGRP関連障害を処置するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は、悪心または嘔吐を随伴する中等度から重度の疼痛強度の典型的には片側性で拍動性の頭痛、および/または音に対する過敏性(音過敏)および光に対する過敏性(光過敏)を含む複数の症状を伴って4~72時間持続する再発性発作により特徴づけられる慢性で衰弱性の障害である。片頭痛には多くの場合に、典型的には閃光などの視覚障害を伴うが、身体の一部の麻痺または刺痛を伴うこともある前兆として公知の一過性の神経学的警告症状が先行する。片頭痛は、広く一般的でもあり無力化性でもある。Migraine Research Foundationは、片頭痛を世界で3番目に蔓延している疾病とランキングしており、Global Burden of Disease Study 2015は、片頭痛を全世界で7番目に多い身体障害の特異的原因とみなしている。Migraine Research Foundationによれば、米国において、およそ3600万人が片頭痛発作に苦しんでいる。多くの罹患者は1カ月あたり1回または2回、片頭痛発作を経験しているが、400万人超が、3カ月超にわたって1カ月あたり少なくとも15日、そのうち少なくとも8日が片頭痛である頭痛日を経験するものと定義される慢性片頭痛を有する。それ以外の人は、1カ月あたり15日未満の片頭痛日を経験することにより特徴づけられる反復性片頭痛を有する。反復性片頭痛を有する人は、時間が経つにつれて慢性片頭痛へと進行し得る。片頭痛発作は、4時間または3日間まで持続し得る。片頭痛発作に苦しむ個人の90%超は働くことができないか、または片頭痛発作の間は正常に働くことができず、多くがうつ病、不安および不眠症などの併存状態を経験している。また、片頭痛に苦しんでいる者は、随伴する悪心を有することが多く、発作中に食品または液体を摂取することを嫌悪する。
【0004】
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は37アミノ酸神経ペプチドであり、カルシトニン、アドレノメデュリンおよびアミリンを含むペプチドのファミリーに属する。ヒトでは、CGRPの2つの形態(α-CGRPおよびβ-CGRP)が存在し、同様の活性を有する。それらは、3つのアミノ酸が異なっており、示差的分布を示す。少なくとも2つのCGRP受容体サブタイプも、示差的活性を説明し得る。CGRP受容体は、疼痛シグナル伝達経路、頭蓋内動脈および肥満細胞内に位置しており、その活性化は、片頭痛病態生理において原因的役割を果たすと考えられる。例えば、調査および臨床研究により、CGRPの血清レベルが片頭痛発作中に上昇すること、静脈内CGRPの注入が片頭痛罹患者および非片頭痛罹患者において持続的疼痛をもたらすこと、ならびに抗片頭痛薬での処置がCGRP活性を正常化することが示されている。
【0005】
現在、臨床医は、片頭痛を急性処置するためにいくつかの薬理学的薬剤を使用している。2015にAmerican Headache Societyにより公開された研究は、片頭痛の急性処置のために有効と考えられる薬物は、次のクラスに該当すると結論付けた:トリプタン、エルゴタミン誘導体、非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)、オピオイドおよび組合せ薬物。片頭痛を急性処置するための現行の標準治療は、セロトニン5-HT1B/1D受容体アゴニストであるトリプタンの処方である。トリプタンは片頭痛を急性処置するために開発され、過去20年間にわたって承認されている。トリプタンの初期導入は、疑われている片頭痛の病態生理をより選択的に標的とする薬物へのシフトを意味した。トリプタンは、外来診療時に医療提供者により処方される抗片頭痛治療のほぼ80%を占めるが、不完全な効果または頭痛の再発などの問題が、重大な臨床上の限界であり続けている。実際に、トリプタン接種後2時間で、治験の患者のうちの約30%しか、疼痛から解放されていない。加えて、トリプタンは、5-HT1B媒介作用からの全身および脳血管の血管狭窄の可能性により、心臓血管疾患、脳血管疾患、またはいずれかについて重大な危険因子を有する患者では禁忌とされている。また、雑誌Headacheにおいて公開された2017年1月の研究によれば、米国内の推定260万人の片頭痛罹患者が、処置選択肢としてのトリプタンの可能性を限定する心臓血管事象、状態または手技を有する。したがって、既存の治療と比較して患者利益の増強をもたらす新規の片頭痛特異的薬物について、叶えられていない重大な医学的必要性が依然として存在する。
【0006】
片頭痛におけるCGRP関与の可能性は、例えば、Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.、New Haven、CTにより開発された高度な臨床用候補であるリメゲパント(BHV-3000)およびザベゲパント(BHV-3500)を含むいくつかの化合物の開発および治験のためのベースである。
【0007】
ザベゲパント(バゼゲパントとしても公知)は、次の式I:
【0008】
【化1】
を有する第三世代の高親和性で選択的、かつ構造的に独特な低分子CGRP受容体アンタゴニストである。
【0009】
ザベゲパントは、例えば、それらの全体が参照により本明細書に援用される2003年12月18日公開のWO03/104236、および2013年7月9日に発行された米国特許第8,481,546号に記載されている。
【0010】
ザベゲパントは高度に可溶性の分子であるが、その生物学的利用能の特徴により、この薬物を経口剤形で調製することは困難であり得る。したがって、種々の投与経路により、ザベゲパントおよび他のCGRP阻害薬の生物学的利用能を増強することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、ヒト末梢および中枢神経系の侵害受容経路に広く分布しており、その受容体は疼痛経路でも発現される。CGRPは片頭痛病態生理に関与しているが、非頭痛性疼痛におけるその役割はまったく明らかになっていない。それを必要とする患者において様々な疼痛障害を処置するための新たな医薬品が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、CGRP阻害薬を含む薬学的活性成分を含む医薬組成物の鼻腔内投与による、CGRP関連状態、例えば、片頭痛または非片頭痛関連障害の処置を対象とする。
【0013】
一実施形態では、それを必要とする対象において、異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための医薬組成物であって、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
別の実施形態では、それを必要とする対象において、異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための装置であって、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む噴霧可能な液体組成物を有する貯蔵器、(b)鼻腔に挿入するように設計された噴霧デバイス、および(c)前記鼻腔に前記組成物の液滴を送達するようにデバイスを操作するための手段を含む装置を提供する。
【0015】
別の実施形態では、それを必要とする対象において、異常なレベルのCGRPと関連する疼痛障害を処置または予防するための方法であって、CGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む方法を提供する。
【0016】
別の実施形態では、それを必要とする患者において疼痛障害を処置または予防するためのキットであって、(a)鼻腔内送達のための前記医薬組成物、および(b)前記医薬組成物を投与するための指示書を含むキットを提供する。前記キットは、前記医薬組成物を投与するための装置をさらに含んでもよい。
【0017】
これらの、および/または他の態様は、添付の図面と併せて、実施形態の次の説明から明らかになり、より容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】実施形態による組成物を鼻腔内投与するためのAptar Pharma Unidose Systemの図である。
図1B】実施形態による組成物を鼻腔内投与するためのAptar Pharma Unidose Systemの断面図である。
図2A】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図2B】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図2C】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図2D】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図2E】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図2F】日による、および実施形態による組成物での処置による血漿中濃度レベルを示す、平均血漿中濃度(1ミリリットルあたりのナノグラム、ng/mL) 対 基準時間(時、h)のグラフである。
図3】投与後2時間にわたる、ザベゲパントの鼻腔内投与後の患者における疼痛軽減を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次の詳細な説明は、本発明を実行する際に当業者を助けるために提供される。当業者は、本開示の意図または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態を変更および変化させることができる。別段に定義されていない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されていない。一般に使用される辞書において定義されているものなどの用語は、関連分野および本開示の文脈において、それらの意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明らかにそのように定義されていない限り、理想化されているか、または過度に正式な意味で解釈されるものではない。
【0020】
本出願において使用される場合、本明細書において別段に明確に提示されている場合を除いて、次の用語はそれぞれ、下に記述の意味を有することとする。追加の定義を、本出願を通じて記述する。用語が本明細書において具体的に定義されていない事例では、その用語には、本発明を説明する際のその使用に関連して、その用語を文脈の中で適用する当業者により、当技術分野において承認されている意味が与えられる。
【0021】
冠詞「a」および「an」は、文脈が別段に明白に示していない限り、1つまたは1つより多くの(すなわち、少なくとも1つ)の冠詞の文法的対象物を指す。例として、「an element」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0022】
「または」という用語は、「および/または」を意味する。本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」および/または「含むこと(comprising)」、または「含む(include)」および/または「含むこと(including)」という用語は、述べられた特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはこれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0023】
本明細書で使用される場合の「約」という用語は、当業者により決定される、特定の値または組成について許容される誤差範囲内の値または組成を指し、これは、一部では、どのように値または組成が測定または決定されるか、すなわち、測定系の限界に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の実務による1または1を超える標準偏差内を意味し得る。別法では、「約」は10%または20%までの範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mgの間の任意の数(10%について)または2.4mg~3.6mgの間の任意の数(20%について)を含み得る。さらに、特に生物系またはプロセスに関して、この用語は値の1桁までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本出願および特許請求の範囲において提示されるとき、別段に述べられていない限り、「約」の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲内であると仮定すべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合の「投与すること」という用語は、当業者に知られている様々な方法および送達系のいずれかを使用しての、対象への、治療薬を含む組成物の物理的導入を指す。投与することは、例えば、1回、複数回、および/または1つまたは複数の長期間にわたって行うこともでき、かつ治療上有効な用量または治療量以下の用量であってよい。
【0025】
本明細書で使用される場合の「AUC」(曲線下面積)という用語は、対象に吸収される、または暴露される薬物の総量を指す。一般に、AUCは、対象における薬物濃度の、濃度が無視できなくなるまでの経時的なプロットにおける数学的方法から得ることができる。「AUC」(曲線下面積)という用語は、規定の時間間隔での部分的なAUCも指し得る。
【0026】
本明細書で使用される場合の「AUC[0-t]」という用語は、時間0から最後の測定可能な濃度までの濃度時間曲線下面積を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合の「AUC[0-inf]」という用語は、時間0から無限大までの濃度時間曲線下面積を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合の「Cmax」という用語は、第1の用量の投与から第2の用量の投与の間の対象の血液、血清、既定の画分または試験領域における薬物の最大濃度を指す。Cmaxという用語は、規定された場合、用量正規化比も指し得る。
【0029】
本明細書で使用される場合の「と組み合わせて」という用語は、ある処置モダリティの、別の処置モダリティに加えての投与を指す。したがって、「と組み合わせて」は、対象へのある処置モダリティの、他の処置モダリティの投与前、その間、またはその後の投与を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合の「薬学的に許容できる塩」という用語は、患者の消化管の胃または胃腸液への化合物の溶解性を上昇させて化合物の溶解および生物学的利用能を促進することが示されている本明細書に記載の化合物またはプロドラッグの1種または複数の塩形態を指す。薬学的に許容できる塩には、必要な場合に、薬学的に許容できる無機または有機塩基および酸から誘導されるものが含まれる。好適な塩には、薬学分野において周知の多くの他の酸および塩基のなかでも、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩、およびアンモニウム塩から誘導されるものが含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合の「対象」および「患者」という用語は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」という用語には、これに限定されないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類などの脊椎動物が含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。「対象」および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合の薬剤(本明細書において時に「薬物」とも称される)の「有効量」、「治療有効量」、「治療有効投与量」および「治療有効用量」という用語は、単独で、または別の薬剤と組み合わせて使用される場合に、対象を疾患の開始から防御する、または疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度および期間の増加により証拠付けられる疾患退縮、もしくは疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防を促進する薬剤の任意の量を指す。薬剤の治療有効量は、治験中のヒト対象、ヒトにおける有効性を予期するための動物モデル系などにおいて当業者に公知の様々な方法を使用して、またはin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることにより評価することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合の「Tmax」という用語は、最大濃度(Cmax)が対象の血液、血清、既定の区画または検査領域において達成される、薬物投与後の時間または期間を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合の「BID」という用語は、1日2回投与を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合の「CV」という用語は、変動係数を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合の「GM」という用語は、相乗平均を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合の「Kel」という用語は、排泄速度定数を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合の「max」という用語は、「最大」を意味し、「min」という用語は、「最小」を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合の「QD」という用語は、1日1回投与を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合の「t1/2 el」という用語は、見掛け排出半減期を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合の「処置」という用語は、対象における状態または疾患の任意の処置を指し、(i)疾患に罹患しやすいが、まだ疾患を有するとは診断されていない対象において、疾患もしくは状態が発生することを予防すること;(ii)疾患もしくは状態を阻害すること、すなわち、その進展を停止すること;疾患もしくは状態を軽減すること、すなわち、状態の退縮を起こすこと;または(iii)疾患に起因する状態、すなわち、疾患の症状を寛解もしくは軽減することが含まれ得る。処置は、他の標準治療と組み合わせて、または単独で使用することができるであろう。対象の処置または「治療」には、症状、合併症もしくは状態、または疾患と関連する生化学的兆候の開始、進行、進展、重症度または再発の逆転、緩和、寛解、阻害、減速または予防を目的とした、対象で行われる任意の種類の介入もしくはプロセス、または対象への薬剤の投与も含まれる。
【0042】
CGRP関連疾患に関して、「処置」または「処置すること」は、有利か、または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有利か、または所望の臨床結果には、これに限定されないが、次のうちの1つまたは複数が含まれる:疾患または障害の治癒、重症度の軽減を含む主症状のいずれかの態様の改善、主症状、および他の関連症状の強度の緩和、再発の頻度の低下、症状に罹患している者の生活の質の向上、ならびに症状を処置するために必要とされる他の薬物の用量の減少。
【0043】
本明細書で使用される場合の「鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬」という用語は、鼻腔内投与後に1%またはそれ以上、2%またはそれ以上、3%またはそれ以上、4%またはそれ以上、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、15%またはそれ以上、20%またはそれ以上、25%またはそれ以上、30%またはそれ以上、35%またはそれ以上、40%またはそれ以上、45%またはそれ以上、50%またはそれ以上、55%またはそれ以上、60%またはそれ以上、65%またはそれ以上、70%またはそれ以上、75%またはそれ以上、80%またはそれ以上、85%またはそれ以上、90%またはそれ以上、または95%またはそれ以上の生物学的利用能を有するCGRP阻害薬を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合の「低分子」という用語は、1000g/molまたはそれ未満、950g/molまたはそれ未満、900g/molまたはそれ未満、850g/molまたはそれ未満、800g/molまたはそれ未満、750g/molまたはそれ未満、700g/molまたはそれ未満、650g/molまたはそれ未満、600g/molまたはそれ未満、550g/molまたはそれ未満、500g/molまたはそれ未満、450g/molまたはそれ未満、400g/molまたはそれ未満、350g/molまたはそれ未満、300g/molまたはそれ未満、250g/molまたはそれ未満、または200g/molまたはそれ未満の分子量を有する分子を指す。
【0045】
本発明は、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む鼻腔内投与のための組成物を包含する。本発明はさらに、前記組成物を鼻腔内投与することによりCGRPを調節するための、および異常なレベルのCGRPまたはCGRP受容体シグナル伝達と関連する医学的状態を伴う患者を処置するための方法を包含する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「CGRP阻害薬」という用語は、CGRPリガンドまたはCGRP受容体の阻害薬であり得る化学成分を指す。したがって、「CGRP阻害薬」という用語は、CGRP受容体阻害薬を包含する。CGRP阻害薬は、CGRP阻害薬またはCGRP受容体阻害薬であり得る。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は37アミノ酸神経ペプチドであり、カルシトニン、アドレノメデュリンおよびアミリンを含むペプチドのファミリーに属する。CGRPが片頭痛の病態生理に関与していることを示すかなりの証拠が収集されている。CGRP阻害薬が片頭痛を処置するために有効であることを証明するために、治験が実施された。
【0047】
CGRP阻害薬は、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合性断片、CGRP注入阻害タンパク質(infusion inhibitory protein)、CGRP生体中和薬、低分子CGRP受容体アンタゴニスト、低分子CGRP阻害薬、またはポリペプチドCGRP阻害薬であり得る。例えば、CGRP阻害薬は、低分子CGRP受容体アンタゴニストであり得る。
【0048】
鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬は、すべての薬学的に許容できる塩形態で組成物中に含まれてよい。薬学的に許容できる塩は、対イオンが化合物の生理学的活性または毒性に有意に寄与せず、したがって、薬理学的均等物として機能するものである。これらの塩は、市販の試薬を用いて一般的な有機技法により作製することができる。一部の陰イオン塩形態は、アセテート、アシストレート(acistrate)、ベシレート、ブロミド、クロリド、シトレート、フマレート、グルクロネート、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロヨージド、ヨージド、ラクテート、マレエート、メシレート、ニトレート、パモエート、ホスフェート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、トシレート、およびキシノホエート(xinofoate)を含む。一部の陽イオン塩形態は、アンモニウム、アルミニウム、ベンザチン、ビスマス、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛を含む。
【0049】
本発明は、CGRP阻害薬において生じる原子のすべての同位体を含むことが意図されている。同位体には、同じ原子番号だが、異なる質量数を有する原子が含まれる。一般例であって限定ではないが、水素の同位体にはジュウテリウムおよびトリチウムが含まれる。炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれる。本発明の同位体標識された化合物は一般に、当業者に公知の慣用の技術により、または本明細書に記載のものと類似のプロセスにより、別段に用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して調製することができる。そのような化合物は、例えば、生物学的活性を決定する際の標準および試薬として、様々な有望な用途を有し得る。安定同位体の場合には、そのような化合物は、生物学的、薬理学的、または薬物動態特性を好みに修飾する可能性を有し得る。
【0050】
治療活性な成分は、2種またはそれ以上の化合物を含んでよく、そのそれぞれが鼻腔内で生物学的に利用可能な医薬品活性成分(「API」)、例えば、抗片頭痛薬であってよい。
【0051】
医薬組成物を鼻腔内投与に適合させる。これは、組成物が治療活性な成分の鼻腔内送達に物理的に好適な形態であることを意味する。一実施形態では、組成物は噴霧可能な液体の形態である。他の実施形態では、組成物は、半固体形態、例えば、クリーム剤、ゲル剤または軟膏剤である。特定の理論に束縛されることはないが、鼻腔内投与された場合のCGRP阻害薬の吸収の大部分は鼻粘膜を介するものであると考えられる。
【0052】
一部の実施形態によれば、CGRP阻害薬は、少なくとも約1mg/mL、少なくとも約2mg/mL、少なくとも約3mg/mL、少なくとも約4mg/mL、少なくとも約5mg/mL、少なくとも約10mg/mL、少なくとも約15mg/mL、少なくとも約20mg/mL、少なくとも約25mg/mL、少なくとも約30mg/mL、少なくとも約35mg/mL、少なくとも約45mg/mL、少なくとも約50mg/mL、少なくとも約55mg/mL、少なくとも約60mg/mL、少なくとも約65mg/mL、少なくとも約70mg/mL、少なくとも約75mg/mL、少なくとも約80mg/mL、少なくとも約85mg/mL、少なくとも約90mg/mL、少なくとも約95mg/mL、少なくとも約100mg/mL、少なくとも約125mg/mL、少なくとも約150mg/mL、少なくとも約175mg/mL、または少なくとも約200mg/mLの濃度で組成物中に存在し得る。CGRP阻害薬の濃度は、上の値のいずれかの間の範囲であり得る。例えば、CGRP阻害薬は、約1~約200mg/mL、約2~約100mg/mL、約5~約100mg/mL、または約5~約50mg/mLの濃度で存在し得る。
【0053】
CGRP阻害薬は、1日あたり約1~1000mgの用量で投与することができる。例えば、CGRP阻害薬は、1日あたり約1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、750、または1000mgの用量で投与することができる。CGRP阻害薬の1日用量は、上の値のいずれかの間の範囲であり得る。CGRP阻害薬を含む組成物は、単回用量として投与することができる。
【0054】
CGRP阻害薬は、少なくとも1週間、必要とされる長さで投与することができる。例えば、CGRP阻害薬は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または12週間投与することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「単回用量として鼻腔内投与可能な組成物の量」という語句は、ヒトまたは非ヒト対象の片方または両方の鼻腔に適切に投与され得て、CGRP阻害薬の単回用量を得ることができる組成物の総体積を意味する。そのような量は実用的な体積であり;任意の既知のデバイスにより投与できないほど小さくはないが、用量のかなりの部分が鼻腔内に保持されないほど大きくはない。例えば、各鼻腔に1回の2つのアリコットでのヒト対象への投与が意図されている噴霧可能な製剤に関して、約0.05~約0.25mLの体積が、1用量あたり約0.1mL~約0.5mLの総量で各鼻腔に適切に投与され得る。鼻咽頭通路を介しての排出により組成物が部分的に失われるいずれの傾向も低下させるために、実用的な低い用量を投与することが一般に望ましい。したがって、特に好適な体積は典型的には、鼻腔あたり約0.05~約0.15mLである。しかしながら、所望の場合には、用量全体を一方の鼻腔に投与することができる。
【0056】
本明細書の開示から明らかであろうとおり、前記医薬組成物は、あらゆる哺乳類種の対象、特に、ヒト対象に投与するために有用である。
【0057】
前記組成物は可溶化剤を含み得る。可溶化剤は、CGRP阻害薬のための溶媒または溶媒系を含んでよく、この溶媒系は、それ自体、1種または複数の溶媒を含み、CGRP阻害薬が溶解する媒体の大部分を形成し得る。可溶化剤の性質、およびそれが1種または複数の溶媒を含むかどうかにかかわらず、CGRP阻害薬の本質的にすべてを可溶化するために十分な量の可溶化剤が存在する。可溶化剤は、CGRP阻害薬を可溶化するために必要な量で存在する場合に、薬学的に許容できなければならない。例えば、可溶化剤は、鼻腔を覆う組織に対して毒性であるべきでも、過剰な刺激を惹起すべきでもない。一実施形態では、溶媒は、水、アルコール、またはそれらの組合せであり得る。別の実施形態では、溶媒は水であってもよい。
【0058】
前記組成物は任意選択で、受容剤(receptivity agent)をさらに含む。本明細書における「受容剤」という用語は、対象に投与される医薬組成物に含まれる場合に、対象内、またはその上における投与位置で、またはその付近で組成物に対する望ましくない応答を緩和し得る薬剤を意味する。具体的には、投与位置が鼻腔内である場合、緩和され得るそのような望ましくない応答には、くしゃみ、過剰な鼻水または鼻組織の刺激などの不随意または反射応答、および/または不快な味または臭気などに対する認知応答が含まれ得る。認知応答は、組成物の使用を減らす、または終了する意識的または無意識的決定を含み得て、したがって、患者の服薬遵守に影響を及ぼし得る。受容剤は、1つまたは複数のそのような望ましくない応答を緩和し得る。
【0059】
一部の実施形態では、受容剤は感覚受容増強剤を含む。感覚受容増強剤の実例には、天然および/または合成甘味剤、香味剤、香料、矯味化合物、またはそれらの組合せが含まれる。
【0060】
一部の実施形態では、受容剤として含まれる感覚受容増強剤には、甘味剤が含まれる。例示的な甘味剤には、サッカリン、アスパルテーム、ネオテーム、シクラメート、グルコース、フルクトース、スクロース、キシリトール、タガトース、スクラロース、マルチトール、イソマルツロース、水素化イソマルツロース、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトデキストリン、ポリデキストロース、グリセリン、エリトリトール、マルトール、アセスルファム、アセスルファムカリウム、アリターム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオシド、タウマチン、糖、またはそれらの組合せが含まれる。
【0061】
一実施形態では、受容剤には、くしゃみを阻害し得る薬剤、すなわち、抗くしゃみ誘発剤が含まれる。
【0062】
医薬組成物は任意選択で、1種または複数の薬学的に許容できる成分、例えば、担体、防腐剤、希釈剤、安定剤、pH調節剤などとして有用な成分をさらに含む。実施形態によれば、組成物は少なくとも1種の防腐剤を含む。防腐剤は、抗微生物活性を有し得る、および/または抗酸化剤として役立ち得る。例示的な防腐剤には、これに限定されないが、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、またはその組合せが含まれる。
【0063】
前記組成物を水性媒体中で製剤化する場合、これは、1種または複数の張性調節剤を、例えば、組成物を実質的に等張性にする量で含んでよい。例えば、生理食塩水が、そのような組成物の基礎を形成し得る。
【0064】
CGRP阻害薬を鼻腔内投与するための装置も提供する。装置は、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む噴霧可能な液体組成物を有する貯蔵器、(b)鼻腔に挿入するように設計された噴霧デバイス、および(c)前記鼻腔に前記組成物の液滴を送達するようにデバイスを操作するための手段を含み得る。
【0065】
噴霧デバイスは、デバイスを鼻腔内に挿入し得る限り、組成物が貯蔵器から供給されるときに液体組成物の液滴を生成し得る任意のデバイスであってよい。一実施形態では、デバイスは、液体組成物が圧力下で通過するときに液体を液滴に分解するノズルまたは圧縮通路を含む。噴霧デバイスを操作するための当技術分野で公知の任意の手段、例えば、貯蔵器を絞る、もしくはプランジャーを押すことなどによる圧力の施与、または電気的に操作されるデバイスの場合には、スイッチの作動を用いることができる。
【0066】
装置により生産される液滴のサイズの範囲は、組成物の物理的特性、例えば、その粘度、噴霧デバイスの性質(例えば、ノズル装置のサイズ)および組成物を排出するためにデバイスを操作する手法に依存する。液滴は一般に、吸入可能なエアロゾルを形成するほど微細であるべきではないが、鼻粘膜に容易に接着し得ないほど粗くあるべきではない。
【0067】
任意選択で、装置は、組成物の計測量、例えば、約0.05~約0.25mL、より典型的には約0.05~約0.15mLの量を鼻腔に送達するように操作可能である。装置は任意選択で、異なる計測量を送達するように調節可能である。一部の実施形態では、装置には、AptarGroup,Inc.(Crystal Lake、Illinois、USA)の一部であるAptar Pharmaにより販売されているものなど、市販されている鼻噴霧デバイス、またはその変更形態が含まれる。装置は、単回用量用装置、2回用量用装置、または多回用量用装置であってもよい。
【0068】
CGRP阻害薬を対象に送達するための方法であって、CGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、対象に鼻腔内投与することを含む方法も提供する。
【0069】
それを必要とする対象において異常なレベルのCGRPと関連する状態を処置するための方法であって、治療有効量のCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む組成物を、対象に鼻腔内投与することを含む方法も提供する。
【0070】
一実施形態では、状態は、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発性頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される疾患または障害であり得る。
【0071】
別の実施形態では、状態は、慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、小線維神経障害性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性背部痛、慢性股関節痛、慢性手指痛、運動誘発筋肉痛、がん性疼痛、慢性炎症性皮膚疼痛、熱傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、薬物誘発性神経障害、職業性神経障害、リンパ腫性神経障害、骨髄腫性神経障害、多巣性運動神経障害、慢性特発性感覚性神経障害、がん性神経障害、急性疼痛自律神経障害、圧迫性神経障害、血管炎性/虚血性神経障害、側頭骨顎関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、眼疼痛、および歯痛から選択される疾患または障害であってよい。
【0072】
一例では、状態は薬物乱用頭痛(MOH)であってよく、状態を有する対象は、疼痛のための処置を受けていてよく、その際、疼痛のための処置には、急性疼痛薬および慢性疼痛薬から選択される医薬が含まれ得る。例えば、疼痛のための処置には、トリプタン、麦角アルカロイド、鎮痛薬およびオピオイドから選択される医薬が含まれる。トリプタンは、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、ドニトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、アビトリプタン、およびゾルミトリプタンから選択され得る。麦角アルカロイドは、クラビン、リゼルグ酸アミドおよびエルゴペプチンから選択され得る。麦角アルカロイドは、エルゴノビン、メチルエルゴノビン、メチセルギド、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、メシル酸エルゴロイドおよびリゼルグ酸ジエチルアミド、またはその組合せからも選択され得る。
【0073】
MOHは、1種または複数の疼痛薬の長期使用から生じることもある。対象は、片頭痛、群発性頭痛、または緊張型頭痛から選択される原発性頭痛障害を有し得る。対象は現在、処置を受けていてもよいし、または原発性頭痛障害のための処置を受けたことがあってもよい。
【0074】
疼痛のための処置には、アスピリン、ジクロフェナク;ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、メロキシカム、ルミラコキシブ、またはそれらの組合せから選択される医薬が含まれ得る。
【0075】
MOHは、ケタミン、エスケタミン、アルフェンタニル、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ドロナビノール、エスタゾラム、エゾピクロン(ezopiclone)、フェンタニール、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ロラゼパム、メトバルビタール、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テムパゼパム(tempazepam)、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロン、およびゾルピデムから選択される医薬での処置から生じることもある。
【0076】
MOHは、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ドロナビノール、エスタゾラム、エゾピクロン、フェンタニール、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ロラゼパム、メトバルビタール、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テムパゼパム、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロン、およびゾルピデムから選択される医薬の長期使用から生じることもある。
【0077】
MOHは、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、メクロフェナメート、イソメテプテン、インドメタシン;コデイン、モルヒネ、ヒドロコドン、アセチルジヒドロコデイン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベリン、フェンタニール、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、トラマドール、プロクロルペラジン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、ピロキシカム、JTE-522、L-745,337、NS388、デラコキシブ、バルデコキシブ、イウミラコキシブ(iumiracoxib)、エトリコキシブ、パレコキシブ、4-(4-シクロヘキシル-2-メチルオキサゾール-5-イル)-2フルオロベンゼンスルホンアミド,(2-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-2シクロペンテン-l-オン、N-[2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル]メタンスルホンアミド、2-(3,4ジフルオロフェニル)-4-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-3(2H)ピリダジノン、2-[(2,4-ジクロロ-6-メチルフェニル)アミノ]-5-エチル-ベンゼン酢酸、(3Z)3-[(4-クロロフェニル)[4-(メチルスルホニル)フェニル]メチレン]ジヒドロ-2(3H)-フラノン、(S)-6,8-ジクロロ-2-(トリフルオロメチル)-2H-l-ベンゾピラン-3-カルボン酸、アモバルビタール、ブタルビタール、シクロバルビタール、ペントバルビタール、アロバルビタール、メチルフェノバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、ビニルビタール、ベラパミル、シルチアゼム(ciltiazem)、ニフェジピン、リドカイン、テトラカイン、プリロカイン、ブピバカイン(bupivicaine)、メピバカイン、エチドカイン、プロカイン、ベンゾカイン、フェヘルジン(phehelzine)、イソカルボキサジド、ジクロラールフェナゾン、ニモジピン、メトクロプラミド、カプサイシン受容体アゴニスト、カプトプリル、チオスピロン、ステロイド、カフェイン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、ジアゼパム、ロラゼパム、クロルプロマジン、メトトリメプラジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、ベンズキナミド、次サリチル酸ビスマス、ブクリジン、シンナリジン、シクリジン、ジフェニドール、ドラセトロン、ドンペリドン、ドロナビノール、ドロペリドール、ハロペリドール、メトクロプラミド、ナビロン、チエチルペラジン、トリメトベンズアミド、およびエジオピタント(eziopitant)、メクリジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン グラニセトロン ドラセトロン、ヒドロドラセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、シランセトロン、シサプリド、レンザプリドメトクロプラミド、ガラノラクトン、フェンシクリジン、ケタミン、デキストロメトルファン、およびその異性体、薬学的に許容できる塩、エステル、コンジュゲート、またはプロドラッグから選択される医薬の長期使用から生じることもある。
【0078】
別の例では、状態は、外傷後頭痛(PTH)頭痛であってよく、その状態を有する対象は、PTHを外傷事象から1、2、3、4、5、6または7日後に経験していてよい。外傷事象が、震盪または意識喪失をもたらしていてもよい。対象は、眩暈、不眠症、不十分な集中力、記憶の問題、光過敏、音過敏、もしくは倦怠、またはそれらの組合せに苦しんでいてよい。
【0079】
別の実施形態では、状態は、インスリン非依存性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱損傷、循環性ショック、敗血症、アルコール禁断症候群、オピエート禁断症候群、モルヒネ耐性、男性および女性におけるホットフラッシュ、閉経期と関連するフラッシング、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、バラ色の皮膚(skin rosaceousness)、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、神経線維腫症、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎障害、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーングレン症候群、変形性関節症、骨関節炎性変性椎間板疾患、顎関節症、頸椎捻挫、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される疾患または障害であってよい。皮膚疾患は、再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性掻痒症、および尿毒症性掻痒症から選択され得る。
【0080】
別の実施形態では、状態は、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支反応亢進、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳、および毒性損傷から選択される疾患または障害であり得る。毒性損傷は、塩素ガス損傷、マスタードガス損傷、アクロレイン損傷、煙害、オゾン損傷、戦争化学物質曝露(warfare chemical exposure)、および工業化学物質曝露から選択され得る。
【0081】
別の実施形態では、患者において異常なレベルのCGRPと関連する状態を処置するためのキットであって、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害薬を含む治療活性な成分を含む上の医薬組成物、および(b)前記医薬組成物を投与するための指示書を含むキットを提供する。前記キットは、前記医薬組成物を投与するための装置をさらに含んでもよい。
【0082】
一実施形態では、本発明は、低分子CGRP受容体アンタゴニストとして(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド(BHV-3500、ザベゲパント、または式Iを有する化合物)を含む鼻腔内投与のための組成物を包含する。
【0083】
【化2】
【0084】
ザベゲパントは、別の名前「バゼゲパント」でも公知であり、「ザベゲパント」および「バゼゲパント」の両方が、上の式Iを有する同じ分子を指す。
【0085】
ザベゲパントの合成方法を次に説明する。
【0086】
合成方法
略語は一般に、当技術分野で使用される慣習に従う。本明細書および実施例において使用される化学略語は次のとおりに定義される:「NaHMDS」はナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミド;「MeOH」はメタノール;「NBS」はN-ブロモスクシンイミド;「Ar」はアリール;「TFA」はトリフルオロ酢酸;「LAH」は水素化アルミニウムリチウム;「BOC」、「DMSO」はジメチルスルホキシド;「h」は時間;「rt」は室温または保持時間(文脈が指定する);「min」は分;「EtOAc」は酢酸エチル;「THF」はテトラヒドロフラン;「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸;「EtO」はジエチルエーテル;「DMAP」は4-ジメチルアミノピリジン;「DCE」は1,2-ジクロロエタン;「ACN」はアセトニトリル;「DME」は1,2-ジメトキシエタン;「HOBt」は1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;「DIEA」はジイソプロピルエチルアミン、「Nf」はCF(CFSO-;および「TMOF」はトリメチルオルトホルメートである。
【0087】
本明細書で使用される場合の略語は、次のとおりに定義される:「1x」は1倍、「2x」は2倍、「3x」は3倍、「℃」は摂氏温度、「eq」は当量または均等物、「g」はグラム、「mg」はミリグラム、「L」はリットル、「mL」または「ml」はミリリットル、「μL」はマイクロリットル、「N」は規定、「M」はモル、「mmol」はミリモル、「min」は分、「h」は時間、「rt」は室温、「RT」は保持時間、「atm」は雰囲気、「psi」はポンド毎平方インチ、「conc.」は濃、「sat」または「sat’d」は飽和、「MW」は分子量、「mp」は融点、「ee」は鏡像異性体過剰率、「MS」または「Mass Spec」は質量分析法、「ESI」はエレクトロスプレーイオン化質量分析、「HR」は高分解能、「HRMS」は高分解能質量分析法、「LCMS」は液体クロマトグラフィー質量分析法、「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィー、「RP HPLC」は逆相HPLC、「TLC」または「tlc」は薄層クロマトグラフィー、「NMR」は核磁気共鳴分光法、「1H」はプロトン、「δ」はデルタ、「s」は一重線、「d」は二重線、「t」は三重線、「q」は四重線、「m」は多重線、「br」はブロード、「Hz」はヘルツであり、「α」、「β」、「R」、「S」、「E」、および「Z」は、当業者には熟知されている立体化学表示である。
【0088】
化合物Iは、スキーム1に従って調製することができる。この合成は、14の化学的ステップであり、高度に収束的であり、3つの大きな断片を最後の3つのステップにおいてカップリングする。したがって、合成は、大きな断片A(スキーム2)およびB(スキーム3)の調製で開始される。
【0089】
【化3】
【0090】
断片Aの合成を、N-Boc-4-ピペリドンと、トリメチルホスホノアセテートから生成したイリドとのホーナー-エモンズ反応から開始して、tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレートを優れた収率で得る(スキーム2)。炭素上のパラジウムにより媒介される接触水素化が不飽和二重結合を還元する。tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレートをLDAで処理して、エノラートを生成し、これは、2-ニトロベンズアルデヒドで捕捉すると、ニトロアルコールをもたらす。酢酸中でニトロ基を鉄で還元し、続いて、ジオキサン中で塩化水素で処理すると、断片Aの合成が完了する。
【0091】
【化4】
【0092】
インダゾールアミノ酸Bの合成を、一塩化ヨウ素の作用による2,6-ジメチルアニリンのヨウ素化で開始する(スキーム3)。この中間体を一時的に取り除けておいた。N-CBZ-L-セリンメチルエステルをワンポットのメタンスルホニル化/除去反応に掛けて、N-CBZ-デヒドロアラニンメチルエステルを得た。ヨウ化物およびデヒドロアラニンが得られたら、それらを、酢酸パラジウム(II)を使用してヘックカップリングで効率的にカップリングさせて、生成物を収率65%で得た。
【0093】
この時点で、(-)-1,2-ビス((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン(シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレートおよび水素(60psi)を利用する触媒不斉水素化を使用して、キラル中心を導入して、キラルアミノ酸を約96%で得る。次いで、インダゾール環を、亜硝酸イソアミルの作用により形成する。得られたインダゾールは高度に結晶性である。アセトン/ヘキサンからの1回の再結晶化により、インダゾールアミノ酸が優れた純度で、改善された99.8%eeで得られる。水素化条件下でCBZ保護基を除去すると、断片Bの調製が完了する。
【0094】
インダゾールアミノ酸Bは、ラセミのアミノ酸またはケト酸の酵素的分割を使用して調製することもできる(Hanson,Ronald L.;Davis,Brian L.;Goldberg,Steven L.;Johnston,Robert M.;Parker,William L.;Tully,Thomas P.;Montana,Michael A.;Patel,Ramesh N.Process Research and Development、Bristol-Myers Squibb、New Brunswick、NJ、USA. Organic Process Research & Development(2008)、12(6)、1119~1129.)。
【0095】
【化5】
【0096】
炭酸N,N’-ジスクシンイミジルを使用して、断片AおよびBを効率的にカップリングさせて、尿素部分を収率78%で導入する(スキーム4)。メチルエステルを水酸化リチウムでけん化して、ほぼ定量的収量のカルボン酸を得る。酸と1-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジンとをTBTU(登録商標)媒介カップリングさせると、化合物Iの合成が完了する。フラッシュクロマトグラフィーにより、生成物が非結晶性粉末として得られ、これをアセトンから結晶化させると、化合物Iを微細な白色の結晶性粉末として得ることができる。
【0097】
【化6】
【0098】
tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレート。鉱油中の水素化ナトリウム(60%、7.92g、198.02ミリモル)をヘキサンで洗浄し、次いで、ジメチルホルムアミド(220mL)に懸濁した。混合物を0℃に冷却した。トリメチルホスホノアセテート(29.0mL、189.82ミリモル)を、撹拌されている反応混合物に滴下添加した。0℃での20分後に、ジメチルホルムアミド(80mL)中のN-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリドン(30.41g、152.62ミリモル)の溶液を混合物に滴下添加した。反応物を室温で3時間撹拌し、次いで、ジエチルエーテル(650mL)で希釈した。混合物水で1回洗浄し、水層をジエチルエーテルで1回抽出した。合わせた有機層を水で4回洗浄し、水相を廃棄した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮乾固した。標題化合物を白色の固体として収率92%で得た。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 5.68 (s, 1 H), 3.66 (s, 3 H), 3.40-3.51
(m, 4 H), 2.90 (t, J = 5.49, 2 H), 2.25 (t, J = 5.49, 2 H), 1.44 (s, 9 H).
【0099】
【化7】
【0100】
tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート。1:1の酢酸エチル/メタノールの混合物(220mL)中のtert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレート(35.71g、140ミリモル)の溶液を炭素上の50%湿潤10%パラジウム(3.3g)で慎重に処理した。反応容器に水素ガス55psiを装入し、混合物をParr装置上で室温で16時間振盪した。次いで、反応混合物を濾過して、触媒を除去し、濾液を真空中で濃縮した。標題化合物が透明な無色の油状物として収率97%で得られた。1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 4.04 (d, J = 10.25, 2 H), 3.64 (s,
3 H), 2.68 (t, J = 12.44, 2 H), 2.21 (d, J = 6.95, 2 H), 1.98-1.77 (m, 1 H),
1.64 (d, J = 13.54, 2 H), 1.41 (s, 9 H), 1.25-0.99 (m, 2 H).
【0101】
【化8】
【0102】
4-[2-ヒドロキシ-1-メトキシカルボニル-2-(2-ニトロ-フェニル)-エチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル。N,N-ジイソプロピルアミン(4.40mL、31.3ミリモル)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した。混合物を-78℃に冷却した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、12.4mL、31ミリモル)を撹拌溶液に滴下添加した。-78℃で30分間撹拌した後に、テトラヒドロフラン(15mL)中のtert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(6.65g、25.8ミリモル)の溶液を混合物に滴下添加した。撹拌を-78℃で1時間継続した。次いで、テトラヒドロフラン(20mL)中の2-ニトロベンズアルデヒド(3.90g、25.8ミリモル)の溶液を混合物に滴下添加し、次いで、撹拌を-78℃でさらに2.5時間継続した。反応を冷塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、次いで、水で希釈した。混合物を酢酸エチルで2回抽出し、水相を廃棄した。物質を乾燥し(硫酸マグネシウム)、濾過し、濃縮乾固した。シリカゲルクロマトグラフィーにより、所望の生成物を収率94%で薄黄色の泡として得た。MS m/e(M-C4H8+H)+ = 353.1.
【0103】
【化9】
【0104】
4-(4-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-3-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル。窒素入口、温度計、および機械撹拌機を備えた三ツ口フラスコ内で、4-[2-ヒドロキシ-1-メトキシカルボニル-2-(2-ニトロ-フェニル)-エチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(9.93g、24.3ミリモル)を酢酸(1.75モル、100mL)に溶解した。撹拌しながら鉄粉(8.90g、159ミリモル)を溶液に添加した。撹拌混合物を30分間、80℃にゆっくり加熱し、次いで、室温に冷却した。次いで、これを酢酸エチルで希釈し、セライトのパッドを通して濾過した。固体を20%メタノール/酢酸エチルで、次いで、メタノールで洗浄した。濾液を濃縮し、残渣を酢酸エチルと炭酸水素ナトリウム水溶液との間で分配した。層を分離した。得られた水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせた。混合物を水で2回洗浄し、水相を廃棄した。物質を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、濃縮乾固した。シリカゲルクロマトグラフィーにより、標題化合物を薄黄色の泡状物として収率77%で得た。MS m/e(M-H)- = 345.1.
【0105】
【化10】
【0106】
3-(ピペリジン-4-イル)キノリン-2(1H)ヒドロクロリド。酢酸エチル(70mL)中の4-(4-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-3-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(5.60g、16.2ミリモル)の撹拌溶液をジオキサン中のHCl(4N、40ミリモル、10mL)で処理した。混合物を室温で45分間撹拌した。次いで、さらなるジオキサン中のHCl(4N、120ミリモル、30mL)を添加し、撹拌を室温で16時間継続した。得られた固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄した。次いで、これを5%水-イソプロパノール(100mL)に懸濁し、混合物を還流に加温し、20分間撹拌した。混合物を室温に冷却し、室温で16時間撹拌した。固体を濾取し、イソプロパノールで洗浄し、高真空下で乾燥した。標題化合物が白色の固体として収率75%で得られた。1H-NMR (DMSO-d6) δ 11.85 (s, 1 H), 9.02 (bs, 1 H), 8.88 (bs,
1 H), 7.70 (t, J = 3.81 Hz, 2 H), 7.53 - 7.30 (d, J = 8.24 Hz, 1 H), 7.17 (t, J
= 7.48 Hz, 2 H), 3.36 (d, J = 12.51 Hz, 2 H), 3.10 - 2.94 (m, 3 H), 2.01 (d, J
= 13.43 Hz, 2 H), 1.87 - 1.73 (m, 2 H); MS m/e (M+H)+ = 229.0.
【0107】
【化11】
【0108】
4-ヨード-2,6-ジメチルベンゼンアミンヒドロクロリド。メタノール(700mL)中の炭酸水素ナトリウム(126g、1.5モル)および2,6-ジメチルアニリン(61.5mL、500ミリモル)の懸濁液に、一塩化ヨウ素(ジクロロメタン中1.0M、550mL、550ミリモル)を室温で1時間かけて添加した。添加が完了した後に、撹拌を3時間継続した。反応を濾過して過剰の炭酸水素ナトリウムを除去し、溶媒を真空中で除去した。残渣をジエチルエーテル(1.5L)に再溶解し、塩酸(エーテル中2M、375mL、750ミリモル)で処理した。得られた懸濁液を冷凍庫(-15℃)内で終夜貯蔵した。固体を濾過し、無色になるまでジエチルエーテルで洗浄して、126.5g(89%)を灰緑色の粉末として得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.33 (s, 6 H), 7.48 (s, 2 H), 9.05 (bs, 3
H); 13C-NMR (DMSO-d6) δ 17.4, 91.5, 133.1, 131.2, 136.9.
【0109】
【化12】
【0110】
メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート。機械攪拌機を備えた火炎乾燥した三つ口丸底フラスコに、(S)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-ヒドロキシプロパノエート(129g、509ミリモル)、無水ジクロロメタン(2L)、および塩化メタンスルホニル(49.3mL、636ミリモル)を添加した。混合物を-15℃に冷却し、反応混合物の温度が0℃を超えないようにトリエチルアミン(213mL、1527ミリモル)で滴下処理した。最初の当量のトリエチルアミンの添加は発熱性であった。トリエチルアミンの添加後に、混合物を0℃で30分間撹拌した。冷却浴を外し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応をメタノール(21mL)の添加によりクエンチした。洗浄液がpH5になるまで混合物を0.5%硫酸水素カリウム水溶液、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:9の酢酸エチル/ヘキサン)により、111g(92%)を粘稠性で無色の油状物として得、これは放置すると結晶化した。1H-NMR (DMSO-d6) δ 3.71 (s, 3 H), 5.10 (s, 2 H), 5.60 (s, 1
H), 5.76 (s, 1 H), 7.39-7.35 (m, 5 H), 8.96 (s, 1 H); 13C-NMR
(DMSO-d6) δ 52.3,
65.9, 127.8, 128.1, 128.3, 128.8, 133.3, 136.3, 153.5, 163.7.
【0111】
【化13】
【0112】
(Z)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート。2L丸底フラスコに、4-ヨード-2,6-ジメチルベンゼンアミン塩酸塩(55g、194ミリモル)、メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート(59.2g、252ミリモル)、塩化テトラブチルアンモニウム(59.2g、213ミリモル)、酢酸パラジウム(II)(4.34g、19.4ミリモル)、およびテトラヒドロフラン(1.2L、窒素流により30分間、脱気)を装入した。混合物を撹拌して、懸濁液を形成し、次いで、窒素流で30分間、脱気した。トリエチルアミン(110mL、789ミリモル)を添加し、得られた混合物を3時間、加熱還流した。室温に冷却した後に、反応混合物を、セライトのパッドを通して濾過し、テトラヒドロフラン(2×100mL)で洗浄し、濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水(3×)およびブライン(2×)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:9の酢酸エチル/ジクロロメタンを使用)により、黄褐色の固体を得た。固体を温メタノール(210mL)および水(100mL)から再結晶化させた。混合物を室温で終夜、次いで、0℃で2時間、最後に-15℃で2時間保持した。得られた固体を濾過し、氷冷1:1のメタノール/水で洗浄し、高真空下で終夜乾燥して、44.7g(65%)を明黄褐色の固体として得たが、これはZ/E異性体の混合物(73:27)であった。1H-NMR (DMSO-d6) δ, 2.05 (s, 6 H), 3.61 (s, 0.8 H), 3.68 (s,
2.2 H), 5.00 (s, 0.54 H), 5.13 (s, 1.46 H), 5.24 (s, 2 H), 7.40-7.21 (m, 8 H),
8.51 (s, 0.27 H), 8.79 (s, 0.73 H); 13C-NMR (DMSO-d6) δ 17.8, 51.7, 65.3, 119.4, 120.0, 120.3,
127.3, 127.7, 128.3, 130.9, 135.8, 137.2, 146.9, 154.7, 166.0.
【0113】
【化14】
【0114】
(R)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)プロパノエート。火炎乾燥した2L Parr水素化ボトルに、(Z)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート(84.5g、239ミリモル)、ジクロロメタン(300mL)、およびメタノール(300mL)を装入した。ボトルを撹拌して、薄茶色の懸濁液を形成した。窒素流を30分間用いて、混合物を脱気した。これに、(-)-1,2-ビス((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)-ベゼン(シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート([(2R,5R)-Et-DuPhosRh]BF)(2.11g、3.20ミリモル)を急いで添加した。ボトルを直ちに、Parr水素化装置に取り付けた。5サイクルの水素(60psi)および真空の後に、ボトルを65psiに加圧し、懸濁液を室温で16時間撹拌した。反応物は均一になった。反応混合物を濃縮し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:9酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、82.9g(98%)を得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.04 (s, 6 H), 2.65 (dd, J = 13.4, 9.8 Hz,
1H), 2.82 (dd, J = 13.7, 5.2 Hz, 1 H), 3.62 (s, 3 H), 4.15-4.10 (m, 1H), 4.41
(s, 2 H), 5.00 (s, 2 H), 6.68 (s, 2 H), 7.37-7.28 (m, 5 H), 7.70 (d, J = 7.9
Hz, 1 H); 13C-NMR (DMSO-d6) δ 17.7, 35.9, 51.7, 56.1, 65.3, 120.4,
124.0, 127.5, 127.7, 128.2, 128.3, 136.9, 142.6, 155.9, 172.5.
【0115】
【化15】
【0116】
(R)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート。(R)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)プロパノエート(50.0g、140ミリモル)を、火炎乾燥した5L三ツ口丸底フラスコに秤量し、続いて、トルエン(2.4L)および氷酢酸(120mL、2.1モル)を添加した。混合物を機械的に撹拌して、透明な溶液を形成し、次いで、酢酸カリウム(103g、1.05モル)を添加した。得られた白色の懸濁液に、亜硝酸イソアミル(20.7mL、154ミリモル)を室温で滴下添加し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム(1L)を添加し、続いて、固体炭酸水素ナトリウムを慎重に添加して、酢酸を中和した。混合物を、ジクロロメタン(2L)およびブライン(1.5L)の混合物で抽出した。分離の後に、水層をジクロロメタン(500mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を除去して、黄褐色の固体を得、これをヘキサン(2L)およびトルエン(150mL)で洗浄した。固体をアセトン(260mL)およびヘキサン(700mL)から再結晶化させた。やや濁った混合物をゆっくり室温に、次いで、1.5時間0℃に、最後に1.5時間-15℃に冷却した。得られた固体を濾過し、氷冷アセトン/ヘキサン(1:1、200mL)で洗浄して、39.1g(収率76%)を得た。分析用HPLCは、98%超のUV純度を示した。鏡像異性体過剰率(ee)は99.8%であると決定された(条件:Chiralpak ADカラム、4.6×250mm、10μm;A=エタノール、B=0.05%ジエチルアミン/ヘプタン;55分間、1.0mL/分で85%B。Rでの保持時間は44.6分であり、Sでは28.8分であった)。1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.48 (s, 3 H), 2.93 (dd, J = 13.4, 10.7
Hz, 1H), 3.10 (dd, J = 13.7, 4.9 Hz, 1H), 3.63 (s, 3H), 4.32-4.27 (m, 1 H),
4.97 (s, 2 H), 7.03 (s, 1 H), 7.24-7.22 (m, 2 H), 7.29 -7.27 (m, 3 H), 7.41 (s,
1 H), 7.83 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.99 (s, 1H), 13.1 (s, 1 H); 13C-NMR
(DMSO-d6) δ 16.7,
36.5, 51.8, 56.0, 65.3, 117.6, 119.6, 122.7, 127.2, 127.4, 127.6, 128.2, 129.3,
133.4, 136.8, 139.2, 155.9, 172.4. 質量分析: 368.16 (MH)+.
【0117】
【化16】
【0118】
(R)-メチル2-アミノ-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート。Parr水素化ボトルに、(R)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート(11.0g、29.9ミリモル)およびメタノール(75mL)を装入した。懸濁液を窒素でパージし、パラジウム(炭素上10%、700mg)で処理した。ボトルを水素(15psi)下で終夜振盪した。混合物を、セライトのパッドを通して濾過して、触媒を除去した。溶離液を濃縮して、7.7g(定量)を油状物として得、これをさらに精製せずに使用した。1H-NMR (CD3OD) δ 2.54 (s, 3 H), 2.98 (dd, J = 13.5, 7.0 Hz,
1 H), 3.09 (dd, J = 13.5, 5.9 Hz, 1 H), 3.68 (s, 3 H), 3.75 (dd, J = 7.0, 6.2
Hz, 1 H), 7.01 (s, 1 H), 7.39 (s, 1 H), 7.98 (s, 1 H). 質量分析: 232.34 (M-H)-.
【0119】
【化17】
【0120】
(R)-メチル3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパノエート。ジメチルホルムアミド(50mL)中の(R)-メチル2-アミノ-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエートヒドロクロリド(7.26g、27.0ミリモル)の溶液に室温で、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(7.60g、29.7ミリモル)を、続いて、トリエチルアミン(11.29mL、81ミリモル)を添加した。得られた混合物を30分間撹拌し、3-(ピペリジン-4-イル)キノリン-2(1H)-オン(6.77g、29.9ミリモル)で少しずつ処理した。反応物を24時間撹拌した。混合物を濃縮し、酢酸エチルに溶解し、水、ブライン、および0.5N HCl(2×)で順に洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、20:1の酢酸エチル/メタノール)により精製して、11.9g(78%)を得た。1H-NMR (CD3OD) δ 13.0 (s, 1 H), 11.8 (s, 1 H), 7.98 (s, 1
H), 7.63 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.57 (s, 1 H), 7.45 - 7.41 (m, 2 H), 7.27
(d, J = 8.2Hz, 1 H), 7.16 (t, J = 7.9 Hz, 1 H), 7.03 (s, 1 H), 6.85 (d, J = 7.9
Hz, 1 H), 4.31 - 4.26 (m, 1 H), 4.10 - 4.08 (m, 2 H), 3.60 (s, 3 H), 3.07 - 3.01
(m, 2 H), 2.93 - 2.88 (m, 1 H), 2.77 - 2.67 (m, 2 H), 2.48 (s, 3 H), 1.78 -
1.72 (m, 2 H), 1.34 - 1.26 (m, 2 H). 質量分析: 488.52 (MH)+.
【0121】
【化18】
【0122】
(R)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパン酸。テトラヒドロフラン(50mL)およびメタノール(10mL)中の(R)-メチル3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパノエート(5.50g、11.3ミリモル)の溶液を0℃に冷却した。これに、水(20mL)中の水酸化リチウム一水和物(0.95g、22.6ミリモル)の冷溶液(0℃)を15分かけて滴下添加した。反応物を室温でさらに3時間撹拌した。混合物を濃縮して、有機溶媒を除去した。得られた残渣を最小量の水に溶解し、0℃に冷却し、pH2が達成されるまで、冷1N HCl(0℃)で処理した。得られた固体を濾取し、冷水およびエーテルで洗浄し、次いで、高真空下で終夜乾燥して、5.0g(94%)を白色の固体として得た。1H-NMR (DMSO-d6) δ 13.05 (bs, 1 H), 11.77 (s, 1 H), 7.98 (s,
1 H), 7.62 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.55 (s, 1 H), 7.44 (d, J = 8.2Hz, 1 H), 7.42
(s, 1 H), 7.27 (d, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.16 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.05 (s, 1 H),
6.65 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 4.27 - 4.22 (m, 1 H), 4.10 - 4.07 (m, 2 H), 3.12 -
3.07 (m, 1 H), 3.03 - 2.99 (m, 1 H), 2.93 - 2.88 (m, 1 H), 2.77 - 2.66 (m, 2
H), 2.47 (s, 3 H), 1.77 - 1.74 (m, 2 H), 1.34 - 1.27 (m, 2 H). 質量分析: 474.30 (MH)+.
【0123】
【化19】
【0124】
(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド(I)。フラスコに、(R)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパン酸(2.9g、6.11ミリモル)、トリエチルアミン(3.00mL、21.5ミリモル)、1-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン(1.23g、6.72ミリモル)、およびジメチルホルムアミド(10mL)を装入した。得られた溶液を2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(2.26g、7.03ミリモル)で少しずつ処理した。反応物を室温で終夜撹拌した。混合物を真空下で濃縮して、ジメチルホルムアミドを除去した。粗生成物をジクロロメタン中7%メタノールに溶解し、2%の水酸化アンモニウム水溶液を含有するジクロロメタン中7%メタノールを溶離液として使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。純粋な画分を収集し、溶媒を真空下で除去した。所望の生成物を温アセトンから結晶化させて、式Iを有する化合物を収率77%で得た。分析用HPLCは230nmで99.0%UV純度を示した。鏡像異性体過剰率(ee)は99.9%超であると決定された(条件:Chiralpak ADカラム、4.6×250mm、10μm;溶離液:70%(0.05%ジエチルアミン)/ヘプタン/30%エタノール;1.0mL/分で45分間。保持時間は、Rで18.7分、Sで28.1分であった)。1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 13.01 (s, 1 H), 11.76 (s, 1 H), 7.96
(s, 1 H), 7.62 (d, J = 7.10 Hz, 1 H), 7.60 (s, 1 H), 7.42 (m, 1 H), 7.36 (s, 1
H), 7.26 (d, J = 8.25 Hz, 1 H), 7.14 (m, 1 H), 7.00 (s, 1 H), 6.69 (d, J = 8.25
Hz, 1 H), 4.78 (q, J = 7.79 Hz, 1 H), 4.14 (d, J = 12.37 Hz, 2 H), 3.54 (dd, J
= 9.16, 4.58 Hz, 1 H), 3.24 (m, 1 H), 3.11 (m, 1 H), 2.97 (m, 1 H), 2.89 (m, 2
H), 2.69 (m, 4 H), 2.32 (m, 1 H), 2.21 (m, 1 H), 2.07 (m, 4 H), 1.95 (t, J =
8.25 Hz, 1 H), 1.87 (m, J = 11.28, 11.28, 3.55, 3.44 Hz, 1 H), 1.76 (t, J =
12.03 Hz, 2 H), 1.68 (t, J = 11.11 Hz, 2 H), 1.53 (t, J = 8.25 Hz, 1 H), 1.32
(m, 4 H), 1.16 (m, 2 H); 13C-NMR (DMSO-d6) δ 16.80, 27.30, 30.51, 30.51, 30.67, 35.50,
38.04, 41.74, 44.00, 44.16, 45.35, 45.78, 48.14, 48.39, 51.45, 54.76, 54.76,
60.61, 114.53, 117.79, 119.29, 119.34, 121.57, 122.78, 127.46, 127.79, 129.29,
129.79, 133.31, 133.72, 136.98, 137.41, 139.12, 156.50, 161.50, 170.42.
正確な質量分析:m/z639.3770、[MH]、Δ=-0.2ppm。旋光性:589nmで-27.36°、濃度=メタノール中4.71mg/mL。
【0125】
明細および剤形
ザベゲパント(BHV-3500)原薬の一塩酸塩形態の物理的および化学的特性を表1に提示する。
【0126】
【表1】
【0127】
研究において使用される製剤を表2に提示する。
【0128】
【表2】
【0129】
ザベゲパントの鼻腔内投与
この薬物製品は、pH6.0で、50mMコハク酸溶液中に1mg/mL~200mg/mLで配合されたBHV-3500を含み、1.25%(w/w)デキストロースを含有する(防腐剤非含有)。製造は、必要とされる注射用水(WFI)USPの一部に添加剤を可溶化するステップと、水酸化ナトリウムまたは塩酸でpHを6.0±0.2に調節するステップとを含む。バッチをWFIで目標体積にし、バイオバーデンのために試料採取し、0.22μmフィルターを通して濾過して、バイオバーデンを減少させる。
【0130】
次いで、濾過溶液を1型ガラスバイアルに充填し(125μL)、100μLの薬物製品を送達するようにゴム製ストッパーで密封する。次いで、密封されたバイアルをAptar Pharma UDS(Unidose System)デバイスに取り付け(図2)、次いで、適切な二次包装に入れる。デバイスおよび二次包装の両方に、片面または両面で、研究番号、製品名、濃度、貯蔵条件、製造者ならびにFDAが要求する、調査用途および子供によるアクセスの制限についての注意書きを含む情報をラベル付けする。商品については、各BHV-3500製品を、ピールオフリッドを備えた単一ブリスター内にさらに包装し、それを次いで、市販のために他の三次包装に包装することとなる(例えば、紙箱)。図2Aは、Aptar Pharma UDS装置を断面図(図2B)で、すべての構成部品の位置と共に示している。BHV-3500経鼻溶液は、室温貯蔵を示す20℃~25℃(68°F~77°F)で貯蔵されるべきである。提供される二次包装内で、光から保護されている場合は、15℃~30℃までの逸脱は許容される。
【0131】
BHV-3500は、直ちに使用可能な単位用量の使い捨て鼻噴霧薬デバイス配合剤である。この配合剤のデバイスの構成部品は、ゴムストッパー(ブラッククロロブチルストッパー、シリコーン処理済、West Pharmaceutical Servicesが供給)(すなわち、一次包装の構成部品)を備えていて、アクチュエータサブアセンブリ(鋼製カニューレを備えたポリプロピレン成形構成部品のサブアセンブリ、Aptar Pharmaが供給)を取り付けられている透明ガラスバイアル(単位用量、透明、USP1型ガラスバイアル、Nipro GlassまたはOmpiのいずれかが供給)と、バイアルホルダー(ポリプロピレン成形構成部品、Aptar Pharmaが供給)(すなわち、二次包装の構成部品)とを含む。
【0132】
BHV-3500鼻噴霧デバイスは、次のサブアセンブリおよびサブコンポーネント:
アクチュエータASM(サブアセンブリ)であって、
・ アクチュエータ(組立材料は、Aptar Pharmaが供給する白色ポリプロピレン)
・ 噴霧ピン(Aptar Pharmaが供給する自然色ポリプロピレン)
・ カニューレ(Aptar Pharmaが供給する自然色ステンレス鋼)
からなるアクチュエータASM(サブアセンブリ)と、
● バイアルホルダー(Aptar Pharmaが供給する白色ポリプロピレン)と、
● ストッパーを備えた薬物充填バイアル
(・ ガラスバイアルは、次の2つの供給元:
・ Nipro Glass、Germany AG
・ Nuova Ompi
により製造および供給され、
供給者からのバイアル用の組立材料は両方とも、USP I型透明ガラスである。供給者からのバイアルは両方とも、USP 660:ガラス容器;USP 211:ヒ素;およびUSP 1660:ガラス容器の内面耐久性評価において設定されている要件に適合している。)と、
● ゴムストッパー(West Pharmaceutical Services,Incが製造および供給。組立材料はクロロブチルゴム(天然ゴムラテックスは使用しない)であり、色は黒色である。このストッパーは、USP 381「注射剤用のエラストマー製クロージャ」に記載の生理化学的試験に適合している)と
から構成される。
【0133】
アクチュエータサブアセンブリはAptar Pharmaから、仮組立されたままで受け取られる。サブアセンブリおよびコンポーネントは両方とも、Renaissance(BHV-3500製品の製造者)が受け取り、すべての性能要件が満たされているという保証を与える供給元の適合証明書ならびに外観、アイデンティティおよび寸法検査に及ぶ受入コンポーネント検査に基づきリリースされた。
【0134】
臨床薬理学:単一漸増用量研究
BHV3500-101は、完了した第1相、単一施設、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、連続SAD試験である。この試験は、11までのコホートから構成される。各コホートにおいて、対象は、単回用量のザベゲパントまたはプラセボのいずれかを3対1の比で、合計8対象で投与されるように無作為に割り当てられた。研究の主目標は、健康な対象における0.1mg~40mgの範囲の単回漸増用量のIN投与後のザベゲパントの安全性および耐容性を評価することであった。二次目標は、単回用量後のザベゲパントのPKプロファイルを特徴づけること;40mg未満の場合にはザベゲパントの最大耐量(MTD)を同定すること;ならびにECGパラメーター(すなわち、QTc、PR間隔、QRS群、心拍数[HR]、およびT波形)に対するザベゲパントの作用を記載することであった。
【0135】
BHV3500-101は、化合物でのその後の臨床研究を支持するための安全性、耐容性、およびPK情報を集めるためにザベゲパントで行われた第1の臨床研究であった。単一の噴霧剤100μLを送達する使い捨てデバイスであるAptar Pharma UDSを使用して、ザベゲパントを投与した。ザベゲパント0.1mgおよび0.3mgを投与されるすべての対象、さらに、ザベゲパント1mgコホートからの対象はPK分析から除外されたが、それというのも、これらの対象は、測定されたすべての時点で検出可能な血漿中濃度(定量化の下限未満[LLOQ])を有さなかったためであった。総じて、41人の対象がPK分析に含まれた。PK記述統計のまとめを表10に提示し、結果の概要を下にまとめる:
・ 5mg~20mgの単回IN用量としてのザベゲパントの投与は、非臨床モデルから有効性を有すると予期された治療域内の全身曝露をもたらした。
・ 吸収速度および範囲は、低および中程度用量群(ザベゲパント1mg、3mg、5mg、および10mg)と比較して、20mg用量群でより高かった。最大用量群(ザベゲパント40mg[2×20mg])の吸収速度および範囲は、ザベゲパント20mg(1×20mg)用量群よりも低かった。
・ ザベゲパントは急速に吸収され、ピークザベゲパント濃度は単回IN用量(ザベゲパント10mg)後0.54時間で観察され、中央Tmaxはすべての用量で0.54~0.96時間、および5mg~20mgで0.54~0.77時間の範囲であった。
・ ザベゲパントの中央t1/2はすべての用量で1.6~4.7時間、および5mg~20mgで2.5~4.4時間の範囲であった。
・ ザベゲパントでの平均残留面積は、1mg(31.66%)を除いてすべての用量で20%未満であったが、これは、ザベゲパントのPKプロファイルを特徴づけるために96時間の試料採取期間が十分であったことを示した。これは、80%を超える平均AUC[0-t] 対 AUC[0-inf]の比に相当する。
【0136】
単回漸増用量研究の結果を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
臨床薬理学:複数漸増用量研究
2つの択一的投与アームを用いる第1相、単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、連続複数漸増用量(MAD)研究を行った。ザベゲパント(およびプラセボ)を、単一の噴霧剤100μLを送達する使い捨てデバイスであるAptar Pharma UDSを使用して投与した。研究のMAD部分は4つのコホートからなり、3つのコホートでは20mgの最大用量が最高14日間、1日1回投与され、第4のコホートでは20mgが最高8日間、1日2回投与された。
【0139】
4つのMADコホートに加えて、2つの択一的投与コホートが存在し、それぞれ、1日投与からなった。第1の択一的投与コホートは、30分の投与間隔での2回の20mg連続投与の作用を評価した(鼻腔交互で噴霧剤20mg[200mg/mLで100μL])。第2の択一的投与コホートは、鼻をかんで5分の投与間隔での2回の20mg連続投与の作用を評価した(鼻腔交互で噴霧剤20mg[200mg/mLで100μL])。
【0140】
PKデータをコホート1~4の対象から収集した。コホート1~4におけるザベゲパントを投与された36人の対象すべてがPK分析に含まれた。PK記述統計の概要を表4に提示し、結果を下にまとめる:
・ ザベゲパントの単回用量IN投与の後に(1日目)、Cmaxの相乗平均は、5、10および20mg用量レベルでそれぞれ11.37、16.31および34.71ng/mLである。AUC0-24の相乗平均は、それぞれ24.95、29.61および80.09ng・h/mLである。
・ ザベゲパントの複数用量IN投与の後に(14日目)、Cmaxの相乗平均は、5、10および20mg用量レベルでそれぞれ7.58、12.98および40.93ng/mLである。AUCtauの相乗平均は、それぞれ20.66、32.85および90.98ng・h/mLである。
・ Tmaxは、投与された用量には依存せずに、IN投与からほぼ30分後に生じた。
・ 平均排出半減期は3.69から4.93時間の間の範囲であり、用量と共に増大する傾向があった。
・ ザベゲパントの尿濃度はすべて、コホート1~3における試料すべてで定量下限未満であった。
【0141】
研究された用量レベルでは、ザベゲパントの蓄積は観察されなかったか、軽微であった(CmaxおよびAUC0-24での14日目 対 1日目の比は2倍未満であり、0.67から1.18の間の範囲であった)。
【0142】
複数漸増用量研究の結果を表4および5a~5cに示す。
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
血漿中濃度データは図2Aから2Fに図示されている。
【0148】
BHV-3500の有効性および安全性の評価
プラセボに対する鼻腔内ザベゲパント5、10および20mgの有効性および安全性を第2/3相、無作為化、用量範囲探索、プラセボ対照、ピボタル治験(BHV3500-201、または研究201)において評価したが、その際、患者1,673人が片頭痛の急性処置を受けた。
【0149】
研究201では、層別CMH検定mITT対象を使用して、単回用量として投与されたザベゲパント5、10、および20mgは、投与後15分の早さで疼痛軽減を示した(表6、図3)。
【0150】
【表8】
【0151】
研究201においても、単回用量を使用して2時間で、疼痛消失と、最も煩わしい症状(MBS)の消失との多重主要評価項目において、ザベゲパント10および20mgは、プラセボよりも統計学的に優れていた(p<0.05)(表7)。ザベゲパントの利点は、持続的疼痛消失2~24時間(5、10および20mg);持続的疼痛消失2~48(5、10および20mg);持続的疼痛軽減2~24時間(5、10および20mg);持続的疼痛軽減2~48(5および10mg)を含めて、レスキュー薬なしで、48時間を超えて永続的で、持続的であった(基準p<0.05)。
【0152】
【表9】
【0153】
ザベゲパントはまた、複数の二次終点においてプラセボよりも優れており、初期活性を実証した(基準p<0.05)。ザベゲパントは迅速な開始を示し、投与後15分の疼痛軽減(10および20mg)、投与後2~24時間までの持続的疼痛軽減(3つのザベゲパント群のすべて)、投与後2~24時間までの持続的疼痛消失(3つのザベゲパント群のすべて)、投与後2~24時間までの持続的疼痛軽減(ザベゲパント5mgおよび10mg)、投与後2~24時間までの持続的疼痛消失(3つのザベゲパント群のすべて)、および30分の早さで正常機能への復帰(20mg)を伴った。10および20mg用量は2時間で、疼痛軽減と正常機能への復帰の両方に対して治療効果を示した(表8、図3)。
【0154】
【表10-1】
【0155】
【表10-2】

【0156】
【表10-3】
【0157】
鼻腔内ザベゲパントは、この単回用量試験において忍容性が良好で、安全であった。5%超の個々の有害事象(AE)は味覚障害(ザベゲパントアームで13.5~16.1%、およびプラセボアームで3.5%)および鼻不快感(ザベゲパントアームで1.3~5.2%、およびプラセボアームで0.2%)であった。AEの大部分(80%超)は中程度の強度であった。いずれの処置アームにおいても、ULNの3倍超のASTもしくはALT、またはULNの2倍超の総ビリルビンを有する対象はいなかったので、肝毒性のシグナルはなかった(表9)。
【0158】
【表11】
【0159】
本出願を通じて、様々な刊行物が、著者名および日付により、または特許番号もしくは特許公報番号により参照される。これらの刊行物の開示は、それらの全体が、本明細書に記載されていて、特許請求の範囲において請求される本発明の時点において当業者に公知のとおりの現況技術をより完全に記載するために、参照により本出願に援用される。しかしながら、本明細書における参照文献の引用は、そのような参照文献が本発明に対する従来技術であるとの自認であると解釈されるべきではない。
【0160】
当業者は、ルーチン以下の実験を使用して、本明細書に記載の具体的な手順の多数の均等物を理解する、または確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であり、次の特許請求の範囲によりカバーされると考えられる。例えば、本明細書に記載の説明および実施例に具体的に開示されているもの以外の薬学的に許容できる塩を使用することができる。さらに、そのような組合せを同定する具体的な開示が本明細書に存在するか否かに関わらず、条項のリスト内の具体的な条項、または条項のより広い群内の条項のサブセット群を、他の具体的な条項、条項のサブセット群または条項のより広い群と組み合わせることができることが意図されている。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
【国際調査報告】