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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】担持タンタル触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/20 20060101AFI20240130BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240130BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240130BHJP
   B01J 35/51 20240101ALI20240130BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240130BHJP
   C07C 11/16 20060101ALI20240130BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20240130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
B01J23/20 Z
B01J37/02 101Z
B01J37/08
B01J35/08 Z
B01J35/10 301G
B01J37/02 101A
C07C11/16
C07C1/24
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545758
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022014332
(87)【国際公開番号】W WO2022165190
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,484
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521541594
【氏名又は名称】エコヴィスト・カタリスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ECOVYST CATALYST TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ,ヤタオ レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラグ ラシクラル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01C
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA02C
4G169BA03A
4G169BA03C
4G169BA04A
4G169BA04C
4G169BA05A
4G169BA05C
4G169BA06A
4G169BA06C
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB04C
4G169BB06A
4G169BB06C
4G169BC52A
4G169BC52C
4G169BC56A
4G169BC56B
4G169BC56C
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169BE11C
4G169CB07
4G169CB21
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA04X
4G169EA04Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169ED10
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB15
4G169FB17
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC25
4H006BA12
4H006BA55
4H006BA81
4H006BA85
4H039CA29
4H039CL25
(57)【要約】
Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒、及び得られる担持Ta触媒の製造方法。一の実施形態において本方法は、固体酸化物担体材料の表面ヒドロキシルとの適切な反応性を有するTa前駆体を選択し、触媒前駆体又は触媒における所望のTa分布をもたらすことを含む。一の実施形態において本方法は、担体材料上の利用可能な表面ヒドロキシルの数を制御し、か焼等の熱的方法によってTa前駆体と反応させ、所望のTa分布を達成することを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体の製造方法であって、以下:
ヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を準備すること;
生成する酸化タンタル触媒前駆体粒子に、所望のTa分布をもたらす反応性を有するTa前駆体材料を選択すること;
前記固体酸化物又は混合酸化物粒子と、前記Ta前駆体材料を含む有機溶液とを接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び
前記Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること;
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成することを更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
選択した前記Ta前駆体材料は、粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度よりも速い、前記固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
得られる前記触媒前駆体粒子が、egg-shell型のTa分布を有する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
選択した前記Ta前駆体材料は、粒子の中心に向かう前記前駆体の物質移動速度に近い、又は前記物質移動速度よりも遅い、前記固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
得られる前記触媒前駆体粒子が、粒子全体にわたって均一なTa分布を有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
得られる前記触媒前駆体粒子が、OH飽和濃度未満のTa:OH比を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記Ta:OH比が0.15未満である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記固体酸化物又は混合酸化物担体が、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、又はこれらの組み合わせ、を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記固体酸化物又は混合酸化物粒子が、5質量%未満の水分を含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記固体酸化物又は混合酸化物粒子が、0.5~5mmの平均粒径を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記固体酸化物又は混合酸化物粒子が、200~600m/gの平均表面積を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記固体酸化物又は混合酸化物粒子が、0.7~1.8cc/gの平均細孔容積を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
前記接触させることが、インシピエントウェットネス含侵又はスラリー反応により、前記Ta前駆体材料を含む有機溶液を、前記固体酸化物又は混合酸化物粒子に添加することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記Ta含侵粒子を回収することが、前記Ta前駆体材料と混合した溶媒を除去することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記Ta前駆体が、2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシド、タンタルエトキシド、又はタンタルエトキシドと2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン)との組み合わせ、を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
Ta前駆体と担体材料との反応速度を制御するために、少なくとも1つの変性剤により前記Ta前駆体を安定化させる、少なくとも1つの化学的プロセスを更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
前記Ta前駆体が、タンタルエトキシドを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記Ta前駆体用の前記変性剤が、2,4-ペンタンジオンを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記Ta前駆体がタンタルエトキシドであり、かつ前記変性剤が2,4-ペンタンジオンである、請求項17に記載の製造方法。
【請求項21】
Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体の製造方法であって、以下:
結合したヒドロキシル基を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を準備すること;
前記ヒドロキシル基との所望の反応速度を有するTa前駆体材料を選択すること;
少なくとも1つの熱的プロセスによって、前記Ta前駆体と反応するヒドロキシル基の数を制御すること;
前記制御された数の前記ヒドロキシル基を有する前記固体酸化物又は混合酸化物粒子と、前記Ta前駆体材料を含む有機溶液とを接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び、
前記Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること;
を含む、製造方法。
【請求項22】
前記触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成することを更に含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記熱的プロセスは、担体上のヒドロキシル濃度を減少させるために、前記担体をか焼することを含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1、2、21、又は22に記載のいずれかの方法によって製造された、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒。
【請求項25】
制御されたTa分布が、粒子上のegg-shell型のTa分布を有する、請求項24に記載の担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒。
【請求項26】
制御されたTa分布が、粒子全体にわたって均一な分布を有する、請求項24に記載の担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒。
【請求項27】
0.1~0.6Ta/nmのTa濃度を有する、請求項24に記載の担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒。
【請求項28】
ビーズ、顆粒、又は押出物の形態である、請求項24に記載の担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒。
【請求項29】
エタノールからブタジエンを製造する方法であって、前記方法が、エタノールと、請求項2又は22に記載の方法によって製造された担持酸化タンタル触媒と、を接触させることを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,484号の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は一般に、タンタル(Ta)分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体及び触媒を製造する方法に関する。また本開示は、本開示の方法によって製造される、特に表面ヒドロキシル飽和濃度よりも実質的に低いTa担持量においてTa分布が制御された(例えば均一なTa分布を有する)担持酸化タンタル触媒前駆体及び触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
担持金属酸化物は、担体材料(例えばシリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、及びこれらの混合物等)の表面に担持及び結合した1つかそれ以上の金属酸化物種を含む、均質触媒の一種である。一般的に使用される金属酸化物の例は、第3~第7族金属の酸化物を含む。なぜならば、それらは様々な化学種の合成に使用される様々な触媒を形成できるためである。例えば、担持酸化タンタル触媒は、エタノールから1,3-ブタジエンの製造、並びにメチル-tert-ブチルエーテルからのイソブタン及びメタノールへの分解を含む、工業的に重要な多くの化学反応を触媒することが判明している。
【0004】
担持酸化タンタル触媒を使用してエタノールからブタジエンを製造する方法は、様々な望ましくない副生成物の生成を含む、様々な制限を有することが知られている。原子レベルにおけるTa分散は、触媒の選択性及び活性に影響することが知られている。触媒粒子においてTa分布を制御することは、触媒におけるTa分散に影響する重要な要素の1つである。従って、担持酸化タンタル触媒を使用するエタノールからブタジエンの製造において、Ta担持量及びTa分布の両方が、触媒の性能にとって重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L.T. Zhuravlev, The surface chemistry of amorphous silica. Zhuravlev model, Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 173 (2000)
【非特許文献2】e.g., Corson, B. B.; Stahly, E. E.; Jones, H. E.; Bishop, H. D. Industrial and Engineering Chemistry, 41, 1012-1017 (1949)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知のTa前駆体を使用して製造した担持酸化タンタル触媒は、固有の制限を有する。例えば、特に粒子がpacked-bedプロセスに使用するためにかなりの大きさである場合は、触媒粒子における所望のTa分布は、公知のTa前駆体によっては達成されないだろう。本開示は、Ta分布を制御する方法を提供し、それにより得られる触媒の選択性及び活性を向上させる。
【0007】
本明細書に記載した、担持酸化タンタル触媒前駆体及び触媒、並びにその製造方法は、1つまたはそれ以上の、上述の及び/又は先行技術のその他の課題を解決することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本明細書に、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体を製造するための方法を開示する。本方法は、表面にヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物担体粒子を得ること;所望のTa分布を得るために適切な反応性を有するTa前駆体材料を選択すること;固体酸化物又は混合酸化物粒子を、有機溶媒と混合したTa前駆体材料と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;任意選択的にTa含侵粒子を洗浄し、未反応のTa前駆体を除去すること;溶媒を除去することでTa含侵粒子を回収し、触媒前駆体を形成すること、を含む。一の実施形態において、本開示の方法は、触媒前駆体をか焼(calcining)し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成する工程を更に含んでもよい。
【0009】
一の実施形態において、担持金属酸化物触媒を製造するための上記調製方法は、活性金属前駆体(例えばTaに関してはタンタルエトキシド)と溶媒とを含む有機溶液を、インシピエントウェットネス含侵又はスラリー反応によって固体酸化物担体(例えばシリカ)に添加すること、及び溶媒を除去することによってTa含侵触媒前駆体粒子を回収すること、を含む。続いて、触媒前駆体中に含侵したTa前駆体を、(例えば熱処理によって)分解させ、分散担持金属酸化物触媒を与える。上記担体は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、又はこれらの混合物等の固体酸化物又は混合酸化物担体であり得る。担持酸化タンタル触媒において、高分散Taは典型的に、+5の酸化数を示す。
【0010】
他の一の実施形態において、Ta前駆体の反応性を制御する(例えば反応性が低い前駆体を選択する、又は少なくとも1つのin-situ処理を行って前駆体の反応性を低くする)ことによって、均一なTa分布を有する担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒粒子を製造する方法が開示される。例えば、一の実施形態において、Ta前駆体と少なくとも1つの化学種とを複合化し、Ta化合物と担体上の表面ヒドロキシルとの反応を遅くすることによって、Ta前駆体を安定させる方法を開示する。この実施形態において、反応速度の制御は、Ta前駆体と、固体酸化物又は混合酸化物担体上の表面ヒドロキシルとの反応速度を制御し、粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度に近い値にする、又はそれよりも遅くすることを含む。更なる一の実施形態において、溶媒の選択も、Ta前駆体と表面ヒドロキシルとの反応速度に影響し得る。
【0011】
一の実施形態において、前駆体と反応し得る表面ヒドロキシルに対するTa前駆体のモル比(即ちTa:OH比)を調整する(tuning)、又は操作する(manipulating)ことによって、制御されたTa分布を有する担持酸化タンタル触媒前駆体粒子を製造する方法が開示される。これは、Ta前駆体と反応させる前に、少なくとも1つの方法(例えばか焼等の熱処理)で、担体中のヒドロキシル基の数を制御することによって達成され得る。
【0012】
この実施形態において、担体材料上のヒドロキシル濃度を減少させ、それによって本方法で使用されるTa:OH比を増大させるためにか焼工程を含む方法が開示される。一の実施形態においてこれは、Ta前駆体と反応させる前に、酸化物又は混合酸化物担体を熱処理する(例えばか焼する)ことにより達成され得る。
【0013】
更に、本明細書に開示した方法によって製造された、制御されたTa分布を有する担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒が開示される。一の実施形態において、担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒粒子は、本明細書で定義するように、egg-shell型のTa分布を有する。他の一の実施形態において、担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒粒子は、本明細書で定義するように、粒子全体にわたって均一なTa分布を有する。例えば、一の実施形態において、本明細書に開示した方法によって製造された、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体及び触媒が開示される。
【0014】
他の一の実施形態において、エタノールからブタジエンを製造するための方法が開示される。本使用法は、エタノールと、本開示の方法によって製造された担持酸化タンタル触媒とを接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面は、本明細書に導入され、本明細書の一部を構成する。
【0016】
図1図1は、本開示の実施形態に従うシリカ担体の製造に使用される一般的な工程を示すフローチャートである。
図2図2は、実施例1に従って製造されたサンプルにおける、Ta分布データの折れ線グラフである。
図3図3は、実施例2に従って製造されたサンプルにおける、Ta分布データの折れ線グラフである。
図4図4は、実施例3に従って製造されたサンプルにおける、Ta分布データの折れ線グラフである。
図5A図5Aは、実施例4に従って製造されたサンプルにおいて、サンプルAにおける、Ta反応速度への変性剤(modifier)の影響を示す、Ta分布データの折れ線グラフである。
図5B図5Bは、実施例4に従って製造されたサンプルにおいて、サンプルBにおける、Ta反応速度への変性剤(modifier)の影響を示す、Ta分布データの折れ線グラフである。
図5C図5Cは、実施例4に従って製造されたサンプルにおいて、サンプルCにおける、Ta反応速度への変性剤(modifier)の影響を示す、Ta分布データの折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細
定義:
用語「組成物(composition)」は、触媒前駆体、及び得られる触媒を意味する。
【0018】
フレーズ「制御されたTa分布(controlled distribution of Ta)」は、触媒前駆体又は触媒粒子における所望のTa分布が意図的に得られることを意味する。
【0019】
フレーズ「粒子全体にわたって均一なTa分布(uniform distribution of Ta throughout the particle)」は、Ta濃度レベルが、直径の両端から5%以内のデータポイントを除いて、直径に沿って、平均Ta濃度から20%を超えて変化しない、ことを意味する。
【0020】
用語「egg-shell型分布(egg-shell distribution)」は、殆どのTaが粒子表面方向に集中しており、粒子の中心方向に存在するTaが少数である、又は存在しないことを意味する。例えば、egg-shell型分布において、Ta濃度レベルは、一般に直径の両端近傍でピークに達し、中心に向かって平坦化し、特にビーズの外側20%以内の最大Ta濃度は、平均Ta濃度よりも少なくとも1.5倍高く、ビーズの中心のTa濃度は、ビーズの平均Ta濃度の50%未満である。
【0021】
用語「中間の分布(intermediate distribution)」は、本明細書に記載の均一な分布及びegg-shell型分布以外の全てのTa分布の型を含む。
【0022】
用語「酸化タンタル(tantalum oxide)」は、化学式Taを有する五酸化タンタルを含むが、これに限定されず、あらゆるタンタルの酸化物を意味する。
【0023】
フレーズ「Ta含侵粒子を回収すること(recovering the Ta-impregnated particles)」は、本明細書に記載の手段により、有機溶媒から、形成した粒子を分離することを含む。これは、スラリー反応の場合においては、形成した粒子から有機溶媒を排出し、続いて形成粒子を乾燥することを含んでもよく、インシピエント含侵の場合においては、形成粒子を乾燥することのみを含んでもよい。上述のように、本開示の方法は、回収工程の前に、Ta含侵粒子を洗浄し未反応のTa前駆体を除去する工程を任意で含んでもよい。一の実施形態において、更に回収後のTa含侵粒子をか焼し、Ta前駆体を分解して酸化タンタルに変換してもよい。
【0024】
シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、及びこれらの混合物等の固体酸化物担体。本明細書で使用される場合、混合酸化物粒子を含む担体は、1つ超の化学元素のカチオンを含む酸化物担体を包含し、それぞれは微量、又は不純物のレベル超の量で存在する(例えば少なくとも0.1質量%、0.5質量%超、又は1質量%超)。一の実施形態において、固体酸化物又は混合酸化物担体は、10質量%未満の水分量を有し、例えば5質量%未満、又は2質量%未満の水を含む。一の実施形態において、固体酸化物担体は、0.5質量%未満の水を含み、例えば0.1質量%未満の水を含む。これらのレベルの水分量に到達するために乾燥工程が必要である場合、約120~200℃で最大12時間乾燥することにより、上記水分量に到達し得る。
【0025】
分析方法:
Ta分布:本明細書に記載したようなTa分布を測定するために、粒子をエポキシ樹脂に埋め込み、半球にカットし、埋め込まれた半球の表面を研磨した。研磨半球表面の直径全体にわたる粒子のTa分布は、Hitachi SU6600 走査型電子顕微鏡に添付の、Bruker Nano QUANTAX 200システム、及びBruker Nano XFlash 6|30検出機を使用し、スタンダードレスEDSスペクトル分析(standardless EDS spectrum analysis)によって測定した。Ta含有量は、Ta Lライン上のP/B-ZAF法に基づいて計算した。
【0026】
Ta濃度:触媒組成物中のTa濃度を、Perkin Elmer Optima 8300 ICP-OES分光器を使用し、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma, 別としてICP)分光分析によって測定した。結果は、500~550℃でか焼した触媒の乾燥重量に基づいて記録した。
【0027】
表面積及び細孔容積:表面積及び細孔容積を、Quantachrome Corporation(現在はAnton Paar GmbH)製のAutosorb-6 Testing unitを使用し、窒素ポロシメトリーによって測定した。まず、サンプルをAutosorb-6 Degassing Unit上で、350℃で少なくとも4時間脱気(degassed)した。複数箇所の表面積を、0.05~0.30のP/Pにおけるデータポイントをとり、BET理論を使用して計算した。細孔容積測定は、脱着レッグ(desorption leg)上で、0.984のP/Pにおいて記録した。平均細孔径は、円筒状細孔を仮定し、以下の式:
【0028】
【数1】
を使用して計算した。
【0029】
粒径:粒径は、当該技術分野で公知の様々な手法によって測定され得る。例えば粒径は、ふるい分析、又はCamsizer(登録商標)粒径及び形状分析システムによって測定され得る。粒子状または球状に関して具体的に記載したが、本明細書に記載の担持金属触媒は、押出物、錠剤の形態とすることができ、または不規則な粒状とすることができる。
【0030】
Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒を製造するための方法が、最も広い意味で記載される。一の実施形態において、本方法は、表面ヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を提供することを含む。本明細書に記載のように、固体酸化物又は混合酸化物粒子は、(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0031】
本明細書に記載した担持酸化タンタル触媒は、とりわけ、エタノールから1,3-ブタジエンの製造、並びにメチルtert-ブチルエーテルのイソブテン及びメタノールへの分解に使用されてもよい。多くの場合、これらの反応は、工業的に重要な(relevant)スケールにおいて、充填床構成(packed-bed configuration)で行うことが好ましい。その結果、担持酸化タンタル触媒は、反応器床を横切る実質的に受容可能な圧力降下においてプロセスを操作するために、0.5mm超(例えば1~5mm)の等価粒径を有する必要がある。このサイズの触媒粒子は、ビーズ、顆粒、又は押出物の形態であり得る。ビーズがより一般的に使用される形態の1つである。一の実施形態において、本明細書に記載の固体酸化物又は混合酸化物粒子は、0.5~5mm(例えば2~4mm)の平均粒径を有し得る。当該固体酸化物又は混合酸化物粒子は、200~600m/g(例えば300~400m/g)の平均表面積を有する。また、当該固体酸化物又は混合酸化物粒子は、0.7~1.8cc/g(例えば1.0~1.5cc/g)の細孔容積を有し得る。
【0032】
本明細書に記載の方法は、酸化物担体の表面ヒドロキシルと反応するTa前駆体材料を選択することを含む。例えば、200℃超での処理を行っていないシリカ担体は通常、約4.6OH/nmの表面ヒドロキシル濃度を有する。表面ヒドロキシルに対するTaのモル比(Ta:OH)が高くなるような量のTa前駆体を使用することは、利用可能なヒドロキシルと反応するのに十分なTa前駆体分子が存在するために、触媒前駆体又は触媒粒子におけるTaのより均一な分布をもたらし得る。例えば、320m/gの表面積及び4.6OH/nmのヒドロキシル濃度を有するシリカ担体は、各Ta前駆体分子が、3つの表面ヒドロキシルと反応する(1:3のTa:OH)と仮定すると、12.5質量%のTa担持量を有し得る。大きなTa担持量は、更なる利点をもたらすものではなく、触媒性能に対して有害で、かつTaコストのために経済的に不利であるため、多くの工業アプリケーションは、Ta担持量の大きい担持酸化タンタル触媒を必要としない。確かに、ほとんどの担持酸化タンタル触媒の工業アプリケーションは、1~6質量%のTaを必要とし、これは320m/gの表面積及び4.6OH/nmのヒドロキシル濃度を有するシリカにおいて、Ta:OHのモル比0.02~0.15に相当する。本明細書に記載した実施形態は、担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒において、ヒドロキシル飽和濃度よりも十分に低いTa濃度において、Ta分布を制御する方法を記載する。
【0033】
触媒前駆体又は触媒のモル比Ta:OHは、担体粒子中に存在するヒドロキシル基の濃度、及び触媒前駆体又は触媒粒子の所望のTa含有量から計算される。担体粒子中のヒドロキシル基の濃度は、担体が高純度、かつアクセス可能なヒドロキシル濃度を有しない場合は熱重量分析(TGA)によって、又は滴定法によって定量的に測定され得る。また、触媒前駆体又は触媒のTa含有量は、ICP法によって測定され得る。Ta:OHモル比の変化は、触媒前駆体若しくは触媒中のTa含有量の変化、又は本明細書に記載の方法による担体中のヒドロキシル基の濃度の制御、又はこれらの両方によって影響され得る。
【0034】
触媒前駆体又は触媒中のTa含有量の所望の目標を達成するために、一定量のTa前駆体を、有機溶媒に溶解させる。Ta前駆体の一定量は、使用される調製法及び調製条件に依存する。例えば、インシピエント含侵法が使用される場合、Ta前駆体の一定量は、「理論量」、即ち、Ta前駆体の100%が触媒前駆体又は触媒中に保持されると仮定した場合に、触媒前駆体又は触媒において所望のTa含有量を達成するために計算される量が必要とされる。しかしながら、スラリー反応法が使用される場合、Ta前駆体の一定量は通常、理論量よりも多く、かつTa前駆体の一定量は、反応平衡定数、及びTa含侵粒子を有機溶媒で洗浄し担体の細孔から未反応のTa前駆体を除去したか否か、を含むいくつかの要素に依存する。本明細書で使用される用語「平衡定数(equilibrium constant)」は、反応溶液が担体と平衡である際の、反応溶液中で使用されるTa前駆体の量に対する、ヒドロキシルと反応するTa前駆体の量の比、を意味する。かかる平衡に達するために必要な時間が、「平衡時間(equilibrium time)」である。例えば、平衡反応定数が0.7である場合、反応時間が平衡時間に近づいており、かつTa含侵粒子が洗浄され未反応のTa前駆体が除去されている場合、加えられる一定量のタンタル前駆体は、理論量を平衡定数(この場合は0.7)によって割った値である。当業者は、上記平衡定数及び平衡時間が、使用されるTa前駆体により変化するだけでなく、化学反応に影響し得る他のパラメータ(例えば反応温度、酸化物担体の種類、溶媒の種類、以下に記載する他の化学変性剤の存在等)によっても変化することを理解するだろう。
【0035】
本明細書に記載の方法は、得られる触媒前駆体又は触媒粒子に所望のTa分布を与える反応速度(又は「反応性」)、を有するTa前駆体材料を選択することを含む。例えば、一の実施形態において、選択されたTa前駆体材料は、固体酸化物又は酸化物粒子との反応速度を有し、これは粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度よりも速い。この実施形態において、得られる触媒前駆体又は触媒粒子は、本明細書で定義したように、粒子の内側よりも、粒子の外表面に向かってTa濃度がより大きくなる、egg-shell型のTa分布を有する。この実施形態において、Ta担持量は、全ての利用可能なヒドロキシル基を消費するために要求されるレベル未満である、又は低Ta:OH比である。
【0036】
他の一の実施形態において、選択されたTa前駆体材料は、固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度を有し、これは粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度に近い、又は遅い。この実施形態において、得られる触媒前駆体又は触媒粒子は、Ta:OH比が低い場合でも、粒子全体にわたって均一なTa分布を有する。本明細書で使用される場合、「低い比(low ratio)」は、飽和比(これは各Taが3つのヒドロキシルと反応すると仮定すると、1:3、即ち0.33)よりも十分に低いことを意味する。例えば、Ta:OHは、0.15未満であってよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「Ta前駆体の反応速度、又は反応性」は、特定の前駆体がヒドロキシル基と反応する速度を意味する。この速度は通常、Ta前駆体に結合した官能基の数、大きさ、及び複雑性(complexity)によって決まる。一般に、官能基の大きさ及び複雑性が増加するに従い、反応性は減少する。
【0038】
本明細書で使用され得るTa前駆体は、例えばより均一なTa分布のために、2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシドを含む、又はよりegg-shell型のTa分布のためにタンタルエトキシドを含むが、これらに制限されない。Ta前駆体の反応性は、少なくとも1つの化学変性剤(例えば安定剤)を添加することにより変化し得る。例えば、含侵溶液への2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン)のin-situ添加によって、タンタルエトキシドと表面ヒドロキシルとの反応性は減少し得る。2,4-ペンタンジオンは、タンタルエトキシドと錯体を形成し、生じた錯体は、タンタルエトキシド単体よりも、表面ヒドロキシルとの反応速度が小さい。更に、タンタルエトキシドに対する2,4-ペンタンジオンのモル比を変えることで、タンタルエトキシドとヒドロキシルとの反応性を調整できる。更に、使用する溶媒を変えることで、Ta前駆体とヒドロキシル基との反応性に影響を与え得る。例えば安定剤として2,4-ペンタンジオンを使用した安定化タンタルエトキシドを使用する場合、Ta前駆体とヒドロキシルとの反応速度は、2-プロパノールを使用する場合よりも、メタノールを使用する場合の方が速い。
【0039】
本方法は、固体酸化物又は混合酸化物粒子と、Ta前駆体材料とを接触させ、Ta含侵粒子を形成することを更に含む。例えば、一の実施形態において接触工程は、インシピエントウェットネス含侵又はスラリー反応により、固体酸化物又は混合酸化物粒子にTa前駆体材料を含む有機溶液を添加することを含む。一の実施形態においてTa前駆体は、有機溶媒と混合され、溶液を形成する。その後、単に形成粒子の細孔を充填するために、十分な量の溶液を形成担体粒子に加えることができる。このインシピエントウェットネス含侵法において、サンプル中にフリーな溶媒は実質的に存在しない。スラリー反応法において、Ta前駆体と有機溶媒との混合後に形成された溶液の体積は、形成粒子の細孔において利用可能な容積よりも実質的に大きい。従って、形成粒子及び溶液を含む本システムは、スラリーを形成する。
【0040】
本明細書に記載の方法は、本明細書に記載した通り、Ta含侵固体酸化物担体を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体粒子を形成することを更に含む。例えばこの工程は、エバポレーション等による溶媒の除去を含む。一の実施形態において、固体酸化物(例えばシリカゲル)中に含侵したタンタルを含む粒子を回収することは、従来の方法によって形成シリカゲル粒子を有機溶媒から分離すること、及び任意選択的に溶媒で粒子を洗浄することを含む。これは、形成シリカゲル粒子から有機溶媒を排出し、続いて形成シリカゲル粒子を乾燥すること、を含んでもよい。乾燥(真空乾燥を含み得る)は、形成シリカゲル粒子を有機溶媒の沸点に到達させることを含む。乾燥条件は変更してもよいが、ほとんど全ての有機溶媒が蒸発するまで行う。スラリー反応法及びインシピエントウェットネス含侵法の両方において、Taベアリング溶液(Ta bearing solution)と固体酸化物担体との接触時間は、平衡時間よりも実質的に短くされるべきではない。接触時間がスラリー反応法における平衡時間よりも非常に短い場合、ヒドロキシルと反応するTaの量は、平衡定数に応じて反応するはずの量よりも実質的に低くなり、触媒中の最終的なTa濃度は、目標よりも低く成り得る。接触時間がインシピエントウェットネス含侵法における平衡時間よりも非常に短い場合、溶媒のエバポレーション工程中に、未反応のTa前駆体が固体酸化物の表面に移行し得る。これは、所望でないより不均一なTa分布をもたらし得る。
【0041】
本方法は、任意選択的に少なくとも400℃で触媒前駆体粒子をか焼し、触媒前駆体中のTa錯体を酸化し、担持酸化タンタル触媒粒子を形成することを更に含んでもよい。
【0042】
一の実施形態において、Ta前駆体と反応し得る表面ヒドロキシルの数(又は濃度)を制御し、酸化物担体における所望のTa分布を得ることができる。上述のように、低いTa:OHにおいて、選択したTa前駆体材料と、固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度が、粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度よりも速い場合、得られる触媒は、egg-shell型の分布を有し得る。しかしながら、同様のTa担持量において、同様のTa前駆体と反応し得る表面ヒドロキシルの数が、酸化物担体とTa前駆体とが混合される前に減少する場合、Ta:OH比は増大し、かつ触媒粒子は表面ヒドロキシル基の減少の程度に応じて、中間の分布又は均一なTa分布を有し得る。これは、Ta前駆体が、それらと反応する未反応の表面ヒドロキシルを探すために、粒子のより深くに拡散しなければならないためである。表面ヒドロキシル基の数は、例えばか焼といった熱処理によって減少し得る。
【0043】
一の実施形態において、担持酸化タンタル触媒においてTa分布を制御する本方法は、担体の熱処理によってシリカ担体中のヒドロキシル含有量を制御することで達成される。シリカ表面の脱ヒドロキシルに対する温度の影響の例は、L.T. Zhuravlev, The surface chemistry of amorphous silica. Zhuravlev model, Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 173 (2000) 1-38の図9、及び対応する説明に具体的に示されており、これら全てを参照により本明細書に援用する。上記文献は、処理温度の増大とともに、シリカヒドロキシル濃度が減少することを示している。
【0044】
一の実施形態において、本方法は、ヒドロキシル濃度を所望のレベルまで減少させるために十分な時間及び温度において、固体酸化物又は混合酸化物粒子をか焼することを含んでもよい。例えば、固体酸化物がシリカを含む場合、ヒドロキシルはシラノール基を含み、シラノール基の縮合からシロキサン基を形成するために、シリカのか焼は少なくとも200℃で行われる。
【0045】
本明細書に記載の方法によって製造した、制御されたTa分布を有する担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒も、本明細書に与えられる。例えば、一の実施形態において、本明細書に記載の担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒は、制御されたTa分布を有し、それは、外表面近傍のTa濃度が粒子の内側よりも大きい、egg-shell型のTa分布である。他の一の実施形態において、制御されたTa分布は、粒子全体にわたって均一なTa分布を含む。
【0046】
一の実施形態において、本明細書に記載した担持Ta触媒は、担体が320m/gの表面積を有する場合、0.1~0.6Ta/nm、又は1~6質量%のTa濃度を有する。
【0047】
一の実施形態において、Taの均一な分布、及びOH飽和濃度未満の所望のタンタル:ヒドロキシルのモル比(即ちTa:OH)を有する担持金属触媒が記載される。例えば、3.0質量%のタンタル(即ち約3.6質量%のTa)を320m/gのシリカ担体に担持する場合、Ta:OHは、0.07:1(OH密度は4.6OH/nmと仮定)であり、これは各Ta前駆体分子が3つの表面ヒドロキシル基と反応すると仮定した場合のOH飽和濃度である0.33:1よりも十分に低い。
【0048】
一の実施形態において、本明細書に記載した方法の組み合わせを使用して、触媒前駆体又は触媒のTa分布を制御する方法が開示される。例えば、一の実施形態において、担体上の利用可能な表面ヒドロキシル濃度を制御するための本開示の熱的方法によって、Ta前駆体の反応性の制御と同時に、担持酸化タンタル触媒前駆体又は触媒においてTa分布を制御する方法が開示される。一の実施形態において、本開示の熱的方法は、担体を事前にか焼することを含む。
【0049】
少なくともエタノールを含むフィードをブタジエンに変換するための、本明細書に記載の触媒の使用も開示される。例えば、文献には、300℃~400℃の温度範囲、0.1~1.0MPaの圧力範囲、及び0.2~2.0の液空間速度(liquid hourly space velocity)において、少なくともエタノールを含むフィードをブタジエンに変換するための、担持タンタル酸化触媒(2質量%のTaを含む)の使用が記載されている。例えば、Corson, B. B.; Stahly, E. E.; Jones, H. E.; Bishop, H. D. Industrial and Engineering Chemistry, 41, 1012-1017 (1949)を参照されたい。上記文献のエタノールを含むフィードのブタジエンへの変換に関する手法は、参照により本明細書に援用される。
【0050】
一の実施形態において、Ta分布が制御された担持タンタル酸化触媒前駆体の製造方法が開示される。本方法は、:ヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;得られる酸化タンタル触媒粒子において、所望のTa分布をもたらす反応性を有するTa前駆体材料を選択すること;固体酸化物又は混合酸化物粒子を、Ta前駆体材料を含む有機溶液と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び、Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む。
【0051】
一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持タンタル酸化触媒を形成することを更に含んでもよい。
【0052】
本明細書に記載のように、選択したTa前駆体材料は、固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度を有し、それは粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度よりも速い。これは、egg-shell型のTa分布を有する触媒前駆体粒子をもたらす。
【0053】
他の一の実施形態において、選択したTa前駆体材料は、固体酸化物又は混合酸化物粒子との反応速度を有し、それは粒子の中心に向かう前駆体の物質移動速度に近い、又はそれよりも遅い。これは、粒子全体にわたって均一なTa分布を有する触媒前駆体粒子をもたらす。
【0054】
一の実施形態において、得られる触媒前駆体粒子は、OH飽和濃度よりも低いTa:OH比(例えば0.15未満のTa:OH比)を有する。
【0055】
一の実施形態において、固体酸化物又は混合酸化物担体は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、又はこれらの組み合わせ、を含む。固体酸化物又は混合酸化物粒子は、5質量%未満の水分を有する。
【0056】
一の実施形態において、固体酸化物又は混合酸化物粒子は、0.5~5mmの平均粒径を有する。
【0057】
一の実施形態において、固体酸化物又は混合酸化物粒子は、200~600m/gの表面積、及び/又は0.7~1.8cc/gの細孔容積を有してもよい。
【0058】
一の実施形態において、本明細書に記載の接触工程は、インシピエントウェットネス含侵又はスラリー反応によって、固体酸化物又は混合酸化物粒子にTa前駆体材料を含む有機溶液を添加することを含む。
【0059】
一の実施形態において、Ta前駆体粒子の回収は、Ta前駆体材料と混合した溶媒を除去することを含む。
【0060】
一の実施形態において、Ta前駆体は、2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシド、タンタルエトキシド、又はタンタルエトキシドと2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン)との組み合わせ、を含む。
【0061】
一の実施形態において、Ta前駆体と担体材料との反応速度を制御するために、変性剤によりTa前駆体を安定させる少なくとも1つの化学的方法が使用される。
【0062】
一の実施形態において、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体の製造方法が記載される。本方法は、:結合したヒドロキシル基を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;ヒドロキシル基との所望の反応速度を有するTa前駆体材料を選択すること;少なくとも1つの熱的方法によって、ヒドロキシル基の数を制御しTa前駆体と反応させること;ヒドロキシル基の数が制御された固体酸化物又は混合酸化物粒子をTa前駆体材料と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び、Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む。
【0063】
一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒前駆体を形成することを更に含んでもよい。
【0064】
一の実施形態において、触媒前駆体又は触媒は、ビーズ、顆粒、又は押出物の形態である。
【0065】
一の実施形態において、本開示の方法により製造した、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体が更に記載される。例えば本方法は、ヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;得られる酸化タンタル触媒粒子において、所望のTa分布をもたらす反応性を有するTa前駆体材料を選択すること;固体酸化物又は混合酸化物粒子を、Ta前駆体材料を含む有機溶液と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む。一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成することを更に含む。
【0066】
一の実施形態において、本開示の方法により製造した、Ta分布が制御された担持酸化タンタル触媒前駆体が更に記載される。例えば本方法は、結合したヒドロキシル基を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;ヒドロキシル基との所望の反応速度を有するTa前駆体材料を選択すること;少なくとも1つの熱的方法によって、ヒドロキシル基の数を制御しTa前駆体と反応させること;数が制御されたヒドロキシル基を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を、Ta前駆体材料を含む有機溶液と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び、Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む。一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成することを更に含む。
【0067】
一の実施形態において、エタノールからブタジエンを製造する方法が更に記載される。例えば本方法は、エタノールと担持酸化タンタル触媒を接触させることを含む。当該触媒は、:ヒドロキシル濃度を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;得られる酸化タンタル触媒粒子において、所望のTa分布をもたらす反応性を有するTa前駆体材料を選択すること;固体酸化物又は混合酸化物粒子を、Ta前駆体材料を含む有機溶液と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む方法によって製造される。一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成することを更に含む。
【0068】
一の実施形態において、エタノールからブタジエンを製造する方法が更に記載される。例えば本方法は、エタノールと担持酸化タンタル触媒を接触させることを含む。当該触媒は、:結合したヒドロキシル基を有する固体酸化物又は混合酸化物粒子を含む担体を得ること;ヒドロキシル基との所望の反応速度を有するTa前駆体材料を選択すること;少なくとも1つの熱的方法によって、ヒドロキシル基の数を制御しTa前駆体と反応させること;ヒドロキシル基の数が制御された固体酸化物又は混合酸化物粒子を、Ta前駆体材料を含む有機溶液と接触させ、Ta含侵粒子を形成すること;及び、Ta含侵粒子を回収し、所望のTa分布を有する触媒前駆体を形成すること、を含む方法によって製造される。一の実施形態において、本方法は、触媒前駆体をか焼し、所望のTa分布を有する担持酸化タンタル触媒を形成すること、を更に含む。
【0069】
本明細書に開示した触媒及び方法の特徴及び利点は、以下の実施例によって示されるが、これらはいかなる意味においても本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0070】
実施例
以下の全ての実施例において、使用した担体はシリカゲルビーズであり、以下の典型的な特性:2~5mmの大きさ、約320m/gの表面積;約1.05cc/gの細孔容積、及び約131Åの平均細孔径、を有する。全ての場合において、使用前のシリカゲルを、120℃で測定した乾燥減量(LOD)<0.5質量%まで予備乾燥させた。
【0071】
シリカ担体の製造
一の実施形態において、担体はシリカを含む。以下は、本開示の実施形態に従ってシリカ担体を製造するために使用した、一般的な工程の説明である。本開示の実施形態に従ったシリカ担体の製造において使用した一般的な工程を示すフローチャートを、図1に示す。シリカ担体、及びその製造方法のより詳細な記載は、同時係属中の出願番号16/804,610に記載されており、参照により本明細書に援用する。
【0072】
一の実施形態において、まず、SiO:NaOの質量比が3.3の希釈ケイ酸ナトリウム溶液と希硫酸とを反応させ、12質量%のSiO、かつHSO:NaOのモル比が0.8、という組成を有するハイドロゾルを形成した。その結果、得られたハイドロゾルは塩基性であった。一の実施形態において、ケイ酸ナトリウム溶液は、SiOの質量を基準に、約400ppmのAlを含んでいた。一の実施形態において、Al含有量が低くより高純度のケイ酸塩を使用し、よりAl含有量が低いシリカが製造され得る。
【0073】
続いてハイドロゾルを空気中へ噴霧し、そこで液滴に分解させ、数ミリメートルの直径を有するビーズに固化させた。その後ビーズを、水、又はビーズ/溶液系のpHを緩衝する、pHが約9の塩基性溶液(硫酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液)に捕集した。70℃で約16時間エージングを行い、約300m/gの表面積を有するゲルを得た。
【0074】
その後、酸を加えてpHを約2まで下げた。続いてビーズを、pHを約3に酸性化した水で洗浄し、Na濃度を減少させた。洗浄後すぐに、水酸化アンモニウム溶液を使用してビーズのpHを約9に増加させた。続いてビーズを、オーブンを使用して乾燥した。最後に、ビーズをふるい分け、所望の粒径の画分を得た。なお、乾燥前のpHの調整は任意であり、ビーズは一般的にpH3~9で乾燥される。
【0075】
一の実施形態において、記載した本方法は、所望の表面積及びNa濃度の組み合わせを得るために、任意選択的に、温度上昇中に複数回のエージング工程を含み、各エージング工程に続いて、酸性化及び洗浄工程を任意選択的に含むよう変更され得る。
【0076】
上記手法を使用することで、約300m/gの表面積、約1.0cc/gの細孔容積、500ppm未満のAl(シリカの純度に依存する)、1000ppm未満のNa(複数回のエージング工程と洗浄との併用の程度に依存する)を有するシリカゲルビーズを得ることができる。
【実施例1】
【0077】
Egg-shell型分布
24.2gの2-プロパノールに、1.77gのタンタルエトキシドを溶かした溶液を調製した。続いてこの溶液を、30gの事前乾燥シリカゲルビーズに迅速に含侵させた。含侵は、15分未満で行った。含侵シリカゲルを少なくとも1時間密封容器に静置した後、防爆ホットプレート(explosion-proof hot-plate)を使用して溶媒を蒸発させた。続いて乾燥材料を、空気中で4時間、500℃までか焼し、Taを2.4質量%含む触媒を得た。
【実施例2】
【0078】
2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシドによる均一な分布
60gの2-プロパノールに、4.88gの2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシド(CAS#20219-33-4)を溶かした溶液を調製した。続いてこの溶液を、70gの事前乾燥シリカゲルビーズに迅速に含侵させた。含侵は、15分未満で行った。含侵シリカゲルを少なくとも1時間密封容器に静置した後、防爆ホットプレートを使用して溶媒を蒸発させた。続いて乾燥材料を、空気中で4時間、500℃までか焼し、Taを2.2質量%含む触媒を得た。
【実施例3】
【0079】
タンタルエトキシド+アセチルアセトンによる均一な分布
10gのタンタエルエトキシドと、4.95gの2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン)とを混合し、安定化Ta前駆体溶液を調製した。6.8gの安定化Ta前駆体溶液を60gのイソプロパノールに溶解させ、続いて溶液を80gの事前乾燥シリカゲルビーズに迅速に含侵させた。含侵は15分未満で行った。含侵シリカゲルを少なくとも1時間密封容器に静置した後、防爆ホットプレートを使用して溶媒を蒸発させた。続いて乾燥材料を、空気中で4時間、500℃までか焼し、Taを2.5質量%含む触媒を得た。
【0080】
上記に記載のように、実施例1に示した製造物は、タンタルエトキシドとシリカシラノールとの反応速度が、ビーズの中心に向かう前駆体の物質移動速度よりも速いために、ほとんどのTaがビーズの表面に集中する、egg-shell型のTa分布を示す。一方、実施例2のように2,4-ペンタンジオン酸タンタルテトラエトキシドを使用した場合、ビーズ全体にわたってより均一なTa分布が実現された。実施例2と同様の結果が、実施例3で示したように、アセチルアセトン:タンタルエトキシドのモル比が2:1の混合物を使用した際に得られた。実施例2及び3で使用したTa前駆体は、シリカシラノールとの反応速度がより小さいため、反応が完了する前に前駆体がビーズ中に拡散し、より均一なTa分布をもたらす。上記の実施例は、適切な前駆体を選択する、又は前駆体をin-situで化学修飾することで、Ta前駆体の物質移動速度に対するTa前駆体と担体材料(ここではシリカ)との反応速度を調整することにより、触媒におけるTa分布を制御することが可能であることを示す。
【0081】
実施例1~3の結果を、図2~4にグラフで示す。これらの図は、所望の反応速度を有するTa前駆体を選択することで、本記載と一致する低いTa:OH比において、均一な分布、又はegg-shell型分布のいずれかが実現され得ることを示す。例えば実施例1は、反応が速いTa前駆体を使用し、egg-shell型分布を実現した。一方実施例2及び3は、複雑で、反応が遅いTa前駆体を使用し、均一なTa分布を達成した。全ての実施例において、Ta:OHのモル比は、約0.06:1であった。
【実施例4】
【0082】
Ta反応速度への変性剤の影響
この一連の実験において、各サンプルについて、約30gのシリカゲルと、約70gの2-プロパノール溶媒に、タンタルエトキシド(TE、約1.73g)及び任意選択的に2,4ペンタンジオン(AcAc、0.83g)を溶解させた溶液と、を混合した。溶液の総量は、シリカビーズにおいて利用可能な細孔容積の約3倍であり、従ってこれらのサンプルは、上記に記載の「スラリー反応」法によって調製した。上記混合物を、表1に記載の時間、振動撹拌機(oscillating shaker)上で攪拌した。続いて、過剰の溶液を排出(デカンテーション)し、ビーズを防爆ホットプレート上で乾燥させ、細孔中に保持されていた溶媒を蒸発させた。当該乾燥ビーズを、550℃で4時間か焼した。ICPを使用して、スペント反応(spent-reaction)溶液及びか焼したビーズ中のTaを測定し、Ta前駆体とシリカゲルビーズの反応度を測定した。結果を表1に示す。ビーズ中のTa分布を評価するために、サンプル上でEDSラインスキャンも測定した。
【0083】
サンプルAとBを比較すると、2,4-ペンタンジオン(AcAc)を、同様の接触時間(1.5時間)でタンタルエトキシドと共に加えた場合、いかなる変性剤も使用していないタンタルエトキシドの場合と比較し、シリカ上に残るTaがはるかに少ないことがわかる。これは、2,4-ペンタンジオンの存在が、タンタルエトキシドとシリカとの反応を減速させていることを示唆する。また、サンプルAはegg-shell型分布を有するのに対し、サンプルBはサンプルAよりも均一なTa分布を有する。
【0084】
サンプルBとCとを比較すると、接触時間の増加に伴い、より多くのTaがシリカと反応していることがわかる。
【0085】
サンプルAとCにおけるTa分布を比較すると、サンプルAがegg-shell型のTa分布を有するのに対し、サンプルCは均一なTa分布を有することがわかる。
【0086】
【表1】
【実施例5】
【0087】
溶媒の影響
表2は、メタノール(MeOH)及び2-プロパノール(IPA)を溶媒として様々な比で使用し、シリカゲルビーズと、2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン、AcAc)の存在下でタンタルエトキシドを含む溶液との、スラリー反応におけるデータを要約したものである。実験手順及び処理条件は、特記がない限りは、実施例4と同様であった。溶媒混合物中のメタノール量の増加に伴い、Ta前駆体とシリカ担体(即ち表面ヒドロキシル基)との反応が速くなることをデータは示している。金属アルコキシドの加水分解に関する文献は、加水分解がとりわけ立体因子に影響されることを示唆している。アルキル鎖長又は側鎖の増大は、加水分解を減速させる。タンタエルエトキシド、2,4-ペンタンジオン、及び溶媒分子が混合されるとすぐに、アセチルアセトン及びアルコキシ(即ちメトキシ、エトキシ、2-プロポキシ)配位子は、Ta+5イオンの周りで動的平衡にあると予想される。従って、溶液中のメタノール含有量の増加に伴い、Ta+5がメトキシ基に配位する確率が増大し、それによってTa前駆体とシラノールとの反応速度が増大する。
【0088】
【表2】
【0089】
特記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件等の量を表す全ての数値は、いかなる場合も、「約(about)」という用語によって修飾されていると理解される。従って特記しない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載した数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性値に応じて変化し得る近似値である。
【0090】
本開示の触媒および方法の他の実施形態は、本明細書及び本開示の実施形態のプラクティスの考察から、当業者にとって明確であろう。本明細書および実施例は例示的なものとしてのみ考慮されることが意図されており、本出願の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】