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特表2024-505519がんを処置するための近赤外光免疫療法(NIR-PIT)併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(54)【発明の名称】がんを処置するための近赤外光免疫療法(NIR-PIT)併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/17 20200101AFI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61K41/17
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 P
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/20
A61K38/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545802
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022014448
(87)【国際公開番号】W WO2022165277
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,068
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】309004585
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】THE U.S.A.AS REPRESENTED BY THE SECRETARY,DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】小林 久隆
(72)【発明者】
【氏名】チョイケ, ピーター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA24
4C084MA02
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
(57)【要約】
治療有効量の1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子を使用して、がんを有する対象を処置する方法が、本明細書において提供される。方法は、対象に、治療有効量の(a)1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せ、(b)1つまたは複数の還元剤、(c)1つまたは複数の免疫活性化因子、あるいはa、b、およびcの組合せを、例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子と同時にもしくは実質的に同時に、または逐次的に(例えば、約0~24時間以内に)投与するステップをさらに含み得る。方法はまた、対象または対象におけるがん細胞(例えば、腫瘍または血液中のがん細胞)に、660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で照射するステップを含む。1つまたは複数の還元剤の使用により、処置により生じる浮腫を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを処置するための方法であって、
(a)前記対象に、治療有効量の
(i)1つもしくは複数の抗体-IR700分子であって、前記抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合し、前記腫瘍特異的タンパク質が、上皮成長因子受容体(EGFR/HER1)、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、癌胎児性抗原(CEA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮成長因子(VEGF)、VEGF受容体(VEGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、エフリンA型受容体2(EphA2)、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、インテグリンα5 β3,1、Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3(ERBB3)、MET癌原遺伝子、受容体チロシンキナーゼ(MET)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、エフリンA型受容体3(EPHA3)、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体1(TRAILR1)、TRAILR2、核内因子カッパ-Bリガンドの受容体活性化因子(RANKL)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、多形性上皮ムチン(PEM)抗原、SK-1抗原、プログラム死1(PD-1)、もしくはプログラム死リガンド2(PD-L2)を含む、抗体-IR700分子、ならびに/または
(ii)1つもしくは複数の免疫活性化因子
を投与するステップと、
(b)前記対象に、治療有効量の1つもしくは複数の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)抗体-IR700分子、1つもしくは複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)抗体-IR700分子、またはこれらの組合せを投与するステップと、
(c)続いて、660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップと
を含み、
前記1つもしくは複数の抗体-IR700分子、前記1つもしくは複数の免疫活性化因子、前記1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、および/または前記1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子が、逐次的または同時に投与され、
それによって、前記対象における前記がんを処置する、方法。
【請求項2】
投与するステップ(a)および(b)が、静脈内投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象におけるがんを処置するための方法であって、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、前記抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質または免疫細胞の表面上の免疫細胞特異的タンパク質に特異的に結合する、ステップと、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の還元剤を投与するステップと、
660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップと
を含み、
前記1つまたは複数の抗体-IR700分子および前記1つまたは複数の還元剤が、逐次的または同時に投与される、方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の抗体-IR700分子が、静脈内投与され、前記1つまたは複数の還元剤が、腹腔内投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記照射するステップが、両方の投与するステップの後に行われる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の還元剤が、前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップの前に投与される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍特異的タンパク質が、HER1/EGFR、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、TAG7)、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2を含み、前記免疫細胞特異的タンパク質が、CTLA4またはPD-L1を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍特異的タンパク質が、EGFRを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記EGFR抗体が、パニツムマブまたはセツキシマブを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫細胞特異的タンパク質が、CTLA4またはPD-L1を含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記がんまたはがん細胞が、乳房、肝臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、脳、子宮頸部、腎臓、骨、皮膚、頭頸部、中咽頭、または血液のがんまたはがん細胞である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CTLA4抗体が、イピリムマブもしくはトレメリムマブを含む、および/または
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、もしくはMEDI-4737である、請求項1~2または7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の抗体-IR700分子の治療有効量が、少なくとも15mgであり、1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子の治療有効量が、少なくとも15mgであり、1つまたは複数のPD-L1抗体-IR700分子の治療有効量が、少なくとも15mgである、請求項1~2または5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の抗体-IR700分子の治療有効量が、少なくとも15mgであり、1つまたは複数の還元剤の治療有効量が、5~50gである、請求項3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象および/または前記がん細胞が、680nmまたは690nmの波長において10~60J/cmの線量で照射される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記がん細胞が、対象の血液中にあり、前記がん細胞に照射するステップが、前記対象によって着用されるデバイスを使用することによって前記血液に照射することを含み、前記デバイスが、近赤外(NIR)発光ダイオード(LED)を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記抗体-IR700分子に特異的に結合する前記腫瘍特異的タンパク質を発現するがんを有する対象を選択するステップ
をさらに含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記がんの重量、体積、もしくはサイズを、処置がない状態と比べて少なくとも25%低減させる、
660~740nmの波長において照射されておらず、前記腫瘍もしくは病変部の照射された領域から遠位に位置する転移の重量、体積、もしくはサイズを、処置がない状態と比べて少なくとも25%低減させる、
前記対象の生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、
前記対象の無増悪生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、
前記対象の無疾患生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、または
これらの組合せを行う、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
CD4Foxp3 Tregを選択的に殺滅する、
前記がん内の全生細胞およびT細胞集団から、CTLA4細胞を選択的に枯渇させるが、領域リンパ節もしくは脾臓内では枯渇させず、
CD8/CD4Foxp3比を増加させる、
CD8+/Treg比を増加させる、
CD4Foxp3細胞:CD4Foxp3細胞比を増加させる、
腫瘍内血液灌流を減少させる、または
これらの組合せを行う、請求項1~2または10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処置された対象において、浮腫および/または急性炎症性反応を、前記1つまたは複数の還元剤の非存在下における浮腫および/または急性炎症性反応の量と比較して少なくとも20%低減させる、請求項3~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、気道または縦隔におけるがんである、請求項3~18または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の還元剤が、L-アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、L-システイン、グルタチオン、またはこれらの組合せを含む、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の還元剤が、L-アスコルビン酸ナトリウムである、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象に、治療有効量の1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せを投与するステップをさらに含む、請求項3~9、11、13~18、または20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップが、660~740nmの波長における少なくとも1J/cmの線量での2回またはそれよりも多くの照射線量を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記2回またはそれよりも多くの照射線量は、互いに約12~36時間、例えば、約24時間以内に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象に、前記がん細胞の表面上の前記腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合する、2回またはそれよりも多くの用量の前記1つまたは複数の抗体-IR700分子が投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記がん細胞の表面上の前記腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合する、前記1つまたは複数の抗体-IR700分子の前記2回またはそれよりも多くの用量が、約24~48時間離れている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記照射するステップの約0~48時間後に、蛍光寿命イメージングにより前記がん細胞を検出するステップ
をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象に、2回またはそれよりも多くの用量の前記1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子および/または前記1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子が投与される、請求項1~2、7、または10~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子を投与するステップをさらに含む、請求項3~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記1つまたは複数の免疫活性化因子が、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方を含む、請求項1、2、または31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、対象の血液中のがん細胞を殺滅する方法であり、前記照射するステップが、前記がん細胞に、NIR LEDを用いて、660~740nmの波長において少なくとも1J/cm2の線量で照射することを含み、前記NIR LEDが、前記対象によって着用される着用可能デバイスに存在する、請求項1~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
対象におけるEGFRを発現するがんを処置するための方法であって、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗EGFR-IR700分子を投与するステップと、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗CTLA4-IR700分子を投与するステップと、
続いて、670~700nmの波長において4~100J/cmの線量で前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるEGFRを発現するがん細胞に照射するステップと
を含み、
前記1つまたは複数の抗EGFR-IR700分子および前記1つまたは複数の抗CTLA4-IR700分子が、逐次的または同時に投与され、
それによって、前記対象における前記EGFRを発現するがんを処置する、方法。
【請求項35】
前記EGFR抗体が、パニツムマブまたはセツキシマブを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記CTLA4抗体が、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む、請求項34~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
対象におけるがんを処置するための方法であって、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗PD-L1-IR700分子を投与するステップと、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子を投与するステップと、
続いて、670~700nmの波長において4~100J/cmの線量で前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップと
を含み、
前記1つまたは複数の抗PD-L1-IR700分子および前記1つまたは複数の免疫活性化因子が、逐次的または同時に投与され、
それによって、前記対象における前記がんを処置する、方法。
【請求項38】
前記抗PD-L1が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つまたは複数の免疫活性化因子が、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方を含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、前記抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合し、前記腫瘍特異的タンパク質が、上皮成長因子受容体HER1/EGFR、CTLA4、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2を含む、ステップをさらに含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記CTLA4抗体が、イピリムマブまたはトレメリムマブを含み、前記EGFR抗体が、パニツムマブまたはセツキシマブを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象におけるがん処置により生じる浮腫を低減させるための方法であって、
前記対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、前記抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合するか、または免疫細胞の表面上のタンパク質に結合する、ステップと、
前記対象に、治療有効量のL-アスコルビン酸ナトリウムを投与するステップと、
660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で前記対象に照射するステップおよび/または前記対象におけるがん細胞に照射するステップと
を含み、
前記1つまたは複数の抗体-IR700分子および前記1つまたは複数の還元剤が、逐次的または同時に投与され、
それによって、対象におけるがん処置により生じる浮腫を低減させる、方法。
【請求項43】
免疫細胞の表面上の前記タンパク質が、CTLA4であり、前記腫瘍特異的タンパク質が、HER1/EGFR、PD-L1、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記がんが、高度または中等度に免疫原性のがんである、請求項1~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記高度または中等度に免疫原性のがんが、黒色腫、肺がん、または腎細胞癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記がんが、低免疫原性がんである、請求項1~43のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記低免疫原性がんが、乳がん、膵臓がん、中咽頭がん、または口腔扁平上皮細胞がんである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
アブスコパル効果を有する、請求項1~47のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,068号のより早い出願日の優先権の利益を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、近赤外(NIR)光での照射後に、抗体-IR700コンジュゲートを、他の治療剤、例えば、1つもしくは複数の抗CTLA4-IR700コンジュゲート、抗PD-L1-IR700コンジュゲート、1つもしくは複数の免疫活性化因子、および/または1つもしくは複数の還元剤と組み合わせて使用して、細胞、例えば、がん細胞を殺滅する、方法に関する。
【0003】
政府の支援に関する謝辞
本発明は、National Institutes of Health, National Cancer Instituteによりプロジェクト番号Z01 ZIA BC 011513のもとに政府の支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
がんの治療法はいくつか存在するが、非がん性細胞を損傷することなく腫瘍細胞を効果的に殺滅する治療法に対する必要性が残っている。
【0005】
外科手術、放射線照射、および化学療法を含む、従来的ながん療法の副作用を最小限に抑えるために、分子標的化がん療法が開発されている。既存の標的化療法のなかでも、モノクローナル抗体(MAb)療法が、もっとも長い歴史を有する。多数の治療用MAbが、Food and Drug Administration(FDA)によって承認されている(Waldmann, Nat Med 9:269-277, 2003、Reichert et al., Nat Biotechnol 23:1073-1078, 2005)。有効なMAb療法は、従来的に、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、および受容体遮断の3つの機序に依存し、複数回の高用量のMAbを必要とする。MAbはまた、放射性核種(Goldenberg et al., J Clin Oncol 24, 823-834, 2006)または化学的もしくは生物学的毒素(Pastan et al., Nat Rev Cancer 6:559-565, 2006)などの治療を送達するためのベクターとしてより低い用量で使用されている。最終的には、しかしながら、用量制限毒性は、抗体コンジュゲートの生体分布および異化に関連する。
【0006】
光感受性物質を非イオン化光の物理的エネルギーを組み合わせて細胞を殺滅する従来的な光線力学的療法は、現在利用可能な非標的化光感作剤が、正常組織にも取り込まれ、したがって、励起光自体は近赤外(NIR)範囲で無害であるが副作用を引き起こすため、がん療法には一般的にあまり用いられていない。免疫調節性抗体、がんワクチン、および細胞に基づく治療法の使用を含む、がん免疫療法もまた、がんを制御する戦略となっている(Chen and Mellman, Immunity 39:1-10, 2013、Childs and Carsten, Nat. Rev. Drug Discov. 14:487-498, 2015、June et al., Sci. Transl. Med. 7:280ps7, 2015、Melero et al., Nat. Rev. Cancer 15:457-472, 2015)。
【0007】
近赤外光免疫療法(NIR-PIT)は、標的化モノクローナル抗体-光吸収剤コンジュゲート(APC)を用いるがん処置である。腫瘍細胞表面抗原へのAPCの抗体局在化の後に、NIR光を使用して、高度に選択的な細胞溶解を誘導する。NIR-PITは、急速な壊死性細胞死を誘導し、これにより、免疫原性細胞死(ICD)と調和して樹状細胞(DC)を活性化する自然免疫リガンドが生じる。NIR-PITが腫瘍細胞を殺滅する方法についての説明は、Sato et al. (ACS Cent. Sci. 4:1559-69, 2018)に記載されている。簡単に述べると、抗体-IR700コンジュゲートがその標的に結合した後、NIR光による活性化により、抗体-抗原複合体の形状に物理的変化が生じ、これが、細胞膜内の物理的応力を誘導し、膜をまたぐ水流の増加をもたらし、これが、最終的に、細胞の破裂および壊死性細胞死を引き起こす。2020年9月、ヒト使用のための最初のAPCであるセツキシマブ-IR700(ASP1929)が、日本においてPharmaceuticals and Medical Devices Agency(PMDA)により臨床使用が条件的に承認され、登録された。
【0008】
細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)は、抗腫瘍免疫抑制を媒介する主要な免疫チェックポイントリガンド分子である。抗CTLA4免疫療法の抗腫瘍有効性は、1996年に初めて報告され、2011年にCTLA4標的化抗体であるイピリムマブのFDA承認につながった。CTLA4標的化療法に加えて、調節性T細胞(Treg)を標的とする治療法は、抗腫瘍効果を誘導することが示されている。Tregが通常抗腫瘍免疫を下方調節する3つの重要な機序が存在する:(i)CTLA4軸を促進すること、(ii)エフェクターT細胞に利用可能なIL-2の量を低減させること、ならびに(iii)免疫抑制性サイトカイン、例えば、IL-10およびTGF-βを産生させること。実際に、抗CTLA4免疫療法は、CTLA4経路に干渉するという理由だけでなく、腫瘍内Tregの枯渇をもたらすという理由でも、有効であると考えられている。しかしながら、抗CTLA4療法およびTreg枯渇を含む全身がん免疫療法は、多くの場合、自己免疫有害事象を誘導し、したがって、より腫瘍特異的な方法が、望ましいであろう。
【0009】
抗腫瘍免疫抑制を媒介する別の主要な免疫チェックポイントリガンド分子は、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)であり、これは、Tリンパ細胞上に発現するPD-1受容体に結合し、細胞機能を抑制する。PD-L1は、がん細胞を含む様々な細胞に条件的に発現する。細胞傷害性T細胞に依拠する抗腫瘍宿主免疫は、PD-L1発現微小環境下において抑制され得る。これらの分子に対する抗体を使用したPD-1/PD-L1軸の遮断は、抗CTLA4療法と同様に免疫チェックポイントを阻害し、いくらかの割合の患者においてがん細胞に対する有効な免疫活性化をもたらした。しかしながら、抗CTLA4療法と同様に、抗PD-1/PD-L1療法を含む全身がん免疫療法は、多くの場合、自己免疫有害事象を誘導し、したがって、より腫瘍特異的な方法が、望ましいであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Waldmann, Nat Med 9:269-277, 2003
【非特許文献2】Reichert et al., Nat Biotechnol 23:1073-1078, 2005
【非特許文献3】Goldenberg et al., J Clin Oncol 24, 823-834, 2006
【非特許文献4】Pastan et al., Nat Rev Cancer 6:559-565, 2006
【非特許文献5】Chen and Mellman, Immunity 39:1-10, 2013
【非特許文献6】Childs and Carsten, Nat. Rev. Drug Discov. 14:487-498, 2015
【非特許文献7】June et al., Sci. Transl. Med. 7:280ps7, 2015
【非特許文献8】Melero et al., Nat. Rev. Cancer 15:457-472, 2015
【非特許文献9】Sato et al. ACS Cent. Sci. 4:1559-69, 2018
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の概要
がんを有する対象を、NIR-光免疫療法(PIT)を使用して、(1)1つもしくは複数の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)抗体-IR700分子、1つもしくは複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)抗体-IR700分子、またはこれらの組合せ、(2)1つまたは複数の還元剤、あるいは(1)および(2)の両方と組み合わせた、腫瘍特異的タンパク質抗体-IR700分子(抗体-光吸収剤コンジュゲート(APC))および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子の組合せで処置する方法が、本明細書において提供される。
【0012】
1つの例では、方法は、がんを有する対象に、治療有効量の(a)(i)1つもしくは複数の抗体-IR700分子であって、抗体が、がん細胞表面分子、例えば、腫瘍特異的抗原に特異的に結合する、抗体-IR700分子、および/または(ii)1つもしくは複数の免疫活性化因子(例えば、IL-15、インターフェロンガンマ、もしくはその両方)、ならびに(b)1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはその両方を投与するステップを含む。一部の例では、腫瘍特異的タンパク質は、上皮成長因子受容体(EGFR/HER1)、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、癌胎児性抗原(CEA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮成長因子(VEGF)、VEGF受容体(VEGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、エフリンA型受容体2(EphA2)、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン(例えば、MUC1、MUC4、MUC5AC、もしくはがん抗原125(CA125))、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、GD2、GD3、GM1、もしくはGM2)、インテグリンαVβ3、インテグリンα5 β3,1、Erb-B2受容体チロシンキナーゼ3(ERBB3)、MET癌原遺伝子、受容体チロシンキナーゼ(MET)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、エフリンA型受容体3(EPHA3)、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド受容体1(TRAILR1)、TRAILR2、核内因子カッパ-Bリガンドの受容体活性化因子(RANKL)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、多形性上皮ムチン(PEM)抗原、SK-1抗原、プログラム死1(PD-1)、またはプログラム死リガンド2(PD-L2)を含む。具体的な例では、腫瘍特異的タンパク質は、EGFR/HER1であり、それらの例のうちの一部では、抗体-IR700分子は、パニツムマブまたはセツキシマブを含む。具体的な例では、EGFR抗体-IR700およびCTLA4抗体-IR700が、投与される。具体的な例では、IL-15およびCTLA4抗体-IR700が、投与される。具体的な例では、IFN-ガンマおよびCTLA4抗体-IR700が、投与される。具体的な例では、EGFR抗体-IR700およびPD-L1抗体-IR700が、投与される。具体的な例では、IL-15およびPD-L1抗体-IR700が、投与される。具体的な例では、IFN-ガンマおよびPD-L1抗体-IR700が、投与される。(a)および(b)の分子は、同時に、実質的に同時に、または逐次的に(例えば、互いに約0~24時間以内に)投与され得る。一部の例では、(a)および(b)の分子は、静脈内投与される。次いで、対象または対象におけるがん細胞(例えば、腫瘍、または血液中のがん細胞)は、続いて、660~740nm、例えば、660~710nm、または680もしくは690nmの波長において少なくとも1J/cm(例えば、少なくとも10J/cmまたは少なくとも20J/cm、例えば、10~60J/cm、10J/cm~50J/cm、20~50J/cm、20J/cm~60J/cm、または20~30J/cm)の線量で照射される。
【0013】
対象におけるがんを処置するための方法であって、NIR-PIT療法の望まれない副作用、例えば、浮腫を低減させるために1つまたは複数の還元剤の投与を含む、方法が、提供される。そのような方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質または免疫細胞(例えば、T細胞)の表面上の免疫細胞特異的タンパク質に特異的に結合する、ステップを含み得る。一部の例では、腫瘍特異的タンパク質または免疫細胞特異的タンパク質は、HER1/EGFR、CTLA4、PD-L1、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、TAG72、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン(例えば、MUC1、MUC4、MUC5AC、もしくはがん抗原125(CA125))、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、GD2、GD3、GM1、もしくはGM2)、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2であるか、またはこれらを含む。1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、HER1/EGFRであるか、またはそれを含み、それらの例のうちの一部では、抗体は、パニツムマブまたはセツキシマブであるか、またはそれを含む。1つの例では、免疫細胞特異的タンパク質は、CTLA4であるか、またはそれを含み、それらの例のうちの一部では、抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブであるか、またはそれを含む。1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、PD-L1であるか、またはそれを含み、それらの例のうちの一部では、抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737であるか、またはそれを含む。方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の還元剤、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、L-システイン、グルタチオン、またはこれらの組合せを投与するステップをさらに含む。1つの例では、1つまたは複数の還元剤は、L-アスコルビン酸ナトリウムであるか、またはそれを含む。一部の例では、方法は、対象に、治療有効量の1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せを投与するステップをさらに含む。1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子および1つまたは複数の還元剤(ならびに必要に応じて1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せ)は、逐次的または同時に投与され得る。一部の例では、抗体-IR700分子は、静脈内投与され、還元剤は、腹腔内投与される。方法はまた、660~740nm、例えば、660~710nm、または680もしくは690nmの波長において少なくとも1J/cm(例えば、少なくとも10J/cmまたは少なくとも20J/cm、例えば、10~60J/cm、10J/cm~50J/cm、20~50J/cm、20J/cm~60J/cm、または20~30J/cm)の線量で対象に照射するステップおよび/または対象におけるがん細胞に照射するステップも含む。一部の例では、照射は、1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子および1つまたは複数の還元剤の投与の後に行われる。一部の例では、1つまたは複数の還元剤は、照射するステップの前に投与される。一部の例では、1つまたは複数の還元剤は、照射するステップの後に投与される。1つまたは複数の還元剤の使用は、NIR-PITの望ましくない効果、例えば、浮腫、急性炎症性反応、またはその両方を低減することができる。一部の例では、NIR-PITと組み合わせた1つまたは複数の還元剤の使用は、処置される対象における浮腫を、NIR-PITとともに1つまたは複数の還元剤を使用しない浮腫の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらには少なくとも95%低減させる。一部の例では、NIR-PITと組み合わせた1つまたは複数の還元剤の使用は、処置される対象における急性炎症性反応を、NIR-PITとともに1つまたは複数の還元剤を使用しない急性炎症性反応の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらには少なくとも95%低減させる。
【0014】
一部の例では、本明細書に提供される方法は、抗体-IR700分子に特異的に結合し得るがん細胞表面タンパク質を発現する腫瘍またはがんを有するがんを有する対象を選択するステップをさらに含む。
【0015】
一部の例では、開示される方法で処置されるがんまたはがん細胞は、乳房、肝臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、脳、子宮頸部、腎臓、骨、皮膚、頭頸部、中咽頭、または血液のがんまたはがん細胞である。1つの例では、がんが、気道または縦隔におけるがんである、がん(caner)またはがん細胞。一部の例では、処置されるがんは、高度または中等度に免疫原性のがん、例えば、黒色腫、肺がん、または腎細胞癌である。一部の例では、処置されるがんは、低免疫原性がん、例えば、乳がん、膵臓がん、中咽頭がん、または口腔扁平上皮細胞がんである。
【0016】
一部の例では、開示される方法は、アブスコパル効果を有する。
【0017】
一部の例では、方法は、対象の血液におけるがん細胞を殺滅する方法であり、照射するステップは、がん細胞に、NIR LEDを用いて660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で(例えば、680nmまたは690nm、10~60J/cmの線量、例えば、20~50J/cmまたは20~30J/cmの線量で)照射することを含み、NIR LEDは、対象によって着用される着用可能デバイスに存在する。
【0018】
開示される方法の照射するステップは、660~740nmの波長における少なくとも1J/cmの線量での2回またはそれよりも多くの照射線量を投与することを含み得る。例えば、2回またはそれよりも多くの照射線量は、互いに約12~36時間、例えば、約24時間以内に投与される。
【0019】
一部の例では、対象は、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合する、2回またはそれよりも多くの用量、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回の用量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与される。一部の例では、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合する、1つまたは複数の抗体-IR700分子の2回またはそれよりも多くの用量は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも1週間、例えば、約24~48時間、離れている。
【0020】
一部の例では、IR700にコンジュゲートしたCTLA4抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブであるか、またはそれを含む。
【0021】
一部の例では、IR700にコンジュゲートしたPD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737であるか、またはそれを含む。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたPD-L1抗体は、アテゾリズマブまたはアベルマブであるか、またはそれを含む。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたPD-L1抗体は、デュルバルマブ、KN035、またはコシベリマブであるか、またはそれを含む。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたPD-L1抗体は、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737を含むか、またはそれからなる。
【0022】
一部の例では、EGFR抗体-IR700分子において使用されるEGFR抗体は、パニツムマブまたはセツキシマブであるか、またはそれを含む。
【0023】
一部の例では、対象は、2回またはそれよりも多くの用量、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回の用量の、CTLA4抗体-IR700分子、および/または1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子が投与される。一部の例では、2回またはそれよりも多くの用量は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも1週間、例えば、約24~48時間、離れている。
【0024】
一部の例では、腫瘍特異的抗体は、がん細胞表面上の1つまたは複数のタンパク質(例えば、受容体)に結合し、ここで、がん細胞表面上のタンパク質は、非がん細胞(例えば、正常な健常細胞)には有意に見出されず、したがって、抗体は、非がん細胞には有意に結合しない。1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、HER1/EGFRである。具体的な例では、EGFRに特異的なEGFR抗体は、パニツムマブまたはセツキシマブであるか、またはそれを含む。1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、HER2またはPSMAである。1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、PD-L1またはCTLA4である。腫瘍特異的抗体-IR700分子(例えば、これらの抗原のうちの1つまたは複数に特異的な抗体を含む)によって認識され得る追加の例示的な腫瘍特異的タンパク質としては、メソテリン、PSMA、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、TAG72、VEGF、EpCAM、EphA2、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン(例えば、MUC1、MUC4、MUC5AC、またはがん抗原125(CA125))、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、GD2、GD3、GM1、またはGM2)、VEGF受容体(VEGFR)、インテグリンαVβ3、インテグリンα5 β3,1、インテグリンαVβ3、インテグリンα5 β3,1、Erb-B2 ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、多形性上皮ムチン(PEM)抗原、SK-1抗原、PD-L1、およびプログラム死リガンド2(PD-L2)が挙げられる。追加の例示的な腫瘍特異的タンパク質および抗体は、本明細書に提供される(以下の表1を含む)。
【0025】
一部の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、EGFR抗体-IR700)の治療有効量は、少なくとも100mg/m、例えば、少なくとも200mg/m、少なくとも300mg/m、少なくとも400mg/m、または少なくとも500mg/m、例えば、100~800mg/m、100~500mg/m、250~700mg/m、250~500mg/m、または300~500mg/mである。一部の例では、1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子の治療有効量は、少なくとも100mg/m、例えば、少なくとも200mg/m、少なくとも300mg/m、少なくとも400mg/m、または少なくとも500mg/m、例えば、100~800mg/m、100~500mg/m、250~700mg/m、250~500mg/m、または300~500mg/mである。一部の例では、1つまたは複数のPD-L1抗体-IR700分子の治療有効量は、少なくとも100mg/m、例えば、少なくとも200mg/m、少なくとも300mg/m、少なくとも400mg/m、または少なくとも500mg/m、例えば、100~800mg/m、100~500mg/m、250~700mg/m、250~500mg/m、または300~500mg/mである。一部の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、EGFR抗体-IR700)の治療有効量は、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、または少なくとも500mg、例えば、10~1000mg、15~1000mg、10~500mg、15~300mg、または15~100mgである。一部の例では、1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子の治療有効量は、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、または少なくとも500mg、例えば、10~1000mg、15~1000mg、10~500mg、15~300mg、または15~100mgである。一部の例では、1つまたは複数のPD-L1抗体-IR700分子の治療有効量は、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも50mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、または少なくとも500mg、例えば、10~1000mg、15~1000mg、10~500mg、15~300mg、または15~100mgである。一部の例では、1つまたは複数の還元剤の治療有効量は、少なくとも1g、例えば、少なくとも5g、少なくとも10g、少なくとも25g、少なくとも50g、少なくとも100g、少なくとも200g、または少なくとも300g、例えば、1~300g、10~300g、5~50g、5~25g、5~100g、または100~300gである。
【0026】
一部の例では、がん細胞は、対象の血液中にあり、がん細胞に照射するステップは、対象によって着用されるデバイスを使用することによって血液に照射することを含み、デバイスは、近赤外(NIR)発光ダイオード(LED)を含む。
【0027】
一部の例では、方法は、抗体-IR700分子に特異的に結合する腫瘍特異的タンパク質を発現するがんを有する対象を選択するステップをさらに含む。
【0028】
一部の例では、開示される方法は、がんの重量、体積、もしくはサイズを、処置がない状態と比べて少なくとも25%低減させる、660~740nmの波長で照射されておらず、腫瘍もしくは病変部の照射されたエリアから遠位に位置する転移の重量、体積、もしくはサイズを、処置がない状態と比べて少なくとも25%低減させる(例えば、アブスコパル効果が存在する)、対象の生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、対象の無増悪生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、対象の無疾患生存期間を、処置がない状態と比べて増加させる、またはこれらの組合せを行う。
【0029】
一部の例では、開示される方法、例えば、CTLA4抗体-IR700分子を利用するものは、CD4Foxp3 Tregを選択的に殺滅する、がん内の全生細胞およびT細胞集団からCTLA4細胞を選択的に枯渇させるが、領域リンパ節もしくは脾臓内では枯渇させず、CD8/CD4Foxp3比を増加させる、CD8+/Treg比を増加させる、腫瘍内血液灌流を減少させる、またはこれらの組合せを行う。
【0030】
一部の例では、開示される方法は、例えば、照射するステップの約0~48時間後に、蛍光寿命イメージングによりがん細胞を検出するステップをさらに含む。
【0031】
一部の例では、開示される方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子、例えば、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方を投与するステップをさらに含む。特定の実施形態では、免疫活性化因子は、1つまたは複数の免疫系活性化因子および/または免疫サプレッサー細胞の阻害剤、例えば、アンタゴニストPD-1抗体、アンタゴニストPD-L1抗体、またはCD25抗体-IR700分子を含む。一部の例では、免疫サプレッサー細胞の阻害剤は、活性を阻害し、かつ/または調節性T(Treg)細胞を殺滅する。他の例では、免疫系活性化因子は、1つまたは複数のインターロイキン(例えば、IL-2および/またはIL-15)を含む。免疫モジュレーターは、一部の例では、がん細胞によって発現される1つまたは複数のタンパク質に特異的なメモリーT細胞の産生を増加させ得る。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子の治療有効量は、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、もしくは少なくとも50mg、例えば、0.1~100mg、0.5~50mg、0.5~25mg、0.5~10mg、1~5mg、2~4mg、もしくは1~10mg(例えば、iv投与に関して)であるか、または少なくとも0.01mg、少なくとも0.05mg、少なくとも0.1mg、もしくは少なくとも1mg、例えば、0.01~1mg、0.1~1mg、0.01~0.075mg、0.5~1mg、0.1~0.5mg、もしくは0.05~0.5mg(例えば、腫瘍内投与に関して)である。
【0032】
一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、NIR照射の投与の前に投与される。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、NIR照射の投与の後に投与される。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、NIR照射の投与の前および後に投与される。
【0033】
対象におけるEGFRを発現するがんを処置するための方法が、本明細書において提供される。そのような方法は、対象に、(1)治療有効量の1つまたは複数の抗EGFR-IR700分子、および(2)治療有効量の1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子を投与するステップを含み得る。投与の後に、方法は、670~700nmの波長において4~100J/cmの線量で(例えば、680nmまたは690nm、10~60J/cm、例えば、20~50J/cm、または20~30J/cmの線量で)、対象に照射および/または対象におけるEGFRを発現するがん細胞に照射し、それによって、対象におけるEGFRを発現するがんを処置するステップをさらに含む。一部の例では、方法は、例えば、照射の前または後(またはその両方)に、対象に、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子、例えば、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方を投与するステップをさらに含む。一部の例では、方法は、例えば、照射の前または後(またはその両方)に、対象に、治療有効量の1つまたは複数の還元剤、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウムを投与するステップをさらに含む。1つまたは複数の抗EGFR-IR700分子および1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子は、逐次的または同時に投与され得る。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたEGFR抗体は、パニツムマブまたはセツキシマブを含むか、またはそれである。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたCTLA4抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブを含むか、またはそれである。
【0034】
対象におけるがんを処置するための方法が、本明細書において提供される。そのような方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗PD-L1-IR700分子を投与するステップと、対象に、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子(例えば、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方)を投与するステップと、続いて、670~700nmの波長において4~100J/cmの線量で対象に照射するステップおよび/または対象におけるがん細胞に照射するステップとを含み得る。1つまたは複数の抗PD-L1-IR700分子および1つまたは複数の免疫活性化因子は、逐次的または同時に投与され得る。一部の例では、IR700にコンジュゲートしたPD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737を含むか、またはそれらである。一部の例では、方法は、例えば、照射の前または後(またはその両方)に、対象に、治療有効量の1つまたは複数の還元剤、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウムを投与するステップをさらに含む。一部の例では、方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質に特異的に結合する、ステップをさらに含む。一部の例では、腫瘍特異的タンパク質は、上皮成長因子受容体HER1/EGFR、CTLA4、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2を含む。
【0035】
対象におけるがん処置、例えば、1つまたは複数の抗体-IR700分子を使用するNIR-PIT療法により生じる浮腫を低減させるための方法もまた、提供される。そのような方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数の抗体-IR700分子を投与するステップであって、抗体が、がん細胞の表面上の腫瘍特異的タンパク質(例えば、EGFRもしくはVEGF)または免疫細胞(例えば、CTLA4)に特異的に結合する、ステップと、対象に、治療有効量の還元剤、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウムを投与するステップとを含み得る。対象および/またはがん細胞は、660~740nmの波長において少なくとも1J/cmの線量で照射される。1つまたは複数の抗体-IR700分子および1つまたは複数の還元剤は、逐次的または同時に投与され得る。
【0036】
本開示の上述および他の特色は、以下のいくつかの実施形態の詳細な説明、続いて添付の図面への参照により、さらに明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A-B】mEERL-hEGFR細胞系の特徴、およびパニツムマブまたはCTLA4標的化NIR-PITによる評価。(A)SDS-PAGEによるパニツムマブ-IR700およびCTLA4-IR700の検証(左:コロイダルブルー染色、右:700nm蛍光)。それぞれの希釈した抗体を対照として使用した。(B)NIR-PITによって誘導されたmEERL-hEGFR細胞の膜損傷を、PI染色を使用して測定した。各値は、独立した実験の平均±SEMを表す。(C)MTTアッセイによって測定した代謝活性。対照群は、APC投与を有さなかったか、またはNIR光照射のみを有した。各値は、独立した実験の平均(対照に対する%の平均)±SEMを表す。(D)H-E染色による組織学的評価。パニツムマブNIR-PITは、光曝露後1時間以内に腫瘍細胞の膨潤および空胞化を誘導したが、CTLA4 NIR-PITは、明らかな変化を誘導しなかった。スケールバーは、100μm(上部)または50μm(下部)を表す。(E)LL/2-luc、MC38-luc、およびmEERL-hEGFR腫瘍の代表的な多重免疫組織化学検査の画像。上部はpCKおよびDAPI染色の複合画像、下部はCD4、FoxP3、およびCD8染色の複合画像。腫瘍内CD8 T細胞を、多重IHC画像内で計数した。データは、mm当たりの細胞計数として示されている。腫瘍内CD8 T細胞密度は、mEERL-hEGFR腫瘍において、他の腫瘍よりも有意に低かった。腫瘍内CD8ρ/Treg比もまた、mEERL-hEGFR腫瘍において、他の腫瘍と比較して低かった(画像、×200;スケールバー、100μm。n=4;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、P<0.05;**、P<0.01;N.S.、有意差なし)。
図1C-D】同上。
図1E】同上。
図2A】二重標的化NIR-PITによるCTLA4発現細胞の枯渇。(A)mEERL-hEGFR腫瘍におけるいくつかの細胞のCTLA4発現を、フローサイトメトリーによって分析した。腫瘍細胞(hEGFR+CD45-)、CD11b+細胞、CD8+ T細胞(CD3CD8+)、CD4+FoxP3- T細胞、およびTreg(CD3+CD4+FoxP3+)におけるCTLA4発現の代表的なヒストグラム、ならびにCTLA4のRFIが、示されている(n=5、一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、P<0.05;**、P<0.01;****、P<0.0001)。(B)代表的なドットプロットは、各NIR-PITの3時間後のフローサイトメトリーによるmEERL-hEGFR腫瘍内の生細胞におけるCTLA4発現を示す。(C)mEERL-hEGFR腫瘍、腫瘍流入領域リンパ節、および脾臓内の全生細胞中のCTLA4細胞のパーセンテージ。CTLA4 NIR-PITまたは二重NIRPIT後の腫瘍内のCTLA4発現細胞は、有意に減少した。(D)代表的なドットプロットは、各NIR-PITの3時間後のmEERL-hEGFR腫瘍内のTreg集団を示す。(E)散布図は、腫瘍、腫瘍流入領域リンパ節、および脾臓内のTreg/CD3ρ、非調節性CD4(CD4FoxP3-)/Treg、およびCD8/Tregの比を示す。CTLA4および二重NIR-PIT群において、Treg/CD3比は、有意に減少したが、CD4/TregおよびCD8/Treg比は、増加した。(n=4;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;**、P<0.01;***、P<0.001;ns、有意差なし)。
図2B-C】同上。
図2D】同上。
図2E】同上。
図3A】パニツムマブ-IR700または抗CTLA4-IR700の注射後のmEERL-hEGFR腫瘍のin vivo IR700蛍光イメージング。IR700蛍光および白色光画像を、Pearl Imager(LI-COR Biosciences)の700nm蛍光チャネルを使用して取得し、Pearl Cam Software(LI-COR Biosciences)を使用して分析した。IR700シグナルの連続背側蛍光画像を、50μgのpan-IR700またはCTLA4-IR700を尾静脈から静脈内注射する前、ならびに注射の1/4時間後、1時間後、3時間後、6時間後、9時間後、12時間後、18時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に取得した。目的の領域(ROI)を、腫瘍に設定し、隣接する非腫瘍領域(左背側)をバックグラウンドとして設定した。蛍光強度の平均値を、各ROIについて計算した。標的対バックグラウンド比(TBR)を、以下の式によって腫瘍の蛍光強度およびバックグラウンドの蛍光強度から計算した:(腫瘍の平均蛍光強度)/(バックグラウンドの平均蛍光強度)。(A)一連の700nm蛍光画像を、示される時点で取得した。(B)mEERL-hEGFR腫瘍における平均蛍光強度の定量分析が示されている。(C)TBRの定量分析が示されている(B、C;n=5、平均±SEM)。
図3B-C】同上。
図4】mEERL-hEGFR腫瘍に関するin vivo CTLA4標的化NIR-PITの有効性。(A)処置スケジュール。(B)mEERL-hEGFR腫瘍保持マウスにおけるNIR-PITの前および後の700nm蛍光イメージング。(A.U.;任意単位)(C)腫瘍体積曲線(n=10;平均±SEM、反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。(D)生存曲線(n=10;ボンフェローニ補正を用いたログランク検定;N.S.、有意差なし)。
図5】in vivoでのhEGFRおよびCTLA4を標的とする組合せNIR-PITの有効性。(A)処置スケジュール。(B)mEERL-hEGFR腫瘍保持マウスにおけるNIR-PITの前および後の700nm蛍光イメージング。腫瘍の700nm蛍光は、I.V.群を除き、光曝露の直後に減少した。黄色の円は、腫瘍の位置を表す。(C)腫瘍体積曲線(n=12~13;平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、組合せPIT群と対比)。(D)生存曲線(n=12~13、ボンフェローニ補正を用いたログランク検定、*p<0.05;**p<0.01;N.S.有意差なし)。パニツムマブNIR-PIT、CTLA4 NIR-PIT、二重NIR-PITは、それぞれ、1/12匹、3/12匹、5/13匹のマウスにおいて、腫瘍を排除した。
図6A-B】in vivoでのCD44およびCTLA4を標的とする組合せNIR-PITの有効性。(A)処置スケジュール。(B)LL/2-luc腫瘍保持マウスにおけるNIR-PITの前および後の700nm蛍光イメージング。700nm蛍光は、I.V.群を除き、NIR光曝露の直後に減少した。黄色の円は、腫瘍の位置を表す。(C)LL/2-luc腫瘍保持マウスにおけるNIR-PITの前および後のBLI。(D)BLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=10~12;平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、P<0.05;N.S.、有意差なし;二重NIR-PIT群と対比)。(E)腫瘍体積曲線(n=10~12;平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;N.S.、有意差なし;二重NIR-PIT群と対比)。(F)生存曲線(n=10~12、ボンフェローニ補正を用いたログランク検定;*、p<0.05;**、p<0.01;N.S.有意差なし;二重NIR-PIT群と対比)。
図6C-D】同上。
図6E-F】同上。
図7A-C】二重NIR-PITは、mEERL-hEGFR腫瘍内の免疫抑制環境を改善した。(A~C)領域リンパ節内の細胞集団を、mEERL-hEGFRモデルにおいてフローサイトメトリーによって各NIR-PITの2日後に分析した。樹状細胞上の活性化マーカー(CD40(A)、CD8(B)、CD96(C))の発現を、計算した。二重NIR-PIT群におけるCD86発現は、すべての他の群と比較して有意に高かった。(D)NIR光曝露の7日後の腫瘍の多重免疫組織化学染色。右:CD8(マゼンタ)、CD4(緑色)、およびFoxp3(黄色)のリンパ球マーカー染色。左:統合画像。スケールバー、100μm。(E)CD8+細胞(マゼンタの矢印)、CD4+Foxp3-細胞(緑色の矢印)、およびCD4+Foxp3+細胞(黄色の矢印)の例。(F)腫瘍内CD8+細胞密度は、二重PIT群において、対照群よりも有意に高かった(n=5、一方向ANOVAに続いてテューキーの検定、*p<0.05)。(G)腫瘍内CD8+/Treg比もまた、二重NIR-PIT群において、すべての他の群と比較して増加した(n=5、一方向ANOVAに続いてテューキーの検定、*p<0.05)。
図7D-G】同上。
図7H】二重標的化NIR-PITは、流入領域リンパ節においてCD8 T細胞を活性化する。CD8 T細胞内の活性化マーカー(CD25およびCD69)の発現を、計算した。CD25発現は、すべてのNIR-PIT群において有意に増加した。(n=5;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05;N.S.、有意差なし;I.V.群と対比)。
図8】二重NIR-PITにより、mEERL-hEGFR腫瘍に対する長期免疫が得られた。二重NIR-PITにより完全寛解を達成したマウスに、mEERL-hEGFR腫瘍を反対側の側腹部に再接種した。(A)処置スケジュールおよび再接種の位置。(B)腫瘍体積曲線。対照=新しく接種した腫瘍;再接種=二重NIR-PITによる完全な排除後に再接種した腫瘍(n=5;平均±SEM;反復測定二方向反復測定ANOVAに続いてテューキーの検定、****p<0.00001)。(C)生存曲線(ログランク検定、****p<0.0001)。
図9】両側腫瘍モデルにおけるin vivo二重NIR-PITの有効性。(A)処置スケジュール。(B)NIR光曝露の図。赤色の円は、NIR光が照射された場所を示す。NIR光を、右側の腫瘍にのみ曝露した。灰色のマークは、接種された腫瘍を示す。(C)mEERL-hEGFR腫瘍保持マウスにおけるNIR-PITの前および後の700nm蛍光イメージング。700nm蛍光は、NIR光曝露後に右側でのみ減少し、一方で、700nm蛍光は、反対側の腫瘍においては持続した。(D)腫瘍体積曲線。両方の腫瘍の腫瘍成長は、二重NIR-PIT群において、I.V.群と比較して有意に抑制された(n=10、平均±SEM、I.V.群の同じ側のみと対比;二方向ANOVA反復測定に続いてテューキーの検定、****p<0.0001)(E)生存曲線(n=10、ログランク検定、**p<0.01;N.S.有意差なし)。二重NIR-PITは、1/10匹のマウスにおいて腫瘍を排除した)。
図10】二重標的化NIR-PITが腫瘍内血液灌流を損なう。処置後の血液灌流分析。ウシアルブミン(Thermo Fisher)を、IR700に使用されるのと同じ方法を使用して、IRDye 800CW NHSエステル(IR800、LI-COR Biosciences)とコンジュゲートした。本発明者らは、コンジュゲートを、アルブミン-IR800と略す。NIR光曝露の24時間後に、50μgのアルブミン-IR800を、静脈内注射した。一連の背側800nm蛍光画像を、Pearl Imagerの800nmのチャネルで取得した。(A)腫瘍のウシアルブミン-IR800蛍光に基づく灌流の画像を注射の前および5分後、10分後、15分後に取得した。(B)標的対バックグラウンドの比の棒グラフを示す(n=5;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、P<0.05、**、P<0.01)。
図11A-B】抗PD-L1-IR700(CD274-Ab-IR700)の合成およびPD-L1標的化NIR-PITの細胞殺滅の特異性。(A)SDS-PAGEによる抗PD-L1-IR700の評価(左:コロイダルブルー染色、右:700nm蛍光)。非コンジュゲート抗PD-L1抗体を、対照として使用した。(B)SECによる抗CTLA4-IR700の評価。APCは、280および689nmの光吸収ならびに対応する蛍光を示した。したがって、コンジュゲートの純度は良好である。(C)がん細胞系におけるPD-L1発現のフローサイトメトリー分析。MC38-luc(上部)およびLL2-luc(底部)の代表的なヒストグラムを示す。(D)インターフェロンガンマありまたはなしの細胞培養物およびin vivo腫瘍から得られたがん細胞系MC38-luc(左)およびLL2-luc(右)におけるPD-L1発現のフローサイトメトリー分析。インターフェロンガンマは、PD-L1の発現を条件的に増強させる。(E)NIR-PITを標的とするin vitro PD-L1は、インターフェロンガンマで処置したMC38-luc細胞に対してより良好な細胞殺滅を示した。
図11C-D】同上。
図11E】同上。
図12】20ng/mlまたは50ng/mlのIFNgamma(IFNγ)での刺激の前および後のがん細胞系におけるPD-L1発現を示すフローサイトメトリー分析。
図13】腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現を示すフローサイトメトリー分析。
図14】in vivoで抗PD-L1-IR700を使用したMC38-luc腫瘍の処置の効果を示す、グラフ。腫瘍体積(上部のグラフ)および生存(下部のグラフ)に対する効果を、ビヒクル単独(対照)、NIR光なしの抗PD-L1-IR700(I.V.)、またはNIR光ありの抗PD-L1-IR700(PIT)の存在下で示す。(A)もともとの腫瘍の処置、(B)再接種したマウスの処置。
図15】in vivoで抗PD-L1-IR700コンジュゲートおよびIL15プレコンディショニングを使用したLL2-luc腫瘍処置の効果。ビヒクル単独(対照)、NIR光なしの抗PD-L1-IR700(I.V.のみ)、NIR光ありの抗PD-L1-IR700(PIT)、IL-15のみ、NIR光なしの抗PD-L1-IR700+IL15プレコンディショニング(IL15+APC)、またはNIR光ありの抗PD-L1-IR70+IL15プレコンディショニング(IL15+PIT)。
図16】SiPcの光分解分析。IR700と同軸のリガンドを有するPc 3の合成スキーム。
図17A-C】L-NaAAは、IR700からのリガンド放出を加速させる。(A)PBS中の様々な濃度のL-NaAAを有する25μMのPc 3に、NIR光を照射し、700nm蛍光イメージングを使用してイメージングした。(B)平均700nm蛍光強度は、NIR光およびL-NaAAの両方の用量依存性の様式で減少した(n=4、平均±SEM)。(C)L-NaAAを有するPc 3のNIR光曝露後の凝集。親水性から疎水性への可溶性の変化とともに、IR700のシアン色が減少し、凝集が出現し、同時に、700nm蛍光は、L-NaAAの用量依存性の様式で消失した。(D)PBS中の様々な濃度のL-NaAAを有する3μMのパニツムマブ-IR700に、NIR光を照射し、700nm蛍光イメージングを使用してイメージングした。(E)PBS中1mMを上回るL-NaAAを使用した場合、平均蛍光強度は、NIR光の線量依存性の様式で減少した(n=4、平均±SEM)。(F)任意の濃度のNaNを有するPBS中3μMのパニツムマブ-IR700では、NIR光曝露後の平均蛍光強度は、変化しなかった(n=4、平均±SEM)。(G)以下の5つの群においてアルゴン飽和条件下(左側)または空気の存在下(右側)においてNIR光を照射した、PBS中のIR700(0.5mM)およびL-NaAA(10mM)を含有する試料のESRスペクトル;(i)対照スペクトル(薬物なし)、(ii)NIR曝露なしのPBS中のIR700(0.5mM)およびL-NaAA(10mM)を含有する試料の対照スペクトル、(iii)(ii)の条件下においてNIR光曝露ありのESRスペクトル、(iv)PBS中のIR700(0.5mM)、L-NaAA(10mM)、およびNaN3(100mM)を含有する、NIR曝露なしの試料の対照スペクトル、(v)(iv)の条件下においてNIR光曝露ありのESRスペクトル。△;実施例7に記載されるクオーツESRチューブを起源とする望ましくないが無視できる程度のシグナル。(H)条件(iii)および(v)におけるIR700(後/前)の残存パーセンテージ。平均値が、示される(n=2)。
図17D-F】同上。
図17G-H】同上。
図18A-C】L-システインは、NIR光曝露後のリガンド放出を加速させるが、NaNは、この反応を阻害する。(A)PBS中の様々な濃度のL-システインを有する25μMのPc 3における平均700nm蛍光強度は、NIR光およびL-システインの両方の用量依存性の様式で減少した(n=4、平均±SEM)。(B)L-システイン混合物を有するPc 3におけるNIR光曝露後の凝集。IR700のシアン色が減少し、凝集が出現し、同時に、700nm蛍光は、L-システインの用量依存性の様式で消失した。(C)PBS中の様々な濃度のL-システインを有する3μMのパニツムマブ-IR700に、NIR光を照射し、700nm蛍光イメージングを使用してイメージングした。PBS中1mMを上回るL-システイン条件下において、平均700nm蛍光強度は、NIR光の線量依存性の様式で減少した(n=4、平均±SEM)。(D)PBS中3μMのパニツムマブ-IR700を有する1mMを上回るNaN3下において、NIR光曝露後の平均700nm蛍光強度は、有意に減少した(n=4、平均±SEM、0mMのNaN3と対比;二方向ANOVA反復測定に続いてダネットの検定;*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001)。(E)1mMのL-NaAAおよびL-システインの両方を有するPBS中3μMのパニツムマブ-IR700において、NaN3は、NIR光曝露後の平均700nm蛍光強度に影響を及ぼさなかった(n=4、平均±SEM)。(F)アルゴン飽和条件下においてNIR光を照射した場合のPBS中のIR700(0.5mM)およびL-システイン(10mM)を含有する試料から得られたESRスペクトル。(i)NIR光曝露なしのPBS中のIR700(0.5mM)およびL-システイン(10mM)を含有する試料の対照スペクトル。(ii)試料にNIR光を照射したときに得られたESRスペクトル。(iii)赤色で示されるESRスペクトルは、100mMのNaNをPBS中のIR700(0.5mM)およびL-システイン(10mM)を含有する試料に添加し、それらにアルゴン飽和条件下においてNIRを照射することによって得られた。灰色を重ねたESRスペクトルは、(ii)に示されるNaN3の非存在下において得られたESRスペクトルと同一である。△;クオーツESRチューブを起源とする望ましくないが無視できる程度のシグナル。Cys;L-システイン。(G)条件(ii)および(iii)における残存IR700%(後/前)。平均値が、示される(n=2)。(H)いくつかの条件におけるIR700の存在下でのシスチンおよびシステインのHPLCのチャート。システインを含有するIR700の溶液に、低酸素条件下で照射した場合、システインおよびシスチンのピークは観察されたが、照射なしの場合にはシスチンのピークは存在しなかった。一方で、好気性条件の場合、システインのピークは、照射後にほとんど消失した。
図18D-E】同上。
図18F-G】同上。
図18H】同上。
図19A-B】in vitroでNaNを添加した、還元剤を用いたA431 GFP-luc細胞におけるパニツムマブNIR-PITの有効性。L-NaAA(A)またはL-システイン(B)を用いたパニツムマブNIR-PITによって誘導されるA431 GFP-luc細胞の膜損傷を、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して測定した(n=4、平均±SEM、L-NaAAまたはL-システインなしのNIR-PITと対比;一方向ANOVAに続いてダネットの検定;**、p<0.01;N.S.、有意差なし)。(C)L-NaAAおよびL-システインの両方を用いたNIR-PITによるA431 GFP-luc細胞の膜損傷を、PI染色を使用して測定した(n=4、平均±SEM、還元剤なしのNIR-PITと対比;一方向ANOVAに続いてダネットの検定;**、p<0.01;***、p<0.001;N.S.、有意差なし)。10mMのNaN3条件下において、L-NaAA(D)またはL-システイン(E)を用いたパニツムマブNIR-PITによって誘導されるA431 GFP-luc細胞の膜損傷を、PI染色によって測定した(n=4、平均の±SEM;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001;N.S.、有意差なし)。
図19C】同上。
図19D-E】同上。
図20A-B】L-NaAA(A)またはL-システイン(B)を用いたパニツムマブNIR-PITによって誘導されるMDAMB468 GFP-luc細胞の膜損傷を、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して測定した(n=4;**、p<0.01;N.S.、有意差なし;L-NaAAまたはL-システインなしのNIR-PITと対比;一方向ANOVAに続いてダネットの検定)。10mMのNaN条件下において、L-NaAA(C)またはL-システイン(E)を用いたパニツムマブNIR-PITによって誘導されるMDAMB468 GFP-luc細胞の膜損傷を、PI染色によって測定した。(n=4;*、p<0.05;N.S.、有意差なし;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定)。各値は、独立した実験の平均±SEMを表す(n=4)。
図20C-D】同上。
図21A-B】生物発光イメージング(BLI)によって細胞生存率を評価した。細胞を、NIR-PIT処置の1時間後にD-ルシフェリン(150mg mL-1、1ウェル当たり10μL;Gold Biotechnology、St. Louis、MO)に曝露し、M3 Vision Software(Biospace Lab)を使用して、BLIを行った(Photon Imager;Biospace Lab、Paris、France)。ROIを、ウェル全体を含むように設定し、平均ルシフェラーゼ活性を測定した。10mMのNaN3の条件下において、L-NaAAまたはL-システインを用いたパニツムマブNIR-PITによって誘導されるA431 GFP-luc細胞(A、B)およびMDAMB468 GFP-luc細胞(C、D)の細胞生存率を、BLIによって測定した。(n=4;****、p<0.0001;N.S.、有意差なし;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定)。各値は、独立した実験の平均±SEMを表す(n=4)。
図21C-D】同上。
図22A-B】アルブミン-IR700プロセシングに対する還元剤の効果。(A)処置スケジュール。(B)L-NaAAありまたはなしの蛍光の代表的な画像。(C)無胸腺マウスにおけるL-NaAAありまたはなしのNIR光曝露の前および後の平均蛍光強度(n=4、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05;N.S.、有意差なし)。(E)L-システインありまたはなしの蛍光の代表的な画像。(E)無胸腺マウスにおけるL-システインありまたはなしのNIR光曝露の前および後の平均蛍光強度(n=4、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。
図22C-D】同上。
図22E】同上。
図23】MC38-luc腫瘍に対するL-NaAA単独のin vivo有効性。(A)処置スケジュール。(B)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるL-NaAA投与の前(6日目)ならびに後(8日目、10日目、および12日目)のBLI。(C)BLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=10、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。
図24A-B】MC38-luc腫瘍モデルにおけるCD44標的化NIR-PITに関するL-NaAAの有効性。(A)処置スケジュール。(B)蛍光イメージング、ならびに(C)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるL-NaAAありまたはなしのCD44標的化NIR-PITの前および後の平均700nm蛍光強度(n=10、平均±SEM;対応のあるt検定;N.S.、有意差なし)。(D)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるCD44標的化NIR-PITの前(6日目)および後(8~12日目)のBLI。(E)BLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=10;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;****、P<0.0001;N.S.、有意差なし)。(F)浮腫の形成(赤色の矢印)が、CD44標的化NIR-PITの1日後に示された。(G)体重曲線(n=10、平均の±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。(H)NIR-PITの1日後のT2WI脂肪抑制MRIイメージング。赤色の矢印は、MC38-luc皮下腫瘍を示す。(I)冠状方向T2WI脂肪抑制MR画像から計算した平均高強度面積(n=3、平均±SEM;対応のないt検定;*、p<0.05)。
図24C-D】同上。
図24E-G】同上。
図24H-I】同上。
図25A-C】LL/2-lucおよびMOC2-luc腫瘍に対するL-NaAAを用いたCD44標的化NIR-PITのin vivo有効性。(A)処置スケジュール。(B)蛍光イメージング、ならびに(C)LL/2-luc腫瘍保持マウスにおけるL-NaAAありまたはなしでのCD44標的化NIR-PITの前および後の平均蛍光強度(n=10、平均±SEM;対応のあるt検定;N.S.、有意差なし)。(D)LL/2-luc腫瘍保持マウスにおけるCD44標的化NIR-PITの前(6日目)および後(8~11日目)のBLI。(E)LL/2-lucおよび(F)MOC2-luc腫瘍においてBLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=10、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;***、P<0.001;****、P<0.0001;N.S.、有意差なし)。(G)LL/2-lucおよびMOC2-luc腫瘍におけるL-NaAAありまたはなしのCD44標的化NIR-PITの1日後の浮腫の形成(赤色の矢印)。(H)LL/2-lucおよび(I)MOC2-luc腫瘍保持マウスにおける体重曲線。(n=10、平均±SEM;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。
図25D-F】同上。
図25G-I】同上。
図26A-C】A431 GFP-luc腫瘍に対するL-NaAAを用いたパニツムマブNIR-PITのin vivo有効性。(A)処置スケジュール。(B)蛍光イメージング、ならびに(C)A431 GFP-luc腫瘍保持マウスにおけるL-NaAAありまたはなしでのパニツムマブNIR-PITの前および後の平均蛍光強度(n=8、平均±SEM;対応のあるt検定;N.S.、有意差なし)。(D)A431 GFP-luc腫瘍保持マウスにおけるパニツムマブNIR-PITの前(6日目)および後(8~12日目)のBLI。(E)BLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=8、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;N.S.、有意差なし)。
図26D-E】同上。
図27】浮腫の磁気共鳴イメージング。(A)MC38-luc腫瘍におけるL-NaAAありまたはなしのCD44標的化NIR-PITの1日後の冠状方向T2WI STIR画像。(B)CD44標的化NIR-PIT後の冠状方向T2WI STIR MR画像から計算した平均高強度面積(n=3、平均±SEM;対応のないt検定;*、p<0.05)。
図28A-C】L-NaAAを用いたNIR-PIT後の活性酸素標本(ROS)のイメージングおよび定量化。L-NaAAありまたはなしのNIR-PIT後のROSを評価するために、ROSを、化学発光イメージング(CLI)で評価し、ここで、L-012(0.5mgマウス-1;FUJIFILM Wako Chemicals U.S.A Corp、Richmond、VA)を、マウスに腹腔内注射した。光子計数を、Photon Imager(Biospace Lab)で相対光単位を使用して評価した。ROIを、腫瘍全体にわたって配置した。相対光単位の1分当たりの計数を、M3 Vision Software(Biospace Lab)を使用して計算し、以下の式を使用してNIR-PIT前のものに基づくパーセンテージに変換した:[(処置後の相対光単位)/(処置前の相対光単位)×100(%)]。化学発光画像を、NIR-PITの1時間後および3時間後に継続して記録した。(A)処置スケジュール。(B)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるCD44標的化NIR-PITの前および後のCLI。(C)CD44標的化NIR-PIT後のMC38-lucにおけるCLIから計算した光子計数(n=5、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05)。(D)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるCTLA4標的化NIR-PITの前および後のBLI。(E)CTLA4標的化NIR-PIT後のMC38-lucにおけるBLIから計算した光子計数(n=5、平均±SEM;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05)。
図28D-E】同上。
図29A-C】MC38-luc腫瘍モデルにおけるCTLA4標的化NIR-PITに関するL-NaAAの早期有効性。(A)処置スケジュール。(B)蛍光イメージング、ならびに(D)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるL-NaAAありまたはなしでのCTLA4標的化NIR-PITの前および後の平均蛍光強度(n=10、平均±SEM;対応のあるt検定;N.S.、有意差なし)。(D)MC38-luc腫瘍保持マウスにおけるCTLA4標的化NIR-PITの前(6日目)および後(8~13日目)のBLI。(E)BLIから計算したルシフェラーゼ活性(n=10;反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定;****、p<0.0001;N.S.、有意差なし)。(G)浮腫の形成(赤色の矢印)が、CTLA4標的化NIR-PITの1日後に示された。(G)CTLA4標的化NIR-PITの1日後のT2WI脂肪抑制MRIイメージング。赤色の矢印は、MC38-luc皮下腫瘍を示す。(H)冠状方向T2WI脂肪抑制MRI画像から計算した平均高強度面積(n=3、平均±SEM;対応のないt検定;**、p<0.01)。(I)体重曲線(n=10、平均の±SEM;一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05)。(J)L-NaAAを用いたCTLA4標的化NIR-PITの3時間後の全生細胞間のCTLA4hi細胞のパーセンテージ(n=4、一方向ANOVAに続いてテューキーの検定;*、p<0.05;N.S.、有意差なし)。
図29D-E】同上。
図29F-H】同上。
図29I-J】同上。
図30A】スキームは、L-NaAAによるROSクエンチおよびIR700のリガンド放出の加速に関する提案された機序を示す。(A)IR700の光誘導性リガンド放出反応のエネルギー図。IR700は、電子を受け取り、ラジカルアニオンとなる。L-システインおよびL-NaAAは、電子供与体として作用する。ラジカルアニオンからのリガンド放出反応は、酸性条件において加速される。したがって、リガンド放出反応は、L-NaAAによって加速される。(B)NIR-PIT後の急性浮腫を抑制するためのL-NaAAの機序。NIR-PITの間、ROSもまた生成され、浮腫を引き起こす。L-NaAAは、ROSをクエンチし、急性浮腫の防止をもたらすが、光誘導性リガンド放出を促進する。
図30B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0038】
いくつかの実施形態の詳細な説明
別途説明されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示される本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含む。同様に、「または」という言葉は、文脈により別途明確に示されない限り、「および」を含むことを意図する。「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising)」とは、「Aを含む(including)」、または「Bを含む(including)」、または「AおよびBを含む(including)」ことを意味する。
【0039】
本開示の実施形態の実施および/または試験に好適な方法および材料を、以下に記載する。そのような方法および材料は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されるものと類似または同等の他の方法および材料を、使用することができる。例えば、従来的な方法は、様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されており、これには、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press, 2001、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, 1992 (and Supplements to 2000)、Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 4th ed., Wiley & Sons, 1999、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990、およびHarlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999が挙げられる。
【0040】
本明細書において参照されるすべてのGenBank(登録商標)受託番号と関連付けられた配列は、2021年1月29日の時点で利用可能な配列に関して参照により組み込まれる。
【0041】
本明細書におけるすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0042】
本開示の様々な実施形態の考察を容易にするために、特定の用語の説明を、以下に提供する。
【0043】
アブスコパル効果:局所治療(例えば、NIR-PIT)の直接的な標的ではない身体の一部における、腫瘍、例えば、転移の処置。例えば、適切な抗体-IR700コンジュゲートと組み合わせたNIR光での特定の腫瘍の照射は、NIR光を照射していない異なる腫瘍(例えば、転移)のサイズを低減させ得る。未照射/遠位腫瘍は、一部の例において(例えば、ヒトにおいて)、NIR光で処置される腫瘍から少なくとも3インチ離れており、例えば、NIR光で処置される腫瘍から少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも10インチ、少なくとも12インチ、少なくとも18インチ、または少なくとも24インチ離れている。
【0044】
投与:対象に、薬剤、例えば、抗体-IR700分子、還元剤、および/または免疫モジュレーターを、任意の有効な経路によって提供または供与すること。投与の例示的な経路としては、局部、全身、または局所注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、骨内、前立腺内、および静脈内)、経口、眼内、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣内、ならびに吸入の経路が挙げられるが、これらに限定されない。1つの例では、投与は、静脈内である。1つの例では、投与は、腹腔内である。
【0045】
抗体:抗原のエピトープ、例えば、腫瘍特異的タンパク質、または免疫細胞、例えば、T細胞上に特異的に発現されるタンパク質を特異的に認識しそれに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンド。抗体は、重鎖および軽鎖から構成され、これらのそれぞれは、可変重鎖(V)領域および可変軽鎖(V)領域と称される可変領域を有する。まとめて、V領域およびV領域は、抗体によって認識される抗原に結合することを担う。
【0046】
抗体、例えば、抗体-IR700分子におけるものは、インタクトな免疫グロブリンならびに抗体のバリアントおよび部分、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)を含む。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域および免疫グロブリンの重鎖可変領域が、リンカーによって結合された融合タンパク質であるが、一方で、dsFvの場合は、鎖が、鎖の会合を安定させるためにジスルフィド結合を導入するように突然変異されている。用語はまた、遺伝子操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)も含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL)、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W. H. Freeman & Co., New York, 1997もまた参照されたい。
【0047】
典型的には、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。ラムダ(λ)およびカッパ(κ)の2つのタイプの軽鎖が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖のクラス(またはアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgE。
【0048】
各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する(領域は、「ドメイン」としても公知である)。組み合わせて、重鎖および軽鎖可変領域は、抗原を特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも称される3つの超可変領域により分断される「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、定義されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。Kabatのデータベースは、現在、オンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種、例えば、ヒト内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成要素である軽鎖および重鎖の合わせたフレームワーク領域は、三次元空間においてCDRを位置付けおよびアライメントするように機能する。
【0049】
CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合を担う。各鎖のCDRは、典型的に、CDR1、CDR2、およびCDR3と称され、N末端から開始して順番に番号付けされ、また、典型的に、特定のCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、V CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方で、V CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体ごとに変動するのはCDRであるが、CDR内の限定された数のアミノ酸位置のみが、抗原結合に直接的に関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と称される。
【0050】
「V」または「VH」への言及は、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFv、またはFabのものを含む。「V」または「VL」への言及は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFv、またはFabのものを含む。
【0051】
「モノクローナル抗体」(mAb)は、Bリンパ球の単一のクローンによって、または単一の抗体の軽鎖および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生された抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞の免疫脾臓細胞との融合体からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって、産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。一部の例では、抗体-IR700分子における抗体は、mAb、例えば、ヒト化mAbである。
【0052】
「キメラ抗体」は、1つの種、例えば、ヒトに由来するフレームワーク残基、および別の種、例えば、メソテリンを特異的に結合するマウス抗体に由来するCDR(一般に、抗原結合を付与する)を有する。
【0053】
「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域、および非ヒト(例えば、マウス、ラット、または合成)免疫グロブリンに由来する1つまたは複数のCDRを含む、免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と称される。一実施形態では、すべてのCDRは、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は、存在しなくてもよいが、存在する場合は、それらは、ヒト免疫グロブリン定常領域に実質的に同一、例えば、少なくとも約85~90%、例えば、約95%、またはそれを超えて同一でなければならない。したがって、可能性としてCDRを除く、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体のアクセプターフレームワークは、限定された数の、ドナーフレームワークから得られたアミノ酸による置換を有し得る。ヒト化または他のモノクローナル抗体は、抗原結合にも他の免疫グロブリン機能にも実質的に効果を有さない追加の保存的アミノ酸置換を有し得る。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作を用いて構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
【0054】
「ヒト」抗体(「完全ヒト」抗体とも称される)は、ヒトフレームワーク領域、およびヒト免疫グロブリンに由来するすべてのCDRを含む、抗体である。1つの例では、フレームワークおよびCDRは、同じ起源のヒト重鎖および/または軽鎖アミノ酸配列に由来する。しかしながら、1つのヒト抗体に由来するフレームワークを、異なるヒト抗体に由来するCDRを含むように操作することができる。ヒト免疫グロブリンのすべての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に実質的に同一である。
【0055】
「特異的に結合する」とは、無関連のタンパク質、例えば、非腫瘍タンパク質、例えば、β-アクチンへの結合と比べて、抗原、例えば、腫瘍特異的抗原と特異的に免疫反応する個々の抗体の能力を指す。例えば、EGFR特異的結合剤は、in vitroまたはin vivoにおいて、実質的にEGFRタンパク質のみに結合する。本明細書において使用される場合、「腫瘍特異的結合剤」という用語は、腫瘍特異的抗体(およびそれらの断片)ならびにその調製物において実質的に腫瘍特異的タンパク質にのみ結合する他の薬剤を含む。
【0056】
結合は、抗体分子と、T細胞表面分子の抗原性決定基との間の非ランダム結合反応である。所望される結合特異性は、典型的に、T細胞表面分子および無関連の抗原を差次的に結合し、したがって、特に、2つの抗原が固有のエピトープを有する場合に2つの異なる抗原を区別する、抗体の能力の参照点から、決定される。特定のエピトープに特異的に結合する抗体は、「特異的抗体」と称される。
【0057】
一部の例では、抗体(例えば、抗体-IR700分子におけるもの)は、標的(例えば、細胞表面タンパク質、例えば、腫瘍特異的タンパク質)に、試料または対象における他の分子に対する結合定数よりも少なくとも10-1高い、10-1高い、または10-1高い結合定数で、特異的に結合する。一部の例では、抗体(例えば、mAb)またはその断片は、1nMまたはそれを下回る平衡定数(Kd)を有する。例えば、抗体は、標的、例えば、腫瘍特異的タンパク質に、少なくとも約0.1×10-8M、少なくとも約0.3×10-8M、少なくとも約0.5×10-8M、少なくとも約0.75×10-8M、少なくとも約1.0×10-8M、少なくとも約1.3×10-8M、少なくとも約1.5×10-8M、または少なくとも約2.0×10-8Mの結合親和性で結合する。Kd値は、例えば、競合的ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)によって、または表面プラズモン共鳴デバイス、例えば、Biacore,Inc.、Piscataway、NJから入手可能なBiacore T100を使用して、決定することができる。
【0058】
抗体-IR700分子または抗体-IR700コンジュゲート:IR700にコンジュゲートし、抗体、例えば、腫瘍特異的抗体の両方を含む、分子。一部の例では、抗体は、がん細胞上の表面タンパク質、例えば、腫瘍特異的抗原に特異的に結合する、ヒト化抗体(例えば、ヒト化mAb)である。
【0059】
抗原(Ag):動物において抗体の産生またはT細胞応答を刺激することができる、化合物、組成物、または物質で、動物に注射または吸収される組成物(例えば、腫瘍特異的タンパク質を含むもの)を含む。抗原は、異種抗原、例えば、開示される抗原によって誘導されるものを含む、特異的な体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「エピトープ」または「抗原性決定基」は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の領域を指す。一実施形態では、エピトープが、MHC分子と併せて提示された場合、T細胞はエピトープに応答する。エピトープは、連続的なアミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並置される非連続的なアミノ酸の両方から形成され得る。連続的なアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的に、変性溶媒に曝露された際に保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的に、変性溶媒での処置の際に失われる。エピトープは、固有の空間コンフォメーションにおいて、典型的には少なくとも3個のアミノ酸、より通例的には少なくとも5個、約9個、または約8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間コンフォメーションを決定する方法としては、例えば、X線結晶構造解析および核磁気共鳴が挙げられる。
【0060】
抗原の例としては、抗原性決定基、例えば、免疫細胞によって認識されるものを含有する、ペプチド、脂質、多糖、および核酸が挙げられるが、これらに限定されない。一部の例では、抗原としては、腫瘍特異的タンパク質もしくはペプチド(例えば、細胞、例えば、がん細胞の表面上に見出されるもの)、またはその免疫原性断片が挙げられる。一部の例では、抗原としては、免疫細胞特異的タンパク質もしくはペプチド(例えば、免疫細胞、例えば、T細胞、例えば、調節性T細胞の表面上に見出されるもの)、またはその免疫原性断片が挙げられる。
【0061】
がん:異常または無制御な細胞成長によって特徴付けられる、悪性腫瘍。多くの場合がんと関連する他の特色としては、転移、隣接する細胞の正常な機能性への干渉、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、および炎症性応答または免疫応答の抑制または悪化、周囲または遠位組織または器官、例えば、リンパ節の浸潤などが挙げられる。「転移性疾患」は、もともとの腫瘍部位から出て、例えば、血流またはリンパ系を介して、身体の他の部分へと移動する、がん細胞を指す。1つの例では、開示される方法によって殺滅される細胞は、がん細胞である。
【0062】
CD25(IL-2受容体アルファ鎖):(例えば、OMIM 147730)活性化されたT細胞、活性化されたB細胞、一部の胸腺細胞、骨髄系前駆体、および乏突起膠細胞に存在する、I型膜貫通タンパク質。CD25は、マウスにおいてCD4+FoxP3+調節性T細胞を特定するためのマーカーとして使用されている。CD25は、B細胞新生物、一部の急性非リンパ球性白血病、神経芽細胞腫、肥満細胞症、および腫瘍浸潤リンパ球を含む、一部のがん細胞の表面において見出される。それは、HTLV-1の受容体として機能し、その結果、成人T細胞リンパ腫/白血病において新生物細胞に発現される。例示的なCD25配列は、GenBank(登録商標)データベースにおいて見出すことができる(例えば、受託番号CAA44297.1、NP_000408.1、およびNP_001295171.1)。CD25に特異的な例示的なmAbは、ダクリズマブおよびバシリキシマブであり、これらを、IR700に付着させ、ダクリズマブ-IR700またはバシリキシマブ-IR700を形成することができ、これを、CD25を発現するがん細胞を標的とするために開示される方法において使用するか、または免疫調節分子として(例えば、腫瘍内の腫瘍浸潤Treg細胞を低減させるために)使用することができる。
【0063】
接触させること:直接的な物理的会合におくことで、固体形態および液体形態の両方を含む。接触させることは、in vitro、例えば、単離された細胞、例えば、腫瘍細胞で、または対象(例えば、腫瘍、例えば、がんを有する対象)に投与することによってin vivoで生じてもよい。
【0064】
細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4):(例えば、OMIM 123890)抗腫瘍免疫抑制を媒介する主要な免疫チェックポイント分子。CTLA4は、調節性T細胞において構成的に発現されるが、活性化後の従来的なT細胞においては上方調節のみがなされ、これは、がんにおいて特に顕著な現象である。例示的なCTLA4配列は、GenBank(登録商標)データベースにおいて見出すことができる(例えば、受託番号AAL07473.1、AAF01489.1、およびAF414120.1)。CTLA4に特異的な例示的なmAbは、イピリムマブであり、これを、IR700に付着させてイピリムマブ-IR700を形成することができ、これを、開示される方法において使用して、CTLA4を発現する細胞、例えば、黒色腫のCTLA4を発現する細胞またはCTLA4を発現するT細胞を標的とすることができる。
【0065】
減少:あるものの品質、量、または強度を低減させること。1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子を含む治療用組成物は、抗体-IR700分子が特異的に結合する細胞の生存率を、細胞にNIR(例えば、約680nmまたは690nmの波長)を少なくとも1J/cm(例えば、4~100J/cm)の線量で照射した後に、例えば、抗体-IR700分子の非存在下における応答と比較して、減少させる。一部の例では、そのような減少は、細胞、例えば、がん細胞または腫瘍床におけるCD4Foxp3 Tregの殺滅によって証明される。一部の例では、細胞の生存率の減少は、抗体-IR700分子を含まない組成物で観察される生存率と比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、またはさらには少なくとも90%である。他の例では、減少は、倍数変化、例えば、細胞生存率の、抗体-IR700分子を含まない組成物で観察される生存率と比べて、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、8分の1以下、10分の1以下、またはさらには15もしくは20分の1以下の減少として表される。そのような減少は、本明細書に開示される方法を使用して測定することができる。
【0066】
上皮成長因子受容体(EGFR):(例えば、OMIM 131550)細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーの受容体である膜貫通タンパク質。上皮成長因子受容体は、4つの緊密に関連する受容体チロシンキナーゼのサブファミリーである、受容体のErbBファミリーのメンバーである:EGFR(ErbB-1)、HER2/neu(ErbB-2)、Her 3(ErbB-3)、およびHer 4(ErbB-4)。EGFRは、HER2および他のHERファミリーメンバーとヘテロ二量体を形成することができる。EGFRの発現または活性に影響を及ぼす突然変異は、肺の腺癌、肛門がん、神経膠芽腫、および頭頸部の上皮腫瘍を含む、がんをもたらし得る。例示的なEGFR配列は、GenBank(登録商標)データベースにおいて見出すことができる(例えば、受託番号NP_001333826.1、CAA55587.1、およびAAF14008.1)。EGFRに特異的な例示的なmAbは、パニツムマブであり、これを、IR700に付着させてパニツムマブ-IR700を形成することができ、これを、開示される方法において使用して、EGFRを発現する細胞を標的とすることができる。
【0067】
免疫モジュレーター:免疫モジュレーターは、免疫系の1つまたは複数の機能を変更させる(例えば、増加または減少させる)物質である。一部の例では、免疫モジュレーターは、免疫系を活性化する。他の例では、免疫モジュレーターは、免疫サプレッサー細胞の活性を阻害する(または殺滅する)。一部の例では、免疫モジュレーターは、mAbであり、これを、IR700に付着させてmAb-IR700を形成することができ、これを、開示される方法において使用して、mAbによって認識されるタンパク質を発現する細胞を標的とすることができる。例示的な免疫モジュレーターとしては、免疫活性化因子IL-15およびIFN-ガンマが挙げられる。
【0068】
IR700(IRDye(登録商標)700DX):以下の式を有する色素である。
【化1】
【0069】
LI-COR(Lincoln、NE)から市販されている。アミノ反応性IR700は、比較的親水性の色素であり、IR700のNHSエステルを使用して抗体と共有結合的にコンジュゲートすることができる。IR700はまた、従来的な光感作剤、例えば、ヘマトポルフィリン誘導体Photofrin(登録商標)(630nmで1.2×10-1cm-1)、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、Foscan(登録商標)(652nmで2.2×10-1cm-1)、およびモノ-L-アスパルチルクロリンe6、NPe6/Laserphyrin(登録商標)(654nmで4.0×10-1cm-1)よりも、5倍を上回って高い消散係数を有する(最大689nmの吸光で2.1×10-1cm-1)。
【0070】
医薬組成物:対象に適切に投与された場合に、所望される治療効果または予防効果を誘導することができる、化学的化合物または組成物。医薬組成物は、治療剤、例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子、還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子を含み得る。治療剤または医薬剤は、単独または追加の化合物と一緒に、所望される応答を誘導する(例えば、対象に投与された場合に治療効果または予防効果を誘導する)ものである。特定の例では、医薬組成物は、治療有効量の少なくとも1つの抗体-IR700分子を含む。
【0071】
薬学的に許容されるビヒクル:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来的なものである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 21st Edition (2005)は、1つまたは複数の治療用化合物、例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子の薬学的送達に好適な組成物および製剤について記載している。
【0072】
一般に、担体の性質は、用いられる特定の投与様式に依存することになる。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどといった、薬学的および生理学的に許容される流体を含む、注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)については、従来的な非毒性の固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与しようとする医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0073】
光免疫療法(PIT):細胞タンパク質(例えば、細胞表面上のもの)を標的とするモノクローナル抗体(MAb)にコンジュゲートした、近赤外(NIR)フタロシアニン色素IRDye700DX(IR700)に基づく標的特異的光感作剤を利用する、分子標的化治療。1つの例では、細胞表面タンパク質は、がん細胞または免疫細胞上に特異的に見出されるものであり、したがって、PITは、そのような細胞を殺滅するために使用することができる。細胞死は、抗体-IR700コンジュゲートが細胞に結合し、細胞に、NIRを照射した場合に生じるが、一方で、抗体-IR700分子により認識される細胞表面タンパク質を発現しない細胞は、多数が殺滅されることはない。
【0074】
プログラム死1(PD-1):(例えば、OMIM 600244)免疫系を下方調節することによってヒト身体の細胞に対する免疫系の応答を調節し、T細胞炎症性活性を抑制することによって自己寛容性を促進する役割を有する、細胞の表面上の1型膜タンパク質。PD-1は、PD-L1およびPD-L2の2つのリガンドに結合する。例示的なPD-1配列は、GenBank(登録商標)データベースにおいて見出すことができる(例えば、受託番号CAA48113.1、NP_005009.2、およびNP_001076975.1)。開示される方法と組み合わせて使用することができるPD-1に特異的な例示的なアンタゴニストmAbとしては、Jounce TherapeuticsによるJTX-4014、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ(PDR001)、カムレリズマブ(SHR1210)、シンチリマブ(IBI308)、チスレリズマブ(BGB-A317)、トリパリマブ(JS 001、ドスタルリマブ(TSR-042、WBP-285)、INCMGA00012(MGA012)、AMP-224、およびAMP-514が挙げられる。PD-1に特異的な例示的なmAbは、ニボルマブであり、これを、開示される方法と組み合わせて使用することができる。
【0075】
プログラム死リガンド1(PD-L1):(例えば、OMIM 605402)特定の事象、例えば、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、および肝炎の際に免疫系の適応アームを抑制する、細胞の表面上の1型膜タンパク質。阻害性チェックポイント分子PD-1へのPD-L1の結合は、免疫受容体チロシンに基づくスイッチモチーフ(ITSM)モチーフを介したホスファターゼ(SHP-1またはSHP-2)との相互作用に基づく阻害性シグナルを伝達する。PD-L1は、活性化されたT細胞、B細胞、および骨髄系細胞上に見出されるPD-1に結合して、活性化または阻害をモジュレートする。例示的なPD-L1配列は、GenBank(登録商標)データベースにおいて見出すことができる(例えば、受託番号ADK70950.1、NP_054862.1、およびNP_001156884.1)。PD-L1活性をアンタゴナイズする抗体を、IR700にコンジュゲートし(抗PD-L1-IR700を形成し)、本明細書に提供される方法を、例えば、腫瘍特異的抗原Ab-IR700分子と組み合わせて使用することができる。PD-L1に特異的な例示的なアンタゴニストmAbとしては、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、およびMEDI-4737が挙げられ、これらのうちのいずれかを、IR700にコンジュゲートすることができる。例えば、PD-L1に特異的な1つの例示的なmAbは、デュルバルマブであり、これを、IR700に付着させてデュルバルマブ-IR700を形成することができ、これを、開示される方法において使用して、PD-L1を発現する細胞を標的とすることができる。
【0076】
還元剤:酸化還元化学反応において、電子を電子レシピエント(酸化剤)にわたす(または「供与する」)エレメントまたは化合物。還元剤は、したがって、酸化還元反応において電子を失うと、酸化される。還元剤は、酸化剤を「還元する」(またはそれによって「酸化される」)。したがって、1つまたは複数の還元剤を、in vitroおよびin vivoでNIR-PITと組み合わせて使用して、NIR光への曝露後にIR700から生じる活性酸素種に起因する望まれない非特異的組織損傷を低減することができる。例えば、還元剤は、結合していないかまたは腫瘍のエリア内にある活性酸素種を不活性化し、身体の他のエリア内の望まれない急性炎症を低減させることができる。本明細書に提供される方法において使用することができる例示的な還元剤としては、L-システイン、L-アスコルビン酸ナトリウム(L-NaAA)、アスコルビン酸(例えば、L-またはR-アスコルビン酸)、およびグルタチオンが挙げられる。一部の例では、アジ化ナトリウムは、その毒性に起因して、in vivoでは使用されない。したがって、一部の例では、開示される方法において使用される還元剤は、アジ化ナトリウムではない。1つの例では、開示される方法において使用される還元剤は、L-NaAAである。
【0077】
対象または患者:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む用語。1つの例では、対象は、ヒトまたは獣医学的対象、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、または非ヒト霊長類である。一部の例では、対象は、がんを有するかまたはがんに関して処置されている哺乳動物(例えば、ヒト)である。
【0078】
治療有効量:単独、または追加の治療剤(例えば、抗CTLA4-IR700分子、抗PD-L1-IR700分子、免疫モジュレーター、および/または還元剤)と一緒に、薬剤で処置されている対象または細胞において所望される効果を達成するのに十分な組成物の量である。薬剤(例えば、単独または他の薬剤と組み合わせた抗体-IR700分子)の有効量は、処置されている対象または細胞、特定の治療剤、および治療用組成物の投与様式を含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に依存し得る。1つの例では、抗体-IR700分子および/または免疫モジュレーターの治療有効量または濃度は、疾患の進展(例えば、転移)を予防する、その進行を遅延させる、もしくはその退縮を引き起こすのに十分であるもの、または疾患、例えば、がんによって引き起こされる症状を低減することができるものである。1つの例では、抗体-IR700分子および/または免疫モジュレーターの治療有効量または濃度は、腫瘍を有する患者の生存期間を増加させるのに十分であるものである。1つの例では、還元剤の治療有効量または濃度は、NIR-PITで処置された対象における浮腫、急性炎症性反応、またはその両方を減少させるのに十分であるものである。
【0079】
1つの例では、所望される応答は、がんと関連する1つまたは複数の症状を低減または阻害することである。1つまたは複数の症状は、組成物が有効であるために、完全に排除される必要はない。例えば、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、一部の例では、腫瘍のサイズ(例えば、腫瘍または腫瘍の転移の体積または重量)を、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)腫瘍サイズと比較して、例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには少なくとも100%減少させる。1つの特定の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、細胞(例えば、がん細胞)の集団を、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)細胞殺滅と比較して、例えば、細胞の少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには少なくとも100%を殺滅することによって、殺滅する。1つの特定の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、腫瘍を有する患者(または最近腫瘍が除去されたもの)の生存期間を増加させる、例えば、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)生存期間と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%生存を増加させる。一部の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、対象におけるメモリーT細胞の量を、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)メモリーT細胞の量と比較して、例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%の増加で、増加させる。一部の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、対象におけるMHC I型拘束性の腫瘍特異的抗原に対するポリクローナル抗原特異的TIC応答の量を増加させる、例えば、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)MHC I型拘束性の腫瘍特異的抗原に対するポリクローナル抗原特異的TIC応答の量と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%増加させる。一部の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、標的とされる腫瘍におけるTreg(例えば、FOXP3CD25CD4 Treg細胞)の量を減少させる、例えば、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)標的とされる腫瘍におけるTregの量と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも100%減少させる。一部の例では、本明細書に提供されるモダリティでの処置は、処置される対象におけるCD8+/Treg比を増加させる、例えば、処置がない状態における(または本明細書に提供される治療法のサブセットのみでの)CD8+/Treg比と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%増加させる。一部の例では、これらの効果の組合せが、開示される方法によって達成される。
【0080】
ヒトまたは獣医学的対象に投与される治療剤の有効量は、その対象と関連するいくつかの因子、例えば、対象の全般的な健康状態に応じて変動し得る。薬剤の有効量は、組成物の投薬量を変動させ、結果として得られる治療応答、例えば、腫瘍の退縮を測定することによって、決定することができる。有効量はまた、様々なin vitro、in vivo、またはin situでのイムノアッセイを通じて決定することもできる。開示される薬剤は、所望される応答を得るために必要に応じて、単回用量または複数回用量で投与することができる。しかしながら、有効量は、適用されている処置、処置されている対象、処置されている状態の重症度および種類、ならびに投与の様式に依存し得る。
【0081】
特定の例では、抗体-IR700分子の治療有効用量は、例えば、i.v.投与される場合、少なくとも60キログラム当たり0.5ミリグラム(mg/kg)、少なくとも5mg/60kg、少なくとも10mg/60kg、少なくとも20mg/60kg、少なくとも30mg/60kg、少なくとも50mg/60kg、例えば、0.5~50mg/60kg、例えば、1mg/60kg、2mg/60kg、5mg/60kg、20mg/60kg、または50mg/60kgの用量である。別の例では、抗体-IR700分子の治療有効用量は、例えば、腫瘍内またはip投与される場合、少なくとも10μg/kg、例えば、少なくとも100μg/kg、少なくとも500μg/kg、または少なくとも500μg/kg、例えば、10μg/kg~1000μg/kg、例えば、100μg/kg、250μg/kg、約500μg/kg、750μg/kg、または1000μg/kgの用量である。1つの例では、抗体-IR700分子の治療有効用量は、局部溶液で投与される、少なくとも1μg/ml、例えば、少なくとも500μg/ml、例えば、20μg/ml~100μg/mlの間、例えば、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、または100μg/mlである。しかしながら、当業者であれば、例えば、特定の抗体-IR700分子に応じて、より高いかまたは低い投薬量もまた使用され得ることを認識するであろう。特定の例では、そのような一日投薬量は、1つもしくは複数の分割された用量(例えば、2、3、もしくは4つの用量)で、または単一の製剤において、投与される。開示される抗体-IR700分子は、単独で、薬学的に許容される担体の存在下で、他の治療剤(例えば、他の抗新生物剤)の存在下で、投与され得る。
【0082】
一般的に、1つまたは複数の抗体-IR700分子(および一部の例では還元剤も)の投与後の好適な照射線量は、660~740nmの波長において少なくとも1J/cm、例えば、660~740nmの波長において少なくとも10J/cm、660~740nmの波長において少なくとも20J/cm、660~740nmの波長において少なくとも25J/cm、660~740nmの波長において少なくとも50J/cm、または660~740nmの波長において少なくとも100J/cm、例えば、660~740nmの波長において1~500J/cmである。一部の例では、波長は、660~710nmである。具体的な例では、抗体-IR700分子の投与後の好適な照射線量は、680もしくは690nmの波長において少なくとも1J/cm、例えば、680もしくは690nmの波長において少なくとも10J/cm、680もしくは690nmの波長において少なくとも20J/cm、680もしくは690nmの波長において少なくとも25J/cm、680もしくは690nmの波長において少なくとも50J/cm、または680もしくは690nmの波長において少なくとも100J/cm、例えば、680または690nmの波長において4~50J/cmまたは10~25J/cmである。特定の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与後に(ならびに一部の例では、免疫モジュレーターおよび/または還元剤の投与後も)複数回の照射(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、または少なくとも4回の照射、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回の別個の投与)が行われる。
【0083】
処置すること:治療剤での細胞または組織の処置を指して使用される場合、1つもしくは複数の薬剤(例えば、1つまたは複数の抗体-IR700分子、ならびに一部の例では、1つもしくは複数の免疫活性化因子および/または1つもしくは複数の還元剤も)を、細胞もしくは組織と接触させるかもしくはそれとともにインキュベートすること、および/または1つまたは複数の薬剤を対象、例えば、がんを有する対象に投与することを含む、用語。処置された細胞は、所望される応答に十分な量および条件下で、所望される組成物と接触されている細胞である。1つの例では、処置された細胞は、抗体が細胞上の表面タンパク質に結合するのに十分な条件下で抗体-IR700分子に曝露されており、必要に応じて、還元剤と接触され、十分な細胞殺滅が達成されるまで、NIR光が照射されている、細胞である。他の例では、処置された対象は、抗体が細胞上の表面タンパク質に結合するのに十分な条件下で1つまたは複数の抗体-IR700分子が投与されており、必要に応じて、1つまたは複数の還元剤が投与され、十分な細胞殺滅が達成されるまで、NIR光が照射されている、対象である。
【0084】
腫瘍、新形成、悪性腫瘍、またはがん:新生物は過剰な細胞分裂により生じる組織または細胞の異常な成長である。新生物性成長により、腫瘍が生じ得る。個体における腫瘍の量は、「腫瘍量」であり、これは、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる。転移しない腫瘍は、「良性」と称される。周囲の組織に侵入する、および/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と称される。「非がん性組織」は、悪性新生物が形成されたが、新生物の特徴的な病理を有さない、同じ器官に由来する組織である。一般的に、非がん性組織は、組織学的に正常に見える。「正常組織」は、器官ががんまたはその器官の別の疾患もしくは障害に罹患していない、器官に由来する組織である。「無がん」対象は、その器官のがんを有すると診断されておらず、検出可能ながんを有さない。
【0085】
腫瘍は、もともとの(原発性)腫瘍、再発性腫瘍、および転移性(二次)腫瘍を含む。腫瘍再発は、もともとの(原発性)腫瘍と同じ部位において、例えば、腫瘍が、外科手術で、薬物、もしくは他の処置によって除去されたか、またはそれ以外の方法で消滅した後に、腫瘍が再来することである。転移は、身体の1つの部分から別の部分への腫瘍の拡がりである。拡がった細胞から形成された腫瘍は、二次腫瘍と称され、もともとの(原発性)腫瘍におけるもののような細胞を含有する。原発性腫瘍または転移のいずれかの再発があり得る。
【0086】
開示される方法で処置することができる例示的な腫瘍、例えば、がんとしては、固形腫瘍、例えば、乳癌(例えば、小葉癌および乳管癌)、肉腫、肺の癌腫(例えば、非小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および腺癌)、肺の中皮腫、結腸直腸腺癌、頭頸部がん(例えば、腺癌、扁平上皮細胞癌、転移性扁平上皮、例えば、HPVまたはエプスタイン・バーウイルス、例えば、HPV16によって引き起こされるがんには、口腔、舌、頬、鼻咽頭、喉、下咽頭、中咽頭、喉頭、および気管のがんが含まれる)、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣生殖細胞腫瘍、精巣癌および生殖細胞腫瘍、膵臓腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(例えば、移行細胞癌、腺癌、および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(例えば、腺癌およびミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮頸外膜、および膣の癌(例えば、それらのそれぞれの腺癌および扁平上皮癌)、皮膚の腫瘍(例えば、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、皮膚付属器腫瘍(skin appendage tumor)、カポジ肉腫、皮膚リンパ腫、皮膚付属器腫瘍(skin adnexal tumor)、ならびに様々なタイプの肉腫およびメルケル細胞癌)、食道癌、鼻咽頭および中咽頭の癌(それらの扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系腫瘍(例えば、神経膠、神経、および髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟部組織肉腫、および骨および軟骨の肉腫、ならびにリンパ系腫瘍(B細胞およびT細胞悪性リンパ腫を含む)が挙げられる。1つの例では、腫瘍は、腺癌である。1つの例では、腫瘍は、中咽頭がんである。1つの例では、腫瘍は、扁平上皮癌、例えば、頭頸部または皮膚のものである。
【0087】
方法はまた、液性腫瘍(例えば、血液学的悪性腫瘍)、例えば、リンパ系、白血球、または他の種類の白血病を処置するために使用することができる。具体的な例では、処置される腫瘍は、血液の腫瘍、例えば、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞性白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、および成人T細胞性白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、ならびに骨髄腫である。
【0088】
十分な条件下:所望される活性を可能にする任意の環境を説明して使用される語句。1つの例では、「~に十分な条件下」は、対象に、抗体-IR700分子を、抗体-IR700分子がその標的とされる細胞表面タンパク質(例えば、腫瘍特異的抗原または免疫細胞特異的抗原)に結合することを可能にするのに十分に投与することを含む。特定の例では、所望される活性は、抗体-IR700分子が結合した細胞の、細胞の治療的照射後の殺滅である。
【0089】
未処置:未処置細胞は、治療剤、例えば、抗体-IR700分子および/または照射と接触していない細胞である。ある例では、未処置細胞は、治療剤が送達されるビヒクルを受容する細胞である。同様に、未処置対象は、治療剤、例えば、抗体-IR700分子および/または照射が投与されていない対象である。ある例では、未処置対象は、治療剤が送達されるビヒクルを受容する対象である。
【0090】
ある特定の具体的な例の開示は、他の実施形態の排除を意味するものではない。加えて、本明細書に記載されるいずれの処置も、必ずしも他の処置を排除するものではなく、他の生体活性剤または処置モダリティと組み合わせることができる。
【0091】
技術の概要
近赤外光免疫療法(NIR-PIT)は、IRDye700DX(IR700)と称される光吸収性シリコン-フタロシアニン色素誘導体にコンジュゲートしたモノクローナル抗体(mAb)およびNIR光を利用して壊死性/免疫原性細胞死を誘導する、高度に選択的ながん処置である。静脈内投与のおよそ1日後に、抗体-光吸収剤コンジュゲート(APC、本明細書において、抗体-IR700分子とも称される)は、がん細胞表面マーカーに結合する。APCの結合後のNIR光の適用により、色素におけるリガンドの放出、APC-抗原複合体の可溶性の劇的な変化、およびがん細胞の急速な不可逆的細胞膜損傷が高度に選択的な様式で生じ、高度に免疫原性の細胞死がもたらされる。臨床的に、このプロセスは、活性酸素種(ROS)によって媒介される処置後の浮腫をもたらす。
【0092】
CTLA4は、抗腫瘍免疫抑制を媒介する主要な免疫チェックポイント分子である。CTLA4標的化NIR-PIT(多くは調節性T細胞(Treg)である腫瘍内CTLA4細胞を枯渇させる)を、腫瘍標的化NIR-PIT(例えば、IR700にコンジュゲートした腫瘍特異的抗体を使用する)と組み合わせて使用した腫瘍処置に対する相乗効果を示すデータが、本明細書に提供される。したがって、CTLA4標的化NIR-PITは、CTLA4軸を遮断すること、ならびにCTLA4を発現する免疫サプレッサー細胞を排除することによって、潜在的なT細胞に媒介される抗腫瘍免疫の誘導をもたらすことで、腫瘍を効果的に処置することができる。NIR-PITを、例えば、腫瘍特異的抗原抗体-IR700コンジュゲートと組み合わせて使用した、腫瘍床における局所的なCTLA4を発現する細胞の枯渇は、様々な腫瘍型を処置するために使用することができる。
【0093】
抗PD-L1-IR700は、がん細胞を標的とし、免疫抑制のPD1-PDL1軸を遮断し、それが一部のマウス患者を治癒したため、NIR-PITともに抗PD-L1-IR700を使用することが、がん+免疫療法として位置付けられ得ることを示すデータもまた、提供される。加えて、例えば、IL-15、インターフェロンガンマ、またはその両方と組み合わせた、さらなる免疫活性化により、完全奏功(CR)率を向上させ、これを使用して腫瘍を処置し生存を増加させることができる。
【0094】
治療効果を損なうことなく一過性の急性炎症性浮腫を最小限に抑えるために、還元剤、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム(L-NaAA)またはL-システインを投与して、有害なROSをクエンチし、リガンド放出反応を加速させた。L-NaAAおよびL-システインは、NIR-PIT後のROSを還元することによって急性浮腫を抑制したが、治療効果を変更させることはなかった。NIR-PITは、L-NaAAまたはL-システインの存在下において、不必要なROS産生によって引き起こされる副作用を有することなく、安全に行うことができた。したがって、還元剤、例えば、L-システインおよびL-アスコルビン酸ナトリウムを、NIR-PITと組み合わせて使用して、活性酸素種に起因する望まれない非特異的組織損傷、例えば、浮腫(例えば、一過性急性浮腫)および急性炎症性反応を低減することができる。一部の例では、還元剤は、ROSをクエンチするが、NIR光に誘導されるIR700のリガンド放出反応を促進する電子供与体である。1つの例では、処置される腫瘍は、浮腫が気道閉塞および咳嗽などの副作用を引き起こし得る重要な構造体、例えば、頸部または縦隔の気道の近傍に位置し、それを、開示される方法で処置することができる。
【0095】
これらの観察に基づいて、NIR-PITを使用して対象におけるがんを処置する方法、例えば、(1)1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せ、(2)1つもしくは複数の腫瘍特異的抗体-IR700コンジュゲート、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはその両方、および必要に応じて(3)1つまたは複数の還元剤の投与が、本明細書に提供される。一部の例では、方法は、NIR-PITを使用して対象におけるがんを処置すること、例えば、(1)1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700コンジュゲート、(2)1つまたは複数の還元剤、および必要に応じて(3)1つまたは複数の免疫活性化因子の投与を含む。一部の例では、方法は、NIR-PITを使用して対象におけるEGFRを発現するがんを処置すること、例えば、(1)1つまたは複数のCTLA4抗体-IR700分子、(2)1つまたは複数のEGFR抗体-IR700コンジュゲート、および必要に応じて(3)1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはその両方の投与を含む。一部の例では、方法は、NIR-PITを使用して対象におけるがんを処置すること、例えば、(1)1つまたは複数のPD-L1抗体-IR700分子、(2)1つまたは複数の免疫活性化因子、および必要に応じて(3)1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の腫瘍特異的抗体-IR700コンジュゲート、またはその両方の投与を含む。
【0096】
そのような方法は、NIR光を照射した部位、ならびに照射されていない遠位転移において、がん細胞を殺滅する。還元剤の存在は、IR700分子の照射により生じる活性酸素種を除去または低減させることができ、これにより、望まれない炎症および浮腫が低減される。そのような方法は、局所的、およびさらには処置された部位から離れた遠位転移の両方で、様々ながんの高度に有効な処置を提供する(アブスコパル効果)。
【0097】
がんを処置するための方法
本開示は、がんを有する対象、例えば、固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍を有する対象を処置するための方法を提供する。方法は、対象に、色素IR700にコンジュゲートした抗体(本明細書において、抗体-IR700分子または抗体-光吸収剤コンジュゲート(APC)と称される)を投与するステップであって、抗体が、一部の例では、がん(例えば、腫瘍)細胞表面タンパク質(本明細書において、腫瘍特異的抗原またはタンパク質とも称される)に特異的に結合する、ステップを含む。腫瘍特異的タンパク質は、がん細胞に固有であるか、またはがん細胞において、他の細胞、例えば、正常細胞と比較してはるかに豊富である、タンパク質である。例えば、HER2は、一般的に、乳がんにおいて見出されるが、HER1は、典型的には、腺癌において見出され、これは、多数の器官、例えば、膵臓、乳房、前立腺、および結腸において見出され得る。一部の例では、APCの抗体は、免疫細胞、例えば、T細胞、例えば、調節性細胞上のタンパク質に特異的に結合する。1つの例では、抗体に特異的に結合する免疫細胞特異的タンパク質は、CTLA4である。方法は、(a)対象に、治療有効量の1つもしくは複数の免疫活性化因子(例えば、IL-15もしくはIFN-ガンマ)を投与するステップ、(b)対象に、治療有効量の1つもしくは複数の還元剤を投与するステップ(例えば、浮腫を低減するため)、または(a)および(b)の両方をさらに含み得る。
【0098】
対象は、治療有効量の1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子(例えば、薬学的に許容される担体、例えば、薬学的および生理学的に許容される流体の存在下で)を、抗体ががん細胞表面タンパク質に特異的に結合するのを許容する条件下において投与される。例えば、抗体-IR700分子は、ビヒクルとして、薬学的に有効な担体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液(例えば、PBS/EDTA)、水性デキストロース、ゴマ油、グリセロール、エタノール、これらの組合せなどにおいて存在し得る。担体および組成物は、滅菌であり得、製剤は、投与の様式に適している。具体的な例では、抗体-IR700分子は、EGFR抗体-IR700である。一部の例では、腫瘍特異的抗体は、HER1/EGFR、PD-L1、メソテリン、PSMA、HER2/ERBB2、CD3、CD18、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD30、CD33、CD44、CD52、CD133、CD206、CEA、AFP、ルイスY、TAG7)、VEGF、VEGFR、EpCAM、EphA2、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、インテグリンαVβ3、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、BCR複合体、gp72、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、IgE、CA242、PEM抗原、SK-1抗原、PD-1、またはPD-L2に特異的である。
【0099】
一部の例では、対象は、治療有効量の1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せ(例えば、薬学的に許容される担体、例えば、薬学的および生理学的に許容される流体の存在下で)を、抗体ががん細胞表面タンパク質に特異的に結合するのを許容する条件下においてさらに投与される。例えば、CTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せは、ビヒクルとして、薬学的に有効な担体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液(例えば、PBS/EDTA)、水性デキストロース、ゴマ油、グリセロール、エタノール、これらの組合せなどにおいて存在し得る。
【0100】
一部の例では、腫瘍特異的抗体-IR700分子、およびCTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せは、単一の組成物に存在し、同時に投与される。他の例では、腫瘍特異的抗体-IR700分子、およびCTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せは、別個の組成物に存在し、同時もしくは同時期に、または逐次的に(例えば、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも30分間、もしくは少なくとも60分間の間隔で)投与される。
【0101】
一部の例では、対象は、例えば、治療有効量の1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、および/または1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子と組み合わせて、治療有効量の1つまたは複数の免疫活性化因子がさらに投与される。免疫活性化因子は、免疫系活性化因子、および/または免疫サプレッサー細胞の1つもしくは複数の阻害剤(例えば、薬学的に許容される担体、例えば、薬学的および生理学的に許容される流体の存在下で)を含む。具体的な例では、免疫活性化因子剤は、IL-15である。別の具体的な例では、免疫調節剤は、インターフェロンガンマである。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、対象に、1つまたは複数の抗体-IR700分子と同時に(例えば、同時にまたは実質的に同時に)、例えば、同じ組成物において、投与される。他の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子および1つまたは複数の免疫活性化因子は、対象に、逐次的に(いずれかの順序で)例えば、互いに少なくとも約1時間(例えば、約5分間、約10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間、約2時間、約12時間、約24時間、約48時間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間以内)離れて、投与される。
【0102】
一部の例では、対象は、例えば、NIR-PITにより生じ得る浮腫を低減させるために、治療有効量の1つまたは複数の還元剤がさらに投与される。一部の例では、抗体-IR700分子および還元剤は、単一の組成物に存在し、同時に投与される。他の例では、抗体-IR700分子および還元剤は、別個の組成物に存在し、同時もしくは同時期に、または逐次的に(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子に続いて還元剤を、例えば、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも12時間、または少なくとも24時間の間隔で)投与される。
【0103】
一部の例では、腫瘍特異的抗体-IR700分子は、静脈内投与される。一部の例では、CTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せは、静脈内投与される。一部の例では、1つまたは複数の還元剤は、腹腔内投与される。一部の例では、腫瘍特異的抗体-IR700分子、およびCTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せは、静脈内投与される。一部の例では、腫瘍特異的抗体-IR700分子は、静脈内投与され、1つまたは複数の還元剤は、腹腔内投与される。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子(例えば、IL15)は、静脈内投与される。1つの例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、例えば、1~10mgの用量で静脈内投与される、IL15である。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子(例えば、IFNγ)は、腫瘍内投与される。1つの例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、例えば、1mgを上回らない、例えば、0.01~1mgの用量で腫瘍内投与される、IFNγである。
【0104】
1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子)を投与した後に、1つまたは複数の抗体-IR700分子は、標的とされる腫瘍または腫瘍の免疫細胞内に蓄積することが可能である。同様に、1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せを投与した後に、そのような分子は、それらのそれぞれのタンパク質(それぞれ、CTLA4またはPD-L1)、例えば、そのようなタンパク質を発現する細胞に、例えば、腫瘍床に存在するCTLA4またはPD-L1を発現する細胞に、結合することが可能である。腫瘍細胞および腫瘍床(またはがんを有する対象)における他の細胞は、次いで、抗体-IR700コンジュゲートが結合した細胞の殺滅を許容する条件下において、例えば、660~740nm(例えば、600~710nm)の波長において、少なくとも1J/cmの線量で(例えば、680nmまたは690nm、10~60J/cmの線量、例えば、20~50J/cmまたは20~30J/cmの線量で)の照射で、照射される。
【0105】
1つの例では、抗体-IR700コンジュゲートの投与と照射の間には、少なくとも約10分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、または少なくとも約48時間(例えば、約1~4時間、30分間~1時間、10分間~60分間、30分間~8時間、2~10時間、12~24時間、18~36時間、または24~48時間)ある。1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700コンジュゲートが投与され(例えば、i.v.)、少なくとも約10分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、または少なくとも約48時間(例えば、約1~4時間、30分間~1時間、10分間~60分間、30分間~8時間、2~10時間、12~24時間、18~36時間、または24~48時間、例えば、約12時間または約24時間)後に、腫瘍(または対象)が照射される。1つまたは複数の免疫活性化因子は、1つまたは複数の抗体-IR700コンジュゲートの前または後、および照射の前または後に、投与され得る(例えば、全身、例えば、ivまたはip)。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、照射の前および後に投与され、例えば、照射の前に少なくとも1回の用量の免疫活性化因子、および照射の後に少なくとも1回の用量の免疫活性化因子(例えば、照射の24時間前、および照射の24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、またはそれよりも後の1つまたは複数)が、投与される。追加の例では、免疫活性化因子の用量はまた、少なくとも1回の照射処置と同じ日に投与されてもよい。1つまたは複数の還元剤は、1つまたは複数の抗体-IR700コンジュゲートの前または後であるが、照射の前(例えば、照射の少なくとも5分前、少なくとも10分前、少なくとも15分前、または少なくとも30分前、例えば、5~60分前)に、投与され得る(例えば、全身、例えば、ivまたはip)。
【0106】
一部の例では、抗体-IR700分子のうちの1つまたは複数の複数回の用量は、対象に、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回の別個の用量(または投与)で投与される。一部の例では、1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せの複数回の用量は、対象に、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回の別個の用量(または投与)で投与される。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子の複数回の用量は、対象に、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回の別個の用量(または投与)で投与される。一部の例では、1つまたは複数の還元剤の複数回の用量は、対象に、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回の別個の用量(または投与)で投与される。一部の例では、NIRでの複数回の照射線量は、対象に、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回の別個の線量(または投与)で投与される。具体的な例では、対象は、抗体-IR700分子のうちの1つまたは複数の少なくとも1回の用量、1つまたは複数の免疫活性化因子の少なくとも2回の用量、および少なくとも2回の別個のNIR照射の投与が投与される。
【0107】
NIR励起光波長は、組織内への少なくとも数センチメートルの透過を可能にする。例えば、ディフューザーチップ付きファイバー結合型レーザーダイオードを使用することによって、NIR光は、身体表面に対して深部に位置する、それ以外ではアクセス不可能な腫瘍の数センチメートル内部へと送達され得る。固形がんを処置することに加えて、循環腫瘍細胞(血液学的悪性腫瘍を含むがこれらに限定されない)を、(例えば、本明細書に記載されるNIR LED着用可能デバイスを使用して)表在血管を移動する際に励起することができるため、それらを標的とすることができる。
【0108】
1つの例では、開示される方法は、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、(a)1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、またはこれらの組合せ、(b)1つまたは複数の還元剤、(c)1つまたは複数の免疫活性化因子、あるいはa、b、およびcの組合せと組み合わせた、1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子の投与なし、ならびにNIR照射なし)と比べて、処置された標的細胞(例えば、腫瘍特異的抗原を発現するがん細胞、または腫瘍床内の免疫細胞、例えば、腫瘍床内のPD-L1もしくはCTLA4を発現するT細胞、例えば、CTLA4を発現する腫瘍床内の4CD4Foxp3 Treg)のうちの少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれよりも多くを殺滅する。
【0109】
1つの例では、開示される方法は、使用される抗体-IR700コンジュゲートの抗体に特異的に結合するタンパク質(例えば、腫瘍特異的抗原、CTLA4、またはPD-L1)を発現する細胞を選択的に殺滅し、それによって、腫瘍を処置する。例えば、正常細胞と比べて腫瘍細胞を選択的に殺滅することにより、方法は、正常細胞、例えば、例として、投与される抗体に特異的に結合するタンパク質(例えば、腫瘍特異的抗原)を発現しない細胞などよりも効果的に腫瘍細胞を殺滅することができる。一部の例では、開示される方法は、腫瘍の重量、サイズ、および/または体積を減少させるか、腫瘍の成長を減速させるか、腫瘍の再発を減少もしくは減速させるか、腫瘍の転移を減少もしくは減速させる(例えば、転移の数を低減させるか、もしくは転移の重量/体積/サイズを減少させることによって)か、またはこれらの組合せを行う。例えば、開示される方法は、一部の例では、腫瘍サイズ(例えば、腫瘍の重量または体積)を、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、(a)1つもしくは複数の還元剤、(b)1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与なし、ならびに/あるいはNIR照射なし)と比べて、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには100%、低減させる。一部の例では、開示される方法は、転移の重量、体積、またはサイズを、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、(a)1つもしくは複数の還元剤、(b)1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与なし、ならびに/あるいは原発性腫瘍のNIR照射なし)と比べて、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには100%、減少させる。一部の例では、開示される方法は、アブスコパル効果を有し、それ自体が660~740nmの波長において少なくとも1J cm-2の線量(例えば、少なくとも4J cm-2の線量または4~50J cm-2の線量)で照射されておらず、腫瘍または病変部の照射されたエリアから遠位に位置する転移の重量、体積、またはサイズを減少させる。一部の例では、照射されていない転移の重量、体積、またはサイズは、開示される方法での処置によって(例えば、(a)1つもしくは複数の還元剤、(b)1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与なし、ならびに/あるいは原発性腫瘍のNIR照射なしで)、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには100%減少する。
【0110】
他の免疫細胞と比べてTreg細胞(例えば、CD4Foxp3 Treg)の選択的な殺滅により、方法は、他の免疫細胞、例えば、腫瘍床内にないTregなどよりも効果的に照射されたTreg細胞を殺滅することができる。1つの例では、開示される方法(例えば、CTLA4抗体-IR700を使用するもの)は、Tregを減少させる(例えば、腫瘍床内のFOXP3 CD4 Treg細胞を減少させるが、身体の他の部分、例えば、脾臓または領域リンパ節においては減少させない)。例えば、開示される方法は(例えば、CTLA4抗体-IR700またはPD-L1抗体-IR700が投与される例では)、一部の例では、腫瘍床内のFOXP3 CD4 Treg細胞の数を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれを上回って、減少させる。一部の例では、開示される方法は、CD4Foxp3細胞:CD4Foxp3細胞の比を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも200%、少なくとも300%、またはそれを上回って、増加させる。一部の例では、開示される方法は、脾臓または腫瘍の領域リンパ節内のFOXP3 CD4 Treg細胞の数を、実質的に減少させず、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、10%以下、5%以下、1%以下、または0.5%以下で減少させる。
【0111】
一部の例では、開示される方法は、腫瘍内血管灌流を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはそれを上回って、減少させる。
【0112】
一部の例では、開示される方法は、腫瘍、再発、および/または転移性腫瘍と関連する1つまたは複数の症状を減少させる。1つの例では、開示される方法は、腫瘍の成長を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、例えば、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれを上回って、減速させる。1つの例では、開示される方法は、腫瘍の再発を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、例えば、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらには100%、低減または排除する。
【0113】
一部の例では、開示される方法は、対象(例えば、腫瘍を有するかまたは腫瘍が以前に除去されている対象)の生存期間を、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて増加させる。一部の例では、対象の生存期間は、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれを上回って増加する。一部の例では、対象の生存期間は、例えば、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)と比べて、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも1.5年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、またはそれを上回って増加する。例えば、開示される方法は、一部の例では、対象の無増悪生存期間または無疾患生存期間(例えば、原発性腫瘍の再発の欠如または転移の欠如)を、開示される方法での処置がない状態(例えば、1つもしくは複数の抗体-IR700分子の投与なし、および/またはNIR照射なし)での平均生存期間と比べて、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、少なくとも48ヶ月間、少なくとも60ヶ月間、またはそれを上回って増加させる。
【0114】
一部の例では、NIR-PITと組み合わせた1つまたは複数の還元剤の使用は、処置される対象における浮腫を、NIR-PITとともに1つまたは複数の還元剤を使用しない浮腫の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらには少なくとも95%低減させる。一部の例では、NIR-PITと組み合わせた1つまたは複数の還元剤の使用は、処置される対象における急性炎症性反応を、NIR-PITとともに1つまたは複数の還元剤を使用しない急性炎症性反応の量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらには少なくとも95%低減させる。
【0115】
1つの例では、上に列挙される効果の組合せが、開示される方法で達成される。
【0116】
開示される方法は、身体における固定腫瘍、ならびに血液学的悪性腫瘍および/または循環中の腫瘍(例えば、白血病細胞、転移、および/もしくは循環腫瘍細胞)を処置するために使用することができる。しかしながら、循環細胞は、それらの性質により、それほど長く光に曝露することができない。したがって、殺滅しようとする細胞が、身体全体を循環しているものである場合、方法は、着用することができるデバイスまたは身体の部分を覆うものを使用することによって、達成することができる。例えば、そのようなデバイスは、長期間着用することができる。NIR放出発光ダイオード(LED)およびバッテリーパックを組み込んだ日常の着用可能物品(例えば、腕時計、ジュエリー(例えば、ネックレスまたはブレスレット)、ブランケット、衣服(例えば、下着、靴下、および靴の中敷き)、ならびに他の日常の着用可能物品)を使用することができる。そのようなデバイスは、長い期間にわたって、デバイスの下にある皮膚に光を生成し、長期間にわたって、表在血管への継続的な光の曝露をもたらす。循環腫瘍細胞は、デバイスの下にあるエリアを通るときに、光に曝露される。例として、このデバイスの腕時計またはブレスレットバージョンは、一連のNIR LEDをバッテリーパワーパックとともに含み得、1日の大半の間着用される。1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子の(例えば、1つもしくは複数のCTLA4抗体-IR700分子、1つもしくは複数のPD-L1抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、全身的に、例えば、ivおよび/またはipでの)投与の後に、循環細胞は、抗体-IR700コンジュゲートに結合し、PITによる殺滅に対して感受性となる。これらの細胞が、日常の着用可能物品(例えば、ブレスレットまたは腕時計)に存在するLEDに隣接する血管内を流動するときに、それらは、NIR光に曝露され、それらが細胞殺滅に対して感受性となるであろう。光線量は、診断および細胞型に応じて調整可能であり得る。
【0117】
一部の例では、方法は、治療法、例えば、腫瘍細胞の殺滅、Tregの殺滅、またはその両方をモニタリングするステップをさらに含む。そのような例では、対象は、例えば、1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)が投与され、本明細書に記載されるように照射される。しかしながら、より低い用量の抗体-IR700コンジュゲートおよびNIR光を、モニタリング(細胞殺滅は、必要とされない場合があるため、治療法のモニタリングのみ)に使用してもよい。1つの例では、モニタリングするために投与される抗体-IR700コンジュゲートの量は、多くとも2分の1(例えば、治療用量の多くとも3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、または10分の1)である。1つの例では、モニタリングするために投与される抗体-IR700コンジュゲートの量は、治療用量よりも少なくとも20%または少なくとも25%低い。1つの例では、モニタリングするために使用されるNIR光の量は、治療線量の少なくとも1/1000または少なくとも1/10,000である。これは、処置されている細胞の検出を可能にする。例えば、そのような方法を使用することによって、腫瘍のサイズおよび転移を、モニタリングすることができる。
【0118】
一部の例では、方法は、外科手術、例えば、内視鏡術中に有用である。例えば、抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)が、例えば、1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせて投与され、細胞/対象に、上述のように照射した後、これは、細胞殺滅をもたらすだけでなく、外科医または他の医療従事者が、腫瘍の境界部を視認することを可能にし、腫瘍(例えば、皮膚、乳房、肺、結腸、頭頸部、または前立腺の腫瘍)の切除が完了すること、および境界部を明瞭にすることを確実にするのに役立つ。一部の例では、多くとも2分の1(例えば、治療用量の多くとも3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、または10分の1)などの、より低い用量の抗体-IR700コンジュゲートを、視覚化に使用することができる。
【0119】
1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、例えば、腫瘍、例えば、がんを有する対象、または腫瘍が以前に除去された(例えば、外科手術によって)対象に、局所的または全身的に投与され得る。具体的な例が提供されているが、当業者であれば、開示される治療剤の代替的な投与方法を使用してもよいことを理解するであろう。そのような方法としては、例えば、処置を必要とする対象に数時間から数日間の期間にわたって連続的な注入を提供する、カテーテルまたは埋込み可能なポンプの使用を挙げることができる。
【0120】
1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、腫瘍(腫瘍内)または器官(例えば、前立腺)への直接的な注射または注入を含む、非経口手段によって投与される。一部の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、薬剤を腫瘍に適用する、例えば、治療剤の局所注射、治療剤を含有する溶液に腫瘍を浸すことによって、または治療剤を腫瘍に注ぐことよって、腫瘍に投与される。
【0121】
加えて、または代替的に、開示される組成物は、腫瘍(例えば、がん)を有する対象に、全身的に、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、皮下、または経口で投与され得る。1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、同じかまたは異なる経路によって、投与され得る。1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子は、iv投与され、1つまたは複数の還元剤は、腹腔内に送達される。1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子および1つまたは複数の免疫活性化因子は、ivおよび/または腫瘍内に投与され、1つまたは複数の還元剤は、腹腔内に送達される。別の例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、全身的に(例えば、静脈内または腹腔内に)投与される。1つの例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子および/または免疫細胞特異的抗体-IR700分子)、1つまたは複数の還元剤、および1つまたは複数の免疫活性化因子は、腹腔内投与される。1つの例では、1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子、1つまたは複数の免疫活性化因子、および1つまたは複数の還元剤は、静脈内投与される。
【0122】
対象に投与しようとする本明細書に提供される治療剤の投薬量は、絶対限界値の対象ではなく、組成物の性質、その活性成分、およびその可能性のある不必要な副作用(例えば、抗体に対する免疫応答)、処置されている対象および処置されている状態の種類、ならびに投与の様式に依存し得る。一般的に、用量は、治療有効量、例えば、所望される生物学的効果を達成するのに十分な量、例えば、腫瘍のサイズ(例えば、体積および/または重量)を減少させるか、または腫瘍のさらなる成長を減弱させるか、または腫瘍の望まれない症状を減少させるのに有効な量であろう。
【0123】
抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)の静脈内投与に関して、単回処置での対象への投与のための例示的な投薬量は、0.5~200mg/60kg体重、1~100mg/60kg体重、1~50mg/60kg体重、1~20mg/60kg体重、例えば、約1または2mg/kg体重の範囲であり得る。なおも別の例では、腹腔内または腫瘍内に投与される抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)の治療有効量は、体重1kg当たり10μg~5000μgの抗体-IR700分子、例えば、10μg/kg~1000μg/kg、10μg/kg~500μg/kg、または100μg/kg~1000μg/kgである。1つの例では、ヒト患者に投与される抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)の用量は、少なくとも50mg、例えば、少なくとも100mg、少なくとも300mg、少なくとも500mg、少なくとも750mg、またはさらには1gである。
【0124】
還元剤の静脈内投与に関して、単回処置での対象への投与のための例示的な投薬量は、0.5~300g/60kg体重、1~300g/60kg体重、1~50g/60kg体重、1~20g/60kg体重、1~10g/60kg体重、10~300g/60kg体重、例えば、1、2、5、10、20、50、100、200、または300g/60kg体重の範囲であり得る。なおも別の例では、腹腔内または腫瘍内に投与される還元剤の治療有効量は、体重1kg当たり10mg~5000mgの還元剤、例えば、10mg/kg~1000mg/kg、10mg/kg~500mg/kg、または100mg/kg~1000mg/kgである。1つの例では、ヒト患者に投与される還元剤の用量は、少なくとも1g、少なくとも10g、少なくとも20g、少なくとも50g、少なくとも100g、少なくとも200g、少なくとも300g、例えば、1、2、5、10、20、50、100、200、または300gである。
【0125】
免疫活性化剤、例えば、IL-15の静脈内投与に関して、単回処置での対象への投与のための例示的な投薬量は、0.1~100mg、例えば、1~10mgまたは0.5~20mgの範囲であり得る。免疫活性化剤、例えば、IFNガンマの腫瘍内投与に関して、単回処置での対象への投与のための例示的な投薬量は、0.01~1mg、例えば、0.1~0.5mgまたは0.05~5mgの範囲であり得る。
【0126】
開示される抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子での処置は、1日で完了し得るか、または同じかもしくは異なる投薬量を用いて複数日間反復的に行われてもよい。反復処置は、同日、連日、または1~3日ごと、3~7日ごと、1~2週間ごと、2~4週間ごと、1~2ヶ月ごと、またはさらに長い間隔で、行われてもよい。一部の例では、抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子は、同日に投与される。他の例では、抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子は、異なる日に投与され、例えば、1つまたは複数の免疫活性化因子が、抗体-IR700分子の前日に投与されるか、または抗体-IR700分子が、1つまたは複数の還元剤の前日に投与される)。1つの非限定的な例では、1つまたは複数の抗体-IR700分子および1つまたは複数の免疫活性化因子は、同日に対象に投与され、1つまたは複数の免疫活性化因子の反復用量(同じかまたは異なる投薬レベルで)が、連日、または1~3日ごと、3~7日ごと、1~2週間ごと、2~4週間ごと、1~2ヶ月ごと、またはさらに長い間隔で、対象に投与される(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれよりも多くの追加の用量の1つまたは複数の免疫活性化因子)。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子の反復用量の量は、初回用量と比較して低減される(例えば、50%低減される)。
【0127】
例示的な処置の組合せは、表1に提供されている。
【表1-1】
【表1-2】
【0128】
一部の例、実施例7~13および19~38のうちのいずれか1つでは、免疫活性化因子は、IL-15である。一部の例、実施例7~13および19~38のうちのいずれか1つでは、免疫活性化因子は、インターフェロンガンマである。一部の例、実施例14~24、31~36、および38~39のうちのいずれか1つでは、還元剤は、L-アスコルビン酸ナトリウムである。
【0129】
追加の実施形態では、方法はまた、対象に、1つまたは複数の追加の治療剤を投与するステップを含む。国際特許出願公開第WO 2013/009475号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、照射(例えば、660~710nmの波長における、少なくとも10J/cm、少なくとも20J/cm、少なくとも30J/cm、少なくとも40J/cm、少なくとも50J/cm、少なくとも70J/cm、少なくとも80J/cm、または少なくとも100J/cm、例えば、少なくとも10~100J/cmの線量での照射)の後に約8時間のウインドウがあり、その間、PIT処置細胞による追加の薬剤(例えば、ナノサイズ剤、例えば、直径が少なくとも約1nm、直径が少なくとも10nm、直径が少なくとも100nm、または直径が少なくとも200nm、例えば、直径が1~500nmのもの)の取り込みが、増強される。したがって、1つまたは複数の追加の治療剤が、さらに、PITと同時期または逐次的に、対象に投与され得る。1つの例では、追加の治療剤は、照射後、例えば、細胞に照射した約0~8時間後(例えば、照射の少なくとも10分後、少なくとも30分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも3時間後、少なくとも4時間後、少なくとも5時間後、少なくとも6時間後、または少なくとも7時間後、例えば、照射後10時間以内、9時間以内、または8時間以内、例えば、1時間~10時間、1時間~9時間、1時間~8時間、2時間~8時間、または4時間~8時間)に投与される。別の例では、追加の治療剤は、照射の直前(例えば、照射の約10分~120分前、例えば、照射の10分~60分前、または10分~30分前)に投与される。使用することができる追加の治療剤は、以下に考察されている。
【0130】
追加の実施形態では、リアルタイムでの細胞の殺滅の検出またはモニタリングを可能にする方法が、提供される。そのような方法は、例えば、十分な量の抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)、1つもしくは複数の還元剤、ならびに/または1つもしくは複数の免疫活性化因子、あるいは十分な量の照射が、細胞殺滅を促進するために細胞または腫瘍に送達されたことを確実にするのに有用である。これらの方法は、形態学的変化が明らかになる前に細胞殺滅の検出を可能にする。1つの例では、方法は、細胞表面タンパク質を有する細胞を、治療有効量の1つもしくは複数の抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)、1つもしくは複数の還元剤、ならびに/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と接触させるステップと、細胞に、660~740nmの波長において少なくとも10J/cmの線量で照射するステップと、細胞を、細胞に照射した約0~48時間後(例えば、細胞に照射した少なくとも1時間後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後、少なくとも6時間後、少なくとも12時間後、少なくとも18時間後、少なくとも24時間後、少なくとも36時間後、少なくとも48時間後、または少なくとも72時間後、例えば、細胞に照射した1分~30分後、10分~30分後、10分~1時間後、1時間~8時間後、6時間~24時間後、または6時間~48時間後)に蛍光寿命イメージングで検出し、それによって、リアルタイムで細胞殺滅を検出するステップとを含む。FLTの短縮は、PITによって誘導される急性膜損傷の指標としての機能を果たす。したがって、細胞は、IR700 FLTを少なくとも25%、例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも75%短縮するのに十分な条件下で照射される。1つの例では、細胞は、660nm~740nm(例えば、680nm~700nm、例えば、680または690nm)の波長において、少なくとも10J/cm、少なくとも20J/cm、少なくとも30J/cm、少なくとも40J/cm、少なくとも50J/cm、または少なくとも60J/cm、例えば、10~60J/cm、20~50J/cm、20~25J/cm、または30~50J/cmの線量で照射される。
【0131】
一部の例では、リアルタイムで細胞殺滅を検出する方法は、例えば、細胞に照射した約0~8時間後に、細胞を、1つまたは複数の追加の治療剤と接触させるステップを含む。リアルタイムイメージングは、細胞を、1つまたは複数の追加の治療剤と接触させる前または後に生じ得る。例えば、リアルタイムイメージングによって決定した場合に、1つもしくは複数の抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子の投与後に不十分な細胞殺滅が生じた場合には、細胞を、1つまたは複数の追加の治療剤と接触させることができる。しかしながら、一部の例では、細胞は、リアルタイムで細胞殺滅を検出する前に、抗体-IR700分子(腫瘍特異的抗体-IR700分子、ならびにCTLA4およびPD-L1抗体-IR700分子を含む)、1つもしくは複数の還元剤、および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子、ならびに追加の治療剤と接触される。
【0132】
例示的な細胞
標的細胞は、望ましくない細胞またはその成長が望ましくない細胞、例えば、がん細胞(例えば、腫瘍細胞)または免疫細胞(例えば、T細胞、例えば、Treg)であり得る。細胞は、処置しようとする哺乳動物、例えば、がんを有する対象(例えば、ヒトまたは獣医学的対象)に存在し得る。任意の標的細胞を、特許請求される方法で処置することができる。1つの例では、標的細胞は、他の正常な(所望される)細胞の表面上には実質的に見出されない細胞表面タンパク質を発現し、そのようなタンパク質に特異的に結合する抗体を選択することができ、そのタンパク質に対する抗体-IR700分子を生成することができる。1つの例では、細胞表面タンパク質は、腫瘍特異的タンパク質(例えば、抗原)、例えば、EGFRである。1つの非限定的な例では、細胞表面タンパク質は、CTLA4(例えば、腫瘍床におけるCD4Foxp3 Tregを標的とするため)である。1つの非限定的な例では、細胞表面タンパク質は、PD-L1である。
【0133】
1つの例では、腫瘍細胞は、がん細胞、例えば、がんを有する患者における細胞である。開示される方法を用いて殺滅することができる例示的な細胞としては、以下の腫瘍の細胞が挙げられる:血液学的悪性腫瘍、例えば、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む、白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病)。別の例では、細胞は、固形腫瘍細胞、例えば、肉腫および癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、肺がん、結腸直腸がん、扁平上皮細胞癌、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮細胞癌)、基底細胞癌、腺癌(例えば、膵臓、結腸、卵巣、肺、乳房、胃、前立腺、子宮頸部、または食道の腺癌)、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、膀胱癌、ならびにCNSがん(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)に由来する細胞である。1つの例では、腫瘍は、中咽頭がんである。
【0134】
具体的な例では、細胞は、肺がん細胞である。
【0135】
具体的な例では、細胞は、乳がん細胞である。
【0136】
具体的な例では、細胞は、結腸がん細胞である。
【0137】
具体的な例では、細胞は、頭頸部がん細胞である。
【0138】
具体的な例では、細胞は、前立腺がん細胞である。
【0139】
具体的な例では、細胞は、中咽頭がん細胞である。
【0140】
具体的な例では、細胞は、扁平上皮細胞癌細胞、例えば、頭頸部または皮膚がんのもの)である。
【0141】
一部の例では、方法は、アブスコパル効果を有し得るため、処置されるがんまたはがん細胞は、照射される腫瘍から遠位の部位にあるもの、例えば、660~740nmの波長における少なくとも1J/cmの線量での照射を受けない、例えば、1mm離れた、1インチ離れた、2インチ離れた、3インチ離れた、4インチ離れた、6インチ離れた、12インチ離れた、またはそれよりも遠くの遠位転移である。
【0142】
一部の例では、処置されるがんまたはがん細胞は、中等度または高度に免疫原性であり、免疫応答を誘起することができる。一部の例では、CTLA4抗体-IR700および/またはPD-L抗体-IR700の投与を含むNIR-PIT方法は、中等度または高度に免疫原性の腫瘍を処置するために使用される。中等度または高度に免疫原性のがんの例としては、黒色腫、肺がん(例えば、NSCLC)、結腸がん、および腎細胞がんが挙げられる。1つの例では、高度に免疫原性のがんは、前立腺がんである。一部の例では、処置されるがんまたはがん細胞は、高度に免疫原性でなく、免疫応答を誘起することができない。一部の例では、CTLA4抗体-IR700および/またはPD-L抗体-IR700を伴うNIR-PITは、低免疫原性腫瘍を処置するために、抗腫瘍-IL700(例えば、抗EGFR-IR700または抗PSA抗原-IR700)と組み合わせて使用される。低免疫原性のがんの例としては、口腔扁平上皮細胞がん、乳がん、膵臓がん、および多発性骨髄腫が挙げられる。一部の例では、腫瘍免疫原性スコアを使用して、がんが、低免疫原性であるか、中等度に免疫原性であるか、または高度に免疫原性であるかを決定する(例えば、Wang et al, eLife, 8:e49020, 2019を参照されたい)。
【0143】
例示的な対象
一部の例では、開示される方法は、がんを有する対象、または腫瘍、例えば、本明細書に記載される腫瘍を有する対象を処置するために使用される。一部の例では、腫瘍は、以前に処置されており、例えば、外科手術または化学的に除去されており、開示される方法は、それに続いて、患者に残存している可能性のある任意の残存している望まれない腫瘍細胞を殺滅するため、および/または腫瘍の再発もしくは転移を低減させるために使用される。
【0144】
開示される方法は、腫瘍、例えば、がんを有するか、またはそれが以前に除去もしくは処置されている、任意の哺乳動物対象(例えば、ヒトまたは獣医学的対象、例えば、イヌもしくはネコ)、例えば、ヒトを処置するために使用され得る。開示される治療法を必要とする対象としては、がん、例えば、腫瘍特異的抗体-IR700分子に特異的に結合し得る腫瘍特異的タンパク質を細胞表面上に発現するがん、または免疫細胞特異的抗体-IR700分子(例えば、CTLA4抗体-IR700)に結合し得る免疫細胞が浸潤したがんを有する、ヒト対象が挙げられ得る。例えば、開示される方法は、単独で、または放射線照射もしくは他の化学療法もしくは外科手術と組み合わせて、がんの初回処置として使用され得る。開示される方法はまた、以前の放射線照射または化学療法が失敗した患者においても、使用され得る。したがって、一部の例では、対象は、他の治療法を受けているが、他の治療法が、所望される治療応答をもたらさなかったものである。開示される方法はまた、限局型および/もしくは転移性がん、ならびに/または原発性腫瘍の再発を有する患者においても使用され得る。
【0145】
一部の例では、方法は、開示される治療法から利益を得るであろう対象を選択するステップ、例えば、抗体-IR700分子に特異的に結合し得る細胞表面タンパク質(例えば、腫瘍特異的タンパク質)を発現する腫瘍を有する対象を選択するステップを含む。例えば、対象が、HER2を発現する乳がんを有すると決定された場合、対象は、例えば、CTLA4抗体-IR700分子、PD-L1抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、1つもしくは複数の免疫活性化因子、またはこれらの組合せと組み合わせた、抗HER2-IR700分子、例えば、トラスツズマブ-IR700で処置することに選択され得、対象は、続いて、本明細書に記載されるように照射される。
【0146】
例示的な細胞表面タンパク質
1つの例では、殺滅しようとする標的細胞の細胞表面上のタンパク質は、他の細胞上には有意な量で存在しない。例えば、細胞表面タンパク質は、標的細胞型においてのみ見出される受容体であり得る。
【0147】
具体的な例では、細胞表面タンパク質は、がんまたは腫瘍特異的タンパク質(腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原とも称される)、例えば、EGF受容体ファミリーのメンバー(例えば、HER1、2、3、および4)、ならびにサイトカイン受容体(例えば、CD20、CD25、IL-13R、CD5、CD52など)である。したがって、一部の例では、細胞表面タンパク質は、腫瘍細胞の細胞膜上に発現される抗原である。腫瘍特異的タンパク質は、がん細胞に固有であるか、またはがん細胞において、他の細胞、例えば、正常細胞と比較してはるかに豊富である、タンパク質である。例えば、HER2は、主として、乳がんにおいて見出されるが、HER1は、主として、腺癌において見出され、これは、多数の器官、例えば、膵臓、乳房、前立腺、および結腸において見出され得る。
【0148】
標的細胞において見出すことができる例示的な腫瘍特異的タンパク質(およびそのタンパク質に特異的な抗体を使用して抗体-IR700分子を製剤化することができるもの)としては、MAGE 1(例えば、GenBank受託番号M77481およびAAA03229)、MAGE 2(例えば、GenBank受託番号L18920およびAAA17729)、MAGE 3(例えば、GenBank受託番号U03735およびAAA17446)、MAGE 4(例えば、GenBank受託番号D32075およびA06841.1)などを含む、様々なMAGE(黒色腫関連抗原E)のうちのいずれか、様々なチロシナーゼ(例えば、GenBank受託番号U01873およびAAB60319)のうちのいずれか、突然変異体ras、突然変異体p53(例えば、GenBank受託番号X54156、CAA38095、およびAA494311)、p97黒色腫抗原(例えば、GenBank受託番号M12154およびAAA59992)、乳房腫瘍と関連するヒト乳脂肪球(HMFG)(例えば、GenBank受託番号S56151およびAAB19771)、BAGE1(例えば、GenBank受託番号Q13072)およびBAGE2(例えば、GenBank受託番号NM_182482およびNP_872288)を含む様々なBAGE(ヒトB黒色腫関連抗原E)のうちのいずれか、GAGE1(例えば、GenBank受託番号Q13065)またはGAGE2~6のうちのいずれかを含む様々なGAGE(G抗原)のうちのいずれか、様々なガングリオシド、CD25(例えば、GenBank受託番号NP_000408.1およびNM_000417.2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
他の腫瘍特異的抗原としては、子宮頸がんと関連するHPV 16/18およびE6/E7抗原(例えば、GenBank受託番号NC_001526、FJ952142.1、ADB94605、ADB94606、およびU89349)、乳癌と関連するムチン(MUC 1)-KLH抗原(例えば、GenBank受託番号J03651およびAAA35756)、結腸直腸がんと関連するCEA(癌胎児性抗原)(例えば、GenBank受託番号X98311およびCAA66955)、例えば、黒色腫と関連するgp100(例えば、GenBank受託番号S73003およびAAC60634)、黒色腫と関連するMART1抗原(例えば、GenBank受託番号NP_005502)、卵巣がんおよび他のがんと関連するがん抗原125(CA125、ムチン16またはMUC16としても公知)(例えば、GenBank受託番号NM_024690およびNP_078966)、肝臓がんと関連するアルファ-フェトプロテイン(AFP)(例えば、GenBank受託番号NM_001134およびNP_001125)、結腸直腸がん、胆管がん、乳がん、小細胞肺がん、および他のがんと関連するルイスY抗原、腺癌と関連する腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、グリピカン1(膵臓がん、神経膠腫、および乳がんと関連するGPC1)、グリピカン2(神経芽細胞腫と関連する)、およびグリピカン3(肝細胞癌と関連する)、ならびに前立腺がんと関連するPSA抗原(例えば、GenBank受託番号X14810およびCAA32915)が挙げられる。
【0150】
他の例示的な腫瘍特異的タンパク質としては、固形腫瘍血管新生ならびに前立腺がんと関連するPMSA(前立腺膜特異的抗原、例えば、GenBank受託番号AAA60209およびAAB81971.1)、乳がん、卵巣がん、胃がん、および子宮がんと関連するHER-2(ヒト上皮成長因子受容体2、例えば、GenBank受託番号M16789.1、M16790.1、M16791.1、M16792.1、およびAAA58637)、肺がん、肛門がん、および神経芽細胞腫、ならびに腺癌と関連するHER-1(例えば、GenBank受託番号NM_005228およびNP_005219)、黒色腫、肉腫、精巣癌、および他のがんと関連するNY-ESO-1(例えば、GenBank受託番号U87459およびAAB49693)、hTERT(別名テロメラーゼ)(例えば、GenBank受託番号NM_198253およびNP_937983(バリアント1)、NM_198255およびNP_937986(バリアント2))、プロテイナーゼ3(例えば、GenBank受託番号M29142、M75154、M96839、X55668、NM 00277、M96628、X56606、CAA39943、およびAAA36342)、ならびにウイルムス腫瘍1(WT-1、例えば、GenBank受託番号NM_000378およびNP_000369(バリアントA)、NM_024424およびNP_077742(バリアントB)、NM_024425およびNP_077743(バリアントC)、ならびにNM_024426およびNP_077744(バリアントD))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、EGFRであり、一部の例では、EGFR抗体-IR700は、パニツムマブまたはセツキシマブであるか、またはそれを含む。
【0152】
1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、PD-L1であり、一部の例では、PD-L1抗体-IR700は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはコシベリマブであるか、またはそれを含む。
【0153】
1つの例では、腫瘍特異的タンパク質は、慢性リンパ球性白血病と関連するCD52(例えば、GenBank受託番号AAH27495.1およびCAI15846.1)、急性骨髄性白血病と関連するCD33(例えば、GenBank受託番号NM_023068およびCAD36509.1)、ならびに非ホジキンリンパ腫と関連するCD20(例えば、GenBank受託番号NP_068769 NP_031667)である。
【0154】
具体的な例では、腫瘍特異的タンパク質は、CD44(例えば、OMIM 107269、GenBank受託番号ACI46596.1およびNP_000601.3)である。CD44は、がん幹細胞様細胞および様々なタイプのがんのマーカーであり、細胞間接着、細胞遊走、細胞の空間配置、およびマトリックス由来生存シグナルの促進に関係している。腫瘍の形質膜上のCD44の高い発現は、腫瘍の侵攻性および予後の不良と関連付けられ得る。
【0155】
したがって、開示される方法は、腫瘍特異的タンパク質を発現する任意のがんを処置するために使用することができる。
【0156】
例示的な抗体-IR700分子
細胞表面タンパク質配列は、公的に利用可能である(例えば、上述のように)ため、そのようなタンパク質に特異的な抗体(またはIR700にコンジュゲートすることができる他の小分子)の作製または購入は、達成することができる。例えば、腫瘍特異的タンパク質HER2が、標的として選択される場合、HER2に特異的な抗体(例えば、トラスツズマブ)を、購入または生成し、IR700色素に付着させることができる。他の具体的な例は、本明細書における表2および他の箇所に提供されている。1つの例では、IR700にコンジュゲートした抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0157】
1つの例では、抗体-IR700分子は、PD-L1抗体-IR700分子、例えば、アテゾリズマブ-IR700、アベルマブ-IR700、デュルバルマブ-IR700、コシベリマブ-IR700、KN035-IR700、BMS935559-IR700、MEDI-4736-IR700、MEDfI-4737-IR700、BMS-936559-IR700、MPDL-3280A-IR700、またはCK-301-IR700である。
【0158】
1つの例では、抗体-IR700分子は、EGFR抗体-IR700分子、例えば、パニツムマブ-IR700またはセツキシマブ-IR700である。
【0159】
抗体-IR700分子は、WO 2013/009475(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの方法を使用して、生成することができる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0160】
IR700にコンジュゲートし、開示される方法において使用することができる、追加の抗体としては、3F8、アバゴボマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アルツモマブペンテテート、アナツモマブマフェナトクス、アポリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、シタツズマブボガトクス、デツモマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エプラツズマブ、エリツマキソマブ、ガリキシマブ、グレンバツムマブベドチン、イゴボマブ、イムシロマブ、ルミリキシマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、ナコロマブタフェナトクス、ナプツモマブエスタフェナトクス、ノフェツモマブメルペンタン、ピンツモマブ、サツモマブペンデチド、ソネプシズマブ、タプリツモマブパプトクス、テナツモマブ、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、TNX-650、またはトレメリムマブが挙げられる。
【0161】
一部の例では、IR700にコンジュゲートした抗体によって認識される細胞表面タンパク質は、免疫細胞、例えば、Tregに見出されるものである。1つの例では、タンパク質は、CTLA4である。1つの例では、抗体-IR700分子は、CTLA4抗体-IR700分子、例えば、イピリムマブ-IR700またはトレメリムマブ-IR700である。
【0162】
1つの例では、患者は、がん細胞表面抗原に特異的な少なくとも2つの異なる抗体-IR700分子で処置される。1つの例では、2つの異なる抗体-IR700分子は、同じタンパク質(例えば、HER-2)に特異的であるが、タンパク質の異なるエピトープ(例えば、HER-2のエピトープ1およびエピトープ2)に特異的である。別の例では、2つの異なる抗体-IR700分子は、2つの異なるタンパク質または抗原に特異的である。例えば、抗HER1-IR700および抗HER2-IR700は、HER1またはHER2のいずれかを有する細胞の殺滅を促進するために、カクテルとして一緒に注射されてもよい。
【0163】
免疫モジュレーター/免疫活性化因子
開示される方法において使用される免疫活性化因子は、免疫系を活性化する、および/または免疫サプレッサー細胞(本明細書においてサプレッサー細胞とも称される)を阻害する、薬剤または組成物を含む。免疫サプレッサー細胞の阻害および/または免疫応答の活性化は、腫瘍細胞殺滅を増加させ得、メモリーT細胞の産生をもたらし、これによって、再発および/または遠位腫瘍もしくは転移に対する「ワクチン」効果を提供することができる。一部の例では、1つまたは複数の免疫活性化因子は、1つもしくは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子、1つもしくは複数の還元剤、またはその両方と組み合わせて使用される。
【0164】
一部の実施形態では、免疫活性化因子は、免疫サプレッサー細胞の阻害剤、例えば、免疫サプレッサー細胞の活性を阻害または低減させる薬剤である。一部の場合には、免疫モジュレーターは、免疫サプレッサー細胞を殺滅する。一部の例では、免疫サプレッサー細胞は、調節性T(Treg)細胞である。一部の例では、自己免疫の発症につながる可能性があるため、サプレッサー細胞のすべてがin vivoで殺滅されるわけではない。したがって、一部の例では、方法は、対象のあるエリア、例えば、腫瘍のエリアまたは腫瘍を以前有していたエリアにおいて、免疫サプレッサーの活性または数を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減させる。一部の例では、方法は、対象におけるサプレッサー細胞の総数を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減させる。
【0165】
免疫サプレッサー細胞の阻害剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ、スニチニブ、およびイマチニブ)、化学療法剤(例えば、シクロホスファミドまたはインターロイキン-毒素融合体、例えば、デニロイキンジフチトクス(IL2-ジフテリア毒素融合体)、または抗CD25抗体(例えば、ダクリズマブもしくはバシリキシマブ)、またはサプレッサー細胞表面タンパク質に結合する他の抗体(例えば、以下に記載されるもの)が挙げられる。他の例では、免疫サプレッサー細胞の阻害剤としては、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、それによってPD-L1のPD-1への結合を予防する、抗PD-L1アンタゴナイズ抗体(本明細書において、PD-1/PD-L1 mAbに媒介される免疫チェックポイント遮断(ICB)と称される)が挙げられる。したがって、一部の例では、免疫モジュレーターは、PD-L1アンタゴナイズ抗体、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、KN035(エンバフォリマブ)、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、またはMEDI-4737(または本明細書に提供される他の例)である。チェックポイント阻害剤には、イピリムマブおよびトレメリムマブを含むCTLA-4抗体も含まれる。免疫サプレッサー細胞の阻害剤はまた、LAG-3またはB7-H3アンタゴニスト、例えば、BMS-986016、およびMGA271であり得る。一部の例では、免疫サプレッサー細胞の阻害剤のうちの2つまたはそれよりも多くを、対象に投与することができる。1つの非限定的な例では、対象は、抗PD1および抗LAG-3抗体を投与される。
【0166】
一部の例では、サプレッサー細胞の活性を阻害または低減させる薬剤としては、1つまたは複数の抗体‐IR700分子であって、抗体が、サプレッサー細胞表面タンパク質(例えば、CD25、CD4、C-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)、C-Cケモカイン受容体4型(CCR4)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、グルココルチコイド誘導型TNF受容体(GITR)、OX40、葉酸受容体4(FR4)、CD16、CD56、CD8、CD122、CD23、CD163、CD206、CD11b、Gr-1、CD14、インターロイキン4受容体アルファ鎖(IL-4Ra)、インターロイキン-1受容体アルファ(IL-1Ra)、インターロイキン-1デコイ受容体、CD103、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、CXCR2、CD33、およびCD66b))に特異的に結合する、抗体‐IR700分子が挙げられる。
【0167】
非限定的な例では、免疫モジュレーターは、CD25抗体-IR700分子、例えば、ダクリズマブ-IR700またはバシリキシマブ-IR700である。
【0168】
他の実施形態では、免疫モジュレーターは、免疫系活性化因子(免疫活性化因子)である。一部の例では、免疫系活性化因子は、1つまたは複数のT細胞および/またはナチュラルキラー(NK)細胞を刺激(活性化)する。1つの例では、免疫系活性化因子は、1つまたは複数のインターロイキン(IL)、例えば、IL-2、IL-15、IL-7、IL-12、および/またはIL-21を含む。非限定的な例では、免疫モジュレーターは、IL-15を含むか、またはそれからなる。非限定的な例では、免疫モジュレーターは、IL-2およびIL-15を含む。非限定的な例では、免疫モジュレーターは、インターフェロンガンマを含むか、またはそれからなる。別の例では、免疫系活性化因子は、共刺激受容体、例えば、4-1BB、OX40、またはGITRに対する1つまたは複数のアゴニストを含む。非限定的な例では、免疫モジュレーターは、刺激性抗4-1BB抗体、抗OX40抗体、および/または抗GITR抗体を含む。
【0169】
一部の例では、1回または複数(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、またはそれよりも多く)の用量の免疫モジュレーターが、対象に投与される。したがって、免疫モジュレーターを投与するステップは、1日に完了し得るか、または同じかもしくは異なる投薬量を用いて複数日間反復的に行われてもよい(例えば、少なくとも異なる2回、異なる3回、異なる4回、異なる5回、または異なる10回の投与)。一部の例では、反復投与は、同じ用量である。他の例では、反復投与は、異なる用量(例えば、先行する用量よりも高い後続の用量、または先行する用量よりも低い後続の用量)である。免疫モジュレーターの反復投与は、同日、連続日、1日おき、1~3日ごと、3~7日ごと、1~2週間ごと、2~4週間ごと、1~2ヶ月ごと、またはさらに長い間隔で、行われてもよい。一部の例では、免疫モジュレーターの少なくとも1回の用量は、照射の前に投与され、免疫モジュレーターの少なくとも1回の用量は、照射の後に投与される。
【0170】
照射
対象に1つまたは複数の抗体-IR700分子が投与された後、対象(または対象における腫瘍)は、照射される。標的タンパク質を発現する細胞のみが、抗体によって認識されるため、それらの細胞のみに、細胞を殺滅するのに十分な量の抗体-IR700分子が会合することになる。照射は、抗体-IR700分子が結合した細胞のみを殺滅し、他の細胞は殺滅しないため、これにより、望まれない副作用、例えば、非腫瘍細胞の殺滅の可能性が減少する。
【0171】
対象(例えば、対象における腫瘍)は、660~740nm、例えば、660~710nm、660~700nm、680~700nm、670~690nm、例えば、680nmまたは690nmの波長において、治療照射線量で照射される。特定の例では、細胞、腫瘍、または対象は、少なくとも1J/cm、例えば、少なくとも10J/cm、少なくとも20J/cm、少なくとも25J/cm、少なくとも30J/cm、少なくとも50J/cm、少なくとも100J/cm、または少なくとも500J/cm、例えば、1~1000J/cm、1~500J/cm、1~100J/cm、4~50J/cm、30~50J/cm、10~100J/cm、20~30J/cm、20~50J/cm、または10~50J/cmの線量で照射される。
【0172】
対象は、1回または複数回照射され得る。したがって、照射は、1日に完了し得るか、または同じかもしくは異なる投薬量を用いて複数日間反復的に行われてもよい(例えば、少なくとも異なる2回、異なる3回、異なる4回、異なる5回、または異なる10回の照射)。一部の例では、反復照射は、同じ線量である。他の例では、反復照射は、異なる線量(例えば、先行する線量よりも高い後続の線量、または先行する線量よりも低い後続の線量)である。反復照射は、同日、連日、1日おき、1~3日ごと、3~7日ごと、1~2週間ごと、2~4週間ごと、1~2ヶ月ごと、またはさらに長い間隔で、行われてもよい。1つの例では、第1の照射は、50J/cmであり、第2の照射は、100J/cmであり、照射は、連続した日に行われる(例えば、約24時間間隔で)。1つの例では、第1の照射は、10~50J/cmであり、第2の照射は、10~50J/cmであり、照射は、連続した日に行われる(例えば、約24時間間隔で)。
【0173】
一部の例では、照射は、NIR LEDを組み込んだ着用可能デバイスで提供される。他の例では、開示される方法とともに使用することができる別のタイプのデバイスは、NIR LEDを有する懐中電灯様デバイスである。そのようなデバイスは、外科手術中に病変部の限局療法に使用され得るか、または1つもしくは複数のPIT剤の投与後に体表面にNIR光を適用する内視鏡に組み込まれ得る。そのようなデバイスは、身体の特定の標的への処置を誘導するように、医師または有資格医療従事者によって使用され得る。
【0174】
着用可能NIR LEDを使用した処置
本明細書に記載されるように、開示される方法は、がん細胞(または例えば、CTLA4抗体-IR700が使用される場合は腫瘍床におけるTreg)に高度に特異的である。しかしながら、身体内を循環するかまたは皮膚上に存在する細胞を殺滅するために、患者は、NIR LEDを組み込んだデバイスを着用することができる。一部の例では、患者は、少なくとも2つのデバイス、例えば、日中には衣料品またはジュエリー、および夜間にはブレスレットを使用する。一部の例では、患者は、少なくとも2つのデバイス、例えば、2つの衣料品を同時に使用する。これらのデバイスは、処置が人目につかないままとなり、日々の活動に干渉しないように、患者が、持ち運び可能な日常的な衣料品およびジュエリーを使用してNIR光に曝露されるのを可能にする。一部の例では、デバイスは、PIT療法のために、日中、さり気なく着用することができる。NIR LEDを組み込んだ例示的なデバイスは、国際特許出願公開第WO 2013/009475号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0175】
1つの例では、患者は、1つまたは複数の抗体-IR700分子を、本明細書に記載される方法を使用して、例えば、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせて、投与される。患者は、次いで、長期治療、および血液またはリンパ節または皮膚に存在する腫瘍細胞の処置を可能にする、NIR LEDを組み込んだデバイスを着用する。一部の例では、線量は、少なくとも1J/cm、少なくとも4J/cm、少なくとも10J/cm、少なくとも20J/cm、少なくとも30J/cm、少なくとも40J/cm、または少なくとも50J/cm、例えば、10~100J/cm、10~50J/cm、例えば、20J/cmまたは30J/cmである。一部の例では、例えば、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与は、治療レベルが確実に身体に存在するように、ある期間にわたって反復される(例えば、2週間ごとまたは1ヶ月ごと)。
【0176】
一部の例では、患者は、少なくとも1週間、例えば、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、またはさらには少なくとも1年間、デバイス、またはデバイスの組合せを着用または使用する。一部の例では、患者は、少なくとも1日に4時間、例えば、少なくとも1日に12時間、少なくとも1日に16時間、少なくとも1日に18時間、またはさらには1日に24時間、デバイスまたはデバイスの組合せを着用または使用する。同様の「日常的な」性質の複数のデバイス(ブランケット、ブレスレット、ネックレス、下着、靴下、靴の中敷き)が、処置期間の間、同じ患者によって着用され得ることは、十分可能である。夜間には、患者は、NIR LEDブランケットまたは他のカバーを使用し得る。
【0177】
追加の治療の投与
上記に考察されるように、例えば、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与、ならびに照射の前、最中、または後に、対象は、1つまたは複数の他の治療を受けてもよい。1つの例では、対象は、例えば、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子の投与、ならびに照射の前に、腫瘍を除去または低減させるための1つまたは複数の処置を受ける。他の例では、追加の処置または治療剤(例えば、抗新生物剤)は、処置しようとする対象に、例えば、照射の後、例えば、細胞に照射した約0~8時間後(例えば、照射の少なくとも10分後、少なくとも30分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも3時間後、少なくとも4時間後、少なくとも5時間後、少なくとも6時間後、または少なくとも7時間後、例えば、照射後10時間以内、9時間以内、または8時間以内、例えば、1時間~10時間、1時間~9時間、1時間~8時間、2時間~8時間、または4時間~8時間)に投与され得る。別の例では、追加の治療剤は、照射の直前(例えば、照射の約10分~120分前、例えば、照射の10分~60分前、または10分~30分前)に投与される。
【0178】
一部の例では、PITの後に約8時間、腫瘍の追加の治療剤へのアクセス性を増強させる、開示される方法と組み合わせて使用することができるそのような治療の例としては、腫瘍の除去または低減のための外科処置(例えば、外科的切除、低温療法、もしくは化学塞栓術)、ならびに放射線療法剤、抗新生物化学療法剤、抗生物質、アルキル化剤、および抗酸化剤、キナーゼ阻害剤、および他の薬剤を含み得る抗腫瘍医薬処置が挙げられるが、これらに限定されない。一部の例では、追加の治療剤は、ナノ粒子にコンジュゲートする。使用することができる追加の治療剤の特定の例としては、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたは架橋剤、DNA合成阻害剤、DNAおよび/またはRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、ならびに遺伝子調節因子が挙げられる。これらの薬剤(治療有効量で投与される)および処置は、単独または組み合わせて使用され得る。
【0179】
「微小管結合剤」は、チューブリンと相互作用して微小管形成を安定化または脱安定化し、それによって、細胞分裂を阻害する、薬剤を指す。開示される方法と併せて使用することができる微小管結合剤の例としては、限定することなく、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(ナベルビン)、エポチロン、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、ポドフィロトキシン、およびリゾキシンが挙げられる。そのような化合物のアナログおよび誘導体もまた、使用することができる。例えば、好適なエポチロンおよびエポチロンアナログは、国際公開第WO 2004/018478号に記載されている。米国特許第6,610,860号、同第5,530,020号、および同第5,912,264号に教示されるタキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ならびにパクリタキセルのアナログを、使用することができる。
【0180】
以下のクラスの化合物を、本明細書に開示される方法とともに使用することができる:限定することなく、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ならびにそれらの誘導体およびアナログを含む、好適なDNAおよび/またはRNA転写調節剤もまた、開示される治療法と組み合わせた使用に好適である。対象に投与することができるDNAインターカレーターおよび架橋剤としては、限定することなく、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる。治療剤として使用するのに好適なDNA合成阻害剤としては、限定することなく、メトトレキセート、5-フルオロ-5’-デオキシウリジン、5-フルオロウラシル、およびこれらのアナログが挙げられる。好適な酵素阻害剤の例としては、限定することなく、カンプトテシン、エトポシド、ホルメスタン、トリコスタチン、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる。遺伝子調節に影響を及ぼす好適な化合物としては、1つまたは複数の遺伝子の発現の増加または減少をもたらす薬剤、例えば、ラロキシフェン、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ミフェプリストン、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる。キナーゼ阻害剤としては、成長因子のリン酸化および活性化を予防する、Gleevec(登録商標)(イマチニブ)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)、およびTarceva(登録商標)(エルロチニブ)が挙げられる。
【0181】
抗血管新生剤の非限定的な例としては、タンパク質、酵素、多糖、オリゴ糖、DNA、RNA、および組換えベクターなどの分子、ならびに血管成長を低減またはさらには阻害するように機能する小分子が挙げられる。好適な血管新生阻害剤の例としては、限定することなく、アンジオスタチンK1-3、スタウロスポリン、ゲニステイン、フマギリン、メドロキシプロゲステロン、スラミン、インターフェロン-アルファ、メタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板因子4、ソマトスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、サリドマイド、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる。例えば、一部の実施形態では、抗血管新生剤は、VEGFに特異的に結合する抗体(例えば、Avastin、Roche)またはVEGF受容体に特異的に結合する抗体(例えば、VEGFR2抗体)である。1つの例では、抗血管新生剤は、VEGFR2抗体またはDMXAA(バジメザンもしくはASA404としても公知で、例えば、Sigma Corp.、St.Louis、MOから市販されている)、またはその両方を含む。抗血管新生剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、抗血管新生チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えば、スニチニブ、キシチニブ(xitinib)、およびダサチニブであり得る。これらは、個別に、または任意の組合せで使用してもよい。
【0182】
上述の分類のうちの1つまたは複数に入る場合も入らない場合もある他の治療剤、例えば、抗腫瘍剤もまた、開示される方法と組み合わせた投与に好適である。例として、そのような薬剤としては、アドリアマイシン、アピゲニン、ラパマイシン、ゼブラリン、シメチジン、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる。
【0183】
一部の例では、治療用抗体-IR700分子を受容する対象はまた、例えば、静脈内投与によって、インターロイキン-2(IL-2)も投与される。特定の例では、IL-2(Chiron Corp.、Emeryville、CA)は、少なくとも500,000IU/kgの用量で、抗体-IR700分子の投与の翌日に開始し、最大5日間継続して、8時間ごとに15分間の期間にわたって、静脈内ボーラスとして投与される。投薬は、対象の寛容性に応じてスキップしてもよい。
【0184】
例示的な追加の治療剤としては、抗新生物剤、例えば、化学療法剤および抗血管新生剤または治療法、例えば、放射線療法が挙げられる。1つの例では、薬剤は、化学療法免疫抑制剤(例えば、リツキシマブ、ステロイド)またはサイトカイン(例えば、GM-CSF)である。例示的な化学療法剤は、例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison’s Principles of Internal Medicine, 14th edition、Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., 2000 Churchill Livingstone, Inc、Baltzer and Berkery. (eds): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995、Fischer Knobf, and Durivage (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993)に提供されている。組合せ化学療法は、がんを処置するための1つを上回る薬剤の投与である。
【0185】
本明細書に提供される方法とともに使用することができる例示的な化学療法剤としては、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、イアゾフリン(iazofurine)、ゲムシタビン、エトポシド、ビノレルビン、タモキシフェン、バルスポダル、シクロホスファミド、メトトレキセート、フルオロウラシル、ミトキサントロン、Doxil(リポソーム封入ドキソルビシン(doxiorubicine))、およびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。使用することができる化学療法剤の追加の例としては、アルキル化剤、抗代謝剤、天然産物、またはホルモンおよびそれらのアンタゴニストが挙げられる。アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、またはクロラムブシル)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジン)が挙げられる。アルキル化剤の具体的な非限定的な例は、テモゾロミドおよびダカルバジンである。抗代謝剤の例としては、葉酸アナログ(例えば、メトトレキセート)、ピリミジンアナログ(例えば、5-FUまたはシタラビン)、およびプリンアナログ、例えば、メルカプトプリンまたはチオグアニンが挙げられる。天然産物の例としては、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドまたはテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシンC)、および酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)が挙げられる。その他の薬剤の例としては、白金配位錯体(例えば、シスプラチンとしても公知のcis-ジアミン-ジクロロ白金II)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタンおよびアミノグルテチミド)が挙げられる。ホルモンおよびアンタゴニストの例としては、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)、ならびにアンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)が挙げられる。
【0186】
例示的な化学療法薬としては、アドリアマイン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン(Carboplatinum)、シスプラチン(Cisplatinum)、シトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-フルオロウラシル(5-FU)、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(または他のタキサン、例えば、ドセタキセル)、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン(Gemzar)、ハーセプチン、イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(Hycamtin)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼベリン(Zevelin)、およびカルチトリオールが挙げられる。使用することができる免疫活性化因子の非限定的な例としては、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(New Orleans、La.のImregより)、SK&F 106528、およびTNF(腫瘍壊死因子、Genentech)が挙げられる。
【0187】
一部の例では、追加の治療剤は、ナノ粒子、例えば、少なくとも1nmの直径(例えば、少なくとも10nmの直径、少なくとも30nmの直径、少なくとも100nmの直径、少なくとも200nmの直径、少なくとも300nmの直径、少なくとも500nmの直径、または少なくとも750nmの直径、例えば、1nm~500nm、1nm~300nm、1nm~100nm、10nm~500nm、または10nm~300nmの直径)のものに、コンジュゲートする(またはそれと会合する)。
【0188】
1つの例では、腫瘍(例えば、転移性腫瘍)の少なくとも一部分は、開示される治療の投与(例えば、例として、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせた、1つまたは複数の腫瘍特異的抗体-IR700分子の投与、ならびに照射)の前に、外科的に除去される(例えば、外科的切除および/もしくは低温療法による)、照射される(例えば、腫瘍を根絶もしくは縮小するのを補助する腫瘍部位への放射性材料もしくはエネルギーの投与(例えば、体外照射療法))、化学的に処置される(例えば、化学塞栓術による)、またはこれらの組合せが行われる。例えば、転移性腫瘍を有する対象は、開示される治療の投与の前に、腫瘍のすべてまたは一部が、外科的に切除されていてもよい。ある例では、1つまたは複数の化学療法剤は、例えば、1つもしくは複数の還元剤および/または1つもしくは複数の免疫活性化因子と組み合わせた、1つまたは複数の抗体-IR700分子での処置、ならびに照射、ならびに照射の後に、投与される。別の特定の例では、対象は、転移性腫瘍を有し、放射線療法、化学塞栓療法、またはその両方が、開示される治療の投与と同時に投与される。
【0189】
一部の例では、投与される追加の治療剤は、モノクローナル抗体、例えば、3F8、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート、アナツモマブマフェナトクス、アポリズマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、CC49、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、ダセツズマブ、デツモマブ、エクロメキシマブ、エクリムマブ、エドレコロマブ、エプラツズマブ、エリツマキソマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィギツムマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブベドチン、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ、イムシロマブ、インテツムマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ、ラキサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、ナコロマブタフェナトクス、ナプツモマブエスタフェナトクス、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オファツムマブ、オララツマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、パニツムマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブペンデチド、シブロツズマブ、ソネプシズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タプリツモマブパプトクス、テナツモマブ、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、TNX-650、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルタムマム、またはこれらの組合せである。
【0190】
例示的な還元剤
本明細書に提供される方法において使用することができる例示的な還元剤としては、酸化還元化学反応において電子を電子レシピエント(酸化剤)にわたす(または「供与する」)薬剤が挙げられる。本明細書に提供される方法において使用することができる例示的な還元剤としては、L-システイン、L-アスコルビン酸ナトリウム(L-NaAA)、アスコルビン酸(例えば、L-またはR-アスコルビン酸)、およびグルタチオンが挙げられる。一部の例では、開示される方法において使用される還元剤は、アジ化ナトリウムではない。一部の例では、開示される方法において使用される還元剤は、L-システインではない。1つの例では、還元剤は、L-NaAA(例えば、5~50g、i.p.)である。
【実施例
【0191】
(実施例1)
材料および方法
この実施例は、実施例2における結果を得るために使用される材料および方法について説明する。
【0192】
細胞培養物
HPV 16 E6/E7およびhRASのC57BL/6由来中咽頭上皮細胞への形質導入によって、親mEERL細胞を構築した(Hoover et al., Arch OtolaryngolHead Neck Surg 2007; 133: 495-502、Spanos et al., J Virol 2008; 82:2493-500、Williams et al., Head Neck 2009; 31:911-8)。mEERL-hEGFRは、William C.Spanos博士から入手した(Sanford Research、Okada et al., EBioMedicine 2021;67:103345)。加えて、ルシフェラーゼを安定に発現するMC38細胞(結腸がん、RRID:CVCL_B288、Claudia Palena、NCI、2015より)およびMOC2細胞(口腔がん、RRID:CVCL_ZD33、Kerafastより)(MC38-lucおよびMOC2-luc、製造業者の推奨に従ってPerkinElmer製のRediFect Red-Flucレンチウイルスの安定な形質導入により生成)、ならびにLL/2-luc細胞(ルイス肺癌、RRID:CVCL_A4CM、Imanis Life Sciencesから購入)を使用した。MC38-luc、MOC2-luc、およびLL/2-luc細胞における高いルシフェラーゼ発現を、10継代まで確認した。mEERL-hEGFR細胞を、以前の報告(Mermod et al., Int J Cancer 2018; 142:2518-28)から修正し、10% FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)および1×ヒトケラチノサイト成長補助剤(Thermo Fisher Scientific)を補充したDMEM/F-12(Thermo Fisher Scientific)において培養した。MC38-lucおよびLL/2-luc細胞を、10% FBSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640において培養した。MOC2-luc細胞を、5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、5ng/mLのインスリン(MilliporeSigma)、40ng/mLのヒドロコルチゾン(MilliporeSigma)、および3.5ng/mLのヒト組換えEGF(MilliporeSigma)を補充したIMDM培地およびHam’s Nutrient Mixture F12培地の混合物(2:1の比、GE Health Healthcare Life Sciences)において培養した。すべての細胞を、95%空気および5% COの雰囲気下において37℃で加湿インキュベーターにおいて培養し、30継代以下で培養した。細胞系の同一性を、短いタンデムリピート(STR)のプロファイリングによって試験した。MC38-luc、MOC2-luc、およびLL2-lucについては、一致スコアは、80%を上回り、細胞系の同一性が信頼できるものであったことを示す。mEERL-hEGFRについては、STRプロファイルは、いずれの公知の細胞系とも一致しなかった。マイコプラズマ試験を、MC38-luc、MOC2-luc、およびLL2-lucについてはPCRによって、mEERL-hEGFRについてはMycoAlert PLUS Mycoplasma Detection Kitによって行い、すべての細胞系は試験で陰性であった。
【0193】
試薬
水溶性シリコンフタロシアニン誘導体であるIRDye700DX NHSエステル(IR700)を、LI-COR Bioscience(Lincoln、NE)から得た。hEGFRに対する完全ヒト化IgG2 mAbであるパニツムマブを、Amgen(Thousand Oaks、CA)から得た。抗マウス/ヒトCD44(クローンIM7、RRID:AB_110649)、抗マウスCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)(クローン9D9、RRID:AB_10949609)を、Bio X Cell(Lebanon、NH)から得た。すべての他の化学物質は、試薬グレードのものであった。
【0194】
IR700にコンジュゲートしたパニツムマブ、抗CD44、および抗CTLA-4の合成
IR700のモノクローナル抗体(mAb)とのコンジュゲーションを、以前の報告に従って行った。簡単に述べると、1mgのいずれかのmAbを、5倍モル過剰量のIR700 NIHエステル(DMSO中10mmol/L)、0.1mol/LのNaHPO(pH8.5)とともに、室温で1時間インキュベートした。混合物を、ろ過カラム(Sephadex G 25カラム、PD-10、GE Healthcare)で精製した。APCの品質を、4%~20%の勾配のポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)を用いたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で評価した。非コンジュゲート抗体を、対照に使用した。80Vで2.5時間の電気泳動の後に、ゲルを、700nmの蛍光チャネルを使用して、Pearl Imager(LI-COR Biosciences)で観察した。ゲルを、次いで、コロイダルブルーで染色して、コンジュゲートの分子量を、非コンジュゲート抗体のものと比較した。IR700にコンジュゲートしたパニツムマブ、抗CD44抗体、および抗CTLA4抗体は、本明細書において、それぞれ、pan-IR700、CD44-IR700、およびCTLA4 IR700と略す。
【0195】
動物および腫瘍モデル
すべての手順は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsを遵守して行い、地域のAnimal Care and Use Committeeによって承認されていた。6~8週齢の雌性C57BL/6マウス(IMSR_JAX:000664))を、The Jackson Laboratoryから得た。侵襲手順の間、マウスは、3%イソフルランの吸入および/または750mgのペントバルビタールナトリウム(Nembutal Sodium Solution、Ovation Pharmaceuticals Inc.)の腹腔内注射により麻酔した。
【0196】
マウスの下半身を、NIR光照射および画像分析の前に剃毛した。腫瘍を、各モデルの背側腹部の右側または両側への1×10個の細胞の皮下注射によって構築した。およそ50~100mmの体積に達した腫瘍を有するマウスを、実験に使用した。マウスを、毎日モニタリングし、腫瘍体積(腫瘍体積=長さ×幅×0.5)を、腫瘍体積が2,000mmに達するまで1週間に2回測定し、達した時点で、マウスを、二酸化炭素ガスの吸入により安楽死させた。両側モデルの場合、マウスは、いずれかの腫瘍がその人道的エンドポイントに達したときに安楽死させた。処置後4週間またはそれよりも長い期間の腫瘍消失を、完全寛解として定義した。
【0197】
in vitro NIR-PIT
mEERL-hEGFR、MC38-luc、およびLL/2-luc細胞(2×10個)を、12ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートし、次いで、pan-IR700またはCD44-IR700(10μg/mL)を含有する培地に、37℃で1時間曝露した。PBSで洗浄した後、フェノールレッド不含RPMI 1640培地を添加した。NIR光(690nm)を、がん細胞に、ML7710レーザーシステム(Modulight、Tampere、Finland)を用いて150mW/cmの出力密度で照射した。NIR-PITの1時間後に、細胞を、トリプシンで収集し、室温で5分間、ヨウ化プロピジウム(PI、1μg/mL)で染色し、次いで、FlowJoソフトウェア(FlowJo LLC)を使用し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を使用して、BD FACSCalibur(BD Biosciences)においてPI陽性について評価した。細胞生存率を評価するために、細胞増殖を、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって評価した。上述のように、細胞をインキュベートし、処置した。NIR-PITの1時間後に、培地を除去し、500μlのMTT試薬(SIGMA Aldrich、0.5mg/ml)を、各ウェルに添加した。1時間のインキュベーション後に、上清を除去し、500μLの2-プロパノールを各ウェルに添加して、結晶ホルマザンン色素を溶解した。上清を100μLずつ96ウェルプレートに移した後、吸光を、マイクロプレートリーダー(SynergyTM H1)において570nmで測定した。相対的定量のために、各群における吸光の値を、対照群におけるものに対して正規化した。
【0198】
in vivo NIR-PIT
二重標的化NIR-PIT実験のために、腫瘍保持マウスを、4つの群にランダム化し、混合型抗体/APCの静脈内注射、続いてNIR光曝露を、次のように行った:(i)混合した25mgのパニツムマブおよび25mgの抗CTLA4抗体(I.V.群)、(ii)混合した25mgのpan-IR700および25mgの抗CTLA4抗体(パニツムマブNIR-PIT群)、(iii)混合した25mgのパニツムマブおよび25mgのCTLA4-IR700(CTLA4 NIR-PIT群)、ならびに(iv)混合した25mgのpan-IR700および25mgのCTLA4-IR700(二重NIR-PIT群)。CTLA4標的化NIR-PIT単剤療法の実験のために、腫瘍保持マウスを、また、以下のように3つの群にランダム化した:(i)処置なし(対照群)、(ii)NIR光曝露なしのCTLA4-IR700(25mg)の静脈内投与(APC I.V.群)、および(iii)CTLA4-IR700(25mg)の静脈内投与に続いてNIR光曝露(NIR-PIT群)。混合型抗体/APCを、C57BL/6マウスへのがん細胞の接種の6日後に注射した。投与の24時間後に、NIR光(690nm、150mW/cm2)を、すべての群において50J/cm2で腫瘍に照射した。腫瘍以外のマウスの表面は、アルミニウム箔で被覆した。二重NIR-PIT群において腫瘍を排除したマウスを、反対側の側腹部へのhEGFRmEERL(1×10個)細胞の皮下注射によって再チャレンジした。両側モデルの場合には、NIR光(690nm、150mW/cm2)を、右側の腫瘍にのみ50J/cmで与え、マウスの残り(左側の腫瘍を含む)は、照射中、アルミニウム箔で被覆した。
【0199】
組織学的分析
mEERL-hEGFR、MC38-luc、およびLLC腫瘍に由来する腫瘍を採取し、ホルマリンで固定しパラフィンに包埋し、4mmで切片を作製した。標準的なヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色の後に、明視野顕微鏡写真を、Mantra Quantitative Pathology Workstation(PerkinElmer)を使用して得た。
【0200】
多重免疫組織化学検査
多重免疫組織化学検査(IHC)を、Opal 7-Color AutomationIHC Kit(AKOYA Bioscience)およびBOND RXm自動染色装置(Leica Biosystems)を使用して行った。以下の抗体を使用した:抗CD8(クローンEPR20305、Abcam、1:500希釈)、抗CD4(クローンEPR19514、Abcam、1:1,000希釈)、抗FoxP3(クローン1054C、Novus Biologicals、1:1,000希釈)、抗汎サイトケラチン(ウサギポリ、Bioss、1:500希釈)。染色は、製造業者が提供するOpal 7カラープロトコールに従い、以下の修正を用いて行った:(i)抗原賦活化は、BOND ER2溶液(Leica Biosystems)を使用して20分間行い、(ii)ImmPRESS HRP抗ウサギIgG(ペルオキシダーゼ)Polymer Detection Kit(Vector Laboratories)を、キットで提供されている抗マウス/ヒト二次抗体の代わりに使用した。染色したスライドを、VECTASHIELD Hardset Antifade Mounting Medium(Vector Laboratories)で封入し、次いで、Mantra Quantitative Pathology Workstation(PerkinElmer)を使用してイメージングした。画像を、inFormソフトウェア(AKOYA Biosystems)で分析した。InFormソフトウェアは、以下の基準に従って組織および細胞表現型を自動で検出するように訓練されていた:それぞれ、汎サイトケラチン発現を有するエリア=腫瘍、他のエリ=間質、CD4+FoxP3+細胞=Treg、CD4+FoxP3-=CD4 T細胞、またはCD8+=CD8+ T細胞。各表現型の細胞計数をエクスポートし、メガピクセルエリア当たりの計数として示した。3つの腫瘍試料を、各群について試験した。5つの写真を、各標本について取得し、細胞計数および組織エリアを、5つすべての写真について組み合わせた。
【0201】
フローサイトメトリー分析
CTLA4の発現を評価するために、mEERL-hEGFR腫瘍保持マウスを、構築された腫瘍の体積がおよそ150mmに達したときに安楽死させた。NIR-PIT後のCTLA4を発現する細胞の消失を確認するために、mEERL-hEGFR腫瘍保持マウスの腫瘍または脾臓を、NIR光曝露の3時間後に採取した。腫瘍流入領域リンパ節および脾臓もまた、全身効果について評価するために分析した。領域リンパ節における免疫反応を評価するために、同側鼠径リンパ節を、NIR-PITの2日後に採取した。腫瘍試料に由来する単一細胞懸濁液を、以下のプロトコールを使用して調製した。腫瘍全体を、コラゲナーゼIV型(1mg/mL、Thermo Fisher Scientific)およびDNase I(20mg/mL、Millipore Sigma)を含有するRPMI 1640培地(Thermo Fisher Scientific)において、37℃で30分間インキュベートし、次いで、ハサミで優しく切断し、3mLのシリンジのプランジャーの背面で潰した。組織を、70μmの細胞ストレーナー(Corning、Corning、NY、USA)に通した。脾細胞もまた、全身効果を決定するために分析した。合計3.0×10個の細胞を染色し、5.0×10個の細胞のデータを、各腫瘍について収集した。細胞を、BioLegend[抗CD3e(145-2C11、RRID:AB_312660)、抗CD8α(53-6.7、RRID:AB_2888883)、抗CD11b(M1/70、RRID:AB_312791)、抗CD11c(N418、RRID:AB_314173)、抗CD25(PC61.5、RRID:AB_312847)、抗F4/80(BM8、RRID:AB_893481)、抗CD45(30-F11、RRID:AB_2563598)、および抗IA/I-E(M5/114.15.2、RRID:AB_313328)]、またはThermo Fisher Scientific[抗CD4(RM4-5、RRID:AB_464902)、抗CD69(H1.2F3、RRID:AB_1210795)、および抗NK1.1(136、RRID:AB_2534431)]のいずれかから得た抗体で染色した。生細胞を死細胞と区別するために、細胞はまた、LIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stain(Thermo Fisher Scientific)でも染色した。CTLA4発現を評価するために、抗CTLA4(9D9)またはアイソタイプ対照[マウスIgG2b(MPC-11、RRID:AB_1107791)、Bio X Cell]を、Alexa Flour 647 NHSエステル(Thermo Fisher Scientific)とコンジュゲートした。コンジュゲーションは、IR700コンジュゲーションと同じ方法で行った。FoxP3の染色のために、細胞を、固定し、FoxP3 Transcription Factor Staining Buffer Set(Thermo Fisher Scientific)で透過処理し、続いて、抗FoxP3(FJK-16s、Thermo Fisher Scientific)とともにインキュベートした。細胞の蛍光を、次いで、フローサイトメーター(FACSCaliburまたはFACSLyric、RRID:SCR_000401、BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(FlowJo LLC、RRID:SCR_008520)で分析した。死細胞を、FSC、SSC、およびLIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stainでの染色に基づいて、分析から除去した。Treg集団を、CD3ρ T細胞間でのCD4ρFoxP3ρ T細胞のゲーティングによって定義した。
【0202】
統計学的分析
定量的データを、平均±SEMとして表した。in vitro実験については、一方向分散分析(ANOVA)に続いて、テューキーの検定を使用した。in vivo実験については、二方向ANOVAに続いて、テューキーの検定を、多重比較(3つを上回る群)に使用した。生存の累積確率を、カプラン-マイヤーの生存曲線分析によって分析し、結果を、ログランク検定で比較した。統計学的分析を、GraphPad Prismバージョン8(GraphPadソフトウェア)で行った。0.05未満のP値を、統計学的に有意とみなした。
【0203】
(実施例2)
がん細胞標的化およびCTLA4標的化を同時に組み合わせたNIR-PITは、同系マウスモデルにおいて相乗的処置効果をもたらす
この実施例は、腫瘍標的化NIR-PIT(例えば、腫瘍特異的抗体-IR700コンジュゲート、例えば、抗EGFR-IR700コンジュゲートを使用)と組み合わせた、CTLA4標的化NIR-PITを使用したTreg細胞殺滅による、Tregに媒介される免疫抑制を低減させる方法を使用した結果について説明する。細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)を発現する細胞およびがん細胞を標的とする組合せNIR-PITを、新しく構築したhEGFRを発現するマウス中咽頭がん細胞(mEERL-hEGFR)を含む4つの腫瘍モデルにおいて調査した。単一分子標的化療法(hEGFRまたはCTLA4を標的とするNIR-PIT)は、免疫原性の乏しいmEERLhEGFR腫瘍において、腫瘍進行を阻害しなかったが、二重(CTLA4/hEGFR)標的化NIR-PITは、腫瘍成長を有意に抑制し、生存を延長させ、38%の完全奏功率をもたらした。二重標的化NIR-PITの後に、主として調節性T細胞(Treg)であるCTLA4を発現する細胞の枯渇、および腫瘍床におけるCD8ρ/Treg比の増加が観察され、宿主抗腫瘍免疫の増強が示された。さらに、二重標的化NIR-PITは、同じタイプの遠位未処置腫瘍において、抗腫瘍免疫を示した。したがって、同時のがん細胞標的化NIR-PITおよびCTLA4標的化NIR-PITは、特に、NIR-PIT単剤療法が最適とは言えない免疫原性の乏しい腫瘍において、新しいがん治療戦略である。
【0204】
in vitroにおけるmEERL-hEGFR細胞に対するパニツムマブおよびCTLA-4 NIR-PITの有効性
IR700色素およびパニツムマブまたは抗CTLA4抗体のコンジュゲートを確認するために、SDS-pageゲル電気泳動を使用した。pan-IR-700および非コンジュゲート対照パニツムマブは、ほぼ同一の分子量を示した(図1A)。コンジュゲートは、強い蛍光強度を示したが、認識できる凝集は検出されなかった。抗CTLA4 IR-700において、ほぼ同一の結果が示された。
【0205】
ヨウ化プロピジウム(PI)の組込みおよびMTTアッセイに基づいて、がん細胞死が、pan-IR700に曝露したmEERL-hEGFRマウスにおいて、NIR光の線量依存性の様式で、NIR-PITによって誘導された(図1B、1C)。NIR光単独でも、パニツムマブIR700単独でも、細胞生存率に有意な変化は誘導されなかった。また、CTLA4標的化NIR-PITを行った場合に、hEGFRmEERL細胞において、有意な細胞損傷は検出されなかった。これらのデータにより、hEGFR標的化NIR-PITは、mEERL-hEGFR細胞において標的細胞特異的細胞死を誘導したが、一方でCTLA4標的化NIR-PITは、mEERL-hEGFR細胞にin vitroで影響を及ぼさなかったことが検証された。
【0206】
パニツムマブIR700 NIR-PITは、in vivoにおいて腫瘍細胞を即座に破壊する
各NIR-PIT処置後のmEERL-hEGFR腫瘍における細胞損傷を、組織学的分析によって評価した。腫瘍を、光曝露の1時間後に採取した。H-E染色は、パニツムマブNIR-PITで処置した腫瘍において、腫瘍細胞の膨潤および空胞化を示したが、CTLA4標的化NIR-PITで処置した腫瘍において、明らかな変化は見出されなかった(図1D)。したがって、病理学的データにより、パニツムマブNIR-PITが、腫瘍細胞の即座の死を引き起こしたが、CTLA4 NIR-PITは引き起こさなかったことが示された。
【0207】
mEERL-hEGFR腫瘍におけるより少ない腫瘍浸潤T細胞
様々な腫瘍モデルの免疫原性を比較するために、3つのマウス同系腫瘍モデルLL/2-luc、MC38-luc、およびmEERL-hEGFR腫瘍におけるCD8腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、IHCによって検査した。mEERL-hEGFR腫瘍におけるCD8 TILの数は、他の2つの腫瘍モデルのものよりも低かった(図1E)。TILのCD8/CD4FoxP3ρ(Treg)比を決定したが、それは、この比が、強力な抗腫瘍免疫応答の指標であるためである。腫瘍内CD8/Treg比もまた、mEERL-hEGFR腫瘍において、他の2つの腫瘍におけるものよりも有意に低かった。これらの結果により、mEERL-hEGFR腫瘍が、他の同系腫瘍モデルと比較して、免疫原性が乏しかったことが示された。
【0208】
Tregは、腫瘍床内でCTLA4を発現する
CTLA4発現細胞をin vivoで検証するために、mEERL-hEGFR腫瘍に由来する様々な細胞型のCTLA4発現を、フローサイトメトリーによって分析した。CTLA4発現は、mEERL-hEGFR細胞(hEGFRCD45-)、骨髄系細胞(CD3-CD11b)、細胞傷害性T細胞(CD3CD8)、およびヘルパーT細胞(CD3CD4FoxP3-、図2A)では、無視できる程度かまたは最小限であった。Treg(CD3CD4FoxP3)では、CTLA4は、高度に発現され、Tregの相対蛍光強度(RFI)は、他の細胞型のものよりも有意に高かった。
【0209】
CTLA4標的化NIR-PIT後の腫瘍内のTregの枯渇
次に、CTLA4を発現する細胞の選択的枯渇を、各NIR-PITの後に、フローサイトメトリーによって、腫瘍、腫瘍流入領域リンパ節、および脾臓において評価した(図2B)。処置有効性を、4つの群間で比較した;パニツムマブおよび抗CTLA4抗体注射(I.V.群)、pan-IR700および抗CTLA4抗体注射(pan NIRPIT群)、パニツムマブおよびCTLA4-IR700注射(CTLA4 NIRPIT群)、ならびにpan-IR700およびCTLA4-IR700の組合せ注射(二重NIR-PIT群)。NIR光を、注射の1日後にすべての群に適用した。腫瘍内のCTLA4を発現する細胞は、CTLA4 NIR-PITおよび二重NIR-PIT群では、I.V.群と比較して減少したが、領域リンパ節においても脾臓においても有意な変化は検出されなかった(図2C)。次に、NIR-PITによって選択的に枯渇されたT細胞のタイプを決定した。Tregは、CTLA4 NIR-PITおよび二重NIR-PIT群において有意に低減された(図2Dおよび2E)。CD4FoxP3-およびCD8 T細胞の集団は、インタクトなままであった。この結果に関して、CD4FoxP3-/TregおよびCD8/Tregの比は、増加した(図2E)。リンパ節および脾臓において、4つの群間で有意な変化は観察されなかった。これらの結果により、CTLA4標的化NIR-PITが、単剤療法およびパニツムマブNIR-PITとの組合せの両方で、主としてTregを枯渇させ、この効果が処置部位に限定されていたことが示された。
【0210】
mEERL-hEGFR細胞のin vivo 700nm蛍光イメージング
各APCの腫瘍への蓄積を評価するために、700nmの連続蛍光画像を得た。mEERL-hEGFR腫瘍におけるpan-IR700および抗CTLA4-IR700の両方の蛍光強度は、APC注射後1日以内にピーク強度を示し、これは、その後数日間にわたって徐々に減少した(図3A~3B)。標的対バックグラウンド比は、同様の傾向を示した(図3C)。したがって、APCとの1日間のインキュベーションを使用して、腫瘍とバックグラウンドの正常組織との間の最大の差を得た。
【0211】
mEERL-hEGFR腫瘍におけるCTLA4標的化NIR-PITの単剤療法の効果
mEERL-hEGFR腫瘍に対するCTLA4標的化NIR-PITの単剤療法の抗腫瘍効果を、図4Aに示されるように評価した。EERL腫瘍は、高度に免疫原性ではない。処置有効性を、3つの群間で比較した;非処置群(対照群)、NIR光照射なしのAPC注射(APC I.V.群)、およびAPC注射に続いてNIR光照射(NIR-PIT群)。CTLA4 IR700のiv注射の1日後に、腫瘍は、CTLA4-IR700なしの腫瘍よりも高い700nm蛍光強度を示した(図4B)。50J/cmのNIR光への曝露後に、腫瘍のIR700蛍光シグナルは、即座に減少したが、APC I.V.またはNIR-PIT群では、対照群と比較して変化はなく、有意差は検出されなかった(図4C)。生存曲線において、NIR-PIT群は、他の群と比較して改善された生存を示さなかった(図4D)。これらの結果により、mEERL-hEGFR同種移植モデルにおいて、CTLA4標的化NIT-PIT単独では、有意な治療効果は存在しなかったことが示された。
【0212】
hEGFRおよびCTLA4を標的とする同時の二重NIR-PITは、いずれかの単一分子標的化療法単独よりも良好に、腫瘍成長を阻害する
mEERL-hEGFR腫瘍に対する同時の二重NIR-PITの有効性を評価するために、pan-IR700および抗CTLA4 IR-700を使用したin vivo実験を行った。4つの腫瘍群を比較した;パニツムマブおよびCTLA4抗体(IVのみ)、pan-IR700およびCTLA4抗体(パニツムマブNIR-PIT)、パニツムマブおよびCTLA4 IR700(CTLA4 NIR-PIT)、ならびにpan-IR700およびCTLA4 IR700(二重NIR-PIT)(図5A)。すべての群を、薬物投与の1日後に、1回だけ、NIR光曝露に曝露させた(50J/cm)。腫瘍における700nmの蛍光が、APCを注射した群(パニツムマブNIR-PIT、CTLA4 NIR-PIT、および二重NIR-PIT群)において検出され、このシグナルは、NIR光曝露後即座に減少した(図5B)。二重NIR-PIT群における腫瘍体積は、任意の他の群と比較して、有意に減少した(p<0.001、各群対二重PIT群)(図5C)。パニツムマブおよびCTLA4 NIR-PITの両方の群における腫瘍進行は、I.V.群と比較して有意に減少しなかった。さらに、二重NIR-PIT群は、IVのみの群(p<0.01)およびパニツムマブNIR-PIT群(P<0.05)と比較して有意な生存の延長を達成した(図5D)。二重NIR-PIT群の生存は、CTLA4 NIR-PIT群と比較して有意に延長されなかったが、より多数の腫瘍が、二重NIR-PIT群において、CTLA4-NIR-PIT単剤療法におけるものよりも排除された(38%対25%)。
【0213】
CTLA4標的化NIR-PITおよび他のがん細胞標的化NIR-PITの組合せ効果を評価するために、二重NIR-PITの有効性を、LL/2-luc、MC38-luc、およびMOC2-luc腫瘍において、CD44およびCTLA4抗体を利用して調査した(図6A~6F)。CTLA4/CD44二重標的化NIR-PIT実験のために、腫瘍保持マウスを、4つの群にランダム化し、混合型抗体/APCの静脈内注射、続いてNIR光曝露を、次のように行った:i)混合型25μgの抗CD44抗体および25μgの抗CTLA4抗体(I.V.群)、ii)混合型25μgのCD44-IR700および25μgの抗CTLA4抗体(CD44 NIR-PIT群)、iii)混合型25μgの抗CD44抗体および25μgのCTLA4-IR700(CTLA4 NIR-PIT群)、ならびにiv)混合型25μgのCD44-IR700および25μgのCTLA4-IR700(二重NIR-PIT群)。混合型抗体/APCを、C57BL/6マウスへのがん細胞の接種の6日後に注射した。投与の24時間後に、NIR光(690nm、150mW/cm)を、すべての群において50J/cmで腫瘍に適用した。腫瘍外のすべてのエリアを、アルミニウム箔で被覆した。MC38-luc、MOC2-luc、およびLL/2-luc腫瘍保持マウスにおいて生物発光画像を得るために、D-ルシフェリン(MC38-lucおよびMOC2-lucについては15mg/mLで200mL、LL/2-lucについては3mg/mLで200mL、Gold Biotechnology、St.Louis、MO、USA)を、マウスに腹腔内注射した。ルシフェラーゼ活性を、相対光単位を使用してBLIシステム(Photon Imager、Biospace Lab、Nesles la Vallee、France)で分析した。ROIを、腫瘍全体にわたって配置した。相対光単位の1分当たりの計数を、M3 Vision Software(Biospace Lab)を使用して計算し、以下の式を使用してNIR-PIT前のものに基づくパーセンテージに変換した:[(処置後の相対光単位)/(処置前の相対光単位)×100(%)]。CTLA4/CD44二重NIR-PIT群は、すべての腫瘍モデルにおいて、I.V.群と比較して腫瘍進行を有意に阻害し、LL/2-lucおよびMC38-luc腫瘍において生存を延長した。CTLA4/CD44二重標的化NIR-PITは、それぞれ、構築されたLL/2-lucおよびMC38-luc腫瘍の44%および40%を根絶させたが、試験した腫瘍モデルにおいて、CTLA4標的化NIR-PIT単剤療法とCTLA4/CD44二重標的化NIR-PITとの間でさらなる効果は観察されなかった。
【0214】
二重標的化NIR-PITは、抗腫瘍宿主免疫を活性化する
各NIR-PIT後の樹状細胞(DC)およびCD8ρ T細胞の活性化を評価するために、同側鼠径リンパ節を、NIR-PITの2日後に採取し、フローサイトメトリーによって分析した。DCにおけるCD40およびCD80の平均蛍光強度(MFI)は、二重NIR-PIT群において、非処置群(対照群、図7Aおよび7B)と比較して有意に高かった。CD86において、二重群におけるMFIは、任意の他の群のものよりも高かった(図7C)。さらに、リンパ節内のCD8 T細胞中のCD25細胞のパーセンテージは、NIR-PITによって処置したすべての群において、I.V.群と比較して、有意に高かった(図7H)。これらの結果は、DC成熟およびがん細胞に対する細胞傷害性T細胞応答の活性化が、二重標的化NIR-PIT後に活性化DCによって増強されたことを示す。
【0215】
二重標的化NIR-PITは、腫瘍組織におけるCD8 T細胞の蓄積をもたらす
各治療法後のTMEにおけるリンパ球の蓄積を評価するために、TILを、多重IHCによって分析した(図7Dおよび7E)。CD8、CD4FoxP3、およびCD4FoxP3 T細胞を、各標本について計数した。CD8 T細胞は、二重NIR-PIT群において、対照群と比較して有意に高い密度を有し(図7F)、一方で、二重NIR-PIT群におけるCD8/Treg比は、すべての他の群よりも有意に高かった(図7G)。これらの結果は、二重標的化NIR-PITが、免疫抑制性TMEを逆転させ、T細胞活性化をもたらし、これが、いずれかの単一の分子を標的とする治療法と比較して、腫瘍進行を強力に抑制したことを示した。
【0216】
二重標的化NIR-PITは、免疫記憶をもたらす
免疫学的記憶を検査するために、処置したmEERL-hEGFR腫瘍が、二重NIR-PIT後に消滅したマウスに、反対側の背側への初回NIR PITのおよそ15週間後に、mEERL-hEGFR細胞を再接種した(図8A)。二重NIR-PITによって以前に接種した腫瘍が排除されたすべてのマウスが、新しく埋め込んだmEERL-hEGFR細胞を完全に拒絶したが、対照マウスにおいて、拒絶は観察されなかった(図8B)。加えて、二重NIR-PITによって以前の接種腫瘍が排除されたすべてのマウスは生存したが、すべての対照マウスは約50日以内に死亡した(図8C)。これは、二重標的化NIR-PIT後の免疫記憶の発生を示す。
【0217】
二重標的化NIR-PITは、両側腫瘍モデルにおいて、アブスコパル効果を示す
全身抗腫瘍免疫の発生を評価するために、両側mEERL-hEGFR腫瘍モデルを構築し、処置有効性を、I.V.群と二重NIR-PIT群との間で比較した。処置およびイメージングレジメンを、図9Aに示す。反対側の腫瘍は、NIR光曝露から遮蔽した(図9B)。同側腫瘍の50J/cm2のNIR光への曝露後、二重NIR-PIT群において、NIR光を照射した[NIR光(+)]腫瘍の700nm蛍光シグナルは、減少したが、反対側の腫瘍[NIR光(-)]の700nm蛍光は、変化しなかった(図9C)。腫瘍成長は、二重NIR-PIT群では、NIR光+)腫瘍だけでなく、NIR光(-)腫瘍についても、I.V.群と比較して有意に抑制された[P<0.0001(両側)対I.V.群、図9D]。各群で、NIR光(+)およびNIR光(-)の腫瘍間で、有意差は観察されなかった。また、二重NIR-PIT群の生存は、I.V.群と比較して、有意に延長された(図9E)。さらに、片側二重標的化NIR-PITを使用した両側腫瘍の完全寛解が、10匹中1匹のマウスにおいて達成された。
【0218】
考察
同時CTLA4/hEGFR二重標的化NIR-PITは、同じ抗体用量であっても、いずれかの処置単独よりも強力な腫瘍応答を示した。二重標的化NIR-PITの3時間後および7日後におけるCD8+/Treg比は、他の治療法と比較して、有意に増加した。さらに、アブスコパル効果が、二重標的化NIR-PIT後に両側腫瘍のモデルにおいて観察された。これらの結果は、二重標的化NIR-PITが、免疫抑制性TMEを変更し得、腫瘍成長抑制に対する強力な相乗効果をもたらしたことを示す。
【0219】
非コンジュゲートCTLA4およびhEGFR抗体単剤療法の投与は、いずれの治療効果も示さなかった(図4~6)。実際に、脾臓におけるTreg数に変化はなかったため(図2CおよびD)、治療用抗体用量の半分未満を使用したので、抗CTLA4抗体がTreg数を低減させた可能性は低い(Nagaya et al., Cancer Immunol Res 2019;7:401-13、Maruoka et al., Cancer Immunol Res 2020;8:345-55、Okada et al., Bioconjug Chem 2019;30:2624-33)。しかしながら、かなりの治療効果が、より低い用量の抗CTLA4抗体を使用した二重標的化NIR-PITで観察された。ICIを含むがん免疫療法と関連する重篤な自己免疫有害効果が、ヒトにおいて、抗CTLA4抗体(イピリムマブ)で頻繁に報告されていた(Hodi et al., N Engl J Med 2010;363:711-23、Weber et al., Lancet Oncol 2015;16:375-84、Weber et al., N Engl J Med 2017;377:1824-35、Robert et al., N Engl J Med 2011;364:2517-26、Quirk et al., Transl Res 2015;166:412-24)。イピリムマブは、他のICIよりも高頻度で免疫関連の有害効果(irAE)を誘導し、特に、黒色腫療法のために3mg/kgの用量を受けた患者の約40%において消化管症状を引き起こす(Dougan et al., Support Care Cancer 2020;28: 6129-43、Dougan M. Front Immunol 2017;8:1547、Eggermont et al., N Engl J Med 2016;375:1845-55、Puzanov et al., J Immunother Cancer 2017;5:95.)。PD-L1を遮断するイピリムマブまたはペンブロリズマブのirAEは、報告によると用量依存性である(Dougan et al., Support Care Cancer 2020;28: 6129-43、Puzanov et al., J Immunother Cancer 2017;5:95、Maughan et al., Front Oncol 2017;7:56)。したがって、低用量のICIの投与により、irAEを最小限に抑えられる可能性がある。したがって、二重標的化NIR-PITは、ICIと比較したその優れた治療効果のためだけでなく、抗体用量により有害効果を低減することができるため、高い有益性を有する。
【0220】
CTLA4は、FoxP3ρ Tregおよび様々な他の細胞において発現される。CTLA4のエンドサイトーシスは、極めて急速であるため、細胞表面上のCTLA4の発現を捕捉することは困難である。いずれにせよ、CTLA4標的化NIR-PITは、腫瘍内のTregを依然として枯渇させることができた。さらに、骨髄由来サプレッサー細胞および数種類のがん細胞もまた、細胞膜にCTLA4を発現していた(Yu et al., Oncoimmunology 2016;5:e1151594、Pico de Coana et al., Cancer Immunol Immunother 2014;63:977-83、Chaudhary et al., Vaccines 2016;4:28)。これらの細胞もまた、抗腫瘍宿主免疫をさらに増強させることができるCTLA4標的化NIR-PITによって、枯渇させることができた。加えて、CTLA4標的化NIR-PITは、腫瘍内血液灌流を抑制することが報告されている(Okada et al., Adv Ther 2021;n/a:2000269、Kurebayashi et al., Cancer Res 2021;81:3092-104)。腫瘍内血流の低減が、CTLA4標的化NIR-PITの単剤療法と同様に、二重標的化NIR-PIT後に観察された(図10A、10B)。この早期血管効果はまた、全体的な治療効果にも寄与し得る。
【0221】
CD25標的化NIR-PITはまた、選択的Treg枯渇も誘導したが、CD25は、IL2受容体であるため、光曝露後の残存APCの存在は、活性化エフェクター細胞におけるIL2/IL2R結合を遮断し、それらの阻害をもたらし得る。CTLA4標的化NIR-PITは、CTLA4抗体が、IL2結合を遮断せず、CTLA4-IR700は、CTLA4免疫チェックポイント経路を遮断し、宿主抗腫瘍免疫の増強をもたらし得るため、CD25標的化NIR-PITよりも良好であり得る(Okada et al., Adv Ther 2021;n/a:2000269)。
【0222】
がん標的化剤としてCD44と組み合わせたCTLA4を利用した二重標的化NIR-PITもまた、評価したが、CD44を発現するLL/2-luc、MC38-lucおよびMOC2- luc腫瘍モデルにおいて、相乗効果は観察されなかった(図6A~6F)。これらのモデルにおけるCTLA4/CD44の組合せが、mEERL-hEGFRモデルにおけるCTLA4/hEGFRよりも有効性が低かった理由については、いくつかあり得る。第1に、MC38-lucおよびLL/2-luc腫瘍は、高度に免疫原性の腫瘍である。宿主腫瘍免疫は、可能性としては、腫瘍がいずれの処置の前にすでにリンパ球が高度に浸潤していたため、CTLA4標的化NIR-PIT単独によって増強された(図1E)。対照的に、mEERL-hEGFR腫瘍は、T細胞の低い浸潤(図1E)およびCTLA4標的化NIR-PITのそれ自体による治療効果の欠如によって示されるように、免疫原性の乏しい腫瘍であると考えられた。CTLA4/hEGFR二重標的化NIR-PITは、mEERL-hEGFR同種移植モデルにおいて、腫瘍進行を阻害し、DC成熟およびT細胞応答の活性化を増強した(図5および7)。別の理由としては、標的外細胞殺滅があるであろう。MOC2-luc腫瘍もまた、免疫原性の乏しい腫瘍であったが、CTLA4/CD44二重標的化NIR-PITの相乗効果は、このモデルにおいては見られなかった。CD44は、がん細胞上だけでなく、一部の免疫細胞、例えば、エフェクターT細胞およびメモリーT細胞上にも発現される(Govindaraju et al., Matrix Biol 2019;75-76:314-30)。CD8+ T細胞のCD44陽性サブセットは、CD44標的化NIR-PITによって枯渇された(Maruoka et al. Vaccines 2020;8:528)。したがって、CD44標的化NIR-PITはまた、エフェクターT細胞を損傷し、抗腫瘍効果の減弱化をもたらし得る。一方で、hEGFRを標的とするNIR-PITは、hEGFRを発現しない宿主免疫細胞を損傷することなく、hEGFRを発現するがん細胞のみを殺滅する。したがって、mEERL-hEGFR腫瘍モデルにおけるCTLA4/hEGFR二重標的化NIR-PITは、がん細胞のみを標的化することによって抗腫瘍免疫活性化を誘導し、一般に免疫抑制性であるCTLA4を発現する細胞を排除することによって効果を増幅させることに成功した。
【0223】
結論として、データは、CTLA4/hEGFR二重標的化NIR-PITが、がん細胞および腫瘍内組織におけるCTLA4を発現する細胞を枯渇させることに成功し、いずれかの薬剤単独を上回って、細胞成長に対して有意な影響を有したことを示す。この組合せのNIR-PITアプローチは、特に、NIR-PIT単剤療法の有効性が不十分である場合に、治療効果を増強させることができる。
【0224】
(実施例3)
PD-L1-IR700+IL-15プレコンディショニングは、マウスにおいて相乗的抗腫瘍効果を提供する
実施例1に記載される材料および方法を、PD-L1標的化NIR-PITにおけるPD-L1抗体-IR700コンジュゲートの効果を示すために使用したが、Bio X Cell(West Lebanon、NH、USA)から得た抗マウスCD274抗体(10F.9G2モノクローナル抗体)を、抗マウスCTLA4抗体(9D9)の代わりに使用したことを除く。方法は、PD-L1抗体-IR700コンジュゲートの投与の前にIL15でのプレコンディショニングをさらに含んだ。
【0225】
抗PD-L1(CD274)とコンジュゲートしたIR700
APCを合成するために、IR700を、抗PD-L1抗体(クローン10F.9G2)にコンジュゲートし、コンジュゲート(抗PD-L1-IR700またはCD274Ab-IR700)を、SDS-PAGEによって分析した。抗PD-L1および抗PD-L1-IR700は、およそ同じ分子量を有したが、抗PD-L1-IR700のみが、700nmの蛍光を有した(図11A)。APCを、SECでも評価した。メインピークとして280nmの吸収で検出されたタンパク質の大部分(11.5分で溶出)は、689nmの吸光および蛍光(励起689nm、放出700nm)を有した(図11B)。これらの結果により、APCのコンジュゲーションの成功が検証された。
【0226】
がん細胞および免疫細胞におけるPD-L1の発現
がん細胞系におけるPD-L1発現のフローサイトメトリー分析を行った。MC38-luc(上部)およびLL2-luc(底部)の代表的なヒストグラムを、図11Cに示す。がん細胞系MC38-lucおよびLL2-lucにおけるPD-L1発現のフローサイトメトリー分析を、インターフェロンガンマありまたはなしの細胞培養物およびin vivo腫瘍から得た。図11Aに示されるように、インターフェロンガンマは、PD-L1の発現を条件的に増強させた。in vitroで培養したがん細胞に対するPD-L1を標的とするNIR-PITの前および後の顕微鏡画像は、細胞が、形状が変化し、粉砕されていることを示した。in vitro PD-L1標的化NIR-PITは、インターフェロンガンマで処置したMC38-luc細胞に対してより良好な細胞殺滅を示した(図11E)。
【0227】
図12に示されるように、PD-L1発現は、IFN-ガンマへの曝露後に、がん細胞において増加する。図13に示されるように、PD-L1は、腫瘍浸潤免疫細胞において発現される。
【0228】
抗PD-L1-IR700およびIL-15でのがんの処置
抗PD-L1-IR700を、MC38-luc腫瘍を保持するマウスに投与した。腫瘍を、5×10個のMC38細胞のs.c.投与によって構築した。8日後に、抗PD-L1-IR700(または対照IgG-IR700)を、i.v.投与し、腫瘍を、NIR光(50J/cm2)に供したか(PIT)、またはしなかった。図14A(左パネル)に示されるように、NIR光ありの抗PD-L1-IR700は、NIR光ありの抗PD-L1-IR700単独よりも高い程度で、腫瘍体積を有意に低減させ、生存を増加させた。マウスに、続いて、追加用量のMC38細胞を投与し、腫瘍体積および生存に対する効果を測定した。図14B(右パネル)に示されるように、抗PD-L1-IR700で以前に処置したマウスは、ナイーブマウスとは対照的に、腫瘍の再発を有さず、生存した。
【0229】
抗PD-L1-IR700 PITと組み合わせたIL15プレコンディショニングの効果を、図15に示す。腫瘍を、マウスに5×10個のLL2細胞のs.c.投与によって構築した。4日後に、IL15(1ug i.p.)を投与し、続いて、1日後に、抗PD-L1-IR700(またはビヒクル対照)を投与し、続いて、さらに1日後に、NIR光(50J/cm2)を行ったかまたは行わなかった。図15(左パネル)に示されるように、NIR光と組み合わせた抗PD-L1-IR700は、NIR光なしの抗PD-L1-IR700よりも高い程度で、腫瘍体積を有意に低減させ、生存を増加させた。図15(右パネル)に示されるように、IL-15プレコンディショニングの追加は、NIRを用いた抗PD-L1-IR700よりも高い程度に、腫瘍体積を実質的に低減させ、生存を増加させた。
【0230】
(実施例4)
材料および方法
この実施例は、実施例5~11における結果を得るために使用される材料および方法について説明する。
【0231】
試薬
水溶性シリカ-フタロシアニン誘導体であるIRDye700DX NHSエステルを、LI-COR Biosciences(Lincoln、NE)から得た。EGFRに対する完全ヒト化IgG2モノクローナル抗体(mAb)であるパニツムマブを、Amgen(Thousand Oaks、CA)から得た。抗マウスCTLA4抗体(クローン;9D9)を、Bio X Cell(West Lebanon、NH)から得た。L-アスコルビン酸ナトリウム(L-NaAA)およびL-システインを、MilliporeSigma(Burlington、MA)から得た。アジ化ナトリウム(NaN3)を、MP biomedicals,LLC(Solon、OH)から得た。
【0232】
合成
化合物を、以前に報告されている方法(図16)のわずかな修正によって調製した(Sato et al., ACS central science 2018, 4:1559-1569)。全般的な化学物質は、入手可能な最良グレードのものであり、FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation、Tokyo Chemical Industries Co, Ltd.、KANTO CHEMICAL Co.,INC.、およびSigma-Aldrich Japan K.K.によって供給されており、さらなる精製なしに使用した。1H NMRスペクトルを、JNM-ECX400PまたはJMN-ECS400(JEOL Ltd、Tokyo、Japan)機器において400MHzで記録し、重水素化溶媒シグナルと比べて報告する。
【0233】
シリコンフタロシアニンジヒドロキシド(Pc 1)
四塩化ケイ素(1.93g、11.4mmol)および1,3-ジイミノイソインドリン(1.10g、7.59mmol)を、キノリン(13mL)中に溶解させ、混合物を、アルゴン雰囲気下において2時間還流した。混合物を、室温(RT)に冷却した後、5MのNaOH水溶液(10mL)を添加し、混合物を、2時間還流した。産物を、ろ過によって回収し、MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させた(970mg、1.69mmol)。産物を、さらなる精製なしに次の反応に使用した。
【0234】
ビス(3-アミノプロピルジメチルシリルオキシド)シリコンフタロシアニン(Pc 2)
Pc 1(500mg、0.87mmol)および3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン(1.12g、6.96mmol)を、ピリジン(250mL)中に溶解させ、混合物を、アルゴン雰囲気下において終夜還流し、回転式蒸発によって濃縮した。残渣を、希釈し、ろ過し、HO-エタノール溶液(2:1)で洗浄し、真空下で乾燥させた(650mg、0.807mmol、収率82%(2ステップ))。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ -2.86 (s, 12 H), -2.33~-2.27 (m, 4 H), -1.28~-1.19 (m, 4 H), 1.18 (t, J = 7.2 Hz, 4 H), 8.35 (dd, J = 5.7, 2.8 Hz, 8 H), 9.66 (dd, J = 5.7, 2.8 Hz, 8 H).
【0235】
ビス{3-[トリス(3-スルホプロピル)]アンモニオプロピルジメチルシリルオキシド}シリコンフタロシアニン(Pc 3)
Pc 2(300mg、0.373mmol)、1,3-プロパンスルトン(2.27g、18.6mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、4.82g、37.4mmol)を、EtOH(15mL)中に溶解させ、混合物を、50℃で120時間、アルゴン雰囲気下において撹拌した。産物を、溶離液A(HO、0.1Mのトリ-エチルアンモニウムアセテート(TEAA))および溶離液B(99%のMeCN、1%のHO)(15分間でA/B=80/20から50/50、5分間で50/50から0/100)を使用して、逆相カラムInertsil ODS-3(10mm×250mm)(GL Sciences Inc.、Tokyo、Japan)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Shimadzu Co.、Kyoto、Japan)によって精製した。産物を、Sep-Pak C18カートリッジ(Waters Corporation、Milford、MA)およびカチオン交換樹脂で脱塩し、Pc 3を得た(216mg、0.132mmol、収率36%、ナトリウム塩として)。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ -2.79 (s, 12 H), -2.12~-2.18 (m, 4 H), -0.88~-0.98 (m, 4 H), 1.75-1.66 (m, 12H), 2.05-1.98 (m, 4 H), 2.80-2.73 (m, 24 H) 8.52 (dd, J = 5.7, 3.0 Hz, 8 H), 9.79 (dd, J = 5.7, 3.0 Hz, 8 H).
【0236】
IR700にコンジュゲートしたウシアルブミン、パニツムマブ、抗CD44抗体および抗CTLA4抗体の合成
ウシアルブミン(1mg、15.0nmol)、パニツムマブ(1mg、6.8nmol)、抗CD44および抗CTLA4抗体(1mg、6.7nmol)を、0.1mol L-1のNa2HPO4(pH8.5)中において、5倍モル過剰量のIR700 NHSエステルとともに室温で1時間インキュベートした(アルブミン;146.9μg、75.2nmol、パニツムマブ;66.9μg、34.2nmol、抗CD44および抗CTLA4抗体;65.1μg、33.3nmol、DMSO中10mmol L-1)。混合物を、Sephadex G25カラム(PD-10、GE Healthcare、Piscataway、NJ、USA)で精製した。IR700の濃度を、UV-Vis(8453 Value System、Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を使用して689nmにおける吸光によって決定した。タンパク質濃度を、595nmにおける吸光を測定することによって、Coomassie Plusタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL、USA)で確認した。SDS-PAGEを、各コンジュゲートの品質管理として行った。パニツムマブ-IR700はpan-IR700、アルブミン-IR700はalb-IR700、抗CD44-IR700はCD44-IR700、および抗CTLA4-IR700はCTLA4-IR700と略す。
【0237】
in vitroにおけるNIR光曝露後のPc 3またはmAb-IR700の700nm蛍光評価
PBS緩衝液(pH7.5)中、0、0.1、0.5、1.0、および10mMのL-NaAAまたはL-システインを有する25μMのPc 3または3μMのpan-IR700溶液を、調製した。NaN3と混合した分析のために、PBSによって希釈した、異なる濃度のNaN3(0、0.01、0.1、1、10、または100mM)を添加した、1mMのL-システインおよび/または1mMのL-NaAAを有する3μMのmAb-IR700溶液を、調製した。pan-IR700を、ML7710レーザーシステム(Modulight、Tampere、Finland)を用いて各条件(0、5、10、25、50、100、150、および200J)においてNIR光(690nm、150mW cm-2、50J cm-2)に曝露した。各照射の前および後に、700nm蛍光強度を、蛍光イメージャー(Pearl Imager、LI-COR Bioscience、Lincoln、NE、USA)によって取得した。Pearl Cam Software(LI-COR Biosciences)を、蛍光を分析するために使用した。同じ目的の領域(ROI)を、各チューブの溶液に設置し、次いで、平均700nm蛍光強度を測定した。NIR光照射の前および後のチューブの外観を、イメージングした。すべての実験は、室温で行った。
【0238】
電子スピン共鳴(ESR)分光法
100mMリン酸緩衝液(pH7.0)中の0.5mMのIR700、30マイクロリットルを、10mMのL-システインまたは10mMのL-NaAAありまたはなしで、気体透過性ポリメチルペンテン(TPXTM)チューブ(内径0.76mm×外径1.0mm×長さ60mm、Toho Kasei Sangyo Co.,Ltd.、Tokyo、Japan)に充填し、これを、次いで、両端を封止し、このTPXチューブを、天然クオーツESRチューブ(外径5mm×長さ250mm、S-5-EPR-250S、Norell Inc.、NC)に入れた。ESR試料チューブを、円筒TE011モードのキャビティ(JEOL)に設置し、アルゴンガスを、長いキャピラリーガラスチューブからESR試料チューブへ流入させて、試料から酸素を除去した。5分間のアルゴンガスでの排気後に、ESR試料チューブを封止し、X-band CW-ESR測定を、JEOL-RE1X分光計(JEOL、Tokyo、Japan)を使用して周囲温度で行った。NIR光の照射を開始したのと同時に、ESRスキャン(スキャン時間:8分/10mT)を低磁場側から開始した。ESRパラメーターは、次の通りであった:入射マイクロ波;電力10mW、マイクロ波周波数;9.150GHz、変調周波数;100kHz、磁場変調振幅;0.1mT、時間定数;0.3秒、スキャン範囲;325.17±5mT、およびレシーバーゲイン;5.0×102。ESRシグナルの線幅、強度、およびg値を、キャビティ内の同時搭載されているMn2+マーカー(ES-DM1、JEOL)のシグナルおよびWin-Radソフトウェア(Radical Research、Tokyo、Japan)を使用して推測した。
【0239】
システインからのシスチンの形成のHPLC分析
1mMのL-システインを含有する10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中の0.25mMのIR700の溶液を、封止したキュベットにおいて調製し、アルゴンを、キュベットのゴム製セプタムキャップに20分間吹き込んだ。脱酸素化した溶液に、次いで、レーザー(MLL-III-690、Changchun New Industries Optoelectronics Technology Co.Ltd、Changchun、China)(690nm、1W cm-2)を1時間照射した。アルゴン吹き込みなしの溶液もまた、上述のように照射した。照射した溶液を、Millex-LHフィルター(細孔サイズ:0.45μm、親水性、PTFE、Merck Millipore、US)でろ過した。溶液を、溶離液A(HO、0.1%のトリフルオロ酢酸)および溶離液B(99%のMeCN、1%のHO)(A/B=99/1)を1mL 分-1の流速で使用して、逆相カラムInertsil ODS-3(4.6mm×250mm)(GL Sciences Inc.、Tokyo、Japan)を用いてHPLCシステム(Shimadzu Co.、Kyoto、Japan)によって分析した。検出波長は、202nmであった。溶液はまた、L-システインおよびL-シスチンのピークを特定するために基準化合物を共注入した。
【0240】
細胞培養物
ルシフェラーゼを発現するマウスがん細胞系、A431 GFP-luc(EGFRを発現する表皮がん)、MDAMB468 GFP-luc(EGFRを発現する乳がん)、MC38-luc(結腸がん)、LL/2-luc(肺がん)、およびMOC2-luc(口腔がん)を使用した。A431 GFP-luc、MDAMB468 GFP-luc、MC38-luc、およびLL/2-luc細胞を、10%のウシ胎児血清、100I.U.mL-1のペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)を補充したRPMI1640培地(Thermo Fisher Scientific)において培養した。MOC2-luc細胞を、5%ウシ胎児血清、100I.U.mL-1のペニシリン/ストレプトマイシン、5ng mL-1のインスリン(MilliporeSigma)、40ng mL-1のヒドロコルチゾン(MilliporeSigma)、および3.5ng mL-1のヒト組換えEGF(MilliporeSigma)を補充したIMDM培地およびHam’s Nutrient Mixture F12培地の混合物(2:1の比、GE Health Healthcare Life Sciences)において培養した。すべての細胞を、95%空気および5% COの雰囲気下において37℃で加湿インキュベーターにおいて培養した。
【0241】
還元剤を用いたin vitro NIR-PIT
A431 GFP-lucまたはMDAMB468 GFP-luc細胞(4×10個)を、12ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートし、次いで、パニツムマブ-IR700(10μg mL-1)を含有する培地に37℃で1時間曝露した。APCを有する培地を吸引した後、様々な濃度のL-NaAA、L-システイン、および/またはNaNを含有するフェノールレッド不含培地を、各ウェルに添加した。NIR光(690nm、150mW cm-2、A431 GFP-lucについては1または2J cm-2、MDAMB468 GFP-lucについては20J cm-2)を、がん細胞に照射した。フローサイトメトリー分析のために、細胞を、NIR光曝露の1時間後に、トリプシンで収集した。細胞を、次いで、室温で5分間、ヨウ化プロピジウム(PI、1μg mL-1)で染色した。細胞の蛍光を、次いで、フローサイトメーター(FACSCalibur、BD Biosciences、San Jose、CA、USA)およびFlowJoソフトウェア(BD Biosciences)で分析した。
【0242】
動物および腫瘍モデル
すべてのin vivo手順は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animal Resources (1996), US National Research Councilを遵守して行った。6~8週齢の雌性C57BL/6マウスおよびホモ接合性無胸腺ヌードマウスを、それぞれ、The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)およびCharles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から得た。A431 GFP-luc(1×10個)、MC38-luc(1×10個)、LL/2-luc(0.5×10個)、またはMOC2-luc(1×10個)細胞を、背側の右側に接種した。腫瘍部位を覆う毛は、C57BL/6マウスのNIR-PITおよびイメージングの前に除去した。体重を、NIR光曝露の前日から、4~6日後まで測定した。マウスを、COで安楽死させ、BLIを含むすべての実験を終了した。
【0243】
in vivo NIR-PIT
C57BL/6腫瘍保持マウスを、以下のように3つの群にランダム化した:i)処置なし(対照)、ii)L-NaAAなしで、APCの静脈内投与に続いてNIR光曝露(NIR-PIT)、iii)L-NaAAありのNIR-PIT。APCを、C57BL/6マウスへのがん細胞の接種の6日後に注射した。同様に、無胸腺マウスの腫瘍保持マウスを、以下のように2つの群にランダム化した:i)L-NaAAなしのNIR-PIT、ii)L-NaAAありのNIR-PIT。APCの用量は、それぞれ、CD44-IR700については100μg、CTLA4-IR700については50μgであった。NIR光(690nm、150mW cm-2、50J cm-2)を、翌日に曝露した。L-NaAA(80mg マウス-1)またはPBSを、NIR光曝露の15分前に腹腔内注射した。NIR光曝露の際、腫瘍に隣接する正常組織は、確実にNIR光曝露が腫瘍部位に限定されるように、アルミニウム箔で被覆した。IR700の背側蛍光画像を、Pearl Imager(LI-COR Biosciences)の700nm蛍光チャネルで得た。画像を、NIR-PITの前および後に取得した。ROIを、腫瘍に配置した。NIR光照射の1日後の処置マウスの背側浮腫形成を、カメラでイメージングした。急性処置の有効性を、BLI分析で評価し、ここで、D-ルシフェリン(3mg マウス-1、Gold Biotechnology)をマウスに腹腔内注射した。ルシフェラーゼ活性を、相対光単位を使用してBLIシステム(Biospace Lab)で分析した。ROIを、腫瘍全体にわたって配置した。相対光単位の1分当たりの計数を、M3 Vision Software(Biospace Lab)を使用して計算し、以下の式を使用してNIR-PIT前のものに基づくパーセンテージに変換した:[(処置後の相対光単位)/(処置前の相対光単位)×100(%)]。生物発光画像を、脱毛に誘導される皮膚の色素沈着の発症により正確な測定ができなくなるまで継続的に記録した。
【0244】
磁気共鳴イメージング(MRI)
ペントバルビタール麻酔下において、MRIを、NIR光曝露の1日後に、社内10インチの円形マウスレシーバーコイルアレイ(Elition 3T、Philips Medical Systems、Best、Nether-lands)を使用して3-Tスキャナーで行った。腫瘍を正確に位置付けるために、スカウト画像を得た。すべてのマウスに、T2強調脂肪抑制イメージング(T2WI脂肪抑制)および短いTI反転回復イメージング(STIR)を行った。すべての画像を冠状面で取得し、T2WI脂肪抑制画像は、軸面でも取得した。すべての画像を、Image Jソフトウェアを使用して分析し、3Dイメージングを再構築した。T2WI脂肪抑制およびSTIRにおいて各画像から導出された高シグナル強度面積を、Image Jによって計算した。
【0245】
フローサイトメトリー分析
CTLA4を発現する細胞の抑制を確認するために、MC38-lucの腫瘍を、NIR光曝露の3時間後に採取した。腫瘍試料に由来する単一細胞懸濁液を、以下のプロトコールを使用して調製した。腫瘍全体を、コラゲナーゼIV型(1mg mL-1、Thermo Fisher Scientific)およびDNase I(20μg mL-1、Millipore Sigma、Burlington、MA)を含有するRPMI 1640培地(Thermo Fisher Scientific)において、37℃で30分間インキュベートし、次いで、ハサミで優しく切断し、3mLのシリンジのプランジャーの背面で潰した。組織を、70μmの細胞ストレーナー(Corning、Corning、NY)に通した。合計3.0×10個の細胞を染色し、5.0×10個の細胞のデータを、各腫瘍について収集した。細胞を、Thermo Fisher Scientificから得た抗CTLA4抗体(クローン、UC10-4B9)で染色した。生細胞を死細胞と区別するために、細胞はまた、LIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stain(Thermo Fisher Scientific)でも染色した。細胞の蛍光を、次いで、フローサイトメーター(FACSLyric、BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(FlowJo LLC)で分析した。死細胞を、FSC、SSC、およびLIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stainでの染色に基づいて、分析から除去した。
【0246】
統計学的分析
データを、平均±SEMとして表す。統計学的分析は、GraphPad Prism(GraphPad Software、LaJolla、CA、USA)で行った。各実験の試料サイズ(n)は、各図の凡例に記載されている。1回での測定のために、両側対応のないt検定(2つの群)または一方向分散分析(ANOVA)に続いてテューキーの検定またはダネットの検定(3つもしくはそれを上回る群)を使用した。ルシフェラーゼ活性、生体分布、および体重の比較のために、反復測定二方向ANOVAに続いてテューキーの検定を使用した。0.05未満のp値を、有意とみなした。
【0247】
(実施例5)
L-NaAAは、アジ化ナトリウム(NaN)の存在に関係なく、NIR照射により軸リガンドの放出を加速させる
IR700のフタロシアニンシアニン部分である化合物Pc 3を、図16に従って合成した。NIR光曝露後のPc 3の光誘導性リガンド放出反応は、電子供与体であるL-NaAAの存在下において、用量依存性の様式で加速された。Pc 3の700nm蛍光は、NIR光およびL-NaAAの用量依存性の様式で減少した(図17A、17B)。蛍光の消失は、Pc 3が、光曝露後にその可溶性を劇的に変化させたため、L-NaAAの用量依存性の様式でのPc 3の沈降と関連していた(図17C)。パニツムマブとコンジュゲートされたIR700(パニツムマブ-IR700)の蛍光放出は、NIR光およびL-NaAAの用量依存性の様式で減少した(図17D、17E)。NaN3の存在により、L-NaAAは、NIR光照射後のパニツムマブ-IR700の蛍光の減少を阻害しなかった(図17F)。
【0248】
IR700およびL-NaAAラジカルの中間産物を特定するために、電子スピン共鳴(ESR)分光法を行った。ブロードシグナルが、中心場に観察されたが(図17G(i))、このシグナルは、空のクオーツESRチューブでも観察されており、このシグナルが、クオーツESRチューブ自体に由来することが示された。したがって、このシグナルは、差し引くことができ、ESR測定に干渉しなかった。アルゴン飽和条件下において(図17G、左)、2.0051のg値および0.18mTの分割幅を有する小さいが明確なダブレットシグナルが、単純にIR700をL-NaAAと数分間混合することによって観察された(図17G(ii))。このシグナルのESRパラメーターは、L-NaAAの酸化中に産生される、L-NaAAラジカルについて以前に報告されたものとほとんど同じである。この観察は、L-NaAAラジカルが、NIR光照射なしでIR700およびL-NaAAの間の酸化還元相互作用によって産生されることを示す。10mMのL-NaAAおよび0.5mMのIR700を含有する試料にNIR光を照射した場合、図17G(iii)の左のスペクトルにおいてアスタリスクで示されるように、0.87mTのブロード線幅および2.0006のg値を有する小さなシグナルが出現した。このシグナルは、電子供与体、例えば、L-NaAAの非存在下では観察されておらず、求電子性分子である酸素が存在する場合に、空気中のシグナルの強度が、アルゴン飽和条件下のものよりもはるかに小さかったため、このESRシグナルを、L-NaAAからNIR光に誘導されるトリプレット状態のIR700への電子移動によって産生されたIR700アニオンラジカルに割り当てた。この手順において、磁場のスキャンおよび試料照射は、同時に開始し、8分/10mTで継続した。したがって、IR700アニオンラジカルに起因するシグナルが検出された中心領域は、スキャン開始から約4分で生じた。IR700アニオンラジカルに由来するこのシグナルは、NIR光照射後少なくとも16分間観察された。このシグナルは、IR700アニオンラジカルに由来し、NIR光照射が、L-NaAAの存在下においてIR700アニオンラジカルを産生することを示した。図17G(iv)および(v)の左のスペクトルにおいて、L-NaAAラジカルおよびNIR光に誘導されるIR700アニオンラジカルの形成に対するNaN3の効果を、検査した。結果は、100mMのNaNの添加が、L-NaAAラジカルを減弱させたが、NIR光照射によって産生されるIR700アニオンラジカルの形成には影響を及ぼさなかったことを示した。
【0249】
類似の実験を、酸素の存在下において行った。図17G(ii)および(iii)の右のスペクトルに示されるように、空気中でのIR700のL-NaAAとの反応は、アルゴン飽和条件下におけるものよりも強力な、L-NaAAラジカルに由来するラジカルシグナルを示し、L-NaAAラジカルは、NIR光照射によってさらに増強された。さらに、NIR光照射は、空気中でIR700アニオンラジカルを産生したが、これは、アルゴン飽和条件と比較して大幅に低減されたことも観察された。L-NaAAラジカルおよびIR700アニオンラジカルに対するNaN3の効果は、図17G(iv)および(v)の右のスペクトルに示されている。100mMのNaN3の試料への添加により、L-NaAAラジカルに由来するESRシグナル強度が減少したが、NIR照射によって産生されるIR700アニオンラジカルの形成に影響を及ぼすようであった。軸リガンド切断が、L-NaAA添加条件下において観察され、これは、NaNによって増強されなかった(図17H)。
【0250】
(実施例6)
L-システインを電子供与体として添加した場合に、NaN3は、IR700のリガンド放出を阻害した。
Pc 3およびパニツムマブ-IR700の光誘導性リガンド放出反応を、L-NaAAの代替的な電子供与体であるL-システイン添加の条件下において評価した。同様の現象が観察されたが、L-NaAAを使用した場合よりも低いNIR光照射レベルで生じた(図18A~18C)。10mMまたはそれよりも高い濃度のNaNを、1mMのL-システインと組み合わせることで、L-システイン単独で見られるパニツムマブ-IR700蛍光の消失が、低下した(図18D)。しかしながら、1mMのL-NaAAの1mMのL-システインへの添加により、NaNの効果に対抗した(図18E)。
【0251】
照射なしの0.5mMのIR700および10mMのL-システインの対照ESRスペクトルは、図18F(i)に示されている。0.5mMのIR700および10mMのL-システインの試料を、100mMのリン酸緩衝溶液(pH7.0)に溶解させ、アルゴン飽和条件下においてNIR光を照射すると、IR700アニオンラジカルに割り当てられる0.87mTの線幅および2.0006のg値を有する対称的なESRスペクトルが、図18F(ii)に示されるように、観察された。さらに、NIR光に誘導されるIR700アニオンラジカルに対するNaNの効果を評価するために、類似の実験を、試料中の100mMのNaNの存在下において行った。NaNの存在下におけるESRスペクトル(赤色)を、NaNの非存在下におけるスペクトル(灰色、図18F(ii)と同じスペクトル)に、図18F(iii)に示されるように、重ねた。これらの結果は、NaNが、IR700アニオンラジカルのシグナルを減少させたことを示した。NaNを添加した場合、リガンド切断が減少された(図18G)。この結果は、ラジカルアニオンの形成が阻害されたESRの結果と一致する。
【0252】
L-シスチンが、L-システインから産生されるかどうかを決定するために、IR700の溶液に、L-システインの存在下において照射し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。IR700に、低酸素条件下において照射した場合、L-システインおよびL-シスチンのピークが観察されたが、NIR光照射なしの場合にはL-シスチンのピークは存在しなかった(図18H)。一方で、酸素の存在下においてNIR光照射すると、L-システインのピークは、大幅に低減され、一方で、L-シスチンのピークは、低酸素条件下におけるものよりも大きかった。これらの結果は、L-システインが、励起状態においてIR700に対する還元体として作用し、L-シスチンに変換されたことを示した。加えて、L-システインは、酸素の存在下において、酸素の非存在下よりも効率的に消費された。これは、酸素が、トリプレット励起状態のIR700または基底状態におけるアニオンラジカルをクエンチし、より効率的なサイクルの励起および還元をもたらすためであり得る。
【0253】
(実施例7)
L-NaAAは、NaNによって引き起こされるNIR-PIT細胞傷害性の抑制に対抗する
NIR-PITの有効性に対する還元剤の効果を調査するために、がん細胞を標的とするNIR-PITの細胞傷害性効果を、細胞生存率アッセイによって定量的に評価した。低い濃度または薬理学的濃度下において、L-NaAAは、パニツムマブ-IR700 NIR-PIT(Pan-PIT)の細胞傷害性損傷を増加させた。超生理学的濃度のL-NaAA(例えば、1mMを上回る)下において、Pan-PITによる細胞傷害性損傷は、わずかに阻害された。対照的に、L-システインは、0.001mMなどの非常に低い濃度においてのみであるが、Pan-PITの細胞傷害性損傷をわずかに増強し、一方で、0.1mMまたはそれよりも高い濃度では細胞傷害性を低下させた(図19A~19B)。L-システインおよびL-NaAAの両方が同等の濃度で存在する場合、L-システインは、L-システインのL-NaAAと比較して高い酸化還元能に起因して、L-NaAAの効果に対抗する傾向があった(図19A)。
【0254】
次に、NaNの存在下におけるPan-PITの細胞傷害性に対する各還元剤の影響を評価した。L-NaAAは、NaN3によって引き起こされる細胞傷害性の低減を克服したが、L-システインは、NaN3の効果を逆転させることはできなかった(図19D、19E)。別の細胞系であるMDAMB468において、L-NaAAはまた、NaN3によって抑制されるPan-PITの細胞傷害性を回復させた(図20A~20D)。同様の傾向が、生物発光イメージング(BLI)によって観察された(図21A~21D)。これらの結果は、NaNによるNIR-PIT細胞傷害性の抑制が、L-NaAAによって克服されたが、L-システインによっては、その高い酸化還元能にもかかわらず、おそらくは、添加されたL-システインが、L-システインのスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成し、それによって、光誘導性リガンド放出反応を加速させるその能力が低下したため、克服されなかったことを示す。
【0255】
(実施例8)
L-NaAAは、NIR光曝露後のIR700のリガンド放出を加速させる
L-NaAAまたはL-システインが、in vivoでIR700からのリガンド放出を良好に促進するかどうかを評価するために、アルブミン-IR700(alb-IR700)を使用し、蛍光の消失を測定した(図22A)。コンジュゲートされたalb-IR700(50μg)を、NIR光曝露の2時間前に、非腫瘍保持無胸腺ヌードマウスに、外側尾静脈から注射した。L-NaAA(80mg)、L-システイン(10.5mg)、またはPBSを、マウスにNIR光を照射する2分前に、尾静脈から注射した。腹部を、NIR光(690nm、150mW cm-2、20J cm-2)に曝露した。腹側蛍光を、Pearl Imager(LI-COR Biosciences)を使用して、NIR光曝露の前および後に測定した。NIR光照射および蛍光イメージングのサイクルを、5回反復した。ROIは、肝臓および照射部位に設置した。各ROIの平均蛍光強度を計算した。
【0256】
alb-IR700をNIR光に曝露した後、700nm蛍光シグナルは、照射部位では減少したが、肝臓内のシグナルは、NIR光の線量依存性の様式で増加した(図22B、22D)。L-NaAA投与下において、蛍光は、L-NaAAなしの条件と比較して有意に減少したが、L-システインでは蛍光に明らかな変化はなかった(図22C、22E)。リガンド放出は蛍光の消失をもたらすため、肝臓における700nm蛍光の減少は、NIR光曝露後にalb-IR700で高いリガンド放出が生じたことを意味する。したがって、L-NaAAは、in vivoでアルブミンにコンジュゲートしたIR700のリガンド放出を加速させたが、L-システインは加速させなかった。
【0257】
(実施例9)
L-NaAAは、がん細胞標的化NIR-PITの有効性に影響を及ぼさなかった
L-NaAAが、がん細胞標的化NIR-PITの抗腫瘍効果に影響を及ぼしたかどうかを、CD44-IR700 in vivo同種移植腫瘍モデルを利用して、決定した。まず、L-NaAAは、腫瘍成長に影響を及ぼさないことを確認した。処置およびイメージングレジメンが、示されている(図23A)。MC38-luc腫瘍内のCD44-IR700の蓄積を、蛍光イメージングによって確認し、これは、NIR光曝露後に、L-NaAAが存在するかどうかに関係なく、減少した(図23B、23C)。CD44標的化NIR-PITの治療有効性を、リードアウトとしてBLIで評価した(図24D)。L-NaAAの存在に関係なく、両方のNIR-PIT群が、BLIにおいて、がん細胞死を示す、対照群と比較して有意に低い強度を示し、L-NaAAありのNIR-PITとL-NaAAなしのNIR-PITとの間で有意差はなかった(図24E)。L-NaAAなしのNIR-PIT群において1日目に、重度の浮腫形成が、腫瘍の上の皮膚で観察された。これは、生物発光シグナルの多くを減弱させた可能性が高い。MC38-luc、LL/2-luc、およびMOC2-luc腫瘍モデルは、すべてが、CD44標的化NIR-PITの抗腫瘍効果が、L-NaAAで変化しなかったことを示した(図25A~25I)。無胸腺マウスにおいて、L-NaAAはまた、pan-PITの有効性に影響を及ぼさなかった(図26A~26E)。
【0258】
(実施例10)
L-NaAAは、NIR-PITでの処置後の浮腫の形成を抑制した
浮腫の形成を、L-NaAAありおよびなしのCD44標的化NIR-PIT後に評価した。MC38-luc、LL/2-luc、およびMOC2-luc腫瘍保持マウスにおいて、浮腫は、L-NaAAなしで、NIR-PITの1日後に、マウスにおいて、皮下腫瘍周辺の背側表面に観察された(図24Fおよび25G)。しかしながら、L-NaAA注射ありのNIR-PITによって処置したマウスにおいて、浮腫は検出されなかった。2つの群間で、体重における有意差は観察されなかった(図24G)。他の同種移植モデルにおいて、L-NaAAありのCD44標的化NIR-PIT後に体重における有意差は検出されなかった(図25H、25I)。
【0259】
浮腫の程度を定量するために、磁気共鳴イメージング(MRI)を、CD44標的化NIR-PITの1日後に行った。非L-NaAA群において、T2強調および脂肪抑制画像(T2WI脂肪抑制)は、NIR-PITにおいて、高シグナル強度面積として示される、末梢腫瘍部位から胸郭の低端および尾部の近位側までに及ぶ広範囲の浮腫を示した。対照的に、L-NaAA群においては、処置した腫瘍の周囲のみに、最小限の浮腫が観察された(図25H)。T2WI脂肪抑制画像における処置後の浮腫に対応する高シグナル強度の面積を定量し、高シグナル面積は、L-NaAAなしで処置した群において、L-NaAA群と比べて、有意に大きかったことが示された(図25I)。これはまた、短いTI反転回復画像(STIR)でも確認された(図27A~27B)。
【0260】
浮腫形成の原因を調査するために、ROSを、NIR-PITの前および後に、MC38-luc腫瘍保持マウスにおいてL-012を使用して、化学発光イメージング(CLI)で評価した(図28A~28C)。L-NaAAありのCD44標的化NIR-PITは、CLIにおいて、L-NaAAなしのNIR-PITと比較して、有意に低い強度(低ROS)示した。これらのデータは、L-NaAAが、NIR-PIT後にROSによって誘導される浮腫形成を阻害したことを示した。
【0261】
(実施例11)
L-NaAAは、有効性に干渉することなく、免疫抑制性細胞を標的とするNIR-PIT後の浮腫の形成を抑制した
L-NaAAありおよびなしのCTLA4標的化NIR-PITの有効性を、MC38-luc腫瘍において評価した。両方の群において、CTLA4-IR700蛍光を、注射の1日後、NIR-PITの前に観察したが、NIR光曝露後に減少した(図29A~29C)。L-NaAAなしのNIR-PIT群は、NIR光曝露後1日目から3日目に、L-NaAAありのNIR-PIT群よりも低いBLI腫瘍シグナルを有した(図29D)。しかしながら、NIR-PIT後6日目までに、2つの群間で差は観察されず、両方のNIR-PIT群が、対照群と比較して有意に低いBLI強度を示した(図29E)。CTLA4標的化NIR-PITは、CD44標的化NIR-PITよりも強力な浮腫形成を示したため、L-NaAAなしのNIR-PIT群において、皮膚肥厚化に起因してBLIでより低い強度が示された。L-NaAAありのNIR-PITによって処置したマウスにおける浮腫の形成もまた、肉眼的およびMRIの両方で、抑制された(図29F~29H)。NIR-PITの翌日に、有意な重量低下が、L-NaAAありのNIR-PIT群のマウスにおいて観察されたが(図29I)、浮腫が比較的少ないためと思われた。
【0262】
CTLA4標的化NIR-PITにおいて、より高いROSもまた、L-NaAAなしのNIR-PIT群において検出された(図28D、28E)。CTLA4標的化NIR-PITの選択的な細胞傷害性が、L-NaAAありのNIR-PIT群において保存されていたかどうかを確認するために、CTLA4を発現する細胞の選択的な枯渇を、MC38-luc腫瘍において、CTLA4標的化NIR-PITの3時間後の評価した(図29J)。CTLA4hi細胞は、L-NaAAありおよびなしの両方のNIR-PIT群において、選択的に枯渇された。したがって、L-NaAAは、免疫抑制性細胞標的化NIR-PITの有効性に対して効果を有さなかったが、ROSによる浮腫形成を抑制した。
【0263】
NIR-PITによって誘導される選択的な細胞傷害性は、低酸素の電子供与体が豊富な条件下において生じる、光誘導性リガンド放出反応によって引き起こされる。リガンド放出は、APC-抗原複合体の可溶性の劇的な変化を引き起こし、細胞膜の損傷および細胞死を引き起こす。しかしながら、正常酸素条件または高酸素条件下において、NIR光は、APCにおいてROS産生を誘導し、これは、NIR-PIT後の非選択的細胞傷害性および局所的な浮腫に寄与する可能性が高い。別の可能性のある局所的な浮腫の形成の原因は、NIR-PITに起因する直接的なリンパ系損傷と関連するリンパ管閉塞であり得る。しかしながら、NIR-PITによる明らかなリンパ性閉鎖または形態学的変化は観察されなかった。したがって、ROSは、血管透過性を増加させ、浮腫の形成をもたらす。L-NaAAは、NIR-PITリガンド放出反応を促進するべき電子供与体であるが、ROSの大半をクエンチし、それによって、MRIで図24Hおよび29Gに示されるように浮腫を低減させる。ROSのクエンチは、がん細胞の細胞傷害性に干渉し得るため、NIR-PITの治療効果に影響を及ぼし得る。しかしながら、L-NaAA注射ありのNIR-PITは、依然として、許容可能な細胞傷害性を示したが、浮腫形成は伴わない。したがって、NIR-PITにおけるL-NaAA投与は、例えば、浮腫が気道または縦隔に影響を及ぼし得る場合に、より安全である有効な治療法を提供する。
【0264】
低酸素条件下において、L-NaAAラジカル産生は、最小限であるが、正常酸素条件下においては、L-NaAAラジカル産生の量は、極めて多く(図17G(ii)および(iii))、酸素分子が、L-NaAAラジカルの産生に関与することを示す。IR700アニオンラジカルが、酸素の存在下において、1つの電子を酸素に供与して、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2-・)を生成するか、または光励起によって生成されたトリプレット状態IR700が、トリプレット酸素(O2)にエネルギーを与えて、シングレット酸素(O2)を産生することが、可能である。L-NaAAが、O2-・およびO2と反応して、L-NaAAラジカルおよび過酸化水素を形成することが、報告されている。したがって、酸素の存在下において、L-NaAAが、これらのROSと反応し、多数のL-NaAAラジカルの生成をもたらし得ることが、可能である。この事例では、高用量のL-NaAAにより、生成されたROSを消費し、臨床実施において、NIR-PITの副作用を低減することができる。
【0265】
IR700アニオンラジカルは、L-システインを還元剤として使用した場合に明確に観察されているが(図18F(ii))、シグナルは、L-NaAAを還元剤として使用した場合、非常に低い(図17G(iii))。これは、還元剤としてのL-システインおよびL-NaAAの特性における差に起因し得る。L-システインは、1つの電子の還元能力を有する単純な還元体であるが、一方で、L-NaAAは、水中でイオン化してL-NaAAモノアニオンとなり、このL-NaAAモノアニオンが、反応プロセスにおいて還元体として作用する。L-NaAAモノアニオンは、1つの電子の還元能力を有するだけでなく、1つの水素の供与体としても作用し、比較的長い寿命を有するESRで検出可能なL-NaAAラジカルを産生する(Njus and Kelley, Biochim Biophys Acta 1993, 1144:235-48.)。量子化学的計算を用いる場合、1つの電子の還元体、例えば、L-システインの存在下におけるIR700の光還元において、軸リガンド切断は、L-NaAAで生じるような、還元体からの1つの電子の移動による加水分解およびHOからの1つのプロトンの移動を必要とすることが以前に示された(Kobayashi et al., Chempluschem 2020, 85:1959-1963)。L-システインを還元剤として使用した場合、1つの電子が、IR700に供与され、HOからIR700アニオンラジカルへのプロトン移動が比較的緩徐であったため、寿命の長いIR700アニオンラジカルが、ESRによって検出された。しかしながら、L-NaAAを還元剤として使用した場合、L-NaAAモノアニオンからIR700分子への1つの電子および1つのプロトンの供与は、同時に生じ、そのため、IR700アニオンラジカルは、それが生成されると同時に軸リガンド切断反応へと迅速に進み、したがって、ESRによって検出することができなかった(図17Gおよび30A)。
【0266】
以前の研究により、公知のシングレット酸素およびROSクエンチャーであるNaNが、NIR-PITの細胞傷害性を部分的に抑制することが示されている。しかしながら、これらの実験は、NaNの必要な用量が、生きている動物にとってin vivoで毒性であるため、in vitroで行われていた。本明細書において、NaNは、ESRで示されるように、IR700ラジカルアニオン形成をクエンチすることによって、IR700のNIR光誘導性リガンド放出反応を直接的に抑制したことが示されている(図17Gおよび18F)。リガンド放出の抑制は、IR700蛍光消失によって測定可能であり、これは、処置の有効性にも等しい。NaNは、IR700のNIR光誘導性リガンド放出反応を抑制することによって、細胞傷害性を部分的に抑制する。したがって、NIR-PIT細胞傷害性の作用機序におけるROSの役割は、文献において誇張されていた(Kishimoto et al., Free radical biology & medicine 2015, 85:24-32.、Railkar, et al., Molecular cancer therapeutics 2017, 16:2201-2214)。
【0267】
L-システインは、L-NaAAよりも高いその酸化還元能および臨床使用に起因して、還元剤として、L-NaAAの代替物である。IR700溶液において、L-システインは、特に低酸素条件下において、電子供与によって光誘導性リガンド放出を加速させた。しかしながら、IR700が抗体にコンジュゲートすると、NIR光誘導性リガンド放出反応は低酸素状態で優勢となり、L-システインによって高度に影響を受けない。抗体のL-システイン側鎖上のスルフヒドリル基は、共有結合でコンジュゲートされ、NIR光によって活性化されると、IR700に電子を供与し得ることが可能である。L-システイン添加は、さらには、in vitroでNIR-PITから細胞を保護したが、おそらくはこれは、L-システインが、正常酸素細胞培養条件下において、抗体上の遊離スルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成するためである。L-シスチンの形成は、光に活性化されるIR700への有効な電子供与を阻止し、リガンド放出反応を抑制する。L-NaAAは、電子供与体であるとともに、リガンド放出反応を促進する励起されたIR700のプロトン化の補助も行い得る。したがって、L-システインは、良好な還元剤であり、in vitroでリガンド放出反応を加速させ得るが、in vivoでこの目的のために使用することは困難であり得る。
【0268】
まとめると、IR700への直接的な電子供与体およびNIR-PIT中のROSの還元剤の両方として作用するL-NaAAは、NIR-PITの選択的な細胞傷害性を促進しながら、局所的な浮腫を抑制する。本明細書において使用される用量でのL-NaAAの比較的低い毒性および安全性臨床プロファイルに基づいて、これは、その安全性プロファイルを改善しながら、その有効性を妨害しない、NIR-PITの有用なアジュバントとしての機能を果たし得る(図30B)。したがって、1つまたは複数の還元剤、例えば、L-NaAAを、IR700を利用する開示される方法と組み合わせて使用することができる。1つまたは複数の還元剤は、一部の例では、例えば、NIR-PITの直後に、浮腫を有意に抑制する。臨床的に、浮腫は、NIR-PITでの臨床上の問題である。例えば、身体の重要な部分(例えば、気道または縦隔、例えば、気管の後方)で生じる腫瘍を処置する場合、浮腫は、望ましくない事象、例えば、窒息をもたらし得る。
【0269】
本開示の原理を適用することができる多数の可能性のある実施形態を考慮して、例示された実施形態が、本開示の例にすぎず、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。したがって、我々は、これらの特許請求の範囲の範囲および趣旨の範囲内のすべてを、我々の発明として主張する。
図1A-B】
図1C-D】
図1E
図2A
図2B-C】
図2D
図2E
図3A
図3B-C】
図4
図5
図6A-B】
図6C-D】
図6E-F】
図7A-C】
図7D-G】
図7H
図8
図9
図10
図11A-B】
図11C-D】
図11E
図12
図13
図14
図15
図16
図17A-C】
図17D-F】
図17G-H】
図18A-C】
図18D-E】
図18F-G】
図18H
図19A-B】
図19C
図19D-E】
図20A-B】
図20C-D】
図21A-B】
図21C-D】
図22A-B】
図22C-D】
図22E
図23
図24A-B】
図24C-D】
図24E-G】
図24H-I】
図25A-C】
図25D-F】
図25G-I】
図26A-C】
図26D-E】
図27
図28A-C】
図28D-E】
図29A-C】
図29D-E】
図29F-H】
図29I-J】
図30A
図30B
【国際調査報告】